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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-19
(54)【発明の名称】複合積層体を有するソーラーパネル
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/049 20140101AFI20231212BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20231212BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20231212BHJP
   B32B 17/12 20060101ALI20231212BHJP
   H10K 30/88 20230101ALI20231212BHJP
   H02S 20/26 20140101ALI20231212BHJP
   B60R 16/04 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
H01L31/04 562
B32B7/025
B32B5/28 Z
B32B17/12
H10K30/88
H02S20/26
B60R16/04 V
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532201
(86)(22)【出願日】2021-11-25
(85)【翻訳文提出日】2023-07-24
(86)【国際出願番号】 EP2021083017
(87)【国際公開番号】W WO2022112423
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】2026972
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523310789
【氏名又は名称】ライトイヤー・レイヤー・イーペーセーオー・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シュトルム・ポカンプ
【テーマコード(参考)】
4F100
5F251
【Fターム(参考)】
4F100AA37
4F100AA37D
4F100AG00
4F100AG00A
4F100AG00C
4F100AG00E
4F100AK01C
4F100AK01D
4F100AK01E
4F100AK53
4F100AR00B
4F100BA05
4F100BA07
4F100DD04B
4F100DD12B
4F100DG01
4F100DG01C
4F100DG01D
4F100DG01E
4F100DG12
4F100DG12C
4F100DG12D
4F100DG12E
4F100DH01C
4F100DH01D
4F100DH01E
4F100GB07
4F100GB31
4F100GB48B
4F100JA02C
4F100JA02E
4F100JB12C
4F100JB12D
4F100JB12E
4F100YY00A
5F251BA03
5F251BA05
5F251BA18
5F251JA05
(57)【要約】
本発明は、ソーダ石灰ガラスの熱膨張係数にほぼ一致する熱膨張係数を有する積層体で裏打ちされたソーラーパネルに関する。任意選択で、ソーラーパネルは、ソーダ石灰ガラス板、室温でCTEが50ppm/K未満の低CTEエポキシ樹脂、それぞれが2つの織られたEガラス繊維と33%の樹脂重量とを含む上層および下層を含み、前記Eガラス繊維は、2つの繊維方向に整列したxおよびyを有する織られたプライについて、各プライで26.3GPaのx方向およびy方向の推定ヤング率と、13.3ppm/Kの推定CTEとを有し、中央層の厚さの0.7倍から1.4倍の厚さを有し、中央層は織られた炭素繊維、42%の樹脂重量を含み、62.8GPaの推定ExxおよびEyyならびに1ppm/Kの推定CTEを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板、太陽光発電デバイス、積層体(100)を含むソーラーパネル(200)であって、
前記積層体が、
1つ以上の炭素繊維のプライ(108)を含む中央層(102)であって、前記中央層は上面と下面を示し、前記下面は前記上面の反対側である、中央層と、
上層(104)および下層(106)であって、前記上層および下層のそれぞれは、1つ以上のガラス繊維のプライ(110、112、114、116)を含み、前記上層は前記中央層の前記上面と接触しており、前記下層は前記中央層の前記下面と接触しており、前記プライは硬化したポリマーに埋め込まれている、上層および下層と、
を含むハイブリッド複合積層体であることを特徴とする、ソーラーパネル。
【請求項2】
前記積層体が釣り合った対称な積層体である、請求項1に記載のソーラーパネル。
【請求項3】
前記プライの少なくとも1つは一方向性繊維を含む、請求項1または2に記載のソーラーパネル。
【請求項4】
前記プライの少なくとも1つは織られた繊維を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のソーラーパネル。
【請求項5】
