(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-19
(54)【発明の名称】向上した耐久性と柔軟性を有する水分および酸素バリア性積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 9/00 20060101AFI20231212BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B32B9/00 A
B65D65/40 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534968
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(85)【翻訳文提出日】2023-06-08
(86)【国際出願番号】 KR2021018565
(87)【国際公開番号】W WO2022145786
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】10-2020-0184952
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0172899
(32)【優先日】2021-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ア ルム
(72)【発明者】
【氏名】パク,チャン ウォン
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA15
3E086BB02
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3E086BB71
3E086CA01
3E086CA31
4F100AA00B
4F100AA19B
4F100AH06C
4F100AK02A
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4F100GB15
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4F100JD02B
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4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
本発明は、向上した耐久性と柔軟性を有する、水分および酸素バリア性積層体に関する。本発明によれば、透明基材の一面上に順次に形成された無機バリア層および保護層を含み、前記保護層は、シロキサン化合物由来の繰り返し単位を含む有機共重合体を含む、積層体が提供される。本発明による積層体は、折り曲げなどの変形が加わっても優れた層間密着性を維持することができるため、優れた水分および酸素バリア性を示すことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材の一面上に順次に形成された無機バリア層および保護層を含み、
前記保護層は、シロキサン化合物由来の繰り返し単位を含む有機共重合体を含む、
積層体。
【請求項2】
前記有機共重合体は、前記シロキサン化合物由来の繰り返し単位と、ウレタングループ(-NHCOO-)を含む繰り返し単位とを含むブロック共重合体である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記有機共重合体は、前記シロキサン化合物由来の繰り返し単位1~40重量%、および前記ウレタングループを含む繰り返し単位60~99重量%を含む、請求項2に記載の積層体。
【請求項4】
前記有機共重合体は、前記シロキサン化合物と、前記ウレタングループを含む繰り返し単位を有するポリウレタンとの縮合重合反応により得られるものである、請求項2に記載の積層体。
【請求項5】
前記シロキサン化合物は、1500~2500g/molの重量平均分子量を有し、前記ポリウレタンは、10000~30000g/molの重量平均分子量を有する、請求項4に記載の積層体。
【請求項6】
前記シロキサン化合物は、両末端がカルビノール(carbinol)グループで終結しているポリシロキサンである、請求項1に記載の積層体。
【請求項7】
前記シロキサン化合物は、下記化学式1で表されるポリシロキサンである、請求項6に記載の積層体。
[化学式1]
(前記化学式1で、
R
1~R
6は、それぞれ独立して、1価のC
1-10炭化水素ラジカルであり、
R
7およびR
8は、それぞれ独立して、2価のC
1-10炭化水素ラジカルである。)
