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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-19
(54)【発明の名称】嚢胞性線維症の治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/47 20060101AFI20231212BHJP
   A61K 31/395 20060101ALI20231212BHJP
   A61K 31/404 20060101ALI20231212BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231212BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20231212BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20231212BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20231212BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20231212BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20231212BHJP
   A61K 9/30 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
A61K31/47
A61K31/395
A61K31/404
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61P3/00
A61K9/20
A61K47/38
A61K47/20
A61K47/12
A61K9/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534949
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(85)【翻訳文提出日】2023-07-03
(86)【国際出願番号】 US2021062687
(87)【国際公開番号】W WO2022125826
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】63/123,928
(32)【優先日】2020-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/124,575
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/150,434
(32)【優先日】2021-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
(71)【出願人】
【識別番号】598032106
【氏名又は名称】バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ボレク, バルトゥオミェイ
(72)【発明者】
【氏名】チェン, ウェイチャオ ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】グナワン, ルディ
(72)【発明者】
【氏名】ハセルタイン, エリック
(72)【発明者】
【氏名】ナイル, ニティン
(72)【発明者】
【氏名】パノルチャン, ポルントゥラ
(72)【発明者】
【氏名】ソスネイ, パトリック
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076AA42
4C076BB01
4C076CC21
4C076CC29
4C076DD41
4C076DD55
4C076EE31
4C076EE32
4C076FF43
4C076GG14
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC13
4C086BC29
4C086CB26
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZC01
4C086ZC21
4C086ZC75
(57)【要約】
本出願は、化合物I又はその薬学的に許容可能な塩を投与することを含む、嚢胞性線維症又はCFTR介在性疾患を治療する方法を記載する。本出願はまた、化合物I又はその薬学的に許容可能な塩を含み、任意選択的に、1つ以上の追加のCFTR調節剤を含む医薬組成物を記載する。本開示の一態様は、250mgのCFTR増強剤化合物、N-(2-(tert-ブチル)-5-ヒドロキシ-4-(2-(メチル-d3)プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)フェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド(化合物I)又は相当量のその医薬的に許容可能な塩を含む医薬組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
嚢胞性線維症を治療する方法であって、
(a)250mgの化合物I又は相当量のその薬学的に許容可能な塩、及び
(b)21.24mgの化合物IIカルシウム塩水和物形態D
【化1】

(c)100mgの化合物III
【化2】

又は相当量のその薬学的に許容可能な塩を、連日投与することを含む、方法。
【請求項2】
嚢胞性線維症を治療する方法であって、治療を必要とする患者に
(a)250mgの化合物I。
(b)21.240mgの化合物IIカルシウム塩水和物形態D、及び
(c)100mgの化合物IIIを、
連日投与することを含む、方法。
【請求項3】
化合物I、II、及びIIIが、別個の組成物で投与される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
化合物I、II、及びIIIが、単一の組成物で投与される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
化合物I、II、及びIIIが、2つの組成物として1日1回投与され、各組成物が、125mgの化合物I、10.62mgの化合物IIカルシウム塩水和物形態D、及び50mgの化合物IIIを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
嚢胞性線維症を治療する方法であって、250mgの化合物I
【化3】

又は相当量のその薬学的に許容可能な塩を、1日1回、治療を必要とする患者に投与することを含む、方法。
【請求項7】
前記患者が、F508del変異に対してホモ接合性であるか、又はF508del/最小機能遺伝子型、F508del/ゲーティング遺伝子型、又はF508del/残存機能遺伝子型を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記患者がヘテロ接合性遺伝子型を有し、かつ1つのF508del変異を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記患者が、表3から選択される1つの変異を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記患者が、表4から選択される1つの変異を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記患者が、表4から選択される少なくとも1つの変異を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
(a)250mgの化合物I又は相当量のその薬学的に許容可能な塩、
(b)21.24mgの化合物IIカルシウム塩水和物形態D、及び
(c)100mgの化合物III又は相当量のその薬学的に許容可能な塩を含む、医薬組成物。
【請求項13】
(a)250mgの化合物I、
(b)21.24mgの化合物IIカルシウム塩水和物形態D、及び
(c)100mgの化合物IIIを含む、医薬組成物。
【請求項14】
(a)125mgの化合物I又は相当量のその薬学的に許容可能な塩、
(b)10.62mgの化合物IIカルシウム塩水和物形態D、及び
(c)50mgの化合物III又は相当量のその薬学的に許容可能な塩を含む、医薬組成物。
【請求項15】
(a)125mgの化合物I、
(b)10.62mgの化合物IIカルシウム塩水和物形態D、及び
(c)50mgの化合物IIIを含む、医薬組成物。
【請求項16】
(a)化合物Iを含む156.3mgの固体分散体であって、前記固体分散体が、
(i)前記固体分散体の重量に対して、80重量%の化合物I、
(ii)前記固体分散体の重量に対して、19.5重量%のヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル、及び
(iii)前記固体分散体の重量に対して、0.5重量%のラウリル硫酸ナトリウムを含む、固体分散体と、
(b)10.6mgの化合物IIカルシウム塩水和物形態Dと、
(c)化合物IIIを含む62.5mgの固体分散体であって。前記固体分散体が、
(i)前記固体分散体の重量に対して、80重量%の化合物III、及び
(ii)前記固体分散体の重量に対して、20重量%のヒプロメロースを含む、固体分散体と、
(d)124.0mgの微結晶セルロースと、
(e)22.8mgのクロスカルメロースナトリウムと、
(f)3.8mgのステアリン酸マグネシウムと、を含む、錠剤。
【請求項17】
(a)化合物Iを含む156.3mgの固体分散体であって、前記固体分散体が、
(i)前記固体分散体の重量に対して、80重量%の化合物I、
(ii)前記固体分散体の重量に対して、19.5重量%のヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル、及び
(iii)前記固体分散体の重量に対して、0.5重量%のラウリル硫酸ナトリウムを含む、固体分散体と、
(b)10.6mgの化合物IIカルシウム塩水和物形態Dと、
(c)化合物IIIを含む62.5mgの固体分散体であって。前記固体分散体が、
(i)前記固体分散体の重量に対して、80重量%の化合物III、及び
(ii)前記固体分散体の重量に対して、20重量%のヒプロメロースを含む、固体分散体と、
(d)124.0mgの微結晶セルロースと、
(e)22.8mgのクロスカルメロースナトリウムと、
(f)3.8mgのステアリン酸マグネシウムと、
(g)11.4mgのフィルムコートと、を含む、錠剤。
【請求項18】
(a)化合物Iを含む156.3mgの固体分散体であって、前記固体分散体が、
(i)前記固体分散体の重量に対して、80重量%の化合物I、
(ii)前記固体分散体の重量に対して、19.5重量%のヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル、及び
(iii)前記固体分散体の重量に対して、0.5重量%のラウリル硫酸ナトリウムを含む、固体分散体と、
(b)10.6mgの化合物IIカルシウム塩水和物形態Dと、
(c)化合物IIIを含む62.5mgの固体分散体であって。前記固体分散体が、
(i)前記固体分散体の重量に対して、80重量%の化合物III、及び
(ii)前記固体分散体の重量に対して、20重量%のヒプロメロースを含む、固体分散体と、を含む、錠剤。
【請求項19】
前記錠剤が、70~170mgの微結晶セルロースを更に含む、請求項18に記載の錠剤。
【請求項20】
前記錠剤が、10~40mgのクロスカルメロースナトリウムを更に含む、請求項18に記載の錠剤。
【請求項21】
前記錠剤が、70~170mgの微結晶セルロース及び10~40mgのクロスカルメロースナトリウムを更に含む、請求項18に記載の錠剤。
【請求項22】
(a)化合物Iを含む156.3mgの固体分散体であって、前記固体分散体が、
(i)前記固体分散体の重量に対して、80重量%の化合物I、
(ii)前記固体分散体の重量に対して、19.5重量%のヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル、及び
(iii)前記固体分散体の重量に対して、0.5重量%のラウリル硫酸ナトリウムを含む、固体分散体と、
(b)10.6mgの化合物IIカルシウム塩水和物形態Dと、
(c)化合物IIIを含む62.5mgの固体分散体であって。前記固体分散体が、
(i)前記固体分散体の重量に対して、80重量%の化合物III、及び
(ii)前記固体分散体の重量に対して、20重量%のヒプロメロースを含む、固体分散体と、
(d)125.0mgの微結晶セルロースと、
(e)22.8mgのクロスカルメロースナトリウムと、
(f)2.9mgのステアリン酸マグネシウムと、を含む、錠剤。
【請求項23】
(a)化合物Iを含む156.3mgの固体分散体であって、前記固体分散体が、
(i)前記固体分散体の重量に対して、80重量%の化合物I、
(ii)前記固体分散体の重量に対して、19.5重量%のヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル、及び
(iii)前記固体分散体の重量に対して、0.5重量%のラウリル硫酸ナトリウムを含む、固体分散体と、
(b)10.6mgの化合物IIカルシウム塩水和物形態Dと、
(c)化合物IIIを含む62.5mgの固体分散体であって。前記固体分散体が、
(i)前記固体分散体の重量に対して、80重量%の化合物III、及び
(ii)前記固体分散体の重量に対して、20重量%のヒプロメロースを含む、固体分散体と、
(d)124.5mgの微結晶セルロースと、
(e)22.8mgのクロスカルメロースナトリウムと、
(f)3.8mgのステアリン酸マグネシウムと、任意選択的に
(g)15.9mgのフィルムコートと、を含む、錠剤。
【請求項24】
250mgの化合物I
【化4】

又は相当量のその薬学的に許容可能な塩を含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年12月10日に出願された米国仮出願第63/123,928号、2020年12月11日に出願された米国仮出願第63/124,575号、及び2021年2月17日に出願された米国仮出願第63/150,434号に対する優先権の利益を主張するものであり、それらの各々の内容は、参照によりそれぞれの全体が組み込まれる。
【0002】
本発明は、嚢胞性線維症を治療するための医薬組成物及び方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
嚢胞性線維症(CF)は、世界でおよそ83,000人の小児及び成人が罹患している劣性遺伝性疾患である。CFの治療は進歩しているにもかかわらず、それを完治する方法がない。
【0004】
CFを有する患者において、呼吸上皮で内因的に発現したCFTRの変異により、頂端アニオン分泌が減少し、イオン及び流体輸送の不均衡が引き起こされる。結果として生じたアニオン輸送における減少は、肺における粘液蓄積の増進及びそれに付随する微生物感染の一因となり、これは最終的にCF患者に死をもたらす。呼吸器疾患に加えて、CF患者は、典型的には、治療せずに放置すると死に至る胃腸障害及び膵機能不全に罹患している。加えて、嚢胞性線維症を有する男性の大半は不妊症であり、嚢胞性線維症を有する女性では受精率が低下する。
【0005】
CFTR遺伝子の配列分析により、疾患を引き起こす様々な変異が明らかになっている(Cutting,G.R.et al.(1990)Nature346:366-369、Dean,M.et al.(1990)Cell61:863:870、及びKerem,B-S.et al.(1989)Science245:1073-1080、Kerem,B-S et al.(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA87:8447-8451)。現在までに、CF遺伝子中の2000を超える変異が確認されている。CF変異は、http://www.genet.sickkids.on.ca/appにある、「Cystic Fibrosis Mutation Database」に列挙されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。最も一般的な疾患を引き起こす変異は、CFTRアミノ酸配列の508位でのフェニルアラニンの欠失であり、一般にF508del変異と称される。この変異は、嚢胞性線維症のおおよそ90%の症例で発生し、重症疾患に関連する。
【0006】
CFTRにおける残基508の欠失により、新生タンパク質が正しくフォールディングすることが妨げられる。これにより、変異タンパク質が小胞体(ER)を出て、原形質膜に輸送されることが不可能となる。結果として、膜内に存在するアニオン輸送のためのCFTRチャネルの数は、野生型CFTR、すなわち変異を有しないCFTRを発現する細胞において観察されるものよりもはるかに少なくなる。輸送障害に加えて、この変異により、チャネルゲーティングの欠陥がもたらされる。膜中のチャネル数の減少とゲーティング欠損が合わさって、上皮を横断するアニオン及び流体輸送の減少につながる。(Quinton,P.M.(1990),FASEB J.4:2709-2727)。F508del変異のために欠陥があるチャネルは、野生型CFTRチャネルよりも機能は低いが、依然として機能的である。(Dalemans et al.(1991),Nature Lond.354:526-528、Pasyk and Foskett(1995),J.Cell.Biochem.270:12347-50)。F508delに加えて、欠陥のある輸送、合成、及び/又はチャネルゲーティングをもたらすCFTRの他の疾患を引き起こす変異は、上方又は下方制御されて、アニオン分泌を変化させ、疾患進行及び/又は重症度を改変させる可能性がある。
【0007】
CFTRは、吸収上皮細胞及び分泌上皮細胞を含む様々な細胞型で発現するcAMP/ATP介在性アニオンチャネルであり、ここで、CFTRは、膜を横断するアニオンフラックス並びに、他のイオンチャネル及びタンパク質の活性を制御する。上皮細胞において、CFTRの正常機能は、呼吸組織及び消化組織を含む全身の電解質輸送の維持に不可欠である。CFTRは、膜貫通ドメインのタンデムリピートからなるタンパク質をコードする1480個のアミノ酸で構成されており、各々、6つの膜貫通ヘリックスとヌクレオチド結合ドメインを含む。2つの膜貫通ドメインが、大きい極性の制御(R)ドメインを介して、チャネル活性及び細胞輸送を制御する複数のリン酸化部位に結合している。
【0008】
塩化物輸送は、頂端膜上に存在するENaC(上皮ナトリウムチャネル)とCFTRとの協調的活性、及び細胞の側底面上で発現するNa-K-ATPaseポンプとClチャネルとの協調的活性によって起こる。管腔側からの塩化物の二次性能動輸送により、細胞内塩化物の蓄積がもたらされ、その後、Clチャネルを介して細胞から受動的に離れ、ベクトル輸送をもたらすことができる。Na/2Cl/K共輸送体、側底面上のNa-K-ATPaseポンプ及び側底膜Kチャネル、並びに管腔側のCFTRの配置により、塩化物の分泌が調整される。恐らく水自体が積極的に輸送されることがないため、上皮を横断するその流れは、ナトリウム及び塩化物の大きな流れによって生じるわずかな経上皮浸透圧勾配に依存する。
【0009】
いくつかのCFTR調節化合物が最近同定された。しかしながら、嚢胞性線維症及び他のCFTR介在性疾患、特にこれらの疾患のより重篤な形態を治療又は重症度を低減させることができる化合物が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Cutting,G.R.et al.(1990)Nature346:366-369
【非特許文献2】Dean,M.et al.(1990)Cell61:863:870
【非特許文献3】Kerem,B-S.et al.(1989)Science245:1073-1080
【非特許文献4】Kerem,B-S et al.(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA87:8447-8451
【非特許文献5】http://www.genet.sickkids.on.ca/app
【非特許文献6】Quinton,P.M.(1990),FASEB J.4:2709-2727
【非特許文献7】Dalemans et al.(1991),Nature Lond.354:526-528
【非特許文献8】Pasyk and Foskett(1995),J.Cell.Biochem.270:12347-50
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本開示の一態様は、250mgのCFTR増強剤化合物、N-(2-(tert-ブチル)-5-ヒドロキシ-4-(2-(メチル-d3)プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)フェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド(化合物I)又は相当量のその医薬的に許容可能な塩を含む医薬組成物を提供する。化合物Iは、以下の構造を有するものとして示され得る。
【化1】
【0012】
150mgの12時間毎のアイバカフトール(すなわち、12時間間隔で1日2回)及び150mgの1日1回の化合物I(すなわち、1日1回)と比較して、250mgの化合物Iを1日1回投与すると、汗クロリド(SwCl)によって測定される治療プロファイルが改善され得ることが見出された。
【0013】
いくつかの実施形態では、本開示は、250mgの化合物I及び/又は相当量のその薬学的に許容可能な塩を含む、医薬組成物を提供し、その組成物は、少なくとも1つの追加の活性薬学的成分及び/又は少なくとも1つの担体を更に含み得る。本開示の更に他の態様は、CFTR介在性疾患の嚢胞性線維症を治療する方法であって、化合物I又は相当量のその薬学的に許容可能な塩を、任意選択的に、少なくとも1つの追加の成分を含む医薬組成物の一部として、治療を必要とする対象に投与することを含む、方法である。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、250mgの化合物I(又は相当量のその薬学的に許容可能な塩)、21.24mgの化合物II、カルシウム塩水和物形態D、及び100mgの化合物III(又は相当量のその薬学的に許容可能な塩)を含む。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、125mgの化合物I(又は相当量のその薬学的に許容可能な塩)、10.62mgの化合物II、カルシウム塩水和物形態D、及び50mgの化合物III(又は相当量のその薬学的に許容可能な塩)を含む。
【0014】
一実施形態は、CFTR介在性疾患の嚢胞性線維症を治療する方法であって、250mgのN-(2-(tert-ブチル)-5-ヒドロキシ-4-(2-(メチル-d3)プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)フェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド(化合物I)を、単独で、又は21.24mgの(14S)-8-[3-(2-{ジスピロ[2.0.2.1]ヘプタン-7-イル}エトキシ)-1H-ピラゾール-1-イル]-12,12-ジメチル-2λ6-チア-3,9,11,18,23-ペンタアザテトラシクロ[17.3.1.111,14.05,10]テトラコサ-1(22),5,7,9,19(23),20-ヘキサエン-2,2,4-トリオン(化合物II)カルシウム塩水和物形態D、及び/又は50~100mgの(R)-1-(2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-N-(1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-6-フルオロ-2-(1-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-2-イル)-1H-インドール-5-イル)シクロプロパンカルボキサミド(化合物III)との組み合わせで投与することを含む、方法を提供する。
【0015】
いくつかの実施形態では、250mgの化合物I(又は相当量のその薬学的に許容可能な塩)は、20mgの化合物IIカルシウム塩水和物形態Dと、同じ組成物で投与される。いくつかの実施形態では、250mgの化合物Iは、21.24mgの化合物IIカルシウム塩水和物形態D及び100mgの化合物III(又は相当量のその薬学的に許容可能な塩)と、同じ組成物で投与される。いくつかの実施形態では、250mgの化合物I(又は相当量のその薬学的に許容可能な塩)を含む組成物は、21.24mgの化合物IIカルシウム塩水和物形態D及び/又は100mgの化合物III(又は相当量のその薬学的に許容可能な塩)を含む別個の組成物と同時投与される。いくつかの実施形態では、250mgの化合物Iは、21.24mgの化合物IIカルシウム塩水和物形態D及び100mgの化合物III(又は相当量のその薬学的に許容可能な塩)と同じ組成物で投与される。いくつかの実施形態では、250mgの化合物I、21.24mgの化合物IIカルシウム塩水和物形態D、及び100mgの化合物III(又は相当量のその薬学的に許容可能な塩)は、2つの等用量組成物で1日1回投与される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】結晶性化合物I(遊離形態)形態AのXRPDパターンを提示する。
図2】結晶性化合物I(遊離形態)形態Aの13C固体NMRスペクトルを示す。
図3】結晶性化合物Iカルシウム塩水和物形態AのXRPDパターンを提示する。
図4】化合物Iカルシウム塩水和物形態Aの13C固体NMRスペクトルを示す。
図5】結晶性化合物Iカルシウム塩水和物形態DのXRPDパターンを提示する。
図6】化合物Iカルシウム塩水和物形態Dの13C固体NMRスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
定義
本開示の全体を通して使用される「化合物I」は、N-(2-(tert-ブチル)-5-ヒドロキシ-4-(2-(メチル-d3)プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)フェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミドであり、これは、以下の構造を有するものとして示され得る。
【化2】

