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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-20
(54)【発明の名称】封入ペブル
(51)【国際特許分類】
   G21B 1/13 20060101AFI20231213BHJP
【FI】
G21B1/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532646
(86)(22)【出願日】2021-11-25
(85)【翻訳文提出日】2023-07-19
(86)【国際出願番号】 EP2021083042
(87)【国際公開番号】W WO2022112441
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】20383029.4
(32)【優先日】2020-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523196426
【氏名又は名称】ユナイテッド キングダム アトミック エナジー オーソリティー
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】プラザ、フランシスコ ホセ カルボ
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデス、ホルヘ フラデラ
(72)【発明者】
【氏名】シプリアイン、セルジオ サダバ
(72)【発明者】
【氏名】ハ、サミュエル
(57)【要約】
封入ペブルであって、燃料炉心、及び燃料炉心を封入する保持器であって、保持器を貫通する少なくとも1つのガス移送チャネルを含む保持器を含む封入ペブルが提供される。封入ペブルを作る方法、核融合炉のための増殖ブランケットモジュール、核融合炉並びにその方法及び使用も提供される。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
封入ペブルであって、
燃料炉心、及び
前記燃料炉心を封入する保持器であって、前記保持器を貫通する少なくとも1つのガス移送チャネルを含む保持器
を含む封入ペブル。
【請求項2】
前記保持器は、複数のガス移送チャネルを含む、請求項1に記載の封入ペブル。
【請求項3】
前記保持器と共に収容され、且つ前記燃料炉心を囲むセラミックシェル、及び/又は
前記少なくとも1つのガス移送チャネル内に設けられたセラミックインサート
をさらに含む、請求項1又は2に記載の封入ペブル。
【請求項4】
前記セラミックシェル及び/又は前記セラミックインサートは、ガス透過性セラミックを含む、請求項3に記載の封入ペブル。
【請求項5】
前記ガス透過性セラミックは、ガス透過性シリカ、ガス透過性黒鉛又はガス透過性炭化ケイ素を含む、請求項4に記載の封入ペブル。
【請求項6】
前記ガス透過性セラミックは、0.25μm未満の細孔半径を有する有孔セラミックを含む、請求項4又は5に記載の封入ペブル。
【請求項7】
前記保持器の内径は、前記燃料炉心の外径よりも大きい、請求項1~6のいずれか一項に記載の封入ペブル。
【請求項8】
前記保持器の前記内径は、前記セラミックシェルの外径よりも大きい、請求項3~7のいずれか一項に記載の封入ペブル。
【請求項9】
前記燃料炉心は、増殖物質、例えばトリチウムを発生させることができる増殖物質を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の封入ペブル。
【請求項10】
前記燃料炉心は、原子炉の動作温度、約300℃超で液体である溶融塩を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の封入ペブル。
【請求項11】
前記燃料炉心は、リチウム塩、例えばLi2BeF4を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の封入ペブル。
【請求項12】
前記燃料炉心は、酸化還元制御物質、例えば金属ベリリウムをさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の封入ペブル。
【請求項13】
前記封入燃料ペブル内にガスポケットが設けられる、請求項1~12のいずれか一項に記載の封入ペブル。
【請求項14】
前記保持器内にセラミックシェルが収容され、前記ガスポケットは、前記セラミックシェル内に設けられる、請求項13に記載の封入ペブル。
【請求項15】
前記ガスポケット内に、冷却ガス、例えば窒素ガス又はヘリウムガスが提供される、請求項13又は14に記載の封入ペブル。
【請求項16】
前記保持器は、金属保持器、例えば金属合金、例えば鋼鉄を含む金属保持器である、請求項1~15のいずれか一項に記載の封入ペブル。
【請求項17】
前記金属合金は、低放射化フェライトマルテンサイト鋼を含む、請求項16に記載の封入ペブル。
【請求項18】
前記保持器は、球形又は円筒形である、請求項1~17のいずれか一項に記載の封入ペブル。
【請求項19】
封入ペブルを形成する方法であって、
燃料炉心を保持器内に封入するステップ
を含み、前記保持器は、前記保持器を貫通する少なくとも1つのガス移送チャネルを含む、方法。
【請求項20】
燃料炉心を保持器の第1の部分内に配設するステップ、及び
前記燃料炉心を封入するために保持器の第2の部分を前記第1の部分に結合するステップ
を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
保持器を形成するステップ、
前記保持器内に開口を形成するステップ、
