(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-20
(54)【発明の名称】一液型構造接着剤
(51)【国際特許分類】
C09J 163/00 20060101AFI20231213BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
C09J163/00
C09J11/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524607
(86)(22)【出願日】2021-08-18
(85)【翻訳文提出日】2023-05-11
(86)【国際出願番号】 US2021046496
(87)【国際公開番号】W WO2022093365
(87)【国際公開日】2022-05-05
(32)【優先日】2020-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519415100
【氏名又は名称】ディディピー スペシャルティ エレクトロニック マテリアルズ ユーエス,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】コッホ、フェリクス
(72)【発明者】
【氏名】ルッツ、アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】フルッキガー、ジャニーヌ
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040EC001
4J040EF132
4J040JA12
4J040KA14
4J040KA16
(57)【要約】
本明細書では、熱及び湿気への曝露後に優れた接着強度を示す一液型接着剤組成物が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一液型エポキシ接着剤組成物であって、
A)少なくとも1種のエポキシ樹脂;
B)前記接着剤の総重量を基準として5~16重量%の反応性強靭化剤であって、ポリウレタン触媒の存在下で少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ジオール及びポリ(ブタジエン)ジオールをジイソシアネートと反応させ、続いてジフェノールでの鎖延長及びモノ又はジフェノールでのエンドキャッピングを行うことによって製造される反応性強靭化剤;
C)1種以上のエポキシ硬化剤;
D)1種以上のエポキシ硬化触媒
を含む一液型エポキシ接着剤組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種のエポキシ樹脂は、液体及び固体のエポキシ樹脂の組み合わせを含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種のエポキシ樹脂は、
(1)170~195g/eqのエポキシド当量(ASTM D-1652に従って測定)と、22.4~23.6%のエポキシドパーセント割合(ASTM D-1652に従って測定)と、5200~5500mmol/kgのエポキシド基含有量(ASTM D-1652に従って測定)と、4000~14000mPasの25℃における粘度(ASTM D-445に従って測定)とを有する、エピクロロヒドリンとビスフェノールAとの液体反応生成物;
(2)475~550g/eqのエポキシド当量(ASTM D-1652に従って測定)と、7.8~9.1%のエポキシドパーセント割合(ASTM D-1652に従って測定)と、1820~2110mmol/kgのエポキシド基含有量(ASTM D-1652に従って測定)と、400~950mPasの150℃における溶融粘度(ASTM D-4287に従って測定)とを有する、エピクロロヒドリンとビスフェノールAとの低分子量固体反応生成物である固体エポキシ樹脂;及び
(3)これらの混合物
から選択されるエポキシ樹脂を含む、請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記強靭化剤は、ポリ(C
2~C
6アルキレンオキシド)ジオールから選択されるポリ(アルキレンオキシド)ジオールを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
前記強靭化剤は、ポリ(テトラメチレンオキシド)ジオール(「PTMEG」)、ポリ(トリメチレンオキシド)ジオール(「PO3G」)及びこれらの混合物から選択されるポリ(アルキレンオキシド)ジオールを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
前記強靭化剤は、1,000~2,500Da、より好ましくは2,000Daの範囲の分子量を有する、PTMEGであるポリ(アルキレンオキシド)ジオールを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
前記ジイソシアネートは、脂肪族ジイソシアネートである、請求項1~6のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
前記ジイソシアネートは、HMDIである、請求項1~7のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項9】
前記PBDは、2,000~3,500Da、より好ましくは2,800Daの範囲の分子量を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項10】
前記強靭化剤の鎖延長は、O,O’-ジアリルビスフェノールA(「ODBA」)を用いて行われる、請求項1~9のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項11】
前記強靭化剤のエンドキャッピングは、カシューナッツ殻油(「CNSL」)を用いて行われる、請求項1~10のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項12】
前記強靭化剤は、前記接着剤組成物の総重量を基準として14重量%以下で存在する、請求項1~11のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項13】
