(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-19
(54)【発明の名称】プライマーセット、試薬の組成物および非定型細菌を検出する方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6888 20180101AFI20231212BHJP
C12Q 1/6844 20180101ALI20231212BHJP
【FI】
C12Q1/6888 Z ZNA
C12Q1/6844 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534707
(86)(22)【出願日】2021-12-08
(85)【翻訳文提出日】2023-08-02
(86)【国際出願番号】 PL2021050085
(87)【国際公開番号】W WO2022124919
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519224731
【氏名又は名称】ゲノムテック、スプウカ、アクツィーナ
【氏名又は名称原語表記】GENOMTEC SA
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】ミロン、トカルスキ
(72)【発明者】
【氏名】イザベラ、ピエルカ
(72)【発明者】
【氏名】マウゴジャタ、マロドブラ-マズール
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ06
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS24
4B063QX02
(57)【要約】
本発明は、肺炎クラミジア細菌のMOMP遺伝子のヌクレオチド配列を増幅するためのプライマーセット、肺炎クラミジア細菌を検出するための方法、肺炎クラミジア細菌によって引き起こされる感染症を検出するための方法、および肺炎クラミジア細菌によって引き起こされる感染症を検出するためのキットに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肺炎クラミジアMOMP遺伝子のヌクレオチド配列を増幅するためのプライマーセットであって、以下のヌクレオチド配列a)およびb)を有する内部プライマーのセット、ならびに以下のヌクレオチド配列c)およびd)を含む外部プライマーのセット:
a)5’ CGCTCCAAGAGAAAGAGGTGTC 3’(核酸配列配列番号3またはその逆の相補的な配列-3’末端から、好ましくはTTTTブリッジによって、配列5’ AAACGTTTCTTTAAGTAACGGAG 3’-(核酸配列配列番号4またはその逆の相補的な配列と連結されている;
b)5’ CTCGTGGAGCCTTATGGGAA 3’-(核酸配列配列番号5またはその逆の相補的な配列-3’末端から、好ましくはTTTTブリッジによって、配列5’ GTGCATATTGGAATTCAGCT 3’-(核酸配列配列番号6またはその逆の相補的な配列と連結されている;
c)5’ CTGTAAATGCAAATGAACTACC 3’配列番号1の核酸配列またはその逆の相補的な配列、および
d)配列5’ CACATTAAGTTCTTCAACTTTAGGT 3’核酸配列配列番号2またはその逆の相補的な配列
を含むことを特徴とする、プライマーセット。
【請求項2】
肺炎クラミジアMOMP遺伝子 配列番号7-5’ TGCGGTTGTGCAACTTTGGG 3’に含まれるヌクレオチド配列またはこれに相補的なヌクレオチド配列を含むループプライマー配列を含む、請求項1に記載のプライマーセット。
【請求項3】
肺炎クラミジア細菌を検出する方法であって、請求項1または2に記載のプライマーセットを使用して細菌ゲノムの核酸配列の選択領域が増幅され、その増幅方法がLAMP法である、方法。
【請求項4】
増幅が以下の温度プロファイル:65.5℃、40分で行われる、請求項3に記載の細菌を検出する方法。
【請求項5】
終点反応が80℃の温度プロファイルでさらに5分間行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
請求項3に記載の検出方法を含んでなる、肺炎クラミジア細菌感染症の検出のための方法。
【請求項7】
請求項1および2に記載のプライマーセットを含んでなる、肺炎クラミジア細菌感染症の検出のためのキット。
【請求項8】
5.0μlのWarmStart LAMP 2x Master Mix(NEB)を含んでなる、請求項7に記載の感染症検出キット。
【請求項9】
