(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-19
(54)【発明の名称】パーキンソン病の治療に使用するための新規なカテコールアミンプロドラッグ
(51)【国際特許分類】
C07D 221/08 20060101AFI20231212BHJP
A61K 31/473 20060101ALI20231212BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20231212BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20231212BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20231212BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20231212BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20231212BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20231212BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20231212BHJP
A61P 25/30 20060101ALI20231212BHJP
A61P 25/36 20060101ALI20231212BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
C07D221/08
A61K31/473
A61K9/20
A61K9/48
A61P25/00
A61P25/14
A61P25/16
A61P25/18
A61P25/28
A61P25/30
A61P25/36
A61P43/00 123
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528989
(86)(22)【出願日】2021-11-15
(85)【翻訳文提出日】2023-05-16
(86)【国際出願番号】 EP2021081678
(87)【国際公開番号】W WO2022106352
(87)【国際公開日】2022-05-27
(32)【優先日】2020-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591143065
【氏名又は名称】ハー・ルンドベック・アクチエゼルスカベット
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100141195
【氏名又は名称】西澤 恵美子
(72)【発明者】
【氏名】ヨルゲンセン,モルテン
(72)【発明者】
【氏名】イェンセン,クラウス,ギョルヴィグ
(72)【発明者】
【氏名】ラウシオ,イャルッコ,タパニ
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン,クリストファー,ゲルナー,バヴンホイ
(72)【発明者】
【氏名】ボル,イェッテ,ビスガード
(72)【発明者】
【氏名】グスタヴソン,レナ
(72)【発明者】
【氏名】クェルドセン,アンニャ,ノルガード
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC01
4C076FF04
4C076FF34
4C076FF36
4C076FF67
4C076FF68
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC28
4C086GA13
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
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4C086MA35
4C086MA37
4C086MA52
4C086NA05
4C086NA06
4C086NA10
4C086NA11
4C086NA15
4C086ZA01
4C086ZA02
4C086ZA16
4C086ZA18
4C086ZC39
(57)【要約】
本発明は、ドーパミンアゴニスト(4aR,10aR)-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロ-ベンゾ[g]キノリン-6,7-ジオールのスルファマート誘導体プロドラッグ、ドーパミンアゴニストでの治療が治療上有益である症状の治療におけるその使用及び本発明の化合物を含む医薬組成物を提供する。本発明による化合物は、式(Id)(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、H及び以下の置換基(iii)(式中、
*は、酸素に対する結合点を示し、R3は、H及びCOR4から選択され、R4は、H及びC1~C6アルキルから選択される)から選択され、但し、R1及びR2は、両方ともH、15ではあり得ないことを条件とする)のもの又はその薬学的に許容される塩である。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(Id)
【化1】
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、H及び以下の置換基(iii)
【化2】
(式中、
*は、酸素に対する結合点を示し、
R3は、H及びCOR4から選択され、
R4は、H及びC1~C6アルキルから選択される)
から選択され、
但し、R1及びR2は、両方ともHではあり得ないことを条件とする)
による化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
R1又はR2の1つは、置換基(iii)であり、及び他の1つは、Hである、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
R1及びR2の両方は、置換基(iii)である、請求項1~2のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
R3は、Hである、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
化合物が、以下の式(II)の(4aR,10aR)-6-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イルスルファマート及び式(III)の(4aR,10aR)-7-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-イルスルファマート
【化3】
及びその薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項1~2のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
化合物が、式(I)の化合物を実質的に含まない単離形態である、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
固体形態である、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物の薬学的に許容される塩。
【請求項9】
医薬として使用するための、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項10】
治療有効量の、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩と、1種又は複数の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項11】
経口投与のための錠剤又はカプセル剤などの経口医薬組成物である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
パーキンソン病、ハンチントン病、下肢静止不能症候群若しくはアルツハイマー病などの神経変性疾患若しくは障害;又は統合失調症、注意欠陥多動障害若しくは薬物嗜癖などの精神神経疾患若しくは障害の治療に使用するための、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物若しくはその薬学的に許容される塩又は請求項10~11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
パーキンソン病の治療における、請求項12に記載の使用のための化合物若しくはその薬学的に許容される塩又は医薬組成物。
【請求項14】
パーキンソン病、ハンチントン病、下肢静止不能症候群若しくはアルツハイマー病などの神経変性疾患若しくは障害;又は統合失調症、注意欠陥多動障害若しくは薬物嗜癖などの精神神経疾患若しくは障害の治療のための医薬の製造における、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物若しくはその薬学的に許容される塩又は請求項10~11のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項15】
前記医薬は、パーキンソン病の治療のためのものである、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
パーキンソン病、ハンチントン病、下肢静止不能症候群若しくはアルツハイマー病などの神経変性疾患若しくは障害;又は統合失調症、注意欠陥多動障害若しくは薬物嗜癖などの精神神経疾患若しくは障害を治療する方法であって、それを必要とする患者に、治療有効量の、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物若しくはその薬学的に許容される塩又は請求項10~11のいずれか一項に記載の医薬組成物を投与することを含む方法。
【請求項17】
パーキンソン病を治療するための、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドーパミンアゴニスト(4aR,10aR)-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロ-ベンゾ[g]キノリン-6,7-ジオールのスルファマート誘導体プロドラッグである化合物と、パーキンソン病並びに/又は例えば下肢静止不能症候群、ハンチントン病及びアルツハイマー病並びに統合失調症、注意欠陥多動障害及び薬物嗜癖などの精神神経疾患及び障害など、ドーパミンアゴニストでの治療が治療上有益な他の症状の治療でのその使用とを提供する。本発明は、本発明の化合物を含む医薬組成物をさらに提供する。
【背景技術】
【0002】
パーキンソン病(PD)は、年齢と共に一層蔓延する一般的な神経変性疾患であり、世界的に推定で七百万人~一千万人の人々に影響を及ぼす。パーキンソン病は、運動性及び非運動性の両方の症状を特徴とする多面的な疾患である。運動性症状としては、安静時振せん(震え)、動作緩慢/無動症(動作の緩慢さ及び欠如)、筋固縮、姿勢の安定性及び歩行機能不全が挙げられ、非運動性症状としては、精神神経障害(例えば、鬱病、精神病性症状、不安、感情鈍麻、軽度認知障害及び認知症)並びに自律神経障害及び睡眠障害(Poewe et al.,Nature Review,(2017)vol3 article 17013:1-21)が挙げられる。
【0003】
パーキンソン病の病態生理の重要な顕著な特徴は、線条体及び他の脳領域へのドーパミン作動性神経支配を提供する黒質緻密部における色素性ドーパミン作動性神経細胞の減少である。かかる進行性神経変性は、ドーパミン線条体レベルの低下を引き起こし、その結果、最終的に大脳基底核回路網の一連の変化が生じ、最後にパーキンソン病の4つの主要運動特徴が現れる。線条体におけるドーパミンの主要な標的は、組織分布的突起が突出した、D1又はD2受容体を選択的に発現する中型有棘GABA作動性神経細胞(MSN)からなる。線条体淡蒼球系「間接的経路」とも呼ばれる、外側淡蒼球に投射するGABA作動性MSNは、D2受容体(MSN-2)を発現する。線条体黒質系「直接経路」とも呼ばれる、黒質網様部及び内側淡蒼球に投射するGABA作動性-MSNは、D1受容体(MSN-1)を発現する。ニューロン減少のためのドーパミンの欠乏により、2つの経路の活性が不均衡となり、その結果、視床及び皮質出力活性が著しく減少し、最終的に運動機能不全が生じる(Gerfen et al,Science(1990)250:1429-32;Delong,(1990)Trends in Neuroscience 13:281-5;Alexander et Crutcher,(1990)Trends in Neuroscience 13:266-71及び概説に関してPoewe et al.,Nature Review(2017)vol.3 article 17013:1-21)。
【0004】
パーキンソン病に罹患しており、且つ運動性症状のコントロールを目標とする患者に利用可能な最も有効な治療戦略は、主に間接的及び直接的ドーパミンアゴニストである。古典的且つ金標準の療法としては、脳において脱カルボキシル化されてドーパミンを形成するL-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン(L-DOPA)の慢性的な経口摂取が挙げられる。他のアプローチは、D1及びD2受容体サブタイプの両方に作用するアポモルヒネ又はプラミペキソール、ロピニロール及びD2受容体サブタイプに対して優勢に向けられる他のアゴニストなどのドーパミン受容体アゴニストの投与を含む。D1及びD2受容体サブタイプの両方の活性化のため並びに間接的-直接的経路の全体論的な再平衡のため(すなわちD2アゴニストのみが間接的経路の機能不全を逆戻りさせる)、最適なMR(動かすと症状が軽減すること)は、L-DOPA及びアポモルヒネの両方の使用で得られる。
