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特表2023-552935核酸配列決定のための方法、システム、及び組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-20
(54)【発明の名称】核酸配列決定のための方法、システム、及び組成物
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6869 20180101AFI20231213BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20231213BHJP
   C12Q 1/6834 20180101ALI20231213BHJP
   C12Q 1/6816 20180101ALI20231213BHJP
【FI】
C12Q1/6869
C12N15/11 Z
C12Q1/6834 Z
C12Q1/6816 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580797
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(85)【翻訳文提出日】2023-02-02
(86)【国際出願番号】 EP2021086349
(87)【国際公開番号】W WO2022129439
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】63/127,043
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】502279294
【氏名又は名称】イルミナ ケンブリッジ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】リウ,シャオハイ
(72)【発明者】
【氏名】ウー,シャオリン
(72)【発明者】
【氏名】マッコーリー,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ラマノフ,ニコライ ニコラエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】クレッシナ,エレナ
(72)【発明者】
【氏名】フランセ,アントワーヌ
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA13
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR56
4B063QR62
4B063QR63
4B063QS34
4B063QX02
(57)【要約】
本開示は、核酸配列決定用途のための方法、システム、キット、及び組成物に関する。特に、本方法は、異なる励起波長及び単一の発光チャネルを用いた2つの撮像イベントを利用して、異なるタイプのヌクレオチドコンジュゲートの蛍光シグナルパターンを収集し、組み込まれたヌクレオチドコンジュゲートの同一性を決定する。本明細書に記載の方法は、2つの撮像イベントの間で、組み込み混合物におけるヌクレオチドコンジュゲートの化学的処理を必要としない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的ポリヌクレオチドの配列を決定するための方法であって、
(a)プライマーポリヌクレオチドを、4つの異なるタイプのヌクレオチドコンジュゲートのうちの1つ以上を含む混合物と接触させることであって、第1のタイプのヌクレオチドコンジュゲートが、第1の標識を含み、第2のタイプのヌクレオチドコンジュゲートが、第2の標識を含み、第3のタイプのヌクレオチドコンジュゲートが、第3の標識を含み、前記第1の標識、前記第2の標識、及び前記第3の標識の各々が、互いにスペクトル的に異なり、前記プライマーポリヌクレオチドが、前記標的ポリヌクレオチドの少なくとも一部に相補的である、接触させることと、
(b)前記混合物からヌクレオチドコンジュゲートを前記プライマーポリヌクレオチドに組み込んで、伸長したプライマーポリヌクレオチドを生成することと、
(c)第1の励起光源を使用して第1の撮像イベントを行い、前記伸長したプライマーポリヌクレオチドから第1の発光シグナルを収集することと、
(d)第2の励起光源を使用して第2の撮像イベントを行い、前記伸長したプライマーポリヌクレオチドから第2の発光シグナルを収集することと、を含み、
前記第1の励起光源及び前記第2の励起光源が、異なる波長を有し、第1の発光シグナル及び前記第2の発光シグナルが、単一発光検出チャネルに収集される、方法。
【請求項2】
第4のタイプのヌクレオチドコンジュゲートが、標識されていないか、又は前記第1の撮像イベント若しくは前記第2の撮像イベントのいずれからも検出可能なシグナルを放出しない蛍光部分で標識されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のタイプの前記ヌクレオチドコンジュゲートの組み込みが、前記第1の撮像イベントにおけるシグナル状態及び前記第2の撮像イベントにおける暗状態によって決定される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2のタイプの前記ヌクレオチドコンジュゲートの組み込みが、前記第1の撮像イベントにおける暗状態及び前記第2の撮像イベントにおけるシグナル状態によって決定される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第3のタイプの前記ヌクレオチドコンジュゲートの組み込みが、前記第1の撮像イベント及び前記第2の撮像イベントの両方におけるシグナル状態によって決定される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第4のタイプの前記ヌクレオチドコンジュゲートの組み込みが、前記第1の撮像イベント及び前記第2の撮像イベントの両方における暗状態によって決定される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記4つのタイプのヌクレオチドコンジュゲートが、dATP、dCTP、dGTP、及びdTTP若しくはdUTP、又はそれらの非天然ヌクレオチド類似体を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記混合物中の前記4つのタイプのヌクレオチドコンジュゲートの各々が、3’ヒドロキシル遮断基を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
(e)前記第2の撮像イベントの後、及び次の配列決定サイクルの前に、前記組み込まれたヌクレオチドコンジュゲートから前記3’ヒドロキシル遮断基及び標識を除去することを更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(a)~(e)を複数のサイクルで繰り返すことと、
連続的に組み込まれたヌクレオチドコンジュゲートに基づいて、前記標的ポリヌクレオチドの配列を決定することと、を更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(a)~(e)が、少なくとも50サイクル繰り返される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の励起光源及び前記第2の励起光源の各々が、レーザー、発光ダイオード(LED)、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の励起光源が、約400nm~約480nmの波長を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の励起光源が、約450nm~約460nmの波長を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の励起光源が、約490nm~約550nmの波長を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の励起光源が、約510nm~約530nmの波長を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の励起光源が、約490nm~約550nmの波長を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の励起光源が、約510nm~約530nmの波長を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の励起光源が、約400nm~約480nmの波長を有する、請求項1~12、17、及び18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記第2の励起光源が、約450nm~約460nmの波長を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記単一発光検出チャネルが、約560nmを超える検出スペクトル範囲を有する、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記方法が、前記第1の撮像イベントと前記第2の撮像イベントとの間で、前記混合物中にいずれのヌクレオチドコンジュゲートの化学修飾も含まない、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記標的ポリヌクレオチドが、固体支持体に固定されている、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記固体支持体が、複数の固定された標的ポリヌクレオチドを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記固体支持体が、パターン化フローセルを含む、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
前記パターン化フローセルが、複数のナノウェルを含み、各ナノウェルが、固定された標的ポリヌクレオチドを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記固体支持体が、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)チップを更に含む、請求項23~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
配列決定用途のためのキットであって、
第1の標識を含む、第1のタイプのヌクレオチドコンジュゲートと、
第2の標識を含む、第2のタイプのヌクレオチドコンジュゲートと、
第3の標識を含む、第3のタイプのヌクレオチドコンジュゲートと、を含み、
前記第1の標識、前記第2の標識、及び前記第3の標識の各々が、互いにスペクトル的に異なり、前記第1の標識及び前記第3の標識が、第1の光源波長を使用して励起可能であり、前記第2の標識及び前記第3の標識が、前記第1の光源波長とは異なる第2の光源波長を使用して励起可能であり、
前記第1の標識、前記第2の標識、及び前記第3の標識の各々が、単一検出チャネルで検出可能である発光スペクトルを有する、キット。
【請求項29】
第4のタイプのヌクレオチドを更に含み、前記第4のタイプのヌクレオチドが、非標識(暗色)である、請求項28に記載のキット。
【請求項30】
前記第1の光源が、約400nm~約480nmの波長を有する、請求項28又は29に記載のキット。
【請求項31】
前記第1の光源が、約450nm~約460nmの波長を有する、請求項30に記載のキット。
【請求項32】
前記第2の光源が、約490nm~約550nmの波長を有する、請求項28~31のいずれか一項に記載のキット。
【請求項33】
前記第2の光源が、約510nm~約530nmの波長を有する、請求項32に記載のキット。
【請求項34】
前記単一発光検出チャネルが、約560nmを超える検出スペクトル範囲を有する、請求項28~33のいずれか一項に記載のキット。
【請求項35】
DNAポリメラーゼ及び1つ以上の緩衝組成物を更に含む、請求項28~34のいずれか一項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全般的には、核酸配列決定用途のための方法、システム、キット、及び組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
核酸配列決定方法は、Maxam及びGilbertによって使用された化学的分解法並びにSangerによって使用されたストランド伸長法から著しく進化している。現在では、数千個の核酸の並行した処理を単一シークエンシング実行で全て可能にするいくつかの配列決定方法論が使用されている。かかる方法を行う装置は、一般的には大型で高価であるが、それは現在の方法が、典型的には、配列決定反応への核酸の組み込みを記録するために、多量の高価な試薬及び複数のセットの光学フィルタに依存しているためである。
【0003】
ハイスループットで、より小さく、より安価なDNA配列決定技術の必要性は、ゲノム配列決定の利得を得るために有益であることが明らかになってきている。個別化医療は、前に向かって進んでおり、かかる技術から利益を得る。潜在的な変異及び異常を特定する個体ゲノムの配列決定は、人が特定の疾患を有する場合、続いてその個体に適合させた次の療法を特定する際に重要である。かかる努力に適応するために、配列決定技術は、ハイスループット能力を有するだけでなく、拡張性を有するべきである。したがって、速度、エラー読み取りが改善され、また費用効果がある新規配列決定法の必要性が存在している。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、次世代配列決定法、システム、及び組成物を提供する。本開示のいくつかの実施形態は、標的ポリヌクレオチドの配列を決定するための方法に関するものであり、方法は、
(a)プライマーポリヌクレオチドを、4つの異なるタイプのヌクレオチドコンジュゲートのうちの1つ以上を含む混合物(すなわち、組み込み混合物)と接触させることであって、第1のタイプのヌクレオチドコンジュゲートが、第1の標識を含み、第2のタイプのヌクレオチドコンジュゲートが、第2の標識を含み、第3のタイプのヌクレオチドコンジュゲートが、第3の標識を含み、第1の標識、第2の標識、及び第3の標識の各々が、互いにスペクトル的に異なり、プライマーポリヌクレオチドが、標的ポリヌクレオチドの少なくとも一部に相補的である、接触させることと、
(b)混合物からヌクレオチドコンジュゲートをプライマーポリヌクレオチドに組み込んで、伸長したプライマーポリヌクレオチドを生成することと、
(c)第1の励起光源を使用して第1の撮像イベントを行い、伸長したプライマーポリヌクレオチドから第1の発光シグナルを収集することと、
(d)第2の励起光源を使用して第2の撮像イベントを行い、伸長したプライマーポリヌクレオチドから第2の発光シグナルを収集することと、を含み、
第1の励起光源及び第2の励起光源は、異なる波長を有し、第1の発光シグナル及び第2の発光シグナルは、単一発光検出チャネル/フィルタに検出又は収集される。いくつかの実施形態において、方法は、第1の撮像イベントの後及び第2の撮像イベントの前に、混合物中にいずれのヌクレオチドコンジュゲートの化学修飾も含まない。いくつかの実施形態において、混合物は、第4のタイプのヌクレオチドコンジュゲートを更に含み、第4のタイプのヌクレオチドコンジュゲートは、標識されていないか、又は第1若しくは第2の撮像イベントのどちらからもシグナルを放出しない蛍光部分で標識されているのいずれかである。いくつかの更なる実施形態において、組み込み混合物中の4つの異なるタイプのヌクレオチドコンジュゲートのうちの1つ以上の各々は、3’ヒドロキシル遮断基を含む。
