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特表2023-552999共焦点イメージングを用いるマイクロプレート用の汎用マルチ検出システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-20
(54)【発明の名称】共焦点イメージングを用いるマイクロプレート用の汎用マルチ検出システム
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/00 20060101AFI20231213BHJP
   G02B 21/24 20060101ALI20231213BHJP
   G02B 21/06 20060101ALI20231213BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
G02B21/00
G02B21/24
G02B21/06
G01N21/27 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534011
(86)(22)【出願日】2021-12-02
(85)【翻訳文提出日】2023-06-02
(86)【国際出願番号】 US2021061610
(87)【国際公開番号】W WO2022120047
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】63/120,605
(32)【優先日】2020-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】399117121
【氏名又は名称】アジレント・テクノロジーズ・インク
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100218604
【弁理士】
【氏名又は名称】池本 理絵
(72)【発明者】
【氏名】ピエット,ロス・マーセル
(72)【発明者】
【氏名】アムレッティ,シャビエル・フランソワ・パトリック
(72)【発明者】
【氏名】フォスター,カレブ・アラン
(72)【発明者】
【氏名】ナイト,ベンジャミン・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ノックス,ピーター・ブレント
(72)【発明者】
【氏名】ノリス,ベン・エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ピエット,ジェイムズ・ドナルド
(72)【発明者】
【氏名】シアーズ,リチャード・ナイルズ
(72)【発明者】
【氏名】スタイルズ,マシュー・アーサー
(72)【発明者】
【氏名】ジメンコフ,オレグ・ニコラエヴィチ
【テーマコード(参考)】
2G059
2H052
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB04
2G059BB09
2G059BB14
2G059CC16
2G059DD13
2G059DD17
2G059EE01
2G059EE06
2G059EE07
2G059FF01
2G059FF03
2G059FF07
2G059FF11
2G059GG01
2G059GG02
2G059GG03
2G059HH01
2G059HH02
2G059HH03
2G059JJ02
2G059JJ05
2G059JJ11
2G059KK04
2G059KK09
2H052AA07
2H052AA09
2H052AB02
2H052AC01
2H052AC34
2H052AD02
2H052AD03
2H052AD24
2H052AD27
2H052AF14
(57)【要約】
サンプルを光学的に分析する装置は、サンプルを撮像するイメージングサブシステムと、サンプルを分析する1つ以上の分析サブシステムであって、共焦点イメージングサブシステムと、装置内の雰囲気の温度を制御する温度制御サブシステムと、装置内の雰囲気の組成を制御するガス制御サブシステムと、装置の様々なサブシステムを制御する制御モジュールとを含む1つ以上の分析サブシステムとを含むことができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルを保持するように構成されたマイクロプレートウェルを備えるマイクロプレートを支持するように構成されたレセプタクル支持体と、
細胞レベルで前記サンプルを撮像するように構成された共焦点イメージングサブシステムと、
前記サンプルをウェルレベルで分析するように構成された非撮像分析サブシステムであって、前記サンプルの吸光度を測定する第1の測定モダリティと、前記サンプルの蛍光を測定する第2の測定モダリティと、前記サンプルの化学ルミネセンスを測定する第3の測定モダリティとのうちの少なくとも1つを提供するように構成されている非撮像分析サブシステムと
を備える、1つ以上のサンプルを分析するデバイス。
【請求項2】
前記共焦点イメージングサブシステム及び前記非撮像分析サブシステムの双方に共通であり、前記サンプルを分析する前記非撮像分析サブシステム及び前記サンプルを撮像する前記共焦点イメージングサブシステムに対して前記レセプタクル支持体を位置決めするように構成されている位置決めサブシステムを更に備える請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記サンプルをインキュベートするように構成されたインキュベーションチャンバを更に備える請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記デバイスの外部を形成し、前記非撮像分析サブシステムと、前記共焦点イメージングサブシステムと、前記位置決めサブシステムとを収容するハウジングを更に備える請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記非撮像分析サブシステムは、前記第1の測定モダリティと、前記第2の測定モダリティと、前記第3の測定モダリティとを提供するように構成されている、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記サンプルの周囲の温度を制御するように構成された温度制御サブシステムを更に備える請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記サンプルの周囲の雰囲気の組成を制御するように構成されたガス制御サブシステムを更に備える請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記非撮像分析サブシステムと、前記共焦点イメージングサブシステムと、前記位置決めサブシステムと、前記温度制御サブシステムと、前記ガス制御サブシステムとの動作を制御するように構成されたプロセッサを更に備える請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記非撮像分析サブシステムと、前記共焦点イメージングサブシステムと、前記位置決めサブシステムと、前記温度制御サブシステムと、前記ガス制御サブシステムとの動作を制御するためのユーザ入力を受信するように構成されたユーザインタフェースを更に備える請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記サンプルの周囲の雰囲気温度を制御するように構成された温度制御サブシステムと、
前記サンプルの周囲の雰囲気組成を制御するように構成されたガス制御サブシステムと
を更に備え、
前記雰囲気組成は細胞生存性に寄与する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
(i)前記共焦点イメージングサブシステム及び前記非撮像分析サブシステムのうちの一方と、(ii)前記レセプタクル支持体とは、共通に制御された雰囲気組成を共有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
前記共焦点イメージングサブシステムと、前記非撮像分析サブシステムと、前記レセプタクル支持体とは、共通に制御された雰囲気組成を共有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
前記共焦点イメージングサブシステムは前記サンプルを撮像する対物レンズを備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
前記共焦点イメージングサブシステムは、タレット上に取り付けられる複数の対物レンズを備え、前記タレット上に取り付けられる前記複数の対物レンズは、前記サンプルを選択的に撮像するように選択可能である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
前記共焦点イメージングサブシステムは撮像光源を備え、
前記非撮像分析サブシステムは、前記撮像光源とは別個の少なくとも1つの分析光源を備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項16】
前記非撮像分析サブシステムと前記共焦点イメージングサブシステムとの動作を制御するように構成されたプロセッサを更に備える請求項1に記載のデバイス。
【請求項17】
前記非撮像分析サブシステムと前記共焦点イメージングサブシステムとの動作を制御するためのユーザ入力を受信するように構成されたユーザインタフェースを更に備える請求項1に記載のデバイス。
【請求項18】
前記デバイスの外部を形成し、前記非撮像分析サブシステム及び前記共焦点イメージングサブシステムを収容するハウジングを更に備える請求項1に記載のデバイス。
【請求項19】
前記非撮像分析サブシステムは、前記第1の測定モダリティと、前記第2の測定モダリティと、前記第3の測定モダリティとを提供するように構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項20】
前記対物レンズは液浸対物レンズである、請求項13に記載のデバイス。
【請求項21】
サンプルを保持するように構成されたマイクロプレートウェルを備えるマイクロプレートを支持するように構成されたレセプタクル支持体と、
前記サンプルを撮像するように構成された対物レンズと、
前記対物レンズを介して前記サンプルを撮像するように構成されたレーザ点走査共焦点システムと、
前記対物レンズを介して前記サンプルを撮像するように構成されたスピニングディスク又は広視野イメージングシステムと
を備え、
前記レーザ点走査共焦点システムと、前記スピニングディスク又は広視野イメージングシステムとの双方の少なくとも一部は、前記レーザ点走査共焦点システムと、前記スピニングディスク又は広視野イメージングシステムとが、前記サンプルを撮像するために前記対物レンズと選択的に位置合わせされるように構成されているように、移動可能に設けられる、サンプルを分析するデバイス。
【請求項22】
前記対物レンズは液浸対物レンズである、請求項21に記載のデバイス。
【請求項23】
前記液浸対物レンズには、前記対物レンズの上端に取り付けられるスリーブが設けられ、
前記スリーブは、
前記液浸対物レンズにおけるレンズの輪郭を前記レンズの上面に向かって沿う突出部であって、前記突出部と前記液浸対物レンズの前記レンズとの間に空間が設けられ、前記空間は、液浸のために前記レンズの前記上面に供給される液体を受けるように構成されているものである、突出部と、
上壁であって、該上壁と前記突出部との間に溝が設けられ、前記溝は、前記液体の一部が前記レンズの前記上面に供給された後に前記液体の一部を受けるように構成されている、上壁と
を備える、請求項22に記載のデバイス。
【請求項24】
前記スリーブの上面は、前記レンズの前記上面と同一平面にある、請求項23に記載のデバイス。
【請求項25】
ディスプレイと、
前記レーザ点走査共焦点システムと、前記スピニングディスク又は広視野イメージングシステムとを制御するように構成され、前記ディスプレイに、ユーザが前記レーザ点走査共焦点システムの使用と前記スピニングディスク又は広視野イメージングシステムの使用との間で選択することを可能にするインタフェースを表示させるように更に構成されている、コントローラと
を更に備える、請求項21に記載のデバイス。
【請求項26】
前記コントローラは、前記インタフェースに対する前記ユーザによる入力に基づいて、前記レーザ点走査共焦点システムを使用する動作を実行し、その後、前記レーザ点走査共焦点システムを使用する動作を実行するように更に構成されている、請求項25に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態と一致する装置及び方法は、マイクロウェル内に配設されたサンプルの蛍光、化学ルミネセンス、及び吸光度の検出を含む複数の検出モードを提供するマイクロプレートベースの検出システム、並びに広視野及び共焦点顕微鏡法を利用する細胞レベル及び細胞下レベルでのマイクロプレートウェルの内容物の撮像に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2020年12月2日に出願された米国仮特許出願第63/120,605号に基づくとともにその優先権を主張するものであり、その内容全体が引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【背景技術】
【0003】
多様な形状及びサイズの容器内に配置された試料サンプルを評価するために、様々な異なる分析機器を研究室で採用することができる。従来、マイクロプレート式システム(microplate format system)を使用することが単一基盤型レセプタクル(single-matrix receptacle)上の多くのサンプルを試験することに適していることから、マイクロプレート式システムの普及が拡大してきた。
【0004】
図1は、行列状に配設された96個の円形のウェル2を含む従来の96ウェルプレート1を示す図である。図2は、384個の正方形のウェル4を含む従来の384ウェルプレート3を示す図である。構成に応じて、行列状に配置された、マイクロプレートの全体的な寸法サイズ(高さ、幅等)が同じでありながら1536個のウェルを含むウェル等、更に高密度のウェルが存在しうる。
【0005】
