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特表2023-552733抗クローディン-18.2抗体及びその抗体薬物複合体
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  • 特表-抗クローディン-18.2抗体及びその抗体薬物複合体 図1
  • 特表-抗クローディン-18.2抗体及びその抗体薬物複合体 図2
  • 特表-抗クローディン-18.2抗体及びその抗体薬物複合体 図3
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  • 特表-抗クローディン-18.2抗体及びその抗体薬物複合体 図4B
  • 特表-抗クローディン-18.2抗体及びその抗体薬物複合体 図4C
  • 特表-抗クローディン-18.2抗体及びその抗体薬物複合体 図5
  • 特表-抗クローディン-18.2抗体及びその抗体薬物複合体 図6
  • 特表-抗クローディン-18.2抗体及びその抗体薬物複合体 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-19
(54)【発明の名称】抗クローディン-18.2抗体及びその抗体薬物複合体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20231212BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20231212BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20231212BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20231212BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20231212BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20231212BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20231212BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231212BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20231212BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20231212BHJP
   C07K 5/06 20060101ALI20231212BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20231212BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20231212BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20231212BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20231212BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20231212BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231212BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231212BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20231212BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20231212BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/46 ZNA
C07K19/00
C12N15/63 Z
C12N1/19
C12N1/15
C12N1/21
C12N5/10
C12N5/071
C07K16/30
C07K5/06
C12P21/08
A61K47/68
A61K47/65
A61P31/00
A61P37/06
A61P29/00
A61P35/00
A61P1/18
A61P1/00
A61K39/395 L
A61K39/395 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532228
(86)(22)【出願日】2022-05-07
(85)【翻訳文提出日】2023-05-25
(86)【国際出願番号】 CN2022091353
(87)【国際公開番号】W WO2022237666
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】202110502421.4
(32)【優先日】2021-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520087262
【氏名又は名称】レメゲン シーオー.,エルティーディー.
【氏名又は名称原語表記】REMEGEN CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.58 Beijing Middle Road, Yantai Development Zone, Yantai District, China(Shandong)Pilot Free Trade Zone, Yantai, Shandong 264006 China
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】房 健民
(72)【発明者】
【氏名】李 元浩
(72)【発明者】
【氏名】朱 梅英
(72)【発明者】
【氏名】姜 静
(72)【発明者】
【氏名】沈 月雷
(72)【発明者】
【氏名】李 慎▲ジュン▼
(72)【発明者】
【氏名】羅 文▲テイ▼
(72)【発明者】
【氏名】チェン ツァオピン
(72)【発明者】
【氏名】王 麗麗
(72)【発明者】
【氏名】王 凌
(72)【発明者】
【氏名】チェン チィンビン
(72)【発明者】
【氏名】楊 放
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA05
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AA92Y
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC04
4C076CC07
4C076CC16
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C085AA22
4C085AA25
4C085AA26
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA11
4H045BA51
4H045BA72
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA50
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、クローディン-18.2を標的とする抗体、抗体薬物複合体及びがんの治療におけるそれらの使用を提供する。また、本発明は、上記クローディン-18.2抗体をコードするヌクレオチド、ポリヌクレオチドの組み合わせ、発現ベクター及び発現ベクターの組み合わせ、上記クローディン-18.2の抗体又は抗体薬物複合体を含む医薬組成物並びにがんを治療又は予防するための医薬品の製造におけるそれらの使用を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む抗体又はその抗原結合断片であって、前記重鎖可変領域のCDR及び/又は前記軽鎖可変領域のCDRは、以下の配列により定義される抗体と同じCDR配列を有するか、又は以下の配列により定義される抗体のCDRで1~2個のアミノ酸置換を行ってなされたものであり、前記配列により定義される抗体は、
(1)重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号1に示され、かつ/又は
