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特表2023-552966コーティング層を有する多層構造体及び物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-20
(54)【発明の名称】コーティング層を有する多層構造体及び物品
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20231213BHJP
   B32B 7/02 20190101ALI20231213BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20231213BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20231213BHJP
   B29C 48/154 20190101ALI20231213BHJP
   B29C 48/07 20190101ALI20231213BHJP
【FI】
B32B27/32
B32B7/02
C08L23/04
C08J3/22 CES
B29C48/154
B29C48/07
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528082
(86)(22)【出願日】2021-11-16
(85)【翻訳文提出日】2023-05-10
(86)【国際出願番号】 US2021059513
(87)【国際公開番号】W WO2022108923
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】63/116,251
(32)【優先日】2020-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100156476
【弁理士】
【氏名又は名称】潮 太朗
(72)【発明者】
【氏名】オリヴェイラ、マルロス ジュンティーニ デ
(72)【発明者】
【氏名】ビスコグリオ、マイケル ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ゴメス、ジョルジ シー.
(72)【発明者】
【氏名】ヴァーリ、カミラ ド
【テーマコード(参考)】
4F070
4F100
4F207
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA13
4F070AC56
4F070AE08
4F070FB03
4F070FB09
4F100AB33
4F100AB33B
4F100AK01
4F100AK01B
4F100AK04
4F100AK04A
4F100AK06
4F100AK06A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA07
4F100DG10
4F100DG10B
4F100DG12
4F100DG12B
4F100DG15
4F100DG15A
4F100EH17
4F100EH17A
4F100EH23
4F100EH23A
4F100EH46
4F100EH46A
4F100JA06
4F100JA06A
4F100JA13
4F100JA13A
4F207AA04
4F207AA07
4F207AB04
4F207AC08
4F207AD05
4F207AD06
4F207AD08
4F207AD16
4F207AG01
4F207AG03
4F207AR12
4F207KA01
4F207KA17
4F207KB13
4F207KB26
4F207KL84
4F207KM15
4J002BB031
4J002EK006
4J002FD146
4J002GF00
(57)【要約】
多層構造体、並びにそれから形成される物品が提供される。本明細書に開示される実施形態による多層構造体は、基材層及びコーティング層を含み、基材層は、コーティング層でコーティングされる。コーティング層は、高圧低密度ポリエチレン及びマスターバッチ組成物のブレンドを含む。コーティング層が基材層上にコーティングされる場合に、コーティング層は、加工中に改善されたネックイン低減及びドローダウンの維持又は改善を有することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層構造体であって、
(a)基材を含む基材層と、
(b)ポリエチレン組成物を含むコーティング層であって、前記ポリエチレン組成物が、
(i)0.916g/cm~0.940g/cmの範囲の密度、2.0~30.0g/10分の範囲のメルトインデックス(I)、及び1,000個の総炭素原子当たり0.20個未満のビニル基を有する、高圧低密度ポリエチレン、並びに
(ii)フリーラジカル発生剤及びポリエチレン樹脂を含むマスターバッチ組成物であって、前記フリーラジカル発生剤が、220℃で200秒未満の半減期、及び-250kJ/molより高い分解エネルギーを有し、前記ポリエチレン樹脂が、0.900g/cm~0.970g/cmの範囲の密度、0.01g/10分~100g/10分の範囲のメルトインデックスを有する、マスターバッチ組成物、を含む、コーティング層と、を含み、
前記基材層が、前記コーティング層でコーティングされている、多層構造体。
【請求項2】
前記ポリエチレン組成物が、90~99.5重量%の前記高圧低密度ポリエチレンと、0.5~10重量%の前記マスターバッチ組成物と、を含む、請求項1に記載の多層構造体。
【請求項3】
前記フリーラジカル発生剤の量が、前記ポリエチレン樹脂の総量に対して100ppm未満である、請求項1又は2に記載の多層構造体。
【請求項4】
前記フリーラジカル発生剤が、220℃で60秒~120秒の半減期を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項5】
前記フリーラジカル発生剤の分子量が、200~1,000ダルトンである、請求項1~4のいずれか一項に記載の多層構造体
【請求項6】
前記フリーラジカル発生剤が、環状過酸化物である、請求項1~5のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項7】
前記基材層の前記基材が、フィルム、不織布、織布、スクリム、箔、カーペット、プラスチック、サラン、紙、セルロース、又は金属のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項8】
多層構造体を形成するための方法であって、
(a)0.916g/cm~0.940g/cmの範囲の密度、2.0~30.0g/10分の範囲のメルトインデックス(I)、及び1,000個の総炭素原子当たり0.20個未満のビニル基を有する、高圧低密度ポリエチレンを提供することと、
(b)フリーラジカル発生剤及びポリエチレン樹脂を含むマスターバッチ組成物を提供することであって、前記フリーラジカル発生剤が、220℃で200秒未満の半減期、及び-250kJ/molより高い分解エネルギーを有し、前記ポリエチレン樹脂が、0.900g/cm~0.970g/cmの範囲の密度、0.01g/10分~100g/10分の範囲のメルトインデックスを有する、提供することと、
(c)前記高圧低密度ポリエチレンを前記マスターバッチ組成物と反応させて、ポリエチレン組成物を形成することと、
(d)前記ポリエチレン組成物を、基材を含む基材層上にコーティング層として押出コーティングして、前記多層構造体を形成することと、を含む、方法。
【請求項9】
前記コーティング層としての前記ポリエチレン組成物の押出コーティング中に、前記コーティング層が、440フィート/分で4.00インチ未満のネックインを有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記コーティング層としての前記ポリエチレン組成物の押出コーティング中に、前記コーティング層が、880フィート/分で3.50インチ未満のネックインを有する、請求項8又は9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材層及びコーティング層を含む多層構造体と、そのような多層構造体を含む物品と、そのような多層構造体を作製するための方法と、に関する。
