(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-20
(54)【発明の名称】低濃度の逆アルドール触媒を使用するアルドヘキソースを生じる炭水化物のエチレングリコールへの選択的な変換のための連続プロセス
(51)【国際特許分類】
C07C 29/00 20060101AFI20231213BHJP
C07C 31/20 20060101ALI20231213BHJP
C07C 29/141 20060101ALI20231213BHJP
B01J 23/888 20060101ALI20231213BHJP
B01J 23/755 20060101ALI20231213BHJP
B01J 23/30 20060101ALI20231213BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20231213BHJP
【FI】
C07C29/00
C07C31/20 A
C07C29/141
B01J23/888 Z
B01J23/755 Z
B01J23/30 Z
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519018
(86)(22)【出願日】2020-09-24
(85)【翻訳文提出日】2023-05-16
(86)【国際出願番号】 US2020052579
(87)【国際公開番号】W WO2022066160
(87)【国際公開日】2022-03-31
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517254868
【氏名又は名称】ティー.イーエヌ プロセス テクノロジー, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110003579
【氏名又は名称】弁理士法人山崎国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【氏名又は名称】朴 志恩
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【氏名又は名称】今井 千裕
(72)【発明者】
【氏名】シュレック,デヴィッド・ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】バニング,ドナルド
(72)【発明者】
【氏名】カピキャク,ルー
(72)【発明者】
【氏名】アルビン,ブルック
(72)【発明者】
【氏名】ナンリー,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドフォード,マイケル
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA06
4G169AA14
4G169BA01A
4G169BA50
4G169BB02A
4G169BB04A
4G169BC60A
4G169BC68A
4G169CB02
4G169CB35
4G169CB70
4G169DA04
4G169DA08
4G169EA01X
4G169EA01Y
4G169EB18X
4G169EB18Y
4G169EC02X
4G169EC02Y
4G169EC22X
4G169EC22Y
4G169FC08
4H006AA02
4H006AC41
4H006BA14
4H006BA21
4H006BA82
4H006BA85
4H006BC10
4H006BC17
4H006BE20
4H006FE11
4H006FG24
4H039CA60
4H039CA62
4H039CB20
4H039CE90
(57)【要約】
エチレングリコールへの高い選択性を得るために、極めて低濃度の逆アルドール触媒を、特定の活性、サイズ、および空間的分散を有する水素化触媒と組み合わせて使用する逆アルドールプロセスが開示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルドースを生じる炭水化物を含有するフィードからエチレングリコールを生産するための連続的な触媒プロセスであって、
(a)不均一系ニッケル含有水素化触媒を中に含む液状媒体を含有する反応ゾーンに、前記フィードを連続的または間欠的に供給するステップであって、前記フィードは、液状媒体1リットル当たり少なくとも約50グラム/時間の炭水化物の速度で供給され、前記液状媒体は、溶存水素の存在、少なくとも約235℃の温度、3より高いpH、および前記アルドースを生じる炭水化物の少なくとも99質量パーセントを反応させるのに十分な滞留時間を含む触媒変換条件下にあり:
(i)前記不均一系水素化触媒は、約100ミクロン未満の最大粒子寸法を有し、
(ii)前記水素化触媒は、約100グラム/リットル未満の量で前記液状媒体中に分散され、それによって前記液状媒体中で、触媒的に活性な水素化部位間に空間的な関係を提供する、ステップ;
(b)前記反応ゾーンに、均一系タングステン含有逆アルドール触媒を連続的または間欠的に供給するステップであって、反応器中の前記液状媒体中のタングステン原子として計算された可溶化したタングステン化合物の濃度は、約200~1500ミリグラム/リットルであり、水素化触媒と逆アルドール触媒との相対量は、触媒変換条件下で、100時間の持続時間にわたり、前記アルドースを含有する炭水化物のエチレングリコールへの少なくとも75パーセントの累積変換効率を提供するのに十分な量である、ステップ;および
(c)前記反応ゾーンから、エチレングリコールを含有する粗生成物ストリームを連続的または間欠的に引き出すステップ
を含む、上記プロセス。
【請求項2】
前記アルドースを生じる炭水化物が、グルコースを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記液状媒体が、水を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記液状媒体が、水、および水における水素の溶解性よりも大きい水素の溶解性を有する共溶媒を含む、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記水素化触媒が、10質量パーセント未満のニッケル(元素のニッケルとして計算した)を有する、不活性支持体上に担持されたニッケル含有触媒である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記支持体が、10平方メートル/グラム未満の表面積を有する、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記支持体が、アルファ-アルミナである、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記水素化触媒が、水素化活性を小さくするように前処理されている、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記前処理が、前記水素化触媒上にタングステン含有化合物を堆積させることを含む、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記液状媒体中の前記可溶化したタングステン化合物が、元素のタングステンとして計算して、約300~1200ミリグラム/リットルの濃度である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
前記液状媒体中の前記可溶化したタングステン化合物の濃度が、より高い濃度と、より低い濃度とで、連続的または間欠的にサイクル化される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
より低い濃度の可溶化したタングステンへの前記サイクル中に、pHを、少なくとも0.5pH単位増加させる、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記水素化触媒が、担持触媒であり、前記液状媒体中に、1リットル当たり0.1~3グラムのニッケル(元素のニッケルとして計算した)を提供する量で存在する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項14】
前記触媒変換条件が、2500~20,000kPaの絶対圧力を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項15】
ループ型反応器で実行される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項16】
撹拌床反応器で実行される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項17】
前記水素化触媒の一部が、前記反応器から連続的または間欠的に引き出され、回復させた水素化触媒または新しい水素化触媒で交換される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項18】
前記アルドースを生じる炭水化物を含有するフィードが、液状媒体1リットル当たり100~1000グラム/時間の炭水化物の量で、前記反応器に供給される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項19】
前記アルドースを生じる炭水化物を含有するフィードが、複数のポイントで前記反応器に供給されて、水素欠乏のリスクを小さくする、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
前記均一系タングステン含有逆アルドール触媒の一部が、前記反応器に送られる前記アルドースを生じる炭水化物を含有するフィードに添加される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項21】
前記均一系タングステン含有逆アルドール触媒が、アルドースを異性化する触媒活性を有する、請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
