(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-20
(54)【発明の名称】SPFブースターとしての非球状中空シリカ粒子
(51)【国際特許分類】
A61K 8/25 20060101AFI20231213BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20231213BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20231213BHJP
C01B 33/18 20060101ALI20231213BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20231213BHJP
B82Y 5/00 20110101ALI20231213BHJP
【FI】
A61K8/25
A61Q17/04
A61K8/81
C01B33/18 Z
B82Y40/00
B82Y5/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524337
(86)(22)【出願日】2021-10-28
(85)【翻訳文提出日】2023-04-20
(86)【国際出願番号】 US2021056968
(87)【国際公開番号】W WO2022094022
(87)【国際公開日】2022-05-05
(32)【優先日】2020-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】弁理士法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シオン、ジエ
(72)【発明者】
【氏名】ツォン、ファンウェン
(72)【発明者】
【氏名】シュー、ウェンジュン
(72)【発明者】
【氏名】ミラー、ディーン エム.
【テーマコード(参考)】
4C083
4G072
【Fターム(参考)】
4C083AB171
4C083AB172
4C083AD021
4C083AD611
4C083BB01
4C083BB21
4C083BB46
4C083BB47
4C083BB51
4C083CC19
4C083EE17
4C083FF01
4G072AA25
4G072AA28
4G072BB05
4G072BB16
4G072CC13
4G072DD04
4G072DD05
4G072GG01
4G072GG03
4G072HH30
4G072JJ14
4G072JJ33
4G072JJ34
4G072LL11
4G072MM01
4G072MM03
4G072MM23
4G072RR12
4G072TT01
4G072UU30
(57)【要約】
非球状中空シリカ粒子、非球状中空シリカ粒子を作製するためのプロセス、及びサンケア組成物における非球状中空シリカ粒子の使用が本明細書に記載される。非球状中空シリカ粒子を形成するために、ゾル-ゲル化学を用いた炭酸カルシウムテンプレート上へのシリカシェルの堆積が用いられる。炭酸カルシウムテンプレートのその後の溶解が、非球状中空シリカ粒子中に空隙(例えば、中空内部)を形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンケア組成物であって、
長軸及び短軸を有する非球状中空シリカ粒子であって、平均短軸が400nm超である、非球状中空シリカ粒子と、
少なくとも1種の日焼け止め活性物質と
を含む、サンケア組成物。
【請求項2】
前記非球状中空シリカ粒子が、約50nm超のシェル厚さを有する、請求項1に記載のサンケア組成物。
【請求項3】
前記非球状中空シリカ粒子が、前記短軸よりも少なくとも1.25倍大きい長軸を有する、請求項1又は2に記載のサンケア組成物。
【請求項4】
前記非球状中空シリカ粒子が、500nm超の平均長軸を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のサンケア組成物。
【請求項5】
前記非球状中空シリカ粒子が、350nm超の平均空隙長軸を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のサンケア組成物。
【請求項6】
前記非球状中空シリカ粒子が、1100nm未満の平均空隙短軸を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のサンケア組成物。