化合物Iは、薬学的に許容可能な塩の形態であり得る。化合物I及びその薬学的に許容可能な塩は、米国特許第8,865,902号、同第9,181,192号、及び同第9,512,079号、並びに国際特許公開第2012/158885号、同第2014/078842号、同第2017/053455号、及び同第2018/080591号に以前に記載されており、それら各々は参照により本明細書に組み込まれる。
【0018】
いくつかの実施形態では、化合物Iにおける各重水素の同位体濃縮係数は、変化し得る。「同位体濃縮係数」という用語は、特定の同位体の同位体存在量と天然存在量との間の比を指す。いくつかの実施形態では、化合物Iの各指定重水素原子の同位体濃縮係数は少なくとも3500(各指定された重水素原子での52.5%の重水素組み込み)、少なくとも4000(60%の重水素組み込み)、少なくとも4500(67.5%の重水素組み込み)、少なくとも5000(75%の重水素組み込み)、少なくとも5500(82.5%の重水素組み込み)、少なくとも6000(90%の重水素組み込み)、少なくとも6333.3(95%の重水素組み込み)、少なくとも6466.7(97%の重水素組み込み)、少なくとも6600(99%の重水素組み込み)、又は少なくとも6633.3(99.5%の重水素組み込み)である。
【0019】
本明細書で使用される「化合物II」は、(14S)-8-[3-(2-{ジスピロ[2.0.2.1]ヘプタン-7-イル}エトキシ)-1H-ピラゾール-1-イル]-12,12-ジメチル-2λ6-チア-3,9,11,18,23-ペンタアザテトラシクロ[17.3.1.111,14.05,10]テトラコサ-1(22),5,7,9,19(23),20-ヘキサエン-2,2,4-トリオンを指し、以下の構造で示され得る。
【化3】

化合物II及びその重水素化誘導体並びに薬学的に許容可能な塩は、国際特許公開第2019/161078号に(参照により本明細書に組み込まれる)最初に記載された。
【0020】
いくつかの実施形態では、化合物IIは、カルシウム塩水和物形態Dの形態である。20mgの化合物IIは、21.24mgの化合物IIカルシウム塩水和物形態Dに相当する。いくつかの実施形態では、化合物IIカルシウム塩水和物形態Dは、6.1±0.2度2シータ、16.2±0.2度2シータ、及び22.8±0.2度2シータのシグナルを有するX線粉末ディフラクトグラムによって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、化合物IIカルシウム塩水和物形態Dは、(a)6.1±0.2度2シータ、16.2±0.2度2シータ、及び22.8±0.2度2シータのシグナル、並びに(b)5.5±0.2度2シータ、15.5±0.2度2シータ、19.7±0.2度2シータ、21.5±0.2度2シータ、22.1±0.2度2シータ、23.0±0.2度2シータ、及び27.6±0.2度2シータのうちの1つ以上のシグナルを有するX線粉末ディフラクトグラムによって特徴付けられる。
【0021】
いくつかの実施形態では、化合物IIカルシウム塩水和物形態Dは、(a)6.1±0.2度2シータ、16.2±0.2度2シータ、及び22.8±0.2度2シータのシグナル、並びに(b)5.5±0.2度2シータ、15.5±0.2度2シータ、19.7±0.2度2シータ、21.5±0.2度2シータ、22.1±0.2度2シータ、23.0±0.2度2シータ、及び27.6±0.2度2シータのうちの2つ以上のシグナルを有するX線粉末ディフラクトグラムによって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、化合物IIカルシウム塩水和物形態Dは、(a)6.1±0.2度2シータ、16.2±0.2度2シータ、及び22.8±0.2度2シータのシグナル、並びに(b)5.5±0.2度2シータ、15.5±0.2度2シータ、19.7±0.2度2シータ、21.5±0.2度2シータ、22.1±0.2度2シータ、23.0±0.2度2シータ、及び27.6±0.2度2シータのうちの3つ以上のシグナルを有するX線粉末ディフラクトグラムによって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、化合物IIカルシウム塩水和物形態Dは、(a)6.1±0.2度2シータ、16.2±0.2度2シータ、及び22.8±0.2度2シータのシグナル、並びに(b)5.5±0.2度2シータ、15.5±0.2度2シータ、19.7±0.2度2シータ、21.5±0.2度2シータ、22.1±0.2度2シータ、23.0±0.2度2シータ、及び27.6±0.2度2シータのうちの4つ以上のシグナルを有するX線粉末ディフラクトグラムによって特徴付けられる。
【0022】
いくつかの実施形態では、化合物IIカルシウム塩水和物形態Dは、6.1±0.2度2シータ、16.2±0.2度2シータ、22.8±0.2度2シータ、及び27.6±0.2度2シータのシグナルを有するX線粉末ディフラクトグラムによって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、化合物IIカルシウム塩水和物形態Dは、6.1±0.2度2シータ、15.5±0.2度2シータ、16.2±0.2度2シータ、19.7±0.2度2シータ、22.8±0.2度2シータ、及び27.6±0.2度2シータのシグナルを有するX線粉末ディフラクトグラムによって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、化合物IIカルシウム塩水和物形態Dは、図5に実質的に類似するX線粉末ディフラクトグラムによって特徴付けられる。
【0023】
いくつかの実施形態では、化合物IIカルシウム塩水和物形態Dは、179.8±0.2ppm、130.2±0.2ppm、125.6±0.2ppm、120.9±0.2ppm、55.2±0.2ppm、44.3±0.2ppm、35.0±0.2ppm、及び1.6±0.2ppmから選択される1つ以上のピークを有する、13C固体核磁気共鳴(13C ssNMR)スペクトルを有するものとして特徴付けられる。いくつかの実施形態では、化合物IIカルシウム塩水和物形態Dは、179.8±0.2ppm、130.2±0.2ppm、125.6±0.2ppm、120.9±0.2ppm、55.2±0.2ppm、44.3±0.2ppm、35.0±0.2ppm、及び1.6±0.2ppmから選択される2つ以上のピークを有する13C ssNMRスペクトルを有するものとして特徴付けられる。いくつかの実施形態では、化合物IIカルシウム塩水和物形態Dは、179.8±0.2ppm、130.2±0.2ppm、125.6±0.2ppm、120.9±0.2ppm、55.2±0.2ppm、44.3±0.2ppm、35.0±0.2ppm、及び1.6±0.2ppmから選択される3つ以上のピークを有する13C ssNMRスペクトルを有するものとして特徴付けられる。いくつかの実施形態では、化合物IIカルシウム塩水和物形態Dは、179.8±0.2ppm、130.2±0.2ppm、125.6±0.2ppm、120.9±0.2ppm、55.2±0.2ppm、44.3±0.2ppm、35.0±0.2ppm、及び1.6±0.2ppmから選択される4つ以上のピークを有する13C ssNMRスペクトルを有するものとして特徴付けられる。いくつかの実施形態では、化合物IIカルシウム塩水和物形態Dは、179.8±0.2ppm、130.2±0.2ppm、125.6±0.2ppm、120.9±0.2ppm、55.2±0.2ppm、44.3±0.2ppm、35.0±0.2ppm、及び1.6±0.2ppmから選択される5つ以上のピークを有する13C ssNMRスペクトルを有するものとして特徴付けられる。いくつかの実施形態では、化合物IIカルシウム塩水和物形態Dは、179.8±0.2ppm、130.2±0.2ppm、125.6±0.2ppm、120.9±0.2ppm、55.2±0.2ppm、44.3±0.2ppm、35.0±0.2ppm、及び1.6±0.2ppmから選択される6つ以上のピークを有する13C ssNMRスペクトルを有するものとして特徴付けられる。
【0024】
いくつかの実施形態では、化合物IIカルシウム塩水和物形態Dは、130.2±0.2ppm、125.6±0.2ppm、及び35.0±0.2ppmから選択される1つ以上のピークを有する13C ssNMRスペクトルを有するものとして特徴付けられる。いくつかの実施形態では、化合物IIカルシウム塩水和物形態Dは、130.2±0.2ppm、125.6±0.2ppm、及び35.0±0.2ppmから選択される2つ以上のピークを有する13C ssNMRスペクトルを有するものとして特徴付けられる。いくつかの実施形態では、化合物Iカルシウム塩水和物形態Dは、130.2±0.2ppm、125.6±0.2ppm、及び35.0±0.2ppmでのピークを有する13C ssNMRスペクトルを有するものとして特徴付けられる。
【0025】
いくつかの実施形態では、化合物IIカルシウム塩水和物形態Dは、(a)130.2±0.2ppm、125.6±0.2ppm、及び/又は35.0±0.2ppmでのピーク、及び(b)176.9±0.2ppm、160.9±0.2ppm、142.0±0.2ppm、及び/又は98.6±0.2ppmでのピークを有する13C ssNMRスペクトルを有するものとして特徴付けられる。いくつかの実施形態では、化合物IIカルシウム塩水和物形態Dは、(a)130.2±0.2ppm、125.6±0.2ppm、及び/又は35.0±0.2ppmでのピーク、及び(b)176.9±0.2ppm、160.9±0.2ppm、142.0±0.2ppm、及び98.6±0.2ppmでのピークを有する13C ssNMRスペクトルを有するものとして特徴付けられる。いくつかの実施形態では、化合物IIカルシウム塩水和物形態Dは、(a)130.2±0.2ppm、125.6±0.2ppm、及び35.0±0.2ppmでのピーク、及び(b)176.9±0.2ppm、160.9±0.2ppm、142.0±0.2ppm、及び/又は98.6±0.2ppmでのピークを有する13C ssNMRスペクトルを有するものとして特徴付けられる。いくつかの実施形態では、化合物IIカルシウム塩水和物形態Dは、130.2±0.2ppm、125.6±0.2ppm、35.0±0.2ppm、176.9±0.2ppm、160.9±0.2ppm、142.0±0.2ppm、及び98.6±0.2ppmでのピークを有する13C ssNMRスペクトルを有するものとして特徴付けられる。
【0026】
いくつかの実施形態では、化合物IIカルシウム塩水和物形態Dは、図6に実質的に類似している13C ssNMRスペクトルによって特徴付けられる。
【0027】
いくつかの実施形態では、化合物IIカルシウム塩水和物形態Dは、Cu Kα線(λ=1.5478Å)及び相補型金属酸化膜半導体(CMOS)検出器を備えたブルカー回折計で、100Kで測定された、三斜晶系、P1空間群、及び以下の単位格子寸法によって特徴付けられる。
【表1】
【0028】
本開示全体を通して使用される「化合物III」は、(R)-1-(2,2-ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-N-(1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-6-フルオロ-2-(1-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-2-イル)-1H-インドール-5-イル)シクロプロパンカルボキサミドを指す、
【化4】

いくつかの実施形態では、化合物IIIは、薬学的に許容可能な塩の形態である。化合物III及びその薬学的に許容可能な塩は、国際特許公開第2010/053471号(参照により本明細書に組み込まれる)に以前に開示されている。
【0029】
本明細書で使用される場合、「CFTR」とは、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子を意味する。
【0030】
本明細書で使用される場合、「変異」は、CFTR遺伝子又はCFTRタンパク質における変異を指し得る。「CFTR遺伝子変異」は、CFTR遺伝子における変異を指し、「CFTRタンパク質変異」は、CFTRタンパク質における変異を指す。一般に、遺伝的欠損若しくは変異、又は遺伝子中のヌクレオチドの変化は、その遺伝子から翻訳されるCFTRタンパク質の変異、又はフレームシフトをもたらす。
【0031】
「F508del」という用語は、508位でアミノ酸フェニルアラニンを欠いている変異CFTRタンパク質を指す。
【0032】
本明細書で使用される場合、特定の遺伝子変異について「ホモ接合性」である患者は、各対立遺伝子に同じ変異を有する。
【0033】
本明細書で使用される場合、特定の遺伝子変異について「ヘテロ接合性」である患者は、一方の対立遺伝子に特定の変異を有し、他方の対立遺伝子に異なる変異を有する。
【0034】
本明細書で使用される場合、「モジュレータ」という用語は、タンパク質などの生物学的化合物又は分子の活性を増加させる化合物を指す。例えば、CFTRモジュレータは、CFTRの活性を増加させる化合物である。CFTRモジュレータによってもたらされる活性の増加には、CFTRを補正する、増強する、安定化する、及び/又は増幅する化合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0035】
本明細書で使用される場合、「CFTRコレクター」という用語は、CFTRの処理及び輸送を促進して細胞表面におけるCFTRの量を増加させる化合物を指す。本明細書に開示される化合物II及びIIIは、CFTRコレクターである。
【0036】
本明細書で使用される場合、「CFTR増強剤」という用語は、細胞表面に位置するCFTRタンパク質のチャネル活性を増加させ、イオン輸送の強化をもたらす化合物を指す。本明細書に開示される化合物Iは、CFTR増強剤である。
【0037】
本明細書で使用される場合、「活性医薬成分」又は「治療剤」(「API」)という用語は、生物学的に活性な化合物を指す。
【0038】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能な塩」という用語は、塩が非毒性である、本開示の化合物の塩形態を指す。本開示の化合物の薬学的に許容可能な塩は、好適な無機及び有機酸並びに塩基に由来するものを含む。薬学的に許容可能な塩は、当該技術分野で周知である。例えば、S.M.Berge,et al.は、J.Pharmaceutical Sciences,1977,66,1-19に詳細に薬学的に許容可能な塩を記載する。
【0039】
本明細書で使用される場合、「非晶質」という用語は、その分子の位置において長距離秩序を有しない固体物質を指す。非晶質固体は、明確に画定された配置、例えば、分子充填が存在せず、長距離秩序も存在しないように、分子が無作為に配置されている、概ね過冷却された液体である。非晶質固体は、概ね等方的である、すなわち、全ての方向において同様の特性を呈し、明確な融点を有しない。例えば、非晶質物質は、そのX線粉末回折(XRPD)パターンにおいて、鋭い特徴的な結晶性ピークを有しない(すなわち、XRPDによって決定される結晶性ではない)固体物質である。代わりに、そのXRPDパターンにおいて1つ又はいくつかの幅広いピーク(例えば、ハロー)が見られる。幅広いピークは、非晶質固体の特徴である。非晶質物質及び結晶性物質のXRPDの比較については、US2004/0006237を参照されたい。いくつかの実施形態では、固体物質は非晶質化合物を含むことがあり、例えば、固体物質は、そのXRPDスペクトルにおける鋭い特徴的な結晶性ピークの欠如を特徴とし得る(すなわち、固体物質は結晶性ではないが、XRPDによって決定されるような非晶質である)。代わりに、固体物質のXRPDパターンにおいて1つ又はいくつかの幅広いピーク(例えば、ハロー)が見られ得る。非晶質物質及び結晶性物質のXRPDの比較については、US2004/0006237を参照されたい。非晶質化合物を含む固体材料は、例えば、純粋な結晶性固体の溶融の範囲と比較して、固体材料の溶融のより幅広い温度範囲によって特徴付けられ得る。例えば、ラマン分光法、赤外分光法、及び固体NMRなどの他の技法を使用して、結晶性形態又は非晶質形態を特徴付けることができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、固体物質は、結晶性固体と非晶質固体との混合物を含み得る。非晶質化合物を含むように調製された固体物質は、例えば、最大30%の結晶性固体を含み得る。いくつかの実施形態では、非晶質化合物を含むように調製された固体物質は、例えば、最大25%、20%、15%、10%、5%、又は2%の結晶性固体も含み得る。固体物質が結晶性固体と非晶質固体との混合物を含む実施形態では、XRPDなどの特徴付けデータは、結晶性固体及び非晶質固体の両方の指標を含み得る。
【0041】
本明細書で使用される場合、「実質的に非晶質の」という用語は、その分子の位置にほとんど又は全く長距離秩序を有しない固体物質を指す。例えば、実質的に非晶質の物質は、15%未満の結晶化度(例えば、10%未満の結晶化度、又は5%未満の結晶化度、又は2%未満の結晶化度)を有する。「実質的に非晶質の」という用語が、結晶化度を有しない(0%)物質を指す「非晶質」という記述語を含むことにも留意されたい。
【0042】
本明細書で使用される場合、「実質的に結晶性の」という用語は、非晶質分子をほとんど又は全く有しない固体物質を指す。例えば、実質的に結晶性の物質は、15%未満の非晶質分子(例えば、10%未満の非晶質分子、5%未満の非晶質分子、又は2%未満の非晶質分子)を有する。「実質的に結晶性の」という用語が、100%結晶性形態である物質を指す「結晶性」という記述語を含むことにも留意されたい。
【0043】
本明細書で使用される場合、「XRPD」という用語は、X線粉末回折の分析的特性評価方法を指す。本明細書に開示されるXRPDパターンは、周囲条件下で回折計を使用して透過又は反射配置で記録したものである。
【0044】
本明細書で使用される場合、「周囲条件」という用語は、室温、外気条件、及び制御されていない湿度条件を意味する。「室温」及び「周囲温度」という用語は、15℃~30℃を意味する。
【0045】
本明細書で使用される場合、「X線粉末ディフラクトグラム」、「X線粉末回折パターン」、「XRPDパターン」、「XRPDスペクトル」という用語は、シグナル位置(横座標上)をシグナル強度(縦座標上)に対してプロットする実験的に取得されたパターンを互換的に指す。非晶質物質の場合、X線粉末ディフラクトグラムは1つ以上の幅広いシグナルを含む場合があり、結晶性物質の場合、X線粉末ディフラクトグラムは1つ以上のシグナルを含む場合があり、各々、X線粉末ディフラクトグラムの横座標上に示される、2θ度(°2θ)として測定されるその角度値によって特定され、これらは「…2シータ度のシグナル」、「…の[a]2シータ値のシグナル」、及び/又は「…から選択される少なくとも…の2シータ値のシグナル」として表され得る。
【0046】
本明細書で使用される「シグナル」又は「ピーク」とは、カウントで測定された強度が極大であるXRPDパターンにおける点を指す。当業者であれば、XRPDパターンにおける1つ以上のシグナル(又はピーク)が重複する場合があり、例えば、肉眼では明らかではない場合があることを認識するであろう。実際に、当業者であれば、リートベルト法などのいくつかの当該技術分野で認識されている方法が、シグナルがあるパターンで存在するかを決定することができ、かつその決定に好適であることを認識するであろう。
【0047】
本明細書で使用される場合、「…度2シータのシグナル」とは、X線粉末回折実験(°2θ)において測定及び観察されるX線反射位置を指す。
【0048】
測定された角度値の再現性は、±0.2°2θの範囲内であり、すなわち、角度値は、列挙された角度値+0.2度2シータ、角度値-0.2度2シータ、又はそれらの2つの端点間(角度値+0.2度2シータと角度値-0.2度2シータとの間)の任意の値であり得る。
【0049】
「シグナル強度」及び「ピーク強度」という用語は、所与のX線粉末ディフラクトグラム内の相対的シグナル強度を互換的に指す。相対的シグナル強度又はピーク強度に影響を及ぼし得る要因には、試料の厚さ及び好ましい配向が含まれる(例えば、結晶性粒子はランダムに分布しない)。
【0050】
本明細書で使用される場合、X線粉末ディフラクトグラムは、2つのディフラクトグラムにおけるシグナルの少なくとも90%、例えば、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%が重複する場合、「[特定の]図におけるものと実質的に類似している」。「実質的な類似性」を決定する際に、当業者であれば、同じ結晶性形態であってもXRPDディフラクトグラムの強度及び/又はシグナル位置に変動が存在し得ることを理解するであろう。したがって、当業者であれば、XRPDディフラクトグラムにおける(度2シータでの)シグナル最大値が、当該技術分野で認識されている変動である報告された値の±0.2度2シータとして値が特定されることを一般に意味することを理解するであろう。
【0051】
本明細書で使用される場合、13C ssNMRスペクトルは、2スペクトルにおけるシグナルの少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%などの、少なくとも90%が重複する場合、「[特定の]図のものと実質的に類似」する。「実質的な類似性」を決定する際に、当業者であれば、同じ結晶性形態であってもssNMRスペクトルの強度及び/又はシグナル位置に変動が存在し得ることを理解するであろう。したがって、当業者であれば、ssNMRスペクトルにおける化学シフト(本明細書で言及される百万分率(ppm))が、当該技術分野で認識されている変動である報告された値の±0.2ppmとして値が特定されることを一般に意味することを理解するであろう。
【0052】
本明細書で使用される場合、「...2シータ値でシグナルを有するX線粉末ディフラクトグラム」という用語は、X線粉末回折実験において測定及び観察されるX線反射位置(°2シータ)を含むXRPDパターンを指す。
【0053】
本明細書で使用される場合、「DSC」という用語は、示差走査熱量測定の分析方法を指す。
【0054】
本明細書で使用される場合、「溶媒」という用語は、生成物が少なくとも部分的に可溶性である(生成物の溶解度>1g/l)任意の液体を指す。
【0055】
本明細書で使用される場合、「分散体」という用語は、1つの物質である分散相が、第2の物質(連続相又はビヒクル)全体にわたって別個の単位で分布されている分散系を指す。分散相のサイズは、大幅に変動し得る(例えば、ナノメートル寸法から数ミクロンのサイズまでのコロイド粒子)。概して、分散相は、固体、液体、又は気体であり得る。固体分散体の場合、分散相及び連続相が両方とも固体である。薬学的用途において、固体分散体は、非晶質ポリマー(連続相)中に結晶性薬物(分散相)を含み得、又は代替的には、非晶質ポリマー(連続相)中に非晶質薬物(分散相)を含み得る。いくつかの実施形態では、固体分散体は、分散相を構成するポリマーを含み、薬物は、連続相を構成する。あるいは、固体分散体は、分散相を構成する薬物、及び連続相を構成するポリマーを含む。
【0056】
「患者」及び「対象」という用語は互換的に使用され、ヒトを含む動物を指す。
【0057】
本明細書で使用される場合、「治療」、「治療すること」などという用語は、概して、対象におけるCF若しくはその症状の改善、又はCF若しくはCFの症状のうちの1つ以上の重症度を軽減することを意味する。本明細書で使用される「治療」には、対象の成長の増加、体重増加の向上、肺内の粘膜の減少、膵機能及び/若しくは肝機能の改善、肺感染症の軽減、並びに/又は咳若しくは息切れの軽減が含まれるが、これらに限定されない。これらの症状のうちのいずれかの改善又はそれらの重症度の軽減は、当該技術分野で既知の標準方法及び技法に従って容易に評価することができる。
【0058】
本明細書で使用される場合、「と組み合わせて」という用語は、2つ以上の化合物、薬剤、又は追加の活性医薬成分を指す場合、2つ以上の化合物、薬剤、又は活性医薬成分が互いに前後して又は互いに同時に患者に投与されることを意味する。
【0059】
「約」及び「およそ」という用語は、組成物又は剤形の成分の用量、量、若しくは重量パーセントと関連して使用される場合、指定された用量、量、若しくは重量パーセントの値、又は指定された用量、量、若しくは重量パーセントから得られるものと同等の薬理学的効果を提供することが当業者によって認識されている用量、量、若しくは重量パーセントの範囲を含む。「約」及び「およそ」という用語は、当業者によって決定される特定の値に対する許容可能な誤差を指し得、これは、その値がどのように測定又は決定されるかに部分的に依存する。いくつかの実施形態では、「約」及び「およそ」という用語は、所与の値又は範囲の20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%、1%、又は0.5%以内を意味する。
【0060】
当業者であれば、「化合物又はその薬学的に許容可能な塩」の量が開示されるとき、その化合物の薬学的に許容可能な塩形態の量がその化合物の遊離塩基の濃度に相当する量であることを認識するであろう。本明細書における化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩の開示される量が、それらの遊離塩基形態に基づくことに留意されたい。例えば、「100mgの化合物I及びその薬学的に許容可能な塩から選択される少なくとも1つの化合物」は、100mgの化合物I及び100mgの化合物Iに相当する化合物Iの薬学的に許容可能な塩の濃度を含む。
【0061】
好適な薬学的に許容可能な塩は、例えば、S.M.Berge,et al.J.Pharmaceutical Sciences,1977,66,1-19に開示されるものである。例えば、その論文の表1は、以下の薬学的に許容可能な塩を提供する。
【表2】
【0062】
薬学的に許容可能な酸付加塩の非限定的な例には、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、又は過塩素酸などの無機酸で形成される塩、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、又はマロン酸などの有機酸で形成される塩、及びイオン交換などの当該技術分野で使用されている他の方法を使用して形成される塩が挙げられる。薬学的に許容可能な塩の非限定的な例には、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、カンファー酸塩(camphorate)、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、及び吉草酸塩が挙げられる。適切な塩基に由来する薬学的に許容可能な塩には、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、及びN(C1-4アルキル)塩が含まれる。本開示は、本明細書に開示される化合物の任意の塩基性窒素含有基の四級化も想定する。アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の好適な非限定的な例には、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、及びマグネシウムが挙げられる。薬学的に許容可能な塩の更なる非限定的な例には、ハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、低級アルキルスルホン酸塩、及びアリールスルホン酸塩などの対イオンを使用して形成されるアンモニウム、四級アンモニウム、及びアミンカチオンが挙げられる。薬学的に許容可能な塩の他の好適な非限定的な例には、ベシル酸塩及びグルコサミン塩が挙げられる。
【0063】
治療方法
CFTR変異は、CFTR量、すなわち、細胞表面におけるCFTRチャネルの数に影響を及ぼし得るか、又はCFTR機能、すなわち、各チャネルが開いてイオンを輸送する機能的能力に影響を及ぼし得る。CFTR量に影響を及ぼす変異には、合成欠損を引き起こす変異(クラスI欠損)、プロセシング及び輸送欠損を引き起こす変異(クラスII欠損)、CFTRの合成の低下を引き起こす変異(クラスV欠損)、並びにCFTRの表面安定性を低下させる変異(クラスVI欠損)が含まれる。CFTR機能に影響を及ぼす変異には、ゲーティング欠損を引き起こす変異(クラスIII欠損)及びコンダクタンス欠損を引き起こす変異(クラスIV欠損)が含まれる。いくつかのCFTR変異は、複数のクラスの特徴を呈する。
【0064】
いくつかの実施形態では、患者における嚢胞性線維症を治療する方法であって、有効量の、本開示の化合物、その薬学的に許容可能な塩、又は前述のいずれかの重水素化類似体、あるいは医薬組成物を、例えばヒトなどの患者に投与することを含み、当該患者は嚢胞性線維症を有する患者である、方法が、本明細書に開示されている。いくつかの実施形態では、患者は、F508del/最小機能(MF)遺伝子型、F508del/F508del遺伝子型(F508del変異に対してホモ接合性)、F508del/ゲーティング遺伝子型、又はF508del/残存機能(RF)遺伝子型を有する。いくつかの実施形態では、患者は、ヘテロ接合性であり、1つのF508del変異を有する。
【0065】
本明細書で使用される場合、「最小機能(MF)変異」とは、最小限のCFTR機能に関連するCFTR遺伝子変異(ほとんど又は全く機能しないCFTRタンパク質)を指し、例えば、チャネルゲーティング欠陥若しくは「ゲーティング変異」として知られているCFTRチャネルが開閉する能力の重度の欠陥に関連する変異、CFTRの細胞プロセシング及び細胞表面へのその送達の重度の欠陥に関連する変異、CFTR合成なし(又は最小CFTR合成)に関連する変異、並びにチャネルコンダクタンスの重度の欠陥に関連する変異が含まれる。
【0066】
いくつかの実施形態では、患者は、ヘテロ接合性であり、一方の対立遺伝子にF508del変異を有し、他方の対立遺伝子に表2から選択される変異を有する。
【表3-1】

