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特表2023-552958ポリエチレン組成物及びそれを含むフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-20
(54)【発明の名称】ポリエチレン組成物及びそれを含むフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/04 20060101AFI20231213BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20231213BHJP
   C08F 10/02 20060101ALI20231213BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
C08L23/04
C08K5/098
C08F10/02
C08J5/18 CES
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524698
(86)(22)【出願日】2021-10-29
(85)【翻訳文提出日】2023-04-21
(86)【国際出願番号】 US2021057337
(87)【国際公開番号】W WO2022094266
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】63/107,890
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】PCT/US2021/053346
(32)【優先日】2021-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】バルボサ、ブルーノ セザル デ モラエス
(72)【発明者】
【氏名】マッツォーラ、ニコラス シー.
(72)【発明者】
【氏名】シャルマ、ラーフル
(72)【発明者】
【氏名】ブアシュチク、ジャンナ
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4F071AA15
4F071AA81
4F071AA82
4F071AA88
4F071AF23Y
4F071AH04
4F071BB09
4F071BC01
4F071BC12
4J002BB03X
4J002BB05W
4J002EG076
4J002EG096
4J002FD206
4J002GG02
4J100AA02P
4J100AA16Q
4J100AA19Q
4J100DA01
4J100DA12
4J100DA19
4J100DA42
4J100DA52
4J100JA58
(57)【要約】
本発明は、ポリエチレン組成物に関する。一態様において、ポリエチレン組成物は、(1)iCCD分析法による溶出プロファイルにおいて50℃~85℃の温度範囲に単一ピークを有する第1のポリエチレン画分と、(2)iCCD分析法による溶出プロファイルにおいて85℃~100℃の温度範囲に単一ピークを有する第2のポリエチレン画分と、(3)iCCD分析法による溶出プロファイルにおいて100℃~120℃の温度範囲に単一ピークを有する第3のポリエチレン画分とを含み、第1のポリエチレン面積画分は溶出プロファイルの総面積の25~50%を構成し、第2のポリエチレン面積画分は溶出プロファイルの総面積の30~50%を構成し、第3のポリエチレン面積画分は溶出プロファイルの総面積の15~35%を構成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン組成物であって、
(1)改良されたコモノマー組成分布(iCCD)分析法による溶出プロファイルにおいて50℃~85℃の温度範囲に単一ピークを有する第1のポリエチレン画分であって、第1のポリエチレン面積画分が、50~85℃の前記第1のポリエチレン画分の単一ピークの真下の前記溶出プロファイルにおける面積であり、前記第1のポリエチレン画分における平均Mが、前記iCCD分析法を用いて測定した場合に100,000~225,000g/molである、第1のポリエチレン画分と、
(2)iCCD分析法による前記溶出プロファイルにおいて85℃~100℃の温度範囲に単一ピークを有する第2のポリエチレン画分であって、第2のポリエチレン面積画分が、85℃~100℃前記の第2のポリエチレン画分の前記単一ピークの真下の前記溶出プロファイルにおける面積であり、前記第2のポリエチレン画分における平均Mが、前記iCCD分析法を用いて測定した場合に30,000~60,000g/molである、第2のポリエチレン画分と、
(3)iCCD分析法による溶出プロファイルにおいて100℃~120℃の温度範囲に単一ピークを有する第3のポリエチレン画分であって、第3のポリエチレン面積画分が、100℃~120℃の前記第3のポリエチレン画分の前記単一ピークの真下の前記溶出プロファイルにおける面積であり、前記第3のポリエチレン画分における平均Mが、前記iCCD分析法を用いて測定した場合に100,000~225,000g/molである、第3のポリエチレン画分と、
を含み、
前記第1のポリエチレン面積画分が、前記溶出プロファイルの総面積の25~50%を構成し、前記第2のポリエチレン面積画分が、前記溶出プロファイルの総面積の30~50%を構成し、前記第3のポリエチレン面積画分が、前記溶出プロファイルの総面積の15~35%を構成する、ポリエチレン組成物。
【請求項2】
前記第1のポリエチレン面積画分が、前記溶出プロファイルの総面積の30~45%を構成し、前記第2のポリエチレン面積画分が、前記溶出プロファイルの総面積の35~45%を構成し、前記第3のポリエチレン面積画分が、前記溶出プロファイルの総面積の15~30%を構成する、請求項1に記載のポリエチレン組成物。
【請求項3】
前記ポリエチレン組成物が、0.940~0.949g/cmの全体密度を有する、請求項1又は請求項2に記載のポリエチレン組成物。
【請求項4】
前記ポリエチレン組成物が、0.5~2g/10分のメルトインデックス(I)を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリエチレン組成物。
【請求項5】
前記組成物の総重量に基づいて、20~5000ppmの核形成剤を更に含み、前記核形成剤が、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩又は4-[(4-クロロベンゾイル)アミノ]安息香酸ナトリウムを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリエチレン組成物。
【請求項6】
前記組成物が、
(a)第1のポリエチレン成分であって、
(1)0.935~0.947g/cmの範囲の密度及び0.1g/10分未満のメルトインデックス(I)を有する、25~37重量パーセントの第1のポリエチレン画分と、
(2)63~75重量パーセントの第2のポリエチレン画分と、
を含むポリエチレン成分を含み、
前記第1のポリエチレン成分が、13C NMRを使用して測定した場合、1,000個の炭素原子あたり0.10未満の分岐を有し、前記第1のポリエチレン成分の密度が、少なくとも0.965g/cmであり、前記第1のポリエチレン成分のメルトインデックス(I)が、0.5~10g/10分である、第1のポリエチレン成分と、
(b)第2のポリエチレン成分であって、
(1)改善されたコモノマー組成分布(iCCD)分析法による溶出プロファイルにおいて45℃~87℃の温度範囲に単一ピークを有する第1のポリエチレン画分であって、前記第1のポリエチレン面積画分が、45~87℃の第1のポリエチレン画分の単一ピークの真下の溶出プロファイルにおける面積である、第1のポリエチレン画分と、
(2)iCCD分析法による溶出プロファイルにおいて95℃~120℃の温度範囲に単一ピークを有する第2のポリエチレン画分であって、第2のポリエチレン面積画分が、95℃~120℃の前記第2のポリエチレン画分の前記単一ピークの真下の前記溶出プロファイルにおける面積である、第2のポリエチレン画分と、を含み、
前記第2のポリエチレン成分が、0.924g/cm~0.936g/cmの密度及び0.25g/10分~2.0g/10分のメルトインデックス(I)を有し、前記第2の成分の前記第2のポリエチレン画分面積が、前記溶出プロファイルの総面積の少なくとも40%を構成し、前記第2の成分の前記第1のポリエチレン画分面積の前記第2の成分の前記第2のポリエチレン画分面積に対する比が、0.75~2.5であり、ピーク高さの50パーセントでの前記第2の成分の前記第2のポリエチレン画分の前記単一ピークの幅が、5.0℃未満である、第2のポリエチレン成分と、のブレンドであり、
前記ポリエチレン組成物が、前記ポリエチレン組成物の総重量に基づいて、30~60重量パーセントの前記第1のポリエチレン成分と、40~70重量パーセントの前記第2のポリエチレン成分と、を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリエチレン組成物。
【請求項7】
前記ポリエチレン組成物から形成され、3~4ミルの厚さを有する単層フィルムが、少なくとも110g/ミルの正規化ダート衝撃を示す、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリエチレン組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のポリエチレン組成物を含む、フィルム。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載のポリエチレン組成物を含む、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレン組成物、及びそのような組成物を含むフィルムに関する。
【0002】
序論
可撓性包装フィルム構造は、多くの場合、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミドなどを含む、複数の種類のポリマー材料で形成される。そのような材料は、典型的には、単一の種類の材料では到達できない特性のバランスを達成するように組み合わされる。しかしながら、これらの材料の相違点のため、最終包装は、典型的には、リサイクルするのが容易ではない。したがって、リサイクル性プロファイルを改善するための、単一成分構造(例えば、すべてがポリエチレンである構造)への動きも存在する。例えば、すべてがポリエチレンである構造の場合、リサイクル性を改善させながら、異なるポリマー材料から形成される場合にこれらの構造に期待される性能レベルを維持するために、一定の性能測定基準(例えば、機械的特性)を強化することが必要になる。
【0003】
しばしば、包装及び他の用途のためのフィルムの設計において、フィルムの1つの特性の改善により、フィルムの別の特性の低下をもたらすことがある。例えば、より低い密度を有するポリエチレンの使用によって、いくつかの機械的特性(例えば、ダート)を改善し得るが、割線弾性係数及び/又はバリア特性などの他の特性を低下させることがある。良好な剛性と靭性とのバランスは、例えば、頑丈な輸送用サックバッグ、自立型パウチ、ペットフード包装などのいくつかの包装用途向けに望ましい特性の組み合わせであり得る。
【0004】
改善された特性を提供するためにフィルムに使用することができる新しいポリエチレン組成物を有することが望ましい。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、望ましい及び/又は改善された特性を提供するためにフィルムに使用することができるポリエチレン組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明のポリエチレン組成物から形成されたフィルムは、改善されたダート衝撃性能を提供する。
【0006】
一態様では、ポリエチレン組成物は、
(1)改良されたコモノマー組成分布(improved comonomer composition distribution、iCCD)分析法による溶出プロファイルにおいて50℃~85℃の温度範囲に単一ピークを有する第1のポリエチレン画分であって、第1のポリエチレン面積画分が、50~85℃の当該第1のポリエチレン画分の単一ピークの真下の溶出プロファイルにおける面積であり、当該第1のポリエチレン画分における平均Mが、当該iCCD分析法を用いて測定した場合に100,000~225,000g/molである、第1のポリエチレン画分と、
(2)iCCD分析法による当該溶出プロファイルにおいて85℃~100℃の温度範囲に単一ピークを有する第2のポリエチレン画分であって、第2のポリエチレン面積画分が、85℃~100℃の当該第2のポリエチレン画分の当該単一ピークの真下の当該溶出プロファイルにおける面積であり、当該第2のポリエチレン画分における平均Mが、当該iCCD分析法を用いて測定した場合に30,000~60,000g/molである、第2のポリエチレン画分と、
(3)iCCD分析法による当該溶出プロファイルにおいて100℃~120℃の温度範囲に単一ピークを有する第3のポリエチレン画分であって、第3のポリエチレン面積画分が、100℃~120℃の当該第3のポリエチレン画分の当該単一ピークの真下の当該溶出プロファイルにおける面積であり、当該第3のポリエチレン画分における平均Mが、当該iCCD分析法を用いて測定した場合に100,000~225,000g/molである、第3のポリエチレン画分と、
を含み、
当該第1のポリエチレン面積画分が、当該溶出プロファイルの総面積の25~50%を構成し、当該第2のポリエチレン面積画分が、当該溶出プロファイルの総面積の30~50%を構成し、当該第3のポリエチレン面積画分が、当該溶出プロファイルの総面積の15~35%を構成する、方法。
【0007】
これら及び他の実施形態は、「発明を実施するための形態」において、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示の実施形態を例示する目的で、例示的な形態が図面に示されている。しかしながら、これらの実施形態は、示される正確な配置及び手段に限定されないことを理解されたい。
【0009】
図1】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、あるポリエチレン組成物のiCCD溶出プロファイルを概略的に示すグラフである。
図2】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、第2のポリエチレン成分のiCCD溶出プロファイルを概略的に示すグラフである。
図3】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、第2のポリエチレン成分のiCCD溶出プロファイルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
相反する記載がなく、文脈から暗示されておらず、又は当該技術分野で慣例的でない限り、すべての部及びパーセントは、重量を基準とするものであり、すべての温度は℃であり、すべての試験方法は、本開示の出願日の時点において最新のものである。
【0011】
本明細書で使用される場合、「組成物」という用語は、組成物を構成する材料、並びに組成物の材料から形成される反応生成物及び分解生成物の混合物を指す。
【0012】
「ポリマー」は、同じ種類であるか又は異なる種類であるかにかかわらず、モノマーを重合させることによって調製されるポリマー化合物を意味する。したがって、総称用語ポリマーは、以下に定義される用語ホモポリマー、及び以下に定義される用語インターポリマーを包含する。微量の不純物(例えば、触媒残渣)が、ポリマー中及び/又はポリマー内に導入される場合がある。ポリマーは、単一のポリマー、ポリマーブレンド、又は重合中にその場で形成されるポリマーの混合物を含むポリマー混合物であり得る。
【0013】
本明細書で使用される場合、「ホモポリマー」という用語は、微量の不純物がポリマー構造に取り込まれ得ると理解した上で、1種類のみのモノマーから調製されるポリマーを指す。
【0014】
本明細書で使用するとき、「インターポリマー」という用語は、少なくとも2種類の異なるモノマーの重合によって調製されるポリマーを指す。したがって、インターポリマーという総称は、コポリマー(2種類の異なるモノマーから調製されるポリマーを指すために用いられる)及び2種類を超える異なる種類のモノマーから調製されるポリマーを含む。
【0015】
本明細書で使用するとき、「オレフィン系ポリマー」又は「ポリオレフィン」という用語は、(ポリマーの重量に基づいて)過半量のオレフィンモノマー、例えば、エチレン又はプロピレンを重合形態で含み、任意選択で1つ以上のコモノマーを含み得るポリマーを指す。
【0016】
本明細書で使用される場合、「エチレン/α-オレフィンインターポリマー」という用語は、重合形態で、過半量(50mol%超)の、エチレンモノマーに由来する単位と、残りの量の、1つ以上のα-オレフィンに由来する単位とを含むインターポリマーを指す。エチレン/α-オレフィンインターポリマーの形成に使用される典型的なα-オレフィンは、C~C10アルケンである。
【0017】
本明細書で使用される場合、「エチレン/α-オレフィンコポリマー」という用語は、重合形態で、2種類のみのモノマーとして、過半量(50mol%超)のエチレンモノマーと、α-オレフィンと、を含むコポリマーを指す。
【0018】
本明細書で使用される場合、「α-オレフィン」という用語は、一次又はアルファ(α)位置に二重結合を有するアルケンを指す。
【0019】
「ポリエチレン」又は「エチレン系ポリマー」は、過半量(50mol%超)の、エチレンモノマーに由来する単位を含む、ポリマーを意味するものとする。これは、ポリエチレンホモポリマー又はコポリマー(2つ以上のコモノマーに由来する単位を意味する)を含む。当該技術分野において既知のポリエチレンの一般的な形態は、低密度ポリエチレン(Low Density Polyethylene、LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(Linear Low Density Polyethylene、LLDPE)、極低密度ポリエチレン(Ultra Low Density Polyethylene、ULDPE)、超低密度ポリエチレン(Very Low Density Polyethylene、VLDPE)、直鎖状低密度樹脂及び実質的に直鎖状の低密度樹脂の両方を含む、シングルサイト触媒による直鎖状低密度ポリエチレン(m-LLDPE)、エチレン系プラストマー(ethylene-based plastomer、POP)及びエチレン系エラストマー(ethylene-based elastomer、POE)、中密度ポリエチレン(Medium Density Polyethylene、MDPE)、並びに高密度ポリエチレン(High Density Polyethylene、HDPE)が挙げられる。これらのポリエチレン材料は、概して、当該技術分野において既知である。しかしながら、以下の記載は、これらの異なるポリエチレン樹脂のうちのいくつかの間の差異を理解するのに役立ち得る。
【0020】
「LDPE」という用語はまた、「高圧エチレンポリマー」、又は「高分岐ポリエチレン」とも称され得るが、ポリマーが、過酸化物(例えば、参照により組み込まれる、米国特許第4,599,392号を参照されたい)などの、フリーラジカル開始剤を使用して、14,500psi(100MPa)を上回る圧力で、オートクレーブ又は管状反応器中で、部分的又は完全に、ホモ重合又は共重合されることを意味するように定義される。LDPE樹脂は、典型的には、0.916~0.935g/cmの範囲内の密度を有する。
【0021】
「LLDPE」という用語は、伝統的なチーグラー・ナッタ触媒系及びクロム系触媒、並びに、モノ-又はビス-シクロペンタジエニル触媒(典型的にはメタロセンと称される)、幾何拘束触媒、ホスフィンイミン触媒及び多価アリールオキシエーテル触媒(典型的にはビスフェニルフェノキシと称される)を含むが、これらに限定されないシングルサイト触媒を使用して作製される両方の樹脂を含み、かつ直鎖状、実質的に直鎖状、又は不均質なポリエチレンコポリマー又はホモポリマーを含む。LLDPEは、LDPEよりも少ない長鎖分岐を含有し、米国特許第5,272,236号、米国特許第5,278,272号、米国特許第5,582,923号、及び米国特許第5,733,155号に更に定義されている実質的に直鎖状のエチレンポリマー、米国特許第3,645,992号のものなどの、均質に分岐した直鎖状エチレンポリマー組成物、米国特許第4,076,698号に開示されているプロセスに従って調製されるものなどの不均質分岐エチレンポリマー、及び/又はこれらのブレンド(米国特許第3,914,342号又は米国特許第5,854,045号に開示されているものなど)が挙げられる。LLDPEは、当技術分野で既知の任意の種類の反応器又は反応器構成を使用して、気相、溶液相、若しくはスラリー重合、又はそれらの任意の組み合わせを介して作製され得る。
