(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-19
(54)【発明の名称】光学変位センサ
(51)【国際特許分類】
H04R 23/00 20060101AFI20231212BHJP
G01D 5/26 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
H04R23/00 320
G01D5/26 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535812
(86)(22)【出願日】2021-12-14
(85)【翻訳文提出日】2023-06-29
(86)【国際出願番号】 GB2021053291
(87)【国際公開番号】W WO2022129893
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521437781
【氏名又は名称】センシベル アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サグベルク, ホーコン
(72)【発明者】
【氏名】ラコール, マチュー
【テーマコード(参考)】
2F103
5D021
【Fターム(参考)】
2F103BA10
2F103BA37
2F103CA04
2F103EB02
2F103EB11
2F103EC03
5D021DD04
(57)【要約】
光学変位センサ(2)は、反射面(4)と、反射面とともに、各々、干渉配置を規定する1つ以上の回折格子(6)と、を備える。反射面(4)は、回折格子(6)に対して移動可能であるか、又はその逆である。光源(8)からの光は、干渉配置を介して伝搬し、各組の光検出器(10)で干渉パターンを生じる。各干渉パターンは、反射面(4)と各格子(6)との間の分離に応じて決まる。コリメート光学配置(14)は、光源(8)と回折格子(6)との間で光を少なくとも部分的にコリメートする。干渉配置又は各干渉配置について、反射面(4)又は回折格子(6)がゼロ変位位置にあるとき、回折格子(6)と反射面(4)との間を伝搬する光の光学経路長Lは、以下の関係をjの20%以内まで満たし、nは整数であり、Tzは以下のように規定されるタルボット長であり、式中、λは光の波長であり、pは各回折格子(6)の格子周期である。代替的に、Lはpの20%以内まで満たし、式中、mは奇数の整数である。追加的に又は代替的に、光学変位センサ(34、112)は、2つ以上の回折格子(44、46、116)を備えてもよく、ビーム分離配置(48、126)又は複数の光源要素を使用して、各格子(44、46、116)に各分離した光ビーム(62、64、132)を提供するように構成されてもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学変位センサであって、
反射面と、
前記反射面から間隔をあけた1つ以上の回折格子であって、前記回折格子又は各回折格子は、前記反射面とともに、各干渉配置を規定し、i)前記反射面又はii)前記回折格子若しくは各回折格子のいずれかが、互いに対して移動可能である、1つ以上の回折格子と、
前記干渉配置に光を提供するように配置されることで、各干渉配置について、前記光の第1の部分が、前記干渉配置を介して第1の光学経路に沿って伝搬し、前記光の第2の部分が、前記干渉配置を介して第2の異なる光学経路に沿って伝搬するようにすることで、前記干渉配置の前記反射面と前記回折格子との間の分離に応じて決まる、前記第1及び第2の光学経路の間の光学経路差を生じさせる光源と、
各干渉配置について、前記光学経路差に応じて、光の前記第1及び第2の部分によって生成された干渉パターンの少なくとも一部を検出するように配置された各組の1つ以上の光検出器と、
前記光源と前記回折格子との間の前記光を少なくとも部分的にコリメートするように配置されたコリメート光学配置と、を備え、
前記干渉配置又は各干渉配置について、前記反射面又は前記回折格子がゼロ変位位置にあるとき、前記回折格子は、光の前記各第1の部分が、前記回折格子と前記反射面との間で光学経路長Lに沿って進行するような距離、前記反射面から間隔をあけ、
前記回折格子又は各回折格子は、前記干渉配置又は各干渉配置について、格子周期p及び光学経路長Lが以下の関係を
【数14】
【数15】
の20%以内まで満たすような、前記格子周期pの周期回折格子を含み、式中、nは整数であり、
T
zは、以下のように規定されるタルボット長であり、
【数16】
式中、λは前記光の波長である、光学変位センサ。
【請求項2】
少なくとも2つの回折格子を備える、請求項1に記載の光学変位センサ。
【請求項3】
前記光学経路長Lは、各回折格子によって異なる、請求項2に記載の光学変位センサ。
【請求項4】
前記ゼロ変位位置において、前記反射面は、少なくとも15μmの垂直距離で、前記回折格子又は各回折格子から分離している、先行請求項のいずれか一項に記載の光学変位センサ。
【請求項5】
前記光学変位センサは、2つ以上の光学格子を備え、
a)各回折格子は、各格子線方向に延びる1組の平行格子線を含み、上記1組の回折格子における各回折格子の前記格子線方向は、上記組における他の各回折格子の前記格子線方向とは異なり、かつ/又は、
b)前記光学変位センサは、前記光を2つ以上のビームに分離するように配置されたビーム分離光学配置を備え、前記2つ以上のビームを、各々、前記回折格子のうちの各1つずつに方向付ける、先行請求項のいずれか一項に記載の光学変位センサ。
【請求項6】
前記光学変位センサは、2つ以上の回折格子を備え、前記光源は、前記光が複数の光ビームとして提供されるように、複数の光源要素を備え、各光源要素は、前記ビームのうちの各1つずつを提供し、光の各ビームを、前記回折格子のうちの各1つずつに方向付ける、請求項1~4のいずれか一項に記載の光学変位センサ。
【請求項7】
光学変位センサであって、
反射面と、
前記反射面から間隔をあけた2つ以上の回折格子であって、各回折格子は、前記反射面とともに、各干渉配置を規定し、i)前記反射面又はii)前記回折格子のいずれかが、互いに対して移動可能である、2つ以上の回折格子と、
前記干渉配置に光を提供するように配置されることで、各干渉配置について、前記光の第1の部分が、前記干渉配置を介して第1の光学経路に沿って伝搬し、前記光の第2の部分が、前記干渉配置を介して第2の異なる光学経路に沿って伝搬するようにすることで、前記干渉配置の前記反射面と前記回折格子との間の分離に応じて決まる、前記第1及び第2の光学経路の間の光学経路差を生じさせる光源と、
各干渉配置について、前記光学経路差に応じて、光の前記第1及び第2の部分によって生成された干渉パターンの少なくとも一部を検出するように配置された各組の1つ以上の光検出器と、
前記光源と前記回折格子との間の前記光を少なくとも部分的にコリメートするように配置されたコリメート光学配置と、を備え、
b)各回折格子は、各格子線方向に延びる1組の平行格子線を含み、1組の前記回折格子における各回折格子の前記格子線方向は、前記組における各他方の回折格子の前記回折格子線方向とは異なり、かつ/又は、
b)前記光学変位センサは、前記光を2つ以上のビームに分離するように配置されたビーム分離光学配置を備え、前記2つ以上のビームを、各々、前記回折格子のうちの各1つずつに方向付ける、先行請求項のいずれか一項に記載の光学変位センサ。
【請求項8】
前記コリメート光学配置及び前記ビーム分離光学配置は、少なくとも部分的に前記光をコリメートする機能、及び前記光を2つ以上のビームに分離する機能の両方を実施する単一の構成要素として形成される、請求項5又は7に記載の光学変位センサ。
【請求項9】
光学変位センサであって、
反射面と、
前記反射面から間隔をあけた2つ以上の回折格子であって、各回折格子は、反射面とともに、各干渉配置を規定し、i)反射面又はii)回折格子のいずれかが、互いに対して移動可能である、2つ以上の回折格子と、
前記干渉配置に光を提供するように配置されることで、各干渉配置について、前記光の第1の部分が、前記干渉配置を介して第1の光学経路に沿って伝搬し、前記光の第2の部分が、前記干渉配置を介して第2の異なる光学経路に沿って伝搬するようにすることで、前記干渉配置の前記反射面と前記回折格子との間の分離に応じて決まる、前記第1及び第2の光学経路の間の光学経路差を生じさせる光源と、
各干渉配置について、前記光学経路差に応じて、光の前記第1及び第2の部分によって生成された干渉パターンの少なくとも一部を検出するように配置された各組の1つ以上の光検出器と、
前記光源と前記回折格子との間の前記光を少なくとも部分的にコリメートするように配置されたコリメート光学配置と、を備え、
前記光源は、前記光が複数の光ビームとして提供されるように、複数の光源要素を備え、各光源要素は、前記ビームのうちの各1つずつを提供し、光の各ビームを、前記回折格子のうちの各1つずつに方向付ける、光学変位センサ。
【請求項10】
各回折格子と前記反射面との間に、各回折格子に対して異なる垂直光学経路長が存在する、先行請求項のいずれか一項に記載の光学変位センサ。
【請求項11】
前記コリメート光学配置は、レンズを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の光学変位センサ。
【請求項12】
前記ビームは、前記各回折格子が据えられる平面の法線に対して一定角度で前記回折格子に衝突する、先行請求項のいずれか一項に記載の光学変位センサ。
【請求項13】
各ビームの伝搬の方向は、i)前記ビームが衝突する前記回折格子の前記格子線に対して平行であり、ii)前記回折格子が据えられる面に直交する平面内にある、請求項12に記載の光学変位センサ。
【請求項14】
前記光学変位センサは、2つ以上の回折格子を備え、1つのビーム又は各ビームは、前記各回折格子が据えられる平面への法線に対して各入射角で、その各回折格子に衝突し、1組の前記回折格子における各回折格子に対する前記入射角が、前記組における各他方の回折格子の前記入射角とは異なる、先行請求項のいずれか一項に記載の光学変位センサ。
