(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-20
(54)【発明の名称】同種アデノウイルスワクチン接種の方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/00 20060101AFI20231213BHJP
A61K 35/761 20150101ALI20231213BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20231213BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231213BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231213BHJP
A61P 33/00 20060101ALI20231213BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20231213BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20231213BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20231213BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20231213BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20231213BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20231213BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20231213BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231213BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20231213BHJP
A61K 38/19 20060101ALI20231213BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20231213BHJP
C12N 15/861 20060101ALN20231213BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20231213BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20231213BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20231213BHJP
C12N 15/19 20060101ALN20231213BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALN20231213BHJP
C12N 7/01 20060101ALN20231213BHJP
【FI】
A61K39/00 H
A61K35/761
A61P37/04
A61P43/00 105
A61P35/00
A61P33/00
A61P31/10
A61P31/12
A61P31/00
A61P31/04
A61K48/00
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K39/39
A61K39/395 U
A61K39/395 D
A61P31/18
A61K38/19
A61K38/20
C12N15/861 Z ZNA
C07K16/28
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/19
C12Q1/6869 Z
C12N7/01
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534100
(86)(22)【出願日】2021-12-03
(85)【翻訳文提出日】2023-06-29
(86)【国際出願番号】 US2021061876
(87)【国際公開番号】W WO2022120217
(87)【国際公開日】2022-06-09
(32)【優先日】2020-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】518213307
【氏名又は名称】グリットストーン バイオ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ヨース カリン
(72)【発明者】
【氏名】スカラン シアラン ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ギトリン レオニド
(72)【発明者】
【氏名】ファーガスン アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ルソー ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】イェレンスキー ロマン
(72)【発明者】
【氏名】サン ジェームス シン
(72)【発明者】
【氏名】デイビス マシュー ジョゼフ
(72)【発明者】
【氏名】ラッパポート エイミー レイチェル
(72)【発明者】
【氏名】パーマー クリスティーヌ デニス
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA13
4B063QQ08
4B063QQ43
4B063QR08
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4B063QS34
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4C084ZB372
4C084ZC75
4C085AA03
4C085AA13
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4C085BA02
4C085BA07
4C085BA49
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4C085CC01
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4C087AA01
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4C087BC83
4C087MA66
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4C087ZC75
4H045AA11
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA28
4H045EA31
(57)【要約】
ワクチンとしての使用を含む組成物に関連するヌクレオチド、細胞、及び方法であって、同種プライム/ブーストワクチン接種戦略に使用するためのアデノウイルスベクター等の同種プライム/ブーストワクチン接種戦略のためのベクター及び方法を含む、前記ヌクレオチド、細胞、及び方法を開示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チンパンジーアデノウイルス(ChAdV)ベクターを含む組成物を対象に送達するための方法であって、前記方法が、複数の用量の前記組成物を前記対象に投与することを含み、前記複数の用量が少なくとも初回用量及び2回目の用量を含み、前記初回用量と前記2回目の用量の間の期間が少なくとも27週間である、前記方法。
【請求項2】
チンパンジーアデノウイルス(ChAdV)ベクターを含む組成物を対象に送達するための方法であって、前記方法が、複数の用量の前記組成物を前記対象に投与することを含み、前記複数の用量が少なくとも初回用量及び2回目の用量を含み、2回目の用量の投与の前にChAdV特異的中和抗体価が中和閾値未満であると決定される、前記方法。
【請求項3】
チンパンジーアデノウイルス(ChAdV)ベクターを含む組成物を対象に送達するための方法であって、
(a)前記組成物の初回用量を前記対象に投与すること、
(b)ChAdV特異的中和抗体価を決定するかまたは決定しておくこと、及び
(c)ChAdV特異的中和抗体価が中和閾値未満であると決定された場合に、前記組成物の2回目の用量を前記対象に投与すること
を含む、前記方法。
【請求項4】
前記初回用量と前記2回目の用量の間の期間が、少なくとも27週間、少なくとも28週間、少なくとも29週間、少なくとも30週間、少なくとも31週間、または少なくとも32週間である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記初回用量がプライミング用量である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の用量が3回以上の用量を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の用量のうちの1回以上が前記初回用量の前に投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記初回用量と前記2回目の用量の間に前記組成物の追加の用量が投与されない、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記中和抗体価が、
ChAdVウイルスを50%中和する、免疫化された前記対象からの血清の最小希釈度として計算されるNT50値
である、請求項2~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記中和閾値が、900以下のNT50値である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記中和抗体価を決定することが、
(1)免疫化された前記対象からの血清の1つ以上の希釈液を、ChAdVウイルスの中和に十分な条件下で前記ChAdVウイルスと接触させるステップ、及び
(2)中和されていないウイルスと比べて前記ChAdVウイルスの中和を評価するステップ
を含む、請求項2~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記中和を評価するステップが、前記ChAdVウイルスにより発現されるレポーターコンストラクトの発現を評価することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記中和閾値が、前記2回目の用量における前記ChAdVウイルスの完全中和のための最小中和抗体価である、請求項2~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記中和閾値が、前記対象において前記2回目の用量が免疫応答を誘導する最小中和抗体価である、請求項2~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記ChAdVベクターが、少なくとも1つの抗原をコードする、上記方法請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの抗原が非自己由来ペプチドであり、前記非自己由来ペプチドが前記対象の野生型遺伝子によってコードされない、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つの抗原が腫瘍関連抗原である、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記腫瘍関連抗原がネオアンチゲンである、請求項15~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つの抗原が外来性抗原である、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記外来性抗原が、病原体、ウイルス、細菌、真菌、または寄生虫からのものである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記複数の用量の各々が、同じ抗原を含む、請求項15~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記組成物が、筋肉内(IM)、皮内(ID)、皮下(SC)、または静脈内(IV)に投与される、上記方法請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記組成物が(IM)投与される、上記方法請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記IM投与が、別々の注射部位において実施される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記別々の注射部位が、相対する三角筋における注射部位である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記別々の注射部位が、両側の殿筋部位または大腿直筋部位における注射部位である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記方法には免疫調節物質の投与が含まれないか、または、前記方法が免疫調節物質の非存在下で実施され、
任意選択で、前記免疫調節物質がチェックポイント阻害物質である、
上記方法請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
免疫調節物質を投与することをさらに含む、上記方法請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記免疫調節物質が、抗CTLA4抗体もしくはその抗原結合断片、抗PD-1抗体もしくはその抗原結合断片、抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合断片、抗4-1BB抗体もしくはその抗原結合断片、または抗OX-40抗体もしくはその抗原結合断片である、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
前記対象のHLAハプロタイプを決定するかまたは決定しておくことをさらに含む、上記方法請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記ChAdVベクターが、
(a)ChAdV骨格であって、
(i)少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と、
(ii)少なくとも1つのポリアデニル化(ポリ(A))配列と
を含む、前記ChAdV骨格、及び
(b)カセットであって、
(i)少なくとも1つの抗原コード核酸配列であって、
a.エピトープコード核酸配列であって、コードされたエピトープ配列を、野生型核酸配列によりコードされる対応するペプチド配列とは異なるものにする、少なくとも1つの変化を任意選択で含む、前記エピトープコード核酸配列と、
b.任意選択で5’リンカー配列と、
c.任意選択で3’リンカー配列と
を任意選択で含む、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列
を含む、前記カセット
を含み、
ここで、前記カセットが、前記少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列及び前記少なくとも1つのポリ(A)配列に機能的に連結されている、
上記方法請求項1~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記ChAdVベクターが、
(a)ChAdV骨格であって、
(i)配列番号1に記載の配列の少なくともヌクレオチド2~36,518を含む改変ChAdV68配列であって、前記ヌクレオチド2~36,518が、(1)E1欠失に対応する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド577~3403、(2)E3欠失に対応する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド27,125~31,825、及び(3)部分的E4欠失に対応する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド34,916~35,642を欠く、前記改変ChAdV68配列と、
(ii)CMVプロモーターヌクレオチド配列と、
(iii)SV40ポリアデニル化(ポリ(A))配列と
を含む、
前記ChAdV骨格、ならびに
(b)カセットであって、
(i)少なくとも1つの抗原コード核酸配列であって、
a.エピトープコード核酸配列であって、コードされたエピトープ配列を、野生型核酸配列によりコードされる対応するペプチド配列とは異なるものにする、少なくとも1つの変化を任意選択で含む、前記エピトープコード核酸配列と、
b.任意選択で5’リンカー配列と、
c.任意選択で3’リンカー配列と
を含む、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列
を含む、前記カセット
を含み、
ここで、前記カセットが前記E1欠失内に挿入されており、かつ前記カセットが、前記CMVプロモーターヌクレオチド配列及び前記SV40ポリ(A)配列に機能的に連結されている、
上記方法請求項1~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記エピトープコード核酸配列が、細胞の表面にMHCクラスI及び/またはMHCクラスIIによって提示されることが既知であるかまたは疑われているエピトープをコードし、任意選択で、前記細胞の表面が腫瘍細胞表面または感染細胞表面であり、任意選択で、前記細胞が前記対象の細胞である、上記方法請求項31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列が、エピトープへの抗原プロセシングを受けることができるポリペプチド配列をコードし、任意選択で、前記エピトープが、細胞の表面にMHCクラスIによって提示されることが知られているかまたは疑われており、任意選択で、前記細胞の表面が腫瘍細胞表面または感染細胞表面である、上記方法請求項31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記細胞が、肺がん、黒色腫、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、腎臓がん、胃がん、結腸がん、精巣がん、頭頸部がん、膵がん、脳腫瘍、B細胞リンパ腫、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、T細胞リンパ性白血病、非小細胞肺がん、及び小細胞肺がんからなる群から選択される腫瘍細胞であるか、または
前記細胞が、病原体感染細胞、ウイルス感染細胞、細菌感染細胞、真菌感染細胞、及び寄生虫感染細胞からなる群から選択される感染細胞である、
請求項33または34に記載の方法。
【請求項36】
前記ウイルス感染細胞がHIV感染細胞である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記エピトープコード核酸配列が、HIV GAGタンパク質またはエピトープをコードする、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記ChAdVベクター中の前記カセットの各要素の順番に並べられた配列が、5’から3’方向へ、以下:
P
a-(L5
b-N
c-L3
d)
X-(G5
e-U
f)
Y-G3
g
を含む式で表され、
式中、
Pは、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列のうちの少なくとも1つに機能的に連結されている前記少なくとも1つのプロモーター配列を含み、a=1であり、
Nは、前記エピトープコード核酸配列のうちの1つを含み、c=1であり、
L5は前記5’リンカー配列を含み、b=0または1であり、
L3は前記3’リンカー配列を含み、d=0または1であり、
G5は、GPGPGアミノ酸リンカーをコードする少なくとも1つの核酸配列のうちの1つを含み、e=0または1であり、
G3は、GPGPGアミノ酸リンカーをコードする少なくとも1つの核酸配列のうちの1つを含み、g=0または1であり、
Uは、少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列のうちの1つを含み、f=1であり、
X=1~400であり、各Xについて、対応するN
cはエピトープコード核酸配列であり、
Y=0、1、または2であり、各Yについて、対応するU
fはMHCクラスIIエピトープコード核酸配列である、
上記方法請求項31または33~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
各Xについて、前記対応するN
cが、別個のエピトープコード核酸配列である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
各Yについて、前記対応するU
fが、別個のMHCクラスIIエピトープコード核酸配列である、請求項38または39に記載の方法。
【請求項41】
b=1、d=1、e=1、g=1、h=1、X=10、Y=2であり、
PがCMVプロモーター配列であり、
各Nが、7~15アミノ酸長のMHCクラスIエピトープ、MHCクラスIIエピトープ、B細胞応答を刺激する能力があるエピトープ、またはそれらの組み合わせをコードし、
L5が、前記エピトープの天然N末端アミノ酸配列をコードする天然5’リンカー配列であり、ここで、前記5’リンカー配列が、少なくとも3アミノ酸長であるペプチドをコードし、
L3が、前記エピトープの天然C末端アミノ酸配列をコードする天然3’リンカー配列であり、ここで、前記3’リンカー配列が、少なくとも3アミノ酸長であるペプチドをコードし、
Uが、PADREクラスII配列及び破傷風トキソイドMHCクラスII配列の各々であり、
前記ChAdVベクターが、配列番号1に記載の配列の少なくともヌクレオチド2~36,518を含む改変ChAdV68配列を含み、ここで、前記ヌクレオチド2~36,518が、(1)E1欠失に対応する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド577~3403、(2)E3欠失に対応する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド27,125~31,825、及び(3)部分的E4欠失に対応する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド34,916~35,642を欠き、ネオアンチゲンカセットが前記E1欠失内に挿入されており、かつ
I抗原コード核酸配列の各々が、25アミノ酸長であるポリペプチドをコードする、
上記方法請求項38~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記カセットが、前記少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と前記少なくとも1つのポリ(A)配列の間に組み込まれている、上記方法請求項31または33~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列が、前記カセットに機能的に連結されている、上記方法請求項31、33~40、または42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記ChAdV骨格がChAdV68ベクター骨格を含む、上記方法請求項31、33~40、または42~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記ChAdV68ベクター骨格が、配列番号1に記載の配列を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記ChAdV68ベクター骨格が、ChAdV68ゲノムに関してまたは配列番号1に示される配列に関して、アデノウイルスのE1A、E1B、E2A、E2B、E3、L1、L2、L3、L4、及びL5遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子における機能欠失を含み、任意選択で、アデノウイルス骨格または改変ChAdV68配列が、アデノウイルスゲノムに関して、または配列番号1に示される配列に関して、(1)E1A及びE1Bにおいて、または(2)E1A、E1B、及びE3において完全に欠失しているかまたは機能的に欠失しており、任意選択で、E1遺伝子が、配列番号1に示される配列に関して、少なくともヌクレオチド577~3403のE1欠失を介して機能的に欠失しており、任意選択で、E3遺伝子が、配列番号1に示される配列に関して、少なくともヌクレオチド27,125~31,825のE3欠失を介して機能的に欠失している、請求項44または45に記載の方法。
【請求項47】
前記ChAdV68ベクター骨格が、ChAdV68ゲノムに関して、または配列番号1に示される配列に関して、1つ以上の遺伝子または制御配列を含み、任意選択で、前記1つ以上の遺伝子または制御配列が、チンパンジーアデノウイルス末端逆位反復(ITR)、E1A、E1B、E2A、E2B、E3、E4、L1、L2、L3、L4、及びL5遺伝子からなる群から選択される、請求項44または45に記載の方法。
【請求項48】
前記ChAdV68ベクター骨格が、部分的に欠失したE4遺伝子を含む、請求項44~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記部分的に欠失したE4遺伝子が、
A.配列番号1に示され、かつ、配列番号1に示される配列の少なくともヌクレオチド34,916~35,642を欠く、E4遺伝子配列、
B.配列番号1に示され、かつ、配列番号1に示される配列の少なくともヌクレオチド34,916~34,942、ヌクレオチド34,952~35,305、配列番号1に示される配列のヌクレオチド35,302~35,642を欠く、E4遺伝子配列であって、前記ベクターが、配列番号1に示される配列の少なくともヌクレオチド2~36,518を含む、前記E4遺伝子配列、
C.配列番号1に示され、かつ、配列番号1に示される配列の少なくともヌクレオチド34,980~36,516を欠く、E4遺伝子配列であって、前記ベクターが、配列番号1に示される配列の少なくともヌクレオチド2~36,518を含む、前記E4遺伝子配列、
D.配列番号1に示され、かつ、配列番号1に示される配列の少なくともヌクレオチド34,979~35,642を欠く、E4遺伝子配列であって、前記ベクターが、配列番号1に示される配列の少なくともヌクレオチド2~36,518を含む、前記E4遺伝子配列、
E.E4Orf2の少なくとも部分欠失、完全欠失E4Orf3、及びE4Orf4の少なくとも部分欠失である、E4欠失、
F.E4Orf2の少なくとも部分欠失、E4Orf3の少なくとも部分欠失、及びE4Orf4の少なくとも部分欠失である、E4欠失、
G.E4Orf1の少なくとも部分欠失、完全欠失E4Orf2、及びE4Orf3の少なくとも部分欠失である、E4欠失、または
H.E4Orf2の少なくとも部分欠失及びE4Orf3の少なくとも部分欠失である、E4欠失
を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記ChAdV68ベクター骨格が、配列番号1に記載の配列の少なくともヌクレオチド2~36,518を含み、前記ヌクレオチド2~36,518が、(1)E1欠失に対応する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド577~3403、(2)E3欠失に対応する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド27,125~31,825、及び(3)部分的E4欠失に対応する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド34,916~35,642を欠き、任意選択で、抗原カセットが前記E1欠失内に挿入されている、請求項44に記載の方法。
【請求項51】
前記ChAdV68ベクター骨格が、配列番号29369に記載の配列を含み、任意選択で、抗原カセットが前記E1欠失内に挿入されている、請求項44に記載の方法。
【請求項52】
前記ChAdV68ベクター骨格が、配列番号1に記載の配列の少なくともヌクレオチド2~36,518を含み、前記ヌクレオチド2~36,518が、
A.E1欠失に対応する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド577~3403、
B.E3欠失に対応する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド27,125~31,825、
C.部分的E4欠失に対応する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド34,916~35,642、
D.配列番号1に示される配列のヌクレオチド456~3014、
E.配列番号1に示される配列のヌクレオチド27,816~31,333、
F.配列番号1に示される配列のヌクレオチド3957~10346、
G.配列番号1に示される配列のヌクレオチド21787~23370、
H.配列番号1に示される配列のヌクレオチド33486~36193、または
それらの組み合わせ
を欠く、請求項44に記載の方法。
【請求項53】
前記ChAdV68ベクター骨格が、配列番号1に記載の配列の少なくともヌクレオチド2~36,518を含み、前記ヌクレオチド2~36,518が、(1)E1欠失に対応する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド577~3403、及び(2)E3欠失に対応する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド27,125~31,825を欠く、請求項44に記載の方法。
【請求項54】
前記カセットが、E1領域にて、E3領域にて、及び/または前記カセットの組み込みを可能にする任意の欠失AdV領域にて前記ChAdV骨格内に挿入されている、上記方法請求項31、33~40、または42~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記ChAdV骨格が、第一世代、第二世代、またはヘルパー依存型のアデノウイルスベクターのうちの1つから作製される、上記方法請求項31、33~40、または42~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列が、CMVプロモーター配列、SV40プロモーター配列、EF-1プロモーター配列、RSVプロモーター配列、PGKプロモーター配列、HSAプロモーター配列、MCKプロモーター配列、及びEBVプロモーター配列からなる群から選択される、上記方法請求項31、33~40、または42~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列がCMVプロモーター配列である、上記方法請求項31、33~40、または42~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記エピトープコード核酸配列のうちの少なくとも1つが、発現及び翻訳された場合に前記対象の細胞上にMHCクラスIによって提示され得るエピトープをコードする、上記方法請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記エピトープコード核酸配列のうちの少なくとも1つが、発現及び翻訳された場合に前記対象の細胞上にMHCクラスIIによって提示され得るエピトープをコードする、上記方法請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列が、2個以上の抗原コード核酸配列を含む、上記方法請求項31、33~40、または42~59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
各抗原コード核酸配列が互いに直接連結されている、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
各抗原コード核酸配列が、リンカーをコードする核酸配列により別個の抗原コード核酸配列に連結されている、上記方法請求項31~40または42~61のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
前記リンカーが、2つのエピトープコード核酸配列を連結するか、またはエピトープコード核酸配列をMHCクラスIIエピトープコード核酸配列に連結する、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記リンカーが、
(1)長さが少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10残基である、連続するグリシン残基、(2)長さが少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10残基である、連続するアラニン残基、(3)2つのアルギニン残基(RR)、(4)アラニン、アラニン、チロシン(AAY)、(5)哺乳類のプロテアソームによって効率的にプロセシングされる、長さが少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10アミノ酸残基のコンセンサス配列、及び(6)起源同族のタンパク質に由来する抗原に隣接し、長さが少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または2~20アミノ酸残基である、1つ以上の天然配列
からなる群から選択される、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記リンカーが、2つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列を連結するか、またはMHCクラスII配列をエピトープコード核酸配列に連結する、請求項62に記載の方法。
【請求項66】
前記リンカーが配列GPGPGを含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記抗原コード核酸配列が、前記抗原コード核酸配列の発現、安定性、細胞輸送、プロセシング及び提示、ならびに/または免疫原性を増強させる分離したまたは連続した配列に機能的にまたは直接、連結されている、上記方法請求項31~40または42~66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
前記分離したまたは連続した配列が、ユビキチン配列、プロテアソームターゲティングが増大するよう改変されたユビキチン配列(例えば、前記ユビキチン配列が、76位でのGlyからAlaへの置換を含有する)、免疫グロブリンシグナル配列(例えば、IgK)、主要組織適合性クラスI配列、リソソーム関連膜タンパク質(LAMP)-1、ヒト樹状細胞リソソーム関連膜タンパク質、及び主要組織適合性クラスII配列、のうちの少なくとも1つを含み、任意選択で、プロテアソームターゲティングが増大するよう改変された前記ユビキチン配列がA76である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記エピトープコード核酸配列が、少なくとも1つの変化を含み、前記変化により、翻訳された対応する野生型核酸配列と比べて、コードされたエピトープが、その対応するMHCアレルに対する増大した結合親和性を有する、上記方法請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
前記エピトープコード核酸配列が、少なくとも1つの変化を含み、前記変化により、翻訳された対応する野生型核酸配列と比べて、コードされたエピトープが、その対応するMHCアレルに対する増大した結合安定性を有する、上記方法請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
前記エピトープコード核酸配列が、少なくとも1つの変化を含み、前記変化により、翻訳された対応する野生型核酸配列と比べて、コードされたエピトープが、その対応するMHCアレル上での増大した提示の可能性を有する、上記方法請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
前記少なくとも1つの変化が、点変異、フレームシフト変異、非フレームシフト変異、欠失変異、挿入変異、スプライスバリアント、ゲノム再編成、または、プロテアソームにより生成されたスプライス抗原を含む、上記方法請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
前記エピトープコード核酸配列が、がんを有することがわかっているかまたは疑われている対象において発現することが既知であるかまたは疑われているエピトープをコードする、上記方法請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
前記がんが固形腫瘍を含む、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記がんが、肺がん、黒色腫、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、腎臓がん、胃がん、結腸がん、精巣がん、頭頸部がん、膵がん、膀胱がん、脳腫瘍、B細胞リンパ腫、急性骨髄性白血病、成人急性リンパ芽球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、T細胞リンパ性白血病、非小細胞肺がん、及び小細胞肺がんからなる群から選択される、請求項73または74に記載の方法。
【請求項76】
前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列が、少なくとも2~10、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の抗原コード核酸配列を含み、任意選択で、各抗原コード核酸配列が、別個の抗原コード核酸配列をコードする、上記方法請求項31~40または42~75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列が、少なくとも11~20、15~20、11~100、11~200、11~300、11~400、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または最大400個の抗原コード核酸配列を含み、任意選択で、各抗原コード核酸配列が、別個の抗原コード核酸配列をコードする、上記方法請求項31~40または42~75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列が、少なくとも11~20、15~20、11~100、11~200、11~300、11~400、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または最大400個の抗原コード核酸配列を含む、上記方法請求項31~40または42~75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列が、少なくとも2~400個の抗原コード核酸配列を含み、前記抗原コード核酸配列のうち少なくとも2個が、細胞表面にMHCクラスIによって提示されるエピトープ配列またはそれらの部分をコードする、上記方法請求項31~40または42~75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
MHCクラスIエピトープのうち少なくとも2つが、腫瘍細胞表面にMHCクラスIによって提示される、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記エピトープコード核酸配列が、少なくとも1つのMHCクラスIエピトープコード核酸配列を含み、各抗原コード核酸配列が、8~35アミノ酸長、任意選択で、9~17、9~25、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、または35アミノ酸長のポリペプチド配列をコードする、上記方法請求項31~40または42~80のいずれか1項に記載の方法。
【請求項82】
少なくとも1つの前記MHCクラスIIエピトープコード核酸配列が存在する、上記方法請求項31~40または42~81のいずれか1項に記載の方法。
【請求項83】
少なくとも1つの前記MHCクラスIIエピトープコード核酸配列が、存在し、かつ、少なくとも1つの変化を含む少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列を含み、前記変化が、コードされたエピトープ配列を、野生型核酸配列によりコードされる対応するペプチド配列とは異なるものにする、上記方法請求項31~40または42~81のいずれか1項に記載の方法。
【請求項84】
前記エピトープコード核酸配列がMHCクラスIIエピトープコード核酸配列を含み、各抗原コード核酸配列が、12~20、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または20~40アミノ酸長のポリペプチド配列をコードする、上記方法請求項31~40または42~83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項85】
前記エピトープコード核酸配列がMHCクラスIIエピトープコード核酸配列を含み、ここで、少なくとも1つの前記MHCクラスIIエピトープコード核酸配列が存在し、少なくとも1つの前記MHCクラスIIエピトープコード核酸配列が、少なくとも1つのユニバーサルMHCクラスIIエピトープコード核酸配列を含み、任意選択で、前記少なくとも1つのユニバーサル配列が破傷風トキソイド及びPADREのうちの少なくとも1つを含む、上記方法請求項31~40または42~84のいずれか1項に記載の方法。
【請求項86】
前記少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列が誘導性である、上記方法請求項31、33~40、または42~85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項87】
前記少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列が非誘導性である、上記方法請求項31、33~40、または42~85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項88】
前記少なくとも1つのポリ(A)配列が、ウシ成長ホルモン(BGH)SV40ポリA配列を含む、上記方法請求項31、33~40、または42~87のいずれか1項に記載の方法。
【請求項89】
前記少なくとも1つのポリ(A)配列が、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、または少なくとも90個の連続するAヌクレオチドである、請求項31、33~40、または42~88のいずれか1項に記載の方法。
【請求項90】
前記少なくとも1つのポリ(A)配列が、少なくとも100個の連続するAヌクレオチドである、上記方法請求項31、33~40、または42~88のいずれか1項に記載の方法。
【請求項91】
前記カセットが、イントロン配列、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)配列、配列内リボソーム進入配列(IRES)の配列、2A自己切断ペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、フーリン切断部位をコードするヌクレオチド配列、または、mRNAの核外輸送、安定性、もしくは翻訳効率を増強させることが知られており前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列のうちの少なくとも1つに機能的に連結されている5’もしくは3’の非コード領域内の配列、のうちの少なくとも1つをさらに含む、上記方法請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項92】
前記カセットがレポーター遺伝子をさらに含み、前記レポーター遺伝子が、緑色蛍光タンパク質(GFP)、GFPバリアント、分泌型アルカリホスファターゼ、ルシフェラーゼ、ルシフェラーゼバリアント、または検出可能なペプチドもしくはエピトープを含むが、これらに限定されない、上記方法請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項93】
前記検出可能なペプチドまたはエピトープが、HAタグ、Flagタグ、Hisタグ、またはV5タグからなる群から選択される、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
1つ以上の前記ベクターが、少なくとも1つの免疫調節物質をコードする1つ以上の核酸配列をさらに含む、上記方法請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項95】
前記免疫調節物質が、抗CTLA4抗体もしくはその抗原結合断片、抗PD-1抗体もしくはその抗原結合断片、抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合断片、抗4-1BB抗体もしくはその抗原結合断片、または抗OX-40抗体もしくはその抗原結合断片である、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記抗体またはその抗原結合断片が、Fab断片、Fab’断片、一本鎖Fv(scFv)、単一特異的であるかもしくは複数の特異性を一緒に連結させた単一ドメイン抗体(sdAb)(例えば、ラクダ科の動物の抗体ドメイン)、または全長一本鎖抗体(例えば、重鎖と軽鎖が可動性リンカーによって連結されている全長IgG)である、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記抗体の重鎖配列及び軽鎖配列が、2A等の自己切断配列もしくはIRESのいずれかで区切られている連続した配列であるか、または前記抗体の重鎖配列及び軽鎖配列が、連続するグリシン残基等の可動性リンカーによって連結されている、請求項95または96に記載の方法。
【請求項98】
前記免疫調節物質がサイトカインである、請求項94に記載の方法。
【請求項99】
前記サイトカインが、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、もしくはIL-21またはそれら各々のバリアントのうちの少なくとも1つである、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
少なくとも1つのエピトープコード核酸配列が、
(a)腫瘍、感染細胞、または感染症生物から、エクソーム、トランスクリプトーム、または全ゲノムのヌクレオチド配列決定データのうちの少なくとも1つを取得するステップであって、前記ヌクレオチド配列決定データが、抗原のセットの各々についてのペプチド配列を表すデータを取得するために使用される、前記取得するステップ、
(b)各抗原の前記ペプチド配列を提示モデルに入力して、細胞表面に、任意選択で腫瘍細胞表面または感染細胞表面にMHCアレルのうちの1つ以上によって前記抗原の各々が提示される数値的尤度のセットを生成するステップであって、前記数値的尤度のセットが、受け取った質量分析データに少なくとも基づいて同定されている、前記生成するステップ、及び
(c)前記少なくとも1つのエピトープコード核酸配列を生成するために使用される選択された抗原のセットを生成するために、前記数値的尤度のセットに基づいて前記抗原のセットのサブセットを選択するステップ
を実施することによって選択される、上記方法請求項31~40または42~99のいずれか1項に記載の方法。
【請求項101】
前記エピトープコード核酸配列の各々が、
(a)腫瘍、感染細胞、または感染症生物から、エクソーム、トランスクリプトーム、または全ゲノムのヌクレオチド配列決定データのうちの少なくとも1つを取得するステップであって、前記ヌクレオチド配列決定データが、抗原のセットの各々についてのペプチド配列を表すデータを取得するために使用される、前記取得するステップ、
(b)各抗原の前記ペプチド配列を提示モデルに入力して、細胞表面に、任意選択で腫瘍細胞表面または感染細胞表面にMHCアレルのうちの1つ以上によって前記抗原の各々が提示される数値的尤度のセットを生成するステップであって、前記数値的尤度のセットが、受け取った質量分析データに少なくとも基づいて同定されている、前記生成するステップ、及び
(c)少なくとも20個の前記エピトープコード核酸配列を生成するために使用される選択された抗原のセットを生成するために、前記数値的尤度のセットに基づいて前記抗原のセットのサブセットを選択するステップ
を実施することによって選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項102】
選択されたエピトープのセットの数が2~20である、請求項100に記載の方法。
【請求項103】
前記提示モデルが、
(a)前記MHCアレルのうちの特定の1つとペプチド配列の特定の位置における特定のアミノ酸との対の存在と、
(b)前記対の前記MHCアレルのうちの前記特定の1つによる、細胞表面での、任意選択で腫瘍細胞表面または感染細胞表面での、前記特定の位置に前記特定のアミノ酸を含むそのようなペプチド配列の提示の可能性と
の間の依存性を表す、請求項100~102のいずれか1項に記載の方法。
【請求項104】
選択された抗原のセットを選択することが、前記提示モデルに基づいて、選択されなかった抗原と比べて前記細胞表面に提示される可能性が増大している抗原を選択することを含み、任意選択で、前記選択された抗原が、1つ以上の特定のHLAアレルによって提示されると確認されている、請求項100~103のいずれか1項に記載の方法。
【請求項105】
選択されたエピトープのセットを選択することが、前記提示モデルに基づいて、選択されなかったエピトープと比べて前記対象において腫瘍特異的な免疫応答の誘導能がある可能性が増大しているエピトープを選択することを含む、請求項100~104のいずれか1項に記載の方法。
【請求項106】
選択された抗原のセットを選択することが、前記提示モデルに基づいて、選択されなかった抗原と比べて前記対象において腫瘍特異的または感染症特異的な免疫応答の誘導能がある可能性が増大している抗原を選択することを含む、請求項100~105のいずれか1項に記載の方法。
【請求項107】
選択された抗原のセットを選択することが、前記提示モデルに基づいて、選択されなかった抗原と比べてプロフェッショナル抗原提示細胞(APC)によってナイーブT細胞に提示される能力がある可能性が増大している抗原を選択することを含み、任意選択で、前記APCが樹状細胞(DC)である、請求項100~106のいずれか1項に記載の方法。
【請求項108】
選択された抗原のセットを選択することが、前記提示モデルに基づいて、選択されなかった抗原と比べて中枢性寛容または末梢性寛容を介した阻害を受ける可能性が減少している抗原を選択することを含む、請求項100~107のいずれか1項に記載の方法。
【請求項109】
選択された抗原のセットを選択することが、前記提示モデルに基づいて、選択されなかった抗原と比べて前記対象において正常組織に対する自己免疫応答の誘導能がある可能性が減少している抗原を選択することを含む、請求項100~108のいずれか1項に記載の方法。
【請求項110】
エクソームまたはトランスクリプトームのヌクレオチド配列決定データが、腫瘍細胞もしくは腫瘍組織、感染細胞、または感染症生物においてシークエンシングを実施することによって取得される、請求項100~109のいずれか1項に記載の方法。
【請求項111】
前記シークエンシングが次世代シークエンシング(NGS)または任意の超並列シークエンシング手法である、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
前記カセットが、前記カセット内の隣接配列によって形成される接合部エピトープ配列を含む、上記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項113】
少なくとも1つまたはそれぞれの接合部エピトープ配列が、MHCに対する500nM超の親和性を有する、請求項112に記載の方法。
【請求項114】
各接合部エピトープ配列が非自己である、請求項112または113に記載の方法。
【請求項115】
前記MHCクラスIエピトープの各々が、集団の少なくとも5%に存在する少なくとも1つのHLAアレルによる提示能があると予測または確認される、上記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項116】
前記MHCクラスIエピトープの各々が、少なくとも1つのHLAアレルによる提示能があると予測または確認され、抗原/HLAの各対の、集団における抗原/HLA保有率が少なくとも0.01%である、上記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項117】