【表3-2】
【0067】
いくつかの実施形態では、患者は、ヘテロ接合性であり、一方の対立遺伝子にF508del変異を有し、他方の対立遺伝子に表3から選択される変異を有する。
【表4】
【0068】
いくつかの実施形態では、患者は、表4から選択される少なくとも1つの変異を有する。いくつかの実施形態では、患者は、F508del変異を有しておらず、表4から選択される少なくとも1つの変異を有する。
【表5-1】

【表5-2】
【0069】
いくつかの実施形態では、本開示はまた、前述の化合物の同位体標識誘導体を使用した治療方法を対象とする。いくつかの実施形態では、その中の1つ以上の原子が、通常、自然に発生する原子の原子質量又は質量数とは異なる原子又は原子質量数を有する原子若しくは複数の原子によって置換されている(同位体標識)、前述の化合物又はその薬学的に許容可能な塩の同位体標識誘導体。市販されており、かつ本開示に好適な同位体の例には、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素、及び塩素の同位体、例えば、それぞれ、H、H、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、及び36Clが挙げられる。
【0070】
同位体標識化合物及び塩は、いくつかの有益な方法で使用することができる。これらは、薬剤及び/又は基質組織分布アッセイなどの様々なタイプのアッセイに好適であり得る。例えば、トリチウム(H)標識及び/又は炭素-14(14C)標識化合物は、比較的単純な調製及び優れた検出能のため、基質組織分布アッセイなどの様々なタイプのアッセイに特に有用である。例えば、重水素(H)標識化合物が治療上有用であり、非H標識化合物よりも潜在的な治療上の利点を有する。概して、重水素(H)標識化合物及び塩は、以下に記載の速度論的同位体効果のため、同位体標識されていないものと比較してより高い代謝安定性を有することができる。より高い代謝安定性は、所望され得るインビボ半減期の増加又はより低い投薬量に直結する。同位体標識化合物及び塩は、通常、本明細書の合成スキーム及び関連記述、実施例の部分、並びに調製の部分に開示される手順を行い、非同位体標識反応物を容易に入手可能な同位体標識反応物に置き換えることによって調製することができる。
【0071】
いくつかの実施形態では、同位体標識化合物及び塩は、重水素(H)標識化合物及び塩である。いくつかの特定の実施形態では、同位体標識された化合物及び塩は、重水素(H)標識され、その中の1つ以上の水素原子は、重水素によって置き換えられている。化学構造において、重水素は「D」として表される。
【0072】
重水素(H)標識された化合物及び塩は、一次速度論的同位体効果によって、化合物の酸化的代謝を操作することができる。一次速度論的同位体効果は、同位体核種の交換により生じる化学反応速度の変化であり、これは、続いて、この同位体交換後の共有結合形成に必要な基底状態エネルギーの変化により引き起こされる。より重い同位体の交換は、通常、化学結合の基底状態エネルギーの低下をもたらし、それ故に、律速結合切断の減少がもたらされる。結合切断が多生成物反応の配位に沿って鞍点領域内又はその近くで生じる場合、生成物分布比が大幅に変化する可能性がある。説明目的で、重水素が交換不可能な位置で炭素原子に結合している場合、kM/=2~7の速度差が典型的である。更なる考察のために、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、S.L.Harbeson and R.D.Tung,Deuterium In Drug Discovery and Development,Ann.Rep.Med.Chem.2011,46,403-417を参照されたい。
【0073】
本開示の同位体標識化合物及び塩に組み込まれる同位体(例えば、重水素)の濃度は、同位体濃縮係数によって定義され得る。本明細書で使用される「同位体濃縮係数」という用語は、指定された同位体の同位体存在度と天然存在度との間の比率を意味する。いくつかの実施形態では、本開示の化合物における置換基が重水素で示される場合、そのような化合物は、少なくとも3500(各指定された重水素原子における52.5%の重水素組み込み)、少なくとも4000(60%の重水素組み込み)、少なくとも4500(67.5%の重水素組み込み)、少なくとも5000(75%の重水素組み込み)、少なくとも5500(82.5%の重水素組み込み)、少なくとも6000(90%の重水素組み込み)、少なくとも6333.3(95%の重水素組み込み)、少なくとも6466.7(97%の重水素組み込み)、少なくとも6600(99%の重水素組み込み)、又は少なくとも6633.3(99.5%の重水素組み込み)の各指定重水素原子に対する同位体濃縮係数を有する。
【0074】
治療剤を発見及び開発する場合、当業者は、望ましいインビトロ特性を保持しながら、薬物動態パラメータを最適化することを試みる。薬物動態プロファイルが不十分な多くの化合物が、酸化的代謝の影響を受けやすいと想定することが合理的であり得る。
【0075】
本明細書に開示される一態様は、250mgの化合物I(又は相当量のその薬学的に許容可能な塩)を投与することを含む、嚢胞性線維症及び他のCFTR介在性疾患を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、250mgの化合物I(又は相当量のその薬学的に許容可能な塩)は、1日1回、単回投与を単独で、又は別のCFTRモジュレータとの組み合わせで投与される。いくつかの実施形態では、250mgの化合物I(又は相当量のその薬学的に許容可能な塩)は、1日1回、2回分の125mg用量を単独で、又は別のCFTRモジュレータとの組み合わせで投与される。
【0076】
本明細書に開示される一態様は、21.24mgの化合物IIカルシウム塩水和物形態D及び100mgの化合物III(又は相当量のその薬学的に許容可能な塩)と組み合わせた、250mgの化合物I(又は相当量のその薬学的に許容可能な塩)の連日投与により、嚢胞性線維症及び他のCFTR介在性疾患を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、250mgの化合物I(又は相当量のその薬学的に許容可能な塩)、21.24mgの化合物IIカルシウム塩水和物形態D、100mgの化合物III(又は相当量のその薬学的に許容可能な塩)は、別個の医薬組成物で毎日投与される。いくつかの実施形態では、250mgの化合物I(又は相当量のその薬学的に許容可能な塩)、21.24mgの化合物IIカルシウム塩水和物形態D、及び100mgの化合物III(又は相当量のその薬学的に許容可能な塩)は、単一の医薬組成物で毎日投与される。いくつかの実施形態では、250mgの化合物I(又は相当量のその薬学的に許容可能な塩)、21.24mgの化合物IIカルシウム塩水和物形態D、及び100mgの化合物III(又は相当量のその薬学的に許容可能な塩)は、1日1回、2つの同等の医薬組成物で一緒に投与される。
【0077】
医薬組成物
本発明の別の態様は、嚢胞性線維症の治療に使用するための医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、250mgの化合物I(又は相当量のその薬学的に許容可能な塩)を含む。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、125mgの化合物I(又は相当量のその薬学的に許容可能な塩)を含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、250mgの化合物I、21.24mgの化合物IIカルシウム塩水和物形態D、100mgの化合物IIIを含む。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、125mgの化合物、10.62mgの化合物IIカルシウム塩水和物形態D、及び50mgの化合物IIIを含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物(例えば、錠剤)は、化合物Iを含む第1の固体分散体(例えば、噴霧乾燥分散体)、及び化合物IIIを含む第2の固体分散体(例えば、噴霧乾燥分散体)を含む。化合物Iの非重水素化類似体の固体分散体、及びこのような分散体を調製する方法は、参照により本明細書に組み込まれるPCT公開第2007/079139号に開示されている。これらの同じ固体分散体は、化合物Iでの使用に適している。化合物IIIの固体分散体及びその調製する方法は、参照により本明細書に組み込まれるPCT公開第2011/119984号及び同第2015/160787号に開示されている。
【0080】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、組成物の重量に対して約39.9重量%の化合物Iを含む固体分散体(固体分散体は、固体分散体の重量に対して80重量%の化合物I、19.5重量%のヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル、及び0.5重量%のラウリル硫酸ナトリウムを含む)、組成物の重量に対して約2.7重量%の化合物IIカルシウム塩水和物形態D、及び組成物の重量に対して約16.0重量%の化合物IIIを含む固体分散体(固体分散体は、固体分散体の重量に対して80重量%の化合物I及び20重量%のヒプロメロースを含む)を含む。
【0081】
当技術分野で公知の任意の適切な医薬組成物を、化合物I、化合物IIカルシウム塩水和物形態D、及び化合物IIIに使用することができる。化合物I及びその薬学的に許容可能な塩についてのいくつかの例示的な医薬組成物は、US8,865,902、US9,181,192、US9,512,079、WO2017/053455、及びWO2018/080591に見出すことができ、それら全ては参照により本明細書に組み込まれる。化合物II及びその薬学的に許容可能な塩を含む例示的な医薬組成物は、WO2019/161078及びWO2020/102346に開示されている。化合物III及びその薬学的に許容可能な塩についての例示的な医薬組成物は、参照により本明細書に組み込まれる、WO2011/119984及びWO2014/014841に開示されている。
【0082】
本明細書に開示される医薬組成物は、任意選択的に少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体を更に含み得る。少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体は、アジュバント及びビヒクルから選択され得る。本明細書で使用される場合、少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体には、望まれる特定の剤形に適した、ありとあらゆる溶媒、希釈剤、他の液体ビヒクル、分散補助剤、懸濁補助剤、表面活性剤、等張剤、増粘剤、乳化剤、保存剤、固体結合剤、及び滑沢剤が含まれる。Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st edition,2005,ed.D.B.Troy,Lippincott Williams&Wilkins,Philadelphia、及びEncyclopedia of Pharmaceutical Technology,eds.J.Swarbrick and J.C.Boylan,1988-1999,Marcel Dekker,New Yorkは、医薬組成物の製剤化に使用される様々な担体及びそれらの調製のための既知の技法を開示している。任意の従来の担体が、例えば、任意の望ましくない生物学的効果をもたらすか、さもなければ医薬組成物の任意の他の成分と有害な様式で相互作用することによって、本開示の化合物と不相溶性になる場合を除いて、その使用が本開示の範囲内であることが企図される。好適な薬学的に許容可能な担体の非限定的な例には、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)、緩衝物質(例えば、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、及びソルビン酸カリウムなど)、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩、及び電解質(例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、及び亜鉛塩)、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、羊毛脂、糖(例えば、ラクトース、グルコース、及びスクロース)、デンプン(例えば、トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプン)、セルロース及びその誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、及び酢酸セルロース)、粉末トラガント、麦芽、ゼラチン、タルク、賦形剤(例えば、ココアバター及び座薬ワックス)、油(例えば、ピーナッツ油、綿実油、紅花油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、及び大豆油)、グリコール(例えば、プロピレングリコール及びポリエチレングリコール)、エステル(例えば、オレイン酸エチル及びラウリン酸エチル)、寒天、緩衝剤(例えば、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム)、アルギン酸、パイロジェンフリー水、等張生理食塩水、リンガー溶液、エチルアルコール、リン酸緩衝溶液、非毒性相溶性滑沢剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウム)、着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、保存剤、及び抗酸化剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
一実施形態では、本開示の医薬組成物は、1つ以上の充填剤、崩壊剤、及び滑沢剤を含む。
【0084】
本明細書に開示される医薬組成物に適した充填剤は、医薬組成物の他の成分と適合性があり、すなわち、医薬組成物の溶解度、硬度、化学的安定性、物理的安定性、又は生物活性を実質的に低下させない。例示的な充填剤としては、セルロース、変性セルロース、(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース)、酢酸セルロース、微結晶性セルロース、リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、デンプン(例えば、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン)、糖(例えば、マンニトール、ラクトース、スクロースなど)、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、充填剤は、微結晶性セルロースである。
【0085】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、医薬組成物の重量に対して、少なくとも25重量%(例えば、少なくとも27重量%又は少なくとも30重量%)の量で1つ以上の充填剤を含む。例えば、医薬組成物は、医薬組成物の重量に対して、25重量%~40重量%(例えば、25重量%~35重量%又は30重量%~33重量%)の充填剤を含む。別の実施例では、医薬組成物は、医薬組成物の重量に対して、少なくとも25重量%(例えば、少なくとも27重量%又は少なくとも30重量%)の微結晶性セルロース、例えば、Avicel PH102又はAvicel PH101を含む。別の実施例では、医薬組成物は、医薬組成物の重量に対して、25重量%~40重量%(例えば、25重量%~35重量%又は30重量%~33重量%)の微結晶性セルロースを、含む。別の実施例では、医薬組成物は、医薬組成物の重量に対して、約31.7重量%の微結晶性セルロースを含む。別の実施例では、医薬組成物は、医薬組成物の重量に対して、約32.6重量%の微結晶性セルロースを含む。
【0086】
本明細書に開示される医薬組成物に好適な崩壊剤は、医薬組成物の分散を高めることができ、医薬組成物の他の成分と適合性があり、すなわち、医薬組成物の化学的安定性、物理的安定性、硬度、又は生物活性を実質的に低下させない。例示的な崩壊剤には、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドン、又はそれらの組み合わせが含まれる。いくつかの実施形態では、崩壊剤は、クロスカルメロースナトリウムである。
【0087】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物は、医薬組成物の重量に対して、10重量%以下(例えば、8重量%以下又は7重量%以下)の量で崩壊剤を含む。例えば、医薬組成物は、医薬組成物の重量に対して、1重量%~10重量%(例えば、2重量%~8重量%又は3重量%~7重量%)の崩壊剤を含む。別の実施例では、医薬組成物は、医薬組成物の重量に対して、10重量%以下(例えば、8重量%以下又は7重量%以下)のクロスカルメロースナトリウムを含む。別の実施例では、医薬組成物は、医薬組成物の重量に対して、1重量%~10重量%(例えば、2重量%~8重量%、又は3重量%~7重量%)のクロスカルメロースナトリウムを含む。別の実施例では、医薬組成物は、医薬組成物の重量に対して、約5.8重量%のクロスカルメロースナトリウムを含む。別の実施例では、医薬組成物は、医薬組成物の重量に対して、約6.0重量%のクロスカルメロースナトリウムを含む。
【0088】
一部の実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物は、滑沢剤を含む。滑沢剤は、表面(例えば、混合ボウル、造粒ロール、圧縮ダイ及び/又はパンチの表面)への混合成分の付着を防止することができる。滑沢剤はまた、造粒物内の粒子間摩擦を低減し、造粒機及び/又はダイプレスからの圧縮医薬組成物の圧縮及び吐出を改善することができる。本明細書に開示される医薬組成物に適した滑沢剤は、医薬組成物の他の成分と適合性があり、すなわち、医薬組成物の溶解度、硬度、又は生物活性を実質的に低下させない。例示的な滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸、ステアリン酸アルミニウム、ロイシン、ベヘニル酸グリセリル、水素添加植物油、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウムである。
【0089】
一実施形態では、医薬組成物は、医薬組成物の重量に対して、5重量%以下(例えば、4重量%以下、3重量%以下、又は2重量%以下)の量で滑沢剤を含む。例えば、医薬組成物は、医薬組成物の重量に対して、0.10重量%~5重量%(例えば、0.5重量%~3重量%又は0.75重量%~2重量%)の滑沢剤を含む。別の実施例では、医薬組成物は、医薬組成物の重量に対して、5重量%以下(例えば、4重量%以下、3重量%以下、又は2重量%以下)のステアリン酸マグネシウムを含む。別の実施例では、医薬組成物は、医薬組成物の重量に対して、0.10重量%~5重量%(例えば、0.5重量%~3重量%、又は0.75重量%~2重量%)のステアリン酸マグネシウムを含む。別の実施例では、医薬組成物は、医薬組成物の重量に対して、約1.0重量%のステアリン酸マグネシウムを含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物は、錠剤である。いくつかの実施形態では、錠剤は、フィルムコートを含む。いくつかの実施形態では、フィルムコートは、Opadry20A100021である。
【0091】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される錠剤は、以下を含む。
【表6】
【0092】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される錠剤は、以下を含む。
【表7】
【0093】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される錠剤は、以下を含む。
【表8】
【0094】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される錠剤は、以下を含む。
【表9】
【0095】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される錠剤は、以下を含む。
【表10】
【0096】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される錠剤は、以下を含む。
【表11】
【0097】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される錠剤は、以下を含む。
【表12】
【0098】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される錠剤は、以下を含む。
【表13】
【0099】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される錠剤は、以下を含む。
【表14】
【0100】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される錠剤は、以下を含む。
【表15】
【0101】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される錠剤は、以下を含む。
【表16】
【0102】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される錠剤は、以下を含む。
【表17】
【0103】
一般的な実験手順
試薬及び出発物質は、別途明記しない限り、商業的供給源から入手し、それらを精製することなく使用した。プロトン及び炭素NMRスペクトルを、それぞれ、400MHz及び100MHzのH共鳴周波数及び13C共鳴周波数で動作するBruker Biospin DRX 400MHz FTNMR分光計、又は300MHz NMR分光計のいずれかで取得した。一次元プロトン及び炭素スペクトルを、20Hzの試料回転での広帯域観測(BBFO)プローブを使用して、それぞれ、0.1834Hz/Pt及び0.9083Hz/Ptのデジタル分解能で取得した。全てのプロトン及び炭素スペクトルを、標準的な、以前に公開されたパルスシーケンス及び日常的な処理パラメータを使用して、30℃での温度制御で取得した。化合物の最終純度を、Waters製のAcquity UPLC BEH C18カラム(50×2.1mm、1.7μm粒径)(製品番号:186002350)、及び3.0分間にわたる1%~99%移動相Bのデュアルグラジエントの実行を使用して、逆相UPLCによって決定した。移動相A=HO(0.05%CFCOH)。移動相B=CHCN(0.035%CFCOH)。流量=1.2mL/分、注入量=1.5μL、カラム温度=60℃。最終純度を、2つのUVトレース(220nm、254nm)の曲線下面積(AUC)を平均化することによって計算した。低分解能質量スペクトルは、水素イオン(H)を使用したエレクトロスプレーイオン化(ESI)を使用した検出範囲にわたって0.1Daの質量精度及び1000amuの最小分解能のシングル四重極質量分析計を使用して得られた。(2S)-2,4-ジメチル-4-ニトロ-ペンタン酸メチルの光学純度を、2.0mL/分の流量(Hキャリアガス)、220℃の注入温度及び120℃のオーブン温度、15分間で、Restek Rt-βDEXcstカラム(30m×0.25mm×0.25um_df)を使用して、Agilent7890A/MSD5975C機器でキラルガスクロマトグラフィー(GC)分析を使用して決定した。化合物Iの純度を、Poroshell120 EC-C8カラム(4.6×150mm、2.7μm粒径、及び40分間にわたる30~95%の移動相のデュアルグラジエントを使用して逆相HPLCにより決定した。移動相A=5mMの酢酸アンモニウムpH4.50及び移動相B=アセトニトリル。流量=1.0mL/分、注入量=5μL、254nm、カラム温度=30℃。
【0104】
化合物I、II、及びIIIは、当技術分野の任意の適切な方法によって調製することができる。化合物Iを作製する方法は、WO2019/109021及び米国特許第9,512,079号に見出すことができ、化合物II及びその薬学的に許容可能な塩を作製する方法は、WO2019/161078及びPCT/US2020/046116に開示されており、化合物III及びその薬学的に許容可能な塩を作製する方法は、WO2011/119984及びWO2011/133751に開示されており、それら全てが参照により本明細書に組み込まれる。
【0105】
実施例1:N-(2-(tert-ブチル)-5-ヒドロキシ-4-(2-(メチル-d3)プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)フェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド(化合物I)の合成
(2)(化合物I)の合成の全体スキームを以下に示し、続いて各中間体の合成手順を示す。
【化5】
【0106】
オーバーヘッド撹拌器を備えた5Lの丸底フラスコに、4-/er/-ブチルフェノール(14、503.2g)、KCO(46.3g)、DO(1949g、1761mL、3.5体積)、及びMeOD(409g、503mL、1.0体積)を充填した。混合物を加熱して、窒素雰囲気下で還流した。反応混合物を16時間還流下で熟成させた。反応混合物を室温まで冷却し、変換のためにサンプリングした(D%組み込み)。反応物を5℃に冷却し、35%DC1溶液(90g、71.2mL)を加えた。反応混合物を5℃で2時間熟成させた。得られたスラリーを濾過し、ケーキをDO(836g、755mL、1.5体積)で洗浄した。このプロセスは、目標のD%組み込みが満たされるまで繰り返された(通常、2回の交換が必要とされる)。湿潤ケーキを、一定重量が得られるまで、40℃で窒素ブリード(nitrogen bleed)をしながら真空オーブンで乾燥させる。4-(tert-ブチル)フェン-2,6-d-オール-d(19)の収率は、純度は99.6%、99.3%のD%組み込みの506gの白色固体(98%)であった。
【0107】
4-(tert-ブチル)-2-(2-(メチル-d3)プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)フェン-6-d-オール-d及び4-(tert-ブチル)-2,6-ビス(2-(メチル-d3)プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)フェノール-d(18)の合成手順
【化6】