(2)軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号2に示される、抗クローディン-18.2抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
(1)重鎖可変領域CDR1のアミノ酸配列は、配列番号3、4、5、6若しくは7に示されるか、又は配列番号3、4、5、6若しくは7に対して1若しくは2個のアミノ酸置換を行ったアミノ酸配列であり、CDR2のアミノ酸配列は、配列番号8、9、10、11若しくは12に示されるか、又は配列番号8、9、10、11若しくは12に対して1若しくは2個のアミノ酸置換を行ったアミノ酸配列であり、CDR3のアミノ酸配列は、配列番号13、14、15、16又は17に示されるか、又は配列番号13、14、15、16又は17に対して1若しくは2個のアミノ酸置換を行ったアミノ酸配列であり、
(2)軽鎖可変領域CDR1のアミノ酸配列は、配列番号18、19、20、21又は22に示されるか、又は配列番号18、19、20、21又は22に対して1若しくは2個のアミノ酸置換を行ったアミノ酸配列であり、CDR2のアミノ酸配列は、配列番号23、24、25、26又は27に示されるか、又は配列番号23、24、25、26又は27に対して1若しくは2個のアミノ酸置換を行ったアミノ酸配列であり、CDR3のアミノ酸配列は、配列番号28、29、30、31又は32に示されるか、又は配列番号28、29、30、31又は32に対して1若しくは2個のアミノ酸置換を行ったアミノ酸配列である、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
(1)重鎖可変領域CDR1~3のアミノ酸配列は、配列番号3、8、13であるか、又は配列番号3、8、13に対して1若しくは2個のアミノ酸置換を行ったアミノ酸配列であり、かつ/又は軽鎖可変領域CDR1~3のアミノ酸配列は、配列番号18、23、28であるか、又は配列番号18、23、28に対して1若しくは2個のアミノ酸置換を行ったアミノ酸配列であり、
(2)重鎖可変領域CDR1~3のアミノ酸配列は、配列番号4、9、14であるか、又は配列番号4、9、14に対して1若しくは2個のアミノ酸置換を行ったアミノ酸配列であり、かつ/又は軽鎖可変領域CDR1~3のアミノ酸配列は、配列番号19、24、29であるか、又は配列番号19、24、29に対して1若しくは2個のアミノ酸置換を行ったアミノ酸配列であり、
(3)重鎖可変領域CDR1~3のアミノ酸配列は、配列番号5、10、15であるか、又は配列番号5、10、15に対して1若しくは2個のアミノ酸置換を行ったアミノ酸配列であり、かつ/又は軽鎖可変領域CDR1~3のアミノ酸配列は、配列番号20、25、30であるか、又は配列番号20、25、30に対して1若しくは2個のアミノ酸置換を行ったアミノ酸配列であり、
(4)重鎖可変領域CDR1~3のアミノ酸配列は、配列番号6、11、16であるか、又は配列番号6、11、16に対して1若しくは2個のアミノ酸置換を行ったアミノ酸配列であり、かつ/又は軽鎖可変領域CDR1~3のアミノ酸配列は、配列番号21、26、31であるか、又は配列番号21、26、31に対して1若しくは2個のアミノ酸置換を行ったアミノ酸配列であり、
(5)重鎖可変領域CDR1~3のアミノ酸配列は、配列番号7、12、17であるか、又は配列番号7、12、17に対して1若しくは2個のアミノ酸置換を行ったアミノ酸配列であり、かつ/又は軽鎖可変領域CDR1~3のアミノ酸配列は、配列番号22、27、32であるか、又は配列番号22、27、32に対して1若しくは2個のアミノ酸置換を行ったアミノ酸配列である、請求項2に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
(1)重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号1に示されるか、或いは配列番号1と同じCDR1~3を有し、かつ配列番号1と比較して同一性が80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%を超える配列であり、かつ/又は
(2)軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号2に示されるか、或いは配列番号2と同じCDR1~3を有し、かつ配列番号2と比較して同一性が80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%を超える配列である、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
(1)重鎖のアミノ酸配列が配列番号33に示され、かつ/又は
(2)軽鎖のアミノ酸配列が配列番号34に示される請求項4に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項6】
前記抗体又はその機能的結合断片には、モノクローナル抗体、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、Fv、単鎖Fv(scFv)、二重特異性抗体、多重特異性抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、又は抗体の抗原結合部分を含む融合タンパク質が含まれ、好ましくは、前記抗体がヒト化モノクローナル抗体である、請求項1に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項7】
ヒト又はマウスの定常領域をさらに含み、好ましくは、前記定常領域がIgG1、IgG2、IgG3、IgG4から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合断片を含む、抗体薬物複合体。
【請求項9】
前記抗体薬物複合体の構造が下記の式(I)に示される、ことを特徴とする請求項8に記載の抗体薬物複合体。
Ab-L-D (I)
(ただし、Abは、請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合断片であり、
Dは、活性薬物単位であり、
Lは、抗体又はその抗原結合断片Ab及び活性薬物単位Dにそれぞれ共有結合されている任意の連結基であり、
ここで、前記Abは、1つ又は複数の連結基Lを介して1つ又は複数の活性薬物単位Dを連結している。)
【請求項10】
前記Lが、前記Ab上のアミノ残基又はスルフヒドリル残基に共有結合されており、
好ましくは、前記Lが、前記Ab上のスルフヒドリル残基に共有結合されており、
より好ましくは、前記Lが、前記Ab上の鎖間ジスルフィド結合が切断された後に形成されたスルフヒドリル残基に共有結合されている、ことを特徴とする請求項9に記載の抗体薬物複合体。
【請求項11】
前記Lには、切断可能なリンカー及び切断不可能なリンカーが含まれる、ことを特徴とする請求項9に記載の抗体薬物複合体。
【請求項12】
前記切断可能なリンカーにはペプチド単位が含まれ、
前記ペプチド単位は、2~20個のアミノ酸を含み、好ましくは、-バリン-シトルリン-(-Val-Cit-)、-グリシン-グリシン-フェニルアラニン-グリシン-(-Gly-Gly-Phe-Gly-)、-バリン-アラニン-(-Val-Ala-)、-バリン-リジン-(-Val-Lys-)、-バリン-アルギニン-(-Val-Arg-)、-フェニルアラニン-シトルリン-(-Phe-Cit-)、-フェニルアラニン-リジン-(-Phe-Lys-)、-フェニルアラニン-アルギニン-(-Phe-Arg-)及びそれらの組み合わせから選択される、ことを特徴とする請求項11に記載の抗体薬物複合体。
【請求項13】
前記Lが以下:
【化1】
からなる群より選択される構造を含むことを特徴とする請求項9~12のいずれか1項に記載の抗体薬物複合体。
【請求項14】
前記活性薬物単位Dが、細胞毒性分子、細胞分化因子、幹細胞栄養因子、ステロイド薬、自己免疫疾患の治療薬、抗炎症薬、又は感染症の治療薬であり、
好ましくは、前記細胞毒性分子には、以下に限定されないが、チューブリン阻害剤又はDNA損傷剤が含まれ、
前記チューブリン阻害剤には、以下に限定されないが、ドラスタチン(dolastatin)及びアウリスタチン(auristatin)系細胞毒性分子、マイタンシン(maytansine)系細胞毒性分子が含まれ、
前記DNA損傷剤には、以下に限定されないが、カリケアマイシン系(calicheamicin)、デュオカルマイシン(duocarmycin)系、アントラマイシン系誘導体PBD(pyrrolobenzodiazepine)、カンプトテシン(camptothecins)及びカンプトテシン系誘導体、SN-38が含まれ、