前記MHCクラスIエピトープの各々が、少なくとも1つのHLAアレルによる提示能があると予測または確認され、抗原/HLAの各対の、集団における抗原/HLA保有率が少なくとも0.1%である、上記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項118】
前記カセットが、翻訳された野生型核酸配列を含む非治療的なMHCクラスIエピトープ核酸配列もクラスIIエピトープ核酸配列もコードせず、ここで、前記非治療的なエピトープが、前記対象のMHCアレルに提示されると予測される、上記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項119】
予測される前記非治療的なMHCクラスIエピトープ核酸配列またはクラスIIエピトープ配列が、前記カセット内の隣接配列によって形成される接合部エピトープ配列である、請求項118に記載の方法。
【請求項120】
前記予測が、前記非治療的なエピトープの配列を提示モデルに入力することによって生成される提示尤度に基づく、請求項112~119のいずれか1項に記載の方法。
【請求項121】
前記カセット内の前記抗原コード核酸配列の順序が、
(a)前記抗原コード核酸配列の様々な順序に対応する候補カセット配列のセットを生成すること、
(b)各候補カセット配列について、前記候補カセット配列における非治療的エピトープの提示に基づいた提示スコアを決定すること、及び
(c)抗原ワクチンのカセット配列として、所定の閾値を下回る提示スコアと関連する候補カセット配列を選択すること
を含む一連のステップによって決定される、上記方法請求項112~120のいずれか1項に記載の方法。
【請求項122】
前記組成物が、薬学的に許容される担体を含む医薬組成物として製剤化されている、上記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項123】
前記組成物が、前記ChAdVベクターを含むウイルス粒子を含む、上記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項124】
前記エピトープコード核酸配列のうちの1つ以上が、前記対象の腫瘍に由来する、上記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項125】
前記エピトープコード核酸配列の各々が、前記対象の腫瘍に由来する、上記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項126】
前記エピトープコード核酸配列のうちの1つ以上が、前記対象の腫瘍に由来しない、上記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項127】
前記エピトープコード核酸配列の各々が、前記対象の腫瘍に由来しない、上記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項128】
前記エピトープコード核酸配列が、配列番号57~29,364からなる群から選択されるエピトープを含む、上記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項129】
前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列が、少なくとも、
(A)KRAS_G12C MHCクラスIエピトープコード核酸配列であって、配列番号14,954、19,848、及び19,850からなる群から選択されるMHCクラスIエピトープをコードする、前記KRAS_G12C MHCクラスIエピトープコード核酸配列、
(B)KRAS_G12D MHCクラスIエピトープコード核酸配列であって、配列番号19,749、19,865、及び19,863からなる群から選択されるMHCクラスIエピトープをコードする、前記KRAS_G12D MHCクラスIエピトープコード核酸配列、ならびに
(C)KRAS_G12V MHCクラスIエピトープコード核酸配列であって、配列番号19,976、19,779、11,495、及び19,974からなる群から選択されるMHCクラスIエピトープをコードする、前記KRAS_G12V MHCクラスIエピトープコード核酸配列
の各々を含む、上記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項130】
前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列が、
(A)KRAS_G12C MHCクラスIエピトープコード核酸配列、
(B)KRAS_G12D MHCクラスIエピトープコード核酸配列、
(C)KRAS_G12V MHCクラスIエピトープコード核酸配列、
(D)KRAS Q61H MHCクラスIエピトープコード核酸配列、
(E)TP53_R213L MHCクラスIエピトープコード核酸配列、
(F)TP53_S127Y MHCクラスIエピトープコード核酸配列、
(G)TP53_R249M MHCクラスIエピトープコード核酸配列、
またはそれらの組み合わせ
を含む、上記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項131】
自己増幅型アルファウイルスに基づく発現系を投与することをさらに含む、上記方法請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項132】
前記自己増幅型アルファウイルスに基づく発現系の送達のための前記組成物が、筋肉内(IM)、皮内(ID)、皮下(SC)、または静脈内(IV)に投与される、請求項131に記載の方法。
【請求項133】
前記自己増幅型アルファウイルスに基づく発現系の送達のための前記組成物が(IM)投与される、請求項131または132に記載の方法。
【請求項134】
前記IM投与が、別々の注射部位において実施される、請求項133に記載の方法。
【請求項135】
前記別々の注射部位が、相対する三角筋の注射部位である、請求項134に記載の方法。
【請求項136】
前記別々の注射部位が、両側の殿筋部位または大腿直筋部位の注射部位である、請求項134に記載の方法。
【請求項137】
1つ以上のブースト用量の前記注射部位が、前記プライミング用量の前記注射部位に可能な限り近い、請求項133~136のいずれか1項に記載の方法。
【請求項138】
前記自己増幅型アルファウイルスに基づく発現系の送達のための前記組成物が、
(A)前記自己増幅型アルファウイルスに基づく発現系であって、前記自己増幅型アルファウイルスに基づく発現系が、1つ以上のベクターを含み、前記1つ以上のベクターが、
(a)RNAアルファウイルス骨格であって、
(i)少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と、
(ii)少なくとも1つのポリアデニル化(ポリ(A))配列と
を含む、前記RNAアルファウイルス骨格、ならびに
(b)カセットであって、
(i)少なくとも1つの抗原コード核酸配列であって、
a.エピトープコード核酸配列であって、コードされたエピトープ配列を、野生型核酸配列によりコードされる対応するペプチド配列とは異なるものにする、少なくとも1つの変化を任意選択で含む、前記エピトープコード核酸配列と、
b.任意選択で5’リンカー配列と、
c.任意選択で3’リンカー配列と
を含む、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列、
(ii)任意選択で、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列に機能的に連結されている第2のプロモーターヌクレオチド配列、及び
(iii)任意選択で、少なくとも1つの第2のポリ(A)配列であって、前記アルファウイルスにとって天然ポリ(A)配列であるかまたは外因性ポリ(A)配列である、前記第2のポリ(A)配列
を含む、前記カセット
を含む、前記自己増幅型アルファウイルスに基づく発現系、ならびに
(B)脂質ナノ粒子(LNP)であって、前記自己増幅型アルファウイルスに基づく発現系を内包する、前記LNP
を含む、上記方法請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項139】
前記自己増幅型アルファウイルスに基づく発現系の送達のための前記組成物が、
(A)前記自己増幅型アルファウイルスに基づく発現系であって、前記自己増幅型アルファウイルスに基づく発現系が、1つ以上のベクターを含み、前記1つ以上のベクターが、
(a)RNAアルファウイルス骨格であって、前記RNAアルファウイルス骨格が、配列番号6に記載の核酸配列を含み、前記RNAアルファウイルス骨格配列が、26Sプロモーターヌクレオチド配列及びポリ(A)配列を含み、前記26Sプロモーター配列が前記RNAアルファウイルス骨格にとって内因性であり、前記ポリ(A)配列が、前記RNAアルファウイルス骨格にとって内因性である、前記RNAアルファウイルス骨格、及び
(b)前記26Sプロモーターヌクレオチド配列と前記ポリ(A)配列の間に組み込まれているカセットであって、
前記カセットが、前記26Sプロモーターヌクレオチド配列に機能的に連結されており、かつ、前記カセットが、少なくとも1つの抗原コード核酸配列を含み、前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列が、
a.エピトープコード核酸配列であって、コードされたエピトープ配列を、野生型核酸配列によりコードされる対応するペプチド配列とは異なるものにする、少なくとも1つの変化を任意選択で含む、前記エピトープコード核酸配列と、
b.任意選択で5’リンカー配列と、
c.任意選択で3’リンカー配列と
を含む、
前記カセット
を含む、前記自己増幅型アルファウイルスに基づく発現系、ならびに
(B)脂質ナノ粒子(LNP)であって、前記自己増幅型アルファウイルスに基づく発現系を内包する、前記LNP
を含む、上記方法請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項140】
前記ChAdVベクターの前記カセットが、前記自己増幅型アルファウイルスに基づく発現系の送達のための前記組成物の前記カセットと同一である、上記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項141】
前記自己増幅型アルファウイルスに基づく発現系の送達のための前記組成物における前記カセットの各要素の順番に並べられた配列が、5’から3’方向へ、以下:
P
a-(L5
b-N
c-L3
d)
X-(G5
e-U
f)
Y-G3
g
を含む式で表され、
式中、
Pは、前記第2のプロモーターヌクレオチド配列を含み、a=0または1であり、
Nは、前記エピトープコード核酸配列のうちの1つを含み、c=1であり、
L5は前記5’リンカー配列を含み、b=0または1であり、
L3は前記3’リンカー配列を含み、d=0または1であり、
G5は、GPGPGアミノ酸リンカーをコードする少なくとも1つの核酸配列のうちの1つを含み、e=0または1であり、
G3は、GPGPGアミノ酸リンカーをコードする少なくとも1つの核酸配列のうちの1つを含み、g=0または1であり、
Uは、前記少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列のうちの1つを含み、f=1であり、
X=1~400であり、各Xについて、対応するN
cはエピトープコード核酸配列であり、
Y=0、1、または2であり、各Yについて、対応するU
fはMHCクラスIIエピトープコード核酸配列である、
上記方法請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項142】
各Xについて、前記対応するN
cが、別個のエピトープコード核酸配列である、請求項141に記載の方法。
【請求項143】
各Yについて、前記対応するU
fが、別個のMHCクラスIIエピトープコード核酸配列である、請求項141または142に記載の方法。
【請求項144】
a=0、b=1、d=1、e=1、g=1、h=1、X=20、Y=2であり、
前記少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列が、前記RNAアルファウイルス骨格によって提供される単一の26Sプロモーターヌクレオチド配列であり、
前記少なくとも1つのポリアデニル化ポリ(A)配列が、前記RNAアルファウイルス骨格によって提供される少なくとも100個の連続するAヌクレオチドのポリ(A)配列であり、
前記カセットが、前記26Sプロモーターヌクレオチド配列と前記ポリ(A)配列の間に組み込まれており、ここで、前記カセットが、前記26Sプロモーターヌクレオチド配列及び前記ポリ(A)配列に機能的に連結されており、
各Nが、7~15アミノ酸長のMHCクラスIエピトープ、MHCクラスIIエピトープ、B細胞応答を刺激する能力があるエピトープ、またはそれらの組み合わせをコードし、
L5が、前記エピトープの天然N末端アミノ酸配列をコードする天然5’リンカー配列であり、ここで、前記5’リンカー配列が、少なくとも3アミノ酸長であるペプチドをコードし、
L3が、前記エピトープの天然C末端アミノ酸配列をコードする天然3’リンカー配列であり、ここで、前記3’リンカー配列が、少なくとも3アミノ酸長であるペプチドをコードし、
Uが、PADREクラスII配列及び破傷風トキソイドMHCクラスII配列の各々であり、
前記RNAアルファウイルス骨格が、配列番号6に記載の配列であり、かつ
前記MHCクラスIエピトープコード核酸配列の各々が、13~25アミノ酸長であるポリペプチドをコードする、
上記方法請求項141~143のいずれか1項に記載の方法。
【請求項145】
前記LNPが、イオン化可能なアミノ脂質、ホスファチジルコリン、コレステロール、PEGベースのコート脂質、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される脂質を含む、上記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項146】
前記LNPが、イオン化可能なアミノ脂質、ホスファチジルコリン、コレステロール、及びPEGベースのコート脂質を含む、上記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項147】
前記イオン化可能なアミノ脂質が、MC3様(ジリノレイルメチル-4-ジメチルアミノブチラート)分子を含む、請求項145または146に記載の方法。
【請求項148】
前記LNPに内包された発現系が約100nmの直径を有する、上記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項149】
前記カセットが、前記少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と前記少なくとも1つのポリ(A)配列の間に組み込まれている、上記方法請求項138、140~143、または145~148のいずれか1項に記載の方法。
【請求項150】
前記少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列が、前記カセットに機能的に連結されている、上記方法請求項138、140~143、または145~149のいずれか1項に記載の方法。
【請求項151】
前記1つ以上のベクターが、1つ以上のプラス鎖RNAベクターを含む、上記方法請求項138、140~143、または145~150のいずれか1項に記載の方法。
【請求項152】
前記1つ以上のプラス鎖RNAベクターが、5’の7-メチルグアノシン(m7g)キャップを含む、請求項151に記載の方法。
【請求項153】
前記1つ以上のプラス鎖RNAベクターがインビトロ転写により生成される、請求項151または152に記載の方法。
【請求項154】
前記1つ以上のベクターが哺乳類細胞内で自己複製する、上記方法請求項138、140~143、または145~153のいずれか1項に記載の方法。
【請求項155】
前記RNAアルファウイルス骨格が、アウラウイルス、フォートモーガン(Fort Morgan)ウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、ロスリバーウイルス、セムリキ森林ウイルス、シンドビスウイルス、またはマヤロウイルスの少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、上記方法請求項138、140~143、または145~154のいずれか1項に記載の方法。
【請求項156】
前記RNAアルファウイルス骨格が、ベネズエラウマ脳炎ウイルスの少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、上記方法請求項138、140~143、または145~154のいずれか1項に記載の方法。
【請求項157】
前記RNAアルファウイルス骨格が、少なくとも、
前記アウラウイルス、前記フォートモーガンウイルス、前記ベネズエラウマ脳炎ウイルス、前記ロスリバーウイルス、前記セムリキ森林ウイルス、前記シンドビスウイルス、または前記マヤロウイルスのヌクレオチド配列によってコードされる、非構造タンパク質媒介性増幅のための配列、26Sプロモーター配列、ポリ(A)配列、非構造タンパク質1(nsP1)遺伝子、nsP2遺伝子、nsP3遺伝子、及びnsP4遺伝子
を含む、請求項155または156に記載の方法。
【請求項158】
前記RNAアルファウイルス骨格が、少なくとも、
前記アウラウイルス、前記フォートモーガンウイルス、前記ベネズエラウマ脳炎ウイルス、前記ロスリバーウイルス、前記セムリキ森林ウイルス、前記シンドビスウイルス、または前記マヤロウイルスのヌクレオチド配列によってコードされる、非構造タンパク質媒介性増幅のための配列、26Sプロモーター配列、及びポリ(A)配列
を含む、請求項155または156に記載の方法。
【請求項159】
非構造タンパク質媒介性増幅のための配列が、アルファウイルス5’UTR、51nt CSE、24nt CSE、26Sサブゲノムプロモーター配列、19nt CSE、アルファウイルス3’UTR、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項157または158に記載の方法。
【請求項160】
前記RNAアルファウイルス骨格が、構造ビリオンタンパク質カプシドであるE2及びE1をコードしない、上記方法請求項157~159のいずれか1項に記載の方法。
【請求項161】
前記カセットが、前記アウラウイルス、前記フォートモーガンウイルス、前記ベネズエラウマ脳炎ウイルス、前記ロスリバーウイルス、前記セムリキ森林ウイルス、前記シンドビスウイルス、または前記マヤロウイルスのヌクレオチド配列内に構造ビリオンタンパク質の代わりに挿入されている、請求項160に記載の方法。
【請求項162】
前記ベネズエラウマ脳炎ウイルスが、配列番号3または配列番号5の配列を含む、請求項155または156に記載の方法。
【請求項163】
前記ベネズエラウマ脳炎ウイルスが、塩基対7544と11175の間の欠失をさらに含む配列番号3または配列番号5の配列を含む、請求項155または156に記載の方法。
【請求項164】
前記RNAアルファウイルス骨格が、配列番号6または配列番号7に記載の配列を含む、請求項163に記載の方法。
【請求項165】
前記カセットが、配列番号3または配列番号5の配列に記載される塩基対7544と11175の間の欠失を置き換えるように7544位に挿入されている、請求項163または164に記載の方法。
【請求項166】
前記カセットの挿入が、nsP1~4遺伝子と少なくとも1つの前記核酸配列とを含むポリシストロン性RNAの転写を提供し、前記nsP1~4遺伝子及び少なくとも1つの前記核酸配列が、別々のオープンリーディングフレーム中に存在する、請求項161~165のいずれか1項に記載の方法。
【請求項167】
前記少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列が、前記RNAアルファウイルス骨格によってコードされる天然26Sプロモーターヌクレオチド配列である、上記方法請求項138、140~143、または145~166のいずれか1項に記載の方法。
【請求項168】
前記少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列が外因性RNAプロモーターである、上記方法請求項138、140~143、または145~166のいずれか1項に記載の方法。
【請求項169】
前記第2のプロモーターヌクレオチド配列が26Sプロモーターヌクレオチド配列である、上記方法請求項138、140~143、または145~168のいずれか1項に記載の方法。
【請求項170】
前記第2のプロモーターヌクレオチド配列が、複数の26Sプロモーターヌクレオチド配列を含み、各26Sプロモーターヌクレオチド配列が、前記別々のオープンリーディングフレームのうちの1つ以上の転写を提供する、上記方法請求項138、140~143、または145~168のいずれか1項に記載の方法。
【請求項171】
前記1つ以上のベクターがそれぞれ少なくとも300ntのサイズである、上記方法請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項172】
前記1つ以上のベクターがそれぞれ少なくとも1kbのサイズである、上記方法請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項173】
前記1つ以上のベクターがそれぞれ2kbのサイズである、上記方法請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項174】
前記1つ以上のベクターがそれぞれ5kb未満のサイズである、上記方法請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項175】
前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列が、2個以上の抗原コード核酸配列を含む、上記方法請求項138~143または145~174のいずれか1項に記載の方法。
【請求項176】
各抗原コード核酸配列が互いに直接連結されている、請求項175に記載の方法。
【請求項177】
各抗原コード核酸配列が、リンカーをコードする核酸配列により別個の抗原コード核酸配列に連結されている、上記方法請求項138~143または145~176のいずれか1項に記載の方法。
【請求項178】
前記リンカーが、2つのMHCクラスIエピトープコード核酸配列を連結するか、またはMHCクラスIエピトープコード核酸配列をMHCクラスIIエピトープコード核酸配列に連結する、請求項177に記載の方法。
【請求項179】
前記リンカーが、
(1)長さが少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10残基である、連続するグリシン残基、(2)長さが少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10残基である、連続するアラニン残基、(3)2つのアルギニン残基(RR)、(4)アラニン、アラニン、チロシン(AAY)、(5)哺乳類のプロテアソームによって効率的にプロセシングされる、長さが少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10アミノ酸残基のコンセンサス配列、及び(6)起源同族のタンパク質に由来する抗原に隣接し、長さが少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または2~20アミノ酸残基である、1つ以上の天然配列
からなる群から選択される、請求項178に記載の方法。
【請求項180】
前記リンカーが、2つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列を連結するか、またはMHCクラスII配列をMHCクラスIエピトープコード核酸配列に連結する、請求項177に記載の方法。
【請求項181】
前記リンカーが配列GPGPGを含む、請求項180に記載の方法。
【請求項182】
前記抗原コード核酸配列が、前記抗原コード核酸配列の発現、安定性、細胞輸送、プロセシング及び提示、ならびに/または免疫原性を増強させる分離したまたは連続した配列に機能的にまたは直接、連結されている、上記方法請求項138~143または145~181のいずれか1項に記載の方法。
【請求項183】
前記分離したまたは連続した配列が、ユビキチン配列、プロテアソームターゲティングが増大するよう改変されたユビキチン配列(例えば、前記ユビキチン配列が、76位でのGlyからAlaへの置換を含有する)、免疫グロブリンシグナル配列(例えば、IgK)、主要組織適合性クラスI配列、リソソーム関連膜タンパク質(LAMP)-1、ヒト樹状細胞リソソーム関連膜タンパク質、及び主要組織適合性クラスII配列、のうちの少なくとも1つを含み、任意選択で、プロテアソームターゲティングが増大するよう改変された前記ユビキチン配列がA76である、請求項182に記載の方法。
【請求項184】
前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列が、少なくとも2~10、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の抗原コード核酸配列を含み、任意選択で、各抗原コード核酸配列が、別個の抗原コード核酸配列をコードする、上記方法請求項138~143または145~183のいずれか1項に記載の方法。
【請求項185】
前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列が、少なくとも11~20、15~20、11~100、11~200、11~300、11~400、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または最大400個の抗原コード核酸配列を含み、任意選択で、各抗原コード核酸配列が、別個の抗原コード核酸配列をコードする、上記方法請求項138~143または145~183のいずれか1項に記載の方法。
【請求項186】
前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列が、少なくとも11~20、15~20、11~100、11~200、11~300、11~400、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または最大400個の抗原コード核酸配列を含む、請求項138~143または145~183のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項187】
前記少なくとも1つの抗原コード核酸配列が、少なくとも2~400個の抗原コード核酸配列を含み、前記抗原コード核酸配列のうち少なくとも2個が、細胞表面にMHCクラスIによって提示されるエピトープ配列またはそれらの部分をコードする、上記方法請求項138~143または145~183のいずれか1項に記載の方法。
【請求項188】
前記MHCクラスIエピトープのうち少なくとも2つが、前記腫瘍細胞表面にMHCクラスIによって提示される、請求項144に記載の組成物。
【請求項189】
前記エピトープコード核酸配列が、少なくとも1つのMHCクラスIエピトープコード核酸配列を含み、各抗原コード核酸配列が、8~35アミノ酸長、任意選択で、9~17、9~25、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、または35アミノ酸長のポリペプチド配列をコードする、上記方法請求項138~143または145~188のいずれか1項に記載の方法。
【請求項190】
前記少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列が存在する、上記方法請求項138~143または145~189のいずれか1項に記載の方法。
【請求項191】
前記少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列が、存在し、かつ、少なくとも1つの変化を含む少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列を含み、前記変化が、コードされたエピトープ配列を、野生型核酸配列によりコードされる対応するペプチド配列とは異なるものにする、上記方法請求項141~143または145~189のいずれか1項に記載の方法。
【請求項192】
前記エピトープコード核酸配列がMHCクラスIIエピトープコード核酸配列を含み、各抗原コード核酸配列が、12~20、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または20~40アミノ酸長のポリペプチド配列をコードする、上記方法請求項138~143または145~191のいずれか1項に記載の方法。
【請求項193】
前記エピトープコード核酸配列がMHCクラスIIエピトープコード核酸配列を含み、ここで、少なくとも1つの前記MHCクラスIIエピトープコード核酸配列が存在し、少なくとも1つの前記MHCクラスIIエピトープコード核酸配列が、少なくとも1つのユニバーサルMHCクラスIIエピトープコード核酸配列を含み、任意選択で、前記少なくとも1つのユニバーサル配列が破傷風トキソイド及びPADREのうちの少なくとも1つを含む、上記方法請求項138~143または145~192のいずれか1項に記載の方法。
【請求項194】
前記少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列または前記第2のプロモーターヌクレオチド配列が誘導性である、上記方法請求項138、140~143、または145~193のいずれか1項に記載の方法。
【請求項195】
前記少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列または前記第2のプロモーターヌクレオチド配列が非誘導性である、上記方法請求項138、140~143、または145~193のいずれか1項に記載の方法。
【請求項196】
前記少なくとも1つのポリ(A)配列が、前記アルファウイルスにとって天然のポリ(A)配列を含む、上記方法請求項138、140~143、または145~195のいずれか1項に記載の方法。
【請求項197】
前記少なくとも1つのポリ(A)配列が、前記アルファウイルスにとって外因性のポリ(A)配列を含む、上記方法請求項138、140~143、または145~195のいずれか1項に記載の方法。
【請求項198】
前記少なくとも1つのポリ(A)配列が、少なくとも1つの前記核酸配列のうちの少なくとも1つに機能的に連結されている、上記方法請求項138、140~143、または145~197のいずれか1項に記載の方法。
【請求項199】
前記少なくとも1つのポリ(A)配列が、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、または少なくとも90個の連続するAヌクレオチドである、請求項138、140~143、または145~198のいずれか1項に記載の方法。
【請求項200】
前記少なくとも1つのポリ(A)配列が、少なくとも100個の連続するAヌクレオチドである、上記方法請求項138、140~143、または145~198のいずれか1項に記載の方法。
【請求項201】
前記エピトープコード核酸配列がMHCクラスIエピトープコード核酸配列を含み、前記MHCクラスIエピトープコード核酸配列が、
(a)前記腫瘍からエクソーム、トランスクリプトーム、または全ゲノムの腫瘍ヌクレオチド配列決定データのうちの少なくとも1つを取得するステップであって、前記腫瘍ヌクレオチド配列決定データが、エピトープのセットの各々についてのペプチド配列を表すデータを取得するために使用される、前記取得するステップ、
(b)各エピトープの前記ペプチド配列を提示モデルに入力して、前記腫瘍の腫瘍細胞表面に前記MHCアレルのうちの1つ以上によって前記エピトープの各々が提示される数値的尤度のセットを生成するステップであって、前記数値的尤度のセットが、受け取った質量分析データに少なくとも基づいて同定されている、前記生成するステップ、及び
(c)前記MHCクラスIエピトープコード核酸配列を生成するために使用される選択されたエピトープのセットを生成するために、前記数値的尤度のセットに基づいて前記エピトープのセットのサブセットを選択するステップ
を実施することによって選択される、上記方法請求項138~143または145~200のいずれか1項に記載の方法。
【請求項202】
前記MHCクラスIエピトープコード核酸配列の各々が、
(a)前記腫瘍からエクソーム、トランスクリプトーム、または全ゲノムの腫瘍ヌクレオチド配列決定データのうちの少なくとも1つを取得するステップであって、前記腫瘍ヌクレオチド配列決定データが、エピトープのセットの各々についてのペプチド配列を表すデータを取得するために使用される、前記取得するステップ、
(b)各エピトープの前記ペプチド配列を提示モデルに入力して、前記腫瘍の腫瘍細胞表面に前記MHCアレルのうちの1つ以上によって前記エピトープの各々が提示される数値的尤度のセットを生成するステップであって、前記数値的尤度のセットが、受け取った質量分析データに少なくとも基づいて同定されている、前記生成するステップ、及び
(c)少なくとも20個の前記MHCクラスIエピトープコード核酸配列を生成するために使用される選択されたエピトープのセットを生成するために、前記数値的尤度のセットに基づいて前記エピトープのセットのサブセットを選択するステップ
を実施することによって選択される、請求項144に記載の方法。
【請求項203】
前記選択されたエピトープのセットの数が2~20である、請求項201に記載の方法。
【請求項204】
前記提示モデルが、
(a)前記MHCアレルのうちの特定の1つとペプチド配列の特定の位置における特定のアミノ酸との対の存在と、
(b)前記対の前記MHCアレルのうちの前記特定の1つによる、前記腫瘍細胞表面での、前記特定の位置に前記特定のアミノ酸を含むそのようなペプチド配列の提示の可能性と
の間の依存性を表す、請求項201~203のいずれか1項に記載の方法。
【請求項205】
選択されたエピトープのセットを選択することが、前記提示モデルに基づいて、選択されなかったエピトープと比べて前記腫瘍細胞表面に提示される可能性が増大しているエピトープを選択することを含む、請求項201~204のいずれか1項に記載の方法。
【請求項206】
選択されたエピトープのセットを選択することが、前記提示モデルに基づいて、選択されなかったエピトープと比べて前記対象において腫瘍特異的な免疫応答の誘導能がある可能性が増大しているエピトープを選択することを含む、請求項201~205のいずれか1項に記載の方法。
【請求項207】
選択されたエピトープのセットを選択することが、前記提示モデルに基づいて、選択されなかったエピトープと比べてプロフェッショナル抗原提示細胞(APC)によってナイーブT細胞に提示される能力がある可能性が増大しているエピトープを選択することを含み、任意選択で、前記APCが樹状細胞(DC)である、請求項201~206のいずれか1項に記載の方法。
【請求項208】
選択されたエピトープのセットを選択することが、前記提示モデルに基づいて、選択されなかったエピトープと比べて中枢性寛容または末梢性寛容を介した阻害を受ける可能性が減少しているエピトープを選択することを含む、請求項201~207のいずれか1項に記載の方法。
【請求項209】
選択されたエピトープのセットを選択することが、前記提示モデルに基づいて、選択されなかったエピトープと比べて前記対象において正常組織に対する自己免疫応答の誘導能がある可能性が減少しているエピトープを選択することを含む、請求項201~208のいずれか1項に記載の方法。
【請求項210】
エクソームまたはトランスクリプトームのヌクレオチド配列決定データが、前記腫瘍組織においてシークエンシングを実施することによって取得される、請求項201~209のいずれか1項に記載の方法。
【請求項211】
前記シークエンシングが次世代シークエンシング(NGS)または任意の超並列シークエンシング手法である、請求項210に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年12月3日に出願された米国特許仮出願第63/121,164号の利益を主張するものであり、あらゆる目的のために参照することによりその全体が本発明に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。2020年12月3日に作成された上記ASCIIコピーは、GSO-096_Sequence_Listing.txtという名前であり、サイズが6,925,547バイトである。
【背景技術】
【0003】
背景
腫瘍特異抗原に基づく治療用ワクチンは、次世代の個別化がん免疫療法として大いに有望である。1~3例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)及び黒色腫等の遺伝子変異量の高いがんは特に、ネオアンチゲン生成の可能性が比較的高いことから、そのような治療法の魅力的な標的である。4、5初期の証拠では、ネオアンチゲンに基づくワクチン接種がT細胞応答を誘発することができること6、及びネオアンチゲン標的細胞療法が特定の患者においてある特定の状況下で腫瘍退縮を生じさせ得ること7が示されている。
【0004】
がん及び感染症のいずれの状況においても抗原ワクチン設計に関する問題の1つは、存在する多くのコード変異のうちどれが「最良の」治療用抗原、例えば、免疫を誘発することができる抗原を生成するのかということである。
【0005】
現在の抗原予測方法の課題に加え、多くがヒトに由来する、ヒトにおける抗原送達に使用することができる利用可能なベクター系に関しても、ある特定の課題が存在する。例えば、多くのヒトは、それまでの自然曝露の結果として、ヒトウイルスに対する既存の免疫を有しており、この免疫が、がん治療または感染症に対するワクチン接種等の、ワクチン接種戦略における抗原送達のための組換えヒトウイルスの使用に対する大きな障害となり得る。上記問題に対処するワクチン接種戦略でいくらかの前進が見られるが、特に、臨床応用のためには依然として改善、例えば、ワクチンの効力及び有効性の改善が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
概要
本明細書では、チンパンジーアデノウイルス(ChAdV)ベクターを含む組成物を対象に送達するための方法であって、方法が、複数の用量の組成物を対象に投与することを含み、複数の用量が少なくとも初回用量及び2回目の用量を含み、初回用量と2回目の用量の間の期間が少なくとも27週間である、方法を開示する。
【0007】
また、本明細書では、チンパンジーアデノウイルス(ChAdV)ベクターを含む組成物を対象に送達するための方法であって、方法が、複数の用量の組成物を対象に投与することを含み、複数の用量が少なくとも初回用量及び2回目の用量を含み、2回目の用量の投与の前にChAdV特異的中和抗体価が中和閾値未満であると決定される、方法も開示する。
【0008】
また、本明細書では、チンパンジーアデノウイルス(ChAdV)ベクターを含む組成物を対象に送達するための方法であって、(a)組成物の初回用量を対象に投与すること、(b)ChAdV特異的中和抗体価を決定するかまたは決定しておくこと、及び(c)ChAdV特異的中和抗体価が中和閾値未満であると決定された場合に、組成物の2回目の用量を対象に投与すること、を含む、方法も開示する。
【0009】
いくつかの態様では、初回用量と2回目の用量の間の期間は、少なくとも27週間、少なくとも28週間、少なくとも29週間、少なくとも30週間、少なくとも31週間、または少なくとも32週間である。
【0010】
いくつかの態様では、初回用量はプライミング用量である。
【0011】
いくつかの態様では、複数の用量は、3回以上の用量を含む。いくつかの態様では、複数の用量のうちの1回以上は、初回用量の前に投与される。
【0012】
いくつかの態様では、初回用量と2回目の用量の間に組成物の追加の用量は投与されない。
【0013】
いくつかの態様では、中和抗体価は、ChAdVウイルスを50%中和する、免疫化された対象からの血清の最小希釈度として計算されるNT50値である。いくつかの態様では、中和閾値は、900以下のNT50値である。いくつかの態様では、中和抗体価を決定することは、(1)免疫化された対象からの血清の1つ以上の希釈液を、ChAdVウイルスの中和に十分な条件下でChAdVウイルスと接触させるステップ、及び(2)中和されていないウイルスと比べてChAdVウイルスの中和を評価するステップを含む。いくつかの態様では、中和を評価するステップは、ChAdVウイルスにより発現されるレポーターコンストラクトの発現を評価することを含む。
【0014】
いくつかの態様では、中和閾値は、2回目の用量におけるChAdVウイルスの完全中和のための最小中和抗体価である。いくつかの態様では、中和閾値は、2回目の用量が対象において免疫応答を誘導する最小中和抗体価である。
【0015】
いくつかの態様では、ChAdVベクターは、少なくとも1つの抗原をコードする。いくつかの態様では、少なくとも1つの抗原は非自己由来ペプチドであり、非自己由来ペプチドは対象の野生型遺伝子によってコードされない。いくつかの態様では、少なくとも1つの抗原は腫瘍関連抗原である。いくつかの態様では、腫瘍関連抗原はネオアンチゲンである。
【0016】
いくつかの態様では、少なくとも1つの抗原は外来性抗原である。いくつかの態様では、外来性抗原は、病原体、ウイルス、細菌、真菌、または寄生虫からのものである。
【0017】
いくつかの態様では、複数の用量の各々は同じ抗原を含む。
【0018】
いくつかの態様では、組成物は、筋肉内(IM)、皮内(ID)、皮下(SC)、または静脈内(IV)に投与される。いくつかの態様では、組成物は、(IM)投与される。いくつかの態様では、IM投与は、別々の注射部位において実施される。いくつかの態様では、別々の注射部位は、相対する三角筋における注射部位である。いくつかの態様では、別々の注射部位は、両側の殿筋部位または大腿直筋部位における注射部位である。
【0019】
いくつかの態様では、方法には免疫調節物質の投与が含まれないか、または方法が免疫調節物質の非存在下で実施され、任意選択で、免疫調節物質はチェックポイント阻害物質である。
【0020】
いくつかの態様では、方法はさらに、免疫調節物質を投与することを含む。いくつかの態様では、免疫調節物質は、抗CTLA4抗体もしくはその抗原結合断片、抗PD-1抗体もしくはその抗原結合断片、抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合断片、抗4-1BB抗体もしくはその抗原結合断片、または抗OX-40抗体もしくはその抗原結合断片である。
【0021】
いくつかの態様では、方法はさらに、対象のHLAハプロタイプを決定するかまたは決定しておくことを含む。
【0022】
いくつかの態様では、ChAdVベクターは、(a)ChAdV骨格であって、(i)少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列、及び(ii)少なくとも1つのポリアデニル化(ポリ(A))配列、を含む、ChAdV骨格、ならびに(b)カセットであって、(i)少なくとも1つの抗原コード核酸配列であって、a.エピトープコード核酸配列であって、コードされたエピトープ配列を、野生型核酸配列によりコードされる対応するペプチド配列とは異なるものにする、少なくとも1つの変化を任意選択で含む、エピトープコード核酸配列、b.任意選択で5’リンカー配列、及びc.任意選択で3’リンカー配列、を任意選択で含む、少なくとも1つの抗原コード核酸配列、を含む、カセット、を含み、ここで、カセットが、少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列及び少なくとも1つのポリ(A)配列に機能的に連結されている。
【0023】
いくつかの態様では、ChAdVベクターは、(a)ChAdV骨格であって、(i)配列番号1に記載の配列の少なくともヌクレオチド2~36,518を含む改変ChAdV68配列であって、ヌクレオチド2~36,518が、(1)E1欠失に対応する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド577~3403、(2)E3欠失に対応する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド27,125~31,825、及び(3)部分的E4欠失に対応する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド34,916~35,642を欠く、改変ChAdV68配列、(ii)CMVプロモーターヌクレオチド配列、及び(iii)SV40ポリアデニル化(ポリ(A))配列、を含む、ChAdV骨格、ならびに(b)カセットであって、(i)少なくとも1つの抗原コード核酸配列であって、a.エピトープコード核酸配列であって、コードされたエピトープ配列を、野生型核酸配列によりコードされる対応するペプチド配列とは異なるものにする、少なくとも1つの変化を任意選択で含む、エピトープコード核酸配列、b.任意選択で5’リンカー配列、及びc.任意選択で3’リンカー配列、を含む、少なくとも1つの抗原コード核酸配列、を含む、カセット、を含み、ここで、カセットがE1欠失内に挿入されており、かつカセットが、CMVプロモーターヌクレオチド配列及びSV40ポリ(A)配列に機能的に連結されている。
【0024】
いくつかの態様では、エピトープコード核酸配列は、細胞の表面にMHCクラスI及び/またはMHCクラスIIによって提示されることが既知であるかまたは疑われているエピトープをコードし、任意選択で、細胞の表面は腫瘍細胞表面または感染細胞表面であり、任意選択で、細胞は対象の細胞である。いくつかの態様では、少なくとも1つの抗原コード核酸配列は、エピトープへの抗原プロセシングを受けることができるポリペプチド配列をコードし、任意選択で、エピトープは、細胞の表面にMHCクラスIによって提示されることが知られているかまたは疑われており、任意選択で、細胞の表面は腫瘍細胞表面または感染細胞表面である。いくつかの態様では、細胞は、肺がん、黒色腫、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、腎臓がん、胃がん、結腸がん、精巣がん、頭頸部がん、膵がん、脳腫瘍、B細胞リンパ腫、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、T細胞リンパ性白血病、非小細胞肺がん、及び小細胞肺がんからなる群から選択される腫瘍細胞であるか、または細胞は、病原体感染細胞、ウイルス感染細胞、細菌感染細胞、真菌感染細胞、及び寄生虫感染細胞からなる群から選択される感染細胞である。
【0025】
いくつかの態様では、ウイルス感染細胞はHIV感染細胞である。いくつかの態様では、エピトープコード核酸配列は、HIV GAGタンパク質またはエピトープをコードする。
【0026】
いくつかの態様では、ChAdVベクター中のカセットの各要素の順番に並べられた配列は、5’から3’方向へ、以下:
Pa-(L5b-Nc-L3d)X-(G5e-Uf)Y-G3g
を含む式で表され、
式中、Pは、少なくとも1つの抗原コード核酸配列のうちの少なくとも1つに機能的に連結されている少なくとも1つのプロモーター配列を含み、a=1であり、Nはエピトープコード核酸配列のうちの1つを含み、c=1であり、L5は5’リンカー配列を含み、b=0または1であり、L3は3’リンカー配列を含み、d=0または1であり、G5は、GPGPGアミノ酸リンカーをコードする少なくとも1つの核酸配列のうちの1つを含み、e=0または1であり、G3は、GPGPGアミノ酸リンカーをコードする少なくとも1つの核酸配列のうちの1つを含み、g=0または1であり、Uは、少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列のうちの1つを含み、f=1であり、X=1~400であり、各Xについて、対応するNcはエピトープコード核酸配列であり、Y=0、1、または2であり、各Yについて、対応するUfはMHCクラスIIエピトープコード核酸配列である。
【0027】
いくつかの態様では、各Xについて、対応するNcは別個のエピトープコード核酸配列である。いくつかの態様では、各Yについて、対応するUfは別個のMHCクラスIIエピトープコード核酸配列である。
【0028】
いくつかの態様では、b=1、d=1、e=1、g=1、h=1、X=10、Y=2であり、PはCMVプロモーター配列であり、各Nは、7~15アミノ酸長のMHCクラスIエピトープ、MHCクラスIIエピトープ、B細胞応答を刺激する能力があるエピトープ、またはそれらの組み合わせをコードし、L5は、エピトープの天然N末端アミノ酸配列をコードする天然5’リンカー配列であり、ここで、5’リンカー配列は、少なくとも3アミノ酸長であるペプチドをコードし、L3は、エピトープの天然C末端アミノ酸配列をコードする天然3’リンカー配列であり、ここで、3’リンカー配列は、少なくとも3アミノ酸長であるペプチドをコードし、Uは、PADREクラスII配列及び破傷風トキソイドMHCクラスII配列の各々であり、ChAdVベクターは、配列番号1に記載の配列の少なくともヌクレオチド2~36,518を含む改変ChAdV68配列を含み、ここで、ヌクレオチド2~36,518が、(1)E1欠失に対応する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド577~3403、(2)E3欠失に対応する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド27,125~31,825、及び(3)部分的E4欠失に対応する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド34,916~35,642を欠き、ネオアンチゲンカセットはE1欠失内に挿入されており、I抗原コード核酸配列の各々は、25アミノ酸長であるポリペプチドをコードする。
【0029】
いくつかの態様では、カセットは、少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と少なくとも1つのポリ(A)配列の間に組み込まれる。いくつかの態様では、少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列は、カセットに機能的に連結されている。
【0030】
いくつかの態様では、ChAdV骨格は、ChAdV68ベクター骨格を含む。いくつかの態様では、ChAdV68ベクター骨格は配列番号1に記載の配列を含む。いくつかの態様では、ChAdV68ベクター骨格は、ChAdV68ゲノムに関してまたは配列番号1に示される配列に関して、アデノウイルスのE1A、E1B、E2A、E2B、E3、L1、L2、L3、L4、及びL5遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子における機能欠失を含み、任意選択で、アデノウイルス骨格または改変ChAdV68配列は、アデノウイルスゲノムに関して、または配列番号1に示される配列に関して、(1)E1A及びE1Bにおいて、または(2)E1A、E1B、及びE3において完全に欠失しているかまたは機能的に欠失しており、任意選択で、E1遺伝子は、配列番号1に示される配列に関して、少なくともヌクレオチド577~3403のE1欠失を介して機能的に欠失しており、任意選択で、E3遺伝子は、配列番号1に示される配列に関して、少なくともヌクレオチド27,125~31,825のE3欠失を介して機能的に欠失している。いくつかの態様では、ChAdV68ベクター骨格は、ChAdV68ゲノムに関して、または配列番号1に示される配列に関して、1つ以上の遺伝子または制御配列を含み、任意選択で、1つ以上の遺伝子または制御配列は、チンパンジーアデノウイルス末端逆位反復(ITR)、E1A、E1B、E2A、E2B、E3、E4、L1、L2、L3、L4、及びL5遺伝子からなる群から選択される。
【0031】
いくつかの態様では、ChAdV68ベクター骨格は、部分的に欠失したE4遺伝子を含む。いくつかの態様では、部分的に欠失したE4遺伝子は、A.配列番号1に示され、かつ、配列番号1に示される配列の少なくともヌクレオチド34,916~35,642を欠く、E4遺伝子配列、B.配列番号1に示され、かつ、配列番号1に示される配列の少なくともヌクレオチド34,916~34,942、ヌクレオチド34,952~35,305、配列番号1に示される配列のヌクレオチド35,302~35,642を欠く、E4遺伝子配列であって、ベクターが、配列番号1に示される配列の少なくともヌクレオチド2~36,518を含む、E4遺伝子配列、C.配列番号1に示され、かつ、配列番号1に示される配列の少なくともヌクレオチド34,980~36,516を欠く、E4遺伝子配列であって、ベクターが、配列番号1に示される配列の少なくともヌクレオチド2~36,518を含む、E4遺伝子配列、D.配列番号1に示され、かつ、配列番号1に示される配列の少なくともヌクレオチド34,979~35,642を欠く、E4遺伝子配列であって、ベクターが、配列番号1に示される配列の少なくともヌクレオチド2~36,518を含む、E4遺伝子配列、E.E4Orf2の少なくとも部分欠失、完全欠失E4Orf3、及びE4Orf4の少なくとも部分欠失である、E4欠失、F.E4Orf2の少なくとも部分欠失、E4Orf3の少なくとも部分欠失、及びE4Orf4の少なくとも部分欠失である、E4欠失、G.E4Orf1の少なくとも部分欠失、完全欠失E4Orf2、及びE4Orf3の少なくとも部分欠失である、E4欠失、またはH.E4Orf2の少なくとも部分欠失及びE4Orf3の少なくとも部分欠失である、E4欠失、を含む。