請求項1および2に記載の増幅プライマーを含み、前記プライマーが以下の濃度:0.13μM F3、0.13μM B3、1.06μM FIP、1.06μM BIP、0.27μM LoopBを有し;D-(+)-トレハロース二水和物-6%;二本鎖DNAと相互作用する蛍光マーカー-EvaGreen≦1Xまたは≦0.5μlの量の蛍光色素または≦1μlの量の緑色蛍光色素またはSyto-13≦16μMまたはSYTO-82≦16μMまたは増幅反応を阻害しない濃度の二本鎖DNAと相互作用する別の蛍光色素を含む、請求項7または8に記載の感染症検出キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肺炎クラミジア(Chlamydophila pneumoniae)のMOMP遺伝子のヌクレオチド配列を増幅するためのプライマーセット、肺炎クラミジア細菌を検出するための方法、肺炎クラミジア細菌によって引き起こされる感染症を検出するための方法、および肺炎クラミジア感染症を検出するためのキットに関する。本発明は、医療診断に適用することができる。
【背景技術】
【0002】
肺炎クラミジアは、偏性細胞内細菌に属し、特定の2段階の発生サイクルによって区別される。2つの連続した形態:基本小体および網様体で構成されている。基本小体は、宿主に感染する代謝的に不活性な形態である。基本小体は、エンドサイトーシスの過程で、細胞内に入り、そこで活発に代謝する非感染性の網様体に変化する。48~72時間後、凝縮、再構成、および網様体から基本小体への分裂が起こる。基本小体は細胞内に500~1000個の量で蓄積される。数が多いにもかかわらず、基本小体は宿主細胞の機能に影響を与えない。細胞が小体で満たされると、細胞外へのクラミジア抗原の放出が誘発され、それによって免疫反応が引き起こされる。細胞内ではサイクルが継続されるため、微生物培地で細胞を培養することは不可能である。従って、肺炎クラミジア感染症の診断は困難である。肺炎クラミジアは、下気道感染症および上気道感染症の両方を引き起こす可能性がある。主に肺炎および気管支炎を引き起こす。上気道の場合、感染症は、副鼻腔または咽頭の炎症が単独かまたは下気道感染症と合併して起こる。感染症の潜伏期間はおよそ21日である。
【0003】
現在使用されている診断方法は、感度および特異性が不十分である。一般的に使用されている方法には、血清学的および免疫学的(EIA、ELISA)方法が含まれる。IgM抗体は感染後約3週間で検出可能になり、IgG抗体は症状が現れてから6~8週間で発生する可能性がある。免疫学的方法も血清学的方法も、肺炎クラミジアの迅速かつ正確な診断には十分ではない。病原体は細胞内に存在するため、培養培地の接種などの微生物学的方法は、細胞を使用せずには不可能である。最大の特異性と感度を特徴とする方法は、生物材料、つまり、咽頭スワブまたは鼻咽頭スワブにおける肺炎クラミジアの核酸の検出を伴うものである(いわゆるNAAT法-核酸増幅検査)。NAAT技術で最も一般的に使用される検査は、リアルタイムPCRに基づくアッセイである。リアルタイムPCR技術を使用した多くの異なる検査が市場で利用可能であるが、激しい競争にもかかわらず、これらの方法は依然として比較的高価である。さらに、専門性の高い人材、高価な装置が必要であり、患者のサンプルからの遺伝物質の抽出が必要である。さらに、試薬の加熱と冷却の反復が必要であるため、この方法は比較的時間がかかり、使用される装置は、このプロセスを実行するために比較的多くのエネルギーを消費する。
【0004】
LAMP(ループ介在等温増幅 (Loop-mediated isothermal amplification))法を含む等温法は、診断プロセスのスピードアップが可能であり、分析を実行するのに必要なエネルギーコストが削減され、検出された病原体のDNA/RNAを抽出する必要なく判定を実行することができる方法である。さらに、文献データによると、これらの方法は、前述のリアルタイムPCR技術よりも感度および特異性が高く、さらに、はるかに高速であることを特徴とする。等温での進行では特別な機器を必要としない。等温法はハードウェア要件が低いため、プライマリケアユニット(POCT-臨床現場即時検査(point-of-care testing))に理想的な診断ソリューションであり、患者と医師の最初の接触の際に、一般開業医または専門医(耳鼻咽喉科、小児科医)の実務において検査を実行することができる。このソリューションにより迅速な対応(15分以内)が可能になり、これにより、全く初めての訪問時に標的療法の導入が可能になる。これは、肺炎クラミジア(Chlamydiophila pneumoniae)などの非定型細菌の場合に特に重要である。一方、凍結乾燥試薬を使用すると、診断検査を凍結する必要がなく、検査を室温で保存することが可能になる。
【発明の開示】
【0005】
