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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-19
(54)【発明の名称】工具交換装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/157 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
B23Q3/157 R
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534164
(86)(22)【出願日】2021-11-29
(85)【翻訳文提出日】2023-07-31
(86)【国際出願番号】 EP2021083316
(87)【国際公開番号】W WO2022122443
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】01556/20
(32)【優先日】2020-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】599172531
【氏名又は名称】ライシャウァー アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ムラー,ミヒェル
(72)【発明者】
【氏名】ゼンハウザー ,エアヴィン
(72)【発明者】
【氏名】フェルマン,オリヴィエル
(72)【発明者】
【氏名】クリエ,ピルミン エリク
【テーマコード(参考)】
3C002
【Fターム(参考)】
3C002FF02
3C002KK04
3C002LL06
(57)【要約】
工具交換装置200は、工作機械100における工具500を交換するように機能する。工具交換装置は、昇降キャリッジ240が鉛直昇降方向Z3に沿ってガイドされる支持構造体210を有する。ピボットアーム250が、昇降キャリッジ240に、鉛直ピボット軸C3を中心に旋回可能であるように取り付けられる。鉛直方向に上下に配置される複数の工具ホルダー221、222、223、230が、工具マガジン220を形成する。工具グリッパー260が、ピボットアーム250に取り付けられる。工具グリッパーは、工具500を把持する。その後、工具は、ピボットアーム250の昇降運動及び旋回運動の組合せによって、工具ホルダーのうちの1つと工作機械の工具スピンドルとの間で移動される。任意選択で、追加のアーム252が、ピボットアーム250に旋回可能に取り付けられる。追加のアーム252を用いて、工作機械のワーククランプ手段を取り替えることができる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械(100)、特に歯切り盤において工具(500)を交換する工具交換装置(200)であって、
支持構造体(210)と、
空間内で鉛直に延在する昇降方向(Z3)に沿って前記支持構造体(210)上でガイドされる昇降キャリッジ(240)と、
空間内で鉛直方向に延在するピボット軸(C3)を中心に旋回可能であるように、前記昇降キャリッジ(240)に旋回可能に取り付けられるピボットアーム(250)と、
前記ピボットアーム(250)上に取り付けられ、工具(500)を把持するように構成される工具グリッパー(260)と、
鉛直方向に上下に配置される複数の工具ホルダー(221、222、223、230)を備える工具マガジン(220)と、
を備え、
前記工具交換装置(200)は、前記工具グリッパー(260)によって把持された工具(500)を、前記ピボットアーム(250)の昇降運動及び旋回運動の組合せによって、前記工具ホルダー(221、222、223、230)のうちの1つと前記工作機械(100)の工具スピンドル(170)との間、又は前記工具マガジン(200)の2つの異なる工具ホルダー(221、222、223、230)の間で選択的に移動させるように構成される、工具交換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の工具交換装置(200)であって、
前記支持構造体(210)は、下端部が前記工作機械(100)の機械ベッド(110)上に取り付けられるように構成される鉛直支柱を含み、
前記昇降キャリッジ(240)は、前記支柱上を前記昇降方向(Z3)に沿ってガイドされ、
好ましくは、前記工具ホルダー(221、222、223、230)は、前記支柱に取り付けられる、工具交換装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の工具交換装置(200)であって、前記工具ホルダーのうちの1つ(230)は、前記工具マガジン(220)の装填を容易にするように、前記支持構造体(210)に移動可能に、特に、水平装填方向(X4)に沿って変位可能及び/又は鉛直装填ピボット軸(C4)を中心に旋回可能に取り付けられる、工具交換装置。
【請求項4】
請求項3に記載の工具交換装置(200)であって、前記工具交換装置(200)の内部空間を外部空間から分離する外壁(400)を備え、
前記外壁は、前記内部空間と前記外部空間との間で工具(500)を交換するための工具装填開口(410)を有し、
可動工具ホルダー(230)は、前記工具装填開口(410)を通して移動可能であり、
前記工具交換装置(200)は、好ましくは、前記工具装填開口(410)を選択的に開閉するように構成される工具装填ドア(420)を備える、工具交換装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の工具交換装置(200)であって、
装填リニアガイド(231)と、
前記装填リニアガイド(231)上を前記水平装填方向(X4)に沿って変位可能にガイドされる装填キャリッジ(232、233)と、
を備え、
可動工具ホルダー(230)は、前記鉛直装填ピボット軸(C4)を中心に旋回可能であるように、前記装填キャリッジ(232、233)上に取り付けられる、工具交換装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の工具交換装置(200)であって、前記工具交換装置(200)の内部空間を前記工作機械(100)の加工空間から分離するように構成される仕切り(300)を更に備え、
前記仕切り(300)は、仕切り開口(320)を備え、
前記工具交換装置(200)は、前記仕切り開口(320)を選択的に開閉するように構成される仕切りドア(330)を備え、
前記工具グリッパー(260)が取り付けられた前記ピボットアーム(250)は、前記昇降キャリッジ(240)の少なくとも1つの位置において、前記仕切り開口(320)を通して移動可能である、工具交換装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の工具交換装置(200)であって、前記工具(500)上の機械可読データキャリア(521)を読み取る読取りステーション(600)を更に備え、
前記読取りステーション(600)は、前記工具グリッパー(260)によって保持された工具(500)上の前記データキャリア(521)を読み取るために、前記工具(500)が、前記ピボットアーム(250)の昇降運動及び旋回運動の組合せによって前記読取りステーション(600)へと移動可能であるように配置される、工具交換装置。
【請求項8】
請求項7に記載の工具交換装置(200)であって、前記読取りステーション(600)は、基部(610)と、前記データキャリア(521)を読み取る読取り装置(630)と、前記基部(610)と前記読取り装置(630)との間に配置されるばね部材(640)とを備え、前記読取り装置(630)は、前記ばね部材(640)によってもたらされる復元力に抗して、前記基部(610)に対して鉛直下方に移動可能になっている、工具交換装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の工具交換装置(200)であって、工具クリーナー(700)を更に備え、
前記工具クリーナー(700)は、前記工具グリッパー(260)によって保持された工具(500)が、前記工具(500)の工具支持部(510)を清掃するために、前記ピボットアーム(250)の昇降運動及び旋回運動の組合せによって、前記工具クリーナー(700)に向かって移動可能であるように配置される、工具交換装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の工具交換装置(200)であって、前記工具グリッパー(260)は、2つ以上の工具(500、500’)を把持する少なくとも2対のグリッパージョー(261、262;261’、262’)を有する複数のグリッパーとして構成される、工具交換装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の工具交換装置(200)であって、前記工具グリッパー(260)は、前記ピボットアーム(250)に移動可能に、特に、旋回可能に、例えば、鉛直グリッパーピボット軸(C6)を中心に若しくは水平グリッパーピボット軸(C8)を中心に旋回可能に、及び/又は、変位可能に、特に、水平グリッパー変位方向(Y3)に沿って直線変位可能に取り付けられる、工具交換装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の工具交換装置(200)であって、
前記工具スピンドル(170)のテーパーレセプタクル(171)を清掃するテーパークリーナー(530)、及び/又は、
特に前記工作機械(100)のワーククランプ手段(140)の径方向及び軸方向の振れを測定する測定プローブ(540)を更に備え、
前記テーパークリーナー(530)は、前記ピボットアーム(250)の昇降運動及び旋回運動の組合せによって前記工具スピンドル(170)に向かって移動可能であるように、前記工具グリッパー(260)によって把持可能であり、
前記測定プローブ(540)は、前記ピボットアーム(250)の昇降運動及び旋回運動の組合せによって測定位置に移動することができるように、前記工具グリッパー(260)によって把持可能である、工具交換装置。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の工具交換装置(200)であって、前記ピボットアーム(250)上に取り付けられるとともに、ワーク(800)をワークレスト(280)から取り上げて前記工作機械(100)のワークスピンドル(130)に移送するように構成される、ワークグリッパー(270)を更に備える、工具交換装置。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の工具交換装置(200)であって、
前記昇降方向(Z3)に沿って昇降運動を実行するように前記昇降キャリッジ(240)を駆動する昇降キャリッジ駆動部(242)と、
前記ピボット軸(C3)を中心に前記昇降キャリッジ(240)に対して旋回運動を実行するように前記ピボットアーム(250)を駆動するピボット駆動部(256)と、
前記昇降キャリッジ駆動部(242)、前記ピボット駆動部(256)、及び前記工具グリッパー(260)を制御するように構成される制御装置(180)と、
を更に備える、工具交換装置。
【請求項15】