前記均一系タングステン含有逆アルドール触媒が、部分的に中和されている、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記触媒変換条件が、3.8~8のpHを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項24】
前記水素化触媒上の約35パーセント未満のニッケルが、ゼロ原子価の状態である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項25】
前記支持体が、約50マイクロメートル未満の最大寸法を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項26】
前記炭水化物を含有するフィードが、空間的に分散されるように前記反応ゾーンに導入される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項27】
前記フィード中の前記炭水化物の液体に対する質量比率が、約0.1:1~0.4:1である、請求項26に記載のプロセス。
【請求項28】
前記反応ゾーン中の2つまたはそれより多くの場所で、フィードが導入される、請求項26に記載のプロセス。
【請求項29】
前記フィードが、炭水化物と、水素化触媒が存在しない前記反応ゾーンからの前記液状媒体の一部とを含む、請求項26に記載のプロセス。
【請求項30】
前記フィードについての前記反応ゾーンからの前記液状媒体の一部が、前記反応ゾーンに水素のマイクロバブルを導入するための推進力を与える流体として使用される、請求項29に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001]この発明は、逆アルドール反応(retro-aldol reaction)および中間体の水素化を使用して、アルドースを生じる炭水化物を、エチレングリコールに選択的に変換するための連続プロセスに関し、より特定には、低濃度の均一系タングステン含有逆アルドール触媒が使用されるこのようなプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
[002]エチレングリコールは、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの他の材料のためのビルディングブロックとして、さらに、その固有の特性、例えば不凍性のために、広範囲な用途を有する有用な大量生産される化学物質である。エチレングリコールの需要はかなりのものであり、そのためエチレングリコールは世界で生産される最大量の有機化学物質の1つとなっている。これは現在、炭化水素供給材料由来のエチレンから開始する多段階プロセスによって作製されている。
【0003】
[003]炭水化物などの再生可能資源からエチレングリコールを製造する提案がなされてきた。これらの代替プロセスには、糖の水素化分解や、水素化触媒上で水素化してエチレングリコールおよびプロピレングリコールを生産できる糖から逆アルドール触媒を使用して中間体を生成する2触媒プロセスなどの触媒経路が含まれる。前者のプロセスは、本明細書では水素化分解プロセスまたは水素化分解経路と称され、後者のプロセスは、水素化または逆アルドールプロセスあるいは水素化または逆アルドール経路と称される。言及し易さのために、本明細書では、後者は、逆アルドールプロセスまたは逆アルドール経路と称する。用語「触媒プロセス」または「触媒経路」は、水素化分解経路および逆アルドール経路の両方を包含することが意図される。用語「Hcat」は、本明細書で使用される場合、水素化分解触媒および水素化触媒の両方を包含することが意図される。
【0004】
[004]触媒経路において、アルドースまたはケトースを生じる炭水化物(これは、1種の炭水化物でもよいし、または炭水化物の混合物でもよい)は、水性媒体中の触媒を含有する反応ゾーンに送られる。上昇した温度および水素の存在下で、炭水化物は、エチレングリコールおよび/またはプロピレングリコールに変換される。水素化分解プロセスは、水素化分解触媒を使用し、典型的には約225℃未満の温度である。多くの例において、炭水化物の高い変換は、約220℃未満の温度で起こり得る。水素化分解経路は、副産物生産を少なくするために、反応ゾーンにフィードされた低濃度の炭水化物を使用することが多い。逆アルドール経路は、炭水化物が逆アルドール触媒上で中間体に変換され、次いで中間体が水素化触媒上でエチレングリコールおよび/またはプロピレングリコールに触媒変換されるという点で根本的に異なる。求められる最初に生じる逆アルドール反応は吸熱性であり、ソルビトールのようなポリオールへの炭水化物の水素化よりも優先的に炭水化物の中間体への変換が起こるように十分な反応速度を提供するためには、高温を必要とし、例えば230℃を超える温度を必要とする場合が多い。
【0005】
[005]商業的に競争力のあるプロセスを達成するためのハードルは、相当なものである。炭水化物のエチレングリコールや販売可能な副産物への高変換だけでは、競争力を達成するのに不十分である。プロセスは、安定な操作での長い実行時間で連続的である必要がある。逆アルドール経路は高圧での水素化を含むことから、反応器や関連器具ための資本コストを最小化するためには、ハイスループットが望ましい。逆アルドール経路ための追加の操作費用は、均一系逆アルドール触媒(homogenous, retro-aldol catalyst)とHcatの両方のための触媒の使用である。
【0006】
[006]エチレングリコールへの逆アルドール経路は、複雑さを伴う。炭水化物は、逆アルドール変換を受けて、グリコールアルデヒドを生成しなければならず、次いでグリコールアルデヒドは、エチレングリコールに水素化される。触媒性逆アルドール反応に必要な温度は、炭水化物の他の反応を引き起こすのにも十分である。例えば、フルクトースへのグルコース異性化が起こり、フルクトースは、逆アルドールプロセスで優勢にプロピレングリコールを形成する。グリコールアルデヒドは高度に反応性であり、例えば1,2-ブタンジオールに非触媒的に反応し得る。これらの理由のために、逆アルドール反応および水素化反応は、可能な限り近い時間および近接して、時には同じ反応器で実行される。加えて、水素化条件は、所望のエチレングリコール生成物の水素化を含むさらなる追加の反応を起こし得る。逆アルドール経路中に起こり得る反応の一部の速度論は、Zhouらによって、Ethylene Glycol Production from Glucose over W-Ru Catalysts: Maximizing Yield by Kinetic Modeling and Simulation、AIChE Journal、第63巻、第6号、2017年6月で報告されている。彼らの主眼は、温度の変化、グルコースフィード濃度およびフィード速度に向けられた。彼らは、エチレングリコールの収量を改善するにはより低いグルコース濃度が好ましく、それゆえに、10%グルコースフィード濃度を使用したシミュレーションおよび実験的検証を行うことを選択したと述べている。彼らは、彼らのシミュレーションから、グルコースの低いフィード速度が、高いエチレングリコール収量を得るのに有利であると結論付けている。彼らのシミュレーションによれば、反応温度を453°Kから473°K以上に増加させると、反応選択性がヘキシトールからエチレングリコールに逆転することが示される。著者によるさらなる結論は、反応が、グルコースの極めて低いフィード速度で、高温で実行される場合、ガス生産が顕著になることを含む。
【0007】
[007] エチレングリコールの所定の生産速度のためには、より高いフィード速度およびフィード中のより高いグルコース濃度での場合に比べて、低いグルコース濃度および低いフィード速度の場合には、大きい反応器体積の使用が求められるであろう。Linらは、米国特許出願公開第2017/0210687A1で、特定の主触媒および可溶性タングステン酸塩またはタングステン化合物を使用して糖からジオールを製造するためのプロセスを開示する。主触媒は、ニッケルと様々な他の成分との酸耐性合金であると言われている。Linらは、最大60重量%のグルコース濃度を含む様々な実施態様を提供する。実施態様2は、例えば、6リットルの液状媒体を含有する10リットルの反応器への、2L/時間のフィード速度での、50重量%のグルコースを含有するフィードを使用する。主触媒は1000グラムの量で存在し、可溶性タングステン酸塩触媒(タングステン酸ナトリウム)はフィードの2重量%の量で提供される。Linらは、71%のエチレングリコール収量、ならびに3重量%のブチレングリコールを有する7重量%のプロピレングリコールを達成したことを報告している。彼らは、ソルビトールおよびグリセリンなどの糖アルコール類(itol)の収量を具体的に報告していなかった。Linらによって使用された大量の主触媒およびタングステン酸ナトリウムは、より低い濃度のグルコースが使用される場合、より少ない量の触媒が使用される他の実施態様のように、フィード中のグルコース濃度に関連しているようである。実施態様4において、40重量%のグルコースフィードが、100グラムの三酸化タングステンおよび500グラムの主触媒と共に使用される。エチレングリコール収量は67%であり、プロピレングリコール収量は2%であった。実施態様10において、フィード中のグルコース濃度は40重量%であり、主触媒を1500グラムの量で使用し、タングステン酸ナトリウムを0.5重量%で使用した。エチレングリコール収量は80%であり、プロピレングリコールは5%収量であった。Linらによる研究が、フィード中でより高い濃度のグルコースを使用してより高いエチレングリコール収量を得ることが可能であり得ることを証明する一方で、工業的な規模のプラントの実用的な操作と経済性に影響を与える大量の触媒を使用するという犠牲が伴う。
【0008】
