IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーロン インダストリーズ インクの特許一覧

<>
  • 特表-中空糸膜及びその製造方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-19
(54)【発明の名称】中空糸膜及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 69/08 20060101AFI20231212BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20231212BHJP
   B01D 69/02 20060101ALI20231212BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20231212BHJP
   B01D 71/16 20060101ALI20231212BHJP
   B01D 71/34 20060101ALI20231212BHJP
   B01D 71/42 20060101ALI20231212BHJP
   B01D 71/56 20060101ALI20231212BHJP
   B01D 71/64 20060101ALI20231212BHJP
   B01D 71/68 20060101ALI20231212BHJP
   D01F 6/76 20060101ALI20231212BHJP
   D01F 6/94 20060101ALI20231212BHJP
   D01F 8/16 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B01D69/08
B01D69/00
B01D69/02
B01D69/12
B01D71/16
B01D71/34
B01D71/42
B01D71/56
B01D71/64
B01D71/68
D01F6/76 D
D01F6/94 Z
D01F8/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532253
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(85)【翻訳文提出日】2023-05-25
(86)【国際出願番号】 KR2021018438
(87)【国際公開番号】W WO2022145781
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】10-2020-0189895
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【弁理士】
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100199004
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 洋
(72)【発明者】
【氏名】イ ジユン
(72)【発明者】
【氏名】オ ヨンソク
(72)【発明者】
【氏名】イ アルム
【テーマコード(参考)】
4D006
4L035
4L041
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006MA01
4D006MA08
4D006MA25
4D006MA31
4D006MA33
4D006MB16
4D006MB19
4D006MC17
4D006MC29
4D006MC54
4D006MC58
4D006MC59
4D006MC62X
4D006MC63
4D006NA04
4D006NA27
4D006NA28
4D006NA75
4D006PA01
4D006PB17
4D006PB65
4D006PC72
4L035AA04
4L035BB07
4L035DD07
4L035FF01
4L041AA02
4L041BA03
4L041BA41
4L041BA57
4L041BC20
4L041BD20
4L041CA35
(57)【要約】
本発明は、中心から順に、1nm以下の気孔を含む高密度のスポンジ構造の第1層、フィンガー構造(finger-like structure)を含む第2層、及び10~1,000μmサイズの気孔を含む低密度のスポンジ構造の第3層を含む中空糸膜、及びその製造方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心から順に、
1nm以下の気孔を含む高密度のスポンジ構造の第1層;
フィンガー構造(finger-like structure)を含む第2層;及び
10~1,000μmサイズの気孔を含む低密度のスポンジ構造の第3層を含む中空糸膜。
【請求項2】
前記第1層の厚さは1~40μmであり、前記第2層の厚さは20~60μmであり、前記第3層の厚さは20~50μmのものである、請求項1に記載の中空糸膜。
【請求項3】
前記中空糸膜は、1barの圧力及び80℃の温度下で測定される水蒸気透過度が0.1g/s/m以上のものである、請求項1に記載の中空糸膜。
【請求項4】
前記中空糸膜は、0.7barの圧力での窒素透過度が100cc/min/cm以下のものである、請求項1に記載の中空糸膜。
【請求項5】
前記中空糸膜は、0.7barの圧力での酸素透過度が100cc/min/cm以下のものである、請求項1に記載の中空糸膜。
【請求項6】
前記中空糸膜は、引張強度が100gf/fiber以上のものである、請求項1に記載の中空糸膜。
【請求項7】