前記強靭化剤は、前記接着剤組成物の総重量を基準として12重量%以下で存在する、請求項1~12のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項14】
前記強靭化剤は、前記接着剤組成物の総重量を基準として10重量%以下で存在する、請求項1~13のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項15】
DIN EN1465-2009-07:接着面積10×25mm、接着剤組成物層厚さ0.2mm、鋼製基材HE 450 GI 10/10、180℃のオーブン温度においてオーブンで30分硬化及び次いで70℃、相対湿度98%で3週間、-20℃で2時間エージング、続いて23℃/相対湿度50%で2時間コンディショニングに従って作成された重ねせん断試験片は、25%以下の接着破壊を示す、請求項1~14のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項16】
接着された構造であって、
(1)第1の基材;
(2)第2の基材;
(3)前記第1及び第2の基材の表面の一部を接着する接着剤組成物であって、請求項1~15のいずれか一項に記載の接着剤組成物
を含む接着された構造。
【請求項17】
前記第1及び第2の基材は、アルミニウム、鋼、ポリアミド並びにエポキシに基づく炭素繊維及びガラス繊維で強化された複合材料から選択される、請求項16に記載の接着された構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一液型エポキシ接着剤、特に高湿度及び高温下で良好なエージング特性を示す強化されたエポキシ接着剤の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
強化された一液型エポキシ構造接着剤は、金属間の接合及び金属と他の材料との接合のために自動車及び他の産業で広く使用されている。多くの場合、これらの構造接着剤は、車両衝突の状況中の破損に強く耐えなければならない。このタイプの構造接着剤は、「衝突耐久性接着剤」又は「CDA」と呼ばれることがある。この特性は、接着剤配合物中に特定のタイプの材料が存在することによって実現される。これらの材料は、多くの場合に「強靭化剤」と呼ばれる。強靭化剤は、ブロックされた官能基を有し、硬化反応の条件下で脱ブロックしてエポキシ樹脂と反応することができる。このタイプの強靭化剤は、例えば、米国特許第5,202,390号明細書、同第5,278,257号明細書、国際公開第2005/118734号パンフレット、同第2007/003650号パンフレット、同第2012/091842号パンフレット、米国特許出願公開第2005/0070634号明細書、同第2005/0209401号明細書、同第2006/0276601号明細書、欧州特許出願公開第A-0308664号明細書、同第1498441A号明細書、同第A1728825号明細書、同第A1896517号明細書、同第A1916269号明細書、同第A1916270号明細書、同第A1916272号明細書及び同第A-1916285号明細書に記載されている。
【0003】
米国特許第9,181,463号明細書は、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール(「PTMEG」)をジイソシアネートと反応させ、次いで得られたプレポリマーをO,O’-ジアリルビスフェノールAで鎖延長し、続いてモノ又はジフェノールでイソシアネート基をキャッピングすることによって製造される強靭化剤を含むエポキシ系接着剤を記載している。そのような接着剤は、優れた保存安定性を示し、硬化することで優れた重ねせん断強さ及び衝撃剥離強さを有する硬化した接着剤を形成するとされている。
【0004】
自動車用途の接着剤は、特に高温及び高湿度の過酷な環境条件にさらされる。このため、自動車メーカーは、熱及び湿気にさらされた後でも強度がよく保持される接着剤を求めている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱及び湿気にさらされた後に接着強度がよく保持される強化された接着剤が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様において、本明細書では、一液型エポキシ接着剤組成物であって、
A)少なくとも1種のエポキシ樹脂;
B)接着剤の総重量を基準として5~16重量%の反応性強靭化剤であって、ポリウレタン触媒の存在下で少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ジオール及び任意選択的にポリ(ブタジエン)ジオールをジイソシアネートと反応させ、任意選択的に続いてジフェノールでの鎖延長及びモノ又はジフェノールでのエンドキャッピングを行うことによって製造される反応性強靭化剤;
C)1種以上のエポキシ硬化剤;
D)1種以上のエポキシ硬化触媒
を含む一液型エポキシ接着剤組成物が提供される。
【0007】
第2の態様では、本発明は、接着された構造であって、
(1)第1の基材;
(2)第2の基材;
(3)第1及び第2の基材の表面の一部を接続する接着剤組成物であって、
A)少なくとも1種のエポキシ樹脂;
B)接着剤の総重量を基準として5~16重量%の反応性強靭化剤であって、ポリウレタン触媒の存在下で少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ジオール及び任意選択的にポリ(ブタジエン)ジオールをジイソシアネートと反応させ、任意選択的に続いてジフェノールでの鎖延長及びモノ又はジフェノールでのエンドキャッピングを行うことによって製造される反応性強靭化剤;
C)1種以上の潜在性エポキシ硬化剤;
D)1種以上のエポキシ硬化触媒
を含む接着剤組成物
を含む接着された構造を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明者らは、驚くべきことに、エポキシ接着剤中の強靭化剤含有量を低減することにより、熱及び湿気への曝露後の接着性能が大幅に改善されることを見出した。
【0009】
定義及び略語
PTMEG:ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール
DGEBA:ビスフェノールAジグリシジルエーテル。
【0010】
本明細書で報告されるようなポリマーの分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって決定される数又は重量平均分子量としてダルトン(Da)単位で報告される。