[008]Schreckらは、米国特許第10,544,072B2において、アルドヘキソースを生じる炭水化物のエチレングリコールへの高度に選択的な変換ための連続プロセスを開示する。逆アルドール触媒の水素化触媒に対する所定の比率と温度を使用して、エチレングリコールへの高い変換効率が、ソルビトールの共生産の最小化と、少なくとも約15:1のエチレングリコールのプロピレングリコールに対する質量比率、および約0.5:1未満のグリセリンのプロピレングリコールに対する質量比率の少なくとも1つとで得られる。実施例において、フィードは、約32質量パーセントまたは50質量パーセントのグルコース溶液である。ほとんどの実施例で使用された水素化触媒は、シリカアルミナ押出し支持体に担持されたニッケル、レニウム、およびホウ素の組合せである。このタイプの水素化触媒は、6.8質量パーセントのニッケルを含有する。特許出願に続く研究は、シリカアルミナ支持体が、実施例で採用される条件下で崩壊する可能性があることを示す。2つの実施例では炭素担持ルテニウム触媒が使用されている。逆アルドール触媒は、メタタングステン酸アンモニウム、メタタングステン酸ナトリウムまたはメタタングステン酸ナトリウムとタングステン酸ナトリウムとの組合せのいずれかである。ニッケル触媒を使用した全ての実施例において、触媒は、100ミリリットル当たり6グラム(30グラム/リットル)の量で提供され、逆アルドール触媒は、0.1~1.5質量パーセントで提供される。実施例では、約1~2.5ミリリットル/分のフィード速度が開示されている。86質量パーセントもの高いエチレングリコールへの選択性が報告されている。エチレングリコールへの最大の選択性は、1質量パーセントまたはそれより多くの逆アルドール触媒を含有する実施例で提供される。一般的に、1ミリリットル/分のフィード速度は、エチレングリコールへのより高い選択性を提供する。
【0009】
[009]Schreckらは、32~50パーセントのグルコースフィード濃度でエチレングリコールへの高い選択性を達成する能力を実証し、使用される触媒の量は、操作上の観点で採算があう。しかしながら、商業的なプラントの経済性は、使用される触媒の量を低減することによって改善されるであろう。
【0010】
[010]De Vliegerらは、国際公開第2020/055831号において、糖からのグリコール生産のための始動プロセスを開示する。彼らは、タングステン含有逆アルドール触媒および水素化触媒を使用してプロセス始動中にタングステン沈殿を抑制するための1つまたはそれより多くの薬剤の使用を開示する。特許出願人は、以下のように述べている:
「糖からグリコールへのプロセスで典型的に使用される均一系タングステンベースの触媒は、例えば金属(タングステン)の還元および沈殿によって、望ましくない生成物への変換を起こしやすい可能性がある。反応器システム中の沈殿した固体は、ラインのブロックや目詰まりに加えてタングステン金属と存在する他の化学種との望ましくない化学的および/または物理的な反応(例えば、触媒被毒)を引き起こす可能性がある。」(段落[10])。
【0011】
[011]好適な物質の例として、特許権者である出願人は、糖フィードまたはプロセス中に形成された生成物、例えば、ソルビトール、モノエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、グリセロール、または他の糖アルコール、アルデヒド、ケトン、およびカルボン酸を列挙している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許出願公開第2017/0210687A1
【特許文献2】米国特許第10,544,072B2
【特許文献3】国際公開第2020/055831号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Zhouら、Ethylene Glycol Production from Glucose over W-Ru Catalysts: Maximizing Yield by Kinetic Modeling and Simulation、AIChE Journal、第63巻、第6号、2017年6月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
[012]本発明によれば、エチレングリコールへの逆アルドール経路では、極めて低濃度の逆アルドール触媒を使用でき、それでもなおエチレングリコールへの高い選択性および高い反応器処理量を達成できることが見出される。開示されたプロセスにおいて、これらの極めて低濃度の逆アルドール触媒は、エチレングリコールへの高い選択性を得るために、特定の活性、サイズおよび空間的分散を有する水素化触媒と組み合わせて使用される。水素化触媒の空間的分散は、水素欠乏のリスクを小さくする。さらに、水素化のための触媒金属の濃度を、これまでにエチレングリコールへの逆アルドール経路に関して好ましいとされたものより低くできることが多く、これは、アルドース、特にグルコースをエチレングリコールに変換する逆アルドール経路のための商業的なスケールの施設のコストを低減し、その実用的な操作を容易にする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
[013]開示されたプロセスで使用される逆アルドール触媒は、均一系タングステン含有触媒であって、ニッケルを含む、好ましくは低表面積の実質的に不活性な支持体上のニッケルを含む不均一系水素化触媒を含有する反応ゾーンに、連続的にまたは間欠的に均一系タングステン含有触媒またはその前駆体が導入されるものである。開示されたプロセスは、極めて低い逆アルドール触媒濃度と組み合わせて、相対的に低い水素化活性を有する触媒、例えば、各粒子上に担持された調節された水素化活性を有するニッケル含有触媒を使用し、それでもなお商業的なスケールの操作にとって十分な活性の選択性を提供する。逆アルドール触媒は、アルドースを生じるフィードと共に、または別々に、または両方を組み合わせて添加することができる。逆アルドール触媒の添加速度は、典型的には、反応器中の液状媒体中のタングステン原子として計算された可溶化したタングステン化合物の濃度が、約200~1500、好ましくは約300~1200ミリグラム/リットルになるような速度である。低濃度の可溶化したタングステン化合物において、反応器から出る可溶化したタングステン化合物は低減され、それによって、プロセスの経済性が改善される。理論に制限されることは望まないが、反応条件下で、タングステン化合物の堆積による水素化触媒の汚染は、弱められるかもしくは安定化され、または一部の場合において反転されることも考えられる。さらに、ニッケル含有触媒の交換率を下げることができ、さらなる経済的な利益の実現が可能になる。
【0016】
[014]特定の形態によれば、アルドースを生じる炭水化物を含有するフィードからエチレングリコールを生産するための触媒プロセスは、以下を含む:
(a)不均一系ニッケル含有水素化触媒を中に含む液状媒体を含有する反応ゾーンに、前記フィードを連続的または間欠的に供給するステップであって、前記フィードは液状媒体1リットル当たり少なくとも約50グラム/時間、好ましくは少なくとも約100グラム/時間の炭水化物の速度で供給され、前記液状媒体は溶存水素の存在、少なくとも約235℃の温度、3より高いpH、およびアルドースを生じる炭水化物の少なくとも99質量パーセントを反応させるのに十分な滞留時間を含む触媒変換条件下にあり、
(i)不均一系水素化触媒は約100マイクロメートル未満、好ましくは約50マイクロメートル未満の最大粒子寸法を有し、好ましくは、担持されたニッケル含有触媒であり、より好ましくは、レニウムおよびイリジウムの少なくとも一方で安定化されている担持されたニッケル含有触媒であり、支持体は不活性支持体であり、好ましくは約100平方メートル/グラム未満、より好ましくは約50平方メートル/グラム未満の表面積を有し、約10質量パーセント未満のニッケル(元素のニッケルとして計算された)を含有し、
(ii)水素化触媒は約100グラム/リットル未満の量で液状媒体中に分散され、それによって前記液状媒体中で触媒的に活性な水素化部位間に空間的な関係を提供する、ステップ;
(b)反応ゾーンに、均一系タングステン含有逆アルドール触媒を連続的または間欠的に供給するステップであって、反応器中の液状媒体中のタングステン原子として計算された可溶化したタングステン化合物の濃度は約200~1500ミリグラム/リットルであり、水素化触媒と逆アルドール触媒との相対量は、触媒変換条件下で、100時間の持続時間にわたり、少なくとも75パーセントの、アルドースを含有する炭水化物のエチレングリコールへの累積変換効率を提供するのに十分な量である、ステップ;および
(c)反応ゾーンから、エチレングリコールを含有する未処理の生成物ストリームを連続的または間欠的に引き出すステップ。
【0017】
[015]好ましくは、水素化触媒は、反応ゾーンにおいて、0.1~5グラム/リットルのニッケル(元素のニッケルとして計算された)を提供する量で、液状媒体中に存在する。好ましくは、触媒粒子の水素化活性に加えて反応ゾーンにおける水素化活性も調節するために、水素化触媒のニッケルの一部のみが触媒活性を有する。担持触媒に関してほとんどの場合、水素化触媒中のニッケルの約50パーセント未満、時には約35パーセント未満(元素のニッケルとして計算された)が、ゼロ原子価の状態である。
【0018】
[016]好ましくは、炭水化物を含有するフィードは、空間的に分散されるように反応ゾーンに導入され、それでもなお、反応ゾーンの単位体積当たり商業的に魅力的なローディング量で提供され、例えば、液状媒体1リットル当たり、少なくとも100または150グラム、時には少なくとも約200または250グラムの炭水化物で提供される。したがって、フィードは、反応ゾーン中の2つまたはそれより多くの場所で導入してもよいし、またはフィードは、例えば、溶媒の少なくとも1種で、または生成物ストリームを再利用することによって希釈してもよい。炭水化物の空間的な分散は、水素化のための水素需要が水素の供給を超える水素化触媒の周辺の局所領域を回避するのに役立つ。好ましくは、炭水化物は、液体と混合し、次いでこの混合物が反応ゾーンに導入される。炭水化物の液体に対する質量比率は、多くの場合、約0.6:1未満であり、例えば、約0.05:1~0.5:1であり、時には約0.1:1~0.4:1である。
【0019】
[017]複数の実施態様が開示されるが、本発明の例示的な態様を示し説明する以下の詳細な説明から、本開示の他の実施態様も当業者には明らかであろう。理解される通り、本開示は、いずれも本開示の本質および範囲から逸脱することなく、様々な明白な形態で改変が可能である。したがって、図面および詳細な説明は、本質的に例示的であり、限定的とはみなされないものとする。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[018]本明細書で参照される全ての特許、公開された特許出願および論文は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