燃料炉心を前記保持器内に形成するために、前記開口を通して燃料を挿入するステップ
、及び
前記燃料炉心を封入するために前記開口を封じるステップ
を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも1つのガス移送チャネルを、前記保持器を貫通して形成するステップ、例えば複数のガス移送チャネルを、前記保持器を貫通して形成するステップを含む、請求項19~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも1つのガス移送チャネルを形成するステップは、前記少なくとも1つのガス移送チャネルを形成するために前記保持器をレーザーで穴あけするステップを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
少なくとも1つのガス移送チャネルを形成するステップは、前記保持器を形成する焼結プロセス中に前記保持器の空孔率を制御するステップを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
セラミックシェルを前記燃料炉心の周囲に形成するステップ、及び
前記形成されたセラミックシェルを前記保持器内に封入するステップ
を含む、請求項19~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記封入ペブルは、段落1~20のいずれか1つに記載のものである、請求項19~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
核融合炉のための増殖ブランケットモジュールであって、
直列及び/又は並列に接続された複数のペブルベッド、及び
各ペブルベッド内の複数の封入ペブル
を含む増殖ブランケットモジュール。
【請求項28】
前記複数のペブルベッドの各ペブルベッドは、それぞれガス入口マニホールド及びガス出口マニホールドを介してガス入口及びガス出口と流体連通する、請求項27に記載の増殖ブランケットモジュール。
【請求項29】
各ペブルベッドは、第1の端部及び第2の端部を有する長尺ベッドであり、前記ガス入口マニホールドは、前記第1の端部と係合するように構成され、前記ガス出口マニホールドは、前記第2の端部と係合するように構成される、請求項27又は28に記載の増殖ブランケットモジュール。
【請求項30】
前記複数のペブルベッドの各ペブルベッドは、ペブルベッドの少なくとも2つのグループの1つに設けられる、請求項27~29のいずれか一項に記載の増殖ブランケットモジュール。
【請求項31】
前記少なくとも2つのグループの第1のグループは、前記ガス入口から前記第1のグループの少なくとも1つのペブルベッドを通して前記ガス出口まで第1のガス流路を画定し、前記少なくとも2つのグループの第2のグループは、前記ガス入口から前記第2のグループの少なくとも1つのペブルベッドを通して前記ガス出口まで第2のガス流路を画定する、請求項30に記載の増殖ブランケットモジュール。
【請求項32】
前記第1のガス流路及び第2のガス流路は、前記ガス入口から前記ガス出口まで並列に接続される、請求項31に記載の増殖ブランケットモジュール。
【請求項33】
ペブルベッドの各グループ内の各ペブルベッドは、ペブルベッドの同じグループ内の少なくとも1つの他のペブルベッドと直列に接続される、請求項30~32のいずれか一項に記載の増殖ブランケットモジュール。
【請求項34】
中性子増倍物質、例えば硫化鉛は、隣接するペブルベッド間の空隙内に提供される、請求項27~33のいずれか一項に記載の増殖ブランケットモジュール。
【請求項35】
中性子反射物質、例えば炭化タングステンを含む中性子反射パネルをさらに含む、請求項27~34のいずれか一項に記載の増殖ブランケットモジュール。
【請求項36】
核融合炉の第1の壁構成要素と係合するように構成される、請求項27~35のいずれか一項に記載の増殖ブランケットモジュール。
【請求項37】
前記複数のペブルベッドは、ハニカム構造を形成する、請求項27~36のいずれか一項に記載の増殖ブランケットモジュール。
【請求項38】
前記複数のペブルベッドの各ペブルベッドは、隣接するペブルベッドと少なくとも1つの壁を共有する、請求項37に記載の増殖ブランケットモジュール。
【請求項39】
使用時、核融合炉内で前記ペブルベッドが極方向に合わせられるように配設される、請求項27~38のいずれか一項に記載の増殖ブランケットモジュール。
【請求項40】
前記複数の封入ペブルのうちの少なくとも1つの封入ペブルは、請求項1~20のいずれか一項に記載のものである、請求項27~39のいずれか一項に記載の増殖ブランケットモジュール。
【請求項41】
前記封入ペブルの少なくとも2つは同じ組成である燃料炉心を含むか、又は前記封入ペブルの少なくとも2つは異なる組成である燃料炉心を含む、請求項40に記載の増殖ブランケットモジュール。
【請求項42】
前記封入ペブルの少なくとも2つはLi2BeF4炉心を含むか、又は前記封入燃料ペブルの少なくとも1つはLi2BeF4を含み、前記封入燃料ペブルの少なくとも1つはLi2BeF4と異なる炉心を含む、請求項41に記載の増殖ブランケットモジュール。
【請求項43】
前記複数のペブルベッドは、低放射化フェライトマルテンサイト鋼壁を含む、請求項27~41のいずれか一項に記載の増殖ブランケットモジュール。
【請求項44】
前記複数のペブルベッドは、トリチウム透過バリアコーティング、例えばクロミア(Cr23)又はアルミナ(Al23)のコーティングを備える、請求項27~41のいずれか一項に記載の増殖ブランケットモジュール。
【請求項45】
請求項27~44のいずれか一項に記載の増殖ブランケットモジュールを動作させる方法であって、
