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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-19
(54)【発明の名称】金属切削旋削方法
(51)【国際特許分類】
   B23B 1/00 20060101AFI20231212BHJP
   B23B 29/24 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B23B1/00 Z
B23B29/24 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535879
(86)(22)【出願日】2021-11-03
(85)【翻訳文提出日】2023-08-09
(86)【国際出願番号】 EP2021080451
(87)【国際公開番号】W WO2022128238
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】20214135.4
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520333435
【氏名又は名称】エービー サンドビック コロマント
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンソン, アダム
(72)【発明者】
【氏名】レフ, ロニー
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクブラド, クリステル
【テーマコード(参考)】
3C045
3C046
【Fターム(参考)】
3C045AA10
3C046NN06
(57)【要約】
CNC旋盤のための旋削方法であって、金属被加工物(2)を用意するステップと、旋削工具(1)を用意するステップであって、旋削工具(1)が、連結部(3)を備え、連結部(3)が、連結軸(A2)に沿って延在し、旋削工具(1)が、第1の切削要素(7)および第2の切削要素(8)を備え、第1の切削要素(7)が、第1の切削刃(5)を備え、第2の切削要素(8)が、第2の前方切削刃(13)および第2の後方切削刃(15)を分離しかつ接続する第2のノーズ切削刃(6)を備える、旋削工具(1)を用意するステップと、金属被加工物(2)をその回転軸(A1)の周りで1つの方向(50)に回転させるステップと、第1の切削刃(5)が切削するように旋削工具(1)を第1の方向(17)に移動させるステップと、第1の切削刃(5)が金属被加工物(2)から離れるように、および第2のノーズ切削刃(6)が金属被加工物(2)に向かって移動させられるように、旋削工具(1)をある方向(19)に移動させるステップと、第2の前方切削刃(13)が5~45°である第2の切込み角(β)で切削するように、旋削工具(1)を第2の方向(18)に移動させるステップであって、第2の方向(18)が、第1の方向(17)に対して反対方向であるかまたは実質的に反対方向である、旋削工具(1)を第2の方向(18)に移動させるステップと、を含む、旋削方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CNC旋盤のための旋削方法であって、
金属被加工物(2)を用意するステップと、
旋削工具(1)を用意するステップであって、
前記旋削工具(1)が、連結部(3)を備え、
前記連結部(3)が、連結軸(A2)に沿って延在し、
前記旋削工具(1)が、第1の切削要素(7)および第2の切削要素(8)を備え、
前記第1の切削要素(7)が、第1の切削刃(5)を備え、
前記第2の切削要素(8)が、第2の前方切削刃(13)および第2の後方切削刃(15)を分離しかつ接続する第2のノーズ切削刃(6)を備える、旋削工具(1)を用意するステップと、
前記金属被加工物(2)をその回転軸(A1)の周りで1つの方向(50)に回転させるステップと、
前記第1の切削刃(5)が切削するように前記旋削工具(1)を第1の方向(17)に移動させるステップと、
前記第1の切削刃(5)が前記金属被加工物(2)から離れる方向に移動させられるように、および前記第2のノーズ切削刃(6)が前記金属被加工物(2)に向かって移動させられるように、前記旋削工具(1)をある方向(19)に移動させるステップと、
前記第2の前方切削刃(13)が5~45°である第2の切込み角(β)で切削するように、前記旋削工具(1)を第2の方向(18)に移動させるステップであって、
前記第2の方向(18)が、前記第1の方向(17)に対して反対方向であるかまたは実質的に反対方向である、前記旋削工具(1)を第2の方向(18)に移動させるステップと、
を含む、旋削方法。
【請求項2】
前記第1の切削要素(7)が、第1の前方切削刃(12)および第1の後方切削刃(14)を備え、
前記第1の切削刃(5)が、第1のノーズ切削刃(5)であり、
前記第1のノーズ切削刃(5)が、前記第1の前方切削刃(12)および前記第1の後方切削刃(14)を分離しかつ接続し、
前記旋削工具(1)を第1の方向(17)に移動させているときに、前記第1の前方切削刃(12)が、5~45°である第1の切込み角(α)を形成する、
請求項1に記載の旋削方法。
【請求項3】
前記旋削工具(1)を前記第2の方向(18)に移動させているときに、前記第2の後方切削刃(15)が、鈍角の前逃げ角(δ)を形成する、
請求項1または2に記載の旋削方法。
【請求項4】
前記旋削工具(1)を前記第1の方向(17)に移動させているときに、前記第1の後方切削刃(14)が、鈍角の前逃げ角(γ)を形成する、
請求項2または3に記載の旋削方法。
【請求項5】
前記旋削工具(1)を前記第2の方向(18)に移動させる前記ステップが、前記旋削工具(1)を前記第1の方向(17)に移動させているときに機械加工された表面(25)の少なくとも一部分を旋削することを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の旋削方法。
【請求項6】
前記第1の切削刃(5)が前記金属被加工物(2)から離れる方向に移動させられるように、および前記第2のノーズ切削刃(6)が前記金属被加工物(2)に向かって移動させられるように、前記旋削工具(1)をある方向(19)に移動させる前記ステップが、
前記連結中心軸(A2)の周りでの前記旋削工具(1)の回転を伴わない、
請求項1から5のいずれか一項に記載の旋削方法。
【請求項7】
前記連結軸(A2)が、前記回転軸(A1)に対して平行であるかまたは垂直である、請求項1から6のいずれか一項に記載の旋削方法。
【請求項8】
前記金属被加工物(2)が、挟持手段(60)によって挟持され、
前記挟持手段から前記第2のノーズ切削刃(6)までの距離が、前記挟持手段(60)から前記第1の切削刃(5)までの距離よりも短い、
請求項1から7のいずれか一項に記載の旋削方法。
【請求項9】
前記旋削工具(1)を前記第1の方向(17)に移動させているときに、前記第2のノーズ切削刃(6)が、前記第1の方向(17)において第1の切削刃(5)の前方にあり、
前記旋削工具(1)を前記第2の方向(18)に移動させているときに、前記第1の切削刃(5)が、前記第2の方向(18)において前記第2のノーズ切削刃(6)の前方にある、
請求項1から8のいずれか一項に記載の旋削方法。
【請求項10】
前記第2の方向(18)が、前記金属被加工物(2)の隅部から離れる方向におけるものである、請求項1から9のいずれか一項に記載の旋削方法。
【請求項11】
前記第2の前方切削刃(13)が鈍角の第3の切込み角で動作するように、第3の方向に旋削するさらなるステップを含み、
前記第3の方向が、回転軸(A1)に向かうものである、
請求項1から10のいずれか一項に記載の旋削方法。
【請求項12】
前記第1の切削要素(7)が、第1の旋削インサート(7)であり、前記第2の切削要素(8)が、第2の旋削インサート(8)であり、
前記第1の旋削インサート(7)が、第1の頂面(20)および第1の底面(22)を備え、
前記第1の頂面(20)および前記第1の底面(22)が、第1の側面によって接続され、
