(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-20
(54)【発明の名称】アルキルピリジニウムクマリン色素及び配列決定用途における使用
(51)【国際特許分類】
C07D 491/052 20060101AFI20231213BHJP
C07H 19/24 20060101ALI20231213BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20231213BHJP
G01N 33/533 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
C07D491/052 CSP
C07H19/24
G01N33/53 M
G01N33/533
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580794
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(85)【翻訳文提出日】2023-02-02
(86)【国際出願番号】 GB2021053343
(87)【国際公開番号】W WO2022129930
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】502279294
【氏名又は名称】イルミナ ケンブリッジ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】クレッシナ,エレナ
(72)【発明者】
【氏名】フランセ,アントワーヌ
(72)【発明者】
【氏名】リウ,シャオハイ
【テーマコード(参考)】
4C050
4C057
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050AA08
4C050BB07
4C050CC18
4C050EE01
4C050FF02
4C050GG03
4C050HH04
4C057BB02
4C057DD03
4C057LL50
4C057LL51
(57)【要約】
本出願は、式(I)のアルキルピリジニウム置換クマリン色素及び蛍光標識としてのそれらの使用に関する。例えば、これらの色素は、核酸配列決定用途のためのヌクレオチドを標識するために使用され得る。式中、R1は、又はであり、R1は、1つ以上のC1~C6アルキルで置換されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物、その塩、又はメソメリー形態であって、
【化1】
式中、R
1は、
【化2】
であり、R
1は、1つ以上のC
1~C
6アルキルで置換されており、
各R
2、R
5及びR
7は、独立して、H、C
1~C
6アルキル、置換されたC
1~C
6アルキル、C
1~C
6アルコキシ、C
2~C
6アルケニル、C
2~C
6アルキニル、C
1~C
6ハロアルキル、C
1~C
6ハロアルコキシ、(C
1~C
6アルコキシ)C
1~C
6アルキル、任意に置換されたアミノ、アミノ(C
1~C
6アルキル)、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、ヒドロキシ(C
1~C
6アルキル)、ニトロ、スルホニル、スルホ、スルフィノ、スルホネート、S-スルホンアミド、又はN-スルホンアミドであり、
R
3及びR
4の各々は、独立して、H、C
1~C
6アルキル、又は置換されたC
1~C
6アルキルであり、
代替的に、R
2及びR
3は、それらが結合している原子と一緒に、任意に置換された5~10員ヘテロアリール又は任意に置換された5~10員ヘテロシクリルからなる群から選択される環又は環系を形成し、
代替的に、R
4及びR
5は、それらが結合している原子と一緒に、任意に置換された5~10員ヘテロアリール又は任意に置換された5~10員ヘテロシクリルからなる群から選択される環又は環系を形成し、
R
6は、H、C
1~C
6アルキル、置換されたC
1~C
6アルキル、又は任意に置換されたC
6~C
10アリールであり、
R
a、R
b及びR
cの各々は、独立して、C
1~C
6アルキル又は置換されたC
1~C
6アルキルである、化合物、その塩、又はメソメリー形態。
【請求項2】
R
3が、Hであり、R
4が、C
1~C
6アルキル又は置換されたC
1~C
6アルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R
3及びR
4の各々が、独立して、C
1~C
6アルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
式(I)の化合物が、式(Ia)
【化3】
その塩、又はメソメリー形態によっても表され、式中、
各R
8、R
9、R
10及びR
11は、独立して、H、C
1~C
6アルキル、置換されたC
1~C
6アルキル、C
1~C
6アルコキシ、C
2~C
6アルケニル、C
2~C
6アルキニル、C
1~C
6ハロアルキル、C
1~C
6ハロアルコキシ、(C
1~C
6アルコキシ)C
1~C
6アルキル、任意に置換されたアミノ、アミノ(C
1~C
6アルキル)、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、ヒドロキシ(C
1~C
6アルキル)、ニトロ、スルホニル、スルホ、スルフィノ、スルホネート、S-スルホンアミド、又はN-スルホンアミドであり、
実線及び破線
【化4】
によって表される結合は、単結合及び二重結合からなる群から選択されるが、但し、
【化5】
が二重結合の場合、R
11は、存在しないことを条件とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
R
1が、
【化6】
である、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
R
1が、
【化7】
である、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
各R
a及びR
bが、独立して、C
1~C
6アルキルである、請求項5又は6に記載の化合物。
【請求項8】
各R
a及びR
bが、独立して、カルボキシル(-C(O)OH)、カルボキシレート(-C(O)O
-)、スルホ(-SO
3H)又はスルホネート(-SO
3
-)で置換されたC
1~C
6アルキルである、請求項5又は6に記載の化合物。
【請求項9】
実線及び破線
【化8】
によって表される前記結合が、二重結合である、請求項4~8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
R
10が、H又はC
1~C
6アルキルである、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
R
10が、メチルである、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
実線及び破線
【化9】
によって表される前記結合が、単結合である、請求項4~8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
R
10が、Hであり、R
11が、C
1~C
6アルキルである、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
R
10及びR
11の各々が、Hである、請求項12に記載の化合物。
【請求項15】
R
8及びR
9の各々が、Hである、請求項4~14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
R
8及びR
9のうちの少なくとも1つが、C
1~C
6アルキルである、請求項4~14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
R
8及びR
9の各々が、C
1~C
6アルキルである、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
R
8及びR
9の各々が、メチルである、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
R
3が、C
1~C
6アルキルである、請求項4~18のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項20】
R
3が、置換されたC
1~C
6アルキルである、請求項4~18のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項21】
R
3が、カルボキシル(-C(O)OH)、カルボキシレート
(-C(O)O
-)、スルホ(-SO
3H)、スルホネート(-SO
3
-)、-C(O)OR
12、及び-C(O)NR
13R
14からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換されたC
1~C
6アルキルであり、R
12が、任意に置換されたC
1~C
6アルキル、任意に置換されたC
6~C
10アリール、任意に置換された5~10員ヘテロアリール、又は任意に置換されたC
3~C
7シクロアルキルであり、R
13及びR
14の各々が、独立して、H、任意に置換されたC
1~C
6アルキル、任意に置換されたC
6~C
10アリール、任意に置換された5~10員ヘテロアリール、又は任意に置換されたC
3~C
7シクロアルキルである、請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
R
3が、カルボキシル又は-C(O)NR
13R
14で置換されたC
1~C
6アルキルであり、各R
13及びR
14が、独立して、カルボキシル、カルボキシレート、-C(O)OR
12、スルホ又はスルホネートで置換されたC
1~C
6アルキルである、請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
R
2が、Hである、請求項1~22のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項24】
R
2及びR
3は、それらが結合している原子と一緒に結合して、任意に置換された6員ヘテロシクリルを形成する、請求項1及び4~18のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項25】
前記6員ヘテロシクリルが、1つ以上のC
1~C
6アルキルで置換されている、請求項24に記載の化合物。
【請求項26】
R
6が、H又はフェニルである、請求項1~25のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項27】
R
7が、Hである、請求項1~26のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項28】
【化10】
並びにそれらの塩及びメソメリー形態から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項29】
請求項1~28のいずれか一項に記載の化合物で標識されたヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド。
【請求項30】
前記化合物が、式(I)のR
8a、R
8b、又はR
8cのカルボキシル基を介して前記ヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドに結合している、請求項29に記載の標識されたヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド。
【請求項31】
前記化合物が、式(I)のR
3又はR
4のカルボキシル基を介して前記ヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドに結合している、請求項29に記載の標識されたヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド。
【請求項32】
前記化合物が、ピリミジン塩基のC5位置、又は7-デアザプリン塩基のC7位置にリンカー部分を介して結合している、請求項29~31のいずれか一項に記載の標識されたヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド。
【請求項33】
前記ヌクレオチドのリボース糖又はデオキシリボース糖に共有結合した3’OHブロッキング基を更に含む、請求項29~32のいずれか一項に記載の標識されたヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド。
【請求項34】
前記ヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドが、標的ポリヌクレオチドの少なくとも一部分にハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドである、請求項29に記載のヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド。
【請求項35】
前記標的ポリヌクレオチドが、固体支持体に固定化されている、請求項34に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項36】
前記固体支持体が、複数の固定化された標的ポリヌクレオチドのアレイを含む、請求項35に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項37】
請求項29~33のいずれか一項に記載の第1の化合物で標識された第1のヌクレオチドを含む、キット。
【請求項38】
第2の化合物で標識された第2のヌクレオチドを更に含み、前記第2の化合物は、前記第1の標識されたヌクレオチドの前記第1の化合物とは異なる、請求項37に記載のキット。
【請求項39】
前記第1の標識されたヌクレオチド及び第2の標識されたヌクレオチドが、第1の光源波長を使用して励起可能である、請求項38に記載のキット。
【請求項40】
第3のヌクレオチドを更に含み、前記第3のヌクレオチドは、前記第1及び前記第2の化合物とは異なる第3の化合物で標識され、前記第1及び第3の標識されたヌクレオチドが、第2の光源波長を使用して励起可能である、請求項38又は39に記載のキット。
【請求項41】
第4のヌクレオチドを更に含み、前記第4のヌクレオチドは、標識されていない(暗色)、請求項40に記載のキット。
【請求項42】
前記第1の標識されたヌクレオチド、前記第2の標識されたヌクレオチド、及び前記第3の標識されたヌクレオチドの各々が、単一の検出チャネルで検出可能である発光スペクトルを有する、請求項37~41のいずれか一項に記載のキット。
【請求項43】
DNAポリメラーゼ及び1つ以上の緩衝組成物を更に含む、請求項37~42のいずれか一項記載のキット。
【請求項44】
標的ポリヌクレオチドの配列を決定する方法であって、
(a)プライマーポリヌクレオチド/標的ポリヌクレオチド複合体を1つ以上の標識されたヌクレオチドと接触させることであって、前記標識されたヌクレオチドのうちの少なくとも1つは、請求項29~33のいずれか一項に記載のヌクレオチドであり、前記プライマーポリヌクレオチドは、前記標的ポリヌクレオチドの少なくとも一部分に相補的である、接触させることと、
(b)標識されたヌクレオチドを前記プライマーポリヌクレオチドに組み込んで、伸長されたプライマーポリヌクレオチド/標的ポリヌクレオチド複合体を生成することと、
(c)前記伸長されたプライマーポリヌクレオチド/標的ポリヌクレオチド複合体の1つ以上の蛍光測定を実施して、前記組み込まれたヌクレオチドの同一性を決定することと、を含む、方法。
【請求項45】
前記プライマーポリヌクレオチド/標的ポリヌクレオチド複合体が、前記標的ポリヌクレオチドを前記標的ポリヌクレオチドの少なくとも一部分に相補的なプライマーポリヌクレオチドと接触させることによって形成される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
(d)前記プライマーポリヌクレオチドに組み込まれた前記ヌクレオチドから前記標識及び前記3’ブロッキング基を除去することを更に含む、請求項44又は45に記載の方法。
【請求項47】
(e)前記除去された標識及び前記3’ブロッキング基を前記伸長されたプライマーポリヌクレオチドから洗い落とすことを更に含む、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
鋳型ポリヌクレオチド鎖の少なくとも一部分の配列が決定されるまで、工程(a)~(e)を繰り返すことを更に含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記工程(a)~(e)が、少なくとも50回繰り返される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記プライマーポリヌクレオチドに組み込まれた前記ヌクレオチドからの前記標識及び前記3’ブロッキング基が、単一の化学反応において除去される、請求項44~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記方法が、自動配列決定機器で実施され、前記自動配列決定機器は、異なる波長で作動する2つの光源を含む、請求項44~50のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アルキルピリジニウム置換クマリン誘導体及び蛍光標識としてのそれらの使用に関する。具体的には、化合物は、核酸配列決定用途のためのヌクレオチド標識として使用され得る。
【背景技術】
【0002】
蛍光標識を有する核酸の非放射性検出は、分子生物学における重要な技術である。組換えDNA技術で用いられる多くの手順は、以前、例えば、32Pで放射性標識されたヌクレオチド又はポリヌクレオチドの使用に依存した。放射性化合物は、核酸及び他の目的の分子の高感度な検出を可能にする。しかしながら、放射性同位体の使用には、それらの費用、制限された貯蔵寿命、不十分な感度、及びより重要なことに、安全性の考慮事項などの重大な制限がある。放射性標識の必要性を排除すると、安全上のリスク、並びに環境への影響及び例えば、試薬廃棄と関連するコストの両方が低減される。非放射性蛍光検出に適した方法としては、非限定的な例として、自動化されたDNA配列決定、ハイブリダイゼーション方法、ポリメラーゼ鎖反応生成物のリアルタイム検出、及び免疫アッセイが挙げられる。
【0003】
多くの用途について、複数の空間的に重複する分析物の独立した検出を達成するために、複数の分光的に区別可能な蛍光標識を用いることが望ましい。そのような多重方法では、反応容器の数を低減して、実験プロトコルを簡素化し、用途特異的試薬キットの生成を容易にすることができる。例えば、多色の自動化されたDNA配列決定システムでは、多重蛍光検出は、単一の電気泳動レーンにおける複数のヌクレオチド塩基の分析を可能にし、それによって、単色の方法と比較してスループットを増加させ、レーン間電気泳動移動度の変動と関連する不確実性を低減する。
【0004】
しかしながら、多重蛍光検出は、問題となる可能性があり、適切な蛍光標識の選択を制約するいくつかの重要な要因が存在する。第1に、所与の用途において、実質的に分解された吸収及び発光スペクトルを持つ色素化合物を見つけることは困難である場合がある。加えて、いくつかの蛍光色素が一緒に使用される場合、色素の吸収バンドが通常広く分離されているため、同時励起によって区別可能なスペクトル領域で蛍光シグナルを生成することは複雑である場合があり、そのため2つの色素に対してでも同等の蛍光励起効率を達成することは、困難である。多くの励起方法は、レーザのような高電力光源を使用するため、色素は、そのような励起に耐えるのに十分な光安定性を有する必要がある。分子生物学方法にとって特に重要な最終的な考慮事項は、蛍光色素が、例えば、DNA合成溶媒及び試薬、緩衝液、ポリメラーゼ酵素、並びにリガーゼ酵素などの試薬化学物質と、どの程度適合性である必要があるかである。
【0005】
配列決定技術の進歩につれて、全ての上記の制約を満たし、かつ特に固相配列決定などの高スループット分子方法に適した更なる蛍光色素化合物、それらの核酸コンジュゲート、及び複数の色素セットの必要性が生じている。
【0006】
蛍光バンドの好適な蛍光強度、形状、及び波長最大値のような蛍光特性を改善した蛍光色素分子は、核酸配列決定の速度及び精度を改善することができる。強い蛍光シグナルは、測定が、水性の生物学的緩衝液中及び高温で行われる場合には、大部分の有機色素の蛍光強度がそのような条件下では著しく低いため、特に重要である。更に、色素が結合している塩基の性質はまた、蛍光最大値、蛍光強度、及び色素の他のスペクトル特性に影響を及ぼす。核酸塩基と蛍光色素との間の、配列特異的相互作用は、蛍光色素の具体的な設計によって調整することができる。蛍光色素の構造を最適化することにより、ヌクレオチドの組み込み効率を改善し、配列決定エラーのレベルを低減させ、核酸配列決定における試薬の使用量を減少させ、その結果、核酸配列決定のコストを低減させることができる。
【0007】
いくつかの光学的及び技術的開発は、既に、画質を大幅に向上させてきたが、最終的には、不十分な光学解像度によって制限された。一般に、光学顕微鏡の光学解像度は、使用される光の波長のおよそ半分の距離で離間した物体どうしを見分けるレベルに限定される。実際的な用語では、互いに非常に遠く離れた(少なくとも200~350nm)物体どうしのみが、光学顕微鏡法によって見分けることができる。画像解像度を改善し、単位表面積当たりで見分けることができるオブジェクトの数を増加させる1つの方式は、より短い波長の励起光を使用することである。例えば、同じ光学系を用いて、波長がΔλ約100nmだけ短縮されると、解像度がより良好になり(約Δ50nm/(約15%))、歪みの少ない画像が記録され、認識可能なエリア上の物体の密度が約35%増加する。
【0008】
特定の核酸配列決定法は、色素で標識されたヌクレオチドを励起及び検出するためにレーザ光を用いる。これらの機器は、660nmで励起可能な適切な色素と共に、赤色レーザなどのより長い波長の光を使用する。有用な解像度を維持しながら、より密集した核酸配列決定クラスターを検出するためには、より短波長の青色光源(450~460nm)を使用することができる。この場合、光学解像度は、長波長赤色蛍光色素の発光波長によってではなく、むしろ、次の最長波長光源、例えば、532nmの「緑色レーザ」によって励起可能な色素の発光によって制限される。したがって、配列決定用途の蛍光検出における使用のための青色色素標識が必要とされている。
【0009】
クマリン色素ファミリーは、それらの顕著なスペクトル特性に起因して化学者の注目を集めている。それにもかかわらず、市販されている大きなストークスシフト(large Stokes shift、LSS)を有する光安定性蛍光色素はわずかしかない。これらの色素のほとんどは、足場としてクマリン断片も含有する。したがって、テーラーメイドの吸着(adsorption)波長及び良好な安定性を有する蛍光ストークスシフトを有する色素を設計することは、色素開発における重要な課題のままである。
【発明の概要】
【0010】
本明細書には、長いストークスシフト、並びにヌクレオチド標識化に好適な改善された蛍光強度及び化学的安定性を有するアルキルピリジニウム置換クマリン色素が記載されている。これらのクマリン色素は、青色光及び緑色光の両方の励起下で強い蛍光を有する(例えば、これらのクマリン色素は、約450nm~約530nm、約460nm~約520nm、約475nm~約510nm、又は約490nm~約500nmの吸収波長を有し得る)。