マイクロプレートベースの検出方法は、単純な吸光度から蛍光、そして化学ルミネセンスへと進歩してきた。マイクロプレートベースのシステムの他の適応例としては、ヒトの体温に近い温度が長期間にわたって維持されるカイネティクスアッセイ(kinetic assay:運動学的試験)に必要な、制御された温度でマイクロプレートを処理及び分析するための流体注入器及びインキュベータを含む。同様に、マイクロプレートを囲むガス環境を制御する雰囲気制御システムが、マイクロプレート内に配置された生細胞の長期研究を可能にするために開発されてきた。
【0006】
単機能の特化された機器は、いくつかの検出モダリティ(detection modality)が単一の機器内で組み合わされるマルチ検出機器へと進歩してきた。初期のマルチ検出機器は、選択のためにいくつかの一般的に使用される分析波長を伴うフィルタベースのものであったが、次世代のマルチ検出機器は、典型的には200nm~1000nmの波長範囲内である、1つの機器において提供することができる広範囲のスペクトルから波長帯域を研究者が選択することを可能にするために、モノクロメータを更に含むものとなった。したがって、例えば、特許文献1に記載されている初期のモノクロメータベースの機器は、単一格子モノクロメータをバンドパスフィルタと組み合わせたものであった。しかしながら、任意の波長を柔軟に選択することに関しては有利であったが、そのようなユニットにおいて選択されたスペクトル帯域の純度は、研究レベルの分光計測から利用可能なものと一致しなかった。
【0007】
その後のモノクロメータベースのマルチ検出機器は、例えば特許文献2に記載されているように、光の純度がフィルタベースの機器に匹敵する検出限界に達するのに十分であったダブルモノクロメータに基づくようになった。そこでは、直列の2つの格子は、励起ダブルモノクロメータに配備することができ、直列の2つの格子は、発光ダブルモノクロメータに配備することができる。波長選択に加えて、分析されているアッセイに応じて、これらの機器は、吸光度及び蛍光の双方についてのサンプルのスペクトル走査も可能にし、したがって、現代の研究室において利用される単一の機器の有用性を大いに高める。
【0008】
市場が、ハイスループットスクリーニング(HTS:High throughput Screening)市場に役立つ高感度用のフィルタベースの機器と、主に研究で使用されるモノクロメータベースの機器とに二分されていたことから、例えば、特許文献3及び特許文献4に記載されているように、フィルタベースの読取りとモノクロメータベースの読取りとが単一の機器内に提供される、双方を組み合わせた機器が開発されるようになった。
【0009】
ハイブリッド型のフィルタベース及びモノクロメータベースの検出機器は、フィルタとモノクロメータの二分化に対処したものであったが、そのような機器は、主に、1時間当たりに処理されるサンプルの数が貴重であった同種アッセイ(homogeneous assey)とともに使用された。この設計のシステムが配備された研究領域は、サンプルごとに記録された少数のパラメータを用いてマイクロプレートのウェル内の大量のサンプルを迅速に処理するためのハイスループットスクリーニング(HTS)として知られている。速度を最適化して、分析を可能な限り迅速に実行して、いくつかの固有の特性を示すウェルを探し、次いで、更なる調査を保証する「ヒット(hit)」のウェルに焦点を当てる。そのような後続の調査は、典型的には、より詳細な分析機器の別個のラインによって実行される。
【0010】
典型的には、ほとんどのアッセイは主に生化学ベースであり、HTS技術は創薬研究及び分析(drug discovery research and analysis)のための好ましい方法であった。創薬のコストが増大するにつれて、より生物学的に関連するモデルの必要性が、細胞の単一の単層を使用する二次元(2D)細胞ベースのアッセイの成長を推進した。研究者らは、同種アッセイの限界を認識し、個々の細胞の挙動を研究することを望んだ。したがって、細胞をペトリ皿のような従来の実験容器からマイクロプレートに再分布させた。その結果、分析のためのパラメータの数を劇的に増加させることができた。
【0011】
最初に、マイクロプレートのウェルを、従来の顕微鏡を使用して撮像し、後に専用の撮像装置を介して撮像した。単一の画像であっても膨大な量の情報が利用可能であることに起因して、マイクロプレート内の細胞の撮像は、例えば特許文献5に記載されているように、ハイコンテントスクリーニング(HCS:High Content Screening)として知られているものとすることができる。
【0012】
HTS非撮像機器(HTS non-imaging instrumentation)及びHCS撮像機器(HCS imaging instrumentation)は、市場に並行して販売されている。双方のタイプの能力を活用するシステムが開発されており、それによって、研究者は、例えば特許文献6及び特許文献7に記載されているように、同じ機器において、蛍光、吸光度、及び化学ルミネセンス等の非撮像分析モダリティ(non-imaging analysis modality)、並びに細胞レベルでのマイクロウェル内の撮像にアクセスすることができる。これらの機器は、各顕微鏡対物レンズの完全な視野が照明及び撮像される広視野顕微鏡法を実施する。このタイプの分析は、細胞の単層(monolayer)を研究するのに適している。
【0013】
図3は、マイクロプレートのウェル内に播種(seeded)された細胞を示す図である。マイクロプレートのウェル41の底部に播種された細胞42は、例えば、雰囲気及び湿度を制御する環境内で成長する。そこでは、成長細胞42が増殖し、ウェル41の底部を覆うように広がる。細胞層の深さは、単一細胞に限定することができ、鮮明で非常に情報量の多い細胞の画像を、広視野イメージング及び顕微鏡法を介して得ることができる。
【0014】
最近、研究者らは、二次元(2D)層として現れるマイクロウェル内の付着細胞(adherent cell)は、非常に有用であるが、生体組織を正確に表すには限界があることを認識している。これは、生体組織内の細胞が最終的に三次元的に成長するためである。したがって、三次元(3D)細胞培養が、細胞研究の次のステップにおいて望ましいものとなるであろう。
【0015】
3D細胞培養は、生物細胞が成長してそれらの周囲と三次元で相互作用するように誘導される、人工的に作り出された環境である。これは、in vivo(生体内)での細胞の実際の成長をよく模倣することができる。
【0016】
三次元細胞培養物はスフェロイド(spheroid:回転楕円体)と呼ばれる。スフェロイドは、マイクロプレートのウェル内で成長させることもできる。マイクロウェル内で成長させたスフェロイド内の細胞に関する薬学的研究は、in vivoでの細胞挙動をより厳密に再現することを目的とする。例えば、薬物毒性スクリーニングの目的のために、三次元で増殖させたin vitro(体外の)細胞の遺伝子発現を試験することは、3Dスフェロイドにおける遺伝子発現がin vivoでの遺伝子発現により密接に類似するので、二次元で試験するよりも有用である。また、3D細胞培養物は、2D培養における細胞よりも高い安定性及び長い寿命を有することから、3D細胞培養物は、長期研究のため、及び薬物の長期効果を実証するためにより適したものとすることができる。
【0017】
図4は、マイクロウェル内の3D細胞を模式的に示す図である。図4に示されているように、スフェロイド63を形成する個々の細胞62の3Dクラスタは、マイクロウェル61の底部に位置する。例えば、3Dアッセイは、スフェロイド、チューモロイド(tumoroid)、オルガノイド(organoid)、マトリゲル(matrigel)、ショウジョウバエ、ゼブラフィッシュ、及び細胞成長のための3Dプリントされた生体材料足場を含みうる。これらの場合のそれぞれにおいて、広視野蛍光イメージングは、サンプル全体を照明することに起因して、撮像検出方法としては限界があり、サンプルの厚さが増加するにつれて、十分に解像度の高い画像を得る能力を低減させる重いバックグラウンド「ノイズ」がもたらされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第6,313,471号
【特許文献2】米国特許第6,654,119号
【特許文献3】米国特許第7,782,454号
【特許文献4】米国特許第8,218,141号
【特許文献5】米国特許第5,989,835号
【特許文献6】米国特許第9,557,217号
【特許文献7】米国特許第10,072,982号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
したがって、3Dスフェロイドをスクリーニングする更なる方法が望ましいであろう。
【0020】
細胞ベースのアッセイ、特に生細胞アッセイは、生命科学研究の分野においてより一般的になってきている。マイクロプレートは、定性的及び定量的手段による細胞成長プロセスの調査用の容器として使用が拡大されている。多くの場合、細胞を用いた作業は、複数の専用機器を利用して研究者によって実行される。
【0021】
全ウェル蛍光の代表的な測定値を得るのに十分に大きい光ビーム直径、又はウェルにわたるシグナルのエリア走査及びマッピングを実行するのに十分に大きいビームサイズを有する機器を用いた蛍光読取りは、専用の従来の蛍光リーダー又はマルチ検出リーダーを用いて達成することができる。機器のほとんどは、プレートのインキュベーション、流体注入を提供し、組織培養インキュベータと同様のガス制御(CO及び/又はO(つまり、CO又はO、あるいはそれらの両方))のオプション(選択肢)も可能にする。
【0022】
単にウェルの蛍光シグナルレベルよりもはるかに多くの情報を、広視野イメージングモダリティを用いて細胞から得ることができる。非染色細胞のための明視野及び位相差、並びに染色細胞のための蛍光イメージングを伴う実験室用顕微鏡が一般的に使用される。いくつかの機器は、インキュベーションチャンバ及び環境の制御を可能にする。スフェロイドのような3D細胞クラスタのより鮮明な撮像又は切片化のために、共焦点顕微鏡法を第3の計測のオプション(選択肢)として使用される。
【0023】
典型的には、これらの一連の機器は様々なベンダから供給され、ユーザは、必要に応じて機器から機器へとマイクロプレートを物理的に移動させること、並びにサンプル分析プロセス全体を追跡すること、及び完全な分析結果を得るためにいくつかのユニットからのデータを操作することを強いられうる。ロボット工学なしでは、長期の複雑な実験を適切に行うことはほぼ不可能でありうる。これは、分析コスト及び複雑性の双方を更に増加させる。非撮像分析モダリティ(蛍光、吸光度、及び化学ルミネセンス)、細胞レベルでの広視野蛍光イメージング、共焦点蛍光イメージング、環境制御、及び試薬注入を単一の機器に組み合わせることにより、完全な分析ソリューションが提供され、研究者は、退屈なマイクロプレートの取扱い、マイクロプレートの追跡、及びデータ伝送から解放される。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本明細書に記載される実施の形態は、上記の欠点及び上述されていない他の欠点を克服する。また、実施の形態は、上述の欠点を克服する必要はなく、一例示の実施の形態は、上述の問題のいずれも克服しなくてもよい。
【0025】
一例示の実施の形態の一態様によれば、1つ以上のサンプルを分析するデバイスが提供され、デバイスは、サンプルを保持するレセプタクルのための支持体と、サンプルを撮像するイメージングサブシステムと、サンプルを分析する分析サブシステムとを含む。
【0026】
一例示の実施の形態の一態様によれば、1つ以上のサンプルを検査するサンプル分析デバイスの複数のサブシステムから少なくとも1つのサブシステムを選択することであって、複数のサブシステムが、1つ以上のサンプルを撮像するイメージングサブシステムと、1つ以上のサンプルを分析する分析サブシステムとを含むことと、選択された少なくとも1つのサブシステムを制御して、1つ以上のサンプルに対して検査を実行することであって、検査が、1つ以上のサンプルを撮像するイメージングサブシステムの撮像動作と、1つ以上のサンプルを分析する分析サブシステムの分析動作とを含むこととを含む、サンプル分析方法が提供される。
【0027】
一例示の実施の形態の一態様によれば、コンピュータによって実行されたときにコンピュータにサンプル検査方法を実行させるプログラムが具現された非一時的コンピュータ可読媒体であって、本方法は、1つ以上のサンプルを検査するサンプル分析デバイスの複数のサブシステムから少なくとも1つのサブシステムを選択することであって、複数のサブシステムが、1つ以上のサンプルを撮像するイメージングサブシステムと、1つ以上のサンプルを分析する分析サブシステムとを含むことと、選択された少なくとも1つのサブシステムを制御して、1つ以上のサンプルに対する検査を実行させることであって、検査は、1つ以上のサンプルを撮像するイメージングサブシステムの撮像動作と、1つ以上のサンプルを分析する分析サブシステムの分析動作とを含むこととを含む、非一時的コンピュータ可読媒体が提供される。
【0028】
一例示の実施の形態の一態様によれば、サンプルを分析するデバイスが提供される。本デバイスは、サンプルを保持するように構成されたマイクロプレートウェルを備えるマイクロプレートを支持するように構成されたレセプタクル支持体と、サンプルを撮像するように構成された対物レンズと、対物レンズを介してサンプルを撮像するように構成されたレーザ点走査共焦点システムと、対物レンズを介してサンプルを撮像するように構成されたスピニングディスク及び/又は広視野(つまり、スピニングディスク又は広視野あるいはそれらの両方の)イメージングシステムとを備えることができ、レーザ点走査共焦点システム及びスピニングディスク及び/又は広視野イメージングシステムの双方の少なくとも一部は、レーザ点走査共焦点システム及びスピニングディスク及び/又は広視野イメージングシステムが、サンプルを撮像するために対物レンズと選択的に位置合わせされるように構成されるように、移動可能に設けられる。
【0029】
上記及び他の態様は、添付の図面を参照してその例示の実施形態を詳細に説明することによってより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】従来の96ウェルプレートを示す図である。
図2】従来の384ウェルプレートを示す図である。
図3】マイクロプレートのウェルに播種された細胞を示す図である。
図4】マイクロウェル内の3D細胞を模式的に示す図である。
図5A】スフェロイドの比較図である。
図5B】スフェロイドの比較図である。
図6】一実施形態に係るマルチ検出システムを示すブロック図である。
