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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-20
(54)【発明の名称】方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/164 20170101AFI20231213BHJP
   D01F 9/12 20060101ALI20231213BHJP
   C01B 32/158 20170101ALI20231213BHJP
   B01J 27/049 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
C01B32/164
D01F9/12
C01B32/158
B01J27/049 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521604
(86)(22)【出願日】2021-10-15
(85)【翻訳文提出日】2023-05-15
(86)【国際出願番号】 GB2021052675
(87)【国際公開番号】W WO2022079444
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】2016334.1
(32)【優先日】2020-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522087774
【氏名又は名称】キュー-フロー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Q-FLO LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100228120
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 蓮太朗
(72)【発明者】
【氏名】リロン イスマン
(72)【発明者】
【氏名】アダム ボイス
(72)【発明者】
【氏名】ジェロニモ テッローネス
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン コリンズ
(72)【発明者】
【氏名】フィオナ スメイル
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ クロザ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ エリオット
(72)【発明者】
【氏名】シュキ イエシュラン
(72)【発明者】
【氏名】メイア ヘフェッツ
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ピック
【テーマコード(参考)】
4G146
4G169
4L037
【Fターム(参考)】
4G146AA11
4G146AB06
4G146AC03A
4G146AC20B
4G146AC23B
4G146AC30B
4G146AD05
4G146BA12
4G146BA48
4G146BC08
4G146BC09
4G146BC18
4G146BC25
4G146BC33
4G146BC34
4G146BC42
4G146BC44
4G146CB01
4G146DA03
4G146DA07
4G146DA12
4G146DA26
4G146DA27
4G146DA43
4G146DA45
4G169AA02
4G169AA08
4G169BA03
4G169BB02
4G169BC66
4G169BD08
4G169CB81
4G169DA05
4G169EA01Y
4G169FA05
4G169FB01
4G169FB77
4G169FB79
4G169FC02
4G169FC06
4L037FA03
4L037FA04
(57)【要約】
本発明は、実質的に配向したカーボンナノチューブ(CNT)を有するカーボンナノチューブ構造の製造方法、および温度制御フロースルー反応器に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブ構造の製造方法であって、
(a)温度制御フロースルー反応器内のキャリアガスの連続流に金属触媒前駆体を導入するステップと、
(b)前記キャリアガスの前記流中の前記金属触媒前駆体を、粒子状金属触媒を生成するのに十分な第1の温度ゾーンにさらすステップと、
(c)炭素源を前記キャリアガスの前記流に放出するステップと、
(d)前記粒子状金属触媒および前記炭素源を、前記第1の温度ゾーンの下流の第2の温度ゾーンにさらすステップであって、前記第2の温度ゾーンは、カーボンナノチューブ凝集体を生成するのに十分である、ステップと、
(e)前記第2の温度ゾーンでまたはその近くで、前記温度制御フロースルー反応器内に電界を生成するステップと、
(f)前記温度制御フロースルー反応器の放出口から連続放出として前記カーボンナノチューブ凝集体を放出するステップと、
(g)前記連続放出をカーボンナノチューブ構造の形で収集するステップと、
を含む、カーボンナノチューブ構造の製造方法。
【請求項2】
前記電界は、前記キャリアガスの流路に対して実質的に平行に配向される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電界は、キャリアガスの流路と実質的に同軸に配向される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記電界は、AC電源によって生成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記電界は、0.35~1.0kVcm-1の範囲の電界強度で生成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記温度制御フロースルー反応器は、
ステップ(a)において前記金属触媒前駆体が導入され、ステップ(c)において前記炭素源が放出される、上流端から下流端まで延在する細長い耐火性ハウジングと、
前記細長い耐火性ハウジング内の温度ゾーン間に軸方向の温度変動を提供するように適合された、前記細長い耐火性ハウジングを取り囲む熱エンクロージャであって、前記温度ゾーンは、前記第1の温度ゾーンと前記第2の温度ゾーンとを含む、熱エンクロージャと、
前記細長い耐火性ハウジングの内側または外側に位置する電極と、
を備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記電極は、前記キャリアガスの流路に対して実質的に平行に配向される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記電極は、前記キャリアガスの流路と実質的に同軸に配向される、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記炭素凝集体は、エアロゲルである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
カーボンナノチューブ構造を製造するための温度制御フロースルー反応器であって、
上流端から下流端まで延在する細長い耐火性ハウジングと、
前記上流端から前記下流端へおよびそれを越えてキャリアガスの連続流を導入するための、前記細長い耐火性ハウジングの前記上流端におけるまたはその近くの入口と、
前記キャリアガスの前記連続流中に炭素源を放出するための第1のフィードと、
前記キャリアガスの前記連続流に金属触媒前駆体を導入するための第2のフィードと、
前記細長い耐火性ハウジング内の温度ゾーン間の軸方向の温度変動を提供するように適合された、前記細長い耐火性ハウジングを囲む熱エンクロージャであって、前記温度ゾーンは、粒子状金属触媒を生成するのに十分な第1の温度ゾーンとカーボンナノチューブ凝集体を生成するのに十分な第2の温度ゾーンとを含む、熱エンクロージャと、
前記カーボンナノチューブ凝集体の連続放出をカーボンナノチューブ構造の形で前記下流端から収集する収集器と、
前記細長い耐火性ハウジングの内側または外側に位置する第1の電極と、
前記第2の温度ゾーンまたはその付近で細長い前記耐火性ハウジング内に電界を生成するのに十分な高電位を印加するように前記第1の電極に電気的に接続される、電界発生器と、
を備える、カーボンナノチューブ構造を製造するための温度制御フロースルー反応器。
【請求項11】
第2の電極をさらに備える、請求項10に記載の温度制御フロースルー反応器。
【請求項12】
前記電界は、前記細長い耐火性ハウジングと実質的に同軸である、請求項10または11に記載の温度制御フロースルー反応器。
【請求項13】
前記収集器は、接地に電気的に接続される、請求項10から12のいずれか一項に記載の温度制御フロースルー反応器。
【請求項14】
前記第1の電極は、前記第2の温度ゾーンでまたは前記第2の温度ゾーンに隣接して前記細長い耐火性ハウジングの内側に位置し、前記収集器は、接地に電気的に接続される、請求項10から12のいずれか一項に記載の温度制御フロースルー反応器。
【請求項15】
前記細長い耐火性ハウジングの外側に第2の電極をさらに備え、前記第1の電極は、前記第2の温度ゾーンでまたは第2の温度ゾーンに隣接して前記細長い耐火性ハウジングの内側に位置する、請求項10から13のいずれか一項に記載の温度制御フロースルー反応器。
【請求項16】
前記第2の電極は、前記熱エンクロージャに電気的に接続され、前記熱エンクロージャは、接地される、請求項15に記載の温度制御フロースルー反応器。
【請求項17】
前記第1の電極は、前記第2の温度ゾーンに隣接する前記細長い耐火性ハウジングの外側に位置する、請求項10から13のいずれか一項に記載の温度制御フロースルー反応器。
【請求項18】
前記細長い耐火性ハウジングの外側に位置する第2の電極をさらに備え、前記第1の電極は、前記細長い耐火性ハウジングの外側に位置し、前記第2の電極は、接地に電気的に接続される、請求項10から13のいずれか一項に記載の温度制御フロースルー反応器。
【請求項19】
前記電界発生器は、AC電源である、請求項10から18のいずれか一項に記載の温度制御フロースルー反応器。
【請求項20】
前記電界発生器は、高無線周波数(HF)で動作可能である、請求項19に記載の温度制御フロースルー反応器。
【請求項21】
メジアン径16nm以上のカーボンナノチューブ束を備えるカーボンナノチューブ凝集体またはカーボンナノチューブ構造。
【請求項22】
前記カーボンナノチューブ束の直径が対数正規分布に従う、請求項21に記載のカーボンナノチューブ凝集体またはカーボンナノチューブ構造。
【請求項23】
カーボンナノチューブ凝集体またはカーボンナノチューブ構造に沿って軸方向に変化可能であるメジアン径を有するカーボンナノチューブ束を備える、カーボンナノチューブ凝集体またはカーボンナノチューブ構造。