【0011】
本開示のいくつかの態様は、式(I)の化合物、又はその塩、若しくはメソメリー形態に関し、
【0012】
【0013】
【化2】
であり、R
1は、1つ以上のC
1~C
6アルキルで置換されており、
各R
2、R
5及びR
7は、独立して、H、C
1~C
6アルキル、置換されたC
1~C
6アルキル、C
1~C
6アルコキシ、C
2~C
6アルケニル、C
2~C
6アルキニル、C
1~C
6ハロアルキル、C
1~C
6ハロアルコキシ、(C
1~C
6アルコキシ)C
1~C
6アルキル、任意に置換されたアミノ、アミノ(C
1~C
6アルキル)、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、ヒドロキシ(C
1~C
6アルキル)、ニトロ、スルホニル、スルホ、スルフィノ、スルホネート、S-スルホンアミド、又はN-スルホンアミドであり、
R
3及びR
4の各々は、独立して、H、C
1~C
6アルキル、又は置換されたC
1~C
6アルキルであり、
代替的に、R
2及びR
3は、それらが結合している原子と一緒に、任意に置換された5~10員ヘテロアリール又は任意に置換された5~10員ヘテロシクリルからなる群から選択される環又は環系を形成し、
代替的に、R
4及びR
5は、それらが結合している原子と一緒に、任意に置換された5~10員ヘテロアリール又は任意に置換された5~10員ヘテロシクリルからなる群から選択される環又は環系を形成し、
R
6は、H、C
1~C
6アルキル、置換されたC
1~C
6アルキル、又は任意に置換されたC
6~C
10アリールであり、
R
a、R
b及びR
cの各々は、独立して、C
1~C
6アルキル又は置換されたC
1~C
6アルキルである。
【0014】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(Ia)、又はその塩若しくはメソメリー形態によっても表され、
【0015】
【化3】
式中、各R
8、R
9、R
10及びR
11は、独立して、H、C
1~C
6アルキル、置換されたC
1~C
6アルキル、C
1~C
6アルコキシ、C
2~C
6アルケニル、C
2~C
6アルキニル、C
1~C
6ハロアルキル、C
1~C
6ハロアルコキシ、(C
1~C
6アルコキシ)C
1~C
6アルキル、任意に置換されたアミノ、アミノ(C
1~C
6アルキル)、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、ヒドロキシ(C
1~C
6アルキル)、ニトロ、スルホニル、スルホ、スルフィノ、スルホネート、S-スルホンアミド、又はN-スルホンアミドであり、実線及び破線
【0016】
【化4】
によって表される結合は、単結合及び二重結合からなる群から選択されるが、但し、
【0017】
【化5】
が二重結合の場合、R
11は、存在しないことを条件とする。
【0018】
式(I)又は(Ia)の化合物のいくつかの実施形態では、R1(例えば、Ra、Rb又はRc)は、カルボキシル基(-C(O)OH)を含む。他の実施形態では、R3又はR4は、カルボキシル基を含む。
【0019】
いくつかの態様では、本開示の化合物は、例えば、ヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、炭水化物、リガンド、粒子、細胞、半固体表面(例えば、ゲル)、又は固体表面などの基材部分で標識されるか、又はコンジュゲートされる。標識化又はコンジュゲーションは、カルボキシル基を介して実施され得、それは、当該技術分野で既知の方法を使用して、それに結合した部分(ヌクレオチドなど)又はリンカー上のアミノ又はヒドロキシル基と反応し、アミド又はエステルを形成し得る。
【0020】
本開示のいくつかの他の態様は、例えば、基材部分への共有結合を可能にするためのリンカー基を含む色素化合物に関する。連結は、R基のうちのいずれかを含む、色素の任意の位置で実施され得る。いくつかの実施形態では、連結は、式(I)のR1(例えば、Ra、Rb又はRc)又はR3又はR4を介して実施され得る。いくつかの更なる実施形態では、連結は、式(Ia)のR1(例えば、Ra、Rb又はRc)又はR3を介して実施され得る。
【0021】
本開示のいくつかの更なる態様は、以下の式によって定義される標識されたヌクレオシド又はヌクレオチド化合物を提供し、
N-L-色素
式中、Nは、ヌクレオシド又はヌクレオチドであり、
Lは、任意のリンカー部分であり、
色素は、本開示による式(I)又は(Ia)の蛍光化合物の部分であり、式(I)又は(Ia)の化合物の官能基(例えば、カルボキシル基)は、リンカー部分又はヌクレオシド/ヌクレオチドのアミノ又はヒドロキシル基と反応して共有結合を形成する。
【0022】
本開示のいくつかの追加の態様は、式(I)又は(Ia)の化合物で標識されたヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドに関する。
【0023】
本開示のいくつかの追加の態様は、様々な免疫学的アッセイ、オリゴヌクレオチド若しくは核酸標識化において、又は合成によるDNA配列決定のために使用され得る色素化合物(遊離又は標識された形態)を含むキットに関する。更に別の態様では、本開示は、自動機器プラットホーム上の合成による配列決定のサイクルに特に適した色素「セット」を含むキットを提供する。いくつかの態様では、少なくとも1つのヌクレオチドが本明細書に記載の標識されたヌクレオチドである、1つ以上のヌクレオチドを含有するキットである。
【0024】
本開示の更なる態様は、標的ポリヌクレオチドの配列を決定する方法であって、
(a)プライマーポリヌクレオチド/標的ポリヌクレオチド複合体を1つ以上の標識されたヌクレオチド(例えば、A、G、C及びT、又はdATP、dGTP、dCTP及びdTTP)と接触させることであって、当該標識されたヌクレオチドのうちの少なくとも1つが、式(I)又は(Ia)のアルキルピリジニウム置換クマリン色素で標識された本明細書に記載のヌクレオチドであり、プライマーポリヌクレオチドが、標的ポリヌクレオチドの少なくとも一部分に相補的である、接触させることと、
(b)標識されたヌクレオチドをプライマーポリヌクレオチド/標的ヌクレオチド複合体に組み込んで、伸長されたプライマーポリヌクレオチド/標的ヌクレオチド複合体を生成することと、
(c)伸長されたプライマーポリヌクレオチド/標的ヌクレオチド複合体の1つ以上の蛍光測定を実施して、組み込まれたヌクレオチドの同一性を決定することと、を含む、方法である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1A】それぞれ450nm及び520nmの励起波長での緩衝液中の参照色素Aと比較したクマリン色素I-1の蛍光発光スペクトルを示す。
【
図1B】それぞれ450nm及び520nmの励起波長での緩衝液中の参照色素Aと比較したクマリン色素I-1の蛍光発光スペクトルを示す。
【
図2A】それぞれ450nm及び520nmの励起波長での緩衝液中の参照色素Cと比較したクマリン色素I-5の蛍光発光スペクトルを示す。
【
図2B】それぞれ450nm及び520nmの励起波長での緩衝液中の参照色素Cと比較したクマリン色素I-5の蛍光発光スペクトルを示す。
【
図3A】それぞれ450nm及び520nmの励起波長での緩衝液中の参照色素Bと比較したクマリン色素I-8の蛍光発光スペクトルを示す。
【
図3B】それぞれ450nm及び520nmの励起波長での緩衝液中の参照色素Bと比較したクマリン色素I-8の蛍光発光スペクトルを示す。
【
図4A】それぞれ450nm及び520nmの励起波長での緩衝液中の参照色素Aで標識された標識された完全に官能化されたAヌクレオチド(fully functionalized A nucleotide、ffA)と比較したクマリン色素I-1で標識されたffAの蛍光発光スペクトルを示す。
【
図4B】それぞれ450nm及び520nmの励起波長での緩衝液中の参照色素Aで標識された標識された完全に官能化されたAヌクレオチド(fully functionalized A nucleotide、ffA)と比較したクマリン色素I-1で標識されたffAの蛍光発光スペクトルを示す。
【
図5A】それぞれ450nm及び520nmの励起波長での緩衝液中の参照色素Cで標識された標識されたffAと比較したクマリン色素I-5で標識されたffAの蛍光発光スペクトルを示す。
【
図5B】それぞれ450nm及び520nmの励起波長での緩衝液中の参照色素Cで標識された標識されたffAと比較したクマリン色素I-5で標識されたffAの蛍光発光スペクトルを示す。
【
図6A】それぞれ450nm及び520nmの励起波長での緩衝液中の参照色素Bで標識された標識されたffAと比較したクマリン色素I-8で標識されたffAの蛍光発光スペクトルを示す。
【
図6B】それぞれ450nm及び520nmの励起波長での緩衝液中の参照色素Bで標識された標識されたffAと比較したクマリン色素I-8で標識されたffAの蛍光発光スペクトルを示す。
【
図7A】それぞれ450nm及び520nmの励起波長での緩衝液中の参照色素Dで標識された標識されたffAと比較したクマリン色素I-3で標識されたffAの蛍光発光スペクトルを示す。
【
図7B】それぞれ450nm及び520nmの励起波長での緩衝液中の参照色素Dで標識された標識されたffAと比較したクマリン色素I-3で標識されたffAの蛍光発光スペクトルを示す。
【
図8A】それぞれ、クマリン色素I-1で標識されたffAを含む取り込み混合物について得られた散布図及び参照色素Aで標識されたffAを含む取り込み混合物について得られた散布図を示す。
【
図8B】それぞれ、クマリン色素I-1で標識されたffAを含む取り込み混合物について得られた散布図及び参照色素Aで標識されたffAを含む取り込み混合物について得られた散布図を示す。
【
図8C】それぞれ、クマリン色素I-3で標識されたffAを含む取り込み混合物について得られた散布図及び参照色素Dで標識されたffAを含む取り込み混合物について得られた散布図を示す。
【
図8D】それぞれ、クマリン色素I-3で標識されたffAを含む取り込み混合物について得られた散布図及び参照色素Dで標識されたffAを含む取り込み混合物について得られた散布図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示の実施形態は、増強された蛍光強度及び長いストークスシフトを有するアルキルピリジニウム置換クマリン色素に関する。これらのクマリン色素はまた、広い励起波長を有し、青色及び緑色の光源の両方によって励起され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のアルキルピリジニウムクマリン色素は、2つのチャネルCMOS検出(緑色光励起及び青色光励起)を備えるIlluminaのiSeq(商標)プラットホームで使用され得る。
【0027】
定義
本明細書で使用されるセクションの見出しは、構成目的のみのためであり、記載される主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0028】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、明示的かつ明確に1つの指示対象に限定されていない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。本教示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の様々な実施形態に対して様々な修正及び変更を行うことができることは、当業者には明らかであろう。したがって、本明細書に記載の様々な実施形態は、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物の範囲内の他の改変及び変形を包含することが意図される。
【0029】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当該技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。用語「含む(including)」、並びに他の形態、例えば、「含む(include)」、「含む(includes)」、及び「含まれる(included)」の使用は、限定的ではない。更に、用語「有する(having)」、並びに他の形態、例えば、「有する(have)」、「有する(has)」、及び「有した(had)」の使用は、限定的ではない。本明細書で使用されるとき、移行句又は特許請求項の本文において、用語「含む(comprise)」及び「含む(comprising)」は、オープンエンドの意味を有するものとして解釈されるべきである。すなわち、上記の用語は、語句「少なくとも有する」又は「少なくとも含む」と同義であると解釈されるべきである。例えば、プロセスの文脈において使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、プロセスが少なくとも列挙された工程を含むが、追加の工程を含み得ることを意味する。化合物、組成物、又はデバイスの文脈で使用される場合、用語「含む(comprising)」は、化合物、組成物、又はデバイスが少なくとも列挙された特徴又は構成要素を含むが、追加の特徴又は構成要素も含み得ることを意味する。
【0030】
本明細書で使用される場合、一般的な有機略語は、以下のように定義される。
℃ 摂氏温度
dATP デオキシアデノシン三リン酸
dCTP デオキシシチジン三リン酸
dGTP デオキシグアノシン三リン酸
dTTP デオキシチミジン三リン酸
ddNTP ジデオキシヌクレオチド三リン酸
ffA 完全に官能化されたAヌクレオチド
ffC 完全に官能化されたCヌクレオチド
ffG 完全に官能化されたGヌクレオチド
ffN 完全に官能化されたヌクレオチド
ffT 完全に官能化されたTヌクレオチド
h 時間
RT 室温
SBS 合成による配列決定
【0031】
本明細書で使用される場合、「アレイ」という用語は、異なるプローブ分子が相対的な位置に従って互いに区別できるように、1つ以上の基材に結合した異なるプローブ分子の集団を指す。アレイは、基材上の異なるアドレス可能な位置に各々位置する異なるプローブ分子を含み得る。代替的に、又は追加的に、アレイは、各々が異なるプローブ分子を有する別個の基材を含むことができ、異なるプローブ分子は、基材が結合される表面上の基材の位置に従って、又は液体中の基材の位置に従って特定され得る。別個の基材が表面上に位置する例示的なアレイとしては、例えば、米国特許第6,355,431(B1)号、米国特許出願公開第2002/0102578号、及びPCT国際公開第00/63437号に記載されているように、ウェル中のビーズを含むものが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、蛍光活性化細胞選別機(fluorescent activated cell sorter、FACS)などのマイクロ流体デバイスを使用して、ビーズを液体アレイ内で区別するために本発明において使用され得る例示的な形式は、例えば、米国特許第6,524,793号に記載されている。本発明において使用され得るアレイの更なる例としては、米国特許第5,429,807号、同第5,436,327号、同第5,561,071号、同第5,583,211号、同第5,658,734号、同第5,837,858号、同第5,874,219号、同第5,919,523号、同第6,136,269号、同第6,287,768号、同第6,287,776号、同第6,288,220号、同第6,297,006号、同第6,291,193号、同第6,346,413号、同第6,416,949号、同第6,482,591号、同第6、514、751号及び同第6,610,482号、並びに国際公開第93/17126号、国際公開第95/11995号、国際公開第95/35505号、欧州特許第742287号、及び欧州特許第799897号に記載されているものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
本明細書で使用するとき、用語「共有結合した(「covalently attached」又は「covalently bonded」)」は、原子間の電子対の共有によって特徴付けられる化学結合の形成を指す。例えば、共有結合したポリマーコーティングとは、他の手段、例えば、接着又は静電相互作用による表面への付着と比較して、基材の官能化表面と化学結合を形成するポリマーコーティングを指す。表面に共有結合したポリマーは、共有結合に加えて他の手段によっても結合され得ることが理解されるであろう。
【0033】
本明細書で使用するとき、用語「ハロゲン」又は「ハロ」は、元素周期表の7族の、例えばフッ素、塩素、臭素、又はヨウ素のいずれか1つを意味し、フッ素及び塩素が好ましい。
【0034】
本明細書で使用される場合、「a」及び「b」が整数である、「Ca~Cb」は、アルキル、アルケニル、若しくはアルキニル基の炭素原子の数、又はシクロアルキル若しくはアリール基の環原子の数を指す。すなわち、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキルの環、及びアリールの環は、両端値を含む「a」~「b」の数の炭素原子を含有し得る。例えば、「C1~C4アルキル」基は、1~4個の炭素を有する全てのアルキル基、すなわち、CH3-、CH3CH2-、CH3CH2CH2-、(CH3)2CH-、CH3CH2CH2CH2-、CH3CH2CH(CH3)-、及び(CH3)3C-を指し、C3~C4シクロアルキル基は、3~4個の炭素原子を有する全てのシクロアルキル基、すなわち、シクロプロピル及びシクロブチルを指す。同様に、「4~6員ヘテロシクリル」基は、4~6個の全環原子を有する全てのヘテロシクリル基、例えば、アゼチジン、オキセタン、オキサゾリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリンなどを指す。「a」及び「b」がアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、又はアリール基に関して指定されていない場合、これらの定義に記載される最も広い範囲が想定されるべきである。本明細書で使用される場合、「C1~C6」という用語は、C1、C2、C3、C4、C5、及びC6、並びに2つの数字のうちのいずれかによって定義される範囲を含む。例えば、C1~C6アルキルは、C1、C2、C3、C4、C5、及びC6アルキル、C2~C6アルキル、C1~C3アルキルなどを含む。同様に、C2~C6アルケニルは、C2、C3、C4、C5、及びC6アルケニル、C2~C5アルケニル、C3~C4アルケニルなどが含まれ、C2~C6アルキニルは、C2、C3、C4、C5、及びC6アルキニル、C2~C5アルキニル、C3~C4アルキニルなどを含む。C3~C8シクロアルキルは各々、3、4、5、6、7、及び8個の炭素原子を含有する炭化水素環、又はC3~C7シクロアルキル又はC5~C6シクロアルキルなどのいずれか2つの数字によって定義される範囲を含む。
【0035】
本明細書に使用されるとき、「アルキル」は、完全に飽和している(すなわち、二重結合又は三重結合を含有しない)直鎖又は分岐鎖炭化水素鎖を指す。アルキル基は、1~20個の炭素原子を有してもよい(本明細書に示されるときはいつでも、「1~20」などの数値範囲は、所与の範囲内の各整数を指す。例えば、「1~20個の炭素原子」は、アルキル基が、1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子など、最大で20個の炭素原子からなり得ることを意味するが、本定義はまた、数値範囲が指定されていない用語「アルキル」の存在もカバーする)。アルキル基はまた、1~9個の炭素原子を有する中規模のアルキルであってもよい。アルキル基は、1~6個の炭素原子を有する低級アルキルであってもよい。一例にすぎないが、「C1~6アルキル」又は「C1~C6アルキル」は、アルキル鎖中に1~6個の炭素原子が存在することを示し、すなわち、アルキル鎖は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、及びt-ブチルからなる群から選択される。典型的なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、三級ブチル、ペンチル、ヘキシルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
本明細書で使用される場合、「アルコキシ」は、Rが上に定義されるアルキルである、「C1~9アルコキシ」又は「C1~C9アルコキシ」などの式-ORを指し、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、1-メチルエトキシ(イソプロポキシ)、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、及びtert-ブトキシなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0037】
本明細書に使用されるとき、「アルケニル」は、1つ以上の二重結合を含有する直鎖又は分岐鎖炭化水素鎖を指す。アルケニル基は、2~20個の炭素原子を有し得るが、本定義はまた、数値範囲が指定されていない用語「アルケニル」の存在もカバーする。アルケニル基はまた、2~9個の炭素原子を有する中規模のアルケニルであってもよい。アルケニル基は、2~6個の炭素原子を有する低級アルケニルであってもよい。一例にすぎないが、「C2~C6アルケニル」又は「C2~6アルケニル」とは、アルケニル鎖中に2~6個の炭素原子が存在することを示し、すなわち、アルケニル鎖は、エテニル、プロペン-1-イル、プロペン-2-イル、プロペン-3-イル、ブテン-1-イル、ブテン-2-イル、ブテン-3-イル、ブテン-4-イル、1-メチル-プロペン-1-イル、2-メチル-プロペン-1-イル、1-エチル-エテン-1-イル、2-メチル-プロペン-3-イル、ブタ-1,3-ジエニル、ブタ-1,2-ジエニル、及びブタ-1,2-ジエン-4-イルからなる群から選択される。典型的なアルケニル基としては、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、及びヘキセニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
本明細書で使用するとき、「アルキニル」は、1つ以上の三重結合を含有する直鎖又は分岐鎖炭化水素鎖を指す。アルキニル基は、2~20個の炭素原子を有し得るが、本定義はまた、数値範囲が指定されていない用語「アルキニル」の存在もカバーする。アルキニル基はまた、2~9個の炭素原子を有する中規模のアルキニルであってもよい。アルキニル基は、2~6個の炭素原子を有する低級アルキニルであってもよい。一例にすぎないが、「C2~6アルキニル」又は「C2~C6アルケニル」は、アルキニル鎖中に2~6個の炭素原子が存在することを示し、すなわち、そのアルキニル鎖は、エチニル、プロピン-1-イル、プロピン-2-イル、ブチン-1-イル、ブチン-3-イル、ブチン-4-イル、及び2-ブチニルからなる群から選択される。典型的なアルキニル基としては、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、及びヘキシニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