定義
[019]以下の用語は、本明細書で使用される場合、別段の指定がない限り、またはそれらが使用される文脈から明らかでない限り、以下に記載の意味を有する。
【0021】
[020]本明細書において範囲が使用される場合、その範囲に含まれるありとあらゆる値を長々と挙げて記載する必要性を回避するように、その範囲の端点のみが記載される。列挙された端点の間のあらゆる適切な中間の値および範囲を選択することができる。一例として、0.1~1.0の範囲が列挙される場合、全ての中間の値(例えば、0.2、0.3、6.3、0.815など)が含まれ、全ての中間の範囲(例えば、0.2~0.5、0.54~0.913など)も同様である。
【0022】
[021]用語「1つの(a)」および「1つの(an)」の使用は、記載された要素の1つまたはそれより多くを含むことが意図される。
[022]混合するまたは混合されたは、2種またはそれより多くの要素の物理的な組合せの形成を意味し、このような組合せは、全体にわたり均一であってもよいし、または不均一な組成を有していてもよく、その例としては、これらに限定されないが、固体混合物、溶液、および懸濁液が挙げられる。
【0023】
[023]アルドースは、1分子当たり単一のアルデヒド基(-CH=O)のみを含有し、一般化学式Cn(H2O)nを有する単糖を意味する。アルドースの非限定的な例としては、アルドヘキソース(全て6個の炭素を有するアルデヒドを含有する糖であり、その例としては、グルコース、マンノース、ガラクトース、アロース、アルトロース、イドース、タロース、およびグロースが挙げられる);アルドペントース(全て5個の炭素を有するアルデヒドを含有する糖であり、その例としては、キシロース、リキソース、リボース、およびアラビノースが挙げられる);アルドテトロース(全て4個の炭素を有するアルデヒドを含有する糖であり、その例としては、エリトロースおよびトレオースが挙げられる)、およびアルドトリオース(全て3個の炭素を有するアルデヒドを含有する糖であり、その例としては、グリセルアルデヒドが挙げられる)が挙げられる。
【0024】
[024]アルドースを生じる炭水化物は、アルドースまたは加水分解のときにアルドースを生じ得る二糖もしくは多糖を意味する。例えば、スクロースは、加水分解のときにケトースも生じるが、それでもアルドースを生じる炭水化物である。
【0025】
[025]水性および水溶液は、水が存在するが、水が優勢の成分であることを必要としないことを意味する。説明の目的で、これに限定されないが、90体積パーセントのエチレングリコールおよび10体積パーセントの水の溶液が水溶液になる。水溶液は、溶解または分散した成分を含有する液状媒体、例えば、これらに限定されないが、コロイド懸濁液およびスラリーを含む。
【0026】
[026]生物学的起源の炭水化物供給材料は、全体が、または相当部分が、生物学的な生成物もしくは再生可能な農業材料(これらに限定されないが、植物、動物および海洋材料など)または山林材料から供給された、それら由来の、またはそれらから合成された炭水化物を含む生成物を意味する。
【0027】
[027]接触を開始することは、流体が、成分、例えば、均一系または不均一系触媒を含有する媒体と接触し始めるが、その流体の全ての分子が触媒と接触することを必要としないことを意味する。
【0028】
[028]溶液の組成は、より低い沸点の成分、通常、3個またはそれより少ない炭素と約300℃未満の標準沸点とを有する成分にはガスクロマトグラフィーを使用して、より高い沸点の成分、通常、3個またはそれより多くの炭素を有する成分、および熱的に不安定な成分には高速液体クロマトグラフィーを使用して決定される。
【0029】
[029]アルドヘキソースのエチレングリコールへの変換効率は、質量パーセントで報告され、生成物溶液に含有されるエチレングリコールの質量を、理論上炭水化物フィードによって提供されるアルドヘキソースの質量、すなわち、炭水化物フィードに含有される全てのアルドヘキソース自体および炭水化物フィードに含有される全ての二糖または多糖の加水分解の際に理論上生成するアルドヘキソースを含む質量で、割ることにより計算される。
【0030】
[030]累積変換効率は、所定期間中に供給されたアルドースを生じる炭水化物の質量およびその所定期間中に生産された例えばエチレングリコールの質量の観点での、所定期間にわたる複合的な変換効率を意味する。測定は、このような期間にわたる全ての炭水化物およびエチレングリコールを考慮に入れるという条件で、あらゆる好適な手段によって行うことができる。
【0031】
[031]分散されたとは、全方向に分離していることを意味する。分散された水素化触媒は、溶存水素と水素化可能な有機化合物との両方を含有する粒子周辺に液状媒体を有するものである。
【0032】
[032]ヘキシトールは、C6H14O6の実験式を有する6個の炭素の化合物であって、炭素1個当たり1個のヒドロキシルを有するものを意味する。
[033]高剪断混合は、隣接する領域に対して様々な速度で移動する流体を提供することを含み、これは、剪断をもたらして混合が促進されるように固定のまたは動く機械的な手段を介して達成することができる。本明細書で使用される場合、高剪断混合に供される成分は、不混和性であってもよいし、部分的に不混和性であってもよいし、または混和性であってもよい。水流分配(hydraulic distribution)は、そこに含有されるあらゆる触媒との接触を含む容器中の水溶液の分配を意味する。
【0033】
[034]水素欠乏は、望ましい接触水素化のための分子水素に対する需要が、分子水素を時期的に適切に供給するための物質移動性能を超えていることを意味する。水素欠乏は、部分的に水素化された化合物の生産、有機酸の生成、および1つの有機化合物から別の有機化合物への水素の移動を引き起こす可能性がある。
【0034】
[035]直前にとは、1分より長い滞留時間を必要とする介入単位操作が存在しないことを意味する。
[036]間欠的は、時々を意味し、その時間間隔は規則的であってもよいし、または不規則であってもよい。
【0035】
[037]糖アルコール類(itol)は、各炭素原子においてヒドロキシル部分でのみ置換された炭化水素を意味し、例えばソルビトール、マンニトール、およびグリセリンなどである。
【0036】
[038]ケトースは、1つの分子当たり1つのケトン基を含有する単糖を意味する。ケトースの非限定的な例としては、ケトヘキソース(全て6個の炭素を有するケトンを含有する糖であり、その例としては、フルクトース、プシコース、ソルボース、およびタガトースが挙げられる)、ケトペントース(全て5個の炭素を有するケトンを含有する糖であり、その例としては、キシルロースおよびリブロースが挙げられる)、ケトテトロース(全て4個の炭素を有するケトースを含有する糖であり、その例としては、エリトルロースが挙げられる)、およびケトトリオース(全て3個の炭素を有するケトースを含有する糖であり、その例としては、ジヒドロキシアセトンが挙げられる)が挙げられる。
【0037】
[039]液状媒体は、反応器中の液体を意味する。この液体は、炭水化物、中間体、および生成物のための溶媒、さらには均一系タングステン含有逆アルドール触媒のための溶媒である。典型的には、好ましくは、このような液体は、少なくともいくらかの水を含有しており、したがって水性媒体と呼ばれる。
【0038】
[040]水素化される可能性がある有機物質(「HOC」)は、プロセス条件下で、1つまたはそれより多くの生成物に水素化される可能性がある酸素を含有する炭化水素である。HOCとしては、これらに限定されないが、糖および他のケトンおよびアルデヒド、ならびにヒドロキシルを含有する炭化水素、例えばアルコール、ジオール、および糖アルコール類が挙げられる。
【0039】
[041]水溶液のpHは、周囲気圧および周囲温度で決定される。例えば水性の水素化媒体または生成物溶液のpHを決定することにおいて、液体は、冷却され、pH決定の前に、周囲気圧および周囲温度で2時間静置する。pH測定が求められる溶液が約50質量パーセント未満の水を含有する場合、50質量パーセントより多くの水が提供されるように、溶液に水を添加する。一貫性のために、溶液の希釈は、同じ質量パーセントの水となるようになされる。
【0040】
[042]pH制御剤は、緩衝液および酸または塩基の1つまたはそれより多くを意味する。
[043]炭水化物の少なくとも部分的な水和を維持するのに十分な圧力は、カラメル化反応を防ぐ炭水化物の水和の十分な水分を維持するのに十分な圧力を意味する。水の沸点を超える温度では、その圧力は、水和の水分を炭水化物上に保持させることを可能にするのに十分なものである。
【0041】
[044]迅速な拡散混合は、物質移動を容易にして実質的に均一な組成物を形成するために、混合しようとする2つまたはそれより多くの流体の少なくとも1つが微細に分割されている混合である。
【0042】
[045]反応媒体は、炭水化物を含有するフィードを溶解させることができる、触媒変換条件下の液相である。
[046]反応器は、直列または並列の1つまたはそれより多くの容器であってもよく、容器は、1つまたはそれより多くのゾーンを含有していてもよい。反応器は、連続的な操作のためのあらゆる好適な設計の反応器であってもよく、その例としては、これらに限定されないが、タンク、およびパイプまたはチューブ型反応器などが挙げられ、必要に応じて、流体混合性能を有していてもよい。反応器のタイプとしては、これらに限定されないが、層流反応器、固定床反応器、スラリー反応器、流動床反応器、移動床反応器、擬似移動床反応器、トリクルベッド反応器、気泡塔反応器、キャビテーション反応器およびループ型反応器が挙げられる。
【0043】
[047]可溶性は、反応媒体中で、単一の液相を形成するかまたはコロイド懸濁液を形成することができることを意味する。
[048]可溶化したタングステン化合物は、反応媒体中に溶解されたタングステン化合物であるか、またはコロイド状に懸濁されたタングステン化合物である。