図7】一実施形態に係るマルチ検出システムを示すブロック図である。
図8】一実施形態に係るマルチ検出システムを示すブロック図である。
図9】一実施形態に係るマルチ検出システムを示すブロック図である。
図10】一実施形態に係るスピニングディスクを示す図である。
図11】一実施形態に係る共焦点ディスク撮像モジュールを示す図である。
図12】一実施形態に係るディスク交換機構及びディスク合焦機構を示す図である。
図13】一実施形態に係る非撮像分析サブシステムの図である。
図14】一実施形態に係る注入サブシステムを示す図である。
図15】一実施形態に係るマルチ検出システムを示す図である。
図16A】一実施形態に係る環境制御サブシステムを示す斜視図である。
図16B】上記の実施形態に係る環境制御サブシステムを示す背面図である。
図16C】上記の実施形態に係る環境制御サブシステムを示す前面図である。
図17】一実施形態に係る機器のモダリティの制御を示す機能ブロック図である。
図18】一例示の実施形態に係るマルチ検出システムの制御方法のフローチャートである。
図19A】一実施形態に係る液浸対物レンズを示す第1の図である。
図19B】上記の実施形態に係る液浸対物レンズを示す第2の図である。
図20】一実施形態に係る流体ポンプシステムを示す図である。
図21】一実施形態に係る対物レンズ連結部を示す図である。
図22A】第1の実施形態に係る液浸対物レンズを示す斜視図である。
図22B】第1の実施形態に係る液浸対物レンズを示す上面図である。
図22C】液体バルブが設けられた状態の第1の実施形態に係る液浸対物レンズを示す、図22Bの線A-Aに沿った第1の断面図である。
図22D】上にマイクロプレートが設けられた、第1の実施形態に係る液浸対物レンズを示す、図22Bの線A-Aに沿った第2の断面図である。
図23A】第2の実施形態に係る液浸対物レンズを示す上面図である。
図23B】液体バルブが設けられた状態の第2の実施形態に係る液浸対物レンズを示す、図23Aの線B-Bに沿った第1の断面図である。
図23C】上にマイクロプレートが設けられた、第2の実施形態に係る液浸対物レンズを示す、図23Aの線B-Bに沿った第2の断面図である。
図24A】第3の実施形態に係る液浸対物レンズを示す上面図である。
図24B】液体バルブが設けられた状態の第3の実施形態に係る液浸対物レンズを示す、図24Aの線C-Cに沿った第1の断面図である。
図24C】上にマイクロプレートが設けられた、第3の実施形態に係る液浸対物レンズを示す、図24Aの線C-Cに沿った第2の断面図である。
図25A】第4の実施形態に係る液浸対物レンズを示す上面図である。
図25B】液体バルブが設けられた状態の第4の実施形態に係る液浸対物レンズを示す、図25Aの線D-Dに沿った第1の断面図である。
図25C】上にマイクロプレートが設けられた、第4の実施形態に係る液浸対物レンズを示す、図25Aの線D-Dに沿った第2の断面図である。
図26A】一実施形態に係る、レーザ点走査共焦点モダリティにおけるマルチ検出システムの第1の図である。
図26B】同実施形態に係る、広視野又はスピニングディスク共焦点モダリティにおけるマルチ検出システムの第2の図である。
図27】一実施形態に係る一例示のユーザインタフェースの図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
共焦点イメージング(confocal imaging)として知られるイメージングモダリティは、3D細胞構造を撮像するのに非常に適したものでありうる。共焦点イメージングにおいては、サンプルは、一度に1つの点又は部分を照明することができる。例えば、光学的に共役な面に位置決めされたピンホール等の小さな開口に光を通過させることができる。点照明は、焦点外光及び背景光を実質的に排除し、それにより、画像の光学的な解像度及びコントラストを増加させる。完全な画像は、走査機能を介して点ごとに構築されるか、又はつなぎ合わされ、明確な特徴を有して非常に鮮明である。走査機能は、走査ディスク又はニポウディスク(Nipkow disk)としても知られるスピニングディスクを用いて実行することができる。
【0032】
共焦点イメージングは、スフェロイドと共に使用するのに特によく適したイメージングモダリティである。共焦点イメージングを用いて、スフェロイドを層ごとに切片化することができ、そして、正確な細胞の計数及び3D画像の操作の双方のためにコンピュータにおいて3Dモデルが作製され、様々な角度からスフェロイドが観察されうる。
【0033】
図5A及び図5Bは、スフェロイドの比較図である。図5Aは、広視野イメージングを用いて20倍(20X)の倍率で撮影されたスフェロイドを示す。図5Bは、共焦点イメージングを用いて20倍(20X)の倍率で撮影されたスフェロイドを示す。スフェロイドのサイズは、図5Aの画像を使用して評価することができるが、個々の細胞及びスフェロイドの構造は、図5Bの共焦点イメージングでのみ視認可能となる。
【0034】
図5Bの共焦点イメージングに帰する解像度の利点は、共焦点開口によって引き起こされる光強度の減少を犠牲にして提供され、その結果、多くの場合、図5Aの広視野イメージングと比較してより長い露光時間が必要となる。
【0035】
制御された生細胞環境と組み合わされた、非撮像分析モダリティ(蛍光、吸光度、化学ルミネセンス等)及び細胞レベルでの広視野蛍光イメージングも含む機器に共焦点蛍光イメージングを追加することにより、3D細胞スフェロイド研究を目的とするものを含む、マイクロプレートベースのアッセイフォーマットを分析するための最も多用途の単一の機器が現代の研究者に提供される。
【0036】
一例においては、より高速なスクリーニングのために広視野イメージングが実行される一方で、公開画像のために共焦点イメージングが実行されるワークフローが存在しうる。
【0037】
広視野イメージングは、HCSタイプのアッセイのために実行されてもよく、その場合、スループットは広視野イメージングでより速くなり、結果として得られる画像分析は依然として統計的にロバストである。次いで、共焦点イメージングを採用して、公開又はプレゼンテーションの目的のために「対照(control)」と比較した「ヒット(hit)」の代表的なウェルを取得することができる。
【0038】
一例においては、サイズに基づくスフェロイドのより迅速な一次スクリーニングのために広視野イメージングが実行されるワークフローが存在しうる。次いで、共焦点イメージングを使用するとより正確なものとなる、核の計数に基づいた各「ヒット」ウェルのサイズのより深い評価のために、共焦点イメージングが使用される。
【0039】
典型的には、広視野イメージングは、個々の核を確実に計数するのに十分に3Dスフェロイドを「見る」ことができないが、広視野は、それでもなお、総スフェロイドサイズに基づいて「ヒット」の決定を行うことができる。「ヒット」ウェルが広視野イメージングで識別されると、識別されたウェルは、次いで共焦点イメージングで撮像され、広視野イメージング単独では実行することができない、スフェロイド内の全ての核を計数するための改良された画像分析が得られる。
【0040】
一例においては、創傷治癒薬物候補を決定するための増殖アッセイ(3D内皮細胞スフェロイドアッセイ)が存在しうる。一次薬物スクリーニングは、どの化合物が細胞成長/増殖の増加を誘発するかを決定するために、小さな内皮スフェロイドが未知の化合物ライブラリで処理されるマイクロプレートにおいて実行することができる。増加した成長を引き起こす化合物は、更なる創傷治癒研究のための候補でありうる。
【0041】
分析ワークフローにおいて、GFP蛍光強度を使用してマイクロプレートを迅速にスクリーニングして、増大したサイズのスフェロイドを有するウェルを決定するために、プレートリーダー(plate reader)を使用することができる。GFP強度の閾値(閾値は、アッセイ開発中に統計的に決定される)を満たすウェルが「ヒット」とみなされ、更なる撮像のために選択される。対照ウェル(control well)もまた、ヒットウェルとの比較のための参照ウェル(reference well)として、常に更に撮像される。3Dスフェロイドの共焦点イメージングを実行して、スフェロイドサンプル全体の2チャネルzスタック画像セット(Hoescht 33342核マーカー及びGFPマーカー)を取得することができる。Zスタックの最大投影の画像処理及び分析においては、スフェロイドの細胞数を決定してスフェロイドサイズを定量化する。スフェロイド内に細胞死があるかどうかを決定するために、画像中の核マスクの分布の目視検査を実行する。そして、ヒットウェル画像分析からの結果を対照と比較して、対照に対する成長のパーセンテージを決定する。
【0042】
一例示のワークフローにおいては、3Dチューモロイド(tumoroid:種痘性)細胞毒性及び免疫応答アッセイ(免疫及び細胞毒性治療応答を決定するための外科的サンプルからの3Dチューモロイドアッセイ)が実行される。このアッセイには、動物モデル又は患者に由来する外科的サンプルから得られたチューモロイドを培養することを含む。これらのチューモロイドは動物/患者に由来することから、in vitro腫瘍由来免疫細胞応答を評価することができ、様々な療法に対する腫瘍応答の分析が可能になる。このアッセイは、異種多細胞腫瘍モデルを使用して、マイクロプレートベースの形式で新規の治療剤の有効性を評価することができる。
【0043】
例えば、チューモロイドは、核計数のために染色されうる(例えば、青色)とともに、免疫細胞マーカーのために染色されうる(例えば、赤色)。マイクロプレートリーダーを使用して、低い青色シグナルとして示される高い細胞毒性を有するウェル、高い赤色シグナルとして示される高い免疫応答を有するウェルを評価することができる。細胞毒性又は免疫応答についての一方又は双方の閾値基準(閾値は、アッセイ開発の間に統計的に決定される)を満たすウェルが「ヒット」とみなされ、更なる撮像のために選択される。対照ウェルもまた、ヒットウェルと比較するために、常に更に撮像される。3Dチューモロイドの共焦点イメージングを実行して、チューモロイドサンプル全体の2チャネルzスタック画像セット(Hoescht 33342核マーケット及びCY5マーカー)を取得する。Zスタックの最大投影について画像処理及び分析を実行し、チューモロイドの細胞の計数を実行して細胞数を定量化する。赤色陽性細胞の数を、免疫応答のために決定する。ヒットウェル画像分析からの結果を対照と比較して、対照に対する細胞毒性又は免疫応答のパーセンテージを決定する。
【0044】
上記の例のうちのいくつかは、「ヒットピッキング(hit picking)」としてアッセイを実行するために単一の機器の能力を利用する。第1の迅速な読取りは、典型的には、より低い倍率で実行される蛍光非撮像読取り又は蛍光若しくは明視野広視野イメージング読取りとすることができる高速読取り方法を使用して、特定の関心対象のサンプルを識別する。関心対象のウェル(ヒットと呼ばれる)が識別されると、第2のより時間のかかるモダリティが配備され、特定の関心対象の結果を決定する。この処理は、最終結果が高解像度共焦点イメージングである場合に特に重要であり、この場合、大きなデータ記憶が必要とされ、関心対象となる少数のサンプルのみに関する膨大な量の情報を収集することは、データ記憶空間の実質的な節約を提供する。この処理はまた、ほとんどのサンプルが「ヒット」ではなく、第1のアッセイステップ中に排除されることから、データ取得及びデータレビュー中の処理時間を節約する。様々な異なる処理ステップを実行するための単一の統合されたデバイスは、分析を合理化することができる。
【0045】
スフェロイドの研究のための多様な機能性を有する単一の機器の能力の他の応用が可能である。スフェロイドは、典型的には、図4に示すように、丸底ウェル内で成長させる。多くの場合、最終撮像ステップのために、スフェロイドは、丸みを帯びたウェル底部が撮像中にレンズと同様に機能することで光学収差が不必要に誘発されて結果として得られる画質に悪影響を及ぼすことを防止する目的のために、平底プレート内に移送される。高品質の顕微鏡対物レンズは、光路内のそのような「丸みを帯びたウェル」の底部レンズ用には設計されていない。最良の画質のために別のウェル、ディッシュ、又はプレートに移送した後、ウェル内のスフェロイドの正確な位置はもはや分からなくなる。好ましい実施形態においては、ウェルを撮像するためのより低い倍率であるがより大きい視野での広視野イメージングが実行されてスフェロイド(関心領域(region of interest))を位置特定し、次いで、見出されたスフェロイドの位置(関心領域)を光軸と一致させるようにウェルを位置決めし、より小さい視野を伴うより高い倍率の対物レンズを使用して、共焦点モダリティにおいてスフェロイドを撮像し、対物レンズがウェル底面に垂直な対物レンズの合焦軸に沿って横断する間、複数の画像を収集することによってZスタックが実行されうる。スフェロイド(関心領域)は、蛍光読取り領域走査を実行し、撮像のために最大蛍光シグナルの領域を選択することで、機器の非撮像分析モダリティを使用することによって識別されうる。
【0046】
図6は、一実施形態に係るマルチ検出システムを示すブロック図である。
【0047】
図6に示されているように、マルチ検出システムは、コントローラ1000と、流体注入サブシステム1100と、広視野イメージング構成要素1200及び共焦点イメージング構成要素1500を含むイメージングサブシステムと、非撮像分析サブシステム1300と、広視野イメージングのための撮像照明サブシステム1600と、ハウジング1900と、マイクロプレート300と、マイクロプレートキャリア310と、ウェル200内のサンプルをインキュベートするためのインキュベーションチャンバ320と、環境制御サブシステム2000と、共焦点イメージングサブシステムとを備える。マルチ検出システムはまた、外部サブシステム2100を備えうる。
【0048】
サンプルは、マイクロプレート300のウェル200(例えば、マイクロウェル)内に配置される。マイクロプレート300は、マイクロプレートキャリア310によって、測定及びインキュベーションチャンバ320の内外に輸送される。マルチ検出システムの外部環境に露出されるように配設されると、マイクロプレート300は、技術者又はロボットアームによるアクセスのために、インキュベーションチャンバ320及び/又はハウジング1900(つまり、インキュベーションチャンバ320又はハウジング1900あるいはそれらの両方)の外部でアクセス可能とすることができる。マイクロプレート300がチャンバ内に配設されると、様々なサポートされたイメージング及び非撮像分析モダリティを実行することができる。