用語「芳香族」は、共役π電子系を有し、炭素環芳香族(例えば、フェニル)及び複素環式芳香族基(例えば、ピリジン)の両方を含む環又は環系を指す。この用語は、環系全体が芳香族である限り、単環式又は縮合多環式(すなわち、隣接する原子対を共有する環)基を含む。
【0040】
本明細書で使用するとき、「アリール」は、環骨格中に炭素のみを含有する芳香環又は環系(すなわち、2個の隣接する炭素原子を共有する2つ以上の縮合環)を指す。アリールが環系である場合、系内の全ての環は芳香環である。アリール基は6~18個の炭素原子を有し得るが、本定義はまた、数値範囲が指定されていない用語「アリール」の存在もカバーする。いくつかの実施形態では、アリール基は、6~10個の炭素原子を有する。アリール基は、「C6~C10アリール」、「C6又はC10アリール」、又は類似の表記で指定され得る。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、アズレニル、及びアントラセニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
「アラルキル」又は「アリールアルキル」は、「C7~14アラルキル」などの、アルキレン基を介して置換基として結合されたアリール基であり、ベンジル、2-フェニルエチル、3-フェニルプロピル、及びナフチルアルキルを含むがこれらに限定されない。いくつかの場合において、アルキレン基は、より低級アルキレン基(すなわち、C1~6アルキレン基)である。
【0042】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアリール」は、環骨格中に窒素、酸素、及び硫黄を含むがこれらに限定されない、1個以上のヘテロ原子、すなわち炭素以外の元素を含有する芳香環又は環系(すなわち、2個の隣接する原子を共有する2つ以上の縮合環)を指す。ヘテロアリールが環系である場合、系内の全ての環は芳香環である。ヘテロアリール基は、5~18個の環員(すなわち、炭素原子及びヘテロ原子を含む、環骨格を構成する原子の数)を有し得るが、本定義はまた、数値範囲が指定されていない用語「ヘテロアリール」の存在もカバーする。いくつかの実施形態では、ヘテロアリール基は、5~10個の環員又は5~7つの環員を有する。ヘテロアリール基は、「5~7員ヘテロアリール」、「5~10員ヘテロアリール」、又は類似の表記で指定され得る。ヘテロアリール環の例としては、フリル、チエニル、フタラジニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、インドリル、イソインドリル、及びベンゾチエニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
「ヘテロアラルキル」又は「ヘテロアリールアルキル」は、アルキレン基を介して置換基として結合されたヘテロアリール基である。例としては、2-チエニルメチル、3-チエニルメチル、フリルメチル、チエニルエチル、ピロリルアルキル、ピリジルアルキル、イソオキサゾリリルアルキル、及びイミダゾリルアルキルが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの場合において、アルキレン基は、より低級アルキレン基(すなわち、C1~6アルキレン基)である。
【0044】
本明細書で使用するとき、「カルボシクリル」は、環系骨格中に炭素原子のみを含有する非芳香族環又は環系を意味する。カルボシクリルが環系である場合、2つ以上の環が、縮合、架橋、又はスピロ結合方式で一体に結合され得る。カルボシクリルは、環系中の少なくとも1つの環が芳香族ではないことを条件として、任意の飽和度を有してもよい。したがって、カルボシクリルとしては、シクロアルキル、シクロアルケニル、及びシクロアルキニルが挙げられる。カルボシクリル基は、3~20個の炭素原子を有し得るが、本定義はまた、数値範囲が指定されていない用語「カルボシクリル」の存在もカバーする。カルボシクリル基はまた、3~10個の炭素原子を有する中規模のカルボシクリルであってもよい。カルボシクリル基はまた、3~6個の炭素原子を有するカルボシクリルであってもよい。カルボシクリル基は、「C3~6カルボシクリル」、「C3~C6カルボシクリル」、又は類似の表記で指定され得る。カルボシクリル環の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、2,3-ジヒドロ-インデン、ビシクル[2.2.2]オクタニル、アダマンチル、及びスピロ[4.4]ノナニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
本明細書で使用するとき、「シクロアルキル」は、完全飽和カルボシクリル環又は環系を意味する。例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルが挙げられる。
【0046】
本明細書で使用するとき、「ヘテロシクリル」は、環骨格中に少なくとも1個のヘテロ原子を含有する非芳香族環又は環系を意味する。ヘテロシクリルどうしは、縮合、架橋、又はスピロ結合の形式で、一緒に接合されてもよい。ヘテロシクリルは、環系中の少なくとも1つの環が芳香族ではないことを条件として、任意の飽和度を有してもよい。ヘテロ原子は、環系中の非芳香環又は芳香環のいずれかに存在してもよい。ヘテロシクリル基は、3~20個の環員(すなわち、炭素原子及びヘテロ原子を含む、環骨格を構成する原子の数)を有し得るが、本定義はまた、数値範囲が指定されていない用語「ヘテロシクリル」の存在もカバーする。ヘテロシクリル基はまた、3~10個の環員を有する中規模のヘテロシクリルであってもよい。ヘテロシクリル基は、3~6つの環員を有するヘテロシクリルであってもよい。ヘテロシクリル基は、「3~6員ヘテロシクリル」又は類似の表記で指定されてもよい。好ましい6員単環式ヘテロシクリルでは、ヘテロ原子は、O、N又はSのうちの1つ~3つまで選択される。好ましい5員の単環式ヘテロシクリルでは、ヘテロ原子は、O、N、又はSから選択される1個又は2個のヘテロ原子から選択される。ヘテロシクリル環の例としては、アゼピニル、アクリジニル、カルバゾリル、シノリニル、ジオキソラニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、モルホリニル、オキシラニル、オキセパニル、チアパニル、ピペリジニル、ピペラジニル、ジオキサピペラジニル、ピロリジニル、ピロリドニル、ピロリジオニル、4-ピペリドニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、1,3-ジオキシニル、1,3-ジオキサニル、1,4-ジオキシニル、1,4-ジオキサニル、1,3-オキサチニル、1,4-オキサチニル、1,4-オキサチアニル、2H-1,2-オキサジニル、トリオキサニル、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジニル、1,3-ジオキソリル、1,3-ジオキソラニル、1,3-ジチオリル、1,3-ジチオラニル、イソオキサゾリニル、イソオキサゾリジニル、オキサゾリニル、オキサゾリジニル、オキサゾリジノニル、チアゾリニル、チアゾリジニル、1,3-オキサチオラニル、インドリニル、イソインドリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロ-1,4-チアジニル、チアモルフォリニル、ジヒドロベンゾフラニル、ベンズイミダゾリジニル、及びテトラヒドロキノリンが挙げられるが、それらに限定されない。
【0047】
本明細書で使用される場合、「アルコキシアルキル」又は「(アルコキシ)アルキル」は、C2~C8アルコキシアルキル、又は(C1~C6アルコキシ)C1~C6アルキル、例えば、-(CH2)1~3-OCH3などのアルキレン基を介して接続されたアルコキシ基を指す。
【0048】
「O-カルボキシ」基は、「-OC(=O)R」基を指し、式中、Rは、本明細書で定義するように、水素、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C3~7カルボシクリル、C6~10アリール、5~10員ヘテロアリール、及び3~10員ヘテロシクリルから選択される。
【0049】
「C-カルボキシ」基は、「-C(=O)OR」基を指し、式中、Rは、本明細書で定義するように、水素と、C1~6アルキルと、C2~6アルケニルと、C2~6アルキニルと、C3~7カルボシクリルと、C6~10アリールと、5~10員ヘテロアリールと、3~10員ヘテロシクリルとからなる群から選択される。非限定的な例としては、カルボキシル(すなわち、-C(=O)OH)が挙げられる。
【0050】
「スルホニル」基は、「-SO2R」基を指し、式中、Rは、本明細書で定義するように、水素、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C3~7カルボシクリル、C6~10アリール、5~10員ヘテロアリール、及び3~10員ヘテロシクリルから選択される。
【0051】
「スルフィノ」基は、「-S(=O)OH」基を指す。
【0052】
「スルホ」基は、「-S(=O)2OH」又は「-SO3H」基を指す。
【0053】
「スルホネート」基は、「-SO3
-」基を指す。
【0054】
「スルフェート」基は、「-SO4
-」基を指す。
【0055】
「S-スルホンアミド」基は、「-SO2NRARB」基を指し、式中、RA及びRBは、本明細書で定義するように、各々独立して、水素、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C3~7カルボシクリル、C6~10アリール、5~10員ヘテロアリール、及び3~10員ヘテロシクリルから選択される。
【0056】
「N-スルホンアミド」基は、「-N(RA)SO2RB」基を指し、式中、RA及びRbは、本明細書に定義されるように、各々独立して、水素、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C3~7カルボシクリル、C6~10アリール、5~10員ヘテロアリール、及び3~10員ヘテロシクリルから選択される。
【0057】
「C-アミド」基は、「-C(=O)NRARB」基を指し、式中、RA及びRBは、本明細書に定義されるように、各々独立して、水素、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C3~7カルボシクリル、C6~10アリール、5~10員ヘテロアリール、及び3~10員ヘテロシクリルから選択される。
【0058】
「N-アミド」基は、「-N(RA)C(=O)RB」基を指し、式中、RA及びRBは、本明細書に定義されるように、各々独立して、水素、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C3~7カルボシクリル、C6~10アリール、5~10員ヘテロアリール、及び3~10員ヘテロシクリルから選択される。
【0059】
「アミノ」基は、「-NRARB」基を指し、式中、RA及びRBは、本明細書に定義されるように、各々独立して、水素、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C3~7カルボシクリル、C6~10アリール、5~10員ヘテロアリール、及び3~10員ヘテロシクリルから選択される。非限定的な例としては、遊離アミノ(すなわち、-NH2)が挙げられる。
【0060】
「アミノアルキル」基は、アルキレン基を介して連結されたアミノ基を指す。
【0061】
「アルコキシアルキル」基は、例えば、「C2~C8アルコキシアルキル」などのアルキレン基を介して接続したアルコキシ基を指す。
【0062】
基が「任意に置換された」として記載される場合、それは非置換であるか、又は置換されているかのいずれかであり得る。同様に、基が「置換された」として記載される場合、置換基は、示された置換基のうちの1つ以上から選択され得る。本明細書で使用するとき、置換基は、1個以上の水素原子が別の原子又は基に対して交換されている非置換親基から誘導される。別途記載のない限り、基が「置換されている」とみなされる場合、それは、基が、C1~C6アルキル、C1~C6アルケニル、C1~C6アルキニル、C3~C7カルボシクリル(任意に、ハロ、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、C1~C6ハロアルキル、及びC1~C6ハロアルコキシで置換されている)、C3~C7-カルボシクリル~C1~C6-アルキル(任意に、ハロ、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、C1~C6ハロアルキル、及びC1~C6ハロアルコキシで置換されている)、3~10員ヘテロシクリル(任意に、ハロ、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、C1~C6ハロアルキル、及びC1~C6ハロアルコキシで置換されている)、3~10員ヘテロシクリル~C1~C6-アルキル(任意に、ハロ、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、C1~C6ハロアルキル、及びC1~C6ハロアルコキシで置換されている)、アリール(任意に、ハロ、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、C1~C6ハロアルキル、及びC1~C6ハロアルコキシで置換されている)、アリール(C1~C6)アルキル(任意に、ハロ、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、C1~C6ハロアルキル、及びC1~C6ハロアルコキシで置換されている)、5~10員ヘテロアリール(任意に、ハロ、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、C1~C6ハロアルキル、及びC1~C6ハロアルコキシで置換されている)、5~10員ヘテロアリール(C1~C6)アルキル(任意に、ハロ、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、C1~C6ハロアルキル、及びC1~C6ハロアルコキシで置換されている)、ハロ、-CN、ヒドロキシ、C1~C6アルコキシ、C1~C6アルコキシ(C1~C6)アルキル(すなわち、エーテル)、アリールオキシ、スルフヒドリル(メルカプト)、ハロ(C1~C6)アルキル(例えば、-CF3)、ハロ(C1~C6)アルコキシ(例えば、-OCF3)、C1~C6アルキルチオ、アリールチオ、アミノ、アミノ(C1~C6)アルキル、ニトロ、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、S-スルホンアミド、N-スルホンアミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、アシル、シアネート、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、スルフィニル、スルホニル、-SO3H、スルホネート、スルフェート、スルフィノ、-OSO2C1~C4アルキル、及びオキソ(=O)から独立して選択される1つ以上の置換基で置換されることを意味する。ある基が「任意に置換された」と記載されている場合は常に、その基は、上記置換基で置換され得る。いくつかの実施形態では、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル又はヘテロシクリル基が置換されている場合、各々は、独立して、ハロ、-CN、-SO3
-、-OSO3
-、-SO3H、-SRA、-ORA、-NRBRC、オキソ、-CONRBRC、-SO2NRBRC、-COOH、及び-COORBからなる群から選択される1つ以上の置換基で置換され、式中、RA、RB及びRCは、各々独立して、H、アルキル、置換されたアルキル、アルケニル、置換されたアルケニル、アルキニル、置換されたアルキニル、アリール、及び置換されたアリールから選択される。
【0063】
当業者には理解されるように、本明細書に記載の化合物は、イオン化形態、例えば、-CO2
-、-SO3
-又は-O-SO3
-で存在し得る。化合物が、正又は負に帯電した置換基、例えば、SO3
-を含有する場合、化合物が全体として中性であるように、負又は正に帯電した対イオンを含有してもよい。他の態様では、化合物は塩形態で存在してもよく、対イオンは、共役酸又は塩基によって提供される。
【0064】
ある特定のラジカル命名法は、文脈に応じてモノラジカル又はジラジカルのいずれかを含むことができることを理解されたい。例えば、置換基が分子の残りの部分への2つの結合点を必要とする場合、置換基はジラジカルであることが理解される。例えば、2つの結合点を必要とするアルキルとして特定される置換基としては、-CH2-、-CH2CH2-、-CH2CH(CH3)CH2-などのジラジカルが挙げられる。他のラジカル命名法は、「アルキレン」又は「アルケニレン」など、ラジカルがジラジカルであることを明確に示す。
【0065】
2つの「隣接する」R基は、それらが結合している原子と共に環を形成すると言われる場合、原子の集合単位、介在する結合、及び2つのR基が列挙された環であることを意味する。例えば、以下のサブ構造が存在する場合、
【0066】
【化6】
R
1及びR
2は、水素及びアルキルからなる群から選択されるものとして定義されるか、又はR
1及びR
2は、それらが結合している原子と一緒にアリール若しくはカルボシクリルを形成し、これは、R
1及びR
2が、水素若しくはアルキルから選択することができるか、又は代替的に、サブ構造が、以下の構造を有することを意味し、
【0067】
【化7】
式中、Aは、アリール環又は示された二重結合を含有するカルボシクリルである。
【0068】
置換基がジラジカルとして示される場合(すなわち、分子の残りの部分への2つの結合点を有する)は、特に指示がない限り、置換基が任意の方向性構成で結合することができることを理解されたい。したがって、例えば、-AE-又は
【0069】
【化8】
として示される置換基は、Aが、分子の最も左の結合点で結合されるように、方向付けられている置換基、並びにAが、分子の最も右の結合点で結合される場合を示す。加えて、基又は置換基が、
【0070】
【化9】
として示され、Lが、任意に存在するリンカー部分と定義され、Lが存在しない(又は不在である)場合、そのような基又は置換基は、
【0071】
【0072】
本明細書に記載の化合物は、いくつかのメソメリー形態として表すことができる。単一の構造が描かれている場合、関連するメソメリー形態のいずれかが意図される。本明細書に記載のクマリン化合物は、単一の構造によって表されるが、関連するメソメリー形態のいずれかとして同様に示され得る。例示的なメソメリー構造を、それぞれ式(I)及び式(Ia)について以下に示す。
【0073】
【0074】
本明細書に記載される化合物の単一のメソメリー形態が示されている各事例においては、代替のメソメリー形態も同様に企図される。
【0075】
本明細書に使用されるとき、「ヌクレオチド」は、窒素含有複素環式塩基、糖、及び1つ以上のリン酸基を含む。それらは、核酸配列のモノマー単位である。RNA中では、糖は、リボースであり、DNA中では、デオキシリボース、すなわち、リボース中に存在するヒドロキシル基を欠く糖である。窒素含有複素環式塩基は、プリン、デアザプリン、又はピリミジン塩基であり得る。プリン塩基には、アデニン(A)及びグアニン(G)、並びに7-デアザアデニン又は7-デアザグアニンなどのそれらの修飾された誘導体又は類似体が含まれる。ピリミジン塩基としては、シトシン(C)、チミン(T)、及びウラシル(U)、並びにそれらの修飾された誘導体又は類似体が挙げられる。デオキシリボースのC-1原子は、ピリミジンのN-1又はプリンのN-9に結合される。
【0076】
本明細書で使用される場合、「ヌクレオシド」は、ヌクレオチドと構造的に類似しているが、リン酸部分を欠いている。ヌクレオシド類似体の例は、標識が塩基に連結され、糖分子に結合したリン酸基が存在しないものである。用語「ヌクレオシド」は、当業者によって理解される通常の意味で、本明細書で使用される。例としては、リボース部分を含むリボヌクレオシド、及びデオキシリボース部分を含むデオキシリボヌクレオシドが挙げられるが、これらに限定されない。修飾されたペントース部分は、酸素原子が炭素で置き換えられている、かつ/又は炭素が硫黄又は酸素原子で置き換えられている、ペントース部分である。「ヌクレオシド」は、置換塩基及び/又は糖部分を有し得るモノマーである。更に、ヌクレオシドは、より大きなDNA及び/又はRNAポリマー及びオリゴマーに組み込まれ得る。
【0077】
用語「プリン塩基」は、当業者によって理解される通常の意味で、本明細書で使用され、その互変異性体を含む。同様に、用語「ピリミジン塩基」は、当業者によって理解される通常の意味で、本明細書で使用され、その互変異性体を含む。任意に置換されたプリン塩基の非限定的なリストとしては、プリン、アデニン、グアニン、デアザプリン、7-デアザアデニン、7-デアザグアニン、ヒポキサンチン、キサンチン、アロキサンチン、7-アルキルグアニン(例えば、7-メチルグアニン)、テオブロミン、カフェイン、尿酸、及びイソグアニンが挙げられる。ピリミジン塩基の例としては、シトシン、チミン、ウラシル、5,6-ジヒドロウラシル、及び5-アルキルシトシン(例えば、5-メチルシトシン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
本明細書で使用される場合、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドが、本明細書に記載のヌクレオシド又はヌクレオチドを「含む」として記載される場合、それは、本明細書に記載のヌクレオシド又はヌクレオチドは、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドと共有結合を形成することを意味する。同様に、ヌクレオシド又はヌクレオチドが、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドに「組み込まれた」など、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの一部として記載される場合、それは、本明細書に記載のヌクレオシド又はヌクレオチドは、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドと共有結合を形成することを意味する。いくつかのそのような実施形態では、共有結合は、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの3’ヒドロキシ基と、本明細書に記載のヌクレオチドの5’リン酸基との間で、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの3’炭素原子とヌクレオチドの5’炭素原子との間のホスホジエステル結合として形成される。
【0079】
本明細書で使用される場合、「開裂可能なリンカー」という用語は、リンカー全体を除去する必要があることを意味するものではない。開裂部位は、リンカーの一部が、開裂後に検出可能な色素及び/又はヌクレオシド若しくはヌクレオチド部分に結合したままであることを確実にするリンカー上の位置に配置され得る。
【0080】