【0032】
いくつかの態様では、ChAdV68ベクター骨格は、配列番号1に記載の配列の少なくともヌクレオチド2~36,518を含み、ヌクレオチド2~36,518は、(1)E1欠失に対応する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド577~3403、(2)E3欠失に対応する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド27,125~31,825、及び(3)部分的E4欠失に対応する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド34,916~35,642を欠き、任意選択で、抗原カセットがE1欠失内に挿入される。いくつかの態様では、ChAdV68ベクター骨格は、配列番号29369に記載の配列を含み、任意選択で、抗原カセットがE1欠失内に挿入される。いくつかの態様では、ChAdV68ベクター骨格は、配列番号1に記載の配列の少なくともヌクレオチド2~36,518を含み、ヌクレオチド2~36,518は、A.E1欠失に対応する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド577~3403、B.E3欠失に対応する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド27,125~31,825、C.部分的E4欠失に対応する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド34,916~35,642、D.配列番号1に示される配列のヌクレオチド456~3014、E.配列番号1に示される配列のヌクレオチド27,816~31,333、F.配列番号1に示される配列のヌクレオチド3957~10346、G.配列番号1に示される配列のヌクレオチド21787~23370、H.配列番号1に示される配列のヌクレオチド33486~36193、またはそれらの組み合わせを欠く。
【0033】
いくつかの態様では、ChAdV68ベクター骨格は、配列番号1に記載の配列の少なくともヌクレオチド2~36,518を含み、ヌクレオチド2~36,518は、(1)E1欠失に対応する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド577~3403、及び(2)E3欠失に対応する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド27,125~31,825を欠く。
【0034】
いくつかの態様では、ここで、カセットが、E1領域にて、E3領域にて、及び/またはカセットの組み込みを可能にする任意の欠失AdV領域にてChAdV骨格内に挿入される。
【0035】
いくつかの態様では、ChAdV骨格は、第一世代、第二世代、またはヘルパー依存型のアデノウイルスベクターのうちの1つから作製される。いくつかの態様では、少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列は、CMVプロモーター配列、SV40プロモーター配列、EF-1プロモーター配列、RSVプロモーター配列、PGKプロモーター配列、HSAプロモーター配列、MCKプロモーター配列、及びEBVプロモーター配列からなる群から選択される。いくつかの態様では、少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列は、CMVプロモーター配列である。
【0036】
いくつかの態様では、エピトープコード核酸配列のうちの少なくとも1つは、発現及び翻訳された場合に、対象の細胞上にMHCクラスIによって提示され得るエピトープをコードする。いくつかの態様では、エピトープコード核酸配列のうちの少なくとも1つは、発現及び翻訳された場合に、対象の細胞上にMHCクラスIIによって提示され得るエピトープをコードする。
【0037】
いくつかの態様では、少なくとも1つの抗原コード核酸配列は、2個以上の抗原コード核酸配列を含む。いくつかの態様では、各抗原コード核酸配列は、互いに直接連結されている。
【0038】
いくつかの態様では、各抗原コード核酸配列は、リンカーをコードする核酸配列により別個の抗原コード核酸配列に連結されている。いくつかの態様では、リンカーは、2つのエピトープコード核酸配列を連結するか、またはエピトープコード核酸配列をMHCクラスIIエピトープコード核酸配列に連結する。いくつかの態様では、リンカーは、(1)長さが少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10残基である、連続するグリシン残基、(2)長さが少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10残基である、連続するアラニン残基、(3)2つのアルギニン残基(RR)、(4)アラニン、アラニン、チロシン(AAY)、(5)哺乳類のプロテアソームによって効率的にプロセシングされる、長さが少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10アミノ酸残基のコンセンサス配列、及び(6)起源同族のタンパク質に由来する抗原に隣接し、長さが少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または2~20アミノ酸残基である、1つ以上の天然配列、からなる群から選択される。いくつかの態様では、リンカーは、2つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列を連結するか、またはMHCクラスII配列をエピトープコード核酸配列に連結する。いくつかの態様では、リンカーは配列GPGPGを含む。
【0039】
いくつかの態様では、抗原コード核酸配列は、抗原コード核酸配列の発現、安定性、細胞輸送、プロセシング及び提示、及び/または免疫原性を増強させる分離したまたは連続した配列に機能的にまたは直接、連結されている。いくつかの態様では、分離したまたは連続した配列は、ユビキチン配列、プロテアソームターゲティングが増大するよう改変されたユビキチン配列(例えば、ユビキチン配列は、76位でのGlyからAlaへの置換を含有する)、免疫グロブリンシグナル配列(例えば、IgK)、主要組織適合性クラスI配列、リソソーム関連膜タンパク質(LAMP)-1、ヒト樹状細胞リソソーム関連膜タンパク質、及び主要組織適合性クラスII配列、のうちの少なくとも1つを含み、任意選択で、プロテアソームターゲティングが増大するよう改変されたユビキチン配列がA76である。
【0040】
いくつかの態様では、エピトープコード核酸配列は、少なくとも1つの変化を含み、この変化により、翻訳された対応する野生型核酸配列と比べて、コードされたエピトープが、その対応するMHCアレルに対する増大した結合親和性を有する。いくつかの態様では、エピトープコード核酸配列は、少なくとも1つの変化を含み、この変化により、翻訳された対応する野生型核酸配列と比べて、コードされたエピトープが、その対応するMHCアレルに対する増大した結合安定性を有する。いくつかの態様では、エピトープコード核酸配列は、少なくとも1つの変化を含み、この変化により、翻訳された対応する野生型核酸配列と比べて、コードされたエピトープが、その対応するMHCアレル上での増大した提示の可能性を有する。いくつかの態様では、少なくとも1つの変化は、点変異、フレームシフト変異、非フレームシフト変異、欠失変異、挿入変異、スプライスバリアント、ゲノム再編成、または、プロテアソームにより生成されたスプライス抗原を含む。
【0041】
いくつかの態様では、エピトープコード核酸配列は、がんを有することがわかっているかまたは疑われている対象において発現することが既知であるかまたは疑われているエピトープをコードする。いくつかの態様では、がんは固形腫瘍を含む。いくつかの態様では、がんは、肺がん、黒色腫、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、腎臓がん、胃がん、結腸がん、精巣がん、頭頸部がん、膵がん、膀胱がん、脳腫瘍、B細胞リンパ腫、急性骨髄性白血病、成人急性リンパ芽球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、T細胞リンパ性白血病、非小細胞肺がん、及び小細胞肺がんからなる群から選択される。
【0042】
いくつかの態様では、少なくとも1つの抗原コード核酸配列は、少なくとも2~10、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の抗原コード核酸配列を含み、任意選択で、各抗原コード核酸配列が、別個の抗原コード核酸配列をコードする。いくつかの態様では、少なくとも1つの抗原コード核酸配列は、少なくとも11~20、15~20、11~100、11~200、11~300、11~400、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または最大400個の抗原コード核酸配列を含み、任意選択で、各抗原コード核酸配列が、別個の抗原コード核酸配列をコードする。いくつかの態様では、少なくとも1つの抗原コード核酸配列は、少なくとも11~20、15~20、11~100、11~200、11~300、11~400、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または最大400個の抗原コード核酸配列を含む。
【0043】
いくつかの態様では、少なくとも1つの抗原コード核酸配列は、少なくとも2~400個の抗原コード核酸配列を含み、抗原コード核酸配列のうち少なくとも2個が、細胞表面にMHCクラスIによって提示されるエピトープ配列またはそれらの部分をコードする。いくつかの態様では、MHCクラスIエピトープのうち少なくとも2個は、腫瘍細胞表面にMHCクラスIによって提示される。
【0044】
いくつかの態様では、エピトープコード核酸配列は、少なくとも1つのMHCクラスIエピトープコード核酸配列を含み、各抗原コード核酸配列は、8~35アミノ酸長、任意選択で、9~17、9~25、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、または35アミノ酸長のポリペプチド配列をコードする。
【0045】
いくつかの態様では、少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列が存在する。
【0046】
いくつかの態様では、少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列が、存在し、かつ、少なくとも1つの変化を含む少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列を含み、前記変化が、コードされたエピトープ配列を、野生型核酸配列によりコードされる対応するペプチド配列とは異なるものにする。
【0047】
いくつかの態様では、エピトープコード核酸配列は、MHCクラスIIエピトープコード核酸配列を含み、各抗原コード核酸配列が、12~20、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または20~40アミノ酸長のポリペプチド配列をコードする。いくつかの態様では、エピトープコード核酸配列は、MHCクラスIIエピトープコード核酸配列を含み、ここで、少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列が存在し、少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列が少なくとも1つのユニバーサルMHCクラスIIエピトープコード核酸配列を含み、任意選択で、少なくとも1つのユニバーサル配列が破傷風トキソイド及びPADREのうちの少なくとも1つを含む。
【0048】
いくつかの態様では、少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列は誘導性である。いくつかの態様では、少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列は非誘導性である。いくつかの態様では、少なくとも1つのポリ(A)配列は、ウシ成長ホルモン(BGH)SV40ポリA配列を含む。いくつかの態様では、少なくとも1つのポリ(A)配列は、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、または少なくとも90個の連続するAヌクレオチドである。いくつかの態様では、少なくとも1つのポリ(A)配列は、少なくとも100個の連続するAヌクレオチドである。
【0049】
いくつかの態様では、カセットはさらに、イントロン配列、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)配列、配列内リボソーム進入配列(IRES)の配列、2A自己切断ペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、フーリン切断部位をコードするヌクレオチド配列、または、mRNAの核外輸送、安定性、もしくは翻訳効率を増強させることが知られており少なくとも1つの抗原コード核酸配列のうちの少なくとも1つに機能的に連結されている5’もしくは3’の非コード領域内の配列、のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの態様では、カセットはさらに、レポーター遺伝子を含み、レポーター遺伝子が、緑色蛍光タンパク質(GFP)、GFPバリアント、分泌型アルカリホスファターゼ、ルシフェラーゼ、ルシフェラーゼバリアント、または検出可能なペプチドもしくはエピトープを含むが、これらに限定されない。いくつかの態様では、検出可能なペプチドまたはエピトープは、HAタグ、Flagタグ、Hisタグ、またはV5タグからなる群から選択される。
【0050】
いくつかの態様では、1つ以上のベクターはさらに、少なくとも1つの免疫調節物質をコードする1つ以上の核酸配列を含む。いくつかの態様では、免疫調節物質は、抗CTLA4抗体もしくはその抗原結合断片、抗PD-1抗体もしくはその抗原結合断片、抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合断片、抗4-1BB抗体もしくはその抗原結合断片、または抗OX-40抗体もしくはその抗原結合断片である。いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合断片は、Fab断片、Fab’断片、一本鎖Fv(scFv)、単一特異的であるかもしくは複数の特異性を一緒に連結させた単一ドメイン抗体(sdAb)(例えば、ラクダ科の動物の抗体ドメイン)、または全長一本鎖抗体(例えば、重鎖と軽鎖が可動性リンカーによって連結されている全長IgG)である。いくつかの態様では、抗体の重鎖配列及び軽鎖配列は、2A等の自己切断配列もしくはIRESのいずれかで区切られている連続した配列であるか、または抗体の重鎖配列及び軽鎖配列は、連続するグリシン残基等の可動性リンカーによって連結されている。いくつかの態様では、免疫調節物質はサイトカインである。いくつかの態様では、サイトカインは、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、もしくはIL-21またはそれら各々のバリアントのうちの少なくとも1つである。
【0051】
いくつかの態様では、少なくとも1つのエピトープコード核酸配列は、(a)腫瘍、感染細胞、または感染症生物から、エクソーム、トランスクリプトーム、または全ゲノムのヌクレオチド配列決定データのうちの少なくとも1つを取得するステップであって、ヌクレオチド配列決定データが、抗原のセットの各々についてのペプチド配列を表すデータを取得するために使用される、取得するステップ、(b)各抗原のペプチド配列を提示モデルに入力して、細胞表面に、任意選択で腫瘍細胞表面または感染細胞表面にMHCアレルのうちの1つ以上によって抗原の各々が提示される数値的尤度のセットを生成するステップであって、数値的尤度のセットが、受け取った質量分析データに少なくとも基づいて同定されている、生成するステップ、及び(c)少なくとも1つのエピトープコード核酸配列を生成するために使用される選択された抗原のセットを生成するために、数値的尤度のセットに基づいて抗原のセットのサブセットを選択するステップ、を実施することによって選択される。いくつかの態様では、エピトープコード核酸配列の各々は、(a)腫瘍、感染細胞、または感染症生物から、エクソーム、トランスクリプトーム、または全ゲノムのヌクレオチド配列決定データのうちの少なくとも1つを取得するステップであって、ヌクレオチド配列決定データが、抗原のセットの各々についてのペプチド配列を表すデータを取得するために使用される、取得するステップ、(b)各抗原のペプチド配列を提示モデルに入力して、細胞表面に、任意選択で腫瘍細胞表面または感染細胞表面にMHCアレルのうちの1つ以上によって抗原の各々が提示される数値的尤度のセットを生成し、数値的尤度のセットが、受け取った質量分析データに少なくとも基づいて同定されている、ステップ、及び(c)少なくとも20個のエピトープコード核酸配列を生成するために使用される選択された抗原のセットを生成するために、数値的尤度のセットに基づいて抗原のセットのサブセットを選択するステップ、を実施することによって選択される。いくつかの態様では、選択されたエピトープのセットの数は2~20である。いくつかの態様では、提示モデルは、(a)MHCアレルのうちの特定の1つとペプチド配列の特定の位置における特定のアミノ酸との対の存在と、(b)対のMHCアレルのうちの特定の1つによる、細胞表面での、任意選択で腫瘍細胞表面または感染細胞表面での、特定の位置に特定のアミノ酸を含むそのようなペプチド配列の提示の可能性、との間の依存性を表す。いくつかの態様では、選択された抗原のセットを選択することは、提示モデルに基づいて、選択されなかった抗原と比べて細胞表面に提示される可能性が増大している抗原を選択することを含み、任意選択で、選択された抗原は、1つ以上の特定のHLAアレルによって提示されると確認されている。いくつかの態様では、選択されたエピトープのセットを選択することは、提示モデルに基づいて、選択されなかったエピトープと比べて対象において腫瘍特異的な免疫応答の誘導能がある可能性が増大しているエピトープを選択することを含む。いくつかの態様では、選択された抗原のセットを選択することは、提示モデルに基づいて、選択されなかった抗原と比べて対象において腫瘍特異的または感染症特異的な免疫応答の誘導能がある可能性が増大している抗原を選択することを含む。いくつかの態様では、選択された抗原のセットを選択することは、提示モデルに基づいて、選択されなかった抗原と比べてプロフェッショナル抗原提示細胞(APC)によってナイーブT細胞に提示される能力がある可能性が増大している抗原を選択することを含み、任意選択で、APCは樹状細胞(DC)である。いくつかの態様では、選択された抗原のセットを選択することは、提示モデルに基づいて、選択されなかった抗原と比べて中枢性寛容または末梢性寛容を介した阻害を受ける可能性が減少している抗原を選択することを含む。いくつかの態様では、選択された抗原のセットを選択することは、提示モデルに基づいて、選択されなかった抗原と比べて対象において正常組織に対する自己免疫応答の誘導能がある可能性が減少している抗原を選択することを含む。いくつかの態様では、エクソームまたはトランスクリプトームのヌクレオチド配列決定データは、腫瘍細胞もしくは腫瘍組織、感染細胞、または感染症生物においてシークエンシングを実施することによって取得される。いくつかの態様では、シークエンシングは次世代シークエンシング(NGS)または任意の超並列シークエンシング手法である。
【0052】
いくつかの態様では、カセットは、カセット内の隣接配列によって形成される接合部エピトープ配列を含む。いくつかの態様では、少なくとも1つまたはそれぞれの接合部エピトープ配列は、MHCに対する親和性が500nM超である。いくつかの態様では、各接合部エピトープ配列は非自己である。
【0053】
いくつかの態様では、MHCクラスIエピトープの各々は、集団の少なくとも5%に存在する少なくとも1つのHLAアレルによる提示能があると予測または確認される。いくつかの態様では、MHCクラスIエピトープの各々は、少なくとも1つのHLAアレルによる提示能があると予測または確認され、抗原/HLAの各対の、集団における抗原/HLA保有率は少なくとも0.01%である。いくつかの態様では、MHCクラスIエピトープの各々は、少なくとも1つのHLAアレルによる提示能があると予測または確認され、抗原/HLAの各対の、集団における抗原/HLA保有率は少なくとも0.1%である。
【0054】
いくつかの態様では、カセットは、翻訳された野生型核酸配列を含む非治療的なMHCクラスIエピトープ核酸配列もクラスIIエピトープ核酸配列もコードせず、ここで、非治療的なエピトープは、対象のMHCアレルに提示されると予測される。いくつかの態様では、予測される非治療的なMHCクラスIエピトープ核酸配列またはクラスIIエピトープ配列は、カセット内の隣接配列によって形成される接合部エピトープ配列である。いくつかの態様では、予測は、非治療的なエピトープの配列を提示モデルに入力することによって生成される提示尤度に基づく。いくつかの態様では、カセット内の抗原コード核酸配列の順序は、(a)抗原コード核酸配列の様々な順序に対応する候補カセット配列のセットを生成すること、(b)各候補カセット配列について、候補カセット配列における非治療的エピトープの提示に基づいた提示スコアを決定すること、及び(c)抗原ワクチンのカセット配列として、所定の閾値を下回る提示スコアと関連する候補カセット配列を選択すること、を含む一連のステップによって決定される。
【0055】
いくつかの態様では、組成物は、薬学的に許容される担体を含む医薬組成物として製剤化される。いくつかの態様では、組成物は、ChAdVベクターを含むウイルス粒子を含む。
【0056】
いくつかの態様では、エピトープコード核酸配列のうちの1つ以上は、対象の腫瘍に由来する。いくつかの態様では、エピトープコード核酸配列の各々は、対象の腫瘍に由来する。いくつかの態様では、エピトープコード核酸配列のうちの1つ以上は、対象の腫瘍に由来しない。いくつかの態様では、エピトープコード核酸配列の各々は、対象の腫瘍に由来しない。
【0057】
いくつかの態様では、エピトープコード核酸配列は、配列番号57~29,364からなる群から選択されるエピトープを含む。いくつかの態様では、少なくとも1つの抗原コード核酸配列は、少なくとも、(A)KRAS_G12C MHCクラスIエピトープコード核酸配列であって、配列番号14,954、19,848、及び19,850からなる群から選択されるMHCクラスIエピトープをコードする、KRAS_G12C MHCクラスIエピトープコード核酸配列、(B)KRAS_G12D MHCクラスIエピトープコード核酸配列であって、配列番号19,749、19,865、及び19,863からなる群から選択されるMHCクラスIエピトープをコードする、KRAS_G12D MHCクラスIエピトープコード核酸配列、ならびに(C)KRAS_G12V MHCクラスIエピトープコード核酸配列であって、配列番号19,976、19,779、11,495、及び19,974からなる群から選択されるMHCクラスIエピトープをコードする、KRAS_G12V MHCクラスIエピトープコード核酸配列、の各々を含む。
【0058】
いくつかの態様では、少なくとも1つの抗原コード核酸配列は、(A)KRAS_G12C MHCクラスIエピトープコード核酸配列、(B)KRAS_G12D MHCクラスIエピトープコード核酸配列、(C)KRAS_G12V MHCクラスIエピトープコード核酸配列、(D)KRAS Q61H MHCクラスIエピトープコード核酸配列、(E)TP53_R213L MHCクラスIエピトープコード核酸配列、(F)TP53_S127Y MHCクラスIエピトープコード核酸配列、(G)TP53_R249M MHCクラスIエピトープコード核酸配列、またはそれらの組み合わせを含む。
【0059】
いくつかの態様では、方法はさらに、自己増幅型アルファウイルスに基づく発現系を投与することを含む。いくつかの態様では、自己増幅型アルファウイルスに基づく発現系の送達のための組成物は、筋肉内(IM)、皮内(ID)、皮下(SC)、または静脈内(IV)に投与される。いくつかの態様では、自己増幅型アルファウイルスに基づく発現系の送達のための組成物は、(IM)投与される。いくつかの態様では、IM投与は、別々の注射部位において実施される。いくつかの態様では、別々の注射部位は、相対する三角筋における注射部位である。いくつかの態様では、別々の注射部位は、両側の殿筋部位または大腿直筋部位における注射部位である。いくつかの態様では、1つ以上のブースト用量の注射部位は、プライミング用量の注射部位に可能な限り近い。
【0060】
いくつかの態様では、自己増幅型アルファウイルスに基づく発現系の送達のための組成物は、(A)自己増幅型アルファウイルスに基づく発現系であって、自己増幅型アルファウイルスに基づく発現系が、1つ以上のベクターを含み、1つ以上のベクターが、(a)RNAアルファウイルス骨格であって、(i)少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列、及び(ii)少なくとも1つのポリアデニル化(ポリ(A))配列、を含む、RNAアルファウイルス骨格、ならびに(b)カセットであって、(i)少なくとも1つの抗原コード核酸配列であって、a.エピトープコード核酸配列であって、コードされたエピトープ配列を、野生型核酸配列によりコードされる対応するペプチド配列とは異なるものにする、少なくとも1つの変化を任意選択で含む、エピトープコード核酸配列、b.任意選択で5’リンカー配列、及びc.任意選択で3’リンカー配列、を含む、少なくとも1つの抗原コード核酸配列、(ii)任意選択で、少なくとも1つの抗原コード核酸配列に機能的に連結されている第2のプロモーターヌクレオチド配列、及び(iii)任意選択で、少なくとも1つの第2のポリ(A)配列であって、アルファウイルスにとって天然ポリ(A)配列であるかまたは外因性ポリ(A)配列である、第2のポリ(A)配列、を含む、カセット、を含む、自己増幅型アルファウイルスに基づく発現系、ならびに(B)脂質ナノ粒子(LNP)であって、自己増幅型アルファウイルスに基づく発現系を内包する、LNPと、を含む。
【0061】
いくつかの態様では、自己増幅型アルファウイルスに基づく発現系の送達のための組成物は、(A)自己増幅型アルファウイルスに基づく発現系であって、自己増幅型アルファウイルスに基づく発現系が、1つ以上のベクターを含み、1つ以上のベクターが、(a)RNAアルファウイルス骨格であって、RNAアルファウイルス骨格が、配列番号6に記載の核酸配列を含み、RNAアルファウイルス骨格配列が、26Sプロモーターヌクレオチド配列及びポリ(A)配列を含み、26Sプロモーター配列がRNAアルファウイルス骨格にとって内因性であり、ポリ(A)配列が、RNAアルファウイルス骨格にとって内因性である、RNAアルファウイルス骨格、ならびに(b)26Sプロモーターヌクレオチド配列とポリ(A)配列の間に組み込まれているカセットであって、カセットが、26Sプロモーターヌクレオチド配列に機能的に連結されており、かつ、カセットが、少なくとも1つの抗原コード核酸配列を含み、少なくとも1つの抗原コード核酸配列が、a.エピトープコード核酸配列であって、コードされたエピトープ配列を、野生型核酸配列によりコードされる対応するペプチド配列とは異なるものにする、少なくとも1つの変化を任意選択で含む、エピトープコード核酸配列、b.任意選択で5’リンカー配列、及びc.任意選択で3’リンカー配列、を含む、カセット、を含む、自己増幅型アルファウイルスに基づく発現系、ならびに、(B)脂質ナノ粒子(LNP)であって、自己増幅型アルファウイルスに基づく発現系を内包する、LNPと、を含む。
【0062】
いくつかの態様では、ChAdVベクターのカセットは、自己増幅型アルファウイルスに基づく発現系の送達のための組成物のカセットと同一である。
【0063】
いくつかの態様では、自己増幅型アルファウイルスに基づく発現系の送達のための組成物におけるカセットの各要素の順番に並べられた配列は、5’から3’方向へ、Pa-(L5b-Nc-L3d)X-(G5e-Uf)Y-G3gを含む式で表され、式中、Pは、第2のプロモーターヌクレオチド配列であり、a=0または1であり、Nはエピトープコード核酸配列のうちの1つを含み、c=1であり、L5は5’リンカー配列を含み、b=0または1であり、L3は3’リンカー配列を含み、d=0または1であり、G5は、GPGPGアミノ酸リンカーをコードする少なくとも1つの核酸配列のうちの1つを含み、e=0または1であり、G3は、GPGPGアミノ酸リンカーをコードする少なくとも1つの核酸配列のうちの1つを含み、g=0または1であり、Uは、少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列のうちの1つを含み、f=1であり、X=1~400であり、各Xについて、対応するNcはエピトープコード核酸配列であり、Y=0、1、または2であり、各Yについて、対応するUfはMHCクラスIIエピトープコード核酸配列である。
【0064】
いくつかの態様では、各Xについて、対応するNcは別個のエピトープコード核酸配列である。いくつかの態様では、各Yについて、対応するUfは別個のMHCクラスIIエピトープコード核酸配列である。いくつかの態様では、a=0、b=1、d=1、e=1、g=1、h=1、X=20、Y=2であり、少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列は、RNAアルファウイルス骨格によって提供される単一の26Sプロモーターヌクレオチド配列であり、少なくとも1つのポリアデニル化ポリ(A)配列は、RNAアルファウイルス骨格によって提供される少なくとも100個の連続するAヌクレオチドのポリ(A)配列であり、カセットは、26Sプロモーターヌクレオチド配列とポリ(A)配列の間に組み込まれており、ここで、カセットが、26Sプロモーターヌクレオチド配列及びポリ(A)配列に機能的に連結されており、各Nは、7~15アミノ酸長のMHCクラスIエピトープ、MHCクラスIIエピトープ、B細胞応答を刺激する能力があるエピトープ、またはそれらの組み合わせをコードし、L5は、エピトープの天然N末端アミノ酸配列をコードする天然5’リンカー配列であり、ここで、5’リンカー配列は、少なくとも3アミノ酸長であるペプチドをコードし、L3は、エピトープの天然C末端アミノ酸配列をコードする天然3’リンカー配列であり、ここで、3’リンカー配列は、少なくとも3アミノ酸長であるペプチドをコードし、Uは、PADREクラスII配列及び破傷風トキソイドMHCクラスII配列の各々であり、RNAアルファウイルス骨格は配列番号6に記載の配列であり、MHCクラスIエピトープコード核酸配列の各々は、13~25アミノ酸長であるポリペプチドをコードする。
【0065】
いくつかの態様では、LNPは、イオン化可能なアミノ脂質、ホスファチジルコリン、コレステロール、PEGベースのコート脂質、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される脂質を含む。いくつかの態様では、LNPは、イオン化可能なアミノ脂質、ホスファチジルコリン、コレステロール、及びPEGベースのコート脂質を含む。いくつかの態様では、イオン化可能なアミノ脂質は、MC3様(ジリノレイルメチル-4-ジメチルアミノブチラート)分子を含む。いくつかの態様では、LNPに内包された発現系は約100nmの直径を有する。
【0066】
いくつかの態様では、カセットは、少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列と少なくとも1つのポリ(A)配列の間に組み込まれる。いくつかの態様では、少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列は、カセットに機能的に連結されている。
【0067】
いくつかの態様では、1つ以上のベクターは、1つ以上のプラス鎖RNAベクターを含む。いくつかの態様では、1つ以上のプラス鎖RNAベクターは、5’の7-メチルグアノシン(m7g)キャップを含む。いくつかの態様では、1つ以上のプラス鎖RNAベクターは、インビトロ転写により生成される。
【0068】
いくつかの態様では、1つ以上のベクターは、哺乳類細胞内で自己複製する。いくつかの態様では、RNAアルファウイルス骨格は、アウラウイルス、フォートモーガン(Fort Morgan)ウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、ロスリバーウイルス、セムリキ森林ウイルス、シンドビスウイルス、またはマヤロウイルスの少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、RNAアルファウイルス骨格は、ベネズエラウマ脳炎ウイルスの少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、RNAアルファウイルス骨格は少なくとも、アウラウイルス、フォートモーガンウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、ロスリバーウイルス、セムリキ森林ウイルス、シンドビスウイルス、またはマヤロウイルスのヌクレオチド配列によってコードされる、非構造タンパク質媒介性増幅のための配列、26Sプロモーター配列、ポリ(A)配列、非構造タンパク質1(nsP1)遺伝子、nsP2遺伝子、nsP3遺伝子、及びnsP4遺伝子を含む。いくつかの態様では、RNAアルファウイルス骨格は少なくとも、アウラウイルス、フォートモーガンウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、ロスリバーウイルス、セムリキ森林ウイルス、シンドビスウイルス、またはマヤロウイルスのヌクレオチド配列によってコードされる、非構造タンパク質媒介性増幅のための配列、26Sプロモーター配列、及びポリ(A)配列を含む。いくつかの態様では、非構造タンパク質媒介性増幅のための配列は、アルファウイルス5’UTR、51nt CSE、24nt CSE、26Sサブゲノムプロモーター配列、19nt CSE、アルファウイルス3’UTR、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの態様では、RNAアルファウイルス骨格は、構造ビリオンタンパク質カプシドであるE2及びE1をコードしない。いくつかの態様では、カセットは、アウラウイルス、フォートモーガンウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、ロスリバーウイルス、セムリキ森林ウイルス、シンドビスウイルス、またはマヤロウイルスのヌクレオチド配列内に構造ビリオンタンパク質の代わりに挿入される。いくつかの態様では、ベネズエラウマ脳炎ウイルスは、配列番号3または配列番号5の配列を含む。いくつかの態様では、ベネズエラウマ脳炎ウイルスは、塩基対7544と11175の間の欠失をさらに含む配列番号3または配列番号5の配列を含む。いくつかの態様では、RNAアルファウイルス骨格は、配列番号6または配列番号7に記載の配列を含む。いくつかの態様では、カセットは、配列番号3または配列番号5の配列に記載される塩基対7544と11175の間の欠失を置き換えるように7544位に挿入される。いくつかの態様では、カセットの挿入は、nsP1~4遺伝子と少なくとも1つの核酸配列とを含むポリシストロン性RNAの転写を提供し、nsP1~4遺伝子及び少なくとも1つの核酸配列は、別々のオープンリーディングフレーム中に存在する。
【0069】
いくつかの態様では、少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列は、RNAアルファウイルス骨格によってコードされる天然26Sプロモーターヌクレオチド配列である。いくつかの態様では、少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列は、外因性RNAプロモーターである。いくつかの態様では、第2のプロモーターヌクレオチド配列は、26Sプロモーターヌクレオチド配列である。いくつかの態様では、第2のプロモーターヌクレオチド配列は、複数の26Sプロモーターヌクレオチド配列を含み、各26Sプロモーターヌクレオチド配列は、別々のオープンリーディングフレームのうちの1つ以上の転写を提供する。
【0070】
いくつかの態様では、1つ以上のベクターはそれぞれ少なくとも300ntのサイズである。いくつかの態様では、1つ以上のベクターはそれぞれ少なくとも1kbのサイズである。いくつかの態様では、1つ以上のベクターはそれぞれ2kbのサイズである。いくつかの態様では、1つ以上のベクターはそれぞれ5kb未満のサイズである。
【0071】
いくつかの態様では、少なくとも1つの抗原コード核酸配列は、2個以上の抗原コード核酸配列を含む。いくつかの態様では、各抗原コード核酸配列は、互いに直接連結されている。いくつかの態様では、各抗原コード核酸配列は、リンカーをコードする核酸配列により別個の抗原コード核酸配列に連結されている。いくつかの態様では、リンカーは、2つのMHCクラスIエピトープコード核酸配列を連結するか、またはMHCクラスIエピトープコード核酸配列をMHCクラスIIエピトープコード核酸配列に連結する。いくつかの態様では、リンカーは、(1)長さが少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10残基である、連続するグリシン残基、(2)長さが少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10残基である、連続するアラニン残基、(3)2つのアルギニン残基(RR)、(4)アラニン、アラニン、チロシン(AAY)、(5)哺乳類のプロテアソームによって効率的にプロセシングされる、長さが少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10アミノ酸残基のコンセンサス配列、及び(6)起源同族のタンパク質に由来する抗原に隣接し、長さが少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または2~20アミノ酸残基である、1つ以上の天然配列、からなる群から選択される。いくつかの態様では、リンカーは、2つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列を連結するか、またはMHCクラスII配列をMHCクラスIエピトープコード核酸配列に連結する。いくつかの態様では、リンカーは配列GPGPGを含む。
【0072】
いくつかの態様では、抗原コード核酸配列は、抗原コード核酸配列の発現、安定性、細胞輸送、プロセシング及び提示、及び/または免疫原性を増強させる分離したまたは連続した配列に機能的にまたは直接、連結されている。いくつかの態様では、分離したまたは連続した配列は、ユビキチン配列、プロテアソームターゲティングが増大するよう改変されたユビキチン配列(例えば、ユビキチン配列は、76位でのGlyからAlaへの置換を含有する)、免疫グロブリンシグナル配列(例えば、IgK)、主要組織適合性クラスI配列、リソソーム関連膜タンパク質(LAMP)-1、ヒト樹状細胞リソソーム関連膜タンパク質、及び主要組織適合性クラスII配列、のうちの少なくとも1つを含み、任意選択で、プロテアソームターゲティングが増大するよう改変されたユビキチン配列がA76である。
【0073】
いくつかの態様では、少なくとも1つの抗原コード核酸配列は、少なくとも2~10、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の抗原コード核酸配列を含み、任意選択で、各抗原コード核酸配列が、別個の抗原コード核酸配列をコードする。いくつかの態様では、少なくとも1つの抗原コード核酸配列は、少なくとも11~20、15~20、11~100、11~200、11~300、11~400、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または最大400個の抗原コード核酸配列を含み、任意選択で、各抗原コード核酸配列が、別個の抗原コード核酸配列をコードする。いくつかの態様では、少なくとも1つの抗原コード核酸配列は、少なくとも11~20、15~20、11~100、11~200、11~300、11~400、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または最大400個の抗原コード核酸配列を含む。いくつかの態様では、少なくとも1つの抗原コード核酸配列は、少なくとも2~400個の抗原コード核酸配列を含み、抗原コード核酸配列のうち少なくとも2個が、細胞表面にMHCクラスIによって提示されるエピトープ配列またはそれらの部分をコードする。
【0074】
いくつかの態様では、MHCクラスIエピトープのうち少なくとも2つは、腫瘍細胞表面にMHCクラスIによって提示される。いくつかの態様では、エピトープコード核酸配列は、少なくとも1つのMHCクラスIエピトープコード核酸配列を含み、各抗原コード核酸配列は、8~35アミノ酸長、任意選択で、9~17、9~25、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、または35アミノ酸長のポリペプチド配列をコードする。
【0075】
いくつかの態様では、少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列が存在する。いくつかの態様では、少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列が、存在し、かつ、少なくとも1つの変化を含む少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列を含み、前記変化が、コードされたエピトープ配列を、野生型核酸配列によりコードされる対応するペプチド配列とは異なるものにする。いくつかの態様では、エピトープコード核酸配列は、MHCクラスIIエピトープコード核酸配列を含み、各抗原コード核酸配列が、12~20、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または20~40アミノ酸長のポリペプチド配列をコードする。いくつかの態様では、エピトープコード核酸配列は、MHCクラスIIエピトープコード核酸配列を含み、ここで、少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列が存在し、少なくとも1つのMHCクラスIIエピトープコード核酸配列が少なくとも1つのユニバーサルMHCクラスIIエピトープコード核酸配列を含み、任意選択で、少なくとも1つのユニバーサル配列が破傷風トキソイド及びPADREのうちの少なくとも1つを含む。
【0076】
いくつかの態様では、少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列または第2のプロモーターヌクレオチド配列は誘導性である。いくつかの態様では、少なくとも1つのプロモーターヌクレオチド配列または第2のプロモーターヌクレオチド配列は非誘導性である。
【0077】
いくつかの態様では、少なくとも1つのポリ(A)配列は、アルファウイルスにとって天然のポリ(A)配列を含む。いくつかの態様では、少なくとも1つのポリ(A)配列は、アルファウイルスにとって外因性のポリ(A)配列を含む。いくつかの態様では、少なくとも1つのポリ(A)配列は、少なくとも1つの核酸配列のうちの少なくとも1つに機能的に連結されている。いくつかの態様では、少なくとも1つのポリ(A)配列は、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、または少なくとも90個の連続するAヌクレオチドである。いくつかの態様では、少なくとも1つのポリ(A)配列は、少なくとも100個の連続するAヌクレオチドである。
【0078】
いくつかの態様では、エピトープコード核酸配列はMHCクラスIエピトープコード核酸配列を含み、MHCクラスIエピトープコード核酸配列は、(a)腫瘍からエクソーム、トランスクリプトーム、または全ゲノムの腫瘍ヌクレオチド配列決定データのうちの少なくとも1つを取得するステップであって、腫瘍ヌクレオチド配列決定データが、エピトープのセットの各々についてのペプチド配列を表すデータを取得するために使用される、取得するステップ、(b)各エピトープのペプチド配列を提示モデルに入力して腫瘍の腫瘍細胞表面にMHCアレルのうちの1つ以上によって、エピトープの各々が提示される数値的尤度のセットを生成するステップであって、数値的尤度のセットが、受け取った質量分析データに少なくとも基づいて同定されている、生成するステップ、及び(c)MHCクラスIエピトープコード核酸配列を生成するために使用される選択されたエピトープのセットを生成するために、数値的尤度のセットに基づいてエピトープのセットのサブセットを選択するステップ、を実施することによって選択される。いくつかの態様では、MHCクラスIエピトープコード核酸配列の各々は、(a)腫瘍からエクソーム、トランスクリプトーム、または全ゲノムの腫瘍ヌクレオチド配列決定データのうちの少なくとも1つを取得するステップであって、腫瘍ヌクレオチド配列決定データが、エピトープのセットの各々についてのペプチド配列を表すデータを取得するために使用される、取得するステップ、(b)各エピトープのペプチド配列を提示モデルに入力して、腫瘍の腫瘍細胞表面にMHCアレルのうちの1つ以上によってエピトープの各々が提示される数値的尤度のセットを生成するステップであって、数値的尤度のセットが、受け取った質量分析データに少なくとも基づいて同定されている、生成するステップ、及び(c)少なくとも20個のMHCクラスIエピトープコード核酸配列を生成するために使用される選択されたエピトープのセットを生成するために、数値的尤度のセットに基づいてエピトープのセットのサブセットを選択するステップ、を実施することによって選択される。いくつかの態様では、選択されたエピトープのセットの数は2~20である。いくつかの態様では、提示モデルは、(a)MHCアレルのうちの特定の1つとペプチド配列の特定の位置における特定のアミノ酸との対の存在と、(b)対のMHCアレルのうちの特定の1つによる、腫瘍細胞表面での、特定の位置に特定のアミノ酸を含むそのようなペプチド配列の提示の可能性、との間の依存性を表す。いくつかの態様では、選択されたエピトープのセットを選択することは、提示モデルに基づいて、選択されなかったエピトープと比べて腫瘍細胞表面に提示される可能性が増大しているエピトープを選択することを含む。いくつかの態様では、選択されたエピトープのセットを選択することは、提示モデルに基づいて、選択されなかったエピトープと比べて対象において腫瘍特異的な免疫応答の誘導能がある可能性が増大しているエピトープを選択することを含む。いくつかの態様では、選択されたエピトープのセットを選択することは、提示モデルに基づいて、選択されなかったエピトープと比べてプロフェッショナル抗原提示細胞(APC)によってナイーブT細胞に提示される能力がある可能性が増大しているエピトープを選択することを含み、任意選択で、APCは樹状細胞(DC)である。いくつかの態様では、選択されたエピトープのセットを選択することは、提示モデルに基づいて、選択されなかったエピトープと比べて中枢性寛容または末梢性寛容を介した阻害を受ける可能性が減少しているエピトープを選択することを含む。いくつかの態様では、選択されたエピトープのセットを選択することは、提示モデルに基づいて、選択されなかったエピトープと比べて対象において正常組織に対する自己免疫応答の誘導能がある可能性が減少しているエピトープを選択することを含む。
【0079】
いくつかの態様では、エクソームまたはトランスクリプトームのヌクレオチド配列決定データは、腫瘍組織においてシークエンシングを実施することによって取得される。いくつかの態様では、シークエンシングは次世代シークエンシング(NGS)または任意の超並列シークエンシング手法である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
本発明のこれら及び他の特徴、態様、及び利点は、以下の説明、及び添付の図面に関してより良く理解される。
【
図2A】ELISpotを使用して測定された抗原特異的細胞性免疫応答を示す。6つの重複ペプチドプールで刺激したPBMCで抗原特異的IFN-ガンマ産生を測定した(それぞれ20ペプチド、15アミノ酸長)。動物全体(n=6)の各プールの平均を示す。各試料についてバックグラウンドをDMSO対照に合わせて補正し、0~4週にはカウント変換係数を適用した。積み上げ棒グラフにはそれぞれ、プール1~6の応答が上から下へ示されている。
【
図2B】ELISpotを使用して測定された抗原特異的細胞性免疫応答を示す。6つの重複ペプチドプールで刺激したPBMCで抗原特異的IFN-ガンマ産生を測定した(それぞれ20ペプチド、15アミノ酸長)。個々の霊長類#1~3の応答を示す(それぞれ上のパネルから下のパネルへ)。各試料についてバックグラウンドをDMSO対照に合わせて補正し、0~4週にはカウント変換係数を適用した。積み上げ棒グラフにはそれぞれ、プール1~6の応答が上から下へ示されている。
【
図2C】ELISpotを使用して測定された抗原特異的細胞性免疫応答を示す。6つの重複ペプチドプールで刺激したPBMCで抗原特異的IFN-ガンマ産生を測定した(それぞれ20ペプチド、15アミノ酸長)。個々の霊長類#4~6の応答を示す(それぞれ上のパネルから下のパネルへ)。各試料についてバックグラウンドをDMSO対照に合わせて補正し、0~4週にはカウント変換係数を適用した。積み上げ棒グラフにはそれぞれ、プール1~6の応答が上から下へ示されている。
【
図3A】ELISpotを使用して測定された、GRANITE被験者G1の抗原特異的細胞性免疫応答を示す。CD8エピトーププールで刺激したPBMCで抗原特異的IFN-ガンマ産生を測定した。グラフは、三連ELISpotウェルの10
6PBMCあたりの平均スポット形成単位(SFU)+/-標準偏差(SD)を示す。LOD=アッセイ検出限界。ULOQ=定量上限(5,000 SFU/10
6PBMC)。
【
図3B】ELISpotを使用して測定された、GRANITE被験者G1の抗原特異的細胞性免疫応答を示す。ミニCD8エピトーププールで刺激したPBMCで抗原特異的IFN-ガンマ産生を測定した。グラフは、三連ELISpotウェルの10
6PBMCあたりの平均スポット形成単位(SFU)+/-標準偏差(SD)を示す。LOD=アッセイ検出限界。全経時変化が示されている。
【
図3C】ELISpotを使用して測定された、GRANITE被験者G1の抗原特異的細胞性免疫応答を示す。ミニCD8エピトーププールで刺激したPBMCで抗原特異的IFN-ガンマ産生を測定した。グラフは、三連ELISpotウェルの10
6PBMCあたりの平均スポット形成単位(SFU)+/-標準偏差(SD)を示す。LOD=アッセイ検出限界。
図3Bからの68週目及び70週目が示されている。
【
図4】ELISpotを使用して測定された、GRANITE被験者G3の抗原特異的細胞性免疫応答を示す。CD8エピトーププールで刺激したPBMCで抗原特異的IFN-ガンマ産生を測定した。グラフは、三連ELISpotウェルの10
6PBMCあたりの平均スポット形成単位(SFU)+/-標準偏差(SD)を示す。LOD=アッセイ検出限界。
【
図5】ELISpotを使用して測定された、GRANITE被験者G8の抗原特異的細胞性免疫応答を示す。CD8エピトーププールで刺激したPBMCで抗原特異的IFN-ガンマ産生を測定した。グラフは、三連ELISpotウェルの10
6PBMCあたりの平均スポット形成単位(SFU)+/-標準偏差(SD)を示す。LOD=アッセイ検出限界。
【
図6】ELISpotを使用して測定された、GRANITE被験者G11の抗原特異的細胞性免疫応答を示す。CD8エピトーププールで刺激したPBMCで抗原特異的IFN-ガンマ産生を測定した。グラフは、三連ELISpotウェルの10
6PBMCあたりの平均スポット形成単位(SFU)+/-標準偏差(SD)を示す。LOD=アッセイ検出限界。
【
図7】同種ChAdVプライム-ブーストワクチン戦略の免疫細胞特徴付けデータを示す。左パネル:患者G1、G3、G8、及びG11について、患者特異的ペプチドプールでエキソビボIFNg ELISpotにおいて一晩刺激したPBMCからのChAdVブースト前後のELISpotデータを示す。グラフは、三連ELISpotウェルの10
6PBMCあたりの平均スポット形成単位(SFU)を示す。中央パネル:ChAdVブースト前後のエキソビボIFNg ELISpotアッセイ(G1、G3、G8、及びG11)からの上清を、患者特異的CD8プールでの刺激後のグランザイムB(GRZB)のレベルについてMSD U-plexアッセイによって分析した。グラフは、複製ウェルからの平均GRZBレベルをpg/ml単位で示す(バックグラウンドは差し引いている)。右パネル:患者G11からのChAdVブースト前後の時点のPBMCをエキソビボFluoroSpotアッセイによって分析し、DMSOまたは患者特異的CD8プールでの一晩の刺激後のIFNg、GRZB及びIL-2の発現を測定した。グラフは、IFNγ、GRZB、及びIL-2について、複製FluoroSpotウェルの10