樹脂は、室温で50ppm/K未満の熱膨張係数を有する低熱膨張係数エポキシである、請求項1~4のいずれか一項に記載のソーラーパネル。
【請求項6】
前記ガラス繊維がEガラス繊維であり、前記Eガラス繊維が任意選択でソーダ石灰ガラスの熱膨張係数と実質的に同じ熱膨張係数を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のソーラーパネル。
【請求項7】
前記ソーラーパネルは、湾曲ソーラーパネル、より具体的には二重湾曲ソーラーパネルである、請求項1~6のいずれか一項に記載のソーラーパネル。
【請求項8】
前記太陽光発電デバイスが、多接合ソーラーセル、単結晶シリコンソーラーセル、多結晶シリコンソーラーセル、GaAsソーラーセル、ペロブスカイトソーラーフィルム、または薄膜ソーラーフィルムの群からの太陽光発電デバイスである、請求項1~7のいずれか一項に記載のソーラーパネル。
【請求項9】
前記ガラス板が厚さ1.5mmから3.0mmの間のソーダ石灰ガラス板であり、感光デバイスが、感光面と、少なくとも1つのアノードおよび1つのカソード、ならびにバックコンタクトフォイルを示す前記感光面と反対の面とを有する1つ以上の単結晶または多結晶半導体セルであり、前記セルはガラス板とバックコンタクトフォイルの間に配置され、前記バックコンタクトフォイルは前記セルと複合積層体との間に配置され、前記ガラス板、前記セル、前記バックコンタクトフォイルおよび前記複合積層体は、封止材によって互いに接着されている、請求項1~8のいずれか一項に記載のソーラーパネル。
【請求項10】
前記中央層の炭素繊維のプライの少なくとも1つは、非ランダムな方向に延在する複数の炭素繊維を含み、および/または
前記上層のガラス繊維のプライの少なくとも1つは、非ランダムな方向に延在する複数のガラス繊維を含み、および/または
前記下層のガラス繊維のプライの少なくとも1つは、非ランダムな方向に延在する複数のガラス繊維を含む、
請求項1~9のいずれか一項に記載のソーラーパネル。
【請求項11】
前記炭素繊維および/または前記ガラス繊維の少なくとも50%、例えば少なくとも75%が、同じ非ランダムな方向に延在する、請求項10に記載のソーラーパネル。
【請求項12】
前記中央層は、炭素繊維の第1の中央層プライを含み、前記第1の中央層プライにおいて、炭素繊維の大部分、任意選択で炭素繊維のすべてが第1の方向に延在し、
前記上層は、ガラス繊維の第1の上層プライを含み、前記第1の上層プライにおいて、ガラス繊維の大部分、任意選択でガラス繊維のすべてが第2の方向に延在し、
前記上層は、ガラス繊維の第2の上層プライをさらに含み、前記第2の上層プライにおいて、ガラス繊維の大部分、任意選択でガラス繊維のすべてが第4の方向に延在し、
前記下層は、ガラス繊維の第1の下層プライを含み、前記第1の下層プライにおいて、ガラス繊維の大部分、任意選択でガラス繊維のすべてが第3の方向に延在し、かつ
前記下層は、ガラス繊維の第2の下層プライをさらに含み、前記第2の下層プライにおいて、ガラス繊維の大部分、任意選択でガラス繊維のすべてが第5の方向に延在し、
前記第2の方向は前記第3の方向と同じであり、前記第4の方向は前記第5の方向と同じである、請求項1~11のいずれかに記載のソーラーパネル。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のソーラーパネルを含む、車両。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載のソーラーパネルを含む、建築物一体型太陽光発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板、太陽光発電デバイス、および積層体を含むソーラーパネルに関する。
本発明はさらに、そのようなソーラーパネルを含む車両および建築物一体型太陽光発電システムに関する。
【0002】
この出願に至るプロジェクトは、助成契約第848620号に基づいて欧州連合のHorizon 2020研究革新プログラムから資金提供を受けている。
【背景技術】
【0003】
ソーラーパネルは、ガラス板と金属取り付け構造体との間にソーラーセルとして取り付けられた静的な平坦なソーラーパネルとして使用されるだけでなく、例えば、オランダ、ヘルモントのアトラステクノロジーズ(Atlas Technologies)社によって販売されるライトイヤーワン(Lightyear One)などの太陽光発電車両のルーフおよびボンネットとしても使用される。好ましくは、1キロメートルあたりの使用電力を下げるために、そのような自動車は軽量であるべきであり、また、ソーラーセルによって生成される電気量を最適化するために、可能な限り多いソーラーパネル面積を有するべきである。したがって、ボンネット、ルーフ、およびトランクを完全に使用する必要がある。したがって、ボンネット(ルーフおよびトランクも)は、例えば特許文献1に記載されているように、2方向に湾曲したガラス板、ソーラーセルの形で封止された太陽光発電デバイスを含む。
別の要求は、車両が安全で十分に堅牢であることである。特に、車両のボンネットは歩行者との衝撃に耐えることができなければならない。複合積層体はパネルを強化し、また、ガラスがEVA(エチレン酢酸ビニル(Ethylene Vinyl Acetate))などの封止材を介して積層体に接着されているため、ガラスが破損した場合にすべての破片が一緒に(積層体に接着されて)留まることを保証し、したがって、例えば歩行者に対する起こり得る損傷を低減する。
