(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-19
(54)【発明の名称】鋼製品の温度の推定
(51)【国際特許分類】
G01J 5/00 20220101AFI20231212BHJP
G01J 5/60 20060101ALI20231212BHJP
B21B 38/00 20060101ALI20231212BHJP
B21C 51/00 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
G01J5/00 101A
G01J5/60 E
B21B38/00 C
B21C51/00 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536052
(86)(22)【出願日】2021-12-08
(85)【翻訳文提出日】2023-07-24
(86)【国際出願番号】 IB2021061437
(87)【国際公開番号】W WO2022130125
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2020/061937
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミック,ノエル
(72)【発明者】
【氏名】ル・ノック,グワナエル
(72)【発明者】
【氏名】フェルテ,モルガン
【テーマコード(参考)】
2G066
【Fターム(参考)】
2G066AA15
2G066AC01
2G066AC11
2G066BC15
(57)【要約】
本発明は、鋼製品の温度を推定するための方法であって、いくつかの測定条件について、0.9~2.1μmの範囲の5個の波長における強度が記録され、スペクトル減衰係数が計算される、較正ステップ、前記5個の波長における強度が記録され、スペクトル減衰係数がいくつかの温度について計算される、測定ステップ、確率試験が行われて鋼製品の温度を推定する、比較ステップを含む、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
300℃~1600℃の温度を有する鋼製品の温度T
REALを推定するための方法であって、方法は、
A.較正ステップであって、
i.1つは0.9μm~1.35μm、1つは1.35μm~1.55μm、1つは1.55μm~1.85μm、1つは1.85μm~2.05μm、及び1つは2.05μm~2.1μmである、0.9~2.1μmの範囲の5個の波長(λ)において、センサによって、
既知の温度(T
REF)を有する基準によって放出された放射の強度(I)を、前記基準の放射率(ε
REF)と、前記基準と前記センサとの間の媒体の透過率(α
REF)とで特徴づけられる測定条件において、測定するステップであって、前記基準が鋼製品である、ステップ、
ii.前記5個の波長における前記測定された強度(I)を使用してスペクトル減衰係数C
CALIBを計算するステップであって、
【数1】
であり、ここで、P(λ,T
REF)は、波長(λ)及び温度(T
REF)におけるプランクの法則に基づく、熱平衡状態にある黒体によって放出される電磁放射のスペクトル密度である、ステップ、
iii.基準放射率(ε
REF)と、前記基準と前記センサとの間の媒体の透過率(α
REF)との、N
CALIB個の異なる組み合わせについてステップi.及びii.を繰り返して、N
CALIB個のスペクトル減衰係数を得るステップであって、N
CALIBは2より大きい整数である、ステップ
を含む、較正ステップ、
B.測定ステップであって、
i.0.9~2.1μmの範囲の前記5個の波長(λ)において、前記鋼製品によって放出される放射線の強度Iを測定するステップ、
ii.300~1600℃の範囲のN
T個の温度(Tj)について及び前記5個の波長について、N
T個のスペクトル減衰係数C
COMPUTETjを計算するステップであって、N
Tは2から1300の整数であり、
【数2】
であり、ここで、
P(λ,T
J)は、波長λ及び温度T
Jにおけるプランクの法則に基づく、熱平衡状態にある黒体によって放出される電磁放射のスペクトル密度である、ステップ
を含む、測定ステップ、
C.比較ステップであって、
i.C
CALIBの中で最も確からしいC
COMPUTETjを見つけるための確率テストを行うステップ、
ii.前記鋼製品の温度T
REALが、前記最も確からしいC
COMPUTET
Jの温度T
Jと等しいと推定するステップ
を含む、比較ステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記冷却処理が熱間圧延中又は熱間圧延後に行われ、前記鋼製品が300℃~1100℃の温度を有し、ステップBにおいて、T
Jが300℃~1100℃の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記冷却処理が連続鋳造中又は連続鋳造後に行われ、前記鋼製品が800℃~1600℃の温度を有し、ステップBにおいて、T
