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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-19
(54)【発明の名称】金属切削旋削工具
(51)【国際特許分類】
   B23B 29/24 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
B23B29/24 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536027
(86)(22)【出願日】2021-11-03
(85)【翻訳文提出日】2023-08-09
(86)【国際出願番号】 EP2021080443
(87)【国際公開番号】W WO2022128235
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】20214113.1
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520333435
【氏名又は名称】エービー サンドビック コロマント
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンソン, アダム
(72)【発明者】
【氏名】レフ, ロニー
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクブラド, クリステル
【テーマコード(参考)】
3C046
【Fターム(参考)】
3C046NN06
(57)【要約】
連結部(3)を備える旋削工具(1)であって、連結部(3)が、連結軸(A2)に沿って延在し、連結軸(A2)が、旋削工具(1)の長手軸を画定し、旋削工具(1)が、第1の切削要素(7)および第2の切削要素(8)を備え、第1の切削要素(7)が、第1の切削刃(5)を備え、第2の切削要素(8)が、第2の前方切削刃(13)および第2の後方切削刃(15)を分離しかつ接続する第2のノーズ切削刃(6)を備え、第1の切削要素(7)が、第1の頂面(20)を備え、第2の切削要素(8)が、第2の頂面(21)を備え、第1および第2の切削要素(7、8)が、連結軸(A2)に対して垂直なその中心軸(A3)を有する仮想の円または円筒(C1)と交差し、第1の切削要素(7)が、第2の切削要素(8)に関して傾斜角(ω)だけ傾斜し、前述の傾斜角(ω)が、仮想円(C1)の中心軸(A3)の周りで測定され、第2の頂面(21)が、連結軸(A2)に対して垂直であるかまたは実質的に垂直でありかつ仮想の円または円筒(C1)の中心軸(A3)に対して垂直であるかまたは実質的に垂直である方向に面している、旋削工具(1)。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結部(3)を備える旋削工具(1)であって、
前記連結部(3)が、連結軸(A2)に沿って延在し、
前記連結軸(A2)が、前記旋削工具(1)の長手軸を画定し、
前記旋削工具(1)が、第1の切削要素(7)および第2の切削要素(8)を備え、
前記第1の切削要素(7)が、第1の切削刃(5)を備え、
前記第2の切削要素(8)が、第2の前方切削刃(13)および第2の後方切削刃(15)を分離しかつ接続する第2のノーズ切削刃(6)を備え、
前記第1の切削要素(7)が、第1の頂面(20)を備え、
前記第2の切削要素(8)が、第2の頂面(21)を備える、旋削工具(1)において、
前記第1および第2の切削要素(7、8)が、前記連結軸(A2)に対して垂直なその中心軸(A3)を有する仮想の円または円筒(C1)と交差し、
前記第1の切削要素(7)が、前記第2の切削要素(8)に関して傾斜角(ω)だけ傾斜し、
前記傾斜角(ω)が、前記仮想の円(C1)の前記中心軸(A3)の周りで測定され、
前記第2の頂面(21)が、前記連結軸(A2)に対して垂直であるかまたは実質的に垂直でありかつ前記仮想の円または円筒(C1)の前記中心軸(A3)に対して垂直であるかまたは実質的に垂直である方向に面していることを特徴とする、旋削工具(1)。
【請求項2】
前記第1の切削要素(7)が、第1の前方切削刃(12)および第1の後方切削刃(14)を備え、
前記第1の切削刃(5)が、第1のノーズ切削刃(5)であり、
前記第1のノーズ切削刃(5)が、前記第1の前方切削刃(12)および前記第1の後方切削刃(14)を分離しかつ接続する、
請求項1に記載の旋削工具(1)。
【請求項3】
前記連結軸(A2)から前記第1のノーズ切削刃(5)までの距離が、前記連結軸(A2)から前記第2のノーズ切削刃(6)までの距離よりも短い、
請求項2に記載の旋削工具(1)。
【請求項4】
前記旋削工具(1)が、中間部(33)を備え、
前記中間部(33)が、凹状部(33)を備え、
前記凹状部(33)が、前記仮想の円または円筒(C1)の前記中心軸(A3)の周りで湾曲しており、
前記第1および第2の切削要素(7、8)が、前記凹状部(33)に沿った離隔された部分に接続されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の旋削工具(1)。
【請求項5】
前記凹状部(33)が、第1の側面(40)を備え、
前記第1の側面(40)が、前記仮想の円または円筒(C1)の前記中心軸(A3)に対して垂直であるかまたは実質的に垂直である平面において延在し、
前記平面が、前記連結軸(A2)から離隔されており、
前記第1および第2の切削要素(7、8)が、前記第1の側面(40)に接続されており、
前記中間部が、開口部(41)を備える、
請求項4に記載の旋削工具(1)。
【請求項6】
前記第1の前方切削刃(12)と前記第1の後方切削刃(14)との間の角度として定義される第1のノーズ角が、鋭角である、
請求項1から5のいずれか一項に記載の旋削工具(1)。
【請求項7】
前記第2の前方切削刃(13)と前記第2の後方切削刃(15)との間の角度として定義される第2のノーズ角が、鋭角である、
請求項1から6のいずれか一項に記載の旋削工具(1)。
【請求項8】
前記第1の切削要素(7)が、第1の旋削インサート(7)の形態であり、
前記第2の切削要素(8)が、第2の旋削インサート(8)の形態であり、
前記第1の旋削インサート(7)が、第1の頂面(20)および反対側の第1の底面(22)を備え、
前記第2の旋削インサート(8)が、第2の頂面(21)および反対側の第2の底面(23)を備え、
前記第1の頂面(20)が、第1のすくい表面を備え、
前記第2の頂面(21)が、第2のすくい表面を備える、
請求項1から7のいずれか一項に記載の旋削工具(1)。
【請求項9】
前記第1の切削要素(7)が、前記旋削工具(1)を前記連結軸(A2)に対して垂直な第1の方向(17)に移動させているときに前記第1の前方切削刃(12)が鋭角の第1の切込み角(α)を形成するように配置され、
前記第2の切削要素(8)が、前記旋削工具(1)を前記第1の方向(17)とは反対の第2の方向(18)に移動させているときに前記第2の前方切削刃(13)が鋭角の第2の切込み角(β)を形成するように配置されている、
請求項1から8のいずれか一項に記載の旋削工具(1)。
【請求項10】
前記第1の切削要素(7)が、前記旋削工具(1)を第1の方向(17)に移動させているときに前記第1の後方切削刃(14)が鈍角の第1の前逃げ角(γ)を形成するように配置されている、
請求項1から9のいずれか一項に記載の旋削工具(1)。
【請求項11】
前記第2の切削要素(8)が、前記旋削工具(1)を第2の方向(18)に移動させているときに前記第2の後方切削刃(15)が鈍角の第2の前逃げ角(δ)を形成するように配置されている、
請求項1から10のいずれか一項に記載の旋削工具(1)。
【請求項12】