【0004】
車両のソーラーパネルは極端な気象条件にさらされており、風のない暑い日に太陽の光が多く降り注ぐとパネルが最高で120℃の温度に達し、カナダや例えばノルウェーの北部の寒い冬の夜には-40℃に達する。これは、ガラスと複合積層体との熱膨張係数(CTE)の小さな差が、ガラス板に許容できない変形や応力をもたらす可能性があり、ガラスの破損や粉砕につながる可能性があることを意味する。したがって、ガラス、より具体的にはソーダ石灰ガラスのCTEに十分に一致するCTEを有する積層体が必要とされている。本発明は、この問題に対する解決策を提供することを意図する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2020/064474号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「Glass/Carbon Fibre Hybrid Composite Laminates for Structural Applications in Automotive Vehicles」、J.Zhang他、Sustainable Automotive Technologies(2012)、69-74ページ
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ガラス板、太陽光発電デバイスおよび積層体を含むソーラーパネルを提供し、前記積層体が、以下を含む複合ハイブリッド積層体であることを特徴とする:
1つ以上の繊維のプライ(ply)を含む中央層であって、前記中央層は上面および下面を示し、前記下面は前記上面の反対側である、中央層
上層および下層であって、前記上層および下層のそれぞれは1つ以上のガラス繊維のプライを含み、前記上層は前記中央層の前記上面と接触し、前記下層は前記中央層の前記下面と接触し、プライは硬化したポリマーに埋め込まれている、上層および下層
【0008】
例えば、前記ソーラーパネルは、車両、例えば電気自動車、例えば少なくとも部分的な太陽光発電車などの少なくとも部分的に自己充電する電気自動車に組み込まれるのに適したソーラーパネルである。代替的にまたは追加で、前記ソーラーパネルは、建築物、例えば大きな温度変化を受ける環境に位置する建築物またはその一部での使用に適したソーラーパネルである。
【0009】
ガラスパネルは、例えばソーダ石灰ガラスのガラスパネルである。任意選択で、ガラスパネルは別の種類のガラスである。
【0010】
複合ハイブリッド積層体は、典型的には、ポリマーマトリクス、典型的には樹脂マトリクス中に、2つ以上の材料のいくつかのプライを含む。前記複合積層体のCTEは、前記プライ(プライの材料)のCTEと前記樹脂のCTE、およびこれらの重量パーセントによって決まる。CTEと強度は、面内において等方性または異方性になり得る。ここで説明する複合体を使用する場合、面内のCTEと剛性は等方性または少なくとも半等方性であるだろう。これは、前記プライの配向および前記プライの厚さの適切な選択によって達成される。
【0011】
この文脈において、ハイブリッドとは、少なくとも2つのプライが異なる繊維、ここでは炭素繊維およびガラス繊維を含むことを意味する。
【0012】
当該技術分野における一般的な理解であるように、「プライの配向」とは、それぞれのプライにおける繊維の配向を指す。
【0013】
好ましくは、積層体は、曲げやせん断などの応力下での望ましくない結合挙動を排除する対称的で釣り合った(balanced)積層体である。
【0014】
この文脈において対称的とは、中央層が中央平面(mid-plane)を有し、中央平面から距離Dにある各プライが、前記中央平面から距離-Dにある同じ配向を有する別のプライと関連付けられることを意味する。前記積層体は対称であるため、軸と屈曲の結合が排除される。
この文脈において釣り合った(balanced)とは、(面内)配向θを有する各プライに対して、配向-θを有する別のプライがあることを意味する。
【0015】
一実施形態では、前記太陽光発電セルは前記ガラスパネルと前記積層体との間に配置される。この実施形態では、任意選択で、前記ガラスパネルは前記ソーラーパネルの外層を形成し、前記ソーラーパネルの外表面であるか、または前記ソーラーパネルの外表面の一部を形成する自由表面を有する。任意選択で、この実施形態では、前記積層体は前記ソーラーパネルの裏打ち構造(backing structure)を形成し、これにより前記ソーラーパネルに剛性と強度が与えられる。
【0016】
一実施形態では、前記上層および下層のプライは硬化ポリマー、より具体的には硬化樹脂に埋め込まれる。
【0017】
一実施形態では、前記上層および下層のプライは硬化ポリマー中に埋め込まれており、この硬化ポリマーは硬化樹脂である。
【0018】
使用されるソーダ石灰ガラス板は、-40℃と+120℃との間の温度範囲において、約7.8ppm/KのCTEを有する。