【請求項15】
前記光のビーム方向、又は前記回折格子に衝突する光ビームのビーム方向は、前記回折格子の表面に直交する、先行請求項のいずれか一項に記載の光学変位センサ。
【請求項16】
前記光学変位センサは、2つ以上の回折格子を備え、各回折格子は、前記格子間の中心点から放射状に延びる1組の線のうちの1つの線に沿った向きとなる、先行請求項のいずれか一項に記載の光学変位センサ。
【請求項17】
前記光学変位センサは、N個の格子を備え、前記回折格子は、互いに対して、(360°)/Nの角度、又はその倍数の角度の向きとなる、先行請求項のいずれか一項に記載の光学変位センサ。
【請求項18】
前記干渉配置又は干渉配置は、同一の格子周期及び同一の格子線方向を有する一対の回折格子を含み、同一の光学距離、前記反射面から分離して、前記一対の回折格子がともに、前記干渉配置に対応する1つ以上の光検出器の同一組上に光を方向付けるように機能するようにする、先行請求項のいずれか一項に記載の光学変位センサ。
【請求項19】
前記回折格子は、回転対称の複合回折格子として配置される、先行請求項のいずれか一項に記載の光学変位センサ。
【請求項20】
各干渉配置に対する前記第1及び第2の光部分を、前記干渉配置に設けられた各光検出器上に方向付けるように配置されたビーム操作光学配置を更に備える、先行請求項のいずれか一項に記載の光学変位センサ。
【請求項21】
ビーム分離光学配置又は前記ビーム分離光学配置及び前記ビーム操作光学配置は、共通基板上に設けられる、請求項20に記載の光学変位センサ。
【請求項22】
各組の1つ以上の光検出器は、2つの光検出器を含み、前記光検出器は、+1次回折次数が前記光検出器のうちの第1の光検出器に衝突し、-1次回折次数が前記光検出器のうちの第2の光検出器に衝突するように配置される、先行請求項のいずれか一項に記載の光学変位センサ。
【請求項23】
各組の1つ以上の光検出器は、3つの光検出器を含み、前記光検出器は、+1次回折次数が前記光検出器のうちの第1の光検出器に衝突し、0次回折次数が前記光検出器のうちの第2の光検出器に衝突し、-1次回折次数が前記光検出器のうちの第3の光検出器に衝突するように配置される、先行請求項のいずれか一項に記載の光学変位センサ。
【請求項24】
メンブレンを更に備え、前記反射面は、前記メンブレンの表面を含むか、又は前記メンブレンの表面上に設けられる、先行請求項のいずれか一項に記載の光学変位センサ。
【請求項25】
先行請求項のいずれか一項に記載の光学変位センサを備える、光学マイクロフォン。
【請求項26】
光学変位センサであって、
反射面と、
前記反射面から間隔をあけた1つ以上の回折格子であって、前記回折格子又は各回折格子は、前記反射面とともに、各干渉配置を規定し、i)前記反射面又はii)前記回折格子若しくは各回折格子のいずれかが、互いに対して移動可能である、1つ以上の回折格子と、
前記干渉配置に光を提供するように配置されることで、各干渉配置について、前記光の第1の部分が、前記干渉配置を介して第1の光学経路に沿って伝搬し、前記光の第2の部分が、前記干渉配置を介して第2の異なる光学経路に沿って伝搬するようにすることで、前記干渉配置の前記反射面と前記回折格子との間の分離に応じて決まる、前記第1及び第2の光学経路の間の光学経路差を生じさせる光源と、
各干渉配置について、前記光学経路差に応じて、光の前記第1及び第2の部分によって生成された干渉パターンの少なくとも一部を検出するように配置された各組の1つ以上の光検出器と、
前記光源と前記回折格子との間の前記光を少なくとも部分的にコリメートするように配置されたコリメート光学配置と、を備え、
前記干渉配置又は各干渉配置について、前記反射面又は前記回折格子がゼロ変位位置にあるとき、前記回折格子は、光の前記各第1の部分が、前記回折格子と前記反射面との間で光学経路長Lに沿って進行するような距離、前記反射面から間隔をあけ、
前記回折格子又は各回折格子は、干渉配置又は各干渉配置について、格子周期p及び光学経路長Lが以下の関係を
【数17】
【数18】
の20%以内まで満たすような、前記格子周期pの周期回折格子を含み、式中、mは奇数の整数であり、
T
zは、以下のように規定されるタルボット長であり、
【数19】
式中、λは光の波長である、光学変位センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学変位センサ全般に関し、特に、光学マイクロフォンにおける使用のための光学変位センサに関するが、これに限定されるものでない。
【0002】
マイクロフォンは、通常、周辺の音響振動に応じて振動する可動部材(例えば、メンブレン)の変位を測定することにより、音波を電気信号に変換するために使用される。このような可動部材の変位を測定するには、容量読み出し(一般的に、コンデンサマイクロフォンと呼ばれる)、及び静電又は電磁読み出し機構(例えば、ダイナミックマイクロフォン)を含む、多数のやり方が存在する。
【0003】
マイクロフォンのメンブレンの位置を読み出す代替のやり方として、光学干渉法読み出しを使用した光学変位センサを使用する。このようなシステムの典型例として、メンブレンに隣接する基板上に回折格子を設け、この回折格子上に光を方向付ける。この光の第1の部分は、格子から反射して返される。第2の部分は、格子を透過し、ここで放射を回折する。回折された放射は、メンブレンに衝突し、ここで放射を格子に向かって反射する。放射は、格子を通過し、これら光の2つの部分が干渉し合って、検出器による検出の可能な干渉パターンを作り出す。干渉パターンは、格子の回折次数に合致した形状(すなわち、空間分布)を有するが、これらの回折次数に方向付けた光の強度は、これら光の2つの部分の相対的位相に応じて決まるため、格子とメンブレンとの間の距離に応じて決まる。メンブレンの位置(ひいては移動)は、したがって、検出器による光の強度変化から判定可能である。
【0004】
このような光学変位センサは、信号対雑音比(SNR)が高く、感度が高いので、光学マイクロフォン及びその他の用途での使用に好都合である。しかしながら、このような光学変位センサの性能の更なる向上が望まれる。
【0005】
第1の態様から見ると、本発明は、光学変位センサであって、
反射面と、
反射面から間隔をあけた1つ以上の回折格子であって、回折格子又は各回折格子は、反射面とともに、各干渉配置を規定し、i)反射面又はii)回折格子若しくは各回折格子のいずれかが、互いに対して移動可能である、1つ以上の回折格子と、
当該干渉配置に光を提供するように配置されることで、各干渉配置について、当該光の第1の部分が、干渉配置を介して第1の光学経路に沿って伝搬し、当該光の第2の部分が、当該干渉配置を介して第2の異なる光学経路に沿って伝搬するようにすることで、干渉配置の反射面と回折格子との間の分離に応じて決まる、第1及び第2の光学経路の間の光学経路差を生じさせる光源と、
各干渉配置について、当該光学経路差に応じて、光の当該第1及び第2の部分によって生成された干渉パターンの少なくとも一部を検出するように配置された各組の1つ以上の光検出器と、
光源と回折格子との間の光を少なくとも部分的にコリメートするように配置されたコリメート光学配置と、を備え、
干渉配置又は各干渉配置について、反射面又は回折格子がゼロ変位位置にあるとき、回折格子は、光の各第1の部分が、回折格子と反射面との間で光学経路長Lに沿って進行するような距離、反射面から間隔をあけ、
回折格子又は各回折格子は、干渉配置又は各干渉配置について、格子周期p及び光学経路長Lが以下の関係
【数1】
を
【数2】
20%以内まで満たすような、格子周期pの周期回折格子を含み、式中、nは整数であり、
式中、T
zは、以下のように規定されるタルボット長であり、
【数3】
式中、λは、光の波長である、光学変位センサを提供する。
【0006】
本出願人は、回折格子を利用した光学変位センサにおいて、回折により著しい量の光が失われ、光学変位センサの性能を損ない得る(例えば、感度を低下させる)ことを認識してきた。回折格子により、光を異なる回折次数に対応した別個のチャンネルに分離させて、反応面と回折格子との間の分離に対応する信号(例えば、差分信号)を生成することが可能になり、通常は、一部の光が光検出器によって最終的に収集されないような方向に回折され、例えば、回折格子と反射面との間の空隙における複数回の反射と吸収のために損失され得る。本出願人は更に、回折格子に衝突するのに先立って、光を少なくとも部分的にコリメートすることにより、及び、格子周期p及び光学経路長Lが各格子について数式1の関係を満たすように光学変位センサを構成することにより、この損失が改善され得ることを認識している。
【0007】
平面波が周期格子によって回折されるときに生じる回折パターンの特性により、数式1の関係でこれらの損失が改善される。平面波が周期格子により回折されるとき、格子の面から一定距離離れて、格子の画像が反復される反復パターンが生成される。一定距離は、タルボット長Tzである。タルボット長の半分、及びタルボット長の半分の奇数倍で、回折光は格子画像となるが、画像は、格子周期の半分、横方向に移動される。
【0008】
本発明によると、光学経路長Lは、光の第1の部分が衝突し、格子によって回折された後、回折面によって反射された後に格子に再び衝突するのに先立って、合計距離2L、伝搬するようにする。
【0009】
数式1の関係によると、2Lは、タルボット長の整数倍に対応し、これは、回折された第1の光部分における格子の反復自己画像が実際の回折格子の位置と一致していることを意味する。これにより、回折格子を介してより多くの光を連結させ(すなわち、格子によって光検出器に向かって透過又は反射され)、光検出器に伝搬できるようにし、ここで検出信号に寄与する。
【0010】
本出願人はまた、2Lがタルボット長の半分の奇数倍に対応するとき、同様の利点が得られることも認識している。したがって、第2の態様から見ると、本発明は、光学変位センサであって、
反射面と、
