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▶ ケーニッヒ アンド バウアー バンクノーテ ソリューションズ ソシエテ アノニムの特許一覧

特表2023-552770セキュリティ特徴の設計及び生成方法
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  • 特表-セキュリティ特徴の設計及び生成方法 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-19
(54)【発明の名称】セキュリティ特徴の設計及び生成方法
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/342 20140101AFI20231212BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20231212BHJP
   B42D 25/24 20140101ALI20231212BHJP
   B42D 25/29 20140101ALI20231212BHJP
   B42D 25/23 20140101ALI20231212BHJP
   B42D 25/324 20140101ALI20231212BHJP
【FI】
B42D25/342
G02B3/00 A
B42D25/24
B42D25/29
B42D25/23
B42D25/324
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534098
(86)(22)【出願日】2021-12-14
(85)【翻訳文提出日】2023-07-24
(86)【国際出願番号】 EP2021085667
(87)【国際公開番号】W WO2022129032
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】2019780.2
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522411647
【氏名又は名称】ケーニッヒ アンド バウアー バンクノーテ ソリューションズ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スチュワート、ロベルト レアード
【テーマコード(参考)】
2C005
【Fターム(参考)】
2C005HA02
2C005HA04
2C005HB02
2C005HB03
2C005HB10
2C005JB40
(57)【要約】
セキュリティ特徴内のプリント画像の少なくとも領域を設計する方法が提供される。セキュリティ特徴は、プリント画像をオーバーレイする光学素子のアレイを含む。方法は、セキュリティ特徴のユーザが見るアイコンを表すピクセル値を有するピクセルのロウ及びカラムを含むアイコン行列を設計することと、アイコンの所望の拡大率を与えるために所望のギャップサイズを決定することと、ピクセルの2次元行列のアレイを生成することとを含み、アレイは繰り返される行列セットのシーケンスを含み、各セットは第一サイズを有する第一タイプの行列の第一数、及び第二サイズを有する第二タイプの行列の第二数を含み、第一タイプの行列及び第二タイプの行列はアイコン行列に基づいており、第一数、第二数、第一サイズ、及び第二サイズは、セット内の各行列の平均サイズが所望のギャップサイズだけモーダル行列サイズから変位するように選択される。またセキュリティ特徴のプリント画像も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セキュリティ特徴内のプリント画像の少なくとも領域を設計する方法であって、
前記セキュリティ特徴は前記プリント画像をオーバーレイする光学素子のアレイを含み、
前記方法は、
前記セキュリティ特徴のユーザが見るアイコンを表すピクセル値を有するピクセルのロウ及びカラムを含むアイコン行列を設計することと、
前記アイコンの所望の拡大率を与えるために所望のギャップサイズを決定することと、
ピクセルの2次元行列のアレイを生成することであって、前記アレイは繰り返される行列セットのシーケンスを含む、前記生成することと、
を含み、
各セットは、第一サイズを有する第一タイプの行列の第一数と、第二サイズを有する第二タイプの行列の第二数とを含み、
前記第一タイプの前記行列及び前記第二タイプの前記行列は前記アイコン行列に基づいており、
前記第一数、前記第二数、前記第一サイズ、及び前記第二サイズは、前記セット内の各行列の平均サイズがモーダル行列サイズから前記所望のギャップサイズだけ変位するように選択される、前記方法。
【請求項2】
前記所望のギャップ寸法を決定する前記ステップは、ギャップサイズを計算することを含み、前記ギャップサイズは、前記アイコン行列に対応する繰り返される行列のアレイに、前記繰り返される行列が前記ギャップサイズだけ離隔されて前記光学素子のアレイを介して見られる場合、所望の拡大効果を生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第一タイプの前記行列は、前記アイコン行列に対応する、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第二タイプの前記行列は、前記第一タイプの前記行列よりも少なくとも1つ追加のカラムを含む、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記第二タイプの前記行列は、前記第一タイプの前記行列よりも少なくとも1つ少ないカラムを含む、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記第二タイプの前記行列は、前記第一タイプの前記行列よりも少なくとも1つ追加のロウを含む、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記第二タイプの前記行列は、前記第一タイプの前記行列よりも少なくとも1つ少ないロウを含む、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記第二数は1である、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記第一タイプの前記行列は同一である、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
セキュリティ特徴内にプリント画像を設計する方法であって、
前記プリント画像を複数の領域に分割し、前記複数の領域のうちの第一領域に関して、
その領域に関連付けられた第一アイコン設計を提供し、その領域に関連付けられた所望の第一拡大率を与えることと、
前記アイコン行列が前記第一アイコン設計を表し、前記所望の拡大率が前記所望の第一拡大率である、先行請求項のいずれかに記載の前記方法に従って前記第一領域を設計することと、
