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特表2023-552795コヒーレント分散型センシングのための空間平均化方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-19
(54)【発明の名称】コヒーレント分散型センシングのための空間平均化方法
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/353 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
G01D5/353 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534703
(86)(22)【出願日】2021-12-13
(85)【翻訳文提出日】2023-06-07
(86)【国際出願番号】 US2021063165
(87)【国際公開番号】W WO2022132668
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】63/124,948
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/548,581
(32)【優先日】2021-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504080663
【氏名又は名称】エヌイーシー ラボラトリーズ アメリカ インク
【氏名又は名称原語表記】NEC Laboratories America, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ホ、 ジュンチャン
(72)【発明者】
【氏名】ホワン、 ユエ-カイ
(72)【発明者】
【氏名】イプ、 エズラ
【テーマコード(参考)】
2F103
【Fターム(参考)】
2F103BA10
2F103CA01
2F103CA06
2F103CA07
2F103EB02
2F103EB11
2F103EC09
2F103EC16
2F103ED27
2F103ED34
2F103ED37
2F103FA18
(57)【要約】
本開示の態様は、位置グループ化およびグループ内部位相調整とそれに続くグループ間位相調整および合成とを伴う、ユーザが設定したタップ数を採用するセンシングファイバに沿った位置間の移動平均方法を採用する、コヒーレント分散型センシングのためのシステム、方法、および構造を記述する。この方法では、調整を達成するために、2段階の回転、すなわち、グループ内回転およびグループ間回転を使用して、全ての関与するセンシングファイバの位置の位相を調整する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インタロゲータによって、質問光を生成し、該質問光をある長さの光センシングファイバに送ることと、
コヒーレント検出器によって、前記光センシングファイバに送られた前記質問光から生じる後方散乱光を検出することと、
コヒーレント検出器によって、検出された後方散乱光を示す信号を生成し出力することと、
信号処理装置によって、検出された後方散乱光を示す出力信号を分析し、前記光センシングファイバの前記長さに沿った位置に関連する歪み信号であって、前記位置における前記光センシングファイバの振動および音響環境を示す歪み信号を決定することと、を含む、コヒーレント分散型音響センシング(DAS)システムのための空間平均化方法であって、
前記光センシングファイバの前記長さに沿った2つの位置の出力信号の複素積(ビート積)を使用して、前記光センシングファイバの前記長さに沿った全ての位置の間の位相変化を決定することを特徴とする方法。
【請求項2】
移動平均が、空間領域内の複数の位置からの前記ビート積に適用されることをさらに特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
個々の位置に関連付けられた信号が平均化グループにグループ化され、該グループのうちの1つに属する信号が同じ方向に調整され、グループでの位置が最初に選択位置に調整され、複数のグループにまたがる位置では、第2の調整動作を用いることをさらに特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記空間領域の移動平均が、偏波合成と周波数または波長ダイバーシティを含むダイバーシティ合成とに続いて適用されることをさらに特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
選択位置は、そのグループ内で最大短期平均電力を有する位置であることをさらに特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
各位置は、そのグループ内の位相調整のための位相回転を有することをさらに特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記選択位置の回転信号が基準として使用されることをさらに特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
