(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-19
(54)【発明の名称】流体貯蔵および/または循環モジュールの自動車用装置
(51)【国際特許分類】
B60K 11/04 20060101AFI20231212BHJP
F16M 1/00 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B60K11/04 Z
F16M1/00 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535874
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(85)【翻訳文提出日】2023-08-09
(86)【国際出願番号】 EP2021084672
(87)【国際公開番号】W WO2022128647
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】レクロク, ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】グロッシアー, ティエリ
【テーマコード(参考)】
3D038
【Fターム(参考)】
3D038AB01
3D038AC01
(57)【要約】
自動車用の装置(1)は、液体貯蔵および/または循環モジュール(2)と、モジュール(2)を支持するための支持エレメント(3)と、ある方向(100)に沿って頂部から底部へモジュール(2)に力を加えるように移動させられるために、支持エレメント(3)に対して可動であるように取り付けられたパッド(6)を備える少なくとも1つの一次固定装置(4)と、を備え、前記方向(100)に沿ったパッド(6)の移動距離が、モジュール(2)が空である構成とモジュール(2)に液体が満たされている構成との間の、支持エレメント(3)に対するモジュール(2)の前記方向(100)に沿った位置の変化よりも大きいまたは等しい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用の装置(1)であって、液体貯蔵および/または循環モジュール(2)、特に冷却モジュールと、前記モジュール(2)を支持するための支持エレメント(3)と、前記モジュール(2)を前記支持エレメント(3)に固定するための少なくとも1つの一次装置(4)と、前記モジュール(2)を前記支持エレメント(3)に固定するための少なくとも1つの二次装置(5)と、を備え、
前記二次固定装置(5)が、前記モジュール(2)の重量を少なくとも部分的に支持するように構成されており、
前記一次固定装置(4)が、第1の安定位置と第2の安定位置との間で前記支持エレメント(3)に対して可動なパッド(6)を備え、
前記パッド(6)は、前記パッド(6)が前記第2の安定位置に向かって移動させられるときにある方向(100)に沿って頂部から底部へ前記モジュール(2)に力を加えるように設計および構成されており、前記第1の安定位置と前記第2の安定位置との間の前記方向(100)に沿った前記パッド(6)の移動距離(K)が、前記モジュール(2)が空である構成と前記モジュール(2)に液体が満たされている構成との間の前記支持エレメント(3)に対する前記モジュール(2)の前記方向(100)に沿った位置の変化(Δz)よりも大きいまたは等しい、ことを特徴とする、
装置(1)。
【請求項2】
前記一次固定装置(4)が、前記パッド(6)を案内するための案内タブ(72)と、前記支持エレメント(3)に固定するための少なくとも1つの固定タブ(71)とを備え、前記案内タブ(72)が、前記パッド(6)を受容することができる、前記パッド(6)を案内するための少なくとも1つの案内手段(74)を備え、前記固定タブ(71)が、固定手段(9)、特にねじを受容するように構成された開口(73)を備える、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記パッド(6)が、前記案内手段(74)の下側縁部(75)と接触して延びるように構成された基部(61)を備え、
前記基部(61)が、少なくとも1つの平坦または実質的に平坦な一次軸受(63)と、前記方向(100)に沿って測定されかつ前記第1の安定位置と前記第2の安定位置との間の前記パッド(6)の前記移動距離(K)と等しい高さ(H)だけ、前記少なくとも1つの一次軸受(63)から離された、少なくとも1つの平坦または実質的に平坦な二次軸受(64)とを備え、前記少なくとも1つの一次軸受(63)と前記少なくとも1つの二次軸受(64)が、斜面(65)によって接続されており、