6PBMCあたりの平均SFU+/-標準偏差(SD)を積み上げで示している。
【
図8A】エフェクターメモリー集団を評価するための四量体染色及びメモリー表現型決定のフローサイトメトリーデータを示す。患者G1のChAd68ブースト前のペプチド-HLA(HLA-B
*44:05-PE)の認識を示す密度プロット。フロープロットは、CD8四量体
+集団におけるナイーブ(CD45RA
+CCR7
+)細胞、中央メモリー(CD45RA
-CCR7
+)細胞、エフェクターメモリー(CD45RA
-CCR7
-)細胞、及びTエフェクターメモリーRA
+(CD45RA
+CCR7
-)細胞の頻度を示す。
【
図8B】エフェクターメモリー集団を評価するための四量体染色及びメモリー表現型決定のフローサイトメトリーデータを示す。患者G1のChAd68ブースト後のペプチド-HLA(HLA-B
*44:05-APC)の認識を示す密度プロット。フロープロットは、CD8四量体
+集団におけるナイーブ(CD45RA
+CCR7
+)細胞、中央メモリー(CD45RA
-CCR7
+)細胞、エフェクターメモリー(CD45RA
-CCR7
-)細胞、及びTエフェクターメモリーRA
+(CD45RA
+CCR7
-)細胞の頻度を示す。
【
図8C】エフェクターメモリー集団を評価するための四量体染色及びメモリー表現型決定のフローサイトメトリーデータを示す。患者G1のChAd68ブースト前後のペプチド-HLA(HLA-A
*02:01-BV421)の認識を示す密度プロット。対応するドットプロットからのCD8四量体
+集団におけるナイーブ(CD45RA
+CCR7
+)細胞、セントラルメモリー(CD45RA
-CCR7
+)細胞、エフェクターメモリー(CD45RA
-CCR7
-)細胞、及びTエフェクターメモリーRA
+(CD45RA
+CCR7
-)細胞の頻度を示す円グラフ。
【発明を実施するための形態】
【0081】
詳細な説明
I.定義
一般に、特許請求の範囲及び明細書で使される用語は、当業者によって理解される平易な意味を有するものと解釈されることが意図される。さらに明確にするために、以下に特定の用語を定義する。平易な意味と記載の定義の間に矛盾がある場合は、記載の定義が使用される。
【0082】
本明細書で使用される場合、用語「抗原」は、免疫応答を刺激する物質である。抗原は、ネオアンチゲンであり得る。抗原は、特定の集団、例えば、がん患者の特定の集団の間で見られる抗原である「共通抗原」であり得る。
【0083】
本明細書で使用される場合、用語「ネオアンチゲン」は、例えば、腫瘍細胞における変異または腫瘍細胞に特異的な翻訳後修飾を介して、対応する野生型抗原とは異なるものにする、少なくとも1つの変化を有する抗原である。ネオアンチゲンには、ポリペプチド配列またはヌクレオチド配列が含まれ得る。変異には、フレームシフトもしくは非フレームシフトのインデル、ミスセンスもしくはナンセンスの置換、スプライス部位の変化、ゲノム再編成もしくは遺伝子融合、またはネオORFを生じさせる任意のゲノム変化もしくは発現変化が含まれ得る。変異にはまた、スプライスバリアントも含まれ得る。腫瘍細胞に特異的な翻訳後修飾には、異常なリン酸化が含まれ得る。腫瘍細胞に特異的な翻訳後修飾にはまた、プロテアソームにより生成されたスプライス抗原も含まれ得る。Liepe et al.,A large fraction of HLA class I ligands are proteasome-generated spliced peptides;Science.2016 Oct 21;354(6310):354-358を参照のこと。対象は、様々な診断方法、例えば、以下に詳述される患者選択方法の使用を介して投与のために特定され得る。
【0084】
本明細書で使用される場合、用語「腫瘍抗原」は、対象の腫瘍細胞もしくは組織中に存在するが、対象の対応する正常な細胞もしくは組織には存在しない抗原であるか、または正常な細胞もしくは組織と比較して、腫瘍細胞もしくはがん性組織において発現が変化していることが既知であるかもしくはそのことが見出されたポリペプチドに由来する抗原である。
【0085】
本明細書で使用される場合、用語「抗原に基づくワクチン」は、1つ以上の抗原、例えば、複数の抗原に基づいたワクチン組成物である。ワクチンは、ヌクレオチドベース(例えば、ウイルスベース、RNAベース、またはDNAベース)、タンパク質ベース(例えば、ペプチドベース)、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0086】
本明細書で使用される場合、用語「候補抗原」は、抗原を表し得る配列を生じさせる変異または他の異常である。
【0087】
本明細書で使用される場合、用語「コード領域」は、タンパク質をコードする遺伝子の部分である。
【0088】
本明細書で使用される場合、用語「コード変異」は、コード領域に生じる変異である。
【0089】
本明細書で使用される場合、用語「ORF」とは、オープンリーディングフレームを意味する。
【0090】
本明細書で使用される場合、用語「NEO-ORF」は、変異またはスプライシング等の他の異常から生じる腫瘍特異的ORFである。
【0091】
本明細書で使用される場合、用語「ミスセンス変異」は、あるアミノ酸から別のアミノ酸への置換を引き起こす変異である。
【0092】
本明細書で使用される場合、用語「ナンセンス変異」は、あるアミノ酸から終止コドンへの置換を引き起こすか、または標準開始コドンの除去を引き起こす変異である。
【0093】
本明細書で使用される場合、用語「フレームシフト変異」は、タンパク質のフレームに変化を引き起こす変異である。
【0094】
本明細書で使用される場合、用語「インデル」は、1つ以上の核酸の挿入または欠失である。
【0095】
本明細書で使用される場合、2つ以上の核酸またはポリペプチドの配列との関連において、用語「同一性」パーセントとは、以下に記載の配列比較アルゴリズム(例えば、BLASTP及びBLASTNまたは当業者に利用可能な他のアルゴリズム)のうちの1つを使用するかまたは目視検査によって測定される、最大一致度について比較及びアラインメントを行った場合に、明示されたパーセンテージのヌクレオチドまたはアミノ酸残基が同じである2つ以上の配列またはサブ配列を指す。用途に応じて、「同一性」パーセントは、比較される配列の領域にわたって、例えば、機能ドメインにわたって存在することもあれば、別の場合には、比較される2配列の全長にわたって存在することもある。
【0096】
配列比較では典型的には、1つの配列が参照配列の役目を果たし、これに対して被験配列が比較される。配列比較アルゴリズムを使用する場合、被験配列及び参照配列をコンピュータに入力し、必要に応じて部分列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムのパラメータを指定する。その後、配列比較アルゴリズムが、指定されたプログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する被験配列の配列同一性パーセントを算出する。別法として、配列の類似性または非類似性は、特定のヌクレオチド、または翻訳された配列の場合は選択された配列の位置(例えば、配列モチーフ)におけるアミノ酸の、有無の組み合わせによって確立することができる。
【0097】
比較のための配列の最適アラインメントは、例えば、Smith & Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所的相同性アルゴリズムによるか、Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アラインメントアルゴリズムによるか、Pearson & Lipman,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似性検索方法によるか、これらのアルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,Wis.内にあるGAP,BESTFIT,FASTA,及びTFASTA)のコンピュータ化された実装によるか、または目視検査(概要は、Ausubel et al.、以下を参照のこと)によって行うことができる。
【0098】
配列同一性パーセント及び配列類似性を決定するのに好適なアルゴリズムの一例はBLASTアルゴリズムであり、Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403-410(1990)に記載されている。BLAST解析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationを介して公的に入手可能である。
【0099】
本明細書で使用される場合、用語「ノンストップまたはリードスルー」は、天然の終止コドンの除去を引き起こす変異である。
【0100】
本明細書で使用される場合、用語「エピトープ」は、抗体またはT細胞受容体が典型的に結合する、抗原の特定の部分である。
【0101】
本明細書で使用される場合、用語「免疫原性」は、免疫応答を、例えば、T細胞、B細胞、または両方を介して刺激する能力である。
【0102】
本明細書で使用される場合、用語「HLA結合親和性」、「MHC結合親和性」とは、特定の抗原と特定のMHCアレルの間での結合の親和性を意味する。
【0103】
本明細書で使用される場合、用語「ベイト」は、試料からのDNAまたはRNAの特定の配列を濃縮するために使用される核酸プローブである。
【0104】
本明細書で使用される場合、用語「バリアント」は、対象の核酸と対照として使用される参照ヒトゲノムの間の差である。
【0105】
本明細書で使用される場合、用語「バリアントコール」は、典型的にはシークエンシングからの、バリアントの存在のアルゴリズム的決定である。
【0106】
本明細書で使用される場合、用語「多型」は、生殖細胞系列バリアント、すなわち、個体の、DNAを持つ細胞すべてに見出されるバリアントである。
【0107】
本明細書で使用される場合、用語「体細胞バリアント」は、個体の非生殖系細胞に生じるバリアントである。
【0108】
本明細書で使用される場合、用語「アレル」は、遺伝子のバージョンまたは遺伝子配列のバージョンまたはタンパク質のバージョンである。
【0109】
本明細書で使用される場合、用語「HLA型」は、HLA遺伝子アレルを補足するものである。
【0110】
本明細書で使用される場合、用語「ナンセンス変異依存分解機構」または「NMD」は、未成熟終止コドンが原因の細胞によるmRNAの分解である。
【0111】
本明細書で使用される場合、用語「幹変異(truncal mutation)」は、腫瘍発生の初期に生じる、腫瘍の細胞の大部分に存在する変異である。
【0112】
本明細書で使用される場合、用語「サブクローナル変異(subclonal mutation)」は、腫瘍発生の後期に生じる、腫瘍細胞のサブセットにのみ存在する変異である。
【0113】
本明細書で使用される場合、用語「エクソーム」は、タンパク質をコードするゲノムのサブセットである。エクソームは、ゲノムのうちのエクソン集であり得る。
【0114】
本明細書で使用される場合、用語「ロジスティック回帰」は、従属変数が1に等しい確率のロジットを、従属変数の線形関数としてモデル化する、統計からの2値のデータに関する回帰モデルである。
【0115】
本明細書で使用される場合、用語「ニューラルネットワーク」は、複数の層の線形変換、それに続く、典型的には確率的勾配降下法及び誤差逆伝播法により訓練される要素ごとの非線形性からなる、分類または回帰のための機械学習モデルである。
【0116】
本明細書で使用される場合、用語「プロテオーム」は、細胞、細胞群、または個体によって発現及び/または翻訳される全タンパク質のセットである。
【0117】
本明細書で使用される場合、用語「ペプチドーム」は、細胞表面上のMHC-IまたはMHC-IIによって提示される全ペプチドのセットである。ペプチドームは、細胞または細胞集の特性を指す場合がある(例えば、腫瘍を構成する細胞すべてのペプチドームの結合体を意味する腫瘍ペプチドーム、または感染症により感染している細胞すべてのペプチドームの結合体を意味する感染症ペプチドーム)。
【0118】
本明細書で使用される場合、用語「ELISPOT」とは、酵素結合免疫吸着スポットアッセイを意味し、これは、ヒト及び動物での免疫応答をモニタリングするための一般的な方法である。
【0119】
本明細書で使用される場合、用語「デキストラマー」は、フローサイトメトリーにおいて抗原特異的T細胞染色に使用される、デキストランベースのペプチド-MHC多量体である。
【0120】
本明細書で使用される場合、用語「寛容または免疫寛容」は、1つ以上の抗原、例えば、自己抗原に対する免疫非応答性の状態である。
【0121】
本明細書で使用される場合、用語「中枢性寛容」は、自己反応性T細胞クローンを除去することによるか、または自己反応性T細胞クローンを促進して免疫抑制性の制御性T細胞(Treg)に分化させることによって、胸腺において影響を受ける寛容である。
【0122】
本明細書で使用される場合、用語「末梢性寛容」は、中枢性寛容を生き延びる自己反応性T細胞を下方制御もしくはアネルギー化することによるか、またはこれらのT細胞を促進してTregに分化させることによって、末梢において影響を受ける寛容である。
【0123】
用語「試料」には、静脈穿刺、排泄、射精、マッサージ、生検、針吸引、洗浄試料、擦過、外科的切開、または当該技術分野で公知の他の介入もしくは手段が含まれる手段によって対象から採取された、単一細胞もしくは複数の細胞または細胞の断片または体液のアリコートが含まれ得る。
【0124】
用語「対象」は、細胞、組織、または生物、ヒトもしくは非ヒトを包含し、雌雄、インビボ、エキソビボ、またはインビトロを問わない。対象という用語は、ヒト等の哺乳類を含む。
【0125】
用語「哺乳類」は、ヒト及び非ヒトの両方を包含し、これには、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、マウス、ウシ、ウマ、及びブタが含まれるが、これらに限定されない。
【0126】
用語「臨床因子」とは、対象の病態の尺度、例えば、疾患の活動性または重症度を指す。「臨床因子」は、非試料マーカーを含む対象の健康状態のすべてのマーカー、及び/または対象の他の特徴、例えば、限定することなく、年齢及び性を包含する。臨床因子は、決定されている条件下での、対象からの試料(または試料の集団)または対象の評価から取得され得るスコア、値、または値のセットであり得る。臨床因子はまた、マーカー及び/または他のパラメータ、例えば、遺伝子発現代替物によって予測することもできる。臨床的因子には、腫瘍の種類、腫瘍サブタイプ、感染症の種類、感染症サブタイプ、及び喫煙歴が含まれ得る。
【0127】
用語「腫瘍に由来する抗原コード核酸配列」とは、例えばRT-PCRを介して、腫瘍から取得される核酸配列;または腫瘍をシークエンシングし、次いで、シークエンシングデータを使用して、例えば、当該技術分野で公知の様々な合成法もしくはPCRベースの方法を介して核酸配列を合成することにより取得される配列データを指す。派生配列には、配列が最適化された核酸配列バリアント(例えば、コドン最適化及び/または発現のための他の最適化)等の、核酸配列バリアントが含まれ得、それらは、腫瘍から取得される対応する天然核酸配列がコードするポリペプチド配列と同じポリペプチド配列をコードする。
【0128】
用語「感染症に由来する抗原コード核酸配列」とは、例えばRT-PCRを介して、感染細胞もしくは感染症生物から取得される核酸配列;または感染細胞もしくは感染症生物をシークエンシングし、次いで、シークエンシングデータを使用して、例えば、当該技術分野で公知の様々な合成法もしくはPCRベースの方法を介して核酸配列を合成することにより取得される配列データを指す。派生配列には、配列が最適化された核酸配列バリアント(例えば、コドン最適化及び/または発現のための他の最適化)等の、核酸配列バリアントが含まれ得、それらは、対応する天然感染症生物核酸配列がコードするポリペプチド配列と同じポリペプチド配列をコードする。派生配列には、天然感染症生物ポリペプチド配列に対して1つ以上(例えば、1、2、3、4、または5)の変異を有する改変感染症生物ポリペプチド配列をコードする核酸配列バリアントが含まれ得る。例えば、改変ポリペプチド配列は、感染症生物タンパク質の天然ポリペプチド配列に対して1つ以上のミスセンス変異を有し得る。
【0129】
用語「アルファウイルス」とは、トガウイルス科(Togaviridae)のメンバーを指し、一本鎖プラス鎖RNAウイルスである。アルファウイルスは典型的には、シンドビスウイルス、ロスリバーウイルス、マヤロウイルス、チクングニアウイルス、及びセムリキ森林ウイルス等の旧世界、または東部ウマ脳炎、アウラウイルス、フォートモーガンウイルス、もしくはベネズエラウマ脳炎ウイルス及びその派生株TC-83等の新世界に分類される。アルファウイルスは典型的には、自己複製RNAウイルスである。
【0130】
用語「アルファウイルス骨格」とは、ウイルスゲノムの自己複製を可能にする、アルファウイルスの最小配列を指す。最小配列には、非構造タンパク質媒介性増幅のための保存された配列、非構造タンパク質1(nsP1)遺伝子、nsP2遺伝子、nsP3遺伝子、nsP4遺伝子、及びポリA配列、ならびにサブゲノム(例えば、26S)プロモーターエレメント等のウイルスのサブゲノムRNAの発現のための配列が含まれ得る。
【0131】
用語「非構造タンパク質媒介性増幅のための配列」には、当業者に周知のアルファウイルス保存配列エレメント(CSE:conserved sequence element)が含まれる。CSEとしては、アルファウイルス5’UTR、51nt CSE、24nt CSE、サブゲノムプロモーター配列(例えば、26Sサブゲノムプロモーター配列)、19nt CSE、及びアルファウイルス3’UTRが挙げられるが、これらに限定されない。
【0132】
用語「RNAポリメラーゼ」には、DNAテンプレートからのRNAポリヌクレオチドの産生を触媒するポリメラーゼが含まれる。RNAポリメラーゼとしては、T3、T7、及びSP6等のバクテリオファージ由来のポリメラーゼが挙げられるが、これらに限定されない。
【0133】
用語「脂質」には、疎水性及び/または両親媒性の分子が含まれる。脂質は、カチオン性、アニオン性、または中性であり得る。脂質は、合成でも天然由来でもあり得、場合によっては生物分解性であり得る。脂質には、コレステロール、リン脂質、脂質複合体が含まれ得、それらとしては、ポリエチレングリコール(PEG)複合体(PEG化脂質)、ワックス、油、グリセリド、脂肪、及び脂溶性ビタミンが挙げられるが、これらに限定されない。脂質にはまた、ジリノレイルメチル-4-ジメチルアミノブチラート(MC3)及びMC3様分子も含まれ得る。
【0134】
用語「脂質ナノ粒子」または「LNP」には、水性内部を囲む脂質含有膜を使用して形成される小胞様構造が含まれ、リポソームとも呼ばれる。脂質ナノ粒子には、界面活性剤により安定化された固体脂質コアを有する脂質ベース組成物が含まれる。コア脂質は、脂肪酸、アシルグリセロール、ワックス、及びこれらの界面活性剤の混合物であり得る。リン脂質、スフィンゴミエリン、胆汁酸塩(タウロコール酸ナトリウム)、及びステロール(コレステロール)等の生体膜脂質を安定化剤として用いることができる。脂質ナノ粒子は、1つ以上のカチオン性、アニオン性、または中性の脂質の定義された比等のこれに限定されない、異なる脂質分子の定義された比を使用して形成することができる。脂質ナノ粒子は、外膜シェル内に分子を内包することができ、その後、標的細胞と接触させて内包された分子を宿主細胞サイトゾルに送達することができる。脂質ナノ粒子は、それらの表面を含め、非脂質分子を用いて修飾または機能化することができる。脂質ナノ粒子は、単一層(単層(unilamellar))または多層(多重層(multilamellar))であり得る。脂質ナノ粒子は、核酸と複合体を形成することができる。単層脂質ナノ粒子は核酸と複合体を形成することができ、ここで、核酸は水性内部にある。多重層脂質ナノ粒子は核酸と複合体を形成することができ、ここで、核酸は水性内部にあるか、または形成するかもしくは間に挟まれる。
【0135】
略語: MHC:主要組織適合遺伝子複合体(major histocompatibility complex);HLA:ヒト白血球抗原(human leukocyte antigen)、またはヒトMHC遺伝子座(human MHC gene locus);NGS:次世代シークエンシング(next-generation sequencing);PPV:陽性適中率(positive predictive value);TSNA:腫瘍特異的ネオアンチゲン(tumor-specific neoantigen);FFPE:ホルマリン固定パラフィン包埋(formalin-fixed,paraffin-embedded);NMD:ナンセンス変異依存分解機構(nonsense-mediated decay);NSCLC:非小細胞肺がん(non-small-cell lung cancer);DC:樹状細胞(dendritic cell)。
【0136】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」には、文脈で特に明確に指示されない限り、複数の指示対象が含まれることに留意すべきである。
【0137】
具体的に記述されるかまたは文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される場合、用語「約」は、当該従来技術における通常の許容公差の範囲内、例えば、平均の2標準偏差以内であると理解される。「約」は、記述された値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、または0.01%以内であると理解され得る。文脈から別様に明確でない限り、本明細書で提供されるすべての数値は、約という用語によって修飾される。
【0138】
本明細書で直接定義されていないいかなる用語も、本発明の技術分野内で理解されるような、それらの用語に共通して関連付けられる意味を有すると理解されるべきである。本明細書では、本発明の態様の組成物、デバイス、方法等、及びそれらをどのように作製または使用するかを説明する際に、実践者に追加のガイダンスを提供するために特定の用語が論じられる。同じことが複数の言い方で言われる場合があることを認識されよう。したがって、本明細書で論じられる用語のうちの任意の1つまたは複数について代替言語及び同義語が使用される場合がある。ある用語が本明細書で詳述されるかもしくは論じられているか否かは重要ではない。いくつかの同義語または代用可能な方法、材料等が提供される。明示的に記述されていない限り、1つまたは少数の同義語または同等物の記述は、他の同義語または同等物の使用を排除するものではない。用語の例を含め、例の使用は、例示のみを目的としており、本明細書での本発明の態様の範囲及び意味を限定するものではない。
【0139】
本明細書の本文中で引用されているすべての参考文献、発行済特許、及び特許出願は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0140】
II.抗原同定
腫瘍及び正常のエクソーム及びトランスクリプトームのNGS分析のための研究方法が報告されており、抗原同定領域に適用されている。6、14、15臨床現場での抗原同定に対する感度及び特異性の増大のための特定の最適化を考慮することができる。これらの最適化は、2つの領域、すなわち、実験室プロセスに関連するもの、及びNGSデータ分析に関連するものに分類することができる。記載の研究方法はまた、他の状況での抗原の同定、例えば、感染症生物、対象での感染、または対象の感染細胞から抗原を同定する同定に適用することができる。最適化の例は当業者に公知であり、例えば、米国特許第10,055,540号、米国出願公開第US20200010849A1号、米国出願公開第16/606,577号、ならびに国際特許出願公開第WO2020181240A1号、同第WO/2018/195357号及び同第WO/2018/208856号に方法が詳述されており、それぞれ、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0141】
抗原(例えば、腫瘍または感染症生物に由来する抗原)を同定するための方法には、細胞表面に提示される(例えば、樹状細胞等のプロフェッショナル抗原提示細胞を含め、腫瘍細胞上、感染細胞上、または免疫細胞上にMHCによって提示される)可能性の高い抗原、及び/または免疫原性である可能性の高い抗原を同定することが含まれる。一例として、そのような方法の1つは、腫瘍、感染細胞、もしくは感染症生物から、エクソーム、トランスクリプトームまたは全ゲノムのヌクレオチド配列決定及び/または発現のデータのうちの少なくとも1つを取得するステップであって、ヌクレオチド配列決定データ及び/または発現データが、抗原(例えば、腫瘍または感染症生物に由来する抗原)のセットのそれぞれのペプチド配列を表すデータを取得するために使用される、取得するステップ;各抗原のペプチド配列を1つ以上の提示モデルに入力して、細胞表面に、例えば、対象の腫瘍細胞または感染細胞の表面に1つ以上のMHCアレルによって抗原の各々が提示される数値的尤度のセットを生成するステップであって、数値的尤度のセットが、受け取った質量分析データに少なくとも基づいて同定されている、生成するステップ;ならびに選択された抗原のセットを生成するために、数値的尤度のセットに基づいて抗原のセットのサブセットを選択するステップ、を含み得る。
【0142】
III.ネオアンチゲンにおける腫瘍特異的変異の同定
本明細書ではまた、ある特定の変異(例えば、がん細胞に存在するバリアントまたはアレル)の同定のための方法も開示する。特に、これらの変異は、がんを有する対象のがん細胞のゲノム、トランスクリプトーム、プロテオーム、またはエクソームには存在するが、対象の正常組織には存在しない可能性がある。共通ネオアンチゲンを含め、腫瘍に特異的なネオアンチゲンを同定するための特定の方法が当業者に公知であり、例えば、米国特許第10,055,540号、米国出願公開第US20200010849A1号、ならびに国際特許出願公開第WO/2018/195357号及び同第WO/2018/208856号に方法が詳述されており、それぞれ、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。腫瘍に特異的な共通ネオアンチゲンの例は、国際特許出願公開第WO2019226941A1号に詳述されており、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。共通ネオアンチゲンには、KRAS関連変異(例えば、KRAS G12C、KRAS G12V、KRAS G12D、及び/またはKRAS Q61H変異)が含まれるが、これらに限定されない。例えば、KRAS関連MHCクラスIネオエピトープには、野生型(WT)ヒトKRASに関する変異、例えば、以下の例示的アミノ酸配列に関する変異が含まれ得る:MTEYKLVVVGAGGVGKSALTIQLIQNHFVDEYDPTIEDSYRKQVVIDGETCLLDILDTAGQEEYSAMRDQYMRTGEGFLCVFAINNTKSFEDIHHYREQIKRVKDSEDVPMVLVGNKCDLPSRTVDTKQAQDLARSYGIPFIETSAKTRQRVEDAFYTLVREIRQYRLKKISKEEKTPGCVKIKKCIIM。
【0143】
腫瘍における遺伝子変異は、それらが腫瘍においてのみタンパク質のアミノ酸配列の変化をもたらす場合には、免疫学的腫瘍ターゲティングに有用であると見なすことができる。有用な変異には、(1)タンパク質に異なるアミノ酸をもたらす非同義変異、(2)終止コドンが変更または欠失されて、C末端に新規の腫瘍特異的配列を持つ長いタンパク質の翻訳をもたらすリードスルー変異、(3)成熟mRNAにイントロンが包含されてしまい、そのため固有の腫瘍特異的タンパク質配列をもたらすスプライス部位変異、(4)2つのタンパク質の接合部に腫瘍特異的配列を持つキメラタンパク質をもたらす染色体再構成(すなわち、遺伝子融合)、(5)新規の腫瘍特異的タンパク質配列を持つ新たなオープンリーディングフレームをもたらすフレームシフト変異または欠失、が挙げられる。変異にはまた、非フレームシフトインデル、ミスセンス置換もしくはナンセンス置換、スプライス部位の変化、ゲノム再編成もしくは遺伝子融合、またはネオORFを生じさせる任意のゲノム変化もしくは発現変化のうちの1つ以上も含まれ得る。
【0144】
腫瘍細胞において、例えば、スプライス部位、フレームシフト、リードスルー、もしくは遺伝子融合の変異から生じる変異を有するペプチドまたは変異ポリペプチドは、腫瘍と正常細胞を対比させたDNA、RNAもしくはタンパク質のシークエンシングを行うことによって同定することができる。
【0145】
また、変異には、以前に同定されている腫瘍特異的変異も含まれ得る。既知の腫瘍変異は、Catalogue of Somatic Mutations in Cancer(COSMIC)データベースに見出すことができる。
【0146】
個体のDNAまたはRNAにおける特定の変異またはアレルの存在を検出するために様々な方法が利用可能である。この分野での進歩により、正確、容易、かつ安価な大規模SNPジェノタイピングがもたらされた。例えば、いくつかの技術が報告されており、動的アレル特異的ハイブリダイゼーション(DASH)、マイクロプレートアレイ対角ゲル電気泳動(MADGE)、パイロシークエンス法、オリゴヌクレオチド特異的ライゲーション、TaqManシステム、及びAffymetrix SNPチップのような各種DNA「チップ」技術が含まれる。これらの方法では、標的遺伝子領域の増幅、典型的にはPCRによるものを利用する。侵襲的切断、それに続く質量分析法または固定化南京錠型プローブ(padlock probe)及びローリングサークル増幅による小シグナル分子の生成に基づく、さらに他の方法。特異的変異を検出するための当該技術分野で公知の方法のいくつかを以下にまとめる。
【0147】
PCRベースの検出手段には、複数のマーカーの同時のマルチプレックス増幅が含まれ得る。例えば、サイズが重複しない、同時に分析可能なPCR産物を生成するようPCRプライマーを選択することは当該技術分野において周知である。別法として、差別的に標識されるプライマーを用いて異なるマーカーを増幅させることが可能であり、したがって、各々を差別的に検出することができる。当然のことながら、ハイブリダイゼーションに基づく検出手段により、試料中の複数のPCR産物の差別的な検出が可能になる。複数のマーカーの多重分析を可能にする他の技術が当該技術分野で公知である。
【0148】
ゲノムDNAまたは細胞RNAにおける一塩基多型の分析を容易にするために、いくつかの方法が開発されている。例えば、一塩基多型は、例えばMundy,C.R.(米国特許第4,656,127号)に開示されているような、特殊化したエキソヌクレアーゼ耐性ヌクレオチドを使用することによって検出することができる。その方法によれば、多型性部位に対して3’に隣接するアレル配列に相補的なプライマーが、特定の動物またはヒトから取得された標的分子にハイブリダイズすることができるようにされている。標的分子上の多型性部位が、存在する特定のエキソヌクレアーゼ耐性ヌクレオチド誘導体に相補的なヌクレオチドを含有している場合、その誘導体が、ハイブリダイズしたプライマーの末端に組み込まれる。そのような組み込みは、プライマーをエキソヌクレアーゼに対して耐性にし、それによりその検出を可能にする。試料のエキソヌクレアーゼ耐性誘導体の同一性が分かっているため、そのプライマーがエキソヌクレアーゼに対して耐性になったという所見から、標的分子の多型性部位に存在するヌクレオチドが、反応に使用されるヌクレオチド誘導体のヌクレオチドに相補的であることが明らかになる。この方法には、大量の外来性配列データの決定を必要としないという利点がある。
【0149】
多型性部位のヌクレオチドの同一性を決定するために溶液を用いる方法を使用することができる。Cohen,D.et al.(フランス特許第2,650,840号、PCT出願第WO91/02087号)。米国特許第4,656,127号のMundyの方法でのように、多型性部位に対して3’に隣接するアレル配列に相補的なプライマーが用いられる。この方法では、多型性部位のヌクレオチドに相補的である場合にプライマーの末端に組み込まれる標識ジデオキシヌクレオチド誘導体を使用して、その部位のヌクレオチドの同一性を決定する。
【0150】
Genetic Bit AnalysisまたはGBAとして知られる代替的方法がGoelet,P.et al.によって報告されている(PCT出願第92/15712号)。Goelet,P.et al.の方法では、標識されたターミネーターと、多型性部位に対して3’にある配列に相補的なプライマーとの混合物を使用する。したがって、組み込まれている標識されたターミネーターは、評価される標的分子の多型性部位に存在するヌクレオチドによって決定され、かつ、それに相補的である。Cohen et al.(フランス特許第2,650,840号、PCT出願第WO91/02087号)の方法とは対照的に、Goelet,P.et al.の方法は、不均一相アッセイであり得、ここで、プライマーまたは標的分子は、固相に固定化されている。
【0151】
DNAの多型性部位を評価するためのプライマー誘導型ヌクレオチド組み込み手順がいくつか報告されている(Komher,J.S.et al.,Nucl.Acids.Res.17:7779-7784(1989)、Sokolov,B.P.,Nucl.Acids Res.18:3671(1990)、Syvanen,A.-C.,et al.,Genomics 8:684-692(1990)、Kuppuswamy,M.N.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)88:1143-1147(1991)、Prezant,T.R.et al.,Hum.Mutat.1:159-164(1992)、Ugozzoli,L.et al.,GATA 9:107-112(1992)、Nyren,P.et al.,Anal.Biochem.208:171-175(1993))。これらの方法は、GBAとは異なり、多型性部位における塩基同士を識別するために標識デオキシヌクレオチドの組み込みを利用する。そのようなフォーマットでは、シグナルは組み込まれたデオキシヌクレオチドの数に比例するため、同じヌクレオチドのランで生じる多型は、ランの長さに比例するシグナルを生じさせ得る、(Syvanen,A.-C.,et al.,Amer.J.Hum.Genet.52:46-59(1993))。
【0152】
多数のイニシアチブが、DNAまたはRNAの何百万もの個々の分子から並行して直接、配列情報を取得している。合成時リアルタイム1分子シークエンシング技術は、蛍光ヌクレオチドの検出に依存しており、配列決定されるテンプレートに相補的なDNAの新生鎖に蛍光ヌクレオチドが組み込まれる。一方法では、30~50塩基長のオリゴヌクレオチドが、カバーガラスに5’末端で共有結合により係留されている。これらの係留鎖は2つの機能を果たす。第1に、テンプレートが、表面に結合したオリゴヌクレオチドに相補的な捕捉尾部を伴って構成されている場合に、それらの係留鎖は標的テンプレート鎖の捕捉部位として作用する。それらはまた、配列読み取りの基礎を形成するテンプレート指向性のプライマー伸長のためのプライマーとして作用する。捕捉プライマーは、複数サイクルの、合成、検出、及び色素を除去するための色素-リンカーの化学的切断を使用する配列決定のための定位置部位として機能する。各サイクルには、ポリメラーゼ/標識ヌクレオチドの混合物の添加、すすぎ、イメージング及び色素の切断が含まれる。代替的方法では、ポリメラーゼは、蛍光ドナー分子で修飾されてスライドガラス上に固定化され、各ヌクレオチドは、ガンマ-リン酸に結合しているアクセプター蛍光部分で色分けされる。システムは、蛍光修飾したヌクレオチドが新たな鎖に組み込まれる際の、蛍光タグ付きポリメラーゼと蛍光修飾したヌクレオチドとの相互作用を検出する。他の合成時解読技術もまた存在する。
【0153】
変異を同定するために任意の好適な合成時解読プラットフォームを使用することができる。上記のように、現在4つの主要な合成時解読プラットフォームが利用可能である:Roche/454 Life SciencesのGenome Sequencers、Illumina/Solexaの1G Analyzer、Applied BioSystemsのSOLiDシステム、及びHelicos BiosciencesのHeliscopeシステム。合成時解読プラットフォームはまた、Pacific BioSciences及びVisiGen Biotechnologiesによっても報告されている。いくつかの実施形態では、配列決定される複数の核酸分子は、支持体(例えば、固体支持体)に結合している。核酸を支持体に固定化するために、捕捉配列/ユニバーサルプライミング部位をテンプレートの3’及び/または5’末端に付加することができる。支持体に共有結合で結合している相補配列に捕捉配列をハイブリダイズすることによって、核酸を支持体に結合させることができる。捕捉配列(ユニバーサル捕捉配列とも呼ばれる)は、ユニバーサルプライマーとして二重の役目を果たし得る支持体に結合している配列に相補的な核酸配列である。
【0154】
捕捉配列の代替として、結合対(例えば、米国特許出願第2006/0252077号に記載されるような、例えば、抗体/抗原、受容体/リガンド、またはアビジン-ビオチンの対等)のメンバーを、その結合対それぞれの第2のメンバーでコートされた表面に捕捉されるべき各断片に連結することができる。
【0155】
捕捉の後、例えば、テンプレート依存性合成時解読を含め、例えば、実施例及び米国特許第7,283,337号に記載のような、一分子検出/シークエンシングによって配列を分析することができる。合成時解読では、表面に結合した分子が、ポリメラーゼ存在下で複数の標識ヌクレオチド三リン酸に曝露される。成長鎖の3’末端に組み込まれる標識ヌクレオチドの順序によってテンプレートの配列が決定される。これは、リアルタイムで実施することも、ステップアンドリピート方式で実施することもできる。リアルタイム分析の場合、各ヌクレオチドに異なる光学標識を組み込むことができ、組み込まれたヌクレオチドの刺激に複数のレーザーを利用することができる。
【0156】
シークエンシングにはまた、他の超並列シークエンシングまたは次世代シークエンシング(NGS)の技術及びプラットフォームも含まれ得る。超並列シークエンシング技術及びプラットフォームのさらなる例は、Illumina HiSeqまたはMiSeq、Thermo PGMまたはProton、Pac Bio RS IIまたはSequel、QiagenのGene Reader、及びOxford Nanopore MinIONである。追加で同様の現在の超並列シークエンシング技術、及びこれらの技術の将来の世代を使用することができる。
【0157】
本明細書に記載される方法に使用するための核酸試料を取得するために、任意の細胞種または組織を用いることができる。例えば、DNAまたはRNA試料は、腫瘍もしくは既知の技術(例えば、静脈穿刺)により得られる体液、例えば、血液、または唾液から得ることができる。別法として、乾燥試料(例えば、毛髪または皮膚)で核酸試験を実施することができる。さらに、ある試料をシークエンシングのために腫瘍から取得することができ、別の試料を、組織型が腫瘍と同じである正常組織からシークエンシングのために取得することができる。ある試料をシークエンシングのために腫瘍から取得することができ、別の試料を、腫瘍と比べて組織型が異なる正常組織からシークエンシングのために取得することができる。
【0158】
腫瘍には、肺がん、黒色腫、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、腎臓がん、胃がん、結腸がん、精巣がん、頭頸部がん、膵がん、脳腫瘍、B細胞リンパ腫、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、及びT細胞リンパ性白血病、非小細胞肺がん、及び小細胞肺がんのうちの1つ以上が含まれ得る。
【0159】
別法として、タンパク質質量分析法を使用して、腫瘍細胞上でMHCタンパク質に結合している変異ペプチドの存在を同定または検証することができる。ペプチドは、腫瘍細胞から、または腫瘍から免疫沈降させたHLA分子から酸溶出させ、その後、質量分析法を使用して同定することができる。
【0160】
IV.抗原
抗原には、ヌクレオチドまたはポリペプチドが含まれ得る。例えば、抗原は、ポリペプチド配列をコードするRNA配列であり得る。したがって、ワクチンに有用な抗原には、ヌクレオチド配列またはポリペプチド配列が含まれ得る。
【0161】
本明細書では、本明細書に開示の方法によって同定される腫瘍特異的変異を含む単離されたペプチド、既知の腫瘍特異的変異を含むペプチド、及び本明細書に開示の方法によって同定される変異ポリペプチドまたはそれらの断片を開示する。ネオアンチゲンペプチドは、それらのコード配列との関連において説明することができ、その場合、ネオアンチゲンには、関連ポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列(例えば、DNAまたはRNA)が含まれる。
【0162】
本明細書ではまた、正常な細胞もしくは組織と比較して腫瘍細胞もしくはがん性組織において発現が変化していることが既知であるかまたはそのことが見出された任意のポリペプチドに由来するペプチド、例えば、正常な細胞もしくは組織と比較して腫瘍細胞もしくはがん性組織で異常に発現されることが既知であるかまたはそのことが見出された任意のポリペプチドも開示する。抗原ペプチドが由来し得る好適なポリペプチドは、例えば、COSMICデータベースに見出すことができる。COSMICは、ヒトのがんにおける体細胞変異に関する包括的な情報を管理している。ペプチドは、腫瘍特異的変異を含有する。腫瘍抗原(例えば、共通腫瘍抗原及び腫瘍ネオ抗原)には、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる米国出願第17/058,128号に記載のものが含まれ得るが、これに限定されない。抗原ペプチドは、それらのコード配列との関連において説明することができ、その場合、抗原には、関連ポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列(例えば、DNAまたはRNA)が含まれる。
【0163】
本明細書ではまた、感染症生物、対象における感染、または対象の感染細胞と関連する任意のポリペプチドに由来するペプチドも開示する。抗原は、感染症生物のヌクレオチド配列またはポリペプチド配列に由来し得る。感染症生物のポリペプチド配列には、病原体由来ペプチド、ウイルス由来ペプチド、細菌由来ペプチド、真菌由来ペプチド、及び/または寄生虫由来ペプチドが含まれるが、これらに限定されない。感染症生物には、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス(SARS)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)、エボラ、HIV、B型肝炎ウイルス(HBV)、インフルエンザ、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、サイトメガロウイルス(CMV)、チクングニアウイルス、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、デング熱ウイルス、オルチミクソウイルス科(orthymyxoviridae)ウイルス、及び結核が含まれるが、これらに限定されない。
【0164】
本明細書では、本明細書に開示の方法によって同定される感染症生物特異的な抗原またはエピトープを含む単離されたペプチド、既知の感染症生物特異的な抗原またはエピトープを含むペプチド、及び本明細書に開示の方法によって同定される変異ポリペプチドまたはそれらの断片を開示する。抗原ペプチドは、それらのコード配列との関連において説明することができ、その場合、抗原には、関連ポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列(例えば、DNAまたはRNA)が含まれる。
【0165】
本明細書に記載されるベクター及び関連組成物を使用して、任意の生物からの抗原、例えば、それらの毒素もしくは他の副生成物を送達し、生物もしくはその副生成物と関連する感染症もしくは他の有害反応を予防及び/または治療することができる。
【0166】
ワクチンに組み込むことができる(例えば、カセットにしてコードされる)抗原には、ヒト及び非ヒト脊椎動物に感染する病原性ウイルス等のウイルスに対してヒトまたは非ヒト動物を免疫化するのに有用な免疫原が含まれる。抗原は、様々なウイルス科から選択され得る。対抗する免疫応答が望まれる望ましいウイルス科の例には、ピコルナウイルス科が含まれ、これには、感冒の症例の約50%の原因であるライノウイルス属;ポリオウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、及びA型肝炎ウイルス等のヒトエンテロウイルスが含まれるエンテロウイルス属;ならびに主に非ヒト動物での、口蹄疫の原因であるアプトウイルス(apthovirus)属が含まれる。ウイルスのうちピコルナウイルス科の中では、標的抗原には、VP1、VP2、VP3、VP4、及びVPGが含まれる。別のウイルス科には、カルシウイルス(calcivirus)科が含まれ、これにはノーウォーク群のウイルスが包含され、これらは流行性胃腸炎の重要な病原体である。ヒト及び非ヒト動物での免疫応答を刺激するための標的抗原に使用するために望ましいさらに別のウイルス科はトガウイルス科であり、これにはアルファウイルス属が含まれ、これには、シンドビスウイルス、ロスリバーウイルス、ならびにベネズエラウマ脳炎、東部ウマ脳炎及び西部ウマ脳炎、ならびに風疹ウイルス等のルビウイルスが含まれる。フラビウイルス科(Flaviviridae)には、デングウイルス、黄熱病ウイルス、日本脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス及びダニ媒介性脳炎ウイルスが含まれる。他の標的抗原は、C型肝炎またはコロナウイルス科から生成される場合があり、これには、伝染性気管支炎ウイルス(家禽)、ブタ伝染性胃腸ウイルス(ブタ)、ブタ血球凝集性脳脊髄炎ウイルス(ブタ)、ネコ伝染性腹膜炎ウイルス(ネコ)、ネコ腸コロナウイルス(ネコ)、イヌコロナウイルス(イヌ)等の多数の非ヒトウイルス、及びヒト呼吸器コロナウイルスが含まれ、これらは、感冒及び/または非A型、B型もしくはC型肝炎を引き起こす場合がある。コロナウイルス科の中では、標的抗原には、E1(Mタンパク質またはマトリックスタンパク質とも呼ばれる)、E2(Sタンパク質またはスパイクタンパク質とも呼ばれる)、E3(HEまたはヘマグルチン-エルテロース(hemagglutin-elterose)とも呼ばれる)の糖タンパク質(コロナウイルスすべてに存在するわけではない)、またはN(ヌクレオカプシド)が含まれる。さらに他の抗原は、ラブドウイルス科に対してターゲティングされ得、これには、ベシクロウイルス属(例えば、水疱性口内炎ウイルス)、及びリッサウイルス全般(例えば狂犬病)が含まれる。ラブドウイルス科の中では、好適な抗原は、Gタンパク質またはNタンパク質に由来し得る。マールブルグウイルス及びエボラウイルス等の出血熱ウイルスが含まれるフィロウイルス科(filoviridae)は、好適な抗原源であり得る。パラミクソウイルス科には、パラインフルエンザウイルス1型、パラインフルエンザウイルス3型、ウシパラインフルエンザウイルス3型、ウブラウイルス(ムンプスウイルス)、パラインフルエンザウイルス2型、パラインフルエンザウイルス4型、ニューカッスル病ウイルス(ニワトリ)、牛疫、モルビリウイルス(麻疹及びイヌジステンパーを含む)、ならびに呼吸器多核体ウイルスが含まれるニューモウイルス(例えば、GenBankから配列が入手可能な糖(G)タンパク質及び融合(F)タンパク質)が含まれる。インフルエンザウイルスはオルトミクソウイルス科の中に分類され、好適な抗原源であり得る(例えば、HAタンパク質、N1タンパク質)。ブニヤウイルス科には、ブニヤウイルス属(カリフォルニア脳炎、ラクロス)、フレボウイルス属(リフトバレー熱)、ハンタウイルス属(プレマラ(puremala)はヘマハギン熱(hemahagin fever)ウイルスである)、ナイロウイルス属(ナイロビ羊病)及び様々な未分類のブンガウイルス(bungavirus)が含まれる。アレナウイルス科では、LCM及びラッサ熱ウイルスに対する抗原源が得られる。レオウイルス科には、レオウイルス属、ロタウイルス属(小児に急性胃腸炎を引き起こす)、オルビウイルス属、及びカルチウイルス(cultivirus)属(コロラドダニ熱、レボンボ(ヒト)、ウマ脳症、ブルータング)が含まれる。レトロウイルス科にはオンコリビリナル(oncorivirinal)亜科が含まれ、これには、ネコ白血病ウイルス、HTLVI及びHTLVII、レンチビリナル(lentivirinal)(これには、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウマ伝染性貧血ウイルス、及びスプマビリナル(spumavirinal)が含まれる)のようなヒト及び動物の疾患が包含される。レンチウイルスの中から、多くの好適な抗原が報告されており、容易に選択することができる。好適なHIV抗原及びSIV抗原の例には、非限定的に、gag、pol、Vif、Vpx、VPR、Env、Tat、Nef、及びRevといったタンパク質、ならびにそれらの様々な断片が含まれる。例えば、Envタンパク質の好適な断片には、gp120、gp160、gp41等のそのサブユニット、またはより小さなそれらの断片、例えば、少なくとも約8アミノ酸長のもの、のうちのいずれかが含まれ得る。同様に、tatタンパク質の断片が選択され得る。[米国特許第5,891,994号及び米国特許第6,193,981号を参照のこと。]また、D.H.Barouch et al,J.Virol.,75(5):2462-2467(March 2001)、及びR.R.Amara,et al,Science,292:69-74(6 Apr.2001)に記載のHIVタンパク質及びSIVタンパク質も参照のこと。別の例では、HIV及び/またはSIVの免疫原性タンパク質もしくはペプチドを使用して、融合タンパク質または他の免疫原性分子が形成され得る。例えば、2001年8月2日に公開されたWO01/54719、及び、1999年4月8日に公開されたWO99/16884に記載のHIV-1 Tat及び/またはNef融合タンパク質及び免疫化レジメンを参照のこと。本発明は、本明細書に記載されるHIV及び/またはSIVの免疫原性タンパク質もしくはペプチドに限定されない。さらに、これらのタンパク質に対する様々な改変は、報告されているか、または当業者であれば容易に行うことができる。例えば、米国特許第5,972,596号に記載されている改変gagタンパク質を参照のこと。さらに、任意の所望のHIV免疫原及び/またはSIV免疫原が、単独または組み合わせで送達され得る。そのような組み合わせには、単一ベクターからかまたは複数のベクターからの発現が含まれ得る。パポーバウイルス科には、ポリオーマウイルス亜科(BKUウイルス及びJCUウイルス)及びパピローマウイルス亜科(がんまたは乳頭腫の悪性進行と関連する)が含まれる。アデノウイルス科には、呼吸器疾患及び/または腸炎を引き起こすウイルス(EX、AD7、ARD、O.B.)が含まれる。パルボウイルス科ネコパルボウイルス(ネコ腸炎)、ネコ汎白血球減少症ウイルス、イヌパルボウイルス、及びブタパルボウイルス。ヘルペスウイルス科には、単純ウイルス属(HSVI、HSVII)、バリセロウイルス属(仮性狂犬病、水痘帯状疱疹)を包含するアルファヘルペスウイルス亜科(alphaherpesvirinae)、ならびにサイトメガロウイルス属(ヒトCMV)、ムロメガロウイルス属)が含まれるベータヘルペスウイルス亜科(betaherpesvirinae)、ならびにリンホクリプトウイルス属、EBV(バーキットリンパ腫)、感染性鼻気管炎、マレック病ウイルス、及びラジノウイルス属が含まれるガンマヘルペスウイルス亜科(gammaherpesvirinae)が含まれる。ポックスウイルス科には、オルソポックスウイルス属(痘瘡(天然痘)及びワクシニア属(牛痘))、パラポックスウイルス属、アビポックスウイルス属、カプリポックスウイルス属、レポリポックスウイルス属、ブタポックスウイルス属を包含するコードポックスウイルス亜科(chordopoxyirinae)、ならびにエントモポックスウイルス亜科(entomopoxyirinae)が含まれる。ヘパドナウイルス科には、B型肝炎ウイルスが含まれる。好適な抗原源であり得る分類対象外ウイルスの1つは、デルタ型肝炎ウイルスである。さらに他のウイルス源には、トリ伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス及び豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルスが含まれ得る。アルファウイルス科には、ウマ動脈炎ウイルス及び様々な脳炎ウイルスが含まれる。
【0167】