【0011】
エポキシ樹脂
本発明による接着剤組成物に有用なエポキシ樹脂としては、様々な硬化性エポキシ化合物及びこれらの組み合わせが挙げられる。有用なエポキシ樹脂としては、液状のもの、固形のもの及びこれらの混合物が挙げられる。典型的には、エポキシ化合物は、ポリエポキシドとも称されるエポキシ樹脂である。本明細書において有用なポリエポキシドは、単量体(例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ノボラック系エポキシ樹脂及び三官能性エポキシ樹脂)、より分子量の高い樹脂(例えば、ビスフェノールAで鎖伸長されたビスフェノールAのジグリシジルエーテル)又は単独重合体若しくは共重合体に重合させた不飽和モノエポキシド(例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等)であり得る。最も望ましくは、エポキシ化合物は、1分子当たり平均して少なくとも1つのペンダント又は末端1,2-エポキシ基(すなわちビシナルエポキシ基)を含む。本発明で使用することができる固体エポキシ樹脂は、好ましくは、ビスフェノールAを含み得るか、又は好ましくは主にビスフェノールAをベースとし得る。幾つかの好ましいエポキシ樹脂としては、例えば、D.E.R.330、D.E.R.331及びD.E.R.671が挙げられ、これらは、全てThe Dow Chemical Companyから市販されている。
【0012】
1つの好ましいエポキシ樹脂は、一般式:
【化1】
(式中、nは、0~約25の範囲である)
を有する。
【0013】
好ましいエポキシ樹脂は、約170~195g/モルの範囲のエポキシ当量を有する。
【0014】
エポキシ接着剤の特性を調整するために、エポキシ樹脂の組み合わせを使用することができる。本発明の組成物及び方法では、エポキシ接着剤は、任意の量のエポキシ樹脂を含み得る。好ましくは、液体及び/又は固体のエポキシ樹脂は、エポキシ接着剤の20重量%以上、より好ましくは約25重量%以上、30重量%以上又は35重量%以上を構成する。好ましくは、液体及び/又は固体のエポキシ樹脂は、エポキシ接着剤の65重量%以下、より好ましくは55重量%以下又は45重量%以下を構成する。他の好ましい量は実施例に示されている。これらの値の対から形成される範囲(例えば25~35重量%、25~65重量%、30~38重量%(接着剤AA))も好ましい。
【0015】
液体及び固体のエポキシ樹脂の組み合わせが使用される場合、任意の割合を使用することができ、当業者が決定することができる。適切な粘度を得るために、液体エポキシ樹脂対固体エポキシ樹脂の重量比が50:50より大きいことが通常好ましい。本発明のエポキシ接着剤組成物は、好ましくは、55:45以上、65:35以上又は70:30以上の比率で液体及び固体のエポキシ樹脂を含む。本発明のエポキシ接着剤組成物は、好ましくは、100:0以下、99:1以下、90:10以下又は85:10以下の比率で液体及び固体のエポキシ樹脂を含む。他の好ましい比率は実施例に示されている。これらの値の対から形成される範囲(例えば50:50~100:0、65:35~82:18(接着剤AU))も好ましい。
【0016】
好ましいエポキシ樹脂としては、以下のものが挙げられる:
1.170~195g/eqのエポキシド当量(ASTM D-1652に従って測定)と、22.4~23.6%のエポキシドパーセント割合(ASTM D-1652に従って測定)と、5200~5500mmol/kgのエポキシド基含有量(ASTM D-1652に従って測定)と、4000~14000mPasの25℃における粘度(ASTM D-445に従って測定)とを有する、エピクロロヒドリンとビスフェノールAとの液体反応生成物;
2.475~550g/eqのエポキシド当量(ASTM D-1652に従って測定)と、7.8~9.1%のエポキシドパーセント割合(ASTM D-1652に従って測定)と、1820~2110mmol/kgのエポキシド基含有量(ASTM D-1652に従って測定)と、400~950mPasの150℃における溶融粘度(ASTM D-4287に従って測定)とを有する、エピクロロヒドリンとビスフェノールAとの低分子量固体反応生成物である固体エポキシ樹脂;
3.1と2との混合物、
4.エポキシ2:エポキシ1が60:40である混合物。
【0017】
強靭化剤
本発明の接着剤組成物は、組成物の総重量を基準として5~16重量%の強靭化剤を含む。強靭化剤は、接着剤組成物の総重量を基準として好ましくは15重量%以下、より好ましくは14重量%以下又は12重量%以下で存在する。
【0018】
本発明の組成物において使用される強靭化剤は、ポリウレタン触媒の存在下でポリ(アルキレンオキシド)ジオール及び任意選択的にポリ(ブタジエン)ジオール(「PBD」)をジイソシアネートと反応させ、任意選択的に続いてジフェノールでの鎖延長及びモノ又はジフェノールでのエンドキャッピングを行うことによって製造される反応性強靭化剤である。
【0019】
好ましい実施形態では、PBDが含まれる。
【0020】
別の好ましい実施形態では、ジフェノールによる鎖延長が行われる。
【0021】
別の好ましい実施形態では、PBDが含まれ、ジフェノールによる鎖延長が行われる。
【0022】
別の好ましい実施形態では、PBDは、含まれない。
【0023】
別の好ましい実施形態では、鎖延長は、行われない。
【0024】
別の好ましい実施形態では、PBDは、含まれず、鎖延長は、行われない。
【0025】
好ましいポリ(アルキレンオキシド)ジオールは、ポリ(C2~C6アルキレンオキシド)ジオール、特にポリ(テトラメチレンオキシド)ジオール(「PTMEG」)、ポリ(トリメチレンオキシド)ジオール(「PO3G」)及びこれらの混合物から選択される。ポリ(アルキレンオキシド)ジオールは、好ましくは1,000~2,500Daの範囲、より好ましくは2,000Daの分子量を有する。PTMEGが特に好ましい。好ましくは、PTMEGは、1,000~2,500Daの範囲、より好ましくは2,000Daの分子量を有する。
【0026】
PBDは、好ましくは2,000~3,500Daの範囲、より好ましくは2,800Daの分子量を有する。
【0027】