【0022】
「MDPE」という用語は、0.926~0.935g/cmの密度を有するポリエチレンを指す。「MDPE」は、典型的には、クロム又はチーグラー・ナッタ触媒を使用して、又は、置換モノ-又はビス-シクロペンタジエニル触媒(典型的にはメタロセンと称される)、幾何拘束触媒、ホスフィンイミン触媒、及び多価アリールオキシエーテル触媒(典型的にはビスフェニルフェノキシと称される)を含むが、これらに限定されないシングルサイト触媒を使用して製造され、典型的には、2.5超の分子量分布(「molecular weight distribution、MWD」)を有する。
【0023】
「HDPE」という用語は、一般にチーグラー・ナッタ触媒、クロム触媒、又は、置換モノ-若しくはビス-シクロペンタジエニル触媒(典型的にはメタロセンと称される)、幾何拘束触媒、ホスフィンイミン触媒、及び多価アリールオキシエーテル触媒(典型的にはビスフェニルフェノキシと称される)を含むが、これらに限定されないシングルサイト触媒を用いて調製される、約0.935g/cm超~最大約0.980g/cmの密度を有するポリエチレンを指す。
【0024】
「ULDPE」という用語は、一般にチーグラー・ナッタ触媒、クロム触媒、又は、置換モノ-若しくはビス-シクロペンタジエニル触媒(典型的にはメタロセンと称される)、幾何拘束触媒、ホスフィンイミン触媒、及び多価アリールオキシエーテル触媒(典型的にはビスフェニルフェノキシと称される)を含むが、これらに限定されないシングルサイト触媒を用いて調製される、0.855~0.912g/cmの密度を有するポリエチレンを指す。ULDPEとしては、ポリエチレン(エチレン系)プラストマー及びポリエチレン(エチレン系)エラストマーが挙げられるが、これらに限定されない。ポリエチレン(エチレン系)エラストマープラストマーは、一般に0.855~0.912g/cmの密度を有する。
【0025】
「ブレンド」、「ポリマーブレンド」、及び同様の用語は、2つ以上のポリマーの組成物を意味する。そのようなブレンドは、混和性であっても、そうでなくてもよい。そのようなブレンドは、相分離していても、していなくてもよい。そのようなブレンドは、透過電子分光法、光散乱、X線散乱、及び当該技術分野で既知の任意の他の方法から決定されるような、1つ以上のドメイン構成を含有しても、そうでなくてもよい。ブレンドは、積層体ではないが、積層体の1つ以上の層が、ブレンドを含有し得る。そのようなブレンドは、乾燥ブレンドとして調製され得るか、その場で(例えば、反応器内で)、溶融ブレンドとして、又は当業者に既知の他の技法を使用して形成され得る。
【0026】
本明細書に記載されるように、ポリエチレン「画分」とは、記載されるポリエチレン組成物の組成全体の一部分を指す。本明細書に記載される特定のポリエチレン組成物は、少なくとも「第1のポリエチレン画分」及び「第2のポリエチレン画分」を含む。いくつかのポリエチレン組成物は、「第3のポリエチレン画分」及び「第4のポリエチレン画分」を含み得る。そのようなポリエチレン組成物中に含まれる様々な画分は、改善されたコモノマー組成分布(iCCD)分析法による溶出プロファイルにおけるその温度範囲によって定量され得る。別段特に明記されていない限り、本明細書で言及されるいずれの溶出プロファイルも、iCCDにより観察された溶出プロファイルである。そのような画分の例は、本明細書により提供される実施例を考慮してよりよく理解されるであろう。本明細書に記載の特定のポリエチレン組成物は、「マルチモーダル(多峰性)」と称することができ、これは、ポリエチレン組成物が、それらの溶出プロファイルに少なくとも2つのピークを含むことを意味する。本明細書に記載の特定のポリエチレン組成物は「二峰性」であり得、これは、2つの主要なピークが存在することを意味する。他は、3つのピークが存在することを意味する「三峰性」として記載され得る。本明細書で使用される場合、「単一ピーク」は、特定の画分が単一ピークのみを含むiCCDを指す。すなわち、いくつかの実施形態では、特定の画分のiCCDは、上向きの傾斜領域に続く下向きの傾斜領域のみを有して単一ピークを形成し得る。
【0027】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語及びそれらの派生語は、あらゆる追加の成分、工程、又は手順の存在を、それらが具体的に開示されているか否かにかかわらず、除外することを意図するものではない。いかなる疑念も避けるために、「含む(comprising)」という用語を使用して特許請求されるすべての組成物は、別段矛盾する記述がない限り、ポリマー性か又は別のものであるかにかかわらず、あらゆる追加の添加剤、アジュバント、又は化合物を含み得る。対照的に、「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、操作性に必須ではないものを除き、あらゆる以降の記述の範囲からあらゆる他の成分、工程、又は手順を除外する。「からなる(consisting of)」という用語は、具体的に描写又は列記されていないあらゆる成分、工程、又は手順を除外する。
【0028】
本発明は、望ましい及び/又は改善された特性を提供するためにフィルムに使用することができるポリエチレン組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明のポリエチレン組成物から形成されたフィルムは、改善されたダート衝撃性能を提供する。
【0029】
一態様では、ポリエチレン組成物は、
(1)改良されたコモノマー組成分布(iCCD)分析法による溶出プロファイルにおいて50℃~85℃の温度範囲に単一ピークを有する第1のポリエチレン画分であって、第1のポリエチレン面積画分が、50~85℃の当該第1のポリエチレン画分の単一ピークの真下の溶出プロファイルにおける面積であり、当該第1のポリエチレン画分における平均Mが、当該iCCD分析法を用いて測定した場合に100,000~225,000g/molである、第1のポリエチレン画分と、
(2)iCCD分析法による当該溶出プロファイルにおいて85℃~100℃の温度範囲に単一ピークを有する第2のポリエチレン画分であって、第2のポリエチレン面積画分が、85℃~100℃の当該第2のポリエチレン画分の当該単一ピークの真下の当該溶出プロファイルにおける面積であり、当該第2のポリエチレン画分における平均Mが、当該iCCD分析法を用いて測定した場合に30,000~60,000g/molである、第2のポリエチレン画分と、
(3)iCCD分析法による当該溶出プロファイルにおいて100℃~120℃の温度範囲に単一ピークを有する第3のポリエチレン画分であって、第3のポリエチレン面積画分が、100℃~120℃の当該第3のポリエチレン画分の当該単一ピークの真下の当該溶出プロファイルにおける面積であり、当該第3のポリエチレン画分における平均Mが、当該iCCD分析法を用いて測定した場合に100,000~225,000g/molである、第3のポリエチレン画分と、
を含み、
当該第1のポリエチレン面積画分が、当該溶出プロファイルの総面積の25~50%を構成し、当該第2のポリエチレン面積画分が、当該溶出プロファイルの総面積の30~50%を構成し、当該第3のポリエチレン面積画分が、当該溶出プロファイルの総面積の15~35%を構成する。
【0030】
いくつかの実施形態では、当該第1のポリエチレン面積画分が、当該溶出プロファイルの総面積の30~45%を構成し、当該第2のポリエチレン面積画分が、当該溶出プロファイルの総面積の35~45%を構成し、当該第3のポリエチレン面積画分が、当該溶出プロファイルの総面積の15~30%を構成する。いくつかの実施形態では、このポリエチレン組成物は、0.940~0.949g/cmの全体密度を有する。いくつかの実施形態では、このポリエチレン組成物は、0.941~0.947g/cmの全体密度を有する。いくつかの実施形態では、このポリエチレン組成物は、0.5~2g/10分のメルトインデックス(I)を有する。いくつかの実施形態では、このポリエチレン組成物は、0.8~1.1g/10分のメルトインデックス(I)を有する。
【0031】
いくつかの実施形態では、このポリエチレン組成物は、組成物の総重量に基づいて、20~5000ppmの核形成剤を更に含み、核形成剤は、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩又は4-[(4-クロロベンゾイル)アミノ]安息香酸ナトリウムを含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、このポリエチレン組成物は、
(a)第1のポリエチレン成分であって、
(1)0.935~0.947g/cmの範囲の密度及び0.1g/10分未満のメルトインデックス(I)を有する、25~37重量パーセントの第1のポリエチレン画分と、
(2)63~75重量パーセントの第2のポリエチレン画分と、を含むポリエチレン成分を含み、
この第1のポリエチレン成分が、13C NMRを使用して測定した場合、1,000個の炭素原子あたり0.10未満の分岐を有し、この第1のポリエチレン成分の密度が、少なくとも0.965g/cmであり、この第1のポリエチレン成分のメルトインデックス(I)が、0.5~10g/10分である、第1のポリエチレン成分と、
(b)第2のポリエチレン成分であって、
(1)改善されたコモノマー組成分布(iCCD)分析法による溶出プロファイルにおいて45℃~87℃の温度範囲に単一ピークを有する第1のポリエチレン画分であって、第1のポリエチレン面積画分が、45~87℃の第1のポリエチレン画分の単一ピークの真下の溶出プロファイルにおける面積である、第1のポリエチレン画分と、
(2)iCCD分析法による溶出プロファイルにおいて95℃~120℃の温度範囲に単一ピークを有する第2のポリエチレン画分であって、第2のポリエチレン面積画分が、95℃~120℃の当該第2のポリエチレン画分の当該単一ピークの真下の溶出プロファイルにおける面積である、第2のポリエチレン画分と、を含み、
この第2のポリエチレン成分は、0.924g/cm~0.936g/cmの密度及び0.25g/10分~2.0g/10分のメルトインデックス(I)を有し、この第2の成分の第2のポリエチレン画分面積が、溶出プロファイルの総面積の少なくとも40%を構成し、第2の成分の第1のポリエチレン画分面積の第2の成分の第2のポリエチレン画分面積に対する比が、0.75~2.5であり、ピーク高さの50パーセントでの第2の成分の第2のポリエチレン画分の単一ピークの幅が、5.0℃未満である、第2のポリエチレン成分と、のブレンドであり、
このポリエチレン組成物は、ポリエチレン組成物の総重量に基づいて、30~60重量パーセントの第1のポリエチレン成分と、40~70重量パーセントの第2のポリエチレン成分と、を含む。第1のポリエチレン成分の様々な実施形態に関する追加の詳細は、以下の「第1のポリエチレン成分」の項に提供される。第2のポリエチレン成分の様々な実施形態に関する追加の詳細は、以下の「第2のポリエチレン成分」の項に提供される。
【0033】
いくつかの実施形態では、このポリエチレン組成物から形成され、3~4ミルの厚さを有する単層フィルムは、少なくとも110g/ミルの正規化ダート衝撃を示す。いくつかの実施形態では、このポリエチレン組成物から形成され、3~4ミルの厚さを有する単層フィルムは、最大200g/ミルの正規化ダート衝撃を示す。
【0034】
本発明はまた、フィルムに関する。一態様において、フィルムは、本明細書に開示される本発明のポリエチレン組成物のいずれかを含む。別の一態様では、本発明は更に、包装などの物品に関する。一態様において、物品は、本明細書に開示される本発明のポリエチレン組成物のいずれかを含む。一態様において、物品は、本明細書に開示される本発明のフィルムのいずれかを含む。
【0035】
別の一態様では、本発明は、包装などの物品に関する。一態様において、物品は、本明細書に開示される本発明の多層フィルムのいずれかを含む。
【0036】
ポリエチレン組成物のiCCD溶出プロファイル
いくつかの実施形態において、本発明のポリエチレン組成物は、改善されたコモノマー組成分布(iCCD)分析法によるそれらの溶出プロファイルによって特徴付けられる。一実施形態では、このポリエチレン組成物は、
(1)改良されたコモノマー組成分布(iCCD)分析法による溶出プロファイルにおいて50℃~85℃の温度範囲に単一ピークを有する第1のポリエチレン画分であって、第1のポリエチレン面積画分が、50~85℃当該の第1のポリエチレン画分の単一ピークの真下の溶出プロファイルにおける面積であり、当該第1のポリエチレン画分における平均Mが、当該iCCD分析法を用いて測定した場合に100,000~225,000g/molである、第1のポリエチレン画分と、
(2)iCCD分析法による溶出プロファイルにおいて85℃~100℃の温度範囲に単一ピークを有する第2のポリエチレン画分であって、第2のポリエチレン面積画分が、85℃~100℃当該の当該第2のポリエチレン画分の当該単一ピークの真下の当該溶出プロファイルにおける面積であり、当該第2のポリエチレン画分における平均Mが、当該iCCD分析法を用いて測定した場合に30,000~60,000g/molである、第2のポリエチレン画分と、
(3)iCCD分析法による当該溶出プロファイルにおいて100℃~120℃の温度範囲に単一ピークを有する第3のポリエチレン画分であって、第3のポリエチレン面積画分が、100℃~120℃の当該第3のポリエチレン画分の当該単一ピークの真下の当該溶出プロファイルにおける面積であり、当該第3のポリエチレン画分における平均Mが、当該iCCD分析法を用いて測定した場合に100,000~225,000g/molである、第3のポリエチレン画分と、
を含み、
当該第1のポリエチレン面積画分が、当該溶出プロファイルの総面積の25~50%を構成し、当該第2のポリエチレン面積画分が、当該溶出プロファイルの総面積の30~50%を構成し、当該第3のポリエチレン面積画分が、当該溶出プロファイルの総面積の15~35%を構成する。
【0037】
記載されるiCCD分布を参照すると、図1は、試料のiCCD分布5を、累積重量分率曲線10とともに概略的に示している。図1は、概して、本明細書において詳細に論じる、第1の画分、第2の画分、第3のピーク画分などの、ポリエチレン組成物のiCCDプロファイルのいくつかの特徴を示す。したがって、図1は、本明細書で提供されるiCCDプロファイルに関連する開示に関して参照として使用され得る。具体的には、第1の画分12、第2の画分16、第3の画分20が示される。第1の画分12はピーク14を有し、第2の画分106はピーク18を有し、第3の画分はピーク22を有する。図1のプロファイルは、実験又は観察に由来するものではないが、代わりに、iCCD溶出プロファイルの特定の特徴を記載するという情報提供目的で提供されることを理解されたい。
【0038】
1つ以上の実施形態において、ポリエチレン組成物の第1のポリエチレン画分は、iCCDによる溶出プロファイルにおいて50℃~85℃の温度範囲に単一ピークを有し得る。1つ以上の実施形態において、第1のポリエチレン画分の単一ピークは、70℃~85℃など、60℃~85℃の温度範囲内にあり得る。第1のポリエチレン画分の重量平均分子量(molecular weight、M)は、iCCD分析法を使用して測定される場合、100,000~225,000g/molである。いくつかの実施形態において、第1のポリエチレン面積画分は、溶出プロファイルの総面積の25~50%を構成する。いくつかの実施形態において、第1のポリエチレン面積画分は、溶出プロファイルの総面積の30~45%を構成する。
【0039】
第1、第2、又は第3のポリエチレン画分におけるピークは、定義された温度境界でのそれぞれのポリエチレン画分における極小値によって形成されない場合があることを理解されたい。つまり、ピークは、ポリエチレン画分のしきい値温度によって形成されたピークではなく、その範囲全体の観点でのピークでなければならない。例えば、単一の谷が後に続く単一ピークがポリエチレン画分に存在する場合(上向きの傾斜に続く下向きの傾斜に続く上向きの傾斜)、そのようなポリエチレン画分には単一ピークのみが存在することになる。
【0040】
1つ以上の実施形態において、ポリエチレン組成物の第2のポリエチレン画分は、iCCDによる溶出プロファイルにおいて85℃~100℃の温度範囲に単一ピークを有し得る。1つ以上の実施形態において、第1のポリエチレン画分の単一ピークは、90℃~100℃の温度範囲内にあり得る。第2のポリエチレン画分の重量平均分子量(M)は、iCCD分析法を使用して測定される場合、30,000~60,000g/molである。いくつかの実施形態において、第2のポリエチレン面積画分は、溶出プロファイルの総面積の30~50%を構成する。いくつかの実施形態において、第2のポリエチレン面積画分は、溶出プロファイルの総面積の35~45%を構成する。
【0041】
1つ以上の実施形態において、ポリエチレン組成物の第3のポリエチレン画分は、iCCDによる溶出プロファイルにおいて100℃~120℃の温度範囲に単一ピークを有し得る。1つ以上の実施形態において、第1のポリエチレン画分の単一ピークは、100℃~110℃の温度範囲内にあり得る。第3のポリエチレン画分の重量平均分子量(M)は、iCCD分析法を使用して測定される場合、100,000~225,000g/molである。いくつかの実施形態において、第3のポリエチレン面積画分は、溶出プロファイルの総面積の15~35%を構成する。いくつかの実施形態において、第3のポリエチレン面積画分は、溶出プロファイルの総面積の15~30%を構成する。
【0042】
本明細書に記載の実施形態では、第1のポリエチレン画分面積は、第1のポリエチレン画分の単一ピークの真下の、50℃~85℃における溶出プロファイル内の面積である。同様に、第2のポリエチレン画分面積は、第2のポリエチレン画分の単一ピークの真下の85℃~100℃の溶出プロファイルにおける面積である。第3のポリエチレン画分面積は、第3のポリエチレン画分の単一ピークの真下の100℃~120℃の溶出プロファイルにおける面積である。第1のポリエチレン画分面積、第2のポリエチレン画分面積、及び第3のポリエチレン画分面積は、それぞれ、一般にポリエチレン組成物中の各ポリマー画分の総相対質量に対応し得る。一般に、iCCDプロファイルにおけるポリエチレン画分面積は、指定された開始温度と終了温度との間のiCCDプロファイルを積分することによって決定することができる。いくつかの実施形態では、第1のポリエチレン面積画分が、溶出プロファイルの総面積の25~50%を構成し、第2のポリエチレン面積画分が、溶出プロファイルの総面積の30~50%を構成し、第3のポリエチレン面積画分が、溶出プロファイルの総面積の15~35%を構成する。いくつかの実施形態では、当該第1のポリエチレン面積画分が、当該溶出プロファイルの総面積の30~45%を構成し、当該第2のポリエチレン面積画分が、前記溶出プロファイルの総面積の35~45%を構成し、当該第3のポリエチレン面積画分が、当該溶出プロファイルの総面積の15~30%を構成する。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態では、改善されたコモノマー組成分布(iCCD)分析法による記載された溶出プロファイル(上述のように、第1のポリエチレン面積画分が50℃~85℃であり、第2のポリエチレン画分面積が85℃~100℃であり、第3のポリエチレン画分面積が100℃~120℃である)を有するポリエチレン組成物は、第1のポリエチレン成分(後述)と第2のポリエチレン成分(後述)とのブレンドから形成することができる。
【0044】
第1のポリエチレン成分
上述したように、本発明のポリエチレン組成物は、特定の特性を有する第1のポリエチレン成分を含む。本発明の実施形態において使用される第1のポリエチレン成分は、(i)0.935~0.947g/cmの範囲の密度及び0.1g/10分未満のメルトインデックス(I)を有する、25~37重量パーセントの第1のポリエチレン画分と、(ii)63~75重量パーセントの第2のポリエチレン画分と、を含み、第1のポリエチレン成分は、13C NMRを使用して測定した場合、1,000個の炭素原子あたり0.10未満の分岐を有し、第1のポリエチレン成分の密度は、少なくとも0.965g/cmであり、第1のポリエチレン成分のメルトインデックス(I)は、0.5~10g/10分である。
