(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-19
(54)【発明の名称】被覆された医療製品
(51)【国際特許分類】
A61L 29/16 20060101AFI20231212BHJP
A61L 29/12 20060101ALI20231212BHJP
A61L 29/08 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
A61L29/16
A61L29/12
A61L29/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528717
(86)(22)【出願日】2021-11-16
(85)【翻訳文提出日】2023-07-18
(86)【国際出願番号】 EP2021081902
(87)【国際公開番号】W WO2022101518
(87)【国際公開日】2022-05-19
(32)【優先日】2020-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】504150209
【氏名又は名称】ヘモテック アーゲー
【氏名又は名称原語表記】Hemoteq AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン エリカ
(72)【発明者】
【氏名】メイザー ギュンター
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AC08
4C081AC09
4C081AC10
4C081CE02
4C081CE11
4C081EA06
(57)【要約】
本発明は、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および少なくとも一つの溶媒、を含み、少なくとも一つの溶媒中に、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解し、少なくとも一つの溶媒中に、少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、医療機器の被覆のための懸濁物に関する。さらに、本発明は、前記懸濁物を調製するための工程、前記懸濁物を用いて医療機器を被覆するための方法、並びに少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールおよび少なくとも一つの微結晶タキサンを用いて被覆された医療機器に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから選択される医療機器を被覆するための懸濁物であって、前記懸濁物は以下を含む:
a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に前記少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に前記少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、溶媒または溶媒混合物。
【請求項2】
前記少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセルを含む、またはからなる群から選択される、請求項1に記載の懸濁物。
【請求項3】
前記少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールおよび前記少なくとも一つのタキサンは、10%~30%のトリ-O-アシルグリセロール対90%~70%のタキサンの質量比で存在する、請求項1または請求項2に記載の懸濁物。
【請求項4】
前記少なくとも一つのタキサンは、1μmから300μmの範囲の結晶サイズを有する微結晶の形態である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の懸濁物。
【請求項5】
前記少なくとも一つのタキサンの少なくとも70%は、10μmから100μmの範囲の結晶サイズを有する微結晶の形態である、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の懸濁物。
【請求項6】
前記少なくとも一つのタキサンは、少なくとも80重量%の結晶化度を有する、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の懸濁物。
【請求項7】
前記溶媒は、20℃で≦2.0の誘電率ε
rを有する非溶媒である、または前記溶媒混合物は、20℃で≦2.0の誘電率ε
rを有する非溶媒の少なくとも50体積%を含む、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の懸濁物。
【請求項8】
前記溶媒混合物は、-0.5から+1.5のn-オクタノール-水分配係数logK
OW、および20℃で5.0から30の誘電率ε
r、を有する少なくとも一つの極性有機溶媒、並びに20℃で≦3.0の誘電率ε
r、および≧3.0のn-オクタノール-水分配係数logK
OW、を有する少なくとも一つの非極性有機溶媒、の混合物である、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の懸濁物。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の懸濁物の調製方法であって、以下のステップを含む:
a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールを溶媒または溶媒混合物に溶解すること、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサンの懸濁物およびステップa)からの溶液を調製すること、
ここで、前記少なくとも一つのタキサンの前記微結晶は、ステップa)の溶液に溶解しない。
【請求項10】
前記少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキ
セルを含む、またはからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも一つのタキサンは、1μmから300μmの範囲の結晶サイズを有する微結晶の形態である、請求項9または請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも一つのタキサンの少なくとも70%は、10μmから100μmの範囲の結晶サイズを有する微結晶の形態である、請求項9から請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも一つのタキサンは、少なくとも80重量%の結晶化度を有する、請求項9から請求項12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記溶媒は、20℃で≦2.0の誘電率ε
rを有する非溶媒である、または前記溶媒混合物は、20℃で≦2.0の誘電率ε
rを有する少なくとも50体積%の非溶媒を含む、請求項9から請求項13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記溶媒混合物は、-0.5から+1.5のn-オクタノール-水分配係数logK
OW、および20℃で5.0から30の誘電率ε
r、を有する少なくとも一つの極性有機溶媒、並びに20℃で≦30の誘電率ε
r、および≧3.0のn-オクタノール-水分配係数logK
OW、を有する少なくとも一つの非極性有機溶媒、の混合物である、請求項9から請求項14のいずれか一項に記載の懸濁物。
【請求項16】
カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから選択される医療機器の被覆方法であって、以下のステップを含む:
a)医療機器に医療機器表面を提供すること、
b)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および溶媒または溶媒混合物、を含む懸濁物を提供すること、ここで溶媒または溶媒混合物中に前記少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールは溶解し、溶媒または溶媒混合物中に前記少なくとも一つのタキサンの前記微結晶は溶解しない、および
c)シリンジ法、ピペッティング法、キャピラリー法、フォールドスプレー法、ディッピング法、スプレー法、ドラッギング法、スレッドドラッギング法、液滴ドラッギング法、またはローリング法によって、医療機器の表面に被覆懸濁物を塗布すること。
【請求項17】
以下のステップd)
前記被覆を乾燥させること
をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項16または請求項17に記載の方法によって得られる、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから選択される医療機器。
【請求項19】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の懸濁物を用いて被覆され、続いて前記被覆が乾燥される、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから選択される医療機器。
【請求項20】
トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、並びに微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、を用いて被覆されたカテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニュ
ーレから選択される医療機器。
【請求項21】
前記タキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセルを含む、またはからなる群から選択される、請求項20に記載の医療機器。
【請求項22】
前記少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールおよび前記少なくとも一つのタキサンは、10%~30%のトリ-O-アシルグリセロール対90%~70%のタキサンの質量比で存在する、請求項20または請求項21に記載の医療機器。
【請求項23】
前記少なくとも一つのタキサンは、1μmから300μmの範囲の結晶サイズを有する微結晶の形態である、請求項20から請求項22のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項24】
前記少なくとも一つのタキサンの少なくとも70%は、10μmから100μmの範囲の結晶サイズを有する微結晶の形態である、請求項20から請求項23のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項25】
前記少なくとも一つのタキサンは、少なくとも80重量%の結晶化度を有する、請求項20から請求項24のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項26】
生物安定性または生物分解性、生物活性または生物不活性のポリマー層、金属層またはセラミック層は、前記少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールおよび前記少なくとも一つのタキサンの層の下に存在する、請求項20から請求項25のいずれか一項に記載の医療機器。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、少なくとも一つの微結晶タキサン、少なくとも一つの溶媒または溶媒混合物、を含み、少なくとも一つの溶媒または溶媒混合物中に、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および少なくとも一つの溶媒または溶媒混合物中に、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが存在する場合、少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、医療機器の被覆のための懸濁物に関する。さらに、本発明は、前記懸濁物を調製するための方法、医療機器を被覆するための方法、並びに少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールおよび少なくとも一つの微結晶タキサンを用いて被覆された医療機器に関する。
【0002】
[発明の背景]
医療機器は、身体に欠けている機能を引き受けるために、身体自身の機能を支持するために、または医療機器の助けを受けて活性物質を局所的に移動するために使用される。応用分野に応じて、医療機器は、生物との短期的または長期的のいずれかの接触を有する。接触時間は、数秒から数十年に及ぶことができる。医療機器の使用が必要になる場合、治癒工程における免疫系の過剰反応を防ぐために、創傷治癒中に発生する避けられない炎症工程を制御する必要がある。
【0003】
機械的または熱的方法、例えば、血管ステントの移植またはバルーン血管形成術など、を用いて血管収縮(狭窄)を治療する場合、治療後数週間に再狭窄が頻繁な合併症として発生する。再狭窄を防ぐために、ステントおよびカテーテルバルーンは、活性剤、特に抗再狭窄剤を用いて被覆されている。これまで、ラパマイシン(シロリムス)などのリムス活性剤、またはパクリタキセルなどのタキサンは、有効な活性剤であることが証明されている。リムス活性剤は、FKBP12に可逆的に結合し、細胞分裂を抑制するが、一方、パクリタキセルなどのタキサンは微小管に不可逆的に結合し、細胞分裂も抑制する。
【0004】
「薬剤溶出ステント」(DES)は、先行技術において知られており、先行技術において、血管拡張および関連する血管壁への損傷に加えて、患部の治癒は適切な活性剤の助けにより制御される。
【0005】
体内に永久に残らない医療機器、例えば、生分解性ステントなども当技術分野で知られている。生分解性ステントは、長期的な医療機器の利点を提供するために、薬物被覆をさらに有してもよい。しかしながら、このアプローチはまだ開発中である。
【0006】
ステントに加えて、薬剤溶出カテーテル、特にバルーンカテーテルは、先行技術においても知られており、有機体と短時間接触するだけであるという利点を有する。
【0007】
しかしながら、他の医療機器を被覆するための要件は、適用分野によって当然異なるけれども、ステントおよびカテーテルだけが活性剤を用いて被覆されることができるのではない。
【0008】
カテーテルにおける活性剤放出被覆の要件は特に高く、医療機器の非常に短い滞留時間を超えた、長期的な、十分に投与される、およびさらに可能な限り定量的な活性剤の適用は、特に、非常に短期間使用される医療機器の場合、特に血管領域において、特別な課題を表し、そのことによって、一方では、活性剤が標的に向かう途中で時期尚早に洗い流されないようにする、または、例えば、拡張中に崩壊し、未定義または不十分な量の活性剤
のみが血管壁に到達しないようにする、ということを保証しなければならない。他方、短期間使用される医療機器として冠動脈「薬物被覆バルーン」(DCB)の場合、最大90秒の非常に制限された接触時間でも、活性剤がバルーンカテーテルから血管壁へ、または血管壁内へ意図された投与量で移送されるのに十分でなければならない。末梢血管系、例えば、脚の動脈において、治療される血管に応じて、約120秒以上の長い接触時間を可能にし、末梢血管での接触時間の上限は、浅大腿動脈(AFS)において最大5分である。
【0009】
先行技術において、カテーテルバルーンにおけるいくつかの活性剤被覆が、これらの問題を、被覆において追加の賦形剤を使用することにより薬物放出を促進すること、または被覆の安定性を向上させることによって回避することが知られている(WO2010/121840A2、WO2013/007653A1、WO2012/146681A1参照)。
【0010】
タキサンを用いて被覆されたカテーテルバルーンの場合、有効性が低い他の理由は、低い薬物移動に加えて、血管壁におけるタキサンの滞留時間が短いことである。
【0011】
タキサン結晶が非晶質タキサン粒子より遅い溶解挙動を示すことは、先行技術から知られている。
したがって、結晶性タキサンを用いての被覆は、血管壁におけるタキサンの長期の滞留時間を確実にするために望ましい。しかしながら、結晶性バルーン被覆の使用は、塞栓症の危険性を有するので(WO2011/147408A2)、先行技術におけるカテーテルバルーンにとって非晶質被覆は、依然として好まれる。
【0012】
治療される組織へのバルーン拡張によるタキサンの適用は、結晶が薬物デポー(depots)として作用し、および遅延して薬物を放出するという利点を有するが、一方、非晶質薬物を用いると、拡張後すぐに放出される。しかしながら、タキサン結晶を用いての直接被覆、またはタキサンの純粋な結晶含有懸濁物を用いての被覆は、タキサン結晶が医療機器表面に十分に付着しないという特定の欠点を有することが示されている。他の問題は、1μm~5μmより大きい粒子の懸濁物は、急速に沈降する傾向があり、そのことは、後に懸濁物から微結晶性タキサンを均一に被覆することをはるかに困難にすることである。
【0013】
これらの問題を回避しよう試みる先行技術から、カテーテルバルーン用の結晶性タキサンを用いての活性剤被覆は知られている。しかしながら、結晶性タキサンを用いてカテーテルバルーンを被覆するための先行技術の方法は、費用がかかり、および複雑である。
【0014】
先行技術において、主に、タキサン結晶懸濁物は、タキサン結晶のサイズが1μm未満のナノスケールであるタキサン結晶懸濁物が提案される。しかしながら、このサイズの結晶は、血管壁におけるタキサンの所望の延長された滞留時間を十分に確保することができないという欠点を有する。
【0015】
拡張時に適切な薬物移動を示すタキサン結晶を用いたカテーテルバルーンにおける十分に強力な、再現性のある被覆は、溶媒およびタキサンからなる溶液を用いてカテーテルバルーンを被覆することによって、並びにタキサン結晶をバルーン表面にスパッタリングし、続いて「溶媒結合」による任意の付着強化、および溶媒および非溶媒中にタキサンを有する溶液からの溶解したタキサンの結晶化によって、得ることができなかった。
【0016】
本発明の目的は、被覆製剤および被覆された医療機器を提供することであり、ここで、被覆は、柔軟であり、医療機器表面に非常によく付着し、活性剤粒子の最適なサイズ分布
を有し、および体内で非常に短い滞留時間内でさえもできる限り定量的に活性剤を送達し、そのことによって活性剤は、その後、血管壁から細胞内へとはるかに長い期間にわたって拡散することもできる。
【0017】
言い換えると、本発明の目的は、短期および長期医療機器の被覆のための組成物を提供することであり、組成物は、安定的かつ柔軟な方法で被覆として医療機器の表面に付着し、一方、治癒工程を最適に支持するために、血管壁または組織への活性剤の最も完全な、および制御可能な移動を確保する。
【0018】
特に、本発明の目的は、結晶性タキサン化合物を用いたカテーテルバルーンの被覆を提供することであり、ここで、被覆は、安定的かつ柔軟な方法でカテーテルバルーンの表面に付着し、一方、治癒工程を最適に支持するために、血管壁または組織への活性剤の完全な、および制御可能な移動を確保する。
【0019】
この目的は、本発明の独立請求項の技術的教示によって解決される。本発明の更なる有利な実施形態は、従属請求項、明細書、図面、および実施例から得られる。
【0020】
[簡単な説明]
驚くべきことに、医療機器、特に、カテーテルバルーン、ステント、およびカニューレの被覆のための懸濁物が上記目的を解決することが明らかにされており、懸濁物は以下を含む:a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールから選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、およびb)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、およびc)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、または、溶媒または溶媒混合物中に、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが存在する場合に少なくとも一つのタキサンの微結晶は溶解しない、溶媒または溶媒混合物。
【0021】
タキサンの微結晶が溶解しない、医療機器の被覆のための微結晶性タキサンの特に有利な結晶懸濁物を、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールから選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが、前記懸濁物中に溶解した形態で存在する場合に、提供することができることが現在明らかされている。
【0022】
本発明に係るトリ-O-アシルグリセロールに関して、驚くべきことに、タキサンの微結晶が「停止状態」に保持され、したがって沈降しない、微結晶タキサンの当該安定な懸濁物を調製することが可能であった。マイクロメートル範囲の結晶、すなわち1μm~5μmを超える結晶の懸濁物は沈降する傾向があるので、このことは特に驚くべきことであった。したがって、本発明に係る結晶懸濁物は、医療機器上にタキサンの微結晶の均一な被覆を生成するために特に有利である。
【0023】
トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールから選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールを使用する他の特定の利点は、本発明に係るトリ-O-アシルグリセロールが、「柔軟な接着剤」のようにタキサンの微結晶を医療機器表面上に保持することが可能であることである。したがって、本発明に係る結晶懸濁物は、医療機器上にタキサンの微結晶の均一な被覆を生成するのに特に有利であり、本発明に係る結晶懸濁物において、タキサンの微結晶は医療機器表面にも十分に付着する。
【0024】
本発明に係らない更なる先行技術のトリ-O-アシルグリセロールに関して、本発明に係る結晶懸濁物の調製は不可能であった。本発明に係らないトリ-O-アシルグリセロールは、懸濁物中のタキサンの微結晶の溶解を引き起こす、または促進することを明らかにすることができた。さらに、タキサンの微結晶の沈降は、本発明に係らないトリ-O-アシルグリセロールを用いて生じた。
【0025】
さらに、本発明に係らない更なる先行技術のトリ-O-アシルグリセロールに関して、タキサンの微結晶の均一な被覆を医療機器上で生成することができず、特にタキサンの微結晶における医療機器表面への接着の欠如が観察されている。本発明に係らないトリ-O-アシルグリセロールは、医療機器表面上にタキサンの微結晶を十分に「接着し」および保持することができないことを示すことができた。
【0026】
したがって、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールから選択されるトリ-O-アシルグリセロールを単独で、またはこれらのトリ-O-アシルグリセロールの混合物でも、本発明に係る微結晶タキサンの結晶懸濁物を調製することができ、結晶懸濁物においてタキサンの微結晶は無傷のままである。更なる特定の利点は、少なくとも一つのタキサンの微結晶が懸濁物中に浮遊し、したがって懸濁液中に均一に分布され、したがって、タキサンを微結晶の形態だけでなく均一に医療機器表面に適用することができることである。
【0027】
本発明に係る懸濁物を用いて被覆されている医療機器は、医療機器表面上に、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールから選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールの被覆、および少なくとも一つのタキサンの微結晶を示す。この被覆は、非常に優れた柔軟性、および医療機器表面への優れた接着性によって主に特徴付けられる。さらに、この被覆は、非晶質タキサン粒子とは対照的に、体内での滞留時間が非常に短い場合でさえも、少なくとも一つのタキサンの微結晶を定量的に放出することができ、そのことは、その後、血管壁から細胞内にはるかに長い時間にわたって拡散することができるという有利な特性を提供する。
【0028】
本発明に係る被覆を、任意の医療機器に提供することができ、好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステントまたはカニューレから選択され、特に好ましくはカテーテルバルーンである。タキサンの量およびタキサンの送達速度または溶出速度は、手術場所で要求される仕様に従って変化し得るが、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールから選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールは、一方では、微結晶タキサンの組織への最適な移動を支持し、同時に被覆における高い柔軟性および安定性を確保し、したがって微結晶タキサンが、最適な濃度で損失することなく周囲の組織に実際に到達することを保証する。
【0029】
本発明に係る被覆の非常に良好な柔軟性および付着性は、形状の変化を受けなければならない医療機器、例えば、ステントおよびカテーテルバルーンなどにとって特に重要である。例えば、膨張、収縮、折り畳み、および圧着は、移植中の摩擦および体液に、並びに流れにもさらされる被覆に特別な安定性要件を必要とする。微結晶タキサンの所望の溶出速度、および微結晶タキサンの組織への最適移動量の設定も、本発明に係るカテーテルバルーン被覆(DCB)を用いて解決される。考慮されるべき更なる要件は、本発明に係る被覆が偏見なく満たし、医療機器の滅菌、貯蔵寿命、最小貯蔵寿命、耐熱性などに関する。
【0030】
したがって、医療機器上における本発明の被覆は、長期的に、および短期的にも体内で使用される医療機器に要求される重要な課題を解決する。
[詳細な説明]
本発明は、医療機器、好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、およびカニューレの被覆のための懸濁物に関し、懸濁物は以下を含む:
a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、および
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に、少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、溶媒または溶媒混合物。
【0031】
本発明にとって不可欠であるのは、微結晶タキサンの使用、および微結晶タキサンの懸濁物の存在であり、ここで、懸濁物は、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロール、からなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールを含まなければならない。
【0032】
本明細書において使用される用語「被覆製剤」または「活性剤含有組成物」は、少なくとも一つのタキサン、および溶媒または溶媒混合物、およびトリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロール、からなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、の混合物、すなわち、溶液、分散体、懸濁物またはエマルジョン、を指す。用語「製剤」は、液体混合物(懸濁物、エマルジョン、分散体、溶液)であることを示すことを目的とする。本明細書において使用される用語「被覆製剤」は、したがって、用語「溶液」または「被覆溶液」、「分散体」または「被覆分散体」、「懸濁物」または「被覆懸濁物」、および「エマルジョン」または「被覆エマルジョン」の総称を表す。
【0033】
本明細書において使用される用語「溶液」または「被覆溶液」は、一般に、二つ以上の化学的に純粋な物質からなる均一な混合物を指す。定義によると、溶液は、一相のみを形成し、および溶質は、溶媒中に均一に分布しているので、溶液はそれ自体、外部から認識できない。
【0034】
本明細書において使用される用語「分散体」または「被覆分散体」は、一般に、互いに溶解しない、もしくはほとんど溶解しない、または互いに化学的に結合する少なくとも二つの物質の不均一な混合物を指す。この場合において、一つ以上の物質は、他の連続した物質中に、いわゆる分散媒体中に、分散相として微細に分散される。
【0035】
本明細書において使用される用語「エマルジョン」または「被覆エマルジョン」は、一般に、目に見える分離のない、通常は混和しない2つの液体の微細に分散された混合物を指す。一方の液体は、他方の液体に分散された小さな液滴を形成する。エマルジョンは分散体の特定の形態である。
【0036】
本明細書において使用される用語「懸濁物」または「被覆懸濁物」は、一般に、液体中に微細に分布された固体からなる物質の不均一な混合物を指す。したがって、定義によると、「懸濁物」は均一な混合物ではなく、したがって溶液ではない。懸濁物は、分散体の特定の形態である。
【0037】
少なくとも一つのタキサンを微結晶の形態で含む「懸濁物」は、本明細書において「結
晶懸濁物」とも呼ばれる。本発明によると、本明細書の懸濁物における微細に分布された固体は、少なくとも一つの微結晶タキサン、または少なくとも一つのタキサンの微結晶である。本明細書の懸濁物における液体は、溶媒または溶媒混合物であり、ここで、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールは、溶媒または溶媒混合物中に溶解された形態で存在する。
【0038】
したがって、本発明に係る「懸濁物」は、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールを含む液体、並びにこの液体中に微細に分布された固体、すなわち少なくとも一つのタキサンの微結晶、の物質の不均一な混合物に関する。したがって、本発明によると、微結晶タキサンは、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つが溶解したトリ-O-アシルグリセロールを含む液体に懸濁される。
【0039】
本発明に係る懸濁物は、少なくとも一つのタキサンの微結晶の沈降または溶解も懸濁物中で起こらないと特徴付けられる。本発明に係る懸濁物は、本明細書において「安定な懸濁物」とも呼ばれる。
【0040】
本発明に係る懸濁物は、溶媒または溶媒混合物、および微結晶性タキサン、およびトリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つの溶解したトリ-O-アシルグリセロールとからなり得る。しかしながら、懸濁物は、タキサンに基づいて最大5.0重量%までの他の添加剤を含んでもよく、すなわち、95gのタキサンに対して、最大5gまでの添加剤を懸濁物中に含んでもよい。
【0041】
したがって、本発明は更に、医療機器、好ましくはカテーテルバルーン、カテーテル、ステント、またはカニューレから選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下を含む:
a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に、少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない溶媒または溶媒混合物、および
d)タキサンに基づいて最大5.0重量%までの添加剤。
【0042】
適切な添加剤は、後述される物質、好ましくは抗酸化剤、ポリビニルピロリドン(PVP)および凝集阻害剤である。
添加剤、例えば、抗酸化剤、ポリビニルピロリドン(PVP)、および凝集阻害剤などは、好ましくは、少なくとも一つのタキサンに基づいて最大4.0重量%まで、好ましくは少なくとも一つのタキサンに基づいて最大3.0重量%まで、更に好ましくは少なくとも一つのタキサンに基づいて最大2.5重量%まで、更に好ましくは少なくとも一つのタキサンに基づいて最大2.0重量%まで、更に好ましくは少なくとも一つのタキサンに基づいて最大1.5重量%まで、および更に好ましくは少なくとも一つのタキサンに基づいて最大1.0重量%まで、の量で存在することができる。
【0043】
本明細書で使用される用語「トリ-O-アシルグリセロール」または短縮形「トリアシ
ルグリセロール」は、3つの脂肪酸を用いてエステル化されたグリセロール(グリセリン)の化合物、すなわちトリプルエステル化グリセロール(グリセリン類)を指す。トリグリセリドまたはグリセロールトリエステルは、トリ-O-アシルグリセロールの同義語であり、用語トリ-O-アシルグリセロールは、IUPACによって推奨される。
【0044】
トリ-O-アシルグリセロールは、次の一般式(I)を有する:
【0045】
【0046】
式中、R1、R2およびR3は、アルキルまたはアルケニル残基を表す。トリ-O-アシルグリセロールの構造は多様であり、R1、R2、およびR3は、多くの異なる脂肪酸であるので、多数の可能な組み合わせを可能にする。全ては、非極性であり、すなわち親油性である。トリ-O-アシルグリセロールの場合において、中鎖トリ-O-アシルグリセロールと長鎖トリ-O-アシルグリセロールとで更なる区別をすることができる。中鎖トリ-O-アシルグリセロールは、6から12の炭素原子の平均長を有する脂肪酸を有し、および長鎖トリ-O-アシルグリセロールは、14から24の炭素原子の長さを有する脂肪酸を有する。そのことにより、2つの型のトリ-O-アシルグリセロール:単純なトリ-O-アシルグリセロールおよび混合トリ-O-アシルグリセロール、が生じることができる。単純なトリ-O-アシルグリセロールにおいて、脂肪酸残基R1、R2、およびR3は同一であり;混合トリ-O-アシルグリセロールにおいて、脂肪酸残基R1、R2、およびR3の少なくとも一つは、他の二つとは異なる。中鎖脂肪酸の例は、カプロン酸(ヘキサン酸)、エナント酸(ヘプタン酸)、カプリル酸(オクタン酸)、ペルラルゴン酸(ノナン酸)、カプリン酸(デカン酸)、ウンデカン酸、およびラウリン酸(ドデカン酸)である。
【0047】
予想外に、中鎖脂肪酸であるカプリル酸(オクタン酸)、カプリン酸(デカン酸)、ペルラルゴン酸(ノナン酸)またはウンデカン酸を用いて完全にエステル化されたトリ-O-アシルグリセロールの化学的、物理的および生物学的特性は、医療機器における第一の場所での微結晶タキサンを用いた均一および十分な付着性被覆を可能にすることを示すことができた。さらに、カプリル酸(オクタン酸)、カプリン酸(デカン酸)、ペルラルゴン酸(ノナン酸)またはウンデカン酸を用いて完全にエステル化されたグリセロールだけが、本発明に係る結晶懸濁物を調製することが可能であった。
【0048】
したがって、本明細書において好ましいトリ-O-アシルグリセロールは、次の一般式(I)を有する:
【0049】
【0050】
式中、R1、R2、およびR3は、互いに独立して、-CH2(CH2)5CH3、-CH2(CH2)6CH3、-CH2(CH2)7CH3、および-CH2(CH2)8CH3、から選択される。
【0051】
混合トリ-O-アシルグリセロールに関して、R1、R2、およびR3は、-CH2(CH2)5CH3、-CH2(CH2)6CH3、-CH2(CH2)7CH3および-CH2(CH2)8CH3、から独立して選択され、ここで、3つのR1、R2およびR3は、すべて同一ではなく、微結晶タキサンの安定な結晶懸濁物も調製することができることを示すことができた。しかしながら、これらの混合トリ-O-アシルグリセロールは、調製するためにより費用がかかり、費用効果が高くなく、したがって、本明細書において好ましくない。
【0052】
したがって、本発明に係る全ての3つの残基R1、R2およびR3は、同一であり、すなわち、R1、R2およびR3は、-CH2(CH2)5CH3であり、またはR1、R2およびR3は、-CH2(CH2)6CH3であり、またはR1、R2およびR3は、-CH2(CH2)7CH3であり、またはR1、R2およびR3は、-CH2(CH2)8CH3である。
【0053】
トリ-O-アシルグリセロールを含む結晶懸濁物を調製する試みにおいて、トリ-O-アシルグリセロールは、上記のような本発明に係らない他の中長鎖脂肪酸、特にカプロン酸(トリカプロン酸)などのより短い中長鎖脂肪酸を用いて、しかし、酢酸(トリアセチン)などのより短いモノカルボン酸でも、完全にエステル化されており、本発明に係らないこれらのトリ-O-アシルグリセロールの存在下において、懸濁物中のタキサンの微結晶の溶解が発生し、または促進されたので、本発明に係る結晶懸濁物を調製することはできなかった。懸濁物中のタキサンの微結晶の溶解は、中長鎖脂肪酸用いて部分的にエステル化されただけのグリセロール、例えば、モノ-O-アシルグリセロール、またはジ-O-アシルグリセロールなどを用いても起こった。さらに、タキサンの微結晶の沈降が、本発明に係らないトリ-O-アシルグリセロールを用いて起こった。
【0054】
懸濁物中にトリ-O-アシルグリセロールが完全に欠如する場合、少なくとも一つのタキサンの微結晶の沈降が急速に起こった。安定した懸濁物の調製は不可能であった。
【0055】
したがって、懸濁液中のトリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つの溶解したトリ-O-アシルグリセロールの存在は、本発明に係る結晶懸濁物にとって必須である。
【0056】
したがって、3つのオクタン酸分子を用いて完全にエステル化されたグリセロール、3
つのデカン酸分子を用いて完全にエステル化されたグリセロール、3つのノナン酸分子を用いて完全にエステル化されたグリセロール、または3つのウンデカン酸を用いて完全にエステル化されたグリセロール、すなわち、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールは、懸濁物中の微結晶タキサンを部分的に溶解しない、または溶解しない、ことを示すことができた。
【0057】
したがって、本発明に係るトリ-O-アシルグリセロールを用いて、結晶懸濁液を被覆製剤として提供することができ、被覆製剤において、タキサンの微結晶は無傷のまま残っており、懸濁物中に懸濁され、および均一に分布され、タキサンの微結晶の沈降または粒子の凝集は起こらないので、タキサンを、微結晶形態で医療機器表面に均一に適用することができる。
【0058】
トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールを使用する他の特定の利点は、本発明に係るトリ-O-アシルグリセロールがタキサンの微結晶を、医療機器表面に「柔軟な接着剤」のように保持できることが可能であることであり、タキサンの微結晶の医療機器表面への十分な付着を提供することができる。
【0059】
トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される本発明に係るトリ-O-アシルグリセロール、または前記トリ-O-アシルグリセロールの混合物は、それらの融点が体内での使用にとって安全にするという利点を有する。タキサンの微結晶の医療機器表面への十分な付着を確実にするために、37℃より低い融点が必須であることも明らかになっている。トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される本発明に係るトリ-O-アシルグリセロールのみ、または前記トリ-O-アシルグリセロールの混合物は、「接着剤」のように微結晶タキサンを保持することができ、したがって最適な柔軟性および作用部位への損失のない輸送を保証する。次の高級同族体であるトリドデカノイルグリセロールでさえ、45℃~46℃で溶けるという欠点を有する。
【0060】
本発明に係らないトリ-O-アシルグリセロールに関して、それらは、上記のような本発明に係らない中鎖脂肪酸または長鎖脂肪酸、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、またはパルミチン酸など、を用いて完全にエステル化されており、タキサンの微結晶が懸濁物中に浮遊し、懸濁物中に均一に分布される本発明に係る結晶懸濁物を提供することは不可能であった。本発明に係らないトリ-O-アシルグリセロール、例えば、トリドデカノイルグリセロールなどを使用する場合、医療機器表面上に微結晶形態のタキサンを用いて均一に被覆することは不可能であった。微結晶形態のタキサンおよびトリドデカノイルグリセロールの被覆を用いて被覆されたカテーテルバルーンは明らかに均一な被覆を欠いており、表面は不均一であり、被覆は膨張中に容易に崩れ落ちた。
【0061】
タキサンの微結晶、および懸濁物中に溶解した形態で存在する本発明に係らないトリ-O-アシルグリセロールを含む懸濁物を用いて医療機器を被覆する試みにおいて、トリ-O-アシルグリセロールは、本発明に係らない上記のような中鎖脂肪酸または長鎖脂肪酸、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸またはパルミチン酸などで完全にエステル化されており、タキサンの微結晶が医療機器表面に均一に分布し、および医療機器表面に十分に付着する被覆を生成することは不可能であった。タキサンの微結晶および本発明に係らない
トリ-O-アシルグリセロール、例えば、トリドデカノイルグリセロールなど、を用いて被覆することに関して、タキサンの微結晶と、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールとの被覆と比較して、「崩壊(crumble)試験」において、より高い粒子放出を観察した。比較は、タキサンの微結晶とトリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールとを用いる本発明に係る被覆に関して、測定された全ての粒径についての粒子放出が、タキサンの微結晶と本発明に係らないトリ-O-アシルグリセロール、例えば、トリドデカノイルグリセロールなどを用いての被覆についての粒子放出よりはるかに低いことを明らかに示した。
【0062】
驚くべきことに、医療機器表面へのタキサンの微結晶の顕著な付着は、本発明に係るトリ-O-アシルグリセロールが本発明に係る結晶懸濁物中に溶解した形態で存在し、懸濁物中に懸濁された少なくとも一つのタキサンの微結晶と共に、または同時に、医療機器表面に適用される場合に特に達成されることも示されることができる。
【0063】
医療機器表面へのタキサンの微結晶の顕著な付着は、医療機器表面が本発明に係る少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールを含む溶液を用いて最初に被覆された場合、およびタキサンの微結晶が、続いて、前記トリ-O-アシルグリセロール層に適用された場合に、再生されることができなかった。さらに、タキサンの微結晶の十分な付着は、医療機器表面を、先行技術の方法に従ってタキサンの結晶を用いて最初に被覆し、その後、トリ-O-アシルグリセロールを含み微結晶タキサンが溶解しない溶液を用いて被覆した場合に見られなかった。
