(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-20
(54)【発明の名称】コンフォーマルかつ平滑な窒化チタン層及びその形成方法
(51)【国際特許分類】
C23C 16/34 20060101AFI20231213BHJP
【FI】
C23C16/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533612
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(85)【翻訳文提出日】2023-06-01
(86)【国際出願番号】 US2021062679
(87)【国際公開番号】W WO2022125820
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518196871
【氏名又は名称】ユージェヌス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095267
【氏名又は名称】小島 高城郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124176
【氏名又は名称】河合 典子
(74)【代理人】
【識別番号】100224269
【氏名又は名称】小島 佑太
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、ヒュンチョル
(72)【発明者】
【氏名】キム、ハエ・ヤング
(72)【発明者】
【氏名】ダームドヒア、アジット
(72)【発明者】
【氏名】ニー、ブンセン・ビー
(72)【発明者】
【氏名】ジュング、スング・フーン
【テーマコード(参考)】
4K030
【Fターム(参考)】
4K030AA03
4K030AA13
4K030BA18
4K030BA38
4K030CA04
4K030JA01
4K030JA05
4K030JA06
4K030JA09
4K030JA10
(57)【要約】
開示された技術は広くは窒化チタン(TiN)を含む薄膜の形成に関し、特に周期的蒸着プロセスによるTiNを含む薄膜の形成に関する。一態様では、 周期的蒸着プロセスによる窒化チタン(TiN)を含む薄膜の形成方法が、半導体基板を1又はそれ以上の周期的蒸着サイクルに曝すことによって半導体基板上にTiN薄膜を形成することを含み、その各々がTi前駆体流量でTi前駆体に曝すこととN前駆体流量でN前駆体に曝すこととを含み、N前駆体流量とTi前駆体流量の比が3を超える。本方法では、TiN薄膜のX線スペクトルにおけるTiNの(111)結晶方位に対応するX線回折ピークの高さ又は強度と、TiNの(200)結晶方位に対応するX線回折ピークの高さ又は強度の比が0.4を超えるように、TiN薄膜が優先的な(111)結晶組織を有する。態様はまた、薄膜を包含する半導体構造及びそれを形成する方法も目的とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期的蒸着プロセスにより窒化チタン(TiN)を含む薄膜を形成する方法であって、前記方法が、
各回において所定のTi前駆体流量でのTi前駆体への曝露及び所定のN前駆体流量でのN前駆体への曝露を含む1回以上の周期的蒸着サイクルに半導体基板を曝露することによって、前記半導体基板上にTiN薄膜を形成することを含み、
前記N前駆体流量と前記Ti前駆体流量の比(N/Ti流量比)が3より大きく、かつ、
前記方法が、前記TiN薄膜のX線スペクトルにおけるTiNの(111)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又強度とTiNの(200)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又強度の比が0.4より大きくなるような結晶組織を有するTiN薄膜を形成する、方法。
【請求項2】
前記N/Ti流量比が3~100である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法では、前記N/Ti流量比が大きくなると、前記TiN薄膜の厚さが低減する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記N/Ti流量比が大きくなると、前記TiN薄膜の抵抗率が小さくなる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記方法では、前記N/Ti流量比が大きくなると、前記TiN薄膜のヤング率が大きくなる、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記ヤング率が大きくなることが、150GPaを超える値に大きくなることを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記方法では、前記N/Ti流量比が大きくなると、前記TiN薄膜の硬度が増す、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記硬度が増すことが、6GPaを超える値に増すことを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記N/Ti流量比が大きくなると、前記TiN薄膜の塩素濃度が低減する、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記方法では、堆積圧力を低下させると、TiNの(111)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又強度とTiNの(200)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又強度の比が大きくなる、請求項3の記載の方法。
【請求項11】
前記N前駆体流量が500~10000sccmである、請求項3に記載の方法。
【請求項12】
前記Ti前駆体流量が100~5000sccmである、請求項3に記載の方法。
【請求項13】
周期的蒸着プロセスにより窒化チタン(TiN)を含む薄膜を形成する方法であって、前記方法が、
各回において所定のTi前駆体流量でのTi前駆体への曝露及び所定のN前駆体流量でのN前駆体への曝露を含む1回以上の周期的蒸着サイクルに半導体基板を曝露することによって、前記半導体基板上にTiN薄膜を形成することを含み、
前記N前駆体流量が500sccmより大きく、かつ、
前記方法が、前記TiN薄膜のX線スペクトルにおけるTiNの(111)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又強度とTiNの(200)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又強度の比が0.4より大きくなるような結晶組織を有するTiN薄膜を形成する、方法。
【請求項14】
前記N前駆体流量と前記Ti前駆体流量の比(N/Ti流量比)が3~100である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記方法では、前記N/Ti流量比を大きくすると、前記TiN薄膜の厚さが低減する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記厚さが低減すると、前記TiN薄膜の抵抗率が低減する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記厚さが低減すると、前記TiN薄膜のヤング率が大きくなる、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記ヤング率が大きくなることが、150GPaを超える値に大きくなることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記厚さが低減すると、前記TiN薄膜の硬度が増す、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記硬度が増すことが、6GPaを超える値に増すことを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記厚さが低減すると、前記TiN薄膜の塩素濃度が低減する、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記方法では、堆積圧力が低下すると、TiNの(111)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又強度とTiNの(200)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又強度の比が大きくなる、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記N前駆体流量が500sccm~10000sccmである、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
前記Ti前駆体流量が100sccm~5000sccmである、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
周期的蒸着プロセスにより窒化チタン(TiN)を含む薄膜を形成する方法であって、前記方法が、
各回において所定の第1のTi前駆体流量での第1のTi前駆体への曝露及び所定の第1のN前駆体流量での第1のN前駆体への曝露を含む1回以上の第1の周期的蒸着サイクルに半導体基板を曝露することによって、前記半導体基板上に第1のTiN薄膜を形成することと、
各回において所定の第2のTi前駆体流量での第2のTi前駆体への曝露及び所定の第2のN前駆体流量での第2のN前駆体への曝露を含む1回以上の第2の周期的蒸着サイクルに前記半導体基板を曝露することによって、前記第1のTiN薄膜上に第2のTiN薄膜を形成することと、を含み、
前記方法では、前記第1及び第2のTiN薄膜の一方又は両方のX線スペクトルにおいてTiNの(111)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又強度とTiNの(200)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又強度の比が0.4より大きくなるように、前記第1及び第2のTiN薄膜の一方又は両方が優先的な(111)結晶組織を有する、方法。
【請求項26】
前記1回以上の第2の周期的蒸着サイクル中の前記第2のTi前駆体及び前記第2のN前駆体の一方又は両方への曝露が、前記1回以上の第1の周期的蒸着サイクル中の前記第1のTi前駆体及び前記第1のN前駆体の一方又は両方への対応する曝露に比べて高い圧力下で行われる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
第1のN前駆体流量と第1のTi前駆体流量の第1の比(第1のN/Ti流量比)及び第2のN前駆体流量と第2のTi前駆体流量の第2の比(第2のN/Ti流量比)の一方又は両方が3~100である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記方法では、前記第1のN/Ti流量比及び前記第2のN/Ti流量比の一方又は両方が大きくなると、前記第1及び第2のTiN薄膜の一方又は両方の対応する厚さが低減する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記対応する厚さが低減すると、前記第1及び第2のTiN薄膜の一方又は両方の対応する抵抗率が低減する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記対応する厚さが低減すると、前記第1及び第2のTiN薄膜の一方又は両方の対応するヤング率が大きくなる、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記ヤング率が大きくなることが、150GPaを超える値に大きくなることを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記対応する厚さが低減すると、前記第1及び第2のTiN薄膜の一方又は両方の対応する硬度の値が増す、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記硬度の値が増すことが、6GPaを超える値に増すことを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記対応する厚さが低減すると、前記第1の及び第2のTiN薄膜の対応する塩素濃度が低減する、請求項28に記載の方法。
【請求項35】
TiNの(111)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又強度とTiNの(200)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又強度の比が、前記第1のTiN薄膜において前記第2のTiN薄膜におけるそれよりも大きい、請求項25に記載の方法。
【請求項36】
前記1回以上の第1の周期的蒸着サイクル中の前記第1のTi前駆体及び前記第1のN前駆体の一方又は両方への曝露が、約5トル未満の第1のリアクタ圧力下で行われ、かつ、前記1回以上の第2の周期的蒸着サイクル中の前記第2のTi前駆体及び前記第2のN前駆体の一方又は両方への曝露が、約5トルより高いリアクタ圧力下で行われる、請求項25に記載の方法。
【請求項37】
周期的蒸着プロセスにより窒化チタン(TiN)を含む薄膜を形成する方法であって、前記方法が、
各回において第1のTi前駆体流量での第1のTi前駆体への曝露及び第1のN前駆体流量での第1のN前駆体への曝露を含む1回以上の第1の周期的蒸着サイクルに半導体基板を曝露することによって、第1の圧力で前記半導体基板上に第1のTiN薄膜を形成することを含み、
前記第1のTiN薄膜が、前記TiN薄膜のX線スペクトルにおけるTiNの(111)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又強度とTiNの(200)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又強度の比が0.4より大きくなるような結晶組織を有し、かつ、
各回において第2のTi前駆体流量での第2のTi前駆体への曝露及び第2のN前駆体流量での第2のN前駆体への曝露を含む1回以上の第2の周期的蒸着サイクルに前記半導体基板を曝露することによって、前記第1の圧力よりも高い第2の圧力で前記第1のTiN薄膜上に第2のTiN薄膜を形成することを含む、方法。
【請求項38】
前記第2の圧力が5トルより高い、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記第2のTiN薄膜のX線スペクトルにおけるTiNの(111)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又強度とTiNの(200)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又強度の比が、前記第1のTiN薄膜の対応する比よりも小さくなるように、前記第2のTiN薄膜が優先的な(111)結晶組織を有する、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記第1のN前駆体流量と前記第1のTi前駆体流量の少なくとも第1の比(第1のN/Ti流量比)が3~100である、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記第2のN前駆体流量と前記第2のTi前駆体流量の第2の比(第2のN/Ti流量比)が、前記第1のN/Ti流量比よりも小さい、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記方法では、前記第1のN/Ti流量比と前記第2のN/Ti流量比の一方又は両方が大きくなると、前記第1及び第2のTiN薄膜の一方又は両方の対応する厚さが低減する、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記対応する厚さが低減すると、前記第1及び第2のTiN薄膜の一方又は両方の対応する抵抗率が低減する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記対応する厚さが低減すると、前記第1及び第2のTiN薄膜の一方又両方の対応するヤング率が大きくなる、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記ヤング率が大きくなることが、150GPaを超える値に大きくなることを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記対応する厚さが低減すると、前記第1及び第2のTiN薄膜の一方又は両方の対応する硬度の値が増す、請求項42に記載の方法。
