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▶ クレ バイオテクノロジ (シャンハイ) カンパニー リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-19
(54)【発明の名称】二重特異性抗体およびその適用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/46 20060101AFI20231212BHJP
   C07K 16/24 20060101ALI20231212BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20231212BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231212BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20231212BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231212BHJP
   G01N 33/531 20060101ALI20231212BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
C07K16/46 ZNA
C07K16/24
C07K16/28
A61P35/00
A61P35/02
A61K39/395 N
G01N33/531 A
G01N33/574 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535529
(86)(22)【出願日】2021-05-19
(85)【翻訳文提出日】2023-06-09
(86)【国際出願番号】 CN2021094672
(87)【国際公開番号】W WO2022121239
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】202011427863.9
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】521501093
【氏名又は名称】クレ バイオテクノロジ (シャンハイ) カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チー シャンドン
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB17
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、二重特異性抗体およびその適用を提供し、本発明の二重特異性抗体の第1の抗体の2本の鎖にそれぞれIL15およびIL15Rαを導入し(例えば、IL15およびIL15Rαは、それぞれCL1およびCH1を置き換える)、IL15およびIL15Rαの高親和性を利用してIL15/IL15Rα複合体を形成し、それにより、第1の抗体の軽鎖/重鎖の正しいペアリングを実現し、二重特異性抗体の軽鎖/重鎖の不正確なマッチングの問題を解決する。同時に、第1の抗体の可変ドメインVH1、VL1、IL15およびIL15Rαのアミノ酸配列の突然変異により、VH1とVL1との間、およびIL15とIL15Rαとの間に一対または複数対のジスルフィド結合を添加し、第1の抗体の軽鎖/重鎖間の結合活性をさらに増強し、それにより、二重特異性抗体の調製プロセス中の軽鎖/重鎖の不正確なマッチング、多量の副産物、安定性の低さ等の課題を効果的に克服し、最後に、サイトカインを標的とする、正しくペアリングされた二重特異性多機能抗体を調製する。同時に、二重特異性抗体の開発サイクルを短縮し、生産コストを削減する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重特異性抗体であって、
a)第1の抗原に特異的に結合する第1の抗体の軽鎖および重鎖と、ならびに
b)第2の抗原に特異的に結合する第2の抗体の軽鎖および重鎖とを含み、
ここで、第1の抗体中の2本の鎖は、それぞれIL15およびIL15Rαを含み、IL15/IL15Rα複合体を形成することができ、
前記IL15は、IL15Rαに結合できる突然変異体を含み、前記IL15Rαは、IL15に結合できる突然変異体を含むことを特徴とする、前記二重特異性抗体。
【請求項2】
前記IL15とIL15Rαとの間に一対または複数対のジスルフィド結合があり、
前記IL15は、以下に示される突然変異を含み、カウント方法は、SEQ ID No.1に示されるIL15の最初のアミノ酸から1番目としてカウントされ、
【表1】
または前記IL15およびIL15Rαは、以下に示される突然変異の組み合わせを含み、カウント方法は、SEQ ID No.1に示されるIL15の最初のアミノ酸から1番目としてカウントされ、SEQ ID No.3に示されるIL15Rαの最初のアミノ酸から1番目としてカウントされることを特徴とする
請求項1に記載の二重特異性抗体。
【表2】
【請求項3】
前記第1の抗体の可変ドメインVH1とVL1との間には一対または複数対のジスルフィド結合があり、前記VH1およびVL1は、EUナンバリングに基づいた以下の突然変異の組み合わせの形態を含むことを特徴とする
請求項1に記載の二重特異性抗体。
【表3】
【請求項4】
前記第1および第2の抗体重鎖は、それぞれFcセグメントを含み、前記Fcセグメントは、それぞれ、異なる突然変異を有するA鎖およびB鎖を含み、前記A鎖およびB鎖は、EUナンバリングに基づいた以下の突然変異の組み合わせの形態を有することを特徴とする
請求項1に記載の二重特異性抗体。
【表4】
【請求項5】
前記Fcセグメントは、ヒトIgG1 Fc、ヒトIgG2 Fc、ヒトIgG3 Fc、ヒトIgG4 Fcおよびその突然変異体を含み、前記FcセグメントのA鎖およびB鎖において、1本の鎖は、プロテインAに結合することができ、もう1本の鎖は、プロテインAに結合できない突然変異体であり、前記突然変異は、EUナンバリングに基づいたH435RまたはH435R/Y436Fを含むことを特徴とする
請求項4に記載の二重特異性抗体。
【請求項6】
前記第1の抗原は、CD3、CD20、CD19、CD30、CD33、CD38、CD40、CD52、slamf7、GD2、CD24、CD47、CD133、CD217、CD239、CD274、CD276、PD-1、CEA、Epcam、Trop2、TAG72、MUC1、MUC16、mesothelin、folr1、CLDN18.2、PDL1、EGFR、EGFR VIII、C-MET、HER2、FGFR2、FGFR3、PSMA、PSCA、EphA2、ADAM17、17-A1、NKG2D ligands、MCSP、LGR5、SSEA3、SLC34A2、BCMA、GPNMB、IL-6R、IL-2R、CCR4、VEGFR-2、CD6、CTLA-4、インテグリンα4、DNA/ヒストン複合体(histone complex)、PDGFRα、NeuGcGM3、IL-4Rα、IL-6Rαのいずれか一つであり、前記第2の抗原は、第1の抗原の異なるエピトープまたは上記の別の抗原であることを特徴とする
請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項7】
前記第1の抗体および/または第2の抗体は、キメラ、ヒト化または完全ヒト由来抗体であることを特徴とする
請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項8】
式Iまたは式IIに示される構造を有し、
【化1】
ここで、
鎖1:VL1またはVH1は、L1を介してIL15またはIL15RαのN末端またはC末端に連結され、
鎖2:N末端からCまで、VH1またはVL1、L2、IL15RαまたはIL15、L3、Fcの順位で配置され、
鎖3:第2の抗体重鎖は、N末端からC末端まで、VH2-CH1-Fcの順位で配置され、
鎖4:第2の抗体軽鎖は、N末端からC末端まで、VL2-CLの順位で配置され、
VH1、VL1は、第1の抗体の可変ドメインを表し、
VH2、VL2は、第2の抗体の可変ドメインを表し、
CH1、CLは、第2の抗体の定常ドメインを表し、
「-」は、ペプチド結合を表し、
L1、L2およびL3は、それぞれ独立して、結合またはリンカー配列であり、
【化2】
ここで、
鎖1:IL15またはIL15Rαは、L1を介してVL1またはVH1のN末端またはC末端に連結され、
鎖2:N末端からC末端まで、IL15RαまたはIL15、L2、VH1またはVL1、L3、Fcの順位で配置され、
鎖3:第2の抗体重鎖は、N末端からC末端まで、VH2-CH1-Fcの順位で配置され、
鎖4:第2の抗体軽鎖は、N末端からC末端まで、VL2-CLの順位で配置され、
VH1、VL1は、第1の抗体の可変ドメインを表し、
VH2、VL2は、第2の抗体の可変ドメインを表し、
CH1、CLは、第2の抗体の定常ドメインを表し、
「-」は、ペプチド結合を表し、
L1、L2およびL3は、それぞれ独立して、結合またはリンカー配列であることを特徴とする
請求項1~7のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
【請求項9】
前記鎖1および鎖2は、以下の表の組み合わせの形態を含むことを特徴とする
請求項8に記載の二重特異性抗体。
【表5】
【請求項10】
N末端からC末端までのその配置は、式IIIに示される構造を有し、
【化3】
ここで、
VH1、VL1は、第1の抗体の可変ドメインを表し、
VH2、VL2は、第2の抗体の可変ドメインを表し、
CH1、CLは、第2の抗体の定常ドメインを表し、
「-」は、ペプチド結合を表し、
L1、L2およびL3は、それぞれ独立して、免疫原性の低いアミノ酸リンカー配列であることを特徴とする
請求項8に記載の二重特異性抗体。
【請求項11】
前記IL15配列は、SEQ ID No.1またはSEQ ID No.2に示されたとおりであり、前記IL15Rα配列は、SEQ ID No.3、SEQ ID No.4、SEQ ID No.5、SEQ ID No.6、SEQ ID No.7、SEQ ID No.8またはSEQ ID No.9に示されたとおりであることを特徴とする
請求項8~10のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
【請求項12】
前記Fc配列は、SEQ ID No.18またはSEQ ID No.19に示されたとおりであることを特徴とする
請求項8~10のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
【請求項13】
前記第1の抗原および第2の抗原は、それぞれ、Her2の二つの異なるエピトープに結合する抗原であることを特徴とする
請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項14】
前記二重特異性抗体は、SEQ ID No.10、SEQ ID No.11、SEQ ID No.13、SEQ ID No.12の配列の融合によって得られることを特徴とする
請求項12に記載の二重特異性抗体。
【請求項15】
前記第1の抗原および第2の抗原は、それぞれ、CS1抗原およびCD38抗原であることを特徴とする
請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項16】
ここで、前記二重特異性抗体は、SEQ ID No.14、SEQ ID No.15、SEQ ID No.17、SEQ ID No.16の配列の融合によって得られることを特徴とする