前記第2の旋削インサート(8)が、第2の頂面(21)および第2の底面(23)を備え、
前記第2の頂面(21)および前記第2の底面(23)が、第2の側面によって接続され、
前記第1の頂面(20)および前記第2の頂面(21)が、チップブレーク手段を備える、
請求項1から11のいずれか一項に記載の旋削方法。
【請求項13】
前記連結部(3)が、横断面が正方形もしくは矩形であるか、または、円錐形もしくは実質的に円錐形の部分を備える、
請求項1から12のいずれか一項に記載の旋削方法。
【請求項14】
前記金属被加工物(2)が前記第1の切削刃(5)と前記第2のノーズ切削刃(6)との間に位置するように前記旋削工具(1)を配置するさらなるステップを含む、
請求項1から13のいずれか一項に記載の旋削方法。
【請求項15】
CNC旋盤によって実行されたときに前記CNC旋盤に請求項1から14のいずれか一項に記載のステップを行わせる命令を有する、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属切削の技術分野に属する。より具体的には、本発明は、旋削の分野に属する。
【0002】
本発明は、請求項1に記載の方法に言及する。言い換えれば、本発明は、CNC旋盤のための旋削方法に関する。
【背景技術】
【0003】
金属切削において、旋削は一般的な作業である。CNC旋盤が一般に使用される。通常、金属被加工物から複雑な形状が機械加工される。複雑な形状を得るために、2つ以上の旋削工具を使用することが一般的であり、その場合、旋削工具は、異なる幾何学的形状または異なる向きを有する。例えば、1つの旋削工具が、1つの方向における機械加工に適していてよく、第2の旋削工具が、異なる方向に機械加工するのに適していてよい。
【0004】
慣例的に、各旋削工具には、1つの旋削インサートが装備されている。1つの旋削インサートを使用して旋削した後、通常、第1の旋削工具は、第2の旋削工具に割出しされる。例えば、CNC旋盤は、タレットを備えることができ、1つの旋削工具から第2の旋削工具に割出しすることは、所定の角度によるタレットの回転によって達成される。タレットの回転による割出しは、例えばCNC旋盤次第で時間がかかる。1つの工具から別の工具に変更または割出ししているときなどの切削をしていない時間は、ダウンタイムと呼ばれ得る。
【0005】
EP1317981A1は、複数の旋削インサートを担持する工具を開示しており、この工具によれば、連結軸の周りでの旋削工具の回転により、異なる旋削インサート間の切り替えが迅速に達成され得る。
【0006】
本発明者らは、さらに改善された旋削のための方法が必要とされていることを見出した。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、改善された旋削方法、具体的には少なくとも2つの切削要素が次々に使用され、ダウンタイムが短縮される、切削方法を提供することである。さらなる目的は、多数のCNC旋盤、特に旋削工具がその中心軸の周りで回転し得ないCNC旋盤に適用可能な方法を提供することである。またさらなる目的は、複雑な形状がより効果的な態様で機械加工可能な方法を提供することである。またさらなる目的は、旋削工具の数を減少させることであり、これは、2つ以上の旋削工具の代わりに1つだけの旋削工具を使用することによってなされる。またさらなる目的は、入り組んだ形状の構成要素を単一の旋削工具で機械加工するやり方を改善することである。
【0008】
前述の目的のうちの少なくとも1つは、金属被加工物を用意するステップと、旋削工具を用意するステップであって、旋削工具が、連結部を備え、連結部が、連結軸に沿って延在し、旋削工具が、第1の切削要素および第2の切削要素を備え、第1の切削要素が、第1の切削刃を備え、第2の切削要素が、第2の前方切削刃および第2の後方切削刃を分離しかつ接続する第2のノーズ切削刃を備える、旋削工具を用意するステップと、金属被加工物をその回転軸の周りで1つの方向に回転させるステップと、第1の切削刃が切削するように旋削工具を第1の方向に移動させるステップと、第1の切削刃が金属被加工物から離れる方向に移動させられるように、および第2のノーズ切削刃が金属被加工物に向かって移動させられるように、旋削工具をある方向に移動させるステップと、第2の前方切削刃が5~45°である第2の切込み角で切削するように旋削工具を第2の方向に移動させるステップであって、第2の方向が、第1の方向に対して反対方向であるかまたは実質的に反対方向である、旋削工具を第2の方向に移動させるステップと、を含む、CNC旋盤のための旋削方法によって達成される
【0009】
旋削方法は、CNC旋盤、すなわちコンピュータまたはコンピュータ化された数値制御旋盤、すなわち、例えば旋削旋盤、マルチタスク機械、ターンミル機械、またはスライディングヘッド機械などの旋削に適した任意のCNC機械のためのものである。金属被加工物が用意される。金属被加工物は、径方向外側表面である外部表面を備える。径方向外側表面は、回転軸と反対の側を向いている。旋削方法は、径方向外側表面の旋削、すなわち外部旋削のためのものである。金属被加工物は、第1の端部と第2の端部との間に延在する。金属被加工物は、挟持手段によって挟持される。挟持手段は、金属被加工物を保持し、かつ、モータまたはスピンドルにより少なくとも部分的に制御されかつ駆動される。
【0010】
挟持手段は、コレットチャック、フェイスドライバ、または3ジョーチャックの形態であってよく、また、心押し台を備え得る。機械の主軸台端部は、金属被加工物の第1の端部に置かれることが好ましい。被加工物の第1の端部の反対側の金属被加工物の第2の端部は、自由端部であってよい。あるいは、第2の端部は、心押し台または第2のチャックと接触している。
【0011】
旋削工具が用意される。旋削工具は、前方端部、および、連結部の形態をした反対側の後端部を備える。連結部は、CNC旋盤に、より具体的には機械スピンドルまたは工具リボルバタレットもしくは工具ポストなどのCNC旋盤の機械インターフェースに接続される。
【0012】
連結部は、正方形または矩形の形状の横断面を有し得る。連結部は、好ましくはISO標準26623-1などに従って円錐形または実質的に円錐形であり得る。この文脈において、切頭コーンが、コーン様の形状である。この文脈において、ISO標準26623-1カップリングの後部を形成するテーパ付けされた部分は、コーン様の形状である。連結部は、前述のコーンまたはコーン様の形状が連結軸の周りで対称的であるかまたは実質的に対称的であるように円錐形であることが好ましい。この文脈において、三回対称性が、対称的であると考えられるべきである。前述のコーンまたはコーン様の形状の断面積は、後方向において減少することが好ましい。連結部は、DIN69893に従って、HSKなどの中空テーパシャンクの形態であってよい。
【0013】
連結部は、連結軸または中心軸に沿って延在し、この中心軸は、旋削工具の長手軸を画定する。連結軸に沿ってまたは対して平行に測定される旋削工具の長さ、すなわち全長は、好ましくは50~400mmであり、さらに好ましくは70~300mmである。
【0014】
旋削工具は、第1の切削要素および第2の切削要素を備える。第1および第2の切削要素は、離隔されている。第1および第2の切削要素は、好ましくは切削インサートまたは旋削インサートであり、すなわち、例えば超硬合金といった耐摩耗材料から作られた交換可能な要素である。あるいは、第1および第2の切削要素は、好ましくは超硬合金の単体から作られた単一の耐摩耗要素の一部であり得る。第1の切削要素は、第1の頂面を備える。第1の頂面は、すくい面またはすくい表面を備える。
【0015】
第1の切削要素は、第1の切削刃を備える。第1の切削刃は、好ましくは、ノーズ切削刃、すなわち上面図において凸状である切削刃の形態であり得る。第1の切削刃、または第1の切削刃の一部分は、切削仕上げ表面(machined surface)を生成する。第1の切削要素は、円形切削インサート、すなわち上面図において円形または実質的に円形であるインサートの形態であってよい。前述の円の半径は、好ましくは5~30mmである。あるいは、第1の切削刃は、上面図において凸状であるノーズ切削刃であってよく、好ましくは、0.2~1.6mmの曲率半径を有しかつ第1の前方切削刃すなわち主切削刃または主要切削刃またはリーディング切削刃と第1の後方切削刃すなわち補助切削刃またはトレーリング切削刃との間に配置されすなわちそれらを接続する円弧の形態である。