を含む、前記方法。
【請求項11】
前記複数の領域のうちの第二領域に関して、
前記複数の領域のうちの前記第二領域に関連付けられた第二アイコン設計を提供し、前記第二領域に関連付けられた所望の第二拡大率を与えることと、
前記アイコン行列が前記第二アイコン設計を表し、前記所望の拡大率が前記所望の第二拡大率である、先行請求項のいずれかに記載の前記方法に従って前記第二領域を設計することと、
をさらに含み、
前記所望の第二拡大率は、前記所望の第一拡大率とは異なり、前記第一領域の前記モーダル行列サイズは、前記第二領域の前記モーダル行列サイズと同じである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第二アイコン設計は、前記第一アイコン設計とは異なる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記複数の領域のうちのさらなる領域に静的設計素子に対応する領域を提供することをさらに含み、前記光学素子に対する前記静的設計素子のサイズは、前記静的設計素子に対応する前記領域内の前記セキュリティ特徴内の各光学素子の下の前記ピクセルが実質的に均一になる結果をもたらす、請求項10から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記複数の領域のうちのさらなる領域に、アニメーション化された設計素子に対応する領域を提供することをさらに含み、前記アニメーション化された設計素子に対応する前記領域に、前記プリント画像は、各レンズがピクセル行列をオーバーレイするように設計され、各ピクセルはアニメーションの一連のフレーム内のアニメーションの特定のフレームに関連付けられる、請求項10から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれかに従って設計されたプリント画像をプリントすることを含む、セキュリティ特徴を生成する方法。
【請求項16】
前記プリント画像上に光学素子のアレイを配置することをさらに含み、各光学素子は前記モーダル行列と実質的に同じサイズである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
セキュリティ特徴のプリント画像であって、前記セキュリティ特徴は、前記プリント画像をオーバーレイする光学素子のアレイを含み、
前記プリント画像の少なくとも1つの領域は、繰り返されるセットのシーケンスを含むピクセルの2次元行列のアレイを含み、各セットは、第一サイズを有する第一タイプの行列の第一数、及び第二サイズを有する第二タイプの行列の第二数を含み、
前記第一タイプの前記行列及び前記第二タイプの前記行列は、前記セキュリティ特徴のユーザが見るアイコンを表すピクセル値を有するピクセルのロウ及びカラムを含むアイコン行列に基づいており、
前記第一数、前記第二数、前記第一サイズ、及び前記第二サイズは、前記プリント画像が前記光学素子のアレイを通して見える場合、前記アイコンの所望の拡大率を与えるために、前記セット内の各行列の平均サイズがモーダル行列サイズから所望のギャップサイズだけ変位するように選択される、前記セキュリティ特徴のプリント画像。
【請求項18】
前記第一タイプの前記行列は、前記アイコン行列に対応する、請求項17に記載のプリント画像。
【請求項19】
前記第二タイプの前記行列は、前記第一タイプの前記行列よりも少なくとも1つ追加のカラムを含む、請求項17または請求項18に記載のプリント画像。
【請求項20】
前記第二タイプの前記行列は、前記第一タイプの前記行列よりも少なくとも1つ少ないカラムを含む、請求項17または請求項18に記載のプリント画像。
【請求項21】
前記第二タイプの前記行列は、前記第一タイプの前記行列よりも少なくとも1つ追加のロウを含む、請求項17~20のいずれかに記載のプリント画像。
【請求項22】
前記第二タイプの前記行列は、前記第一タイプの前記行列よりも少なくとも1つ少ないロウを含む、請求項17~20のいずれかに記載のプリント画像。
【請求項23】
前記第二数は1である、請求項17~22のいずれかに記載のプリント画像。
【請求項24】
前記第一タイプの前記行列は同一である、請求項17~23のいずれかに記載のプリント画像。
【請求項25】
前記画像は複数の領域を含み、前記少なくとも1つの領域は前記複数の領域のうちの第一領域であり、前記第一領域での前記アイコン行列は第一アイコン行列であり、前記第一領域での前記所望の拡大率は所望の第一拡大率である、請求項17~24のいずれかに記載のプリント画像。
【請求項26】
前記複数の領域は第二領域を含み、前記第二領域での前記アイコン行列は第二アイコン行列であり、前記第二領域での前記所望の拡大率は所望の第二拡大率であり、前記第二領域での前記モーダル行列サイズは前記第一領域での前記モーダル行列サイズと同じである、請求項25に記載のプリント画像。
【請求項27】
前記第二アイコン設計は、前記第一アイコン設計とは異なる、請求項26に記載のプリント画像。
【請求項28】
静的設計素子に対応する領域をさらに含み、前記光学素子に対する前記静的設計素子の前記サイズは、前記静的設計素子に対応する前記領域内の前記セキュリティ特徴における各光学素子の下の前記ピクセルが実質的に均一になる結果をもたらす、請求項25から27のいずれかに記載のプリント画像。
【請求項29】
アニメーション化された設計素子に対応する領域をさらに含み、前記アニメーション化された設計素子に対応する前記領域に、前記プリント画像は、各レンズがピクセル行列をオーバーレイするように設計され、各ピクセルはアニメーションの一連のフレーム内のアニメーションの特定のフレームに関連付けられる、請求項25から28のいずれかに記載のプリント画像。
【請求項30】
請求項17から29のいずれかに記載の前記プリント画像と、
前記プリント画像をオーバーレイする同一の光学素子のアレイと、
を含む、セキュリティ特徴。
【請求項31】
請求項30の前記セキュリティ特徴を含むセキュリティ文書。
【請求項32】
前記セキュリティ文書は、紙幣、パスポート、運転免許証、及び身分証明書の1つである、請求項31に記載のセキュリティ文書。
【請求項33】
実行されると、プロセッサを含むマシンに請求項1~14のいずれかに記載の前記方法を実行させるコンピュータ可読命令を格納する、非一時的なコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
多くの文書には、贋造または偽造文書の特定を支援するセキュリティ特徴が含まれる。これらの文書の多くには、マイクロオプティクスを利用したセキュリティ特徴が含まれており、それらのような特徴は、通常、確実な偽物を生成するには精度が必要であるためコピーすることは難しい。
【0002】