【0044】
[049]ニッケル触媒について、安定化されたとは、レニウムおよびイリジウム非含有のニッケルと比較して、レニウムおよびイリジウムの一方またはそれより多くが、反応媒体中でのニッケルの溶解性を低減するのに十分な量でニッケルと組み合わされていることを意味する。安定化されたニッケルは、合金であってもよいし、または合金でなくてもよい。レニウムおよび/またはイリジウムは、一部の場合において、ニッケル触媒の触媒性能に影響を与える可能性がある。
【0045】
炭水化物フィード
[050]開示されたプロセスは、アルドヘキソースを生じる炭水化物を含有する炭水化物フィードを使用する。エチレングリコールのプロピレングリコールに対する高い質量比率を含有する生成物溶液が求められる場合、フィード中の炭水化物は、少なくとも約90質量%、好ましくは少なくとも約95または99質量パーセントのアルドヘキソースを生じる炭水化物を含む。多くの場合、炭水化物フィードは、炭水化物ポリマー、例えばデンプン、セルロース、またはこのようなポリマーの部分的に加水分解された画分、またはポリマーの混合物、または部分的に加水分解された画分を有するポリマーの混合物を含む。
【0046】
[051]ほとんどの生物学的起源の炭水化物供給材料は、加水分解されるときにグルコースを生じる。開示されたプロセスは、グルコースおよびグルコース前駆体をエチレングリコールに変換するために、効果的に使用することができる。グルコース前駆体としては、これらに限定されないが、マルトース、トレハロース、セロビオース、コージビオース、ニゲロース、ニゲロース、イソマルトース、β,β-トレハロース、α,β-トレハロース、ソホロース、ラミナリビオース、ゲンチオビオース、およびマンノビオースが挙げられる。また、炭水化物フィードの大部分または唯一の反応性成分として、グルコースを有することも許容される。当然ながら、開示されたプロセスにおいて、他のアルドースを使用してもよい。他の炭水化物ポリマーおよびオリゴマー、例えばヘミセルロース、ヘミセルロースの部分的に加水分解された形態、二糖、例えばスクロース、ラクツロース、ラクトース、ツラノース、マルツロース、パラチノース、ゲンチオビウロース、メリビオース、およびメリビウロース、またはそれらの組合せが使用される可能性がある。しかしながら、これらの性質は、エチレングリコールおよびプロピレングリコールの様々な混合物をもたらす可能性がある。
【0047】
[052]炭水化物フィードは、固体であってもよいし、または好ましくは液体懸濁液の形態であってもよいし、または水などの溶媒中に溶解されていてもよい。炭水化物フィードが非水性環境中にある場合、炭水化物が少なくとも部分的に水和していることが好ましい。非水性溶媒としては、アルカノール、ジオールおよびポリオール、エーテル、または他の好適な1~6個の炭素原子を有する炭素化合物が挙げられる。溶媒としては、混合溶媒、特に、水と前述の非水性溶媒の1種とを含有する混合溶媒が挙げられる。特定の混合溶媒は、水素化反応の条件下で、より高い濃度の溶存水素を有していてもよく、これにより水素欠乏の可能性が低減される。好ましい非水性溶媒は、水素供与体であり得るものであり、例えばイソプロパノールである。しばしばこれらの水素供与体溶媒は、ヒドロキシル基を有し、このヒドロキシル基は、水素原子を供与するとカルボニルに変換され、このカルボニルは、反応ゾーン中の条件下で還元することができる。最も好ましくは、炭水化物フィードは、水溶液の形態で提供される。いずれの場合においても、フィードの体積および引き出された未処理の生成物の体積は、連続プロセスをもたらすためにバランスがとれている必要がある。
【0048】
[053]反応ゾーンに炭水化物を提供することにおけるさらなる考察は、エネルギーおよび資本コストを最小化することである。例えば、定常操作において、フィードに含有される溶媒は、未処理の生成物と共に反応ゾーンを出て、所望のグリコール生成物を回収するために分離する必要がある。
【0049】
[054]好ましくは、フィードは、水素欠乏を引き起こす可能性がある不適当な濃度のHOCが回避されるような方式で反応ゾーンに導入される。反応ゾーンの単位体積当たり、炭水化物を供給するためのより多くの数の複数の配置を使用することで、フィード中の炭水化物をさらに濃縮することができる。一般的に、炭水化物フィード中の水の炭水化物に対する質量比率は、好ましくは、4:1~1:4の範囲である。時には、デキストロースおよびスクロースなどの特定の炭水化物が600グラム/リットルまたはそれより高濃度の水溶液は、商業的に入手可能である。
【0050】
[055]一部の場合において、水素化触媒が実質的に存在しない再利用された水素化溶液、またはそれらのアリコートもしくは分離した部分は、成分として炭水化物フィードに添加される。再利用される水素化溶液は、未処理の生成物ストリームの一部または水素化触媒が除去されている内部再利用物の1つまたはそれより多くであってもよい。好適な固体分離技術としては、これらに限定されないが、ろ過および密度分離、例えばサイクロン、ベーンセパレーター(vane separator)、ならびに遠心分離が挙げられる。この再利用により、フィードのための新しい溶媒の量を低減しながら、反応ゾーンの単位体積当たり高い変換を維持するのに十分な速度で炭水化物がフィードされる。再利用の使用は、特に再利用物が、未処理の生成物ストリームの分別した部分である場合、炭水化物のエチレングリコールへの高い変換を維持しながら、反応ゾーンへの低濃度の炭水化物の供給を可能にする。加えて、再利用ストリームは、反応ゾーンの温度かまたはそれに近い温度に維持することが実現可能であり、これは、再利用ストリームがタングステン含有触媒を含有しているためであり、フィードが反応ゾーンに入る前に逆アルドール変換を起こすことができる。再利用された水素化溶液の使用により、炭水化物の、再利用された総生成物ストリームおよび添加された溶媒に対する質量比率は、しばしば約0.05:1~0.4:1の範囲内であり、時には約0.1:1~0.3:1である。再利用された未処理の生成物ストリームは、しばしば生成物ストリームの約20~80体積パーセントである。
【0051】
[056]一部の場合において、再利用される水素化ストリームの導入速度は、そのようなストリームが、炭水化物の導入のポイントで、反応ゾーンに水素の小さい気泡またはマイクロバブルを導入するためのインジェクターまたはエダクターのための推進力のある流体として使用できるような速度であり、それにより、水素欠乏の可能性を小さくすることができる。例えば、再利用される水素化ストリームは、水素がフィードされるベンチュリミキサーに送ってもよい。水素は、少なくとも部分的に反応ゾーンの上部空間から供給されてもよく、さらに、ベンチュリミキサーが使用される場合、真空を使用して、上部空間からミキサーに水素を引き込むことができる。次いで混合物を、反応ゾーンにおいて、1つまたはそれより多くのインジェクターに送る。インジェクターは、ジェットミキサー/エアレーターまたはスロットインジェクター、例えば米国特許第4,162,970号で開示されたものであり得る。インジェクター、特にスロットインジェクターは、広範囲な液体およびガス流速にわたって操作することが可能であり、したがって、ガス移動能力を大幅に小さくすることが可能である。所与のサイズのマイクロバブルを提供するのに必要なエネルギーはしばしば、マイクロバブルスパージャーを使用してそのサイズのマイクロバブルを形成するのに必要なエネルギーより低い。インジェクターによって生成する気泡サイズは、他の要因のなかでも、インジェクターを通る液体フローの速度、およびインジェクターを通過する反応生成物に対する水素の比率の影響を受けると予想される。好ましくは、インジェクターによって導入される水素は、0.01~0.5ミリメートル、好ましくは0.02~0.3ミリメートルの範囲の直径を有するマイクロバブルの形態である。マイクロバブルは、反応ゾーンにおける水素の液状媒体への物質移動速度を強化するのに役立つ。
【0052】
[057]炭水化物フィードに含有される炭水化物は、反応器体積1リットル当たり、少なくとも50または100グラム/時間、好ましくは約150~500グラム/時間の速度で提供される。任意に、逆アルドール触媒を含有するが本質的に水素化触媒が存在しない別個の反応ゾーンを使用してもよい。
【0053】
逆アルドール触媒
[058]開示されたプロセスは、均一系タングステン含有逆アルドール触媒を使用する。均一系触媒源は、固体であってもよいし、または溶解もしくは懸濁されたタングステン化合物であってもよい。固体として添加される場合、タングステン化合物は、化合物それ自体として、または他の材料を含む混合物として、または担体に担持されて添加することができる。タングステン化合物としては、酸化物、硫酸塩、リン化物、窒化物、炭化物、ハロゲン化物、酸などが挙げられる。また、その例としては、ジルコニア、アルミナ、およびアルミナ-シリカに担持された、炭化タングステン、可溶性ホスホタングステン、酸化タングステンも挙げられる。好ましい触媒は、可溶性タングステン化合物およびタングステン化合物の混合物によって提供される。可溶性タングステン酸塩としては、これらに限定されないが、パラタングステン酸アンモニウムおよびアルカリ金属のパラタングステン酸塩、例えば、パラタングステン酸ナトリウムおよびカリウム、部分的に中和されたタングステン酸、メタタングステン酸アンモニウムおよびアルカリ金属のメタタングステン酸塩、ならびにタングステン酸アンモニウムおよびアルカリ金属のタングステン酸塩が挙げられる。アンモニウムカチオンの存在は、低級グリコール(lower glycol)生成物において望ましくないアミン副産物の生成を引き起こすことが多い。理論に縛られることは望まないが、触媒活性を呈する化学種は、触媒として導入される可溶性タングステン化合物と同じであってもよいし、または同じでなくてもよい。むしろ、触媒活性種は、逆アルドール反応条件への曝露の結果として形成される可能性がある。タングステン含有複合体は、典型的には、pH依存性である。例えば、7より高いpHでタングステン酸ナトリウムを含有する溶液は、pHが低められると、メタタングステン酸ナトリウムを生成すると予想される。錯体化したタングステン酸アニオンの形態は、一般的に、pH依存性である。タングステン酸アニオンの縮合から形成された錯体化したアニオンが形成される速度は、タングステン含有アニオンの濃度の影響を受ける。
