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特表2023-552761インク系およびインクジェット印刷のための方法
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  • 特表-インク系およびインクジェット印刷のための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-19
(54)【発明の名称】インク系およびインクジェット印刷のための方法
(51)【国際特許分類】
   H10K 71/15 20230101AFI20231212BHJP
   H10K 71/40 20230101ALI20231212BHJP
   H10K 71/13 20230101ALI20231212BHJP
   H10K 50/11 20230101ALI20231212BHJP
   H10K 50/14 20230101ALI20231212BHJP
【FI】
H10K71/15
H10K71/40
H10K71/13
H10K50/11
H10K50/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533715
(86)(22)【出願日】2021-12-06
(85)【翻訳文提出日】2023-06-01
(86)【国際出願番号】 EP2021084307
(87)【国際公開番号】W WO2022122607
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】20212464.0
(32)【優先日】2020-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597035528
【氏名又は名称】メルク パテント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ツェン、シン-ロン
(72)【発明者】
【氏名】クニッペル、サビーネ
(72)【発明者】
【氏名】ハンブルガー、マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】ベアル、ゲーレ
(72)【発明者】
【氏名】ブーヘラー-プリートカー、マルガリータ
【テーマコード(参考)】
3K107
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC21
3K107CC45
3K107FF00
3K107FF03
3K107FF05
3K107FF09
3K107FF14
3K107FF18
3K107GG08
3K107GG26
(57)【要約】
本願は、次の成分:a)少なくとも1種の第1の成膜性有機機能材料と、少なくとも1種の第1の有機溶媒とを含む、第1の調合物、b)少なくとも1種の第2の成膜性有機機能材料と、少なくとも1種の第2の有機溶媒とを含む、第2の調合物を含むインク系であって、(i)第1および第2の有機溶媒が互いに異なり;(ii)第1の成膜性有機機能材料が第2の有機溶媒中で、15分超、好ましくは30分超、より好ましくは60分超の溶解時間を有し、溶解時間が、室温で、7g/Lの第2の有機溶媒中の第1の成膜性有機機能材料の濃度において決定されることを特徴とする、インク系を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分:
a)少なくとも1種の第1の成膜性有機機能材料と、少なくとも1種の第1の有機溶媒とを含む、第1の調合物、
b)少なくとも1種の第2の成膜性有機機能材料と、少なくとも1種の第2の有機溶媒とを含む、第2の調合物
を含むインク系であって、
(i)前記第1および第2の有機溶媒が互いに異なり;
(ii)前記第1の成膜性有機機能材料が前記第2の有機溶媒中で、15分超、好ましくは30分超、より好ましくは60分超の溶解時間を有し、前記溶解時間が、室温で、7g/Lの前記第2の有機溶媒中の前記第1の成膜性有機機能材料の濃度において決定される
ことを特徴とする、インク系。
【請求項2】
少なくとも1種の第3の成膜性材料と、少なくとも1種の第3の有機溶媒とを含む、第3の調合物をさらに含み、前記第3の有機溶媒が、前記第1および第2の有機溶媒とは異なることを特徴とする、請求項1に記載のインク系。
【請求項3】
前記第1、第2および任意の第3の成膜性有機機能材料が、互いに異なることを特徴とする、請求項1または2に記載のインク系。
【請求項4】
前記第1、第2および任意の第3の成膜性有機機能材料が、低分子量化合物、ポリマー、オリゴマーもしくはデンドリマー、またはこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1~3の何れか1項に記載のインク系。
【請求項5】
前記低分子量化合物が、3,000g/mol以下、好ましくは2,000g/mol以下、より好ましくは1,000g/mol以下の分子量を有することを特徴とする、請求項4に記載のインク系。
【請求項6】
前記ポリマーが、10,000g/mol以上、好ましくは25,000g/mol以上、より好ましくは50,000g/mol以上の分子量Mを有することを特徴とする、請求項4に記載のインク系。
【請求項7】
対応する前記調合物における、前記少なくとも1種の第1、第2および任意の第3の成膜性有機機能材料の含有量が、それぞれ、前記調合物の総重量を基準として、0.001~20重量%の範囲、好ましくは0.01~10重量%の範囲、より好ましくは0.1~5重量%の範囲、最も好ましくは0.3~5重量%の範囲であることを特徴とする、請求項1~6の何れか1項に記載のインク系。
【請求項8】
前記第1、第2および任意に第3の有機溶媒が、100~400℃の範囲、好ましくは200~350℃の範囲、より好ましくは225~325℃の範囲、最も好ましくは250~300℃の範囲の沸点を有することを特徴とする、請求項1~7の何れか1項に記載のインク系。
【請求項9】
前記第1、第2および任意の第3の成膜性有機機能材料が、それぞれ、対応する前記有機溶媒において、5g/l以上、好ましくは10g/l以上の溶解度を有することを特徴とする、請求項1~8の何れか1項に記載のインク系。
【請求項10】
前記第1、第2および任意の第3の調合物が、それぞれ、0.8~50mPa・sの範囲、好ましくは1~40mPa・sの範囲、より好ましくは2~15mPa・sの範囲の粘度を有することを特徴とする、請求項1~9の何れか1項に記載のインク系。
【請求項11】
前記第1、第2および任意の第3の調合物が、それぞれ、10~70mN/mの範囲、好ましくは15~50mN/mの範囲、より好ましくは20~40mN/mの範囲の表面張力を有することを特徴とする、請求項1~10の何れか1項に記載のインク系。
【請求項12】
前記第1、第2および第3の有機溶媒が、共溶媒をさらに含むことを特徴とする、請求項1~11の何れか1項に記載のインク系。
【請求項13】
インクジェット印刷のための方法であって、
a)基板を準備する工程、
b)請求項1に記載のインク系の第1の調合物を、第1のタイプのピクセルに印刷する工程、
c)前記第1のタイプのピクセルにおける前記第1の調合物を乾燥させる工程、
d)請求項1に記載のインク系の第2の調合物を、第2のタイプのピクセルに印刷する工程、および
e)前記第2のタイプのピクセルにおける前記第2の調合物を乾燥させる工程
を含む、方法。
【請求項14】
a)一対の電極を準備する工程、
b)前記電極の間に機能層を提供する工程
を含む、OLEDを製造するための方法であって、
少なくとも1つの機能層が、請求項13の方法によって製造されることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷の分野にあり、インク系に関する。本発明はまた、言及したインク系の適用による、インクジェット印刷方法に関する。本発明はさらに、言及したインクジェット印刷方法を実施することによる、有機発光ダイオード(OLED)の機能層を製造するための方法、およびOLED、特にフルカラーOLEDディスプレイを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
OLED(有機発光ダイオード)ディスプレイは、極めて薄く、軽量であり、エネルギー効率が高い。これらのディスプレイは、並外れた色の鮮やかさおよび非常に高いコントラストで、どの視野角から見ても完璧な画像を配信する。低エネルギー消費であるため、小型OLEDディスプレイは、ポータブルデバイス、たとえば、スマートフォン、デジタルフレームおよびデジタルカメラにおける使用に申し分なく適する。OLEDディスプレイは、テレビジョン、モニタ、大面積ビデオウォールおよび自動車用途に好適である。万人向けの可撓性または巻き取り式ディスプレイは、未来の夢ではなく、既に開発中である。
【0003】
OLEDディスプレイは、個々に制御される発光素子またはピクセルの配列からなる。フルカラーディスプレイの場合、各ピクセルは、集合的に所望の画像を生成するように個々に制御することができる、赤色、緑色および青色(RGB)のサブピクセルからなる。この点について、OLEDディスプレイにおけるRGB色パターニングには、2つの主なアプローチがあり、即ち、(a)サイドバイサイドRGB OLEDと;(b)カラーフィルタを加えた白色OLEDとである。1つ目のアプローチでは、各ピクセルがRGB OLEDサブピクセルからなり、各デバイスの全ての光出力が、改変されずに最終画像に直接寄与し、後者では、3つの白色OLEDサブピクセルが、3つのカラーフィルタによって組み合わせられる。
【0004】
RGB OLEDを形成する基本的なOLEDセル構造は、一般に、有機半導体分子を、ガラスまたは可撓性膜の基板上で、導電性電極の間に堆積させることからなる。電極同士の間に電流が流れると、電子と正孔とが有機半導体に注入され、対になって再結合すると励起子が発生し、有機分子が電気的に励起された状態となる。有機分子は、発光によって、電気的に励起された状態から基底状態へと戻る。使用した半導体の分子構造によって、発光の色が決まる。具体的には、OLEDスタックは複数の機能性有機層を含み、機能性有機層としては、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、ならびに電子輸送層および電子注入層が挙げられる。これらの層の全てが、アノードとカソードとの間に位置する。
OLED構造の内訳:
・基板(プラスチック、ガラスまたは金属ホイルとすることができる) - OLEDの土台である。
・アノード(OLEDのタイプに応じて、透明であってもなくてもよい) - 正電荷を帯びて、OLEDデバイスを構成する有機層に正孔(電子の欠乏)を注入する。
・正孔注入層(HIL) - アノードの上に堆積させ、この層がアノードから正孔を受け取り、デバイスのより深部へ注入する。
・正孔輸送層(HTL) - この層は、正孔が発光性層に到達できるように、この層を越える正孔の輸送を支援する。
・発光性層(EML) - デバイスの心臓部であって、光が生じるところであり、発光性層は、ホスト中にドーピングされた色規定発光体からなる。発光性層は、電気エネルギーが直接、光に変換される層である。
・電子輸送層(ETL) - 電子が発光性層に到達できるように、この層を越える電子の輸送を支援する。
・電子注入層(EIL) - この層がカソードから電子を受け取り、デバイスのより深部へ注入する。
・カソード(OLEDのタイプに応じて、透明であってもなくてもよい) - 負電荷を帯びて、OLEDデバイスを構成する有機層に電子を注入する。
OLEDの構造
各デバイスの光出力全体が画像生成に利用されるため、サイドバイサイドアプローチは、より良好な電力消費効率を提供する。しかしながら、このアプローチには、同じ基板上にサイドバイサイドでRGB OLEDを組み立てることが要求される。有機半導体は一般に、溶媒によって容易に損傷することに起因して、光リソグラフィによる方法の対象とはならないため、同じ基板上に異なる材料のOLEDを組み立てることは、シャドーマスクを使用したOLED材料の熱蒸着によってのみ、またはポリマーおよび溶液加工可能な小分子材料の場合に、印刷ベースの技法、たとえばインクジェット印刷を通じてのみ、行うことができる。
【0005】
ディスプレイ製造業者は、ディスプレイ用途のために、OLEDに大きな関心を持っている。特に、高性能化への大きな潜在性、および潜在的な低い製造コストのために、インクジェット印刷OLEDに関心がある。インクジェット技法を使用することの利点は、非常に精密な位置、インク体積の制御、および大量生産の場合の潜在的に高いスループットである。高い生産性を持続させるために、最大数のインクが、製造の同じサイクルにおいて印刷され、たとえば、3種の発光性層材料(インク)の全てを、同時に印刷し、乾燥させる。
【0006】
各色についての性能を最適化するために、ディスプレイ製造業者は、異なるインク供給業者から、異なる成膜材料および異なる溶媒系を含有する、最良のインクを選択する傾向にある。しかしながら、これは、とりわけ、隣接するピクセルにおける層が異なる溶媒系によって形成される場合、不良なピクセルプロファイルをもたらすことがある。具体的には、下に記述される通り、2種以上の異なる溶媒の乾燥処理中に、溶媒蒸気の一方が隣接するピクセルに影響を及ぼし、図1に示されるように、隣接するピクセルの成膜材料の早期沈着、またはさらには隣接するピクセルのディウェッティングを含めて、膜形成に損傷を生じる。
【0007】
乾燥処理中の不利な溶媒相互作用を防止するために、改善された方法が適用される。具体的には、下に記述される通り、1つのインク(ピクセルAにおけるインクA)をまず印刷し、真空乾燥によって乾燥させて、膜を形成する。次いで、別のインク(ピクセルBにおけるインクB)を印刷し、真空乾燥によって乾燥させる。しかしながら、このアプローチの場合の問題は、依然として、ピクセルAにおける膜が、図2に示される通り、印刷または乾燥中に、溶媒の蒸気による影響を受けることでありうる。
【0008】
これを鑑みて、先行技術では、あるインクの溶媒の、他のインクから形成される膜に対する負の効果を防止するためのインク系を提供し、したがって、均一な成膜を達成することが、喫緊に必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