【請求項7】
前記サンケア組成物の日焼け防止指数(SPF)ブーストが約3超である、請求項1~6のいずれか一項に記載のサンケア組成物。
【請求項8】
中空ポリスチレン球をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のサンケア組成物。
【請求項9】
美容上許容され得る皮膚軟化剤、キャリア液、顔料、湿潤剤、ビタミン、保湿剤、コンディショナー、油、シリコーン、懸濁化剤、界面活性剤、乳化剤、防腐剤、レオロジー改質剤、pH調整剤、還元剤、抗酸化剤、及び/又は発泡剤もしくは消泡剤のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のサンケア組成物。
【請求項10】
長軸及び短軸を有する非球状中空シリカ粒子を作製するためのプロセスであって、平均短軸が400nm超であり、前記非球状中空シリカ粒子が、さらに精製することなく約2重量%未満の有機物質を含有し、前記プロセスが、
炭酸カルシウムテンプレートをエタノール中に分散させることと、
アンモニウム溶液を添加することと、
次いでオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)をゆっくりと添加することと、
酸を添加して前記炭酸カルシウムテンプレートを溶解させることと、
を含む、プロセス。
【請求項11】
前記酸を添加するステップの前に、反応をエタノールでクエンチすることをさらに含む、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記反応をエタノールでクエンチすることの前に、約30分間~約90分間待つことをさらに含む、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
エチレングリコールの存在下で塩化カルシウム溶液を炭酸ナトリウム溶液にゆっくりと添加することによって炭酸カルシウムテンプレートを形成することをさらに含む、請求項10に記載のプロセス。
【請求項14】
長軸及び短軸を有し、平均短軸が400nm超である非球状中空シリカ粒子の、サンケア組成物におけるSPFブースターとしての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年10月28日に出願された米国仮特許出願第63/106,645号の利益を主張するものであり、その開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
日焼け防止指数(SPF)が、UV放射線(例えば、UVA放射線及び/又はUVB放射線)を遮断、吸収、及び/又は散乱するサンケア組成物の能力を評価するために使用される。サンケア組成物は、本明細書において日焼け止め活性物質として記載される物理的UV遮断剤及び/又は化学的UV吸収剤を含有してもよい。しかしながら、日焼け止め活性物質の濃度が高すぎると、サンケア組成物の審美性が損なわれ、及び/又は望ましくない毒物学的影響及び/又は環境問題が生じることになる。したがって、SPFブースター(例えば、日焼け止め活性物質と認識されていないが、SPFを増加させるように作用する化合物)は、例えば、より多くの日焼け止め活性物質を添加することなくサンケア組成物のSPFを増加させるために、サンケア組成物に添加することが非常に望ましい。
【0003】
したがって、必要とされているのは、新しいSPFブースター及びそれを形成するための新しいプロセスである。
【発明の概要】
【0004】
非球状中空シリカ粒子、非球状中空シリカ粒子を作製するためのプロセス、及びサンケア組成物における非球状中空シリカ粒子の使用が本明細書に記載される。非球状中空シリカ粒子を形成するために、ゾル-ゲル化学を用いた炭酸カルシウムテンプレート上へのシリカシェルの堆積が用いられる。炭酸カルシウムテンプレートのその後の溶解が、非球状中空シリカ粒子中に空隙(例えば、中空内部)を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】バッチ1~5と表示された非球状中空シリカ粒子の走査透過電子顕微鏡(STEM)画像の群である。
【
図2】オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)の参照スペクトルと共に、室温及び乾燥後のバッチ1非球状中空シリカ粒子の減衰全反射フーリエ変換赤外分光法(ATR-FTIR)スペクトルである。