ジイソシアネートは、特に限定されない。脂肪族ジイソシアネートが好ましく、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(「HMDI」)及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)が具体例である。HMDIが特に好ましい。
【0028】
ポリウレタン触媒は、特に限定されない。ジブチルスズジラウレート(「DBTL」)が特に好ましい。触媒は、強靭化剤の総重量を基準として好ましくは0.01~0.1重量%、より好ましくは0.6重量%で使用される。
【0029】
任意選択的な鎖延長は、ジフェノールを用いて行われる。O,O’-ジアリルビスフェノールA(「ODBA」)が特に好ましい。ジフェノールは、強靭化剤の総重量を基準として好ましくは2~10重量%、より好ましくは5~8重量%、特に好ましくは7重量%で使用される。代わりに、連鎖延長剤は、0:1~1:1、より好ましくは0:1~0.8:1、特に好ましくは0.6:1~0.8:1のポリオールに対するモル比で使用することができる。
【0030】
エンドキャッピングは、モノフェノール又はジフェノールを用いて行われる。特に好ましいモノフェノールは、カシューナッツ殻油(「CNSL」)である。エンドキャッピングするモノ又はジフェノールは、強靭化剤の総重量を基準として好ましくは5~20重量%、より好ましくは10~15重量%、特には13重量%で使用される。代わりに、エンドキャッピング基は、0.1:1~2:1、より好ましくは0.2:1~1.8:1、より特に好ましくは0.3:1~1.7:1のポリオールに対するモル比で使用することができる。
【0031】
強靭化剤は、好ましくは、強靭化剤の総重量を基準として40~60重量%、より好ましくは45~55重量%のポリ(アルキレンオキシド)ジオールを含む。特に好ましくは、強靭化剤は、強靭化剤の総重量を基準として40~60重量%、より好ましくは45~55重量%のPTMEGを含み、2,000Daの分子量を有するPTMEGが特に好ましい。
【0032】
強靭化剤は、好ましくは、強靭化剤の総重量を基準として10~25重量%、より好ましくは12~18重量%のPBDを含み、2,800Daの分子量を有するPBDが特に好ましい。
【0033】
好ましい実施形態では、強靭化剤は、以下の成分を反応させることによって製造される(重量%は強靭化剤の総重量基準である):
PTMEG(2,000Da) 50.41重量%
PBD(2,800Da) 16.81重量%
ODBA 7.09重量%
HMDI 12.58重量%
DBTDL 0.06重量%
CNSL 13.05重量%。
【0034】
強靭化剤は、次のプロセスによって製造される:
1.第1の反応段階:ポリ(アルキレンオキシド)ジオールとPBDとを実験用反応器に入れ、120℃まで加熱する。真空下において混合物を120℃で30分間加熱する。混合物を60℃まで冷却する。温度が60℃に到達したときにジイソシアネートを添加し、混合物を2分間混合する。次いで、ポリウレタン触媒を添加し、混合物を窒素下において85℃(浴温)で45分間反応させる。
2.第2の反応段階:鎖延長剤を添加し、混合物を窒素下において95℃(浴温)で60分間撹拌する。
3.第3の反応段階:エンドキャッピングするフェノールを添加し、混合物を窒素下において95℃(浴温度)で90分間撹拌する。混合物を脱気のために真空下において95℃で10分間撹拌する。
【0035】
特に好ましい強靭化剤は、以下の成分(重量%は強靭化剤の総重量基準である)を使用して、上記プロセスを用いて製造される:
PTMEG(2,000Da) 50.41重量%
PBD(2,800Da) 16.81重量%
ODBA 7.09重量%
HMDI 12.58重量%
DBTDL 0.06重量%
CNSL 13.05重量%。
【0036】
潜在性エポキシ硬化剤
接着剤は、潜在性硬化剤も含む。硬化剤は、接着剤が少なくとも60℃の硬化温度を示す場合、本発明の目的のために「潜在的」であるとみなされる。硬化温度は、好ましくは、少なくとも80℃であり、少なくとも100℃又は少なくとも140℃であり得る。これは、例えば、180℃ほどに高くてもよい。「硬化温度」とは、構造接着剤が2時間以内の完全硬化でその重ねせん断強さ(DIN ISO 1465)の少なくとも30%を達成する最も低い温度を指す。「完全硬化」における重ねせん断強さは、180℃で30分間硬化したサンプルで測定され、この条件は、「完全硬化」条件を表す。
【0037】
適切な潜在性硬化剤には、三塩化ホウ素/アミン及び三フッ化ホウ素/アミン錯体、メラミン、ジアリルメラミン、グアナミン、例えばジシアンジアミド、メチルグアニジン、ジメチルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、メチルイソビグアニジン、ジメチルイソビグアニジン、テトラメチルイソビグアニジン、ヘプタメチルイソビグアニジン、ヘキサメチルイソビグアニジン、アセトグアナミン及びベンゾグアナミン、アミノトリアゾール、例えば3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、ヒドラジド、例えばアジピン酸ジヒドラジド、ステアリン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、セミカルバジド、シアノアセトアミド及び芳香族ポリアミン、例えばアミノジフェニルスルホンなどの材料が含まれる。ジシアンジアミドが特に好ましい硬化剤である。
【0038】
潜在性硬化剤は、接着剤を硬化させるのに十分な量で使用される。典型的には、組成物中に存在するエポキシド基の少なくとも80%を消費するのに十分な硬化剤が提供される。エポキシド基の全てを消費するのに必要な量を超える大過剰は、通常、不要である。好ましくは、硬化剤は、接着剤の少なくとも約1.5重量パーセント、より好ましくは少なくとも約2.5重量パーセント、更により好ましくは少なくとも3.0重量パーセントを構成する。硬化剤は、好ましくは、接着剤組成物の最大で約15重量パーセント、より好ましくは最大で約10重量パーセント、最も好ましくは最大で約8重量パーセントを構成する。
【0039】
好ましい実施形態では、潜在性エポキシ硬化剤はジシアンジアミドである。エポキシ/ジシアンジアミド比の定数(EP/Dicy比)は、配合物1kg当たりのdicy分子の数に対する1kg当たりのエポキシ基の数の比によって計算される。好ましくは、ジシアンジアミドは、約5のエポキシ/ジシアンジアミド比を与える量で存在する。好ましくは、ジシアンジアミドは、接着剤組成物の総重量を基準として2~8重量%、より好ましくは4~5重量%で接着剤中に存在する。