炭素繊維強化プラスチック(CFRP)としても知られる硬化炭素繊維プライの擬似等方性(quasi-isotropic)積層体は、-1ppm/Kと+1ppm/Kの間の低いCTEを有することが知られており、この種類の積層体とソーダ石灰ガラス板との組み合わせは、積層体とガラス板のCTEにおける大きな不一致をもたらす。
ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)としても知られる硬化ガラス繊維プライの擬似等方性積層体は、+13ppm/Kと+20ppm/Kの間のCTEを有することが知られている。
したがって、CFRPのCTEが小さすぎるためCFRPはソーダ石灰ガラス板のCTEに一致できない一方、GFRPのCTEが大きすぎるためGFRPはソーダ石灰ガラス板のCTEに一致できない。
【0019】
炭素繊維プライ、ガラス繊維プライ、および樹脂の組み合わせにより、ガラス板のCTEに十分近いCTEを有する積層体を得ることができ、(例えば、封止材またはEVAなどのシーラントを使用して)ガラス板に取り付けられ、-40℃と+120℃の間の温度範囲で動作することができる。
【0020】
多くの用途において、120℃~125℃は、樹脂と封止材の両方が固化(硬化、架橋)し、互いに接着する温度であり、したがってソーラーパネルにおいて応力が発生しない温度であることに留意されたい。その後ソーラー板を室温、またはさらに低い温度にすると、応力が生じ、したがって変形が生じる。
【0021】
炭素繊維プライおよびガラス繊維プライを含むハイブリッド積層体は、例えば非特許文献1から知られていることにもさらに留意されたい。ここでは、強度があり、軽量で、比較的安価なハイブリッド積層体が求められており、その結果、等しいパーセンテージの炭素繊維およびガラス繊維を備えた積層体が得られる。論文では、ハイブリッド積層体のCTEをガラスのCTEに一致させることについては説明しておらず、積層体のCTEについても研究していない。したがって、当業者はこの刊行物で解決策を見出すことはないだろう。
【0022】
一実施形態では、前記中央層の炭素繊維のプライの少なくとも1つは、非ランダムな方向に延在する複数の炭素繊維を含む。任意選択で、前記中央層の炭素繊維のプライの少なくとも1つにおいて、複数の炭素繊維が同じ非ランダムな方向に延在する。例えば、前記中央層の炭素繊維のプライの少なくとも1つにおいて、炭素繊維の少なくとも50%、例えば少なくとも75%が同じ非ランダムな方向に延在する。
【0023】
例えばランダムに配向した繊維から積層体を製造することは可能であるが、より制御された繊維の配向を使用することにより、より制御された積層体が得られる。
【0024】
一実施形態では、上層のガラス繊維のプライの少なくとも1つは、非ランダムな方向に延在する複数のガラス繊維を含む。任意選択で、上層のガラス繊維のプライの少なくとも1つにおいて、複数のガラス繊維が同じ非ランダムな方向に延在する。例えば、上層のカーボンガラスのプライの少なくとも1つにおいて、ガラス繊維の少なくとも50%、例えば少なくとも75%が同じ非ランダムな方向に延在する。
【0025】
例えばランダムに配向した繊維から積層体を製造することは可能であるが、より制御された繊維の配向を使用することにより、より制御された積層体が得られる。
【0026】
一実施形態では、前記下層のガラス繊維のプライの少なくとも1つは、非ランダムな方向に延在する複数のガラス繊維を含む。任意選択で、前記下層のガラス繊維のプライの少なくとも1つにおいて、複数のガラス繊維が同じ非ランダムな方向に延在する。例えば、前記下層のカーボンガラスのプライの少なくとも1つにおいて、ガラス繊維の少なくとも50%、例えば少なくとも75%が同じ非ランダムな方向に延在する。例えばランダムに配向した繊維から積層体を製造することは可能であるが、より制御された繊維の配向を使用すると、より制御された積層体が得られる。
【0027】
一実施形態では、前記上層のガラス繊維のプライの少なくとも1つは、非ランダムな方向に延在する複数のガラス繊維を含む。任意選択で、前記上層のガラス繊維のプライの少なくとも1つにおいて、複数のガラス繊維が同じ非ランダムな方向に延在する。例えば、前記上層のカーボンガラスのプライの少なくとも1つにおいて、ガラス繊維の少なくとも50%、例えば少なくとも75%が同じ非ランダムな方向に延在する。
【0028】
さらに、この実施形態では、前記下層のガラス繊維のプライの少なくとも1つは、非ランダムな方向に延在する複数のガラス繊維を含む。任意選択で、前記下層のガラス繊維のプライの少なくとも1つにおいて、複数のガラス繊維が同じ非ランダムな方向に延在する。例えば、前記下層のカーボンガラスのプライの少なくとも1つにおいて、ガラス繊維の少なくとも50%、例えば少なくとも75%が同じ非ランダムな方向に延在する。
【0029】
例えばランダムに配向した繊維から積層体を製造することは可能であるが、より制御された繊維の配向を使用することにより、より制御された積層体が得られる。
【0030】
一実施形態では、前記中央層の炭素繊維のプライの少なくとも1つは、非ランダムな方向に延在する複数の炭素繊維を含む。任意選択で、前記中央層の炭素繊維のプライの少なくとも1つにおいて、複数の炭素繊維が同じ非ランダムな方向に延在する。例えば、前記中央層の炭素繊維のプライの少なくとも1つにおいて、炭素繊維の少なくとも50%、例えば少なくとも75%が同じ非ランダムな方向に延在する。