前記案内手段(74)の前記下側縁部(75)が、前記基部(61)に対して少なくとも部分的に相補的である、請求項2に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記斜面(65)が、前記第1の軸受(63)が内接させられることが可能である平面に対して傾斜(α)を有し、前記傾斜(α)は、5°~75°であって、前記モジュール(2)の位置の変化(Δz)の関数として規定される、請求項3に記載の装置(1)。
【請求項5】
前記一次固定装置(4)が、前記第1の安定位置と前記第2の安定位置との間の前記パッド(6)の移動を可能にするように、前記パッド(6)に固定された形式で嵌合されかつ取り付けられたグリッピングレバー(8)を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項6】
前記パッド(6)が前記第1の安定位置に配置されているときに前記グリッピングレバー(8)と干渉するように構成されたフィッティング(91)をさらに備える、請求項5に記載の装置(1)。
【請求項7】
前記二次装置(5)が、少なくとも部分的にゴムから形成されており、前記移動距離(K)が、さらに、前記一次固定装置(4)の剛性の関数としておよび/または前記二次固定装置(5)の剛性の関数として規定されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の装置(1)を備える自動車。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか一項に記載の装置(1)を組み立てる方法であって、
空である液体貯蔵および/または循環モジュール(2)に少なくとも1つの一次固定装置(4)を固定するステップと、次いで、
前記少なくとも1つの一次固定装置(4)が嵌合された前記モジュール(2)を支持エレメント(3)に対して位置決めするステップと、次いで、
特に螺合によって、前記少なくとも1つの一次固定装置(4)を前記支持エレメント(3)に固定するステップと、次いで、
ある方向(100)に沿って頂部から底部へ前記モジュール(2)に力を加えるように前記一次固定装置(4)のパッドを第1の安定位置から第2の安定位置へ移動させるステップと、次いで、
前記モジュール(2)を液体で満たすステップと、を含む、方法。
【請求項10】
前記第1の安定位置と前記第2の安定位置との間の、前記モジュール(2)に対する前記パッド(6)の移動が、前記方向(100)に平行または実質的に平行な回転軸(600)を中心とする回転運動、および同じ方向に沿った並進運動において行われる、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体、特に液体の貯蔵および/または循環のためのモジュールの、自動車用装置、およびこのような装置を備える自動車に関する。本発明は、前記装置を組み立てる方法にも関する。
【0002】
自動車において、車両の前方区画にラジエータなどの冷却モジュールを配置することが知られている。このようなモジュールは、従来、固定装置を介してクロスメンバまたは支持エレメントに取り付けられている。特に、このような固定装置は、「ばらつき(dispersion)」という用語によって知られる現象である、自動車を機械加工しかつ取り付けるためのプロセスにおける公差の結果生じるモジュールの位置決めの不正確さを克服することを目的とする。このようなばらつきは、それらの上側部分および下側部分において固定される必要がある冷却モジュールの取付けの際の複雑化を伴う。冷却モジュールは、対象とする支持体にモジュールが固定された後、すなわちモジュールが空であり、流体、特に液体の貯蔵および/または循環を保証しないときに、様々なパーツの全体的なばらつきを補償しかつゼロまたは減じられた遊びを補償するために従来少なくとも部分的に弾性である。
【0003】
このような固定装置の1つの欠点は、モジュールに液体が満たされるとモジュールの質量の増大、したがって、位置の変化を考慮することを可能にしないということである。これは、このような満たしが、組立てラインの最後に、すなわち様々な固定装置が据え付けられると、行われるからである。満たされることによるモジュールの質量の増大は、固定装置の変形および遊びの出現を伴い、遊びは、特に、モジュールの空の質量と満たされた質量との偏差に依存する。満たした後に生じるこの遊びは、モジュールに振動応力を生じ、その結果、様々な構成要素の早すぎる弱まりおよび摩耗が生じる。
【0004】
このような欠点は、特に規制基準の進化による、冷却モジュールの寸法の増大によって一層強調される。
【0005】
したがって、本発明は、この文脈内に入り、固定装置が、固定装置が支持するモジュールが満たされた後に適応させられる、すなわちモジュールが空であるかまたは流体で満たされているかどうかに応じてこのようなモジュールの質量および/または位置の変化に適応させられる遊びを有するように構成されている、装置を提案することを目的とする。
【0006】