【請求項8】
前記R
1~R
6は、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、プロピル基、またはフェニル基であり、前記R
7およびR
8は、それぞれ独立して、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、またはフェニレン基である、請求項7に記載の積層体。
【請求項9】
前記ウレタングループを含む繰り返し単位は、下記化学式2で表される、請求項2に記載の積層体。
[化学式2]
(前記化学式2で、
Arは、C
1-3アルキル基で置換されたか、または非置換のC
6-30アリーレン基であり、
L
1およびL
2は、それぞれ独立して、直接結合またはC
1-5アルキレン基であり、
L
3は、C
1-5アルキレン基である。)
【請求項10】
前記保護層は、前記有機共重合体とシラン系カップリング剤との混合物を含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項11】
前記透明基材は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリカーボネート、およびポリ(メチルメタクリレート)からなる群より選択された1種以上の高分子を含むプラスチックフィルムである、請求項1に記載の積層体。
【請求項12】
前記無機バリア層は、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、および窒化アルミニウムからなる群より選択された1種以上の無機物からなる、請求項1に記載の積層体。
【請求項13】
前記透明基材は、5μm~300μmの厚さを有する、請求項1に記載の積層体。
【請求項14】
前記無機バリア層は、1nm~200nmの厚さを有する、請求項1に記載の積層体。
【請求項15】
前記保護層は、1nm~1000nmの厚さを有する、請求項1に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、向上した耐久性と柔軟性を有する、水分および酸素バリア性の積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック基材の表面に、酸化アルミニウムなどの無機薄膜を形成したバリア性積層体は、食品、電子素子など多様な物品の包装用途に適用されている。
【0003】
しかし、このようなバリア性積層体は、折り曲げなどの変形が加わる場合、層間の分離または破れによりバリア性が劣化するという問題がある。
【0004】
そこで、バリア性積層体の耐久性と柔軟性を改善するために多様な研究が試みられている。例えば、前記プラスチック基材と前記無機薄膜との間に、接着性の向上のためのプライマー層を導入したり、前記無機薄膜上に様々な組成の高分子コーティング層を積層する。
【0005】
しかし、バリア性積層体が示す耐久性と柔軟性は、トレードオフの関係にあるのが一般的であるため、これらの特性を同時に充足させるのは難しいという限界がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、向上した耐久性と柔軟性を有する、水分および酸素バリア性積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明の実現形態による水分および酸素バリア性積層体について説明する。
【0008】
本明細書で別に定義されない限り、全ての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する分野の通常の技術者により一般的に理解される意味と同一の意味を有する。本発明で説明に使用される用語は、単に特定の具体例を効果的に記述するためのものであり、本発明を制限するものと意図されない。
【0009】
本明細書で使用される単数の形態は、文句がこれと明確に反対の意味を示さない限り、複数の形態も含む。
【0010】
本明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、定数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特定の特性、領域、定数、段階、動作、要素、成分および/または群の存在や付加を除外させるのではない。
【0011】
本発明は、多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるところ、特定の実施例を例示して、下記で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするのではなく、前記思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むものと理解されなければならない。