より好ましくは、前記アウリスタチン(auristatin)系細胞素分子には、以下に限定されないが、MMAE若しくはMMAF又はそれらの誘導体が含まれ、
前記マイタンシン系細胞毒性分子には、以下に限定されないが、DM1、DM4又はそれらの誘導体が含まれる、ことを特徴とする請求項9に記載の抗体薬物複合体。
【請求項15】
前記活性薬物単位Dが以下:
【化2】
からなる群より選択される構造を有する、ことを特徴とする請求項9に記載の抗体薬物複合体。
【請求項16】
前記抗体薬物複合体が以下:
【化3】
(ただし、pは、1、2、3、4、5、6、7、8から選択される整数であり、qは、1、2、3、4から選択される整数である。)
からなる群より選択される構造を有する、ことを特徴とする請求項9に記載の抗体薬物複合体。
【請求項17】
請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合断片をコードする、単離されたポリヌクレオチド又はその組み合わせ。
【請求項18】
請求項17に記載のポリヌクレオチドを含む、核酸構築物。
【請求項19】
前記核酸構築物がベクターである、請求項18に記載の核酸構築物。
【請求項20】
請求項18又は19に記載の核酸構築物を含む、宿主細胞。
【請求項21】
前記細胞が、原核細胞、真核細胞、酵母細胞、哺乳動物の細胞、大腸菌細胞又はCHO細胞、NS0細胞、Sp2/0細胞、BHK細胞である、請求項20に記載の宿主細胞。
【請求項22】
請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合断片及び/又は請求項8又は15に記載の抗体薬物複合体と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項23】
抗クローディン-18.2抗体又は抗原結合断片をコードするベクターを発現させるのに適した条件下で請求項20又は21に記載の宿主細胞を培養し、前記抗体又は断片を回収することを含む、抗クローディン-18.2抗体の作製方法。
【請求項24】
がんを治療又は予防するための医薬品の製造における、請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合断片、請求項8~15に記載の抗体薬物複合体、請求項17に記載のポリヌクレオチド又はその組み合わせ、請求項18に記載の核酸構築物、請求項19に記載のベクター、或いは請求項22に記載の医薬組成物の、使用。
【請求項25】
前記がんが、固形腫瘍であり、さらに、前記固形腫瘍には、胃癌、膵臓がんが含まれる、請求項24に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオ医薬品の分野に関し、特に、抗クローディン-18.2抗体及びその抗体薬物複合体に関し、また、本発明は、上記抗体及びその抗体薬物複合体の用途にも関する。
【背景技術】
【0002】
近年、世界中の悪性腫瘍の全体的な発生率はますます上昇傾向にあり、人間の健康や生存を深刻に脅かしている。現在、悪性腫瘍の臨床的な治療は手術、化学療法及び放射線療法が中心であるが、満足のいく治療効果を得ることは困難である。抗体薬物複合体(antibody-drug conjugate、ADC)は、生物活性を有する薬物(Drug)と抗体(Antibody)とを化学的リンカー(Linker)により連結されてなる一種の生物的製剤である。近年、幾つかの抗体薬物複合体は、悪性腫瘍の治療にブレークスルーを取得し、手術、化学療法、放射線療法に次ぐ主要な新治療法となっている。しかし、2021年3月まで、世界中で承認された抗体複合薬物は11種類(米国FDAが10品目を承認し、日本PMDAが1品目を承認した)しかなく、承認された適応症の種類も少なく、悪性腫瘍患者の臨床的ニーズがまだまだ満たされていない。
【0003】
【表1】
【0004】
細胞結合クローディン(Claudins又はCLDNs)は、様々な上皮組織に広く分布しており、細胞密着結合に重要な構造成分である。研究によると、CLDNsタンパク質は上皮細胞が浸透圧、バリア機能及び細胞極性を維持するのに密接に関連しており(非特許文献1)、病原体に対する免疫防御のプロセスにも関与している(非特許文献2)ということがある。また、CLDNsは多くの腫瘍の発生や発展中に発現パターンが変化することが確認されており、CLDNs系統を特異性マーカータンパク質とする標的治療の研究が広く注目されている。しかし、ほとんどのCLDNsは広く発現しているのに対して、その中の個別のメンバー、例えば、CLDN18タンパク質は、胃腸管などの特定の組織のみに高度選択的に発現することが多い。CLDN18遺伝子はヒト第3染色体の3q22.3に位置し、その遺伝子の最初のエクソンには2つのオプションがあり、これにより2つの異なるスプライス変異体が形成され、N末端に69個の異なるアミノ酸配列を持つ、クローディン-18.1タンパク質とCLDN18.2タンパク質という2種類のタンパク質アイソフォームを発現することができる(非特許文献3)。ここで、クローディン-18.1タンパク質は、肺胞上皮細胞が選択的に発現した特異性抗原であり、正常な肺胞組織のみで高度に発現されるが、膵管などの組織を含む他の正常な組織では見られない(非特許文献4)。クローディン-18.2タンパク質も高選択性を有するマーカータンパク質であるが、クローディン-18.1タンパク質とはまったく異なる組織に分布している。クローディン-18.2タンパク質は、健常な組織では発現が高度に制限されているが、胃癌、乳がん、結腸がん、肝臓癌、頭頸部癌、気管支癌及び非小細胞肺癌などの様々な原発性悪性腫瘍で異常に活性化・過剰発現されており、特に胃癌(70%)、膵臓がん(50%)、食道癌(30%)などの消化器系の悪性腫瘍に発現されることが多い(非特許文献5)。また、別の研究によると、CLDN18.2タンパク質は原発巣に発現されるのに限定されず、転移巣でも高度に発現され、悪性腫瘍細胞の増殖と走化性転移のプロセスに関与している可能性があることが示された(非特許文献6、7)。従って、クローディン-18.2は腫瘍患者マーカーと抗腫瘍薬開発ターゲットとして非常に理想的なものであり、特に胃癌、膵臓がん、食道癌、肺癌、卵巣がんに対して適合しているが、その標的の特殊性(クローディン-18.1と比べて、構造が高度に類似しており、両者の細胞外領域における第1のドメインもまったく同じである)のため、クローディン-18.2治療性抗体の開発はより困難であり、これもクローディン-18.2標的薬の開発を制限する主な原因である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Gunzel D.Claudins:vital partners in transcellular and paracellular transport coupling[J].Pflugers Arch,2017,469(1):35-44.
【非特許文献2】Colpitts CC,Baumert TF.Claudins in viral infection:from entry to spread[J].Pflugers Arch,2017,469(1):27-34.
【非特許文献3】Hayashi D、Tamura A、Tanaka H、et al.Deficiency of claudin-18 causes paracellular H+leakage,up-regulation of interleukin-1β,and atrophic gastritis in mice[J].Gastroenterology,2012,142(2):292-304.
【非特許文献4】Li G,Flodby P,Luo J,et al.Knockout mice reveal key roles for clau‐din18 in alveolar barrier properties and fluid homeostasis[J].Am J Respir Cell Mol Biol,2014,51(2):210-222.
【非特許文献5】Kumar V,Soni P,Garg M,et al.Emerging Therapies in the Manage‐ment of Advanced-Stage Gastric Cancer[J].Front Pharmacol,2018,9:404.
【非特許文献6】Woll S,Schlitter AM,Dhaene K、et al.クローディン-18.2 is a target for IMAB362 antibody in pancreatic neoplasms[J].Int J Cancer,2014,134(3):731-739.