本願は、次の成分:
a)少なくとも1種の第1の成膜性有機機能材料と、少なくとも1種の第1の有機溶媒とを含む、第1の調合物、
b)少なくとも1種の第2の成膜性有機機能材料と、少なくとも1種の第2の有機溶媒とを含む、第2の調合物
を含むか、またはこれらからなるインク系であって、
(i)第1および第2の有機溶媒が互いに異なり;
(ii)第1の成膜性有機機能材料が第2の有機溶媒中で、15分超、好ましくは30分超、より好ましくは60分超の溶解時間を有し、溶解時間が、室温で、7g/Lの第2の有機溶媒中の第1の成膜性有機機能材料の濃度において決定される
ことを特徴とする、インク系に関する。
【0010】
好ましい態様では、本願のインク系は、少なくとも1種の第3の成膜性有機機能材料と、少なくとも1種の第3の有機溶媒とを含む、第3の調合物をさらに含み、第3の有機溶媒は、第1および第2の有機溶媒とは異なり、第1および第2の成膜性有機機能材料は両方とも、第3の溶媒中で、15分超、好ましくは30分超、より好ましくは60分超の溶解時間を有し、溶解時間は、室温で、7g/Lの濃度において決定される。
【0011】
本発明はさらに、インクジェット印刷のための方法であって、
a)基板を準備する工程、
b)請求項1のインク系の第1の調合物を、第1のタイプのピクセルに印刷する工程、
c)第1のタイプのピクセルにおける第1の調合物を乾燥させる工程、
d)請求項1のインク系の第2の調合物を、第2のタイプのピクセルに印刷する工程、および
e)第2のタイプのピクセルにおける第2の調合物を乾燥させる工程
を含む、またはこれらからなる、方法に関する。
【0012】
本発明はさらに、有機発光ダイオード(OLED)の機能層を製造するための方法であって、機能層が、本発明によるインクジェット印刷方法、または前記インクジェット印刷方法と、他の成膜技法、たとえば、真空蒸発/堆積との組合せを実施することによって製造される、方法に関する。
【0013】
本願はまた、
a)一対の電極を準備する工程、
b)電極の間に機能層を提供する工程
を含むか、またはこれらからなるOLEDを製造するための方法であって、
少なくとも1つの機能層が、本発明のインクジェット印刷方法を実施することによって製造される、方法に関する。
【0014】
驚くべきことに、本願による方法の適用によって、第1のタイプのピクセルのプロファイルが、第2の調合物の印刷および乾燥処理中、滑らか且つ均一に維持されることが見出された。その結果、印刷の収率および効率を、上昇させることができる。さらに、本願による方法の適用によって、得られる有機発光ダイオード(OLED)の機能層は、長い寿命を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】2種以上の異なる溶媒の乾燥処理中に、溶媒蒸気の一方が隣接するピクセルに影響を及ぼす場合を示す。
図2】印刷または乾燥中に、溶媒の蒸気による影響を受ける場合を示す。
図3】プロファイルの比較を示す。
【発明の詳細な説明】
【0016】
インク - 調合物
本願によれば、第1の調合物、第2の調合物および任意に第3の調合物は、溶媒が互いに異なるという点で、相異なる。
【0017】
本願によれば、「少なくとも」という用語は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つおよびそれよりも多いこととして理解される。
【0018】
本願によれば、成膜性有機機能材料という用語は、とりわけ、有機導電体、有機半導体、有機蛍光化合物、有機リン光化合物、有機光吸収化合物、有機感光性化合物、有機光増感剤、および他の有機光活性化合物を表す。有機機能材料という用語はさらに、遷移金属、希土類、ランタニド、およびアクチニドの有機金属錯体を包含する。
【0019】
成膜性有機機能材料は、好ましくは蛍光発光体、リン光発光体、ホスト材料、マトリックス材料、励起子阻止材料、電子輸送材料、電子注入材料、正孔輸送材料、正孔注入材料、nドーパント、pドーパント、ワイドバンドギャップ材料、電子阻止材料、および正孔阻止材料からなる群から選択される。
【0020】
成膜性有機機能材料の好ましい態様は、さらにWO2011/076314A1に詳細に開示されている。
【0021】
さらに好ましい態様において、成膜性有機機能材料は、正孔注入性、正孔輸送性、発光、電子輸送性および電子注入性材料からなる群から選択される有機半導体である。
【0022】
成膜性有機機能材料は、低分子量を有する化合物、ポリマー、オリゴマーまたはデンドリマーとすることができ、ここで、成膜性有機機能材料はさらに、混合物の形態であってもよい。したがって、本発明による調合物は、低分子量を有する2種以上の異なる化合物、低分子量を有する1種の化合物と1種のポリマー、または2種のポリマー(ブレンド)を含んでもよい。
【0023】
成膜性有機機能材料は多くの場合、フロンティア軌道の特性によって説明され、これを以下により詳細に記載する。分子軌道、特に最高被占分子軌道(HOMO)と最低空分子軌道(LUMO)、それらのエネルギー準位、および材料の最低三重項状態Tまたは最低励起一重項状態Sのエネルギーを、量子化学計算に基づき評価することができる。金属を含まない有機物質についてこれらの特性を計算するには、まず、「基底状態/半経験的/デフォルトスピン/AM1/電荷0/スピン一重項」法を用いて構造最適化が行われる。続いて、最適化された構造に基づきエネルギー計算が行われる。「6-31G(d)」基底集合(電荷0、スピン一重項)を伴う「TD-SCF/DFT/デフォルトスピン/B3PW91」法がここでは用いられる。金属含有化合物の場合、構造は「基底状態/ハートリーフォック/デフォルトスピン/LanL2MB/電荷0/スピン一重項」法により最適化される。エネルギー計算は上述の有機物質の場合の方法と同様に行われるが、金属原子の場合は「LanL2DZ」基底集合が用いられ、配位子の場合は「6-31G(d)」基底集合が用いられるという違いがある。エネルギー計算により、HOMOエネルギー準位HEhまたはLUMOエネルギー準位LEhがハートリー単位で得られる。サイクリックボルタンメトリ測定を参照して較正される電子ボルト単位のHOMOおよびLUMOエネルギー準位は、それから下記のように決定される:
HOMO(eV)=((HEh27.212)-0.9899)/1.1206
LUMO(eV)=((LEh27.212)-2.0041)/1.385
本願の目的のため、これらの値をそれぞれ材料のHOMOおよびLUMOエネルギー準位とみなすこととする。
【0024】
最低三重項状態Tは、記載の量子化学計算から生じる最低エネルギーを有する三重項状態のエネルギーと定義される。
【0025】
最低励起一重項状態Sは、記載の量子化学計算から生じる最低エネルギーを有する励起一重項状態のエネルギーと定義される。
【0026】
ここで記載される方法は、使用されるソフトウェアパッケージから独立しており、常に同じ結果を与える。この目的のために頻繁に使用されるプログラムの例は、「Gaussian09W」(Gaussian Inc.)とQ-Chem4.1(Q-Chem、Inc.)である。
【0027】
ここで正孔注入材料とも呼ばれる正孔注入特性を有する化合物は、正孔、即ち、正電荷のアノードから有機層への移動を単純化または促進する。正孔注入材料は、アノード準位の領域以上にあるHOMO準位を有し、即ち、一般には少なくとも-5.3eVである。
【0028】
ここで正孔輸送材料とも呼ばれる正孔輸送特性を有する化合物は、一般にはアノードまたは隣接層、たとえば正孔注入層から注入される正孔、即ち、正電荷を輸送することができる。正孔輸送材料は一般に、好ましくは少なくとも-5.4eVの高HOMO準位を有する。電子デバイスの構造によっては、正孔輸送材料を正孔注入材料として利用することも可能となり得る。
【0029】
正孔注入および/または正孔輸送特性を有する好ましい化合物としては、たとえば、トリアリールアミン、ベンジジン、テトラアリール-パラ-フェニレンジアミン、トリアリールホスフィン、フェノチアジン、フェノキサジン、ジヒドロフェナジン、チアントレン、ジベンゾ-パラ-ジオキシン、フェノキサチイン、カルバゾール、アズレン、チオフェン、ピロールおよびフランとこれらの誘導体、ならびに高HOMO(HOMO=最高被占分子軌道)を有するさらなるO、SまたはN含有ヘテロ環式化合物が挙げられる。
【0030】
正孔注入および/または正孔輸送特性を有する化合物として、フェニレンジアミン誘導体(US3615404)、アリールアミン誘導体(US3567450)、アミノ置換カルコン誘導体(US3526501)、スチリルアントラセン誘導体(JP-A-56-46234)、多環式芳香族化合物(EP1009041)、ポリアリールアルカン誘導体(US3615402)、フルオレノン誘導体(JP-A-54-110837)、ヒドラゾン誘導体(US3717462)、アシルヒドラゾン、スチルベン誘導体(JP-A-61-210363)、シラザン誘導体(US4950950)、ポリシラン(JP-A-2-204996)、アニリンコポリマー(JP-A-2-282263)、チオフェンオリゴマー(特開平1(1989)-211399号)、ポリチオフェン、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリピロール、ポリアニリン、および他の導電性高分子、ポルフィリン化合物(JP-A-63-2956965、US4720432)、芳香族ジメチリデン型化合物、カルバゾール化合物、たとえばCDBP、CBP、mCPなど、芳香族第3級アミンおよびスチリルアミン化合物(US4127412)、たとえば、ベンジジン型のトリフェニルアミン、スチリルアミン型のトリフェニルアミン、およびジアミン型のトリフェニルアミンなどに特に言及してもよい。アリールアミンデンドリマー(特開平8(1996)-193191号)、単量体トリアリールアミン(US3180730)、1以上のビニルラジカルおよび/または活性水素を含有する少なくとも1つの官能基を含有するトリアリールアミン(US3567450およびUS3658520)、またはテトラアリールジアミン(2つの第3級アミン単位はアリール基を介して結合されている)を使用することも可能である。より多くのトリアリールアミノ基が分子中に存在していてもよい。フタロシアニン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、ブタジエン誘導体、およびキノリン誘導体、たとえばジピラジノ[2,3-f:2’,3’-h]キノキサリンヘキサカルボニトリルなども適切である。
【0031】
少なくとも2つの第3級アミン単位を含有する芳香族第3級アミン(US2008/0102311A1、US4720432およびUS5061569)、たとえばNPD(α-NPD=4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニル-アミノ]ビフェニル)(US5061569)、TPD232(=N,N’-ビス-(N,N’-ジフェニル-4-アミノフェニル)-N,N-ジフェニル-4,4’-ジアミノ-1,1’-ビフェニル)またはMTDATA(MTDATAまたはm-MTDATA=4,4’,4’’-トリス[3-メチルフェニル)フェニルアミノ]-トリフェニルアミン)(JP-A-4-308688)、TBDB(=N,N,N’,N’-テトラ(4-ビフェニル)-ジアミノビフェニレン)、TAPC(=1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)シクロ-ヘキサン)、TAPPP(=1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)-3-フェニルプロパン)、BDTAPVB(=1,4-ビス[2-[4-[N,N-ジ(p-トリル)アミノ]フェニル]ビニル]ベンゼン)、TTB(=N,N,N’,N’-テトラ-p-トリル-4,4’-ジアミノビフェニル)、TPD(=4,4’-ビス[N-3-メチルフェニル]-N-フェニルアミノ)-ビフェニル)、N,N,N’,N’-テトラフェニル-4,4’’’-ジアミノ-1,1’,4’,1’’,4’’,1’’’-クアテルフェニルなどが好ましく、同様に、カルバゾール単位を含有する第3級アミン、たとえばTCTA(=4-(9H-カルバゾール-9-イル)-N,N-ビス[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ベンゼンアミン)などが好ましい。同様に、US2007/0092755A1によるヘキサアザトリフェニレン化合物、およびフタロシアニン誘導体(たとえばHPc、CuPc(=銅フタロシアニン)、CoPc、NiPc、ZnPc、PdPc、FePc、MnPc、ClAlPc、ClGaPc、ClInPc、ClSnPc、ClSiPc、(HO)AlPc、(HO)GaPc、VOPc、TiOPc、MoOPc、GaPc-O-GaPc)が好ましい。
【0032】
下記の式(TA-1)~(TA-12)のトリアリールアミン化合物が特に好ましく、EP1162193B1、EP650955B1、Synth.Metals1997、91(1-3)、209、DE19646119A1、WO2006/122630A1、EP1860097A1、EP1834945A1、JP08053397A、US6251531B1、US2005/0221124、JP08292586A、US7399537B2、US2006/0061265A1、EP1661888、およびWO2009/041635に開示されている。式(TA-1)~(TA-12)の前記化合物は、置換されていてもよい。
【0033】
【化1-1】
【0034】
【化1-2】
【0035】
正孔注入材料として利用できるさらなる化合物が、EP0891121A1およびEP1029909A1に記載され、注入層は一般に、US2004/0174116A1に記載されている。
【0036】
正孔注入および/または正孔輸送材料として一般的に利用されるこれらのアリールアミンおよびヘテロ環式化合物は、ポリマー中で、好ましくは-5.8eV(対真空準位)を超え、特に好ましくは-5.5eVを超えるHOMOを生じる。
【0037】