【0012】
本明細書で、例えば「~上に」、「~上部に」、「~下部に」、「~側に」などにより二つの部分の位置関係が説明される場合、「直ちに」または「直接」という表現が使用されない以上、二つの部分の間に一つ以上の他の部分が位置することができる。
【0013】
本明細書で、例えば「~後に」、「~に続いて」、「~次に」、「~前に」などにより時間的な前後関係が説明される場合、「直ちに」または「直接」という表現が使用されない以上、連続的でない場合も含むことができる。
【0014】
本明細書で「少なくとも一つ」の用語は、一つ以上の関連項目から提示可能な全ての組み合わせを含むものと理解されなければならない。
【0015】
発明の一実現形態によれば、
透明基材の一面上に順次に形成された無機バリア層および保護層を含み、
前記保護層は、シロキサン化合物由来の繰り返し単位を含む有機共重合体を含む、
積層体が提供される。
【0016】
本発明者らの持続的な研究の結果、シロキサン化合物由来の繰り返し単位を含む有機共重合体を含む前記保護層を、前記無機バリア層上に形成する場合、向上した耐久性と柔軟性を有する、水分および酸素バリア性積層体が提供され得ることが確認された。
【0017】
前記シロキサン化合物由来の繰り返し単位を含む有機共重合体は、前記積層体におけるバリア特性と柔軟性の向上を可能にするだけでなく、前記積層体の層間密着性を向上させて耐久性の向上を可能にする。
【0018】
つまり、前記シロキサン化合物由来の繰り返し単位を含む有機共重合体は、トレードオフの関係にあると知られている前記積層体の耐久性と柔軟性とを、同時に向上させることができる。
【0019】
発明の一実施様態によれば、前記積層体は、透明基材の一面上に順次に形成された無機バリア層および保護層を含む構造を有することができる。
【0020】
発明の他の一実施様態によれば、前記積層体は、前記透明基材の両面上に、それぞれ順次に形成された無機バリア層および保護層を含む構造を有することができる。
【0021】
本発明で前記透明基材は、透明性と柔軟性を有するプラスチックフィルムであり得る。
【0022】
具体的に、前記透明基材は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリカーボネート(PC)、およびポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)からなる群より選択された1種以上の高分子を含むプラスチックフィルムであり得る。これらの中でもポリエチレンテレフタレートフィルムは、透明性と柔軟性を兼備しながらも強度に優れることから、前記透明基材として適宜に適用され得る。
【0023】
発明の一実施様態によれば、前記透明基材は、5μm~300μmの厚さを有することができる。
【0024】
基材としての適切な強度が発現できるようにするために、前記透明基材の厚さは5μm以上であることが好ましい。ただし、基材が過度に厚い場合、柔軟性が低下しうる。したがって、前記透明基材の厚さは300μm以下であることが好ましい。
【0025】
より好ましくは、前記透明基材の厚さは、5μm~250μm、あるいは10μm~250μm、あるいは10μm~200μm、あるいは10μm~150μm、あるいは10μm~100μmであり得る。
【0026】
必要に応じて、前記透明基材は、その表面ぬれ性または前記無機バリア層との密着性などを向上させるための表面処理がなされたものであり得る。非制限的な例として、前記表面処理は、プラズマ処理、コロナ処理、グロー放電処理などであり得る。
【0027】
一方、前記無機バリア層は、無機物からなる薄膜であって、前記透明基材の一面上に積層される。
【0028】
前記無機バリア層は、透明であり、前記積層体が水分および酸素バリア性を示すようにする。
【0029】
このような無機バリア層は、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、および窒化アルミニウムからなる群より選択された1種以上の無機物からなるのでありうる。
【0030】
発明の一実施様態によれば、前記無機バリア層は、1nm~200nmの厚さを有しうる。
【0031】
バリア層としての適切な物性が発現できるようにするために、前記無機バリア層の厚さは1nm以上であることが好ましい。ただし、前記無機バリア層が過度に厚い場合、応力によるカールが発生したり、若干の折り曲げだけでも亀裂が発生しうる。したがって、前記無機バリア層の厚さは200nm以下であることが好ましい。