請求項14に記載の二重特異性抗体。
【請求項17】
医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、
(a)請求項1~16のいずれか1項に記載の二重特異性抗体と、および
(b)薬学的に許容される担体とを含むことを特徴とする、前記医薬組成物。
【請求項18】
癌(または腫瘍)、感染症および免疫調節性疾患を治療するための薬物の調製における、請求項1~16のいずれか1項に記載の二重特異性抗体の適用。
【請求項19】
腫瘍増殖を阻害するための薬物の調製における、請求項1~16のいずれか1項に記載の二重特異性抗体の適用。
【請求項20】
前記癌(または腫瘍)は、結腸直腸がん、乳がん、卵巣がん、膵臓がん、胃がん、前立腺がん、腎臓がん、子宮頸がん、甲状腺がん、子宮内膜がん、子宮がん、膀胱がん、神経内分泌がん、頭頸部がん、肝臓がん、鼻咽腔癌、精巣がん、骨髄がん、リンパ腫、白血病、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、黒色腫、基底細胞皮膚がん、扁平上皮皮膚がん、隆起性皮膚線維肉腫、メルケル細胞がん、膠芽腫、神経膠腫、肉腫、中皮腫、および骨髄異形成症候群を含むことを特徴とする
請求項18または19のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
【請求項21】
Her2陽性腫瘍(例えば、乳がん、胃がん)を診断するための試薬またはキットの調製における、請求項14に記載の二重特異性抗体の用途。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、生物医学の分野に属し、二重特異性抗体に関し、本発明は、このような二重特異性抗体の適用にも関する。
【0002】
[背景技術]
二機能性抗体としても呼ばれる二重特異性抗体(BsAb)は、二つの異なる抗原およびエピトープを同時に識別して結合し、二つの異なるシグナル経路を遮断してその効果を発揮することができる。BsAbは、通常の抗体と比較して、特異的な抗原結合部位を追加し、治療面では次のような利点を有する。
【0003】
腫瘍に対する免疫細胞の殺傷の媒介:二重特異性抗体の重要な作用機序は、免疫細胞の殺傷を媒介することであり、二重特異性抗体は、2本の抗原結合アームを有し、そのうちの1本は、標的抗原に結合し、もう1本は、エフェクター細胞上の標識抗原に結合し、後者は、エフェクター細胞を活性化して、腫瘍細胞を標的にして殺傷することができる。現在、販売が承認されている二つの二重特異性抗体製品は、このクラスに属し、Trion Pharma会社によって開発されたcatumaxomabは、腫瘍表面抗原EpCAMおよびT細胞表面受容体CD3を標的にすることができるが、Micromet会社およびAmgen会社によって開発されたBlinatumomabは、CD19およびCD3に同時に結合することができる。両者は、キラーT細胞をすべて活性化して動員することで、腫瘍を治療するという目的を達成する。
【0004】
二重標的シグナル遮断により、独特または重複する機能を発揮し、薬剤耐性を効果的に防止する。二重標的を同時に結合して、二重シグナル経路を遮断することは、二重特異性抗体の別の重要な作用機序である。受容体チロシンキナーゼ(receptor tyrosine kinase、RTKs)は、酵素結合受容体の最大のクラスであり、Herファミリー等の細胞増殖プロセスにおいて重要な調節作用を果たす。RTKsは、腫瘍細胞の表面で異常に高度に発現し、腫瘍細胞の悪性増殖を引き起こすため、腫瘍治療の重要な標的でもある。RTKsに対する単一標的のモノクローナル抗体は、腫瘍治療に広く適用されているが、腫瘍細胞は、シグナル経路を切り替えることによって、またはHERファミリーメンバ自体もしくは異なるメンバ間の相同二量体もしくはヘテロ二量体を通じて細胞内シグナルを活性化することによって、免疫から逃避することができる。従って、二重特異性抗体薬を使用して、二つまたは複数のRTKsまたはそのリガンドを同時に遮断すると、腫瘍細胞の逃避を減少し、治療効果を向上する。
【0005】
より強力な特異性、標的性およびオフターゲット毒性の軽減:二重特異性抗体の二つの抗原結合アームが異なる抗原に結合できるという特性を利用し、二つの抗原結合アームは、それぞれ、癌細胞表面の二つの抗原に結合でき、癌細胞に対する抗体の結合特異および和標的性を効果的に増強し、オフターゲット等の副作用を軽減する。
【0006】
治療費を効果的に削減する:BiTEを例にして、従来の抗体と比較して、組織透過率、腫瘍細胞の殺傷効率、オフターゲット率および臨床適応症等の指標面で強力な競争力があり、臨床上の大きな利点を有する。特に投与量に関しては、その治療効果が通常の抗体の100~1000倍に達することができるため、最低投与量は、元の1/2000にすることができ、薬物治療に係るコストを大幅に削減することができる。併用療法と比較すると、二重特異性抗体のコストも、二つの単一薬剤の組み合わせよりもはるかに低くなる。
【0007】
現在、世界で販売が承認されている二重特異性抗体薬は、三つある。
2009年、欧州連合は、癌性腹水の治療用として、最初の治療用二重特異性抗体であるTrionPharma会社のCatumaxomabを承認した(CD3およびEpCAMを標的する)。2014年、FDAは、急性Bリンパ性白血病の治療のために、BiTE(登録商標)技術に基づいてAmgen会社が開発した二重特異性抗体薬Blinatumomab(CD3およびCD19を標的する)を迅速に承認し、それは、CD19を標的とする最初に承認された薬物でもある。Amgenは、一連の血液悪性腫瘍および固形腫瘍の幅広いポートフォリオにわたって、臨床開発中の十数種類のBiTE(登録商標)分子を保有する。ここで、BCMA/CD3を標的とするAMG420は、FDA認可のファストトラック承認ステータスを取得している。固形腫瘍の治療において、前立腺特異的膜抗原(PSMA)を標的とするBiTE(登録商標)分子AMG212(Pasotuxizumab)の臨床試験結果もその優位性を示す。2017年11月、FDAは、血友病治療のためにロシュの二重特異性抗体Emicizumab(凝固因子Xおよび因子IXaを標的とする)を迅速に承認した。2018年12月に中国での販売が承認され、中国で承認された最初の二重特異性抗体である。
【0008】
二重特異性抗体の自体は、多くの利点があり、癌、慢性炎症性疾患、自己免疫性疾患、および感染症などの複数の治療分野で適用されることができる。しかし、二重特異性抗体を調製する主な技術的困難は、特にFc領域(IgG様)を含む非対称二重特異性抗体の場合、正しくペアリングされた二重特異性抗体を取得し、HC/HCとLC/HCとの不正確なマッチング問題に同時に直面することである。その後、HC/HCの不正確なマッチングを減少させるために、KiH、ART-IgおよびBiMab技術を開発した。CrossMAb技術(そのうちの一対の重鎖および軽鎖の可変ドメインVLおよびVHが互いに置換され、同時に定常ドメインCLおよびCH1も互いに置換される)、YBODY技術(一側は従来のFabを採用して抗原Aを標的とする一価ユニットFab-Fcを校正し、もう一側は、一本鎖抗体を採用して抗原Bを標的とする一本鎖ユニットScFv-Fcを構成する)、WuXiBody(TCR定常領域は、重鎖定常領域CH1および軽鎖定常領域CLを置換する)および共通軽鎖技術を使用して、LC/HCの不正確なマッチングを減少する。しかし、二重特異性抗体の分野については、LC/HCの不正確なマッチング問題を解決するための新しい技術をさらに開発する必要が依然としてある。
【0009】
1.Her2
受容体チロシンキナーゼのErbBファミリーのメンバは、細胞の成長、分化および生存の重要なメディエーターである。当該受容体ファミリーは、上皮増殖因子受容体(EGFRまたはErbB1)、Her2(ErbB2)、Her3(ErbB3)およびHer4(ErbB4またはtyro2)を含む、四つの固有のメンバを含む。Her2は、膜貫通型の表面結合型受容体チロシンキナーゼであり、通常の場合に、細胞の増殖および分化につながるシグナル伝達経路に関与する。
【0010】
Her2の過剰発現は、正常な細胞機能の障害を引き起こす可能性があり、通常、腫瘍の発生および発展に密接に関連する。Her2の相同またはヘテロ重合は、受容体チロシン残基のリン酸化を引き起こし、多くのシグナル伝達経路を引き起こし、細胞増殖および腫瘍形成を引き起こす可能性がある。予後および予測のバイオマーカーとして、Her2遺伝子の増幅または過剰発現は、約15~30%の乳がんおよび10~30%の胃がん/食道がんで発生する。卵巣がん、子宮内膜がん、膀胱がん、肺がん、結腸がんおよび頭頸部がん等の他の腫瘍も出Her2の過剰発現が観察されることができる。
【0011】
トラスツズマブ(Trastuzumab)は、Her2の細胞外ドメインIV膜近位エピトープを識別する。具体的には、Her2の細胞外ドメインIV部分のC末端にある3個の環(557-561、570-573および593-603)で構成されるエピトープである。エピトープは、その二量体化パートナーの結合ドメインに近接しているか、または直接相互作用している可能性があるため、トラスツズマブのエピトープへの結合は、二量体化プロセスを阻害する立体障害が誘発される可能性がある。さらに、トラスツズマブの結合は、Her2受容体の細胞外ドメインをプロテアーゼの攻撃や加水分解から保護することもできる。
【0012】
現在、トラスツズマブを乳がん治療の第1の選択薬として使用されており、Her2の過剰発現を伴う転移性乳がんを効果的に治療し、単剤第1の選択治療の客観的奏効率は、30~50%であり、しかし、Her2発現が低い転移性乳がんの治療には、効果がよくなく、抗体が最初に効果を示した場合でも1年以内に多くの患者で耐性が発見される。Her2は、当該ファミリーの他のメンバ(Her1、Her3およびHer4)とともに、リガンド依存性またはリガンド非依存性のヘテロ二量体を形成することができ、それにより、下流の経路を活性化し、腫瘍細胞の増殖を引き起こすが、トラスツズマブは、ヘテロ二量体形成を阻害できなかったため、これは、薬剤耐性の発生の理由の一つである可能性がある。
【0013】
ペルツズマブ(Pertuzumab)は、HER2受容体が細胞表面上の他のHER受容体(EGFR/HER1、HER3およびHER4)とペアリング(二量体化)するのを防ぐように特別に設計されたヒト化モノクローナル抗体であり、当該プロセスは、腫瘍の増殖および生存に役割を果たすと考えられる。ペルツズマブは、進行前立腺がん、非小細胞肺がん、卵巣がんおよび乳がんに対して一定の治療効果を示すが、その治療効果は、Her2発現レベルに依存する。ペルツズマブは、Her2細胞外ドメインIIヘテロ二量体の重要な部位を識別し、これによって識別されたエピトープは、サブ領域IIの中心のセグメント245~311に位置し、重要な残基は、H245、V286、S288、L295、H296およびK311である。ここで、L295、H296は、Her2およびHer3ヘテロ二量体を媒介する重要な部位であり、L295A/H296Aの二重突然変異は、Her2/Her3のヘテロ二量体化を完全に遮断することができる(Franklin,M.C.ら、Insights into ErbB signaling from the structure of the ErbB2-pertuzumab complex.Cancer Cell,2004.5(4):pp.317-28)。従って、ペルツズマブは、Her2/Her3ヘテロ二量体の形成を効果的に阻害するために使用されることができるが、EGFR/Her2ヘテロ二量体の形成に対して顕著な阻害効果は、示されていない。