【0005】
以下に示す構造を有するL-DOPA及びアポモルヒネは、現在、臨床的使用において最も有効なPD薬物である。
【化1】
【0006】
L-DOPAは、ドーパミンのプロドラッグであり、運動性パーキンソン病の治療における最も有効な薬物であり続けている。しかしながら、治療の数年(すなわちハネムーン期間)後、疾患の固有の進行(すなわちドーパミン作動性神経細胞の持続した減少)及びL-DOPAの乏しい薬物動態学的(PK)プロファイルのために合併症が起こる。その合併症としては、1)薬物の最適な「時間通りの効果」中に起こる異常な不随意運動であるジスキネジア、及び2)その期間中にL-DOPAのポジティブな効果が徐々に減少し、症状が再び現れるか又は悪化する変動外の期間(Sprenger and Poewe,CNS Drugs(2013),27:259-272)が挙げられる。
【0007】
直接ドーパミン受容体アゴニストは、ドーパミン自己受容体並びに中型有棘神経細胞MSN-1及びMSN-2上に位置するシナプス後ドーパミン受容体を活性化することができる。アポモルヒネは、1,2-ジヒドロキシベンゼン(カテコール)部位を有するドーパミンアゴニストのクラスに属する。フェネチルアミンモチーフと組み合わせた場合、カテコールアミンは、アポモルヒネの場合と同様に経口バイオアベイラビリティが低いか又は全くない場合が多い。アポモルヒネは、臨床的に、非経口送達(一般に、断続的な皮下投与又はポンプによる日中の連続的な非経口的注入)ではあるが、PD治療に使用される。アポモルヒネに関して、動物研究から、経皮送達又は植込錠によって可能性のある投与形態が提供され得ることが示されている。しかしながら、植込錠からのアポモルヒネの送達がサルで研究された場合(Campbell et al et al.,Chase Experimental Neurology(2005),192:73-78)、大部分の事例において、植込手術後の局所的刺激及び他の合併症を防ぐために動物を免疫抑制薬デキサメタゾンで治療しなければならなかったことが判明した。吸入及び舌下製剤などのPDにおけるアポモルヒネ療法の代替の送達戦略が広範に探求されている(例えば、Grosset et al.,Acta Neurol Scand.(2013),128:166-171及びHauser et al.,Movement Disorders(2016),Vol.32(9):1367-1372を参照されたい)。
【0008】
カテコールアミンの非経口製剤の代替法は、経口投与ができるように遊離カテコールヒドロキシル基をマスクするプロドラッグの使用を含む。しかしながら、臨床的使用のためのプロドラッグの開発に伴う既知の問題は、ヒトにおける親化合物への転化を予測することに伴う困難さである。
【0009】
十二指腸送達のための全体的に被覆されたN-プロピル-ノルアポルフィン(NPA)及びアポモルヒネのモノピバロイルエステル(国際公開第02/100377号パンフレット)並びにD1-様アゴニストであるアドロゴリド、A-86929のジアセチルプロドラッグ(Giardina and Williams;CNS Drug Reviews(2001),Vol.7(3):305-316)など、カテコールアミンの種々のエステルプロドラッグが文献で報告されている。アドロゴリドは、経口投与後に男性において広範な肝初回通過代謝を受け、その結果、低い経口バイオアベイラビリティ(約4%)を有する。PD患者において、静脈内(IV)アドロゴリドは、L-DOPAと同等の抗パーキンソン有効性を有する(Giardina and Williams;CNS Drug Reviews(2001),Vol.7(3):305-316)。
【0010】
カテコールアミンのエステルプロドラッグに加えて、代替のプロドラッグアプローチは、対応するメチレン-ジオキシ(MDO)誘導体又はジ-アセタールイル誘導として2つのカテコールヒドロキシル基のマスキングを含む。このプロドラッグの原理は、例えば、Campbell et al.,Neuropharmacology(1982);21(10):953-961並びに米国特許第4543256号明細書、国際公開第2009/026934号パンフレット及び国際公開第2009/026935号パンフレットに記述されている。
【0011】
カテコールアミンプロドラッグの提案される他のアプローチは、例えば、国際公開第2001/078713号パンフレット及びLiu et al.,Bioorganic Med.Chem.(2008),16:3438-3444で提案されるエノン誘導体の形成である。カテコールアミンプロドラッグのさらなる例については、例えば、Sozio et al.,Exp.Opin.Drug Disc.(2012);7(5):385-406を参照されたい。
【0012】
以下に化合物(I)として示される化合物(4aR,10aR)-1-n-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロ-ベンゾ[g]キノリン-6,7-ジオールは、国際公開第2009/026934号パンフレットに開示されている。トランス異性体は、化合物がラットにおいて低い経口バイオアベイラビリティを有することを示唆する薬理学的データを含む、Liu et al.,J.Med.Chem.(2006),49:1494-1498、次いでLiu et al.,Bioorganic Med.Chem.(2008),16:3438-3444に以前に開示された。最初に、Cannon et al.,J.Heterocyclic Chem.(1980);17:1633-1636にラセミ化合物が開示された。
【化2】
【0013】
化合物(I)は、混合D1及びD2活性を有するドーパミン受容体アゴニストである。化合物(I)の異なるプロドラッグ誘導体が当技術分野で公知である。
【0014】
Liu et al.,J.Med.Chem.(2006),49:1494-1498及びLiu et al.,Bioorganic Med.Chem.(2008),16:3438-3444は、ラットにおいて活性化合物(I)に転化されることが示された、以下に示す式(Ia)のエノン誘導体を開示している。
【化3】
【0015】
国際公開第2009/026934号パンフレット及び国際公開第2009/026935号パンフレットは、(6aR,10aR)-7-プロピル-6,6a,7,8,9,10,10a,11-オクタヒドロ-[1,3]ジオキソロ[4’,5’:5,6]ベンゾ[1,2-g]キノリン、以下の式(Ib)を有するメチレジオキシ(MDO)誘導体を含む化合物(I)の2種類のプロドラッグ誘導体を開示している。
【化4】
【0016】
ラット及びヒト肝細胞における化合物(I)への化合物(Ib)の転化は、国際公開第2010/097092号パンフレットにおいて実証されている。さらに、化合物(Ia)及び(Ib)並びに活性「親化合物」(I)のインビボ薬理学は、パーキンソン病に関して様々な動物モデルにおいて試験されている(国際公開第2010/097092号パンフレット)。化合物(I)並びに化合物(Ia)及び(Ib)の両方とも有効であると判明しており、化合物(Ia)及び(Ib)がインビボで化合物(I)に転化されると示されている。3種すべての化合物が、L-dopa及びアポモルヒネに関して確認されたよりも長い作用持続時間を有することが報告された。
【0017】
国際公開第2009/026934号パンフレット及び国際公開第2009/026935号パンフレットで開示されている化合物(I)の他のプロドラッグは、以下に示す式(Ic)の従来のエステルプロドラッグである。
【化5】
【0018】
国際公開第2019101917号パンフレットは、化合物(I)のさらなるグルクロニド抱合体並びに以下の式(Id-iia)、(Id-iib)及び(Id-iiab)の化合物(I)のスルフェート抱合体を開示している。
【化6】
【0019】
国際公開第2019101917号パンフレットは、化合物(I)の経口活性プロドラッグとしての、化合物(I)の開示されたグルクロニド及びスルフェート誘導体の使用を提案している。
【0020】
化合物(I)の他の抱合体は、国際公開第2020234274号パンフレット、国際公開第2020234275号パンフレット、国際公開第2020234276号パンフレット及び国際公開第2020234277号パンフレットに開示されている。
【0021】
この分野で長年にわたって関心の対象となっているにもかかわらず、PDの治療のための効率的で、忍容性がよく且つ経口的に作用する薬の開発に対する要求は、依然として明らかに対処されていない。連続的なドーパミン作動性刺激を提供し得る、好ましいPKプロファイルを有する混合D1/D2アゴニストのプロドラッグ誘導体は、かかる未対処の要求を満たし得る。
【0022】
プロドラッグ成分としてのスルファマート誘導体は、例えば、エストラジオールについて以前に提案されている(Elger et al.J Steroid Biochem Mol Biol 55:395-403,1995及びElger et al.Reprod Fertil Dev 13:297-305,2001)。
【発明の概要】
【0023】
本発明は、パーキンソン病を治療するための新規な化合物に関する。より詳細には、本発明は、化合物(4aR,10aR)-1-n-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロ-ベンゾ[g]キノリン-6,7-ジオールの新規なスルファマートプロドラッグ誘導体(化合物(I))に関する。本発明の化合物は、実施例2のPK研究で実証されるように、化合物(I)の経口送達に特に有用であることが証明されており、本発明の試験化合物は、インビボで化合物(I)に転化される。
【0024】
実施例2から、本発明の試験化合物(II)及び(III)により、先行技術の化合物(Ia)及び(Ib)について確認された対応する曝露よりも低く、プロドラッグとして有用でないことが判明した先行技術化合物(Ic)についての対応する曝露よりも高い、24時間全体にわたるラットの血漿中曝露が得られることがさらに実証される。
【0025】
さらに、ラットにおいて化合物(II)及び(III)の両方を投与した後に確認された化合物(I)値のCmaxは、先行技術化合物(Ia)及び(Ib)並びに先行技術のスルフェート抱合体化合物(Id-iia)及び(Id-iib)の投与から達成可能なものよりも低い。副作用を誘発すると予想される化合物(I)のピーク濃度が低いことから、高い用量の本発明の化合物を投与して、化合物(Ia)及び(Ib)の投与から達成可能な濃度と比較して、化合物(I)の高い総血漿中濃度が達成され得る可能性がある。化合物(II)は、先行技術のスルフェート抱合体化合物(Id-iia)、(Id-iib)及び(Id-iiab)よりも速く、同時に先行技術の化合物(Ia)、(Ib)及び(Ic)と同等である、約1時間後のTmax観測値を有した。
【0026】
実施例4から、化合物(II)及び(III)がヒト及びラット肝臓S9画分とのインキュベーションにより化合物(I)に転化されることが実証される(
図3及び4)。さらに、本発明の化合物(II)及び(III)は、先行技術のスルフェート抱合体化合物(Id-iia)及び(Id-iib)と比較して、ヒト肝臓S9とのインキュベーションによって化合物(I)への増加した転化を有した(
図3)。
【0027】
さらに、実施例3から、本発明の化合物、特に化合物(II)及び化合物(III)のpH6での溶解度は、対応する先行技術のスルフェート抱合体化合物(Id-iia)及び(Id-iib)の溶解度よりも高いことが実証される。pH6.0以下でのpHでの高い溶解度は、経腸投与後の化合物の吸収を促進するのに有利であり得る。
【0028】
第1の態様において、本発明は、以下の式(Id)
【化7】
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、H及び以下の置換基(iii)
【化8】
(式中、
*は、酸素に対する結合点を示し、
R3は、H及びCOR4から選択され、
R4は、H及びC1~C6アルキルから選択される)
から選択され、
但し、R1及びR2は、両方ともHではあり得ないことを条件とする)
による化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0029】
本発明の好ましい実施形態において、式(Id)による化合物は、R3がHである化合物である。
【0030】
本発明の別の好ましい実施形態において、式(Id)による化合物は、以下の式(II)の(4aR,10aR)-6-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イルスルファマート及び式(III)の(4aR,10aR)-7-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-イルスルファマート
【化9】
及びその薬学的に許容される塩からなる群から選択される。
【0031】
他の好ましい実施形態において、本発明による化合物は、式(I)の化合物を実質的に含まない単離形態である。本発明の他の実施形態において、前記化合物又はその薬学的に許容される塩は、固体形態である。
