IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バイオヴィット カンパニー,リミテッドの特許一覧

特表2023-552750機能性ペプチドが結合した生体適合ポリペプチドを含む炎症疾患の抑制用組成物
<>
  • 特表-機能性ペプチドが結合した生体適合ポリペプチドを含む炎症疾患の抑制用組成物 図1
  • 特表-機能性ペプチドが結合した生体適合ポリペプチドを含む炎症疾患の抑制用組成物 図2
  • 特表-機能性ペプチドが結合した生体適合ポリペプチドを含む炎症疾患の抑制用組成物 図3
  • 特表-機能性ペプチドが結合した生体適合ポリペプチドを含む炎症疾患の抑制用組成物 図4
  • 特表-機能性ペプチドが結合した生体適合ポリペプチドを含む炎症疾患の抑制用組成物 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-19
(54)【発明の名称】機能性ペプチドが結合した生体適合ポリペプチドを含む炎症疾患の抑制用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/64 20170101AFI20231212BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231212BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20231212BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20231212BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20231212BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20231212BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20231212BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20231212BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20231212BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20231212BHJP
   A61P 17/10 20060101ALI20231212BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20231212BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20231212BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20231212BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20231212BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20231212BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20231212BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231212BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20231212BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20231212BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20231212BHJP
   A61K 38/18 20060101ALI20231212BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20231212BHJP
   C07K 14/435 20060101ALN20231212BHJP
【FI】
A61K47/64
A61P29/00
A61K38/00
A61K47/65
A61K38/10
A61K38/16
A61P17/00
A61P37/08
A61P17/06
A61P17/04
A61P17/10
A61P11/06
A61P11/02
A61P27/02
A61P19/02
A61P11/00
A61P17/02
A61P35/00
A61K38/08
A61K8/64
A61Q19/00
A61K38/18
C07K19/00
C07K14/435
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533311
(86)(22)【出願日】2021-10-15
(85)【翻訳文提出日】2023-05-30
(86)【国際出願番号】 KR2021014295
(87)【国際公開番号】W WO2022114521
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】10-2020-0163705
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Witepsol
(71)【出願人】
【識別番号】521349233
【氏名又は名称】バイオヴィット カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】キム・ヨンテ
(72)【発明者】
【氏名】チュ・ウンビン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076CC05
4C076CC10
4C076CC18
4C076CC27
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF68
4C083AD411
4C083EE12
4C083EE13
4C083EE14
4C083FF01
4C084AA01
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA18
4C084BA19
4C084BA23
4C084CA53
4C084CA59
4C084DA42
4C084DB52
4C084NA14
4C084ZA331
4C084ZA332
4C084ZA341
4C084ZA342
4C084ZA591
4C084ZA592
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZA961
4C084ZA962
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZB131
4C084ZB132
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC521
4C084ZC522
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA50
4H045EA15
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、生体適合ポリペプチドに機能性ペプチドが結合した組換えポリペプチドを含む炎症疾患の抑制または改善用組成物に関する。本発明の組成物は、人体に安全であるだけでなく、初期炎症を発生するサイトカインおよび腫瘍壊死因子を抑制して炎症を抑制するために広範に適用されることができ、炎症を阻害するための医薬品、医療製品、化粧品、日常用品などの分野に使用することができ、またさらなる新薬の開発にも活用されることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体適合ポリペプチドに機能性ペプチドが結合した組換えポリペプチドを含む炎症疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項2】
前記炎症疾患は、炎症性皮膚疾患および胃腸、食道、小腸、尿道、結膜の炎症性疾患からなる群から選択される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記炎症疾患は、アトピー皮膚炎、乾癬、喘息、接触性皮膚炎、鼻炎、結膜炎、関節炎、気管支炎、褥瘡、潰瘍、がん、魚鱗癬、天疱瘡、にきび、紅斑性狼瘡、皮膚老化および皮膚しわからなる群から選択される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記生体適合ポリペプチドは、イガイ接着タンパク質またはフジツボ接着タンパク質である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記イガイは、ミチルス・エドゥリス(Mytilus edulis)、ミチルス・ガロプロヴィンシアリス(Mytilus galloprovincialis)、およびミチルス・コラスカス(Mytilus