【0002】
序論
押出コーティングされた基材(すなわち、コーティング層でコーティングされている基材層)を含む多層構造体は、包装用途において広く使用されている。そのような構造体を作製するために、ポリオレフィンコーティングが、押出コーティングを介して基材上に接着又はコーティングされ得る。コーティングは、基材層に添加される場合に、望ましい特性(例えば、バリア特性、シーリング特性、及び靱性特性)を改善又は付与することができる。しかしながら、押出コーティングされた基材を生産及び製造する際に課題が存在する。例えば、低密度ポリエチレンは、多くの場合、その高い溶融強度及び長鎖分岐の存在に起因して、ポリオレフィンコーティングとして使用される。しかしながら、低密度ポリエチレンを基材(例えば、フィルム)上に押出コーティングすることによって、製造ラインがその最高目標速度で稼働している場合に、ネックインの増加がもたらされ得る。したがって、ドローダウン性能を維持又は改善しながらネックインの減少を呈するコーティング層及び樹脂設計を含む、多層構造体が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、基材層及びコーティング層を含む多層構造体であって、基材層が、コーティング層でコーティングされている、多層構造体を提供する。実施形態によれば、コーティング層は、高圧低密度ポリエチレン及びマスターバッチ組成物を含むポリエチレン組成物を含み、コーティング層が基材層上にコーティングされる場合に、コーティング層は、ドローダウンを維持又は改善しながらネックインの低減などの望ましい特性を呈することができる。
【0004】
一態様では、本発明は、(a)基材を含む基材層と、(b)ポリエチレン組成物を含むコーティング層であって、ポリエチレン組成物が、(i)0.916g/cm~0.940g/cmの範囲の密度、2.0~30.0g/10分の範囲のメルトインデックス(I)、及び1,000個の総炭素原子当たり0.20個未満のビニル基を有する、高圧低密度ポリエチレン、並びに(ii)フリーラジカル発生剤及びポリエチレン樹脂を含むマスターバッチ組成物であって、フリーラジカル発生剤が、220℃で200秒未満の半減期、及び-250kJ/molより高い分解エネルギーを有し、ポリエチレン樹脂が、0.900g/cm~0.970g/cmの範囲の密度、0.01g/10分~100g/10分の範囲のメルトインデックスを有する、マスターバッチ組成物、を含む、コーティング層と、を含み、基材層が、コーティング層でコーティングされている、多層構造体を提供する。
【0005】
別の態様では、本発明は、本明細書に開示される本発明の多層構造体のうちのいずれかを含む、包装などの物品を提供する。
【0006】
別の態様では、本発明は、本発明の多層構造体を形成するための方法を提供し、方法は、(a)0.916g/cm~0.940g/cmの範囲の密度、2.0~30.0g/10分のメルトインデックス(I)、及び1,000個の総炭素原子当たり0.20個未満のビニル基を有する、高圧低密度ポリエチレンを提供することと、(b)フリーラジカル発生剤及びポリエチレン樹脂を含むマスターバッチ組成物を提供することであって、フリーラジカル発生剤が、220℃で200秒未満の半減期、及び-250kJ/molより高い分解エネルギーを有し、ポリエチレン樹脂が、0.900g/cm~0.970g/cmの範囲の密度、0.01g/10分~100g/10分の範囲のメルトインデックスを有する、提供することと、(c)高圧低密度ポリエチレンをマスターバッチ組成物と反応させて、ポリエチレン組成物を形成することと、(d)ポリエチレン組成物を、基材を含む基材層上にコーティング層として押出コーティングして、多層構造体を形成することと、を含む。
【0007】
これら及び他の実施形態は、「発明を実施するための形態」において、より詳細に記載される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
開示される多層構造体、物品、及び多層構造体を作製するための方法の態様は、以下により詳細に記載される。しかしながら、本開示は、以下に記載する実施形態を限定するものと解釈されるべきではない。
【0009】
本明細書で使用される場合、「ポリマー」という用語は、同じ種類又は異なる種類にかかわらず、モノマーを重合することによって調製されたポリマー化合物を意味する。したがって、ポリマーという総称は、ホモポリマーという用語(1種類のみのモノマーから調製されたポリマーを指すために用いられる)、及びコポリマー又はインターポリマーという用語を包含する。微量の不純物(例えば、触媒残渣)が、ポリマー中及び/又はポリマー内に組み込まれる場合がある。ポリマーは、単一のポリマー、ポリマーブレンド、又は重合中にその場で形成されるポリマーの混合物を含むポリマー混合物であり得る。
【0010】
本明細書で使用される場合、「ポリエチレン」又は「エチレン系ポリマー」という用語は、過半量(50mol%超)のエチレンモノマーに由来する単位を含むポリマーを意味するものとする。これは、ポリエチレンホモポリマー又はコポリマー(2つ以上のコモノマーに由来する単位を意味する)を含む。当該技術分野において既知のポリエチレンの一般的な形態としては、低密度ポリエチレン(Low Density Polyethylene、LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(Linear Low Density Polyethylene、LLDPE)、極低密度ポリエチレン(Ultra Low Density Polyethylene、ULDPE)、超低密度ポリエチレン(Very Low Density Polyethylene、VLDPE)、直鎖状低密度樹脂及び実質的に直鎖状の低密度樹脂の両方を含む、シングルサイト触媒による直鎖状低密度ポリエチレン(m-LLDPE)、エチレン系プラストマー(ethylene-based plastomer、POP)及びエチレン系エラストマー(ethylene-based elastomer、POE)、中密度ポリエチレン(Medium Density Polyethylene、MDPE)、並びに高密度ポリエチレン(High Density Polyethylene、HDPE)が挙げられる。
【0011】
本明細書で使用される場合、「高圧低密度ポリエチレン」という用語は、オートクレーブ中又は管状反応器中で、過酸化物などのフリーラジカル開始剤を使用して、14,500psi(100MPa)を上回る圧力で部分的又は全体的に単独重合又は共重合されるポリエチレンを意味するものとする(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,599,392号を参照されたい)。本明細書で使用される場合、高圧低密度ポリエチレンは、0.916g/cm~0.940g/cmの範囲の密度を有する。
【0012】
本明細書で使用される場合、「多層構造体」という用語は、2つ以上の層を有する任意の構造体を指す。例えば、多層構造体は、2、3、4、5、又はそれ以上の層を有し得る。多層構造体は、文字で指定された層を有するものとして記載され得る。例えば、コア層B、並びに2つの外側層A及びCを有する3層構造体は、A/B/Cとして示され得る。同様に、2つのコア層B及びC、並びに2つの外側層A及びDを有する構造体は、A/B/C/Dとして示されることになる。本明細書に開示される多層構造体は、コーティング層及び基材層を含む構造体を含む。
【0013】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語及びそれらの派生語は、あらゆる追加の成分、工程、又は手順の存在を、それらが具体的に開示されているか否かにかかわらず、除外することを意図するものではない。いかなる疑念も避けるために、「含む(comprising)」という用語の使用を通して特許請求される全ての組成物は、別段矛盾する記述がない限り、ポリマー性か又は別のものであるかにかかわらず、あらゆる追加の添加剤、アジュバント、又は化合物を含み得る。対照的に、「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、操作性に必須ではないものを除き、あらゆる以降の記述の範囲からあらゆる他の成分、工程、又は手順を除外する。「からなる(consisting of)」という用語は、具体的に描写又は列記されていないあらゆる成分、工程、又は手順を除外する。
