(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-20
(54)【発明の名称】被験者の睡眠姿勢を決定するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/107 20060101AFI20231213BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
A61B5/107 300
A61B5/11 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528953
(86)(22)【出願日】2021-12-08
(85)【翻訳文提出日】2023-05-16
(86)【国際出願番号】 EP2021084682
(87)【国際公開番号】W WO2022122779
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145654
【氏名又は名称】矢ヶ部 喜行
(72)【発明者】
【氏名】シッペル アルフォンスス タレシシウス ヨゼフ マリア
(72)【発明者】
【氏名】ドス サントス ダ フォンセカ ペドロ ミゲル フェレイラ
(72)【発明者】
【氏名】ブルーウェル ヤン
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038VA06
4C038VB01
4C038VB32
4C038VB33
4C038VC20
(57)【要約】
被験者の睡眠姿勢を決定するためのシステム及び方法は、被験者に結合される3軸加速度計を使用する。3軸加速度計の複数の3軸加速度信号が経時的に分析され、この分析から、基準の頭尾回転軸が導出される。関心のある(すなわち、特定の時点における)加速度測定に対し、基準の頭尾回転軸周りの回転角が決定され、従って、前記基準の頭尾回転軸に対する睡眠姿勢を示すことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の睡眠姿勢を決定するためのシステムであって、前記システムは、
前記被験者に結合するための3軸加速度計、及び
制御器
を有し、前記制御器は、
前記3軸加速度計の経時的な複数の3軸加速度信号から、水平面内にあると仮定される基準の頭尾回転軸を決定し、及び
関心のある加速度測定に対し、前記基準の頭尾回転軸周りの回転角を決定する
ように適応する、システム。
【請求項2】
前記制御器は、
3軸加速度測定の複数の対に対し、夫々のクロス積ベクトルを導出する、
全ての結果生じるクロス積ベクトルが共通の半球内に向けられるように、選択されるクロス積ベクトルを反転させる、及び
前記結果生じるクロス積ベクトルから前記基準の頭尾回転軸を取得する
ことによって、前記基準の頭尾回転軸を決定するように適応する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記制御器は、前記結果生じるクロス積ベクトルの平均に基づく方向を持つ単一ベクトルとして、前記基準の頭尾回転軸を決定するように適応する、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記制御器は、前記被験者に対する前記基準の頭尾回転軸の頭-つま先方向を決定するように適応する、請求項1乃至3の何れか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記制御器は、
座っている間或いは立っている間に加速度をモニタリングする、又は
生命兆候によって引き起こされる加速度をモニタリングする
ことによって、前記被験者に対する前記基準の頭尾回転軸の頭-つま先方向を決定するように適応する、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記生命兆候は、呼吸及び/又は心拍を有する、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記制御器は、デフォルト方向に対して前記基準の頭尾回転軸周りの回転角を決定するように適応し、及び
前記制御器は、前記基準の頭尾回転軸の前記デフォルト方向に対応する前記被験者の姿勢を決定するように適応する、
請求項1乃至6の何れか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記制御器は、
