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特表2023-552981熱可塑性樹脂組成物およびそれにより製造された成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-20
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物およびそれにより製造された成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/08 20060101AFI20231213BHJP
   C08L 51/04 20060101ALI20231213BHJP
   C08L 77/12 20060101ALI20231213BHJP
   C08K 3/105 20180101ALI20231213BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20231213BHJP
   C08K 3/16 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
C08L25/08
C08L51/04
C08L77/12
C08K3/105
C08K3/22
C08K3/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533352
(86)(22)【出願日】2021-11-09
(85)【翻訳文提出日】2023-05-31
(86)【国際出願番号】 KR2021016188
(87)【国際公開番号】W WO2022124593
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】10-2020-0173658
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520087103
【氏名又は名称】ロッテ ケミカル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】キム,ユン ジン
(72)【発明者】
【氏名】チュ,ドン フイ
(72)【発明者】
【氏名】クウォン,ヨン チュル
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BC06X
4J002BN13W
4J002BN14W
4J002CL083
4J002DA076
4J002DD026
4J002DE096
4J002DE107
4J002FD186
4J002FD187
4J002FD206
4J002FD207
(57)【要約】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ゴム変性芳香族ビニル系共重合体樹脂約100重量部;ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体約5重量部~約25重量部;銀(Ag)系化合物約0.05重量部~約1.5重量部;および酸化亜鉛約1重量部~約15重量部を含み、前記ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体、および前記銀系化合物と前記酸化亜鉛の和の重量比(ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体:銀系化合物+酸化亜鉛)は、約1:0.1~約1:2であることを特徴とする。前記熱可塑性樹脂組成物は、抗ウイルス性、耐候性、耐衝撃性等に優れる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム変性芳香族ビニル系共重合体樹脂約100重量部;
ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体約5重量部~約25重量部;
銀(Ag)系化合物約0.05重量部~約1.5重量部;および
酸化亜鉛約1重量部~約15重量部を含み、
前記ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体、および前記銀系化合物と前記酸化亜鉛の和の重量比(ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体:銀系化合物+酸化亜鉛)は、約1:0.1~約1:2であることを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ゴム変性芳香族ビニル系共重合体樹脂は、ゴム変性ビニル系グラフト共重合体および芳香族ビニル系共重合体樹脂を含むことを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ゴム変性ビニル系グラフト共重合体は、ゴム質重合体に芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体を含む単量体混合物がグラフト重合されたことを特徴とする、請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体は、炭素数6以上のアミノカルボン酸、ラクタムまたはジアミン-ジカルボン酸塩;ポリアルキレングリコール;および炭素数4~20のジカルボン酸;を含む反応混合物のブロック共重合体であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記銀系化合物は、金属銀、酸化銀、ハロゲン化銀および銀イオンを含有する担持体の1種以上を含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記銀系化合物および前記酸化亜鉛の重量比(銀系化合物:酸化亜鉛)は、約1:3~約1:90であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂組成物は、ISO 21702評価法によって、5cm×5cmの大きさの試片に豚流行性下痢ウイルスまたはインフルエンザAウイルス液を滴下し、25℃、RH50%の条件で時間帯別に測定したウイルス死滅時間が約20時間以下であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