ワクチンに組み込むことができる(例えば、カセットにしてコードされる)抗原には、ヒト及び非ヒト脊椎動物に感染する、細菌、真菌、寄生性微生物もしくは多細胞寄生虫が含まれる病原体に対して、ヒトまたは非ヒト動物を免疫化するのに有用な免疫原も含まれる。細菌性病原体の例には、病原性グラム陽性球菌が含まれ、肺炎連鎖球菌(pneumococci)、ブドウ球菌(staphylococci)、及び連鎖球菌(streptococci)が含まれる。病原性グラム陰性球菌には、髄膜炎菌(meningococcus)、淋菌(gonococcus)が含まれる。病原性腸内グラム陰性桿菌には、腸内細菌科(enterobacteriaceae);シュードモナス属(pseudomonas)、アシドバクテリア(acinetobacteria)及びエイケネラ属(eikenella);類鼻疽;サルモネラ菌(salmonella);赤痢菌(shigella);ヘモフィルス属(haemophilus)(インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、ヘモフィルス・ソムナス(Haemophilus somnus));モラクセラ属(moraxella);軟性下疳菌(H.ducreyi)(軟性下疳を引き起こす);ブルセラ菌(brucella);フランシセラ・ツラレンシス(Franisella tularensis)(野兎病を引き起こす);エルシニア属(yersinia)(パスツレラ属(pasteurella));ストレプトバチルス・モニリフォルミス(streptobacillus moniliformis)ならびにスピリルム属(spirillum)が含まれる。グラム陽性桿菌には、リステリア菌(listeria monocytogenes);ブタ丹毒菌(erysipelothrix rhusiopathiae);ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheria)(ジフテリア);コレラ(cholera);炭疽菌(B.anthracis)(炭疽);ドノヴァン症(鼠径部肉芽腫);及びバルトネラ症が含まれる。病原性嫌気性菌によって引き起こされる疾患には、破傷風;ボツリヌス症;他のクロストリジウム;結核;ハンセン病;及び他のマイコバクテリアが含まれる。特定の細菌種の例は、限定することなく、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae)、大便連鎖球菌(Streptococcus faecalis)、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、ピロリ菌(Helicobacter pylori)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、トラコーマクラミジア(Chlamydia trachomatis)、肺炎クラミジア(Chlamydia pneumoniae)、オウム病クラミジア(Chlamydia psittaci)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、チフス菌(Salmonella typhi)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、サルモネラ・コレレスイス(Salmonella choleraesuis)、大腸菌(Escherichia coli)、赤痢菌、コレラ菌(Vibrio cholerae)、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、マイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ(Mycobacterium intracellulare)複合体、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、破傷風菌(Clostridium tetani)、レプトスピラ・インターロガンス(Leptospira interrogans)、ライム病ボレリア(Borrelia burgdorferi)、ヘモリチカ菌(Pasteurella haemolytica)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、アクチノバチルス・プルロニューモニア(Actinobacillus pleuropneumoniae)、及びマイコプラズマ・ガリセプチカム(Mycoplasma gallisepticum)である。病原性スピロヘータによる疾患には、梅毒;トレポネーマ症:イチゴ腫、ピンタ及び風土病梅毒;及びレプトスピラ症が含まれる。高病原体細菌及び病原性真菌によって引き起こされる他の感染症には、アクチノミセス症/放線菌症;ノカルジア症;クリプトコッカス症(クリプトコッカス属(Cryptococcus))、醸母菌症(ブラストミセス属(Blastomyces))、ヒストプラスマ症(ヒストプラズマ属(Histoplasma))及びコクチジオイデス真菌症(コクシジオイデス(Coccidiodes));カンジダ症(カンジダ属(Candida))、アスペルギルス症(アスペルギルス(Aspergillis))、及びムコール症;スポロトリクム症;パラコクシジオイデス症、ペトリエリジオーシス(petriellidiosis)、トルロプシス症、菌腫及びクロモミコーシス;及び皮膚糸状菌症が含まれる。リケッチア感染症には、チフス熱、ロッキー山紅斑熱、Q熱、及びリケッチア痘症が含まれる。マイコプラズマ感染症及びクラミジア感染症の例には、肺炎マイコプラズマ(mycoplasma pneumoniae);性病性リンパ肉芽腫;オウム病;及び周産期クラミジア感染症が挙げられる。病原性真核生物は、病原性の原生動物及び蠕虫を包含し、それらにより引き起こされる感染症には、アメーバ症;マラリア;リーシュマニア症(例えば、森林型熱帯リーシュマニア(Leishmania major)によって引き起こされる);トリパノソーマ症;トキソプラズマ症(例えば、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)によって引き起こされる);ニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)感染症;トリカン(Trichan)感染症;トキソプラズマ感染症(トキソプラズマ原虫);バベシア症;ジアルジア症(例えば、ジアルジア属(Giardia)によって引き起こされる);施毛虫症(例えば、トリコモナス属(Trichomonas)によって引き起こされる);フィラリア症;住血吸虫症(例えば、住血吸虫属(Schistosoma)によって引き起こされる);線虫感染症;吸虫(trematode)または吸虫(fluke)感染症;及び条虫(サナダムシ)感染症が挙げられる。他の寄生虫感染症は、特に回虫属(Ascaris)、鞭虫属(Trichuris)、クリプトスポリジウム属(Cryptosporidium)、及びニューモシスチス・カリニによって引き起こされ得る。
【0168】
本明細書ではまた、感染症生物、対象における感染、または対象の感染細胞と関連する任意のポリペプチドに由来するペプチドも開示する。抗原は、感染症生物の核酸配列またはポリペプチド配列に由来し得る。感染症生物のポリペプチド配列には、病原体由来ペプチド、ウイルス由来ペプチド、細菌由来ペプチド、真菌由来ペプチド、及び/または寄生虫由来ペプチドが含まれるが、これらに限定されない。感染症生物には、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス(SARS)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)、エボラ、HIV、B型肝炎ウイルス(HBV)、インフルエンザ、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、サイトメガロウイルス(CMV)、チクングニアウイルス、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、デング熱ウイルス、オルチミクソウイルス科ウイルス、及び結核が含まれるが、これらに限定されない。
【0169】
抗原は、腫瘍細胞、感染細胞、または樹状細胞等のプロフェッショナル抗原提示細胞を含む免疫細胞等の細胞の細胞表面に提示されると予測されるものを選択することができる。抗原は、免疫原性であると予測されるものを選択することができる。
【0170】
抗原ヌクレオチド配列によってコードされる1つ以上のポリペプチドは、以下:IC50値が1000nM未満であるMHCとの結合親和性、MHCクラスIペプチドの場合は8~15、8、9、10、11、12、13、14、もしくは15アミノ酸の長さ、プロテアソームによる切断を促進するペプチドの内部または近傍での配列モチーフの存在、及びTAP輸送を促進する配列モチーフの存在、のうちの少なくとも1つを含むことができる。MHCクラスIIペプチドの場合は6~30、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、もしくは30アミノ酸の長さ、細胞外もしくはリソソームでのプロテアーゼ(例えば、カテプシン)による切断またはHLA-DMに触媒されるHLA結合を促進するペプチドの内部もしくは近傍での配列モチーフの存在。
【0171】
1つ以上の抗原が腫瘍の表面に提示され得る。1つ以上の抗原が感染細胞の表面に提示され得る。
【0172】
1つ以上の抗原は、腫瘍を有する対象において免疫原性であり得、例えば、対象でのT細胞応答及び/またはB細胞応答を刺激する能力がある。1つ以上の抗原は、感染症を有するかまたは有すると疑われる対象において免疫原性であり得、例えば、対象でのT細胞応答及び/またはB細胞応答を刺激する能力がある。1つ以上の抗原は、感染症のリスクのある対象において免疫原性であり得、例えば、その感染症に対する免疫学的防御(すなわち、免疫)を提供する、対象でのT細胞応答及び/またはB細胞応答を刺激する能力、例えば、メモリーT細胞、メモリーB細胞、またはその感染症に特異的な抗体の産生を刺激する等の能力がある。
【0173】
1つ以上の抗原は、1つ以上の抗原を認識する抗体(例えば、腫瘍または感染症抗原を認識する抗体)の産生等のB細胞応答を刺激する能力があり得る。抗体は、直鎖ポリペプチド配列を認識することができるか、または二次及び三次構造を認識することができる。したがって、B細胞抗原には、直鎖ポリペプチド配列または二次構造及び三次構造を有するポリペプチドが含まれ得、それらとしては、全長タンパク質、タンパク質サブユニット、タンパク質ドメイン、または二次構造及び三次構造を有することが既知であるかもしくは予測される任意のポリペプチド配列が挙げられるが、これらに限定されない。腫瘍または感染症抗原に対するB細胞応答を刺激する能力がある抗原はそれぞれ、腫瘍細胞または感染症生物の表面に見られる抗原であり得る。腫瘍または感染症抗原に対するB細胞応答を誘発する能力がある抗原はそれぞれ、腫瘍または感染症生物で発現される細胞内ネオアンチゲンであり得る。
【0174】
1つ以上の抗原には、T細胞応答を刺激する能力がある抗原(例えば、予測されるT細胞エピトープ配列等のペプチド)と、B細胞応答を刺激する能力がある別個の抗原(例えば、全長タンパク質、タンパク質サブユニット、タンパク質ドメイン)の組み合わせが含まれ得る。
【0175】
対象での自己免疫応答を刺激する1つ以上の抗原は、対象のためのワクチン作製との関連では、考慮から除外することができる。
【0176】
少なくとも1つの抗原ペプチド分子(例えば、エピトープ配列)のサイズは、限定するわけではないが、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30、約31、約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39、約40、約41、約42、約43、約44、約45、約46、約47、約48、約49、約50、約60、約70、約80、約90、約100、約110、約120、またはそれ以上のアミノ分子残基、及びそこから導き出せる任意の範囲を含むことができる。具体的な実施形態では抗原ペプチド分子は50アミノ酸以下である。
【0177】
抗原ペプチド及びポリペプチドは、MHCクラスIの場合は、15残基長以下、通常は約8~約11残基、特に9または10残基からなり、MHCクラスIIの場合は、6以上30以下の残基であり得る。
【0178】
必要に応じて、より長いペプチドをいくつかの方法で設計することができる。ある場合では、HLAアレルでのペプチドの提示可能性が予測されているかまたは既知である場合、より長いペプチドは、(1)個々の提示されるペプチドが、各々の対応する遺伝子産物のN末端及びC末端へ向かって2~5アミノ酸の伸長を有する、(2)提示されたペプチドの一部または全部と、各々について伸長された配列との連結、のいずれかからなり得る。別の場合では、シークエンシングにより腫瘍内に存在する長い(10残基超)ネオエピトープ配列が明らかになる場合(例えば、新規ペプチド配列をもたらすフレームシフト、リードスルーまたはイントロン包含による)、より長いペプチドは、(3)新規の腫瘍特異的または感染症特異的なアミノ酸の領域全体からなり、したがって、計算によるかまたはインビトロ試験に基づいた、最も強力なHLA提示の短いペプチドの選択の必要性が省かれる。いずれの場合も、より長いペプチドの使用により、患者細胞による内因性プロセシングが可能になり、より効果的な抗原提示及びT細胞応答の刺激がもたらされ得る。より長いペプチドにはまた、腫瘍または感染症生物でそれぞれ発現されるもの等の、ペプチドの全長タンパク質、タンパク質サブユニット、タンパク質ドメイン、及びそれらの組み合わせも含まれ得る。B細胞応答を刺激するために、より長いペプチド(例えば、全長タンパク質、タンパク質サブユニット、またはタンパク質ドメイン)及びそれらの組み合わせを含めることができる。
【0179】
抗原ペプチド及びポリペプチドは、HLAタンパク質上に提示され得る。いくつかの態様では、抗原ペプチド及びポリペプチドはHLAタンパク質上に提示され、親和性が野生型ペプチドよりも高い。いくつかの態様では、抗原ペプチドまたはポリペプチドは、少なくとも5000nM未満、少なくとも1000nM未満、少なくとも500nM未満、少なくとも250nM未満、少なくとも200nM未満、少なくとも150nM未満、少なくとも100nM未満、少なくとも50nM未満、またはそれより低いIC50を有し得る。
【0180】
いくつかの態様では、抗原ペプチド及びポリペプチドは、対象に投与された場合に自己免疫応答を誘導しない、及び/または免疫寛容を引き起こさない。
【0181】
少なくとも2つ以上の抗原ペプチドを含む組成物も提供される。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも2つの別個のペプチドを含有する。少なくとも2つの別個のペプチドは、同じポリペプチドに由来し得る。別個のポリペプチドとは、ペプチドが、長さ、アミノ酸配列、またはその両方で異なっていることを意味する。ペプチドには、腫瘍特異的変異が含まれ得る。腫瘍特異的ペプチドは、腫瘍特異的変異を含有することが既知であるかまたはそのことが見出された任意のポリペプチドに由来し得るか、あるいは正常な細胞もしくは組織と比較して腫瘍細胞もしくはがん性組織において発現が変化していることが既知であるかまたはそのことが見出された任意のポリペプチド、例えば、正常な細胞もしくは組織と比較して腫瘍細胞もしくはがん性組織で異常に発現されることが既知であるかまたはそのことが見出された任意のポリペプチドに由来するペプチドであり得る。ペプチドは、感染症生物と関連することが既知であるかまたは疑われている任意のポリペプチドに由来し得るか、あるいは正常な細胞もしくは組織と比較して感染細胞において発現が変化していることが既知であるかまたはそのことが見出された任意のポリペプチドに由来するペプチドであり得る(例えば、発現が宿主細胞に限定されている感染症のポリヌクレオチドまたはポリペプチドが含まれる、感染症のポリヌクレオチドまたはポリペプチド)。抗原ペプチドが由来し得る好適なポリペプチドは、例えば、COSMICデータベースまたはAACR Genomics Evidence Neoplasia Information Exchange(GENIE)データベースに見出すことができる。COSMICは、ヒトのがんにおける体細胞変異に関する包括的な情報を管理している。AACR GENIEは、臨床グレードのがんゲノムデータを集約し、それらを何万ものがん患者からの臨床転帰と関連付けている。いくつかの態様では、腫瘍特異的変異は、特定のがん種のドライバー変異である。ペプチドには、KRAS変異(例えば、KRAS G12C、KRAS G12V、KRAS G12D、及び/またはKRAS Q61Hの変異)が含まれ得る。
【0182】
所望の活性または特性を有する抗原ペプチド及びポリペプチドを修飾して、ある特定の所望の属性、例えば薬理学的特性の改善を提供し、一方で、未修飾ペプチドが所望のMHC分子と結合して適切なT細胞を活性化させるという生物学的活性を増大させるかまたはその実質的にすべてを少なくとも保持するようにすることができる。例えば、抗原ペプチド及びポリペプチドは、保存的または非保存的な置換等の様々な変更を受ける可能性があり、その場合、そのような変更により、それらの使用における特定の利点、例えば、MHCの結合、安定性または提示の改善等が提供され得る。保存的置換とは、あるアミノ酸残基を、生物学的及び/または化学的に類似する別のアミノ酸残基に置き換えること、例えば、ある疎水性残基を別の残基に、もしくはある極性残基を別の残基に置き換えることを意味する。置換には、Gly、Ala;Val、Ile、Leu、Met;Asp、Glu;Asn、Gln;Ser、Thr;Lys、Arg;及びPhe、Tyr等の組み合わせが含まれる。単一アミノ酸置換の効果はまた、D-アミノ酸を使用してプローブされ得る。そのような修飾は、例えば、Merrifield,Science 232:341-347(1986),Barany & Merrifield,The Peptides,Gross & Meienhofer,eds.(N.Y.,Academic Press),pp.1-284(1979)、及びStewart & Young,Solid Phase Peptide Synthesis,(Rockford,Ill.,Pierce),2d Ed.(1984)に記載されている、周知のペプチド合成手順を使用して行うことができる。
【0183】
様々なアミノ酸模倣物または非天然アミノ酸でのペプチド及びポリペプチドの修飾は、ペプチド及びポリペプチドの安定性をインビボで増大させる際に特に有用であり得る。安定性は、多数の方法でアッセイされ得る。例えば、ペプチダーゼ及び様々な生物学的媒体、例えば、ヒトの血漿及び血清が、安定性を試験するために使用されている。例えば、Verhoef et al.,Eur.J.Drug Metab Pharmacokin.11:291-302(1986)を参照のこと。ペプチドの半減期は、25%ヒト血清(v/v)アッセイを使用して好都合に決定され得る。プロトコルは一般に以下のとおりである。プールされたヒト血清(AB型、非熱非働化)を、使用前に遠心分離により脱脂する。次いで、血清をRPMI組織培養培地で25%に希釈し、ペプチド安定性を試験するために使用する。所定の時間間隔で少量の反応溶液を取り出し、6%トリクロロ酢酸またはエタノールの水溶液に加える。混濁反応試料を15分間冷却(4℃)し、その後、沈殿した血清タンパク質を遠心にかけてペレットにする。その後、安定性特異的なクロマトグラフィー条件を使用した逆相HPLCによって、ペプチドの存在を決定する。
【0184】
ペプチド及びポリペプチドは、血清中半減期改善以外の所望の属性が得られるよう、修飾され得る。例えば、ペプチドがCTL活性を刺激する能力は、Tヘルパー細胞応答を刺激する能力がある少なくとも1つのエピトープを含有する配列への結合によって増強され得る。免疫原性ペプチド/Tヘルパー複合体は、スペーサー分子によって連結され得る。スペーサーは典型的には、生理学的条件下で実質的に非荷電である、アミノ酸またはアミノ酸模倣物等の比較的小さい中性分子で構成される。スペーサーは典型的には、例えば、Ala、Gly、または非極性アミノ酸もしくは中性極性アミノ酸の他の中性スペーサーから選択される。任意選択で存在するスペーサーは同じ残基で構成される必要はなく、したがって、ヘテロオリゴマーでもホモオリゴマーでもあり得ることが理解されるであろう。存在する場合、スペーサーは一般には少なくとも1つまたは2つの残基、より一般には3~6つの残基である。別法として、ペプチドは、スペーサーを用いずにTヘルパーペプチドに連結され得る。
【0185】
抗原ペプチドは、Tヘルパーペプチドに直接連結することができ、またペプチドのアミノ末端もしくはカルボキシ末端のいずれにおいてもスペーサーを介して連結することもできる。抗原ペプチドまたはTヘルパーペプチドのいずれのアミノ末端も、アシル化が可能である。例示的Tヘルパーペプチドには、破傷風トキソイド830~843、インフルエンザ307~319、マラリアスポロゾイト周囲382~398及び378~389が含まれる。
【0186】
タンパク質またはペプチドは、標準的分子生物学的技術によるタンパク質、ポリペプチドもしくはペプチドの発現、天然物からのタンパク質もしくはペプチドの単離、またはタンパク質もしくはペプチドの化学合成等の、当業者に公知の任意の技術によって作製可能である。様々な遺伝子に対応する、ヌクレオチドならびにタンパク質、ポリペプチド及びペプチドの配列は、以前に開示されており、当業者に公知のコンピュータ化されたデータベースに見出すことができる。そのようなデータベースの1つは、National Institutes of Healthウェブサイトに設けられたNational Center for Biotechnology InformationのGenbank及びGenPeptデータベースである。既知の遺伝子のコード領域は、本明細書に開示の技術または当業者に公知であろう技術を使用して、増幅及び/または発現が可能である。別法として、タンパク質、ポリペプチド及びペプチドの様々な市販の調製物が当業者に公知である。
【0187】
さらなる態様では、抗原には、抗原ペプチドまたはその部分をコードする核酸(例えば、ポリヌクレオチド)が含まれる。ポリヌクレオチドは、一本鎖及び/または二本鎖、あるいは天然ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの安定化形態、例えば、チオリン酸骨格を有するポリヌクレオチド等、あるいはそれらの組み合わせのいずれかの、例えば、DNA、cDNA、PNA、CNA、RNA(例えば、mRNA)であり得、イントロンを含有する場合もあれば、含有しない場合もある。抗原をコードするポリヌクレオチド配列は、発現が改善するよう転写、翻訳、転写後プロセシング、及び/またはRNA安定性を改善すること等を介して、配列最適化が可能である。例えば、抗原をコードするポリヌクレオチド配列は、コドンが最適化されたものであり得る。本明細書で「コドン最適化」とは、所与の生物のコドンバイアスに関して使用頻度の低いコドンを、使用頻度の高い同義コドンに置き換えることを指す。ポリヌクレオチド配列を、転写後プロセシングが改善するよう最適化することができ、例えば、意図しないスプライシングが減少するよう、スプライシングモチーフ(例えば、標準及び/または潜在的/非標準のスプライスドナー配列、分岐配列、及び/またはアクセプター配列)の除去、及び/またはバイアスに優先されるスプライシング現象への外因性スプライシングモチーフ(例えば、スプライスドナー配列、分岐配列、及び/またはアクセプター配列)の導入等を介して最適化することができる。外因性イントロン配列には、SV40に由来するもの(例えば、SV40ミニイントロン)及び免疫グロブリンに由来するもの(例えば、ヒトβ-グロビン遺伝子)が含まれるが、これらに限定されない。外因性イントロン配列は、プロモーター/エンハンサー配列と抗原配列の間に組み込まれ得る。発現ベクターに使用するための外因性イントロン配列は、Callendret et al.(Virology.2007 Jul 5;363(2):288-302)に詳述されており、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。ポリヌクレオチド配列を、転写安定性が改善するよう、例えば、RNA不安定性モチーフ(例えば、AUリッチエレメント及び3’UTRモチーフ)及び/または反復ヌクレオチド配列の除去を介して最適化することができる。ポリヌクレオチド配列を、正確な転写が改善するよう、例えば、潜在的転写イニシエーター及び/またはターミネーターの除去を介して最適化することができる。ポリヌクレオチド配列を、翻訳及び翻訳精度が改善するよう、例えば、潜在的AUG開始コドン、早期ポリA配列、及び/または二次構造モチーフの除去を介して最適化することができる。ポリヌクレオチド配列を、転写産物の核外輸送が改善するよう、構成輸送要素(CTE)、RNA輸送因子(RTE)、またはウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE)の付加等を介して最適化することができる。発現ベクターに使用するための核外輸送シグナルは、Callendret et al.(Virology.2007 Jul 5;363(2):288-302)に詳述されており、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。ポリヌクレオチド配列を、GC含量に関して、例えば、所与の生物の平均GC含量が反映されるよう最適化することができる。配列最適化により、転写、翻訳、転写後プロセシング、及び/またはRNA安定性等の1つ以上の配列特性のバランスを取ることができる。配列最適化により、転写、翻訳、転写後プロセシング、及びRNA安定性のそれぞれのバランスの取れた最適配列を生成することができる。GeneArt(Thermo Fisher)、Codon Optimization Tool(IDT)、Cool Tool(University of Singapore)、SGI-DNA(La Jolla California)等の配列最適化アルゴリズムが当業者に公知である。抗原をコードするタンパク質の1つ以上の領域を別々に配列最適化することができる。
【0188】
さらに別の態様では、ポリペプチドまたはその部分を発現する能力がある発現ベクターを提供する。様々な細胞型の発現ベクターが当該技術分野において周知であり、過度の実験を伴うことなく選択することができる。一般に、DNAは、プラスミド等の発現ベクター内に、発現のための適切な配向及び正しいリーディングフレームで挿入される。必要に応じて、所望の宿主により認識される、適切な転写調節性及び翻訳調節性の制御ヌクレオチド配列にDNAを連結することができるが、そのような制御は一般に発現ベクターで利用可能である。その後、標準的技術により宿主にベクターが導入される。ガイダンスは、例えば、Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Yに見出すことができる。
【0189】
V.ワクチン組成物
本明細書ではまた、特異的免疫応答、例えば、腫瘍特異的免疫応答または感染症生物特異的免疫応答を生じさせる能力がある免疫原性組成物、例えば、ワクチン組成物も開示する。ワクチン組成物は典型的には、1つまたは複数の、例えば、本明細書に記載の方法を使用して選択されるか、あるいは病原体由来ペプチド、ウイルス由来ペプチド、細菌由来ペプチド、真菌由来ペプチド、及び/または寄生虫由来ペプチドから選択される抗原を含む。ワクチン組成物はワクチンとも呼ばれ得る。
【0190】
ワクチンは、1~30個のペプチド、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、もしくは30個の異なるペプチド、6、7、8、9、10、11、12、13、もしくは14個の異なるペプチド、または12、13、もしくは14個の異なるペプチドを含有することができる。ペプチドには、翻訳後修飾が含まれ得る。ワクチンは、1~100個、もしくはそれ以上のヌクレオチド配列、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100個、もしくはそれ以上の異なるヌクレオチド配列、6、7、8、9、10、11、12、13、もしくは14個の異なるヌクレオチド配列、または12、13、もしくは14個の異なるヌクレオチド配列を含有することができる。ワクチンは、1~30個の抗原配列、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100個、もしくはそれ以上の異なる抗原配列、6、7、8、9、10、11、12、13、もしくは14個の異なる抗原配列、または12、13、もしくは14個の異なる抗原配列を含有することができる。
【0191】
ワクチンは、1~30個の抗原コード核酸配列、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100個、もしくはそれ以上の異なる抗原コード核酸配列、6、7、8、9、10、11、12、13、もしくは14個の異なる抗原コード核酸配列、または12、13、もしくは14個の異なる抗原コード核酸配列を含有することができる。抗原コード核酸配列とは、「抗原カセット」の部分をコードする抗原を指し得る。抗原カセットの特徴については本明細書で詳述されている。抗原コード核酸配列は、1つ以上のエピトープコード核酸配列を含有することができる(例えば、連結されたT細胞エピトープをコードする抗原コード核酸配列)。
【0192】
ワクチンは、1~30個の別個のエピトープコード核酸配列、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100個、もしくはそれ以上の別個のエピトープコード核酸配列、6、7、8、9、10、11、12、13、もしくは14個の別個のエピトープコード核酸配列、または12、13、もしくは14個の別個のエピトープコード核酸配列を含有することができる。エピトープコード核酸配列とは、個々のエピトープ配列のための配列、例えば、連結されたT細胞エピトープをコードする抗原コード核酸配列中のT細胞エピトープのそれぞれを指し得る。
【0193】
ワクチンは、エピトープコード核酸配列の少なくとも2つのリピートを含有することができる。本明細書で使用される、「反復」(または互換的に「繰り返し」)とは、抗原コード核酸配列内での同一の核酸エピトープをコードする核酸配列(本明細書に記載される任意選択の5’リンカー配列及び/または任意選択の3’リンカー配列を包含)の2回以上の反復を指す。一例では、カセットの抗原コード核酸配列部分は、エピトープコード核酸配列の少なくとも2回の反復をコードする。さらなる非限定的な例では、カセットの抗原コード核酸配列部分は、複数の別個のエピトープをコードし、別個のエピトープのうちの少なくとも1つは、別個のエピトープをコードする核酸配列の少なくとも2回の反復によってコードされる(すなわち、少なくとも2つの別個のエピトープコード核酸配列)。例示的な非限定的例では、抗原コード核酸配列は、エピトープコード核酸配列によってコードされるエピトープA、B、及びCをコードし、エピトープコード配列A(EA)、エピトープコード配列B(EB)、及びエピトープコード配列C(EC)、ならびに別個のエピトープのうちの少なくとも1つの反復を有する例示的な抗原コード核酸配列は、以下の式によって例示されるが、これらに限定されない。
- 1つの別個のエピトープの反復(エピトープAの反復):
EA-EB-EC-EA、または
EA-EA-EB-EC
- 複数の別個のエピトープの反復(エピトープA、B、及びCの反復):
EA-EB-EC-EA-EB-EC、または
EA-EA-EB-EB-EC-EC
- 複数の別個のエピトープの多回反復(エピトープA,B,及びCの反復):
EA-EB-EC-EA-EB-EC-EA-EB-EC、または
EA-EA-EA-EB-EB-EB-EC-EC-EC
【0194】
上記の例は限定的なものではなく、別個のエピトープのうちの少なくとも1つの反復を有する抗原コード核酸配列は、別個のエピトープの各々を任意の順序または頻度でコードすることができる。例えば、順序及び頻度は、別個のエピトープのランダムな配置、例えば、エピトープA、B、及びCを用いる例では式EA-EB-EC-EC-EA-EB-EA-EC-EA-EC-EC-EBが可能である。
【0195】
また、本明細書では抗原コードカセットも提供され、この抗原コードカセットは、5’から3’方向へ下式:
(Ex-(EN
n)y)z
で表される、少なくとも1つの抗原コード核酸配列を有し、
式中、Eは、別個のエピトープコード核酸配列等のヌクレオチド配列を表し、
nは、別々の別個のエピトープコード核酸配列の数を表し、かつ、0を含めた任意の整数であり、
ENは、それぞれの対応するnの、別々の別個のエピトープコード核酸配列を構成するヌクレオチド配列を表し、
z回の反復ごとに、x=0または1、各nについてy=0または1、及びxまたはyの少なくとも一方=1、かつ
z=2以上であり、ここで、抗原コード核酸配列は、E、所与のEN、またはそれらの組み合わせの少なくとも2回の反復を含む。
【0196】
各EまたはENは、独立して、本明細書に記載の任意のエピトープコード核酸配列(例えば、感染症T細胞エピトープ及び/またはネオアンチゲンエピトープをコードするペプチド)を含むことができる。例えば、各EまたはENは、独立して、5’から3’方向へ式(L5b-Nc-L3d)で表されるヌクレオチド配列を含むことができ、その場合、Nは、各EまたはENと関連する別個のエピトープコード核酸配列を含み、c=1であり、L5は5’リンカー配列を含み、b=0または1であり、L3は3’リンカー配列を含み、d=0または1である。使用可能なエピトープ及びリンカーは本明細書に詳述されており、例えば、V.A.抗原カセットを参照されたい。
【0197】
エピトープコード核酸配列(任意選択の5’リンカー配列及び/または任意選択の3’リンカー配列を包含)の反復は、配列同士を直鎖状に直接連結され得る(例えば、上記例示のようにEA-EA-・・・)。エピトープコード核酸配列の反復は、1つ以上の追加のヌクレオチド配列によって区切られ得る。一般に、エピトープコード核酸配列の反復は、本明細書に記載の組成物に適用可能な任意のサイズのヌクレオチド配列によって区切られ得る。一例では、エピトープコード核酸配列の反復は、別々の別個のエピトープコード核酸配列(例えば、EA-EB-EC-EA・・・、上記例示のように)によって区切られ得る。反復が、単一の別々の別個のエピトープコード核酸配列によって区切られており、各エピトープコード核酸配列(任意選択の5’リンカー配列及び/または任意選択の3’リンカー配列を包含)が25アミノ酸長のペプチドをコードする例では、反復は75ヌクレオチドによって区切られ得、例えば、EA-EB-EA・・・で表される抗原コード核酸の場合、EAは75ヌクレオチドによって区切られている。例を用いて説明すると、25merの抗原であるTrp1(VTNTEMFVTAPDNLGYMYEVQWPGQ)及びTrp2(TQPQIANCSVYDFFVWLHYYSVRDT)の反復をコードする配列VTNTEMFVTAPDNLGYMYEVQWPGQTQPQIANCSVYDFFVWLHYYSVRDTVTNTEMFVTAPDNLGYMYEVQWPGQTQPQIANCSVYDFFVWLHYYSVRDTを有する抗原コード核酸では、Trp1の反復は25merのTrp2によって区切られており、したがって、Trp1エピトープコード核酸配列の反復は、75ヌクレオチドのTrp2エピトープコード核酸配列で区切られている。反復が、2、3、4、5、6、7、8、または9個の別々の別個のエピトープコード核酸配列によって区切られており、各エピトープコード核酸配列(任意選択の5’リンカー配列及び/または任意選択の3’リンカー配列を包含)が25アミノ酸長のペプチドをコードする例では、反復はそれぞれ、150、225、300、375、450、525、600、または675個のヌクレオチドによって区切られ得る。
【0198】
一実施形態では、異なるペプチド及び/またはポリペプチド、あるいはそれらをコードするヌクレオチド配列は、ペプチド及び/またはポリペプチドが、異なるMHCクラスI分子及び/または異なるMHCクラスII分子等の異なるMHC分子と会合する能力を持つよう選択される。いくつかの態様では、1つのワクチン組成物は、出現頻度が最も高いMHCクラスI分子及び/または異なるMHCクラスII分子と会合する能力があるペプチド及び/またはポリペプチドのためのコード配列を含む。したがって、ワクチン組成物は、少なくとも2つの好ましい、少なくとも3つの好ましい、または少なくとも4つの好ましいMHCクラスI分子及び/または異なるMHCクラスII分子と会合する能力がある異なる断片を含むことができる。
【0199】
前記ワクチン組成物は、特異的細胞傷害性T細胞応答及び/または特異的ヘルパーT細胞応答を刺激する能力があり得る。ワクチン組成物は、特異的細胞傷害性T細胞応答及び特異的ヘルパーT細胞応答を刺激する能力があり得る。
【0200】
前記ワクチン組成物は、特異的B細胞応答(例えば、抗体反応)を刺激する能力があり得る。
【0201】
前記ワクチン組成物は、特異的細胞傷害性T細胞応答、特異的ヘルパーT細胞応答、及び/または特異的B細胞応答を刺激する能力があり得る。ワクチン組成物は、特異的細胞傷害性T細胞応答及び特異的B細胞応答を刺激する能力があり得る。ワクチン組成物は、特異的ヘルパーT細胞応答及び特異的B細胞応答を刺激する能力があり得る。ワクチン組成物は、特異的細胞傷害性T細胞応答、特異的ヘルパーT細胞応答、及び特異的B細胞応答を刺激する能力があり得る。
【0202】
ワクチン組成物はさらに、アジュバント及び/または担体を含むことができる。有用なアジュバント及び担体の例は、本明細書で以下に記載される。組成物は、担体、例えば、タンパク質または抗原提示細胞等、例えば、T細胞にペプチドを提示する能力がある樹状細胞(DC)等と会合することができる。
【0203】
アジュバントは、ワクチン組成物内に混合することにより抗原に対する免疫応答を増大させるか、そうでなければ修正する、任意の物質である。担体は、足場構造、例えば、抗原を会合させることができるポリペプチドまたは多糖であり得る。任意選択で、アジュバントは、共有結合または非共有結合により結合される。
【0204】
アジュバントが抗原に対する免疫応答を増大させる能力は、典型的には、免疫介在性反応の大幅もしくは実質的な増大、または疾患症状の軽減により示される。例えば、液性免疫の増大は典型的には、抗原に対して産生された抗体の力価の大幅な増大によって示され、及びT細胞活性の増大は、典型的には、細胞の増殖、または細胞傷害性、またはサイトカイン分泌の増大に示される。アジュバントはまた、免疫応答を、例えば、主に液性またはThによる応答を主に細胞性またはThによる応答に変えることによって変化させ得る。
【0205】
好適なアジュバントには、1018 ISS、ミョウバン、アルミニウム塩、Amplivax、AS15、BCG、CP-870,893、CpG7909、CyaA、dSLIM、GM-CSF、IC30、IC31、イミキモド、ImuFact IMP321、IS Patch、ISS、ISCOMATRIX、JuvImmune、LipoVac、MF59、モノホスホリルリピドA、Montanide IMS 1312、Montanide ISA 206、Montanide ISA 50V、Montanide ISA-51、OK-432、OM-174、OM-197-MP-EC、ONTAK、PepTelベクター系、PLG微粒子、レジキモド、SRL172、ビロソーム及び他のウイルス様粒子、YF-17D、VEGFトラップ、R848、ベータグルカン、Pam3Cys、サポニン由来のAquilaのQS21 stimulon(Aquila Biotech,Worcester,Mass.,USA)、マイコバクテリア抽出物及び合成細菌細胞壁模倣物、ならびにRibiのDetox.QuilまたはSuperfos等の所有権のある他のアジュバントが含まれるが、これらに限定されない。不完全フロイントまたはGM-CSF等のアジュバントが有用である。樹状細胞に対して特異的ないくつかの免疫アジュバント(例えば、MF59)及びそれらの調製物が、以前に報告されている(Dupuis M,et al.,Cell Immunol.1998;186(1):18-27;Allison A C;Dev Biol Stand.1998;92:3-11)。サイトカインも使用され得る。いくつかのサイトカインは、樹状細胞のリンパ組織への遊走に影響を与えること(例えば、TNF-アルファ)、Tリンパ球に対する効率的抗原提示細胞への樹状細胞の成熟を促進すること(例えば、GM-CSF、IL-1及びIL-4)(参照によりその全体が具体的に本明細書に組み込まれる米国特許第5,849,589号)、及び免疫アジュバントとして作用すること(例えば、IL-12)(Gabrilovich D I,et al.,J Immunother Emphasis Tumor Immunol.1996(6):414-418)に直接関連している。
【0206】
CpG免疫刺激オリゴヌクレオチドもまた、ワクチンという状況ではアジュバントの効果を増強させることが報告されている。TLR7、TLR8及び/またはTLR9と結合するRNA等の他のTLR結合分子も使用され得る。
【0207】
有用なアジュバントの他の例には、化学修飾されたCpG(例えば、CpR、Idera)、ポリ(I:C)(例えば、polyi:CI2U)、非-CpG細菌DNAもしくはRNA、ならびに治療薬及び/またはアジュバントとして作用し得るシクロホスファミド、スニチニブ、ベバシズマブ、セレブレックス、NCX-4016、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル、ソラフィニブ、XL-999、CP-547632、パゾパニブ、ZD2171、AZD2171、イピリムマブ、トレメリムマブ、及びSC58175等の免疫活性小分子及び抗体が含まれるが、これらに限定されない。アジュバント及び添加物の量及び濃度は、過度の実験を伴うことなく当業者により容易に決定され得る。追加のアジュバントには、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF、サルグラモスチム)等のコロニー刺激因子が含まれる。
【0208】
ワクチン組成物は、複数の異なるアジュバントを含むことができる。さらに、治療用組成物は、上記のものまたはそれらの組み合わせのいずれかを含め、任意のアジュバント物質を含むことができる。また、ワクチン及びアジュバントを一緒に、または任意の適切な順序で別々に投与可能であることも企図される。
【0209】
担体(または賦形剤)は、アジュバントとは独立して存在することができる。担体の機能は、例えば、活性または免疫原性を増大させるために特に変異体の分子量を増加させること、安定性を付与すること、生物学的活性を増大させること、または血清中半減期を延長することであり得る。さらに、担体は、ペプチドをT細胞に提示するのを助けることができる。担体は、当業者に既知の任意の好適な担体、例えば、タンパク質または抗原提示細胞であり得る。担体タンパク質は、キーホールリンペットヘモシアニン、血清タンパク質、例えば、トランスフェリン、ウシ血清アルブミン、ヒト血清アルブミン、サイログロブリンもしくはオボアルブミン等、免疫グロブリン、またはホルモン、例えば、インスリンもしくはパルミチン酸等であり得るが、これらに限定されない。ヒトの免疫化の場合、担体は一般に、ヒトに許容され、かつ安全な、生理学的に許容される担体である。ただし、破傷風トキソイド及び/またはジフテリアトキソイドは好適な担体である。別法として、担体は、デキストラン、例えばセファロースであり得る。
【0210】
細胞傷害性T細胞(CTL)は、無傷の外来性抗原それ自体ではなく、MHC分子に結合したペプチドという形態にある抗原を認識する。MHC分子自体は、抗原提示細胞の細胞表面に位置する。したがって、CTLの活性化は、ペプチド抗原、MHC分子、及びAPCの三量体複合体が存在する場合に可能である。これに一致して、ペプチドがCTLの活性化に使用されるだけではなく、さらなるAPCがそれぞれのMHC分子と共に加えられる場合、免疫応答が増強され得る。したがって、いくつかの実施形態では、ワクチン組成物はさらに、少なくとも1つの抗原提示細胞を含有する。
【0211】
抗原はまた、ウイルスベクターに基づくワクチンプラットフォーム、例えば、ワクシニア、鶏痘、自己複製アルファウイルス、マラバウイルス、アデノウイルス(例えば、Tatsis et al.,Adenoviruses,Molecular Therapy(2004)10,616-629を参照のこと)、または第2世代、第3世代もしくは第2/第3世代ハイブリッドのレンチウイルス及び特定の細胞型もしくは受容体を標的にするよう設計された任意の世代の組換えレンチウイルスが含まれるが、これらに限定されないレンチウイルス(例えば、Hu et al.,Immunization Delivered by Lentiviral Vectors for Cancer and Infectious Diseases,Immunol Rev.(2011)239(1):45-61,Sakuma et al.,Lentiviral vectors:basic to translational,Biochem J.(2012)443(3):603-18,Cooper et al.,Rescue of splicing-mediated intron loss maximizes expression in lentiviral vectors containing the human ubiquitin C promoter,Nucl.Acids Res.(2015)43(1):682-690,Zufferey et al.,Self-Inactivating Lentivirus Vector for Safe and Efficient In Vivo Gene Delivery,J.Virol.(1998)72(12):9873-9880を参照のこと)等に含めることもできる。上記のウイルスベクターに基づくワクチンプラットフォームのパッケージング容量に応じて、この手法では、1つ以上の抗原ペプチドをコードする1つ以上のヌクレオチド配列を送達することができる。配列は、非変異配列に隣接する場合もあれば、リンカーによって区切られている場合も、細胞内コンパートメントを標的とする1つ以上の配列が先行する場合もある(例えば、Gros et al.,Prospective identification of neoantigen-specific lymphocytes in the peripheral blood of melanoma patients,Nat Med.(2016)22(4):433-8、Stronen et al.,Targeting of cancer neoantigens with donor-derived T cell receptor repertoires,Science.(2016)352(6291):1337-41、Lu et al.,Efficient identification of mutated cancer antigens recognized by T cells associated with durable tumor regressions,Clin Cancer Res.(2014)20(13):3401-10を参照のこと)。宿主への導入時、感染細胞は抗原を発現し、それによりペプチドに対する宿主免疫(例えば、CTL)応答が刺激される。免疫プロトコルに有用なワクシニアベクター及び方法は、例えば、米国特許第4,722,848号に記載されている。別のベクターは、BCG(Bacille Calmette Guerin:カルメット・ゲラン桿菌)である。BCGベクターは、Stover et al.(Nature 351:456-460(1991))に記載されている。抗原の治療的投与または免疫に有用な多種多様な他のワクチンベクター、例えば、チフス菌ベクター等は本明細書での説明から当業者に明らかであろう。
【0212】
V.A.抗原カセット
1つ以上の抗原の選択、「抗原カセット」のクローニング及び構築ならびにウイルスベクターへのその挿入に用いられる方法は、本明細書で提供される教示を考慮すれば、当業者の技量の範囲内である。「抗原カセット」または「カセット」とは、選択された抗原または複数の抗原(例えば、抗原コード核酸配列)と、抗原を転写し、転写された産物を発現するために必要な他の調節エレメントとの組み合わせを意味する。選択された抗原または複数の抗原とは、別個のエピトープ配列を指し得、例えば、カセット内の抗原コード核酸配列は、エピトープが転写され、発現されるよう、エピトープコード核酸配列(または複数のエピトープコード核酸配列)をコードすることができる。抗原または複数の抗原は、転写が可能な方法で調節性成分に機能的に連結され得る。そのような成分には、ウイルスベクターをトランスフェクトされた細胞において抗原の発現を誘導することができる従来の調節エレメントが含まれる。したがって、抗原カセットは、抗原に連結され、かつ、組換えベクターの選択ウイルス配列内に他の任意選択の調節エレメントと共に位置する、選択されたプロモーターを含有することもできる。カセットには、1つ以上の病原体由来ペプチド、ウイルス由来ペプチド、細菌由来ペプチド、真菌由来ペプチド、寄生虫由来ペプチド、及び/または腫瘍由来ペプチド等の1つ以上の抗原が含まれ得る。カセットは、1つ以上の抗原コード核酸配列を有することができ、例えば、複数の抗原コード核酸配列を含有するカセットは、それぞれ独立して別々のプロモーターに機能的に連結されている、及び/または他のマルチシストン性(multicistonic)の系、例えば、2Aリボソームスキッピング配列要素(例えば、E2A、P2A、F2A、またはT2A配列)または配列内リボソーム進入部位(IRES)配列要素等を使用して一緒に連結されている。リンカーはまた、TEVまたはフーリンの切断部位等の切断部位を有することができる。切断部位を有するリンカーを、他の要素、例えば、多シストロン性の系にあるものと組み合わせて使用することができる。非限定的な例を用いて説明すると、フーリンプロテアーゼ切断部位を2Aリボソームスキッピング配列要素と組み合わせて使用して、フーリンプロテアーゼ切断部位が、翻訳後の2A配列の除去を促進するよう構成されるようにすることができる。複数の抗原コード核酸配列を含有するカセットでは、各抗原コード核酸配列は、1つ以上のエピトープコード核酸配列を含有することができる(例えば、連結されたT細胞エピトープをコードする抗原コード核酸配列)。
【0213】
有用なプロモーターは、構成的プロモーターまたは調節(誘導性)プロモーターであり得、発現される抗原の量の制御を可能にする。例えば、望ましいプロモーターは、サイトメガロウイルス最初期プロモーター/エンハンサーのプロモーターである[例えば、Boshart et al,Cell,41:521-530(1985)を参照のこと]。別の望ましいプロモーターには、ラウス肉腫ウイルスのLTRプロモーター/エンハンサーが含まれる。さらに別のプロモーター/エンハンサー配列は、ニワトリ細胞質ベータアクチンプロモーターである[T.A.Kost et al,Nucl.Acids Res.,11(23):8287(1983)]。他の好適または望ましいプロモーターは、当業者により選択され得る。
【0214】
前記抗原カセットにはまた、ウイルスベクター配列にとって異種の核酸配列も含まれ得、これには、転写物(ポリ(A)、ポリAまたはpA)の効率的なポリアデニル化のためのシグナルをもたらす配列、及び機能的なスプライスドナー及びスプライスアクセプター部位を有するイントロンが含まれる。本発明の例示的ベクターで用いられる一般的なポリA配列は、パポーバウイルスSV-40に由来するものである。ポリA配列は一般に、抗原に基づく配列の後、ウイルスベクター配列の前のカセット内に挿入され得る。一般的なイントロン配列はまたSV-40に由来し得、SV-40 Tイントロン配列と呼ばれる。抗原カセットはまた、プロモーター/エンハンサー配列と抗原の間に位置するようなイントロンを含有することもできる。これら及び他の一般的ベクター要素の選択は、従来通りであり[例えば、Sambrook et al,“Molecular Cloning.A Laboratory Manual.”,2d edit.,Cold Spring Harbor Laboratory,New York(1989)及びそこに引用されている参考文献を参照のこと]、そのような配列の多くが商業的及び産業的供給源ならびにGenbankから利用可能である。
【0215】
抗原カセットは、1個以上の抗原を有することができる。例えば、所与のカセットには、1~10、1~20、1~30、10~20、15~25、15~20、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個、またはそれ以上の抗原が含まれ得る。抗原は、互いに直接連結され得る。抗原はまた、リンカーと互いに連結され得る。抗原は、NからCへ、またはCからNへ等の、互いに対して任意の配向が可能である。
【0216】
本明細書の他の箇所に記載があるように、抗原カセットは、選択され得る部位の中でも特に、VEE骨格の欠失させた構造タンパク質等のウイルスベクター内の任意の選択欠失の部位か、またはChAdに基づくベクターのE1遺伝子領域欠失もしくはE3遺伝子領域欠失の部位に位置させることができる。
【0217】
前記抗原カセットは、5’から3’方向へ、各要素の順番に並べられた配列を表すために、以下の式:
(Pa-(L5b-Nc-L3d)X)Z-(P2h-(G5e-Uf)Y)W-G3g