グループ内の各位置を使用して、その入力信号と基準との位相差を決定し、位相回転を平均差で更新するグループ内部調整手順をさらに特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
グループG+lがグループGとの差を維持する、またはグループGがグループG+1との差を維持するように、全てのグループがその隣接グループとのグループ差を維持し、前記グループ差を使用して前記グループとその隣接グループとにまたがる平均位置を調整するグループ間調整手順をさらに特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記グループは、空間平均タップに等しい固定サイズを示す、請求項3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、任意の所与の時間において、いくつかのファイバ位置で、ランダムで独立したレイリーフェージングおよび低い信号レベル、または信号がないことさえも示す、レイリー後方散乱を使用するコヒーレント分散型音響センシング(DAS)システム、方法、および構造に関する。
【背景技術】
【0002】
当業者であれば理解できるように、DASシステムは、光ファイバのレイリー散乱効果を利用して、ファイバの歪みの変化を検出する。得られた動的歪み信号は、インタロゲーション下の光ファイバケーブルの全長に沿った振動と音響信号、およびそのような振動のファイバ位置を決定するために使用される。コヒーレントDASは、複素信号から位相を抽出して歪みを検出する。しかし、位相計算は、同じノイズレベルの下では信号強度に敏感である。レイリー散乱信号の検出に依存するDASシステムでは、特定の位置で信号強度が減衰し、ノイズが溢れる可能性がある。そのため、位相測定が不安定になる。
【発明の概要】
【0003】
当技術分野の進歩は、位相決定前にあらゆるレイリーフェージングを低減するために偏波合成出力を用いた移動平均を有利に採用し、出力信号品質を有利に改善する本開示の態様によってなされる。適切な調整(alignment)を確実にするために、本開示は、平均化に関与する複数のファイバ位置を調整する方法を説明する。
【0004】
従来技術とは大きく異なり、本開示の態様によるシステム、方法、および構造は、ユーザが設定したタップ数を使用して、光ファイバに沿った位置間で新規の移動平均法を採用する。これから図示して説明するように、信号を有利に強化し、フェージングの可能性を低減する2つの動作がある。
【0005】
第1の動作は、位置のグループ化およびグループ内部位相調整を含み、ここで、1)ファイバに沿った位置は、重複しない固定サイズグループに分割され、各グループ内の位置の数は空間平均タップに等しく、2)各グループ内で、最大平均電力を有する位置(「選択位置」)が特定され、各DASフレームサイクルごとに、平均電力が選択位置とともに更新され、3)グループ内の各位置には位相回転値があり、これを使用して、対応する位置の複素信号を回転させて、グループ内の他の位置と調整する。この回転値は、DASフレームサイクルごとに更新され、4)選択位置における回転複素信号の平均方向(「基準方向」)が特定される。各位置について、この基準方向との平均差を計算し、その回転を更新する。
【0006】
本開示の態様による第2の動作は、グループ間位相調整および合成であり、以下を含む。第1に、各隣接グループ内の選択位置の回転複素値間の平均位相差をグループ間位相オフセットとして計算する。第2に、グループにまたがる平均化のために、1つのグループ内の位置を回転してグループ間のオフセットを補正し、次いで合成する。第3に、本方法は、調整を達成するために、グループ内回転、次にグループ間回転といった2段階の回転を使用して、平均のすべての関与する位置の位相を調整し、ここで、1)グループ内調整は、最大電力の位置を基準として使用し、他の位置を回転してそれらの位相を調整する。これは、各他の位置と選択位置との間の位相差を比較し、その位相差によって他の位置を回転させることによって達成される。これにより、偏波スイッチングとファイバ応力の両方によって引き起こされる位相変化を追跡し、サンプリングされた信号の全帯域をカバーすることができ、グループ間調整では、2つのグループ間の位相差を使用してグループの1つを回転させる。この方法では、平均化に関与する各位置ではなく、2つのグループごとの位相差を保存し、計算の複雑さと必要なバッファサイズをO(N)からO(1)に低減することができる。ここで、Nは平均タップ数である。本方法では、選択位置の回転値を使用して、グループ内およびグループ間の両方の調整について位相差を計算する。これにより、選択位置を変更しても位相が連続し、最大電力位置の方向にも追跡するため、信号中のあらゆる情報(超低周波を含む)を保存することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示のより完全な理解は、添付図面を参照することによって実現され得る。
【0008】
図1(A)】例示的な従来技術のDAS構成の概略図である。