請求項13に記載の工具交換装置(200)であって、制御装置(180)は、以下の動作のうちの少なくとも1つを実行するように構成される、工具交換装置:
a)前記工具グリッパー(260)によって工具(500)を把持すること、
b)前記工具グリッパー(260)によって把持された工具(500)を、前記ピボットアーム(250)の昇降運動及び旋回運動の組合せによって、前記工具ホルダー(221、222、223、230)のうちの1つと前記工作機械(100)の工具スピンドル(170)との間で移動させること、
c)前記工具グリッパー(260)によって把持された工具(500)を、前記ピボットアーム(250)の昇降運動及び旋回運動の組合せによって、前記工具マガジン(220)の2つの異なる工具ホルダー(221、222、223、230)の間で移動させること、
d)前記工具交換装置が請求項6に従って構成される場合、仕切りドア(330)を開閉すること、
e)前記工具交換装置が請求項7又は8に従って構成される場合、前記工具グリッパー(260)によって把持された工具(500)を、前記ピボットアーム(250)の昇降運動及び旋回運動の組合せによって読取りステーション(600)に移動させ、前記把持された工具(500)上のデータキャリア(521)を読み取ること、
f)前記工具交換装置が請求項9に従って構成される場合、前記工具グリッパー(260)によって把持された工具(500)を、前記ピボットアーム(250)の昇降運動及び旋回運動の組合せによって工具クリーナー(700)に移動させ、前記把持された工具(500)の工具支持部(510)を、工具クリーナー(700)によって清掃すること、
g)前記工具交換装置が請求項11に従って構成される場合、前記工具グリッパー(260)を前記ピボットアーム(250)に対して移動させること、
h)前記工具交換装置が請求項12に従って構成される場合、前記工具グリッパー(260)によって把持されたテーパークリーナー(530)を、前記ピボットアーム(250)の昇降運動及び旋回運動の組合せによって前記工具スピンドル(170)に移動させること、
j)前記工具交換装置が請求項12に従って構成される場合、前記工具グリッパー(260)によって把持された測定プローブ(540)を、前記ピボットアーム(250)の昇降運動及び旋回運動の組合せによって測定位置に移動させること、
k)前記工具交換装置が請求項13に従って構成される場合、ワーク(800)を前記ワークグリッパー(270)によって把持し、前記ワークグリッパー(270)によって把持されたワーク(800)を、前記ピボットアーム(250)の昇降運動及び旋回運動の組合せによって、ワークレスト(280)と前記工作機械(100)のワークスピンドル(130)との間で移動させること。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の工具交換装置(200)であって、
前記ピボットアーム(250)に、鉛直方向に延在する補助ピボット軸(C5)を中心に旋回可能に取り付けられる補助アーム(252)を更に備え、
前記補助アーム(252)の前記補助ピボット軸(C5)及び前記ピボットアーム(250)の前記ピボット軸(C3)は、平行かつ互いに離隔するようになっており、
前記補助アーム(252)は、好ましくは、前記補助ピボット軸(C5)の周りの前記補助アーム(252)の旋回運動を防止するために、静止位置において前記ピボットアーム(250)に係止可能であり、
前記補助アーム(252)は、前記工作機械(100)のワーククランプ手段(140)が取り付けられるように構成される、工具交換装置。
【請求項17】
請求項16に記載の工具交換装置(200)であって、
前記補助アーム(252)及び前記ワーククランプ手段(140)に取外し可能に接続されるように構成されるクランプ手段ホルダー(255)を更に備え、前記ワーククランプ手段(140)は、前記クランプ手段ホルダー(255)を介して前記補助アーム(252)に取り付けられる、特に懸架されるようになっている、クランプ手段ホルダー(255)を更に備える、工具交換装置。
【請求項18】
請求項16又は17に記載の工具交換装置(200)であって、力変換器(258)が、鉛直方向における前記補助アーム(252)上の負荷を検出するように、前記補助アーム(252)上に配置される、工具交換装置。
【請求項19】
工作機械(100)であって、
機械ベッド(110)と、
工具(500)を工具軸(B)を中心に回転させるように駆動する工具スピンドル(170)と、
請求項1~18のいずれか1項に記載の工具交換装置(200)と、
を備え、
前記工具スピンドル(170)は、好ましくは、前記工具軸(B)が空間内で鉛直方向に延在する位置にもたらすことができるように、前記工作機械(100)において旋回可能に配置され、
前記工具交換装置(200)は、前記工具グリッパー(260)によって把持された工具(500)が、前記ピボットアーム(250)の昇降運動及び旋回運動の組合せによって、前記工具ホルダー(221、222、223、230)のうちの1つから前記工具スピンドル(170)へと移動可能であるように、前記機械ベッド(110)上に配置される、工作機械。
【請求項20】
請求項19に記載の工作機械(100)であって、ワーククランプ手段(140)を有するワークスピンドル(130)を更に備え、
前記工具交換装置(200)は、請求項16~19のいずれか1項に従って形成され、
前記ワークスピンドル(130)は、前記補助アーム(252)が前記ピボットアーム(250)に対して静止位置から外方に旋回すると、前記ワーククランプ手段(140)を前記補助アーム(252)に取り付けることができるように、前記機械ベッド(110)上に配置される、工作機械。
【請求項21】
工作機械(100)におけるワーククランプ手段(140)を交換するための、請求項16~19のいずれか1項に記載の工具交換装置(200)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の工具交換装置、工具交換装置を備える工作機械、及びそのような工具交換装置の使用に関する。工作機械は、特に歯車創成加工を行う歯切り盤であり得る。交換が行われる工具は、特に、ギヤスカイビング工具であり得る。
【背景技術】
【0002】
工作機械において、多くの場合、例えば、摩耗した工具を研ぎ直すために、1つの工具を別の工具に取り替えることが必要である。これは、特に歯切り盤にも当てはまる。例えば、ギヤスカイビング工具は、耐用寿命があるため、定期的に取り替えなければならない。工具交換に要する労力及び時間を削減するために、現行の技術水準において自動工具交換装置が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1は、ホブ盤における工具交換装置を開示している。工具交換中、ホブカッターの形態の工具がホブ盤の工具ヘッドから取り外され、懸架装置によって取り上げられる。懸架装置は、水平移送レールによって中間位置に移送され、そこで、取外し位置へと鉛直軸を中心に回転して、ホブカッターを取り外すことができる。その設計に起因して、この工具交換装置は、工具回転軸が水平である機械にのみ、及び工具ヘッドの両側に取り付けられる工具にのみ好適である。工具交換装置は、特にギヤスカイビング工具には好適でない。また、この工具交換装置は、多くのスペースをとる。
【0004】
特許文献2は、3つのキャリッジを備えるキャリッジユニット上に取り付けられるグリッパーを備える工具交換装置を開示している。フライス工具は、循環マガジン内に鉛直に懸架される。循環マガジンにおける回転は、水平面において起こる。フライス工具は、工具交換装置によって、循環マガジンと機械加工ヘッドとの間で往復移送することができる。その設計に起因して、この工具交換装置も、工具ヘッドの両側に取り付けられる工具にのみ好適であり、したがって、ギヤスカイビング工具には好適でない。加えて、この工具交換装置も多くのスペースをとる。
【0005】
特許文献3は、水平キャリッジによって、循環マガジンと機械加工ヘッドとの間でギヤスカイビング工具を往復移送する工具交換装置を開示している。ここでは、循環マガジンの循環は、鉛直面において起こる。この工具交換装置も、比較的大きなスペースを要する。
【0006】
特許文献4は、ギヤスカイビング工具の交換にも使用できる工具交換装置を開示している。工具は、ドラム形状の工具マガジンに保管される。工具交換装置は、水平軸を中心に旋回することができるダブルアームを有する。把持セクションが、ダブルアームの自由端部のそれぞれに形成される。ダブルアームは、把持セクションによって、工具スピンドル上にクランプされた機械加工工具と、工具マガジンから排出された工具との双方を把持し、これらの2つの工具を互いに交換する。この工具交換装置も、比較的大きなスペースをとる。
【0007】
特許文献5は、上下に配置された工具ホルダー内に複数の曲げ工具が保管される工具マガジンを開示している。関節式アームロボットがマガジンから工具を取り外し、曲げ機械まで移送する。歯切り盤における使用は開示されていない。
【0008】
特許文献6は、ダブルグリッパーが取り付けられる昇降可能かつ回転可能な支柱を備える工具交換装置を開示している。工具交換装置は、工具スピンドルと工具が懸架されるチェーンマガジンとの間で工具を移送する。工具交換装置は、昇降運動及び回転運動をもたらす複雑なカム機構を有する。工具交換装置の設計は、比較的複雑である。ここでも、歯切り盤における使用は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2017/0232564号
【特許文献2】米国特許出願公開第2014/106950号
【特許文献3】米国特許出願公開第2019/070682号
【特許文献4】米国特許出願公開第2020/130120号
【特許文献5】国際公開第2012/027770号
【特許文献6】米国特許出願公開第2010/173762号
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、その構成に起因して、特に省スペースとなるように構成することができる工具交換装置を開示することである。
【0011】
この目的は、請求項1に記載の工具交換装置によって達成される。更なる実施形態は、従属請求項に規定される。
【0012】
工作機械、特に歯切り盤において工具を交換する工具交換装置が開示される。工具交換装置は、
支持構造体と、
空間内で鉛直方向に延びる昇降方向に沿って支持構造体上でガイドされる昇降キャリッジと、
空間内で鉛直方向に延在するピボット軸を中心に旋回可能であるように、昇降キャリッジに旋回可能に取り付けられるピボットアームと、
ピボットアーム上に取り付けられ、工具を把持するように構成される工具グリッパーと、
鉛直方向に上下に配置される複数の工具ホルダーを備える工具マガジンと、
を備え、
工具交換装置は、工具グリッパーによって把持された工具を、ピボットアームの昇降運動及び旋回運動の組合せによって、工具ホルダーのうちの1つと工作機械の工具スピンドルとの間、又は工具マガジンの2つの異なる工具ホルダーの間で選択的に移動させるように構成される。
【0013】