【0064】
先行技術において、医療機器表面へのタキサンの微結晶の付着の欠如は、医療機器の被覆のための微結晶タキサンの使用に関して主な欠点とされている。本発明は、この欠点を克服し、および医療機器表面に微結晶タキサンを用いての被覆を提供するための解決法を提供する。
【0065】
本発明に係る懸濁物において、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールは、溶解された形態で有利に存在し、したがって、医療機器が本発明に係る懸濁物を用いて被覆される場合、タキサンの微結晶が均一に分布されるだけでなく、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールも被覆全体にわたって均一に分布される被覆が得られる。このことは、タキサンの微結晶の被覆がより厚い層厚さで提供され、ここで本発明に係る懸濁物が連続して数回適用される場合に特に有利である。次に、本発明に係るトリ-O-アシルグリセロールは、当該被覆において均一に分布され、医療機器表面における「柔軟な接着剤」のようにタキサンの微結晶を保持するが、さらに「柔軟な接着剤」のように微結晶の間にも保持する。
【0066】
したがって、本発明の懸濁物は、少なくとも一つのタキサンの微結晶の付着も互いの間で増加するという追加の利点を提供する。少なくとも一つのタキサンの微結晶を、懸濁物中に溶解されたトリ-O-アシルグリセロールを用いずに最初に適用し、続くステップにおいて、トリ-O-アシルグリセロール溶液を用いて被覆すると、トリ-O-アシルグリセロール溶液は、タキサンの微結晶の下および間に十分に浸透することができず、したがって、医療機器表面上での、および少なくとも一つのタキサンの微結晶間の付着を増加させるという技術的効果を十分に提供することができない。
【0067】
トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールの群から選択される少なくとも一つの溶解したトリ-O-アシルグリセロール、および微結晶の形態の少なくとも一つのタキサンを含む本発明に係る懸濁物を提供する場合、タキサンの微結晶における医療機器表面への不十分な付着という主要な問題は、今や驚くべきことに解決されている。
【0068】
トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールの存在下で微結晶タキサンを用いての医療機器の被覆は、特に、薬物送達バルーンカテーテルの分野において現在市場で入手可能な医療製品と比較して著しく減少した粒子放出を示すので、現在市場に出回っている医療機器と比較して、「崩壊(crumbling)」挙動の大幅な減少も示し、したがって、本発明に係る被覆の安定性は、等しく増加することを証明する。このことは、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールは、「柔軟な接着剤」のように医療機器表面にタキサンの微結晶をしっかりと保持し、結果的に、安定した、脆くない、および柔軟な被覆を生じるという利点から特に生じる。
【0069】
さらに、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択されるトリ-O-アシルグリセロール、または前記トリ-O-アシルグリセロールの混合物は、他の利点を有することを示すことができた。とりわけ、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択されるトリ-O-アシルグリセロール、または前記トリ-O-アシルグリセロールの混合物は、微結晶タキサンの組織への最適な移動を可能にする。本発明に係る懸濁液を用いて調製された被覆は、市場で入手可能な既知の被覆された医療製品の場合よりも、医療表面上でのタキサンの微結晶のより滑らかな、均一な表面および均一な分布を有する。したがって、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールにおけるこれらの有利な特性は、組織への最適な活性剤の移動および溶出、並びに移植場所での最適な活性剤分布をもたらす。
【0070】
したがって、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロール、からなる群から選択されるトリ-O-アシルグリセロール、またはこれらのトリ-O-アシルグリセロールの混合物は、とりわけ以下の重要な目的を果たす:それらは、微結晶タキサンの担体であり、したがって、被覆(薬物担体)における機械的特性、例えば、医療機器表面への付着などに影響を与え、移植中の微結晶タキサンの可能な限り最小限の損失(「薬物輸送損失」)を確保するが、被覆の粒子サイズ分布、したがって「崩壊(crumbling)挙動」(「粒子放出」)にも影響を与え、そのことによって、移植前および移植中の被覆における脆弱性または柔軟性および適応性、並びに関連する形状の変化を意味する。被覆の均一性(「均一性」)は、均一な被覆が医療機器表面でのタキサンの均一な分布を達成することもでき、したがって微結晶タキサンの周囲組織への均一な分布も達成することができるので、他の重要なパラメーターであると考えられる。さらに、「触媒」として、それらは、微結晶タキサンを変えることなく、および当該有効性に影響を与えることなく、周囲組織へのタキサンの微結晶における活性剤移動を加速または促進する(「薬物移動プロモーター」)。
【0071】
したがって、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される本発明に係るトリ-O-アシルグリセロール、または前記トリ-O-アシルグリセロールの混合物は、結果的に得られた被覆が、失うことなく、基材の形の変化、例えば伸長など、を受けることなく、問題なく、および、早期の剥離または溶解さえもなく、しかし、埋め込まれた、または塗布された少なくとも一つの微結晶タキサンを早期に「失う」ことはなく、医療機器の表面に付着するので、タキサンの微結晶を有する医療器具の被覆に特に有利である。このことにより、被覆は、激しい形状変化、例えば、被覆されたバルーンカテーテルなどの折り畳み、拡張、収縮によるものなど、の場合でさえも、任意の損傷を受けない。
【0072】
したがって、本発明の目的は、本発明に係る懸濁物によって微結晶タキサンの十分な活性剤付着および活性剤放出に関して解決され、本発明に係る懸濁物は、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択されるトリ-O-アシルグリセロールを溶解された形態で含む。
【0073】
本明細書において使用される用語「トリオクタノイルグリセロール」または「トリ-O-オクタノイルグリセロール」は、グリセロールがカプリル酸またはオクタン酸で完全にエステル化されているトリ-O-アシルグリセロールを指す。先行技術において知られているトリオクタノイルグリセロールの同義名は、トリオクタノイルグリセリド、グリセリントリオクタノイン、トリカプリロイルグリセリン、オクタン酸-1,1’,1’’-(1,2,3-プロパントリイル)エステル、グリセリントリカプリレート、トリカプリリルグリセリン、TG(8:0/8:0/8:0)、トリカプリル酸グリセロール、カプリル酸-1,2,3-プロパントリイルエステル、カプリリン、オクタン酸トリグリセリド、トリカプリルグリセリド、トリカプリリン、トリオクタノイルグリセロール、オクタン酸-1,2,3-プロパントリイルエステル、トリオクタン酸グリセロール、トリオクタン酸1,2,3-プロパントリオール、カプリル酸トリグリセリド、トリカプリル酸グリセロール、カプリル酸トリグリセリド、トリカプリリン、トリカプリリルグリセロール、1,2,3-トリオクタノイルグリセロール、トリオクタン酸グリセロール、および1,2,3-トリカプリロイルグリセロール、である。トリオクタノイルグリセロールは、CAS番号538-23-8、分子量470.68g/molを有し、および以下の構造式を有する:
【0074】
【0075】
オクタン酸は、慣用名カプリル酸で知られるカルボン酸であり、および以下の構造式の飽和脂肪酸である:
【0076】
【0077】
本発明の好ましい実施形態において、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器の被覆用の懸濁物は、少なくともトリオクタノイルグリセロールを含む。本発明の好ましい実施形態において、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールは、したがって、好ましくはトリオクタノイルグリセロールから選択される。
【0078】
トリオクタノイルグリセロールの融点は、9℃~10℃の範囲にある。トリオクタノイルグリセロールは、通常の条件下(20℃、101hPa)で無臭、透明無色から琥珀色の液体として存在する。トリオクタノイルグリセロールは水にほとんど溶けない。
【0079】
本明細書において使用される用語「トリノナノイルグリセロール」または「トリ-O-ノナノイルグリセロール」は、グリセロールがペラルゴン酸またはノナン酸を用いて完全にエステル化されているトリ-O-アシルグリセロールを指す。先行技術において知られるトリデカノイルグリセロールの同義名は、グリセロールトリペラルゴネート、トリノナノイン、1,2,3-トリノナノイルグリセロール、トリプレアルゴニン、1,2,3-トリペラルゴノイル-グリセロールである。トリノナノイルグリセロールは、CAS番号126-53-4、分子量512.76g/molを有し、および以下の構造式を有する:
【0080】
【0081】
ノナン酸は、慣用名ペラルゴン酸で知られるカルボン酸であり、および以下の構造式の飽和脂肪酸である:
【0082】
【0083】
本発明の好ましい実施形態において、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器の被覆用の懸濁物は、少なくともトリノナノイルグリセロールを含む。本発明の好ましい実施形態において、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールは、したがって、好ましくはトリノナノイルグリセロールから選択される。
【0084】
トリノナノイルグリセロールの融点は、8℃~9℃の範囲にある。トリノナノイルグリ
セロールは、通常の条件下(20℃、101hPa)で液体として存在する。トリノナノイルグリセロールは、水にほとんど溶けない。
【0085】
本明細書において使用される用語「トリデカノイルグリセロール」または「トリ-O-デカノイルグリセロール」は、グリセロールがカプリン酸またはデカン酸を用いて完全にエステル化されているトリ-O-アシルグリセロールを指す。先行技術において知られるトリデカノイルグリセロールの同義名は、グリセロールトリス-(デカノエート)、1,2,3-トリカプリノイル-グリセロール、トリカプリン、1,2,3-トリデカノイルグリセロール、グリセロールトリデカノエート、トリデカノインである。トリデカノイルグリセロールは、CAS番号621-71-6、分子量554.84g/molを有し、および以下の構造式を有する:
【0086】
【0087】
デカン酸は、慣用名カプリン酸で知られるカルボン酸であり、および以下の構造式の飽和脂肪酸である:
【0088】
【0089】
本発明の好ましい実施形態において、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器の被覆用の懸濁物は、少なくともトリデカノイルグリセロールを含む。本発明の好ましい実施形態において、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールは、したがって、好ましくはトリデカノイルグリセロールから選択される。
【0090】
トリデカノイルグリセロールの融点は、31℃~33℃の範囲にある。トリデカノイルグリセロールは、通常の条件下(20℃、101hPa)で淡黄色の固体として存在する。トリデカノイルグリセロールは水にほとんど溶けない。
【0091】
本明細書において使用される用語「トリウンデカノイルグリセロール」または「トリ-O-ウンデカノイルグリセロール」は、グリセロールがウンデカン酸を用いて完全にエステル化されているトリ-O-アシルグリセロールを指す。先行技術において知られるトリウンデカノイルグリセロールの同義名は、グリセロールトリウンデカノエート、トリウンデカノイン、1,2,3-トリウンデカノイルグリセロール、トリウンデカニンである。IUPAC名は、1,3-ビス(ウンデカノイルオキシ)プロパン-2-イル-ウンデカノエートである。トリウンデカノイルグリセロールは、CAS番号13552-80-2、分子量596.9g/molを有し、および以下の構造式を有する:
【0092】
【0093】
ウンデカン酸は、以下の構造式を有する飽和脂肪酸である:
【0094】
【0095】
本発明の好ましい実施形態において、好ましくはカテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから選択される医療機器の被覆用の懸濁物は、少なくともトリウンデカノイルグリセロールを含む。本発明の好ましい実施形態において、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールは、したがって、好ましくはトリウンデカノイルグリセロールから選択される。
【0096】
トリウンデカノイルグリセロールの融点は、30℃~32℃の範囲にある。トリウンデカノイルグリセロールは、通常の条件下(20℃、101hPa)で固体として存在する。トリウンデカノイルグリセロールは、水にほとんど溶けない。
【0097】
したがって、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器の被覆用の本発明の懸濁物は、本発明によれば、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールを含む。
【0098】
言い換えると、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器の被覆用の本発明の懸濁物は、本発明によれば、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールを含む。
【0099】
言い換えると、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器の被覆用の本発明の懸濁物は、本発明によれば、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択されるトリ-O-アシルグリセロール、またはトリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも二つのトリ-O-アシルグリセロールの混合物のいずれかを含む。
【0100】
さらに異なって製剤化されると、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器の被覆用の本発明の懸濁物は、本
発明によればて、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択されるトリ-O-アシルグリセロール、またはトリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される二つ、三つ、または四つのトリ-O-アシルグリセロールの混合物のいずれかを含む。
【0101】
したがって、本明細書における語句「トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール」は、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択されるトリ-O-アシルグリセロールの混合物も指す。したがって、語句「少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール」は、例えば、「少なくとも二つのトリ-O-アシルグリセロール」、「少なくとも三つのトリ-O-アシルグリセロール」、「二つのトリ-O-アシルグリセロール」、「三つのトリ-O-アシルグリセロール」、および「四つのトリ-O-アシルグリセロール」などの表現を含む。
【0102】
本発明のいくつかの実施形態において、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器の被覆用の懸濁物は、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも二つのトリ-O-アシルグリセロールを含む。
【0103】
本発明のいくつかの実施形態において、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器の被覆用の懸濁物は、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも三つのトリ-O-アシルグリセロールを含む。
【0104】
本発明のいくつかの実施形態において、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器の被覆用の懸濁物は、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールを含む。
【0105】
本発明に係るトリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択されるトリ-O-アシルグリセロールは、37℃より低い融点を有し、したがって、体温で、溶融形態で存在する、または体温で、溶融もしくは軟化する。
【0106】
本発明のいくつかの実施形態において、通常の条件下(20℃、101hPa)で液体として存在するトリ-O-アシルグリセロール、例えばトリオクタノイルグリセロールまたはトリノナノイルグリセロール、特に好ましくはトリオクタノイルグリセロールを、本発明に係る懸濁物を調製するために使用されると好ましい。特にトリオクタノイルグリセロールを用いると、優れた安定性の、脆くない、および柔軟な被覆を得ることができた。いくつかの実施形態において、少なくともトリオクタノイルグリセロールおよび/またはトリノナノイルグリセロール、特に好ましくはトリオクタノイルグリセロールを含む、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールの混合物は、結果的に得られる混合物が通常の条件下(20℃、101hPa)で液体として存在するので、更に好ましい。本明細書
においてトリ-O-アシルグリセロールの特に好ましい混合物は、トリオクタノイルグリセロールとトリデカノイルグリセロールとの混合物である。
【0107】
本発明のいくつかの更なる実施形態において、通常の条件下(20℃、101hPa)で固体として存在するトリ-O-アシルグリセロール、例えば、トリデカノイルグリセロールまたはトリウンデカノイルグリセロールなどは、本発明に係る懸濁物を調製するために使用されると好ましい。特にトリデカノイルグリセロールを用いると、優れた安定性、脆くない、および柔軟な被覆を得ることができた。体温は、これらのトリ-O-アシルグリセロールの融点よりもさらに高いので、トリデカノイルグリセロールまたはトリウンデカノイルグリセロールは、移植中に、体温で、溶融形態で存在し、したがって、特に、医療機器、例えば、カテーテルバルーンまたはステントなどの膨張中に、通常の条件下(20℃、101hPa)で液体として存在するトリ-O-アシルグリセロール、例えば、トリオクタノイルグリセロールまたはトリノナノイルグリセロールなどと比較して、粒子放出、したがて、脆さに関して不利な点はない。さらに、必要に応じて、または希望に応じて、トリデカノイルグリセロール、またはトリウンデカノイルグリセロールが移植前に溶融し、または軟化し、したがって移植の開始時にすでに溶融形態であるように、被覆された医療機器を、移植前に加熱することもできる。
【0108】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器の被覆用の懸濁物は、したがって、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、更に好ましくはトリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、およびトリデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、更に好ましくはトリオクタノイルグリセロールおよびトリデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、更に好ましくは、トリオクタノイルグリセロールから選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、またはトリデカノイルグリセロールから選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、を含む。
【0109】
本発明のいくつかの更に好ましい実施形態において、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器の被覆用の懸濁物は、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択されるトリ-O-アシルグリセロールの混合物を含む。 これらの好ましい実施形態のいくつかにおいて、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器の被覆用の懸濁物は、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロールおよびトリデカノイルグリセロールの混合物、またはトリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロールおよびトリウンデカノイルグリセロールの混合物、またはトリオクタノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロールおよびトリウンデカノイルグリセロールの混合物、またはトリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロールおよびトリウンデカノイルグリセロールの混合物、更に好ましくは、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロールおよびトリデカノイルグリセロールの混合物、またはトリオクタノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロールおよびトリウンデカノイルグリセロールの混合物、更により好ましくは、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、およびトリデカノイルグリセロールの混合物、を含む。
【0110】
いくつかの好ましい実施形態において、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ス
テントまたはカニューレから好ましくは選択される医療機器の被覆用の懸濁物は、トリオクタノイルグリセロールおよびトリデカノイルグリセロールの混合物、またはトリオクタノイルグリセロールおよびトリノナノイルグリセロールの混合物、またはトリオクタノイルグリセロールおよびトリウンデカノイルグリセロールの混合物、またはトリノナノイルグリセロールおよびトリデカノイルグリセロールの混合物、またはトリノナノイルグリセロールおよびトリウンデカノイルグリセロールの混合物、またはトリデカノイルグリセロールおよびトリウンデカノイルグリセロールの混合物、を含む。
【0111】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器の被覆用の懸濁物は、トリデカノイルグリセロールおよびトリノナノイルグリセロールの混合物、またはトリデカノイルグリセロールおよびトリウンデカノイルグリセロールの混合物、またはトリデカノイルグリセロールおよびトリオクタノイルグリセロールの混合物、更に好ましくはトリデカノイルグリセロールおよびトリノナノイルグリセロールの混合物、またはトリデカノイルグリセロールおよびトリオクタノイルグリセロールの混合物、および最も好ましくはトリデカノイルグリセロールおよびトリオクタノイルグリセロールの混合物、を含む。
【0112】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器の被覆用の懸濁物は、トリオクタノイルグリセロールおよびトリノナノイルグリセロールの混合物、またはトリオクタノイルグリセロールおよびトリウンデカノイルグリセロールの混合物、またはトリオクタノイルグリセロールおよびトリデカノイルグリセロールの混合物、更に好ましくはトリオクタノイルグリセロールおよびトリノナノイルグリセロールの混合物、またはトリオクタノイルグリセロールおよびトリデカノイルグリセロールの混合物、および最も好ましくはトリオクタノイルグリセロールおよびトリデカノイルグリセロールの混合物、を含む。
【0113】
本発明の最も好ましい実施形態において、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器の被覆用の懸濁物は、トリオクタノイルグリセロールおよびトリデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、またはトリオクタノイルグリセロールおよびトリデカノイルグリセロールの混合物、を含む。
【0114】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器の被覆用の懸濁物は、トリオクタノイルグリセロールから選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、またはトリオクタノイルグリセロールとトリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールとの混合物、好ましくはトリノナノイルグリセロールおよびトリデカノイルグリセロール、さらにより好ましくはトリデカノイルグリセロールを含む。
【0115】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器の被覆用の懸濁物は、トリオクタノイルグリセロール、またはトリオクタノイルグリセロールとトリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールから選択される少なくとも一つの更なるトリ-O-アシルグリセロールとの混合物、好ましくはトリノナノイルグリセロールおよびトリデカノイルグリセロール、さらにより好ましくはトリデカノイルグリセロールを含む。
【0116】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器の被覆用の懸濁物は、トリデカノイルグリセロールから選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、またはトリデカノイルグリセロールとトリノナノイルグリセロール、トリオクタノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つの更なるトリ-O-アシルグリセロールとの混合物、好ましくはトリノナノイルグリセロールおよびトリオクタノイルグリセロール、さらにより好ましくはトリオクタノイルグリセロールを含む。
【0117】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器の被覆用の懸濁物は、トリデカノイルグリセロール、またはトリデカノイルグリセロールとトリノナノイルグリセロール、トリオクタノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つの更なるトリ-O-アシルグリセロールとの混合物、好ましくはトリノナノイルグリセロールおよびトリオクタノイルグリセロール、さらにより好ましくはトリオクタノイルグリセロールを含む。
【0118】
トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールは、好ましくは、少なくとも≧90%、好ましくは≧95%、およびより好ましくは≧99%の純度を有する。トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールから選択されるトリ-O-アシルグリセロールの混合物は、少なくとも≧90%、好ましくは≧95%、およびより好ましくは≧99%のトリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択されるトリ-O-アシルグリセロールを有する。
【0119】
特に好ましくは、本発明に係る懸濁物は、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールに加えて、任意の他のトリ-O-アシルグリセロールを含まない。
【0120】
例えば、トリオクタノイルグリセロールおよびトリデカノイルグリセロールは、例えば、大豆油、オリーブ油、またはココナッツ油などの様々な植物油中に、または動物油中に天然成分としても存在する。しかしながら、これらの天然植物油または動物油は、本発明に係らない他の飽和、および更に不飽和トリ-O-アシルグリセロールも様々な割合で含み、または例えば、モノ-O-アシルグリセロール、ジ-O-アセチルグリセロール、脂肪酸、および脂質などの他の物質も含み、したがって、天然の植物油または動物油は、本発明に係る結晶懸濁物の生成には適していない。植物油または動物油は、少なくとも≧90%、好ましくは≧95%、および特に好ましくは≧99%のトリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールからなるという条件で、本発明のために使用されることができる。
【0121】
したがって、本発明に係らないトリ-O-アシルグリセロールの混合物は、本明細書において、油、例えば、亜麻仁油、大麻油、トウモロコシ油、クルミ油、菜種油、大豆油、ヒマワリ油、ケシ油、ベニバナ油、小麦胚芽油、ベニバナ油、グレープシード油、月見草油、ルリヂサ油、ブラッククミン油、藻類油、魚油、タラ肝油、ココナッツ油など、およ
び/または前述の油の混合物、である。
【0122】
トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールを含む本発明に係る懸濁物の調製のために、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールは、本発明に係る結晶懸濁物の調製のための化学的に純粋な物質として使用される、またはトリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも≧90%、好ましくは≧95%以上、およびより好ましくは≧99%の少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールからなる混合物が使用される、のいずれかである。トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールは、当然ながら、天然の植物油または動物油、例えば、トリ-O-アシルグリセロールであるトリオクタノイルグリセロールおよびトリデカノイルグリセロール、並びにトリオクタノイルグリセロールおよびトリデカノイルグリセロールの混合物などから得ることもでき、商標カプテックス(Captex)(登録商標)8000(トリオクタノイルグリセロール)、カプテックス(Captex)(登録商標)1000(トリデカノイルグリセロール)、カプテックス(Captex)(登録商標)300(トリオクタノイルグリセロール/トリデカノイルグリセロール)、カプテックス(Captex)(登録商標)355(トリオクタノイルグリセロール/トリデカノイルグリセロール)、ミグリオール(Miglyol)(登録商標)810(トリオクタノイルグリセロール:トリデカノイルグリセロール、約70:30)、およびミグリオール(Miglyol)(登録商標)812(トリオクタノイルグリセロール:トリデカノイルグリセロール、約50:50)で市販される。当該市販される混合物を、本発明の懸濁物を調製するために使用することができる。
【0123】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器の被覆用の懸濁物は、したがって、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも二つのトリ-O-アシルグリセロールの混合物を含み、ここで、混合物は、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも≧90%、好ましくは≧95%、およびより好ましくは≧99%の少なくとも二つのトリ-O-アシルグリセロールからなる。
【0124】
本明細書において使用される用語「重量パーセント」(略語:重量%)は、混合物100g当たりのグラムで測定される、混合物または溶液中の物質の割合を指す。本明細書において使用される用語重量パーセントは、混合物の質量分率を表すものである。
【0125】
本明細書において使用される用語「質量分率」は、物質の混合物における組成の定量的説明のための物理化学的量を指す。考慮される混合物成分の質量は、全ての混合物成分の質量の合計に関係し、質量分率は、混合物の総質量における考慮される混合物成分の質量の相対比率を示す。
【0126】
好ましい実施形態において、懸濁物中のトリ-O-アシルグリセロールおよび微結晶タキサンの総質量に対するトリ-O-アシルグリセロールの質量分率(m/m;[g]/[g];m=質量)は、好ましくは、5%~40%、より好ましくは10%~30%、および最も好ましくは20%である。ここで、トリ-O-アシルグリセロールの質量は、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール
、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択されるトリ-O-アシルグリセロールの総質量を指し、すなわち、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールから選択されるトリ-O-アシルグリセロールの混合物の場合、混合物の質量における質量分率は、トリ-O-アシルグリセロール混合物および微結晶タキサンの総質量から計算される。
【0127】
したがって、懸濁物中のトリ-O-アシルグリセロールおよび微結晶タキサンの総質量に対するトリ-O-アシルグリセロールの質量分率を計算するために、トリ-O-アシルグリセロールの質量およびトリ-O-アシルグリセロールと微結晶タキサンとの総質量の商を形成する。例えば、4gのタキサンおよび1gのトリ-O-アシルグリセロールの混合物中のトリ-O-アシルグリセロールの質量分率は20%である。
【0128】
好ましい実施形態において、懸濁物中のトリ-O-アシルグリセロールおよび微結晶タキサンの総質量に対するトリ-O-アシルグリセロール質量分率(m/m;[g]/[g];m=質量)は、好ましくは0.1%~50%、更に好ましくは1%~40%、より好ましくは10%~30%、および最も好ましくは20%である。
【0129】
好ましい実施形態において、懸濁物中のトリ-O-アシルグリセロールおよび微結晶タキサンの総質量に対するタキサンの質量分率(m/m;[g]/[g];m=質量)は、好ましくは99.9%~50%、更に好ましくは99%~60%、より好ましくは90%~70%、および最も好ましくは80%である。
【0130】
したがって、トリ-O-アシルグリセロールおよび微結晶タキサンの総質量に対するトリ-O-アシルグリセロールおよび微結晶タキサンの質量分率は、好ましくは0.1%~50%のトリ-O-アシルグリセロールおよび99.9%~50%のタキサン、更に好ましくは1%~40%のトリ-O-アシルグリセロールおよび99%~60%のタキサン、より好ましくは10%~30%のトリ-O-アシルグリセロールおよび90%~70%のタキサン、並びに最も好ましくは20%のトリ-O-アシルグリセロール、および80%のタキサン、である。
【0131】
トリ-O-アシルグリセロールの混合物が使用される場合、トリ-O-アシルグリセロール混合物および微結晶タキサンの総質量に対するトリ-O-アシルグリセロール混合物の質量の質量分率が決定される。例えば、4gのタキサンとトリ-O-アシルグリセロールとの混合物中のトリ-O-アシルグリセロール混合物の質量分率は20%である。
【0132】
好ましい実施形態において、微結晶タキサンに対するトリ-O-アシルグリセロールの量は、好ましくは0.1重量%~50重量%、更に好ましくは1重量%~40重量%、より好ましくは10重量%~30重量%、および最も好ましくは20重量%である。
【0133】
好ましい実施形態において、トリ-O-アシルグリセロールに対する微結晶タキサンの量は、懸濁物中に好ましくは99.9重量%~50重量%、更に好ましくは99重量%~60重量%、より好ましくは90重量%~70重量%、および最も好ましくは80重量%である。
【0134】
したがって、懸濁物中のトリ-O-アシルグリセロールおよび微結晶タキサンは、好ましくは0.1重量%~50重量%のトリ-O-アシルグリセロール対99.9重量%~50重量%のタキサンで、更に好ましくは1重量%~40重量%のトリ-O-アシルグリセロール対99.60重量%のタキサン、特に好ましくは、10重量%~30重量%のトリ-O-アシルグリセロール対90重量%~70重量%のタキサンで、および最も好ましく
は20重量%のトリ-O-アシルグリセロールおよび80重量%のタキサンで存在する。
【0135】
好ましい実施形態において、懸濁物中の添加剤および微結晶タキサンの総質量に対する添加剤の質量分率(m/m;[g]/[g];m=質量)は、好ましくは0.001%~1.0%、更に好ましくは0.01%~2.5%、より好ましくは特に好ましくは0.05%~5.0%である。
【0136】
本明細書において使用される用語「質量比」は、物質の混合物の組成の定量的記述のための物理化学的量を指す。質量比は、二つの考慮される混合物成分の互いの質量の比を示す。
【0137】
トリ-O-アシルグリセロールと微結晶タキサンとの質量比(m/m;[g]/[g];m=質量)は、好ましくは1:1000~1:1、より好ましくは1:100~1:1.5、更に好ましくは1:10~1:3、およびより好ましくは1:5~1:4、および最も好ましくは1:4である。ここでトリ-O-アシルグリセロールの質量は、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択されるトリ-O-アシルグリセロールの総質量を指し、すなわち、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択されるトリ-O-アシルグリセロールの混合物に関して、トリ-O-アシルグリセロールの混合物の質量は、質量比を算出するために使用される。
【0138】
したがって、微結晶タキサンに対するトリ-O-アシルグリセロールの質量比を算出するために、トリ-O-アシルグリセロールの質量とタキサンの質量との商を形成する。例えば、1gのトリ-O-アシルグリセロールおよび4gのタキサンの混合物中のトリ-O-アシルグリセロールとタキサンとの質量比は1:4である。
【0139】
微結晶タキサンに対するトリ-O-アシルグリセロール対の質量比は、さらに好ましくは0.1%~50%、より好ましくは1%~40%、より好ましくは10%~30%、および更に好ましくは20%~25%、および最も好ましくは25%である。いくつかの好ましい実施形態において、微結晶性タキサンに対するトリ-O-アシルグリセロールの質量比は、好ましくは5%~40%、より好ましくは10%~30%、および最も好ましくは20%~25%である。
【0140】
したがって、微結晶タキサンに対するトリ-O-アシルグリセロールの質量比を計算するために、トリ-O-アシルグリセロールの質量とタキサンの質量との商を形成する。例えば、1gのトリ-O-アシルグリセロールおよび4gのタキサンの混合物中の微結晶タキサンに対するトリ-O-アシルグリセロールの質量比は25%である。
【0141】
好ましい実施形態において、100mLの懸濁物体積に対する微結晶タキサンの質量比(m/V;[g]/[100mL];m=質量;V=体積)は、0.5%~6%、より好ましくは1%~5%、さらにより好ましくは2%~4%、および最も好ましくは3%である。
【0142】
したがって、100mLの懸濁物体積に対する微結晶タキサンの質量比を算出するために、微結晶タキサンの質量と100mLの懸濁物体積との商を形成する。例えば、3gのタキサンおよび100mLの懸濁物体積の懸濁物中における100mLの懸濁物体積に対する微結晶タキサンの質量比は3%である。
【0143】
1Lの懸濁物体積の体積に基づいて、1Lの懸濁物体積に対する微結晶タキサンの質量
比(m/V;[g]/[L];m=質量;V=体積)は、0.5%~6%、好ましくは1%~5%、更により好ましくは2%~4%、および最も好ましくは3%である。
【0144】
したがって、1Lの懸濁物体積に対する微結晶タキサンの質量比を算出するために、1Lの懸濁物体積に対する微結晶タキサンの質量の商を形成する。例えば、30gのタキサンおよび1Lの懸濁物体積の懸濁物中における1Lの懸濁物体積に対する微結晶タキサンの質量比は3%である。
【0145】
好ましい実施形態において、100mL懸濁物体積に対するトリ-O-アシルグリセロールの質量比(m/V;[g]/[100mL];m=質量;V=体積)は、0.13%~1.5%、より好ましくは0.25%~1.25%、更により好ましくは0.5%~1%、および最も好ましくは0.75%である。
【0146】
したがって、100mLの懸濁物体積に対するトリ-O-アシルグリセロールの質量比を算出するために、トリ-O-アシルグリセロールの質量と100mLの懸濁物体積との商を形成する。例えば、0.75gのトリ-O-アシルグリセロールおよび100mLの懸濁物体積の懸濁物中における100mLの懸濁物体積に対するトリ-O-アシルグリセロールの質量比は0.75%である。
【0147】
言い換えると、1Lの懸濁物体積に対するトリ-O-アシルグリセロールの質量比(m/V;[g]/[L];m=質量;V=体積)は、0.13%~1.5%、より好ましくは0.25%~1.25%、更により好ましくは0.5%~1%、および最も好ましくは0.75%である。したがって、1Lの懸濁物体積に対するトリ-O-アシルグリセロールの質量比を算出するために、トリ-O-アシルグリセロールの質量と1Lの懸濁物体積との商を形成する。例えば、7.5gのタキサンおよび1Lの懸濁物体積の懸濁物中における1Lの懸濁物体積に対するトリ-O-アシルグリセロールの質量比は0.75%である。
【0148】
本明細書において使用される用語「質量濃度」は、物質混合物/混合相の組成の定量的説明のための物理化学的量を指す。ここで、考慮される混合成分の質量は、混合相の総体積に関する。
【0149】
