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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-19
(54)【発明の名称】Dixon式水/脂肪分離MR撮像
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
A61B5/055 312
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534172
(86)(22)【出願日】2021-12-02
(85)【翻訳文提出日】2023-07-20
(86)【国際出願番号】 EP2021083857
(87)【国際公開番号】W WO2022122518
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】20212403.8
(32)【優先日】2020-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】エガース ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】ボルネート ペーター
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AA07
4C096AB06
4C096AB14
4C096AB18
4C096BA05
4C096BA07
4C096DC33
(57)【要約】
本発明は、Dixon式MR撮像方法に関する。対象物10に、少なくとも2ショットの画像化シーケンスが施され、各ショットが、励起RFパルス及び後続の一連の再収束RFパルスを含み、少なくとも1対の位相エンコードされたエコー、すなわち、第1のエコー時間における第1のエコー及び第2のエコー時間における第2のエコーが、2つの連続する再収束RFパルス間の各時間間隔において生成される。2セットのエコー信号ペア、すなわち、第1のセット及び第2のセットは、画像化シーケンスの2つのそれぞれのショットにおいて、読み出し磁気勾配の双極ペアを使用して取得される。第2のセットの取得における読み出し磁場勾配の双極ペアは、第1のセットの取得における読み出し磁場勾配の双極ペアの極性と反対の極性を有している。代替的又は追加的に、第2のセットの取得における読み出し磁場勾配の時間的軌跡は、第1のセットの取得における読み出し磁場勾配の時間的軌跡に対して逆転されている。代替的又は追加的に、第1及び第2のセットの取得が、読み出し磁場勾配の双極ペアにそれぞれ先行及び後続する読み出し方向Mにおける磁場勾配の勾配面積に関して互いに異なる。最後に、取得されたエコー信号ペアの第1及び第2のセットからMR画像が再構成され、これによって水プロトン及び脂肪プロトンからの信号寄与が分離される。さらに、本発明は、MR装置1、及びMR装置1上で実行されるコンピュータ・プログラムに関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MR装置の検査ボリューム内に配置される対象物のMR撮像の方法であって、前記方法が、
前記対象物に、少なくとも2ショットの画像化シーケンスを施すステップであって、各ショットが、励起RFパルス及び後続の一連の再収束RFパルスを含み、少なくとも1対の位相エンコードされたエコー、すなわち、第1のエコー時間における第1のエコー及び第2のエコー時間における第2のエコーが、2つの連続する前記再収束RFパルス間の各時間間隔において生成される、施すステップと、
各繰り返し間隔における読み出し磁場勾配の双極ペアを使用して、前記画像化シーケンスの第1のショットにおいて、前記対象物からエコー信号ペアの第1のセットを取得するステップと、
各繰り返し間隔における読み出し磁場勾配の双極ペアを使用して、前記画像化シーケンスの第2のショットにおいて、前記対象物からのエコー信号ペアの第2のセットを取得するステップであって、
前記第2のセットの前記取得における前記読み出し磁場勾配の前記双極ペアは、前記第1のセットの前記取得における前記読み出し磁場勾配の前記双極ペアの極性と反対の極性を有する、
前記第2のセットの前記取得における前記読み出し磁場勾配の時間的軌跡が、前記第1のセットの前記取得における前記読み出し磁場勾配の時間的軌跡に対して逆転されている、並びに/又は