【0049】
マイクロプレートキャリア310は、マイクロプレート300の位置操作のためのマイクロプレート輸送サブシステムの一部であり、ベルト、プラットフォーム、マイクロプレートホルダ、モータ、及び位置操作のためのハードウェア制御下で実行される位置決めソフトウェアの任意の適切な組合せを含むことができる。マイクロプレート300がインキュベーションチャンバ320内に配設されると、マイクロプレート300全体がインキュベートされたままとなる。インキュベーションシステム及びインキュベーションチャンバ320については、後で詳細に説明する。
【0050】
非撮像分析サブシステム1300は、フラッシュバルブ、二重励起モノクロメータ、及び二重発光モノクロメータ、光電子増倍管(PMT:photomultiplier tube)、及びシリコン検出器を介した照明に基づくものでありうる。非撮像分析サブシステム1300は、ウェル200内のサンプルの対応する特性の検出のために、吸光度、蛍光、及び化学ルミネセンス分析モダリティをサポートする。非撮像分析サブシステム1300は、フィルタベースのサブシステムとして、又は上記のいずれか若しくは全てのハイブリッドとして実施することができる。
【0051】
イメージングサブシステムは、対物レンズ、レンズ、LED、フィルタキューブ、スピニングディスク、カメラ、及び他の構成要素等の広視野イメージング構成要素1200及び共焦点イメージング構成要素1500を含む。撮像照明サブシステム1600は、広視野イメージングのための照明構成要素を含み、明視野、カラー明視野、及び位相差イメージングモダリティのための照明を提供することが可能である。
【0052】
外部サブシステム2100は、共焦点イメージングのための外部共焦点照明サブシステム(external confocal illumination subsystem)とすることができ、この外部共焦点照明サブシステムは、機器に対する外部サブシステム2100の物理的配置の柔軟性を高めるために、光ファイバを介してハウジング1900内のイメージングサブシステムにモジュール式に接続し、イメージングサブシステムから分離することができる。代替的に、共焦点撮像照明サブシステムは、ハウジング1900内に統合されるように配設されてもよい。
【0053】
流体注入サブシステム1100は、アッセイに必要な場合、試薬をウェル200に送達する。流体注入サブシステム1100は、ウェルに流体を送達し、必要な場合にはウェルから流体を吸引するために、ポンプ、リザーバ、ライン又は管類、ピペット及び先端、並びにハードウェア制御下で実行されるソフトウェアの任意の組合せを含みうる。
【0054】
ハウジング1900に対して外部に配置されて示される環境制御サブシステム2000は、ハウジング1900の内部の雰囲気状態の制御を提供するガス制御モジュールを含みうる。他の制御モジュールは、環境制御サブシステム2000の制御下でハウジング1900内において制御されうる、温度、湿度、及び他の状態の制御のためのモジュールを含みうる。環境制御サブシステムは、ハウジング1900内の全ての状態を制御するために、ポンプ、リザーバ、ライン又は管類、ファン、加熱及び冷却要素等の任意の組合せを含みうる。ハウジング1900は、サブシステムの大部分を収容し、生細胞に寄与するガス雰囲気が、環境制御サブシステム2000によって効果的に維持及び制御することができる物理的空間を画定する。
【0055】
コントローラ1000は、マルチ検出システムの全ての動作を制御することができる。コントローラ1000は、マルチ検出サブシステム内の様々なサブシステムのそれぞれに有線又は無線で通信することができる。コントローラ1000は、ハードウェア(例えば、CPU、メモリ、ケーブル、コネクタ等)と、マルチ検出システムの動作を制御するハードウェアによる実行のためのソフトウェアとの任意の組合せを含むことができる。
【0056】
図7は、一実施形態に係るマルチ検出システムを示すブロック図である。
【0057】
いくつかのイメージングモダリティは、マルチ検出システムによって可能になる。蛍光、明視野、及び位相差における広視野イメージングを、共焦点イメージングモダリティに加えて実行することができる。共焦点イメージングシステム及び広視野イメージングシステムの双方の光学要素が、図7に示される。
【0058】
マイクロプレート300は、関心対象のウェル200を対物レンズ1230の撮像光軸と一致して位置決めするマイクロプレートキャリア310上に配置されうる。対物レンズは、対物レンズタレット1232上に配置された、いくつかの様々な倍率の対物レンズの中から選択することができる。撮像照明サブシステム1600の相対位置は、図7に示されており、撮像照明サブシステム1600は、サンプルに対する明視野、カラー明視野、及び位相差イメージングのために使用することができる。多くの光学要素が、広視野システムと共焦点システムとの間で共有され、そのようなセクションのより詳細な説明が、以下で図8及び図9において提供され、図7のいくつかの要素は、明確にするために省略される。
【0059】
図8は、一実施形態に係るマルチ検出システムを示すブロック図である。
【0060】
共焦点イメージンは、図8に示されているように配備される。広視野イメージングサブシステム要素(例えば、LEDキューブ1201及びフィルタキューブ1210)は、サンプルへの光路から自動的に除去され、図7に示されているシステムは、共焦点光路の理解のために、図8に示されている共焦点光学系に変換される。
【0061】
スピニングディスク共焦点システムが、共焦点イメージングシステムの一例示の実施形態として配備される。このシステムは、スピニングディスク(図10)を光路に利用することに基づいている。ディスクは、サンプル及び検出面に対して共役な中間像面内に配置される。したがって、ディスクは、励起光路及び発光光路の双方にある。ディスクは、典型的には厚さ約2mmであり、一例示の実施形態においては、ガラス又は石英から作製される。ディスクは、ピンホール又はスリットのパターンとして残された透明な領域を除いて、不透明であるように、又は所与の透明度若しくは不透明度を有するようにコーティングされてもよい。理想的には、ディスク表面は、到来する光を反射しないように作製される。撮像されるサンプルは、ピンホールを介して透過される励起光によって照明される。サンプル上のこれらの照明されたスポットから生成される、サンプルによって発出された放射のみが、ディスクのピンホールを介して検出器に達する。ピンホール又はスリットは、多数ではあるが、光学的に独立して作用するように互いに遠く離れて配置される。隣接するピンホールからのエネルギーは、所与のピンホールによって照明されるサンプルスポットに理想的には影響を及ぼさない。ディスクスポットパターンは、典型的には、図10に示されているように、いくつかの螺旋に配置される。ディスクは、連続的に回転するように制御され、したがって、サンプルを走査することができる。ディスクが回転すると、サンプルは一度に1つのスポットを照明され、完全なサンプル像が検出器上で検出され、サンプルの完全な画像として再構成される。
【0062】
図8に戻ると、共焦点光源1540は、共焦点顕微鏡法に適した任意の光源とすることができる。例えば、共焦点光源1540は、発光ダイオード(LED)又は固体レーザ又は半導体ベースのレーザ(レーザダイオード)等の固体光源とすることができる。一例示の実施形態においては、光ファイバの出力先端は、光(放射)源とすることができる。励起スペクトルは、一般に光と称される380nm~630nmの範囲外とすることができることから、放射は一実施形態としてのものである。しかしながら、「光源」という用語は、撮像においてより一般的に使用され、光という用語は、本明細書においては放射と互換的に使用される。ファイバの入力先端は、機器の外部の光源モジュールから照明されることができ、サンプルの撮像に関するニーズに対する最良の光源整合を選択する際に柔軟性を持たせる。ファイバはまた、複数の外部光源からの入力を分岐する柔軟性を持たせる。ファイバの出力先端は、コンデンサ1522によって、スピニングディスク1504が位置する中間サンプル像面上又はその近くに結像される。ファイバからの光は、励起フィルタ1531を通して送られてもよく、次いで、ダイクロイックミラー(dichroic mirror)1533から反射され、チューブレンズ1520によってスピニングディスク1504上に合焦される。「レンズ」という用語は、当業者によって理解されるように、実施形態及び機能に応じて、ここで及び説明全体を通して、単一のレンズ又はレンズのグループを指すことができる。説明したように、ディスクはスリットの穴の螺旋パターンを有する。フィールドレンズ1519は、光損失を最小限にし、ディスクを出る光をチューブレンズ1250によって集められるように導く。チューブレンズ1250は、ミラー1220を介して励起放射を対物レンズ1230に誘導する。対物レンズ1230は、ウェルの底部付近のサンプル上の小さなスポットを照明する。サンプル成分は、励起波長に対応する色素で染色される。これらの構成要素は、到来する放射によって励起され、典型的にはより長い波長を有する放射を発出する。この放射光は、次のようにして検出器へ誘導される。
【0063】
サンプルによって発出された光は、対物レンズ1230によってコリメートされ、ミラー1220によって反射され、チューブレンズ1250及びフィールドレンズ1519によってスピニングディスク1504上に集められる。放射光におけるサンプルの中間像は、スピニングディスク1504の表面に形成される。チューブレンズ1520及びレンズ1521は、その画像を反転させ、検出器1560においてサンプル像を形成する。検出器1560は、典型的には、電荷結合素子(CCD:charged couple device)カメラ又は相補型金属酸化膜半導体(CMOS:complimentary metal-oxide semiconductor)カメラ等の画素化デジタルカメラである。サンプル像は、カメラによって捕捉され、マルチ検出システム又は外部コンピューティングシステムのメモリ内に記憶することができ、様々な特性に関して強化及び分析され、及び/又は視覚ディスプレイ上でユーザに提示され(つまり、強化及び分析、又は提示、あるいはそれらの全てをされ)うる。
【0064】
共焦点キューブ1530(例えば、共焦点励起/ダイクロイックミラー/発光キューブ)がチューブレンズ1520とレンズ1521との間に示されており、これは蛍光顕微鏡法のための配置である。フィルタ及びダイクロイックは、ガラス上の薄膜コーティングとすることができる。励起フィルタ1531は、励起のための帯域通過を形成し、発光フィルタ1532は、発光のための帯域通過を形成し、ダイクロイックミラー1533は、利用可能なエネルギーを完全に使用し、励起光がディスク表面を含むサンプルに向かって進行し、検出器に到達するにつれて、複数の光学面から反射される励起光の規模を抑制するように、励起及び発光を分離する。レンズ1521(例えば、発光フィルタ)は、励起光抑制の大部分を提供するが、ダイクロイックミラー1533もまた、抑制の役割を果たす。記載されたキューブの代替的な配置は、励起フィルタ、発光フィルタ及びダイクロイックを担持するいくつかのフィルタホイールとすることができる。例示された実施形態においては、キューブは、記載された要素を配置する方法であり、これは、撮像に関するニーズが変化するときに、ユーザによる非常に容易な交換を可能にする。いくつかのフィルタキューブ(例えば、共焦点キューブ1530)は、電動スライダ上に配置することができ、ユーザによって実行されるソフトウェアでのセットアップによって、又はバーコード若しくは他の何らかの自動的に利用可能な方法を介して自動的に読み取られるコードで電子的若しくは光学的にラベル付けすることによって、識別することができる。
【0065】
スピニングディスクの表面は、サンプルと共に検出器上に結像される。したがって、ディスク表面に付着する何らかの塵粒子は、画像内のアーチファクト、例えば、ディスク回転による明光の筋として現れる場合がある。小さな粒子は、遠心力に抗する十分な力でディスク表面に容易に付着しうる。スピニングディスク1504及びディスク駆動モータ1509は、ディスクモジュール1553の一部である。モジュール内のディスクは、典型的には、クリーンルームのような清浄な環境で組み立てられ、ディスク上に塵粒子が堆積するのを防止するために周囲環境から封止される。モジュール内の窓1551及び1550は、光を通過させるが、塵を通さない。理想的には、これらの塵保護窓は、中間像面から可能な限り遠くに配置されるべきであり、それにより、窓ガラス上に堆積する可能性がある塵が画像にアーチファクトをもたらさない。ディスクは、ディスクモジュール1502及び1553内に完全に収容される。したがって、ユーザは、ディスクに塵の粒子を導入することを避けるためにモジュールを開くべきではない。
【0066】
図8は、マルチ検出器に設置された2つのディスクモジュール1553及び1502を示す。ディスクは、1つのディスク又は別のディスクを光路内に位置決めするように移動させることができる。代替的に、双方のディスクを光路の外に移動させ、空間1501を光軸に沿って配置してもよい。これは、蛍光イメージング、明視野イメージング、又は位相差イメージング等の広視野イメージングモダリティが実行されることを可能にする。
【0067】
同じ機器においてユーザのために共焦点及び広視野のイメージングオプションの双方を可能にすることの大きな利点は、例えば、広視野画像及び共焦点イメージングモダリティにおける同じ画像等、様々なイメージングモダリティにおける画像を重ね合わせる能力である。代替的に、明視野画像を利用して、関心領域を位置特定し、その後、関心領域を共焦点的に撮像してもよい。この構成により画像を適切に得るためには、双方のモダリティの倍率が正確に一致しなければならず、そうでなければ画像は適切に重なり合わない。チューブレンズ1520及び1250の間のセクションの光は平行ではない。共焦点モダリティにおいては、このセクションにおける光路にいくつかの平坦な窓、すなわち、共焦点ディスク及び塵保護窓が存在する。広視野モダリティにおいては、これらの窓は不要である。しかし、平行でない光路における光路長を一致させるために、共焦点ディスク間の空間1501にガラス1505が追加され、それを通して広視野イメージングが行われる。これは、画像モダリティが変化するとき、サンプルが固定された対物レンズ位置に対して焦点が合ったままであることを確実にする。これは、共焦点及び広視野イメージングモードにおける倍率が一致することを確実にする。ガラス1505の厚さは、共焦点イメージングで使用されるディスクの平坦な窓(窓1551、スピニングディスク1504、及び窓1550)の合計と一致すべきである。ガラス1505は、中間像面から可能な限り遠くに配置されるべきであり、それにより、ガラス上に堆積する可能性がある塵が像にアーチファクトをもたらさない。