好ましい実施形態において、懸濁物中の微結晶タキサンの質量濃度(m/V;[mg]/[mL];m=質量;V=体積)は、好ましくは、5mg/mL~60mg/mL、より好ましくは20mg/mL~40mg/mL、更に好ましくは20mg/mL~30mg/mLである。いくつかの好ましい実施形態において、懸濁物中の微結晶タキサンの質量濃度は20mg/mL~25mg/mLである。いくつかの好ましい実施形態において、懸濁物中の微結晶タキサンの質量濃度は25mg/mL~30mg/mLである。いくつかの好ましい実施形態において、懸濁物中の微結晶タキサンの質量濃度は20mg/mLである。いくつかの好ましい実施形態において、懸濁物中の微結晶タキサンの質量濃度は25mg/mLである。いくつかの好ましい実施形態において、懸濁物中の微結晶タキサンの質量濃度は30mg/mLである。
【0150】
言い換えると、懸濁物中の微結晶タキサンの質量濃度(m/V;[kg]/[m3];m=質量;V=体積)は、好ましくは5kg/m3~60kg/m3、より好ましくは20kg/m3~40kg/m3、より好ましくは20kg/m3~30kg/m3、である。いくつかの好ましい実施形態において、懸濁物中の微結晶タキサンの質量濃度は、20kg/m3~25kg/m3である。いくつかの好ましい実施形態において、懸濁物中の微結晶タキサンの質量濃度は、25kg/m3~30kg/m3である。いくつかの好ましい実施形態において、懸濁物中の微結晶タキサンの質量濃度は、20kg/m3であ
る。いくつかの好ましい実施形態において、懸濁物中の微結晶タキサンの質量濃度は25kg/m3である。いくつかの好ましい実施形態において、懸濁物中の微結晶タキサンの質量濃度は、30kg/m3である。
【0151】
好ましい実施形態において、懸濁物中のトリ-O-アシルグリセロールの質量濃度(m/V;[mg]/[mL];m=質量;V=体積)は、好ましくは1.3mg/mL~15mg/mL、より好ましくは2.5mg/mL~12.5mg/mL、より好ましくは5mg/mL~10mg/mLである。
【0152】
いくつかの好ましい実施形態において、懸濁物中のトリ-O-アシルグリセロールの質量濃度は、6mg/mL~9mg/mLである。いくつかの好ましい実施形態において、懸濁物中のトリ-O-アシルグリセロールの質量濃度は、5.5mg/mL~9.5mg/mLである。いくつかの好ましい実施形態において、懸濁物中のトリ-O-アシルグリセロールの質量濃度は、7.5mg/mLである。いくつかの好ましい実施形態において、懸濁物中のトリ-O-アシルグリセロールの質量濃度は、7mg/mLである。いくつかの好ましい実施形態において、懸濁物中のトリ-O-アシルグリセロールの質量濃度は、6.5mg/mLである。
【0153】
いくつかの好ましい実施形態において、懸濁物中のトリ-O-アシルグリセロールの質量濃度は、4mg/mL~6mg/mLである。いくつかの好ましい実施形態において、懸濁物中のトリ-O-アシルグリセロールの質量濃度は、4.5mg/mL~5.5mg/mLである。いくつかの好ましい実施形態において、懸濁物中のトリ-O-アシルグリセロールの質量濃度は、4.5mg/mLである。いくつかの好ましい実施形態において、懸濁物中のトリ-O-アシルグリセロールの質量濃度は、5mg/mLである。いくつかの好ましい実施形態において、懸濁物中のトリ-O-アシルグリセロールの質量濃度は、5.5mg/mLである。
【0154】
好ましい実施形態において、懸濁物中の微結晶タキサンの質量濃度(m/V;[mg]/[mL];m=質量;V=体積)は、5mg/mL~60mg/mLであり、およびトリ-O-アシルグリセロールの質量濃度は1.3mg/mL~15mg/mLあり、更に好ましくは、懸濁物中の微結晶タキサンの質量濃度は、20mg/mL~40mg/mLであり、およびトリ-O-アシルグリセロールの質量濃度は2.5mg/mL~12.5mg/mLあり、更に好ましくは、懸濁物中の微結晶タキサンの質量濃度は、20mg/mL~30mg/mLであり、およびトリ-O-アシルグリセロールの質量濃度は5mg/mL~10mg/mLある。
【0155】
本明細書において使用される用語「物質濃度の量」は、物質混合物/混合相の組成の定量的説明のための物理化学的量を指す。ここで、考慮される混合成分の物質の量は、混合相の総体積に関する。
【0156】
好ましい実施形態において、懸濁物中の微結晶タキサンのモル濃度(n/V;[mmol]/[L];n=物質の量;V=体積)は、好ましくは5mmol/L~60mmol/L、より好ましくは20mmol/L~40mmol/L、より好ましくは25mmol/L~35mmol/L、である。
【0157】
言い換えると、懸濁液中の微結晶タキサンのモル濃度(n/V;[mmol]/[L];n=物質の量;V=体積)は、好ましくは、5mol/m3~60mol/m3、より好ましくは20mol/m3~40mol/m3、より好ましくは25mol/m3~35mol/m3である。
【0158】
いくつかの好ましい実施形態において、懸濁物中のトリ-O-アシルグリセロールのモル濃度(n/V;[mmol]/[L];n=物質の量;V=体積)は、2mmol/L~35mmol/L、より好ましくは、4mmol/L~25mmol/L、より好ましくは10mmol/L~20mmol/L、より好ましくは12mmol/L~18mmol/L、である。
【0159】
いくつかの好ましい実施形態において、懸濁物中のトリ-O-アシルグリセロールのモル濃度(n/V;[mmol]/[L];n=物質の量;V=体積)は、2mol/m3~35mol/m3、より好ましくは4mol/m3~25mol/m3、より好ましくは10mol/m3~20mol/m3、より好ましくは12mol/m3~18mol/m3、である。
【0160】
本明細書において使用される用語「タキサン」は、細胞増殖抑制剤に属する一群の活性剤を指し、タキソイドとしても知られる。タキサンは、様々な癌の治療に使用され、化学療法剤として機能する。パクリタキセルなどのタキサンは、再狭窄を防止するための、医療機器、例えば、ステントおよびカテーテルバルーンなどの被覆に適した薬剤として先行技術から知られている。タキサンは紡錘体の分解を阻害して有糸分裂における紡錘体の必須の機能を不能な状態することによって細胞分裂を阻害し、したがって腫瘍の増殖を阻害する。紡錘体を形成する微小管は、細胞分裂の過程において複製された遺伝物質を2つの娘細胞に分配するために不可欠である。本明細書において使用される用語「タキサン」は、天然に存在するタキサン、例えば、パクリタキセルおよびパクリタキセルの誘導体、例えば、ドセタキセルなどを指す。
【0161】
本発明によれば、以下の物質をタキサンとして使用することができる:
パクリタキセル、タキソテール、バッカチン、7-キシロシル-10-デアセチルタキソール、セファロマンニン、10-デアセチル-7-エピタキソール、7-エピタキソール、10-デアセチルセファロマンニン、ドセタキセル、7-デオキシ-ドセタキソール、7,8-シクロプロパタキサン、N-置換2-アゼチドン、6,7-エポキシ-パクリタキセル、6,7-修飾パクリタキセル、10-デアセトキシタキソール、10-デアセチルタキソール(10-デアセチルバッカチンIII由来)、タキソールのホスホノオキシおよびカーボネート誘導体、タキソール2’,7-二ナトリウム1,2-ベンゼンジカルボキシレート、10-デアセトキシ-11,12-ジヒドロタキソール-10,12(18)-ジエン誘導体、10-デアセトキシタキソール、プロタキソール(2’-および/または7-O-エステル誘導体)、パクリタキセルの2’-および/または7-O-カーボネート誘導体、フルオロタキソール、9-デオキソタキサン、13-アセチル-9-デオキソバッカチンIII、9-デオキソタキソール、7-デオキシ-9-デオキソタキソール、10-デアセトキシ-7-デオキシ-9-デオキソタキソール、スルホン化2’-アクリロイルタキソール、スルホン化2’-O-アシルタキソール誘導体、スクシニルタキソール、2’-ガンマ-アミノブチリルタキソール、2’-アセチルタキソール、7-アセチルタキソール、7-グリシン-カルバメート-タキソール、パクリタキセルの2’-ベンゾイル誘導体、2’,7-ジベンゾイル-タキソール、2’-アセチルタキソール、2’,7-ジアセチルタキソール、2’-スクシニルタキソール、2’-(ベータ-アラニル)-タキソール、2’-スクシニルタキソールのエチレングリコール誘導体、2’-グルタリルタキソール、2’-(N,N-ジメチルグリシル)-タキソール、2’-(2-(N,N-ジメチルアミノ)プロピオニル)タキソール、2’-オルトカルボキシベンゾイル-タキソール、タキソールの2’脂肪族カルボン酸誘導体、2’-(N,N-ジエチルアミノプロピオニル)タキソール、7-(N,N-ジメチルグリシル)タキソール、2’,7-ジ-(N,N-ジメチルグリシル)タキソール、7-(N,N-ジエチルアミノプロピオニル)タキソール、2’,7-ジ(N,N-ジエチルアミノプロピオニル)タキソール、2’-(L-グリシル)タキソール、7-(L-グリシル)タキソール、2
’,7-ジ(L-グリシル)タキソール、2’-(L-アラニル)タキソール、7-(L-アラニル)タキソール、2’,7-ジ(L-アラニル)タキソール、2’-(L-ロイシル)タキソール、7-(L-ロイシル)タキソール、2’,7-ジ(L-ロイシル)タキソール、2’-(L-イソロイシル)タキソール、7-(L-イソロイシル)タキソール、2’,7-ジ(L-イソロイシル)タキソール、2’-(L-バリル)タキソール、7-(L-バリル)タキソール、2’7-ジ(L-バリル)タキソール、2’-(L-フェニルアラニル)タキソール、7-(L-フェニルアラニル)タキソール、2’,7-ジ(L-フェニルアラニル)タキソール、2’-(L-プロリル)タキソール、7-(L-プロリル)タキソール、2’,7-ジ(L-プロリル)タキソール、2’-(L-リシル)タキソール、7-(L-リシル)タキソール、2’,7-ジ(L-リシル)タキソール、2’-(L-グルタミル)タキソール、7-(L-グルタミル)タキソール、2’,7-ジ(L-グルタミル)タキソール、2’-(L-アルギニル)タキソール、7-(L-アルギニル)タキソール、2’,7-ジ(L-アルギニル)タキソール、(N-デベンゾイル-N-tert-(ブトキシカロニル)-10-デアセチルタキソール、バッカチンIII、10-デアセチルバッカチンIII、カバジタキセル、ブレビフォリオール、ユナンタクスシン、タクスシン、14-ベータ-ヒドロキシ-10-デアセチルバッカチンIII、デベンゾイル-2-アシルパクリタキセル誘導体、ベンゾエートパクリタキセル誘導体、18-側鎖置換パクリタキセル誘導体、塩素化パクリタキセル類似体、C4メトキシエーテルパクリタキセル誘導体、スルホンアミドタキサン誘導体、臭素化パクリタキセル類似体、ジラール(Girard’s)タキソール誘導体、ニトロフェニルパクリタキセル、10-デアセチル酸置換パクリタキセル誘導体、14-β-ヒドロキシ-10-デアセチルバッカチンIII誘導体、C7タキサン誘導体、2-デベンゾイル-2-アシルタキサン誘導体、2-デベンゾイルパクリタキセル誘導体、2-アシルパクリタキセル誘導体、10-デアセチルタキソールA、10-デアセチルタキソールB、2-アロイル-4-アシルパクリタキセル類似体、オルト-エステルパクリタキセル類似体、バッカチンVII、バッカチンVI、バッカチンIV、7-エピ-バッカチンIII、バッカチンV、バッカチンI、バッカチンA、エピタキソール。
【0162】
少なくとも一つのタキサンは、好ましくは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセルを含む、またはからなる群から好ましくは選択され、特に好ましくはパクリタキセルである。
【0163】
パクリタキセルは、商標タキソール(Taxol)(登録商標)および化学名[2aR-[2a,4,4a,6,9(R*,S*),11,12,12a,12b]]-(ベンゾイルアミノ)-ヒドロキシベンゼンプロピオン酸-6,12b-ビス-(アセチルオキシ)-12-(ベンゾイルオキシ)-2a-3,4,4a,5,6,9,10,11,12,12a,12b-ドデカヒドロ-4,11-ジヒドロキシ-4a,8,13,13-テトラメチル-5-オキソ-7,11-メタノ-1H-シクロデカ[3,4]ベンズ[1,2-b]オキセト-9-イルエステル)、または(2α,4α,5β,7β,10β,13α)-4,10-ビス(アセチルオキシ)-13-{[(2R,3S)-3-(ベンゾイルアミノ)-2-ヒドロキシ-3-フェニルプロパノイル]オキシ}-1,7-ジヒドロキシ-9-オキソ-5,20-エポキシタックス-11-エン-2-イル-ベンゾエート(IUPAC名)でよく知られる。
【0164】
パクリタキセルは次の構造式を有する:
【0165】
【0166】
ドセタキセルは、商標タキソテラ(Taxotere)(登録商標)および化学名(2R,3S)-4-アセトキシ-2α-ベンジルオキシ-13-[3-(N-tert-ブトキシカルボニル)アミノ-2-ヒドロキシ-3-フェニル]プロピオニル-5β,20-エポキシ-1,7β,10β-トリヒドロキシ-9-オキソタックス-11-エン-13α-イルエステル(IUPAC名)で知られる。ドセタキセルは以下の構造式を有する:
【0167】
【0168】
カバジタキセルは、商標ジェブタナ(Jevtana)(登録商標)で入手可能であり、化学名(1S,2S,3R,4S,7R,9S,10S,12R,15S)-4-(アセチルオキシ)-15-{[(2R,3S)-3-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}-2-ヒドロキシ-3-フェニルプロパノイル]オキシ}-1-ヒドロキシ-9,12-ジメトキシ-10,14,17,17-テトラメチル-11-オキソ-6-オキサテトラシクロ[11.3.1.03,10.04,7]ヘプタデク-13-エン-2-イルベンゾエートで知られる。カバジタキセルは、以下の構造式を有する。
【0169】
【0170】
本明細書において使用される用語「微結晶」は、その構成要素が結晶構造内に規則的に配置され、マイクロメートル範囲のサイズを有する固体を指す。本明細書において使用される用語「マイクロメートル範囲」は、1μmから300μmの範囲に相当し、ここで1μmは、10-6m、10-3mm、または1000nmに相当する。したがって、本明細書において使用される用語微結晶は、1μm~300μmの範囲の結晶サイズを有する結晶を指す。
【0171】
本明細書において使用される用語「結晶サイズ」は、結晶の最大寸法に沿った長さ、すなわち、棒状または針状の結晶の場合において結晶の縦軸に沿った結晶の長さを指す。したがって、本明細書で定義される微結晶は、微結晶の最大寸法に沿って1μmから300μmの範囲の長さを有する。
【0172】
本明細書において使用される用語「結晶化度」は、化合物の結晶含有量、すなわち、結晶および他の形態の化合物の総量に対する化合物の結晶の割合である。
本明細書において使用される用語「微結晶タキサン」は、微結晶の形態であるタキサンを指す。したがって、用語「微結晶タキサン」および「微結晶の形態のタキサン」は、本明細書において互いに交換可能で使用される。
【0173】
タキサンの調製のための結晶化工程は、先行技術から知られる。一般に、タキサンを結晶化するために、タキサンの溶液を調製することができ、溶液中のタキサンの溶解度を低下させることができる。溶解度を低下させるための一般的な方法は、例えば、冷却、貧溶媒(anti-solvent)の添加、蒸発などを含む。
【0174】
冷却による結晶化:タキサンを、室温または室温より高い温度で飽和するまで溶媒に溶解することができ、より低い温度(例えば:0℃で)で結晶化させることができる。結晶サイズの分布は、制御された冷却速度によって影響されることができる。極性有機溶媒および非極性有機溶媒の両方、例えば、トルエン、アセトニトリル、ギ酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、エタノール、ジメチルホルムアミド、アニソール、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、テトラヒドロフラン、ニトロメタン、プロプリオニトリル(proprionitrile)などは、タキサンの結晶化用に適切な溶媒である。
【0175】
種結晶の添加による結晶化:タキサンを、溶媒中に飽和まで溶解し、結晶化は、種結晶の添加によって開始し、過飽和の制御された低下を達成する。
貧溶媒の添加による結晶化:タキサンを溶媒に溶解し、その後、非溶媒または水を添加する。ここで二相混合物も可能である。極性有機溶媒、例えば、アセトン、アセトニトリ
ル、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシドなどを、タキサンを溶解するための溶媒として使用することができる。適切な非溶媒は、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサンまたはヘプタンを含む。溶媒混合物を、結晶化のために静置させ、撹拌し、またはゆっくり濃縮し、または真空内で蒸発させる。タキサンの結晶サイズおよび結晶化度は、非極性溶媒の制御された添加によって影響されることができる。大きな結晶を生成するために過飽和を遅くすべきであり、および小さな結晶を生成するために、過飽和を速くすべきである。結晶サイズを制御するために貧溶媒の添加速度を制御することは、よく知られている。
【0176】
微結晶の生成に関して、結晶化を、超音波によって助けることもできる。結晶サイズは、超音波によって影響されることができることが一般に知られている。結晶化および核生成を開始するために、超音波を、結晶化の開始時に使用することができ、更なる結晶成長を伴って、その後の結晶成長が妨げられずに進行し、したがって、より大きな結晶が成長する。一方、過飽和溶液への連続的な超音波処理の適用は、この工程において多くの核が形成されるので、結果的に多数の小さな結晶の成長をもたらす。他の選択肢は、適合した結晶サイズが達成されるような方法で結晶成長に影響を与えるようにパルスモードで超音波を使用することができる。
【0177】
本明細書において、微結晶タキサンの生成のための好ましい結晶化工程は、天然および無傷の状態で微結晶を得るための、および例えば、粉砕または微粉化などによる可能性がある損傷を回避するための、制御された結晶化である。
【0178】
微粉化、粉砕、またはふるい分けなどの先行技術から知られる他の工程も、所望の結晶サイズを提供するために使用することができる。一つの可能性は、結晶を粉砕することであり、これは結晶化中に湿式粉砕によって行うこともできる。粉砕は、異なる結晶サイズ、すなわち、より広範な結晶サイズ分布を得るために有利であることができる。粉砕は、結晶サイズ範囲内の全ての所望サイズを可能にする。例えば、単離および乾燥の後に特別なふるい分け工程などを行うことによって、より均一な結晶サイズを提供することができる。先行技術から知られる特別なふるい分け装置を、この目的のために使用することができる。ふるい分け工程において、タキサンを、例えば、ふるい分けの積み重ねを通してふるい分け、異なるサイズ範囲に分割することができる。
【0179】
懸濁物がトリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールを含む場合、特に安定な懸濁物を、微結晶タキサンを用いて調製することができることを示すことができた。本発明によれば、少なくとも一つのタキサンは微結晶の形態である。したがって、タキサンは、1μmから300μmの範囲の結晶サイズを有する微結晶の形態で存在する。したがって、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、1μmから300μmの間の結晶サイズを有する。
【0180】
タキサンの微結晶はカプセル化されておらず、ポリマーなどを用いて被覆されておらず、および表面に修飾されていない。さらに、タキサンの微結晶は、ポリマー、ポリマー粒子、金属、金属粒子、セラミックまたはセラミック粒子を含まない。また、タキサンの微結晶は、任意の他の活性のある医薬不活性剤、またはタンパク質、アミノ酸、またはヌクレオチド、または他の生体高分子も含まない。
【0181】
したがって、本発明は、本明細書において定義される少なくとも一つの微結晶タキサンを含む懸濁物に関する。懸濁物において、少なくとも一つのタキサンは、微結晶の形態で存在する。懸濁物中の溶媒または溶媒混合物に溶解されたタキサンの含有量は、懸濁物の
調製において使用される微結晶の形態のタキサンの質量に基づいて、10%未満、好ましくは5%未満、およびさらに好ましくは2%未満、最も好ましくは1%未満である。したがって、少なくとも一つのタキサンの微結晶の最大10%、好ましくは最大5%、および更に好ましくは最大2%、最も好ましくは最大1%が、懸濁液中に溶解することが好ましい。
【0182】
本発明によれば、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器の被覆用の懸濁物は、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解し、および少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、溶媒または溶媒混合物を含む。
【0183】
本明細書において使用される語句「少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない」は、少なくとも一つのタキサンの微結晶の好ましくは最大10%、好ましくは最大9%、更に好ましくは最大8%、更に好ましくは最大7%、更に好ましくは最大6%、更に好ましくは最大5%、更により好ましくは最大3%、更に好ましくは最大2%、および最も好ましくは最大1%が、懸濁物中に溶解することを意味する。好ましくは、当然ながら、少なくとも一つのタキサンの微結晶の100%が、懸濁液中に溶解しない。
【0184】
懸濁物における溶媒または溶媒混合物に対する少なくとも一つのタキサンの微結晶の溶解度は、<20mg/mL、より好ましくは<15mg/mL、より好ましくは<10mg/mL、より好ましくは<9mg/mL、より好ましくは<8mg/mL、更に好ましくは<7mg/mL、更に好ましくは<6mg/mL、更に好ましくは<5mg/mL、更に好ましくは<4mg/mL、更に好ましくは<3mg/mL、更に好ましくは<2mg/mL、更に好ましくは<1mg/mLである。
【0185】
驚くべきことに、タキサンの微結晶は、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも1つのトリ-O-アシルグリセロールを含む溶液に溶解しないことが明らかになった。したがって、タキサンの微結晶が無傷のまま残る被覆製剤として結晶懸濁物を調製することができる。
【0186】
タキサンの結晶は、少なくとも1μmのサイズを有すべきである。1μm未満の結晶は、小さすぎるので、比較的早く溶解する。本発明の懸濁物を調製することにおいて、少なくとも一つのタキサンが1μm未満の結晶サイズを有する結晶を実質的に含まない場合にのみ、安定な懸濁物を得ることができることを明らかにしている。言い換えると、タキサンは、ナノ結晶の形態ではないことが特に好ましい。本明細書において使用される用語ナノ結晶は、1nmから1000nm未満の範囲の結晶サイズを有する結晶を指す。
【0187】
好ましくは、少なくとも一つのタキサンの少なくとも95%~97%、より好ましくは少なくとも95%~99%、更に好ましくは少なくとも97%~99%、および特に好ましくは少なくとも一つのタキサンの98%~99.9%は、少なくとも1μmの結晶サイズを有する微結晶の形態で存在する。更に好ましい実施形態において、少なくとも一つのタキサンの100%は、少なくとも1μmの結晶サイズを有する微結晶の形態で存在する。
【0188】
微結晶の形態のタキサンは、少なくとも10μmの結晶サイズを有する場合に有利であることも示されることができた。したがって、少なくとも一つのタキサンは、1μm~10μmの結晶サイズを有する微結晶を少ない割合で有することが好ましい。少量の結晶のみ、すなわち全結晶の10%より極めて低い量の結晶が10μmより小さいことが特に好ましい。好ましい実施形態において、タキサンの全微結晶の10%未満が、10μm未満
の範囲の結晶サイズで存在する。
【0189】
好ましくは、少なくとも一つのタキサンの少なくとも90%、好ましくは少なくとも一つのタキサンの少なくとも90%~95%、より好ましくは少なくとも一つのタキサンの少なくとも93%~98%、より好ましくは少なくとも一つのタキサンの少なくとも95%~99%、および特に好ましくは少なくとも一つのタキサンの少なくとも98%~99.9%が、少なくとも10μmの結晶サイズを有する微結晶の形態で存在する。
【0190】
少なくとも一つのタキサンの微結晶は、少なくとも5μmの結晶サイズを有すると更に好ましい。したがって、少なくとも一つのタキサンの少なくとも90%、好ましくは少なくとも一つのタキサンの少なくとも90%~95%、より好ましくは少なくとも一つのタキサンの少なくとも93%~98%、更に好ましくは少なくとも一つのタキサンの少なくとも95%~99%、および特に好ましくは少なくとも一つのタキサンの少なくとも98%~99.9%は、少なくとも5μmの結晶サイズを有する微結晶の形態で存在する。5μm未満の範囲の結晶サイズを有する微結晶は、より速く溶解することができるので、あまり好ましくない。
【0191】
更に好ましくは、少なくとも一つのタキサンの微結晶が、少なくとも20μmの結晶サイズを有することである。したがって、少なくとも一つのタキサンの少なくとも90%、好ましくは少なくとも一つのタキサンの少なくとも90%~95%、より好ましくは少なくとも一つのタキサンの少なくとも93%~98%、更に好ましくは少なくとも一つのタキサンの少なくとも95%~99%、および特に好ましくは少なくとも一つのタキサンの少なくとも98%~99.9%は、少なくとも20μmの結晶サイズを有する微結晶の形態で存在する。
【0192】
さらに、好ましくは、タキサンの微結晶の少量のみ、すなわち、すなわち40%未満、およびより好ましくは30%未満、または更に25%未満が、100μm~300μmの範囲の結晶サイズで存在する。したがって、少なくとも一つのタキサンの最大40%、好ましくは少なくとも一つのタキサンの最大30%、更に好ましくは少なくとも一つのタキサンの最大25%は、100μm~300μmの粒径を有する微結晶の形態で存在する。更なる実施形態において、少なくとも一つのタキサンの最大20%、好ましくは少なくとも一つのタキサンの最大15%、さらに好ましくは少なくとも一つのタキサンの最大10%が、100μm~300μmの粒径を有する微結晶の形態で存在する。特に好ましい実施形態において、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、最大100μmの結晶サイズで実質的に存在する。
【0193】
更に好ましくは、150μm~300μmの範囲の結晶サイズを有するタキサンの微結晶はほとんど存在しない、すなわち、10%未満、およびより好ましくは5%未満、または更に2%未満、および最も好ましくは1%未満である。150μm~300μmの範囲の結晶サイズを有する微結晶は、凝集体を形成し、非晶質粒子に合体することができ、そのことは、血管閉塞の危険性を引き起こし得る。したがって、150μm~300μmの範囲の粒径を有する微結晶の割合が可能な限り低いことが特に好ましい。
【0194】
したがって、少なくとも一つのタキサンの最大10%、好ましくは少なくとも一つのタキサンの最大5%、更に好ましくは少なくとも一つのタキサンの最大2%、更により好ましくは少なくとも一つのタキサンの最大1%は、150μm~300μmの粒径を有する微結晶の形態で存在すると好ましい。更なる実施形態において、少なくとも一つのタキサンの少なくとも99%、好ましくは99.5%、更に好ましくは少なくとも99.7%、更に好ましくは少なくとも99.9%、および最も好ましくは100%が、≦150μmの粒径で存在すると好ましい。好ましい実施形態において、少なくとも一つのタキサンの
微結晶は、最大150μmの結晶サイズで実質的に存在する。特に好ましい実施形態において、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、最大150μmの結晶サイズで実質的に存在する。
【0195】
好ましくは、タキサンは、1μmから150μmの結晶サイズを有する微結晶の形態である。
したがって、少なくとも一つのタキサンの最大10%、好ましくは少なくとも一つのタキサンの最大5%、更に好ましくは少なくとも一つのタキサンの最大2%、更により好ましくは少なくとも一つのタキサンの最大1%が、100μm~300μmの粒径を有する微結晶の形態で存在すると好ましい。更なる実施形態において、少なくとも一つのタキサンの少なくとも99%、好ましくは99.5%、更に好ましくは少なくとも99.7%、更に好ましくは少なくとも99.9%、および最も好ましくは100%が、≦100μmの粒径で存在すると好ましい。好ましい実施形態において、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、最大100μmの結晶サイズで実質的に存在する。特に好ましい実施形態において、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、最大100μmの結晶サイズで実質的に存在する。
【0196】
好ましくは、タキサンは、1μmから100μmの結晶サイズを有する微結晶の形態である。
10μmから100μmの範囲の結晶サイズを有するタキサンの微結晶は、医療機器の被覆用の本発明に係る懸濁物を提供するのによく適していることを示すことができた。したがって、少なくとも一つタキサンの少なくとも70%、好ましくは少なくとも一つのタキサンの少なくとも70%~80%、更に好ましくは少なくとも一つのタキサンの少なくとも80%~90%、更に好ましくは少なくとも一つのタキサンの少なくとも90%~95%、および特に好ましくは、少なくとも一つのタキサンの少なくとも95%~99%は、10μmから100μmの結晶サイズを有する微結晶の形態で存在すると好ましい。
【0197】
10μmから80μmの範囲の結晶サイズを有するタキサンの微結晶は、医療機器の被覆用の本発明に係る懸濁物を提供するのによく適していることを示すことができた。したがって、少なくとも一つのタキサンの少なくとも70%、好ましくは少なくとも一つのタキサンの少なくとも70%~80%、更に好ましくは少なくとも一つのタキサンの少なくとも80%~90%、更に好ましくは少なくとも一つのタキサンの少なくとも90%~95%、および特に好ましくは少なくとも一つのタキサンの少なくとも95%~99%が、10μmから80μmの結晶サイズを有する微結晶の形態で存在する。
【0198】
10μmから70μmの範囲の結晶サイズを有するタキサンの微結晶は、医療機器の被覆用の本発明に係る懸濁物を提供するのによく適していることを示すことができた。したがって、少なくとも一つのタキサンの少なくとも70%、好ましくは少なくとも一つのタキサンの少なくとも70%~80%、更に好ましくは少なくとも一つのタキサンの少なくとも80%~90%、更に好ましくは少なくとも一つのタキサンの少なくとも90%~95%、および特に好ましくは少なくとも一つのタキサンの少なくとも95%~99%が、10μmから70μmの結晶サイズを有する微結晶の形態で存在する。
【0199】
5μmから50μmの範囲の粒径を有するタキサンの微結晶は、医療機器の被覆用の安定な懸濁物を提供するのに適していることを示すことができた。したがって、タキサンの微結晶の少なくとも70%は、5μmから50μmの範囲の結晶サイズで存在すると好ましい。したがって、タキサンの少なくとも70%、好ましくはタキサンの少なくとも70%~80%、更に好ましくはタキサンの少なくとも80%~90%は、5μmから50μmの範囲の粒径を有する微結晶の形態で存在する。少なくとも一つタキサンの少なくとも70%、好ましくは少なくとも一つのタキサンの少なくとも70%~80%、更に好まし
くは少なくとも一つのタキサンの少なくとも80%~90%、更に好ましくは少なくとも一つのタキサンの少なくとも90%~95%、および特に好ましくは、少なくとも一つのタキサンの少なくとも95%~99%は、5μmから35μmの粒径を有する微結晶の形態で存在すると更に好ましい。
【0200】
特に好ましい実施形態において、タキサンの微結晶は、20μmから60μmの範囲の結晶サイズで存在する。好ましくは、したがって、少なくとも一つタキサンの少なくとも70%、好ましくは少なくとも一つのタキサンの少なくとも70%~80%、更に好ましくは少なくとも一つのタキサンの少なくとも80%~90%、更に好ましくは少なくとも一つのタキサンの少なくとも90%~95%、および特に好ましくは、少なくとも一つのタキサンの少なくとも95%~99%は、20μmから60μmの範囲の結晶サイズを有する微結晶の形態で存在する。
【0201】
好ましくは、タキサンは、少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも92.5重量%、より好ましくは少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも97.5重量%、および最も好ましくは少なくとも99重量%の結晶化度を有する。
【0202】
少なくとも一つのタキサンの微結晶は、好ましくは、パクリタキセル、ドセタキセル、またはカバジタキセルの微結晶である。
本明細書において好ましくは、微結晶パクリタキセル、微結晶ドセタキセル、および微結晶カバジタキセルである。本明細書において特に好ましくは、微結晶パクリタキセルである。
【0203】
柱状癖から針状癖を有する結晶は、結晶の長さが当該直径よりも大幅に大きい、一次元の細長い形状である。
好ましい実施形態において、少なくとも一つのタキサンはパクリタキセルである。パクリタキセルは針状で結晶化する。したがって、パクリタキセルの微結晶の少なくとも90%、より好ましくは少なくとも92.5%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97.5%、および最も好ましくは少なくとも99%は、針状であると好ましい。したがって、パクリタキセルの微結晶の少なくとも90%、より好ましくは少なくとも92.5%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97.5%、および最も好ましくは少なくとも99%は針状であると好ましい。したがって、パクリタキセルの少なくとも90%、より好ましくは少なくとも92.5%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97.5%、および最も好ましくは少なくとも99%は、針状微結晶の形態であると好ましい。
【0204】
本明細書において使用される用語「溶媒」は、常温(20℃)、および常圧(101hPa,1バール,1atm)で凝集体の液体状態で存在し、気体、液体、または固体を、溶解または希釈することができ、溶解した物質と溶媒との間で化学反応が起こらない物質を指す。例えば、水および液体有機物質などの液体は、他の物質を溶かすための溶媒として使用される。
【0205】
本明細書において使用される用語「非溶媒」は、微結晶タキサンを溶解できない、または溶解しない溶媒、すなわち、微結晶タキサンが実質的に不溶性であるが、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群、から選択されるトリ-O-アシルグリセロール、または前記トリ-O-アシルグリセロールの混合物が可溶性である、溶媒を指す。
【0206】
非溶媒中の微結晶タキサンの溶解度は、最大で1mg/mLであるべきである。微結晶
タキサンの溶解度が最大で1mg/mLである溶媒の例は、水および例えば、飽和脂肪族炭化水素などのいくつかの非極性有機溶媒である。
【0207】
トリ-O-アシルグリセロール、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロール、または前記トリ-O-アシルグリセロールの混合物が可溶である溶媒の例は、限定されないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエンなどの非極性有機溶媒であるが、例えば、ジエチルエーテル、酢酸エチル、アセトン、イソプロパノール、およびエタノールなどの極性有機溶媒も含む。
【0208】
トリ-O-アシルグリセロールは、非極性、すなわち親油性であり、例えば、水またはグリセロールなどの極性の高い溶媒に溶け難い、または実質的に不溶性である。したがって、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択されるトリ-O-アシルグリセロール、または前記トリ-O-アシルグリセロールの混合物は、例えば、水またはグリセロールなどの極性の高い溶媒において溶解した形態で存在しないので、例えば、水またはグリセロールなどの極性の高い溶媒のみを溶媒として含む懸濁液物は、本発明に係らない。
【0209】
したがって、本明細書において使用される用語「非溶媒」は、非極性有機溶媒、特に飽和脂肪族炭化水素を指す。したがって、「非溶媒」は「非極性有機非溶媒」とも呼ばれる。したがって、本明細書において「非溶媒」と呼ばれる非極性有機溶媒は、常温(20℃)および常圧(101hPa,1バール,1atm)で液体である飽和脂肪族炭化水素、すなわち、一般分子式CnH2n+2で、n=5から16を有する非分岐(直鎖)飽和炭化水素、一般分子式CnH2n+2で、n=4から16を有する分岐飽和炭化水素、または一般分子式CnH2nで、n=5から16を有する環状飽和炭化水素、を含む。非溶媒の例は、非分岐C5~16アルカン、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、石油エーテルなど、分岐C5~16アルカン(イソ-アルカン)、例えば、イソペンタン、イソオクタン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,2-ジメチルブタン、2,3-ジメチルブタン、2,2-ジメチルペンタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、2,3-ジメチルペンタン、2,4-ジメチルペンタン、3,3-ジメチルペンタン、3-エチルペンタン、2,2,4-トリメチルペンタン、2,2,4-トリメチルブタン、2-メチルオクタン、2-メチルヘプタン、3-メチルヘプタン、4-メチルヘプタン、テトラエチルメタンなど、C5~16-シクロアルカン、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、tert-ブチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、2,3-ジメチルシクロブタン、1,2-ジメチルシクロブタン、デカリン、ピナン ヘキシルシクロヘキサン、ヘプチルシクロペンタン、14-ジメチルシクロヘキサン、1,1-ジメチルシクロヘキサン、スピロペンタン、スピロヘキサン、スピロヘプタンなど、を含むが、これらに限定されない。当然ながら、非溶媒の混合物も使用することができる。
【0210】
本発明に適した非溶媒は、常温(20℃)、および常圧(101hPa;1バール、1atm)で液体状態である。好ましい非溶媒は、<20℃、より好ましくは<15℃、更により好ましくは<10℃の融点を有する。好ましい非溶媒は、<200℃、更に好ましくは<150℃、更により好ましくは<100℃の沸点も示す。好ましい非溶媒は、>25℃、更に好ましくは>30℃、更により好ましくは>40℃の沸点も示す。したがって、好ましい非溶媒は、25℃から200℃の間、更に好ましくは30℃から150℃の間、更により好ましくは40℃から100℃の間の沸点を有する。ここで、融点および沸点の表示は、常圧(101hPa;1バール,1atm)を指す。
【0211】
好ましい非溶媒は更に、常温(20℃)で<600hPa、より好ましくは<300hPa、更により好ましくは<200hPaの蒸気圧を有する。好ましい非溶媒は更に、20℃で>1hPa、より好ましくは>10hPa、更により好ましくは>30hPaの蒸気圧を示す。したがって、好ましい非溶媒は、常温(20℃)で1hPaから600hPaの間、より好ましくは10hPaから300hPaの間、さらにより好ましくは30hPaから200hPaの間の蒸気圧を示す。
【0212】
好ましい非溶媒は、永久双極子モーメントを有さない、すなわち、0.0から最大0.1D(0.0~0.3・10-30Cm)の双極子モーメントを有する。
好ましい非溶媒は、常温(20℃)で誘電率εr≦2.5、より好ましくは≦2.2、更により好ましくは≦2.0を示す。好ましい非溶媒は、n-オクタノール-水分配係数logKOW>2.0、より好ましくは≧2.5、更により好ましくは≧3.0以上を示す。したがって、好ましい非溶媒は、常温(20℃)で誘電率εr≦2.5およびlogKOW>2.0、より好ましくは誘電率εr≦2.2およびlogKOW≧2.5、さらにより好ましくは、誘電率εr≦2.0およびlogKOW≧3.0を有するものである。
【0213】
好ましい非溶媒は更に、常温(20℃)で密度<0.95g/mL、より好ましくは<0.9g/mL、更により好ましくは<0.8g/mLを有する。好ましい非溶媒は更に、常温(20℃)で粘度<2.0mPa s、より好ましくは<1.5mPa s、更により好ましくは<1.0mPa sを有する。
【0214】
したがって、本明細書において好ましくは、常温(20℃)および常圧(101hPa;1バール,1atm)で凝集体の液体状態であり、および融点<20℃、より好ましくは<15℃、更により好ましくは<10℃、沸点<200℃、より好ましくは<150℃、更により好ましくは<100℃、それぞれ、沸点>25℃、より好ましくは>30℃、さらにより好ましくは>40℃、20℃での蒸気圧<600hPa、より好ましくは<300hPa、更により好ましくは<200hPa、それぞれ、20℃での蒸気圧>1hPa、より好ましくは>10hPa、更により好ましくは>30hPa、密度<0.95g/mL、より好ましくは<0.9g/mL、更により好ましくは<0.8g/mL、双極子モーメント0.0~0.1D(0.0~0.3×10-30Cm)、20℃での粘度<2.0mPa s、更により好ましくは<1.5mPa s、更により好ましくは<1.0mPa s、を有し、および特に20℃で誘電率εrは≦2.5、より好ましくは≦2.2、更により好ましくは≦2.0、n-オクタノール-水分配係数logKOW>2.0、より好ましくは≧2.5、更により好ましくは≧3.0、を有する。
【0215】
本明細書において適した非溶媒の誘電率およびlogKOWの配向値(orientation values)(与えられた値は四捨五入された値)の概要を表1に示す。いくつかの特定の非溶媒の他のパラメーターの概要を表2に示す(与えられた値は四捨五入さ
れた値である)。
【0216】
【0217】
【0218】
【0219】