coruscus)からなる群から選択される、請求項4に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記イガイ接着タンパク質は、配列番号7~配列番号10のいずれか一つの配列を含むFP-3、配列番号12~配列番号15のいずれか一つの配列を含むFP-5、および配列番号16の配列を含むFP-6からなる群から選択される第1ペプチドの炭素末端やアミン末端あるいは両末端の全てに、配列番号1~配列番号5のいずれか一つの配列を含むFP-1、配列番号6の配列を含むFP-2、および配列番号11の配列を含むFP-4からなる群から選択される第2ペプチドが融合したタンパク質である、請求項4に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記イガイ接着タンパク質は、FP-5の両末端にFP-1が互いに融合した形態のFP-151(配列番号17~配列番号21);FP-3の両末端にFP-1が互いに融合した形態のFP-131(配列番号22);FP-5の両末端にFP-2およびFP-1が互いに融合した形態のFP-251(配列番号23);およびFP-5の両末端にFP-3が互いに融合した形態のFP-353(配列番号17~配列番号24);からなる群から選択される、請求項4に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記機能性ペプチドは、抗菌ペプチド、細胞外基質タンパク質、および成長因子からなる群から選択される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記機能性ペプチドは、抗菌ペプチドである、請求項8に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記生体適合ポリペプチドと機能性ペプチドは、直接結合するか、ペプチド性または非-ペプチド性リンカーを介して結合する、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記抗菌ペプチドは、KLWKKWAKKWLKLWKA(配列番号29)、FALALKALKKL(配列番号30)、ILRWPWWPWRRK(配列番号31)、AKRHHGYKRKFH(配列番号32)、KWKLFKKIGAVLKVL(配列番号33)、LVKLVAGIKKFLKWK(配列番号34)、IWSILAPLGTTLVKLVAGIGQQKRK(配列番号35)、GIGAVLKVLTTGLPALISWI(配列番号36)、SWLSKTAKKGAVLKVL(配列番号37)、KKLFKKILKYL(配列番号38)、GLKKLISWIKRAAQQG(配列番号39)、GWLKKIGKKIERVGQHTRDATIQGLGIAQQAANVAATAR(配列番号40)、LKKLAKLALAF(配列番号41)、KLLLKLLKKLLKLLKKK(配列番号42)、THRPPMWSPVWP(配列番号43)、GWLKKIGKWKIFKK(配列番号44)、ILPWKWPWWPWRR(配列番号45)、RRWWCRC(配列番号46)、KLAKLAKKLAKLAK(配列番号47)、LKKLAKLALAFILRWPWWPWRRK(配列番号48)、RLLRRLLRRLLRRLLRRLLR(配列番号49)、FLKLLKKLAAKLF(配列番号50)、WLKKIGKKIERVGQHTRDATIQGLGIAQQAANVAATAR(配列番号51)、およびGTNNWWQSPSIQN(配列番号52)からなる群から選択される、請求項9に記載の薬学的組成物。。
【請求項12】
生体適合ポリペプチドに機能性ペプチドが結合した組換えポリペプチドを含む炎症疾患の改善用化粧料組成物。
【請求項13】
前記生体適合ポリペプチドは、イガイ接着タンパク質である、請求項12に記載の化粧料組成物。
【請求項14】
前記機能性ペプチドは、抗菌ペプチドである、請求項12に記載の化粧料組成物。
【請求項15】
前記炎症疾患は、アトピー皮膚炎、乾癬、蕁麻疹、化膿性汗腺炎、ざ瘡、喘息、接触性皮膚炎、鼻炎、結膜炎、関節炎、気管支炎、褥瘡、潰瘍、がん、魚鱗癬、天疱瘡、にきび、紅斑性狼瘡、皮膚老化、および皮膚しわからなる群から選択される、請求項12に記載の化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性ペプチドが結合した生体適合ポリペプチドを含む炎症疾患の抑制用組成物に関し、より詳細には、イガイ接着タンパク質由来の生体適合ポリペプチドに機能性ペプチドが結合した組換えポリペプチドを含む様々な炎症作用の抑制用組成物、例えば、医薬品、医療製品、化粧品、日常用品などに関する。
【背景技術】
【0002】
炎症とは、刺激による生体組織の防御反応の一つであり、兔疫細胞、血管、炎症媒介体などが関与し、細胞損傷を引き起こすすべての因子は、炎症の原因になり得る。炎症反応は、生体に加えられた損傷の要因を除去し、損傷した組織を再生して、生体内の生理機能を回復する人体の最も重要な生体防御メカニズムである。
【0003】
ヒトの炎症反応は、様々な複雑なシステムを介して調節される。炎症反応が生じると、血流の増加と血液毛細管の透過性が向上し、負傷、感染または免疫反応部位への白血球、抗体、サイトカインおよび補体といった大分子の移動を誘導し、高い血流量と炎症部位への血漿の流出は、熱、発赤、浮腫および痛症を引き起こす(Calder PC.n-3 Polyunsaturated fatty acids,inflammation,and inflammatory diseases.Am J Clin Nutr.2006;83(6):1505S-19S)。また、病原体由来の分子、損傷した細胞の生成物、毒素またはアレルゲンのような炎症刺激によって引き起こされた炎症反応は、IL(Interleukin)系のサイトカイン、腫瘍壊死因子(TNF、tumor necrosis factor)のような一部の細胞由来の媒介体の放出につながる。
【0004】
最近、産業化および西洋化による生活環境の変化に伴い、過敏性あるいは炎症性免疫疾患の発病率が急増しており、炎症が慢性化すると、アトピー、リウマチ関節炎のような自己免疫疾患だけでなく、成人病、心血管疾患、がんのような疾患として現れ得る。
【0005】
しかし、このような疾患を引き起こすにもかかわらず、炎症反応は、非常に複雑な機転を有しており、断片的にのみその作用機転が明らかになっており、炎症を治療するための薬物の場合、ほとんどが偶然に使用されたり、経験的に使用されているだけである。代表的には、炎症を抑制するための用途に使用される非ステロイド性物質としては、イブプロフェン(ibuprofen)やインドメタシン(indomethacin)などがあり、ステロイド性物質としては、デキサメタゾン(dexamethasone)などがあるが、この場合にも、その詳細な薬理作用が明らかになり始めたのは最近のことであり、人体安全性に問題があるため使用が制限されている。
【0006】
一方、イガイやフジツボが分泌する接着剤は、タンパク質で構成されている生体接着剤であり、耐水性を示しており、固有の生分解性の特性により、微生物や酵素作用によって生分解される環境にやさしい接着剤である。そのうち、イガイの足糸から分泌するイガイ接着タンパク質は、生命体由来のバイオ基盤素材として、ヒト細胞を攻撃するか免疫反応を引き起こさないと知られて、手術時に生体組織の接着や折れた歯の接着などの医療分野において応用可能性が大きいバイオ素材として注目されてきた(韓国登録特許公報第10-1578522号、韓国登録特許公報第10-1631704号)。実際、イガイ接着タンパク質を生体適合素材として活用するために、生体特性を確認している。イガイ接着タンパク質の接触および投与が如何なる影響を及ぼすか確認するために、動物実験により臓器に及ぼす毒性と免疫反応に関する研究を行っており、結果、臓器ごとに毒性による特別な特異所見が見つからず、組織の壊死や急性炎症反応などが確認されなかった(J.Dove,et al.,Journal of American Dental Association 112,879,1986)。したがって、既存のイガイ接着タンパク質に関する特許および研究は、ほとんどがその主要特性である接着性に注目している(韓国公開特許公報第10-2018-0033517号、韓国公開特許公報第10-2018-0029228号)。
【0007】
イガイ接着タンパク質に関する研究は、様々なイガイタンパク質の開発および遺伝子組換え技術を用いる大量生産に分けて行われており、主に、ミチルス・エドゥリス(Mytilus edulis)、ミチルス・ガロプロヴィンシアリス(Mytilus galloprovincialis)およびミチルス・コラスカス(Mytilus coruscus)由来のイガイ接着タンパク質について知られている。イガイ接着タンパク質のメカニズムを明らかにするために、足糸タンパク質の種類およびそのアミノ酸配列が長い間研究されており、約12種以上のタンパク質で構成されていることが明らかになった。
【0008】
一方、抗菌ペプチドは、自然免疫系の一員として、生体適合性に優れた最も安全な抗菌物質の一つであり、直接的な殺菌作用だけでなく、宿主の防御機能を調節すると知られている。既存の抗生物質とは異なる作用機転で作用し、抗生剤耐性を有する細菌は言うまでもなく、真菌に至るまでの広範で強力な死滅活性を示すことができ、病原性微生物を制御する作用時間も非常に速いと知られている(韓国登録特許公報第10-1652263号)。しかし、抗菌ペプチドの抗炎症効果については本技術分野において具体的に知られていない。
【0009】
したがって、本発明者らは、生体適合ポリペプチドに各種の抗菌ペプチドが融合した組換えポリペプチドを開発し、前記組換えポリペプチドを用いて、より効果的に抗炎症効果を示すことで、アトピーなどの炎症性疾患に適用することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】韓国登録特許公報第10-1578522号
【特許文献2】韓国登録特許公報第10-1631704号
【特許文献3】韓国公開特許公報第10-2018-0033517号
【特許文献4】韓国公開特許公報第10-2018-0029228号