Jが800℃~1600℃の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップA)i.及びB)i.において、1つは0.9μm~1.11μm、1つは1.11μm~1.15μm、1つは1.15μm~1.35μm、1つは1.35μm~1.55μm、1つは1.55μm~1.85μm、1つは1.85μm~2.05μm、1つは2.05μm~2.07μm、及び1つは2.07μm~2.1μmである、0.9~2.1μmの範囲の8個の波長(λ)の放射強度が測定され、ステップA)ii.及びB)ii.において、前記8個の波長についてのスペクトル減衰係数が計算される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップA)i.及びB)iにおいて、0.9~2.1μmの範囲の5個の追加の波長における放射強度が測定され、ステップA)ii.及びB)ii.において、前記8個の波長及び前記5個の追加の波長についてのスペクトル減衰係数が計算される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ステップA)i.及びB)iにおいて、0.9~2.1μmの範囲の42個の追加の波長における放射強度が測定され、ステップA)ii.及びB)ii.において、前記8個の波長及び前記42個の追加の波長についてのスペクトル減衰係数が計算される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
ステップA)i.及びB)iにおいて、0.9~2.1μmの範囲の92個の追加の波長における放射強度が測定され、ステップA)ii.及びB)ii.において、前記8個の波長及び前記92個の追加の波長についてのスペクトル減衰係数が計算される、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
N
CALIBが、2~1000、好ましくは、20~1000の整数である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップC)i.において、確率テストが、主要成分を定義する前記C
CALIBに対する次元削減を備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップC)i.において、次元削減が、主成分分析を用いて行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ステップC)i.において、確率テストが、確率モデルにおける前記C
CALIBの射影を備える、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップC)iにおいて、前記確率モデルが混合ガウスモデルである、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却処理が行われる鋼製品の温度を推定するための方法に関する。本方法は、水が前記鋼製品上に存在するときに特に有利である。たとえば、製鋼において、特許請求される方法は、連続鋳造中の二次冷却中に、又は熱間圧延機のランアウトテーブルに適用され得る。
【0002】
鋼ストリップの製造中、鋳造から巻取りまで、鋼にはいくつかの冷却動作が行われる。これらの動作は、通常、鋼に水を噴霧することを含む。これにより、ストリップ表面上に水膜が形成される可能性がある。
【0003】
冷却動作は、通常、冷却力を調整するためのモデルを含む。これらのモデルは、入力データとしてストリップ温度を有する。したがって、冷却に確実に習熟するためには、冷却動作中の温度を正確に知ることが重要である。
【0004】
放射強度を測定するパイロメータが、通常、鋼製品の温度を測定するために使用される。しかしながら、測定された放射の強度は、製品上の水の層など、製品とパイロメータとの間の媒体の存在によって影響を受ける。たとえば、鋼表面及び環境に外乱がないとき、それらの精度は約±10℃である。鋼表面に水が存在するとき、又は鋼とパイロメータとの間に靄(fog)があるとき、測定誤差は100℃まで上昇する可能性がある。鋼上に水が存在し、鋼とパイロメータとの間に靄があるとき、測定誤差は200℃まで上昇する可能性がある。
【0005】
したがって、水が鋼上にあり、及び/又はストリップと測定デバイスとの間に靄があるとき、鋼温度の測定の精度を改善する必要がある。
【背景技術】
【0006】