【請求項24】
カーボンナノチューブ束の直径は、正規分布から対数正規分布へ軸方向に変化する、請求項23に記載のカーボンナノチューブ凝集体またはカーボンナノチューブ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実質的に配向したカーボンナノチューブ(CNT)を有するカーボンナノチューブ構造の製造方法、および温度制御フロースルー反応器に関する。
【背景技術】
【0002】
特に高い電気伝導性および熱伝導性と組み合わされたとき、高い強度および剛性を備えた軽量材料の需要が高まっている。CNTの凝集体から形成された製品が製造されているが、その特性は理論上の能力に達していない。この未到達の主な理由は、凝集によって生成されたマクロスケール繊維内の分子スケールCNTの不完全な配向である。
【0003】
CNTは、共有結合によって結合された炭素原子のシートを備え、閉じたチューブを形成する分子スケールの構造である。CNT壁は、単層(単層CNT(SWCNT))または多層(多層CNT(MWCNT))からなり得る。個々のCNTは、通常0.4nm~40nmの直径、および通常、その直径の100倍超の長さを有する。
【0004】
CNTをマクロスケールの用途向けの繊維またはマットなどの構造に形成するには、多数のCNTの凝集を作製する必要がある。CNTは、近接させると、ファンデルワールス力ならびにその他の原子レベルおよび分子レベルの相互作用によって互いに引き付けられる。各々が非常に多数のCNTを含む複数の長く細いストランドを形成する方法は、浮遊触媒化学蒸着(FCCVD)として知られている。この方法では、炭素が豊富な供給原料(例えば、メタンやアセチレン)を、鉄および硫黄を含有する触媒前駆体(それぞれフェロセンおよびチオフェンなど)とともにセラミックチューブに導入し、非常に高い温度(通常は1000℃を超える)に上昇させる。分解に続いて、前駆体によって提供される炭素原子がエアロゲルを形成し、これをセラミックチューブから抽出して繊維またはマットを形成し得る。FCCVDおよび装置の構成は、欧州特許出願公開第3227231号明細書に開示されている。実際には、エアロゲルを形成するCNTの配向が不十分であることがわかる。これにより、繊維の機械的、電気的、および熱的特性が、配向したCNT束から得られる値よりはるかに低くなる。
【0005】
従来のFCCVD温度制御フロースルー反応器の必須要素を図1に概略的に示す。電気絶縁耐火管1は、金属製の外側ケース2、断熱材3、および細長い電気加熱要素4を備える炉内に軸方向に位置し、炉に囲まれている。炉を1300℃の典型的な温度に加熱した後、メタンなどの供給原料ならびにフェロセンおよびチオフェンなどの触媒前駆体が、水素などのキャリアガスと共に管1の入力端5に供給される。キャリアガスの重要な機能は、管1の内部から酸素を排除することであり、さもなければ形成CNTの燃焼を引き起こすであろう。触媒反応は高温で発生し、各々がエアロゲルソック6の形でCNT束を備える繊維のネットワークの形成をもたらす。エアロゲルソック6は、管1の出力端7から引き出され、そこでリール8に巻くことによって単繊維に伸ばされ得る。(例えば)ねじりによるまたは酸を用いる処理による後処理は、得られた繊維の機械的特性を高めるのに役立つ。このようなプロセスの例は、Leeらによる「Direct spinning and densification method for high-performance carbon nanotube fibres」、Nature Communications、Vol. 10、記事2962(2019)、およびJ Bulmerらによる「Extreme stretching of high G:D ratio carbon nanotube fibres using super-acid」、Carbon、153 725-736に記載されている。FCCVD温度制御フロースルー反応器の有利な点は、連続製造に使用され得ることである。前駆体材料は、温度制御フロースルー反応器の入力端に連続的に供給され、エアロゲルは出力端から連続的に放出される。
【0006】
よく配向した短いCNT繊維の製造方法は既知であるが、長い繊維の連続製造には適してない。電界の使用が報告されているが(例えば中国特許出願公開第101254914号明細書において)、多くの場合、これらは非常に小規模なCNTに適用されている。典型的な従来の構成は、ナノスケールのチャネルまたは狭い間隔で配置されたプレートを備え、それぞれに数ボルトの電位差が印加されている。例えば、Chenらによる「Aligning single-wall carbon nanotubes with an alternating-current electric field」、Applied Physics Letters、Vol.78、No23、2001年6月には、約25μm間隔で配置され、10Vのピークツーピークの交互電圧が適用された、櫛形電極の構成が記載されている。ほとんどの研究者は、液体媒体中に懸濁したCNTに電界が印加される構成について説明している。このような構成によってCNTは配向する一方、液体中でのCNTの動きは遅く、印加され得る電界強度は液体の特性によって制限される。一部の研究者は、交番電界を印加した(例えば、Liuら、「Electric-field oriented carbon nanotubes in different dielectric solvents」、Current Applied Physics、Vol4(2004)、pp125-128を参照されたい)。それらが形成された表面に直交して成長するCNT束の配向方法は、C Bowerら、「Plasma-induced alignment of carbon nanotubes」,Applied Physics Letters,Vol.77 No6,2000年8月に記載されている。Bowerは、ナノチューブが、マイクロ波プラズマで生成された電界の存在下で、起伏のある表面上に成長し得、局所的な基質表面に常に垂直な方向に配向され得ることを報告した。この成長は、形成される表面に対して直角に成長する長さ約50μmの多くの密集した繊維を有する芝生状に類似する。M.T.ColeおよびW.L.Milneの「Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition of Horizontally Aligned Carbon Nanotubes」、Materials、2013、Vol.6、pp2262-2273にも、プラズマを使用して短い配向したCNTを生成する構成が記載されており、0.1~0.5μV/mのオーダーの電界強度が必要であることがわかる。
【0007】
電位が印加された一対のプレート間で短い配向したCNTが成長することも報告されている(例えば、Y.AvigalおよびR.Kalishの「Growth of aligned carbon nanotubes by biasing during growth」、Applied Physics Letters、78,p.2291-2293,2001ならびにQ BaoおよびC Panの「Electric field induced growth of well aligned carbon nanotubes from ethanol flames」、Nanotechnology 17(2006)1016-1021を参照されたい)。関連する構成は、W.Merchan-Merchanら、「ombustion synthesis of carbon nanotubes and related nanostructures」、Progress in Energy and Combustion Science、Vol.36(2010)pp696-727に記載されている。
【0008】
静的(DC)電界ではなく交互電界の使用は、Chenらの「Quantitatively Control of Carbon Nanotubes Using Real Time Electrical Detection Dielectrophoresis Assembly」ナノテクノロジーに関する第15回IEEE国際会議の議事録、2015年7月27~30日、ローマ、イタリア、pp 1029-1032に記載された。
【0009】
CNTのより長い集合体を作製する方法は、L.R.Bornhoeftら(「Teslaphoresis of Carbon Nanotubes」、ACS Nano 2016、10、4873-4881、American Chemical Society)によって説明された。この方法には、空気中での粉末CNTの「爆発的自己組織化」と、液体CNT懸濁液のゆっくりとした配向が含まれる。
【0010】
米国特許出願公開第2012/0282453号明細書は、複合体を形成するためにポリマースプレーを適用することによって配向されるCNTのリボンを製造するための連続的な方法を開示している。
【0011】
FCCVDの使用と電界の適用との組み合わせは、Pengらによって説明されている(Enrichment of metallic carbon nanotubes by electric field-assisted chemical vapor deposition,Carbon、Carbon、Vol.49(2011)、pp2555-1560)。ただし、電界はガス流の方向に直交する方向に配向されるため、配向したCNTの長い凝集を連続的に製造することはできない。
【0012】
従来技術の方法のいずれも、エンジニアリング用途のための連続配向マクロスケール繊維の製造に適していない。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、機械的、電気的または熱的特性の改善に寄与する構成CNTの改善された配向を伴ってCNT構造(例えば、繊維)を連続的に製造し得る方法および温度制御フロースルー反応器に関する。特に、本発明は、気相におけるCNT束の自己組織化と直接相互作用する浮遊触媒(CVD)法に関する。
【0014】
したがって、第1の態様から見ると、本発明は、
カーボンナノチューブ構造の製造方法であって、
(a)温度制御フロースルー反応器内のキャリアガスの連続流に金属触媒前駆体を導入するステップと、
(b)キャリアガスの流中の金属触媒前駆体を、粒子状金属触媒を生成するのに十分な第1の温度ゾーンにさらすステップと、
(c)炭素源をキャリアガスの流に放出するステップと、
(d)粒子状金属触媒および炭素源を、第1の温度ゾーンの下流の第2の温度ゾーンにさらすステップであって、第2の温度ゾーンは、カーボンナノチューブ集合体を生成するのに十分である、ステップと、
(e)第2の温度ゾーンでまたはその近くで、温度制御フロースルー反応器内に電界を生成するステップと、
(f)温度制御フロースルー反応器の放出口から連続放出としてカーボンナノチューブ凝集体を放出するステップと、