本明細書で使用される場合、「誘導体」又は「類似体」は、修飾された塩基部分及び/又は修飾された糖部分を有する合成ヌクレオチド又はヌクレオシド誘導体を意味する。そのような誘導体及び類似体は、例えば、Scheit,Nucleotide Analogs(John Wiley&Son,1980)及びUhlman et al.,Chemical Reviews 90:543-584,1990に考察されている。ヌクレオチド類似体はまた、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、アルキル-ホスホネート、ホスホラニリデート(phosphoranilidate)、及びホスホラミデート連結を含む修飾されたホスホジエステルリンケージを含むことができる。本明細書で使用される「誘導体」、「類似体」、及び「修飾された」は、互換的に使用され得、本明細書で定義される用語「ヌクレオチド」及び「ヌクレオシド」に包含される。
【0081】
本明細書で使用される場合、用語「リン酸塩」は、当業者によって理解される通常の意味で使用され、そのプロトン化形態(例えば、
【0082】
【化12】
)を含む。本明細書で使用される場合、用語「一リン酸」、「二リン酸」、及び「三リン酸」は、当業者によって理解される通常の意味で使用され、プロトン化形態を含む。
【0083】
本明細書で使用される場合、「フェージング」という用語は、3’ターミネーター及びフルオロフォアの不完全な除去、及び/又は所与の配列決定サイクルでのポリメラーゼによるクラスター内のDNA鎖の一部分の組み込みの完了不良によって引き起こされる、SBSにおける現象を指す。プレフェージングは、効果的な3’ターミネーターなしでヌクレオチドを組み込むことによって引き起こされ、取り込みイベントは、停止不良により1サイクル前に進む。フェージング及びプレフェージングは、特定のサイクルに対する測定されたシグナル強度を、現在のサイクルからのシグナル、並びに前及び次のサイクルからのノイズからなるようにする。サイクル数が増加するにつれて、フェージング及びプレフェージングによって影響を受けたクラスター当たりの配列の割合は増加し、正しい塩基の特定を妨げる。プレフェージングは、合成による配列決定(sequencing by synthesis、SBS)中の微量の保護されていない、又はブロックされていない3’-OHヌクレオチドの存在によって引き起こされ得る。保護されていない3’-OHヌクレオチドは、製造プロセス中、又は場合によっては、貯蔵及び試薬処理プロセス中に生成され得る。したがって、プレフェージングの発生率を減少させるヌクレオチド類似体の発見は驚くべきことであり、SBS用途において既存のヌクレオチド類似体に対して大きな利点を提供する。例えば、提供されるヌクレオチド類似体は、より速いSBSサイクル時間、低いフェージング及びプレフェージング値、並びにより長い配列決定リード長をもたらし得る。
【0084】
式(I)の蛍光色素
本開示のいくつかの態様は、式(I)のクマリン色素、並びにその塩及びメソメリー形態に関し、
【0085】
【0086】
【化14】
であり、R
1は、1つ以上のC
1~C
6アルキルで置換されており、
各R
2、R
5及びR
7は、独立して、H、C
1~C
6アルキル、置換されたC
1~C
6アルキル、C
1~C
6アルコキシ、C
2~C
6アルケニル、C
2~C
6アルキニル、C
1~C
6ハロアルキル、C
1~C
6ハロアルコキシ、(C
1~C
6アルコキシ)C
1~C
6アルキル、任意に置換されたアミノ、アミノ(C
1~C
6アルキル)、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、ヒドロキシ(C
1~C
6アルキル)、ニトロ、スルホニル、スルホ、スルフィノ、スルホネート、S-スルホンアミド、又はN-スルホンアミドであり、
R
3及びR
4の各々は、独立して、H、C
1~C
6アルキル、又は置換されたC
1~C
6アルキルであり、
代替的に、R
2及びR
3は、それらが結合している原子と一緒に、任意に置換された5~10員ヘテロアリール又は任意に置換された5~10員ヘテロシクリルからなる群から選択される環又は環系を形成し、
代替的に、R
4及びR
5は、それらが結合している原子と一緒に、任意に置換された5~10員ヘテロアリール又は任意に置換された5~10員ヘテロシクリルからなる群から選択される環又は環系を形成し、
R
6は、H、C
1~C
6アルキル、置換されたC
1~C
6アルキル、又は任意に置換されたC
6~C
10アリールであり、
R
a、R
b及びR
cの各々は、独立して、C
1~C
6アルキル又は置換されたC
1~C
6アルキルである。
【0087】
式(I)の化合物のいくつかの実施形態では、R3及びR4のうちの少なくとも1つは、Hである。いくつかの更なる実施形態では、R3及びR4の両方は、Hである。他の実施形態では、R3は、Hであり、R4は、C1~C6アルキル又は置換されたC1~C6アルキルである。他の実施形態では、R3及びR4の各々は、独立して、C1~C6アルキル又は置換されたC1~C6アルキルである。置換されたC1~C6アルキルには、カルボキシル、カルボキシレート(-C(O)-)、スルホ(-SO3H)、スルホネート(-SO3
-)、スルフェート(-O-SO3
-)、任意に置換されたアミノ(Boc保護されたアミノ基など)、-C(O)OR12又は-C(O)NR13R14などの1つ以上の置換基で置換されたメチル、エチル、イソプロピル、n-プロピル、n-ブチル、2-ブチル、n-ペンチル、2-ペンチル、n-ヘキシルなどが含まれるが、これらに限定されず、式中、R12が、任意に置換されたC1~C6アルキル、任意に置換されたC6~C10アリール、任意に置換された5~10員ヘテロアリール、又は任意に置換されたC3~C7シクロアルキルであり、R13及びR14の各々が、独立して、H、任意に置換されたC1~C6アルキル、任意に置換されたC6~C10アリール、任意に置換された5~10員ヘテロアリール、又は任意に置換されたC3~C7シクロアルキルである。一実施形態では、R3及びR4の各々は、エチルである。他の実施形態では、R3は、Hであり、R4は、カルボキシルで置換されたn-プロピルである。
【0088】
式(I)の化合物のいくつかの実施形態はまた、式(Ia)によって表され、式(I)のR4及びR5が、それらが結合している原子と一緒に、以下の構造の任意に置換された6員ヘテロシクリル
【0089】
【化15】
その塩又はメソメリー形態を形成し、
各R
8、R
9、R
10及びR
11は、独立して、C
1~C
6アルキル、置換されたC
1~C
6アルキル、C
1~C
6アルコキシ、C
2~C
6アルケニル、C
2~C
6アルキニル、C
1~C
6ハロアルキル、C
1~C
6ハロアルコキシ、(C
1~C
6アルコキシ)C
1~C
6アルキル、任意に置換されたアミノ、アミノ(C
1~C
6アルキル)、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、ヒドロキシ(C
1~C
6アルキル)、ニトロ、スルホニル、スルホ、スルフィノ、スルホネート、S-スルホンアミド、又はN-スルホンアミドであり、
実線及び破線
【0090】
【化16】
によって表される結合は、単結合及び二重結合からなる群から選択されるが、但し、
【0091】
【化17】
が二重結合の場合、R
11は、存在しないことを条件とする。
【0092】
式(I)又は(Ia)の化合物のいくつかの実施形態では、R1は、1つのC1~C6アルキル(例えば、メチル、エチル、イソプロピル、n-プロピル、n-ブチル、2-ブチル、n-ペンチル、2-ペンチル、又はn-ヘキシル)で置換されている。いくつかの他の実施形態では、R1は、独立して、2つのC1~C6アルキルで置換されている。他の実施形態では、R1は、独立して、3つのC1~C6アルキルで置換されている。いくつかの更なる実施形態では、R1は、
【0093】
【0094】
【化19】
である。いくつかのそのような実施形態では、各R
a及びR
bは、独立して、C
1~C
6アルキル(例えば、メチル、エチル、イソプロピル、n-プロピル、n-ブチル、2-ブチル、n-ペンチル、2-ペンチル、又はn-ヘキシルなど)である。いくつかの更なる実施形態では、各R
a及びR
bは、独立して、置換されたC
1~C
6アルキルである(例えば、カルボキシル、カルボキシレート(-C(O)O
-)、スルホ(-SO
3H)、スルホネート(-SO
3
-)、スルフェート(-O-SO
3
-)、任意に置換されたアミノ(Boc保護されたアミノ基など)、-C(O)OR
12又は-C(O)NR
13R
14などの1つ以上の置換基で置換された、メチル、エチル、イソプロピル、n-プロピル、n-ブチル、2-ブチル、n-ペンチル、2-ペンチル、又はn-ヘキシルであり、式中、R
12は、任意に置換されたC
1~C
6アルキル、任意に置換されたC
6~C
10アリール、任意に置換された5~10員ヘテロアリール、又は任意に置換されたC
3~C
7シクロアルキルであり、R
13及びR
14の各々は、独立して、H、任意に置換されたC
1~C
6アルキル、任意に置換されたC
6~C
10アリール、任意に置換された5~10員ヘテロアリール、又は任意に置換されたC
3~C
7シクロアルキルである。例えば、R
a及びR
bの各々は、独立して、カルボキシル、カルボキシレート、スルホ若しくはスルホネートで置換されたn-プロピル、n-ブチル又はn-ペンチルである。いくつかの実施形態では、置換は、直鎖C
2、C
3、C
5、C
6、又はC
6アルキルの末端にある。
【0095】
式(Ia)の化合物のいくつかの実施形態では、実践及び破線
【0096】
【化20】
によって表される結合は、二重結合である。いくつかのそのような実施形態では、R
10は、H又はC
1~C
6アルキルである。一例では、R
10は、メチルである。いくつかの他の実施形態では、実践及び破線
【0097】
【化21】
によって表される結合は、単結合である。いくつかのそのような実施形態では、R
10は、Hであり、R
11は、C
1~C
6アルキルである。他の実施形態では、R
10及びR
11の各々は、Hである。式(Ia)の化合物のいくつかの実施形態では、R
8及びR
9の各々は、Hである。他の実施形態では、R
8及びR
9のうちの少なくとも1つは、C
1~C
6アルキルである。更なる実施形態では、R
8及びR
9の各々は、C
1~C
6アルキルである。一例では、R
8及びR
9の各々は、メチルである。いくつかの実施形態では、R
3は、Hである。他の実施形態では、R
3は、C
1~C
6アルキル(例えば、メチル、エチル、イソプロピル、n-プロピル、n-ブチル、2-ブチル、n-ペンチル、2-ペンチル、又はn-ヘキシルなど)である。更なる実施形態では、R
3は、置換されたC
1~C
6アルキルである(例えば、カルボキシル、カルボキシレート(-C(O)
-)、スルホ(-SO
3H)、スルホネート(-SO
3
-)、スルフェート(-O-SO
3
-)、任意に置換されたアミノ、-C(O)OR
12又は-C(O)NR
13R
14などの1つ以上の置換基で置換されたメチル、エチル、イソプロピル、n-プロピル、n-ブチル、2-ブチル、n-ペンチル、2-ペンチル、又はn-ヘキシルであり、式中、R
12は、任意に置換されたC
1~C
6アルキル、任意に置換されたC
6~C
10アリール、任意に置換された5~10員ヘテロアリール、又は任意に置換されたC
3~C
7シクロアルキルであり、R
13及びR
14の各々は、独立して、H、任意に置換されたC
1~C
6アルキル、任意に置換されたC
6~C
10アリール、任意に置換された5~10員ヘテロアリール、又は任意に置換されたC
3~C
7シクロアルキルである。例えば、R
3は、各々がカルボキシル、カルボキシレート、スルホ、又はスルホネートで置換された、エチル、n-プロピル、n-ブチル、又はn-ペンチルである。別の例として、R
3は、
【0098】
-C(O)NR13R14で置換されたエチル、n-プロピル、n-ブチル、又はn-ペンチルであり、式中、各R13及びR14は、独立して、カルボキシル、カルボキシレート、-C(O)OR12、スルホ又はスルホネートで置換されたC1~C6アルキルである。
【0099】
式(I)又は(Ia)の化合物のいくつかの実施形態では、R2は、Hである。他の実施形態では、R2及びR3は、それらが結合している原子と一緒に結合して、任意に置換された5、6、又は7員ヘテロシクリルを形成する。いくつかのそのような実施形態では、R2及びR3は、それらが結合している原子と一緒に結合して、1つ以上のC1~C6アルキルで置換された6員ヘテロシクリルを形成する。
【0100】
式(I)又は(Ia)の化合物のいくつかの実施形態では、R6は、H又は任意に置換されたフェニルである。
【0101】
式(I)又は(Ia)の化合物のいくつかの実施形態では、R7は、Hである。
【0102】
式(I)又は(Ia)の化合物の追加の実施形態は、以下を含む。
【0103】
【化22】
並びにそれらの塩及びメソメリー形態。非限定的な例の対応するC
1~C
6アルキルカルボン酸エステル(化合物のカルボン酸基から形成されたメチルエステル、エチルエステルイソプロピルエステル、及びt-ブチルエステルなど)、対応するイミン類似体(クマリンコア-C(=O)部分が、代わりに-C(=NH)である)、並びにその塩及びメソメリー形態。
【0104】
シクロオクタテトラエン(cyclooctatetraene、COT)光保護部分
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の蛍光化合物(式(I)又は(Ia))は、それに共有結合した光保護部分を導入するように更に修飾され得、例えば、シクロオクタテトラエン部分は、構造
【0105】
【化23】
を含み、式中、
R
1A及びR
2Aの各々は、独立して、H、ヒドロキシル、ハロゲン、アジド、チオール、ニトロ、シアノ、任意に置換されたアミノ、カルボキシル、-C(O)OR
5A、-C(O)NR
6AR
7A、任意に置換されたC
1~6アルキル、任意に置換されたC
1~6アルコキシ、任意に置換されたC
1~6ハロアルキル、任意に置換されたC
1~6ハロアルコキシ、任意に置換されたC
2~6アルケニル、任意に置換されたC
2~6アルキニル、任意に置換されたC
6~10アリール、任意に置換されたC
7~14アラルキル、任意に置換されたC
3~7カルボシクリル、任意に置換された5~10員ヘテロアリール、又は任意に置換された3~10員ヘテロシクリルであり、
X
1及びY
1は、各々独立して、結合、-O-、-S-、-NR
3A-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-C(=O)-NR
4A-、-S(O)
2-、-NR
3A-C(=O)-NR
4A、-NR
3A-C(=S)-NR
4A-、任意に置換されたC
1~6アルキレン、又は少なくとも1つの炭素原子がO、S、又はNで置換されている任意に置換されたヘテロアルキレンであり、
Zは、存在しないか、任意に置換されたC
2~6アルケニレン、又は任意に置換されたC
2~6アルキニレンであり、
R
3A及びR
4Aの各々は、独立して、H、任意に置換されたC
1~6アルキル、又は任意に置換されたC
6~10アリールであり、
R
5Aは、任意に置換されたC
1~6アルキル、任意に置換されたC
6~10アリール、任意に置換されたC
7~14アラルキル、任意に置換されたC
3~7カルボシクリル、任意に置換された5~10員ヘテロアリール、又は任意に置換された3~10員ヘテロシクリルであり、
R
6A及びR
7Aの各々は、独立して、H、任意に置換されたC
1~6アルキル、任意に置換されたC
6~10アリール、任意に置換されたC
7~14アラルキル、任意に置換されたC
3~7カルボシクリル、任意に置換された5~10員ヘテロアリール、又は任意に置換された3~10員ヘテロシクリルであり、
【0106】
【化24】
におけるR
1A及びR
2Aが結合している炭素原子は、O、S、又はNで任意に置き換えられるが、但し、炭素原子がO又はSで置き換えられる場合、R
1A及びR
2Aは、両方とも存在しないことを条件とし、当該炭素原子が、Nで置き換えられる場合、R
2Aは、存在しないことを条件とし、mは、0~10の整数である。いくつかの実施形態では、X及びYは、両方とも結合ではない。
【0107】
いくつかの更なる実施形態では、シクロオクタテトラエン部分は、構造
【0108】
【化25】
を含む。いくつかのそのような実施形態では、R
1A及びR
2Aのうちの少なくとも1つは、水素である。いくつかの更なる実施形態では、R
1A及びR
2Aの両方が、水素である。いくつかの他の実施形態では、R
1Aは、Hであり、R
2Aは、任意に置換されたアミノ、カルボキシル、又は-C(O)NR
6AR
7Aである。いくつかの実施形態では、mは、1、2、3、4、5、又は6であり、R
1A及びR
2Aの各々は、独立して、水素、任意に置換されたアミノ、カルボキシル、-C(O)NR
6AR
7A、又はそれらの組み合わせである。いくつかの更なる実施形態では、mが、2、3、4、5、又は6である場合、1つのR
1Aは、アミノ、カルボキシル、又は-C(O)NR
6AR
7Aであり、残りのR
1A及びR
2Aは、水素である。いくつかの実施形態では、
【0109】
【化26】
におけるR
1A及びR
2Aが結合している少なくとも1つの炭素原子は、O、S、又はNで置き換えられている。いくつかのそのような実施形態では、
【0110】
【化27】
における1つの炭素原子は、酸素原子によって置き換えられ、当該置き換えられた炭素原子に結合しているR
1A及びR
2Aの両方は存在しない。いくつかの他の実施形態では、
【0111】
【化28】
における1つの炭素原子が窒素原子で置き換えられる場合、当該置き換えられた炭素原子に結合しているR
2Aは、存在せず、当該置き換えられた炭素原子に結合しているR
1Aは、水素又はC
1~6アルキルである。R
1A及びR
2Aの任意の実施形態では、R
1A又はR
2Aは、-C(O)NR
6AR
7Aであり、R
6A及びR
7Aは、独立して、H、C
1~6アルキル又は置換されたC
1~6アルキル(例えば、-CO
2H、-NH
2、-SO
3H、又は-SO
3
-で置換されたC
1~6アルキル)であり得る。
【0112】
いくつかの更なる実施形態では、本明細書に記載の蛍光色素は、以下の構造のシクロオクタテトラエン部分を含む。
【0113】
【化29】
本明細書に記載のCOT部分は、アミド結合を形成する(アミド結合のカルボニル基が示されていない)ための本明細書に記載の蛍光色素の官能基(例えば、カルボキシル基)とCOT誘導体のアミノ基との間の反応により得られる。
【0114】
標識されたヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド
本開示の一態様によれば、本明細書に記載の色素化合物は、基材部分への結合に好適であり、特に基材部分への結合を可能にするリンカー基を含む。基材部分は、本開示の色素をコンジュゲートさせることができる実質上任意の分子又は物質であってもよく、非限定的な例として、ヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、炭水化物、リガンド、粒子、固体表面、有機及び無機ポリマー、染色体、核、生細胞、並びにこれらの組み合わせ又は集合体が挙げられる。色素は、疎水性誘引、イオン誘引、及び共有結合を含む様々な手段によって、任意のリンカーによってコンジュゲートさせることができる。いくつかの態様では、色素は、共有結合によって基材にコンジュゲートされる。より具体的には、共有結合は、リンカー基によるものである。場合によっては、このような標識されたヌクレオチドは、「修飾されたヌクレオチド」とも称される。
【0115】
本開示のいくつかの態様は、本明細書に記載の式(I)若しくは(Ia)の色素、若しくはそれらのメソメリー形態の塩又は本明細書に記載の光保護部分COTを含有するその誘導体で標識されたヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドに関する。標識されたヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドは、カルボキシル基(-CO2H)又はアルキル-カルボキシル基を介して本明細書に開示される色素化合物に結合し、アミド又はアルキル-アミドを形成し得る。いくつかの更なる実施形態では、カルボキシル基は、ヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドのアミノ又はヒドロキシル基への結合に使用され得る、カルボキシル基の活性化形態、例えば、アミド又はエステルの形態であり得る。本明細書で使用するとき、用語「活性化エステル」は、例えばアミノ基を含有する化合物と、穏和な条件下で反応することができるカルボキシル基誘導体を指す。活性化エステルの非限定的な例としては、p-ニトロフェニル、ペンタフルオロフェニル、及びスクシンイミドエステルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0116】
例えば、式(I)の色素化合物は、式(I)のR1(例えば、Ra、Rb又はRc)又はR3/R4のうちの1つを介してヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドに結合し得る。いくつかのそのような実施形態では、式(I)のR1は、-CO2H又は-(CH2)1~6-CO2Hを含み、結合は、R1のカルボキシル官能基とヌクレオチド又はヌクレオチドリンカーのアミノ官能基と間にアミド部分を形成する。一例として、標識されたヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドは、以下の構造の色素部分を含み得る。
【0117】
【化30】
他の実施形態では、式(I)のR
3又はR
4は、-CO
2H又は-(CH
2)
1~6-CO
2Hを含み、結合は、-CO
2H基を使用してアミドを形成する。例えば、標識されたヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドは、以下の色素部分を含み得る。
【0118】
【0119】
同様に、式(Ia)の色素化合物は、式(Ia)のR1(例えば、Ra、Rb又はRc)又はR3を介して、R1又はR3のカルボキシル官能基とヌクレオチド又はヌクレオチドリンカーのアミノ官能基との間にアミド部分を形成することによってヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドに結合し得る。例えば、標識されたヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドは、以下の色素部分、
【0120】
【化32】
を含み得る。他の実施形態では、式(I)又は(Ia)のR
b又はR
cは、-CO
2H又は-(CH
2)
1~6-CO
2Hを含み、結合は、-CO
2H基を使用してアミドを形成する。
【0121】
いくつかの実施形態では、色素化合物は、ヌクレオチド塩基を介してオリゴヌクレオチド又はヌクレオチドに共有結合し得る。いくつかのそのような実施形態では、標識されたヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドは、任意にリンカー部分を介して、ピリミジン塩基のC5位置、又は7-デアザプリン塩基のC7位置に結合した色素を有し得る。例えば、核酸塩基は、7-デアザアデニンであり得、色素は、C7位置で、任意にリンカーを介して7-デアザアデニンに結合している。核酸塩基は、7-デアザグアニンであり得、色素は、C7位置で、任意にリンカーを介して7-デアザグアニンに結合している。核酸塩基は、シトシンであり得、色素は、C5位置で、任意にリンカーを介してシトシンに結合している。別の例として、核酸塩基は、チミン又はウラシルであり得、色素は、C5位置で、任意にリンカーを介してチミン又はウラシルに結合している。