前記第1層~第3層は、それぞれ独立に、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリスルホン、ポリビニリデンフルオリド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、及びセルロースアセテートからなる群から選択される1種以上を含むものである、請求項1に記載の中空糸膜。
【請求項8】
前記中空糸膜の内径は600~1,400μmであり、外径は1,000~2,000μmである、請求項1に記載の中空糸膜。
【請求項9】
非溶媒、貧溶媒及び高分子樹脂を混合して第1紡糸溶液を製造し、非溶媒、良溶媒及び高分子樹脂を混合して第2紡糸溶液を製造するステップ;
前記第1紡糸溶液を、熱誘起相分離法を用いて紡糸して中空の第1層を製造するステップ;
前記紡糸された支持体を良溶媒及び非溶媒の混合溶媒に通過させるステップ;及び
前記第1層及び前記第2紡糸溶液を、口金を通して吐出して非溶媒誘起相分離法によって第2層及び第3層を形成するステップを含む、中空糸膜の製造方法。
【請求項10】
前記第1紡糸溶液は、前記高分子樹脂を45重量%~70重量%含み、
前記第2紡糸溶液は、前記高分子樹脂を15重量%~40重量%含むものである、請求項9に記載の中空糸膜の製造方法。
【請求項11】
前記高分子樹脂は、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリスルホン、ポリビニリデンフルオリド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、及びセルロースアセテートからなる群から選択される1種以上を含むものである、請求項9に記載の中空糸膜の製造方法。
【請求項12】
前記非溶媒は、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、ヘキサン、ペンタン、ベンゼン、トルエン、四塩化炭素、o-ジクロロベンゼン、及びポリエチレングリコールからなる群から選択される1種以上を含むものである、請求項9に記載の中空糸膜の製造 方法。
【請求項13】
前記良溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、テトラメチル尿素及びトリメチルリン酸からなる群から選択される1種以上を含むものである、請求項9に記載の中空糸膜の製造方法。
【請求項14】
前記貧溶媒は、ブタノール、イソブタノール、オクタノール、ペンタノール、イソペンタノール、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート及びポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルからなる群から選択される1種以上を含むものである、請求項9に記載の中空糸膜の製造方法。
【請求項15】
前記第1紡糸溶液及び第2紡糸溶液は、それぞれ独立に、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、グリセリン、ジエチルグリコール及びトリエチレングリコールからなる群から選択される1種以上の親水性添加剤をさらに含むものである、請求項9に記載の中空糸膜の製造方法。
【請求項16】
前記第1紡糸溶液及び第2紡糸溶液は、それぞれ独立に、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸ソルビタンエステル及びアルキルモノグリセリルエーテルからなる群から選択される1種以上の非イオン性界面活性剤をさらに含むものである、請求項9に記載の中空糸膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空糸膜及びその製造方法に関し、より具体的には、燃料電池システムの加湿装置に好ましく用いられる中空糸膜及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水蒸気透過膜を用いて加湿、または除湿を行う方法が注目されている。水蒸気透過膜を用いた加湿及び除湿方式は、メンテナンスが不要であり、駆動に別途電源を必要としないなどの利点を有している。
【0003】
水蒸気透過膜が中空状になった中空糸膜は、燃料電池スタックの隔膜加湿などに用いられる。燃料電池の場合、車載用では4,000NL/分程度の多量の空気流量に対する加湿が必要である。そのため、加湿用中空糸膜には水蒸気透過性や中空糸膜強度が高いことが求められている。加湿用中空糸膜は、中空糸からの空気漏れを防ぐためのガスバリア性が必要であり、また水蒸気透過性も有していなければならない。そのため、中空糸の膜を非常に微細な直径の空隙を持つ多孔膜にし、これを加圧することによって所望の水蒸気透過量を得ることができる。また、空気流量は運転場所や運転方法によって大きく異なる。例えば市街地を走行する場合は低流量でもいいが、山道や急加速時には高流量が必要となる。
【0004】
加湿用中空糸膜としては、様々な種類の重合体を用いた膜が提案されている。一例として、ポリイミド樹脂を素材として用いた加湿用中空糸膜がある。この膜の特徴は、耐熱性、耐久性及びガスバリア性に優れていることである。一方で、水蒸気透過性が低いという欠点がある。
【0005】
また、フッ素系イオン交換膜を用いた加湿用中空糸膜は、ポリイミド樹脂を素材とした加湿用中空糸膜よりは水蒸気透過性、ガスバリア性は高い。一方で、加湿用中空糸膜として実際に使用する程の水蒸気透過性が備わっておらず、耐熱性にも乏しく、中空糸膜自体の価格も非常に高い方である。
【0006】