前記第1の切削要素(7)および前記第2の切削要素(8)が、その回転軸(A1)の周りで1つの方向に回転可能である金属被加工物(2)を旋削するために使用可能であるように配置され、前記回転軸(2)が、前記連結軸(A2)に対して垂直に配置されかつ前記連結軸(A2)と交差する、
請求項1から11のいずれか一項に記載の旋削工具(1)。
【請求項13】
前記第1の切削刃(5)および前記第2のノーズ切削刃(6)が、前記連結軸(A2)を含む平面と交差するかまたは実質的に交差する、
請求項1から12のいずれか一項に記載の旋削工具(1)。
【請求項14】
前記旋削工具(1)が、円筒形の金属被加工物(2)が前記第1の切削要素(7)と前記第2の切削要素(8)との間に配置可能なように配置され、前記金属被加工物(2)の長手軸(A2)が、前記切削要素(7、8)間に位置する、
請求項1から13のいずれか一項に記載の旋削工具(1)。
【請求項15】
前記連結部(3)が、横断面が正方形または矩形であるか、あるいは、テーパ付けされた部分または円錐形もしくは実質的に円錐形の部分を備える、
請求項1から14のいずれか一項に記載の旋削工具(1)。
【請求項16】
前記第1および第2の切削要素(7、8)が、ある平面に対して同じ側に位置決めされ、
前記平面が、前記連結軸(A2)を含み、
前記平面が、前記第1の頂面(20)と直角に交差する平面に対して平行である、
請求項1から15のいずれか一項に記載の旋削工具(1)。
【請求項17】
前記連結部(3)から前記第1の切削要素(7)までの距離が、前記連結部(3)から前記第2の切削要素(8)までの距離よりも大きい、
請求項1から16のいずれか一項に記載の旋削工具(1)。
【請求項18】
CNC旋盤のための旋削方法であって、
金属被加工物(2)を用意するステップと、
請求項1から17のいずれか一項に記載の旋削工具(1)を用意するステップと、
前記金属被加工物(2)をその回転軸(A1)の周りで1つの方向(30)に回転させるステップと、
前記第1の切削刃(5)が切削するように前記旋削工具(1)を第1の方向(17)に移動させるステップと、
前記第1の切削刃(5)が前記金属被加工物(2)から離れる方向に移動させられるように、また、前記第2のノーズ切削刃(6)が前記金属被加工物(2)に向かって移動させられるように、前記旋削工具(1)をある方向(19)に移動させるステップと、
前記第2の前方切削刃(13)が5~45°である第2の切込み角(β)で切削するように前記旋削工具(1)を第2の方向(18)に移動させるステップであって、
前記第2の方向(18)が、前記第1の方向(17)に対して反対方向であるかまたは実質的に反対方向である、ステップと、
を含む、旋削方法。
【請求項19】
CNC旋盤によって実行されたときに前記CNC旋盤に請求項18に記載のステップを行わせる命令を有する、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属切削の技術分野に属する。より具体的には、本発明は、旋削の分野に属する。
【0002】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載の旋削工具に言及する。言い換えれば、本発明は、連結部を備える旋削工具であって、連結部が、連結軸に沿って延在し、連結軸が、旋削工具の長手軸を画定し、旋削工具が、第1の切削要素および第2の切削要素を備え、第1の切削要素が、第1の切削刃を備え、第2の切削要素が、第2の前方切削刃および第2の後方切削刃を分離しかつ接続する第2のノーズ切削刃を備え、第1の切削要素が、第1の頂面を備え、第2の切削要素が、第2の頂面を備える、旋削工具に関する。
【0003】
さらなる態様では、本発明は、CNC旋盤のための機械加工方法に関する。
【背景技術】
【0004】
金属切削において、旋削は一般的な作業である。CNC旋盤が一般に使用される。通常、金属被加工物から複雑な形状が機械加工される。複雑な形状を得るために、2つ以上の旋削工具を使用することが一般的であり、その場合、旋削工具は、異なる幾何学的形状または異なる向きを有する。例えば、1つの旋削工具が、1つの方向における機械加工に適していてよく、第2の旋削工具が、異なる方向に機械加工するのに適していてよい。
【0005】
慣例的に、各旋削工具には、1つの旋削インサートが装備されている。1つの旋削インサートを使用して旋削した後、通常、第1の旋削工具は、第2の旋削工具に割出しされる。例えば、CNC旋盤は、タレットを備えることができ、1つの旋削工具から第2の旋削工具に割出しすることは、所定の角度によるタレットの回転によって達成される。タレットの回転による割出しは、例えばCNC旋盤次第で時間がかかる。1つの工具から別の工具に変更または割出ししているときなどの切削をしていない時間は、ダウンタイムと呼ばれ得る。
【0006】
EP1317981A1は、複数の旋削インサートを担持する工具を開示しており、この工具によれば、連結軸の周りでの旋削工具の回転により、異なる旋削インサート間の切り替えが迅速に達成され得る。
【0007】
本発明者らは、さらに改善された旋削工具が必要とされていることを見出した。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、複雑な形状を有する物体を機械加工するのに適した旋削工具を提供することである。さらなる目的は、広範なCNC旋盤で使用可能な旋削工具を提供することである。またさらなる目的は、長時間にわたる機械加工に使用可能な旋削工具を提供することである。なおもさらなる目的は、ダウンタイムを短縮するのに役立ち得る旋削工具を提供することである。
【0009】
前述の目的のうちの少なくとも1つは、最初に定義される旋削工具によって達成され、この旋削工具では、第1および第2の切削要素は、連結軸に対して垂直な中心軸を有する仮想の円または円筒と交差し、第1の切削要素は、第2の切削要素に関してある傾斜角だけ傾斜し、前述の傾斜角は、仮想円の中心軸の周りで測定され、第2の頂面は、連結軸に対して垂直であるかまたは実質的に垂直でありかつ仮想の円または円筒の中心軸に対して垂直であるかまたは実質的に垂直である方向に面している。
【0010】
そのような旋削工具により、第1の切削要素から第2の要素への非常に迅速な変更または割出しが、CNC旋盤のX軸における短い横断などを通じた旋削工具の直線運動によって達成されることが可能であり、前述のX軸は、連結軸と一致し得る。
【0011】
旋削工具は、CNC旋盤、すなわち、コンピュータまたはコンピュータ化された数値制御旋盤、すなわち、例えば旋削旋盤、マルチタスク機械、ターンミル機械、またはスライディングヘッド機械などの旋削に適した任意のCNC機械のためのものである。旋削工具は、径方向外側表面である外部表面を備える金属被加工物などの金属被加工物を機械加工するためのものであり、ここで、径方向外側表面は、その周りで金属被加工物が回転可能である回転軸と反対の側を向いている。旋削工具は、前述の径方向外側表面の旋削、すなわち外部旋削(external turning)のためのものである。
【0012】
旋削工具は、前方端部、および、連結部の形態をした反対側の後端部を備える。連結部は、CNC旋盤に、より具体的には機械スピンドルまたは工具リボルバタレットもしくは工具ポストなどのCNC旋盤の機械インターフェースに、取外し可能に接続可能である。
【0013】
連結部は、正方形または矩形の形状の横断面を有し得る。連結部は、好ましくはISO標準26623-1などに従って円錐形または実質的に円錐形であり得る。
【0014】
連結部は、連結軸または中心軸に沿って延在し、この中心軸は、旋削工具の長手軸を画定する。
【0015】