【0014】
実施形態では、本発明は、(a)基材を含む基材層と、(b)ポリエチレン組成物を含むコーティング層であって、ポリエチレン組成物が、(i)0.916g/cm~0.940g/cmの範囲の密度、2.0~30.0g/10分の範囲のメルトインデックス(I)、及び1,000個の総炭素原子当たり0.20個未満のビニル基を有する、高圧低密度ポリエチレン、並びに(ii)フリーラジカル発生剤及びポリエチレン樹脂を含むマスターバッチ組成物であって、フリーラジカル発生剤が、220℃で200秒未満の半減期、及び-250kJ/molより高い分解エネルギーを有し、ポリエチレン樹脂が、0.900g/cm~0.970g/cmの範囲の密度、0.01g/10分~100g/10分の範囲のメルトインデックスを有する、マスターバッチ組成物、を含む、コーティング層と、を含み、基材層が、コーティング層でコーティングされている、多層構造体を提供する。特定の理論に束縛されるものではないが、特定の高圧低密度ポリエチレンと、フリーラジカル発生剤を有する特定のマスターバッチ組成物とのブレンドが、そのブレンドを含まずに低密度ポリエチレン又は直鎖状低密度ポリエチレンを有するコーティング層を含む多層構造体と比較した場合に、ネックインの低減及びドローダウンの維持又は改善に寄与すると考えられる。
【0015】
本発明の多層構造体は、本明細書に記載の2つ以上の実施形態の組み合わせを含み得る。
【0016】
他の実施形態では、本発明は、包装などの物品に関する。実施形態では、物品は、本明細書に開示される本発明の多層構造体のうちのいずれかを含む。本発明の物品は、本明細書に記載の2つ以上の実施形態の組み合わせを含み得る。
【0017】
基材層
本発明の多層構造体は、基材を含む基材層を含む。コーティング層は、押出コーティングなどの当該技術分野において既知の技術を使用して、基材層に塗布される(すなわち、基材層がコーティング層でコーティングされる)。
【0018】
実施形態では、基材層の基材は、フィルム、不織布、織布、スクリム、箔、カーペット、プラスチック、サラン(saran)、紙、セルロース、又は金属のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0019】
コーティング層
本発明の多層構造体は、コーティング層を含む。コーティング層は、ポリエチレン組成物を含む。ポリエチレン組成物は、(i)0.916g/cm~0.940g/cmの範囲の密度、2.0~30.0g/10分の範囲のメルトインデックス(I)、及び1,000個の総炭素原子当たり0.20個未満のビニル基を有する、高圧低密度ポリエチレンと、(ii)フリーラジカル発生剤及びポリエチレン樹脂を含むマスターバッチ組成物であって、フリーラジカル発生剤が、220℃で200秒未満の半減期、及び-250kJ/molより高い分解エネルギーを有し、ポリエチレン樹脂が、0.900g/cm~0.970g/cmの範囲の密度、0.01g/10分~100g/10分の範囲のメルトインデックス(I)を有する、マスターバッチ組成物と、を含む。多層構造体は、ネックイン低減を強化し、ドローダウンを維持又は改善するコーティング層を含む。
【0020】
ポリエチレン組成物は、高圧低密度ポリエチレンを含む。実施形態では、ポリエチレン組成物は、90~99.5重量パーセント(重量%)の高圧低密度ポリエチレンと、0.5~10重量%のマスターバッチ組成物と、を含む。90~99.5重量%の高圧低密度ポリエチレンの全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に開示され、組み込まれる。例えば、ポリエチレン組成物は、90~99.5重量%、92~99.5重量%、95~99.5重量%、又は96~99.5重量%の高圧低密度ポリエチレンを含むことができ、ここで、重量パーセント(重量%)は、ポリエチレン組成物の総重量に基づく。同様に、0.5~10重量%のマスターバッチ組成物の全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に開示され、組み込まれる。例えば、ポリエチレン組成物は、0.5~10重量%、0.5~8重量%、0.5~5重量%、又は0.5~4重量%のマスターバッチ組成物を含むことができ、ここで、重量パーセント(重量%)は、ポリエチレン組成物の総重量に基づく。
【0021】
実施形態では、ポリエチレン組成物の高圧低密度ポリエチレンは、0.916g/cm~0.940g/cmの密度を有する。0.916g/cm~0.940g/cmの全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に開示され、含まれる。例えば、高圧低密度ポリエチレンは、0.916g/cm~0.940g/cm、0.916g/cm~0.935g/cm、0.916g/cm~0.930g/cm、0.916g/cm~0.925g/cm、又は0.916g/cm~0.920g/cmの密度を有することができる。
【0022】
実施形態では、ポリエチレン組成物の高圧低密度ポリエチレンは、2.0~30.0g/10分の範囲のメルトインデックス(I)を有する。2.0~30.0g/10分の全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に開示され、組み込まれる。例えば、高圧低密度ポリエチレンは、2.0~30.0g/10分、2.0~20g/10分、又は0.2~10g/10分の範囲のメルトインデックス(I)を有することができる。
【0023】
実施形態では、ポリエチレン組成物の高圧低密度ポリエチレンは、1,000個の総炭素原子当たり0.20個未満のビニル基を有する。1,000個の総炭素原子当たり0.20個未満のビニル基の全ての値及び部分範囲が、本明細書に開示され、含まれる。例えば、高圧低密度ポリエチレンは、1,000個の総炭素原子当たり0.20個未満のビニル基、1,000個の総炭素原子当たり0.18個未満のビニル基、1,000個の総炭素原子当たり0.16個未満のビニル基、1,000個の総炭素原子当たり0.14個未満のビニル基、1,000個の総炭素原子当たり0.12個未満のビニル基、1,000個の総炭素原子当たり0.10個未満のビニル基、1,000個の総炭素原子当たり0.08個未満のビニル基、又は1,000個の総炭素原子当たり0.06個未満のビニル基を有することができ、ビニル不飽和は、以下に記載の試験方法に従って測定することができる。
【0024】
実施形態では、高圧低密度ポリエチレンは、オートクレーブ反応器中で重合することができる。他の実施形態では、高圧低密度ポリエチレンは、管状反応器中で重合することができる。
【0025】
いくつかの実施形態におけるコーティング層のポリエチレン組成物に使用することができる高圧低密度ポリエチレンの例としては、The Dow Chemical Company(Midland,MI)から市販されている、DOW(商標)LDPE 772及びAGILITY(商標)(例えば、AGILITY(商標)EC7000及びAGILITY(商標)EC7080)高圧低密度ポリエチレンが挙げられる。
【0026】
ポリエチレン組成物は、フリーラジカル発生剤及びポリエチレン樹脂を含むマスターバッチ組成物を含む。実施形態では、フリーラジカル発生剤は、220℃で200秒未満の半減期及び-250kJ/molより高い(すなわち、-250kJ/molより負である)分解エネルギーを有する。いくつかの実施形態では、フリーラジカル発生剤は、220℃で175秒、150秒、又は125秒未満の半減期を有する。他の実施形態では、フリーラジカル発生剤は、220℃で60~200秒、60~175秒、60~150秒、60~125秒、又は60~120秒の半減期を有する。
【0027】
実施形態では、フリーラジカル発生剤は、200~1,000ダルトンの分子量を有し得る。200~1,000ダルトンの全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に含まれ、開示される。例えば、いくつかの実施形態では、フリーラジカル発生剤は、225~1000、250~1000、又は250~700の分子量を有し得る。