【0068】
共焦点ディスク上のピンホールサイズは、理想的には、結像対物レンズ1230のパラメータに基づいて選択される。一実施形態においては、サンプル上に形成されるディスクピンホールの像のサイズは、対物レンズのエアリー回折パターン(Airy diffraction pattern)の最初の2つの最小値の間の距離に一致させることができる。Zeissの"Introduction to Spinning disk microscopy"に示されているディスクピンホールサイズの式は、以下のとおりである。
【0069】
ディスクピンホール直径=1.2×対物レンズの倍率×放射波長/対物レンズの開口数
【0070】
対物レンズの開口数(NA)及び倍率の双方は、式の一部である。ピンホールが小さすぎると、光の損失が大きくなりすぎ、画像を撮影する時間が長くなる。ピンホールが大きすぎると、共焦点効果が低減されるか、又は完全に失われる可能性がある。ほとんどの市販のスピニングディスク顕微鏡は、50μm~70μmの範囲のピンホールを有する交換不可能なスピニングディスクを特徴とする。これは、共焦点顕微鏡法で典型的に配備される高倍率対物レンズの範囲との妥協点として合理的に良好に機能する。しかし、適切なピンホールを有するディスクを、使用される対物レンズに適合させることができることが好ましい。
【0071】
いくつかのスピニングディスクの実施例においては、丸穴の螺旋パターンを有しないが、代わりに、スリットの開口を採用する。スリット開口は、サンプルの比較的より明るい照明及びより強い放射信号を提供することができ、一方、ピンホールの開口は、比較的より良好な軸方向分解能を提供することができる。したがって、生物学的蛍光の用途を含むいくつかの撮像用途においては、画像取得時間を短縮できるようにするためにはスリットが好ましい場合があり、これは、固定された対物レンズであってもディスクを変更する別の理由である。
【0072】
ディスクの中からの選択がユーザによって、又はマルチ検出システムによって自動的に実行されうるように、複数のディスクが撮像機器内に配備されうる。
【0073】
図8は、マルチ検出器において使用される2つのディスクモジュール1502、1553の例を示す。全てのディスクモジュールは、ユーザによって交換されるように構成することができる。モジュールは、マルチ検出システムによる自動構成を可能にするために、ユーザによって制御されるソフトウェアにおけるセットアップによって識別することができるか、又はバーコード若しくは何らかの他の利用可能な方法を介して自動的に読み取られるコードで電子的若しくは光学的にラベル付けすることができる。
【0074】
モジュール式ディスクモジュールからの1つの追加の利点は、ディスクモジュールが機器から取り外され、双方の窓が容易にアクセス可能であるときに、ユーザが窓1551及び1550を掃除することができることであり、これは、防塵を提供することができる。
【0075】
モジュール識別は、自動化されたソフトウェアセットアップを可能にし、光路内のモジュール軸方向位置を自動的にリセット及び較正することを可能にする。スピニングディスク共焦点撮像装置においては、ディスク表面の面、検出器感知素子の面、及びサンプルの面は、互いに共役であるべきである。これは、サンプルからの放射光線に従う場合、サンプル面の像がディスク面と一致し、ディスク面及びサンプル面の画像が検出器面と一致することを意味する。検出器1560の感知チップ面は、カメラの設計により固定される。対物レンズ1230は、合焦軸に沿って移動して、検出器上のサンプル像を鮮明にすることができる。この場合、ディスクは、理想的には、3つの面の全てが共役となるように、検出器及び中間サンプル像面の双方と共役な中間面に配置されるべきである。提案される実施形態においては、ディスク軸方向位置は、ディスクモジュール設計によって理想的な共役位置の非常に近くに保持されるが、ディスク表面の最終位置は、検出器上のディスクパターンを観察し、このパターンを検出器上に鮮明に合焦させることによって自動的に調整することができる。複数の像ベースの合焦方法が利用可能であり、当該産業においては既知である。最良のディスク表面位置が見出されると、この位置はソフトウェア及びメモリに記憶され、ディスクモジュールに関連付けることができる。ディスクモジュールが取り外され、再び設置された場合、正しいディスク位置をソフトウェアによって自動的に復元することができる。新しいディスクモジュールが導入された場合、システムは、代替的にディスクフォーカスルーチンを行い、新しいディスクモジュールに対する最良の軸方向位置を選択する。したがって、ユーザは、どのディスクモジュールが機器内に配備されているか、及びその様々な位置決めを追跡することから解放されうる。
【0076】
代替的に、少数のディスクモジュールのみを利用することが想定される場合には、ユーザは、マルチ検出システムに含まれるソフトウェアのユーザインタフェースの較正セクション内のセットアップ画面を介してディスクモジュールをセットアップすることができる。
【0077】
ユーザが交換可能なディスクモジュール及び自動化された軸方向のディスク位置決めの2つの概念は、連携して最良に機能するが、別々に実装されてもよい。自動化された軸方向のディスク位置決めが利用できない場合、ディスクモジュールは、ディスク位置、及び機器内の適切な配置を確実にするモジュール上のいくつかのデータに対して交換可能であるように構成することができる。ユーザが開く必要がなく、したがって環境にさらされることがない、容易に交換可能なディスクモジュールの概念は、配備された撮像対物レンズ及びサンプルに最も適した複数のディスクの柔軟性を望むユーザに依然として適用され、利益をもたらす。
【0078】
ディスクモジュールが機器内で1つ又は2つに限定される場合であっても、自動軸方向調整を使用して、検出器1560(例えば、カメラ)内の検出器の像センサの感知面の位置を厳密に制御する必要性を軽減することができる。カメラ選択におけるユーザの最大の柔軟性を持たせ、マルチ検出システム内のカメラのアップグレードも可能にする場合。カメラ交換後にセンサ表面が移動した場合には、ディスク表面は、像ベースのオートフォーカスルーチンを介してセンサ表面と共役になるように自動的に再配置されうる。
【0079】
図9は、一実施形態に係るマルチ検出システムを示すブロック図である。
【0080】
図9には、一例示の実施形態において配備される広視野イメージングが示されている。上述のように、光学セクション(15xxと標示された要素を有する)は、共焦点イメージング(光路内にスピニングディスク1504又は1503を有する)及び広視野イメージング(ディスク間の空間1501を介する)の双方を可能にする。しかし、研究者が単一の多用途機器に配備することを望む場合がある広視野モダリティに対して、この光学部品並びに共焦点光源1540及び共焦点キューブ1530を使用することは欠点が存在しうる。共焦点イメージングの場合には、励起放射は、ディスク表面の前に位置決めされる複数の光学要素(例えば、ダイクロイックミラー1533、チューブレンズ1520、窓1551)を介して、ディスク上に向けられるべきである。ディスクの後、励起放射は、より多くの光学要素(例えば、窓1550、フィールドレンズ1519、チューブレンズ1250、ミラー1220、対物レンズ1230)を介してサンプルに誘導される。共焦点イメージングの場合、この方式は選択肢にない。しかし、対峙する全ての表面上で、励起光の一部が反射して戻る。次いで、良好な設計は、反射光が可能な限り検出器から維持されることを確実にするための慎重な光線追跡と、望ましくない反射光を抑制するための発光フィルタ1532とに依拠する。チューブレンズ1520及び窓1551のようなディスク表面の前の光学素子、並びにスピニングディスク1504の表面は、部分的に反射される非常に強いレベルの励起放射にさらされる。また、塵粒子が励起されて蛍光を発することもある。設計者の最善の意図にも関わらず、光の一部は検出器に到達し、信号対雑音比を低下させる。したがって、画像上で非常に暗く見えるべきである非蛍光サンプルは、非常に暗く見えない場合がある。これは、反射光に起因する顕著な背景信号、すなわち、画像全体にわたって均一になる傾向がある効果に起因しうる。図8において上述した共焦点セクション励起要素を使用する広視野顕微鏡法では、画質及びシステム能力において著しい妥協を伴うことになる。
【0081】
一例示の実施形態においては、代替的なサブシステムが、広視野蛍光イメージングに使用することができる同一機器内に設けられる。共焦点サブシステムの共焦点キューブ1530は、邪魔にならないように配置され、スピニングディスクモジュールは、広視野イメージングのために空間1501に位置決めされる。これにより、図7の構成が図9の構成に変換される。専用の広視野セクション要素は、LEDキューブ1201、及び広視野励起/発光/ダイクロイックイメージングフィルタキューブ1210である。励起フィルタ1211、ダイクロイックミラー1212、及び発光フィルタ1213は、典型的には、最良の信号対雑音性能のためにLEDキューブ1201と整合されるであろう、フィルタキューブ内に搭載される。調査される特定の化学に対応する、これらのキューブ対のいくつかは、スライダ上に設けることができる。
【0082】
この設計にはいくつかの利点がある。
【0083】
第1に、LED励起光学部品はサンプルに非常に近く、したがって、励起光は、サンプルへの途中で対峙する光学面がより少ない。したがって、検出器に到達することができるこれらの表面からの反射は、大幅に低減され、画像の信号対雑音比が改善される。
【0084】
第2に、市場で入手可能なLEDキューブ1201に使用される多様なLEDは、共焦点光学管内で使用されるほど十分に強力ではない場合があるが、図9に示すようにサンプルのより近くに配置された場合に十分な励起を送達することができる。
【0085】
第3に、サンプルがUV範囲で励起されなければならない場合に特に重要なことは、いくつかの対物レンズがUV対物レンズとして評価され、UV光を透過し、UVによって励起されたときに非常に低い蛍光を示すことである。しかし、一般に、チューブレンズ等の光学管の残りの部分のために市販されている光学要素は、UV光によって照明されたときに蛍光がないことが保証されない。一般的なDAPI核染色剤で染色されたサンプルの広視野画像が必要とされる場合には、共焦点光学管における一般的な手法は、約400nmの波長を使用し、これにより、サンプルに加えて光学要素を強く励起することを回避することである。しかし、DAPI染色の励起に理想的な波長である360nmから400nmに向かって励起を移動させると、放射光が大幅に減少する。研究者は、サンプル中により高い濃度の色素を配置するか、又は検出器のゲインを上昇させ、したがって、撮像の信号対雑音比を減少させる必要がある。理想的には、DAPI染色サンプルの励起は、360nmで行われるが、UV励起光は、蛍光を発しうる光学要素を通過しない。LEDキューブ1201及びフィルタキューブ1210は、一例示の実施形態においてまさにそのような最適なオプションを可能にする。UV励起は、蛍光を発しないように選択することができる対物レンズ1230のみに入る。放射光は、共焦点及び広視野管に共通の複数の光学要素を介して検出器に戻るが、放射光は可視スペクトル範囲内にあるため、光が対峙する光学要素は、典型的には、UV光において蛍光を発するレベルでは蛍光を発しない。
【0086】
図9は、非蛍光モダリティにおける広視野イメージングのための撮像照明サブシステム1600の相対位置を示す。これは、明視野、一度に1つずつ切替え可能な三色LEDを有するカラー明視野、又は位相差対物レンズに一致するリング開口を有する位相差照明システムとすることができる。
【0087】
図11は、一実施形態に係る共焦点ディスク撮像モジュールを示す図である。
【0088】
ディスク駆動モータ1509は、一例示の実施形態におけるDCブラシレスモータであり、一定速度で数千RPMの高回転速度が可能であり、ハウジングベース1800に取り付けられている。スピニングディスク1504は、ハブ部分1820及び1830によってモータシャフト上に固定される。カバー1810は、ハウジングベース1800に取り付けられ、ディスクのための無塵環境を完成する。ディスクへのユーザアクセスはない。光学窓1550及び1551は、モジュールの内部を無塵に保ちながら、光が通過することを可能にする。撮像の観点からは、窓上の塵粒子が画像に影響を及ぼすことを回避するために、全体的な空間制約内で、双方の窓をディスク面から可能な限り遠くに離しておくことが有利である。ディスクモジュールは、バーコードラベル、単純なバイナリコードラベル、又は他の何らかの機器可読手段を介して識別することができ、したがって、マルチ検出システムは、どのディスクモジュールが存在し、いつでも利用可能であるかを自動的に識別することができる。
【0089】
図10を参照すると、ディスク速度と共焦点画像露光時間とを密接に相関させる必要が存在する。図10に示すように、ディスク上には複数の螺旋が設けられており、ディスクが回転すると、サンプルはピンホールパターンによって掃引される。サンプルを一度に連続的でありながら完全に照明するのに必要なディスク回転の最小角度が存在する。多くの市販のディスク及び一例示の実施形態のディスクにおいては、この角度は30度である。露光時間がディスクを30度移動させる時間の倍数でない場合、ストライプのような何らかのアーチファクトが画像内に現れる。これは、当該産業においては既知の問題である。一例示の実施形態においては、ディスク回転の速度は2400rpmに設定され、露光時間は1回転の倍数(例えば、25ミリ秒、50ミリ秒、75ミリ秒等)に設定される。この手法は、画質と画像を撮影する最小時間との間の良好な妥協点をもたらすことが分かった。また、全回転時間露光増分を使用するこの手法は、ディスク螺旋パターンとディスク回転軸との間の潜在的な非同心性によって引き起こされる画像アーチファクトを最小限に抑える結果となった。
【0090】
図12は、一実施形態に係るディスク交換機構及びディスク合焦機構(disc focus mechanism)を示す図である。