電子注入および/または電子輸送特性を有する化合物は、たとえば、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、オキサジアゾール、キノリン、キノキサリン、アントラセン、ベンゾアントラセン、ピレン、ペリレン、ベンゾイミダゾール、トリアジン、ケトン、ホスフィンオキシドおよびフェナジンとこれらの誘導体、ならびにトリアリールボラン、および低LUMO(LUMO=最低空分子軌道)を有するさらなるO、SまたはN含有ヘテロ環式化合物である。
【0038】
電子輸送性および電子注入性層に特に適する化合物は、8-ヒドロキシキノリンの金属キレート(たとえばLiQ、AlQ、GaQ、MgQ、ZnQ、InQ、ZrQ)、BAlQ、Gaオキシノイド錯体、4-アザフェナントレン-5-オール-Be錯体(US5529853A、式ET-1参照)、ブタジエン誘導体(US4356429)、ヘテロ環式光学的光沢剤(US4539507)、ベンゾイミダゾール誘導体(US2007/0273272A1)、たとえばTPBI(US5766779、式ET-2参照)など、1,3,5-トリアジン、たとえばスピロビフルオレニルトリアジン誘導体(たとえばDE102008064200による)、ピレン、アントラセン、テトラセン、フルオレン、スピロフルオレン、デンドリマー、テトラセン(たとえばルブレン誘導体)、1,10-フェナントロリン誘導体(JP2003-115387、JP2004-311184、JP2001-267080、WO02/043449)、シラシクロペンタジエン誘導体(EP1480280、EP1478032、EP1469533)、ボラン誘導体、たとえばSiを含有するトリアリールボラン誘導体(US2007/0087219A1、式ET-3参照)など、ピリジン誘導体(JP2004-200162)、フェナントロリン、とりわけ、1,10-フェナントロリン誘導体、たとえばBCPおよびBphenなど、さらにビフェニルまたは他の芳香族基を介して結合した幾つかのフェナントロリン(US2007-0252517A1)またはアントラセンに結合したフェナントロリン(US2007-0122656A1、式ET-4およびET-5参照)である。
【0039】
【化2】
【0040】
同様に適するのは、ヘテロ環式有機化合物、たとえばチオピランジオキシド、オキサゾール、トリアゾール、イミダゾールまたはオキサジアゾールなどである。Nを含有する五員環、たとえばオキサゾールなど、好ましくは1,3,4-オキサジアゾール、たとえばとりわけUS2007/0273272A1に開示されている式ET-6、ET-7、ET-8およびET-9の化合物;チアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、トリアゾールの使用例は、とりわけUS2008/0102311A1、およびY.A.Levin、M.S.Skorobogatova、Khimiya Geterotsiklicheskikh Soedinenii 1967(2)、339-341を参照されたく、好ましくは式ET-10の化合物、シラシクロペンタジエン誘導体である。好ましい化合物は、下記の式(ET-6)~(ET-10)である:
【0041】
【化3】
【0042】
有機化合物、たとえばフルオレノン、フルオレニリデンメタン、ペリレンテトラ炭酸、アントラキノンジメタン、ジフェノキノン、アントロンおよびアントラキノンジエチレンジアミンとこれらの誘導体を利用することも同様に可能である。
【0043】
2,9,10-置換アントラセン(1-もしくは2-ナフチル、および4-もしくは3-ビフェニルを有する)、または2つのアントラセン単位を含有する分子(US2008/0193796A1、式ET-11参照)が好ましい。また、非常に有利なのは、9,10-置換アントラセン単位のベンゾイミダゾール誘導体への結合(US2006/147747AおよびEP1551206A1、式ET-12およびET-13参照)である。
【0044】
【化4】
【0045】
電子注入および/または電子輸送特性を生成できる化合物は、好ましくは-2.5eV未満(対真空準位)、特に好ましくは-2.7eV未満のLUMOを生じる。
【0046】
本発明の調合物は、発光体を含んでもよい。発光体という用語は、任意のタイプのエネルギーの移動により生じ得る励起後に、発光を伴う基底状態への放射遷移を許容する材料を意味する。一般に、2つのクラスの発光体、即ち、蛍光およびリン光発光体が公知である。蛍光発光体という用語は、励起一重項状態から基底状態へ放射遷移が生じる材料または化合物を意味する。リン光発光体という用語は、好ましくは遷移金属を含有するルミネッセンス材料または化合物を意味する。
【0047】
ドーパントが系中で上記特性を引き起こす場合、発光体は、ドーパントと呼ばれることも多い。マトリックス材料とドーパントを含む系中のドーパントは、混合物の割合が低い方の成分を意味すると解釈される。これに対応して、マトリックス材料とドーパントを含む系中のマトリックス材料は、混合物の割合が高い方の成分を意味すると解釈される。したがって、リン光発光体という用語は、たとえばリン光ドーパントを意味すると解釈することもできる。
【0048】
発光が可能な化合物は、とりわけ、蛍光発光体およびリン光発光体を含む。これらは、とりわけ、スチルベン、スチルベンアミン、スチリルアミン、クマリン、ルブレン、ローダミン、チアゾール、チアジアゾール、シアニン、チオフェン、パラフェニレン、ペリレン、フタロシアニン、ポルフィリン、ケトン、キノリン、イミン、アントラセンおよび/またはピレン構造を含有する化合物を含む。室温であっても高効率で三重項状態から発光できる、即ち、電気蛍光ではなく、多くの場合エネルギー効率の上昇をもたらす電気リン光を呈する化合物が特に好ましい。この目的に適するのは、まず、原子番号が36より大きい重い原子を含有する化合物である。上記の条件を満たすd-またはf-遷移金属を含有する化合物が好ましい。ここで、8~10族の元素(Ru、Os、Rh、Ir、Pd、Pt)を含有する対応する化合物が特に好ましい。ここで、適する機能性化合物は、たとえばWO02/068435A1、WO02/081488A1、EP1239526A2およびWO2004/026886A2などに記載の様々な錯体である。
【0049】
蛍光発光体として機能できる好ましい化合物を、以下の例により記載する。好ましい蛍光発光体は、モノスチリルアミン、ジスチリルアミン、トリスチリルアミン、テトラスチリルアミン、スチリルホスフィン、スチリルエーテル、およびアリールアミンのクラスから選択される。
【0050】
モノスチリルアミンは、1つの置換または無置換スチリル基と、少なくとも1つの、好ましくは芳香族アミンを含有する化合物を意味するものと解釈される。ジスチリルアミンは、2つの置換または無置換スチリル基と、少なくとも1つの、好ましくは芳香族アミンを含有する化合物を意味するものと解釈される。トリスチリルアミンは、3つの置換または無置換スチリル基と、少なくとも1つの、好ましくは芳香族アミンを含有する化合物を意味するものと解釈される。テトラスチリルアミンは、4つの置換または無置換スチリル基と、少なくとも1つの、好ましく芳香族アミンを含有する化合物を意味するものと解釈される。スチリル基は、特に好ましくはスチルベンであり、さらに置換されていてもよい。対応するホスフィンとエーテルは、アミンと同様に定義される。本発明の意味でのアリールアミンまたは芳香族アミンは、窒素に直接結合した3つの置換または無置換の芳香族またはヘテロ芳香族環系を含有する化合物を意味するものと解釈される。好ましくは、これらの芳香族またはヘテロ芳香族環系のうちの少なくとも1つは、好ましくは少なくとも14個の芳香族環原子を有する縮合環系である。これらの好ましい例は、芳香族アントラセンアミン、芳香族アントラセンジアミン、芳香族ピレンアミン、芳香族ピレンジアミン、芳香族クリセンアミン、または芳香族クリセンジアミンである。芳香族アントラセンアミンは、1つのジアリールアミノ基が好ましくは9位でアントラセン基に直接結合している化合物を意味するものと解釈される。芳香族アントラセンジアミンは、2つのジアリールアミノ基が好ましくは2,6または9,10位でアントラセン基に直接結合している化合物を意味するものと解釈される。芳香族ピレンアミン、ピレンジアミン、クリセンアミン、およびクリセンジアミンはこれと同様に定義され、ここで、ジアリールアミノ基は好ましくはピレンに1位または1,6位で結合している。
【0051】
さらに好ましい蛍光発光体は、とりわけWO2006/122630に記載のインデノフルオレンアミンまたはインデノフルオレンジアミン;とりわけWO2008/006449に記載のベンゾインデノフルオレンアミンまたはベンゾインデノフルオレンジアミン;およびとりわけWO2007/140847に記載のジベンゾインデノフルオレンアミンまたはジベンゾインデノフルオレンジアミンから選択される。
【0052】
蛍光発光体として利用できるスチリルアミンのクラスからの化合物の例は、置換もしくは無置換トリスチルベンアミン、またはWO2006/000388、WO2006/058737、WO2006/000389、WO2007/065549およびWO2007/115610に記載のドーパントである。ジスチリルベンゼンおよびジスチリルビフェニル誘導体は、US5121029に記載されている。さらなるスチリルアミンを、US2007/0122656A1に見出すことができる。
【0053】
特に好ましいスチリルアミン化合物は、US7250532B2に記載の式EM-1の化合物、およびDE102005058557A1に記載の式EM-2の化合物である:
【0054】
【化5】
【0055】
特に好ましいトリアリールアミン化合物は、CN1583691A、JP08/053397AおよびUS6251531B1、EP1957606A1、US2008/0113101A1、US2006/210830A、WO2008/006449、ならびにDE102008035413に開示されている式EM-3~EM-15の化合物とその誘導体である:
【0056】
【化6-1】
【0057】
【化6-2】
【0058】
蛍光発光体として利用できるさらなる好ましい化合物は、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、ベンゾアントラセン、ベンゾフェナントレン(DE102009005746)、フルオレン、フルオランテン、ペリフランテン、インデノペリレン、フェナントレン、ペリレン(US2007/0252517A1)、ピレン、クリセン、デカシクレン、コロネン、テトラフェニルシクロペンタジエン、ペンタフェニルシクロペンタジエン、フルオレン、スピロフルオレン、ルブレン、クマリン(US4769292、US6020078、US2007/0252517A1)、ピラン、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ピラジン、ケイ皮酸エステル、ジケトピロロピロール、アクリドン、およびキナクリドン(US2007/0252517A1)の誘導体から選択される。
【0059】
アントラセン化合物のうち、9,10-置換アントラセン、たとえば9,10-ジフェニルアントラセンおよび9,10-ビス(フェニルエチニル)アントラセンなどが特に好ましい。1,4-ビス(9’-エチニルアントラセニル)ベンゼンも好ましいドーパントである。
【0060】
同様に、ルブレン、クマリン、ローダミン、キナクリドンの誘導体、たとえばDMQA(=N,N’-ジメチルキナクリドン)など、ジシアノメチレンピラン、たとえばDCM(=4-(ジシアノエチレン)-6-(4-ジメチルアミノスチリル-2-メチル)-4H-ピラン)など、チオピラン、ポリメチン、ピリリウムおよびチアピリリウム塩、ペリフランテン、ならびにインデノペリレンが好ましい。
【0061】
青色蛍光発光体は、好ましくはポリ芳香族化合物、たとえば9,10-ジ(2-ナフチルアントラセン)および他のアントラセン誘導体など、テトラセン、キサンテン、ペリレンの誘導体、たとえば2,5,8,11-テトラ-t-ブチルペリレンなど、フェニレン、たとえば4,4’-ビス(9-エチル-3-カルバゾビニレン)-1,1’-ビフェニル、フルオレン、フルオランテン、アリールピレン(US2006/0222886A1)、アリーレンビニレン(US5121029、US5130603)、ビス(アジニル)イミン-ホウ素化合物(US2007/0092753A1)、ビス(アジニル)メテン化合物、およびカルボスチリル化合物などである。
【0062】
さらなる好ましい青色蛍光発光体は、C.H.Chenら:「Recent developments in organic electroluminescent materials」Macro-mol.Symp.125、(1997)1-48および「Recent progress of molecular organic electroluminescent materials and devices」Mat.Sci.and Eng.R、39(2002)、143-222に記載されている。
【0063】
さらなる好ましい青色蛍光発光体は、WO2010/012328A1に開示されているような、下記の式(1)
【0064】
【化7】
【0065】
(式中、使用された記号および添え字には下記が適用される:
Ar、Ar、Arは、出現する毎に同一であるかまたは異なり、1つ以上のラジカルRによって置換されていてもよい5~30個の芳香族環原子を有するアリールまたはヘテロアリール基であり、ただし、Arは、アントラセン、ナフタセンまたはペンタセンを表さず;
Xは、出現する毎に同一であるかまたは異なり、BR、C(R、Si(R、C=O、C=NR、C=C(R、O、S、S=O、SO、NR、PR、P(=O)RおよびP(=S)Rから選択される基であり;