前記第1及び第2のセットの前記取得が、前記読み出し磁場勾配の前記双極ペアにそれぞれ先行及び後続する読み出し方向における磁場勾配の勾配面積に関して互いに異なる、取得するステップと、
取得されたエコー信号ペアの前記第1及び第2のセットから、MR画像を再構成するように構成するステップであって、これによって水プロトン及び脂肪プロトンからの信号寄与が分離され、前記再構成が、双極取得から生じるアーチファクトの抑制又は除去を含む、構成するステップと
を有する、方法。
【請求項2】
前記第1のセット及び/又は前記第2のセットの一部又は全てのエコー信号が部分的にのみ取得される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記MR画像の前記再構成が、前記第1及び第2のセットのそれぞれについての、取得された前記エコー信号ペアからのシングル・エコー画像、すなわち、前記第1のエコー時間に属する第1のシングル・エコー画像、及び前記第2のエコー時間に属する第2のシングル・エコー画像の再構成を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1及び第2のセットの前記第1のシングル・エコー画像のピクセル単位又はボクセル単位の位相を揃えることによって、並びに、前記第1及び第2のセットの前記第2のシングル・エコー画像のピクセル単位又はボクセル単位の位相を揃えることによって、渦電流によって誘起される位相誤差が除去される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記MR画像の前記再構成が、第1の水画像及び第1の脂肪画像をもたらす、前記第1のセットの前記第1のシングル・エコー画像及び前記第2のセットの一方のシングル・エコー画像に基づく、第1の水/脂肪分離と、第2の水画像及び第2の脂肪画像をもたらす、前記第1のセットの前記第2のシングル・エコー画像、及び前記第2のセットの他方のシングル・エコー画像に基づく、第2の水/脂肪分離とを含む、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
脂肪シフト及び/又はB歪みが補正される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1及び第2の水画像が合成されて最終的な水画像になり、並びに/又は、前記第1及び第2の脂肪画像が合成されて最終的な脂肪画像になる、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
検査ボリューム内に均一な静磁場Bを発生させる少なくとも1つの主磁石コイルと、前記検査ボリューム内の異なる空間方向に、スイッチングされる磁場勾配を発生させるためのいくつかの勾配コイルと、前記検査ボリューム内にRFパルスを発生させ、及び/又は前記検査ボリューム内に位置する対象物からMR信号を受信する少なくとも1つのRFコイルと、RFパルス及びスイッチングされた磁場勾配の時間的遷移を制御する制御ユニットと、受信された前記MR信号からMR画像を再構成する再構成ユニットとを含むMR装置であって、前記MR装置が、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法のステップを実行するように構成されている、MR装置。
【請求項9】
MR装置上で実行されるコンピュータ・プログラムであって、前記コンピュータ・プログラムが、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法を実行するのに必要な命令を含む、コンピュータ・プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴(MR)撮像の分野に関する。MR装置の検査ボリューム内に配置された対象物のMR撮像に関する。本発明は、MR装置及びMR装置上で実行されるコンピュータ・プログラムにも関する。
【背景技術】
【0002】
2次元又は3次元の画像を形成するために、磁場と核スピンとの間の相互作用を利用する画像形成MR方法は、軟組織の画像化について多くの点で他の画像化方法よりも優れており、電離放射線を必要とせず、通常、非侵襲的であるので、特に医療診断の分野で、現在広く用いられている。