【0016】
第2の切削要素は、第2の前方切削刃および第2の後方切削刃を分離しかつ接続する第2のノーズ切削刃を備える。第2の切削要素は、第1の頂面を備える。第2の頂面は、すくい面またはすくい表面を備える。第2の前方切削刃は、リーディング切削刃である。第2の後方切削刃は、トレーリング切削刃である。
【0017】
第1の頂面は、上面図において、菱形、三角形、八角形、正方形、円形、または多角形の形状を有し得る。
【0018】
第1の頂面および第2の頂面は、それぞれ、平坦であってよい。あるいは、前述の表面の一方または両方が、非平坦または非平面状であってよい。前述の表面は、1つまたは複数の突出部および/もしくはくぼみの形態の1つまたは複数のチップブレーク手段を備え得ることが好ましい。
【0019】
第1の頂面が面する方向は、第1の頂面の垂線であり、すなわち、第1の頂面に対して垂直な方向である。前述の方向は、第1の頂面から離れており、また、第1の切削要素が第1の底面を有する切削インサートまたは旋削インサートの形態である場合には、第1の底面から離れている。
【0020】
第1の頂面が非平坦である場合、第1の頂面が面する方向を定める目的のために、そのような第1の頂面は、第1の中央平面に対して平行な平面としてまたはほぼその平面として画定されてよく、前述の平面は、第1の切削刃または第1の切削刃の少なくとも一部分と交差する。前述の第1の中央平面は、第1の切削要素が第1の底面を有する切削インサートまたは旋削インサートの形態である場合には、第1の頂面と第1の底面との間の中ほどの平面である。
【0021】
あるいは、前述の第1の頂面は、第1の頂面が面する方向を定める目的のために、第1の頂面と境界を接しているかまたは第1の頂面に隣接している全てのノーズ切削刃と交差する平面として画定され得る。
【0022】
対応する推論が、第2の頂面および第2の切削要素に適用される。
【0023】
方法は、金属被加工物をその回転軸の周りで1つの方向に回転させるステップを含む。1つの方向は、時計方向または反時計方向であってよい。
【0024】
方法は、旋削工具を第1の方向に、すなわち第1の送り方向に移動させるステップを含む。言い換えれば、方法は、第1の方向に旋削するステップを含む。
【0025】
第1の方向は、好ましくは回転軸に対して平行であってよく、長手方向旋削としても知られている。前述のステップは、切削し始めることと切削を終わらせることとの間として定義される第1の通過に含まれる。第1の通過は、必ずしも真っ直ぐな線に沿った第1の切削要素の移動ではない。第1の方向に旋削しているとき、第1の切削刃は切削しており、すなわち動作している。切削仕上げ表面が、第1の切削刃によって形成される。
【0026】
切削を終わらせた後または終わらせている間、旋削工具は、第1の切削刃が金属被加工物から離れる方向に移動させられるように、および第2のノーズ切削刃が金属被加工物に向かって移動させられるように、移動させられる。前述の移動の少なくとも一部分の間、第1の切削要素および第2の切削要素のどちらも動作しておらず、すなわち、前述の移動中には第1および第2の切削要素によって金属が切削されない。
【0027】
旋削工具の移動は、連結軸および回転軸に対して垂直な方向におけるものであってよい。旋削工具の移動は、好ましくは直線移動であるかまたは直線移動を含んでよい。前述の移動は、連結軸の周りでの回転を伴わないことが好ましい。したがって、方法は、広範なCNC旋盤に適用され得る。移動は、第1の頂面に対して垂直であるかまたは実質的に垂直である方向におけるものであってよい。
【0028】
前述の移動は、割出し運動である。言い換えれば、移動は、第1の切削要素が非動作位置に運ばれ、かつ、第2の切削要素が動作位置に、すなわち第2の要素が金属被加工物から金属を切削するのに適している位置に運ばれるような移動である。
【0029】
方法は、旋削工具を第2の方向に移動させるステップを含む。言い換えれば、第2の方向に旋削する。第2の方向、または第2の送り方向は、第1の方向に対して反対方向であるかまたは実質的に反対方向である。例えば、第1の方向および第2の方向は、回転軸に対して平行であってよいが、相反する方向である。例えば、第1の方向は、被加工物の第1の端部から離れる方向であってよく、第2の方向は、被加工物の前述の第1の端部に向かうものであってよい。前述の第1の端部は、挟持端部、すなわち挟持手段によって挟持される被加工物の端部であってよい。前述の旋削工具を第2の方向に移動させるステップは、切削し始めることと切削を終わらせることとの間として定義される第2の通過に含まれる。第2の通過は、必ずしも真っ直ぐな線に沿った第1の切削要素の移動ではない。切削仕上げ表面が、第2のノーズ切削刃によって形成される。第2のノーズ切削刃および第2の前方切削刃は、第2の前方切削刃が鋭角の第2の切込み角で動作するように、動作する。鋭角の第2の切込み角は、好ましくは5~45°であり、さらに好ましくは5~30°である。そのような鋭角の切込み角によれば、第2の切込み角がより大きい場合と比較して、第2の切削要素のインサート摩耗が軽減される。第2の切込み角は、旋削工具を第2の方向に移動させているときの第2の前方切削刃の切込み角である。
【0030】
旋削工具を第1の方向に移動させているときに、第2の切削要素は動作しておらず、すなわち切削しておらず、言い換えれば、金属被加工物から離隔されている。旋削工具を第2の方向に移動させているときに、第1の切削要素は動作しておらず、すなわち切削しておらず、言い換えれば金属被加工物から離隔されている。
【0031】
第1の切削刃と第2のノーズ切削刃との間には、旋削工具のいかなる部分も存在しないことが好ましい。言い換えれば、第1および第2のノーズ切削刃を接続する真っ直ぐな線沿いには旋削工具の部分が置かれないことが好ましい。
【0032】
一実施形態によれば、第1の切削要素は、第1の前方切削刃および第1の後方切削刃を備え、第1の切削刃は、第1のノーズ切削刃であり、第1のノーズ切削刃は、第1の前方切削刃および第1の後方切削刃を分離しかつ接続し、旋削工具を第1の方向に移動させているときに、第1の前方切削刃は、5~45°である第1の切込み角を形成する。
【0033】
そのような方法によれば、第1の切込み角がより大きい場合と比較して、第1の切削要素の摩耗が軽減される。
【0034】
主要切削刃または主切削刃である第1の前方切削刃、および、補助切削刃である第1の後方切削刃は、それぞれ、上面図において直線状もしくは線形であるかまたは実質的に直線状もしくは実質的に線形であることが好ましい。第1のノーズ切削刃は、好ましくは円弧の形態で、好ましくは0.2~1.6mmの曲率半径を有して、上面図において凸状である。
【0035】
第1の前方切削刃と第1の後方切削刃との間の角度として定められる第1の切削要素のノーズ角は、好ましくは160°以下であり、さらに好ましくは30°~80°である。
【0036】
第1の前方切削刃は、鋭角の第1の切込み角を形成し、前述の第1の切込み角は、5~45°であり、さらに好ましくは5~30°である。
【0037】
旋削工具を第1の方向に移動させているときに、第1のノーズ切削刃および第1の前方切削刃は、切削しており、または動作している。
【0038】
第1および第2のノーズ切削刃は、第1および第2の方向に旋削しているときに一定の距離だけ回転軸に沿って離隔されることが好ましい。
【0039】
一実施形態によれば、方法は、第2の後方切削刃が鈍角の前逃げ角を形成するように旋削工具を第2の方向に移動させるさらなるステップを含む。
【0040】
そのような方法によれば、回転軸に対して垂直な表面が、第2の切削要素によって機械加工され得る。方法は、第2の切削要素が切削するように旋削工具を回転軸に向かって径方向に移動させるステップを含み得る。前述のステップは、旋削工具を第2の方向に移動させるステップより前であることが好ましい。