【0091】
図12を参照すると、ディスク交換機構及びディスク合焦機構は、一例示の実施形態において実装することができる。しかしながら、ディスク交換機構及びディスク合焦機構の構成はこれに限定されるものではない。
【0092】
ベース1701は、機構の全ての要素を支持する。IKO又はHTKガイドシステムの一部のようなリニアウェイレール(linear way rail)1705が、ベース1701に取り付けられる。リニアウェイのキャリッジ1706は、ブラケット1710を支持する。ブラケット1710は、モータ1715によってタイミングベルト1717を介して光軸と直交する方向に並進される。この動きは、ディスクモジュール1502又はディスクモジュール1553又は空間1501のいずれかが、撮像光軸と整列して位置決めされることを可能にする。他の機械的な実施態様も可能であり、タイミングベルトの主な利点は、この特定の方法で達成可能な変化の速度である。軸ホーミングセンサ(axis homing sensor)及び/又は可能なエンコード(つまり、軸ホーミングセンサ又は可能なエンコードあるいはそれらの両方)は、明確には図示されていない。
【0093】
ブラケット1710は、リニアウェイレール1720及びモータ1725を保持する。一例示の実施形態においては、モータシャフトは、送りねじとして成形される。モータは、リードナット1727を介して、リニアウェイキャリッジ1721に取り付けられた支持体1730を光軸の方向に並進させ、共焦点ディスクの軸方向焦点を提供する。軸ホーミングセンサ及び/又は可能なエンコードは、明確には図示されていない。
【0094】
ディスクモジュールは、支持体1730に直接取り付けられ、ユーザによってアクセスすることができる。取付けは、容易な取外しのために締結具又は磁石を介することができる。代替的に、ディスクモジュールは、ガイド1732に取り付けられ、次いで、ユーザによる機器からの容易な取外しのために、支持体1730に滑り嵌め(slip fit)され、そして固定することができる。
【0095】
当業者には理解されるように、ディスクモジュールアクセス、位置決め、及びディスク合焦の機能を達成するために、他の機構を配備することができる。
【0096】
図13は、一実施形態に係る、非撮像分析サブシステムの図である。
【0097】
図13を参照すると、マルチ検出システムの非撮像分析サブシステム1300が提供される。
【0098】
非撮像分析サブシステム1300の分析モダリティは、吸光度、上部及び下部からの蛍光、及び化学ルミネセンスでありうる。Xeフラッシュバルブ13001は、200nm~1000nmの範囲の放射を放射する。蛍光励起/吸光度デュアルモノクロメータの2つのステージ13002及び13003は、放射の狭い帯域通過を選択する。放射は、ファイバ13030を介して吸光度チャネルに、13005を介して上部蛍光に、又は13033を介して底部蛍光に、光ファイバケーブルによってサンプルに向かって誘導される。一度に1本のファイバのみが作用することから、様々な分析モード間で光のクロストークはない。吸光度は、レンズ13040及び13050を介してシリコン検出器13060によって測定される。
【0099】
上部蛍光励起及び発光のピックアップは、様々なマイクロプレート及び流体レベルに適応するように上下に移動することができるレンズ13020を介して実行される。底部蛍光は、レンズ13055を用いて同様の方法で行われる。上部及び底部発光の双方は、光ファイバケーブルによって、発光デュアルモノクロメータ13010及び13011の第1の段階に、次いで、光電子増倍管13012に誘導される。化学ルミネセンスファイバ13021は、光電子増倍管に直接接続され、モノクロメータをバイパスすることによって非常に弱い光の測定を提供することができる。
【0100】
流体注入サブシステム1100は、流体ライン1112及び1111を介して試薬を注入し、分析サブシステムによって注入の結果を迅速に測定する能力を研究者に提供することができ、機器において実行することができる試験の範囲を更に増大させる。
【0101】
図14は、一実施形態に係る注入サブシステムを示す図である。
【0102】
図14を参照すると、任意選択の注入サブシステムが提供される。注入サブシステム1100は、図15に示されるように、マルチ検出機器の上部に配置することができ、流体ライン1112及び1111は、ハウジングの上部の隔壁アクセスを通して供給することができる。試薬は、図14に示されるように、PTFEラインとすることができる流体ライン1111及び1112を介して流体注入サブシステム1100内のポンプによってマイクロウェルに送達され、注入針1102及び1101を介してウェルの中に送達される。
【0103】
図13を参照すると、環境制御がマルチ検出システムに配備されうる。
【0104】
マイクロプレートキャリア310は、図13に示されるように、マイクロプレート300を支持し、インキュベーションチャンバ320内に位置する。これは、マイクロプレート300が、インキュベーションチャンバ320内のマイクロプレートキャリア310の全ての位置において所望の温度に維持されることを確実にする。インキュベーションチャンバ320は、小さな開口部を介して光学素子へのアクセスを依然として提供しながら、連続アルミニウムシートのような、一定温度を維持するのによく適した材料から構築することができる。インキュベーションチャンバ320は、典型的には断熱されている。このようなチャンバの設計は、当業者に既知であり、そして多くのマルチ検出機器から既知である。一般的な制御温度範囲は、室温~65度とすることができる。
【0105】
図15は、一実施形態に係るマルチ検出システムを示す図である。
【0106】
生細胞の場合、温度は典型的には37度であるが、加えて、サンプルの周囲のガスの制御が必要である。制御は、図15の器具の完全なハウジング1910を適切なガス混合物で満たすことによって達成される。この設計は、ガス制御された環境を測定チャンバ又は分離隔壁だけに閉じ込めようとすることを回避する。この設計の目的は、ハウジング1910内の雰囲気を均一にすることである。したがって、ハウジング1910の設計は、ハウジング内の間隙を回避し、ユーザアクセスドアの周囲に軟質ガスケット材料を使用することによって、可能な限り気密に作製される。
【0107】
図16は、一実施形態に係るガス制御サブシステムを示す図である。
【0108】
図16を参照すると、環境制御サブシステム2000(例えば、ガス制御サブシステム)は、機器の外部に配置することができる。環境制御サブシステム2000は、ユーザが、チャンバ内のCO2及び/又はO2(つまり、CO2又はO2あるいはそれらの両方の)濃度レベルを、通常の雰囲気とは異なるように、すなわち、より高いCO2及びより低いO2に設定することを可能にする。ガスサンプリングライン(gas sampling line)は、環境制御サブシステム2000を機器ハウジングの内部に接続する。サンプリングラインを介して機器からサンプリング又は抽出されたガスの組成に基づいて、制御システムは、例えば、流入ガスを小型ファンで分散させることによって、機器に供給されるCO2又はN2ガスの流れを調整することができる。これは、全てのガスセンサ及び弁を主要機器の外部に配置し、外部ガスコントローラ内のガス制御の複雑性及び信頼性を保つことを可能にする。
【0109】
XYキャリア移動ゾーンの周囲のインキュベーションチャンバと、ハウジングの内側、ひいてはマイクロプレートの周囲の雰囲気のガス制御との組合せは、長期生細胞実験を実行する能力をユーザに提供する。
【0110】
図15を参照すると、例示の実施形態において実装されるような機器とのユーザ対話を受ける機器及び要素全体の外観図が示されている。マイクロプレートキャリア310は、それ自体をユーザに提示し(右側に示される)、マイクロプレート300は、例えば、ユーザ又はロボットアームによって、マイクロプレートキャリア310上に配置され、次いで、マルチ検出システム内に位置決めされる。共焦点キューブ1530、広視野LEDキューブ1201、及び広視野フィルタキューブ1210、共焦点ディスクモジュール及び対物レンズ1230へのアクセスは、ドア1905を介して機器の前面を介する。したがって、ユーザがほとんどのユーザ可変要素に一度にアクセスすることが容易になる。
【0111】
或る特定の実施形態によれば、本開示の対物レンズ(例えば、対物レンズ1230又は対物レンズ2210)は、液浸対物レンズとすることができる。
【0112】
顕微鏡における光学性能を改善する方法は、液浸対物レンズを使用することである。光学顕微鏡法において、液浸対物レンズは、顕微鏡の解像度を高めるために使用される特別に設計された対物レンズである。本開示の実施形態によれば、光学系は倒立顕微鏡(inverted microscope)であり、対物レンズがサンプルの下に配置され、下からサンプルを観察することを意味する。本開示の倒立顕微鏡構成においては、流体浸漬を実行するとき、流体(例えば、水又は他の流体)の液滴が対物レンズ上に置かれ、流体の表面張力によって適所に保持される。次いで、対物レンズがサンプルにもたらされ、液滴がサンプルと対物レンズとの間に挟まれる。このようにして、サンプルへと通過してサンプルから対物レンズへと通過する光は、空気を通過しない。空気よりも流体の屈折率が高いと、開口数が増加する。これは、解像度を増加させ、信号レベルを増加させる。実施形態によれば、対物レンズがサンプルにもたらされてもよく、次いで、流体の液滴が対物レンズ上に置かれる。
【0113】
水浸対物レンズに加えて、本開示の対物レンズは、開口数を増加させるための他のタイプの流体を備えることができる。流体のいくつかの例は、例えば、油及びグリセロール(glycerol)を含む。本開示の実施形態においては、流体は、水、油、グリセロール、又は屈折率を増加させるであろう何らかの他のタイプの流体とすることができる。
【0114】
図19A及び図19Bを参照して、本開示の実施形態に係る液浸対物レンズを以下に説明する。実施形態によれば、対物レンズ1330は、対物レンズ1330の上に嵌合するスリーブ1332を備えることができる。スリーブ1332は、スリーブ1332の内外に流体経路を提供するように構成されていてもよい。加えて、スリーブ1332は、流体液滴33を適所に保持するのに役立つ。実施形態によれば、スリーブ1332は、流体を内部に圧送するためのポートと、流体を外部に圧送するためのポートとを有する。実施形態によると、図19A及び図19Bに示されているように、入口及び出口ポートは、同一ポート31であってもよい。図19Bを参照すると、余分な液滴34は、ポート31を通ってスリーブ1332から出ることができる。一例示の実施形態においては、スリーブ1332は、例えば、陽極酸化アルミニウム、プラスチック、又は他の材料から形成されてもよい。
【0115】
実施形態によれば、図20を参照すると、流体ポンプシステムが提供されうる。流体ポンプシステムは、第1のポンプ1336と、第2のポンプ1337と、第1のリザーバ1338(供給源リザーバ)と、第2のリザーバ1339(廃棄物リザーバ)とを含むことができる。流体は、第1のポンプ1336によって第1のリザーバ1338から対物レンズ1330のヘッドに圧送することができる。図20に示されているように、第1のポンプ1336は、シリンジポンプ(syringe pump)であってもよい。次いで、流体は、流体を第2のリザーバ1339に圧送する第2のポンプ1337を介して対物レンズ1330から除去される。第2のポンプ1337は、廃棄物ポンプと呼ばれてもよく、また、図20に示されるように、シリンジポンプであってもよい。第1のポンプ1336及び第2のポンプ1337は、同じ又は同様の機能を達成する他のタイプのポンプであってもよい。スリーブ1332は、対物レンズ1330に嵌合され、流体を対物レンズ1330の上部に誘導し、流体液滴を適所に保持することを助けることができる。スリーブ1332はまた、流体がスリーブ1332から除去されるように構成されうる、廃棄物ポート(waste port)を有してもよい。対物レンズ1330は、流体(例えば、水)浸漬用途に最適化された特別に設計された対物レンズであってもよい。図20においては、第1のリザーバ1338及び第2のリザーバ1339は、それぞれ、別個の供給源リザーバ及び廃棄物リザーバとして示されている。しかしながら、実施形態によれば、2つの別個のリザーバの代わりに、流体を再利用することができる単一のリザーバを設けることができる。さらに、ポンプは多目的であってもよい。例えば、BioTek C 10製品は、試薬をサンプル中に分注するために使用することができる流体分注モジュールを有する。この同じ分注モジュールは、コストを削減するために、追加の目的(第1のポンプ1336及び/又は第2のポンプ1337(つまり、第1のポンプ1336又は第2のポンプ1337あるいはそれらの両方)の目的を含む)を有するように構成することができる。
【0116】
図20を更に参照すると、対物レンズ1330は、対物レンズ連結部1334によって対物レンズタレット1232に取り付けられてもよい。対物レンズ連結部1334の説明は、図21を参照して以下に提供される。
【0117】
図21に示されているように、対物レンズ連結部1334は、対物レンズ1330と対物レンズタレット1232とを互いに連結するように構成された運動学的接続部(kinematic connection)1334A及び磁石1334Bを含むことができる。例えば、対物レンズ1330は、運動学的接続部1334Aの第1の部分として、凸部又は凹部のうちの一方を少なくとも1つ備えることができ、対物レンズタレット1232は、第1の部分に対応する運動学的接続部1334Aの第2の部分として、凸部及び凹部のうちの他方を少なくとも1つ備えることができる。磁石1334Bは、対物レンズ1330及び対物レンズタレット1232のうちの1つ以上を備えることができる。実施形態によれば、対物レンズ1330及び対物レンズタレット1232の双方は、互いに対応し、磁力を介して互いに接続するように構成された磁石1334Bを備えることができる。他の実施形態においては、対物レンズ1330及び対物レンズタレット1232のうちの一方のみに磁石1334Bを設けることができ、この磁石は、対物レンズ1330及び対物レンズタレット1232のうちの他方に設けられた磁性材料(例えば、金属)に接続するように構成することができる。
【0118】