、Rは、出現する毎に同一であるかまたは異なり、H、D、F、Cl、Br、I、N(Ar、C(=O)Ar、P(=O)(Ar、S(=O)Ar、S(=O)Ar、CR=CRAr、CHO、CR=C(R、CN、NO、Si(R、B(OR、B(R、B(N(R、OSO、1~40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基または2~40個のC原子を有する直鎖アルケニルもしくはアルキニル基または3~40個のC原子を有する分枝もしくは環状アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基(これらのそれぞれは、1つ以上のラジカルRによって置換されていてもよい)(ここで、各場合において、1つ以上の隣接していないCH基は、RC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)R、SO、SO、NR、O、SもしくはCONRによって置きかえられていてもよく、1個以上のH原子は、F、Cl、Br、I、CNもしくはNOによって置きかえられていてもよい)、または5~60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族環系(これらは、各場合において1つ以上のラジカルRによって置換されていてもよい)、またはこれらの系の組合せであり;2つ以上の置換基RまたはRは、互いに単環または多環式の脂肪族または芳香族環系を形成してもよく;
は、出現する毎に同一であるかまたは異なり、H、Dまたは1~20個のC原子を有する脂肪族もしくは芳香族炭化水素ラジカルであり;
Arは、出現する毎に同一であるかまたは異なり、1つ以上の非芳香族ラジカルRによって置換されていてもよい5~30個の芳香族環原子を有する芳香族またはヘテロ芳香族環系であり;ここで、同じ窒素またはリン原子上の2つのラジカルArは、単結合または架橋Xにより互いに結合してもよく;
m、nは、0または1であり、ただし、m+n=1であり;
pは、1、2、3、4、5または6であり;
ここで、Ar、ArおよびXは一緒になって5員環または6員環を形成し、Ar、ArおよびXは、一緒になって5員環または6員環を形成し、ただし、式(1)の化合物中の記号Xは全て5員環中に結合しているか、式(1)の化合物中の記号Xは全て6員環中に結合しているかのいずれかであり;
基Ar、ArおよびArにおける全てのπ電子の合計が、p=1である場合少なくとも28であり、p=2である場合少なくとも34であり、p=3である場合少なくとも40であり、p=4である場合少なくとも46であり、p=5である場合少なくとも52であり、p=6である場合少なくとも58であることを特徴とし;
ここで、n=0またはm=0は、対応する基Xが存在せず、代わりに水素または置換基RがArおよびArの対応する位置に結合していることを意味する)
の炭化水素である。
【0066】
さらなる好ましい青色蛍光発光体は、WO2014/111269A2に開示されているような、下記の式(2)
【0067】
【化8】
【0068】
(式中:
Arは、出現する毎に同一であるかまたは異なり、1つ以上のラジカルRによって置換されていてもよい6~18個の芳香族環原子を有するアリールまたはヘテロアリール基であり;
Arは、出現する毎に同一であるかまたは異なり、1つ以上のラジカルRによって置換されていてもよい6個の芳香族環原子を有するアリールまたはヘテロアリール基であり;
は、出現する毎に同一であるかまたは異なり、BR、C(R、-C(R-C(R-、-C(R-O-、-C(R-S-、-RC=CR-、-RC=N-、Si(R、-Si(R-Si(R-、C=O、O、S、S=O、SO、NR、PRまたはP(=O)Rであり;
、R、Rは、出現する毎に同一であるかまたは異なり、H、D、F、Cl、Br、I、C(=O)R、CN、Si(R、N(R、P(=O)(R、OR、S(=O)R、S(=O)、1~20個のC原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基または3~20個のC原子を有する分枝もしくは環状アルキルもしくはアルコキシ基または2~20個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基(ここで、先に言及した基は、それぞれ1つ以上のラジカルRによって置換されていてもよく、先に言及した基中の1つ以上のCH基は、-RC=CR-、-C≡C-、Si(R、C=O、C=NR、-C(=O)O-、-C(=O)NR-、NR、P(=O)(R)、-O-、-S-、SOもしくはSOによって置きかえられていてもよい)、または各場合において1つ以上のラジカルRによって置換されていてもよい5~30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族環系(ここで、2つ以上のラジカルRは、互いに結合していてもよく、環を形成してもよい)であり;
は、出現する毎に同一であるかまたは異なり、H、D、F、Cl、Br、I、C(=O)R、CN、Si(R、N(R、P(=O)(R、OR、S(=O)R、S(=O)、1~20個のC原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基または3~20個のC原子を有する分枝もしくは環状アルキルもしくはアルコキシ基または2~20個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基(ここで、先に言及した基は、それぞれ1つ以上のラジカルRによって置換されていてもよく、先に言及した基中の1つ以上のCH基は、-RC=CR-、-C≡C-、Si(R、C=O、C=NR、-C(=O)O-、-C(=O)NR-、NR、P(=O)(R)、-O-、-S-、SOもしくはSOによって置きかえられていてもよい)、または各場合において1つ以上のラジカルRによって置換されていてもよい5~30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族環系(ここで、2つ以上のラジカルRは、互いに結合していてもよく、環を形成してもよい)であり;
は、出現する毎に同一であるかまたは異なり、H、D、Fまたは1~20個のC原子を有する脂肪族、芳香族もしくはヘテロ芳香族有機ラジカル(ここで、加えて、1つ以上のH原子は、DまたはFによって置きかえられていてもよい)であり;ここで、2つ以上の置換基Rは互いに結合していてもよく、環を形成してもよく;
ここで、2つの基Arのうちの少なくとも一方は、10個以上の芳香族環原子を含有しなければならず;
ここで、2つの基Arのうちの一方がフェニル基である場合、2つの基Arのうちの他方は、14個を超える芳香族環原子を含有してはならない)
の炭化水素である。
【0069】
さらなる好ましい青色蛍光発光体は、WO2018/007421A1に開示されるような下記の式(3)
【0070】
【化9】
【0071】
(式中、使用された記号および添え字には下記が適用される:
Arは、出現する毎に同一であるかまたは異なり、各場合において1つ以上のラジカルRによって置換されていてもよい6~18個の芳香族環原子を有するアリールまたはヘテロアリール基を表し、ここで式(1)中の基Arのうちの少なくとも1つは10個以上の芳香族環原子を有し;
Arは、出現する毎に同一であるかまたは異なり、各場合において1つ以上のラジカルRによって置換されていてもよい6個の芳香族環原子を有するアリールまたはヘテロアリール基を表し;
Ar、Arは、出現する毎に同一であるかまたは異なり、各場合において1(つ)以上のラジカルRによって置換されていてもよい5~25個の芳香族環原子を有する芳香族またはヘテロ芳香族環系を表し;
Eは、出現する毎に同一であるかまたは異なり、-BR-、-C(R-、-C(R-C(R-、-C(R-O-、-C(R-S-、-RC=CR-、-RC=N-、Si(R、-Si(R-Si(R-、-C(=O)-、-C(=NR)-、-C(=C(R)-、-O-、-S-、-S(=O)-、-SO-、-N(R)-、-P(R)-および-P((=O)R)-から選択され、2つの基Eは、互いに対してcis-またはtrans-位置にあってもよく;
、Rは、出現する毎に同一であるかまたは異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CHO、CN、N(Ar、C(=O)Ar、P(=O)(Ar、S(=O)Ar、S(=O)Ar、NO、Si(R、B(OR、OSO、1~40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルキル基または3~40個のC原子を有する分枝もしくは環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルキル基(これらのそれぞれは、1つ以上のラジカルRによって置換されていてもよい)(ここで、各場合において、1つ以上の隣接していないCH基は、RC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、P(=O)(R)、SO、SO、O、SまたはCONRによって置きかえられていてもよく、1個以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CNまたはNOによって置きかえられていてもよい)、各場合において1つ以上のラジカルRによって置換されていてもよい5~60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族環系、または1つ以上のラジカルRによって置換されていてもよい5~40個の芳香族環原子を有するアリールオキシ基(ここで、2つの隣接する置換基Rおよび/または2つの隣接する置換基Rは、1つ以上のラジカルRによって置換されていてもよい単環もしくは多環式の脂肪族環系もしくは芳香族環系を形成してもよい)を表し;
は、出現する毎に同一であるかまたは異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CHO、CN、N(Ar2、C(=O)Ar、P(=O)(Ar、S(=O)Ar、S(=O)Ar、NO、Si(R、B(OR、OSO、1~40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルキル基または3~40個のC原子を有する分枝もしくは環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルキル基(これらのそれぞれは、1つ以上のラジカルRによって置換されていてもよい)(ここで、各場合において、1つ以上の隣接していないCH基は、RC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、P(=O)(R)、SO、SO、O、SまたはCONRによって置きかえられていてもよく、1個以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CNまたはNOによって置きかえられていてもよい)、各場合において1つ以上のラジカルRによって置換されていてもよい5~60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族環系、または1つ以上のラジカルRによって置換されていてもよい5~60個の芳香族環原子を有するアリールオキシ基(ここで、2つの隣接する置換基Rは、1つ以上のラジカルRによって置換されていてもよい単環もしくは多環式の脂肪族環系もしくは芳香族環系を形成してもよい)を表し;
は、出現する毎に同一であるかまたは異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CN、1~20個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルキル基または3~20個のC原子を有する分枝もしくは環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルキル基(ここで、各場合において、1つ以上の隣接していないCH基は、SO、SO、O、Sによって置きかえられていてもよく、1個以上のH原子は、D、F、Cl、BrもしくはIによって置きかえられていてもよい)、または5~24個のC原子を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族環系を表し;
Arは、各場合において、1つ以上のラジカルRによって置換されていてもよい5~24個の芳香族環原子、好ましくは5~18個の芳香族環原子を有する芳香族またはヘテロ芳香族環系であり;
nは、1~20の整数であり;
ここで、nが1に等しく、基ArまたはArのうちの少なくとも1方がフェニル基を表す場合、式(1)の化合物は、少なくとも1つの基RまたはRを持ち、これは、2~40個のC原子を有する直鎖アルキル基または3~40個のC原子を有する分枝もしくは環状アルキル基を表し、これらのそれぞれは、1つ以上のラジカルRによって置換されていてもよい)
の炭化水素である。
【0072】
リン光発光体として機能することができる好ましい化合物を、以下の例により記載する。
【0073】
リン光発光体の例が、WO00/70655、WO01/41512、WO02/02714、WO02/15645、EP1191613、EP1191612、EP1191614、およびWO2005/033244によって明らかにされている。一般に、先行技術に従いリン光OLEDに使用され、有機エレクトロルミネッセンスの分野で当業者に公知であるようなリン光錯体は全て適切であり、当業者は、進歩性を要することなくさらなるリン光錯体を使用することができる。
【0074】
リン光金属錯体は、好ましくはIr、Ru、Pd、Pt、OsまたはRe、より好ましくはIrを含有する。
【0075】
好ましい配位子は、2-フェニルピリジン誘導体、7,8-ベンゾキノリン誘導体、2-(2-チエニル)ピリジン誘導体、2-(1-ナフチル)ピリジン誘導体、1-フェニルイソキノリン誘導体、3-フェニルイソキノリン誘導体、または2-フェニルキノリン誘導体である。これらの化合物は全て、青色用に、たとえばフルオロ、シアノおよび/またはトリフルオロメチル置換基により置換されていてもよい。補助配位子は、好ましくはアセチルアセトナートまたはピコリン酸である。
【0076】
特に、式EM-16の四座配位子を有するPtまたはPdの錯体が適している。
【0077】
【化10】
【0078】