中空糸膜の製膜方法によっては、非溶媒誘起相分離法(Non-solvent Induced Phase Separation:NIPS)または熱誘起相分離法(Thermally Induced Phase Separation:TIPS)を用いて製造される。
【0007】
前記非溶媒誘起相分離法によれば、高分子樹脂を良溶媒(good solvent)に溶解させた紡糸溶液を、口金を通して吐出し、吐出された紡糸溶液を、非溶媒(non-solvent)を含む液に接触させることによって、前記紡糸溶液の固化を誘導して膜を製造する。
【0008】
前記熱誘起相分離法によれば、高分子樹脂を相分離温度以上で貧溶媒(poor solvent)に強制的に溶解させることによって紡糸溶液を製造し、この紡糸溶液を、口金を通して吐出し、吐出された紡糸溶液を相分離温度以下の冷却液に接触させることによって、紡糸溶液を凝固させて膜を製造する。
【0009】
しかし、前記非溶媒誘起相分離法によって製造される中空糸膜は、熱誘起相分離法による場合に表されるビード(bead)構造を有しておらず、マクロボイドを含む三次元ネットワーク構造を有するため、引張強度(tensile strength)が不十分であるという欠点がある。前記熱誘起相分離法によって製造される中空糸膜は、マクロボイド(macro void)を含まず、膜厚方向に対称となるビード構造を有しているため、膜の機械的強度は高いが、気孔サイズの制御が困難であり、分離特性が低いという欠点がある。
【0010】
したがって、中空糸膜の商用化のためには、高い水分拡散性能と共に引張強度を向上させて物理的、機械的物性を向上させなければならず、そのためには中空糸膜の最適な構造を確保することが求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、引張強度及び水分拡散特性に優れた中空糸膜を提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、前記中空糸膜の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施例は、中心から順に、1nm以下の気孔を含む高密度のスポンジ構造の第1層、フィンガー構造(finger-like structure)を含む第2層、及び10~1,000μmサイズの気孔を含む低密度のスポンジ構造の第3層を含む中空糸膜を提供する。
【0014】
前記第1層の厚さは1~40μmであり、前記第2層の厚さは20~60μmであり、前記第3層の厚さは20~50μmであり得る。
【0015】
前記中空糸膜は、1barの圧力及び80℃の温度下で測定される水蒸気透過度が0.1g/s/m以上であり得る。
【0016】
前記中空糸膜は、0.7barの圧力での窒素透過度が100cc/min/cm以下であり得る。
【0017】
前記中空糸膜は、0.7barの圧力での酸素透過度が100cc/min/cm以下であり得る。
【0018】
前記中空糸膜は、引張強度が100gf/fiber以上であり得る。
【0019】
前記第1層~第3層は、それぞれ独立に、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリスルホン、ポリビニリデンフルオリド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、及びセルロースアセテートからなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0020】
前記中空糸膜の内径は600~1,400μmであり、外径は1,000~2,000μmであり得る。
【0021】
本発明の他の一実施例は、非溶媒、貧溶媒及び高分子樹脂を混合して第1紡糸溶液を製造し、非溶媒、良溶媒及び高分子樹脂を混合して第2紡糸溶液を製造するステップ、前記第1紡糸溶液を、熱誘起相分離法を用いて紡糸して中空の第1層を製造するステップ、前記紡糸された支持体を良溶媒及び非溶媒の混合溶媒に通過させるステップ、及び前記第1層及び前記第2紡糸溶液を、口金を通して吐出して非溶媒誘起相分離法によって第2層及び第3層を形成するステップを含む、中空糸膜の製造方法を提供する。
【0022】
前記第1紡糸溶液は、前記高分子樹脂を45重量%~70重量%含み、前記第2紡糸溶液は、前記高分子樹脂を15重量%~40重量%含むことができる。
【0023】
前記高分子樹脂は、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリスルホン、ポリビニリデンフルオリド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、及びセルロースアセテートからなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0024】
前記非溶媒は、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、ヘキサン、ペンタン、ベンゼン、トルエン、四塩化炭素、o-ジクロロベンゼン、及びポリエチレングリコールからなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0025】
前記良溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、テトラメチル尿素及びトリメチルリン酸からなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0026】