冷却ガスの流れを前記増殖ブランケットモジュールに提供するステップ、
前記冷却ガスが、トリチウムが富化された暖められたガスを提供する前記増殖ブランケットモジュールから熱及びトリチウムを抽出することを可能にするステップ、
前記暖められたガスを前記増殖ブランケットモジュールから除去するステップ、及び
前記暖められたガスから前記トリチウムを抽出するステップ
を含む方法。
【請求項46】
前記増殖ブランケットは、核融合炉内に存在し、且つ前記封入ペブル内のトリチウム増殖反応及び/又は前記原子炉心内のプラズマによって加熱される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記冷却ガスは、窒素、ヘリウム及び二酸化炭素から選択される1つ又は複数の冷却ガスを含む、請求項45又は46に記載の方法。
【請求項48】
請求項1~20のいずれか一項に記載の封入ペブル及び/又は請求項27~44のいずれか一項に記載の増殖ブランケットモジュールを含む核融合炉。
【請求項49】
核融合炉又は核分裂炉内における、請求項1~20のいずれか一項に記載の封入ペブルの使用。
【請求項50】
核融合炉内における、請求項27~44のいずれか一項に記載の増殖ブランケットモジュールの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、封入ペブル、封入ペブルを作る方法、増殖ブランケットモジュール、ペブル及び/又は増殖ブランケットを含む核融合炉並びにその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料ペブルは、核融合プロセス及び核分裂プロセスにおいて知られている。核分裂プロセスでは、ペブルは、典型的には、TRISO粒子などの多数の燃料粒子をそれぞれ収容する不浸透性熱分解炭素シェルを含む。
【0003】
特に増殖ブランケットの一部としての、核融合炉のためのペブルベッドも提案されている。核融合炉では、増殖ブランケットは、プラズマが発生する原子炉炉心を包み、且つプラズマ中に発生した中性子を、その中性子を吸収することによって遮蔽することを提供し、発電のための熱を抽出し、核融合炉の自給自足原理を実現するために必要なトリチウムを増殖させる。
【0004】
既存のブランケットは、液体(溶融燃料)ブランケット及び固体燃料ブランケットの2つのカテゴリに分類され得る。液体ブランケットは、高温での腐食に起因する熱水力学及び材料適合性問題を有する一方、固体ブランケットは、例えば、トリチウム抽出に伴う問題を有する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記で指摘したように、核融合プロセスのための既存のブランケットには制限がある。したがって、これらの制限に対処することを目的とした改善を有することは、価値があるであろう。
【0006】
したがって、第1の態様によると、封入ペブルであって、
燃料炉心、及び
燃料炉心を封入する保持器であって、保持器を貫通する少なくとも1つのガス移送チャネルを含む保持器
を含む封入ペブルが提供される。
【0007】
燃料炉心を封入する保持器は、構造支持を提供し、且つガスが封入ペブルから離れることを依然として可能にする一方、燃料炉心を衝撃から保護する。
【0008】
第2の態様によると、封入ペブルを形成する方法であって、
炉心を保持器内に封入するステップ
を含み、保持器は、保持器を貫通する少なくとも1つのガス移送チャネルを含む、方法が提供される。
【0009】
第3の態様によると、核融合炉のための増殖ブランケットモジュールであって、
直列及び/又は並列に接続された複数のペブルベッド、及び
各ペブルベッド内の複数の封入ペブル
を含む増殖ブランケットモジュールが提供される。
【0010】
複数のペブルベッドを直列及び/又は並列に接続することにより、より効率的な冷却及びトリチウム抽出プロセスが実現され得る。
【0011】
第4の態様によると、第3の態様の増殖ブランケットモジュールを動作させる方法であって、
冷却ガスの流れを増殖ブランケットモジュールに提供するステップ、
冷却ガスが、トリチウムが富化された暖められたガスを提供する増殖ブランケットモジュールから熱及びトリチウムを抽出することを可能にするステップ、
暖められたガスを増殖ブランケットモジュールから除去するステップ及び
暖められたガスからトリチウムを抽出するステップ
を含む方法が提供される。
【0012】
第5の態様によると、第1の態様による少なくとも1つの封入ペブル及び/又は第3の態様による少なくとも1つの増殖ブランケットモジュールを含む核融合炉が提供される。
【0013】
第1の態様の封入ペブル及び第3の態様の増殖ブランケットモジュールの使用は、本開示のさらなる態様を構成する。
【0014】
上記の態様により、既存の技術の制限が対処される。特に、冷却、構造支持及び収容の機能は、封入ペブルの様々な構成要素に分離される。増殖ブランケットモジュールは、低質量の構造材料も有する。したがって、改善された封入ペブル、増殖ブランケット及びその使用が提供される。
【0015】
これら及び他の態様は、以下に説明される実施形態から明らかになり、それらを参照して明確にされる。
【0016】
ここで、例示的実施形態が以下の図面を参照して例としてのみ説明される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】一実施形態による封入ペブルを描写する。
図1B】一実施形態による封入ペブルを描写する。
図2】一実施形態による、ペブルベッド内に一緒に詰められた封入ペブルを描写する。
図3】一実施形態による増殖ブランケットモジュールを描写する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