【0009】
図1(B)】本開示の態様による例示的なコヒーレントDAS構成の概略図である。
【0010】
図1(C)】本開示の態様によるコヒーレントDAS構成の例示的な処理を示す概略図である。
【0011】
図2】本開示の態様による空間平均化を示す。
【0012】
図3】本開示の態様によるグループの内部位相差および回転角の計算を、グループごとの処理、グループ間位相差処理、および調整および合成の処理動作に分けて示すフロー図である。
【0013】
図4】本開示の態様による位置のグループ化を示す模式図である。
【0014】
図5(A)】本開示の態様によるグループ内部調整を示す一対のプロットである。
図5(B)】本開示の態様によるグループ内部調整を示す一対のプロットである。
【0015】
図6(A)】本開示の態様によるグループ内部の位相差計算および回転値更新を示す。
図6(B)】本開示の態様によるグループ内部の位相差計算および回転値更新を示す。
【0016】
図7】本開示の態様によるグループ内部の回転および調整を示すフロー図である。
【0017】
図8】本開示の態様によるグループ間調整およびさらなる調整を必要とするグループを示す模式図である。
【0018】
図9】本開示の態様によるグループ間調整を示す模式図である。
【0019】
図10】本開示の態様による実装におけるグループ間調整を示す模式図である。
【0020】
例示的な実施形態は、図面および詳細な説明によってより完全に説明される。しかしながら、本開示による実施形態は様々な形態で実施することができ、図面および詳細な説明に記載された特定のまたは例示的な実施形態に限定されない。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下は、単に本開示の原理を例示するものである。したがって、当業者は本明細書に明示的に記載または図示されていないが、本開示の原理を具現化し、その精神および範囲内に含まれる様々な構成を考案することができることが理解されよう。
【0022】
さらに、本明細書に記載されているすべての実施例および条件付き用語は、本開示の原理および技術を促進するために発明者によって寄与された概念を読者が理解するのを助けるための教育目的のためだけのものであることを意図しており、そのような具体的に列挙された実施例および条件に限定されないと解釈されるべきである。
【0023】
さらに、本開示の原理、態様、および実施形態を記載する本明細書のすべての記述、ならびにその具体例は、その構造的および機能的等価物の両方を包含することを意図している。さらに、そのような等価物は、現在知られている等価物と、将来開発される等価物、すなわち、構造に関係なく同じ機能を実行する開発された要素との両方を含むことが意図されている。
【0024】
したがって、たとえば、本明細書の任意のブロック図が、本開示の原理を実施する例示的な回路の概念図を表すことは、当業者には理解されるであろう。
【0025】
本明細書で特に明記しない限り、図面を構成する図は、縮尺通りに描かれていない。
【0026】
いくつかの追加の背景として、近年、分散型振動センシング(DVS)や分散型音響センシング(DAS)を含む分散型光ファイバセンシング(DFOS)システムが、インフラストラクチャ監視、侵入検出、および地震検出を含むがこれらに限定されない多くの用途で広く受け入れられていることに改めて留意する。DASおよびDVSでは、後方レイリー散乱効果を用いてファイバの歪みの変化を検出し、ファイバ自体が後続の分析のために光センシング信号をインタロゲータに戻す伝送媒体として機能する。
【0027】
図1(A)は、インタロゲータ/コヒーレント受信機/検出/分析システムを使用する従来技術のDFOS/DVS/DASシステムの簡略化した概略図を示す。動作上、このようなシステムは、光Tx信号を生成して光センシングファイバに印加し、その結果、反射/散乱した光信号が受信機/分析システムに戻され、受信機/分析システムは、反射/散乱され、その後に受信された信号を受信/検出/分析する。信号が分析され、ファイバの長さに沿って遭遇する環境条件を示す出力が生成される。
【0028】
図1(B)は、本開示の態様による例示的なコヒーレントDASシステムの概略ブロック図である。コヒーレントDASシステムは、レイリー散乱を使用してセンシングファイバに沿って音響信号を検出するため、一般に、光信号(パルスまたはコード)を周期的に生成する送信機(Tx)を含むインタロゲータを使用する。光信号は、分散型センシングファイバに導かれる。ファイバに沿った各位置は、光信号のごく一部を反射してインタロゲータに戻す。後方散乱信号は、Rx部で処理され、音響信号を回復したり、振動を検出したりする。
【0029】
前述のように、コヒーレントDASは、光ファイバに沿って選択された2つの位置ごとに差動ビートを使用して、選択された2つの位置の間の位置でのファイバ応力を検出する。コヒーレント光検波には、A偏波ダイバーシティとY偏波ダイバーシティがあり、ファイバの移動または他の要因によってランダムに変化する。このため、ビートでは、X-X、X-Y、Y-X、およびY-Yを使用して、すべての電力を十分に利用することができ、その結果、4つの偏波ダイバーシティ