融点<15℃、20℃での誘電率εr≦2.5、logKOW≧3.0、沸点<200℃、沸点>30℃、20℃での蒸気圧1hPaから600hPaを有する好ましい非溶媒は、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、石油エーテル、イソオクタン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,2-ジメチルブタン、2,3-ジメチルブタン、2,2-ジメチルペンタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、2,3-ジメチルペンタン、2,4-ジメチルペンタン、3,3-ジメチルペンタン、3-エチルペンタン、2,2,4-トリメチルペンタン、2,2,4-トリメチルブタン、2-メチルオクタン、2-メチルヘプタン、3-メチルヘプタン、4-メチルヘプタン、テトラエチルメタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、tert-ブチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、2,3-ジメチルシクロブタン、1,2-ジメチルシクロブタン、デカリン、ピナン、を含むが、これらに限定されない。ここで与えられた融点および沸点は常圧(101hPa;1バール,1atm)を指す。
【0220】
本明細書において好ましい非溶媒は、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナンおよびデカンを含む。
<10℃の融点、≦2.0の20℃での誘電率εr、≧3.0のlogKOW、<150℃の沸点、>30℃の沸点、20℃で10hPaから600hPaの間の蒸気圧を有する更に好ましい非溶媒は、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、石油エーテル、イソオクタン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,2-ジメチルブタン、2,3-ジメチルブタン、2,2ジメチルペンタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、2,3-ジメチルペンタン、2,4-ジメチルペンタン、3,3-ジメチルペンタン、3-エチルペンタン、2,2,4-トリメチルペンタン、2,2,4-トリメチルブタン、2-メチルオクタン、2-メチルヘプタン、3-メチルヘプタン、4-メチルヘプタン、テトラエチルメタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、2,3-ジメチルシクロブタン、1,2-ジメチルシクロブタン、を含むが、これらに限定されない。ここで与えられた融点および沸点は常圧(101hPa;1バール,1atm)を指す。
【0221】
<10℃の融点、≦2.0の20℃での誘電率εr、≧3.0のlogKOW、<100℃の沸点、>40℃の沸点、20℃で30hPaから300hPaの間の蒸気圧を有する更に好ましい非溶媒は、ヘキサン、ヘプタン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,2-ジメチルペンタン、2-チルヘキサン、3-メチルヘキサン、2,3-ジメチルペンタン、2,4-ジメチルペンタン、3,3-ジメチルペンタン、3-エチルペンタン、2,2,4-トリメチルペンタン、2,2,4-トリメチルブタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、2,3-ジメチルシクロブタン、1,2-ジメチルシクロブタン、を含むが、これらに限定されない。ここで与えられた融点および沸点は常圧(101hPa;1バール,1atm)を指す。
【0222】
本明細書において、特に好ましい非溶媒は、ヘキサン、シクロヘキサン、およびヘプタンである。
本明細書において使用される用語「非極性有機溶媒」は、常温(20℃)および常圧(101hPa;1バール,1atm)で液体である、すなわち、<20℃の融点を少なくとも有する炭素系溶媒を指す。非極性有機溶媒の例は、四塩化炭素、純粋な炭化水素溶媒、例えば、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナンまたはデカンなど、芳香族溶媒、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレンなど、を含むが、これらに限定されない。
【0223】
本明細書において定義される非極性有機溶媒は、20℃で≦10、より好ましくは≦5.0、より好ましくは≦3.0、更により好ましくは≦2.0の誘電率εrを有し、および同時にn-オクタノール-水分配係数logKOW>2.0、より好ましくは≧2.5、更により好ましくは≧3.0、を有する。したがって、20℃で≦10の誘電率εr、およびlogKOW≦2.0、特に≦1.5を有する溶媒は、本明細書において非極性有機溶媒を構成しない。例えば、1,4-ジオキサンは、20℃で約2.3の誘電率εrを有するが、約-0.4のlogKOWを有するので、本明細書において非極性有機溶媒を表さない。
【0224】
好ましくは、常温(20℃)で≦10の誘電率εr、および>2.0のlogKOW、より好ましくは≦5の誘電率εr、および≧2.5のlogKOW、更により好ましくは≦3.0の誘電率εr、および≧3.0のlogKOWを有する非極性有機溶媒である。特に、常温(20℃)で≦2.0の誘電率εr、および>3.0のlogKOWを有する非極性有機溶媒が好ましい。
【0225】
本発明に適している非極性有機溶媒は、常温(20℃)および常圧(101hPa;1バール、1atm)で凝集体の液体状態で存在する。好ましい非極性有機溶媒は、<20℃、より好ましくは<15℃、更により好ましくは<10℃の融点を有する。好ましい非極性有機溶媒は更に、<200℃、更に好ましくは<150℃、更により好ましくは<100℃の沸点を示す。好ましい非極性有機溶媒は更に、>25℃、より好ましくは>30℃、更により好ましくは>40℃の沸点を示す。したがって、好ましい非極性有機溶媒は、25℃から200℃の間、更に好ましくは30℃から150℃の間、更により好ましくは40℃から100℃の間の沸点を有する。ここでの融点および沸点の表示は、常圧(101hPa;1バール,1atm)を指す。
【0226】
好ましい非極性有機溶媒は更に、常温(20℃)で<600hPa、より好ましくは<300hPa、更により好ましくは<200hPaの蒸気圧を示す。好ましい非極性有機溶媒は更に、20℃で>1hPa、より好ましくは>10hPa、更により好ましくは>30hPaの蒸気圧を示す。したがって、好ましい非極性有機溶媒は、常温(20℃)で1hPaから600hPaの間、より好ましくは10hPaから300hPaの間、更に
より好ましくは30hPaから200hPaの間の蒸気圧を示す。
【0227】
常温(20℃)で≦10の誘電率εr、および>2のlogKOWを有する非極性有機溶媒の例は、非分岐C5~16-アルカン、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、石油エーテルなど、分岐C5~16-アルカン、例えば、イソペンタン、イソオクタン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,2-ジメチルブタン、2,3-ジメチルブタン、2,2-ジメチルペンタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、2,3-ジメチルペンタン、2,4-ジメチルペンタン、3,3-ジメチルペンタン、3-エチルペンタン、2,2,4-トリメチルペンタン、2,2,4-トリメチルブタン、2-メチルオクタン、2-メチルヘプタン、3-メチルヘプタン、4-メチルヘプタン、テトラエチルメタン、またはC5~16-シクロアルカン、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、tert-ブチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、2,3-ジメチルシクロブタン、1,2-ジメチルシクロブタン、デカリン、ピナン 1,4-ジメチルシクロヘキサン、1,1-ジメチルシクロヘキサン、スピロペンタン、スピロヘキサン、スピロヘプタン、リグロインなど、ハロアルカン、例えば、四塩化炭素、テトラデカフルオロヘキサンなど、芳香族炭化水素、例えば、ベンゼンなど、飽和脂肪族置換基を有する芳香族炭化水素、例えば、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、メシチレン、1-フェニルブタン、2-メチル-1-フェニルプロパン、2-フェンブタン、クメン(cumen)、イソ-ブチルベンゼン、プロピルベンゼン、ヘキシルベンゼン、イソ-ブチルベンゼンなど、ハロゲン化芳香族化合物、例えば、クロロベンゼン、フルオロベンゼン、p-ジクロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、ブロモベンゼン、塩化ベンジル、臭化ベンジルなど、または他の置換芳香族化合物、例えば、アニソールおよびエトキシベンゼンなど、を含むが、これらに限定されない。
【0228】
したがって、非極性有機溶媒は、本明細書において好ましくは、常温(20℃)および常圧(101hPa;1バール,1atm)で凝集体の液体状態であり、および<20℃、より好ましくは<15℃、更により好ましくは<10℃の融点、<200℃、より好ましくは<150℃、更により好ましくは<100℃、それぞれの沸点、>25℃、より好ましくは>30℃、更により好ましくは>40℃の沸点、20℃で<600hPa、より好ましくは<300hPa、更により好ましくは<200hPa、それぞれの蒸気圧、20℃で>1hPa、より好ましくは>10hPa、更により好ましくは>30hPaの蒸気圧、0.0~0.5D(0.0~1.7 10-30Cm)、好ましくは0.0~0.1D(0.0~0.3 10-30Cm)、の双極子モーメント、およびより好ましくは20℃で≦10、より好ましくは≦5.0、更により好ましくは≦3.0、更により好ましくは≦2.0の誘電率εr、およびlogKOW>2.0、より好ましくは≧2.5、さらにより好ましくは≧3.0のn-オクタノール-水分配係数logKOW、を有する。
【0229】
本明細書において使用される用語「非極性有機溶媒」は、好ましくは、炭素と水素の間の電気陰性度の小さな差により非極性であり、永久双極子モーメントを有さない非プロトン性非極性溶媒を指し、したがって、ハロゲン化芳香族化合物、例えば、クロロベンゼン、フルオロベンゼン、p-ジクロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、塩化ベンジル、臭化ベンジル、または更に置換された芳香族合物、例えば、アニソール、エトキシベンゼンなどは、あまり好ましくなく、それらは、少なくとも1.0D(3.3×10-30Cm)の双極子モーメント、または20℃で≧3の誘電率を有する。
【0230】
したがって、好ましい非極性有機溶媒は、0.0~0.5D(0.0~1.7×10-30Cm)の双極子モーメントを有し、更に好ましい非極性有機溶媒は、永久双極子モー
メントを有さない、すなわち、0.0~0.1D(0.0~0.3×10-30Cm)の双極子モーメントを有する。
【0231】
非プロトン性非極性溶媒は、非常に親油性であり、および非常に疎水性であり、したがって、本明細書において非極性有機溶媒として好ましい。本明細書において好ましい非プロトン性非極性溶媒の代表例は、アルカン、ベンゼン、並びに脂肪族置換基および芳香族置換基を有する芳香族化合物、過ハロゲン化炭化水素、例えば、四塩化炭素、ヘキサフルオロベンゼンなどである。
【0232】
非プロトン性非極性溶媒の他の代表例は、アルケン、アルキン、不飽和脂肪族置換基を有する芳香族化合物、および完全に対称な構造を有する他の分子、例えば、テトラメチルシランまたは二硫化炭素など、である。非プロトン性非極性溶媒、例えば、アルケン、アルキン、不飽和脂肪族置換基を有する芳香族化合物、および完全に対称な構造の他の分子、例えば、テトラメチルシランまたは二硫化炭素などを、本明細書において、非極性有機溶媒として使用することができるが、あまり好ましくない。当該非プロトン性非極性溶媒が使用される場合、それらと、および微結晶タキサンおよび少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールとの間で化学反応が起こらないことを確実にしなければならない。当業者は、特定の溶媒と微結晶タキサンまたはトリ-O-アシルグリセロールとの間で化学反応が起こることができるかどうか、および特定の溶媒が結晶懸濁物を調製するために適しているかどうかを容易に評価することができる。したがって、適切な溶媒の選択は、当業者の定型的業務の一部である。
【0233】
したがって、本明細書における好ましい非極性有機溶媒は、非分岐、分岐および環状の飽和脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、および飽和脂肪族置換基を有する芳香族炭化水素、および過ハロゲン化炭化水素である。
【0234】
したがって、好ましい非極性有機溶媒は、常温(20℃)常圧(101hPa;1bar、1atm)で、≦3、より好ましくは≦2.5、より好ましくは≦2.2、さらにより好ましくは≦2.0の誘電率εr、および>2.0、より好ましくは≧2.5、更により好ましくは≧3.0のn-オクタノール-水分配係数logKOWを示す。
【0235】
したがって、本明細書において特に好ましくは、非極性有機溶媒であり、非極性有機溶媒は、常温(20℃)および常圧(101hPa;1バール,1atm)で凝集体の液体状態であり、および<20℃、より好ましくは<15℃、更により好ましくは<10℃の融点、<200℃、より好ましくは<150℃、更により好ましくは<100℃、それぞれの沸点、>25℃、より好ましくは>30℃、更により好ましくは>40℃の沸点、20℃で<600hPa、より好ましくは<300hPa、更により好ましくは<200hPa、それぞれの蒸気圧、20℃で>1hPa、より好ましくは>10hPa、更により好ましくは>30hPaの蒸気圧、0.0~0.5D(0.0~1.7×10-30Cm)、好ましくは0.0~0.1D(0.0~0.3×10-30Cm)、の双極子モーメント、および20℃で≦3、より好ましくは≦2.5、更により好ましくは≦2.2、更により好ましくは≦2.0の誘電率εr、および>2.0、より好ましくは≧2.5、さらにより好ましくは≧3.0のn-オクタノール-水分配係数logKOW、を有する。
【0236】
非極性溶媒の誘電率およびlogKOWの配向値(orientation values)(与えられた値は四捨五入された値)の概要を表3に示す。
【0237】
【0238】
表2に既に示されたものに加えて、非極性有機溶媒のいくつかの特定の例のいくつかの物理的パラメーターの概要を、以下の表4に示す(与えられた値は、四捨五入された値である)。
【0239】
【0240】
【0241】
<20℃の融点、20℃で≦3の誘電率εr、logKOW>2.0、<200℃の沸点、>30℃の沸点、20℃で1hPaから600hPaの間の蒸気圧を有する好ましい非極性有機溶媒は、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、石油エーテル、イソオクタン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,2-ジメチルブタン、2,3-ジメチルブタン、2,2-ジメチルペンタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、2,3-ジメチルペンタン、2,4-ジメチルペンタン、3,3-ジメチルペンタン、3-エチルペンタン、2,2,4-トリメチルペンタン、2,2,4-トリメチルブタン、2-メチルオクタン、2-メチルヘプタン、3-メチルヘプタン、4-メチルヘプタン、テトラエチルメタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、tert-ブチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、2,3-ジメチルシクロブタン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、1,2-ジメチルシクロブタン、デカリン、ピナン、四塩化炭素、テトラデカフルオロヘキサン、ヘキサフルオロベンゼン、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、1フェニルブタン、2-メチル-1-フェニルプロパン、2-フェンブタン、クメン(cumen)、イソ-ブチルベンゼン、プロピルベンゼンを含むが、これらに限定されない。当然ながら、非極性有機溶媒の混合物も使用することができる。
【0242】
<10℃の融点、20℃で≦3の誘電率εr、logKOW>2.0、<150℃の沸点、>30℃の沸点、20℃で10hPaから600hPaの間の蒸気圧を有する更に好ましい非極性有機溶媒は、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、石油エーテル、イソオクタン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,2-ジメチルブタン、2,3-ジメチルブタン、2,2-ジメチルペンタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、2,3-ジメチルペンタン、2,4-ジメチルペンタン、3,3-ジメチルペンタン、3-エチルペンタン、2,2,4-トリメチルペンタン、2,2,4-トリメチルブタン、2-メチルオクタン、2-メチルヘプタン、3-メチルヘプタン、4-メチルヘプタン、テトラエチルメタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、2,3-ジメチルシクロブタン、1,2-ジメチルシクロブタン、四塩化炭素、テトラデカフルオロヘキサン、ヘキサフルオロベンゼン、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、を含むが、これらに限定されない。当然ながら、非極性有機溶媒の混合物も使用することができる。
【0243】
<10℃の融点、20℃で≦2.5の誘電率εr、logKOW>2.0、<100℃の沸点、>40℃の沸点、20℃で10hPaから300hPaの間の蒸気圧を有する更に好ましい非極性有機溶媒は、ヘキサン、ヘプタン、2-メチルペンタン、3-メチルペ
ンタン、2,2-ジメチルペンタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、2,3-ジメチルペンタン、2,4-ジメチルペンタン、3,3-ジメチルペンタン、3-エチルペンタン、2,2,4-トリメチルペンタン、2,2,4-トリメチルブタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、2,3-ジメチルシクロブタン、1,2-ジメチルシクロブタン、四塩化炭素、テトラデカフルオロヘキサン、ヘキサフルオロベンゼン、ベンゼン、を含むが、これらに限定されない。当然ながら、非極性有機溶媒の混合物も使用することができる。
【0244】
<10℃の融点、20℃で≦2.5の誘電率εr、logKOW≧3.0、<100℃の沸点、>40℃の沸点、20℃で10hPaから300hPaの間の蒸気圧を有する更に好ましい非極性有機溶媒は、ヘキサン、ヘプタン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,2-ジメチルペンタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、2,3-ジメチルペンタン、2,4-ジメチルペンタン、3,3-ジメチルペンタン、3-エチルペンタン、2,2,4-トリメチルペンタン、2,2,4-トリメチルブタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、2,3-ジメチルシクロブタン、1,2-ジメチルシクロブタン、四塩化炭素、を含むが、これらに限定されない。当然ながら、非極性有機溶媒の混合物も使用することができる。
【0245】
好ましい非極性有機溶媒は、無水、すなわち乾燥した非極性有機溶媒でもある。
好ましい非極性有機溶媒はさらに、常温(20℃)で<0.95g/mL、より好ましくは<0.9g/mL、さらにより好ましくは<0.8g/mLの密度を有する。したがって、特に好ましい非極性有機溶媒は、本明細書において定義される非溶媒を表す。したがって、本明細書において特に好ましい非極性有機溶媒は、ヘキサン、シクロヘキサン、およびヘプタンである。
【0246】
油、例えば、ココナッツ油、パーム油、ピーナッツ油、綿実油、キャノーラ油、魚油、大豆油、亜麻仁油、オリーブ油などは、一般に非極性であり、および20℃で約2~5の誘電率εrを有する。油、例えば、ヒマシ油、ココナッツ油、パーム油、ピーナッツ油、綿実油、キャノーラ油、魚油、大豆油、亜麻仁油、オリーブ油などは、非極性有機溶媒として本明細書においてあまり好ましくない。これらの油は粘性があり、および20℃で約30~160mPa sの粘度を有する。本明細書において好ましい非極性有機溶媒は、常温(20℃)で<2.0mPa s、より好ましくは<1.5mPa s、さらにより好ましくは<1.0mPa sの粘度を有する。
【0247】
本明細書において使用される用語「極性有機溶媒」は、常温(20℃)および常圧(101hPa;1バール,1atm)で液体であり、すなわち、<20℃の融点を少なくとも有する炭素系溶媒を指す。一般的な極性有機溶媒の例は、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、エーテル、例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル(MTDC)、ケトン、例えば、アセトン、ブタノン、またはペンタノンなど、アルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、カルボン酸、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸など、アミド、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)またはジメチルアセトアミドなど、ハロゲン化溶媒、例えば、クロロホルム、塩化メチレンなど、およびカルボン酸エステル、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、などを含むが、これらに限定されない。
【0248】
本明細書において定義される極性有機溶媒は、≦+2.0、好ましくは-1.0~+2.0、およびより好ましくは-0.5~+1.5、さらに好ましくは-0.4~+1.4、さらにより好ましくは、-0.4~+0.9のn-オクタノール-水分配係数logKOWを好ましくは示す。さらに好ましい極性有機溶媒は、20℃で>3、より好ましくは≧5.0の誘電率εrを示す。好ましい極性有機溶媒は更に、20℃で<50、より好ま
しくは<40、さらにより好ましくは<35、最も好ましくは<30の誘電率εrを示す。
【0249】
したがって、本明細書において好ましい有機溶媒は、≦+2.0のn-オクタノール-水分配係数logKOW、および20℃で>3の誘電率εr、更により好ましくは-1.0~+2.0のlogKOW、および20℃で≧5.0および<40の誘電率εr、より好ましくは、-0.5~+1.5のlogKOW、および20℃で≧5.0および<30の誘電率εr、および最も好ましくは、-0.4~+1.4のlogKOW、および20℃で≧5.0および<30の誘電率εrを有する。したがって、好ましい有機溶媒は、-1.0~+2.0のn-オクタノール-水分配係数logKOW、および20℃で>3.0~40の誘電率εr、さらにより好ましくは、-1.0~+2.0のlogKOW、および20℃で5.0~40の誘電率εr、更により好ましくは、-1.0~+2.0のlogKOW、および20℃で5.0~35の誘電率εr、および最も好ましくは、-0.5~+1.5のlogKOW、および20℃で5.0~30の誘電率εrを示す。したがって、20℃で>3の誘電率εr、およびlogKOW>2.0を有する溶媒は、本明細書において極性有機溶媒ではない。例えば、クロロベンゼンは、20℃で約5.6の誘電率εrを有する約2.9のlogKOWを有し、従って、本明細書において極性有機溶媒を構成しない。
【0250】
本発明に適している極性有機溶媒は、常温(20℃)、および常圧(101hPa;1バール、1atm)で凝集体の液体状態である。好ましい極性有機溶媒は、<20℃、より好ましくは<15℃、更により好ましくは<10℃の融点を有する。好ましい極性有機溶媒は、<200℃、更に好ましくは<150℃、更により好ましくは<100℃の沸点も示す。好ましい極性有機溶媒は、>25℃、より好ましくは>30℃、更により好ましくは>40℃の沸点も示す。したがって、好ましい極性有機溶媒は、25℃から200℃の間、更に好ましくは30℃から150℃の間、更により好ましくは40℃から100℃の間の沸点を示す。ここで、融点および沸点の表示は、常圧(101hPa;1バール,1atm)を指す。
【0251】
好ましい極性有機溶媒は更に、常温(20℃)で<600hPa、より好ましくは<300hPa、更により好ましくは<200hPaを示す。好ましい極性有機溶媒は更に、20℃で>1hPa、より好ましくは>10hPa、更により好ましくは>30hPaを示す。したがって、好ましい極性有機溶媒は、常温(20℃)で1hPaから600hPaの間、より好ましくは10hPaから300hPaの間、更により好ましくは30hPaから200hPaの間の蒸気圧を示す。
【0252】
好ましい極性有機溶媒は、≧1.0D(3.3×10-30Cm)の双極子モーメントを示し、更に好ましい極性有機は、≦3.0D(9.9×10-30Cm)、更により好ましくは、≦2.0D(6.6×10-30Cm)を示す。
【0253】
本明細書において使用される用語「極性有機溶媒」は、非プロトン性極性溶媒およびプロトン性溶媒を指す。非プロトン性極性溶媒において、分子は非対称に置換されるので、分子は双極子モーメントを有する。非プロトン性極性溶媒の例は、エーテル、エステル、酸無水物、ケトン、例えばアセトンなど、三級アミン、ピリジン、フラン、チオフェン、不斉ハロゲン化炭化水素、ニトロメタン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、炭酸ジメチル、テトラメチル尿素、テトラエチル尿素、ジメチルプロピレン尿素(DMPU)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMEU)、を含む。最も重要なプロトン性溶媒は水である。他のプロトン性溶媒の例は、アルコール、アルデヒドおよびカルボン酸である。したがって、プロトン性溶媒は、水、メタノール、エタノールおよび他のアルコール、第一級および第二級アミン、カルボン酸、例えば
、ギ酸および酢酸など、ホルムアミドである。
【0254】
非プロトン性極性溶媒は、本明細書において定義される非極性有機溶媒、特に本明細書において定義される非溶媒と任意の混合比で一般的に混和性であるので、好ましい極性有機溶媒は、特に、非プロトン性極性溶媒を含む。
【0255】
いくつかの極性有機溶媒のための誘電率およびlogKOWの配向値(orientation values)(与えられた値は四捨五入された値である)の概要を表5に示す。
【0256】
【0257】
いくつかの極性有機溶媒のいくつかの物理的パラメーターの概要(与えられた値は、四捨五入された値である)を、以下の表6に示す。
【0258】
【0259】
【0260】
好ましい極性有機溶媒は、テトラヒドロフラン、アセトン、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、クロロホルム、塩化メチレン(ジクロロメタン)、および酢酸エチル(酢酸エチル)である。
【0261】
さらに好ましい極性有機溶媒は、テトラヒドロフラン、アセトン、エタノール、n-プロパノール、イソ-プロパノール、および酢酸エチルである。
最も好ましくは、生理的にほとんど無害な溶媒であるエタノール、イソ-プロパノール、および酢酸エチルである。酢酸エチルは、特に好ましい。
【0262】
当然ながら、極性有機溶媒の混合物も使用することができる。
水は非常に極性の有機溶媒であると考えられるが、水を含む被覆は乾燥することが困難であるので避けるべきである。さらに、本発明に係るトリ-O-アシルグリセロールは、例えば水などの非常に極性の溶媒にほとんど溶けない、または実質的に不溶である。トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択されるトリ-O-アシルグリセロールは水に溶解した形態で存在することができないので、溶媒として水のみを含む懸濁物は、本発明に係らない。しかしながら、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解した形態で存在する、水混和性極性有機溶媒の含水溶媒混合物も、例えば、水/メタノール(25:75)、水/イソプロパノール(35:65)、または水/アセトニトリル(15:85)などで提供することができる。それにも関わらず、無水溶媒混合物は、本明細書において好ましい。
【0263】
したがって、特に好ましくは、医療機器、好ましくはカテーテル、ステント、およびカニューレを被覆するための無水懸濁物であり、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、および微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および溶媒または溶媒混合物、を含み、ここで、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールは、少なくとも一つの溶媒または溶媒混合物に溶解され、およびここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、溶解した少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールを含む溶媒または溶媒混合物に溶解しない。
【0264】
本明細書において使用される「無水懸濁物」は、懸濁液の総体積に基づいて20体積%以下、好ましくは20体積%未満、より好ましくは10体積%未満、より好ましくは5体積%未満、より好ましくは3体積%未満、より好ましく2体積%未満、より好ましくは1.5体積%未満、更により好ましくは1体積%未満、更により好ましく、0.5体積%未満、および最も好ましくは0.1体積%未満の水を含む。
【0265】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の懸濁物は、溶媒混合物を含み、溶媒混合物中に、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールは溶解し、および少なくとも一つのタキサンの微結晶は溶解しない。本明細書において好ましい溶媒混合物は、少なくとも一つの非極性有機溶媒の混合物、好ましくは少なくとも一つの非溶媒および少なくとも一つの極性有機溶媒の混合物である。非極性有機溶媒、または非溶媒および極性有機溶媒は、均質な混合物を得るために、互いに混和できなければならず、および好ましくは、任意の比率で互いに混和できなければならない。
【0266】
本明細書において定義される非極性有機溶媒は、一般に、水および短鎖アルコールなどの他の高極性有機溶媒、例えば、メタノールなどと任意の比率で混和する。水と混和しない非極性有機溶媒は、ベンゼン、四塩化炭素、シクロヘキサン、ヘプタン、ヘキサン、イソオクタン、ペンタン、トルエン、およびキシレンを含むが、これらに限定されない。したがって、特に、本明細書において定義される非溶媒は、水と混和しない。したがって、少なくとも一つの非溶媒を含む溶媒混合物は、特に好ましくは、混合成分として水を含まない。さらに、いくつかの非極性有機溶媒、例えば、キシレン、シクロヘキサン、ヘプタン、ヘキサン、イソオクタン、およびペンタンなどは、非常に極性の有機溶媒、例えば、ジメチルスルホキシドおよびジメチルホルムアミドなどと任意の比率でも混和しない。さらに、本明細書において定義される非溶媒、例えば、シクロヘキサン、ヘプタン、ヘキサン、イソオクタンおよびペンタンなども、極性有機溶媒、例えば、アセトニトリルおよびメタノールなどと混和しない。
【0267】
したがって、本明細書において定義される少なくとも一つの非溶媒および少なくとも一つの極性有機溶媒の溶媒混合物は、特に好ましくは、-0.5~+1.5のlogKOWおよび20℃で<30誘電率εr、更に好ましくは-0.4~+1.4のlogKOWおよび20℃で<30誘電率εr、を有する極性有機溶媒を含む。
【0268】
いくつかの実施形態において、懸濁物中の非極性有機溶媒と極性有機溶媒との体積比は、25:75から75:25の間、好ましくは30:70から70:30の間、およびより好ましくは35:65から65:35の間である。
【0269】
好ましくは、懸濁物中の非極性有機溶媒と極性有機溶媒との体積比は、99:1から65:35の間、好ましくは95:5から70:30の間、およびより好ましくは80:20から65:35の間であり、より好ましくは90:10から80:15の間、および最も好ましくは85:15である。
【0270】
更に好ましくは、少なくとも50体積%の非極性有機溶媒、より好ましくは少なくとも55体積%の非極性有機溶媒、より好ましくは少なくとも60体積%の非極性有機溶媒、より好ましくは少なくとも65体積%の非極性有機溶媒、より好ましくは少なくとも70体積%の非極性有機溶媒、より好ましくは少なくとも75体積%の非極性有機溶媒、および最も好ましくは少なくとも80体積%の非極性有機溶媒を含む溶媒混合物である。
【0271】
さらに好ましくは、少なくとも50体積%の非溶媒、より好ましくは少なくとも55体積%の非溶媒、より好ましくは少なくとも60体積%の非溶媒、より好ましくは少なくとも65体積%の非溶媒、より好ましくは少なくとも70体積%の非溶媒、より好ましくは
少なくとも75体積%の非溶媒、および最も好ましくは少なくとも80体積%の非溶媒、を含む溶媒混合物である。
【0272】
したがって、好ましい実施形態において、溶媒混合物は、20℃で≦10の誘電率εr、および>2.0のn-オクタノール-水分配係数logKOWを有する、より好ましくは20℃で≦5.0の誘電率εr、および≧2.5のn-オクタノール-水分配係数logKOWを有する、より好ましくは、20℃で≦3.0の誘電率εr、および≧3.0のn-オクタノール-水分配係数logKOWを有する、および最も好ましくは、20℃で≦2.0の誘電率εrを有する、少なくとも一つの非極性有機溶媒を含む。
【0273】
更に好ましい実施形態において、溶媒混合物は、20℃で≦10の誘電率εr、および>2.0のn-オクタノール-水分配係数logKOWを有する、より好ましくは20℃で≦5.0の誘電率εr、および≧2.5のn-オクタノール-水分配係数logKOWを有する、より好ましくは、20℃で≦3.0の誘電率εr、および≧3.0のn-オクタノール-水分配係数logKOWを有する、および最も好ましくは、20℃で≦2.0の誘電率εrを有する、少なくとも50体積%、より好ましくは少なくとも55体積%、より好ましくは少なくとも60体積%、より好ましくは少なくとも65体積%、より好ましくは少なくとも70体積%、より好ましくは少なくとも75体積%、および最も好ましくは少なくとも80体積%の非極性有機溶媒を含む。
【0274】
極性有機溶媒および非極性有機溶媒の好ましい組み合わせは、例えば、エタノールおよびシクロヘキサン、または酢酸エチルおよびヘプタンである。
好ましくは、-1.0から+2.0のlogKOW、および20℃で3.0から40の誘電率εr、更により好ましくは-1.0から+2.0のlogKOW、および20℃で5.0から40の誘電率εr、更により好ましくは-1.0から+2.0のlogKOW、および20℃で5.0から35の誘電率εr、より好ましくは-0.5から+1.5のlogKOW、および20℃で5.0から30の誘電率εr、および最も好ましくは-0.4から+0.9のlogKOW、および20℃で5.0から30の誘電率εrを有する、少なくとも一つの極性有機溶媒と、並びに20℃で≦10の誘電率εrおよび>2.0のn-オクタノール-水分配係数logKOWを有する、より好ましくは、20℃で≦5.0の誘電率εrおよび≧2.5のn-オクタノール-水分配係数logKOWを有する、より好ましくは、20℃で≦3.0の誘電率εrおよび≧3.0のn-オクタノール-水分配係数logKOWを有する、および最も好ましくは20℃で≦2.0の誘電率εrを有する非極性有機溶媒との溶媒混合物である。
【0275】
好ましくは、テトラヒドロフラン、アセトン、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、クロロホルム、ジクロロメタン、酢酸エチル、好ましくはテトラヒドロフラン、アセトン、エタノール、n-プロパノール、、イソ-プロパノール、および酢酸エチル、更に好ましくは、エタノール、イソプロパノールおよび酢酸エチルを含む、またはからなる群から選択される少なくとも一つの極性有機溶媒と、並びに20℃で≦10の誘電率εrおよび>2.0のn-オクタノール-水分配係数logKOWを有する、より好ましくは、20℃で≦5.0の誘電率εrおよび≧2.5のn-オクタノール-水分配係数logKOWを有する、より好ましくは、20℃で≦3.0の誘電率εrおよび≧3.0のn-オクタノール-水分配係数logKOWを有する、および最も好ましくは20℃で≦2.0の誘電率εrを有する、非極性有機溶媒との溶媒混合物である。
【0276】
極性有機溶媒と非極性有機溶媒との特に好ましい組み合わせは、酢酸エチルと、並びに20℃で≦10の誘電率εrおよび>2.0のn-オクタノール-水分配係数logKOWを有する、より好ましくは、20℃で≦5.0の誘電率εrおよび≧2.5のn-オクタノール-水分配係数logKOWを有する、より好ましくは、20℃で≦3.0の誘電
率εrおよび≧3.0のn-オクタノール-水分配係数logKOWを有する、および最も好ましくは20℃で≦2.0の誘電率εrを有する、本明細書に定義される非極性有機溶媒との溶媒混合物である。
【0277】
極性有機溶媒と非極性有機溶媒の更により好ましい組み合わせは、酢酸エチルと、20℃で≦2.0の誘電率εrを有する本明細書において定義される非溶媒との溶媒混合物である。
【0278】
極性有機溶媒と非極性有機溶媒との好ましい組み合わせは、酢酸エチル、並びにペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、石油エーテル、イソオクタン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,2-ジメチルブタン、2,3-ジメチルブタン、2,2-ジメチルペンタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、2,3-ジメチルペンタン、2,4-ジメチルペンタン、3,3-ジメチルペンタン、3エチルペンタン、2,2,4-トリメチルペンタン、2,2,4-トリメチルブタン、2-メチルオクタン、2-メチルヘプタン、3-メチルヘプタン、4-メチルヘプタン、テトラエチルメタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、tert-ブチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、2,3ジメチルシクロブタン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、1,2-ジメチルシクロブタン、デカリン、ピナン、四塩化炭素、テトラデカフルオロヘキサン、ヘキサフルオロベンゼン、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、1-フェニルブタン、2-メチル-1-フェニルプロパン、2-フェンブタン、クメン、イソ-ブチルベンゼン、プロピルベンゼン、好ましくはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、石油エーテル、イソオクタン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,2-ジメチルブタン、2,3-ジメチルブタン、2,2-ジメチルペンタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、2,3-ジメチルペンタン、2,4-ジメチルペンタン、3,3-ジメチルペンタン、3-エチルペンタン、2,2,4-トリメチルペンタン、2,2,4-トリメチルブタン、2-メチルオクタン、2-メチルヘプタン、3-メチルヘプタン、4-メチルヘプタン、テトラエチルメタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、2,3-ジメチルシクロブタン、1,2-ジメチルシクロブタン、四塩化炭素、テトラデカフルオロヘキサン、ヘキサフルオロベンゼン、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、さらに好ましくはヘキサン、ヘプタン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,2-ジメチルペンタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、2,3-ジメチルペンタン、2,4-ジメチルペンタン、3,3-ジメチルペンタン、3-エチルペンタン、2,2,4-トリメチルペンタン、2,2,4-トリメチルブタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、2,3-ジメチルシクロブタン、1,2-ジメチルシクロブタン、四塩化炭素、テトラデカフルオロヘキサン、ヘキサフルオロベンゼン、ベンゼン、更に好ましくはヘキサン、ヘプタン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,2-ジメチルペンタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、2,3-ジメチルペンタン、2,4-ジメチルペンタン、3,3-ジメチルペンタン、3-エチルペンタン、2,2,4-トリメチルペンタン、2,2,4-トリメチルブタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、2,3-ジメチルシクロブタン、1,2-ジメチルシクロブタン、四塩化炭素、および最も好ましくはヘキサン、ヘプタン、およびシクロヘキサン、を含む、またはからなる群から選択される非極性有機溶媒、である。
【0279】
KOWは、n-オクタノール-水分配係数である。したがって、KOWは、n-オクタノールおよび水の二相系における物質の分配係数である。logKOWは、KOWの10を底とする対数である。logKOWは、英語圏においてlogPとも知られる。KOWは、物質の親油性と親水性との関係の尺度として機能する。物質がn-オクタノールなどの親油性溶媒により溶けやすい場合、値は1より大きくなり、物質が水により溶けやすい
場合、1より小さくなる。
【0280】