【0031】
さらに、この実施形態では、前記上層のガラス繊維のプライの少なくとも1つは、非ランダムな方向に延在する複数のガラス繊維を含む。任意選択で、前記上層のガラス繊維のプライの少なくとも1つにおいて、複数のガラス繊維が同じ非ランダムな方向に延在する。例えば、前記上層のカーボンガラスのプライの少なくとも1つにおいて、ガラス繊維の少なくとも50%、例えば少なくとも75%が同じ非ランダムな方向に延在する。
【0032】
代替的に、または追加的に、この実施形態では、前記下層のガラス繊維のプライの少なくとも1つは、非ランダムな方向に延在する複数のガラス繊維を含む。任意選択で、前記下層のガラス繊維のプライの少なくとも1つにおいて、複数のガラス繊維が同じ非ランダムな方向に延在する。例えば、前記下層のカーボンガラスのプライの少なくとも1つにおいて、ガラス繊維の少なくとも50%、例えば少なくとも75%が同じ非ランダムな方向に延在する。例えばランダムに配向した繊維から積層体を製造することは可能であるが、より制御された繊維の配向を使用すると、より制御された積層体が得られる。
【0033】
本発明の一実施形態では、プライのうちの少なくとも1つは一方向性繊維を含む。
【0034】
例えば無配向繊維から積層体を製造することは可能であるが、より制御された繊維の配向を使用すると、より制御された積層体が得られる。
【0035】
本発明の別の実施形態では、前記プライのうちの少なくとも1つは織られた繊維を含む。
【0036】
例えば無配向繊維から積層体を製造することは可能であるが、より制御された繊維の配向を使用すると、より制御された積層体が得られる。
【0037】
一実施形態では、前記中央層の炭素繊維のプライは連続炭素繊維を含む。これらの連続炭素繊維は、例えば、プライの1つの端からプライの別の端まで延在する。代替的に、または追加的に、炭素繊維のプライは、3センチメートル~25センチメートル、例えば5センチメートル~15センチメートルの長さを有する炭素繊維、および/または5センチメートル以下の長さを有する炭素繊維を含む。
【0038】
一実施形態では、前記上層のガラス繊維のプライは連続ガラス繊維を含む。これらの連続ガラス繊維は、例えば、プライの1つの端からプライの別の端まで延在する。代替的に、または追加的に、ガラス繊維のプライは、3センチメートル~25センチメートル、例えば5センチメートル~15センチメートルの長さを有するガラス繊維、および/または5センチメートル以下の長さを有する炭素繊維を含む。
【0039】
一実施形態では、前記下層のガラス繊維のプライは連続ガラス繊維を含む。これらの連続ガラス繊維は、例えば、プライの1つの端からプライの別の端まで延在する。代替的に、または追加的に、ガラス繊維のプライは、3センチメートル~25センチメートル、例えば5センチメートル~15センチメートルの長さを有するガラス繊維、および/または5センチメートル以下の長さを有する炭素繊維を含む。
【0040】
一実施形態では、前記中央層は炭素繊維の第1の中央層プライを含み、前記第1の中央層プライにおいて、炭素繊維の大部分、任意選択ですべての炭素繊維は第1の方向に延在する。この実施形態では、前記上層はガラス繊維の第1の上層プライを含み、前記第1の上層プライにおいて、ガラス繊維の大部分、任意選択ですべてのガラス繊維は第1の方向とは異なる第2の方向に延在する。この実施形態では、前記下層はガラス繊維の第1の下層プライを含み、前記第1の下層プライにおいて、ガラス繊維の大部分、任意選択ですべてのガラス繊維は第3の方向に延在する。
【0041】
任意選択で、前記第3の方向は前記第2の方向と同じである。これにより、釣り合った、および/または対称的なハイブリッド複合積層体を提供できるという利点が提供される。
【0042】
この実施形態の変形例では、前記第2の方向および前記第3の方向は、前記第1の方向に対して45°の角度で延在し、前記第2の方向と前記第3の方向は互いに対して90°の角度で延在する。
【0043】
一実施形態では、前記中央層は炭素繊維の第1の中央層プライを含み、前記第1の中央層プライにおいて、炭素繊維の大部分、任意選択ですべての炭素繊維は第1の方向に延在する。この実施形態では、前記中央層は炭素繊維の第2の中央層プライをさらに含み、前記第2の中央層プライにおいて、炭素繊維の大部分、任意選択ですべての炭素繊維は第2の方向に延在する。前記第2の方向は、前記第1の方向と同じであってもよく、または前記第1の方向と異なっていてもよい。
【0044】
一実施形態では、前記中央層は炭素繊維の第1の中央層プライを含み、前記第1の中央層プライにおいて、炭素繊維の大部分、任意選択ですべての炭素繊維は第1の方向に延在する。この実施形態では、前記上層はガラス繊維の第1の上層プライを含み、前記第1の上層プライにおいて、ガラス繊維の大部分、任意選択ですべてのガラス繊維は第2の方向に延在する。さらに、前記上層はガラス繊維の第2の上層プライを含み、前記第2の上層プライにおいて、ガラス繊維の大部分、任意選択ですべてのガラス繊維は第4の方向に延在する。
【0045】
さらに、この実施形態では、前記下層はガラス繊維の第1の下層プライを含み、前記第1の下層プライにおいて、ガラス繊維の大部分、任意選択ですべてのガラス繊維は第3の方向に延在さする。さらに、前記下層はガラス繊維の第2の下層プライを含み、前記第2の下層プライにおいて、ガラス繊維の大部分、任意選択ですべてのガラス繊維は第5の方向に延在する。