【0032】
本発明のさらなる態様は、式(Id)による化合物の薬学的に許容される塩を提供する。
【0033】
本発明のさらなる態様は、医薬として使用するための、式(Id)の化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0034】
本発明のさらなる態様は、治療有効量の、式(Id)による化合物又はその薬学的に許容される塩と、1種又は複数の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。好ましい実施形態において、前記医薬組成物は、経口投与のための錠剤又はカプセル剤などの経口医薬組成物である。
【0035】
本発明のさらなる態様は、パーキンソン病、ハンチントン病、下肢静止不能症候群若しくはアルツハイマー病などの神経変性疾患若しくは障害;又は統合失調症、注意欠陥多動障害若しくは薬物嗜癖などの精神神経疾患若しくは障害の治療に使用するための、式(Id)の化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。好ましい実施形態において、式(Id)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、パーキンソン病の治療に使用される。
【0036】
本発明のさらなる態様は、パーキンソン病、ハンチントン病、下肢静止不能症候群若しくはアルツハイマー病などの神経変性疾患若しくは障害;又は統合失調症、注意欠陥多動障害若しくは薬物嗜癖などの精神神経疾患若しくは障害の治療のための医薬の製造における、上述の式(Id)の化合物若しくその薬学的に許容される塩又は医薬組成物の使用を提供する。好ましい実施形態において、その医薬は、パーキンソン病の治療のための医薬である。
【0037】
本発明のさらなる態様は、パーキンソン病、ハンチントン病、下肢静止不能症候群若しくはアルツハイマー病などの神経変性疾患若しくは障害;又は統合失調症、注意欠陥多動障害若しくは薬物嗜癖などの精神神経疾患若しくは障害を治療する方法であって、それを必要とする患者に、治療有効量の、式(Id)による化合物又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】実施例2による経口投与後に得られる、ウィスターラットにおけるPKプロファイルを示す。プロファイルは、それぞれの化合物に対して、時点ごとの対象3匹からの平均血漿中濃度に基づく。X軸:時間(時);Y軸:化合物(III)の投与後に得られた化合物(I)の血漿中濃度(pg/mL)。
【
図2】実施例2による経口投与後に得られる、ウィスターラットにおけるPKプロファイルを示す。プロファイルは、それぞれの化合物に対して、時点ごとの対象3匹からの平均血漿中濃度に基づく。X軸:時間(時);Y軸:化合物(II)の投与後に得られた化合物(I)の血漿中濃度(pg/mL)。
【
図3】ヒト肝臓S9における、化合物(I)への化合物(II)、(III)、(Id-iia)及び(Id-iib)のインビトロでの転化を示す。X軸:時間(分);Y軸:時点=0分での濃度からの化合物(I)の濃度の増加(pg/mL)。●は、化合物(III)を示し、○は、化合物(II)を示し、バツ(×)は、化合物(Id-iia)を示し、△は、化合物(Id-iib)を示す。
【
図4】ラット肝臓S9における、化合物(I)への化合物(II)、(III)、(Id-iia)及び(Id-iib)のインビトロでの転化を示す。X軸:時間(分);Y軸:時点=0分での濃度からの化合物(I)の濃度の増加(pg/mL)。●は、化合物(III)を示し、○は、化合物(II)を示し、バツ(×)は、化合物(Id-iia)を示し、△は、化合物(Id-iib)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
発明の詳細な説明
定義
化合物
本発明により包含される化合物の参照は、本発明の化合物の遊離物質(例えば、遊離塩基又は両性イオン)、本発明の化合物の薬学的に許容される塩、酸付加塩又は塩基付加塩など、並びに本発明の化合物及びその薬学的に許容される塩の多形及び無形質形態を含む。さらに、本発明の化合物及びその薬学的に許容される塩は、非溶媒和状態及び水、エタノール等の薬学的に許容される溶媒との溶媒和状態で潜在的に存在し得る。溶媒和状態及び非溶媒和状態の両方が本発明によって包含される。
【0040】
併用治療(combination treatment)
式(Id)の化合物と、神経変性疾患又は障害の治療においてその化合物が有用である別の化合物とを治療有効量で併用投与(combined administration)することを含む、本発明の方法と関連して本明細書で使用される「併用使用」(combined use)、「~と組み合わせて」(in combination with)及び「~の組み合わせ」(a combination of)等の用語は、前記他の化合物と共にいずれかの順序で式(Id)の化合物を同時に又は逐次投与することを意味することが意図される。
【0041】
薬学的に許容される塩
本発明の化合物は、遊離物質又はその薬学的に許容される塩として一般に用いられる。式(Id)の化合物が遊離塩基を含有する場合、かかる塩は、従来の手法で式(Id)の遊離塩基の溶液又は懸濁液を、薬学的に許容される酸のモル当量で処理することによって調製され得る。適切な有機酸及び無機酸の代表的な例を以下に示す。
【0042】
本発明に関連して、薬学的に許容される塩は、非毒性、すなわち生理学的に許容される塩を表すことが意図される。
【0043】
「薬学的に許容される塩」という用語は、親分子における窒素原子上の無機酸及び/又は有機酸で形成される塩である、薬学的に許容される酸付加塩を含む。前記酸は、例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、亜硝酸、硫酸、安息香酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、フマル酸、グルタミン酸、ピログルタミン酸、サリチル酸、ゲンチシン酸、サッカリン及びスルホン酸、例えばメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸及びベンゼンスルホン酸から選択され得る。
【0044】
薬学的に許容される塩を形成するのに有用な酸及び塩基の他の例は、例えば、Stahl and Wermuth(Eds),Handbook of Pharmaceutical salts.Properties,selection,and use,Wiley-VCH2008に記載されている。
【0045】
プロドラッグ
本発明に関連して、「プロドラッグ」又は「プロドラッグ誘導体」という用語は、哺乳動物、好ましくはヒトなどの生体対象に投与した後、体内で薬理学的活性部位に転化される化合物を意味する。転化は、好ましくは、マウス、ラット、イヌ、ミニブタ、ウサギ、サル及び/又はヒトなどの哺乳動物内で起こる。本発明に関連して、「化合物(4aR,10aR)-1-n-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロ-ベンゾ[g]キノリン-6,7-ジオールのプロドラッグ」、又は「式(I)の化合物のプロドラッグ」、又は「化合物(I)のプロドラッグ」は、投与後、体内で化合物(4aR,10aR)-1-n-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロ-ベンゾ[g]キノリン-6,7-ジオールに転化される化合物であると理解される。前記投与は、当技術分野で公知の医薬組成物の従来の投与経路により、好ましくは経口投与であり得る。
【0046】
本発明に関連して、「親化合物」及び「親分子」という用語は、対応するプロドラッグの転化で得られる薬理学的活性部位を意味する。例えば、化合物(Ia)、(Ib)、(Ic)の1つ又は式(Id)による本発明の化合物(例えば、化合物(II)(III)及び(V))のいずれかの「親化合物」は、式(I)の化合物であると理解される。
【0047】
置換基
本発明に関連して、所定の範囲は、「-」(ダッシュ)又は「~」で区別なく示され、例えば、「C1-C6アルキル」は、「C1~C6アルキル」に等しい。
【0048】
「アルキル」という用語は、炭素原子1~6個までを有する直鎖状(すなわち未分岐)又は分岐状飽和炭化水素を意味する。かかる基の例としては、限定されないが、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2-ブチル、2-メチル-2-プロピル、2-メチル-1-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル及びn-ヘキシルが挙げられる。
【0049】
薬物動態学的定義及び略語
本明細書で使用される「PKプロファイル」は、「薬物動態学的プロファイル」の略語である。本明細書に記載の薬物動態学的プロファイル及び薬物動態学的パラメーターは、ノンコンパートメントモデリングを用いて、本発明の化合物を経口投与した後、式(I)の化合物について得られた血漿中濃度-時間データに基づく。省略されたPKパラメーターは、Cmax(最高濃度);tmax(Cmax到達時間);t1/2(半減期);AUC0~24(投与時点から投与後24時間までの曲線下面積)であり、「24時間時点での曝露」は、投与から24時間後に測定された式(I)の化合物の血漿中濃度である。
【0050】
治療有効量
本発明に関連して、本発明の化合物の「治療有効量」という用語は、前記化合物の投与を含む治療的介入において所定の疾患及びその合併症の臨床症状を軽減するか、阻止するか、部分的に阻止するか、取り除くか又は遅らせるのに十分な量を意味する。これを達成するのに適した量は、「治療有効量」と定義される。それぞれの目的に有効な量は、例えば、疾患又は損傷の重症度並びに対象の体重及び全身状態に応じて異なる。適切な投薬量の決定は、熟練した医師の一般の技術の範囲内にすべてある通常の実験を用いて、値のマトリックスを構築し、そのマトリックスにおける様々なポイントを試験することによって達成されることが理解されるであろう。
【0051】
本発明に関連して、本発明の化合物の「治療有効量」とは、本発明の前記化合物が好ましくは経口経路によって哺乳動物、好ましくはヒトに投与された場合、所定の疾患及びその合併症の臨床症状を軽減するか、阻止するか、部分的に阻止するか、取り除くか又は遅らせるのに十分な化合物(I)の量を提供することができる、本発明の前記化合物の量を意味する。
【0052】
治療及び処置
本発明に関連して、「治療」又は「処置」は、疾患の臨床症状を緩和するか、阻止するか、部分的に阻止するか、取り除くか又はその進行を遅らせる目的のための患者の管理及びケアを示すことが意図される。治療されるべき患者は、好ましくは、哺乳動物、特にヒトである。
【0053】
医薬製剤及び賦形剤
以下では、「賦形剤」又は「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、限定されないが、担体、充填剤、希釈剤、付着防止剤、結合剤、コーティング、着色剤、崩壊剤、風味、流動促進剤、滑沢剤、保存剤、吸着剤、甘味料、溶媒、賦形剤及び補助剤などの医薬品賦形剤を意味する。
【0054】
表題及び副表題は、本明細書において単に便宜上使用され、本発明を限定するものとして決して解釈すべきではない。
【0055】
要素を参照して、「含む」、「有する」、「包含する」又は「含有する」などの用語を用いた、本発明のいずれかの態様又は本発明の態様の本明細書における説明は、別段の指定がない限り又は文脈に明確に矛盾がない限り(例えば、特定の要素を含むと本明細書に記載される組成物は、別段の指定がない限り又は文脈に明確に矛盾がない限り、その要素からなる組成物も表すと理解されるべきである)、その特定の要素「からなる」、「から本質的になる」又は「を実質的に含む」、本発明の類似の態様又は本発明の態様に対する支持を提供することが意図される。
【0056】
本明細書におけるいずれかの及びすべての実施例又は例示的な文言(「例として」、「例えば」、「例」、「など」及び「それ自体」など)の使用は、単に本発明をより明確にすることが意図され、別段の指定がない限り、本発明の範囲を限定するものではない。
【0057】
本明細書に記載の本発明の種々の態様、実施形態、実行及び特徴は、別個に又はいずれかの組み合わせで特許請求され得ることを理解されたい。
【0058】
本発明は、適用可能な法律によって認められる通り、本明細書に添付される特許請求の範囲に記載された主題のすべての修正形態及び均等物を包含する。
【0059】
本発明の化合物
本発明者らは、デュアルD1/D2アゴニストである(4aR,10aR)-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロ-ベンゾ[g]キノリン-6,7-ジオール[化合物(I)]のプロドラッグとして機能し得る新規なスルファマート化合物を同定した(例えば、国際公開第2009/026934号パンフレットを参照されたい)。
【0060】
ウィスターラットにおいて本発明の代表的な化合物(II)及び(III)を経口投与することにより、血漿中の化合物(I)の濃度によって測定された化合物(I)の全身的曝露が提供されることが判明し、化合物(I)の経口活性プロドラッグとしての前記化合物の有用性が示唆された。
【0061】
インビボで試験された化合物について、化合物(I)287μg/kgに対応する化合物(Ib)300μg/kgの用量に等しくなるように分子量によって用量が補正された。