これらの文書で使用されるセキュリティ特徴は、多くの場合、ピクセルで構成されるプリント画像をオーバーレイするマイクロ光学素子のアレイを含む。マイクロ光学素子を使用するセキュリティ特徴のそのような一例は、モアレ拡大鏡であり、プリント画像はマイクロ光学素子の各レンズのほぼ下にプリントされる一連のアイコンを含む。アイコン及びレンズの繰り返し長さ(ピッチ)が異なると、ミスマッチが生じ、隣接するレンズによってアイコンの隣接部分が拡大され、見る人にアイコンの拡大したビューを提供する。
【背景技術】
【0003】
本発明は、一般に、モアレ拡大率の原理に基づいているマイクロ光学ベースのセキュリティ特徴の設計に関する。モアレ拡大率については、Kamal et al.の「Properties of moire magnifiers」(Optical Engineering37(11)3007-3014)に詳細に記載されており、その開示は参照により本明細書に援用されている。従来技術のモアレ拡大鏡ベースのセキュリティ特徴は、図1Aの平面図及び図1Bの側断面図に示されている。セキュリティ特徴は、実質的に同一のプリントマイクロイメージ、またはアイコン110の規則的な2次元アレイを含む。これらアイコンは、通常、最大約250μmの寸法を有する。一般に、図1Bに示されるように、プリントアイコンは、多数のプリントピクセル130で構成される。各ピクセルは、その時点でのアイコンの色を決定する1つのピクセル値(または複数のピクセル値)を有する。マイクロ光学素子120の2次元アレイ、例えばマイクロレンズの2次元アレイはプリントアイコンをオーバーレイする。光学素子の繰り返し長さまたはピッチ125、126は、プリントアイコンのピッチ115、116と類似している(ただし同一ではない)。光学素子の2次元アレイを通して見ると、アイコンの1つまたは複数の拡大バージョンが生成される。ここで説明されるように、アイコンのアレイのピッチ及び光学素子のアレイのピッチが互いにどの程度異なるかによって拡大率が異なる。通常、水平方向での光学素子のピッチ125及びプリントアイコンのピッチ115が、垂直方向でのそれぞれの光学素子のピッチ126及びプリントアイコンのピッチ116と同じであるが、必ずしもそうである必要はないことに留意されたい。
【0004】
一般に、各光学素子(例、マイクロレンズ)は同一の光学特性を有する。アイコンのピッチとマイクロレンズアレイのピッチとの間にわずかなミスマッチを与えることにより、各マイクロレンズは、対応するプリントアイコンの異なる部分を結像する。本質的には、連続する光学素子がアイコンの連続する部分を結像して、アイコンの拡大画像を構築することを、ミスマッチがレンズの整数に等しくなるたびに繰り返す。図1Aの灰色の破線ボックス150は、アイコン110と光学素子120との間のミスマッチが1つのマイクロ光学素子120の幅まで累積した境界を画定する繰り返しパターンを示す。連続する光学素子がアイコンの連続する部分を結像した結果、図1Cに表されるように、見る人にはアイコン160の拡大バージョンが見える。見る人がセキュリティ特徴を傾けると、アイコンの様々な部分が各レンズによって拡大されて見え、その結果、セキュリティ特徴を傾けると、拡大されたアイコンがマイクロレンズの平面に対して「シフト」するように見える。これにより、アイコンの拡大画像がマイクロレンズとは異なる平面上にあるように見えるため、奥行きの効果が与えられる。
【0005】
以上のことから、モアレ拡大鏡における拡大率が、光学素子のピッチとアイコンのピッチとの間のミスマッチの程度に依存することが明らかである。ここで具体的な例を参照して説明されるように、ピッチミスマッチが減少するにつれて、より高い拡大率が達成される。
【0006】
例えば、セキュリティ特徴がマイクロレンズのアレイの下にある70μmの幅Wを有するアイコンを含むことを考慮すると、各マイクロレンズは70μmの幅Wを有し、互いに正確に隣接して配置される、すなわち、70μmのピッチPも有する。ここで、アイコンのアレイのピッチPが72.5μmである場合、つまり各アイコンがP-W=2.5μmだけ離隔される場合の結果の拡大率を考えてみる。隣接するマイクロレンズ間では、各マイクロレンズとそれに対応するアイコンとの間のオフセットには、Δ=P-P=P-W=2.5μmというΔの変化がある。28個のマイクロレンズの後、累積オフセットは28Δ=70μmに達し、これはアイコンのサイズである。したがって実際には、その次のマイクロレンズ(すなわち、29番目のマイクロレンズ)は、最初のマイクロレンズと同じアイコンの部分を結像する。見る人にとって、アイコンは28個のマイクロレンズにわたって表示されるため、拡大率Mは28xである。
【0007】
見る人にとってのアイコンの見かけのサイズは、M・W=28・70μm=1.96mmである。アイコンの見かけのサイズがそれを通して見えるマイクロレンズのサイズよりもはるかに大きいため、セキュリティ特徴の平面に対して、見る人から遠ざかって見える仮想平面上にアイコンが配置されている外観を見る人に与えることが理解されよう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述から分かるように、拡大率Mは、M=P/Δによって与えられる。したがって、見かけの拡大率(その上、仮想アイコンの平面とセキュリティ特徴の平面との間の見かけの分離)を大きくするには、アイコンのピッチとアイコンの幅との間の差異が小さくなる、つまり、隣接するプリントアイコン間の間隔が小さくなる必要がある。
【0009】
また、アイコンのピッチをアイコンの幅よりも小さくすることにより、拡大率の符号が逆になることも理解されよう。事実上、これにより、セキュリティ特徴の平面に対して見る人に近づくように見える仮想平面上にアイコンが配置されているという視覚的外観が与えられる。
【0010】
必要とされるピッチにおける差異を様々な方法で提供することが当技術分野で知られている。例えば、ピッチにおける差異は、アイコンをレンズアレイと同じピッチでプリントするが、その後、下にあるプリント画像に対してレンズアレイをわずかに回転させることによって得られることができる。これにより、下にある画像のピッチと比較して、レンズアレイのピッチが効果的に小さくなる。あるいは、下にあるプリント画像のピッチはレンズアレイのピッチと異なる場合もあり、レンズアレイとプリント画像との間の角度オフセットを使用して、アイコンとレンズアレイとの間のピッチの有効な差異(したがって、拡大率)を変える。ただし、この方法での問題は、角度オフセットによって適用されるピッチにおける差異がセキュリティ特徴全体で必ず一定であるため、セキュリティ特徴全体で拡大率/見かけの奥行きの対照的な領域を提供することが困難であることである。さらに、マイクロレンズアレイ及びプリント画像を必要な角度オフセットと必要な精度でアライメントすることは困難な場合がある。
【0011】
