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特表2023-552727マイクロLED及びマイクロエレクトロニクス転写用基板
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-19
(54)【発明の名称】マイクロLED及びマイクロエレクトロニクス転写用基板
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/15 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
H01L23/14 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023531572
(86)(22)【出願日】2021-11-17
(85)【翻訳文提出日】2023-07-20
(86)【国際出願番号】 US2021059623
(87)【国際公開番号】W WO2022115280
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】63/117,653
(32)【優先日】2020-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100196221
【弁理士】
【氏名又は名称】上潟口 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】チャン ヤ-フエイ
(72)【発明者】
【氏名】ガーナー ショーン マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ハイネ デヴィッド ロバート
(57)【要約】
マイクロLEDの転写特性が改善されたガラス基板が開示され、ガラス基板は、第1の主要面と、第1の主要面と反対側の第2の主要面と、その間の厚さとを含む。電気的機能層は、第1の主要面上に配置することができる。ガラスウェーハは、約0.25mmから約50mmの空間波長範囲において、約1μm以下の大きさのうねりを示す。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主要面、前記第1の主要面と反対側の第2の主要面、及び前記第1の主要面と前記第2の主要面との間の厚さを備える基板であって、
前記第1の主要面又は前記第2の主要面の50mm×50mmの領域にわたって評価される前記基板の最大うねりは、約0.25mmから約50mmの空間波長範囲において約1μm以下の大きさを有する、基板。
【請求項2】
前記基板は、前記第1の主要面上に配置された電気的機能層をさらに含む、請求項1に記載の基板。
【請求項3】
前記電気的機能層は、複数の金属導体を含む、請求項2に記載の基板。
【請求項4】
前記電気的機能層は、薄膜トランジスタを含む、請求項2に記載の基板。
【請求項5】
前記空間波長範囲は、約30mmから約50mmである、請求項1に記載の基板。
【請求項6】
前記うねりは、約0.5μm以下である、請求項1に記載の基板。
【請求項7】
前記第1の主要面上に配置された接着層をさらに含む、請求項1に記載の基板。
【請求項8】
前記第1の主要面の表面積は、1x104mm2以上である、請求項1に記載の基板。
【請求項9】
前記第1の主要面の表面積は、約1m2以上である、請求項1に記載の基板。
【請求項10】
前記基板の厚さは、約0.1mmから約1mmの範囲である、請求項1に記載の基板。
【請求項11】
前記ガラス基板の熱膨張係数は、0℃から300℃の温度範囲にわたって、約3ppm/℃から約10ppm/℃の範囲にある、請求項1に記載の基板。
【請求項12】
前記基板は、シリカベースのガラス基板である、請求項1に記載の基板。
【請求項13】
前記最大うねりは、30mm×30mmの領域で評価される、請求項1記載の基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2020年11月24日出願の米国仮出願番号63/117,653号の米国特許法第119条に基づく優先権の利益を主張するものであり、その開示内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、マイクロLED及びマイクロエレクトロニクス転写用の基板に関し、より詳細には、最適化された幾何学的属性を示すガラス基板に関する。