【0005】
本明細書に記載の配列決定法では、組み込まれた各ヌクレオチドコンジュゲートの同一性は、第1の撮像イベント及び第2の撮像イベントの検出パターンに基づいて決定される。例えば、第1のタイプのヌクレオチドコンジュゲートの組み込みは、第1の撮像イベントにおけるシグナル状態及び第2の撮像イベントにおける暗状態によって決定される。第2のタイプのヌクレオチドコンジュゲートの組み込みは、第1の撮像イベントにおける暗状態及び第2の撮像イベントにおけるシグナル状態によって決定される。第3のタイプのヌクレオチドコンジュゲートの組み込みは、第1の撮像イベント及び第2の撮像イベントの両方におけるシグナル状態によって決定される。第4のタイプのヌクレオチドコンジュゲートの組み込みは、第1の撮像イベント及び第2の撮像イベントの両方における暗状態によって決定される。いくつかの実施形態において、ステップ(a)における混合物は、4つの異なるタイプのヌクレオチドコンジュゲート(A、C、G、及びT又はU)を含む。いくつかの更なる実施形態において、4つのタイプのヌクレオチドコンジュゲートのうちの3つは、互いにスペクトル的に異なるフルオロフォアで各々標識されており、ヌクレオチドのうちの1つは、フルオロフォアで標識されていない。更なる実施形態において、ステップ(a)~(d)は、繰り返しサイクル(例えば、少なくとも30、50、100、150、200、250、又は300回)で行われ、方法は、各組み込まれたヌクレオチドコンジュゲートの同一性を順次決定し、それによって一本鎖ポリヌクレオチドの少なくとも一部の配列を決定することを更に含む。
【0006】
本開示の追加の実施形態は、配列決定用途のためのキットに関するものであり、キットは、
第1の標識を含む、第1のタイプのヌクレオチドコンジュゲートと、
第2の標識を含む、第2のタイプのヌクレオチドコンジュゲートと、
第3の標識を含む、第3のタイプのヌクレオチドコンジュゲートと、を含み、
第1の標識、第2の標識、及び第3の標識の各々は、互いにスペクトル的に異なり、第1の標識及び第3の標識は、第1の光源波長を使用して励起可能であり、第2の標識及び第3の標識は、第1の光源波長とは異なる第2の光源波長を使用して励起可能であり、第1の標識、第2の標識、及び第3の標識の各々は、単一検出チャネルで検出可能である発光スペクトルを有する。いくつかの実施形態において、キットは、4つの異なるタイプのヌクレオチドコンジュゲート(A、C、G、及びT又はU)を含む。いくつかの更なる実施形態において、4つのタイプのヌクレオチドコンジュゲートのうちの3つは、互いにスペクトル的に異なるフルオロフォアで各々標識されており、ヌクレオチドのうちの1つは、フルオロフォアで標識されていない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】標準的なIllumina 1チャネル 合成による配列決定(SBS)化学のフローチャートを示す。
図1B】標準的な1チャネルSBSからの画像1及び画像2が、どのように画像分析ソフトウェアによって処理され、どの塩基が組み込まれているか特定することを示す。
図2】本明細書に記載の配列決定法の実施形態を示す。
図3A】本明細書に記載の配列決定法のための検出システムの実施形態を示す。
図3B】本明細書に記載の単一発光検出チャネルの実施形態を示す。
図4】本明細書に記載の配列決定法の実施形態に従って、iSeq(商標)100システムで得られた散布図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
Illuminaの次世代配列決定システムであるiSeq(商標)100は、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)ベースの技術を使用して、簡略化されたアクセス可能なベンチトップ配列決定ソリューションをもたらす。標準的な配列決定ワークフローは、図1A及び1Bに示され、1チャネル配列決定とも呼ばれる。各配列決定サイクルは、2つの化学ステップ及び2つの撮像ステップを含む。図1Aでは、第1の化学ステップは、蛍光標識されたアデニン及びチミンを有するヌクレオチドの混合物にフローセルを露出させる。第1の撮像ステップの間、各クラスターからの発光は、CMOSセンサによって記録される。第2の化学ステップは、アデニンから蛍光標識を除去し、蛍光標識をシトシンに付加する。両方の化学ステップにおいて、グアニンは暗色(標識されていない)である。第2の画像を記録する。図1Bでは、画像1と画像2との組み合わせは、画像分析ソフトウェアによって処理されて、どの塩基が各クラスター位置に組み込まれているかを特定する。この配列決定サイクルは、「n」回繰り返えされ、「n」個の塩基の読み取り長を作成する。4チャネルSBS化学とは異なり、シークエンサーは各ヌクレオチドについて異なる色素を使用するが、iSeq(商標)100システムは、配列決定サイクル毎に1つの色素を使用する。1チャネル化学では、アデニンは取り外し可能な標識を有し、第1の画像のみで標識される。シトシンは、標識に結合することができ、第2の画像でのみ標識されるリンカー基である。チミンは、永続的な蛍光標識を有し、したがって、両方の画像で標識されており、グアニンは永続的に暗色である。ヌクレオチドは、2つの画像にまたがる各塩基における異なる発光パターンの分析によって特定される。
【0009】
本開示は、IlluminaのiSeq(商標)100プラットフォームに記載の1チャネル配列決定に、代替的な改善されたソリューションを提供する。特に、本開示は、2つの撮像ステップ及び1つの発光検出フィルタ/チャネルを使用してヌクレオチドの組み込みの同一性を決定するための方法を提供する。より少ないフィルタの使用によって、より小さいフットプリントで行う配列決定を可能にする。更に、本開示の方法は、上記の第2の化学ステップを排除する。本明細書に記載される方法及びシステムは、データ出力速度及び精度を増加させながら、装置ハードウェアの必要性を減少させ、装置のサイズ、試薬の使用、及びコストを低減させる。例えば、本明細書に記載の方法は、IlluminaのiSeq(商標)配列決定システムで使用することができ、迅速なターンアラウンド時間及び効率的な配列決定を提供する。
【0010】
定義
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当該技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。用語「含む(including)」、並びに他の形態、例えば、「含む(include)」、「含む(includes)」、及び「含まれる(included)」の使用は、限定的ではない。更に、用語「有する(having)」、並びに他の形態、例えば、「有する(have)」、「有する(has)」、及び「有した(had)」の使用は、限定的ではない。本明細書で使用されるとき、移行句又は請求項の本文において、用語「含む(comprise)」及び「含む(comprising)」は、オープンエンドの意味を有するものとして解釈されるべきである。すなわち、上記の用語は、語句「少なくとも有する」又は「少なくとも含む」と同義であると解釈されるべきである。例えば、プロセスの文脈において使用される場合、用語「含む(comprising)」は、プロセスが少なくとも列挙された工程を含むが、追加の工程を含み得ることを意味する。化合物、組成物、又はデバイスの文脈で使用される場合、用語「含む(comprising)」は、化合物、組成物、又はデバイスが少なくとも列挙された特徴又は構成要素を含むが、追加の特徴又は構成要素も含み得ることを意味する。
【0011】
本明細書で使用される場合、一般的な有機略語は、以下のように定義される。
℃ 摂氏温度
dATP デオキシアデノシン三リン酸
dCTP デオキシシチジン三リン酸
dGTP デオキシグアノシン三リン酸
dTTP デオキシチミジン三リン酸
ddNTP ジデオキシヌクレオチド三リン酸
ffA 完全官能化Aヌクレオチド
ffC 完全官能化Cヌクレオチド
ffG 完全官能化Gヌクレオチド
ffN 完全官能化ヌクレオチド
ffT 完全官能化Tヌクレオチド
LED 発光ダイオード
SBS 合成による配列決定
【0012】
本明細書で使用される場合、「アレイ」という用語は、異なるプローブ分子を相対的な位置に従って互いに区別することができるように、1つ以上の基材に結合されている異なるプローブ分子の集団を指す。アレイは、基材上の異なるアドレス可能な位置に各々配置されるプローブ分子を含むことができる。代替的に、又は追加的に、アレイは、各々が異なるプローブ分子を担持する別個の基材を含むことができ、異なるプローブ分子は、基材が結合される表面上の基材の位置に従って、又は液体中の基材の位置に従って特定することができる。別個の基材が表面上に位置する例示的なアレイには、例えば、米国特許第6,355,431B1号、US2002/0102578、及びPCT公開第WO00/63437号に記載されているように、ウェル中にビーズを含むものが挙げられるが、これらに限定されない。液体アレイ中のビーズを区別するために本発明で使用することができる例示的な形式は、例えば、蛍光活性化細胞選別装置(FACS)などのマイクロ流体デバイスを使用し、例えば、米国特許第6,524,793号に記載されている。本発明で使用することができるアレイの更なる例には、米国特許第5,429,807号、同第5,436,327号、同第5,561,071号、同第5,583,211号、同第5,658,734号、同第5,837,858号、同第5,874,219号、同第5,919,523号、同第6,136,269号、同第6,287,768号、同第6,287,776号、同第6,288,220号、同第6,297,006号、同第6,291,193号、同第6,346,413号、同第6,416,949号、同第6,482,591号、同第6,514,751号、及び同第6,610,482号、並びにWO93/17126、WO95/11995、WO95/35505、EP742287、及びEP799897が含まれる。
【0013】
本明細書で使用するとき、用語「共有結合した(「covalently attached」又は「covalently bonded」)」は、原子間の電子対の共有によって特徴付けられる化学結合の形成を指す。例えば、共有結合したポリマーコーティングとは、他の手段、例えば、接着又は静電相互作用による表面への付着と比較して、基材の官能化表面と化学結合を形成するポリマーコーティングを指す。表面に共有結合したポリマーは、共有結合に加えて、手段によって結合され得ることが理解されるであろう。
【0014】
本明細書に記載される化合物の単一のメソメリー形態が示されている各事例においては、代替のメソメリー形態も同様に企図される。
【0015】
本明細書に使用されるとき、「ヌクレオチド」は、窒素含有複素環式塩基、糖、及び1つ以上のリン酸基を含む。それらは、核酸配列のモノマー単位である。RNA中では、糖は、リボースであり、DNA中では、デオキシリボース、すなわち、リボース中に存在するヒドロキシル基を欠く糖である。窒素含有複素環式塩基は、プリン、デアザプリン、又はピリミジン塩基であることができる。プリン塩基には、アデニン(A)及びグアニン(G)、並びに7-デアザアデニン若しくは7-デアザグアニンなどの、それらの修飾された誘導体又は類似体が含まれる。ピリミジン塩基としては、シトシン(C)、チミン(T)、及びウラシル(U)、並びにそれらの修飾された誘導体又は類似体が挙げられる。デオキシリボースのC-1原子は、ピリミジンのN-1又はプリンのN-9に結合される。
【0016】
本明細書で使用される場合、「ヌクレオチドコンジュゲート」は、一般に、任意選択的に本明細書に記載される開裂リンカーを通して、蛍光部分で標識されたヌクレオチドを指す。いくつかの実施形態において、ヌクレオチドコンジュゲートが、非標識ヌクレオチドコンジュゲートとして記載される場合、かかるヌクレオチドは、蛍光部分を含まない。いくつかの更なる実施形態において、非標識ヌクレオチドコンジュゲートはまた、開裂可能なリンカーを有さない。
【0017】
本明細書で使用される場合、「ヌクレオシド」は、ヌクレオチドと構造的に類似しているが、リン酸部分を欠いている。ヌクレオシド類似体の例は、標識が塩基に連結され、糖分子に結合したリン酸基が存在しないものである。用語「ヌクレオシド」は、当業者によって理解される通常の意味で、本明細書で使用される。例としては、リボース部分を含むリボヌクレオシド、及びデオキシリボース部分を含むデオキシリボヌクレオシドが挙げられるが、これらに限定されない。修飾されたペントース部分は、酸素原子が炭素で置き換えられている、かつ/又は炭素が硫黄又は酸素原子で置き換えられている、ペントース部分である。「ヌクレオシド」は、置換塩基及び/又は糖部分を有し得るモノマーである。更に、ヌクレオシドは、より大きなDNA及び/又はRNAポリマー及びオリゴマーに組み込まれ得る。
【0018】
用語「プリン塩基」は、当業者によって理解される通常の意味で、本明細書で使用され、その互変異性体を含む。同様に、用語「ピリミジン塩基」は、当業者によって理解される通常の意味で、本明細書で使用され、その互変異性体を含む。任意に置換されたプリン塩基の非限定的なリストとしては、プリン、アデニン、グアニン、デアザプリン、7-デアザアデニン、7-デアザグアニン、ヒポキサンチン、キサンチン、アロキサンチン、7-アルキルグアニン(例えば、7-メチルグアニン)、テオブロミン、カフェイン、尿酸、及びイソグアニンが挙げられる。ピリミジン塩基の例としては、シトシン、チミン、ウラシル、5,6-ジヒドロウラシル、及び5-アルキルシトシン(例えば、5-メチルシトシン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
本明細書で使用される場合、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドが、本明細書に記載のヌクレオシド又はヌクレオチドを「含む」として記載される場合、それは、本明細書に記載のヌクレオシド又はヌクレオチドは、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドと共有結合を形成することを意味する。同様に、ヌクレオシド又はヌクレオチドが、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドに「組み込まれた」など、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの一部として記載される場合、それは、本明細書に記載のヌクレオシド又はヌクレオチドは、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドと共有結合を形成することを意味する。いくつかのそのような実施形態では、共有結合は、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの3’ヒドロキシ基と、本明細書に記載のヌクレオチドの5’リン酸基との間で、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの3’炭素原子とヌクレオチドの5’炭素原子との間のホスホジエステル結合として形成される。