欧州特許第2889594号明細書は、水による冷却プロセスにおいて鋼材の表面温度を正確に測定する方法を開示している。0.7~0.9μm、1.0~1.2μm、及び1.6~1.8μmの波長帯域の放射が記録される。鋼温度を測定するために、パイロメータが使用される。さらに、光学ガラスが、パイロメータと鋼との間に置かれ、鋼から決定された空間に置かれる。光学ガラスはまた、冷却プロセス中に、安定した表面張力を有するために、冷却水が鋼材と光学ガラスとの間の空間に入るように位置付けされる。したがって、光学ガラスと鋼との間の媒体が知られている。次いで、測定された放射強度は、鋼材と光学ガラスとの間のギャップにリンクする係数を使用して補正される。これは、水によるラジアン(radian)エネルギーの吸収又は散乱によって引き起こされる温度測定誤差を低減することを可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2889594号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、冷却動作中の鋼ストリップの温度測定の精度を向上させる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これは、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法を提供することによって達成される。
【0010】
他の特徴及び利点が、本発明の以下の詳細な説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】特許請求されるプロセスのステップA.i.からB.ii.の実施形態を示す図である。
【
図2】波長に応じての水の吸収スペクトルの一実施形態を示す図である。
【
図3】波長に応じての水蒸気の吸収スペクトルの一実施形態を示す図である。
【
図4】較正ステップにおいて計算されたいくつかのスペクトル減衰係数C
CALIBの実施形態を示す図である。
【
図5】熱電対によって測定された鋼ストリップ温度と、特許請求されるプロセスによって推定された鋼ストリップ温度との比較結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、300℃~1600℃の温度を有する鋼製品の温度T
REALを推定するための方法に関し、本方法は、
A.較正ステップであって、
i.1つは0.9μm~1.35μm、1つは1.35μm~1.55μm、1つは1.55μm~1.85μm、1つは1.85μm~2.05μm、及び1つは2.05μm~2.1μmである、0.9~2.1μmの範囲の5個の波長(λ)において、センサによって、
既知の温度(T
REF)を有する基準によって放出された放射の強度(I)を、前記基準の放射率(ε
REF)と、前記基準と前記センサとの間の媒体の透過率(α
REF)とで特徴づけられる測定条件において、測定するステップであって、前記基準が鋼製品である、ステップ、
ii.前記5個の波長における前記測定された強度(I)を使用してスペクトル減衰係数C
CALIBを計算するステップであって、
【数1】
であり、ここで、P(λ,T
REF)は、波長(λ)及び温度(T
REF)におけるプランクの法則に基づく、熱平衡状態にある黒体によって放出される電磁放射のスペクトル密度である、ステップ、
iii.基準放射率(ε
REF)と、前記基準と前記センサとの間の媒体の透過率(α
REF)との、N
CALIB個の異なる組み合わせについてステップi.及びii.を繰り返して、N
CALIB個のスペクトル減衰係数を得るステップであって、N
CALIBは2より大きい整数である、ステップ
を含む、較正ステップ、
B.測定ステップであって、
i.0.9~2.1μmの範囲の前記5個の波長(λ)において、前記鋼製品によって放出される放射線の強度Iを測定するステップ、
ii.300~1600℃の範囲のN
T個の温度(Tj)について及び前記5個の波長について、N
T個のスペクトル減衰係数C
COMPUTETjを計算するステップであって、N
Tは2から1300の整数であり、
【数2】
であり、ここで、
P(λ,T
J)は、波長λ及び温度T
Jにおけるプランクの法則に基づく、熱平衡状態にある黒体によって放出される電磁放射のスペクトル密度である、ステップ
を含む、測定ステップ、
C.比較ステップであって、
i.C
CALIBの中で最も確からしいC
COMPUTETjを見つけるための確率テストを行うステップ、
ii.前記鋼製品の温度T
REALが、前記最も確からしいC
COMPUTET
Jの温度T
Jと等しいと推定するステップ
を含む、比較ステップ
を含む。
【0013】
【0014】
鋼製品は、ストリップ、バンド又はスラブなどの任意の種類の製品であり得る。鋼製品の温度は知られていないが、測定が行われるプロセスステップに応じて、当業者は温度があるべき範囲を知っている。たとえば、熱間圧延後の鋼ストリップの冷却処理において、鋼ストリップの温度は、一般に300°C~1100°Cの間に含まれる。
【0015】
較正ステップA.i.では、基準鋼製品によって放出される放射の強度は、任意の適切な手段によって測定することができる。これらは、好ましくは、ハイパースペクトルカメラによって測定される。
【0016】
較正ステップA.i.では、基準鋼製品は、好ましくは、推定される温度を有する鋼製品と同様の組成を有する。さらにより好ましくは、基準鋼製品は、分析される鋼製品と同じグレードを有する。
【0017】
較正ステップA.i.において、基準鋼製品の温度は、任意の手段によって測定することができる。好ましくは、この温度は、熱電対を使用して測定される。