【特許文献5】韓国登録特許公報第10-1652263号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Calder PC.n-3 Polyunsaturated fatty acids,inflammation,and inflammatory diseases.Am J Clin Nutr.2006;83(6):1505S-19S
【非特許文献2】J.Dove,et al.,Journal of American Dental Association 112,879,1986
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述のような従来の技術の問題を解決するためのものであり、本発明の目的は、生体適合ポリペプチドに機能性ペプチドが結合した組換えポリペプチドを含む炎症疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供するものである。
【0013】
また、本発明の目的は、生体適合ポリペプチドに機能性ペプチドが結合した組換えポリペプチドを含む炎症疾患の改善用化粧料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明は、生体適合ポリペプチドに機能性ペプチドが結合した組換えポリペプチドを含む炎症疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0015】
一実施態様において、前記炎症疾患は、炎症性皮膚疾患、または胃腸、食道、小腸、尿道、結膜の炎症性疾患であることができるが、これに限定されるものではない。好ましい実施態様において、前記炎症疾患は、アトピー皮膚炎(atopic dermatitis)、乾癬(psoriasis)、蕁麻疹(urticaria)、化膿性汗腺炎(hidradenitis suppurativa、HS)、ざ瘡(acne)、喘息(asthma)、接触性皮膚炎(contact dermatitis)、鼻炎(rhinitis)、結膜炎(conjunctivitis)、関節炎(arthritis)、気管支炎(bronchitis)、褥瘡(bedsore)、潰瘍(ulcer)、がん(cancer)、魚鱗癬、天疱瘡、にきび、紅斑性狼瘡、皮膚老化、または皮膚しわであることができるが、これに限定されるものではない。
【0016】
一実施態様において、前記生体適合ポリペプチドは、イガイ接着タンパク質またはフジツボ接着タンパク質であることができるが、これに限定されるものではない。好ましい実施態様において、前記イガイは、ミチルス・エドゥリス、ミチルス・ガロプロヴィンシアリス、またはミチルス・コラスカスであることができるが、これに限定されるものではない。
【0017】
一実施態様において、前記イガイ接着タンパク質は、配列番号7~配列番号10のいずれか一つの配列を含む足糸タンパク質(foot protein)-3(FP-3)、配列番号12~配列番号15のいずれか一つの配列を含むFP-5、および配列番号16の配列を含むFP-6からなる群から選択される第1ペプチドのC-末端やN-末端、あるいは両末端の全てに、配列番号1~配列番号5のいずれか一つの配列を含むFP-1、配列番号6の配列を含むFP-2、および配列番号11の配列を含むFP-4からなる群から選択される第2ペプチドが融合したタンパク質であることができる。
【0018】
好ましい実施態様において、前記イガイ接着タンパク質は、FP-5の両末端にFP-1が互いに融合した形態のFP-151(配列番号17~配列番号21);FP-3の両末端にFP-1が互いに融合した形態のFP-131(配列番号22);FP-5の両末端にFP-2およびFP-1が互いに融合した形態のFP-251(配列番号23);およびFP-5の両末端にFP-3が互いに融合した形態のFP-353(配列番号17~配列番号24);からなる群から選択されることができるが、これに限定されるものではない。
【0019】
一実施態様において、前記機能性ペプチドは、抗菌ペプチド、細胞外基質タンパク質、または成長因子であることができ、抗菌ペプチドであることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0020】
一実施態様において、前記生体適合ポリペプチドと機能性ペプチドは、直接結合するか、ペプチド性リンカー(linker)または非-ペプチド性リンカーを介して結合することができるが、これに限定されるものではない。
【0021】
好ましい実施態様において、前記抗菌ペプチドは、KLWKKWAKKWLKLWKA(配列番号29)、FALALKALKKL(配列番号30)、ILRWPWWPWRRK(配列番号31)、AKRHHGYKRKFH(配列番号32)、KWKLFKKIGAVLKVL(配列番号33)、LVKLVAGIKKFLKWK(配列番号34)、IWSILAPLGTTLVKLVAGIGQQKRK(配列番号35)、GIGAVLKVLTTGLPALISWI(配列番号36)、SWLSKTAKKGAVLKVL(配列番号37)、KKLFKKILKYL(配列番号38)、GLKKLISWIKRAAQQG(配列番号39)、GWLKKIGKKIERVGQHTRDATIQGLGIAQQAANVAATAR(配列番号40)、LKKLAKLALAF(配列番号41)、KLLLKLLKKLLKLLKKK(配列番号42)、THRPPMWSPVWP(配列番号43)、GWLKKIGKWKIFKK(配列番号44)、ILPWKWPWWPWRR(配列番号45)、RRWWCRC(配列番号46)、KLAKLAKKLAKLAK(配列番号47)、LKKLAKLALAFILRWPWWPWRRK(配列番号48)、RLLRRLLRRLLRRLLRRLLR(配列番号49)、FLKLLKKLAAKLF(配列番号50)、WLKKIGKKIERVGQHTRDATIQGLGIAQQAANVAATAR(配列番号51)、またはGTNNWWQSPSIQN(配列番号52)であることができるが、これに限定されるものではない。
【0022】
また、本発明は、生体適合ポリペプチドに機能性ペプチドが結合した組換えポリペプチドを含む炎症疾患の改善用の化粧料組成物を提供する。
【0023】
また、本発明は、上記開示された生体適合ポリペプチドに機能性ペプチドが結合した組換えポリペプチドまたは前記組換えポリペプチドを含む組成物、例えば、薬学的組成物または化粧料組成物を個体に投与するステップを含む炎症疾患の抑制または改善方法を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明の組換えポリペプチドを含む組成物は、人体に安全なだけでなく、初期炎症を発生するサイトカインおよび腫瘍壊死因子を抑制して炎症を抑制するために広範に適用されることができ、炎症を阻害するための医薬品、医療製品、化粧品、日常用品などの分野に使用することができ、また、さらなる新薬の開発にも活用されることができる。
【0025】
本発明の上述の特徴とさらに他の特徴および利点は、例示的な目的に提供される下記の実施態様と図面をともに考慮すると明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の組換えポリペプチドの三次構造モデルを示す。前記組換えポリペプチドは、イガイ接着タンパク質のN-末端およびC-末端に機能性ペプチドが結合している。MAPは、イガイ接着タンパク質を示す。
図2】炎症性サイトカインであるIL-6が本発明のBVI181、BVI182およびBVI183組換えポリペプチドを含む組成物を処理した後、著しく阻害されることを示すグラフである。
図3】腫瘍壊死因子であるTNF-αがBVI181、BVI182およびBVI183組換えポリペプチドを含む組成物を処理した後、著しく阻害されることを示すグラフである。
図4】12-O-テトラデカノイルホルボール-13-アセテート(TPA)を処理したマウスの耳の厚さがBVI183組換えポリペプチドを含む組成物を処理した後、正常対照群と同様になって炎症が減少することを示すグラフである。
図5】炎症がある子犬の皮膚で本発明のBVI183組換えポリペプチドを含む組成物を処理した後、炎症が著しく減少することを確認した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0028】
本発明は、生体適合ポリペプチドに機能性ペプチドが結合した組換えポリペプチドを含む炎症疾患の予防または治療用組成物を提供する。
【0029】
本発明において、用語「炎症疾患」は、炎症誘発因子などの有害な刺激によって人体免疫系を過剰に亢進させてマクロファージのような免疫細胞から分泌するTNF-α、IL-1、IL-6、プロスタグランジン(prostagladin)、ロイコトリエン(luecotriene)または酸化窒素(nitric oxide、NO)のような炎症誘発物質(炎症性サイトカイン)によって引き起こされる任意の疾患を制限なく含む意味で使用される。
【0030】
本発明において、用語「治療」は、他に言及されない限り、前記用語が適用される疾患または疾病、または前記疾患または疾病の一つ以上の症状を逆転させるか、緩和させるか、その進行を抑制するか、または予防することを制限なく含む意味で使用される。また、哺乳動物において、炎症疾患の「治療」または「治療療法」は、下記の一つ以上を含むことができる。
【0031】
(1)炎症疾患の発達を阻止する。
(2)炎症疾患の拡散を予防する。
(3)炎症疾患を軽減する。
(4)炎症疾患の再発を予防する。および
(5)炎症疾患の症状を緩和する。
【0032】