【請求項47】
前記硬度の値が増すことが、6GPaを超える値に増すことを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記対応する厚さが低減すると、前記第1及び第2のTiN薄膜の対応する塩素濃度が低減する、請求項42に記載の方法。
【請求項49】
前記第1の圧力が5トル未満である、請求項37に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願とともに提出された出願データシートにおいて外国又は国内の優先権主張が特定されている全ての出願が、37 CFR 1.57に基づいて参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、名称「CONFORMAL AND SMOOTH TITANIUM NITRIDE LAYERS AND METHODS OF FORMING THE SAME(コンフォーマルかつ平滑な窒化チタン層及びその形成方法)」である2019年10月8日出願の米国出願第16/595,945号の一部継続出願であり、そして、2020年12月10日に出願された米国仮特許出願第63/123,733号で名称「CONFORMAL AND SMOOTH TITANIUM NITRIDE LAYERS AND METHODS OF FORMING THE SAME(コンフォーマルかつ平滑な窒化チタン層及びその形成方法)」の35 U.S.C §119(e)に基づく優先権の利益を主張するものであり、それぞれの内容は参照によりその全体を本明細書に明確に組み入れるものとする。
【0003】
開示された技術は、一般的には窒化チタン層の形成に関し、そしてより詳細には、コンフォーマルかつ平滑な窒化チタン層に関する。
【背景技術】
【0004】
窒化チタン(TiN)は、集積回路(IC)内の様々な構造の製造に広く使用されている。例えば、TiNは拡散バリア、多様な電極、及びメタライゼーション構造に用いられてきた。IC製造におけるこのようなTiNの広範な利用は、その構造的、熱的、及び電気的特性に帰することができる。各種IC構造のサイズ縮小化につれて、TiNは、ますます縮小されるサイズと複雑なトポロジーを有する特徴的形状の上に形成される。例えば、テクノロジーノードが10nmノードを超えた大きさになると、例えば数ナノメートルという小サイズで高アスペクト比のトレンチ及びビアをコンフォーマルに被覆できる薄膜、例えば拡散バリアが必要となる。IC工業では数十年間TiN拡散バリアを形成するために物理気相蒸着(PVD)及び化学気相蒸着(CVD)等の技術が用いられてきたが、より小さいトレンチやビアに成膜されるTiN膜のコンフォーマル(形状適合)性に対する必要性が増すにつれて、それらの使用が最終的に制限される場合がある。一方、TiN膜のコンフォーマル成膜においては原子層堆積法(ALD)が実証されているが、膜の幾つかの電気的特性(例えば導電性)及び物理的特性(例えば表面粗さ)が、物理気相蒸着(PVD)等の他の方法を用いて形成されたTiN膜に比べて劣っている場合がある。したがって、IC製造での使用のために、PVD及びCVDにより形成されたTiN膜に対して、より優れた表面平滑性及びステップカバレッジを備える一方、相当する又はより優れた電気的特性及び物理的特性も備えたTiN系膜を形成するための原子層堆積法に対する必要性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様においては、周期的蒸着プロセスによる窒化チタン(TiN)の形成方法が、各回において第1のTi前駆体への曝露及び第1のN前駆体への曝露を含む1回以上の第1の周期的蒸着サイクルに半導体基板を、曝露することによって、半導体基板上に薄膜の第1の部分を形成することを含む。その方法はさらに、各回が第2のTi前駆体への曝露及び第2のN前駆体への曝露を含む1回以上の第2の周期的蒸着サイクルに半導体基板を曝露することによって、薄膜の第1の部分上に薄膜の第2の部分を形成することを含む。1回以上の第2のALDサイクル中のTi前駆体及びN前駆体の一方又は両方への曝露は、1回以上の第1のALDサイクル中のTi前駆体及びN前駆体の一方又は両方への対応する曝露に比べて高い圧力下で行われる。
【0006】
別の態様では、周期的蒸着プロセスによる窒化チタン(TiN)を含む薄膜の形成方法が、アスペクト比が1より大きいトレンチ又はビアを有する半導体基板を設けることを含む。本方法はさらに、トレンチ又はビア内に薄膜の第1の部分を形成するために、各回において第1のTi前駆体への曝露及び第1のN前駆体への曝露を含む1回以上の第1の周期的蒸着サイクルに半導体基板を曝露することによって、トレンチ又はビア内に薄膜を形成することを含む。本方法はさらに、薄膜の第1の部分上に薄膜の第2の部分を形成するために、各回において第2のTi前駆体への曝露及び第2のN前駆体への曝露を含む1回以上の第2の周期的蒸着サイクルに半導体基板を曝露することを含む。1回以上の第1の周期的蒸着サイクル中の第1のTi前駆体及び第1のN前駆体の一方又は両方への曝露は、1回以上の第2の周期的蒸着サイクル中の一方又は両方への対応する曝露に比べて異なる圧力下で行われる、
【0007】
別の態様では、半導体基板構造が、アスペクト比が5より大きいトレンチ又はビア内に非金属側壁表面を含む半導体基板を有する。半導体構造はさらに、非金属側壁表面をコンフォーマルに被覆するTiNを含む薄膜を有する。その場合、トレンチ又はビアの高さの下部25%上に形成された薄膜の厚さとトレンチ又はビアの高さの上部25%上に形成された薄膜の厚さの比が0.9より大きい。
【0008】
別の態様では、周期的蒸着プロセスにより窒化チタン(TiN)を含む薄膜を形成する方法が、各回において所定のTi前駆体流量でのTi前駆体への曝露及び所定のN前駆体流量でのN前駆体への曝露を含む1回以上の周期的蒸着サイクルに半導体基板を曝露することによって、半導体基板上にTiN薄膜を形成することを含み、その場合、N前駆体流量とTi前駆体流量の比が3より大きい。本方法は、TiN薄膜のX線スペクトルにおけるTiNの(111)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又は強度とTiNの(200)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又は強度の比が0.4より大きくなるように、TiN薄膜が優先的な(111)結晶組織を有する。
【0009】
別の態様では、周期的蒸着プロセスにより窒化チタン(TiN)を含む薄膜を形成する方法が、各回において所定のTi前駆体流量でのTi前駆体への曝露及び所定のN前駆体流量でのN前駆体への曝露を含む1回以上の周期的蒸着サイクルに半導体基板を曝露することによって、半導体基板上にTiN薄膜を形成することを含み、その場合、N前駆体流量が500sccmより大きい。本方法は、TiN薄膜のX線スペクトルにおけるTiNの(111)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又は強度とTiNの(200)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又は強度の比が0.4より大きくなるように、TiN薄膜が優先的な(111)結晶組織を有する。
【0010】
別の態様では、周期的蒸着プロセスにより窒化チタン(TiN)を含む薄膜を形成する方法が、各回において所定のTi前駆体流量でのTi前駆体への曝露及び所定のN前駆体流量でのN前駆体への曝露を含む1回以上の周期的蒸着サイクルに半導体基板を曝露することによって、半導体基板上にTiN薄膜を形成することを含む。本方法はさらに、各回において所定の第2のTi前駆体流量での第2のTi前駆体への曝露及び所定の第2のN前駆体流量での第2のN前駆体への曝露を含む1回以上の第2の周期的蒸着サイクルに半導体基板を曝露することによって、TiN薄膜上に第2のTiN薄膜を形成することを含む。本方法では、TiN薄膜及び第2のTiN薄膜の一方又は両方のX線スペクトルにおけるTiNの(111)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又は強度とTiNの(200)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又は強度の比が0.4より大きくなるように、TiN薄膜及び第2のTiN薄膜の一方又は両方が優先的な(111)結晶組織を有する。
【0011】
別の態様では、周期的蒸着プロセスにより窒化チタン(TiN)を含む薄膜を形成する方法が、各回において所定の第1のTi前駆体流量での第1のTi前駆体への曝露及び所定の第1のN前駆体流量での第1のN前駆体への曝露を含む1回以上の第1の周期的蒸着サイクルに半導体基板を曝露することによって、第1の圧力で半導体基板上に第1のTiN薄膜を形成することを含む。第1のTiN薄膜は、TiN薄膜のX線スペクトルにおけるTiNの(111)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又は強度とTiNの(200)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又は強度の比が0.4より大きくなるような結晶組織を有する。本方法はさらに、各回において第2のTi前駆体流量での第2のTi前駆体への曝露及び第2のN前駆体流量での第2のN前駆体への曝露を含む1回以上の第2の周期的蒸着サイクルに半導体基板を曝露することによって、第1の圧力よりも高い第2の圧力で第1のTiN薄膜上に第2のTiN薄膜を形成することを含む。
【0012】
別の態様では、半導体構造が、アスペクト比が5より大きいトレンチ又はビア内に非金属側壁表面を含む半導体基板を有する。半導体構造はさらに、その非金属側壁表面をコンフォーマルに被覆するTiNを含む薄膜を有する。その場合、薄膜は、薄膜のX線回折プロフィールにおいて(111)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又は強度と(200)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又は強度の比が0.4より大きくなるような結晶組織を有する。
【0013】
別の態様では、半導体構造が、アスペクト比が5より大きいトレンチ又はビア内の非金属側壁表面を含む半導体基板を有する。半導体構造はさらに、その非金属側壁表面をコンフォーマルに被覆するTiNを含む薄膜を有する。その場合、その下部と上部とでは結晶組織が異なる。薄膜の少なくとも下部は、薄膜のX線回折プロフィールにおいて(111)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又は強度と(200)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又は強度の比が0.4より大きくなるような結晶組織を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1A~1Dは、異なる成長モード下での薄膜の核及び成長機構を概略的に示している。
【
図2】
図2は、サーマル原子層堆積法により酸化物被覆シリコン基板上に成長したTiN層の断面透過型電子顕微鏡写真である。
【
図3A】
図3Aは、実施形態において、異なる対応する前駆体曝露圧力下で基板を複数のサイクルに曝露することによりTiN層を形成する原子層堆積法を概略的に示した流れ図である。
【
図3B】
図3Bは、実施形態において、異なる対応する前駆体曝露圧力下で基板を複数のサイクルに曝露して原子層堆積法により形成されたTiN層を含む半導体構造を概略的に示した断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態において、異なる対応する前駆体曝露圧力下で基板を複数のサイクルに曝露した、原子層堆積法の異なるサイクルの圧力トレースを概略的に示している。
【
図5】
図5は、ビアの異なる部分において厚さの異なるTiN層で被覆されたビアの断面図を概略的に示している。
【
図6】
図6は、実施形態において、異なる対応する前駆体曝露圧力下で基板を複数のサイクルに曝露した、原子層堆積法により形成されたTiN層の厚さの関数として実験的に測定された表面粗さ及びステップカバレッジ傾向を示すグラフである。
【
図7A】
図7Aは、同じ前駆体曝露圧力下で行ったALDサイクルに基板が曝露された、原子層堆積法により形成されたTiN層で被覆された高アスペクト比ビアの断面透過型電子顕微鏡写真である。
【
図7B】
図7Bは、
図7Aに示した高アスペクト比ビアの上部領域の断面透過型電子顕微鏡写真である。
【
図7C】
図7Cは、
図7Aに示した高アスペクト比ビアの下部領域の断面透過型電子顕微鏡写真である。
【
図8A】
図8Aは、実施形態において、異なる対応する前駆体曝露圧力下で基板を複数のサイクルに曝露した、原子層堆積法による
図7Aに示されたものと類似した高アスペクト比ビアの上部領域に形成されたTiN層の断面透過型電子顕微鏡写真である。
【
図8B】
図8Bは、
図8に示した高アスペクト比ビアトレンチの下部領域に形成されたTiN層の断面透過型電子顕微鏡写真である。
【
図9】
図9は、実施形態において、単一の曝露圧力下で原子層堆積法により形成されたTiN層と、複数の曝露圧力下で原子層堆積法により形成されたTiN層との間の測定されたステップカバレッジの統計的比較を示したグラフである。
【
図10】
図10は、実施形態において、異なる対応する前駆体曝露圧力下で基板を複数のサイクルに曝露した、TiN層で被覆されたビアの断面を概略的に示している。
【
図11】
図11は、実施形態による、比較的高いN前駆体流量に基板を曝露して(111)結晶組織を増したTiN層を形成する原子層堆積法を模式的に示すフローチャートである。
【
図12A】
図12Aは、実施形態による、様々な程度の(111)結晶組織を有するTiN薄膜の実験でのX線回折スペクトルを示す。
【
図12B】
図12Bは、
図12AのX線回折スペクトルから得られたTiNの(111)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さとTiNの(200)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さの実験での比を示すグラフである。
【
図13】
図13は、実施形態による、(111)結晶組織の増加したTiN薄膜の実験での厚さ及び抵抗率の計測値のグラフである。
【
図14】
図14は、実施形態による、(111)結晶組織の増加したTiN薄膜の実験での硬度及び弾性率の計測値のグラフである。
【
図15】
図15は、実施形態による、(111)結晶組織の増加したTiN薄膜の実験での硬度計測値のグラフである。
【
図16】
図16は、実施形態による、異なる曝露圧力で形成され、(111)結晶組織の増加したTiN薄膜の実験でのX線回折スペクトルを示す。
【
図17】
図17は、実施形態による、(111)結晶組織の増加したTiN薄膜の塩素濃度深さプロフィールを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上述した通り、集積回路(IC)工業において、優れた電気的及び物理的特性を備え滑らかでコンフォーマルなTiN膜及びそのような膜の形成方法に対する必要性がある。これらの及び他の必要性を解決するために、ここでは、周期的蒸着プロセスにより堆積された膜がコンフォーマル特性を呈する一方、既存の物理気相蒸着法(PVD)及び化学気相蒸着法(CVD)により形成されたTiN膜より優れた又は相当する電気的及び物理的特性も有するTiNを含む滑らかでコンフォーマルな薄膜、及び薄膜を形成するための周期的気相堆積方法が開示される。特に、窒化チタン(TiN)を含む薄膜の形成方法は、各回において第1のTi前駆体への曝露及び第1のN前駆体への曝露を含む1回以上の第1の周期的蒸着サイクルに半導体基板を曝露することによって、半導体基板上に薄膜の第1の部分を形成することを含む。その方法はさらに、各回において第2のTi前駆体への曝露及び第2のN前駆体への曝露を含む1回以上の第2の周期的蒸着サイクルに半導体基板を曝露することによって、薄膜の第1の部分上に薄膜の第2の部分を形成することを含む。