封入ペブル
上記で指摘したように、本明細書では、炉心と、炉心を封入する保持器とを含む封入ペブルが提供される。いくつかの実施形態では、封入ペブルは、核分裂炉内での使用に好適な燃料ペブルであり得る。いくつかの実施形態では、封入ペブルは、核融合炉のための増殖ブランケット内での使用に好適な増殖ペブルであり得る。用語「増殖ペブル」及び「燃料ペブル」は、本明細書において、両方のシステムと類似した構成要素が説明される場合、交換可能に使用され得ることが理解される。
【0019】
保持器は、ガスが炉心から離れ、且つ炉心内の圧力の過剰な増強を防止することを可能にするために、保持器を貫通する少なくとも1つのガス移送チャネルを含む。本開示は、核融合炉の増殖ブランケットにおける使用のための封入ペブルに主に関係するが、封入増殖ペブルは、核分裂プロセス、例えばキセノン、クリプトン及びヨウ素などのガス状及び揮発性核分裂生成物が生成され、したがって捕捉及び廃棄されなければならない溶融塩炉にも用途を見出し得ることが分かる。本明細書で使用されるように、用語「保持器」は、1つ又は複数の物質、例えば炉心及び/又はセラミックシェルが収容される三次元構造であると理解されるべきである。保持器は、使用時に変形しないように十分に構造的に弾性であり、これにより、その内容物を、他の物体との衝撃によって破損することから保護する。
【0020】
封入ペブルは、燃料炉心を含む。いくつかの例では、燃料炉心は、増殖炉心とも呼ばれ得る。核融合プロセスでは、増殖物質は、核融合プロセスの燃料であるトリチウムを発生させるため、本明細書では燃料発生炉心又は燃料炉心とも呼ばれる。いくつかの例では、燃料炉心は、既存の核融合プロセスで知られているものなど、トリチウムを発生させることができる増殖物質を含む。核融合プロセスの増殖ブランケットの動作温度は、通常、300℃超であるため、燃料炉心は、約300℃超で液体である溶融塩を含み得る。増殖ブランケットで使用され得る多くの異なる溶融塩がある。通常、増殖物質は、核融合炉内のトリチウム生成が、通常、Li6(n,α)H3とLi7(n,n’,α)H3との反応によって実現されるため、リチウム塩、例えばLi2BeF4(FLiBe)を含む。FLiBeは、高トリチウム増殖率(TBR)を有することが知られており、459℃の融点を有するが、PbLi合金、例えばPb17Li83又はLiF-LiI-LiCl塩などの他の液体増殖体も好適である。増殖物質の組成、例えばLiF-LiI-LiCl混合物は、動作要件に合わせて調整され得ることが理解される。
【0021】
いくつかの実施形態では、燃料炉心は、酸化還元制御物質、例えば金属ベリリウムをさらに含む。燃料炉心がフッ化塩を含む実施形態では、発生したトリチウムとフッ化物との間の酸化還元反応がフッ化トリチウムをもたらし得る。フッ化トリチウムは、フッ化水素と同程度に腐食性であり、したがって増殖ブランケットの構成要素(金属で形成される場合に保持器を含む)を腐食させ得る。しかし、金属ベリリウムなどの酸化還元制御物質の包含は、フッ化トリチウムの発生を防止し得、その結果、二原子(分子)トリチウムが代わりに形成される。ジルコニウムなどの他の酸化還元反応制御物質も使用され得る。
【0022】
封入ペブルは、燃料炉心を封入する保持器を含む。保持器は、ペブル間の接触を防止してダスト発生を防止し、詰められたベッドの重量に耐え、ペブルのトリチウム抽出又は冷却に影響を与えることなく、機械的負荷に起因する変形を許容するために、使用時に燃料炉心及び存在する場合にはセラミックシェルの周囲の十分な構造支持又は剛性を提供する。いくつかの実施形態では、保持器は、球形又は円筒形であり得る。球形ペブルは、本明細書で説明された円筒形燃料ベッドなどのペブルベッド内への詰め込みに特に適する。
【0023】
保持器は、保持器を貫通する少なくとも1つのガス移送チャネルを含み、炉心から保持器を通過するまでのトリチウム及びヘリウムの浸透を可能にする。このようにして、溶融塩をそのまま収容し、ペブル内のガスの増強を防止する一方、トリチウム抽出の効率が改善され得る。いくつかの実施形態では、保持器は、複数のガス移送チャネルを含み、したがってトリチウム抽出の効率を増加する。ガス移送チャネルは、約0.5μmの孔を提供するための、例えば保持器のレーザー穴あけによって生成された機械加工チャネルであり得る。他の実施形態では、ガス移送チャネルは、保持器内の細孔の包含によって形成され得る。他の実施形態では、保持器は、ワイヤ状構造を含み、例えば織られた又は不織繊維のメッシュを含む。いくつかの例では、織られた又は不織メッシュを形成する繊維は、5mm未満の径、例えば3mm未満の径、例えば約1mmの径であり得る。いくつかの例では、メッシュは、単一撚り合わせ繊維又は多重撚り合わせ編み上げ繊維で形成され得る。
【0024】
いくつかの実施形態では、保持器径は、20mm未満、例えば15mm未満、例えば約10mm以下である。いくつかの実施形態では、保持器は、2mm未満、例えば1.5mm未満、例えば約1mm以下の厚さを有する。いくつかの実施形態では、保持器の内径は、燃料炉心の外径より大きくてもよい。燃料炉心を囲むセラミックシェルを封入ペブルが含む実施形態では、保持器の内径は、セラミックシェルの外径より大きくてもよい。したがって、間隙が保持器と内部構成要素との間に設けられ得る。間隙を燃料炉心と保持器との間又はセラミックシェルと保持器との間に設けることにより、抽出されたトリチウムは、燃料炉心及びペブルからペブルベッドまで効率的に浸透し得る。
【0025】