本発明において、適用可能な炎症疾患は、炎症性皮膚疾患および胃腸、食道、小腸、尿道、結膜などの組織の炎症性疾患が制限なく含まれることができる。前記炎症疾患としては、アトピー皮膚炎、乾癬、蕁麻疹、例えば、慢性蕁麻疹、化膿性汗腺炎、ざ瘡、例えば、集簇性ざ瘡(Acne conglobata)、喘息、接触性皮膚炎、鼻炎、結膜炎、関節炎、気管支炎、褥瘡、潰瘍、がん、魚鱗癬、天疱瘡、にきび、紅斑性狼瘡、皮膚老化、皮膚しわなどの疾患が含まれることができるが、これに限定されるものではなく、皮膚での炎症反応によって引き起こされ得る任意の疾患が、全て本発明の皮膚疾患の範囲に含まれることができる。
【0033】
前記生体適合ポリペプチドは、イガイまたはフジツボ由来の接着タンパク質であることができ、イガイ由来の接着タンパク質であることが好ましいが、これに限定されるものではない。一実施態様において、前記イガイは、ミチルス・エドゥリス、ミチルス・ガロプロヴィンシアリス、およびミチルス・コラスカスからなる群から選択されることができ、好ましくは、ミチルス・ガロプロヴィンシアリスであることができるが、これに限定されるものではない。
【0034】
本発明において、イガイ接着タンパク質は、イガイから由来した接着タンパク質であり、湿気のある環境や乾燥した環境で自己接着が可能な接着性タンパク質であり、組換えイガイ接着タンパク質またはイガイ接着タンパク質の変異体(mutant)であることが好ましいが、これに限定されるものではなく、好ましくは、国際公開番号第WO2006/107183A1号または第WO2005/092920号に記載の任意のイガイ接着タンパク質を制限なく含むことができる。前記イガイ接着タンパク質の変異体は、好ましくは、イガイ接着タンパク質の接着力を維持する前提の下で、前記イガイ接着タンパク質のカルボキシル末端(C-末端)やアミノ末端(N-末端)にさらなる配列を含むか、一部のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたものであることができる。より好ましくは、前記イガイ接着タンパク質のカルボキシル末端またはアミノ末端に、生理機能性ペプチド、例えば、RGDを含む3~25個のアミノ酸からなるポリペプチドが連結されたものであるか、イガイ接着タンパク質をなすチロシン残基総数の1~100%、好ましくは5~100%、より好ましくは50~100%が3、4-ジヒドロキシフェニル-L-アラニン(DOPA)で置換されたものであることができる。
【0035】
市販のイガイ接着タンパク質の例としては、ソウル特別市麻浦区所在の(株)BioVitによって販売されているイガイ由来組換え抗菌接着タンパク質であるBV_Seriesあるいは米国サウスキャロライナ州ノースオーガスタ所在のKollodis Bioscience社が販売しているイガイ接着タンパク質があるが、これに限定されるものではない。
【0036】
一実施態様において、前記イガイ接着タンパク質は、それ自体で使用するか、FP-1、FP-2、FP-3、FP-4、FP-5、FP-6、およびその断片からなる群から選択されることができる。他の実施態様において、前記イガイ接着タンパク質は、FP-1、FP-2、FP-3、FP-4、FP-5、FP-6、およびその断片のうち2以上が互いに融合した融合タンパク質または融合ポリペプチドであることができる。
【0037】
好ましい実施態様において、前記イガイ接着タンパク質は、それ自体で使用するか、配列番号7、8、9または10で記載するFP-3、配列番号12、13、14または15で記載するFP-5、または配列番号16で記載するFP-6に該当する第1ペプチドの炭素末端やアミン末端あるいは両方にイガイ接着タンパク質FP-1(配列番号1,2,3、4、5)、FP-2(配列番号6)またはFP-4(配列番号11)および各タンパク質の切片からなる群から選択される少なくとも一つの第2ペプチドが融合した融合タンパク質として使用されることができる。前記第2ペプチドとして選択されるタンパク質は、さらに、炭素またはアミン末端にスペーサ(spacer)が含まれることができ、好ましいスペーサは、配列番号25~配列番号28のいずれか一つで記載するアミノ酸配列を含むことができる。前記スペーサは、配列番号25、26、27、または28が、複数回、例えば、2回以上繰り返されたペプチドを使用してもよい。
【0038】
好ましくは、前記第1ペプチドは、配列番号12~配列番号15のアミノ酸配列を含むFP-5であり、前記第2ペプチドは、配列番号1~配列番号5のアミノ酸配列を含むFP-1である。より好ましくは、本発明で利用可能なイガイ接着タンパク質は、配列番号1~配列番号5のアミノ酸配列を含むFP-1のアミンあるいは炭素末端に配列番号25~配列番号28のいずれか一つのスペーサが結合した接着タンパク質である。
【0039】
他の実施態様において、前記イガイ接着タンパク質は、FP-5の両末端にFP-1が互いに融合した形態のFP-151(配列番号17~配列番号21)、FP-3の両末端にFP-1が互いに融合した形態のFP-131(配列番号22)、FP-5の両末端にFP-2およびFP-1が互いに融合した形態のFP-251(配列番号23)、およびFP-5の両末端にFP-3が互いに融合した形態のFP-353(配列番号17~配列番号24)であることができるが、これに限定されるものではない。
【0040】
本発明において、前記組換えポリペプチドを構成する生体適合ポリペプチド、例えば、イガイ接着タンパク質は、自然に存在するイガイ接着タンパク質あるいは遺伝子組換え的に考案されたイガイ接着タンパク質のC-末端あるいはN-末端に機能性ペプチドが付加された形態を有することが好ましい。
【0041】
一実施態様において、前記機能性ペプチドは、抗菌ペプチド、細胞外基質タンパク質、および成長因子からなる群から由来することができ、好ましくは、抗菌ペプチドから由来することができるが、これに限定されるものではない。
【0042】
一実施態様において、前記生体適合ポリペプチド、例えば、イガイ接着タンパク質と機能性ペプチドは、直接結合するか、リンカーを介して結合することができる。前記リンカーは、ペプチド性リンカーまたは非-ペプチド性リンカーであることができる。
【0043】
前記リンカーがペプチド性リンカーである時に、1個以上のアミノ酸を含むことができ、例えば、1個~10個、好ましくは2個~6個、例えば、2個のアミノ酸を含むことができるが、これに限定されるものではない。好ましい実施態様において、前記リンカーは、KLのジペプチドであることができる。
【0044】
前記リンカーが非-ペプチド性リンカーである時に、繰り返し単位が2個以上結合した生体適合性重合体が使用されることができる。前記繰り返し単位は、ペプチド結合ではなく任意の共有結合により互いに連結される。前記非-ペプチド性リンカーは、脂肪酸、多糖類、高分子重合体、低分子化合物、ヌクレオチドおよびこれらの組み合わせからなる群から選択されることができるが、これに限定されるものではない。
【0045】
本発明において、前記組換えポリペプチドを構成する生体適合ポリペプチドに付加される機能性ペプチドは、自然から由来するか人工的に合成される任意のペプチドを制限なく使用することができる。一実施態様において、前記機能性ペプチドは、抗菌ペプチド、細胞外基質タンパク質、および成長因子からなる群から由来することができ、好ましくは、抗菌ペプチドから由来することができるが、これに限定されるものではない。前記抗菌ペプチドは、微生物の細胞膜を破壊するか細胞膜を透過して代謝機能を阻害するメカニズムを介して抗菌効果を発揮することができ、微生物の細胞膜を破壊するメカニズムを介して抗菌効果を発揮する任意の抗菌ペプチドがいずれも本発明に使用されることができる。好ましくは、接着タンパク質に結合する抗菌ペプチドは、グラム陽性菌は言うまでもなく、グラム陰性菌に効果がある抗菌ペプチドから任意に選択されることができる。
【0046】
一実施態様において、前記抗菌ペプチドは、KLWKKWAKKWLKLWKA(配列番号29)、FALALKALKKL(配列番号30)、ILRWPWWPWRRK(配列番号31)、AKRHHGYKRKFH(配列番号32)、KWKLFKKIGAVLKVL(配列番号33)、LVKLVAGIKKFLKWK(配列番号34)、IWSILAPLGTTLVKLVAGIGQQKRK(配列番号35)、GIGAVLKVLTTGLPALISWI(配列番号36)、SWLSKTAKKGAVLKVL(配列番号37)、KKLFKKILKYL(配列番号38)、GLKKLISWIKRAAQQG(配列番号39)、GWLKKIGKKIERVGQHTRDATIQGLGIAQQAANVAATAR(配列番号40)、LKKLAKLALAF(配列番号41)、KLLLKLLKKLLKLLKKK(配列番号42)、THRPPMWSPVWP(配列番号43)、GWLKKIGKWKIFKK(配列番号44)、ILPWKWPWWPWRR(配列番号45)、RRWWCRC(配列番号46)、KLAKLAKKLAKLAK(配列番号47)、LKKLAKLALAFILRWPWWPWRRK(配列番号48)、RLLRRLLRRLLRRLLRRLLR(配列番号49)、FLKLLKKLAAKLF(配列番号50)、WLKKIGKKIERVGQHTRDATIQGLGIAQQAANVAATAR(配列番号51)、およびGTNNWWQSPSIQN(配列番号52)からなる群から選択されることができるが、これに限定されるものではない。他の実施態様において、前記抗菌ペプチドは、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)の皮膚から分離したα-螺旋状23個アミノ酸ペプチドであるマガイニン(Magainin)やデルマセプチン(Dermaseptin)、ヒトデフェンシン(human defensin)、カテリシジン(cathelicidin)LL-37、ヒスタチン(Histatin)などが使用されることができるが、これに限定されるものではない。