【0020】
本明細書で使用される場合、「開裂可能なリンカー」という用語は、リンカー全体を除去する必要があることを意味するものではない。開裂部位は、リンカーの一部が、開裂後に検出可能な標識及び/又はヌクレオシド若しくはヌクレオチド部分に結合したままであることを確実にするリンカー上の位置に配置することができる。
【0021】
本明細書で使用される場合、「誘導体」又は「類似体」は、修飾された塩基部分及び/又は修飾された糖部分を有する合成ヌクレオチド又はヌクレオシド誘導体を意味する。そのような誘導体及び類似体は、例えば、Scheit,Nucleotide Analogs(John Wiley&Son,1980)及びUhlman et al.,Chemical Reviews 90:543-584,1990に考察されている。ヌクレオチド類似体はまた、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、アルキル-ホスホネート、ホスホラニリデート(phosphoranilidate)、及びホスホラミデート連結を含む修飾されたホスホジエステル連結を含むことができる。本明細書で使用される「誘導体」、「類似体」、及び「修飾された」は、互換的に使用され得、本明細書で定義される用語「ヌクレオチド」及び「ヌクレオシド」に包含される。
【0022】
本明細書で使用される場合、用語「リン酸塩」は、当業者によって理解される通常の意味で使用され、そのプロトン化形態(例えば、
【0023】
【化1】
)を含む。本明細書で使用される場合、用語「一リン酸」、「二リン酸」、及び「三リン酸」は、当業者によって理解される通常の意味で使用され、プロトン化形態を含む。
【0024】
当業者には理解されるように、本明細書に記載のヌクレオチドコンジュゲートなどの化合物は、例えば、-CO 、-SO 、又は-Oを含む、イオン化形態で存在し得る。化合物が、正又は負に帯電した置換基を含有する場合、化合物が全体として中性であるように、負又は正に帯電した対イオンを含有してもよい。他の態様では、化合物は塩形態で存在してもよく、対イオンは、共役酸又は塩基によって提供される。
【0025】
本明細書で使用される場合、用語「フェージング」は、3’ターミネーター及びフルオロフォアの不完全な除去、及び/又は所与の配列決定サイクルにおけるポリメラーゼによるクラスター内のDNA鎖の一部の組み込みを完了不良によって引き起こされる、SBSにおける現象を指す。プリフェージングは、効果的な3’ターミネーターなしでヌクレオチドを組み込むことによって引き起こされ、取り込みイベントは、終了不良により1サイクル前に進む。フェージング及びプリフェージングは、特定のサイクルで測定されたシグナル強度が、現在のサイクルからのシグナル、並びに前及び次のサイクルからのノイズからなるようにさせる。サイクル数が増加するにつれて、フェージング及びプリフェージングによって影響を受けた1つのクラスター当たりの配列の割合は増加し、正しい塩基の識別を妨げる。プリフェージングは、合成による配列決定(SBS)中の微量の保護又はブロックされていない3’-OHヌクレオチドの存在によって引き起こされ得る。保護されていない3’-OHヌクレオチドは、製造プロセス中、又は場合によっては、保存及び試薬処理プロセス中に生成され得る。
【0026】
配列決定法
本開示のいくつかの態様は、標的ポリヌクレオチド、例えば、一本鎖標的ポリヌクレオチドの配列を決定するための方法に関するものであり、方法は、
(a)プライマーポリヌクレオチドを、4つの異なるタイプのヌクレオチドコンジュゲートのうちの1つ以上を含む混合物と接触させることであって、第1のタイプのヌクレオチドコンジュゲートが、第1の標識を含み、第2のタイプのヌクレオチドコンジュゲートが、第2の標識を含み、第3のタイプのヌクレオチドコンジュゲートが、第3の標識を含み、第1の標識、第2の標識、及び第3の標識の各々が、互いにスペクトル的に異なり、プライマーポリヌクレオチドが、標的ポリヌクレオチドの少なくとも一部に相補的である、接触させることと、
(b)混合物からヌクレオチドコンジュゲートをプライマーポリヌクレオチドに組み込んで、伸長したプライマーポリヌクレオチドを生成することと、
(c)第1の励起光源を使用して第1の撮像イベントを行い、伸長したプライマーポリヌクレオチドから第1の発光シグナルを検出/収集することと、
(d)第2の励起光源を使用して第2の撮像イベントを行い、伸長したプライマーポリヌクレオチドから第2の発光シグナルを検出/収集することと、を含み、
第1の励起光源及び第2の励起光源は、異なる波長を有し、第1の発光シグナル及び第2の発光シグナルは、単一発光検出チャネルに検出又は収集される。
【0027】
本明細書に記載の配列決定法のいくつかの実施形態において、組み込み混合物は、第4のタイプのヌクレオチドを更に含み、第4のタイプのヌクレオチドは、第1又は第2の撮像イベントのいずれからも検出可能なシグナルを放出しない蛍光部分で標識されている。方法のいくつかの実施形態において、第1の発光シグナルは、第1のタイプのヌクレオチドコンジュゲートの第1の標識又は第3のタイプのヌクレオチドコンジュゲートの第3の標識からのシグナルを含む。方法のいくつかの実施形態において、第2の発光シグナルは、第2のタイプのヌクレオチドコンジュゲートの第2の標識又は第3のタイプのヌクレオチドコンジュゲートの第3の標識からのシグナルを含む。いくつかの実施形態において、第1のタイプのヌクレオチドコンジュゲートの組み込みは、第1の撮像イベントにおけるシグナル状態及び第2の撮像イベントにおける暗状態によって決定される。いくつかの実施形態において、第2のタイプのヌクレオチドコンジュゲートの組み込みは、第1の撮像イベントにおける暗状態及び第2の撮像イベントにおけるシグナル状態によって決定される。いくつかの実施形態において、第3のタイプのヌクレオチドコンジュゲートの組み込みは、第1の撮像イベント及び第2の撮像イベントの両方におけるシグナル状態によって決定される。いくつかの実施形態において、第4のタイプのヌクレオチドコンジュゲートの組み込みは、第1の撮像イベント及び第2の撮像イベントの両方における暗状態によって決定される。一実施形態において、第1のタイプのヌクレオチドコンジュゲートの組み込みは、第1の撮像イベントにおけるシグナル状態及び第2の撮像イベントにおける暗状態によって決定され、第2のタイプのヌクレオチドコンジュゲートの組み込みは、第1の撮像イベントにおける暗状態及び第2の撮像イベントにおけるシグナル状態によって決定され、第3のタイプのヌクレオチドコンジュゲートの組み込みは、第1の撮像イベント及び第2の撮像イベントにおけるシグナル状態によって決定され、第4のタイプのヌクレオチドコンジュゲートの組み込みは、第1の撮像イベント及び第2の撮像イベントにおける暗状態によって決定される。
【0028】
撮像イベントに関して使用される場合、「シグナル状態」という用語は、標識されたヌクレオチドコンジュゲートの状態を指し、特定の発光シグナルが、かかる撮像イベントによって生成され、発光シグナルが、本明細書に記載の単一検出チャネル/フィルタ(すなわち、1つのチャネル検出)で検出又は収集される。例えば、ヌクレオチドコンジュゲートにおける蛍光部分は、光源(例えば、レーザー)によって特定の波長で励起され得、単一発光検出チャネル/フィルタ内で収集又は検出される蛍光シグナルを放出し、かかる撮像イベントにおいて「シグナル状態」を示す。
【0029】
撮像イベントに関して使用される場合、「暗状態」という用語は、標識されたヌクレオチドコンジュゲートの状態を指し、特定の発光シグナルが、かかる撮像イベントによって生成されないか、又は発光シグナルが、単一発光検出チャネル/フィルタで収集又は検出されないいずれかである。ヌクレオチドコンジュゲートの「暗状態」は、様々な状況に起因し得る。1つのシナリオでは、かかるヌクレオチドコンジュゲートは、蛍光部分を欠いており、その結果、いかなる蛍光シグナルも放出しない。別のシナリオでは、ヌクレオチドコンジュゲートは、光源によって特定の波長で励起することができない蛍光部分で標識され、したがって、いかなるシグナルも放出することができないか、又は最小の蛍光を放出する(例えば、赤色発光色素は、青色又は紫色領域の波長で励起可能であることはない)。第3のシナリオでは、ヌクレオチドコンジュゲートは蛍光部分で標識されており、撮像イベントの結果としてシグナルを放出する。しかしながら、かかる発光シグナルの波長は、単一検出チャネル外にあり、そのため検出することができない(例えば、色素は青色シグナルを放出するが、検出チャネルは緑色~赤色領域にある)。暗状態検出はまた、蛍光標識が現に存在し得ないバックグラウンド蛍光を含み得る。例えば、いくつかの反応成分は、特定の波長で励起されたときに最小の蛍光を示し得る。したがって、蛍光部分が存在しないとしても、かかる成分からのバックグラウンド蛍光が存在し得る。更に、バックグラウンド蛍光は、光散乱に起因し、例えば、隣接する配列決定反応からのものであり得、検出器によって検出され得る。加えて、バックグラウンド蛍光は、不純なクラスター(例えば、クラスター増幅の間の複数のテンプレート播種、フェージング、又はプリフェージング事象に起因する)によって引き起こされ得る。したがって、「暗状態」は、蛍光標識を欠くヌクレオチドが本明細書に記載の方法で利用される場合など、蛍光部分が具体的に含まれない場合にかかるバックグラウンド蛍光を含み得る。しかしながら、かかるバックグランド蛍光は、シグナル状態から区別可能であると考えられ、そのため非標識ヌクレオチド(又は「暗色」ヌクレオチド)のヌクレオチド組み込みは依然として識別可能である。
【0030】
本明細書に記載の方法の一例では、「T」ヌクレオチドコンジュゲートは、第1の撮像イベントにおけるシグナル状態及び第2の撮像イベントにおける暗状態によって決定され、「C」ヌクレオチドコンジュゲートは、第1の撮像イベントにおける暗状態及び第2の撮像イベントにおけるシグナル状態によって決定され、「A」ヌクレオチドコンジュゲートは、第1の撮像イベントにおけるシグナル状態及び第2の撮像イベントにおけるシグナル状態によって決定され、「G」ヌクレオチドコンジュゲートは、第1の撮像イベントにおける暗状態及び第2の撮像イベントにおいて暗状態によって決定される。別の例では、「C」ヌクレオチドコンジュゲートは、第1の撮像イベントにおけるシグナル状態及び第2の撮像イベントにおける暗状態によって決定され、「T」ヌクレオチドコンジュゲートは、第1の撮像イベントにおける暗状態及び第2の撮像イベントにおけるシグナル状態によって決定され、「A」ヌクレオチドコンジュゲートは、第1の撮像イベントにおけるシグナル状態及び第2の撮像イベントにおけるシグナル状態によって決定され、「G」ヌクレオチドコンジュゲートは、第1の撮像イベントにおける暗状態及び第2の撮像イベントにおいて暗状態によって決定される。非限定的な例を以下の表Aに示す。各例において、「T」はまた、「U」によって置き換えられ得る。
【0031】
【表1-1】
【0032】
【表1-2】
【0033】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態において、ステップ(a)における混合物中のヌクレオチドコンジュゲートは、A、C、G、T、及びU、並びにそれらの非天然ヌクレオチド類似体からなる群から選択されるヌクレオチドタイプを含む。更なる実施形態において、ステップ(a)における混合物は、4つの異なるタイプのヌクレオチドコンジュゲート(A、C、G、及びT又はU)、又はそれらの非天然ヌクレオチド類似体を含む。更なる実施形態において、4つの異なるタイプのヌクレオチドコンジュゲートは、dATP、dCTP、dGTP、及びdTTP若しくはdUTP、又はそれらの非天然ヌクレオチド類似体である。いくつかの更なる実施形態において、4つのタイプのヌクレオチドコンジュゲートのうちの3つは、互いにスペクトル的に異なるフルオロフォアで各々標識されており、ヌクレオチドコンジュゲートのうちの1つは、フルオロフォアで標識されていないか、又はフルオロフォアで標識されているが、第1の撮像又は第2の撮像イベントのいずれにおいてもシグナルを放出することができない。更なる実施形態において、組み込み混合物中の4つのタイプのヌクレオチドコンジュゲートの各々は、3’ヒドロキシル遮断基を含む。
【0034】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態において、方法は、ステップ(e):次の配列決定サイクルの前に(例えば、第2の撮像イベントの後、及び次の配列決定サイクルの開始前)組み込まれたヌクレオチドコンジュゲートから蛍光標識を切断又は除去することを更に含む。更なる実施形態において、組み込まれたヌクレオチドコンジュゲートは、3’ヒドロキシ遮断基を有し、3’ヒドロキシ遮断基も、次の配列決定サイクルの前に除去される。いくつかのかかる実施形態において、標識及び3’ヒドロキシ遮断基は、単一のステップで(例えば、同じ化学反応条件下で)除去される。他の実施形態において、標識及び3’ヒドロキシ遮断基は、2つの別個のステップで除去される(例えば、標識及び3’遮断基は、2つの別個の化学反応条件下で除去される)。いくつかの更なる実施形態において、切断後洗浄ステップが、標識及び3’遮断基が除去された後に使用される。更なる実施形態において、ステップ(a)~(e)は、繰り返しサイクル(例えば、少なくとも30、50、100、150、200、250、300、400、又は500回)で行われ、方法は、各々連続的に組み込まれたヌクレオチドコンジュゲートの同一性に基づいて、標的ポリヌクレオチドの少なくとも一部の配列を順次決定することを更に含む。いくつかのかかる実施形態において、ステップ(a)~(e)は、少なくとも50サイクル繰り返される。いくつかのかかる実施形態において、4つの異なるタイプのヌクレオチドコンジュゲートが同時に存在し、各サイクル中に組み込みで競合する。いくつかの更なる実施形態において、ヌクレオチドコンジュゲートの組み込みは、ポリメラーゼ(例えば、DNAポリメラーゼ)によって行われる。例示的なポリメラーゼとしては、Pol812、Pol1901、Pol1558、又はPol963が挙げられるが、これらに限定されない。Pol812、Pol1901、Pol1558、又はPol963 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列は、例えば、米国特許公開第2020/0131484A1号及び同第2020/0181587A1号に記載されており、それらの両方が参照により本明細書に組み込まれる。
【0035】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態において、第1の撮像イベントで使用される第1の励起光源及び第2の撮像イベントで使用される第2の励起光源の各々は、レーザー、発光ダイオード(LED)、又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、第1の励起光源は、第2の励起光源よりも短い波長を有する。いくつかのかかる実施形態において、第1の励起光源は、約400nm~約480nm、約420nm~約470nm、又は約450nm~約460nmの波長(すなわち、「青色光」)を有する。一実施形態において、第1の励起光源は、約450nmの波長を有する。第2の励起光源は、約490nm~約550nm、約500nm~約540nm、又は約510nm~約530nmの波長(すなわち、「緑色光」)を有する。一実施形態において、第2の励起光源は、約520nmの波長を有する。他の実施形態において、第1の励起光源は、第2の励起光源よりも長い波長を有する。いくつかのかかる実施形態において、第1の励起光源は、約490nm~約550nm、約500nm~約540nm、又は約510nm~約530nmの波長(すなわち、「緑色光」)を有する。一実施形態において、第2の励起光源は、約520nmの波長を有する。第2の励起光源は、約400nm~約480nm、約420nm~約470nm、又は約450nm~約460nmの波長(すなわち、「青色光」)を有する。一実施形態において、第2の励起光源は、約450nmの波長を有する。