様々な溶媒におけるn-オクタノール-水分配係数logKOWは、当業者には周知であり、例えば、James Sangster「単純な有機化合物のオクタノール-水分配係数(Octanol-Watter Partition Coefficients of Simple Organic Compounds)」,J.Phys.Chem.Ref.Data1989,Vol.18,No.3,pp.1111-1227、を参照し、これは、当該全体が参照により本明細書に組み込まれる。極性有機溶媒は、本明細書において、-1.0から+2.0のlogKOW、および好ましくは-0.5から+1.5のlogKOWを有するものとして定義される。非溶媒または非極性有機溶媒は、本明細書において、logKOW≧2.8、好ましくはlogKOW≧3.3、または+2.8から+7.5、および好ましくは+3.3から+7.0のlogKOWを有するものを指す。
【0281】
n-オクタノール-水分配係数を決定するための測定方法も当業者に周知であり、例えば、James Sangster「単純な有機化合物のオクタノール-水分配係数(Octanol-Watter Partition Coefficients of Simple Organic Compounds)」,J.Phys.Chem.Ref.Data1989,Vol.18,No.3,pp.1111-1227、節「測定方法(Methods of Measuremen)」を参照する。logKOW値の実際の測定は、既知の濃度c0b
水を有する各溶媒を、正確に測定されたオクタノールの体積Vオクタノールでオーバーレイされた(overlaid)既知の体積で水溶液に導入し、および激しく混合する方法で実行されることができる。その後、相分離を待ち、オクタノール相を分離する。相混合中に更なる体積変化が起こらないことを確実にするために、使用されるオクタノールを、事前に水を用いて飽和状態にし、および使用される水を、事前にオクタノールを用いて飽和状態にする。logKOWは、親油性溶媒に対して正であり、および親水性溶媒に対して負である。
【0282】
【0283】
【0284】
極性有機溶媒のlogKOW値と非極性有機溶媒のlogKOW値との間には、少なくとも1.0、好ましくは少なくとも1.5、より好ましくは少なくとも2.0の差があるべきである。
【0285】
非極性有機溶媒の混合物のKOWを決定するには、個々の非極性有機溶媒の KOW値を、混合物の体積分率に従って加重し、加重されたKOW値から平均値を決定する。
【0286】
誘電率(比誘電率、式記号εr)は、溶媒の特定の特性を説明するために使用されることができる物理的な実体定数(physical substance constant)である。高い誘電率を有する溶媒は、イオン性化合物および他の極性化合物に対して良好な溶媒であり、低い誘電率を有する溶媒は、非極性化合物に対してより良い溶媒である。用語「誘電率」は、先行技術において、誘電率(permittivity)、誘電伝導率、誘電性、または誘電関数とも呼ばれる。媒体の比誘電率εrは、誘電率(permittivity)または誘電率(dielectric constant)とも呼ばれ、真空の誘電率(permittivity)ε0に対する誘電率(permittivity)εの無次元比である。気体、液体および固体の物質に関して、εr>1。比誘電率(relative permittivity)を決定するための測定方法は、当業者にはよく知られている。誘電率(dielectric constant)を測定するために開発されている多くの方法がある。例えば、開放同軸プローブ法は液体に適している。この方法において、プローブを液体に浸し、および反射係数を測定し、および誘電率(dielectric constant)を決定するために使用する。
【0287】
本発明によれば、本発明に係る懸濁物は、溶媒または溶媒混合物を含む。本発明によれば、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールは、溶媒または溶媒混合物中に溶解される。したがって、本発明によると、懸濁物は、溶媒または溶媒混合物を含み、溶媒または溶媒混合物中に、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロール、からなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解し、ここで、少なくとも一つのタキサン
の微結晶は、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールの存在下で溶解しない、またはもはや溶解しない。
【0288】
したがって、定義により、溶媒または溶媒混合物は、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールから選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解した溶液を形成し、したがって均一な混合物を構成する。したがって、溶媒または溶媒混合物中のトリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールから選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールの溶液は、一相のみを有し、および溶解されたトリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールから選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールは、溶媒または溶媒混合物中に均一に分布される。
【0289】
したがって、本発明に係る懸濁物は、以下の組み合わせである:
1)溶媒または溶媒混合物中に、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールを有する溶液、および2)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、1)に係る溶液中に溶解しない。
【0290】
微結晶の形態の少なくとも一つのタキサンは、少なくとも一つの溶媒または溶媒混合物中にトリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールを有する溶液中に固体として微細に分布される、すなわち「懸濁」される。したがって、本発明によると、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、溶媒または溶媒混合物中にトリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールを有する溶液中に「懸濁」される。
【0291】
したがって、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物にも関し、懸濁物は以下を含む:
a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン;および
c)溶媒または溶媒混合物、
ここで、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールは、溶媒または溶媒混合物中に溶解され、および
ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、溶解した少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールを含む溶媒または溶媒混合物中に溶解しない。
【0292】
言い換えると、本発明は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下を含む:
a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールの少なくとも一つを有する溶液;および
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、前記溶液中に懸濁されている微結晶。
【0293】
更に言い換えると、本発明は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下を含む:
a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールの少なくとも一つを有する溶液、および
b)前記溶液中に懸濁された少なくとも一つのタキサンの微結晶。
【0294】
本発明は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下を含む:a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、
ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、1μmから300μmの範囲の結晶サイズを有する。
【0295】
本発明は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下を含む:a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、少なくとも80重量%の結晶化度を有する。
【0296】
本発明は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下を含む:a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセルを含む、またはからなる群から選択される。
【0297】
本発明は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下を含む:a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセルから選択される。
【0298】
本発明は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下を含む:a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、
ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、1μmから300μmの範囲の結晶サイズを有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセルを含む、またはからなる群から選択される。
【0299】
本発明は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下を含む:a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、少なくとも80重量%の結晶化度を有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセルを含む、またはからなる群から選択される。
【0300】
本発明は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下を含む:a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、
ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、1μmから300μmの範囲の結晶サイズを有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセルから選択される。
【0301】
本発明は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下を含む:a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも
一つのトリ-O-アシルグリセロール、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、少なくとも80重量%の結晶化度を有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセルから選択される。
【0302】
本発明は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下を含む:a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、
ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、1μmから300μmの範囲の結晶サイズを有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、少なくとも80重量%の結晶化度を有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセルから選択される。
【0303】
本発明は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下を含む:a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、
ここで、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールおよび少なくとも一つのタキサンは、10%~30%のトリ-O-アシルグリセロール対90%~70%のタキサンの質量比で存在する。
【0304】
本発明は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下を含む:a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、
ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、1μmから300μmの範囲の結晶サイズを有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセル、を含む、またはからなる群から選択され、
ここで、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールおよび少なくとも一つのタキサンは、10%~30%のトリ-O-アシルグリセロール対90%~70%のタキサンの
質量比で存在する。
【0305】
本発明は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下を含む:a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、少なくとも80重量%の結晶化度を有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセル、を含む、またはからなる群から選択され、
ここで、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールおよび少なくとも一つのタキサンは、10%~30%のトリ-O-アシルグリセロール対90%~70%のタキサンの質量比で存在する。
【0306】
本発明は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下を含む:a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、
ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、1μmから300μmの範囲の結晶サイズを有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセルから選択され、
ここで、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールおよび少なくとも一つのタキサンは、10%~30%のトリ-O-アシルグリセロール対90%~70%のタキサンの質量比で存在する。
【0307】
本発明は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下を含む:a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、少なくとも80重量%の結晶化度を有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセルから選択され、
ここで、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールおよび少なくとも一つのタキサンは、10%~30%のトリ-O-アシルグリセロール対90%~70%のタキサンの質量比で存在する。
【0308】
本発明は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレか
ら好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下を含む:a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、
ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、1μmから300μmの範囲の結晶サイズを有し、
ここで、溶媒は、20℃で≦2.0の誘電率εrを有する非溶媒であり、または溶媒混合物は、20℃で≦2.0の誘電率εrを有する少なくとも50体積%の非溶媒を含む。
【0309】
本発明は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下を含む:a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および
c)溶媒混合物、溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒混合物中に少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、
ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、1μmから300μmの範囲の結晶サイズを有し、
ここで、溶媒混合物は、-0.5から+1.5のn-オクタノール-水分配係数logKOW、および20℃で5.0から30の誘電率εr、を有する少なくとも一つの極性有機溶媒、並びに20℃で≦30の誘電率εr、および≧3.0のn-オクタノール-水分配係数logKOW、を有する少なくとも一つの非極性有機溶媒、の混合物である。
【0310】
本発明は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下を含む:a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および
c)溶媒混合物、溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒混合物中に少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセル、を含む、またはからなる群から選択され、
ここで、溶媒混合物は、-0.5から+1.5のn-オクタノール-水分配係数logKOW、および20℃で5.0から30の誘電率εr、を有する少なくとも一つの極性有機溶媒、並びに20℃で≦30の誘電率εr、および≧3.0のn-オクタノール-水分配係数logKOW、を有する少なくとも一つの非極性有機溶媒、の混合物である。
【0311】
本発明は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下を含む:a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-
O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセルを含む、またはからなる群から選択され、
ここで、溶媒は、20℃で≦2.0の誘電率εrを有する非溶媒であり、または溶媒混合物は、20℃で≦2.0の誘電率εrを有する少なくとも50体積%の非溶媒を含む。
【0312】
本発明は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下を含む:a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセルから選択され、
ここで、溶媒は、20℃で≦2.0の誘電率εrを有する非溶媒であり、または溶媒混合物は、20℃で≦2.0の誘電率εrを有する少なくとも50体積%の非溶媒を含む。
【0313】
本発明は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下を含む:a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および
c)溶媒混合物、溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒混合物中に少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセルから選択され、
ここで、溶媒混合物は、-0.5から+1.5のn-オクタノール-水分配係数logKOW、および20℃で5.0から30の誘電率εr、を有する少なくとも一つの極性有機溶媒、並びに20℃で≦30の誘電率εr、および≧3.0のn-オクタノール-水分配係数logKOW、を有する少なくとも一つの非極性有機溶媒、の混合物である。
【0314】
本発明は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下を含む:a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、
ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、1μmから300μmの範囲の結晶サイズを有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセル、を含む、またはからなる群から選択され、
ここで、溶媒は、20℃で≦2.0の誘電率εrを有する非溶媒であり、または溶媒混合物は、20℃で≦2.0の誘電率εrを有する少なくとも50体積%の非溶媒を含む。
【0315】
本発明は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下を含む:a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および
c)溶媒混合物、溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒混合物中に少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、
ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、1μmから300μmの範囲の結晶サイズを有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセル、を含む、またはからなる群から選択され、
ここで、溶媒混合物は、-0.5から+1.5のn-オクタノール-水分配係数logKOW、および20℃で5.0から30の誘電率εr、を有する少なくとも一つの極性有機溶媒、並びに20℃で≦30の誘電率εr、および≧3.0のn-オクタノール-水分配係数logKOW、を有する少なくとも一つの非極性有機溶媒、の混合物である。
【0316】
本発明は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下を含む:a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、少なくとも80重量%の結晶化度を有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセル、を含む、またはからなる群から選択され、
ここで、溶媒は、20℃で≦2.0の誘電率εrを有する非溶媒であり、または溶媒混合物は、20℃で≦2.0の誘電率εrを有する少なくとも50体積%の非溶媒を含む。
【0317】
本発明は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下を含む:a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および
c)溶媒混合物、溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒混合物中に少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、少なくとも80重量%の結晶化度を有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセル、を含む、またはからなる群から選択され、
ここで、溶媒混合物は、-0.5から+1.5のn-オクタノール-水分配係数logKOW、および20℃で5.0から30の誘電率εr、を有する少なくとも一つの極性有機溶媒、並びに20℃で≦30の誘電率εr、および≧3.0のn-オクタノール-水分配係数logKOW、を有する少なくとも一つの非極性有機溶媒、の混合物である。
【0318】
本発明は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下を含む:
a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、
ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、1μmから300μmの範囲の結晶サイズを有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、から選択され、
ここで、溶媒は、20℃で≦2.0の誘電率εrを有する非溶媒であり、または溶媒混合物は、20℃で≦2.0の誘電率εrを有する少なくとも50体積%の非溶媒を含む。
【0319】
本発明は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下を含む:a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および
c)溶媒混合物、溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒混合物中に少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、
ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、1μmから300μmの範囲の結晶サイズを有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセルから選択され、
ここで、溶媒混合物は、-0.5から+1.5のn-オクタノール-水分配係数logKOW、および20℃で5.0から30の誘電率εr、を有する少なくとも一つの極性有機溶媒、並びに20℃で≦30の誘電率εr、および≧3.0のn-オクタノール-水分配係数logKOW、を有する少なくとも一つの非極性有機溶媒、の混合物である。
【0320】
本発明は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下を含む:a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および
c)溶媒混合物、溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒混合物中に少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、少なくとも80重量%の結晶化度を有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセルから選択され、
ここで、溶媒混合物は、エタノールおよびシクロヘキサン、または酢酸エチルおよびヘプタン、から選択される。
【0321】
本発明は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下を含む:a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つの
タキサンの微結晶が溶解しない、
ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、1μmから300μmの範囲の結晶サイズを有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、少なくとも80重量%の結晶化度を有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセルから選択され、
ここで、溶媒は、20℃で≦2.0の誘電率εrを有する非溶媒であり、または溶媒混合物は、20℃で≦2.0の誘電率εrを有する少なくとも50体積%の非溶媒を含む。
【0322】
本発明は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下を含む:a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および
c)溶媒混合物、溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒混合物中に少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、
ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、1μmから300μmの範囲の結晶サイズを有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、少なくとも80重量%の結晶化度を有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセルから選択され、
ここで、溶媒混合物は、-0.5から+1.5のn-オクタノール-水分配係数logKOW、および20℃で5.0から30の誘電率εr、を有する少なくとも一つの極性有機溶媒、並びに20℃で≦3.0からの誘電率εr、および≧3.0のn-オクタノール-水分配係数logKOW、を有する少なくとも一つの非極性有機溶媒、の混合物である。
【0323】
本発明は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下を含む:a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、
ここで、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールおよび少なくとも一つのタキサンは、10%~30%のトリ-O-アシルグリセロール対90%~70%のタキサンの質量比で存在し、
ここで、溶媒は、20℃で≦2.0の誘電率εrを有する非溶媒であり、または溶媒混合物は、20℃で≦2.0の誘電率εrを有する少なくとも50体積%の非溶媒を含む。
【0324】
本発明は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下を含む:a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および
c)溶媒混合物、溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒混合物中に少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、
ここで、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールおよび少なくとも一つのタキ
サンは、10%~30%のトリ-O-アシルグリセロール対90%~70%のタキサンの質量比で存在し、
ここで、溶媒混合物は、-0.5から+1.5のn-オクタノール-水分配係数logKOW、および20℃で5.0から30の誘電率εr、を有する少なくとも一つの極性有機溶媒、並びに20℃で≦3.0からの誘電率εr、および≧3.0のn-オクタノール-水分配係数logKOW、を有する少なくとも一つの非極性有機溶媒、の混合物である。
【0325】
本発明は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下を含む:a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、
ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、1μmから300μmの範囲の結晶サイズを有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセル、を含む、またはからなる群から選択され、
ここで、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールおよび少なくとも一つのタキサンは、10%~30%のトリ-O-アシルグリセロール対90%~70%のタキサンの質量比で存在し、
ここで、溶媒は、20℃で≦2.0の誘電率εrを有する非溶媒であり、または溶媒混合物は、20℃で≦2.0の誘電率εrを有する少なくとも50体積%の非溶媒を含む。
【0326】
本発明は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下を含む:a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および
c)溶媒混合物、溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒混合物中に少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、
ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、1μmから300μmの範囲の結晶サイズを有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセル、を含む、またはからなる群から選択され、
ここで、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールおよび少なくとも一つのタキサンは、10%~30%のトリ-O-アシルグリセロール対90%~70%のタキサンの質量比で存在し、
ここで、溶媒混合物は、-0.5から+1.5のn-オクタノール-水分配係数logKOW、および20℃で5.0から30の誘電率εr、を有する少なくとも一つの極性有機溶媒、並びに20℃で≦3.0からの誘電率εr、および≧3.0のn-オクタノール-水分配係数logKOW、を有する少なくとも一つの非極性有機溶媒、の混合物である。
【0327】
本発明は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下を含む:
a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、少なくとも80重量%の結晶化度を有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセル、を含む、またはからなる群から選択され、
ここで、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールおよび少なくとも一つのタキサンは、10%~30%のトリ-O-アシルグリセロール対90%~70%のタキサンの質量比で存在し、
ここで、溶媒は、20℃で≦2.0の誘電率εrを有する非溶媒であり、または溶媒混合物は、20℃で≦2.0の誘電率εrを有する少なくとも50体積%の非溶媒を含む。
【0328】
本発明は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下を含む:a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および
c)溶媒混合物、溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒混合物中に少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、少なくとも80重量%の結晶化度を有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセル、を含む、またはからなる群から選択され、
ここで、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールおよび少なくとも一つのタキサンは、10%~30%のトリ-O-アシルグリセロール対90%~70%のタキサンの質量比で存在し、
ここで、溶媒混合物は、-0.5から+1.5のn-オクタノール-水分配係数logKOW、および20℃で5.0から30の誘電率εr、を有する少なくとも一つの極性有機溶媒、並びに20℃で≦3.0からの誘電率εr、および≧3.0のn-オクタノール-水分配係数logKOW、を有する少なくとも一つの非極性有機溶媒、の混合物である。
【0329】
本発明は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下を含む:a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、
ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、1μmから300μmの範囲の結晶サイズを有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセルから選択され、
ここで、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールおよび少なくとも一つのタキサンは、10%~30%のトリ-O-アシルグリセロール対90%~70%のタキサンの
質量比で存在し、
ここで、溶媒は、20℃で≦2.0の誘電率εrを有する非溶媒であり、または溶媒混合物は、20℃で≦2.0の誘電率εrを有する少なくとも50体積%の非溶媒を含む。
【0330】
本発明は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下を含む:a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および
c)溶媒混合物、溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒混合物中に少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、
ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、1μmから300μmの範囲の結晶サイズを有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセルから選択され、
ここで、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールおよび少なくとも一つのタキサンは、10%~30%のトリ-O-アシルグリセロール対90%~70%のタキサンの質量比で存在し、
ここで、溶媒混合物は、-0.5から+1.5のn-オクタノール-水分配係数logKOW、および20℃で5.0から30の誘電率εr、を有する少なくとも一つの極性有機溶媒、並びに20℃で≦3.0からの誘電率εr、および≧3.0のn-オクタノール-水分配係数logKOW、を有する少なくとも一つの非極性有機溶媒、の混合物である。
【0331】
本発明は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下を含む:a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、少なくとも80重量%の結晶化度を有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセルから選択され、
ここで、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールおよび少なくとも一つのタキサンは、10%~30%のトリ-O-アシルグリセロール対90%~70%のタキサンの質量比で存在し、
ここで、溶媒は、20℃で≦2.0の誘電率εrを有する非溶媒であり、または溶媒混合物は、20℃で≦2.0の誘電率εrを有する少なくとも50体積%の非溶媒を含む。
【0332】
本発明は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下を含む:a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および
c)溶媒混合物、溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒混合物中に少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、少なくとも80重量%の結晶化度を有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセルから選択され、
ここで、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールおよび少なくとも一つのタキサンは、10%~30%のトリ-O-アシルグリセロール対90%~70%のタキサンの質量比で存在し、
ここで、溶媒混合物は、-0.5から+1.5のn-オクタノール-水分配係数logKOW、および20℃で5.0から30の誘電率εr、を有する少なくとも一つの極性有機溶媒、並びに20℃で≦3.0の誘電率εr、および≧3.0のn-オクタノール-水分配係数logKOW、を有する少なくとも一つの非極性有機溶媒、の混合物である。
【0333】
したがって、本発明は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下を含む:
a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが存在する場合、少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、
ここで、懸濁物は1%~6%のタキサンを含む。
【0334】
いくつかの更なる実施形態において、被覆懸濁物は、以下の三つの要素のみからなり得るa)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、またはトリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、および/もしくはトリウンデカノイルグリセロールの混合物;b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン;およびc)少なくとも一つの溶媒または溶媒混合物、少なくとも一つの溶媒または溶媒混合物中に、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および少なくとも一つの溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない。