【0122】
3’-OHブロッキング基
標識されたヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドはまた、ヌクレオチドのリボース糖又はデオキシリボース糖に共有結合したブロッキング基を有してもよい。ブロッキング基は、リボース糖又はデオキシリボース糖上の任意の位置に結合されてもよい。特定の実施形態では、ブロッキング基は、ヌクレオチドのリボース糖又はデオキシリボース糖の3’OH位置にある。様々な3’OHブロッキング基は、国際公開第2004/018497号及び国際公開第2014/139596号において開示されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。例えば、ブロッキング基は、アジドメチル(-CH2N3)若しくは置換されたアジドメチル(例えば、-CH(CHF2)N3若しくはCH(CH2F)N3)、又はリボース若しくはデオキシリボース糖の3’酸素原子に接続しているアリルであり得る。いくつかの実施形態では、3’ブロッキング基は、アジドメチルであり、リボース又はデオキシリボースの3’炭素を用いて3’-OCH2N3を形成する。
【0123】
いくつかの他の実施形態では、3’ブロッキング基及び3’酸素原子は、リボース又はデオキシリボースの3’炭素に共有結合した構造
【0124】
【化33】
のアセタール基を形成し、
式中、各R
1a及びR
1bは、独立して、H、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6ハロアルキル、C
1~C
6アルコキシ、C
1~C
6ハロアルコキシ、シアノ、ハロゲン、任意に置換されたフェニル、又は任意に置換されたアラルキルであり、
各R
2a及びR
2bは、独立して、H、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6ハロアルキル、シアノ、又はハロゲンであり、
代替的に、R
1a及びR
2aは、それらが結合している原子と一緒に、任意に置換された5~8員ヘテロシクリル基を形成し、
R
Fは、H、任意に置換されたC
2~C
6アルケニル、任意に置換されたC
3~C
7シクロアルケニル、任意に置換されたC
2~C
6アルキニル、又は任意に置換された(C
1~C
6アルキレン)Si(R
3a)
3であり、
各R
3aは、独立して、H、C
1~C
6アルキル、又は任意に置換されたC
6~C
10アリールである。
【0125】
追加の3’-OHブロッキング基は、米国特許出願公開第2020/0216891(A1)号において開示され、これは、その全体が参照により組み込まれる。アセタールブロッキング基の非限定的な例は、
【0126】
【0127】
【化35】
であり、各々、リボース又はデオキシリボースの3’炭素に共有結合している。
【0128】
3’-OHブロッキング基の脱保護
いくつかの実施形態では、アジドメチル3’ヒドロキシル保護基は、水溶性ホスフィン試薬を使用することによって除去又は脱保護され得る。非限定的な例としては、トリス(ヒドロキシメチル)ホスフィン(THMP)、トリス(ヒドロキシエチル)ホスフィン(THEP)、又はトリス(ヒドロキシルプロピル)ホスフィン(THP又はTHPP)が挙げられる。本明細書に記載の3’-アセタールブロッキング基は、様々な化学条件下で除去又は開裂され得る。ビニル又はアルケニル部分を含有するアセタールブロッキング基
【0129】
【化36】
の場合、非限定的な開裂条件は、ホスフィン配位子、例えばトリス(ヒドロキシメチル)ホスフィン(THMP)、又はトリス(ヒドロキシルプロピル)ホスフィン(THP又はTHPP)の存在下での、Pd(OAc)
2又はアリルPd(II)クロリド二量体などのPd(II)錯体を含む。アルキニル基(例えば、エチニル)を含有するこれらのブロッキング基の場合、それらはまた、ホスフィン配位子(例えば、THP又はTHMP)の存在下でのPd(II)錯体(例えば、Pd(OAc)
2又はアリルPd(II)クロリド二量体)によって除去され得る。
【0130】
パラジウム開裂試薬
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の3’ヒドロキシルブロッキング基は、パラジウム触媒によって開裂され得る。いくつかのそのような実施形態では、Pd触媒は、水溶性である。いくつかのそのような実施形態では、は、Pd(0)錯体である(例えば、トリス(3,3’,3’’-ホスフィニジントリス(ベンゼンスルホナト)パラジウム(0)九ナトリウム(nonasodium)塩九水和物)である。場合によっては、Pd(0)は、アルケン、アルコール、アミン、ホスフィン、又は金属水素化物などの試薬によるPd(II)錯体の還元からその場で生成され得る。好適なパラジウム源としては、Na2PdCl4、Pd(CH3CN)2Cl2、(PdCl(C3H5))2、[Pd(C3H5)(THP)]Cl、[Pd(C3H5)(THP)2]Cl、Pd(OAc)2、Pd(Ph3)4、Pd(dba)2、Pd(Acac)2、PdCl2(COD)、及びPd(TFA)2が挙げられる。そのような一実施形態では、Pd(0)錯体は、Na2PdCl4からその場で生成される。別の実施形態では、パラジウム源は、アリルパラジウム(II)クロリド二量体[(PdCl(C3H5))2]である。いくつかの実施形態では、Pd(0)錯体は、Pd(II)錯体をホスフィンと混合することによって水溶液中で生成される。好適なホスフィンとしては、トリス(ヒドロキシプロピル)ホスフィン(THP)、トリス(ヒドロキシメチル)ホスフィン(THMP)、1,3,5-トリアザ-7-ホスファアダマンタン(PTA)、ビス(p-スルホナトフェニル)フェニルホスフィン二水和物カリウム塩、トリス(カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、及びトリフェニルホスフィン-3,3’,3’’-トリスルホン酸三ナトリウム塩などの水溶性ホスフィンが挙げられる。
【0131】
いくつかの実施形態では、Pd(0)は、Pd(II)錯体[(PdCl(C3H5))2]をTHPとその場で混合することによって調製される。Pd(II)錯体とTHPとのモル比は、約1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、又は1:10であり得る。いくつかの更なる実施形態では、アスコルビン酸又はその塩(例えば、アスコルビン酸ナトリウム)などの1つ以上の還元剤を添加してもよい。いくつかの実施形態では、開裂混合物は、一級アミン、二級アミン、三級アミン、炭酸塩、リン酸塩、若しくはホウ酸塩、又はそれらの組み合わせなどの追加の緩衝試薬を含有し得る。いくつかの更なる実施形態では、緩衝剤試薬は、エタノールアミン(ethanolamine、EA)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス)、グリシン、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、2-ジメチルエタノールアミン(dimethylethanolamine、DMEA)、2-ジエチルエタノールアミン(diethylethanolamine、DEEA)、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(tetramethylethylenediamine、TEMED)、若しくはN,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミン(tetraethylethylenediamine、TEEDA)、又はそれらの組み合わせを含む。一実施形態では、緩衝剤試薬は、DEEAである。別の実施形態では、緩衝剤試薬は、炭酸塩、リン酸塩、若しくはホウ酸塩、又はそれらの組み合わせなどの1つ以上の無機塩を含有する。一実施形態では、無機塩は、ナトリウム塩である。
【0132】
リンカー
本明細書に開示される色素化合物は、基材又は別の分子へ化合物が共有結合するための置換位置の1つに、反応性リンカー基を含んでもよい。反応性連結基は、結合(例えば、共有結合又は非共有結合)、特に共有結合を形成することができる部分である。特定の実施形態では、リンカーは、開裂可能なリンカーであってもよい。用語「開裂可能なリンカー」の使用は、リンカー全体を除去する必要があることを意味するものではない。開裂部位は、リンカーの一部分が、開裂後に色素及び/又は基材部分に結合したままであることを確実にするリンカー上の位置に配置され得る。開裂可能なリンカーは、非限定的な例として、求電子的に開裂可能なリンカー、求核的に開裂可能なリンカー、光開裂可能リンカー、還元条件下で開裂可能なリンカー(例えば、ジスルフィド又はアジド含有リンカー)、酸化的条件で開裂可能なリンカー、安全装置リンカーの使用によって開裂可能なリンカー、除去機構によって開裂可能であるリンカーであり得る。色素化合物を基材部分に結合させるために開裂可能なリンカーを使用することにより、必要に応じて、検出後に標識を除去することができ、下流の工程においていかなる干渉シグナルも回避することができる。
【0133】
有用なリンカー基は、PCT国際公開第2004/018493号(参照により本明細書に組み込まれる)に見ることができ、その例としては、水溶性ホスフィン、又は遷移金属から形成された水溶性遷移金属触媒及び少なくとも部分的に水溶性の配位子を使用して開裂され得るリンカーが挙げられる。水溶液中で、後者は、少なくとも部分的に水溶性の遷移金属錯体を形成する。このような開裂可能なリンカーは、ヌクレオチドの塩基を、本明細書に記載される色素などの標識に接続するために使用することができる。
【0134】
特定のリンカーとしては、下の式の部分を含むものなど、PCT国際公開第2004/018493号(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるものが挙げられ、
【0135】
【0136】
式中、Xは、O、S、NH、及びNQを含む基から選択され、Qは、C1~10の置換又は非置換アルキル基であり、Yは、O、S、NH、及びN(アリル)を含む基から選択され、Tは、水素又はC1~C10置換又は非置換アルキル基であり、*は、その部分がヌクレオチド又はヌクレオシドの残りの部分に接続される場所を示す。いくつかの態様では、リンカーは、ヌクレオチドの塩基を、例えば、本明細書に記載の色素化合物などの標識に接続する。
【0137】
リンカーの追加の例としては、以下の式の部分を含むものなど、米国特許出願公開第2016/0040225号(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるものが挙げられる
【0138】
【化38】
(式中、*は、その部分がヌクレオチド又はヌクレオシドの残りの部分に接続される場所を示す)。本明細書に示されるリンカー部分は、ヌクレオチド/ヌクレオチドと標識との間の全体又は部分的リンカー構造を含んでもよい。本明細書に示されるリンカー部分は、ヌクレオチド/ヌクレオチドと標識との間の全体又は部分的リンカー構造を含んでもよい。
【0139】
リンカーの追加の例としては、式
【0140】
【化39】
の部分が挙げられ、式中、Bは、核酸塩基であり、Zは、-N
3(アジド)、-O-C
1~C
6アルキル、-O-C
2~C
6アルケニル、又は-O-C
2~C
6アルキニルであり、Flは、追加のリンカー構造を含有し得る色素部分を含む。当業者は、本明細書に記載の色素化合物が、色素化合物の官能基(例えば、カルボキシル)をリンカーの官能基(例えば、アミノ)と反応させることによってリンカーに共有結合していることを理解する。一実施形態では、開裂可能なリンカーは、
【0141】
【化40】
(「AOL」リンカー部分)を含み、式中、Zは、-O-アリルである。
【0142】
特定の実施形態では、蛍光色素(フルオロフォア)とグアニン塩基との間のリンカーの長さは、例えば、ポリエチレングリコールスペーサー基を導入することによって変更することができ、それにより、当該技術分野において既知の他の結合を介してグアニン塩基に結合した同じフルオロフォアと比較して、蛍光強度を増加させることができる。例示的なリンカー及びそれらの特性は、PCT国際公開第2007/020457号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。リンカーのこのような設計、特にそれらの長さが増加したことは、DNAなどのポリヌクレオチドに組み込まれたとき、グアノシンヌクレオチドのグアニン塩基に結合したフルオロフォアの輝度の改善を可能にすることができる。したがって、色素が、グアニン含有ヌクレオチドに結合した蛍光色素標識の検出を必要とする任意の分析方法における使用のためである場合、リンカーが、国際公開第2007/020457号に記載される、式-((CH2)2O)n-(式中、nは、2~50の整数である)のスペーサー基を含む場合、有利である。
【0143】
ヌクレオシド及びヌクレオチドは、糖又は核塩基上の部位で標識されてもよい。当該技術分野において既知のように、「ヌクレオチド」は、窒素塩基、糖、及び1つ以上のリン酸基からなる。RNAにおいて、糖はリボースであり、DNAにおいて、糖は、デオキシリボース、すなわち、リボース中に存在するヒドロキシル基を欠く糖である。窒素塩基は、プリン又はピリミジンの誘導体である。プリンはアデニン(A)及びグアニン(G)であり、ピリミジンはシトシン(C)及びチミン(T)であるか、又はRNAの文脈では、ウラシル(U)である。デオキシリボースのC-1原子は、ピリミジンのN-1又はプリンのN-9に結合される。ヌクレオチドはまた、ヌクレオシドのリン酸エステルであり、糖のC-3又はC-5に結合したヒドロキシル基にエステル化が生じる。ヌクレオシドは、通常、一リン酸、二リン酸、又は三リン酸である。
【0144】
「ヌクレオシド」は、ヌクレオチドと構造的に類似しているが、リン酸部分を欠いている。ヌクレオチド類似体の例は、標識が塩基に連結され、糖分子に結合したリン酸基が存在しないものである。
【0145】
塩基は通常、プリン又はピリミジンと称されるが、当業者は、ヌクレオチド又はヌクレオシドの能力を変化させてワトソン・クリック塩基対合を起こすことのない誘導体及び類似体が利用可能であることを理解するであろう。「誘導体」又は「類似体」は、コア構造が親化合物のそれと同じであるか、又は酷似しているが、例えば、誘導体ヌクレオチド又はヌクレオシドが他の分子と連結されるのを可能にする、異なるか、又は追加の側基などの化学的又は物理的修飾を有する化合物又は分子を意味する。例えば、塩基は、デアザプリンであってもよい。特定の実施形態では、誘導体は、ワトソン・クリック対合を受けることができるべきである。「誘導体」及び「類似体」はまた、例えば、修飾された塩基部分及び/又は修飾された糖部分を有する合成ヌクレオチド又はヌクレオシド誘導体を含む。そのような誘導体及び類似体は、例えば、Scheit,Nucleotide analogs(John Wiley&Son,1980)及びUhlman,Chemical Reviews90:543-584,1990に考察されている。ヌクレオチド類似体はまた、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、アルキル-ホスホン酸塩、ホスホラニリデート(phosphoranilidate)、ホスホラミデート連結などを含む修飾されたホスホジエステルリンケージを含み得る。
【0146】
色素は、例えばリンカーを介してヌクレオチド塩基上の任意の位置に結合されてよい。特定の実施形態では、ワトソン-クリック塩基対合が、得られた類似体に対して依然として実施され得る。特定の核塩基標識化部位としては、ピリミジン塩基のC5位置、又は7-デアザプリン塩基のC7位置が挙げられる。上記のように、リンカー基を使用して、ヌクレオシド又はヌクレオチドに色素を共有結合させることができる。
【0147】
特定の実施形態では、標識されたヌクレオシド又はヌクレオチドは、酵素的に組み込み可能であり得、かつ酵素的に伸長可能であり得る。したがって、リンカー部分は、ヌクレオチドを化合物に接続するのに十分な長さであってもよく、その結果、化合物は、核酸複製酵素によるヌクレオチドの全体的な結合及び認識と有意なほどには干渉しない。したがって、リンカーはスペーサー単位も含み得る。スペーサーは、例えば、開裂部位又は標識からヌクレオチド塩基を遠ざける。
【0148】
本明細書に記載の色素で標識されたヌクレオシド又はヌクレオチドは、以下の式を有し得る:
【0149】
【0150】
式中、色素は、(色素の官能基とリンカー「L」の官能基との間の共有結合後の)本明細書に記載の色素化合物(標識)部分であり、Bは、例えば、ウラシル、チミン、シトシン、アデニン、7-デアザアデニン、グアニン、7-デアザグアニンなどの核酸塩基であり、Lは、存在しても存在しなくてもよい任意のリンカーであり、R’は、Hであり得、又は-OR’は、一リン酸、二リン酸、三リン酸、チオリン酸、リン酸エステル類似体、反応性リン含有基に結合した-O-、又はブロッキング基によって保護された-O-であり、R’’は、H又はOHであり、R’’’は、Hであり、本明細書に記載の3’OHブロッキング基、又は-OR’’’は、ホスホルアミダイトを形成する。-OR’’’がホスホルアミダイトである場合、R’は、自動合成条件下で続くモノマーカップリングを可能にする酸開裂可能なヒドロキシル保護基である。いくつかの更なる実施形態では、Bは、
【0151】
【0152】
【化43】
又はそれらの任意に置換された誘導体及びそれらの類似体を含む。いくつかの更なる実施形態では、標識核酸塩基は、構造
【0153】
【0154】
特定の実施形態では、ブロッキング基は、色素化合物とは別個に独立しており、すなわち、色素化合物には結合していない。代替的に、色素は、3’-OHブロッキング基の全て又は一部を含んでもよい。したがって、R’’’は、色素化合物を含んでも含まなくてもよい3’-OHブロッキング基であり得る。
【0155】
更に別の代替的実施形態では、ペントース糖の3’炭素上にブロッキング基は、存在せず、例えば、塩基に結合した色素(又は色素及びリンカー構造物)が、更なるヌクレオチドの組み込みに対するブロックとして作用するのに十分なサイズ又は構造であり得る。したがって、色素が糖の3’位置に結合されているかどうかにかかわらず、ブロックは立体障害に起因し得るか、又は、サイズ、電荷、及び構造の組み合わせに起因し得る。
【0156】
更に別の代替的実施形態では、ブロッキング基は、ペントース糖の2’又は4’炭素上に存在し、更なるヌクレオチドの組み込みのブロックとして作用するのに十分なサイズ又は構造であり得る。
【0157】
ブロッキング基の使用により、例えば、標識されたヌクレオチドが組み込まれるときに伸長を停止することなどによって、重合を制御することができる。ブロッキング効果が可逆的である場合、例えば、化学的条件を変更することによって、又は化学ブロックを除去することによって可逆的である場合(但し、例はこれらの場合に限られない)、特定の点で伸長を一旦停止してから、継続を可能にすることができる。
【0158】
特定の実施形態では、リンカー(色素とヌクレオチドとの間)及びブロッキング基が両方とも存在し、互いに別個の部分である。特定の実施形態では、リンカー及びブロッキング基は、両方とも同じ条件、又は実質的に同様の条件下で開裂可能である。したがって、脱保護及び脱ブロッキングプロセスは、色素化合物及びブロッキング基の両方を除去するために単一の処理のみが必要となるため、より効率的であり得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、リンカー及びブロッキング基は、同様の条件下で開裂可能である必要はなく、その代わりに、異なる条件下で個別に開裂可能である。
【0159】
本開示はまた、色素化合物を組み込むポリヌクレオチドも包含する。このようなポリヌクレオチドは、ホスホジエステル連結で接合されたデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドからそれぞれなるDNA又はRNAであってもよい。ポリヌクレオチドは、自然由来のヌクレオチド、本明細書に記載される標識されたヌクレオチド以外の非自然由来(又は修飾された)ヌクレオチド、又はこれらの任意の組み合わせを、本明細書に記載されるような少なくとも1つの修飾されたヌクレオチド(例えば、色素化合物で標識されたもの)と組み合わせて含むことができる。本開示によるポリヌクレオチドは、非自然由来の骨格結合及び/又は非ヌクレオチド化学修飾も含み得る。少なくとも1つの標識されたヌクレオチドを含むリボヌクレオチド及びデオキシリボヌクレオチドの混合物からなるキメラ構造も想到される。
【0160】
本明細書に記載の非限定的な例示的な標識されたヌクレオチドとしては、以下のものが挙げられる。
【0161】
【化45】
式中、Lは、リンカーを表し、Rは、上記のリボース若しくはデオキシリボース部分、又は5’位置が一リン酸、二リン酸、若しくは三リン酸で置換されたリボース若しくはデオキシリボース部分を表す。
【0162】
いくつかの実施形態では、非限定的な例示的な蛍光色素コンジュゲートは以下に示される。
【0163】
【0164】
【0165】
【化48】
式中、PGは、本明細書に記載の3’OHブロッキング基を表し、pは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10の整数であり、kは、0、1、2、3、4、又は5である。一実施形態では、-O-PGは、AOMである。別の実施形態では、-O-PGは、-O-アジドメチルである。一実施形態では、kは、5である。いくつかの更なる実施形態では、pは、1、2、又は3であり、kは、5である。
【0166】
【化49】
は、リンカー部分のアミノ基と色素のカルボキシル基との間の反応の結果としての、開裂可能なリンカーを有する色素の接続点を指す。本明細書に記載の標識されたヌクレオチドの任意の実施形態では、ヌクレオチドは、ヌクレオチド三リン酸である。
【0167】
本開示の追加の態様は、本明細書に記載の標識されたヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドに関する。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、標的ポリヌクレオチドの少なくとも一部分にハイブリダイズされる。いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチドは、固体支持体上に固定化される。いくつかの更なる実施形態では、固体支持体は、複数の固定化された標的ポリヌクレオチドのアレイを含む。更なる実施形態では、固体支持体は、パターン化されたフローセルを備える。更なる実施形態では、パターン化されたフローセルは、CMOSチップ上に製造される。更なる実施形態では、パターン化されたフローセルは、複数のナノウェルを備える。更に別の実施形態では、複数のナノウェルは、各CMOSフォトダイオード(ピクセル)上に直接整列される。
【0168】
キット