【0040】
エポキシ硬化触媒
本発明の接着剤組成物は、エポキシ硬化触媒を含む。
【0041】
エポキシ硬化触媒は、硬化剤でエポキシ樹脂の反応を触媒する1種以上の物質である。それは、好ましくは、封入されているか、又はそうでなければ高温にさらされたときにのみ活性になる潜在型である。好ましいエポキシ触媒の中でも、p-クロロフェニル-N,N-ジメチル尿素(モニュロン)、3-フェニル-1,1-ジメチル尿素(フェヌロン)、3,4-ジクロロフェニル-N,N-ジメチル尿素(ジウロン)、N-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-N’,N’-ジメチル尿素25(クロルトルロン)、tert-アクリル-若しくはアルキレンジアミン(ベンジルジメチルアミンなど)、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ピペリジン又はその誘導体、様々な脂肪族尿素化合物(欧州特許第1916272号明細書に記載されているものなど);C1~C12アルキレンイミダゾール若しくはN-アリールイミダゾール(2-エチル-2-メチルイミダゾールなど)又はN-ブチルイミダゾール及び6-カプロラクタム、ポリ(p-ビニルフェノール)マトリックスに組み込まれた2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(欧州特許第0197892号明細書に記載されているものなど)又はノボラック樹脂に組み込まれた2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(米国特許第4,701,378号明細書に記載されているものなど)が適している。特に好ましいものは、ポリ(p-ビニルフェノール)ポリマーマトリックスに組み込まれたトリス-2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールである。
【0042】
エポキシ硬化触媒は、例えば、接着剤組成物の総重量の少なくとも0.1パーセント、少なくとも0.25パーセント又は少なくとも0.5パーセントを構成することができ、例えば接着剤組成物の総重量の最大5パーセント、最大3パーセント又は最大2パーセントを構成することができる。
【0043】
好ましい実施形態では、エポキシ硬化触媒は、ポリ(p-ビニルフェノール)ポリマーマトリックスに組み込まれた2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールであり、接着剤組成物の総重量を基準として0.5~1.5重量%、より好ましくは1重量%の量で使用される。
【0044】
本発明の好ましい接着剤組成物の例
1.一液型エポキシ接着剤組成物であって、
A)少なくとも1種のエポキシ樹脂;
B)接着剤の総重量を基準として5~16重量%の反応性強靭化剤であって、ポリウレタン触媒の存在下で少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ジオール及びポリ(ブタジエン)ジオールをジイソシアネートと反応させ、続いてジフェノールでの鎖延長及びモノ又はジフェノールでのエンドキャッピングを行うことによって製造される反応性強靭化剤;
C)1種以上の潜在性エポキシ硬化剤;
D)1種以上のエポキシ硬化触媒
を含む一液型エポキシ接着剤組成物。
2.一液型エポキシ接着剤組成物であって、
A)170~195g/eqのエポキシド当量(ASTM D-1652に従って測定)と、22.4~23.6%のエポキシドパーセント割合(ASTM D-1652に従って測定)と、5200~5500mmol/kgのエポキシド基含有量(ASTM D-1652に従って測定)と、4000~14000mPasの25℃における粘度(ASTM D-445に従って測定)とを有する、エピクロロヒドリンとビスフェノールAとの液体反応生成物、475~550g/eqのエポキシド当量(ASTM D-1652に従って測定)と、7.8~9.1%のエポキシドパーセント割合(ASTM D-1652に従って測定)と、1820~2110mmol/kgのエポキシド基含有量(ASTM D-1652に従って測定)と、400~950mPasの150℃における溶融粘度(ASTM D-4287に従って測定)とを有する、エピクロロヒドリンとビスフェノールAとの低分子量固体反応生成物である固体エポキシ樹脂及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂;
B)接着剤の総重量を基準として5~16重量%の反応性強靭化剤であって、ポリウレタン触媒の存在下で少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ジオール及びポリ(ブタジエン)ジオールをジイソシアネートと反応させ、続いてジフェノールでの鎖延長及びモノ又はジフェノールでのエンドキャッピングを行うことによって製造される反応性強靭化剤;
C)1種以上の潜在性エポキシ硬化剤;
D)1種以上のエポキシ硬化触媒
を含む一液型エポキシ接着剤組成物。
3.一液型エポキシ接着剤組成物であって、
A)少なくとも1種のエポキシ樹脂;
B)接着剤の総重量を基準として5~16重量%の反応性強靭化剤であって、ポリウレタン触媒の存在下でPTMEG及びポリ(ブタジエン)ジオールをジイソシアネートと反応させ、続いてジフェノールの鎖延長及びモノ又はジフェノールでのエンドキャッピングを行うことによって製造される反応性強靭化剤;
C)1種以上の潜在性エポキシ硬化剤;
D)1種以上のエポキシ硬化触媒
を含む一液型エポキシ接着剤組成物。
4.一液型エポキシ接着剤組成物であって、
A)少なくとも1種のエポキシ樹脂;
B)接着剤の総重量を基準として5~16重量%の反応性強靭化剤であって、ポリウレタン触媒の存在下でPTMEG及びポリ(ブタジエン)ジオールを脂肪族ジイソシアネートと反応させ、続いてジフェノールでの鎖延長及びモノ又はジフェノールでのエンドキャッピングを行うことによって製造される反応性強靭化剤;
C)1種以上の潜在性エポキシ硬化剤;
D)1種以上のエポキシ硬化触媒
を含む一液型エポキシ接着剤組成物。
5.一液型エポキシ接着剤組成物であって、
A)少なくとも1種のエポキシ樹脂;