工具マガジンは、鉛直方向に上下に配置されるいくつかの工具ホルダーによって形成されることから、工具マガジンに生じるスペース要件は非常に小さくなる。そのような工具マガジンは、装填及び取出しを非常に容易に行うことができる。このために、本発明は、工具グリッパーを備える水平に旋回可能なピボットアームが旋回可能に取り付けられる、鉛直方向に移動可能な昇降キャリッジを提案する。そのような構成は、シンプルかつ安価に実施することができ、また、スペースもほとんど必要としない。概して、その結果、支持構造体を工作機械の機械ベッドに接続することによって工作機械に直接容易に組み込むことができる、非常にコンパクトな工具交換装置になる。
【0014】
特に、支持構造体は、下端部が工作機械の機械ベッドに取り付けられるように構成される鉛直支柱を備えることができる。また、昇降キャリッジが、支柱上を昇降方向に沿ってガイドされる。工具ホルダーもこの支柱に取り付けられることが好ましい。しかしながら、代替的な実施形態において、工具ホルダーを支持構造体の別の部材に取り付けることも考えられる。
【0015】
工具マガジンの特に単純な装填を可能にするために、工具マガジンの工具ホルダーのうちの1つは、支持構造体に移動可能に、特に、水平装填方向に沿って変位可能に、及び/又は鉛直装填ピボット軸を中心に旋回可能に取り付けることができる。特に、工具交換装置は、工具交換装置の内部空間を外部空間から分離する外壁を備えることができる。また、外壁は、内部空間と外部空間との間で工具を交換するための工具装填開口を備えることができる。したがって、可動工具ホルダーを外部空間からアクセス可能にするために、可動工具ホルダーが工具装填開口を通して移動可能である場合が特に有利である。残りの工具ホルダーは、支持構造体に固定的に接続することができる。
【0016】
工具交換装置は、工具装填開口を選択的に開閉するように構成される工具装填ドアを備えることができる。工具装填ドアは、工具装填開口の開放状態(開又は閉)を制御装置に通知する状態表示器を備えることができる。制御装置は、工具装填開口が開放している限り、工具交換装置の内部の動作を防止する、及び/又は、工具交換装置の内部で動作が実行されている限り、工具装填ドアの開放を防止するように構成することができる。
【0017】
好ましい実施形態において、可動工具交換装置は以下のように実施される。工具交換装置は、装填リニアガイドと、水平装填方向に沿って変位可能であるように装填リニアガイドによってガイドされる装填キャリッジとを有する。また、可動工具ホルダーが、鉛直装填ピボット軸を中心に旋回可能であるように、装填キャリッジ上に取り付けられる。このように可動工具ホルダーの直線変位及び旋回の組合せが可能であることにより、最小のスペース要件で、この工具ホルダーの特に良好なアクセス性がもたらされる。
【0018】
工具交換装置は、工具交換装置の内部空間を工作機械の加工空間から分離するように構成される仕切りを更に備えることが好ましい。また、仕切りは、仕切り開口を備え、工具交換装置は、仕切り開口を選択的に開閉するように構成される仕切りドアを備える。このために、仕切りドアは、対応する駆動部、例えば、空気圧駆動部を備えることができる。仕切り開口は、工具グリッパーが取り付けられたピボットアームが、昇降キャリッジの少なくとも1つの位置において、好ましくは、昇降キャリッジの位置の或る特定の範囲において、開放した仕切り開口を通して移動することができるように、十分な高さがある。また、仕切り開口は、ピボットアームが仕切り開口を通って延びるとき、昇降キャリッジが或る特定の量だけ昇降方向に沿って移動することができるように、十分な高さがあることが好ましい。このようにして、工具交換、及びより詳細に後述する任意選択のクランプ手段の交換及び/又はワークの交換が容易になる。
【0019】
工具交換装置は、読取りステーションを更に備えることができ、読取りステーションは、工具グリッパーによって保持された工具を、ピボットアームの昇降運動及び旋回運動の組合せによって、読取りステーションに移動させ、工具上の機械可読データキャリアを読み取ることができるように配置される。例えば、データキャリアは、RFIDトランスポンダーとすることができる。したがって、読取りステーションは、RFIDトランシーバーを有するRFIDステーションとすることができる。他の実施形態において、データキャリアは、光学データキャリア、例えば、バーコード又はQRコード(登録商標)とすることができ、その場合、読取りステーションは、そのような光学データキャリアを光学的に読み取るように構成することができる。このために、読取りステーションは、光学センサー、例えばカメラと、任意選択で光源、例えばLED光源とを備える対応する読取り装置を備えることができる。磁気データキャリア又は触覚的に読取り可能なデータキャリアも考えられる。
【0020】
読取りステーションに対する損傷を回避するために、読取りステーションは、ばね負荷設計を有することができる。このために、読取りステーションは、基部と、上述した読取り装置と、基部と読取り装置との間に配置されるばね部材とを備えることができ、読取り装置は、ばね部材によってもたらされる復元力に抗して基部に対して鉛直下方に移動することができる。これにより、工具が読取りステーション上に配置されるときに、読取り装置又は対応するデータキャリアに対する損傷が防止される。これは、異なる長さの工具が使用され、それぞれの工具の長さが事前に既知でない場合に特に有利である。読取りステーションにばね負荷を行うことにより、昇降キャリッジは、工具の長さに関わらず、工具を読み取るための同じ位置に常に移動することができる。こうして、工具の長さの差異は、ばね部材によって補償される。
【0021】
工具交換装置は、工具クリーナーを更に備えることができる。工具クリーナーは、工具グリッパーによって保持された工具が、工具の工具支持部を清掃するために、ピボットアームの昇降運動及び旋回運動の組合せによって、工具クリーナーに向かって移動可能に配置されることが好ましい。特に、工具クリーナーは、支持構造体上に、特に工具ホルダーの上方に配置することができる。支持構造体が柱状に形成される場合、工具クリーナーは、支柱の上端部に配置することができる。
【0022】
非生産的なアイドル時間を低減するために、工具グリッパーは、2つ以上の工具を把持することができるように、少なくとも2対のグリッパージョーを有する複数のグリッパーとして構成することができる。
【0023】
工具グリッパーは、ピボットアームに強固に又は移動可能に取り付けることができる。特に、工具グリッパーは、旋回可能であるように、例えば、鉛直又は水平のグリッパーピボット軸を中心に旋回可能に、及び/又は、変位可能に、特に、水平のグリッパー変位方向に沿って直線変位可能であるように、ピボットアーム上に取り付けることができる。
【0024】
工具以外の物体も、これらの物体によって付加的な機能を実行するために、工具グリッパーによって把持することができる。例えば、工具交換装置は、工具グリッパーによって把持されるように構成されるテーパークリーナーを備えることができる。テーパークリーナーは、そのテーパーレセプタクルを清掃するために、ピボットアームの昇降運動及び旋回運動の組合せによって、工具スピンドルに向かって移動させることができる。また、工具交換装置は、測定プローブを備えることができ、この測定プローブは、例えば、工作機械のワーククランプ手段の径方向及び軸方向の振れの測定を行うように構成することができる。また、測定プローブは、さらに、ピボットアームの昇降運動及び旋回運動の組合せによって測定位置に移動させるために、工具グリッパーによって把持可能であるように構成することができる。測定プローブは、工具グリッパーによって測定位置に保持し続けることができるか、又は、測定位置において、工作機械の別の構成要素によって受け取ることができる、例えば、工具スピンドル上にクランプすることができる。
【0025】
工具交換装置は、工具だけでなく、ワークも交換するように構成することができる。このために、工具交換装置は、ピボットアームに取り付けられるワークグリッパーを更に備えることができる。ワークグリッパーは、ピボットアームの昇降運動及び旋回運動の組合せによって工具グリッパーと同様に移動することができる。また、ワークグリッパーは、ワークレストからワークを取り上げ、工作機械のワークスピンドルに移送するように構成することができる。
【0026】
ピボットアームの昇降運動及び旋回運動の組合せをもたらすために、工具交換装置は、昇降方向に沿って昇降運動を実行するように昇降キャリッジを駆動する昇降キャリッジ駆動部と、ピボット軸を中心に昇降キャリッジに対して旋回運動を実行するようにピボットアームを駆動するピボット駆動部とを備えることができる。さらに、工具交換装置は、昇降キャリッジ駆動部、ピボット駆動部、及びグリッパー、並びに任意選択で工具交換装置の他の構成要素を制御するように構成される制御装置を備えることができる。制御装置は、工作機械の機械制御部の一体部分とすることができるが、工具交換装置の構成要素のみを制御し、実際の機械制御部と通信する独立した制御装置を提供することも考えられる。制御装置は、特に、好適にプログラムされた制御コンピューターを含むことができる。この制御コンピューターは、個々の駆動部に対する好適なNC軸モジュールと相互に作用することができる。
【0027】
特に、制御装置は、以下の動作のうちの少なくとも1つを制御するように構成することができる:
a)工具グリッパーによって工具を把持すること、
b)工具グリッパーによって把持された工具を、ピボットアームの昇降運動及び旋回運動の組合せによって、工具ホルダーのうちの1つと工作機械の工具スピンドルとの間で移動させること、
c)工具グリッパーによって把持された工具を、ピボットアームの昇降運動及び旋回運動の組合せによって、工具マガジンの2つの異なる工具ホルダーの間で移動させること、
d)仕切りドアを開閉すること、
e)工具グリッパーによって把持された工具を、ピボットアームの昇降運動及び旋回運動の組合せによって読取りステーションに移動させ、把持された工具上のデータキャリアを読み取ること、
f)工具グリッパーによって把持された工具を、ピボットアームの昇降運動及び旋回運動の組合せによって工具クリーナーに移動させ、把持された工具の工具支持部を、工具クリーナーによって清掃すること、
g)工具グリッパーをピボットアームに対して移動させること、
h)工具グリッパーによって把持されたテーパークリーナーを、ピボットアームの昇降運動及び旋回運動の組合せによって工具スピンドルに移動させること、
j)工具グリッパーによって把持された測定プローブを、ピボットアームの昇降運動及び旋回運動の組合せによって測定位置に移動させること、
k)ワークをワークグリッパーによって把持し、ワークグリッパーによって把持されたワークを、ピボットアームの昇降運動及び旋回運動の組合せによって、ワークレストと工作機械のワークスピンドルとの間で移動させること。
【0028】
これに関して、本発明は、上述したタイプの工具交換装置を動作させる方法も開示し、本方法は、上述した動作a)~k)のうちの少なくとも1つを実行することを含む。
【0029】
好ましい実施形態において、工具交換装置は、工具を交換するために使用されるだけでなく、ワークのクランプ手段を交換するために使用することもできる。このために、工具交換装置は、補助アームの補助ピボット軸及びピボットアームのピボット軸が互いに平行かつ離隔するように、鉛直方向に延在する補助ピボット軸を中心に旋回可能であるように、ピボットアームに取り付けられる補助アームを有する。補助アームは、補助ピボット軸を中心とする補助アームの旋回運動を防止するために、静止位置においてピボットアームに解除可能に係止可能であることが好ましい。補助アームは、工作機械のワーククランプ手段が取り付けられるように構成される。