【0028】
実施形態では、フリーラジカル発生剤は、ポリエチレン樹脂の総量に対して、5ppm~1000ppmの範囲の量で存在する。5~1,000ppmの全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に含まれ、本明細書に開示され、例えば、ポリエチレン樹脂の総量に対するフリーラジカル発生剤の量は、5、10、20、30、50、80、100、200、300、400、500、600、700、800、又は900ppmの下限から、15、25、30、35、50、60、65、75、100、150、250、350、450、550、650、750、850、950、又は1000ppmの上限までの範囲であってもよい。
【0029】
本明細書における実施形態では、フリーラジカル発生剤は、環状過酸化物であってもよい。好適な環状過酸化物の例は、以下の式で表されてもよく
【化1】

式中、R1~R6は、独立して、水素又は不活性に置換又は非置換のC1~C20アルキル、C3~C20シクロアルキル、C6~C20アリール、C7~C20アラルキル、又はC7~C20アルカリールである。R1~R6に含まれる不活性置換基の代表は、ヒドロキシル、C1~C20アルコキシ、直鎖又は分岐C1~C20アルキル、C6~C20アリールオキシ、ハロゲン、エステル、カルボキシル、ニトリル、及びアミドである。いくつかの実施形態では、R1~R6は、各々独立して、例えば、C1~C10アルキル又はC1~C4アルキルを含む低級アルキルである。
【0030】
本明細書に記載のような環状過酸化物のいくつかは市販されているが、そうでなければ、米国特許第3,003,000号;Uhlmann,3rd Ed.,Vol.13,pp.256-57(1962);論文、”Studies in Organic Peroxides XXV Preparation,Separation and Identification of Peroxides Derived from Methyl Ethyl Ketone and Hydrogen Peroxide,”Milas,N.A.and Golubovic,A.,J.Am.Chem.,Soc,Vol.81,pp.5824-26(1959);”Organic Peroxides”,Swern,D.editor,Wiley-Interscience,New York(1970);及びHouben-Weyl Methoden der Organische Chemie,El 3,Volume 1,page 736に記載のように、ケトンを過酸化水素と接触させることによって作製することができる。
【0031】
他の環状過酸化物の例としては、アセトン、メチルアミルケトン、メチルヘプチルケトン、メチルヘキシルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトンメチルオクチルケトン、メチルノニルケトン、メチルデシルケトン、及びメチルウンデシルケトンから誘導されるものが挙げられる。環状過酸化物は、単独で、又は互いに組み合わせて使用することができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、環状過酸化物は、商品名TRIGONOX301の下でAkzoNobelから市販されている3,6,9-トリエチル-3-6-9-トリメチル-1,4,7-トリペロキソナンであってもよい。本明細書で使用される環状過酸化物は、過酸化物及びその中に担持される希釈剤(存在する場合)の融点に応じて、液体、固体、又はペーストであり得る。
【0033】
マスターバッチ組成物のポリエチレン樹脂は、0.900g/cm~0.970g/cmの範囲の密度及び0.01g/10分~100g/10分の範囲のメルトインデックス(I)を有する。0.900g/cm~0.970g/cmの範囲の密度及び0.01g/10分~100g/10分の範囲のメルトインデックスの全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に含まれ、開示される。例えば、いくつかの実施形態では、密度は、0.900、0.902、0.905、0.907、0.910、0.912、0.915、0.920、0.925、0.930、0.935、又は0.940g/cmの下限から、0.970、0.965、0.960、0.955、0.950、0.945、0.942、0.940、0.937、0.935、0.930、0.927、0.925、0.922、又は0.920g/cmの上限までの範囲である。他の実施形態では、密度は、0.905g/cm~0.965g/cm、0.905g/cm~0.960g/cm、0.907g/cm~0.960g/cm、0.910g/cm~0.955g/cm、0.910g/cm~0.950g/cm、0.910g/cm~0.947g/cm、0.910g/cm~0.945g/cm、0.910g/cm~0.9420g/cm、又は0.910g/cm~0.940g/cmの範囲である。例えば、いくつかの実施形態では、メルトインデックス(I)は、0.01、0.05、0.1、0.5、1、3、5、7、10、12、15、18、20、23、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、又は90の下限から、100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、27、25、22、20、17、15、12、10、8、5、2、1、0.9、0.7、又は0.5の上限までの範囲である。他の実施形態では、メルトインデックス(I)は、0.05g/10分~30g/10分、0.1g/10分~30g/10分、0.1g/10分~25g/10分、0.1g/10分~20g/10分、0.1g/10分~18g/10分、0.1g/15分~30g/10分、0.25g/10分~15g/10分、0.25g/10分~12g/10分、0.25g/10分~10g/10分、0.25g/10分~8g/10分、0.25g/10分~5g/10分の範囲である。
【0034】
ポリエチレン樹脂は、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、又はそれらの組み合わせであってもよい。いくつかの実施形態では、ポリエチレン樹脂は、LDPEである。他の実施形態では、ポリエチレン樹脂は、LLDPEである。更なる実施形態では、ポリエチレンは、MDPE又はHDPEである。
【0035】
ポリエチレン樹脂がLLDPEである本明細書における実施形態では、LLDPEは、均質分岐状、若しくは不均質分岐状、及び/又は単峰性若しくは多峰性(例えば二峰性)のポリエチレンであってもよい。直鎖状低密度ポリエチレンは、エチレンホモポリマー、エチレンと少なくとも1つのコモノマーのインターポリマー、及びそれらのブレンドを含む。好適なコモノマーの例としては、アルファ-オレフィンが挙げられ得る。好適なアルファ-オレフィンとしては、3~20個の炭素原子(C3~C20)を含有するものが挙げられ得る。例えば、アルファ-オレフィンは、C4~C20アルファ-オレフィン、C4~C12アルファ-オレフィン、C3~C10アルファ-オレフィン、C3~C8アルファ-オレフィン、C4~C8アルファ-オレフィン、又はC6~C8アルファ-オレフィンであってもよい。いくつかの実施形態では、直鎖状低密度ポリエチレンは、エチレン/アルファ-オレフィンコポリマーであり、アルファ-オレフィンは、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、及び1-デセンからなる群から選択される。他の実施形態では、直鎖状低密度ポリエチレンは、エチレン/アルファ-オレフィンコポリマーであり、アルファ-オレフィンは、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、及び1-オクテンからなる群から選択される。更なる実施形態では、直鎖状低密度ポリエチレンは、エチレン/アルファ-オレフィンコポリマーであり、アルファ-オレフィンは、1-ヘキセン及び1-オクテンからなる群から選択される。
【0036】