そのために、本発明は、自動車用装置であって、装置が、液体貯蔵および/または循環モジュール、特に冷却モジュールと、モジュールを支持するための支持エレメントと、モジュールを支持エレメントに固定するための少なくとも1つの一次装置と、モジュールを支持エレメントに固定するための少なくとも1つの二次装置と、を備える、自動車用装置を提案する。装置は、
二次固定装置が、モジュールの重量を少なくとも部分的に支持するように構成されており、
一次固定装置が、第1の安定位置と第2の安定位置との間で支持エレメントに対して可動なパッドを備え、
前記パッドが、パッドが第2の安定位置に向かって移動させられるときにある方向に沿って頂部から底部へモジュールに力を加えるように設計および構成されており、第1の安定位置と第2の安定位置との間の前記方向に沿ったパッドの移動距離Kが、モジュールが空である構成とモジュールに液体が満たされている構成との間の、支持エレメントに対するモジュールの前記方向に沿った位置の変化Δzよりも大きいまたは等しい、ことを特徴とする。
【0007】
一次固定装置は、特に、パッドを案内するための案内タブと、支持エレメントに固定するための少なくとも1つの固定タブとを備えてよく、案内タブは、パッドを受容することができる、パッドを案内するための少なくとも1つの案内手段を備え、固定タブは、固定手段、特にねじを受容するように構成された開口を備える。
【0008】
パッドは、案内手段の下側縁部と接触して延びるように構成された基部を備えてよい。基部は、少なくとも1つの平坦または実質的に平坦な一次軸受と、前記方向に沿って測定されかつ第1の安定位置と第2の安定位置との間のパッドの移動距離Kと等しい高さHだけ少なくとも1つの一次軸受から離された少なくとも1つの平坦または実質的に平坦な二次軸受とを備え、少なくとも1つの一次軸受および少なくとも1つの二次軸受は、斜面によって接続されている。さらに、案内手段の下側縁部は、基部に対して少なくとも部分的に相補的であってよい。
【0009】
特に、斜面は、5°~75°の、第1の軸受が内接させられることが可能である平面に対する傾斜αを有してよく、傾斜αは、モジュールの位置の変化Δzの関数として規定される。
【0010】
選択的に、一次固定装置は、少なくとも1つの強化部材、例えば、少なくとも第1の安定位置と第2の安定位置との間のパッドの移動方向に沿って延びる強化部材を備えてよい。
【0011】
1つの実施形態によれば、一次固定装置は、第1の安定位置と第2の安定位置との間のパッドの移動を可能にするためにパッドに固定された形式で嵌合されかつ取り付けられたグリッピングレバーを備えてよい。装置は、次いで、例えば、さらに、パッドが第1の位置に配置されているときにグリッピングレバーと干渉するように構成されたフィッティングを備えてよい。
【0012】
二次装置は、少なくとも部分的にゴムから形成されてよく、次いで、さらに、移動距離Kが、一次固定装置の剛性の関数としておよび/または二次固定装置の剛性の関数として規定されることが可能である。
【0013】
本発明は、上記に示したような装置を備える自動車にも関する。
【0014】
本発明は、最後に、本発明による装置を組み立てる方法であって、
空である液体貯蔵および/または循環モジュールに少なくとも1つの一次固定装置を固定するステップと、次いで、
少なくとも1つの一次固定装置が嵌合されたモジュールを支持エレメントに対して位置決めするステップと、次いで、
特に螺合によって、少なくとも1つの一次固定装置を支持エレメントに固定するステップと、次いで、
ある方向に沿って頂部から底部へモジュールに力を加えるために一次固定装置のパッドを第1の位置から第2の位置へ移動させるステップと、次いで、
モジュールを液体で満たすステップと、を含んでよい、本発明による装置を組み立てる方法に関する。
【0015】
特に、第1の位置と第2の位置との間のモジュールに対するパッドの移動は、前記方向に対して平行または実質的に平行な回転軸を中心とする回転運動およびこの同じ方向に沿った並進運動において行われてよい。
【0016】
さらなる詳細、特徴および利点は、以下の図面に示された様々な実施形態の例に関連して、非限定的な指示によって以下に与えられる詳細な説明を読むことからより明確に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】装置の一部の概略図であり、液体貯蔵および/または循環モジュールの上側部分に取り付けられた一次固定装置を示す。
【
図3】一次固定装置の第1の実施形態の実施形態例の斜視図である。
【
図4】一次固定装置の第2の実施形態の実施形態例の斜視図である。
【
図5】
図4に示したような一次固定装置の第1の位置の斜視図である。
【
図6】
図4に示したような一次固定装置の第2の位置の斜視図である。
【
図7】一次固定装置の第2の実施形態の実施形態変化例の斜視図である。
【
図8】
図6に示したように第2の位置にあるときの、