【0047】
他の実施態様において、前記細胞外基質タンパク質は、コラーゲン(Collagen)、フィブロネクチン(Fibronectin)、ラミニン(Laminin)、およびビトロネクチン(Vitronectin)からなる群から選択されることができ、前記成長因子は、上皮成長因子(Epidermal Growth Factor、EGF)、線維芽細胞増殖因子(Fibroblast Growth Factor、FGF)、および血管内皮細胞増殖因子(Vascular Endothelial Growth Factor、VEGF)からなる群から選択されることができるが、これに限定されるものではない。
【0048】
一実施態様において、前記機能性ペプチドは、前記生体適合ポリペプチド、例えば、イガイ接着タンパク質のC-末端、N-末端、または両末端の全てに融合することができる。
【0049】
本発明において、生体適合ポリペプチド、例えば、イガイ接着タンパク質に機能性ペプチドが結合した組換えポリペプチドを含む組成物を炎症治療剤として使用するために、前記組成物は、凍結乾燥した粉末状、凍結乾燥した粉末を用いた溶液状、ゲル状などで使用することができる。炎症治療剤として使用するための有効濃度は、経口、経皮および静脈など、各適用分野の毒性テストを経て本技術分野において通常の技術基が容易に定めることができる。
【0050】
本発明に開示されている組換えポリペプチドを構成するアミノ酸のうちチロシン残基は、化学修飾によりDOPA、そして、さらにDOPAキノンに変化することができる。一実施態様において、このような化学修飾を媒介することができる、例えば、キノコ由来のチロシナーゼ(tyrosinase)酵素を用いて、組換えポリペプチドの化学修飾を行うことができる。
【0051】
一実施態様において、本発明に開示されている生体適合ポリペプチド、例えば、イガイ接着タンパク質は、好ましくは、外部遺伝子を発現することができる用途に作製された通常のベクターに発現可能に挿入し、遺伝工学的な方法で大量生産することができるが、これに限定されるものではない。前記ベクターは、タンパク質を生産するための宿主細胞の種類および特性によって適切に選択するか、新規で作製することができる。前記ベクターを宿主細胞に形質転換する方法および形質転換体から組換えタンパク質を生産する方法は、通常の方法で容易に実施することができる。上記のベクターの選択、作製、形質転換および組換えタンパク質の発現などの方法は、本願発明が属する技術分野における通常の技術者であれば容易に実施することができ、通常の方法において一部の変形も本発明に含まれる。
【0052】
一実施態様において、前記宿主細胞は、原核生物細胞または真核生物細胞であることができ、好ましくは、大腸菌細胞であることができるが、これに限定されるものではない。
【0053】
本発明において、用語「遺伝子」は、ポリペプチド、前駆体、またはRNA(例えば、rRNA、tRNA)を生産するために必要なコーディング配列を含む核酸(例えば、DNA)配列を制限なく含む意味で使用される。本発明において、用語「遺伝子」は、遺伝子のcDNAとゲノム形態の両方を含む。ゲノム形態または遺伝子のクローンは「イントロン」または「挿入領域」または「挿入配列」と称する非-コーディング配列によって妨げられるコーディング領域を含む。ポリペプチドは、完全な長さのコーディング配列によってコーディングされるか、完全な長さまたは断片の目的とする活性または機能的特性(例えば、酵素的活性、リガンド結合、シグナル導入、免疫原性など)が維持される限り、コーディング配列の一部分によってコーディングされることができる。また、前記用語は、構造遺伝子のコーディング領域および前記遺伝子が完全な長さのmRNAの長さに相当するように、末端から約1kb以上の距離で5’および3’末端のコーディング領域に隣接して位置した配列を含む。
【0054】
本発明において、前記ベクターは、本発明の組換えポリペプチドをコーディングする遺伝子の効率的な発現のために発現ベクターを使用することが好ましい。本発明において、「発現ベクター」とは、適当な宿主細胞において目的ペプチドを発現することができる組換えベクターを示し、遺伝子挿入物が発現されるように作動可能に連結された必須の調節要素を含む遺伝子作製物を意味する。本発明の発現ベクターは、好適な発現ベクターが一般的に有している要素として、プロモータ、オペレータ、開始コドンのような発現調節要素を含むことができる。開始コドンおよび終止コドンは、一般的にポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の一部として見なされ、遺伝子作製物が投与された時に個体で必ず作用を示す必要があり、コーディング配列とインフレーム(in frame)に存在しなければならない。ベクターのプロモータは、構成的または誘導性であることができる。
【0055】
また、前記ベクターは、細胞培養液から本発明の組換えポリペプチドの分離を促進するために、融合ポリペプチドの排出のためのシグナル配列を含むことができる。特異的な開始シグナルは、また挿入された核酸配列の効率的な翻訳に必要であり得る。これらのシグナルは、ATG開始コドンおよび隣接した配列を含む。ある場合には、ATG開始コドンを含むことができる外因性翻訳調節シグナルが提供されなければならない。これらの外因性翻訳調節シグナルおよび開始コドンは、様々な天然および合成供給源であることができる。発現効率は、適当な転写または翻訳強化因子の導入によって増加することができる。
【0056】
一実施態様において、前記ベクターは、通常のすべての発現ベクターを制限なく使用することができる。例えば、プラスミドDNA、ファージDNAなどが使用されることができる。プラスミドDNAの具体的な例としては、pUC18、pIDTSAMRT-AMPのような商業的なプラスミドを含む。本発明で使用可能なプラスミドの他の例としては、大腸菌由来のプラスミド(pET-22b(+)、pYG601BR322、pBR325、pUC118およびpUC119)、枯草菌(Bacillus subtilis)-由来のプラスミド(pUB110およびpTP5)および酵母-由来のプラスミド(YEp13、YEp24およびYCp50)がある。ファージDNAの具体的な例としては、λ-ファージ(Charon4A、Charon21A、EMBL3、EMBL4、λgt10、λgt11およびλZAP)がある。また、レトロウイルス(retrovirus)、アデノウイルス(adenovirus)またはワクシニアウイルス(vaccinia virus)のような動物ウイルス、バキュロウイルス(baculovirus)のような昆虫ウイルスが使用されることができる。このような発現ベクターは、宿主細胞に応じて、タンパク質の発現量と修飾などが異なり、目的に最も適する宿主細胞を選択して使用すればよい。
【0057】
好ましい実施態様において、前記ベクターとしては、pET22b(+)ベクターが使用されることができる。前記pET22b(+)ベクターは、タンパク質発現用ベクターであり、pET22b(+)ベクターのNde I/Hind III制限酵素サイトに組換えMGFP-2突然変異体が挿入されており、pET22b(+)ベクターのHind III/Xho I制限酵素サイトに抗菌ペプチドが挿入されている。前記pET22b(+)ベクターは、T7プロモータを含んでおり、IPTG(Isopropylthio-β-D-galactoside)を用いて発現を誘導することができ、親和性クロマトグラフィーを用いたタンパク質分離精製のための親和性リガンド(例えば、hexahisitidine)遺伝子配列がXho I制限酵素サイトの後ろに存在する。
【0058】
本発明において、形質転換体は、前記ベクターを好適な宿主細胞内に導入することで得ることができる。宿主の種類としては、エスケリキア(Esherichia)属(Genus)、シュードモナス(Pseudomonas)属、ラルストニア(Ralstonia)属、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、コマモナス(Comamonas)属、バークホルデリア(Burkholderia)属、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属、フラボバクテリウム(Flabobacterium)属、ビブリオ(Vibrio)属、エンテロバクター(Enterobacter)属、リゾビウム(Rhizobium)属、グルコノバクター(Gluconobacter)属、アシネトバクター(Acinetobacter)属、モラクセラ(Moraxella)属、ニトロソモナス(Nitrosomonas)属、アエロモナス(Aeromonas)属、パラコッカス(Paracoccus)属、バチルス(Bacillus)属、クロストリジウム(Clostridium)属、ラックトバチルス(Lactobacillus)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、アルスロバクター(Arthrobacter)属、アクロモバクター(Achromobacter)属、ミクロコッカス(Micrococcus)属、マイコバクテリウム(Mycobacterium)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ストレプトミセス(Streptomyces)属、アクチノミセス(Actinomyces)属、ノカルジア(Nocardia)属、メチロバクテリウム(Methylobacterium)属などの各種細菌が挙げられる。また、前記細菌以外に、サッカロミセス(Saccharomyces)属、カンジダ(Candida)属などの酵母、また各種のカビなどが宿主として挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0059】