【数1】
および
【数2】
が得られる。4つのダイバーシティ項を1つの項に結合するには、後続の処理が必要とされる。
【0030】
特定の実施形態では、コヒーレント受信機は、レイリー反射信号を検出するために、インタロゲート周波数から異なる量だけオフセットされた複数のLO周波数を使用することができる。この方法の一部として、インタロゲーションとコヒーレント検波との間の周波数オフセットを有利に提供するTx/Rxフレーミング方式を使用することができる。
【0031】
動作上、DAS受信信号サンプルは、各フレーム内で位置ごとに順番に受信され、一方、偏波ダイバーシティ合成処理では、各位置についてフレームごとの処理が必要である。シーケンス変換には、大量のメモリと帯域幅を必要とする。ビート処理からのダイバーシティ項を2倍にすると、必要なメモリと帯域幅がさらに2倍になる。
【0032】
本開示の態様によるシステム、方法、および構造は、一般に、受信機内で、または受信機と連携して動作し、有利には、ビートダイバーシティ項を低減することによって必要とされるメモリおよび帯域幅を低減する。
【0033】
本開示の態様によれば、偏波スイッチングは、位置サンプリングレート(すなわち、DASパルスまたはフレーム繰り返しレート)と比較して遅いプロセスであるため、A偏波とY偏波は、ビート前に統合される。動作的には、まず2つの偏波は、統合前に、一方の偏波(AまたはY)を他方の偏波(YまたはA)に回転させることによって同じ方向に揃えられ、次いで、位相の連続性を維持するために回転される。
【0034】
2つの偏波は、最初に、平均電力が高い方(pol-Pとする)に揃えられる。次いで、X-Y合成信号は、差動ビートのためのビートモジュールに渡され、その後、位相抽出またはその他の追加の処理が行われる。
【0035】
有利なことに、本開示の態様によるシステム、方法、および構造は、ビートモジュールへの単一の入力のみと、ビートからの1つの出力のみが存在するように、ビート前に2つの偏波を1つの出力に合成することができる。この全体的な独創的な動作により、処理の複雑さとメモリサイズを有利に低減する。
【0036】
前述のように、本開示の態様によるシステム、方法、および構造は図1(C)に示すように、差動位相を使用してファイバに沿った応力を検出するコヒーレントDASのためのものである。信号入力X(z,n)およびY(z,n)は、2つの偏波X/Yによるものであり、zはファイバに沿った位置であり、nはその位置の時系列である。差動ビートにより、
【数3】
および
【数4】
の4つの偏波ダイバーシティが生成される。偏波合成により、4つの偏波の位相が調整され、加算されて1つの出力
【数5】
が得られる。本発明は、一般に、偏波合成モジュールと位相抽出モジュールとの間に位置する機能に関する。
【0037】
なお、本発明の態様は、空間領域における移動平均関数として扱うことができ、これは、次式で表すことができる。
【数6】
図2に示すように、時間nについて、5タップ平均化の例を用いている。
【0038】
図2は、本開示の態様による空間平均化を示す。これまで述べてきたように、そしてこれからさらに説明するように、本開示の態様によるシステム、方法、および構造は、ファイバに沿った位置を重複しないグループに分割する。各位置は、そのグループ内の他の位置と調整するために使用される位相回転R(z,n)を有する。各グループでは、最も高い平均電力(または振幅)の位置が、位置zeとして示される「選択位置」として使用される。選択位置
【数7】
の信号は、まず
【数8】
になるように回転され、このグループの基準として使用される。次に、グループ内の他の各位置の入力信号は、この基準との位相差を
【数9】
によって計算し、ここで、
【数10】
は入力信号の共役である。この差は、ローパスフィルタを使用してR(z,n)を更新するために使用される。この手順は、図3に示されている。図3は、本開示の態様によるグループの内部位相差および回転角の計算を、グループごとの処理、グループ間位相差処理、および調整および合成の処理動作に分けて示すフロー図である。
【0039】
2つの隣接グループごとに、グループ(g+1)の位相をグループgに合わせるために使用されるグループ間位相回転Rg(g+1,n)(「グループ」の変数g)がある。この信号は、グループ(g+1)とグループgの間の位相差の平均であり、
【数11】
である。Rg(g+1,n)の計算は、図3のグループ間位相差部に示されている。
【0040】
最終的な合成のために、各位置は、まず、R(z,n)を回転させて
【数12】
とすることによって、グループ内部調整を実行する。グループgのみを対象とした平均化では、
【数13】
である
【数14】
を取得する。グループgとグループ(g+1)の両方が関係するものについては、グループ(g+1)内の位置についてRg(g+1,n)のグループ回転を取得してから合成する。これは、図3の調整および合成の部分に示されている。
【0041】
前述のように、本開示の態様は、偏波合成出力を用いた移動平均を提供し、位相計算に送信する前にレイリーフェージングの可能性を低減し、出力信号の品質を改善することが期待される。偏波合成では、各位置が異なる位置を指している場合があり、直接合成することができない。本開示は、平均化に関与する複数の位置を調整する方法を提供する。