【0014】
2.IL15/IL15Ra
IL-15は、NK細胞、NKT細胞およびメモリーCD8+T細胞の機能に非常に重要な14~15kDaのサイトカインである。IL-15は、体内にほとんど存在しないが、その受容体IL-15Rαと結合することで形質導入され、非常に高い生物学的効力を有する複合体IL-15スーパーアゴニスト(IL-15SA)が生成された後に一緒に標的細胞に輸送される。IL-15SAは、IL-15を応答する細胞、特にNK細胞を強力に活性化し、それによって抗腫瘍および抗ウイルス機能を促進する。
【0015】
研究者らは、1994年にIL-15をTリンパ球増殖因子として初めて同定し、それは、IL-2と約19%の相同配列を有し、多くの生物学的特性も非常に類似している。IL-15の三次元構造は、IL-2に似ており、四つの「上-下-下-下」ヘリックスバンドルで構成され、IL-4、IL-7およびIL-9等の他のサイトカインもこのようなコンフォメーションを含む。IL-15は、他のサイトカインとは異なる作用をし、IL-15受容体αは、IL-15を生成する細胞(例えば、マクロファージおよび樹状細胞)で発現し、IL-15とIL-15SAを形成して、IL-15Rβ(IL-2Rβとも呼ばれる)および共通γ鎖(IL-2、IL-4、IL-7、IL-9およびIL-21と共有する)を発現するNK、NKTおよびメモリーCD8+ T細胞にシグナルを伝達し、IL-15に独特の機能を仲介する能力を与えるのは、この独特の提示である可能性が非常に高い。マウスIL-15は、ヒトIL-15と70%のアミノ酸配列相同性を有し、ヒトIL-15およびマウスIL-15も、同様のトランス発現パターン、シグナル伝達経路および生物学的活性を有する。IL-15は、単球、マクロファージ、DC、ケラチノサイト、線維芽細胞、筋細胞および神経細胞を含む多くの細胞タイプおよび組織で発現される。IL-15は、多面発現性サイトカインとして自然免疫および適応免疫において重要な役割を果たす。
【0016】
トランス発現したIL-15/IL-15Rαシグナルは、細胞上に発現したβ鎖およびγ鎖を応答して、JAK1およびJAK3の動員および活性化を誘導し、活性化されたJAK1およびJAK3は、STAT3およびSTAT5をさらにリン酸化する。STAT3およびSTAT5がリン酸化された後に相同二量体を形成し、細胞核に移行して標的遺伝子の転写を促進する。IL-15シグナル伝達は、下流反応のカスケードを刺激し、細胞増殖を誘導し、アポトーシスを減少させ、免疫細胞の活性化および移行を増強する。高親和性IL-15Rαが存在しない場合、IL-15は、中程度の親和性(Ka=1.10/M)のβおよびγ受容体複合体(IL-15Rβγ)と単独に結合し、他のチロシンキナーゼ(例えば、Lck、Fyn、Lyn、Syk)のリン酸化および活性化を誘導し、PI3K、MAPK経路と相互作用することもできる。研究によると、代謝チェックポイントキナーゼmTORは、高濃度のIL-15によって活性化されることもでき、これは、NK細胞の増殖および活性化の増強に関連することを示し、mTORを選択的にノックダウンすると、骨髄NK細胞の成熟がブロックされる。IL-15がNK細胞の増殖を促進する能力は、部分的にはIL-15が媒介した好気性解糖によるものであり、IL-15が存在しない場合、NK細胞の基礎代謝は、非常に低くなるが、IL-15の濃度を向上させることでこの生理活性を大幅に増強させることができる。
【0017】
IL-15は、IL-2と同様の免疫学的特性を有するため、T細胞の増殖および生存を誘導し、NK細胞の増殖および分化を促進し、細胞傷害性Tリンパ球の生成を誘導する。しかし、IL-2とは異なり、IL-15は、Treg細胞に対して明らかな影響を及ぼさず、マウスまたは非ヒト霊長類動物(NHP)で毛細管漏出症候群を引き起こされないため、IL-2と比較して、IL-15は、腫瘍免疫療法のより好ましい選択である。アカゲザルIL-15(rIL-15)は、インビボ実験で使用される最初のIL-15の形態であり、研究者らは、rIL-15が細胞表面IL-15Rαに優先的に結合できると考えている。ヘテロ二量体IL-15/IL-15Rαは、細胞から溶解されたIL-15の天然的な形態であり、細胞刺激相互作用とは独立して応答することができ、現在、ノバルティス会社は、固形腫瘍におけるこのような形態の分子(NIZ985)の臨床試験を実施している。Cytuneによって開発されたRLIは、IL-15RαのSushiドメインに結合したIL-15で構成される融合タンパク質であり、可溶性IL-15アゴニストとして機能する。IL-15/IL-15Rα-Fc複合体は、市販のIL-15Rα-Fcキメラ融合タンパク質を、前臨床研究で広く使用されているrIL-15と混合することによって生成される。
【0018】
しかしながら、サイトカインの臨床使用には、単剤投与では標的化が難しく、高濃度投与でないと抗腫瘍効果が得られず、高濃度投与では免疫阻害効果および高い毒性が生じるという欠点がある。また、非標的サイトカインによる免疫系の活性化は、漸進的であり、免疫系は、広範囲に活性化され、致命的な副作用が伴う。さらに、サイトカインは、小分子量タンパク質であり、抗体の体内循環保護機序がないため、単純サイトカインは、半減期が短いことが多く、短期間に高用量を繰り返し投与する必要がある。現在、ほとんどの臨床研究薬は、サイトカインの半減期を延長させるためにPEG化またはFc融合を使用し、半減期は延長されているが、サイトカインの標的化が不十分であるという問題は、依然として解決できない。
【0019】
[発明の概要]
[発明が解決しようとする課題]
[課題を解決するための手段]
本発明の第1の態様は、a)第1の抗原に特異的に結合する第1の抗体の軽鎖および重鎖と、ならびにb)第2の抗原に特異的に結合する第2の抗体の軽鎖および重鎖とを含む、二重特異性抗体を提供し、ここで、第1の抗体中の2本の鎖をそれぞれIL15およびIL15Rαに導入し(例えば、IL15およびIL15Rαは、それぞれCL1およびCH1を置き換える)、IL15およびIL15Rαの高親和性を利用して、IL15/IL15Rα複合体を形成し、それにより、第1の抗体の軽鎖/重鎖の正しいペアリングを実現し、二重特異性抗体の軽鎖/重鎖の不正確なマッチング問題を解決する。同時に、第1の抗体の可変ドメインVH1、VL1、IL15およびIL15Rαのアミノ酸配列の突然変異により、VH1とVL1との間、およびIL15とIL15Rαとの間に一対または複数対のジスルフィド結合を添加し、第1の抗体の軽鎖/重鎖間の結合活性をさらに増強し、それにより、二重特異性抗体の軽鎖/重鎖の不正確なマッチング問題を効果的に克服する。
【0020】
本発明で構築された二重特異性抗体は、a)第1の抗原に特異的に結合する第1の抗体の軽鎖および重鎖と、ならびにb)第2の抗原に特異的に結合する第2の抗体の軽鎖および重鎖とを含み、ここで、第1の抗体中の2本の鎖は、それぞれIL15およびIL15Rαを含み、IL15/IL15Rα複合体を形成することができる。
【0021】
別の好ましい例において、前記IL15は、IL15Rαに結合できる突然変異体を含み、前記IL15Rαは、IL15に結合できる突然変異体を含む。
別の好ましい例において、前記第1の抗体可変ドメインVH1とVL1とは、連結または重合し、前記IL15とIL15Rαとは、連結または重合する。
【0022】
別の好ましい例において、前記IL15およびIL15Rαは、第1の抗体の定常ドメインCH1およびCLを置換する。
別の好ましい例において、前記第1の抗体の可変ドメインVL1およびVH1は、IL15およびIL15RαのN末端に連結される。
【0023】
別の好ましい例において、前記第1の抗体の可変ドメインVL1およびVH1は、IL15およびIL15RαのC末端に連結される。
別の好ましい例において、前記第1の抗体の可変ドメインVL1およびVH1は、互いに位置を入れ替わる。
【0024】
別の好ましい例において、前記第1の抗体軽鎖(N末端からC末端まで)は、第1の抗体重鎖(N末端からC末端まで)と同向の重合される。
別の好ましい例において、前記第1の抗体軽鎖(C末端からN末端まで)は、第1の抗体重鎖(N末端からC末端まで)と逆重合される。
【0025】
別の好ましい例において、前記第1の抗体の可変ドメインVL1およびVH1は、低免疫原性アミノ酸リンカー配列を介してIL15およびIL15Rαに連結される。
別の好ましい例において、前記IL15とIL15Rαとの間には、一対または複数対のジスルフィド結合が存在する。
【0026】
別の好ましい例において、前記IL15は、以下に示される突然変異を含み、カウント方法は、SEQ ID No.1に示されるIL15の最初のアミノ酸から1番目としてカウントされる。
【0027】
【表1】
【0028】
別の好ましい例において、前記IL15およびIL15Rαは、以下に示される突然変異の組み合わせを含み、カウント方法は、SEQ ID No.1に示されるIL15の最初のアミノ酸から1番目としてカウントされ、SEQ ID No.3に示されるIL15Rαの最初のアミノ酸から1番目としてカウントされる。
【0029】
【表2】
【0030】
別の好ましい例において、前記第1の抗体の可変ドメインVH1とVL1との間には、一対または複数対のジスルフィド結合が存在する。
別の好ましい例において、前記VH1およびVL1は、EUナンバリングに基づいた以下の突然変異の組み合わせの形態を含む。
【0031】
【表3】
【0032】
別の好ましい例において、前記第1および第2の抗体重鎖は、それぞれ、Fcセグメントに異なる突然変異を有するA鎖およびB鎖を含み、前記A鎖およびB鎖は、EUナンバリングに基づいた以下の突然変異の組み合わせの形態を有する。
【0033】
【表4】
【0034】
別の好ましい例において、前記Fcセグメントは、ヒトIgG1 Fc、ヒトIgG2 Fc、ヒトIgG3 Fc、ヒトIgG4 Fcおよびその突然変異体を含む。
【0035】
別の好ましい例において、前記FcセグメントのA鎖およびB鎖において、1本の鎖は、プロテインAに結合することができ、もう1本の鎖は、プロテインAに結合できない突然変異体であり、前記突然変異は、EUナンバリングに基づいたH435RまたはH435R/Y436Fを含む。
【0036】
別の好ましい例において、前記第1の抗原は、CD3、CD20、CD19、CD30、CD33、CD38、CD40、CD52、slamf7、GD2、CD24、CD47、CD133、CD217、CD239、CD274、CD276、PD-1、CEA、Epcam、Trop2、TAG72、MUC1、MUC16、mesothelin、folr1、CLDN18.2、PDL1、EGFR、EGFR VIII、C-MET、HER2、FGFR2、FGFR3、PSMA、PSCA、EphA2、ADAM17、17-A1、NKG2D ligands、MCSP、LGR5、SSEA3、SLC34A2、BCMA、GPNMB、IL-6R、IL-2R、CCR4、VEGFR-2、CD6、CTLA-4、インテグリンα4、DNA/ヒストン複合体(histone complex)、PDGFRα、NeuGcGM3、IL-4Rα、IL-6Rαのいずれか一つであり、前記第2の抗原は、第1の抗原の異なるエピトープまたは上記の別の抗原である。
【0037】
別の好ましい例において、前記第1の/第2の抗体は、キメラ、ヒト化または完全ヒト由来抗体である。
別の好ましい例において、前記二重特異性抗体は、式Iに示される構造を有し、
【0038】
【化1】
【0039】
ここで、