1回以上の第2の周期的蒸着サイクル中の第2のTi前駆体及び第2のN前駆体の一方又は両方への曝露は、1回以上の第1の周期的蒸着サイクル中の第1のTi前駆体及び第1のN前駆体の一方又は両方への対応する曝露に比べて異なっている。本明細書に開示された周期的蒸着プロセスは、ときには原子層堆積法(ALD)と称される。しかしながら、周期的蒸着プロセスは、原子層堆積プロセスに限定されない。例えば、本明細書に記載された多様な実施形態において、前駆体は、部分的に又はほぼ全体的に反応表面を飽和することができる。
【0016】
薄膜の第1の部分の堆積中、比較的低圧力で、例えば3トル(Torr)未満で基板をTi及び/又はN前駆体に曝露することにより、初期の膜成長は、実質的にレイヤーバイレイヤー成長モードとなり得る。これにより、基板を例えば3トル又は5トルより高い圧力でTi及び/又はN前駆体に曝露することにより堆積された比較対象のTiN膜に比べて、より小さい平均粒径とより小さい表面粗さが得られる点で有利である。一方、薄膜の第2の部分の堆積中、基板を比較的高い圧力、例えば3トルより高い圧力下でTi及び/又はN前駆体に曝露することによって、その膜成長の第2の部分は、基板を比較的低い圧力、例えば3トル未満又は1トル未満の圧力下でTi及び/又はN前駆体に曝露することにより堆積された比較対象のTiN膜に比べてより高レベルのコンフォーマリティ又はステップカバレッジが得られる点で有利である。
【0017】
さらに、TiN膜の第1の部分がレイヤーバイレイヤーモードで成長するので、薄膜の第2の部分は、Ti及び/又はN前駆体へ比較的高圧力下で曝露して開始する比較対象の薄膜成長に比べて、第1の部分をテンプレートとして用いてレイヤーバイレイヤーモードで成長し続けることができる。
【0018】
正味の結果として、所与の表面、例えば非金属表面を含む表面上に堆積したとき、本明細書に記載した方法によりTi前駆体及びN前駆体の一方又は両方について2つの異なる対応する曝露圧力下で蒸着することにより堆積された第1及び第2の部分を含む薄膜は、単一圧力を用いて同じ表面上に形成された薄膜層に比べて優れた表面粗さとコンフォーマリティの組合せを有する点で有利である。それに替えて又は付加して、一部には、平滑さ及びコンフォーマリティが改善されたために、薄膜は、所与の既存の方法により形成されたTiN層に比べて比較的低い電気抵抗率を有する。
【0019】
本明細書に記載されるように、その特定の化学量論比を伴わずにその構成元素により称される化合物は、明示的に限定されない限り、各元素の全ての可能な零以外の濃度を包含するものと理解するべきである。例えば、窒化チタン(TiN)は、一般式TixN、x>0で表すことができる窒化チタンの全ての可能な化学量論的組成及び非化学量論的組成を包含するものと理解し、TiN、Ti3N4、Ti4N3、Ti6N5、Ti2N、及びTiN2、並びにその他のTiとNの非化学量論的組成を含む。
【0020】
上述した通り、窒化チタン系薄膜は、集積回路(IC)製造において重要な役割を担う。IC工業ではTiNを成膜するために物理気相蒸着(PVD)及び化学気相蒸着(CVD)等の技術が用いられてきたが、TiN系膜を、電気的及び/又は物理的特性を大きく損なうことなく高いコンフォーマリティを有して形成するための蒸着方法の必要性が高まっている。
【0021】
加えて、プラズマ強化原子層堆積(PE-ALD)等のプラズマ強化プロセスは、比較的低アスペクト比である表面上にコンフォーマル膜を形成するのに有効であり得るが、それらのプロセスは、高アスペクト比を有するビアやキャビティの内側に成膜するには有効ではない場合がある。いかなる理論にも拘束されないが、これに対する1つの可能な理由として、所与の状況下ではプラズマが高アスペクト比のビアの深い部分に到達しない場合があることが考えられる。そのような状況下では、ビアにおける異なる部分が、異なる量のプラズマに曝されることで、不均質な成膜から生じる望ましくない構造的影響をもたらすことになる可能性がある。例えば、ビアの開口近傍では、より深い部分に比べてより厚い膜が堆積することになる(しばしばカッシング又はキーホール形成と称される)。これらの理由から、サーマルALDが、より有利となり得る。なぜなら、それらの熱的なプロセスは、堆積される表面の各部分へのプラズマの到達能力に依存しないからである。
【0022】
しかしながら、サーマルALD技術は、トポグラフィー上に、特に比較的高アスペクト比(例えば1:1を超える)をもつトポグラフィー上に、比較的コンフォーマルなTiN膜を形成するのに適切なものとなり得る一方、発明者らは、サーマルALDにより形成されたTiN膜が、幾つかの観点で、例えば膜の粗さや電気抵抗率の点でPVDやCVDにより形成されたTiN系薄膜に劣る可能性があることを認識した。この点において、発明者らは、ALD成長したTiN系膜の幾つかの電気的特性及び/又は物理的特性が、成長のモードによって影響を受け得ることを見出した。特に、発明者らは、ALDにおいて2次元のレイヤーバイレイヤー成長モードでTiN系膜を成長させることが望ましい場合がある一方、そのようなレイヤーバイレイヤー成長モードは、状況によっては容易に達成できないことがあることを見出した。発明者らはさらに、レイヤーバイレイヤー成長モードでALDによりTiN系薄膜を成長させることが、TiN系薄膜を非金属表面上に、特に酸化物及び窒化物の表面又はドーピングされた及びドーピングされていないシリコン表面等の絶縁性表面上に形成する場合に、IC製造における特定の課題を提起していることを見出した。いかなる理論にも拘束されないが、本発明者らは、TiN系薄膜がレイヤーバイレイヤー成長モードで成長し得る度合いが、
図1A~1Dを参照して本明細書に開示されるように、表面のタイプ及び結晶化度に依存する初期成長モードに依存し得ることを認識した。
【0023】
図1Aは、TiN層の核生成を概略的に示し、
図1B~1Dは、異なる表面上でのTiN層の異なる成長モードを示している。
図1Aを参照すると、前駆体分子104が基板100に到達したならば、それらは物理的に基板上に吸着される。吸着した分子104の幾つかは、それらが化学吸着されるエネルギー的に好ましい位置に到達するまで基板100の表面に沿って拡散することができる。表面拡散は、とりわけ基板温度、基板材料、及び吸着される分子の運動エネルギーによって支配される。化学吸着分子により形成される核のサイズが、体積自由エネルギーと表面エネルギーとのトレードオフで決まる所定のサイズ(「臨界サイズ」と称されることがある)を超えると、核がエネルギー的に安定となり、サイズが大きくなり始めることができる。このようにして形成された安定な核の層108は、さらなる前駆体分子104を取り込むことによって成長し続ける。それに続く膜成長は、
図1B~1Dに概略的に示すような異なる成長モードによって分類することができる。
【0024】
図1Bは、3次元島成長モードを概略的に示し、Volmer?Weber(ヴォルマー-ウェバー)成長モードと称されることがあり、3次元島からなる層112が形成される。いかなる理論にも拘束されないが、島成長モードは、3次元島に関係する正味の表面フリーエネルギーが正であるときに支配的となり得る。それは、堆積された原子が基板に対するよりも互いに対してより強く結合していることを示している。例えば金属TiN層が所与の半導体及び/又は絶縁材料表面上に堆積される場合、TiN層のALD成長のエネルギー論は島成長モードを支持することが理解されよう。
【0025】
図1Cは、レイヤーバイレイヤー成長モードを示し、Frank-van der Merwe(フランク-ファンデアメルヴェ)成長モードと称されることがあり、比較的平滑な2次元層116が形成される。いかなる理論にも拘束されないが、レイヤーバイレイヤー成長モードは、堆積された原子が互いに対するよりも基板に対してより強く結合する場合に支配的となり得る。それによって安定な2次元層116がエネルギー的に好ましくなる。レイヤーバイレイヤー成長モードは、TiN層の最初の単層からバルク結晶までの層間の結合エネルギーの値が連続的に減少する場合に持続され得る。
【0026】
図1B及び1Cは、TiN系薄膜の2つの異なる可能な成長モードであるが、所与の状況下では、レイヤーバイレイヤー成長モードと3次元成長モードの中間の成長モードが可能である。
図1Dは、Stranski-Krastanov (SK)(ストランスキ-クラスタノフ)成長モードとして知られる中間成長モードの一例を示している。いかなる理論にも拘束されないが、SK成長モードは、レイヤーバイレイヤー成長モードで始まる薄膜成長で起こり得る。1つ以上の単層の形成後、レイヤーバイレイヤー成長モードが好ましくなくなった場合、島成長モードが始まりレイヤーバイレイヤー成長モードよりも支配的となり、その結果、2次元の初期層の上に3次元島が形成される薄膜構造120が得られる。SK成長モードは、歪み緩和機構(歪み誘起粗面化)として起こり得る。
【0027】
堆積物と基板との間の相互作用に加えて、基板温度、反応圧力、及び堆積速度等の他の要因が、核と初期成長プロセスに大きく影響し得る。そのことがひいては、得られる薄膜の最終的なナノ構造又はマイクロ構造に影響する。例えば、表面拡散を促進する堆積条件、例えば比較的高い基板温度、比較的低い圧力、及び/又は低い堆積速度は、レイヤーバイレイヤーモードでの成長を促進し得る。故に、本明細書に開示したように、低い圧力及び堆積速度等によりTiN膜の初期部分の堆積中の表面拡散を促進することによって、実施形態による初期の膜成長が実質的にレイヤーバイレイヤー成長モードで進行することができる。
【0028】
IC製造において、TiNが、誘電体及び半導体表面等の意図される多様な表面上でALDにより成長するとき、ALD成長は、3次元島成長モード又はSK成長モードで開始することが見出されている。例えば、所与の状況下において、ドーピングされた又はドーピングされていないSi、SiO
2、Si
3N
4、及び他の高K又は低K材料を含む基板表面上のTiNのALD成長は、島成長モード又はSK成長モードで進行し得る。発明者らは、一部には、島成長モード又はSK成長モードのいずれかの初期成長モードのために、ALDによるTiNのその後の成長が、しばしば、
図2に示したような高アスペクト比構造における極薄のコンフォーマルTiNの多くの用途において望ましくない膜モルフォロジーをもたらすことを見出した。
【0029】
図2は、ネイティブ酸化物により被覆されたSi基板上にサーマルALDにより成長したTiN層の断面透過型電子顕微鏡写真である。3次元島成長モード又はSK成長モードのいずれかの初期の膜成長後、TiNのALD成長は、しばしば、配向の異なる隣接結晶の競合成長により特徴付けられ、所与の状況下では、核生成層に近接したV形結晶粒となり、膜厚が厚くなると柱状モルフォロジーの形態となることがある。
図2に示したように、得られる膜モルフォロジーは、大きな表面粗さを生じるファセット化した柱頭と、結晶粒に比べて低密度の柱状境界とを含む。柱状境界が、結晶粒自体に比べて著しく不良な拡散バリア特性を有し得ること、及びTiN層を介した望ましくない汚染物の輸送の最小抵抗の経路として機能し得ることは理解されよう。
【0030】
発明者らは、比較的低い、例えば1トル未満の圧力下で基板をTi及び/又はN前駆体に曝露することによりTiN層の初期部分が非金属表面上に形成されるとき、初期の3次元成長モード又はSK成長モードを抑制することができかつレイヤーバイレイヤー成長モードを初期段階で、例えばTiN堆積の核生成段階で、促進できることを見出した。他の理由の中でも、これは、吸着したTi及びN前駆体分子の局所的拡散が、局所的に拡散して基板表面、特に非金属表面を比較的小さい接触角で濡らすのにより時間がかかるためと考えることができる。比較的低い曝露圧力下で成長したTiN層は、実質的に島を形成することなく非金属表面の大きな面積を均一にカバーする層をもたらし、それによって、上述したように通常3次元島又はSK成長モードが優勢となるALDのTiNの成長初期段階において、基板上でレイヤーバイレイヤー成長モードがより優勢となる。したがって、比較的低い前駆体曝露圧力下で、例えば3トル未満で基板をTi及び/又はN前駆体に曝露してTiNのALDを開始することによって、例えば核生成段階において、得られる初期層がレイヤーバイレイヤーモードで成長することができる。その後の成長のバルク段階は、比較的高い前駆体曝露圧力下で、例えば3トル超えで基板をTi及びN前駆体に曝露することにより進行させることができ、レイヤーバイレイヤーモードで進行し続けることができる。実施形態による方法を採用することにより、TiNの汎用的なALDの幾つかの短所を回避できる。それは特にTiN層がALDにより直接、所与の半導体及び/又は絶縁体材料上に、特にSi、SiO2、及び/又はSi3N4を含む無機層上に形成されるときであり、上述したように通常であればそれらは島又はSK成長モードに特徴付けられる初期成長とその後の柱状成長につながり得る。
【0031】
図3Aは、実施形態における、異なる対応する前駆体曝露圧力を用いた複数のサイクルに基板を曝露することによりTiN層を形成する原子層堆積法300を概略的に示す流れ図である。得られる膜は、異なる対応する曝露圧力下で形成された少なくとも2つの領域を有する。
図3Bは、
図3Aに示した方法による、異なる対応する前駆体曝露圧力を用いた複数のサイクルに基板が曝露される原子層堆積法により形成されたTiN層を含む半導体構造350の概略断面図を示している。
図3Aを参照すると、方法300は、例えばサーマルALDであるALD用に構成された反応チャンバ内に非金属表面を含む基板を設けること310を含む。方法300はさらに、例えば核生成段階である初期段階を含み、それは、半導体基板を、各回が第1の各曝露圧力下での第1のTi前駆体への曝露及び第1のN前駆体への曝露を含む1回以上の第1のALDサイクルに曝露することにより、基板上に薄膜の第1の部分を形成すること320を含む。方法300はさらに、例えばバルク堆積段階である後続段階を含み、それは、半導体基板を、各回が第2の各曝露圧力下での第2のTi前駆体への曝露及び第2のN前駆体への曝露を含む1回以上の第2のALDサイクルに曝露することにより、薄膜の第1の部分上に薄膜の第2の部分を形成すること330を含む。1回以上の第2のALDサイクル中のTi前駆体及びN前駆体の一方又は両方への曝露は、1回以上の第1のALDサイクル中のTi前駆体及びN前駆体の一方又は両方への対応する曝露に比べて高い圧力下で行われる。
【0032】
図3Bを参照すると、半導体薄膜構造350の断面図は、基板360を有し、その基板360は例えば誘電体表面及び/又は半導体表面である非金属表面を有する。TiNを含む薄膜の第1の部分370は、基板360上に形成され、そして薄膜の第2の部分380は、第1の部分370上に形成される。第1及び第2の部分370、380は、
図3Aに示した原子層堆積法により形成され、その場合、基板360は異なる対応する前駆体曝露圧力を用いて第1及び第2のサイクルに曝露される。第1の部分370は、上述したように例えば核生成段階である初期段階においてレイヤーバイレイヤー成長モードで成長することができるので、少なくとも第1の部分370又は第1及び第2の部分370、380の両方が、V形結晶粒の柱状成長で特徴的な異なる配向をもつ隣接結晶や比較的高い(例えば厚さの10%)表面粗さが実質的に存在しないものとなり得る。得られるTiN層は、核生成及びバルク堆積段階の間に単一圧力下で形成された比較対象の薄膜層に比べて、相対的に高いコンフォーマリティ又はステップカバレッジ、より小さい表面粗さ、より小さい平均粒サイズ、より高い導電率、及び/又はバリア特性のうち1つ以上の優れた特性を有する。
【0033】
ここに、そして明細書全体に記載されるように、実施形態によるTiN薄膜が形成される半導体基板は、限定はしないが、ドーピングされた半導体基板を含む多様な基板で実施され得ることが理解されるであろう。それらは、IV族元素材料(例えばSi、Ge、C、又はSn等)、又はIV族材料から形成された合金(例えばSiGe、SiGeC、SiC、SiSn、SiSnC、GeSn等);III-V族化合物半導体材料(例えばGaAs、GaN、InAs等)、又はIII-V族材料から形成された合金;II-VI族半導体材料(CdSe、CdS、ZnSe等)、又はII-VI材料から形成された合金から形成することができる。
【0034】
所与の実施形態では、基板が、例えばシリコンオンインシュレータ(SOI)等の絶縁体上半導体基板としても実施され得る。SOI基板は、通常、シリコン-絶縁体-シリコン構造を含み、その場合、上述した多様な構造が、埋込SiO2層等の絶縁体層を用いて支持基板から絶縁されている。さらに、本明細書に記載した多様な構造が、少なくとも部分的にエピタキシャル層で表面領域又はその近傍において形成され得ることが理解されるであろう。
【0035】