本明細書では、本開示のアルキルピリジニウムクマリン化合物で標識された(すなわち、第1の標識)第1のヌクレオチドを含むキットが提供される。いくつかの実施形態では、キットはまた、第1の標識されたヌクレオチド中のアルキルピリジニウムクマリン化合物とは異なる第2の化合物で標識された(すなわち、第2の標識)第2の標識されたヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、第1及び第2の標識されたヌクレオチドは、単一の励起源を使用して励起可能であり、それは、第1の励起波長を有する第1の光源であり得る。例えば、第1及び第2の標識の励起帯は、スペクトルの重複領域における励起が両方の標識を蛍光発光させるように少なくとも部分的に重なっていてもよい。いくつかの更なる実施形態では、キットは、第3のヌクレオチドを含み得、第3のヌクレオチドは、第1及び第2の標識とは異なる第3の化合物で標識されている(すなわち、第3の標識)。いくつかのそのような実施形態では、第1及び第3の標識されたヌクレオチドは、第2の励起源を使用して励起可能であり、それは、第1の励起波長とは異なる第2の励起波長を有する第2の光源であり得る。例えば、第1及び第3の標識の励起帯は、スペクトルの重複領域における励起が両方の標識を蛍光発光させるように少なくとも部分的に重なっていてもよい。いくつかの更なる実施形態では、キットは、第4のヌクレオチドを更に含み得る。いくつかのそのような実施形態では、第4のヌクレオチドは、標識されていない(暗色)。他の実施形態では、第4のヌクレオチドは、第1、第2、及び第3のヌクレオチドとは異なる化合物で標識され、各標識は、他の標識と区別可能である明確な吸光度最大値を有する。更に他の実施形態では、第4のヌクレオチドは、標識されていない。いくつかの実施形態では、第1の励起光源は、約500nm~約550nm、約510~約540nm、又は約520~約530nm(例えば、520nm)の波長を有する。第2の光源は、約400nm~約480nm、約420nm~約470nm、又は450nm~約460nm(例えば、450nm)の励起波長を有する。代替の実施形態では、第1の光源は、約400nm~約480nm、約420nm~約470nm、又は450nm~約460nm(例えば、450nm)の励起波長を有する。第2の励起光源は、約500nm~約550nm、約510~約540nm、又は約520~約530nm(例えば、520nm)の波長を有する。第2の光源は、約400nm~約480nm、約420nm~約470nm、又は450nm~約460nm(例えば、450nm)の励起波長を有する。更なる実施形態では、第1の標識、第2の標識、及び第3の標識の各々は、単一の発光収集フィルタ又はチャネルに収集され得る発光スペクトルを有する。
【0169】
いくつかの実施形態では、キットは、4つの標識されたヌクレオチド(A、C、G及びT又はU)を含み得、4つのヌクレオチドのうちの第1のヌクレオチドは、本明細書に開示される化合物で標識される。このようなキットでは、4つのヌクレオチドの各々は、他の3つのヌクレオチド上の標識と同じであるか又は異なる化合物で標識され得る。代替的に、4つのヌクレオチドのうちの第1のヌクレオチドは、本明細書に記載の標識されたヌクレオチドであり、4つのヌクレオチドのうちの第2のヌクレオチドは、第2の標識を有し、第3のヌクレオチドは、第3の標識を有し、第4のヌクレオチドは、標識されていない(暗色)。別の例として、4つのヌクレオチドのうちの第1のヌクレオチドは、本明細書に記載の標識されたヌクレオチドであり、4つのヌクレオチドのうちの第2のヌクレオチドは、第2の標識を有し、第3のヌクレオチドは、2つの標識の混合物を担持し、第4のヌクレオチドは、標識されていない(暗色)。したがって、標識化合物のうちの1つ以上は、その化合物が他の化合物と区別可能であるように、異なる吸光度最大値及び/又は発光最大値を有し得る。例えば、各化合物は、各化合物が他の3つの化合物(又は4番目のヌクレオチドが標識されていない場合は2つの化合物)と区別可能であるように、異なる吸光度最大値及び/又は発光最大値を有し得る。最大値以外の吸光度スペクトル及び/又は発光スペクトルの部分は異なる場合があり、これらの差異は、化合物を区別するために利用され得ることが理解されるであろう。キットは、2つ以上の化合物が異なる吸光度最大値を有するようなものであってもよい。本明細書に開示されるアルキルピリジニウムクマリン色素は、典型的には、500nm未満の領域の光を吸収する。例えば、これらのクマリン色素は、約450nm~約530nm、約460nm~約520nm、約475nm~約510nm、又は約490nm~約500nmの吸収波長を有し得る。
【0170】
本明細書に記載される化合物、ヌクレオチド、又はキットは、生物学系(例えば、プロセス又はその構成要素を含む)を検出、測定、又は同定するために使用されてもよい。化合物、ヌクレオチド又はキットを用いることができる例示的な技術としては、配列決定、発現分析、ハイブリダイゼーション分析、遺伝子分析、RNA分析、細胞アッセイ(例えば、細胞結合又は細胞機能分析)、又はタンパク質アッセイ(例えば、タンパク質結合アッセイ又はタンパク質活性アッセイ)が挙げられる。その使用は、自動配列決定機器などの特定の技術を実行するための自動化機器であってもよい。配列決定機器は、異なる波長で作動する2つの光源を含み得る。
【0171】
特定の実施形態では、本明細書に記載の標識されたヌクレオチドは、標識されていない、若しくは天然のヌクレオチド、又はそれらの任意の組み合わせと組み合わせて供給され得る。ヌクレオチドの組み合わせは、別個の個々の構成要素(例えば、容器又はチューブ当たり1つのヌクレオチド型)として、又はヌクレオチド混合物(例えば、同じ容器又はチューブ内で混合された2つ以上のヌクレオチド)として提供され得る。
【0172】
キットが、複数の、特に2つ、又は3つ、又はより具体的に4つのヌクレオチドを含む場合、異なるヌクレオチドは、異なる色素化合物で標識され得るか、又は色素化合物を含まない、暗色であり得る。異なるヌクレオチドが異なる色素化合物で標識されている場合、色素化合物が分光的に区別可能な蛍光色素であるというのが本キットの特徴である。本明細書で使用するとき、用語「分光的に区別可能な蛍光色素」とは、2つ以上の色素が1つの試料に存在する場合、蛍光検出装置(例えば、市販の毛管ベースのDNA配列決定プラットホーム)によって区別され得る波長で、蛍光エネルギーを放射する蛍光色素を指す。蛍光色素化合物で標識された2つのヌクレオチドがキット形態で供給される場合、分光的に区別可能な蛍光色素は、例えば、同じ光源など、同じ波長で励起され得ることが、いくつかの実施形態の特徴である。蛍光色素化合物で標識された4つのヌクレオチドがキット形態で供給される場合、分光的に区別可能な蛍光色素のうちの2つが1つの波長で励起され得、他の2つの分光的に区別可能な色素は両方とも別の波長で励起され得ることがいくつかの実施形態の特徴である。色素の特定の励起波長は、450~460nm、490~500nm、又は520nm以上(例えば、532nm)である。
【0173】
いくつか実施形態では、キットは、本開示の化合物で標識された第1のヌクレオチド、及び第2の色素で標識された第2のヌクレオチドを含み、色素は、少なくとも10nm、特に20nm~50nm又は30nm~40nmの吸光度最大値の差を有する。より特には、第1の標識は、40nm超、50nm超、又は60nm超のストークスシフトを有し得る。第2の標識は、約80nm超、90nm超、又は100nm超のストークスシフトを有し得る(「ストークスシフト」は、ピーク吸収波長とピーク発光波長との間の距離である)。更に、第1の標識は、約460nm~約520nm、約475nm~約510nm、又は約490nm~約500nmの吸収最大値を有し得る。第2の標識は、約400nm~約470nm、又は約450nm~約460nmの吸収最大値を有し得る。更なる実施形態では、キットは、第3の標識されたヌクレオチドを更に含み得、第3の標識は、520nm超の吸収最大値を有する。第3の標識は、20nm超、30nm超、又は40nm超のストークスシフト、又は20~40nmのストークスシフトを有し得る。キットは、標識されていない第4のヌクレオチドを更に含み得る。更なる実施形態では、第1の標識、第2の標識、及び第3の標識の各々は、540nm超、550nm超、560nm超、570nm超、580nm超、590nm超、又は600nm超の発光最大値を有する。いくつかの実施形態では、第1の標識、第2の標識、及び第3の標識の発光スペクトルは、単一の発光収集チャネル又はフィルタ(例えば、約580~約700nmの収集領域)で検出又は収集され得る。
【0174】
代替的な実施形態では、本開示のキットは、同じ塩基が2つの異なる化合物で標識されているヌクレオチドを含有し得る。第1のヌクレオチドは、本開示の化合物で標識されてもよい。第2のヌクレオチドは、分光的に異なる化合物、例えば、600nm未満で吸収される「緑色」色素で標識されてもよい。第3のヌクレオチドは、本開示の化合物と、分光的に異なる化合物との混合物として標識されてもよく、第4のヌクレオチドは「暗色」であり得、かつ標識を含有しなくてもよい。したがって、簡便に言えば、ヌクレオチド1~4は、「青色」、「緑色」、「青色/緑色」、及び暗色と標識され得る。機器を更に単純化するために、4つのヌクレオチドは、単一の光源で励起される2つの色素で標識することができ、したがって、ヌクレオチド1~4の標識は、「青色1」、「青色2」、「青色1/青色2」、及び暗色であり得る。
【0175】
異なる色素化合物で標識された異なるヌクレオチドを有する構成に関して、キットが本明細書に例示されるが、キットは、同じ色素化合物を有する2、3、4個以上の異なるヌクレオチドを含み得ることが理解されるであろう。
【0176】
標識されたヌクレオチドに加えて、キットは、少なくとも1つの更なる構成要素を一緒に含み得る。更なる構成要素は、本明細書に記載される方法又は以下の実施例のセクションで特定される構成要素のうちの1つ以上であってもよい。本開示のキットに組み合わせることができる構成要素のいくつかの非限定的な例を以下に記載する。いくつかの実施形態では、キットは、DNAポリメラーゼ(変異体DNAポリメラーゼなど)及び1つ以上の緩衝組成物を更に含む。1つの緩衝組成物は、アスコルビン酸又はアスコルビン酸ナトリウムなどの酸化防止剤を含み得、それは検出中に色素化合物を光損傷から保護するために使用され得る。追加の緩衝組成物は、3’ブロッキング基及び/又は開裂可能なリンカーを開裂するために使用され得る試薬を含み得る。例えば、パラジウム錯体など遷移金属及び少なくとも部分的に水溶性の配位子から水溶性ホスフィン又は水溶性遷移金属触媒が形成した。キットの様々な構成要素は、使用前に希釈される濃縮形態で提供され得る。そのような実施形態では、好適な希釈緩衝液も含まれ得る。ここでも、本明細書に記載される方法で特定された構成要素のうちの1つ以上を、本開示のキットに含めることができる。本明細書に記載のヌクレオチド又は標識されたヌクレオチドの任意の実施形態では、ヌクレオチド又は標識されたヌクレオチドは、3’ヒドロキシルブロッキング基を含む。
【0177】
配列決定の方法
本開示による色素化合物を含むヌクレオチドは、そのようなヌクレオチドに結合した蛍光標識の検出を含む方法などの任意の分析方法において、それ自体であるか、又はより大きな分子構造若しくはコンジュゲートに組み込まれるか、又はそれらと関連するかにかかわらず、使用され得る。この文脈において、「ポリヌクレオチドに組み込まれる」という用語は、それ自体がより長いポリヌクレオチド鎖の一部を形成し得る、第2のヌクレオチドの3’ヒドロキシル基に、5’リン酸がリン酸ジエステル連結で結合されることを意味し得る。本明細書に記載のヌクレオチドの3’末端は、更なるヌクレオチドの5’リン酸に、リン酸ジエステル連結で結合されてもよく、又はされなくてもよい。したがって、非限定的な一実施形態では、本開示は、ポリヌクレオチドに組み込まれた標識されたヌクレオチドを検出する方法であって、(a)本開示の少なくとも1つの標識されたヌクレオチドをポリヌクレオチドに組み込むことと、(b)当該ヌクレオチドに結合させた色素化合物からの蛍光シグナルを検出することによって、ポリヌクレオチドに組み込まれたヌクレオチドの同一性を決定することと、を含む方法を提供する。
【0178】
本方法は、(a)本開示による1つ以上の標識されたヌクレオチドがポリヌクレオチドに組み込まれる合成工程と、(b)ポリヌクレオチドに組み込まれた1つ以上の標識されたヌクレオチドが、それらの蛍光を検出又は定量的に測定することによって検出される検出工程と、を含み得る。
【0179】
本出願のいくつかの実施形態は、標的ポリヌクレオチドの配列を決定する方法であって、(a)プライマーポリヌクレオチド/標的ポリヌクレオチド複合体を1つ以上の標識されたヌクレオチド(ヌクレオシド三リン酸A、G、C、及びTなど)と接触させることであって、当該標識されたヌクレオチドのうちの少なくとも1つが、本明細書に記載の標識されたヌクレオチドであり、プライマーポリヌクレオチドが、標的ポリヌクレオチドの少なくとも一部分に相補的である、接触させることと、(b)標識されたヌクレオチドをプライマーポリヌクレオチドに組み込んで、伸長されたプライマーポリヌクレオチドを生成することと、(c)1つ以上の蛍光測定を実施し、組み込まれたヌクレオチドの同一性を決定することと、を含む。いくつかのそのような実施形態では、プライマーポリヌクレオチド/標的ポリヌクレオチド複合体は、標的ポリヌクレオチドを標的ポリヌクレオチドの少なくとも一部分に相補的なプライマーポリヌクレオチドと接触させることによって形成される。いくつかの実施形態では、本方法は、(d)プライマーポリヌクレオチドに組み込まれたヌクレオチドから標識部分及び3’ブロッキング基を除去することを更に含む。いくつかの更なる実施形態では、本方法はまた、(e)除去された標識部分及び3’ブロッキング基をプライマーポリヌクレオチド鎖から洗い落とすことを含み得る。いくつかの実施形態では、工程(a)~(d)又は工程(a)~(e)は、標的ポリヌクレオチド鎖の少なくとも一部分の配列が決定されるまで、繰り返される。場合によっては、工程(a)~(d)又は工程(a)~(e)は、少なくとも30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、又は300サイクル繰り返される。いくつかの実施形態では、プライマーポリヌクレオチド鎖に組み込まれたヌクレオチドからの標識部分及び3’ブロッキング基は、単一の化学反応で除去される。いくつかの更なる実施形態では、本方法は、自動配列決定機器で実施され、自動配列決定機器は、異なる波長で作動する2つの光源を含む。いくつかの実施形態では、配列決定は、本明細書に記載の配列決定工程の繰り返しのサイクルの完了後に行われる。
【0180】
本開示のいくつかの実施形態は、標的ポリヌクレオチド(例えば、一本鎖標的ポリヌクレオチド)の配列を決定するための方法に関し、(a)プライマーポリヌクレオチドを、4つの異なる種類のヌクレオチドコンジュゲートのうちの1つ以上を含む組み込み混合物と接触させることであって、第1の種類のヌクレオチドコンジュゲートが、第1の標識を含み、第2の種類のヌクレオチドコンジュゲートが、第2の標識を含み、第3の種類のヌクレオチドコンジュゲートが、第3の標識を含み、第1の標識、第2の標識、及び第3の標識の各々が、互いに分光的に異なり、プライマーヌクレオチドが、一本鎖標的ポリヌクレオチドの少なくとも一部分に相補的である、接触させることと、(b)混合物からプライマーポリヌクレオチドに1つのヌクレオチドコンジュゲートを組み込んで、伸長されたプライマーポリヌクレオチドを生成することと、(c)第1の励起光源を使用して第1の撮像イベントを実施し、伸長されたポリヌクレオチドから第1の発光シグナルを検出することと、(d)第2の励起光源を使用して第2の撮像イベントを実施し、伸長されたポリヌクレオチドから第2の発光シグナルを検出することと、を含み、第1の励起光源及び第2の励起光源が、異なる波長を有し、第1の発光シグナル及び第2の発光シグナルが、単一の発光検出チャネルで検出又は収集される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のクロメノキノリン色素は、本方法に記載の第1、第2、又は第3の標識のうちのいずれか1つとして使用され得る。いくつかの実施形態では、本方法は、第1の撮像イベントの後及び第2の撮像イベントの前に、混合物中の任意のヌクレオチドコンジュゲートの化学修飾を含まない。いくつかの更なる実施形態では、組み込み混合物は、第4の種類のヌクレオチドを更に含み、第4の種類のヌクレオチドは、標識されていない、第1若しくは第2の撮像イベントのいずれからもシグナルを発光しない蛍光部分で標識されている。この配列決定方法では、各組み込まれたヌクレオチドコンジュゲートの同一性は、第1の撮像イベント及び第2の撮像イベントの検出パターンに基づいて決定される。例えば、第1の種類のヌクレオチドコンジュゲートの組み込みは、第1の撮像イベントにおけるシグナル状態及び第2の撮像イベントにおける暗色状態によって決定される。第2の種類のヌクレオチドコンジュゲートの組み込みは、第1の撮像イベントにおける暗色状態及び第2の撮像イベントにおけるシグナル状態によって決定される。第3の種類のヌクレオチドコンジュゲートの組み込みは、第1の撮像イベント及び第2の撮像イベントの両方におけるシグナル状態によって決定される。第4の種類のヌクレオチドコンジュゲートの組み込みは、第1の撮像イベント及び第2の撮像イベントの両方における暗色状態によって決定される。更なる実施形態では、工程(a)~(d)は、繰り返しのサイクル(例えば、少なくとも30、50、100、150、200、250、300、400、又は500回)で実施され、本方法は、各連続的に組み込まれたヌクレオチドコンジュゲートの同一性に基づいて、一本鎖標的ポリヌクレオチドの少なくとも一部分の配列を連続的に決定することを更に含む。いくつかの実施形態では、第1の励起光源は、第2の励起光源よりも短い波長を有する。いくつかのそのような実施形態では、第1の励起光源は、約400nm~約480nm、約420nm~約470nm、又は約450nm~約460nm(すなわち、「青色光」)の波長を有する。一実施形態では、第1の励起光源は、約450nmの波長を有する。第2の励起光源は、約500nm~約550nm、約510nm~約540nm、又は約520nm~約530nm(すなわち、「緑色光」)の波長を有する。一実施形態では、第2の励起光源は、約520nmの波長を有する。他の実施形態では、第1の励起光源は、第2の励起光源よりも長い波長を有する。いくつかのそのような実施形態では、第1の励起光源は、約500nm~約550nm、約510nm~約540nm、又は約520nm~約530nm(すなわち、「緑色光」)の波長を有する。一実施形態では、第2の励起光源は、約520nmの波長を有する。第2の励起光源は、約400nm~約480nm、約420nm~約470nm、又は約450nm~約460nm(すなわち、「青色光」)の波長を有する。一実施形態では、第2の励起光源は、約450nmの波長を有する。
【0181】
一実施形態では、少なくとも1つのヌクレオチドは、ポリメラーゼ酵素の作用によって合成工程において、ポリヌクレオチド(本明細書に記載の一本鎖プライマーポリヌクレオチドなど)に組み込まれる。しかしながら、例えば、化学的オリゴヌクレオチド合成又は標識されたオリゴヌクレオチドの標識されていないオリゴヌクレオチドへのライゲーションなどのヌクレオチドをポリヌクレオチドに結合する他の方法を使用し得る。したがって、ヌクレオチド及びポリヌクレオチドに関して用語「組み込む」が使用されるときには、化学的方法及び酵素法によるポリヌクレオチド合成を包含することができる。
【0182】
特定の実施形態では、合成工程が実施され、かつ任意に、本開示の蛍光標識されたヌクレオチドを含む反応混合物と共に、鋳型又は標的ポリヌクレオチド鎖をインキュベートすることを含んでもよい。ポリメラーゼはまた、鋳型又は標的ポリヌクレオチド鎖にアニーリングされたポリヌクレオチド鎖上の遊離3’ヒドロキシル基と標識されたヌクレオチド上の5’リン酸基との間のリン酸ジエステル連結の形成を可能にする条件下で提供され得る。したがって、合成工程は、ヌクレオチドの鋳型/標的鎖への相補的塩基対合によって指向されるポリヌクレオチド鎖の形成を含み得る。
【0183】
本方法の全ての実施形態では、検出工程は、標識されたヌクレオチドが組み込まれるポリヌクレオチド鎖が鋳型/標的鎖にアニーリングされている間、又は2つの鎖が分離される変性工程の後に実施され得る。合成工程と検出工程との間に、例えば化学的又は酵素的反応工程又は精製工程といった更なる工程が含まれてもよい。特に、標識されたヌクレオチドを組み込むポリヌクレオチド鎖は、単離又は精製され得、次いで、更に処理され得るか、又は続く分析に使用され得る。例として、合成工程において本明細書に記載の標識されたヌクレオチドを組み込んだポリヌクレオチドは、続いて、標識されたプローブ又はプライマーとして使用され得る。他の実施形態では、本明細書に記載の合成工程の生成物は、更なる反応工程、所望であれば、精製又は単離されたこれらの続く工程の生成物に供され得る。
【0184】
合成工程に好適な条件は、標準的な分子生物学的技術に精通しているものにはよく知られている。一実施形態では、合成工程は、好適なポリメラーゼ酵素の存在下で鋳型/標的鎖に相補的な伸長された標的鎖(プライマーポリヌクレオチド)を形成するために、本明細書に記載の標識されたヌクレオチドを含むヌクレオチド前駆体を使用する標準的なプライマー伸長反応と類似し得る。他の実施形態では、合成工程は、それ自体が、プライマー及び鋳型のポリヌクレオチド鎖のコピーに由来するアニーリングされた相補鎖からなる、標識された二本鎖増幅生成物を生成する、増幅反応の一部を形成し得る。他の例示的な合成工程としては、ニックトランスレーション、鎖置換重合、ランダムプライミングDNA標識化などが挙げられる。合成工程に特に有用なポリメラーゼ酵素は、本明細書に記載の標識されたヌクレオチドの組み込みを触媒することができるものである。様々な天然に生じる又は変異/修飾されたポリメラーゼが使用され得る。例として、熱安定性ポリメラーゼは、熱サイクリング条件を使用して実施される合成反応に使用することができるが、熱安定性ポリメラーゼは、等温プライマー伸長反応には望ましくない場合がある。本開示による標識されたヌクレオチドを組み込むことができる好適な熱安定性ポリメラーゼには、国際公開第2005/024010号又は国際公開第06/120433号に記載されるものが含まれ、これらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる。37℃などの低温で実施される合成反応では、ポリメラーゼ酵素は、必ずしも熱安定性ポリメラーゼである必要はなく、したがって、ポリメラーゼの選択は、反応温度、pH、鎖置換活性などのいくつかの要因に依存する。
【0185】
特定の非限定的な実施形態では、本開示は、核酸配列決定、再配列決定、全ゲノム配列決定、一塩基多型スコアリング、ポリヌクレオチドに組み込まれた場合に本明細書に記載の色素で標識された修飾されたヌクレオチド又はヌクレオシドの検出を伴う任意の他の用途の方法を含む。
【0186】
本開示の特定の実施形態は、ポリヌクレオチドの合成による配列決定反応における本開示による色素部分を含む標識されたヌクレオチドの使用を提供する。合成による配列決定は、概して、配列決定される鋳型/標的核酸に相補的な伸長されたポリヌクレオチド鎖を形成するために、ポリメラーゼ又はリガーゼを使用して、成長しているポリヌクレオチド鎖に、5’から3’方向に1つ以上のヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドを連続的に付加することを含む。付加されたヌクレオチドのうちの1つ以上に存在する塩基の同一性は、検出又は「撮像」工程において決定され得る。付加された塩基の同一性は、各ヌクレオチド組み込み工程後に決定され得る。次いで、鋳型の配列は、従来式のワトソン・クリック塩基対合ルールを使用して推測され得る。一塩基の同一性を決定するための本明細書に記載の色素で標識されたヌクレオチドの使用は、例えば、一塩基多型スコアリングにおいて有用であり得、そのような一塩基伸長反応は、本開示の範囲内である。