前記の熱可塑性樹脂組成物は、50mm×90mm×2.5mmの大きさの射出試片に対して、色差計を使用して初期色相(L ,a ,b )を測定し、前記射出試片を、ASTM D4459によって300時間テストを行い、色差計を使用してテスト後の色相(L ,a ,b )を測定した後、下記数式1に従い算出した色相変化(ΔE)が約3以下であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物:
【数1】

前記数式1において、ΔLはテスト前後のL値の差(L -L )で、Δaはテスト前後のa値の差(a -a )で、Δbはテスト前後のb*値の差(b -b )である。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂組成物は、ASTM D256によって測定した厚さ1/4”試片のノッチアイゾット衝撃強度が約14kgf・cm/cm~約30kgf・cm/cmであることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物から形成されることを特徴とする、成形品。
【請求項11】
前記成形品は、少なくとも一面に表面粗度測定器で測定した表面粗度が約1μm~約50μmの腐食表面を含むことを特徴とする、請求項10に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物およびそれにより製造された成形品に関する。より具体的には、本発明は、抗ウイルス性、耐候性、耐衝撃性等に優れた熱可塑性樹脂組成物およびそれにより製造された成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コロナウイルスのパンデミック以降、抗ウイルス機能が含まれている熱可塑性樹脂製品に対する要求が増加している。特に、室内で使用される家電製品等の外装材として適用しようとする事例が増えている。具体的には、冷蔵庫の取っ手、小型家電(空気清浄機、加湿器等)の外装、リモコン等が前記用途に該当する。
【0003】
抗ウイルス性能の発現が可能な素材として広く知られているものに、銅(Cu)化合物等がある。しかし、銅化合物を熱可塑性樹脂組成物に適用する場合、加工が難しく、酸化による変色等の問題があるため、適用可能な製品が非常に制限的になる。また、既存の無機抗菌剤等を適用した熱可塑性樹脂組成物は、抗菌性能は優れるものの、抗ウイルス性能が発現するかは確認できていない。
【0004】
よって、抗ウイルス性、耐候性、耐衝撃性等に優れた熱可塑性樹脂組成物の開発が必要な実情にある。
【0005】
本発明の背景技術は、韓国公開特許10-2020-0065139号等に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、抗ウイルス性、耐候性、耐衝撃性等に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供するためのものである。
【0007】
本発明の別の目的は、前記熱可塑性樹脂組成物から形成された成形品を提供するためのものである。
【0008】
本発明の前記およびその他の目的は、下記で説明する本発明によって全て達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1.本発明の一つの観点は、熱可塑性樹脂組成物に関するものである。前記熱可塑性樹脂組成物は、ゴム変性芳香族ビニル系共重合体樹脂約100重量部;ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体約5重量部~約25重量部;銀(Ag)系化合物約0.05重量部~約1.5重量部;および酸化亜鉛約1重量部~約15重量部を含み、前記ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体、および前記銀系化合物と前記酸化亜鉛の和の重量比(ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体:銀系化合物+酸化亜鉛)は、約1:0.1~約1:2であることを特徴とする。
【0010】
2.前記1の具体例において、前記ゴム変性芳香族ビニル系共重合体樹脂は、ゴム変性ビニル系グラフト共重合体および芳香族ビニル系共重合体樹脂を含むことができる。
【0011】
3.前記1または2の具体例において、前記ゴム変性ビニル系グラフト共重合体は、ゴム質重合体に芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体を含む単量体混合物がグラフト重合されたものになり得る。
【0012】
4.前記1~3の具体例において、前記ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体は、炭素数6以上のアミノカルボン酸、ラクタムまたはジアミン-ジカルボン酸塩;ポリアルキレングリコール;および炭素数4~20のジカルボン酸;を含む反応混合物のブロック共重合体になり得る。