【0062】
ウィスターラットへの化合物(Ia)及び(Ib)の経口投与により、化合物(I)の初期及び高ピーク血漿中濃度が得られることが以前に確認されている。かかる高ピーク濃度は、ヒトにおいて、例えば悪心、嘔吐及びめまいなどのドーパミン作動性副作用を伴う可能性がある。対照的に、本発明の化合物(II)について、化合物(I)の持続性曝露を伴って吸収速度が遅くなり、急速なピーク濃度を防ぐことが確認された。さらに、本明細書における実施例2で示されるように、ウィスターラットにおける化合物(II)及び(III)の経口投与後の化合物(I)の血漿中曝露は、化合物(Ic)について確認された曝露よりも高いが、中程度の曝露を示す。しかしながら、副作用を誘発すると予想される化合物(I)のピーク濃度が低いことから、より高い用量の本発明の化合物を投与して、化合物(Ia)及び(Ib)の投与から達成可能な濃度と比較して、化合物(I)のより高い総血漿中濃度が潜在的に達成され得る。化合物(Ic)のPK特性を調査した際、本発明者らは、化合物(I)の血漿中濃度が非常に低く、経口投与のための化合物(I)のプロドラッグとして化合物(Ic)が不適当なままであることを見出し、本発明の化合物の経口バイオアベイラビリティは、非常に予測不可能であることが確認された。
【0063】
ウィスターラットでの化合物(II)及び(III)のPK研究に関するPKパラメーターを表2に列挙し、PKプロファイルを
図1及び2に示す。
【0064】
したがって、結論として、本発明の化合物は、化合物(I)の経口的に利用可能なプロドラッグとして有用であり、且つ既知のプロドラッグ(Ia)及び(Ib)で確認されるピークCmaxを回避し、化合物(Ic)よりも著しく高い化合物(I)のAUCが得られるPKプロファイルを提供することがラットにおいて確認された。1種又は複数の対象、例えば動物、例えばラット、ミニブタ、サル又はヒト(ラットが好ましい対象である)に本発明の化合物を経口投与し、以下で実施例2又は実施例3に記載のように血漿中の化合物(I)の濃度を測定することにより、Cmax及びPKプロファイルを測定することができる。したがって、本発明の一実施形態において、式(Id)の化合物は、既知のプロドラッグ(Ia)及び(Ib)で確認されるピークCmaxを回避し、化合物(Ic)よりも高い化合物(I)のAUCが得られる、確認されたPKプロファイルを有する。したがって、本発明の一実施形態において、式(Id)の化合物は、約90pg/mLを超える、例えば約90~約600pg/mLの範囲、例えば約90~約400pg/mLの範囲、例えば約100~200pg/mLの範囲、又は約200~約300pg/mLの範囲、又は約300~約400pg/mLの範囲のCmaxを有する。本発明の別の実施形態において、Cmaxは、3000pg/mL未満、より好ましくは1000pg/mL未満、例えば約50~約500pg/mLの範囲である。
【0065】
本発明の別の実施形態において、式(Id)の化合物は、24時間にわたって測定される、1000pg*h/mLを超える、例えば約1500~約5000pg*h/mLの範囲、例えば約1500~4000pg*h/mLの範囲、例えば約1600pg*h/mL、又は例えば約1700pg*h/mL、又は例えば約1800pg*h/mL、又は例えば約1900pg*h/mL、又は例えば約2000pg*h/mL、又は例えば約2100pg*h/mL、又は例えば約2200pg*h/mL、又は例えば約2300pg*h/mL、又は例えば約2400pg*h/mL、又は例えば約2500pg*h/mL、又は例えば約2600pg*h/mL、又は例えば約2700pg*h/mL、又は例えば約2800pg*h/mL、又は例えば約2900pg*h/mL、又は例えば約3000pg*h/mL、又は例えば約3100pg*h/mL、又は例えば約3200pg*h/mL、又は例えば約3300pg*h/mL、又は例えば約3400pg*h/mL、又は例えば約3500pg*h/mL、又は例えば約3600pg*h/mL、又は例えば約3700pg*h/mL、又は例えば約3800pg*h/mL、又は例えば約3900pg*h/mL、又は例えば約4000pg*h/mL、又は例えば約4100pg*h/mL、又は例えば約4200pg*h/mL、又は例えば約4300pg*h/mL、又は例えば約4400pg*h/mL、又は例えば約4500pg*h/mL、又は例えば約4600pg*h/mL、又は例えば約4700pg*h/mL、又は例えば約4800pg*h/mL、又は例えば約4900pg*h/mL、又は例えば約5000pg*h/mLのAUCを有する。
【0066】
本発明のより好ましい実施形態において、式(Id)の化合物は、約90pg/mLを超える、例えば約90~約600pg/mLの範囲のCmax及び24時間にわたって測定される、約1500~約5000pg*h/mLの範囲、例えば約1500~4000pg*h/mLの範囲のAUCを有する。
【0067】
実施例4から、化合物(II)及び(III)がヒト及びラット肝臓S9画分とのインキュベーションにより化合物(I)に転化されることが実証される(
図3及び4)。さらに、本発明の化合物(II)及び(III)は、先行技術のスルフェート抱合体化合物(Id-iia)及び(Id-iib)と比較して、ヒト肝臓S9とのインキュベーションによって化合物(I)への増加した転化を有することが実証された(
図3)。
【0068】
したがって、本発明の一実施形態において、(Id)の化合物は、先行技術のスルフェート抱合体化合物(Id-iia)及び(Id-iib)と比較して、ヒト肝臓S9とのインキュベーション後に化合物(I)への増加した転化を有する。本発明のより具体的な実施形態において、実施例4に記載の方法又は先行技術において公知の他の式(Id)の化合物は、他の均等な方法を用いて測定された場合、先行技術のスルフェート抱合体化合物(Id-iia)及び(Id-iib)と比較して化合物(I)への増加した転化を有する。
【0069】
さらに、実施例3から、本発明の化合物、特に化合物(II)及び化合物(III)のpH6.0での溶解度は、対応する先行技術の化合物(Id-iia)及び(Id-iib)の溶解度よりも高いことが実証され、表3を参照されたい。本発明の化合物の溶解度は、例えば、実施例3に記載の方法により、溶液、例えばpH6.0のリン酸緩衝液など、適切な酸性pHでバッファーを含む溶液に化合物を溶解することによって測定することができる。
【0070】
したがって、本発明の一実施形態において、式(Id)の化合物は、先行技術のスルフェート抱合体化合物(Id-iia)及び(Id-iib)と比較して、酸性pHでの増加した溶解度を有し、例えば約0.035mg/mLを超える、例えば約0.035~約0.01mg/mLの範囲又は約0.1mg/mLを超える、例えば約0.1~約1.0mg/mLの範囲、例えば約0.2mg/mL、又は約0.3mg/mL、又は約0.4mg/mL、又は約0.5mg/mL、又は約0.6mg/mL、又は約0.7mg/mL、又は約0.8mg/mL、又は約0.9mg/mL、又は約1.0mg/mL、又は約1.0mg/mLを超える、例えば約1.0~約5mg/mLの範囲のpH6.0での溶解度測定値を有する。
【0071】
したがって、本発明の一態様は、化合物(I)のスルファマート誘導体又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0072】
したがって、第1の態様において、本発明は、以下の式(Id)
【化10】
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、H及び以下の置換基(iii)
【化11】
(式中、
*は、酸素に対する結合点を示し、
R3は、H及びCOR4から選択され、
R4は、C1~C6アルキルである)
から選択され、
但し、R1及びR2は、両方ともHではあり得ないことを条件とする)
による化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0073】
したがって、本発明の一実施形態において、本発明は、式(Id)(式中、R1又はR2の少なくとも1つは、置換基(iii)である)による化合物、例えば式(Id)(式中、R1は、置換基(iii)であり、及びR2は、Hである)による化合物;若しくは例えば式(Id)(式中、R1は、Hであり、及びR2は、置換基(iii)である)による化合物;若しくは式(Id)(式中、R1及びR2の両方は、置換基(iii)である)による化合物;又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0074】
本発明の好ましい実施形態において、本発明の化合物は、式(Id)(式中、R1は、置換基(iii)であり、及びR2は、Hである)による化合物;若しくは式(Id)(式中、R1は、Hであり、及びR2は、置換基(iii)である)による化合物又はその薬学的に許容される塩である。
【0075】
本発明の好ましい一実施形態において、式(Id)(式中、R3は、Hである)による化合物又はその薬学的に許容される塩が提供される。
【0076】
本発明の別の実施形態において、式(Id)(式中、R3は、COR4であり、及びR4は、H及びC1~C6アルキルから選択される)による化合物又はその薬学的に許容される塩が提供される。かかる化合物は、式(Id)(式中、R3は、COR4であり、及びR4は、水素、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2-ブチル、2-メチル-2-プロピル、2-メチル-1-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル及びn-ヘキシルからなる群から選択される)による化合物又はその薬学的に許容される塩を含む。本発明のより具体的な実施形態において、式(Id)(式中、R3は、COR4であり、及びR4は、メチル、エチル、1-プロピル及び2-プロピルからなる群から選択される)による化合物又はその薬学的に許容される塩が提供される。
【0077】
本発明のさらにより具体的な実施形態において、式(Id)(式中、R3は、COR4であり、及びR4は、Hである)による化合物又はその薬学的に許容される塩が提供される。
【0078】
本発明のさらにより具体的な実施形態において、式(Id)(式中、R3は、COR4であり、及びR4は、メチルである)による化合物又はその薬学的に許容される塩が提供される。
【0079】
本発明のさらにより具体的な実施形態において、式(Id)(式中、R3は、COR4であり、及びR4は、エチルである)による化合物又はその薬学的に許容される塩が提供される。
【0080】
本発明のさらにより具体的な実施形態において、式(Id)(式中、R3は、COR4であり、及びR4は、1-プロピルである)による化合物又はその薬学的に許容される塩が提供される。
【0081】
本発明のさらにより具体的な実施形態において、式(Id)(式中、R3は、COR4であり、及びR4は、2-プロピルである)による化合物又はその薬学的に許容される塩が提供される。
【0082】
本発明のさらにより具体的な実施形態において、式(Id)(式中、R3は、COR4であり、及びR4は、1-ブチルである)による化合物又はその薬学的に許容される塩が提供される。
【0083】
本発明のさらにより具体的な実施形態において、式(Id)(式中、R3は、COR4であり、及びR4は、2-ブチルである)による化合物又はその薬学的に許容される塩が提供される。
【0084】
本発明のさらにより具体的な実施形態において、式(Id)(式中、R3は、COR4であり、及びR4は、2-メチル-2-プロピルである)による化合物又はその薬学的に許容される塩が提供される。
【0085】
本発明のさらにより具体的な実施形態において、式(Id)(式中、R3は、COR4であり、及びR4は、2-メチル-1-ブチルである)による化合物又はその薬学的に許容される塩が提供される。
【0086】
本発明のさらにより具体的な実施形態において、式(Id)(式中、R3は、COR4であり、及びR4は、n-ペンチルである)による化合物又はその薬学的に許容される塩が提供される。
【0087】
本発明のさらにより具体的な実施形態において、式(Id)(式中、R3は、COR4であり、及びR4は、イソペンチルである)による化合物又はその薬学的に許容される塩が提供される。
【0088】
本発明のさらにより具体的な実施形態において、式(Id)(式中、R3は、COR4であり、及びR4は、n-ヘキシルである)による化合物又はその薬学的に許容される塩が提供される。
【0089】
本発明の具体的な実施形態において、本発明の化合物は、式(Id)(式中、R1及びR2の少なくとも1つは、置換基(iii)であり、及びR3は、Hである)の化合物又はその薬学的に許容される塩である。したがって、本発明の一実施形態において、本発明の化合物は、以下の式(II):
【化12】
の(4aR,10aR)-6-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イルスルファマート、
以下の式(III):
【化13】
の(4aR,10aR)-7-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-イルスルファマート、
以下の式(IV):
【化14】
の(4aS,10aR)-4a-アミノ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6,7-ジイルビス(スルファマート)
からなる群から選択される式(Id)化合物及びこれらの化合物のいずれか1つの薬学的に許容される塩である。