反射面から間隔をあけた1つ以上の回折格子であって、回折格子又は各回折格子は、反射面とともに、各干渉配置を規定し、i)反射面又はii)回折格子若しくは各回折格子のいずれかが、互いに対して移動可能である、1つ以上の回折格子と、
当該干渉配置に光を提供するように配置されることで、各干渉配置について、当該光の第1の部分が、干渉配置を介して第1の光学経路に沿って伝搬し、当該光の第2の部分が、当該干渉配置を介して第2の異なる光学経路に沿って伝搬するようにすることで、干渉配置の反射面と回折格子との間の分離に応じて決まる、第1及び第2の光学経路の間の光学経路差を生じさせる光源と、
各干渉配置について、当該光学経路差に応じて、光の当該第1及び第2の部分によって生成された干渉パターンの少なくとも一部を検出するように配置された各組の1つ以上の光検出器と、
光源と回折格子との間の光を少なくとも部分的にコリメートするように配置されたコリメート光学配置と、を備え、
干渉配置又は各干渉配置について、反射面又は回折格子がゼロ変位位置にあるとき、回折格子は、光の各第1の部分が、回折格子と反射面との間で光学経路長Lに沿って進行するような距離、反射面から間隔をあけ、
回折格子又は各回折格子は、干渉配置又は各干渉配置について、格子周期p及び光学経路長Lが以下の関係
【数4】
を
【数5】
の20%以内まで満たすような、格子周期pの周期回折格子を含み、式中、mは奇数の整数であり、
式中、T
zは、以下のように規定されるタルボット長であり、
【数6】
式中、λは、光の波長である、光学変位センサを提供する。
【0011】
数式3の関係によると、2Lは、タルボット長の半分の奇数倍に対応し、これは、回折された第1の光部分における格子の反復自己画像が、実際の回折格子と一致するものの、格子周期の半分、横方向に移動されることを意味している。これにより、大部分の光が、回折格子から反射面に向かって戻るように反射され、反射面ではその後、光を回折格子に再び戻すように反射し、すなわち、光は、距離2Lでもう一往復するようにする。この光が回折格子に再び衝突するとき、光は、回折格子と反射面との間で合計距離4L、すなわち、2往復したこととなる。この場合、数式3の関係によると、4Lは、タルボット長の整数の数に対応する。したがって、2往復後の回折された第1の光部分における格子の反復自己画像は、実際の回折格子の位置と一致する。これにより、回折格子を介してより多くの光を連結させ(すなわち、格子によって光検出器に向かって透過又は反射され)、光検出器に伝搬できるようにし、ここで検出信号に寄与する。この構成は、反射面と回折格子との間の空隙で光が2往復するため、反射面又は回折格子の移動に対する光学変位センサの感度を2倍にし得るという、追加の効果を提供し得る。
【0012】
これは、光の伝搬角度が格子面に亘る位置とともに変動しない(又は、光が少なくとも部分的にコリメートされなかった場合に比べて、変動が少ない)ことを意味するため、光のコリメートは、この効果に寄与する。結果として、回折格子と反射面との間の垂直方向の所与の分離について、光学経路長Lもまた、回折格子の表面に亘って変動せず(又は、変動が少なく)、これは、数式1又は数式3の関係が回折格子表面に亘る全ての、又は実質的に全ての位置で満たされ、光損失の低減に寄与し得ることを意味する。
【0013】
数式1の関係は、光損失の低減の利点が著しく有用な程度に提供されるように、精密に満たされる必要はないことが理解されなければならない。本出願人は、光学経路長Lが式1を
【数7】
の20%のマージン以内まで満たす場合、有用な光損失低減が達成可能であることを見出している。一連の実施形態において、格子周期p及び光学経路長Lは、数式1の関係を
【数8】
の15%以内まで満たす。
【0014】
数式3の関係は、光損失の低減の利点が著しく有用な程度に提供されるように、精密に満たされる必要はないことが理解されなければならない。出願人は、光路長Lが式3を
【数9】
の20%のマージン以内まで満たす場合、光損失の有用な低減を達成することができることを見出した。一連の実施形態において、格子周期p及び光学経路長Lは、数式3の関係を
【数10】
の15%以内まで満たす。
【0015】
光学変位センサは、メンブレンを備えることが好ましく、反射面は、メンブレンの表面を含むか、又はメンブレンの表面上に設けられる。
【0016】
反射面が回折格子に対して移動可能である実施形態において、反射面は、可動部材内又は可動部材上に設けられてもよく、又は可動部材の一部を含んでもよい。回折格子は、例えば、光源及び光検出器に対して固定されてもよく、光学変位センサは、基板を備えてもよく、回折格子は、基板内又は基板上に設けられてもよく、又は基板の一部を含んでもよい。
【0017】
回折格子又は各回折格子が反射面に対して移動可能である実施形態において、回折格子は、可動部材内又は可動部材上に設けられてもよく、又は可動部材の一部を含んでもよい。反射面は、例えば、光源及び光検出器に対して固定されてもよく、光学変位センサは、基板を備えてもよく、反射面は、基板内又は基板上に設けられてもよく、又は基板の一部を含んでもよい。
【0018】
非限定的な例として、可動部材は、メンブレン又は(例えば、加速度計又は受振器における)プルーフマスであってもよい。
【0019】
「反射面」の文脈において、反射とは、表面が少なくとも部分的に反射性を備えることを意味するものの、例えば、光学変位センサの特定の構成に応じて、それは実質的に、又は完全に反射性を備えてもよいことが理解されなければならない。
【0020】
回折格子又は各回折格子は、周期格子を含むと言われるとき、これは、回折格子又は各回折格子が1組の等間隔の平行格子線を含むことを意味するものと理解されなければならない。複数の回折格子が設けられる場合、各回折格子は、各平面内に据えられることが好ましく、格子の全ての平面は、互いに平行である。より一般的には、回折格子又は各回折格子は、反射面の平面に対して平行な平面内に据えられて、反射面及び回折格子の相対的移動が上記平面と直交するようにするのが好ましい。このことにより、移動中の反射面又は回折格子の僅かな変位のために生じる、平面からのあらゆるブレが無視されることが理解されなければならない。
【0021】
回折格子又は各回折格子は、回折格子の光源に対向する側に衝突する光のために、格子線が例えば、格子線間の領域に対して、高い反射率を有するように製造されることが好ましい。これは、高い回折効率の提供に役立ち得る。
【0022】
数式1による関係が適用される実施形態において、格子線は、回折格子の反射面に対向する側に衝突する光のために、低い反射率を有することが好ましく、例えば、回折格子の光源に対向する側に衝突する光のために、回折格子の反射率に対して低いことが好ましい。このことは、回折格子と反射面との間の間隙における光の複数の内部反射を低減するのに役立ち、このことは、例えば、上述のとおり、数式1が適用される本発明の第1の態様において提供される利点を増加させることにより、光学変位センサの性能を向上するのに役立ち得る。
【0023】
数式3に係る関係が適用される実施形態において、格子線は、回折格子の反射面に対向する側に衝突する光のために、例えば、格子線間の領域に対して高い反射率を有することが好ましい。このことは、1回目の往復後に反射面に向かって戻るように光を反射するのに役立ち、この光が回折格子と反射面との間で2回目の往復を行うようにし得る。このことは、例えば、以上に検討のとおり、数式3が適用される本発明の第2の態様において提供される利点を増加させることにより、光学変位センサの性能を向上するのに役立ち得る。
【0024】
上述の高反射率特性及び低反射率特性は、好適なコーティング(例えば、多層コーティング、反射防止コーティング等)又は、例えば、格子線及び/又は格子線間の領域に施されるその他の表面処理(例えば、反射防止処理)によって提供されてもよい。
【0025】
光の波長λは、光源によって生成される波長の有限スペクトルを特徴付ける波長であってもよい。例えば、この波長は、光の波長スペクトルのピーク波長又は中心波長であってもよい。
【0026】
この文脈において「ゼロ変位位置」とは、反射面又は回折格子が、仮に、設計上測定の対象である、結果としての外力に晒されなかった場合にとる平衡位置を意味する。
【0027】
コリメートを行う光学配置は、単一の光学要素を備えてもよく、又は複数の要素を備えてもよい。
【0028】
本明細書中に使用される用語である「光検出器」は、具体的な光検出器デバイス(例えば、光ダイオード)に限定されるものでなく、その1つを超える数の領域に入射する光を別個に検出するデバイス、例えば、CCDであってもよく、この場合、異なる画素又は画素の領域が、各々、入射する到来光に対する別個の信号を提供する。
【0029】
一連の実施形態において、光学変位センサは、少なくとも2つの回折格子を備える。光学経路長Lは、各回折格子につき異なってもよく、例えば、以下に検討するとおり、これは、各回折格子と反射面との間に、各回折格子で異なる垂直光学経路長が存在するように、光学変位センサを構成することによって達成されることが好ましい。このような配置により、例えば、WO2014/202753に記載のとおり、光学変位センサの動的範囲を有利に拡張させてもよい。異なる光学経路長によって異なる位相オフセットを提供し、結果として、相対的位相オフセットを備えた複数の光学信号を生じる。光学測定を提供するために信号を組み合わせることで、光学変位センサの動作範囲を拡張することができる。
【0030】
一連の実施形態において、各回折格子と反射面との間には、各回折格子で異なる垂直光学経路長が存在する。垂直光学経路長の差は、反射面に対して異なる高さオフセットで回折格子を位置決めすることによって、例えば、段差形状を有する基板上に回折格子を設けることによって、設けられてもよい。異なる高さオフセットは、基板内の異なる深さにエッチングされた窪みによって設けられてもよく、この場合、例えば、回折格子は窪み内に設けられる。垂直光学経路長の差は、反射面の異なる高さ(例えば、段差形状又はエッチングされた窪み)の領域によって設けられてもよく、この場合、例えば、反射面が固定され、回折格子が反射面に対して移動する。したがって、反射面は、単一の平面状表面である必要はなく、例えば、複数の領域又はファセットを備えてもよく、例えば、各々、格子を有する可動部材に対して異なる高さオフセットを有することが理解されなければならない。しかしながら、光学経路長の差が回折格子と反射面との間の物理的距離の差によって設けられることは必須でない。光学経路長の差は、非平面的外径を有する基板を必ずしも必要とすることなく、例えば、光学遅延フィルムを使用するなど、他のやり方で設けられてもよい。