【0335】
添加剤
トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、からなる群から選択される上記の少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールに加えて、本発明に係る懸濁物は、一つ以上の添加剤も含んでもよい。具体的には、一つ以上の添加剤は、懸濁物中に好ましくは溶解される。
【0336】
好ましい実施形態において、本発明に係る懸濁物は、ポリマー、オリゴマー、金属または金属粒子、有機金属化合物、および塩を含まない。したがって、いくつかの実施形態において、本発明に係る医療機器被覆懸濁物は、ポリマー、オリゴマー、金属または金属粒子、有機金属化合物、および塩を含まない。
【0337】
好ましい実施形態において、抗酸化剤は、本発明に係る懸濁物中に添加剤として存在してもよい。
適切な抗酸化剤は、ブチルヒドロキシルトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール、パルミチン酸アスコルビル、ステアリン酸アスコルビル、酢酸トコフェロール、アスコルビン酸、トコフェロールおよびトコトリエノール(例えば、α-トコフェロールなど)、カロテノイド、例えば、β-カロテン、ゼアキサンチン、リコピンおよびルテインなど、ビタミンC、ノルジヒドログアレチン酸、プロブコール、没食子酸プロピル、二次
植物化合物(フラボノイド)、例えば、カテキン、ガロカテキン、エピカテキン、没食子酸エピガロカテキン、タキシフォリン、イソリクイリチゲニン、キサントフモール、モリン、ケルセチン(グリコシドルチンおよびメチルエーテルイソラムネチン)、ケンフェロール、ミリセチン、フィセチン、オーレウシジン、ルテオリン、アピゲニン、ヘスペレチン、ナリンゲニン、エリオジクチオール、ゲニステイン、ダイゼイン、リコリシジンアントシアニン、アリシン、アスタキサンチングルタチオン、レスベラトロール、それらの誘導体、およびそれらの組み合わせなど、を含む。
【0338】
したがって、好ましい抗酸化剤は、特に空気と接触後に脂肪相の酸敗を防止する、または遅らせるブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、トコフェロール、カロテノイド、フラボノイド、および当然ながら抗酸化剤の混合物でもある。
【0339】
ブチルヒドロキシトルエン(BHT)は、抗酸化剤として特に好ましい。
一つ以上の抗酸化剤が懸濁物に添加される場合、それらの総含有量は、タキサンに対して1.0~0.001重量%、好ましくは0.5~0.005重量%、および特に好ましくは0.1~0.01重量%であると算出される。
【0340】
いくつかの実施形態において、凝集阻害剤は、懸濁物中の少なくとも一つのタキサンの微結晶の沈降を防止し得る添加剤として本発明の懸濁液中に存在してもよい。適切な凝集阻害剤には、ポリソルベート、例えば、ツイーン(Tween)80などを含むが、限定されない。凝集阻害剤は、非常に低い活性剤レベルでの結晶懸濁物の調製に好ましくは使用される。
【0341】
例えば、結晶の均一な分布を有するタキサンを含む3%懸濁液を、凝集阻害剤を用いずに調製することができ;約1.5~1%の懸濁物(w/v)およびより低い懸濁物の場合、凝集阻害剤の添加は、微結晶の沈降を更に防止し、したがって、均一な被覆を可能にし続けるので、有利であることができる。
【0342】
一つ以上の凝集阻害剤を懸濁物に添加する場合、微結晶を懸濁物中に保持できる追加量は、それぞれのタキサンについて個別に決定されなければならない。懸濁物中の微結晶タキサンの総量は、好ましくは1.0~0.001重量%の間で非常に低く、更に好ましくは0.5~0.005重量%、および特に好ましくは0.1~0.01重量%である。
【0343】
他の非ポリマー賦形剤をマトリックスとして溶液に添加することも可能である。被覆特性も改善する、または被覆特性に悪い変化を及ぼさない生体適合性有機物質と同様に、例えば、造影剤または造影剤類似体は適切である。
【0344】
いくつかの実施形態において、本発明の懸濁物は、添加剤として、一つ以上のポリマー、例えばポリビニルピロリドン(PVP)などを含んでもよい。適切なポリマー添加剤は、有機溶媒、特に非極性溶媒中に溶解されることができるポリマーである。有機溶媒中にほとんど溶解しない、または実質的に不溶性である非常に親水性の水溶性ポリマーは好ましくない。さらに、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、懸濁物中で、溶解されたポリマーの存在下で、付着されない、または溶解されないことを確実にするために注意しなければならない。医療機器の被覆用のポリマーは従来技術から知られている。したがって、当業者は、適切なポリマー添加剤を容易に選択することができる。
【0345】
しかしながら、医療機器を被覆するためのポリマーを含まない懸濁物は、本明細書において特に好ましい。
したがって、本発明は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、または
カニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、前記懸濁物は以下からなる:
(a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセルからなる群から選択され、およびc)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが存在する場合、少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、および
d)タキサンに基づいて最大5.0重量%までの添加剤。
【0346】
適切な添加剤は、抗酸化剤、ポリビニルピロリドン(PVP)、および凝集阻害剤である。
したがって、本発明は、好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下からなる:
(a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセル、からなる群から選択され、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが存在する場合、少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、および
d)タキサンに基づいて最大5.0重量%までの添加剤、
ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、1μmから300μmの範囲の結晶サイズを有する。
【0347】
したがって、本発明は好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下からなる:
(a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール;および
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセル、からなる群から選択され、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが存在する場合、少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、および
d)タキサンに基づいて最大5.0重量%までの添加剤、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、少なくとも80重量%の結晶化度を有する。
【0348】
したがって、本発明は好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し
、懸濁物は以下からなる:
(a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール;および
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセル、からなる群から選択され、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが存在する場合、少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、および
d)タキサンに基づいて最大5.0重量%までの添加剤、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセルから選択される。
【0349】
したがって、本発明は好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下からなる:
(a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール;および
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセルからなる群から選択され、およびc)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが存在する場合、少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、および
d)タキサンに基づいて最大5.0重量%までの添加剤、
ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、1μmから300μmの範囲の結晶サイズを有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセルから選択される。
【0350】
したがって、本発明は好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下からなる:
(a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール;および
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセルからなる群から選択され、およびc)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが存在する場合、少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、および
d)タキサンに基づいて最大5.0重量%までの添加剤
ここで、少なくとも一つのタキサンは、少なくとも80重量%の結晶化度を有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセルから選択される。
【0351】
したがって、本発明は好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下からなる:
(a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール;および
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセル、からなる群から選択され、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが存在する場合、少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、および
d)タキサンに基づいて最大5.0重量%までの添加剤、
ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、1μmから300μmの範囲の結晶サイズを有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、少なくとも80重量%の結晶化度を有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセルから選択される。
【0352】
したがって、本発明は好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下からなる:
(a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール;および
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセル、からなる群から選択され、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが存在する場合、少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、および
d)タキサンに基づいて最大5.0重量%までの添加剤、
ここで、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールおよび少なくとも一つのタキサンは、10%~30%のトリ-O-アシルグリセロール対90%~70%のタキサンの質量比で存在する。
【0353】
したがって、本発明は好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下からなる:
(a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール;および
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセル、からなる群から選択され、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが存在する場合、少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、および
d)タキサンに基づいて最大5.0重量%までの添加剤、
ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、1μmから300μmの範囲の結晶サイズを有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセルから選択され、
ここで、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールおよび少なくとも一つのタキサンは、10%~30%のトリ-O-アシルグリセロール対90%~70%のタキサンの質量比で存在する。
【0354】
したがって、本発明は好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下からなる:
(a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール;および
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセル、からなる群から選択され、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが存在する場合、少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、および
d)タキサンに基づいて最大5.0重量%までの添加剤、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、少なくとも80重量%の結晶化度を有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセルから選択され、
ここで、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールおよび少なくとも一つのタキサンは、10%~30%のトリ-O-アシルグリセロール対90%~70%のタキサンの質量比で存在する。
【0355】
したがって、本発明は好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下からなる:
(a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール;および
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセル、からなる群から選択され、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが存在する場合、少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、および
d)タキサンに基づいて最大5.0重量%までの添加剤、
ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、1μmから300μmの範囲の結晶サイズを有し、
ここで、溶媒は、20℃で≦2.0の誘電率εrを有する非溶媒であり、または溶媒混合物は、20℃で≦2.0の誘電率εrを有する少なくとも50体積%の非溶媒を含む。
【0356】
したがって、本発明は好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下からなる:
(a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール;および
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセル、からなる群から選択され、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが存在する場合、少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、および
d)タキサンに基づいて最大5.0重量%までの添加剤、
ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、1μmから300μmの範囲の結晶サイズを有し、
ここで、溶媒混合物は、-0.5から+1.5のn-オクタノール-水分配係数logKOW、および20℃で5.0から30の誘電率εr、を有する少なくとも一つの極性有機溶媒、並びに20℃で≦3.0の誘電率εr、および≧3.0のn-オクタノール-水分配係数logKOW、を有する少なくとも一つの非極性有機溶媒、の混合物である。
【0357】
したがって、本発明は好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下からなる:
(a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール;および
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセル、からなる群から選択され、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが存在する場合、少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、および
d)タキサンに基づいて最大5.0重量%までの添加剤、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセルから選択され、
ここで、溶媒は、20℃で≦2.0の誘電率εrを有する非溶媒であり、または溶媒混合物は、20℃で≦2.0の誘電率εrを有する少なくとも50体積%の非溶媒を含む。
【0358】
したがって、本発明は好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下からなる:
(a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール;および
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセル、からなる群から選択され、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが存在する場合、少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、および
d)タキサンに基づいて最大5.0重量%までの添加剤、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセルから選択され、
ここで、溶媒混合物は、-0.5から+1.5のn-オクタノール-水分配係数logKOW、および20℃で5.0から30の誘電率εr、を有する少なくとも一つの極性有
機溶媒、並びに20℃で≦3.0の誘電率εr、および≧3.0のn-オクタノール-水分配係数logKOW、を有する少なくとも一つの非極性有機溶媒、の混合物である。
【0359】
したがって、本発明は好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下からなる:
(a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール;および
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセルからなる群から選択され、およびc)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが存在する場合、少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、および
d)タキサンに基づいて最大5.0重量%までの添加剤、
ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、1μmから300μmの範囲の結晶サイズを有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセルから選択され、
ここで、溶媒は、20℃で≦2.0の誘電率εrを有する非溶媒であり、または溶媒混合物は、20℃で≦2.0の誘電率εrを有する少なくとも50体積%の非溶媒を含む。
【0360】
したがって、本発明は好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下からなる:
(a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール;および
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセルからなる群から選択され、およびc)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが存在する場合、少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、および
d)タキサンに基づいて最大5.0重量%までの添加剤、
ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、1μmから300μmの範囲の結晶サイズを有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセルから選択され、
ここで、溶媒混合物は、-0.5から+1.5のn-オクタノール-水分配係数logKOW、および20℃で5.0から30の誘電率εr、を有する少なくとも一つの極性有機溶媒、並びに20℃で≦3.0の誘電率εr、および≧3.0のn-オクタノール-水分配係数logKOW、を有する少なくとも一つの非極性有機溶媒、の混合物である。
【0361】
したがって、本発明は好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下からなる:
(a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール;および
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、ここで、少なくとも一つのタキサンは、
パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセル、からなる群から選択され、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが存在する場合、少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、および
d)タキサンに基づいて最大5.0重量%までの添加剤、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、少なくとも80重量%の結晶化度を有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセルから選択され、
ここで、溶媒混合物は、エタノールおよびシクロヘキサン、または酢酸エチルおよびヘプタン、から選択される。
【0362】
したがって、本発明は好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下からなる:
(a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール;および
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセル、からなる群から選択され、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが存在する場合、少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、および
d)タキサンに基づいて最大5.0重量%までの添加剤、
ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、1μmから300μmの範囲の結晶サイズを有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、少なくとも80重量%の結晶化度を有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセルから選択され、
ここで、溶媒は、20℃で≦2.0の誘電率εrを有する非溶媒であり、または溶媒混合物は、20℃で≦2.0の誘電率εrを有する少なくとも50体積%の非溶媒を含む。
【0363】
したがって、本発明は好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下からなる:
(a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール;および
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセル、からなる群から選択され、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが存在する場合、少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、および
d)タキサンに基づいて最大5.0重量%までの添加剤、
ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、1μmから300μmの範囲の結晶サイズを有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、少なくとも80重量%の結晶化度を有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセルから選択され、
ここで、溶媒混合物は、-0.5から+1.5のn-オクタノール-水分配係数logKOW、および20℃で5.0から30の誘電率εr、を有する少なくとも一つの極性有機溶媒、並びに20℃で≦3.0の誘電率εr、および≧3.0のn-オクタノール-水分配係数logKOW、を有する少なくとも一つの非極性有機溶媒、の混合物である。
【0364】
したがって、本発明は好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下からなる:
(a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール;および
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセル、からなる群から選択され、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが存在する場合、少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、および
d)タキサンに基づいて最大5.0重量%までの添加剤、
ここで、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールおよび少なくとも一つのタキサンは、10%~30%のトリ-O-アシルグリセロール対90%~70%のタキサンの質量比で存在し、
ここで、溶媒は、20℃で≦2.0の誘電率εrを有する非溶媒であり、または溶媒混合物は、20℃で≦2.0の誘電率εrを有する少なくとも50体積%の非溶媒を含む。
【0365】
したがって、本発明は好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下からなる:
(a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール;および
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセル、からなる群から選択され、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが存在する場合、少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、および
d)タキサンに基づいて最大5.0重量%までの添加剤、
ここで、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールおよび少なくとも一つのタキサンは、10%~30%のトリ-O-アシルグリセロール対90%~70%のタキサンの質量比で存在し、
ここで、溶媒混合物は、-0.5から+1.5のn-オクタノール-水分配係数logKOW、および20℃で5.0から30の誘電率εr、を有する少なくとも一つの極性有機溶媒、並びに20℃で≦3.0の誘電率εr、および≧3.0のn-オクタノール-水分配係数logKOW、を有する少なくとも一つの非極性有機溶媒、の混合物である。
【0366】
したがって、本発明は好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し
、懸濁物は以下からなる:
(a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール;および
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセル、からなる群から選択され、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが存在する場合、少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、および
d)タキサンに基づいて最大5.0重量%までの添加剤、
ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、1μmから300μmの範囲の結晶サイズを有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセルから選択され、
ここで、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールおよび少なくとも一つのタキサンは、10%~30%のトリ-O-アシルグリセロール対90%~70%のタキサンの質量比で存在し、
ここで、溶媒は、20℃で≦2.0の誘電率εrを有する非溶媒であり、または溶媒混合物は、20℃で≦2.0の誘電率εrを有する少なくとも50体積%の非溶媒を含む。
【0367】
したがって、本発明は好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下からなる:
(a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール;および
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセル、からなる群から選択され、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが存在する場合、少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、および
d)タキサンに基づいて最大5.0重量%までの添加剤、
ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、1μmから300μmの範囲の結晶サイズを有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセルから選択され、
ここで、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールおよび少なくとも一つのタキサンは、10%~30%のトリ-O-アシルグリセロール対90%~70%のタキサンの質量比で存在し、
ここで、溶媒混合物は、-0.5から+1.5のn-オクタノール-水分配係数logKOW、および20℃で5.0から30の誘電率εr、を有する少なくとも一つの極性有機溶媒、並びに20℃で≦3.0の誘電率εr、および≧3.0のn-オクタノール-水分配係数logKOW、を有する少なくとも一つの非極性有機溶媒、の混合物である。
【0368】
したがって、本発明は好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下からなる:
(a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグ
リセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール;および
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセル、からなる群から選択され、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが存在する場合、少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、および
d)タキサンに基づいて最大5.0重量%までの添加剤、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、少なくとも80重量%の結晶化度を有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセルから選択され、
ここで、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールおよび少なくとも一つのタキサンは、10%~30%のトリ-O-アシルグリセロール対90%~70%のタキサンの質量比で存在し、
ここで、溶媒は、20℃で≦2.0の誘電率εrを有する非溶媒であり、または溶媒混合物は、20℃で≦2.0の誘電率εrを有する少なくとも50体積%の非溶媒を含む。
【0369】
したがって、本発明は好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物に関し、懸濁物は以下からなる:
(a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール;および
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセル、からなる群から選択され、および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが存在する場合、少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、および
d)タキサンに基づいて最大5.0重量%までの添加剤、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、少なくとも80重量%の結晶化度を有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセルから選択され、
ここで、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールおよび少なくとも一つのタキサンは、10%~30%のトリ-O-アシルグリセロール対90%~70%のタキサンの質量比で存在し、
ここで、溶媒混合物は、-0.5から+1.5のn-オクタノール-水分配係数logKOW、および20℃で5.0から30の誘電率εr、を有する少なくとも一つの極性有機溶媒、並びに20℃で≦3.0の誘電率εr、および≧3.0のn-オクタノール-水分配係数logKOW、を有する少なくとも一つの非極性有機溶媒、の混合物である。
【0370】
懸濁物を調製するための方法
本発明は更に、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物を調製するための方法に関し、以下のステップを含む:
a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールを、溶媒または溶媒混合物中に溶解すること;
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサンをステップa)における溶液に添加するこ
と、またはステップa)における溶液を微結晶の形態の少なくとも一つのタキサンに添加すること、
ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、ステップa)における溶液に溶解しない。
【0371】
言い換えると、本発明は更に、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物を調製するための方法に関し、以下のステップを含む:
a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールを、溶媒または溶媒混合物中に溶解すること;
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサンおよびステップa)における溶液の懸濁物を調製すること、
ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、ステップa)における溶液に溶解しない。
【0372】
好ましくは、少なくとも一つのタキサンは、少なくとも80重量%の結晶化度を有する。好ましくは、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、1μmから300μmの範囲の結晶サイズ、より好ましくは、最大で100μmの結晶サイズ、より好ましくは、10μmから100μmの範囲の結晶サイズ、を有する。より好ましくは、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセル、を含む、またはからなる群から選択され、特に好ましくは、パクリタキセルである。好ましくは、溶媒は、20℃で≦2.0の誘電率εrを有する非溶媒であり、または溶媒混合物は、20℃で≦2.0の誘電率εrを有する少なくとも50体積%の非溶媒を含む。好ましくは、溶媒混合物は、-0.5から+1.5のn-オクタノール-水分配係数logKOW、および20℃で5.0から30の誘電率εr、を有する少なくとも一つの極性有機溶媒、並びに20℃で≦3.0からの誘電率εr、および≧3.0のn-オクタノール-水分配係数logKOW、を有する少なくとも一つの非極性有機溶媒、の混合物である。
【0373】
言い換えると、本発明は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器を被覆するための懸濁物を調製するための方法に関し、以下のステップを含む:
a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールを、溶媒または溶媒混合物中に提供すること;
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサンを提供すること、
c)ステップa)に係る溶液と、ステップb)に係る微結晶の形態の少なくとも一つのタキサンとを混合することによって懸濁物を調製すること、
ここで、ステップb)に係る少なくとも一つのタキサンの微結晶は、ステップa)に係る溶液に溶解しない。
【0374】
好ましくは、少なくとも一つのタキサンは、少なくとも80重量%の結晶化度を有する。好ましくは、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、1μmから300μmの範囲の結晶サイズ、より好ましくは、最大で100μmの結晶サイズ、より好ましくは、10μmから100μmの範囲の結晶サイズ、を有する。より好ましくは、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセル、を含む、またはからなる群から選択され、特に好ましくは、パクリタキセルである。好ましくは、溶媒は、20℃で≦2.0の誘電率εrを有する非溶媒であり、または溶媒混合物は、20℃で≦2.0の誘電率εrを有する少なくとも50体積%の非溶媒を含む。好ましくは、溶媒混合物は、-0.5から+1.5のn-オクタノール-水分配係数logKOW、および20℃
で5.0から30の誘電率εr、を有する少なくとも一つの極性有機溶媒、並びに20℃で≦3.0からの誘電率εr、および≧3.0のn-オクタノール-水分配係数logKOW、を有する少なくとも一つの非極性有機溶媒、の混合物である。
【0375】
微結晶の形態の少なくとも一つのタキサンを提供すること、および微結晶の形態の少なくとも一つのタキサンを、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールの溶液と共に溶媒または溶媒混合物中に添加することが不可欠であり、したがって、安定な結晶懸濁液物が形成されることが証明されている。一方、タキサンの微結晶を、溶媒または溶媒混合物に最初に添加し、その後に、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが添加される場合、医療機器上にしっかりと付着する被覆を生成することができる本発明に係るタキサンの微結晶の懸濁物は形成されない。したがって、タキサンの結晶懸濁物を調製する一連のステップは不可欠であり、置き換えられることはできない。同様に、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールを含む溶媒または溶媒混合物中にタキサンを有する溶液からタキサンの結晶を生成しようと試みる場合、医療機器の表面に被覆後に不適切な被覆が形成される。