増殖ブランケットの最大熱効率は、構造材料の最大動作温度によって決定される。したがって、保持器などの構造材料の選択は、高温におけるその活性化及びその性能によって部分的に導かれる。最大の利点は、クリープ領域で動作し、過剰な周期的熱応力を避けることによって得ることができる。望ましくない周期的負荷は、クリープ疲労相互作用及び進行性変形に至る。材料温度があまりに下げられる場合、脆化放熱効果が優勢になる。いくつかの実施形態では、保持器は、例えば、金属合金、例えば鋼鉄から形成された金属保持器を含む。金属合金は、低放射化フェライトマルテンサイト鋼、又はオーステナイト鋼、又は酸化物分散鋼を含み得る。原子力産業で使用される鋼鉄は、よく知られている。一実施形態では、保持器は、EUROFER 97(低放射化フェライトマルテンサイト鋼)を含むか又はそれから形成される。他の好適な材料は、公知の鋼鉄MHT-9、ODS、F82H及びORNL 9Cr-2WVTaを含む。他の実施形態では、保持器は、繊維状物質、例えば炭素繊維、ガラス繊維を含む。いくつかの実施形態では、繊維状物質は、有孔性繊維状物質、例えば織られた又は不織メッシュであるためにガス移送チャネルを有する。いくつかの実施形態では、保持器は、シリカ又は炭素繊維複合材などの構造的セラミックを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、封入ペブルは、セラミックシェルを含む。セラミックシェルは、燃料炉心及び保持器を仲介する層であり得る。いくつかの実施形態では、セラミックシェルは、燃料炉心を取り囲む。いくつかの実施形態では、セラミックシェルは、燃料炉心上に且つそれと直接接触して配置される。
【0027】
いくつかの実施形態では、封入ペブルは、少なくとも1つのガス移送チャネル内に配置されたセラミックインサートを含む。いくつかの実施形態では、封入ペブルは、その中に配置されたセラミックインサートをそれぞれ有する複数のガス移送チャネルを含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、セラミックは、有孔性、例えばガス透過性であり、これにより燃料炉心及びペブルから増殖ブランケットの残りまでのガス(トリチウム、ヘリウム)の移送を可能にする。いくつかの実施形態では、セラミックは、ガス透過性であるが、液体に対して不透過性であり、したがって燃料炉心内の溶融塩の閉じ込めを可能にする。
【0029】
いくつかの実施形態では、セラミックは、ガス透過性である。これは、セラミックが、炉心からセラミックシェルを通して、保持器とセラミックシェルとの間の空隙までのトリチウム及び/若しくはヘリウムの浸透又は保持器内のチャネル内に配置されたセラミックインサート(ここからガスが保持器を通して移送され得る)を通るトリチウム及び/若しくはヘリウムの浸透を可能にする細孔寸法を有することを意味する。ガス透過を可能にする一方、液体トリチウム増殖物質の漏洩を防止するために必要とされる細孔寸法は、増殖ブランケット内の動作温度と、したがって有孔セラミック全体にわたる圧力差とに依存する。通常、細孔寸法は、1μm未満、例えば0.5μm未満、例えば0.25μm未満、例えば0.1μm未満であろう。例えば、犠牲テンプレート材の包含並びに燒結時間及び/又は燒結温度を制御することにより、細孔寸法又はセラミックを制御する方法は、当技術分野で知られている。
【0030】
セラミックは、燃料炉心の溶融塩に対するその不活性のために選択される材料を含み得る。セラミックは、増殖ブランケット内の動作温度に耐えるその能力のために選択される材料を含み得、この温度は、300℃超に容易に到達し得、900℃を超え得る。例えば、セラミックは、シリカ、有効黒鉛、炭化ケイ素、炭化亜鉛、炭化チタン及びそれらの混合物から選択される材料を含み得る。
【0031】
これらの実施形態では、セラミックは、増殖ブランケットの残りを動作中の溶融炉心の腐食性から保護するだけでなく、保持器も動作中の燃料炉心の内部温度から保護する。これは、これらの温度までの周期的熱動作が応力を金属にかけ得、変形及び疲労を介して保持器の使用可能寿命に負の影響を与え得るためである。セラミックの有孔性又はガス透過性質は、内圧増大を防止する一方、溶融燃料が逃げることを防止するために、炉心からのガス状トリチウム及びヘリウムの浸透も可能にする。存在する場合、セラミックは、金属保持器による物理的浸食又は摩耗から保護される。
【0032】
いくつかの実施形態では、ガスポケットが封入ペブル内に設けられる。いくつかの実施形態では、ガスポケットは、保持器内に配置されたセラミックシェル内に設けられる。いくつかの実施形態では、保持器は、セラミックインサートを備え、ガスポケットは、保持器内に設けられる。いくつかの例では、ガスポケットは、増殖ブランケット内で使用されるのと同じ冷却ガス又は異なる冷却ガスであり得る冷却ガスを含む。いくつかの例では、冷却ガスは、窒素ガス、ヘリウムガス、クリプトンガス、キセノンガスを含む。多量の冷却ガスを封入燃料ペブル内に提供することにより、燃料炉心内の圧力変化が達成されることを可能にし、且つヘリウム及び分子トリチウムが燃料炉心から浸透する前に脱着又はガス抜きし得るペブル内の場所を提供する。
【0033】