【非特許文献7】Jiang H,Shi Z,Wang P,et al.Claudin-18.2-Specific Chimeric Antigen Receptor Engineered T Cells for the Treatment of Gastric Cancer[J].J Natl Cancer Inst,2018,111(4):1-10.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在、クローディン-18.2を標的とする抗体薬物複合体はすべて前臨床研究段階にあり、いずれも臨床段階に進んでいないところである。そこで、より多くの臨床オプションを提供するために、クローディン-18.2を標的とする抗体薬物複合体を開発することが、急務である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はクローディン-18.2を標的とする抗体、抗体薬物複合体及びがんの治療におけるそれらの使用を提供する。また、本発明は、上記クローディン-18.2抗体をコードするヌクレオチド、ポリヌクレオチドの組み合わせ、発現ベクター及び発現ベクターの組み合わせ、上記クローディン-18.2の抗体、抗体薬物複合体を含む医薬組成物及びがんを治療又は予防するための医薬品の製造におけるそれらの使用を提供する。
【0008】
具体的には、本発明は、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む抗体又はその抗原結合断片であって、前記重鎖可変領域のCDR及び/又は前記軽鎖可変領域のCDRは、以下の配列により定義される抗体と同じCDR配列を有するか、又は以下の配列により定義される抗体のCDRで1~2個のアミノ酸置換を行ってなされたものであり、前記配列により定義される抗体は、
(1)重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号1に示され、かつ/又は
(2)軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号2に示される、抗クローディン-18.2抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0009】
特定の実施形態では、異なるアッセイ方法又はシステムにより同定された、対応する重鎖及び軽鎖可変領域の相補性決定領域CDR1~3が表2に示される。
【0010】
【表2】
【0011】
また、本発明は、いくつかの特定の実施形態では、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む抗クローディン-18.2抗体又は抗原結合断片を提供し、
(1)重鎖可変領域CDR1のアミノ酸配列は、配列番号3、4、5、6若しくは7に示されるか、又は配列番号3、4、5、6若しくは7に対して1若しくは2個のアミノ酸置換を行ったアミノ酸配列であり、CDR2のアミノ酸配列は、配列番号8、9、10、11若しくは12に示されるか、又は配列番号8、9、10、11若しくは12に対して1若しくは2個のアミノ酸置換を行ったアミノ酸配列であり、CDR3のアミノ酸配列は、配列番号13、14、15、16又は17に示されるか、又は配列番号13、14、15、16又は17に対して1若しくは2個のアミノ酸置換を行ったアミノ酸配列であり、
(2)軽鎖可変領域CDR1のアミノ酸配列は、配列番号18、19、20、21又は22に示されるか、又は配列番号18、19、20、21又は22に対して1若しくは2個のアミノ酸置換を行ったアミノ酸配列であり、CDR2のアミノ酸配列は、配列番号23、24、25、26又は27に示されるか、又は配列番号23、24、25、26又は27に対して1若しくは2個のアミノ酸置換を行ったアミノ酸配列であり、CDR3のアミノ酸配列は、配列番号28、29、30、31又は32に示されるか、又は配列番号28、29、30、31又は32に対して1若しくは2個のアミノ酸置換を行ったアミノ酸配列である。
【0012】
また、いくつかの特定の実施形態では、本発明で提供される抗クローディン-18.2抗体又は抗原結合断片は以下の通りである。
(1)重鎖可変領域CDR1~3のアミノ酸配列は、配列番号3、8、13であるか、又は配列番号3、8、13に対して1若しくは2個のアミノ酸置換を行ったアミノ酸配列であり、かつ/又は軽鎖可変領域CDR1~3のアミノ酸配列は、配列番号18、23、28であるか、又は配列番号18、23、28に対して1若しくは2個のアミノ酸置換を行ったアミノ酸配列であり、
(2)重鎖可変領域CDR1~3のアミノ酸配列は、配列番号4、9、14であるか、又は配列番号4、9、14に対して1若しくは2個のアミノ酸置換を行ったアミノ酸配列であり、かつ/又は軽鎖可変領域CDR1~3のアミノ酸配列は、配列番号19、24、29であるか、又は配列番号19、24、29に対して1若しくは2個のアミノ酸置換を行ったアミノ酸配列であり、
(3)重鎖可変領域CDR1~3のアミノ酸配列は、配列番号5、10、15であるか、又は配列番号5、10、15に対して1若しくは2個のアミノ酸置換を行ったアミノ酸配列であり、かつ/又は軽鎖可変領域CDR1~3のアミノ酸配列は、配列番号20、25、30であるか、又は配列番号20、25、30に対して1若しくは2個のアミノ酸置換を行ったアミノ酸配列であり、
(4)重鎖可変領域CDR1~3のアミノ酸配列は、配列番号6、11、16であるか、又は配列番号6、11、16に対して1若しくは2個のアミノ酸置換を行ったアミノ酸配列であり、かつ/又は軽鎖可変領域CDR1~3のアミノ酸配列は、配列番号21、26、31であるか、又は配列番号21、26、31に対して1若しくは2個のアミノ酸置換を行ったアミノ酸配列であり、
(5)重鎖可変領域CDR1~3のアミノ酸配列は、配列番号7、12、17であるか、又は配列番号7、12、17に対して1若しくは2個のアミノ酸置換を行ったアミノ酸配列であり、かつ/又は軽鎖可変領域CDR1~3のアミノ酸配列は、配列番号22、27、32であるか、又は配列番号22、27、32に対して1若しくは2個のアミノ酸置換を行ったアミノ酸配列である。
【0013】
いくつかの特定の実施形態では、本発明で提供される抗体又はその抗原結合断片は、
(1)重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号1に示されるか、或いは配列番号1と同じCDR1~3を有し、かつ配列番号1と比較して同一性が80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%を超える配列を有し、かつ/又は
(2)軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号2に示されるか、或いは配列番号2と同じCDR1~3を有し、かつ配列番号2と比較して同一性が80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%を超える配列を有する、組み合わせからなる群から選択される可変領域を含む。
【0014】
特定の実施形態では、本発明に係る抗クローディン-18.2抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、以下の通りである(配列番号1)。
QVQLVQSGAE VKKPGASVKV SCKASGYAFT NYLIEWVRQA PGQGLEWMGL INPGSGGTNY 60
NEKFKGRVTM TRDTSTSTVY MELSSLRSED TAVYYCARGG YYGNSFAYWG QGTLVTVSS 119
【0015】
特定の実施形態では、本発明に係る抗クローディン-18.2抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、以下の通りである(配列番号2)。
DIVMTQSPLS LPVTPGEPAS ISCKSSQSLL NSGNQKNYLT WYLQKPGQSP QLLIYWASTR 60
ESGVPDRFSG SGSGTDFTLK ISRVEAEDVG VYYCQNAYYY PYTFGGGTKV EIK 113
【0016】
特定の実施形態では、本発明に係る抗クローディン-18.2は、(1)重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号1に示され、かつ/又は(2)軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号2に示される。
【0017】
いくつかの特定の実施形態では、本発明で提供される抗体又はその抗原結合断片は、(1)重鎖のアミノ酸配列が配列番号33に示され、かつ/又は(2)軽鎖のアミノ酸配列が配列番号34に示される。