例えば、大腸菌などの細菌を宿主として使用する場合、前記組換えベクターは、自分が宿主の中で自律複製可能であるとともに、プロモータ、組換えポリペプチドをコーディングする遺伝子を含むDNAおよび転写終結配列などの発現に必要な構成を有することが好ましい。細菌への組換えDNAの導入方法としては、塩化カルシウム法やエレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、酢酸リチウム法などが利用可能であるが、これに限定されるものではない。
【0060】
一実施態様において、本発明の組成物に含まれる組換えポリペプチドは、(a)本発明の組換えポリペプチドをコードする遺伝子を含むベクターを製造するステップと、(b)前記ベクターを宿主細胞に形質転換した形質転換体を製造するステップと、(c)前記形質転換体を培養するステップとを含む製造方法により製造されることができる。他の実施態様において、前記製造方法は、(d)前記組換えポリペプチドを分離および精製するステップをさらに含むことができる。
【0061】
前記形質転換体を培養する方法は、宿主の培養に使用される通常の方法を使用すれば良い。また培養方法は、バッチ(batch)式、流動バッチ式、連続培養、リアクター形式など、通常の微生物の培養に使用する任意の方法を使用することができる。大腸菌などの細菌を宿主として得られた形質転換体の培地としては、完全培地または合成培地、例えば、LB培地、M9培地などが挙げられる。また、培養温度は、上述の適温の範囲で培養することで、本発明の組換えポリペプチドを菌体内に蓄積させ、回収することができる。
【0062】
炭素源は、微生物の増殖に必要であり、例えば、グルコース、フルクトース、スクロース、マルトース、ガラクトース、デンプンなどの糖類;エタノール、プロパノール、ブタノールなどの低級アルコール類;グリセロールなどの多価アルコール類;酢酸、クエン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、グルコン酸などの有機酸;プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸などの脂肪酸などを用いることができる。
【0063】
窒素源としては、例えば、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウムなどのアムモニウム塩の他に、ペプトン、肉汁、酵母抽出物、麦芽抽出物、カゼイン分解物、トウモロコシ浸漬液などの天生成物由来のものが挙げられる。また、無機物としては、例えば、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。培養液にカナマイシン、アンピシリン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ストレプトマイシンなどの抗生物質を添加しても良い。
【0064】
また、プロモータが誘導性の発現ベクターを使用して形質転換した微生物を培養する場合には、プロモータの種類に適する誘導物質を培地に添加すれば良い。例えば、イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)、テトラサイクリン、インドールアクリル酸(IAA)などが誘導物質として挙げられる。本発明の組換えポリペプチドの取得および精製は、得られる培養物の中から菌体または上澄み液を遠心回収し、菌体破砕、抽出、親和性クロマトグラフィー、カチオンまたはアニオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過などを単独でまたは適当に組み合わせることで行うことができるが、これに限定されるものではない。
【0065】
一実施態様において、前記形質転換体は、通常のLB培地で培養することができ、組換えポリペプチドの発現を誘導するために、IPTGを添加することができる。好ましい組換えポリペプチドの発現方法は、前記形質転換体をLB(5g/リットル酵母抽出物、10g/リットルトリプトン、10g/リットルNaCl)培地に培養し、培養液の吸光度が600nmで0.6~0.8である時にIPTGを0.5mM~4mM添加して3時間培養することができるが、これに限定されるものではない。前記の方法で発現させた組換えポリペプチドは、封入体(Inclusion Body)の形態に生産され、前記封入体を可溶化して組換えポリペプチドを分離および精製することができる。
【0066】
好ましい実施態様において、本発明の組成物は、薬学的組成物の形態であることができ、前記薬学的組成物は、生体適合ポリペプチドに機能性ペプチドが結合した組換えポリペプチドを薬学的組成物の全重量に対して、0.001~10重量%、または0.01~5重量%、または0.01~3重量%、または0.1~2重量%、または0.5~1.5重量%含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0067】
本発明の薬学的組成物は、前記組換えポリペプチドの他に、本発明が目的とする効果を損傷しない範囲内で、好ましくは、前記組換えポリペプチドの効果に相昇効果を与えることができる他の成分などをさらに含むことができる。例えば、抗酸化剤、安定化剤、溶解化剤、ビタミン、顔料および香料のような通常の補助剤、または担体を含むことができる。
【0068】
前記薬学的組成物の投与経路は、口腔、静脈内、筋肉内、動脈内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸管、局所、舌下または直腸が含まれ、例えば、塗布による局所投与(topical application)方式で適用されることができる。前記非経口は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、病巣内注射または注入技術を含む。
【0069】
本発明の薬学的組成物は薬学的に有効な量で投与することができる。本発明において、「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的な利益/危険の比率で疾患を治療するに十分な量を意味し、有効容量の水準は、個体種類および重症度、年齢、性別、疾病の種類、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路および排出の比率、治療期間、同時使用される薬物を含む要素およびその他の医学分野において周知の要素に応じて決定されることができる。本発明の組成物は、個別治療剤として投与するか他の治療剤と併用して投与されることができ、従来の治療剤とは順にまたは同時に投与されることができる。また、単一または多重投与されることができる。前記要素を全て考慮して、副作用なしに最小限の量で最大の効果を得ることができる量を投与することが重要であり、本技術分野において通常の技術者によって容易に決定されることができる。
【0070】
本発明の薬学的組成物は、抗炎作用を目的とする組織、器官、または個体に制限なく適用されることができ、いかなるものでも適用可能である。例えば、本発明の薬学的組成物は、ヒトだけでなく、サル、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ラット、マウス、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギなどのヒトではない動物、鳥類および魚類など、いずれにおいても使用可能である。
【0071】
本発明の薬学的組成物は、前記組換えポリペプチドにさらに同一または類似の機能を示す有効成分を1種以上含有することができる。前記薬学的組成物は、それぞれ通常の方法によって、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップなどの経口型剤形、外用剤、坐剤および滅菌注射溶液の形態に剤形化して使用されることができる。
【0072】
非経口投与のための製剤としては、それぞれ通常の方法によって、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、滅菌された水溶液、液剤、非水性溶剤、懸濁剤、エマルジョン、シロップ、坐剤、エアロゾルなどの外用剤および滅菌注射製剤の形態に剤形化して使用されることができ、好ましくは、クリーム、ゲル、パッチ、噴霧剤、軟膏剤、硬膏剤、ローション剤、リニメント剤、パスタ剤またはカタプラスマ剤の皮膚外用薬学的組成物を製造して使用することができるが、これに限定されるものではない。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、エチルオレートのような注射可能なエステルなどが使用されることができる。坐剤の基剤としては、ウィテップゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイン(Tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが使用されることができる。
【0073】
本発明の薬学的組成物は、防腐剤、安定化剤、水和剤または乳化促進剤、浸透圧調節のための塩および/または緩衝剤などの補助剤、およびその他の治療的に有用な物質をさらに含有することができ、通常の方法である混合、顆粒化またはコーティング方法によって剤形化することができる。
【0074】