鎖1:VL1またはVH1は、L1を介してIL15またはIL15RαのN末端またはC末端に連結され、
鎖2:N末端からCまで、VH1またはVL1、L2、IL15RαまたはIL15、L3、Fcの順位で配置され、
鎖3:第2の抗体重鎖は、N末端からC末端まで、VH2-CH1-Fcの順位で配置され、
鎖4:第2の抗体軽鎖は、N末端からC末端まで、VL2-CLの順位で配置され、
「-」は、ペプチド結合を表し、
L1、L2およびL3は、それぞれ独立して、結合またはリンカー配列であり、
別の好ましい例において、前記二重特異性抗体は、式IIに示される構造を有し、
【0040】
【化2】
【0041】
ここで、
鎖1:IL15またはIL15Rαは、L1を介してVL1またはVH1のN末端またはC末端に連結され、
鎖2:N末端からC末端まで、IL15RαまたはIL15、L2、VH1またはVL1、L3、Fcの順位で配置され、
鎖3:第2の抗体重鎖は、N末端からC末端まで、VH2-CH1-Fcの順位で配置され、
鎖4:第2の抗体軽鎖は、N末端からC末端まで、VL2-CLの順位で配置され、
「-」は、ペプチド結合を表し、
L1、L2およびL3は、それぞれ独立して、結合またはリンカー配列である。
【0042】
別の好ましい例において、上記の鎖1および鎖2は、以下の表の組み合わせの形態を含む。
【0043】
【表5】
【0044】
別の好ましい例において、前記二重特異性抗体は、式IIIに示される構造を有し、
【0045】
【化3】
【0046】
ここで、
鎖1:N末端からC末端まで配置され、VL1-L1-IL15、L1は、免疫原性の低いアミノ酸リンカー配列であり、
鎖2:N末端からC末端まで配置され、VH1-L2-IL15Rα-L3-Fc、L2、L3は、免疫原性の低いアミノ酸リンカー配列であり、
鎖3:N末端からC末端まで、VH2-CH1-Fcの順位で配置され、
鎖4:N末端からC末端まで、VL2-CLの順位で配置され、
「-」は、ペプチド結合を表す。
【0047】
別の好ましい例において、前記L1、L2およびL3は、グリシン(G)およびセリン(S)残基を含む。
別の好ましい例において、前記L1、L2およびL3は、一つまたは複数のGGGGSリピートを含む。
【0048】
別の好ましい例において、前記IL15配列は、SEQ ID No.1またはSEQ ID No.2に示されたとおりであり、前記IL15Rα配列は、SEQ ID No.3、SEQ ID No.4、SEQ ID No.5、SEQ ID No.6、SEQ ID No.7、SEQ ID No.8またはSEQ ID No.9に示されたとおりである。
【0049】
別の好ましい例において、前記Fc配列は、SEQ ID No.18またはSEQ ID No.19に示されたとおりである。
別の好ましい例において、前記第1の抗原および第2の抗原は、それぞれ、Her2の二つの異なるエピトープに結合する抗原である。
【0050】
別の好ましい例において、前記二重特異性抗体は、SEQ ID No.10、SEQ ID No.11、SEQ ID No.13、SEQ ID No.12の配列の融合によって得られる。
【0051】
別の好ましい例において、前記第1の抗原および第2の抗原は、それぞれ、CS1抗原およびCD38抗原である。
別の好ましい例において、前記二重特異性抗体は、SEQ ID No.14、SEQ ID No.15、SEQ ID No.17、SEQ ID No.16の配列の融合によって得られる。
【0052】
本発明の第2の態様は、
(a)本発明の第1の態様に記載の二重特異性抗体と、および
(b)薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物を提供する。。
【0053】
別の好ましい例において、前記医薬組成物は、化学療法薬等の癌(または腫瘍)を治療するための他の薬物をさらに含む。
本発明の第3の態様は、癌(または腫瘍)、感染症または免疫調節疾患を治療するための薬物の調製における、本発明の第1の態様に記載の二重特異性抗体および本発明の第2の態様に記載の医薬組成物の適用を提供する。
【0054】
本発明の第4の態様は、腫瘍増殖を阻害するための薬物の調製における本発明の第1の態様に記載の二重特異性抗体の適用を提供する。
別の好ましい例において、前記癌または腫瘍は、結腸直腸がん、乳がん、卵巣がん、膵臓がん、胃がん、前立腺がん、腎臓がん、子宮頸がん、甲状腺がん、子宮内膜がん、子宮がん、膀胱がん、神経内分泌がん、頭頸部がん、肝臓がん、鼻咽腔癌、精巣がん等の部位からの癌または腫瘍を含む。
【0055】
別の好ましい例において、前記癌(または腫瘍)は、骨髄がん、リンパ腫、白血病、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、黒色腫、基底細胞皮膚がん、扁平上皮皮膚がん、隆起性皮膚線維肉腫、メルケル細胞がん、膠芽腫、神経膠腫、肉腫、中皮腫、および骨髄異形成症候群を含む。
【0056】
本発明の第5の態様は、調製HER2陽性腫瘍(例えば、乳がん、胃がん)を診断するための試薬またはキットの調製における、本発明の第1の態様に記載のHerダブルエピトープに結合する二重特異性抗体の用途を提供する。
【0057】
[発明の効果]
実験を通じて、本発明の発明者は、驚くべきことに、二重特異性抗体が、第1の抗体の2本の鎖にそれぞれIL15およびIL15Rα(例えば、IL15およびIL15Rαは、それぞれCL1およびCH1を置き換える)を導入し、IL15およびIL15Rαの高親和性を利用して、IL15/IL15Rα複合体を形成し、それにより、第1の抗体の軽鎖/重鎖の正しいペアリングを実現し、二重特異性抗体の軽鎖/重鎖の不正確なマッチング問題を解決することを発見した。同時に、第1の抗体の可変ドメインVH1、VL1、IL15およびIL15Rαのアミノ酸配列の突然変異により、VH1とVL1との間、およびIL15とIL15Rαとの間に一対または複数対のジスルフィド結合を添加し、第1の抗体の軽鎖/重鎖間の結合活性をさらに増強し、それにより、二重特異性抗体の調製プロセス中の軽鎖/重鎖の不正確なマッチング、多量の副産物、安定性の低さ等の課題を効果的に克服し、最後に、サイトカインを標的とする、正しくペアリングされた二重特異性多機能抗体を調製する。同時に、二重特異性抗体の開発サイクルを短縮し、生産コストを削減する。
【0058】
別の態様において、本発明で構築された二重特異性抗体は、軽鎖/重鎖の不正確なマッチング問題を克服する同時に、IL-15/IL-15Rα活性を有し、サイトカインを腫瘍部位に標的化することができ、腫瘍部位でPMBC中のT細胞およびNK細胞を特異的に増幅および活性化して、免疫細胞の数およびキラーサイトカインの放出を増加させ、腫瘍細胞をより効果的に殺すことができ、投与量を軽減することができる。
【0059】
第3の態様において、本発明は、正しくペアリングされたトラスツズマブ/ペルツズマブ/IL15二重特異性抗体の構築に成功し、Her2二重特異性抗体の標的化を利用して、IL15を腫瘍組織に標的化し、免疫応答を刺激し、複数の機序を通じてHer2陽性腫瘍を殺傷する。
【0060】
第4の態様において、本発明は、CS1モノクローナル抗体と同等のCS1抗原結合結合能を有する、CS1/CD38抗原に結合する正しくペアリングされたエロツズマブ/ダラツムマブ/IL15二重特異性抗体の構築に成功し、同時に、CD38モノクローナル抗体と同等のCD38抗原結合結合能を有し、血液腫瘍の治療において大きな可能性を秘めている。
【0061】
本発明をより容易に理解するために、特定の技術的および化学的用語を以下に具体的に定義する。この文書の他の場所で明確に定義されていない限り、本明細書で使用される他のすべての技術的および化学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。
【0062】
用語
本発明で使用されるアミノ酸の3文字表記および1文字表記は、J.Boil.Chem.,243,p3558(1968)に記載されたとおりである。
【0063】
本発明に記載の「抗体」は、完全な抗体だけでなく、抗原結合活性を有する断片、ポリペプチド配列、およびその誘導体および類似体も含む。
前記抗原結合断片は、完全長抗体の一つまたは複数の部分を指し、前記部分は、抗原(例えば、HER2)に結合する能力を保持し、抗原への特異的結合に関して完全な抗体と競合する。通常は、Fundamental Immunology,Ch.7(Paul,W.,ed.,第2版,Raven Press,N.Y.(1989)を参照し、これは、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。組換えDNA技術によって、または完全な抗体の酵素的または化学的切断によって抗原結合部分を生成することができる。いくつかの場合によっては、抗原結合部分は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、Fv、dAbおよび相補性決定領域(CDR)断片、一本鎖抗体(例えば、scFv)、ポリペプチドに特異的抗原結合能力を付与するのに十分な抗体の少なくとも一部を含むキメラ抗体を含む。当業者に知られている従来の技術(例えば、組換えDNA技術または酵素的または化学的切断法)を使用して、所定の抗体(例えば、モノクローナル抗体2E12)から抗体の抗原結合部分(例えば、上記の抗体断片)を得ることができ、完全な抗体の場合と同じ方法で特異性について抗体の抗原結合部分をスクリーニングする。「Fd断片」という用語は、VHおよびCH1ドメインで構成される抗体断片を指し、「Fv断片」という用語は、抗体の単一アームのVLおよびVHドメインで構成される抗体断片を指し、「dAb断片」という用語は、VHドメインで構成される抗体断片(Wardら、Nature 341:544-546(1989))を指し、「Fab断片」という用語は、VL、VH、CLおよびCH1ドメインで構成される抗体断片を指し、「F(ab’)2断片」という用語は、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された二つのFab断片を含む抗体断片を指す。
【0064】
本明細書で使用されるように、「断片」、「誘導体」および「類似体」という用語は、本発明の抗体と基本的に同じ生物学機能または活性を保持するポリペプチドを指す。本発明のポリペプチド断片、誘導体または類似体は、(i)一つのまたは複数の保存的または非保存性的アミノ酸残基(好ましくは、保存的アミノ酸残基)が置換されたポリペプチド(このように置換されたアミノ酸残基は、遺伝暗号によってコードされる場合とされない場合であり得る)、または(ii)一つのまたは複数のアミノ酸残基に置換基を有するポリペプチド、または(iii)成熟ポリペプチドと別の化合物(例えば、ポリエチレングリコール等のポリペプチドの半減期を延長する化合物)との融合によって形成されるポリペプチドまたは(iv)追加のアミノ酸配列がポリペプチド配列に融合されることによって形成されたポリペプチド(例えば、リーダー配列または分泌配列またはこのポリペプチドを精製するための配列またはタンパク質配列または6Hisタグで形成された融合タンパク質)であり得る。本明細書の教示に従って、これらの断片、誘導体および類似体は、当業者の周知の範囲内である。
【0065】