【0031】
反射面は単一の平面状表面である必要はないが、例えば、複数の領域又はファセットを備えてもよく、これは、表面が分離した、独立に移動可能な表面を含んでもよいことを含意するものでないことが理解されなければならない。例えば、反射面は、共通の可動部材(例えば、メンブレン)の一部上に設けられてもよく、又は共通の可動部材の一部を形成してもよく、又は回折格子が共通の可動部材(例えば、メンブレン)上に設けられてもよい。
【0032】
一連の実施形態において、ゼロ変位位置にて、反射面は、少なくとも15μmの垂直距離、回折格子又は各回折格子から分離する。
【0033】
1を超える数の回折格子を有する実施形態において、格子周期pは、各回折格子で同一であることが好ましい。位相オフセットを導入することが求められる高さオフセットは、通常、非常に小さい(例えば、波長のスケールである)ため、格子の全てが、高さオフセットによって与えられる位相オフセットであっても、前述のマージン内で数式1又は数式3の上記の関係を満足することができる。例えば、反射面と格子との間の典型的なゼロ変位間隔は、30μm~40μmの範囲内であってもよく、又は30μmを超えてもよく、例えば、40μmを超えてもよい。このことが、減衰の低減に有利に役立ってもよい。対応する格子周期(例えば、30μm~40μmの範囲に対応する)は、5μm~6μmの範囲内であってもよく、これにより、例えば、850nmの波長にて、好適な回折角度を提供することができる。
【0034】
コリメート配置が少なくとも部分的に光をコリメートすると言われるとき、これは、コリメート光学配置を出る光が、コリメート光学配置に衝突する光よりも小さなビーム角を有することを意味する。ビームは収束又は発散してもよく、すなわち、ビーム角は、ビームが収束又は発散する角度を指してもよい。コリメート光学配置は、光を完全、又は実質的に完全にコリメートすることで、例えば、コリメート後の光のビーム角が10°未満、例えば、5°未満、例えば、2°未満、例えば、1°未満、例えば、0.5%未満、例えば、0.1%未満となるようにしてもよい。一連の実施形態において、コリメート光学配置は、レンズであるか、又はレンズを備える。
【0035】
上に述べたとおり、回折格子又は反射面は、(例えば、基板の表面を備える)基板内又は基板上に設けられて(例えば、付着又はエッチングされて)もよい。いくつかの実施形態において、回折格子又は反射面は、基板の第1の側に設けられ、反射面及び回折格子が互いに対向するようにし、コリメート光学配置は、基板の第2の側に設けられ、光源に対向する。いくつかの実施形態において、回折格子又は反射面は、第1の基板内又は第1の基板上に設けられてもよく、コリメート光学配置は、光源と第1の基板との間で第2の基板上に設けられてもよい。コリメート光学配置は、光源の表面に設けられてもよく、例えば、光源は、後方発光VCSEL(すなわち、発光器がVCSELの背面に位置決めされ、前面を通じてVCSELを出るように光を放出する)であってもよく、この場合、コリメート光学配置は、その発光(すなわち、前)面上に設けられて(例えば、エッチングされて)もよい。
【0036】
干渉配置は、回折格子が光源と反射面との間に位置決めされるように構成されてもよい。光検出器は、干渉配置のうち、光源と同一の側に、例えば、光源に隣接して設けられてもよい。光源及び光検出器は、共通のオプトエレクトロニクス基板上に設けられてもよい。干渉配置は、反射面が光源と回折格子との間に位置決めされるように構成されてもよい。光検出器は、干渉配置のうち、光源の反対側に、例えば、回折格子に対向して設けられてもよい。
【0037】
基板は、任意の好適な材料、例えば、シリコン又はガラスで作成されてもよい。
【0038】
光源は、レーザ、例えば、垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)、例えば、後方発光VCSELを備えてもよい。VCSELは、その表面上に、1つ以上の光学要素(例えば、コリメート光学配置及び/又はビーム分離光学配置)を備えてもよい。
【0039】
一連の実施形態において、光学変位センサは、2つ以上の回折格子を備え、
a)各回折格子は、各格子線方向に延びる1組の平行格子線を含み、上記1組の回折格子における各回折格子の格子線方向は、上記組における他の各回折格子の格子線方向とは異なり、かつ/又は、
b)光学変位センサは、光を2つ以上のビームに分離するように配置されたビーム分離光学配置を備え、2つ以上のビームを、各々、回折格子のうちの各1つずつに方向付ける。
【0040】
これ自体が、新規かつ進歩的であるため、本発明の第3の態様から見ると、光学変位センサであって、
反射面と、
反射面から間隔をあけた2つ以上の回折格子であって、各回折格子は、反射面とともに、各干渉配置を規定し、i)反射面又はii)回折格子のいずれかが、互いに対して移動可能である、2つ以上の回折格子と、
当該干渉配置に光を提供するように配置されることで、各干渉配置について、上記光の第1の部分が、干渉配置を介して第1の光学経路に沿って伝搬し、上記光の第2の部分が、干渉配置を介して第2の異なる光学経路に沿って伝搬するようにすることで、干渉配置の反射面と回折格子との間の分離に応じて決まる、第1及び第2の光学経路の間の光学経路差を生じさせる光源と、
各干渉配置について、当該光学経路差に応じて、光の当該第1及び第2の部分によって生成された干渉パターンの少なくとも一部を検出するように配置された各組の1つ以上の光検出器と、
光源と回折格子との間の光を少なくとも部分的にコリメートするように配置されたコリメート光学配置と、を備え、
a)各回折格子は、各格子線方向に延びる1組の平行格子線を含み、上記1組の回折格子における各回折格子の格子線方向は、上記組における他の各回折格子の格子線方向とは異なり、かつ/又は、
b)光学変位センサは、光を2つ以上のビームに分離するように配置されたビーム分離光学配置を備え、2つ以上のビームを、各々、回折格子のうちの各1つずつに方向付ける。
【0041】
本発明の第1及び/又は第2の態様に係る一連の実施形態において、光学変位センサは、2つ以上の回折格子を備え、光源は、光が複数の光ビームとして提供されるように複数の光源要素を備え、各光源要素は、上記ビームのうちの各1つずつを提供し、各光ビームを、回折格子の各1つずつに方向付ける。このような実施形態にはまた、上の提示のとおり、特徴a)も設けられてよい。
【0042】
これ自体が、新規かつ進歩的であるため、本発明の第4の態様から見ると、光学変位センサであって、
反射面と、
反射面から間隔をあけた2つ以上の回折格子であって、各回折格子は、反射面とともに、各干渉配置を規定し、i)反射面又はii)回折格子のいずれかが、互いに対して移動可能である、2つ以上の回折格子と、
当該干渉配置に光を提供するように配置されることで、各干渉配置について、上記光の第1の部分が、干渉配置を介して第1の光学経路に沿って伝搬し、上記光の第2の部分が、干渉配置を介して第2の異なる光学経路に沿って伝搬するようにすることで、干渉配置の反射面と回折格子との間の分離に応じて決まる、第1及び第2の光学経路の間の光学経路差を生じさせる光源と、
各干渉配置について、当該光学経路差に応じて、光の当該第1及び第2の部分によって生成された干渉パターンの少なくとも一部を検出するように配置された各組の1つ以上の光検出器と、
光源と回折格子との間の光を少なくとも部分的にコリメートするように配置されたコリメート光学配置と、を備え、
光源は、光が複数の光ビームとして提供されるように、複数の光源要素を備え、各光源要素は、上記ビームのうちの各1つずつを提供し、光の各ビームを、回折格子のうちの各1つずつに方向付ける、光学変位センサを提供する。
【0043】
複数の光源要素は、アレイに配列されてもよい。光源は、複数の発光器を備えた(すなわち、複数の発光器の1つずつが光源要素のうちの1つである)垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)を備えてもよい。光源は、前方発光VCSEL又は後方発光VCSELを備えてもよい。VCSELは、その表面上に1つ以上の光学要素(例えば、コリメート光学配置)を備えてもよい。光源要素は、独立して(例えば、個別に、又はサブグループごとに)動作可能であってもよい。これにより、例えば、光学変位センサの電力削減モードでの動作を可能にしてもよい。
【0044】
コリメート光学配置は、複数の光ビームのうちの各ビームを少なくとも部分的にコリメートするように配置されてもよく、例えば、コリメート光学配置は、複数のコリメート光学要素を備えてもよく、上記コリメート光学要素は、各々、上記光ビームのうちの各1つずつを少なくとも部分的にコリメートするように配置される。第4の態様に係る実施形態にも、第3の態様との関連で上に提示したとおり、特徴a)が設けられてもよい。
【0045】
第1及び第2の態様の任意の特徴はまた、適用可能な場合、第3及び第4の態様の特徴であってもよい。
【0046】
ビーム分離光学配置は、単一の光学要素を備えてもよく、又は複数の要素を備えてもよい。ビーム分離光学配置は、ビームスプリッタ、例えば、回折ビームスプリッタであってもよく、又はこれを備えてもよい。ビーム分離光学配置は、屈折型であっても回折型であってもよく、例えば、ビーム分離光学配置は、回折格子であってもよく、又はこれを備えてもよい。
【0047】
ビーム分離光学配置は、ビームを、これらの各回折格子上に、又はこれらの各回折格子に対して方向付けてもよい。ビーム分離光学配置は、少なくとも部分的にビームをコリメートしてもよい。
【0048】