本発明の薬学的組成物の投与量は、個体の年齢、体重、一般的な健康、性別、投与時間、投与経路、排出率、薬物配合および特定の疾患の重症度を含む様々な要因によって様々に変化することができる。
【0075】
また、本発明の薬学的組成物は、単独で、または手術、放射線治療、ホルモン治療、化学治療および生物学的反応調節剤を使用する方法と併用して使用することができる。また前記薬学的組成物は、成人基準に、1~20,000mg/kg、例えば、1~10,000mg/kg、1~1,000mg/kg、または1~200mg/kgの範囲内の投与量で投与されることができ、前記薬学的組成物が外用剤である場合には、成人基準に、(1.0~3.0ml)の量で1日1回~5回塗布し、1ヶ月以上継続することが好ましいが、前記投与量は、本発明の範囲を限定するものではない。前記薬学的組成物は、単独で、または手術、放射線治療、ホルモン治療、化学治療および生物学的反応調節剤を使用する方法と併用して使用することができる。
【0076】
他の好ましい実施態様において、本発明の組成物は、化粧料組成物の形態であることができる。
【0077】
本発明の化粧料組成物は、化粧品分野において通常使用される基剤、補助剤および添加剤を使用して液体または固体状に製造されることができる。液体または固体状の化粧品としては、例えば、これに限定されないが、化粧水、クリーム剤、ローション剤などの形態を含むことができる。
【0078】
本発明の化粧料組成物は、通常用いられる成分を含むことができ、例えば、抗酸化剤、防腐剤、安定化剤、溶解化剤、ビタミン、顔料および香料のような通常の補助剤、そして担体を含むことができる。
【0079】
また、本発明の化粧料組成物は、機能性を追加または増進するために、しわ改善化粧料、美白用化粧料、紫外線遮断剤、光散乱剤などをさらに含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0080】
本発明の化粧料組成物は、本技術分野において通常製造されるいかなる剤形でも製造されることができ、例えば、溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、クリーム、ローション、パウダー、せっけん、界面活性剤-含有クレンジング、オイル、パウダーファンデーション、エマルジョンファンデーション、ワックスファンデーションおよびスプレーなどに剤形化することができるが、これに限定されるものではない。より詳細には、柔軟化粧水、栄養化粧水、栄養クリーム、マッサージクリーム、エッセンス、アイクリーム、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パック、スプレーまたはパウダーの剤形に製造されることができる。
【0081】
本発明の剤形がペースト、クリームまたはゲルである場合には、担体成分として、動物性油、植物性油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト、シリカ、タルクまたは酸化亜鉛などが用いられることができる。
【0082】
本発明の剤形がパウダーまたはスプレーである場合には、担体成分として、ラクトース、タルク、シリカ、アルミニウムヒドロキシド、カルシウムシリケートまたはポリアミドパウダーが用いられることができ、特に、スプレーである場合には、さらに、クロロフルオロヒドロカーボン、プロパン/ブタンまたはジメチルエーテルのような推進薬を含むことができる。
【0083】
本発明の剤形が溶液または乳濁液である場合には、担体成分として、溶媒、溶解化剤または乳濁化剤が用いられ、例えば、水、エタノール、イソプロパノール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールオイル、グリセロール脂肪族エステル、ポリエチレングリコールまたはソルビタンの脂肪酸エステルがある。
【0084】
本発明の剤形が懸濁液である場合には、担体成分として、水、エタノールまたはプロピレングリコールのような液状の希釈剤、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステルおよびポリオキシエチレンソルビタンエステルのような懸濁剤、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天またはトラガントなどが用いられることができる。
【0085】
本発明の剤形が界面-活性剤含有クレンジングである場合には、担体成分として、脂肪族アルコールサルフェート、脂肪族アルコールエーテルサルフェート、スルホコハク酸モノエステル、イミダゾリニウム誘導体、メチルタウレート、サルコシネート、脂肪酸アミドエーテルサルフェート、アルキルアミドベタイン、脂肪族アルコール、脂肪酸グリセリド、脂肪酸ジエタノールアミド、植物性油、ラノリン誘導体またはエトキシル化グリセロール脂肪酸エステルなどが用いられることができる。
【0086】
本発明の化粧料組成物は、単独または重複塗布して使用するか、本発明以外の他の化粧料組成物と重複塗布して使用することができる。また、本発明による細胞の再生または抗炎用化粧料組成物は、通常の使用方法によって使用されることができ、ユーザの皮膚状態または好みに応じてその使用回数を異ならせることができる。
【0087】
他の好ましい実施態様において、本発明は、前記開示されている生体適合ポリペプチドに機能性ペプチドが結合した組換えポリペプチドまたは前記組換えポリペプチドを含む組成物、例えば、薬学的組成物または化粧料組成物を個体に投与するステップを含む炎症抑制方法を提供する。
【0088】
本発明の一実施態様において、本発明者らは、炎症関連疾患を引き起こす炎症性サイトカインを前記機能性タンパク質組成物が効果的に阻害することを確認した。好ましい実施態様において、本発明の組成物は、皮膚炎症を引き起こす12-O-テトラデカノイルホルボール-13-アセテート(TPA)によって発現する炎症性サイトカインであるIL-6(Interleukin-6)および腫瘍壊死因子であるTNF-αを著しく阻害し、TPA処理マウスで耳の厚さを正常対照群と同様に減少させて、優れた抗炎活性を有していることを確認した(図2図4参照)。IL-6は先天免疫と適応免疫の両方において機能するサイトカインとして、B細胞、T細胞、線維芽細胞、血管内皮細胞、皮膚角質細胞などから生成され、様々な免疫および炎症反応に関与することから、炎症モデルにおいてIL-6発現量の減少は非常に重要な意味を有する。他の実施態様において、本発明者らは、前記機能性タンパク質組成物を炎症性疾患がある子犬に適用し、炎症が著しく減少することを確認した(図5参照)。
【0089】
TNF-αおよびIL-6と様々な炎症疾患との連関性が本技術分野に知られている。TNF-αは、炎症反応に関与し、急性期反応の構成員であるサイトカインの一種として、免疫細胞を調節する役割をする。TNF-αは、アポトーシス誘導、IL-1とIL-6の生産による敗血症を引き起こし、非正常な調節によって様々なヒト炎症疾患を引き起こす。また、IL-6は、炎症反応の初期ステップで生成されるサイトカインの一種であり、細胞が異なる細胞にシグナルを与えるために放出する生理活性タンパク質である。IL-6の作用は、主に、免疫反応と関連しているが、感染、外傷、やけどや炎症につながる組織損傷による様々な炎症反応も促進する。
【0090】
アトピー皮膚炎がある患者においてTNF-αの増加が発見され、皮膚炎の重症度と相関関係がある。また、TNF-αとかゆみを引き起こすヒスタミン濃度との間に有意な相関関係が発見され、TNF-αの過剰分泌がアトピー皮膚炎の病態生理学的メカニズムに影響を及ぼし得ることが確認された(Sumimoto、S.,Kawai,M.,Kasajima,Y.,& Hamamoto,T.(1992)Archives of Disease in Childhood,67(3),277-279.doi:10.1136/adc.67.3.277)。なお、アトピー皮膚炎患者の80%以上において血清IgEが増加しており、この数値は、アトピー皮膚炎の臨床的重症度と比例するが、IL-6がIgEの生成を増幅させることが知られている。
【0091】
また、IL-6は、長い間乾癬の病因と関連があると研究されており、TNF-αとIL-6の数値増加は、乾癬の特徴であると知られている(A.Castells-Rodellas,J.V.et al.,Acta Dermato-Venereologica,vol.72,no.3、pp.165-168,1992;P.Neuner,et al.,Journal of Investigative Dermatology,vol.97,no.1,pp.27-33,1991;R.M.Grossman,et al,Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,vol.86,no.16,pp.6367-6371,1989)。乾癬において、IL-6は、STAT3経路を活性化して、角質細胞の生存および増殖を制御する遺伝子発現に影響を及ぼすことが知られている。乾癬の治療のために、TNF-αの濃度を減少させるインフリキシマブ(infliximab)が開発され、IL-6抑制剤は、乾癬患者のうち、特に、膿疱性乾癬患者において成功的な治療効果があった(Andrea Saggini,et al.,Journal of Immunology Research,vol.2014,Article ID 964069,10 pages,2014.https://doi.org/10.1155/2014/964069)。
【0092】
また、慢性蕁麻疹患者において、IL-6の濃度が有意に増加したことが知られている(Kasperska-Zajac,et al.,Clinical & Experimental Allergy,41(10),1386-1391,2011,111/j.1365-2222.2011.03789.x)