【0046】
この実施形態では、前記第2の方向は前記第3の方向と同じであり、前記第4の方向は前記第5の方向と同じである。
【0047】
任意選択で、前記第1の方向は、前記第2の方向および前記第4の方向のうちの1つと同じである。
【0048】
本発明の別の実施形態では、前記樹脂は、室温で50ppm/K未満のCTEを有する低CTEエポキシである。CTEは熱膨張係数として定義される。
【0049】
前記プライを含浸するのに十分な量の樹脂を有する積層体、すなわち(ソーダ石灰)ガラスのCTEに近いまたは等しいCTEを有する積層体のために、室温で50ppm/K未満の(硬化)CTEを有する樹脂を使用する必要がある。
【0050】
本発明の別の実施形態では、前記ガラス繊維はEガラス繊維である。
【0051】
Eガラス繊維は、ソーダ石灰ガラス、すなわち典型的にソーラーパネルに使用されるガラスのCTEに近いCTEを有する。また、Eガラス繊維は比較的安価で広く入手できるため、これらの用途には最良の選択である。
【0052】
本発明の別の実施形態では、前記ソーラーパネルは湾曲ソーラーパネル、より具体的には二重湾曲ソーラーパネルである。
【0053】
車両、建築物一体型太陽光発電素子(BIPV素子)などの多くの用途では、湾曲または二重湾曲パネルが好ましい。
【0054】
別の実施形態では、前記太陽光発電デバイスは、多接合ソーラーセル、単結晶シリコンソーラーセル、多結晶シリコンソーラーセル、GaAsソーラーセル、ペロブスカイトソーラーフィルム、または薄膜ソーラーフィルムの群からの太陽光発電デバイスである。
【0055】
本発明の別の実施形態では、前記ソーラーパネルは、1.5mm~3.0mmの厚さを有するソーダ石灰ガラス板であるガラス板を含み、前記感光デバイスは、1つ以上の単結晶または多結晶半導体セルであり、感光面と、前記感光面の反対側の反対面とを備え、前記反対面は、少なくとも1つのアノードおよび1つのカソード、ならびにバックコンタクトフォイルを示し、前記セルは前記ガラス板と前記バックコンタクトフォイルの間に配置され、前記バックコンタクトフォイルは1つ以上のセルと複合積層体との間に配置され、前記ガラス、セル、バックコンタクトフォイルおよび複合積層体は、封止材によって互いに接着されている。
【0056】
この実施形態は、前記ソーラーパネルの構成要素が配置される順序を説明する。典型的には、前記ソーラーセルはEVAなどの封止材に封止されており、バックコンタクトフォイル(たとえば、その上に銅パターンを有するポリアミドフィルム)または別のタイプの相互接続によって、ソーラーセルのアノードとカソードが封止材中の穴を通して相互接続される。次に、前記封止材を前記ガラス板に置き、硬化させる。前記積層体は、同時硬化もしくは同時接着されてもよく、または前記封止材の硬化後に接着されてもよい。
【0057】
本発明の一態様では、車両は本発明によるソーラーパネルを含む。
【0058】
オランダ、ヘルモントのアトラステクノロジーズ社が販売するライトイヤーワンなどの車両には、ソーラーパネル、より具体的には、(二重)湾曲ソーラーボンネット、ルーフ、およびトランクが備え付けられている。そのような車両は、ルーフの温度が(たとえば、ノルウェー北部やカナダの寒い冬の夜に)-40℃まで低下し、または(暑い日に、スペインまたはカリフォルニアで陽の当たる場所に駐車した場合)+120℃まで上昇する可能性がある環境で動作する必要がある。パネルの硬化(固化)は約+120℃で起こり、その温度で応力のない状態になるため、最大の応力および変形は最低温度で発生することに留意されたい。
【0059】
別の態様では、本発明は、本発明によるソーラーパネルを含む建築物一体型太陽光発電(BIPV)システムに関する。
【0060】
BIPVシステムは、建築設計の一部であり、好ましくは(二重)湾曲形状である可能性を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1図1は、本発明によるハイブリッド複合積層体の一実施形態を概略的に示す。
図2図2は、全ガラス繊維積層体を使用した(先行技術の)ソーラーカーのルーフにおける応力のCAE解析を概略的に示す。
図3図3は、全ガラス繊維積層体を使用した(先行技術の)ソーラーカーのルーフの熱変形のCAE解析を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0062】
例えば、特許文献1は、バックコンタクトフォイルおよびEVAなどの封止材を使用してソーラーセルを湾曲したガラス板に接着するいくつかの方法のうちの1つを説明している。典型的には、前記セルは前記封止材中に封止される。また、前記バックコンタクトフォイルは、同じ前記封止材によって封入されるか、または少なくとも前記封止材に接着されてもよい。前記封止材を硬化させることにより、前記ガラス板、ソーラーセル、およびバックコンタクトフォイルが前記ガラス板に「接着」される。
【0063】