比較実施形態によれば、対物レンズは、対物レンズタレットにねじ込まれてもよい。しかしながら、対物レンズとともにスリーブ及び管類を使用することは、少なくともいくつかの実施形態においては、対物レンズタレットの中への対物レンズのねじ込みを困難にしうる。本開示の実施形態に係る、運動学的接続部1334A及び磁石1334Bを含む対物レンズ連結部1334の使用は、スリーブ及び管類を伴う対物レンズが容易に設置されることを可能にする。
【0119】
実施形態によれば、図22A図25Cを参照すると、対物レンズ1330及びスリーブ1332は、様々な構成を有することができる。実施形態によれば、スリーブ1332はキャップ(cap)と呼ばれることもある。
【0120】
図21は、一実施形態に係る対物レンズ連結部を示す図である。図22Aは、第1の実施形態に係る液浸対物レンズを示す斜視図である。図22Bは、第1の実施形態に係る液浸対物レンズを示す上面図である。図22Cは、液体バルブが設けられた状態の第1の実施形態に係る液浸対物レンズを示す、図22Bの線A-Aに沿った断面図である。図22Dは、上にマイクロプレートが設けられた、第1の実施形態に係る液浸対物レンズを示す、図22Bの線A-Aに沿った第2の断面図である。図23Aは、第2の実施形態に係る液浸対物レンズを示す上面図である。図23Bは、液体バルブが設けられた状態の第2の実施形態に係る液浸対物レンズを示す、図23Aの線B-Bに沿った第1の断面図である。図23Cは、上にマイクロプレートが設けられた、第2の実施形態に係る液浸対物レンズを示す、図23Aの線B-Bに沿った第2の断面図である。図24Aは、第3の実施形態に係る液浸対物レンズを示す上面図である。図24Bは、液体バルブが設けられた状態の第3の実施形態に係る液浸対物レンズを示す、図24Aの線C-Cに沿った第1の断面図である。図24Cは、上にマイクロプレートが設けられた、第3の実施形態に係る液浸対物レンズを示す、図24Aの線C-Cに沿った第2の断面図である。図25Aは、第4の実施形態に係る液浸対物レンズを示す上面図である。図25Bは、液体バルブが設けられた状態の第4の実施形態に係る液浸対物レンズを示す、図25Aの線D-Dに沿った第1の断面図である。図25Cは、上にマイクロプレートが設けられた、第4の実施形態に係る液浸対物レンズを示す、図25Aの線D-Dに沿った第2の断面図である。
【0121】
図22A図25Cの以下の説明においては、同じ又は同様の特徴部には同じ又は同様の参照符号が与えられる。明確にするために、同じ又は同様の特徴部の冗長な説明は省略することができる。
【0122】
図22A図22Dを参照すると、スリーブ1332Aの上面10Aは、対物レンズ1330Aのレンズの上面11Aと同一平面とすることができ、スリーブ1332Aは、対物レンズ1330Aにクランプするように構成することができる。
【0123】
スリーブ1332Aは、例えば、上側部分50A、中間部分60A、及び下側部分70Aを含むことができる。実施形態によれば、上側部分50A、中間部分60A、及び下側部分70Aは、単一の本体又は複数の本体を構成するように、互いに別個に又は一体的に設けられてもよい。実施形態によれば、上側部分50A、中間部分60A、及び下側部分70Aのうちの2つは、単一の本体を構成するように一体的に設けられてもよく、上側部分50A、中間部分60A、及び下側部分70Aのうちの他の1つは、他の2つに取り付けられるように構成された別個の本体として別個に設けられてもよい。実施形態によれば、上側部分50A、中間部分60A、及び/又は下側部分70A(つまり、上側部分50A、中間部分60A、又は下側部分70A、あるいはそれらの全て)は、別個の本体に更に分割することができる、及び/又は追加の本体を設ける(つまり、さらに分割、又は追加の本体を設ける、あるいはそれらの両方をする)ことができる。実施形態によれば、任意の数の上側部分50A、中間部分60A、及び下側部分70Aをアルミニウムで形成することができる。
【0124】
実施形態によれば、任意の数の上側部分50A、中間部分60A、及び下側部分70Aが、対物レンズ1330Aの中心軸の周りで実質的に回転対称を示すように形成されてもよい。中心軸は、例えば、対物レンズ1330Aの光軸であってもよい。
【0125】
中間部分60Aは、下側部分70Aの上方に設けられてもよい。中間部分60Aは、入口ポート62及び出口ポート63を含むことができる。流体は、流体ポンプシステム(例えば、図20参照)によって、入口ポート62を介してスリーブ1332A内へ圧送され、出口ポート63を介してスリーブ1332Aから圧送されてもよい。入口ポート62と出口ポート63とは、スリーブ1332Aを挟んで互いに離れて設けられていてもよい。しかし、入口ポート62及び出口ポート63の位置は、このような構成に限定されるものではなく、様々に変形させることができる。実施形態によれば、入口ポート62及び出口ポート63は、単一のポートによって構成されてもよい。
【0126】
中間部分60Aは、対物レンズ1330Aの輪郭に沿うテーパ部分64Aを更に含むことができる。例えば、テーパ部分64Aは、中間部分60Aの外側部分から上向きかつ半径方向内向きに延在してもよい。テーパ部分64Aは、対物レンズ1330Aの中心軸の周りに回転対称を実質的に示すように形成されてもよい。実施形態によれば、テーパ部分64Aは、その形状が対物レンズ1330Aの輪郭に沿う限り、テーパ以外の形状を有することができる。テーパ部分64Aの形状(例えば、対物レンズ1330Aの輪郭に沿った逆V字形状)により、液浸のために対物レンズ1330A上で液滴90を所望の形状にすることができる。実施形態によれば、テーパ部分64Aは、代替的に、「突出部」と称することができる。
【0127】
実施形態によれば、入口ポート62は、液滴90用の液体を対物レンズ1330Aとテーパ部分64Aとの間の空間に供給するように構成されるように、テーパ部分64Aを通ってテーパ部分64Aの内側まで延在する通路を含むことができる。
【0128】
上側部分50Aは、本体を含むことができる。例えば、本体は、中間部分60Aから上方に延在する側壁52Aと、側壁52Aから半径方向内方に延在する上壁53Aとを含むことができる。側壁52A及び上壁53Aは、互いから実質的に90度で延在することができる。しかし、角度はこれに限定されるものではなく、実施形態に応じて様々に変更することができる。側壁52A及び上壁53Aを含む本体は、対物レンズ1330Aの中心軸の周りに実質的に回転対称を示すように形成されてもよい。
【0129】
上側部分50Aと中間部分60Aとによって、それらの間に溝84が形成されてもよい。例えば、溝84は、上壁52の内面、側壁53の内面、及びテーパ部分64Aの外面によって画定されてもよい。実施形態によれば、溝84は、対物レンズ1330Aの中心軸の周りに実質的に回転対称を示すように形成されてもよい。溝84は、余剰量の液体を受けて収容するように構成されてもよい。実施形態によれば、溝84は、溝84内の余剰量の液体が、溝84と連通する出口ポート63の通路を介してスリーブ1332Aから出るように、出口ポート63と連通することができる。
【0130】
図22C及び図22Dを参照すると、上壁53Aの少なくとも上面は、対物レンズ1330Aのレンズの上面11Aと同一平面にあるスリーブ1332Aの上面10Aを構成することができる。実施形態によれば、テーパ部分64の上面も、対物レンズ1330Aのレンズの上面11Aと同一平面にあってもよい。
【0131】
実施形態によれば、1つ以上のOリング32がスリーブ1332Aと対物レンズ1330Aとの間に設けられてもよい。例えば、Oリング32を中間部分60Aと対物レンズ1330Aとの間に設けてもよい。Oリング32は、対物レンズ1330Aとテーパ部分64Aとの間に液体が受け入れられる空間の底部側を封止するように構成することができる。
【0132】
図22Dを参照すると、少なくとも1つのウェル82内にサンプルを保持するマイクロプレート80が、スリーブ1332A及び対物レンズ1330Aの真上に設けられてもよい。対物レンズにおけるレンズ上の液滴90は、ウェル82の真下の位置でマイクロプレート80の底面と接触することができる。マイクロプレート80は、例えば、本開示で説明されるマイクロプレート300、又は他のマイクロプレートに対応しうる。
【0133】
図23A図23Cを参照すると、スリーブ1332Bの上面10Bは、対物レンズ1330Bのレンズの上面11Bの上方にあってもよく、スリーブ1332Bは、対物レンズ1330Bにクランプする(clamp:固定する)ように構成されてもよい。
【0134】
スリーブ1332Bは、例えば、上側部分50B、中間部分60B、及び下側部分70Bを含むことができる。
【0135】
中間部分60Bは、テーパ部分64Bを含むことができ、上側部分50Bは、側壁52B及び上壁53Bを含む本体を含むことができる。上壁53Bの少なくとも上面は、対物レンズ1330Bのレンズの上面11Bの上方にあるスリーブ1332Bの上面10Bを構成することができる。実施形態によれば、テーパ部分64Bの上面も、対物レンズ1330Bのレンズの上面11Bの上方にあり、上壁53Bの上面と同一平面にあってもよい。
【0136】
図24A図24Cを参照すると、スリーブ1332Cの上面10Cは、対物レンズ1330Cのレンズの上面11Cの下にあってもよく、スリーブ1332Cは、対物レンズ1330Cにクランプするように構成されてもよい。
【0137】
スリーブ1332Cは、例えば、上側部分50C、中間部分60C、及び下側部分70Cを含むことができる。
【0138】
中間部分60Cは、テーパ部分64Cを含むことができ、上側部分50Cは、側壁52C及び上壁53Cを含む本体を含むことができる。上壁53Cの少なくとも上面は、対物レンズ1330Cのレンズの上面11Cの下にあるスリーブ1332Cの上面10Cを構成することができる。実施形態によれば、テーパ部分64Cの上面も、対物レンズ1330Cのレンズの上面11Cの下にあってもよく、上壁53Cの上面と同一平面にあってもよい。
【0139】
図25A図25Cを参照すると、スリーブ1332Dの上面10Dは、対物レンズ1330Dのレンズの上面11Dと同一平面にあってもよく、スリーブ1332Dは、対物レンズ1330Dに螺合するように構成されてもよい。
【0140】
一実施形態によれば、スリーブ1332Dの内面及び対物レンズ1330Dの外面は、スリーブ1332D及び対物レンズ1330Dの少なくとも一方の回転運動によってスリーブ1332D及び対物レンズ1330Dを互いに着脱できるように、互いに対応して係合するねじ山を含むことができる。
【0141】
スリーブ1332Dは、例えば、第1の部分60D及び第2の部分50Dを含むことができる。
【0142】
第1の部分60Dは、テーパ部分64Dを含むことができ、第2の部分50Dは、側壁52C及び上壁53Cを含む本体を含むことができる。上壁53Dの少なくとも上面は、対物レンズ1330Dのレンズの上面11Dと同一平面にあるスリーブ1332Dの上面10Dを構成してもよい。実施形態によれば、テーパ部分64Dの上面も、対物レンズ1330Dのレンズの上面11Dと同一平面にあってもよい。
【0143】
実施形態によれば、第1の部分60Dの内面は、ねじ山を含むことができる。
【0144】
実施形態によれば、スリーブ1332Dの上面10Dは、対物レンズ1330Dのレンズの上面11Dの上方又は下方にあってもよい。例えば、上壁53Dの上面は、対物レンズ1330Dのレンズの上面11Dの上方又は下方にあってもよく、テーパ部分64Dの上面は、上壁53Dの上面と同一平面にあってもよい。
【0145】
本開示の実施形態によれば、共焦点顕微鏡法の様々な実施形態が代替的又は追加的に提供されうる。例えば、レーザ点走査共焦点システムが提供されてもよい。レーザ点走査共焦点顕微鏡法は、小さい開口(ピンホール(pinhole))を通してレーザ光の単一の点を合焦させることと、ジグザグパターンで点ごとにサンプルにわたって順次走査することとを含みうる。サンプルは蛍光を発し、光は光学系を通して送り返される。次いで、光は、光電子増倍管(PMT)とすることができる検出器によって点毎に読み取られてもよいが、他の光測定センサを使用して検出することもできる。センサからの信号は、点毎に記録されてもよく、各点は、画像内の単一ピクセルを構成してもよい。レーザ点走査システムにはスピニングディスク共焦点を超える利点及び欠点がある。レーザ点走査システムは、典型的には、スピニングディスク共焦点よりも遅く、したがって、多くの場合、ハイスループット用途又は生細胞画像に適切ではなかった。一方、レーザ点走査共焦点システムは、サンプル内により深く貫通し、軸方向及び横方向のより良い分解能を提供する。最近では、速度を増加させるためにレーザ点走査システムに改良が加えられており、したがって、依然として増加した浸透深さを提供しながら、スピニングディスク速度に匹敵し始めている。レーザ点走査共焦点システムの速度は、システムの走査ミラーを駆動するモータの走査速度によって制限される。
【0146】
実施形態によれば、本開示の共焦点サブシステムは、レーザ点走査共焦点及びスピニングディスク共焦点の双方を備えることができる。スピニングディスク共焦点システムは、生サンプル撮像及びハイスループット用途のために使用されてもよい一方、レーザ点走査共焦点システムは、増加した分解能を伴ってサンプルの中により深く貫通するために使用されてもよい。「ヒット」を提供するためにどのように広視野イメージング又は他の測定モダリティを使用することができるかと同様に、本開示の実施形態は、スピニングディスク共焦点を実施して、3Dサンプルを通して迅速に走査し、或る関心対象点を位置特定してもよい。次いで、レーザ点走査システムを使用して、関心領域のより詳細な画像を撮影することができる。レーザ点走査共焦点システム及びスピニングディスクシステムの双方が、2つの別個の機器として市販されている。しかしながら、そのような方法で2つの別個の機器を使用することにはいくつかの問題がある。1つには、スピニングディスク及びレーザ共焦点顕微鏡の双方のコストが、上記のようなワークフローを実行不可能にする。さらに、代替の顕微鏡上の関心領域に再配置するという技術的問題がある。レーザ点走査共焦点システム及びスピニングディスクシステムの双方が同じ機器に実装された状態で、「ヒット」を見つけることができ、次いで、光学系は、ステージを移動させることなく切り替わって、関心領域を走査することができる。最後に、サンプルが経時的に変化する生細胞の研究の問題もある。サンプルを異なる機器に移動させるには、生物学的変化の速度に比べて時間がかかりすぎる。サンプルを別の機器に移動させるとき、「ヒット」の関心領域は変化している可能性があり、もはや関連していない可能性がある。