図7に示したような一次固定装置の概略的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、例えばユーティリティビークルタイプの、自動車用装置1の一例を示す。本発明による装置1は、概して、液体貯蔵および/または循環モジュール2と、モジュール2を支持するための支持エレメント3と、モジュール2を支持エレメント3に固定するための少なくとも1つの一次装置4と、モジュール2を支持エレメント3に固定するための少なくとも1つの二次装置5とを備える。
【0019】
貯蔵および/または循環モジュール2は、特定の非限定的な例によれば、冷却モジュール2であってよく、この冷却モジュール2において、グリコール水などの冷却液、またはオイルなどの潤滑剤、または満たされたときに貯蔵および/または循環モジュールの質量に影響を有するあらゆるその他の流体が循環する。冷却モジュール2は、特に、例えば車両の前面から生じる外気の流れと、モジュール2において循環する液体との間の熱の交換を実施するように構成された少なくとも1つの熱交換器またはラジエータを含んでよい。
【0020】
1つの実施形態例によれば、モジュール2を支持するための支持エレメント3は、車両の技術的前面に含まれてよく、支持エレメント3は、パワートレイン(またはPWT)のための区画またはハウジングの少なくとも一部を含んでよい。特に、モジュール2は、上側および/または下側の少なくとも1つのクロスメンバ、および/または一次固定装置4および/または二次固定装置5を収容することができるこのような区画またはハウジングの壁部に固定されるように取り付けられてよい。
【0021】
装置1内において、二次固定装置5は、モジュール2の重量を少なくとも部分的に支持するように構成されている。特に、二次装置5は、ゴムなどの弾性的に変形可能な材料から少なくとも部分的に形成されてよい。言い換えれば、二次固定装置5は、垂直方向に対して平行または実質的に平行な方向100に沿って少なくとも部分的にモジュール2と支持エレメント3との間にあるように配置されてよい。
【0022】
本明細書の説明を通じて、装置1の向きは、車両の前進方向に対応する長手方向軸線Xと、第1の軸線Xに対して直交する横方向軸線Yと、第1の軸線Xおよび第2の軸線Yに対して直交する垂直軸線Zとに関して規定される。このような基準系において、垂直方向は、平らな地面に配置された車両のために規定される。軸線X、YおよびZは、特に、それが必要な図面において三面体XYZによって示されている。
【0023】
この文脈の中で、「頂部」、「底部」、「上側」および「下側」という用語は、軸線Zに沿った、すなわち垂直方向に沿ったそれらの位置に関して規定される。図面を通じて、様々な構成要素を分離する寸法および間隔は、明瞭にするために誇張されている場合もある。
【0024】
図1に示された例において、少なくとも1つの一次固定装置4はモジュール2の上側部分に配置されているのに対し、少なくとも1つの二次固定装置5はモジュール2の下側部分に配置されている。特に、少なくとも1つの一次固定装置4は上側端面21に配置されているのに対し、少なくとも1つの二次固定装置5は、軸線Zに沿ってモジュール2の上側端面21とは反対側の下側端面22に配置されている。
【0025】
このケースでは、装置1は、モジュール2の上側部分に取り付けられた2つの一次固定装置4と、モジュール2の下側部分に取り付けられた2つの二次固定装置5とを含む。このような例は全く限定ではなく、装置1は、異なる数の一次固定装置4および/または二次固定装置5を含むことができることが理解されるであろう。一次固定装置4に関連して説明される特徴のうちの全てまたは幾つかは、複数の一次固定装置4のうちの全てまたは幾つかに拡張することもできる。同じことが二次固定装置5にも当てはまる。
【0026】
図2に詳細に示された一次固定装置4は、支持エレメント3に対して移動することができるように取り付けられたパッド6を含む。パッド6は、モジュール2に対しても可動である。1つの実施形態例によれば、パッド6は、エラストマ材料、例えばエチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)から形成されてよく、これは、方向100に沿った減衰機能および効率的な圧縮仕事を行うことを可能にする。パッド6は、それぞれ
図5および
図6に示された第1の安定位置と第2の安定位置との間でモジュール2および支持エレメント3に対して移動させられてよい。パッド6は、例えば、パッド6を貫通して延びた、
図2に破線で概略的に示されたピン92を介してモジュール2に取り付けられてよい。
【0027】
「安定位置」とは、パッドを移動させるために必要とされる力が中断されたときにパッドがとどまる位置を意味すると理解される。
【0028】
特に、組立て方法に関して以下で詳細に示すように、パッド6は、方向100に対して平行または実質的に平行な回転軸600を中心とした回転運動、およびこの同じ回転軸600に沿った並進運動との組合せにおいて第1の安定位置と第2の安定位置との間を移動させられるように構成されてよい。