封入ペブルの例が図1A及び1Bに提供される。これらの例は、例えば、金属保持器の使用の特定の実施形態を示すが、これらは、単に例であり、他の構成及び材料が可能であることが理解される。図1Aは、最外シェルとしての金属保持器102、金属保持器102内のセラミックシェル108及びセラミックシェル108内の燃料炉心110を含む封入ペブル100の構造を示す。金属保持器102は、両方向のガスの流れを可能にする複数の孔又はガス移送チャネル104を備える。上述のように、ガス移送チャネル104は、燃料炉心110内で発生したヘリウム及びトリチウムの流れが封入燃料ペブル100から出ることを可能にする。図1Aでは明確に描写されていないが(しかし、以下に説明される図2では示される)、金属保持器102の内半径は、セラミックシェル108の外半径よりも大きく、これにより金属保持器102とセラミックシェル108との間のクリアランスを提供する。このクリアランスは、冷却ガスが金属保持器102とセラミックシェル108との間の空間内に入り、セラミックシェル108を直接冷却し、冷却プロセスの効率を増加させることを意味する。セラミックシェル108内に燃料炉心110が設けられる。燃料炉心110は、上記のFLiBeなどのリチウム塩を含み得る。核融合炉からプラズマを逃がす中性子は、リチウムと反応し、トリチウムを増殖させる。冷却ガスのポケット106は、分子トリチウム及びヘリウムが有孔セラミックシェル108を通して浸透し、ガス移送チャネル104を介して封入燃料ペブル100から出る前に燃料炉心110から脱着し得るセラミックシェル108内に設けられる。燃料炉心110内の酸化還元反応を制御し、生成される腐食性フッ化トリチウムの量を最小化するために、金属ベリリウムなどの酸化還元材112の種(seeds)も燃料炉心110内に含まれている。
【0034】
図1Bは、代替の封入ペブル100の構造を示す。図1Bのペブル100は、図1Aのペブル100と同じ金属保持器102を有するが、セラミックシェル108の代わりにセラミックインサート114を有する。セラミックインサート114は、金属保持器102のガス移送チャネル(番号なし)内に挿入され、これにより、トリチウム及びヘリウムが封入ペブル100をから出るための、ガス透過性であるが、溶融塩不浸透性である経路を提供する。図1Aのペブルと同様に、ガスポケット106は、ここでは、冷却ガスを最初に充填されるが、動作中にトリチウム及びヘリウムが脱着し得る金属保持器102内に設けられる。示さないが、酸化還元材の種も、そうでなければ金属保持器102を劣化させるであろう腐食性物質の形成を防止するために、燃料炉心110内に含まれるであろう。
【0035】
図2は、例えば、本明細書で説明されるような増殖ブランケットモジュールのペブルベッド内に存在する場合の一緒に詰められた複数の封入ペブルの概略図を示す。図2の左側部分は、金属保持器102(封入ペブルのいかなる内部構成要素もない)が一緒に詰められ得る例を実証する。各金属保持器102は、金属保持器102間の空隙及び他の金属保持器102のガス移送チャネルと流体連通する複数のガス移送チャネルを備える。したがって、ペブルベッド内に存在する場合、金属保持器102の本体は、その中を冷却ガスが流れ得る網目状網を提供する。図2Aの右側部分は、図の左側部分に示す金属保持器102の同じ詰め込みに基づく封入ペブル100の詰められたベッドを示す。分かるように、セラミックシェル108の外部寸法は、金属保持器102の内部寸法未満であり、したがって2つの間に冷却ガスのための流路を提供する。封入ペブルを完成するために、セラミックシェル108は、上述のような燃料炉心110及びガスポケット106を備える。
【0036】
封入ペブルを形成する方法
本明細書で説明されるのは、封入ペブルを形成する方法でもあり、本方法は、燃料炉心を保持器内に封入するステップを含み、保持器は、保持器を貫通する少なくとも1つのガス移送チャネルを含む。封入ペブルは、上述のものであり得る。
【0037】
当業者によって理解されるように、封入ペブルの様々な構成要素を形成する様々な方法が可能である。
【0038】
例えば、ポリスチレンなどの犠牲支持体上に小さい中空金属球を形成する方法が知られており(https://www.hollomet.com/en/home.html)、ここでは、支持体は、流動化ベッド内に保持され、結合剤(例えば、水)と金属粉との懸濁液が噴霧蒸着方法で支持体の表面上に噴霧される。熱処理は、犠牲支持体及び結合剤を焼き払い、中空金属球の成形体を残し、次に、成形体は、規定の空孔率を有する金属保持器を形成するために管理状態下で焼結され得る。次に、燃料が挿入され得る保持器内の開口をレーザー穴あけが形成し得、開口を封じるための溶接が続く。例えば、金属保持器を通る少なくとも1つのガス移送チャネルは、レーザー穴あけによって形成され得る。レーザー穴あけ技術は、例えば、最小0.5μmまでの径の孔を正確に提供することができる。
【0039】
代替プロセスでは、上記のような犠牲支持体全体にわたって金属半球が形成され得る。犠牲支持体及び有機結合剤が焼き払われ、金属半球が焼結された後、燃料炉心は、金属保持器の第1の部分を形成する第1の半球内に配設され得、第2の半球の形式の金属保持器の第2の部分は、燃料炉心を封入するために第1の半球に結合され得る。2つの半球は、燃料炉心を封入するために、例えば溶接によって互いに結合され得る。
【0040】
中空セラミック球又は半球も上述のように犠牲支持体上に形成され得る(https://www.hollomet.com/en/home.html)。ガスポケットがセラミックシェル内に設けられる実施形態では、ガスポケットと同じ寸法の犠牲支持体は、セラミック蒸着のためのテンプレートとして成型燃料炉心と組み合わせて使用され得、犠牲支持体は、後に焼き払われる。次に、セラミック成形体は、規定の空孔率を有するセラミックシェルを生成するために管理状態下で焼結され得る。セラミック中の細孔寸法の制御は、当技術分野で知られている。例えば、22nmほどの平均細孔寸法を提供するために細孔寸法形成を制御すること及び細孔寸法を判断する方法について説明するIsobe et al.,Pore size control of Al23 ceramics using two-step sintering,Ceramics International(2012),Vol 38(1),787-793を参照されたい。一実施形態では、セラミックシェルは、2つのセラミック半球を形成し、燃料炉心をセラミック半球の一方内に配設し、燃料炉心を封入するために2つの半球を互いに結合することにより、燃料炉心の周囲に形成される。2つの半球は、バンド、例えば金属バンドを2つの半球の周囲に設け、2つの半球をクランプすることによって互いに結合され得る。