を使用して表すことができ、式中、P及びP2は、プロモーターヌクレオチド配列を含み、Nは、MHCクラスIエピトープコード核酸配列を含み、L5は5’リンカー配列を含み、L3は3’リンカー配列を含み、G5は、アミノ酸リンカーをコードする核酸配列を含み、G3は、アミノ酸リンカーをコードする少なくとも1つの核酸配列のうちの1つを含み、Uは、MHCクラスII抗原コード核酸配列を含み、各Xについて、対応するNcは、核酸配列をコードするエピトープであり、各Yについて、対応するUfは、MHCクラスIIエピトープコード核酸配列(例えば、ユニバーサルMHCクラスIIエピトープコード核酸配列)である。ユニバーサル配列は、破傷風トキソイド及びPADREのうちの少なくとも1つを含むことができる。ユニバーサル配列は、破傷風トキソイドペプチドを含むことができる。ユニバーサル配列は、PADREペプチドを含むことができる。ユニバーサル配列は、破傷風トキソイド及びPADREペプチドを含むことができる。存在する要素の数を選択することにより、組成物及び規則配列をさらに定義することができ、例えば、a=0または1、b=0または1、c=1、d=0または1、e=0または1、f=1、g=0または1、h=0または1、X=1~400、Y=0、1、2、3、4または5、Z=1~400、及びW=0、1、2、3、4または5である。
【0218】
一例では、存在する要素には、a=0、b=1、d=1、e=1、g=1、h=0、X=10、Y=2、Z=1、及びW=1が含まれ、これは、追加のプロモーターは存在せず(例えば、RNAアルファウイルスまたはChAdVの骨格等のベクター骨格で提供されるプロモーターヌクレオチド配列のみが存在する)、10個のMHCクラスIエピトープが存在し、5’リンカーが各Nに存在し、3’リンカーが各Nに存在し、2つのMHCクラスIIエピトープが存在し、2つのMHCクラスIIエピトープを連結するリンカーが存在し、2つのMHCクラスIIエピトープの5’末端を最終MHCクラスIエピトープの3’リンカーに連結するリンカーが存在し、かつ、2つのMHCクラスIIエピトープの3’末端をベクター骨格(例えば、ChAdVまたはRNAアルファウイルスの骨格)に連結するリンカーが存在することを表している。
【0219】
前記抗原カセットの3’末端をベクター骨格(例えば、RNAアルファウイルス骨格)に連結することの例には、3’の19nt CSE等のベクター骨格によって提供される3’UTR要素に直接連結することが含まれる。抗原カセットの5’末端をベクター骨格(例えば、RNAアルファウイルス骨格)に連結することの例には、サブゲノムプロモーター配列(例えば、26Sサブゲノムプロモーター配列)、アルファウイルス5’UTR、51nt CSE、もしくは24nt CSE等の、ベクター骨格のプロモーターまたは5’UTR要素に直接連結することが含まれる。
【0220】
他の例には、以下が含まれる:a=1であり、ここで、ベクター骨格(例えば、ChAdVまたはRNAアルファウイルスの骨格)によって提供されるプロモーターヌクレオチド配列以外のプロモーターが存在することを表し;a=1、かつ、Zが1より大きい場合、ベクター骨格によって提供されるプロモーターヌクレオチド配列以外の複数のプロモーターが存在し、各々が、核酸配列をコードする1つ以上の別個のMHCクラスIエピトープの発現を誘導し;h=1であり、ここで、MHCクラスIIエピトープコード核酸配列の発現を誘導するための別個のプロモーターが存在することを表し;かつ、g=0であり、MHCクラスIIエピトープコード核酸配列は、存在する場合に、ベクター骨格(例えば、ChAdVまたはRNAアルファウイルスの骨格)に直接連結されていることを表す。例えば、ChAdVベクター骨格は、CMVプロモーター/エンハンサーの制御下に置かれた抗原カセットを有することができる。
【0221】
他の例には、存在している各MHCクラスIエピトープが、5’リンカーを有し得る場合、3’リンカーを有し得る場合、どちらも有し得ない場合、または両方を有し得る場合が含まれる。複数のMHCクラスIエピトープが同じ抗原カセット内に存在する例では、一部のMHCクラスIエピトープは5’リンカーと3’リンカーの両方を有し得るが、他のMHCクラスIエピトープは5’リンカーを有し得るか、3’リンカーを有し得るか、またはどちらも有し得ない。複数のMHCクラスIエピトープが同じ抗原カセット内に存在する他の例では、一部のMHCクラスIエピトープは5’リンカーまたは3’リンカーのいずれかを有し得るが、他のMHCクラスIエピトープは5’リンカーを有し得るか、3’リンカーを有し得るか、またはどちらも有し得ない。
【0222】
複数のMHCクラスIIエピトープが、同じ抗原カセット内に存在する例では、一部のMHCクラスIIエピトープは5’リンカーと3’リンカーの両方を有し得るが、他のMHCクラスIIエピトープは5’リンカーを有し得るか、3’リンカーを有し得るか、またはどちらも有し得ない。複数のMHCクラスIIエピトープが同じ抗原カセット内に存在する他の例では、一部のMHCクラスIIエピトープは5’リンカーまたは3’リンカーのいずれかを有し得るが、他のMHCクラスIIエピトープは5’リンカーを有し得るか、3’リンカーを有し得るか、またはどちらも有し得ない。
【0223】
他の例には、存在している各抗原が、5’リンカーを有し得る場合、3’リンカーを有し得る場合、どちらも有し得ない場合、または両方を有し得る場合が含まれる。複数の抗原が同じ抗原カセット内に存在する例では、一部の抗原は5’リンカーと3’リンカーの両方を有し得るが、他の抗原は5’リンカーを有し得るか、3’リンカーを有し得るか、またはどちらも有し得ない。複数の抗原が同じ抗原カセット内に存在する他の例では、一部の抗原は5’リンカーまたは3’リンカーのいずれかを有し得るが、他の抗原は5’リンカーを有し得るか、3’リンカーを有し得るか、またはどちらも有し得ない。
【0224】
プロモーターヌクレオチド配列であるP及び/またはP2は、RNAアルファウイルス骨格等のベクター骨格によって提供されるプロモーターヌクレオチド配列と同じであり得る。例えば、RNAアルファウイルス骨格によって提供されるプロモーター配列であるPn及びP2は、各々がサブゲノムプロモーター配列(例えば、26Sサブゲノムプロモーター配列)またはCMVプロモーターを含むことができる。プロモーターヌクレオチド配列であるP及び/またはP2は、ベクター骨格(例えば、ChAdVまたはRNAアルファウイルスの骨格)によって提供されるプロモーターヌクレオチド配列とは異なり得、また、互いに異なり得る。
【0225】
5’リンカーであるL5は、天然配列または非天然配列であり得る。非天然配列には、AAY、RR、及びDPPが含まれるが、これらに限定されない。3’リンカーであるL3もまた、天然配列または非天然配列であり得る。さらに、L5及びL3は、両方が天然配列であること、両方が非天然配列であること、または一方が天然であり、他方が非天然であることが可能である。各Xについて、アミノ酸リンカーは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、またはそれ以上のアミノ酸長であり得る。各Xについて、アミノ酸リンカーはまた、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも29、または少なくとも30アミノ酸長であり得る。
【0226】
アミノ酸リンカーG5は各Yについて、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、またはそれ以上のアミノ酸長であり得る。各Yについて、アミノ酸リンカーはまた、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも29、または少なくとも30アミノ酸長であり得る。
【0227】
アミノ酸リンカーG3は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、またはそれ以上のアミノ酸長であり得る。G3はまた、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも29、または少なくとも30アミノ酸長であり得る。
【0228】
各Xについて、各Nは、MHCクラスIエピトープ、MHCクラスIIエピトープ、B細胞応答を刺激する能力があるエピトープ/抗原、またはそれらの組み合わせをコードすることができる。各Xについて、各Nは、MHCクラスIエピトープ、MHCクラスIIエピトープ、及びB細胞応答を刺激する能力があるエピトープ/抗原の組み合わせをコードすることができる。各Xについて、各Nは、MHCクラスIエピトープ及びMHCクラスIIエピトープの組み合わせをコードすることができる。各Xについて、各Nは、MHCクラスIエピトープ及びB細胞応答を刺激する能力があるエピトープ/抗原の組み合わせをコードすることができる。各Xについて、各Nは、MHCクラスIIエピトープ及びB細胞応答を刺激する能力があるエピトープ/抗原の組み合わせをコードすることができる。各Xについて、各Nは、MHCクラスIIエピトープをコードすることができる。各Xについて、各Nは、B細胞応答を刺激する能力があるエピトープ/抗原をコードすることができる。各Xについて、各Nは、7~15アミノ酸長のMHCクラスIエピトープをコードすることができる。各Xについて、各Nはまた、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30アミノ酸長のMHCクラスIエピトープをコードすることができる。各Xについて、各Nはまた、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも29、または少なくとも30アミノ酸長のMHCクラスIエピトープをコードすることができる。
【0229】
1つ以上の抗原をコードするカセットは、700ヌクレオチド以下であり得る。1つ以上の抗原をコードするカセットは700ヌクレオチド以下であり得、2つの別個のエピトープコード核酸配列をコードすることができる(例えば、免疫原性ポリペプチドをコードする2つの別個の感染症または腫瘍に由来する核酸配列をコードすることができる)。1つ以上の抗原をコードするカセットは700ヌクレオチド以下であり得、少なくとも2つの別個のエピトープコード核酸配列をコードすることができる。1つ以上の抗原をコードするカセットは700ヌクレオチド以下であり得、3つの別個のエピトープコード核酸配列をコードすることができる。1つ以上の抗原をコードするカセットは700ヌクレオチド以下であり得、少なくとも3つの別個のエピトープコード核酸配列をコードすることができる。1つ以上の抗原をコードするカセットは700ヌクレオチド以下であり得、1~10、1~5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれ以上の抗原を含めることができる。
【0230】
1つ以上の抗原をコードするカセットは、375~700ヌクレオチド長であり得る。1つ以上の抗原をコードするカセットは375~700ヌクレオチド長であり得、2つの別個のエピトープコード核酸配列をコードすることができる(例えば、免疫原性ポリペプチドをコードする2つの別個の感染症または腫瘍に由来する核酸配列をコードすることができる)。1つ以上の抗原をコードするカセットは375~700ヌクレオチド長であり得、少なくとも2つの別個のエピトープコード核酸配列をコードすることができる。1つ以上の抗原をコードするカセットは375~700ヌクレオチド長であり得、3つの別個のエピトープコード核酸配列をコードすることができる。1つ以上の抗原をコードするカセットは375~700ヌクレオチド長であり、少なくとも3つの別個のエピトープコード核酸配列をコードする。1つ以上の抗原をコードするカセットは375~700ヌクレオチド長であり得、1~10、1~5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれ以上の抗原を含めることができる。
【0231】
1つ以上の抗原をコードするカセットは、600、500、400、300、200、もしくは100ヌクレオチド長またはそれ以下であり得る。1つ以上の抗原をコードするカセットは、600、500、400、300、200、もしくは100ヌクレオチド長またはそれ以下であり得、2つの別個のエピトープコード核酸配列をコードすることができる。1つ以上の抗原をコードするカセットは、600、500、400、300、200、もしくは100ヌクレオチド長またはそれ以下であり得、少なくとも2つの別個のエピトープコード核酸配列をコードすることができる。1つ以上の抗原をコードするカセットは、600、500、400、300、200、もしくは100ヌクレオチド長またはそれ以下であり得、3つの別個のエピトープコード核酸配列をコードすることができる。1つ以上の抗原をコードするカセットは、600、500、400、300、200、もしくは100ヌクレオチド長またはそれ以下であり得、少なくとも3つの別個のエピトープコード核酸配列をコードすることができる。1つ以上の抗原をコードするカセットは、600、500、400、300、200、もしくは100ヌクレオチド長またはそれ以下であり得、1~10、1~5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれ以上の抗原を含めることができる。
【0232】
1つ以上の抗原をコードするカセットは、375~600、375~500、または375~400ヌクレオチド長であり得る。1つ以上の抗原をコードするカセットは、375~600、375~500、または375~400ヌクレオチド長であり得、2つの別個のエピトープコード核酸配列をコードすることができる。1つ以上の抗原をコードするカセットは、375~600、375~500、または375~400ヌクレオチド長であり得、少なくとも2つの別個のエピトープコード核酸配列をコードすることができる。1つ以上の抗原をコードするカセットは、375~600、375~500、または375~400ヌクレオチド長であり得、3つの別個のエピトープコード核酸配列をコードすることができる。1つ以上の抗原をコードするカセットは、375~600、375~500、または375~400ヌクレオチド長であり得、少なくとも3つの別個のエピトープコード核酸配列をコードすることができる。1つ以上の抗原をコードするカセットは、375~600、375~500、または375~400ヌクレオチド長であり得、1~10、1~5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれ以上の抗原を含めることができる。
【0233】
場合によっては、さらなる抗原及び/またはエピトープをコードするカセット内の抗原またはエピトープは、コードされる他のものに対して免疫優性なエピトープであり得る。免疫優性は一般に、1つまたは少数の特定の免疫原性ペプチドのみへの免疫応答の偏向である。免疫優性は、免疫モニタリングプロトコルの一部として評価され得る。例えば、免疫優性は、コードされた抗原に対するT細胞及び/またはB細胞の応答を評価することにより評価され得る。
【0234】
免疫優性は、免疫優性抗原の存在が、1つ以上の他の抗原に対する免疫応答に与える影響として評価され得る。例えば、免疫優性抗原及びそのそれぞれの免疫応答(例えば、免疫優性MHCクラスIエピトープ)は、別の抗原の免疫応答を、免疫優性抗原の非存在下での免疫応答と比べて低下させることができる。この低下は、免疫優性抗原の存在下での免疫応答が、治療に有効な応答とは見なされないようなものであり得る。例えば、他の抗原に対するT細胞応答が、免疫優性MHCクラスIエピトープの非存在下で刺激される応答と比較してもはや治療に有効な応答と見なされない場合、MHCクラスIエピトープは一般に免疫優性であると見なされる。免疫応答はまた、免疫優性抗原の非存在下での応答と比べて、検出限界未満または検出限界近くまで低下され得る。例えば、他の抗原に対するT細胞応答が、免疫優性MHCクラスIエピトープの非存在下で刺激される応答と比較して検出限界以下である場合、MHCクラスIエピトープは一般に免疫優性であると見なされる。一般に、免疫優性の評価は、免疫応答を刺激する能力がある2つの抗原間で、例えば、それぞれ、各エピトープを提示することが既知であるかまたは予測される同族MHCアレルを有する対象に投与されるワクチン組成物中の2つのT細胞エピトープ間で行われる。免疫優性は、疑わしい免疫優性抗原の存在下及び非存在下での、他の抗原に対する相対的免疫応答を評価することにより評価され得る。
【0235】
免疫優性は、2つ以上の抗原間の免疫応答の相対差として評価され得る。免疫優性とは、特定の抗原の免疫応答が、同じカセット内でコードされる別の抗原と比べて5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、または50倍であることを指し得る。免疫優性とは、特定の抗原の免疫応答が、同じカセット内でコードされる別の抗原と比べて100倍、200倍、300倍、400倍、または500倍であることを指し得る。免疫優性とは、特定の抗原の免疫応答が、同じカセット内でコードされる別の抗原と比べて1000倍、2000倍、3000倍、4000倍、または5000倍であることを指し得る。免疫優性とは、特定の抗原の免疫応答が、同じカセット内でコードされる別の抗原と比べて10,000倍であることを指し得る。
【0236】
場合によっては、免疫優性エピトープを含有するワクチン組成物を避けることが望ましい場合がある。例えば、免疫優性エピトープをコードするワクチンカセットの設計を避けることが望ましい場合がある。理論に拘束されることは望まないが、免疫優性エピトープを、追加のエピトープと一緒に投与すること及び/またはコードすることが、その追加のエピトープに対するワクチンの有効性を最終的には低下させる可能性を含めて、追加のエピトープに対する免疫応答を低下させる場合がある。例示的な非限定的例として、TP53関連ネオエピトープ等のワクチン組成物は、免疫応答、例えばT細胞応答を、TP53関連ネオエピトープに偏らせて、ワクチン組成物中の他の抗原またはエピトープ(例えば、ワクチン組成物中の1つ以上のKRAS関連ネオエピトープ)に対する免疫応答にマイナスの影響(例えば、免疫応答が治療に有効な応答ではないところまで、及び/または検出限界未満まで免疫応答を低下させる)を与える場合がある。したがって、ワクチン組成物を、免疫優性エピトープを含有しないよう設計すること、例えば、免疫優性エピトープをコードしないようワクチンカセット(例えば、(ネオ)抗原コードカセット)を設計することができる。例えば、カセットは、対象にワクチン組成物にして投与される場合に、カセット内でコードされる別のエピトープに対する免疫応答を、その別のエピトープが免疫優性MHCクラスIエピトープの非存在下で投与される場合の免疫応答と比べて低下させるエピトープをコードしない。別の例では、カセットは、対象にワクチン組成物にして投与される場合に、カセット内でコードされる別のエピトープに対する免疫応答を、その別のエピトープが免疫優性MHCクラスIエピトープの非存在下で投与される場合の免疫応答と比べて検出限界未満まで低下させるエピトープをコードしない。別の例では、カセットは、対象にワクチン組成物にして投与される場合に、カセット内でコードされる別のエピトープに対する免疫応答を、その別のエピトープが免疫優性MHCクラスIエピトープの非存在下で投与される場合の免疫応答と比べて低下させ、その免疫応答が治療に有効な応答ではないエピトープをコードしない。別の例では、カセットは、対象に投与されるワクチン組成物中の同じカセット内でコードされる別のエピトープと比べて、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍もしくは50倍またはそれ以上の免疫応答を刺激するエピトープをコードせず、その場合、それぞれの抗原が対象での免疫応答を刺激する能力がある。別の例では、カセットは、対象に投与されるワクチン組成物中の同じカセット内でコードされる別のエピトープと比べて、100倍、200倍、300倍、400倍もしくは500倍またはそれ以上の免疫応答を刺激するエピトープをコードせず、その場合、それぞれの抗原が対象での免疫応答を刺激する能力がある。別の例では、カセットは、対象に投与されるワクチン組成物中の同じカセット内でコードされる別のエピトープと比べて、1000倍、2000倍、3000倍、4000倍、もしくは5000倍またはそれ以上の免疫応答を刺激するエピトープをコードせず、その場合、それぞれの抗原が対象での免疫応答を刺激する能力がある。別の例では、カセットは、対象に投与されるワクチン組成物中の同じカセット内でコードされる別のエピトープと比べて10,000倍またはそれ以上の免疫応答をもたらすエピトープをコードせず、その場合、それぞれの抗原が対象での免疫応答を刺激する能力がある。
【0237】
V.B.免疫調節物質
本明細書に記載されるChAdVベクターまたは本明細書に記載されるアルファウイルスベクター等の本明細書に記載されるベクターは、少なくとも1つの抗原をコードする核酸を含むことができ、同じかまたは別個のベクターが、少なくとも1つの免疫調節物質コードする核酸を含むことができる。免疫調節物質には、免疫チェックポイント分子に結合して、その活性を遮断する結合分子(例えば、scFv等の抗体)が含まれ得る。免疫調節物質には、IL-2、IL-7、IL-12(IL-12のp35、p40、p70、及び/またはp70融合コンストラクトを含む)、IL-15、またはIL-21等のサイトカインが含まれ得る。免疫調節物質には、修飾サイトカイン(例えば、pegIL-2)が含まれ得る。ベクターは、抗原カセット、及び免疫調節物質をコードする1つ以上の核酸分子を含むことができる。
【0238】
遮断または阻害の標的となり得る例示的な免疫チェックポイント分子には、CTLA-4、4-1BB(CD137)、4-1BBL(CD137L)、PDL1、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、TIM3、B7H3、B7H4、VISTA、KIR、2B4(CD2ファミリーの分子に属し、すべてのNK、γδ、及びメモリーCD8+(αβ)T細胞に発現する)、CD160(BY55とも呼ばれる)、及びCGEN-15049が含まれるが、これらに限定されない。免疫チェックポイント阻害物質には、抗体、もしくはその抗原結合断片、またはCTLA-4、PDL1、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、TIM3、B7H3、B7H4、VISTA、KIR、2B4、CD160、及びCGEN-15049のうちの1つ以上に結合して、その活性を遮断または阻害する他の結合タンパク質が含まれる。例示的な免疫チェックポイント阻害物質には、トレメリムマブ(CTLA-4遮断抗体)、抗OX40、PD-L1モノクローナル抗体(抗B7-H1;MEDI4736)、イピリムマブ、MK-3475(PD-1遮断薬)、ニボルマブ(抗PD1抗体)、CT-011(抗PD1抗体)、BY55モノクローナル抗体、AMP224(抗PDL1抗体)、BMS-936559(抗PDL1抗体)、MPLDL3280A(抗PDL1抗体)、MSB0010718C(抗PDL1抗体)及びヤーボイ/イピリムマブ(抗CTLA-4チェックポイント阻害物質)が含まれる。抗体をコードする配列は、当該技術分野の通常の技能を使用してC68等のベクター内に操作が可能である。例示的な方法は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれるFang et al.,Stable antibody expression at therapeutic levels using the 2A peptide.Nat Biotechnol.2005 May;23(5):584-90.Epub 2005 Apr 17に記載されている。
【0239】
V.C.ワクチンの設計及び製造に関する追加考慮事項
V.C.1.すべての腫瘍サブクローンを対象とするペプチドのセットの決定
すべてまたはほとんどの腫瘍サブクローンによって提示されるペプチドを意味する幹ペプチド(Truncal peptide)に、ワクチン内に含めるための優先順位を付けることができる。任意選択で、提示され、かつ高い確率で免疫原性であると予測される幹ペプチドがない場合、または提示され、かつ高い確率で免疫原性であると予測される幹ペプチドの数が、追加の非幹ペプチドをワクチンに含めることができるほど十分に少ない場合は、腫瘍サブクローンの数及び同一性を推定し、ワクチンでカバーされる腫瘍サブクローンの数が最大限となるようにペプチドを選択することにより、さらなるペプチドに優先順位を付けることができる。
【0240】
V.C.2.抗原の優先順位付け
上記の抗原フィルターがすべて適用された後でも、ワクチン技術で支持できるよりも多くの候補抗原が、依然としてワクチンに含めるために利用可能な場合がある。さらに、抗原分析の様々な側面が依然として不確かな場合があり、ワクチン抗原候補の異なる特性間でのトレードオフが存在し得る。したがって、選択工程の各ステップにおける所定のフィルターの代わりに、統合的多次元モデル、すなわち、少なくとも以下の軸を有する空間に候補抗原を配し、統合的手法を使用して選択を最適化するモデルを考慮することができる。
1.自己免疫または寛容のリスク(生殖細胞系列のリスク)(典型的には、自己免疫のリスクが低い方が好ましい)
2.シークエンシングアーチファクトの確率(典型的には、アーチファクトの確率の低い方が好ましい)
3.免疫原性の確率(典型的には、免疫原性の確率の高い方が好ましい)
4.提示の確率(典型的には、提示の確率の高い方が好ましい)
5.遺伝子発現(典型的には、発現の高い方が好ましい)
6.HLA遺伝子の対象範囲(抗原のセットの提示に関与するHLA分子の数ガ大きいほど、腫瘍、感染症、及び/または感染細胞がHLA分子の下方制御もしくは変異を介して免疫攻撃から逃避する確率が低くなり得る)
7.HLAクラスの対象範囲(HLA-I及びHLA-IIの両方を対象とすることにより、治療効果の確率が上がり、腫瘍または感染症の逃避の確率が下がり得る)
【0241】
さらに、任意選択で、抗原が、患者の腫瘍もしくは感染細胞の全部または一部で喪失または不活性化しているHLAアレルにより提示されると予測される場合、それらの抗原をワクチン接種の優先順位から外す(例えば、除外する)ことができる。HLAアレルの喪失は、体細胞変異、ヘテロ接合性の消失、または遺伝子座のホモ接合性の欠失のいずれかによって起こる。HLAアレル体細胞変異の検出のための方法は、当該技術分野において周知である(例えば、Shukla et al.,2015)。体細胞LOH(ヘテロ接合性の消失)及びホモ接合性の欠失(HLA遺伝子座を含む)の検出のための方法も同様に十分に報告されている。(Carter et al.,2012、McGranahan et al.,2017;Van Loo et al.,2010)。抗原はまた、質量分析データから、予測抗原が予測HLAアレルにより提示されないことが示される場合にも優先順位から外され得る。
【0242】
V.D.自己増幅RNAベクター
一般に、すべての自己増幅RNA(SAM)ベクターは、自己複製ウイルスに由来する自己増幅骨格を含有する。用語「自己増幅骨格」とは、ウイルスゲノムの自己複製を可能にする、自己複製ウイルスの最小配列を指す。例えば、アルファウイルスの自己複製を可能にする最小配列には、非構造タンパク質媒介性増幅のための保存された配列(例えば、非構造タンパク質1(nsP1)遺伝子、nsP2遺伝子、nsP3遺伝子、nsP4遺伝子、及び/またはポリA配列)が含まれ得る。自己増幅骨格にはまた、ウイルスのサブゲノムRNAの発現のための配列(例えば、アルファウイルスでは26Sプロモーターエレメント)も含まれ得る。SAMベクターは、プラス鎖またはマイナス鎖自己複製ウイルスに由来する骨格を持つベクター等の、プラス鎖RNAポリヌクレオチドまたはマイナス鎖RNAポリヌクレオチドであり得る。自己複製ウイルスには、アルファウイルス、フラビウイルス(例えば、クンジンウイルス)、麻疹ウイルス、及びラブドウイルス(例えば、狂犬病ウイルス及び水疱性口内炎ウイルス)が含まれるが、これらに限定されない。自己複製ウイルスに由来するSAMベクター系の例は、Lundstrom(Molecules.2018 Dec 13;23(12).pii:E3310.doi:10.3390/molecules23123310)に詳述されており、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0243】
V.D.1.アルファウイルス生物学
アルファウイルスはトガウイルス科(Togaviridae)のメンバーであり、一本鎖プラス鎖RNAウイルスである。それらのメンバーは典型的には、シンドビスウイルス、ロスリバーウイルス、マヤロウイルス、チクングニアウイルス、及びセムリキ森林ウイルス等の旧世界、または東部ウマ脳炎、アウラウイルス、フォートモーガンウイルス、もしくはベネズエラウマ脳炎ウイルス及びその派生株TC-83等の新世界に分類される(Strauss Microbial Review 1994)。天然アルファウイルスゲノムは典型的には、長さが約12kbであり、その最初の3分の2には、ウイルスゲノムの自己複製のためのRNA複製複合体を形成する非構造タンパク質(nsP)をコードする遺伝子が含有され、最後の3分の1には、ビリオン産生のための構造タンパク質をコードするサブゲノム発現カセットが含有される(Frolov RNA 2001)。
【0244】
アルファウイルスのモデル生活環には、いくつかの異なる段階が伴う(Strauss Microbial Review 1994,Jose Future Microbiol 2009)。宿主細胞へのウイルスの吸着に続き、ビリオンが細胞内コンパートメント内の膜と融合し、最終的にサイトゾル内へのゲノムRNAの放出をもたらす。プラス鎖の配向にある、5’のメチルグアニル酸キャップ及び3’のポリA尾部を含むゲノムRNAは、翻訳されて、複製複合体を形成する非構造タンパク質nsP1~4を生成する。感染初期にはその後、プラス鎖は複合体によりマイナス鎖のテンプレートに複製される。現在のモデルでは、複製複合体は、感染の進行につれてさらなるプロセシングを受け、そこから生じるプロセシングされた複合体が、全長プラス鎖ゲノムRNA、及び構造遺伝子を含有する26Sサブゲノムのプラス鎖RNAの両方へのマイナス鎖の転写に切り替わる。アルファウイルスのいくつかの保存配列エレメント(CSE)は、様々なRNA複製ステップにおいて役割を果たすことが確認されており、それらには、マイナス鎖テンプレートからのプラス鎖RNAの複製における5’UTRの相補鎖、ゲノムテンプレートからのマイナス鎖合成の複製における51nt CSE、マイナス鎖からのサブゲノムRNAの転写におけるnsPと26S RNAの間の接合部領域での24nt CSE、及びプラス鎖テンプレートからのマイナス鎖合成における3’ 19nt CSEが含まれる。
【0245】
様々なRNA種の複製に続き、ウイルス粒子がウイルスの自然の生活環で典型的に構築される。26S RNAが翻訳され、そこから生じたタンパク質がさらなるプロセシングを受けて、カプシドタンパク質、糖タンパク質E1及びE2、ならびに2つの小ポリペプチドE3及び6K等の構造タンパク質が生成される(Strauss 1994)。ウイルスRNAのカプシド形成が起こり、通常はパッケージされるゲノムRNAにのみ特異的なカプシドタンパク質を持ち、その後、ビリオンが組み立てられ、膜表面に出芽する。
【0246】
V.D.2.送達ベクターとしてのアルファウイルス
アルファウイルス(アルファウイルスの配列、特徴、及び他の要素を含む)を使用して、アルファウイルス系送達ベクター(アルファウイルスベクター(alphavirus vector)、アルファウイルスウイルスベクター(alphavirus viral vector)、アルファウイルスワクチンベクター、自己複製RNA(srRNA)ベクター、または自己増幅mRNA(SAM)ベクターとも呼ばれる)を生成することができる。アルファウイルスは、以前から発現ベクター系として使用するために操作されている(Pushko 1997,Rheme 2004)。アルファウイルスは、特に、異種抗原発現が所望され得るワクチンという状況において、いくつかの利点を提供する。宿主サイトゾルで自己複製するその能力のため、アルファウイルスベクターは一般に、細胞内に多くのコピー数の発現カセットを生成することができ、高レベルの異種抗原生成をもたらす。さらに、ベクターは一般に一過性であるため、バイオセーフティの改善、ならびにベクターに対する免疫寛容の誘導の減少をもたらす。一般に、公衆には、ヒトアデノウイルス等の他の標準的ウイルスベクターと比較して、アルファウイルスベクターに対する既存の免疫も欠いている。また、アルファウイルスに基づくベクターは一般に、感染細胞に対する細胞傷害性応答ももたらす。細胞傷害性は、発現された異種抗原に対する免疫応答を適切に刺激するために、ワクチンという状況ではある程度重要であり得る。ただし、所望の細胞傷害性の程度は綱渡り的であり得るため、VEEのTC-83株を含め、いくつかの弱毒化アルファウイルスが開発されている。したがって、本明細書に記載される抗原発現ベクターの一例は、高レベルの抗原発現を可能にし、抗原に対する強い免疫応答を刺激し、ベクター自体に対する免疫応答を刺激せず、かつ安全な方法で使用可能である、アルファウイルス骨格を利用することができる。さらに、抗原発現カセットは、VEEまたはその弱毒化派生株TC-83に由来する配列が含まれるがこれらに限定されない、ベクターが使用するアルファウイルス配列の最適化を介して、異なるレベルの免疫応答を刺激するよう設計可能である。
【0247】
アルファウイルス配列を使用して、いくつかの発現ベクター設計戦略が設計されている(Pushko 1997)。一戦略では、アルファウイルスベクター設計には、26Sプロモーター配列エレメントの第2のコピーを構造タンパク質遺伝子の下流に挿入し、それに続けて異種遺伝子を挿入することが含まれる(Frolov 1993)。したがって、天然の非構造タンパク質及び構造タンパク質に加え、異種タンパク質を発現する追加のサブゲノムRNAが生成される。この系では、感染性ビリオンの生成のための全エレメントが存在するため、非感染細胞における発現ベクターの感染の繰り返しが発生し得る。
【0248】
別の発現ベクター設計では、ヘルパーウイルス系を利用している(Pushko 1997)。この戦略では、構造タンパク質が異種遺伝子に置き換えられる。したがって、まだ無傷の非構造遺伝子に媒介されるウイルスRNAの自己複製に続いて、26SサブゲノムRNAにより、異種タンパク質の発現が提供される。従来、構造タンパク質を発現する追加のベクターはその後、細胞株のコトランスフェクション等によりトランスで供給され、感染性ウイルスが生成される。系は、USPN8,093,021に詳述されており、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。ヘルパーベクター系は、感染性粒子が形成される可能性を制限するという利益を提供し、したがって、バイオセーフティが改善する。さらに、ヘルパーベクター系はベクター全長を短縮し、複製及び発現の効率が改善する。したがって、本明細書に記載される抗原発現ベクターの一例は、アルファウイルス骨格を利用することができ、ここで、構造タンパク質は抗原カセットに置き換えられ、得られたベクターは、バイオセーフティの問題を減らすと同時に、発現ベクター全体のサイズの縮小による効率的な発現を促進する。
【0249】
V.D.3.インビトロでの自己増幅ウイルスの生成
RNA生成のための当該技術分野で周知の好都合な技術は、インビトロ転写(IVT)である。この技術では、まず所望のベクターのDNAテンプレートが、当業者に周知の技術、例えば、クローニング、制限酵素消化、ライゲーション、遺伝子合成(例えば、化学合成及び/または酵素による合成)、ならびにポリメラーゼ連鎖反応(PCR)等の標準的な分子生物学技術によって生成される。
【0250】
DNAテンプレートは、RNAへの転写が所望される配列(例えば、SAM)の5’末端にRNAポリメラーゼプロモーターを含有する。プロモーターには、T3、T7、K11、またはSP6等のバクテリオファージポリメラーゼプロモーターが含まれるが、これらに限定されない。選択される特定のRNAポリメラーゼプロモーター配列に応じて、所望の配列に加え、追加の5’ヌクレオチドを転写させることができる。例えば、標準T7プロモーターは、配列TAATACGACTCACTATAGGにより参照され得、ここで、所望の配列Nの生成のためにDNAテンプレートTAATACGACTCACTATAGGNを使用するIVT反応により、mRNA配列GG-Nがもたらされる。理論に拘束されることは望まないが、一般に、T7ポリメラーゼは、グアノシンで始まるRNA転写産物をより効率的に転写する。追加の5’ヌクレオチドが所望されない場合(例えば、追加のGGがない場合)、DNAテンプレートに含有されているRNAポリメラーゼプロモーターは、所望の配列(例えば、SAMベクターが由来する自己複製ウイルスの天然5’配列を有するSAM)の5’ヌクレオチドのみを含有する転写産物をもたらす配列であり得る。例えば、最小T7プロモーターは、配列TAATACGACTCACTATAにより参照され得、ここで、所望の配列Nの生成のためにDNAテンプレートTAATACGACTCACTATANを使用するIVT反応により、mRNA配列Nがもたらされる。同様に、配列ATTTAGGTGACACTATAにより参照される最小SP6プロモーターを、追加の5’ヌクレオチドを含まない転写産物を生成するために使用することができる。典型的IVT反応では、DNAテンプレートは、適切なRNAポリメラーゼ酵素、緩衝剤、及びヌクレオチド(NTP)と共にインキュベートされる。
【0251】
得られたRNAポリヌクレオチドを任意選択でさらに修飾することができ、これには、7-メチルグアノシンまたは関連構造等の5’キャップ構造の付加、及び任意選択で、ポリアデニル化(ポリA)尾部が含まれるよう3’末端を修飾することが含まれるが、これに限定されない。修飾IVT反応では、RNAは、IVT中のキャップ類似体付加を介して共転写により5’キャップ構造でキャップ化される。キャップ類似体には、ジヌクレオチド(m7G-ppp-N)キャップ類似体またはトリヌクレオチド(m7G-ppp-N-N)キャップ類似体が含まれ得、ここで、Nは、ヌクレオチドまたは修飾ヌクレオチドを表す(例えば、アデノシン、グアノシン、シチジン、及びウリジン等の、これらに限定されないリボヌクレオシド)。例示的キャップ類似体及びIVT反応におけるそれらの使用は、米国特許第10,519,189号にも詳述されており、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。考察されているように、T7ポリメラーゼは、グアノシンで始まるRNA転写産物をより効率的に転写する。グアノシンで始まっていないテンプレートでの転写効率を改善するために、トリヌクレオチドキャップ類似体(m7G-ppp-N-N)を使用することができる。トリヌクレオチドキャップ類似体は、ジヌクレオチドキャップ類似体(m7G-ppp-N)を使用するIVT反応と比べて転写効率を、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍、またはそれ以上高めることができる。
【0252】
5’キャップ構造はまた、mRNA 2’-O-メチルトランスフェラーゼ及びS-アデノシルメチオニンヲ含有するワクシニアキャッピング系(例えば、NEBカタログ番号M2080)等を使用して、転写後に付加することが可能である。
【0253】
得られたRNAポリヌクレオチドを、任意選択で、記載されているキャッピング技術とは別に、またはそれに加えてさらに修飾することができ、ポリアデニル化(ポリA)尾部が含まれるよう3’末端を修飾することが含まれるが、これに限定されない。
【0254】
その後、RNAは、当該技術分野で周知の技術、例えば、フェノール-クロロホルム抽出またはカラム精製(例えば、クロマトグラフィーを用いる精製)を使用して精製可能である。
【0255】
V.D.4.脂質ナノ粒子による送達
ワクチンベクターの設計において考慮すべき重要な側面は、ベクターそれ自体に対する免疫である(Riley 2017)。これは、ある特定のヒトアデノウイルス系の場合のように、ベクターそれ自体に対する免疫を既に有している形の場合もあれば、ワクチン投与の後でベクターに対する免疫が発生している形の場合もある。後者は、プライミング用量とブースト用量が分かれている場合のように、同じワクチンの複数投与が実施される場合、または異なる抗原カセットを送達するために同じワクチンベクター系が使用される場合、重要な考慮事項である。
【0256】
アルファウイルスベクターの場合、標準的送達方法は、カプシドタンパク質、E1タンパク質、及びE2タンパク質をトランスで提供して感染性ウイルス粒子を生成する、既に考察されているヘルパーウイルス系である。ただし、E1タンパク質及びE2タンパク質は多くの場合、中和抗体の主な標的であることに留意することが重要である(Strauss 1994)。したがって、感染性粒子が中和抗体により標的とされる場合には、標的細胞に目的抗原を送達するためにアルファウイルスベクターを使用することの有効性が低減され得る。
【0257】
ウイルス粒子媒介性の遺伝子送達の代替は、発現ベクターを送達するためのナノ材料の使用である(Riley 2017)。ナノ材料ビヒクルは重要なことには、非免疫原性物質で作製可能であり、一般に、送達ベクターそれ自体に対する免疫が刺激されることを回避できる。これらの材料には、脂質、無機ナノ材料、及び他の高分子材料が含まれ得るが、これらに限定されない。脂質は、カチオン性、アニオン性、または中性であり得る。材料は、合成でも天然由来でもあり得、場合によっては生物分解性であり得る。脂質には、脂肪、コレステロール、リン脂質、脂質複合体が含まれ得、それらとしては、ポリエチレングリコール(PEG)複合体(PEG化脂質)、ワックス、油、グリセリド、及び脂溶性ビタミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0258】
脂質ナノ粒子(LNP)は、両親媒性という脂質の性質が膜及び小胞様構造の形成を可能にするため、魅力的な送達システムである(Riley 2017)。一般に、これらの小胞は、標的細胞の膜内への吸収及びサイトゾル内への核酸の放出により発現ベクターを送達する。さらに、LNPは、特定の細胞型のターゲティングが促進されるよう、さらに修飾または機能化され得る。LNP設計での別の考慮事項は、ターゲティング効率と細胞毒性の間のバランスである。脂質組成物には一般に、カチオン、中性、アニオン性、及び両親媒性脂質の定義された混合物が含まれる。場合によっては、LNPの凝集を防ぐため、脂質の酸化を防ぐため、または追加の部分の結合を促進する官能性化学基を提供するために、特定の脂質を含める。脂質の組成は、LNP全体のサイズ及び安定性に影響を与え得る。一例では、脂質組成物は、ジリノレイルメチル-4-ジメチルアミノブチラート(MC3)またはMC3様分子を含む。MC3及びMC3様脂質組成物は、PEGもしくはPEG結合脂質、ステロール、または中性脂質等の1つ以上の他の脂質が含まれるよう製剤化され得る。
【0259】
血清に直接曝露される発現ベクター等の核酸ベクターでは、血清ヌクレアーゼによる核酸の分解または遊離核酸によるオフターゲットの免疫系刺激を含め、いくつかの望ましくない結果が生じる可能性がある。したがって、分解を回避すると同時に、潜在的オフターゲット作用も回避するために、アルファウイルスベクターの封入を使用することができる。ある特定の例では、アルファウイルスベクターは、送達ビヒクル内、例えば、LNPの水性内部内に、完全に封入されている。アルファウイルスベクターのLNP内封入は、マイクロ流体混合及びマイクロ流体液滴生成デバイスでの液滴生成等の当業者に周知の技術によって実施可能である。そのようなデバイスには、標準的T字型デバイスまたはフローフォーカス型デバイスが含まれるが、これらに限定されない。一例では、MC3またはMC3様を含有する組成物等の所望の脂質製剤が、アルファウイルス送達ベクター及び他の所望の物質と並行して液滴生成デバイスに提供され、送達ベクター及び所望の物質が、MC3またはMC3様を用いるLNPの内部内に完全に封入される。一例では、液滴生成デバイスは、生産されるLNPのサイズ範囲及び粒度分布を制御することができる。例えば、LNPは、1~1000ナノメートルの直径、例えば、1、10、50、100、500、または1000ナノメートルの範囲のサイズを有し得る。液滴生成後、発現ベクターを内包する送達ビヒクルをさらに処理または修飾して、それらを投与用に調製することができる。
【0260】
V.E.チンパンジーアデノウイルス(ChAd)
V.E.1.チンパンジーアデノウイルスによるウイルス送達
1つ以上の抗原の(例えば、抗原カセットを介した)送達のためのワクチン組成物は、チンパンジー由来のアデノウイルスヌクレオチド配列、様々な新規ベクター、及びチンパンジーアデノウイルス遺伝子を発現する細胞株を提供することにより作製が可能である。チンパンジーC68アデノウイルス(本明細書ではChAdV68とも呼ばれる)のヌクレオチド配列(配列番号1を参照のこと)を、抗原送達のためのワクチン組成物に使用することができる。C68アデノウイルス由来ベクターは、USPN6,083,716に詳述されており、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。ChAdV68を用いるベクター及び送達システムは、米国出願公開第US20200197500A1号及び国際特許出願公開第WO2020243719A1号に詳述されており、その各々は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0261】
さらなる態様では、C68等のチンパンジーアデノウイルスのDNA配列を含む組換えアデノウイルス、及びその発現を導く制御配列に機能的に連結されている抗原カセットが本明細書で提供される。組換えウイルスは、哺乳類の細胞、好ましくはヒトの細胞に感染する能力があり、細胞において抗原カセット産物を発現させる能力がある。このベクターでは、天然のチンパンジーE1遺伝子、及び/またはE3遺伝子、及び/またはE4遺伝子を欠失させることができる。これらの遺伝子欠失部位のいずれにも抗原カセットを挿入することができる。抗原カセットには、抗原刺激された免疫応答が所望される対象となる抗原が含まれ得る。
【0262】
別の態様では、C68等のチンパンジーアデノウイルスに感染した哺乳類細胞が本明細書で提供される。
【0263】
さらに別の態様では、チンパンジーアデノウイルス遺伝子(例えば、C68由来)またはその機能的断片を発現する新規哺乳類細胞株が提供される。
【0264】
さらに別の態様では、哺乳類細胞に抗原カセットを送達するための方法が本明細書で提供され、細胞に、抗原カセットを発現するよう操作されているC68等のチンパンジーアデノウイルスを有効量にて導入するステップを含む。
【0265】
さらに別の態様では、がんを治療するために、哺乳類宿主での免疫応答を刺激するための方法が提供される。この方法は、免疫応答が標的とする対象である腫瘍からの1つ以上の抗原をコードする抗原カセットを含むC68等の組換えチンパンジーアデノウイルスを、有効量にて宿主に投与するステップを含むことができる。
【0266】
さらに別の態様では、感染症等の対象での疾患を治療または予防するために、哺乳類宿主での免疫応答を刺激するための方法が提供される。この方法は、免疫応答が標的とする対象である感染症等からの1つ以上の抗原をコードする抗原カセットを含むC68等の組換えチンパンジーアデノウイルスを、有効量にて宿主に投与するステップを含むことができる。
【0267】
また、配列番号1の配列から得られるチンパンジーアデノウイルス遺伝子を発現する非サル哺乳類細胞も開示する。遺伝子は、配列番号1のアデノウイルスE1A、E1B、E2A、E2B、E3、E4、L1、L2、L3、L4、及びL5からなる群から選択され得る。
【0268】
また、配列番号1の配列から得られる遺伝子を含むチンパンジーアデノウイルスDNA配列を含む核酸分子も開示する。遺伝子は、配列番号1の前記チンパンジーアデノウイルスE1A、E1B、E2A、E2B、E3、E4、L1、L2、L3、L4、及びL5遺伝子からなる群から選択され得る。いくつかの態様では、核酸分子は配列番号1を含む。いくつかの態様では、核酸分子は配列番号1の配列を含み、配列番号1のE1A、E1B、E2A、E2B、E3、E4、L1、L2、L3、L4、及びL5遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子を欠いている。
【0269】
また、配列番号1から得られるチンパンジーアデノウイルスDNA配列を含むベクター、及び抗原カセットであって、異種宿主細胞におけるかかるカセットの発現を導く1つ以上の制御配列に機能的に連結されている、抗原カセット、も開示し、任意選択で、チンパンジーアデノウイルスDNA配列は、複製及びビリオンのカプシド形成に必要なシスエレメントを少なくとも含み、シスエレメントは、抗原カセット及び制御配列に隣接している。いくつかの態様では、チンパンジーアデノウイルスDNA配列は、配列番号1のE1A、E1B、E2A、E2B、E3、E4、L1、L2、L3、L4、及びL5遺伝子配列からなる群から選択される遺伝子を含む。いくつかの態様では、ベクターは、E1A及び/またはE1B遺伝子を欠くことができる。
【0270】
本明細書ではまた、部分的に欠失したE4遺伝子を含むアデノウイルスベクターであって、欠失または部分的欠失E4orf2領域、及び欠失または部分的欠失E4orf3領域、ならびに任意選択で、欠失または部分的欠失E4orf4領域、を含む、アデノウイルスベクターも開示する。部分的に欠失したE4は、配列番号1に示される配列の少なくともヌクレオチド34,916~35,642のE4欠失を含むことができ、ここで、ベクターは、配列番号1に記載の配列の少なくともヌクレオチド2~36,518を含む。部分的に欠失したE4は、配列番号1に示される配列のヌクレオチド34,916~34,942の少なくとも部分欠失、配列番号1に示される配列のヌクレオチド34,952~35,305の少なくとも部分欠失、及び配列番号1に示される配列のヌクレオチド35,302~35,642の少なくとも部分欠失、のE4欠失を含むことができ、ここで、ベクターは、配列番号1に記載の配列の少なくともヌクレオチド2~36,518を含む。部分的に欠失したE4は、配列番号1に示される配列の少なくともヌクレオチド34,980~36,516のE4欠失を含むことができ、ここで、ベクターは、配列番号1に記載の配列の少なくともヌクレオチド2~36,518を含む。部分的に欠失したE4は、配列番号1に示される配列の少なくともヌクレオチド34,979~35,642のE4欠失を含むことができ、ここで、ベクターは、配列番号1に記載の配列の少なくともヌクレオチド2~36,518を含む。部分的に欠失したE4は、E4Orf2の少なくとも部分欠失、完全欠失E4Orf3、及びE4Orf4の少なくとも部分欠失である、E4欠失を含むことができる。部分的に欠失したE4は、E4Orf2の少なくとも部分欠失、E4Orf3の少なくとも部分欠失、及びE4Orf4の少なくとも部分欠失である、E4欠失を含むことができる。部分的に欠失したE4は、E4Orf1の少なくとも部分欠失、完全欠失E4Orf2、及びE4Orf3の少なくとも部分欠失である、E4欠失を含むことができる。部分的に欠失したE4は、E4Orf2の少なくとも部分欠失及びE4Orf3の少なくとも部分欠失である、E4欠失を含むことができる。部分的に欠失したE4は、E4Orf1の開始部位からE4Orf5の開始部位までのE4欠失を含むことができる。部分的に欠失したE4は、E4Orf1の開始部位に隣接するE4欠失であり得る。部分的に欠失したE4は、E4Orf2の開始部位に隣接するE4欠失であり得る。部分的に欠失したE4は、E4Orf3の開始部位に隣接するE4欠失であり得る。部分的に欠失したE4は、E4Orf4の開始部位に隣接するE4欠失であり得る。E4欠失は、少なくとも50ヌクレオチド、少なくとも100ヌクレオチド、少なくとも200ヌクレオチド、少なくとも300ヌクレオチド、少なくとも400ヌクレオチド、少なくとも500ヌクレオチド、少なくとも600ヌクレオチド、少なくとも700ヌクレオチド、少なくとも800ヌクレオチド、少なくとも900ヌクレオチド、少なくとも1000ヌクレオチド、少なくとも1100ヌクレオチド、少なくとも1200ヌクレオチド、少なくとも1300ヌクレオチド、少なくとも1400ヌクレオチド、少なくとも1500ヌクレオチド、少なくとも1600ヌクレオチド、少なくとも1700ヌクレオチド、少なくとも1800ヌクレオチド、少なくとも1900ヌクレオチド、または少なくとも2000ヌクレオチドであり得る。E4欠失は、少なくとも700ヌクレオチドであり得る。E4欠失は、少なくとも1500ヌクレオチドであり得る。E4欠失は、50ヌクレオチド以下、100ヌクレオチド以下、200ヌクレオチド以下、300ヌクレオチド以下、400ヌクレオチド以下、500ヌクレオチド以下、600ヌクレオチド以下、700ヌクレオチド以下、800ヌクレオチド以下、900ヌクレオチド以下、1000ヌクレオチド以下、1100ヌクレオチド以下、1200ヌクレオチド以下、1300ヌクレオチド以下、1400ヌクレオチド以下、1500ヌクレオチド以下、1600ヌクレオチド以下、1700ヌクレオチド以下、1800ヌクレオチド以下、1900ヌクレオチド以下、または2000ヌクレオチド以下であり得る。E4欠失は、750ヌクレオチド以下であり得る。E4欠失は、少なくとも1550ヌクレオチド以下であり得る。
【0271】