(g)連続放出をカーボンナノチューブ構造の形で収集するステップと、
を含む、カーボンナノチューブ構造の製造方法を提供する。
【0015】
通常、キャリアガスの連続流は、実質的に線形の流路をたどる。
【0016】
好ましくは、電界は、キャリアガスの流路に実質的に平行に配向される。特に好ましくは、電界は、キャリアガスの流路と実質的に同軸に配向される。
【0017】
好ましくは、温度制御フロースルー反応器は、
ステップ(a)において金属触媒前駆体が導入され、ステップ(c)において炭素源が放出される、上流端から下流端まで延在する細長い耐火性ハウジングと、
細長い耐火性ハウジング内の温度ゾーン間に軸方向の温度変動を提供するように適合された、細長い耐火性ハウジングを取り囲む熱エンクロージャであって、温度ゾーンは、第1の温度ゾーンと第2の温度ゾーンとを含む、熱エンクロージャと、
細長い耐火性ハウジングの内側または外側に位置する電極と、
を備える。
【0018】
電極は、細長い耐火性ハウジングの内側に部分的に位置し得る。例えば、電極は、上流端から上流へ延在し得る。
【0019】
好ましくは、電極は、キャリアガスの流路に対して実質的に平行に配向される。特に好ましくは、電極は、キャリアガスの流路と実質的に同軸に配向される。
【0020】
電界は、接地に電気的に接続された第1の端子(例えば、金属ケース)と、電極に電気的に接続された第2の端子と、を有する電界発生器によって生成され得る。
【0021】
ステップ(a)において、金属触媒前駆体は、温度制御フロースルー反応器に軸方向または半径方向に導入され得る。金属触媒前駆体は、プローブまたはインジェクタを通して導入され得る。金属触媒前駆体は、複数の場所に導入され得る。
【0022】
金属触媒前駆体は、キャリアガス中に固体粒子(好ましくは固体ナノ粒子)として懸濁され得る。
【0023】
金属触媒前駆体は、Fe、Ru、Co、W、Cr、Mo、Rh、Ir、Os、Ni、Pd、Pt、Ru、Y、La、Ce、Mn、Pr、Nd、Tb、Dy、Ho、Er、Lu、Hf、Li、およびGdからなる群の少なくとも1つの金属化合物であり得る。
【0024】
金属触媒前駆体は、金属錯体または有機金属化合物であり得る。
【0025】
好ましくは、金属触媒前駆体は、硫黄含有である。
【0026】
金属触媒前駆体は、ステップ(a)で硫黄含有添加剤と一緒に導入され得る。硫黄含有添加剤は、チオフェン、硫化鉄、硫黄含有フェロセニル誘導体(例えば、硫化フェロセニル)、硫化水素または二硫化炭素であり得る。
【0027】
通常、粒子状金属触媒は、ナノ粒子状金属触媒である。好ましくは、ナノ粒子金属触媒のナノ粒子は、1~50nm(好ましくは1~10nm)の範囲の平均直径(例えば、数、体積または表面平均直径)を有する。好ましくは、ナノ粒子金属触媒の粒子の80%以上は、30nm未満の直径を有する。特に好ましくは、ナノ粒子金属触媒の粒子の80%以上は、12nm未満の直径を有する。粒状金属触媒の濃度は、10~1010粒子cm-3の範囲内であり得る。
【0028】
ステップ(c)において、炭素源は、温度制御フロースルー反応器内に軸方向または半径方向に放出され得る。炭素源は、プローブまたはインジェクタを介して導入され得る。炭素源は、複数の場所に導入され得る。
【0029】
炭素源は、必要に応じて置換および/または必要に応じてヒドロキシル化された芳香族または脂肪族、非環状または環状炭化水素(例えば、アルキン、アルカンまたはアルケン)であり得、これは、必要に応じて1つ以上のヘテロ原子(例えば、酸素)によって中断され得る。好ましくは、必要に応じてハロゲン化されたC1-6-炭化水素(例えば、メタン、プロパン、エチレン、アセチレンまたはテトラクロロエチレン)、必要に応じて一、二または三置換のベンゼン誘導体(例えば、トルエン)、C1-6-アルコール(例えば、エタノールまたはブタノール)または芳香族炭化水素(例えば、ベンゼンまたはトルエン)である。
【0030】
粒状金属触媒の生成は、ステップ(b)において、金属触媒前駆体の金属種(例えば、原子、ラジカルまたはイオン)への熱分解または解離によって開始され得る。ステップ(b)における粒子状金属触媒の生成は、金属種の核生成金属種(例えばクラスター)への核生成を含み得る。粒状金属触媒の生成は、核形成された金属種の粒状金属触媒への成長を含み得る。
【0031】
好ましい実施形態では、キャリアガスは、分散した基質粒子を含む。通常、基質粒子は細かく分割されている。基質粒子は、キャリアガス中に分散された基質支持粒状金属触媒を形成することによって、第1の温度ゾーンでの核形成を促進するように働く。基質粒子は、SiまたはSiO粒子であり得る。
【0032】
好ましくは、この方法は、基質粒子をキャリアガスの連続流に導入することをさらに含む。
【0033】
好ましい実施形態では、ステップ(a)および(c)は同時である。
【0034】
第1および第2の温度ゾーンは、少なくとも600~1300℃の範囲に及び得る。
【0035】
キャリアガスは、通常、窒素、アルゴン、ヘリウム、または水素のうちの1つ以上である。キャリアガスの流量は、1000~50000sccm(例えば、30000sccm)の範囲であり得る。
【0036】
炭素凝集体は、多層カーボンナノチューブ(例えば、二重壁カーボンナノチューブ)および/または単層カーボンナノチューブを備え得る。
【0037】
炭素凝集体は、3D連続ネットワーク(例えば、エアロゲル)の形態をとり得る。
【0038】
好ましくは、炭素凝集体は、エアロゲルである。
【0039】
カーボンナノチューブ構造は、粉末、繊維、ワイヤ、フィルム、リボン、ストランド、シート、プレート、メッシュ、またはマットであり得る。
【0040】
カーボンナノチューブ凝集体またはカーボンナノチューブ構造は、カーボンナノチューブ束(すなわち、ファンデルワールス力によって相互に引き付けられる実質的に平行なCNTのアレイ(通常3~20個のCNT))を備え得る。
【0041】
カーボンナノチューブ凝集体またはカーボンナノチューブ構造は、16nm以上、好ましくは20nm以上、特に好ましくは25nm以上、より好ましくは50nm超、さらに好ましくは75nm以上のメジアン径(例えば、SEMおよび手動画像分析によって測定される)を有するカーボンナノチューブ束を備え得る。好ましくは、カーボンナノチューブ束の直径は、対数正規分布に従う。
【0042】
カーボンナノチューブ凝集体またはカーボンナノチューブ構造は、軸方向に(すなわち長さに沿って)可変であるメジアン径(例えば、SEMおよび手動画像分析によって測定される)を有するカーボンナノチューブ束を備え得る。好ましくは、カーボンナノチューブ束の直径は、正規分布から対数正規分布まで軸方向に変化する。
【0043】
さらなる態様から見ると、本発明は、カーボンナノチューブ構造を製造するための温度制御フロースルー反応器であって、
上流端から下流端まで延在する細長い耐火性ハウジングと、
上流端から下流端へおよびそれを越えてキャリアガスの連続流を導入するための、細長い耐火性ハウジングの上流端におけるまたはその近くの入口と、
キャリアガスの連続流中に炭素源を放出するための第1のフィードと、
キャリアガスの連続流に金属触媒前駆体を導入するための第2のフィードと、
細長い耐火性ハウジング内の温度ゾーン間の軸方向の温度変動を提供するように適合された、細長い耐火性ハウジングを囲む熱エンクロージャであって、温度ゾーンは、粒子状金属触媒を生成するのに十分な第1の温度ゾーンとカーボンナノチューブ凝集体を生成するのに十分な第2の温度ゾーンとを含む、熱エンクロージャと、
カーボンナノチューブ凝集体の連続放出をカーボンナノチューブ構造の形で下流端から収集する収集器と、
細長い耐火性ハウジングの内側または外側に位置する第1の電極と、
第2の温度ゾーンまたはその付近で細長い耐火性ハウジングの内側に電界を生成するのに十分な高電位を印加するように接地と第1の電極との間に電気的に接続される、電界発生器と、
を備える、カーボンナノチューブ構造を製造するための温度制御フロースルー反応器を提供する。
【0044】
温度制御フロースルー反応器は、第2の電極をさらに備え得る。電界発生器は、高電位または低電位を印加するように、第2の電極に電気的に接続され得る。好ましくは、第2の電極は、接地に電気的に接続される。
【0045】
温度制御フロースルー反応器は、第3の電極をさらに備え得る。電界発生器は、高電位または低電位を印加するように、第3の電極に電気的に接続され得る。好ましくは、第3の電極は、接地に電気的に接続される。第3の電極は、電界の形態、強度および位置を制御するために使用され得る。
【0046】
温度制御フロースルー反応器は、細長い耐火性ハウジングの外側に位置する複数の追加の電極をさらに備え得る。複数の追加の電極は、高電位の電界発生器と接地とに交互に接続され得る。
【0047】
当該(または各)電極は、細長い電極(例えば、細長い中実または細長い中空電極)であり得る。当該(または各)電極は、実質的に立方体、円筒形、または環状であり得る。通常、当該(または各)電極は、細長い耐火性ハウジングと実質的に同軸である。
【0048】
第1の電極は、少なくとも部分的に細長い耐火性ハウジングの内側に(例えば、細長い耐火性ハウジングの上流端においてまたはその近くに)位置し得る。第1の電極は、第2の温度ゾーンにまたはその近くに(例えば、隣接して)位置し得る。第1の電極は、第2の温度ゾーンの上流に位置し得る。
【0049】
当該(または各)電極は、通常、耐火管の内側の温度および化学的環境に耐えることが可能である導電性材料から形成される。適切な材料としては、モリブデンまたはガラス状炭素が挙げられる。当該(または各)電極は、不活性スリーブ(例えば、アルミナスリーブ)を備え得る。スリーブは、電極の下流先端のみを露出させたままにし得る。
【0050】
電界は、細長い耐火性ハウジングと実質的に同軸であることが好ましい。
【0051】
好ましくは、収集器は、接地に電気的に接続される。使用中の収集器への効果的な接続によって、カーボンナノチューブ凝集体は接地される。
【0052】
第1の好ましい実施形態では、第1の電極は、第2の温度ゾーンでまたは第2の温度ゾーンに隣接して細長い耐火性ハウジングの内側に位置し、収集器は、接地に電気的に接続される。好ましくは、電界発生器の接地された部分(例えば端子)は、収集器に電気的に接続される。
【0053】
第2の好ましい実施形態では、温度制御フロースルー反応器は、細長い耐火性ハウジングの外側に第2の電極をさらに備え、第1の電極は、細長い耐火性ハウジングの内側の第2の温度ゾーンでまたは第2の温度ゾーンに隣接して位置する。特に好ましくは、電界発生器の接地された部分(例えば端子)は、収集器に電気的に接続される。
【0054】
第2の好ましい実施形態では、第2の電極は、熱エンクロージャに電気的に接続され得、熱エンクロージャは、接地され得る。これは、第2の電極を接地するのに役立つ。例えば、第2の電極は、熱エンクロージャの金属ケースに電気的に接続され得る。