さらに、基板は、その上に形成された多様な構造を含むことができ、例えば拡散領域、絶縁領域、電極、ビア及びライン等々である。その上に実施形態によるTiN層を含む任意の構造を形成でき、それらは例えば1つ以上の半導体又は誘電体の表面をもつビア、キャビティ、ホール、又はトレンチ等のトポロジー的特徴を含む。したがって、実施形態によるTiN層がその上に形成される非金属表面は、ドーピングされた又はドーピングされていないSi表面等の半導体表面、及び/又は、層間絶縁膜(ILD)表面等の誘電体表面、マスクもしくはハードマスク表面、又はゲート誘電体表面等々であり、それらは、無機絶縁体、酸化物、窒化物、高K誘電体、低K誘電体、又は炭素等々の誘電体材料を含むことができる。
【0036】
ここに、そして明細書全体に記載されるように、反応チャンバは、サーマル原子層堆積(ALD)用に適切に構成された単一ウェハ処理反応チャンバ又はバッチウェハ処理反応チャンバを含む任意の反応チャンバを意味する。サーマルALDリアクタ内で、基板は、サセプタ又はキャリアボート等の適切な基板ホルダ上に載置することができる。基板は、加熱されたサセプタを介した熱伝導により直接加熱することができ、又はランプ等の照射源からの輻射によりもしくは加熱されたチャンバ壁を介した対流により間接的に加熱することができる。
【0037】
一般的にALDプロセスでは、酸化反応物及び還元反応物等の反応物又は前駆体が、基板をその中に配置した反応チャンバ内に交互に導入される。1つ以上の反応物又は前駆体の導入は、順次、過剰な反応物又は前駆体を反応チャンバから除去するためのパージ及び/又はポンプ排出工程と交互に行うことができる。反応物が、適切な時間間隔に亘る条件下で反応チャンバ内に導入され得ることによって、基板の表面が少なくとも部分的に前駆体又は反応物及び/又は反応物の反応生成物で飽和されるようになる。過剰な又は残留した前駆体又は反応物は、その後、反応チャンバのパージ及び/又はポンプ排出等により基板から除去することができる。ポンプ排出工程は、適切な吸引ポンプ工程により行うことができ、パージ工程は、窒素や希ガス等の非反応性又は不活性ガスを反応チャンバに導入することにより行うことができる。以下に記載する実施形態におけるサーマルALDにより形成される層の概念においては、一般的に、前駆体又は反応物の2つのカテゴリが存在し、すなわち窒素(N)前駆体と、チタン(Ti)前駆体である。
【0038】
以下では、
図4を参照して、サーマルALD等のALDにより、基板を、異なる対応する前駆体曝露圧力下で複数のサイクルに曝露することにより形成される少なくとも2つの領域を有するTiNを含む薄膜を形成する方法300(
図3A)の実施例を、実施形態にしたがって説明する。
【0039】
[異なる対応する前駆体曝露圧力下で基板を複数のサイクルに曝露することによるTiNの原子層堆積]
図3Aに戻って参照すると、非金属表面を含む基板(
図3Bの基板360)を反応チャンバ内に設けること310を行った後、方法300は、サーマルALD等の原子層堆積(ALD)により半導体基板を1回以上の第1のALDサイクルに曝露することにより非金属表面上に薄膜の第1の部分を形成した後、半導体基板を1回以上の第2のALDサイクルに曝露することにより薄膜の第2の部分を形成すること320へと進む。以下では、第1及び第2のALDサイクル中に使用される曝露圧力が、図式化されている。
【0040】
図4は、実施形態による、薄膜の第1の部分370(
図3B)を形成するための第1のサイクル400Aすなわち例えば核生成段階、及び、薄膜の第2の部分380(
図3B)を形成するための第2のサイクル400Bすなわち例えばバルク形成段階における、基板のTi及びN前駆体への曝露に対応する圧力トレースを図式的に示している。
図4を参照すると、薄膜の第1の部分は、半導体基板を、各回が第1のTi前駆体の分圧への1回以上の曝露404もしくは曝露パルス、又は、第1のN前駆体の分圧への1回以上の曝露408もしくは曝露パルスを含む1回以上の第1のALDサイクル400Aに曝露することにより形成される。薄膜の第2の部分は、半導体基板を、各回が第2のTi前駆体の分圧への1回以上の曝露412もしくは曝露パルス、又は、第2のN前駆体の分圧への1回以上の曝露416もしくは曝露パルスを含む1回以上の第2のALDサイクル400Bに曝露することにより形成される。
【0041】
模式的に示すように、第1のTi前駆体への曝露404、第1のN前駆体への曝露408、第2のTi前駆体への曝露412、及び第2のN前駆体への曝露416の各々は、異なる分圧領域を有することができ、対応する分圧上昇区間404A、408A、412A、及び416Aと、メイン曝露区間404B、408B、412B、及び416Bと、分圧降下区間404C、408C、412C、及び416Cを含む。分圧上昇区間404A、408A、412A、及び416Aの各々は、例えば、反応チャンバ内に導入されている個々の前駆体に対応することができる。メイン曝露区間404B、408B、412B、及び416Bの各々は、反応チャンバ内の個々の前駆体の量が比較的一定の期間に対応することができる。比較的一定の量の個々の前駆体は、例えば圧力トランスジューサ又はスロットルバルブを用いて維持することができる。分圧降下区間404C、408C、412C、及び416Cの各々は、例えば、個々の前駆体が反応チャンバからパージ又はポンプ排出されているときの区間に対応することができる。
【0042】
図4をさらに参照すると、所与の実施例において、前駆体が各曝露の後でポンプ排出及び/又はパージされ得ることが理解されるであろう。前駆体がパージされずにポンプ排出される所与の実施例では、反応チャンバ圧力を実質的に個々の前駆体の分圧により表すことができ、そして曝露404、408、412、416の圧力トレースが、個々の曝露中の反応チャンバ圧力又は前駆体分圧を実質的に表すことができる。前駆体がポンプ排出されずに不活性ガスと共にパージされる所与の実施例では、反応チャンバ圧力を、曝露404、408、412、及び416に対応する反応チャンバ全圧404P、408P、412P、及び416Pにより表すことができ、その場合、反応チャンバ全圧は、個々の前駆体及び不活性ガスの混合物から得られる。
【0043】
実際には、より高いスループットと良好な膜品質のために、ポンプ排出とパージの組合せを用いることができる。これらの実施例では、基板は、パージ及びポンプ排出中も含めて全圧404P、408P、412P、及び416Pを測定する一方で、第1のTi前駆体、第1のN前駆体、第2のTi前駆体、及び第2のN前駆体の分圧に曝露されることができる。所与の実施形態では、チャンバの全圧は、所与の前駆体曝露又は曝露パルスを通して比較的一定に維持することができる一方、ポンプ出力は、圧力トランスジューサを用いたり、除去された前駆体を不活性ガスで置換したりして調整される。これらの実施例では、第1の部分(
図3Bの370)を形成するための1回以上の第1のALD400Aのサイクルの各回において、第1のTi前駆体の分圧への1回以上の曝露404(測定されるパラメータは反応チャンバ全圧404Pでもよい)、及び第1のN前駆体の分圧への1回以上の曝露408(測定されるパラメータは反応チャンバ全圧408Pでもよい)を含むことができる。同様に、第2の部分(
図3Bの380)を形成するための1回以上の第2のALD400Bのサイクルの各回において、第2のTi前駆体の分圧への1回以上の曝露412(測定されるパラメータは反応チャンバ全圧412Pでもよい)、及び第2のN前駆体の分圧への1回以上の曝露416(測定されるパラメータは反応チャンバ全圧416Pでもよい)を含むことができる。
【0044】
多様な実施形態によれば、前駆体への曝露中、測定される反応チャンバ全圧が、前駆体分圧に比例することができる。したがって、全圧404P及び408Pに比べて高い全圧412P及び416Pは、第1のTi前駆体及び第1のN前駆体の分圧に比べて高い第2のTi前駆体及び第2のN前駆体の分圧にそれぞれ対応する。しかしながら、実施形態はそのように限定されず、他の実施形態では、全圧404P及び408Pに比べて高い全圧412P及び416Pが、第1のTi前駆体及び第1のN前駆体の分圧に比べて同じか又は低い第2のTi前駆体及び第2のN前駆体の分圧にそれぞれ対応することができる。
【0045】
図3Aに示した方法300に戻って参照すると、例えばバルク堆積フェーズである後段の1回以上の第2のALDサイクル中の第2のTi前駆体及び第2のN前駆体の曝露圧力の一方又は両方が、例えば核生成フェーズである前段の1回以上の第1のALDサイクル中の第1のTi前駆体及び第1のN前駆体の曝露圧力の一方又は両方に比べて高い。所与の実施形態では、曝露圧力は、前駆体の分圧又は反応チャンバの全圧とすることができる。したがって、多様な実施形態では、
図4を参照すると、第2のTi前駆体への曝露412及び第2のN前駆体への曝露416の一方又は両方が、対応する第1のTi前駆体への曝露404及び第1のN前駆体への曝露408の一方又は両方に比べて高い分圧及び/又は高い反応チャンバ全圧でそれぞれ行われることができる。
【0046】
さらに
図4を参照すると、多様な実施形態では、第1及び第2のサイクル400A及び400B中のTi及びN前駆体への対応する曝露同士の間の対応する分圧又は全圧を、分圧上昇区間404A、408A、412A、及び416A、メイン曝露区間404B、408B、412B、及び416B、分圧降下区間404C、408C、412C、及び416Cのいずれか1つの区間中の対応する分圧又は全圧とすることができる。例えば、第2のALDサイクル400B中のメイン曝露区間412B及び416Bのそれぞれの間の第2のTi前駆体及び第2のN前駆体の一方又は両方への曝露412、416を、第1のALDサイクル400A中のメイン曝露区間404B及び408Bのそれぞれの間の第1のTi前駆体及び第1のN前駆体の一方又は両方への曝露404、408に比べて高い全圧又は分圧で行うことができる。多様な実施形態では、第1及び第2のサイクル400A及び400B中のTi及びN前駆体への対応する曝露同士の間の対応する分圧又は全圧を、曝露404、408、412、及び416中の対応する平均値、中間値、又はピーク値の分圧又は全圧とすることができる。
【0047】
さらに
図4を参照すると、図示の実施形態では、第1のTi前駆体への曝露404中と第1のN前駆体への曝露408中の全圧及び/又は分圧が異なり、かつ、第2のTi前駆体への曝露412中と第2のN前駆体への曝露416中の全圧及び/又は分圧が異なる。しかしながら、実施形態はそのように限定されず、そして所与の実施形態では、第1のTi前駆体への曝露404中と第1のN前駆体への曝露408中の全圧及び/又は分圧を一定に維持することができ、かつ/又は、第2のTi前駆体への曝露412中と第2のN前駆体への曝露416中の全圧及び/又は分圧を一定に維持することができる。
【0048】
さらに
図4を参照すると、第1のTi前駆体への曝露404中と第1のN前駆体への曝露408中のそれぞれの全圧は、同じか又は異ならせることができるが、0.01~0.2トル、0.2~0.4トル、0.4~0.6トル、0.6~0.8トル、0.8~1.0トル、1.0~1.5トル、1.5~2.0トル、2.0~2.5トル、2.5~3.0トル、又はこれらの値のいずれかにより規定される範囲内の圧力とすることができる。第2のTi前駆体への曝露412中と第2のN前駆体への曝露416中のそれぞれの全圧は、同じか又は異ならせることができるが、3.0~4.0トル、4.0~5.0トル、5.0~6.0トル、6.0~7.0トル、7.0~8.0トル、8.0~9.0トル、9.0~10.0トル、10.0~11.0トル、11.0~12.0トル、又はこれらの値のいずれかにより規定される範囲内の圧力とすることができる。第2のTi前駆体への曝露412中の反応チャンバの全圧(トルで測定)の、第1のTi前駆体への曝露404中のそれに対する比は、2~5、5~10、10~20、20~50、50~100、又はこれらの値のいずれかにより規定される範囲内とすることができる。同様に、第2のN前駆体への曝露416中の反応チャンバの全圧(トルで測定)の、第1のN前駆体への曝露408中のそれに対する比は、2~5、5~10、10~20、20~50、50~100、又はこれらの値のいずれかにより規定される範囲内とすることができる。曝露404、408、412、及び416の各々において、個々のTi又はN前駆体は、反応チャンバ内のガス分子の全量の1~2%、2~5%、5~10%、10~20%、20~50%、50~100%、又はこれらの値のいずれかにより規定される範囲内の割合とすることができる。
【0049】
さらに
図4を参照すると、多様な実施形態によれば、第1のTi前駆体への曝露404及び第1のN前駆体への曝露408中の全圧又は分圧が、個々の前駆体及び不活性ガスの流量と反応チャンバのポンプ出力に関係して、第1のサイクル400Aすなわち段階中の堆積速度が、0.10~0.20Å/サイクル、0.20~0.30Å/サイクル、0.30~0.40Å/サイクル、0.40~0.50Å/サイクル、0.50~0.60Å/サイクルの間となるように、又は、第1のTi前駆体への曝露404及び第1のN前駆体への曝露408を含むサイクル当たりこれらの値のいずれかに規定される範囲内の値となるようにように制御される。第2のTi前駆体への曝露412及び第2のN前駆体への曝露416中の全圧又は分圧が、個々の前駆体及び不活性ガスの流量と反応チャンバのポンプ出力に関係して、第2のサイクル400Bすなわち段階中の堆積速度が、0.20~0.30Å/サイクル、0.30~0.40Å/サイクル、0.40~0.50Å/サイクル、0.50~0.60Å/サイクル、0.60~0.70Å/サイクル、0.70~0.80Å/サイクルの間となるように、又は、第1のTi前駆体への曝露404及び第1のN前駆体への曝露408を含むサイクル当たりこれらの値のいずれかに規定される範囲内の値となるようにように制御される。第2のサイクル400B中の、第1のサイクル400A中に対するサイクル当たりの堆積速度の比は、1~1.5、1.5~2.0、2.5~3.0、又はこれらの値のいずれかにより規定される範囲内の比とすることができる。
【0050】
発明者らは、本明細書に開示されたTiN薄膜の多様な技術的利点が、TiNを含む薄膜の第1の部分370(
図3B)の形成320(
図3A)及び第2の部分380(
図3B)の形成330が、半導体基板を、1~25サイクル、26~50サイクル、50~100サイクル、100~200サイクル、200~300サイクル、300~400サイクル、400~500サイクル、500~600サイクル、又はこれらの値のいずれかにより規定される範囲内のサイクル数の第1のサイクル400A(
図4)及び第2のサイクル400B(
図4)にそれぞれ曝露することを含むときに実現され得ることを見出した。多様な実施形態では、第2のサイクルの回数の、第1のサイクルの回数に対する比が、1、2、5、もしくは10、又はこれらの値のいずれかにより規定される範囲内の比より大きくなり得るか、又は、1、0.5、0.1、もしくは0.1、又はこれらの値のいずれかにより規定される範囲内の比より小さくなり得る。第1の部分370(
図3B)及び第2の部分380(
図3B)を含むTiNを含む薄膜の全厚は、結合した積層厚さを有することができ、それは約25nm、20nm、15nm、10nm、7nm、4nm、2nm、又はこれらの値のいずれかにより規定される範囲内の値を超えない。第1の部分370(
図3B)と第2の部分380(
図3B)との厚さの比は、約1:20~1:10、1:10~1:5、1:5~1:2、1:2~1:1、1:1~2:1、2:1~5:1、5:1~10:1、10:1~20:1、又はこれらの値のいずれかにより規定される範囲内の比とすることができる。所与の実施形態では、例えばコンフォーマリティが高いことが膜粗さが小さいことよりも重要である場合、第1の部分370(
図3B)を相対的に薄くすることができ、一方、膜粗さが小さいことがコンフォーマリティが高いことよりも重要である場合、第2の部分380(
図3B)を相対的に薄くすることができることが理解されるであろう。
【0051】
さらに
図4を参照すると、第1のTi前駆体への基板の曝露404と、第2のTi前駆体への基板の曝露412の各々は、基板の表面がほぼ全体的に又は部分的に第1のTi前駆体又は第2のTi前駆体によりそれぞれ飽和されるように行われる。第1のTi前駆体への基板の曝露404と、第2のTi前駆体への基板の曝露412の各々の後、過剰な又は残留する第1及び/又は第2のTi前駆体又は基板表面に物理吸着又は化学吸着して留まらなかったそれらの反応生成物を、ポンプ排出及び/又はパージすることができる。
【0052】