【0032】
より好ましくは、前記無機バリア層の厚さは、1nm~150nm、あるいは5nm~150nm、あるいは5nm~100nm、あるいは10nm~100nmであり得る。
【0033】
発明の一実施様態によれば、前記無機バリア層は、本発明が属する技術分野における通常の方法により前記透明基材上に形成され得る。
【0034】
例えば、前記無機バリア層の積層方法としては、物理気相蒸着(PVD)または化学気相蒸着(CVD)のうちから適切な方法が選択され得る。
【0035】
好ましくは、前記無機バリア層の積層方法としては、熱蒸着(thermal evaporation)および電子ビーム蒸着(electron-beam evaporation)のような蒸発(蒸着)法(evaporation);またはスパッタリング(sputtering)が選択され得る。
【0036】
一例として、前記蒸発法は、最も基本的な薄膜形成方法であり、金属および非金属のソースを加熱、蒸発させて、温度が低い状態である基材の表面に凝縮させて薄膜を形成する方法である。発明の一実施様態によれば、前記蒸発法のうち、熱蒸着が、前記無機バリア層の積層方法として好適に選択され得る。前記熱蒸着は、初期真空度10-4torr程度の蒸気圧が要求され、蒸発しようとするソースを載せたボート(boat)に電気を流し、このボートにて発生する抵抗熱を利用して前記ソースを加熱する方式の蒸着法である。前記熱蒸着での蒸着速度は、フィラメントに供給される電流量を調節して変化させることができる。また、反応性ガス(酸素ガス)を入れて反応することで酸化膜(AlOx、SiOxなど)を形成することができる。
【0037】
他の一例として、前記スパッタリングは、再現性に優れ、緻密な薄膜を大面積に簡便に形成することができるため、好適に利用され得る。好ましくは、前記無機バリア層の積層方法としては、前記無機物であるターゲット(target)と反応性ガス(例えば酸素)を使用する反応性スパッタリング(reactive sputtering)を利用することができる。前記反応性スパッタリングでは、システム内に、プラズマ発生ガスであるアルゴン(Ar)以外に、前記反応性ガスを追加的に入れる。前記反応性スパッタリングでは、プラズマ放出モニター(plasma emission monitor)、マスフローコントローラー(mass flow controller)などの装置を利用して、システム内の前記反応ガスの量を精密に制御することが好ましい。形成しようとする無機薄膜の化学量論比が合わなければならないためである。前記反応ガスの導入量を調整することによって安定した成膜が可能であり、優れたバリア性を有する前記無機バリア層が形成され得る。
【0038】
一方、前記保護層は、前記無機バリア層に積層される。
【0039】
前記保護層は、折り曲げなどの変形による前記無機バリア層の亀裂や層間の分離を最小化することができる。
【0040】
特に、前記保護層は、シロキサン化合物由来の繰り返し単位を含む有機共重合体を含む。
【0041】
前記シロキサン化合物由来の繰り返し単位を含む有機共重合体は、前記積層体のバリア特性と柔軟性の向上を可能にするだけでなく、前記積層体の層間密着性を向上させて耐久性の向上を可能にする。
【0042】
好ましくは、前記有機共重合体は、前記シロキサン化合物由来の繰り返し単位と、ウレタングループ(-NHCOO-)を含む繰り返し単位とを含むブロック共重合体である。前記有機共重合体は、前記ウレタングループを含む繰り返し単位であるソフトセグメント(soft segment)と、前記シロキサン化合物由来の繰り返し単位であるハードセグメント(hard segment)とを含む。これにより、前記有機共重合体は、前記ハードセグメントに起因した優れたバリア性、耐久性および耐熱性と、前記ソフトセグメントに起因した優れた柔軟性及び層間密着性とを示すことができる。
【0043】
発明の一実施様態によれば、前記有機共重合体は、前記シロキサン化合物由来の繰り返し単位1~40重量%、および、前記ウレタングループを含む繰り返し単位60~99重量%を含むことが好ましい。
【0044】
前記ハードセグメントに起因した優れたバリア性、耐久性および耐熱性の発現のために、前記有機共重合体にて前記シロキサン化合物由来の繰り返し単位は1重量%以上含まれることが好ましい。ただし、前記シロキサン化合物由来の繰り返し単位の含有量が過度に高い場合、前記保護層の柔軟性が低下しうる。したがって、前記有機共重合体で前記シロキサン化合物由来の繰り返し単位は、40重量%以下で含まれることが好ましい。