【0055】
第3の好ましい実施形態では、第1の電極は、第2の温度ゾーンに隣接する細長い耐火性ハウジングの外側に位置する。特に好ましくは、電界発生器の接地された部分(例えば端子)は、収集器に電気的に接続される。
【0056】
第4の好ましい実施形態では、温度制御フロースルー反応器は、細長い耐火性ハウジングの外側に位置する第2の電極をさらに備え、第1の電極は、細長い耐火性ハウジングの外側に位置し、第2の電極は、接地に電気的に接続される。
【0057】
第5の好ましい実施形態では、温度制御フロースルー反応器は、細長い耐火性ハウジングの内側に位置する第2の電極をさらに備え、第1の電極は、細長い耐火性ハウジングの内側に位置し、第2の電極は、接地に電気的に接続される。
【0058】
第1の電極は、第2の温度ゾーンに隣接して位置し得る。第1の電極の先端は、細長い耐火性ハウジングの中間点の上流に位置し得る。
【0059】
第2の電極は、第2の温度ゾーンに隣接して位置し得る。第2の電極の先端は、細長い耐火性ハウジングの中間点の下流に位置し得る。
【0060】
好ましくは、電界発生器は、AC電位(例えば、500Vから5000Vのピークツーピークの範囲)を印加する。
【0061】
電界発生器は、AC電源であることが好ましい。AC電界は、CNTが密なネットワークおよびエアロゲルを形成する前に、CNTをその場で連続的に配向させるのに有利に役立つ。具体的には、AC電界は、ローレンツ力によって誘発されるCNT硬化効果(zピンチ)を生成する。例として、CNT束の直径が16~25nmに広がり、ナノビルディングブロック構成要素の基本的な性質を変更することなく、電気特性と引張特性が劇的に増加した(それぞれ最大90%および380%)ことが確認された(ラマン分光法で検証)。強化された特性は、小角X線散乱および革新的なSEM画像解析によって定量化された、テキスタイル内のCNT配向の度合と相関していた。0.5~1kVcm-1の範囲の印加電界強度で、元の材料(T=0.2)に対して明確な配向(T=0.5)が達成された。
【0062】
好ましくは、電界発生器は、0.1~2.0kVcm-1、特に好ましくは0.5~1.0kVcm-1、より好ましくは0.35~0.75kVcm-1の範囲の電界強度でAC電位を印加する。
【0063】
電界発生器は、無線周波数(RF)で動作可能であることが好ましい。特に好ましくは、電界発生器は、高無線周波数(HF)(例えば、10~20MHzの範囲の周波数)で動作可能である。
【0064】
好ましくは、温度制御フロースルー反応器は、基質粒子をキャリアガスの連続流に導入するための第3のフィードをさらに備える。
【0065】
第1、第2、および第3のフィードは、噴射ノズル、ランス、プローブ、またはマルチオリフィス噴射器(例えば、シャワーヘッド噴射器)であり得る。
【0066】
細長い耐火性ハウジングは、実質的に円筒形(例えば、管状)であり得る。
【0067】
通常、熱エンクロージャには断熱材が含まれている。熱エンクロージャは、接地された金属ケースであり得る。
【0068】
軸方向の温度変動は、不均一(例えば、階段状)であり得る。温度制御フロースルー反応器の温度は、抵抗加熱、プラズマまたはレーザーによって制御され得る。
【0069】
温度制御フロースルー反応器は、実質的に垂直または水平であり得る。
【0070】
収集器は、通常、導電性(例えば、金属)である。収集器は、回転スピンドル、リール、またはドラムであり得る。
【0071】
本発明の方法および反応器は、(例えば)電界強度を調整することによって、CNT束(すなわち、ファンデルワールス力によって相互に引き付けられる実質的に平行なCNT(通常、3~20個のCNT)のアレイ)のサイズおよび分布の制御を容易にする。
【0072】
さらに別の態様から見ると、本発明は、16nm以上、好ましくは20nm以上、特に好ましくは25nm以上、より好ましくは50nm超、さらに好ましくは75nm以上である、メジアン径(例えば、SEMおよび手動画像分析によって測定される)を有するカーボンナノチューブ束を含むカーボンナノチューブ凝集体またはカーボンナノチューブ構造を提供する。
【0073】
好ましくは、カーボンナノチューブ束の直径は、対数正規分布に従う。
【0074】
さらに別の態様から見ると、本発明は、カーボンナノチューブ凝集体またはカーボンナノチューブ構造に沿って軸方向に可変であるメジアン径(例えば、SEMおよび手動画像分析によって測定される)を有するカーボンナノチューブ束を備える、カーボンナノチューブ凝集体またはカーボンナノチューブ構造を提供する。
【0075】
好ましくは、カーボンナノチューブ束の直径は、正規分布から対数正規分布まで軸方向に変化する。
【0076】
ここで、添付の図面を参照して、非限定的な意味で本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0077】
図1】エアロゲルの形でカーボンナノチューブを生成するための従来のFCCVD炉の簡略図である。
図2】耐火管内に含まれる第1の電極を有する、本発明の温度制御フロースルー反応器の第1の実施形態を示す図である。
図3】第1の電極とエアロゲルによって形成された第2の電極との間に電位差が印加されたときに第1の実施形態において生成される電界のコンピュータシミュレーションの結果を示す図である。
図4】第3の中空円筒電極によって囲まれた耐火管内の第1の電極とエアロゲルによって形成された第2の電極との間に電位差が印加されるときに、本発明の温度制御フロースルー反応器の第2の実施形態によって生成される電界のコンピュータシミュレーションの結果を示す図である。
図5】耐火管の外部にある中空円筒形の第1の電極とエアロゲルによって形成された第2の電極との間に電位差が印加されたときに、本発明の温度制御フロースルー反応器の第3の実施形態によって生成される電界のコンピュータシミュレーションの結果を示す図である。
図6】耐火管の外部にある2つの中空円筒電極間に電位差が印加されたときに、本発明の温度制御フロースルー反応器の第4の実施形態によって生成される電界のコンピュータシミュレーションの結果を示す図である。
図7】選択された動作周波数で共振するように構成された回路の例示的な実施形態である。
図8図8a及び図8bは、RF電界を印加して形成されたCNT凝集体のSEM画像である。
図9】外部電極を有する本発明の温度制御フロースルー反応器の実施形態の斜視図である。
図10】外部電極を有する本発明の温度制御フロースルー反応器の実施形態の断面図である。
図11】AC電界配向システムを示す。(a)RF電極が前面に挿入されたFCCVD反応器であり、一方、形成中のCNTエアロゲルは、対向電極として機能する接地ボビンに収集される。CNTは、エアロゲルを形成する前に、得られた力線に沿って配向する。(b)電極間ギャップでの発生を示す拡大図である。(i)AC電界は、超長CNTを硬化させる「ローレンツピンチ」を誘発し、(ii)硬化超長CNTは、電界誘起配向トルクの影響下にあり、(iii)CNTは、力線に従って配向される。回路図は縮尺どおりではなく、(i)~(iii)が同時に発生する。(c)等電位線(青)と直交する力線(赤)を表す反応管の内側の電界分布のFEM数値結果である。CNTエアロゲル(「ソック」)は、外径28mm(内径25mm)の円柱として概算された。等電位線の充填密度は、局所電界強度を示す。このモデルは、電極間ギャップ(幅50mm)内で2つの電極を架橋する配向誘導力線の存在を示す。
図12】内部RF電極を使用した連続CNT配向を示す。(a)反応器の端から上流を見た画像である。画像は、AC電界が印加されている間の回転ボビン上のCNTエアロゲル収集を示す。延長ウィスカーは、グラファイトRF電極の端から形成エアロゲルに向かって「成長」している。(b)CNT最終製品の微細形態を示すSEM画像である。CNTの配向は明らかであるが、最適ではないようである。挿入図は、AC配向中に生成された長さ15cmの単一のCNTソックを示す。ソックは通常より硬いようであり、その重量を支えることが可能である。
図13】CNT配向材料の物理的特性を示す。(a)異なる印加AC電界強度および基準物質(0W)の下で収集されたCNT材料の比導電率(黒、左軸)とG/D比(赤、右軸)とを示すプロットである。G/D比は大幅に変化していない一方、比導電率は最大90%増加している。エラーバーは、少なくとも3つの異なるサンプルを使用した標準偏差を示す。(b)延性(0W)から配向したサンプルのより脆くなりやすい挙動への機械的性能の明確な変化を示す引張測定の応力-ひずみ曲線である。特性の機械的シフトは、印加された電界強度とよく相関する(∝P 1/2)。
図14】CNT材料のWAXS配向を示す。(a)Q範囲0.7~0.8nm-1での0W(参照)および300Wサンプルの強度正規化方位角スキャンである。方位角φ=0°は、x軸(赤道)に対応し、繊維軸に垂直である。挿入図は、対応する2D SAXSパターンを示す。参照材料には明らかな散乱パターンは見られず、テキスタイルの異方性が確認された。300Wのサンプルは、特徴的なローレンツ強度分布を示し、CNT配向の存在が確認された。(b)サンプルの弾性率の関数として、方位角スキャン(挿入図)から計算されたハーマンのパラメータ(P2)を示すプロットである。
図15】zピンチメカニズムである。(a)zピンチ硬化効果に関連するCNTの電磁界の図である。軸電流(オレンジ)はCNT壁に閉じ込められ、円周方向の磁界(青)を誘導する。(b-c)zピンチの連続体CNTモデルの断面自由体図である。輪郭に沿った両面の内力は赤で表示される。CNT壁に作用する圧力(b)と同等の復元力(c)は青で示される。
図16】CNT電界配向のモデル化を示す。(a~b)DC(a)およびAC(b)電界に対するT2_min対CNT長さ(log)および電界強度(log)の表面プロットである。T2_minの異なる値での等高線は、赤、黒、青で描かれている。白い破線は、DC電界の剛弾性遷移を示す。(c)(a)(破線)および(b)(実線)から取得した等高線の電界強度とCNTの長さとの両対数プロットである。オレンジ色の破線は、剛弾性遷移を示す。(d~e)異なる(10,10)SWCNT束(d)および異なるアームチェア壁を有するMWCNT(e)のCNT長に対するT2_min=0.5に到達するために必要な電界強度の両対数プロットである。(f)参照サンプルのTEM画像は、3~5の壁(赤い線)を有するいくつかの壁を有するMWCNTが広範囲に存在することを示す。