同様に、第1のN前駆体への基板の曝露408と、第2のN前駆体への基板の曝露416の各々は、基板の表面がほぼ全体的に又は部分的に第1のN前駆体又は第2のN前駆体によりそれぞれ飽和されるように行われる。第1のN前駆体への基板の曝露408と、第2のN前駆体への基板の曝露416の各々の後、過剰な又は残留する第1及び/又は第2のN前駆体又は基板表面に物理吸着又は化学吸着して留まらなかったそれらの反応生成物を、ポンプ排出及び/又はパージすることができる。基板を、第1のTi前駆体への1回以上の曝露及び第1のN前駆体への1回以上の曝露へ供することによって、TiNの1サイクル当たりほぼ単層以下のもの形成することができる。同様に、基板を、第2のTi前駆体への1回以上の曝露及び第2のN前駆体への1回以上の曝露へ供することによって、TiNの1サイクル当たりほぼ単層以下のものを形成することができる。
【0053】
所与の実施形態では、第1のTi前駆体への曝露404、第1のN前駆体への曝露408、第2のTi前駆体への曝露412、及び/又は第2のN前駆体への曝露416を、他の前駆体の導入前に連続して複数回行うことができる。例えば、所与の状況下では、基板をTi前駆体及び/又はN前駆体へ1回以上曝露することによって、例えば大きな立体障害の影響が存在する場合に、より高レベルの表面飽和を得ることができる点で有利である。
【0054】
さらに
図4を参照すると、第1のTi前駆体及び第1のN前駆体への曝露の相対的順序は、競合する状況に応じて選択され得ることが理解されるであろう。所与の実施例では、第1のTi前駆体を、基板表面が曝露される最初の前駆体とすることが有利な場合がある。例えば、Si表面の第1のTi前駆体への1回以上の直接曝露は、TiSiの1つ以上の単層の形成をもたらすと共にSiNの形成を妨げることができ、ひいては、下層のSiとその上に形成されるTiN層との間の接触抵抗を低減する点で有利となり得る。しかしながら、所与の他の実施例では、第1のN前駆体を、基板表面が曝露される最初の前駆体とすることが有利な場合がある。例えばSi表面を第1のN前駆体へ直接曝露することによって、1つ以上のSiNの単層を意図的に形成することができ、それは積層のバリア特性を向上させるのに有利となり得る。
【0055】
多様な実施形態において、第1のサイクル408Aの各々における第1のTi反応物及び/又は第1のN前駆体への基板の曝露、並びに、第2のサイクル408Bの各々における第2のTi反応物及び/又は第2のN前駆体への曝露の頻度及び繰り返しは、前駆体の立体障害の影響の感受性を含む様々な検討に基づいて、所望の厚さ及び化学量論を得るために変更し得ることが理解されるであろう。
【0056】
多様な実施形態では、実施形態によるTiN層の第1及び第2の部分を形成するために同じか又は異なり得る第1及び第2のTi前駆体の非限定的な例として、四塩化チタン(TiCl4)、テトラキス(ジメチルアミノ)チタン(TDMAT)、又はテトラキス(ジエチルアミノ)チタン(TDEAT)が含まれる。TiNの第1及び第2の部分において同じ前駆体を有することは、例えばコスト低減及び/又はプロセス設計の容易さの点で有利となり得る。しかしながら、TiNの第1及び第2の部分において異なる前駆体を有することは、例えば異なる堆積特性又は膜品質の点で有利となり得る。
【0057】
多様な実施形態では、実施形態によるTiN層の第1及び第2の部分を形成するために同じか又は異なり得る第1及び第2のN前駆体の非限定的な例として、アンモニア(NH3)、ヒドラジン(N2H4)、モノメチルヒドラジン(CH3(NH)NH2、"MMH")が含まれる。第1及び第2の部分において同じ前駆体を有することは、例えばコスト低減及び/又はプロセス設計の容易さの点で有利となり得る。しかしながら、TiNの第1及び第2の部分において異なる前駆体を有することは、例えば異なる堆積特性又は膜品質の点で有利となり得る。
【0058】
多様な実施形態では、パージ用の不活性ガスの非限定的な例として、窒素N2又はArもしくはHe等の希ガスが含まれる。
【0059】
本明細書に記載した多様な技術的利点及び利益は、実施形態によれば、TiNを含む薄膜の第1及び第2の部分370、380(
図3B)の一方又は両方が、350℃~800℃、450℃~750℃、500℃~700℃、550℃~650℃、又はこれらの値のいずれかにより規定される範囲内の、例えば約600℃の基板温度で形成される場合に実現することができる。プロセス中の温度調整には長時間かかる場合があるため、第1及び第2の部分370、380の成長中に同じ温度を維持することは、スループット及びプロセス制御の容易さのために有利となり得る。
【0060】
多様な実施形態では、第1及び第2のTi前駆体並びに第1及び第2のN前駆体の各々の曝露時間又はパルス時間は、約0.1~1秒、1~10秒、10~30秒、30~60秒、又はこれらの値のいずれかにより規定される範囲内の持続時間とすることができる。
【0061】
有利な点として、多様な実施形態において、異なる対応する前駆体曝露圧力下で複数回のサイクルに基板を曝露する原子層堆積法を用いてTiN層が形成される場合、単一圧力設定による他のALDプロセスを用いて形成されたTiN膜を含む汎用的なTiN膜に対して表面粗さ及び電気抵抗率の一方又は両方を大きく低減することができる。本明細書に記載した方法により形成されかつ上記の厚さ及び第1と第2の部分370、380(
図3B)厚さ比を有するTiNを含む薄膜が堆積されると、薄膜の平均厚さに基づいて、3%、4%、5%、6%、7%、8%、及び9%、又はこれらの値のいずれかにより規定される範囲内の値の二乗平均平方根(RMS)表面粗さを有することができる。それに替えて、上記の厚さ及び第1と第2の部分370、380(
図3B)厚さ比を有するTiNを含む薄膜が堆積されると、2.5nm、2nm、1.5nm、1.0nm、0.5nm、又はこれらの値のいずれかにより規定される範囲内の値のRMS表面粗さ値を有することができる。
【0062】
本明細書に記載した方法により形成されかつ第1と第2の部分370、380(
図3B)の上記の厚さ及び厚さ比を有するTiNを含む薄膜が堆積されると、<70μΩ-cm、70~100μΩ-cm、100~130μΩ-cm、130~160μΩ-cm、160~190μΩ-cm、190~220μΩ-cm、220~250μΩ-cm、250~280μΩ-cm、280~310μΩ-cm、又は310μΩ-cm以上、又はこれらの値のいずれかにより規定される範囲内の値、例えば約200μΩ-cm未満の電気抵抗率を有することができる。
【0063】
表面粗さ及び電気抵抗率の低減に加えて、本明細書に記載した方法により形成されたTiNを含む薄膜は、高アスペクト比構造に堆積されるとき高いコンフォーマリティを有する。高アスペクト比構造の概念におけるコンフォーマリティの1つの尺度は、ここではステップカバレッジと称される。高アスペクト比構造は、例えばビア、ホール、トレンチ、キャビティ、又は類似の構造であり得る。図示の例として、
図5は、高アスペクト比構造上に形成された薄膜のコンフォーマリティを定義しかつ/又は測定する幾つかの例示的な測定基準を説明するために、例示的な高アスペクト比構造516をその中に形成された半導体構造500を概略的に示している。図示された高アスペクト比構造516は、その異なる部分において異なる厚さを有するTiN層512で被覆される。本明細書に記載するように、高アスペクト比構造は、例えば高アスペクト比構造516の深さ又は高さ(H)を開口領域の幅(W)で割った比である、1より大きいアスペクト比を有する。図示の例では、高アスペクト比構造516は、半導体基板504上に形成された、例えば層間絶縁膜(ILD)層である誘電体層508を貫通して形成されたビアであり、高アスペクト比構造516の底面は、下にある半導体504を露出させている。TiN層512は、高アスペクト比構造516の異なる表面を異なる厚さで被覆することができる。本明細書に記載するように、高アスペクト比で形成された薄膜のコンフォーマリティを定義し又は測定する1つの尺度はステップカバレッジと称される。ステップカバレッジは、高アスペクト比構造の下部又は底部領域における薄膜の厚さと高アスペクト比構造の上部又は頂部領域における薄膜の厚さとの比として定義することができる。上部又は頂部領域は、開口の頂部から測定したHの例えば0~10%又は0~25%における比較的小さい深さの高アスペクト比構造の領域とすることができる。下部又は底部領域は、開口の頂部から測定したHの例えば90~100%又は75~100%における比較的大きい深さの高アスペクト比構造の領域とすることができる。所与の高アスペクト比構造においては、ステップカバレッジが、高アスペクト比構造の上部又は頂部の側壁面に形成された薄膜512Cの厚さに対する底面に形成された薄膜512Aの厚さの比により定義され又は測定され得る。しかしながら、所与の高アスペクト比構造が、明確に規定される底面を有していないか又は曲率半径の小さい底面を有する場合があることは理解されるであろう。このような構造では、ステップカバレッジは、高アスペクト比構造の上部又は頂部の側壁面に形成された薄膜512Cの厚さに対する下部又は底部の側壁面に形成された薄膜512Bの厚さの比によってより一貫して定義又は測定され得る。
【0064】
上述したように、本明細書に開示された方法により形成されたTiNを含む薄膜は、表面粗さ及び電気抵抗率が低減する一方、高アスペクト比構造における高いコンフォーマリティも提供する。多様な実施形態では、1、2、5、10、20、50、100、200、又はこれらの値のいずれかにより規定される範囲内の値を超えるアスペクト比を有する高アスペクト比構造が、70%、80%、90%、95%、又はこれらの値のいずれかにより規定される範囲内の値を超えるここに定義されたステップカバレッジをもって実施形態によるTiN膜でコンフォーマルに被覆され得る。
【0065】
[基板を、異なる対応する前駆体曝露圧力で複数回のサイクルに曝露することにより形成されたTiNの物理的特性]
図6は、第1のサイクル(例えば核生成段階)と第2のサイクル(バルク堆積段階)を合計600回で組み合わせた中から、0.5トルの比較的低いチャンバ圧力下でTi及びN前駆体へ曝露する第1のサイクルの回数の関数として、実験的に測定された二乗平均平方根(RMS)表面粗さの傾向604及びステップカバレッジの傾向608を示したグラフである。Ti及びN前駆体への曝露の第2のサイクルは、5トルの比較的高いチャンバ圧力下で行った。
図6の各実験データ点は、表面粗さ測定のためにネイティブSiO
2被覆されたSi上で成長したTiN膜、及び、SiO
2で形成され約40:1のアスペクト比をもつビア内で成長したTiN膜から得られた。第1及び第2のサイクルの測定された堆積速度は、それぞれ0.28Å/サイクル及び0.38Å/サイクルであった。実験データは、第1のサイクル0回(0Å)/第2のサイクル600回(228Å)、第1のサイクル50回(14Å)/第2のサイクル550回(209Å)、第1のサイクル200回(56Å)/第2のサイクル400回(152Å)、第1のサイクル600回(168Å)/第2のサイクル0回(0Å)の4つの異なるTiN膜で測定された。4つのTiN膜は、全体の厚さがそれぞれ約228Å、223Å、208Å、及び168Åであった。
上述したように、TiN膜の測定された表面粗さの値は、比較的低圧力下での曝露を含む第1のサイクルの相対的な回数が増すと低減する。いかなる理論にも拘束されないが、これは、成長速度が遅いほど、表面粗さを低減しかつレイヤーバイレイヤー成長を促進する傾向がある表面拡散を増大させる傾向があるからと考えられる。第1のサイクル0回/第2のサイクル600回、第1のサイクル50回/第2のサイクル550回、及び第1のサイクル200回/第2のサイクル400回の薄膜について測定された表面粗さの値は、それぞれ21Å、17.5Å、及び12.5Åであり、それぞれのTiN膜の全厚に対して約9%、8%、及び6%に対応する。
さらに上述したように、TiN膜の測定されたステップカバレッジの値は、第1のサイクル600回/第2のサイクル0回で成長させた膜に対して、第1のサイクル0回/第2のサイクル600回で成長させた膜の方が高い値であった。いかなる理論にも拘束されないが、これは、より高い圧力がより多くの前駆体を高アスペクト比の底面へ到達させる傾向があり、それがステップカバレッジを向上させる傾向があるからと考えられる。
しかしながら、驚くべきことに、発明者らは、第1のサイクルが約50回(全サイクル回数の8%)までは、第1のサイクルの回数が増すとステップカバレッジが実際に向上することを見出した。したがって、所与の実施形態によれば、TiN膜の第1の部分を形成することが、半導体基板を、各回が約3トル未満の比較的低い曝露圧力下での第1のTi前駆体への曝露と第1のN前駆体への曝露を含む1~50回のサイクルに交互に曝露することを含む。
【0066】
図7A~9は、基板を同じ前駆体曝露圧力を用いたサイクルに曝露して成長させたTiN膜と、基板を異なる対応する前駆体圧力を用いた複数回のサイクルに曝露して成長させたTiN膜との間のさらなる実験による比較を示している。
図7Aは、基板が第2のサイクルに対応するのと同じ前駆体曝露圧力下でALDサイクルに曝露される原子層堆積法により形成されたTiN層で被覆された高アスペクト比ビアの透過型電子顕微鏡写真である。
図7B及び7Cは、5トルの比較的大きいチャンバ圧力下でTi及びN前駆体に曝露する第2のサイクルのみを用いて成長させたTiN膜の透過型電子顕微鏡写真(TEM)である。これらのTEMは、約40:1のアスペクト比でSiO
2中に形成されたビアの上部(
図7B)及び下部(
図7C)の領域で撮影した画像である。
比較として、
図8A及び8Bは、実施形態による、比較的低い(0.5トル)及び高い(5トル)チャンバ圧力でのTi及びN前駆体への曝露の第1及び第2のサイクルの組合せを用いて成長させたTiN膜の透過型電子顕微鏡写真(TEM)である。これらのTEMは、約40:1のアスペクト比でSiO
2中に形成されたビアの上部(
図8A)及び下部(
図8B)の領域で撮影した画像である。
図9は、
図7A~7Cに示したTEM顕微鏡写真から測定された測定ステップカバレッジ904と
図8A~8Bに示したTEM顕微鏡写真から測定された測定ステップカバレッジ908との間の実験的統計比較を示すグラフである。
図9のデータ点は、ビアの下部領域内の異なる位置と、ビアの上部領域内の異なる位置から取得した比を表している。TEM画像からは容易に明らかではないが、
図9の統計的比較は、単一曝露圧力を用いて堆積されたTiN膜における87%に対し、実施形態にしたがって堆積されたTiN膜においては93%という、より高い中央値ステップカバレッジを明確に示している。加えて、実施形態にしたがって堆積されたTiN真kうの測定する1つの尺度はステップカバレッジの統計的広がりは、単一曝露圧力を用いて堆積されたTiN膜のそれよりも大幅に小さく、後者は膜粗さが顕著に高いことを示している。
【0067】
[高い(111)結晶組織をもつTiN薄膜の原子層堆積法]
本明細書に開示するTiNは、面心立方の、NaClタイプの格子構造を有する。したがって、(200)方位に比べて表面が(111)方位を有するとき表面原子密度が最も高い。TiNにおける所与の結晶方位を有する表面の割合は、堆積条件に大きく依存し得る。
【0068】
例えばDRAM、キャパシタ電極等、TiN薄膜の特定の用途においては、積極的なスケーリングへの高まる要求に応えるために、TiN膜は、例えば30nm未満という極めて薄いものであると同時に、厳しい電気的及び機械的な特性の組合せを満たす必要があり得る。例えば上述した低い電気抵抗率と高いコンフォーマリティに加えて、ある種のTiN薄膜は、集積不良のリスクを低減するために、例えば比較的大きい密度、硬度及び弾性率等の厳しい機械的特性の組合せを同時に満たす必要がある。
【0069】
原子層堆積法により成長したTiN薄膜は、表面上に、他の方位の中でも(111)と(200)を含む異なる結晶方位をもつ結晶粒を有し得る。発明者らは、所定の結晶組織を有するように組織化されたTiN薄膜が、上述した望ましい低電気抵抗率とコンフォーマリティをもつことに加えて優れた機械的特性を有し得ることを発見した。特に、比較的高い(111)結晶組織をもつ超薄膜のTiN膜は、比較的大きい密度、硬度及び弾性率を有し得る。加えて、高い(111)結晶組織は、柱状成長を低減することによって、優れた拡散バリア特性を発揮することができる。いかなる理論にも拘束されないが、比較的高い(111)結晶組織を有するTiN薄膜のこれらの有利な特性は、成長面に対して平行な方向における最も高い表面原子充填密度の一つと、優れた物理的特性に好適な粒界配置に関係すると考えられる。発明者らはさらに、本明細書に記載したように、周期的蒸着サイクルの所定の条件を制御することによってTiN薄膜の組織を制御可能であることを発見した。特に、発明者らは、本明細書に記載したように、比較的高い流量のN前駆体を基板に作用させる周期的蒸着サイクルが、比較的高い(111)結晶組織をもつTiN薄膜を成長させ得ることを発見した。
【0070】