4-(tert-ブチル)フェン-2,6-d-オール-d(19)(101.8g、0.66mol、1.0当量)を、2L反応器中のCHCl(400mL)中に溶解した。
【数1】

(43.0g、0.51mol、0.77当量)を、250mLフラスコ中のCHCl(100mL)中に溶解した。tert-ブタノール-r/の溶液を、室温で2L反応器に充填した。反応混合物を、-5℃に冷却した。DSO(51.1g、0.51mol、0.77当量)を、-4~-2℃の温度範囲を維持しながら、添加漏斗を介して滴下で加えた。反応混合物を、-2℃で3~4時間撹拌した。完全な変換後、反応を水(28mL)を加えることによりクエンチし、18~20℃に加温した。底部の水層を排出し、廃棄した。CHCl層を、飽和NaHCCh水溶液(約200mL)でpHを6~8に調整する。NaCl(飽和)溶液(400mL)を混合物に充填した。得られた溶液を5分間撹拌し、5分間静置した。下部のCHCl層を1Lフラスコに排出した。水層を廃棄した。CHCl溶液を最小体積に濃縮し、n-ヘプタン(200mL)を充填した。溶液を最小体積に濃縮し、最終体積800mLになるまでnへプタンを充填した。0.5NのNaOH溶液600mL(6体積)を反応器に充填し、得られた混合物を5分間撹拌し、少なくとも5分間静置した。水層を排出し、廃棄した。1.0NのNaOH溶液300mL(3体積)を反応器に充填し、得られた混合物を5分間撹拌し、少なくとも5分間静置した。水層を排出し、廃棄した。1.0NのNaOH溶液300mL(3体積)を反応器に充填し、得られた混合物を5分間撹拌し、少なくとも5分間静置した。水層を排出し、廃棄した。残りのn-ヘプタン溶液を濃縮して乾燥し、所望の生成物である4-(tert-ブチル)-2-(2-(メチル-d)プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d)フェン-6-d-オール-d(18)を透明油状物として104.5g得、これを更に精製することなく次のステップに進めた。
【0108】
2-ブロモ-4-(tert-ブチル)-6-(2-(メチル-d3)プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)フェノール(17)の合成手順
【化7】

4-(tert-ブチル)-2-(2-(メチル-d)プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d)フェン-6-d-オール-d(18)(100g、0.462mol、1.0当量)を、2L反応器中のCH2Cl2(800mL、7体積)に溶解し、溶液を撹拌した。バッチを0±3℃に冷却した。バッチに、N-ブロモスクシンイミド(84.4g、0.462mol、1.0当量)を30分間にわたって少しずつ(portion-wise)充填した。バッチを、0±2℃で少なくとも30分間撹拌した。次いで、バッチを2時間にわたって20±2℃に加熱し、20±2℃で少なくとも12時間撹拌した。完全な変換後、飽和NaHCCh水溶液(500mL、5体積)を充填し、バッチを少なくとも10分間撹拌した。かき混ぜを停止して、相を少なくとも5分間分離させ、CH2Cl2層を排出し、続いて水層を除去した。CTLCh層を容器に充填し戻した。バッチに、飽和NaHCCh重炭酸塩水溶液(500mL、5体積)を装入し、バッチを少なくとも10分間撹拌した。かき混ぜを停止して、相を少なくとも5分間分離させ、CHCl層を排出し、続いて水層を除去した。CHCl層を容器に充填し戻し、追加のCH2Cl2(300mL、3体積)で希釈した。バッチを蒸留し(300mLを除去)、乾燥に達したかKFによって確認した。得られた17の透明な黄色溶液は、更に精製することなく次のステップに進めた。
【0109】
2-ブロモ-4-(tert-ブチル)-6-(2-(メチル-d3)プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)フェニルメチルカーボネート(16)の合成手順
【化8】

清浄な反応器に、4-(tert-ブチル)-2-(2-(メチル-d3)プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)フェン-6-d-オール-d(17)(136g、0.462mol、1.0当量)のCHCl溶液を充填し、続いて追加のCHCl(130mL、1体積)を加え、この溶液を撹拌した。バッチに、4-(ジメチルアミノ)ピリジン(2.8g、0.023mol、0.05当量)及びトリエチルアミン(70.1g、0.693mol、1.5当量)を充填した。バッチを0±3℃に冷却した。バッチ温度を<5℃に維持しながら、バッチに、40分間にわたって、クロロギ酸メチル(48.0g、0.508mol、1.1当量)を滴下で加えた。バッチを、3±2℃で少なくとも30分間撹拌し、次いで1時間かけて20±2℃に加温した。完全な変換後、1NのHCl(400mL、3体積)を充填した。バッチを少なくとも10分間撹拌し、次いで層を少なくとも5分間分離させた。下部有機層を排出し、続いて水層(第1の水層)を排出した。有機層を、1NのHCl溶液(400mL、3体積)とともに反応器に充填し戻した。バッチを少なくとも10分間撹拌し、次いで層を少なくとも5分間分離させた。下部有機層を排出した。第1の水層を、CHCl(300mL、2.2体積)とともに反応器に充填した。バッチを少なくとも10分間撹拌し、次いで層を少なくとも5分間分離させた。下部有機層を排出し、第1の有機層と合わせ、続いて水層を除去した。両方の有機層の内容物を容器に充填する。反応器を水(500mL、3.7体積)を充填した。バッチを少なくとも10分間撹拌し、次いで層を少なくとも5分間分離させた。下部有機層を排出し、続いて水層を排出した。有機層を、CHCl(400mL、3体積)と一緒に反応器に充填し戻した。バッチを蒸留して800mLを除去し、KFによって確実な乾燥を確認した。得られた16の透明な黄色溶液は、更に精製することなく次のステップにはめ込まれた。
【0110】
2-ブロモ-4-(tert-ブチル)-6-(2-(メチル-d3)プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)-3-ニトロフェニルメチルカーボネート(15)の合成手順
【化9】

反応器に、2-ブロモ-4-(tert-ブチル)-6-(2-(メチル-d3)プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)フェニルメチルカーボネート(16)を充填し、次いで溶液を0℃に冷却した。温度を5℃以下に維持しながら、硫酸(4.9当量)及び硝酸(100%、2.0当量)を充填した。完全に変換されるまで、反応物を0℃で2時間撹拌した。次いで、反応物を、水(8.8体積)でクエンチし、CHCl(1.7体積)で希釈した。層を分離し、上層の水層をCHClで抽出した(2.8体積)。層を分離した後、有機層を合わせ、反応器に戻し、重炭酸ナトリウム(7.4%w/w、6.8体積)で洗浄した。層を分離した後、有機層を反応器に戻し、塩化ナトリウム(23%w/w、3.8体積)で洗浄した。層を分離した後、有機層を反応器に戻し、最小体積まで濃縮した。メタノール(1.2体積)を充填し、次いで最小体積まで濃縮した。メタノール(1.2体積)を充填し、次いで最小体積まで濃縮した。メタノール(1.7体積)を充填し、スラリーを30分間加熱還流し、次いで4時間かけて5℃までゆっくりと冷却した。固体生成物(15)を濾過し、ケーキを冷メタノール(1.0体積)で洗浄した。固体2-ブロモ-4-(tert-ブチル)-6-(2-(メチル-d3)プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)-3-ニトロフェニルメチルカーボネート(15)を、真空下で40℃~50℃で乾燥させて、99.9%の純度及び99%のD組み込みのオフホワイト固体を得た。
【0111】
5-アミノ-4-(tert-ブチル)-2-(2-(メチル-d3)プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)フェニルメチルカーボネート(7)の合成手順
【化10】

5重量%の5%Pd/C(50~65重量%の湿潤、JMタイプ37)を反応器に充填する。(4.0体積)メタノールを充填する。系を閉じる。2.0BarでN2(g>でパージする。2.0BarでH2(g)で活性化する。25℃±5℃で容器にH2(g>を2.0Barまで充填する。25℃±5℃の温度を維持しながら、2時間以上撹拌する。排気し、2.0BarでN2(g)でパージする。化合物15(1.0当量)を、Na2HPO(2.3当量)とともに反応器に充填する。(11.0体積)のメタノールを充填する。系を閉じる。2.0BarでN2(g>でパージする。2.0BarでH2(g)で活性化する。25℃±5℃で容器にH2(g>を2.0Barまで充填する。25℃±5℃の反応温度を維持しながら、約24時間撹拌する。完全に変換したら、7.7体積のMeOHを加えて反応混合物を希釈する。反応混合物を35.0℃±5℃に加熱する。触媒及びNa2HPOを濾別する。反応器及び濾過ケーキをメタノール(4.0体積)で洗浄し、最初の濾液と合わせて濾過する。Pd含量をチェックし、必要に応じて樹脂処理を実施する(樹脂処理は、SPM-32樹脂(5重量%)を充填する。樹脂処理溶液を35.0℃±5℃で3時間以上撹拌する。樹脂を濾別する。
【0112】
反応器及び濾過ケーキをメタノール(2.0体積)で洗浄し、濾過して、最初の濾液と合わせる)。Norit CASP活性炭素(3重量%)を充填する。35.0℃±5℃で3時間以上撹拌する。活性炭を濾別する。反応器及び濾過ケーキをメタノール(2.0体積)で洗浄し、濾過して、最初の濾液と合わせる。50℃以下で、8.0体積まで真空下で蒸留する。温度を45℃±5℃に維持しながら、水(2.0体積)を充填する。得られたスラリーを0℃±5℃に2時間かけて冷却する。スラリーを0℃±5℃で1時間以上保持し、撹拌する。濾過し、ケーキを2.0体積のメタノール/水(8:2)で0℃±5℃で洗浄する。5-アミノ-4-(tert-ブチル)-2-(2-(メチル-d3)プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)フェニルメチルカーボネート(7)を40℃以下で真空下で乾燥し、純度>99.5%の白色の固体を得る。
【0113】
4-(tert-ブチル)-2-(2-(メチル-d3)プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)-5-(4-オキソ-l,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド)フェニルメチルカーボネート(8)の合成手順
【化11】

化合物7を化合物8に変換する手順は、化合物5についての類似の手順に従って行うことができる。
【0114】
N-(2-(tert-ブチル)-5-ヒドロキシ-4-(2-(メチル-d3)プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)フェニル)-4-オキソ-l,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド(2)(化合物I)の合成手順
【化12】

化合物8を化合物2に変換する手順は、化合物1の合成についての類似の手順に従って行うことができる。
【0115】
実施例2:5-アミノ-4-(tert-ブチル)-2-(2-(メチル-d3)プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)フェニルメチルカーボネート(7)の合成
化合物7の合成の別の全体スキームを以下に示し、続いて各合成中間体の合成手順を示す。
【化13】
【0116】
4-(tert-ブチル)フェン-2,6-d2-オール-d(19)の合成手順
【化14】

清浄で乾燥した500mL反応器に、4-/c/7-ブチルフェノール(14)(24.6g、0.162mmol、1.00当量)、CHCl(64mL、2.6体積)、及びヘプタン(64mL、2.6体積)を充填し、この混合物を25℃に加温し、全ての固体が溶解するまで撹拌した。この溶液に、塩化重水素(重水素酸化物中35%w/w、25mL、1.0体積)を充填し、この混合物を少なくとも3.5時間かき混ぜた。かき混ぜを停止し、相を分離させ、次いで水層(底部)を反応器から排出した。反応器に、塩化重水素(重水素酸化物中35%w/w、25mL、1.0体積)を充填し、この混合物を少なくとも3.5時間かき混ぜた。かき混ぜを停止し、相を分離させ、次いで水層(底部)を反応器から排出した。反応器に、塩化重水素(重水素酸化物中35%w/w、25mL、1.0体積)を充填し、この混合物を少なくとも3.5時間かき混ぜた。かき混ぜを停止し、相を分離させ、次いで水層(底部)を反応器から排出した。得られた溶液をサンプリングし、出発物質4-/er/-ブチルフェノールに対して、少なくとも99%の所望の重水素組み込み生成物4-(tert-ブチル)フェン-2,6-d2-オール-d(19)であることを確認した。反応器内の溶液を、以下に記載される次のステップに継続させた。
【0117】
4-(tert-ブチル)-2-(2-(メチル-d3)プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)フェン-6-d-オール(18)の合成手順
【化15】