【
図3】比較用サンケア配合物(例えば、SPFブースターなし又は従来のSPFブースター)、テンプレート材料を組み込んだサンケア配合物、及び非球状中空シリカ粒子(例えば、SPFブースターとして)を含むサンケア配合物を含む初期配合物及び熱老化配合物についての日焼け防止指数(SPF)測定の図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
非球状中空シリカ粒子、非球状中空シリカ粒子を作製するためのプロセス、及びサンケア組成物における非球状中空シリカ粒子の使用が本明細書に記載される。本明細書に記載の非球状中空シリカ粒子に関する「非球状」とは、粒子が一般に球状でないことを意味する。好ましくは、非球状中空シリカ粒子は、異方性形状(例えば、長軸及び短軸)を有する。本明細書に記載の非球状中空シリカ粒子に関する「中空」とは、粒子が、酸化ケイ素粒子のシェルによって画定される空隙(例えば、中空内部)を有することを意味する。複数の細孔(例えば、チャネル)がシェルを通過し、中空部分からシェルの外面まで延在する。
【0007】
非球状中空シリカ粒子は、無機テンプレート上にシリカを堆積させることによって(例えば、ゾル-ゲルプロセスによって)調製することができる。シリカは、シリケート前駆体、例えばアルコキシシラン、アルキルシリケートなどからのものであってもよい。好ましくは、非球状中空シリカ粒子を作製するためのプロセスは、テンプレートとして使用するための炭酸カルシウム結晶を得ること、テンプレート上にシリカシェルを堆積させること、次いでテンプレートを酸で溶解して非球状中空シリカ粒子を得ることを含む。より好ましくは、オルトケイ酸テトラエチルを使用してシリカシェルを形成する。非球状中空シリカ粒子の形態は、無機テンプレートの形態の結果であってもよく、例えば、シリカは、例えば連続シリカシェルとして比較的均一に堆積されてもよい。無機テンプレートは、酸で溶解されてもよい。無機テンプレートは炭酸カルシウムであってもよい。非球状中空シリカ粒子は、約2重量%未満の有機物質、好ましくは約1.5重量%未満の有機物質、より好ましくは約1.0重量%未満の有機物質を含有してもよい。
【0008】
本プロセスは、界面活性剤を含まないプロセスであってもよい。
【0009】
別の実施形態において、無機テンプレートを作製するために使用されるプロセス条件を変化させて、テンプレートとして使用するための球状炭酸カルシウム結晶を得ることが企図される。この場合、上記のプロセス、例えば、無機テンプレート上にシリカを堆積させること(例えば、ゾル-ゲルプロセスを介して)が続き、球状中空シリカ粒子が得られる。
【0010】
非球状中空シリカ粒子を作製するための好ましいプロセスは、炭酸カルシウムテンプレートをエタノール中に分散させることと、アンモニウム溶液を添加することと、次いでオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)をゆっくりと添加することと、酸を添加して炭酸カルシウムテンプレートを溶解させることとを含む。このプロセスは、酸を添加するステップの前に、エタノールで反応をクエンチすることを含んでもよい。このプロセスは、エタノールで反応をクエンチする前に約30分~約90分を含んでもよい。非球状中空シリカ粒子は、さらに精製することなく、約2重量%未満の有機物質を含有してもよい。
【0011】
炭酸カルシウムテンプレート材料は、エチレングリコールの存在下で塩化カルシウム溶液を炭酸ナトリウム溶液にゆっくりと添加することによって形成してもよい。一定時間撹拌した後、生成物(炭酸カルシウム)を遠心分離によって分離する。遠心分離した生成物をエタノールで洗浄する。試薬の濃度、反応時間、及び温度は、テンプレートサイズに影響を及ぼし得る。
【0012】
本明細書に記載の非球状中空シリカ粒子は、好ましくは、異方性形状(例えば、長軸及び短軸)を有する。透過型電子顕微鏡(STEM)画像は、粒子サイズを決定するために使用され得、スケールバーを使用して手動で測定する。例えば、STEMは、長軸及び短軸の長さ、中空空隙の存在、空隙の寸法、及びシェル厚さを観察するために使用され得、スケールバーを使用して手動で測定する。
【0013】