【0003】
一般的なMR法によると、検査される患者の体は、強力で均一な磁場B内に配置され、磁場Bの方向が、同時に座標系の軸(通常はz軸)を画定し、この座標系に基づいて測定が行われる。磁場Bは、磁場の強度に依存して個々の核スピンに異なるエネルギー準位を生成し、これは、無線周波数領域に定義された周波数(ラーモア周波数)の電磁場(RF電磁場)を印加することによって励起(スピン共鳴)することができる。巨視的観点から、個々の核スピンの分布によって全体的な磁化が生じ、この磁化は、z軸に垂直な適切な周波数の電磁パルス(RFパルス)を印加することによって平衡状態から偏向させることができ、これにより、磁化はz軸を中心とした歳差運動を行う。歳差運動は、円錐の表面を描き、この開口角はフリップ角と呼ばれる。フリップ角の大きさは、印加される電磁パルスの強度及び時間幅に依存する。いわゆる90°パルスの場合、スピンはz軸から横断平面に偏向される(90°のフリップ角)。
【0004】
RFパルスの終了後、磁化は緩和されて元の平衡状態に戻り、z方向の磁化は第1の時定数T(スピン-格子緩和時間又は縦緩和時間)で再び構築され、z方向に垂直な方向の磁化は第2の時定数T(スピン-スピン緩和時間又は横緩和時間)で緩和される。磁化の変動がz軸に垂直な方向において測定されるやり方で、磁化の変動は、MR装置の検査ボリューム内に配置され、配向された受信RFコイルによって検出することができる。横断方向磁化の減衰に伴って生じるのは、例えば90°パルスを印加した後、(局所的な磁場の不均一性によって誘起される)核スピンが、同じ位相の秩序状態から、位相が均一に分散した状態に遷移すること(ディフェージング)である。ディフェージングは、再収束パルス(例えば180°パルス)によって補償することができる。これにより、受信コイルにおいてエコー信号が生じる。
【0005】
体内で空間分解能を実現するために、3つの主軸に沿って延在する一定の磁場勾配が、均一磁場Bに重ね合わせられ、これによりラーモア周波数の線形空間依存性がもたらされる。したがって、受信コイルで拾われる信号は、体内の異なる場所に関連付けることができる異なる周波数の成分を含む。受信コイルを介して取得される信号データは、空間周波数領域に対応し、k空間データと呼ばれる。k空間データは、通常、異なる位相エンコードで取得されたk空間の複数のラインからのデータを含む。各k空間ラインは、いくつかのサンプルを収集することによってデジタル化される。k空間の複数のラインからのサンプルのセットは、例えばフーリエ変換によってMR画像に変換される。
【0006】
MR撮像では、信号全体に対する水と及び脂肪の相対寄与に関する情報を取得して、水と脂肪との一方の寄与を抑制するか、又は水と脂肪との両方の寄与を別々に、若しくは合わせて解析することがしばしば望まれる。これらの寄与は、(励起又はスピン・エコー再収束に関して)異なるエコー時間で取得された、2つ以上の対応するエコーからの情報を組み合わせるとき、計算することができる。これは、化学シフト・エンコードとみなされ、化学シフト次元である追加の次元が、わずかに異なるエコー時間で2つ以上のMR画像を取得することによって定義され、エンコードされる。水/脂肪分離について、これらのタイプの実験は、しばしばDixon式測定と呼ばれる。Dixon法MR撮像又はDixon法の水/脂肪MR撮像によって、異なるエコー時間で取得された2つ以上の対応するエコーからの水及び脂肪の寄与を計算することにより、水/脂肪分離が実現される。一般に、水及び脂肪における水素の知られている歳差運動周波数の差異が存在するので、そのような分離が可能になる。その最も単純な形態では、水及び脂肪の画像は、同位相の、及び同位相でないデータセットの加算又は減算のいずれかによって生成される。
【0007】