【0045】
いくつかの実施形態では、第1のポリエチレン成分は、2.5g/10分以下のメルトインデックス(I)を有する。
【0046】
いくつかの実施形態では、第1のポリエチレン成分は、0.940~0.947g/cmの範囲の密度を有する、25~37重量パーセントの第1のポリエチレン画分と、0.970g/cm以上の密度を有する、63~75重量パーセントの第2のポリエチレン画分と、を含む。
【0047】
第1のポリエチレン成分は、本明細書に記載の2つ以上の実施形態の組み合わせを含んでもよい。
【0048】
一実施形態では、第1のポリエチレン成分は、少なくとも0.965g/cmの密度を有する。いくつかの実施形態では、第1のポリエチレン成分は、少なくとも0.968g/cmの密度を有する。第1のポリエチレン成分は、いくつかの実施形態では、最大0.976g/cmの密度を有する。いくつかの実施形態では、第1のポリエチレン成分は、0.965~0.976g/cm、例えば、0.965~0.970、又は0.967~0.969、又は0.965~0.970g/cmの範囲の密度を有する。例えば、密度は、その下限が0.965又は0.967g/cm、及びその上限が0.970、0.972、0.975、又は0.976g/cmであり得る。
【0049】
第1のポリエチレン成分は、メルトインデックス(190°C/2.16kgでのI又はI2)が、0.5~10g/10分である。例えば、メルトインデックス(190°C/2.16kgでのI又はI2)は、その下限が、0.5、0.7、0.9、1.0、1.1、1.2、1.5、2、3、4、又は5g/10分、及びその上限が、1.5、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、又は10g/10分であり得る。いくつかの実施形態では、第1のポリエチレン成分は、0.5~5g/10分、又は0.5~2.5g/10分、又は0.7~3g/10分、又は1.0~2.0g/10分、又は1.0~1.5g/10分のメルトインデックス(I)を有する。
【0050】
いくつかの実施形態では、第1のポリエチレン成分は、10以上のメルトインデックス比(I10/I)を有する。第1のポリエチレン成分は、いくつかの実施形態では、最大17のメルトインデックス比(I10/I)を有する。いくつかの実施形態では、第1のポリエチレン成分は、10~17のメルトインデックス比(I10/I)を有する。第1のポリエチレン成分は、いくつかの実施形態では、12~17のメルトインデックス比(I10/I)を有する。
【0051】
第1のポリエチレン成分は、低いレベルの分岐を有する。第1のポリエチレン成分は、いくつかの実施形態では、13C NMRを使用して測定した場合、1,000個の炭素原子当たり0.10未満の分岐を有する。いくつかの実施形態では、第1のポリエチレン成分は、13C NMRを使用して測定した場合、1,000個の炭素原子当たり0.07未満の分岐を有する。第1のポリエチレン成分は、いくつかの実施形態では、13C NMRを使用して測定した場合、1,000個の炭素原子当たり0.05未満の分岐を有する。いくつかの実施形態では、第1のポリエチレン成分は、13C NMRを使用して測定した場合、1,000個の炭素原子当たり0.03未満の分岐を有する。
【0052】
いくつかの実施形態では、第1のポリエチレン成分は、低レベルの非ビニル不飽和を有する。いくつかの実施形態では、第1のポリエチレン成分は、H NMRを使用して測定した場合、100万個の炭素原子当たり25未満の非ビニル不飽和を有する。第1のポリエチレン成分は、いくつかの実施形態では、H NMRを用いて測定した場合、100万個の炭素原子当たり20未満の非ビニル不飽和を有する。
【0053】
一実施形態では、第1のポリエチレン成分は、2.0未満、又は1.0~2.0、又は1.2~1.8、又は1.3~1.7のゼロ剪断粘度比(zero-shear viscosity ratio、ZSVR)値を有する。
【0054】
一実施形態では、第1のポリエチレン成分は、8.0~14.0の範囲内の、重量平均分子量と数平均分子量との比(M/M、従来のGPCによって決定)として表される分子量分布を有する。例えば、分子量分布(M/M)は、その下限が、8.0、8.5、9.0、又は9.5、その上限が10.0、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5、又は14.0であり得る。いくつかの実施形態では、M/Mは、10.0~12.0である。
【0055】
一実施形態において、第1のポリエチレン成分は、8,000~20,000g/molの範囲内の数平均分子量(M、従来のGPCによって決定)を有する。例えば、数平均分子量は、その下限が8,000、9,000、10,000、又は11,000g/mol、その上限が12,000、13,000、15,000、又は20,000g/molであり得る。
【0056】
一実施形態において、第1のポリエチレン成分は、100,000~125,000g/molの範囲内の重量平均分子量(M、従来のGPCによって決定)を有する。例えば、重量平均分子量は、その下限が100,000、105,000、又は110,000g/mol、その上限が115,000、120,000、又は124,000g/molであり得る。
【0057】
一実施形態では、第1のポリエチレン成分は、少なくとも350,000g/mol、例えば350,000~600,000g/molなどの範囲内のz平均分子量(M、従来のGPCによって決定)を有する。例えば、z平均分子量は、その下限が、350,000、375,000、400,000、405,000、又は410,000g/mol、その上限が420,000、425,000、450,000、475,000、500,000、550,000、又は600,000g/molであり得る。
【0058】
一実施形態では、第1のポリエチレン成分は、3.0超のM/M比(各々は、従来のGPCによって決定される)を有する。第1のポリエチレン成分は、いくつかの実施形態では、3.5超のM/M比(各々は、従来のGPCによって決定される)を有する。M/Mは、いくつかの実施形態では3.0~4.0、又はいくつかの実施形態では3.5~4.5、又はいくつかの実施形態では3.5~4.0であり得る。
【0059】
一実施形態では、第1のポリエチレン成分は、2.0未満のZSVR、及び3.0超のM/M比(各々は、従来のGPCによって決定される)を有する。別の実施形態では、第1のポリエチレン成分は、2.0未満のZSVR、及び3.5超のM/M比(各々は、従来のGPCによって決定される)を有する。
【0060】
第1のポリエチレン成分は、好ましくは、コモノマーの非存在下で形成されたエチレン系ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、第1のポリエチレン成分は、コモノマーの非存在下で形成された少なくとも99重量%のエチレン系ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、第1のポリエチレン成分は、エチレンモノマーから誘導されたユニットの大部分(>99モル%)を含む少なくとも99重量%のポリマーを含む。
【0061】
第1のポリエチレン成分は、ポリエチレンの2つの画分を含む。
【0062】
第1のポリエチレン画分は、0.935~0.947g/cmの密度を有する。いくつかの実施形態では、第1のポリエチレン画分は、0.940~0.947g/cmの密度を有する。第1のポリエチレン画分は、0.1g/10分未満のメルトインデックス(I)を有する。いくつかの実施形態では、第1のポリエチレン画分は、0.01g/10分以上のメルトインデックス(I)を有する。いくつかの実施形態では、第1のポリエチレン画分は、0.05~0.1g/10分のメルトインデックスを有する。いくつかの実施形態では、第1のポリエチレン画分は、13C NMRを使用して測定した場合、1,000個の炭素原子当たり0.10未満の分岐を有する。
【0063】
いくつかの実施形態では、第2のポリエチレン画分は、0.970g/cm以上の密度を有する。いくつかの実施形態では、第1のポリエチレン画分は、0.940~0.947g/cmの密度を有し、第2のポリエチレン画分は、0.970g/cm以上の密度を有する。いくつかの実施形態では、第2のポリエチレン画分は、少なくとも100g/10分のメルトインデックス(I)を有する。いくつかの実施形態では、第2のポリエチレン画分は、少なくとも100g/10分及び最大10,000g/10分以上のメルトインデックス(I)を有する。第2のポリエチレン画分は、いくつかの実施形態では、少なくとも100g/10分及び最大10,000g/10分のメルトインデックス(I)を有する。第2のポリエチレン画分は、いくつかの実施形態では、少なくとも100g/10分及び最大1,000g/10分のメルトインデックス(I)を有する。
【0064】
いくつかの実施形態では、第2のポリエチレン画分のメルトインデックス(I)の第1のポリエチレン画分のメルトインデックス(I)に対する比率は、少なくとも1,000である。
【0065】
第1のポリエチレン成分は、第1のポリエチレン成分の総重量に基づいて、25~37重量パーセントの第1のポリエチレン画分と、63~75重量パーセントの第2のポリエチレン画分と、を含む。いくつかの実施形態では、第1のポリエチレン成分は、第1のポリエチレン成分の総重量に基づいて、30~37重量パーセントの第1のポリエチレン画分と、63~70重量パーセントの第2のポリエチレン画分と、を含む。
【0066】
以下の議論は、本発明の実施形態で使用するための第1のポリエチレン成分の調製に焦点を合わせている。
【0067】
重合
任意の従来の重合プロセスを用いて、第1のポリエチレン成分を生成し得る。そのような従来の重合プロセスとしては、1つ以上の従来の反応器、例えばループ反応器、等温反応器、撹拌槽反応器、並列式の、連続式のバッチ反応器、及び/又はそれらの任意の組み合わせを使用する、スラリー重合プロセス、溶液重合プロセスが挙げられるが、これらに限定されない。第1のポリエチレン成分は、例えば、1つ以上のループ反応器、等温反応器、及びこれらの組み合わせを使用する、溶液相重合プロセスを介して生成され得る。
【0068】
一般に、溶液相重合プロセスは、1つ以上の等温ループ反応器又は1つ以上の断熱反応器などの1つ以上のよく撹拌される反応器において、115~250℃、例えば、115~200℃の範囲内の温度、かつ300~1,000psi、例えば、400~750psiの範囲内の圧力で起こり得る。いくつかの実施形態では、二重反応器では、第1の反応器の温度は、115~190℃、例えば、115~175℃の範囲であり、第2の反応器の温度は、150~250℃、例えば、130~165℃の範囲である。他の実施形態では、単一の反応器では、反応器の温度は、115~250℃、例えば、115~225℃の範囲内である。
【0069】
溶液相重合プロセスにおける滞留時間は、2~30分、例えば、10~20分の範囲内であり得る。エチレン、溶媒、水素、1つ以上の触媒系、任意選択的に1つ以上の助触媒、及び任意選択的に1つ以上のコモノマーが、1つ以上の反応器に連続的に供給される。例示的な溶媒としては、イソパラフィンが挙げられるが、これに限定されない。例えば、そのような溶媒は、ExxonMobil Chemical Co.(Houston,Texas)からISOPAR Eの名称で市販されている。次いで、第1のポリエチレン成分と溶媒との得られた混合物が、反応器から取り出され、第1のポリエチレン成分が単離される。溶媒は、典型的に、溶媒回収ユニット、すなわち熱交換器及び気液分離器ドラムを介して回収され、次いで、重合系に再循環される。
【0070】
一実施形態では、第1のポリエチレン成分は、二重反応器系、例えば、二重ループ反応器系において、溶液重合によって生成することができ、ここで、エチレンは、1つ以上の触媒系の存在下で重合される。いくつかの実施形態では、エチレンのみが重合される。加えて、1つ以上の助触媒が存在し得る。別の実施形態において、第1のポリエチレン成分は、単一の反応器系、例えば、単一ループ反応器系において、溶液重合によって生成することができ、ここで、エチレンは、2つの触媒系の存在下で重合される。いくつかの実施形態では、エチレンのみが重合される。
【0071】
触媒系
本明細書に記載の第1のポリエチレン成分を生成するために使用することができる触媒系の特定の実施形態をここで説明する。本開示の触媒系は、異なる形態で具現化されてよく、本開示に記載される特定の実施形態に限定されると解釈されるべきではないことを理解されたい。むしろ、実施形態は、本開示が、徹底的かつ完全であり、主題の範囲を当業者に完全に伝えるように提供される。
【0072】
「独立して選択される」という用語は、R、R、R、R、及びRなどのR基が、同一であっても異なってもよいこと(例えば、R、R、R、R、及びRが、全て置換アルキルであるか、又はR及びRが、置換アルキルであり、Rが、アリールであってもよい、など)を示すために本明細書で使用される。単数形の使用には、複数形の使用が含まれ、またその逆も同様である(例えば、ヘキサン溶媒は複数のヘキサンを含む)。命名されたR基は、一般に、当該技術分野においてその名称を有するR基に対応すると認識されている構造を有する。これらの定義は、当業者に既知の定義を、補足し例示することを意図するものであり、排除するものではない。
【0073】
「プロ触媒」という用語は、活性化剤と組み合わせたときに触媒活性を有する化合物を指す。「活性化剤」という用語は、プロ触媒を触媒的に活性な触媒に変換するようにプロ触媒と化学的に反応する化合物を指す。本明細書で使用される場合、「助触媒」及び「活性化剤」という用語は、互換的な用語である。
【0074】
特定の炭素原子を含有する化学基を記載するために使用するとき、「(C~C)」の形態を有する括弧付きの表現は、化学基の非置換形態がx及びyを含めてx個の炭素原子からy個の炭素原子を有することを意味する。例えば、(C~C40)アルキルは、その非置換形態で1~40個の炭素原子を有するアルキル基である。いくつかの実施形態及び一般構造において、ある特定の化学基は、Rなどの1つ以上の置換基によって置換され得る。括弧付きの「(C-C)」を使用して定義される、化学基のR置換バージョンは、任意の基Rの同一性に応じてy個より多い炭素原子を含有し得る。例えば、「Rがフェニル(-C)である厳密に1つの基Rで置換された(C~C40)アルキル」は、7~46個の炭素原子を含有し得る。したがって、一般に、括弧付きの「(C~C)」を使用して定義される化学基が1個以上の炭素原子を含有する置換基Rによって置換されるとき、化学基の炭素原子の最小及び最大合計数は、x及びyの両方に、全ての炭素原子を含有する置換基R由来の炭素原子の合計数を加えることによって、決定される。
【0075】
「置換」という用語は、対応する非置換化合物又は官能基の炭素原子又はヘテロ原子に結合した少なくとも1個の水素原子(-H)が、置換基(例えばR)によって置き換えられることを意味する。「過置換」という用語は、対応する非置換化合物又は官能基の炭素原子又はヘテロ原子に結合した全ての水素原子(H)が置換基(例えばR)によって置き換えられることを意味する。「多置換」という用語は、対応する非置換化合物又は官能基の炭素原子又はヘテロ原子に結合した少なくとも2個の、ただし全部よりは少ない水素原子が、置換基によって置き換えられることを意味する。
【0076】
「-H」という用語は、別の原子に共有結合している水素又は水素ラジカルを意味する。「水素」及び「-H」は、互換的であり、明記されていない限り、同じものを意味する。
【0077】
「(C~C40)ヒドロカルビル」という用語は、1~40個の炭素原子の炭化水素ラジカルを意味し、「(C~C40)ヒドロカルビレン」という用語は、1~40個の炭素原子の炭化水素ジラジカルを意味し、各炭化水素ラジカル及び各炭化水素ジラジカルは、芳香族又は非芳香族、飽和又は不飽和、直鎖又は分岐鎖、環式(単環式及び多環式、縮合及び非縮合多環式を含み、二環式を含む、3個以上の炭素原子)又は非環式であり、非置換であるか、若しくは1つ以上のRによって置換されている。
【0078】
本開示において、(C~C40)ヒドロカルビルは、非置換若しくは置換(C~C40)アルキル、(C~C40)シクロアルキル、(C~C20)シクロアルキル-(C~C20)アルキレン、(C~C40)アリール、又は(C~C20)アリール-(C~C20)アルキレンであり得る。いくつかの実施形態において、上記の(C~C40)ヒドロカルビル基の各々は、最大20個の炭素原子を有し(すなわち、(C~C20)ヒドロカルビル)、他の実施形態では、最大12個の炭素原子を有する。
【0079】
「(C~C40)アルキル」及び「(C~C18)アルキル」という用語は、それぞれ、1~40個の炭素原子又は1~18個の炭素原子の飽和直鎖又は分岐炭化水素基を意味し、ラジカルは、非置換であるか又は1つ以上のRSにより置換されている。非置換(C~C40)アルキルの例は、非置換(C~C20)アルキル、非置換(C~C10)アルキル、非置換(C~C)アルキル、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2-ブチル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、1-ペンチル、1-ヘキシル、1-ヘプチル、1-ノニル、及び1-デシルである。置換(C~C40)アルキルの例は、置換(C~C20)アルキル、置換(C~C10)アルキル、トリフルオロメチル、及び[C45]アルキルである。「[C45]アルキル」(角括弧付き)という用語は、置換基を含めてラジカル中に最大45個の炭素原子が存在することを意味し、例えば、それぞれ、(C~C)アルキルである1つのRによって置換された(C27~C40)アルキルである。各(C~C)アルキルは、メチル、トリフルオロメチル、エチル、1-プロピル、1-メチルエチル、又は1,1-ジメチルエチルであり得る。
【0080】
「(C~C40)アリール」という用語は、6~40個の炭素原子、そのうち少なくとも6~14個の炭素原子は芳香環炭素原子である、非置換又は(1つ以上のRによって)置換された単環式、二環式、又は三環式芳香族炭化水素ラジカルを意味し、単環式、二環式、又は三環式ラジカルは、それぞれ1個、2個、又3個の環を含み、1個の環は芳香族であり、2個又は3個の環は独立して縮合又は非縮合であり、2個又は3個の環のうちの少なくとも1つは芳香族である。置換(C~C40)アリールの例は、非置換(C~C20)アリール非置換(C~C18)アリール、2-(C~C)アルキル-フェニル、2,4-ビス(C~C)アルキル-フェニル、フェニル、フルオレニル、テトラヒドロフルオレニル、インダセニル、ヘキサヒドロインダセニル、インデニル、ジヒドロインデニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、及びフェナントレンである。置換(C~C40)アリールの例は、置換(C~C20)アリール、置換(C-C18)アリール、2,4-ビス[(C20)アルキル]-フェニル、ポリフルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、及びフルオレン-9-オン-1-イルである。
【0081】
「(C~C40)シクロアルキル」という用語は、非置換であるか、又は1つ以上のRで置換されている、3~40個の炭素原子の飽和環状炭化水素ラジカルを意味する。他のシクロアルキル基(例えば、(C~C)シクロアルキル)は、x~y個の炭素原子を有し、かつ非置換であるか、又は1つ以上のRで置換されているものであるかのいずれかとして、同様の様式で定義される。非置換(C~C40)シクロアルキルの例は、非置換(C~C20)シクロアルキル、非置換(C~C10)シクロアルキル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、及びシクロデシルである。置換(C~C40)シクロアルキルの例は、置換(C~C20)シクロアルキル、置換(C~C10)シクロアルキル、シクロペンタノン-2-イル、及び1-フルオロシクロヘキシルである。
【0082】