別のアプローチは、アイコンのアレイを、それぞれの間をわずかに離してプリントし、レンズのピッチに比べてアイコンのピッチを大きくすることである(図1Bに示されるように)。上記の例では、アイコンアレイを、各アイコンの間で2.5μm離してプリントすることができる。あるいは、アイコンの間隔を2.5μm縮小してプリントし、Mに負の値を与えることもできる。ただし、この方法の問題は、印刷プロセスの精度によって制限されることである。最終的に、達成できるピッチの最小差は印刷プロセスの解像度によって制限され、従来技術では、物理的に薄いセキュリティ特徴で見かけの高い拡大率を達成するには、非常に高解像度の印刷プロセスが必要である。
【0012】
本発明が対処しようとするのは、これらの問題及び他の問題である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は、セキュリティ特徴内のプリント画像の少なくとも領域を設計する方法を提供し、セキュリティ特徴は、プリント画像をオーバーレイする光学素子のアレイを含み、この方法は、セキュリティ特徴のユーザが見るアイコンを表すピクセル値を有するピクセルのロウ及びカラムを含むアイコン行列を設計することと、アイコンの所望の拡大率を与えるために所望のギャップサイズを決定することと、ピクセルの2次元行列のアレイを生成することとを含み、アレイは繰り返される行列セットのシーケンスを含み、各セットは第一サイズを有する第一タイプの行列の第一数と、第二サイズを有する第二タイプの行列の第二数とを含み、第一タイプの行列及び第二タイプの行列はアイコン行列に基づいており、第一数、第二数、第一サイズ、及び第二サイズは、セット内の各行列の平均サイズが所望のギャップサイズだけモーダル行列サイズから変位するように選択される。
【0014】
有利には、これにより、アイコンのピッチとオーバーレイされた光学素子のピッチとの間の有効なミスマッチが、プリント画像に対して光学素子を回転でオフセットする必要なく、従来技術で必要とされていたものよりも高くない印刷解像度を有する印刷プロセスによって制御されることが可能になる。達成可能な拡大率は、最小印刷解像度によって、または光学素子のアレイとその下にある画像との間の回転オフセットの精度によって制限されることはなくなる。
【0015】
一実施形態では、所望のギャップ寸法を決定するステップは、ギャップサイズを計算することを含み、このギャップサイズは、アイコン行列に対応する繰り返される行列のアレイに、繰り返される行列がギャップサイズだけ離隔されて光学素子のアレイを介して見られる場合、所望の拡大効果を生じる。
【0016】
一実施形態では、第一タイプの行列はアイコン行列に対応する。
【0017】
すなわち、この実施形態では、第一タイプの行列は、アイコン行列と同じ次元を有するアイコン行列であり得るが、第二タイプの行列は、異なるサイズを有するようなアイコン行列の修正バージョンであり得る。例えば、第二タイプの行列のピクセル値は、アイコン行列のスケーリングバージョンである画像に対応し、アイコン行列よりも大きいか小さいかいずれかである場合がある。あるいは、第二タイプの行列は、アイコン行列のトリミングバージョンであってもよく、すなわち、ピクセルの1つ以上のカラム及び/またはロウが除去されていることを除いて、アイコン行列に対応してもよい。あるいは、第二タイプの行列は、追加のパディングまたはホワイトスペースによるアイコン行列のバージョンであってもよく、つまり、ピクセルの1つ以上の追加のカラム及び/またはロウを有することを除いて、アイコン行列に対応してもよい。
【0018】
あるいは、第一及び第二行列のそれぞれをアイコン行列から個別に導出することもできる。例えば、第一行列及び第二行列はそれぞれ、異なるサイズを有するように、異なるスケール因子を有する、同じアイコン行列のスケーリングバージョンであってもよい。
【0019】
様々な実施形態では、第二タイプの行列は、第一タイプの行列よりも少なくとも1つ追加のカラムまたは少なくとも1つ少ないカラムを含む。
【0020】
様々な実施形態では、第二タイプの行列は、第一タイプの行列よりも少なくとも1つ追加のカラムまたは少なくとも1つ少ないカラムを含む。
【0021】
様々な実施形態では、第二数は1である。
【0022】
本発明のさらなる態様は、セキュリティ特徴内にプリント画像を設計する方法を提供し、この方法は、プリント画像を複数の領域に分割し、複数の領域の第一領域に、その領域に関連付けられた第一アイコン設計を提供し、その領域に関連付けられた所望の第一拡大率を与えることと、上記で開示された方法のいずれかに従って第一領域を設計することとを含み、アイコン行列は第一アイコン設計を表し、所望の拡大率は所望の第一拡大率である。
【0023】
有利なことに、これにより、セキュリティ特徴の特定の領域が拡大率の視覚効果を与えることが可能になり、他の領域は異なる視覚効果を与えることができる。特に、拡大率の効果を与える方法は、例えば、プリント画像に対するマイクロ光学素子アレイの回転に依存しないため、セキュリティ特徴全体で与えられる視覚効果は、従来技術のそれらのようなモアレ拡大鏡の場合と同様に、ピッチにおける差異がマイクロ光学素子アレイとプリント画像との間の角度オフセットによって(少なくとも部分的に)決められることにより、制限されない。例えば、符号が異なり拡大率が高い領域をセキュリティ特徴全体に設けることができる。一般に、本発明の方法を使用すると、画像全体に拡大率のほぼすべての組み合わせを与えることが可能である。様々な実施形態では、これは、セキュリティ特徴内の異なる光学効果がその視覚的弁別性を強化することにより、容易に識別可能な認証セキュリティ特徴としてのその有効性を向上させる、セキュリティ特徴の設計を可能にする。
【0024】
一実施形態では、方法は、複数の領域のうちの第二領域に対して、複数の領域のうちの第二領域に関連付けられた第二アイコン設計を提供し、第二領域に関連付けられた所望の第二拡大率を与えることと、先行請求項のいずれかに記載の方法に従って第二領域を設計することとをさらに含み、アイコン行列は第二アイコン設計を表し、所望の拡大率は所望の第二拡大率であり、所望の第二拡大率は所望の第一拡大率とは異なり、第一領域でのモーダル行列のサイズは第二領域でのモーダル行列のサイズと同じである。
【0025】
有利なことに、これにより、セキュリティ特徴の異なる領域が異なる拡大率を与えることが可能になる。
【0026】
一実施形態では、第二アイコン設計は第一アイコン設計とは異なる。
【0027】
有利なことに、これにより、セキュリティ特徴の異なる領域に異なるアイコン設計が与えられることが可能になり、それぞれが異なる拡大率に関連付けられる。
【0028】
様々な実施形態では、方法は、複数の領域のうちのさらなる領域に静的設計素子に対応する領域を提供することをさらに含み、光学素子に対する静的設計素子のサイズは、静的設計素子に対応する領域内のセキュリティ特徴における各光学素子の下のピクセルが実質的に均一になる結果をもたらす。
【0029】