B)接着剤の総重量を基準として5~16重量%の反応性強靭化剤であって、ポリウレタン触媒の存在下でPTMEG及びポリ(ブタジエン)ジオールをHMDIと反応させ、続いてジフェノールでの鎖延長及びモノ又はジフェノールでのエンドキャッピングを行うることによって製造される反応性強靭化剤;
C)1種以上の潜在性エポキシ硬化剤;
D)1種以上のエポキシ硬化触媒
を含む一液型エポキシ接着剤組成物。
6.一液型エポキシ接着剤組成物であって、
A)少なくとも1種のエポキシ樹脂;
B)接着剤の総重量を基準として5~16重量%の反応性強靭化剤であって、ポリウレタン触媒の存在下でPTMEG及びポリ(ブタジエン)ジオールを脂肪族ジイソシアネートと反応させ、続いてODBAでの鎖延長及びモノ又はジフェノールでのエンドキャッピングを行うことによって製造される反応性強靭化剤;
C)1種以上の潜在性エポキシ硬化剤;
D)1種以上のエポキシ硬化触媒
を含む一液型エポキシ接着剤組成物。
7.一液型エポキシ接着剤組成物であって、
A)少なくとも1種のエポキシ樹脂;
B)接着剤の総重量を基準として5~16重量%の反応性強靭化剤であって、ポリウレタン触媒の存在下でPTMEG及びポリ(ブタジエン)ジオールを脂肪族ジイソシアネートと反応させ、続いてジフェノールでの鎖延長及びCNSLでのエンドキャッピングを行うことによって製造される反応性強靭化剤;
C)1種以上の潜在性エポキシ硬化剤;
D)1種以上のエポキシ硬化触媒
を含む一液型エポキシ接着剤組成物。
8.一液型エポキシ接着剤組成物であって、
A)少なくとも1種のエポキシ樹脂;
B)接着剤の総重量を基準として5~16重量%の反応性強靭化剤であって、ポリウレタン触媒の存在下でPTMEG及びポリ(ブタジエン)ジオールをHMDIと反応させ、続いてODBAでの鎖延長及びCNSLでのエンドキャッピングを行うことによって製造される反応性強靭化剤;
C)1種以上の潜在性エポキシ硬化剤;
D)1種以上のエポキシ硬化触媒
を含む一液型エポキシ接着剤組成物。
9.一液型エポキシ接着剤組成物であって、
A)少なくとも1種のエポキシ樹脂;
B)接着剤の総重量を基準として5~16重量%の反応性強靭化剤であって、ポリウレタン触媒の存在下で少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ジオール及びポリ(ブタジエン)ジオールをジイソシアネートと反応させ、続いてジフェノールでの鎖延長及びモノ又はジフェノールでのエンドキャッピングを行うことによって製造される反応性強靭化剤;
C)ジシアンジアミドである1種以上の潜在性エポキシ硬化剤;
D)1種以上のエポキシ硬化触媒
を含む一液型エポキシ接着剤組成物。
10.一液型エポキシ接着剤組成物であって、
A)170~195g/eqのエポキシド当量(ASTM D-1652に従って測定)と、22.4~23.6%のエポキシドパーセント割合(ASTM D-1652に従って測定)と、5200~5500mmol/kgのエポキシド基含有量(ASTM D-1652に従って測定)と、4000~14000mPasの25℃における粘度(ASTM D-445に従って測定)とを有する、エピクロロヒドリンとビスフェノールAとの液体反応生成物、475~550g/eqのエポキシド当量(ASTM D-1652に従って測定)と、7.8~9.1%のエポキシドパーセント割合(ASTM D-1652に従って測定)と、1820~2110mmol/kgのエポキシド基含有量(ASTM D-1652に従って測定)と、400~950mPasの150℃における溶融粘度(ASTM D-4287に従って測定)とを有する、エピクロロヒドリンとビスフェノールAとの低分子量固体反応生成物である固体エポキシ樹脂及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂;
B)接着剤の総重量を基準として5~16重量%の反応性強靭化剤であって、ポリウレタン触媒の存在下でPTMEG及びポリ(ブタジエン)ジオールをHMDIと反応させ、続いてODBAでの鎖延長及びCNSLでのエンドキャッピングを行うことによって製造される反応性強靭化剤;
C)ジシアンジアミドである1種以上の潜在性エポキシ硬化剤;
D)ポリビニルフェノールポリマーマトリックスに埋め込まれたトリス-2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールである1種以上のエポキシ硬化触媒
を含む一液型エポキシ接着剤組成物。
11.一液型エポキシ接着剤組成物であって、
A)170~195g/eqのエポキシド当量(ASTM D-1652に従って測定)と、22.4~23.6%のエポキシドパーセント割合(ASTM D-1652に従って測定)と、5200~5500mmol/kgのエポキシド基含有量(ASTM D-1652に従って測定)と、11000~14000mPasの25℃における粘度(ASTM D-445に従って測定)とを有する、エピクロロヒドリンとビスフェノールAとの液体反応生成物、475~550g/eqのエポキシド当量(ASTM D-1652に従って測定)と、7.8~9.1%のエポキシドパーセント割合(ASTM D-1652に従って測定)と、1820~2110mmol/kgのエポキシド基含有量(ASTM D-1652に従って測定)と、400~950mPasの150℃における溶融粘度(ASTM D-4287に従って測定)とを有する、エピクロロヒドリンとビスフェノールAとの低分子量固体反応生成物である固体エポキシ樹脂及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂;
B)以下のものを反応させることによって製造される、接着剤の総重量を基準として5~16重量%の反応性強靭化剤:
PTMEG(2,000Da) 50.41重量%
PBD(2,800Da) 16.81重量%
ODBA 7.09重量%
HMDI 12.58重量%
DBTDL 0.06重量%
CNSL 13.05重量%、
C)ジシアンジアミドである1種以上の潜在性エポキシ硬化剤;
D)ポリビニルフェノールポリマーマトリックスに埋め込まれたトリス-2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールである1種以上のエポキシ硬化触媒
を含む一液型エポキシ接着剤組成物。
【0045】
接着された基材
本発明は、
(1)第1の基材;
(2)第2の基材;