ビーム分離光学配置は、コリメート光学配置を備えてもよい。コリメート光学配置及びビーム分離光学配置は、少なくとも部分的に光をコリメートする機能、及び光を2つ以上のビームに分離する機能の両方を実施する単一の構成要素として形成されてもよい。ビームのコリメート及び分割に使用されてもよい要素の非限定的な例として、合成位相ホログラム要素と、複数のファセットを備えた屈折レンズが挙げられる。
【0049】
上に述べたとおり、回折格子又は反射面は、(例えば、基板の表面を備える)基板内又は基板上に設けられて(例えば、付着又はエッチングされて)もよい。いくつかの実施形態において、回折格子又は反射面は、基板の第1の側に設けられ、反射面及び回折格子が互いに対向するようにし、ビーム分離光学配置は、基板の第2の側に設けられ、光源に対向する。いくつかの実施形態において、回折格子又は反射面は、第1の基板内又は第1の基板上に設けられ、ビーム分離光学配置は、光源と第1の基板との間で第2の基板上に設けられる。
【0050】
ビーム分離光学配置は、光源の表面上に設けられてもよく、例えば、光源は、後方発光垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)であってもよく、この場合、ビーム分離光学配置は、その前面上に設けられてもよい(例えば、その前面内/上に一体形成されるか、その前面上に搭載されるか、又はその前面内にエッチングされてもよい)。例えば、ビーム分離光学配置は、光源の表面上に形成されたレンズ(例えば、ファセットレンズ)を備えてもよい。他の例として、ビーム分離光学配置は、光源の表面にエッチングされた回折格子を備えてもよい。
【0051】
光源の表面上にビーム分離光学配置を設けることで、様々な効果を提供してもよい。例えば、ウエハスケールでの光学変位センサの光学構成要素の配列をより容易にしてもよい。光学変位センサをよりコンパクトにしてもよい。構成要素の数がより少なくなるため、パッケージ(例えば、マイクロフォンハウジング)内への光学変位センサの組み込みをより容易にしてもよい。
【0052】
特徴a)及びb)のいずれか若しくは両方を提供すること、又は各々格子のうちの1つずつに方向付けたビームを提供する複数の光源要素を提供することは、各干渉配置を通過する光を空間的に分離させることで、異なる光検出器によってより容易に収集できるようにし、各回折格子で別個の信号を生成する技術的努力を提供するものである。
【0053】
特徴a)の場合、ビームは、少なくとも異なる向きの格子線の結果として空間的に分離する。ビームが周期回折格子に衝突するとき、生成される回折次数は、格子線に直交する方向に沿って空間的に分離する。したがって、ビームが格子線向きの異なる複数の回折格子に衝突するとき、これによって、複数組の回折次数(各格子ごとに1つずつ)を生成し、この場合、回折次数の各組が異なる平面内で空間的に分離する(したがって、これらの組の回折次数が互いから空間的に分離する)。光は、例えば、複数の格子に重なる領域に入射する光ビームとして、格子に垂直に衝突する。その場合、格子向きのみが、光を異なる組の回折次数を含む別個のチャンネルに分離させるように機能する。
【0054】
特徴b)の場合、光は、少なくとも光を複数のビーム(例えば、各回折格子ごとに1つずつ)に分離させるビーム分離光学配置により、空間的に分離する。複数の光源要素が複数のビームを提供する特徴の場合、光線は、空間的に分離した光源要素によって提供されることで、空間的に分離する。
【0055】
ビームは、例えば、ビーム分離光学配置に衝突する光のビーム軸に対して、例えば、各ビームが上記軸に対して一定角度で伝搬する場合、「軸外」と記載され得る。回折格子に衝突するビームが空間的に分離する際、格子によって生成されるこれらの組の回折次数も、空間的に分離する。
【0056】
ビームは、各回折格子が据えられる平面への法線に対して一定角度で、回折格子に衝突し得る。各ビームは、例えば、別個のコリメート光学配置により、又はビーム分離光学配置により、コリメートされるか、又は実質的にコリメートされてもよい。各ビームの伝搬の方向は、i)上記ビームの衝突する回折格子の格子線に対して平行であり、ii)上記回折格子の据えられる平面に直交する平面内にあることが好ましい。このような向きは、回折による光損失の低減に関連する、本発明の第1及び第2の態様の特徴の利点を提供するのに有利に役立ち得る。
【0057】
光学変位センサは、正確に2つの回折格子を有してもよい。正確に2つの格子を有する実施形態の文脈において、本明細書に記載のいずれの任意の特徴も、適用可能な場合、3つ以上の回折格子を含む実施形態の任意の特徴であり得る。
【0058】
一連の実施形態において、各ビームは、各回折格子が据えられる平面への法線に対して各入射角でその各回折格子に衝突し、この場合、各回折格子の入射角は、他の各回折格子の入射角とは異なる。
【0059】
一連の実施形態において、各ビームは、各回折格子の据えられる平面への法線に対して各入射角度でその各回折格子に衝突し、この場合、1組の上記回折格子における各回折格子に対する入射角は、上記組における他の各回折格子の入射角とは異なる。
【0060】
2つの入射角は、法線に対して同一の極角を有するものの異なる方位角を有するか、又は法線に対して同一の方位画を有するものの異なる極角を有するか、又は法線に対して異なる極角及び異なる方位角を有する場合、これらの入射角は互いに異なるとみなされ得ることが理解されなければならない。
【0061】
例えば、正確に2つの格子を有する実施形態の場合、格子は、同一の向きを有してもよく、格子線方向に平行な方向において互いから間隔をあけてもよい。各ビームは、同一の極角を有するものの方位角が180°異なる各入射角で、各格子に衝突し得る。
【0062】
一連の実施形態において、回折格子に衝突する光又は光ビームのビーム方向は、回折格子の平面に直交する。
【0063】
いくつかの実施形態において、各回折格子は、格子間の中心点から放射状に延びる1組の線のうちの1つの線に沿う向きとなる。「1つの線に沿う向き」とは、格子が上記線に重なり、上記線に対して平行なその格子線方向を有することを意味する。
【0064】
一連の実施形態において、光学変位センサは、N個の格子を備え、この場合、回折格子は、互いに対して(360°)/Nの角度又はその倍数の向きとなる。
【0065】
回折格子の向きとは、その格子線の向きを指すものと理解されなければならない。
【0066】
いくつかの実施形態において、干渉配置又は各干渉配置は、同一の格子周期及び同一の格子線方向を有し、同一の光学距離、反射面から分離する1対の回折格子を含み、この1対の回折格子がともに上記干渉配置に対応する同一組の1つ以上の光検出器に光を方向付けるように機能するようにする。
【0067】
一連の実施形態において、回折格子は、回転対称の複合回折格子中に配置される。例えば、回折格子は、セクタ、円の直径方向に対向する対のセクタ、又は三角形若しくは六角形、八角形、又は他の多角形における直径方向に対向する対の三角形を含んでもよい。回転対称とは、複合回折格子の軸周りの回折格子の位置を指すものであり、必ずしも格子の全ての特性を指すものでない(例えば、格子は、回転対称でないやり方で異なる高さオフセットを有してもよい)ことが理解されなければならない。
【0068】
以上に検討したようなこれら生成された回折次数の組の空間的分離により、例えば、ビーム分離光学配置を使用して、有利に、これら次数を光検出器により容易に方向付けることができる。
【0069】
一連の実施形態において、光学変位センサは、各干渉配置で第1及び第2の光部分を、上記干渉配置のために設けられた各光検出器に方向付けるように配置されたビーム操作光学配置を備える。
【0070】
ビーム操作光学配置は、1つ以上のビーム操作光学要素、例えば、1つ以上の屈折及び/又は回折光学要素を備えてもよい。
【0071】
ビーム操作光学配置は、複数のプリズム又は格子を含んでもよく、これらは、例えば、基板表面内にエッチングされてもよく、又は例えば、ポリマーを使用して基板表面上にパターニングされてもよい。
【0072】
一連の実施形態において、ビーム分離光学配置及びビーム操作光学配置は、共通の基板上に設けられる。例えば、ビーム操作光学配置は、例えば、ビーム分離光学要素付近に位置決めされた複数のビーム操作光学要素など、ビーム分離光学配置付近(例えば、周囲)に位置決めされてもよい。
【0073】
ビーム操作光学配置は、光検出器及び/又は他の構成要素の位置決めにおいて、更に高い自由度を有利に提供し得る。例えば、ビーム操作光学配置は、各々、各ビームを光検出器のうちの1つに方向付けるように構成された複数のビーム操作光学要素を備えてもよい。これは、特に、3つ、4つ、又はそれ以上の格子を有する実施形態において特に有用であり得る。各干渉配置に関連付けられた光検出器及びその他の構成要素は、他の干渉配置に関連付けられた光路に重なることを回避するため、十分な間隔で配置されることが好ましい。格子の数が多いほど、光検出器とその他の構成要素の載置のための空間がより限定されるため、このような場合には載置の自由度が高いほど役に立つ。
【0074】
ビーム操作配置は、上の特徴b)との組み合わせで提供されることが好ましいが、特徴a)及びb)の両方、又は特徴a)及び/又は複数の光源要素の特徴の組み合わせで提供されてもよい。光が格子に衝突する(例えば、ここで各ビームは、回折格子の表面法線に対して一定角度である)のに先立って光を複数のビームに分離することは、ビームを光検出器上へ向かって操作する際に有用となり得る、更なる自由度を有利に提供し得る。これは、例えば、光検出器及びその他の構成要素の位置決めにより大きな公差を許容することにより、光学変位センサ、特に、光検出器の配列をより容易にし得る。更に、特別な効果として、0次回折次数(これは、さもなければ、例えば、ソースに向かって真っ直ぐ戻されて方向付けられ得るもので、0次回折次数を受け取るために光検出器を位置決めすることは不可能である)の検出を可能にし得る。
【0075】