前記被験者が仰臥位でいる間に較正測定を取得する、
前記被験者が前記加速度計をタップしている間に較正測定を取得する、又は
回転角の拡がりを経時的に分析する
ことによって、前記基準の頭尾回転軸の前記デフォルト方向に対応する前記被験者の姿勢を決定するように適応する、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項に記載の被験者の睡眠姿勢を決定するためのシステム、及び
前記決定された睡眠姿勢に依存して、前記被験者の睡眠姿勢を変更する必要性を前記被験者に警告するための警告システム
を有する、体位睡眠療法システム。
【請求項10】
被験者の睡眠姿勢を決定する方法であって、前記方法は、
前記被験者に結合される加速度計から3軸加速度信号を受信するステップ、
経時的な複数の3軸加速度信号から、水平面内にあると仮定される基準の頭尾回転軸を決定するステップ、及び
関心のある加速度計測定に対し、前記基準の頭尾回転軸周りの回転角を決定するステップ
を有する方法。
【請求項11】
3軸加速度測定の複数の対に対し、夫々のクロス積ベクトルを導出し、
全ての結果生じるクロス積ベクトルが共通の半球内に向けられるように、選択されるクロス積ベクトルを反転させ、及び
前記結果生じるクロス積ベクトルから、前記基準の頭尾回転軸を取得する
ことによって、前記基準の頭尾回転軸を決定するステップを有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
座っている或いは立っている間に加速度をモニタリングする、又は
生命兆候によって引き起こされる加速度をモニタリングする
ことによって、前記被験者に対する前記基準の頭尾軸の頭-つま先方向を決定するステップを有する、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
デフォルト方向に対して前記基準の頭尾回転軸周りの回転角を決定し、及び
前記基準の頭尾回転軸の前記デフォルト方向に対応する前記被験者の姿勢を決定する
ステップを有する、請求項10乃至12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記被験者が仰臥位でいる間に較正測定を取得する、
前記被験者が前記加速度計をタップしている間に較正測定を取得する、又は
回転角の拡がりを経時的に分析する
ことによって、前記基準の頭尾回転軸の前記デフォルト方向に対応する前記被験者の姿勢を決定するステップを有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
コンピュータプログラムコードを含むコンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムコードは、前記コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されるとき、請求項10乃至14の何れか一項に記載の方法を実施するように適応する、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の睡眠姿勢を決定するためのシステム及び方法に関する。関心のある1つの応用は、特に体位睡眠療法(positional sleep therapy)システム及び方法の一部として使用されるときに、睡眠時無呼吸を治療するためのものである。
【背景技術】
【0002】
睡眠時無呼吸は、多因子疾患である。年齢、性別、体重、心不全、肺疾患、季節性感染症、生活様式がこの疾患の一因となり、この疾患を悪化させる。
【0003】
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、上気道の狭窄及び虚脱を特徴とする。解剖学的特性及び特徴は、主に虚脱に寄与する。静的な解剖学的特徴に加えて、上気道の動的変化も、気道の狭窄を妨げる。特に、気道の軟組織(口蓋、舌及び喉頭蓋)の重力変位及び腫れは、気道を狭め、無呼吸低呼吸指数(AHI)を増大させる。
【0004】
中枢性睡眠時無呼吸(CSA)は、呼吸ドライブの減少を特徴とする。神経活動の低下は、1回換気量の減少、空気流の完全な休止又は周期性呼吸(チェーン-ストークス呼吸)をもたらす。
【0005】
睡眠時無呼吸の1つの治療手法は、睡眠中の患者の姿勢を制御すること、特に、患者が仰向け(仰臥位)ではなく、確実に横向き(横臥位)に眠らせることである。
【0006】