本発明に記載の「エピトープ」または「抗原エピトープ」とは、免疫グロブリンまたは抗体が特異的に結合する抗原上の部位を指す。「エピトープ」は、当該技術分野において「抗原決定基」とも呼ばれる。エピトープまたは抗原決定基は、通常、アミノ酸または炭水化物または糖側鎖等の分子の化学的に活性な表面基で構成され、且つ通常は、特定の三次元構造特徴および特定の電荷特徴を有する。例えば、エピトープは、通常、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15個の連続または非連続アミノ酸を独特の交換構造で含み、それは、「線形」または「コンフォメーション」であり得る。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology,第66巻,G.E.Morris,Ed.(1996)を参照する。線形エピトープにおいて、タンパク質はと相互作用分子(例えば、抗体)との間のすべての相互作用点は、タンパク質の一次アミノ酸配列に沿って直線的に存在する。コンフォメーションエピトープにおいて、相互作用点は、互いに分離されたタンパク質のアミノ酸残基を横切って存在する。
【0066】
本発明に記載の「IL-15」は、ヒトIL-15または非ヒト哺乳動物または非哺乳動物のIL-15等の任意のIL-15、またはIL15Rαに結合できる突然変異体であり得る。ブタ、ウサギ、サル、オランウータン、マウス等の非ヒト哺乳動物、ニワトリ等の非哺乳動物、好ましくは、ヒトIL-15が例示される。「IL15Rαに結合できる突然変異体」という用語は、一つまたは複数のアミノ酸の置換、増加または欠失突然変異によって得られる、IL-15とその受容体との間の親和性を向上または減少させるか、またはT細胞またはNK細胞を刺激する活性を増加または減少させる突然変異体分子を指す。本発明に記載の「IL-15」は、好ましくはその変異体形態であり、より好ましくは、アミノ酸配列は、SEQ ID No.1またはSEQ ID No.2である。
【0067】
本発明に記載の「IL-15Rα」は、ヒトIL-15Rαまたは非ヒト哺乳動物IL-15Rαまたは非哺乳動物IL-15Rα等の、任意の種のIL-15Rα、またはIL15Rαに結合できる突然変異体であり得る。ブタ、ウサギ、サル、オランウータン、マウス等の非ヒト哺乳動物、ニワトリ等非哺乳動物が例示される。好ましくはヒトIL-15Rα、より好ましくはECDと呼ばれるヒトIL-15Rα細胞外ドメイン断片IL-15Rαが例示される(データベースUniProtKB、登録番号Q13261、31-205aa)。「IL15Rαに結合できる突然変異体」という用語は、IL-15Rα上の一つまたは複数のアミノ酸の欠失、挿入または置換突然変異によって形成されるIL-15等のそのリガンド分子に結合する能力を有する機能的突然変異体を指し、好ましくは、ヒトIL-15Rα分子、より好ましくはヒトIL-15Rα細胞外ドメイン断片の短縮型、すなわち、細胞外ドメイン断片C末端から始まる一つまたは複数のアミノ酸欠失突然変異によって得られる、好ましくは65~178個のアミノ酸欠失突然変異型を保持する、IL-15Rα(SEQ ID NO:3-9)等のヒトIL-15受容体α活性を有する分子である。
【0068】
本発明に記載の「Fcセグメント」とは、抗原結合活性を有さない免疫グロブリンのC末端領域を指し、抗体分子がエフェクター分子および細胞と相互作用する部位であり、二つのジスルフィドした抗体重鎖Fc領域ポリペプチドを含む二量体分子である。Fc領域は、パパイン消化またはIdeS消化によってトリプシン処理された完全な(全長)抗体に生成するか、または組換えによって生成することができる。「Fc部分」は、好ましくは、少なくとも一つの免疫グロブリンヒンジ領域、並びにIgGのCH2領域およびCH3領域を含む。
【0069】
Fcヘテロ二量体突然変異とは、Fcの適切な部位における一つまたは複数のアミノ酸の置換、挿入または欠失突然変異によって引き起こされるFc構造または機能の変化を指す。突然変異によって設計されたFc変異体間では、空間充填効果、静電ステアリング、水素結合作用、疎水性作用等が形成される。Fc突然変異体間の相互作用は、安定なヘテロ二量体の形成に寄与する。好ましい突然変異は、「Knob-in-hole」形態の突然変異設計として設計される。さらに、本発明に記載のFcには、グリコシル化修飾突然変異、FcγR結合領域突然変異(ADCC活性を調整するため)、抗体の安定性を向上させるアミノ酸突然変異等昨日の変化をもたらすほかの突然変異も存在することができる。本発明におけるFcは、ヒトIgG1 Fc、ヒトIgG2 Fc、ヒトIgG3 Fc、ヒトIgG4 Fcおよびその突然変異を含み、ここで、1本の鎖は、proteinAに結合でき、もう1本の鎖は、proteinAに結合できない突然変異体であり、EUナンバリングに基づいた突然変異H435RまたはH435R/Y436Fを含む。
【0070】
本発明に記載の「ヘテロ二量体」は、遺伝子の共発現生成物であることが好ましい。原核細胞内の大腸菌で共発現されるか、または293、CHO等の真核細胞で共発現される。前記「共発現」とは、細胞内で複数の遺伝子同時に発言し、それらの生成物が同時に出現することを指す。これらの遺伝子は、同時に存在し、別々にまたは一緒に発言を阻害できる。本発明において、一つの真核細胞での共発現が好ましい。共発現によって得られた遺伝子発現生成物は、複合体の郷率的かつ簡単な形成に有利し、本発明において、ヘテロ二量体の形成に遊有利する。
【0071】
Fc変異体の突然変異設計技術は、二重特異性抗体またはヘテロ二量体Fc融合タンパク質形態を調製するためにこの分野で広く使用されている。代表的なものは、Caterら、(ProteinEngineeringvol.9no.7pp617-621,1996)によって提案された「Knob-in-Hole」形態;Amgen会社の技術者の静電ステアリングを使用したFc含有ヘテロ二量体形態の形成(US2010286374A1);Jonathan H.Davisら、(ProteinEngineering,Design&Selectionpp.1-8,2010)によって提案されたIgG/IgA鎖交換によって形成されるヘテロ二量体形態(SEED bodies);Genmab会社のDuoBody(Science,2007.317(5844))プラットフォーム技術によって形成された二重特異性分子;Xencor会社の技術者の構造計算およびFcアミノ酸突然変異を統合し、異なる作用機序を統合したヘテロ二量体タンパク質形態の形成(mAbs3:6,546-557;November/December2011);蘇州ALPHAMAB ONCOLOGY会社の電荷ネットワークベースのFc修飾方法(CN201110459100.7)によるヘテロ二量体タンパク質の形態の取得;ならびにヘテロ二量体機能性タンパク質を形成するための、Fcアミノ酸の変化または機能修飾手段に基づくほかの遺伝子工学的方法がある。本発明に記載のFc変異体断片上のKnob-in-Hole構造とは、2本のFc断片がそれぞれ突然変異し、突然変異後に「Knob-in-Hole」形態で結合できることを指す。得られた第1のFc変異体および第2のFc変異体を「Knob-in-Hole」の携帯で組み合わせてヘテロ二量体形成できるように、Caterらの「Knob-in-Hole」モデルを使用してFc領域に部位突然変異修飾を行うことが好ましい。特定の免疫グロブリンクラスおよびサブクラスからの特定の免疫グロブリンFc領域の選択は、当業者の知識の範囲内である。ヒト抗体IgG1、IgG2、IgG3、IgG4のFc領域が好ましくは、ヒト抗体IgG1およびIgG4のFc領域がより好ましい。第1のFc変異体または第2のFc変異体の一つは、knob突然変異について、もう一つは、hole突然変異についてランダムに選択される。実施例において、前記第1のFc変異体は、knob突然変異であり、前記第2のFc変異体は、hole突然変異である。
【0072】
「リンカー配列」という用語は、交換された二重可変領域免疫グロブリンに折り畳まれる軽鎖および重鎖のドメインに十分な移動性を提供するために、免疫グロブリンドメインに挿入された一つまたは複数のアミノ酸残基を指す。本発明では、タンパク質の正確なフォールディングおよびペプチドの安定性を確保するために、IL-15またはIL-15Rαを対応する軽鎖または重鎖への連結に使用される。本発明の「連結ペプチド」は、好ましくは、低免疫原性アミノ酸障害、好ましくは(GGGGS)nであり、ここで、nは、0、1、2、3、4、5またはそれ以上であり、好ましくは、nは、1~5である。
【0073】
本発明の抗体は、単独で使用してもよく、または検出可能なマーカー(診断目的)、治療剤、PK(タンパク質キナーゼ)修飾部分または上記のこれらの任意の組み合わせに結合またはカップリングさせてもよい。
【0074】
診断目的の検出可能なマーカーとしては、蛍光マーカーまたは発光マーカー、放射性マーカー、MRI(磁気共鳴画像法)またはCT(コンピューター断層撮影法)造影剤、または検出可能な生成物を生成できる酵素を含むが、これらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0075】
図1】二重特異性抗体の構造形態1である。
図2】二重特異性抗体の構造形態2である。
図3】二重特異性抗体の構造形態3である。
図4】二重特異性抗体の構造形態4である。
図5】二重特異性抗体の構造形態5である。
図6】二重特異性抗体の構造形態6である。
図7】二重特異性抗体の構造形態7である。
図8】二重特異性抗体の構造形態8である。
図9】SDS-PAGE電気泳動によって分析されたQP34563457タンパク質の還元バンドおよび非還元バンドである。
図10】QP34563457タンパク質純度のHPLC-SEC分析である。
図11a】QP34563457タンパク質のペプチドマップ分析であり、図11aは、トラスツズマブVL-IL15鎖に対するQP34563457タンパク質の36%の配列カバー率を示す。
図11b】QP34563457タンパク質のペプチドマップ分析であり、図11bは、トラスツズマブVH-IL15Ra-Fc鎖に対するQP34563457タンパク質の56%の配列カバー率を示す。
図11c】QP34563457タンパク質のペプチドマップ分析であり、図11cは、pertuzumabVL-CL鎖に対するQP34563457タンパク質の64%の配列カバー率を示す。
図11d】QP34563457タンパク質のペプチドマップ分析であり、図11dは、pertuzumab VH-CH1-Fc鎖に対するQP34563457タンパク質の56%の配列カバー率を示す。
図12】Her2-Fc融合タンパク質に結合したQP34563457等の分子のELISA検出である。
図13】Her2M2-Fc融合タンパク質に結合したQP34563457等の分子のELISA検出である。
図14】CD38タンパク質に結合したQP34623463等の分子のELISA検出である。
図15】CS1タンパク質に結合したQP34623463等の分子のELISA検出である。
図16】SK-BR-3細胞に結合したQP34563457等の分子のFACS検出である。
図17】BT-474細胞に結合したQP34563457等の分子のFACS検出である。
図18】SK-OV-3細胞に結合したQP34563457等の分子のFACS検出である。
図19】ヒト乳がん細胞SK-BR-3に対するQP34563457等の分子の増殖阻害曲線である。
図20】ヒト乳がん細胞BT-474に対するQP34563457等の分子の増殖阻害曲線である。
図21】ヒト卵巣がん細胞SK-OV-3に対するQP34563457等の分子の増殖阻害曲線である。
図22】QP34563457等が媒介したPBMC殺傷ヒト乳がん細胞SK-BR-3細胞である。
図23】QP34563457等が媒介したPBMC殺傷ヒト乳がん細胞BT-474細胞である。
図24】QP34563457等が媒介したPBMC殺傷ヒト卵巣がん細胞SK-OV-3細胞である。