前記貧溶媒は、ブタノール、イソブタノール、オクタノール、ペンタノール、イソペンタノール、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート及びポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルからなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0027】
前記第1紡糸溶液及び第2紡糸溶液は、それぞれ独立に、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、グリセリン、ジエチルグリコール及びトリエチレングリコールからなる群から選択される1種以上の親水性添加剤をさらに含むことができる。
【0028】
前記第1紡糸溶液及び第2紡糸溶液は、それぞれ独立に、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸ソルビタンエステル及びアルキルモノグリセリルエーテルからなる群から選択される1種以上の非イオン性界面活性剤をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明による中空糸膜は、1nm以下の気孔を含み、高密度のスポンジ構造の内部支持層である第1層、フィンガー構造(finger-like structure)を含む中間層である第2層、及び10~1,000μmサイズの気孔を含み、低密度のスポンジ構造の外層である第3層を全て含むため、水分拡散特性に優れている。また、本発明に係る中空糸膜は、前記フィンガー構造(finger-like structure)を含む第2層の両側面に、前記高密度のスポンジ構造を含む第1層と、前記低密度のスポンジ構造を含む第3層を全て備えるため、引張強度がさらに向上する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施例に係る中空糸膜の断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施例について、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。しかし、本発明は種々の異なる形態で具現化することができ、ここで説明する実施例に限定されない。
【0032】
【0033】
以下、一実施例に係る中空糸膜について説明する。
【0034】
本発明は、機械的強度に優れ親水化度が高いため、水分拡散性が高いながらも窒素または酸素などの気体透過度が低い加湿用中空糸膜に関する。
【0035】
本発明の一実施例に係る中空糸膜100は、中心から順に、1nm以下の気孔を含む高密度のスポンジ構造の第1層10、フィンガー構造(finger-like structure)を含む第2層20、及び10~1,000μmサイズの気孔を含む低密度のスポンジ構造の第3層30を含む。
【0036】
本発明者らは、高含有量の高分子樹脂を含む紡糸溶液を熱誘起相分離法を用いて吐出することによって、極めて稠密なスポンジ構造を含む内部支持層である第1層10を形成し、これを非溶媒と良溶媒との混合溶媒に担持した後、これを紡糸溶液と共に非溶媒誘起相分離法によって吐出することによって、前記のような3層構造の中空糸膜を得ることができた。
【0037】
本発明の中空糸膜100は、内部支持層である第1層10が高密度のスポンジ構造を含むことによって、中空糸膜の優れた機械的強度を付与することができ、フィンガー構造を含む中間層である第2層20、及び低密度のスポンジ構造を含む外層である第3層30を通じて、優れた水分散特性を提供することができる。そのため、前記第1層10の高密度スポンジ構造及び前記第3層30の低密度スポンジ構造の「高密度」及び「低密度」は、両層間の相対的な密度を意味し得るし、前記第1層10が中空糸膜の機械的強度を十分に付与することができ、前記第3層30が水分子の容易な進入及び迅速な伝達のための優れた水分散特性を有する場合、これらの密度の絶対数値は特に制限されず、当業者が適切に選択することができる。
【0038】
具体的には、前記中空糸膜100の第1層10は、中空糸膜の中心から最も近くに位置し、1nm以下のサイズの微細気孔を含む高密度のスポンジ構造を有する。これによって、中空糸膜の内部支持層としての役割を担うことで、優れた機械的強度を付与することができる。ここで、前記スポンジ構造とは、多数の気孔が互いに連結されて形成された三次元の網状構造と理解されていい。
【0039】
一実施例で、前記第1層10は、本発明の中空糸膜100中に1μm~40μmで形成することができ、好ましくは10μm~20μmで形成することができる。前記内部支持層の厚さが1μm未満である場合、中空糸膜に十分な物理的、機械的特性が付与されないので、中空糸膜の引張強度が減少する可能性があり、40μmを超える場合、気孔サイズの制御が困難であり、中空糸膜の水分散性が過度に低下する可能性がある。
【0040】
次に、フィンガー構造(finger-like structure)を含む中間層である第2層20は、本発明の中空糸膜100にマクロボイド(macrovoid)を提供することで、水分子の流路抵抗を低減し透過流速を速くさせ、その結果、優れた水分散特性を付与する役割を果たす。前記フィンガー構造を含む第2層20は、本発明の中空糸膜100において、第1層10と外層である第3層30との間に位置する。ここで、前記フィンガー構造(finger-like structure)とは、指の形状に似ている垂直型の内部欠損の配列と理解でき、中空糸膜を形成する過程で、紡糸溶液内部の溶媒及び添加剤が急激な相転移速度によって一気に抜け出て内部に形成された指状の構造を意味する。前記フィンガー構造は、急速な相転移速度で形成されるので、前記フィンガー構造を含む第2層はフィンガー構造と共に緻密な(dense)領域も含むことができる。本発明の一実施例によれば、第2層は、このようなフィンガー構造によって、水分子の流路抵抗が低減し透過流速が速くなるだけでなく、前記緻密領域によって、水蒸気以外の窒素透過度や酸素透過度を減少させることができるという利点がある。