【背景技術】
【0003】
マイクロ発光ダイオード(microLED)技術に基づくディスプレイは、標準的なLEDサイネージと比較して改善された解像度及びコントラスト比、有機発光ダイオードディスプレイ(OLED)よりも優れた寿命、コントラスト比、及びより大きなシームレスなタイルドディスプレイなどの、いくつかの固有の利点を考慮すると、今後数年間にわたって現在のディスプレイ技術と競合する態勢にある。マイクロLED(microLED)ディスプレイの大規模製造の障害は、各ディスプレイ基板に数百万個のマイクロLEDをほぼ完璧に首尾よく転写する必要があることである。転写されたマイクロLEDの歩留まりは99.9999%を目標としているが、現在の業界レベルは約99.9%である。現在、転写技術は、機械的、静電的、又は磁気的なスタンプ転写技術を伴い、ここでは、マイクロLEDのセットがソースウェーハからスタンプに転写され、次にスタンプから、通常はガラスでできている受け取り基板に転写される。転写を成功させるためには、マイクロLEDが良好に形成されかつスタンプ表面で正確に位置合わせされること、スタンプと基板が正確に位置合わせされかつ接触すること、及びマイクロLEDを受け取るためのバルク及び表面特性が適切に制御された基板が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
マイクロLED転写のために考慮される基板は、2つの異なる形態に由来する。1つの事例では、基板は、中間(一時的な)転写キャリアとして使用することが考慮される。基板は通常、その組成及び全体的な形状に関して特徴付けられ、基板の品質は、総厚さ変動(TTV)、反り(又は曲がり)、及び粗さによって評価される。別の事例では、大きなGenサイズのガラス板は、ディスプレイ・バックプレーン用途に使用することができる。特定の属性の例としては、フルシートの反り、うねり(特定の空間波長範囲での)、移動窓の厚さ変動を挙げることができる。これらの属性は、フォトリソグラフィに基づくバックプレーンの製造、及び、シリコン-ガラス又はガラス-ガラスのバックプレーンの間の一時的又は恒久的な接合には意味があるが、マイクロLEDの転写組立体を成功させるための十分な基準は規定しない。これらの新しいマイクロLED用途では、TTV、反り、粗さに関する従来のガイドラインを使用する基板は、マイクロLEDを基板表面に転写する際に欠陥が少ないことが想定される。しかし、この指針は、基板表面へのマイクロLEDの転写の成功を予測するには不十分である。マイクロLEDの転写効率のより強力な予測因子は、うねりに関する新しい目標範囲である。
【0005】
少なくともうねりの小さな基板は、スタンプ転写プロセスでマイクロLEDを受け取るためのより良い基板であり、例えば、小さなTTV又は反りだけを有する基板と比較して転写効率が改善される。転写プロセスがうねりに特に敏感な空間波長範囲が特定される。これらの空間波長範囲において小さなうねりを示す基板は、既存の製品よりも著しく優れた性能を発揮することができる。
【0006】
マイクロLEDスタンプの転写効率を決定する基板の特徴を特定することにより、従来技術よりも大幅に品質を向上させることができる。反り及びTTVを品質指標として基板供給業者が測定し、製造業者が指定するのに対して、さらなる品質指標としてうねりを使用することで、より優れた性能の基板を得ることができる。将来の用途に関して、製造業者がより大きなスタンプサイズに移行する際に、許容可能な転写効率をもたらすために最小化する必要がある特徴の特定の空間波長範囲が特定される。
【0007】
従って、第1の主要面と、第1の主要面とは反対側の第2の主要表面と、その間の厚さとを含む基板が開示され、この基板はさらに、第1の主要面又は第2の主要面の50mm×50mmの領域、例えば40mm×40mmの領域、例えば30mm×300mmの領域、又は20mm×20mmの領域にわたって、約0.25mmから約50mmの空間波長範囲、例えば約20mmから約50mmの空間波長範囲、例えば約30mmから約50mmの空間波長範囲において、最大うねりは約1μm以下、例えば約0.5μm以下である。
【0008】