図11は、実施形態による、比較的高いN前駆体流量に基板を曝露することによって比較的高い(111)結晶組織をもつTiN層を形成する原子層堆積法1100を概略的に示す流れ図である。本方法1100は、半導体基板を設けること1110を含む。方法1100はさらに、各回において所定のTi前駆体流量でのTi前駆体への曝露及び所定のN前駆体流量でのN前駆体への曝露を含む1回以上の周期的蒸着サイクルに半導体基板を曝露すること1120を含む。本方法は、1回以上の周期的蒸着サイクルに半導体基板を曝露すること1120によって比較的高い(111)結晶組織をもつTiN膜を形成し、その場合、N前駆体流量とTi前駆体流量の比(N/Ti流量比)、及び/又は、N前駆体の流量が、汎用的方法に比べて実質的に大きい。多様な実施形態では、N前駆体流量とTi前駆体流量の比(N/Ti流量比)が3より大きい。多様な実施形態では、N前駆体流量が500sccmより大きい。曝露すること1120及び形成すること1130は、図示のように順に行われる必要はない。本方法1100の多様な実施態様は、本明細書に記載されている。
【0071】
半導体基板を設けること1110は、
図3A及び3Bを参照して上述した多様な実施例における半導体基板を設けること310と類似すると云えるため、簡潔にするためにその詳細はここで繰り返さない。例えば、上述したように基板をパターン化又は非パターン化することができ、かつ絶縁性又は導電性表面の一方又は両方を有し得る。
【0072】
半導体基板を曝露すること1120は、
図3A、3B及び4を参照して上述した1回以上の第1又は第2のサーマルALDサイクルに半導体基板を曝露することに類似すると云えるため、簡潔にするためにその詳細はここで繰り返さない。例えば、所定のTi前駆体流量でのTi前駆体への曝露は、第1のTi前駆体への曝露404(
図4)又は第2のTi前駆体への曝露412(
図4)に従ったものとすることができる。同様に、所定のN前駆体流量でのN前駆体への曝露は、第1のN前駆体への曝露408(
図4)又は第2のN前駆体への曝露416(
図4)に従ったものとすることができる。簡潔にするためにこれらのプロセスの詳細はここで繰り返さない。多様な実施形態では、曝露すること1120は、本明細書に記載したように、高い(111)結晶組織をもつTiN薄膜が形成されるようにするものである。
【0073】
多様な実施形態では、Ti前駆体及びN前駆体を、上述した前駆体のいずれかとすることができる。例えば、Ti前駆体を四塩化チタン(TiCl4)とし、N前駆体をアンモニア(NH3)とすることができる。
【0074】
基板温度、チャンバ圧力、及び曝露時間を含む多様な他のプロセスパラメータは、上述した多様なプロセスパラメータに従ったものとすることができ、簡潔とするためにその詳細はここで繰り返さない。
【0075】
実施形態によれば、曝露すること1120では、N前駆体流量とTi前駆体流量の比(N/Ti流量比)が2より大きくなるようにする。その比は、2、3、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100より大きいか、又はこれらの値のいずれかにより規定される範囲内の値を有する。
【0076】
実施形態によれば、曝露すること1120では、N前駆体流量が200sccmより大きくなるようにする。例えば、N前駆体流量は、200sccm、500sccm、1000sccm、2000sccm、3000sccm、4000sccm、5000sccm、6000sccm、7000sccm、8000sccm、9000sccm、10000sccmより大きいか、又はこれらの値のいずれかにより規定される範囲内の値を有し得る。
【0077】
実施形態によれば、曝露すること1120では、Ti前駆体流量が100sccmより大きいが、上述したN/Ti流量比に従い、N前駆体の流量を超えないようにする。例えば、Ti前駆体流量は、100sccm、200sccm、500sccm、1000sccm、2000sccm、3000sccm、4000sccm、5000sccmより大きいか、又はこれらの値のいずれかにより規定される範囲内の値を有し得る。
【0078】
図12Aは、実施形態による、比較的高い(111)結晶組織を有する、得られたTiN薄膜の実験でのX線回折スペクトルを示す。X線回折スペクトルは、以下の表1に示す実施例1~4から得たものである。
図12Bは、
図12AのX線回折スペクトルから得たTiNの(111)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さとTiNの(200)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さの実験での比を示すグラフである。示されたTiN薄膜は、例としてのみ示すものであり、実施形態はそのように限定されるものではない。
実施形態では、所定のN前駆体流量範囲及び所定のTi前駆体流量範囲によるTiN薄膜が、各回において上述したTi前駆体流量範囲から外れた異なるTi前駆体流量範囲への曝露及び上述したN前駆体流量範囲から外れた異なるN前駆体流量範囲への曝露を含む周期的蒸着サイクルに半導体基板を曝露することによって形成された比較可能な薄膜(例えば類似の厚さを有するTiN)に比べて、比較的高い(111)結晶組織を有するようになる。
(111)組織の増加の程度は、例えばX線回折を用いて計測することができる。例えば、異なるX線ピークの相対的強度は、組織化の程度の少なくとも準定量的示唆を提供し得る。実施形態により有用に形成されたTiN薄膜は、薄膜のX線スペクトルにおいて(111)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又は強度と(200)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又は強度の比が0.4より大きくなるような、比較的高い(111)結晶組織を有する。例えば、この比は、0.4、0.6、0.8、1.0、1.2、1.4、1.6、1.8、2.0、又はこれらの値のいずれかにより規定される範囲内の値より大きくなることができる。選択された実験での前駆体のフロー条件及び対応する比の計測値を表1にまとめている。
【0079】
図13は、実施形態による、比較的高い(111)結晶組織をもつTiN薄膜の実験での厚さ及び抵抗率を計測したグラフである。表1に示した実施例1~4においては、N/Ti流量比が大きくなるにつれて、同じサイクル数における厚さが低減している。意外なことに、従来の方法とは異なり、N/Ti流量比を大きくして厚みが低減すると、TiN薄膜の抵抗率が低減する。本開示以前は、厚さの低減は抵抗率の増加と関連しており、これはTiCl
4で形成された比較的薄いTiN薄膜における塩素の量が比較的多いことと相関していた。示されたTiN薄膜は、例としてのみ示すものであり、実施形態はそのように限定されるものではない。有利な点として、実施形態にしたがって形成されたTiN膜の抵抗率は、約200μΩ-cm又は上記のいずれかの値より小さい。選択された実験的な前駆体のフロー条件と対応する厚さ及び抵抗率の計測値を表1にまとめている。
【0080】
【0081】
図14は、実施形態による、実質的に同じ厚さと優先的な(111)結晶組織とを有するTiN薄膜の実験での硬度と弾性率の計測値のグラフである。
図15は、実施形態による、2つの異なる厚さにおける比較的高い(111)結晶組織を有するTiN薄膜の実験での硬度の計測値のグラフである。実施形態では、Ni/Ti流量比が大きくなり、ひいては厚さが低減すると、TiN薄膜のヤング率と硬度が増加する。図示のTiN薄膜は、例としてのみ示されており、実施形態はそれに限定されない。有利な点として、実施形態により形成されたTiN膜の硬度は、6GPaを超える。例えば、硬度は6GPa、10GPa、14GPa、18GPa、22GPa、25GPaを超えるか、又はこれらの値のいずれかにより規定される範囲内の値を有することができる。有利な点として、実施形態により形成されたTiN膜の弾性率又はヤング率は、150GPaを超える。例えば、ヤング率は、150GPa、170GPa、190GPa、210GPa、230GPa、250GPa、270GPa、300GPaを超えるか、又はこれらの値のいずれかにより規定される範囲内の値を有することができる。
【0082】
本明細書に記載の方法によれば、堆積圧力を低下させると、TiNの(111)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又は強度とTiNの(222)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又は強度の比が大きくなる。これは、
図16に示されており、それは実施形態による、異なる曝露圧力で形成され優先的な(111)結晶組織を有するTiN膜の実験でのX線スペクトルを示している。図示されたTiN薄膜は、例示としてのみ示されており、実施形態をそれに限定されない。特に、X線回折プロフィールは、同じ厚さであるが2つの異なる曝露圧力下で、すなわち5トルと3トルで形成されたTiN膜から得たものである。それらの結果は、より低い圧力下において(111)結晶組織のさらなる増加をもたらし得ることを示している。しかしながら、発明者らは、所与の状況下において、より低い曝露圧力によってステップカバレッジが低下する可能性があることを認知した。したがって、これらの状況下では、実施形態により、比較的高い(111)結晶組織を有するTiN薄膜の形成1130(
図11)の後、方法1100(
図11)がさらに、各回において第2のTi前駆体への曝露及び第2のN前駆体への曝露を含む1回以上の第2の周期的蒸着サイクルに半導体基板を曝露することによって第2のTiN薄膜をTiN薄膜上に形成することを含む。その場合、1回以上の第2の周期的蒸着サイクル中の第2のTi前駆体及び第2のN前駆体の一方又は両方への曝露は、1回以上の第1の周期的蒸着サイクル中のTi前駆体及びN前駆体の一方又は両方への対応する曝露に比べて、より高い圧力下で行われる。TiN薄膜の形成1130(
図11)及び第2のTiN薄膜の形成に対応する他の曝露条件は、
図3A、3B及び4を参照して上述した曝露条件のいずれかによるものとすることができる。
【0083】
図17は、実施形態による、(111)結晶組織が増加したTiN薄膜の塩素濃度の深さプロフィールを示している。深さプロフィールは、二次イオン質量分析計を用いて得られる。計測された薄膜は、表1に挙げた実施例1~4に対応する。上述したように、N/Ti流量比が大きくなると、同じサイクル数において厚さが低減する。意外なことに、従来の方法とは異なり、N/Ti流量比が大きくなり、ひいては厚さが低減すると、TiN薄膜の抵抗率が低減する。
図17は、厚さの低減と共に抵抗率が低減するこの意外な傾向が、塩素濃度の低減に相関することを示している。実施例1~4によりカバーされるN/Ti流量比の範囲において、塩素の量は50%以上低減し得る。実施例1~4において例えば約10nmでは塩素濃度がそれぞれ7.2×10
20/cm
3、6.1×10
20/cm
3、5.1×10
20/cm
3、及び3.5×10
20/cm
3と計測された。本明細書の開示以前は、厚さの低減は、塩素濃度の増加に関係付けられ、相対的に高い抵抗率と相関させられていた。
【0084】
[高い(111)結晶組織をもつ二層TiN薄膜の原子層堆積法]
上述した通り、高いN/Ti流量比、高いN前駆体流量、及び/又は、低い堆積圧力が、得られるTiN薄膜の(111)組織を高める可能性がある。さらに上述した通り、高い(111)組織は、上述した低圧蒸着(例えば5トル未満)によるTiN薄膜と同様の方法で、多様な利点を提供し得る。そのような利点は、抵抗率、硬度、弾性率、及び粗さなどにおける向上を含む。しかしながら、高いN/Ti流量比は、所与の状況下ではステップカバレッジを相対的に低下させる可能性がある。それを補償するために、高い(111)組織をもつ第1のTiN薄膜上に第2のTiN薄膜を成長させる二層又は多層のプロセスが望ましい場合がある。
【0085】
これらの実施形態によれば、本方法は、各回において所定のTi前駆体流量でのTi前駆体への曝露及び所定のN前駆体流量でのN前駆体への曝露を含む1回以上の周期的蒸着サイクルに半導体基板を曝露することによって、半導体基板上にTiN薄膜を形成することを含む。本方法はさらに、各回において所定の第2のTi前駆体流量での第2のTi前駆体への曝露及び所定の第2のN前駆体流量で第2のN前駆体への曝露を含む1回以上の第2の周期的蒸着サイクルに半導体基板を曝露することによって、TiN薄膜上に第2のTiN薄膜を形成することを含む。本方法は、TiN薄膜及び第2のTiN薄膜の一方又は両方が高い(111)結晶組織を有することによって、TiN薄膜及び第2のTiN薄膜の一方又は両方のX線スペクトルにおいて、TiNの(111)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又は強度とTiNの(200)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又は強度の比が0.4より大きくなるようにする。
【0086】
所与の他の実施形態では、周期的蒸着プロセスによって窒化チタン(TiN)を含む薄膜を形成する方法が、各回において所定の第1のTi前駆体流量での第1のTi前駆体への曝露及び所定の第1のN前駆体流量での第1のN前駆体への曝露を含む1回以上の第1の周期的蒸着サイクルに半導体基板を曝露することによって、第1の圧力で半導体基板上に第1のTiN薄膜を形成することを含む。第1のTiN薄膜は、TiN薄膜のX線スペクトルにおけるTiNの(111)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又は強度とTiNの(200)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又は強度の比が0.4より大きくなるような結晶組織を有する。
本方法はさらに、各回において第2のTi前駆体流量での第2のTi前駆体への曝露及び第2のN前駆体流量での第2のN前駆体への曝露を含む1回以上の第2の周期的蒸着サイクルに半導体基板を曝露することによって、第1の圧力よりも高い第2の圧力で第1のTiN薄膜上に第2のTiN薄膜を形成することを含む。第2のTiN薄膜は、例えば
図3A、3B及び4を参照して上述したように、上述した二層又は多層のTiN薄膜プロセスの部分として形成された任意の第1又は第2のTiN薄膜にしたがって形成され得る。
【0087】
これらの実施形態によれば、得られるTiN薄膜は、下部と上部とを有し、その下部と上部とは異なる結晶組織を有し得る。薄膜の少なくとも下部は、薄膜のX線回折プロフィールにおいて(111)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又は強度と(200)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又は強度の比が0.4より大きくなるような結晶組織を有する。上部は、本明細書に記載した通り、堆積条件及び所望される最終的な膜特性に応じて同レベル又は低いレベルの(111)組織を有し得る。
【0088】
有利な点として、TiN薄膜上に成長した第2のTiN薄膜は、下に位置する第1のTiN薄膜の高い(111)組織からの利益をうけ得る。下に位置する第1のTiN薄膜が高い(111)TiN組織を有していない別の表面上で成長した場合には第2のTiN薄膜は相対的に高い(111)組織を有しないという事実にも拘わらず、これらの状況下では第2のTiN薄膜もまた比較的高い(111)組織を有し得る。例えばSiO2、Si等の絶縁膜又は他の材料など、TiN以外の材料又は相対的に高い(111)を有しないTiNなどの別の表面上で成長した場合、第2のTiN薄膜は、相対的に高い(111)組織を有しない可能性がある。例えば、別の表面上で成長した場合、第2のTiN層は、TiN薄膜のX線スペクトルにおけるTiNの(111)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又は強度とTiNの(200)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又は強度の比が実質的に0.4未満、例えば0.3、0.2、0.1、又はこれらの値のいずれかにより規定される範囲内の値であるような結晶組織を有するものとなり得る。この理由は、下に位置するTiN薄膜の組織化表面が、第2以降のTiN薄膜のためのテンプレートとして機能し得るからである。
第2以降のTiN薄膜は、必ずしも高い(111)組織化条件下で形成する必要はないため、第2以降のTiN薄膜は、組み合わされたTiN薄膜の全体的性能を向上させる条件下で形成することができる。例えば、第2以降のTiN薄膜は、多様な2段階堆積プロセスを参照して上述した通り、ステップカバレッジを向上させる条件下で、例えば高圧下で成長させることができる。
【0089】
例えば、第2のTiN薄膜は、