ガラス板の強度を高めるために、板は積層体によって最も良く支持される。熱変形(例えば、車両の空気力学的挙動を損なう可能性がある)や過剰な応力(ガラスの損傷/破損につながる可能性がある)を避けるために、このような積層体のCTEはガラス板のCTEに近いべきである。ガラス板は、典型的に、CTEが約7.8ppm/Kのソーダ石灰ガラスである。積層体には、スチール支持体(スチールのCTEは約10.8ppm/K)やチタン支持体(CTEは約8.1ppm/K)など、いくつかの代替品が存在する。スチールを使用する欠点は、スチールは積層体と比較するとかなり重いことだが、チタンは同等の強度の積層体と比較するとかなり高価で重い。したがって、発明者は、適切な積層体を見出そうと努めた。
【0064】
当業者には知られているように、キロメートル当たりのエネルギー消費(W/km)を減らすには軽い重量が好ましいことに留意されたい。
【0065】
図1は、本発明によるハイブリッド複合積層体の好ましい実施形態を概略的に示す。
【0066】
中央層102は織られた炭素繊維のプライ108を含む。好ましくは、前記炭素プライはプリプレグ、すなわち硬化前にすでに樹脂が含浸されたプライであり、それによって製造が簡素化される。前記積層体はさらに、中央層を取り囲む上層104および下層106を含む。前記上層は、2つの織られたガラス繊維のプライ110および112、好ましくはEガラスのガラス繊維のプリプレグを含み、(織られた)ガラス繊維のプライ、プライ110およびプライ112は、互いに対してθ=45°で配向され、例えば、プライ110はθ=0°で配向され、プライ112はθ=45°で配向される。同様に、プライ114および116は前記下層の一部であり、プライ114はプライ110に沿って配向され、プライ116はプライ112に沿って配向される。
【0067】
θは、xy平面内の配向であることに留意されたい。さらに、織られたプライの場合、θ=0°はθ=90°と同等であり、θ=45°はθ=-45°(またはθ=135°)と同等であることに留意されたい。
【0068】
前記積層体は対称的かつ釣り合っているため、曲げおよびせん断などの望ましくない結合挙動が排除される。プライの配向とプライの厚さを適切に選択すると、CTEと剛性が等方性または少なくとも半等方性になる。
【0069】
好ましくは、ソーラーパネルは、ソーダ石灰ガラス板と、室温で50ppm/K未満のCTEを有する低CTEエポキシ樹脂と、織られたEガラス繊維および33%樹脂重量を含む下層および上層とを含み、前記Eガラス繊維は各プライで26.3GPaの推定ExxおよびEyy(2つの繊維方向に整列したxおよびyを有する織られたプライについて、x方向のヤング率Exxとy方向のヤング率Eyy)、ならびに13.3ppm/Kの推定CTEを有し、中央層の厚さの0.7~1.4倍の厚さを有し、前記中央層は織られた炭素繊維と42%の樹脂重量とを含み、62.8GPaの推定ExxおよびEyy、1ppm/Kの推定CTEを有する。
【0070】
さらに説明するテストおよびシミュレーションで使用される厚さは次のとおりである。
中央層102(織られた炭素プライ):0.34mm
上層104(2つの織られたEガラス繊維プライ110、112):2×0.24mm=0.48mm
下層106(2つの織られたEガラス繊維プライ114、116):2×0.24mm=0.48mm
積層体の全体厚さ:1.3mm
【0071】
樹脂の厚さと量をさらに調整すると、前記ガラス板と前記積層体とがさらによく適合することが予想される。
【0072】
非対称および/または釣り合わない実施形態によって許容可能な結果が達成される可能性があるが、釣り合った対称積層体が好ましいことに留意されたい。
【0073】
積層体を製造する際、プライを互いに積み重ねられてから液体樹脂を注入され得、またはプライはすでに樹脂を含む、いわゆるプリプレグであり得ることは言及する価値がある。
【0074】
図2は、全ガラス繊維積層体を使用したソーラーカーのルーフにおける応力のCAE解析を概略的に示す。
【0075】
ソーラーカーのソーラールーフの第1の実験およびシミュレーションは、(二重湾曲)ソーラールーフ200上で実行された。前記ルーフは、1.7mmのガラス繊維積層体と、単結晶シリコンソーラーセル、封止材としてのEVA(エチレン酢酸ビニル)、およびセルを相互接続するためのバックコンタクトフォイルを備えた2.1mmのソーダ石灰ガラス板とを使用する裏打ち構造を含む。
【0076】
前記ルーフは1791mmの長さ、および1335mmの幅を有する。
【0077】
面202は車両の前方、換言すればボンネットが存在する面に面している。面204は上方を向いている、すなわち車両の内部から取り外されている、すなわち上方を向いている。
【0078】
EVAを使用した125℃でのガラス、ソーラーセル、および裏打ち構造(積層体)の接合(125℃はEVAの硬化温度である)、およびガラスとガラス繊維との間のCTEの差により、ファイバーを使用すると、ソーラーパネルに大量の熱残留応力が引き起こされた。これに関する現在の推定値は、温度20℃で20.1MPa(設計許容値は19MPa)のガラスの最大残留引張応力である。ガラス繊維エポキシ裏打ち構造のみを使用している限り、材料の限界により、これらの値をさらに下げることはできない。完全に炭素繊維の裏打ち構造では、同じかより悪化した問題が発生する可能性がある。全炭素積層体のさらなる問題は、裏打ち構造およびバックコンタクトフォイルならびに/またはソーラーセルもしくはバックコンタクトフォイルなどのそれらの接続の間の電気的短絡を避けるために、裏打ち構造が電気伝導性であってならないことである。