式EM-16の化合物は、US2007/0087219A1により詳細に記載されており、ここで、上記式中の置換基と添え字の説明のため、開示を目的としてこの明細書を参照する。さらに、拡張環系を有するPt-ポルフィリン錯体(US2009/0061681A1)およびIr錯体、たとえば2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-21H、23H-ポルフィリン-Pt(II)、テトラフェニル-Pt(II)テトラベンゾポルフィリン(US2009/0061681A1)、cis-ビス(2-フェニルピリジナト-N,C’)Pt(II)、cis-ビス(2-(2’-チエニル)ピリジナト-N,C’)Pt(II)、cis-ビス(2-(2’-チエニル)-キノリナト-N,C’)Pt(II)、(2-(4,6-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C’)Pt(II)(アセチルアセトナート)、またはトリス(2-フェニルピリジナト-N,C’)Ir(III)(=Ir(ppy)、緑色)、ビス(2-フェニルピリジナト-N,C)Ir(III)(アセチルアセトナート)(=Ir(ppy)アセチルアセトナート、緑色、US2001/0053462A1、Baldo、Thompsonら、Nature403、(2000)、750-753)、ビス(1-フェニルイソキノリナト-N,C’)(2-フェニルピリジナト-N,C’)イリジウム(III)、ビス(2-フェニルピリジナト-N,C’)(1-フェニルイソキノリナト-N,C’)イリジウム(III)、ビス(2-(2’-ベンゾチエニル)ピリジナト-N,C’)イリジウム(III)(アセチルアセトナート)、ビス(2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C’)イリジウム(III)(ピコリナート)(FIrpic、青色)、ビス(2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C’)Ir(III)(テトラキス(1-ピラゾリル)ボラート)、トリス(2-(ビフェニル-3-イル)-4-tert-ブチルピリジン)イリジウム(III)、(ppz)Ir(5phdpym)(US2009/0061681A1)、(45ooppz)Ir(5phdpym)(US2009/0061681A1)、2-フェニルピリジン-Ir錯体の誘導体、たとえばPQIr(=イリジウム(III)ビス(2-フェニルキノリル-N,C’)アセチルアセトナート)など、トリス(2-フェニルイソキノリナト-N,C)Ir(III)(赤色)、ビス(2-(2’-ベンゾ[4,5-a]チエニル)ピリジナト-N,C)Ir(アセチルアセトナート)([BtpIr(acac)]、赤色、Adachiら、Appl.Phys.Lett.78(2001)、1622-1624)である。
【0079】
同様に適するのは、三価のランタニド、たとえばTb3+およびEu3+などの錯体(J.Kidoら、Appl.Phys.Lett.65(1994)、2124、Kidoら、Chem.Lett.657、1990、US2007/0252517A1)、またはマレオニトリルジチオレートを含むPt(II)、Ir(I)、Rh(I)のリン光錯体(Johnsonら、JACS105、1983、1795)、Re(I)トリカルボニル-ジイミン錯体(とりわけWrighton、JACS96、1974、998)、シアノ配位子とビピリジルまたはフェナントロリン配位子を有するOs(II)錯体(Maら、Synth.Metals94、1998、245)である。
【0080】
三座配位子を有するさらなるリン光発光体が、US6824895およびUS10/729238に記載されている。赤色発光リン光錯体は、US6835469およびUS6830828に見出される。
【0081】
リン光ドーパントとして使用される特に好ましい化合物は、とりわけUS2001/0053462A1およびInorg.Chem.2001、40(7)、1704-1711、JACS2001、123(18)、4304-4312に記載の式EM-17の化合物とその誘導体である。
【0082】
【化11】
【0083】
誘導体は、US7378162B2、US6835469B2およびJP2003/253145Aに記載されている。
【0084】
さらに、US7238437B2、US2009/008607A1およびEP1348711に記載の式EM-18~EM-21の化合物とその誘導体を、発光体として利用できる。
【0085】
【化12】
【0086】
同様に、量子ドットを発光体として利用することができ、これらの材料は、WO2011/076314A1に詳細に開示されている。
【0087】
特に、発光化合物と共にホスト材料として利用される化合物は、物質の様々なクラスからの材料を含む。
【0088】
ホスト材料は一般に、利用される発光体材料よりもHOMOとLUMOの間に大きいバンドギャップを有する。加えて、好ましいホスト材料は、正孔または電子輸送材料いずれかの特性を示す。さらに、ホスト材料は、電子および正孔輸送特性の両方を有することができる。
【0089】
ホスト材料は、場合により、特にホスト材料がOLEDにおいてリン光発光体と組み合わせて利用される場合、マトリックス材料とも呼ばれる。
【0090】
特に蛍光ドーパントと共に利用される好ましいホスト材料またはコホスト材料は、オリゴアリーレン(たとえば、EP676461による2,2’,7,7’-テトラフェニルスピロビフルオレン、またはジナフチルアントラセン)、特に縮合芳香族基を含有するオリゴアリーレン、たとえばアントラセン、ベンゾアントラセン、ベンゾフェナントレン(DE102009005746、WO2009/069566)、フェナントレン、テトラセン、コロネン、クリセン、フルオレン、スピロフルオレン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、デカシクレン、ルブレンなど、オリゴアリーレンビニレン(たとえばEP676461によるDPVBi=4,4’-ビス(2,2-ジフェニルエテニル)-1,1’-ビフェニルもしくはスピロ-DPVBi)、ポリポダル金属錯体(たとえばWO04/081017による)、特に8-ヒドロキシキノリンの金属錯体、たとえばAlQ(=アルミニウム(III)トリス(8-ヒドロキシキノリン))もしくはビス(2-メチル-8-キノリノラト)-4-(フェニルフェノリノラト)アルミニウムの金属錯体であって、さらにイミダゾールキレートを含むもの(US2007/0092753A1)、およびキノリン金属錯体、アミノキノリン-金属錯体、ベンゾキノリン-金属錯体、正孔伝導化合物(たとえばWO2004/058911による)、電子伝導化合物、特にケトン、ホスフィンオキシド、スルホキシドなど(たとえばWO2005/084081およびWO2005/084082による)、アトロプ異性体(たとえばWO2006/048268による)、ボロン酸誘導体(たとえばWO2006/117052による)またはベンゾアントラセン(たとえばWO2008/145239による)のクラスから選択される。
【0091】
ホスト材料またはコホスト材料として機能できる特に好ましい化合物は、アントラセン、ベンゾアントラセンおよび/もしくはピレンを含むオリゴアリーレン、またはこれらの化合物のアトロプ異性体のクラスから選択される。本発明の意味でのオリゴアリーレンは、少なくとも3つのアリールまたはアリーレン基が互いに結合している化合物を意味するものと理解されることが意図される。
【0092】
好ましいホスト材料は、特に式(H-1)の化合物から選択される
【0093】
【化13】
【0094】
(式中、Ar、Ar、Arは、出現する毎に同一であるかまたは異なり、任意に置換されていてもよい5~30個の芳香族環原子を有するアリールまたはヘテロアリール基であり、pは、1~5の範囲の整数を表し;Ar、ArおよびArの中のπ電子の合計は、p=1ならば少なくとも30、p=2ならば少なくとも36、p=3ならば少なくとも42である)。
【0095】
式(H-1)の化合物において、Ar基は、特に好ましくはアントラセンを表し、ArおよびAr基は、9および10位で結合しており、ここで、これらの基は、任意に置換されていてもよい。特に非常に好ましくは、Arおよび/またはAr基の少なくとも一方が、1-もしくは2-ナフチル、2-、3-もしくは9-フェナントレニル、または2-、3-、4-、5-、6-もしくは7-ベンゾアントラセニルから選択される縮合アリール基である。アントラセン系化合物は、US2007/0092753A1およびUS2007/0252517A1に記載されており、たとえば2-(4-メチルフェニル)-9,10-ジ-(2-ナフチル)アントラセン、9-(2-ナフチル)-10-(1,1’-ビフェニル)アントラセンおよび9,10-ビス[4-(2,2-ジフェニルエテニル)フェニル]アントラセン、9,10-ジフェニルアントラセン、9,10-ビス(フェニルエチニル)アントラセン、ならびに1,4-ビス(9’-エチニルアントラセニル)ベンゼンである。2つのアントラセン単位を含有する化合物(US2008/0193796A1)、たとえば10,10’-ビス[1,1’,4’,1’’]テルフェニル-2-イル-9,9’-ビスアントラセニルも好ましい。
【0096】
さらなる好ましい化合物は、アリールアミン、スチリルアミン、フルオレセイン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、シクロペンタジエン、テトラフェニルシクロペンタジエン、ペンタフェニルシクロペンタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾオキサゾリン、オキサゾール、ピリジン、ピラジン、イミン、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール(US2007/0092753A1)の誘導体、たとえば2,2’,2’’-(1,3,5-フェニレン)トリス[1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール]、アルダジン、スチルベン、スチリルアリーレン誘導体、たとえば9,10-ビス[4-(2,2-ジフェニルエテニル)-フェニル]アントラセン、およびジスチリルアリーレン誘導体(US5121029)、ジフェニルエチレン、ビニルアントラセン、ジアミノカルバゾール、ピラン、チオピラン、ジケトピロロピロール、ポリメチン、ケイ皮酸エステル、ならびに蛍光染料である。
【0097】
アリールアミンおよびスチリルアミンの誘導体、たとえばTNB(=4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ビフェニル)が特に好ましい。金属オキシノイド錯体、たとえばLiQまたはAlQをコホストとして使用することができる。
【0098】
オリゴアリーレンをマトリックスとして含む好ましい化合物が、US2003/0027016A1、US7326371B2、US2006/043858A、WO2007/114358、WO2008/145239、JP3148176B2、EP1009044、US2004/018383、WO2005/061656A1、EP0681019B1、WO2004/013073A1、US5077142、WO2007/065678、およびDE102009005746に開示されており、ここで、特に好ましい化合物を式H-2~H-8により記載する。
【0099】
【化14】
【0100】
さらに、ホストまたはマトリックスとして利用できる化合物として、リン光発光体と共に利用される材料が挙げられる。
【0101】
これらの化合物は、ポリマー中の構造要素として利用することもでき、CBP(N,N-ビスカルバゾリルビフェニル)、カルバゾール誘導体(たとえばWO2005/039246、US2005/0069729、JP2004/288381、EP1205527またはWO2008/086851による)、アザカルバゾール(たとえばEP1617710、EP1617711、EP1731584またはJP2005/347160による)、ケトン(たとえばWO2004/093207またはDE102008033943による)、ホスフィンオキシド、スルホキシドおよびスルホン(たとえばWO2005/003253による)、オリゴフェニレン、芳香族アミン(たとえばUS2005/0069729による)、双極性マトリックス材料(たとえばWO2007/137725による)、シラン(たとえばWO2005/111172による)、9,9-ジアリールフルオレン誘導体(たとえばDE102008017591による)、アザボロールまたはボロン酸エステル(たとえばWO2006/117052による)、トリアジン誘導体(たとえばDE102008036982による)、インドロカルバゾール誘導体(たとえばWO2007/063754またはWO2008/056746による)、インデノカルバゾール誘導体(たとえばDE102009023155およびDE102009031021による)、ジアザホスホール誘導体(たとえばDE102009022858による)、トリアゾール誘導体、オキサゾールおよびオキサゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、フェニレンジアミン誘導体、第3級芳香族アミン、スチリルアミン、アミノ置換カルコン誘導体、インドール、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族ジメチリデン化合物、カルボジイミド誘導体、トリアリールアミノフェノール配位子をさらに含有してもよい8-ヒドロキシキノリン誘導体の金属錯体、たとえばAlQ(US2007/0134514A1)、金属錯体/ポリシラン化合物、ならびにチオフェン、ベンゾチオフェンおよびジベンゾチオフェン誘導体が挙げられる。
【0102】
好ましいカルバゾール誘導体の例は、mCP(=1,3-N,N-ジ-カルバゾリルベンゼン(=9,9’-(1,3-フェニレン)ビス-9H-カルバゾール))(式H-9)、CDBP(=9,9’-(2,2’-ジメチル[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジイル)ビス-9H-カルバゾール)、1,3-ビス(N,N’-ジカルバゾリル)ベンゼン(=1,3-ビス(カルバゾール-9-イル)ベンゼン)、PVK(ポリビニルカルバゾール)、3,5-ジ(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル、およびCMTTP(式H-10)である。特に言及される化合物は、US2007/0128467A1およびUS2005/0249976A1に開示されている(式H-11およびH-13)。
【0103】