【0036】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態において、単一発光検出チャネルは、約560nm超、約570nm超、約580nm超、約590nm超、又は約600nm超の検出スペクトル範囲を有する。更なる実施形態において、単一発光検出は、約700nm未満、約690nm未満、約680nm未満、約670nm未満、約660nm未満、又は約650nm未満の検出スペクトル範囲を有する。いくつかの更なる実施形態において、単一発光検出チャネルは、約560nm~約690nm、約570nm~約680nm、又は約580nm~約650nmの検出スペクトル範囲を有する。本明細書で使用される「単一発光検出チャネル」という用語は、スペクトルの特定の領域又は特定の波長範囲内の光を検出することのみを可能にする検出チャネル又はフィルタを指し、かかるスペクトル領域外のいかなる発光も検出されない。特に、第1の標識、第2の標識、及び第3の標識の各々は、第1の標識、第2の標識、及び第3の標識のいずれかからの発光が同じ検出チャネル又はフィルタによって検出できるように、特定の波長範囲で重複する発光スペクトルを有する。いくつかのかかる実施形態において、発光スペクトルは、約560nm~約690nm、約570nm~約680nm、又は約580nm~約650nmの単一発光検出チャネルによって検出することができる。
【0037】
図2は、配列決定法に記載の撮像イベントの実施形態を示す。組み込み混合物は、4つのヌクレオチド:約450nmの波長を有する青色光源によって励起可能である第1の色素で標識されたdCTP(ffC)と、約520nmの波長を有する緑色光源によって励起可能である第2の色素で標識されたdTTP(ffT)と、450nmの青色光源及び540nmの緑色光源の両方によって励起可能である第3の色素(「二重色素」)で標識されたdATP(ffA)と、非標識であるdGTP(ffG)と、を含む。ffC、ffT、及びffAの発光スペクトルは、560nm超であるCMOS収集領域(例えば、約570nm~約650nm)で検出される。第1の撮像イベントが青色光源を使用し、第2の撮像イベントが緑色光源を使用する場合、組み込まれたヌクレオチドコンジュゲートの同一性は、以下のように決定することができる。
【0038】
【表2】
【0039】
同様に、第1の撮像イベントが緑色光源を使用し、第2の撮像イベントが青色光源を使用する場合、組み込まれたヌクレオチドコンジュゲートの同一性は、以下のように決定することができる。
【0040】
【表3】
【0041】
本明細書に記載の2励起、単一チャネル検出配列決定法は、蛍光色素が強い蛍光及び化学的安定性を有するだけでなく、調整された吸収及び長いストークスシフトも有することを必要とする。いくつかの実施形態において、第1及び第2の光源(例えば、450nm及び520nm、又は520nm及び450nm)の両方で励起可能である二重色素を有するヌクレオチドコンジュゲートは、約480nm~510nm、又は約490nm~500nmの吸光度最大値(Amax)を有する。より短い波長(第1の光源又は第2の光源のいずれか)でのみ励起可能である色素を有するヌクレオチドコンジュゲートは、約450~460nmのAmaxを有する。より長い波長(第1の光源又は第2の光源のいずれか)でのみ励起可能である色素を有するヌクレオチドコンジュゲートは、約520nm超であるAmaxを有する。更なる実施形態において、二重色素を有するヌクレオチドコンジュゲートの発光最大値(Emax)は、550nm超か又は560nm超である。かかる標識ヌクレオチドコンジュゲートのストークスシフトは、60nm超である。いくつかの更なる実施形態において、より短い波長でのみ励起可能である色素(より短い波長光源によるシグナル状態及びより長い波長光源による暗状態で示される)を有するヌクレオチドコンジュゲートのEmaxは、560nm超である。かかる標識ヌクレオチドコンジュゲートのストークスシフトは、100nm超である。いくつかの更なる実施形態において、より長い波長でのみ励起可能である色素を有するヌクレオチドコンジュゲートのEmaxは、560nm超である。かかるヌクレオチドコンジュゲートのストークスシフトは、約30nm超、又は約40nm超である。本明細書に記載の配列決定法で使用され得る450~460nm、480~510nm、又は490~500nmのAmaxを有するクマリン色素の非限定的な例には、米国公開第2018/0094140A1号、同第2018/0201981A1号、同第2020/0277529A1号、及び同第2020/0277670A1号、並びにUS63/057,758に開示されるものが含まれ、それらは参照により組み込まれる。本明細書に記載の配列決定法で使用され得る520nm超のAmaxを有するポリメチン色素の非限定的な例には、国際特許公開第WO2013/041117号、同第WO2014/135221号、同第WO2015/170102号、同第WO2016/189287、及び同第WO2017/051201号に開示されるものが含まれる。
【0042】
いくつかの実施形態において、第1の撮像イベント及び第2の撮像イベントからの発光検出の組み合わせは、画像分析ソフトウェアによって処理されて、固定された各プライマーポリヌクレオチド/標的ポリヌクレオチド複合体位置で組み込まれた塩基の同一性を決定する。いくつかのかかる実施形態において、画像分析は、取り込みの繰り返しサイクル(少なくとも50、100、150、200、250、又は300回の実行後)の後に処理される。更なる実施形態において、複数の固定されたプライマーポリヌクレオチド/標的ポリヌクレオチド複合体(クラスター)が、並行して検出及び配列決定される。
【0043】
図3Aは、単一チャネル検出のために使用されるシステムの透視図を示す。固体支持体(例えば、フローセル)は、表面に固定されたクラスター化標的ポリヌクレオチド鋳型、及び鋳型の少なくとも一部にハイブリダイズしたプライマーポリヌクレオチドを含み、クラスター化プライマーポリヌクレオチド/標的ポリヌクレオチド複合体を形成する。フローチャネルは、各々が固定されたプライマーポリヌクレオチド/標的ポリヌクレオチド複合体を含有する個別のナノウェルを含み、組み込まれたヌクレオチドコンジュゲートは、それぞれ緑色光源及び青色光源励起に曝露される。組み込まれたヌクレオチドコンジュゲートに結合した蛍光部分に応じて、それは青色/緑色光の片方、青色/緑色光の両方が吸収され得るか、又は青色/緑色光のいずれにも吸収され得ない(例えば、組み込まれたヌクレオチドコンジュゲートが蛍光部分を含まない場合)。蛍光部分の発光(例えば、赤色光)は、単一検出チャネルで検出される。ワークフローは、撮像イベント及び検出メカニズムを単に説明するために簡略化されている。このワークフローは、本明細書に記載の配列決定法の追加のステップ、例えば、第2の撮像イベント後の蛍光部分の切断、及び任意選択的な切断後洗浄ステップを含まない。
【0044】
図3Bは、本明細書に記載の配列決定法で使用される例示的な配列決定及び検出メカニズム300の透視図である。300は、本明細書に記載の固体支持体に統合され得る。最初に、パターン化フローセル310は、中間領域によって分離される、複数の個別のナノウェル315を含む。配列決定反応(例えば、ヌクレオチド組み込み、組み込まれたヌクレオチドコンジュゲートの3’遮断の脱保護、検出後の標識の切断)は、ナノウェルの各々内で行われる。フローセルはまた、透明である保護表面を含み得、青色光及び緑色光照光が通過することを可能にする。320は、光遮断要素325に埋め込まれた複数の光学フィルタであり、それによって、特定の波長範囲にある組み込まれたヌクレオチドコンジュゲートから生成された発光シグナルのみが、CMOS画像センサを通過してそれによって検出され得る。
【0045】
本明細書に記載の方法の任意の実施形態において、標的ポリヌクレオチド、例えば、一本鎖標的ポリヌクレオチドは、固体支持体に固定され得る。いくつかのかかる実施形態において、固体支持体は、複数の固定された標的ポリヌクレオチド、例えば、一本鎖標的ポリヌクレオチドを含む。更なる実施形態において、各標的ポリヌクレオチドは、標的ポリヌクレオチドの少なくとも一部に相補的であるプライマーポリヌクレオチドにハイブリダイズし、したがってプライマーヌクレオチド/標的ヌクレオチド複合体を形成する。固体支持体は、クラスター化プライマーヌクレオチド/標的ヌクレオチド複合体を含み得る。いくつかの実施形態において、固体支持体は、フローセル、例えば、各々互いに分離された複数のナノウェルを含む、パターン化フローセルを含む。いくつかの更なる実施形態において、各ナノウェルは、そこに1つの固定化されたクラスターを含む。いくつかの実施形態において、固体支持体は、CMOSチップを更に含む。例えば、パターン化フローセルは、CMOSチップの上部に組み立てられ、複数の光学フィルタ及び光遮断要素によって分離され、そのため、撮像イベントから生成された発光シグナルが光学フィルタを通して選別され、COMS画像センサによって検出される。更に別の実施形態において、複数のナノウェルの各々は、各CMOSフォトダイオード(ピクセル)上に直接的に配列される。
【0046】
本明細書に記載の任意の実施形態において、方法は、第1の撮像イベントの後及び第2の撮像イベントの前に、混合物中のいずれのヌクレオチドコンジュゲートのいかなる化学修飾も含まない。化学修飾は、切断試薬などの化学試薬、結合パートナ-蛍光部分コンジュゲート、又は第1の撮像イベントから第2の撮像イベントまでに蛍光に特定可能かつ測定可能な変化を直接的又は間接的に引き起こし得る他の試薬を利用し得る。例えば、化学修飾は、1つ以上のタイプのヌクレオチドコンジュゲートから標識を切断すること、及び/又は1つ以上の異なるタイプのヌクレオチドコンジュゲートに標識を付加することを含み得る。特に、本明細書に記載の方法は、iSeq(商標)100シーケンサーに必要な第2の化学ステップを排除して、1つのヌクレオチドコンジュゲートから蛍光標識を除去し、異なるタイプのヌクレオチドコンジュゲートに蛍光標識を付加する。結果として、本明細書に記載の配列決定法は、サイクル時間の実質的な低減を提供し、必要な試薬(例えば、THP試薬、及び洗浄溶液)の体積を低減させる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の配列決定法は、1つの色素を使用する、IlluminaのiSeq(商標)100での標準的なサイクル時間と比較して、サイクル時間の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、又は30%の減少を提供し、1つの検出方法が図1Aに示される。
【0047】
追加の例示的な実施形態が、以下に説明される。
【0048】
いくつかの実施形態において、核酸を配列決定するための方法は、3つの異なるヌクレオチドタイプの直接的又は間接的の検出のための1つの蛍光標識、及び蛍光シグナルの存在によって検出されないが、代わりに蛍光シグナルの欠如又は不存在によって検出される1つのヌクレオチドタイプの使用を含む。いくつかの実施形態において、核酸を配列決定するための方法は、3つの異なるヌクレオチドタイプの直接的若しくは間接的な検出のために同じか又は同様の励起/発光スペクトルを含む2つ以上の異なる蛍光標識、及び蛍光シグナルの存在によって検出されないが、代わりに蛍光シグナルの欠如又は不存在によって検出される1つのヌクレオチドタイプの使用を含む。同じか又は同様の励起及び発光スペクトルは、光源が2つ以上の異なる蛍光標識を励起し、光学フィルタがそれらの放出された蛍光シグナルを捕捉するようなものである。核酸試料の配列を決定する蛍光の検出は、例えば、配列決定反応中に異なる時間(すなわち、酵素的切断、環境pHの変化、付加試薬の添加などの反応条件における変化の前及び後)での時間間隔で行われ、蛍光遷移パターンなどの蛍光のパターン、核酸標的の配列を決定するそれらの累積パターンを提供する。したがって、本明細書に記載の方法は、時間及び費用が効率的であり、関連する配列決定装置の単純化を可能にする。
【0049】
標的核酸配列を決定するための時間間隔での蛍光パターンの差を利用する例示的な用途は、合成による配列(SBS)方法論及び技術である。したがって、本明細書に記載の実施形態は、合成蛍光用途によって配列において特定の有用性を見出す。本明細書に記載される実施形態は、蛍光配列決定の革新的な方法の例であるが、本開示の実施形態はまた、試料中の2つ以上の分析物(すなわち、そのヌクレオチド、タンパク質、又はそれらの断片)の検出が望まれる様々な他の用途に有用性を見出す。
【0050】
いくつかの実施形態において、配列決定は、ガラス、プラスチック、半導体チップ、又は複合物由来基材などの基材上で行われる。いくつかの実施形態において、1つの核酸種は、例えば単一の標的配列決定のために基材上に提供される。他の実施形態において、配列決定はまた、多重形式であることができ、複数の核酸標的は、例えば、フローセル又はアレイタイプの形式で、並行して検出及び配列決定される。本明細書に記載の実施形態は、並行配列決定又は大規模並行配列決定を実行するときに特に有利である。蛍光並行配列決定を実行するプラットフォームには、限定されないが、Illumina,Inc.(例えば、HiSeq(登録商標)、Genome Analyzer、MiSeq(商標)、MiniSeq(商標)、NextSeq(商標)、iSeq(商標)、及びNovaSeq(商標)プラットフォーム)、Life Technologies(例えば、SOLiD)、Helicos Biosciences(例えば、Heliscope)、454/Roche Life Sciences(Branford, Conn.)、及びPacific Biosciences(例えば、SMART)によって提供されるものが含まれる。複数の核酸種に適応し得るフローセル、チップ、及び他のタイプの表面は、並行配列決定に利用される基材の例示的なものである。複数の核酸種が並行して配列決定される多重形式では、クローン的に増幅した標的配列(例えば、エマルジョンPCR(emPCR)又はブリッジ増幅を介して)が、典型的には、基材上に共有結合によって固定される。例えば、エマルジョンPCRを実行する場合、目的の標的はビーズ上に固定され、一方、クローン的に増幅した標的は、フローセルのチャネル又はアレイ若しくはチップ上の特定の位置に固定される。
【0051】