図17】ツイン電極構成を示す。(a)前面に挿入されたRF電極(グラファイト、6mm)および背面から通された接地電極(Mo、6mm)である。両方の電極が中心軸を自由に走ることができるため、電極間ギャップの深さ(ΔX)と幅(ΔL)とを制御可能である。CNTは、得られた力線に沿って配向する。(b)電極間ギャップの写真である。(i)電界強度が高いため(少なくとも数kVcm-1のオーダー)、水素分解が見られる。(ii)気相成長炭素繊維(VGCF)ウィスカーは、電極間の架橋力線に従って電極間ギャップで成長する。(c)等電位線(青)と直交する力線(赤)とを表す炉キャビティの内側の電界分布のFEM数値結果である。等電位線の充填密度は、電界の局所的な強度を示す。このモデルは、(b)(ii)で明らかにされているものと同様の50mmの電極間ギャップでの配向誘起電界を示す。(d)参照材料(電圧なし、上)と、印加電界強度約0.75kVcm-1の影響下で生成された材料で見られる高度に配向したCNT微細形態(下)とを比較して等方性CNTネットワークの性質を示す低倍率SEM画像である。
図18】CNT材料の画像解析を示す。(a)繊維COPソフトウェア(典型的なSEM画像を伴う)によって計算されたチェビシェフ配向秩序パラメータ(T2)によって描かれたアライメントを、電極間ギャップで生成された印加電界強度と比較するプロット。電界強度が0.23kVcm-1未満では配向に影響を与えないように見えたが、電界強度が0.3kVcm-1以上に達すると、配向が大幅に増加した。Y値の分散は、2つの異なるサンプルの少なくとも3つの画像から算出されたT2値の標準偏差に基づく。X値の変動は、システムの2つの極端な設定点で生成された電圧に基づく。(b)束直径分布(対数正規フィッティング)は、電界強度0.23、0.35、および0.75kVcm-1で生成された材料の束厚の中央値がそれぞれ16.44±0.10から18.87±0.87および25.40±0.46nmに変化することを示す。各サンプルについて、200束の直径を手動で測定した。
図19】FCCVD反応器でのVGCFの形成を示す。(a)VGCFウィスカーは、RF電極表面から反応器壁に向かって放射状に成長し、短絡を引き起こす。(b)VGCFの等方性ネットワークを明らかにする、ウィスカーのSEM画像である。挿入図は、より高い倍率で単一のVGCFを示す。(c)HVの影響下で生成されたウィスカーのSEM画像は、VGCFネットワークでより多くの配向を示す。挿入図は、ウィスカーの合成中にHVを適用すると、はるかに細かい「デンドライト」のようなウィスカーが生成されることを示す。
図20】FCCVD反応器内でのVGCFの「延長」ウィスカーの成長を示す。(a)VGCFウィスカーは、RF電極の下流から軸方向に成長し、RF電極への延長を作製する。(b)「延長」ウィスカーの一部は、長さ150mmに成長した。(c)長い配向したVGCFでできていることが示される、VGCFの「延長」ウィスカーのSEM画像である。挿入図は、VGCFがCNTコア(矢印)を有し非常に薄い(直径約100nm)ことを明らかにする高倍率画像を示す。
図21】内部RF電極セットアップによって生成されたさまざまなCNTサンプルのラマンスペクトルである。参照サンプルのスペクトルと電界の影響下で生成された材料の他のスペクトルとの間に大きな違いはない。
図22】電界強度0.75kVcm-1で生成されたCNT材料のSEM画像である。矢印は、長さが100μmを超える超長CNT束の軌跡をたどる。
【発明を実施するための形態】
【0078】
図2は、本発明の温度制御フロースルー反応器の第1の実施形態を示す。細長い第1の電極9は、炉内に軸方向に位置し、炉によって囲まれた電気絶縁耐火管1の入力端5に設けられる。炉は、コネクタ16によって接地された金属製の外側ケース2、断熱材3、および細長い電気加熱要素4を備える。第1の電極9は、耐火管1の内部の温度および化学的環境に耐えることが可能であるモリブデンなどの導電性材料から形成される。第2の電極は、処理中に生成され、耐熱管1の出力端7から導電リール8上に放出される導電性エアロゲルソック6の後端によって形成される。第1の導体10は、第1の電極9を高電圧源13のライブ端子に接続し、第2の導体11は、導電性リール8を接地への接続14を有する高電圧源13の端子に接続する。高電圧源13は、無線周波電圧を供給する。第1の電極9の前端とエアロゲルソック6の後端との間に高い電位差(電圧)を確立する効果は、耐火管1の軸と実質的に配向した点線の輪郭15によって示される領域に実質的に軸方向の電界を生成する。
【0079】
図3は、第1の電極9とエアロゲルソック6の後端によって形成された第2の電極との間の第1の実施形態で生成された電気力線13および等電位線14のコンピュータシミュレーションの結果を示す。13.64MHzの周波数で交流電圧を印加することによって、CNTの有効な配向が観察されることがわかった。これは、産業および科学的使用のために国際的に割り当てられた周波数である。印加電位源は、アーク放電またはコロナ放電を回避しながら、印加電位が最大度合のCNT配向を提供するのに十分であるように構成される。
【0080】
図4は、第1の電極9、エアロゲル6から形成された第2の電極(第1の実施形態について説明したように)、および耐火管1の外部にある細長い中空円筒状の第3の電極20の間の本発明の温度制御フロースルー反応器の第2の実施形態によって生成されるシミュレートされた電界を示す。第3の電極20は、炉の金属製の(接地された)外側ケース2への導電接続によって接地電位に維持される。第2の実施形態は、第1の実施形態よりも、エアロゲル6から形成された第1の電極9と第2の電極との間の領域において、より均一な軸方向電界を生成する。
【0081】
図5は、本発明の温度制御フロースルー反応器の第3の実施形態によって、耐火管1の外部を取り囲む環状または中空円筒の形態をとる第1の電極21間に生成されるシミュレートされた電界を示す。この実施形態では、第1の電極21は高電位であり、エアロゲル6から形成された第2の電極は、(第1の実施形態について説明したように)導電性リール8によって接地される。
【0082】
図6は、本発明の温度制御フロースルー反応器の第4の実施形態によって、細長い中空円筒の形態をとる第1の電極22と、類似した細長い中空円筒形の形態をとる第2の電極23との間に生成されるシミュレートされた電界を示す。第1の電極22は、高電位であり、第2の電極23は、接地されている。第1および第2の電極22、23は、耐熱管1の外側を取り囲む。第4の実施形態は、第1、第2および第3の実施形態よりも長い軸方向距離にわたって実質的に軸方向の電界を生成する。
【0083】
図2から6の実施形態では、金属製の外側ケース2は、炉の内側の交番電界によって引き起こされる放射線から環境を遮蔽する接地された電磁スクリーンを形成する。これによって、人員の安全が確保されるだけでなく、電気または電子機器との干渉がブロックされる。
【0084】
55mmの直径を有する耐火管1の場合、電界を交番させることによってCNT配向を提供するのに必要な電圧は、通常、500V~5000Vのピークツーピークであることが見出された。使用され得る最大電界強度は、耐火管1内でコロナ放電の発生またはプラズマの形成を引き起こす電界強度未満である。電極の最適な軸方向の位置および電極間の電界強度は、耐火管1の直径、耐火管1内の反応ガスおよび輸送ガスの種類および流量、耐火管1の軸に沿った温度プロファイル、ならびに(1つ以上の)高電圧電極と(1つ以上の)接地電極との構成の関数である。印加電界の周波数は、13.553~13.567MHzの範囲であり得るが、他の周波数も使用され得る。
【0085】
選択された動作周波数で共振するように構成された回路構成に出力が印加される無線周波数発生器を使用して電界を発生させることは利便性がある。このような回路構成の例示的な実施形態は、図7に示されており、そこでは無線周波電力発生器(制御および監視機能と共に発振器および電力増幅器を含む回路構成が設けられている)が無線周波伝送ラインによって入力ポート30に接続されている。インダクタ31および可変コンデンサ33は、直列共振回路を構成し、その機能は入力ポート30から印加される電圧を増加させることである。出力ポート35と、インダクタ31と可変コンデンサ33との接続点と、の間に接続が設けられ、入力ポート30に印加される電圧は、共振回路31、33の電圧倍率係数(「Q値」)で乗算される。可変コンデンサ32は、インダクタ31と並列に接続され、共振回路31、33の実効誘導リアクタンスの変動を可能にする。可変コンデンサ32、33の値の選択は、共振回路31、33のQ値の制御を可能にし、入力ポート30と出力ポート35とにおける電圧の間の関係の制御を可能にする。インダクタ31には可変タップが設けられ得、そのインダクタンスを直接調整することが可能である。可変コンデンサ34が設けられ、回路の入力インピーダンスを調整して、接続された無線周波発生器によって通常必要とされる50オームのインピーダンスに整合させることが可能である。高電圧(例えば、500Vから10000Vの間)の発生を可能にするために、可変コンデンサ32、33、34は、真空可変コンデンサである。
【0086】
浮遊(寄生)容量36は、炉の金属製の外側ケース2と高電圧電極および関連する導電接続との間に存在する。この浮遊容量の効果は、共振回路31、33に負荷をかけることであり、その結果、出力ポート35での出力電圧が低下する。浮遊容量36の影響は、それと並列にインダクタ37を接続することによって減少し得る。インダクタ37の実効値は、動作周波数で浮遊容量36との並列共振を生成するように選択される。
【0087】
ポート38は、無線周波伝送線によって、通常、50オームの値を有する抵抗終端に接続される。ガルバニック接続された導電性ループ48およびコンデンサ40と共に監視ポート39が設けられており、監視ポート39における出力電圧を出力ポート35におけるはるかに低い電圧に関連付けるための1回の較正プロセスの後に出力電圧を測定可能にする。較正後、出力ポート35の電圧は、(例えば)標準的なオシロスコープを使用して出力ポート35の低電圧を測定することによって推定され得る。この構成によって、機器を操作する人員に危険をもたらし得る高無線周波電圧を頻繁に測定する必要がなくなる。
【0088】
入力ポート30に接続された無線周波発生器は、選択可能なレベルの出力電力を提供し、反射電力が損傷を引き起こし得るレベルを超えて増加した場合に出力電力を低減するための構成を含む。反射電力を監視することによって、コロナもしくはその他の放電の初期形成、または接地されたCNTエアロゲルと高電圧電極との間の接触など、反応器内の変化の表示を提供する。監視情報は、無線周波発生器へのデジタルインターフェースによって提供され得、耐火管からのエアロゲルの回収速度または試薬の流速を制御するために使用され得る。
【0089】
図8aは、図1の温度制御フロースルー反応器を使用して生成されたCNT凝集体のサンプルを示す走査型電子顕微鏡画像である。組み立てられたCNTから形成された繊維は、配向度合をほとんど示さない。図8bは、13.56MHzの周波数で軸方向電界を印加して本発明の第1の実施形態で生成された繊維のサンプルの走査型電子顕微鏡画像である。温度プロファイルおよびその他の動作パラメータは実質的に変化しなかった。図8bに示す繊維は、かなりの度合の配向を示す。