光が周期回折格子に衝突するとき、光は、格子線方向に直交する方向に分離して、中央回折次数(通常、0次又はゼロ次回折次数と称される)及び中央回折次数の各側の回折次数を含む複数の回折次数に回折されることが理解されるであろう。これら2つの次数は、第1の回折次数又は+1次及び-1次回折次数と称され得る。
【0076】
一連の実施形態において、1つ以上の光検出器の各組は、2つの光検出器を含み、上記光検出器は、+1次回折次数が上記光検出器のうちの第1の光検出器に衝突し、-1次回折次数が上記光検出器のうちの第2の光検出器に衝突するように配置される。
【0077】
このような光検出器の配置は、光が、回折格子への衝突に先立って分離する実施形態において提供されてもよく、この場合、光は、回折格子に直角に入射する。このような実施形態において、0次回折次数は、光源に戻さるように方向付けられ、+1次及び-1次の回折次数は、+1次及び-1次の回折次数が格子線方向に直交する方向において0次次数から空間的に分離するように、格子表面法線に対して一定角度で方向付けられる。この空間的分離は、+1次及び-1次の回折次数がソースの方向において戻るように伝搬しないことを意味し、このため光検出器が+1次及び-1次の回折次数を受け取るように好適に位置決め可能である。
【0078】
一連の実施形態において、1つ以上の光検出器の各組は、3つの光検出器を含み、この場合、上記光検出器は、+1次回折次数が上記光検出器のうちの第1の光検出器に衝突し、0次回折次数が上記光検出器のうちの第2の光検出器に衝突し、-1次回折次数が上記光検出器のうちの第3の光検出器に衝突するように配置される。
【0079】
このような光検出器の配置は、光が、回折格子への衝突に先立って分離する実施形態において提供されてもよく、この場合、光は、格子が据えられる平面への法線に対して一定角度で回折格子に衝突する。このような配置において、-1次、0次、及び+1次の回折次数は、通常、光源の方向に戻るように伝搬せず、互いから空間的に分離し、光検出器が-1次、0次、及び+1次の回折次数を受け取るように配置可能とする。これは、回折次数の特性のため、差分信号を有利に生成させ得る。配置における対称性のため、-1次及び+1次の回折次数の検出強度は、通常、同一であるが、0次次数は、差分信号を生成するために-1次及び/又は+1次の回折次数とともに使用可能な差分信号を提供する。これらの実施形態及び他の実施形態において、-1次及び+1次の回折次数からの信号は、単一の信号に統合されてもよく、例えば、-1次及び+1次の回折次数を受け取るように位置決めされた光検出器からの信号が積算されてもよい。
【0080】
本発明は、上述のとおり、光学変位センサを備えた光学マイクロフォン(及び、その他の種別の圧力センサ)に拡張される。しかしながら、本発明の範囲内で他の適用も可能である。本発明は、上述のような光学変位センサを含む加速度計又は受振器に及ぶ。より一般的には、光学変位センサは、2つの容量の流体間の圧力差、音響波、又は振動等、外的刺激の測定を提供し得る。
【0081】
以下、添付の図面を参照し、例示のみを目的として特定の好適な実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る光学変位センサの概略表現を示す。
【
図2】第1の実施形態に係る3つの回折格子を含む複合回折格子の図を示しており、これら3つの格子に対応する検出器の場所の表現を含む。
【
図3】単一の格子を有する光学変位センサの動作範囲を示すグラフを示す。
【
図4a】本発明に係る光学変位センサの第2の実施形態の概略正面図を示す。
【
図4b】
図4aに示される第2の実施形態の光学変位センサの概略側面図を示す。
【
図4c】
図4a及び
図4bに示される第2の実施形態の光学変位センサの概略平面図を示す。
【
図5a】本発明に係る光学変位センサの第3の実施形態の概略正面図を示す。
【
図5b】
図5aに示される第3の実施形態の光学変位センサの概略平面図を示し、光路を、それら光路が衝突する光学面とともに断面図で示す。
【
図5c】
図5a及び
図5bに示される実施形態の光学変位センサの例としての光検出器レイアウトの概略平面図を示す。
【
図6】第4の実施形態に係る光学変位センサの概略正面図を示す。
【
図7】第5の実施形態に係る光学変位センサの概略正面図を示す。
【
図8】第6の実施形態に係る光学変位センサの概略正面図を示す。
【
図9】第7の実施形態に係る光学変位センサの概略正面図を示す。
【0083】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光学変位センサ2を示す。本例において、光学変位センサ2は、光学マイクロフォンの一分を形成する。光学変位センサ2は、反射面を有し、周辺の音波に応じて振動するメンブレン4を備える。光学変位センサ2は、複合回折格子6を更に備えるが、これについては、
図2を参照して以下に詳細に説明する。光学変位センサ2は、光源8及び6つの検出器10を更に備え、検出器10のうちの2つは、
図1に示される図に見て取れる。光源8は、レンズ14を介して回折格子6上に光12を方向付けるように位置決めされる。光12は、ビーム角θ
vの光源から放出される。レンズ14は、光12をコリメートし、この光はその後、平面波として複合回折格子6に衝突する。
【0084】
本例及び以下に説明する他の具体的な実施形態においては、メンブレンの反射面が回折格子に対して移動するが、変形例及びその他の例においては、格子が固定の反射面(例えば、基板の表面)に対して移動してもよい。例えば、本実施形態における複合回折格子は、メンブレン上に製作可能である。いくつかの変形例及びその他の例においては、例えば、複数の格子がメンブレン上に付着される場合、光学遅延フィルムを使用して(例えば、以下に検討する高さオフセットの代わりに)光学位相オフセットが与えられてもよく、又は固定の反射面が高さオフセットを与えてもよく、例えば、反射面に窪みが設けられてもよい。
【0085】
音波の存在下においてはメンブレンが振動するため、メンブレンと複合回折格子との間の分離が変化する。
図1において、この分離は、間隙gとして示されている。メンブレンが音圧波に晒されていないときには、「ゼロ変位」位置において平衡分離で複合回折格子から間隔をあけており、これは、本例において、複合回折格子のタルボット長の半整数倍であり、すなわち、以下の数式を満たし、
【数11】
式中、nは整数であり、T
zは以下のように規定されるタルボット長であり、
【数12】
式中、λは光の波長であり、pは複合格子の格子周期である。数式7は、おおよそ以下のように表現可能である。
【数13】
【0086】
以上において、Lは、複合格子とメンブレンとの間を光が進行する光学経路長である。本例において、光は、複合格子に正常に入射するため、複合格子とメンブレンとの間を光が進行する光学経路長Lは、複合格子とメンブレンとの間の平衡分離と同一である。
【0087】
以上に検討したとおり、この光学経路長L(ひいては、メンブレンと複合格子との間の間隔)に関する条件により、回折による(例えば、メンブレンと複合格子との間の空隙における複数回の反射と吸収とによる)光の損失を低減する。以上の開示より、例えば、本実施形態において、光学経路長Lは、代わりに、数式3を満たしてもよく、これによっても回折による損失が低減されることが理解されるであろう。
【0088】
図2は、複合回折格子6を示す。この例において、複合回折格子6は、円形状を有し、6つのセクタに分割され、3つの回折格子を規定し、各々が各対の回折格子領域を備える。第1の回折格子14は、第1の回折格子領域14a、14bを備え、第2の回折格子16は、第2の対の回折格子領域16a、16bを備え、第3の回折格子18は、第3の対の回折格子領域18a、18bを備える。回折格子領域14a、14b、16a、16b、18a、18bは全て、同一の格子周期を有する。核回折格子14、16、18は、対応する対の検出器を有する。第1の回折格子14は、第1の対の検出器20a、20bに対応する。第2の回折格子16は、第2の対の検出器22a、22bに対応する。第3の回折格子18は、第3の対の検出器24a、24bに対応する。
【0089】
第1の回折格子14の回折格子領域14a、14bは、直径方向に(複合回折格子6の第1の直径に対して)互いに反対であり、各回折領域は、格子線が準放射状の向きとなるように、線形回折格子を含む。この文脈における準放射状とは、格子線が互いに平行であり、第1の直径に対して平行であることを意味するものとして使用される。第1の対の検出器20a、20bもまた、直径方向に(第1の直径に直交する複合回折格子の第2の直径に対して)互いに反対である。
【0090】
光12が複合回折格子に入射するとき、光の一部は、第1の回折格子14を照明する。光のこの部分のうちの第1の部分は、第1の回折格子14を透過し、メンブレン4によって反射された後、第1の回折格子14に再び入射する。第1の回折格子14は、光のこの第1の部分を透過させ、-1次、0次、及び+1次の回折次数を含む、複数の回折次数に回折する。第1の回折格子を照明する光の第2の部分は、第1の回折格子によって反射され、-1次、0次、及び+1次の回折次数を含む、複数の回折次数に回折される。
【0091】
各々の場合において、0次回折次数は、ソースに戻されて方向付けられる。-1次及び+1次の回折次数は、0次の次数に対して一定角度で第1の回折格子から現れるため、第1の回折格子の格子線と直交する方向において、0次回折次数から空間的に分離する。光検出器20a、20bは、-1次回折次数が一方の光検出器20aに入射し、+1次回折次数が他方の光検出器20bに入射するように位置決めされる。各場合において、入射光には、第1及び第2の部分からの光が含まれる。第1の光部分は、メンブレンと第1の回折格子との間の間隙を介して進行する一方、第2の部分はそうではないため、第1と第2の光部分の経路との間に、メンブレンの変位に応じて決まる、光学経路差が存在する。したがって、第1及び第2の部分は、各次数に回折される光の強度がメンブレンの変位に応じて決まるように干渉する。このため、光検出器20a、20bにて検出された-1次及び+1次の回折の強度を使用して、メンブレンの変位を判定することができる。