(C~C40)ヒドロカルビレンの例としては、非置換又は置換(C~C40)アリーレン、(C~C40)シクロアルキレン、及び(C~C40)アルキレン(例えば、(C~C20)アルキレン)が挙げられる。いくつかの実施形態では、ジラジカルは、同じ炭素原子上にあるか(例えば、-CH-)、又は隣接する炭素原子上にあるか(すなわち、1,2-ジラジカル)、又は1個、2個、若しくは2個よりも多い介在炭素原子によって離間されている(例えば、それぞれ、1,3-ジラジカル、1,4-ジラジカル等)。一部のジラジカルは、α,ω-ジラジカルを含む。α,ω-ジラジカルは、ラジカル炭素間に最大の炭素骨格間隔を有するジラジカルである。(C~C20)アルキレンα,ω-ジラジカルのいくつかの例としては、エタン-1,2-ジイル(すなわち、-CHCH-)、プロパン-1,3-ジイル(すなわち、-CHCHCH-)、2-メチルプロパン-1,3-ジイル(すなわち、-CHCH(CH)CH-)が挙げられる。(C~C50)アリーレンα,ω-ジラジカルのいくつかの例としては、フェニル-1,4-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、又はナフタレン-3,7-ジイルが挙げられる。
【0083】
「(C~C40)アルキレン」という用語は、非置換であるか、又は1つ以上のRで置換されている、1~40個の炭素原子の飽和直鎖又は分岐鎖のジラジカル(すなわち、ラジカルが環原子上にない)を意味する。非置換(C~C50)アルキレンの例は、非置換-CHCH-、-(CH-、-(CH-、-(CH-、-(CH-、-(CH-、-(CH-、-CHC*HCH、及び-(CHC*(H)CHを含む非置換(C~C20)アルキレンであり、式中、「C*」は、二級又は三級アルキルラジカルを形成するために水素原子が除去される炭素原子を表す。置換(C~C50)アルキレンの例は、置換(C~C20)アルキレン、-CF-、-C(O)-、及び-(CH14C(CH(CH-(すなわち、6,6-ジメチル置換ノルマル-1,20-エイコシレン)である。前述のように、2つのRは一緒になって(C~C18)アルキレンを形成することができるので、置換(C~C50)アルキレンの例としてはまた、1,2-ビス(メチレン)シクロペンタン、1,2-ビス(メチレン)シクロヘキサン、2,3-ビス(メチレン)-7,7-ジメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、及び2,3-ビス(メチレン)ビシクロ[2.2.2]オクタンも挙げられる。
【0084】
「(C~C40)シクロアルキレン」という用語は、非置換であるか、又は1つ以上のRによって置換されている、3~40個の炭素原子の環式ジラジカル(すなわち、ラジカルは、環原子上にある)を意味する。
【0085】
「ヘテロ原子」という用語は、水素又は炭素以外の原子を指す。ヘテロ原子の例としては、O、S、S(O)、S(O)、Si(R、P(R)、N(R)、-N=C(R、-Ge(R-、又は-Si(R)-が挙げられ、式中、各R、各R、及び各Rは、非置換(C~C18)ヒドロカルビル又は-Hである。「ヘテロ炭化水素」という用語は、1つ以上の炭素原子がヘテロ原子で置換されている分子又は分子骨格を指す。「(C~C40)ヘテロヒドロカルビル」という用語は、1~40個の炭素原子のヘテロ炭化水素ラジカルを意味し、「(C~C40)ヘテロヒドロカルビレン」という用語は、1~40個の炭素原子のヘテロ炭化水素ジラジカルを意味し、各ヘテロ炭化水素が1個以上のヘテロ原子を有する。ヘテロヒドロカルビルのラジカルは、炭素原子又はヘテロ原子上に存在し、ヘテロヒドロカルビルのジラジカルは、(1)1個又は2個の炭素原子上、(2)1個又は2個のヘテロ原子上、又は(3)1つの炭素原子及び1つのヘテロ原子上、に存在し得る。各(C~C50)ヘテロヒドロカルビル及び(C~C50)ヘテロヒドロカルビレンは、非置換であってもよく、又は(1つ以上のRによって)置換されてもよく、芳香族又は非芳香族、飽和又は不飽和、直鎖又は分岐鎖、環式(単環式及び多環式、縮合及び非縮合多環式を含む)又は非環式であってよい。
【0086】
(C~C40)ヘテロヒドロカルビルは、非置換若しくは置換(C~C40)ヘテロアルキル、(C~C40)ヒドロカルビル-O-、(C~C40)ヒドロカルビル-S-、(C~C40)ヒドロカルビル-S(O)-、(C~C40)ヒドロカルビル-S(O)-、(C~C40)ヒドロカルビル-Si(R-、(C~C40)ヒドロカルビル-N(R)-、(C~C40)ヒドロカルビル-P(R)-、(C~C40)ヘテロシクロアルキル、(C~C19)ヘテロシクロアルキル-(C~C20)アルキレン、(C~C20)シクロアルキル-(C~C19)ヘテロアルキレン、(C~C19)ヘテロシクロアルキル-(C~C20)ヘテロアルキレン、(C~C40)ヘテロアリール、(C~C19)ヘテロアリール-(C~C20)アルキレン、(C~C20)アリール-(C~C19)ヘテロアルキレン、又は(C~C19)ヘテロアリール-(C~C20)ヘテロアルキレンであってもよい。
【0087】
「(C~C40)ヘテロアリール」という用語は、合計4~40個の炭素原子及び1~10個のヘテロ原子の非置換又は置換(1つ以上のRによる)単環式、二環式、又は三環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルを意味し、単環式、二環式、又は三環式ラジカルは、それぞれ、1個、2個、又は3個の環を含み、2個又は3個の環は、独立して縮合又は非縮合であり、2個又は3個の環のうちの少なくとも1つは、ヘテロ芳香族である。他のヘテロアリール基(例えば、概して(C-C)ヘテロアリール、例えば(C-C12)ヘテロアリール)も同様に、x~y個の炭素原子(例えば、4~12個の炭素原子)を有し、かつ非置換であるか又は1個若しくは1個超のRによって置換されていると定義される。単環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、5員環又は6員環である。5員環は、5マイナスh個の炭素原子を有し、hは、ヘテロ原子の数であり、1、2、又は3であってよく、各ヘテロ原子は、O、S、N、又はPであり得る。5員環ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例は、ピロール-1-イル、ピロール-2-イル、フラン-3-イル、チオフェン-2-イル、ピラゾール-1-イル、イソオキサゾール-2-イル、イソチアゾール-5-イル、イミダゾール-2-イル、オキサゾール-4-イル、チアゾール-2-イル、1,2,4-トリアゾール-1-イル、1,3,4-オキサジアゾール-2-イル、1,3,4-チアジアゾール-2-イル、テトラゾール-1-イル、テトラゾール-2-イル、及びテトラゾール-5-イルである。6員環は、6マイナスh個の炭素原子を有し、hは、ヘテロ原子の数であり、1又は2であってよく、ヘテロ原子は、N又はPであり得る。6員環ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例は、ピリジン-2-イル、ピリミジン-2-イル、及びピラジン-2-イルである。二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、縮合5,6-又は6,6-環系であり得る。縮合5,6-環系二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例は、インドール-1-イル、及びベンズイミダゾール-1-イルである。縮合6,6-環系二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例は、キノリン-2-イル、及びイソキノリン-1-イルである。三環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、縮合5,6,5-、5,6,6-、6,5,6-、又は6,6,6-環系であり得る。縮合5,6,5-環系の例は、1,7-ジヒドロピロロ[3,2-f]インドール-1-イルである。縮合5,6,6-環系の例は、1H-ベンゾ[f]インドール-1-イルである。縮合6,5,6-環系の例は、9H-カルバゾール-9-イルである。縮合6,5,6-環系の例は、9H-カルバゾール-9-イルである。縮合6,6,6-環系の例は、アクリジン-9-イルである。
【0088】
前述のヘテロアルキルは、(C~C50)炭素原子又はそれより少ない炭素原子とヘテロ原子のうちの1個以上とを含有する飽和直鎖又は分岐鎖ラジカルであってもよい。同様に、ヘテロアルキレンは、1~50個の炭素原子及び1つ又は2つ以上のヘテロ原子を含有する飽和直鎖又は分岐鎖ジラジカルであってもよい。上に定義されたようなヘテロ原子は、Si(R、Ge(R、Si(R、Ge(R、P(R、P(R)、N(R、N(R)、N、O、OR、S、SR、S(O)、及びS(O)を含んでもよく、ヘテロアルキル基及びヘテロアルキレン基の各々は、非置換であるか、又は1つ以上のRによって置換される。
【0089】
非置換(C~C40)ヘテロシクロアルキルの例は、非置換(C~C20)ヘテロシクロアルキル、非置換(C~C10)ヘテロシクロアルキル、アジリジン-l-イル、オキセタン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、ピロリジン-l-イル、テトラヒドロチオフェン-S,S-ジオキシド-2-イル、モルホリン-4-イル、1,4-ジオキサン-2-イル、ヘキサヒドロアゼピン-4-イル、3-オキサ-シクロオクチル、5-チオ-シクロノニル、及び2-アザ-シクロデシルである。
【0090】
「ハロゲン原子」又は「ハロゲン」という用語は、フッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)、又はヨウ素原子(I)のラジカルを意味する。「ハロゲン化物」という用語は、フッ化物(F-)、塩化物(Cl-)、臭化物(Br-)、又はヨウ化物(I-)といったハロゲン原子のアニオン形態を意味する。
【0091】
「飽和」という用語は、炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、並びに(ヘテロ原子含有基における)炭素-窒素、炭素-リン、及び炭素-ケイ素二重結合を欠くことを意味する。飽和化学基が1つ以上の置換基Rによって置換されている場合、1つ以上の二重及び/又は三重結合は、任意選択的に、置換基R中に存在しても、しなくてもよい。「不飽和」という用語は、1つ以上の炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、並びに(ヘテロ原子含有基における)炭素-窒素、炭素-リン、及び炭素-ケイ素二重結合を含有すること、ただし、存在するとしたら置換基R中に存在し得るか、又は存在する場合、(ヘテロ)芳香族環中に存在し得るような任意の二重結合は含まないことを意味する。
【0092】
いくつかの実施形態によれば、第1のポリエチレン成分を生成するための触媒系は、式(I)による金属-配位子錯体を含む。
【化1】
【0093】
式(I)において、Mは、チタン、ジルコニウム、又はハフニウムから選択される金属であり、金属は、+2、+3、又は+4の形式酸化状態にあり、nは、0、1、又は2であり、nが1である場合、Xは、単座配位子又は二座配位子であり、nが2である場合、各Xは単座配位子であり、同じであるか又は異なっており、金属-配位子錯体が、全体的に電荷中性であり、各Zは、独立して、-O-、-S-、-N(R)-、又は-P(R)-から選択され、Lは、(C~C40)ヒドロカルビレン又は(C~C40)ヘテロヒドロカルビレンであり、(C~C40)ヒドロカルビレンは、式(I)中の2つのZ基を連結する1個の炭素原子~10個の炭素原子のリンカー骨格を含む部分(これにLが結合している)を有するか、又は(C~C40)ヘテロヒドロカルビレンは、式(I)中の2つのZ基を連結する1個の原子~10個の原子のリンカー骨格を含む部分を有し、(C~C40)ヘテロヒドロカルビレンの1個の原子~10個の原子のリンカー骨格の1~10個の原子の各々は、独立して、炭素原子又はヘテロ原子であり、各ヘテロ原子は、独立して、O、S、S(O)、S(O)、Si(R、Ge(R、P(R)、又はN(R)であり、独立して、各Rは、(C~C30)ヒドロカルビル又は(C~C30)ヘテロヒドロカルビルであり、R及びRは、独立して、-H、(C~C40)ヒドロカルビル、(C~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、RS(O)-、RS(O)-、(RC=N-、RC(O)O-、ROC(O)-、RC(O)N(R)-、(RNC(O)-、ハロゲン、及び式(II)、式(III)、又は式(IV)を有するラジカルからなる群から選択される。
【化2】
【0094】
式(II)、(III)、及び(IV)中、R31~35、R41~48、又はR51~59の各々は、独立して、(C~C40)ヒドロカルビル、(C~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-N=CHR、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、RS(O)-、RS(O)-、(RC=N-、RC(O)O-、ROC(O)-、RC(O)N(R)-、(RNC(O)-、ハロゲン、又は-Hから選択されるが、ただし、R又はRのうちの少なくとも一方が、式(II)、式(III)、又は式(IV)を有するラジカルであることを条件とする。
【0095】
式(I)中、R2~4、R5~7、及びR9~16の各々は、独立して、(C~C40)ヒドロカルビル、(C~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-N=CHR、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、RS(O)-、RS(O)-、(RC=N-、RC(O)O-、ROC(O)-、RC(O)N(R)-、(RNC(O)-、ハロゲン、及び-Hから選択される。
【0096】
いくつかの実施形態では、第1のポリエチレン成分は、第1の反応器内で式(I)による第1の触媒、及び第2の反応器内で式(I)による異なる触媒を使用して形成される。
【0097】
二重ループ反応器が使用される1つの例示的な実施形態では、第1のループで使用されるプロ触媒は、ジルコニウム,[[2,2’’’-[[ビス[1-メチルエチル]ゲルミレン]ビス(メチレンオキシ-κO)]ビス[3’’,5,5’’-トリス(1,1-ジメチルエチル)-5’-オクチル[1,1’:3’,1’’-ターフェニル]-2’-オラト-κO]](2-)]ジメチル-であり、これは、化学式C86128GeOZr、及び以下の構造(V)を有する。
【化3】
【0098】
このような実施形態では、第2のループに使用されるプロ触媒は、ジルコニウム、[[2,2’’’-[1,3-プロパンジイルビス(オキシ-κO)]ビス[3-[2,7-ビス(1,1-ジメチルエチル)-9H-カルバゾール-9-イル]]-5’-(ジメチルオクチルシリル)-3’-メチル-5-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)[1,1]-ビフェニル]-2-オラト-κO]](2-)]ジメチルであり、化学式C107154SiZr及び以下の構造を有する。
【化4】
【0099】
他の実施形態では、第2のループに使用されるプロ触媒は、ハフニウム、[[2,2’’’-[1,3-プロパンジイルビス(オキシ-κO)]ビス[3-[2,7-ビス(1,1-ジメチルエチル)-9H-カルバゾール-9-イル]]-5’-(ジメチルオクチルシリル)-3’-メチル-5-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)[1,1]-ビフェニル]-2-オラト-κO]](2-)]ジメチルであり、化学式C107154SiHf及び以下の構造を有する。
【化5】
【0100】
助触媒成分
式(I)の金属-配位子錯体を含む触媒系は、オレフィン重合反応の金属系触媒を活性化するための当該技術分野で既知の任意の技術によって触媒的に活性化され得る。例えば、式(I)の金属-配位子錯体を含む系は、錯体を活性化助触媒と接触させるか、又は錯体を活性化助触媒と組み合わせることによって、触媒的に活性化され得る。本明細書で使用するのに好適な活性化助触媒としては、アルキルアルミニウム、ポリマー又はオリゴマーアルモキサン(アルミノキサンとしても知られている)、中性ルイス酸、及び非ポリマー、非配位性、イオン形成化合物(酸化条件下でのそのような化合物の使用を含む)が挙げられる。好適な活性化技法は、バルク電気分解である。前述の活性化助触媒及び技法のうちの1つ以上の組み合わせもまた企図される。「アルキルアルミニウム」という用語は、モノアルキルアルミニウムジヒドリド若しくはモノアルキルアルミニウムジハライド、ジアルキルアルミニウムヒドリド若しくはジアルキルアルミニウムハライド、又はトリアルキルアルミニウムを意味する。ポリマー又はオリゴマーのアルモキサンの例としては、メチルアルモキサン、トリイソブチルアルミニウム変性メチルアルモキサン、及びイソブチルアルモキサンが挙げられる。
【0101】
ルイス酸活性化剤(助触媒)は本明細書に記載されるように、1~3個の(C~C20)ヒドロカルビル置換基を含有する第13族金属化合物を含む。一実施形態では、第13族金属化合物は、トリ((C~C20)ヒドロカルビル)置換アルミニウム又はトリ((C~C20)-ヒドロカルビル)-ボロン化合物である。他の実施形態では、第13族金属化合物は、トリ(ヒドロカルビル)-置換アルミニウム、トリ((C-C20)ヒドロカルビル)-ホウ素化合物、トリ((C-C10)アルキル)アルミニウム、トリ((C-C18)アリール)ホウ素化合物、及びそれらのハロゲン化(過ハロゲン化を含む)誘導体である。更なる実施形態では、第13族金属化合物は、トリス(フルオロ置換フェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランである。いくつかの実施形態では、活性化助触媒は、トリス((C-C20)ヒドロカルビルボレート(例えばトリチルテトラフルオロボレート)又はトリ((C-C20)ヒドロカルビル)アンモニウムテトラ((C-C20)ヒドロカルビル)ボラン(例えば、ビス(オクタデシル)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラン)である。本明細書で使用されるとき、「アンモニウム」という用語は、((C-C20)ヒドロカルビル)、((C-C20)ヒドロカルビル)N(H)、((C-C20)ヒドロカルビル)N(H) 、(C-C20)ヒドロカルビルN(H) 、又はN(H) である窒素カチオンを意味し、各(C-C20)ヒドロカルビルは、2つ以上存在する場合、同一でも異なっていてもよい。
【0102】
中性ルイス酸活性化剤(助触媒)の組み合わせとしては、トリ((C~C)アルキル)アルミニウムとハロゲン化トリ((C~C18)アリール)ボロン化合物、特にトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランとの組み合わせを含む混合物が挙げられる。他の実施形態は、そのような中性ルイス酸混合物と、ポリマー又はオリゴマーのアルモキサンとの組み合わせ、及び単一の中性ルイス酸、特にトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランと、ポリマー又はオリゴマーのアルモキサンとの組み合わせである。(金属-配位子錯体):(トリス(ペンタフルオロ-フェニルボラン):(アルモキサン)[例えば、4族金属-配位子錯体):(トリス(ペンタフルオロ-フェニルボラン):(アルモキサン)]のモル数の比率は、1:1:1~1:10:30であり、他の実施形態では、1:1:1.5~1:5:10である。
【0103】
式(I)の金属-配位子錯体を含む触媒系を活性化して、1つ以上の助触媒、例えば、カチオン形成助触媒、強ルイス酸、又はそれらの組み合わせとの組み合わせによって活性触媒組成物を形成し得る。好適な活性化助触媒としては、ポリマー又はオリゴマーのアルミノキサン、特にメチルアルミノキサン、並びに不活性、相溶性、非配位性、イオン形成性の化合物が挙げられる。好適な助触媒の例としては、変性メチルアルミノキサン(modified methyl aluminoxane、MMAO)、ビス(水素化タローアルキル)メチル、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(1)アミン、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0104】