4-(tert-ブチル)フェン-2,6-d2-オール-d(19)の反応混合物を含有する塩化メチレン溶液に、CHCl(125mL、5体積)を充填した。蒸留ヘッドを使用し、反応器を60℃に加熱して、およそ125mLの反応溶液を反応器から蒸留した。反応器にCHCl(125mL、5体積)を充填した。次いで、およそ100mLの反応液を反応器から蒸留し、この時点で、溶液をサンプリングして、含水量(KF)が300ppm未満であることを確認し、CHCl及びヘプタン含有量を測定した。バッチ体積の測定後、CHCl(8mL、0.24体積)を充填して、総CHCl含有量を3体積に調整し、ヘプタン(68mL、2.8体積)を充填して、ヘプタン含有量を4.5体積に調整した。溶液に、/cvv-ブチルアセト酸e-dg(30.2g、1.46当量)を充填し、得られた溶液を0℃に冷却した。溶液に、硫酸-J2(8.12g、0.49当量)を少なくとも15分間にわたって充填し、溶液を、0~5℃で温度を維持しながら2時間かき混ぜた。この時間後、温度を2時間にわたって20℃まで上昇するよう設定し、溶液を更に14時間かき混ぜた。溶液をサンプリングして、4-/c77-ブチルフェノール(14)又は4-(tert-ブチル)フェン-2,6-d2-オール-d(19)が3%未満で存在することを確認した。反応器にCHCl(58mL、2.4体積)及びヘプタン(90mL、3.7体積)を充填し、溶液を0~5℃に冷却した後、水(125mL、5体積)を充填した。混合物を15分間かき混ぜた後、かき混ぜを停止し、相を分離させた。水相(底部)を反応器から排出した後、0.5NのNaOH水溶液(125mL、5体積)を充填し、温度を20℃に調整した。混合物を20分間かき混ぜた後、かき混ぜを停止し、相を分離させた。有機相(上部)をサンプリングして、4-tert-ブチルフェノール(14)又は4-(tert-ブチル)フェン-2,6-d2-オール-d(18)が0.5%未満で存在することを確認した。水相(底部)を反応器から排出した。反応器内の溶液を、以下に記載される次のステップに継続させた。
【0118】
2-ブロモ-4-(tert-ブチル)-6-(2-(メチル-d3)プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)フェノール(17)の合成手順
【化16】

4-(tert-ブチル)-2-(2-(メチル-d3)プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)フェン-6-d-オール-d(18)を生成するためのアルキル化反応のかき混ぜた溶液を0~5℃にした後、温度を5℃未満に維持しながら臭素(38.4g、1.45当量)を少なくとも1時間にわたって充填した。溶液をサンプリングして、4-(tert-ブチル)-2-(2-(メチル-d3)プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)フェン-6-d-オールが1%未満で存在することを確認した。温度を10℃未満に維持しながら、溶液に二亜硫酸ナトリウム(20%w/w水溶液、147g、0.95当量)を少なくとも1時間にわたって充填し、温度を20℃に調整した後、混合物を更に1時間かき混ぜた。かき混ぜを中止し、相を分離させた。水相(底部)を反応器から排出し、水(125mL、5体積)を反応器に充填した。混合物を15分間かき混ぜた後、かき混ぜを停止し、相を分離させた。水相(底部)を反応器から排出した。反応器内の17の溶液は、以下に記載される次のステップに継続させた。
【0119】
驚くべきことに、この臭素化反応は、ニトロ化反応の選択性を著しく改善した。本プロセスに対する別の予想外の利点は、臭素化により、化合物18及び4-(tert-ブチル)-2,6-ビス(2-(メチル-d3)プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)フェノールの混合物が、同じ所望の生成物(17)に変換されたことであった。これにより、全体的な収率が大幅に改善された。
【0120】
2-ブロモ-4-(tert-ブチル)-6-(2-(メチル-d3)プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)フェニルメチルカーボネート(16)の合成手順
【化17】

2-ブロモ-4-(tert-ブチル)-6-(2-(メチル-d3)プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)フェノール(17)を生成する臭素化反応の溶液に、CHCl(125mL、5体積)を充填した。蒸留ヘッドを使用し、反応器を60℃に加熱して、およそ125mLの反応溶液を反応器から蒸留した。反応器にCHCl(125mL、5体積)を充填した。およそ125mLの反応液を反応器から蒸留した。反応器にCHCl(125mL、5体積)を充填した。次いで、およそ125mLの反応液を反応器から蒸留し、この時点で、溶液をサンプリングして、含水量(KF)が300ppm未満であることを確認し、CH2Cl2及びヘプタン含有量を測定した。バッチ体積の測定後、CFLChを充填して、総CHCl含有量を5.3体積に調整し、ヘプタンを充填して、ヘプタン含有量を8体積に調整した。溶液に、トリエチルアミン(31.7g、1.91当量)を充填し、溶液を0~5℃に冷却した。溶液に、温度を10℃未満に維持しながら、クロロギ酸メチル(24.1g、1.56当量)を少なくとも1時間にわたって充填した、溶液を1時間かき混ぜ、溶液のサンプルを採取して、2-ブロモ-4-(tert-ブチル)-6-(2-(メチル-d3)プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)フェノール(17)が1%未満で存在することを確認した。温度を10℃未満に維持しながら、溶液に1Nの塩酸水溶液(125mL、0.76当量)を少なくとも30分間にわたって充填した。次いで、温度を20℃に調整し、かき混ぜを停止し、相を分離させた。水相(底部)を反応器から排出した後、水(125mL、5体積)を反応器に充填した。混合物を15分間かき混ぜた後、かき混ぜを停止し、相を分離させた。水相(底部)を反応器から排出した後、水(125mL、5体積)を反応器に充填した。混合物を15分間かき混ぜた後、かき混ぜを停止し、相を分離させた。水相(底部)を反応器から排出した。反応器内の(16)の溶液は、以下に記載される次のステップに継続させた。
【0121】
2-ブロモ-4-(tert-ブチル)-6-(2-(メチル-d3)プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)-3-ニトロフェニルメチルカーボネート(15)の合成手順
【化18】

2-ブロモ-4-(tert-ブチル)-6-(2-(メチル-d3)プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)フェニルメチルカーボネート(16)を生成する保護反応の溶液に、CHCl(125mL、5体積)を充填した。蒸留ヘッドを使用し、反応器を60℃に加熱して、およそ125mLの反応溶液を反応器から蒸留した。反応器に、CHCl塩化物(125mL、5体積)を充填した。およそ125mLの反応液を反応器から蒸留した。反応器にCHCl(125mL、5体積)を充填した。反応器にCHCl(125mL、5体積)を充填した。およそ125mLの反応液を反応器から蒸留した。次いで、およそ125mLの反応液を反応器から蒸留し、この時点で、溶液をサンプリングして、含水量(KF)が300ppm未満であることを確認し、CHCl及びヘプタン含有量を測定した。バッチ体積の測定後、CHClを充填して、総CHCl含有量を6体積に調整し、ヘプタンを充填して、ヘプタン含有量を9体積に調整した。溶液を0~5℃に冷却した後、温度を5℃未満に維持しながら、硫酸(172g、10.3当量)を少なくとも30分間にわたって充填した。温度を10℃未満に維持しながら、混合物に硝酸(70%w/w、19.1g、1.31当量)を少なくとも30分間にわたって充填した。混合物を1時間かき混ぜた後、試料を採取し、分析して、2-ブロモ-4-(tert-ブチル)-6-(2-(メチル-d3)プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)フェニルメチルカーボネート(16)が1%未満で存在することを確認した。温度を10℃未満に維持しながら、混合物に水(100mL、4体積)を少なくとも1時間にわたって充填した。かき混ぜを停止し、相を分離させ、水相(底部)を反応器から排出した。かき混ぜを再開した後、温度を10℃未満に維持しながら、重炭酸ナトリウム(8%w/w水溶液、100mL、4体積、0.62当量)を少なくとも10分間にわたって充填した。温度を20℃に調整し、かき混ぜを停止し、相を分離させた。反応器から水相(底部)を排出した後、水(100mL、4体積)を反応器に充填し、混合物を15分間かき混ぜた。かき混ぜを停止し、相を分離させ、水相(底部)を反応器から排出した。混合物に、水(100mL、4体積)を充填し、この混合物を15分間かき混ぜた。かき混ぜを停止し、相を分離させ、水相(底部)を反応器から排出した。反応器の溶媒レベルをマーキングした後、蒸留ヘッドを取り付け、温度を80℃に設定した。溶液にメタノール(570mL、23体積)を充填し、同時に蒸留し、溶媒レベルをマークに維持することによって、添加速度を蒸留速度に一致させた。バッチ容量がおよそ264mL(11体積)になり、およそ1.10kgの蒸留物が除去されるまで、蒸留を継続した。混合物をサンプリングして分析し、ヘプタンが1%v/v未満で存在することを確認した。温度を4時間にわたって0℃に調節した。母液を採取して分析し、2-ブロモ-4-(tert-ブチル)-6-(2-(メチル-d3)プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)-3-ニトロフェニルメチルカーボネート(15)の濃度を決定し、混合物を濾過した。反応器にメタノール(51.1mL、2体積)を充填し、温度が0~5℃に達するまでこれをかき混ぜた。この溶液を使用して、フィルターケーキを洗浄し、次いで、フィルターケーキを少なくとも1時間、吸引により乾燥させた。次いで、固体を真空乾燥させて、2-ブロモ-4-(tert-ブチル)-6-(2-(メチル-d3)プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)-3-ニトロフェニルメチルカーボネート(15)を41.5gのオフホワイト固体として生成した(純度98.4%w/w、純度補正後の収率63%)。
【0122】
5-アミノ-4-(tert-ブチル)-2-(2-(メチル-d3)プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)フェニルメチルカーボネート(7)の合成手順
【化19】

5重量%の5%Pd/C(50~65重量%の湿潤、JMタイプ37)を反応器に充填する。(4.0体積)メタノールを充填する。系を閉じる。2.0BarでN2(g>でパージする。2.0BarでH2(g)で活性化する。25℃±5℃で容器にH2(g>を2.0Barまで充填する。25℃±5℃の温度を維持しながら、2時間以上撹拌する。排気し、2.0BarでN2(g)でパージする。化合物15(1.0当量)を、NaHPO(2.3当量)とともに反応器に充填する。(11.0体積)のメタノールを充填する。系を閉じる。2.0BarでN2(g>でパージする。2.0BarでH2(g)で活性化する。25℃±5℃で容器にH2(g>を2.0Barまで充填する。25℃±5℃の反応温度を維持しながら、約24時間撹拌する。完全に変換したら、7.7体積のMeOHを加えて反応混合物を希釈する。反応混合物を35.0℃±5℃に加熱する。触媒及びNaHPOを濾別する。反応器及び濾過ケーキをメタノール(4.0体積)で洗浄し、最初の濾液と合わせて濾過する。Pd含有量をチェックし、必要に応じて樹脂処理を実施する(樹脂処理は、SPM-32樹脂(5重量%)を充填する。樹脂処理溶液を35.0℃±5℃で3時間以上撹拌する。樹脂を濾別する。
【0123】
反応器及び濾過ケーキをメタノール(2.0体積)で洗浄し、濾過して、最初の濾液と合わせる)。Norit CASP活性炭素(3重量%)を充填する。35.0℃±5℃で3時間以上撹拌する。活性炭を濾別する。反応器及び濾過ケーキをメタノール(2.0体積)で洗浄し、濾過して、最初の濾液と合わせる。50℃以下で、8.0体積まで真空下で蒸留する。温度を45℃±5℃に維持しながら、水(2.0体積)を充填する。得られたスラリーを0℃±5℃に2時間かけて冷却する。スラリーを0℃±5℃で1時間以上保持し、撹拌する。濾過し、ケーキを2.0体積のメタノール/水(8:2)で0℃±5℃で洗浄する。5-アミノ-4-(tert-ブチル)-2-(2-(メチル-d3)プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)フェニルメチルカーボネート(7)を40℃以下で真空下で乾燥し、純度>99.5%の白色の固体を得る。
【0124】
4-(tert-ブチル)-2-(2-(メチル-d3)プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)-5-(4-オキソ-l,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド)フェニルメチルカーボネート(8)の合成手順
【化20】

化合物7を化合物8に変換する手順は、化合物5についての類似の手順に従って行うことができる。
【0125】
N-(2-(tert-ブチル)-5-ヒドロキシ-4-(2-(メチル-d3)プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)フェニル)-4-オキソ-l,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド(2)(化合物I)の合成手順
【化21】

化合物8を化合物2に変換する手順は、化合物1の合成についての類似の手順に従って行うことができる。
【0126】
実施例3:5-アミノ-4-(tert-ブチル)-2-(2-(メチル-d3)プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)フェニルメチルカーボネート(7)の合成
化合物7の合成の別のスキームを以下に示し、続いて各合成中間体の合成手順を示す。
【化22】
【0127】
5-(tert-ブチル)-2-ヒドロキシ安息香酸(15)の合成手順
【化23】

ヘキサン中1.6MのnBuLi(3.49g)を、磁気撹拌子、熱電対、及びN2バブラーを備えた丸底フラスコに加えた。丸底フラスコを-20℃に冷却し、撹拌を開始した。MTBE(12.5mL)中の2-ブロモ-4-tert-ブチルフェノール(26)(5.00g)の溶液を調製し、-20℃に冷却し、-20℃±5℃に温度を維持しながら、丸底フラスコに滴下で加えた。反応混合物を、-20℃±5℃で15分間撹拌し、次いで23℃まで温めた。室温で15分後、リチウム化の完全性を、’H NMR(200pLの反応混合物を0.75mLのd4-MeOHに希釈した)によって測定した。1%未満の2-ブロモ-4-tert-ブチルフェノールが観察されたとき、反応が、完了したとみなされた。反応混合物を0℃に冷却し、ドライアイス(固体CO)を加え、反応物を室温で45分間撹拌した。水(50.0mL)を加えて、反応をクエンチした。混合物を分液漏斗に移し、相を分離し、有機相を廃棄した。水相を、1M HCl(15.0mL)でpH約2に酸性化し、次いでMTBE(25.0mL)で3回抽出した。合わせた有機抽出物を減圧下で濃縮し、5-(tert-ブチル)-2-ヒドロキシ安息香酸(25)を黄色固体として得た(2.25g、収率53.15%)、3/4 NMR(400MHz,d4-MeOH):7.86(1H,d,J=2.6Hz)、7.54(1H,dd,J=8.7,2.6Hz)、6.85(1H,d,J=2.7Hz)、1.30(9H,s)。
【0128】
5-(tert-ブチル)-2-ヒドロキシ安息香酸メチル(24)の合成手順
【化24】

この反応は、Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters,2005,vol.15(21),p.4752-4756に記載されている手順に従って行うことができる。
【0129】
2-((tert-ブトキシカルボニル)オキシ)-5-(tert-ブチル)安息香酸メチル(23)の合成手順
【化25】

ジ-/e/7-ブチルカーボネート(230.55g)及びCHCl(400mL)を1L反応器に充填し、混合物を固体が完全に溶解するまで撹拌した。ジメチルアミノピリジン(0.587g)を、5-(/er/-ブチル)-2-ヒドロキシ安息香酸メチル(24)(200g)とともに撹拌溶液に充填した。反応混合物を15~30℃で撹拌し、60分後に試料アリコートを用いてHPLC(方法)により完全性を測定した。5-tert-ブチル-2-ヒドロキシ安息香酸塩(24)のピーク面積が1%未満になったとき、反応を完了したとみなした。飽和アンモニウム塩化アンモニウム溶液(200mL)を水(200mL)で希釈することにより、塩化アンモニウムの半飽和溶液を別個のフラスコ中で調製した。反応混合物を、飽和水性塩化アンモニウム溶液で2回洗浄した(各洗浄200mL)。各洗浄中、混合物を15分間撹拌し、15分間保持した。続いて、有機溶液を、水で2回洗浄した(各洗浄100mL)。各洗浄中、混合物を15分間撹拌し、15分間保持した。有機溶液を1Lの丸底フラスコに移し、35℃以下で真空下で濃縮して白色固体を得た(275.51g及びHPLC分析(方法)による測定で純度99.46%、収率93.0%の2((/er/-ブトキシカルボニル)オキシ)-5-(ter/-ブチル)安息香酸メチル(23))。3/4 NMR(400MHz,CDCb):8.01(m,1H);7.57(m,1H);7.11(m,1H);3.89(s,3H);1.58(s,9H);1.33(s,9H)。
【0130】
4-(tert-ブチル)-2-(2-(メチル-d3)プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)フェノール(22)の合成手順
【化26】

THF(176mL)を500mLジャケット反応器に充填し、5℃に冷却した。撹拌溶媒に、0~35℃で、ジブチルエーテル(145mL)中の(メチル-d3)マグネシウムヨージド(60.5g)の溶液をゆっくりと充填した。得られたスラリーを、20~30℃にして、維持しながら、THF(44mL)中の2-((tert-ブトキシカルボニル)オキシ)-5-(/c/7-ブチル(安息香酸(23)(22g)の溶液を4~6時間かけて充填した。反応混合物を、20~30℃で撹拌し、60分後に試料アリコートを用いてHPLCにより完全性を測定した。2-((/er/-ブトキシカルボニル)オキシ)-5-(/er/-ブチル)安息香酸(23)のピーク面積が1%未満になったとき、反応を完了したとみなした。第2の反応器に6Nの塩酸水溶液(110mL)を充填し、撹拌溶液を0~10℃に冷却した。反応スラリーを、0~35℃の酸性溶液にゆっくりと移した。相を15分間撹拌し、15分保持してから分離した。水相を、ジブチルエーテル(132mL)で抽出した。抽出中、相を15分間撹拌し、15分間保持してから分離した。合わせた有機相を、水(2×77mL)、5%チオ硫酸ナトリウム水溶液(77mL)、及び水(77mL)で順次洗浄した。各洗浄中、混合物を15分間撹拌し、15分間保持した。有機溶液を丸底フラスコに移し、80℃未満で、真空下で濃縮して、4-(/er/-ブチル)-2-(2-(メチル-d3)プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)フェノール(22)を、粗製油状物として得た(5.94g及びHPLC分析(方法)による測定で純度83.8%、LC/MS分析でD9同位体純度99.3%のHPLC分析、収率84.9%のメチル4-(/er/-ブチル)-2-(2-(メチル-i3/4)プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-^フェノール(23))。3/4 NMR(400MHz,CDOD):7.22(m,1H);7.00(m,1H);6.65(m,1H);1.26(s,9H)。
【0131】
(23)のグリニャール反応により、(22)におけるいくらかの重水素組み込みがもたらされた。H/D交換を行うために、混合物を一連のHCl洗浄に供した:
【化27】
【0132】
H/D交換の手順
化合物22の重水素化類似体(1.00当量)を反応器に充填する。DCM(5体積)を充填する。ジャケットを20℃に設定する。かき混ぜて、固体を溶解させる。35%塩酸(5体積)を充填する。6時間以上かき混ぜて、層を混合する。かき混ぜを停止し、層を少なくとも30分間静置する。反応器から底層(有機層)を排出する。反応器から水層を排出する。有機部分を反応器に充填し戻す。HCl洗浄手順を2回繰り返す。予め混合した水(2.5体積)及び飽和NaCl水溶液(2.5体積)を装入する。30分間かき混ぜて層を混合する。かき混ぜを停止し、層を少なくとも30分間静置する。反応器から底層(有機層)を排出する。反応器から水性物を排出する。有機部分を反応器に充填し戻す。水(5体積)を充填する。30分間かき混ぜて層を混合する。かき混ぜを停止し、層を少なくとも30分間静置する。反応器から底層(有機層)を排出する。反応器から水性物を排出する。有機部分を反応器に充填し戻す。減圧下で溶媒を最小体積まで蒸留する(35℃の浴温度のロトバップを使用した)。DCM(5体積)を充填する。減圧下で溶媒を最小体積まで蒸留する(35℃の浴温度のロトバップを使用した)。DCM(5体積)を充填する。溶液をサンプリングし、KFで含水量を測定する。含水量が300ppm未満になるまで繰り返す。注:この溶液を次の反応に直接使用したため、DCMの最終量は、化合物22のアルコキシホルミル化反応に必要な量であるべきである。
【0133】
4-(tert-ブチル)-2-(2-(メチル-d3)プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)フェニルメチルカーボネート(21)の合成手順
【化28】