【0090】
図9および10は、メタン/チオフェン/水素91およびフェロセン99が供給される耐火管の外部にカンタルリング電極97およびカンタルRF電極98を有する、本発明の温度制御フロースルー反応器94の実施形態の斜視図および断面図をそれぞれ示す。外部リング電極97は、電気力線92を生成して、ボビン96上に巻かれたエアロゲル95を形成するCNT93を配向させる。これによって、継続的なプロセスが促進され、VGCFの望まない成長が排除される。
【実施例
【0091】
(方法)
(高電圧システムおよび最終要素のモデリング)
特注のキャビネットを、HV構成要素用のRFシールドコンパートメントとして機能するように製造し、それによって人員と機器の安全を確保した。このシステムには、免許不要の13.56MHz帯域で動作する300WのRF発生器(Dressler Cesar 1312)が収容されていた。発生器の出力を、13.56MHzに調整された直列接続のL-C回路を介して50オームの負荷に接続した。このような構成によって、インダクタとコンデンサとの間の接続部に高電圧が発生した。第2の可変コンデンサ(C1)をインダクタと並列に接続して、その実効リアクタンスを変更できるようにした。システムで生成されたHVを反応器に投影するために、LCジャンクションをRF電極に接続した。電圧を、主コンデンサのリアクタンスおよびインダクタとそのコンデンサとの並列結合を式(1)に従って変更することによって調整した。
【0092】
【数1】
【0093】
ここで、Qは電圧倍率係数として知られ、Lはインダクタンス、Cはキャパシタンス、Vは出力電圧である。
【0094】
RF出力電圧を、ネットワークの高電圧出力に抵抗分圧器(985kΩ+1kΩ)を接続し、オシロスコープ(72-8705A Tenma)と1:1プローブとを使用して30Wの入力電力で1kΩ抵抗器の電圧を測定することによって、測定した。プローブの規定の入力インピーダンスを考慮して補正を適用した。出力電圧が出力電力の2乗に比例するため、30Wでの測定値は、適切にスケーリングされている。
【0095】
炉の内側の電界分布は、COMSOL MultiphysicsのAC/DCモジュールを使用してモデル化された。自由空間の波長(22m)に比べて炉内の寸法が小さい(全長500mm)ため、電界を疑似DCベースでモデル化することが可能であった。このようなモデルでは、電界の形は、印加電圧に依存しない。反応器構成要素の寸法および材料特性は、実際のシステムに忠実であった。図11cに見られるCNTエアロゲルは、外径28mm(内径25mm)の円柱としてモデル化された。
【0096】
(単一のRF電極によるCNTの連続配向)
FCCVD反応器は、管の中心軸に沿って配向した単一のRFグラファイト電極を備えていた。概念的には、反応器の端に形成される導電性CNTエアロゲルは、接地電極として機能した(図11aを参照されたい)。CNTエアロゲルの接地は、地面を貫通する専用の銅杭によって接地された接地ボビンに収集することによって保証された。RF電極を、HVシステムに接続し特注のインジェクターフランジを通して反応器に挿入した。RF電極の先端は、静止しており、反応器の中間点から95mm上流に位置していた。HVユニットの電源を、0、200、250、300Wに設定した。収集中の反射電力は、最小限(10W未満)であった。各電力構成の実行を、少なくとも3回繰り返した。収集が終了した後、CNT材料を手動で収集軸に垂直に巻いて、ボビンの円周上に「シガー巻き」の細い糸を生成した。糸はランダムなポイントで切断され、長さ約160mmのCNT繊維様材料を生成した。すべての実行で、ツイン電極によるCNT配向について説明したのと同じプロセスパラメータを使用し、収集速度は30ラウンド/分(線速度0.157ms-1)であった。
【0097】
(CNT繊維の特性評価)
微量天秤(Sartorius SE2-F)を使用して繊維の重さを量り、繊維の長さを測定して、各サンプルの線密度をgkm-1(tex)で計算した。繊維の線形抵抗を、ミリオームメーター(Aim-TTi BS407)に接続された特注の4点プローブ治具を使用して、各サンプルの100mmセクションの抵抗を測定することによって決定した。比導電率を、各サンプルの線形密度に従って線形コンダクタンス(線形抵抗に反比例する)を正規化することによって計算した。比導電率値(Smkg-1)を、少なくとも3つのサンプルのセットに従って平均化した。
【0098】
10Nロードセルを備えたInstron機械試験機(5500R)を使用して、繊維強度(線密度で正規化された極限引張応力)および破損時のひずみを測定した。初期ゲージ長は20mmであり、サンプルの変位速度は1mm min-1であった。サンプルの予張力を0.1Nに固定した。滑りを防ぐために、グリップに固定する前にCNT繊維サンプルの端をアルミホイルで挟み、接着した。少なくとも3つのサンプルのセットに従って、繊維の強度および破損時のひずみの値を平均化した。
【0099】
ラマン分析は、Horiba XploRA PLUS共焦点顕微鏡システムで、638nmのレーザー、50x対物レンズ、1200のグレーティング、25%のレーザー出力、および30秒の蓄積を3回使用して実施した。スペクトルは、ベースライン補正が適用された状態で表示される。G/D比は、3つの異なるサンプルの少なくとも3つの繰り返しのセットに従って平均化された。
【0100】
CNT材料の2D SAXSパターンを、ALBAシンクロトロン光施設(バルセロナ、スペイン)のDectris(Pilatus 1M)フォトンカウンティングとRayonix LX255-HS CDD検出器とを備えたBL11-NCD-SWEET非結晶ビームラインで収集した。サンプルの散乱を、直径が約10μmのマイクロフォーカススポットを使用して、λ=1.0Åの放射波長で収集した。パターンを収集する前に、ベヘン酸銀(AgBh)を使用してサンプルホルダーの位置を調整した。収集されたパターンを、最初にバックグラウンド散乱について補正し、次にDAWNソフトウェア(v.2.20)を使用して分析し、0.7~0.8nm-1のQ範囲にわたる放射状積分後に方位角プロファイルを取得した。強度を、Kratkyプロットq2・I(q) vs qから得られた散乱不変量Qによって正規化した。
【0101】
HRTEMイメージングのために、超音波処理装置(Hielscher、UP400ST)内で200mlの1-メチル-2-ピロリジノン(NMP 99%純度、Merck)中で60分間、約10mgのCNT材料を超音波処理して標本を調製した。1mlの分散液を、Lasey Formvar/Carbon TEM grid(Ted Pella)上にピペットで移し、1分間静置してから吸い取った。残留NMPを、グリッドを真空オーブンにおいて70℃で一晩焼くことによって乾燥させた。イメージングを、300KVで動作するモノクロFEI Titan 80-300 TEMを使用して高解像度モードで行った。
【0102】
(ツイン電極セットアップによるCNT配向)
FCCVD反応器は、50mm(OD)のアルミナ管(Almath Rucibles、図17a参照)の中心軸に沿って配向した2つの電極を備えていた。RF電極と呼ばれる6mmグラファイト電極(Beijing Great Wall Co)をHVシステムに接続し、インジェクターフランジを通して反応器に挿入した。インジェクターフランジは、RF電極の自由な横方向の動きを可能にし、一方のポートからはフェロセンをおよびもう一方のポートからは他の前駆体を導入するために、2つのサイドポートを使用した。接地電極と呼ばれる6mmモリブデン電極(Goodfellow)を反応器の遠端から挿入した。電極の配向を容易にし、その位置を固定するために、接地されたz軸移動ステージ(Optics Focus Instruments Co)を使用した。電界の均一性を最大化するために、両方の電極先端を研磨して半球状の滑らかな端を生成した。実験を、電極間ギャップ(ΔL)を200、150、130、および50mmの間で離散的に変化させることによって実行した。これは、接地された電極の端が静止している(反応器の中間点から140mm下流)間にRF電極の先端の位置を変更することによって促進された。HVユニットの電源を、ΔL=50mm以外では300W(最高出力)に設定し、ΔL=50mmでは0W(基準)および180Wの電力設定を使用した。各セットアップを少なくとも2回実行した。HV電源コンソール上によって示される反射電力が最大容量(100W)に達したときにプロセスがすぐにシャットダウンされたため、すべての実験は、短時間(5秒未満)実行された。すべての実行において(特に明記されていない限り)、プロセスを次のように実行した。炉を1300℃に設定した。前駆体は、水素(1400標準立方センチメートル/分、sccm、BOC)、メタン(160sccm、BOC)、フェロセン(110℃に加熱されたタンクを通した200sccmの水素、純度98%、Merck)、およびチオフェン(約0℃で氷で冷却されたリザーバーを通した60sccmの水素、純度99%以上、Merck)を含んでいた。
【0103】
(SEMイメージングおよび画像解析)
CNT標本を、MIRA3電界放出ガン-SEM(Tescan)を使用してイメージングした。イメージングは、3~5mmの作動距離でIn-Beam SE検出器を使用して5kVの加速電圧で行った。試験片はスパッタコーティングされていない。配向の定量化のために、4096X3072ラスターを使用して50kXの倍率で画像を取得した。配向が視覚的に明らかな場合は、ほとんどのCNTが長方形フレームの長軸に平行になる角度において手動で画像を撮影した。これらのイメージングパラメータでは、解像度はCNT束あたり2.9~4.7ピクセルであると計算された(結果セクションに示すように、CNT束のメジアン径は16~26nmであるという発見に基づく)。したがって、フレームあたりのCNTの数は、500を超える必要がある。解像度およびフレームあたりのCNTの数は、画像解析を成功させるために必要なものを満たした。SEM画像解析を実行して、画像配向分布関数(ODF)を取得し、さらに配向秩序パラメータ(つまり、チェビシェフ多項式T2の平均である2次モーメント)を抽出した。分析を、オープンアクセスの繊維COPプログラムを使用して行った。プログラムパラメータを、5スキャン、ビンサイズ0.25、フィルター間隔5に設定した。ピークの数を3に設定した。一方、各ピークをローレンツフィッティングした。各ツイン電極セットアップの平均T配向パラメータの取得は、少なくとも3つのSEM画像(合計1500超のCNT)の分析に基づいた。CNT束直径分析用のSEM画像は、上記と同じ構成を使用して撮影されたが、倍率は200kXであった。フィジーを使用して200個のCNT束の直径を手動で測定し、OriginPro 2021を使用してヒストグラムを対数正規分布でフィッティングさせた。