図25】Mo7e細胞に対する増殖を検出するQP34563457等の分子の実験である。
図26】SK-OV-3インビボ薬物効果モデルの腫瘍増殖曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0076】
以下の実施形態において具体的な条件を示さない実験方法は、通常、従来高知の条件、または原料メーカーまたは商品メーカーが提案する条件や方法に従って行われる。例えば、分子クローニング、実験マニュアル、コールドスプリングハーバー研究所、現代の分子生物学手法、細胞生物学等である。具体的な出所が示されていない試薬は、市販で購入された従来の試薬である。
【0077】
実施例1:融合タンパク質のクローニングおよび発現
タンパク質配列は、次のとおりである。
anti Her2(Her2細胞外ドメインIV領域)VL-IL15SEQ ID NO:10
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVNTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQHYTTPPTFGQGTKVEIKGGGGSGGGGSGGGGSNWVNVISDLKKIEDLIQSMHIDATLYTESDVHPSCKVTAMKCFLLELQVISCESGDASIHDTVENLIILANNSLSSNGNVTESGCKECEELEEKNIKEFLQSFVHIVQMFINTS
anti Her2(Her2細胞外ドメインIV領域)VH-IL15Ra-Fc(Knob)SEQ ID NO:11
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNIKDTYIHWVRQAPGKGLEWVARIYPTNGYTRYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRWGGDGFYAMDYWGQGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSITCPPPMSVEHADIWVKSYSLYSRERYICNSGFKRKAGTCSLTECVLNKATNVAHWTTPSLKCIRGGGGSEPKSSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLWCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
anti Her2′(Her2細胞外ドメインII領域)VL-CL SEQ ID NO:12
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKASQDVSIGVAWYQQKPGKAPKLLIYSASYRYTGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYYIYPYTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
anti Her2′(Her2細胞外ドメインII領域)VH-CH1-CH2-CH3(Hole)SEQ ID NO:13
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFTDYTMDWVRQAPGKGLEWVADVNPNSGGSIYNQRFKGRFTLSVDRSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARNLGPSFYFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLSCAVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLVSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNRYTQKSLSLSPGK
anti CS1 VL-IL15SEQ ID NO:14
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKASQDVGIAVAWYQQKPGKVPKLLIYWASTRHTGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDVATYYCQQYSSYPYTFGQGTKVEIKGGGGSGGGGSGGGGSNWVNVISDLKKIEDLIQSMHIDATLYTESDVHPSCKVTAMKCFLLELQVISCESGDASIHDTVENLIILANNSLSSNGNVTESGCKECEELEEKNIKEFLQSFVHIVQMFINTS
anti CS1 VH-IL15Ra-Fc(Knob)SEQ ID NO:15
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFDFSRYWMSWVRQAPGKGLEWIGEINPDSSTINYAPSLKDKFIISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCARPDGNYWYFDVWGQGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSITCPPPMSVEHADIWVKSYSLYSRERYICNSGFKRKAGTCSLTECVLNKATNVAHWTTPSLKCIRGGGGSEPKSSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLWCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
anti CD38 VL-CL SEQ ID NO:16
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPPTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
anti CD38 VH-CH1-CH2-CH3(Hole)SEQ ID NO:17
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAVSGFTFNSFAMSWVRQAPGKGLEWVSAISGSGGGTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYFCAKDKILWFGEPVFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLSCAVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLVSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNRYTQKSLSLSPGK
クローニングおよび構築方法:
クローン設計は、表1に示されたとおりである。anti Her2(Tmab)VL-IL15(SEQ ID NO:10)、anti Her2(Tmab)VH-IL15Ra-Fc(Knob)(SEQ ID NO:11)、anti CS1 VL-IL15(SEQ ID NO:14)、anti CS1 VH-IL15Ra-Fc(Knob)(SEQ ID NO:15)をコードする担体をそれぞれ構築する。プラスミドにはスクリーニングマーカーとしてDHFRを含み、安定株のスクリーニングに使用されることができ、抗腫瘍特異性抗原抗体をコードする担体の軽鎖配列(配列)および抗腫瘍特異性抗原抗体をコードする担体の重鎖配列(ここで、Fcは、Hole突然変異、即ち(T366S、L368A、Y407V)anti Her2′ VL(Pmab)-CL(SEQ ID NO:12)、anti Her2′(Pmab)VH-CH1-CH2-CH3(Hole)(SEQ ID NO:13)、anti CD38 VL-CL(SEQ ID NO:16)、anti CD38 VH-CH1-CH2-CH3(Hole)(SEQ ID NO:17)を含み)、プラスミドは、スクリーニングマーカーとしてGSを含み、安定株のスクリーニングに使用されることができる。タンパク質分子の構造の模式図は、図6に示されたとおりである。他の的実施形態において、タンパク質分子は、それぞれ図2図8に示されるような他の構造形態であり得る。
【0078】
【表6】
【0079】
表7に示されるように、対照抗体であるトラスツズマブ、ペルツズマブ、エロツズマブ、ダラツムマブを設計及び構築する。
【0080】
【表7】
【0081】
標的分子の一過性発現
Expi CHO-S細胞を、8mMのGlutaMaxを追加したForti CHO培地に接種し(Gibco、A1148301)、37℃、120rpm、8%COで培養する。トランスフェクションの前日に、Expi CHO-S細胞の密度を3×10E6/mLに調整して、シェーカーに入れ、37℃、120rpm、8%COで培養し、トランスフェクション当日、サンプルを採取してカウントし、細胞密度を6×10E6/mlに希釈し、フラスコ当たり40mlで125mlの振とうフラスコにいて、対応するプラスミドをそれぞれ20ugとり、4.8mLのOpti MEMと混合し、120ulのPolyplus-FectoPROトランスフェクション試薬を加え、DNAおよびトランスフェクション試薬を均等に混合した後、室温下で10分間おき、混合物を細胞にゆっくりと入れ、均等に混合した後、シェーカーに入れて培養する。培養プロセスにおいて、それぞれ1日目、4日目、6日目、8日目に2mLのFeed PFF05(OPM、F81279-001)および1mの30%グルコース溶液を各フラスコに追加する。トランスフェクションの初日、温度を32℃に下げ、CO濃度を5%に下げる。13日目にサンプルを収集し、8000rpmで20分間遠心分離し、精製のために上清を採取する。
【0082】
実施例2:融合タンパク質の精製
プロテインAアフィニティークロマトグラフィーによる精製
少なくとも3CVの平衡溶液をカラムに通過させ、実際の体積は、20mlであり、最終機器から流出する溶液のpHおよび導電率が平衡溶液と一致し、流速は、1ml/minであることを確保し、遠心分離後の培地の上清を固に通し、40mlのサンプルをロードし、流速は、0.33ml/minであり、少なくとも3CVの平衡溶液をカラムに通過させ、実際の体積は、20mlであり、最終機器から流出する溶液のpHおよび導電率が平衡溶液と一致し、流速は、0.33ml/minであることを確保し、溶離液をカラムに通過させ、UV280が15mAUに上昇したときに、溶出ピーク(PAC-EP)の収集を開始し、UV280が15mAUに低下したときに、収集を停止し、流速は、1ml/minである。サンプルを収集完了後、pH調節液でPAC-EPを中性に調節する。
【0083】
CH1-XLアフィニティークロマトグラフィー
プロテインAで処理したサンプルを8000rpm×15min遠心分離し、上清を取り、少なくとも3CVの平衡溶液をカラムに通過させ、実際の体積は、20mlであり、最終機器から流出する溶液のpHおよび導電率が平衡溶液と一致し、流速は、1ml/minであることを確保し、遠心分離後の上清をサンプルループに通し、流速0.33ml/minでカラムに通過させ、少なくとも3CVの平衡溶液をカラムに通過させ、実際の体積は、20mlであり、最終機器から流出する溶液のpHおよび導電率が平衡溶液と一致し、流速は、0.33ml/minであることを確保し、溶離液をカラムに通過させ、UV280が10mAUに上昇したときに、溶出ピーク(PAC-EP)の収集を開始し、UV280が10mAUに低下したときに、収集を停止し、流速は、1ml/minである。サンプルを収集完了後、pH調節液でPAC-EPを中性に調節する。