化合物22を化合物21に変換する手順は、化合物12についての類似の手順に従って行うことができる。
【0134】
4-(tert-ブチル)-2-(2-(メチル-d3)プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)-5-ニトロフェニルメチルカーボネート(20)の合成手順
【化29】

化合物21を化合物20に変換する手順は、化合物11Aについての類似の手順に従って行うことができる。
【0135】
5-アミノ-4-(tert-ブチル)-2-(2-(メチル-d3)プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)フェニルメチルカーボネート(7)の合成手順
【化30】

化合物20を化合物7に変換する手順は、化合物4についての類似の手順に従って行うことができる。
【0136】
4-(tert-ブチル)-2-(2-(メチル-d3)プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)-5-(4-オキソ-l,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド)フェニルメチルカーボネート(8)の合成手順
【化31】

化合物7を化合物8に変換する手順は、化合物5についての類似の手順に従って行うことができる。
【0137】
N-(2-(tert-ブチル)-5-ヒドロキシ-4-(2-(メチル-d3)プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)フェニル)-4-オキソ-l,4-ジヒドロキノリン-3-カルボキサミド(2)(化合物I)の合成手順
【化32】

(8)から(2)への変換する手順は、化合物Iの合成についての類似の手順に従って行うことができる。
【0138】
実施例4:(14S)-8-[3-(2-{ジスピロ[2.0.2.1]ヘプタン-7-イル}エトキシ)-1H-ピラゾール-1-イル]-12,12-ジメチル-2λ6-チア-3,9,11,18,23-ペンタアザテトラシクロ[17.3.1.111,14.05,10]テトラコサ-1(22),5,7,9,19(23),20-ヘキサエン-2,2,4-トリオン(化合物II)の合成
試薬及び出発物質は、別途明記しない限り、商業的供給源から入手し、それらを精製することなく使用した。
【0139】
プロトン及び炭素NMRスペクトルを、それぞれ、400MHz及び100MHzのH共鳴周波数及び13C共鳴周波数で動作するBruker Biospin DRX 400MHz FTNMR分光計、又は300MHz NMR分光計のいずれかで取得した。一次元プロトン及び炭素スペクトルを、20Hzの試料回転での広帯域観測(BBFO)プローブを使用して、それぞれ、0.1834Hz/Pt及び0.9083Hz/Ptのデジタル分解能で取得した。全てのプロトン及び炭素スペクトルを、標準的な、以前に公開されたパルスシーケンス及び日常的な処理パラメータを使用して、30℃での温度制御で取得した。
【0140】
パートA:2-クロロ-6-[3-(2-ジスピロ[2.0.2.1]ヘプタン-7-イルエトキシ)ピラゾール-1-イル]ピリジン-3-カルボン酸の合成
【化33】

ステップ1:7-(ブロモメチル)ジスピロ[2.0.2.1]ヘプタン
【化34】

1000mLの三口丸底フラスコに、機械的撹拌器、冷却浴、添加漏斗、J-Kem温度プローブ、及び窒素入口/出口を装着した。この容器に、窒素雰囲気下で、トリフェニルホスフィン(102.7mL、443.2mmol)及びジクロロメタン(1L)を充填し、これにより、透明な無色の溶液を得た。撹拌を開始し、冷却浴にアセトンを充填した。-15℃のポット温度が得られるまでドライアイスを冷却浴に少量ずつに分けて添加した。添加漏斗に臭素(22.82mL、443.0mmol)のジクロロメタン(220mL、10mL/g)溶液を充填し、その後、これを1時間にわたって滴加した。ポット温度を-15℃に維持するために、添加中にドライアイスを冷却浴に少量ずつに分けて添加した。臭素の添加が完了した後、淡黄色の懸濁液を-15℃で15分間撹拌し続け、その時点で、懸濁液を-30℃に冷却した。添加漏斗に、ジスピロ[2.0.2.1]ヘプタン-7-イルメタノール(50g、402.6mmol)、ピリジン(35.82mL、442.9mmol)、及びジクロロメタン(250mL、5mL/g)の溶液を充填した。次いで、ポット温度を-30℃に維持しながら、透明な淡黄色の溶液を1.5時間にわたって滴加した。結果として生じた透明な淡黄色の反応混合物を、-5℃のポット温度に徐々に加温させ、次いで、-5℃で1時間撹拌し続けた。次いで、反応混合物をヘキサン(2000mL)中に注ぎ、これにより、沈殿物が形成された。懸濁液を室温で30分間撹拌し、次いで、20mmのセライト層を備えたガラスフリットブフナー漏斗に通して濾過した。透明な濾液を減圧下で濃縮して(水浴温度20℃)、黄色の油を得たが、いくらかの沈殿物が存在した。油をいくらかのヘキサンで希釈し、室温で15分間静置させ、次いで、20mmのセライト層を備えたガラスフリットブフナー漏斗に通して濾過した。透明な濾液を減圧下で濃縮して(水浴温度20℃)、透明な黄色の油として7-(ブロモメチル)ジスピロ[2.0.2.1]ヘプタン(70g、93%)を得た。H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ3.49(d,J=7.5Hz,2H)、1.90(t,J=7.5Hz,1H)、1.06-0.84(m,4H)、0.71(ddd,J=9.1,5.1,4.0Hz,2H)、0.54(dddd,J=8.6,4.8,3.8,1.0Hz,2H)。
【0141】
ステップ2:2-ジスピロ[2.0.2.1]ヘプタン-7-イルアセトニトリル
【化35】

1000mLの三口丸底フラスコに、機械的撹拌器、二次格納容器として使用した冷却浴、J-Kem温度プローブ、及び窒素入口/出口を装着した。この容器に、窒素雰囲気下で、7-(ブロモメチル)ジスピロ[2.0.2.1]ヘプタン(35g、187.1mmol)及びジメチルスルホキシド(245mL)を充填し、これにより、透明な琥珀色の溶液を得た。撹拌を開始し、ポット温度は19℃を記録した。次いで、容器にシアン化ナトリウム(11.46g、233.8mmol)を固体として一度に添加して充填し、これにより、濃色の溶液が生じ、15分間にわたって徐々に発熱して49℃になった。数分後、ポット温度が低下し始め、混合物を室温で一晩(約15時間)撹拌し続けた。濃色の反応混合物を氷冷飽和炭酸ナトリウム溶液(500mL)でクエンチし、次いで、分液漏斗に移し、ジエチルエーテル(500mL)で分配した。有機層を除去し、残りの水層をジエチルエーテル(2×250mL)で抽出した。合わせた有機層を水(500mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム(200g)で乾燥させ、次いで、ガラスフリットブフナー漏斗に通して濾過した。透明な琥珀色の濾液を減圧下で濃縮して(水浴温度20℃)、透明な濃琥珀色の油として2-ジスピロ[2.0.2.1]ヘプタン-7-イルアセトニトリル(21g、84%)を得た。H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ2.42(d,J=6.6Hz,2H)、1.69(t,J=6.6Hz,1H)、1.02-0.88(m,4H)、0.79-0.70(m,2H)、0.66-0.55(m,2H)。
【0142】
ステップ3:2-ジスピロ[2.0.2.1]ヘプタン-7-イル酢酸
【化36】

2-ジスピロ[2.0.2.1]ヘプタン-7-イルアセトニトリル(2.1g、14.19mmol)のEtOH(32mL)溶液に、水酸化ナトリウム(5.12g、128.0mmol)、続いて、水(13mL)を添加し、結果として生じた溶液を撹拌し、一晩にわたって70℃に加熱した。次いで、混合物を室温に冷却し、水で希釈し、ジエチルエーテルで抽出した。6N塩酸を添加して水相をpH=1に調整し(濁った沈殿物が生じた)、ジエチルエーテル(3回)で抽出した。有機相を乾燥させ(硫酸マグネシウム)、濾過し、濃縮して、オレンジ色の固体として2-ジスピロ[2.0.2.1]ヘプタン-7-イル酢酸(2.19g、収率99%、純度98%)を得て、これを更に精製することなく次のステップに使用した。H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ2.44(d,J=6.9Hz,2H)、1.67(t,J=6.9Hz,1H)、0.91(ddd,J=9.0,5.2,3.9Hz,2H)、0.81(dddd,J=8.9,5.2,3.9,0.5Hz,2H)、0.69(ddd,J=8.9,5.2,3.9Hz,2H)、0.56-0.44(m,2H)。
【0143】
ステップ4:2-ジスピロ[2.0.2.1]ヘプタン-7-イルエタノール
【化37】

氷/水浴中で冷却したテトラヒドロフラン(33.71mL)中に溶解した水素化アルミニウムリチウム(827.4mg、902.3μL、21.80mmol)に、テトラヒドロフラン(7.470mL)中の2-ジスピロ[2.0.2.1]ヘプタン-7-イル酢酸(2.552g、16.77mmol)を、反応温度を<20℃に保ちながら15分間にわたって滴加した。混合物を合計18時間撹拌させ、周囲温度に徐々に加温した。混合物を氷/水浴で冷却し、水(838.4mg、838.4μL、46.54mmol)、続いて、水酸化ナトリウム(5Mの1.006mL、5.031mmol)、次いで、水(2.493g、2.493mL、138.4mmol)を緩徐に加えて順次にクエンチし、白色の粒状スラリーを得て、これをセライトで濾過した。濾過した固体をジエチルエーテルで洗浄した。濾液を約300mbarの真空中及び30℃の水浴中で濃縮した。残渣をジエチルエーテルで希釈し、乾燥させ(硫酸マグネシウム)、濾過し、約300mbarの真空中及び30℃の水浴中で濃縮し、その後、真空下で約30秒間濃縮して、
2-ジスピロ[2.0.2.1]ヘプタン-7-イルエタノール(2.318g、100%)を得て、これを更に精製することなく次のステップで直接使用した。H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ3.64(s,2H)、1.68(d,J=6.7Hz,2H)、1.39(s,1H)、1.31(s,1H)、0.82(d,J=14.0Hz,4H)、0.65(s,2H)、0.50(d,J=3.6Hz,2H)。
【0144】
ステップ5:3-(2-ジスピロ[2.0.2.1]ヘプタン-7-イルエトキシ)ピラゾール-1-カルボン酸tert-ブチル
【化38】

5-オキソ-1H-ピラゾール-2-カルボン酸tert-ブチル(2.942g、15.97mmol)及び2-ジスピロ[2.0.2.1]ヘプタン-7-イルエタノール(2.318g、16.77mmol)のテトラヒドロフラン(36.78mL)溶液に、トリフェニルホスフィン(4.399g、16.77mmol)を添加した。混合物にアゾジカルボン酸ジイソプロピル(3.391g、3.302mL、16.77mmol)を10分間にわたって緩徐に滴加した(軽度の発熱が認められた)。反応混合物を室温で30分間、次いで、50℃で30分間撹拌した。テトラヒドロフランを真空中で除去した。粗残渣にトルエン(23.54mL)を添加し、混合物を一晩撹拌すると、沈殿物が徐々に結晶化した。セライトでスラリー化し、次いで、沈殿物を濾去し、トルエン(8.705mL)で洗浄し、トルエン(8.705mL)で再度洗浄した。濾液を真空中で濃縮した。粗生成物を、100%ヘキサンから100%酢酸エチルへの緩やかな勾配を使用したシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、3-(2-ジスピロ[2.0.2.1]ヘプタン-7-イルエトキシ)ピラゾール-1-カルボン酸tert-ブチル(3.449g、71%)を得た。ESI-MS m/z計算値304.17868、実測値305.1(M+1);保持時間:0.82分(LC法A)。
【0145】
ステップ6:3-(2-ジスピロ[2.0.2.1]ヘプタン-7-イルエトキシ)-1H-ピラゾール
【化39】

3-(2-ジスピロ[2.0.2.1]ヘプタン-7-イルエトキシ)ピラゾール-1-カルボン酸tert-ブチル(5.304g、17.43mmol)をトリフルオロ酢酸(29.81g、20.14mL、261.4mmol)とともにジクロロメタン(53.04mL)中に溶解し、反応物を室温で120分間撹拌した。反応物を蒸発させ、結果として生じた油を酢酸エチルと飽和重炭酸ナトリウム溶液との間に分配し、層を分離した。水性部分を酢酸エチルで更に2回抽出し、次いで、有機層を合わせ、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、蒸発させて、油として3-(2-ジスピロ[2.0.2.1]ヘプタン-7-イルエトキシ)-1H-ピラゾール(3.56g、100%)を得た。ESI-MS m/z計算値204.12627、実測値205.1(M+1);保持時間:0.59分(LC法A)。
【0146】
ステップ7:2-クロロ-6-[3-(2-ジスピロ[2.0.2.1]ヘプタン-7-イルエトキシ)ピラゾール-1-イル]ピリジン-3-カルボン酸tert-ブチル
【化40】

2,6-ジクロロピリジン-3-カルボン酸tert-ブチル(4.322g、17.42mmol)、3-(2-ジスピロ[2.0.2.1]ヘプタン-7-イルエトキシ)-1H-ピラゾール(3.559g、17.42mmol)、及び炭酸カリウム(2.891g、20.92mmol)を無水ジメチルスルホキシド(71.18mL)中で合わせた。1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(391.1mg、3.487mmol)を添加し、混合物を窒素下室温で16時間撹拌した。反応混合物を水(136.9mL)で希釈し、15分間撹拌した。結果として生じた白色の固体を濾過し、水で洗浄した。固体をジクロロメタン中に溶解し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。混合物を濾過し、蒸発させて、白色の固体として2-クロロ-6-[3-(2-ジスピロ[2.0.2.1]ヘプタン-7-イルエトキシ)ピラゾール-1-イル]ピリジン-3-カルボン酸tert-ブチル(5.69g、79%)を得た。H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ8.35(d,J=2.9Hz,1H)、8.18(d,J=8.4Hz,1H)、7.69(d,J=8.4Hz,1H)、5.94(d,J=2.9Hz,1H)、4.25(s,2H)、1.90(d,J=6.8Hz,2H)、1.62(s,9H)、1.49(t,J=6.6Hz,1H)、0.85(d,J=1.5Hz,4H)、0.65(d,J=1.5Hz,2H)、0.52(d,J=1.1Hz,2H)。ESI-MSm/z計算値415.16626、実測値360.0(M-tBu)+;保持時間:2.09分(LC方法B)。
【0147】
ステップ8:2-クロロ-6-[3-(2-ジスピロ[2.0.2.1]ヘプタン-7-イルエトキシ)ピラゾール-1-イル]ピリジン-3-カルボン酸
【化41】

2-クロロ-6-[3-(2-ジスピロ[2.0.2.1]ヘプタン-7-イルエトキシ)ピラゾール-1-イル]ピリジン-3-カルボン酸tert-ブチル(5.85g、14.07mmol)をトリフルオロ酢酸(16.26mL、211.1mmol)とともにジクロロメタン(58.5mL)中に溶解し、反応物を室温で16時間撹拌した。反応物を蒸発させ、結果として生じた固体にエーテルを添加し、次いで、エーテルを減圧下で除去した。このエーテルからの蒸発を更に2回繰り返して、白色の固体で2-クロロ-6-[3-(2-ジスピロ[2.0.2.1]ヘプタン-7-イルエトキシ)ピラゾール-1-イル]ピリジン-3-カルボン酸(5.06g、100%)を得た。H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ8.41(d,J=8.5Hz,1H)、8.37(d,J=2.9Hz,1H)、7.75(d,J=8.5Hz,1H)、5.97(d,J=2.9Hz,1H)、4.27(s,2H)、1.91(d,J=6.7Hz,2H)、1.50(s,1H)、0.85(d,J=1.5Hz,4H)、0.71-0.62(m,2H)、0.52(d,J=1.1Hz,2H)。ESI-MS m/z calc.359.10367,実測値360.2(M+1);保持時間:2.16分(LC方法B)。
【0148】
パートB:(4S)-2,2-ジメチル-4-[3-[(6-スルファモイル-2-ピリジル)アミノ]プロピル]ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチルの合成
【化42】

ステップ1:(E)-(2-オキソテトラヒドロピラン-3-イリデン)メタノラート(ナトリウム塩)
【化43】

5Lの三口丸底フラスコに、機械的撹拌器、加熱マントル、添加漏斗、J-Kem温度プローブ/コントローラ及び窒素入口/出口を装着した。容器に、窒素雰囲気下で水素化ナトリウム(60%w/wの59.91g、1.498mol)、続いてヘプタン(1.5L)を充填し、灰色の懸濁液を得た。撹拌を開始し、ポット温度は19℃を記録した。次いで、容器にエチルアルコール(3.451g、74.91mmol)をシリンジで加えて充填すると、ガスが発生した。添加漏斗に、テトラヒドロピラン-2-オン(150g、1.498mol)及びギ酸エチル(111g、1.50mol)の透明な淡黄色の溶液を充填した。溶液を1時間にわたって滴加すると、ガスが発生し、徐々に発熱して45℃になった。次いで、結果として生じた濃い白色の懸濁液を65℃に2時間加熱し、次いで、室温まで冷却させた。混合物を室温で一晩(約10時間)撹拌し続けた。反応混合物を、窒素流下で、ガラスフリットブフナー漏斗(中程度の多孔度)を通して真空濾過した。濾過ケーキをヘプタン(2×250mL)で置換洗浄し、数分間吸引した。わずかにヘプタンで湿ったケーキをガラストレイに移し、真空オーブン中、45℃で15時間乾燥させて、所望の生成物、(E)-(2-オキソテトラヒドロピラン-3-イリデン)メタノラート(ナトリウム塩)として白色の固体(205g、1.36mol、収率91%)を得た。
【0149】
ステップ2:3-メチレンテトラヒドロピラン-2-オン
【化44】

5Lの三口丸底フラスコに、機械的撹拌器、加熱マントル、添加漏斗、J-Kem温度プローブ/コントローラ及び窒素入口/出口を装着した。この容器に、窒素雰囲気下で、(E)-(2-オキソテトラヒドロピラン-3-イリデン)メタノラート(ナトリウム塩)(205g、1.366mol)(205g、1.366mol)及びテトラヒドロフラン(1640mL)を充填し、これにより、白色の懸濁液を得た。撹拌を開始し、ポット温度は19℃を記録した。次いで、容器にパラホルムアルデヒド(136.6g、4.549mol)を固体として一度に添加して充填した。得られた懸濁液を63℃に加熱し、その状態を15時間維持した。加熱すると、反応混合物はわずかにゼラチン質になった。白色ゼラチン質の混合物を減圧下で濃縮して、テトラヒドロフランのほとんどを除去した。残っている残留物を、分液漏斗中に酢酸エチル(1000mL)、飽和塩化ナトリウム(500mL)、及び飽和炭酸水素ナトリウム(500mL)で分配した。有機物を除去し、残留水溶液を酢酸エチル(5×300mL)で抽出した。合わせた有機物を、硫酸ナトリウム(500g)上で乾燥させ、次いで、20mmのセライト層を備えたガラスフリットブフナー漏斗を通して真空濾過した。濾過ケーキを酢酸エチル(250mL)で置換洗浄した。透明な濾液を減圧下で濃縮して、所望の粗生成物として透明な淡黄色の油(135g)を得た。この物質を、1時間にわたる100%ヘキサンからヘキサン中60%酢酸エチルへの勾配で溶出するシリカゲルカラムフラッシュクロマトグラフィー(液体ロード)により精製し、450mLの画分を収集した。生成物を、3:1のヘキサン/酢酸エチルで溶出するシリカゲルでのTLC分析によって検出し、UV下で可視化した。生成物画分を合わせ、減圧下で濃縮して、所望の生成物、3-メチレンテトラヒドロピラン-2-オンとして透明な無色の油(132g、1.18mol、収率72%、NMRにより16重量%の残留酢酸エチル含有)を得た。1H NMR(400MHz,ジメチルスルホキシド-d)δ6.18(q,J=1.9Hz,1H)、5.60(q,J=1.9Hz,1H)、4.40-4.26(m,2H)、2.61(ddt,J=7.0,6.3,2.0Hz,2H)、1.90-1.75(m,2H)。
【0150】
ステップ3:3-(2-メチル-2-ニトロ-プロピル)テトラヒドロピラン-2-オン
【化45】