【0030】
このために、補助アームは、例えば、クランプ手段ホルダー用のレセプタクルを有することができる。このレセプタクルは、例えば、補助アームとクランプ手段ホルダーとの間のバヨネット式接続として構成することができる。このために、レセプタクルは、バヨネット接続を行う任意選択の凹部が内周部にある環状とすることができる。したがって、ワーク交換装置は、ワーククランプ手段がクランプ手段ホルダーを介して補助アームに取付け可能であるように、補助アーム及びワーククランプ手段に取外し可能に接続されるように構成されるクランプ手段ホルダーを備えることもできる。特に、ワーククランプ手段は、補助アームに懸架式に取付け可能とすることができる。これにより、捻り力又は剪断力による負荷を受けないことから、特にシンプルかつ軽量のクランプ手段ホルダーを使用することが可能になる。
【0031】
補助アームにより、ワーク用のクランプ手段を交換することが特に容易になる。現場クレーン、移動式クレーン台車、対応する追加の機能を備えた特別なセットアップ台車等の外的な補助手段はなくてもよい。これにより、大幅にコストを節減することができ、外的な補助手段のスペース要件が排除される。
【0032】
補助アームにかかる鉛直方向の荷重を検出するために、補助アーム上に力変換器を配置することができる。例えば、クランプ手段ホルダー用のレセプタクルは、力変換器を介して補助アームに接続することができる。このようにして、ピボットアーム及び補助アームのシステムの過負荷を検出することができる。
【0033】
本発明は、工作機械におけるワーククランプ手段を交換する上述したタイプの工具交換装置の使用も開示する。対応する方法は、以下のステップのうちの少なくとも1つ、好ましくは全てを含み、これらのステップは、必ずしも示された順序で実行されない:
ピボットアームの昇降運動及び旋回運動の組合せを実行し、補助アームを、クランプ手段ホルダーを介してワーククランプ手段に接続することができる位置にもたらすために、ピボットアームに対して補助アームを旋回させること、
クランプ手段ホルダーを補助アーム及びワーククランプ手段に接続すること、
昇降キャリッジの昇降運動によって、クランプ手段ホルダーを介して補助アームに取り付けられたワーククランプ手段を昇降させること、
ピボットアームを旋回させることによって、クランプ手段ホルダーに取り付けられたワーククランプ手段を工作機械の外部空間に旋回させること、
昇降キャリッジの昇降運動によって、クランプ手段ホルダーに取り付けられたワーククランプ手段をクランプ手段レスト上に置くこと。
【0034】
本発明はさらに、上述したタイプの工具交換装置を備える工作機械に関する。工作機械は、歯切り盤、特に、歯車創成加工用の歯切り盤であり得る。工作機械は、機械ベッド及び工具スピンドルを備える。工具スピンドルは、工具軸を中心に回転する工具を駆動するために使用される。工具スピンドルは、工具交換を実行するために、工具軸が空間内で鉛直方向に延在する位置にもたらすことができるように、工作機械において機械ベッドに対して旋回可能に配置されることが好ましい。また、工具交換装置は、工具グリッパーによって把持された工具が、ピボットアームの昇降運動及び旋回運動の組合せによって、工具マガジンの工具ホルダーのうちの1つから工具スピンドルへと移動できるように、機械ベッド上に配置される。
【0035】
特に、工具スピンドルは、工具グリッパー上に把持された工具を工具スピンドル上にクランプすることができる位置、又は工具がクランプされた状態の工具スピンドルがピボットアームの旋回運動の衝突輪郭の外側に位置する後退位置に、工具スピンドルを選択的に移動させるために、少なくとも1つの移動方向に沿って機械ベッドに対して移動可能とすることができ、この移動方向は、昇降キャリッジの昇降方向に対して横断方向に延在する。この移動方向は、水平であることが好ましい。さらに、工具スピンドルは、昇降キャリッジの昇降方向に対して平行な方向に沿って移動可能であってもよい。
【0036】
工作機械は、ワーククランプ手段を有するワークスピンドルを更に備えることが好ましい。ワークスピンドルは、ワーククランプ手段を駆動してワーク軸を中心に回転させる。ワーク軸は、空間内で鉛直であることが好ましい。工作機械が歯車創成加工用の歯切り盤である場合、工作機械は、工具スピンドルの回転運動とワークスピンドルの回転運動との間の歯車結合を確立する、すなわち、対応する互いの回転速度が、所定の固定比及び所定の位相関係になるようにこれらの動きを結合する機械制御部を有する。
【0037】
ワークスピンドルは、補助アームがピボットアームに対する静止位置から外れるとき、ワーククランプ手段を補助アームに取り付けることができるように、機械ベッド上に配置されることが好ましい。このために、ワークスピンドルは、補助アーム上のレセプタクルが、ワークスピンドル上に位置するワーククランプ手段の鉛直上方に配置される位置に、工具スピンドルをもたらすために、少なくとも一方向に沿って機械ベッドに対して移動することが好ましく、この方向は、昇降キャリッジの昇降方向に対して横方向に延在する。この方向も、水平方向に延在することが好ましい。この方向は、水平に移動する工具スピンドルが沿う水平方向に対して直交することが好ましい。
【0038】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明するが、図面は、単に説明としての役割を果たすものであり、限定するものとして解釈されるべきではない。図面は、それぞれ概略斜視図で示している。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る、待機位置にある工具交換装置を備える工作機械の図であり、工作機械及び工具交換装置は、明確にするために非常に簡略化された形式で示されている。
図2図2は、図1の工具交換装置の単体の図である。
図3図3は、図2に係る工具交換装置の図であり、明確にするために、図1及び図2の仕切りが、省かれている。
図4図4は、仕切りなしの、別の視点からの工具交換装置の図である。
図5図5は、仕切りなしの、クランプ位置にある工具交換装置の図である。
図6図6は、仕切りなしの、クランプ位置にある工具交換装置を備える図1の工作機械の図である。
図7図7は、仕切りなしの、移送位置にある工具交換装置の図である。
図8図8は、仕切りなしの、準備完了位置にある工具交換装置の図である。
図9A図9Aは、工具装填ステーションの動きを示す工具交換装置の一部の図である。
図9B図9Bは、工具装填ステーションの動きを示す工具交換装置の一部の図である。
図9C図9Cは、工具装填ステーションの動きを示す工具交換装置の一部の図である。
図9D図9Dは、工具装填ステーションの動きを示す工具交換装置の一部の図である。
図10図10は、工具ホルダー及びRFIDトランスポンダーを備える工具の図である。
図11図11は、仕切りなしの、把持位置にある工具交換装置の図である。
図12図12は、テーパークリーナーを工具グリッパー内に装着した、図1の工作機械の一セクションの図である。
図13図13は、測定プローブが工具グリッパー内に収容されている、図1の工作機械の別のセクションの図である。
図14図14は、図3に対応する図における第1の実施形態の工具交換装置の図であり、明確にするために図1図13において省かれていた追加の構成要素が示されている。
図15図15は、図14の領域XV内の詳細図である。
図16図16は、第2の実施形態に係る工具交換装置の一セクションの図である。
図17図17は、仕切りを伴わない、第3の実施形態に係る工具交換装置の図である。
図18図18は、第4の実施形態に係る工具交換装置の一セクションの図である。
図19図19は、第1の位置にある第5の実施形態に係る工具交換装置の一セクションの図である。
図20図20は、第2の位置にある第5の実施形態の工具交換装置の一セクションの図である。
図21図21は、第1の実施形態の工具交換装置を備える図1の工作機械の図であり、工具交換装置は、クランプ手段交換位置にある。
図22図22は、クランプ手段交換位置にある第1の実施形態の工具交換装置の図である。
図23図23は、クランプ手段が機械の外方に旋回した、図21の工作機械の図である。
図24図24は、クランプ手段が外方に旋回した第4の実施形態の工具交換装置の一部の図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
[定義]
歯切り盤:ワークにおける歯車の歯、特に歯車における内歯又は外歯を生成又は機械加工するように構成される機械。例えば、プレ歯付きワークを機械加工するのに用いる精密加工機、特に、プレ歯付きワークを硬化プロセスに従って機械加工するのに用いる硬化仕上げ機とすることができる。
【0041】
歯車創成加工:工具がワーク上を転動し、切削動作をもたらすタイプの歯車加工。様々な歯車創成加工プロセスが知られており、創成歯車研削又は歯車ホーニング等の幾何学的に不定の切削刃を用いるプロセスと、ギアホビング、ギヤスカイビング、ギヤシェービング、又はギヤシェーピング等の幾何学的に規定された切削刃を用いるプロセスとが区別されている。
【0042】
ギヤスカイビング又はホブピーリング:ギヤスカイビングプロセスは、歯車形状の工具を使用して、軸対称の周期的構造が生成される、連続的な切り屑除去プロセスである。ギヤスカイビング工具(「スカイビングホイール」)は、多数の切削刃をその面に有する。工具及びワークが回転スピンドルに取り付けられる。工具の回転軸とワークの回転軸とが互いに斜めに配置される。典型的なロール動作は、回転軸を中心とする工具の回転運動とワークの回転運動とを結合することによって達成される。このロール動作と、ワーク軸に沿った工具又はワークの軸方向送り動作により、ギヤスカイビング中の切削動作が生じる。このプロセスによって、外歯車及び内歯車の双方を機械加工することができる。
【0043】
ピボットアームの昇降運動及び旋回運動の組合せ:この用語は、ピボットアームの昇降運動(昇降キャリッジを用いる)及び旋回運動の両方が起こることを表している。これらの運動は、同時に起こることができるが、必ずしもそうでなくてもよい。これらの運動は、必要に応じて、昇降運動及び旋回運動を交互に何度か繰り返しながら、順番に行うこともできる。
【0044】
[第1の実施形態に係る工具交換装置を備える工作機械]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る工具交換装置200を有する工作機械100の一例を示している。
【0045】
図示の工作機械100は、ギヤスカイビングプロセスに特に好適な歯切り盤である。しかしながら、そのような機械を用いて他のタイプの機械加工、特に他の歯車創成加工プロセスを実行することも可能である。図1において、機械は、極めて概略的にしか示されていない。機械の可能な具体的実施形態の詳細については、スイス特許第715794号を参照し、このスイス特許の開示全体を、本開示において参照により援用する。以下では、下記で説明する工具交換装置200の動作の理解を容易にするために、機械のいくつかの本質的な特徴のみを説明する。
【0046】
機械は、機械ベッド110を有する。機械ベッド110は、側面視において、水平セクション111及び鉛直セクション112を有する略L字形状である。Yキャリッジ120は、水平セクション111上に配置される。Yキャリッジ120は、図示しない駆動部によって、機械ベッド110に対してY方向に沿って変位可能である。Y方向は、空間内で水平方向に延在する。