体位睡眠トレーニングの従来の方法は、“テニスボールテクニック”として知られている。この技術の場合、被験者は、仰向けで眠ることが不快であると分かるように、被験者が眠るために着用するシャツの背中にテニスボールが縫い付けられている。
【0007】
体位依存性(positional)睡眠時無呼吸を治療するための電子式体位睡眠療法装置もよく知られている。典型的な体位睡眠療法装置は、加速度計システムを使用して、被験者が仰向けに眠っているかどうかを検出し、被験者に自分の姿勢を変えるよう促すための振動フィードバックを被験者に提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
在宅での体位療法システムにおいて、患者自身が自分の体に加速度計を配置するので、身体位置及びセンサの方向において相違が生じる可能性がある。加えて、患者の胴体の形状は、集団にわたって大きく異なる。これら2つの要因の組み合わせは、加速度計の方向と身体の姿勢との間の関係に大きな相違を生じさせ、これは、事前に訓練されたモデルに正しくない姿勢を予測させる可能性がある。
【0009】
米国特許出願公開第2019/160282号は、姿勢及び活動レベルを検出するための加速度計の使用を開示している。この加速度計のz軸は、患者の身体の前後軸を示すように較正される。
【0010】
米国特許出願公開第2017/184630号は、垂直較正ベクトルを用いてワイヤレスセンサを較正する方法を開示している。
【0011】
ユーザにとってシステムの使用を複雑にすることなく、正確な姿勢の情報が記録されるように、簡単な方法でセンサの位置を較正することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、請求項により定義される。
【0013】
本発明の一態様による例によれば、被験者の睡眠姿勢を決定するためのシステムであって、前記システムは、
前記被験者に結合するための3軸加速度計、及び
制御器
を有し、前記制御器は、
前記3軸加速度計の経時的な複数の3軸加速度信号から、水平面内にあると仮定される基準の頭尾回転軸を決定し、及び
関心のある加速度測定に対する、前記基準の頭尾回転軸周りの回転角を決定する
ように適応する、システムが提供される。
【0014】
このシステムは、加速度信号を経時的に分析することによって、頭尾(頭-つま先)回転軸周りの回転角を決定する。このように、センサの方向は、例えば、ベッドでの監視の最初の期間に、経時的に収集される信号の分析から導出されるので、被験者の身体に対するセンサの位置決めに関する要件は緩和される。
【0015】
前記基準の頭尾回転軸は、例えば、水平面内にあると仮定される。これは、基準の頭尾回転軸の方向が3D空間で定義されることを可能にする。
【0016】
そのために、身体上のセンサの位置又は前記センサの方向について仮定を行う必要がない。代わりに、様々な姿勢を経時的に観測することによって、前記基準の回転軸が取得され、次いで、これらの姿勢の各々に対し、回転角が計算される。それによって、回転軸及び回転角を識別することが、センサの位置及び配置方法に完全な自由を与える。
【0017】
睡眠中の身体の姿勢は、睡眠ポリグラフ検査において関心のあるパラメタである。1つの応用は、上述したような体位依存性睡眠時無呼吸の診断のためのものであり、ここで、無呼吸事象は、仰臥位の方が他の姿勢よりも頻繁に発生する。
【0018】
(仰臥位が分からなければならない)体位依存性睡眠時無呼吸を治療するための体位療法に必要とされるような、基準姿勢が必要とされる場合、以下に説明されるように、基準姿勢がさらに識別される。
【0019】
制御器は、
3軸加速度測定の複数の対に対し、夫々のクロス積ベクトルを導出し、
全ての結果生じるクロス積ベクトルが共通の半球内に向けられるように、選択されるクロス積ベクトルを反転させ、及び
前記結果生じるクロス積ベクトルから基準の頭尾回転軸を取得する
ことにより、前記基準の頭尾回転軸を決定するように適応する。
【0020】
2つのベクトルのクロス積は、これらベクトル間の回転軸に対応する向きを持ち、この場合、この回転軸は、(これは睡眠中にそれを中心に身体の姿勢が変化する軸であるため)頭尾回転軸である。従って、基準の軸は、クロス積ベクトルの1つ以上から取得される。
【0021】