有利なことに、これにより、拡大領域と非拡大静的領域との両方をセキュリティ特徴内に提供することが可能になる。
【0030】
様々な実施形態では、方法は、複数の領域のうちのさらなる領域に、アニメーション化された設計素子に対応する領域を提供することをさらに含み、アニメーション化された設計素子に対応する領域に、プリント画像は、各レンズがピクセル行列をオーバーレイするように設計され、各ピクセルはアニメーションの一連のフレーム内のアニメーションの特定のフレームに関連付けられる。
【0031】
有利なことに、これにより、拡大領域と非拡大アニメーション化領域との両方をセキュリティ特徴内に提供することが可能になる。
【0032】
本発明のさらなる態様は、上述の方法のいずれかに従って設計されたプリント画像をプリントすることを含む、セキュリティ特徴を生成する方法を提供する。
【0033】
一実施形態では、方法は、プリント画像上に光学素子のアレイを配置することをさらに含み、各光学素子はモーダル行列と実質的に同じサイズである。
【0034】
本発明のさらなる態様は、セキュリティ特徴にプリント画像を提供し、セキュリティ特徴は、プリント画像をオーバーレイする光学素子のアレイを含み、プリント画像の少なくとも1つの領域は、繰り返されるセットのシーケンスを含むピクセルの2次元行列のアレイを含み、各セットは、第一サイズを有する第一タイプの行列の第一数と、第二サイズを有する第二タイプの行列の第二数とを含み、第一タイプの行列及び第二タイプの行列は、セキュリティ特徴のユーザが見るアイコンを表すピクセル値を有するピクセルのロウ及びカラムを含むアイコン行列に基づいており、第一数、第二数、第一サイズ、及び第二サイズは、プリント画像が光学素子のアレイを介して見える場合、セット内の各行列の平均サイズが所望のギャップサイズだけモーダル行列サイズから変位して、アイコンの所望の拡大率を与えるように選択される。
【0035】
本発明のさらなる態様は、プリント画像と、プリント画像をオーバーレイする同一の光学素子のアレイとを含むセキュリティ特徴を提供する。
【0036】
本発明のさらなる態様は、セキュリティ特徴を含むセキュリティ文書を提供する。
【0037】
本発明のさらなる態様は、実行されると、プロセッサを備えるマシンに上述の方法のいずれかを実行させるコンピュータ可読命令を格納する、非一時的なコンピュータ可読媒体を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1A】従来技術のモアレ拡大鏡を示す。
図1B】従来技術のモアレ拡大鏡を示す。
図1C図1A及び図1Bのモアレ拡大鏡内のアイコンの見かけの拡大率を示す。
図2】本発明のセキュリティ特徴を示す。
図3】AからCは、異なる見かけの拡大率を有する領域を含む、本発明の一実施形態におけるセキュリティ特徴によって与えられる視覚効果を示す。
図4】A及びBは、拡大領域と非拡大領域との両方を有する本発明の別の実施形態におけるセキュリティ特徴によって与えられる視覚効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本明細書で開示されるデバイス、システム、及び方法の構造、機能、製造、及び使用の原理の全体的な理解を提供するために、特定の例示的な実施形態について説明する。これらの実施形態の1つ以上の例が添付の図面に示されている。当業者であれば、本明細書に具体的に説明され、添付の図面に示されるデバイス、システム、及び方法が非限定的で例示的な実施形態であり、本発明の範囲が特許請求の範囲によってのみ定義されることを理解するであろう。1つの例示的な実施形態に関連して図示または説明された特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わされ得る。それらのような修正及び変形は、本発明の範囲内に含まれることを意図したものである。
【0040】
アイコン行列のサイズの修正によるモアレ拡大率
一実施形態では、本発明は、セキュリティ特徴で使用するプリント画像を設計するための方法を提供する。この方法は、アイコンの物理的な分離またはアイコンに対するマイクロ光学アレイの回転によって決定されるのではなく、代わりに、プリント画像を提供することによって決定される、有効ピッチを有するセキュリティ特徴のプリント画像を設計することに依存し、プリント画像はアイコンセットの繰り返しを含み、各セットはわずかに異なるサイズのアイコンを含む。これにより、レンズピッチと比較してアイコンピッチに有効な差異が与えられる。
【0041】
本発明は、ピッチ225で間隔をあけた一連のマイクロレンズ220の下にある一連のプリントアイコン210、211の断面図を示す図2から理解されることができる。各アイコン210、211が多数のピクセル230で構成されることが理解されよう。さらに、各アイコンがピクセルの2次元行列であり、理解を容易にするために図2には一次元のみが示されていることが理解されよう。本発明のセキュリティ特徴では、ピクセル230の数は、特定のアイコン210、211に関連付けられた行列間で変動する。例えば、アイコン211の行列は、アイコン210の行列よりも1ピクセル多いことがわかる。このようにして、アイコンに対応する行列のサイズが変動し、レンズピッチと比較してアイコンピッチに有効な差異を与えることができる。
【0042】
各アイコンは、ピクセルの2次元行列として設計される。アイコンの設計でのピクセル数によって、プリント後のアイコンのサイズが決まる。例えば、アイコンが28x28ピクセルのアイコン行列として設計され、各ピクセルが2.5μmの正方形としてプリントされる場合、結果として得られるアイコンのサイズは70μmである。
【0043】
同一サイズのアイコン行列のアレイを提供するのではなく、本発明では、プリント画像は繰り返される行列セットのアレイとして設計される。各セットには、アイコン行列(上記の例では28ピクセル幅)に対応する多数の行列と、アイコン行列とは異なるサイズの少なくとも1つの行列とが含まれる。このように、行列の平均サイズはアイコン行列のサイズ(行列のモーダルサイズである)とは異なる。設計により、行列のモーダルサイズはアレイ内の光学素子のピッチに対応する。行列の平均サイズによって、プリント画像内のアイコンの有効ピッチが決まる。上記の背景技術のセクションで説明した従来技術のプリント画像の設計と比較すると、一旦プリントされると、本発明の平均行列サイズはアイコンピッチに等しく、本発明のモーダル行列サイズはアイコンサイズに等しい。つまり、モーダルプリント行列サイズと平均プリント行列サイズとの間の差異は、拡大率M=P/Δの計算における量Δに相当する。
【0044】
上記の例を取ると、行列のアレイは3つの行列のセットに群化され得、そのうちの2つはアイコン行列(つまり、28ピクセル幅)として設計され、3つ目の幅は1ピクセル追加され、次のシーケンスを与える:
...,28,28,29,28,28,29,...