いくつかの実施形態では、基板は、その上に、例えば第1の主要面及び/又は第2の主要面上に配置された電気的機能層をさらに含むことができる。電気的機能層は、複数の金属導体を含むことができる。いくつかの実施形態では、電気的機能層は薄膜トランジスタ(TFT)を含むことができる。
【0009】
基板は、基板上に、例えば第1又は第2の主要面の少なくとも一方の上に配置された接着剤層をさらに含むことができる。
【0010】
いくつかの実施形態では、第1及び/又は第2の主要面の表面積は、約1x104mm2以上とすることができる。いくつかの実施形態では、第1及び/又は第2の主要面の表面積は、約1m2以上とことができる。第1の主要面と第2の主要面との間の基板の厚さは、約0.1mmから約1mmの範囲とすることができる。
【0011】
基板は、ガラス基板、例えばシリカベースのガラス基板(例えば、約50重量%以上のシリカ)とすることができるが、さらなる実施形態では、基板はシリコン基板(例えば、シリコンウェーハ)とすることができる。
【0012】
様々な実施形態において、基板の熱膨張係数(CTE)は、ASTM C1350M-96(2019)に従って測定した場合、約0℃から約300℃の温度範囲にわたって、約3ppm/℃から約10ppm/℃の範囲とすることができる。
【0013】
本明細書で開示する実施形態の追加の特徴及び利点は、以下の詳細な説明で述べられることになり、一部は、その説明から当業者に明らかになる、又は、以下の詳細な説明、特許請求の範囲、並びに添付の図面を含む、本明細書で説明する実施形態を実施することによって認識されることになる。
【0014】
上記の概要及び以下の詳細な説明の両方は、本明細書に開示された本発明の性質及び特性を理解するための概要又は枠組みを提供することが意図されている実施形態を提示することを理解されたい。添付図面は、さらなる理解をもたらすために含まれ、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する。図面は、本開示の様々な実施形態を示し、明細書と共に、その原理及び作用を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】全厚さ変動(TTV)を示す基板の断面図である。
図2】反りを示す基板の断面図である。
図3】うねりを示す一連の図である。
図4】複数の電子デバイス、例えばマイクロLEDがその上に配置され、非平面表面トポグラフィーを含む基板の上に配置されたスタンプの断面図である。
図5】スタンプが基板に接近する際の図5のスタンプの断面図であり、電子デバイスの基板への不完全な転写を示す。
図6】様々なガラス基板サンプルについて、基板のうねりの関数として電子デバイスの転写効率をシミュレートした結果を示す散布図である。
図7】様々なガラス基板サンプルについて、基板のTTVの関数として電子デバイス転写効率をシミュレートした結果を示す散布図である。
図8】様々なガラス基板サンプルについて、基板の反りの関数として電子デバイス転写効率をシミュレートした結果を示す散布図である。
図9】スタンプサイズの関数としてシミュレートした電子デバイス転写効率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本開示の実施形態に対する参照が詳細に行われ、その実施例は、添付の図面に示されている。可能であれば、図面全体にわたって同じ参照番号は、同じ又は同様の要素を指すように用いられることになる。しかしながら、本開示は、多くの様々な形態で具現化することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈すべきではない。
【0017】
本明細書で使用される場合、用語「約」は、量、サイズ、配合、パラメータ、及び他の量及び特性が、正確ではない及びそうである必要もないが、必要に応じて、公差、変換係数、四捨五入、測定誤差など、並びに当業者に公知の他の要因を反映して、近似する及び/又はより大きく又はより小さくすることができることを意味する。
【0018】
本明細書では、範囲は「約」1つの値から及び/又は「約」別の値まで表すことができる。このような範囲が表される場合、別の実施形態は、1つの値から他方の値まで含む。
同様に、値が先行詞「約」の使用によって近似値として表される場合、その値は別の実施形態を形成することを理解されたい。範囲の各々の終点は、他の終点との関連で及び他の終点とは無関係に有意であることをさらに理解されたい。
【0019】