【0041】
一実施例において、前記第2層20は、本発明の中空糸膜100中に20μm~60μmで形成することができ、好ましくは35μm~50μmで形成することができる。前記第2層20の厚さが20μm未満である場合、中空糸膜にマクロボイドが十分に確保されないので、水分散特性が減少する可能性があり、60μmを超える場合、中空糸膜の厚さ方向の機械的特性が低下する問題が生じかねない。
【0042】
その次に形成されている外層である第3層30は、本発明の中空糸膜100の最も外側に位置し、10μm~1,000μmサイズの微細気孔を含む低密度のスポンジ構造を有する。これによって、中空糸膜の外側の疎なところへの水分子の進入が容易であり、第3層30と接触している前記フィンガー構造を含む第2層20に水分子を速やかに伝達する役割を果たす。
【0043】
一実施例において、前記第3層30は、本発明の中空糸膜100中に20μm~50μmで形成することができ、好ましくは30μm~50μmで形成することができる。
【0044】
一実施例において、前記中空糸膜100は、1barの圧力及び80℃の温度下で測定される水蒸気透過度が0.1g/s/m以上のものであり得るし、好ましくは0.3g/s/m以上であり得る。水蒸気透過度とは、水蒸気透過性能を示す指標である。前記水蒸気透過度が0.1g/s/m以上であると、燃料電池スタックに最適な加湿を行うことができるため、水蒸気を安定して供給することができ、燃料電池スタックの電解質膜性能を十分に発揮することができる。
【0045】
一実施例において、前記中空糸膜100は、0.7barの圧力での窒素透過度が100cc/min/cm以下であり得るし、例えば80cc/min/cm以下、例えば50cc/min/cm以下、例えば30cc/min/cm以下、好ましくは20cc/min/cm以下であり得る。これは、前記窒素透過度が100cc/min/cmを超える場合、実質的に中空糸膜の水蒸気透過性能が低下する可能性があるからである。
【0046】
一実施例において、前記中空糸膜100は、0.7barの圧力での酸素透過度が100cc/min/cm以下であり得るし、例えば80cc/min/cm以下、例えば50cc/min/cm以下、例えば30cc/min/cm以下、好ましくは20cc/min/cm以下であり得る。これは、前記酸素透過度が100cc/min/cmを超える場合、実質的に中空糸膜の水蒸気透過性能が低下する可能性があるからである。
【0047】
一実施例において、前記中空糸膜100は、引張強度が100gf/fiber以上であり得るし、例えば200gf/fiber以上、例えば250gf/fiber以上、好ましくは300gf/fiber以上であり得る。本発明の中空糸膜100は、中空糸膜の内部支持層に高密度のスポンジ構造を含むことによって、機械的、物理的特性が向上して前記の範囲を満足する引張強度を確保することができる。
【0048】
一実施例において、前記第1層10~第3層30は、それぞれ独立に、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリスルホン、ポリビニリデンフルオリド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、及びセルロースアセテートからなる群から選択される1種以上を含むことができ、例えば、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリスルホン、ポリビニリデンフルオリドを使用することができるが、本発明で目的とする効果を達成するために中空糸膜に使用できる高分子樹脂であればこれに制限されない。
【0049】
一実施例において、前記中空糸膜100の内径は600~1,400μmであり、外径は1,000~2,000μmであり得る。前記中空糸膜の内径及び外径が前記範囲を満足する場合、加湿用中空糸膜としての優れた水分拡散特性を確保することができる。
【0050】
本発明の他の具現例は、非溶媒、貧溶媒及び高分子樹脂を混合して第1紡糸溶液を製造し、非溶媒、良溶媒及び高分子樹脂を混合して第2紡糸溶液を製造するステップ(S1)、前記第1紡糸溶液を、熱誘起相分離法を用いて紡糸して中空の第1層10を製造するステップ(S2)、前記紡糸された支持体を良溶媒及び非溶媒の混合溶媒に通過させるステップ(S3)、及び前記第1層10及び前記第2紡糸溶液を、口金を通して吐出して非溶媒誘起相分離法によって第2層20及び第3層30を形成するステップ(S4)を含む、中空糸膜の製造方法を提供する。
【0051】
まず、前記(S1)ステップは、本発明の中空糸膜を製造するための紡糸溶液を準備するステップである。本発明の中空糸膜100は、熱誘起相分離法と非溶媒誘起相分離法を順次に併用することによって、各工程に係る第1紡糸溶液と第2紡糸溶液をそれぞれ使用することができる。
【0052】
前記第1紡糸溶液は、非溶媒、貧溶媒及び高分子樹脂を含み、第2紡糸溶液は、非溶媒、良溶媒及び高分子樹脂を含む。
【0053】
まず、貧溶媒及び非溶媒の混合溶媒に高分子樹脂を溶解させて第1紡糸溶液を製造する。
【0054】