【0092】
第2及び第3の回折格子は、第1の回折格子に対して高さオフセットを有し、これについては、後に詳細に検討する。他の点では、第2の回折格子16と第2の対の検出器22a、22bの構造及び向きは、第1の回折格子14及び第1の対の検出器20a、20bと同一であるが、60°回転している。同様に、第3の回折格子18及び第3の対の検出器24a、24bは、第1の回折格子14及び第1の対の検出器20a、20bに対して120°回転している。各場合において、回折格子によって生じる回折次数は、格子線に直交する方向において分離していることで、異なる向きの回折格子が、各回折格子によって生じる回折次数を空間的に分離するように機能し、これらが異なる検出器に方向付けられるようにする。
【0093】
上述のとおり、3つの回折格子14、16、18は、相対的な高さオフセットを有する。これは、回折格子がメンブレンに対して間隔を有するには、回折次数に回折される光の強度がおおよそ線形になるためのメンブレン変位は相対的に小さな範囲のみを有することになる。結果を
図3に示す。
【0094】
図3は、干渉する光の透過部分及び反射部分の相対的回折効率を示している。上述のとおり、各格子14、16、18について、各検出器20a、20b、22a、22b、24a、24bは、-1次及び1次の次数の回折ピークを受けるように位置決めされる。しかしながら、他の次数が、追加的に又は代替的に検出されてもよく、例えば、他の実施形態において、-1次及び+1次に加えて0次が検出されてもよい。第1の線26は、0次のピークに対応する。第2の線28は、+1次のピークに対応する。
【0095】
図3に示されるとおり、0次及び+1次のピークの相対的回折効率は、メンブレンと格子との間の距離とともに正弦曲線上に変動し、ゼロ次及び1次のピークは逆位相となる。マイクロフォンの感度は、メンブレンの変位の所与の変化に対する出力信号の変化によって判定される。したがって、
図3より、最大感度は、線26、28が最大勾配を有し、おおよそ線形である動作範囲30内に発生することが見て取れる。
【0096】
したがって、各格子について、メンブレンの動きは、nが整数である(2n+1)λ/8のメンブレンと格子との間の距離に対応する作用点周辺の約±λ/16(約±50nmのメンブレン変位に対応する)の動作範囲30における高感度でのみ判定され得る。他の距離においては、低感度32の領域が存在する。結果として、1つの格子で検出可能な動的範囲は、限定される。したがって、光学変位センサ2において、3つの格子14、16、18は、異なる作用点に対応してメンブレンから僅かに異なる距離に設けられることで、より広範なメンブレン位置を網羅するようにし、ひいては光学マイクロフォンの動的範囲を拡張する。
【0097】
高さオフセットは、光の波長の規模であるため、好適なマージン以内まで相対的高さオフセットを備えた複数の格子について、数式5(又は数式3)が依然として満たされることが理解される。
【0098】
図4a~
図4cは、本発明に係る光学変位センサ34の第2の実施形態を示している。
図4aは、光学変位センサ34の概略正面図を示し、
図4bは、光学変位センサ34の概略側面図を示し、
図4cは、光学変位センサ34の概略平面図を示す。
【0099】
光学変位センサ34は、メンブレン36、第1の透明基板38、第2の透明基板40、及びオプトエレクトロニクス基板42を含む。2つの回折格子44、46は、第1の透明基板38のメンブレン36に対向する側に製造される。第2の透明基板40は、ビーム分離光学配置48、及びビーム分離配置48を包囲するビーム操作光学配置50を備える。この例におけるビーム分離配置48は、(他の配置が使用されてもよいが)複数のファセットを備えたレンズの形態にあり、その結果、コリメータの機能も提供するようにする。この例におけるビーム操作光学配置50は、他の配置が可能であるが、基板面となるようにエッチングされた複数のプリズムを備える。オプトエレクトロニクス基板42は、光源52を備え、この例においては、垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)及び6つの光検出器54a、54b、54c、56a、56b、56c(これらのうちの2つが
図4a中に見て取れる)である。
【0100】
VCSELは、コリメートされていない光58を軸60に沿ってビーム分離配置48に方向付けるように配置される。ビーム分離配置48は、コリメートされていない光58を2つの別個のコリメートされたビーム62、64に分離及びコリメートし、コリメートされていない光58の軸60に対して一定角度で伝搬して、各ビーム62、64を回折格子44、46のうちの各1つに方向付けられるようにする。各ビーム62、64は、
図1を参照して上述したのと同一のやり方で、各格子44、46及びメンブレン36と相互作用する。すなわち、第1の部分62a、64aは、メンブレン36により格子44、46まで反射されるように格子44、46を通過した後、格子44、46により透過されて、-1次、0次、1次の回折次数66a、66b、66c、68a、86b、68cに回折される。第2の部分62b、64bは、反射され、格子36によって-1次、0次、及び1次の回折次数66a、66b、66c、68a、68b、68cに回折される。
図4cに見て取れるとおり、-1次及び+1次の回折次数66a、66c、68a、68cは、0次回折次数66b、86bから分離し、-1次、0次、及び+1次の次数66a、66b、66c、68a、86b、68cが各回折格子44、46の格子線に直交する方向に沿って空間的に分離するようにする。
【0101】
ビーム分離配置48は、2つのビーム62、64を軸60に対して一定角度で伝搬させるため、戻ってくる光の回折された第1及び第2の部分(すなわち、-1次、0次、及び+1次の次数)66a、66b、66c、68a、86b、68cも軸60に対して一定角度で伝搬する。これは、-1次、0次、及び+1次の次数66a、66b、66c、68a、86b、68cがビーム分離配置48に対して横方向に変位した領域で第2の透明基板40を通過し、これらがビーム操作光学配置50を通過するようにすることを意味する。ビーム操作光学配置50は、-1次、0次、及び+1次の次数66a、66b、66c、68a、86b、68cを屈折させ、各ビームの各回折次数が光検出器54a、54b、54c、56a、56b、56cのうちの1つに衝突するようにこれらを再度方向付ける。
【0102】
回折格子44、46と組み合わせたビーム分離配置48の配置により、6つの回折格子全て(すなわち、各ビームからの-1次、0次、及び1次の次数)を空間的に分離させ、これらがビーム操作光学配置50によって各光検出器54a、54b、54c、56a、56b、56c上に操作可能となるようにする。次に、光検出器54a、54b、54c、56a、56b、56cで検出された信号を使用して、各ビームに対する(すなわち、各回折格子に対応する)差分信号を生成することができる。
【0103】
2つの回折格子44、46は、
図3を参照して上述したもの同様に、光学変位センサ34の操作範囲を拡張するために、相対的な高さオフセットを有する(すなわち、各ビームに対する信号がメンブレン36の異なる作用点に対応するようにする)。この例において、メンブレン36と格子44、46との間に間隔をあけることは、各光ビームに対する格子44、46からメンブレン36までの光学経路長がタルボット長の半整数倍となるように(上述のとおり、好適な範囲内となるように)されるが、これは必須ではなく、他の実施形態及び本実施形態の変形例がこの特徴を備えずに提供されてもよい。
【0104】
図5a及び
図5bは、各々、本発明に係る光学変位センサ70の第3の実施形態の概略正面図と概略平面図とを示している。
図5aの実施形態は、光学変位センサ70が3つの格子と、3つの対応する組の光検出器とを備える以外は、
図4a~
図4cの実施形態と同様である。明確さのため、1つのみの格子と、1組のみの光検出器を
図5a及び
図5bに示している。他の2つの格子と光検出器の組の載置については、
図5b及び
図5cを参照して以下に検討する。
【0105】
光学変位センサ70は、メンブレン72、第1の透明基板74、第2の透明基板76、及びオプトエレクトロニクス基板78を含む。
図5a及び
図5bは、第1の透明基板74のメンブレン72に対向する側に製造された第1の回折格子80を示している。第2の透明基板76は、ビーム分離配置82と、ビーム分離配置82を包囲するビーム操作光学配置84とを備える。この例におけるビーム分離配置82は、コリメータの機能も提供するように複数のファセットを備えたレンズの形態であるが、他の配置も可能である。この例におけるビーム操作光学配置84は、基板表面となるようにエッチングされた複数のプリズムを備え、各プリズムは、光検出器のうちの1つにビームのうちの各1つを回折するように構成されるが、他のビーム操作光学配置も可能である。オプトエレクトロニクス基板78は、光源86を備え、これは、本例において、垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)である。
図5bは、3つの光検出器88a、88b、88c(このうちの1つを
図5a中に見て取れる)のうちの1つのセットを示している。
【0106】
図5aに示されるとおり、VCSEL86は、ビーム角θ
Lである、コリメートされていない光90を放出する。コリメートされていない光90は、ビーム軸92に沿って方向付けられる。ビーム分離配置82は、コリメートされていない光90を分離し、3つの分離した、実質的にコリメートされたビームにコリメートし、このうちの第1のビーム94が
図5aに示されている。第1のビーム94は、第1の格子表面に直交し、かつ、第1の格子80の格子線に対して平行な平面において、ビーム軸92への角度θ
Bで第1の回折格子80まで伝搬する。
【0107】