【0041】
核融合炉のための増殖ブランケットモジュール
本明細書で説明されるのは、核融合炉のための増殖ブランケットモジュールでもあり、増殖ブランケットモジュールは、直列及び/又は並列に接続された複数のペブルベッド、及び各ペブルベッド内の複数の封入ペブルを含む。複数の封入ペブルの少なくとも1つであるが、いくつかの例ではそのすべてが、本明細書で説明されるペブルである。いくつかの例では、ペブルベッドは、核融合炉のトリチウム燃料がペブルベッド内で発生するため、燃料ベッドを指し得る。
【0042】
ペブルベッドは、ベッドのアレイにおいて互いに対して平行に配設され得る。いくつかの例では、複数のペブルベッドの各ペブルベッドは、それぞれガス入口マニホールド及びガス出口マニホールドを介してガス入口及びガス出口と流体連通する。ガス入口マニホールドは、冷却ガス源、例えば窒素ガス、ヘリウムガス又はクリプトンガス源に接続され得る。ペブルベッドを通る冷却ガスの流れは、以下の2つの目的、すなわち冷却を封入ペブルに提供すること及び発生したトリチウムを抽出することを果たす。ガス出口マニホールドは、燃料としてトリチウムを核融合炉のプラズマ中に再循環させるように構成され得る。
【0043】
いくつかの例では、ガス入口マニホールド及びガス出口マニホールドの一方又は両方は、増殖ユニットの性能へのいかなる影響も避けるために、封入燃料ペブルから漏れるいかなる増殖物質も収容し、その蓄積を可能にするように構成されたプレナムを備える。
【0044】
いくつかの実施形態では、各ペブルベッドは、長尺ベッドである。各ベッドは、封入ペブルの効率的な詰め込みを可能にする円筒形であり得る。しかし、他の構成が企図される。一実施形態では、ペブルベッドは、各ベッドが、隣接するベッドと少なくとも1つの壁を共有するハニカム構造を含む。ベッドの幾何形状に関係なく、各ベッドは、第1の端部及び第2の端部を有し得、一実施形態では、複数のベッドが並列に接続されるように、ガス入口マニホールドは、第1の端部と係合するように構成され、ガス出口マニホールドは、第2の端部と係合するように構成される。
【0045】
いくつかの実施形態では、ガス入口マニホールド及びガス出口マニホールドは、複数のベッドを通る1つ又は複数の流路を画定するように構成される。例えば、複数のベッドの各ベッドは、マニホールド構成によって画定された流路に基づいて画定され得るベッドの少なくとも2つのグループの1つに設けられる。少なくとも2つのグループの第1のグループは、ガス入口から第1のグループの少なくとも1つのベッドを通してガス出口まで第1のガス流路を画定し得、少なくとも2つのグループの第2のグループは、ガス入口から第2のグループの少なくとも1つのベッドを通してガス出口まで第2のガス流路を画定し得る。第1のガス流路及び第2のガス流路は、ガス入口からガス出口まで並列に接続され得るが、動作の任意の時点において、1つのベッド内のガス流は、隣接する又は隣接しないベッド内のガス流に逆行して流れ得ることが理解される。しかし、各グループのベッド内において、各ベッドは、少なくとも1つの他のベッドと直列に接続され得る。すなわち、冷却ガスは、例えば、1つのベッドの底部又は第1の端部から流れ、次のベッドの底部又は第2の端部内に戻る。ベッドのグループの数は、必要とされる冷却を封入ペブルに提供するためのベッドの総数と、冷却ガスの1つ又は複数の最適な流路とに基づいて選択され得る。一実施形態では、マニホールドは、増殖ブランケットモジュールの前部(プラズマ側)から離間されたベッドに続く前に最大冷却を、それを最も必要とするベッドに提供するために、プラズマに最も近いベッドで始まる1つ又は複数の流路上に冷却ガスを導くように構成される。
【0046】
封入ペブルを収容するための内部容積を画定するための1つ又は複数の壁をそれぞれ有する複数の燃料ベッドは、長尺ベッドであり得る。ベッドの1つ又は複数の壁は、核融合炉のための増殖ブランケット内での使用に好適な任意の物質、例えば封入ペブルの保持器に関連して上記で説明された低放射化フェライトマルテンサイト鋼から形成され得る。
【0047】
いくつかの実施形態において且つトリチウム抽出プロセスを最大化するために、複数のベッドは、トリチウム透過バリアコーティング、例えばクロミア(Cr23)又はアルミナ(Al23)のコーティングを備える。これは、トリチウムがベッドからガス出口マニホールドを通して流れ、この時点でトリチウムが抽出され、原子炉プラズマに送られ得ることを保証する。
【0048】
いくつかの実施形態では、複数のベッドは、互いに離間され、その間に空隙が設けられる。中性子増倍物質、例えば硫化鉛は、隣接するベッド間の空隙内に提供され得る。増殖ブランケット内の中性子増倍物質は、知られており、増殖物質のトリチウム増殖比を高めるために使用され得る。したがって、他の中性子増倍物質、例えばZr5Pb4、純粋ベリリウム又はBe12Tiが使用され得ることが理解される。いくつかの実施形態では、中性子増倍物質は、冷却管又はベッド間において、ペブルベッド内の複数のペブルの形式又は圧縮粉末のベッド内の複数のペブルの形式で提供される。
【0049】