直鎖状低密度ポリエチレンは、当該技術分野において既知の任意の種類の反応器又は反応器構成、例えば、流動床気相反応器、ループ反応器、撹拌槽反応器、バッチ反応器を、並列、直列、及び/又はそれらの任意の組み合わせで使用して、気相、液相、若しくはスラリー重合プロセス、又はそれらの任意の組み合わせを介して作製することができる。いくつかの実施形態では、気相又はスラリー相反応器が、使用される。好適な直鎖状低密度ポリエチレンは、国際公開第2005/111291(A1)(参照により本明細書に組み込まれる)における15~17頁及び20~22頁に記載されるプロセスに従って生産してもよい。本明細書に記載の直鎖状低密度ポリエチレンを作製するために使用される触媒としては、チーグラー・ナッタ、クロム、メタロセン、拘束幾何、又はシングルサイト触媒が挙げられ得る。好適な直鎖状低密度ポリエチレンの例としては、米国特許第5,272,236号、米国特許第5,278,272号、米国特許第5,582,923号、米国特許第5,733,155号、及び欧州特許第2653392号に更に定義され、かつ参照により組み込まれる、実質的に直鎖状のエチレンポリマー;参照によりに組み込まれる米国特許第3,645,992号におけるものなどの均質分岐状の直鎖状エチレンポリマー組成物;米国特許第4,076,698号に開示されているプロセスに従って調製されたものなどの不均質分岐状エチレンポリマー;並びに/又はそれらのブレンド(米国特許第3,914,342号又は米国特許第5,854,045号に開示されているものなど)が挙げられ、これらは全て参照により組み込まれる。いくつかの実施形態では、直鎖状低密度ポリエチレンとしては、例えば、ELITE(商標)5100G又は5400G樹脂、ELITE(商標)AT 6401、ATTANE(商標)4201又は4202樹脂、AFFINITY(商標)1840、及びDOWLEX(商標)2020、2045G、2049G、又は2685樹脂を含む、The Dow Chemical Companyによって販売されているELITE(商標)、ELITE(商標)AT、ATTANE(商標)、AFFINITY(商標)、FLEXOMER(商標)、又はDOWLEX(商標)樹脂;例えば、EXCEED(商標)1012、1018、又は1023JA樹脂、及びENABLE(商標)27-03、27-05、又は35-05樹脂を含む、Exxon Mobil Corporationによって販売されているEXCEED(商標)又はENABLE(商標)樹脂;例えば、LLDPE LF1020又はHIFOR Xtreme(商標)SC74836樹脂を含む、Westlake Chemical Corporationによって販売されている直鎖状低密度ポリエチレン樹脂;例えば、PETROTHENE(商標)GA501及びLP540200樹脂、並びにALATHON(商標)L5005樹脂を含む、LyondellBasell Industriesによって販売されている直鎖状低密度ポリエチレン樹脂;例えば、SCLAIR(商標)FP120及びNOVAPOL(商標)TF-Y534を含む、Nova Chemicals Corp.によって販売されている直鎖状低密度ポリエチレン樹脂;例えば、mPACT(商標)D139又はD350樹脂及びMARFLEX(商標)HHM TR-130樹脂を含む、Chevron Phillips Chemical Company,LLCによって販売されている直鎖状低密度ポリエチレン樹脂;例えば、BORSTAR(商標)FB 2310樹脂を含む、Borealis AGによって販売されている直鎖状低密度ポリエチレン樹脂が挙げられ得る。
【0037】
ポリエチレン樹脂がMDPEである本明細書における実施形態では、MDPEは、エチレンホモポリマー又はエチレン及びアルファ-オレフィンのコポリマーであってもよい。好適なアルファ-オレフィンとしては、3~20個の炭素原子(C3~C20)を含有するものが挙げられ得る。例えば、アルファ-オレフィンは、C4~C20アルファ-オレフィン、C4~C12アルファ-オレフィン、C3~C10アルファ-オレフィン、C3~C8アルファ-オレフィン、C4~C8アルファ-オレフィン、又はC6~C8アルファ-オレフィンであってもよい。いくつかの実施形態では、MDPEは、エチレン/アルファ-オレフィンコポリマーであり、アルファ-オレフィンは、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、及び1-デセンからなる群から選択される。他の実施形態では、MDPEは、エチレン/アルファ-オレフィンコポリマーであり、アルファ-オレフィンは、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、及び1-オクテンからなる群から選択される。MDPEは、0.923g/cm~0.935g/cmの密度を有してもよい。全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に含まれ、開示される。
【0038】
MDPEは、当該技術分野において既知の任意の種類の反応器又は反応器構成、例えば、流動床気相反応器、ループ反応器、撹拌槽反応器、バッチ反応器を、並列、直列、及び/又はそれらの任意の組み合わせで使用して、気相、液相、若しくはスラリー重合プロセス、又はそれらの任意の組み合わせによって作製してもよい。いくつかの実施形態では、気相又はスラリー相反応器が、使用される。いくつかの実施形態では、MDPEは、並列又は直列のいずれかの二重反応器モードで動作する溶液プロセスにおいて作製される。MDPEはまた、高圧、フリーラジカル重合プロセスによっても作製され得る。高圧、フリーラジカル重合によってMDPEを調製するための方法は、米国特許出願公開第2004/0054097号(参照により本明細書に組み込まれる)に見出すことができ、オートクレーブ又は管状反応器、並びにそれらの任意の組み合わせにおいて実施することができる。本明細書に記載のMDPEを作製するために使用される触媒としては、チーグラー・ナッタ、メタロセン、拘束幾何、シングルサイト触媒、又はクロム系触媒が挙げられ得る。例示的な好適なMDPE樹脂としては、The Dow Chemical Companyによって販売されている樹脂、例えば、DOWLEX(商標)2038.68G又はDOWLEX(商標)2042G、LyondellBasell Industries(Houston,TX)によって販売されている樹脂、例えば、PETROTHENE(商標)L3035、The ExxonMobil Chemical Company(Houston,TX)によって販売されているENABLE(商標)樹脂、Chevron Phillips Chemical Company LPによって販売されている樹脂、例えば、MARFLEX(商標)TR-130、並びにTotal Petrochemicals&Refining USA Inc.によって販売されている樹脂、例えば、HF 513、HT 514、及びHR 515が挙げられ得る。他の例示的なMDPE樹脂は、米国特許出願公開第2014/0255674号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0039】
ポリエチレン樹脂がHDPEである本明細書における実施形態では、HDPEはまた、エチレンホモポリマー又はエチレン及びアルファ-オレフィンのコポリマーであってもよい。好適なアルファ-オレフィンとしては、3~20個の炭素原子(C3~C20)を含有するものが挙げられ得る。例えば、アルファ-オレフィンは、C4~C20アルファ-オレフィン、C4~C12アルファ-オレフィン、C3~C10アルファ-オレフィン、C3~C8アルファ-オレフィン、C4~C8アルファ-オレフィン、又はC6~C8アルファ-オレフィンであってもよい。いくつかの実施形態では、HDPEは、エチレン/アルファ-オレフィンコポリマーであり、アルファ-オレフィンは、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、及び1-デセンからなる群から選択される。他の実施形態では、HDPEは、エチレン/アルファ-オレフィンコポリマーであり、アルファ-オレフィンは、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、及び1-オクテンからなる群から選択される。使用されるコモノマーの量は、本開示を把握する当業者に明らかであろうように、温度及び圧力、並びにテロマーなどの存在又は非存在などの他の因子のような加工条件を考慮し、HDPEポリマーの所望の密度、及び選択される特定のコポリマーに依存するであろう。HDPEは、0.935g/cm~0.975g/cmの密度を有してもよい。全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に含まれ、開示される。