【化15】
【0104】
好ましいテトラアリール-Si化合物が、たとえばUS2004/0209115、US2004/0209116、US2007/0087219A1、およびH.Gilman、E.A.Zuech、Chemistry & Industry(London、United Kingdom)、1960、120に開示されている。
【0105】
特に好ましいテトラアリール-Si化合物を、式H-14~H-21により記載する。
【0106】
【化16】
【0107】
リン光ドーパント用のマトリックスの調製に特に好ましい群4からの化合物が、とりわけDE102009022858、DE102009023155、EP652273B1、WO2007/063754およびWO2008/056746に開示されており、ここで、特に好ましい化合物を式H-22~H-25により記載する。
【0108】
【化17】
【0109】
本発明に従い利用でき、ホスト材料として機能できる成膜性機能性化合物に関し、少なくとも1個の窒素原子を含有する物質が特に好ましい。これらは、好ましくは芳香族アミン、トリアジン誘導体およびカルバゾール誘導体を含む。したがって、カルバゾール誘導体は、特に、驚くべき高効率を示す。トリアジン誘導体は、電子デバイスの予期しないほどの長寿命をもたらす。
【0110】
複数の異なるマトリックス材料、特に少なくとも1種の電子伝導マトリックス材料と少なくとも1種の正孔伝導マトリックス材料を混合物として利用することも好ましい場合がある。たとえばWO2010/108579に記載されているような、電荷輸送性マトリックス材料と、電荷輸送には関与するとしても顕著な程度には関与しない電気的に不活性なマトリックス材料との混合物の使用も同様に好ましい。
【0111】
一重項状態から三重項状態への移行を改善し、発光体特性を有する機能性化合物の支持に利用され、これらの化合物のリン光特性を改善する化合物を利用することがさらに可能である。この目的に適するのは特に、たとえばWO2004/070772A2およびWO2004/113468A1に記載されているような、カルバゾールおよび架橋カルバゾール二量体単位である。この目的に同じく適切なのは、たとえばWO2005/040302A1に記載されているような、ケトン、ホスフィンオキシド、スルホキシド、スルホン、シラン誘導体および類似の化合物である。
【0112】
ここでnドーパントは、還元剤、即ち、電子供与体を意味するものと解釈される。nドーパントの好ましい例は、WO2005/086251A2によるW(hpp)および他の電子リッチ金属錯体、P=N化合物(たとえばWO2012/175535A1、WO2012/175219A1)、ナフチレンカルボジイミド(たとえばWO2012/168358A1)、フルオレン(たとえばWO2012/031735A1)、フリーラジカルおよびジラジカル(たとえばEP1837926A1、WO2007/107306A1)、ピリジン(たとえばEP2452946A1、EP2463927A1)、N-ヘテロ環式化合物(たとえばWO2009/000237A1)、ならびにアクリジンおよびフェナジン(たとえばUS2007/145355A1)である。
【0113】
さらに、調合物は、ワイドバンドギャップ材料を成膜性機能材料として含んでもよい。ワイドバンドギャップ材料は、US7,294,849の開示内容の意味の材料を意味するものと解釈される。これらの系は、エレクトロルミネッセントデバイスにおいて特に有利な性能データを呈する。
【0114】
ワイドバンドギャップ材料として利用される化合物は、2.5eV以上、好ましくは3.0eV以上、特に好ましくは3.5eV以上のバンドギャップを好ましくは有することができる。バンドギャップは、とりわけ最高被占分子軌道(HOMO)と最低空分子軌道(LUMO)のエネルギー準位によって計算できる。
【0115】
さらに、調合物は、正孔阻止材料(HBM)を成膜性機能材料として含んでもよい。正孔阻止材料は、特にこの材料が発光層または正孔伝導層に隣接する層の形態で配置される場合、多層系において正孔(正電荷)の伝達を防止または最小化する材料を意味する。一般に、正孔阻止材料は、隣接層の中の正孔輸送材料よりも低いHOMO準位を有する。正孔阻止層は多くの場合、OLEDにおいて発光層と電子輸送層の間に配置される。
【0116】
原則として、任意公知の正孔阻止材料を利用することが可能である。本願の他の場所に記載される他の正孔阻止材料に加え、有利な正孔阻止材料は、金属錯体(US2003/0068528)、たとえばビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(BAlQ)などである。Fac-トリス(1-フェニルピラゾラト-N,C2)-イリジウム(III)(Ir(ppz))がこの目的のために同様に利用されている(US2003/0175553A1)。フェナントロリン誘導体、たとえばBCPなど、またはフタルイミド、たとえばTMPPなども同様に利用できる。
【0117】
さらに、有利な正孔阻止材料が、WO00/70655A2、WO01/41512およびWO01/93642A1に記載されている。
【0118】
さらに、調合物は、電子阻止材料(EBM)を成膜性機能材料として含んでもよい。電子阻止材料は、特にこの材料が発光層または電子伝導層に隣接する層の形態で配置される場合、多層系において電子の伝達を防止または最小化する材料を意味する。一般に、電子阻止材料は、隣接層の中の電子輸送材料よりも高いLUMO準位を有する。
【0119】
原則として、任意公知の電子阻止材料を利用することが可能である。本願の他の場所に記載される他の電子阻止材料に加え、有利な電子阻止材料は、遷移金属錯体、たとえばIr(ppz)(US2003/0175553)などである。
【0120】
電子阻止材料は、好ましくはアミン、トリアリールアミン、およびその誘導体から選択することができる。
【0121】
さらに、調合物における成膜性有機機能材料として利用できる機能性化合物は、低分子量化合物である場合、好ましくは3,000g/mol以下、より好ましくは2,000g/mol以下、最も好ましくは1,000g/mol以下の分子量を有する。
【0122】
特に興味深いのは、さらに、高いガラス転移温度により特徴付けられる機能性化合物である。これに関連し、調合物に成膜性有機機能材料として利用できる特に好ましい機能性化合物は、DIN51005に従い判定されるガラス転移温度が70℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは125℃以上、最も好ましくは150℃以上のものである。
【0123】
調合物は、ポリマーを成膜性有機機能材料としてさらに含んでもよい。成膜性有機機能材料として上に記載される化合物は、比較的低分子量を有することが多く、ポリマーと混合することもできる。これらの化合物を共有結合的にポリマーに組み込むことが同様に可能である。これは、特に、反応性脱離基、たとえば臭素、ヨウ素、塩素、ボロン酸もしくはボロン酸エステル、または反応性重合可能基、たとえばオレフィンもしくはオキセタンによって置換された化合物により可能である。これらは、対応するオリゴマー、デンドリマーまたはポリマー製造用のモノマーとして使用することができる。ここでのオリゴマー化または重合は、好ましくは、ハロゲン官能基もしくはボロン酸官能基により、または重合可能基により起きる。さらに、この種の基を介してポリマーを架橋させることが可能である。本発明による化合物とポリマーを、架橋または非架橋層として利用することができる。
【0124】
成膜性有機機能材料として利用できるポリマーは多くの場合、上記の化合物の文脈において記載した単位または構造要素、とりわけWO02/077060A1、WO2005/014689A2およびWO2011/076314A1において開示され広く記載されたものを含有する。機能材料は、たとえば下記のクラスに由来するものとすることができる:
群1:正孔注入および/または正孔輸送特性を生成することができる構造要素;
群2:電子注入および/または電子輸送特性を生成することができる構造要素;
群3:群1および群2に関連して記載される特性を併せ持つ構造要素;
群4:発光特性、特にリン光基を有する構造要素;
群5:いわゆる一重項状態から三重項状態への移行を改善する構造要素;
群6:結果として得られるポリマーの形態または発光色に影響を与える構造要素;
群7:典型的には骨格として使用される構造要素。
【0125】
ここでの構造要素は、さらに様々な機能を有していてもよく、明確な割り当てが有利である必要はない。たとえば、群1の構造要素が同様に骨格として機能してもよい。
【0126】
群1からの構造要素を含有する成膜性有機機能材料として利用される正孔輸送または正孔注入特性を有するポリマーは、好ましくは上記の正孔輸送または正孔注入材料に対応する単位を含有してもよい。
【0127】
群1のさらなる好ましい構造要素は、たとえば、トリアリールアミン、ベンジジン、テトラアリール-パラ-フェニレンジアミン、カルバゾール、アズレン、チオフェン、ピロールおよびフランとこれらの誘導体、ならびに高HOMOを有するさらなるO、SまたはN含有ヘテロ環式化合物である。これらのアリールアミンおよびヘテロ環式化合物は、好ましくは-5.8eV(対真空準位)を超え、特に好ましくは-5.5eVを超えるHOMOを有する。
【0128】
とりわけ、下記の式HTP-1の反復単位の少なくとも1つを含有する正孔輸送または正孔注入特性を有するポリマーが好ましい:
【0129】
【化18】
【0130】
(式中、符号は下記の意味を有する:
Arは、各場合において、異なる反復単位に対して同一であるかまたは異なり、単結合、または任意に置換されていてもよい単環式もしくは多環式アリール基であり;
Arは、各場合において、異なる反復単位に対して同一であるかまたは異なり、任意に置換されていてもよい単環式または多環式アリール基であり;
Arは、各場合において、異なる反復単位に対して同一であるかまたは異なり、任意に置換されていてもよい単環式または多環式アリール基であり;
mは、1、2または3である)。
【0131】
式HTP-1A~HTP-1Cの単位からなる群から選択されるHTP-1の反復単位が特に好ましい:
【0132】
【化19】
【0133】
(式中、符号は下記の意味を有する:
は、出現する毎に同一であるかまたは異なり、H、置換もしくは無置換芳香族もしくはヘテロ芳香族基、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アラルキル、アリールオキシ、アリールチオ、アルコキシカルボニル、シリルもしくはカルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、またはヒドロキシ基であり;
rは、0、1、2、3または4であり、
sは、0、1、2、3、4または5である)。
【0134】
とりわけ、下記の式HTP-2の反復単位の少なくとも1つを含有する正孔輸送または正孔注入特性を有するポリマーが好ましい:
【0135】
【化20】
【0136】
(式中、符号は下記の意味を有する:
およびTは、チオフェン、セレノフェン、チエノ[2,3-b]チオフェン、チエノ[3,2-b]チオフェン、ジチエノチオフェン、ピロールおよびアニリンから独立して選択され、ここで、これらの基は1つ以上のラジカルRによって置換されていてもよく;
は、出現する毎にハロゲン、-CN、-NC、-NCO、-NCS、-OCN、-SCN、-C(=O)NR00、-C(=O)X、-C(=O)R、-NH、-NR00、-SH、-SR、-SOH、-SO、-OH、-NO、-CF、-SF、任意に置換されていてもよく任意に1個以上のヘテロ原子を含有していてもよい、1~40個の炭素原子を有する任意に置換されていてもよいシリル、カルビルまたはヒドロカルビル基から独立して選択され;
およびR00は、それぞれ独立してH、または任意に置換されていてもよく任意に1個以上のヘテロ原子を含有していてもよい、1~40個の炭素原子を有する任意に置換されていてもよいカルビルもしくはヒドロカルビル基であり;
ArおよびArは、互いに独立して、任意に置換されていてもよく任意に隣接するチオフェンまたはセレノフェン基の一方または両方の2,3位に結合していてもよい、単環式または多環式アリールまたはヘテロアリール基を表し;
cおよびeは、互いに独立して0、1、2、3または4であり、ここで、1<c+e≦6であり;
dおよびfは、互いに独立して0、1、2、3または4である)。
【0137】
正孔輸送または正孔注入特性を有するポリマーの好ましい例が、とりわけWO2007/131582A1およびWO2008/009343A1に記載されている。
【0138】
群2からの構造要素を含有する成膜性有機機能材料として利用される電子注入および/または電子輸送特性を有するポリマーは、好ましくは上記の電子注入および/または電子輸送材料に対応する単位を含有してもよい。
【0139】
電子注入および/または電子輸送特性を有する群2のさらなる好ましい構造要素は、たとえば、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、オキサジアゾール、キノリン、キノキサリンおよびフェナジンとこれらの誘導体、さらにトリアリールボランまたは低LUMO準位を有するさらなるO、SまたはN含有ヘテロ環式化合物から誘導される。これらの群2の構造要素は、好ましくは-2.7eV未満(対真空準位)、特に好ましくは-2.8eV未満のLUMOを有する。
【0140】
成膜性有機機能材料は、好ましくは群3からの構造要素を含有するポリマーとすることができ、ここで、正孔および電子移動性を改善する構造要素(即ち、群1および2からの構造要素)は、互いに直接結合している。これらの構造要素の一部は、発光体として機能でき、ここで、発光色は、たとえば緑色、赤色または黄色にシフトされてもよい。したがって、それらの使用は、たとえば、元来青色に発光するポリマーによる他の発光色または広帯域発光の生成にとって有利である。
【0141】
群4からの構造要素を含有する成膜性有機機能材料として利用される発光特性を有するポリマーは、好ましくは上記の発光体材料に対応する単位を含有していてもよい。ここで、リン光基、特に8~10族の元素(Ru、Os、Rh、Ir、Pd、Pt)を含有する対応する単位を含有する上記の発光金属錯体を含有するポリマーが好ましい。