近年、いくつかのDixon式MR撮像方法が提案されてきた。水/脂肪分離に対する様々な方策の他に、知られている技法は、取得するエコー(又はポイント)の特定の数、及び使用されるエコー時間に課す制約によって、主に特徴付けられる。従来のいわゆる2点方法及び3点方法では、水信号及び脂肪信号が、複素平面上でそれぞれ平行及び逆平行である、同位相及び逆位相のエコー時間が必要となる。3点方法は、柔軟なエコー時間を可能にするように、徐々に一般化されてきた。したがって、これらは、もはやエコー時間における水信号と脂肪信号との間の角度又は位相を特定の値に制限しない。このようにして、これらによって、画像化シーケンスの設計の自由度が向上し、特に、取得による信号対雑音比(SNR)ゲインと分離におけるSNR損失との間のトレードオフが可能になる。スキャン時間を短縮するには、3エコーの代わりに2エコーのみをサンプリングすることが、望ましい。しかしながら、エコー時間に対する制約により、実際には、デュアル・エコー取得はトリプル・エコー取得よりも遅くなる。Eggersら(Magnetic Resonance in Medicine、65、96~107、2011)は、そのような制約の排除を可能にする柔軟なデュアル・エコーのDixon式MR撮像方法を提案している。より柔軟なエコー時間を備えたそのようなDixon式MR撮像方法を使用して、同位相画像及び逆位相画像は、もはや必ずしも取得される必要はないが、任意選択で、水画像及び脂肪画像から合成される。
【0008】
Dixon式MR撮像方法は、複数回繰り返し手法を用いた高速(ターボ)スピン・エコー・シーケンスと組み合わせて適用されることが多い。通常、読み出し磁場勾配及び取得ウィンドウがシフトされた2回又は3回のインターリーブ測定が採用される。図2では、従来のターボ・スピン・エコー(TSE)Dixon法シーケンスの概略パルス・シーケンス図が示されている。この図は、周波数エンコード方向(M)、位相エンコード方向(P)、及びスライス選択方向(S)のスイッチングされる磁場勾配を示している。さらに、この図は、RF励起パルス及び再収束パルス、並びに、ACQとして示されている、エコー信号が取得される時間間隔を示している。この図は、画像化シーケンスの1ショットのうちの最初の3つのエコー信号の取得をカバーしている。両向き矢印は、同一の位相エンコードで1ショットを複数回繰り返す間の、読み出し磁場勾配(最上段)と取得ウィンドウACQ(最下段)とのシフトを示している。読み出し磁場勾配のシフトに従って、それぞれ、水プロトン及び脂肪プロトンからの信号寄与の異なる位相オフセットが取得され、Dixon式水/脂肪分離は、この位相オフセットに基づく。
【0009】
標準的(Dixon法ではない)TSEシーケンスと比較して、Dixon法TSE技法は、1回の取得で優れた脂肪抑制及び複数のコントラストを提供する。しかしながら、同一の位相エンコードで各ショットを複数回繰り返す必要があるので、スキャン時間が増加する。さらに、読み出し磁場勾配及び取得ウィンドウのシフトを可能にするために不感時間が導入されるので、スキャン効率が低下する。あるいは、エコーの配置間隔が増大し、より長い、又はより多くのエコー・トレインが必要となる。その結果、カバー範囲が狭くなり、再構成MR画像がよりぼけるか、又はやはりスキャン時間が増加する。
【0010】
あるいは、マルチ・エコー手法が追求され、各RF再収束パルス後に1つのエコーの代わりに2つ又は3つのエコーが取得される。Maら(Magnetic Resonance in Medicine、58、103~109、2007)は、2つの連続する再収束RFパルスの間の各時間間隔において3つのエコー信号が生成される、トリプル・エコーDixon法TSE技法について説明している。これらの3つのエコー信号間の時間的な配置間隔を短縮するために、したがって2つの連続する再収束RFパルス間の時間間隔とエコー・トレインにわたるT減衰を減少させるために、読み出し磁場勾配の双極三連パルスを使用して、エコー信号が取得される。図3は本手法の一例を示している。トリプル・エコーDixon法TSEシーケンスのパルス・シーケンス図が描かれており、1ショットの最初の2つの三連エコー信号の取得をカバーしている。各RF再収束パルス後に3つのグラディエント・エコー(gradient-recalled echo)が取得される。読み出し磁場勾配の双極三連パルスは、スポイラ読み出し磁場勾配によって先行及び後続される。縦の破線は、異なるエコー時間を示している。
【0011】
米国特許出願第2016/0033605号は、2つの連続する再収束RFパルス間の各時間間隔において2つのエコー信号のみが生成される、デュアル・エコーDixon法TSE技法を開示している。さらに、これらの2つのエコー信号間の時間的な配置間隔を短縮し、2つの連続する再収束RFパルス間の時間間隔とエコー・トレインにわたるT減衰とをさらに減少させるために、読み出し磁場勾配の双極ペアを使用して、エコー信号が部分的にのみ取得される。読み出し磁場勾配の双極ペアは、スポイラ読み出し磁場勾配によって先行され、フライ・バック及びスポイラ読み出し磁場勾配によって後続される。