非球状中空シリカ粒子は、約450nm~約1650nmの長軸(例えば、最大外側粒子長さ)を有する。好ましくは、長軸は、約800nm超、約1000nm超、約1100nm超、かつ約1227nm未満、約1300nm未満、及び約1422nm未満であってもよい。より好ましくは、非球状中空シリカ粒子の長軸は、約1100nm~約1200nm、最も好ましくは約1143nmであってもよい。
【0014】
非球状中空シリカは、約350nm~約1200nmの短軸(例えば、最小外側粒子幅)を有する。短軸は長軸より小さくなければならないことが理解される。好ましくは、短軸は、約570nm超、約700nm超、約750nm超、かつ約810nm未満、約850nm未満、及び約954nm未満であってもよい。より好ましくは、非球状中空シリカ粒子の短軸は、約720nm~約820nm、最も好ましくは約770nmであってもよい。
【0015】
長軸は、短軸よりも約1.3倍大きく、約1.4倍大きく、約1.6倍大きく、又は約1.7倍大きくてもよい。好ましくは、長軸対短軸の比は、約3:2(例えば、約1.5:1)であってもよい。
【0016】
非球状中空シリカ粒子は、約400nm~約1350nmの空隙長軸(例えば、非球状中空シリカ粒子の長軸に沿った空隙長さ)を有する。好ましくは、空隙長軸は、約800nm超、約850nm超、約900nm超、かつ約950nm未満、約1000nm未満、及び約1100nm未満であってもよい。より好ましくは、非球状中空シリカ粒子の空隙長軸は、約842nm~約942nm、最も好ましくは約892nmであってもよい。
【0017】
非球状中空シリカ粒子は、約200nm~約850nmの空隙短軸(例えば、非球状中空シリカ粒子の短軸に沿った空隙長さ)を有する。空隙の短軸は空隙の長軸より小さくなければならないことが理解される。好ましくは、空隙短軸は、約400nm超、約550nm超、約570nm超、かつ約652nm未満、約750nm未満、及び約800nm未満であってもよい。より好ましくは、非球状中空シリカ粒子の空隙短軸は、約540nm~約650nm、最も好ましくは約595nmであってもよい。
【0018】
空隙長軸は、空隙短軸よりも約1.3倍大きく、約1.4倍大きく、約1.6倍大きく、又は約1.7倍大きくてもよい。好ましくは、空隙長軸対空隙短軸の比は、約3:2(例えば、約1.5:1)であってもよい。
【0019】
非球状中空シリカ粒子は、約50nm~約300nmのシェル厚さを有する。好ましくは、シェル厚さは、約73nm超、約84nm超、約88nm超、かつ約92nm未満、約100nm未満、及び約200nm未満であってもよい。より好ましくは、非球状中空シリカ粒子のシェル厚さは、約85nm~約95nm、最も好ましくは約90nmであってもよい。
【0020】
本明細書に記載の非球状中空シリカ粒子は、サンケア組成物において使用され得る。サンケア組成物は、UV放射線から使用者を保護するためのパーソナルケア組成物である。サンケア組成物の例には、SPF評価を有する組成物(例えば、日焼け止め組成物)及び/又はUV遮断剤が有益である、例えば、保湿剤、リップクリームなどのようなパーソナルケア組成物が含まれる。
【0021】
本明細書に記載のサンケア組成物は、非球状中空シリカ粒子と、少なくとも1種の日焼け止め活性物質(1種以上の(例えば、混合物)日焼け止め活性物質)とを含む。日焼け止め活性物質は、物理的UV遮断剤(例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛)及び化学的UV吸収剤(例えば、パラアミノ安息香酸、メトキシケイ皮酸オクチル)を含むことが意図されている。適切な日焼け止め活性物質の例には、二酸化チタン、酸化亜鉛、パラアミノ安息香酸、メトキシケイ皮酸オクチル、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、サリチル酸エチルヘキシル、オクトクリレン(2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3ジフェニルアクリレート)、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、アボベンゾン(4-t-ブチル-4’-メトキシジベンゾイル-メタン)、オキシベンゾン、ジオキシベンゾン、シノキサート(2-エトキシエチル-p-メトキシ-シンナメート)、ジエタノールアミン-p-メトキシシンナメート、エチルヘキシル-p-メトキシ-シンナメート、イソペンテニル-4-メトキシシンナメート、2-エチルヘキシルサリチレート、ジガロイルトリオレエートエチル4-ビス(ヒドロキシプロピル)アミノベンゾエート、グリセリルアミノベンゾエート、メチルアントラニレート、ホモサレート(3,3,5-トリメチルシクロヘキシルサリチレート)、トリエタノールアミンサリチレート、2-フェニル-ベンズイミダゾール-5-スルホン酸、スリソベンゾン(2-ヒドロキシ-4-メトキシ-ベンゾフェノン-5-スルホン酸)、パジメートA(アミルp-ジメチルアミノベンゾエート)、パジメートO(オクチルジメチルパラアミノベンゾエート)、4-メチルベンジリデンカンファー、商品名ECAMSULE(商標)、TINOSORB(商標)、NEO HELIOPAN(商標)、MEXORYL(商標)、BENZOPHENONE(商標)、UVINUL(商標)、UVASORB(商標)、及び/もしくはPARSOL(商標)、ならびに/又はそれらの混合物で販売されている日焼け止め活性物質が含まれる。好ましくは、日焼け止め活性物質は、アボベンゾン、オクチサレート、オクトクリレン、酸化亜鉛、二酸化チタン、及びホモサレートの混合物である。より好ましくは、日焼け止め活性物質は、アボベンゾン、オクトクリレン、ホモサレート、酸化亜鉛、二酸化チタン、及びオクチサレートの混合物である。
【0022】
好ましくは、本サンケア組成物は、約5重量部(pbw)超、約7pbw超、約10pbw超又はそれに等しい、かつ約50pbw未満、約45pbw未満、及び約40pbw未満又はそれに等しい組成物の総日焼け止め活性物質を含有する。
【0023】
好ましくは、本サンケア組成物は、約0.2pbw超、約0.5pbw超、約1pbw超又はそれに等しい、かつ約5pbw未満、約4.5pbw未満、及び約4.0pbw未満又はそれに等しい組成物の非球状中空シリカ粒子を含有する。より好ましくは、本サンケア組成物は、組成物の重量基準で約3pbwの非球状中空シリカ粒子を含有する。
【0024】
好ましくは、本サンケア組成物は、美容上許容され得る皮膚軟化剤、湿潤剤、ビタミン、保湿剤、コンディショナー、油、シリコーン、懸濁化剤、キャリア液、顔料、乳白剤/パール化剤、界面活性剤、乳化剤、防腐剤、レオロジー改質剤、着色剤、pH調整剤、推進剤、還元剤、抗酸化剤、香料、発泡剤もしくは消泡剤、なめし剤、防湿剤、及び/又は殺生物剤のうちの少なくとも1つを含み得る。好ましくは、本サンケア組成物は、美容上許容され得る皮膚軟化剤、湿潤剤、ビタミン、保湿剤、コンディショナー、油、シリコーン、懸濁化剤、界面活性剤、乳化剤、防腐剤、レオロジー改質剤、pH調整剤、還元剤、抗酸化剤、及び/又は発泡剤もしくは消泡剤のうちの少なくとも1つを含み得る。好ましくは、サンケア組成物は、湿潤剤、界面活性剤、及び/又は皮膚軟化剤のうちの少なくとも1つを含有し得る。
【0025】
本明細書に記載の非球状中空シリカ粒子は、サンケア組成物においてSPFブースターとして使用され得る。日焼け止め活性物質の濃度が高すぎると、組成物の美観(例えば、粘着性、脂っこさ、ざらざら感、白さなど)の低下及び/又は望ましくない毒物学的影響が生じることになる。その結果、SPFブースター(例えば、認識されている日焼け止め活性物質ではないが、SPFを増加させるように作用する化合物)をサンケア組成物に添加して、より多くの日焼け止め活性物質を添加することなくSPFが増加される。好ましくは、本明細書に記載の非球状中空シリカ粒子は、サンケア組成物のためのSPFブースターとして作用する。好ましくは、サンケア組成物における非球状中空シリカ粒子のSPFブースト比(3重量%ブースター当たり)は、例えば、非球状中空シリカ粒子を含まない比較組成物と比較して、約2.5超、約3超、約3.5超、より好ましくは約4.0超である。SPFブースト比は、式1を用いて決定することができる(実施例7)。
【0026】
使用において、本明細書に記載の中空シリカ粒子を含むサンケア組成物を使用して、UV放射線(例えば、UVA放射線及び/又はUVB放射線)によって引き起こされる損傷から哺乳動物が保護され得る。例えば、UV放射線によって引き起こされる損傷から哺乳動物(例えば、哺乳動物の皮膚)を保護する方法は、本明細書に記載の中空シリカ粒子を含むサンケア組成物を哺乳動物の皮膚に適用することを含む。
【0027】
以下の実施例は、例示のみを目的とするものであり、添付の特許請求の範囲の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0028】