【0013】
5.前記1~4の具体例において、前記銀系化合物は、金属銀、酸化銀、ハロゲン化銀および銀イオンを含有する担持体の1種以上を含み得る。
【0014】
6.前記1~5の具体例において、前記銀系化合物および前記酸化亜鉛の重量比(銀系化合物:酸化亜鉛)は、約1:3~約1:90になり得る。
【0015】
7.前記1~6の具体例において、前記熱可塑性樹脂組成物は、ISO 21702評価法によって、5cm×5cmの大きさの試片に豚流行性下痢ウイルスまたはインフルエンザAウイルス液を滴下し、25℃、RH50%の条件で時間帯別に測定したウイルス死滅時間が約20時間以下になり得る。
【0016】
8.前記1~7の具体例において、前記の熱可塑性樹脂組成物は、50mm×90mm×2.5mmの大きさの射出試片に対して、色差計を使用して初期色相(L ,a ,b )を測定し、前記射出試片を、ASTM D4459によって300時間テストを行い、色差計を使用してテスト後の色相(L ,a ,b )を測定した後、下記数式1に従い算出した色相変化(ΔE)が約3以下になり得る:
【0017】
【数1】
【0018】
前記数式1において、ΔLはテスト前後のL値の差(L -L )で、Δaはテスト前後のa値の差(a -a )で、Δbはテスト前後のb*値の差(b -b )である。
【0019】
9.前記1~8の具体例において、前記熱可塑性樹脂組成物は、ASTM D256によって測定した厚さ1/4”試片のノッチアイゾット衝撃強度が約14kgf・cm/cm~約30kgf・cm/cmになり得る。
【0020】
10.本発明の別の観点は、成形品に関するものである。前記成形品は、前記1~9のいずれかによる熱可塑性樹脂組成物から形成されることを特徴とする。
【0021】
11.前記10の具体例において、前記成形品は、少なくとも一面に表面粗度測定器で測定した表面粗度が約1μm~約50μmの腐食表面を含み得る。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、抗ウイルス性、耐候性、耐衝撃性等に優れた熱可塑性樹脂組成物およびそれにより形成された成形品を提供する発明の効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[発明を実施するための最善の形態]
以下、本発明を詳しく説明する。
【0024】
本発明にかかる熱可塑性樹脂組成物は、(A)ゴム変性芳香族ビニル系共重合体樹脂;(B)ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体;(C)銀(Ag)系化合物;および(D)酸化亜鉛を含む。
【0025】
本明細書において、数値範囲を表す「a~b」は「≧aであり≦b」と定義する。
【0026】
(A)ゴム変性芳香族ビニル系共重合体樹脂
本発明一具体例にかかるゴム変性芳香族ビニル系共重合体樹脂は、(A1)ゴム変性ビニル系グラフト共重合体、および(A2)芳香族ビニル系共重合体樹脂を含むことができる。
【0027】
(A1)ゴム変性ビニル系グラフト共重合体
本発明の一具体例にかかるゴム変性ビニル系グラフト共重合体は、ゴム質重合体に芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体を含む単量体混合物がグラフト重合されたものになり得る。例えば、前記ゴム変性ビニル系グラフト共重合体は、ゴム質重合体に芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体を含む単量体混合物をグラフト重合して得ることができ、必要に応じて、前記単量体混合物に加工性および耐熱性を付与する単量体をさらに含ませてグラフト重合することができる。前記重合は、乳化重合、懸濁重合等の公知の重合方法によって行うことができる。また、前記ゴム変性ビニル系グラフト共重合体は、コア(ゴム質重合体)-シェル(単量体混合物の共重合体)構造を形成し得るが、これに制限されるのではない。
【0028】
具体例において、前記ゴム質重合体としては、ポリブタジエン、ポリ(アクリロニトリル-ブタジエン)等のジエン系ゴム、および前記ジエン系ゴムに水素添加した飽和ゴム、イソプレンゴム、炭素数2~10のアルキル(メタ)アクリレートゴム、炭素数2~10のアルキル(メタ)アクリレートおよびスチレンの共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン単量体三元共重合体(EPDM)等を例示することができる。これらは、単独または2種以上を混合して適用することができる。例えば、ジエン系ゴム、(メタ)アクリレートゴム等を使用することができ、具体的には、ブタジエン系ゴム、ブチルアクリレートゴム等を使用することができる。
【0029】
具体例において、前記ゴム質重合体(ゴム粒子)は、平均粒子の大きさが約0.05μm~約6μm、例えば約0.15μm~約4μm、具体的には約0.25μm~約3.5μmになり得る。前記範囲で、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、外観特性等に優れ得る。ここで、前記ゴム質重合体(ゴム粒子)の平均粒子の大きさ(z-平均)は、ラテックス(latex)状態で光散乱(light scattering)方法を用いて測定することができる。具体的には、ゴム質重合体ラテックスをメッシュ(mesh)に濾して、ゴム質重合体の重合中に発生した凝固物を取り除き、ラテックス0.5gおよび蒸留水30mlを混合した溶液を1,000mlフラスコに注ぎ、蒸留水を満たして試料を製造した後、試料10mlを石英セル(cell)に移し、これに対して、光散乱粒度測定器(malvern社,nano-zs)でゴム質重合体の平均粒子の大きさを測定することができる。