【0012】
高効率化のために、マルチ・エコー手法は、図3に示すように、双極読み出し磁場勾配に依拠する必要がある。これにより必然的に、主磁場Bの化学シフト又は不均一性によるオフ共鳴効果が、結果として得られるシングル・エコー画像に反対方向の歪みをもたらすことになる。加えて、渦電流はシングル・エコー画像間の位相誤差を引き起こす。さらに、マルチ・エコー手法では、特に主磁場強度がより高い場合、部分的エコー・サンプリングを利用することがしばしば必要になるので、補正が困難又は不可能となり、画像品質に悪影響が及ぼされる。
【0013】
米国特許出願第2016/0033605号は、連続する再収束パルス間の時間間隔で2つのエコーのみが取得される、デュアル・エコーDixon法TSE技法に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、TSE取得と組み合わせた、さらに改善されたDixon法の水/脂肪分離を可能にする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によると、MR装置の検査ボリューム内に配置された対象物のMR撮像方法が開示されている。本発明は、
対象物(10)に少なくとも2ショットの画像化シーケンスを施すステップであって、各ショットが、励起RFパルス及び後続の一連の再収束RFパルスを含み、少なくとも1対の位相エンコードされたエコー、すなわち、第1のエコー時間における第1のエコー及び第2のエコー時間における第2のエコーが、2つの連続する再収束RFパルス間の各時間間隔において生成される、施すステップと、
各繰り返し間隔における読み出し磁場勾配の双極ペアを使用して、画像化シーケンスの第1のショットにおいて、対象物(10)からエコー信号ペアの第1のセットを取得するステップと、
各繰り返し間隔における読み出し磁場勾配の双極ペアを使用して、画像化シーケンスの第2のショットにおいて対象(10)からのエコー信号ペアの第2のセットを取得するステップであって、
第2のセットの取得における読み出し磁場勾配の双極ペアが、第1のセットの取得における読み出し磁場勾配の双極ペアの極性と反対の極性を有する、
第2のセットの取得における読み出し磁場勾配の時間的軌跡が、第1のセットの取得における読み出し磁場勾配の時間的軌跡に対して逆転している、並びに/又は
第1及び第2のセットの取得が、読み出し磁場勾配の双極ペアにそれぞれ先行及び後続する読み出し方向(M)における磁場勾配の勾配面積に関して互いに異なる、取得するステップと、
取得されたエコー信号ペアの第1及び第2のセットからMR画像を再構成するステップであって、これによって水プロトン及び脂肪プロトンからの信号寄与が分離される、再構成するステップと
を有する。
【0016】
本発明によると、デュアル・エコーTSE Dixon法画像化シーケンスの2つのインスタンス(ショット)が使用され、各インスタンス(ショット)は、読み出し磁場勾配の双極ペアを使用して、2つの再収束RFパルス間の各間隔において、2つのエコー信号を取得する。一般に、各インスタンスは複数のショットを含み、各ショットは2つより多いエコー信号を取得することができる。しかしながら、簡潔のために、以降では、各インスタンスが1ショットを含むと想定し、各ショットが2つのエコー信号を取得すると想定する。エコー信号の位相エンコードは、取得された第1及び第2のセットのそれぞれがk空間の必要な領域をカバーするように選択される。したがって、本発明は、上記の複数回繰り返し手法とマルチ・エコー手法とを組み合わせることを提案する。読み出し磁場勾配の双極ペアの極性が反対であり、読み出し磁場勾配の時間的軌跡が逆転しており、勾配面積(磁場勾配の時間的軌跡の下の面積)が、読み出し磁場勾配の双極ペアに先行及び後続する、スポイラ読み出し磁場勾配、フライ・バック読み出し磁場勾配、及び/又はディフェージング磁場勾配の間で移行される、2インスタンスの双極デュアル・エコー取得を実行することによって、高い取得デューティ周期が達成され、双極取得から発生するアーチファクトの抑制を容易にすることで高い画像品質が保持される。