【0045】
より好ましくは、前記有機共重合体は、
前記シロキサン化合物由来の繰り返し単位1~40重量%および前記ウレタングループを含む繰り返し単位60~99重量%;
あるいは、前記シロキサン化合物由来の繰り返し単位1~30重量%および前記ウレタングループを含む繰り返し単位70~99重量%;
あるいは、前記シロキサン化合物由来の繰り返し単位1~20重量%および前記ウレタングループを含む繰り返し単位80~99重量%;
あるいは、前記シロキサン化合物由来の繰り返し単位1~15重量%および前記ウレタングループを含む繰り返し単位85~99重量%;
あるいは、前記シロキサン化合物由来の繰り返し単位5~15重量%および前記ウレタングループを含む繰り返し単位85~95重量%;
あるいは、前記シロキサン化合物由来の繰り返し単位10~15重量%および前記ウレタングループを含む繰り返し単位85~90重量%を含むことができる。
【0046】
発明の一実施様態によれば、前記シロキサン化合物は、両末端がカルビノール(carbinol)グループ(基)で終結している(carbinol terminated)ポリシロキサンであり得る。つまり、前記有機共重合体に前記シロキサン化合物由来の繰り返し単位が容易に導入され得るようにするために、前記シロキサン化合物は両末端がカルビノールグループで終結しているポリシロキサンであることが好ましい。
【0047】
より好ましくは、前記シロキサン化合物は、下記化学式1で表されるポリシロキサンであり得る。
【0048】
【0049】
前記化学式1で、
R1~R6は、それぞれ独立して、1価のC1-10炭化水素ラジカルであり、
R7およびR8は、それぞれ独立して、2価のC1-10炭化水素ラジカルである。
【0050】
一例として、前記化学式1で、前記R1~R6は、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、プロピル基、またはフェニル基であり得るのであり;前記R7およびR8は、それぞれ独立して、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、またはフェニレン基であり得る。
【0051】
具体的に、前記シロキサン化合物は、両末端がカルビノールグループで終結しているポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリジプロピルシロキサン、またはポリジフェニルシロキサンであり得る。
【0052】
発明の一実施様態によれば、前記有機共重合体に含まれる前記ウレタングループを含む繰り返し単位は、下記化学式2で表され得る。
【0053】
【0054】
前記化学式2で、
Arは、C1-3アルキル基で置換または非置換されたC6-30アリーレン基であり、
L1およびL2は、それぞれ独立して、直接結合またはC1-5アルキレン基であり、
L3は、C1-5アルキレン基である。
【0055】
一例として、前記化学式2で、前記Arは、フェニレン基、またはメチル基で置換されたフェニレン基であり得;前記L1およびL2は、それぞれ直接結合、メチレン基またはエチレン基であり得;前記L3は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、またはブチレン基であり得る。
【0056】
非制限的な例として、前記ウレタングループを含む繰り返し単位は、下記化学式3で表されるものであり得る。
【0057】
【0058】
発明の一実施様態によれば、前記有機共重合体は、前記シロキサン化合物と、前記ウレタングループを含む繰り返し単位を有するポリウレタンとを縮合重合反応して得られる。
【0059】
この時、前記シロキサン化合物は、1500~2500g/mol、あるいは1600~2500g/mol、あるいは1600~2300g/mol、あるいは1700~2300g/mol、あるいは1700~2000g/molの重量平均分子量(Mw)を有するものであり得る。
【0060】
そして、前記ポリウレタンは、10000~30000g/mol、あるいは12000~30000g/mol、あるいは12000~28000g/mol、あるいは15000~28000g/mol、あるいは15000~25000g/molの重量平均分子量(Mw)を有するものであり得る。
【0061】
本発明において、前記重量平均分子量(Mw)は、測定対象化合物を溶媒に完全に溶解した後、以下の条件のゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を利用して測定され得る。
【0062】
-分析機器:PL-GPC 220 system