部分的に欠失したE4遺伝子は、配列番号1に示される配列の少なくともヌクレオチド34,916~35,642を欠く、配列番号1に示されるE4遺伝子配列であり得る。部分的に欠失したE4遺伝子は、配列番号1に示され、かつ、配列番号1に示される配列の少なくともヌクレオチド34,916~34,942、ヌクレオチド34,952~35,305、及び配列番号1に示される配列のヌクレオチド35,302~35,642を欠くE4遺伝子配列を欠く、配列番号1に示されるE4遺伝子配列であり得る。部分的に欠失したE4遺伝子は、配列番号1に示され、かつ、配列番号1に示される配列の少なくともヌクレオチド34,980~36,516を欠く、E4遺伝子配列であり得る。部分的に欠失したE4遺伝子は、配列番号1に示され、かつ、配列番号1に示される配列の少なくともヌクレオチド34,979~35,642を欠く、E4遺伝子配列であり得る。部分的に欠失したE4遺伝子を有するアデノウイルスベクターは、カセットを有することができ、ここで、カセットは、少なくとも1つのペイロード核酸配列を含み、かつ、カセットは、少なくとも1つのペイロード核酸配列に機能的に連結されている少なくとも1つのプロモーター配列を含む。部分的に欠失したE4遺伝子を有するアデノウイルスベクターは、配列番号1に示されるChAdV68配列の1つ以上の遺伝子または制御配列を有することができ、任意選択で、1つ以上の遺伝子または制御配列は、配列番号1に示される配列のチンパンジーアデノウイルス末端逆位反復(ITR)、E1A、E1B、E2A、E2B、E3、E4、L1、L2、L3、L4、及びL5遺伝子のうちの少なくとも1つを含む。部分的に欠失したE4遺伝子を有するアデノウイルスベクターは、配列番号1に示される配列のヌクレオチド2~34,916を有することができ、ここで、部分的に欠失したE4遺伝子は、ヌクレオチド2~34,916の3’であり、任意選択で、ヌクレオチド2~34,916はさらに、E1欠失に対応する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド577~3403を欠き、及び/またはE3欠失に対応する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド27,125~31,825を欠く。部分的に欠失したE4遺伝子を有するアデノウイルスベクターは、配列番号1に示される配列のヌクレオチド35,643~36,518を有することができ、部分的に欠失したE4遺伝子は、ヌクレオチド35,643~36,518の5’である。部分的に欠失したE4遺伝子を有するアデノウイルスベクターは、配列番号1に示される配列のヌクレオチド2~34,916を有することができ、ここで、部分的に欠失したE4遺伝子は、ヌクレオチド2~34,916の3’であり、ヌクレオチド2~34,916はさらに、E1欠失に対応する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド577~3403を欠き、かつ、E3欠失に対応する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド27,125~31,825を欠く。部分的に欠失したE4遺伝子を有するアデノウイルスベクターは、配列番号1に示される配列のヌクレオチド2~34,916を有することができ、ここで、部分的に欠失したE4遺伝子は、ヌクレオチド2~34,916の3’であり、ヌクレオチド2~34,916はさらに、E1欠失に対応する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド577~3403を欠き、かつ、E3欠失に対応する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド27,125~31,825を欠き、また配列番号1に示される配列のヌクレオチド35,643~36,518を有し、ここで、部分的に欠失したE4遺伝子は、ヌクレオチド35,643~36,518の5’である。
【0272】
部分的に欠失したE4遺伝子は、配列番号1に示される配列の少なくともヌクレオチド34,916~35,642を欠き、配列番号1に示される配列のヌクレオチド2~34,916である、配列番号1に示されるE4遺伝子配列であり得、ここで、部分的に欠失したE4遺伝子は、ヌクレオチド2~34,916の3’であり、ヌクレオチド2~34,916はさらに、E1欠失に対応する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド577~3403を欠き、かつ、E3欠失に対応する、配列番号1に示される配列のヌクレオチド27,125~31,825を欠き、また配列番号1に示される配列のヌクレオチド35,643~36,518を有し、ここで、部分的に欠失したE4遺伝子は、ヌクレオチド35,643~36,518の5’である。
【0273】
本明細書ではまた、抗原カセットを発現するよう操作されたC68ベクター等の本明細書に開示されるベクターをトランスフェクトされた宿主細胞も開示する。本明細書ではまた、ヒト細胞への本明細書に開示されるベクターの導入を介して導入された選択遺伝子を発現するヒト細胞も開示する。
【0274】
本明細書ではまた、抗原カセットを哺乳類細胞に送達するための方法も開示し、抗原カセットを発現するよう操作されたC68ベクター等の本明細書に開示されるベクターを有効量にて前記細胞に導入することを含む。
【0275】
本明細書ではまた、本明細書に開示されるベクターを哺乳類細胞内に導入すること、細胞を好適な条件下で培養すること、及び抗原を生成することを含む、抗原を生成するための方法も開示する。
【0276】
V.E.2. E1を発現する補完細胞株
本明細書に記載される遺伝子のいずれかが欠失した組換えチンパンジーアデノウイルス(Ad)を作製するために、欠失遺伝子領域の機能は、ウイルスの複製及び感染性に必須であれば、ヘルパーウイルスまたは細胞株によって、すなわち、補完細胞株またはパッケージング細胞株によって組換えウイルスに供給が可能である。例えば、複製欠損型チンパンジーアデノウイルスベクターを作製ために、ヒトまたはチンパンジーアデノウイルスのE1遺伝子産物を発現する細胞株を使用することができ、そのような細胞株には、HEK293またはそのバリアントが含まれ得る。チンパンジーE1遺伝子産物を発現する細胞株の作製のためのプロトコル(USPN6,083,716の実施例3及び4)に従って、任意の選択されたチンパンジーアデノウイルス遺伝子を発現する細胞株を作製することができる。
【0277】
チンパンジーアデノウイルスE1発現細胞株を同定するには、AAV増強アッセイを使用することができる。このアッセイは、特徴付けられていない他の(例えば、他の種からの)アデノウイルスのE1遺伝子を使用して作製された細胞株でのE1機能を確認するために有用である。そのアッセイは、USPN6,083,716の実施例4Bに記載されている。
【0278】
選択されたチンパンジーアデノウイルス遺伝子、例えば、E1は、選択された親細胞株での発現のためのプロモーターの転写調節下にあり得る。この目的のために、誘導性プロモーターまたは構成的プロモーターを用いることができる。誘導性プロモーターの中には、亜鉛による誘導性のヒツジメタロチオニン(metallothionine)プロモーター、またはグルココルチコイド、特に、デキサメタゾンによる誘導性のマウス乳がんウイルス(MMTV)プロモーターが含まれる。参照により本明細書に組み込まれる国際特許出願第WO95/13392号において特定されているプロモーター等の他の誘導性プロモーターも、パッケージング細胞株の生産に使用することができる。チンパンジーアデノウイルス遺伝子の発現制御に構成的プロモーターを用いることもできる。
【0279】
親細胞は、任意の所望C68遺伝子を発現する新規細胞株の作製のために選択され得る。制限することなく、そのような親細胞株は、HeLa[ATCC受託番号CCL2]、A549[ATCC受託番号CCL185]、KB[CCL17]、Detroit[例えば、Detroit510、CCL72]、及びWI-38[CCL75]細胞であり得る。他の好適な親細胞株は、他の供給源から入手可能である。親細胞株には、CHO、HEK293またはそのバリアント、911、HeLa、A549、LP-293、PER.C6、またはAE1-2aが含まれ得る。
【0280】
E1発現細胞株は、組換えチンパンジーアデノウイルスE1欠失ベクターの作製に有用であり得る。本質的に同じ手順を使用して構築される、1つ以上の他のチンパンジーアデノウイルスの遺伝子産物を発現する細胞株は、それらの産物をコードする遺伝子が欠失した組換えチンパンジーアデノウイルスベクターの作製において有用である。さらに、他のヒトAd E1遺伝子産物を発現する細胞株もまた、チンパンジー組換えAdの作製に有用である。
【0281】
V.E.3.ベクターとしての組換えウイルス粒子
本明細書に開示される組成物は、細胞に少なくとも1つの抗原を送達するウイルスベクターを含むことができる。そのようなベクターは、C68等のチンパンジーアデノウイルスDNA配列、及び抗原カセットであって、そのカセットの発現を導く制御配列に機能的に連結されている、抗原カセット、を含む。C68ベクターは、感染哺乳類細胞においてカセットを発現させる能力がある。C68ベクターは、1つ以上のウイルス遺伝子が機能的に欠失していてよい。抗原カセットは、プロモーター等の1つ以上の制御配列の制御下にある少なくとも1つの抗原を含む。任意選択のヘルパーウイルス及び/またはパッケージング細胞株は、欠失したアデノウイルス遺伝子の任意の必要産物をチンパンジーウイルスベクターに供給することができる。
【0282】
「機能的に欠失した」という用語は、遺伝子領域がもはや遺伝子発現の1つ以上の機能的産物を生成することができなくなるよう、十分な量の遺伝子領域が除去されるか、そうでなければ、例えば、変異または修飾によって改変されることを意味する。機能欠失をもたらし得る変異または修飾には、未成熟終止コドンの導入ならびに標準及び非標準の開始コドンの除去等のナンセンス変異、mRNAスプライシングもしくは他の転写プロセシングを変化させる変異、またはそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。所望される場合、遺伝子領域全体が除去され得る。
【0283】
本明細書に開示されるベクターを形成する核酸配列の修飾、例えば、配列の欠失、挿入、及び他の変異は、標準的分子生物学的技術を使用して生成され得、それらは本発明の範囲内である。
【0284】
V.E.4.ウイルスプラスミドベクターの構築
本発明に有用なチンパンジーアデノウイルスC68ベクターには、組換え欠損アデノウイルス、すなわち、E1aまたはE1b遺伝子が機能的に欠失しており、任意選択で、他の変異、例えば、温度感受性変異または他の遺伝子の欠失を持つチンパンジーアデノウイルス配列が含まれる。これらのチンパンジー配列はまた、他のアデノウイルス及び/またはアデノ随伴ウイルス配列からハイブリッドベクターを形成する上でも有用であることが予測される。ヒトアデノウイルスから調製される相同アデノウイルスベクターは、公開されている文献に記載されている[例えば、上記Kozarsky I及びII、及びそこで引用されている参考文献、米国特許第5,240,846号を参照のこと]。
【0285】
ヒト(または他の哺乳類の)細胞への抗原カセットの送達に有用なチンパンジーアデノウイルスC68ベクターの構築では、一連のアデノウイルス核酸配列をベクターで用いることができる。最小チンパンジーC68アデノウイルス配列を含むベクターをヘルパーウイルスと併用して感染性組換えウイルス粒子を生成することができる。ヘルパーウイルスは、ウイルスの感染性及び最小チンパンジーアデノウイルスベクターの増殖に必要とされる必須遺伝子産物を提供する。チンパンジーアデノウイルス遺伝子の1つ以上の選択欠失のみが、他の点では機能的なウイルスベクターで行われる場合、欠失させた遺伝子産物は、欠失した遺伝子機能をトランスで提供する選択パッケージング細胞株でウイルスを増殖させることにより、ウイルスベクター生成工程において供給可能である。
【0286】
V.E.5.組換え最小アデノウイルス
最小チンパンジーAd C68ウイルスは、複製及びビリオンのカプシド形成に必要なアデノウイルスシスエレメントのみを含有するウイルス粒子である。すなわち、ベクターは、アデノウイルスのシス作用性の5’及び3’の末端逆位反復(ITR)配列(複製起点として機能)ならびに天然5’パッケージング/エンハンサードメイン(線状Adゲノムのパッケージング及びE1プロモーターのエンハンサーエレメントに必要な配列を含有)を含有する。例えば、参照により本明細書に組み込まれる国際特許出願第WO96/13597号中の「最小」ヒトAdベクターの調製について記載されている技術を参照のこと。
【0287】
V.E.6.他の欠損アデノウイルス
組換え複製欠損アデノウイルスは、最小チンパンジーアデノウイルス配列よりも多く含有することもできる。これらの他のAdベクターは、ウイルスの遺伝子領域の様々な部分の欠失、ならびにヘルパーウイルス及び/またはパッケージング細胞株の任意選択の使用により形成される感染性ウイルス粒子を特徴とし得る。
【0288】
一例として、好適なベクターは、C68アデノウイルス最初期遺伝子E1a及び遅初期(delayed early)遺伝子E1bの全部または十分な部分を、それらの正常な生物学的機能が排除されるよう欠失させることによって形成され得る。複製欠損型E1欠失ウイルスは、機能的アデノウイルスE1a及びE1b遺伝子を含有する、対応遺伝子産物をトランスで提供する、チンパンジーアデノウイルスに形質転換された補完細胞株で増殖させた場合、感染性ウイルスを複製及び生成する能力がある。既知のアデノウイルス配列との相同性に基づき、当該技術分野のヒト組換えE1欠失アデノウイルスについても言えるように、得られる組換えチンパンジーアデノウイルスは多くの細胞型に感染する能力があり、抗原を発現することはできるが、細胞が非常に高い感染多重度で感染しない限り、チンパンジーE1領域DNAを持たない大半の細胞においては複製することはできないことが予測される。
【0289】
別の例として、C68アデノウイルス遅初期遺伝子E3の全部または一部は、組換えウイルスの一部を形成するチンパンジーアデノウイルス配列から排除され得る。
【0290】
チンパンジーアデノウイルスC68ベクターはまた、E4遺伝子の欠失を有して構築可能である。さらに別のベクターは、遅初期遺伝子E2aに欠失を含有することができる。
【0291】
欠失は、チンパンジーC68アデノウイルスゲノムの後期遺伝子L1~L5のいずれかにおいても行うことができる。同様に、中期(intermediate)遺伝子IX及びIVa2での欠失も一部の目的に有用であり得る。他の欠失は、他の構造または非構造アデノウイルス遺伝子で行われ得る。
【0292】
上記で考察した欠失は個々に使用することができる、すなわち、アデノウイルス配列は、E1欠失のみを含有することができる。別法として、生物学的活性の破壊または低下に有効な遺伝子全体またはそれらの部分の欠失を任意の組み合わせで使用することができる。例えば、1つの例示的ベクターでは、アデノウイルスC68配列は、E3欠失の有無を問わず、E1遺伝子及びE4遺伝子の欠失、またはE1、E2a及びE3遺伝子の欠失、またはE1及びE3遺伝子の欠失、またはE1、E2a及びE4遺伝子の欠失等を有することができる。上述のように、そのような欠失を温度感受性変異等の他の変異と組み合わせて使用して、所望の結果を達成することができる。
【0293】
抗原を含むカセットは、任意選択で、チンパンジーC68 Adウイルスの任意の欠失領域に挿入され得る。別法として、所望される場合、既存の遺伝子領域にカセットを挿入して、その領域の機能を破壊することができる。
【0294】
V.E.7.ヘルパーウイルス
抗原カセットを運ぶために用いられるウイルスベクターのチンパンジーアデノウイルス遺伝子含量に応じて、ヘルパーアデノウイルスまたは非複製ウイルス断片を使用して、カセットを含有する感染性組換えウイルス粒子を生成するのに十分なチンパンジーアデノウイルス遺伝子配列を提供することができる。
【0295】
有用なヘルパーウイルスは、アデノウイルスベクターコンストラクト中に存在しない、及び/またはベクターがトランスフェクトされるパッケージング細胞株によって発現されない、選択アデノウイルス遺伝子配列を含有する。ヘルパーウイルスは、複製欠損であり得、上記配列に加えて様々なアデノウイルス遺伝子を含有し得る。ヘルパーウイルスを、本明細書に記載されるE1発現細胞株と組み合わせて使用することができる。
【0296】
C68の場合、「ヘルパー」ウイルスは、C68ゲノムのC末端とSspIをクリッピングすることにより形成される断片であり得、この場合、ウイルスの左端から約1300bpが除去される。次いで、このクリッピングされたウイルスは、プラスミドDNAと共にE1発現細胞株にコトランスフェクトされ、それにより、プラスミドでのC68配列との相同組換えによって組換えウイルスが形成される。
【0297】
ヘルパーウイルスはまた、Wu et al,J.Biol.Chem.,264:16985-16987(1989)、K.J.Fisher and J.M.Wilson,Biochem.J.,299:49(Apr.1,1994)に記載されているようにポリカチオン複合体に形成することもできる。ヘルパーウイルスは、任意選択で、レポーター遺伝子を含有することができる。多数のそのようなレポーター遺伝子が当該技術分野で知られている。アデノウイルスベクター上の抗原カセットとは異なる、ヘルパーウイルス上のレポーター遺伝子の存在により、Adベクターとヘルパーウイルスの両方を独立してモニターすることが可能になる。この第2のレポーターは、得られた組換えウイルスとヘルパーウイルスの間の分離を精製時に可能にするために使用される。
【0298】
V.E.8.ウイルス粒子のアセンブリ及び細胞株の感染
アデノウイルスの選択されたDNA配列、抗原カセット、及び他のベクター要素の、様々な中間プラスミド及びシャトルベクターへのアセンブリ、ならびに組換えウイルス粒子を生成するためのプラスミド及びベクターの使用はいずれも、従来技術を使用して達成することができる。そのような技術には、従来のcDNAクローニング技術、インビトロ組換え技術(例えば、ギブソンアセンブリ)、アデノウイルスゲノムの重複オリゴヌクレオチド配列の使用、ポリメラーゼ連鎖反応、及び所望のヌクレオチド配列をもたらす任意の好適な方法が含まれる。標準的トランスフェクション及びコトランスフェクション技術、例えば、CaPO4沈殿法またはリポフェクタミン等のリポソーム媒介性トランスフェクション法が用いられる。用いられる他の従来方法には、ウイルスゲノムの相同組換え、寒天重層でのウイルスプラーク形成、シグナル発生を測定する方法等が含まれる。
【0299】
例えば、所望抗原カセットを含有するウイルスベクターの構築及びアセンブリの後、ヘルパーウイルス存在下、インビトロでベクターをパッケージング細胞株にトランスフェクトすることができる。ヘルパーとベクター配列の間で相同組換えが起こり、これにより、ベクター中のアデノウイルス抗原の配列が複製されてビリオンカプシド内にパッケージングされることができ、組換えウイルスベクター粒子がもたらされる。
【0300】
得られた組換えチンパンジーC68アデノウイルスは、選択された細胞への抗原カセットの導入に有用である。パッケージング細胞株で増殖させた組換えウイルスを用いたインビボ試験では、E1欠失組換えチンパンジーアデノウイルスは、非チンパンジー細胞、好ましくはヒト細胞にカセットを導入する際の有用性を示している。
【0301】
V.E.9.組換えウイルスベクターの使用
このように、抗原カセットを含有する得られた組換えチンパンジーC68アデノウイルス(上記のようにアデノウイルスベクターとヘルパーウイルスまたはアデノウイルスベクターとパッケージング細胞株の協働により生成)により、対象にインビボまたはエキソビボで抗原を送達することができる効率的な遺伝子導入ビヒクルが提供される。
【0302】
上記の組換えベクターは、公開されている遺伝子治療法に従ってヒトに投与される。抗原カセットを担持するチンパンジーウイルスベクターは、好ましくは、生物学的に適合する溶液または薬学的に許容される送達ビヒクルに懸濁させて、患者に投与され得る。好適なビヒクルには、滅菌生理食塩水が含まれる。薬学的に許容される担体であることが既知であり、かつ当業者に周知の他の水性及び非水性の等張無菌注射液ならびに水性及び非水性の無菌懸濁液は、この目的のために用いられ得る。
【0303】
チンパンジーアデノウイルスベクターは、ヒト細胞に形質導入するのに十分な量であり、かつ、過度の有害作用を伴わないか、または医学的に許容される生理学的効果を伴う治療上の利益を提供するのに十分なレベルの抗原導入及び発現をもたらすのに十分な量で投与され、これは、医療分野の当業者により決定され得る。従来の及び薬学的に許容される投与経路には、肝臓への直接送達、鼻腔内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、経口及び他の非経口による投与経路が含まれるが、これらに限定されない。投与経路は、必要に応じて組み合わせてよい。
【0304】
ウイルスベクターの投与量は、主に、治療される病態、患者の年齢、体重及び健康等の要因に応じて異なるため、患者によって異なり得る。投与量は、任意の副作用に対する治療上の利益のバランスが取れるよう調整され、そのような投与量は、組換えベクターが用いられる治療用途に応じて異なり得る。抗原の発現レベルをモニターして、投与量の投与頻度を決定することができる。
【0305】
組換え複製欠損アデノウイルスは、「薬学的に有効な量」、すなわち、所望の細胞にトランスフェクトするため、及びワクチン効果、すなわち、ある程度の測定可能なレベルの防御免疫を得るのに十分なレベルの選択遺伝子の発現を提供するための投与経路において有効な組換えアデノウイルスの量にて投与され得る。抗原カセットを含むC68ベクターは、アジュバントと共に同時投与され得る。アジュバントは、特に、アジュバントがタンパク質である場合、ベクターとは別個(例えば、ミョウバン)であってもベクター内でコードされてもよい。アジュバントは、当該技術分野において周知である。
【0306】
従来の薬学的に許容される投与経路には、鼻腔内、筋肉内、気管内、皮下、皮内、直腸、経口及び他の非経口による投与経路が含まれるが、これらに限定されない。投与経路は、必要に応じて組み合わされる場合もあれば、免疫原または疾患に応じて調整される場合もある。例えば、狂犬病予防では、皮下、気管内及び鼻腔内の経路が好ましい。投与経路は主に、治療される疾患の性質に応じて異なる。
【0307】
抗原に対する免疫レベルをモニターして、ブースターがある場合はその必要性を決定することができる。例えば、血清中の抗体価の評価の後、任意選択のブースター免疫が望ましい場合がある。
【0308】
VI.治療方法及び製造方法
対象での腫瘍特異的な免疫応答を刺激すること、腫瘍に対するワクチン接種をすること、対象でのがんの症状を、1つ以上の抗原、例えば、本明細書に開示される方法を使用して同定される複数の抗原を対象に投与することによって治療及び/または軽減すること、を行う方法もまた提供される。
【0309】
対象での感染症生物特異的な免疫応答を刺激すること、感染症生物に対するワクチン接種をすること、対象での感染症生物と関連する感染症の症状を、1つ以上の抗原、例えば、本明細書に開示される方法を使用して同定される複数の抗原を対象に投与することによって治療及び/または軽減すること、を行う方法もまた提供される。
【0310】
いくつかの態様では、対象は、がんと診断されているかまたはがんを発症するリスクがある。対象は、ヒト、イヌ、ネコ、ウマまたは腫瘍特異的な免疫応答が望ましい任意の動物であり得る。腫瘍は、乳房、卵巣、前立腺、肺、腎臓、胃、結腸、精巣、頭頸部、膵臓、脳、黒色腫、及び組織器官の他の腫瘍等の任意の固形腫瘍、ならびにリンパ腫及び白血病等の血液腫瘍、例えば、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、T細胞リンパ性白血病、及びB細胞リンパ腫であり得る。
【0311】
いくつかの態様では、対象は、感染症と診断されているかまたは感染症のリスクがある(例えば、年齢、地理/旅行により、及び/または仕事上、感染症のリスクが高いかもしくはその素因がある、あるいは季節性及び/または新規疾患による感染症のリスクがある)。
【0312】
抗原は、CTL応答を刺激するのに十分な量で投与され得る。抗原は、T細胞応答を刺激するのに十分な量で投与され得る。抗原は、B細胞応答を刺激するのに十分な量で投与され得る。抗原は、T細胞応答及びB細胞応答の両方を刺激するのに十分な量で投与され得る。
【0313】
抗原は、単独で、または他の治療剤と組み合わせて投与され得る。治療剤には、抗ウイルス剤または抗生物質等の感染症生物を標的とするものが含まれ得る。
【0314】
さらに、チェックポイント阻害物質等の抗免疫抑制剤/免疫刺激剤を対象にさらに投与することができる。例えば、抗CTLA抗体または抗PD-1もしくは抗PD-L1を対象にさらに投与することができる。抗体によるCTLA-4またはPD-L1の遮断は、患者でのがん性細胞に対する免疫応答を増強させることができる。特に、CTLA-4の遮断は、ワクチン接種プロトコルに従った場合、有効であることが示されている。
【0315】
ワクチン組成物中に含められる各抗原の最適量、及び最適投与レジメンを決定することができる。例えば、抗原またはそのバリアントは、静脈内(i.v.)注射、皮下(s.c.)注射、皮内(i.d.)注射、腹腔内(i.p.)注射、筋肉内(i.m.)注射用に調製可能である。注射の方法には、s.c.、i.d.、i.p.、i.m.、及びi.v.が含まれる。DNAまたはRNA注射の方法には、i.d.、i.m.、s.c.、i.p.及びi.v.が含まれる。ワクチン組成物の他の投与方法は当業者に公知である。
【0316】
ワクチンは、組成物中に存在する抗原の選択、数及び/または量が、組織、がん、感染症、及び/または患者に特異的であるよう編集可能である。例えば、ペプチドの正確な選択は、所与の組織における親タンパク質の発現パターンによって導くことができ、また患者の変異または疾患状態によっても導くことができる。選択は、特定の種類のがん、特定の感染症(例えば、対象が感染しているかまたはそれによる感染リスクがある特定の感染症の分離株(isolate)/株(strain))、疾患の状態、ワクチン接種の目的(例えば、予防的か、または進行中の疾患のターゲティング)、先行治療レジメン、患者の免疫状態、及び当然のことながら患者のHLAハプロタイプ、に応じて異なり得る。さらに、ワクチンは、特定の患者の個人のニーズに従って、個別化された成分を含有することができる。例としては、特定の患者での抗原の発現に従った抗原選択の変更、または一次治療もしくは治療スキームに続く二次治療の調整が含まれる。
【0317】
患者は、様々な診断方法、例えば、以下に詳述される患者選択方法の使用を介して抗原ワクチンの投与のために特定され得る。患者選択には、1つ以上の遺伝子における変異、または、1つ以上の遺伝子の発現パターンを特定することを伴い得る。患者選択には、進行中の感染の感染症を特定することを伴い得る。患者選択には、感染症による感染のリスクを特定することを伴い得る。場合によっては、患者選択には、患者のハプロタイプを特定することを伴う。様々な患者選択方法を並行して実施することができ、例えば、シークエンシング診断では、患者の変異及びハプロタイプの両方を特定することができる。様々な患者選択方法を順次に実施することができ、例えば、1つの診断検査で変異を特定し、別の診断検査で患者のハプロタイプを特定し、その場合、各検査は、同じ診断法(例えば、両方ともハイスループットシークエンシング)でも、異なる診断法(例えば、一方がハイスループットシークエンシング、他方がサンガー法による配列決定)でも可能である。
【0318】
がんまたは感染症のためのワクチンとして使用される組成物の場合、正常組織で高量発現される自己ペプチドと同様の正常な自己ペプチドを持つ抗原は、本明細書に記載される組成物では回避され得るかまたは低量で存在し得る。一方、患者の腫瘍または感染細胞が高量の特定の抗原を発現することが知られている場合、このがんまたは感染症を治療するための医薬組成物はそれぞれ、高量で存在することができ、及び/またはこの特定の抗原またはこの抗原の経路に特異的な複数の抗原が含まれ得る。
【0319】
抗原を含む組成物は、すでにがんまたは感染症を患っている個体に投与され得る。治療用途では、組成物は、腫瘍抗原または感染症生物抗原に対する有効なCTL応答を刺激し、症状及び/または合併症を治癒もしくは少なくとも部分的に停止させるのに十分な量で対象に投与される。これを達成するために適した量は、「治療的有効用量」と定義される。この使用に有効な量は、例えば、組成物、投与様式、治療される疾患の病期及び重症度、患者の体重及び全身の健康状態、及び処方医師の判断に応じて異なる。組成物は一般に、重篤な病状、すなわち、生命を脅かすかもしくは生命を脅かす可能性のある状況、特に、がんが転移している、または感染症生物により臓器障害及び/または他の免疫病理が誘導されている場合に用いられ得ることに留意すべきである。そのような場合、外来性物質の最小化及び抗原の相対的無毒性を考慮し、これらの組成物を実質的に過剰に投与することが可能であり、またそのことが望ましいと担当医に感じてもらうことができる。
【0320】
治療的使用の場合、投与は、腫瘍の検出時もしくは外科的除去時に開始するか、または検出時もしくは感染症治療時に開始することができる。これに続き、少なくとも症状が実質的に軽減されるまで、及びその後の期間、または免疫が提供されている(例えば、メモリーB細胞もしくはメモリーT細胞集団、または抗原特異的B細胞もしくは抗体が産生される)と見なされるまで用量をブーストすることができる。
【0321】
治療的処置のための医薬組成物(例えば、ワクチン組成物)は、非経口、局所(topical)、経鼻、経口または局所(local)の投与について意図される。医薬組成物は、非経口で、例えば、静脈内、皮下、皮内、または筋肉内に投与され得る。組成物は、腫瘍に対する局所免疫応答を刺激するために外科的切除部位に投与され得る。組成物は、対象の特定の感染した組織及び/または細胞を標的とするために投与され得る。本明細書では、非経口投与用の組成物を開示し、これは、抗原の溶液を含み、ワクチン組成物は、許容される担体、例えば、水性担体に溶解または懸濁される。様々な水性担体、例えば、水、緩衝水、0.9%生理食塩水、0.3%グリシン、ヒアルロン酸等を使用することができる。これらの組成物は、従来の周知の滅菌技術により滅菌することができ、また濾過滅菌することもできる。得られた水溶液は、そのままでの使用のためにパッケージングされるか、または凍結乾燥され得、凍結乾燥調製物は、投与前に滅菌溶液と合わせられる。組成物は、pH調整剤及び緩衝剤、等張化剤、湿潤剤等のような、生理的条件に近づけるために必要とされる薬学的に許容される補助物質、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンモノラウラート、オレイン酸トリエタノールアミン等を含有し得る。
【0322】
抗原はまた、それらをリンパ組織等の特定の細胞組織にターゲティングさせるリポソームにより投与され得る。リポソームもまた、半減期延長に有用である。リポソームには、エマルジョン、フォーム、ミセル、不溶性単層、液晶、リン脂質分散液、ラメラ層等が含まれる。これらの調製物では、送達される抗原は、単独で、あるいはCD45抗原に結合するモノクローナル抗体等の、例えば、リンパ系細胞の間で高頻度に見られる受容体に結合する分子と組み合わせて、または他の治療用もしくは免疫原性の組成物と組み合わせて、リポソームの一部として組み込まれる。したがって、所望の抗原が充填されたリポソームをリンパ系細胞の部位に配向させることができ、そこで、リポソームが、選択された治療用/免疫原性の組成物を送達する。リポソームは、標準的小胞形成脂質から形成することができ、これには一般に、中性及び負の電荷を帯びたリン脂質及びコレステロール等のステロールが含まれる。脂質の選択は一般に、例えば、リポソームサイズ、酸不安定性及び血流中でのリポソーム安定性を考慮することによって導かれる。例えば、Szoka et al.,Ann.Rev.Biophys.Bioeng.9;467(1980)、米国特許第4,235,871号、同第4,501,728号、同第4,501,728号、同第4,837,028号、及び第5,019,369号に記載されているように、リポソームを調製するために様々な方法が利用可能である。
【0323】
免疫細胞へのターゲティングの場合、リポソーム内に組み込まれるリガンドには、例えば、所望の免疫系細胞の細胞表面決定基に特異的な抗体またはその断片が含まれ得る。リポソーム懸濁液は、特に、投与様式、送達されるペプチド、及び治療される疾患病期によって異なる用量で、静脈内、局所(locally)、局所(topically)等に投与され得る。
【0324】
治療または免疫を目的とする場合、ペプチドをコードし、任意選択で本明細書に記載されるペプチドのうちの1つ以上をコードする核酸もまた患者に投与され得る。患者に核酸を送達するために多数の方法が好都合に使用される。例えば、核酸は、「裸のDNA」として直接送達され得る。この手法は、例えば、Wolff et al.,Science 247:1465-1468(1990)ならびに米国特許第5,580,859号及び同第5,589,466号に記載されている。核酸はまた、例えば、米国特許第5,204,253号に記載のような弾道(ballistic)送達を使用して投与され得る。DNAのみで構成されている粒子が投与され得る。別法として、DNAを金粒子等の粒子に付着させることができる。核酸配列を送達するための手法には、電気穿孔を用いるかまたは用いない、ウイルスベクター、mRNAベクター、及びDNAベクターが含まれ得る。
【0325】
核酸はまた、カチオン性脂質等のカチオン性化合物と複合体にして送達され得る。脂質媒介性遺伝子送達方法は、例えば、9618372WOAWO96/18372、9324640WOAWO93/24640、Mannino & Gould-Fogerite,BioTechniques 6(7):682-691(1988)、米国特許第5,279,833号(Rose)、米国特許第5,279,833号、9106309WOAWO91/06309、及びFelgner et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA84:7413-7414(1987)に記載されている。
【0326】
抗原はまた、ウイルスベクターに基づくワクチンプラットフォーム、例えば、ワクシニア、鶏痘、自己複製アルファウイルス、マラバウイルス、アデノウイルス(例えば、Tatsis et al.,Adenoviruses,Molecular Therapy(2004)10,616-629を参照のこと)、または第2世代、第3世代もしくは第2/第3世代ハイブリッドのレンチウイルス及び特定の細胞型もしくは受容体を標的にするよう設計された任意の世代の組換えレンチウイルスが含まれるが、これらに限定されないレンチウイルス(例えば、Hu et al.,Immunization Delivered by Lentiviral Vectors for Cancer and Infectious Diseases,Immunol Rev.(2011)239(1):45-61、Sakuma et al.,Lentiviral vectors:basic to translational,Biochem J.(2012)443(3):603-18、Cooper et al.,Rescue of splicing-mediated intron loss maximizes expression in lentiviral vectors containing the human ubiquitin C promoter,Nucl.Acids Res.(2015)43(1):682-690、Zufferey et al.,Self-Inactivating Lentivirus Vector for Safe and Efficient In Vivo Gene Delivery,J.Virol.(1998)72(12):9873-9880を参照のこと)等に含めることもできる。上記のウイルスベクターに基づくワクチンプラットフォームのパッケージング容量に応じて、この手法では、1つ以上の抗原ペプチドをコードする1つ以上のヌクレオチド配列を送達することができる。配列は、非変異配列に隣接する場合もあれば、リンカーによって区切られている場合も、細胞内コンパートメントを標的とする1つ以上の配列が先行する場合もある(例えば、Gros et al.,Prospective identification of neoantigen-specific lymphocytes in the peripheral blood of melanoma patients,Nat Med.(2016)22(4):433-8、Stronen et al.,Targeting of cancer neoantigens with donor-derived T cell receptor repertoires,Science.(2016)352(6291):1337-41、Lu et al.,Efficient identification of mutated cancer antigens recognized by T cells associated with durable tumor regressions,Clin Cancer Res.(2014)20(13):3401-10を参照のこと)。宿主への導入時、感染細胞は抗原を発現し、それによりペプチドに対する宿主免疫(例えば、CTL)応答が刺激される。免疫プロトコルに有用なワクシニアベクター及び方法は、例えば、米国特許第4,722,848号に記載されている。別のベクターは、BCG(Bacille Calmette Guerin:カルメット・ゲラン桿菌)である。BCGベクターは、Stover et al.(Nature 351:456-460(1991))に記載されている。抗原の治療的投与または免疫に有用な多種多様な他のワクチンベクター、例えば、チフス菌ベクター等は本明細書での説明から当業者に明らかであろう。
【0327】
核酸を投与する手段は、1つまたは複数のエピトープをコードするミニ遺伝子コンストラクトを使用する。ヒト細胞における発現のための選択されたCTLエピトープ(ミニ遺伝子)をコードするDNA配列を作製するために、エピトープのアミノ酸配列が逆翻訳される。ヒトのコドン使用表を使用して、各アミノ酸についてのコドン選択を導き出す。これらのエピトープコードDNA配列を直接隣接し、連続ポリペプチド配列を作成する。発現及び/または免疫原性を最適化するために、追加の要素をミニ遺伝子設計に組み込むことができる。逆翻訳され、ミニ遺伝子配列に含まれ得るアミノ酸配列の例には、ヘルパーTリンパ球、エピトープ、リーダー(シグナル)配列、及び小胞体保留シグナルが挙げられる。さらに、合成(例えば、ポリアラニン)または天然に存在するフランキング配列をCTLエピトープに隣接して含めるこれにより、MHCのCTLエピトープ提示を改善することができる。ミニ遺伝子配列は、ミニ遺伝子のプラス鎖及びマイナス鎖をコードするオリゴヌクレオチドを組み立てることによりDNAに変換される。重複オリゴヌクレオチド(30~100塩基長)は、周知の技術を使用して適切な条件下で合成、リン酸化、精製及びアニールされる。オリゴヌクレオチドの末端は、T4 DNAリガーゼを使用して連結される。CTLエピトープポリペプチドをコードするこの合成ミニ遺伝子はその後、所望の発現ベクターにクローニング可能である。
【0328】
精製プラスミドDNAは、様々な製剤を使用して注射用に調製され得る。これらのうち最も簡便なものは、滅菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS)での凍結乾燥DNAの再構成である。様々な方法が報告されており、また新たな技術が利用可能になり得る。上記のように、核酸は、カチオン性脂質を用いて好都合に製剤化される。さらに、保護的相互作用性非凝縮性(PINC)と総称される糖脂質、膜融合性リポソーム、ペプチド及び化合物はまた、安定性、筋肉内分散、または特定の器官もしくは細胞型への輸送等の可変要素に影響を与えるために、精製プラスミドDNAと複合体を形成させることが可能である。
【0329】
また、本明細書に開示される方法のステップを実施すること、及び複数の抗原または複数の抗原のサブセットを含むワクチンを生成すること、を含むワクチンを製造する方法も開示する。
【0330】
本明細書に開示される抗原は、当該技術分野で公知の方法を使用して製造され得る。例えば、本明細書に開示される抗原またはベクター(例えば、1つ以上の抗原をコードする少なくとも1つの配列を含むベクター)を生成する方法には、抗原またはベクターをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む宿主細胞を、かかる抗原またはベクターの発現に好適な条件下で培養すること、及び抗原またはベクター精製することが含まれ得る。標準的精製方法には、クロマトグラフィー法、電気泳動法、免疫学的技術、沈殿、透析、ろ過、濃縮、及びクロマトフォーカシング技術が含まれる。
【0331】
宿主細胞には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NS0細胞、酵母、またはHEK293細胞が含まれ得る。宿主細胞は、本明細書に開示される抗原またはベクターをコードする少なくとも1つの核酸配列を含む1つ以上のポリヌクレオチドで形質転換が可能であり、ここで、任意選択で、単離されたポリヌクレオチドはさらに、抗原またはベクターをコードする少なくとも1つの核酸配列に機能的に連結されているプロモーター配列を含む。ある特定の実施形態では、単離されたポリヌクレオチドはcDNAであり得る。
【0332】
VII.抗原の使用及び投与
他に使用可能な、ワクチン接種の方法、プロトコル、及びスケジュールには、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる国際出願公開第WO2021092095号に記載のものが含まれるが、これらに限定されない。
【0333】
プライム/ブースト戦略における各ベクターには、典型的には、抗原が含まれるカセットが含まれる。カセットには、約1~50個の抗原が含まれ得、通常は各抗原を囲む天然配列等のスペーサー、またはAAY等の他の非天然スペーサー配列によって区切られている。カセットにはまた、ユニバーサルなクラスII抗原と見なすことができる破傷風トキソイド抗原及びPADRE抗原のようなMHCII抗原も含まれ得る。カセットにはまた、ユビキチンターゲティング配列等のターゲティング配列も含まれ得る。さらに、各ワクチン用量は、免疫調節物質と併せて(例えば、同時に、前に、または後に)対象に投与され得る。各ワクチン用量は、チェックポイント阻害物質(CPI)と併せて(例えば、同時に、前に、または後に)対象に投与され得る。CPIには、CTLA4、PD1、及び/またはPDL1を阻害するもの、例えば、抗体またはそれらの抗原結合部分が含まれ得る。そのような抗体には、トレメリムマブまたはデュルバルマブが含まれ得る。各ワクチン用量は、IL-2、IL-7、IL-12(IL-12のp35、p40、p70、及び/またはp70融合コンストラクトを含む)、IL-15、またはIL-21等のサイトカインと併せて(例えば、同時に、前に、または後に)対象に投与され得る。各ワクチン用量は、修飾サイトカイン(例えば、pegIL-2)と併せて(例えば、同時に、前に、または後に)対象に投与され得る。
【0334】
対象に1つ以上の抗原を投与するには、ワクチン接種プロトコルを使用することができる。対象への投与にはプライミングワクチン及びブースティングワクチンを使用することができる。プライミングワクチンには、本明細書に記載される抗原コードベクター、例えば、ChAdV68(例えば、配列番号1または2に示される配列)に基づくベクターのいずれかが用いられ得る。ブースト用量には、本明細書に記載される抗原コードベクター、例えば、ChAdV68(例えば、配列番号1または2に示される配列)またはSAM系ベクター(例えば、配列番号3または4に示される配列)に基づくベクターのいずれかが用いられ得る。1つ以上のブースト用量を投与することができ、同じブースティングワクチンの連続的投与(例えば、同じChAdV68系ベクターの連続的投与もしくは同じSAM系ベクターの連続的投与)、または異なるブースティングワクチンの連続的投与(例えば、SAM系ベクターの投与、それに続くChAdV68系ベクターの投与)が可能である。異なるワクチンの連続的投与には、異なるワクチンの任意の組み合わせが含まれ得る。例えば、ワクチン戦略では、ChAdV68系のプライム、それに続く1回以上のSAM系ブースト、及びSAM系ブーストに続くChAdV68系ブーストを使用することができる。例示的な非限定的なワクチン戦略には、ChAdVプライム-SAMブースト-SAMブースト-ChAdVブースト、またはChAdVプライム-SAMブースト-SAMブースト-SAMブースト-SAMブースト-ChAdVブーストが含まれるが、これらに限定されない。
【0335】
ChAdV68に基づくワクチンは、1×1011ウイルス粒子~1×1012ウイルス粒子の範囲の用量で投与され得る。ChAdV68に基づくワクチンは、1×1011ウイルス粒子の用量で投与され得る。ChAdV68に基づくワクチンは、5×1011ウイルス粒子の用量で投与され得る。ChAdV68に基づくワクチンは、1×1012ウイルス粒子の用量で投与され得る。ChAdV68に基づくワクチンについて選択された投与量は、例えば、組成物、投与様式、治療される疾患の病期及び重症度、患者の体重及び全身の健康状態、ならびに処方医師の判断に応じて異なる。
【0336】
SAMベースのワクチンは、10~300μgのRNAの範囲の用量で投与され得る。SAMベースのワクチンは、100~300μgのRNAの範囲の用量で投与され得る。SAMベースのワクチンは、100μgのRNAの用量で投与され得る。SAMベースのワクチンは、300μgのRNAの用量で投与され得る。SAMベースのワクチンについて選択された投与量は、例えば、組成物、投与様式、治療される疾患の病期及び重症度、患者の体重及び全身の健康状態、ならびに処方医師の判断に応じて異なる。
【0337】
プライミングワクチンは、対象に(例えば、筋肉内に)注射され得る。用量ごとの両側注射を使用することができる。例えば、ChAdV68(C68)1回以上の注射を使用することができる(例えば、総投与量が1×1012ウイルス粒子);0.001~1ugのRNAの範囲から選択される低ワクチン用量、特に0.1ugもしくは1ugでのSAMベクターの1回以上の注射を使用することができる;または1~100ugRNAの範囲から選択される高ワクチン用量、特に10ug、100ug、もしくは300ugでのSAMベクターの1回以上の注射を使用することができる。
【0338】
ワクチンブースト(ブースティングワクチン)は、プライムワクチン接種後に(例えば、筋肉内に)注射され得る。用量ごとの両側注射を使用することができる。例えば、ChAdV68(C68)1回以上の注射を使用することができる(例えば、総投与量が1×1012ウイルス粒子);0.001~1ugのRNAの範囲から選択される低ワクチン用量、特に0.1ugもしくは1ugでのSAMベクターの1回以上の注射を使用することができる;または1~100ugRNAの範囲から選択される高ワクチン用量、特に10ug、100ug、もしくは300ugでのSAMベクターの1回以上の注射を使用することができる。
【0339】
ブースティングワクチンは、プライムの後、約1週間ごと、2週間ごと、3週間ごと、4週間ごと、5週間ごと、6週間ごと、7週間ごと、8週間ごと、9週間ごと、または10週間ごと、例えば、4週間ごと及び/または8週間ごとに投与され得る。ブースティングワクチンは、プライムの後、4週間ごとに投与され得る。ブースティングワクチンは、プライムの後、6週間ごとに投与され得る。ブースティングワクチンは、プライムの後、12週間ごとに投与され得る。ブースト用量は、ワクチン接種プロトコルの期間中、異なる間隔で投与され得る。例えば、例示的な非限定的例には、プライム-4w-ブースト-12w-ブースト-12w-ブースト;またはプライム-4w-ブースト-6w-ブースト-6w-ブースト-6w-ブースト-6w-ブーストが含まれる(「w」は週を表す)。
【0340】
ワクチン投与のうちの1回以上には、1つ以上のチェックポイント阻害物質の同時投与が含まれ得る。例示的な免疫チェックポイント阻害物質には、トレメリムマブ(CTLA-4遮断抗体)、抗OX40、PD-L1モノクローナル抗体(抗B7-H1;MEDI4736)、イピリムマブ、MK-3475(PD-1遮断薬)、ニボルマブ(抗PD1抗体)、CT-011(抗PD1抗体)、BY55モノクローナル抗体、AMP224(抗PDL1抗体)、BMS-936559(抗PDL1抗体)、MPLDL3280A(抗PDL1抗体)、MSB0010718C(抗PDL1抗体)及びヤーボイ/イピリムマブ(抗CTLA-4チェックポイント阻害物質)が含まれる。例示的な非限定的例では、ニボルマブ、ヤーボイ/イピリムマブ、またはそれらの組み合わせ。
【0341】
抗CTLA-4(例えば、トレメリムマブ)もまた、対象に投与され得る。例えば、抗CTLA4は、同じリンパ節への流入が確実に行われるよう、筋肉内ワクチン注射(ChAdV68プライムまたはSAM低用量)部位の近くに皮下投与され得る。トレメリムマブは、CTLA-4の選択的ヒトIgG2 mAb阻害物質である。抗CTLA-4(トレメリムマブ)目的皮下用量は、典型的には、70~75mg(特に75mg)であり、用量範囲は、例えば、1~100mgまたは5~420mgである。
【0342】
ある特定の場合には、デュルバルマブ(MEDI4736)等の抗PD-L1抗体を使用することができる。デュルバルマブは、PD-1及びCD80へのPD-L1の結合を遮断する選択的高親和性ヒトIgG1 mAbである。デュルバルマブは一般に、4週間ごとに20mg/kgでi.v.投与される。
【0343】
ワクチンの投与前、投与中、及び/または投与後に免疫モニタリングが実施され得る。そのようなモニタリングから、パラメータの中でも特に安全性及び有効性の情報を得ることができる。
【0344】
免疫モニタリングの実施には、PBMCが一般に使用される。PBMCは、プライムワクチン接種前、及びプライムワクチン接種後(例えば、4週間及び8週間後)に分離され得る。PBMCは、ブーストワクチン接種の直前及び各ブーストワクチン接種後(例えば、4週間及び8週間後)に採取され得る。
【0345】
T細胞応答及びB細胞応答等の免疫応答は、免疫モニタリングプロトコルの一部として評価され得る。例えば、本明細書に記載されるワクチン組成物が免疫応答を刺激する能力を、モニター及び/または評価することができる。本明細書で使用される場合、「免疫応答を刺激する」とは、免疫応答の任意の増大、例えば、免疫応答の開始(例えば、プライミングワクチンが未処置対象での免疫応答の開始を刺激すること)、または免疫応答の任意の増強作用(例えば、ブースティングワクチンが、プライミングワクチンにより開始された既存の免疫応答等の、抗原に対する既存の免疫応答を有する対象での免疫応答の増強作用を刺激すること)を指す。T細胞応答は、当該技術分野で公知の1つ以上の方法を使用して、例えば、ELISpot、細胞内サイトカイン染色、サイトカイン分泌及び細胞表面捕捉、T細胞増殖、MHCマルチマー染色、または細胞毒性アッセイにより測定され得る。ワクチンでコードされるエピトープに対するT細胞応答は、ELISpotアッセイを使用して、IFN-ガンマ等のサイトカインの誘導を測定することによってPBMCからモニターされ得る。ワクチンでコードされるエピトープに対する特定のCD4またはCD8T細胞応答は、フローサイトメトリーを使用して、細胞内または細胞外で捕捉されるIFN-ガンマ等のサイトカインの誘導を測定することによってPBMCからモニターされ得る。ワクチンでコードされるエピトープに対する特定のCD4またはCD8T細胞応答は、MHCマルチマー染色を使用して、エピトープ/MHCクラスI複合体に特異的なT細胞受容体を発現しているT細胞集団を測定することによってPBMCからモニターされ得る。ワクチンでコードされるエピトープに対する特定のCD4またはCD8T細胞応答は、3H-チミジン、ブロモデオキシウリジン及びカルボキシフルオレセインジアセタートスクシンイミジルエステル(CFSE)取り込み後のT細胞集団のエキソビボ増殖を測定することによってPBMCからモニターされ得る。ワクチンでコードされるエピトープに特異的なPBMC由来T細胞の抗原認識能及び溶解活性は、クロム遊離アッセイまたは代替的比色細胞毒性アッセイによって機能的に評価され得る。
【0346】
B細胞応答は、当該技術分野で公知の1つ以上の方法、例えば、B細胞分化(例えば、形質細胞への分化)、B細胞もしくは血漿細胞の増殖、B細胞もしくは形質細胞の活性化(例えば、CD80もしくはCD86等の共刺激マーカーの上方制御)、抗体クラススイッチ、及び/または抗体産生(例えば、ELISA)を決定するために使用されるアッセイを使用して測定され得る。
【0347】
ワクチン接種レジメンには、ChAdV68に基づくワクチン等の目的のワクチン組成物に対する中和抗体価を評価することが含まれ得る。例えば、ChAdV68に基づくワクチンはプライミング用量として投与され得、再投与前、ChAdV特異的中和抗体価が中和閾値未満であることを決定した後、ブースト用量としてのChAdV68に基づくワクチンの再投与が行われる。中和抗体価は、ChAdVウイルスを50%中和する、免疫化された対象からの血清の最小希釈度として計算されるNT50値であり得る。中和抗体価を決定することには、(1)免疫化された対象からの血清の1つ以上の希釈液を、ChAdVウイルスの中和に十分な条件下でChAdVウイルスと接触させるステップ、及び(2)中和されていないウイルスと比べてChAdVウイルスの中和を評価するステップ、が含まれ得る。
【0348】