いくつかの実施形態では、前述の活性化助触媒のうちの1つ以上は、互いに組み合わせて使用される。特に好ましい組み合わせは、トリ((C~C)ヒドロカルビル)アルミニウム、トリ((C~C)ヒドロカルビル)ボラン、又はホウ酸アンモニウムとオリゴマー若しくはポリマーアルモキサン化合物との混合物である。式(I)の1つ以上の金属-配位子錯体の総モル数と、活性化助触媒のうちの1つ以上の総モル数との比は、1:10,000~100:1である。いくつかの実施形態では、この比は、少なくとも1:5000であり、いくつかの他の実施形態では、少なくとも1:1000、及び10:1以下であり、いくつかの他の実施形態では、1:1以下である。アルモキサンを単独で活性化助触媒として使用する場合、用いられるアルモキサンのモル数は、式(I)の金属-配位子錯体のモル数の少なくとも100倍であることが好ましい。トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを単独で活性化助触媒として使用する場合、いくつかの他の実施形態では、式(I)の1つ以上の金属-配位子錯体の総モル数に対して用いられるトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランのモル数は、0.5:1~10:1、1:1~6:1、又は1:1~5:1である。残りの活性化助触媒は、一般に、式(I)の1つ以上の金属-配位子錯体の総モル量におおよそ等しいモル量で用いられる。
【0105】
核形成剤
いくつかの実施形態では、ポリエチレン組成物は、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩又は4-[(4-クロロベンゾイル)アミノ]安息香酸ナトリウムである核形成剤を更に含み得る。例えば、第1のポリエチレン成分及び核形成剤を一緒に混合してから、第2のポリエチレン成分と混合してポリエチレン組成物を形成してもよい。そのような核形成剤は、適切な量で、本明細書に記載される第1のポリエチレン成分と組み合わせて使用される場合、ポリエチレンフィルムに使用される場合の結晶及び結晶サイズのより均質な分布、より均一な溶融挙動、並びに、得られるフィルムにおける1つ以上の他の改善(例えば、剛性、バリア、及び/又は光学的性質)を提供すると考えられる。
【0106】
いくつかの実施形態では、核形成剤は、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩である。いくつかの実施形態では、核形成剤は、4-[(4-クロロベンゾイル)アミノ]安息香酸ナトリウムである。いくつかの実施形態では、そのようなポリエチレン系組成物は、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩及び4-[(4-クロロベンゾイル)アミノ]安息香酸ナトリウムの両方を含む。
【0107】
1,2-シクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩又は4-[(4-クロロベンゾイル)アミノ]安息香酸ナトリウムのような核形成剤は、不均一な核形成剤である。不均一な核形成剤の量及び種類は、所望の性能を提供するのに重要である。いくつかの実施形態では、ポリエチレン組成物は、本明細書に記載される第1のポリエチレン成分及び第2のポリエチレン成分のバランスをとった上で、ポリエチレン組成物の総重量に基づいて、20~5000ppmの不均一な核形成剤を、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩又は4-[(4-クロロベンゾイル)アミノ]安息香酸ナトリウムの形で含む。いくつかの実施形態では、ポリエチレン組成物は、本明細書に記載される第1のポリエチレン成分及び第2のポリエチレン成分のバランスをとった上で、ポリエチレン組成物の総重量に基づいて、20~2000ppmの1,2-シクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩又は4-[(4-クロロベンゾイル)アミノ]安息香酸ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、ポリエチレン組成物は、本明細書に記載される第1のポリエチレン成分及び第2のポリエチレン成分のバランスをとった上で、ポリエチレン組成物の総重量に基づいて、500~2000ppmの1,2-シクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩又は4-[(4-クロロベンゾイル)アミノ]安息香酸ナトリウムを含む。
【0108】
いくつかの実施形態では、不均一な核形成剤は、ステアリン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、及びそれらの混合物などの脂肪酸金属塩とともに提供され得る。ステアリン酸亜鉛が商業的にどのように調製されるかに基づいて、市販のステアリン酸は、しばしばかなりの量のパルミチン酸を含むため、いくらかのパルミチン酸亜鉛も存在する可能性がある。いくつかのそのような実施形態では、ポリエチレン組成物は、ポリエチレン組成物の総重量に基づいて、45~1000ppmの、ステアリン酸亜鉛及びパルミチン酸亜鉛のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、ポリエチレン組成物は、ポリエチレン組成物の総重量に基づいて、50~700ppmのステアリン酸亜鉛及び/又はパルミチン酸亜鉛を含む。いくつかの実施形態では、ポリエチレン組成物は、ポリエチレン組成物の総重量に基づいて、85~600ppmのステアリン酸亜鉛及び/又はパルミチン酸亜鉛を含む。
【0109】
本発明の実施形態で使用することができる1,2-シクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩の非限定的な一例は、Milliken Chemical(Spartanburg,South Carolin)製のHyperform HPN-20Eである。Hyperform HPN-20Eは、60~70重量パーセントの1,2-シクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩及び30~40重量パーセントのステアリン酸亜鉛/パルミチン酸亜鉛を含む。いくつかの実施形態では、ポリエチレン組成物は、ポリエチレン組成物の総重量に基づいて、20~5000ppmのHyperform HPN-20Eを含む。ポリエチレン組成物は、いくつかの実施形態では、ポリエチレン組成物の総重量に基づいて、20~2000ppmのHyperform HPN-20Eを含む。
【0110】
本発明の実施形態で使用することができる4-[(4-クロロベンゾイル)アミノ]安息香酸ナトリウムの非限定的な一例は、Milliken Chemical(Spartanburg,South Carolina)製のHyperform HPN 210Mである。
【0111】
いくつかの実施形態では、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩又は4-[(4-クロロベンゾイル)アミノ]安息香酸ナトリウム(及び脂肪酸金属塩(例えば、ステアリン酸亜鉛及び/又はパルミチン酸亜鉛)も含まれる場合)は、本明細書に記載される第1のポリエチレン成分と組み合わせる前にそれを担体樹脂とブレンドすることによってマスターバッチとして提供することができる。いくつかのそのような実施形態では、担体樹脂は、1~12g/10分のメルトインデックス(I)を有するポリエチレンである。1,2-シクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩及びステアリン酸亜鉛/パルミチン酸亜鉛がマスターバッチとして提供されるいくつかの実施形態では、マスターバッチは、マスターバッチの総重量に基づいて、2~4重量パーセントの1,2-シクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩及びステアリン酸亜鉛/パルミチン酸亜鉛を含む。一実施形態では、担体樹脂は、0.965の密度及び8~9g/10分のメルトインデックス(I)を有する、狭い分子量分布の高密度ポリエチレンホモポリマーである。いくつかの実施形態では、マスターバッチは、他の添加剤も含むことができる。含まれる添加剤の総量に応じて、マスターバッチは、マスターバッチの総重量に基づいて、85~98重量パーセントの担体樹脂を含むことができる。
【0112】
本発明のいくつかの実施形態で使用することができる他の核形成剤は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2015/0087758号、同第2015/0087759号及び同第2015/0086736号に開示されているものを含む。いくつかの実施形態では、ポリエチレン組成物は、ポリエチレン組成物の総重量に基づいて、20~5000ppmの上記のような核形成剤を含む。ポリエチレン組成物は、いくつかの実施形態では、ポリエチレン組成物の総重量に基づいて、20~2000ppmの上記のような核形成剤を含む。
【0113】
第2のポリエチレン成分
上述したように、本発明のポリエチレン組成物は更に、特定の特性を有する第2のポリエチレン成分を含む。本発明の実施形態において使用される第2のポリエチレン成分は、(1)改善されたコモノマー組成分布(iCCD)分析法による溶出プロファイルにおいて45℃~87℃の温度範囲に単一ピークを有する第1のポリエチレン画分であって、第1のポリエチレン面積画分が、45~87℃の第1のポリエチレン画分の単一ピークの真下の溶出プロファイルにおける面積である、第1のポリエチレン画分と、(2)iCCD分析法による溶出プロファイルにおいて95℃~120℃の温度範囲に単一ピークを有する第2のポリエチレン画分であって、第2のポリエチレン面積画分が、95℃~120℃の第2のポリエチレン画分の該単一ピークの真下の溶出プロファイルにおける面積である、第2のポリエチレン画分と、を含む。第2のポリエチレン成分は、0.924g/cm~0.936g/cmの密度及び0.25g/10分~2.0g/10分のメルトインデックス(I)を有し、第2のポリエチレン画分面積が、溶出プロファイルの総面積の少なくとも40%を構成し、第1のポリエチレン画分面積の第2のポリエチレン画分面積に対する比が、0.75~2.5であり、ピーク高さの50パーセントでの第2のポリエチレン画分の単一ピークの幅が、5.0℃未満である。
【0114】
1つ以上の実施形態において、第2のポリエチレン成分は、0.924g/cm~0.936g/cmの密度を有し得る。例えば、本開示の第2のポリエチレン成分の実施形態は、0.924g/cm~0.931g/cm、0.924g/cm~0.928g/cm、0.927g/cm~0.931g/cm、又は0.929g/cm~0.933g/cmの密度を有し得る。追加の実施形態によれば、第2のポリエチレン成分は、0.924~0.928、0.928g/cm~0.932g/cm、0.932g/cm~0.936g/cm、又はこれらの範囲の任意の組み合わせの密度を有し得る。
【0115】
1つ以上の実施形態において、第2のポリエチレン成分は、0.5g/10分~1.2g/10分など、0.25g/10分~2.0g/10分のメルトインデックス(I)を有し得る。例えば、1つ以上の実施形態では、第2のポリエチレン成分は、0.25g/10分~0.5g/10分、0.5g/10分~0.7g/10分、0.7g/10分~0.9g/10分、0.59g/10分~1.1g/10分、1.1g/10分~1.3g/10分、1.3g/10分~1.5g/10分、1.5g/10分~1.7g/10分、1.7g/10分~2.0g/10分、又はこれらの範囲の任意の組み合わせのメルトインデックス(I)を有し得る。追加の実施形態によれば、第2のポリエチレン成分は、0.65~1.05のメルトインデックス(I)を有し得る。
【0116】
実施形態によれば、第2のポリエチレン成分は、2.5~8.0の範囲内の分子量分布(重量平均分子量の数平均分子量に対する比(Mw/Mn)として表される)を有し得る。例えば、第2のポリエチレン成分は、2.5~3.0、3.0~3.5、3.5~4.0、4.0~4.5、4.5~5.0、5.0~5.5、5.5~6.0、6.0~6.5、6.5~7.0、7.0~7.5、7.5~8.0、又はこれらの範囲の任意の組み合わせの分子量分布を有し得る。追加の実施形態において、第2のポリエチレン成分は、3.0~5.0の分子量分布を有し得る。本明細書に記載されるように、分子量分布は、本明細書に記載されるようなゲル浸透クロマトグラフィ(gel permeation chromatography、GPC)技法に従って計算され得る。
【0117】
1つ以上の追加の実施形態によれば、第2のポリエチレン成分は、3.0未満のゼロ剪断粘度比を有し得る。例えば、第2のポリエチレン成分は、2.9未満、2.8未満、2.7未満、2.6未満、2.5未満、2.4未満、2.3未満、2.2未満、2.1未満、2.0未満、1.9未満、1.8未満、1.7未満、1.6未満、1.5未満、1.4未満、1.3未満、1.2未満、又は更には1.1未満のゼロ剪断粘度比を有し得る。1つ以上の実施形態では、第2のポリエチレン成分は、少なくとも1.0のゼロ剪断粘度比を有し得る。
【0118】
記載されるiCCD分布を参照すると、図2は、試料のiCCD分布100を、累積重量分率曲線200とともに概略的に示している。図2は、概して、本明細書で詳細に論じている、第1の画分、第2の画分、半ピーク幅など、第2のポリエチレン成分のiCCDプロファイルのいくつかの特徴を示す。したがって、図2は、本明細書で提供されるiCCDプロファイルに関連する開示に関して参照として使用され得る。具体的には、第1の画分102及び第2の画分106が図示される。第1の画分102はピーク104を有し、第2の画分106はピーク108を有する。各画分は、半ピーク幅110及び112を有する。図2のプロファイルは、実験又は観察に由来するものではないが、代わりに、iCCD溶出プロファイルの特定の特徴を記載するという情報提供目的で提供されることを理解されたい。
【0119】
1つ以上の実施形態において、第2のポリエチレン成分の第1のポリエチレン画分は、iCCDによる溶出プロファイルにおいて45℃~87℃の温度範囲に単一ピークを有し得る。1つ以上の実施形態において、第1のポリエチレン画分の単一ピークは、70℃~85℃など、60℃~85℃の温度範囲内にあり得る。理論に束縛されるものではないが、重合に二重反応器設計が使用される第2のポリエチレン成分の少なくともいくつかの実施形態において、より高密度の結晶ドメインと、より低密度の非晶質ドメインとの組み合わせが存在し得ると考えられている。衝撃強度は、隣接するラメラを接続する非晶質領域又は結合濃度によって、主として制御される。密度が0.910g/cc未満であるとき、相対的な結合鎖濃度は、比較的大きいと推定される。本開示の組成物中の第1のポリマー画分のピークは、60℃~85℃の温度範囲内にあり得るが、これは、改善された靭性などの機能的利益のためにより高い結合鎖濃度を提供することができる。
【0120】
第1又は第2のポリエチレン画分におけるピークは、定義された温度境界でのそれぞれのポリエチレン画分における極小値によって形成されない場合があることを理解されたい。つまり、ピークは、ポリエチレン画分のしきい値温度によって形成されたピークではなく、その範囲全体の観点でのピークでなければならない。例えば、単一の谷が後に続く単一ピークがポリエチレン画分に存在する場合(上向きの傾斜に続く下向きの傾斜に続く上向きの傾斜)、そのようなポリエチレン画分には単一ピークのみが存在することになる。
【0121】
1つ以上の実施形態では、第2のポリエチレン画分は、iCCDによる溶出プロファイルにおいて95℃~120℃の温度範囲に単一ピークを有し得る。95℃~120℃での低分子量の高密度成分により、ポリエチレンは、これらの2つの画分の比によって記載されるように、より低密度の画分を維持しながら、より高い全体密度を達成することができるため、95℃~120℃の第2のポリエチレン画分の温度範囲が望ましい場合がある。
【0122】
1つ以上の実施形態において、50パーセントのピーク高さでの第2のポリエチレン画分の単一ピークの幅は、5.0℃未満、4℃未満、又は更には3℃未満であり得る。一般に、50パーセントのピーク高さで温度範囲がより小さいということは、「より鋭い」ピークに対応する。いずれの特定の理論に束縛されるものではないが、「より鋭い」又は「より狭い」ピークは、分子触媒によって引き起こされる特徴であり、2つの画分間のより高密度の分割を可能にする、より高密度の画分への最小のコモノマー組み込みを示すと考えられている。
【0123】
1つ以上の実施形態では、第2のポリエチレン成分は、iCCDを介する溶出プロファイルにおいて、80℃~90℃の温度範囲内で極小値を有し得る。この極小値は、第1のポリエチレン画分のピークと第2のポリエチレン画分のピークとの間に収まり得る。
【0124】
本明細書に記載の実施形態では、第1のポリエチレン画分面積は、第1のポリエチレン画分の単一ピークの真下の、45℃~87℃における溶出プロファイル内の面積である。同様に、第2のポリエチレン画分面積は、第2のポリエチレン画分の単一ピークの真下の、95℃~120℃の溶出プロファイルにおける面積である。第1のポリエチレン画分面積及び第2のポリエチレン画分面積は、それぞれ、一般にポリエチレン組成物中の各ポリマー画分の総相対質量に対応し得る。一般に、iCCDプロファイルにおけるポリエチレン画分面積は、指定された開始温度と終了温度との間のiCCDプロファイルを積分することによって決定することができる。
【0125】
1つ以上の実施形態によれば、第2のポリエチレン画分の単一ピークと第1のポリエチレン画分の単一ピークとの差は、少なくとも10℃であり得る。例えば、第2のポリエチレン画分の単一ピークと第1のポリエチレン画分の単一ピークとの差は、少なくとも12℃、14℃、16℃、18℃、又は更には少なくとも20℃であり得る。
【0126】
1つ以上の実施形態において、第1のポリエチレン画分面積は、溶出プロファイルの総面積の少なくとも40%(例えば、溶出プロファイルの総面積の少なくとも42%、少なくとも44%、少なくとも46%、少なくとも48%、少なくとも50%、少なくとも52%、又は更には少なくとも54%)を構成し得る。例えば、第1のポリエチレン画分面積は、42%~58%、43%~45%、45%~47%、53%~55%、又は55%~57%など、溶出プロファイルの総面積の40%~65%を含み得る。
【0127】
1つ以上の実施形態によれば、第2のポリエチレン画分面積は、溶出プロファイルの総面積の少なくとも25%(例えば、溶出プロファイルの総面積の少なくとも30%、少なくとも35%、又は更には少なくとも40%)を構成し得る。例えば、第1のポリエチレン画分面積は、溶出プロファイルの総面積の20%~50%、27%~31%、又は41%~48%を構成し得る。
【0128】
いくつかの実施形態によれば、第1のポリエチレン画分面積の第2のポリエチレン画分面積に対する比は、0.75~2.5(0.75~1.0、1.0~1.25、1.25~1.5、1.5~1.75、1.75~2.0、2.0~2.25、2.25~2.5、又はこれらの範囲の任意の組み合わせなど)であり得る。
【0129】
1つ以上の実施形態において、第2のポリエチレン成分は、エチレンとC3~C12アルケンなどのコモノマーとの重合から形成される。企図されるコモノマーとしては、1-オクテン及び1-ヘキセンなどのC6~C9アルケンが挙げられる。1つ以上の実施形態では、コモノマーは1-オクテンである。
【0130】
1つ以上の実施形態において、第2のポリエチレン画分の単一ピークと第1のポリエチレン画分の単一ピークとの差は、少なくとも10℃、少なくとも12.5℃、少なくとも15℃、少なくとも17.5℃、又は更には少なくとも20℃である。
【0131】
1つ以上の実施形態において、第1のポリエチレン画分は、0.01~0.18g/10分のメルトインデックス(I)を有し得る。例えば、1つ以上の実施形態によれば、第1のポリエチレン画分は、0.01g/10分~0.03g/10分、0.03g/10分~0.05g/10分、0.05g/10分~0.07g/10分、0.07g/10分~0.09g/10分、0.09g/10分~0.11g/10分、0.11g/10分~0.13g/10分、0.13g/10分~0.15g/10分、0.15g/10分~0.18g/10分、又はこれらの範囲の任意の組み合わせのメルトインデックス(I)を有し得る。
【0132】
1つ以上の実施形態において、第2のポリエチレン画分は、1~10,000g/10分のメルトインデックス(I)を有し得る。例えば、1つ以上の実施形態では、第2のポリエチレン画分は、10g/10分~1,000g/10分、20g/10分~800g/10分、1g/10分~100g/10分、100g/10分~1,000g/10分、1,000g/10分~10,000g/10分、又はこれらの範囲の任意の組み合わせのメルトインデックス(I)を有し得る。
【0133】