旋削工具は、第1の切削要素および第2の切削要素を備える。第1および第2の切削要素は、離隔されている。第1および第2の切削要素は、好ましくは切削インサートまたは旋削インサートであり、すなわち、例えば超硬合金といった耐摩耗材料から作られた交換可能な要素である。あるいは、第1および第2の切削要素は、好ましくは超硬合金の単体から作られた単一の耐摩耗要素の一部であり得る。第1の切削要素は、第1の頂面を備える。第1の頂面は、すくい面またはすくい表面を備える。
【0016】
第1の頂面は、上面図において、菱形、三角形、正方形、円形、または多角形の形状を有し得る。
【0017】
第1の頂面および第2の頂面は、それぞれ、平坦であってよい。あるいは、前述の表面の一方または両方が、非平坦または非平面状であってよい。前述の表面は、1つまたは複数の突出部および/もしくはくぼみの形態の1つまたは複数のチップブレーク手段を備え得ることが好ましい。
【0018】
第1の頂面が面する方向は、第1の頂面の垂線であり、すなわち、第1の頂面に対して垂直な方向である。前述の方向は、第1の頂面から離れており、また、第1の切削要素が第1の底面を有する切削インサートまたは旋削インサートの形態である場合には、第1の底面から離れている。
【0019】
第1の頂面が非平坦である場合、第1の頂面が面する方向を定める目的のために、そのような第1の頂面は、第1の中央平面に対して平行な平面としてまたはほぼその平面として画定されてよく、前述の平面は、第1の切削刃または第1の切削刃の少なくとも一部分と交差する。前述の第1の中央平面は、第1の切削要素が第1の底面を有する切削インサートまたは旋削インサートの形態である場合には、第1の頂面と第1の底面との間の中ほどのまたは実質的に中ほどの平面である。
【0020】
あるいは、前述の第1の頂面は、第1の頂面が面する方向を定める目的のために、第1の頂面と境界を接しているかまたは第1の頂面に隣接している全てのノーズ切削刃と交差する平面として画定され得る。
【0021】
対応する推論が、第2の頂面および第2の切削要素に適用される。
【0022】
第1の切削要素は、第1の切削刃を備える。第1の切削刃は、好ましくは、ノーズ切削刃、すなわち上面図において凸状である切削刃の形態であり得る。第1の切削刃、または第1の切削刃の一部分は、切削仕上げ表面(machined surface)を生成する。第1の切削要素は、円形切削インサート、すなわち上面図において円形または実質的に円形であるインサートの形態であってよい。前述の円の半径は、好ましくは5~30mmである。あるいは、第1の切削刃は、上面図において凸状であるノーズ切削刃であってよく、好ましくは、0.2~1.6mmの曲率半径を有しかつ第1の前方切削刃すなわち主切削刃または主要切削刃またはリーディング切削刃と第1の後方切削刃すなわち補助切削刃またはトレーリング切削刃との間に配置されすなわちそれらを接続する円弧の形態である。
【0023】
第2の切削要素は、第2の前方切削刃および第2の後方切削刃を分離しかつ接続する第2のノーズ切削刃を備える。
【0024】
第2の切削要素は、第2の前方切削刃および第2の後方切削刃を分離しかつ接続する第2のノーズ切削刃を備える。第2の切削要素は、第1の頂面を備える。第2の頂面は、すくい面またはすくい表面を備える。第2の前方切削刃は、リーディング切削刃である。第2の後方切削刃は、トレーリング切削刃である。
【0025】
旋削工具は好ましくは長手方向旋削などの、円筒形金属被加工物の外部旋削に適する。第1および第2の切削要素は、その回転軸の周りで1つの方向に回転する金属被加工物の長手方向旋削のために、二者択一的に使用され得る。前述の回転軸は、以下で定められる仮想の円または円筒の中心軸に対して平行である。
【0026】
したがって、旋削工具は、複雑な形状を機械加工するのに適しており、この場合、金属被加工物は、1つの方向にのみ回転される。金属被加工物の回転方向を変更することは、時間のかかることである。
【0027】
第1および第2の切削要素は、連結軸に対して垂直な中心軸を有する仮想の円もしくは円筒と交差するかまたはそのような円もしくは円筒に沿って配置される。前述の切削要素は、仮想円に沿って配置されることが好ましい。そのような旋削工具によれば、旋削工具を比較的によりスリムにすることができ、特に旋削工具をより幅狭にすることができ、ここで、幅狭とは、回転軸に沿った距離として定義される。
【0028】
前述の中心軸は、連結軸と交差するかまたは実質的に交差することが好ましい。実質的に交差するとは、連結軸から20mm未満を意味する。第1の切削要素は、第2の切削要素に関してある傾斜角だけ傾斜する。前述の傾斜角は、少なくとも45°であることが好ましい。さらに好ましくは、前述の傾斜角は、180°+/-20°であり、さらに好ましくは180°+/-10°である。前述の傾斜角が180°である場合、仮想の円または円筒の中心軸は、第1の切削刃と第2のノーズ切削刃との間に位置する。
【0029】
連結部から第2の切削要素までの距離は、連結部から仮想の円または円筒の中心軸までの距離よりも大きいことが好ましい。
【0030】
旋削工具は、その回転軸の周りで回転可能な金属被加工物の旋削のために配置され、前述の回転軸は、前述の中心軸に対して平行である。第2のノーズ切削刃は、中心軸に最も近い第2の切削要素の部分である。第2のノーズ切削刃は、連結部から最も遠くに位置する第2の切削要素の部分である。言い換えれば、第2のノーズ切削刃は、最も前方に位置する第2の切削要素の部分、または第2の切削要素の長手方向に最も前方の部分である。
【0031】
第1の切削刃は、中心軸に最も近い第1の切削要素の部分である。
【0032】
第1の頂面は、前述の傾斜角に等しいかまたは前述の傾斜角の+/-20°以内の角度により、第2の頂面に対して傾斜する。第1の頂面および第2の頂面がどちらも仮想円の中心軸から径方向に延在する場合、前述の角度は、傾斜角に等しい。あるいは、第1の切削要素および/または第2の切削要素は、最大10°の角度により正にまたは負に傾けられ得る。別の代替形態では、第1の頂面および/または第2の頂面は、正のまたは負のすくい角を形成するように配置され得る。
【0033】
第1および第2の頂面は、仮想円に沿って同じ方向に面している、言い換えれば、第1および第2は、どちらも時計方向にまたは反時計方向に面している。
【0034】
第1の切削要素の頂面は、第2の頂面が面している方向とは異なる方向に面している。第1および第2の頂面が平坦ではない場合、頂面が面している方向は、それぞれの頂面の全ての隅部と交差する仮想平面によって定められ得る。
【0035】
第1の中央平面に対して平行でありかつ第1の頂面を備える平面が、第2の中央平面に対して平行でありかつ第2の頂面を備える平面と交差し、前述の交差は、仮想の円もしくは円筒の中心軸と一致するかまたは中心軸に対して平行である。平行である場合、前述の中心軸からの距離は、20mm未満、好ましくは10mm未満である。
【0036】
前述の第1の切削要素は、第2の切削要素に関して180°または実質的に180°だけ傾斜し得る。そのような場合、第1の切削刃と関連するすくい面、および第2の切削刃と関連するすくい面は、反対方向にまたは実質的に反対方向に面している。
【0037】
第2の頂面は、連結軸もしくは連結軸に平行な軸に対して垂直な方向、または実質的に垂直な方向、すなわち15°以内の方向に面している。違うように説明すれば、第1の切削要素のISO3002-1:1982に従う主要な運動の第1の推測される方向は、連結軸もしくは連結軸に平行な軸に対して垂直な方向、または実質的に垂直な方向、すなわち15°以内の方向である。
【0038】
第2の頂面は、仮想の円もしくは円筒の中心軸に対して垂直な方向、または実質的に垂直な方向、すなわち15°以内の方向に面している。
【0039】