【0029】
示されていない代替例によれば、パッド6は、方向100に対して平行または実質的に平行な軸線に沿った並進運動において移動させられるように構成されてよい。
【0030】
パッド6は、特に、第2の位置に向かって移動させられるときに方向100に沿って頂部から底部へモジュール2に力を加えるように設計および構成されている。特に、本発明によれば、第1の安定位置と第2の安定位置との間の前記パッド6の移動距離Kは、モジュール2が空である構成とモジュール2に液体が満たされている構成との間の支持エレメント3に対するモジュール2の位置の変化Δzよりも大きいかまたはそれと等しい。
【0031】
特に、移動距離Kは、さらに、一次固定装置4の剛性の関数および/または二次固定装置5の剛性の関数として規定されてよい。
【0032】
パッド6の「移動距離K」は、パッド6が第1の安定位置と第2の安定位置との間を移動させられるとき、パッド6が並進運動および回転運動の組合せにおいて移動させられるとき、またはパッド6が上述のように並進運動において移動させられるとき、方向100に沿った、すなわち垂直方向に沿った移動を意味すると理解される。
【0033】
モジュール2の「位置の変化Δz」は、支持エレメント3に対する、方向100に沿った、モジュール2上の一点、例えばモジュール2の上側端面21上の点の位置の所定の偏差を意味すると理解される。このような差は、「空の」構成から「満たされた」構成へ変化するとき、本発明において説明したような一次固定装置4を有さないモジュールのために従来観察される。このような位置の変化Δzの値は、特に、所定のモジュールモデルまたは寸法のためのデータベースから、または所定の液体体積から得ることができる。
【0034】
したがって、「空の」構成は、装置1、特にモジュール2が、液体を有さず、このような液体の貯蔵または循環を保証しないことを意味すると理解される。このような構成は、モジュール2の充填前の車両組立てラインにおいて、またはモジュール2に液体を供給するためのモジュール2または回路(図示せず)における取扱い介入の間に、観察することができる。
【0035】
逆に、「満たされた」構成において、モジュール2は、液体を含み、すなわち、例えばその循環を目的として貯蔵を保証する。このような構成は、モジュール2が組立てラインにおいて満たされた後、または市場に出ているまたは走行している車両において観察することができる。
【0036】
一次固定装置4は、さらに、一次装置4を支持エレメント3に固定するための少なくとも1つの固定タブ71と、パッド6を案内するための案内タブ72とを含んでよい。特に、一次固定装置4は、支持エレメント3に固定して取り付けられたブラケット7を含んでよく、ブラケット7は、少なくとも、ブラケット7を支持エレメント3に固定するための固定タブ71と、パッド6を案内するための案内タブ72とを含む。
【0037】
固定タブ71および案内タブ72は、接続されており、互いに横方向に延びている。1つの特定の例によれば、固定タブ71および案内タブ72は、互いに対して少なくとも部分的に垂直に延びていてよい。特に、これらは、一体に形成されてもよく、すなわち、ブラケット7を悪化させるまたはさらには破壊することなしには互いに分離することができない。1つの非典型的な実施形態によれば、ブラケット7は、ポリアミド、特に充填ポリアミドから形成されてよい。
【0038】
固定タブ71は、平坦または実質的に平坦な構造を有する。固定タブ71は、固定手段9、特にねじを受容するように構成された開口73またはパーフォレーション73を含む。有利には、このような開口73またはパーフォレーション73は、一次固定装置4の全体的なばらつきΔd1の関数としておよび/またはモジュール2の全体的なばらつきΔd2の関数として寸法決めされてよい。特に、このような全体的なばらつきの値Δd1,Δd2は、データベースから得られてよい。
【0039】
開口73またはパーフォレーション73は、特にその端部に設けられたオリフィスまたはインサートにおいて、支持エレメント3への一次固定装置4の固定を保証するようにかつ一次固定装置4および/またはモジュール2の、連続した構成要素の機械加工による寸法の誤差を補償するように、寸法決めされている。
【0040】
案内タブ72は、特に方向100に沿って、パッド6を受容しかつ案内することができる、スリーブなどの少なくとも1つの案内手段74を含む。このような案内手段74は、貫通開口を画定しており、装置1が組み立てられるとパッド6がこの貫通開口において延び、前記開口は、モジュール2に面した案内タブ72の下側縁部75と、下側縁部75とは反対側の上側縁部76との間に延びている。言い換えれば、パッド6は、一次固定装置4のブラケット7に対して移動することができるように取り付けられる。
【0041】