本明細書で使用される場合、方向を示す用語、例えば、上、下、右、左、前、後、上部、下部は、描画された図面を参照してもたらされるに過ぎず、絶対的な向きを暗示することを意図するものではない。
【0020】
特に明示されない限り、本明細書に記載されるいかなる方法も、そのステップが特定の順序で実行されることを要求すると解釈されること、及びいかなる装置においても、特定の方向性を要求することは、決して意図されていない。従って、方法の請求項がそのステップに従うべき順序を実際に記載していない場合、又は装置の請求項が個々の構成要素に対する順序又は向きを実際に記載していない場合、又はステップが特定の順序に限定されることが請求項又は説明において他に明確に述べられていない場合、又は装置の構成要素に対する特定の順序又は向きが記載されていない場合、順序又は向きがいかなる点においても推測されることは決して意図されていない。これは、ステップの配置、操作の流れ、構成要素の順序、又は構成要素の向きに関する論理の問題、文法的構成又は句読点から得られる平易な意味、及び明細書に記載された実施形態の数又は種類など、解釈に関するあらゆる非表現的根拠について当てはまるものである。
【0021】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数形の参照を含む。従って、例えば、「a」構成要素への参照は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、2又は3以上のこのような構成要素を有する態様を含む。
【0022】
用語「例示的な」、「実施例」、又はこれらの種々の形態は、実施例、例、又は例示として機能することを意味するのに本明細書で使用される。「例示的な」又は「実施例」として本明細書で説明する何らかの態様又は設計は、他の態様又は設計よりも好ましい又は有利であると解釈すべきではない。さらに、実施例は、明確化及び理解の目的のためにのみ提供され、何らかの方法で開示の主題又は本開示の関連する部分を限定又は制限することを意図しない。様々な範囲の無数の追加の又は代替の実施例を提示することができるが、簡略化するために省略されていることを認識されたい。
【0023】
本明細書で使用される場合、用語「備える」及び「含む」、並びにこれらの変形形態は、特に示されない限り、同義でありオープンエンドであると解釈されるものとする。移行句「備える」又は「含む」に続く要素のリストは、リストに具体的に列挙されたもの以外の要素も存在することができるような、非排他的なリストである。
【0024】
本明細書で使用される用語「実質的な」、「実質的に」、及びこれらの変形形態は、記載される特徴が値又は説明に等しいか又はほぼ等しいことを表すことが意図される。例えば、「実質的に平面の」表面は、平面の又はほぼ平面の表面を表すことが意図される。さらに、「実質的に」は、2つの値が等しいか又はほぼ等しいことを表すことが意図される。一部の実施形態では、「実質的に」は、互いの約10%以内、例えば互いの約5%以内、又は互いの約2%以内の値を表すことができる。
【0025】
特に示されない限り、図面は縮尺通りではない。
【0026】
図1に示すように、全厚さ変動(TTV)とは、基板10の最大厚さTmaxと基板10の最小厚さTminとの差を指し、基板10は、第1の主要面12と、第1の主要面12と反対側の第2の主要面14とを備える。厚さは、第1の主要面上の第1の点と第2の主要面上の第2の点との間の距離として定義され、第1の点及び第2の点は、第1の主要面又は第2の主要面の少なくとも一方に直交する線上にある。従って、TTVは第1の主要面と第2の主要面の両方のトポグラフィーに依存する。TTVはTmax-Tminとして計算できる。TTVが基板全体を基準として使用されるのに対し、局所的厚さ変動(LTV)は基板の一部の厚さ変動として定義することができる。従って、LTVは、特定の基板の総面積よりも小さい表面積、例えば、マイクロLEDを基板に転写するために使用されるスタンプの大きさ程度の面積での厚さの変動を指すために使用することができる。
【0027】
図2を参照すると、反りは、基準面16と基板10の中心線18との間の距離Dの変動の尺度である。反りは、(Dmax-Dmin)/2として計算することができる。
【0028】