【0054】
[059]好ましい逆アルドール触媒は、酸、好ましくは1~6個の炭素を有する有機酸、例えば、これらに制限されないが、ギ酸、酢酸、グリコール酸、および乳酸などで部分的に中和された、タングステン酸アンモニウムまたはアルカリ金属のタングステン酸塩を含む。部分的な中和は、多くの場合、タングステン酸カチオンの約25~75%、すなわち、平均して25~75%が酸部位になる。部分的な中和は、反応器にタングステン含有化合物を導入する前に行われてもよいし、または反応器に含有される酸で行われてもよい。理論に縛られることは望まないが、反応媒体中のタングステン酸アニオン間の空間的な間隔と、ポリタングステン複合体の平衡を達成するのに必要な時間とが、酸化ポリタングステン複合体、例えばメタタングステン酸塩およびパラタングステン酸塩の形成を妨害すると考えられる。しかしながら、典型的には、部分的に中和されたタングステン酸塩が迅速に形成され、逆アルドール活性を提供し、一方で、例えば、アルドースのケトースへの異性化を触媒するタングステン酸ナトリウムの触媒活性を小さくすると考えられる。
【0055】
水素化触媒
[060]開示されたプロセスは、不均一系水素化触媒を採用する。水素化触媒は、ニッケルを使用し、特定の特性を有する。理論によって限定されることは望まないが、水素化触媒は、中間体をエチレングリコールに触媒することに加えて、エチレングリコールなどの生成物の、それほど望ましくない材料、例えばエタノールまたはエタンへの反応を触媒する可能性がある。ニッケルは、相対的に弱い水素化触媒であり、したがって、炭水化物のエチレングリコールへの変換のために使用されてきた。
【0056】
[061]ニッケル触媒は、担持されていてもよいし、または非担持であってもよい。非担持ニッケル触媒としては、ラネーニッケル触媒およびニッケルの合金が挙げられ、促進剤、改質剤および他のアジュバントを含有していてもよい。以下で論じられるように、ニッケル含有非担持触媒のサイズおよび触媒活性は重要である。制御された活性化または選択的な被毒を使用して、求められる水素化触媒活性を提供することができる。
【0057】
[062]開示されたプロセスで使用される担持された水素化触媒は、元素のニッケルとして計算した場合、相対的に少ないニッケル、例えば、約10質量パーセント未満、一部の場合において、約5質量パーセント未満、例えば、約0.1~2.5質量パーセントのニッケルを含有する。したがって、各触媒粒子は、調節された水素化活性を有し、この調節された水素化活性は、それほど望ましくない材料への生成物の触媒された反応を小さくすると考えられ、さらに、酸の生産を引き起こす水素欠乏のリスクを小さくすると考えられる。
【0058】
[063]触媒中の全てのニッケルが、触媒的に活性であるとは限らない。ニッケル含有触媒の活性は、ゼロ原子価の状態である触媒上のニッケルの一部によって、さらに、支持体上のニッケル粒子の立体配置によって、ならびに支持体または堆積による触媒的に活性なニッケルの閉塞によって部分的に影響を受けると予想される。ニッケルの活性および/または安定性は、触媒性の促進剤、改質剤および他のアジュバントの含有によっても影響を受ける可能性がある。触媒の活性はまた、典型的には使用と共に減少する。触媒のニッケル原子の、一般的には約1~50パーセント、好ましくは約20~50パーセント、一部の場合において約10~35パーセントが、ゼロ原子価の状態である。支持体上のニッケルの堆積のサイズも、触媒的に活性なニッケルの一部に影響を与える可能性がある。大きい粒子は、小さい粒子が有する表面積に比べて、単位質量当たり小さい表面積を有する。
【0059】
[064]反応ゾーンの体積における触媒の触媒活性種の絶対量はまた、触媒またはその環境の処理によって、および/または反応ゾーンにおける触媒の不均等分布の問題を改善することによって調整することができる。触媒の触媒活性種の絶対量は、単に触媒の全体の質量ではなく、触媒の有効性に基づく。したがって、コーティング、被毒、粒子の成長、および可溶化による触媒性種の喪失のような触媒の喪失を引き起こす、反応ゾーンにおける不均等分布およびin situの触媒条件のような物理的なプロセス条件は、反応に利用可能な触媒活性種の絶対量に反映される。例えば、触媒への堆積物の形成は、利用可能な触媒部位を低減する。堆積物の全部または一部を除去することは、利用可能な触媒部位の数を増加させることから、触媒の触媒活性種の絶対量の増加である。一部の場合において、触媒中の触媒性種は、酸化または還元された状態になる。例えば、水素化触媒で使用されるニッケルは、酸化された状態になり、もはや触媒的に活性でなくなる可能性がある。酸化ニッケルの還元は、触媒的に利用可能なニッケルの量を増加させると予想され、したがって、触媒の触媒活性種の絶対量の増加をもたらすであろう。同様に、触媒性種は、酸化もしくは還元されてもよいし、または多かれ少なかれ活性な種に変換されてもよい。
【0060】
[065]水素化触媒、特に担持触媒は、好ましくは、安定化剤、例えばレニウムおよびイリジウム、および他のアジュバントを含有する。安定化剤は、多くの場合、ニッケルの約1~20原子パーセント、時には約3~15原子パーセントの量で存在する(全て元素金属として計算した)。理論に縛られることは望まないが、安定化剤は、合金またはニッケルとの他の相互作用を形成して、反応媒体におけるその粒子成長速度、酸化、および溶解性を低減し、それによって水素化触媒の有効寿命を伸長する。安定化剤は、触媒の効力を増す他の作用を有していてもよい。触媒は、他のアジュバント、例えばホウ素などの促進剤を含有していてもよい。
【0061】
[066]ニッケル含有触媒は、低表面積を有し、例えば、50平方メートル/グラム未満、好ましくは10平方メートル/グラム未満の低表面積を有する(BETによって測定した)。理論によって限定されることは望まないが、触媒内部の触媒部位は水素欠乏になりやすく、したがってエチレングリコールへの変換の選択性を低減する酸や他のそれほど望ましくない生成物を生成しやすいと考えられる。一般的に、支持体は大きいほど、より小さい表面積を有することがより望ましい。担持触媒の場合、表面に、または表面近くにニッケルを選択的に配置する調製技術は、特により大きい表面積の支持体にとって有利となるだろう。触媒の最大寸法は、100マイクロメートル未満、時には約50マイクロメートル未満である。アスペクト比(厚さに対する最大寸法)は、多くの場合、1:10~1:1である。一部の場合において、表面から触媒の中心への最小寸法は、約20マイクロメートル未満である。
【0062】
[067]水素化触媒のための支持体は、使用される場合、プロセス条件下で、反応媒体中において実質的に不活性である。多くの例において、反応媒体の条件は、シリカ含有支持体およびシリカ-アルミナ含有支持体などの多くの従来の支持体の構造的な安定性にとって有害である。支持体としては、アルミナ、好ましくはアルファ-アルミナ;ジルコニア;炭素、これに限定されないが、グラフェンなど;ならびに耐火金属、これらに限定されないが、モリブデン、タンタル、およびタングステンなどが挙げられる。支持体は、基材上の表面コーティングを含む。
【0063】
[068]担持された水素化触媒は、当業界において周知のあらゆる好適な技術によって調製することができる。頻繁に使用される技術は、触媒金属の可溶性化合物を、支持体上に堆積させること、乾燥させること、次いで焼成することを含む。初期の湿潤技術を使用してもよい。一部の場合において、初期の湿潤技術は、触媒金属の濃度を支持体の外側方向により大きくするものであり、そこでは、溶解した触媒金属を含有する溶液が乾燥によって孔から引き出される。必要に応じて、支持体の内部に水不溶性の液体を充填し、次いで担体の外部領域で水溶液から触媒金属を堆積させるような技術を使用してもよい。水不溶性の液体は、次いで、例えば乾燥または焼成中に、除去してもよい。一部の場合において、触媒を作製するための母液中に、キレート剤を使用してもよい。キレート剤は、支持体の表面積にわたりニッケルをより均一に堆積させることを促進すると考えられる。キレート剤としては、これらに限定されないが、シュウ酸、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン、ならびにリン酸塩およびホスホン酸塩が挙げられる。支持体上への触媒金属の堆積の後、触媒を粉砕または分解してより小さい粒度にして、水素欠乏の可能性を低減させることも予期される。
【0064】
[069]焼成は、使用される場合、典型的には、触媒金属を酸化物にし、水素の存在下での上昇した温度での活性化は、ゼロ原子価の状態のニッケルを提供する。一部の場合において、高温での酸性水溶液中における酸化ニッケルの溶解性は小さいので、ニッケルの少なくとも約20パーセント、例えば、25~35パーセントまたは50パーセントがゼロ原子価の状態であるのに十分な時間、温度、および水素圧力で活性化を実行することが望ましい。
【0065】
[070]ニッケルが比較的穏やかな水素化触媒であるとしても、必要に応じて、使用前に、水素化触媒を触媒の水素化活性を小さくするように処理してもよい。活性を小さくすることは、例えば選択的な硫化およびコークス化などの当業界において周知のものなどのあらゆる好適な技術によって達成することができる。1つの技術は、不均一系触媒を、水溶性のタングステン酸塩を含有する化合物の溶液と接触させ、pHを減少させて、触媒上にタングステン化合物を沈殿させることである。pHは、望ましい量の非活性化を提供するために、通常、少なくとも0.5、時には、少なくとも2減少させる。沈殿したタングステン化合物は、活性なニッケル部位を部分的に塞ぎ、触媒の内部を塞ぐ、または部分的に塞ぐことにより、水素欠乏を容易に起こす水素化活性を小さくし得る。
【0066】
プロセス条件
[071]開示されたプロセスにおいて、反応条件(例えば、温度、水素分圧、触媒の濃度、水流分配、および滞留時間)の組合せは、アルドースを生じる炭水化物の少なくとも約99質量パーセント、時には本質的に全てを変換するのに十分なものである。概要として、炭水化物フィードを、ケトースへの異性化を最小化しながら逆アルドール条件に供さなければならず、次いで逆アルドール変換からの中間体、特にグリコールアルデヒドを、中間体が他の反応を受けてそれほど望ましくない生成物を形成する前に水素化に供さなければならないため、このプロセスは複雑である。逆アルドールおよび水素化変換のバランスがとれていない場合、エチレングリコールの生産は、最適化できない。