1つ以上の実施形態において、第2のポリエチレン画分の重量平均分子量は、例えば、20,000g/mol~120,000g/mol、又は40,000g/mol~65,000g/molなど、120,000g/mol以下であり得る。追加の実施形態では、第2のポリエチレン画分の重量平均分子量は、20,000g/mol~40,000g/mol、40,000g/mol~60,000g/mol、60,000g/mol~80,000g/mol、80,000g/mol~100,000g/mol、100,000g/mol~120,000g/mol、又はこれらの範囲の任意の組み合わせであり得る。ポリエチレン画分の分子量は、本明細書で後述するように、GPC結果に基づいて計算することができる。
【0134】
追加の実施形態によれば、第2のポリエチレン成分は、例えば4以下、3以下、2以下、又は更には1以下など、5以下のダウレオロジー指数(Dow Rheology Index)を有し得る。
【0135】
1つ以上の実施形態では、第2のポリエチレン成分は、1つ以上の添加剤などの追加の成分を更に含み得る。そのような添加剤としては、帯電防止剤、カラーエンハンサ、染料、潤滑剤、TiO又はCaCOなどの充填剤、乳白剤、核剤、加工助剤、顔料、一次酸化防止剤、二次酸化防止剤、UV安定剤、ブロッキング防止剤、スリップ剤、粘着付与剤、難燃剤、抗菌剤、臭気低減剤、抗真菌剤、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。第2のポリエチレン成分は、そのような添加剤を含む第2のポリエチレン成分の重量に基づいて、そのような添加剤を総合重量で約0.1~約10重量パーセント含有し得る。
【0136】
重合
本明細書に記載の第2のポリエチレン成分を生成するためには、任意の従来の重合プロセスを用いてもよい。そのような従来の重合プロセスとしては、1つ以上の従来の反応器、例えばループ反応器、等温反応器、撹拌槽反応器、並列式の、連続式のバッチ反応器、及び/又はそれらの任意の組み合わせを使用する、スラリー重合プロセス、溶液重合プロセスが挙げられるが、これらに限定されない。ポリエチレン組成物は、例えば、1つ以上のループ反応器、等温反応器、及びこれらの組み合わせを使用する、溶液相重合プロセスを介して生成され得る。
【0137】
一般に、溶液相重合プロセスは、115~250℃の範囲の温度(例えば、115~210℃)、及び300~1,000psiの範囲の圧力(例えば、400~800psi)で、1つ以上の等温ループ反応器又は1つ以上の断熱反応器などの1つ以上のよく撹拌された反応器中で行われ得る。いくつかの実施形態において、二重反応器では、第1の反応器内の温度は、115~190℃(例えば、160~180℃)の範囲内にあり、第2の反応器の温度は、150~250℃(例えば、180~220℃)の範囲内にある。他の実施形態では、単一反応器では、反応器の温度は、115~250℃(例えば、115~225℃)の範囲内である。
【0138】
溶液相重合プロセスにおける滞留時間は、2~30分(例えば5~25分)の範囲内であり得る。エチレン、溶媒、水素、1つ以上の触媒系、任意選択的に1つ以上の助触媒、及び任意選択的に1つ以上のコモノマーが、1つ以上の反応器に連続的に供給される。例示的な溶媒としては、イソパラフィンが挙げられるが、これに限定されない。例えば、そのような溶媒は、ExxonMobil Chemical Co.(Houston,Texas)からISOPAR Eの名称で市販されている。次いで、ポリエチレン組成物と溶媒との得られた混合物が、反応器から取り出され、ポリエチレン組成物が単離される。溶媒は、典型的には、溶媒回収ユニット、例えば、熱交換器及び気液分離器ドラムを介して回収され、次いで重合系に再循環される。
【0139】
いくつかの実施形態において、第2のポリエチレン成分は、二重反応器系、例えば、二重ループ反応器系内で、溶液重合を介して生成することができ、ここで、エチレンは、1つ以上の触媒系の存在下で重合される。いくつかの実施形態では、エチレンのみが重合される。加えて、1つ以上の助触媒が存在し得る。別の実施形態において、第2のポリエチレン成分は、単一の反応器系、例えば、単一ループ反応器系において、溶液重合によって生成することができ、ここで、エチレンは、2つの触媒系の存在下で重合される。いくつかの実施形態では、エチレンのみが重合される。
【0140】
触媒系
第1のポリエチレン成分の製造に関連して記載された同じ触媒系を使用して、第2の組成物のポリエチレン組成物を製造することができる。「実施例」の項に記載されるように、第1のポリエチレン成分及び第2のポリエチレン成分の製造方法は異なっており、これにより、得られるポリエチレン組成物が本明細書に記載されるような異なる特性を有する。
【0141】
上記のように、改善されたコモノマー組成分布(iCCD)分析法による記載された溶出プロファイル(上述のように、第1のポリエチレン面積画分が50℃~85℃であり、第2のポリエチレン画分面積が85℃~100℃の面積であり、第3のポリエチレン画分面積が100℃~120℃の面積である)を有する本発明のポリエチレン組成物のいくつかの実施形態は、第1のポリエチレン成分(上述)と第2のポリエチレン成分(上述)とのブレンドから形成することができる。そのようないくつかの実施形態において、ポリエチレン組成物は、それぞれポリエチレン組成物の総重量に基づいて、30~60重量パーセントの本明細書に記載される任意の実施形態による第1のポリエチレン成分と、40~70重量パーセントの本明細書に記載される任意の実施形態による第2のポリエチレン成分とを含む。そのようないくつかの実施形態において、ポリエチレン組成物は、それぞれポリエチレン組成物の総重量に基づいて、32~56重量パーセントの本明細書に記載される任意の実施形態による第1のポリエチレン成分と、44~68重量パーセントの本明細書に記載される任意の実施形態による第2のポリエチレン成分とを含む。いくつかの実施形態では、そのようなポリエチレン組成物は更に、ポリエチレン組成物の総重量に基づいて、20~5000ppmの核形成剤を更に含み、核形成剤は、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩又は4-[(4-クロロベンゾイル)アミノ]安息香酸ナトリウムを含む。
【0142】
フィルム
本発明のいくつかの実施形態は、本明細書に説明される本発明のポリエチレン組成物のいずれかから形成されたフィルムに関する。いくつかの実施形態では、本発明のフィルムは、本明細書に説明される本発明のポリエチレン組成物のいずれかを含む単層フィルムである。いくつかの実施形態では、本発明のフィルムは多層フィルムであり、少なくとも1つの層は、本明細書に記載されるポリエチレン組成物のいずれかを含む。
【0143】
多層フィルムの場合、フィルム中の層の数は、例えば、フィルムの所望の特性、フィルムの所望の厚さ、フィルムの他の層の含量、フィルムの最終用途、フィルムの製造に利用できる機器などを含む、多数の要因に依存して変化し得る。本発明の多層フィルムは、様々な実施形態では、最大2、3、4、5、6、7、8、9、10、又は11の層を含み得る。いくつかの実施形態では、多層フィルムは5層フィルムである。いくつかの実施形態では、多層フィルムは3層フィルムである。
【0144】
そのような多層フィルム中の1つ以上の層は、本発明のポリエチレン組成物に加えて、他のポリマーを更に含んでもよい。例えば、いくつかの実施形態において、本発明のポリエチレン組成物に加えて、多層フィルムの1つ以上の層は、低密度ポリエチレン(LDPE)又は直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を更に含んでもよい。例えば、LDPEをいくつかの層に含めて、処理を容易にすることができる。LDPEがフィルムに使用されるいくつかの実施形態では、LDPEは、多層フィルムの総重量に基づいて、1~50重量パーセント未満のLDPEを含み得る。いくつかの実施形態では、多層フィルムは、フィルムの総重量に基づいて、1~30重量パーセントのLDPEを含み得る。いくつかの実施形態では、多層フィルムは、フィルムの総重量に基づいて、20~30重量パーセントのLDPEを含み得る。本発明のいくつかの実施形態で使用できる市販のLDPEの例には、DOW(商標)LDPE 132I、DOW(商標)LDPE 203M、DOW(商標)586A、DOW(商標)LDPE 230N、及びAGILITY(商標)1021などの、The Dow Chemical Companyから入手可能なLDPEが含まれる。LLDPEがフィルムで使用されるいくつかの実施形態では、LLDPEは、多層フィルムの総重量に基づいて、1~50重量パーセント未満のLLDPEを含み得る。いくつかの実施形態では、多層フィルムは、フィルムの総重量に基づいて、20~50重量パーセントのLLDPEを含み得る。本発明のいくつかの実施形態において使用できる市販のLLDPEの例としては、The Dow Chemical Companyから入手可能なLLDPE、例えば、DOWLEX(商標)GM 8051F、DOWLEX(商標)GM 8051G、DOWLEX(商標)GM 8051、DOWLEX(商標)GM 8070、DOWLEX(商標)TG 2085B、INNATE(商標)ST50、ELITE(商標)NG5400B、ELITE(商標)NG5401B、ELITE(商標)5400G、及びELITE(商標)5401Gが挙げられる。
【0145】
いくつかの実施形態では、多層フィルムの1つの外層はシーラント層である。シーラント層は、シーラント層を使用してフィルムを別のフィルム、積層体、又はそれ自体に接着することによって、物品又は包装を形成するために使用することができる。したがって、シーラント層は多層フィルムの最外層である。
【0146】
いくつかの実施形態において、シーラント層は、シーラント層として有用であることが当業者に既知である任意の樹脂を含み得る。
【0147】
いくつかの実施形態では、シーラント層は、0.870~0.925g/cmの密度及び0.1~2.0g/10分のメルトインデックス(I)を有する1つ以上のエチレン系ポリマーを含み得る。更なる実施形態では、シーラントフィルム(又はシーラント層)のエチレン系ポリマーは、870~0.925g/cm、又は0.900~0.925g/cm、又は0.910~0.925g/cmの密度を有し得る。加えて、シーラントフィルム(又はシーラント層)のエチレン系ポリマーは、0.1~2.0g/10分、又は0.1~1.5g/10分のメルトインデックス(I)を有し得る。様々な市販のポリエチレンがシーラントフィルムに適していると考えられている。好適な市販品の例としては、ELITE(商標)5400G、ELITE(商標)5401B、及び様々なAFFINITY(商標)ポリオレフィンプラストマー(例えば、AFFINITY(商標)PL 1888、AFFINITY(商標)PF 1140、及びAFFINITY(商標)PF 1146、AFFINITY(商標)VP 8770G1)を挙げることができ、これらはそれぞれThe Dow Chemical Company(Midland,MI)から入手可能である。
【0148】
更なる実施形態では、多層フィルムのシーラント層は、追加のエチレン系ポリマー、例えば、ポリオレフィンプラストマー、LDPE、LLDPEなどを含んでもよい。シーラントフィルム又はシーラント層のLDPEは、概して、例えば、DOW(商標)LDPE 132I及びDOW(商標)LDPE 586Aなどの、当業者に既知の任意のLDPEを含み得る。ポリオレフィンプラストマーを使用した実施形態では、ポリオレフィンプラストマーは、0.2~5g/10分、又は0.5~2.0g/10分のメルトインデックス(I)を有し得る。更に、ポリオレフィンプラストマーは、0.870g/cc~0.920g/cc、又は0.870/cc~0.910g/cc、又は0.900~0.910g/cmの密度を有し得る。様々な市販のポリオレフィンプラストマーがシーラントフィルムに適していると考えられている。好適な例としては、The Dow Chemical Company(Midland,MI)のAFFINITY(商標)PL 1881G、AFFINITY(商標)PL 1888G、AFFINITY(商標)PF 1140G、AFFINITY(商標)PF 1146G、及びAFFINITY(商標)VP 8770G1が挙げられる。シーラント層がLLDPEを含む実施形態では、LLDPEは、概して、例えばDOWLEX(商標)NG2045B、DOWLEX(商標)TG2085B、DOWLEX(商標)GM 8051、DOWLEX(商標)GM 8070、DOWLEX(商標)GM 8085、及びDOWLEX(商標)5056GなどのThe Dow Chemical Companyから市販されているものを含む、当業者に既知の任意のLLDPEを含み得る。含めることができるエチレン系ポリマーの別の例は、0.918g/cm以下の密度を有するINNATE(商標)ポリエチレン樹脂であり、The Dow Chemical CompanyからINNATE(商標)ST50及びINNATE(商標)TH60として市販されている。
【0149】
いくつかの実施形態では、シーラント層は、0.870~0.925g/cmの密度及び0.1~2.0g/10分のメルトインデックス(I)を有するエチレン系ポリマーと、ポリオレフィンプラストマーとのブレンドを含む。例えば、いくつかの実施形態では、そのようなブレンドは、ELITE(商標)5400G又はELITE(商標)5401B及びAFFINITY(商標)PL 1881Gを含むことができる。別の例として、いくつかの実施形態では、そのようなブレンドは、INNATE(商標)ST50及びAFFINITY(商標)PL 1881Gを含むことができる。
【0150】
いくつかの実施形態では、シーラント層は、LLDPEとポリオレフィンプラストマーとのブレンドを含む。例えば、いくつかの実施形態では、そのようなブレンドは、DOWLEX(商標)NG 2045B又はDOWLEX(商標)GM 8051、AFFINITY(商標)PL 1881G、AFFINITY(商標)PF 1140G、AFFINITY(商標)PF 1146G、及びAFFINITY(商標)VP 8770G1を含むことができる。
【0151】
いくつかの実施形態では、シーラント層は、LLDPEとLDPEとのブレンドを含む。例えば、いくつかの実施形態において、そのようなブレンドは、LLDPEとしてDOWLEX(商標)NG 2045B又はDOWLEX(商標)GM 8051、及びLDPEとしてDOW(商標)LDPE 132I又はDOW(商標)LDPE 586Aを含むことができる。いくつかのそのような実施形態では、LDPEの量は、シーラント層の重量に基づいて30重量パーセント以下である。
【0152】
いくつかの実施形態では、シーラント層は、ポリオレフィンプラストマーとLDPEとのブレンドを含む。例えば、いくつかの実施形態において、そのようなブレンドは、ポリオレフィンプラストマー成分としてAFFINITY(商標)PL 1881G、AFFINITY(商標)PL 1888G、AFFINITY(商標)PF 1140G、及びAFFINITY(商標)PF 1146G、及びAFFINITY(商標)VP 8770G1を、並びにLDPEとしてDOW(商標)LDPE 132I又はDOW(商標)LDPE 586Aを含むことができる。いくつかのそのような実施形態では、LDPEの量は、シーラント層の重量に基づいて30重量パーセント以下である。
【0153】
いくつかの実施形態では、フィルム内の層のうちのいずれも、例えば、酸化防止剤、紫外線安定剤、熱安定剤、スリップ剤、粘着防止剤、顔料又は着色剤、加工助剤、架橋触媒、難燃剤、充填剤、及び発泡剤などの当業者に既知である1つ以上の添加剤を(ポリエチレン系組成物について上に記載されたものに加えて)更に含み得ることを理解されたい。
【0154】
いくつかの実施形態では、本発明のフィルムは主にポリエチレンから形成される。ポリエチレンベースであることにより、本発明のいくつかの実施形態による本発明のフィルムは、より容易にリサイクル可能な物品を提供するために、実質的又は完全ではないにしても、主にポリエチレンから構成される物品に組み込まれることができる。例えば、主にポリエチレンを含む多層フィルムは、そのようなポリマーの使用が提供し得る他の利点に加えて、改善されたリサイクル性プロファイルを有する。例えば、いくつかの実施形態では、多層フィルムは、添加剤以外、完全にエチレン系ポリマーから構成される。多層フィルムは、いくつかの実施形態では、多層フィルムの総重量に基づいて、90重量%のエチレン系ポリマー、いくつかの実施形態では95重量%のエチレン系ポリマー、いくつかの実施形態では99重量%のエチレン系ポリマー、いくつかの実施形態では99.9重量%のエチレン系ポリマー、又はいくつかの実施形態では100重量%のエチレン系ポリマーを含み得る。
【0155】
本発明のフィルムは、例えば、層の数、フィルムの意図される用途、及び他の要因に応じて、様々な厚さを有し得る。そのようなフィルムは、いくつかの実施形態において、200マイクロメートル未満、又はいくつかの実施形態において150マイクロメートル未満、又はいくつかの実施形態において120マイクロメートル未満の合計厚さを有する。いくつかの実施形態において、本発明のフィルムは、30~200マイクロメートル、又は30~150マイクロメートル、又は30~120マイクロメートルの合計厚さを有する。
【0156】
フィルムは、本明細書の教示に基づいて、当業者に既知の技術を使用して形成することができる。例えば、フィルムは、インフレーションフィルム(例えば、水急冷インフレーションフィルム)又はキャストフィルムとして調製することができる。例えば、多層フィルムの場合、共押出され得る層については、そのような層は、本明細書の教示に基づいて、当業者に既知の技術を使用してインフレーションフィルム又はキャストフィルムとして共押出することができる。
【0157】
本発明のフィルムは、1つ以上の望ましい特性を示し得る。例えば、いくつかの実施形態では、多層フィルムは、望ましいダート衝撃値、割線弾性係数、バリア特性、及び/又は他の特性を示すことができる。特に、いくつかの実施形態において、本発明の多層フィルムは、驚くべきことに、同じ全体密度を有する多層フィルムと比較した場合に、ダート衝撃(靱性)と割線弾性係数との良好なバランスを示すことができる。更に、いくつかの実施形態において、本発明の多層フィルムの増加した密度は更に、多層フィルムのバリア特性を増加させることができる。
【0158】
いくつかの実施形態では、本発明のポリエチレン組成物から形成され、3~4ミルの厚さを有する単層フィルムは、少なくとも110g/ミルの正規化ダート衝撃を示す。いくつかの実施形態では、本発明のポリエチレン組成物から形成され、3~4ミルの厚さを有する単層フィルムは、最大200g/ミルの正規化ダート衝撃を示す。いくつかの実施形態では、本発明のポリエチレン組成物から形成され、3~4ミルの厚さを有する単層フィルムは、最大160g/ミルの正規化ダート衝撃を示す。いくつかの実施形態では、本発明のポリエチレン組成物から形成され、3~4ミルの厚さを有する単層フィルムは、110g/ミル~200g/ミルの正規化ダート衝撃を示す。いくつかの実施形態では、本発明のポリエチレン組成物から形成され、3~4ミルの厚さを有する単層フィルムは、110g/ミル~160g/ミルの正規化ダート衝撃を示す。
【0159】
物品
本発明の実施形態は更に、本発明の配向多層ポリエチレンフィルムから(又はそのようなフィルムを組み込んだ積層体から)形成されるか、又はそれを組み込んだ、積層体及び包装などの物品に関する。そのような包装は、本明細書に記載のフィルム又は積層体のうちのいずれかから形成することができる。
【0160】
そのような物品の例としては、可撓性包装、パウチ、自立型パウチ、及び既製包装又は既製パウチを挙げることができる。いくつかの実施形態では、本発明の配向多層ポリエチレンフィルム又は積層体は、食品包装に使用され得る。そのような包装に含まれ得る食品の例としては、肉、チーズ、シリアル、ナッツ、ジュース、ソース、ペットフードなどが挙げられる。そのような包装は、本明細書の教示に基づいて、かつ包装の特定の用途(例えば、食品の種類、食品の量など)に基づいて、当業者に既知の技法を使用して形成され得る。
【0161】