【0040】
HDPEは、当該技術分野において既知の任意の種類の反応器又は反応器構成、例えば、流動床気相反応器、ループ反応器、撹拌槽反応器、バッチ反応器を、並列、直列、及び/又はそれらの任意の組み合わせで使用して、気相、液相、若しくはスラリー重合プロセス、又はそれらの任意の組み合わせによって作製してもよい。いくつかの実施形態では、気相又はスラリー相反応器が、使用される。いくつかの実施形態では、HDPEは、並列又は直列のいずれかの二重反応器モードで動作する溶液プロセスにおいて作製される。本明細書に記載のHDPEを作製するために使用される触媒としては、チーグラー・ナッタ、メタロセン、拘束幾何、シングルサイト触媒、又はクロム系触媒が挙げられ得る。HDPEは、単峰性、二峰性、及び多峰性であり得る。市販されている例示的なHDPE樹脂としては、例えば、The Dow Chemical Company(Midland,MI)より入手可能なELITE(商標)5940G、ELITE(商標)5960G、HDPE 35454L、HDPE82054、HDPEDGDA-2484 NT、DGDA-2485 NT、DGDA-5004 NT、DGDB-2480 NT樹脂、Equistar Chemicals,LPより入手可能なL5885及びM6020HDPE樹脂、LyondellBasell Industries(Houston,TX)からのALATHON(商標)L5005、及びChevron Phillips Chemical Company LPからのMARFLEX(商標)HDPE HHM TR-130が挙げられる。他の例示的なHDPE樹脂は、米国特許第7,812,094号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0041】
多層構造体及び形成方法
本発明の多層構造体は、いくつかの実施形態では、基材層と、その上に堆積させたコーティング層とを含む(上述のとおり)。特定のマスターバッチ及び高圧低密度ポリエチレンのブレンドをコーティング層に組み込むことは、有利には、加工中のネックインの改善された低減を提供し、これは、構造体の加工性に有益である。
【0042】
多層構造体を形成するための方法が開示される。方法は、(a)0.916g/cm~0.940g/cmの範囲の密度、2.0~30.0g/10分の範囲のメルトインデックス()、及び1,000個の総炭素原子当たり0.20個未満のビニル基を有する、高圧低密度ポリエチレン(上述のとおり)を提供することと、(b)フリーラジカル発生剤及びポリエチレン樹脂を含むマスターバッチ組成物(上述のとおり)を提供することであって、フリーラジカル発生剤が、220℃で200秒未満の半減期、及び-250kJ/molより高い分解エネルギーを有し、ポリエチレン樹脂が、0.900g/cm~0.970g/cmの範囲の密度、0.01g/10分~100g/10分の範囲のメルトインデックスを有する、提供することと、(c)高圧低密度ポリエチレンをマスターバッチ組成物と反応させて、ポリエチレン組成物を形成することと、(d)ポリエチレン組成物を、基材を含む基材層上にコーティング層として押出コーティングして、多層構造体を形成することと、を含む。
【0043】
高圧低密度ポリエチレンをマスターバッチ組成物と反応させることは、ポリマーが溶融してマスターバッチと混合される任意の慣習的な混合装置中で実施することができる。好適な装置は、当業者に既知であり、例えば、混合機、混練機、及び押出機を含む。いくつかの実施形態では、高圧低密度ポリエチレンをフリーラジカル発生剤と反応させることは、押出機中で行われる。押出機は更に、インフレーションフィルム又はキャストフィルムのラインに取り付けられてもよい。いくつかの実施形態では、高圧低密度ポリエチレンをフリーラジカル発生剤と反応させることは、インフレーションフィルム又はキャストフィルムのラインに取り付けられた押出機中で行われる。
【0044】
例示的な押出機又は混練機の装置としては、例えば、単軸スクリュー押出機、二重反転二軸スクリュー押出機及び共回転二軸スクリュー押出機、プラネタリーギア押出機、リング押出機、又は共混練機が挙げられる。好適な押出機及び混練機は、例えば、Handbuch der Kunststoftextrusion,Vol 1 Grundlagen,Editors F.Hensen,W.Knappe,H.Potente,1989,pp.3-7,ISBN.3-446-14339-4(Vol 2 Extrusionsanlagen 1986,ISBN 3-446-14329-7)に更に記載されている。本明細書における実施形態では、スクリュー長は、スクリュー径の1~60倍、又はスクリュー径の35~48倍の範囲であり得る。スクリューの回転速度は、10~600回転/分(rotations per minute、rpm)、又は25~300rpmの範囲であってもよい。最大スループットは、スクリュー径、回転速度、及び駆動力に依存する。本発明のプロセスはまた、記載されるパラメータを変動させることによって、又は投与量を送達する計量機を用いることによって、最大スループットより低いレベルで実施することもできる。
【0045】
高圧低密度ポリエチレン及びマスターバッチは、60:40~99.9:0.1の比率で反応させてもよい。全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に含まれ、開示される。例えば、いくつかの実施形態では、高圧低密度ポリエチレン及びマスターバッチは、65:35~99.9:0.1、65:35~99.9:0.1、70:30~99.9:0.1、75:25~99.9:0.1、80:20~99.9:0.1、85:15~99.9:0.1、90:10~99.9:0.1、95:5~99.9:0.1、97:3~99.9:0.1、95:5~99:1、又は97:3~99:1の比率で反応させてもよい。高圧低密度ポリエチレン及びマスターバッチはまた、高圧低密度ポリエチレン中のマスターバッチの量が0.1~40重量%の範囲となるように反応させてもよい。全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に含まれ、開示される。例えば、いくつかの実施形態では、高圧低密度ポリエチレン及びマスターバッチは、第1のポリエチレン樹脂中のマスターバッチの量が、0.1~35重量%、0.1~30重量%、0.1~25重量%、0.1~20重量%、0.1~15重量%、0.1~10重量%、0.1~5重量%、0.1~3重量%、1~5重量%、又は1~3重量%の範囲となるように反応させてもよい。
【0046】
高圧低密度ポリエチレン及びマスターバッチは、高圧低密度ポリエチレンとフリーラジカル発生剤との間の反応が行われ得るように、十分な時間、ポリマーの軟化点を超える温度に供される。いくつかの実施形態では、高圧低密度ポリエチレン及びマスターバッチは、280℃以下の温度に供される。280℃以下の全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に含まれ、本明細書に開示される。例えば、温度は、280、260、250、240、220、200、180、又は160℃以下であり得る。いくつかの実施形態では、温度は、120℃~280℃、140℃~280℃、160℃~280℃、180℃~280℃、又は180℃~260℃である。代替の実施形態では、温度は、200℃~260℃である。反応に必要な時間が、温度、反応させる材料の量、及び使用される装置の種類に応じて変動し得ることが、理解されるであろう。例示的な条件下において、ポリマーの軟化点を超える温度が維持される時間は、10秒~30分であってもよい。全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に含まれ、本明細書に開示される。例えば、時間は、10秒、20秒、30秒、1分、5分、15分、又は25分の下限から、45秒、3分、8分、10分、12分、15分、18分、20分、23分、又は30分の上限までであり得る。例えば、時間は、10秒~20分の範囲であり得、又は代替的に、時間は、10秒~15分の範囲であり得、又は代替的に、時間は、10秒~10分の範囲であり得、又は代替的に、時間は、20秒~20分の範囲であり得、又は代替的に、時間は、15分~30分の範囲であり得る。