【0084】
PNGase F消化
39.5μlのサンプルを取り、1.98μlの10%SDSおよび1.58μlの1M DTTを加え、均等に混合した後に100℃で10分間煮沸し、サンプルを冷却した後、4.8μlの10%NP-40および1.0μlのPNGase Fを加え、均等に混合した後に4℃で一晩浸し、一晩後のサンプルを75℃で10分間加熱して熱失活させた後、サンプルに対してSDS-PAGE電気泳動およびSECを行い、タンパク質の純度を検出する。
【0085】
SDS-PAGE電気泳動分析およびHPLC-SEC分析
消化の前後に各サンプルを5μg採取し、1×PBSで体積を48μlに希釈し、12μlの5×Protein Loading Dyeを加え、95℃で10分間加熱する。電気泳動槽にpH8.3のTris-HCl緩衝液(0.1%SDSを含む)を注ぎ、ピペットガンでサンプル槽にサンプルを加え、各サンプル槽に60μlずつサンプルを加える。電圧を140V、時間を100分間に設定して電気泳動を開始する。電気泳動完了後にゲルを取り出し、染色液に30分間浸漬し、タンパク質領域のバンドが鮮明になるまで脱色駅で脱色する。図9は、SDS-PAGE電気泳動によって分析されたQP34563457タンパク質の還元バンドおよび非還元バンドである。図10は、QP34563457タンパク質純度のHPLC-SEC分析である。
【0086】
実施例3:タンパク質QP34563457のペプチドマップ分析
この実施例では、LC-MSを使用して、QP34563457タンパク質のアミノ酸配列を同定する。QP34563457タンパク質の変性および還元後、トリプシンを加えて酵素消化した後にLC-MS/MSによって分析し(LC機器Agilent 1290 Infinity II、カラムAgilent Peptide Plus column。MS機器Agilent 6545 Q-TOF)、得られたデータをPeaksで検索し、Peaks検索の結果を厳密なカード値でろ過して、信頼性の高いペプチドセグメントを取得し、QP34563457タンパク質のトラスツズマブVL-IL15鎖に対する36%の配列カバー率(図11a、灰色は、同定されたアミノ酸配列である)、トラスツズマブ VH-IL15Ra-Fc鎖に対する56%の配列カバー率(図11b、灰色は、同定されたアミノ酸配列である)、pertuzumab VL-CL鎖に対する64%の配列カバー率(図11c、灰色は、同定されたアミノ酸配列である)、pertuzumab VH-CH1-Fc鎖に対する56%の配列カバー率(図11d,灰色は、同定されたアミノ酸配列である)を達成する。LC-MSによるペプチドマップ分析により、トラスツズマブVL、IL15、トラスツズマブ VH、IL15Ra、Fc、pertuzumab VL、CL、pertuzumab VH、CH1、Fc等を含むQP34563457分子内の各断片をそれぞれ発見した。
【0087】
実施例4:Her2へのQP34563457の結合およびその突然変異体活性のELISA検出
ペルツズマブ(Pertuzumab)のみに結合するHer2変異体タンパク質の設計。Matthew C.Franklinは、ペルツズマブFabとHer2細胞外構造の複合体構造をCancer cellに発表した。当該チームは、アラニンスキャニング法を使用して、Her2のどの主要なアミノ酸がペルツズマブFabへの結合に影響を与えるかを研究した。ペルツズマブ(Pertuzumab)のみに結合し、トラスツズマブ(trastuzumab)に結合しないHer2変異体タンパク質をHer2M2(タンパク質番号QP3732)と名付ける。Her2 wt(タンパク質番号QP3731)およびHer2M2(タンパク質番号QP3732)のアミノ酸配列は、それぞれ次のとおりである。
【0088】
QP3731:(Her2 ECD-Fc)
MEFGLSWLFLVAILKGVQCTQVCTGTDMKLRLPASPETHLDMLRHLYQGCQVVQGNLELTYLPTNASLSFLQDIQEVQGYVLIAHNQVRQVPLQRLRIVRGTQLFEDNYALAVLDNGDPLNNTTPVTGASPGGLRELQLRSLTEILKGGVLIQRNPQLCYQDTILWKDIFHKNNQLALTLIDTNRSRACHPCSPMCKGSRCWGESSEDCQSLTRTVCAGGCARCKGPLPTDCCHEQCAAGCTGPKHSDCLACLHFNHSGICELHCPALVTYNTDTFESMPNPEGRYTFGASCVTACPYNYLSTDVGSCTLVCPLHNQEVTAEDGTQRCEKCSKPCARVCYGLGMEHLREVRAVTSANIQEFAGCKKIFGSLAFLPESFDGDPASNTAPLQPEQLQVFETLEEITGYLYISAWPDSLPDLSVFQNLQVIRGRILHNGAYSLTLQGLGISWLGLRSLRELGSGLALIHHNTHLCFVHTVPWDQLFRNPHQALLHTANRPEDECVGEGLACHQLCARGHCWGPGPTQCVNCSQFLRGQECVEECRVLQGLPREYVNARHCLPCHPECQPQNGSVTCFGPEADQCVACAHYKDPPFCVARCPSGVKPDLSYMPIWKFPDEEGACQPCPINCTHSCVDLDDKGCPAEQRASPLTEPKSSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK*
QP3732(Her2M2-Fc):
MEFGLSWLFLVAILKGVQCTQVCTGTDMKLRLPASPETHLDMLRHLYQGCQVVQGNLELTYLPTNASLSFLQDIQEVQGYVLIAHNQVRQVPLQRLRIVRGTQLFEDNYALAVLDNGDPLNNTTPVTGASPGGLRELQLRSLTEILKGGVLIQRNPQLCYQDTILWKDIFHKNNQLALTLIDTNRSRACHPCSPMCKGSRCWGESSEDCQSLTRTVCAGGCARCKGPLPTDCCHEQCAAGCTGPKHSDCLACLHFNHSGICELHCPALVTYNTDTFESMPNPEGRYTFGASCVTACPYNYLSTDVGSCTLVCPLHNQEVTAEDGTQRCEKCSKPCARVCYGLGMEHLREVRAVTSANIQEFAGCKKIFGSLAFLPESFDGDPASNTAPLQPEQLQVFETLEEITGYLYISAWPDSLPDLSVFQNLQVIRGRILHNGAYSLTLQGLGISWLGLRSLRELGSGLALIHHNTHLCFVHTVPWDQLFRNPHQALLHTANRPEDECVGEGLACHQLCARGHCWGPGPTQCVNCSQFLRGQECVEECRVLQGLPREYVNARHCLPCHPECQPQNGSVTCFGPAADQCVACAHYKDPAFcVARCPSGVKPDLSYMPIWKFPDEEGACQPCPINCTHSCVDLDDKGCPAEQRASPLTEPKSSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK*
実験材料:ミルク(milk)(BD、232100)、PBS(SANGON BIOTECH、B548117-0500);HRP-抗ヒトIgG(H+L)(jackson、109-035-088);TMB(洛陽BAIAOTONG実験材料センター、C060201);Elisaプレート(costa、9018)1×PBS緩衝液:8.00gのNaCl、0.20gのKCl、2.9gのNaHPO4・12H0、0.2gのKHPOを、800mLのddHOに秤量して溶解し、十分に溶解した後に1Lに定量し、pHを7.4に調節して、高温で滅菌して備蓄する。または市販の10×、20×PBS溶液を購入して、1×PBS緩衝液に希釈して使用する。ブロッキング溶液:5gのミルクをPBSに秤量し、ブロッキング溶液を調製してすぐに使用する。停止溶液(1mol/LHSO):109mLの98%濃HSOを取り、2000mLのddHOにゆっくりと滴下する。TMBを37℃で10分間発色させ、シェーカーに入れ(120rpm)、100μl/ウェル。
【0089】
実験プロセス:Her2およびその変異体タンパク質QP3731およびQP3732を1ug/mlで4℃で一晩コーティングし、PBSで3回洗浄する。200μL/ウェルでブロッキング溶液5%ミルクを加え、37℃かで1時間インキュベートする。ブロッキング終了後、PBSで3回洗浄し、サンプルをインキュベートし、20ug/mlに従って5倍希釈し、合計七つの購買で希釈し、最後のウェルで100倍に希釈し、100μl/ウェルで完全に混合し、1時間インキュベートし、PBSTで3回洗浄し、酵素標識抗体の添加:HRP-抗ヒトFab抗体をインキュベートし、1:5000の希釈率に従って100μl/ウェルをよく混合した後、1時間インキュベートし、PBSTで6回洗浄する。基質発色液の添加:100μL/ウェルの用量で基質発色液TMBを加え、シェーカーに入れ、200rpm、35℃の暗所で10分間発色する。
【0090】
終了:発色終了後、100μL/ウェルの用量で停止溶液を速やかに加えて反応を終了させる。検出:マイクロプレートリーダーで、そのA450nmのOD値を測定し、graphpad prismソフトウェアを使用して結果を分析する。
【0091】
実験結果:トラスツズマブ(trastuzumab)は、Her2 wtに非常によく結合できるが、基本的にHer2M2に結合せず、QP34563457およびペルツズマブ(Pertuzumab)は、すべてHer2 wtおよびHer2M2に非常によく結合できることを示す(結果は、図12および図13に示されたとおりである)。
【0092】
実施例5:QP34623463のCD38およびCS1活性への結合のELISA検出
実験材料:ミルク(BD、232100)、PBS(SANGON BIOTECH、B548117-0500);HRP-抗ヒトIgG(H+L)(jackson、109-035-088);TMB(洛陽BAIAOTONG実験材料センター、C060201);Elisaプレート(costa、9018)1×PBS緩衝液:8.00gのNaCl、0.20gのKCl、2.9gのNa2HPO4・12H20、0.2gのKH2PO4を秤量して800mLのddHOに溶解し、十分に溶解した後に1Lに定量し、pHを7.4に調節し、高温で滅菌して備蓄する。または市販の10×、20×PBS溶液を購入して1×PBS緩衝液に希釈して使用する。ブロッキング溶液:5gのミルクを秤量してPBSに加え、ブロッキング溶液を調製してすぐに使用する。停止溶液(1mol/LHSO):109mLの98%濃HSOを取り、2000mLのddHOにゆっくりと滴下する。TMBを37℃で10分間発色させ、100μl/ウェルでシェーカーに入れる(120rpm)。
【0093】
実験プロセス:CD38-FcおよびCS1-Fc融合タンパク質をそれぞれ1ug/mlで4℃で一晩コーティングし、PBSで3回洗浄する。200μL/ウェルでブロッキング溶液5%ミルクを加え、37℃かで1時間インキュベートする。ブロッキング終了後、PBSで3回洗浄し、サンプルをインキュベートし、20ug/mlに従って5倍希釈し、合計七つの購買で希釈し、最後のウェルで100倍に希釈し、100μl/ウェルで完全に混合し、1時間インキュベートし、PBSTで3回洗浄し、酵素標識抗体の添加:HRP-抗ヒトFab抗体をインキュベートし、1:5000の希釈率に従って100μl/ウェルをよく混合した後、1時間インキュベートし、PBSTで6回洗浄する。基質発色液の添加:100μL/ウェルの用量で基質発色液TMBを加え、シェーカーに入れ、200rpm、35℃の暗所で10分間発色する。終了:発色終了後、100μL/ウェルの用量で停止溶液を速やかに加えて反応を終了させる。検出:マイクロプレートリーダーで、そのA450nmのOD値を測定し、graphpad prismソフトウェアを使用して結果を分析する。