【0090】
本発明の具体的な実施形態において、本発明の化合物は、式(Id)(式中、R1及びR2の少なくとも1つは、置換基(iii)であり、及びR3は、Hである)の化合物又はその薬学的に許容される塩である。したがって、本発明の一実施形態において、本発明の化合物は、以下の式(II):
【化15】
の(4aR,10aR)-6-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イルスルファマート、
以下の(III):
【化16】
の(4aR,10aR)-7-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-イルスルファマート、
以下の式(V):
【化17】
の(4aR,10aR)-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6,7-ジイルビス(スルファマート))
からなる群から選択される式(Id)化合物及びこれらの化合物のいずれか1つの薬学的に許容される塩である。
【0091】
本発明の好ましい実施形態において、本発明の化合物は、式(Id)(式中、R1及びR2の両方は、置換基(iii)であり、及びR3は、Hである)の化合物又はその薬学的に許容される塩である。したがって、本発明の好ましい実施形態において、式(Id)の化合物は、(4aR,10aR)-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6,7-ジイルビス(スルファマート)である。
【0092】
実施例2から、式(Id)(式中、R1及びR2の1つは、置換基(iii)であり、及びR3は、Hである)の化合物の例である、スルファマート抱合型化合物(II)及び(III)がインビボで化合物(I)に転化されることが実証される。
【0093】
したがって、本発明の好ましい実施形態において、本発明の化合物は、式(Id)(式中、R1及びR2の1つは、Hであり、及び他の1つは、置換基(iii)であり、R3は、Hである)の化合物又はその薬学的に許容される塩である。
【0094】
したがって、本発明の好ましい実施形態において、式(Id)による化合物は、以下の式(II):
【化18】
の(4aR,10aR)-6-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イルスルファマート、
以下の式(III)
【化19】
の(4aR,10aR)-7-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-イルスルファマート
及びこれらの化合物のいずれかの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。
【0095】
したがって、本発明のさらに好ましい実施形態において、式(Id)による化合物は、以下の式(II):
【化20】
の(4aR,10aR)-6-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イルスルファマート又はその薬学的に許容される塩である。
【0096】
したがって、本発明の別の好ましい実施形態において、式(Id)による化合物は、以下の式(III):
【化21】
の(4aR,10aR)-7-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-イルスルファマート又はその薬学的に許容される塩である。
【0097】
本発明の一実施形態は、式(Id)による化合物の薬学的に許容される塩を提供する。一実施形態において、薬学的に許容される塩は、上記の本明細書で定義される酸付加塩である。
【0098】
本発明の化合物の純度の決定は、任意に質量分析と併せて異なるクロマトグラフ法、例えば実施例セクションに記載される、例えば、当技術分野で公知のLC/MS法を用いて決定することができる。
【0099】
本発明の一実施形態において、式(Id)による化合物又はその薬学的に許容される塩は、式(I)の化合物を実質的に含まない単離形態である。
【0100】
本発明の一実施形態において、式(Id)による化合物又はその薬学的に許容される塩は、純度90%を超える、例えば純度約90~99.99%、例えば純度95%、例えば純度96%、例えば純度97%、例えば純度98%、例えば純度99%、例えば純度99.5%の単離形態である。
【0101】
本発明の化合物は、非晶質又は結晶質形態など、異なる形態で存在し得る。
【0102】
本発明の一実施形態において、式(Id)による化合物又はその薬学的に許容される塩は、固体形態である。本発明のさらにより好ましい実施形態において、式(Id)の化合物又はその薬学的に許容される塩は、結晶質形態である。
【0103】
固体形態は、非晶質の固体形態でもあり得る。したがって、本発明の一実施形態において、式(Id)の化合物は、非晶質の固体形態である。
【0104】
式(Id)で特許請求される化合物と類似の同位体標識化合物も本発明に含まれ、1つ又は複数の原子が、天然に通常見出される原子質量又は質量数と異なる原子質量又は質量数を有する同じ元素の原子によって表される(例えば、2H、3H、11C、13C、15N等)。2H置換化合物、すなわち1つ又は複数のH原子が重水素によって表される化合物が特に言及される。
【0105】
本発明の一実施形態において、式(Id)の化合物の水素原子の1つ又は複数が重水素によって表される。大部分の合成化合物において元素は天然同位体存在度で存在し、重水素の固有の取込みが生じることが認識される。しかしながら、重水素などの水素同位元素の天然同位体存在度は、本明細書に示す化合物の安定な同位体置換の程度に対して微々たるものである(約0.015%)。
【0106】
医薬組成物
本発明の別の態様は、治療有効量の、式(Id)の化合物又はその薬学的に許容される塩と、1つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0107】
好ましい実施形態において、医薬組成物は、化合物(II)、化合物(III)及びその薬学的に許容される塩からなる群から選択される式(Id)の化合物を含む。
【0108】
本発明のさらなる態様は、式(Id)の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を製造するプロセス、より好ましくは、そのプロセスは、本明細書における化合物(II)及び化合物(III)からなる群から選択される化合物又はその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を製造するプロセスである。
【0109】
本発明による医薬組成物は、Remington,The Scienceand Practice of Pharmacy,22nd edition(2013),Edited by Allen,Loyd V.,Jr.に開示の技術など、従来の技術に従って薬学的に許容される賦形剤を用いて製剤化され得る。
【0110】
本発明の化合物を含む医薬組成物は、好ましくは、経口投与のための医薬組成物である。経口投与のための医薬組成物としては、錠剤、カプセル剤、粉剤及び顆粒などの固形経口剤形;並びに液剤、乳剤、懸濁剤及びシロップ剤などの液体経口剤形並びに適切な液体に溶解又は懸濁される粉末及び顆粒が挙げられる。
【0111】
固形経口剤形は、個々の単位(例えば、錠剤又はハード若しくはソフトカプセル剤)として提供され得、それぞれが所定の量の活性成分、好ましくは1種又は複数の適切な賦形剤を含有する。適切な場合、固形剤形は、腸溶コーティングなどのコーティングを用いて製造され得るか、又は当技術分野でよく知られている方法に従って遅延性若しくは徐放性などの活性成分の放出制御を提供するように製剤化され得る。適切な場合、固形剤形は、例えば、口腔内分散性錠剤など、唾液中で崩壊する剤形であり得る。
【0112】
本発明の好ましい実施形態において、医薬組成物は、経口投与のための組成物であり、錠剤及びカプセル剤からなる群から選択される。
【0113】
固形経口剤形に適した賦形剤の例としては、限定されないが、微結晶性セルロース、トウモロコシデンプン、ラクトース、マンニトール、ポビドン、クロスカルメロースナトリウム、ショ糖、シクロデキストリン、タルカム、ゼラチン、ペクチン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸及びセルロースの低級アルキルエーテルが挙げられる。同様に、固形製剤は、モノステアリン酸グリセリン又はヒプロメロースなど、当技術分野で公知の遅延性又は徐放性製剤のための賦形剤を含み得る。固体材料が経口投与のために使用される場合、製剤は、例えば、活性成分を固形賦形剤と混合し、続いてその混合物を従来の錠剤化機器で圧縮することによって製造され得るか、又は例えば粉末状、ペレット状若しくはミニ錠剤状の製剤がハードカプセル内に入れられ得る。固形賦形剤の量は、大幅に異なるが、通常、投薬単位あたり約25mg~約1gの範囲である。
【0114】
液体経口剤形は、例えば、エリキシル剤、シロップ剤、経口ドロップ剤又は液体充填カプセル剤として提供され得る。液体経口剤形は、水性又は非水性液中の溶液又は懸濁液のための粉末としても提供され得る。液体経口剤形に適した賦形剤の例としては、限定されないが、エタノール、プロピレングリコール、グリセロール、ポリエチレングリコール、ポロキサマー、ソルビトール、ポリソルベート、モノグリセリド及びジグリセリド、シクロデキストリン、ヤシ油、パーム油及び水が挙げられる。液体経口剤形は、例えば、水性又は非水性液中に活性成分を溶解若しくは懸濁するか、又は水中油型若しくは油中水型液体エマルジョンに活性成分を組み込むことにより製造され得る。
【0115】
着色剤、風味及び保存剤等のさらなる賦形剤が固形及び液体経口製剤に使用され得る。
【0116】
非経口投与のための医薬組成物としては、注射又は注入のための滅菌水溶液及び非水溶液、分散液、懸濁液又はエマルジョン、注射又は注入のための濃縮物並びに使用前に注射又は注入のために滅菌溶液又は分散液に溶解される滅菌粉末が挙げられる。非経口製剤に適した賦形剤の例としては、限定されないが、水、ヤシ油、パーム油及びシクロデキストリンの溶液が挙げられる。水性製剤は、必要に応じて適切に緩衝化し、十分な生理食塩水又はグルコースで等張性を付与されるべきである。
【0117】
他のタイプの医薬組成物としては、坐剤、吸入剤、クリーム剤、ゲル剤、経皮パッチ、植込錠及び口腔内又は舌下投与のための製剤が挙げられる。
【0118】
医薬製剤に使用される賦形剤は、意図する投与経路に適合し、活性成分と適合性であることが必須である。
【0119】
使用及び治療方法
本発明の他の態様は、医薬として使用するための、式(Id)による化合物及び式(Id)による化合物がその必要がある対象に投与される治療方法を提供する。
【0120】
治療のための医学的適応症及び症状
本発明の化合物は、ドーパミンアゴニストの抱合バージョンであり、したがって、本発明の化合物は、パーキンソン病などの神経変性疾患及び障害並びに/又はドーパミンアゴニストでの治療が治療上有益である他の症状の治療での使用が意図される。
【0121】
ドーパミンアゴニストでの治療が治療上有益である治療適応症は、運動性及び/又は非運動性障害を特徴とし、且つその根底にある病態生理の一部が線条体仲介回路網の機能不全である様々な中枢神経系疾患を含む。かかる機能性障害は、限定されないが、パーキンソン病(PD)、下肢静止不能症候群、ハンチントン病及びアルツハイマー病などの神経変性疾患並びに/又は統合失調症、注意欠陥多動障害及び薬物嗜癖などの精神神経疾患でも見られる。
【0122】
したがって、本発明の一実施形態において、式(Id)による化合物若しくはその薬学的に許容される塩又は本発明による医薬組成物は、神経変性疾患若しくは障害又は精神神経疾患若しくは障害の治療に使用される。
【0123】
より具体的には、本発明の一実施形態において、式(Id)による化合物若しくはその薬学的に許容される塩又は本発明による医薬組成物は、パーキンソン病、ハンチントン病、下肢静止不能症候群若しくはアルツハイマー病などの神経変性疾患若しくは障害;又は統合失調症、注意欠陥多動障害若しくは薬物嗜癖などの精神神経疾患若しくは障害の治療に使用される。
【0124】
本発明は、パーキンソン病、ハンチントン病、下肢静止不能症候群若しくはアルツハイマー病などの神経変性疾患若しくは障害;又は統合失調症、注意欠陥多動障害若しくは薬物嗜癖などの精神神経疾患若しくは障害の治療方法も提供し、その方法は、式(Id)による化合物若しくはその薬学的に許容される塩又は本発明による医薬組成物を治療有効量で、それを必要とする患者に投与することを含む。
【0125】
経口投与に適している化合物は、パーキンソン病における新たな治療パラダイムを提供する可能性を有する。したがって、本発明の好ましい実施形態において、式(Id)による本発明の化合物若しくはその薬学的に許容される塩又は本発明による医薬組成物は、パーキンソン病の治療方法において使用される。
【0126】
神経変性疾患及び障害に加えて、ドーパミン作動性代謝回転の増加が有益であり得る他の症状において、認知の様々な面を含む精神機能が改善される。それは、抑うつ症患者において正の効果も有し得、食欲抑制薬として肥満症の治療及び薬物嗜癖の治療でも使用され得る。それは、微細脳機能障害(MBD)、ナルコレプシー、注意欠陥多動障害及び統合失調症の潜在的にネガティブな症状、ポジティブな症状及び認知症状を改善し得る。
【0127】