実施例1
テンプレート形成
炭酸カルシウム(CaCO3)テンプレートを以下のように調製した。
【0029】
15.6gのCaCl2(無水塩化カルシウム、Fisher Scientific社製)を、120mLの脱イオン水及び600mLのエチレングリコール(99%、Alfa Aesar社製)と、磁気撹拌を用いて混合することによって、CaCl2溶液を調製した。
【0030】
24.4gのNaHCO3(重炭酸ナトリウム、>99.5%、Sigma社製)を、240mLの脱イオン水及び1.2Lのエチレングリコールと、磁気撹拌を用いて混合することによって、NaHCO3溶液を調製した。NaHCO3溶液を4Lのガラスビーカーに入れ、オーバーヘッドスターラーを用いて撹拌し続けた。
【0031】
CaCl2溶液をNaHCO3溶液に数分間かけてゆっくりと注いだ。添加中に系は濁った。30分後に撹拌を停止した(CaCl2の添加開始から時間を計った)。溶液を4つの1L遠心分離ボトルに均等に分け、8000rpmで15分間遠心分離した。上清をデカントした。約300gのエタノール(200プルーフ、Pharmoca-Aaper社製)を各遠心分離ボトルに添加し、固体とよく混合した後、再び8000rpmで15分間遠心分離した。生成物を80mLのエタノールに分散させ、それらを4本の45mL遠心分離管に分離し、12000rpmで15分間遠心分離することによって、2回目の洗浄を行った。湿潤スラリーをガラス容器に移し、真空下80℃で3時間加熱して、平均長軸が500~1350nmの範囲であり、平均短軸が200~850nmの範囲である異方性形状を特徴とするCaCO3テンプレートを含む乾燥粉末を得た。
【0032】
実施例2
非球状中空シリカ粒子の形成
非球状中空シリカ粒子を以下のように調製した。
【0033】
CaCO3テンプレートは、実質的に実施例1のプロセスに従って合成した。最初の洗浄後、CaCO3テンプレートを76.5mLのエタノールに分散させ、250mLの丸底フラスコに入れて、白色懸濁液を形成した。白色懸濁液を撹拌プレートを使用して260rpmで撹拌し続けながら、6.6mLのアンモニウム溶液(水酸化アンモニウム、28~30重量%、Pharmco-Aaper社製)及び7.8mLの脱イオン水を添加した。
【0034】
この系を10分間混合した後、シリンジポンプを用いて13mL/hで30分間、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)(Sigma社製)を供給した。反応をさらに1時間続けた後、100mLのエタノールでクエンチした。撹拌後、白色固体がフラスコの底にゆっくりと沈降した。固体と液体との透明な分離が達成されたとき、上部の透明な溶液をデカントした。エタノール100mL、エタノール100mL、及び脱イオン水100mLを用いて3回洗浄を行った。
【0035】
その後、80mLの1.5M HCl溶液(36.5~38重量%の塩酸から、Fisher Chemical社製)を、260rpmで撹拌しながら固体にゆっくりと添加した。添加の際に激しい泡立ちが観察され、次いで白色懸濁液が半透明になった。系を30分間撹拌し続けた後、10000rpmで10分間遠心分離した。生成物を100mLの水で2回、100mLのエタノールで1回洗浄した。湿ったスラリーをガラス容器に移し、真空下110℃で3時間加熱して乾燥粉末を得た。
【0036】
実施例3
非球状中空シリカ粒子の形成
非球状中空シリカ粒子を実質的に実施例2のプロセスに従って調製して、バッチ1~5を得た。全ての5つのバッチは、実施例1のテンプレートプロセスを使用して作製され、表1(以下)におけるサイズの差異は、粒径分布に起因し得る。
【0037】
図1は、バッチ1~5と表示された非球状中空シリカ粒子の走査透過電子顕微鏡(STEM)画像の群であり、球体の中空形態を示している。バッチ1及びバッチ2は、第1の倍率で示される。次に、バッチ2が再度比較的低倍率で示される。バッチ3~5は中間倍率で示される。STEMイメージングは、200keVの加速電圧で動作するFEI Titanプローブ補正電界放出銃(FEG)透過型電子顕微鏡(TEM)を使用して実施した。画像を、13kx~34kxの倍率範囲で、2048×2048画像サイズで収集した。
【0038】
粒径測定をImageJソフトウェアを用いて手動で行い、結果を表1に要約する。