有利には、ブラケット7は、少なくとも方向100に沿って延びる少なくとも1つの強化部材77を含んでよい。様々な代替例によれば、強化部材77は、案内タブ72および固定タブ71と隣接して延びてよいまたは
図3および
図4に示したように案内手段74の厚さに配置されてよい。
【0042】
パッド6は、互いに接続された基部61および本体62を含んでよい。少なくとも本体62は、特に円形断面の、円筒状または実質的に円筒状の形状を有し、案内手段74に対して相補的である。同様に、基部61は、例えば円形断面の、円筒状または実質的に円筒状の形状を有してよい。
【0043】
特に、基部61は、本体62に対してパッド6の拡大部を形成している。したがって、基部61の断面は、パッド6の本体62の最長寸法よりも大きい最長寸法(図示せず)を有する。「最長寸法」とは、例えば、円形断面の直径または多角形断面の対角線を意味すると理解される。
【0044】
本体62は基部61に対して垂直に延びており、これにより、装置1が組み立てられたとき、基部61は、案内手段74の下側縁部75と接触して延びるのに対し、本体62は、案内手段74の開口において下側縁部75から少なくとも上側縁部76まで延びる。
【0045】
図3~
図6に示したように、基部61、特に上側セクション60は、ブラケット7の下側縁部75に面しており、この下側縁部75と相互作用することが意図されている。基部61は、一次固定装置4が、
図5に示された第1の位置に配置されているとき、下側縁部75との第1の接触面を画定するように構成されている。パッド6が、
図6に示された第2の安定位置に移動させられると、基部61は、下側縁部75と第2の接触面を画定し、特に、第1の接触面は第2の接触面よりも厳密に大きいことが可能である。
【0046】
特に、基部6の上側縁部60は、少なくとも1つの平坦または実質的に平坦な一次軸受63と、少なくとも1つの平坦または実質的に平坦な二次軸受64とを含んでよい。このような軸受63,64は、方向100に対して横方向に、特に水平方向または実質的に水平方向に延びている。
【0047】
一次軸受63および二次軸受64は、高さHだけ分離されており、この高さHは、方向100に沿って測定され、第1の安定位置と第2の安定位置との間のパッド6の移動距離Kと等しい。特に、基部6は、装置が組み立てられたとき、一次軸受63が方向100に沿って二次軸受64とモジュール2との間に配置されるように構成されている。
【0048】
有利には、少なくとも1つの一次軸受63と少なくとも1つの二次軸受64とは斜面65によって接続されており、一次軸受63、斜面65および第2の連続的な組立ては、第1の位置から第2の位置へのパッド6の軌道を規定することに寄与する。
【0049】
特に、このような斜面65は、一次軸受63を内接させることができる平面に対して、5°~75°、またはさらには5°~60°の傾斜αを有する。このような傾斜αは、モジュール2の位置の変化Δzの関数として、したがって、パッド6の移動距離Kの関数として規定される。
【0050】
パッド6が複数の一次軸受63を含む場合、一次軸受63は、1つの同じ平面において内接させられることが可能である。同様に、パッド6が複数の二次軸受64を含む場合、二次軸受64は、共有された平面に含まれる。したがって、基部61は、交替する一次軸受63および二次軸受64によって形成された平らな構造を含み、上述のように一次軸受63は斜面65によって二次軸受64に接続されている。その結果、隣接する二次軸受64から一次軸受63を分離させる高さHは、1つの同じパッド6内で一定である。好ましくは、同じことが、当該の様々な斜面65の傾斜に当てはまる。
【0051】
示された例において、第1の二次軸受64は、一方の側において斜面65によって隣接する一次軸受63に、実質的に垂直な縁部によって第2の二次軸受64に接続されていることに留意すべきである。代替的に、一次軸受63および二次軸受64は、上述の斜面65と同様のまたは異なる傾斜の二次斜面によって接続されてもよい。
【0052】
適切な力による案内タブ72に対するパッド6の移動を保証するために、案内手段74の下側縁部75は、少なくとも部分的に基部61に対して相補的であってよい。例えば、下側縁部75は、パッド6が第1の安定位置に配置されているときに基部61の一次軸受63と接触して延びるように構成されかつパッド6が第2の安定位置にあるときに二次軸受64と接触して延びるように構成された少なくとも1つの下側軸受78を含んでよい。
【0053】
さらに、パッド6は、装置1が組み立てられているときまたは取扱い動作の間、パッド6を移動させるための1つまたは複数の工具と相互作用するように成形されてよい。非限定的な例として、本体62の自由端部は、キーと相互作用することができるBTRインプレッションなどのインプレッション66を含んでよい。
【0054】