本明細書に記載される組成物及び方法で使用するためのフローセルは、多くの方法で配列決定に使用することができる。例えば、DNAライブラリなどのDNA試料は、1つ以上のエッチングされたフローチャネルを含むフローセル又は流体デバイスに適用することができ、フローセルは、その表面に共有結合したプローブ分子の集団を更に含むことができる。フローセルチャネルにおける結合したプローブは、チャネル内の異なるアドレス可能な位置に好都合なように配置され、DNAライブラリ分子を、相補的配列が結合するフローセルチャネルに加えることができる(本明細書に記載されるように、更にその全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2012/096703に記載されるように)。本出願で使用するためのフローセルの別の例は、米国特許第8,906,320号及び同第9,990,381号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているようなCMOSフローセルを含む。ブリッジ増幅は、本明細書に記載のように行うことができ、続いて、本明細書に記載の合成方法及び組成物によって配列決定することができる。配列決定のためのフローセルを作成及び利用するための方法は、当該技術分野において既知であり、本明細書に提供され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる全てのものを参照する。本明細書に記載される方法及び組成物は、フローセル指向配列決定法の任意の特定の製造又は方法に限定されないことが企図される。
【0052】
本明細書に記載の方法及び組成物を利用する配列決定はまた、マイクロタイタープレート、例えば、高密度反応プレート又はスライドで行うことができる(Margulies et al., 2005, Nature 437(7057): 376-380、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。例えば、ゲノム標的は、emPCR技術によって調製することができる。反応プレート又はスライドは、反応から、例えば、蛍光又は発光反応から生成された光を捕捉及び記録することができる光ファイバ材料から作製することができる。コア材料をエッチングして、少なくとも1つのemPCR反応ビーズを保持することができる別個の反応ウェルを提供することができる。かかるスライド/プレートは、160万ウェルを超えて含むことができる。作製されたスライド/プレートに標的配列決定反応emPCRビーズを加えて、装置に装着することができ、そこに配列決定試薬が提供されて、配列決定が行われる。
【0053】
本明細書に開示される組成物及び方法を利用する配列決定標的のために配列された基材の例は、Complete Genomics (Mountain View, Calif.)によって行われるようなチップ又はスライド上のDNAナノボールを含むパターン化基材を実行するときに提供される。Drmanac et al., 2010, Science 327(5961): 78-81で報告されているように、シリコンウェハは、二酸化ケイ素及びチタンで層化し、続いて、フォトリソグラフィ及びドライエッチング技法を使用してパターン化することができる。ウェハをHMDSで処理し、フォトレジスト層でコーティングして、シリル化のための個別の領域を決定して、配列決定のためのDNAナノボールのそれに続く共有結合を行うことができる。当業者は、配列決定方法論で使用するための核酸の固定化のために別個の位置でスライド/チップを作製する多くの方法が存在し、本方法は、基材が配列決定のために調製される方法によって限定されないことを理解するであろう。
【0054】
例示の目的のためであり、本明細書に記載の実施形態を限定することを意図するものではないが、配列決定サイクルの一般的な戦略は、一連のステップによって説明することができる。以下の実施例は、合成配列決定反応による配列に基づいているが、本明細書に記載される方法は、任意の特定の配列決定反応方法に限定されない。
【0055】
代替的に、本明細書に記載の配列決定法はまた、上記の同じ2つの撮像イベント及び単一チャネル発光検出を用いながら、非標識ヌクレオチドを使用して実行され得る。例えば、ステップ(a)の組み込み混合物中の4つの異なるタイプのヌクレオチド(例えば、dATP、dCTP、dGTP、及びdTTP又はdUTP)のうちの1つ、2つ、3つ、又は各々は、非標識であり得る。4つのタイプのヌクレオチドの各々(例えば、dNTP)は、単一の塩基のみがプライマーポリヌクレオチドの3’末端にポリメラーゼによって付加され得ることを確実にするために、3’ヒドロキシル遮断基を有する。ステップ(b)における非標識ヌクレオチドの組み込み後、残りの組み込まれていないヌクレオチドを洗い流す。次いで、親和性試薬が導入され、組み込まれたdNTPを特異的に認識して結合し、組み込まれたdNTPを含む標識伸長産物を提供する。合成による配列決定における非標識ヌクレオチド及び親和性試薬の使用は、WO2018/129214及びWO2020/097607に開示されている。非標識ヌクレオチドを使用する本開示の修飾配列決定法は、以下:
(a’)プライマーポリヌクレオチドを、4つの異なるタイプの非標識ヌクレオチドのうちの1つ以上を含む混合物と接触させることであって、プライマーポリヌクレオチドが、一本鎖標的ポリヌクレオチドの少なくとも一部に相補的である、接触させるステップと、
(b’)混合物から1つの非標識ヌクレオチドをプライマーポリヌクレオチドに組み込んで、伸長したプライマーポリヌクレオチドを生成するステップと、
(c’)1つの親和性試薬が、組み込まれた非標識ヌクレオチドに特異的に結合して、標識された伸長したプライマーポリヌクレオチドを提供する条件下で、伸長したプライマーポリヌクレオチドを異なる親和性試薬のセットと接触させるステップと、
(d’)第1の励起光源を使用して第1の撮像イベントを行い、標識された伸長したプライマーポリヌクレオチドから第1の発光シグナルを検出するステップと、
(e’)第2の励起光源を使用して第2の撮像イベントを行い、標識された伸長したプライマーポリヌクレオチドから第2の発光シグナルを検出するステップと、を含み得、
第1の励起光源及び第2の励起光源は、異なる波長を有し、第1の発光シグナル及び第2の発光シグナルは、単一発光検出フィルタ又はチャネルに検出又は収集される。本明細書に記載の修飾配列決定法のいくつかの実施形態において、組み込み混合物中の非標識ヌクレオチドの各々は、3’ヒドロキシル遮断基を含む。更なる実施形態において、組み込まれたヌクレオチドの3’ヒドロキシル遮断基は、次の配列決定サイクルの前に除去される。なお更なる実施形態において、本方法は、組み込まれたヌクレオチドから親和性試薬を除去することを更に含む。更に別の実施形態において、3’ヒドロキシル遮断基及び親和性試薬は、同じ反応で除去される。いくつかの実施形態において、親和性試薬のセットは、第1のタイプのヌクレオチドに特異的に結合する第1の親和性試薬、第2のタイプのヌクレオチドに特異的に結合する第2の親和性試薬、及び第3のタイプのヌクレオチドに特異的に結合する第3の親和性試薬を含み得る。いくつかの更なる実施形態において、第1、第2、及び第3の親和性試薬の各々は、検出可能な標識を含む。いくつかの実施形態において、親和性試薬は、タンパク質タグ、抗体(限定されないが、抗体の結合断片、単鎖抗体、二重特異性抗体などを含む)、アプタマー、ノッチン、アフィマー、又は組み込まれたヌクレオチドに好適な特異性及び親和性で結合する任意の他の既知の薬剤を含む。一実施形態において、親和性試薬は、タンパク質タグ又は抗体である。別の実施形態において、親和性試薬は、蛍光標識である1つ以上の検出可能な標識を含む、タンパク質タグ又は抗体である。
【0056】
4つのヌクレオチドタイプA、C、T、及びG、典型的には、4つのタイプのうちの3つが蛍光標識されている3’ヒドロキシル遮断基を有する配列決定反応のために設計された修飾ヌクレオチドは、目的の鋳型配列(目的の標的ポリヌクレオチド配列と互換的にも使用される)が配置される位置に、他の反応成分と一緒に同時に添加され、配列決定反応が生じる(例えば、フローセル、チップ、スライドなど)。標的配列に基づいて成長する配列核酸鎖へのヌクレオチドの組み込み後、反応物は光に曝露され、任意の発光シグナルが捕捉されて記録され、これは、第1の撮像イベント及び第1の蛍光検出パターンを構成する。第1の撮像イベントに続いて、試料に第1の光源とは異なる波長を有する第2の光源で照射されて、反応位置がもう一度照光され、蛍光の任意の変化が捕捉されて記録されて、第2の撮像イベント(すなわち、第2の蛍光検出パターン)を構成する。組み込まれたヌクレオチド上の3’遮断基は、第2の撮像イベントの後に、次の配列決定サイクルの調製のために、存在する他の試薬と一緒に除去され、洗浄される。いくつかの実施形態において、本開示の方法は、第1の撮像イベントから第2の撮像イベントまでに蛍光における特定可能かつ測定可能な変化を直接引き起こし得るいかなる化学試薬の使用も含まない。2つの撮像イベントからの蛍光パターンが比較され、ヌクレオチドの取り込み、したがって標的核酸の配列が、その特定のサイクルについて、決定される。
【0057】
一実施形態において、少なくとも1つのヌクレオチドが、ポリメラーゼ酵素の作用による合成工程で、ポリヌクレオチド(本明細書に記載の一本鎖プライマーポリヌクレオチドなど)に組み込まれる。しかしながら、ヌクレオチドをポリヌクレオチドに接合する他の方法、例えば、標識オリゴヌクレオチドの非標識化オリゴヌクレオチドへの化学的オリゴヌクレオチド合成又はリゲーションを使用することができる。したがって、ヌクレオチド及びポリヌクレオチドに関して用語「組み込む」が使用されるときには、化学的方法及び酵素法によるポリヌクレオチド合成を包含することができる。
【0058】
特定の実施形態において、合成工程が実行され、かつ任意選択的に、鋳型又は標的ポリヌクレオチド鎖を本開示の蛍光標識ヌクレオチドを含む反応混合物とインキュベートする工程を含み得る。ポリメラーゼはまた、鋳型又は標的ポリヌクレオチド鎖にアニーリングされたポリヌクレオチド鎖上の遊離3’OH基と標識ヌクレオチド上の5’リン酸基との間のホスホジエステル連結の形成を可能にする条件下で提供することもできる。したがって、合成工程は、ヌクレオチドの鋳型/標的鎖への相補的塩基対形成によって実現されるポリヌクレオチド鎖の形成を含むことができる。
【0059】
本方法の全ての実施形態において、検出工程は、標識ヌクレオチドが組み込まれるポリヌクレオチド鎖が標的鎖にアニーリングされている間、又は2つの鎖が分離される変性工程の後に実行され得る。合成工程と検出工程との間に、例えば化学的又は酵素的反応工程又は精製工程といった更なる工程が含まれてもよい。具体的には、標識ヌクレオチドを組み込むポリヌクレオチド鎖は、単離されても精製されてもよく、その後、更に処理されるか、又はその後の解析に使用されてもよい。例として、合成工程において本明細書に記載される標識ヌクレオチドを組み込んでいる標的ポリヌクレオチドは、その後、標識化プローブ又はプライマーとして使用され得る。他の実施形態において、本明細書に記載される合成工程の生成物は、更なる反応工程に供され得、所望であれば、これらの後続工程の生成物は精製又は単離され得る。
【0060】
合成工程に好適な条件は、標準的な分子生物学的技術に精通しているものにはよく知られている。一実施形態において、合成工程は、本明細書に記載される標識ヌクレオチドを含むヌクレオチド前駆体を使用する標準的なプライマー伸長反応と類似し、好適なポリメラーゼ酵素の存在下で標的鎖に相補的な伸長したポリヌクレオチド鎖(プライマーポリヌクレオチド鎖)を形成し得る。他の実施形態において、合成工程は、それ自体が、プライマー標的ポリヌクレオチド鎖をコピーすることに由来するアニーリングされた相補鎖からなる、標識二本鎖増幅産物を生成する、増幅反応の一部をなし得る。他の提示的な合成工程としては、ニックトランスレーション、鎖置換重合、ランダムプライミングDNA標識化などが挙げられる。合成工程に特に有用なポリメラーゼ酵素は、本明細書に記載される標識ヌクレオチドの組み込みを触媒することができるものである。様々な天然由来の又は変異体/改変されたポリメラーゼを使用することができる。例として、熱安定性ポリメラーゼは、熱サイクリング条件を使用して実施される合成反応に使用することができるが、熱安定性ポリメラーゼは、等温プライマー伸長反応には望ましくない場合がある。本開示による標識ヌクレオチドを組み込むことができる好適な熱安定性ポリメラーゼには、WO2005/024010又はWO06/120433に記載されるものが含まれ、それらの各々は参照により本明細書に組み込まれる。37℃などの低温で実施される合成反応では、ポリメラーゼ酵素は、必ずしも熱安定性ポリメラーゼである必要はなく、したがって、ポリメラーゼの選択は、反応温度、pH、鎖置換活性などのいくつかの要因に依存する。
【0061】
特定の非限定的な実施形態において、本開示は、核酸シークエンシング、再シークエンシング、全ゲノムシークエンシング、単一ヌクレオチド多型性スコアリングの方法に加えて、ポリヌクレオチドに組み込まれたときに本明細書に記載される色素で標識化された修飾ヌクレオチド又はヌクレオシドの検出を伴う任意の他の用途の方法を含む。
【0062】
特定の実施形態において、本開示は、本開示による色素部分を含む標識ヌクレオチドを、ポリヌクレオチドの合成によるシークエンシング反応に使用することを提供する。合成による配列決定は、一般に、配列決定される鋳型/標的核酸に相補的な伸長ポリヌクレオチド鎖を形成するために、ポリメラーゼ又はリガーゼを使用して、成長しつつあるポリヌクレオチド鎖に対し、5’から3’方向に1つ以上のヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドを逐次的に付加することを含む。付加されたヌクレオチドのうちの1つ以上に存在する塩基が何であるかは、検出又は「撮像」工程で決定することができる。添加された塩基が何であるかは、各ヌクレオチド組み込み工程後に決定され得る。次いで、鋳型の配列は、従来式のワトソン・クリック塩基対合ルールを使用して推測され得る。単一の塩基が何であるかを決定するために本明細書に記載される色素で標識化されたヌクレオチドを使用することは、例えば、単一ヌクレオチド多型性のスコアリングにおいて有用であり得るが、そのような単一塩基伸長反応は、本開示の範囲内である。
【0063】
本開示の実施形態において、標的ポリヌクレオチドの配列は、組み込まれたヌクレオチド(複数可)に結合した蛍光標識(複数可)の検出を通して配列決定される標的ポリヌクレオチドに相補的な新生鎖への、1つ以上のヌクレオチドの組み込みを検出することによって決定される。標的ポリヌクレオチドのシークエンシングは、好適なプライマー(又は、ヘアピンの一部としてプライマーを含有するヘアピン構造体として調製されたプライマー)でプライミングすることができ、新生鎖は、ポリマー触媒反応において、プライマーの3’末端にヌクレオチドを付加することにより、段階的に伸長される。
【0064】
特定の実施形態において、異なるヌクレオチド三リン酸(A、T、G、及びC)の各々は、固有のフルオロフォアで標識されてもよく、また、制御不可能な重合を防止するために、3’位置に遮断基を含む。代替的に、4つのヌクレオチドのうちの1つは、標識されていなくてもよい(暗色)。ポリメラーゼ酵素は、鋳型/標的ポリヌクレオチドに相補的な新生鎖にヌクレオチドを組み込むが、遮断基は、ヌクレオチドの更なる組み込みを防止する。任意の組み込まれていないヌクレオチドを洗い流すことができ、各組み込まれたヌクレオチドからの蛍光シグナルパターンは、光励起及び好適な発光フィルタを使用する電荷結合素子などの好適な手段によって、光学的に「読み取る」ことができる。次いで、3’-遮断基及び蛍光色素化合物を除去(開裂)して(同時に又は逐次的に)、更なるヌクレオチドの組み込みのために新生鎖をさらすことができる。典型的には、組み込まれたヌクレオチドが何であるかは、各組み込み工程後に決定されるが、これは厳密に必須というわけではない。同様に、米国特許第5,302,509号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)は、固体支持体上に固定化されたポリヌクレオチドを配列決定する方法を開示している。