すなわち、再構成は、双極読み出しから生じるアーチファクトの抑制又は除去を含む。より詳細には、双極勾配ローブの反対の両極性における読み出しの繰り返しにより、渦電流効果による位相情報が提供される。この位相情報は、双極読み出しの勾配スイッチングによる渦電流効果を少なくとも部分的に除去する再構成において利用される。読み出し磁場パルスの時間軌跡を逆転することで、異なるエコー時間による水/脂肪分離のコンディショニングが改善し、水/脂肪分離アーチファクト、及び/又はノイズ増幅を低減又は除去することさえもできる。これらの態様は、再構成に組み込まれてよい。双極ペアにそれぞれ先行及び後続する読み出し方向(M)における磁場勾配の勾配面積に関する相違により、特に部分的なエコー取得について、k空間の全体的なカバー範囲が向上する。これにより、k空間の有効カバー範囲が向上し、再構成の共役対称性の問題のコンディショニングが改善する。
【0017】
好ましい実施形態では、第1のセット及び/又は第2のセットの一部又は全てのエコー信号は、部分的にのみ取得される。つまり、k空間は、k空間の正又は負のいずれの読み出し方向においても部分的にしかサンプリングされない。両方のエコーは、2つの連続する再収束RFパルス間で、繰り返し間隔の中心に向かって、部分的にのみサンプリングされてよく、これは、例えば、第1のエコーが、エコーの前方で、すなわち正の読み出し方向の一部分のみで、サンプリングされ、第2のエコーが、エコーの後方で、すなわち、k空間の負の読み出し方向の一部分のみで、サンプリングされることを意味する。このようにして、エコー・シフトの差異をより小さくすることができ、これは特に、より高い主磁場強度(3T以上)において、有利である。さらに、2つの連続する再収束RFパルス間の間隔を短縮して、スキャン時間及びエコー・トレインにわたるT減衰を低減することができる。
【0018】
さらに好ましい実施形態では、MR画像の再構成は、第1及び第2のセットのそれぞれについての、取得されたエコー信号ペアからのシングル・エコー画像、すなわち、第1のエコー時間に属する第1のシングル・エコー画像、及び第2のエコー時間に属する第2のシングル・エコー画像の再構成を含む。そのため、第1及び第2のセットの第1のシングル・エコー画像のピクセル単位又はボクセル単位の位相を揃えることによって、並びに、第1及び第2のセットの第2のシングル・エコー画像のピクセル単位又はボクセル単位の位相を揃えることによって、それぞれ、渦電流によって誘起される位相誤差を除去することができる。これは、第1のエコー時間及び第2のエコー時間がこの場合では2つのセットで同一であるので、第2のセットの取得における読み出し磁場勾配の双極ペアが、第1のセットの取得における読み出し磁場勾配の双極ペアの極性と反対の極性を有するときに主に適用される。このように補正されたシングル・エコー画像は、さらなる画像再構成手順において、水/脂肪分離のために使用することができる。これは、好ましくは、第1の水画像及び第1の脂肪画像をもたらす、第1のセットの第1のシングル・エコー画像、及び第2のセットの一方のシングル・エコー画像に基づく、第1の水/脂肪分離と、第2の水画像及び第2の脂肪画像をもたらす、第1のセットの第2のシングル・エコー画像、及び第2のセットの他方のシングル・エコー画像に基づく、第2の水/脂肪分離とを含む。有利にも、水/脂肪分離は、読み出し磁場勾配が同じ極性である取得におけるシングル・エコー画像に基づいて実行される。このように、このステップでは脂肪シフト及びB歪みを無視することができる。最後に、第1及び第2の水画像が合成されて最終的な水画像になり、並びに/又は、第1及び第2の脂肪画像が合成されて最終的な脂肪画像になる。この目的のため、例えば、脂肪画像は水画像と位置合わせされ、水/脂肪分離によって推定されたBマップを使用してB歪みが補正される。
【0019】
さらに、第2のセットの取得における読み出し磁場勾配の時間的軌跡を、第1のセットの取得における読み出し磁場勾配の時間的軌跡に対して逆転すること、及び/又は読み出し磁場勾配の双極ペアに先行及び後続する、スポイラ読み出し磁場勾配、フライ・バック読み出し磁場勾配、及び/又は、デフェーシング読み出し磁場勾配との間で勾配面積を移行することは、エコー信号ペアの第1のセットと第2のセットとの取得間のエコー・シフトを修正することを可能にする。このようにして、水/脂肪分離に関連付けられた逆問題のコンディショニングを改善し、水/脂肪分離のアーチファクト及び/又はノイズ増幅を低減、又は除去もすることができる。これは主に、脂肪シフトを補正するためにk空間で水/脂肪分離を実行する場合に適用される。