【0030】
具体例において、前記ゴム質重合体の含量は、ゴム変性ビニル系グラフト共重合体全100重量%のうち、約20重量%~約80重量%、例えば約25重量%~約70重量%になり得、前記単量体混合物(芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体を含む)の含量は、ゴム変性ビニル系グラフト共重合体全100重量%のうち、約20重量%~約80重量%、例えば約30重量%~約75重量%になり得る。前記範囲で、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、外観特性等に優れ得る。
【0031】
具体例において、前記芳香族ビニル系単量体は、前記ゴム質重合体にグラフト共重合され得るものとして、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、エチルスチレン、ビニルキシレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、ジブロモスチレン、ビニルナフタレン等を例示することができる。これらは、単独で使用したり、2種以上を混合して使用することができる。前記芳香族ビニル系単量体の含量は、前記単量体混合物100重量%のうち、約10重量%~約90重量%、例えば約20重量%~約80重量%になり得る。前記範囲で、熱可塑性樹脂組成物の加工性、耐衝撃性等に優れ得る。
【0032】
具体例において、前記シアン化ビニル系単量体は、前記芳香族ビニル系と共重合可能なものとして、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、フェニルアクリロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、フマロニトリル等を例示することができる。これらは、単独で使用したり、2種以上を混合して使用することができる。例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等を使用することができる。前記シアン化ビニル系単量体の含量は、前記単量体混合物100重量%のうち、約5重量%~約60重量%、例えば約10重量%~約50重量%になり得る。前記範囲で、熱可塑性樹脂組成物の耐化学性、機械的特性等に優れ得る。
【0033】
具体例において、前記加工性および耐熱性を付与するための単量体としては、(メタ)アクリル酸、炭素数1~10のアルキル(メタ)アクリレート、無水マレイン酸、N-置換マレイミド等を例示することができるが、これに限定されるのではない。前記加工性および耐熱性を付与するための単量体を使用する際、その含量は、前記単量体混合物100重量%のうち、約60重量%以下、例えば約1重量%~約50重量%になり得る。前記範囲で、他の物性が低下することなく、熱可塑性樹脂組成物に加工性および耐熱性を付与することができる。
【0034】
具体例において、前記ゴム変性ビニル系グラフト共重合体としては、ブタジエン系ゴム質重合体に芳香族ビニル系化合物であるスチレン単量体と、シアン化ビニル系化合物であるアクリロニトリル単量体がグラフトされた共重合体(g-ABS)、ブタジエン系ゴム質重合体に芳香族ビニル系化合物であるスチレン単量体と、加工性および耐熱性を付与するための単量体としてメチルメタクリレートがグラフトされた共重合体(g-MBS)、ブタジエン系ゴム質重合体にスチレン単量体、アクリロニトリル単量体およびメチルメタクリレートがグラフトされた共重合体(g-MABS)、ブチルアクリレート系ゴム質重合体に芳香族ビニル系化合物であるスチレン単量体と、シアン化ビニル系化合物であるアクリロニトリル単量体がグラフトされた共重合体であるアクリレート-スチレン-アクリロニトリルグラフト共重合体(g-ASA)等を例示することができる。
【0035】
具体例において、前記ゴム変性ビニル系グラフト共重合体は、全ゴム変性芳香族ビニル系共重合体樹脂100重量%のうち、約10重量%~約50重量%、例えば約20重量%~約45重量%で含まれ得る。前記範囲で、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、流動性(成形加工性)、外観特性、これらの物性のバランス等に優れ得る。
【0036】
(A2)芳香族ビニル系共重合体樹脂
本発明の一具体例にかかる芳香族ビニル系共重合体樹脂は、通常のゴム変性芳香族ビニル系共重合体樹脂に使用される芳香族ビニル系共重合体樹脂になり得る。例えば、前記芳香族ビニル系共重合体樹脂は、芳香族ビニル系単量体および前記芳香族ビニル系単量体と共重合可能な単量体を含む単量体混合物の重合体になり得る。
【0037】
具体例において、前記芳香族ビニル系共重合体樹脂は、芳香族ビニル系単量体および芳香族ビニル系単量体と共重合可能な単量体等を混合した後、これを重合して得ることができ、前記重合は、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等の公知の重合方法によって行うことができる。
【0038】
具体例において、前記芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、エチルスチレン、ビニルキシレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、ジブロモスチレン、ビニルナフタレン等を使用することができる。これらは、単独または2種以上を混合して適用することができる。前記芳香族ビニル系単量体の含量は、芳香族ビニル系共重合体樹脂全100重量%のうち、約10重量%~約95重量%、例えば約20重量%~約90重量%になり得る。前記範囲で、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、流動性等に優れ得る。
【0039】
具体例において、前記芳香族ビニル系単量体と共重合可能な単量体は、シアン化ビニル系単量体およびアルキル(メタ)アクリル系単量体の1種以上を含むことができる。例えば、シアン化ビニル系単量体またはシアン化ビニル系単量体およびアルキル(メタ)アクリル系単量体になり得る。
【0040】
具体例において、前記シアン化ビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、フェニルアクリロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、フマロニトリル等を例示することができるが、これに制限されるのではない。これらは単独で使用したり、2種以上を混合して使用することができる。例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等を使用することができる。
【0041】
具体例において、前記アルキル(メタ)アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸および/または炭素数1~10のアルキル(メタ)アクリレート等を例示することができる。これらは単独で使用したり、2種以上を混合して使用することができる。例えば、メチルメタクリレート、メチルアクリレート等を使用することができる。
【0042】
具体例において、前記芳香族ビニル系単量体と共重合可能な単量体の含量は、芳香族ビニル系共重合体樹脂全100重量%のうち、約5重量%~約90重量%、例えば約10重量%~約80重量%になり得る。前記範囲で、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、流動性等に優れ得る。
【0043】
具体例において、前記芳香族ビニル系共重合体樹脂は、GPC(gel permeation chromatography)で測定した重量平均分子量(Mw)が約10,000g/mol~約300,000g/mol、例えば約15,000g/mol~約150,000g/molになり得る。前記範囲で、熱可塑性樹脂組成物の機械的強度、成形性等に優れ得る。
【0044】
具体例において、前記芳香族ビニル系共重合体樹脂は、全ゴム変性芳香族ビニル系共重合体樹脂100重量%のうち、約50重量%~約90重量%、例えば約55重量%~約80重量%で含まれ得る。前記範囲で、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、流動性(成形加工性)等に優れ得る。
【0045】
(B)ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体
本発明の一具体例にかかるポリエーテルエステルアミドブロック共重合体は、前記ゴム変性芳香族ビニル系共重合体樹脂に銀系化合物および酸化亜鉛と一緒に適用されて、熱可塑性樹脂組成物(成形品)の抗ウイルス性、耐候性、耐衝撃性等を向上させることのできるものとして、炭素数6以上のアミノカルボン酸、ラクタムまたはジアミン-ジカルボン酸塩;ポリアルキレングリコール;および炭素数4~20のジカルボン酸;を含む反応混合物のブロック共重合体を使用することができる。
【0046】
具体例において、前記炭素数6以上のアミノカルボン酸、ラクタムまたはジアミン-ジカルボン酸の塩としては、ω-アミノカプロン酸、ω-アミノエナント酸、ω-アミノカプリル酸、ω-アミノペルコン酸、ω-アミノカプリン酸、1,1-アミノウンデカン酸、1,2-アミノドデカン酸等のようなアミノカルボン酸類;カプロラクタム、エナントラクタム、カプリルラクタム、ラウリルラクタム等のようなラクタム類;およびヘキサメチレンジアミン-アジピン酸の塩、ヘキサメチレンジアミン-イソフタル酸の塩等のようなジアミンとジカルボン酸の塩等を例示することができる。例えば、1,2-アミノドデカン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン-アジピン酸の塩等を使用することができる。
【0047】
具体例において、前記ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2-および1,3-プロピレングリコール)、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールのブロックまたはランダム共重合体、エチレングリコールとテトラヒドロフランの共重合体等を例示することができる。例えば、ポリエチレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体等を使用することができる。
【0048】
具体例において、前記炭素数4~20のジカルボン酸としては、テレフタル酸、1,4-シクロヘキサカルボン酸、セバシン酸、アジピン酸、ドデカノカルボン酸等を例示することができる。
【0049】