【0065】
上記に例示したようなその方法は、蛍光標識化された3’ブロックされたヌクレオチドA、G、C、及びTを、DNAポリメラーゼの存在下で、固定化されたポリヌクレオチドに相補的な成長鎖に組み込む。ポリメラーゼは、標的ポリヌクレオチドに相補的な塩基を組み込むが、3’-ヒドロキシル遮断基による更なる付加から防止される。次いで、組み込まれたヌクレオチドの標識を判定し、その後、更なる重合を可能にするために、化学的開裂によってブロッキング基が除去され得る。合成による配列決定反応において配列決定される核酸鋳型は、配列決定が所望される任意のポリヌクレオチドであってもよい。シークエンシング反応用の核酸鋳型は、典型的には、シークエンシング反応における更なるヌクレオチドの付加のためのプライマー又は開始点として機能する遊離3’OH基を有する二本鎖領域を含む。配列決定される鋳型の領域は、この遊離3’OH基を相補鎖上にオーバーハングする。配列決定される鋳型のオーバーハング領域は、一本鎖であってもよいが、配列決定される標的鎖に相補的な鎖上に「切れ目が存在」して、配列決定反応を開始するための遊離3’OH基を提供する限りにおいて、二本鎖であることも可能である。かかる実施形態において、配列決定は、鎖置換によって進行し得る。特定の実施形態において、遊離3’OH基を有するプライマーが、配列決定される鋳型の一本鎖領域にハイブリダイズする別個の成分(例えば、短いオリゴヌクレオチド)として添加されてもよい。代替的に、配列決定されるプライマー及び鋳型鎖はそれぞれ、例えばヘアピンループ構造などの分子内二重鎖を形成することができる部分的に自己相補的な核酸鎖の一部を形成してもよい。ヘアピンポリヌクレオチド及びそれらが固体支持体に結合され得る方法は、PCT公開第WO01/57248号及び同第WO2005/047301に開示され、これらの各々は参照により本明細書に組み込まれる。ヌクレオチドは、成長するプライマーに連続的に添加され、5’から3’方向にポリヌクレオチド鎖を合成することができる。添加された塩基の性質は、特に各ヌクレオチド添加後に判定されてよいが、必ずしもそうでなくてもよい。その判定によって、核酸鋳型についての配列情報が提供される。したがって、ヌクレオチドは、ヌクレオチドの5’リン酸基とのホスホジエステル連結の形成を介して、核酸鎖の遊離3’OH基にヌクレオチドを結合することにより、核酸鎖(又はポリヌクレオチド)に組み込まれる。
【0066】
配列決定される核酸鋳型は、DNA若しくはRNA、又は更にはデオキシヌクレオチド及びリボヌクレオチドからなるハイブリッド分子であってもよい。核酸鋳型は、配列決定反応における鋳型のコピーを防止しない限り、天然由来のヌクレオチド及び/又は非天然由来のヌクレオチドと、天然由来又は非天然由来の骨格連結を含んでよい。
【0067】
ある特定の実施形態において、配列決定される標的ポリヌクレオチドは、当該技術分野において既知の任意の好適な連結方法、例えば、共有結合を介して、固体支持体に結合され得る。ある特定の実施形態において、標的ポリヌクレオチドは、固体支持体(例えば、シリカベースの支持体)に直接結合されてもよい。しかしながら、本開示の他の実施形態において、固体支持体の表面は、標的ポリヌクレオチドの直接的共有結合、又は標的ポリヌクレオチドのヒドロゲル若しくは多電解質層(それ自体は固体支持体に共有結合以外の方法で付着される)を通しての固定化のいずれかを可能にするように、何らかの方法で修飾されてもよい。
【0068】
ポリヌクレオチドが支持体(例えば、WO00/006770(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるものなどのシリカベース支持体)に直接結合しているアレイは、ガラス上のペンダントエポキシド基と、ポリヌクレオチドの内部アミノ基との間の反応によって、ガラス支持体に固定化される。加えて、ポリヌクレオチドは、例えば、WO2005/047301(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、硫黄系求核試薬と固体担体との反応によって固体支持体に結合することができる。固体支持型標的ポリヌクレオチドのまた更なる例は、鋳型ポリヌクレオチドが、シリカ系又は他の固体担体上に支持されたヒドロゲルに取り付けられるものであり、例えば、WO00/31148、WO01/01143、WO02/12566号、WO03/014392、米国特許第6,465,178号、及びWO00/53812に記載されており、それらの各々が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0069】
鋳型ポリヌクレオチドが固定化され得る具体的な表面としては、ポリアクリルアミドヒドロゲルが挙げられる。ポリアクリルアミドヒドロゲルは、上記に引用した参考文献及び参照により本明細書に組み込まれるWO2005/065814に記載されている。使用され得る特定のヒドロゲルには、WO2005/065814及び米国公開第2014/0079923号に記載されるものが含まれる。一実施形態では、ヒドロゲルは、PAZAM(ポリ(N-(5-アジドアセトアミジルペンチル)アクリルアミド-co-アクリルアミド))である。
【0070】
DNA鋳型分子は、例えば、米国特許第6,172,218号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、ビーズ又は微小粒子に付着させることができる。ビーズ又は微小粒子への付着は、配列決定用途に有用であり得る。各ビーズが異なるDNA配列を含むビーズライブラリを調製することができる。それらの作成のための例示的なライブラリ及び方法は、Nature, 437, 376-380 (2005)、Science, 309, 5741, 1728-1732 (2005)で報告されており、これらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されるヌクレオチドを使用したかかるビーズのアレイのシークエンシングは、本開示の範囲内である。
【0071】
配列決定される鋳型は、固体支持体上に「アレイ」の一部を形成してもよく、この場合、アレイは任意の便利な形態をとることができる。したがって、本開示の方法は、単一分子アレイ、クラスター化アレイ、及びビーズアレイを含む全ての種類の高密度アレイに適用可能である。本開示の色素化合物で標識化されたヌクレオチドは、基本的に任意の種類のアレイ上で鋳型をシークエンシングするために使用されてもよく、そのようなアレイには、固体支持体上の核酸分子の固定化によって形成されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
しかしながら、本開示の色素化合物で標識化されたヌクレオチドは、クラスター化アレイのシークエンシングの文脈において特に有利である。クラスター化アレイでは、アレイ上の別個の領域(多くの場合、部位又は特徴部と呼ばれる)は、複数のポリヌクレオチド鋳型分子を含む。一般に、複数のポリヌクレオチド分子は、光学的手段によって個別に分解可能ではなく、代わりに、アンサンブル(集合体)として検出される。アレイがどのように形成されるかに応じて、アレイ上の各部位は、1つの個々のポリヌクレオチド分子の複数のコピー(例えば、部位は、特定の一本鎖若しくは二本鎖核酸種に対して均質である)、又は更には少数の異なるポリヌクレオチド分子の複数のコピー(例えば、2つの異なる核酸種の複数のコピー)を含んでもよい。核酸分子のクラスター化アレイは、当該技術分野において一般的に知られている技術を使用して生成され得る。例として、WO98/44151及びWO00/18957は、各々が本明細書に組み込まれ、核酸の増幅方法を記載しており、鋳型及び増幅産物の両方は、固定化された核酸分子のクラスター又は「コロニー」からなるアレイを形成するために、固体支持体上に固定化されたままである。これらの方法に従って調製されたクラスター化アレイ上に存在する核酸分子は、本開示の色素化合物で標識されたヌクレオチドを使用するシークエンシングに好適な鋳型である。
【0073】
本出願の色素化合物で標識されたヌクレオチドは、単一分子アレイ上の鋳型の配列決定にも有用である。本明細書で使用するとき、用語「単一分子アレイ」又は「SMA」は、固体支持体の上に分布(又は配列)されたポリヌクレオチド分子の集団を指し、いかなる個々のポリヌクレオチドの、集団の全ての他のポリヌクレオチドからの離間距離は、個々のポリヌクレオチド分子を個々に見分けることが可能であるようになっている。したがって、固体支持体の表面上に固定化された標的核酸分子は、いくつかの実施形態において、光学的手段によって見分けることができる。これは、1つのポリヌクレオチドをそれぞれ表す1つ以上の別個のシグナルが、使用される特定の撮像装置が、見分けることができるエリア内で発生することを意味する。
【0074】
アレイ上の隣接するポリヌクレオチド分子間の間隔が、少なくとも100nm、より具体的には少なくとも250nm、更により具体的には少なくとも300nm、更により具体的には少なくとも350nmである、単一分子検出が達成され得る。したがって、各分子は個別に分解可能(見分けることが可能)であり、単一分子蛍光点として検出可能であり、この単一分子蛍光点からの蛍光はまた、単一工程でのフォトブリーチを呈する。
【0075】
用語「個々に分解された」及び「個々の解像度」は、本明細書では、可視化されたときに、アレイ上の1つの分子をその隣接する分子と区別することが可能であることを指定するために使用される。アレイ上の個々の分子間の分離は、個々の分子を分解するために使用される特定の技術によって、部分的に決定される。単一分子アレイの一般的な特徴は、各々が参照により本明細書に組み込まれる、公開された出願WO00/06770及びWO01/57248を参照することによって理解されるであろう。本開示の標識ヌクレオチドの1つの使用は、合成によるシークエンシング反応であるが、各ヌクレオチドの有用性は、かかる方法に限定されない。実際に、本明細書に記載の標識ヌクレオチドは、ポリヌクレオチドに組み込まれたヌクレオチドに結合した蛍光標識の検出を必要とする任意の配列決定方法論において有利に使用され得る。
【0076】
特に、本開示の色素化合物で標識化されたヌクレオチドコンジュゲートは、自動蛍光シークエンシングプロトコル、特に、Sanger及び共同研究者の、チェーンターミネーションシークエンシング法に基づく、蛍光色素ターミネーターサイクルシークエンシングに使用することができる。このような方法は、一般に、酵素及びサイクル配列決定を使用して、プライマー伸長配列決定反応において蛍光標識されたジデオキシヌクレオチドを組み込む。いわゆるサンガーシークエンシング法、及び関連するプロトコル(サンガー型)は、標識化されたジデオキシヌクレオチドでランダム化された鎖終端を利用する。
【0077】
キット
本開示のいくつかの態様は、本明細書に記載の配列決定法のためのキットに関する。特に、キットは、第1の蛍光部分(すなわち、第1の標識)を含む第1のタイプのヌクレオチドコンジュゲートと、第2の蛍光部分(すなわち、第2の標識)を含む第2のタイプのヌクレオチドコンジュゲートと、第3の蛍光部分(すなわち、第3の標識)を含む第3のタイプのヌクレオチドコンジュゲートと、を含み得、第1の標識、第2の標識、及び第3の標識の各々は、互いにスペクトル的に異なり、第1の標識及び第3の標識は、第1の光源によって励起可能であり、第2の標識及び第3の標識は、第2の光源によって励起可能であり、第1の光源及び第2の光源は、異なる励起波長を有し、第1の標識、第2の標識、及び第3の標識の各々は、単一検出チャネルで検出可能である発光スペクトルを有する。更なる実施形態において、キットは、第4のタイプのヌクレオチドコンジュゲートを更に含む。いくつかのかかる実施形態において、第4のタイプのヌクレオチドコンジュゲートは、非標識である。4つの異なるタイプのヌクレオチドコンジュゲートは、A、C、G、及びT若しくはU、又はそれらの非天然ヌクレオチド類似体である。更なる実施形態において、4つの異なるタイプのヌクレオチドコンジュゲートは、dATP、dCTP、dGTP、及びdTTP若しくはdUTP、又はそれらの非天然ヌクレオチド類似体である。いくつかの実施形態において、第1の励起光源は、約490nm~約550nm、約510~約540nm、又は約520~約530nm(例えば、520nm)の波長を有する。第2の光源は、約400nm~約480nm、約420nm~約470nm、又は450nm~約460nm(例えば、450nm)の励起波長を有する。代替の実施形態において、第1の光源は、約400nm~約480nm、約420nm~約470nm、又は450nm~約460nm(例えば、450nm)の励起波長を有する。第2の励起光源は、約490nm~約550nm、約500~約540nm、又は約510~約530nm(例えば、520nm)の波長を有する。更なる実施形態において、第1の標識、第2の標識、及び第3の標識の各々は、単一発光フィルタ又はチャネルに収集することができる550nm超又は560nmである発光スペクトルを有する。更なる実施形態において、単一発光検出チャネルは、560nm超及び/又は700nm未満(例えば、約565nm~約690nm、約570nm~約670nm、又は約580nm~約650nm)の検出範囲を有する。
【0078】
本明細書に記載される化合物、ヌクレオチドコンジュゲート、又はキットは、生物システム(例えば、プロセス又はそのコンポーネントを含む)を検出、測定、又は特定するために使用されてもよい。化合物、ヌクレオチド、又はキットを用いることができる例示的な技術としては、シークエンシング、発現解析、ハイブリダイゼーション解析、遺伝子解析、RNA解析、細胞アッセイ(例えば、細胞結合又は細胞機能解析)、又はタンパク質アッセイ(例えば、タンパク質結合アッセイ又はタンパク質活性アッセイ)が挙げられる。その使用は、自動シークエンシング器具などの特定の技術を実行するための自動化器具であってもよい。配列決定装置は、異なる波長で動作する2つの光源(すなわち、第1の励起光源及び第2の励起光源)を含み得る。
【0079】
特定の実施形態において、本明細書に記載の標識ヌクレオチドコンジュゲートは、非標識若しくは天然ヌクレオチド、又はそれらの任意の組み合わせと、組み合わせて供給され得る。ヌクレオチドの組み合わせは、別個の個々のコンポーネント(例えば、容器又はチューブ当たり1つのヌクレオチド型)として、又はヌクレオチド混合物(例えば、同じ容器又はチューブ内で混合された2つ以上のヌクレオチド)として提供され得る。更なる実施形態において、ヌクレオチド混合物は、4つ全てのタイプのヌクレオチドを含有し得る。
【0080】
本明細書で使用される場合、「スペクトル的に異なる」蛍光色素又は標識という用語は、2つ以上のかかる色素が1つの試料中に存在する場合、蛍光検出装置によって区別することができる異なる波長で光エネルギーを吸収し、かつ/又は異なるストークスシフトを有する蛍光色素を指す。2つの標識ヌクレオチドコンジュゲートがキット形態で供給される場合、いくつかの実施形態の特徴は、スペクトル的に異なる蛍光色素が、例えば、2つの異なる光源によるなど、異なる波長で励起可能であることである。蛍光色素化合物で標識化された4つのヌクレオチドがキット形態で供給される場合、いくつかの実施形態の特徴は、スペクトル的に異なる蛍光色素のうちの2つを両方とも1つの波長で励起することができ、2つのスペクトル的に異なる色素を両方とも別の波長で励起することができることである。色素における特定の励起波長は、450~460nm、490~500nm、又は520nm以上(例えば、532nm)である。
【0081】