しかしながら、クロス積は、2つのベクトル間を回転する向きに依存する符号を持つ。結果生じるクロス積ベクトルが正規化されるように、選択的反転がこの曖昧さを取り除く。これは、例えば、基準のクロス積ベクトルを選択し、この基準のクロス積ベクトルに対し負であるクロス積ベクトル(すなわち、基準のクロス積ベクトルに対して90度よりも大きい角度を持つクロス積ベクトル)を反転させることを含む。
【0022】
ある例において、制御器は、結果生じる(すなわち、反転補正された)クロス積ベクトルの平均に基づく向きを持つ単一ベクトル(unity vector)として基準の頭尾回転軸を決定するように適応する。
【0023】
この処理によって導出される基準の頭尾軸は、頭-つま先方向又はつま先-頭方向に向けられる可能性がある。従って、制御器は、好ましくは、被験者に対する基準の頭尾軸の頭-つま先方向を決定するように適応する。
【0024】
これは、
座っている間或いは立っている間の加速度を監視する、又は
生命兆候によって引き起こされる加速度を監視する
ことにより達成される。
【0025】
これらの測定は、基準の頭尾軸の正しい向きが識別されることを可能にする。生命兆候は、例えば、呼吸及び/又は心拍を有する。
【0026】
制御器は、例えば、デフォルト方向に対して前記基準の頭尾回転軸周りの回転角を決定し、制御器は、前記デフォルト方向に対応する被験者の姿勢を決定するように適応する。次いで、仰臥位に対応する方向が識別される。
【0027】
これは、上述したような基準姿勢の決定である。前記基準の頭尾回転軸のデフォルト方向に対応する被験者の姿勢は、
被験者が仰臥位でいる間に較正測定を取得する、
被験者が加速度計をタップ(tap)している間に較正測定を取得する、又は
回転角の拡がりを経時的に分析する
ことにより決定される。
【0028】
従って、経時的な動きから又は較正手続きを実施することの何れかによって仰臥位を識別する方法が色々とある。幾つかの被験者にとって、彼らは、概ね仰臥位の左右90度の範囲内で横になっているが、被験者によっては、夜間に(仰臥位であったことに加え)腹臥位(すなわち、うつ伏せ)で横になっていることがある。従って、幾つかの場合において、ユーザとの対話を必要としない自動的な手法が使用される。別の場合において、ユーザ入力を必要とする較正手法が使用され得るように、曖昧さが存在する。
【0029】
本発明は、体位睡眠療法システムも提供し、このシステムは、
上記に規定されるような被験者の睡眠姿勢を決定するためのシステム、及び
前記決定された睡眠姿勢に依存して、前記被験者の睡眠姿勢を変更する必要性を前記被験者に警告するための警告システム
を有する。
【0030】
従って、睡眠姿勢を決定するためのシステムは、仰臥位及び側臥位の睡眠姿勢が識別されることを可能にし、この情報は、体位睡眠療法システムの一部として従来の方法において使用される。
【0031】
本発明は、被験者の睡眠姿勢を決定する方法も提供し、この方法は、
前記被験者に結合される加速度計から3軸加速度信号を受信するステップ、
経時的な複数の3軸加速度信号から、基準の頭尾回転軸を決定するステップ、及び
関心のある加速度測定に対し、前記基準の頭尾回転軸周りの回転角を決定するステップ
を有する。
【0032】
この方法は、被験者の身体に対して特定のセンサ位置を必要とすることなく、頭尾(頭-つま先)回転軸周りの回転角が導出されることを可能にする。
【0033】
前記方法は、
複数の3軸加速度測定の対に対し夫々のクロス積ベクトルを導出する、
全ての結果生じるクロス積ベクトルが共通の半球内に向けられるように、選択されるクロス積ベクトルを反転する、及び
前記結果生じるクロス積ベクトルから基準の頭尾回転軸を取得する
ことによって基準の頭尾回転軸を決定するステップを有する。
【0034】
被験者に対する基準の頭尾軸の頭-つま先方向は、
座っている間或いは立っている間の加速度をモニタリングする、又は
生命兆候によって引き起こされる加速度をモニタリングする
ことによって決定される。
【0035】
前記方法は、デフォルト方向に対して前記基準の頭尾回転軸周りの回転角を決定するステップ、及び前記基準の頭尾回転軸のデフォルト方向に対応する前記被験者の姿勢を決定するステップを有する。
【0036】
基準の頭尾回転軸のデフォルト方向に対応する被験者の姿勢は、
被験者が仰臥位でいる間に較正測定を取得する、
被験者が加速度計をタップしている間に較正測定を取得する、又は
回転角の拡がりを経時的に分析する
ことにより決定される。
【0037】