図1の非球状中空シリカ球は、約800nm~約1500nmの範囲の平均長軸、及び約500nm~約1000nmの範囲の平均短軸を有する異方性形状を有する。
図1の非球状中空シリカ球は、約70nm~約120nmの間で変化する厚さを有する比較的薄いシェルを有する。
【0039】
非球状中空シリカ粒子の寸法を表1に示す。
【表1】
【0040】
形態に関して、非球状中空シリカ粒子は異方性であり、中空である。非球状中空シリカ粒子は、例えば、平均粒子長軸、平均粒子短軸、平均空隙長軸、及び平均空隙短軸(それぞれ、1143nm、770nm、892nm及び595nm)に関して比較的大きい。
【0041】
実施例4
実施例3からの非球状中空シリカ粒子バッチ1を特性決定した。
図2は、シングルバウンスダイヤモンドATRを備えたThermo Nicolet iS-50 FTIR分光計を用いた減衰全反射フーリエ変換赤外分光法(ATR-FTIR)スペクトルである。バッチ1の非球状中空シリカ粒子を室温(RT)で分析し(紫色の線)、200℃で乾燥させた後の同じサンプルを分析し(赤色の線)、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)の参照スペクトルを分析した(緑色の線)。
【0042】
矢印1を参照すると、波数4000と3000との間で、O-H伸縮モードが、水の存在により、室温バッチ1において現れる。ピークの一部はまた、SiOHの存在に起因し得る。
【0043】
ゾーンAを参照すると、TEOSスペクトルにおいて示されるような3000cm-1付近に位置するC-Hモードは、非球状中空シリカサンプルにおいて見出されず、したがって、検出可能な量のC-Hがないことを示す。したがって、ATR-FTIRの検出限界は通常1重量%であるので、非球状中空シリカサンプル中の有機物含有量は1重量%未満であり、最終的には2重量%未満と述べることができる。RT処理サンプルと比較して、200℃処理サンプルは、水除去に起因して、3000cm-1を超える広いピークの強度の有意な減少を示した。
【0044】
ゾーンBを参照すると、線は、ATR結晶によるアーチファクトを表示する。
【0045】
矢印2を参照すると、RTサンプル上の小さなピークは、水O-H曲げモードを表す。
【0046】
2000cm-1未満で観察されるピークは、様々なSI-O伸縮モードの特徴である。矢印3は、これらのピークのうち最も強いピークを指している。
【0047】
1000cm-1未満では、RTサンプル及び200℃処理サンプルは、ヒドロキシル基の縮合による2つのSi-O伸縮モードを示した。TEOSサンプルは、比較的大きなSi-OH伸縮(加熱時に縮合)を示した。言い換えれば、TEOSは、Si-OH伸縮モードに関連する最大ピーク強度を示した。RTサンプルは、ある程度のモードを示したが、Si-OHの大部分が縮合しているため、ピークは、200℃乾燥サンプルにおいて最も有意ではない。
【0048】
ATR-FTIRのサンプリング深さは、一般に数ミクロンのオーダーであることに留意されたい。非球状中空シリカサンプルの粒径は、例えば平均で1143nm×770nmとより小さいため(表1参照)、ATR-FTIR測定はバルク測定と考えることができる。
【0049】
実施例5(比較)
比較サンケア組成物のSPFを確認するために、表1及び2に記載されている成分を有する日焼け止め配合物比較バッチA及び比較Bを調製した。
【表2】
【0050】
量は重量部(pbw)として記載されている。合計が100pbwに等しくなるように水を添加する(例えば、比較バッチBでは3.0pbw未満の水が存在する)。
【0051】
相A成分(SYMSAVE(商標)Hヒドロキシアセトフェノン抗酸化剤/平滑剤を除く)を一緒に混合し、撹拌しながら70℃に加熱した。70℃で、SYMSAVE(商標)Hヒドロキシアセトフェノン抗酸化剤/平滑剤を相A容器に添加し、内容物を完全に溶解するまで混合した。
【0052】
別の容器で、相B成分を一緒に混合し、全ての成分が溶融又は溶解するまで75℃に加熱した。撹拌しながら(例えば、スプラッシュがない場合は500rpm)、70℃で5分間かけて相Bを相Aに徐々に混合した。均質化しながら、相Cの半分をA/B混合物に添加した。次いで、混合物を高速で3分間均質化し、その後、400rpmのオーバーヘッドスターラーに切り替えた。続いて、相Cの残りの半分を配合物に混合した。
【0053】