【0018】
較正ステップA.ii.において、各記録された強度Iを、測定温度におけるP(λ,Tj)で除算することによって、スペクトル減衰係数CCALIBを計算することができる。
【0019】
ステップA.i.及びA.ii.は、NCALIB回繰り返され、各回は新しい測定条件に対応する。測定条件は、基準放射率(εREF)と、基準とセンサとの間の媒体の透過率(αREF)との組み合わせによって定義される。それは、異なる測定条件について様々なCCALIBを得ることを可能にする。NCALIBが大きいほど、推定の精度が高い。
【0020】
言い換えれば、鋼製品放射率(εREF)と測定条件透過率(αREF)との様々な組み合わせに対して、較正ステップA.のステップi.及びii.が繰り返される。εREFは、基準鋼製品の温度、表面特性(油の存在など)などのいくつかのファクターに応じて変化する。αREFは、センサと基準鋼製品との間の媒体、たとえば、基準鋼製品上の水の層の厚さに依存する。
【0021】
しかしながら、CCALIBを計算するためにεREF及びαREFの値を知る必要はない。
【0022】
測定ステップB.i.において、前記鋼製品によって放出される強度は、好ましくは、ハイパースペクトルカメラを使用して測定される。ステップB.i.で強度が測定される波長は、ステップA.i.の波長と同じである。
【0023】
測定ステップB.ii.では、スペクトル減衰係数が計算される温度の個数(NT)が大きいほど、推定の精度が高くなる。
【0024】
さらに、較正ステップ及び測定ステップの両方において、測定された強度は、伝達関数を使用して調節することができる。
【0025】
0.9μm~1.35μmの波長、1.35μm~1.55μmの波長、1.55μm~1.85μmの波長、1.85μm~2.05μmの波長、及び2.05μm~2.1μmの波長の前記5個の波長における放射強度を測定することにより、低減した個数の強度を使用して、製品放射率と媒体透過率との組み合わせのスペクトル形状を記述することが可能になる。実際、0.9~2.1の範囲では、
図1に示すように、水の吸収スペクトルは、1.35μm~1.55μmのピーク及び1.85μm~2.05μmのピークの2つのピークを示す。
【0026】
比較ステップC.では、CCALIBの中から最も確からしいCCOMPUTEDTJを見つける確率テストを行う。CCALIBの中で最も確からしいCCOMPUTEDTJを見つけることを可能にする任意の方法を行うことができる。
【0027】
この方法は、推定が鋼製品に対する水の存在などの測定条件の影響を考慮するため、鋼製品の温度推定の精度を改善させることができる。
【0028】
好ましくは、前記冷却処理は、熱間圧延中又は熱間圧延後に行われ、前記鋼製品は300℃~1100℃の温度を有し、ステップBにおいて、TJは300℃~1100℃の範囲である。この冷却は、通常、ランアウトテーブルで行われる。
【0029】
好ましくは、前記冷却処理は、連続鋳造中又は連続鋳造後に行われ、前記鋼製品は800℃~1600℃の温度を有し、ステップBにおいて、TJは800℃~1600℃の範囲である。
【0030】
好ましくは、ステップA)i.及びB)i.において、1つは0.9μm~1.11μm、1つは1.11μm~1.15μm、1つは1.15μm~1.35μm、1つは1.35μm~1.55μm、1つは1.55μm~1.85μm、1つは1.85μm~2.05μm、1つは2.05μm~2.07μm、及び1つは2.07μm~2.1μmである、0.9~2.1μmの範囲の8個の波長(λ)の放射強度が測定され、ステップA)ii.及びB)ii.において、前記8個の波長についてのスペクトル減衰係数が計算される。蒸気などの媒体が、鋼製品とセンサとの間に存在するとき、これらの前記8個の波長の放射強度を測定することにより、測定精度が改善する。1.11μm~1.15μm及び2.05~2.07μmの範囲は、
図2に示すように、蒸気の吸収スペクトルのピークに対応する。また、これら2つのピークは、水の吸収スペクトルのピークと一致しない。
【0031】
好ましくは、ステップA)i.及びB)iにおいて、0.9~2.1μmの範囲の5個の追加の波長における放射強度が測定され、ステップA)ii.及びB)ii.において、前記8個の波長及び前記5個の追加の波長についてのスペクトル減衰係数が計算される。13個の波長は、好ましくは、前記範囲内に均一に分布しており、これは、13個の波長が0.1μmの間隔だけ離間している(0.9、1.0、...、2.0、2.1)ことを意味する。
【0032】
好ましくは、ステップA)i.及びB)iにおいて、0.9~2.1μmの範囲の42個の追加の波長における放射強度が測定され、ステップA)ii.及びB)ii.において、前記8個の波長及び前記42個の追加の波長についてのスペクトル減衰係数が計算される。
【0033】
好ましくは、ステップA)i.及びB)iにおいて、0.9~2.1μmの範囲の92個の追加の波長における放射強度が測定され、ステップA)ii.及びB)ii.において、前記8個の波長及び前記92個の追加の波長についてのスペクトル減衰係数が計算される。