本発明は、コンピュータプログラムも提供し、前記コンピュータプログラムは、このコンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されるとき、上に規定した方法を実施するように適応するコンピュータプログラムコードを有する。
【0038】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に記載される実施形態から明らかになり、これを参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本発明をより良く理解するため、及び本発明がどのように実施されるかをより明確に示すために、単なる例として、添付の図面が参照される。
【
図1】
図1は、水平軸周りの加速度計の時計回りの回転を表す。
【
図2】
図2は、太字の頭尾軸と3つの姿勢とを示す。
【
図4】
図4は、回転角から構成される姿勢の角度のグラフを示す。
【
図5】
図5は、極座標プロットにおける角度を示す。
【
図6】
図6は、被験者の睡眠姿勢を決定するためのシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、図面を参照して説明される。詳細な説明及び特定の例は、装置、システム及び方法の例示的な実施形態を示しているが、これらは単に例示を目的としたものであり、本発明の範囲を限定することを意図したものではないことを理解されたい。本発明の装置、システム及び方法のこれら及び他の特徴、態様並びに利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲及び添付の図面からより良く理解されるであろう。図面は単に概略的なものであり、一定の縮尺で描かれていないことを理解されたい。同じ又は類似の部分を示すために、図面全体にわたって同じ参照番号が使用されることも理解されたい。
【0041】
本発明は、被験者に結合される3軸加速度計を用いて、この被験者の睡眠姿勢を決定するためのシステム及び方法を提供する。前記3軸加速度計の複数の3軸加速度信号が経時的に分析され、この分析から、基準の頭尾回転軸が導出される。関心のある(すなわち、特定の時点における)加速度測定に対し、基準の頭尾回転軸周りの回転角が決定され、これは、基準の頭尾回転軸に対する睡眠姿勢を示す。
【0042】
従って、本発明は、睡眠姿勢を決定するために、3軸加速度計を使用しているが、この加速度計の特定の又は正確な配置を必要としない。
【0043】
第1のステップは、睡眠中に被験者がその周りで回転する回転軸を決定するステップである。この回転軸は、頭尾回転軸(頭から足への身体を通る軸)である。
【0044】
加速していない加速度計は、その軸への重力の射影を測定する。万有引力は加速度計の質量を下方に引っ張るので、重力は、地球から離れる加速度として現れ、加速度計にとって、これは、あたかもそれが上方向に加速しているかのように見える。
【0045】
図1は、水平軸周りの加速度計の時計回りの回転、故に、重力ベクトルgに対する加速度計のx、y、z座標空間の回転を示す。この回転は、加速度計の座標空間のy軸上への重力ベクトルgの射影を-g sin(α)から+g sin(α)まで変化させる。
【0046】
睡眠中、様々な睡眠姿勢は、頭尾軸周りの回転として現れる。
【0047】
図2は、前記頭尾軸を太字で示し、3つの姿勢(左側臥位、仰臥位及び右側臥位)を破線の矢印で示す。
図3は、対応する重力ベクトルg1、g2、g3を示す。
【0048】
回転軸を検出するために、ある時間間隔にわたり、加速度計の軸上への重力ベクトルの射影が記録される。これらの値が重力リスト(g1,g2,...,gn)を形成し、この重力リストにおける各項目は、加速度計の座標空間のx、y、z軸へ射影される重力成分からなる3次元ベクトルである。
【0049】
重力ベクトルは、(まだ不明である)軸周りの全ての回転である。回転軸が水平であるという仮定の下で、前記重力ベクトルは、その軸に垂直であり、任意の2つの異なる重力ベクトルのクロス積は、前記回転軸に一致する。
【0050】
従って、基準の頭尾回転軸は、3軸加速度測定の複数の対に対し、夫々のクロス積ベクトルを導出することによって取得される。
【0051】
これらクロス積ベクトルは、全ての要素の対のクロス積からなるn×n行列M(M[i,j]=gi×gj)の要素を形成する。従って、Mの各々の要素は、3次元ベクトルであり、その大きさはg sin(角度(gi,gj))である。
【0052】