うねりは、例えば50ミリメートル(mm)より大きく0.25mmより小さい空間波長を有する表面特徴を除去した後の基板の主要面のトポグラフィーの尺度である。例えば、図3(a)-3(c)に示すように、生の表面トポグラフィーデータ(図3a)をガウシアンフィルタ(図3(b))でフィルタ処理し、大規模な表面特徴(例えば、空間周波数が約50mmより大きい特徴)を除去して、表面のうねり(図3(c))を得ることができる。約0.25mm未満の空間周波数を有する特徴は、表面粗さとして特徴付けられ、同様に除去することができる。
【0029】
マイクロLED転写プロセスは、4つの異なるシナリオ、すなわち1)ネイティブ・エピタキシャル基板から中間(一時的)基板への転写、2)ネイティブ・エピタキシャル基板から最終バックプレーン基板への転写、3)中間基板から別の中間基板への転写、及び/又は、4)中間基板から最終バックプレーン基板への転写を含むことができる。これらの4つの場合において、受け取り基板は、ベア基板(例えば、裸の、被覆されていないガラス)、接着剤で被覆された基板、又は製造された電子部品、例えば、電気的機能層を有する基板である。本明細書で使用される場合、電気的機能層とは、基板を含む電気デバイスで利用される構成要素の間で電気エネルギーを伝導又は利用及び/又は伝達する基板上の層(複数可)を指す。例えば、電気的機能層は、導電性金属層を含むことができる。導電体は、1又は2以上の電子部品に電流及び/又は電圧を供給するために使用される電気トレースを含むことができる。電気トレースは、電力トレース又は電気データ線とすることができる。電気トレースは、フォトリソグラフィなどの従来の手段によって基板上にパターン形成することができる。電気的機能層は、薄膜トランジスタ(TFT)などの電子部品、又は、限定されるものではないが、抵抗器、コンデンサ、インダクタ、トランジスタ、発光ダイオードを含むダイオードなどを含む他の電子部品及び/又は電気部品をさらに含むことができる。以下に説明するマイクロLED転写の歩留まりを改善するための基板規定(prescription)は、非被覆層、被覆層、又は基板パターン化層、例えばパターン化金属層及び/又はパターン化半導体層に適用することができる。
【0030】
マイクロLEDの転写のような電子デバイス転写用の中間キャリア基板は、現在、産業界から、2μm未満のTTV、10マイクロメートル(μm)未満の反りの非被覆属性が要求されている。同様に、ディスプレイ・バックプレーン製造用のGenサイズのガラス基板は、現在、9μm未満の150mm×150mm移動窓厚さ変動、500μm未満のフルシート反り、0.06μm未満の0.8mmから8mmの空間波長範囲でのうねり、及び0.33μm未満の0.8mmから25mmの空間波長範囲でのうねりの非被覆属性が要求されている。ガラス基板及びGen-sizeバックプレーンガラス基板のこれらの属性は、非被覆基板について規定されており、電子デバイスの転写以外の理由で選択されている。
【0031】
基板上への電子デバイスの転写効率の改善は、実験的測定及びシミュレーションを組み合わせて見出された。ガラス基板サンプルは、表面の詳細なトポグラフィーマップを提供できるTropel Flatmaster Multi-Surface Profilerを使用して特性評価した。表面トポグラフィーマッピングは、各基板サンプルの反り、全厚さ変動(TTV)、局所的厚さ変動(LTV)、うねりなどの特性評価に使用した。この詳細な表面情報を用いて、各基板サンプルの表面へのマイクロLEDスタンプ転写プロセスのシミュレーションを構築した。シミュレーションの概略は図4及び5に示されており、その表面にマイクロLEDが搭載されたスタンプ20を基板表面の様々な場所に降ろした。スタンプ上のマイクロLEDが基板表面に配置された接着層24に接触すると、マイクロLEDは基板に転写されることになる。しかしながら、基板の一部の領域では、局所的な表面変動(例えば、うねり)が大きく、マイクロLEDの全てが基板と接触できない場合がある。従って、シミュレーションは、スタンプサイズ、加えた圧力、マイクロLEDの間隔などの他のプロセス変数と共に基板の表面形状に基づいて、所定の基板に転写されることになるマイクロLEDの割合を予測することができる。可能な転写の総数(スタンプ上に配置されたマイクロLEDの総数)と比較した成功した転写の割合は、転写効率を示す。すなわち、転写効率は、(転写イベント中に成功したマイクロLEDの転写数/転写イベントにおけるマイクロLEDの総数)×100%として決定される。