【0376】
本発明は更に、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器の被覆用の懸濁物を調製するための方法に関し、以下のステップを含む:
a’)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールを、溶媒、好ましくは、極性有機溶媒中に溶解すること;
a’’)非極性有機溶媒、好ましくは非溶媒をステップa’)からの溶液に添加すること;および任意に均質化および濾過すること、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサンをステップa’’)からの溶液に添加すること、またはステップa’’)からの溶液を微結晶の形態の少なくとも一つのタキサンに添加すること、
ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、ステップa’’)の溶液に溶解しない。
【0377】
本発明は更に、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから好ましくは選択される医療機器の被覆用の懸濁物を調製するための方法に関し、以下のステップを含む:
a’)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールを、溶媒、好ましくは、極性有機溶媒中に溶解すること、
a’’)非極性有機溶媒、好ましくは非溶媒をステップa’)からの溶液に添加すること;および任意に均質化および濾過すること、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサンを提供すること、
c)ステップa’’)に係る溶液と、ステップb)に係る微結晶の形態の少なくとも一つのタキサンとを混合することによって懸濁物を調製すること、
ここで、ステップb)に係る少なくとも一つのタキサンの微結晶は、ステップa’’)に係る溶液中に溶解しない。
【0378】
好ましくは、少なくとも一つのタキサンは、少なくとも80重量%の結晶化度を有する。好ましくは、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、1μmから300μmの範囲の結晶サイズ、より好ましくは、最大で100μmの結晶サイズ、より好ましくは、10μmから100μmの範囲の結晶サイズ、を有する。より好ましくは、少なくとも一つのタキ
サンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセル、を含む、またはからなる群から選択され、特に好ましくは、パクリタキセルである。好ましくは、溶媒は、20℃で≦2.0の誘電率εrを有する非溶媒、または20℃で≦2.0の誘電率εrを有する少なくとも50体積%の非溶媒を含む溶媒混合物である。好ましくは、溶媒混合物は、-0.5から+1.5のn-オクタノール-水分配係数logKOW、および20℃で5.0から30の誘電率εr、を有する少なくとも一つの極性有機溶媒、並びに20℃で≦3.0からの誘電率εr、および≧3.0のn-オクタノール-水分配係数logKOW、を有する少なくとも一つの非極性有機溶媒、の混合物である。
【0379】
被覆方法
本発明は更に、医療機器、好ましくは、ステント、またはカニューレを、懸濁物を用いて被覆する方法に関し、以下のステップを含む:
a)医療機器に医療機器表面を提供すること、
b)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および溶媒または溶媒混合物、を含む懸濁物を提供することであって、溶媒または溶媒混合物中に、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および、溶媒または溶媒混合物中に、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、溶解しない、または少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが存在する場合に溶解しない;および
c)シリンジ法、ピペッティング法、キャピラリー法、フォールドスプレー法、ディッピング法、スプレー法、ドラッギング法、スレッドドラッギング法、ドロップドラッギング法、またはローリング法によって、医療機器表面に懸濁物を塗布すること。
【0380】
本発明は更に、医療機器、好ましくは、ステント、またはカニューレを、懸濁物を用いて被覆する方法に関し、以下のステップを含む:
a)医療機器に医療機器表面を、任意に前処理された表面(表面を調整すること)を提供すること、ここで、医療機器表面は、被覆されない、または被覆される。
b)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、および溶媒または溶媒混合物、を含む懸濁物を提供することであって、溶媒または溶媒混合物中に、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および、溶媒または溶媒混合物中に、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、溶解しない、または少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが存在する場合に溶解しない;および
c)シリンジ法、ピペッティング法、キャピラリー法、フォールドスプレー法、ディッピング法、スプレー法、ドラッギング法、スレッドドラッギング法、液滴ドラッギング法、またはローリング法によって、医療機器の表面に懸濁物を塗布すること。
【0381】
好ましい実施形態において、方法は、ステップc)の後に被覆を乾燥するステップd)を更に含む。
本明細書において好ましくは、医療機器の被覆のための特別な被覆方法であり、被覆方法において、医療機器を、規定量の微結晶タキサンを用いて被覆することができ、ここで、前記被覆方法において、医療機器表面に、分配装置(dispensing device)を用いて医療機器表面への本発明に係る規定量の被覆懸濁物の標的送達のための体積測定装置を備える被覆装置を、好ましく使用する。
【0382】
規定量の被覆懸濁物を提供することができる、または被覆懸濁物の分配量を測定する、または表示することができる任意の装置を、体積測定装置として機能させることができる。したがって、体積測定装置は、最も単純な場合に、スケール、スケール付きピペット、
スケール付きビュレット、スケール付き容器、スケール付きキャビティ、およびポンプ、バルブ、シリンジ、または他のピストン形状の容器であり、それらは、規定量の被覆懸濁物を提供すること、または運搬すること、または分配することができる。したがって、体積測定装置は、規定量の被覆懸濁物を提供する、もしくは分配する、または被覆懸濁物の分配量を測定する、および/もしくは表示する、のいずれかに機能する。したがって、体積測定装置は、被覆懸濁物の量、したがって分配装置から医療機器表面に移送される微結晶タキサンの量を決定または測定するのに役立つ。
【0383】
しかしながら、被覆装置における最も重要な側面は分配装置であり、分配装置は、ノズル、複数のノズル、糸、糸のネットワーク、布地の一部、革ストリップ、スポンジ、ボール、シリンジ、針、カニューレ、またはキャピラリーとして設計されることができる。分配装置の設計に応じて、わずかに修正された被覆方法が結果的に生じ、そのすべては測定可能な量または規定量の微結晶タキサンを失うことなく医療機器の表面に移動させるという基本原理に基づく。この方法において、規定の活性剤濃度または活性剤量の微結晶タキサンを有する被覆、したがって再現可能な被覆が提供される。様々な用語が、方法、すなわち、シリンジ法、ピペッティング法、キャピラリー法、フォールドスプレー法、ディッピング法、スプレー法、ドラッギング法、スレッドドラッギング法、液滴ドラッギング法、またはローリング法、を区別するために本明細書において使用され、それらは本発明の好ましい実施形態である。
【0384】
結晶懸濁物を用いての医療機器の特に好ましい被覆方法として、マイクロドージング法、例えば、ピペッティング法または液滴ドラッギング法などを用いる液滴投与技術が本明細書において使用される。これらは、タキサンの微結晶が均一に分布されたままであることが保証される限り、特に均一な被覆を、微結晶タキサンの同様に均一な活性剤濃度で、医療機器表面上に得るために使用されることができる。
【0385】
等しい断片に分割されたバルーンカテーテル上の活性剤の回収率に関する研究は、被覆の均一性、したがって結晶懸濁物の使用の成功および100%の回収率を確認する。
【0386】
さらに、結晶における均一な分布を確実にするために、空気圧スイベル(swivel)を、被覆中に懸濁物を攪拌するために使用することができ、沈降の可能性を防ぎ、空気圧スイベル(swivel)は、結晶含有量が2%(w/v)未満の場合に予防策として有利であることができる。
【0387】
一方、医療機器表面の任意の前処理、例えば、コンディショニングまたはベースコートの塗布、などに関して、他の一般的な被覆方法、例えば、スプレー、ディッピング、ブラッシング、ピペッティング、ドロップドラッグ、ローリング、スピニング、in situ(インサイチュ)堆積、スクリーンプリンティング、蒸着またはスプレーなども使用することができる。上記の方法を組み合わせることもできる。
【0388】
被覆された医療機器
本発明の懸濁物は、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、および微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、を含む、活性剤放出被覆を有する被覆された医療機器を提供することに特に適している。
【0389】
したがって、本発明は、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、および微結晶の形態の少な
くとも一つのタキサン、を含む被覆を有する、被覆された医療機器、好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから選択される医療機器に関する。
【0390】
用語「被覆」は、拡張可能な、折り畳まれた、またはつぶれた医療機器、収縮した、部分的に膨張した、および完全に膨張した医療機器、または折り畳まれていない、もしくは部分的に折り畳まれていない医療機器の場合に、医療機器の表面上の被覆だけでなく、材料間、または材料内のひだ、空洞、細孔、マイクロニードル、または他の充填可能な空間の充填または被覆も同様に含むことを意図している。
【0391】
本明細書において使用される用語「医療機器表面上」は、好ましくは、医療機器表面に直接、すなわち医療機器の材料に直接塗布されることを意味する。例えば、医療機器がポリアミドで作られる場合、医療機器の素材であるポリアミドに塗布されることを意味する。医療器具が例えばポリアミドで作られ、その後ポリマーを用いて被覆される場合、医療器具の表面に塗布は行われないことになる。
【0392】
医療機器の表面全体が均一に被覆されると好ましい。さらに、医療機器表面上に微結晶タキサンの均一な分布があると好ましい。しかしながら、表面は、部分的にのみ被覆されることもでき、または異なる点で異なって被覆されることもできる(例えば、異なる被覆厚、異なる被覆、異なる活性剤濃度、選択された区切られた領域のみなど)。
【0393】
本明細書において使用される用語「医療機器」は、病気を検出する、予防する、監視する、治療する、または軽減するために役立つ物品または物質を指すが、主にこの目的(「意図された主な効果」)を薬理学的/免疫学的によって、または代謝作用によって、というよりはむしろ物理的手段によって達成する。しかしながら、医療機器の物理的効果は、薬理学的、免疫学的、または代謝効果によって支持される可能性が高い。医療機器は、生体との接触が短期か長期かに応じて、長期使用のための医療機器および短期使用のための医療機器に分類されることができる。体内に留置することを目的とする全ての医療機器は、長期間使用するためのものであると考慮される。長期使用ではなく非常に短期間使用の医療機器は、一定期間後に除去されることができ、限られた期間使用されることができる医療機器である。
【0394】
長期医療機器の例は、非生分解性、生体安定性ステント、インプラント、関節インプラント、人工血管、脳ペースメーカー(例えば、パーキンソン病用に使用されるものなど)、人工心臓、ポートカテーテル、視覚インプラント、眼球レンズ代替品、網膜代替品、硝子体代替品、角膜、歯科インプラント、人工内耳、再建インプラント、頭蓋再建、骨代替品、陰茎プロテーゼ、括約筋プロテーゼなど、を含むが、これらに限定されない。
【0395】
長期間ではなく非常に短期間の医療機器の例は、カテーテル、バルーンカテーテル、血管形成用カテーテル、膀胱カテーテル、呼吸チューブ、静脈カテーテル、あらゆる種類のカニューレ、針、翼付きカニューレ(バタフライ型)、薬物デポ、例えば、骨折の外科的治療用の固定具、人工アクセス、チューブ、縫合糸、ステープルなど、を含むが、これらに限定されない。
【0396】
用語「バルーン」または「カテーテルバルーン」は、一般に、任意の拡張可能な、および再圧縮可能な、並びに一時的に移植可能な医療機器を指し、それらはカテーテルと組み合わせて一般に使用される。本明細書において使用される用語「カテーテルバルーン」は、拡張可能な部分、すなわちバルーンカテーテルのバルーンを指す。「バルーンカテーテル」は、拡張バルーンカテーテルを指す。バルーンカテーテルは、カテーテルに取り付けられたバルーンを有するカテーテルを指す医学用語である。バルーンカテーテルの例は、
狭窄した、または閉塞した血管を拡張する、および開くための経皮経管的血管形成において使用される血管形成バルーンカテーテル、膀胱カテーテル、血管手術、神経放射線学、および心臓病学における治療において、血栓症および二次的に血栓症に罹患した末梢動脈の治療において使用され、さらに脳卒中治療における脳血栓除去術にも使用される血栓除去カテーテル、末梢動脈系の新鮮および柔らかい塞栓の除去用の血管手術において使用される塞栓除去用カテーテル、フォガーティ(Fogarty)カテーテル、ダブルバルーンカテーテル、呼吸器学において使用されるバルーンカテーテル、マイクロ-バルーンカテーテル、を含むが、これらに限定されない。
【0397】
本発明のいくつかの実施形態において、医療機器は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、血管形成カテーテル、膀胱カテーテル、末梢カテーテル、冠動脈カテーテル、塞栓除去カテーテル、血栓除去カテーテル、神経血栓除去カテーテル、ステント、インプラント、関節インプラント、人工血管、ポートカテーテル、視覚プロテーゼ、眼球インプラント、歯科インプラント、人工内耳、再建インプラント、陰茎プロテーゼ、括約筋プロテーゼ、心臓ペースメーカー、脳ペースメーカー、呼吸チューブ、静脈カテーテル、カニューレ、針、翼付きカニューレ(バタフライ型)、人工アクセス、チューブ、縫合糸、および医療用ステープル、を含む、またはからなる群から選択される。
【0398】
本発明の特に好ましい実施形態において、医療機器は、カテーテル、ステント、カニューレを含む、またはからなる群から選択される。したがって、これらの実施形態において、医療機器は、好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、血管形成カテーテル、膀胱カテーテル、ポートカテーテル、静脈カテーテル、ステント、生体吸収性ステント、カニューレ、皮下注射針、翼状(バタフライ形)カニューレ、末梢静脈留置カニューレ、および硬膜外カニューレを、含む、またはからなる群から選択される。更に好ましくは、医療機器は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、血管形成カテーテル、およびステントを含む、またはからなる群から選択される。更に好ましくは、医療機器は、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、および血管形成カテーテル、を含む、またはからなる群から選択される。より好ましくは、医療機器は、カテーテルバルーンである。
【0399】
カテーテルバルーンは、その応用分野に関係なく、一般的な生体適合性の柔軟な材料、特に以下でさらに説明するようなポリマー、および特にPA12などのポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリエーテル、ペバックス(Pebax)などで作ることができるが、さらに適切なポリマーの組み合わせで、例えば、これらの材料の重ねた層、並びにこれらの材料のコポリマー、ブレンド、および層とコポリマーの実施形態の組み合わせ、およびそれらのブレンドなどで作ることができる。
【0400】
インプラントは、一般的な生体適合性材料、例えば、医療用ステンレス鋼、チタン、クロム、バナジウム、タングステン、モリブデン、金、鉄、ニチノール、マグネシウム、鉄、亜鉛、前述の金属の合金、セラミック、および高分子の生体安定性または生体吸収性材料、例えばPTFE、ポリスルホン、ポリビニルピロリドン、PA12などのポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリエーテル、シリコーン、PMMA、それらの組み合わせなどで作られることができる。材料は、生体不活性、生体安定性および/または生分解性のいずれかであり、インプラントは、拡張性、圧縮性、または非形状変化(non-shape-changing)である。
【0401】
本発明は好ましくは、医療機器、好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから選択される医療機器に関し、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、および微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、を用いて被覆され、
ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、1μmから300μmの範囲の結晶サイズを有する。
【0402】
本発明は好ましくは、医療機器、好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから選択される医療機器に関し、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、および微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、を用いて被覆され、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、少なくとも80重量%の結晶化度を有する。
【0403】
本発明は好ましくは、医療機器、好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから選択される医療機器に関し、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、および微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、を用いて被覆され、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセルを含む、またはからなる群から選択される。
【0404】
本発明は、好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから選択される医療機器に関し、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、および微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、を用いて被覆され、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセルから選択される。
【0405】
本発明は好ましくは、医療機器、好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから選択される医療機器に関し、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、および微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、を用いて被覆され、
ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、1μmから300μmの範囲の結晶サイズを有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセルを含む、またはからなる群から選択される。
【0406】
本発明は好ましくは、医療機器、好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから選択される医療機器に関し、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、および微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、を用いて被覆され、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、少なくとも80重量%の結晶化度を有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセルを含む、またはからなる群から選択される。
【0407】
本発明は好ましくは、医療機器、好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから選択される医療機器に関し、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、および微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、を用いて被覆され、
ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、1μmから300μmの範囲の結晶サ
イズを有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセルから選択される。
【0408】
本発明は好ましくは、医療機器、好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから選択される医療機器に関し、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、および微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、を用いて被覆され、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、少なくとも90重量%の結晶化度を有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセルから選択される。
【0409】
本発明は好ましくは、医療機器、好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから選択される医療機器に関し、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、および微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、を用いて被覆され、
ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、1μmから300μmの範囲の結晶サイズを有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、少なくとも80重量%の結晶化度を有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセルから選択される。
【0410】
本発明は好ましくは、医療機器、好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから選択される医療機器に関し、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、および微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、を用いて被覆され、
ここで、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールおよび少なくとも一つのタキサンは、10%~30%のトリ-O-アシルグリセロール対90%~70%のタキサンの質量比で存在する。
【0411】
本発明は好ましくは、医療機器、好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから選択される医療機器に関し、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、および微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、を用いて被覆され、
ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、1μmから300μmの範囲の結晶サイズを有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセルを含む、またはからなる群から選択され、
ここで、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールおよび少なくとも一つのタキサンは、10%~30%のトリ-O-アシルグリセロール対90%~70%のタキサンの質量比で存在する。
【0412】
本発明は好ましくは、医療機器、好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから選択される医療機器に関し、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、および微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、を用いて被覆され、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、少なくとも80重量%の結晶化度を有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジ
タキセルを含む、またはからなる群から選択され、
ここで、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールおよび少なくとも一つのタキサンは、10%~30%のトリ-O-アシルグリセロール対90%~70%のタキサンの質量比で存在する。
【0413】
本発明は好ましくは、医療機器、好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから選択される医療機器に関し、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、および微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、を用いて被覆され、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、1μmから300μmの範囲の結晶サイズを有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセルから選択され、
ここで、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールおよび少なくとも一つのタキサンは、10%~30%のトリ-O-アシルグリセロール対90%~70%のタキサンの質量比で存在する。
【0414】
本発明は好ましくは、医療機器、好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから選択される医療機器に関し、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、および微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、を用いて被覆され、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、少なくとも80重量%の結晶化度を有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセルから選択され、
ここで、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールおよび少なくとも一つのタキサンは、10%~30%のトリ-O-アシルグリセロール対90%~70%のタキサンの質量比で存在する。
【0415】
本発明は好ましくは、医療機器、好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから選択される医療機器に関し、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、および微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、を用いて被覆され、
ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、1μmから300μmの範囲の結晶サイズを有し、
ここで、タキサンの少なくとも70%は、10μmから100μmの範囲の結晶サイズを有する微結晶の形態である。
【0416】
本発明は好ましくは、医療機器、好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから選択される医療機器に関し、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、および微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、を用いて被覆され、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、少なくとも80重量%の結晶化度を有し、
ここで、タキサンの少なくとも70%は、10μmから100μmの範囲の結晶サイズを有する微結晶の形態である。
【0417】
本発明は好ましくは、医療機器、好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから選択される医療機器に関し、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウン
デカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、および微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、を用いて被覆され、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセルを含む、またはからなる群から選択され、
ここで、タキサンの少なくとも70%は、10μmから100μmの範囲の結晶サイズを有する微結晶の形態である。
【0418】
本発明は、好ましくは、ステント、またはカニューレから選択される医療機器に関し、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、および微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、を用いて被覆され、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセルから選択され、
ここで、タキサンの少なくとも70%は、10μmから100μmの範囲の結晶サイズを有する微結晶の形態である。
【0419】
本発明は好ましくは、医療機器、好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから選択される医療機器に関し、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、および微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、を用いて被覆され、
ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、1μmから300μmの範囲の結晶サイズを有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセルを含む、またはからなる群から選択され、
ここで、タキサンの少なくとも70%は、10μmから1000μmの範囲の結晶サイズを有する微結晶の形態である。
【0420】
本発明は好ましくは、医療機器、好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから選択される医療機器に関し、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、および微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、を用いて被覆され、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、少なくとも80重量%の結晶化度を有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセルを含む、またはからなる群から選択され、
ここで、タキサンの少なくとも70%は、10μmから100μmの範囲の結晶サイズを有する微結晶の形態である。
【0421】
本発明は好ましくは、医療機器、好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから選択される医療機器に関し、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、および微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、を用いて被覆され、
ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、1μmから300μmの範囲の結晶サイズを有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセルから選択され、
ここで、タキサンの少なくとも70%は、10μmから100μmの範囲の結晶サイズを有する微結晶の形態である。
【0422】
本発明は好ましくは、医療機器、好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから選択される医療機器に関し、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、および微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、を用いて被覆され、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、少なくとも80重量%の結晶化度を有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセルから選択され、
ここで、タキサンの少なくとも70%は、10μmから100μmの範囲の結晶サイズを有する微結晶の形態である。
【0423】
本発明は好ましくは、医療機器、好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから選択される医療機器に関し、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、および微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、を用いて被覆され、
ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、1μmから300μmの範囲の結晶サイズを有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、少なくとも80重量%の結晶化度を有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセルから選択され、
ここで、タキサンの少なくとも70%は、10μmから100μmの範囲の結晶サイズを有する微結晶の形態である。
【0424】
本発明は好ましくは、医療機器、好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから選択される医療機器に関し、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、および微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、を用いて被覆され、
ここで、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールおよび少なくとも一つのタキサンは、10%~30%のトリ-O-アシルグリセロール対90%~70%のタキサンの質量比で存在し、
ここで、タキサンの少なくとも70%は、10μmから100μmの範囲の結晶サイズを有する微結晶の形態である。
【0425】
本発明は好ましくは、医療機器、好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから選択される医療機器に関し、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、および微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、を用いて被覆され、
ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、1μmから300μmの範囲の結晶サイズを有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセルを含む、またはからなる群から選択され、
ここで、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールおよび少なくとも一つのタキサンは、10%~30%のトリ-O-アシルグリセロール対90%~70%のタキサンの質量比で存在し、
ここで、タキサンの少なくとも70%は、10μmから100μmの範囲の結晶サイズを有する微結晶の形態である。
【0426】
本発明は好ましくは、医療機器、好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから選択される医療機器に関し、トリオクタノイルグリ
セロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、および微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、を用いて被覆され、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、少なくとも80重量%の結晶化度を有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセルを含む、またはからなる群から選択され、
ここで、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールおよび少なくとも一つのタキサンは、10%~30%のトリ-O-アシルグリセロール対90%~70%のタキサンの質量比で存在し、
ここで、タキサンの少なくとも70%は、10μmから100μmの範囲の結晶サイズを有する微結晶の形態である。
【0427】
本発明は好ましくは、医療機器、好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから選択される医療機器に関し、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、および微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、を用いて被覆され、
ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、1μmから300μmの範囲の結晶サイズを有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセルから選択され、
ここで、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールおよび少なくとも一つのタキサンは、10%~30%のトリ-O-アシルグリセロール対90%~70%のタキサンの質量比で存在し、
ここで、タキサンの少なくとも70%は、10μmから100μmの範囲の結晶サイズを有する微結晶の形態である。
【0428】
本発明は好ましくは、医療機器、好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから選択される医療機器に関し、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、および微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、を用いて被覆され、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、少なくとも80重量%の結晶化度を有し、
ここで、少なくとも一つのタキサンは、パクリタキセルから選択され、
ここで、少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールおよび少なくとも一つのタキサンは、10%~30%のトリ-O-アシルグリセロール対90%~70%のタキサンの質量比で存在し、
ここで、タキサンの少なくとも70%は、10μmから100μmの範囲の結晶サイズを有する微結晶の形態である。
【0429】
被覆の調製に関して、本発明に係る懸濁物が使用され、懸濁物は、溶媒または溶媒混合物中にトリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つの溶解したトリ-O-アシルグリセロールと共に微結晶の形態のタキサンを含む。
【0430】