【0020】
ここまで説明された本発明の方法は、検査ボリューム内に本質的に均一な静磁場Bを発生させる少なくとも1つの主磁石コイルと、検査ボリューム内の異なる空間方向に、スイッチングされる磁場勾配を発生させるためのいくつかの勾配コイルと、検査ボリューム内にRFパルスを発生させ、及び/又は検査ボリューム内に位置する患者の体からMR信号を受信する少なくとも1つの生体RFコイルと、RFパルス及びスイッチングされた磁場勾配の時間的遷移を制御する制御ユニットと、受信されたMR信号からMR画像を再構成する再構成ユニットと含むMR装置によって実行することができる。本発明の方法は、MR装置の、再構成ユニット及び/又は制御ユニットの対応するプログラミングによって実施することができる。
【0021】
本発明の方法は、現在臨床で使用されているほとんどのMR装置で有利に実行することができる。この目的のため、MR装置が、本発明の上記説明した方法ステップを実行するように制御されるコンピュータ・プログラムを利用することが必要なだけである。コンピュータ・プログラムは、MR装置の制御ユニットにインストールするためにダウンロードされるように、データ・キャリア上に存在するか、又はデータ・ネットワーク内に存在してもよい。
【0022】
添付の図面は、本発明の好ましい実施形態を開示している。しかしながら、図面は例示のみを目的としており、本発明の限定を定義することは意図していないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の方法を実行するためのMR装置を示す図である。
図2】従来の複数回繰り返しTSE Dixon法画像化シーケンスの概略(簡略化)パルス・シーケンス図である。
図3】双極読み出し磁場勾配を使用した従来のマルチ・エコーTSE Dixon法画像化シーケンスの概略(簡略化)パルス・シーケンス図である。
図4】本発明の第1の実施形態による概略(簡略化)パルス・シーケンス図である。
図5】本発明の第2の実施形態による概略(簡略化)パルス・シーケンス図である。
図6】本発明の第3の実施形態による概略(簡略化)パルス・シーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1を参照すると、MR装置1がブロック図として示されている。本装置は、実質的に均一で時間的に一定の主磁場Bが、検査ボリュームを通ってz軸に沿って生成されるような、超伝導又は抵抗性の主磁石コイル2を含む。本装置は、1セットの(第1の、第2の、及び、適切な場合は第3の)シム・コイル2’をさらに含み、セット2’の個々のシム・コイルを通る電流は、検査ボリューム内のB偏差を最低限に抑える目的で制御可能である。
【0025】
磁気共鳴の発生及び操作システムは、一連のRFパルス及びスイッチングされた磁場勾配を印加して、磁気共鳴を反転、励起、飽和、再収束、並びに、空間的及びその他の方法でエンコードして、MR撮像を実行する。
【0026】
より具体的には、勾配パルス増幅器3が、検査ボリュームのx、y、及びz軸に沿って、全身勾配コイル4、5、及び6の選択されたものに電流パルスを印加する。デジタルRF周波数送信機7は、送信/受信スイッチ8を介してRFパルス又はパルス・パケットを生体RFコイル9に送信して、検査ボリュームにRFパルスを送信する。典型的なMRイメージング・シーケンスは、任意の印加磁場勾配と共に核磁気共鳴の選択された操作を達成する、短い時間幅のRFパルス・セグメントのパケットで構成される。特に、RFパルスは、検査ボリューム内に位置する体10の一部分を選択する。MR信号は生体RFコイル9によっても拾われる。
【0027】
体10の限定された領域のMR画像を生成するために、1組の局所アレイRFコイル11、12、13が、画像化のために選択された領域に隣接して配置される。アレイ・コイル11、12、13は、生体RFコイルの送信によって誘起されたMR信号を受信するために使用することができる。
【0028】