【0094】
実験結果:QP34623463は、CD38抗原だけでなく、CS1抗原にも結合できる(図14および図15に示されたとおりである)。
実施例6:QP34563457のHer2高発現細胞への結合のFACS検出
実験材料:BT474細胞(ヒト乳がん細胞株)は、中国医学院基礎医学研究所細胞資源センターから購入される。SK-BR-3細胞(ヒト乳がん細胞株)は、中国医学院基礎医学研究所細胞資源センターから購入される。SK-OV-3細胞(ヒト卵巣がん細胞株)は、中国医学院基礎医学研究所細胞資源センターから購入される。
【0095】
実験方法:
実験プロセス:BT474細胞は、10%FBS、0.11g/Lピルビン酸ナトリウムおよび2.5g/Lグルコースを含むRPMI1640(Gibco)培地を使用し、SK-BR-3細胞は、10%FBSを含むDMEM培地(Gibco)を使用し、SK-OV-3細胞は、10%FBSを含むMcCoy′s 5a培地(Gibco)を使用する。37℃下で5%COインキュベーター中で培養し、トリプシン消化によって細胞を収集し、各ウェルに100000個の細胞ずつ96ウェルプレートに接種し、2%FBS/PBSで氷上で1時間ブロッキングし、異なる濃度のタンパク質QP34563457および対照タンパク質をインキュベートし、氷上に1時間置き、PBSで3回洗浄し、PE-抗ヒトFc(1:200)希釈液をインキュベートし、PBSで3回洗浄し、200μLのPBSで再懸濁し、FACSで平均蛍光値を読み取り、graphpad prismソフトウェアを使用して結果を分析する。
【0096】
実験結果:QP34563457は、BT474、SK-BR-3およびSK-OV-3のこれらのHer2高発現細胞を非常によく結合でき、結合能力は、陽性対照モノクローナル抗体トラスツズマブおよびペルツズマブの結合能力に近いが、陰性対照抗体は、Her2高発現細胞に結合できない(図16~18に示されたとおりである)。
【0097】
実施例7:Her2二重特異性抗体によって媒介される増殖阻害
実験目的:腫瘍細胞の増殖対するHer2二重特異性抗体の阻害効果を確認すること
実験材料:BT474細胞(ヒト乳がん細胞株)は、中国医学院基礎医学研究所細胞資源センターから購入される。SK-BR-3細胞(ヒト乳がん細胞株)は、中国医学院基礎医学研究所細胞資源センターから購入される。SK-OV-3細胞(ヒト卵巣がん細胞株)は、中国医学院基礎医学研究所細胞資源センターから購入される。細胞増殖および毒性検出キット(CCK-8)は、MEILUNBioから購入され、カタログ番号は、MA0218であり、ヒトIgGは、Sigmaから購入され、カタログ番号は、I4506であり、他の抗体は、自体で調製される。
【0098】
実験プロセス:BT474細胞は、10%FBS、0.11g/Lピルビン酸ナトリウムおよび2.5g/Lグルコースを含むRPMI1640(Gibco)培地を使用し、SK-BR-3細胞は、10%FBSを含むDMEM培地(Gibco)を使用し、SK-OV-3細胞は、10%FBSを含むMcCoy′s 5a培地(Gibco)を使用する。37℃下で、5%COインキュベーター中で培養し、トリプシン消化によって細胞を収集し、遠心分離後に1%FBSを含む培地で再懸濁し、10000個の細胞で96ウェルプレートに各ウェル50μl接種し、37℃下で3時間接着培養し、試験する各抗体を培地で3倍勾配に希釈した後、ウェルあたり50μlを細胞懸濁液と均等に混合し、37℃下で、5%COインキュベーターで3日間培養し、各ウェルに10μlずつCCK-8試薬を試験する96ウェルプレートに加え、37℃下で、5%COインキュベーター中で2時間インキュベートし、96ウェルプレートを取り出し、マイクロプレートリーダーで450nm波長での吸光度値を検出し、細胞生存率値を計算し、サンプル濃度の対数に対してプロットし、graphpad prismソフトウェアを使用して結果を分析する。四つのパラメーターによって細胞増殖阻害曲線をフィッティングする。
【0099】
実験結果:QP34563457は、HER2陽性腫瘍細胞BT474、SK-BR-3、SK-OV-3の増殖に対して顕著な阻害効果を示し、これは、トラスツズマブまたはペルツズマブのモノクローナル抗体および両者の併用よりも優位に優れている(相乗効果ある)(図19~21に示されたとおりである)。
【0100】
実施例8:HER2二重特異性抗体によって媒介されるADCC効果
実験目的:HER2二重特異性抗体のADCC効果を確認する。
実験材料:PBMCは、上海SAILYBio株式会社から購入され、BT474細胞(ヒト乳がん細胞株)は、中国医学院基礎医学研究所細胞資源センターから購入される。SK-BR-3細胞(ヒト乳がん細胞株)は、中国医学院基礎医学研究所細胞資源センターから購入される。SK-OV-3細胞(ヒト卵巣がん細胞株)は、中国医学院基礎医学研究所細胞資源センターから購入され、Cytotox96 non-radioactive cytotoxicity assay検出キットは、Promega(G1780)から購入される。
【0101】
実験プロセス:PBMCを蘇生させ、細胞を収集して翌日に使用するために備蓄する。標的細胞の準備:SK-BR-3、BT-474、SK-OV-3をトリプシンで消化し、1000rpmで5分間処理する。PBSで2回洗浄した後、96ウェルプレートにウェルあたり20000個の細胞、ウェルあたり50μlずつプレーティングし、37℃下で5%COで2時間インキュベートする。抗体の準備:培地(10%low-IgG FBSを含むRPMI1640)で1:4に10個の濃度の抗体(80ug/ml~0.000512ug/ml、0ug/ml)を連続希釈する。上記で希釈した各濃度の抗体を各ウェルに50μl加え、37℃下で15分間インキュベートする。PBMCの準備:初日に蘇生したPBMCを遠心分離し、培地(10%low-IgG FBSを含むRPMI1640)で再懸濁し、カウントする。PBMC:Target cell=30:1に従って、上記のウェルプレートにウェルあたり50μl加え、37℃下で4時間インキュベートする。LDH検出:最大放出群および体積補正群の場合、45分前に10μlの溶離液を加え、インキュベーターで培養を続ける。4時間培養した後、50μlの上清をマイクロタイタープレートに移し、Cytotox96 non-radioactive cytotoxicity assay検出キット(Promega、G1780)の説明書に従って、50μlの試薬を加える。室温下で、暗所で30分間反応させた後、50μlの停止溶液を加える。490nmの吸光度値を読み取る(停止溶液を加えた後1時間内に読み取りを完了する)。計算:殺傷率=(サンプルの放出-標的細胞の自然放出-エフェクター細胞の自然放出)/(標的細胞の最大放出-標的細胞の自然放出)×100。自然放出(抗体の非存在下でエフェクター細胞とインキュベートされた標的細胞に相当する)を0%細胞毒性と定義し、最大放出(1%Triton X-100で溶出された標的細胞)を100%細胞毒性と定義する。
【0102】
実験結果:QP34563457は、二つのHER2モノクローナル抗体と比較して、BT474、SK-BR-3、SK-OV-3腫瘍細胞に対して同等のADCC活性を維持することを示す(図22~24に示されたとおりである)。
【0103】
実施例9:Mo7e細胞増殖実験
実験材料:Mo7e細胞(ヒト巨細胞性白血病細胞株)は、中国医学院基礎医学研究所細胞資源センターから購入され、細胞増殖および毒性検出キット(CCK-8)は、MEILUNBioから購入され、カタログ番号は、MA0218であり、組換えヒトGM-CSFは、perprotechから購入され、カタログ番号は、300-03であり、ヒトIgGは、Sigmaから購入され、カタログ番号は、I4506であり、他の抗体は、自体で調製される。
【0104】
実験プロセス:Mo7e細胞は、10%FBS、2mMのL-グルタミンおよび8ng/mlのGM-CSFを含むRPMI1640培地を使用して37℃下で5%COインキュベーター中で培養し、Mo7e細胞を収集し、800rpmで5分間遠心分離して上清を捨て、GM-CSFを含まないRPMI1640培地で細胞を2回洗浄し、GM-CSFを含まないRPMI1640培地で細胞を再懸濁し、かつカウントし、細胞を96ウェルプレートに2×10個、ウェルあたり80μlで接種し、37℃下で5%COインキュベーターで1時間培養し、試験する各抗体を培地で4倍勾配に希釈した後、ウェルあたり20μlで細胞懸濁液と均一に混合し、37℃下で、5%COインキュベーターで3日間培養し、各ウェルに10μlずつCCK-8試薬を試験する96ウェルプレートに加え、37℃下で、5%COインキュベーター中で4時間インキュベートし、96ウェルプレートを取り出し、マイクロプレートリーダーで450nm波長の吸光度値を検出する。
【0105】
実験結果:Mo7e細胞増殖実験により、Mo7e細胞が適切なIL15活性を有することを確信された(図25に示されたとおりである)。
実施例10:動物薬物効果実験
HER2を高発現するヒト卵巣がん細胞SK-OV-3モデルで腫瘍増殖に対するQP34563457の阻害効果を評価する。
【0106】
実験プロセス:SK-OV-3細胞は、10%ウシ胎児血清を含むMcCoy’s 5A+10%FBS培地で培養される。指数成長期にあるSK-OV-3細胞を収集し、接種に適した濃度になるまでPBSに再懸濁する。各BALB/C-nudeマウスの右背部に1×10のSK-OV-3細胞を皮下接種し、定期的に腫瘍増殖を観察し、腫瘍が平均約50mmの体積に成長したとき、マウスを腫瘍の大きさおよび体重に応じてランダムにグループに分けて投与し(投与体積は、10ul/g体重である)、初回投与日は、D0と定義する。投与計画は次のとおりである。
【0107】
【表8】
【0108】
投与ごとにマウスの体重および腫瘍体積を観察して記録し、ノギスで腫瘍の長径および短径を測定し、腫瘍体積(mm)=0.5×(a×b)の式に計算して、腫瘍増殖の状況を記録し、腫瘍増殖の曲線をプロットする。最後の投与から6日後に観察し、実験データを記録する。
【0109】
実験結果:結果によると、Tastuzumab、ペルツズマブ、トラスツズマブ+ペルツズマブおよびQP34563457は、すべてSK-OV-3腫瘍の増殖を有意に阻害することができ、腫瘍は、6回の投与後に退縮したことを示し(TGItv>100%)、これは、QP34563457がより低い用量(モノクローナル抗体用用量の10%)の前提下で、huPBMC-graft NCGマウスモデルにおいて依然として有意な腫瘍増殖阻害活性を有することを証明することを示す(図26および表4に示される)。
【0110】
【表9】
【0111】
本発明の具体的な実施形態を詳細に説明したが、当業者は、開示されたすべての教示に基づいて、それらの詳細に対して様々な修正および置換を行うことができ、これらの変更は、すべて本発明の範囲内にあることを理解されたい。本発明の全範囲は、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって与えられる。
図1
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【配列表】
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【国際調査報告】