【0047】
Yキャリッジ120は、ワーククランプ手段140を備えるワークスピンドル130を保持し、ワークスピンドル130によって、図示しないワークをワークスピンドル130上にクランプすることができる。したがって、Yキャリッジ120は、ワークキャリアとして機能する。
【0048】
クランプ手段140は、ワークスピンドル130によって駆動され、ワーク軸、いわゆるC軸を中心に回転することができるように、ワークスピンドル130に取り付けられる。C軸は、空間内で鉛直に、すなわち、重力の方向に沿って延在する。C軸及びY方向は、ともに機械の中心面に延びる。中心面は、Y方向に沿ったYキャリッジ120の位置に関わらず、C軸を含む。
【0049】
Zキャリッジ150は、機械ベッド110の鉛直セクション112上に配置される。Zキャリッジは、図示しない駆動部によって、機械ベッド110に対してZ方向に沿って変位可能である。ここで、Z方向は、空間内で鉛直に、C軸に対して平行かつY方向に対して垂直に延びる。
【0050】
Zキャリッジ150上には、工具スピンドル170を保持して、工具キャリアを形成するXキャリッジ160が配置される。Xキャリッジ160は、図示しない駆動部によって、Zキャリッジ150に対してX方向に沿って変位可能である。ここで、X方向は、空間内で水平に、Z方向及びY方向に対して垂直に、したがって、中心面に対して垂直方向に延びる。Zキャリッジ150及びXキャリッジ160はともにクロスキャリッジを形成し、そこに取り付けられた工具スピンドル170が相互に垂直なZ方向及びX方向に沿って変位することを可能にする。
【0051】
工具スピンドル170は、そこに取り付けられた工具500、例えば、ギヤスカイビング工具を駆動し、工具軸、いわゆるB軸を中心に回転させる。このために、工具500には、工具スピンドルに接続するために、例えば、DIN 69893-1:2011-04又はDIN 69893-6:2003-05に準拠した中空テーパーシャンクを有することができる工具支持部が設けられる。工具支持部によって、工具500は、工具スピンドル170のクランプ手段にクランプされる。
【0052】
工具スピンドル170は、図示しない駆動部によって、Xキャリッジ160に対していわゆるA軸を中心に旋回することができる。A軸は、B軸に対して垂直、X軸に対して平行、かつ中心面に対して垂直である。A軸は、B軸に交差する。B軸が旋回する旋回面は、中心面に対して平行である。
【0053】
機械を制御するために制御装置180が使用される。特に、制御装置180は、軸Aの周りのピボット駆動部、工具軸B及びワーク軸Cのためのスピンドル駆動部、並びにX、Y、及びZ方向に沿った直線変位のための駆動部を制御する。制御装置180は、図示しない制御パネルと相互に作用し、制御パネルは、操作者が制御装置180に制御コマンドを入力し、ステータスメッセージを受信することを可能にする。
【0054】
Yキャリッジ120、Zキャリッジ150、及びXキャリッジ160の移動のための、並びにA軸を中心とした工具スピンドル170の旋回運動のための駆動部及びガイドの可能な構成について、また、更なる構造の詳細については、スイス特許第715794号を参照する。
【0055】
[ワークの機械加工]
図1に係る機械を用いてワークを機械加工するために、Yキャリッジ120を、まず、Y方向に対してワーク交換位置に動かす。この位置において、最新の仕上げ済みワークが、手動で又は図示しないワーク装填部によってクランプ手段140から取り外され、機械加工されるブランクワークが、クランプ手段140上に配置されてクランプされる。その後、Yキャリッジ120は、Y方向に沿って機械加工位置に移動する。ブランクワークがプレ歯付きワークである場合、図示しない噛合装置を使用して、ブランクワークの歯溝の角度位置を確定するために、これらの歯溝を測定する。その後、Zキャリッジ150及びXキャリッジ160は、工具500がブランクワークに係合する位置にもたらされる。同時に、工具スピンドル170は、特にワークのねじれ角に応じたA軸周りの角度位置にある。ここで、ブランクワークの歯車創成加工は、通常の方法で実行される。工具500及びワークは、規定の回転速度比で回転する。この強制的な連結は、制御装置180によって電子的に行われる。Zキャリッジ150の移動により、ワーク軸に沿った軸方向送りが実現される。Xキャリッジ及び/又はYキャリッジの移動により、ワーク軸に対する工具の径方向送りを変更することができる。これらの動きも、制御装置180によって制御される。
【0056】
一定期間が経過すると、工具500の切削刃は、工具500を新しく研ぎ直された工具と取り替えなければならないほど摩耗する。後述する工具交換装置200は、このために使用される。
【0057】
[工具交換装置の構造]
[工具マガジン及び工具装填ステーション]
機械100の工具交換装置200が単体で図2に示されている。工具交換装置200は、複数(ここでは3つ)の工具ホルダー221、222、223が上下に強固に配置される鉛直支柱210の形態の支持構造体を有する。これらの固定工具ホルダーは、以下、「工具保管場所」とも称する。
【0058】
更なる工具ホルダー230が、最下の固定工具ホルダー223の下に配置される。この工具ホルダーは、支柱210に対して水平方向に移動可能であり、特に、水平方向に変位可能かつ鉛直軸を中心に旋回可能である。可動工具ホルダー230は、工具交換装置200の内部と外部との間で工具を移送するように機能する。可動工具ホルダー230は、以下、「工具装填ステーション」とも称する。工具装填ステーションの構造及び機能は、図7図8、及び図9A図9Dに関して下記により詳細に説明する。当然ながら、工具装填ステーションは、操作者にとって人間工学的な高さになるように、固定工具ホルダー間の位置に配置することもできる。
【0059】
工具ホルダー221、222、223、及び230のそれぞれは、それぞれの工具500を受けるように構成される。このために、工具ホルダーは、工具の対応する部分の形状に相補的な形状を有する。本例において、工具ホルダーは、略半円形凹部を有する水平プレートとして形成される。この凹部は、円筒形工具の縮径部分を受ける。より大きな直径の上方に配置された工具支持部のカラーは、環状支持面を形成し、これにより、工具が凹部を囲むプレートの領域に静置される。ただし、当然ながら、別の形態の工具ホルダーも考えられる。
【0060】
各工具ホルダー221、222、223、及び230における図示しない位置センサーが、工具500が関連する工具ホルダー内に配置されているか否かを検出し、それを制御装置180に通知する。位置センサーは、例えば、関連する工具ホルダー内に配置された工具によって作動する単純な機械スイッチとすることができる。図2の例において、3つの固定工具ホルダー(工具保管場所)は、工具500によってそれぞれ占有されているが、一方、可動工具ホルダー230(工具装填ステーション)は占有されていない。
【0061】
工具ホルダー221、222、223、及び230は、機械100において直接利用可能な限られた数の工具(ここでは、最大4つの工具)を保持する工具マガジン220を形成する。
【0062】
[仕切り]
仕切り300は、工具交換装置200を工作機械100の加工空間から分離する。仕切り300は、工具交換装置200の内部を工作機械100の加工空間から分離し、それにより、工具交換装置200の内部を冷却潤滑剤及び/又は切り屑による汚染から保護するように機能する。
【0063】
仕切り300は、鉛直方向に延在する仕切り壁310を備える。仕切り壁310の下端部に隣接して、工作機械100の加工空間内に或る角度で下方に突出するエプロン340があり、それにより、冷却潤滑剤及び/又は切り屑を、機械ベッド110の下側にある切り屑コンベヤ(図示せず)に向かって排出することができる。仕切り開口320が鉛直仕切り310に形成され、鉛直に摺動可能な仕切りドア330によって閉鎖可能である。図示しないアクチュエータ、例えば、従来技術において既知の空気式アクチュエータが、開閉動作をもたらすために使用される。この駆動は、制御装置180によって制御される。
【0064】
安全スイッチが、仕切りドア330の状態(開/閉)を制御装置180に信号伝達し、仕切りドア330の開放時に工作機械においてワークが機械加工されることを防止し、また、仕切りドア330の閉鎖時にスイングアーム250が仕切り開口320を通って移動することを防止する。
【0065】
[工具装填ドアを備える外壁]
工具マガジンの仕切り300に対向する側において、外壁400が、工具交換装置200を外部空間から横方向に分離するように配置される。工具装填開口410が外壁400に形成され、この工具装填開口410は工具装填ドア420によって閉鎖可能である。本例において、工具装填ドア420は、外壁400上に旋回可能に取り付けられる。本例において、工具装填ドア420は、手動で開閉される。
【0066】
外壁400は、機械100と外部空間との横方向の境界をなす。工具装填ドア420は、機械100の操作者が工具交換装置200の可動部によって外傷を負うことを防ぐように機能する。特に、工具装填ドア420には、工具装填ドア420の状態(開又は閉)を制御装置180に通知する状態表示器を備えることができる。制御装置180は、工具装填ドア420が開放している限り、ワーク交換装置の可動部がいかなる動作を実行しないようにし、そうでない場合には、工具装填ドア420の開放を防止する。
【0067】
[RFIDステーション]
RFIDステーション600は、仕切り300と外壁400との間の領域に位置し、冷却潤滑剤及び切り屑から保護される。RFIDステーション600の構造及び機能は、図10及び図11に関連して下記により詳細に説明される。
【0068】
[Z3キャリッジ上のピボットアーム]
図3では、工具交換装置200が、仕切り300なしで示されている。この図において、図2では仕切り壁310によって隠れていた工具交換装置の更なる構成要素を見ることができる。
【0069】
特に、支柱210上で鉛直方向に変位可能にガイドされる昇降キャリッジ240を見ることができる。この昇降キャリッジは、以下、「Z3キャリッジ」とも称する。Z3キャリッジ240は、ピボットアーム250を保持し、ピボットアーム250は、ピボット軸受251を介して鉛直軸を中心に旋回可能である。この軸は、本明細書において「C3軸」とも称する。C3軸は、支柱210と機械100の加工空間との間、又は支柱210と仕切り300との間に位置する領域において、支柱210から距離を置いて延在する。
【0070】
概略的にのみ示す工具グリッパー260が、ピボットアーム250の自由端部に取り付けられる。工具グリッパーは、工具ホルダー221、222、223、230のうちの1つに配置される工具500を把持して、別の場所に移動させることを可能にする。このために、工具グリッパーは、図3に個別に図示しない2つのグリッパージョーを備え、グリッパージョーは、互いに向かって移動可能であり、これにより、工具グリッパーは、工具500の工具支持部をそのカラーにおいて把持する。
【0071】
ピボットアーム250の下には補助アーム252があり、その機能については、図19図22に関して下記により詳細に説明する。補助アーム252は、通常動作時には動作せず、ピボットアーム250の静止位置に係止されている。