肺炎クラミジアの診断のためのLAMP法においてプライマーを使用することは、これまでに公開された特許出願:CN111378769A;CN101886122A;CN104818333A;CN107099619A;KR20160088316Aから知られている。LAMP法は、例えば、特許明細書WO0028082、WO0224902に開示されている。上述の特許出願は、ほとんどの場合、肺炎クラミジア細菌の感度および検出限界について記載していないか、またはこれらの限界は本発明よりも高い。それらの中には、アッセイの特異性に関する情報が含まれていないものもある。上述の特許出願の一部における検出方法は、より大量の反応混合物を使用し、定量的な測定はできず、検出は、アガロースゲル電気泳動または増幅反応の陽性結果に応じた反応混合物の色の変化に基づく他の方法(SYBR Green、ヒドロキシナフトールブルー、クレゾールレッド)を使用する終点型である。さらに、開発された上記のキットのほとんどは、POCT診断に適用することができず、主に研究室で利用される。従って、臨床現場即時検査での使用を目的としたLAMP法による肺炎クラミジア(Chlamydiophila pneumoniae)の診断に使用される、適当に精製されたプライマーセットを使用する診断方法を提供する必要が依然としてある。これによれば、非常に低い検出限界(≧5コピー/反応)で短時間(≦15分)での細菌の検出が可能になる。予想外にも、上記の問題は本発明によって解決された。
【0006】
本発明の第1の主題は、肺炎クラミジアのMOMP遺伝子のヌクレオチド配列を増幅するためのプライマーセットであって、以下のヌクレオチド配列a)およびb)を有する内部プライマーのセット、ならびに肺炎クラミジアMOMP遺伝子の選択された断片に特異的な以下のヌクレオチド配列c)およびd)を含む外部プライマーのセットを含むことを特徴とするプライマーセットである:
a)5’ CGCTCCAAGAGAAAGAGGTGTC 3’(核酸配列(nucleic sequence)配列番号3またはその逆の相補的な配列、3’末端から、好ましくはTTTTブリッジによって、配列5’ AAACGTTTCTTTAAGTAACGGAG 3’-(核酸配列配列番号4またはその逆の相補的な配列と連結されている;
b)5’ CTCGTGGAGCCTTATGGGAA 3’-(核酸配列配列番号5またはその逆の相補的な配列、3’末端から、好ましくはTTTTブリッジによって、配列5’ GTGCATATTGGAATTCAGCT 3’-(核酸配列配列番号6またはその逆の相補的な配列;と連結されている;
c)5’ CTGTAAATGCAAATGAACTACC 3’核酸配列配列番号1またはその逆の相補的な配列、および
d)5’ CACATTAAGTTCTTCAACTTTAGGT 3’核酸配列配列番号2またはその逆の相補的な配列。
【0007】
本発明の好ましい実施形態において、前記プライマーセットは、肺炎クラミジアMOMP遺伝子 配列番号7-5’ TGCGGTTGTGCAACTTTGGG 3’またはその逆の相補的な配列に含まれる核酸配列または相補的な核酸配列を含んでなるループプライマー配列を含んでなる。
【0008】
本発明の第2の主題は、肺炎クラミジア細菌を検出するための方法であり、該方法では、本発明の第1の主題で定義されたプライマーセットを使用して肺炎クラミジアゲノムのヌクレオチド配列の選択領域(MOMP遺伝子断片)が増幅され、その増幅方法がLAMP法であることを特徴とする。
【0009】
好ましい実施形態において、増幅は以下の温度プロファイルで行われる:65.5℃、40分。温度プロファイルとは、増幅が65.5℃の一定温度で40分間行われることを意味する。
【0010】
本発明のさらに好ましい実施形態において、終点反応は、80℃の温度プロファイルでさらに5分間行われる。
【0011】
本発明の第3の主題は、本発明の第2の主題で定義された検出方法を含んでなることを特徴とする、肺炎クラミジア細菌によって引き起こされる感染症を検出するための方法である。
【0012】
本発明の第4の主題は、本発明の第1の主題で定義されたプライマーセットを含んでなることを特徴とする、肺炎クラミジアによって引き起こされる感染症の検出のためのキットである。
【0013】
本発明の好ましい実施形態において、感染症検出キットは、5.0μlのWarmStart LAMP 2X Master Mix(New England Biolabs: https://international.neb.com/products/e1700-warmstart-lamp-kit-dna-rna#Product%20Information)を含んでなる。
【0014】
本発明のさらに好ましい実施形態において、本発明の第1の主題で定義された個々の増幅プライマーは、以下の濃度を有する:0.13μM F3、0.13μM B3、1.06μM FIP、1.06μM BIP、0.27μM LoopB;D-(+)-トレハロース二水和物-6%;二本鎖DNAと相互作用する蛍光マーカー-EvaGreen(Biotium; https://biotium.com/product/evagreen-dye-20x-in-water/)≦1Xまたは≦0.5μlの量の蛍光色素(New England Biolabs, https://international.neb.com/products/e1700-warmstart-lamp-kit-dna-rna#Product%20Information)または≦1μlの量の緑色蛍光色素(Lucigen, https://www.lucigen.com/docs/msds/SDS082-Green-Fluorescent-Dye.pdf)またはSyto-13(ThermoFisher