【0041】
前述の前逃げ角は、好ましくは91°~135°であり、さらに好ましくは93°~120°である。切込み角、ノーズ角、および前逃げ角の和は、180°に等しい。これは、第1および第2の切削要素の両方に当てはまる。
【0042】
一実施形態によれば、方法は、第1の後方切削刃が鈍角の前逃げ角を形成するように旋削工具を第1の方向に移動させるステップを含む。
【0043】
そのような方法によれば、回転軸に対して垂直な表面が、第1の切削要素によって機械加工され得る。方法は、第1の切削要素が切削するように旋削工具を回転軸に向かって径方向に移動させるステップを含み得る。前述のステップは、旋削工具を第1の方向に移動させるステップより前であることが好ましい。
【0044】
前述の前逃げ角は、好ましくは少なくとも91°であり、さらに好ましくは93°~120°である。
【0045】
一実施形態によれば、方法は、旋削工具を第1の方向に移動させているときに機械加工された表面の少なくとも一部分を旋削工具を第2の方向に移動させているときに旋削するステップを含む。
【0046】
そのような方法によれば、荒削りおよび仕上げ作業が、1つだけの旋削工具を使用して行われ得る。
【0047】
方法は、第1の切削要素が切削するように、および旋削工具を第2の方向に移動させているときに機械加工された表面の少なくとも一部分が機械加工されるように、旋削工具を第1の方向に移動させるさらなるステップを含み得る。
【0048】
方法は、第1および第2の切削要素がある順序で二者択一的に切削するように、さらなるステップを含んでよく、ここで、第1の切削要素は、旋削工具が第1の方向に移動されているときに切削し、第2の切削要素は、旋削工具が第2の方向に移動されているときに切削する。
【0049】
一実施形態によれば、第1の切削刃が金属被加工物から離れる方向に移動させられるように、および第2のノーズ切削刃が金属被加工物に向かって移動させられるように、旋削工具をある方向に移動させるステップは、連結中心軸の周りでの旋削工具の回転を伴わない。
【0050】
前述の移動は、連結軸の周りでのまたは連結軸に対して平行な任意の他の軸の周りでの旋削工具の回転を伴わない。それにより、方法は、多数のCNC機械に適用され得る。前述の移動は、直線移動であってよく、または、旋削工具は、CNC旋盤のX-Z平面などの2つの機械軸によって画定された平面内で非直線的に例えば円弧において移動してよい。それにより、割出し時間は、回転移動と比較して短縮され得る。直線移動のもう1つの効果は、回転オプションが存在しないCNC旋盤を使用して方法が行われ得ることである。
【0051】
旋削工具は、第1の通過中、第2の通過中、または第1の通過と第2の通過との間、連結軸の周りで回転しないことが好ましい。旋削工具は、第1および第2の通過中、または第1の通過と第2の通過との間、連結軸に対して平行な任意の軸などの任意の他の軸の周りで回転しないことが好ましい。言い換えれば、方法は、旋削工具の回転移動を少しも伴わないことが好ましい。
【0052】
一実施形態によれば、連結軸は、回転軸に対して平行であるかまたは垂直である。
【0053】
そのような方法によれば、前述の方法は、多数のCNC旋盤に適用され得る。連結軸は、第1および第2の方向に旋削しているとき、好ましくは方法の全てのステップ中、回転軸に対して平行であるかまたは垂直である。
【0054】
一実施形態によれば、金属被加工物は、挟持手段によって挟持され、挟持手段から第2のノーズ切削刃までの距離は、挟持手段から第1の切削刃までの距離よりも短い。
【0055】
前述の挟持手段は、回転スピンドルまたは回転可能なスピンドルに接続されかつそのようなスピンドルによって駆動される。前述の挟持手段は、例えばコレットチャック、3ジョーチャック、またはフェイスドライバの形態であってよい。前述の距離は、回転軸に沿ってまたは回転軸に対して平行に測定される。
【0056】
一実施形態によれば、第2のノーズ切削刃は、旋削工具を第1の方向に移動させているときに第1の方向において第1の切削刃の前方に位置し、第1の切削刃は、旋削工具を第2の方向に移動させているときに第2の方向において第2のノーズ切削刃の前方に位置する。
【0057】
そのような方法によれば、動作していない切削要素が金属被加工物に干渉するリスクが低いので、より多くの形状が機械加工され得る。前方に(ahead)とは、回転軸に沿った送り方向における前方と理解されるべきである。より具体的には、旋削工具を第1の方向に移動させているときに、第2のノーズ切削刃は第1の切削刃の表面生成部の前方に位置し、旋削工具を第2の方向に移動させているときに、第1の切削刃の表面生成部は第2のノーズ切削刃の前方に位置する。第1の切削刃の表面生成部は、第1のノーズ切削刃の形態であることが好ましい。
【0058】
一実施形態によれば、第2の方向は、金属被加工物の隅部から離れる方向におけるものある。
【0059】
隅部または肩部は、回転軸と同心の第1の表面と回転軸に対して垂直な第2の表面との間の交差部として定義される。第1の表面は、外部表面、または内部表面すなわち内腔の内側の表面であってよい。第1の表面は、外部表面、すなわち径方向外側の表面であることが好ましい。前述の隅部は、90°の隅部であることが好ましい。前述の隅部は、完全にまたは少なくとも部分的に第2の切削要素によって形成されることが好ましい。
【0060】
一実施形態によれば、方法は、第2の前方切削刃が鈍角の第3の切込み角で動作するように第3の方向に旋削するさらなるステップを含み、第3の方向は、回転軸に向かうものである。
【0061】
そのような方法によれば、より入り組んだ構成要素形状が、1つの旋削工具によって機械加工され得る。第3の方向に旋削するステップは、第1の方向に旋削することの後であることが好ましい。第3の方向に旋削するステップは、第2の方向に旋削することの前であることが好ましい。第3の方向に旋削するステップは、第3および第2の方向の両方での旋削のときに第2の切削要素が連続的に切削または動作するように、第2の通過の一部であることが好ましい。したがって、第2の通過は、非直線的であることが好ましい。第3の切込み角は、好ましくは少なくとも100°であり、さらに好ましくは少なくとも110°である。第3の方向は、回転軸に対して垂直でありかつ回転軸に向かうことが好ましい。第3の方向に旋削するときに、第2のノーズ切削刃により表面が形成される。
【0062】
第3のおよび第2の方向に旋削することにより、外部隅部または外部肩部が形成されることが好ましい。前述の外部隅部は、2つの表面によって形成され、ここで、1つの第1の表面は、円筒形または円錐形であり、1つの第2の表面は、平坦または円錐形である。前述の2つの表面は、湾曲した表面によって接続される。
【0063】
前述の隅部または肩部は、回転軸と同心の第1の表面、および、回転軸に対して垂直な第2の表面によって画定されることが好ましい。第1の表面は、外部表面、または内部表面すなわち内腔の内側の表面であってよい。第1の表面は、外部表面、すなわち径方向外側の表面であることが好ましい。第1および第2の表面は、湾曲した表面によって接続される。前述の湾曲した表面は、回転軸を含む平面において見たときに円弧の形態であることが好ましい。前述の円弧は、第2のノーズ切削刃の半径以上である半径を有する。
【0064】
第1の方向は、隅部、すなわち前述の隅部に向かう方向におけるものであることが好ましい。言い換えれば、第1の通過は、将来の隅部、好ましくは第2の通過後に仕上げられる隅部に向かう方向におけるものである。したがって、第1の通過は、隅部を荒削りすること、すなわち所望のまたは予め定められた形状のために材料の全てではなくある程度を除去することを含む。
【0065】
一実施形態によれば、第1の切削要素は、第1の旋削インサートであり、第2の切削要素は、第2の旋削インサートであり、第1の旋削インサートは、第1の頂面および第1の底面を備え、第1の頂面および第1の底面は、第1の側面によって接続され、第2の旋削インサートは、第2の頂面および第2の底面を備え、第2の頂面および第2の底面は、第2の側面によって接続され、第1の頂面および第2の頂面は、チップブレーク手段を備える。