【0034】
好ましくは、NCALIBは、2~1000、好ましくは、20~1000の整数である。
【0035】
好ましくは、ステップC)i.において、確率テストは、主要成分を定義する前記CCALIBに対する次元削減を備える。さらにより好ましくは、ステップC)i.において、次元削減は、主成分分析を用いて行われる。
【0036】
好ましくは、ステップC)i.において、確率テストが、確率モデルにおける前記CCALIBの射影を備える。さらにより好ましくは、ステップC)i.において、前記確率モデルは混合ガウスモデルである。
【0037】
特許請求された方法の精度を評価するために、ランアウトテーブルで冷却されている鋼ストリップの温度が、熱電対によって測定され、本方法によって推定された。
【0038】
A.較正ステップ
較正ステップ中に、ランアウトテーブルで冷却されている鋼ストリップによって放出される放射強度は、ハイパースペクトルカメラによって記録された。より正確には、1.1~2.1μmの範囲の256個の波長における強度が記録された。256個の波長は、前記範囲に均一に分布していた。鋼ストリップの温度は、熱電対によって測定された。
【0039】
較正ステップは、5~15分の間続く6回の試行を備え、放射線強度は毎秒10~100回測定された。したがって、数千個の測定条件が記録された。それらは、冷却中(液滴、靄及び水が存在する)に、及び冷却後/冷却前(水/靄が存在しない)に、様々な酸化レベルを有する鋼ストリップに対して行われた。
【0040】
次に、熱平衡状態にある黒体によって放出された電磁放射のスペクトル密度、熱電対による測定温度、及びハイパースペクトルカメラの伝達関数を使用して、いくつかのスペクトル減衰係数C
CALIBが計算された。C
CALIBの各々は、前記256個の波長の各々に対して1つずつ、256個の値を有した。C
CALIBが、
図4にプロットされる。
【0041】
B.測定
測定ステップ中に、ランアウトテーブルで冷却されている鋼ストリップによって放出される放射強度は、ハイパースペクトルカメラによって記録された。より正確には、較正ステップと同じ256個の波長における強度が記録された。
【0042】
さらに、300~1600℃の範囲の261個の温度が、測定された鋼ストリップについての可能な温度として定義されているので、NT=261である。これらの温度は、5℃の間隔:(300、305、310、...、1595、1600℃)で離間された。
【0043】
次に、前記256個の波長において測定された放射強度を、プランクの法則の値で除算し、先に定義された261個の温度の各々の伝達関数を乗算した。したがって、261個のスペクトル減衰係数CCOMPUTETJが計算された。前記261個のスペクトル減衰係数の各々は、測定された各波長に対して1つずつ、256個の値と、関連する温度とを有した。
【0044】
C.比較
この実施形態の確率テストは、10個のステップを備える。
【0045】
1)較正ステップ中に取得されたすべてのスペクトル減衰係数CCALIBに対して主成分分析(PCA)が行われて、3つの主要PCA成分(PC1、PC2、PC3)が得られた。次に、データベースの各CCALIBが、前記3つの主要成分を使用して近似される。
【0046】
2)スペクトル減衰係数は、先に定義された3つの主要成分によって定義されるPCA空間に射影される。
【0047】
3)ステップ2)のPCA空間内の点の密度は、混合ガウスモデルに射影される。
【0048】
4)前記261個のCCOMPUTETJの各々は、先に定義された3つの主要成分によって定義されるPCA空間に射影される。
【0049】
5)261個のCCOMPUTETJの各々について、近似されたスペクトル減衰係数が、4)で定義されたPCA空間におけるそれの座標から再構築され、第1の尤度ファクター(likelihood factor)(Like1)が、元のスペクトル減衰とPCA係数からのそれの再構築とを比較することによって定義される。
【0050】
6)前記261個のCCOMPUTETJの各々は、3)で定義された混合ガウスモデルに射影され、第2の尤度ファクター(Like2)が決定される。Like2は、PCA空間に射影された学習データの局所密度を表す。
【0051】
したがって、2つの尤度(Like1及びLike2)が、前記261個のCCOMPUTETJの各々に関連する。
【0052】
7)次に、Like1とLike2との積が、前記261個のCCOMPUTETJの各々について算出される。
【0053】
最後に、7)の積を最大化するCCOMPUTETJに関連する温度が、鋼ストリップの温度であると定義される。
【0054】
熱電対測定を通して取得された温度と、特許請求された推定によって取得された温度との比較結果を
図5にプロットする。点を付した線は、前述の方法で推定された温度を表し、実線は、熱電対で測定された温度を表す。本方法によって与えられる温度が信頼できることが、明確に分かる。
【国際調査報告】