【0072】
[工具交換装置の動作]
ここで図1図13を参照して、工具交換装置200の動作をより詳細に説明する。
【0073】
[中間位置(図1)]
図1において、Z3キャリッジ240及びピボットアーム250は、工具交換装置の動作中に通常とり得るような中間位置にある。この位置では、ピボットアーム250及びグリッパー260は、仕切り300及び外壁400によって区切られた工具交換装置の内部に完全に収まっている。この位置では、仕切りドア330は、工作機械100におけるワークの機械加工中の汚染から工具交換装置を保護するために閉鎖することができる。
【0074】
[工具マガジンからの工具の取り出し(図2図4)]
工具を工具ホルダー221、222、223、又は230のうちの1つから取り外すために、工具グリッパー260は、ピボットアーム250及びZ3キャリッジ240によって当該工具500に向かって移動する。これは、図2図4では最下の固定工具ホルダーについて示されている。工具グリッパー260は、当該工具を把持する。次いで、ピボットアーム250は、僅かに持ち上がり、工具がRFIDステーション600の鉛直上方にくるまで、仕切り壁310に向かって外方に旋回する。この位置では、ピボットアーム250は、工具グリッパー260及びその内部に保持された工具とともに、Z3キャリッジ240の移動によって、Z3方向に沿って衝突することなく上下に移動することができる。その間、仕切りドア330は、閉鎖したままとすることができる。
【0075】
次いで、工具は、別の工具ホルダー内に配置し、Z3キャリッジ240及びピボットアーム250の適切な移動によって、RFIDステーション600に移動させるか又は工具スピンドル170に移動させることができる。
【0076】
[工具スピンドルへの移送(図5及び図6)]
工具500を工具スピンドル170に移動させるために、上述したように、当該工具を工具ホルダーのうちの1つから取り外し、Z3キャリッジ240を使用して仕切りドア330のすぐ後ろの位置に移動させる。仕切りドア330が開放し、ピボットアーム250は、ピボットアーム250上に保持された工具500が工具スピンドル170の直下に位置するまで、仕切り開口320を通して工作機械100の加工空間内に旋回する。このために、工具スピンドル170は、事前にZキャリッジ150及びXキャリッジ160によって適切な位置にもたらされ、A軸を中心に鉛直方向に傾けられる。その結果の工具スピンドル170、Z3キャリッジ240、及びピボットアーム250の位置が、図5及び図6に示されている。この位置は、以下、「クランプ位置」とも称する。
【0077】
Zキャリッジ150及び/又はZ3キャリッジ240を移動させることにより、工具500は、ここでは、図示しない工具クランプ手段によって工具スピンドル170上にクランプできるように、工具スピンドル170に対して位置決めされる。
【0078】
工具が工具スピンドル170上にクランプされた後、工具グリッパー260が開放させられ、ピボットアーム250が機械の後方に向かって旋回される。ここで、工具スピンドル170は、Xキャリッジ160とともに、ピボットアーム250との衝突領域から移動させられる。これにより、ピボットアーム250は、衝突することなく工具交換装置200の内部へと再び旋回することができる。その後、仕切りドア330が再び閉鎖する。これで、新たにクランプされた工具500によって、ワークを機械加工することができる。
【0079】
工具500を工具スピンドル170から再び取り外し、工具マガジン220内に移動させるには、この動作を逆の順序で実行する。
【0080】
工具マガジンへの新たな工具の装填(図7図8、及び図9A図9D
図7図8、及び図9A図9Dは、工具を機械の外部空間に移送し、新たな工具を工具マガジンに装填するところを示している。工具500を工具交換装置200の内部から機械の外部に移送するために、当該工具を、Z3キャリッジ240及びピボットアーム250の適切な移動によって、可動工具ホルダー230(「工具装填ステーション」)上に配置する。その間、工具装填ドア420は閉鎖している。この状態は、図7に示されている。Zキャリッジ240及びピボットアーム250の対応する位置は、以下、「移送位置」とも称する。
【0081】
ここで、工具グリッパー260が開かれ、ピボットアーム250が当該工具500から離れるように旋回する。可動工具ホルダー230は、固定工具ホルダー221、222、223の鉛直真下に配置されるホーム位置にある。この状態は、図8に示されている。ここで、ピボットアーム250及び工具ホルダー230のこの位置は、動作休止時に工具交換装置がとる静止位置としての役目も果たす。
【0082】
図9A図9Dは、可動工具ホルダー230をこのホーム位置から装填位置に移動する方法を示している。これらの各図において、工具交換装置の同じ部分が示されている。
【0083】
図9Aでは、可動工具ホルダー230はホーム位置にあり、工具装填ドア420は閉鎖している。
【0084】
次いで、工具装填ドア420を開放し、工具装填開口410を露出させる。可動工具ホルダー230は依然としてそのホーム位置にある。これは、図9Bに示されている。この図において、可動工具ホルダー230が支柱210に対して可動である様子も見ることができる。ホルダー235(図9Cを参照)を介して、リニアガイド231が支柱210に強固に接続される。このリニアガイドは、以下、装填リニアガイド又はX4リニアガイドとも称する。X4リニアガイド231において、走行レール232が水平方向X4に沿って摺動可能にガイドされる。プレート233は、走行レール232上に取り付けられる。走行レール232及びプレート233は、ともにキャリッジを形成し、キャリッジは、X4リニアガイド231において摺動可能にガイドされ、以下、装填キャリッジと称する。可動工具ホルダー230は、ピボット軸受234を介してプレート233に旋回可能に取り付けられる。ピボット軸受234は、空間内で鉛直方向に延在するピボット軸C4を画定する(図9Cを参照)。したがって、ピボット軸受234は、装填ピボット軸受とも称する。装填ピボット軸受234は、可動工具ホルダー230が、水平旋回面において装填キャリッジに対して旋回することを可能にする。
【0085】
次いで、可動工具ホルダー230が取り付けられた装填キャリッジ及び工具500は、工具装填開口410を通して工作機械の外部空間に手動で引き出される。その結果の可動工具ホルダー230の中間位置が図9Cに示されている。この中間位置において、可動工具ホルダー230における凹部の開放側が工作機械の内部に向いている。
【0086】
最後に、可動工具ホルダー230における凹部の開放側が操作者の方を向くように、装填ピボット軸C4を中心に可動工具ホルダー230を更に手動で旋回させる。その結果の工具ホルダー230の工具装填位置が図9Dに示されている。この位置において、操作者は、工具500を容易に取り外し、新たな工具を工具ホルダー230に配置することができる。
【0087】
工具交換装置に新たな工具を装填するには、上述したステップを逆の順序で実行する。工具が回転軸を中心とする所定の向きで工具交換装置内に受け入れられることを確実にするために、可動工具ホルダー230上に位置決め要素が存在することができ、位置決め要素は、工具上の相補的な構造と相互作用する。例えば、工具は、DIN 69893-1:2011-4に準拠した配向ノッチ(「ジャーマンコーナー(Deutsches Eck)」)を有することができ、相補的な位置決めピンを可動工具ホルダー230上に設けることができる。
【0088】
新たな工具を伴う可動工具ホルダー230を工具交換装置の内部に押し込んだ後、新たな工具を、上述した方法で、固定工具ホルダー221、222、223のうちの1つに移送することができる。更に詳細に後述するように、工具は、RFIDステーション600において事前に検出されることが好ましい。
【0089】
上記例において、可動工具ホルダー230の動作は手動で実行される。しかしながら、これらの動作は、適切な駆動部によって制御して実行することも考えられる。特に、可動工具ホルダー230と外部マガジンとの間で工具の自動的な交換を実行することが考えられる。このために、外部マニピュレーターにより、可動工具ホルダー230から工具を取り外し、新たな工具を装填することができる。この場合、工具装填ドア420は省くことができる。
【0090】
可動工具ホルダー230を、上述した例とは異なるように設計することも考えられる。例えば、可動工具ホルダー230をピボットアームに取り付け、ピボットアームによって、工具装填開口410を通して外部空間へと旋回させることが考えられる。
【0091】
工具装填ドア420が設けられる場合、回転式ドアの代わりにスライドドアとしてもよい。
【0092】
[RFIDステーションによる工具の検出(図10及び図11)]
図10に示されているように、工具500には、RFIDトランスポンダーを設けることができる。図10は、例示的な工具500を示している。工具500は、工具支持部510を備える。工具支持部510の上端部には、DIN 69893-1:2011-04に準拠したAタイプ又はDIN 69893-6:2003-05に準拠したFタイプの中空テーパーシャンク(HSK)511が設けられる。工具支持部510は、外周に、DIN 69893-1:2011-4に準拠した上述した配向ノッチ513(「ジャーマンコーナー」)を有する。下端部では、端部切削刃521を備えるスカイビングホイール520が、工具支持部510に接続される。本開示の意味内で、工具支持部510及びスカイビングホイール520は、工具500をともに形成する。
【0093】
スカイビングホイール520には、RFIDトランスポンダー522(「RFIDタグ」)が設けられる。RFIDトランスポンダー522は、スカイビングホイールの切削刃521が配置される領域内の径方向において、スカイビングホイールの下側の中心に位置する。このRFIDタグにより、スカイビングホイールを一意に識別することができ、任意選択で、スカイビングホイールの更なる特性をこのタグに記憶することができる。
【0094】
RFIDステーション600によってRFIDトランスポンダー522を読み取るために、工具グリッパー260によって保持された工具500がRFIDステーション600の頂部に接触するまで、Z3キャリッジ240を下方に移動させる。この状態は、図11に示されている。Z3キャリッジ240及びピボットアーム250のこの位置は、以下、「検知位置」とも称する。
【0095】
RFIDステーション600は、その頂面に、RFIDトランスポンダー522を読み取るRFIDトランシーバー630(図4では見れるが、図11では工具によって隠れている)を保持する。RFIDトランスポンダー522は、スカイビングホイール520の一意の識別子を記憶する。この一意の識別子をRFIDトランシーバー630が読み取り、制御装置180に送信する。一意の識別子を使用して、制御装置180が、スカイビングホイール520のプロセス関連特性をデータベースから取得し、これらの特性を使用して、機械加工プロセスを制御する。これらの特性は、例えば、工具構造及び幾何学的データ、並びに、実行した研ぎ直しの回数及び最後の研ぎ直しが行われてからワークを機械加工した回数等の工具の以前の使用に関するデータを含み得る。代替的に、このデータは、RFIDトランスポンダー522に直接記憶することができ、RFIDトランシーバー630によって読み取ることもできる。RFIDトランシーバー630は、RFIDトランスポンダー522に情報を書き込むように更に構成することができる。