一実施例において、前記高分子樹脂は、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリスルホン、ポリビニリデンフルオリド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、及びセルロースアセテートからなる群から選択される1種以上を含むことができ、例えば、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリスルホン、ポリビニリデンフルオリドを使用することができるが、本発明で目的とする効果を達成するために中空糸膜に使用できる高分子樹脂であればこれに制限されない。
【0055】
一実施例において、前記第1紡糸溶液は、前記高分子樹脂を45重量%~70重量%含むことができ、例えば50重量%~70重量%、好ましくは60重量%~70重量%を含むことができる。前記第1紡糸溶液の高分子樹脂含有量が45重量%未満であると、中空糸膜の機械的強度が弱くなる可能性があり、70重量%を超える場合は、第1紡糸溶液の粘度が高すぎて紡糸が困難になるだけでなく、小さな気孔サイズを有する内部支持層である第1層10の成形が困難になる可能性があり、多量の高分子樹脂を溶解させるために貧溶媒の温度を上げなければならない負担がある。
【0056】
前記貧溶媒は、選択された高分子樹脂を常温(25℃)では十分溶解させることができず、高温、具体的には100℃以上に加熱された場合にのみ溶解させることができる溶媒のことを指し、本発明では100℃~150℃の温度で前記高分子樹脂を十分溶解させることができる。
【0057】
一実施例において、前記貧溶媒は前記第1紡糸溶液に含まれ、ブタノール、イソブタノール、オクタノール、ペンタノール、イソペンタノール、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート及びポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルからなる群から選択される1種以上が含まれ得るが、必ずしもこれに制限されるものではない。前記貧溶媒は、第1紡糸溶液の総重量を基準として20重量%~50重量%で含まれ得る。前記貧溶媒の含有量が20重量%未満である場合、第1紡糸溶液の粘度が高すぎて紡糸が困難になるだけでなく、多量の高分子樹脂を溶解させるために貧溶媒の温度を上げなければならない負担があり、50重量%を超える場合、中空糸膜の強度が低くなりすぎる可能性がある。
【0058】
前記非溶媒は、全ての温度区間で、選択された高分子樹脂を溶解させることができない溶媒のことを指す。一実施例において、前記非溶媒は、前記第1紡糸溶液及び第2紡糸溶液に含まれ、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、ヘキサン、ペンタン、ベンゼン、トルエン、四塩化炭素、o-ジクロロベンゼン、及びポリエチレングリコールからなる群から選択される1種以上が含まれ得るが、必ずしもこれに制限されるものではない。前記非溶媒の含有量は、第1紡糸溶液の総重量を基準として1重量%~10重量%であり得る。前記非溶媒の含有量が1重量%未満である場合、中空糸膜の強度が低下する可能性があり、10重量%を超える場合、中空糸膜の内部支持層の気孔形成が容易でなくなる可能性がある。
【0059】
次に、良溶媒及び非溶媒の混合溶媒に高分子樹脂を溶解させて第2紡糸溶液を製造する。
【0060】
前記第2紡糸溶液は、前記高分子樹脂を15重量%~40重量%含むことができ、例えば20重量%~40重量%、好ましくは20重量%~30重量%を含むことができる。前記第2紡糸溶液の高分子樹脂の含有量が15重量%未満であると、中空糸膜の気孔率が低すぎる可能性があり、40重量%を超える場合は、内部活性層である第1層10と外層である第3層30の気孔率が高くなりすぎて、中空糸膜全体の機械的強度が阻害される問題が生じかねない。
【0061】
前記高分子樹脂の具体例は前述した通りであり、前記第1紡糸溶液に含まれる高分子樹脂と同じ種類のものを使用することができ、或いは互いに異なる種類のものを使用することができる。
【0062】
一実施例において、前記良溶媒は前記第2紡糸溶液に含まれ、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、テトラメチル尿素及びトリメチルリン酸からなる群から選択される1種以上が含まれ得るが、必ずしもこれに制限されるものではない。前記良溶媒は、前記第2紡糸溶液の総重量を基準として30重量%~60重量%で含まれ得る。前記良溶媒の含有量が30重量%未満である場合、第2紡糸溶液の粘度が高すぎて紡糸が困難になるだけでなく、高分子樹脂のスムーズな溶解のために良溶媒の温度を上げなければならない負担があり、60重量%を超える場合、第2紡糸溶液の粘度が低くなりすぎて紡糸性が低下する可能性がある。
【0063】
前記非溶媒の具体例は前述した通りであり、前記第1紡糸溶液に含まれる非溶媒と同じ種類のものを使用することができ、或いは互いに異なる種類のものを使用することができる。
【0064】
一実施例において、前記第1紡糸溶液及び第2紡糸溶液は、それぞれ独立に、中空糸膜の気孔形成に役立つ役割を担う親水性添加剤をさらに含むことができ、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、グリセリン、ジエチルグリコール及びトリエチレングリコールからなる群から選択される1種以上の親水性添加剤をさらに含むことができる。
【0065】
前記親水性添加剤は、各紡糸溶液の総重量を基準として5重量%~25重量%で含まれ得る。前記添加剤の含有量が5重量%未満である場合、中空糸膜で気孔形成がスムーズに行われない可能性があり、25重量%を超える場合、紡糸溶液の相分離が急速に進行してしまい、紡糸工程で糸切れが発生する可能性がある。