このクロス積ベクトルの方向は、このクロス積を行う順番(gi×gj=-gj×gi)に依存し、この順番は、姿勢の順番がランダムであるため、ランダムである。
【0053】
このランダム性を取り除くために、Mの全ての要素が整列(アライメント)される。このために、Mの基準要素が選択され、この基準要素に対し90度よりも大きい(マイナスのドット積を持つ)角度を有するMの全ての要素が反転される。結果として、Mの全ての要素は、同じ半空間(基準要素によって定義される半空間)に向く。このように、選択されるクロス積ベクトルは、全ての結果生じるクロス積ベクトルが共通の半球内に向けられるように反転される。
【0054】
この整列後、Mにある全てのベクトルは平均化され、その結果が正規化される。これは、回転軸を表す単一ベクトルをもたらす。従って、基準の頭尾回転軸は、結果生じるクロス積ベクトルの平均に基づく向きを持つ単一ベクトルとして、結果生じるクロス積ベクトルから導出される。
【0055】
人がベッドで横になっている場合、重力軸周りの被験者の回転とは関係なく、前記回転軸は頭尾軸に対応する。例えば、加速度計は前記重力軸を中心とする回転を測定しないので、人が(ベッドに対して)左斜めから真っ直ぐ、右斜めに変化する場合、これは、姿勢に影響しない。
【0056】
特に、加速度計は、被験者に結合されるので、被験者が重力ベクトルの周りを回転するとき、加速度計は被験者と共に回転し、頭尾軸は水平面内にあるという仮定に基づいて、検出される加速度計の信号に変化はない。
【0057】
計算の複雑さを制限し、ロバスト性を高めさせるために、重力リストにある要素(g1、g2、・・・gn)は、例えば、姿勢が安定している時間のエポック(例えば、30秒又は60秒単位)にわたる平均重力である。
【0058】
前記頭尾軸は、例えば、ベッドでの初期の期間の後に決定されてもよい。十分な情報が入手できない場合、デフォルト軸(以前の使用から1つ)が使用されるか、又は十分な情報が入手可能になるまでシステムが“unknown”の状態に入る。“unknown”の状態では、診断又は治療は行われない。
【0059】
回転軸を見つけるために、十分な情報は、例えば何らかの回転が起こるときに入手可能である。所要時間は被験者に大きく依存する。
【0060】
前記システムは、例えば、(被験者がどのように動くか及び/又は過去の情報に依存して)較正を終了させるのに十分な情報が入手可能であるかどうかの尺度を与えることができる。
【0061】
基準軸が一旦決定されると、加速度計が取り付けられたままである限り、基準軸は一晩中有効なままである。
【0062】
システムの使用説明書は、例えば、センサを取り付ける特定の方法を指示することができる。システムは、デフォルト軸で開始するために、これを以前の夜のデータと組み合わせて使用することができる。システムは、次いで、時間と共に学習及び適応するが、身体の姿勢とセンサの方向との間に固定の(又はせいぜいゆっくり変化する)関係があると仮定する。センサの設計は、所与の被験者に対し、センサを装着することができる方法が僅かな数しかないことも意味する。これは自由度を制限するので、測定される信号は、可能なセンサ装着位置にのみ一致することができる。
【0063】
回転軸が識別された後、回転角が決定されることができる。このために、前記重力リストから、基準の重力ベクトルが任意に選択されることができる。(特定の期間、故に、加速度計が特定の方向を持つときの前記加速度計の座標軸上に分解された重力ベクトルを表している)重力リストにある各要素に対し、この基準に対して回転角が決定される。
【0064】
(両方とも3次元ベクトルである)基準及び要素は、回転軸によって定義される平面上に射影され、2つの射影間の角度が計算される。これは、(自分自身との角度は0°であるので、基準に対して角度0°を持つ)重力リストの各要素に対する角度をもたらす。
【0065】
従って、関心のある(すなわち、関心のある何れかの特定の期間での)加速度測定に対し、基準の頭尾回転軸周りの、及び重力リストの基準要素に対する回転角が取得される。
【0066】
図4は、回転角から構成されるグラフを示す。x軸は時間であり、この例において、被験者は、8つの異なる時間期間を持ち、この期間にわたり、被験者の方向は上述したように平均化されている。各々の時間期間は、例えば、測定エポックは、10秒の持続時間を持つような複数の測定エポックを有する。
【0067】
上のグラフは、別々のx、y及びzの生の加速度成分として、時間エポックに対する平均化した重力リストの要素を示す。下のグラフは、基準に対し計算された回転角を示す。