本発明の物品の実施形態は、本明細書に記載の本発明のポリエチレン組成物のいずれかを含むフィルムを組み込んだ積層体であってもよい。いくつかの実施形態において、本発明のポリエチレン組成物を組み込んだフィルムは、別のフィルムに積層させることができる。そのような実施形態における他のフィルムは、ポリエチレンシーラントフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、又はポリアミドであり得る。ポリエチレンシーラントフィルムは、ポリエチレンから実質的に形成される単層又は多層フィルム(例えば、90重量パーセントを超えるエチレン系ポリマー、又は95重量パーセントを超えるエチレン系ポリマー、又は99重量パーセントを超えるエチレン系の特性を含む)であり得、これは、積層体構造の一部として加熱されると、積層体を別のフィルムに、別の積層体に、又はそれ自体にシールすることができる。本明細書の教示に基づいて、当業者に既知の任意のポリエチレンシーラントフィルムが使用され得る。他のフィルムがポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、又はポリアミドを含む場合、フィルム全体は、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、若しくはポリアミドから形成され得るか、又はフィルムは、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、若しくはポリアミドを含む少なくとも1つの層を含む。当業者であれば、本明細書の教示に基づいて、そのような実施形態に使用するためのポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、又はポリアミドを含むフィルムを選択することができる。
【0162】
本発明の実施形態による積層体は、本明細書の教示に基づいて、当業者に既知の技法を使用して形成することができる。例えば、本発明のポリエチレン組成物を含むフィルムは、接着剤を使用して他のフィルムに積層することができる。積層体に使用される接着剤には、様々な接着剤組成物が好適であると考えられる。これらには、ポリウレタン、エポキシ、アクリルなどが含まれ得る。一実施形態では、積層体は、ポリウレタン接着剤を含む接着剤層を含み得る。ポリウレタン接着剤は、無溶剤、水性、又は溶剤系であり得る。更に、ポリウレタン接着剤は、二液型配合物であり得る。接着剤層の重量又は厚さは、例えば、積層体の所望の厚さ、使用される接着剤の種類、及び他の要因を含む多くの要因に依存して変化し得る。いくつかの実施形態では、接着剤層は、最大5.0グラム/m、又は1.0~4.0g/m、又は2.0~3.0g/mで塗布される。
【0163】
本発明のいくつかの実施形態による積層体はまた、押出積層によって形成することができる。
【0164】
試験方法
本明細書に別段示されない限り、本発明の態様の説明では以下の分析方法を使用する。
【0165】
メルトインデックス
メルトインデックスI(又はI2)及びI10(又はI10)は、それぞれ、190℃で、2.16kg及び10kgの荷重で、ASTM D-1238(方法B)に従って測定した。それらの値を、g/10分で報告する。
【0166】
密度
密度測定用の試料を、ASTM D4703に従って調製した。測定を、サンプル加圧の1時間以内に、ASTM D792、方法Bに従って行った。
【0167】
従来のゲル浸透クロマトグラフィ(従来のGPC)
PolymerChar(Valencia,Spain)のGPC-IR高温クロマトグラフィシステムには、Precision Detectors(Amherst,MA)製の2角度レーザー光散乱検出器モデル2040、ともにPolymerChar製のIR5赤外線検出器及び4毛細管粘度計が備わっている。データ収集は、PolymerChar製のInstrument Controlソフトウェア及びデータ収集インターフェースを使用して実施する。このシステムには、Agilent Technologies(Santa Clara,CA)製のオンラインの溶媒脱ガスデバイス及びポンプシステムが備わっている。
【0168】
注入温度は、150℃に制御する。使用するカラムは、Polymer Laboratories(Shropshire,UK)製の3つの10μm「Mixed-B」カラムである。使用する溶媒は、1,2,4-トリクロロベンゼンである。「50ミリリットルの溶媒中0.1グラムのポリマー」の濃度で試料を調製する。クロマトグラフィ溶媒及び試料調製溶媒は、各々、「200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(butylated hydroxytoluene、BHT)」を含有していた。両方の溶媒源を、窒素スパージする。エチレン系ポリマー試料を160℃で3時間穏やかに撹拌する。注入体積は、「200マイクロリットル」であり、流量は、「1ミリリットル/分」である。GPCカラムセットの較正は、21個の「狭い分子量分布」のポリスチレン標準物質を用いて行う。標準物質の分子量(「MW」)は、580~8,400,000g/molの範囲であり、標準物質は、6つの「カクテル」混合物に含有されている。各標準物質混合物は、個々の分子量間に少なくとも10倍の間隔を有する。標準物質混合物は、Polymer Laboratoriesから購入する。ポリスチレン標準物質は、1,000,000g/mol以上の分子量に対して「50mLの溶媒中0.025g」で調製し、1,000,000g/mol未満の分子量に対しては「50mLの溶媒中0.050g」で調製する。
【0169】
ポリスチレン標準物質を、80℃で穏やかに撹拌しながら、30分間溶解させる。狭い標準物質混合物を最初に、「最高分子量成分」が次第に減少する順序で実行して、分解を最小限に抑える。ポリスチレン標準物質ピーク分子量を、式1を使用してポリエチレン分子量に変換する(Williams and Ward,J.Polym.Sci.,Polym.Letters,6,621(1968)に記載のとおり)、
【数1】

(式中、Mは、分子量であり、Aは、0.4316に等しく、Bは、1.0に等しい)。
【0170】
数平均分子量(Mn(従来のgpc))、重量平均分子量(Mw(従来のgpc))、及びz平均分子量(Mz(従来のgpc))を以下の式2~4に従って計算する。
【数2】
【0171】
式2~4では、RVは、「1秒当たり1点」で収集されたカラム保持容積(直線的に離間される)であり、IRは、GPC計器のIR5測定チャネルからの、ボルト単位でのベースライン減算IR検出器信号であり、MPEは、式1から決定されたポリエチレン当量MWである。データ計算は、PolymerCharの「GPC Oneソフトウェア(バージョン2.013H)」を使用して実施する。
【0172】
クリープゼロ剪断粘度測定方法
ゼロ剪断粘度を、AR G2応力制御レオメータ(TA Instruments;New Castle,Del)で、190℃で「直径25mm」の平行プレートを使用して実施するクリープ試験を介して得る。取付け器具をゼロにする前に、レオメーターオーブンを少なくとも30分間試験温度に設定する。その試験温度で、圧縮成形された試料ディスクをプレート間に挿入し、5分間平衡させる。次いで、上側プレートを所望の試験間隙(1.5mm)より50μm(機器設定)上方にまで下げる。余分な材料をトリミングして除去し、上側プレートを所望の間隙まで下げる。測定は、5L/分の流量の窒素パージ下で行われる。デフォルトのクリープ時間を2時間に設定する。各試料を、空気中で、10MPaの圧力下にて5分間、177℃で「厚さ2mm×直径25mm」の円形プラークに圧縮成形する。次いで、試料を圧縮機から取り出し、カウンター上に置いて、冷却させる。
【0173】
定常状態の剪断速度がニュートン領域内になるように十分な低さであることを確実にするために、試料のすべてに20Paの一定の低剪断応力を加える。得られた定常状態の剪断速度は、この試験における試料については10-3~10-4-1の範囲である。定常状態は、「log(J(t))対log(t)」のプロットの最後の10%の時間ウィンドウ内のすべてのデータについて線形回帰を取ることによって決定され、ここでJ(t)は、クリープコンプライアンスであり、tはクリープ時間である。線形回帰の勾配が0.97より大きい場合、定常状態に達したとみなし、次いで、クリープ試験を停止する。この試験におけるすべての場合において、傾きは、1時間以内に基準を満たす。定常状態の剪断速度は、「ε対t」(εは歪みである)のプロットの最後の10%の時間ウィンドウ内のデータ点のすべての線形回帰の勾配から決定される。クリープゼロ剪断粘度を、加えられた応力と定常状態の剪断速度との比から決定する。
【0174】
クリープ試験中に試料が劣化しているかどうかを決定するために、0.1~100ラジアン/秒で、同じ試料に対してクリープ試験の前後に小振幅振動剪断試験を実施する。2つの試験の複素粘度値を比較する。0.1ラジアン/秒における粘度値の差が5%より大きい場合、クリープ試験中に試料は劣化したとみなされ、結果は、廃棄される。
【0175】
ゼロ剪断粘度比(Zero-Shear Viscosity Ratio、ZSVR)
ゼロ剪断粘度比(ZSVR)は、以下の式に従って当量平均分子量における分岐ポリエチレン材料のゼロ剪断粘度(ZSV)と直鎖状ポリエチレン材料のZSVとの比として定義される。
【数3】

ZSV値を、上記の方法を介して190℃でのクリープ試験から得る。Mwtは、上述したように、従来のゲル浸透クロマトグラフィを使用して決定する。直鎖状ポリエチレンのZSVとその分子量との間の相関は、一連の直鎖状ポリエチレン参照試料に基づいて確立された。より低いZSVRは、より低いレベルの長鎖分岐を示す。
【0176】
13C NMRを使用した分岐測定
試料の調製
試料は、緩和剤として0.025MのCr(AcAc)を含有するテトラクロロエタン-d2/オルトジクロロベンゼンの50/50混合物およそ2.7gを、Norell社製品番1001-7の10mmのNMR管中の、0.20~0.30gの試料に添加することによって調製する。管をN2で1分間パージすることにより、酸素を除去する。加熱ブロック及びボルテックスミキサーを使用して、管及びその内容物を120~140℃に加熱することによって、試料を溶解及び均質化させる。各試料を目視検査して、均質性を確認する。完全に混合された試料は、加熱されたNMR試料チェンジャー及び/又はNMRプローブに挿入する前に冷却することはできない。
【0177】
データ獲得パラメータ
データは、Bruker社製10mm多核高温CryoProbeを備えるBruker社製600MHz分光計を使用して収集する。データを、データファイル当たり1280回の過渡電圧、7.8秒のパルス反復遅延、90度のフリップ角、及び逆ゲート付きデカップリングを使用して、120℃の試料温度で取得する。すべての測定は、ロックモードで非回転試料に対して行われる。試料を、データ取得前に熱平衡化させる。13C NMR化学シフトは30.0ppmでのEEEトライアドを内部参照とする。データはスペクトルに処理し、適切なピークを統合し(ブランチを定量化する)、次いで1つ以上のピーク積分値を使用するか、総ブランチ/1000Cに対して平均化する。分岐が検出されない場合は、鎖端に起因するものなどのピークの積分値及び信号対雑音比を使用して、スペクトルの検出限界を計算する。
【0178】
H NMRを使用した不飽和度測定
原液(3.26g)を10mmのNMR管中の0.10~0.13gのポリマー試料に添加する。上記の原液は、テトラクロロエタン-d(TCE)及びペルクロロエチレン(50:50、w:w)の混合液であって、0.001MのCr3+を有する混合液、又は0.001MのCr3+を有する100%TCEのいずれか一方である。管内の溶液を5分間Nでパージして、酸素量を減少させる。周期的にボルテックス混合しながら、試料を120~140℃で溶解させる。各H NMR分析は、Bruker社製AVANCE 600MHz分光計で、120℃で、10mmの凍結プローブを用いて実行する。
【0179】
不飽和度を測定するために2つの実験を実行し、1つは対照実験、もう1つは二重前飽和実験である。対照実験では、データは、0.7Hzの線幅拡大を伴う指数窓関数で処理される。TCEの残留Hからの信号を100に設定し、約-0.5~3ppmの積分値(I合計)を対照実験における全ポリマーからの信号として使用する。ポリマー中の総炭素数NCを、式1Aで以下のように計算する:
【数4】
【0180】
二重前飽和実験では、データを0.7Hzの線拡大を有する指数窓関数で処理し、ベースラインを約7~4ppmに補正する。TCEの残留Hからの信号を100に設定し、不飽和についての対応する積分値(Iビニレン、I三置換、Iビニル、及びIビニリデン)を積分する。ポリエチレン不飽和を決定するためにNMR分光法を使用することは周知であり、例えば、Busico,V.,et al.,Macromolecules,2005,38,6988を参照されたい。ビニレン、三置換、ビニル、及びビニリデンの不飽和単位の数を、以下のように計算する:
【数5】
【0181】
1,000個の総炭素当たりの不飽和単位、すなわち、主鎖と分岐鎖を含むすべてのポリマー炭素は、次のように計算される:
【数6】
【0182】
TCE-d2からの残留プロトンからのHシグナルでは、化学シフト標準を6.0ppmに設定する。制御は、ZGパルス、NS=16、DS=2、AQ=1.82s、D1=14s(D1は緩和遅延)で実行する。二重前飽和実験は、O1P=1.354ppm、O2P=0.960ppm、NS=50、AQ=1.82s、D1=1s(D1は前飽和時間)、D13=13s(D13は緩和遅延)で、修正されたパルス列で実行する。
【0183】
コモノマー含有量分布(iCCD)分析の改善された方法
改善されたコモノマー含有量分析法(iCCD)は、2015年に開発された(Cong and Parrottら、国際公開第2017040127(A1)号)。iCCD試験を、IR-5検出器(PolymerChar,Spain)及び二角光散乱検出器モデル2040(Precision Detectors、現在はAgilent Technologies)を備えた結晶化溶出分画機器(Crystallization Elution Fractionation、CEF)(PolymerChar,Spain)を用いて実施した。検出器オーブン中のIR-5検出器の直前に、5cm又は10cm(長さ)×1/4インチ(ID)のステンレスに20~27マイクロメートルのガラス(MoSCi Corporation,USA)を充填したガードカラムを設置した。オルトジクロロベンゼン(ortho-dichlorobenzene、ODCB、99%無水グレード又はテクニカルグレード)を使用した。EMD Chemicalsからシリカゲル40(粒径0.2~0.5mm、カタログ番号10181-3)を入手した(先にODCB溶媒を乾燥させるために使用され得る)。CEF機器は、N2パージ能力を備えたオートサンプラを装備している。使用前に、ODCBを乾燥窒素(N2)で1時間スパージする。試料の調製は、160℃で1時間振盪しながら、(特に指定のない限り)オートサンプラを用いて4mg/mLで行った。注入量は300μLであった。iCCDの温度プロファイルは、105℃から30℃まで3℃/分で結晶化、30℃で2分間の熱平衡(可溶性画分溶出時間を2分に設定することを含む)、30℃から140℃まで3℃/分で溶出、であった。結晶化中の流量は、0.0mL/分である。溶出中の流量は0.50mL/分である。データは、1データポイント/秒で収集する。
【0184】
iCCDカラムを、15cm(長さ)×1/4インチ(ID)のステンレス管中の金でコーティングされたニッケル粒子(Bright 7GNM8-NiS、Nippon Chemical Industrial Co.)で充填した。カラム充填及び調整は、参考文献(Cong,R.;Parrott,A.;Hollis,C.;Cheatham,M.国際公開第2017040127(A1)号)によるスラリー法で行った。TCBスラリー充填を用いた最終圧力は、150バールであった。
【0185】
カラム温度較正を、ODCB中の参照物質の直鎖状ホモポリマーポリエチレン(コモノマー含有量がゼロ、メルトインデックス(I)が1.0、多分散度M/Mが従来のゲル浸透クロマトグラフィで約2.6、1.0mg/mL)と、エイコサン(2mg/mL)との混合物を使用して実行した。iCCD温度較正は、以下の4つのステップからなった:(1)エイコサンの測定されたピーク溶出温度間の温度オフセットから30.00℃を引いたものとして定義される遅延体積を計算するステップ;(2)iCCD生温度データから、溶出温度の温度オフセットを差し引くステップ(この温度オフセットは、溶出温度、溶出流量などの実験条件の関数であることに留意されたい);(3)直鎖状ホモポリマーポリエチレン参照物質が、101.0℃でピーク温度を有し、エイコサンが、30.0℃のピーク温度を有するように、30.00℃~140.00℃の範囲にわたって溶出温度を変換する線形較正線を作成するステップ;(4)30℃で等温で測定される可溶性画分について、30.0℃未満の溶出温度を、参考文献(Cerk and Congら、米国特許第9,688,795号)に従って3℃/分の溶出加熱速度を使用することによって直線的に外挿するステップ。
【0186】
コモノマー含有量対iCCDの溶出温度は、12個の参照物質(エチレンホモポリマー及びシングルサイトメタロセン触媒で作製されたエチレン-オクテンランダムコポリマー、35,000~128,000の範囲のエチレン等価重量平均分子量を有する)を使用することで構築した。これらの参照物質の全てを、4mg/mLで以前に指定したものと同じ手法で分析した。報告された溶出ピーク温度は、線形方程式y=-6.3515x.+101.00に線形に適合し、式中、yは、iCCDの溶出温度を表し、xは、オクテンモル%を表し、Rは、0.978であった。
【0187】
ポリマーの分子量及びポリマー画分の分子量は、フォームファクタを1及び全てのビリアル係数をゼロと仮定することによって、Rayleigh-Gans-Debys近似(Striegel and Yau,Modern Size Exclusion Liquid Chromatogram,242ページ及び263ページ)に従って、LS検出器(90度の角度)及び濃度検出器(IR-5)から直接決定した。23.0~120℃の範囲の溶出温度(温度較正は上記で指定)で、全てのクロマトグラムを積分するために積分ウィンドウを設定する。
【0188】
iCCDからの分子量(Mw)の計算には、次の4つのステップが含まれる。
【0189】
(1)検出器間オフセットを測定するステップ。オフセットは、濃度検出器に対するLS検出器間の幾何学的体積オフセットとして定義される。これは、濃度検出器とLSクロマトグラムとのポリマーピークの溶出量(mL)の差として計算される。これが、溶出熱速度及び溶出流量を使用することによって、温度オフセットに変換される。直鎖状高密度ポリエチレン(コモノマー含有量がゼロ、メルトインデックス(I)が1.0、多分散度M/Mが従来のゲル浸透クロマトグラフィでおよそ2.6)を使用する。以下のパラメータを除いて、上記の通常のiCCD法と同じ実験条件を使用する:140℃から137℃まで10℃/分で結晶化、可溶性画分溶出時間としての137℃で1分間の熱平衡、7分間の可溶性画分(soluble fraction、SF)時間、137℃から142℃まで3℃/分で溶出。結晶化中の流量は、0.0mL/分である。溶出中の流量は、0.80mL/分である。試料濃度は、1.0mg/mLである。
【0190】
(2)LSクロマトグラムの各LSデータポイントをシフトして、積分前に検出器間オフセットを補正する。
【0191】
(3)ベースラインを差し引いたLS及び濃度クロマトグラムが、ステップ(1)の溶出温度範囲全体について積分される。MW検出器定数を、100,000~140,000Mwの範囲内の既知のMWのHDPE試料、及びLSと濃度積分信号との面積比を使用して計算する。
【0192】
(4)ポリマーのMwを、統合光散乱検出器(90度の角度)と濃度検出器との比を使用し、MW検出器定数を使用することによって計算した。
【0193】
半値幅の計算は、最大ピーク高さの半分での前方温度と後方温度との温度差として定義され、最大ピークの半分での前方温度は、35.0℃から前方へ探索され、最大ピークの半分での後方温度は、119.0℃から後方へ探索される。
【0194】
動的剪断レオロジ
試料を、190℃、25000ポンドの圧力で、6.5分間空気中で圧縮成形し、その後、プラークを実験台上で冷却させた。プラークの厚さは、約3mmであった。窒素パージ下で、25mmの平行プレート装備するARES歪み制御平行プレートレオメータ(TA Instruments)で、一定温度周波数掃引測定を実行した。各測定について、間隙をゼロにする前に、レオメータを少なくとも30分間熱的に平衡化した。試料をプレート上に置き、190℃で5分間溶融させた。次にプレートを2mmまで閉じ、試料をトリミングし、次いで試験を開始した。本方法は、温度平衡を可能にするために、追加で5分間の遅延を組み込んだ。本実験を、190℃で、10倍の間隔あたり5点で、0.1~100ラジアン/秒の周波数範囲にわたって実行した。歪み振幅は、10%で一定であった。振幅及び相に関して、応力応答を分析し、そこから貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G’’)、複素弾性率(G*)、動的複素粘度(η*)、及びtan(δ)又はタンデルタを計算した。