いくつかの実施形態では、中性子反射材パネルが増殖ブランケットモジュール内に設けられる。中性子反射パネルは、使用時、増殖ベッドが反射パネルと第1の壁との間に配置されるように増殖ベッドの後部に設けられ得る。反射パネルの使用は、ブランケットの中性子経済性を改善すると共に、より多くのトリチウムを発生し得る。これは、ブランケットモジュールの全厚さが低減され得ることを意味する。いくつかの実施形態では、中性子反射パネルは、中性子反射物質、例えば炭化タングステン又はホウ化タングステンを含むか又はそれから形成される。いくつかの実施形態では、中性子反射パネルは、中性子反射物質、例えば炭化タングステン又はホウ化タングステンを充填される鋼鉄ケース、例えばEUROFER 97鋼鉄ケースを含む。いくつかの実施形態では、中性子反射パネルは、冷却を提供される。いくつかの実施形態では、中性子反射パネルは、冷却、例えば本明細書で説明された冷却ガス又は液体冷却剤の供給のための入口及び出口を備える。
【0050】
いくつかの実施形態では、複数の燃料ベッド内の封入ペブルの少なくとも2つは、同じ組成である燃料炉心を含む。他の実施形態では、封入ペブルの少なくとも2つは、異なる組成である炉心を含む。例えば、一実施形態では、封入ペブルの少なくとも2つは、Li2BeF4炉心を含み、別の実施形態では、封入燃料ペブルの少なくとも1つは、Li2BeF4を含み、封入燃料ペブルの少なくとも1つは、Li2BeF4と異なる炉心を含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、増殖ブランケットモジュールは、核融合炉の第1の壁構成要素と係合するように構成される。いくつかの実施形態では、核融合炉は、トカマク、例えば球形トカマクである。いくつかの実施形態では、球形トカマクは、小型球形トカマクであり得る。いくつかの実施形態では、増殖ブランケットモジュールは、使用時、球形トカマクなどの核融合炉内で燃料ベッドが極方向に合わせられるように配設される。いくつかの実施形態では、複数の燃料ベッドがアレイ状に配設され、第1の行又はバンクの燃料ベッドは、核融合炉の第1の壁構成要素に隣接して配設され、別の行又はバンクの燃料ベッドは、第1の行又はバンクの燃料ベッドの背後に配設される。
【0052】
増殖ブランケットモジュールの例が図3に示される。増殖ブランケットモジュール200は、複数の長尺及び円筒形ユニットの形式の複数のペブルベッド202を含む。増殖ユニットとも呼ばれ得る各ペブルベッドは、例えば、本明細書で説明されたものなど、複数の封入燃料ペブルを備える。しかし、核融合プロセスでトリチウムを増殖させることができる他のペブルが使用され得ることが理解される。ペブルベッド202は、その両端でマニホールド204及び206によって互いに結合され、蓋締めされる。マニホールド204及び206は、ガス入口208及びガス出口210をそれぞれ備えるが、ガス流の方向は、任意であり、したがって反転され得ることに留意されたい。これは、ガス出口210がガス入口として使用され得、ガス入口208がガス出口として使用され得ることを意味する。中性子反射物質を含む反射パネル212は、増殖ブランケットモジュール200の後端部(使用時において)に設けられ、冷却流のための分離コネクタ214及び216を備える。増殖ブランケットモジュール200の他の構成要素(支持体など)及びそれを原子炉の他の構成要素に取り付ける手段は、示されないことが理解される。特に、増殖ブランケットモジュール200は、隣接するベッド202間及びベッド202と外側ケース又は壁との間の中性子増倍物質のベッドの埋め戻しを可能にするために、外側ケース又は壁を備え得る。増殖ブランケットモジュール200は、核融合炉の第1の壁構成要素と結合するか、相互作用するか又は係合するように構成され得る。
【0053】
増殖ブランケットモジュールを動作させる方法及びその使用
本明細書で説明されるのは、説明された増殖ブランケットモジュールを動作させる方法でもあり、本方法は、冷却ガスの流れを増殖ブランケットモジュールに提供するステップであって、冷却ガスが、トリチウムが富化された暖められたガスを提供する増殖ブランケットモジュールから熱及びトリチウムを抽出することを可能にするステップと、暖められたガスを増殖ブランケットモジュールから除去するステップと、暖められたガスからトリチウムを抽出するステップとを含む。増殖ブランケットモジュールは、核融合炉内に存在し得、原子炉によって加熱され得る。冷却ガスは、窒素、ヘリウム、二酸化炭素から選択される1つ又は複数の冷却ガスを含み得る。
【0054】
本明細書で説明された封入ペブル及び/又は増殖ブランケットモジュールを含む核融合炉と、核融合炉又は核分裂炉内における、本明細書で説明された封入ペブルの使用と、核融合炉内における、本明細書で説明された増殖ブランケットモジュールの使用も説明される。核融合炉は、トカマク原子炉、例えば球形トカマク原子炉であり得る。
【0055】
封入ペブルのモデル化研究及び、封入ペブルを収容する増殖ブランケットモジュールのモデル化研究は、核融合炉内のペブル及び増殖ブランケットの実現可能性及び作業可能性を実証する。
【0056】
開示された実施形態に対する他の変形形態は、本明細書で説明された原理及び技術を実行する際、添付図面、本開示及び添付の特許請求の範囲の研究から当業者によって理解され、行われ得る。特許請求の範囲では、用語「含む」は、他の素子又は工程を排除せず、不定冠詞「1つの(a)」又は「1つの(an)」は、複数の素子を排除しない。いくつかの方策が相互に異なる従属請求項で挙げられるという単純な事実は、これらの方策の組み合わせが有利に使用され得ないことを示すものではない。特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も特許請求の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
図1A
図1B
図2
図3
【国際調査報告】