5000mLの三口丸底フラスコに、機械的撹拌器、二次格納容器として使用した冷却浴、J-Kem温度プローブ、添加漏斗及び窒素入口/出口を装着した。容器に、窒素雰囲気下で2-ニトロプロパン(104.9g、1.177mol)を充填した。撹拌を開始し、ポット温度は19℃を記録した。次いで、容器に1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(22.41g、147.2mmol)を一度にそのままで添加して充填し、透明な淡黄色の溶液を得た。発熱は観察されなかった。添加漏斗に3-メチレンテトラヒドロピラン-2-オン(110g、981.0mmol)のアセトニトリル(1100mL)溶液を充填し、これを1時間にわたって滴加すると、透明な淡黄色の溶液が得られ、徐々に発熱して24℃になった。反応混合物を、室温で3.5時間撹拌し続け、次いで減圧下で濃縮した。残りの残留物をジクロロメタン(1000mL)中に溶解し、1モルのクエン酸溶液/飽和塩化ナトリウム溶液の3:2混合物500mLで分配した。結果として生じた有機相は、透明な淡青色の溶液であり、水相は、わずかに濁った非常に淡い青色の溶液であった。有機層を除去し、残りの水層をジクロロメタン(300mL)で抽出した。合わせた有機層を飽和塩化ナトリウム溶液(300mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム(250g)で乾燥させ、次いで、ガラスフリットブフナー漏斗に通して濾過した。濾液を減圧下で約200mLの体積まで濃縮した。透明な淡青色のジクロロメタン溶液をメチルtert-ブチルエーテル(1500mL)で希釈し、濁った溶液を減圧下で約200mLの体積まで濃縮し、懸濁液を得た。混合物を再びメチルtert-ブチルエーテル(1500mL)で希釈し、減圧下で約250mLの体積まで濃縮した。得られた懸濁液を、一晩(約12時間)室温で静置させた。固体をガラスフリットブフナー漏斗内での真空濾過により収集し、濾過ケーキを冷メチルtert-ブチルエーテル(2×150mL)で置換洗浄し、次いで、30分間吸引した。この物質を更に真空オーブン中で、45℃で5時間乾燥させて、所望の生成物、3-(2-メチル-2-ニトロ-プロピル)テトラヒドロピラン-2-オンとして白色の固体(160g、0.795mol、収率81%)を得た。H NMR(400MHz,ジメチルスルホキシド-d)δ4.34(ddd,J=11.1,9.3,4.3Hz,1H)、4.20(dt,J=11.1,5.1Hz,1H)、2.75-2.62(m,1H)、2.56(dd,J=14.9,5.2Hz,1H)、2.01-1.89(m,2H)、1.89-1.67(m,2H)、1.55(d,J=6.0Hz,6H)、1.44(dddd,J=12.8,11.5,8.1,6.6Hz,1H)。
【0151】
ステップ4:3-(3-ヒドロキシプロピル)-5,5-ジメチル-ピロリジン-2-オン
【化46】

1000mLの三口丸底フラスコに、Teflon撹拌棒、加熱マントル、J-Kem温度プローブ/コントローラ、及びゴムセプタムを装着した。容器に、3-(2-メチル-2-ニトロ-プロピル)テトラヒドロピラン-2-オン(25g、124.2mmol)及びエチルアルコール(375mL)を充填し、白色懸濁液を得た。撹拌を開始し、懸濁液を40℃に10分間加熱し、透明な無色の溶液を得た。次いで、容器にガス分散管を装着し、溶液を15分間にわたって窒素で脱気した。次いで、容器にラネーニッケル(8.019gの50%w/w、68.31mmol)を充填し、次いで、容器にセプタムを装着した。容器を排気し、水素雰囲気下に置いた。このプロセスを3サイクル繰り返した。次いで、容器を1気圧の水素下に置き、反応混合物を徐々に60℃まで加熱した。反応物を、60℃で24時間撹拌し続けた。室温に冷却した後、容器にガス分散管を装着し、反応混合物を15分間にわたって窒素で脱気した。混合物を、20mmのセライト層を備えたガラスフリットブフナー漏斗に通して真空濾過した。濾過ケーキをエタノール(2×100mL)で置換洗浄し、エチルアルコールの湿気がわずかになるまで吸引し、次いで水で湿らせ、使用したラネーニッケル触媒を水中に廃棄した。透明な淡い琥珀色の濾液を減圧下で濃縮して、透明な粘性の淡い琥珀色の油を得た。油をメチルtert-ブチルエーテル(1500mL)で希釈し、濁った溶液を、約150mLの体積まで減圧下で濃縮して懸濁液を得た。混合物を再びメチルtert-ブチルエーテル(1500mL)で希釈し、減圧下で約150mLの体積まで濃縮した。得られた懸濁液を、一晩(約12時間)室温で静置させた。固体を、ガラスフリットブフナー漏斗内で真空濾過によって収集し、濾過ケーキを、冷メチルtert-ブチルエーテル(2×50mL)で置換洗浄し、次いで30分間吸引した。この物質を、45℃において3時間、真空オーブン中で更に乾燥させて、生成物、3-(3-ヒドロキシプロピル)-5,5-ジメチル-ピロリジン-2-オンとして白色の固体(19g、0.111mol、89%収率)を得た。H NMR(400MHz,ジメチルスルホキシド-d)δ7.63(s,1H)、3.38(t,J=6.5Hz,2H)、2.37(tdd,J=9.8,8.5,4.4Hz,1H)、2.02(dd,J=12.3,8.6Hz,1H)、1.72(tdd,J=9.6,7.5,4.4Hz,1H)、1.52-1.32(m,3H)、1.28-1.03(m,7H)。
【0152】
ステップ5:3-(5,5-ジメチルピロリジン-3-イル)プロパン-1-オール
【化47】

5Lの三口丸底フラスコに、機械的撹拌器、加熱マントル、添加漏斗、J-Kem温度プローブ/コントローラ及び窒素入口/出口を装着した。容器に、水素化アルミニウムリチウムペレット(19.39g、510.9mmol)を窒素雰囲気下で充填した。次いで容器にテトラヒドロフラン(500mL、20mL/g)を充填した。撹拌を開始し、ポット温度は20℃を記録した。混合物を室温で0.5時間撹拌し、ペレットを溶解させた。得られた灰色がかった懸濁液のポット温度は24℃を記録した。添加漏斗に、3-(3-ヒドロキシプロピル)-5,5-ジメチル-ピロリジン-2-オン(25g、146.0mmol)のテトラヒドロフラン(500mL)溶液を充填し、透明な淡黄色の溶液を90分にわたって滴加した。均質性を達成するために、わずかな加熱が必要であった。添加完了後、得られた灰色がかった懸濁液のポット温度は24℃を記録した。次いで、混合物を65℃のポット温度に加熱し、その状態を72時間維持した。この時点での反応混合物の分析により、いくらかの残留出発物質が依然として残っており、生成物形成に変化がなかったことが示された。その後、反応はこの時点で停止した。加熱マントルを取り外し、容器に冷却浴を取り付けた。懸濁液を粉砕した氷/水冷却浴で0℃に冷却し、次いで水(19.93mL)、続いて15重量%の水酸化ナトリウム溶液(19.93mL)、次いで最後に水(59.79mL)の非常にゆっくりとした滴加によってクエンチした。得られた白色懸濁液のポット温度は5℃を記録した。冷却浴を取り外し、容器に再び加熱マントルを取り付けた。懸濁液を60℃に加温し、その状態を30分間維持した。温懸濁液を、20mmのセライト層を備えたガラスフリットブフナー漏斗を通して真空濾過した。次いで、濾過ケーキを60℃のテトラヒドロフラン(2×250mL)で置換洗浄し、次いで30分間吸引した。透明な濾液を減圧下で濃縮して、所望の生成物、3-(5,5-ジメチルピロリジン-3-イル)プロパン-1-オールとして透明な淡黄色の粘性油(23.5g、0.149mol、収率99%)を得た。H NMR(400MHz,ジメチルスルホキシド-d)δ3.37(dt,J=8.3,6.4Hz,3H)、2.95(dd,J=10.6,7.6Hz,1H)、2.40(dd,J=10.7,7.7Hz,1H)、2.04(dt,J=16.1,8.1Hz,1H)、1.69(dd,J=12.2,8.2Hz,1H)、1.50-1.24(m,5H)、1.11-0.94(m,7H)。
【0153】
ステップ6:4-(3-ヒドロキシプロピル)-2,2-ジメチル-ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
【化48】

1Lの三口丸底フラスコに、機械的撹拌器、冷却浴、添加漏斗、J-Kem温度プローブ、及び窒素入口/出口を装着した。容器に、3-(5,5-ジメチルピロリジン-3-イル)プロパン-1-オール(15g、95.39mmol)及びジクロロメタン(225mL、15mL/g)を窒素雰囲気下で充填し、透明な淡黄色の溶液を得た。撹拌を開始し、ポット温度は19℃を記録した。冷却浴に粉砕した氷/水を充填し、ポット温度を0℃に下げた。添加漏斗にトリエチルアミン(12.55g、124.0mmol)を充填し、続いて5分にわたってそのまま滴加した。発熱は観察されなかった。次いで添加漏斗に、ジクロロメタン(225mL)中に溶解した二炭酸ジ-tert-ブチル(22.89g、104.9mmol)を充填した。次いで透明な淡黄色の溶液を30分にわたって滴加すると、穏やかなガス発生が生じた。発熱は観察されなかった。冷却浴を除去し、結果として生じた透明な薄黄色の溶液を室温に加温させ、室温で3時間撹拌し続けた。反応混合物を分液漏斗に移し、水(75mL)で分配した。有機物を取り出し、飽和塩化ナトリウム溶液(75mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム(150g)上で乾燥させ、次いでガラスフリットブフナー漏斗を通して濾過した。濾液を減圧下で濃縮して、所望の粗生成物として透明な淡黄色の油(30g)を得た。この物質を、ジクロロメタン中の100%ジクロロメタンからジクロロメタン中の10%メチルアルコールの勾配で60分にわたって溶出するシリカゲルカラムフラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタンによる液体投入)により精製して50mLの画分を収集した。所望の生成物画分を合わせ、減圧下で濃縮して、4-(3-ヒドロキシプロピル)-2,2-ジメチル-ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(22g、0.0855mol、収率90%)を透明な淡黄色の粘性油として得た。H NMR(400MHz,DMSO-d)δ4.38(td,J=5.2,1.4Hz,1H)、3.54(dt,J=10.3,6.7Hz,1H)、3.38(td,J=6.6,3.5Hz,2H)、2.76(q,J=10.3Hz,1H)、2.07(td,J=11.6,5.7Hz,1H)、1.87(ddd,J=16.7,12.1,6.0Hz,1H)、1.37(dd,J=14.2,10.4Hz,17H)、1.24(s,3H)。
【0154】
ステップ7:2,2-ジメチル-4-(3-メチルスルホニルオキシプロピル)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
【化49】

4-(3-ヒドロキシプロピル)-2,2-ジメチル-ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(50.5g、196.22mmol)及びトリエチルアミン(39.711g、54.698mL、392.44mmol)をジクロロメタン(500mL)中に溶解し、結果として生じた溶液を氷水浴中で30分間冷却した。塩化メシル(24.725g、16.706mL、215.84mmol)を30分間にわたって滴加し、次いで、氷浴を取り外し、混合物を室温で1時間撹拌した。次いで、反応物を飽和炭酸水素ナトリウム溶液(200mL)でクエンチした。相を分離し、有機相を飽和炭酸水素ナトリウム(200mL)及び水(2×100mL)で抽出した。水相を廃棄し、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮して、2,2-ジメチル-4-(3-メチルスルホニルオキシプロピル)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(64.2g、93%)を淡黄色の油として得た。ESI-MS m/z計算値335.1766、実測値336.4(M+1);保持時間:5.54分(LC法Q)。
【0155】
ステップ8:4-(3-アミノプロピル)-2,2-ジメチル-ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
【化50】

2,2-ジメチル-4-(3-メチルスルホニルオキシプロピル)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(64.2g、191.38mmol)をジオキサン(650mL)中に溶解し、次いで、水酸化アンモニウム(650mL)を添加し、結果として生じた混合物を45℃に18時間加熱した。18時間後、反応物を室温に冷却した。溶液を1M水酸化ナトリウム(200mL)で希釈し、次いでジエチルエーテル(3×650mL)で抽出した。水相を廃棄し、合わせた有機相を水(2×200mL)で抽出した。水相を廃棄し、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮して、4-(3-アミノプロピル)-2,2-ジメチル-ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(48.9g、95%)を淡黄色の油として得た。ESI-MS m/z計算値256.2151、実測値257.3(M+1);保持時間:3.70分(LC法Q)。
【0156】
ステップ9:2,2-ジメチル-4-[3-[(6-スルファモイル-2-ピリジル)アミノ]プロピル]ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
【化51】

ジメチルスルホキシド(75mL)中の4-(3-アミノプロピル)-2,2-ジメチル-ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(8.91g、34.8mmol)及び6-フルオロピリジン-2-スルホンアミド(6.13g、34.8mmol)に、炭酸カリウム(4.91g、35.5mmol)を添加し、混合物を100℃で12時間撹拌し、次いで周囲温度に冷却し、更に4時間(合計16時間)撹拌した。反応混合物を、水(200mL)中の塩酸(1Mの35mL、35.00mmol)にゆっくりと注ぎ(いくらか泡立つ)、酢酸エチル(250mL)で希釈した。有機相を分離し、100mLのブラインで洗浄した。有機相を、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、セライト上で濾過し、真空中で濃縮して、暗黄色の油を得た。粗生成物を、ヘキサン中の0%~100%の酢酸エチルで溶出するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製した。純粋(9.0g)画分及び純粋でない(3g)画分の両方を収集した。ヘキサン中の0%~100%の酢酸エチルで溶出するシリカゲルクロマトグラフィーによって純粋でない画分を精製して、合計で、2,2-ジメチル-4-[3-[(6-スルファモイル-2-ピリジル)アミノ]プロピル]ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(10.0g、69%)を得た。H NMR(400MHz,ジメチルスルホキシド-d)δ7.52(dd,J=8.5,7.2Hz,1H)、7.07(s,2H)、6.95(dd,J=7.2,0.7Hz,2H)、6.61(d,J=8.5Hz,1H)、3.55(q,J=9.1Hz,1H)、3.32-3.24(m,2H)、2.79(q,J=10.0Hz,1H)、2.13(d,J=16.1Hz,1H)、1.96-1.82(m,1H)、1.51(dt,J=18.0,9.3Hz,2H)、1.37(dd,J=12.9,10.6Hz,15H)、1.24(s,3H)。ESI-MS m/z calc.412.21442,実測値413.1(M+1);保持時間:2.34分(LC方法D)。
【0157】
ステップ10:(4S)-2,2-ジメチル-4-[3-[(6-スルファモイル-2-ピリジル)アミノ]プロピル]ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
【化52】

ラセミ2,2-ジメチル-4-[3-[(6-スルファモイル-2-ピリジル)アミノ]プロピル]ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(7g、16.97mmol)を、70mL/分で11.0分にわたって40%メタノール/60%二酸化炭素移動相でChiralPak IG(250×21.2mmカラム、5μm粒径)を使用する(注入量=メタノール中の32mg/mL溶液の500μL)、SFCクロマトグラフィーによるキラル分離に供して、最初に溶出するピークとして(4S)-2,2-ジメチル-4-[3-[(6-スルファモイル-2-ピリジル)アミノ]プロピル]ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(3.4481g、99%)を得た。ESI-MS m/z計算値412.21442、実測値413.2(M+1);保持時間:0.63分(LC法A)。
【0158】
パートC:(14S)-8-[3-(2-{ジスピロ[2.0.2.1]ヘプタン-7-イル}エトキシ)-1H-ピラゾール-1-イル]-12,12-ジメチル-2λ6-チア-3,9,11,18,23-ペンタアザテトラシクロ[17.3.1.111,14.05,10]テトラコサ-1(22),5,7,9,19(23),20-ヘキサエン-2,2,4-トリオン(化合物II)の合成
【化53】

ステップ1:(4S)-4-[3-[[6-[[2-クロロ-6-[3-(2-ジスピロ[2.0.2.1]ヘプタン-7-イルエトキシ)ピラゾール-1-イル]ピリジン-3-カルボニル]スルファモイル]-2-ピリジル]アミノ]プロピル]-2,2-ジメチル-ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
【化54】

2-クロロ-6-[3-(2-ジスピロ[2.0.2.1]ヘプタン-7-イルエトキシ)ピラゾール-1-イル]ピリジン-3-カルボン酸(5.2g、14.45mmol)のテトラヒドロフラン(100mL)溶液にカルボニルジイミダゾール(2.8g、16.51mmol)を添加し、混合物を周囲温度で1時間撹拌した。この混合物に、テトラヒドロフラン(15mL)中(4S)-2,2-ジメチル-4-[3-[(6-スルファモイル-2-ピリジル)アミノ]プロピル]ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(6.0g、14.54mmol)、続いて、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(6.5mL、43.47mmol)を添加し、混合物を周囲温度で16時間撹拌した。反応物を水(150mL)で希釈し、混合物を塩酸水溶液(6M 15mL、90.00mmol)で酸性化した。混合物を酢酸エチル(300mL)で抽出し、有機相を分離した。有機相をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、セライトで濾過し、真空中で濃縮して、白色の沈殿物を得た。沈殿物をアセトニトリルでスラリー化し、中型ガラスフリットを使用した濾過により固体を収集し、アセトニトリルで洗浄した。濾液を真空中で濃縮して、黄色の油を得た。粗製油をアセトニトリル及びいくらかのN-メチル-2-ピロリドンで希釈し、水中50%~100%のアセトニトリルで溶出する、415gの逆相C18カラムでクロマトグラフィー処理し、(4S)-4-[3-[[6-[[2-クロロ-6-[3-(2-ジスピロ[2.0.2.1]ヘプタン-7-イルエトキシ)ピラゾール-1-イル]ピリジン-3-カルボニル]スルファモイル]-2-ピリジル]アミノ]プロピル]-2,2-ジメチル-ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(4.5g、41%)を得た。ESI-MS m/z計算値753.30756、実測値754.4(M+1);保持時間:3.79分(LC法D)。
【0159】
ステップ2:2-クロロ-N-[[6-[3-[(3S)-5,5-ジメチルピロリジン-3-イル]プロピルアミノ]-2-ピリジル]スルホニル]-6-[3-(2-ジスピロ[2.0.2.1]ヘプタン-7-イルエトキシ)ピラゾール-1-イル]ピリジン-3-カルボキサミド(トリフルオロ酢酸塩)
【化55】