【0066】
第1の旋削インサートは、第1の切削刃、第1の前方切削刃、および第1の後方切削刃を備える。第2の旋削インサートは、第2のノーズ切削刃、第2の前方切削刃、および第2の後方切削刃を備える。
【0067】
第1の頂面は、すくい表面を備える。第2の頂面は、すくい表面を備える。第1および第2の底面のそれぞれは、座面または接触面を備える。
【0068】
第1のねじのための第1の貫通穴が、第1の頂面および第1の底面と交差することが好ましい。
【0069】
第2のねじのための第2の貫通穴が、第2の頂面および第1の底面と交差することが好ましい。
【0070】
チップブレーク手段は、1つまたは複数の突出部および/もしくはくぼみの形態であってよい。前述の1つまたは複数の突出部および/もしくはくぼみは、チップを制御または破壊するように配置されることが好ましい。前述の突出部は、インサートを側面図において見たときに、頂面に境界を接している切削刃の上方に突出することが好ましい。チップブレーク手段は、旋削におけるチップ破壊を改善する。
【0071】
一実施形態によれば、連結部は、横断面が正方形または矩形であるか、または、円錐形もしくは実質的に円錐形の部分を備える。
【0072】
前述の横断面は、連結軸に対して垂直な平面におけるものである。連結部は、円錐形または実質的に円錐形の部分と、好ましくはISO26623-1:2014によるようなフランジ接触面を含む多角形の中空テーパ接合部分またはDIN69893、ISO12164-1もしくはISO12164-1Fなどによるフランジ接触面を含む中空テーパの形態などをしたリング形状部分と、を備えることが好ましい。
【0073】
一実施形態によれば、方法は、金属被加工物が第1の切削刃と第2のノーズ切削刃との間に位置するように旋削工具を配置するさらなるステップを含む。
【0074】
そのような方法によれば、第1の要素と第2の要素との間の割出しは、連結軸に沿った直線移動を通じて行われ得る。そのような方法は、多数のCNC旋盤で使用され得る。したがって、金属被加工物は、第1の方向に旋削しているとき、および、第2の方向に旋削しているときに、第1の切削刃と第2のノーズ切削刃との間に位置する。
【0075】
回転軸は、第1の切削刃と第2のノーズ切削刃との間に位置するか、または実質的に第1の切削刃と第2のノーズ切削刃との間に位置することが好ましい。言い換えれば、第1の切削要素による第1の方向における旋削、および、第2の切削要素による第2の方向における旋削は、金属被加工物の回転軸に関して相反する側におけるものである。第1の切削刃と関連するすくい面、および第2の切削刃と関連するすくい面は、反対方向にまたは実質的に反対方向に面していることが好ましい。
【0076】
本発明の一態様によれば、CNC旋盤によって実行されたときにCNC旋盤に先の方法のいずれかによるステップを行わせる命令を有するコンピュータプログラムが提供される。
【0077】
前述のコンピュータプログラム、またはコンピュータプログラム製品は、CAMソフトウェア製品、すなわちコンピュータ支援製造のためのソフトウェアに含まれ得る。前述のコンピュータプログラムは、USBスティック、CD-ROM、またはデータストリームなどのコンピュータ可読媒体の形態であってよい。
【0078】
次に、本発明の実施形態の記述により、また、添付の図面を参照することにより、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0079】
図1】第1の実施形態による旋削工具および金属被加工物の斜視図である。
図2図1における旋削工具および金属被加工物の側面図である。
図3図1における旋削工具および金属被加工物の一部分の底面概略図である。
図4図1における旋削工具および金属被加工物の一部分のさらなる底面図である。
図5図1における旋削工具および金属被加工物の一部分のさらなる底面図である。
図6図1における旋削工具および金属被加工物の一部分のさらなる底面図である。
図7】第2の実施形態による旋削工具の側面図である。
図8】第3の実施形態による旋削工具および金属被加工物の側面図である。
図9】第4の実施形態による旋削工具の斜視図である。
図10図9における旋削工具の上面図である。
図11図9における旋削工具の正面図である。
図12図9における旋削工具の側面図である。
図13図9における旋削工具および金属被加工物の上面図である。
図14図9における旋削工具および金属被加工物のさらなる上面図である。
図15図9における旋削工具および金属被加工物のさらなる上面図である。
図16】第5の実施形態による旋削工具の斜視図である。
図17図16における旋削工具の側面図である。
図18図16における旋削工具の正面図である。
図19図16における旋削工具の上面図である。
図20図19におけるセクションBの拡大図である。
図21図16における旋削工具および金属被加工物の上面図である。
図22図16における旋削工具および金属被加工物の側面図である。
図23図16における旋削工具および金属被加工物の上面図である。
図24】旋削工具を第1の方向に移動させることの概略図である。
図25】旋削工具を第2の方向に移動させることの概略図である。
図26】旋削工具を第2の方向に移動させることのさらなる概略図である。
図27】第1の切削要素、第2の切削要素、および回転している金属被加工物を断面で示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0080】
図における全ての旋削工具は、一定の縮尺で描かれている。
【0081】
上記で定義された方法を行うのに適した第1の実施形態による旋削工具1を示す図1~6を参照する。金属被加工物2が、挟持手段(図示せず)によりCNC旋盤(図示せず)のスピンドル(図示せず)に接続される。旋削工具1は、連結軸A2に沿って延在する連結部3を備える。連結軸A2は、旋削工具1の長手軸を画定する。順方向は、連結部3から離れ、すなわち、順方向は、実質的に図1において左側に向かう。金属被加工物2の回転軸A1は、連結軸A2に対して垂直に配置されかつ連結軸A2と交差している。旋削工具1は、第1の旋削インサート7の形態の第1の切削要素7、および、第2の旋削インサート8の形態の第2の切削要素8を備える。
【0082】
図3~6に見られるように、第1の切削要素7は、第1のノーズ切削刃5の形態の第1の切削刃5を備え、この第1の切削刃5は、第1の前方切削刃12および第1の後方切削刃14を分離しかつ接続する。第2の旋削インサート8は、第2の前方切削刃13および第2の後方切削刃15を分離しかつ接続する第2のノーズ切削刃6を備える。
【0083】
図2に見られるように、第1の旋削インサート7は、第1の頂面20を備え、第2の旋削インサート8は、第2の頂面21を備える。図2では、金属被加工物2は、その回転軸A1の周りで時計方向に回転する。第1の切削刃および第2のノーズ切削刃は、連結軸A2および回転軸A1を含む平面と交差するかまたは実質的に交差する。図2では、第1の旋削インサー7は切削しており、第2の旋削インサート8は、金属被加工物2からほんのわずかな距離に位置する。金属被加工物2と非動作の第2の旋削インサート8との間の距離は、図3および4に示されるように、より大きいことが好ましい。
【0084】
図1および2では、旋削工具1は、第1および第2の旋削インサート7、8を接続する凹状部33または湾曲部の形態の中間部33を備える。中間部33は、開口部41を備える。開口部41またはボイドまたは空洞は、機械加工されるべき金属被加工物のための場所を作る。凹状部33は、連結軸A2に対して垂直な軸の周りで湾曲しており、前述の軸は、前述の開口部41またはボイドまたは空洞と交差する。例えば図2で分かるように、開口部41は、回転軸A1に関して径方向に開口する。旋削工具1は、少なくとも金属被加工物2の直径が第1の切削インサート7と第2の旋削インサート8との間の距離未満であるならば、図2における上方から、図2に示されるような位置へ運ばれ得る。これは、金属被加工物1が長いものであるかまたは両端において挟持される場合には、特に有利である。
【0085】