【0187】
本開示の一実施形態では、鋳型/標的ポリヌクレオチドの配列は、組み込まれたヌクレオチドに結合した蛍光標識の検出を介して配列決定される鋳型ポリヌクレオチドに相補的な新生鎖への1つ以上のヌクレオチドの組み込みを検出することによって決定される。鋳型ポリヌクレオチドの配列決定は、好適なプライマー(又は、ヘアピンの一部としてプライマーを含有するヘアピン構造体として調製されたプライマー)でプライミングすることができ、新生鎖は、ポリマー触媒反応において、プライマーの3’末端にヌクレオチドを付加することにより、段階的に伸長される。
【0188】
特定の実施形態では、異なるヌクレオチド三リン酸(A、T、G、及びC)の各々は、固有のフルオロフォアで標識されてもよく、また、制御不可能な重合を防止するために、3’位置にブロッキング基を含む。代替的に、4つのヌクレオチドのうちの1つは、標識されていなくてもよい(暗色)。ポリメラーゼ酵素は、鋳型/標的ポリヌクレオチドに相補的な新生鎖にヌクレオチドを組み込み、ブロッキング基は、ヌクレオチドの更なる組み込みを防止する。任意の組み込まれていないヌクレオチドを洗い落とすことができ、各組み込まれたヌクレオチドからの蛍光シグナルは、光源励起及び好適な発光フィルタを使用する電荷結合デバイスなどの好適な手段によって、光学的に「読み取る」ことができる。次いで、3’ブロッキング基及び蛍光色素化合物を除去(脱保護)して(同時に又は連続的に)、更なるヌクレオチドの組み込みのために新生鎖を露出させることができる。典型的には、組み込まれたヌクレオチドの同一性は、各組み込み工程後に決定されるが、これは厳密に必須というわけではない。同様に、米国特許第5,302,509号(参照により本明細書に組み込まれる)は、固体支持体上に固定化されたポリヌクレオチドを配列決定する方法を開示している。
【0189】
上記に例示したようなその方法は、蛍光標識された3’ブロックされたヌクレオチドA、G、C、及びTを、DNAポリメラーゼの存在下で、固定化されたポリヌクレオチドに相補的な成長鎖に組み込む。ポリメラーゼは、標的ポリヌクレオチドに相補的な塩基を組み込むが、3’-ブロッキング基によって、更なる付加が防止される。次いで、組み込まれたヌクレオチドの標識を判定し、その後、更なる重合を可能にするために、化学的開裂によってブロッキング基が除去され得る。合成による配列決定反応において配列決定される核酸鋳型は、配列決定が所望される任意のポリヌクレオチドであってもよい。配列決定反応用の核酸鋳型は、典型的には、配列決定反応における更なるヌクレオチドの付加のためのプライマー又は開始点として機能する遊離3’ヒドロキシル基を有する二本鎖領域を含む。配列決定される鋳型の領域は、この遊離3’ヒドロキシル基を相補鎖上にオーバーハングする。配列決定される鋳型のオーバーハング領域は、一本鎖であってもよいが、配列決定される鋳型鎖に相補的な鎖上に「切れ目が存在」して、配列決定反応を開始するための遊離3’OH基を提供する限りにおいて、二本鎖であることも可能である。そのような実施形態では、配列決定は、鎖置換によって進行し得る。特定の実施形態では、遊離3’ヒドロキシル基を有するプライマーが、配列決定される鋳型の一本鎖領域にハイブリダイズする別個の構成要素(例えば、短いオリゴヌクレオチド)として添加され得る。代替的に、配列決定されるプライマー及び鋳型鎖は各々、例えばヘアピンループ構造などの分子内二重鎖を形成することができる部分的に自己相補的な核酸鎖の一部を形成してもよい。ヘアピンポリヌクレオチド及びそれらを固体支持体に取り付けることができる方法は、国際公開第01/57248号及び国際公開第2005/047301号において開示されており、これらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる。ヌクレオチドは、成長するプライマーに連続的に付加され、5’から3’への方向にポリヌクレオチド鎖を合成することができる。添加された塩基の性質は、特に各ヌクレオチド付加後に判定されてもよいが、必ずしもそうでなくてもよい。その判定によって、核酸鋳型についての配列情報が提供される。したがって、ヌクレオチドは、ヌクレオチドの5’リン酸基とのリン酸ジエステル結合の形成を介して、核酸鎖の遊離3’ヒドロキシル基にヌクレオチドを結合することにより、核酸鎖(又はポリヌクレオチド)に組み込まれる。
【0190】
配列決定される核酸鋳型は、DNA若しくはRNA、又は更にはデオキシヌクレオチド及びリボヌクレオチドからなるハイブリッド分子であってもよい。核酸鋳型は、配列決定反応における鋳型のコピーを防止しない限り、天然由来のヌクレオチド及び/又は非天然由来のヌクレオチドと、天然由来又は非天然由来の骨格連結を含んでもよい。
【0191】
特定の実施形態では、配列決定される核酸鋳型は、当該技術分野で既知の任意の好適な連結方法、例えば、共有結合を介して、固体支持体に結合され得る。特定の実施形態では、鋳型ポリヌクレオチドは、固体支持体(例えば、シリカベースの支持体)に直接結合され得る。しかしながら、本開示の他の実施形態では、固体支持体の表面は、鋳型ポリヌクレオチドの直接的共有結合、又はそれ自体が固体支持体に非共有結合し得る、ヒドロゲル又は高分子電解質多層を介する鋳型ポリヌクレオチドの固定化のいずれかを可能にするように、何らかの方式で修飾されてもよい。
【0192】
ポリヌクレオチドが支持体(例えば、国際公開第00/06770号(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているものなどのシリカベースの支持体に直接結合しているアレイであって、ポリヌクレオチドが、ガラス上のペンダントエポキシド基と、ポリヌクレオチド上の内部アミノ基との間の反応によって、ガラス支持体上に固定化される、アレイ。加えて、ポリヌクレオチドは、例えば、国際公開第2005/047301号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、硫黄ベースの求核剤と固体支持体との反応によって固体支持体に結合され得る。固体支持された鋳型ポリヌクレオチドのなお更なる例では、鋳型ポリヌクレオチドが、例えば国際公開第00/31148号、国際公開第01/01143号、国際公開第02/12566号、国際公開第03/014392号、米国特許第6,465,178号、及び国際公開第00/53812号に記載されている、シリカベース又は他の固体支持体に上に支持されたヒドロゲルに結合される場合であり、これらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0193】
鋳型ポリヌクレオチドが固定化され得る具体的な表面としては、ポリアクリルアミドヒドロゲルが挙げられる。ポリアクリルアミドヒドロゲルは、上記の参考文献及び国際公開第2005/065814号に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。使用され得る特定のヒドロゲルには、国際公開第2005/065814号及び米国特許出願公開第2014/0079923号に記載されるものが含まれる。一実施形態では、ヒドロゲルは、PAZAM(ポリ(N-(5-アジドアセトアミジルペンチル)アクリルアミド-co-アクリルアミド))である。
【0194】
DNA鋳型分子は、例えば、米国特許第6,172,218号(参照により本明細書に組み込まれ)に記載されているように、ビーズ又は微小粒子に結合され得る。ビーズ又は微小粒子への結合は、配列決定用途に有用であり得る。各ビーズが異なるDNA配列を含むビーズライブラリを調製することができる。それらの作成のための例示的なライブラリ及び方法は、Nature,437,376-380(2005)、Science,309,5741,1728-1732(2005)に記載されており、これらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されるヌクレオチドを使用したかかるビーズのアレイの配列決定は、本開示の範囲内である。
【0195】
配列決定される鋳型は、固体支持体上に「アレイ」の一部を形成してもよく、この場合、アレイは任意の便利な形態をとることができる。したがって、本開示の方法は、単一分子アレイ、クラスター化アレイ、及びビーズアレイを含む全ての種類の高密度アレイに適用可能である。本開示の色素化合物で標識されたヌクレオチドは、固体支持体上の核酸分子の固定化によって形成されるものが含まれるがこれに限定されない基本的に任意の種類のアレイ上で鋳型を配列決定するために使用され得る。
【0196】
しかしながら、本開示の色素化合物で標識されたヌクレオチドは、クラスター化アレイの配列決定の状況において特に有利である。クラスター化アレイでは、アレイ上の別個の領域(多くの場合、部位又は特徴部と称される)は、複数のポリヌクレオチド鋳型分子を含む。一般に、複数のポリヌクレオチド分子は、光学的手段によって個別に見分けることができず、代わりに、アンサンブル(集合体)として検出される。アレイがどのように形成されるかに応じて、アレイ上の各部位は、1つの個々のポリヌクレオチド分子の複数のコピー(例えば、部位は、特定の一本鎖若しくは二本鎖核酸種に対して均質である)、又は更には少数の異なるポリヌクレオチド分子の複数のコピー(例えば、2つの異なる核酸種の複数のコピー)を含んでもよい。核酸分子のクラスター化アレイは、当該技術分野において一般的に知られている技術を使用して生成され得る。例として、各々は本明細書に組み込まれる、国際公開第98/44151号及び国際公開第00/18957号は、核酸の増幅方法を記載しており、鋳型及び増幅産物の両方は、固定化された核酸分子のクラスター又は「コロニー」からなるアレイを形成するために、固体支持体上に固定化されたままである。これらの方法に従って調製されたクラスター化アレイ上に存在する核酸分子は、本開示の色素化合物で標識されたヌクレオチドを使用する配列決定に好適な鋳型である。
【0197】
本開示の色素化合物で標識されたヌクレオチドは、単一分子アレイ上の鋳型の配列決定にも有用である。本明細書で使用するとき、用語「単一分子アレイ」又は「single molecule array、SMA」は、固体支持体の上に分布(又は配列)されたポリヌクレオチド分子の集団を指し、いかなる個々のポリヌクレオチドの、集団の全ての他のポリヌクレオチドからの離間距離は、個々のポリヌクレオチド分子を個々に見分けることが可能であるようになっている。したがって、固体支持体の表面上に固定化された標的核酸分子は、いくつかの実施形態では、光学的手段によって分解することができる。これは、1つのポリヌクレオチドを各々表す1つ以上の別個のシグナルが、使用される特定の撮像デバイスの見分けることができるエリア内で発生することを意味する。
【0198】
アレイ上の隣接するポリヌクレオチド分子間の間隔が、少なくとも100nm、より具体的には少なくとも250nm、更により具体的には少なくとも300nm、更により具体的には少なくとも350nmである、単一分子検出が達成され得る。したがって、各分子は個別に分解可能で見分けることができ、単一分子蛍光点として検出可能であり、この単一分子蛍光点からの蛍光はまた、単一工程でのフォトブリーチを呈する。
【0199】
用語「個々に分解された」及び「個々の解像度」は、可視化されたときに、アレイ上の1つの分子をその隣接する分子と区別することが可能であることを指定するために本明細書で使用される。アレイ上の個々の分子間の分離は、個々の分子を分解するために使用される特定の技術によって、部分的に決定される。単一分子アレイの一般的な特徴は、各々が、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第00/06770号及び国際公開第01/57248号を参照することによって理解されるであろう。本開示の標識されたヌクレオチドの一使用は、合成による配列決定反応にあるが、そのようなヌクレオチドの有用性は、そのような方法に限定されない。実際に、本明細書に記載の標識されたヌクレオチドは、ポリヌクレオチドに組み込まれたヌクレオチドに結合した蛍光標識の検出を必要とする任意の配列決定方法において有利に使用され得る。
【0200】
特に、本開示の色素化合物で標識されたヌクレオチドは、自動蛍光配列決定プロトコル、特に、サンガー及び共同研究者の連鎖停止配列決定法に基づく、蛍光色素ターミネーターサイクル配列決定に使用され得る。このような方法は、一般に、酵素及びサイクル配列決定を使用して、プライマー伸長配列決定反応において蛍光標識されたジデオキシヌクレオチドを組み込む。いわゆるサンガー配列決定法、及び関連するプロトコル(サンガー型)は、標識されたジデオキシヌクレオチドでランダム化された鎖終端を利用する。
【0201】
したがって、本開示はまた、3’位置及び2’位置の両方においてヒドロキシル基を欠くジデオキシヌクレオチドである色素化合物で標識されたヌクレオチドも包含し、このような修飾されたデオキシヌクレオチドは、サンガー型配列決定法などにおける使用に好適である。
【0202】
ジデオキシ塩基を使用することによって達成される効果と同じ効果が、3’-OHブロッキング基を有するヌクレオチドを使用することによって達成され得る(両者とも続くヌクレオチドの組み込みを防止できる)ため、3’ブロッキング基を組み込んだ本開示の色素化合物で標識されたヌクレオチドは、サンガー法及び関連するプロトコルにおいて有用であり得ることが認識されるであろう。本開示によるヌクレオチドであって、3’ブロッキング基を有するヌクレオチドをサンガー型の配列決定方法で使用する場合、本開示の標識されたヌクレオチドが組み込まれる各事例においては、ヌクレオチドが、続いて組み込まれる必要はなく、したがって、標識をヌクレオチドから除去する必要がないため、ヌクレオチドに結合した色素化合物又は検出可能な標識は開裂可能なリンカーを介して接続される必要がないということが理解されるであろう。
【0203】
代替的に、本明細書に記載の配列決定方法はまた、標識されていないヌクレオチド及び本明細書に記載の蛍光色素を含有する親和性試薬を使用して実施され得る。例えば、工程(a)の組み込み混合物中の4つの異なる種類のヌクレオチドのうちの1つ、2つ、3つ、又は各々(例えば、dATP、dCTP、dGTP、及びdTTP又はdUTP)は、標識されていなくてもよい。4つの種類のヌクレオチド(例えば、dNTP)の各々は、1つの塩基のみがプライマーポリヌクレオチドの3’末端にポリメラーゼによって付加され得ることを確実にするために、3’ヒドロキシルブロッキング基を有する。工程(b)における標識されていないヌクレオチドの組み込み後、残りの組み込まれていないヌクレオチドを洗い落とす。次いで、組み込まれたdNTPを特異的に認識して、結合し、組み込まれたdNTPを含む標識された伸長生成物を提供する親和性試薬が導入される。合成による配列決定における標識されていないヌクレオチド及び親和性試薬の使用は、国際公開第2018/129214号及び国際公開第2020/097607号において開示されている。標識されていないヌクレオチドを使用する本開示の修飾された配列決定方法は、以下の工程を含み得る。
【0204】
(a’)プライマーポリヌクレオチド/標的ポリヌクレオチド複合体を1つ以上の標識されていないヌクレオチド(例えば、dATP、dCTP、dGTP、及びdTTP又はdUTP)と接触させることであって、プライマーポリヌクレオチドが、標的ポリヌクレオチドの少なくとも一部分に相補的である、接触させること、
(b’)ヌクレオチドをプライマーポリヌクレオチドに組み込んで、伸長されたプライマーポリヌクレオチド(すなわち、伸長されたプライマーポリヌクレオチド/標的ポリヌクレオチド複合体)を生成すること、
(c’)伸長されたプライマーポリヌクレオチドを親和性試薬のセットと接触させることであって、1つの親和性試薬が、組み込まれた標識されていないヌクレオチドに特異的に結合して、標識された伸長されたプライマーポリヌクレオチド(すなわち、標識された伸長されたプライマーポリヌクレオチド/標的ポリヌクレオチド複合体)を提供する、接触させること、
(d’)標識された伸長されたプライマーポリヌクレオチドの1つ以上の蛍光測定を実施して、組み込まれたヌクレオチドの同一性を決定すること。
【0205】
本明細書に記載の修飾された配列決定方法のいくつかの実施形態では、組み込み混合物中の標識されていないヌクレオチドの各々は、3’ヒドロキシルブロッキング基を含有する。更なる実施形態では、組み込まれたヌクレオチドの3’ヒドロキシルブロッキング基は、次の組み込みサイクルの前に除去される。なお更なる実施形態では、本方法は、組み込まれたヌクレオチドから親和性試薬を除去することを更に含む。なお更なる実施形態では、3’ヒドロキシルブロッキング基及び親和性試薬は同じ反応で除去される。いくつかの実施形態では、親和性試薬のセットは、第1の種類のヌクレオチドに特異的に結合する第1の親和性試薬、第2の種類のヌクレオチドに特異的に結合する第2の親和性試薬、及び第3の種類のヌクレオチドに特異的に結合する第3の親和性試薬を含み得る。いくつかの更なる実施形態では、第1、第2、及び第3の親和性試薬の各々は、分光的に区別可能である検出可能な標識されたを含む。いくつかの実施形態では、親和性試薬は、タンパク質タグ、抗体(抗体の結合断片、単鎖抗体、二重特異性抗体などを含むがこれらに限定されない)、アプタマー、ノッチン、アフィマー、又は組み込まれたヌクレオチドに適切な特異性及び親和性で結合する任意の他の既知の薬剤を含み得る。一実施形態では、セット中の1つ以上の親和性試薬は、抗体又はタンパク質タグである。別の実施形態では、第1の種類、第2の種類、及び第3の種類の親和性試薬のうちの少なくとも1つは、1つ以上の検出可能な標識(例えば、同じ検出可能な標識の複数のコピー)を含む抗体又はタンパク質タグであり、検出可能な標識は、本明細書に記載のアルキルピリジニウムクマリン色素部分であるか、又はそれを含む。
【0206】
実施例
追加的実施形態が、以下の実施例において更に詳細に開示されるが、これらの実施例は、特許請求の範囲の範囲を限定することを意図したものではない。
【0207】
実施例1.アルキルピリジニウムクマリン色素の合成
アルキルピリジニウム中間体の合成
【0208】
【0209】
2,4-ルチジン(5.8mL、50mmol)を、窒素下で乾燥フラスコ中の無水THF(20mL)に溶解した。THF/ヘキサン中の1Mのリチウムジイソプロピルアミド溶液(50mL、50mmol)を0℃でゆっくりと添加した。溶液は暗赤色になり、それを室温で4時間撹拌した。次いで、10mLの無水THFに溶解した無水炭酸ジエチル(14.7mL、2.5mmol)をゆっくりと添加し、反応物を室温で一晩撹拌した。次いで、混合物を飽和NH4Cl水溶液(10mL)でクエンチし、200mLの酢酸エチルで希釈し、200mLの水で洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させた。残渣をシリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィにより精製した。次いで、中間体を10mLの濃HClに溶解し、100℃で1時間加熱した。揮発性物質を減圧下で除去し、次いで、残渣をエタノール(50mL)に溶解し、数滴の濃硫酸を添加した。溶液を完了するまで室温で撹拌した。反応物を5mLの飽和NaHCO3水溶液でクエンチし、揮発性物質を減圧下で除去した。残渣を飽和NaHCO3(50mL)と酢酸エチル(100mL)との間で分配した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させた。化合物1を34%の収率で無色の粘性油として得た。
【0210】
6-ブロモヘキサン酸(228mg、1.17mmol)及び化合物1(210mg、1.17mmol)を混合し、次いで、100℃で一晩加熱した。次いで、混合物を水とジクロロメタンとの間で分配した。水相を蒸発させて、化合物2を70%の収率(312mg、0.838mmol)で得た。LC-MS(ESI):(正イオン)m/z294(M+H+)。
【0211】
【0212】
化合物1(199mg、1.1mmol)及び1,3-プロパンスルトン(101μL、1.15mmol)を、1mLのブチロニトリルに溶解し、100℃で2時間加熱した。揮発性物質を減圧下で除去し、残渣を50mLの水に溶解し、2×20mLのDCMで洗浄した。水相を蒸発させて乾固させた。化合物3を、88%の収率(297mg、0.98mmol)で灰色がかった白色の固体として得た。LC-MS(ESI):(正イオン)m/z302(M+H+)。
【0213】
【0214】
2,4,6-コリジン(2.5mL、20mmol)を、窒素下で乾燥フラスコ中の無水THF(20mL)に溶解した。THF/ヘキサン中の1Mのリチウムジイソプロピルアミド溶液(22mL、22mmol)をゆっくりと添加した。溶液は暗赤色に濁り、それを室温で2時間撹拌した。次いで、それを-70℃で20mLの無水THFに溶解した無水炭酸ジエチル(5mL、40mmol)にゆっくりと添加し、反応物をゆっくりと室温まで一晩温めた。次いで、混合物を飽和NH4Cl水溶液(10mL)でクエンチし、200mLの酢酸エチルで希釈した。有機相を分離し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させた。粗生成物をシリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィにより精製した。次いで、中間体を20mLの濃HClに溶解し、室温で一晩放置した。揮発性物質を減圧下で除去し、次いで、残渣をエタノール(50mL)に溶解し、0.5mLの濃硫酸を添加した。溶液を4時間還流し、次いで、5mLの飽和NaHCO3水溶液でクエンチし、揮発性物質を減圧下で除去した。残渣を飽和NaHCO3(50mL)と酢酸エチル(100mL)との間で分配した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させた。化合物4を12%の収率(474mg、2.44mmol)で無色の粘性油として得た。
【0215】
化合物4(100mg、0.518mmol)に、アセトニトリル(300μL)及びトリフルオロメタンスルホン酸エチル(67μL、0.518mmol)を添加した。溶液を室温で3日間撹拌し、次いで、揮発性物質を減圧下で蒸発させて化合物5を白色固体として得、これを更に精製することなく次の工程で使用した。LC-MS(ESI):(正イオン)m/z222(M+H+)。
【0216】
【0217】
CuCN(2g、23.2mmol)及び無水THF(75mL)を窒素下でフラスコに添加し、次いで、撹拌しながら-78℃まで冷却した。イソプロピルマグネシウムブロミド(2-メチルテトラヒドロフラン中の3Mの溶液、15.5mL、46.5mmol)を激しく撹拌しながら滴下した。懸濁液を-78℃で20分間放置し、次いで、2-ブロモ-4-メチルピリジン(1g、5.81mmol)を添加した。反応物を-78℃で3時間撹拌し、次いで、室温に一晩温めた。次いで、懸濁液を氷浴で冷却し、濃水酸化アンモニウム水溶液でゆっくりクエンチした。得られた懸濁液を2×100mLのジクロロメタンで抽出した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させた。粗生成物をシリカゲル上でフラッシュカラムクロマトグラフィにより精製した。化合物6を30%の収率(240mg、1.77mmol)で得た。LC-MS(ESI):(正イオン)m/z135(M+H+)。