この場合、アレイ全体の行列にわたるアイコンの平均幅は28.33ピクセルである。ピクセルあたり2.5μmでプリントされると、これは70.83μmの平均行列サイズに相当し、モーダル行列サイズまたはアイコン行列サイズは70μmである。設計により、モーダル行列サイズは、オーバーレイするレンズアレイ内のレンズ素子のピッチに対応する。
【0045】
その結果、アイコンのアレイの有効ピッチはレンズ素子のピッチとは0.83μmだけ異なる。これにより、M=P/Δ=+84xの拡大率になる。これにより、アイコンがその元のサイズの84倍に拡大され、セキュリティ特徴自体の平面と比較して見る人から遠ざかる平面上に配置されるという視覚効果が与えられる。
【0046】
平均行列サイズ、したがってアイコンのアレイの有効ピッチがレンズ素子のピッチよりも小さいように、第二行列がアイコン行列よりも(1ピクセル追加するのではなく)1ピクセル少ない可能性があることが理解されよう。このような場合、拡大率の符号が逆になり、平面が見る人に近づいてくるという視覚効果を与える。
【0047】
上記の例が、行列からのピクセルのカラムの追加または省略に関して説明されているが、いくつかの実施形態では、ピクセルのロウが追加される、または省略されることが理解されよう。他の実施形態では、ロウとカラムとの両方が省略される。
【0048】
第一タイプの行列及び第二タイプの行列のピクセル値は、様々な方法で決定されることができる。例えば、第二タイプの行列のピクセル値は、アイコン行列のスケーリングバージョンである画像に対応し、アイコン行列よりも大きいか小さいかいずれかである場合がある。あるいは、第二タイプの行列は、アイコン行列のトリミングバージョンであってもよく、すなわち、ピクセルの1つ以上のカラム及び/またはロウが除去されていることを除いて、アイコン行列に対応してもよい。あるいは、第二タイプの行列は、追加のパディングまたはホワイトスペースによるアイコン行列のバージョンであってもよく、つまり、ピクセルの1つ以上の追加のカラム及び/またはロウを有することを除いて、アイコン行列に対応してもよい。
【0049】
あるいは、第一行列タイプがアイコン行列であるのではなく、第一及び第二行列のそれぞれをアイコン行列設計から個別に導出することもできる。例えば、第一行列及び第二行列はそれぞれ、異なるサイズを有するように、異なるスケール因子を有する、同じアイコン行列のスケーリングバージョンであってもよい。
【0050】
従来技術のセキュリティ特徴とは対照的に、アイコンのピッチとレンズのピッチとの間の有効な差異は、最小印刷解像度によって決まらなくなり、代わりに、繰り返されるシーケンス内の平均行列サイズによって決まり、これには、より多くのアイコン行列が含まれる場合があり、平均行列サイズとモーダル行列サイズとの間の差異がさらに小さくなる。
【0051】
さらに、アイコンピッチとレンズピッチとの間の有効な差異が、プリント画像とレンズアレイとの間の配向における差異によってではなく、プリント設計によって得られるため、異なる有効ピッチの差異(したがって異なる拡大効果)は、セキュリティ特徴の様々な領域に与えられることができる。
【0052】
セキュリティ特徴では、弁別的で複雑な視覚効果を与えることが望ましい。視覚効果が弁別的になるほど、セキュリティデバイスの見る人によって認識可能な、所与の文書が真正であるかどうかを確認することが容易になる。視覚効果が複雑になるほど、セキュリティ特徴の偽造コピーを作成することが難しくなる場合がある。
【0053】
設計内で様々な拡大率を示すセキュリティ特徴
上述のように、上述の方法により、画像全体で異なる領域が異なる有効な拡大率を有することができるように、セキュリティ特徴を設計することができる。本発明の一態様では、セキュリティ特徴の異なる領域が異なる見かけの拡大率を示すようにプリント画像を設計することができる。このため、特に弁別的で複雑な視覚設計を提供することが可能である。
【0054】
例えば、図3Aから図3Cを参照すると、設計300は、第二フレーム部分320によって包囲された第一中央部分310に分離されることができる。図3Bに示される第一例として、中央部分310は、(上記の慣例において)「正の」符号の拡大率を有する第一設計を有することができることにより、見る人から遠ざかる平面として見える、すなわち、セキュリティ特徴の平面の「後ろ」にあるように見える。フレーム部分320は、「正」の符号を有するが、中央部分より小さい拡大率を有する場合があるため、見る人から遠ざかる平面上にあるが、中央部分よりもセキュリティデバイスの平面に近い奥行きにあるように見える。このようにして、フレーム部分が中央部分より「上」に浮かんでいるように見える。
【0055】
図3Cに示されるさらなる例として、第二部分は、第一部分とは異なる符号の拡大率を有するように設計され得る。例えば、フレーム部分は、「負」の符号の拡大率を有するため、見る人に近づく平面の上に見える、すなわち、セキュリティ特徴の平面より「上」に見えるように設計され得る。
【0056】
図4に示される別の例として、全く拡大されていないように見えるため、セキュリティ特徴自体の平面内にあるように見える画像の一部をプリントすることにより、設計がさらに増強されることができる。図示されるように、設計400は、見る人から遠ざかる平面の上にあるように見えるような正の符号の拡大率を有する第一中央部分410を含み得る。これは、「負」の符号の拡大率を有するため、見る人に近づく平面の上に現れる第二フレーム部分420によって包囲されている。第三部分440は、見かけの拡大率を全く有しないため、第一部分410及び第二部分420の平面の間の、セキュリティ特徴自体の平面430の上にあるように見えるように設計されている。
【0057】
見かけの拡大率を有しない部分440を提供する1つの方法は、マイクロレンズに比べて大きい設計特徴としてプリント画像を設計することである。上記の例では、非拡大部分440は、画像の中心にあるマクロスケールの円形設計である。設計がマイクロレンズに比べて大きいため、各マイクロレンズの下のピクセルは実質的に均一になり(つまり、マイクロレンズの下の実質的にすべてのピクセルが実質的に同じピクセル値を有し)、したがって、そのマイクロレンズでの画像の外観は、視野角を変えても変化しないように見える。したがって、非拡大部分は、セキュリティデバイスの平面430に静止画像として現れる。
【0058】