中間部33は、第1の側面40および反対側の第2の側面を備える。開口部41により、第1の側面40は、回転軸A1を取り囲まないかまたは包囲しない。第1の側面40は、回転軸A1に対して垂直な平面において延在する。前述の平面40は、連結軸A2から離隔されている。
【0086】
第1の側面40からは、挟持手段により第1の側面に接続される交換式切削ヘッド30、31の形態の突出部30、31が突出している。各切削ヘッド30、31は、少なくとも1つのインサート座を備える。第1および第2の旋削インサート7、8は、それぞれの切削ヘッド30、31により第1の側面40に接続される。
【0087】
図2では、回転軸A1は、連結軸A2に対して垂直でありかつ連結軸A2と交差する。図2に見られるように、金属被加工物2の回転軸A2は、第1の切削インサート7と第2の旋削インサート8との間に位置する。連結部3は、テーパ付けされた部分を備える。連結部3は、産業界ではCoromant Capto(登録商標)として知られている早替えカップリングである。代替的な実施形態(図示せず)では、連結部3は、横断面が正方形とされ、連結軸A2は、図2における連結軸A2に対して平行であり、かつ、図2における連結軸A2より5~20mm下方に位置する。
【0088】
例えば図3におけるように第1の切削インサート7を上面図において見たときに、第1の前方切削刃12と第1の後方切削刃14との間の角度として定義される第1のノーズ角は、鋭角である。
【0089】
第2の旋削インサートを上面図においてまたは例えば図3におけるように底面図において見たときに、第2の前方切削刃13と第2の後方切削刃15との間の角度として定義される第2のノーズ角は、鋭角である。
【0090】
例えば図1に見られるように、第1のねじ(図示せず)のための第1の貫通穴が、第1の頂面および第1の底面と交差し、第2のねじ(図示せず)のための第2の貫通穴が、第2の頂面および第1の底面と交差する。
【0091】
図3および4は、旋削工具1が連結軸A2に対して垂直な第1の方向17に移動させられる第1の機械加工ステップを示す。第1の前方切削刃12は、鋭角の第1の切込み角を形成する。第1の後方切削刃14は、鈍角の第1の前逃げ角を形成する。第1の旋削インサート7は、切削している。第2の旋削インサート8は、金属被加工物2から離隔されている。第2のノーズ切削刃6は、第1の方向17において第1のノーズ切削刃5の前方にある。
【0092】
図3および4に示されたステップの後、第1の旋削インサート7は切削を終え、旋削工具1は、図5に示されるように、第1の切削刃5が金属被加工物2から離れる方向に移動させられるように、また、第2のノーズ切削刃6が金属被加工物2に向かって移動させられるように、方向19に移動させられる。第1の旋削インサート7は、金属被加工物2の回転軸A1から離れるように径方向に移動させられる。
【0093】
図5に示されたステップの後、図6に示されたステップが続く。図6は、旋削工具1を第2の方向18に移動させることを示し、第2の方向18は、図4および5に示された第1の方向17に対して反対方向である。第2の旋削インサート8は、切削している。第1の旋削インサート7は、動作していない。言い換えれば、第1の旋削インサートは、金属被加工物2から離隔されている。第2の前方切削刃13は、鋭角の第2の切込み角を形成する。第2の後方切削刃15は、鈍角の第2の前逃げ角を形成する。
【0094】
金属被加工物2は、図3、4および6におけるその回転軸A1の周りで同じ方向に回転する。
【0095】
図7は、第2の実施形態による旋削工具1を示す。第1の実施形態による旋削工具1と第2の実施形態による旋削工具1との間の唯一の実質的な違いは、第2の実施形態による旋削工具1が第3の旋削インサート9を備えることである。第1の旋削インサート7から第2の旋削インサート8への割出しまたは第2の旋削インサート8から第1の旋削インサート7への割出しは、連結軸A2に沿った旋削工具1の移動を通じたものであるが、第3の旋削インサート9への割出しは、連結軸A2に対して垂直な方向、より具体的には図2での下方への旋削工具の移動を通じたものである。図7に見られるように、第1の旋削インサート7および第2の旋削インサート8、ならびに第3の旋削インサート9は、連結軸A2に対して垂直なその中心軸A3を有する仮想の円または円筒C1と交差する。第1の旋削インサート7は、第2の旋削インサート8に関して傾斜角ωだけ傾斜している。傾斜角ωは、仮想円C1の中心軸A3の周りで測定される。第2の頂面21は、連結軸A2に対して垂直でありかつ仮想の円または円筒C1の中心軸A3に対して垂直であるかまたは実質的に垂直である方向に面している。
【0096】
図8は、第3の実施形態による旋削工具1および金属被加工物2を示す。第2の実施形態による旋削工具1と第3の実施形態による旋削工具1との間の唯一の実質的な違いは、第3の実施形態による旋削工具1が第4の旋削インサート10を備えること、および、中間部33が回転軸A1を包囲することである。言い換えれば、中間部は、径方向開口部を備えない。
【0097】
次に、第4の実施形態による旋削工具1を示す図9~15を参照する。旋削工具1は連結部3を備える。連結部3は、旋削工具1の長手軸を画定する連結軸A2に沿って延在する。連結部は、旋削工具1の後端部を画定する。旋削工具1は、第1の旋削インサート7の形態の第1の切削要素7、および、第2の旋削インサート8の形態の第2の切削要素8を備える。例えば図10に見られるように、第1の旋削インサート7は、第1の前方切削刃12、第1の後方切削刃14、および第1のノーズ切削刃5を備える。第1のノーズ切削刃5は、連結軸A2に最も近い第1の切削インサート7の部分である。第2の旋削インサート8は、第2のノーズ切削刃6、第2の前方切削刃13、および第2の後方切削刃15を備える。第1の前方切削刃12と第1の後方切削刃14との間の角度として定義される第1のノーズ角は、鋭角である。第2の前方切削刃13と第2の後方切削刃15との間の角度として定義される第2のノーズ角は、鋭角である。例えば図10に見られるように、連結軸A2に沿ってまたは連結軸A2に対して平行に測定されると、第2のノーズ切削刃6は、第1の切削刃5の前に位置する。前(forward)とは、第1および第2の旋削インサート7、8に向かって連結部3から離れると定義される。
【0098】
例えば図11に見られるように、第1の旋削インサート7は、第1の頂面20および反対側の第1の底面を備える。第2の旋削インサート8は、第2の頂面21および反対側の第2の底面を備える。第1の頂面20は、第1のすくい表面を備え、第2の頂面21は、第2のすくい表面を備える。図11に見られるように、第1および第2の切削インサート7、8は、連結軸A2に対して平行な中心軸A3を有する仮想の円または円筒C1と交差する。第1の旋削インサート7は、第2の旋削インサート8に関して傾斜角ωだけ傾斜し、前述の傾斜角ωは、仮想円C1の中心軸A3の周りで測定される。第1の頂面20は、連結軸に対して垂直であるかまたは実質的に垂直である方向に面している。
【0099】
例えば図9に見られるように、旋削工具1は、前向きの表面42、すなわち連結部3と反対の側を向いた表面を備える。前向きの表面42から前方向に突出する交換式切削ヘッド30、31の形態の2つの要素30、31。第1の切削ヘッド30は、第1の旋削インサート7を備え、つまり、第1の切削ヘッドは、第1の旋削インサート7が取り付けられるインサート座を備える。第2の切削ヘッド31は、第2の切削要素8を備える。切削ヘッド30、31は、連結軸A2から離隔されている。
【0100】
連結部3は、旋削工具1の後端部を画定し、また、好ましくは空洞または凹部(図示せず)を備える機械インターフェース(図示せず)に挿入されるのに適している。例えば図9に示された連結部3は、実質的に円錐形の部分または実質的にテーパ付けされたもしくはテーパ付けされた部分を備える。連結部は、金属切削工具の分野では、Coromant Capto(登録商標)として知られている。例えば方形シャンクタイプとして知られているような他のタイプの連結部が可能である。例えば、連結部が方形シャンクタイプのものである場合、連結軸に対して垂直な連結部の横断面は、正方形の形状または矩形の形状とされる。さらに、そのような旋削工具の場合、連結軸は、図12における連結軸A2に対して平行でありかつ連結軸A2より5~20mm下方に位置する。