有利には、取扱いステップ中のパッド6およびブラケット7の分離を防止するために、インプレッション66は、パッドが第1の安定位置に配置されているときに方向100に沿って一方向へのブラケット7に対するパッド6の移動を制限または防止するように構成された少なくとも1つのブロッキング部材67を含んでよい。特に、このようなブロッキング部材67は、パッドが第1の安定位置にあるとき、ブラケット7のカバーリング部分79と隣接するように構成されてよい。このようなカバーリング部分79は、案内タブ72、特に上側縁部76から始まってよく、方向100に沿ってパッド6の本体62の一部に面して延びている。パッド6が第2の安定位置に向かって移動させられると、ブロッキング部材67もカバーリング部分79から離れるように移動させられ、次いで、方向100に沿ってパッド6を移動させることを可能にする。
【0055】
図4に示された代替的な実施形態によれば、一次固定装置4は、有利には、第1の位置と第2の位置との間の移動を可能にするためにパッド6に固定された形式で嵌合されかつ取り付けられたグリッピングレバー8を含んでよい。特に、第1の位置と第2の位置との間の移動は、45°~180°、例えば60°~75°、またはさらには約90°の、回転軸600を中心とするレバーのこのような回転運動によって行うことができる。このようなグリッピングレバー8は、本体62、特に上述のような本体62におけるインプレッション66に対して相補的なエンドピース81を含み、ユーザがレバーを取り扱うことを可能にするグリッピングフランジ82を含んでよい。
【0056】
装置1が取り付けられるまたは取り外されるとき、グリッピングレバー8は装置1内に取り付けられたままであり、有利には特定の工具の必要性を排除することを可能にする。
【0057】
さらに、このようなグリッピングレバー8は、一方では視覚的または機械的ポカヨケ機能を、他方ではリマインダ機能を有し得る。これは、
図7に示したように、パッド6が第2の位置へ移動させられたとき、グリッピングレバー8、特にそのグリッピングフランジ82が固定タブ71の近くに延びているからである。したがって、固定手段9は、一次固定装置4が第2の位置にある間、すなわち一次固定装置4が頂部から底部へモジュール2に力を加えるとき、アクセス不能であり、一次固定装置4の取外しを防止する。
【0058】
逆に、
図8に示したように、技術的前面は、モジュール2が力を受けていないと車両の最終取付けを不可能にするように形成されてよい。この場合、装置1は、パッド6が第1の位置に配置されているとき、前面におけるエアガイド91の据付がグリッピングレバー8によって不可能にされるように構成されており、レバーの位置決めが特に前記エアガイド91のための意図した位置と重なり、このような重なりは破線で示されている。このような装置は、一次装置4がモジュール2に所望の力を加えかつ上記に示された方法が正しく行われるために、パッド6が適切に位置決めされることを保証することを可能にする。
【0059】
本発明は、この順序で行われる、上記に示したような装置1を組み立てる方法にも関する。
【0060】
このような方法は、支持エレメント3または代替的にモジュール2に、例えばモジュール2の下側端面22において少なくとも1つの二次装置5を取り付けるステップを含む。
【0061】
方法は、空のモジュール2に少なくとも1つの一次固定装置4を固定するステップを含む。
【0062】
次いで、特に、各一次固定装置4のために、パッド6が、例えばピンを介して、モジュール2に対して可動に取り付けられる。一次装置4は、パッド6の基部61が方向100に沿ってモジュール2とブラケット7の少なくとも一部との間に配置されるように配置される。特に、パッド6の基部61は、少なくとも方向100に沿って案内手段74とモジュール2との間に配置される。
【0063】
次いで、1つまたは複数の一次固定装置が嵌合されたモジュール2が、支持エレメント3に対して位置決めされる。固定タブ71は、開口73またはパーフォレーション73が、固定手段9を受容することができる支持エレメント3のオリフィスまたはインサートに面して配置されるように配置される。次いで、モジュール2は、1つまたは複数の二次装置5がモジュールの重量を支持するように位置決めされる。
【0064】
次いで、方法は、特にねじ込みによって、少なくとも1つの一次固定装置4を支持エレメント3に固定するステップを含む。特に、このようなステップはサブステップを含み、一次固定装置4の全体的なばらつきΔd1および/またはモジュール2の全体的なばらつきΔd2を正すまたは保証するために、固定手段9を介してブラケット7、例えばブラケット7の固定タブ71を支持エレメント3に固定するステップを含む。
【0065】
次いで、一次固定装置4のパッド6を第1の位置から第2の位置へ移動させるステップが行われる。この場合、このような移動は、回転軸600を中心とする回転運動と、回転軸600に対して平行または実質的に平行な方向100に沿った並進運動との組合せにおいて行われる。特に、このような回転運動は、45°~180°、例えば60°~75°、またはさらには約90°であってよい。