【0018】
本発明で提供される抗体は、モノクローナル抗体、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、Fv、単鎖Fv(「scFv」)、 二重抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、又は抗体の抗原結合部分を含む融合タンパク質であってもよいが、好ましくは、前記抗体はヒト化モノクローナル抗体である。
【0019】
本発明で提供される抗体は、ヒト又はマウスの定常領域をさらに含み、好ましくは、前記定常領域はIgG1、IgG2、IgG3、IgG4から選択される。
【0020】
また、本発明は上記のいずれかの抗体又はその抗原結合断片を含む抗体薬物複合体提供する。
【0021】
さらに、前記抗体薬物複合体の構造は、下記の式(I)に示される。
Ab-L-D (I)
ただし、Abは、上記のいずれかの抗体又はその抗原結合断片であり、
Dは、活性薬物単位であり、
Lは、抗体又はその抗原結合断片Ab及び活性薬物単位Dにそれぞれ共有結合されている任意の連結基であり、
ここで、前記Abは、1つ又は複数の連結基Lを介して1つ又は複数の活性薬物単位Dを連結している。
【0022】
また、前記Lは、抗体Ab上のアミノ残基又はスルフヒドリル残基に共有結合されている。好ましくは、前記Lは、抗体Ab上のスルフヒドリル残基に共有結合されている。より好ましくは、前記Lは、抗体Ab上の鎖間ジスルフィド結合が切断された後に形成されたスルフヒドリル残基に共有結合されている。
【0023】
また、前記Lは、切断可能なリンカー及び切断不可能なリンカーである。
【0024】
さらに、前記切断可能なリンカーにはペプチド単位が含まれる。前記ペプチド単位は2~20個のアミノ酸を含む。前記ペプチド単位は、-バリン-シトルリン-(-Val-Cit-)、-グリシン-グリシン-フェニルアラニン-グリシン-(-Gly-Gly-Phe-Gly-)、-バリン-アラニン-(-Val-Ala-)、-バリン-リジン-(-Val-Lys-)、-バリン-アルギニン-(-Val-Arg-)、-フェニルアラニン-シトルリン-(-Phe-Cit-)、-フェニルアラニン-リジン-(-Phe-Lys-)、-フェニルアラニン-アルギニン-(-Phe-Arg-)及びそれらの組み合わせから選択されることが好ましい。
【0025】
また、上記のいずれかの抗体薬物複合体は、前記Lが下記の既存のリンカー構造(特許公開番号CN110997010Aの中国発明特許明細書の第7~10頁)を含むことを特徴とする。
【0026】
【化1】
【0027】
【化2】
【0028】
【化3】
【0029】
【化4】
【0030】
また、前記活性薬物単位Dとしては、細胞毒性分子、細胞分化因子、幹細胞栄養因子、ステロイド薬、自己免疫疾患の治療薬、抗炎症薬又は感染症の治療薬である。好ましくは、前記細胞毒性分子には、チューブリン阻害剤又はDNA損傷剤が含まれるが、これらに限定されない。前記チューブリン阻害剤には、ドラスタチン(dolastatin)及びアウリスタチン(auristatin)系細胞毒性分子、マイタンシン(maytansine)系細胞毒性分子が含まれるが、これらに限定されない。前記DNA損傷剤には、カリケアマイシン系(calicheamicin)、デュオカルマイシン(duocarmycin)系、アントラマイシン系誘導体PBD、カンプトテシン(camptothecins)及びカンプトテシン系誘導体、SN-38が含まれるが、これらに限定されない。より好ましくは、前記アウリスタチン(auristatin)系細胞素分子には、MMAE又はMMAF又はそれらの誘導体が含まれるが、これらに限定されない。前記マイタンシン系細胞毒性分子には、DM1、DM4又はそれらの誘導体が含まれるが、これらに限定されない。よりさらに、前記活性薬物単位Dには、下記のADCに用いられている既存の活性薬物単位(特許公開番号CN110997010Aの中国発明特許明細書の第12~14頁)が含まれる。
【0031】
【化5】
【0032】
【化6】
【0033】
【化7】
【0034】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明は、以下の構造を有する抗体薬物複合体(即ち、Ab--Mc-Val-Cit-PAB-MMAE)を提供する。
【0035】
【化8】
【0036】
(ただし、pは、1、2、3、4、5、6、7、8から選択される整数である。)
【0037】
他の好ましい実施形態では、本発明は、以下の構造を有する抗体薬物複合体(即ち、Ab-D07-Val-Cit-PAB-MMAE)を提供する。
【0038】
【化9】
(ただし、qは、1、2、3、4から選択される整数である。)
【0039】
他の好ましい実施形態では、本発明は、以下の構造を有する抗体薬物複合体(即ち、Ab--PY-Val-Cit-MMAE)を提供する。
【0040】
【化10】
【0041】
(ただし、qは、1、2、3、4から選択される整数である。)
【0042】
また、本発明は、上記のいずれかの抗体又はその抗原結合断片をコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【0043】
また、本発明は、上記のいずれかの抗体又はその抗原結合断片の重鎖をコードするポリヌクレオチド及び上記のいずれかの抗体又はその抗原結合断片の軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含む、単離されたポリヌクレオチドの組み合わせを提供する。
【0044】
また、本発明は、上記のポリヌクレオチドを含む核酸構築物を提供する。
【0045】
さらに、前記核酸構築物はベクターである。
【0046】
また、本発明は、上記の核酸構築物又はベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0047】
さらに、前記宿主細胞は、原核細胞、真核細胞、酵母細胞、哺乳動物の細胞、大腸菌細胞又はCHO細胞、NS0細胞、Sp2/0細胞、BHK細胞である。
【0048】
また、本発明は、上記のいずれかの抗体又はその抗原結合断片及び/又は抗体薬物複合体と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0049】
また、本発明は、抗クローディン-18.2抗体又は抗原結合断片をコードするベクターを発現させるのに適した条件下で上記宿主細胞を培養し、前記抗体又は断片を回収することを含む抗クローディン-18.2抗体の作製方法を提供する。
【0050】
がんを治療又は予防するための医薬品の製造における、上記のいずれかの抗体又はその抗原結合断片、抗体薬物複合体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドの組み合わせ、核酸構築物、ベクター、又は医薬組成物の使用では、前記がんは、固形腫瘍であり、さらに、前記固形腫瘍には、胃癌、膵臓がんが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1図1は、抗クローディン-18.2マウス抗体CLN-03-3A7、CLN-03-4E5、CLN-03-6H2の投与後の動物の腫瘍体積変化を示すグラフである
図2図2は、抗クローディン-18.2マウス抗体CLN-03-3A7、CLN-03-4E5、CLN-03-6H2の投与後の動物の体重変化を示すグラフである。
図3図3は、キメラ抗体CLN-03-4E5-01、CLN-03-6H2-01及びIMAB362の親和力検出の比較図である。
図4A図4Aは、胃癌モデルKATOIIIにおけるCLN-03-6H2-01とIMAB362のエンドサイトーシス効率の比較図を示す。
図4B図4Bは、膵臓がんモデルAsPC-1におけるCLN-03-6H2-01とIMAB362のエンドサイトーシス効率の比較図を示す。
図4C図4Cは、肺癌モデルA549におけるCLN-03-6H2-01とIMAB362のエンドサイトーシス効率の比較図を示す。
図5図5は、フローサイトメトリーにより検出したRGCLN18.2及RGCLN18.2-PY-Val-Cit-PAB-MMAE、RGCLN18.2-MC-Val-Cit-PAB-MMAE、RGCLN18.2-D07-Val-Cit-PAB-MMAE、IMAB362-MC-Val-Cit-MMAEのエンドサイトーシス効果の比較図である。
図6図6は、RGCLN18.2-MC-Val-Cit-PAB-MMAE、IMAB362-MC-Val-Cit-PAB-MMAE及びPBSの投与後の動物の体重変化を示すグラフである。