【0195】
ダート衝撃
フィルムを生成した後、そのフィルムを、ASTM標準に従って23℃(+/-2℃)及び50%R.H(+/-5)に少なくとも40時間馴化させた。標準試験条件は、ASTM標準に従って、23℃(±2℃)及び50%R.H(±5)である。
【0196】
試料の厚さは試料の中央で測定し、次いで、試料を5インチの内径を有する環状試験片ホルダーで固定した。ダートを、試料中央の上方に装填し、空気圧の機構又は電磁気的機構のいずれかによって放出した。
【0197】
試験は「階段」法に従って実施した。試料が破損した場合、ダートの重量を既知の固定量だけ低減して新たな試料を試験した。試料が破損しなかった場合、ダートの重量を既知の量だけ増加して新たな試料を試験した。20個の試験片を試験した後、破損数を決定した。この数が10であった場合、試験を完了する。この数が10未満であった場合、10の破損が記録されるまで試験を継続した。この数が10超であった場合、破損しなかったパウチの合計が10になるまで試験を継続した。ASTM D1709に従って、これらのデータからダート衝撃値を決定し、グラムで表した。実施例における試験結果は、方法A(タイプAのダート衝撃)によって報告される。
【0198】
「ダート落下衝撃」及び「ダート衝撃」という用語は、この試験方法を指すために本明細書において同義的に使用する。「正規化ダート衝撃」という用語は、測定されたダート衝撃をフィルムの厚さで割ったものを指す。
【0199】
ここで、本発明のいくつかの実施形態を、以下の実施例に詳細に説明する。
【実施例
【0200】
第1のポリエチレン成分
以下は、本発明のポリエチレン組成物の実施形態に使用することができる第1のポリエチレン成分の例である。第1のポリエチレン成分1を、以下のプロセスに従って、かつ表1に報告されている反応条件に基づいて調製する。
【0201】
反応環境に導入する前に、すべての原材料(エチレンモノマー)及びプロセス溶媒(狭い沸点範囲の高純度イソパラフィン溶媒、Isopar-E)を分子篩で精製する。水素は、高純度グレードとして加圧されて供給され、それ以上は精製されない。反応器へのモノマー供給流を、機械的圧縮機によって、反応圧力よりも高い圧力に加圧する。溶媒供給物を、ポンプによって、反応圧力よりも高い圧力に加圧する。個々の触媒成分を、精製された溶媒を用いて指定の成分濃度に手動でバッチ希釈し、反応圧力よりも高い圧力に加圧する。全ての反応供給流を、質量流量計を用いて測定し、コンピュータにより自動化された弁制御系によって独立して制御する。
【0202】
連続溶液重合反応器は、熱除去を伴う連続撹拌槽反応器(continuously stirred tank reactor、CSTR)と同様の2つの液体充填非断熱式等温循環ループ反応器からなる。各反応器へのすべての未使用の溶媒、モノマー、水素、及び触媒成分供給物の独立した制御が可能である。各反応器への未使用の供給流全体(溶媒、モノマー、及び水素)は、供給流を熱交換器に通すことにより温度制御される。各重合反応器への未使用の供給物全体を、各注入位置間でほぼ等しい反応器体積で、1つの反応器当たり2つの位置で反応器に注入する。第1の反応器への未使用供給物は、典型的には、各注入器が、未使用の供給物の質量流量全体の半分を受けるように制御される。直列の第2の反応器への未使用の供給物は、典型的には、各注入器の近くでエチレン質量流量全体の半分を維持するように制御され、第1の反応器からの未反応エチレンは、低圧の未使用の供給物に隣接する第2の反応器に入るため、この注入器は通常、第2の反応器への未使用の供給物の質量流量全体の半分未満を有する。
【0203】
各反応器のための触媒/助触媒成分は、特別に設計された注入スティンガを通して重合反応器に注入される。各触媒/助触媒成分は、反応器の前の接触時間なしに、反応器内の同じ相対位置に別々に注入される。主触媒成分は、個々の反応モノマー転化を特定の目標値に維持するようにコンピュータ制御される。助触媒成分は、主触媒成分に対して計算された特定のモル比に基づいて供給される。
【0204】
第1の反応器で使用される触媒は、ジルコニウム,[[2,2’’’-[[ビス[1-メチルエチル]ゲルミレン]ビス(メチレンオキシ-κO)]ビス[3’’,5,5’’-トリス(1,1-ジメチルエチル)-5’-オクチル[1,1’:3’,1’’-ターフェニル]-2’-オラト-κO]](2-)]ジメチル-であり、これは、化学式C86128GeOZr、及び以下の構造(「触媒1」)を有する。
【化6】
【0205】
第2の反応器で使用される触媒は、ジルコニウム,[[2,2’’’-[1,3-プロパンジイルビス(オキシ-κO)]ビス[3-[2,7-ビス(1,1-ジメチルエチル)-9H-カルバゾール-9-イル]]-5’-(ジメチルオクチルシリル)-3’-メチル-5-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)[1,1]-ビフェニル]-2-オラト-κO]](2-)]ジメチルであり、化学式C107154SiZr及び以下の構造(「触媒2」)を有する。
【化7】
【0206】
各反応器供給物の注入位置の直後に、供給流が、静的混合要素を有する循環重合反応器の内容物と混合される。各反応器の内容物を、反応熱の大部分を除去する役割を果たす熱交換器に、特定の反応温度で等温反応環境を維持する役割を果たす冷却剤側の温度で、連続的に循環させる。各反応器ループの周りの循環は、ポンプによって提供する。
【0207】
第1の重合反応器からの流出物(溶媒、モノマー、水素、触媒成分、及び溶融ポリマーを含有する)は、第1の反応器ループから出て、制御バルブ(第1の反応器の圧力を特定の目標値に維持する役割を有する)を通過し、同様の設計の第2の重合反応器に注入される。第2の重合反応器からの最終流出物は、好適な試薬(水)の添加及びそれとの反応により流出物が非活性化されるゾーンに入る。この同じ反応器出口位置に、ポリマーの安定化のために他の添加剤が添加される。この最終流出物流は、触媒の非活性化及び添加剤の分散を促進するために、静的混合要素の別のセットを通過する。
【0208】
触媒の非活性化及び添加剤の添加に続いて、反応器流出物は、ポリマーが非ポリマー流から除去される脱揮発系に入る。単離されたポリマー溶融物をペレット化して回収する。非ポリマー流は、システムから除去されるエチレンの大部分を分離する様々な機器を通過する。溶媒の大部分は、精製系を通過した後、反応器に再循環される。少量の溶媒がプロセスからパージされる。ポリエチレン組成物1を少量(ppmレベル)の安定剤で安定化させた。
【0209】
第1のポリエチレン成分1の重合条件を表1に報告する。表1に見られるように、助触媒1(ビス(水素化タローアルキル)メチル、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(1-)アミン);及び助触媒2(変性メチルアルミノキサン(MMAO))を各々、触媒1及び触媒2のための助触媒として使用する。
【0210】
第1のポリエチレン成分2は、ポリエチレン成分1と同じ触媒系を使用し、同等の反応条件で同じプロセスを使用して調製する。
【0211】
第1のポリエチレン成分1及び第1のポリエチレン成分2の追加の特性は、上記の試験方法を使用して測定し、表2に報告する。第1のポリエチレン画分は、第1の反応器からのポリエチレン成分を指し、第2のポリエチレン画分は、第2の反応器からのポリエチレン画分を指す。
【表1】

【表2】

*この測定の検出限界は、3未満であった。
**目標
【0212】
第1のポリエチレン成分1の第1のポリエチレン画分、第1のポリエチレン成分1全体、及び第1のポリエチレン成分2全体の密度は、「試験方法」の項で上述されているように測定される。第1のポリエチレン組成物2の第1のポリエチレン画分の密度が目標値である。第2のポリエチレン画分の密度は、以下のブレンドルールを使用して計算する。
【数7】
【0213】
第1のポリエチレン成分1を、マスターバッチに提供されるHyperform HPN-20E核形成剤(Milliken Chemical)と乾式ブレンドして、HPN-20E核形成剤の異なる最終充填量(「HPN-20E」)を標的とすることができる。HPN-20Eを有するマスターバッチの一例には、3重量パーセントのHPN-20E、1.5重量パーセントのシリカ、0.5重量パーセントのハイドロタルサイト、5重量パーセントの酸化防止剤、及び90重量パーセントの担体樹脂が含まれる。担体樹脂は、0.965g/cmの密度及び8.0g/10分のメルトインデックス(I)を有する狭い分子量分布の高密度ポリエチレンホモポリマーであり得る。Hyperform HPN-20Eは、約66重量パーセントの1,2-シクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩及び約34重量パーセントのステアリン酸亜鉛/パルミチン酸亜鉛を含む。Hyperform HPN-20E核形成剤で形成されたこのマスターバッチは、「核形成剤マスターバッチ1」と呼ばれる。
【0214】
以下の実施例におけるフィルムの調製において、第1のポリエチレン成分は、ポリエチレン成分1及びポリエチレン成分2と同じ触媒系を使用し、かつ、第1のポリエチレン成分がポリエチレン成分2の特性と一致する特性を有するように、同等の反応条件で同じプロセスを使用して作製される。この第1のポリエチレン成分を核形成マスターバッチと溶融ブレンドして、750ppmのHyperform HPN-20E核形成剤の目標充填量を提供する。本発明のフィルム及び以下の比較例フィルムを形成する際の第1のポリエチレン成分3への言及は、Hyperform HPN-20Eの750ppmの目標充填量を有する核形成マスターバッチを組み込むこの第1のポリエチレン成分であると理解されるべきである。
【0215】
第2のポリエチレン成分
以下は、本発明の多層フィルムの実施形態に使用することができる第2のポリエチレン成分の例である。
【0216】
発明を実施するための形態の1つ以上の実施形態に従って記載される第2のポリエチレン成分1~5は、後述の方法並びに触媒及び反応器を利用することによって調製される。
【0217】
反応環境に導入する前に、全ての原材料(モノマー及びコモノマー)並びにプロセス溶媒(狭い沸点範囲の高純度イソパラフィン溶媒、Isopar-E)を分子篩で精製する。水素は、高純度グレードとして加圧されて供給され、それ以上は精製されない。反応器へのモノマー供給流を、機械的圧縮機によって、反応圧力よりも高い圧力に加圧する。溶媒及びコモノマーの供給を、ポンプによって、反応圧力よりも高い圧力に加圧する。個々の触媒成分を、精製された溶媒を用いて手動でバッチ希釈し、反応圧力よりも高い圧力に加圧する。全ての反応供給流を、質量流量計を用いて測定し、コンピュータにより自動化された弁制御系によって独立して制御する。
【0218】
2つの反応器系を直列構成で使用する。各連続溶液重合反応器は、熱を除去する連続撹拌槽反応器(CSTR)と同様の液体充填非断熱式等温循環ループ反応器からなる。すべての新鮮な溶媒、モノマー、コモノマー、水素、及び触媒成分供給物の独立した制御が可能である。各反応器への未使用の供給流全体(溶媒、モノマー、コモノマー、及び水素)は、供給流を熱交換器に通すことにより単一溶液相を維持するように温度制御される。各重合反応器への未使用の供給物全体を、各注入位置間でほぼ等しい反応器体積で、2つの位置で反応器に注入する。未使用供給物は、各注入器が、未使用の供給物の質量流量全体の半分を受けるように制御される。触媒成分は、注入スティンガを通して重合反応器に注入される。主要な触媒成分供給物は、各反応器のモノマー変換を特定の目標値に維持するようにコンピュータ制御される。助触媒成分は、主触媒成分に対して計算された特定のモル比に基づいて供給される。各反応器供給物の注入位置の直後に、供給流が、静的混合要素を有する循環重合反応器の内容物と混合される。各反応器の内容物を反応熱の大部分を除去する役割を果たす熱交換器に、特定温度で等温反応環境を維持する役割を果たす冷却剤側の温度で、連続的に循環させる。各反応器ループの周りの循環は、ポンプによって提供する。
【0219】
二重直列反応器構成では、第1の重合反応器からの流出物(溶媒、モノマー、コモノマー、水素、触媒成分、ポリマーを含有する)は、第1の反応器ループを出て、第2の反応器ループに添加される。
【0220】
第2の反応器流出液は、好適な試薬(水)の添加及びそれとの反応により流出液が非活性化されるゾーンに入る。この同じ反応器の出口位置に、ポリマー安定化のために他の添加剤が添加される(オクタデシル3,5-ジ-Tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート、テトラキス(メチレン(3,5-ジ-Tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート))メタン、及びトリス(2,4-ジ-Tert-ブチル-フェニル)ホスファイトのような押出及びフィルム製作中の安定化に好適な典型的な酸化防止剤)。
【0221】
触媒の非活性化及び添加剤の添加に続いて、反応器流出物は、ポリマーが非ポリマー流から除去される脱揮発系に入る。単離されたポリマー溶融物をペレット化して回収する。非ポリマー流は、システムから除去されるエチレンの大部分を分離する様々な機器を通過する。溶媒及び未反応コモノマーの大部分は、精製系を通過した後、反応器に再循環される。少量の溶媒及びコモノマーを、プロセスからパージする。
【0222】
第2のポリエチレン成分1~5の重合条件を表3に報告する。表4は、表3で参照される触媒を示す。
【表3】

【表4】
【0223】
発明を実施するための形態のうちの1つ以上に従って説明される第2のポリエチレン成分6は、後述の方法並びに触媒及び反応器を利用することによって調製される。
【0224】
反応環境に導入する前に、全ての原材料(モノマー及びコモノマー)並びにプロセス溶媒(狭い沸点範囲の高純度イソパラフィン溶媒、Isopar-E)を分子篩で精製する。水素は、高純度グレードとして加圧されて供給され、それ以上は精製されない。反応器へのモノマー供給流を、機械的圧縮機によって、反応圧力よりも高い圧力に加圧する。溶媒及びコモノマーの供給を、ポンプによって、反応圧力よりも高い圧力に加圧する。個々の触媒成分を、精製された溶媒を用いて手動でバッチ希釈し、反応圧力よりも高い圧力に加圧する。全ての反応供給流を、質量流量計を用いて測定し、コンピュータにより自動化された弁制御系によって独立して制御する。
【0225】
2つの反応器系を並列構成で使用する。各連続溶液重合反応器は、熱除去を伴う連続撹拌槽反応器(CSTR)と同様の、液体充填非断熱式等温循環ループ反応器からなる。すべての未使用の溶媒、モノマー、コモノマー、水素、及び触媒成分供給物の独立した制御が可能である。各反応器への未使用の供給流全体(溶媒、モノマー、コモノマー、及び水素)は、供給流を熱交換器に通過させることによって単一溶液相を維持するように温度制御される。各重合反応器への未使用の供給物全体を、各注入位置の間でほぼ等しい反応器体積で、2つの位置で反応器に注入する。未使用供給物は、各注入器が、未使用の供給物の質量流量全体の半分を受けるように制御される。触媒成分は、特別に設計された注入スティンガを通して重合反応器に注入される。主触媒成分供給物は、個々の反応モノマー転化を特定の目標値に維持するようにコンピュータ制御される。助触媒成分は、主触媒成分に対して計算された特定のモル比に基づいて供給される。各反応器供給物の注入位置の直後に、供給流が、静的混合要素を有する循環重合反応器の内容物と混合される。各反応器の内容物を、反応熱の大部分を除去する役割を果たす熱交換器に、特定温度で等温反応環境を維持する役割を果たす冷却剤側の温度で、連続的に循環させる。各反応器ループの周りの循環は、ポンプによって提供する。
【0226】
第1及び第2の重合反応器からの流出液流を、任意の追加の処理の前に組み合わせる。組み合わせた最終反応器流出液は、好適な試薬(水)の添加及びそれとの反応により流出物が非活性化されるゾーンに入る。この同じ反応器の出口位置に、ポリマー安定化のために他の添加剤が添加される(オクタデシル3,5-ジ-Tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート、テトラキス(メチレン(3,5-ジ-Tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート))メタン、及びトリス(2,4-ジ-Tert-ブチル-フェニル)ホスファイトのような押出及びインフレーションフィルム製作中の安定化に好適な典型的な酸化防止剤)。
【0227】
触媒の非活性化及び添加剤の添加に続いて、反応器流出物は、ポリマーが非ポリマー流から除去される脱揮発系に入る。単離されたポリマー溶融物をペレット化して回収する。非ポリマー流は、システムから除去されるエチレンの大部分を分離する様々な機器を通過する。溶媒及び未反応コモノマーの大部分は、精製系を通過した後、反応器に再循環される。少量の溶媒及びコモノマーを、プロセスからパージする。
【0228】
第2のポリエチレン成分6の重合条件を表5に報告する。表4は、表5で参照される触媒を示す。
【表5】
【0229】
第2のポリエチレン成分1、3、5、及び6をiCCDによって分析する。第2のポリエチレン成分5のiCCDデータは、図3に提供されている。これらの試料のiCCD試験から生成された追加データを表6A及び6Bに示す。具体的には、表6A及び6Bには、それぞれの第1及び第2ポリエチレン画分の面積(45~87℃及び95~120℃)を含むiCCDデータの分析が含まれる。全体密度、メルトインデックス、第2のPE画分における重量平均分子量を含むこれら試料についての追加データも提供されている。これらの特性は、完全に各ポリエチレン試料からなる単層インフレーションフィルムに基づいている。
【表6】

【表7】
【0230】
本発明のポリエチレン組成物1~7及び比較例のポリエチレン組成物A~C
第1の成分3(「第1のPE成分」)及び第2のポリエチレン成分5(「第2のPE成分」)を様々な量で乾式ブレンドして、表7に示す本発明のポリエチレン組成物1~7及び比較ポリエチレン組成物A~Bを得る。ブレンドは、一軸スクリュー押出機において220℃で行った。比較例のポリエチレン組成物Cは、The Dow Chemical Companyから入手可能なELITE(商標)5940である。本発明のポリエチレン組成物及び比較例のポリエチレン組成物をiCCDによって分析する。表7は、第1、第2、及び第3のポリエチレン画分それぞれの面積(50~85℃、85~100℃、及び100~120℃)並びに分子量(M)を含むiCCDデータの分析を含む。表7は更に、本発明のポリエチレン組成物及び比較例のポリエチレン組成物の全体密度を提供する。これらの密度は、上記の第1のポリエチレン成分の説明において提供されたブレンド規則を使用して計算される。これらの特性は、完全に各ポリエチレン試料からなる単層インフレーションフィルムに基づいている。
【表8】
【0231】
本発明のフィルム1~7及び比較例のフィルムA~C
本発明のフィルム1~7及び比較例のフィルムA~Cは、それぞれ本発明のポリエチレン組成物1~7及び比較例のポリエチレン組成物から形成される。フィルムは、以下の製造条件を使用して、Dr.Collin 7層インフレーションフィルムラインを使用して作製された単層フィルムである。
・ ダイギャップ:1.8mm
・ BUR:2.5
・ 空気温度:18℃
・ ダイ温度:210℃
・ 押出温度:190℃~220℃
・ 引取速度:3.5m/分
・ 出力レート:5.92kg/h
・ 厚さ:約3.54ミル。
【0232】
フィルムの正規化ダート衝撃は、上記の「試験方法」の項に記載の方法を用いて測定される。表8は、各フィルムについての厚さ及び正規化ダート衝撃を含む。本発明のフィルムの2%歪みでの機械方向の割線弾性係数が測定され、本発明のフィルムはそれぞれ、500MPaを超える2%割線弾性係数を示す。
【表9】
【0233】
表8に示すように、本発明のフィルムはそれぞれ、116g/ミル以上の正規化ダート衝撃を示した。同時に、本発明のフィルムは、500MPaを超える機械方向の2%割線弾性係数を維持した。これは、本発明のポリエチレン組成物が、剛性(割線弾性係数によって特徴付けられる)と靭性(ダートによって特徴付けられる)との優れたバランスをもたらす能力を示す。
図1
図2
図3
【国際調査報告】