下肢静止不能症候群(RLS)及び周期性四肢運動障害(PLMD)は、ドーパミンアゴニストで臨床的に治療される別の適応症である。さらに、性交不能、勃起機能不全、SSRI誘発性機能障害、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)及び特定の下垂体腫瘍(プロラクチノーマ)も、ドーパミンアゴニストで治療することにより改善される可能性がある。ドーパミンは、循環器系及び腎系の調節に関与し、したがって、腎不全及び高血圧症は、本発明の化合物の代替の適応症と見なされ得る。
【0128】
用量
療法に必要とされる様々な用量での治療に、式(Id)による本発明の化合物が使用され得る。したがって、一実施形態において、1日あたり約0.0001~約5mg/kg体重の量で投与される。特に、1日量は、1日あたり0.001~約2mg/kg体重の範囲であり得る。正確な投薬量は、治療すべき対象の投与頻度及び投与形式、性別、年齢、体重及び全身状態、治療すべき状態の性質及び重症度、治療されるべき付随する疾患、治療の所望の効果並びに当業者に公知の他の因子に応じて異なる。
【0129】
成人の一般的な経口投薬量は、本発明の化合物0.01~100mg/日の範囲であり、例えば0.05~50mg/日、0.1~10mg/日又は0.1~5mg/日又は1~10mg/日、又は10~15mg/日、15~25mg/日、25~35mg/日、35~45mg/日、又は例えば55~65mg/日、又は70~85mg/日、又は80~95mg/日の範囲である。
【0130】
好都合には、本発明の化合物は、約0.01~100mg、例えば約0.01~50mg、例えば0.05mg、0.1mg、0.2mg、0.5mg、1mg、5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg又は50mgまでの量で前記化合物を含有する単位剤形で投与される。
【0131】
投与経路
単独の活性化合物として又は他の活性化合物と併せて、式(Id)の化合物を含む医薬組成物は、経口、経直腸、経鼻、経頬粘膜、舌下、経肺、経皮及び非経口的(例えば、皮下、筋肉内及び静脈内)経路などのいずれかの適切な経路による投与のために特に製剤化され得る。本発明に関連して、経口経路が好ましい投与経路である。
【0132】
その経路は、治療される対象の全身状態及び年齢、治療される状態の性質並びに活性成分に応じて異なると理解される。
【0133】
本発明のさらなる態様は、パーキンソン病、ハンチントン病、下肢静止不能症候群若しくはアルツハイマー病などの神経変性疾患若しくは障害;又は統合失調症、注意欠陥多動障害若しくは薬物嗜癖などの精神神経疾患若しくは障害の治療方法に関し、その方法は、式(Id)の化合物若しくはその薬学的に許容される塩又は本発明による医薬組成物を治療有効量で、それを必要とする患者に投与することを含む。
【0134】
本発明の好ましい実施形態において、治療方法は、神経変性疾患又は障害を治療する方法、さらにより好ましくはパーキンソン病を治療する方法である。
【0135】
本発明のさらなる態様は、パーキンソン病、ハンチントン病、下肢静止不能症候群若しくはアルツハイマー病などの神経変性疾患若しくは障害の治療;又は統合失調症、注意欠陥多動障害若しくは薬物嗜癖などの精神神経疾患若しくは障害の治療のための医薬の製造における、式(Id)による化合物若しくはその薬学的に許容される塩又は本発明による医薬組成物の使用に関する。
【0136】
本発明の好ましい実施形態において、式(Id)の化合物若しくはその薬学的に許容される塩又は本発明による医薬組成物は、神経変性疾患又は障害の治療のための医薬の製造において、より好ましくはパーキンソン病の治療のための医薬の製造において使用される。
【0137】
本発明の一実施形態において、式(Id)の化合物若しくはその薬学的に許容される塩又は本発明による医薬組成物は、単独の活性化合物としてスタンドアローン治療として使用される。
【0138】
本発明の一実施形態において、式(Id)の化合物若しくはその薬学的に許容される塩又は本発明による医薬組成物は、パーキンソン病などの神経変性疾患又は障害のスタンドアローン治療として使用される。
【0139】
組合せ(combination)
本発明の別の実施形態において、式(Id)の化合物若しくはその薬学的に許容される塩又は本発明による医薬組成物は、パーキンソン病などの神経変性疾患又は障害の治療に有用な他の薬剤と組み合わせて使用され得る。
【0140】
本発明の一実施形態において、化合物(II)、(III)及び(IV)からなる群から選択される化合物又はこれらの化合物のいずれか1つの薬学的に許容される塩は、パーキンソン病などの神経変性疾患又は障害の治療に有用な他の薬剤と併せて使用される。本発明の一実施形態において、化合物(II)、(III)及び(V)からなる群から選択される化合物又はこれらの化合物のいずれか1つの薬学的に許容される塩は、パーキンソン病などの神経変性疾患又は障害の治療に有用な他の薬剤と併せて使用される。さらにより具体的な実施形態において、化合物(II)及び(III)からなる群から選択される化合物又はこれらの化合物のいずれか1つの薬学的に許容される塩は、パーキンソン病などの神経変性疾患又は障害の治療に有用な他の薬剤と併せて使用される。
【0141】
2種類の化合物は、同時に又は2種類の化合物の投与間に時間を挟んで投与され得る。2種類の化合物は、同一医薬製剤若しくは組成物の一部として又は別々の医薬製剤若しくは組成物において投与され得る。2種類の化合物は、同日又は異なる日に投与され得る。それらは、同じ経路、例えば経口投与、皮下注射、経皮投与、デポー、筋肉内注射若しくは静脈内注射などにより、又は一方の化合物が例えば経口投与されるか若しくはデポーによって投与され、もう一方の化合物が例えば注入される異なる経路により投与され得る。2種類の化合物は、1日、1週若しくは1か月に1回若しくは2回などの同じ投与計画又は間隔により、又は例えば一方が1日に1回投与され、もう一方が1日、若しくは週、若しくは月に2回投与される異なる投与計画によって投与され得る。
【0142】
一部の場合、治療される患者は、式(Id)の化合物又はその薬学的に許容される塩での治療が開始される際、神経変性疾患又は障害の治療で有用な1種又は複数の他の化合物での治療を既に受けていることができる。他の場合、神経変性疾患又は障害の治療に有用な1種又は複数の他の化合物での治療が開始される際、患者は、式(Id)の化合物での治療を既に受けていることができる。他の場合、式(Id)の化合物での治療及び神経変性疾患又は障害の治療に有用な1種又は複数の他の化合物での治療は、同時に開始される。
【0143】
本発明の化合物若しくはその薬学的に許容される塩又は本発明による医薬組成物は、パーキンソン病などの神経変性疾患又は障害の治療に一般に使用される1種又は複数の化合物と併せて使用され得る。したがって、本発明の一実施形態において、式(Id)の化合物若しくはその薬学的に許容される塩又は本発明による医薬組成物は、L-DOPA、ドロキシドパ、フォリグラックス、セレジリン又はラサギリンなどのMAO-B阻害剤、エンタカポン又はトルカポンなどのCOMT阻害剤、イストラデフィリンなどのアデノシン2aアンタゴニスト、アマンタジン又はメマンチンなどの抗グルタミン酸剤、リバスチグミン、ドネペジル又はガランタミンなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤及びクエチアピン、クロザピン、リスペリドン、ピマバンセリン、オランザピン、ハロペリドール、アリピプラゾール又はブレクスピプラゾールなどの抗精神病薬からなる群から選択される化合物と併せて使用される。
【0144】
本発明の一実施形態において、化合物(II)、(III)及び(IV)からなる群から選択される化合物又はこれらの化合物のいずれか1つの薬学的に許容される塩は、L-DOPA、ドロキシドパ、フォリグラックス、セレジリン又はラサギリンなどのMAO-B阻害剤、エンタカポン又はトルカポンなどのCOMT阻害剤、イストラデフィリンなどのアデノシン2aアンタゴニスト、アマンタジン又はメマンチンなどの抗グルタミン酸剤、リバスチグミン、ドネペジル又はガランタミンなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤及びクエチアピン、クロザピン、リスペリドン、ピマバンセリン、オランザピン、ハロペリドール、アリピプラゾール又はブレクスピプラゾールなどの抗精神病薬からなる群から選択される化合物と併せて使用される。
【0145】
本発明の一実施形態において、化合物(II)、(III)及び(V)からなる群から選択される化合物又はこれらの化合物のいずれか1つの薬学的に許容される塩は、L-DOPA、ドロキシドパ、フォリグラックス、セレジリン又はラサギリンなどのMAO-B阻害剤、エンタカポン又はトルカポンなどのCOMT阻害剤、イストラデフィリンなどのアデノシン2aアンタゴニスト、アマンタジン又はメマンチンなどの抗グルタミン酸剤、リバスチグミン、ドネペジル又はガランタミンなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤及びクエチアピン、クロザピン、リスペリドン、ピマバンセリン、オランザピン、ハロペリドール、アリピプラゾール又はブレクスピプラゾールなどの抗精神病薬からなる群から選択される化合物と併せて使用される。
【0146】
さらにより具体的な実施形態において、化合物(II)及び(III)からなる群から選択される化合物又はこれらの化合物のいずれか1つの薬学的に許容される塩は、L-DOPA、ドロキシドパ、フォリグラックス、セレジリン又はラサギリンなどのMAO-B阻害剤、エンタカポン又はトルカポンなどのCOMT阻害剤、イストラデフィリンなどのアデノシン2aアンタゴニスト、アマンタジン又はメマンチンなどの抗グルタミン酸剤、リバスチグミン、ドネペジル又はガランタミンなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤及びクエチアピン、クロザピン、リスペリドン、ピマバンセリン、オランザピン、ハロペリドール、アリピプラゾール又はブレクスピプラゾールなどの抗精神病薬からなる群から選択される化合物と併せて使用される。
【0147】
小分子に加えて、本発明の化合物と組み合わされる化合物は、例えば、抗体標的化α-シヌクレイン、Tau又はA-βタンパク質など、神経変性疾患又は障害の治療における新興生物製剤アプローチも包含し得る。
【0148】
したがって、本発明の一実施形態において、式(Id)の化合物若しくはその薬学的に許容される塩又は本発明による医薬組成物は、L-DOPA、ドロキシドパ、フォリグラックス、セレジリン若しくはラサギリンなどのMAO-B阻害剤、エンタカポン若しくはトルカポンなどのCOMT阻害剤、イストラデフィリンなどのアデノシン2aアンタゴニスト、アマンタジン若しくはメマンチンなどの抗グルタミン酸剤、リバスチグミン、ドネペジル若しくはガランタミンなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤及びクエチアピン、クロザピン、リスペリドン、ピマバンセリン、オランザピン、ハロペリドール、アリピプラゾール若しくはブレクスピプラゾールなどの抗精神病薬からなる群から選択される化合物など、パーキンソン病の治療のための他の薬剤;又は抗体標的化α-シヌクレイン、Tau又はA-βタンパク質と併せて使用される。
【0149】
本発明の一実施形態において、化合物(II)、(III)及び(IV)からなる群から選択される化合物又はこれらの化合物のいずれか1つの薬学的に許容される塩は、L-DOPA、ドロキシドパ、フォリグラックス、セレジリン若しくはラサギリンなどのMAO-B阻害剤、エンタカポン若しくはトルカポンなどのCOMT阻害剤、イストラデフィリンなどのアデノシン2aアンタゴニスト、アマンタジン若しくはメマンチンなどの抗グルタミン酸剤、リバスチグミン、ドネペジル若しくはガランタミンなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤及びクエチアピン、クロザピン、リスペリドン、ピマバンセリン、オランザピン、ハロペリドール、アリピプラゾール若しくはブレクスピプラゾールなどの抗精神病薬からなる群から選択される化合物;又は抗体標的化α-シヌクレイン、Tau若しくはA-βタンパク質と併せて使用される。
【0150】
本発明の一実施形態において、化合物(II)、(III)及び(V)からなる群から選択される化合物又はこれらの化合物のいずれか1つの薬学的に許容される塩は、L-DOPA、ドロキシドパ、フォリグラックス、セレジリン若しくはラサギリンなどのMAO-B阻害剤、エンタカポン若しくはトルカポンなどのCOMT阻害剤、イストラデフィリンなどのアデノシン2aアンタゴニスト、アマンタジン若しくはメマンチンなどの抗グルタミン酸剤、リバスチグミン、ドネペジル若しくはガランタミンなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤及びクエチアピン、クロザピン、リスペリドン、ピマバンセリン、オランザピン、ハロペリドール、アリピプラゾール若しくはブレクスピプラゾールなどの抗精神病薬からなる群から選択される化合物;又は抗体標的化α-シヌクレイン、Tau若しくはA-βタンパク質と併せて使用される。
【0151】