【0079】
同様のシミュレーションを、中央に4つの織られたガラス繊維プライと1つの織られた炭素繊維プライを含むハイブリッド複合体を有し、前記ハイブリッド複合体は段落[0039]および[0041]の量および寸法を使用して対称かつ釣り合っている、図1の積層体を使用してルーフ上で実行した。
【0080】
この設計の第1の繰り返し(iteration)は、20℃の温度において最大3.2MPa(以前は20.4MPa)の残留応力を示し、これは、温度が-40℃に低下した場合でも十分に許容限界内である。使用する樹脂の量を減らすか、または別の樹脂を使用してさらに最適化すると、この値をさらに下げることができる。
【0081】
また、このハイブリッド積層体ソリューションは、同等のコストを有する全ガラス繊維積層体よりもわずかに軽い重量を有する。当業者には知られているように、キロメートル当たりのエネルギー消費量(W/km)を減らすには、より軽い重量が好ましい。
【0082】
はるかに低いCTEを有する樹脂は存在するが、これらは、例えばシリカで充填されることが多く、そのため積層体用の注入流体としてはあまり適していないことに留意されたい。電子機器のポッティングを目的とした他の低粘度および低CTE樹脂も入手可能だが、これらは多くの場合より高価である。
【0083】
当業者は、二重湾曲パネルが非湾曲パネルまたは単一湾曲パネルよりもはるかに高い面外剛性を示すことを認識するであろうことにさらに留意されたい。これにより、パネルの熱残留応力が高くなる。このため、パネルは曲率が最も高い位置(コーナー付近)で最も高い熱残留応力を示し、曲率が最も低い位置(ルーフの中央)で最も低い熱残留応力を示す。
【0084】
図3は、全ガラス繊維積層体を使用したソーラーカーのルーフの熱変形のCAE解析を概略的に示す。
【0085】
第1の実験およびシミュレーションは、車両用の(二重湾曲)ソーラールーフ200上で実行され、前記ルーフは、1.7mmのガラス繊維複合積層体、単結晶シリコンソーラーセルを備えた2.1mmのソーダ石灰ガラス板、封止材としてのEVA(エチレン酢酸ビニル)、および前記セルを相互接続するためのバックコンタクトフォイルを使用する裏打ち構造を含む。前記ルーフは1791mmの長さおよび1335mmの幅を有する。
【0086】
側面202は車両の前方、換言すればボンネットが存在する側面に面している。側面204は上方を向いている、すなわち車両の内部から取り外されている、すなわち上方を向いている。
【0087】
図2に示す熱応力は、ルーフの形状およびルーフが嵌合する凹部の境界とともに、ソーラーパネルの熱変形を引き起こす。この全ガラス繊維積層体のシミュレーションと測定により、温度20℃で最大20.7mmの熱変形が生じた。
【0088】
正の熱変形はルーフ表面に垂直で車両外側に向かう方向であり、すなわち外側へ向いており、負の熱変形はルーフ表面に垂直で車両内側に向かう方向であり、すなわち車両の内側へ向かう方向であることに留意されたい。
【0089】
ガラス繊維エポキシ裏打ち構造のみを使用している限り、材料の限界により、これらの値をさらに小さくすることは不可能である。完全に炭素繊維の裏打ち構造では、同じか、より悪化した問題が発生する可能性がある。それは、積層体(裏打ち構造)のCTEが小さすぎることである。全炭素積層体のさらなる問題は、裏打ち構造およびバックコンタクトフォイルならびに/またはソーラーセルもしくはバックコンタクトフォイルなどのそれらの接続との間の電気的短絡を避けるために、裏打ち構造が電気伝導性であってはならないことである。
【0090】
同様のシミュレーションを、中央に4つの織られたガラス繊維プライと1つの織られた炭素繊維プライとを含むハイブリッド複合体を有し、前記ハイブリッド複合体は段落[0039]および[0041]の量および寸法を使用して対称かつ釣り合っている、図1の積層体を使用してルーフ上で実行した。
【0091】
この設計の第1の繰り返しは、20℃の温度において3.5mm(以前は20.7mm)の最大熱変形を示し、これは、温度が-40℃に低下した場合でも十分に許容限界内である。使用する樹脂の量を減らすか、または別の樹脂を使用してさらに最適化すると、この値をさらに下げることができる。
【0092】
本発明を例示するために車両のルーフが使用されているが、本発明は、車両のボンネット、トランク、または任意の他の車両のソーラーパネルとして使用されるソーラーパネルにも等しくよく適用できることに留意されたい。本発明はまた、建築物一体型太陽光発電システム(BIPS)として使用される、またはその一部であるソーラーパネルにも適用可能である。パネルは、平坦なパネルであっても、湾曲パネルまたは二重湾曲パネルであってもよい。
【0093】
典型的には、封止材と樹脂の硬化温度または架橋温度が互いに近いことに留意されたい。たとえば、EVA(エチレン酢酸ビニル)の硬化温度は、所望の硬化時間に応じて120℃から140℃の間である。エポキシ樹脂の硬化にも同様の温度が必要である。これは、同時硬化が可能であり、ここで材料が固化するためこの同時硬化温度では応力がゼロであることを意味する。ソーラーパネル(ガラス/封入材/積層体)を冷却すると、応力が蓄積し、熱変形が発生する。
図1
図2
図3
【国際調査報告】