第1の切削要素と関連するISO3002-1:1982に従う第1の工具基準面は、第2の切削要素と関連するISO3002-1:1982に従う第2の工具基準面と交差する。第1および第2の工具基準面は、共通平面内にあってよいことが好ましい。そのような場合、第1の切削要素のISO3002-1:1982に従う主要な運動の第1の推測される方向は、第2の切削要素の主要な運動の第2の推測される方向に対して反対方向である方向である。連結軸は、前述の共通平面において延在することが好ましい。あるいは、連結軸は、前述の共通平面に対して平行な平面において延在し、この場合、前述の平面間の距離は、20mm以下である。あるいは、すなわち、前述の工具基準面が共通平面において延在しない場合、第1および第2の工具基準面は、互いに対してある角度にあってよく、この場合、前述の角度は、第1の切削要素の主要な運動の第1の推測される方向と第2の切削要素の主要な運動の第2の推測される方向との間の角度に等しい。第1および第2の工具基準面は、機械加工されるべき金属被加工物の回転軸に対して平行な線に沿って交差することが好ましい。
【0040】
第1の切削刃と第2のノーズ切削刃との間には、旋削工具のいかなる部分も存在しない。言い換えれば、第1の切削刃と第2のノーズ切削刃との間の真っ直ぐな線沿いには、旋削工具のいかなる部分も存在しない。
【0041】
第1および第2の切削要素は、長手方向に離隔されており、長手方向は、連結軸によって定められる。
【0042】
第1の切削刃および第2のノーズ切削刃は、自由端部である。言い換えれば、前述の切削刃は、金属切削作業が行われ得るように位置決めされる。
【0043】
一実施形態によれば、第1の切削要素は、第1の前方切削刃および第1の後方切削刃を備え、第1の切削刃は、第1のノーズ切削刃を備え、第1のノーズ切削刃は、第1の前方切削刃および第1の後方切削刃を分離しかつ接続する。
【0044】
そのような旋削工具によれば、より複雑な形状が機械加工され得る。例えば、溝が機械加工され得る。主要切削刃または主切削刃である第1の前方切削刃、および、補助切削刃である第1の後方切削刃は、それぞれ、上面図において直線状もしくは線形であるかまたは実質的に直線状もしくは実質的に線形であることが好ましい。第1のノーズ切削刃は、好ましくは円弧の形態で、好ましくは0.2~1.6mmの曲率半径を有して、上面図において凸状である。
【0045】
第1の前方切削刃と第1の後方切削刃との間の角度として定められる第1の切削要素のノーズ角は、好ましくは160°以下であり、さらに好ましくは30°~80°である。そのような旋削工具により、より複雑な形状が機械加工され得る。
【0046】
第1の前方切削刃は、旋削工具を連結軸に対して垂直でありかつ金属被加工物の回転軸に対して平行である方向に移動させているときに鋭角の第1の切込み角を形成するように配置されることが好ましい。前述の第1の切込み角は、好ましくは3~45°であり、さらに好ましくは5~30°である。そのような旋削工具によれば、第1の前方切削刃の摩耗が軽減され得る。
【0047】
旋削工具の前述の移動中、第1のノーズ切削刃および第1の前方切削刃は、切削しており、すなわち、動作している。
【0048】
一実施形態によれば、連結軸から第1のノーズ切削刃までの距離は、連結軸から第2のノーズ切削刃までの距離よりも短い。
【0049】
前述の距離は、連結軸に対して垂直な平行線に沿って測定される。距離の差は、好ましくは1~30mm、さらに好ましくは5~15mmである。
【0050】
したがって、第1の切削要素および第2の切削要素は、旋削工具を第1の方向に移動させているときに第2のノーズ切削刃が第1の方向において第1の切削刃の前方になるように配置される。
【0051】
一実施形態によれば、旋削工具は、中間部を備え、中間部は、凹状部を備え、凹状部は、仮想の円または円筒の中心軸の周りで湾曲しており、第1および第2の切削要素は、凹状部に沿った離隔された部分に接続される。
【0052】
第1および第2の切削要素は、凹状部に沿った離隔された部分に直接に接続されるかまたは例えば交換式切削工具ヘッドによって間接的に接続される。回転軸は、連結軸に対して垂直であり、かつ、連結軸と交差するかまたは実質的に交差し、すなわち20mm以内にある。中間部は、連結部と切削部との間にあり、かつ、連結部と切削部とを接続する。旋削工具は、凹状部、あるいはC形状部、あるいは湾曲した部分、あるいは仮想の円または円筒の中心軸の周りで湾曲したもしくは曲がった凹状部を全体で形成する要素を含む部分を備える。言い換えれば、凹状部は、仮想の円または円筒の中心軸からある距離だけ離隔されている。前述の距離は、一定であるかあるいは変動してよい。いずれの場合にも、前述の距離は、前述の仮想の円または円筒の半径よりも小さくない。
【0053】
一実施形態によれば、凹状部は、第1の側面を備え、前述の第1の側面は、仮想の円または円筒の中心軸に対して垂直であるかまたは実質的に垂直である平面において延在し、前述の平面は、連結軸から離隔されており、第1および第2の切削要素は、第1の側面に接続されており、中間部は、開口部を備える。
【0054】
そのような旋削工具によれば、旋削工具を比較的によりスリムにすることができ、特に旋削工具をより幅狭にすることができ、ここで、幅狭とは、回転軸に沿った距離として定義される。そのような旋削工具によれば、旋削工具は、金属被加工物が一方の端部において心押し台に接続される場合などに、より多くのやり方で金属被加工物に向かって運ばれ得る。
【0055】
前述の平面に関して、第1および第2の切削要素は、前述の平面の一方の側に配置され、連結軸は、前述の平面の反対側に配置される。
【0056】
凹状部は、第1の側面および反対側の第2の側面の2つの側面を備える。第1および第2の切削要素は、同じ側面に接続される。
【0057】
第1の側面は、平面状であるかまたは実質的に平面状であってよい。あるいは、第1の側面は、平面からわずかに逸脱する表面を有してよい。
【0058】
第1および第2の切削要素は、突出要素に接続され、この突出要素は、連結軸から離れる方向において第1の側面から突出する。
【0059】
中間部は、開口部を備え、前述の開口部は、仮想の円または円筒の中心軸に関して径方向にある。言い換えれば、前述の開口部は、仮想の円または円筒の中心軸に対して垂直である。言い換えれば、中間部は、非円周状である。
【0060】
言い換えれば、第1の側面は、中心軸を完全には取り囲まないかまたは包囲しない。例えば、中間部は、側面図においてO形状ではなくC形状であり得る。
【0061】
一実施形態によれば、第1の前方切削刃と第1の後方切削刃との間の角度として定義される第1のノーズ角は、鋭角である。
【0062】
そのような旋削工具によれば、より複雑な形状が機械加工され得る。そのような旋削工具によれば、例えば外向き(out-facing)などのより多くの送り方向が可能である。第1のノーズ角は、慣例的に上面図において測定される。第1の切削要素の上面図は、第1のすくい面が観察者に面しているときのものである。第1のノーズ角は、好ましくは25~80°であり、さらに好ましくは30~60°である。
【0063】
一実施形態によれば、第2の前方切削刃と第2の後方切削刃との間の角度として定義される第2のノーズ角は、鋭角である。
【0064】
そのような旋削工具によれば、より複雑な形状が機械加工され得る。そのような旋削工具によれば、例えば外向きなどのより多くの送り方向が可能である。第1のノーズ角は、慣例的に上面図において測定される。第2の切削要素の上面図は、第2のすくい面が観察者に面しているときのものである。第2のノーズ角は、好ましくは25~80°であり、さらに好ましくは30~60°である。
【0065】
一実施形態によれば、第1の切削要素は、第1の旋削インサートの形態であり、第2の切削要素は、第2の旋削インサートの形態であり、第1の旋削インサートは、第1の頂面および反対側の第1の底面を備え、第2の旋削インサートは、第2の頂面および反対側の第2の底面を備え、第1の頂面は、第1のすくい表面を備え、第2の頂面は、第2のすくい表面を備える。