(3)第1及び第2の基材の表面の一部を接続する接着剤組成物であって、
A)少なくとも1種のエポキシ樹脂;
B)接着剤の総重量を基準として5~16重量%の反応性強靭化剤であって、ポリウレタン触媒の存在下で少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ジオール及びポリ(ブタジエン)ジオールをジイソシアネートと反応させ、続いてジフェノールでの鎖延長及びモノ又はジフェノールでのエンドキャッピングを行うことによって製造される反応性強靭化剤;
C)1種以上の潜在性エポキシ硬化剤;
D)1種以上のエポキシ硬化触媒
を含む接着剤組成物
を含む、接着された構造も提供する。
【0046】
好ましい実施形態では、第1及び第2の基材は、金属、ガラス、プラスチック及び複合材料から独立して選択される。好ましい金属は、アルミニウム及び鋼である。好ましいプラスチックには、ポリアミド又はエポキシに基づく炭素繊維及びガラス繊維で強化された複合材料が含まれる。
【0047】
発明の効果
本発明の接着剤組成物は、高温高湿暴露(「カタプラズマ試験」)後に優れた接着性及び機械的特性を示す。具体的には、DIN EN1465-2009-07:接着面積10×25mm、接着層厚さ0.2mm、厚さ1.8mmの鋼製基材HE 450 GI 10/10上、180℃のオーブン温度においてオーブンで30分硬化及び次いで70℃、相対湿度98%で3週間、-20℃で2時間エージング、続いて23℃/相対湿度50%で2時間コンディショニングに従って作成した重ねせん断試験片は、25%以下の接着破壊を示す。
【実施例】
【0048】
【0049】
D.E.R.(商標)331(商標)液体エポキシ樹脂は、182~192g/eqのエポキシド当量(ASTM D-1652に従って測定)と、22.4~23.6%のエポキシドパーセント割合(ASTM D-1652に従って測定)と、5200~5500mmol/kgのエポキシド基含有量(ASTM D-1652に従って測定)と、11000~14000mPasの25℃における粘度(ASTM D-445に従って測定)とを有する、エピクロロヒドリンとビスフェノールAとの液体反応生成物である。
【0050】
D.E.R.*671固体エポキシ樹脂は、475~550g/eqのエポキシド当量(ASTM D-1652に従って測定)と、7.8~9.1%のエポキシドパーセント割合(ASTM D-1652に従って測定)と、1820~2110mmol/kgのエポキシド基含有量(ASTM D-1652に従って測定)と、400~950mPasの150℃における溶融粘度(ASTM D-4287に従って測定)とを有する、エピクロロヒドリンとビスフェノールAとの低分子量固体反応生成物である。
【0051】
【0052】
強靭化剤の製造
強靭化剤は、以下のプロセスによって製造した。
1.第1の反応段階:各成分の量は表3に記載されている。成分[a]及び[b]を実験用反応器に入れ、120℃まで加熱した。混合物を、真空下において120℃で30分間混合した。混合物を60℃まで冷却した。温度が60℃に到達したときに成分[c]を添加し、混合物を2分間混合した。成分[g]を添加し、混合物を窒素下において85℃(浴温)で45分間反応させた。
2.第2の反応段階:成分[e]を添加し、混合物を窒素下において95℃(浴温)で60分間撹拌した。
3.第3の反応段階:成分[f]を添加し、混合物を窒素下において95℃(浴温)で90分間撹拌した。最後に、混合物を真空下において95℃で10分間撹拌して脱気した。
【0053】
実施例で使用した強靭化剤は、上述したプロセスを使用して合成した。成分は表3に記載されている。
【0054】
【0055】
【0056】
本発明の全ての配合物は、従来使用されていた量と比較して減少した量の強靭化剤(16重量%以下)を使用した。比較例1及び2並びに本発明の実施例1~4は、強靭化剤の含有量のみが異なる。様々な配合物における強靭化剤含有量の減少は、液体エポキシ樹脂D.E.R.331のみならず、半固体エポキシ樹脂混合物及びエポキシジシアンジアミド比を一定に保つためのジシアンジアミドの量の変更によって補われている(EP/Dicy比は、配合物1kg当たりのdicy分子の数に対する1kg当たりのエポキシ基の数の比によって計算される)。比較例1及び2は、20重量%及び18重量%の強靭化剤で、従来技術でこれまでに記載されているような高い強靭化剤含有量を含む。本発明の実施例1~4は、それぞれ16重量%からわずか10重量%まで、低減された量の強靭化剤を含んでいる。
【0057】
試験方法
レオロジー
回転粘度/降伏応力:Bohlin CS-50レオメーター、C/P20、上昇/下降0.1~20s/1;45℃;Cassonモデルにより評価。
【0058】
熱分析
動的機械分析(DMA):ガラス転移温度Tgは、DMA測定によって決定し、tanδの最大値として定義した。試験方法:温度範囲:40℃~+250℃;周波数:1Hz;加熱速度:3℃/分。
【0059】
機械的試験
使用した鋼材:HE450M G10/10厚さ1.8mmの亜鉛メッキ鋼(ex Arcelor)にQuaker Ferrocoat N6130を再度グリース塗布
重ねせん断強さは、DIN EN1465-2009-07に従って測定した:10×25mmの接着面積、0.2mmの接着剤層の厚さ
衝撃剥離強さは、BS EN ISO 11343:2005に従って測定した:接着面積20×30mm、接着剤層の厚さ0.2mm、使用鋼材:DX56 Z100(0.8mm)
弾性率は、DIN EN ISO 527-1:2012に従って測定した。
【0060】
破壊モードの評価
CF=凝集破壊
AF=接着破壊
100=100%破壊。
【0061】
湿度暴露試験(「カタプラズマ試験」)は、RNES-B-00137 v1.0に従って、以下の重ねせん断試験片を使用して行った。
【0062】
重ねせん断試験片は、RNES-B-00058 v1.0に従って、上述した基材と所定の接着面積の寸法を使用してそれぞれの接着剤配合物を塗布し、続いて表に記載の温度及び時間(30分、180℃)で試験片をオーブン(オーブン温度)で硬化させることによって作成した。その後、試験片を70℃、相対湿度98%で3週間、-20℃で2時間エージングし、続いて23℃/相対湿度50%で2時間コンディショニングした。
【0063】
表5は、レオロジー、機械的特性、バルク特性のデータ及び湿度暴露試験の結果をまとめている。破壊モードが分析され、評価される。