第1のビーム94の第1の部分96は、第1の回折格子80を通過し、メンブレン72から反射される。次いで、反射された第1の部分は、回折格子80を戻るように通過し、ここで-1次、0次、及び1次の回折次数に回折される。第1のビーム94の第2の部分98は、第1の格子80によって反射され、ここで、第2の部分98を-1次、0次、及び1次の回折次数に回折する。回折次数は、第1の格子80の格子線方向に直交する方向において、空間的に分離する。ビーム操作光学配置84は、-1次、0次、及び+1次の回折次数の各々を、光検出器88a、88b、88cのうちの各1つずつに方向付ける。第1及び第2の部分96、98の回折次数は、光検出器88a、88b、88cで干渉することで、各光検出器88a、88b、88cにおいて検出される光の強度が第1の格子80とメンブレン72との間の分離に応じて決まるようにする。したがって、メンブレン位置が変動する際、検出された光の強度を使用して、メンブレンの変位を判定することができる。
【0108】
以上に検討したとおり、ビーム分離配置82は、コリメートされていない光90を3つのビームに分割する。第1のビーム94に加えて、第2のビーム及び第3のビームが生成される。各第2及び第3の回折格子を使用して、第2及び第3のビームから各-1次、0次、及び+1次の回折次数を生成し、これらを、第1の格子との関連で上述したのと同一のやり方で、各光検出器上に方向付けられる。
【0109】
図5bは、平面図において見たときの、VCSEL86、ビーム分離配置82、第1の格子80、ビーム操作光学配置84(0次の回折次数を対応する光検出器上に方向付けるように構成される)のビーム操作要素100、及び光検出器88a、88b、88cが占める領域の相対位置を示す。点線の円102は、0次の回折次数に対するこれらの各要素に衝突するビームの領域を示す。各場合におけるビーム幅は、それが衝突する要素の領域よりも小さいことが見て取れるが、これは、エッジ回折効果を回避するためである。
【0110】
図5bから、VCSEL86及びビーム分離配置82とは別に、残りの要素が円の120°セクタ103内に位置決めされることも見て取れる。これら残り2つの回折格子と、対応するビーム操作要素と、光検出器の組(
図5b中には図示せず)は、同様に、
図5bに示されるセンサに対して120°及び240°回転された120°セクタ内に位置決めされることで、これら3つのセクタがともに、平面視において円を形成するようにし、ここで円には、光学変位センサ70の要素のうちの全てが含まれる。
【0111】
図5cは、
図5a及び
図5bに示される実施形態の光学変位センサ70に対する例としての光検出器レイアウトの概略平面図を示す。レイアウトは、3倍の回転対照を有することで、3組の光検出器104、106が設けられるようにし、各組が、点線破線で示される円110内の3つの120°セクタ108内のうちの1つに含まれる。実線で描かれた光検出器104は、各格子から0次の回折次数を受け取るように位置決めされる。点線で描かれた光検出器106は、-1次及び+1次の回折次数を受け取るように位置決めされる。
【0112】
図5a及び
図5bの例において、これら3つの格子は、相対的な高さオフセットを有し、メンブレンに対する複数の作用点を提供するようにし、
図3を参照して上述したのと同様のやり方で、マイクロフォンの動的範囲を広げる。
【0113】
この例において、必須ではないものの、メンブレンと回折格子との間の分離は、各仮説格子に対して第1の光部分が進行する光学経路がタルボット長の半整数倍(上で検討したとおりの好適なマージン以内まで)となるように選択されることで、光損失の低減に関連して以上に検討した効果を提供する。
【0114】
図6は、第4の実施形態に係る光学変位センサ112の概略正面図を示す。第4の実施形態は、
図4a~
図4cの実施形態の変形例とみなされ得るが、他の実施形態において、例えば、
図5a~
図5cの実施形態において、同一又は同様の変形例が提供されてもよい。
【0115】
光学変位センサ112は、メンブレン114と、2つの回折格子116とを備える。回折格子116は、メンブレンとともに、各々、各干渉配置118を形成する。
【0116】
メンブレン112及び回折格子114は、基板120の上方に支持される。(明確さのため、メンブレン114及び回折格子116を支持する支持構造は、
図6中には示されていない。)VCSEL122及び6つの光検出器124(そのうちの2つは、
図6中に見て取れる)が、基板120上に設けられる。
【0117】
本実施形態において、VCSEL122は、2つの発光器126を備えた後方発光VCSELである。2つのプリズム128は、VCSEL122の前(発光)面に形成される。レンズ130を含むコリメート光学配置は、VCSEL122と回折格子116との間に位置決めされる。
【0118】
動作中、発光器126は、各々、各光ビーム132を放出する。各ビームは、プリズム128のうちの1つを通過する。プリズム128は、ビーム132を、レンズ130のうちの各1つずつ上に方向付け、ここでビーム132をコリメートする。次いで、ビーム132は、回折格子116のうちの各1つずつに衝突する。
【0119】
ビーム132は、各々、
図1、
図4a、及び
図5aを参照して上述したのと同一のやり方で、各格子116及びメンブレン114と相互作用し、すなわち、第1の部分は、メンブレン114によって反射して格子116に戻されるように各格子116を通過した後、格子116を透過し、各々、検出器124のうちの各1つずつに衝突する-1次、0次、及び1次の回折次数に回折される。第2の部分は、各格子116によって反射され、-1次、0次、及び1次の回折次数に回折され、これらは、各々、検出器124のうちの各1つずつに衝突し、ここで対応する第1の部分と干渉し、結果として得られた信号が検出器によって測定される。
【0120】
したがって、本実施形態は、ビーム分離光学配置を使用して単一の光源からの単一のビームを分離させるのではなく、複数の光源(すなわち、発光器126)を使用して、分離したビームを提供する点で、
図4a~
図4cの実施形態から変化している。加えて、この特定の例においては、操作機能を提供するVCSEL面上にプリズム124を備え、ビーム132をレンズ130に方向付けるが、これは本実施形態、又は他の任意の実施形態の必須の特徴ではない。
【0121】
図7は、第5の実施形態に係る光学変位センサ134の概略正面図を示す。本実施形態も、
図4a~
図4cの実施形態の変形例である。光学変位センサ134は、あらゆる点で
図6の光学変位センサ112と同一であり、同様に動作する。しかしながら、光ビームを格子上に方向付けるやり方が異なる。
【0122】
光学変位センサ134は、メンブレン136と、基板140の上方に位置決めされた2つの回折格子138とを備え、基板140上には、VCSEL142と6つの光検出器144が搭載される。VCSEL142は、各々が光ビーム148を提供する2つの発光器146を備えた後方発光VCSELである。しかしながら、光ビーム148を方向付けてコリメートするために別個にレンズの搭載されたVCSEL面にプリズムを有する代わりに、VCSEL142は、その前(発光)面にレンズ150を有する。レンズ150は、光ビーム148のコリメート及び方向付けの両方を行うことで、格子138に衝突するようにする。
【0123】
図8は、第6の実施形態に係る光学変位センサ152の概略正面図である。この実施形態はまた、
図4a~
図4cの実施形態の変形例でもある。光学変位センサ152は、あらゆる点で
図7の光学変位センサ134と同一であり、同様に動作する。しかしながら、これは、光ビームを格子上に方向付けるやり方が異なる。
【0124】
光学変位センサ152は、メンブレン154と、基板158の上方に位置決めされた2つの回折格子156とを備え、基板158上には、VCSEL160と6つの光検出器162が搭載される。VCSEL160は、後方発光VCSELである。しかしながら、本実施形態において、VCSEL160は、単一の光ビーム166を提供する1つのみの発光器164を有している。更に、レンズの代わりに、VCSEL160の前(発光)面上に回折光学要素168が存在する。
【0125】
VCSELのエミッタ164からのビーム168は、回折光学要素168に衝突し、ビーム166を分離し、コリメートして2つの分離した、コリメートされたビーム170を生成し、次いでこれらが回折格子156に衝突する。
【0126】
図9は、第7の実施形態に係る光学変位センサ172の概略正面図を示す。この実施形態はまた、
図4a~
図4cの実施形態の変形例でもある。光学変位センサ172は、あらゆる点で
図6の光学変位センサ112と同一であり、同様に動作する。しかしながら、これは、光ビームを格子上に方向付けるやり方が異なる。
【0127】
光学変位センサ172は、メンブレン174と基板178上方に位置決めされた2つの回折格子176を備え、基板178上には、VCSEL180及び6つの光検出器182が搭載される。VCSEL180は、各々、各光ビーム186を提供する2つの発光器184を有するが、この実施形態においては、VCSEL180は、前方発光VCSELであり、いずれのプリズム、レンズ、又はその他の光学要素も内部又はその前面上に形成されていない。代わりに、別個の単一のレンズ188がVCSEL180と格子176との間に位置決めされる。この例において、レンズ188は、屈折レンズであるが、これは必須ではなく、他の実施形態において、レンズ188は、回折レンズであってもよい。2つの光ビーム186をレンズ188に方向付け、各ビーム186がレンズ188の異なる部分を通過し、ここでビーム186をコリメートし、これらを格子176のうちの各1つずつに方向付ける。
【0128】
技術的に適用可能な場合、正確に2つの回折格子を有する特定の実施形態の文脈において記載の光学的特徴とその変形例も、3つ以上の回折格子を有する実施形態に適用されてもよく、逆であってもよい。
【0129】
上述の実施形態は単なる例示であり、他の実施形態及び変形例も添付の請求項に規定の本発明の範囲内で可能であることが理解されるであろう。
【国際調査報告】