【0101】
図13は、第1の機械加工ステップを示す。金属被加工物2が、その回転軸A1の周りで1つの方向に回転する。旋削工具1は、連結軸A2に対して平行かつその金属被加工物2の回転軸A1に対して平行な第1の方向17に移動させられる。第1の方向17は、前方向であり、すなわち、連結部3から離れる方向でありかつ前向きの表面42が面している方向である。図13において、第1の旋削インサート7の頂面は、観察者に面している。切削仕上げ表面が、第1のノーズ切削刃5によって形成され、言い換えれば、第1のノーズ切削刃5は、表面生成切削刃である。第1の旋削インサート7は、第1の前方切削刃12が3~45°の鋭角の第1の切込み角αを形成するように配置される。第1の後方切削刃14は、93°~135°の鈍角の第1の前逃げ角γを形成する。第2の旋削インサート8は、金属被加工物2から離隔されている。旋削工具1を第1の方向17に移動させているときに、第2のノーズ切削刃6は、第1のノーズ切削刃5の前方にある。図13に見られるように、旋削工具1は、円筒形である金属被加工物2が第1の旋削インサート7と第2の旋削インサート8との間に配置されるように配置され、金属被加工物(2)の長手軸A1である回転軸A1は、前述の旋削インサート7、8の間に位置する。
【0102】
図14は、図13に示されたステップの後のステップを示す。旋削工具1は、第1のノーズ切削刃5が金属被加工物2から離れる方向に移動させられるように、および第2のノーズ切削刃6が金属被加工物2に向かって移動させられるように、方向19に移動させられる。旋削工具1は、連結軸A2に対して垂直でありかつ回転軸A1に対して垂直である方向19に移動させられる。前述の移動は、直線移動である。
【0103】
図15は、図14に示されたステップの後のステップを示す。旋削工具18は、第2の方向18に移動させられる。第2の方向18は、第1の方向17に対して反対方向である。第2の前方切削刃13は、3°~45°の鋭角の第2の切込み角βを形成する。第2の後方切削刃15は、93°~135°の鈍角の第2の前逃げ角δを形成する。第1の旋削インサート7は、金属被加工物2から離隔されている。第1のノーズ切削刃5は、第2の方向18において第2のノーズ切削刃6の前方にある。図13に示された第1のステップにおいて第1の旋削インサート7によって機械加工された表面の少なくとも一部分が、第2の旋削インサート8によって機械加工される。
【0104】
次に、第5の実施形態による旋削工具1を示す図16~23を参照する。旋削工具1は連結部3を備える。連結部3は、連結軸A2に沿って延在する。連結軸A2は、旋削工具1の長手軸を画定する。連結部3は、円錐形または実質的に円錐形の部分を備える。例では、実質的に円錐形の部分は、産業界ではCoromant Capto(登録商標)として知られているものに従う。連結部は、横断面が正方形または矩形の形状などの他の形状を有してよく、前述の横断面は、連結軸に対して垂直である。
【0105】
旋削工具1は、第1の旋削インサート7の形態の第1の切削要素7、第2の旋削インサート8の形態の第2の切削要素8、および、第3の旋削インサート9の形態の第3の切削要素9を備える。第1の旋削インサート7は、第1のノーズ切削刃5の形態の第1の切削刃5、第1の前方切削刃12、および、第1の後方切削刃14を備える。第1のノーズ切削刃5は、第1の前方切削刃12および第1の後方切削刃14を分離しかつ接続する。第1の旋削インサート7は、第1の頂面20および反対側の第1の底面を備える。第2の旋削インサート8は、第2のノーズ切削刃6、第2の前方切削刃13、および、第2の後方切削刃15を備える。第2のノーズ切削刃6は、第2の前方切削刃13および第2の後方切削刃15を分離しかつ接続する。言い換えれば、第2の前方切削刃13および第2の後方切削刃15は、第2のノーズ切削刃6に向かって収束する。第2の切削要素8は、第2の頂面21および反対側の第2の底面を備える。
【0106】
第1の中央平面P1が、第1の頂面20と第1の底面との間の中ほどにまたは実質的に中ほどに延在する。第1の中央平面P1は、第1の底面に対して平行であるかまたは実質的に平行である。対応する態様で、第2の旋削インサート8は、第2の頂面21および反対側の第2の底面を備え、第2の中央平面P2が、第2の頂面21と第2の底面との間の中ほどにまたは実質的に中ほどに延在する。第3の旋削インサート9は、その頂面と底面との間の中ほどに第3の中央平面P3を有して、対応する態様で配置される。前述の頂面20、21は、すくい表面として機能するのに適している。第1、第2、および第3の中央平面P1、P2、P3は、平行な平面または実質的に平行な平面において延在する。例えば図17に見られるように、第1の頂面20および第2の頂面21は、同じ方向または実質的に同じ方向に面しており、この方向は、図17では上方である。
【0107】
図18に見られるように、連結軸A2から第2のノーズ切削刃までの距離は、連結軸A2から第1のノーズ切削刃5までの距離よりも大きい。前述の距離は、図18では水平に測定される。言い換えれば、連結軸を含む第1の平面からの前述の距離、前述の第1の平面は、第1の中央平面に対して垂直である。したがって、前述の距離は、前述の第1の平面から第1のノーズ切削刃5までおよび第2のノーズ切削刃6までのものである。図19、および図19におけるセクションBの拡大図である図20に見られるように、上面図では、第1の前方切削刃12と第1の後方切削刃14との間の第1の二等分線が、第2の前方切削刃13と第2の後方切削刃15との間の第2の二等分線に関して45~90°の角度を形成する。第1の後方切削刃14および第2の後方切削刃15が互いに関して6~20°の角度を形成することも分かる。さらに、第1の前方切削刃12から第2の前方切削刃13までの距離は、第1の前方切削刃12から第2の後方切削刃15までの距離よりも短い。第1の前方切削刃12と第1の後方切削刃14との間の角度として定義される第1のノーズ角は、鋭角である。第2の前方切削刃13と第2の後方切削刃15との間の角度として定義される第2のノーズ角は、鋭角である。例えば図19では、第1のノーズ切削刃5および第2のノーズ切削刃6は、長手方向に等しいかまたは実質的に等しい距離のところに位置する。第1のノーズ切削刃5および/または第2のノーズ切削刃6は、旋削工具1の長手方向に最も遠位の部分であり、ここで、長手方向に(longitudinally)とは、連結軸に沿うまたは連結軸A2に対して平行な線に沿うとして定義される。
【0108】
図20では、第1の旋削インサート7および第2の旋削インサート8は、上面図において部分的に重なり合う。
【0109】
図21は、CNC旋盤(図示せず)のための旋削方法の第1のステップの一例を示す。金属被加工物2が、その回転軸A1の周りで1つの方向50に回転している。旋削工具1の連結部3は、CNC旋盤(図示せず)に接続され、より具体的には、連結部は、機械インターフェースに接続される。連結軸A2は、回転軸A1に対して垂直である。旋削工具1は、第1のノーズ切削刃5が切削するように、および第1の前方切削刃が鋭角の切込み角を形成するように、第1の方向17に移動させられる。第1の後方切削刃14は、鈍角の前逃げ角を形成する。第2および第3の旋削インサート8、9は、金属被加工物2から離隔されている。第2のノーズ切削刃は、第1の方向17において第1のノーズ切削刃5の前方に位置する。第1の方向は、回転軸A1に対して平行である。
【0110】
第1のステップの後、旋削工具1は、図22に見られるように、連結軸A2に対して垂直でありかつ回転軸A1に対して垂直である方向19に移動させられる。前述の方向は、第1の頂面20が面しているのと同じ方向であるかまたは実質的に同じ方向である。前述の方向は、回転軸A1に関して径方向ではなく、むしろ、金属被加工物2に関して接線方向である。旋削工具1の前述の移動は、第1のノーズ切削刃が金属被加工物2からさらに離れる方向に移動され、第2のノーズ切削刃6が金属被加工物2のより近くにまたは金属被加工物2に向かって移動させられるような、直線移動である。第1、第2、または第3の切削インサート7、8、9のいずれも、切削していない。