具体例において、前記炭素数6以上のアミノカルボン酸、ラクタムまたはジアミン-ジカルボン酸塩;と前記ポリアルキレングリコール;の結合は、エステル結合になり得、前記炭素数6以上のアミノカルボン酸、ラクタムまたはジアミン-ジカルボン酸塩;と前記炭素数4~20のジカルボン酸;の結合は、アミド結合になり得、前記ポリアルキレングリコール;と前記炭素数4~20のジカルボン酸;の結合は、エステル結合になり得る。
【0050】
具体例において、前記ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体は、公知の合成方法によって製造することができ、例えば、日本特許公報昭56-045419および日本特許公開昭55-133424に開示されている合成方法によって製造することができる。
【0051】
具体例において、前記ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体は、ポリエーテル-エステルブロックを約10重量%~約95重量%含むことができる。前記範囲で、熱可塑性樹脂組成物(成形品)の耐衝撃性等に優れ得る。
【0052】
具体例において、前記ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体は、前記ゴム変性芳香族ビニル系共重合体樹脂約100重量部に対して、約5重量部~約25重量部、例えば約8重量部~約22重量部で含まれ得る。前記ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体の含量が、前記ゴム変性芳香族ビニル系共重合体樹脂約100重量部に対して、約5重量部未満の場合は、熱可塑性樹脂組成物(成形品)の抗ウイルス性、耐衝撃性等が低下するおそれがあり、約25重量部を超過する場合は、熱可塑性樹脂組成物(成形品)の耐候性、熱安定性等が低下するおそれがある。
【0053】
(C)銀(Ag)系化合物
本発明の一具体例にかかる銀系化合物は、前記ゴム変性芳香族ビニル系共重合体樹脂にポリエーテルエステルアミドブロック共重合体および酸化亜鉛と一緒に適用されて、熱可塑性樹脂組成物(成形品)の抗ウイルス性、耐候性、耐衝撃性等を向上させることができるものである。前記銀系化合物は、抗菌剤として銀成分を含む化合物であれば特に制限されるのではなく、例えば、金属銀、酸化銀、ハロゲン化銀、銀イオンを含有する担持体、これらの組合せ等を含むことができる。これらのうち、銀イオンを含有する担持体を使用することができる。前記担持体としては、ゼオライト、シリカゲル、リン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、リン酸-ソジウム-ジルコニウム、リン酸-ソジウム-水素-ジルコニウム等を挙げることができる。前記担持体は、多孔質構造であることが好ましい。多孔質構造の担持体は、銀成分をその内部にまで保有することができるため、銀成分の含有量を多くできるだけでなく、銀成分の持続性能(維持性能)が向上する。具体的には、前記銀系化合物としては、銀ソジウム水素ジルコニウムホスフェート(silver sodium hydrogen zirconium phosphate)等を使用することができる。
【0054】
具体例において、前記銀系化合物は、粒度分析器(Beckman Coulter社,Laser Diffraction Particle Size Analyzer LS 13 320装備)を使用して測定した平均粒子の大きさ(D50)が15μm以下、例えば0.1μm~12μmになり得る。
【0055】
具体例において、前記銀系化合物は、前記ゴム変性芳香族ビニル系共重合体樹脂約100重量部に対して、約0.05重量部~約1.5重量部、例えば約0.1重量部~約1.2重量部で含むことができる。前記銀系化合物の含量が前記ゴム変性芳香族ビニル系共重合体樹脂約100重量部に対して、約0.05重量部未満の場合は、熱可塑性樹脂組成物(成形品)の抗ウイルス性、抗菌性等が低下するおそれがあり、約1.2重量部を超過する場合は、熱可塑性樹脂組成物(成形品)の耐衝撃性、耐候性等が低下するおそれがある。
【0056】
(D)酸化亜鉛
本発明の酸化亜鉛は、前記ゴム変性芳香族ビニル系共重合体樹脂にポリエーテルエステルアミドブロック共重合体および酸化亜鉛と一緒に適用されて、熱可塑性樹脂組成物(成形品)の抗ウイルス性、耐候性、耐衝撃性等を向上させることのできるものとして、通常の熱可塑性樹脂組成物に適用される酸化亜鉛を使用することができる。
【0057】
具体例において、前記酸化亜鉛は、一次粒子(単一粒子)および前記一次粒子が集まって形成した二次粒子からなっており、粒度分析器(Beckman Coulter社,Laser Diffraction Particle Size Analyzer LS 13 320装備)で測定した一次粒子の平均粒子の大きさ(D50)が約1nm~約50nm、例えば約1nm~約30nmになり得、二次粒子の平均粒子の大きさ(D50)が約0.1μm~約10μm、例えば約0.5μm~約5μmになり得る。前記範囲で、熱可塑性樹脂組成物(成形品)の抗ウイルス性、耐衝撃性等に優れ得る。
【0058】
具体例において、前記酸化亜鉛は、前記ゴム変性芳香族ビニル系共重合体樹脂約100重量部に対して、約1重量部~約15重量部、例えば約2重量部~約12重量部で含まれ得る。前記酸化亜鉛の含量が前記ゴム変性芳香族ビニル系共重合体樹脂約100重量部に対して、約1重量部未満の場合は、熱可塑性樹脂組成物(成形品)の抗ウイルス性、耐候性、抗菌性等が低下するおそれがあり、約15重量部を超過する場合は、熱可塑性樹脂組成物(成形品)の耐衝撃性、着色性等が低下するおそれがある。
【0059】