図7図7は、RGCLN18.2-MC-Val-Cit-PAB-MMAE、IMAB362-MC-Val-Cit-PAB-MMAE及びPBSの投与後の担癌体積変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0052】
[定義]
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、当業者によって理解されるものと同じ意味を有する。この分野の定義と用語について、当業者がCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubel)を具体的に参照すればよい。アミノ酸残基の略語は、当分野で用いられる、20個の慣用のL-アミノ酸を表す標準的な3文字及び/又は1文字コードの1つを指す。
【0053】
本発明においては、抗体可変領域の相補性決定領域(CDR)を測定又は番号付けする方法には、当技術分野で周知のIMGT、Kabat、Chothia、AbM及びContact法が含まれる。
【0054】
本発明においては、2つの核酸又はアミノ酸の配列間の「一致性」、「同一性」又は「類似性」とは、最適なアラインメント(好適なアラインメント)を実行して得られた、比較される2つの配列が持つ共通ヌクレオチド又は共通アミノ酸残基のパーセンテージを指し、このパーセンテージは、純粹に統計的なものであり、2つの配列間の差異はランダムに分布してその全長をカバーする。2つの核酸又はアミノ酸の配列間の配列比較は、通常、それらの配列を最適な方法で整列させた後、それらの配列を比較することにより行われ、セグメントにより又は「比較ウィンドウ」により実施されることができる。配列を比較するための好適なアラインメントとしては、手動で実施され得ることに加え、Smith及びWaterman(1981)[Ad.App.Math.2:482]の局所的相同性アルゴリズム、Neddleman及びWunschの(1970)[J.MoI.Biol.48:443]局所的相同性アルゴリズム、Pearson及びLipmanの(1988)[Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444)類似性検索法、これらのアルゴリズムを使用するコンピューターソフトウェア(GAP、BESTFIT、FASTA及びTFASTA in the Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575Science Dr.,Madison、WI、又はBLAST N or BLAST P比較ソフトウェア)により実施されることも可能である。
【0055】
本明細書で使用される「抗体」は最も広い意味で使用され、モノクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)を含むが、これらに限定されない様々な抗体構造を包含する。本明細書で使用される「抗原結合断片」とは、抗体断片が、それを由来する抗体の重鎖又は軽鎖の可変鎖の部分配列からなるか、或いはそれらを含むことを意味する。ただし、前記部分配列は、それを由来する抗体と同じ結合特異性や十分な親和力を十分に保持できるものであり、それを由来する抗体の親和力の少なくとも1/100に等しいものが好ましく、少なくとも1/10に等しいものがより好ましい。このような機能的断片としては、それを由来する抗体配列からの、最低5個のアミノ酸、好ましくは10、15、25、50及び100個の連続アミノ酸を含むものであり、例えば(特に)Fab、F(ab’)、F(ab’)2、Fv、dAb、Fd、相補性決定領域(CDR)断片、単鎖抗体(scFv)、二価単鎖抗体であり、特異性抗原をこのポリペプチドに結合させるのに十分な免疫グロブリン断片を少なくとも1つ含む。上記の断片は、合成、又は酵素法、又は無傷の免疫グロブリンの化学的切断により調製するか、又は組換えDNA技術による遺伝工学的改造を行うことができる。その製造方法は当技術分野で周知である。1本の重鎖には、1本の重鎖可変領域(VHと略される)と1本の重鎖定常領域が含まれる。重鎖定常領域には、CH1、CH2及びCH3の3つのドメイン(domain)が含まれる。1本の軽鎖には、1本の軽鎖可変領域(VLと略される)と1本の軽鎖定常領域が含まれる。この軽鎖定常領域には、1つのドメインCLが含まれる。VH及びVL領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる幾つかの超可変性領域に細分することができ、その間に幾つかのフレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存的領域が散在する。各VH及びVLは、アミノ基端からカルボキシ基端に向かって、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で配置される3つのCDRと4つのFRから構成される。重鎖及び軽鎖のこれらの可変領域には、抗原と相互作用する結合モチーフが含まれる。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系の第1成分(Clq)を含む免疫グロブリンが宿主の組織又は因子に結合することを媒介することができる。本発明に係る抗体には、キメラ又はヒト化抗体も含まれる。
【0056】
用語「ヒト化抗体」とは、非ヒト抗体に由来するCDR領域を含み、かつその抗体分子の他の部分が1つ(又は複数)のヒト抗体に由来する抗体を指す。さらに、結合親和力を保持するためには、骨格(FRと呼ばれる)セグメントのいくつかの残基が修飾されてもよい(文献8:Jones et al.,Nature、321:522-525,1986,Verhoeyen et al.,Science、239:1534-1536,1988,Riechmann et al.,Nature,332:323-327,1988.)。本発明に係るヒト化抗体又はその断片は、当業者に知られている技術により調製することができる(文献9:Singer et al.,J.Immun.150:2844-2857,1992、Mountain et al.,Biotechnol.Genet.Eng.Rev.,10:1-142,1992; 又はBebbington et al.,Bio/Technology,10:169-175,1992.)。
【0057】
用語「キメラ抗体」とは、可変領域配列がある種に由来し、定常領域配列が別の種に由来する抗体を指し、例えば、可変領域配列がマウス抗体に由来し、定常領域配列がヒト抗体に由来する抗体が挙げられる。本発明によるキメラ抗体又はその断片は、遺伝子組換え技術を使用して調製することができる。例えば、前記キメラ抗体は、プロモーターと、本発明による非ヒト、特にマウスモノクローナル抗体の可変領域をコードする配列と、ヒト抗体の定常領域をコードする配列とを含む組換えDNAをクローニングすることにより製造することができる。このような組換え遺伝子によってコードした本発明のキメラ抗体は、例えば、マウス-ヒトキメラであり、この抗体の特異性がマウスDNAに由来する可変領域により決定され、またそのアイソタイプがヒトDNAに由来する定常領域により決定される。キメラ抗体の作製方法については、例えば、Verhoeyn et al.(BioEssays,8:74,1988)の文献を参照されたい。
【0058】
用語「モノクローナル抗体」とは、単一の分子組成を有する抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対して単一の結合特異性及び親和性を示す。
【0059】
用語「単離された」核酸分子は、少なくとも1つの汚染物核酸分子から同定及び単離された核酸分子であり、抗体核酸の天然供給源において一般にこの汚染物核酸分子に関連する。単離された核酸分子は、自然界に存在する場合とはその形態や環境で異なる。従って、単離された核酸分子は、天然細胞に存在する核酸分子とは異なる。しかし、単離された核酸分子には、抗体を通常に発現する細胞に含まれる核酸分子が含まれ、この細胞には、例えば核酸分子が天然細胞とは異なる染色体位置に位置する。
【0060】
通常、モノクローナル抗体又はその機能的断片、特にマウス由来のモノクローナル抗体又はその機能的断片を調製するためには、マニュアル「Antibodies」に記載されている技術(文献10:Harlow and Lane、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor NY、pp.726、1988)又はKohler及びMilsteinによって記載されるハイブリドーマ細胞から調製するための技術(Nature、256:495-497、1975)をとりわけ参照されたい。