Scientific, https://www.thermofisher.com/order/catalog/product/S7575#/S7575)≦16μMまたはSYTO-82(ThermoFisher Scientific, https://www.thermofisher.com/order/catalog/product/S11363?ef_id=EAIaIQobChMI26qq1uW77QIVBHAYCh33gAx0EAAYASAAEgJ_vPD_BwE:G:s&s_kwcid=AL!3652!3!447292198730!b!!g!!&cid=bid_pca_iva_r01_co_cp1359_pjt0000_bid00000_0se_gaw_dy_pur_con&gclid=EAIaIQobChMI26qq1uW77QIVBHAYCh33gAx0EAAYASAAEgJ_vPD_BwE#/S11363?ef_id=EAIaIQobChMI26qq1uW77QIVBHAYCh33gAx0EAAYASAAEgJ_vPD_BwE:G:s&s_kwcid=AL!3652!3!447292198730!b!!g!!&cid=bid_pca_iva_r01_co_cp1359_pjt0000_bid00000_0se_gaw_dy_pur_con&gclid=EAIaIQobChMI26qq1uW77QIVBHAYCh33gAx0EAAYASAAEgJ_vPD_BwE)≦16μMまたは増幅反応を阻害しない濃度の二本鎖DNAと相互作用する別の蛍光色素。
【0015】
肺炎クラミジアの検出のための本発明のプライマーセット、ならびに肺炎クラミジア感染症を検出するための方法および増幅産物を検出する方法の利点は、臨床現場即時検査(the point of care)(POCT)での医療診断における、ポータブルジェネティックアナライザーを用いたターゲットアプリケーションでのそれらの使用可能性である。本発明の反応混合物を凍結乾燥することにより、検査の診断パラメーターを低下させることなく、診断キットを室温で保存することが可能になる。さらに、蛍光色素を使用して増幅産物を検出すると、前記方法の感度が高まり、検出限界を(1コピー/反応まで)下げることができ、検査サンプル中の細菌の定量的測定も可能になる。
本発明の例示的な実施形態を図面に示す。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、前記方法の感度特性を示しており、鋳型:肺炎クラミジア株由来のゲノムDNA:CM-1(VR-1360DQ(商標))をDNA標準のコピー数/反応10~1の範囲にわたって用いて特定のシグナルが得られたが、NTCでは産物は存在しなかった;
図1:レーン1:質量マーカー(Quick-Load(登録商標)Purple 100 bp DNA Ladder、NewEngland Biolabs);レーン2:NTC;レーン3:ChPの1コピー;レーン4:ChPの5コピー;レーン5:ChPの10コピー。
【
図2】
図2は、肺炎クラミジア株由来のゲノムDNA:CM-1(VR-1360DQ(商標))標準のDNA標準コピー数/反応10~1の範囲にわたる連続希釈をアッセイすることによって測定された本発明の方法の感度を示しており、産物の増幅をリアルタイムで測定した。リアルタイムでの肺炎クラミジア検出の結果を表1に示し、蛍光シグナルの検出に必要な最短時間を示している。
【
図3】
図3は、前記方法の感度特性を示しており、鋳型:肺炎クラミジア株由来のゲノムDNA:CM-1(VR-1360DQ(商標))をDNA標準のコピー数/反応100~10の範囲にわたって用いて特定のシグナルが得られたが、NTCでは産物は存在しなかった;
図3:レーン1:質量マーカー(Quick-Load(登録商標)Purple 100 bp DNA Ladder、NewEngland Biolabs);レーン2:NTC;レーン3:ChPの10コピー;レーン4:ChPの25コピー;レーン5:ChPの50コピー;レーン6:ChPの100コピー。
【
図4】
図4は、肺炎クラミジア株由来のゲノムDNA:CM-1(VR-1360DQ(商標))標準のDNA標準のコピー数/反応100~10の範囲にわたる連続希釈をアッセイすることによって測定された本発明の方法の感度を示しており、産物の増幅をリアルタイムで測定した。リアルタイムでの肺炎クラミジア検出の結果を表2に示し、蛍光シグナルの検出に必要な最短時間を示している。
【
図5-6】
図5および
図6は、天然の生理学的細菌叢、同時感染から生じ得るものまたは類似のゲノム配列を共有するものとして、検査した生物材料中に潜在的に存在する複数の病原体の標準マトリックスを用いて本発明の方法の特異性を示している。