具体例において、前記ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体および前記銀系化合物と前記酸化亜鉛の和の重量比(ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体:銀系化合物+酸化亜鉛)は、約1:0.1~約1:2、例えば約1:0.15~約1:1.5になり得る。前記重量比が約1:0.1未満の場合は、熱可塑性樹脂組成物(成形品)の抗ウイルス性、耐候性等が低下するおそれがあり、約1:2を超過する場合は、熱可塑性樹脂組成物(成形品)の抗ウイルス性、耐衝撃性等が低下するおそれがある。
【0060】
具体例において、前記銀系化合物および前記酸化亜鉛の重量比(銀系化合物:酸化亜鉛)は、約1:3~約1:90、例えば約1:3.3~約1:80になり得る。前記範囲で、熱可塑性樹脂組成物(成形品)の抗ウイルス性、耐候性、耐衝撃性等がより優れたものになり得る。
【0061】
本発明の一具体例にかかる熱可塑性樹脂組成物は、通常の熱可塑性樹脂組成物に含まれる添加剤をさらに含むことができる。前記添加剤としては、難燃剤、充填剤、酸化防止剤、滴下防止剤、滑剤、離型剤、核剤、安定剤、顔料、染料、これらの混合物等を例示することができるが、これに制限されるのではない。前記添加剤を使用する際、その含量は、前記ゴム変性芳香族ビニル系共重合体樹脂約100重量部に対して、約0.001重量部~約40重量部、例えば約0.1重量部~約10重量部になり得る。
【0062】
本発明の一具体例にかかる熱可塑性樹脂組成物は、前記構成成分を混合し、通常の二軸押出器を使用して、約200℃~約280℃、例えば約220℃~約250℃で溶融押出したペレット形態になり得る。
【0063】
具体例において、前記熱可塑性樹脂組成物は、ISO 21702評価法によって、5cm×5cmの大きさの試片に豚流行性下痢ウイルス(PEDV)またはインフルエンザAウイルス液を滴下し、25℃、RH 50%の条件で時間帯別に測定したウイルス死滅時間が約20時間以下、例えば約8時間~約16時間になり得る。
【0064】
具体例において、前記熱可塑性樹脂組成物は、50mm×90mm×2.5mmの大きさの射出試片に対して色差計を使用して初期色相(L ,a ,b )を測定し、前記射出試片を、ASTM D4459によって300時間テストを行い、色差計を使用してテスト後の色相(L ,a ,b )を測定した後、下記数式1に従って算出した色相変化(ΔE)が約3以下、例えば約1.5~約2.5になり得る。
【0065】
【数2】
【0066】
前記数式1において、ΔLはテスト前後のL値の差(L -L )で、Δaはテスト前後のa値の差(a -a )で、Δbはテスト前後のb*値の差(b -b )である。
【0067】
具体例において、前記熱可塑性樹脂組成物は、ASTM D256によって測定した厚さ1/4”の試片のノッチアイゾット衝撃強度が約14kgf・cm/cm~約30kgf・cm/cm、例えば約16kgf・cm/cm~約25kgf・cm/cmになり得る。
【0068】
本発明にかかる成形品は、前記熱可塑性樹脂組成物から形成される。前記熱可塑性樹脂組成物は、ペレット形態に製造することができ、製造されたペレットは、射出成形、押出成形、真空成形、キャスティング成形等の多様な成形方法によって多様な成形品(製品)に製造することができる。このような成形方法は、本発明が属する分野の通常の知識を有する者によって広められている。
【0069】
具体例において、前記成形品は、抗ウイルス性、耐候性、耐衝撃性、これらの物性バランス等に優れるため、身体接触の多い製品の抗ウイルス性の外装材等に有用である。
【0070】
具体例において、前記成形品は、少なくとも一面に表面粗度測定器で測定した表面粗度が約1μm~約50μm、例えば約5μm~約40μmの腐食表面を含むことができる。腐食表面の形成方法は、本発明の属する分野の通常の知識を有する者によって広められている。前記表面粗度の範囲で、成形品の抗ウイルス性等により優れ、低光性の製品を得ることができる。
【0071】
具体例において、前記腐食表面を含む成形品は、ASTM D523によって85°の角度で測定した3.2mm厚の試片の腐食表面光沢度が約0.5%~約40%、例えば約1%~約20%になり得る。前記範囲で、成形品の低光性、抗ウイルス性、耐候性等により優れ得る。
【0072】
[発明の実施のための形態]
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、このような実施例は、単に説明の目的のためのものであり、本発明を制限するものと解釈してはならない。
【0073】
実施例
実施例および比較例で使用した各成分の仕様は次の通りである。
【0074】
(A)ゴム変性芳香族ビニル系共重合体樹脂
下記(A1)ゴム変性ビニル系グラフト共重合体25重量%、および(A2)芳香族ビニル系共重合体樹脂75重量%を混合して使用した。
【0075】
(A1)ゴム変性ビニル系グラフト共重合体
平均粒子の大きさが0.3μmのブタジエンゴム58重量%に、スチレンおよびアクリロニトリル(重量比:75/25)を含む単量体混合物42重量%をグラフト重合して製造されたコア-シェル形態のグラフト共重合体(g-ABS)を使用した。
【0076】
(A2)芳香族ビニル系共重合体樹脂
スチレン70重量%およびアクリロニトリル30重量%を重合して製造されたSAN樹脂(重量平均分子量:120,000g/mol)を使用した。
【0077】
(B)ブロック共重合体
(B1)ポリアミド6-ポリエチレンオキシドブロック共重合体(PA6-b-PEO,製造社:Sanyo chemical,製品名:PELECTRON AS)を使用した。