【0032】
何十もの基板上で何百ものスタンプ転写プロセスをシミュレートすることによって、どのような表面特徴が効果的なマイクロLED転写を可能にし、どのような特徴がそうでないかを特徴付けることができる。転写スタンプの下の基板領域の反り、LTV、うねりなどの表面形状データを使用して、転写効率を計算することができる。データは、一般に考えられているように、反り又は厚さ変動だけでは転写効率を予測できないことを示す。解析によると、基板の反りの大部分は、転写プロセス中に基板を真空(チャッキング)で表面に保持するチャッキングプロセスと、スタンプの結合力によって除去されるため、反りは不十分な評価基準である。基板のチャッキングに関する研究は、チャッキング後も表面変動の小さい波長の特徴が残ることを示す。同様に、TTVは基板表面の2点、すなわち最大厚さの点と最小厚さの点を考慮するため、予測因子としては不十分である。局所的厚さ変動(LTV)は、スタンプの領域にわたる厚さの変動を考慮するが、LTVは基板の上面と下面の両方の特性に依存するため、やはり予測因子としては不十分である。一方、うねりは、マイクロLEDの転写に関連する空間波長範囲の特徴を考慮しながら、基板上面の品質を捕らえる。従って、他の要因よりもうねりを最適化した基板(例えば、ウェーハ)は、より大きな転写成功をもたらすことができる。
【0033】
解析は、マイクロLED転写を考慮するための固有の属性は、約0.25mmから約50mm、より詳細には約30mmから約50mmの空間波長範囲において、50mm×50mm移動窓にわたる最大うねりであることをさらに示す。反りとLTVの二次的な組み合わせは、同様にあまり役割を果たさない場合がある。ガラス基板のサイズは、100mm×100mmのウェーハから1×1m2を超えるシートまでとすることができる。ガラス基板の弾性率は、ASTM C623の「Test Method for Youngs Modulus, Shear Modulus and Poissons Ratio for Glass and Glass-Ceramics by Resonance」に従って共振超音波スペクトロメトリで測定した場合、約60ギガパスカル(GPa)から約90GPaの範囲とすることができる。ガラス基板の厚さは、約0.1mmから約1mm、約0.1mmから約0.7mm、約0.3mmから約1mm、約0.1mmから約0.250mm、約0.3mmから約1mm(その間の全ての範囲及び部分範囲を含む)の範囲とすることができ、厚さは、第1及び第2の主要面のいずれか一方又は両方に直交する線に沿った基板の第1の主要面と第2の主要面との間の距離として定義される。ガラス基板の熱膨張係数(CTE)値は、ASTM E228-17、「Standard Test Method for Linear Thermal Expansion of Solid Materials With a Push-Rod Dilatometer」に従って測定した場合、約0℃から約300℃の温度範囲にわたって、約3ppm/℃から約10ppm/℃の範囲とすることができる。
【0034】
以下では、電子部品の転写効率に対するうねりの影響を評価するために実施された実験作業についてより詳細に説明する。23枚のガラス基板について、Tropel Flatmasterを使用してトポグラフィー属性(例えば、反り、LTV、うねり)を測定した。基板は、直径200mmの円板であり、3つの異なる市販ガラス、すなわち、アルカリ土類アルミノホウケイ酸ガラス(ガラス1及び3)、2つの異なる無アルカリアルミノホウケイ酸ガラス(ガラス2及び4)、及び無アルカリホウケイ酸ガラス(ガラス5)を含んでいた。次に、これらのデータを使用して、測定された属性のさまざまな組み合わせを示すガラスウェーハのデジタル複製(仮想ガラスウェーハ)を作成し、複数のシミュレーションを行い、ここでは、複数のマイクロLEDを含む仮想スタンプを使用して仮想ガラスウェーハにデジタル的にスタンプした。スタンプは、30mm×30mmのスタンプ面でモデル化した。スタンプは剛性かつ平坦で、弾性率は70GPaとした。さらに、スタンプが仮想ガラスウェーハに加える力は1ニュートン(N)と仮定した。画素ピッチ(マイクロLED構造のの間隔)は200μmと仮定し、仮想ガラスウェーハ上に配置された接着層の厚さは1μmとした。さらに、接着層は柔軟であり、必要に応じて変形すると仮定した。各マイクロLEDは、正方形の15μm×15μmの構造体で、厚さは5μmと仮定した。個々のmicroLEDの接触面(接着剤層に対向する面)の半分以上が接着剤に接触していれば、microLEDは仮想ガラスウェーハに正常に転写されたとみなした。曲がり及び反りは、真空チャックによって仮想ガラスウェーハから除去されているとみなした。シミュレーションデータを図6、7、8に示す。