【0066】
一実施例において、前記第1紡糸溶液及び第2紡糸溶液は、それぞれ独立に、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸ソルビタンエステル及びアルキルモノグリセリルエーテルからなる群から選択される1種以上の非イオン性界面活性剤をさらに含むことができる。
【0067】
前記第1紡糸溶液の製造と前記第2紡糸溶液の製造過程において特別な製造手順があるわけではない。
【0068】
次に、前記(S2)ステップは、第1紡糸溶液を用いて熱誘起相分離法によって高密度のスポンジ構造を含む内部支持層である第1層10を形成するステップである。
【0069】
具体的には、前記(S2)ステップは、非溶媒、貧溶媒及び高分子樹脂を混合した第1紡糸溶液を紡糸温度100℃~300℃で口金を通して吐出することによって、内部支持層である第1層10を形成することができる。前記第1層10は、高含有量の高分子樹脂を含む第1紡糸溶液を熱誘起相分離法によって形成することによって、水分拡散性が良好な上に機械的強度にも非常に優れている中空糸膜を形成することができる。
【0070】
前記第1紡糸溶液の吐出速度は約10~60g/minに調節することができる。
【0071】
前記第1紡糸溶液を、例えば二重管からなる口金を通して吐出する工程の際に、前記紡糸物の中空内部に混合液を吐出することができ、この時、前記混合液は良溶媒及び非溶媒を含んでなり得る。前記良溶媒及び非溶媒の具体例は前述した通りである。このように、前記紡糸物の中空内部に混合液を吐出することによって、中空糸膜の形態をより容易に得ることができる。
【0072】
前記口金を通して吐出された紡糸物は、エアギャップ(air gap)を経て、後述する(S3)ステップの混合溶媒と接触することによって固化することができる。前記エアギャップは主に空気層または不活性気体層であり、この時、エアギャップの長さは0.1~15cmに維持することができる。
【0073】
前記(S2)ステップを経て形成される第1層10は、本発明の中空糸膜100で内部支持層の役割を担い、(S2)ステップを経て製造される中空糸膜は、内径が約600~1,400μmであり、外径が1,000~2,000μmであり得る。
【0074】
次に、前記(S2)ステップで紡糸された支持体を良溶媒及び非溶媒の混合溶媒と接触させて固化させる(S3)。
【0075】
前記混合溶媒は、例えば5℃~25℃に冷却された状態であり得るし、前記(S2)ステップで紡糸された支持体を凝固させる役割を担う。前記混合溶媒に含まれる良溶媒及び非溶媒の具体例は前述した通りである。
【0076】
次に、前記(S4)ステップは、前記(S3)ステップで凝固した第1層10と第2紡糸溶液を、口金を通して吐出して、非溶媒誘起相分離法によって中空糸膜の中間層である第2層20と外層である第3層30を形成するステップである。
【0077】
前記口金は、例えば2つの管から構成される二重管からなり得る。したがって、前記(S3)ステップを通じて形成された第1層10と第2紡糸溶液それぞれを、前記二重管から構成される口金に分離して供給するようになり、特に前記第1層10を口金の内側に供給し、前記第2紡糸溶液を口金の外側に供給することによって、得られる紡糸物の内側面は第1層10から構成され、外側面は前記第2紡糸溶液の紡糸物から構成され得る。
【0078】
前記口金を通して吐出された紡糸物は、エアギャップ(air gap)を経て固化することができる。前記エアギャップは主に空気層または不活性気体層であり、この時、エアギャップの長さは1~50cmに維持することができる。
【0079】
【0080】
前記(S4)ステップを通じて、前記(S3)ステップで第1層10の外部に付着した非溶媒と良溶媒との混合溶媒と、前記第2紡糸溶液とが紡糸過程で接触し速い相転移が起こり、その結果、前記支持層の外側面にフィンガー構造の中間層である第2層20が素早く形成される。この時、前記混合溶媒が中空糸膜の紡糸過程におけるボア流体(bore liquid)の役割を担うようになり、二重管から構成される口金のノズルから吐出される瞬間、第2紡糸溶液と接触する過程で第2紡糸溶液に含まれる溶媒と、前記混合溶媒に含まれる非溶媒とが瞬時に置換され、凝固する過程を経てフィンガー構造の中間層を形成する。その後、口金のノズルを通して吐出された第2紡糸溶液は、エアギャップを通過する過程で水分と接触する過程を通じて、前記フィンガー構造の第2層20の外側に非溶媒と第2紡糸溶液が反応して相転移が起こった結果、低密度のスポンジ構造を有する外層である第3層30を形成することができる。
【0081】
前記(S4)ステップにおいて、前記第2紡糸溶液の非溶媒及び良溶媒の具体例は前述した通りである。
【発明を実施するための形態】
【0082】
以下、実施例及び比較例を通じて本発明を具体的に説明する。ただし、下記の実施例は本発明の理解を助けるためのものに過ぎず、これによって本発明の権利範囲が制限されるものではない。
【0083】
【0084】
[実施例]
【0085】
65重量%のポリフェニルスルホン(PPSu)、20重量%のイソブタノール、10重量%のポリエチレングリコール(PEG 200)及び非イオン性界面活性剤で5重量%のtriton x-10を混合し、150℃で24時間撹拌して第1紡糸溶液を製造した。
【0086】
28重量%のポリフェニルスルホン、25重量%のポリエチレングリコール(PEG 200)、45.5重量%の溶媒及び非イオン性界面活性剤で1.5重量%のtriton x-10を混合し、150℃で24時間撹拌して第2紡糸溶液を製造した。