【0047】
実施形態では、方法は、(a)0.916g/cm~0.940g/cmの範囲の密度、2.0~30.0g/10分の範囲のメルトインデックス(I)、及び1,000個の総炭素原子当たり0.20個未満のビニル基を有する、高圧低密度ポリエチレン(上記のとおり)を提供することと、(b)フリーラジカル発生剤及びポリエチレン樹脂を含むマスターバッチ組成物(上述のとおり)を提供することであって、フリーラジカル発生剤が、220℃で200秒未満の半減期、及び-250kJ/molより高い分解エネルギーを有し、ポリエチレン樹脂が、0.900g/cm~0.970g/cmの範囲の密度、0.01g/10分~100g/10分の範囲のメルトインデックスを有する、提供することと、(c)高圧低密度ポリエチレンをマスターバッチ組成物と反応させて、ポリエチレン組成物を形成することと、(d)ポリエチレン組成物を、基材を含む基材層上にコーティング層として押出コーティングして、多層構造体を形成することであって、コーティング層としてのポリエチレン組成物の押出コーティング中に、コーティング層が、440フィート/分で4.00インチ未満、又は代替的に3.50インチ未満、又は代替的に3.00インチ未満、又は代替的に2.50インチ未満のネックインを有する、形成することと、を含む。
【0048】
実施形態では、方法は、(a)0.916g/cm~0.940g/cmの範囲の密度、2.0~30.0g/10分の範囲のメルトインデックス(I)、及び1,000個の総炭素原子当たり0.20個未満のビニル基を有する、高圧低密度ポリエチレン(上記のとおり)を提供することと、(b)フリーラジカル発生剤及びポリエチレン樹脂を含むマスターバッチ組成物(上述のとおり)を提供することであって、フリーラジカル発生剤が、220℃で200秒未満の半減期、及び-250kJ/molより高い分解エネルギーを有し、ポリエチレン樹脂が、0.900g/cm~0.970g/cmの範囲の密度、0.01g/10分~100g/10分の範囲のメルトインデックスを有する、提供することと、(c)高圧低密度ポリエチレンをマスターバッチ組成物と反応させて、ポリエチレン組成物を形成することと、(d)ポリエチレン組成物を、基材を含む基材層上にコーティング層として押出コーティングして、多層構造体を形成することであって、コーティング層としてのポリエチレン組成物の押出コーティング中に、コーティング層が、880フィート/分で3.50インチ未満、又は代替的に3.00インチ未満、又は代替的に2.50インチ未満のネックインを有する、形成することと、を含む。
【0049】
物品
本発明の多層構造体を使用して、包装などの物品を形成することができる。そのような物品は、本明細書に記載の多層構造体のうちのいずれかから形成することができる。
【0050】
本発明の多層構造体から形成することができる物品の例としては、可撓性包装、パウチ、自立型パウチ、及び既製の包装又はパウチが挙げられ得る。いくつかの実施形態では、本発明の多層構造体又は物品は、工業用包装に使用することができる。そのような物品は、本明細書の教示に基づいて、かつ包装の特定の使用に基づいて、当業者に既知の技術を使用して形成することができる。
【0051】
試験方法
本明細書に別段示されない限り、本発明の態様の説明では以下の分析方法を使用する。
【0052】
密度
密度は、ASTM D792に従って測定され、1立方センチメートル当たりのグラム(g/cm)で表される。
メルトインデックス(I
【0053】
メルトインデックス、又はIは、190℃、2.16kgでASTM D1238に従って測定される。
【0054】
ビニル不飽和
試料は、約130mgの試料を、Norell 1001-7の10mmのNMR管中で、重量で50/50のテトラクロロエタン-d2/ペルクロロエチレン3.25gに、0.001MのCr(AcAc)3とともに添加することによって調製した。試料は、管に挿入したピペットを介して、およそ5分間、溶剤を通して窒素を通気することによりパージし、蓋をして、テフロンテープで密封してから、室温で一晩浸して、試料の溶解を容易にした。試料を115℃で加熱してボルテックスし、均質性を確保した。
【0055】
H NMRは、Bruker Dual DUL高温CryoProbeを備えた、Bruker AVANCE400MHz分光計上で、試料温度120℃で実行した。総ポリマープロトンを定量化するための対照スペクトル、及び二重の予備飽和実験である、2つの実験を実施してスペクトルを得、その実験により、強いポリマー骨格ピークが抑制され、末端基の定量化のための高感度スペクトルが可能になった。この対照は、ZGパルス、4走査、AQ 1.64秒、D1(緩和遅延)14秒で実施した。二重の予備飽和実験は、修正パルス配列、100走査、DS 4、AQ 1.64秒、D1(予備飽和時間)1秒、D13(緩和遅延)13秒で実施した。4.95~5.15ppmの領域を積分して、ビニル含有量を決定した。
【0056】
半減期
2042(エイコサン)中の10(w/w)%溶液としての異なるフリーラジカル発生剤(free radical generator、FRG)の熱分解を、等温条件及び温度走査モードの両方において、SensysEvo DSC機器(Setaram,France)を用いて調査した。FRGの熱分解の速度則(速度論的パラメータ)を得るために、C2042(エイコサン)中のFRGの10(w/w)%溶液を、5種類の異なる走査速度、すなわち、それぞれ1℃/分、2.5℃/分、5℃/分、10℃/分、及び20℃/分で75℃~350℃の温度間隔において温度走査モードで測定した。約60mgの試料(エイコサン中のFRGの10(w/w)%)を、170mLのAlパンに装填し、75℃(パラフィンの融点を超える)窒素雰囲気下(20cc/分)にあるDSC機器に入れた。熱平衡の後、温度を上記の温度プログラムに従って走査し、サーモグラムを記録した。120℃~320℃の温度間隔で発熱ピークを記録した。放出される熱量、-ΔHr(J/g)を、各試験片のDSC曲線から決定し、これにより、温度による反応進行/変換の計算が可能になる。分解速度則を記載する速度論的パラメータは、等変換法(AKTS Thermokineticソフトウェア、AKTS AG,Switzerlandを使用する)及びSestak-Berggren自己触媒モデルに従う最良パラメータの両方によって決定した。活性化エネルギー、E(kJ/mol)、及び分解進行、αの関数としての見かけ上の頻度因子、lnΑ(α)・f(α)(s-1(-)は、Friedmanの微分等変換法及びOzawaの積分等変換法を使用して決定する。Sestak-Berggren式の一般的な形式は、以下に与えられ、
【数1】

上記式中の活性化エネルギー、E、頻度因子、A、並びに反応次数、m及びnは、最良適合法によって決定する。次いで、E、A、m、及びnのパラメータは、AKTS Thermokineticソフトウェアを使用して、任意の温度におけるFRGの半減期を計算するために使用することができる。
【0057】
分解エネルギー及びピーク分解温度
示差走査熱量測定(Differential Scanning calorimetry、DSC)を使用して、分解エネルギー及びピーク分解温度を測定した。RCS(冷蔵冷却システム)を備えたTA Instruments Q2000 DSCを使用して、この分析を実行した。0.5~2mgの試料をガラス毛細管に入れ、秤量し、「コールドフィンガー」デバイスを使用して冷却を維持しながら窒素下で火炎密封した。次いで、分析を実行して、その熱特性を決定した。
【0058】