【0078】
(B2)ポリプロピレン-ポリエチレンオキシドブロック共重合体(PP-b-PEO,製造社:Sanyo chemical,製品名:PELECTRON PVL,屈折率:1.50)を使用した。
【0079】
(C)銀(Ag)系化合物
銀ホスフェートガラス(silver phosphate glass,製造社:Fuji Chemical Industries,LTD.製品名:BM-102SD)を使用した。
【0080】
(D)酸化亜鉛
酸化亜鉛(製造社:SH energy&chemical,製品名:ANYZON)を使用した。
【0081】
実施例1~7および比較例1~11
前記各構成成分を下記表1、2および3に記載したような含量で添加した後、230℃で押出してペレットを製造した。押出しはL/D=36、直径45mmの二軸押出器を使用し、製造されたペレットは80℃で2時間以上乾燥した後、6oz射出器(成形温度:230℃,金型温度:60℃)で射出して試片を製造した。製造された試片に対して下記の方法で物性を評価し、その結果を下記表1、2および3に記載した。
【0082】
物性測定方法
(1)抗ウイルス性の評価:ISO 21702評価法によって、5cm×5cmの大きさの試片に豚流行性下痢ウイルス(PEDV)またはインフルエンザAウイルス液を滴下し、25℃、RH50%の条件で時間帯別にウイルス死滅時間(単位:時間)を測定した。
【0083】
(2)色相変化(ΔE):50mm×90mm×2.5mmの大きさの射出試片に対して、色差計(KONICA MINOLTA,CM-3700A)を使用して初期色相(L ,a ,b )を測定し、前記射出試片を、ASTM D4459によって300時間テストを行い、色差計を使用してテスト後の色相(L ,a ,b )を測定した後、下記数式1に従って色相変化(ΔE)を算出した。
【0084】
【数3】
【0085】
前記数式1において、ΔLはテスト前後のL値の差(L -L )で、Δaはテスト前後のa値の差(a -a )で、Δbはテスト前後のb*値の差(b -b )である。
【0086】
(3)ノッチアイゾット衝撃強度(単位:kgf・cm/cm):ASTM D256によって、1/4”厚の試片のノッチアイゾット衝撃強度を測定した。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】
【0090】
前記結果から、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、抗ウイルス性(ウイルスの死滅時間)、耐候性(色相変化(ΔE))、耐衝撃性(ノッチアイゾット衝撃強度)等が全て優れることがわかる。
【0091】
一方、ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体の含量が本発明の範囲未満である比較例1の場合は、抗ウイルス性、耐衝撃性等が低下することがわかり、ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体の含量が本発明の範囲を超過した比較例2の場合は、耐候性等が低下することがわかり、本発明のポリエーテルエステルアミドブロック共重合体の代わりに、ポリプロピレン-ポリエチレンオキシドブロック共重合体(B2)を適用した比較例3の場合は、耐衝撃性等が低下することがわかる。銀系化合物の含量が本発明の範囲未満である比較例4の場合は、抗ウイルス性等が低下することがわかり、銀系化合物の含量が本発明の範囲を超過した比較例5の場合は、耐衝撃性等が実施例に比べて低下し、耐候性等が低下することがわかり、酸化亜鉛の含量が本発明の範囲未満である比較例6の場合は、抗ウイルス性、耐候性等が低下することがわかり、酸化亜鉛の含量が本発明の範囲を超過した比較例7の場合は、耐衝撃性等が低下することがわかる。また、前記ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体(B1)、前記銀系化合物(C)および前記酸化亜鉛(D)の含量が本発明の範囲に含まれても、前記ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体(B1)および前記銀系化合物(C)と前記酸化亜鉛(D)の和の重量比(B1:C+D)が本発明の範囲未満(1:0.042)である比較例8の場合は、抗ウイルス性、耐候性等が低下することがわかり、本発明の範囲を超過(1:3.3)した比較例9の場合は、抗ウイルス性、耐衝撃性等が低下することがわかる。また、ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体を適用しなかった比較例10の場合は、抗ウイルス性等が低下することがわかり、ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体、銀系化合物および酸化亜鉛を適用しなかった比較例11の場合は、抗ウイルス性、耐候性等が低下することがわかる。
【0092】
これまで本発明に対して実施例を中心に説明した。本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者は、本発明が本発明の本質的な特性から外れない範囲で変形した形態に具現できることを理解すると考える。そのため、開示した実施例は、限定的な観点ではなく説明的な観点から考慮しなければならない。本発明の範囲は、前述の説明ではなく、特許請求の範囲に表されており、それと同等の範囲内にあるすべての相違点は本発明に含まれるものと解釈しなければならない。
【国際調査報告】