【0042】
本開示は、図4(本開示の態様による位置のグループ化を示す模式図)に示すように、入力信号を各グループ内にN個の位置を有するグループに分割する動作を説明する。ここで、Nは平均化タップである。例えば、5タップの平均化の場合、位置0~4はグループ0に属し、位置5~9はグループ1に属し、以下同様である。
【0043】
各位置には、回転R(z,n)があり、グループ内の他のメンバーと調整するために、信号がその指向方向(DCとみなされる)からシフトする。図5(A)および図5(B)は、本開示の態様によるグループ内部調整を示す一対のプロットである。
【0044】
例えば、図5(A)では、位置pと位置qはどちらもグループgに属するが、入力信号
【数15】
および平均化信号
【数16】
および
【数17】
によって示されるように、DC方向が異なる。R(p,n)およびR(q,n)の回転をそれぞれ適用することによって、2つの信号
【数18】
および
【数19】
図5(B)に示すように調整される。一実施形態では、
【数20】
が正規化されたR(z,n)によって回転され、
【数21】
となる。
【0045】
各グループは、最高平均電力の位置を選択位置zeとして選択する。回転信号
【数22】
の方向が、グループの基準方向とされる。グループ内の他の各位置は、この基準方向と比較して、そのR(z,n)を更新する。瞬時差(instant difference)は、図6(A)に模式的に示すように、
【数23】
を使用して計算する。
【0046】
図6(A)および図6(B)は、本開示の態様によるグループ内部の位相差計算および回転値更新を示す。この図を参照すると、R(z,n)が、ローパスフィルタを使用して
【数24】
によって更新されることに留意されたい(図6(B))。
【0047】
一実施形態では、R(z,n)が正規化された
【数25】
を平均化(またはローパスフィルタリング)することによって更新され、
【数26】
となる。
【0048】
図7は、本開示の態様によるグループ内部の回転および調整を示すフロー図であり、上記の手順を要約する。
【0049】
各グループが内部的に整列すると、次のステップは、2つのグループにまたがる位置を合成するためのグループ間調整である。図8(本開示の態様によるグループ間調整およびさらなる調整を必要とするグループを示す模式図)に示される例のように、平均化された結果
【数27】
は、図7の手順を使用して既に調整されているグループg内のすべての位置からのものであり、一方、結果
【数28】
から
【数29】
は、さらなる調整を必要とするグループgとグループg+1の両方にまたがる位置からのものである。
【0050】
各グループ(g+1)は、その前のグループ(グループg)との平均位相差Rg(g+1,n)を維持する。グループ間調整は、
【数30】

【数31】
)を用いて、グループ(g+1)内の全ての調整された信号をグループg内の信号の方向に回転させることによって行われる。複数の位置合成は、
【数32】
になる。この動作を図9に示す。
【0051】
グループ内部調整と同様に、グループ(g+1)内の回転は、正規化された値(
【数33】
)で行うことができる。一実施形態では、複数の位置合成は、その平均電力に基づいて、各位置に重みを適用することができる。
【0052】
グループ回転Rg(g+1,n)は、各グループで選択された位置の回転信号(
【数34】
)を使用して、グループgとグループ(g+1)との平均差分によって更新される。ここで、
【数35】
であり、
【数36】
である。一実施形態では、Rg(g+1,n)が正規化された位相差
【数37】
から生成される。
【0053】
位置ごとの信号入力を与えると、図10に示すように、2つの並列シフトレジスタによってグループ間調整を実現することができる。この図を参照すると、そこで使用されている「FF」は、「フリップフロップ」またはレジスタを指すことに留意されたい。左側のシフトレジスタは、グループ間回転のない信号を有し、一方、右側のシフトレジスタは、グループ間位相差によって回転される。パルスは、グループごとに1回生成され、左側のレジスタによって「クリア」信号として使用され、レジスタ1~(N-1)をゼロにクリアし、右側の信号で「ロード」信号として使用され、左側のレジスタから右側のレジスタに値をロードする。パルスが非アクティブの場合、各サイクルごとにレジスタが前のレジスタから値をロードする。この動作により、右側の出力のレジスタは、常に信号を適切に調整する。
【0054】
この時点で、いくつかの具体例を使用して本開示を提示したが、当業者は本教示がそのように限定されないことを認識するのであろう。したがって、本開示は、本明細書に添付される特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
図1(A)】
図1(B)】
図1(C)】
図2
図3
図4
図5(A)】
図5(B)】
図6(A)】
図6(B)】
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】