【0142】
いわゆる一重項状態から三重項状態への移行を改善する群5の単位を含有する成膜性有機機能材料として利用されるポリマーは、好ましくはリン光化合物の支持に利用することができ、好ましくは上記の群4の構造要素を含有するポリマーである。ここでは、高分子三重項マトリックスを使用することができる。
【0143】
この目的に適するのは、特に、たとえばDE10304819A1およびDE10328627A1に記載されているような、カルバゾールおよび連結カルバゾール二量体単位である。同じくこの目的に適するのは、たとえばDE10349033A1に記載されているようなケトン、ホスフィンオキシド、スルホキシド、スルホンおよびシラン誘導体、ならびに類似の化合物である。さらに、好ましい構造単位は、リン光化合物と共に利用されるマトリックス材料に関連して上に記載した化合物に由来するものとすることができる。
【0144】
さらなる成膜性有機機能材料は、好ましくはポリマーの形態または発光色に影響を与える群6の単位を含有するポリマーである。上に言及されたポリマーの他に、これらは、上記の基にカウントされない少なくとも1つのさらなる芳香族または別の共役構造を有するものである。したがって、これらの基は、電荷担体移動性、非有機金属錯体、または一重項-三重項移行に対して効果がほとんどないか、全くない。
【0145】
この種の構造単位は、結果として得られるポリマーの形態または発光色に影響を与えることができる。したがって、構造単位によっては、これらのポリマーは、発光体として使用することもできる。
【0146】
したがって、蛍光OLEDの場合、6~40個のC原子を有する芳香族構造要素、またはトラン、スチルベンもしくはビススチリルアリーレン誘導体単位が好ましく、そのそれぞれは、1つ以上のラジカルによって置換されていてもよい。ここでは、1,4-フェニレン、1,4-ナフチレン、1,4-もしくは9,10-アントリレン、1,6-、2,7-もしくは4,9-ピレニレン、3,9-もしくは3,10-ペリレニレン、4,4’-ビフェニレン、4,4’’-テルフェニリレン、4,4’-ビ-1,1’-ナフチリレン、4,4’-トラニレン、4,4’-スチルベニレン、または4,4’’-ビススチリルアリーレン誘導体から誘導される基の使用が特に好ましい。
【0147】
成膜性有機機能材料として利用されるポリマーは、好ましくは群7の単位を含有し、好ましくは、多くの場合骨格として使用される6~40個のC原子を有する芳香族構造を含有する。
【0148】
これらは、とりわけ、たとえばUS5962631、WO2006/052457A2およびWO2006/118345A1に開示されている4,5-ジヒドロピレン誘導体、4,5,9,10-テトラ-ヒドロピレン誘導体、フルオレン誘導体、たとえばWO2003/020790A1に開示されている9,9-スピロビフルオレン誘導体、たとえばWO2005/104264A1に開示されている9,10-フェナントレン誘導体、たとえばWO2005/014689A2に開示されている9,10-ジヒドロフェナントレン誘導体、たとえばWO2004/041901A1およびWO2004/113412A2に開示されている5,7-ジヒドロジベンゾオキセピン誘導体とcis-およびtrans-インデノフルオレン誘導体、ならびにたとえばWO2006/063852A1に開示されているビナフチレン誘導体、ならびにたとえばWO2005/056633A1、EP1344788A1、WO2007/043495A1、WO2005/033174A1、WO2003/099901A1およびDE102006003710に開示されているさらなる単位を含む。
【0149】
たとえばUS5,962,631、WO2006/052457A2およびWO2006/118345A1に開示されているフルオレン誘導体、たとえばWO2003/020790A1に開示されているスピロビフルオレン誘導体、たとえばWO2005/056633A1、EP1344788A1およびWO2007/043495A1に開示されているベンゾフルオレン、ジベンゾフルオレン、ベンゾチオフェンおよびジベンゾフルオレン基とその誘導体から選択される群7の構造単位が特に好ましい。
【0150】
特に好ましい群7の構造要素は、一般式PB-1で表される:
【0151】
【化21】
【0152】
(式中、符号と添え字は、下記の意味を有する:
A、BおよびB’はそれぞれ、また、異なる反復単位に対して同一であるかまたは異なっており、好ましくは-CR-、-NR-、-PR-、-O-、-S-、-SO-、-SO2-、-CO-、-CS-、-CSe-、-P(=O)R-、-P(=S)R-および-SiR-から選択される二価基であり;
およびRは、出現する毎にH、ハロゲン、-CN、-NC、-NCO、-NCS、-OCN、-SCN、-C(=O)NR00、-C(=O)X、-C(=O)R、-NH、-NR00、-SH、-SR、-SOH、-SO、-OH、-NO、-CF、-SF、任意に置換されていてもよく任意に1個以上のヘテロ原子を含有していてもよい1~40個の炭素原子を有する任意に置換されていてもよいシリル、カルビルまたはヒドロカルビル基から独立して選択され、ここで、RおよびRは、任意にそれらが結合しているフルオレンラジカルと共にスピロ基を形成してもよく;
Xは、ハロゲンであり;
およびR00はそれぞれ独立して、H、または任意に置換されていてもよく任意に1個以上のヘテロ原子を含有していてもよい、1~40個の炭素原子を有する任意に置換されていてもよいカルビルもしくはヒドロカルビル基であり;
gは、各場合において、独立して0または1であり、hは、各場合において、独立して0または1であり、ここで、副単位中のgとhの合計は好ましくは1であり;
mは、1以上の整数であり;
ArおよびArは、互いに独立して任意に置換されていてもよく任意にインデノフルオレンの7,8位または8,9位に結合されていてもよい単環式または多環式アリールまたはヘテロアリール基を表し;
aおよびbは、互いに独立して0または1である)。
【0153】
およびR基がこれらの基が結合しているフルオレン群と共にスピロ基を形成する場合、この基は好ましくはスピロビフルオレンを表す。
【0154】
式PB-1A~PB-1Eの単位からなる群から選択される式PB-1の反復単位が特に好ましい:
【0155】
【化22】
【0156】
(式中、Rは、式PB-1について上に記載した意味を有し、rは、0、1、2、3または4であり、Rは、ラジカルRと同じ意味を有する)。
【0157】
は、好ましくは-F、-Cl、-Br、-I、-CN、-NO、-NCO、-NCS、-OCN、-SCN、-C(=O)NR00、-C(=O)X、-C(=O)R、-NR00、4~40個、好ましくは6~20個のC原子を有する任意に置換されていてもよいシリル、アリールもしくはヘテロアリール基、または1~20個、好ましくは1~12個のC原子を有する直鎖、分枝もしくは環状アルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシもしくはアルコキシカルボニルオキシ基であり、ここで、1個以上の水素原子は任意にFまたはClによって置換されていてもよく、R、R00基およびXは、式PB-1について上に記載した意味を有する。
【0158】
式PB-1F~PB-1Iの単位からなる群から選択される式PB-1の反復単位が特に好ましい:
【0159】
【化23】
【0160】
(式中、符号は下記の意味を有する:
Lは、H、ハロゲン、または1~12個のC原子を有する任意にフッ素化されていてもよい直鎖状もしくは分枝アルキルもしくはアルコキシ基であり、好ましくはメチル、i-プロピル、t-ブチル、n-ペントキシまたはトリフルオロメチルを表し;
L’は、1~12個のC原子を有する任意にフッ素化されていてもよい直鎖状または分枝アルキルまたはアルコキシ基であり、好ましくはn-オクチルまたはn-オクチルオキシを表す)。
【0161】
本発明を実施するには、上記群1~7の構造要素の2種以上を含有するポリマーが好ましい。さらに、ポリマーは、好ましくは上記の1つの群からの構造要素の2種以上を含有する、即ち、1つの群から選択される構造要素の混合物を含むことが規定されてもよい。
【0162】
特に、発光特性、好ましくは少なくとも1種のリン光基を有する少なくとも1種の構造要素(群4)の他に、少なくとも1種のさらなる上記群1~3、5または6の構造要素を追加で含有するポリマーが特に好ましく、ここで、これらは好ましくは群1~3から選択される。
【0163】
様々なクラスの基の割合は、ポリマー中に存在する場合、広い範囲内とすることができ、ここで、これらは、当業者には公知である。各場合において、上記群1~7の構造要素から選択される、ポリマー中に存在する1つのクラスの割合が、好ましくは各場合において5mol%以上、特に好ましくは各場合において10mol%以上である場合、驚くべき利点を達成することができる。
【0164】
白色発光コポリマーの調製が、とりわけDE10343606A1に詳細に記載されている。
【0165】
溶解度を向上させるため、ポリマーは、対応する基を含有してもよい。好ましくは、ポリマーが置換基を含有し、その結果反復単位1つ当たり平均で少なくとも2個の非芳香族炭素原子、特に好ましくは少なくとも4個、とりわけ好ましくは少なくとも8個の非芳香族炭素原子が存在し、ここで、平均は数平均に関することが規定されてもよい。ここで、個々の炭素原子は、たとえば、OまたはSによって置きかえられていてもよい。ただし、特定の割合の、任意に全ての反復単位が、非芳香族炭素原子を含有する置換基を含有しないことも可能である。ここでは、長鎖置換基は、有機機能材料を用いて得ることができる層に悪影響を及ぼす可能性があるため、短鎖置換基が好ましい。置換基は、好ましくは直鎖中に12個以下の炭素原子、好ましくは8個以下の炭素原子、特に好ましくは6個以下の炭素原子を含有する。
【0166】
発明に従い成膜性有機機能材料として利用されるポリマーは、ランダム、交互もしくはレジオ規則性コポリマー、ブロックコポリマー、またはこれらのコポリマー形態の組合せとすることができる。
【0167】
さらなる態様において、成膜性有機機能材料として利用されるポリマーは、側鎖を有する非共役ポリマーとすることができ、ここで、この態様は、ポリマーに基づくリン光OLEDの場合に特に重要である。一般に、リン光ポリマーは、ビニル化合物のフリーラジカル共重合によって得ることができ、ここで、これらのビニル化合物は、とりわけUS7250226B2に開示されているように、リン光発光体を有する少なくとも1つの単位および/または少なくとも1つの電荷輸送単位を含有する。さらなるリン光ポリマーが、とりわけJP2007/211243A2、JP2007/197574A2、US7250226B2およびJP2007/059939Aに記載されている。
【0168】
さらなる好ましい態様において、非共役のポリマーは、スペーサー単位により互いに連結された骨格単位を含有する。骨格単位に基づく非共役のポリマーに基づくこうした三重項発光体の例が、たとえばDE102009023154に開示されている。
【0169】
さらなる好ましい態様において、非共役ポリマーは、蛍光発光体として設計することができる。側鎖を有する非共役ポリマーに基づく好ましい蛍光発光体は、アントラセンもしくはベンゾアントラセン基、またはこれらの基の誘導体を側鎖に含有し、ここで、これらのポリマーは、たとえばJP2005/108556、JP2005/285661およびJP2003/338375に開示されている。
【0170】
これらのポリマーは多くの場合、電子または正孔輸送材料として利用することができ、ここで、これらのポリマーは、好ましくは非共役ポリマーとして設計される。
【0171】
さらに、調合物における成膜性有機機能材料として利用される機能性化合物は、高分子化合物である場合、好ましくは10,000g/mol以上、より好ましくは25,000g/mol以上、最も好ましくは50,000g/mol以上の分子量Mを有する。
【0172】
ここで、ポリマーの分子量Mは、好ましくは10,000~2,000,000g/molの範囲、より好ましくは25,000~1,000,000g/molの範囲、最も好ましくは50,000~500,000g/molの範囲である。分子量Mは、内部ポリスチレン標準に対してGPC(=ゲル浸透クロマトグラフィー)により決定される。
【0173】
本発明による調合物は、電子デバイスのそれぞれの機能層の製造に必要な成膜性有機機能材料を全て含んでもよい。たとえば、正孔輸送、正孔注入、電子輸送または電子注入層が1種の機能性化合物から正確に構築される場合、調合物は、この化合物を有機機能材料として正確に含む。たとえば、発光層が発光体をマトリックスまたはホスト材料と組み合わせて含む場合、本願において他の場所でより詳細に説明したように、調合物は、有機機能材料として発光体とマトリックスまたはホスト材料の混合物を正確に含む。
【0174】
前記成分の他に、本発明による調合物は、さらなる添加剤および加工助剤を含んでもよい。これらは、とりわけ、表面活性物質(界面活性剤)、滑沢剤およびグリース、粘度を調整する添加剤、伝導性を増加させる添加剤、分散剤、疎水化剤、接着促進剤、流動性向上剤、消泡剤、脱気剤、反応性または非反応性であってもよい希釈剤、充填剤、補助剤、加工助剤、染料、顔料、安定剤、増感剤、ナノ粒子、ならびに阻害剤を含む。
【0175】
本願の好ましい一態様では、少なくとも1種の第1の成膜性有機機能材料、少なくとも1種の第2の成膜性有機機能材料、および任意に少なくとも1種の第3の成膜性有機機能材料は、互いに異なる。
【0176】
好ましくは、本願によれば、第1の成膜性有機機能材料はポリマーであり、第2の成膜性有機機能材料は低分子量を有する化合物であり、逆もまた同様である。
【0177】
本願によれば、第1のインクの第1の溶媒、第2のインクの第2の溶媒、および任意に第3のインクの第3の溶媒は、互いに異なり、好ましくは有機溶媒であり、この有機溶媒としては、とりわけ、ケトン、エーテル、エステル、アミド、たとえば、ジ-C1~2-アルキルホルムアミド、硫黄化合物、ニトロ化合物、炭化水素、ハロゲン化炭化水素(たとえば塩素化炭化水素)、芳香族またはヘテロ芳香族炭化水素(たとえばナフタレン誘導体)、およびハロゲン化芳香族またはヘテロ芳香族炭化水素が挙げられる。
【0178】