-カラム:2×PLGEL MIXED-B(7.5×300mm)
-溶媒:トリクロロベンゼン(TCB)+0.04wt%ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)(after drying with 0.1% CaCl2)(CaCl2での乾燥後)
-インジェクタ(Injector)、検出温度:160℃
-流速:1.0ml/min
-注入量:200μl
-標準試料:ポリスチレン
【0063】
発明の他の一実施様態によれば、前記有機共重合体は、前記シロキサン化合物に過剰のジイソシアナート化合物を反応させることで、イソシアネートグループで終結しているポリシロキサンを準備する段階;および、前記イソシアネートグループで終結しているポリシロキサンを、ジオール化合物と反応させて前記有機共重合体を提供する段階を通じて得られることもありうる。
【0064】
前記保護層は、本発明が属する技術分野における通常の方法により、前記無機バリア層上に形成され得る。
【0065】
一例として、前記保護層の積層方法は、湿式コーティング法が選択され得る。具体的に、前記湿式コーティング法としては、バーコート法、スピンコート法、ローラコート法、噴霧コート法、エアーナイフコート法、フローコート法、カーテンコート法、ダイレクトグラビア法、スリットリバース法などが適用され得る。
【0066】
他の一例として、前記保護層は、接着剤または接着フィルムを使用して前記無機バリア層上に積層され得る。
【0067】
発明の一実施様態によれば、前記保護層は、前記有機共重合体とシラン系カップリング剤との混合物を含むことができる。つまり、前記保護層には、前記無機バリア層との接着力を向上させることができるシラン系カップリング剤がさらに含まれ得る。
【0068】
発明の一実施様態によれば、前記保護層は、1nm~1000nmの厚さを有することができる。
【0069】
保護層としての適切な物性が発現できるようにするために、前記保護層の厚さは1nm以上であることが好ましい。ただし、前記保護層が過度に厚い場合、柔軟性が低下し、応力によるカールが発生しうる。したがって、前記保護層の厚さは1000nm以下であることが好ましい。
【0070】
より好ましくは、前記保護層の厚さは、5nm~1000nm、あるいは5nm~800nm、あるいは10nm~800nm、あるいは50nm~700nm、あるいは100nm~700nm、あるいは200nm~600nmであり得る。
【0071】
発明の一実施様態によれば、前記積層体は、食品包装材として使用することができる。発明の他の一実施様態によれば、前記積層体は、液晶表示素子、太陽電池、タッチパネル、有機EL素子、有機TFT、有機半導体センサー、有機発光デバイス、フィルムコンデンサ、無機EL素子、およびカラーフィルターといった各種電子素子に適用されたり、前記電子素子の包装材として使用したりすることができる。
【0072】
本発明による前記積層体は、前述した層構成と成分を含むことによって、折り曲げなどの変形が加わっても優れた層間密着性を維持することができるため、優れた水分および酸素バリア性を示すことができる。
【0073】
フレキシブルバリア材料の核心的な属性のうちの一つは、屈曲耐久性またはゲルボフレックス(Gelboflex)という反復的な変形に対する抵抗である。このような特性はゲルボフレックステスト(Gelboflex test)により評価され得る。
【0074】
前記テストは、ゲルボフレックステスターを利用して、ASTM F392(Standard Practice for Conditioning Flexible Barrier Materials for Flex Durability)にしたがい行われ得る。
【0075】
例えば、前記テストで前記積層体サンプルは、前記ゲルボフレックステスターのマンドレルに取り付けられる。曲げる動作は、水平動作(圧縮)、および、これと結合された捩じり動作から構成され、前記積層体を、繰り返し、捩じって曲げる。曲げる動作の速度は1分当たり45~60サイクルで行われる。予め定められた回数のストローク後、前記積層体サンプルを検査する。前記検査では、前記ゲルボフレックステストの前と後に前記積層体サンプルが示す、水分バリア性、酸素バリア性、および剥離テスト(peel test)の結果値の変化量を確認する。
【発明の効果】
【0076】
本発明による水分および酸素バリア性積層体は、向上した耐久性と柔軟性を有する。前記積層体は、折り曲げなどの変形が加わっても、優れた層間密着性を維持することができるため、優れた水分および酸素バリア性を示すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0077】