結果としてのMR信号は、生体RFコイル9及び/又はアレイRFコイル11、12、13によって拾われ、好ましくはプリアンプ(図示せず)を含む受信機14によって復調される。受信機14は送信/受信スイッチ8を介してRFコイル9、11、12、及び13に接続されている。
【0029】
ホスト・コンピュータ15は、本発明の画像化シーケンスを生成するために、シム・コイル2’、並びに勾配パルス増幅器3、及び送信器7を制御する。選択されたシーケンスについて、受信機14は、単一又は複数のk空間ラインから、各RF励起パルスに続いて信号データを素早く連続して受信する。データ取得システム16は、受信信号のアナログ-デジタル変換を実行し、各k空間ラインをさらなる処理に適したデジタル・フォーマットに変換する。現代のMR装置では、データ取得システム16は、生の画像データの取得に特化した別個のコンピュータである。
【0030】
最終的に、デジタル生画像データは、フーリエ変換、又はSENSEなどの他の適切な再構成アルゴリズムを適用する再構成プロセッサ17によって再構成されて画像表示になる。MR画像は、患者を通る平面スライス、平行な平面スライスのアレイ、3次元ボリュームなどの表示である。次いで、画像は画像メモリに格納され、この画像には、スライス、投影、又は画像表示の他の部分を、視覚化のための適切なフォーマットに変換するためにアクセスすることができ、この視覚化は、例えば、結果MR画像の、人間が可読な表示を提供するビデオ・モニタ18を介するものである。
【0031】
ホスト・コンピュータ15及び再構成プロセッサ17は、対応するプログラミングによって、本明細書で上述及び後述される本発明の方法を実行するように配置される。
【0032】
本発明によると、デュアル・エコーTSE Dixon法画像化シーケンスの2つのインスタンス(ショット)が使用され、各インスタンス(ショット)は、読み出し磁場勾配の双極ペアを使用して、2つの再収束RFパルス間の各間隔において2つのエコー信号を取得する。図4は、本発明による画像化シーケンスを構成するデュアル・エコーTSEシーケンスのパルス・シーケンス図を示している。この図は、周波数エンコード方向(M)、位相エンコード方向(P)、及びスライス選択方向(S)のスイッチングされた磁場勾配を示している。さらに、この図は、RF励起パルス及び再収束パルス、並びにエコー信号が取得される時間間隔を示し、時間間隔はACQとして示されている。2つの連続する再収束RFパルス間の各時間間隔で、読み出し磁場勾配の双極ペアを使用して1対のエコー信号が取得される。図4は、画像化シーケンスの1ショットの最初の2対のエコー信号をカバーしている。ショット間で双極読み出し磁場勾配の極性が逆転している(図4では両向き矢印で示される)、画像化シーケンスの2ショットを実行することにより、高い取得デューティ周期が実現され、双極取得から発生するアーチファクトの抑制を容易にすることで、高い画像品質が保持される(詳細は上記の説明を参照)。一般に、2つのショットの位相エンコードは同一である必要はない。この場合、高度なパラレル・イメージング及び/又は圧縮検知のサブサンプリング並びに再構成の技法を有利に適用することができる。
【0033】
代替的又は追加的に、読み出し磁場勾配の時間的軌跡(すなわち、個々の読み出し磁場勾配パルスのシーケンス又は順序)を、第2のショットで逆転することができる。これは、図5に示されている。図5のパルス・シーケンス図は、周波数エンコード方向(M)における読み出し磁場勾配の時間的軌跡が、図4に示される第1のショットに対して図5に示される第2のショットでは逆転されている点を除いて、図4のパルス・シーケンス図と同一である。
【0034】
代替的又は追加的に、双極ペア以外の読み出し磁場勾配の勾配面積を、これらの勾配面積の合計を固定したまま、第1のショットと第2のショットとの間で変化させることができる。これは、図6に示されている。図6のパルス・シーケンス図は、勾配面積が、読み出し磁場勾配の双極ペアに後続するスポイラ読み出し磁場勾配及びフライ・バック読み出し磁場勾配から、読み出し磁場勾配の双極ペアに先行するスポイラ読み出し磁場勾配に移行されている点を除いて、図4のパルス・シーケンス図と同一である。さらに、任意選択で、タイミングの微細な最適化が行われて、取得ウィンドウがわずかに長くなった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】