【0067】
[072]この開示では、低濃度の均一系タングステン含有触媒が使用される。したがって、逆アルドール変換と水素化変換のバランスは、影響を受ける可能性がある。それでも開示されたプロセスは、エチレングリコールへの高い選択性を可能にし、例えば、アルドースを生じる炭水化物がグルコースである場合、グルコースの少なくとも約75パーセント、好ましくは少なくとも約80パーセントがエチレングリコールに変換される。グリコールアルデヒドに完全に変換する可能性をもたないケトースまたは炭水化物を炭水化物フィードが含有する場合、エチレングリコールへの選択性は、比例して低減するであろうことが理解される。
【0068】
[073]タングステン含有触媒の添加速度は、可溶化したタングステン化合物を反応器の液状媒体に提供するのに十分な速度であり、約200~1500ミリグラム/リットル、好ましくは約300~1200ミリグラム/リットルである(元素のタングステンとして計算された)。タングステンは、水素化触媒を含む固体の蓄積を表面上にもたらし得る沈殿を形成し得ることがよく理解されている。例えば、国際公開第2020/055831号を参照されたい。この開示に従って使用される反応器中の低濃度の可溶化したタングステンで、タングステン沈殿の堆積は安定化され、一部の場合において、可溶化したタングステン化合物と沈殿したタングステン化合物との平衡が達成される。タングステン化合物の添加を止めることを含む、反応器へのタングステン化合物の添加速度の変更またはサイクル化は、この開示の範囲内であり、それによって、液状媒体中の可溶化したタングステンの濃度は、より高い濃度からより低い濃度に変化すると予想される。より低い濃度では、表面上のタングステン沈殿の少なくとも一部が除去される。液状媒体中の可溶化したタングステンのより低い濃度は、多くの場合、より高い濃度より、少なくとも約100ミリグラム/リットル低いものであり、時には、より低い濃度は、約10~700ミリグラム/リットル、例えば、50~500ミリグラム/リットルの範囲内である(元素のタングステンとして計算した)。一般的に、堆積から可溶化されたタングステンは、炭水化物フィードのエチレングリコールへの変換が比較的妨げられない十分な可溶化されたタングステンを提供する。
【0069】
[074]可溶化および堆積したタングステン化合物間の平衡は、多くの場合pHの影響を受け、より高いpH値は、可溶化したタングステンに平衡をよりシフトさせる。したがって、必要に応じて、特に沈殿したタングステンを除去する目的のためにタングステン化合物の添加速度を低減するかまたは停止する場合、水酸化物および炭酸塩などのpH制御剤を使用してもよい。タングステン堆積を除去するためにpHを増加させる例において、pHは、少なくとも約0.5pH単位増加させる。タングステン化合物添加の低減は、使用される場合、間欠的に、または定期的に行ってもよい。反応器中の可溶化したタングステン濃度が、より高いレベルで、例えば、1000~1500ミリグラム/リットルの範囲で維持される場合、250時間毎の、タングステン化合物添加のより低い速度への少なくとも1回のサイクルが使用される。タングステン化合物添加のより低い速度は、多くの場合、より高い添加速度の約0パーセントから、50または75パーセントである。低減したタングステン化合物の添加速度の持続時間は、多くの場合、約0.1~24時間またはそれより長い時間であるが、好ましくは、5パーセントまたはそれより多くのエチレングリコールへの選択性の低下が起こるほど長くない時間である。一部の場合において、サイクルは、水素化触媒活性の喪失が観察されたときだけ行われる。水素化触媒活性の喪失の1つの指標は、反応器中の液状媒体のpHの減少であり、例えば、少なくとも0.2pH単位の減少である。他の例において、タングステン化合物の添加速度は、予め確立されたスケジュールで変更することができる。より低いタングステン化合物の添加速度へのサイクルは、典型的には約0.5時間から250時間、例えば、約1から100時間である。
【0070】
[075]開示されたプロセスで使用される水素化触媒の量は、広く変更が可能である。実用的な目的のためには、より少ない量の水素化触媒を使用することが経済的に好ましい。低濃度のタングステン含有逆アルドール触媒を使用できることによって、またそれにより水素化触媒へのタングステン化合物の堆積を小さくすることによって、より少量の水素化触媒で、より長い期間の活性を提供することができる。一般的に、水素化触媒は、反応器中の液状媒体1リットル当たり、10グラム/リットル未満、時には約5グラム/リットル未満、例えば、約0.1または0.5~3グラム/リットルのニッケルの量(元素のニッケルとして計算した)で提供される。上述したように、必ずしも触媒中の全てのニッケルがゼロ原子価の状態とは限らないし、または全てのゼロ原子価の状態のニッケルに、グリコールアルデヒドまたは水素が容易に接近可能とは限らない。したがって、特定の水素化触媒ごとに、液状媒体1リットル当たり最適な質量のニッケルは、様々であると予想される。一部の場合において、水素化触媒の一部は、反応器から連続的または間欠的に引き出され、新しい、または回復させた水素化触媒で交換される。この交換は、反応器内で比較的一定の水素化活性を維持することに役立つ。
【0071】
[076]エチレングリコールの選択性を最適化するために、水素化触媒粒子の空間的な関係に加えて、水素化触媒の活性、特に炭水化物フィードが反応器に入る領域における水素化触媒の活性が重要である。水素化触媒粒子が互いに近接し過ぎている場合、逆アルドール変換が完了しない可能性があり、それによってソルビトールおよび他の糖アルコール類の生産が増加する。水素化触媒粒子が極端に離れている場合、中間体同士の反応が起こって、1,2-ブタンジオールなどの望ましくない生成物を生産する可能性がある。水素化触媒粒子の活性は、エチレングリコールへの選択性を最適化することにおける因子でもある。活性が高すぎると、水素欠乏のリスクが増加し、酸などのそれほど望ましくない生成物の形成に加えて、エチレングリコールおよびプロピレングリコールのアルコールおよび炭化水素へのさらなる水素化を引き起こす。
【0072】
[077]各触媒粒子の水素化活性に加えて、空間的な関係、触媒粒子のサイズおよび水素化される可能性がある有機物質の濃度(「HOC」)はいずれも、反応器における局所的な水素需要において役割を果たす。水素欠乏は、水素化の可能性が、水素化触媒の局所領域に水素を供給する能力を超える場合に起こり得る。水素は、典型的には、プロセス条件において、液体の反応媒体中で散在的に可溶性である。水素濃度の増加は、水素の分圧を増加させることによって、または水素のより大きい溶解性を有する溶媒または共溶媒を使用することによって、または分子水素に加えてイソプロパノールなどの水素供与体化合物を使用して水素を供給することによって、達成することができる。液状媒体中の水素は、水素化触媒への物質移動を経るが、この物質移動は、主として濃度差によって引き起こされる駆動力に関連するものである。触媒的な水素化を介した水素の枯渇と組み合わせた、物質移動に必要な時間の持続時間は、水素化触媒の水素についての需要を供給するのに十分な水素がない触媒粒子周辺の局所領域、すなわち、局所的な水素欠乏領域をもたらす可能性がある。したがって、より低い活性の水素化触媒および/またはより小さいサイズの水素化触媒を用いれば、各水素化触媒粒子周辺の局所領域に存在する水素についての需要がより小さくなるであろう。同様に、触媒粒子周辺の局所領域におけるHOCの濃度が低減すると、その局所領域における水素についての需要は、より小さくなるであろう。
【0073】
[078]上述したように、開示されたプロセスで使用される水素化触媒は、約100マイクロメートル未満の主要寸法、および約5質量パーセント未満のニッケル濃度(元素のニッケルとして計算された)を有する。低い水素化活性の場合、触媒粒子周辺の所与の領域における水素の需要は、より高いニッケル濃度を有しており全ての他の要因が同じままのより大きい触媒粒子の場合に存在し得る需要に比べて、より小さいと予想される。したがって、低い水素化活性触媒は、より分散した触媒部位をもたらすことができ、したがって水素欠乏のリスクが小さくなる。開示されたプロセスの追加の特色は、水素欠乏のリスクを小さくする能力と共に、一部の場合において、プロセスのための圧力を、水素欠乏のリスクを過度に増加させることなく低くできることである。より低い圧力は、圧縮コストを低減でき、一部の場合において資本コストを低減できる。典型的には、逆アルドールプロセスにおいて、圧力(絶対)は、典型的には約15~200bar(1500~20,000kPa)、例えば、約25~150bar(2500~15000kPa)の範囲である。2500から12000kPaの範囲内の圧力は、水素化触媒および炭水化物フィードが最適に分散されている用途を見出すことができる。
【0074】
[079]水素欠乏のリスクに影響を与える他の要因は、HOCの濃度およびHOCの濃度の均一性である。例えば、炭水化物を含有するフィードが反応器の局所領域に導入される場合、その領域中の逆アルドール触媒、特に水素化触媒は、過剰なローディングとなり得て、結果として、例えば、グルコースが額アルドール触媒をバイパスしてソルビトールへ水素化されることによって、またはその領域における水素化のための水素についての需要を増加させることによって、エチレングリコールへの選択性の喪失が起こり得る。反応器中の液状媒体中のフィードの優れた混合が行われ、かつHOCの過剰な濃度を有する領域が回避されるようにフィードが複数のポイントで添加される場合には、開示されたプロセスで使用される低濃度の逆アルドール触媒は、依然として高速の炭水化物フィードを処理することが可能である。一般的に、炭水化物フィードの優れた混合および分散を用いて、一部の例では、反応器1リットル当たり最大1キログラム/時間の炭水化物のフィード速度を達成することができる。炭水化物フィードは、1リットル当たり少なくとも50グラム/時間の炭水化物であり、しばしば、1リットル当たり約100~700または1000グラム/時間の炭水化物の範囲内である。