本発明は、したがって、懸濁物を用いて被覆された医療機器、好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから選択される医療機器に関し、懸濁物は以下を含む:
a)トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロール、
b)微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン;および
c)溶媒または溶媒混合物であって、溶媒または溶媒混合物中に少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが溶解する、および溶媒または溶媒混合物中に、少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない、または少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが存在する場合、少なくとも一つのタキサンの微結晶が溶解しない。
【0431】
本発明は、したがって、医療機器、好ましくは、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから選択される医療機器に関し、以下のステップを含む方法にしたがって得られる:
a)医療機器表面を有する、カテーテルバルーン、バルーンカテーテル、ステント、またはカニューレから選択される医療機器を提供すること;
b)溶媒または溶媒混合物中に溶解されたトリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択されるトリ-O-アシルグリセロール、並びに微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、を提供すること、ここで、少なくとも一つのタキサンの微結晶は、溶媒または溶媒混合物中に溶解しない、または少なくとも一つのトリ-O-アシルグリセロールが存在する場合に溶解しない;
c)シリンジ法、ピペッティング法、キャピラリー法、フォールドスプレー法、ディッピング法、スプレー法、ドラッギング法、スレッドドラッギング法、液滴ドラッギング法、またはローリング法によって、医療機器の表面に懸濁物を塗布すること、
d)被覆を乾燥すること。
【0432】
本発明のいくつかの実施形態において、医療機器表面上に被覆しているベースを有する医療機器表面を有する医療機器が提供され得る。当該実施形態において、トリオクタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、およびトリウンデカノイルグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つの-O-アシルグリセロール、および微結晶の形態の少なくとも一つのタキサン、を含む本発明に係る懸濁物は、このベース被覆上に塗布される。
【0433】
例えば、医療機器表面は、脱硫酸化され、再アセチル化されたヘパリンなどの半合成ヘパリン誘導体、またはN-カルボキシメチル化され、部分的にN-アセチル化されたキトサンなどのキトサン誘導体の共有結合固定化によって適用されるベース被覆として、血液適合性の抗血栓形成層がさらに提供されてもよい。
【0434】
必要な、または有利な場合、インプラント表面を、例えば、プラズマ工程、温度処理、適切な溶媒を用いて湿らせること、DLC被覆(「ダイヤモンド状炭素」)、テフロン(登録商標)被覆、またはシリコン処理などの表面活性化によって、前処理することができる。適切な溶媒を用いて湿らせることは、付着に良い影響を与えることが示されている。
【0435】
同様に、生分解性および/または生体安定性ポリマーを有するポリマーベース被覆を実現することができる。これらのポリマー被覆は、当然ながら、添加剤、例えば、更なる活性剤、または活性剤の混合物などを含むこともできる。適切な活性剤または活性剤の組み合わせは、抗炎症剤、細胞増殖抑制剤、細胞毒性剤、抗増殖剤、抗微小管剤、抗血管新生剤、抗再狭窄剤(抗再狭窄剤)、抗真菌剤、抗腫瘍剤、抗遊走剤、抗血栓剤、および抗血栓性物質を含む。
【0436】
微結晶の形態のタキサンが医療機器表面に直接的に、または医療機器表面上に適用されない場合、合成の、半合成の、および/または天然起源の生体安定性および/または生体分解性ポリマーまたは多糖類の適切な生体適合性物質を、担体またはマトリックスとして使用することができる。
【0437】
一般に生物学的に安定で、およびゆっくりとしか生分解しないポリマーとして以下を挙げることができる:ポリアクリル酸、およびポリアクリレート、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレートなど、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリエーテルアミド、ポリエチレンアミン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリカルボウレタン、ポリビニルケトン、ポリビニルハライド、ポリビニリデンハライド、ポリビニルエーテル、ポリビニル芳香族化合物、ポリビニルエステル、ポリビニルピロリドン、ポリオキシメチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリオレフィンエラストマー、ポリイソブチレン、EPDMゴム、フルオロシリコーン、カルボキシメチルキトサン、ポリエチレンテレフタレート、ポリバレレート、カルボキシメチルセルロース、セルロース、レーヨン、レーヨントリアセテート、硝酸セルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、エチルビニルアセテートコポリマー、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、エポキシ樹脂、ABS樹脂、EPDMゴム、シリコーンプレポリマー、シリコーン、例えば、ポリシロキサンなど、ポリビニルハロゲン、およびコポリマー、セルロースエーテル、セルローストリアセテート、キトサン、キトサン誘導体、重合性油、例えば、亜麻仁油など、およびコポリマー、例えば、亜麻仁油、およびそれらのコポリマーおよび/または混合物。
【0438】
一般に生分解性、生分解性または再吸収性ポリマー例えば:ポリバレロラクトン、ポリ-ε-デカラクトン、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリラクチドとポリグリコリドとのコポリマー、ポリ-ε-カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート、ポリヒドロキシブチレート-コ-バレレート、ポリ(1,4-ジオキサン-2,3-ジオン)、ポリ(1,3-ジオキサン-2-オン)、ポリ-パラ-ジオキサノン、ポリ無水物、例えば、ポリマレイン酸無水物など、ポリヒドロキシメタクリレート、フィブリン、ポリシアノアクリレート、ポリカプロラクトンジメチルアクリレート、ポリ-b-マレイン酸、ポリカプロラクトンブチルアクリレート、マルチブロックポリマー、例えば、オリゴカプロラクトンジオールおよびオリゴジオキサノンジオールなど、ポリエーテルエステルマルチブロックポリマー、例えば、PEGおよびポリ(ブチレンテレフタレートなど、ポリピボトラクトン、ポリグリコール酸トリメチルカーボネート、ポリカプロラクトングリコリド、ポリ(g-エチルグルタメート)、ポリ(DTH-イミノカーボネート)、ポリ(DTE-コ-DT-カーボネート)、ポリ(ビスフェノールA-イミノカーボネート)、ポリオルトエステル、ポリグリコール酸トリメチルカーボネート、ポリトリメチルカーボネート、ポリイミノカーボネート、ポリ(N-ビニル)ピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエステルアミド、グリコール化ポリエステル、ポリホスホエステル、ポリホスファゼン、ポリ[p-カルボキシフェノキシ])プロパン]、ポリヒドロキシペンタン酸、ポリエチレンオキシド-プロピレンオキシド、軟質ポリウレタン、主鎖にアミノ酸残基を有するポリウレタン、ポリエーテルエステル、例えば、ポリエチレンオキシドなど、ポリアルケノキサラート、ポリオルトエステルおよびそれらのコポリマー、カラギーナン、フィブリノーゲン、デンプン、コラーゲン、タンパク質ベースのポリマー、ポリアミノ酸、合成ポリアミノ酸、ゼイン、変性ゼイン、ポリヒドロキシアルカノエート、ペクチン酸、アクチン酸、変性および未変性フィブリン、およびカゼイン、カルボキシメチルサルフェート、アルブミン、ヒアルロン酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、デキストラン、b-シクロデキストリン、PEGとポリプロピレングリコールとのコポリマー、アラビアゴム、グアー、ゼラチン、コラーゲン、コラーゲン-N-ヒドロキシスクシンイミド、脂質およびリポイド、架橋度の低い重合性油、上記の物質の修飾体およびコポリマー、および/または混合物を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0439】
【
図1】
図1は、生体内の血管における自然な経路を模倣するシリコーンチューブから形成されたモデルを示す。a)模擬末梢カテーテル;b)模擬大腿動脈。
【
図2】a)は、被覆されたカテーテルバルーンにおける粒子放出を決定するための曲げ試験を示し、b)は、被覆されたカテーテルバルーンの粒子放出を測定するためのエッジ衝撃試験を示す。
【
図3】
図3は、先行技術の被覆されたカテーテルバルーンを示す。a)明らかに、均一な被覆は欠いており、表面も不均一であることを示し、b)被覆は膨張中に崩れ落ちる。
【
図4】
図4は、カテーテルバルーンの全長に沿って剥離している大きな被覆断片を有する先行技術の被覆されたカテーテルバルーンを示す。
【
図5】
図5は、膨張中および膨張後のトリオクタノイルグリセロール/PTXを有する被覆を示し、均一な表面構造を有する均一な被覆であり、被覆はバルーンの膨張中に剥離しない。
【発明を実施するための形態】
【0440】
[実施例]
実施例1
微結晶パクリタキセルの調製
本発明に係る結晶懸濁物の調製のために、パクリタキセルの微結晶を最初に提供した。結晶性パクリタキセルの調製のための結晶化工程は、先行技術から知られている。先行技術からよく知られている結晶化工程は以下を含む:
冷却による結晶化:パクリタキセルを、室温またはそれより高い温度で飽和まで溶媒に溶解し、例えば0℃などのより低温で結晶化させることができる。結晶サイズ分布は、制御された冷却速度によって影響を受ける可能性がある。例えば、トルエン、アセトニトリル、エタノール、ジメチルホルムアミド、メタノールなどの溶媒は、結晶化に適切な溶媒である。
【0441】
種結晶の添加による結晶化:パクリタキセルを溶媒中に飽和まで溶解し、種結晶を添加して結晶化を開始し、過飽和の制御された低下を達成する。
貧溶媒の添加による結晶化:パクリタキセルを溶媒に溶解し、その後、非溶媒または水を添加する。ここで二相混合物も可能である。極性有機溶媒、例えば、アセトニトリル、エタノール、ジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシドなどを、パクリタキセルを溶解するための溶媒として使用することができる。適切な非溶媒は、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサンまたはヘプタンを含む。溶媒混合物を、結晶化のために静置させ、撹拌し、またはゆっくり濃縮し、または真空内で蒸発させる。薬剤の結晶サイズおよび結晶化度は、非極性溶媒の制御された添加によって影響されることができる。大きな結晶を生成するために過飽和をより遅くするべきであり、および小さな結晶を生成するために、過飽和をより速くするべきである。結晶サイズを制御するために貧溶媒の添加速度を制御することは、よく知られている。
【0442】
微結晶の生成に関して、結晶化を、超音波によって助けることもできる。結晶サイズは、超音波によって影響されることができることが一般に知られている。これに関連して、結晶化および核生成を開始するために、超音波を、結晶化の開始時に使用することができ、更なる結晶成長を伴って、その後の結晶成長が妨げられずに進行し、したがって、より大きな結晶が成長することができる。一方、過飽和溶液への連続的な超音波処理の適用は、この工程において多くの核が形成されるので、結果的に多数の小さな結晶の成長をもたらす。他の選択肢は、適合した結晶サイズが達成されるような方法で結晶成長に影響を与えるようにパルスモードで超音波を用いて超音波で分解することである。
【0443】
微粉化、粉砕、またはふるい分けなどの先行技術から知られる他の工程も、所望の結晶
サイズを提供するために使用することができる。一つの可能性は、結晶を粉砕することであり、これは結晶化中に湿式粉砕によって行うこともできる。粉砕は、異なる結晶サイズ、すなわち、より広範な結晶サイズ分布を得るために有利であることができる。粉砕は、結晶サイズ範囲内の全ての所望サイズを可能にする。例えば、単離および乾燥の後に特別なふるい分け工程などを行うことによって、より均一な結晶サイズを提供することができる。先行技術から知られる特別なふるい分け装置を、この目的のために使用することができる。ふるい分け工程において、パクリタキセルを、例えば、ふるい分けの積み重ねを通してふるい分け、異なるサイズ範囲に分割することができる。
【0444】
微結晶性パクリタキセの調製のために、制御された結晶化を用いての結晶化工程を実行した。したがって、パクリタキセルを、微結晶の形態で直接的に得ることができる。結晶化後、微結晶を単離し、洗浄し(ヘプタン)、乾燥した。任意に、その後、ふるい分け方法によって異なる結晶サイズへのさらなる分離を実行し、微結晶のより狭い結晶サイズ分布を提供した。
【0445】
得られたパクリタキセルの微結晶を、以下の実施例において結晶懸濁物を調製するために使用した。
実施例2
トリ-O-アシルグリセロールと、微結晶パクリタキセルとを有する結晶懸濁物の調製
第一のステップにおいて、トリ-O-アシルグリセロールの溶液を、溶媒混合物中で最初に調製した。続いて、溶液をパクリタキセルの微結晶と組み合わせて、トリ-O-アシルグリセロールを、安定な結晶懸濁物を得るために使用することができるか調査した。溶媒および溶媒混合物の組成は、使用される活性剤に応じて変化した。実施例において調製された溶液および溶媒混合物は、パクリタキセルに適用される。溶液の調製に関して、ここでは例として酢酸エチル/ヘプタン溶媒混合物を使用した。
【0446】
1.トリ-O-アシルグリセロールを有する溶液の調製
溶液を調製するために、各トリ-O-アシルグリセロールを、最初に極性有機溶媒に溶解し、その後、非極性溶媒を添加した。
【0447】
溶液を調製するために、770mgの各トリ-O-アシルグリセロールを14gの酢酸エチル(15.6mL)に溶解した。その後、57.4gのn-ヘプタン(84.4mL)を添加した。続いて、均質化および濾過を行った。溶媒混合物の総量は、100mLである。
溶液1a)
トリ-O-アシルグリセロール:トリオクタノイルグリセロール
溶液1b)
トリ-O-アシルグリセロール:トリデカノイルグリセロール
溶液1c)
トリ-O-アシルグリセロール:トリヘキサノイルグリセロール
溶液1d)
トリ-O-アシルグリセロール:トリブタノイルグリセロール
溶液1e)
トリ-O-アシルグリセロール:770mgトリアセチン
溶液1f)
トリ-O-アシルグリセロール:トリドデカノイルグリセロール
溶液1g)
トリ-O-アシルグリセロール:シトリル/ラクチル/リノレイル/オレイル-O-グリセロール(IMWITOR(登録商標))
溶液1h)
トリ-O-アシルグリセロール:ジオクタノイルグリセロール
溶液1i)
トリ-O-アシルグリセロール:モノオクタノイルグリセロール
溶液1j)
トリ-O-アシルグリセロール:トリテトラデカノイルグリセロール
2.パクリタキセルの微結晶の再分散
正確に計量された量の事前に調製されたパクリタキセルの乾燥微結晶に対して、トリ-O-アシルグリセロールおよび任意に抗酸化剤を含む規定量の溶液を注意深く添加する。パクリタキセルの微結晶が溶液中に溶けないかどうか、および懸濁液が形成されるかどうかを調査した。
【0448】
結晶懸濁物を調製することができるかどうかを確認するために、200mgの微結晶の形態のパクリタキセルそれぞれに、10mLの溶液1a)から1j)のいずれか一つを室温で注意深く添加した。各溶液について10mLの溶液の6つの混合物を調製した。組み合わせた後、パクリタキセルの微結晶が溶液に直接的に溶解するかどうかを試験した。微結晶が直ちに溶解しなかった溶液については、懸濁物を100時間静置させ、または50℃に加熱して、懸濁物が滅菌条件下で安定して残ったかどうかを確認し、微結晶が溶解した場合は再び確認した。
【0449】
【0450】
結果:
トリ-O-アシルグリセロールであるトリオクタノイルグリセロールおよびトリデカノイルグリセロールを用いて安定な結晶懸濁物を調製することができ、結晶懸濁物は100時間後および50℃への温度上昇下でさえも安定のままであった。トリオクタノイルグリセロールおよびトリデカノイルグリセロールを有する溶液において、微結晶の沈降は起こらず、微結晶は結晶懸濁物中に「浮遊」し、均一に分布される。
【0451】
結晶サイズ、粒子サイズ分布(すなわち、結晶サイズ分布)、および結晶の形状を評価するために、各場合においてパスツールピペットを用いて試料を採取し、SEM試料プレートのスライド上に滴下した。評価のために、SEM画像を 200×および1000×の倍率で撮影した。
【0452】
トリヘキサノイルグリセロールを有する溶液において、パクリタキセルの微結晶は直接溶解しなかった。これらの懸濁物において、微結晶は、トリオクタノイルグリセロールおよびトリデカノイルグリセロールを有する結晶懸濁物とは対照的に、100時間後に均一に存在しなかった。温度を上昇させるとパクリタキセルの微結晶は急速に溶解した。
【0453】
トリドデカノイルグリセロールおよびトリテトラデカノイルグリセロールを有する溶液において、パクリタキセルの微結晶は直接溶解しなかった。しかしながら、これらの「懸濁物」は不安定であることも明らかになった。トリドデカノイルグリセロールおよびトリテトラデカノイルグリセロールの場合、パクリタキセルの微結晶は100時間後でも完全には溶解しなかった。しかしながら、パクリタキセルの微結晶は、いまだに安定した状態であった。しかしながら、トリオクタノイルグリセロールおよびトリデカノイルグリセロールを有する結晶懸濁液とは対照的に、微結晶は均一に分布されておらず、および結晶の沈降が発生した。50℃への温度の上昇は、この工程を加速させ、微結晶が溶解した場合は再び確認した。
【0454】
結晶サイズ、粒子サイズ分布(すなわち、結晶サイズ分布)、および結晶の形状を評価するために、パスツールピペットを使用して一つの試料を採取し、SEM試料プレートのホイル上に一滴を置いた。追加の試料を沈降物から採取し、および一滴をSEM試料プレートのスライド上に置いた。評価のために、SEM画像を200×および1000×の倍率で撮影した。評価のために、SEM画像を200×および1000×の倍率で撮影した。
【0455】
SEM画像は、トリドデカノイルグリセロールおよびトリテトラデカノイルグリセロールを含む結晶懸濁液の微結晶が無傷なままではなかったことを示した。結晶サイズ分布は、最初に使用された微結晶パクリタキセルの結晶サイズ分布ともはや一致せず、特に沈降物から採取された試料の結晶サイズ分布において、より大きな結晶が検出された。
【0456】
トリ-O-アシルグリセロールの他の溶液を用いて結晶懸濁物を調製することはできなかった。したがって、安定な結晶懸濁物は、トリオクタノイルグリセロールおよびトリデカノイルグリセロールを使用してのみ調製することができた。
【0457】
実施例3
さらなるトリ-O-アシルグリセロール、および微結晶パクリタキセルを有する結晶懸濁物の調製
実施例2の結果に基づいて、3つのトリ-O-アシルグリセロールである、トリヘプタノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロールおよびトリウンデカノイルグリセロールの更なる溶液を調製し、これらを用いて安定な結晶懸濁物を得ることができるどうかを調査した。ここでは、溶液を調製するために酢酸エチル/ヘプタン溶媒混合物も使用した。
【0458】
1.トリ-O-アシルグリセロールを有する溶液の調製
溶液を調製するために、770mgのそれぞれトリ-O-アシルグリセロールを14gの酢酸エチル(15.6mL)に溶解した。その後、57.4gのn-ヘプタン(84.4mL)を添加した。続いて、均質化および濾過を行った。溶媒混合物の総量は100mLである。
溶液2a)
トリ-O-アシルグリセロール:トリヘプタノイルグリセロール
溶液2b)
トリ-O-アシルグリセロール:トリノナノイルグリセロール
溶液2c)
トリ-O-アシルグリセロール:トリウンデカノイルグリセロール
2.パクリタキセルの微結晶の再分散
結晶懸濁物を調製するために、実施例2と同様に、200mgのパクリタキセルをそれぞれ、10mLの溶液2a)から溶液2c)に室温で注意深く加えた。各溶液につき10mLの溶液を有する3つの混合物を調製した。組み合わせた後、微結晶がこれらの溶液に直接溶解するかどうかを試験した。微結晶が直ちに溶解しなかった溶液について、抗酸化剤を有さない溶液の懸濁物を100時間静置させ、または50℃に加熱し、懸濁物が滅菌条件下で安定して残ったかどうかを確認し、微結晶が溶解した場合は再び確認した。
【0459】
直接比較のために、溶液1a)から溶液1d)に関して実施例2の結果を以下の表に含む。
【0460】
【0461】
結果
トリ-O-アシルグリセロールであるトリノナノイルグリセロールおよびトリウンデカノイルグリセロールを、安定な結晶懸濁物を調製するために使用し、結晶懸濁物は24時
間~48時間後および50℃への温度上昇下で安定のままであった。トリノナノイルグリセロールおよびトリウンデカノイルグリセロールを有する溶液において、微結晶の沈降は起こらず、微結晶は結晶懸濁物中に「浮遊」し、均一に分布された。
【0462】
結晶サイズ、粒子サイズ分布(すなわち、結晶サイズ分布)、および結晶の形状を評価するために、各場合においてパスツールピペットを用いて試料を採取し、SEM試料プレートのスライド上に滴下した。評価のために、SEM画像を 200×および1000×の倍率で撮影した。
【0463】
SEM画像は、トリ-O-アシルグリセロールであるトリノナノイルグリセロールおよびトリウンデカノイルグリセロールを含む結晶懸濁物の微結晶が無傷のままであったことを示した。パクリタキセルの微結晶は一貫して針状であった。結晶サイズ分布も、使用された微結晶パクリタキセルの結晶サイズ分布と一致し続けた。
【0464】
トリヘプタノイルグリセロールを有する溶液において、パクリタキセルの微結晶は直接溶解しなかった。しかしながら、パクリタキセルの微結晶は100時間後に部分的に溶解し、温度を上昇させるとパクリタキセルの微結晶は溶解した。
【0465】
結晶サイズ、粒子サイズ分布(すなわち、結晶サイズ分布)、および結晶の形状を評価するために、各場合においてパスツールピペットを使用して試料を採取し、SEM試料プレートのスライド上に滴下した。評価のために、SEM画像を200×および1000×の倍率で撮影した。
【0466】
SEM画像は、トリヘプタノイルグリセロールを有する結晶懸濁液の微結晶が無傷なままではなかったことを示した。結晶サイズ分布は、最初に使用された微結晶パクリタキセルの結晶サイズ分布ともはや一致しなかった。
【0467】
したがって、安定な結晶懸濁物は、更にトリ-O-アシルグリセロールであるトリノナノイルグリセロールおよびトリウンデカノイルグリセロールを用いて調製することができた。
【0468】
実施例4
トリオクタノイルグリセロールおよびパクリタキセル(PTX)を含む3%および1%結晶懸濁物の調製
I.トリオクタノイルグリセロール溶液の調製
Ia)
3%のPTX結晶含有量を有する100mlバッチについての溶媒混合物の例。14gの酢酸エチル中に、770mgのトリオクタノイルグリセロールを溶解する。この溶液に、57.4gのn-ヘプタンを添加し、均質化し、および濾過する。
【0469】
Ib)1%PTX結晶含有量を有する100mlバッチについての溶液混合物の実施例。14gの酢酸エチル中に、250mgのトリオクタノイルグリセロールおよび20mgのツイーン(Tween)80を溶解する。この溶液に57.4gのn-ヘプタンを添加し、均質化し、および濾過する。
【0470】
II.結晶懸濁物の調製
規定量の溶媒混合物を、正確に計量された量の事前に調製され乾燥活性剤結晶に注意深くに添加する。結晶は溶媒混合物中に不溶であり、溶媒混合物と共に懸濁物を形成する。溶液Ia)について、微結晶の形態の3gのパクリタキセルを使用し、および溶液Ib)について、1gの微結晶の形態のパクリタキセルを使用した。
【0471】
実施例5
異なる割合のトリ-O-アシルグリセロールを有するパクリタキセルの微結晶を含む結晶懸濁物の調製
実施例2および実施例3において、トリ-O-アシルグリセロールであるトリオクタノイルグリセロール、トリデカノイルグリセロール、トリノナノイルグリセロール、およびトリウンデカノイル-グリセロールについて、安定な結晶懸濁物は、トリ-O-アシルグリセロールとパクリタキセルの微結晶との質量比が20:80で得られることができることを示した。
【0472】
この目的のために、異なる割合のトリ-O-アシルグリセロールを有するトリオクタノイルグリセロールまたはトリデカノイルグリセロールの溶液を使用して更なる調査を実施し、トリ-O-アシルグリセロールと微結晶パクリタキセルとの最適質量比を明らかにした。溶液を調製するために、適切な量の各トリ-O-アシルグリセロールを、14gの酢酸エチル(15.6mL)に溶解した。その後、57.4gのn-ヘプタン(84.4mL)を添加した。続いて、均質化および濾過を行った。溶媒混合物の総量は100mLである。
溶液3a)
トリ-O-アシルグリセロール:トリオクタノイルグリセロール
計量:300mg
溶液3b)
トリ-O-アシルグリセロール:トリオクタノイルグリセロール
計量:450mg
溶液3c)
トリ-O-アシルグリセロール:トリオクタノイルグリセロール
計量:600mg
溶液3d)
トリ-O-アシルグリセロール:トリオクタノイルグリセロール
計量:900mg
溶液3e)
トリ-O-アシルグリセロール:トリオクタノイルグリセロール
計量:1200mg
溶液3f)
トリ-O-アシルグリセロール:トリオクタノイルグリセロール
計量:1500mg
溶液4a)
トリ-O-アシルグリセロール:トリデカノイルグリセロール
計量:300mg
溶液4b)
トリ-O-アシルグリセロール:トリデカノイルグリセロール
計量:450mg
溶液4c)
トリ-O-アシルグリセロール:トリデカノイルグリセロール
計量:600mg
溶液4d)
トリ-O-アシルグリセロール:トリデカノイルグリセロール
計量:900mg
溶液4e)
トリ-O-アシルグリセロール:トリデカノイルグリセロール
計量:1200mg
溶液4f)
トリ-O-アシルグリセロール:トリデカノイルグリセロール
計量:1500mg
【0473】
【0474】
【0475】
結果;
トリ-O-アシルグリセロールであるトリオクタノイルグリセロールおよびトリデカノイルグリセロールの異なる割合を用いて、安定な結晶懸濁物を微結晶パクリタキセルを用いて調製することができた。トリオクタノイルグリセロールおよびトリデカノイルグリセロールの異なる割合を有する溶液に関して、特に、20:80の比率を有する結晶懸濁液は、100時間後でさえも優れた安定性を有した。
【0476】
実施例6
異なる溶媒混合物中に微結晶パクリタキセルを含む結晶懸濁物の調製
前の実施例の結果に基づいて、微結晶パクリタキセルの結晶懸濁物の調製のための異なる溶媒混合物を試験した。前の実施例において使用された酢酸エチル/ヘプタンの溶媒混合物は、約85:15(ヘプタン:酢酸エチル)の割合を有する。
【0477】
結晶懸濁液の調製のための溶媒混合物を更に調査するために、極性有機溶媒であるアセトン、エタノール、イソ-プロパノールおよび酢酸エチルと、非極性有機溶媒であるヘキサン、ヘプタンおよびシクロヘキサンとの溶媒混合物を、異なる割合で調製した。
【0478】
溶液を調製するために、770mgのトリオクタノイルグリセロールを極性溶媒中に溶解した。その後、非極性溶媒を添加した。その後、それを均質化し、および濾過した。溶媒混合物の総量は、各場合において100mLである。
【0479】
結晶懸濁液を調製することができたかどうかを試験するために、10mLの各溶液を、室温で微結晶の形態の200mgのパクリタキセルに注意深く添加した。混合後、安定な結晶懸濁液を得られたかどうかを試験した。
【0480】
【0481】
【0482】
【0483】
安定な結晶懸濁物を、様々な溶媒混合物を使用して微結晶パクリタキセルを用いて調製することができた。非極性溶媒を少なくとも50体積%含有すると、非常に安定な結晶懸濁物につながることを示している。
【0484】
実施例7
トリオクタノイルグリセロールを含む微結晶パクリタキセルの結晶懸濁液を用いてのバルーンカテーテルの被覆
マイクロドージング法、例えば、ピペッティング法または液滴ドラッギング法などにおける液滴投与技術を使用して、トリオクタノイルグリセロール(PTXに基づいて20wt%)を含む2%PTX懸濁物を用いて4x40mmのバルーンカテーテルを被覆した。結晶が均一に分布されているバルーン表面上に、同様に均一な濃度の活性剤を有する均一な被覆を全体にわたって生成することが可能であった。等しいサイズの断片に分割されたバルーンカテーテル上の活性剤の回収率に関する研究は、被覆の均一性、したがって結晶懸濁物を使用することにおける成功、および100%の回収率を確認した。
【0485】
実施例8
本発明に係らないトリアシルグリセロールおよび微結晶パクリタキセルを含む結晶懸濁物を用いてのバルーンカテーテルの被覆
実施例2において、微結晶パクリタキセルは、トリドデカノイルグリセロール、またはトリテトラデカノイルグリセロールを含む溶液に完全には溶解しないことが明らかになった。トリドデカノイルグリセロールまたはトリテトラデカノイルグリセロールを含む懸濁物は不安定であることが明らかになった。微結晶パクリタキセルを用いてのバルーンカテーテルの被覆における安定性、柔軟性および付着性を調査するために、本発明に係らないトリドデカノイルグリセロールまたはトリテトラデカノイルグリセロール(PTXに基づいて20重量%)を含む微結晶パクリタキセルの懸濁物を新たに調製し、および被覆用に直接使用した。
【0486】
4x40mmのバルーンカテーテルを、トリドデカノイルグリセロールまたはトリテトラデカノイルグリセロール(PTXに基づいて20重量%)を含む2%PTX懸濁液を用いて、マイクロドージング法、例えば、ピペッティング法、または液滴ドラッギング法などの液滴投与技術を使用して、それぞれ被覆した。被覆は、これらの懸濁物を用いて十分に均一に塗布されないことを明らかにした。
【0487】
続いて、これらの被覆されたバルーンカテーテルを、黒いパッド上の適切な物体のエッジにぶつけた(エッジ衝撃試験)。その後、パッド上に収集された粒子を、顕微鏡によって測定し、分離された被覆のサイズ分布を測定した。その後、膨張したバルーンをPBS溶液に浸し、まだ緩く付着している任意の残存する粒子も落とし、評価に含めた。更なる調査において、追加の被覆されたバルーンカテーテルを、黒いパッド上で規定通りに膨張させ、および様々な方向に曲げた(曲げ試験)。その後、パッド上に収集された粒子を、顕微鏡によって測定し、および分離させた被覆のサイズ分布を測定した。その後、膨張したバルーンを、PBS溶液に浸し、したがって、緩く付着している任意の残存する粒子も落とすことが可能であり、および評価に含めることが可能であった。
【0488】
本発明に係る被覆と本発明に係らない被覆とのエッジ衝撃試験および曲げ試験の結果の比較
エッジ衝撃試験および曲げ試験は、本発明に係るトリオクタノイルグリセロールを有する被覆に関しての全粒子損失、および粒子サイズ分布/バルーン表面積は、本発明に係らないトリドデカノイルグリセロールまたはトリテトラデカノイルグリセロールを有する被覆における全粒子損失、および粒子サイズ分布/バルーン表面積よりもはるかに低いことを明らかに示した。パクリタキセルの微結晶およびトリオクタノイルグリセロールを有する本発明に係る被覆についての粒子放出は、粒子がほとんど分離しないことを示した。本発明に従って被覆されたバルーンカテーテルは、先行技術よりもはるかに低い決定された粒子数を有する。
【0489】
実施例9
インビトロモデルを使用して移植中の粒子放出(「崩壊(crumble)試験」)、活性剤または被覆の損失の測定、インプラント表面の事前湿潤、均一な被覆の測定
1.粒子放出(「崩壊(crumble)試験」)
表面上の被覆における機械的接着を確認するために、粒子放出が測定され(「崩壊(crumble)試験」)、ここで、表面から放出される粒子および粒子サイズがどのくらいか、したがって、被覆された医療機器がエッジに衝撃を受けて曲がる(バルーンの膨張中および膨張後)場合に、失われるかを決定する。この目的のために、被覆されたインプラントは、最大3回の機械的試験を受ける。計量された被覆インプラントは、試験する前後に計量される。
a)エッジ衝撃試験(
図2b)
被覆されたバルーンカテーテルを、黒いパッド上で適切な物の硬い(鋭い)エッジに対して軽くぶつける。その後、パッド上に収集された粒子を、顕微鏡によって測定し、分離された被覆のサイズ分布を測定する。その後、膨張したバルーンを、PBS溶液に浸す。このことは、緩く付着している任意の残存する粒子も落とす原因となり、評価に含めることが可能である。
b)曲げ試験(
図2a)
被覆されたバルーンカテーテルを、規定通りに膨張させ、および黒いパッド上で手によって様々な方向に曲げる。その後、パッド上に収集された粒子を、顕微鏡によって測定し、分離された被覆のサイズ分布を測定する。その後、膨張したバルーンを、PBS溶液に浸す。このことは、緩く付着している任意の残存する粒子も落とす原因となり、評価に含めることが可能である。
c)付着試験
この目的のために、特に、より長いバルーンカテーテルの場合には、例えば、長さ150mmの末梢バルーンを収縮させ、および膨張させ、適切な直径を有する丸い容器(例えば:試験管、直立シリンダー、または類似のもの)に巻き付けて、一方で、粉(crumbs)が形成されていないかどうかを確認し、他方で、被覆がバルーンカテーテルから分離し血管表面に付着しているかいないかを確認する。滑らかな物体(好ましくは、カテーテルを十分に曲げることができ、黒いパッド上に落ちているか、かつどれくらい落ちているかを確認することができるように周囲から適合するガラスの実験用容器)の周囲を曲げる。加水分解チューブは、12.8mmの直径を有する。バルーンを、加水分解チューブの周りで壁に接触するように曲げる。ガラス上の汚れた磨耗は許容でき、崩れかけの塊は許容できない。
【0490】
「崩壊(crumble)試験」は、全ての試料における総粒子損失および粒子サイズ分布/バルーン表面積が、FDAガイドラインをはるかに下回ることを明確に示す。トリオクタノイルグリセロールを用いると、1μg/mm2のPTX微結晶または3μg/mm2のPTX微結晶を用いる負荷に関係なく、放出される粒子が大幅に少なく、および市販の、したがって承認された被覆バルーンカテーテルについて得られる値よりもはるかに低いことを表13において明確に明らかにすることができる。本発明に係るパクリタキセルおよびトリオクタノイルグリセロールの微結晶を用いて被覆すること(ここでは異なるBMTカテーテルバルーン上に)に関して全ての測定された粒径範囲における粒子放出は、実質的に粒子を分離することができないことを示す。本発明に係る被覆された全てのバルーンカテーテルは、先行技術よりもはるかに低い測定された粒子数を有する。
【0491】
したがって、本発明に係るパクリタキセル被覆されたバルーンの微結晶の結晶被覆における柔軟性および安定性は、承認された基準および先行技術をはるかに上回ることを明らかにすることができる。
【0492】
【0493】
膨張中および膨張後のトリオクタノイルグリセロール/PTXを用いての結晶被覆は、目視検証すると、均一な表面構造を有する均一な被覆を示す。バルーンの膨張中に被覆が崩れ落ちることはない。
【0494】
優れた柔軟性および実質的に無損失の接着に加えて、本発明に係る結晶被覆は、所要の、および必要な温度安定性、滅菌性(ETO滅菌が好ましい)および保存可能期間も示す。
【0495】
2.インビトロ(in vitro)モデルを使用した移植中の活性剤または被覆の損失の決定
バルーンカテーテルが移植部位まで移動しなければならない血管を通る自然の大抵は湾曲した経路をシミュレーションするために、生体内の血管の自然な経路を模倣するシリコーンチューブモデルが形成される(
図1aおよび
図1bを参照)。
【0496】
カテーテルを、動脈をシミュレーションするシリコーンチューブに挿入し、膨張させる。シリコーンチューブは、定められた量の発熱物質を含まない水で事前に充填される。60秒後、バルーンを収縮させ(真空に引き)、慎重に引き抜く。チューブからの液体が容器に完全に集められることを確実にするように注意する。続いて、規定量の水を用いて洗い流し、さらに収集する。粒子分析(粒子サイズ分布および定量化)を、LPC(液体粒子カウンター)によって実行する。
【0497】
【0498】
【0499】
メドトロニック社(Medtronic)のインパクト パシフィック(In.Pact Pacific)、ビーブラウン社(BBraun)のパッコキャス(Paccocath)と、トリオクタノイルグリセロール/PTX(1μm/mm
2)を用いて被覆された本発明に係るバルーンカテーテルとの間の光学的比較は、膨張後の柔軟性および表面付着性の違いを明らかに示す(
図3~
図5を参照)。したがって、膨張単独で、次の欠陥を明らかにする。
【0500】
メドトロニック社(Medtronic)のインパクト パシフィック(In.Pact Pacific)は、被覆の均一の欠如を明らかに示し、表面も不均一であり、被覆は膨張中に崩れ落ちる(
図3)。
【0501】
ビーブラウン社(BBraun)のパッコキャス(Paccocath)を膨張させると、カテーテルバルーンの全長に沿って被覆の大きな部分が剥がれ落ちる(
図4)。
【0502】
対照的に、トリオクタノイルグリセロール/PTXを有する被覆は、膨張中および膨張後に均一な表面質感を有する均一な被覆を示し、被覆はバルーンの膨張中に剥がれ落ちない(
図5)。
【0503】
優れた柔軟性および実質的に損失のない付着に加えて、本発明に係る被覆は、所要の、および必要な温度安定性、滅菌性(ETO滅菌が好ましい)および保存期間も示す。
【0504】
3.均一な被覆の測定
この目的のために、被覆された計量バルーンを固定し、膨張させる。その後、バルーンを、メスを用いてできるだけ同じサイズの一片に切断する、例えば、40mmの長さのバルーンを4ピースに、120mmの長さのバルーンを6ピースに分割することができる。最初に、バルーンを縦半分に切り、層の厚さを、マイクロメーターを用いて測定する。その後、バルーンを分割し、そのピースを、計量し、さらに層の厚さを、マイクロメーターを用いて測定する。
【0505】
被覆を、規定量のアセトン中にそれぞれ溶解し、活性剤の量を、HPLCによって決定する。バルーン断面積を考慮して、結果を互いに比較する。
全ての場合において、トリオクタノイルグリセロール、またはトリデカノイルグリセロールの存在は、特に安定で柔軟な被覆を得ること、パクリタキセルも結晶の形態で非常によく付着し、パクリタキセルは標的部位との接触時間中にのみ放出されることが明らかにされている。
【0506】
実施例10
本発明に係らない結晶被覆との比較
パクリタキセル微結晶の結晶被覆および「溶媒結合」
パクリタキセル結晶を乾燥物質(粉末)としてバルーンカテーテルにどの程度適用することができるかを試験した。とりわけ、結晶の付着性を評価した。4.0×60mmのバルーンサイズを有するPTAカテーテルを、被覆の適用のために使用した。
【0507】
最初に、純粋な結晶粉末の適用を行った。この目的のために、粉末を特注のボウルに充填し、バルーンと接触させる。その工程において、回転するバルーンは、表面に付着する結晶を拾い上げる。その後、溶媒を慎重にスプレーして結晶をわずかに溶解し、したがって、結晶は、続く乾燥後にバルーン表面により良く付着するようにした。微結晶が無傷のまま残存しないことを示すことができた。「崩壊(crumble)試験」は、総粒子損失および粒子放出が非常に高いことを明らかに示した。被覆は、バルーン表面への付着が不十分である。
【0508】
市販の接着剤またはトリオクタノイルグリセロール溶液のベースコートと、トリオクタノイルグリセロール溶液を有する任意のトップコートとを有するパクリタキセル微結晶の結晶被覆
パクリタキセル結晶を乾燥物質(粉末)としてバルーンカテーテルにどの程度適用することができるかを試験した。とりわけ、結晶の付着性を評価した。4.0×60mmのバルーンサイズを有するPTAカテーテルを、被覆の適用のために使用した。
【0509】
最初に、バルーンへの結晶の付着を確実にするためにベースコートを適用した。実験設定の適合性を試験するために、市販の医療用接着剤(ヘンケル社(Henkel))を最初に使用した。
【0510】
市販の接着剤(ウフ社(Uhu))のベースコート:接着剤をチューブから直接的に薄く適用し、回転バルーン上に均一に分散させる。続いて結晶を適用する。
【0511】
さらに、トリオクタノイルグリセロールを、ベース被覆として使用した。ベース被覆は、回転カテーテル上でピペッティングすることによって適用される。ベース被覆を約10分間乾燥後、純粋な結晶粉末を適用する。この目的のために、粉末を特注の皿に充填し、バルーンと接触させる。その工程において、回転するバルーンは、表面に付着する結晶を拾い上げる。
【0512】
溶液の組成:
84.4% n-ヘプタン(体積%)
15.6% 酢酸エチル(体積%)
0.05% ブチル化ヒドロキシトルエン(質量/体積)
200μlのトリオクタノイルグリセロールを2mlの溶液に溶解する。2×50μlのベース被覆溶液を適用する。
【0513】
トリオクタノイルグリセロールを使用した場合、結晶はバルーン表面へ付着したが、結晶同士の付着は、十分ではなかったことを示すことができた。
したがって、第3被覆ステップにおいて、トリオクタノイルグリセロールを有するトップコートを、ピペットを用いて適用し、付着性を高めた。付着性を「曲げ試験」により評価した。曲げ試験は、被覆されたバルーンを直径約14mmのガラス管の周囲で2回曲げる方法である。この工程中に多くのおよび/またはより大きな断片が被覆から剥離する場合、付着性は不十分であると評価される。
【0514】
トップコート液の組成:
84.4%n-ヘプタン(体積%)
15.6%酢酸エチル(体積%)
0.25%トリオクタノイルグリセロール(質量/体積)
0.05%ブチル化ヒドロキシトルエン(質量/体積)
2×30μlのトップコート溶液をそれぞれピペッティングした。
【0515】
トップコート溶液を使用した場合、結晶はバルーン表面によりよく付着することを明らかにし、結晶同士の付着も改善され、したがって、エッジ衝撃試験において発生する粒子の放出がより少ない。しかしながら、曲げ試験およびバルーンの膨張は、結晶同士の付着が十分でなかったことを示した。
【国際調査報告】