【実施例
【0061】
以下、本発明の実施形態について実施例を参照しながら説明するが、当業者なら、以下の実施例が本発明を説明するために用いられるに過ぎなく、本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではないことを理解するであろう。
【0062】
実施例1 抗クローディン-18.2マウス抗体スクリーニング及び親和力の検出
【0063】
クローディン-18.2の第1細胞外領域のタンパク質をコードする真核発現プラスミドを含む細胞を、免疫原としてクローディン-18.2ノックアウトマウス(Biocytogen Pharmaceuticals (Beijing) Co., Ltd.に由来)を免疫した。
【0064】
CLN-40-3C8、CLN-07-4C3、CLN-39-8D11、CLN-39-1E1、CLN-03-6H2、CLN-03-4E5、CLN-03-1A8、CLN-03-4A11、CLN-07-5B10、CLN-07-5G11、CLN-03-3A7、CLN-03-4C11、CLN-38-4H3、CLN-03-4G7、CLN-39-1B6、CLN-39-3E7、CLN-03-1F5、CLN-38-8A1、CLN-39-7H7、CLN-03-6G10、CLN-40-6C9、CLN-07-5D9という合計22株のマウス抗体を選別した。
【0065】
得られた22株のマウス抗体のクローディン-18.2に対する結合活性をFACSで検出した。順に最終濃度10ug/mL、1ug/mL、0.1ug/mL、0.01ug/mL、0.001ug/mLに希釈したサンプルを、それぞれCHO-クローディン-18.2細胞と4℃で30分間反応させた後、遠心分離して上清を廃棄し、各ウェルに200μlのPBSを加え、2000rpm、5min、2回洗浄した後、各ウェルに1:100倍希釈したanti-mouse IgGFc-FITC抗体(Abcam、カタログ番号ab97264)50μLを加え、4℃で30分間反応させた後、洗浄ステップを繰り返し、1回洗浄し、最後に各ウェルに200μLのPBSを加え、再懸濁し、機械で検出した。検出結果を表3に示す。ポリクローナル抗体は良好な結合活性を示した。
【0066】
【表3】
【0067】
実施例2 抗クローディン-18.2マウス抗体のインビボ有効性の評価
親和力の高い11株の抗クローディン-18.2マウス抗体(CLN-40-3C8、CLN-07-4C3、CLN-39-8D11、CLN-39-1E1、CLN-03-6H2、CLN-03-4E5、CLN-03-1A8、CLN-03-4A11、CLN-07-5B10、CLN-07-5G11、CLN-03-3A7)を選択し、胃癌PDXモデルにより治療の可能性のあるCLN-03-3A7、CLN-03-4E5、CLN-03-6H2を選別し、そして、上記3つの抗体に対して以下のインビボ有効性評価を行った。
【0068】
胃癌腫瘍をB-NDGマウス(このマウスモデルは、Biocytogen JiangSu Co.,Ltd.から提供された)に皮下接種し、腫瘍体積が150mm3に達したときに、各実験群に5匹のマウスでグループ化した。グループ分け後、エンドサイトーシス及び結合性能の優れたマウス抗体CLN-03-3A7、CLN-03-4E5、CLN-03-6H2を、それぞれ週2回10mg/kgの用量でマウスの腹腔内に注射し、マウスの腫瘍増殖を週2回モニターした(腫瘍体積=0.5×長径×短径2)。具体的な結果を図1図2に示す。実験結果は、クローディン-18.2マウス抗体が腫瘍に対して有意な阻害作用を有し、抗体が安全で、マウスの体重が有意に変化しておらず、3つのマウス抗体の腫瘍阻害活性がCLN-03-6H2>CLN-03-4E5>CLN-03-3A7であることが示された。
【0069】
実施例3 キメラ抗体の作製及び親和力の検出
【0070】
CLN-03-4E5及びCLN-03-6Hの2つのマウス抗体をそれぞれキメラ抗体改造することにより、CLN-03-4E5-01、CLN-03-6H2-01キメラ抗体を得た。CLN-03-4E5-01、CLN-03-6H2-01及びIMAB362(ヒトマウスキメラモノクローナル抗体、クラジキシマブ)の親和力を比較した。結果(表4及び図3に示す)から分かるように、CLN-03-4E5-01、CLN-03-6H2-01及びIMAB362はいずれも良好な親和性活性を示し、本発明で提供されるCLN-03-4E5-01、CLN-03-6H2-01の2つのキメラ抗体はいずれもIMAB362により結合活性に優れた。
【0071】
【表4】
【0072】
実施例4 キメラ抗体のエンドサイトーシス効率の検出
CLN-03-6H2-01キメラ抗体とIMAB362(ヒトマウスキメラモノクローナル抗体、クラジキシマブ)のエンドサイトーシス効率を検出して比較し、精製されたキメラ抗体をpromega PHAb抗体染料標識キット(promega G9841)の明細書に従って標識し、抗体標識前の濃度は2mg/mLであった。標識された抗体と胃癌モデルKATOIII(ATCC)、膵臓がんモデルAsPC-1(ATCC)、肺癌モデルA549(ATCC)細胞を一定の濃度勾配に従って37℃でインキュベートした。時間勾配を0h、2h、4h、6h、8h、12h、24hに設定し、濃度勾配を0.1nM、1nM、10nMに設定した。各サンプリングポイントの終了後、フローサイトメトリーにより蛍光強度を検出した。実験結果(図4A図4B及び図4Cを参照)は、異なる腫瘍細胞株におけるキメラ抗体CLN-03-6H2-01のエンドサイトーシス効果が、IMAB362のエンドサイトーシス効果よりも優れていることが示された。ただし、図4Aは胃癌モデルKATOIIIにおけるCLN-03-6H2-01とIMAB362のエンドサイトーシス効率の比較を示し、図4Bは膵臓がんモデルAsPC-1におけるCLN-03-6H2-01とIMAB362のエンドサイトーシス効率の比較を示し、図4Cは肺癌モデルA549におけるCLN-03-6H2-01とIMAB362のエンドサイトーシス効率の比較を示す。
【0073】
実施例5 キメラ抗体CLN-03-6H2-01のヒト化の改造
軽鎖又は重鎖のCDRを免疫グロブリンの軽鎖又は重鎖のフレームワーク領域に移植することにより、キメラ抗体CLN-03-6H2-01をヒト化して改造した。キメラ抗体CLN-03-6H2-01抗体の軽鎖及び重鎖のCDRを、Kabatシステムを使用して決定した。抗体可変領域のデータベースに対するアラインメントにより、ヒトIgG1フレームワーク領域を決定した。異なるヒト化Clandin18.2抗体の軽鎖可変領域配列及び異なるヒト化Clandin18.2抗体の重鎖可変領域配列を設計して合成した。ヒト化Clandin18.2抗体の軽鎖可変領域とヒトkappa定常領域をPCRにより融合させ、ヒト化Clandin18.2軽鎖の全長を得、また、ヒト化Clandin18.2重鎖可変領域とIgG1定常領域をPCRにより融合させ、ヒト化Clandin18.2重鎖の全長を得た。異なる軽鎖と重鎖を組み合わせて発現させ、精製したポリクローナルヒト化抗体の親和力をフローサイトメトリー(FACS)で検出し(表5を参照)、最適な親和力を持つH-1番号抗体(RGCLN18.2抗体と命名)を選択してシークエンシングした。
【0074】
【表5】
【0075】
【表6】
【0076】
RGCLN18.2抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号1):
QVQLVQSGAE VKKPGASVKV SCKASGYAFT NYLIEWVRQA PGQGLEWMGL INPGSGGTNY 60
NEKFKGRVTM TRDTSTSTVY MELSSLRSED TAVYYCARGG YYGNSFAYWG QGTLVTVSS 119
【0077】
RGCLN18.2抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号2):
DIVMTQSPLS LPVTPGEPAS ISCKSSQSLL NSGNQKNYLT WYLQKPGQSP QLLIYWASTR 60
ESGVPDRFSG SGSGTDFTLK ISRVEAEDVG VYYCQNAYYY PYTFGGGTKV EIK 113
【0078】
RGCLN18.2抗体の重鎖のアミノ酸配列(配列番号33):
QVQLVQSGAE VKKPGASVKV SCKASGYAFT NYLIEWVRQA PGQGLEWMGL INPGSGGTNY 60
NEKFKGRVTM TRDTSTSTVY MELSSLRSED TAVYYCARGG YYGNSFAYWG QGTLVTVSSA 120