本明細書に記載のキットのいくつかの実施形態において、第1の標識を有するヌクレオチドコンジュゲートは、約450~460nmの範囲の吸光度最大値(Amax)を有する第1の光源によってのみ励起可能である。第2の光源によってのみ励起可能である第2の標識を有するヌクレオチドコンジュゲートは、520nm超のAmaxを有する。第1及び第2の光源(例えば、450nm及び520nm、又は520nm及び450nm)の両方で励起可能である第3の標識を有するヌクレオチドコンジュゲートは、約480nm~510nm、又は約490nm~500nmのAmaxを有する。代替的に、1の光源によってのみ励起可能である第1の標識を有するヌクレオチドコンジュゲートは、520nm超のAmaxを有する。第2の光源によってのみ励起可能である第2の標識を有するヌクレオチドコンジュゲートは、約450~460nmのAmaxを有する。第1及び第2の光源(例えば、450nm及び520nm、又は520nm及び450nm)の両方で励起可能である第3の標識を有するヌクレオチドコンジュゲートは、約480nm~510nm、又は約490nm~500nmのAmaxを有する。更なる実施形態において、第3の標識を有するヌクレオチドコンジュゲートの発光最大値(Emax)は、550nm超又は560nm超であり、かかる標識ヌクレオチドコンジュゲートのストークスシフトは、60nm超である。第1の標識を有するヌクレオチドコンジュゲートのEmaxは、560nm超であり、かかる標識ヌクレオチドコンジュゲートのストークスシフトは、100nm超である。第2の標識を有するヌクレオチドコンジュゲートのEmaxは、560nm超であり、かかるヌクレオチドコンジュゲートのストークスシフトは、約30nm超又は約40nm超である。代替的に、第3の標識を有するヌクレオチドコンジュゲートのEmaxは、550nm超又は560nm超であり、かかる標識ヌクレオチドコンジュゲートのストークスシフトは、60nm超である。第1の標識を有するヌクレオチドコンジュゲートのEmaxは、560nm超であり、かかるヌクレオチドコンジュゲートのストークスシフトは、約30nm超又は約40nm超である。第2の標識を有するヌクレオチドコンジュゲートのEmaxは、560nm超であり、かかる標識ヌクレオチドコンジュゲートのストークスシフトは、100nm超である。
【0082】
一例において、第1の光源は、450~460nmの励起波長を有し、第2の光源は、520nmの励起波長を有する。別の例において、第1の光源は、520nmの励起波長を有し、第2の光源は、450~460nmの励起波長を有する。いくつかのかかる実施形態において、第1のタイプのヌクレオチドコンジュゲートは、Cヌクレオチド(dCTP)であり、第2のタイプのヌクレオチドコンジュゲートは、Tヌクレオチド(dTTP)であり、第3のタイプのヌクレオチドコンジュゲートは、Aヌクレオチド(dATP)であり、第4のタイプのヌクレオチドは、非標識Gヌクレオチド(dGTP)である。いくつかの他の実施形態において、第1のタイプのヌクレオチドコンジュゲートは、Tヌクレオチド(dTTP)であり、第2のタイプのヌクレオチドコンジュゲートは、Cヌクレオチド(dCTP)であり、第3のタイプのヌクレオチドコンジュゲートは、Aヌクレオチド(dATP)であり、第4のタイプのヌクレオチドは、非標識Gヌクレオチド(dGTP)である。いくつかの他の実施形態において、第1のタイプのヌクレオチドコンジュゲートは、Cヌクレオチド(dCTP)であり、第2のタイプのヌクレオチドコンジュゲートは、Aヌクレオチド(dATP)であり、第3のタイプのヌクレオチドコンジュゲートは、Tヌクレオチド(dTTP)であり、第4のタイプのヌクレオチドは、非標識Gヌクレオチド(dGTP)である。更に他の実施形態において、第1のタイプのヌクレオチドコンジュゲートは、Aヌクレオチド(dATP)であり、第2のタイプのヌクレオチドコンジュゲートは、Cヌクレオチド(dCTP)であり、第3のタイプのヌクレオチドコンジュゲートは、Tヌクレオチド(dTTP)であり、第4のタイプのヌクレオチドは、非標識Gヌクレオチド(dGTP)である。更に他の実施形態において、第1のタイプのヌクレオチドコンジュゲートは、Aヌクレオチド(dATP)であり、第2のタイプのヌクレオチドコンジュゲートは、Tヌクレオチド(dTTP)であり、第3のタイプのヌクレオチドコンジュゲートは、Cヌクレオチド(dCTP)であり、第4のタイプのヌクレオチドは、非標識Gヌクレオチド(dGTP)である。更に他の実施形態において、第1のタイプのヌクレオチドコンジュゲートは、Tヌクレオチド(dTTP)であり、第2のタイプのヌクレオチドコンジュゲートは、Aヌクレオチド(dATP)であり、第3のタイプのヌクレオチドコンジュゲートは、Cヌクレオチド(dCTP)であり、第4のタイプのヌクレオチドは、非標識Gヌクレオチド(dGTP)である。代替的に、G又はdGTPヌクレオチドは、本明細書に記載のスペクトル的に異なる標識で標識され得、他の3つのヌクレオチドコンジュゲートのうちの1つは、非標識であり得る。
【0083】
異なる色素化合物で標識化された異なるヌクレオチドを有する構成に関して、キットが本明細書に例示されるが、キットは、同じ色素化合物を有する2、3、4個以上の異なるヌクレオチドを含み得ることが理解されるであろう。
【0084】
標識ヌクレオチドに加えて、キットは、少なくとも1つの追加の成分を一緒に含み得る。更なる成分は、本明細書に記載される方法又は以下の実施例のセクションで特定される成分のうちの1つ以上であってもよい。本開示のキットに組み合わせることができる成分のいくつかの非限定的な例を以下に記載する。いくつかの実施形態において、キットは、DNAポリメラーゼ(変異体DNAポリメラーゼなど)及び1つ以上の緩衝組成物を更に含む。1つの緩衝組成物は、アスコルビン酸又はアスコルビン酸ナトリウムなどの抗酸化剤を含み得、検出中に色素化合物を光損傷から保護するために使用することができる。追加の緩衝組成物は、3’遮断基及び/又は開裂可能なリンカーを切断するために使用することができる試薬を含み得る。例えば、パラジウム錯体などの、遷移金属及び少なくとも部分的に水溶性の配位子から形成された水溶性ホスフィン又は水溶性遷移金属触媒。キットの様々な構成要素は、使用前に希釈される濃縮形態で提供され得る。そのような実施形態では、好適な希釈緩衝液も含まれ得る。ここでも、本明細書に記載される方法で特定された成分のうちの1つ以上を、本開示のキットに含めることができる。
【0085】
本明細書に記載のキットのいくつかの実施形態において、蛍光色素化合物は、ヌクレオチド塩基を介してヌクレオチドに共有結合され得る。いくつかのかかる実施形態において、標識ヌクレオチドは、ピリミジン塩基のC5位置に結合されているか、又は7デアザプリン塩基のC7位置に、任意選択的にリンカー部分を通して結合されている色素を有し得る。例えば、核酸塩基は、7-デアザアデニンであり得、色素は、任意選択的にリンカーを通して、C7位置で7-デアザアデニンに結合されている。核酸塩基は、7-デアザグアニンであり得、色素は、任意選択的にリンカーを通して、C7位置で7-デアザグアニンに結合されている。核酸塩基は、シトシンであり得、色素は、任意選択的にリンカーを通して、C5位置でシトシンに結合されている。別の例として、核酸塩基は、チミン又はウラシルであり得、色素は、任意選択的にリンカーを通して、C5位置でチミン又はウラシルに結合されている。本明細書に記載のヌクレオチド又はヌクレオチドコンジュゲートの任意の実施形態において、ヌクレオチド又はヌクレオチドコンジュゲートは、3’ヒドロキシル遮断基を含み得る。
【0086】
3’ヒドロキシル遮断基
組み込み混合物に使用される標識ヌクレオチドコンジュゲートはまた、ヌクレオチドのリボース糖又はデオキシリボース糖に共有結合した遮断基を有し得る。遮断基は、リボース糖又はデオキシリボース糖上の任意の位置に結合されてもよい。特定の実施形態において、遮断基は、ヌクレオチドのリボース糖又はデオキシリボース糖の3’OH位置にある。様々な3’OH遮断基が、WO2004/018497及びWO2014/139596に開示されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。例えば、遮断基は、アジドメチル(-CH)若しくは置換アジドメチル(例えば、-CH(CHF)N又はCH(CHF)N)、又はリボース若しくはデオキシリボース部分の3’酸素原子に接続しているアリルであり得る。いくつかの実施形態において、3’遮断基は、アジドメチルであり、リボース又はデオキシリボースの3’炭素を用いて3’-OCHを形成する。
【0087】
いくつかの他の実施形態において、3’遮断基及び3’酸素原子は、リボース又はデオキシリボースの3’炭素に共有結合した構造
【0088】
【化2】
のアセタール基を形成し、
式中、各R1a及びR1bは、独立して、H、C~Cアルキル、C1~ハロアルキル、C1~アルコキシ、C1~ハロアルコキシ、シアノ、ハロゲン、任意に置換されたフェニル、又は任意に置換されたアラルキルであり、
各R2a及びR2bは、独立して、H、C~Cアルキル、C~Cハロアルキル、シアノ、又はハロゲンであり、
代替として、R1a及びR2aは、それらが結合している原子と一緒に、任意に置換された5~8員ヘテロシクリル基を形成し、
は、H、任意に置換されたC~Cアルケニル、任意に置換されたC~Cシクロアルケニル、任意に置換されたC~Cアルキニル、又は任意に置換された(C~Cアルキレン)Si(R3aであり、
各R3aは、独立して、H、C~Cアルキル、又は任意に置換されたC~C10アリールである。
【0089】
追加の3’OH遮断基は、米国公開第2020/0216891A1号に開示され、その全体が参照により組み込まれる。アセタールブロッキング基
【0090】
【化3】
(AOM)、
【0091】
【化4】
の非限定的な例であり、各々、リボース又はデオキシリボースの3’炭素に共有結合している。
【0092】
3’-OH遮断基の脱保護
いくつかの実施形態において、アジドメチル3’ヒドロキシ保護基は、水溶性ホスフィン試薬を使用することによって除去又は脱保護され得る。非限定的な例としては、トリス(ヒドロキシメチル)ホスフィン(THMP)、トリス(ヒドロキシエチル)ホスフィン(THEP)、又はトリス(ヒドロキシルプロピル)ホスフィン(THP又はTHPP)が挙げられる。本明細書に記載の3’-アセタールブロッキング基は、様々な化学条件下で除去又は切断され得る。ビニル又はアルケニル部分を含むアセタール遮断基
【0093】
【化5】
基(例えば、エチニル)を含有するこれらのブロッキング基の場合、それらはまた、ホスフィン配位子(例えば、THP又はTHMP)の存在下でのPd(II)錯体(例えば、Pd(OAc)又はアリルPd(II)クロリド二量体)によって除去され得る。
【0094】
パラジウム切断試薬
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の3’ヒドロキシル遮断基は、パラジウム触媒によって切断され得る。いくつかのそのような実施形態では、Pd触媒は、水溶性である。いくつかのかかる実施形態において、Pd(0)錯体(例えば、トリス(3,3’,3’’ホスフィニジントリス(ベンゼンスルホナト)パラジウム(0)九ナトリウム塩九水和物)である。場合によっては、Pd(0)は、アルケン、アルコール、アミン、ホスフィン、又は金属水素化物などの試薬によるPd(II)錯体の還元からその場で生成され得る。好適なパラジウム源としては、NaPdCl、Pd(CHCN)Cl2,(PdCl(C))、[Pd(C)(THP)]Cl、[Pd(C)(THP)]Cl、Pd(OAc)、Pd(Ph、Pd(dba)、Pd(Acac)、PdCl(COD)、及びPd(TFA)が挙げられる。そのような一実施形態では、Pd(0)錯体は、NaPdClからその場で生成される。別の実施形態において、パラジウム源は、アリルパラジウム(II)クロリド二量体[(PdCl(C))]である。いくつかの実施形態において、Pd(0)錯体は、Pd(II)錯体をホスフィンと混合することによって水溶液中で生成される。好適なホスフィンとしては、トリス(ヒドロキシプロピル)ホスフィン(THP)、トリス(ヒドロキシメチル)ホスフィン(THMP)、1,3,5-トリアザ-7-ホスファアダマンタン(PTA)、ビス(p-スルホナトフェニル)フェニルホスフィン二水和物カリウム塩、トリス(カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、及びトリフェニルホスフィン-3,3’,3’’-トリスルホン酸三ナトリウム塩などの水溶性ホスフィンが挙げられる。
【0095】
いくつかの実施形態では、Pd(0)は、Pd(II)錯体[(PdCl(C))]をTHPとその場で混合することによって調製される。Pd(II)錯体とTHPとのモル比は、約1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、又は1:10であり得る。いくつかの更なる実施形態では、アスコルビン酸又はその塩(例えば、アスコルビン酸ナトリウム)などの1つ以上の還元剤を添加してもよい。いくつかの実施形態では、切断混合物は、一級アミン、二級アミン、三級アミン、炭酸塩、リン酸塩、若しくはホウ酸塩、又はそれらの組み合わせなどの追加の緩衝剤試薬を含有し得る。いくつかの更なる実施形態では、緩衝剤試薬は、エタノールアミン(EA)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス)、グリシン、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、2-ジメチルエタノールアミン(DMEA)、2-ジエチルエタノールアミン(DEEA)、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)、若しくはN,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミン(TEEDA)、又はそれらの組み合わせを含む。一実施形態では、緩衝剤試薬は、DEEAである。別の実施形態では、緩衝剤試薬は、炭酸塩、リン酸塩、若しくはホウ酸塩、又はそれらの組み合わせなどの1つ以上の無機塩を含有する。一実施形態では、無機塩は、ナトリウム塩である。
【0096】
リンカー
蛍光標識は、開裂可能なリンカーを介してヌクレオチドに共有結合され得る。用語「開裂可能なリンカー」の使用は、リンカー全体を除去する必要があることを意味するものではない。開裂部位は、リンカーの一部が、開裂後に色素及び/又は基材部分に付着したままであることを確実にするリンカー上の位置に配置され得る。開裂可能なリンカーは、非限定的な例として、求電子的に開裂可能なリンカー、求核的に開裂可能なリンカー、光開裂可能リンカー、還元条件下で開裂可能なリンカー(例えば、ジスルフィド又はアジド含有リンカー)、酸化的条件で開裂可能なリンカー、安全装置リンカーの使用によって開裂可能なリンカー、除去機構によって開裂可能であるリンカーであり得る。色素化合物を基材部分に付着させるために開裂可能なリンカーを使用することにより、必要に応じて、検出後に標識を除去することができ、下流の工程においていかなる干渉シグナルも回避することができる。
【0097】
有用なリンカー基は、PTC公開第WO2004/018493号(参照により本明細書において組み込まれる)に記載されており、その例としては、遷移金属及び少なくとも部分的に水溶性リガンドから形成された水溶性ホスフィン又は水溶性遷移金属触媒を使用して開裂され得るリンカーが挙げられる。水溶液中で、後者は、少なくとも部分的に水溶性の遷移金属錯体を形成する。このような開裂可能なリンカーは、ヌクレオチドの塩基を、本明細書に記載される色素などの標識に接続するために使用することができる。