(4S)-4-[3-[[6-[[2-クロロ-6-[3-(2-ジスピロ[2.0.2.1]ヘプタン-7-イルエトキシ)ピラゾール-1-イル]ピリジン-3-カルボニル]スルファモイル]-2-ピリジル]アミノ]プロピル]-2,2-ジメチル-ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(5.9g、7.821mmol)のジクロロメタン(30mL)及びトルエン(15mL)溶液に、トリフルオロ酢酸(6.0mL、77.88mmol)を添加し、混合物を周囲温度で18時間撹拌した。溶媒を、浴温度を45℃に設定して真空中で除去し、濃い黄色い油を得た。油をトルエン(125mL)で希釈し、溶媒を、浴温度を45℃に設定して真空中で除去した。油をトルエンで希釈し、溶媒を真空中で除去して、濃い粘性の黄色い油、2-クロロ-N-[[6-[3-[(3S)-5,5-ジメチルピロリジン-3-イル]プロピルアミノ]-2-ピリジル]スルホニル]-6-[3-(2-ジスピロ[2.0.2.1]ヘプタン-7-イルエトキシ)ピラゾール-1-イル]ピリジン-3-カルボキサミド(トリフルオロ酢酸塩)(6.0g、100%)を得て、これを更に精製することなく、次のステップに使用した。ESI-MS m/z計算値653.2551、実測値654.3(M+1);保持時間:2.6分(LC法B)。
【0160】
ステップ3:(14S)-8-[3-(2-{ジスピロ[2.0.2.1]ヘプタン-7-イル}エトキシ)-1H-ピラゾール-1-イル]-12,12-ジメチル-2λ6-チア-3,9,11,18,23-ペンタアザテトラシクロ[17.3.1.111,14.05,10]テトラコサ-1(22),5,7,9,19(23),20-ヘキサエン-2,2,4-トリオン(化合物II)
【化56】

2-クロロ-N-[[6-[3-[(3S)-5,5-ジメチルピロリジン-3-イル]プロピルアミノ]-2-ピリジル]スルホニル]-6-[3-(2-ジスピロ[2.0.2.1]ヘプタン-7-イルエトキシ)ピラゾール-1-イル]ピリジン-3-カルボキサミド(トリフルオロ酢酸塩)(6.0g、7.810mmol)のNMP(140mL)溶液に、炭酸カリウム(5.3g、38.35mmol)を添加した。混合物に窒素を5分間パージした。次いで、混合物を150℃で22時間加熱した。反応混合物を室温に冷却し、水(300mL)に添加し、オフホワイト色の固体沈殿物を得た。混合物を塩酸水溶液(6M 12mL、72.00mmol)で注意深く酸性化し、泡状スラリーを得た。中型ガラスフリットを使用した濾過により固体を収集した。湿潤フィルターケーキを酢酸エチル(500mL)中に溶解し、200mLのブラインで洗浄した。水相はわずかに混濁していたため、少量の6N塩酸で酸性化し、有機相に戻した。水相を分離し、有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮し、淡黄色の油を得た。この粗生成物をアセトニトリルで希釈し、水中50%~100%のアセトニトリルで溶出する415gのC18逆相カラムでクロマトグラフィー処理した。生成物を、クリーム色の泡状物として単離した。泡状物を48時間45℃において真空中で乾燥させ、(14S)-8-[3-(2-{ジスピロ[2.0.2.1]ヘプタン-7-イル}エトキシ)-1H-ピラゾール-1-イル]-12,12-ジメチル-2λ6-チア-3,9,11,18,23-ペンタアザテトラシクロ[17.3.1.111,14.05,10]テトラコサ-1(22),5,7,9,19(23),20-ヘキサエン-2,2,4-トリオン(化合物II)(3.32g、68%)を得た。H NMR(400MHz,ジメチルスルホキシド-d)δ12.48(s,1H)、8.20(d,J=2.8Hz,1H)、7.81(d,J=8.2Hz,1H)、7.57(dd,J=8.5,7.2Hz,1H)、7.05(d,J=7.1Hz,1H)、6.97(d,J=8.5Hz,1H)、6.91(d,J=8.2Hz,1H)、6.71(d,J=8.5Hz,1H)、6.08(d,J=2.7Hz,1H)、4.21(td,J=6.7,1.3Hz,2H)、3.92(d,J=12.0Hz,1H)、3.16(s,1H)、2.95(d,J=13.3Hz,1H)、2.78-2.66(m,1H)、2.07(s,1H)、1.92-1.72(m,4H)、1.60(s,6H)、1.51(s,3H)、1.47(t,J=6.5Hz,1H)、1.31(q,J=12.2Hz,1H)、0.89-0.77(m,4H)、0.69-0.61(m,2H)、0.53-0.45(m,2H)。ESI-MS m/z 計算値617.27844、実測値618.4(M+1)、保持時間:10.29分(LC方法F)。
【0161】
実施例5:化合物II(遊離形態)形態A
反応器には、オーバーヘッド撹拌器、還流冷却器、Nバブルライン及び出口、並びに温度プローブが装備された。(14S)-8-ブロモ-12,12-ジメチル-2λ-チア-3,9,11,18,23-ペンタアザテトラシクロ[17.3.1.11114.010]テトラコサ-1(23),5,7,9,19,21-ヘキサエン-2,2,4-トリオン(86%w/w IPAcの120g[103.2g(14S)-8-ブロモ-12,12-ジメチル-2λ-チア-3,9,11,18,23-ペンタアザテトラシクロ[17.3.1.11114.010]テトラコサ-1(23),5,7,9,19,21-ヘキサエン-2,2,4-トリオン]、0.21mol、1当量)、3-(2-(ジスピロ[2.0.2.1〕ヘプタン-7-イル)エトキシ)-1H-ピラゾール(42.6g、0.21mol、1当量)、325メッシュKCO(63.4g、0.46mol、2.2当量)、CuI(3.3g、17.2mmol、0.083当量)及びBuOAc(740mL)の混合物を反応器に充填した。混合物を、周囲温度で撹拌した。次いでDMF(300mL、2.9体積)及び
N,N’-ジメチルシクロヘキサン-1,2-ジアミン(14.6g又は16.2ml、0.1mol、0.49当量)を反応器に充填し、混合物を3回のN/真空/Nサイクルでパージした。次いで、混合物を、120℃に4時間加熱し、次いで周囲温度まで冷却させた。10%w/vシュウ酸水溶液(860mL、0.96mol、4.6当量)を滴加し、混合物を少なくとも1時間撹拌した。次いで、混合物を濾過して、懸濁固体を除去した。除去した固体を、(2×120mL)で洗浄した。濾液からの層を分離した。有機層を、8%w/vのクエン酸三ナトリウム水溶液(600mL)で洗浄した。相分離を助けるために、必要に応じてブラインを添加した。有機層を1:1 v/vの水/ブライン(400mL)で洗浄した。有機層を、セライトのパッドを通して濾過した。濾過パッドをIPAc(150mL)で洗浄した。濾液を濃縮し、次いで800mLの1-PrOH(7.8体積)を加え、混合物を濃縮した。このステップをもう一度繰り返した。トルエン(800mL)を加え、混合物を濃縮した。このステップをもう一度繰り返し、濃厚なスラリーを得た。粗混合物を、300mL(2.9体積)のトルエンの体積になるまで濃縮した。一晩スラリーを撹拌した後、固体を濾過することによって収集し、固体をトルエン(2×100mL、0.97体積)で洗浄した。乾燥減量が1.0%以下になるまで、固体を窒素ブリードしながら50℃で真空下で乾燥させ、白色/オフホワイトの固体として化合物II(107.0g、83%、94.5%(AUC)HPLC純度)を得た。
【0162】
再結晶化:化合物II形態A[22.2g、94.6%(AUC)化合物II形態Aを、トルエン(440mL、化合物IIに基づいて20体積)に懸濁し、混合物を加熱還流した。2時間以内還流を保持した後、混合物を8時間かけて周囲温度まで冷却した。周囲温度で一晩スラリーを撹拌した後、固体を濾過することによって収集し、固体をトルエン(40mL、1.8体積)で洗浄した。乾燥減量が1.0%以下になるまで、固体を窒素ブリードしながら50℃で真空下で乾燥させ、白色/オフホワイトの固体として化合物II形態A(18.8g、84%、96.8%(AUC)HPLC純度)を得た。
【0163】
2回目の再結晶化:化合物II形態A[17.5g、97.0%(AUC)化合物II形態A]を、トルエン(350mL、化合物IIに基づいて20体積)に懸濁し、混合物を加熱還流した。還流で2時間以上保持した後、混合物を8時間かけて周囲温度まで冷却した。周囲温度で一晩スラリーを撹拌した後、固体を濾過することによって収集し、固体をトルエン(40mL、1.8体積)で洗浄した。乾燥減量が1.0%以下になるまで、固体を窒素ブリードしながら50℃で真空下で乾燥させ、白色/オフホワイトの固体として化合物II形態A(遊離形態)(15.7g、89%、98.4%(AUC)HPLC純度)を得た。
【0164】
化合物II遊離形態Aは、周囲温度での水分活性≦0.95で、最も安定な多形形態である。
【0165】
A.X線粉末回折
XRPDパターンは、Vantec-1検出器を備えたBruker Advanceを使用して、反射モードで室温で取得した。試料は、0.0144531°のステップサイズ及び0.25秒のステップ当たりの時間での連続モードで、3~40°2シータで、シリコン試料ホルダーで分析した。試料は15rpmで回転した。化合物II(遊離形態)形態AのXRPDディフラクトグラムを図1に提供し、XRPDデータを以下の表5に要約する。
【表18】
【0166】
B.単結晶の解明
化合物II(遊離形態)形態Aの構造を有する単結晶を、アセトン/ヘプタンから成長させた。X線回折データは、Mo Kα線(λ=0.71073Å)及びCCD検出器を備えたBruker回折計で、298Kで取得した。構造を、SHELXプログラム(Sheldrick,G.M.,Acta Cryst.,(2008)A64,112-122)を使用して解明し、精密化し、結果を以下の表6に要約する。
【表19】
【0167】
C.固体NMR
1.固体NMR実験(化合物IIの全ての結晶性形態に適用される):
Bruker-Biospin 4mm HFXプローブを備えたBruker-Biospin 400MHzワイドボア分光計を使用した。試料を、4mmのZrOローターに充填し、通常12.5kHzに設定した回転速度で、マジック角回転(MAS)条件下で回転させた。13C交差分極(CP)MAS実験において適切なリサイクル遅延を設定するために、プロトン緩和時間をH MAS T飽和回復緩和実験を使用して測定した。炭素CPMAS実験のCP接触時間を、2ミリ秒に設定した。直線ランプ(50%~100%)を有するCPプロトンパルスを用いた。炭素ハルトマン-ハーンマッチを、外部参照試料(グリシン)で最適化した。炭素スペクトルを、およそ100kHzの電界強度でTPPM15デカップリング配列を使用してプロトンデカップリングで記録した。
【0168】
2.化合物II(遊離形態)形態Aの固体NMR
化合物II(遊離形態)形態Aの固体13C NMRデータを図2に示し、以下の表7に要約する。
【表20】
【0169】
D.示差走査熱量測定分析
DSCは、TA Discovery示差走査熱量計(TA Instruments、New Castle,DE)を使用して実施された。装置はインジウムで較正された。約1~10mgの試料を、密封パンに計量し、1つの孔を有する蓋を使用して圧着した。DSC試料を、10℃/分の加熱速度で、25℃~300℃で走査した。データを収集し、Trios Analysisソフトウェア(TA Instruments社、New Castle,DE)によって分析した。サーモグラムは、約227℃で単一の融解吸熱ピークを示した。
【0170】
実施例6:化合物IIカルシウム塩水和物形態A
化合物IIのカルシウム塩水和物形態Aは、速度論的に最も好ましいカルシウム塩水和物の形態であり、他のカルシウム塩水和物形態よりも高い溶解性、溶解度、及び曝露性をもたらす。
【0171】
化合物IIのカルシウム塩水和物形態Aは、0.2mmolの化合物II(遊離形態)形態A及び0.1mmolのCa(OMe)乾燥粉末を、約45mg/mLのIPAと充填し、約10%の水でスパイクし、70℃に加熱することによって調製される。最初に、全ての固体が溶解した。5分後、白色の固体が沈殿した。得られたスラリーを室温で4日間撹拌した。固体を、真空濾過により化合物IIのカルシウム塩水和物形態Aとして単離し、真空下で40℃で一晩乾燥させた(単離収率約78%)。
【0172】
化合物IIカルシウム塩水和物形態Aを調製する別の方法では、63mLのIPA及び7mLの水を充填した10gの化合物I(遊離形態形態A)を利用した。スラリーを55~65℃に加熱した。混合物に、1.1当量のNaOHを加えた。混合物を、溶液が均質になるまで撹拌した。次いで、溶液を25℃に冷却し、0.1gの化合物IIナトリウム塩水和物形態Aをシード添加(seed)した。スラリーを18時間撹拌した。次いで、溶液を45℃に加熱した。スラリーに0.1gの化合物IIカルシウム塩水和物形態Aをシード添加した。0.55当量のCaCl、9mLのIPA、及び1mLの水の溶液を5時間かけて加えた。得られたスラリーを2時間撹拌した。スラリーを、5時間かけて20℃に冷却した。得られた固体を真空濾過により収集し、得られた湿潤ケーキを50mLの水で洗浄した。洗浄された湿潤ケーキを、1時間風乾した。風乾した湿潤ケーキを、わずかに窒素ブリードしながら、45℃の真空オーブンに20時間移し、結晶性化合物IIカルシウム塩水和物形態A(8.5g、単離収率82%)を得た。
【0173】
A.X線粉末回折:
XRPDパターンは、Vantec-1検出器を備えたBruker Advanceを使用して、反射モードで室温で取得した。試料は、0.0144531°のステップサイズ及び0.25秒のステップ当たりの時間での連続モードで、3~40°2シータで、シリコン試料ホルダーで分析した。試料は15rpmで回転した。化合物IIカルシウム塩水和物形態AのXRPDディフラクトグラムを図3に示し、表8に要約する。
【表21】
【0174】
B.単結晶の解明
化合物IIカルシウム塩水和物形態Aの構造を有する結晶は、1mgの化合物IIカルシウム塩水和物形態Aをジクロロエタン/エタノールの90/10混合物の350μLに溶解することによって成長させ、次いでペンタンで数日間にわたって蒸気を拡散させた。X線回折データは、Cu Kα線(λ=1.5478Å)及びCCD検出器を備えたBruker回折計で、100Kと298Kの両方で取得した。構造を、SHELXプログラム(Sheldrick,G.M.,Acta Cryst.,(2008)A64,112-122)を使用して解明し、精密化し、結果を以下の表9に要約する。
【表22】
【0175】
C.固体NMR
化合物IIカルシウム塩水和物形態Aの固体13C NMRスペクトルを図4に示し、表10に要約する。
【表23】
【0176】
D.示差走査熱量測定分析:
DSCサーモグラムは、TA Instruments DSC Q2000を使用して得た。試料を、10℃/分で、30℃~350℃で加熱した。サーモグラムは、約223℃で吸熱ピークを示した。
【0177】
実施例7:化合物IIカルシウム塩水和物形態D
化合物IIカルシウム塩水和物形態Dは、エタノール及び水の混合物など、特定の条件下で最も安定なカルシウム塩水和物の形態である。
【0178】
約25mgの化合物IIカルシウム塩水和物形態Aに、0.5mLのEtOH:水67:33w/wを加えた。スラリーを、65℃で8日間加熱した。真空濾過によって収集された得られた固体は、化合物IIカルシウム塩水和物形態Dであった。
【0179】
あるいは、化合物IIのカルシウム塩水和物形態Dを、1080mLのIPA及び120mLの水を加えた89gの化合物IIナトリウム水和物形態Aから調製した。スラリーを55~65℃に加熱した。スラリーに、18gの化合物IIカルシウム塩水和物形態Dシードを入れた。このスラリーを、0.55当量のCaCl、81mLのIPAの溶液及び9mLの水を5時間かけて加えた溶液として湿式粉砕した。X線粉末回折により、スラリーが全て化合物Iカルシウム塩水和物形態Dであることが確認されるまで湿式粉砕機を稼働させた。得られた固体を真空濾過により収集し、湿潤ケーキを350mLの水で洗浄した。洗浄された湿潤ケーキを、1時間風乾した。風乾した湿潤ケーキを、わずかに窒素ブリードしながら、45℃の真空オーブンに20時間移し、結晶性化合物IIカルシウム塩水和物形態D(83.15g、単離収率90.6%)を得た。
【0180】
化合物IIカルシウム塩水和物形態Dは、周囲温度から60℃までの水分活性0.1~0.95で、IPA/水中で最も安定な多形形態である。
【0181】
A.X線粉末回折:
X線粉末回折(XRPD)スペクトルを、密封管源及びPIXcel 1D Medipix-2検出器(Malvern PANalytical Inc、Westborough,Massachusetts)を備えたPANalytical Empyreanシステムを使用して、反射モードで室温で記録した。X線発生装置を、銅線(1.54060Å)を使用して、45kVの電圧及び40mAの電流で動作させた。粉末試料を、バックフィルド試料ホルダーに入れ、機器に装填した。試料を、0.0131303°のステップサイズ及びステップ当たり49.725秒で、約3°~約40°2θの範囲にわたってスキャンされた。化合物Iカルシウム塩水和物形態DのXRPDディフラクトグラムを図5に示し、表11に要約する。
【表24-1】

【表24-2】
【0182】
B.単結晶の解明
結晶は、エタノール/水中での、化合物IIカルシウム塩水和物形態Dシード添加プロセスから選択される。X線回折データは、Rigaku MM007HF回転陽極で提供されるCu K線(l=1.5478)及びCMOS検出器を備えたBruker回折計で、100Kで取得した。構造を、SHELXプログラム(Sheldrick,G.M.,Acta Cryst.,(2008)A64,112-122)を使用して解明し、精密化し、結果を表12に要約する。
【表25】
【0183】
C.固体NMR:
化合物Iカルシウム塩水和物形態Cの固体13C NMRスペクトルを図6に示し、表13に要約する。
【表26-1】

【表26-2】
【0184】
D.示差走査熱量測定分析
DSCは、TA Discovery示差走査熱量計(TA Instruments、New Castle,DE)を使用して実施された。装置はインジウムで較正された。約1~10mgの試料を、密封パンに計量し、1つの孔を有する蓋を使用して圧着した。DSC試料を、10℃/分の加熱速度で、25℃~300℃で走査した。データを収集し、Trios Analysisソフトウェア(TA Instruments社、New Castle,DE)によって分析した。サーモグラムは、約182℃及び約208℃で複数の吸熱ピークを示した。
【0185】
実施例8:250mgの化合物Iの有効性データ
臨床試験では、アイバカフトールを用いた安定した治療を受けている、ゲーティング変異を有する対象における、12週間時点でのSwClの絶対的変化に関する比較試験が実施された。化合物Iは、一般的に安全であり、150mg及び250mgで12週間投与しても良好な忍容性があると考えられた。250mgの用量は、12週目で、アイバカフトールベースラインと比較して、SwClの改善を示したのに対し、化合物1の150mgの用量は、アイバカフトールベースラインと比較して、SwClの減少を示した。
【表27】
【0186】
実施例9:例示的な錠剤製剤の調製
表15の顆粒内成分(化合物Iの噴霧乾燥分散体(SDD)、化合物IIのカルシウム塩水和物形態D、化合物IIIのSDD、微結晶セルロース、及びクロスカルメロースナトリウム)を計量し、スクリーンを通してふるいにかけ、ビンブレンダーに入れた。これらの成分をブレンドして組み合わせて顆粒内粉末ブレンドを調製した。顆粒内粉末ブレンドをローラーコンパクタを使用して乾式造粒し、次いで粉砕して顆粒にした。顆粒外微結晶セルロースを計量し、スクリーンを通過させ、ビンブレンダー中で粉砕された顆粒と混合した。ステアリン酸マグネシウムを計量し、ふるいにかけ、次いでビンブレンダーに添加し、混合した。ブレンドされた成分を、電動補助回転式打錠機を使用して圧縮し、必要なコア重量及び硬度を有するテーブルを調製した。次いで、錠剤をコーターに入れ、非機能性コーティングを加えた。
【表28】
【0187】
他の実施形態
前述の説明は、本開示の単に例示的な実施形態を開示し、記載しているに過ぎない。当業者は、このような説明並びに添付の図面及び特許請求の範囲から、様々な変化、変更、及び変形が、以下の特許請求の範囲で定義される本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、それらにおいて行われ得ることを容易に認識するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】