試料の熱的挙動は、試料温度を上昇させて、熱流対温度プロファイルを作成することによって決定した。最初に、試料を、10℃/分の速度で0℃~400℃に加熱した。次に、試料を冷却した。次いで、試料を、10℃/分の加熱速度で再度加熱した(これは「再加熱」上昇である)。両方の加熱曲線を、記録した。初期熱曲線は、熱活性の開始から終了までのベースラインポイントを設定することによって分析した。再加熱は、積分の開始及び終了の決定を支援するために使用した。
【0059】
フリーラジカル発生剤について、第1の熱サイクルの曲線とベースラインとの間の面積の積分によって、ピーク温度及び全分解エネルギーが記録された。分解が発熱性である場合、負の熱流があるという事実のために、曲線とベースラインとの間の面積は、負として積分される。すなわち、試料は、熱を発生する。試料が吸熱性であり、熱を吸収するようにする場合、面積は、正の数として積分される。
【0060】
発熱性のピーク下の熱は、純度によって除算され、100%純粋なラジカル発生剤に外挿して推定した。
【0061】
高温ゲル浸透クロマトグラフィー(High Temperature Gel Permeation Chromatography、HT-GPC)
赤外線濃度検出器(IR-5)からなるPolymerChar(Valencia,Spain)の高温ゲル浸透クロマトグラフィーシステムをMW及びMWDの決定に使用する。溶媒送達ポンプ、オンライン溶媒脱ガスデバイス、自動サンプラー、及びカラムオーブンは、Agilent製である。カラム区画及び検出器区画は、150℃で動作する。カラムは、3つのPLgel 10μm混合-Bカラム(Agilent)である。担体溶媒は、1.0mL/分の流速を有する1,2,4-トリクロロベンゼン(trichlorobenzene、TCB)である。クロマトグラフィー用及び試料調製用の両方の溶媒源は、250ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(hydroxytoluene、BHT)を含有しており、窒素スパージされる。ポリエチレン試料は、注入直前に自動サンプラーにおいて160℃で3時間TCB中に溶解することによって、2mg/mLの標的ポリマー濃度で調製される。注入体積は、200μLである。
【0062】
GPCカラムセットの較正は、21の狭分子量分布のポリスチレン標準物を用いて実行する。標準物の分子量は、580~8,400,000g/molの範囲であり、個々の分子量間に少なくとも10の隔たりがあり、6つの「カクテル」混合物に並べられる。ポリスチレン標準物ピーク分子量を、以下の式を使用してポリエチレン分子量に変換する(Williams and Ward,J.Polym.Sci.,Polym.Let.,6,621(1968)に記載のとおり)。
【数2】
【0063】
式中、Bは、1.0の値を有し、Aの実験的に決定された値は、約0.42である。
【0064】
三次多項式を使用して、式(1)から得られたそれぞれのポリエチレン等価較正点をそれらの観察された溶出体積に適合させる。実際の多項式の適合は、ポリエチレン等価分子量の対数を各ポリスチレン標準物について観察された溶出体積(及び関連する力)に関連付けるように得られる。
【0065】
数平均、重量平均、及びz平均の分子量は、以下の式に従って計算する。
【数3】

【数4】

【数5】

式中、Wfは、i番目の成分の重量分率であり、Mは、i番目の成分の分子量である。MWDは、重量平均分子量(Mw)の数平均分子量(Mn)に対する比率として表される。
【0066】
正確なA値は、式(1)のA値を、式(3)を使用して計算した重量平均分子量及び対応する保持容量多項式が、既知の重量平均分子量が120,000g/molである直鎖状ホモポリマー参照物に従って得られたMwの独立して決定された値と一致するまで調整することによって決定した。
【0067】
ネックイン
ネックインは、ダイの出口におけるウェブ幅と、コーティングされた基材の形成後のコーティング層幅との間の差として測定され、報告される。幅の低減は、ネックインであり、インチで報告される。
【0068】
ドローダウン
ドローダウンは、ウェブが破断する前にウェブが延伸され得る速度として報告される。ドローダウンを測定するために、ウェブが破断するまでラインの速度を増加させ、ウェブが破断した時点の速度をドローダウンとしてフィート/分(feet per minute、fpm)で報告する。
【実施例
【0069】
以下の実施例は、本開示の特徴を例示するものであるが、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。以下の材料を、実施例で使用する。
【0070】
【表1】

*表1における全ての樹脂は、The Dow Chemical Company(Midland,MI)から市販されている。
**未測定=NM
【0071】
表1の高圧低密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンポリマーに加えて、マスターバッチ組成物DOWLEX(商標)GM AX01を使用する。DOWLEX(商標)GM AX01は、The Dow Chemical Company(Midland,MI)から市販されている。DOWLEX(商標)GM AX01は、フリーラジカル発生剤(環状過酸化物)及びポリエチレン樹脂を含む。フリーラジカル発生剤は、220℃で82秒の半減期、-835(kJ/mol)の分解エネルギー、264.3ダルトンの分子量、及び208℃のピーク分解温度を有する。マスターバッチ組成物のポリエチレン樹脂は、0.920g/cmの密度及び16g/10分のメルトインデックス(I)を有する。フリーラジカル発生剤は、マスターバッチ組成物を形成するために、ポリエチレン樹脂の総量に対して1,000ppmの量で添加される。
【0072】
押出コーティングブレンド研究を実施し、表1の高圧低密度ポリエチレン又は直鎖状低密度ポリマーをマスターバッチ組成物DOWLEX(商標)GM AX01(「MB」)とブレンドし、このブレンドを50ポンドの多層褐色クラフト紙(基材を含む基材層)上にコーティングすることによって、ネックイン低減を確認する。本発明の実施例(発明例)及び比較実施例(比較例)が、以下の表2に提供され、各々は、ブレンドされて50ポンドの多層褐色クラフト紙上に押出コーティングされた特定量のLDPE及びMBを含む。
【0073】
押出コーティングの試行は、従来のコーティング手順に従ってBlack-Clawsonラインを使用して実行される。単層コーティングは、150 HP Eurothermドライブを搭載した主要な直径3.5インチの押出機(30:1 L/D)のみを使用して、3層ECラインを使用して押出される。一次バレルは、温度プロファイルA1-16=180/230/285/315/315/315℃を有する6つのヒーターゾーンからなる。内部デッケルエッジビード低減を有する36インチNordson36インチAutoflex VI LH40 EPCダイを使用し、0.5~0.6mm(0.020インチ)ダイギャップ及び153mm(6インチ)エアギャップを設定する。このラインには、30インチのチルロール、ニップロール、バッキングロール、及びシャースリッターが備えられている。押出コーティングの実施は、600℃(又は315℃)で25gsm、90RPMのねじ速度及び250lbs/時、24インチのダイ幅、20ミルのダイギャップで実行され、50ポンドの多層褐色クラフト紙上に440ft/分で1ミルのコーティング厚さに変換される。
【0074】
【表2】
【0075】
基材層(クラフト紙)上へのコーティング層(すなわち、LLDPE又はLDPE及びMBのブレンド)の押出コーティング中に、コーティング層のネックイン及びドローダウンを、上述の試験方法に従って測定する。以下の表3は、結果を提供する。
【0076】
【表3】

*ドローダウンを測定するための最大ライン速度。
【0077】
表3に見られるように、比較実施例1~4は、押出コーティングにおいて一般的に使用される5つの異なる高圧低密度ポリエチレンを表し、MB組成物を添加して(本発明の実施例1~8)そのブレンドが基材上に押出される場合に、ネックインが低減され、ドローダウンが維持又は改善される。比較実施例5及び6はLLDPEを含み、MB組成物をLLDPEに添加しても加工中のネックインは改善されなかった。
【国際調査報告】