【0098】
特定のリンカーとしては、下の式の部分を含むものなど、PCT公開第WO2004/018493号(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるものが挙げられ、
【0099】
【化6】
式中、Xは、O、S、NH、及びNQを含む基から選択され、Qは、C1~10の置換又は非置換アルキル基であり、Yは、O、S、NH、及びN(アリル)を含む基から選択され、Tは、水素又はC~C10置換又は非置換アルキル基であり、*は、その部分がヌクレオチド又はヌクレオシドの残りの部分に接続される場所を示す。いくつかの態様では、リンカーは、ヌクレオチドの塩基を、例えば、本明細書に記載される色素化合物などの標識に接続する。
【0100】
リンカーの追加の例としては、以下の式の部分を含むものなど、米国特許出願公開第2016/0040225号(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるものが挙げられる
【0101】
【化7】
(式中、*は、その部分がヌクレオチド又はヌクレオシドの残りの部分に接続される場所を示す)。ここに示されるリンカー部分は、ヌクレオチド/ヌクレオシドと標識との間の全体又は部分的リンカー構造を含んでもよい。ここに示されるリンカー部分は、ヌクレオチド/ヌクレオシドと標識との間の全体又は部分的リンカー構造を含んでもよい。
【0102】
リンカーの追加の例には、以下の式:
【0103】
【化8】
の部分が含まれ、式中、Bは、核酸塩基であり、Zは、-N(アジド)、-O-C-Cアルキル、-O-C-Cアルケニル、又は-O-C-Cアルキニルであり、Flは、追加のリンカー構造を含有し得る色素部分を含む。当業者は、本明細書に記載の色素化合物が、色素化合物の官能基(例えば、カルボキシル)をリンカーの官能基(例えば、アミノ)と反応させることによってリンカーに共有結合していることを理解する。一実施形態では、切断可能なリンカーは、
【0104】
【化9】
(「AOL」リンカー部分)を含み、式中、Zは、-O-アリルである。開裂可能なリンカーの更なる例は、米国出願第17/353512号に開示されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0105】
特定の実施形態において、蛍光色素(フルオロフォア)とグアニン塩基との間のリンカーの長さは、例えば、ポリエチレングリコールスペーサー基を導入することによって変更することができ、それにより、当該技術分野において既知の他の結合を介してグアニン塩基に結合した同じフルオロフォアと比較して、蛍光強度を増加させることができる。例示的なリンカー及びそれらの特性は、PCT公開第WO2007/020457号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。リンカーのこのような設計、特にそれらの長さが増加したことは、DNAなどのポリヌクレオチドに組み込まれたとき、グアノシンヌクレオチドのグアニン塩基に結合したフルオロフォアの輝度の改善を可能にすることができる。したがって、色素が、グアニン含有ヌクレオチドに結合した蛍光色素標識の検出を必要とする任意の解析方法における使用のためである場合、リンカーが、WO2007/020457に記載される、式-((CHO)-(式中、nは、2~50の整数である)のスペーサー基を含むと、有利である。
【0106】
色素は、例えばリンカーを介してヌクレオチド塩基上の任意の位置に取り付けられてもよい。特定の実施形態において、ワトソン・クリック塩基対合が、得られた類似体に対して依然として実行され得る。特定の核塩基標識部位としては、ピリミジン塩基のC5位置、又は7-デアザプリン塩基のC7位置が挙げられる。上記のように、リンカー基を使用して、ヌクレオシド又はヌクレオチドに色素を共有結合させることができる。
【0107】
本明細書に記載の色素で標識化されたヌクレオチドは、式:
【0108】
【化10】
【0109】
を有し得、式中、Dyeは、本明細書に記載の色素化合物(標識)部分であり(色素の官能基とリンカー「L」の官能基との間の共有結合後)、Bは、例えばウラシル、チミン、シトシン、アデニン、7-デアザアデニン、グアニン、7-デアザグアニンなどの核酸塩基であり、Lは、存在し得るか又は存在し得ない、任意選択的なリンカー基であり、R’は、Hであることができ、-OR’は、一リン酸、二リン酸、三リン酸、チオリン酸、リン酸エステル類似体、反応性リン含有基に結合した-O-、又は遮断基によって保護された-O-であり、R’’は、H又はOHであり、R’’’は、H、本明細書に記載の3’OH遮断基であるか、又は-OR’’’は、ホスホラミダイトを形成する。式中、-OR’’’は、ホスホラミダイトであり、R’は、自動合成条件下でその後のモノマーカップリングを可能にする酸開裂可能なヒドロキシル保護基である。いくつかの更なる実施形態では、Bは、
【0110】
【化11】
若しくは
【0111】
【化12】
又はそれらの任意に置換された誘導体及びそれらの類似体を含む。いくつかの更なる実施形態では、標識核酸塩基は、構造
【0112】
【化13】
を含む。
【0113】
特定の実施形態において、遮断基は、色素化合物とは別個かつ独立しており、すなわち、色素化合物には結合していない。代替的に、色素は、3’OH遮断基の全て又は一部を含み得る。したがって、R’’’は、色素化合物を含み得るか、又は含み得ない、3’OH遮断基であることができる。
【0114】
更に別の代替的な実施形態において、ペントース糖の3’炭素上に遮断基は存在せず、塩基に結合した色素(又は色素及びリンカー構造物)が、例えば、更なるヌクレオチドの組み込みに対するブロックとして作用するのに十分なサイズ又は構造であり得る。したがって、色素が糖の3’位置に結合されているかどうかに関わらず、ブロックは立体的妨害物に起因し得るか、又は、サイズ、電荷、及び構造の組み合わせに起因し得る。
【0115】
更に別の代替的な実施形態において、遮断基はペントース糖の2’又は4’炭素上に存在し、更なるヌクレオチドの組み込みに対してブロックとして作用するのに十分なサイズ又は構造であることができる。
【0116】
ブロッキング基の使用により、例えば、標識ヌクレオチドが組み込まれるときに伸長を停止することなどによって、重合を制御することができる。ブロッキング効果が可逆的である場合、例えば、化学的条件を変更することによって、又は化学ブロックを除去することによって可逆的である場合(ただし例はこれらの場合に限られない)、特定の点で伸長を一旦停止してから、継続を可能とすることができる。
【0117】
特定の実施形態において、リンカー(色素とヌクレオチドとの間のリンカー)及び遮断基が両方とも存在し、互いに別個の部分である。特定の実施形態において、リンカー及び遮断基は、同じ又は実質的に同様の条件下で両方とも開裂可能である。したがって、脱保護及び脱ブロッキングプロセスは、色素化合物及びブロッキング基の両方を除去するために単一の処理のみが必要となるため、より効率的であり得る。しかしながら、いくつかの実施形態において、リンカー及び遮断基は、別個の条件下で個別に開裂可能であることに代えて、同様の条件下で開裂可能である必要はない。
【0118】
本開示はまた、色素化合物を組み込むポリヌクレオチドも包含する。このようなポリヌクレオチドは、ホスホジエステル連結で接合されたデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドからそれぞれなるDNA又はRNAであってもよい。ポリヌクレオチドは、自然由来のヌクレオチド、本明細書に記載される標識化されたヌクレオチド以外の非自然由来(又は修飾)ヌクレオチド、又はこれらの任意の組み合わせを、本明細書に記載されるような少なくとも1つの修飾ヌクレオチド(例えば、色素化合物で標識化されたもの)と組み合わせて含むことができる。本開示によるポリヌクレオチドは、非自然由来の骨格結合及び/又は非ヌクレオチド化学修飾も含み得る。少なくとも1つの標識ヌクレオチドを含むリボヌクレオチド及びデオキシリボヌクレオチドの混合物からなるキメラ構造も想到される。
【0119】
本明細書に記載される非限定的な標識ヌクレオチドコンジュゲートには:
【0120】
【化14】
が含まれ、式中、Lは、リンカーを表し、Rは、上記のリボース若しくはデオキシリボース部分、又は5’位置が一リン酸、二リン酸、若しくは三リン酸で置換されたリボース若しくはデオキシリボース部分を表す。
【0121】
いくつかの実施形態において、開裂可能なリンカー及び蛍光部分を含む非限定的な例示的な完全官能化ヌクレオチドコンジュゲートは、以下:
【0122】
【化15】
【0123】
【化16】
【0124】
【化17】
に示され、式中、PGは、本明細書に記載の3’OH遮断基を表し、pは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10の整数であり、kは、0、1、2、3、4、又は5である。一実施形態では、-O-PGは、AOMである。別の実施形態では、-O-PGは、-O-アジドメチルである。一実施形態において、kは、5である。いくつかの更なる実施形態において、pは、1、2、又は3であり、kは、5である。
【0125】
【化18】
は、リンカー部分のアミノ基と色素のカルボキシル基との間の反応の結果としての、切断可能なリンカーを有する色素の接続点を指す。本明細書に記載の標識ヌクレオチドの任意の実施形態では、ヌクレオチドは、ヌクレオチド三リン酸である。
【実施例
【0126】
追加的実施形態が、以下の実施例において更に詳細に開示されるが、これらの実施例は、特許請求の範囲を限定することを意図したものではない。
【0127】
実施例1.Illumina iSeq(商標)100装置での配列決定実験
この実施例では、本明細書に記載の2チャネル励起及び1チャネル検出配列決定法は、Illumina iSeq(商標)100装置で使用し、第1の画像を緑色励起光(約520nm)、及び第2の画像を青色励起光(約450nm)で得るように設定していた。配列決定操作法を変更して、標準的なSBSサイクル(組み込み、続いて撮像、続いて切断)を1×300サイクルで行った。組み込み混合物は、50mMエタノールアミン緩衝液、pH9.6、50mM NaCl、1mM EDTA、0.2%CHAPS、4mM MgSO、及びDNAポリメラーゼ中に、以下の4つのffN:520nmの緑色光及び450nmの青色光の両方で励起可能であるクロメノキノリン色素Aで標識されたffA、450nmの青色光で励起可能であるクマリン色素Bで標識されたffC、緑色光で励起可能であるポリメチン色素Cで標識されたffT、及び非標識ffG(暗色dGTP)を含む。ffC、ffA、ffT、及びffGの構造を以下に示す。
【0128】
【化19】
【0129】
図4は、26サイクル目の組み込み混合で得られた散布図を示す。散布図は、雲形の良好な分離及びffNセットの有用性を示した。
【0130】
次に、同じffNセットを、Illumina iSeq(商標)100装置における2×300サイクル実行で使用した。装置は、緑色励起光で第1の画像及び青色励起光で第2の画像を取り込むように設定され、操作を変更して、標準的なSBSサイクル(取り込み、続いて撮像、続いて切断)を2×300サイクルで行った。配列決定メトリクスを以下の表1に要約する。フェージング値及びプリフェージング値は、標準的なiSeq(商標)100試薬で得られたものと比較して改善されたことが観察された。加えて、このffNのセットでは、配列決定操作は、標準的なiSeq(商標)100操作と比較して、半分の体積の洗浄緩衝液及びスキャン緩衝液のみを使用する。これらの特徴は、2×300サイクルの伸長した読み取り長を、低いエラー率及び高いQ30%値、並びに約28時間の総実行時間で達成することを可能にした。
【0131】
【表4】
【0132】
実施例2.Illumina iSeq(商標)100装置での配列決定実験
この実施例では、本明細書に記載の2チャネル励起及び1チャネル検出配列決定法は、Illumina iSeq(商標)100装置で使用し、第1の画像を緑色励起光(約520nm)、及び第2の画像を青色励起光(約450nm)で得るように設定していた。標準的な配列決定操作を使用して、SBSサイクル(組み込み、続いて撮像、続いて切断)を2×300サイクルで行った。組み込み混合物は、50mMグリシン緩衝液、pH9.8、50mM NaCl、1mM EDTA、0.2%CHAPS、4mM MgSO、及びDNAポリメラーゼ中に、以下の4つのffN:520nmの緑色光及び450nmの青色光の両方で励起可能であるクロメノキノリン色素Aで標識されたffA、450nmの青色光で励起可能であるクマリン色素Bで標識されたffC、緑色光で励起可能であるポリメチン色素Cで標識されたffT、及び非標識ffG(暗色dGTP)を含む。これらの実験で使用した切断溶液は、100mMジエチルエタノールアミン緩衝液pH9.5、100mMトリス(ヒドロキシプロピル)ホスフィン、10mM[AllylPdCl]、10mMアスコルビン酸ナトリウム、1M NaCl、0.1%Tween20を含有した。ffC、ffA、ffT、及びffGの構造を以下に示す。
【0133】
【化20】
【0134】
表2は、この実施例に記載のffNセットを使用したIllumina iSeq(商標)100装置における2×150サイクル実行及び2×300サイクル実行のサイクル時間、フェージング、プリフェージング、PhiXエラー率、及びQ30%メトリクスを示す。このffNのセットを使用することで、良好な配列決定メトリクスを保持しながら、2×150実行のサイクル時間を、標準的なiSeq(商標)カートリッジ及び操作(約141秒)と比較して約1/2である、60秒まで低減させることが可能だったことが観察された。加えて、このffNのセットを用いた配列決定操作は、標準的なiSeq(商標)100操作(1-Ex化学)と比較して、半分の体積の洗浄緩衝液及びスキャン緩衝液のみを使用する。これらの特徴は、標準的なiSeq(商標)カートリッジを用いた標準的なiSeq(商標)100操作で使用されたのと同等なサイクル時間を使用して、2×300サイクルの伸長した読み取り長を、低いエラー率及び高いQ30%値で達成することを可能にした。iSeq(商標)100におけるこのffNのセットによる全2×300サイクル実行の総時間は約28時間であり、これは、標準的な試薬及び操作を使用してIllumina MiSeq(登録商標)で行われた2×300サイクル実行(約56時間)と比較して1/2の減少である。
【0135】
【表5】
【0136】
表3は、この実施例に記載のffNセットを使用したIllumina iSeq(商標)100装置における2×150サイクル実行のサイクル時間、フェージング、プリフェージング、PhiXエラー率、及びQ30%メトリクスを示し、フローセルピクセルサイズは、1.75μmから1μmに低減されている。フローセルのピクセルサイズの変化は、より良好なシグナルのために、より小さいピッチ及びより短いライトパイプをもたらすが、低いシグナル、高いバックグラウンドノイズ、及び高いクロストークの潜在的な懸念も有する。配列決定メトリクスは、1μmフローセルで全体的に非常に良好な品質を有し、1.75μmフローセルから得られたものと同等であることが観察された。
【0137】
【表6】
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
【国際調査報告】