【0064】
【0065】
驚くべきことに、強靭化剤の含有量を減らすと、湿気及び熱にさらされた後に接着破壊のパーセント割合が大幅に減少することが観察される。
【0066】
強靭化剤の含有量が減少すると、弾性率が2260MPaから3100ほど高くまで増加することが分かる。
【0067】
ガラス転移温度の場合も同様であり、強靭化剤の含有量がCE1からE4に減少すると、109.1℃から120.7℃に上昇する。
【0068】
衝撃剥離強さは、CE1から本発明のE4まで、28N/mmから21N/mmにわずかに低下する。
【0069】
本発明の特定の好ましい実施形態が上で説明され、具体的に例示されてきたが、本発明がそのような実施形態に限定されることを意図しない。むしろ、本発明の多くの特徴及び利点は、本発明の構造及び機能の詳細と一緒に前述の説明で示されているが、本開示は、例示的なものにすぎず、添付の特許請求の範囲が表現される用語の広範な一般的意味によって示される最大限まで、本発明の原理内において、詳細、とりわけ部品の形状、サイズ及び配置に関して変更形態がなされ得ることが理解されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一液型エポキシ接着剤組成物であって、
A)少なくとも1種のエポキシ樹脂;
B)前記接着剤の総重量を基準として5~16重量%の反応性強靭化剤であって、ポリウレタン触媒の存在下で少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ジオール及びポリ(ブタジエン)ジオールをジイソシアネートと反応させ、続いてジフェノールでの鎖延長及びモノ又はジフェノールでのエンドキャッピングを行うことによって製造される反応性強靭化剤;
C)1種以上のエポキシ硬化剤;
D)1種以上のエポキシ硬化触媒
を含む一液型エポキシ接着剤組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種のエポキシ樹脂は、液体及び固体のエポキシ樹脂の組み合わせを含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種のエポキシ樹脂は、
(1)170~195g/eqのエポキシド当量(ASTM D-1652に従って測定)と、22.4~23.6%のエポキシドパーセント割合(ASTM D-1652に従って測定)と、5200~5500mmol/kgのエポキシド基含有量(ASTM D-1652に従って測定)と、4000~14000mPasの25℃における粘度(ASTM D-445に従って測定)とを有する、エピクロロヒドリンとビスフェノールAとの液体反応生成物;
(2)475~550g/eqのエポキシド当量(ASTM D-1652に従って測定)と、7.8~9.1%のエポキシドパーセント割合(ASTM D-1652に従って測定)と、1820~2110mmol/kgのエポキシド基含有量(ASTM D-1652に従って測定)と、400~950mPasの150℃における溶融粘度(ASTM D-4287に従って測定)とを有する、エピクロロヒドリンとビスフェノールAとの低分子量固体反応生成物である固体エポキシ樹脂;及び
(3)これらの混合物
から選択されるエポキシ樹脂を含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記強靭化剤は、ポリ(C
2~C
6アルキレンオキシド)ジオールから選択されるポリ(アルキレンオキシド)ジオールを含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
前記強靭化剤は、ポリ(テトラメチレンオキシド)ジオール(「PTMEG」)、ポリ(トリメチレンオキシド)ジオール(「PO3G」)及びこれらの混合物から選択されるポリ(アルキレンオキシド)ジオールを含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
前記強靭化剤は、1,000~2,500Daの範囲の分子量を有する、PTMEGであるポリ(アルキレンオキシド)ジオールを含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
前記ジイソシアネートは、脂肪族ジイソシアネートである、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
前記ジイソシアネートは、HMDIである、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項9】
前記PBDは、2,000~3,500Daの範囲の分子量を有する、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項10】
前記強靭化剤の鎖延長は、O,O’-ジアリルビスフェノールA(「ODBA」)を用いて行われる、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項11】
前記強靭化剤のエンドキャッピングは、カシューナッツ殻油(「CNSL」)を用いて行われる、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項12】
前記強靭化剤は、前記接着剤組成物の総重量を基準として14重量%以下で存在する、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項13】
前記強靭化剤は、前記接着剤組成物の総重量を基準として12重量%以下で存在する、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項14】
前記強靭化剤は、前記接着剤組成物の総重量を基準として10重量%以下で存在する、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項15】
DIN EN1465-2009-07:接着面積10×25mm、接着剤組成物層厚さ0.2mm、鋼製基材HE 450 GI 10/10、180℃のオーブン温度においてオーブンで30分硬化及び次いで70℃、相対湿度98%で3週間、-20℃で2時間エージング、続いて23℃/相対湿度50%で2時間コンディショニングに従って作成された重ねせん断試験片は、25%以下の接着破壊を示す、請求項1に記載の接着剤組成物。
【国際調査報告】