以下、発明の理解のために好適な実施例が提示される。しかし、下記の実施例は、本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明をこれらだけに限定するのではない。
【0078】
製造例1(有機共重合体の製造)
両末端がカルビノールグループで終結しているポリジメチルシロキサン(重量平均分子量1810g/mol、製造会社:Shin-Esu Chemical)を準備した。下記化学式3の繰り返し単位を有するポリウレタン(重量平均分子量20000g/mol、製造会社:Mitsui Chemical)を準備した。
【0079】
【0080】
重合反応器にて、前記ポリジメチルシロキサン(固形分100重量%)1.5g(15重量%)、および、前記ポリウレタン(固形分33重量%)25.75g(85重量%)を100~200rpmで攪拌した後、イソプロピルアルコール(IPA)である溶媒115.6gを反応器に入れて、300~400rpmの攪拌および80℃下での2時間の縮合重合反応を行った。
【0081】
前記縮合重合反応を通じて、前記ポリジメチルシロキサン由来の繰り返し単位と、前記化学式3の繰り返し単位とを有するブロック共重合体(固形分7重量%)を得た。
【0082】
製造例2(有機共重合体の製造)
前記重合反応器に、前記ポリジメチルシロキサン1g(10重量%)および前記ポリウレタン27.27g(90重量%)を入れて縮合重合反応を行ったことを除き、前記製造例1と同様の方法でブロック共重合体を得た。
【0083】
実施例1
透明基材として厚さ12μmのPETフィルムを準備した。前記PETフィルムを熱蒸着装備(モデル名:Daon-100-TE、製造会社:DAON)のプレートにテープで固定し、ボート(evaporation boat)上にAlチップ(純度99.999%)を置いた後、ロータリーポンプとディフュージョンポンプを作動させて真空状態(4.4X10-5torr)を作る。蒸発速度2.0Å/s、酸素流量23sccm、作業時間19.8s、印加電流175.2Aの条件下で、前記PETフィルム上に、酸化アルミニウム(AlOx)を厚さ10nmに蒸着して前記無機バリア層を形成した。
【0084】
前記製造例1で得られたブロック共重合体含有溶液を、前記無機バリア層上にバーコート(bar coating)(#6、厚さ550nm基準)し、熱風乾燥(100℃、12s)して、厚さ550nmの保護層を形成した。
【0085】
前記方法により前記透明基材上に順次に形成された、前記無機バリア層および前記保護層を含む積層体を得た。
【0086】
実施例2
前記ブロック共重合体含有溶液に、溶液の全体の重量に対して1重量%のシランカップリング剤(製品名:KBM403、製造会社:Shin-Etsu Chemical)をさらに添加したことを除き、前記実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0087】
実施例3
前記製造例1の代わりに前記製造例2で得られたブロック共重合体を使用したことを除き、前記実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0088】
比較例1
前記無機バリア層上に前記保護層を形成しないことを除き、前記実施例1と同様の方法で積層体を得た。
【0089】
比較例2
前記ブロック共重合体含有溶液の代わりに、両末端がカルビノールグループで終結している前記ポリジメチルシロキサン(重量平均分子量1810g/mol、製造会社:Shin-Etsu Chemical)を、前記無機バリア層上にバーコートして前記保護層を形成したことを除き、前記実施例1と同様の方法で積層体を形成した。
【0090】
比較例3
前記ブロック共重合体含有溶液の代わりに、前記化学式3の繰り返し単位を有するポリウレタン(重量平均分子量20000g/mol、製造会社:Mitsui Chemical)を、前記無機バリア層上にバーコートして前記保護層を形成したことを除き、前記実施例1と同様の方法で積層体を形成した。
【0091】
比較例4
透明基材として厚さ12μmのPETフィルムを準備した。前記PETフィルムを熱蒸着装備(モデル名:Daon-100-TE、製造会社:DAON)のプレートにテープで固定し、ボート上にAlチップ(純度99.999%)を置いた後、ロータリーポンプとディフュージョンポンプを作動させて真空状態(4.4X10-5torr)を作る。蒸発速度2.0Å/s、酸素流量23sccm、作業時間19.8s、印加電流175.2Aの条件下で、前記PETフィルム上に、酸化アルミニウム(AlOx)を厚さ10nmに蒸着して無機バリア層を形成した。