【0066】
そのような旋削工具によれば、使用後に旋削インサートだけが交換されればよい。頂面は、すくい表面を備える。底面は、座面または接触面を備える。
【0067】
第1のねじのための第1の貫通穴が、第1の頂面および第1の底面と交差する。
【0068】
第2のねじのための第2の貫通穴が、第2の頂面および第2の底面と交差する。
【0069】
一実施形態によれば、第1の切削要素は、旋削工具を連結軸に対して垂直な第1の方向に移動させているときに第1の前方切削刃が鋭角の第1の切込み角を形成するように配置され、第2の切削要素は、旋削工具を第1の方向とは反対の第2の方向に移動させているときに第2の前方切削刃が鋭角の第2の切込み角を形成するように配置される。
【0070】
そのような旋削工具によれば、摩耗が軽減される。前述の第1の方向は、送り方向であり、かつ、金属被加工物の回転軸に対して平行である。前述の第2の方向は、送り方向であり、かつ、回転軸に対して平行でありかつ連結軸に対して垂直である。第1の切込み角は、好ましくは3~45°である。第2の前方切削刃は、好ましくは3~45°である。
【0071】
一実施形態によれば、第1の切削要素は、旋削工具を第1の方向に移動させているときに第1の後方切削刃が鈍角の第1の前逃げ角を形成するように配置される。
【0072】
そのような旋削工具によれば、第1の切削要素は、例えば外向きといったより多くの送り方向において使用され得る。そのような旋削工具によれば、より複雑な形状が機械加工され得る。第1の前逃げ角は、好ましくは91~135°であり、さらに好ましくは93°~120°である。切込み角、ノーズ角、および前逃げ角の和は、180°に等しい。これは、第1および第2の切削要素の両方に当てはまる。
【0073】
一実施形態によれば、第2の切削要素は、旋削工具を第2の方向に移動させているときに第2の後方切削刃が鈍角の第2の前逃げ角を形成するように配置される。
【0074】
そのような旋削工具によれば、第2の切削要素は、例えば外向きといったより多くの送り方向において使用され得る。第2の前逃げ角は、好ましくは91°~135°であり、さらに好ましくは93°~120°である。
【0075】
一実施形態によれば、第1の切削要素および第2の切削要素は、その回転軸の周りで1つの方向に回転可能である金属被加工物を旋削するために使用され得るように配置され、前述の回転軸は、連結軸に対して垂直に配置されかつ連結軸と交差する。
【0076】
第1の切削要素および第2の切削要素は、あるいは、旋削工具の回転を伴わずに、機械加工、すなわち旋削のために使用され得る。
【0077】
一実施形態によれば、第1の切削刃および第2のノーズ切削刃は、連結軸を含む平面と交差するかまたは実質的に交差する。
【0078】
そのような旋削工具によれば、連結軸に沿った旋削工具の直線移動により割出しが行われ得る。そのような旋削工具は、大抵のCNC旋盤に使用され得る。実質的に交差するとは、距離が前述の平面から2.0mm未満であることを意味する。第1の頂面および第2の頂面は、共通平面内にあるか、または、実質的に共通平面内に置かれることが好ましい。
【0079】
一実施形態によれば、旋削工具は、円筒形の金属被加工物が第1の切削要素と第2の切削要素との間に配置可能なように配置され、金属被加工物の長手軸は、前述の切削要素間に位置する。
【0080】
金属被加工物の回転軸である前述の長手軸は、連結軸に対して垂直であることが好ましい。前述の円筒形の金属被加工物は、好ましくは16~500mmの直径を有し、さらに好ましくは20~200mmの直径を有する。金属被加工物の直径は、仮想の円または円筒よりも小さい。前述の長手軸は、仮想の円または円筒の中心軸に対して平行である。
【0081】
一実施形態によれば、連結部は、横断面が正方形または矩形であるか、あるいは、テーパ付けされた部分または円錐形もしくは実質的に円錐形の部分を備える。
【0082】
そのような旋削工具によれば、大抵のCNC旋盤において取付けが容易に達成される。前述の横断面は、連結軸に対して垂直な平面におけるものである。連結部は、テーパ付けされた部分または円錐形もしくは実質的に円錐形の部分と、好ましくはISO26623-1:2014によるようなフランジ接触面を含む多角形の中空テーパ接合部分または例えばDIN69893、ISO12164-1もしくはISO12164-1Fなどによるフランジ接触面を含む中空テーパの形態などをしたリング形状部分と、を備えることが好ましい。
【0083】
一実施形態によれば、第1および第2の切削要素は、ある平面に関して同じ側に位置決めされ、前述の平面は、連結軸を含み、
前述の平面は、第1の頂面と直角に交差する平面に対して平行である。
【0084】
一実施形態によれば、連結部から第1の切削要素までの距離は、連結部から第2の切削要素までの距離よりも大きい。
【0085】
前述の距離は、長手方向距離であり、したがって、前述の距離は、連結軸に沿って測定される。前述の距離間の差は、好ましくは少なくとも12mmであり、さらに好ましくは少なくとも25mmである。そのような旋削工具によれば、12mmの直径を有する金属被加工物が、その回転軸が連結軸に対して垂直になるように、前述の切削要素間に配置され得る。
【0086】
一実施形態によれば、CNC旋盤のための旋削方法が、金属被加工物を用意するステップと、上記の旋削工具を用意するステップと、金属被加工物をその回転軸の周りで1つの方向に回転させるステップと、第1の切削刃が切削するように旋削工具を第1の方向に移動させるステップと、第1の切削刃が金属被加工物から離れるように移動され、また、第2のノーズ切削刃が金属被加工物に向かって移動させられるように、旋削工具をある方向に移動させるステップと、第2の前方切削刃が5~45°の第2の切込み角で切削するように旋削工具を第2の方向に移動させるステップと、を含み、
第2の方向は、第1の方向に対して反対方向であるかまたは実質的に反対方向である。
【0087】
旋削方法は、CNC旋盤、すなわち、コンピュータまたはコンピュータ化された数値制御旋盤、すなわち、例えば旋削旋盤、マルチタスク機械、ターンミル機械、またはスライディングヘッド機械などの旋削に適した任意のCNC機械のためのものである。金属被加工物が用意される。金属被加工物は、径方向外側表面である外部表面を備える。径方向外側表面は、回転軸と反対の側を向いている。旋削方法は、径方向外側表面の旋削、すなわち外部旋削のためのものである。金属被加工物は、第1の端部と第2の端部との間に延在する。金属被加工物は、挟持手段によって挟持される。挟持手段は、金属被加工物を保持し、かつ、モータまたはスピンドルにより少なくとも部分的に制御されかつ駆動される。
【0088】
挟持手段は、コレットチャック、フェイスドライバ、3ジョーチャックの形態であってよく、また、心押し台を備え得る。機械の主軸台端部は、金属被加工物の第1の端部に置かれることが好ましい。被加工物の第1の端部の反対側の金属被加工物の第2の端部は、自由端部であってよい。あるいは、第2の端部は、心押し台と接触している。
【0089】
挟持手段から第2のノーズ切削刃までの距離は、挟持手段から第1の切削刃までの距離よりも短いことが好ましい。
【0090】
方法は、金属被加工物をその回転軸の周りで1つの方向に回転させるステップを含む。1つの方向は、時計方向または反時計方向であってよい。
【0091】
回転軸は、仮想の円または円筒の中心軸に対して平行である。
【0092】