図5:レーン1:質量マーカー(Quick-Load(登録商標)Purple 100 bp DNA Ladder、NewEngland Biolabs);レーン2および3:メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MSSA);レーン4および5:性器マイコプラズマ(Mycoplasma genitalium);レーン6および7:肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae);レーン8および9:百日咳菌(Bordetella pertussis);レーン10および11:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA);レーン12および13:化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes);レーン14および15:エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis);レーン16および17:エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium);レーン18および19:緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa);レーン20および21:モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis);レーン22および23:アシネトバクター・バウマンニー(Acinetobacter baumannii);レーン24および25:肺炎クラミジア(Chlamydiophila pneumoniae);レーン26および27:NTC;レーン28:質量マーカー(Quick-Load(登録商標)Purple 100 bp DNA Ladder、NewEngland Biolabs)、
図6:レーン1:質量マーカー(Quick-Load(登録商標)Purple 100 bp DNA Ladder、NewEngland Biolabs);レーン2および3:リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes);レーン4および5:レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila);レーン6および7:マイコプラズマ・ホミニス(Mycoplasma hominis);レーン8および9:軟性下疳菌(Haemophilus ducreyi);レーン10および11:大腸菌(Escherichia coli);レーン12および13:マイコプラズマ・ウレアプラズマ(Ureoplasma urealyticum);レーン14および15:カンピロバクター ジェジュニ(Campylobacter jejuni);レーン16および17:カンジダ・アルビカンス(Candida albicans);レーン18および19:肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae);レーン20および21:インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae);レーン22および23:ヒトDNA;レーン24および25:肺炎クラミジア(Chlamydiophila pneumoniae);レーン26および27:NTC;レーン28:質量マーカー(Quick-Load(登録商標)Purple 100 bp DNA Ladder、NewEngland Biolabs)。
【実施例】
【0017】
実施例1 プライマー配列
LAMP技術を使用した肺炎クラミジア遺伝物質の検出に使用される特定のオリゴヌクレオチドの配列を以下に示し、特徴付けている。
【0018】
1.ChP MOMPF3オリゴヌクレオチド配列:5’ CTGTAAATGCAAATGAACTACC 3’は、F2プライマーに隣接する3’末端である肺炎クラミジアMOMP遺伝子(5’-3’鎖)と同一である。
2.ChP MOMPB3オリゴヌクレオチド配列:5’ CACATTAAGTTCTTCAACTTTAGGT 3’は、オリゴヌクレオチド1の3’末端から135ヌクレオチド離れた肺炎クラミジアMOMP遺伝子(5’-3’鎖)の相補的な断片である。
3.ChP MOMPF2オリゴヌクレオチド配列:5’ AAACGTTTCTTTAAGTAACGGAG 3’は、オリゴヌクレオチド1の3’末端に直接隣接する肺炎クラミジアMOMP遺伝子(5’-3’鎖)と同一である。
4.ChP MOMPB2オリゴヌクレオチド配列:5’ GTGCATATTGGAATTCAGCT 3’は、オリゴヌクレオチド1の3’末端から108ヌクレオチド離れた肺炎クラミジアMOMP遺伝子(5’-3’鎖)の相補的な断片である。
5.ChP MOMPF1cオリゴヌクレオチド配列:5’ CGCTCCAAGAGAAAGAGGTGTC 3’は、1オリゴヌクレオチドの3’末端から40ヌクレオチド離れた肺炎クラミジアMOMP遺伝子(5’-3’鎖)の相補的な断片である。