【0092】
次に、前記と同一の熱蒸着装備を利用して、前記無機バリア層上に、酸化ケイ素(SiOx)を厚さ100nmに蒸着して無機保護層を形成した。具体的に、前記無機バリア層が形成されたPETフィルムを、前記熱蒸着装備のプレートにテープで固定し、ボート上にSiOチップ(silicon monoxide、純度99.999%)を置いた後、ロータリーポンプとディフュージョンポンプを作動させて真空状態(4.4X10-5torr)を作る。蒸発速度140.0Å/s、酸素流量10sccm、作業時間19.8s、印加電流140Aの条件下で、前記無機バリア層上に、酸化ケイ素(SiOx)を厚さ100nmに蒸着して前記無機保護層を形成した。
【0093】
前記方法により前記透明基材上に順次に形成された、前記無機バリア層および前記無機保護層を含む積層体を得た。
【0094】
試験例
(1)水分バリア性の評価
水分透過度分析器(モデル名:AQUATRAN 2 WVTR Analyzer、製造会社:Mocon)を利用して、ASTM F1249の標準試験法により、40℃および相対湿度90%の条件下で50cm2の積層体サンプルを装着した後、透過する水分の比率(g/m2*day)を測定した。
【0095】
(2)酸素バリア性の評価
酸素透過度分析器(モデル名:OX-Tran 2/21 OTR Analyzer、製造会社:Mocon)を利用して、ASTM D3985の標準試験法により、23℃および相対湿度0%の条件下で50cm2の積層体サンプルを装着した後、透過する酸素の比率(cc/m2*day)を測定した。
【0096】
(3)剥離テスト(Peel test)
ポリエステル系2液型接着剤である、主剤成分(製品名:TM-585-60K、固形分60重量%)15.3g、硬化剤成分(製品名:CAT-10、固形分75重量%)1.9g、および溶媒(酢酸エチル)25.2gを、ミキシングして接着剤組成物を準備した。積層体の保護層上に、前記接着剤組成物をバーコート(#12、厚さ5μm基準)した後、熱風乾燥(100℃、20s)して、厚さ5μmの接着層を形成した。前記接着層上にCPPフィルムを積層し、45℃で1日間エイジングすることでテストサンプルを準備した。
【0097】
剥離試験器(モデル名:AR-1000、製造会社:ChemInstruments)の測定板上に、両面テープを2枚貼り付けた後、幅2.5cmに切断した前記テストサンプルを貼り付け、ASTM D3330の標準試験法により180°ピールテストを実施することで剥離強度値(gf/cm)を得た。
【0098】
(4)ゲルボフレックステスト(Gelbo flex test)
前記実施例および比較例で得られた積層体に対して、以下の方法でゲルボフレックステストを実施した。
【0099】
ゲルボフレックステスター(モデル名:G0005、製造会社:IDM Instruments)を利用して、ASTM F392の標準試験法によりテストを行った。具体的に、前記積層体における前記無機バリア層および前記保護層が形成されていない、前記透明基材の他の一面上に、接着剤を使用してナイロン繊維およびキャスティング(無延伸)ポリプロピレン(CPP)フィルムを順次に積層することでテストサンプルを準備した。前記テストサンプルをゲルボフレックステスターのマンドレルに取り付けた。テスト設定は、ストロークの最初の90mmで440度の捩じり動作を提供し、65mmの直線水平動作が続くようにした。この際、曲げる動作の速度は1分当たり50サイクルに設定した。
【0100】
50サイクルのストロークの後、前記テストサンプルから前記積層体を回収して、前記(1)水分バリア性の評価、(2)酸素バリア性の評価、および(3)剥離テストを、再び実施した。
【0101】
【0102】
【0103】
前記表1を参照すれば、前記実施例による積層体は、初期の水分および酸素バリア性に優れており、特にゲルボフレックステスト後にも、優れた水分および酸素バリア性と剥離特性を示した。そして、ウレタングループを含む繰り返し単位の含有量が相対的に高い有機共重合体が、前記保護層に適用される場合、水分および酸素バリア性が多少低くなるものの、優れた剥離強度を示すことが分かる。
【0104】
それに比べて、前記表2を参照すれば、前記比較例1の積層体は、初期の水分および酸素バリア性が実施例に比べて劣悪であり、前記比較例1~3の積層体は、ゲルボフレックステストの後に前記特性が顕著に劣化した。前記比較例4の積層体は、初期の水分および酸素バリア性が最も優れていたが、ゲルボフレックステストの後に、前記特性が急激に劣化した。
【国際調査報告】