図3A及び3Bを参照して説明した多様な2段階プロセスによって、大きいN前駆体流量及び/又はN/Ti前駆体流量比を伴って又は伴わずに、上述した通り例えば3又は5トルより高い、比較的高圧で形成され得る。例えば、第1のTiN薄膜が比較的高い(111)方位を有するように組織化することによって、初期の膜成長が実質的に(111)組織に好適なモードで進行することができ、このことは、上述した通り、機械的特性及び電気抵抗率を向上させることになる点で有利である。
一方、続いて基板を、比較的高い圧力で例えば3又は5トルでTi及び/又はN前駆体に曝露することによって、薄膜の第2の部分の堆積中、薄膜の後者の部分すなわち第2のTiN薄膜が、比較的高い(111)組織をもつ第1のTiN薄膜よりも、又は、例えば3トル未満又は1トル未満の比較的低い圧力で基板をTi及び/又はN前駆体に曝露することによって堆積されたTiN薄膜よりも、高いレベルのコンフォーマリティ又はステップカバレッジをもって成長し得る点で有利である。
【0090】
さらに、TiN薄膜の第1の部分が比較的高い(111)組織を有するので、薄膜の第2の部分は、第1の部分をテンプレートとして用いてレイヤーバイレヤー態様で成長し続けることができる。第2のTiN薄膜は、下に位置するTiN薄膜よりも低レベル又は同レベルの(111)組織を有し得る。
【0091】
多様な実施形態によれば、第1のTiN薄膜と第2のTiN薄膜の厚さの比は、所望される最終的な膜特性に応じて、10%、25%、50%、25%、90%又はこれらの値のいずれかにより規定される範囲内の値とすることができる。例えば、より高いレベルの(111)組織が所望される場合、第1のTiN薄膜の厚さを、全体の厚さの50%以上とすることができる一方、より高いレベルのコンフォーマリティが所望される場合、第2のTiN薄膜の厚さを、50%以上とすることができる。
【0092】
得られるTiN薄膜は、第1のTiN薄膜の(111)組織値の任意の分率、例えば、10%、25%、50%、25%、90%又はこれらの値のいずれかにより規定される範囲内の値である(111)組織を有することができる。得られるヤング率及び/又は硬度もまた、これらの値により規定される値を有することができる。
【0093】
得られるTiN薄膜は、下に位置する第1のTiN薄膜を含まない第2のTiN薄膜のコンフォーマリティ値の任意の分率、例えば、10%、25%、50%、25%、90%又はこれらの値のいずれかにより規定される範囲内の値であるコンフォーマリティを有することができる。
【0094】
正味の結果として、所与の表面上、例えば非金属表面をもつ表面上に堆積されたとき、本明細書に開示した方法にしたがって比較的高く(111)組織化された第1のTiN薄膜に続いて第2のTiN薄膜を蒸着することによって堆積された第1及び第2の部分を含む薄膜が、単一ステップを用いて同じ表面上に形成された薄膜層に比べて優れた、表面粗さとコンフォーマリティとの組合せを有するという利点がある。
それに替えて、又はそれに付加して、改善された平滑性とコンフォーマリティに起因して、薄膜は、幾つかの既存の方法によって形成されたTiN層と比較して、比較的低い電気抵抗率を有する。
【0095】
[用途]
本明細書に開示された多様な実施形態にしたがって異なる曝露圧力を用いて形成されたTiNを含む薄膜は、多様な用途で用いることができ、特に基板が比較的高いアスペクト比構造及び/又は非金属表面を含む場合に、本明細書に開示されるTiN層の様々な有利な特性の恩恵を受けることができる。例示的な用途として、1、2、5、10、20、50、100、200又はこれらの値のいずれかにより規定される範囲内の値を超えるアスペクト比(例えば深さを頂部の幅で割った値として定義される)を有するビア、ホール、トレンチ、キャビティ、又は類似の構造を蒸着することが含まれる。
【0096】
例示として、
図10は、高濃度ドーピングされ得るアクティブ半導体基板領域上に形成された例えばソース又はドレインの接点である接点構造のための拡散バリアの概念における用途を概略的に示している。半導体デバイス1000の部分が示され、その上に酸化物又は窒化物等の誘電材料を含む誘電体層1008、例えば層間又は金属管誘電体(ILD)層が形成されている。様々なドープ領域、例えばソース領域及びドレイン領域を含む基板1004の様々な領域への接点を形成するために、誘電体層1008を貫通するビア又はトレンチを形成することができる。ビア又はトレンチは、ビアの誘電体側壁と同様に、例えばシリコン基板表面である基板表面を含む露出した底面等の様々な非金属表面を露出させてもよい。ビアの底面及び側面は、本明細書に記載される多様な実施形態にしたがって形成されたTiN層の第1の部分(
図3Bの第1の部分370に対応)でコンフォーマルに被覆され、次いで、第2の部分(
図3Bの第2の部分380に対応)で被覆されることができる。本明細書に開示される多様な実施形態にしたがって、コンフォーマルな第1の部分を先ずビアの内面に直接形成し、次いでコンフォーマルな第2のTiN層を形成することができる。その後、被覆されたビアに、例えばW、Al、又はCu等の金属を充填して接点プラグ1016を形成することができる。例えば、ビアは、例えばWF
6を用いてCVDによりタングステンで充填されてもよい。
【0097】
実施形態にしたがって形成されたバリア層1012は、様々な理由で有利になり得る。特に、ALDによって形成されたバリア層1012のコンフォーマルな性質のために、その後の金属充填プロセス中のピンチオフの傾向が実質的に低減され得る。さらに、上述したように、バリア層1012は、例えば、基板1004からのドーパント(B、P)のアウト拡散、並びに接点プラグ形成プロセスからの反応物、エッチング剤及び金属(例えば、F、Cl、W、又はCu)のイン拡散等、それらに跨がる物質輸送の有効な阻止を提供することができる。 バリア効果は、表面粗さの低減とステップカバレッジの増加によって向上し得る。さらに、上述したように、レイヤーバイレイヤー成長モードは、バリア層1012の全体的な接触抵抗を低減することができる。さらに、膜粗さの低減によって、所望のバリア機能を達成しつつ、比較的薄いバリア層1012を形成することができ、接触抵抗のさらなる低減をもたらすことができる。
【0098】
本明細書に開示された多様な実施形態により形成されたTiSiN及び/又はTiAlNを含む薄膜の他の用途は、幾つか挙げると、凹んだ基板(埋込の電極又はライン等)、電極(DRAMキャパシタ電極又はゲート電極等)、より高い金属レベルの金属化バリア(Cu接点/ライン用のビア/トレンチ内のバリア等)、3次元メモリ用の高アスペクト比鉛直ロッド電極又はビア、及びスルーシリコンビア(TSV)等の多様な導電構造を含む。
【0099】
[例示的実施形態I]
1. 周期的蒸着プロセスによって窒化チタン(TiN)を含む薄膜を形成する方法であって、前記方法が、
各回において所定のTi前駆体流量でのTi前駆体への曝露及び所定のN前駆体流量でのN前駆体への曝露を含む1回以上の周期的蒸着サイクルに半導体基板を曝露することによって、前記半導体基板上にTiN薄膜を形成することを含み、
前記N前駆体流量と前記Ti前駆体流量の比が3より大きい、方法。
2. 周期的蒸着プロセスによって窒化チタン(TiN)を含む薄膜を形成する方法であって、前記方法が、
各回において所定のTi前駆体流量でのTi前駆体への曝露及び所定のN前駆体流量でのN前駆体への曝露を含む1回以上の周期的蒸着サイクルに半導体基板を曝露することによって、前記半導体基板上にTiN薄膜を形成することを含み、
前記N前駆体流量が200sccmより大きい、方法。
3. 周期的蒸着プロセスによって窒化チタン(TiN)を含む薄膜を形成する方法であって、前記方法が、
各回において所定のTi前駆体流量範囲内のTi前駆体流量でのTi前駆体への曝露及び所定のN前駆体流量範囲内のN前駆体流量でのN前駆体への曝露を含む1回以上の周期的蒸着サイクルに半導体基板を曝露することによって、前記半導体基板上にTiN薄膜を形成することを含み、
前記N前駆体流量範囲及び前記Ti前駆体流量範囲における前記TiN薄膜は、各回において前記Ti前駆体流量範囲以外の異なるTi前駆体流量範囲内での前記Ti前駆体への曝露及び前記N前駆体流量範囲以外の異なるN前駆体流量範囲内での前記N前駆体への曝露を含む周期的蒸着サイクルに半導体基板を曝露することによって形成された別のTiN薄膜に対して優先的な(111)結晶組織を有する、方法。
4. 前記N前駆体流量と前記Ti前駆体流量の比が2~100である、上記実施形態のいずれかの方法。
5. 前記N前駆体流量が200sccm~10000sccmである、上記実施形態のいずれかの方法。
6. 前記Ti前駆体流量が100sccm~5000sccmである、上記実施形態のいずれかの方法。
7. 前記TiN薄膜のX線スペクトルにおける(111)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又は強度と(200)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又は強度の比が0.4より大きくなるように、前記TiN薄膜が優先的な(111)結晶組織を有する、上記実施形態のいずれかの方法。
8. 前記TiN薄膜が6GPaより大きい硬度を有する、上記実施形態のいずれかの方法。
9. 前記TiN薄膜が150GPaより大きいヤング率を有する、上記実施形態のいずれかの方法。
10. 各回において第2のTi前駆体への曝露及び第2のN前駆体への曝露を含む1回以上の第2の周期的蒸着サイクルに半導体基板を曝露することによって、前記TiN薄膜上に第2のTiN薄膜を形成することをさらに含み、
前記1回以上の第2の周期的蒸着サイクル中の前記第2のTi前駆体及び前記第2のN前駆体の一方又は両方への曝露が、前記1回以上の周期的蒸着サイクル中の前記Ti前駆体及び前記N前駆体の一方又は両方への対応する曝露に比べて高い圧力下で行われる、上記実施形態のいずれかの方法。
11. 前記1回以上の周期的蒸着サイクル中の前記Ti前駆体及び前記N前駆体の一方又は両方への曝露が、約5トル未満のリアクタ圧力下で行われ、かつ、前記1回以上の第2の周期的蒸着サイクル中の前記第2のTi前駆体及び前記第2のN前駆体の一方又は両方への曝露が、約5トルより高いリアクタ圧力下で行われる、上記実施形態10の方法。
12. 前記1回以上の第2の周期的蒸着サイクル中の前記第2のTi前駆体及び前記第2のN前駆体の各々への曝露が、前記1回以上の周期的蒸着サイクル中の前記Ti前駆体及び前記N前駆体の各々への対応する曝露に比べて高い圧力下で行われる、上記実施形態10又は11の方法。
13. 前記TiN薄膜を形成することが、前記半導体基板の前記Ti前駆体への曝露及び前記N前駆体への曝露を含む前記周期的蒸着サイクルの1回毎に0.3Å未満の第1の堆積速度で堆積することを含み、かつ、前記第2のTiN薄膜を形成することが、前記半導体基板の前記第2のTi前駆体への曝露及び前記第2のN前駆体への曝露を含む前記第2の周期的蒸着サイクル毎に0.3Åより大きい第2の堆積速度で堆積することを含む、上記実施形態10~12のいずれかの方法。
14. 前記薄膜の二乗平均平方根表面粗さが、前記薄膜の厚さの約8%未満である、上記実施形態のいずれかの方法。
15. 前記TiN薄膜及び前記第2のTiN薄膜を形成することが、熱的な周期的蒸着によって堆積することを含む、上記実施形態10~14のいずれかの方法。
16. 前記TiN薄膜を形成することが、半導体表面及び絶縁体表面の一方又は両方を前記1回以上の周期的蒸着サイクルに直接的に曝露することを含む、上記実施形態10~15のいずれかの方法。
17. 前記TiN薄膜及び前記第2のTiN薄膜を形成することが、レイヤーバイレイヤー成長モードで成長させることを含む、上記実施形態10~16のいずれかの方法。
18. 前記TiN薄膜を形成することが、前記半導体基板を1~50回の前記周期的蒸着サイクルに交互に曝露することを含む、上記実施形態10~17のいずれかの方法。
19. 前記TiN薄膜及び前記第2のTiN薄膜を形成することが、400℃~600℃の温度で形成することを含む、上記実施形態10~18のいずれかの方法。
20. 前記半導体基板が、アスペクト比が1より大きいトレンチ又はビア内の非金属側壁表面をもつ内面を具備するトレンチ又はビアを有し、かつ、前記薄膜を形成することが、前記内面をコンフォーマルに被覆することを含み、前記トレンチ又はビアの高さの下部25%に形成された薄膜の厚さと、前記トレンチ又はビアの高さの上部25%に形成された薄膜の厚さの比が0.9より大きい、上記実施形態のいずれかの方法。
21. 前記薄膜の電気抵抗率が200μΩ-cm未満である、上記実施形態のいずれかの方法。
22. 前記Ti前駆体が前記第2のTi前駆体と同じであり、かつ、前記N前駆体が前記第2のN前駆体同じである、上記実施形態10~21のいずれかの方法。
23. 前記方法が、
1より大きいアスペクト比をもつトレンチ又はビアを有する前記半導体基板を設けること、
前記TiN薄膜を前記とレンジ又はビア内に形成するために前記1回以上の周期的蒸着サイクルに前記半導体基板を曝露することによって前記トレンチ又はビア内に前記薄膜を形成すること、及び、
前記TiN薄膜上に第2のTiN薄膜を形成するために、各回において第2のTi前駆体への曝露及び第2のN前駆体への曝露を含む1回以上の第2の周期的蒸着サイクルに前記半導体基板をさらに曝露することを含み、
前記1回以上の周期的蒸着サイクル中の前記Ti前駆体及び前記N前駆体の一方又は両方への曝露が、前記1回以上の第2の周期的蒸着サイクル中の前記第2のTi前駆体及び前記第2のN前駆体の一方又は両方への対応する曝露とは異なる圧力下で行われる、上記実施形態1~9のいずれかの方法。
24. 前記1回以上の第2の周期的蒸着サイクル中の前記第2のTi前駆体及び前記第2のN前駆体の一方又は両方への曝露が、前記1回以上の周期的蒸着サイクル中の前記Ti前駆体及び前記N前駆体の一方又は両方への対応する曝露に比べて高い圧力下で行われる、上記実施形態23の方法。
25. 前記1回以上の第2の周期的蒸着サイクル中の前記第2のTi前駆体及び前記第2のN前駆体の一方又は両方への曝露が、前記1回以上の周期的蒸着サイクル中の前記Ti前駆体及び前記N前駆体の一方又は両方への対応する曝露よりも5倍以上の高い圧力下で行われる、上記実施形態23又は24の方法。
26. 前記TiN薄膜を形成することが、前記半導体基板を1~50回の周期的蒸着サイクルに交互に曝露することを含む、上記実施形態23~25のいずれかの方法。
27. 前記TiN薄膜を形成することが、前記半導体基板を、第1の回数の前記1回以上の周期的蒸着サイクルに曝露することを含み、前記第2の部分を形成することが、前記半導体基板を、前記第1の回数の前記1回以上の周期的蒸着サイクルの2倍より多い第2の回数の第2の周期的蒸着サイクルに曝露することを含む、上記実施形態23~26のいずれかの方法。
28. 前記薄膜の二乗平均平方根表面粗さが、前記薄膜の厚さの約8%未満である、上記実施形態23~27のいずれかの方法。
29. 前記TiN層を形成することが、400℃~600℃の温度で熱的な周期的蒸着サイクルにより形成することを含む、上記実施形態23~28のいずれかの方法。
30. 前記トレンチ又はビアが、5より大きいアスペクト比と、非金属側壁表面を含む内面とを有し、かつ、前記薄膜を形成することが、前記内面をコンフォーマルに被覆することを含み、前記トレンチ又はビアの高さの下部25%に形成された薄膜の厚さと、前記トレンチ又はビアの高さの上部25%に形成された薄膜の厚さの比が0.9より大きい、上記実施形態23~29のいずれかの方法。
31. 前記Ti前駆体が前記第2のTi前駆体と同じであり、かつ、前記N前駆体が前記第2のN前駆体と同じである、上記実施形態23~29のいずれかの方法。
32. 半導体構造であって、
5より大きいアスペクト比をもつトレンチ又はビア内の非金属側壁表面を有する半導体基板と、
前記非金属側壁表面をコンフォーマルに被覆するTiNを含む薄膜と、を有し、
前記薄膜のX線スペクトルにおける(111)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又は強度と(200)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又は強度の比が0.4より大きくなるように、前記薄膜が優先的な(111)結晶組織を有する、半導体構造。
33. 前記比が1.3より大きい、上記実施形態32の半導体構造。
34. 前記薄膜が6GPaより大きい硬度を有する、上記実施形態32及び33の方法。
35. 前記薄膜が150GPaより大きいヤング率を有する、上記実施形態32~34のいずれかの半導体構造。
36. 前記トレンチ又はビアの高さの下部25%に形成された薄膜の厚さと、前記トレンチ又はビアの高さの上部25%に形成された薄膜の厚さの比が0.9より大きい、上記実施形態32~35のいずれかの半導体構造