【0087】
前記製造された第1紡糸溶液を二重管から構成られる紡糸口金を通して吐出して紡糸物を得た。この時、前記二重管から構成される紡糸口金の内側には、80重量%のジメチルアセトアミド(dimethylacetamide:DMAc)及び20重量%のポリエチレングリコール(Polyethyleneglycol:PEG)からなる25℃の混合液を供給して吐出し、前記紡糸溶液は、前記二重管から構成される紡糸口金の外側に供給して吐出した。
【0088】
前記紡糸物を、5cmの長さを有するエアギャップを通過させた後、凝固槽内の凝固液に浸漬させた。前記凝固液は、25℃のN-メチル-2-ピロリドンと水との混合溶媒を用いた。
【0089】
前記凝固槽で凝固して得られた中空糸膜を再び連続的に、二重管から構成される紡糸口金を通して吐出した。
【0090】
この時、前記二重管から構成される紡糸口金の前記第1紡糸溶液を通じて形成された中空糸膜を供給して吐出し、前記第2紡糸溶液は、前記二重管から構成される紡糸口金の外側に供給して吐出した。
【0091】
その後、25℃の純水で洗浄した後、水とグリセリンを含む80℃の後処理液を用いて熱水処理した上で乾燥することによって、中空糸膜を得た。
【0092】
【0093】
[比較例]
【0094】
65重量%のポリフェニルスルホン(PPSu)、20重量%のイソブタノール、10重量%のポリエチレングリコール(PEG 200)及び非イオン性界面活性剤で5重量%のtriton x-10を混合し、150℃で24時間撹拌して第1紡糸溶液を製造した。
【0095】
こうして製造された紡糸溶液を二重管から構成される紡糸口金を通して吐出して紡糸物を得た。前記紡糸溶液を吐出する工程の際に、前記紡糸物の中空内部に80重量%のジメチルアセトアミド(dimethylacetamide:DMAc)及び20重量%のポリエチレングリコール(Polyethyleneglycol:PEG)からなる25℃の混合液を吐出した。
【0096】
前記紡糸物を、30cmの長さを有するエアギャップを通過させた後、凝固槽内の凝固液に浸漬させた。前記凝固液は50℃の水を用いた。
【0097】
前記凝固槽で凝固して得られた紡糸物を50℃の純水で洗浄した後、水とグリセリンを含む80℃の後処理液を用いて熱水処理した上で乾燥することによって、中空糸膜を得た。
【0098】
【0099】
[評価例1]水蒸気透過度の測定
【0100】
直径10mmのステンレス管に実施例及び比較例によって得られた中空糸膜を17本通過させて両端を接着剤で固定したステンレス管モジュールを作製する。80℃の温度条件下で、乾燥ガスが、前記ステンレス管モジュールのガス入口からガス出口に向かって中空糸膜の内側に流れるようにする。ガス出口から出てきたガスを加湿装置で加湿し、加湿された湿潤ガスが、中空糸膜の外側に流れるようにする。このようにして、ガスが1パスのクロスフローで流れるようにする。中空糸膜内部の線速を空気流量計で1,000cm/sになるように設定する。この時の乾燥ガス入口と乾燥ガス出口でのガスの温度と湿度を測定した。この数値から水蒸気透過量を求め、それを乾燥ガスを流した時間、中空糸膜の有効面積、乾燥ガスの空気注入圧力で割った数値を水蒸気透過度とし、その結果を下記表1に示した。ここで、前記中空糸膜の有効面積とは、乾燥ガスを中空糸の内側に流す場合、中空糸膜の内径X円周率X中空糸長さで求められる面積である。
【0101】
【0102】
[評価例2]窒素透過度の測定
【0103】
窒素気体入りのボンベに圧力レギュレータを設置し、ステンレス配管を通して窒素気体が流れるように連結する。配管の前端及び後端に気体流量計を設置し、実施例及び比較例によって得られた中空糸膜入りのチューブを装着する。中空糸膜の内部に窒素気体が流れるように、直径10mmのチューブ内に中空糸膜を、接着剤を用いて位置させる。中空糸膜の一端を塞ぎ、窒素気体が内部から外部に流れるようにした後、0.7barの圧力を維持して配管の前端と後端の流量値を測定する。窒素の透過度は、前記測定した流量の平均値を中空糸膜の膜面積で割った数値で求められる値である。その結果は下記表1の通りである。
【0104】
【0105】
[評価例3]引張強度の測定
【0106】
実施例及び比較例によって得られた中空糸膜サンプル(膜長さ100mm)を準備した後、インストロン(Instron)4304を用いるが、1Nセル(cell)を使用し上部及び下部のアクショングリップ(Action Grip)に膜の試験片を固定した後、クロスヘッド速度(Crosshead Speed)を50.0mm/minとして引っ張る方法で引張強度を測定した。その結果は下記表1の通りである。
【0107】
【表1】
【0108】
【0109】
比較例の中空糸膜はスポンジ層のみから構成され、フィンガー構造の第2層がない構造であり、そのため、膜厚が相対的に薄くなって実施例の中空糸膜に比べて引張強度が低い。また、フィンガー構造の第2層が形成されて、前述したように速い相転移によって緻密(dense)な領域も共に生成されるが、比較例では、このような緻密領域を含むフィンガー構造の第2層がないため、窒素透過度が急激に増加するようになった。
【0110】
【0111】
以上、本発明の特定の実施例を説明し図示したが、本発明は記載された実施例に限定されるものではなく、本発明の思想及び範囲を逸脱することなく多様な修正及び変形が可能であることは、この技術の分野における通常の知識を有する者には自明である。したがって、そのような修正例または変形例は、本発明の技術的思想や観点から個別的に理解されてはならず、変形された実施例は本発明の特許請求の範囲に属するとするべきだろう。
図1
【国際調査報告】