好ましくは、第1、第2および任意に第3の溶媒は、下記の群:置換および無置換の芳香族または直鎖状エーテル、たとえば3-フェノキシトルエンまたはアニソール;置換または無置換のアレーン誘導体、たとえばシクロヘキシルベンゼン;置換または無置換のインダン、たとえばヘキサメチルインダン;置換および無置換の芳香族または直鎖状ケトン、たとえばジシクロヘキシルメタノン;置換および無置換のヘテロ環式化合物、たとえばピロリジノン、ピリジン、ピラジン;他のフッ素化または塩素化芳香族炭化水素、置換または無置換のナフタレン、たとえばアルキル置換ナフタレン、たとえば1-エチルナフタレンの1種から選ぶことができる。
【0179】
特に好ましい第1、第2および任意に第3の溶媒は、たとえば、1-エチルナフタレン、2-エチルナフタレン、2-プロピルナフタレン、2-(1-メチルエチル)-ナフタレン、1-(1-メチルエチル)-ナフタレン、2-ブチルナフタレン、1,6-ジメチルナフタレン、2,2’-ジメチルビフェニル、3,3’-ジメチルビフェニル、1-アセチルナフタレン、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、1,2,3,5-テトラメチルベンゼン、1,2,4,5-テトラメチルベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、1,2-ジヒドロナフタレン、1,2-ジメチルナフタレン、1,3-ベンゾジオキソール、1,3-ジイソプロピルベンゼン、1,3-ジメチルナフタレン、1,4-ベンゾジオキサン、1,4-ジイソプロピルベンゼン、1,4-ジメチルナフタレン、1,5-ジメチルテトラリン、1-ベンゾチオフェン、チアナフタレン、1-ブロモナフタレン、1-クロロメチルナフタレン、1-メトキシナフタレン、1-メチルナフタレン、2-ブロモ-3-ブロモメチルナフタレン、2-ブロモメチル-ナフタレン、2-ブロモナフタレン、2-エトキシナフタレン、2-イソプロピル-アニソール、3,5-ジメチル-アニソール、5-メトキシインダン、5-メトキシインドール、5-tert-ブチル-m-キシレン、6-メチルキノリン、8-メチルキノリン、アセトフェノン、ベンゾチアゾール、ベンジルアセタート、ブチルフェニルエーテル、シクロヘキシルベンゼン、デカヒドロナフトール、ジメトキシトルエン、3-フェノキシトルエン、ジフェニルエーテル、プロピオフェノン、ヘキシルベンゼン、ヘキサメチルインダン、イソクロマン、フェニルアセタート、プロピオフェノン、ベラトロール、ピロリジノン、N,N-ジブチルアニリン、シクロヘキシルヘキサノアート、メンチルイソバレラート、ジシクロヘキシルメタノン、エチルラウラート、エチルデカノアートである。
【0180】
第1、第2および任意に第3の溶媒は、100~400℃の範囲、好ましくは200~350℃の範囲、より好ましくは225~325℃の範囲、最も好ましくは250~300℃の範囲の沸点を有する。
【0181】
第1、第2および任意の第3の成膜性有機機能材料は、それぞれ、対応する有機溶媒において、5g/l以上、好ましくは10g/l以上の溶解度を有する。
【0182】
対応する調合物における、少なくとも1種の第1、第2または任意の第3の成膜性有機機能材料の含有量は、それぞれ、調合物の総重量を基準として、0.001~20重量%の範囲、好ましくは0.01~10重量%の範囲、より好ましくは0.1~5重量%の範囲、最も好ましくは0.3~5重量%の範囲である。
【0183】
さらに、本発明の第1、第2または任意の第3の調合物は、それぞれ、好ましくは0.8~50mPa・sの範囲、より好ましくは1~40mPa・sの範囲、最も好ましくは2~15mPa・sの範囲の粘度を有する。
【0184】
本発明による調合物および溶媒の粘度は、Discovery AR3形式(Thermo Scientific)の1°コーンプレート回転式レオメータを用いて測定する。この装置は、温度とせん断速度の正確な制御を可能とする。粘度の測定は、25.0℃(+/-0.2℃)の温度および500s-1のせん断速度で行われる。各サンプルは3回測定され、得られた測定値を平均する。
【0185】
本発明の第1、第2または任意の第3の調合物は、それぞれ、好ましくは10~70mN/mの範囲、より好ましくは15~50mN/mの範囲、最も好ましくは20~40mN/mの範囲の表面張力を有する。
【0186】
好ましくは、第1、第2または任意の第3の有機溶媒は、それぞれ、15~70mN/mの範囲、より好ましくは10~50mN/mの範囲、最も好ましくは20~40mN/mの範囲の表面張力を含む。
【0187】
表面張力は、FTA(First Ten Angstrom)1000接触角測角器を使用して、20℃で測定することができる。方法の詳細は、Roger P.Woodward、Ph.D.「Surface Tension Measurements Using the Drop Shape Method」により発表されているように、First Ten Angstromから入手可能である。好ましくは、ペンダントドロップ法を用いて表面張力を判定することができる。この測定技法は、バルク液体または気相中のニードルから液滴を分注する。液滴の形状は、表面張力と重力と密度差との関係に由来する。ペンダントドロップ法を使用し、http://www.kruss.de/services/education-theory/glossary/drop-shape-analysisを使用して、表面張力をペンダントドロップの影画像から計算する。一般に使用され市販されている高精度液滴形状分析ツール、即ちFirst Ten Ångstrom製FTA1000を使用して、全ての表面張力測定を遂行した。表面張力は、ソフトウェアFTA1000によって判定される。測定は全て、20℃乃至25℃の範囲である室温で遂行した。標準的な操作手順は、新しい使い捨ての液滴分注システム(注射器およびニードル)を使用した、各調合物の表面張力の判定を含む。各液滴は、後で平均化される60回の測定を伴う1分の持続期間に亘って測定される。各調合物について、3滴測定される。最終的な値は、前記測定値を平均化したものである。ツールは、表面張力が周知の様々な液体に照らして定期的にクロスチェックされる。
【0188】
好ましくは、本願によれば、第1の溶媒、第2の溶媒および任意に第3の溶媒は、互いに異なり、次の表1に列挙される溶媒またはその混合物から選択してもよい。
【0189】
【表1-1】
【0190】
【表1-2】
【0191】
【表1-3】
【0192】
任意に、第1、第2および第3の溶媒の溶媒は、溶媒の混合物であってもよく、主な溶媒は上に記載した通りであり、残りの溶媒は、一般に使用される、主な溶媒のための共溶媒である。
【0193】
本願によれば、第2の溶媒中の第1の成膜性有機機能材料は、15分超、好ましくは30分超、より好ましくは60分超の溶解時間を有する。
【0194】
本願によれば、第2の溶媒中の第1の成膜性有機機能材料の溶解時間は、光度測定法または重力法による溶解度の判定を記載している、ISO標準7579:2009を遂行することによって判定される。ここでは、光度測定技法が推奨される。
【0195】
以下に記載するように、溶解試験を遂行した。実験は、特に、容易に再現できることに焦点を合わせて設計した。分析する材料(即ち、第1の成膜性材料)を、透明なガラスフラスコに量り取った。次いで、溶媒または予備形成した溶媒混合物(第2の溶媒)を、7g/Lの最終濃度に達するように計算した固体混合物に、一度に加えた。混合物の目視検査によって判断して完全に溶解するまで、マグネチックスターラーを使用して、室温(25℃)において、混合物を600rpmで撹拌した。溶解試験の終了近くでは、視線に垂直な照明のもとで混合物を追加で調査し、溶解していない粒子の識別に役立てることができる。この出願において言及され、ときとして「溶解時間」、tDISSとも称される「溶解の時間」は、クロノメーターを使用して測定され、材料の最後のピースが溶液中に消失するまでの、溶媒の添加と撹拌の開始との間の時間を定量化している。溶解速度は、7g/Lを、完全な溶解が得られるまでの時間(「溶解時間」)で除算することによって決定される。
基板
本発明によれば、インクジェット印刷方法に使用される基板は、インクジェット印刷の分野において一般に使用される、任意の好適な材料から作製してよい。
【0196】
インクジェット印刷方法の好ましい一態様では、使用される基板は、ガラス、プラスチック、金属ホイルまたは可撓性膜を含む群から選択される透明材料とするべきである。
【0197】
インクジェット印刷方法の別の好ましい態様では、印刷は、サブピクセルの全てまたは部分集合を堆積させた基板上に実施される。
乾燥
本発明によれば、印刷されたピクセルの乾燥は、減圧下での真空乾燥を含む、一般に使用される乾燥方法によって実施される。代替的な乾燥方法としては、溶媒の熱蒸発、熱風または赤外線乾燥、および他のものが挙げられる。
【0198】
乾燥は、室温または約0℃~約50℃において実施される。
【0199】
乾燥は、1013mbar以下、好ましくは1mbar未満の圧力において実施される。
ピクセル
本発明によれば、第2の調合物は、第1のサブピクセルに隣接する第2のサブピクセルに印刷される。
機能層
本発明によれば、OLEDの機能層は、正孔注入層(HIL)、正孔輸送層(HTL)、発光性層(EML)、電子輸送層(ETL)、電子注入層(EIL)またはこれらの組合せを含む群から選択される。
【0200】
OLEDの機能層を製造するための方法の好ましい一態様では、機能層は、HIL、HTLおよびEMLからなり、これらは基板上に連続的に提供される。
【0201】
本願によれば、OLEDはフルカラーOLEDである。
【0202】
下の例は、本発明の詳細な説明、およびその組み立ての詳細な説明を提供する。
【0203】
[例]
例1
第1の成膜性材料が異なる第2の溶媒中にある場合の、正孔輸送材料(HTL)としてのポリマーの溶解時間の決定
WO2016/107668A1に記載される正孔輸送材料(HTL)ポリマー(ポリマーP1)を使用した。溶解実験の標的濃度は7g/lであった。25℃における溶解時間tDISSに応じて溶媒を分類し、次の表3aおよび3bに示す通り、溶解のタイプによって特徴付けた。
【0204】
【表2】
【0205】
【表3】
【0206】
第2のインクを印刷する前後の、ポリマーP1によって形成されたピクセルのプロファイルの比較
例2
第2の成膜性材料が異なる第1および第2の溶媒中にある場合の、小分子ブレンドSM-1の溶解時間の決定
WO2017/102048A1のデバイス組み立て例に記載されている小分子ブレンドSM-1を使用した。溶解実験の標的濃度は7g/lであった。25℃における溶解時間tDISSに応じて溶媒を分類し、上の表3bにおいて説明した分類を使用して、下の表4aに示す通り、溶解のタイプによって特徴付けた。
【0207】
【表4】
【0208】
例3
成膜性材料が異なる第1および第2の溶媒中にある場合の、小分子ブレンドSM-2の溶解時間の決定
ホストH1と発光体E1との95/5(重量/重量)混合物からなる、小分子ブレンドSM-2を使用した。H1の構造は下に与えるものであり、使用した発光体は、WO2018/007421A1のデバイス組み立て例にD2として記載される材料であった。
【0209】
【化24】
【0210】
溶解実験の標的濃度は7g/lであった。25℃における溶解時間tDISSに応じて溶媒を分類し、上の表3bにおいて説明した分類を使用して、下の表5aに示す通り、溶解のタイプによって特徴付けた。
【0211】
【表5】
【0212】
例4
隣接する第1のピクセルおよび第2のピクセルを有するピクセル化基板を準備する。20mg/mLのインクからのポリマーP1を、第1の溶媒として3-フェノキシトルエンと共に含む第1のインクを、第1のピクセルにインクジェット印刷する。基板を、室温で、10-5mBarの減圧において、乾燥に供した。次いで、3-フェノキシトルエン(3-PT)中に20mg/mLのSM-2を有するインクを含む第2のインクを、第2のピクセルにインクジェット印刷する。基板を、室温で、10-5mBarの減圧において、乾燥に供した。第2のインクを印刷する前後の第1のピクセルのプロファイルを、プロファイルメータによって特徴付けた。2μmの針を有する、KLA-Tencor Corporation製Alpha-step D120を使用して、膜プロファイルを測定した。
【0213】
例5
第2のインクを、メンチルイソバレラート中20mg/mLのSM-2によって置きかえたこと以外は、例4を繰り返し、第2のインクの乾燥を、室温で、10-5mBarの減圧において実施した。
【0214】
例6
第2のインクを、2-フェノキシエタノール(2-PEN)中20mg/mLのSM-2によって置きかえたこと以外は、例4を繰り返し、第2のインクの乾燥を、室温で、10-5mBarの減圧において実施した。
【0215】
例7
第2のインクを、2-フェノキシエタノール(2-PEN)中20mg/mLのSM-1によって置きかえたこと以外は、例6を繰り返し、第2のインクの乾燥を、室温で、10-5mBarの減圧において実施した。
【0216】
比較例1
隣接する第1のピクセルおよび第2のピクセルを有するピクセル化基板を準備する。20mg/mLのインクからのSM-1を、第1の溶媒として3-フェノキシトルエンと共に含む第1のインクを、第1のピクセルにインクジェット印刷する。基板を、室温で、10-5mBarの減圧において、乾燥に供した。次いで、3-フェノキシトルエン(3-PT)中に20mg/mLのSM-2を有するインクを含む第2のインクを、第2のピクセルにインクジェット印刷する。基板を、室温で、10-5mBarの圧力において、乾燥に供した。第2のインクを印刷する前後の第1のピクセルのプロファイルを、プロファイルメータによって特徴付けた。2μmの針を有する、KLA-Tencor Corporation製Alpha-step D120を使用して、膜プロファイルを測定した。
【0217】
プロファイルの比較を図3に示す。
【0218】
第2の溶媒中の第1の成膜性材料の溶解時間が、15分超、好ましくは30分超、より好ましくは60分超である場合、第1のピクセルのプロファイルが、第2のインクを乾燥させる前後で、滑らか、安定且つ均一に維持されたことを認めることができる。
図1
図2
図3
【国際調査報告】