A/B/C混合物の加熱及び撹拌を停止し、それを45℃に冷却した。相Dを添加し、配合物が室温に達するまで高剪断混合を継続した。
【0054】
比較バッチAはSPFブースターを有していない。比較バッチBは、SPFブースターであるSUNSPHERES(商標)中空ポリスチレン球を有する。
【0055】
実施例6
比較サンケア組成物のSPFを確認するために、表1及び3に記載されている成分を有する日焼け止め配合物比較バッチC及び比較バッチDを調製した。
【表3】
【0056】
量は重量部(pbw)として記載されている。合計が100pbwになるように水を加える。
【0057】
相A成分(SYMSAVE(商標)Hヒドロキシアセトフェノン抗酸化剤/平滑剤を除く)を一緒に混合し、撹拌しながら70℃に加熱した。70℃で、SYMSAVE(商標)Hヒドロキシアセトフェノン抗酸化剤/平滑剤をA相容器に添加し、内容物を完全に溶解するまで混合した。
【0058】
別の容器で、相B成分を一緒に混合し、全ての成分が溶融又は溶解するまで75℃に加熱した。撹拌しながら(例えば、スプラッシュがない場合は500rpm)、70℃で5分間かけて相Bを相Aに徐々に混合した。均質化しながら、相Cの半分をA/B混合物に添加した。次いで、混合物を高速で3分間均質化し、その後、400rpmのオーバーヘッドスターラーに切り替えた。続いて、相Cの残りの半分を配合物に混合した。
【0059】
A/B/C混合物の加熱及び撹拌を停止し、それを45℃に冷却した。相Dを添加し、配合物が室温に達するまで高剪断混合を継続した。
【0060】
バッチCは、CaCO3テンプレート材料を含有する。バッチDは、試験に十分な量の材料を提供するために、非球状中空シリカ粒子バッチ1~5(表1)の混合物を含有する。
【0061】
実施例7
32.5mgの実施例5及び6からのそれぞれのサンケア組成物を、ワイヤ丸棒を使用して5cm×5cmのPMMAプレート上に各々コーティングした。ドローダウンフィルムは、SPF測定の前に少なくとも30分間乾燥させ、水分を十分に蒸発させた。
【0062】
LabSpheres社(米国ニュー・ハンプシャー州ノース・サットン在)から供給された積分球及びSPFオペレーティングソフトウェアを備えたUV-2000Sアナライザーを用いてインビトロSPFを測定した。UV-2000Sは、UV放射線の波長(290~400nm)にわたってドローダウン日焼け止めフィルムのUV吸光度スペクトルを測定し、UV吸光度スペクトルに基づいてSPF値を算出した。
9つのデータ点を(例えば、UV-2000Sによって指定されたフィルム上の異なる位置から)収集し、各配合物について3回繰り返した。
【0063】
日焼け止め配合物を45℃で2週間、1ヶ月、及び2ヶ月間熱老化させて、SPFを試験した。
【0064】
図3は、比較サンケア配合物(例えば、比較バッチA(SPFブースターなし)及び比較バッチB(従来のSPFブースター)、テンプレート材料を組み込んだサンケア配合物(バッチC)、及び非球状中空シリカ粒子(例えば、SPFブースターとして)を含むサンケア配合物(バッチD)を含む初期配合物及び熱老化配合物のSPF測定値の図である。
図3は、各時間における比較バッチA、比較バッチB、バッチC、及びバッチDそれぞれについてのSPFを示す。結果を表4に併せて示す。
【表4】
【0065】
CaCO3粒子は、良好なSPFブーストを提供した。驚くべきことに、非球状中空シリカ粒子(バッチD)は、非常に高いSPFブースト効率をもたらし、熱老化前の市販のベンチマーク(比較バッチB)よりも4倍高かった。2ヶ月の熱老化後、バッチDのSPFブースト比は、市販のベンチマーク(比較バッチB)よりも3倍高いままであった。
【0066】
組成物を比較するために、式1を用いてSPFブースト比を計算した。
【数1】
SPFブースト比計算の結果を表5に示す。
【表5】
したがって、バッチDは、初期、45℃で1ヶ月、及び2ヶ月の熱老化後の両方において、比較バッチBよりも良好なSPFブースターである。
【0067】
本開示は、本明細書に具体的に開示され、例示される実施形態に限定されないことが理解される。本発明の様々な修正が、当業者に明らかになるであろう。そのような変更及び修正は、添付の特許請求の範囲の範囲を逸脱することなく行われ得る。さらに、各詳述された範囲は、範囲のすべての組み合わせ及び部分的組み合わせ、ならびにそれらに含まれる特定の数字を含む。
【国際調査報告】