そのような設計を増強できるさらなる方法は、セキュリティ特徴の平面にあるアニメーション化オブジェクトを生じさせる部分を有するようにプリント画像を設計することによるものである。再び図4を参照すると、これは、設計の非拡大部分に対応するプリント画像の領域440が非拡大アニメーション化設計を提供するようにプリント画像を設計することによって達成されることができる。この場合、領域440内で、各レンズより下のピクセルはそれぞれアニメーションの異なる「フレーム」に対応し、アニメーションの異なるフレームのピクセルはレンズの下でインターレースされる。つまり、設計の非拡大部分は多数のレンズにまたがっており、各レンズの下の行列は、例えば、ピクセルの28x28行列である可能性がある。これは、概念的には「設計」ピクセルの14x14行列に分割される可能性がある(つまり、各ピクセルはプリントピクセルの高さ及び幅の2倍である)。設計の非拡大部分は、14x14=196フレームのアニメーションを有するように設計されている。アニメーションのフレームごとに、各レンズは特定のピクセル値に関連付けられ、そのピクセル値はそのレンズの下の対応するフレームピクセルに割り当てられる。このようにして、アニメーションの異なるフレームに対応する画像のピクセル値は、アニメーション化されたオブジェクトに対応する設計の領域全体でインターレースされる。
【0059】
したがって、ユーザは、セキュリティ特徴のこの部分を様々な角度から見ると、インターレースされたピクセルの異なるセットを見る。それらのピクセルは、アニメーションの特定のフレームに対応している。例えば、アニメーションのフレームによって、ユーザが設計を見る角度を変えると、設計の非拡大部分が様々な色を周期的に繰り返すように、設計の非拡大部分は、ユーザに対して異なる色を表示する場合がある。あるいは、各フレームは、セキュリティ特徴が傾いている場合に画像の非拡大部分が動いているように見える単純なモーションアニメーションのフレームであってもよい。
【0060】
プリント画像、セキュリティ特徴、またはセキュリティ文書を作成する方法
別の実施形態では、セキュリティ特徴にプリント画像を生成する方法が開示されており、この方法は、本明細書に詳述される方法のいずれかに従ってセキュリティ特徴にプリント画像を設計することと、セキュリティ特徴を製作することとを含む。
【0061】
セキュリティ特徴を製作するには、通常、画像をプリントする。マイクロ光学素子(マイクロレンズなど)のアレイをプリント画像上にオーバーレイする。あるいは、基板の裏面の上には画像をプリントし得、その表面の上にはマイクロ光学素子のアレイがある。さらに代替に、プリント画像は、レーザプリントプロセスを使用してマイクロ光学アレイを通してプリントされてもよい。さらに代替に、セキュリティ特徴は、基板の裏面に特徴をエンボス加工し、それらの特徴をインクで充填してプリント画像を提供することによって製作されることができる。
【0062】
別の実施形態では、プリント画像を含むセキュリティ特徴が開示されており、プリント画像は、本明細書で詳述される方法のいずれかに従って設計される。いくつかの実施形態では、セキュリティ特徴は、光学素子のアレイをさらに含み得る。別の実施形態では、セキュリティ文書は、本明細書で開示されるセキュリティ特徴を含み得る。いくつかの実施形態では、セキュリティ文書は紙幣であってもよい。他の実施形態では、セキュリティ文書は、パスポート、運転免許証、IDカード、または他の政府文書のいずれであってもよい。
【0063】
コンピュータ読み出し可能命令
別の実施形態では、コンピュータ可読命令を格納する非一時的なコンピュータ可読媒体が開示されており、これらコンピュータ可読命令は、実行されると、プロセッサを備えるマシンに、本明細書に開示された方法のいずれかを実行させる。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-11-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セキュリティ特徴内のプリント画像の少なくとも領域を設計する方法であって、
前記セキュリティ特徴は前記プリント画像をオーバーレイする光学素子のアレイを含み、
前記方法は、
前記セキュリティ特徴のユーザが見るアイコンを表すピクセル値を有するピクセルのロウ及びカラムを含むアイコン行列を設計することと、
前記アイコンの所望の拡大率を与えるために所望のギャップサイズを決定することであって、前記所望の拡大率は、印刷されると、前記所望のギャップサイズによって分割された前記アイコン行列のサイズに等しい、決定することと、
ピクセルの2次元行列のアレイを生成することであって、前記アレイは繰り返される行列セットのシーケンスを含む、前記生成することと、
を含み、
各セットは、第一サイズを有する第一タイプの行列の第一数と、第二サイズを有する第二タイプの行列の第二数とを含み、
前記第一タイプの前記行列及び前記第二タイプの前記行列は前記アイコン行列に基づいており、前記第一タイプの前記行列は、前記アイコン行列に対応しており、
前記第一数、前記第二数、前記第一サイズ、及び前記第二サイズは、前記セット内の各行列の平均サイズがモーダル行列サイズから前記所望のギャップサイズだけ変位するように選択され、光学素子のアレイのピッチは前記モーダル行列サイズに等しく、
前記第二タイプの前記行列は、前記第一タイプの前記行列よりも少なくとも1つ追加のカラムを含み、前記第二タイプの前記行列は、前記第一タイプの前記行列よりも少なくとも1つ少ないカラムを含む、前記方法。
【請求項2】
前記所望のギャップ寸法を決定するステップは、ギャップサイズを計算することを含み、前記ギャップサイズは、前記アイコン行列に対応する繰り返される行列のアレイに、前記繰り返される行列が前記ギャップサイズだけ離隔されて前記光学素子のアレイを介して見られる場合、所望の拡大効果を生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第二タイプの前記行列は、前記第一タイプの前記行列よりも少なくとも1つ追加のロウを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第二タイプの前記行列は、前記第一タイプの前記行列よりも少なくとも1つ少ないロウを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記第二数は1である、請求項1からのいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記第一タイプの前記行列は同一である、請求項1からのいずれかに記載の方法。
【請求項7】
セキュリティ特徴内にプリント画像を設計する方法であって、
前記プリント画像を複数の領域に分割し、前記複数の領域のうちの第一領域に関して、