【0111】
図23は、図22に示されたステップの後のステップであるさらなるステップを示す。旋削工具1は、第2の前方切削刃13が5~45°である鋭角の第2の切込み角βで切削するように、第2の方向18に移動させられる。切削仕上げ表面が、第2のノーズ切削刃6によって形成される。第2の方向18は、第1の方向17に対して反対方向であるかまたは実質的に反対方向である。第2の後方切削刃15は、鈍角の前逃げ角を形成する。第1のノーズ切削刃は、第2の方向において第2のノーズ切削刃6の前方に位置する。第1および第3の旋削インサート7、9は、金属被加工物2から離隔されている。図21に示されたステップから得られる切削仕上げ表面の少なくとも一部分が、図23に示されたステップにおいて機械加工される。
【0112】
金属被加工物は、上記で説明されてきたものと比較して、様々な形状を有し得る。金属被加工物は、棒、中空棒、またはその回転軸の周りに回転対称性を有するかもしくは実質的に回転対称性を有する任意の他の形状の形態であってよい。機械加工され得る形状は、上記で説明されてきたものとは異なる構成のものであってよい。例えば、形状は、1つの側壁だけでなく、2つの側壁、すなわち回転軸に対して垂直な平面における2つの表面を有してよい。言い換えれば、旋削工具は、外部溝を機械加工するために使用され得る。
【0113】
図24は、旋削工具を第1の方向17に移動させることの概略図であり、第1の切削要素7は、切削している。第1の方向17は、送り方向である。第1の前方切削刃は、5~45°である第1の切込み角αを形成し、第1の後方切削刃は、少なくとも91°の鈍角の前逃げ角γを形成する。第2の切削要素8は、金属被加工物2から離隔されている。切削仕上げ表面25が、第1の切削要素7によって形成される。より具体的には、表面25は、第1のノーズ切削刃5によって形成される。
【0114】
図25は、旋削工具を第2の方向18に移動させることの概略図であり、第2の切削要素8は、切削している。第2の方向は、送り方向である。第2の前方切削刃は、5~45°である第2の切込み角βで切削しており、第2の後方切削刃は、鈍角の前逃げ角δを形成する。図24に見られる第1の方向17に旋削工具1を移動させているときに機械加工された表面25の少なくとも一部分が、図25および図26において第2の切削要素8によって機械加工される。
【0115】
図26は、旋削工具を第2の方向18に移動させることのさらなる概略図であり、第2の切削要素8は、切削している。第2の前方切削刃は、5~45°である第2の切込み角βで切削しており、第2の後方切削刃は、鈍角の前逃げ角δを形成する。第2の底面は、観察者に面している。
【0116】
図24は、第1の機械加工ステップを示し、図25または図26のいずれかに示されたステップが、第1の機械加工ステップに続き得る。旋削工具が第5の実施形態によるものである場合、図25に示されたステップが適用され、一方で、旋削工具が第1、第2、第3、または第4の実施形態によるものである場合、図26に示されたステップが適用される。図25では、第2の切削要素8は、図24における第1の切削要素7と回転軸A1の同じ側にあり、第1の頂面は、第2の頂面と同じ方向に面している。対称的に、図26では、第2の切削要素8は、図24における第1の切削要素7とは回転軸A1の反対側にあり、第1の頂面は、第2の頂面とは反対方向に面している。
【0117】
図24~26における金属被加工物2は、挟持手段60により一方の端部において挟持されている。前述の挟持手段60は、CNC旋盤(図示せず)の一部である回転スピンドルまたは回転可能なスピンドル(図示せず)に接続されかつそのようなスピンドルによって駆動される。前述の挟持手段は、コレットチャック、3ジョーチャック、またはフェイスドライバの形態であってよい。挟持手段60から第2のノーズ切削刃6までの距離は、挟持手段60から第1の切削刃5までの距離よりも短く、前述の距離は、回転軸A1に対して平行な線に沿って測定される。図24~26では、第1の方向17は、挟持手段60から離れる方向であり、第2の方向18は、挟持手段に向かう方向である。あるいは(図示せず)、第1の方向17は、挟持手段60に向かう方向であり、第2の方向18は、挟持手段から離れる方向である。したがって、第1および第2の方向17、18は、回転軸A1に沿った相反する方向である。したがって、相反する方向は、挟持手段に向かうかもしくは挟持手段から離れるものとして、または金属被加工物の一方の長手方向端部に向かうかもしくは長手方向端部から離れるものとして理解される。したがって、第1および第2の方向は、必ずしも直線状かつ回転軸に対して平行ではない。
【0118】
図27は、第1の旋削インサート7の形態の第1の切削要素7、第2の旋削インサート8の形態の第2の切削要素8、および回転する金属被加工物を断面で示す概略図である。第1および第2の旋削インサート7、8は、第1、第2、第3、または第4の旋削工具実施形態に従って配置される。第1の旋削インサート7は、第1の頂面20および第1の底面22を備え、どちらも水平であるかまたは実質的に水平である。第2の切削インサート8は、第2の頂面21および第2の底面23を備え、どちらも水平であるかまたは実質的に水平である。第1の中央平面P1が、第1の頂面20と第1の底面22との中間または実質的に中間に位置する。第1の中央平面P1は、第2の底面22に対して平行であるかまたは実質的に平行である。第2の中央平面P2は、対応する態様で配置される。第1および第2の中央平面P1、P2は、平行な平面内に配置される。金属被加工物2は、その回転軸A1の周りで1つの方向50に回転する。第1および第2の旋削インサート7、8は、回転軸A1の相反する側に置かれる。第1の頂面20は、図において上方に面しており、第2の頂面21は、図において下方に面している。第1の旋削インサート7が切削しているときに、第2の旋削インサート8は金属被加工物2から離隔されている。
【0119】
図25および26は、第2の方向18がどの程度金属被加工物2の隅部から離れる方向にあるかを示す。言い換えれば、第2の方向18は、回転軸A1に対して垂直な平面内にある表面から離れる方向である。前述の隅部、または肩部は、回転軸と同心の表面と、回転軸に対して垂直な第2の表面との間の交差部である。前述の隅部は、90°の隅部である。前述の隅部は、第2の切削要素によって完全に形成されることが好ましく、その場合、旋削工具は、旋削工具を第2の方向18に移動させる直前に回転軸A1に向かって移動させられる。
【0120】
上記の実施形態において説明された第1および第2の旋削インサート7、8は、耐摩耗材料、好ましくは超硬合金から作られることが好ましい。第1および第2の頂面20、21は、チップ形成手段またはチップブレーク手段(図示せず)を備えることが好ましい。前述のチップ形成手段またはチップブレーク手段の少なくとも一部分からそれぞれの旋削インサートの中央平面までの距離は、頂面に境界を接している切削刃から前述の中央平面までの距離よりも大きいことが好ましい。言い換えれば、第1および第2の旋削インサートの頂面20、21は、側面図において切削刃よりも高いかまたは切削刃の上方に位置する少なくとも1つの突出部を備える。このようにして、旋削インサートは旋削により適する。
【0121】
上記の実施形態において説明された第1および第2の旋削インサート7、8は、第1の前方切削刃12が第1のノーズ切削刃5からの距離を増すにつれて下方にすなわち第1の底面22に向かって傾斜しているように設計されることが好ましい。第2の前方切削刃13は、対応する態様で配置されることが好ましい。このようにして、チップ制御がさらに改善される。
【0122】
前方切削刃および後方切削刃は、それぞれの送り方向において前方および後方に位置するものであり、必ずしも旋削工具自体の前方向または後方向に関して前方または後方に位置するのではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
【国際調査報告】