6.ChP MOMPB1cオリゴヌクレオチド配列:5’ CTCGTGGAGCCTTATGGGAA 3’は、オリゴヌクレオチド1の3’末端から68ヌクレオチド離れた肺炎クラミジアMOMP遺伝子(5’-3’鎖)と同一である。
7.ChP MOMPLoopBオリゴヌクレオチド配列:5’ TGCGGTTGTGCAACTTTGGG 3’。
【0019】
F1cおよびF2オリゴヌクレオチドの配列は、互いに直接連結されるか、または好ましくは、TTTTブリッジによって互いに連結され、FIPとして使用される。B1cおよびB2オリゴヌクレオチドの配列は、互いに直接連結されるか、または好ましくは、TTTTブリッジによって互いに連結され、BIPとして使用される。
【0020】
実施例2.反応混合物の組成
LAMP技術を用い、実施例1で特徴付けたオリゴヌクレオチドを使用して肺炎クラミジアMOMP遺伝子を増幅する方法、反応混合物の組成は以下のとおりである:
5.0μl WarmStart LAMP 2X Master Mix
0.13μM F3
0.13μM B3
1.06μM FIP
1.06μM BIP
0.27μM LoopB
D-(+)-トレハロース二水和物-6%二本鎖DNAと相互作用する蛍光マーカー-EvaGreen≦1Xまたは0.5μlの量の蛍光色素50X(New England Biolabs)または≦1μlの量の緑色蛍光色素(Lucigen)またはSyto-13≦16μMまたはSYTO-82≦16μMまたは増幅反応を阻害しない濃度の二本鎖DNAと相互作用する別の蛍光色素。
DNA鋳型≧1コピー/反応
総反応量は、DNaseおよびRNase不含水で10μlに調整した。
【0021】
実施例3.温度プロファイル
LAMP技術および実施例2で特徴付けた反応混合物の組成を用い、実施例1で特徴付けたオリゴヌクレオチドを使用して肺炎クラミジアMOMP遺伝子を増幅する方法、温度プロファイルは以下のとおりである:
1)65.5℃、40分
2)好ましくは、終点反応では80℃、5分。
【0022】
実施例4.蛍光色素の使用
実施例3で特徴付けた温度プロファイルで、LAMP技術および実施例2で特徴付けた反応混合物の組成を用い、実施例1で特徴付けたオリゴヌクレオチドを使用した肺炎クラミジアMOMP遺伝子の増幅および検出の方法、検出方法は下記のとおりである。
【0023】
二本鎖DNAと相互作用することが可能な蛍光色素を使用し、反応、リアルタイムおよび/または終点測定を開始する前に、0.5μl EvaGreen 20X;緑色蛍光色素(Lucigen);SYTO-13およびSYTO-82についてはそれぞれ、0.5μLまたは≦1Xの濃度;≦16μMの量で反応混合物に添加する。FAM色素と同様の範囲の励起波長-EvaGreen;蛍光色素50X(New England Biolabs)、緑色蛍光色素(Lucigen);SYTO-13色素の場合、490~500nm(最適には494nm)およびSYTO-82色素の場合、535nm(最適には541nm);発光波長 EvaGreen;緑色蛍光色素(Lucigen);SYTO-13色素の場合、509~530nmの範囲(最適には518nm)およびSYTO-82色素の場合、556nm(最適には560nm)、検出方法の変化登録時間は肺炎クラミジアおよび陰性対照の反応開始から14.93分から始まる。
【0024】
実施例5.凍結乾燥処理
実施例4で特徴付けた温度プロファイルおよび実施例5で記載した検出方法で、LAMP技術および実施例2で特徴付けた反応混合物の組成を用い、実施例1で特徴付けたオリゴヌクレオチドを使用した肺炎クラミジアMOMP遺伝子の増幅検出および検出のための試薬の調製および凍結乾燥の方法。
【0025】
実施例6.凍結乾燥処理の説明
鋳型DNAを除く反応成分を、実施例2で記載した組成に従って混合し、総量10μlとした。混合物を0.2ml管に移し、下記パラメーターに従って凍結乾燥処理に付した。
【0026】
試験管に入れた混合物を-80℃に2時間予冷した。次に、凍結乾燥処理を、5-2ミリバールの圧力下で-80℃の温度で3時間行った。
【0027】
実施例7 方法の感度
感度は、標準:肺炎クラミジア株由来のゲノムDNA:CM-1(VR-1360DQ(商標))の連続希釈をアッセイすることによって決定し、反応混合物あたり細菌1コピーの最小量であり、産物の増幅はリアルタイムで測定した-
図2、4(連続希釈のリアルタイムLAMP)。
【0028】
個々のサンプルの発光蛍光の検出に要した時間を表1、2に示す。
【0029】
特徴付けたプライマーによって、1コピー/反応混合物の最小数でMOMP遺伝子断片を検出することにより肺炎クラミジア細菌の検出が可能になる。
【0030】
【0031】
【0032】
リアルタイムLAMP技術に基づく検査に対する本明細書に記載した増幅方法およびオリゴヌクレオチドの優位性は、
図1、3に示す感度の大幅な向上と、
図2、4および表1、2に示す分析時間の短縮によるものである。
【0033】
【配列表】
【国際調査報告】