STKGPSVFPL APSSKSTSGG TAALGCLVKD YFPEPVTVSW NSGALTSGVH TFPAVLQSSG 180
LYSLSSVVTV PSSSLGTQTY ICNVNHKPSN TKVDKKVEPK SCDKTHTCPP CPAPELLGGP 240
SVFLFPPKPK DTLMISRTPE VTCVVVDVSH EDPEVKFNWY VDGVEVHNAK TKPREEQYNS 300
TYRVVSVLTV LHQDWLNGKE YKCKVSNKAL PAPIEKTISK AKGQPREPQV YTLPPSREEM 360
TKNQVSLTCL VKGFYPSDIA VEWESNGQPE NNYKTTPPVL DSDGSFFLYS KLTVDKSRWQ 420
QGNVFSCSVM HEALHNHYTQ KSLSLSPGK 449
【0079】
RGCLN18.2抗体の軽鎖のアミノ酸配列(配列番号34):
DIVMTQSPLS LPVTPGEPAS ISCKSSQSLL NSGNQKNYLT WYLQKPGQSP QLLIYWASTR 60
ESGVPDRFSG SGSGTDFTLK ISRVEAEDVG VYYCQNAYYY PYTFGGGTKV EIKRTVAAPS 120
VFIFPPSDEQ LKSGTASVVC LLNNFYPREA KVQWKVDNAL QSGNSQESVT EQDSKDSTYS 180
LSSTLTLSKA DYEKHKVYAC EVTHQGLSSP VTKSFNRGEC 220
【0080】
実施例6 抗体薬物複合体(ADC)の調製
次のように精製水で還元剤及び保護剤を調製して、一般的な複合体化方法を使用して、抗体薬物複合体(ADC)を調製した。1~20mMのTCEP(Tris-2-carboxyethyl-phosphine)、1~20mMのDTPA(Diethylene triamine pentacetate acid)を母液として、所望な複合体化率に応じて一定の濃度範囲内の量で還元剤を添加し、TCEPと抗体との最終濃度のモル比が0.5~6.0:1となるように、一定の体積比(1:1)で一定の濃度のモノクローナル抗体(例えば:5~30mg/mL)を混合し、25℃で1時間攪拌反応させた。TCEPで還元された抗体をそのままに複合体化に使用した。
【0081】
一定の濃度(5mM)のリンカー-活性薬物単位化合物を調製し、25%のDMSO(dimethyl sulfoxide、ジメチルスルホキシド)に溶解し、薬物とチオール基のモル比が0.3~2.8:1となるように薬物をゆっくりと加え、25℃で1~4時間攪拌反応させた。反応終了後、PBS緩衝液で遠心限外ろ過を3回行い、残留未反応薬物やDMSOなどの遊離小分子を精製より除去し、そして、SDS-PAGE電気泳動及び疏水性高速液体クロマトグラフィー(HIC-HPLC)法を使用して複合体化の程度を検出した。
【0082】
本実施例で使用されるリンカー-活性薬物単位化合物は、MC-Val-Cit-PAB-MMAE、D07-Val-Cit-PAB-MMAE及びPy-MAA-Val-Cit-PAB-MMAEであり、その構造式がそれぞれ以下の通りである(合成方法については、特許出願CN108853514A(明細書第14頁)、CN111433188A(明細書第53頁)、WO2019223579A1(明細書第25-27頁)を参照のこと)。
【0083】
【化11】
【0084】
上記の方法により以下のADC(ただし、pは1、2、3、4、5、6、7、8から選択される整数で、qは1、2、3、4から選択される整数で、Abは本発明で提供されるRGCLN18.2抗体である。)を調製した。これらのADCの平均DARが3.5~4.5であった。
【0085】
【化12】
【0086】
実施例7 抗体薬物複合体の細胞エンドサイトーシスの実験
ヒト胃癌細胞NCI-N87細胞株をウェルあたり約1×105個の細胞で6ウェルプレートに再懸濁した。RGCLN18.2、RGCLN18.2-PY-Val-Cit-PAB-MMAE、RGCLN18.2-MC-Val-Cit-PAB-MMAE、RGCLN18.2-D07-Val-Cit-PAB-MMAEをそれぞれpHAbアミン反応性染料に抱合した後、細胞培養培地で10μg/mlに希釈した。100μlのRGCLN18.2及びADCの染料複合体を細胞に加え、所定時間(0時間、1時間、3時間、5時間、21時間及び24時間)で37℃でインキュベートした。RGCLN18.2及びADCのエンドサイトーシス効果をフローサイトメトリーにより測定した。結果を図5に示す。エンドサイトーシス実験の結果から、RGCLN18.2-PY-Val-Cit-PAB-MMAE、RGCLN18.2-MC-Val-Cit-PAB-MMAE、RGCLN18.2-D07-Val-Cit-PAB-MMAE ADCの24時間でのエンドサイトーシス率が98%程度であることが分かった。結果は、RGCLN18.2 ADCがヒト胃癌細胞NCI-N87細胞において非常に良好なエンドサイトーシス効果を有することが示された。
【0087】
実施例8 抗体薬物複合体のインビトロ細胞評価
ヒト胃癌細胞NCI-N87の細胞株懸濁液を100μL/ウェル、5000個/ウェルの密度で96ウェルプレートに加え、水で飽和した37℃のCO2インキュベーターで一晩培養した。抗体薬物複合体(RGCLN18.2-PY-Val-Cit-PAB-MMAE、RGCLN18.2-D07-Val-Cit-PAB-MMAE、RGCLN18.2-MC-Val-Cit-PAB-MMAE、IMAB362-MC-Val-Cit-MMAE)の濃度を段階希釈して細胞を含む96ウェルプレートに100μL/ウェルで加えた。37℃インキュベーターで72時間培養を続けた。マイクロプレートリーダーで450nmでのOD値を読み取った。阻害率の計算式は、IR%=(ODブランク-OD薬物)×100/ODブランクであった。カーブフィッティングソフトウェアSoftmax Pro7.0.3 GxpによりIC50値を算出し、結果を表7に示す。上記のインビトロ有効性試験の実験データから、ADCの増殖阻害効果には、RGCLN18.2-PY-Val-Cit-PAB-MMAE、RGCLN18.2-MC-Val-Cit-PAB-MMAE、RGCLN18.2-D07-Val-Cit-PAB-MMAEの方が、IMAB362-MC-Val-Cit-MMAEよりも優れたことが分かった。
【0088】
【表7】
【0089】
実施例9 抗体医薬品複合のPDX(ヒト腫瘍組織由来移植腫瘍モデル)実験
ヒト膵臓がん組織を洗浄した後、小塊に切断し、トロカールでヌードマウスの背中の右肩甲骨に接種し、腫瘍が100~300mm3に成長した後、動物をランダムにグループ分けし、対照群及び実験群の投与状況を表8に示す。
【0090】
【表8】
【0091】
実験結果を図6図7に示す。ただし、図6は対照群及び実験群の動物の体重の変化曲線を示し、図7は対照群及び実験群の動物の担癌体積の変化曲線を示し、その結果、ヒト膵臓がんPDXモデルにおけるRGCLN18.2-MC-Val-Cit-PAB-MMAEの腫瘍阻害効果がIMAB362-MC-Val-Cit-PAB-MMAEの方よりも強いことが示された。
【0092】
上記の説明は、好ましい実施形態にすぎず、例としてのみ役立ち、本発明を実施するために必要な特徴の組み合わせを限定するものではない。提供されるタイトルは、本発明の様々な実施形態を限定することを意図するものではない。「包含する」、「含む」及び「包括する」などの用語は、限定することを意図するものではない。さらに、特に断りがない限り、数字修飾がない場合は複数の形態を含み、「又は」、「或いは」は「及び/又は」を意味する。本明細書で特に定義しない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0093】
本出願で言及されたすべての刊行物及び特許は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、本発明の記載された方法及び組成物の様々な修飾及び変形が当業者には明らかである。本発明を特定の好ましい実施形態により説明したが、保護が要求される本発明はこれらの特定の実施形態に不適切に限定されるべきではないことを理解されたい。実際には、当業者にとって明らかな、本発明を実施するための記載されたモードの様々な変形は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されている。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
【配列表】
2023552733000001.app
【国際調査報告】