【0104】
(RF電界の影響下でのCNT配向のモデル化)
交番電界によるCNTの配向は、曲げ、電気分極、およびzピンチ硬化効果による追加の電磁相互作用からのエネルギー寄与を伴うワーム状チェーンモデルを使用して説明され得る。
【0105】
(電流、圧力、および力)
最初の概算として、その輪郭に沿ったCNTの電流の大きさと時間の変動は無視された。したがって、CNTの定電流Jが仮定される。ローレンツ圧力の導出では、有限の壁厚を有する連続したCNTが想定される。アンペールの法則を使用して、CNT壁の内側の磁界強度を計算することが可能である。軸方向の電流と円周方向の磁界とを図14aに示す。磁界とCNT内の電流とが相互作用し、CNT壁に均一な圧縮ローレンツ力が発生する。CNTの幅にわたって積分し、壁の厚さが消失する限界をとることによって、CNT壁に作用するローレンツ圧力は次のようになる。
【0106】
【数2】
【0107】
輪郭に沿った各点で表面をさらに積分し、sでパラメータ化することによって、次の復元線力密度を導出し得る。
【0108】
【数3】
【0109】
A=πRはCNTの断面積であり、
は、CNTに沿った接線ベクトルである。したがって、電流から生じる圧力は、常にチェーンの湾曲に対して作用する。圧力と復元力は、図15bおよびcのCNTの2D連続体モデルについて示されている。
【0110】
(エネルギー寄与)
変分法を使用して、zピンチ硬化による復元力密度のエネルギー寄与を次のように計算する。
【0111】
【数4】
【0112】
このエネルギーは、チェーンの中間点が所定の位置に固定された状態で、チェーンの両方の半分がそれぞれ最も近い端の方向に引っ張られるという自然な解釈を有する。
【0113】
電流および結果として生じる圧力は、CNTに外部から誘導される必要がある。これは、CNTに電界Eを印加することによって行われ得る。電荷がCNT内で接線方向にしか移動し得ない単純なモデルを仮定すると、電界自体のエネルギー寄与が次のように提案される。
【0114】
【数5】
【0115】
ここで、改めて、AはCNTの断面積である。
【0116】
上記のエネルギー項をWLCの通常の曲率項と組み合わせると、モデルの完全な自由エネルギー汎関数が次のように得られる。
【数6】
【0117】
ここで、aは単純にCNTの曲げ剛性を表す。
【0118】
(調和近似)
この目的のためには、CNTがすでに電界に強く配向していると仮定するだけで十分である。一般性を失うことなく、電界点は、z軸に沿って許容され、マグニチュードEを有する。次に、接線ベクトルθ(s)のx成分およびy成分の接線ベクトルおよびその2次導関数は、展開され得、加法定数までの自由エネルギーの調和近似に次のように到達する。
【0119】
【数7】
【0120】
この近似モデルは現在の結果の基礎であり、ガウス統計場理論の方法を使用して正確に解き得る。
【0121】
(結果および考察)
(内部RF電極を使用したCNTの連続配向)
電界配向に適合したFCCVDリグは、HVユニットに接続され反応器ヘッドを通して挿入されたグラファイト電極(RF電極)を使用した。導電性CNTエアロゲル(反応器内で連続合成された)は、接地されたボビンに収集され、接地された電極として機能した(図11aを参照されたい)。機械的な巻き取り速度に関連するアーティファクトを最小限に抑えるために、CNT配向の非効率的な速度として考慮されるボビンの直線速度を約0.16ms-1に設定した。図11bは、電極間の配向プロセスのメカニズムを示す。配向プロセスは、内部AC電流、zピンチ硬化効果、および誘導された双極子配向トルクに基づく。最初の試行から、プロセス前駆体の注入後、電極表面から外側に向かってウィスカー状の材料が放射状に成長することがわかった(図19aを参照されたい)。これらのウィスカーは、反応器の中間点(1100~1200℃の温度範囲に相当)から70~90mm上流の、反応器の一部で成長した。SEM分析によって、これらのウィスカーは、サブミクロンの気相成長炭素繊維の等方性ネットワークから作られていることが明らかになった(VGCFは図19bを参照されたい)。これらのウィスカーは、HVを印加しなくても成長したが、電界が存在すると、前駆体が注入されるとすぐにウィスカーの成長が顕著になった。電界の影響下で、VGCFが自発的に自己集合するのではなく、電気力線に従って配向することは明らかであった(図19cを参照されたい)。この構成では、個々のVGCFの一部が100μmを超える長さを示した。配向したVGCFウィスカーのこの優先的な成長は、炉キャビティの有限要素電界分布モデルによって説明され得る(図11cを参照されたい)。このモデルは、RF電極とアルミナ管との間に強い放射状電界(青色の等電位線の密集によって表される)があることを示す。このモデルは、RF電極とCNTエアロゲル「ソック」との間に明確に定義された電気力線が存在し、それに応じてCNTを配向させることが可能であることをも保証する。
【0122】
RF電極上のVGCFウィスカーの半径方向の急速な成長およびセラミックチューブとの必然的な電気的接触のために、数秒以内にRF電極と接地との間に低い抵抗が作製された。これによって、HVセットアップがオフチューンになり、電圧と電界強度が大幅に低下した。このため、RF電極は、中間点の100mm上流に引き込まれた。この位置で、RF電極は、VGCFウィスカーの成長が検出された場所の少なくとも10mm上流にあり、こうして、連続実行中のRF短絡を回避した。このようなセットアップでは、実行中にVGCFウィスカーの半径方向の成長は発生しなかったことが視覚的に明らかであったが、軸方向のウィスカーの成長は検出され得た(図12aを参照されたい)。HVが適用されたときに生成されたCNT材料は、単一のCNTソックが崩壊することなく自己支持され得るため、参照よりも剛性があるように見えた(図12bを参照されたい)。SEMイメージングは、CNT配向のパターンを示した。しかし、それは支配的ではなかった。このような構成の電極間ギャップが大きく、逆に印加電界強度が減少するため、これは予想されていた。それにもかかわらず、図12aおよび20aに示すように、電界の存在によって、ウィスカーが自己集合しおよびRF電極の先端から横方向に成長し、それによって電極間ギャップが人為的に狭められたと仮定される。実際、これらの「延長」ウィスカーの一部は、最大長さ150mmまで成長し、よく配向した非常に薄いVGCFでできていた(図20cを参照されたい)。
【0123】
このセットアップでの試行は、RF電源を0(参照)、200、250、および300W(最大出力)に設定して実行された。このセットアップでは、電極間ギャップが不明であったため、印加電界強度を評価できなかった。ただし、V∝P1/2の場合、電界強度の増分は、RF発生器の電力の平方根に比例するものとする。異なるサンプルの電気測定では、比導電率が参照サンプル(0W)と比較して75~90%明らかに増加していることが明らかになったが、ラマン分光法から得られたG/D比には明らかな変化はなかった(図13aを参照されたい)。さらに、ラマンプロファイルパターンは、すべてのサンプル間で類似したままであった(図21を参照されたい)。これらの発見は、電気的特性の増加は、欠陥の少ないCNTを生成する合成プロセスにおける変化によるものではなく、抵抗の少ないCNT-CNT接合につながる微細構造の変化によるものであったことを示す。さらに機械的分析を行うと、応力/ひずみ曲線からわかるように、サンプルの引張挙動に特徴的な変化が見られた(図13bを参照されたい)。元のプロセス(0W)によって生成されたCNT材料は、破壊に対する高い歪み比とあいまいな破断点とを備えた延性の挙動を示す。比較すると、AC電界下で生成されたすべてのCNT材料は、破壊に対する歪み比が低く、明確な破壊点を有する、はるかに脆い挙動を示した。興味深いことに、その場で配向された材料は、最大375%の弾性率(δ)および最大358%の特定の引張破壊(UTS)の劇的な増加を示した。機械的挙動におけるこの劇的な変化は、CNTの配向によるCNTネットワークの耐荷重微細構造の変化の心強い証拠である。
【0124】
配向の度合を直接評価するために、サンプルに対して追加のSAXS分析を実行した。図14aは、関連する2D SAXSパターンを伴った、不変量(散乱パワー)によって正規化された参照(0W)および300Wサンプルのオーバーレイされた方位角スキャンを示す。参照サンプルは配向パターンを示さない(本質的に等方性であるため)のに対し、300Wサンプルは、より深遠な配向パターンに関連する独特のローレンツ型分布を示していることが明確にわかり得る。Hermanのパラメータ(P)を計算するための生データの統合に基づく追加の分析によって、印加電圧(RF電力の平方根と相関する)と配向の度合との間の傾向が明らかになった(図14bを参照されたい)。また、Pとδとの間に明確な相関関係が見られ、CNTネットワークの剛性が主にそのCNT束の内部配向によって支配されるという概念が支持される。興味深いことに、P値とは別に、方位角スキャンの分布(挿入図に見られるように)は、存在しない(0W)からガウス型(200、250W)からローレンツ型(300W)に発展し、配向が電界強度に相関するという考えを支持している。
【0125】
(RF電界を使用したCNTの配向-理論モデル)
(Zピンチ硬化)
CNTは、厚さが消失する連続シェルとしてモデル化される。平均場近似として、CNT壁内の電流密度は、CNT等高線全体に沿って一定であると仮定された。CNT内の電流は、光フォノンによる電子の散乱によって制限される。SWCNT内の通電モードのモデリングは、RF電界の電流がJ≒25μAのCNT壁の最大飽和電流を超える必要があることを示唆している。したがって、電流飽和が想定されるため、RF AC電界が印加されたときにSWCNTが飽和電流Jを運ぶと想定される。これは、CNTの初期分極後に電流が流れない単純なDC電界とは対照的である。さらに実験では、SWCNTおよびMWCNTの束では、各CNT壁が独自の飽和電流を運ぶことが示唆されている。したがって、合計電流は、CNT繊維に存在する壁の数に比例して増減する。
【0126】
CNTの軸方向電流は、図15aに示すように、CNT壁内に円周方向の磁界を誘導する。電界の大きさは、アンペアの法則を使用して計算され得る。軸方向の電流は、その後、磁界の存在によりローレンツ力を経る。事実上、これはCNT壁に作用する圧力としてモデル化され得る。zピンチという名前は、垂直方向のz軸を中心としたCNTのこの「挟み込み」を指し、核融合を受けるのに十分なほど強力にプラズマを圧縮するために使用される同様の効果に由来する。この効果はCNTでは劇的ではないが、CNTを硬化させて配向を容易にし得る。
【0127】
湾曲CNTセグメントを考慮すると、曲率の中心に向いている(離れている)側が圧縮されている(伸ばされている)ことは明らかである。したがって、ローレンツ圧力が曲率の中心から離れた側に作用する表面積が大きくなり、効果的な復元力が得られる。この力が曲率に反作用するため、CNTは、zピンチ効果によって硬化する。圧力と復元力との図を図15b~cに示す。