方法は、旋削工具を第1の方向に移動させるステップ、すなわち第1の方向に旋削するステップを含む。第1の方向は、送り方向である。第1の方向は、好ましくは回転軸に対して平行であってよく、長手方向旋削としても知られている。前述のステップは、切削し始めることと切削を終わらせることとの間として定義される第1の通過に含まれる。第1の通過は、必ずしも真っ直ぐな線に沿った第1の切削要素の移動ではない。第1の方向に旋削しているとき、第1の切削刃は切削している。切削仕上げ表面が、第1の切削刃によって形成される。
【0093】
第1の切削要素は、第1の前方切削刃および第1の後方切削刃を備えることが好ましく、ここで、第1の切削刃は、第1の前方切削刃および第1の後方切削刃を分離しかつ接続する第1のノーズ切削刃の形態であり、第1の方向に旋削するときに、第1の前方切削刃は、鋭角の第1の切込み角を形成する。
【0094】
切削を終わらせた後または終わらせている間、旋削工具は、第1の切削刃が金属被加工物から離れる方向に移動させられるように、また、第2のノーズ切削刃が金属被加工物に向かって移動させられるように、移動させられる。前述の移動の少なくとも一部分の間、第1の切削要素および第2の切削要素のどちらも切削しておらず、すなわち、前述の移動中には第1および第2の切削要素によって金属が切削されない。
【0095】
旋削工具の前述の移動は、好ましくは直線移動であってよく、すなわち、旋削工具は、直線的に移動させられる。旋削工具の前述の移動は、好ましくは回転軸に対して垂直な方向におけるものであってよい。旋削工具の前述の移動は、好ましくは連結軸に沿った方向におけるものであってよい。前述の移動は、割出し移動、すなわち第1の切削要素を動作位置に配置することから第2の切削要素を動作位置に配置することに変更する目的を有する移動である。
【0096】
方法は、旋削工具を第2の方向に移動させるステップ、すなわち第2の方向に旋削するステップを含む。前述の第2の方向は、送り方向である。第2の方向は、第1の方向に対して反対方向であるかまたは実質的に反対方向である。例えば、第1の方向および第2の方向は、回転軸に対して平行であるが、相反する方向であり得る。前述のステップは、切削し始めることと切削を終わらせることとの間として定義される第2の通過に含まれる。第2の通過は、必ずしも真っ直ぐな線に沿った第1の切削要素の移動ではない。切削仕上げ表面が、第2のノーズ切削刃によって形成される。第2のノーズ切削刃および第2の前方切削刃は、第2の前方切削刃が5~45°、さらに好ましくは5~30°の第2の切込み角で切削するように、切削する。
【0097】
第2の切削要素は、第1の方向に旋削しているときには動作していない。第1の切削要素は、第2の方向に旋削しているときには動作していない。
【0098】
第2の方向は、第1の方向に対して反対方向であるかまたは実質的に反対方向であることが好ましい。
【0099】
第1の方向に切削しているときに、第1の前方切削刃は、鋭角の第1の切込み角を形成することが好ましい。前述の第1の切込み角は、好ましくは3~45°であり、さらに好ましくは5~30°である。第1の後方切削刃は、鈍角の第1の前逃げ角を形成することが好ましい。前述の第1の前逃げ角は、好ましくは91°~135°であり、さらに好ましくは93°~120°である。
【0100】
第2の方向に旋削しているときに、第2の前方切削刃は、鋭角の第2の切込み角で切削することが好ましく、この第2の切込み角は、好ましくは5~45°である。第2の後方切削刃は、鈍角の第2の前逃げ角を形成することが好ましい。前述の第2の前逃げ角は、好ましくは91°~135°であり、さらに好ましくは93°~120°である。
【0101】
前述の方法は、第1の切削刃が金属被加工物から離れる方向に移動させられるように、また、第2のノーズ切削刃が直線運動で金属被加工物に向かって移動させられるように、旋削工具を移動させるステップを含むことが好ましい。
【0102】
前述の移動は、割出し運動である。言い換えれば、移動は、第1の切削要素が非動作位置に運ばれ、かつ、第2の切削要素が動作位置に、すなわち第2の要素が金属被加工物から金属を切削するのに適している位置に運ばれるような移動である。
【0103】
前述の直線運動は、例えば連結軸に沿った直線運動により旋削工具を移動させることによるものであり得る。第1の切削刃が金属被加工物から離れる方向に移動させられるように、また、第2のノーズ切削刃が金属被加工物に向かって移動させられるように、旋削工具を移動させるステップは、連結軸の周りでの旋削工具の回転を伴わないことが好ましい。それにより、割出し時間は、回転移動と比較して短縮され得る。
【0104】
旋削工具は、第1の通過中、第2の通過中、または第1の通過と第2の通過との間、連結軸の周りで回転しないことが好ましい。旋削工具は、第1および第2の通過中、または第1の通過と第2の通過との間、連結軸に対して平行な任意の軸などの任意の他の軸の周りで回転しないことが好ましい。
【0105】
前述の方法は、第1の通過中に機械加工された表面の少なくとも一部分を第2の通過中に旋削すなわち機械加工するステップを含むことが好ましい。
【0106】
第1および第2のノーズ切削刃は、第1の方向に切削しているときおよび第2の方向に切削しているときに回転軸に沿って一定距離だけ離隔されることが好ましい。
【0107】
前述の方法は、連結軸を回転軸に対して垂直にセットするステップを含むことが好ましい。
【0108】
前述の方法は、第1の通過中すなわち旋削工具を第1の方向に移動させているときに第2のノーズ切削刃を第1の切削刃の前方にセットするステップを含むことが好ましい。
【0109】
前述の方法は、第2の通過中すなわち旋削工具を第2の方向に移動させているときに第1の切削刃を第2のノーズ切削刃の前方にセットするステップを含むことが好ましい。前方に(ahead)とは、回転軸に沿った送り方向における前方と理解されるべきである。
【0110】
第2の通過は、隅部から離れる方向におけるものであることが好ましい。隅部または肩部は、回転軸と同心の第1の表面と回転軸に対して垂直な第2の表面との間の交差部として定義される。第1の表面は、外部表面、または内部表面すなわち内腔の内側の表面であってよい。第1の表面は、外部表面、すなわち径方向外側の表面であることが好ましい。
【0111】
第1の通過は、隅部に向かう方向におけるものであることが好ましい。これは、第1の通過が、隅部に向かう方向におけるものであるか、または将来の隅部、好ましくは第2の通過後に仕上げられる隅部に向かう方向におけるものであることを意味する。したがって、第1の通過は、隅部を荒削りすること、すなわち所望のまたは予め定められた形状のために材料の全てではなくある程度を除去することを含む。隅部または肩部は、回転軸と同心の第1の表面と回転軸に対して垂直な第2の表面との間の交差部として定義される。第1の表面は、外部表面、または内部表面すなわち内腔の内側の表面であってよい。第1の表面は、外部表面、すなわち径方向外側の表面であることが好ましい。
【0112】
本発明の一態様によれば、CNC旋盤によって実行されたときにCNC旋盤に先の方法のいずれかによるステップを行わせる命令を有するコンピュータプログラムが提供される。
【0113】
前述のコンピュータプログラム、またはコンピュータプログラム製品は、CAMソフトウェア製品、すなわちコンピュータ支援製造のためのソフトウェアに含まれ得る。前述のコンピュータプログラムは、USBスティック、CD-ROM、またはデータストリームなどのコンピュータ可読媒体の形態であってよい。
【0114】
次に、本発明の実施形態の記述により、また、添付の図面を参照することにより、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0115】
図1】第1の実施形態による旋削工具および金属被加工物の斜視図である。
図2図1における旋削工具および金属被加工物の側面図である。