さらにより具体的な実施形態において、化合物(II)及び(III)からなる群から選択される化合物又はこれらの化合物のいずれか1つの薬学的に許容される塩は、L-DOPA、ドロキシドパ、フォリグラックス、セレジリン若しくはラサギリンなどのMAO-B阻害剤、エンタカポン若しくはトルカポンなどのCOMT阻害剤、イストラデフィリンなどのアデノシン2aアンタゴニスト、アマンタジン若しくはメマンチンなどの抗グルタミン酸剤、リバスチグミン、ドネペジル若しくはガランタミンなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤及びクエチアピン、クロザピン、リスペリドン、ピマバンセリン、オランザピン、ハロペリドール、アリピプラゾール若しくはブレクスピプラゾールなどの抗精神病薬からなる群から選択される化合物;又は抗体標的化α-シヌクレイン、Tau若しくはA-βタンパク質と併せて使用される。
【0152】
一実施形態において、式(Id)による化合物若しくはその薬学的に許容される塩又は本発明の医薬組成物は、患者の治療のための単独の医薬として使用される。一実施形態において、式(Id)による化合物若しくはその薬学的に許容される塩又は本発明の医薬組成物は、上記のリストから選択される別の薬物で以前に治療されていない患者の治療に使用される。
【0153】
本発明の一態様は、パーキンソン病、ハンチントン病、下肢静止不能症候群若しくはアルツハイマー病などの神経変性疾患若しくは障害の治療;又は統合失調症、注意欠陥多動障害若しくは薬物嗜癖などの精神神経疾患若しくは障害の治療のための医薬の製造における、式(Id)の化合物若しくはその薬学的に許容される塩又は本発明による医薬組成物の使用を提供する。好ましい実施形態において、医薬は、パーキンソン病の治療のための医薬である。
【0154】
本発明の例示的化合物
【0155】
【実施例】
【0156】
実施例1 - 本発明の化合物の製造
一般式Id(R1及びR2が上記で定義される通りである)の本発明の化合物は、以下の実施例に示す方法によって製造することができる。記載の方法において、当技術分野の化学者にそれ自体公知であるか、又は当業者に明らかであり得る、変形形態又は修正形態を利用することが可能である。さらに、本発明の化合物を製造する他の方法は、以下の実施例に照らして当業者に容易に理解されるであろう。
【0157】
本明細書で使用される出発原料は、市販されているか、又は当技術分野で公知の慣例的な方法、例えば“Compendium of Organic Synthetic Methods,Vol.I-XII”(Wiley-Interscience出版)などの標準参考図書に記載の方法によって製造することができる。好ましい方法としては、限定されないが、以下の方法が挙げられる。
【0158】
さらに具体的には、化合物(4aR,10aR)-1-n-プロピル-2H,3H,4H,4aH,5H,10H,10aH-ベンゾ[g]キノリン-6,7-ジオールは、例えば国際公開第2009/026934号パンフレットにおける説明に従って製造され得る。
【0159】
そのスキームは、本発明の化合物の合成に有用である方法を表す。それらは、決して本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0160】
化合物(II)
(4aR,10aR)-6-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イルスルファマート
【化22】
アセトニトリル(20mL)中のイソシアン酸クロロスルホニル(4.07g,28.6mmol)の攪拌溶液にギ酸(1.32g,28.7mmol)を室温で一滴ずつ添加した。得られた混合物を室温で一晩攪拌した。上記の混合物に(4aR,10aR)-1-n-プロピル-2H,3H,4H,4aH,5H,10H,10aH-ベンゾ[g]キノリン-6,7-ジオール(1.50g,5.7mmol)及びN,N-ジメチルアセトアミド(10mL)を添加した。得られた混合物を室温でさらに6時間攪拌した。室温で水酸化アンモニウム溶液(10mL)を添加して、反応をクエンチした。得られた混合物を減圧下で濃縮した。
【0161】
分取HPLC(カラム:XBridge Shield RP18 OBDカラム,19*250mm,10μm;移動相A:水(10mMol/L NH4HCO3),移動相B:ACN;流量:25mL/分;勾配:10分で17%B~32%B;220nm;保持時間:9.10分)によって残留物を精製し、(4aR,10aR)-6-ヒドロキシ-1-プロピル-2H,3H,4H,4aH,5H,10H,10aH-ベンゾ[g]キノリン-7-イルスルファマート(406mg)を得た。
【0162】
LC-MS装置及びプロトコル:40℃で操作されるShim-Pack XR-ODS C18、L=50mm,D=3.0mmカラムを備えたShimadzu LCMS-2020。移動相A:水中の0.05%TFA;移動相B:アセトニトリル中の0.05%TFA。流量1.2mL/分。
勾配:
0~3.2分:A:B95:5;
3.2~3.7分:A:B1:1;
3.7~4.75分:A:B0:1;
4.75~5.0分:A:B95:5。
LC-MS(MH+):m/z=341.2 保持時間(分)=1.523
1H NMR(400MHz,DMSO)δ 7.01-6.99(d,1H),6.62-6.60(d,1H),2.94-2..911(m,1H),2.85-2.79(m,1H),2.72-2.66(m,1H),2.51-2.49(m,1H),2.45-2.28(m,1H),2.16-2.06(m,3H),1.85-1.82(m,1H),1.64-1.40(m,5H),1.09-1.06(m,1H),0.86-0.83(t,3H).
【0163】
化合物(III)
(4aR,10aR)-7-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-イルスルファマート
【化23】
アセトニトリル(20mL)中のイソシアン酸クロロスルホニル(4.07g,28.6mmol)の攪拌溶液にギ酸(1.32g,28.7mmol)を室温で一滴ずつ添加した。得られた混合物を室温で一晩攪拌した。上記の混合物に(4aR,10aR)-1-n-プロピル-2H,3H,4H,4aH,5H,10H,10aH-ベンゾ[g]キノリン-6,7-ジオール(1.50g,5.7mmol)及びN,N-ジメチルアセトアミド(10mL)を添加した。得られた混合物を室温でさらに6時間攪拌した。室温で水酸化アンモニウム溶液(10mL)を添加して、反応をクエンチした。得られた混合物を減圧下で濃縮した。分取HPLC(カラム:XBridge Shield RP18 OBDカラム,19
*250mm,10μm;移動相A:水(10mMol/L NH
4HCO
3),移動相B:ACN;流量:25mL/分;勾配:10分で17%B~32%B;254nm;保持時間:8.18分)によって残留物を精製し、(4aR,10aR)-7-ヒドロキシ-1-プロピル-2H,3H,4H,4aH,5H,10H,10aH-ベンゾ[g]キノリン-6-イルスルファマート(297mg)を得た。
【0164】
LC-MS装置及びプロトコル:40℃で操作されるShim-Pack XR-ODS C18、L=50mm,D=3.0mmカラムを備えたShimadzu LCMS-2020。移動相A:水中の0.05%TFA;移動相B:アセトニトリル中の0.05%TFA。流量1.2mL/分。
勾配:
0~3.2分:A:B95:5;
3.2~3.7分:A:B1:1;
3.7~4.75分:A:B0:1;
4.75~5.0分:A:B95:5。
LC-MS(MH+):m/z=341.2 保持時間(分)=1.42
1H NMR(400MHz,DMSO)δ 6.82-6.84(d,1H),6.73-6.70(d,1H),3.12-3.07(m,1H),2.95-2.90(m,1H),2.72-2.63(m,1H),2.53-2.51(m,1H),2.50-2.43(m,1H),2.41-2.32(m,3H),1.82-1.79(m,1H),1.64-1.39(m,5H),1.07-1.02(m,1H),0.86-0.82(t,3H)
【0165】
化合物(V)
(4aR,10aR)-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6,7-ジイルビス(スルファマート)
アセトニトリル(20mL)中のイソシアン酸クロロスルホニル(4.07g,28.6mmol)の攪拌溶液にギ酸(1.32g,28.7mmol)を室温で一滴ずつ添加した。得られた混合物を室温で一晩攪拌した。上記の混合物に(4aR,10aR)-1-プロピル-2H,3H,4H,4aH,5H,10H,10aH-ベンゾ[g]キノリン-6,7-ジオール(1.50g,5.7mmol)及びN,N-ジメチルアセトアミド(10mL)を添加した。得られた混合物を室温でさらに6時間攪拌した。室温で水酸化アンモニウム溶液(10mL)を添加して、反応をクエンチした。得られた混合物を減圧下で濃縮した。分取HPLC(カラム:XBridge Shield RP18 OBDカラム,19*250mm,10μm;移動相A:水(10mMol/LNH4HCO3),移動相B:ACN;流量:25mL/分;勾配:10分で17%B~32%B;254nm)によって残留物を精製し、(4aR,10aR)-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6,7-ジイルビス(スルファマート)を得た。
【0166】
実施例2 - ドーパミンアゴニスト(4aR,10aR)-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロ-ベンゾ[g]キノリン-6,7-ジオールへのインビボでの転化
本発明の実施例から、本発明の選択された化合物がラットにおいてインビボで化合物(I)に転化されることが実証される。
【0167】
ラットにおけるPK実験
化合物(Ia)、(Ib)、(Ic)、(Id-iia)、(Id-iib)及び(Id-iiab)に関する実験に対して、国際公開第2019101917号パンフレット、Liu et al.,J.Med.Chem.(2006),49:1494-1498,Liu et al.,Bioorganic Med.Chem.(2008)及び国際公開第2009/026934号パンフレットに記載のように化合物が合成された。約0.68mLの血液試料を尾又は舌下静脈から採取し、予め冷却されており、且つ水中の100mg/mLアスコルビン酸80μLと、0.5Mクエン酸及び100mM D-糖酸1,4ラクトンを含有する阻害剤溶液40μLとからなる安定化溶液で調製されたK3EDTAチューブに血液試料を入れた。チューブを6~8回穏やかに反転させ、十分に混合し、次いで湿った氷上に置いた。遠心分離(4℃で10分間にわたり3000G)するまで、回収チューブを湿った氷上に30分までの間置いた。湿った氷から除去した後、遠心分離を直ちに開始した。遠心分離が終了した直後に試料を湿った氷上に戻した。予め冷却されたギ酸(20%水中v/v)を含有する適切に標識された2つのクライオチューブのそれぞれに血漿130μLの2つの副試料を移した。チューブの蓋を直ちに取り換え、穏やかに6~8回反転させることにより、血漿溶液を完全に混合した。サンプリング後60分以内に血漿試料を可能な限り水氷上に置き、名目上-70℃で凍結保存した。
【0168】
化合物(II)及び(III)に関する実験について、100mg/mLアスコルビン酸80μLと、100mg/mLクエン酸、21mg/mL D-糖酸1,4ラクトン及び29mg/mLトリス-(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を含有する阻害剤40μLとからなる安定化水溶液でK3EDTAチューブを調製したことを除いて、上記のプロトコルを用いた。
【0169】
固相抽出又は直接タンパク質沈殿に続いて、UPLC-MS/MSによって血漿試料を分析した。応答を補正する内標準を使用した、化合物(I)の特異的な質量/電荷トランジションのモニタリングによる陽イオンモードでのエレクトロスプレーを用いたMS検出。適切なノンコンパートメント技術を用いて標準ソフトウェアを使用して濃度-時間データを分析し、誘導PKパラメーターの推定値を得た。
【0170】
化合物(Ia)を投与することからの化合物(I)の分析に使用される装置:
質量分析計(LC-MS/MS)Waters Acquity-Sciex API 5000。分析カラムWaters BEH UPLC Phenyl 100×2.1mmカラム、粒径1.7マイクロメートル。移動相A:20mMギ酸アンモニウム(水性)+0.5%ギ酸。移動相B:アセトニトリル。6.1分で95/5%から2/98%に移動する勾配。流量0.5mL/分。試験アイテム及び追加された分析標準のMRMモニタリング(多重反応モニタリング)。
化合物(Ia)の投与及び血液サンプリング:Charles River Laboratories,Sulzfeld,GermanyによってHanウィスターラットが供給された。自動制御の人工的な12時間の明及び暗サイクルを維持した。Brogaardenから入手した標準実験室食餌(Altromin1324ペレット)がラットに与えられた。ラットは、食餌に自由にアクセスできた。研究(4週間の毒性研究)中、経管栄養法によってラットに(Ia)の用量を1日1回経口投与した。(Ia)300マイクログラム/kgが投与されたラットから、雄のサテライト動物3匹からの血液試料を29日目の以下の時点:投与後0.5、1、2、4、6、8、12及び24時間で採取した。
【0171】
化合物(Ib)の投与からの化合物(I)の分析に使用される装置:
質量分析計(LC-MS/MS)Waters Acquity-Sciex API5000。分析カラムWaters BEH UPLC Phenyl 100×2.1mmカラム、粒径1.7マイクロメートル。移動相A:20mMギ酸アンモニウム(水性)+0.5%ギ酸。移動相B:アセトニトリル。6.1分で95/5%から2/98に移動する勾配。流量0.5mL/分。試験アイテム及び追加された分析標準のMRMモニタリング。
化合物(Ib)の投与及び血液サンプリング:Charles River Laboratories(UK)によってHanウィスターラットが供給された。自動制御の人工的な12時間の明及び暗サイクルを維持した。標準実験室食餌(Teklad 2014C Diet)がラットに与えられた。ラットは、食餌に自由にアクセスできた。研究(26週間の毒性研究)中、経管栄養法によってラットに(Ib)の用量を1日1回経口投与した。(Ib)300マイクログラム/kgが投与されたラットから、雄のサテライト動物3匹からの血液試料を182日目の以下の時点:投与後0.5、1、2、4、8及び24時間で採取した。
【0172】
先行技術の化合物(Ic)並びに(4aR,10aR)-7-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6-イル硫酸水素塩(hydrogen sulfate)(化合物Id-iia)及び(4aR,10aR)-6-ヒドロキシ-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-7-イル硫酸水素塩(化合物Id-iib)、(4aR,10aR)-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロベンゾ[g]キノリン-6,7-ジイルビス(硫酸水素塩)(化合物(Id-iiab))の投与からの化合物(I)の分析に使用される装置:
質量分析計(LC-MS/MS)Waters Acquity-Waters Xevo TQ-S。分析カラムAcquity BEH C18 100×2.1mm、1.7マイクロメートル。移動相A:20mMギ酸アンモニウム+0.2%ギ酸。移動相B:アセトニトリル+0.2%ギ酸。11.0分で95/5%から5/95%に移動する勾配。流量0.3mL/分。試験アイテム及び追加された分析標準のMRMモニタリング。
【0173】
化合物(Id-iia)及び(Id-iib)の投与及び血液サンプリング:
Charles River Laboratories,Sulzfeld,GermanyによってHanウィスターラットが供給された。自動制御の人工的な12時間の明暗サイクルを維持した。Brogaardenから入手した標準実験室食餌(Altromin1324ペレット)がラットに与えられた。ラットは、食餌に自由にアクセスできた。経管栄養法によって経口で、雄のHanウィスターラットに(Id-iia)及び(Id-iib)それぞれを単回経口経管投与した。(Id-iia)及び(Id-iib)392μg/kgをラットに投与し、雄の動物3匹からの血液試料を以下の時点:投与後1日目:1、2、4、6、8及び24時間で採取した。
【0174】
化合物(Ic)及び(Id-iiab)の投与及び血液サンプリング:
Envigo,UKによってHanウィスターラットが供給された。自動制御の人工的な12時間の明暗サイクルを維持した。標準実験室食餌Teklad2014Cがラットに与えられた。ラットは、食餌に自由にアクセスできた。経管栄養法によって経口で、雄のHanウィスターラットに(Ic)及び(Id-iiab)それぞれを単回経口経管投与した。(Id-iiab)703μg/kg及び(Ic)494μg/kgをラットに投与した。雄の動物3匹からの血液試料を以下の時点:投与後1日目:1、2、4、6、8及び24時間で採取した。
【0175】
化合物(II)及び(III)の投与及び血液サンプリング:
Envigo,UKによってHanウィスターラットが供給された。自動制御の人工的な12時間の明暗サイクルを維持した。標準実験室食餌Teklad2014Cがラットに与えられた。ラットは、食餌に自由にアクセスできた。雄のHanウィスターラットに化合物(II)又は(III)を単回経口経管投与した。化合物(II)390μg/kg及び化合物(III)390μg/kgをラットに投与した。雄の動物3匹からの血液試料を以下の時点:投与後1日目:5分、0.25時間、0.5時間、1時間、2時間、4時間、8時間及び24時間で採取した。
【0176】
化合物(II)及び(III)の投与からの化合物(I)の分析に使用される装置:
質量分析計(LC-MS/MS)Waters Acquity-Waters Xevo TQ-S。分析カラムAcquity BEH C18 100×2.1mm,1.7μm。移動相A:20mMギ酸アンモニウム+0.2%ギ酸。移動相B:アセトニトリル+0.2%ギ酸。9.1分で95/5%から5/95%に移動する勾配。流量0.3mL/分。試験アイテム及び追加された分析標準のMRMモニタリング。
【0177】
化合物(II)及び(III)の投与後の様々な時点での血漿中の、(4aR,10aR)-1-プロピル-1,2,3,4,4a,5,10,10a-オクタヒドロ-ベンゾ[g]キノリン-6,7-ジオール(化合物(I))の時点ごとの対象3匹からの測定平均血漿中濃度を
図2及び1にそれぞれ示す。
【0178】
以下の表2は、測定平均血漿中濃度に基づくPKパラメーターをさらに示す。
【0179】
表2の結果から、試験化合物(II)及び(III)に関する24時間にわたる血漿中曝露は、先行技術の化合物(Ia)、(Ib)について確認された対応する曝露よりも低く、プロドラッグとして有用でないと判明した先行技術の化合物(Ic)についての対応する曝露よりも高い。さらに、化合物(II)及び(III)の両方を投与した後に確認される化合物(I)のCmaxは、先行技術の化合物(Ia)及び(Ib)並びに先行技術のスルフェート抱合体化合物(Id-iia)及び(Id-iib)の投与から達成可能なCmaxよりも低い。
【0180】
副作用を誘発すると予想される化合物(I)のピーク濃度(Cmax)が化合物(II)及び(III)よりも低いことから、より高い用量の本発明の化合物を投与して、化合物(Ia)、(Ib)、(Id-iia)及び(Id-iib)の投与から達成可能な濃度と比較して、化合物(I)のより高い総血漿中濃度が潜在的に達成され得る。
【0181】
化合物(II)に関して、Tmaxは、先行技術の化合物(Ia)、(Ib)及び(Ic)と同様に1時間後に確認され、先行技術の化合物(Id-iia)、(Id-iib)及び(Id-iiab)は、数時間後にTmaxを有した。
【0182】
【0183】
実施例3 - 本発明の化合物の溶解度
以下の実施例から、本発明の化合物は、先行技術のスルフェート誘導体と比較してpH6.0で高い溶解度を有することが実証される。
【0184】
実験手順:
化合物(III)に関して、過剰の化合物(III)で試料を調製し、飽和溶液を確立した。化合物(III)4.2mgをバイアルに移し、バッファー0.5mL(25mMリン酸緩衝液、NaH2PO4/Na2HPO4,pH6)を添加した。試料を回転により24時間混合した。試料のpHをt=0(回転前)及びt=24h(回転の24時間後)で測定した。続いて、試料の一部を0.22μmポリフッ化ビニリデンフィルターで濾過し、最初の数滴を廃棄し、メタノール,80:20の溶離剤20mMアンモニウムバッファー(pH2.4)を用いた逆相HPLC(C18,3.5μm,4.6×150mmカラム)により、溶解した化合物(III)の含有量を定量化した。
【0185】
残りの未溶解物質を抽出し、X線粉末回析(XRPD)により分析する前に、金属プレート上で約20分間空気乾燥させた。XRPDディフラクトグラムは、CuKa1放射線(λ=1.5406A)を用いてPANalytical X’Pert PROX線回折計で得た。X’Celerator検出器を用いて2θ範囲3~39.9°で試料を反射モードで測定した。
【0186】
化合物(Id-iib)に関して、バッファー0.5mL中の化合物(Id-iib)0.799mgを使用して同様の分析を実施した。
【0187】
さらに、ADMET Predictor(商標)version10.3.0.7,Simulations Plus,Incを用いて、物理的及び化学的性質の値を予測した。
【0188】
【0189】
結果:
化合物IIIの溶解度測定値は、0.89mg/mLに決定された。バッファーと混合する前後の結晶質形態は、同一であり、固体形態変化がないことが示された。
【0190】
先行技術のスルフェート誘導体化合物(Id-iib)に関して、溶解度は、0.037mg/mLに決定された。バッファーと混合する前後の結晶質形態は、同一であり、固体形態変化がないことが示された。
【0191】
スルフェート誘導体化合物(Id-iib)及び(Id-iia)は、構造的に非常に類似しており、その結果、非常に類似のpKa予測値及びLogP及びDが得られる。したがって、化合物(Id-iia)の溶解度は、化合物(Id-iib)の溶解度測定値と非常に類似していると予想される。
【0192】
さらに、スルファマート誘導体化合物(II)及び(III)は、構造的に非常に類似しており、その結果、非常に類似のpKa予測値及びLogP及びDが得られる。したがって、化合物IIの溶解度は、化合物IIIの溶解度測定値と非常に類似していると予想される。
【0193】
要約すると、本発明のデータから、本発明の化合物が先行技術のスルフェート誘導体よりも高い溶解度を有することが実証された。
【0194】
実施例4:ラット及びヒト肝臓S9における本発明の化合物の転化
5mM MgCl2、200U/mLスーパーオキシドジスムターゼ及び1mMアスコルビン酸を含む、pH7.4の50mMリン酸緩衝液中に懸濁されたラット及びヒト肝臓S9画分と共に、化合物(II)、(III)、(Id-iia)及び(Id-iib)を別々に1μMでインキュベートした。ヒト肝臓S9(ドナー50名からのプール)及びラット肝臓S9(Wistar Hanラットから,240匹のプール)画分をSekisuiXenoTech,USAから購入した。インキュベーションにおけるタンパク質濃度は4mg/mLであった。自動Hamiltonリキッドハンドリングシステムを使用して、150μL/ウェルの総インキュベーション体積で96ウェルプレートにおいて37℃でインキュベーションを実施した。時点ごとに、3つのウェルにおいて三つ組で化合物をそれぞれインキュベートした。肝臓S9懸濁液を37℃で予めインキュベートし、インキュベーションウェルに試験化合物のストック溶液を添加して、反応を開始させた。試験化合物をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、インキュベーションウェルにストック溶液を加える前に、さらに水に希釈した。インキュベーションにおける最終DMSO濃度は0.1%であった。試験化合物を肝臓S9画分と共に0、5、10、15、30、45及び60分間インキュベートした。2%ギ酸、20mg/mLアスコルビン酸、10mg/mLクエン酸及び3mg/mL TCEP(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン)を含有する、冷たい(約+4℃)停止試薬を100μL含有する96ウェルプレートにインキュベーション試料100μLを移すことにより、インキュベーションを終了した。混合した後、試料をNunc 1.0mLクライオチューブに移し、直ちに-80℃に分析まで凍結した。試料の固相抽出に続いて、LC-MS/MS分析により、化合物(I)の濃度を決定した。異なる時点での化合物(I)の濃度の増加が、0時点で採取された試料中の化合物(I)の濃度を、異なる時点で採取された試料中の化合物(I)の濃度から引くことによって計算された。
【0195】
化合物(II)、(III)、(Id-iia)及び(Id-iib)からの化合物(I)の分析に使用される装置:
質量分析計(LC-MS/MS)Waters Acquity-Waters Xevo TQ-S。分析カラムAcquity BEH C18 50×2.1mm,1.7μm。移動相A:20mMギ酸アンモニウム中に0.2%ギ酸。移動相B:アセトニトリル中に0.2%ギ酸。3.5分で5%Bから95%Bに移動する勾配。流量0.6mL/分。陽分極を用いた多重反応モニタリング(MRM)を適用し、化合物(I)の前駆体生成物イオン対遷移及びその重水素化内標準をモニターした。
【0196】
結果:
図3及び4から、ヒト肝臓S9(
図3)及びラット肝臓S9(
図4)の両方に関して、化合物(II)、(III)、(Id-iia)及び(Id-iib)と共にS9画分をインキュベーションした後、様々な時点での化合物(I)の濃度の増加が測定されたことが示されている。ヒトS9肝臓画分に基づくデータ(
図3)は、本発明の化合物(II)及び(III)が、先行技術のスルフェート抱合体(化合物(Id-iia)及び化合物(Id-iib))と比較して、ヒト肝臓S9画分において化合物(I)への転化の増加を有することを示す。ラット肝臓S9のインキュベーションついて、化合物(II)、化合物(III)及び化合物(Id-iib)が化合物(I)に転化されることが分かる。
【0197】
参考文献
米国特許第4543256号明細書
国際公開第2001/078713号パンフレット
国際公開第02/100377号パンフレット
国際公開第2009/026934号パンフレット
国際公開第2009/026935号パンフレット
国際公開第2010/097092号パンフレット
国際公開第2019101917号パンフレット
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【国際調査報告】