【0218】
化合物6(240mg、1.77mmol)を、窒素下で乾燥フラスコ中の無水THF(5mL)に溶解し、-78℃まで冷却した。THF/ヘキサン中の1Mのリチウムジイソプロピルアミド溶液(3.6mL、3.54mmol)を滴下した。溶液は淡い赤色になり、それを-78℃で1時間撹拌した。次いで、5mLの無水THFに溶解した無水炭酸ジエチル(0.417mL、3.54mmol)をゆっくりと添加し、反応物を室温まで3.5時間温めた。次いで、混合物を飽和NH4Cl水溶液(5mL)でクエンチし、100mLの酢酸エチルで希釈した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させた。残渣をシリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィにより精製した。次いで、中間体を1mLの濃HClに溶解し、100℃で1時間加熱した。揮発性物質を減圧下で除去し、次いで、残渣をエタノール(5mL)に溶解し、数滴の濃硫酸を添加した。溶液を完了するまで室温で撹拌した。反応物を5mLの飽和NaHCO3水溶液でクエンチし、揮発性物質を減圧下で除去した。残渣を飽和NaHCO3(50mL)と酢酸エチル(100mL)との間で分配した。有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させた。化合物7を29%の収率で黄色がかった粘性油として得た。
【0219】
6-ブロモヘキサン酸(103mg、0.53mmol)、化合物7(100mg、0.48mmol)及びヨウ化テトラブチルアンモニウム(数mg、触媒量)を1mLのアセトニトリルに溶解し、100℃で2日間密閉管中で加熱した。次いで、混合物を水と酢酸エチルとの間で分配した。水相を蒸発させて、化合物8をおよそ60%の収率(86mg、0.318mmol)で得た。LC-MS(ESI):(正イオン)m/z322(M+H+)。
【0220】
【0221】
化合物9を5について記載した同じ手順を使用して調製した。粗生成物を精製することなく次の工程で使用した。LC-MS(ESI):(正イオン)m/z236(M+H+)。
【0222】
【0223】
出発物質及び触媒量の酢酸ピペリジニウムをエタノールに溶解し、反応が完了するまで還流した。粗生成物を蒸発させて乾固させ、逆相C18上でフラッシュカラムクロマトグラフィによって精製した。化合物I-1を43%の収率(56mg、0.129mmol)で褐色の固体として得た。1H NMR(400MHz、MeOD):δ(ppm)8.71(d、J=6.9Hz、1H、Ar-H pyr)、8.57(s、1H、Ar-H)、8.48(d、J=2.2Hz、1H、Ar-H pyr)、8.42(dd、J=6.8、2.3Hz、1H、Ar-H pyr)、7.30(s、1H、Ar-H)、6.57(s、1H、Ar-H)、4.51(d、J=7.8Hz、2H、CH2-N+)、3.58-3.48(m、4H、CH2-N)、2.88(s、3H、CH3 pyr)、2.83(t、J=6.2Hz、2H、CH2-Ar)、2.22(t、J=7.1Hz、2H、CH2-COO)、2.04-1.95(m、4H、CH2-CH2-N、CH2-CH2-N+)、1.71(p、J=7.2Hz、2H、CH2-CH2-COO)、1.58-1.44(m、2H、CH2-CH2-CH2-COO)、1.27(d、J=7.1Hz、3H、CH3Et)。LC-MS(ESI):(正イオン)m/z435(M+H+);(負イオン)m/z433(M-)。
【0224】
【0225】
出発物質及び触媒量の酢酸ピペリジニウムをエタノールに溶解し、反応が完了するまで還流した。粗生成物を蒸発させて乾固させ、次いで、残渣を1mLの水中の1mLのトリフルオロ酢酸に溶解し、90℃まで1時間加熱した。反応物を減圧下で蒸発させ、次いで、粗生成物を逆相C18上でフラッシュカラムクロマトグラフィによって精製した。化合物I-2を75%の収率(74mg、0.123mmol)で褐色の固体として得た。1H NMR(400MHz、MeOD):δ(ppm)8.73(d、J=6.1Hz、1H、Ar-H pyr)、8.56(s、1H、Ar-H)、8.49(brs、1H、Ar-H pyr)、8.43(brs、1H、Ar-H pyr)、7.28(s、1H、Ar-H)、6.67(s、1H、Ar-H)、4.73(t、J=8.0Hz、2H、CH2-N+)、3.58-3.45(m、4H、CH2-N)、2.98(t、J=6.6Hz、2H、CH2-SO3
-)、2.91(s、3H、CH3 pyr)、2.82(t、J=6.2Hz、2H、CH2-Ar)、2.39(m、2H、CH2-CH2-N+)、2.32(t、J=7.1Hz、2H、CH2-COO)、2.02-1.91(m、4H、CH2-CH2-N、CH2-CH2-N+)。LC-MS(ESI):(正イオン)m/z501(M+H+);(負イオン)m/z499(M-)。
【0226】
【0227】
化合物I-3をI-2について記載した同じ手順に従って調製した。化合物I-3を59%の収率(32mg、0.064mmol)で褐色の固体として得た。1H NMR(400MHz、MeOD):δ(ppm)8.50(d、J=6.9Hz、1H、Ar-H pyr)、8.41(s、1H、Ar-H)、8.27(d、J=2.3Hz、1H、Ar-H pyr)、8.20(dd、J=6.8、2.3Hz、1H、Ar-H pyr)、7.25(d、J=1.5Hz、1H、Ar-H)、6.45(s、1H、H-Ar)、4.50(d、J=8.2Hz、2H、CH2-N+)、3.38(m、1H、H-ACH2-N)、3.17(m、1H、H-BCH2-N)、2.74(m、3H、CH-Ar、CH2-SO3
-)、2.68(s、3H、CH3 pyr)、2.21-2.09(m、4H、CH2-CH2-N+、CH2-COO)、1.71(m、4H、CH2-CH2-CH2-&CH2-CH)、1.24(s、3H、CH3)、1.20(d、J=6.5Hz、3H、CH3)、1.12(s、3H、CH3)。LC-MS(ESI):(正イオン)m/z543(M+H+);(負イオン)m/z541(M-)。
【0228】
【0229】
化合物I-4をI-2について記載した同じ手順に従って調製した。化合物I-4を84%の収率(77mg、0.135mmol)で褐色の固体として得た。1H NMR(400MHz、MeOD):δ(ppm)8.57(s、1H、Ar-H)、8.35(s、2H、Ar-H pyr)、7.43(d、J=1.5Hz、1H、Ar-H)、6.62(s、1H、H-Ar)、4.58(q、J=7.3Hz、2H、CH2-N+)、3.62(m、1H、H-ACH2-N)、3.34(m、1H、H-BCH2-N)、2.91(s、7H、CH3 pyr、CH3-CH-Ar)、2.29(t、J=7.1Hz、2H、CH2-COO)、1.92(m、4H、CH2-CH2-N、CH2-CH)、1.56(t、J=7.3Hz、3H、CH3Et)、1.46(s、3H、CH3)、1.41(d、J=6.5Hz、3H、CH3)、1.34(s、3H、CH3)。LC-MS(ESI):(正イオン)m/z463(M+H+);(負イオン)m/z461(M-)。
【0230】
【0231】
化合物I-5をI-2について記載した同じ手順に従って調製した。化合物I-4を66%の収率(79mg、0.139mmol)で褐色の固体として得た。1H NMR(400MHz、MeOD):δ(ppm)8.48(s、1H、Ar-H)、8.33(s、2H、Ar-H pyr)、7.24(s、1H、Ar-H pyr)、6.60(s、1H、Ar-H)、4.57(q、J=7.3Hz、2H、CH2-N+)、3.55-3.43(m、4H、CH2-N)、2.90(s、6H、CH3 pyr)、2.80(t、J=6.3Hz、2H、CH2-Ar)、2.27(t、J=7.2Hz、2H、CH2-COO)、2.02-1.89(m、4H、CH2-CH2-N、CH2-CH2-COO)、1.55(t、J=7.3Hz、3H、CH3Et)。LC-MS(ESI):(正イオン)m/z421(M+H+)。
【0232】
【0233】
化合物I-6をI-1について記載した同じ手順に従って調製した。化合物I-6を33%の収率(47mg、0.101mmol)で褐色の固体として得た。1H NMR(400MHz、MeOD):δ(ppm)8.69(d、J=6.9Hz、1H、Ar-H pyr)、8.62(m、2H、Ar-H)、8.35(dd、J=6.9、2.3Hz、1H、Ar-H pyr)、7.33(d、J=1.2Hz、1H、Ar-H)、6.58(s、1H、Ar-H)、4.62-4.54(m、2H、CH2-N+)、3.60-3.48(m、5H、CH2-N、CH iPr)、2.84(t、J=6.2Hz、2H、CH2-Ar)、2.22(t、J=7.1Hz、2H、CH2-COO)、2.05-1.92(m、4H、CH2-CH2-N、CH2-CH2-N+)、1.71(p、J=7.2Hz、2H、CH2-CH2-COO)、1.51(m、8H、CH3 iPr、CH2-CH2-CH2-COO)、1.27(t、J=7.1Hz、3H、CH3Et)。LC-MS(ESI):(正イオン)m/z463(M+H+)。
【0234】
【0235】
化合物I-7をI-2について記載した同じ手順に従って調製した。化合物I-7を33%の収率(48mg、0.1mmol)で褐色の固体として得た。1H NMR(400MHz、MeOD):δ(ppm)8.68(d、J=6.9Hz、1H、Ar-H)、8.66(s、1H、Ar-H)、8.62(d、J=2.3Hz、1H、Ar-H)、8.38(dd、J=6.9、2.3Hz、1H、Ar-H)、7.47(d、J=1.5Hz、1H、Ar-H)、6.64(s、1H、Ar-H)、4.65(q、J=7.3Hz、2H、CH2-N+)、3.62(m、1H、H-ACH2-N)、3.44-3.35(m、1H、H-BCH2-N)、2.91(m、1H、CH iPr)、2.32(t、J=7.2Hz、2H、CH2-COO)、2.00-1.87(m、4H、CH2-CH2-N、CH2-C-N)、1.62(t、J=7.3Hz、3H、CH3Et)、1.52(d、J=6.8Hz、6H、CH3 iPr)、1.47(s、3H、C-CH3)、1.42(d、J=6.5Hz、3H、CH-CH3)、1.36(s、3H、C-CH3)。LC-MS(ESI):(正イオン)m/z477(M+H+)。
【0236】
【0237】
化合物I-8をI-1について記載した同じ手順に従って調製した。化合物I-8を61%の収率(69mg、0.16mmol)で褐色の固体として得た。1H NMR(400MHz、MeOD):δ(ppm)8.74(d、J=6.9Hz、1H、Ar-H pyr)、8.65(s、1H、Ar-H)、8.50(d、J=2.3Hz、1H、Ar-H pyr)、8.43(dd、J=6.9、2.3Hz、1H、Ar-H pyr)、7.61(d、J=9.0Hz、1H、Ar-H)、6.88(dd、J=9.1、2.5Hz、1H、Ar-H)、6.63(d、J=2.4Hz、1H、Ar-H)、4.52(d、J=7.5Hz、2H、CH2-N+)、3.67-3.53(m、4H、CH2-N)、2.89(s、3H、CH3 pyr)、2.22(t、J=7.1Hz、2H、CH2-COO)、1.98(p、J=7.7Hz、2H、CH2-CH2-N+)、1.71(p、J=7.3Hz、2H、CH2-CH2-COO)、1.59-1.46(m、2H、CH2-CH2-CH2-)、1.28(t、J=7.1Hz、6H、CH3Et)。LC-MS(ESI):(正イオン)m/z423(M+H+)、(負イオン)m/z421(M-)。
【0238】
実施例2.アルキルピリジニウムクマリン色素標識されたヌクレオチドの一般的な合成
アルキルピリジニウムクマリン色素(0.015mmol)を2×2mLの無水N,N’-ジメチルホルムアミド(N,N’dimethylformamide、DMF)と共蒸発させ、次いで、1mLの無水N,N’-ジメチルアセトアミド(N,N’dimethylacetamide、DMA)に溶解した。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(17μL、0.1mmol)を添加し、続いてN,N,N’,N’-テトラメチル-O-(N-スクシンイミジル)ウロニウムテトラフルオロボレート(TSTU、4.8mg、0.016mmol)を添加した。反応物を窒素下、室温で30分間撹拌した。この合間、ヌクレオチド三リン酸(0.01mmol)の水溶液を減圧下で蒸発させて乾固させ、100μLの水中の0.1Mの重炭酸トリエチルアンモニウム(triethylammonium bicarbonate、TEAB)溶液に再懸濁した。活性化された色素溶液をトリホスフェートに添加し、反応物を室温で最大18時間撹拌し、RP-HPLCによって監視した。粗生成物を、重炭酸トリエチルアンモニウム水溶液(TEAB、0.1M~1M)の線形勾配で溶出するDEAE-Sephadex A25(25g)上でイオン交換クロマトグラフィによって精製した。トリホスフェートを含有する画分をプールし、溶媒を減圧下で蒸発させて乾固させた。粗生成物を、YMC-Pack-ProC18カラムを使用して分取スケールHPLCによって更に精製した。
【0239】
【0240】
ffA-sPA-LN3-(I-1):収量:8.5μmol、(53%)。LC-MS(ES):(負イオン)m/z1360(M-H+)、680(M-2H+)。UV-可視λmax:507nm。蛍光λmax:566nm。
【0241】
【0242】
ffA-LN3-(I-2):収量:1.9μmol、(38%)。LC-MS(ES):(負イオン)m/z1428(M-H+)。UV-可視λmax:502nm。蛍光λmax:563nm。
【0243】
【0244】
ffA-LN3-(I-3):収量:30.7μmol、(61%)。LC-MS(ES):(負イオン)m/z1470(M-H+)。UV-可視λmax:501nm。蛍光λmax:565nm。
【0245】
【0246】
ffA-LN3-(I-4):収量:1.4μmol、(29%)。LC-MS(ES):(負イオン)m/z1390(M-H+)。UV-可視λmax:493nm。蛍光λmax:551nm。
【0247】
【0248】
ffA-LN3-(I-5):収量:2.7μmol、(54%)。LC-MS(ES):(負イオン)m/z1348(M-H+)。UV-可視λmax:491nm。蛍光λmax:555nm。
【0249】
【0250】
ffA-sPA-LN3-(I-8):収量:7.8μmol、(78%)。LC-MS(ES):(負イオン)m/z1348(M-H+)。UV-可視λmax:495nm。蛍光λmax:556nm。
【0251】
実施例3.アルキルピリジニウムクマリン色素のスペクトル特性
この実施例では、本明細書に記載のいくつかのアルキルピリジニウムクマリン色素のスペクトル特性を、メチル化を伴わない対応する参照色素と比較した。
図1A及び
図1Bにおいて、Universal Scan Mix(USM、1MのTris pH7.5、0.05%のTWEEN、20mMのアスコルビン酸ナトリウム、10mMの没食子酸エチル)の溶液中のメチルピリジニウムクマリン色素I-1の蛍光発光を、それぞれ、450nm(「青色光」)及び520nm(「緑色光」)の励起波長で参照色素Aの蛍光発光と比較した。スペクトルは、石英キュベットを使用して、Agilent Cary 100 UV-可視分光光度計及びCary Eclipse蛍光分光光度計で取得した。色素I-1は、参照色素Aと比較して、緑色光励起時におよそ2倍の蛍光発光の増加、及び青色光励起時におよそ3倍の蛍光発光の増加を示したことが観測された。
【0252】
同様に、
図2A及び
図2Bは、それぞれ450nm及び520nmの励起波長での、参照色素Cの蛍光発光と比較したUSM溶液中のメチルピリジニウムクマリン色素I-5の蛍光発光を示す。
図3A及び
図3Bは、それぞれ450nm及び520nmの励起波長での、参照色素Bの蛍光発光と比較したUSM溶液中のメチルピリジニウムクマリン色素I-8の蛍光発光を示す。クマリン色素I-5は、参照色素Cと比較して、緑色光励起時におよそ2.5倍の蛍光発光の増加、及び青色光励起時におよそ8倍の蛍光発光の増加を示した。クマリン色素I-8は、参照色素Bと比較して、緑色光励起時に同様の蛍光発光、及び青色(450nm)光励起時におよそ2.5倍の蛍光発光の増加を示した。
【0253】
【0254】
実施例4.アルキルピリジニウムクマリンコンジュゲートffAヌクレオチドのスペクトル特性
この実施例では、本明細書に記載のメチルピリジニウムクマリン色素とコンジュゲートしたいくつかの完全に官能化されたAヌクレオチド(ffA)のスペクトル特性を、メチル化を伴わない対応する参照色素と比較した。
図4A及び
図4BにおいてUSM溶液中の2μMの溶液としてのメチルピリジニウムクマリン色素I-1とコンジュゲートしたffAの蛍光発光を、それぞれ、450nm(「青色光」)及び520nm(「緑色光」)の励起波長で参照色素Aの蛍光発光と比較した。スペクトルは、石英キュベットを使用して、Agilent Cary 100 UV-可視分光光度計及びCary Eclipse蛍光分光光度計で取得した。ffA-sPA-LN3-(I-1)は、ffA-sPA-LN3-(参照色素A)と比較して、緑色光励起時に同様の蛍光発光、及び青色光励起時におよそ3倍の蛍光発光の増加を示したことが観測された。
【0255】
同様に、
図5A及び
図5Bは、それぞれ450nm及び520nmの励起波長での、参照色素Cの蛍光発光と比較したUSM溶液中の2μMの溶液としてのメチルピリジニウムクマリン色素I-5とコンジュゲートしたffAの蛍光発光を示す。
図6A及び
図6Bは、それぞれ450nm及び520nmの励起波長での、参照色素Bの蛍光発光と比較したUSM溶液中の2μMの溶液としてのメチルピリジニウムクマリン色素I-8とコンジュゲートしたffAの蛍光発光を示す。
図7A及び
図7Bは、それぞれ450nm及び520nmの励起波長での、参照色素Bの蛍光発光と比較したUSM溶液中の2μMの溶液としてのメチルピリジニウムクマリン色素I-3とコンジュゲートしたffAの蛍光発光を示す。ffA-LN3-(I-5)は、ffA-sPA-LN3-(参照色素C)と比較して、緑色光(520nm)励起時に同様の蛍光発光、及び青色(450nm)光励起時におよそ2.5倍の蛍光発光の増加を示した。ffA-sPA-LN3-(I-8)は、ffA-sPA-LN3-(参照色素B)と比較して、緑色光(520nm)励起時に同様の蛍光発光、及び青色(450nm)光励起時におよそ1.6倍の蛍光発光の増加を示した。ffA-sPA-LN3-(I-3)は、ffA-sPA-LN3-(参照色素D)と比較して、緑色光(520nm)励起時に同様の蛍光発光、及び青色(450nm)光励起時におよそ1.2倍の蛍光発光の増加を示した。
【0256】
【0257】
実施例5.Illumina iSeq(商標)100機器での配列決定実験
この実施例では、本明細書に記載のffA-リンカー色素化合物は、緑色励起光(約520nm)での第1の画像及び青色励起光(約450nm)での第2の画像を撮影するために設定されたIllumina iSeq(商標)100機器で試験された。配列決定の方策は、標準的なSBSサイクル(組み込み、続いて撮像、続いて開裂)を実施するために修飾された。これらの実験の各々において使用される組み込み混合物は、以下の4つのffNsを含有した。1)本明細書に記載のアルキルピリジニウム色素をコンジュゲートしたffA又は本明細書に記載の参照色素をコンジュゲートしたffA、2)本明細書に記載のアルキルピリジニウム色素とコンジュゲートしたffAが使用された場合、450nmの青色光で励起可能であるffC(例えば、ffC-リンカー-クマリン色素E)、並びに本明細書に記載の参照色素と結合したffAとを使用した場合)、ffC-リンカー-クマリン色素F)、3)緑色光で励起可能なffT(例えば、ffT-LN3-NR550s0)、4)50mMのエタノールアミン緩衝液、pH9.6、50mMのNaCl、1mMのEDTA、0.2%のCHAPS、4mMのMgSO4及びDNAポリメラーゼ中の標識されていないffG(暗色ffG)。クマリン色素E及びFは、米国特許出願公開第2018/0094140号に開示されており、ffCとコンジュゲートした場合、それぞれ構造部分
【0258】
【化71】
を有する。
図8A及び
図8Bは、それぞれ、ffA-sPA-LN3-(I-1)及びffA-sPA-LN3-(参照色素A)を含む組み込み混合物について得られた散布図を示す。
図8C及び
図8Dは、それぞれ、ffA-sPA-LN3-(I-3)及びffA-sPA-LN3-(参照色素D)を含む組み込み混合物について得られた散布図を示す。両方の例において、アルキルピリジニウムクマリン色素とコンジュゲートしたffAを含有する組み込み混合物は、ピリジニウム部分にメチル置換を含まない対応する参照色素と比較して、Aクラウドの増加した強度及びより良好な分離を提供することが観察された。
【0259】
表1は、標準的な試薬及び標準的な方策を使用したIllumina iSeq(商標)100機器での2×151サイクルの実行から得られた計量と比較した、iSeq(商標)100での2×151サイクルの場合の、ffA-sPA-LN3-(I-1)、ffA-LN3-(I-3)及びffA-sPA-(参照色素D)についてのフェージング、プレフェージング、及びPhiXエラー率の計量を示す。これらの実験の各々において使用される組み込み混合物は、以下の4つのffNsを含有した。1)本明細書に記載のアルキルピリジニウム色素をコンジュゲートしたffA又は本明細書に記載の参照色素をコンジュゲートしたffA、2)本明細書に記載のアルキルピリジニウム色素とコンジュゲートしたffAが使用された場合、450nmの青色光で励起可能であるffC(例えば、ffC-リンカー-クマリン色素E)、並びに本明細書に記載の参照色素と結合したffAとを使用した場合)、ffC-リンカー-クマリン色素F、3)緑色光で励起可能なffT(例えば、ffT-LN3-NR550s0)、4)50mMのエタノールアミン緩衝液、pH9.6、50mMのNaCl、1mMのEDTA、0.2%のCHAPS、4mMのMgSO4及びDNAポリメラーゼ中の標識されていないffG(暗色ffG)。ffA-sPA-(参照色素D)及び標準的なiSeq(商標)100の試薬と比較して、化合物ffA-sPA-LN3-(I-1)及びffA-LN3-(I-3)でPhiXエラー率計量の改善を観察した。
【0260】
【表1】
更に、Illumina iSeq(商標)100機器での2×300サイクルの実行を実施するために、化合物ffA-sPA-LN3-(I-1)を選択した。機器は、緑色励起光での第1の画像及び青色励起光での第2の画像を撮影するために設定され、その方策は、2×300サイクルの標準的なSBSサイクル(取り込み、続いて撮像、続いて開裂)を実施するために修正された。これらの実験で使用される組み込み混合物は、以下の4つのffNsを含有した:1)ffA-sPA-LN3-(I-1)、2)450nmの青色光で励起可能なffC(例えば、ffC-リンカー-クマリン色素E)、3)緑色光で励起可能なffT(例えば、ffT-リンカー-NR550s0)、及び4)50mMのエタノールアミン緩衝液、pH9.6、50mMのNaCl、1mMのEDTA、0.2%のCHAPS、4mMのMgSO
4及びDNAポリメラーゼ中の暗色ffG。フェージング、プレフェージング、PhiXエラー率、及びQ30%の計量を以下の表2に示す。
【0261】
【国際調査報告】