図3図1における旋削工具および金属被加工物の一部分の底面概略図である。
図4図1における旋削工具および金属被加工物の一部分のさらなる底面図である。
図5図1における旋削工具および金属被加工物の一部分のさらなる底面図である。
図6図1における旋削工具および金属被加工物の一部分のさらなる底面図である。
図7】第2の実施形態による旋削工具の側面図である。
図8】第3の実施形態による旋削工具および金属被加工物の側面図である。
図9】旋削工具を第1の方向に移動させることの概略図である。
図10】旋削工具を第2の方向に移動させることの概略図である。
図11】第1の切削要素、第2の切削要素、および回転している金属被加工物を断面で示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0116】
図における全ての旋削工具は、一定の縮尺で描かれている。
【0117】
上記で定義された方法を行うのに適した第1の実施形態による旋削工具1を示す図1~6を参照する。金属被加工物2が、挟持手段(図示せず)によりCNC旋盤(図示せず)のスピンドル(図示せず)に接続される。旋削工具1は、連結軸A2に沿って延在する連結部3を備える。連結軸A2は、旋削工具1の長手軸を画定する。順方向は、連結部3から離れ、すなわち、順方向は、実質的に図1において左側に向かう。金属被加工物2の回転軸A1は、連結軸A2に対して垂直に配置されかつ連結軸A2と交差している。旋削工具1は、第1の旋削インサート7の形態の第1の切削要素7、および、第2の旋削インサート8の形態の第2の切削要素8を備える。
【0118】
図3~6に見られるように、第1の切削要素7は、第1のノーズ切削刃5の形態の第1の切削刃5を備え、この第1の切削刃5は、第1の前方切削刃12および第1の後方切削刃14を分離しかつ接続する。第2の旋削インサート8は、第2の前方切削刃13および第2の後方切削刃15を分離しかつ接続する第2のノーズ切削刃6を備える。
【0119】
図2に見られるように、第1の旋削インサート7は、第1の頂面20を備え、第2の旋削インサート8は、第2の頂面21を備える。図2では、金属被加工物2は、その回転軸A1の周りで時計方向に回転する。第1の切削刃および第2のノーズ切削刃は、連結軸A2および回転軸A1を含む平面と交差するかまたは実質的に交差する。図2では、第1の旋削インサー7は切削しており、第2の旋削インサート8は、金属被加工物2からほんのわずかな距離に位置する。金属被加工物2と非動作の第2の旋削インサート8との間の距離は、図3および4に示されるように、より大きいことが好ましい。図2は、連結部(3)から第1の切削要素(7)までの距離が連結部(3)から第2の切削要素(8)までの距離よりも大きいことを示す。
【0120】
図1および2では、旋削工具1は、第1および第2の旋削インサート7、8を接続する凹状部33または湾曲部の形態の中間部33を備える。中間部33は、開口部41を備える。開口部41またはボイドまたは空洞は、機械加工されるべき金属被加工物のための場所を作る。凹状部33は、連結軸A2に対して垂直な軸の周りで湾曲しており、前述の軸は、前述の開口部41またはボイドまたは空洞と交差する。例えば図2で分かるように、開口部41は、回転軸A1に関して径方向に開口する。旋削工具1は、少なくとも金属被加工物2の直径が第1の切削インサート7と第2の旋削インサート8との間の距離未満であるならば、図2における上方から、図2に示されるような位置へ運ばれ得る。これは、金属被加工物1が長いものであるかまたは両端において挟持される場合には、特に有利である。
【0121】
中間部33は、第1の側面40および反対側の第2の側面を備える。開口部41により、第1の側面40は、回転軸A1を完全には取り囲まないかまたは包囲しない。第1の側面40は、回転軸A1に対して垂直な平面において延在する。前述の平面40は、連結軸A2から離隔されている。
【0122】
第1の側面40からは、挟持手段により第1の側面に接続される交換式切削ヘッド30、31の形態の突出部30、31が突出している。各切削ヘッド30、31は、少なくとも1つのインサート座を備える。第1および第2の旋削インサート7、8は、それぞれの切削ヘッド30、31により第1の側面40に接続される。
【0123】
図2では、回転軸A1は、連結軸A2に対して垂直でありかつ連結軸A2と交差する。図2に見られるように、金属被加工物2の回転軸A2は、第1の切削インサート7と第2の旋削インサート8との間に位置する。連結部3は、テーパ付けされた部分を備える。連結部3は、産業界ではCoromant Capto(登録商標)として知られている早替えカップリングである。代替的な実施形態(図示せず)では、連結部3は、横断面が正方形とされ、連結軸A2は、図2における連結軸A2に対して平行であり、かつ、図2における連結軸A2より5~20mm下方に位置する。
【0124】
例えば図3におけるように第1の切削インサート7を上面図において見たときに、第1の前方切削刃12と第1の後方切削刃14との間の角度として定義される第1のノーズ角は、鋭角である。
【0125】
第2の旋削インサートを上面図においてまたは例えば図3におけるように底面図において見たときに、第2の前方切削刃13と第2の後方切削刃15との間の角度として定義される第2のノーズ角は、鋭角である。
【0126】
例えば図1に見られるように、第1のねじ(図示せず)のための第1の貫通穴が、第1の頂面および第1の底面と交差し、第2のねじ(図示せず)のための第2の貫通穴が、第2の頂面および第1の底面と交差する。
【0127】
図3および4は、旋削工具1が連結軸A2に対して垂直な第1の方向17に移動させられる第1の機械加工ステップを示す。第1の前方切削刃12は、鋭角の第1の切込み角を形成する。第1の後方切削刃14は、鈍角の第1の前逃げ角を形成する。第1の旋削インサート7は、切削している。第2の旋削インサート8は、金属被加工物2から離隔されている。第2のノーズ切削刃6は、第1の方向17において第1のノーズ切削刃5の前方にある。
【0128】
図3および4に示されたステップの後、第1の旋削インサート7は切削を終え、旋削工具1は、図5に示されるように、第1の切削刃5が金属被加工物2から離れる方向に移動させられるように、また、第2のノーズ切削刃6が金属被加工物2に向かって移動させられるように、方向19に移動させられる。第1の旋削インサート7は、金属被加工物2の回転軸A1から離れるように径方向に移動させられる。
【0129】
図5に示されたステップの後、図6に示されたステップが続く。図6は、旋削工具1を第2の方向18に移動させることを示し、第2の方向18は、図4および5に示された第1の方向17に対して反対方向である。第2の旋削インサート8は、切削している。第1の旋削インサート7は、動作していない。言い換えれば、第1の旋削インサートは、金属被加工物2から離隔されている。第2の前方切削刃13は、鋭角の第2の切込み角を形成する。第2の後方切削刃15は、鈍角の第2の前逃げ角を形成する。
【0130】
金属被加工物2は、図3、4および6におけるその回転軸A1の周りで同じ方向に回転する。
【0131】
図4~6では、第1および第2の旋削インサート7、8は、CNC旋盤(図示せず)のXZ平面において作業する。小さな切込み角を利用するおかげで、インサート摩耗が軽減されるが、別のインサートのおかげで、他方のインサートにより隅部を機械加工することがなおも可能である。図5に見られるようなインサートの非常に迅速な変更は、CNC旋盤のX軸における短い横断に起因するものである。
【0132】