【0075】
[080]反応器中の滞留時間は、部分的には反応器の設計および反応媒体中の触媒の濃度によって決まるであろう。逆アルドール変換と水素化反応はどちらも極めて迅速である。結果として、生産性の限定要素としては、水素欠乏を防止するために水素化触媒に水素を供給する能力が挙げられる。滞留時間は、通常、約1分~5時間、例えば5~200分である。一部の場合において、単位時間当たりの重量空間速度は、フィード中の総炭水化物に基づいて、約0.01または0.05~1hr-1である。滞留時間は、グリコールアルデヒドおよびグルコースが、好ましくは反応生成物の0.1質量パーセント未満、最も好ましくは反応生成物の0.001質量パーセント未満であるのに十分な時間である。
【0076】
[081]アルドースのケトースへの異性化は、エチレングリコールへの変換の選択性を低減する。したがって、異性化を促進する条件、例えば低いpHを最小化することが望ましい。米国特許第10,544,072号で論じられたように、逆アルドール反応は、高い活性化温度を有し、ケトースへの異性化は、より低温で起こる可能性がある。したがって、炭水化物フィードは、好ましくは、170℃から230℃まで、好ましくは少なくとも約240℃までの温度の温度ゾーンを急速に通過させる。
【0077】
[082]炭水化物フィードは、加熱中に、他の化学物質の存在下にあってもよい。例えば、水素化のための水素は、少なくとも部分的に、炭水化物フィードと共に供給されてもよい。必要に応じて、他のアジュバント、例えばpH制御剤も存在していてもよい。一実施態様において、炭水化物フィードは、逆アルドール触媒を含有し、このような例では、アルドヘキソースを生じる炭水化物の触媒変換は、加熱中に起こる。加熱中のアルドヘキソースを生じる炭水化物の変換の程度は、数ある中でも、加熱の持続時間、炭水化物と逆アルドール触媒との相対濃度、および逆アルドール触媒の活性による影響を受けると予想される。
【0078】
[083]また、逆アルドール触媒を提供する一部のタングステン含有化合物も、異性化の触媒である。1つのこのような化合物は、タングステン酸ナトリウムである。このようなタングステン含有化合物が使用される場合、化合物の少なくとも一部は、好ましくは別々に、より好ましくは反応器に炭水化物フィードが導入される領域から遠い位置で導入される。これは、タングステン含有化合物が活性な逆アルドール触媒に変換され、さらに希釈されることを可能にする。さらに、タングステン含有化合物との接触は、逆アルドール反応が起こる温度で起こると予想され、したがって異性化の程度を小さくする。
【0079】
[084]炭水化物フィードは、任意の起こり得る水素化触媒との接触の前に、少なくとも部分的に中間体に変換されるため、炭水化物フィードが反応器に導入される前に、予備混合ゾーンで逆アルドール触媒を炭水化物フィードに添加することは有益であり得る。アルドースのケトースへの異性化は、より低い、またはより高いpH環境によって促進される。それゆえに、反応器への導入前に、多かれ少なかれ中性に炭水化物を維持することは、異性化の程度を最小化することができる。したがって、予備混合ゾーンで少なくとも一部の逆アルドール変換を行うことを利用することが望ましい場合、タングステン含有化合物は、少なくとも部分的に中和されてもよく、例えば、部分的に中和されたタングステン酸、または部分的に中和されたタングステン酸のアルカリ金属塩もしくはタングステン酸アンモニウムであり得る。
【0080】
[085]炭水化物フィードの加熱は、あらゆる好適な方式で達成でき、1つまたはそれより多くのタイプの加熱を使用することができる。炭水化物フィードが液状媒体に導入される前に、炭水化物フィードの加熱の全てを行ってもよいし、加熱の全てを行わなくてもよいし、または加熱の一部を行ってもよい。加熱された炭水化物フィードが予備混合ゾーンにおいて逆アルドール触媒と接触した状態で維持される態様では、液状媒体への導入前のこのような接触の持続時間は、一般的に、約15秒未満、好ましくは約10秒未満、一部の場合において約5秒未満である。典型的には、加熱された炭水化物フィードの液状媒体への導入前のいずれの保持時間も、配管の距離などの器具の配置、および熱交換ゾーンから水素化ゾーンまでの流体分配器などの補助的な器具における滞留時間の結果である。理解されるように、ターンアップ(turn up)およびターンダウン(turn down)操作は、固有の保持時間に影響を与えると予想される。
【0081】
[086]加熱の速度は、熱および物質移動パラメーターによって影響を受けると予想される。一般的に、質量および熱伝達の両方を容易にし、それによって炭水化物フィードがこの温度ゾーンを完全に通過するのに必要な時間を低減するために、加熱中に炭水化物フィードの混合を促進することが望ましい。この混合は、あらゆる好適な方式で実行してもよく、このような方式としては、これらに限定されないが、機械的な混合および静止型の混合、ならびに迅速な拡散混合などが挙げられる。混合の徹底も、反応物、中間体、触媒および生成物の物質移動に影響を与えることができ、したがって、エチレングリコールへの変換の選択性および副産物の形成速度に影響を与え得る。
【0082】
[087]炭水化物フィードとの直接の熱交換のための特に有用なストリームは、引き出された生成物溶液である(再利用)。液状媒体中に可溶性逆アルドール触媒が使用される場合、再利用は、逆アルドール触媒の反応系への実質的なリターンをもたらす。再利用は、少なくとも約180℃の温度で、例えば、約230℃~300℃の範囲の温度で行ってもよい。炭水化物フィードへの再利用分の質量比率は、2つのストリームの相対的な温度および求められる組み合わされた温度によって決まると予想される。再利用分が使用される場合、再利用分の炭水化物フィードに対する質量比率は、多くの場合、約0.1:1~100:1の範囲内である。再利用分は、引き出された生成物溶液の分別した部分であってもよいし、または単位操作に供して再利用ストリームから1種またはそれより多くの成分を分離してもよく、例えば、これらに限定されないが、水素を除去するために脱気してもよいし、例えば、何らかの混入した不均一系触媒を除去するためにろ過してもよい。生成物溶液を脱気して、少なくとも水素の一部を回収する場合、再利用分は、多くの場合、脱気した生成物溶液の分別した部分である。直接熱交換の作動中に炭水化物フィードと組み合わせる前に、再利用分に、1つまたはそれより多くの成分を添加することができる。これらの成分としては、これらに限定されないが、逆アルドール触媒、pH制御剤、および水素が挙げられる。引き出された生成物溶液の再利用を使用することによって、炭水化物フィードと再利用分との組み合わせは、アルドースを生じる未反応の炭水化物、エチレングリコールへの中間体、およびエチレングリコールを含有し得る。水溶液の形態ではない、例えば固体であるかまたは溶融物である炭水化物フィードが使用される場合、再利用分は、炭水化物を溶解させ、炭水化物をカラメル化反応から安定化させるための水を提供する。
【0083】
[088]反応器は、少なくとも約235℃の温度、より好ましくは少なくとも240℃、ほとんどの場合少なくとも約245℃で、最大約280℃または300℃で提供される。開示されたプロセスは、主として反応速度論によって制限される逆アルドール変換、および主として拡散によって制限される水素化変換を含む。温度の調整は、逆アルドール変換と水素化変換のバランスをとるための追加のツールを提供する。したがって、生成物におけるソルビトール濃度の増加は、逆アルドール触媒の活性を増加させることを必要としていることの証拠である可能性があり、これは反応器の温度を増加させることによって達成できる。逆に言えば、例えば、グルコースアルデヒド分子が縮合して1,2-ブタンジオールを形成するので、1,2-ブタンジオールの増加は、水素化が遅滞していることを示す可能性があり、この場合、いずれかの温度を低下させてもよいし、または追加の水素化触媒を添加してもよい。使用される水素化触媒の量は、反応器中の液体1リットル当たり、約100グラム未満であり、多くの場合約10~75グラムである(乾燥触媒のグラムとして計算した)。
【0084】
[089]液体反応媒体のpHは、3より大きく、好ましくは3.5より大きく、例えば3.8~8、一部の場合において約4~7.5である。より低いpHは、上述したように、アルドースのケトースへの異性化を強化する。さらに、より低いpHも、可溶化したタングステン化合物と沈殿したタングステン化合物との平衡を、沈殿したタングステン化合物にシフトさせる。
【0085】
[090]開示されたプロセスは、これらに限定されないが、固定床、流動床、トリクルベッド、移動床、スラリー床、ループ型反応器、例えばBUSS ChemTech AGより入手可能なBuss Loop(登録商標)反応器、および構造床反応器(structured bed reactor)などの多様な反応器で利用することができる。最も一般的には、水素およびフィードおよび中間体の触媒への物質移動を容易にするために、撹拌反応器が使用される。高い水素濃度および迅速な加熱を提供できる1つのタイプの反応器は、キャビテーション反応器であり、例えば参照によりその全体的が本明細書に組み入れられる米国特許第8,981,135B2で開示されたものである。キャビテーション反応器は、局所領域において熱を生成し、したがって、反応ゾーンにおける液状媒体のバルク温度ではなく、これらの局所領域における温度が、この開示の目的のための温度のプロセスパラメーターである。逆アルドール変換は、キャビテーション反応器において達成可能な温度で極めて迅速であり得るため、キャビテーション反応器は、このプロセスにとって興味深いものである。
【0086】
[091]流動床、移動床またはスラリー床反応器の典型的な操作において、水素化触媒の一部は、反応器から連続的または間欠的に引き出され、回復された水素化触媒または新しい水素化触媒で交換される。この手順は、長い操作時間にわたり比較的一定の生産性およびエチレングリコールへの選択性を維持する。
【0087】
[092]様々な実施態様を参照して本開示を説明したが、当業者は、この開示の本質および範囲から逸脱することなく形態および詳細を変更できることを認識しているであろう。
【国際調査報告】