【0093】
また、自己炎症性疾患である化膿性汗腺炎患者の皮膚においてIL-6水準が増加したことが知られており(Haoxiang Xu et al,Postepy Dermatol Alergol.2017 Feb;34(1):82-84.)、特に、重症化膿性汗腺炎患者においてTNF-αの濃度を減少させるインフリキシマブ(infliximab)を投与した時に、効果的な治療代案になり得ることが分かった(J.M.Fernandez-Vozmediano et al.,Dermatology,215(1),41-44,2007,doi:10.1159/000102032)。
【0094】
なお、ざ瘡は、TNF、IL-1βのような特定のサイトカインの上昇によって引き起こされる炎症状態であり、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acne)は、角質細胞からTNF生成を刺激して炎症を引き起こすことが知られている。したがって、TNF抑制剤の使用が治療の役割を果たすことができると考えられている(Freja Laerke Sand et al,JAMA Dermatol.2013;149(11):1306-1307.doi:10.1001/jamadermatol.2013.6678)。
【実施例
【0095】
以下、本発明を実施例によってより詳細に説明する。
【0096】
ただし、下記の実施例は、本発明の好ましい実施態様を説明するために提供され、本発明は、例示の目的にのみ提供される下記の特定の実施態様によってその範囲が制限されるものではない。本発明に開示されているように、機能的に同一の製品、組成物および方法は、本発明の範囲に含まれることが自明である。
【0097】
実施例1.組換えポリペプチドをコードする遺伝子のクローニング
本発明の組換えポリペプチドを含む組成物を製造するために、イガイ接着タンパク質のC-末端またはN-末端部位に機能性ペプチド配列が付加された3種の遺伝子配列を設計して鋳型DNAを合成した後、PCRを行い、これを最終pET22b(+)ベクターに挿入した。前記3種の組換えポリペプチドは、それぞれ、配列番号20のイガイ接着タンパク質、配列番号25のスペーサ、および配列番号29、31、および41のいずれか一つのポリペプチドが融合した構造を有する。ベクターの具体的な形態は、pET22b(+)ベクターにイガイ接着タンパク質/機能性ペプチドが挿入された融合ポリペプチドの形態である。前記pET22b(+)ベクターは、T7プロモータを含んでおり、IPTG(isopropylthio-β-D-galactoside)を用いて発現を誘導することができる。前記3種の組換えポリペプチドをそれぞれBVI181、BVI182およびBVI183と称した。
【0098】
実施例2.組換えポリペプチドを生産する形質転換体の製造および培養
実施例1で製造されたpET22b(+)イガイ接着タンパク質/機能性ペプチドベクターは、クローニング用大腸菌DH5α細胞およびタンパク質発現用に使用された大腸菌BL21(DE3)細胞にそれぞれCaCl2バッファーを使用してコンピテント(Competent)セルを製造した後、熱衝撃(42℃で1分間放置)方法によって形質転換した。形質転換されたコロニーの選別は、アンピシリン(ampcillin、Gold bio)を使用して行い、これにより、大腸菌Dh5α pET22b(+)イガイ接着タンパク質/機能性ペプチドおよび大腸菌BL21(DE3)イガイ接着タンパク質/機能性ペプチドを生産する形質転換体を取得した。
【0099】
実施例3:組換えポリペプチドの生産および取得
BVI181、BVI182およびBVI183組換えポリペプチドを生産するために、大腸菌BL21/pET22b(+)形質転換体をLB培地(5g/リットル酵母抽出物、10g/リットルトリプトン、10g/リットルNaCl)で培養し、適正O.D値に逹した時に、IPTGを添加して、前記組換えポリペプチドの発現を誘導した。それぞれのBVI181、BVI182およびBVI183組換えポリペプチドを発現した後、分離および精製して最終高純度のタンパク質を確保した。
【0100】
BVI181、BVI182およびBVI183組換えポリペプチドのアミノ酸配列をアミノ酸分析装置(Hewlette Packard、米国)で分析して同じタンパク質であることを確認し、前記3種の組換えポリペプチドのうちPDB(Peptide data bank)を介してBVI183ポリペプチドの構造を予想した(図1)。
【0101】
実施例4:本発明の組成物のIL-6およびTNF-α分泌阻害効果
IL-6は、免疫および炎症反応に関与するサイトカインであり、本発明のBVI181、BVI182およびBVI183組換えポリペプチドがIL-6およびTNF-αを阻害できるか否かを確認した。このために、組織培養用ディッシュ(Costar、Cambridge、MA、USA)にマウスIL-6、TNF-αに対する捕獲抗体をコーティングバッファーで希釈した溶液100μlを分注し、4℃で約12~20時間放置した後、洗浄用緩衝液で洗浄した。前記準備したサンプルに分析希釈液(PBS-T;0.01M-PBA、Sigma-aldrich+0.05% Tween 20、Sigma-aldrich)250μlを分注し、洗浄して準備した。準備した組織培養用ディッシュに検出抗体100μlを分注した後、洗浄し、次に、アビジン(avidin)-西洋ワサビペルオキシダーゼ(horseradish peroxidase)溶液100μlを分注した後、テトラメチルベンジジン(tetramethylbenzidine)が含まれた基質液を入れて反応させた。次に、停止溶液(2%Sulfuric acid、Sigma-aldrich)50μlずつを加えて反応を停止させた。光学密度は、マイクロプレートリーダー(Model Multiskan Sky Microplate Spectrophotometer、ThermoFisher)を用いて、450nmで測定した。
【0102】
本発明のBVI181、BVI182およびBVI183組換えポリペプチドを含む組成物を1μM、10μM、および100μMの濃度でそれぞれ適用した結果、IL-6が、炎症モデル(100pg/ml)に比べて本発明の組成物を適用したサンプルでは低濃度の1μMから全て阻害されることを確認し、特に、100μMである時に、各BVI181、BVI182およびBVI183組換えポリペプチドの阻害結果は、25±2,25±1,32±8pg/mlと著しく減少することを確認した(図2)。
【0103】
また、本発明のBVI181、BVI182およびBVI183組換えポリペプチドを含む組成物を1μM、10μM、および100μMの濃度で適用した結果、TNF-αが炎症モデル(30pg/ml)に比べて、本発明の組成物を適用したサンプルでは、低濃度の1μMから全て阻害されることを確認し、特に、100μMである時に、各BVI181、BVI182およびBVI183組換えポリペプチドの阻害結果は、15±2、15±1,13±3pg/mlと著しく減少することを確認した(図3)。
【0104】
実施例5:本発明の組成物のTPA誘導耳浮腫マウスの炎症緩和効果
TPA誘導耳浮腫マウスモデルは、急性炎症による紅斑と浮腫が観察されるモデルであり、本モデルにそれぞれのBVI181、BVI182およびBVI183組換えポリペプチドを含む組成物を処理して、炎症緩和効果を観察した。このために、まず、BALB/cマウスの耳にTPAを処理した後、10μM濃度の各BVI181、BVI182およびBVI183組換えポリペプチドを含む組成物を3日間一日に1時間接触させて炎症緩和効果を観察した。
【0105】
結果、それぞれのBVI181、BVI182およびBVI183組成物を処理した後、すべて1日目から正常マウスの耳の厚さと同様になり、これにより、本発明の組成物の炎症緩和効果を確認した。具体的には、各BVI181、BVI182およびBVI183組成物を処理した後、3日目の耳の厚さは、組成物を処理していない群の0.53±0.02mmでそれぞれ0.37±0.04、0.34±0.01、および0.34±0.01mmに緩和し、正常マウスの耳の厚さである0.28±0.02mmと同様になることを確認した(図4)。
【0106】
実施例6:BVI183組換えポリペプチドを含む組成物の子犬の皮膚炎緩和効果
BVI183組換えポリペプチドを含む組成物をそれぞれ細菌性皮膚炎およびアレルギー性皮膚炎がある子犬に処理して、抗炎効能があるか否かを観察した。実験に使用された子犬のうち、ビション・フリーゼは、アレルギー性皮膚炎を患っており、代表的な症状としてはかゆみがあり、主に、タンパク質の摂取やホコリダニの分泌物によって発生することが知られている。また、プードルは、細菌性皮膚炎で膿皮症または皮膚細菌感染を患っており、皮膚に細菌が過増殖して掻痒症、皮膚角質などの症状を発生することが知られている。
【0107】
図5は、皮膚炎がある子犬(犬種:ビション・フリーゼ、プードル)の皮膚にそれぞれBVI183組換えポリペプチドを含む組成物をスプレー形態で1日1回塗布した後、4日が経過してから観察した様子を示す。BVI183組成物を塗布した後、皮膚炎が急激に減少することが分かり、特に、ビション・フリーゼは、アレルギー性皮膚炎が緩和し、毛が再び伸びることも観察された。
【0108】
本研究は、韓国中小ベンチャー企業部の革新分野創業パッケージ[B0080827000433]の支援を受けて行っている。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
2023552750000001.app
【国際調査報告】