その領域に関連付けられた第一アイコン設計を提供し、その領域に関連付けられた所望の第一拡大率を与えることと、
前記アイコン行列が前記第一アイコン設計を表し、前記所望の拡大率が前記所望の第一拡大率である、求項1~6のいずれかに記載の前記方法に従って前記第一領域を設計することと、
を含む、前記方法。
【請求項8】
前記複数の領域のうちの第二領域に関して、
前記複数の領域のうちの前記第二領域に関連付けられた第二アイコン設計を提供し、前記第二領域に関連付けられた所望の第二拡大率を与えることと、
前記アイコン行列が前記第二アイコン設計を表し、前記所望の拡大率が前記所望の第二拡大率である、求項1~7のいずれかに記載の前記方法に従って前記第二領域を設計することと、
をさらに含み、
前記所望の第二拡大率は、前記所望の第一拡大率とは異なり、第一領域の前記モーダル行列サイズは、前記第二領域の前記モーダル行列サイズと同じである、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記第二アイコン設計は、第一アイコン設計とは異なる、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記複数の領域のうちのさらなる領域に静的設計素子に対応する領域を提供することをさらに含み、前記光学素子に対する前記静的設計素子のサイズは、前記静的設計素子に対応する前記領域内の前記セキュリティ特徴内の各光学素子の下の前記ピクセルが実質的に均一になる結果をもたらす、請求項からのいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記複数の領域のうちのさらなる領域に、アニメーション化された設計素子に対応する領域を提供することをさらに含み、前記アニメーション化された設計素子に対応する前記領域に、前記プリント画像は、各レンズがピクセル行列をオーバーレイするように設計され、各ピクセルはアニメーションの一連のフレーム内のアニメーションの特定のフレームに関連付けられる、請求項から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに従って設計されたプリント画像をプリントすることを含む、セキュリティ特徴を生成する方法。
【請求項13】
前記プリント画像上に光学素子のアレイを配置することをさらに含み、各光学素子は前記モーダル行列と実質的に同じサイズである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
セキュリティ特徴のプリント画像であって、前記セキュリティ特徴は、前記プリント画像をオーバーレイする光学素子のアレイを含み、
前記プリント画像の少なくとも1つの領域は、繰り返されるセットのシーケンスを含むピクセルの2次元行列のアレイを含み、各セットは、第一サイズを有する第一タイプの行列の第一数、及び第二サイズを有する第二タイプの行列の第二数を含み、
前記第一タイプの前記行列及び前記第二タイプの前記行列は、前記セキュリティ特徴のユーザが見るアイコンを表すピクセル値を有するピクセルのロウ及びカラムを含むアイコン行列に基づいており、前記第一タイプの前記行列は、前記アイコン行列に対応しており、
前記第一数、前記第二数、前記第一サイズ、及び前記第二サイズは、前記プリント画像が前記光学素子のアレイを通して見える場合、前記アイコンの所望の拡大率を与えるために、前記セット内の各行列の平均サイズがモーダル行列サイズから所望のギャップサイズだけ変位するように選択され、前記所望の拡大率は、印刷されると、前記所望のギャップサイズによって分割された前記アイコン行列のサイズに等しく、光学素子のアレイのピッチは前記モーダル行列サイズに等しく、
前記第二タイプの前記行列は、前記第一タイプの前記行列よりも少なくとも1つ追加のカラムを含み、前記第二タイプの前記行列は、前記第一タイプの前記行列よりも少なくとも1つ少ないカラムを含む、前記セキュリティ特徴のプリント画像。
【請求項15】
前記第二タイプの前記行列は、前記第一タイプの前記行列よりも少なくとも1つ追加のロウを含む、請求項14に記載のプリント画像。
【請求項16】
前記第二タイプの前記行列は、前記第一タイプの前記行列よりも少なくとも1つ少ないロウを含む、請求項14に記載のプリント画像。
【請求項17】
前記第二数は1である、請求項1416のいずれかに記載のプリント画像。
【請求項18】
前記第一タイプの前記行列は同一である、請求項1417のいずれかに記載のプリント画像。
【請求項19】
前記画像は複数の領域を含み、前記少なくとも1つの領域は前記複数の領域のうちの第一領域であり、前記第一領域での前記アイコン行列は第一アイコン行列であり、前記第一領域での前記所望の拡大率は所望の第一拡大率である、請求項1418のいずれかに記載のプリント画像。
【請求項20】
前記複数の領域は第二領域を含み、前記第二領域での前記アイコン行列は第二アイコン行列であり、前記第二領域での前記所望の拡大率は所望の第二拡大率であり、前記第二領域での前記モーダル行列サイズは前記第一領域での前記モーダル行列サイズと同じである、請求項19に記載のプリント画像。
【請求項21】
二アイコン設計は、第一アイコン設計とは異なる、請求項20に記載のプリント画像。
【請求項22】
静的設計素子に対応する領域をさらに含み、前記光学素子に対する前記静的設計素子の前記サイズは、前記静的設計素子に対応する前記領域内の前記セキュリティ特徴における各光学素子の下の前記ピクセルが実質的に均一になる結果をもたらす、請求項19から21のいずれかに記載のプリント画像。
【請求項23】
アニメーション化された設計素子に対応する領域をさらに含み、前記アニメーション化された設計素子に対応する前記領域に、前記プリント画像は、各レンズがピクセル行列をオーバーレイするように設計され、各ピクセルはアニメーションの一連のフレーム内のアニメーションの特定のフレームに関連付けられる、請求項19から22のいずれかに記載のプリント画像。
【請求項24】
請求項14から23のいずれかに記載の前記プリント画像と、
前記プリント画像をオーバーレイする同一の光学素子のアレイと、
を含む、セキュリティ特徴。
【請求項25】
請求項24の前記セキュリティ特徴を含むセキュリティ文書。
【請求項26】
前記セキュリティ文書は、紙幣、パスポート、運転免許証、及び身分証明書の1つである、請求項25に記載のセキュリティ文書。
【請求項27】
実行されると、プロセッサを含むマシンに請求項1~11のいずれかに記載の前記方法を実行させるコンピュータ可読命令を格納する、非一時的なコンピュータ可読媒体。
【国際調査報告】