【0147】
レーザ点走査共焦点及びスピニングディスク共焦点の双方を同じ機器内に有することの別の利点は、レーザ点走査共焦点システムを、撮像のためではなく、サンプルの特定の領域を光退色させる(photobleach)ためのターゲティング(targeting)するために活用することができることである。レーザ点走査共焦点システムと、その中に設けられたX-Y走査ミラーに対する特定の制御とは、レーザを用いてサンプルの非常に小さい特定の領域をターゲティングすることを可能にする。これは、1つのスポット又はジグザグ走査で画定されたブロックであってもよい。次いで、光退色が起こると、機器は、光退色後の蛍光回復(FRAP:Fluorescence Recovery after PhotoBleaching)をモニターするために、スピニングディスク共焦点に迅速に切り替えることができる。いくつかの特定の用途としては、(a)細胞内の分子拡散の分析(例えば、関心領域が光退色された後の初代樹状細胞におけるF-アクチン拡散(F-Actin diffution)の研究)、(b)生体膜の流動性(例えば、C.エレガンス(C. elegans)における膜流動性(membrane fluidity))の定量化、及び(c)タンパク質結合の分析(例えば、in vivoでのクロマチンタンパク質(chromatin protein)の動的結合のモニタリング)が挙げられる。
【0148】
本開示の実施形態に係る、スピニングディスクシステムの撮像速度と組み合わされたレーザ点走査共焦点システムのピンポイント精度は、FRAPアッセイにおける満たされていない市場ニーズを解決する。
【0149】
図22A及び図22Bを参照して、単一の機器内にレーザ点走査共焦点システム、スピニングディスク共焦点システム、及び広視野機能を含む本開示の実施形態に係る構成を以下に説明する。しかしながら、本開示の実施形態は、上記のシステム及び機能の任意の組合せを含んでもよい。
【0150】
図22Aは、機器がレーザ点走査共焦点(LSC:laser point scanning confocal)モダリティに設定された場合を示す。図22Bは、広視野又はスピニングディスク共焦点モダリティに設定された場合を示している。実施形態によれば、LSCシステムと広視野又はスピニングディスク共焦点システムとの間で切り替えるための機構が設けられてもよい。図22A及び図22Bに示されるように、ブロック2220内の要素は、移動可能であり、レーザ点走査光学とスピニングディスク/共焦点との間の切替えを可能にする。例えば、ブロック2220は、本開示で説明されるように、ディスク(したがって、モダリティ)間の選択のために移動されうる複数のディスクモジュールとすることができる。
【0151】
図22Aを参照すると、本開示の実施形態は、レーザ点走査共焦点システムを含むことができる。典型的にはレーザ源からの光は、光入力デバイス2201においてそのようなシステムに入る。光入力デバイス2201は、例えば、ファイバ結合入力又はファイバを伴わない直接結合レーザであってもよい。次いで、光は、レンズ2202を通過するときにコリメートされる。次いで、光はロングパスダイクロイック(long pass dicroic)2203に当たる。ロングパスダイクロイック2203は、入力光を反射し、高い波長の放射光の通過を可能にするように設計される。光源が複数の入力波長を有することは典型的である。
【0152】
本開示の実施形態は、入力波長に適応するようにロングパスダイクロイック2203を切り替える自動化された手段をサポートすることができる。次いで、光は走査ミラー2204で反射される。走査ミラー2204は、2軸モータ2205及び2206を用いて制御することができる。いくつかの実施形態においては、モータは双方ともガルボ型モータ(Galvo type motor)であり、他の実施形態においては、一方のモータはガルボによって駆動され、他方のモータは共振スキャナ(resonant scanner)である。共振スキャナは、ガルボモータよりもはるかに高速であるが、位置決めに対する制御性が低い。双方のタイプのモータが当業者に知られている。実施形態によれば、走査ミラー2204は、複数(例えば2つ)の別個の走査ミラーとして構成されてもよい。例えば、複数の別個の走査ミラーは、x走査用に構成された第1のミラーと、y走査用に構成された第2のミラーとを含むことができ、ここで、別個の走査ミラーのそれぞれの位置決めは、例えば、それぞれのモータによって制御することができる。
【0153】
光が走査ミラー2204から反射された後、光は、集束レンズ2207、次いでチューブレンズ2208を通過する。次いで、光は、反射ミラー2209、対物レンズ2210、及び最終的にサンプル2211へと進み、ここで、サンプル上に照明されるスポットは微小とすることができる。次いで、サンプルが蛍光性であると仮定すると、光は、レーザ点走査システムを通って後方に進み、ロングパスダイクロイック2203に進む。放射光がロングパスダイクロイック2203の通過帯域内にある場合、放射光は、集束レンズ2213へと通過し、次いでピンホール2214を通過する。ピンホール2214は、単一サイズのピンホールであってもよく、又はサイズが可変であってもよい。サイズの変化は、セレクタホイール又は可変絞り(variable iris)上に複数のピンホールを有することによって達成されうる。次いで、光は、レンズ2215を通過し、次いで、ダイクロイック2216に進む。
【0154】
図22Aに示される配置は、複数の発光波長の同時測定を可能にする二重PMT2218設定を含む。この構成は、追加の数のPMT2218になるように拡張することができる。それはまた、単一のPMT2218配置であってもよく、この場合、発光波長は、切替え機構を含むダイクロイック2216及びEMフィルタ2219のバージョンを介して選択される。切替え機構は、キューブ及びスライダ又は複数のホイールとすることができ、その双方が当業者によって理解されるであろう。
【0155】
レーザ点走査システムにおいては、光入力デバイス2201の位置は、ピンホール2214との正確な位置合わせを必要とする場合がある。これは、レーザ点走査システムの実装、設置、及び保守を困難にする。出荷又は保守の後、ピンホール2214をファイバ位置に再位置合わせするために調整を行う必要がありうることが典型的である。この問題に対する解決策は、光入力デバイス2201(例えば、光ファイバ入力)及びピンホール2214の双方が、電動軸上にあり、機器(例えば、そのコントローラ)が、対応するモータを制御することによって、光入力デバイス2201及びピンホール2214を自動的に位置合わせさせることができることである。そのような態様は、出荷後、保守後、又は更には機器内の熱変化に対して利益を提供しうる。加えて、ファイバ入力位置は、設計にいくらかのマージンがあるように、ピンホールサイズよりも小さくてもよい。自動化された位置合わせを用いて、ピンホールサイズを低減し、したがって、システムの共焦点性を増加させ、それによって、分解能及びサンプル浸透を増加させることができる。
【0156】
図17は、実施形態に係る機器のモダリティの制御を示す機能ブロック図である。
【0157】
モダリティの動作は、中央制御ユニット(例えば、プロセッサ、CPU、マイクロプロセッサ等)によって制御されうる。実施形態によれば、中央制御ユニットは、コントローラ(例えば、コントローラ1000)と称することもできる。
【0158】
中央制御ユニット900は、本開示の実施形態の要素と通信し、それらを制御するように接続することができる。例えば、中央制御ユニット900は、サンプル環境90Aの要素、サンプルの選択及び位置決め90Bの要素、モノクロメータモジュール90Cの要素、撮像装置モジュール90Dの要素、外部光源モジュール932、及び注入モジュール934と通信し、それらを制御するように接続されてもよい。
【0159】
制御下のサンプル環境90Aの要素は、上述したような温度制御902及びガス制御904を提供することができる。
【0160】
サンプル選択及び位置決め90Bは、サンプルを任意のX方向に位置決めするためのモータ906及びY方向に位置決めするためのモータ908の使用を通じて制御することができる。
【0161】
制御下のモノクロメータモジュール90Cの要素は、モノクロメータ励起910、モノクロメータ発光912、モノクロメータPMT916、光ファイバ選択918、及びフラッシュランプ914等の光源を含むことができる。
【0162】
制御下の撮像装置モジュール90Dの要素は、対物レンズセレクタ930と、カメラ920等の画像捕捉デバイスと、対物レンズ用のフォーカスドライブ924と、広視野イメージング用のLED及びフィルタキューブセレクタ922と、共焦点キューブセレクタ928と、スピニングディスクモジュール及び制御926(例えば、選択及び集束)と、レーザ走査共焦点モジュール制御927とを含んでもよい。
【0163】
図18は、一例示の実施形態に係るマルチ検出システムの制御方法のフローチャートである。
【0164】
機器の制御は、例えば図17及び/又は図26A図26B(つまり、図17、又は図26A~26B、あるいはそれらの全て)に関して上述したように、コントローラの使用を通じて調整されてもよい。機器への入力(ステップS1805)は、タッチパッド若しくはグラフィカルディスプレイ等の機器のローカルユーザインタフェースを介して、又はネットワーク等の有線若しくは無線接続を介した機器との通信を介して達成されてもよい。
【0165】
機器への入力の場合、入力は、制御アプリケーションを実行するコンピュータ又は他の端末上に表示されるユーザインタフェース又はグラフィカルユーザインタフェースの使用を通して実行されてもよい。
【0166】
入力は、機器の制御を実行するための設定及びパラメータ等のユーザ入力であってもよい。
【0167】
入力を受信したことに応答して、機器の制御は、例えば、図17及び/又は図26A図26Bに関して上記で論じられるような機器の様々な要素を通して達成されてもよい。例えば、ユーザ入力を受信したことに応答して、機器は、ガスモジュールのガス制御手順(ステップS1810)、サンプルの位置決めを制御するためのサンプル位置決め制御手順(ステップS1820)、モノクロメータの動作を制御するモノクロメータ制御手順(ステップS1830)、撮像装置を制御する撮像装置制御手順(ステップS1840)、及び機器の要素の制御の結果を出力すること(ステップS1850)を含む。
【0168】
制御は図18に示されるように提示されるが、要素は任意の順序で個々に制御されてもよく、全ての要素の制御は必要とされない。したがって、機器の複数のモダリティを単一のアッセイにおいて制御することができる。
【0169】
図18に示されている制御方法、及びコントローラによって実行されうる本明細書に記載の他の機能は、1つ以上の制御プログラムを実行することによって機器の要素を制御する処理ユニット(例えば、CPU)の実行を通して実施されうる。プログラムは、メモリ(すなわち、RAM、ROM、フラッシュ等)、又は他のコンピュータ可読媒体(すなわち、CD-ROM、ディスク等)に記憶されうる。プログラムは、機器によって、又は機器によって実行されるコマンドを送信するコンピュータ等の制御装置によって、ローカルに実行されてもよい。
【0170】
図27を参照すると、本開示の実施形態は、ディスプレイを含んでもよく、コントローラは、ディスプレイにユーザインタフェースを表示させるように更に構成されてもよい。図27は、機器が様々な光学モードの組合せを有する場合のユーザインタフェースの例を示す。要素2300は、サンプルの画像である。要素2301は、倍率を選択するためのドロップダウンメニューである。要素2302は、水浸を有効/無効にする選択ボックスである。選択され、対物レンズが水浸するように構成される場合には、コントローラは、水を対物レンズに自動的に圧送させてもよく、撮像が完了するか、又は要素2302のチェックボックスが選択解除されると、水を自動的に除去してもよい。要素2303は、EM波長選択のためのドロップダウンリストである。図27は、4つの異なるEM波長間の選択が提供されてもよいことを示すが、任意の数のEM波長選択が提供されてもよい。要素2304は、EX波長選択のためのドロップダウンリストである。図27は、4つの異なるEX波長間の選択が提供されてもよいことを示すが、任意の数のEX波長選択が提供されてもよい。要素2305は、命令の様々なモードの間で選択することを可能にするドロップダウンメニューである。図27は、モダリティ間の選択を示し、システムは、スピニングディスク、レーザ走査、及び広視野モダリティを含む。実施形態によれば、要素2305に列挙されたモダリティは、システムに存在するモダリティに依存しうる。システムは、例えば、上述のモダリティ(及び/又は追加のモダリティ)(つまり、上述のモダリティ又は追加のモダリティあるいはそれらの両方)の任意の組合せ、又は単一のモダリティのみを有することができる。単一のモダリティのみが提供される場合には、要素2305は提供されなくてもよい。実施形態によれば、要素2301、2302、2303、2304、及び2305は、ドロップダウンメニュー及び選択ボックスであることに限定されず、当業者に知られている任意の方法で選択のためのオプションを示すことができる。
【0171】
実施形態によれば、インタフェースは、シーケンスで自動的に実行される複数のモダリティをユーザが選択することを可能にする表示要素を含むことができる。例えば、インタフェースに対するユーザからの1つ以上の入力に基づいて、コントローラは、シーケンスが自動的に実行されるように制御するように構成されていてもよい。シーケンスは、本開示において説明されるモダリティ動作の順序を含む、モダリティ動作の任意の順序を含みうる。例えば、スピニングディスク又は広視野イメージングシステムを使用する動作、次いで、レーザ点走査共焦点システムを使用する動作が行われてもよい。
【0172】
本開示の実施形態は、例示の目的のために記載されており、当業者は、本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく、様々な変更、追加及び置換が可能であることを理解するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図16C
図17
図18
図19A
図19B
図20
図21
図22A
図22B
図22C
図22D
図23A
図23B
図23C
図24A
図24B
図24C
図25A
図25B
図25C
図26A
図26B
図27
【国際調査報告】