図7は、第2の実施形態による旋削工具1を示す。第1の実施形態による旋削工具1と第2の実施形態による旋削工具1との間の唯一の実質的な違いは、第2の実施形態による旋削工具1が第3の旋削インサート9を備えることである。第1の旋削インサート7から第2の旋削インサート8への割出しまたは第2の旋削インサート8から第1の旋削インサート7への割出しは、連結軸A2に沿った旋削工具1の移動を通じたものであるが、第3の旋削インサート9への割出しは、連結軸A2に対して垂直な方向、より具体的には図2での下方への旋削工具の移動を通じたものである。図7に見られるように、第1の旋削インサート7および第2の旋削インサート8、ならびに第3の旋削インサート9は、連結軸A2に対して垂直なその中心軸A3を有する仮想の円または円筒C1と交差する。第1の旋削インサート7は、第2の旋削インサート8に関して傾斜角ωだけ傾斜している。傾斜角ωは、仮想円C1の中心軸A3の周りで測定される。第2の頂面21は、連結軸A2に対して垂直でありかつ仮想の円または円筒C1の中心軸A3に対して垂直であるかまたは実質的に垂直である方向に面している。
【0133】
図8は、第3の実施形態による旋削工具1および金属被加工物2を示す。第2の実施形態による旋削工具1と第3の実施形態による旋削工具1との間の唯一の実質的な違いは、第3の実施形態による旋削工具1が第4の旋削インサート10を備えること、および、中間部33が回転軸A1を完全に取り囲むことである。言い換えれば、中間部は、径方向開口部を備えない。
【0134】
金属被加工物は、上記で説明されてきたものと比較して、様々な形状を有し得る。金属被加工物は、棒、中空棒、またはその回転軸の周りに回転対称性を有するかもしくは実質的に回転対称性を有する任意の他の形状の形態であってよい。機械加工され得る形状は、上記で説明されてきたものとは異なる構成のものであってよい。例えば、形状は、1つの側壁だけでなく、2つの側壁、すなわち回転軸に対して垂直な平面における2つの表面を有してよい。言い換えれば、旋削工具は、外部溝を機械加工するために使用され得る。
【0135】
図9は、旋削工具を第1の方向17に移動させることの概略図であり、第1の切削要素7は、切削している。第1の方向17は、送り方向である。第1の前方切削刃は、5~45°である第1の切込み角αを形成し、第1の後方切削刃は、少なくとも91°の鈍角の前逃げ角γを形成する。第2の切削要素8は、金属被加工物2から離隔されている。切削仕上げ表面25が、第1の切削要素7によって形成される。より具体的には、表面25は、第1のノーズ切削刃5によって形成される。
【0136】
図10は、旋削工具を第2の方向18に移動させることの概略図であり、第2の切削要素8は、切削している。第2の前方切削刃は、5~45°である第2の切込み角βで切削しており、第2の後方切削刃は、鈍角の前逃げ角δを形成する。第2の底面は、観察者に面している。
【0137】
図9は、図10に示されたステップが続き得る第1の機械加工ステップを示す。図10では、第2の切削要素8は、図9における第1の切削要素7とは回転軸A1の反対側にあり、第1の頂面は、第2の頂面とは反対方向に面している。
【0138】
図9および10における金属被加工物2は、挟持手段60により一方の端部において挟持されている。前述の挟持手段60は、CNC旋盤(図示せず)の一部である回転スピンドルまたは回転可能なスピンドル(図示せず)に接続されかつそのようなスピンドルによって駆動される。前述の挟持手段は、コレットチャック、3ジョーチャック、またはフェイスドライバの形態であってよい。挟持手段60から第2のノーズ切削刃6までの距離は、挟持手段60から第1の切削刃5までの距離よりも短く、前述の距離は、回転軸A1に対して平行な線に沿って測定される。図9および10では、第1の方向17は、挟持手段60から離れる方向であり、第2の方向18は、挟持手段に向かう方向である。あるいは(図示せず)、第1の方向17は、挟持手段60に向かう方向であり、第2の方向18は、挟持手段から離れる方向である。したがって、第1および第2の方向17、18は、回転軸A1に沿った相反する方向である。したがって、相反する方向は、挟持手段に向かうかもしくは挟持手段から離れるものとして、または金属被加工物の一方の長手方向端部に向かうかもしくは長手方向端部から離れるものとして理解される。したがって、第1および第2の方向は、必ずしも直線状かつ回転軸に対して平行ではない。
【0139】
図9および10に示されたステップは、第1、第2、または第3の実施形態による旋削工具を使用して行われ得る。
【0140】
図11は、第1の旋削インサート7の形態の第1の切削要素7、第2の旋削インサート8の形態の第2の切削要素8、および回転する金属被加工物を断面で示す概略図である。第1および第2の旋削インサート7、8は、第1、第2、または第3の旋削工具実施形態に従って配置される。第1の旋削インサート7は、第1の頂面20および第1の底面22を備え、どちらも水平であるかまたは実質的に水平である。第2の切削インサート8は、第2の頂面21および第2の底面23を備え、どちらも水平であるかまたは実質的に水平である。第1の中央平面P1が、第1の頂面20と第1の底面22との中間または実質的に中間に位置する。第1の中央平面P1は、第2の底面22に対して平行であるかまたは実質的に平行である。第2の中央平面P2は、対応する態様で配置される。第1および第2の中央平面P1、P2は、平行な平面内に配置される。金属被加工物2は、その回転軸A1の周りで1つの方向50に回転する。第1および第2の旋削インサート7、8は、回転軸A1の相反する側に置かれる。第1の頂面20は、図において上方に面しており、第2の頂面21は、図において下方に面している。第1の旋削インサート7が切削しているときに、第2の旋削インサート8は金属被加工物2から離隔されている。例えば図11では、連結軸A2から第1のノーズ切削刃5までの距離は、連結軸A2から第2のノーズ切削刃6までの距離よりも短い。
【0141】
図10、ならびに図6および図15は、第2の方向18がどの程度金属被加工物2の隅部から離れる方向にあるかを示す。言い換えれば、第2の方向18は、回転軸A1に対して垂直な平面内にある表面から離れる方向である。前述の隅部、または肩部は、回転軸と同心の表面と、回転軸に対して垂直な第2の表面との間の交差部である。前述の隅部は、90°の隅部である。前述の隅部は、第2の切削要素によって完全に形成されることが好ましく、その場合、旋削工具は、旋削工具を第2の方向18に移動させる直前に回転軸A1に向かって移動させられる。
【0142】
上記の実施形態において説明された第1および第2の旋削インサート7、8は、耐摩耗材料、好ましくは超硬合金から作られることが好ましい。第1および第2の頂面20、21は、チップ形成手段またはチップブレーク手段(図示せず)を備えることが好ましい。前述のチップ形成手段またはチップブレーク手段の少なくとも一部分からそれぞれの旋削インサートの中央平面までの距離は、頂面に境界を接している切削刃から前述の中央平面までの距離よりも大きいことが好ましい。言い換えれば、第1および第2の旋削インサートの頂面20、21は、側面図において切削刃よりも高いかまたは切削刃の上方に位置する少なくとも1つの突出部を備える。このようにして、旋削インサートは旋削により適する。
【0143】
上記の実施形態において説明された第1および第2の旋削インサート7、8は、第1の前方切削刃12が第1のノーズ切削刃5からの距離を増すにつれて下方にすなわち第1の底面22に向かって傾斜しているように設計されることが好ましい。第2の前方切削刃13は、対応する態様で配置されることが好ましい。このようにして、チップ制御がさらに改善される。
【0144】
前方切削刃および後方切削刃は、それぞれの送り方向において前方および後方に位置するものであり、必ずしも旋削工具自体の前方向または後方向に関して前方または後方に位置するのではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】