【0068】
第1の重力ベクトルは、角度を0°で開始させる基準として取られる。
【0069】
図5は、極座標プロットにおける角度を示す。この角度は回転角であり、直径は任意である。このグラフは、特定の角度を持つ姿勢の密度の指標となる。極座標プロットは、頭尾軸に沿ったビューであると考えることができる。
【0070】
回転角は、基準姿勢に対して得られる。
【0071】
頭尾軸の向き(すなわち、頭からつま先の向きなのか、又はつま先から頭の向きなのか)がまだ定義されていないので、側臥位が左側臥位であるのか又は右側臥位であるのかはまだ分かっていない。0°に対応する実際の姿勢も、まだ決定されていない。
【0072】
前記向き及び基準姿勢を識別する方法が以下で論じられる。加えて、センサの位置及び方向は、夜毎にそれほど変化しない可能性が高いので、システムは、以前の夜の情報をデフォルトの識別として使用することができる。
【0073】
完全にランダムなセンサの配置ができる場合、以前の方向情報に頼ることはできない。ユーザの以前の方向及び習慣的行動に頼るとき、ある程度の曖昧さは存在するが、これは、新しいデータが入りつつ、その晩にわたって徐々に減少する。
【0074】
頭尾軸方向は、様々な方法で識別されることができる。被験者が座っている又は歩いているときの検出を行うことにより、重力は、(尾の方向ではなく)頭の方向と一致する。
【0075】
検出された重力成分と一致する(横たわる姿勢の場合)又は垂直である(座っている/立っている場合)軸上での予測される生命兆候の検出が使用されてもよい。これらの動きは、胸部/腹部の表面に対して概ね垂直である。これは、例えば時間周波数解析によって、信号における顕著な周期成分(呼吸、心拍)の存在を検出することによって達成されることができる。
【0076】
基準姿勢、従って仰臥位に対応する角度も、様々な方法で識別されることができる。
【0077】
被験者は、例えば、治療/記録/分析を開始するとき、仰臥位で横たわるように求められてもよい。これは、残りの姿勢を決定するためのアンカーポイントとして使用されることができる。
【0078】
加速度計は、例えばタップのようなユーザとの対話に敏感であるので、これが仰臥位を定義するのに使用されてもよい。
【0079】
加速度計は、タップに対する特定の反応を持ち、この反応が重力に対する加速度計の方向を識別することを可能にする。
【0080】
仰臥位が定義されなかったとき、センサは、ユーザにタップを行わせることができる。さらに、基準姿勢が誤って設定されたとき、患者はこのことに気付き、基準姿勢を修正することができる。
【0081】
被験者の関与を必要とする代わりに、自動的な較正でもよい。自動的に検出される横たわる姿勢が、所定の範囲(例えば、180度)にわたる場合であり、それら姿勢の1つが、仰臥位であると仮定される(又はユーザ履歴から分かる)場合、残りの姿勢は自動的に決定されることができる。例えば、
図5における0度の角度は、被験者からさらなる入力を何ら必要とせずに仰臥位であると仮定されることができる。
【0082】
半自動的な較正でもよい。前記姿勢の範囲が曖昧な範囲(例えば、90度)にわたる場合、簡単なユーザ対話の方法を用いて、例えば、特定の姿勢、例えば、左側を下にして眠っていたかどうかを、午前中のうちに被験者に質問することによって、被験者がどの姿勢で眠っていたかを推測することができる。これにより残りの姿勢の曖昧さをなくす。
【0083】
姿勢が360度にわたる場合、その場合は、ユーザが腹臥位(うつ伏せ)及び仰臥位(仰向け)の両方で眠っていて、その範囲は再び曖昧である。システムは、これを自動的に判断し、ユーザ入力を求めるか、又は以降の夜に“手動較正”手法(例えば、タップ、或いは夜の初めに位置をプリセットする)に戻るかの何れかを行うことができる。
【0084】
別の例として、特定の姿勢にあるとき、特定の生命兆候の自動検出における性能(品質)がより低くなる(例えば、被験者が左側を下に横たわっている(左側臥位)とき、心拍を測定することがより困難である)場合、自動的に決定される品質指標(例えば、もっともらしい心拍間隔の%)が姿勢毎に計算され(例えば、ある特定の検出される被験者の姿勢に対応する測定の集合の平均品質)、この平均品質に基づいて、簡単な規則を用いて、前記横たわっている姿勢の曖昧さをなくす。
【0085】