【0066】
パッド6の移動は、上記に示したように、工具を介してまたはグリッピングレバー8を介して行われてよい。
【0067】
次いで、パッド6の移動は、案内手段74の下側縁部75の下側軸受78上の点を、基部61の一次軸受63から、パッド6が第1の位置にあるときに、方向100に沿って測定された高さHだけ少なくとも1つの一次軸受63から離された二次軸受64に向かって移動させるサブステップを含んでよい。このような点は、特に、一次軸受63と二次軸受64とを接続する斜面65に沿って移動させられ、斜面65は、モジュール2の位置の変化Δzの関数として規定された、5°~75°の一次軸受63に対する傾斜αを有してよい。
【0068】
パッド6が第2の位置に向かって移動させられると、パッド6は、方向100に沿って頂部から底部へモジュール2に力を加える。このような力は、パッド6が第2の位置にあるとき最大であり、パッド6が第1の位置に配置されているとき最小、またはさらにはゼロである。パッド6の移動は、第1の安定位置と第2の安定位置との間の少なくとも1つの中間位置(図示せず)を含むことに留意すべきである。このような中間位置は、好ましくは不安定であり、すなわちユーザが前記中間位置においてパッド6の移動を妨げると、パッド6は自然に第1の安定位置または第2の安定位置、この場合は第1の安定位置へ戻る。
【0069】
示された例では、このような中間位置は、斜面65の一部と整列した案内手段74の下側軸受78の位置決めに対応してよい。さらにこのような中間位置において、モジュール2に加えられる力は、パッド6が第2の位置にあるときに加えられる力よりも小さいまたは実質的に小さい。
【0070】
上述のように、第1の安定位置と第2の安定位置との間での方向100に沿ったパッド6の移動距離Kは、モジュール2が空の構成とモジュール2に液体が満たされた構成との間の、支持エレメント3に対するモジュール2の方向100に沿った位置の変化Δzよりも大きいかまたは等しくなるように特に規定される。
【0071】
その結果、パッド6が第2の位置に配置されているとき、パッド6は、方向100に沿って頂部から底部へモジュール2に力を加える。これは、このような力を二次固定装置5へ伝達し、二次固定装置5は、弾性的に変形可能であるため、押し潰される。言い換えれば、パッド6が第2の位置に向かって移動させられると、パッドは、頂部から底部へ二次固定装置5に間接的に力を加える。次いで、二次固定装置5は、方向100に沿って底部から頂部へ、一次固定装置4からの力とは反対方向の反作用力を加える。
【0072】
その結果、従来技術において従来観察することができるものとは対照的に、モジュール2への液体のその後の追加が、二次固定装置5によって実施される反作用力の変化を伴わないために、空のモジュール2は、方向100に沿って、すなわち垂直方向で、所定の位置において安定化される。したがって、言い換えれば、液体の追加の結果生じるモジュール2の質量の偏差が、空の構成と満たされた構成との間のモジュール2の位置の変化Δzを伴わないかまたは無視できる差を伴うために、空のモジュール2は、所定のプレストレスをかけられた位置において方向100に沿って安定化される。
【0073】
このようにして、モジュール2が据え付けられかつ空であるときに、すなわち空の構成において、一次固定装置4に規定されるあらゆる隙間は、モジュール2が満たされた後、すなわち満たされた構成においてさえも、一定または実質的に一定のままであり、したがって、早すぎる摩耗から装置1の構成要素を保護する。
【0074】
次いで、モジュール2は、液体、特に冷却液で満たされてよく、質量の追加は、次いで、方向100に沿ったモジュール2の位置または二次固定装置5に加えられる力、すなわちその押し潰しに影響を与えない。
【0075】
したがって、本発明は、自動車用装置であって、液体貯蔵および/または循環モジュールと、前記モジュールを支持するための支持エレメントと、モジュールを支持エレメントに固定するための少なくとも1つの一次固定装置と、モジュールを支持エレメントに固定するための少なくとも1つの二次固定装置と、を備え、このような装置は、空の構成と液体が満たされた構成との間のモジュールの質量の差、ひいては位置の変化を排除することを有利には可能にし、したがって前記装置を早すぎる摩耗から保護しながら、容易に据え付けられかつ低コストで製造することができる、自動車用装置を提案する。
【0076】
しかしながら、本発明は、本明細書に説明および例示された手段および構成に制限されず、あらゆる同等の手段または構成およびこのような手段のあらゆる技術的に実現可能な組合せにも拡張される。特に、一次固定装置のパッドまたはブラケットの形状および寸法は、それらが本文献に説明および例示された機能を最終的に行う限り、本発明から逸脱することなく修正することができる。
【国際調査報告】