【0128】
(モデルの結果)
配向を定量化するために使用される主な尺度は、次の式で定義される2次元の配向秩序パラメータTである。
【0129】
【数8】
【0130】
ここで、θ2Dは、電界に対するCNTの2次元配向角度を示す。この量はCNT材料の2次元SEM画像で簡単に測定され得るため、現在の理論モデルと実験データとを直接比較することが可能になる。Tの平均値は、CNTに沿って変化し、CNTの端で最低になり、CNTの中間点で最高になる。CNT配向の控えめな尺度として,CNT末端で見つかった最小値T2,minを選択した。
【0131】
(剛弾性遷移)
直感的に、電界強度とCNTの長さを特定のポイントまで増加させると、CNTの配向が改善される。DCの場合、T2,minがしきい値長を超えるCNTの長さにもはや依存しないという挙動に明らかな変化がある(図16aを参照されたい)。このしきい値の長さは、分析的に導き出され得、CNTの持続性の長さに比例する。しきい値の長さを下回ると、CNTは、剛体として扱われ得る。しきい値の長さを超えると、弾性曲げがシステムを支配し、CNTの電界への結合が制限される。ACの場合、厳密なレジームは依然として存在するが、T2,minの値が低くCNTが長い場合、動作は弾性的なレジームから逸脱し、厳密なレジームに戻る(図16bを参照されたい)。これは、zピンチ効果がCNTを硬化する(つまり、効果的に剛性にし得る)ことを示す。実質的に配向しているSWCNTの場合、この効果はミリメートルの長さスケールで発生するだけであり(図16cを参照されたい)、飽和電流の比較的低い値によって制限される。ただし、この結果は、zピンチ硬化が、原則として、SWCNTの配向を容易にすることを示す。
【0132】
(SWCNT束およびMWCNT)
zピンチ硬化の強度は、SWCNTの電流飽和によって制限される。ただし、飽和電流は、SWCNT束または単一のMWCNTのCNT壁の数に比例して増減する。したがって、zピンチ硬化は、両方の場合で大幅に顕著になるはずである。図16d~eは、(10,10)SWCNTおよびMWCNTの異なる束について、CNTの長さLに対してプロットされた電界強度Eを示す。プロットでは、T2,min=0.5を選択して、実質的に配向した材料を表した。両方のプロットには、参照用に単一の(10,10)SWCNTが含まれており、zピンチ硬化はミリメートルの長さスケールでのみ支配的になる。束内の個々のSWCNTとして、またはエアロゲルで最も支配的なナノ構造であるMWCNT壁として、およそ3つのCNT壁が存在すると(図16fを参照されたい)、zピンチ硬化は、剛性弾性遷移のしきい値の長さにおいてすでに顕著である。したがって、zピンチ効果は、3つ以上のCNT壁を含むCNT構造を効果的に硬化させ、電界の配向を促進する。その後、配向に必要な電界強度は、FCCVDプロセスガスの典型的な絶縁分解電界強度を下回り、単一のMWCNTおよび小径SWCNT束の配向を技術的に実現可能にする。
【0133】
(ツイン電極構成)
印加電界強度および反応器容積内でのその横方向発生を制御および増加させる手段として、追加の2電極セットアップ(図17aを参照されたい)を開発した。元のセットアップと同じグラファイトRF電極と、モリブデン電極(接地電極)とを背面から挿入した。両方の電極は、反応管の中心軸に沿って配向し、横方向に自由に移動し得た。この構成によって、各電極位置を別々に設定することが可能になり、電極間の位置およびギャップ幅(図17aに示すように、それぞれΔXとΔL)の調整が可能になった。そのような手段は、(RF電源の入力電力と結合した)印加電界強度および電極間ギャップの横方向位置の制御を可能にした。システムが2つの電極間に水素分解を発生させることによってHVを達成し得ることは明らかであった。これは、水素雰囲気に対して少なくとも数kVcm-1のオーダーの電界強度を必要とする現象である(図17b(i))。電極間ギャップがVGCF成長領域に位置したとき、電界分布モデルとよく一致する視覚的表示が明らかであった。その構成では、前駆体が注入されHVがオンの場合、ウィスカーが電極間で成長することがはっきりとわかった(図17b(ii))。最も顕著に見られたのは、中央の力線および電極端に接する周辺線である。
【0134】
RF電極上のVGCFウィスカーの半径方向の急速な成長によっておよび必然的にHVセットアップがオフチューンになることによって、HVの印加が短い期間(約5秒)であっても、電圧および電界強度が大幅に低下することにつながり、セットアップがCNTエアロゲルの形成および配向に大きな影響を与えることが明らかであった。これは、参照サンプルの微細形態を比較した図17d(上)から容易に推測され得、その等方性が、約0.75kVcm-1のその場電界(下)の影響下で合成された材料に著しく配向していることを示す。CNT束が適切に配向していたため、フレーム全体に沿って走っているいくつかの個々の束を追跡することが可能であり、いくつかの束は少なくとも50μmの長さであり、他の場合には100μmを超えることさえあった(図22を参照されたい)。さまざまなΔXおよびΔL構成でかなりの数の実験セットアップを実行した後、接地された電極が炉の中間点から少なくとも140mm下流に配置された場合にのみ、CNTの配向が達成されることが明らかになった。この結果は、ほとんどのCNTエアロゲルが反応器の最後の3分の1の部分で合成されるという知識とうまく一致している。
【0135】
ツイン電極セットアップで生成される材料の量は微量であったため、印加電界強度の関数として配向の度合を定量化することは、SEM画像解析によってのみ行うことができた。このような需要に対応するために、2D画像に基づいて一軸配向秩序を定量化することに特化したオープンアクセスプログラム(Fibre COP)が使用された。2D画像から得られた配向分布の場合、ソフトウェアは、ローレンツ繊維配向分布に従って、(ルジャンドルではなく)チェビシェフ多項式の2次モーメントの平均を計算した。したがって、計算された配向秩序パラメータは、このセクションでは、より一般的なヘルマンのパラメータ(P)ではなく、Tと呼ばれ、これは、例えばX線回折から得られた3Dバルクサンプルから得られたデータに適している。また、ローレンツ分布に基づくT値は、同じデータセットのPよりも常に低い値を示すことにも留意されたい。したがって、Tの現在の値を他の場所で公開されているHermanのパラメータと直接比較するのではなく、それを配向の内部スケールとして使用する必要がある。図18aに示すように、参照サンプル(0kVcm-1)は、視覚的に等方性である。しかし、それは0.19のTを示す(完全な等方性はゼロの値につながるはずである)。これは、反応器内の関連するガス流による材料の固有の配向に関連し得る。システムを0.23kVcm-1の電界強度に設定しても、CNTエアロゲルの基本的な等方性は変わらないように見え、配向パラメータは0.20で実際に変化しない。電界強度が0.30~0.35kVcm-1に変更された場合にのみ、顕著なCNT配向パターンが明らかになった。CNT束の一部は水平パターンに従わなかったが、大部分は水平パターンに従わず、その結果、T値が0.41~0.42に増加した。電界強度が0.75~0.95kVcm-1に増加すると、非常に特徴的な配向パターンが見られた。画像解析によって、配向パラメータが0.46~0.51に急上昇したことが明らかになった。これは、市販のCNT繊維(5tex、Tortech Nano Fibers Ltd.)から取得したSEM画像から計算された値と非常に類似していることがわかった。配向パラメータは非線形傾向に従うが、T2が約0.2から約0.5に増加することは、半値全幅(FWHM)が約100から約43.5°に減少することに相当するため、重要とみなされる。実験的な印加電界強度と約0.5のTに到達する電界強度との間には、1桁の不一致があるように思われるが(図16d)、CNTなどの1Dナノ材料の場合に支配的な電界増強効果が存在する。一次近似として、この強調係数は、1D材料のアスペクト比に比例し、現在の場合、高次近似によると500以上である必要がある。材料の微細形態で観察された別の変化は、CNT束の直径に関連していた。図18bに示すように、電極間ギャップで使用される電界強度が高いほど、CNT束がより厚くなった。CNTのメジアン径は、0.23、0.35および0.75kVcm-1の電界強度に対してそれぞれ16.44、18.87および25.40nmであると分析された。隣接するCNT間で発生する衝突が少なくなるため、CNT束は配向力により薄くなると予想された。この直感に反する現象は、AC電界の結果としてCNTに誘導される圧縮ローレンツピンチの存在により説明され得る。
【0136】
(結論)
この新しいアプローチは、外部電界(例えば、最大1kVcm-1の強度まで)を利用して、約16~約25nmの明らかなCNT束の厚さによって明らかにされるように、気相でのCNTの自己組織化メカニズムに実質的な影響を与える。このシステムは、ナノ材料を収集して巨視的なテキスタイルを形成しながら、その場での連続的な操作を可能にする。SAXSによって決定されるように、この方法は、元のバルク材料の等方性と比較して、独特の配向パターンを生成することが証明された。微細構造の再編成は、テキスタイルの機械的挙動の延性から脆性への移行とうまく相関し、弾性係数を最大375%増加させる。配向によって引張荷重に抵抗する耐荷重性ナノチューブの割合が高くなるため、破壊に至る比応力は最大358%増加した。これにより、抵抗性CNT-CNT接合が減少し、関連する電気的増強が最大90%になった。興味深いことに、ラマン分光法を使用して明らかな変化を検出できなかったため、電界はCNT合成に影響を与えなかった。十分に開発されたモデルは、MWCNT束の配向がキャリアガスの分解閾値未満で発生する可能性を認め、DC電界ではなくAC電界を適用する利点を明らかにした。
【0137】
気相でのCNTネットワークのアセンブリプロセスを操作および制御するためのこの外部電界の新しい使用によって、基本的なプロセスのコスト効率を犠牲にすることなく、高アスペクト比(約10)CNTベースのテキスタイルの可能性を最大限に引き出すことができると確信する。
図1
図2
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図5
図6
図7
図8(a)】
図8(b)】
図9
図10
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図12
図13
図14a
図14b
図15a)】
図15b)】
図15c)】
図16-1】
図16-2】
図16-3】
図17-1】
図17-2】
図18a
図18b
図19
図20
図21-1】
図21-2】
図22
【国際調査報告】