【0035】
図6は、0.25mmから50mmの範囲の空間波長に関する最大うねり(μmで表される)の関数として、シミュレーションされたマイクロLED転写効率をパーセントで表したものである。空間波長が0.25mm未満の特徴は表面粗さとみなされ、空間波長が50mmを超える特徴は反りと分類した。実際には、報告されている最大うねりは、低空間波長及び高空間波長の特徴が表面データからデジタル的にフィルタ処理された後の表面高さの変動である。図6は、ガラス基板の組成又は供給源とは無関係に、特定の空間波長のうねりがスタンプ転写の歩留まりと強い相関関係があることを示す。このデータは、0.25mmから50mmの範囲の空間波長について、50mm×50mm移動窓における最大うねりが約1μm以下、例えば約0.75μm以下、又は約0.5μm以下のガラス基板を使用すると、約100%の転写効率をもたらすことを示す。一方、図7及び8にそれぞれ示されるように、LTV又は反りに関してはほとんど相関がない。
【0036】
図9は、上記で示した特定の空間波長範囲(0.25mmから50mm)を除くデータから全ての表面特徴をフィルタ処理した後の、ガラスウェーハの転写効率のシミュレーションを示す。スタンプサイズは、スタンプサイズが転写効率にどのように寄与するかをよりよく理解するために変化させた。このデータは、転写効率が、スタンプサイズが小さい場合(例えば10mm×10mm)は常にて高いがスタンプサイズが大きくなるにつれて低下することを示す。これは、より高いスループット製造を目的としてスケール変更するプロセスにとって重要である。より長い空間波長、特に30mmを超える波長は、大きなスタンプでの転写に特に不向きである。同様に、最小の空間波長、例えば約0mmから約10mmまでの範囲は、大きなスタンプに不向きである。この結果は、製造業者が効率を上げるためにスタンプサイズを大きくする場合、ウェーハは、許容可能な転写効率を維持するために、30mmから50mmの空間波長範囲で低減されたうねりを呈する必要があることを示す。さらに、この結果は、単に小さいうねりだけでなく、約0.25mmから約50mmの空間波長範囲、特に約30mmから約50mmの空間波長範囲においてうねりの小さなウェーハを使用する必要性を示す。この空間波長範囲は、現在、Genサイズの市販ガラス基板製品では特徴づけられていない。
【0037】
限られた状況では、マイクロLEDは裸の非被覆基板に転写することができる。ほとんどの場合、マイクロLEDは接着剤被覆又は電子部品製造工程を経た基板に転写されることになる。このことを考慮すると、基板の三次元形状は、処理後、例えば熱サイクル後に変化する可能性があるため、効率的なマイクロLEDの転写効率を得るためには、被覆及び構造を組み合わせた基板属性を規定する必要がある。これは、現在のx-yガラス圧縮研究では見落とされている垂直のz方向に特に当てはまる。例えば、アルミノホウケイ酸基板を500℃及び650℃の条件で熱サイクルすると、TFT成長時にウェーハが経験する可能性のある反り及びうねりが著しく増加することが観察される。従って、本実験で行ったガラスウェーハの測定は、ベアガラスサンプルで行ったが、これらの測定結果は、処理後の表面特性を表していると仮定した。すなわち、ベアサンプルは、TFT成長プロセス中などの、表面トポグラフィーを変える可能性のある熱処理が施されていると仮定した。
【0038】
様々な実施形態が、その特定の例示的な実施例に関連して詳細に説明されているが、本開示は、特許請求の範囲から逸脱することなく、開示された特徴の多数の変更及び組み合わせが可能であるため、そのようなものに限定されると見なすべきではない。
【符号の説明】
【0039】
10 基板
20 スタンプ
24 接着層
図1
図2
図3(a)】
図3(b)】
図3(c)】
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】