較正は、設計上の制約も伴っている。ユーザによって異なる加速度計の配置形態が、構造によって制限される場合(例えば、ケースは常に胸部に対し水平、平行に置かれ、単に上下逆さま、すなわち仰向け/裏返しにされる可能性があるだけである)、この追加情報を使用して、検出される姿勢の曖昧さを除く。
【0086】
これら姿勢間の遷移を追跡することが使用されてもよい。これは、ユーザが、側臥位への動きと、側臥位から離れる動きとの間で、回転方向を反転させるからである。
【0087】
図6は、被験者の睡眠姿勢を決定するためのシステム60を示し、このシステムは、
前記被験者に結合するための3軸加速度計62、及び
制御器64
を有する。
【0088】
前記制御器は、3軸加速度計の経時的な複数の3軸加速度信号から、基準の頭尾回転軸を決定するように適応する。次いで、関心のある加速度測定(すなわち、関心のある任意の特定の時間における加速度測定)に対し、前記基準の頭尾回転軸周りの回転角を決定する。
【0089】
図6は、ユーザインターフェース66及び生命兆候センサも示し、その一方又は両方は、上述したように、追加の入力を提供するために使用され、頭尾軸に関する基準方向に対応する姿勢を決定するために前記システムを支援する。
【0090】
本発明は、体位依存性睡眠時無呼吸療法に特に関心がある。しかしながら、それは、ベッドにいる間の身体姿勢の情報を利用する如何なる応用にも使用される。例は、いびきを検出するため又は床ずれに対する感受性をモニタリングするためのシステムである。
【0091】
体位睡眠療法システム内で使用されるとき、睡眠姿勢を決定するための前記システムは、決定される睡眠姿勢に依存して、被験者の睡眠姿勢を変更する必要性を前記被験者に警告するための警告システムと組み合わされる。
【0092】
上述したように、実施形態は、制御器を利用する。この制御器は、必要とされる様々な機能を行うために、ソフトウェア及び/又はハードウェアを用いて、様々な方法で実施されることができる。処理器は、ソフトウェア(例えば、マイクロコード)を用いて、前記必要とされる機能を行うようにプログラムされる1つ以上のマイクロプロセッサを使用する制御器の一例である。しかしながら、制御器は、処理器を使用するかどうかに関係なく実施されることができ、幾つかの機能を行うための専用ハードウェアと、他の機能を行うための処理器(例えば、1つ以上のプログラムされるマイクロプロセッサ及び関連する回路)との組み合わせとして実施されてもよい。
【0093】
本開示の様々な実施形態に用いられる制御器の構成要素の例は、これらに限定されないが、従来のマイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を含む。
【0094】
様々な実施において、処理器又は制御器は、例えば、揮発性及び不揮発性のコンピュータメモリのような1つ以上の記憶媒体、例えばRAM、PROM、EPROM及びEEPROMに関連付けられてもよい。この記憶媒体は、1つ以上の処理器及び/又は制御器上で実行されるとき、前記必要とされる機能を行う1つ以上のプログラムで符号化されてもよい。様々な記憶媒体は、処理器又は制御器内に取り付けられてもよいし、又はこれら記憶媒体に保存される1つ以上のプログラムが処理器又は制御器に読み込まれるように、搬送可能でもよい。
【0095】
開示される実施形態に対する変形例は、図面、開示及び添付の特許請求の範囲の検討から、特許請求される本発明を実施する際に当業者によって理解され、実施されることができる。請求項において、“有する”という用語は、他の要素又はステップを排除するものではなく、複数あることが述べていなくても、それが複数あることを排除するものではない。
【0096】
特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示すものではない。
【0097】
コンピュータプログラムは、例えば、他のハードウェアと一緒に、或いはその一部として供給される光記憶媒体又はソリッドステート媒体のような適切な媒体上に記憶/配布されることができるが、例えば、インターネット又は他の有線若しくは無線電気通信システムを介して、他の形態で配布されることもできる。
【0098】
“に適応する”という用語が請求項又は明細書に用いられる場合、“に適応する”という用語は、“ように構成される”という用語と同等であることを意味する。
【0099】
請求項にある如何なる参照符号も、その範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【国際調査報告】