【0096】
RFIDトランシーバー630及び関連するRFIDトランスポンダー522への損傷を防止するために、RFIDステーション600は、ばね負荷設計を有する。このために、RFIDトランシーバー630は、ガイドレール611を介して基部610上で鉛直方向に摺動可能にガイドされるトランシーバー取付け部620上に取り付けられる。基部610は、機械ベッド110に固定接続される。ばね部材640は、トランシーバー取付け部620と基部610との間で作用し、トランシーバー取付け部620がガイドレール611の下方に移動すると圧縮される。それにより、ばね部材640は、トランシーバー取付け部620に対して復元力をもたらす。基部610に対するトランシーバー取付け部620の移動は、振動を防ぐために減衰させることが好ましい。例えば、ばね部材640は、復元力及び減衰効果の双方を生成する、それ自体既知のガススプリングとすることができる。RFIDステーション600のばね負荷設計は、工具の長さが分からない場合であっても、RFIDトランシーバー630又は関連するRFIDトランスポンダー522を損傷することなく、RFIDステーション600を使用して、異なる長さの工具を読み取ることを可能にする。
【0097】
工具500は、新たな工具が工具交換装置に装填された直後、RFIDステーション600によって検出されることが好ましい。代替的に、この検出は、工具が工具スピンドル170に移送されたときに実行することもできる。
【0098】
更なるRFIDトランスポンダー512が、工具支持部510の周縁領域に配置される。このRFIDトランスポンダーは、DIN 69893-1:2011-04に規定されるように、データキャリアの設置スペースに位置する。このRFIDトランスポンダーは、工具支持部を一意に識別するように使用することができ、任意選択で、工具支持部の更なる特性をこのトランスポンダー内に記憶することができる。図示しない第2のRFIDトランシーバーを使用して、工具支持部510におけるRFIDトランスポンダー512を読み取ることができる。このトランシーバーは、工具グリッパーの下等、工具グリッパー260に隣接して組み込んだり又は位置することができる。
【0099】
2つのRFIDトランスポンダー512及び522から読み取られた情報は、工具500を一意に識別し、スカイビングホイール520及び工具支持部510の正しい組合せであることを検証することができる。
【0100】
RFIDトランスポンダー512、522の代わりに、別のタイプの機械可読データキャリア、例えば、光学読取りコードを、工具支持部510及び/又はスカイビングホイール520に設けてもよい。したがって、RFIDステーションの代わりに、好適に構成された、例えば、RFIDトランシーバーの代わりにデータキャリアの光学読取り装置を備える読取りステーションを設けることができる。
【0101】
他の対象への使用(図12及び図13
図12及び図13を参照すると、工具500以外の対象を工具グリッパー260内に受けることができることが示されている。
【0102】
例えば、図12の例において、工具スピンドル170におけるテーパーレセプタクル171のために、テーパークリーナー530が工具グリッパー260に受け入れられる。テーパークリーナー530は、工具グリッパー260との好適な接続部に取り付けられる市販のテーパークリーナーとすることができる。テーパークリーナー530は、工具グリッパー260によって把持され、ピボットアーム250及びZ3キャリッジ240によって工具スピンドル170に移動され、ゆっくり回転するテーパーレセプタクルに挿入される。テーパークリーナーの代わりに、例えば、ブラシを使用してもよい。
【0103】
図13の例において、測定プローブ540が工具グリッパー260内に受け入れられる。この測定プローブは、一般的な測定及び検査機能を実行することができる。この測定プローブには、無線信号伝送手段を備えることができる。例えば、測定プローブ540は、ワーククランプ手段140の振れ及び軸振れの測定を実行するのに使用することができる。このために、測定プローブ540は、ピボットアーム250及びZ3キャリッジ240によって、ワーククランプ手段140に移動される。代替的に、測定プローブ540は、工具スピンドル170又は工作機械100における別の場所に挿入してもよい。
【0104】
テーパークリーナー530又は測定プローブ540の代わりに、他の対象を工具グリッパー260によって把持してもよい。これらの対象は、不使用時に工具トレイのうちの1つに配置することができる。
【0105】
Z3キャリッジのガイド及び駆動、ピボットアームの駆動、工具グリッパー、補助アームの係止(図14及び図15
明確にするために、工具交換装置のいくつかの構成要素は、図1図13に示していない。図14及び図15は、これらの構成要素を示している。
【0106】
Z3キャリッジ240は、支柱210に強固に接続された2つの平行なガイドレール241によって、それ自体既知の方法でガイドされる。Z3キャリッジは、昇降キャリッジ駆動部242によって駆動され、昇降キャリッジ駆動部242は、回転運動を発生させ、それを、それ自体既知のボールねじ243によって、Z3キャリッジ240の昇降運動に変換する。
【0107】
C3軸を中心としたピボットアーム250の旋回運動は、Z3キャリッジ240に取り付けられる、それ自体既知のピボットアクチュエータ256によって実行される。
【0108】
ラッチ257は、補助アーム252をピボットアーム250に固定する。このラッチは、例えば、ばね付きピンとして構成することができ、このばね付きピンは、ラッチ位置において、ピボットアーム250を貫通して補助アーム252の開口内に入り、解除位置において、ピボットアーム250に対して補助アーム252の旋回を可能にするのに十分に引っ張られる。
【0109】
工具グリッパー260は、図15により詳細に見ることができる。工具グリッパー260は、工具を把持するために互いに向かって空気的に又は電気的に移動可能である、一対のグリッパージョー261、262を備える、それ自体既知の2ジョーグリッパーである。それにより、グリッパージョー261、262の形状は、工具グリッパーによって取り上げられる工具領域の外部形状に適合される。特に、グリッパージョー261、262は、グリッパージョー261、262によって把持された工具が、落下しないように形状嵌合式に固定されるような形状とすることができる。例えば、工具支持部510には、DIN 69893-1:2011-04に準拠したAタイプ又はDIN 69893-6:2003-05に準拠したFタイプの中空テーパーシャンク(HSK)を設けることができる。そのような中空テーパーシャンクは、周方向把持溝を有するカラーを有する。また、グリッパージョーは、この把持溝に係合する、内方に突出した突起を有することができる。
【0110】
昇降キャリッジ駆動部242、ピボット駆動部255、及び工具グリッパー260は、制御装置180によって制御される(図1を参照)。
【0111】
当然ながら、本例以外のタイプのガイド、駆動部、グリッパー、及びラッチも考えられる。
【0112】
[第2の実施形態(図16)]
工具交換装置の第2の実施形態が図16に示されている。第2の実施形態の工具交換装置は、工具グリッパー260の設計及び工具グリッパー260がピボットアーム250に取り付けられる方法に関してのみ、第1の実施形態の工具交換装置とは異なる。
【0113】
第2の実施形態において、工具グリッパー260は、ダブルグリッパーとして構成される。このために、工具グリッパー260は、2対のグリッパージョー261、262又はグリッパージョー261’、262’を備える。グリッパージョー261’、262’の対は、グリッパージョー261、262の対とは反対方向に延在する。工具グリッパー260は、ピボットアーム250の自由端部において、ピボット駆動部が統合されたピボット体263に取り付けられる。このピボット体263は、工具グリッパーが鉛直軸C6を中心に0°~360°の間で旋回することを可能にする。これにより、グリッパージョー261、262及びグリッパージョー261’、262’の対の位置を入れ替えることが可能になる。
【0114】
工具グリッパー260をダブルグリッパーとして設計することにより、仕切り開口320を通してピボットアーム250を複数回移動させる必要なく、摩耗した工具500’を工具スピンドル170から取り外し、新しく研ぎ直された工具500と取り替えることが可能になる。このために、上述した方法で、グリッパージョー261、262の対によって、新しく研ぎ直された工具500を工具マガジンから取り出す。グリッパージョー261’、262’の対は空のままである。次いで、上述した方法で、ピボットアーム250によって、仕切り開口320を通して工具500を工具スピンドル170に移送する。ここで、グリッパージョー261’、262’の対が、工具スピンドル170から摩耗した工具500’を取り上げる。工具グリッパー260は、180°旋回し、グリッパージョー261、262の対は、新しく研ぎ直された工具500を工具スピンドル170に移送する。ここで、ピボットアーム250が旋回して工具交換装置200の内部に戻る。
【0115】
このようにして、工具交換時の非生産的なダウンタイムを低減することができる。
【0116】
グリッパージョーの対は、図16とは異なるように配置してもよく、工具グリッパーは、図16とは異なるようにピボットアーム250に接続してもよい。例えば、グリッパージョーの対は、工具グリッパー260の同じ側に横並びで配置することができる。2対以上のグリッパージョーを設けることもできる。
【0117】
[第3の実施形態(図17)]
工具交換装置の第3の実施形態は、図17に示されている。第3の実施形態において、工具グリッパー260は、第2の実施形態と同様のダブルグリッパーとして構成され、ピボットアーム250に対して鉛直ピボット軸C6を中心に旋回可能である。固定工具ホルダー221、222、223は、ここでは、ダブルレセプタクルとして構成され、すなわち、互いに並んだ2つの工具をそれぞれ受けることができる。これらの工具ホルダーのうちの1つに工具を配置する、又はこれらの工具ホルダーのうちの1つから工具を取り上げるために、対応するピボット位置に工具グリッパー260を移動させることができる。このようにして、必要最小限の追加スペースで工具マガジン220の容量を倍増することができる。
【0118】
加えて、第3の実施形態の工具交換装置は、任意選択で、ワークレスト280からワーク800を取り上げ、ピボットアーム250の対応する位置においてワークスピンドル130のワーククランプ手段140に移送するように構成されるワークグリッパー270を更に備える。制御装置180は、このために対応する制御プログラムを有することができる。
【0119】
本例において、ワークグリッパー270も、ワーク交換時の非生産的なアイドル時間を最小限にするために、ダブルグリッパーとして構成される。しかしながら、ワークグリッパー270は、当然ながら、シングルグリッパーとして構成することもできる。ワークグリッパー270は、工具用のシングルグリッパーと組み合わせることもできる。
【0120】