37. 前記トレンチ又はビアが10より大きいアスペクト比を有する、上記実施形態32~36のいずれかの半導体構造。
38. 前記非金属表面上に形成された前記薄膜の二乗平均平方根表面粗さが、前記薄膜の平均厚さに対して約8%未満である、上記実施形態32~37のいずれかの半導体構造。
39. 前記トレンチ又はビアが誘電体側壁を有する、上記実施形態32~38のいずれかの半導体構造。
40. 前記トレンチ又はビアが前記半導体基板の半導体材料を露出する底面を有する、上記実施形態32~39のいずれかの半導体構造。
41. 前記薄膜が約200μΩ-cm未満の電気抵抗率を有する、上記実施形態32~40のいずれかの半導体構造。
42. 前記薄膜で被覆された前記トレンチ又はビアがタングステンを含む金属で充填されている、上記実施形態32~41のいずれかの半導体構造。
【0100】
[例示的実施形態II]
1. 周期的蒸着プロセスにより窒化チタン(TiN)を含む薄膜を形成する方法であって、前記方法が、
各回において所定のTi前駆体流量でのTi前駆体への曝露及び所定のN前駆体流量でのN前駆体への曝露を含む1回以上の周期的蒸着サイクルに半導体基板を曝露することによって、前記半導体基板上にTiN薄膜を形成することを含み、
前記N前駆体流量と前記Ti前駆体流量の比(N/Ti流量比)が3より大きく、かつ、
前記方法が、前記薄膜のX線スペクトルにおけるTiNの(111)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又は強度とTiNの(200)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又は強度の比が0.4より大きくなるような結晶組織を有するTiN薄膜を形成する、方法。
2. 前記N/Ti流量比が3~100である、上記実施形態1の方法。
3. 前記方法では、前記N/Ti流量比が大きくなると、前記TiN薄膜の厚さが低減する、上記実施形態1又は2の方法。
4. 前記N/Ti流量比が大きくなると、前記TiN薄膜の抵抗率が低減する、上記実施形態1~3のいずれかの方法。
5. 前記方法では、前記N/Ti流量比が大きくなると、前記TiN薄膜のヤング率が大きくなる、上記実施形態1~4のいずれかの方法。
6. 前記ヤング率が大きくなることが、150GPaを超える値に大きくなることを含む、上記実施形態5の方法。
7. 前記方法では、前記N/Ti流量比が大きくなると、前記TiN薄膜の硬度が増す、上記実施形態1~6のいずれかの方法。
8. 前記硬度が増すことが、6GPaを超える値に増すことを含む、上記実施形態7の方法。
9. 前記N/Ti流量比が大きくなると、前記TiN薄膜の塩素濃度が低減する、上記実施形態1~8のいずれかの方法。
10. 前記方法では、堆積圧力を低下させると、TiNの(111)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又は強度とTiNの(200)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又は強度の比が大きくなる、上記実施形態1~9のいずれかの方法。
11. 前記N前駆体流量が500sccm~10000sccmである、上記実施形態1~10のいずれかの方法。
12. 前記Ti前駆体流量が100sccm~5000sccmである、上記実施形態1~11のいずれかの方法。
13. 周期的蒸着プロセスにより窒化チタン(TiN)を含む薄膜を形成する方法であって、前記方法が、
各回において所定のTi前駆体流量でのTi前駆体への曝露及び所定のN前駆体流量でのN前駆体への曝露を含む1回以上の周期的蒸着サイクルに半導体基板を曝露することによって、前記半導体基板上にTiN薄膜を形成することを含み、
前記N前駆体流量が500sccmより大きく、かつ、
前記方法が、前記TiN薄膜のX線スペクトルにおけるTiNの(111)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又は強度とTiNの(200)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又は強度の比が0.4より大きくなるような結晶組織を有するTiN薄膜を形成する、方法。
14. 前記N前駆体流量と前記Ti前駆体流量の比(N/Ti流量比)が3~100である、上記実施形態13の方法。
15. 前記方法では、前記N/Ti流量比が大きくなると、前記TiN薄膜の厚さが低減する、上記実施形態14の方法。
16. 前記厚さが低減すると、前記TiN薄膜の抵抗率が低減する、上記実施形態15の方法。
17. 前記厚さが低減すると、前記TiN薄膜のヤング率が大きくなる、上記実施形態15~16のいずれかの方法。
18. 前記ヤング率が大きくなることが、150GPaを超える値に大きくなることを含む、上記実施形態17の方法。
19. 前記厚さが低減すると、前記TiN薄膜の硬度が増す、上記実施形態15~18のいずれかの方法。
20. 前記硬度が増すことが、6GPaを超える値に増すことを含む、上記実施形態19の方法。
21. 前記厚さが低減すると、前記TiN薄膜の塩素濃度が低減する、上記実施形態15~20のいずれかの方法。
22. 堆積圧力を低下させると、TiNの(111)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又は強度とTiNの(200)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又は強度の比が大きくなる、上記実施形態13~21のいずれかの方法。
23. 前記N前駆体流量が500sccm~10000sccmである、上記実施形態13~22のいずれかの方法。
24. 前記Ti前駆体流量が100sccm~5000sccmである、上記実施形態13~23のいずれかの方法。
25. 周期的蒸着プロセスにより窒化チタン(TiN)を含む薄膜を形成する方法であって、前記方法が、
各回において第1のTi前駆体流量での第1のTi前駆体への曝露及び第1のN前駆体流量での第1のN前駆体への曝露を含む1回以上の第1の周期的蒸着サイクルに半導体基板を曝露することによって、前記半導体基板上に第1のTiN薄膜を形成することと、
各回において第2のTi前駆体流量での第2のTi前駆体への曝露及び第2のN前駆体流量での第2のN前駆体への曝露を含む1回以上の第2の周期的蒸着サイクルに前記半導体基板を曝露することによって、前記第1のTiN薄膜上に第2のTiN薄膜を形成することと、を含み、
前記方法では、前記第1及び第2のTiN薄膜の一方又は両方のX線スペクトルにおいてTiNの(111)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又は強度とTiNの(200)結晶方位に対するX線回折ピークのピーク高さ又は強度の比が0.4より大きくなるように、前記第1及び第2のTiN薄膜の一方又は両方又は組合せが優先的な(111)結晶組織を有する、方法。
26. 前記1回以上の第2の周期的蒸着サイクル中の前記第2のTi前駆体及び前記第2のN前駆体の一方又は両方への曝露が、前記1回以上の第1の周期的蒸着サイクル中の前記第1のTi前駆体及び前記第1のN前駆体の一方又は両方への対応する曝露に比べて高い圧力下で行われる、上記実施形態25の方法。
27. 前記第1のN前駆体流量と前記第1のTi前駆体流量の第1の比(第1のN/Ti流量比)及び前記第2のN前駆体流量と前記第2のTi前駆体流量の第2の比(第2のN/Ti流量比)の一方又は両方が3~100である、上記実施形態26の方法。
28. 前記方法では、前記第1のN/Ti流量比と前記第2のN/Ti流量比の一方又は両方を大きくすると、前記第1及び第2のTiN薄膜の一方又は両方の対応する厚さが低減する、上記実施形態27の方法。
29. 前記対応する厚さが低減すると、前記第1及び第2のTiN薄膜の一方又は両方の対応する抵抗率が低減する、上記実施形態28の方法。
30. 前記対応する厚さが低減すると、前記第1及び第2のTiN薄膜の一方又は両方の対応するヤング率が大きくなる、上記実施形態28又は29の方法。
31. 前記ヤング率が大きくなることが、150GPaを超える値に大きくなることを含む、上記実施形態30の方法。
32. 前記対応する厚さが低減すると、前記第1及び第2のTiN薄膜の一方又は両方の対応する硬度の値が増す、上記実施形態28~31のいずれかの方法。
33. 前記硬度が増すことが、6GPaを超える値に増すことを含む、上記実施形態32の方法。
34. 前記対応する厚さが低減すると、前記第1及び第2のTiN薄膜の対応する塩素濃度が低減する、上記実施形態28~33のいずれかの方法。
35. TiNの(111)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又は強度とTiNの(200)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又は強度の比が、前記TiN薄膜において、前記第2のTiN薄膜におけるそれと比べて大きい、上記実施形態25~34のいずれかの方法。
36. 前記1回以上の第1の周期的蒸着サイクル中の前記第1のTi前駆体及び前記第1のN前駆体の一方又は両方への曝露が約5トル未満のリアクタ圧力下で行われ、かつ、前記1回以上の第2の周期的蒸着サイクル中の前記第2のTi前駆体及び前記第2のN前駆体の一方又は両方への曝露が約5トルより高いリアクタ圧力下で行われる、上記実施形態23~35のいずれかの方法。
37. 周期的蒸着プロセスにより窒化チタン(TiN)を含む薄膜を形成する方法であって、前記方法が、
各回において第1のTi前駆体流量での第1のTi前駆体への曝露及び第1のN前駆流量での第1のN前駆体への曝露を含む1回以上の第1の周期的蒸着サイクルに半導体基板を曝露することによって、第1の圧力で前記半導体基板上に第1のTiN薄膜を形成することを含み、
前記第1のTiN薄膜が、前記TiN薄膜のX線スペクトルにおいてTiNの(111)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又は強度とTiNの(200)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又は強度の比が0.4より大きくなるような結晶組織を有し、かつ、
各回において第2のTi前駆体流量での第2のTi前駆体への曝露及び第2のN前駆体流量での第2のN前駆体への曝露を含む1回以上の第2の周期的蒸着サイクルに前記半導体基板を曝露することによって、前記第1の圧力よりも高い第2の圧力で前記第1のTiN薄膜上に第2のTiN薄膜を形成することを含む、方法。
38. 前記第2の圧力が5トルより高い、上記実施形態37の方法。
39. 前記第2のTiN薄膜は、前記第2のTiN薄膜のX線スペクトルにおけるTiNの(111)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又は強度とTiNの(200)結晶方位に対応するX線回折ピークのピーク高さ又強度の比が、前記第1のTiN薄膜の対応する比よりも小さくなるような結晶組織を有する、上記実施形態37又は38の方法。
40. 前記第1のN前駆体流量と前記第1のTi前駆体流量の少なくとも第1の比(第1のN/Ti流量比)が3~100である、上記実施形態37~39のいずれかの方法。
41. 前記第2のN前駆体流量と前記第2のTi前駆体流量の第2の比(第2のN/Ti流量比)が、前記第1のN/Ti流量比よりも小さい、上記実施形態40の方法。
42. 前記方法では、前記第1のN/Ti流量比及び前記第2のN/Ti流量比の一方又は両方を大きくすると、前記第1及び第2のTiN薄膜の一方又は両方の対応する厚さを低減する、上記実施形態41の方法。
43. 前記対応する厚さが低減すると、前記第1及び第2のTiN薄膜の一方又は両方の対応する抵抗率が低減する、上記実施形態42の方法。
44. 前記対応する厚さが低減すると、前記第1及び第2のTiN薄膜の一方又は両方の対応するヤング率が大きくなる、上記実施形態42の方法。
45. 前記ヤング率が大きくなることが、150GPaを超える値に大きくなることを含む、上記実施形態44の方法。
46. 前記対応する厚さが低減すると、前記第1及び第2のTiN薄膜の一方又は両方の対応する硬度の値が増す、上記実施形態42の方法。
47. 前記硬度の値が増すことが、6GPaを超える値に増すことを含む、上記実施形態46の方法。
48. 前記対応する厚さが低減すると、前記第1及び第2のTiN薄膜の対応する塩素濃度が低減する、上記実施形態42の方法。
49. 前記第1の圧力が5トル未満である、上記実施形態37の方法。
【0101】
本発明を、特定の実施形態を参照して本明細書に記載したが、これらの実施形態は、本発明を限定する役割を果たすものではなく、説明のために記載されたものである。 本発明の主旨及び範囲から逸脱することなく、変更及び改良を行うことができることは、当業者にとって自明であろう。
【0102】
本明細書に開示された様々な実施形態のこのような単純な変更及び改良は、開示された技術の範囲内にあり、開示された技術の特定の範囲は、添付の請求項によってさらに定義されるであろう。
【0103】
以上において、実施形態のいずれか1つの特徴は、実施形態のいずれか他の1つの特徴と組み合わせ又は置換することができることが理解されよう。
【0104】
文脈上明らかに他の場合を要求されない限り、本明細書及び特許請求の範囲を通じて、"有する(comprise)"、"からなっている(consisting)"、"含む(include)"、"含んでいる(including)"などの語は、排他的又は網羅的意味とは反対に、包括的意味で、すなわち、"含むが限定しない(including but not limited to)" の意味で解釈されるものとする。本明細書で一般的に使用される「結合(coupled)」という言葉は、直接接続されているか、又は1つ以上の中間要素を介して接続されている2つ以上の要素を指す。同様に、本明細書で一般的に使用される「接続された(connected)」という言葉は、直接接続されているか、又は1つ以上の中間要素を介して接続されている2つ以上の要素を指す。また、本明細書において、「本明細書(herein)」、「上(above)」、「下(below)」及びこれらに類する語は、本明細書の特定の部分を指すのではなく、全体としての本明細書を指すものとする。また、上記の、発明を実施するための形態の説明において、単数又は複数を用いた語は、文脈が許す限り、それぞれ複数又は単数を含む場合がある。2つ以上の項目のリストを指す「又は」という語は、その語の次の解釈の全てを包含する:リストの項目のいずれか、リストの全ての項目、及びリストの項目の任意の組合せ。
【0105】
さらに、本明細書で使用される、特に「できる(can)」、「できた(could)」、「かもしれない(might)」、「場合がある(may)」、「等(e.g.)」、「例えば(for example)」、「など(such as)」などの条件付き語は、特に断りのない限り、又は使用される文脈内で理解されない限り、一般に、特定の実施形態が特定の特徴、要素及び/又は状態を含み、他の実施形態がそれらを含まないことを伝えることを意図している。したがって、このような条件付き語は、特徴、要素及び/又は状態が1つ以上の実施形態に何らかの形で必要であること、又は、これらの特徴、要素及び/又は状態が任意の特定の実施形態に含まれるか又は実行されるか否かを示唆することは一般に意図されていない。
【0106】
特定の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例示としてのみ提示されたものであり、開示の範囲を限定することを意図したものではない。実際、本明細書に記載された新規な装置、方法、及びシステムは、他の様々な形態で具現化されてもよく、さらに、本明細書に記載される方法及びシステムの形態における様々な省略、置換、及び変更を、本開示の主旨から逸脱せずに行うことができる。例えば、機能が所定の機構で示されているが、代替の実施形態では、異なる構成要素及び/又はセンサートポロジーで同様の機能を実行することができ、いくつかの機能は削除、移動、追加、細分化、結合、及び/又は修正されることができる。これらの各機能は、多様な異なる方法で実施することができる。上述した多様な実施形態の要素及び行為の任意の適切な組合せは、さらなる実施形態を提供するために組み合わされ得る。上述した様々な機能及びプロセスは、互いに独立して実施されてもよいし、様々な方法で組み合わされてもよい。本開示の特徴の全ての可能な組合せ及び下位の組合せは、本開示の範囲に入ることを意図されている。
【国際調査報告】