任意選択の工具クリーナー700が支柱201の上端部に配置される。工具クリーナー700は、工具500の工具支持部510の中空テーパーシャンク511(図10を参照)から冷媒及び切り屑を清掃するために使用される。したがって、工具クリーナー700は、テーパークリーナーとも称する。工具クリーナー700は、グリッパー260によって保持された工具500を、Z3キャリッジ240及びピボットアーム250によって工具クリーナーに容易に移動できるように配置される。本例において、工具クリーナー700は、固定工具ホルダー221、222、223の上方に配置されるが、これは必須ではない。
【0121】
当然ながら、工具クリーナーは、本明細書に記載される他の実施形態のいずれにも設けることができる。好適な工具クリーナーが従来技術から知られており、市販されている。
【0122】
[第4の実施形態(図18)]
工具交換装置の第4の実施形態が図18に示されている。この実施形態において、工具グリッパー260は、ピボットアーム250に対して方向Y3に沿って直線的に変位可能である。このために、工具グリッパー260は、グリッパーキャリッジ265上に取り付けられ、グリッパーキャリッジ265は、グリッパーキャリッジ駆動部266によって、ピボットアーム250に対して方向Y3に沿って制御された様式で変位可能である。
【0123】
本例において、方向Y3は、ピボットアーム250の長手方向に対して実質的に平行であるが、その方向に対して任意の角度とすることができる。
【0124】
この実施形態において、工具グリッパーはまた、第2の実施形態及び第3の実施形態に関して記載したようにダブルグリッパーとすることができる。また、工具グリッパーは、ピボット体を介してグリッパーキャリッジ265上に取り付けることができる。しかしながら、例えば、グリッパージョーの対が横並びで配置される場合、ピボット体は省くこともできる。
【0125】
[第5の実施形態(図19及び図20)]
工具交換装置の第5の実施形態が、図19及び図20に示されている。この実施形態において、工具グリッパー260は、工具グリッパー260が、ピボットアーム250に対して水平ピボット軸C8を中心に制御された様式で90°旋回することを可能にする、一体駆動部を備えるピボット体267に取り付けられる。結果として、工具500は、工具ホルダー221、222、223、224、及び230において、鉛直方向ではなく、水平方向に配置することができる。したがって、工具ホルダーは、工具軸が水平となる向きで工具500を受け入れるようにそれぞれ構成される。工具を水平に配置することによって、長尺の工具に必要とされるスペースが著しく低減される。
【0126】
[クランプ手段の交換(図21図23)]
工具交換装置200は、工具スピンドル170上の工具を自動的に交換することを可能にするだけでなく、操作者のワーククランプ手段140の交換を補助することも可能にする。これは、第1の実施形態を参照して、図21図23に示されている。
【0127】
クランプ手段を交換するために、上述した補助アーム252を、ピボット軸受253を介して、工具グリッパー260の下のピボットアーム250の自由端部に旋回可能に取り付ける。通常動作時では、補助アーム252は、静止位置においてピボットアーム250に係止される。上述したラッチ257は、このために使用される。静止位置は、通常動作中の機械に対する損傷を防止するために、図示しないセンサーによって監視される。補助アーム252は、クランプ手段を交換するために係止解除することができ、それにより、水平面において鉛直補助ピボット軸C5を中心に、ピボットアーム250の自由端部に対して手動で旋回させることができる。補助ピボット軸C5は、ピボットアーム250のピボット軸C3から距離を置いて配置される。補助アーム252の自由端部には、クランプ手段ホルダー255のバヨネット式レセプタクル254がある。
【0128】
クランプ手段の交換を実行するために、Zキャリッジ150は、まず、正のZ方向に沿って一番上まで移動し、Xキャリッジ160は、負のX方向に沿って一番左まで、すなわち、工具交換装置200から離れるように移動し、ピボットアーム250と補助アーム252との衝突を回避する。Yキャリッジ120は、負のY方向に沿って一番前方まで移動し、操作者に最大限のアクセスを可能にする。その後、Z3キャリッジ240及びピボットアーム250は、図21及び図22に示されている位置に移動する。ここで、操作者は、補助アーム252のラッチを解除し、補助アーム252を静止位置から外方に手動で旋回させる。操作者は、クランプ手段ホルダー255をレセプタクル254に取り付け、補助アーム252を図21及び図22に示されている位置に手動でもたらす。クランプ手段ホルダー255は、ここで、クランプ手段140の真上にくる。この位置は、クランプ手段交換位置とも称する。
【0129】
Z3キャリッジの下方移動により、クランプ手段ホルダー255は、次いで、クランプ手段140上に配置される。このとき、クランプ手段ホルダー255は、例えば、ねじ接続によってクランプ手段140に接続され、ワークスピンドル130から解放される。Z3キャリッジ240の上方移動により、クランプ手段140がワークスピンドル130から上昇し、補助アーム252によって工作機械100の加工空間から前方外方に旋回する。その結果の取外し位置が図23に示されている。次いで、クランプ手段140は、Z3キャリッジ240の下方移動によって、図示しないクランプ手段レスト、例えばキャリッジ上に配置することができる。
【0130】
補助アーム252の不要な旋回運動を防止するために、ピボット軸受253上にデテント機構を設け、補助アーム252を1つ以上の選択されたデテント位置に係止することができる。このデテント機構は、補助アーム252が、補助ピボット軸C5の周りの特定の解放トルクを乗り越えた後にのみ、これらのデテント位置から外れて旋回することを可能にするように構成することができる。このために、デテント機構は、例えば、デテント位置においてピボット軸受の制御プレート内のそれぞれの凹部に係合する、ばねスラスト片を備えることができる。代替的に、補助アーム252を任意の旋回位置に固定することを可能にするために、手動で動作可能なクランプ手段を設けてもよく、又は、ピボット軸受253は、補助アーム252の不慮の旋回を防止するために、旋回運動に対してある特定の程度の摩擦を与えるように構成してもよい。
【0131】
クランプ手段ホルダー255がクランプ手段140上に配置されたときのクランプ手段140に対する損傷を防止するために、クランプ手段ホルダー255は、Z方向に沿った圧縮の際にばね負荷を受けるように形成することができる。
【0132】
第1の実施形態を参照してクランプ手段の交換について説明したが、クランプ手段の交換は、他の全ての実施形態においても非常に類似した方法で実行することができる。
【0133】
[力変換器を備える変形例(図24)]
クランプ手段ホルダー255用のレセプタクル254は、力変換器258を介して補助アーム252に取り付けることができる。これは、図24に示されている。力変換器258は、取付け部253から懸架されたクランプ手段140の重量によってもたらされる力を測定する。力変換器258は、測定された力を示す信号を制御装置180に送信し、それにより、制御装置180が、ピボットアーム250及び補助アーム252を含むシステムの過剰な負荷を検出し、それに応じて、必要な場合、工具交換装置の更なる動作を停止するように操作者に警告することを可能にする。警告は、例えば、クランプ手段140とワークスピンドル130との間の接続が正しく解除されず、クランプ手段140が上昇することができなかったときに発することもできる。
【0134】
好適な力変換器が従来技術において知られており、市販されている。
【0135】
図24の力変換器は、第4の実施形態との組合せで示されているが、力変換器は、他の任意の実施形態において使用することもできる。
【0136】
[他の変形例]
当然ながら、特許請求の範囲において規定される本発明の範囲から逸脱することなく、上述した工具交換装置の様々な更なる変形例が可能である。
【0137】
例えば、支持構造体を、上記に示されているものとは別様に設計することも考えられる。例えば、単一の支柱210の代わりに、2つの平行な支柱を支持構造体として設け、工具ホルダーがこれらの支柱のうちの一方に取り付けられ、他方の支柱がZ3キャリッジをガイドするように機能することが考えられる。
【符号の説明】
【0138】
100 工作機械
110 機械ベッド
111 水平セクション
112 鉛直セクション
120 Yキャリッジ
130 ワークスピンドル
140 ワーククランプ手段
150 Zキャリッジ
160 Xキャリッジ
170 工具スピンドル
171 テーパーレセプタクル
180 制御装置
200 工具交換装置
210 支柱
220 工具マガジン
221~224 工具ホルダー(工具保管場所)
230 可動工具ホルダー(工具装填ステーション)
231 X4ガイド
232 X4走行レール
233 プレート
234 ピボット軸受
235 ホルダー
240 昇降キャリッジ(Z3キャリッジ)
241 ガイドレール
242 昇降キャリッジ駆動部
243 ボールねじ
250 ピボットアーム
251 ピボット軸受
252 補助アーム
253 ピボット軸受
254 レセプタクル
255 クランプ手段ホルダー
256 ピボット駆動部
257 補助アームのラッチ
258 力変換器
260 工具グリッパー
261、262 グリッパージョー
261’、262’ グリッパージョー
263 駆動部を備えるピボット軸受
265 グリッパーキャリッジ
266 グリッパーキャリッジ駆動部
267 駆動部を備えるピボット体
270 ワークグリッパー
280 ワークレスト
300 仕切り
310 仕切り壁
320 仕切り開口
330 仕切りドア
340 エプロン
400 外壁
410 工具装填開口
420 工具装填ドア
500、500’ 工具
510 工具支持部
511 中空テーパーシャンク
512 RFIDトランスポンダー
513 配向ノッチ(「ジャーマンコーナー」)
520 スカイビングホイール
521 切削刃
522 RFIDトランスポンダー
530 テーパークリーナー
540 測定プローブ
600 RFIDステーション
610 基部
611 ガイドレール
620 トランシーバー取付け部
630 RFIDトランシーバー
640 ばね部材
700 工具クリーナー
800 ワーク
X、Y、Z 工作機械の直線軸
A 工具スピンドルのピボット軸
B 工具軸
C ワーク軸
Z3 Z3キャリッジの直線軸
Y3 グリッパーキャリッジの直線軸
C3 ピボットアームのピボット軸
X4 可動工具ホルダーの変位方向
C4 可動工具ホルダーのピボット軸
C5 補助アームの補助ピボット軸
C6 工具グリッパーの鉛直ピボット軸
C7 ワークグリッパーの鉛直ピボット軸
C8 工具グリッパーの水平ピボット軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図10
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図12
図13
図14
図15
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図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
【国際調査報告】