対象の疾患状態は、本明細書に記載されるワクチン組成物のいずれかの投与後にモニター可能である。例えば、疾患状態は、対象からの単離されたセルフリーDNA(cfDNA)を使用してモニターされ得る。さらに、ワクチン療法の有効性は、対象からの単離されたcfDNAを使用してモニターされ得る。cfDNAのモニタリングには、a.対象からcfDNAを単離するか、または単離しておくステップ、b.単離されたcfDNAをシークエンシングするか、またはシークエンシングしておくステップ、c.対象の野生型生殖細胞系列核酸配列と比べて、cfDNAでの1つ以上の変異の頻度を決定するか、または決定しておくステップ、及びd.対象の疾患の状態を、ステップ(c)から評価するか、または、評価しておくステップ、が含まれ得る。方法にはまた、上記ステップ(c)に続いて、d.所与の対象についてステップ(a)~(c)の反復を複数回実施し、複数回の反復で決定された1つ以上の変異の頻度を比較すること、及びf.対象の疾患の状態をステップ(d)から評価するかまたは評価しておくこと、も含めることができる。複数回の反復は、異なる時点で実施され得、例えば、ステップ(a)~(c)の第1の反復をワクチン組成物の投与の前に実施し、ステップ(a)~(c)の第2の反復をワクチン組成物の投与の後で実施することができる。ステップ(c)には、複数回の反復で決定された1つ以上の変異の頻度、または第1の反復で決定された1つ以上の変異の頻度と、第2の反復で決定された1つ以上の変異の頻度と、を比較することが含まれ得る。後続の反復または第2の反復で決定された1つ以上の変異の頻度の増加は、疾患の進行として評価され得る。後続の反復または第2の反復で決定された1つ以上の変異の頻度の減少は、応答として評価され得る。いくつかの態様では、応答は、完全奏功(CR)または部分奏効(PR)である。評価ステップに続いて、例えば、cfDNAにおける1つ以上の変異の頻度の評価により対象が疾患を有することが示される場合は、療法が対象に実施され得る。cfDNA単離ステップでは、細胞または細胞片からcfDNAを分離するために遠心分離を使用することができる。cfDNAは、血漿層、バフィーコート、及び赤血球を分離する等により全血から分離され得る。cfDNAシークエンシングでは、次世代シークエンシング(NGS)、サンガー法による配列決定、デュプレックスシークエンシング、全エクソームシークエンシング、全ゲノムシークエンシング、デノボシークエンシング、段階的シークエンシング、ターゲットアンプリコンシークエンシング、ショットガンシークエンシング、またはそれらの組み合わせを使用することができ、また、シークエンシングの前に1つ以上の目的ポリヌクレオチド領域についてcfDNAを濃縮させることが含まれ得る(例えば、1つ以上の変異をコードすることが既知である、もしくはその疑いのあるポリヌクレオチド、コード領域、及び/または腫瘍エクソームポリヌクレオチド)。cfDNAを濃縮させることには、修飾(例えば、ビオチン化)され得る1つ以上のポリヌクレオチドプローブを、1つ以上の目的ポリヌクレオチド領域にハイブリダイズさせることが含まれ得る。一般に、任意の数の変異が同時または並行してモニターされ得る。
【0349】
同種ワクチン接種レジメンには、2回目の用量の有効性を改善するため、同種の用量間の間隔が含まれ得る。例えば、ChAdV68に基づくワクチンは、初回用量として投与が可能であり、有効性改善のため、例えば、ChAdV特異的中和抗体価がブースト用量の有効性に与える影響を軽減するために、ブースト用量としてのChAdV68に基づくワクチンの再投与の前に間隔を含めることが可能である。例えば、初回用量によって、中和抗体の産生が誘導され得、これは、その後、経時的に減少する。本明細書に記載されるChAdV68に基づくワクチンの例示的な非限定的例では、間隔は、少なくとも27週間である。間隔は、27週間であり得る。間隔は、28週間であり得る。間隔は、29週間であり得る。間隔は、30週間であり得る。間隔は、31週間であり得る。間隔は、32週間であり得る。間隔は、33週間であり得る。間隔は、少なくとも27週間であり得る。間隔は、少なくとも28週間であり得る。間隔は、少なくとも29週間であり得る。間隔は、少なくとも30週間であり得る。間隔は、少なくとも31週間であり得る。間隔は、少なくとも32週間であり得る。間隔は、少なくとも33週間であり得る。
【0350】
同種プライム-ブースト戦略におけるChAdV68に基づくワクチン投与の間隔は、わずか8週間であり得る。間隔は、8週間であり得る。間隔は、9週間であり得る。間隔は、10週間であり得る。間隔は、11週間であり得る。間隔は、12週間であり得る。間隔は、13週間であり得る。間隔は、14週間であり得る。間隔は、15週間であり得る。間隔は、16週間であり得る。間隔は、17週間であり得る。間隔は、18週間であり得る。間隔は、19週間であり得る。間隔は、20週間であり得る。間隔は、21週間であり得る。間隔は、23週間であり得る。間隔は、24週間であり得る。間隔は、25週間であり得る。間隔は、26週間であり得る。
【0351】
同種プライム-ブースト戦略におけるChAdV68に基づくワクチン投与の間隔は、少なくとも8週間であり得る。間隔は、少なくとも9週間であり得る。間隔は、少なくとも10週間であり得る。間隔は、少なくとも11週間であり得る。間隔は、少なくとも12週間であり得る。間隔は、少なくとも13週間であり得る。間隔は、少なくとも14週間であり得る。間隔は、少なくとも15週間であり得る。間隔は、少なくとも16週間であり得る。間隔は、少なくとも17週間であり得る。間隔は、少なくとも18週間であり得る。間隔は、少なくとも19週間であり得る。間隔は、少なくとも20週間であり得る。間隔は、少なくとも21週間であり得る。間隔は、少なくとも23週間であり得る。間隔は、少なくとも24週間であり得る。間隔は、少なくとも25週間であり得る。間隔は、少なくとも26週間であり得る。
【0352】
同種プライム-ブースト戦略におけるChAdV68に基づくワクチン投与の間隔は、2か月であり得る。間隔は、2.5か月であり得る。間隔は、3か月であり得る。間隔は、3.5か月であり得る。間隔は、4か月であり得る。間隔は、4.5か月であり得る。間隔は、5か月であり得る。間隔は、5.5か月であり得る。間隔は、6か月であり得る。間隔は、6.5か月であり得る。間隔は、7か月であり得る。間隔は、7.5か月であり得る。間隔は、8か月であり得る。間隔は、8.5か月であり得る。間隔は、少なくとも2か月であり得る。間隔は、少なくとも2.5か月であり得る。間隔は、少なくとも3か月であり得る。間隔は、少なくとも3.5か月であり得る。間隔は、少なくとも4か月であり得る。間隔は、少なくとも4.5か月であり得る。間隔は、少なくとも5か月であり得る。間隔は、少なくとも5.5か月であり得る。間隔は、少なくとも6か月であり得る。間隔は、少なくとも6.5か月であり得る。間隔は、少なくとも7か月であり得る。間隔は、少なくとも7.5か月であり得る。間隔は、少なくとも8か月であり得る。間隔は、少なくとも8.5か月であり得る。
【0353】
VIII.HLAペプチドの単離及び検出
組織試料の溶解及び可溶化後、古典的免疫沈降(IP)法を使用してHLAペプチド分子の単離を実施した(55~58)。HLA特異的IPには清澄化したライセートを使用した。例及び方法は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際特許出願公開第WO/2018/208856号に詳述されている。
【0354】
IX.提示モデル
患者におけるペプチド提示の可能性を特定するために、提示モデルを使用することができる。様々な提示モデルが当業者に公知であり、例えば、米国特許第10,055,540号、米国出願公開第US20200010849A1号及び同第US20110293637号、ならびに国際特許出願公開第WO/2018/195357号、同第WO/2018/208856号、及び同第WO2016187508号に提示モデルが詳述されており、それぞれ、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0355】
X.トレーニングモジュール
ペプチド配列が、そのペプチド配列と関連するMHCアレルによって提示されるかどうかの可能性を生成するトレーニングデータセットに基づいて、1つ以上の提示モデルを構築するために、トレーニングモジュールを使用することができる。様々なトレーニングモジュールが当業者に公知であり、例えば、米国特許第10,055,540号、米国出願公開第US20200010849A1号、ならびに国際特許出願公開第WO/2018/195357号及び同第WO/2018/208856号に提示モデルが詳述されており、それぞれ、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。トレーニングモジュールでは、アレルごとにペプチドの提示可能性を予測するための提示モデルを構築することができる。トレーニングモジュールではまた、2つ以上のMHCアレルが存在する複数アレル設定でのペプチドの提示可能性を予測するための提示モデルを構築することができる。
【0356】
XI.予測モジュール
配列データを受け取り、提示モデルを使用して配列データにおいて候補抗原を選択するために、予測モジュールを使用することができる。具体的には、配列データは、患者の腫瘍組織細胞、患者の感染細胞、もしくは感染症生物自体から抽出された、DNA配列、RNA配列、及び/またはタンパク質配列であり得る。予測モジュールは、患者の正常組織細胞から抽出された配列データを、患者の腫瘍組織細胞から抽出された配列データと比較し、1つ以上の変異を含有する部分を特定することによって、変異ペプチド配列である候補ネオアンチゲンを特定し得る。予測モジュールは、患者の正常組織細胞から抽出された配列データを、患者の感染細胞から抽出された配列データと比較し、感染症生物と関連する1つ以上の抗原を含有する部分を特定すること等によって、病原体由来ペプチド、ウイルス由来ペプチド、細菌由来ペプチド、真菌由来ペプチド、及び寄生虫由来ペプチドである候補抗原を特定し得る。予測モジュールは、患者の正常組織細胞から抽出された配列データを、患者の腫瘍組織細胞から抽出された配列データと比較し、不適切に発現された候補抗原を特定することによって、正常な細胞または組織と比較して腫瘍細胞またはがん性組織において発現が変化している候補抗原を特定し得る。予測モジュールは、患者の正常組織細胞から抽出された配列データを、患者の感染組織細胞から抽出された配列データと比較し、発現された候補抗原を特定する(例えば、発現されたポリヌクレオチド及び/または感染症に特異的なポリペプチドを特定する)ことによって、正常な細胞または組織と比較して感染細胞または感染組織で発現している候補抗原を特定し得る。
【0357】
提示モジュールでは、処理されたペプチド配列に1つ以上の提示モデルを適用して、ペプチド配列の提示可能性を推定することができる。具体的には、予測モジュールは、候補抗原に提示モデルを適用することによって、腫瘍HLA分子または感染細胞HLA分子に提示される可能性の高い1つ以上の候補抗原ペプチド配列を選択し得る。一実施態様では、提示モジュールは、推定提示可能性が所定の閾値を上回る、候補抗原配列を選択する。別の実施態様では、提示モデルは、推定提示可能性が最も高いN個の候補抗原配列を選択する(Nは一般に、ワクチンで送達可能な最大エピトープ数である)。所与の患者について選択された候補抗原が含まれるワクチンを対象に注射して免疫応答を刺激することができる。
【0358】
XI.B.カセット設計モジュール
XI.B.1 概要
患者への注射用に選択された候補ペプチドに基づいてワクチンカセット配列を生成するために、カセット設計モジュールを使用することができる。例えば、カセット設計モジュールを使用して、連結されたT細胞エピトープ等の連結されたエピトープ配列をコードする配列を生成することができる。様々なカセット設計モジュールが当業者に公知であり、例えば、米国特許第10,055,540号、米国出願公開第US20200010849A1号、ならびに国際特許出願公開第WO/2018/195357号及び同第WO/2018/208856号にカセット設計モジュールが詳述されており、それぞれ、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0359】
治療用エピトープのセットは、所定の閾値を上回る提示可能性と関連している予測モジュールによって決定された選択ペプチドに基づいて生成され得、ここで、提示可能性は提示モデルにより決定される。ただし、他の実施形態では、治療用エピトープのセットは、多数の方法(単独または組み合わせ)のうちのいずれか1つ以上に基づいて、例えば、患者のHLAクラスIアレルまたはHLAクラスIIアレルへの結合親和性もしくは予測結合親和性、患者のHLAクラスIアレルまたはHLAクラスIIアレルへの結合安定性もしくは予測結合安定性、ランダムサンプリング等に基づいて生成され得ることが理解される。
【0360】
治療用エピトープは、選択されたペプチド自体に対応し得る。治療用エピトープには、選択されたペプチドに加え、C末端及び/またはN末端のフランキング配列も含まれ得る。N末端及びC末端のフランキング配列は、その供給源であるタンパク質との関連における治療用ワクチンエピトープの天然のN末端及びC末端のフランキング配列であり得る。治療用エピトープは、長さが固定されたエピトープを表し得る。治療用エピトープは、長さが可変のエピトープを表し得、ここで、エピトープの長さは、例えば、C-フランキング配列またはN-フランキング配列の長さに応じて変動し得る。例えば、C末端フランキング配列及びN末端フランキング配列は、各々が2~5残基の異なる長さを有することができ、エピトープに16の可能な選択肢をもたらす。
【0361】
カセット設計モジュールはまた、カセット内の1対の治療用エピトープ間の接合部にまたがる接合部エピトープの提示を考慮に入れてカセット配列を生成することができる。接合部エピトープは、カセット内で治療用エピトープとリンカー配列を連結させる過程が原因でカセットに生じる、非自己であるが無関係な新規エピトープ配列である。接合部エピトープの新規配列は、カセット自体の治療用エピトープとは異なる。
【0362】
カセット設計モジュールは、接合部エピトープが患者において提示される可能性を低下させるカセット配列を生成することができる。具体的には、カセットが患者に注射される場合、接合部エピトープには、患者のHLAクラスIまたはHLAクラスIIのアレルによって提示され、それぞれ、CD8またはCD4のT細胞応答を刺激する可能性がある。そのような反応は、その接合部エピトープに反応性のT細胞には、治療上の利益がなく、カセット内の選択された治療用エピトープに対する免疫応答を抗原競合により減弱させる可能性があるため、望ましくない場合が多い。76
【0363】
カセット設計モジュールは、1つ以上の候補カセットを反復処理することができ、カセット配列が、そのカセット配列と関連する接合部エピトープの提示スコアが数的閾値を下回るものを決定することができる。接合部エピトープ提示スコアは、カセット内の接合部エピトープの提示可能性と関連する量であり、接合部エピトープ提示スコアが高値であるほど、カセットの接合部エピトープがHLAクラスIもしくはHLAクラスIIまたは両方によって提示される可能性が高いことを示す。
【0364】
一実施形態では、カセット設計モジュールは、候補カセット配列のうち接合部エピトープ提示スコアが最も低いものと関連するカセット配列を決定し得る。
【0365】
カセット設計モジュールは、1つ以上の候補カセット配列を反復処理し、候補カセットの接合部エピトープ提示スコアを決定して、閾値を下回る接合部エピトープ提示スコアと関連する最適カセット配列を特定し得る。
【0366】
カセット設計モジュールはさらに1つ以上の候補カセット配列をチェックして、候補カセット配列内の接合部エピトープのいずれかが、ワクチンを設計する対象である所与の患者の自己エピトープであるかどうかを特定し得る。これを達成するために、カセット設計モジュールは、BLAST等の既知のデータベースに対して接合部エピトープをチェックする。一実施形態では、カセット設計モジュールは、接合部自己エピトープを回避するカセットを設計ように構成される。
【0367】
カセット設計モジュールは、力任せ(brute force)法を実施して、可能性のある全部またはほとんどの候補カセット配列を反復処理し、接合部エピトープ提示スコアが最も小さい配列を選択することができる。ただし、そのような候補カセットの数は、ワクチン容量が増大するにつれて、とてつもなく大きくなり得る。例えば、ワクチン容量が20エピトープの場合、カセット設計モジュールは、接合部エピトープ提示スコアが最低のカセットを決定するために、約1018個の可能な候補カセットを反復処理しなければならない。こうした決定は、カセット設計モジュールが、患者のためのワクチン生成を妥当な時間内に完了させるには、計算的に負担となり(計算処理資源が必要という点で)、ときに解決困難な場合がある。さらに、可能な接合部エピトープを候補カセットごとに考慮することは、さらに大きな負担となり得る。したがって、カセット設計モジュールは、力任せ法の場合の候補カセット配列数よりは大幅に少数の、多数の候補カセット配列を反復処理する方法に基づいてカセット配列を選択し得る。
【0368】
カセット設計モジュールは、ランダムまたは少なくとも準ランダムに生成された候補カセットのサブセットを生成することができ、カセット配列として、所定の閾値を下回る接合部エピトープ提示スコアと関連する候補カセットを選択する。さらに、カセット設計モジュールは、カセット配列として接合部エピトープ提示スコアが最も低いサブセットからの候補カセットを選択し得る。例えば、カセット設計モジュールは、20個の選択されたエピトープのセットに対して約100万候補カセットのサブセットを生成し、接合部エピトープ提示スコアが最も小さい候補カセットを選択し得る。ランダムカセット配列のサブセットを生成し、そのサブセットから接合部エピトープ提示スコアが低いカセット配列を選択することは、力任せ法と比べて最適以下であり得るが、計算資源が大幅に少なくて済むため、その実装が技術的に実現可能となる。さらに、より効率的なこの手法とは対照的に、力任せ法を実施しても、接合部エピトープ提示スコアにはわずかな、さらには無視できるほどの改善しかもたらされない場合があるため、資源配分の観点からは価値がない。カセット設計モジュールは、非対称巡回セールスマン問題(TSP)としてカセットのエピトープ配列を定式化することにより、改善されたカセット構成を決定することができる。ノードのリストと各ノードペア間の距離が与えられている場合、TSPは、各ノードを1回だけ訪問し、元のノードへ戻るための総距離が最小となるものと関連するノードの配列を決定する。例えば、互いの距離が既知の都市A、B、及びCが与えられている場合、TSPの解法は、各都市を1回だけ訪問するために巡回した総距離が可能経路のうちで最小である閉の都市配列を生成する。TSPの非対称バージョンでは、ノードペア間の距離が非対称である場合の最適ノード配列を決定する。例えば、ノードAからノードBまで巡回するための「距離」は、ノードBからノードAまで巡回するための「距離」とは異なる場合がある。非対称TSPを使用して改善された最適カセットについて解くことによって、カセット設計モジュールは、カセットのエピトープ間の接合部を横断して、提示スコア減少をもたらすカセット配列を見出すことができる。非対称TSPの解は、カセットの接合部全体の接合部エピトープ提示スコアを最小限に抑えるために、エピトープがカセット内で連結されるべき順序に対応する治療用エピトープの配列を示す。この手法で決定されたカセット配列は、接合部エピトープの提示が大幅に少ない配列となる可能性があり、一方で、生成される候補カセット配列数が大きい場合は特に、ランダムサンプリング法よりも計算資源が大幅に少なくて済む可能性が高い。様々な計算手法及びカセット設計最適化のための比較の例示的な例は、米国特許第10,055,540号、米国出願公開第US20200010849A1号、ならびに国際特許出願公開第WO/2018/195357号及び同第WO/2018/208856号に詳述されており、それぞれ、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0369】
共通抗原ワクチンに含めるための共通(ネオ)抗原配列及びそのようなワクチンによる治療に適切な患者は、例えば、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる米国出願第17/058,128号に記載のように、当業者により選択され得る。共通(ネオ)抗原候補の質量分析(MS)による確認は、選択工程の一部として実施可能である。
【0370】
カセット設計モジュールはまた、ワクチンでコードされる追加のタンパク質配列を考慮に入れてカセット配列を生成することができる。例えば、連結されたT細胞エピトープをコードする配列を生成するために使用されるカセット設計モジュールは、ワクチン中に存在する追加のタンパク質配列(例えば、全長タンパク質配列)によってすでにコードされているT細胞エピトープを考慮に入れることができ、例えば、追加のタンパク質配列によってすでにコードされているT細胞エピトープを候補配列の一覧から除去すること等により行う。
【0371】
カセット設計モジュールはまた、配列のサイズを考慮に入れてカセット配列を生成することができる。理論に拘束されることは望まないが、一般に、カセットサイズの増大は、ワクチン生成及び/またはワクチン有効性等のワクチンの態様にマイナスの影響を与え得る。一例では、カセット設計モジュールは、重複T細胞エピトープ配列等の重複配列を考慮に入れることができる。一般に、重複T細胞エピトープ配列を含有する単一配列(「フレーム」とも呼ばれる)は、複数のペプチドをコードするために必要な配列サイズが縮小されることから、個々のT細胞エピトープを別々に連結している配列よりも効率的である。したがって、例示的な例では、連結されたT細胞エピトープをコードする配列を生成するために使用されるカセット設計モジュールは、1つ以上の追加のT細胞エピトープをコードするようT細胞エピトープ候補を拡張することのコスト/利益を考慮に入れることができ、例えば、追加のT細胞エピトープを提示するMHCにさらなる集団を対象とさせることで得られる利益を、配列サイズ増大のコストと対比させて決定することができる。
【0372】
カセット設計モジュールはまた、確認されたエピトープにより引き起こされる免疫応答の刺激の程度を考慮に入れてカセット配列を生成することができる。
【0373】
カセット設計モジュールはまた、例えば、集団のある割合で、例えば、集団の少なくとも85%、90%、または95%で、少なくとも1つの免疫原性エピトープが少なくとも1つのHLAにより提示される(例えば、4つの主要な民族集団、すなわちヨーロッパ人(EUR)、アフリカ系米国人(AFA)、アジア人・太平洋諸島住民(APA)及びヒスパニック(HIS)にわたる、HLA-A、HLA-B及びHLA-C遺伝子)、ある集団全体のコードされるエピトープの提示を考慮に入れてカセット配列を生成することができる。例示的な非限定的例として、カセット設計モジュールはまた、少なくとも1つの確認されたエピトープを提示するか、または少なくとも4つ、5つ、6つ、もしくは7つの予測エピトープを提示する、少なくとも1つのHLAが少なくとも集団の85%、90%、または95%にわたって存在するよう、カセット配列を生成することができる。
【0374】
カセット設計モジュールはまた、潜在的安全性を改善する他の態様を考慮に入れてカセット配列を生成することができ、例えば、安全性リスクを示す可能性のある機能性タンパク質、機能性タンパク質ドメイン、機能性タンパク質サブユニット、または機能性タンパク質断片を、コードすること、もしくはコードする可能性を制限する。場合によっては、カセット設計モジュールは、コードされるペプチドの配列サイズを、翻訳された対応する全長タンパク質の50%未満、49%未満、48%未満、47%未満、46%未満、45%未満、45%未満、43%未満、42%未満、41%未満、40%未満、39%未満、38%未満、37%未満、36%未満、35%未満、34%未満、または33%未満であるよう制限することができる。場合によっては、カセット設計モジュールは、単一の連続した配列が、翻訳された対応する全長タンパク質の50%未満であるよう、コードされるペプチドの配列サイズを制限することができるが、複数の配列が、同じ翻訳された対応する全長タンパク質に由来し得、合わせて50%超をコードし得る。例を用いて説明すると、重複T細胞エピトープ配列を含有する単一配列(「フレーム」)が、翻訳された対応する全長タンパク質の50%よりも大きい場合、フレームを複数のフレームに分割して(例えば、f1、f2等)、各フレームが翻訳された対応する全長タンパク質の50%未満となるようにすることができる。カセット設計モジュールはまた、コードされたペプチドの配列サイズを、単一の連続した配列が、翻訳された対応する全長タンパク質の49%未満、48%未満、47%未満、46%未満、45%未満、45%未満、43%未満、42%未満、41%未満、40%未満、39%未満、38%未満、37%未満、36%未満、35%未満、34%未満、または33%未満となるよう制限することができる。同じ遺伝子からの複数のフレームがコードされる場合、複数のフレームは、互いに重複する配列を有することができ、言い換えれば、それぞれが別々に同じ配列をコードすることができる。同じ遺伝子からの複数のフレームがコードされる場合、同じ遺伝子に由来する2つ以上の核酸配列を、第1の核酸配列が、第2の核酸配列の直前またはそれに連結されることのないよう並べることができるが、これは、対応する遺伝子において第1の核酸配列に第2の核酸配列が続く場合であり、それが直後であるか否かは問わない。例えば、同じ遺伝子内に3つのフレームがある場合(アミノ酸位置が増加する順にf1、f2、f3):
- 以下のカセット順序は許容されない:
○ f1の直後にf2
○ f2の直後にf3
○ f1の直後にf3
- 以下のカセット順序は許容される:
○ f3の直後にf2
○ f2の直後にf1
【0375】
XIII.コンピュータの例
本明細書に記載される計算方法のいずれかではコンピュータを使用することができる。当業者は、コンピュータが、異なるアーキテクチャを有し得ることを認識するであろう。コンピュータの例は当業者に公知であり、例えば、米国特許第10,055,540号、米国出願公開第US20200010849A1号、ならびに国際特許出願公開第WO/2018/195357号及び同第WO/2018/208856号にコンピュータが詳述されており、それぞれ、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0376】
XIV.実施例
以下は、本発明を実施するための具体的な実施形態の例である。実施例は、あくまで事例を提供するにすぎず、本発明の範囲を何ら限定するものではない。使用する数字(例えば、量、温度等)に関して正確さを保証するべく試みがなされたが、実験上の一部の誤差及び偏差は当然のことながら許容されるべきである。
【0377】
本発明の実施には、特に明記しない限り、当技術分野の技術の範囲内であるタンパク質化学、生化学、組換えDNA技術及び薬理学の従来方法が使用される。そのような技術は文献に十分な説明がある。例えば、T.E.Creighton,Proteins:Structures and Molecular Properties(W.H.Freeman and Company,1993)、A.L.Lehninger,Biochemistry(Worth Publishers,Inc.,current addition)、Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2nd Edition,1989)、Methods In Enzymology(S.Colowick and N.Kaplan eds.,Academic Press,Inc.)、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition(Easton,Pennsylvania:Mack Publishing Company,1990)、Carey and Sundberg Advanced Organic Chemistry 3rd Ed.(Plenum Press)Vols A and B(1992)を参照のこと。
【0378】
XIV.A.ChAd抗原カセット送達ベクター
一例では、チンパンジーアデノウイルス(ChAdV)を、抗原カセットの送達ベクターになるよう操作した。さらなる例では、全長ChAdV68ベクターをAC_000011.1(特許第US6083716号からの配列2)に基づいて合成し、E1(nt457~3014)配列及びE3(nt27,816~31,332)配列を欠失させた。CMVプロモーター/エンハンサーの制御下にあるレポーター遺伝子を欠失E1配列の代わりに挿入した。HEK293細胞へのこのクローンのトランスフェクションでは、感染性ウイルスを得られなかった。野生型C68ウイルスの配列を確認するため、分離株VR-594をATCCから入手して、継代し、その後、独立して配列決定した(配列番号10)。AC_000011.1配列を野生型ChAdV68ウイルスのATCC VR-594配列(配列番号10)と比較した際、6つのヌクレオチドの相違が同定された。一例では、改良型ChAdV68ベクターをAC_000011.1に基づいて生成し、対応するATCC VR-594ヌクレオチドを5つの位置で置換した(ChAdV68.5WTnt配列番号1)。
【0379】
別の例では、改良型ChAdV68ベクターをAC_000011.1に基づいて生成し、E1(nt577~3403)配列及びE3(nt27,816-31,332)配列を欠失させ、対応するATCC VR-594ヌクレオチドを4つの位置で置換した。CMVプロモーター/エンハンサーの制御下にあるGFPレポーター(ChAdV68.4WTnt.GFP;配列番号11)またはモデルネオアンチゲンカセット(ChAdV68.4WTnt.MAG25mer;配列番号12)を、欠失E1配列の代わりに挿入した。
【0380】
別の例では、改良型ChAdV68ベクターをAC_000011.1に基づいて生成し、E1(nt577~3403)配列及びE3(nt27,125~31,825)配列を欠失させ、対応するATCC VR-594ヌクレオチドを5つの位置で置換した。CMVプロモーター/エンハンサーの制御下にあるGFPレポーター(ChAdV68.5WTnt.GFP;配列番号13)またはモデルネオアンチゲンカセット(ChAdV68.5WTnt.MAG25mer;配列番号2)を、欠失E1配列の代わりに挿入した。
【0381】
別の例では、抗原発現系のための改良型ChAdV68ベクター(「chAd68-空-E4欠失」配列番号29369)をAC_000011.1に基づいて生成し、E1(nt577~3403)配列、E3(nt27,125~31,825)配列、及びE4領域(nt34,916~35,642)配列を欠失させ、対応するATCC VR-594(独立して配列決定された全長VR-594 C68 配列番号10)ヌクレオチドを5つの位置で置換した。対応するATCC VR-594ヌクレオチドが5つの位置で置換された全長ChAdV68 AC_000011.1配列を、「ChAdV68.5WTnt」(配列番号1)と呼ぶ。CMVプロモーター/エンハンサーの制御下にある抗原カセットを、欠失E1配列の代わりに挿入する。
【0382】
関連ベクターを以下に記載する:
- 全長ChAdVC68配列「ChAdV68.5WTnt」(配列番号1);対応するATCC VR-594ヌクレオチドが5つの位置で置換されたAC_000011.1配列、
- ATCC VR-594 C68(配列番号10);独立して配列決定;全長C68、
- ChAdV68.4WTnt.GFP(配列番号11);E1(nt577~3403)配列及びE3(nt27,816-31,332)配列を欠失させたAC_000011.1;対応するATCC VR-594ヌクレオチドを4つの位置で置換;CMVプロモーター/エンハンサーの制御下にあるGFPレポーターを欠失E1の代わりに挿入、
- ChAdV68.4WTnt.MAG25mer(配列番号12);E1(nt577~3403)配列及びE3(nt27,816-31,332)配列を欠失させたAC_000011.1;対応するATCC VR-594ヌクレオチドを4つの位置で置換;CMVプロモーター/エンハンサーの制御下にあるモデルネオアンチゲンカセットを欠失E1の代わりに挿入、
- ChAdV68.5WTnt.GFP(配列番号13);E1(nt577~3403)配列及びE3(nt27,125~31,825)配列を欠失させたAC_000011.1;対応するATCC VR-594ヌクレオチドを5つの位置で置換;CMVプロモーター/エンハンサーの制御下にあるGFPレポーターを欠失E1の代わりに挿入、
- ChAd68-空-E4欠失(配列番号29369):E1(nt577~3403)配列、E3(nt27,125~31,825)配列、及びE4領域(nt34,916~35,642)配列を欠失させ、対応するATCC VR-594(独立して配列決定された全長VR-594 C68 配列番号10)ヌクレオチドを5つの位置で置換したAC_000011.1、
- ChAdV68-GAG(完全長ChAd68-CMV-SIVGag-SV40ポリA;配列番号29371);E1(nt577~3403)配列及びE3(nt27,125~31,825)配列を欠失させたAC_000011.1;対応するATCC VR-594ヌクレオチドを5つの位置で置換;CMVプロモーター/エンハンサーの制御下にある完全長コドン最適化SIVSME543GAGを欠失E1の代わりに挿入。
【0383】
293F細胞におけるアデノウイルス生成
インキュベーターで8%CO2にて293FreeStyle(商標)(ThermoFisher)培地中で増殖させた293F細胞においてChAdV68ウイルス生成を実施した。感染当日、細胞を、98%の生存率で106細胞/mLまで希釈し、1L三角フラスコ(Corning)での生産ランあたり400mLを使用した。目的MOIが3.3超の4mLの三次ウイルス原液を感染ごとに使用した。トリパンブルーで測定した生存率が70%未満になるまで細胞を48~72時間インキュベートした。その後、感染細胞を、遠心分離(最高速度ベンチトップ型遠心機)によって回収して、1×PBSで洗浄し、再度遠心分離にかけた後、20mLの10mM Tris pH7.4に再懸濁させた。細胞ペレットを3回の凍結融解により溶解し、4,300×gで5分間の遠心分離により清澄化した。
【0384】
CsCl遠心分離によるアデノウイルスの精製
ウイルスDNAをCsCl遠心分離により精製した。2回の不連続勾配運転を実施した。1回目は細胞成分からウイルスを精製し、2回目で細胞成分からさらに精密に分離し、感染性粒子から欠陥粒子を分離する。
【0385】
10mLの1.2(92mLの10mM Tris pH8.0に溶解した26.8gのCsCl)CsClをポリアロマーチューブに加えた。その後、8mLの1.4 CsCl(87mLの10mM Tris pH8.0に溶解した53gのCsCl)を、ピペットを使用してチューブ下層に送達して慎重に加えた。清澄化したウイルスを1.2層の上に慎重に重層する。必要に応じて、チューブのバランスをとるために、さらに10mM Trisを加えた。その後、チューブをSW-32Tiローターに置き、10℃で2時間30分遠心分離にかけた。その後、チューブを層流キャビネットに移し、18ゲージ針及び10mLシリンジを使用して、ウイルスバンドを吸引した。混入している宿主細胞のDNA及びタンパク質を取り出さないよう注意した。その後、バンドを10mM Tris pH8.0で少なくとも2回希釈し、上記のように不連続勾配で重層した。遠心ランの実施は前述同様であるが、今回はランを一晩実施した。翌日、欠陥のある粒子バンドを吸引しないよう注意しながらバンドを吸引した。その後、ウイルスを、Slide-a-Lyzer(商標)Cassette(Pierce)を使用して、ARM緩衝液(20mM Tris pH8.0、25mM NaCl、2.5%グリセロール)に対して透析した。これを、緩衝液交換ごとに1時間ずつ、3回実施した。その後、ウイルスを等量分割して-80℃で保存した。
【0386】
アデノウイルスのウイルスアッセイ
VP濃度は、1.1×1012ウイルス粒子(VP)の吸光係数が、OD260nmでの吸光度値1と等しいことに基づくOD260アッセイを使用して実施された。ウイルス溶解バッファー(0.1%SDS、10mM Tris pH7.4、1mM EDTA)にアデノウイルスの2つの希釈液(1:5及び1:10)を作った。両方の希釈液でODを2連で測定し、OD260値×希釈倍率×1.1×1012VPをかけてVP濃度/mLを測定した。
【0387】
ウイルス原液の限界希釈アッセイによって感染単位(IU)力価を計算した。最初にウイルスをDMEM/5%NS/1×PSで100倍に希釈し、その後、10倍希釈を使用して1×10-7まで希釈した。次いで、これらの希釈液を100μLにて、少なくとも1時間前に3e5細胞/ウェルで播種された24ウェルプレートの293A細胞に加えた。これを2連で実施した。プレートを、CO2(5%)インキュベーターで37℃にて48時間インキュベートした。その後、細胞を1×PBSで洗浄してから、100%冷メタノール(-20℃)で固定した。その後、プレートを-20℃で最低20分間インキュベートした。ウェルを1×PBSで洗浄した後、1×PBS/0.1%BSAに室温で1時間ブロッキングした。ウサギ抗Ad抗体(Abcam,Cambridge,MA)をブロッキングバッファーに1:8,000の希釈で加え(ウェルあたり0.25ml)、室温1時間インキュベートした。ウェルを、ウェルあたり0.5mLのPBSで4回洗浄した。1000倍希釈したHRP結合ヤギ抗ウサギ抗体(Bethyl Labs,Montgomery Texas)をウェルごとに加え、洗浄最終ラウンドの前に1時間インキュベートした。PBS洗浄を5回実施し、プレートを、DAB(ジアミノベンジジン四塩酸塩)基質の0.01%H2O2添加Tris緩衝生理食塩水溶液(50mM Tris pH7.5、150mM NaCl中、0.67mg/mLのDAB)を使用して作成した。ウェルは、計数の5分前に作成された。細胞を、視野あたり4~40の染色細胞が得られる希釈を使用して、10倍率対物レンズ下で計数した。使用された視野は、24ウェルプレートで視野あたり625グリッドに相当する0.32mm2のグリッドであった。感染性ウイルス数/mLは、グリッドあたりの染色細胞数に、視野あたりのグリッド数を掛け、希釈倍率10を掛けることにより決定され得る。同様に、GFP発現細胞を用いる場合には、カプシド染色ではなく蛍光を使用してGFP発現ビリオン数/mLを決定することができる。
【0388】
XIV.B.アルファウイルスに基づく抗原カセット送達SAMベクター
抗原発現系のためのRNAアルファウイルス骨格を、自己複製ベネズエラウマ脳炎(VEE)ウイルス(Kinney,1986,Virology 152:400-413)から26Sサブゲノムプロモーターの3’に位置するVEEの構造タンパク質を欠失させることによって生成した(VEE配列7544~11,175を欠失;Kinney et al 1986に基づく番号付け;配列番号6)。自己増幅mRNA(「SAM」)ベクターを生成するために、欠失配列を抗原配列に置き換える。20のモデル抗原を含有する代表的SAMベクターは、「VEE-MAG25mer」(配列番号4)である。MAG25merカセットを有する記載の抗原カセットを特徴とするベクターは、全長SIV GAG等の本明細書に記載されるカセット及び/または全長タンパク質に置き換えることが可能である(下記参照)。
【0389】
完全長コドン最適化SIVSME543GAGヌクレオチド配列;ATGGGAGCCAGGAACAGTGTGCTCTCAGGCAAGAAGGCAGATGAGCTGGAGAAGATCAGGCTGAGACCCAATGGCAAGAAGAAGTACATGCTGAAGCATGTGGTCTGGGCAGCCAATGAGCTGGACAGGTTTGGCCTGGCAGAGTCCCTGCTGGACAACAAGGAGGGCTGCCAGAAGATCCTGTCAGTGCTGGCCCCCCTGGTGCCCACTGGCTCAGAGAACCTGAAGAGCCTCTACAACACAGTGTGTGTGATTTGGTGCATCCATGCAGAGGAGAAGGTGAAGCACACTGAGGAGGCCAAGCAGATTGTGCAGAGGCACCTGGTGGTGGAGACTGGCACAGCTGACAAGATGCCAGCCACCTCCAGGCCCACAGCACCCCCCTCTGGCAGGGGGGGCAACTACCCAGTCCAGCAAGTGGGGGGCAACTATGTGCACCTGCCCCTGAGCCCCAGAACCCTGAATGCCTGGGTCAAGCTGGTGGAGGAGAAGAAGTTTGGAGCAGAGGTGGTGCCTGGCTTCCAGGCCCTGTCAGAGGGATGCACTCCCTATGACATCAACCAGATGCTGAACTGTGTGGGAGAGCACCAGGCAGCAATGCAGATCATCAGGGAGATCATCAATGAGGAGGCTGCTGACTGGGACCTCCAGCACCCCCAGCCTGGACCCCTCCCTGCAGGCCAGCTGAGGGAGCCCAGAGGGAGTGACATAGCAGGCACCACCTCCACAGTGGAGGAGCAGATCCAGTGGATGTACAGGCAGCAGAACCCCATCCCTGTGGGCAACATCTACAGGAGGTGGATCCAGCTGGGCCTCCAGAAGTGTGTCAGGATGTACAACCCAACCAACATCCTGGATGTGAAGCAGGGCCCCAAGGAGCCCTTCCAGTCTTATGTGGACAGGTTCTACAAGAGCCTGAGAGCTGAGCAGACAGACCCTGCTGTGAAGAACTGGATGACCCAGACACTGCTGATCCAGAATGCCAATCCTGACTGCAAGCTGGTGCTGAAGGGGCTGGGGATGAATCCAACCCTGGAGGAGATGCTGACAGCCTGCCAGGGCATTGGGGGACCTGGACAGAAGGCCAGGCTCATGGCAGAGGCTCTCAAGGAGGCCCTCAGACCAGACCAGCTGCCATTTGCTGCTGTGCAGCAGAAGGGCCAGAGGAGGACCATCAAGTGCTGGAACTGTGGCAAGGAGGGCCACTCTGCCAGGCAGTGCAGAGCCCCCAGGAGGCAGGGCTGCTGGGGCTGTGGAAAGACAGGCCATGTGATGGCCAAGTGCCCAGAGAGGCAGGCAGGCTTCCTGGGCTTTGGCCCCTGGGGCAAGAAGCCAAGAAACTTCCCCATGGCCCAGATGCCCCAGGGCCTGACCCCCACAGCCCCCCCAGAGGACCCAGCTGTGGACCTGCTGAAGAACTACATGAAGATGGGCAGGAAGCAGAGGGAGAACAGGGAGAGACCCTACAAGGAGGTGACTGAGGACCTGCTGCACCTGAACTCCCTGTTTGGGGAGGACCAGTGA。
【0390】
完全長SIVSME543GAGアミノ酸配列;MGARNSVLSGKKADELEKIRLRPNGKKKYMLKHVVWAANELDRFGLAESLLDNKEGCQKILSVLAPLVPTGSENLKSLYNTVCVIWCIHAEEKVKHTEEAKQIVQRHLVVETGTADKMPATSRPTAPPSGRGGNYPVQQVGGNYVHLPLSPRTLNAWVKLVEEKKFGAEVVPGFQALSEGCTPYDINQMLNCVGEHQAAMQIIREIINEEAADWDLQHPQPGPLPAGQLREPRGSDIAGTTSTVEEQIQWMYRQQNPIPVGNIYRRWIQLGLQKCVRMYNPTNILDVKQGPKEPFQSYVDRFYKSLRAEQTDPAVKNWMTQTLLIQNANPDCKLVLKGLGMNPTLEEMLTACQGIGGPGQKARLMAEALKEALRPDQLPFAAVQQKGQRRTIKCWNCGKEGHSARQCRAPRRQGCWGCGKTGHVMAKCPERQAGFLGFGPWGKKPRNFPMAQMPQGLTPTAPPEDPAVDLLKNYMKMGRKQRENRERPYKEVTEDLLHLNSLFGEDQ*。
【0391】
RNAを生成するためのインビトロ転写
インビボ研究の場合、SAM RNAを以下のプロトコルに従って、示されているように生成した:
(1)TriLink Biotechnologiesにより精製し、Enzymatic Cap1でキャップ化、または
(2)「AU-SAM」ベクターとして生成した。標準3’ジヌクレオチドGGを欠く改変T7 RNAポリメラーゼプロモーター(TAATACGACTCACTATA)をSAMベクターの5’末端に加えて、インビトロ転写テンプレートDNA(配列番号29370;挿入抗原カセットを用いずに7544~11,175を欠失)を生成した。反応条件は、以下に記載のとおりである。
- 1×T7 RNAポリメラーゼミックス(E2040S)の最終濃度を使用する、1×転写バッファー(40mMトリス-HCL[pH7.9]、10mMジチオトレイトール、2mMスペルミジン、0.002%Triton X-100、及び27mM塩化マグネシウム);0.025mg/mLのDNA転写テンプレート(制限消化による線状化);8mM CleanCap試薬AU(カタログ番号N-7114)ならびに10mMずつのATP、シチジン三リン酸(CTP)、GTP、及びウリジン三リン酸(UTP)。
- 転写反応物を37℃で2時間インキュベートし、最終2 U DNase I(AM2239)/0.001mgのDNA転写テンプレート含有DNase I緩衝液で37℃にて1時間処理した。
- SAMをRNeasy Maxi(QIAGEN,75162)で精製した。
【0392】
共転写による5’キャップ構造の付加の別法として、mRNA2’-O-メチルトランスフェラーゼ及びS-アデノシルメチオニンを含有するワクシニアキャッピング系(NEBカタログ番号M2080)を使用した転写後に、7-メチルグアノシンまたは関連5’キャップ構造を酵素により加えることができる。
【0393】
XV.ChAdVブーストプロトコルはNHPにおけるT細胞応答を生じさせる
免疫原性を実証するため、全長SIV抗原GAGを発現するChAdV68ベクター及びSAMベクターを使用してMamu A01インドアカゲザル(NHP)でワクチン試験を行った。
図1は、ワクチン接種戦略を示し、ChAdV68ワクチン接種(1e12vp/動物)を0週目及び33週目に行い、VEE-アルファウイルスベースのSAMワクチン接種(AU-SAMキャップ)を4週目及び17週目に行う。
【0394】
免疫化
Mamu-A*01インドアカゲザルを、(1)ChAdV68-GAG(配列番号29371)または(2)同じく全長SIV抗原GAGを発現するカセットを含有するよう操作されている300ugのVEE系SAMベクター(配列番号6)で、1×1012ウイルス粒子(注射あたり5×1011ウイルス粒子)にて筋肉内両側により免疫化した。ChAdV68及びSAMのワクチンブーストをプライムワクチン接種後に示されている時点で投与した。
【0395】
免疫モニタリング
プライムワクチン接種後の示されている時期に、Lymphocyte Separation Medium(LSM,MP Biomedicals)及びLeucoSep分離チューブ(Greiner Bio-One)を使用してPBMCを分離し、10%FBS及びペニシリン/ストレプトマイシンを含有するRPMIに再懸濁させた。死細胞及びアポトーシス細胞を除外するためにヨウ化プロピジウム染色を使用して、Attune NxTフローサイトメーター(Thermo Fisher)で細胞を計数した。その後、細胞を、以降の分析用に適切な濃度の生細胞に調整した。試験のそれぞれのサルについて、ELISpotまたはフローサイトメトリーの方法を使用してT細胞応答を測定した。ワクチンでコードされた6つの異なるプールのSIV GAGエピトープ(6つの重複ペプチドプール、それぞれ20ペプチド、15アミノ酸)に対するT細胞応答を、エキソビボ酵素結合免疫スポット(enzyme-linked immunospot:ELISpot)分析を使用してIFN-ガンマ等のサイトカインの誘導を測定することにより、PBMCからモニターした。サルIFNg ELISpotPLUSキット(MABTECH)でELISpot調和ガイドライン{DOI:10.1038/nprot.2015.068}に従ってELISpot分析を実施した。200,000PBMCを、IFNg抗体コート済み96ウェルプレートで、10uMの示されているペプチドと共に16時間インキュベートした。アルカリホスファターゼを使用してスポットを作成した。反応を10分計り、水道水下でプレートを流して反応を停止させた。AID vSpot Reader Spectrumを使用してスポットを計数した。ELISpot分析の場合、飽和度が50%超のウェルは「過多のため計数不能」として記録された。複製ウェルの偏差が10%超の試料は分析から除外された。その後、スポットカウントを、式:スポットカウント+2×(スポットカウント×コンフルエンス%/[100%-コンフルエンス%])を使用してウェルのコンフルエントな状態について補正した。抗原刺激ウェルからペプチド刺激陰性ウェルのスポットカウントを差し引いて陰性バックグラウンドを補正した。最後に、過多のため計数不能とラベル付けされたウェルを補正最大観測値に設定し、100の位まで切り上げた。
【0396】
結果
ワクチン接種後の末梢血単核球(PBMC)での抗原特異的細胞性免疫応答を評価した。
図2に示されるように、ChAdVのプライム後に免疫応答が観察され、それぞれのSAMブースト用量の後にも免疫応答増大が観察された。注目すべきことに、免疫応答増大はまた、33週目に投与されたChAdVブースト用量後にも観察された。具体的には、6匹の霊長類全体の各プールの平均を示す
図2Aに示されるように、33週目と比べて、34週目では4.0倍の平均増加、35週目では6.6倍の平均増加が観察された(33週目の平均SFC:2497;34週目の平均SFC:9930;35週目の平均SFC:16445)。
図2Bは、応答が非常に高い個々の霊長類#1~3の結果を示し(18,000SFC/1e6 PBMCを超える)、それぞれ、33週目と比べて35週目に6.6倍、4.0倍、及び16.6倍の増加である。
図2Cは、応答が高い個々の霊長類#4~6の結果を示し(18,000SFC/1e6 PBMC未満)、霊長類#4及び#6ではそれぞれ、33週目と比べて35週目に5.8倍及び4.7倍の増加、及び霊長類#4では、33週目と比べて34週目に54.8倍の増加である。結果は、ワクチン接種戦略、特にChAdVブースト用量が、強い抗原特異的免疫応答をもたらしたことを示す。
【0397】
XVI.ChAdV中和抗体はNHPにおいて経時的に減少する
免疫原性を実証するため、SIV抗原を発現するベクター使用してMamu A01インドアカゲザル(NHP)でワクチン試験を行った。3群のNHPを、ChAdV68.5WTnt.MAG25mer(配列番号2)により、チェックポイント阻害物質抗CTLA-4抗体イピリムマブ(群5及び群6)と共に、またはチェックポイント阻害物質なし(群4)のいずれかで免疫化した。抗体を、静脈内(群5)または皮下(群6)に投与した。ChAdV68ワクチン接種(1e12 vp/動物)を0週目及び32週目に投与し、その間に、VEE-アルファウイルスベースのSAMワクチン接種の追加投与を行った。
【0398】
中和抗体価
処置後の示されている時点で血清を採取した。NHPの血清を56℃で30分間熱非働化した。DMEMで血清の2倍希釈を1:20から1:10,240まで行った。その後、体積が50uLのChAdV-LacZウイルス(7e6 IU/mL)を、等体積の希釈血清と混合し、37℃で1時間インキュベートした。この混合物の20uLを、7e4 HEK293細胞/mLで播種しておいた96ウェルプレートのウェルごとに加えた。各希釈度で三連ウェルを実施し、細胞を37℃で一晩インキュベートした。翌日、Galacto-Star(商標)(Applied Biosystems)化学発光キットを使用してベータ-ガラクトシダーゼ活性を測定した。希釈血清と混合したウイルスの中和パーセントを、細胞培養培地で希釈した中和されていないウイルスからの発現に対して測定する。中和力価(NT50)は、ウイルスを50%中和する血清の最小希釈度として計算され、これは、非線形回帰曲線フィッティングを使用して計算される。
【0399】
結果
ChAdV中和抗体価は、ワクチン接種プロトコルの期間中に評価され、結果を表2に示す。ワクチン接種(0日目)前、NT50値から、既存のChAdV中和抗体の意味のある存在は示されなかった。ワクチン接種後、試験した全群で、ChAdV中和抗体価は7週目に増加し、24週目にさらに増加した。32週目、ChAdV処置群の中和力価は、IPIを受けていない群では24週目の値の約3分の1に(群4;NT50が2527から846)減少しており、IPI同時投与群では約半分に(群5/6;NT50が1184から601に)減少していた。注目すべきことに、32週目のChAdVブースト投与の5週間後、同じ群で力価がそれぞれ5664及び5096に再び増加した。結果から、ChAdVに指向した中和抗体は、ChAdVプライミング用量後に予測される初期増加に続いて減少することが示される。
【0400】
【0401】
XVII.ChAdVブーストプロトコルではヒト被検者においてT細胞応答を生じさせる
方法
個別化ネオアンチゲンがんワクチン(「GRANITE」)を免疫チェックポイント阻害物質と組み合わせて進行がん患者に投与した。GRANITE異種プライム/ブーストワクチンレジメンには、(1)プライムワクチン接種として使用されるChAdV[GRT-C901]、及び(2)GRT-C901に続くブーストワクチン接種に使用される、LNPに製剤化されたSAM[GRT-R902]が含まれた。ChAdVベクターは、E1(nt577~3403)欠失及びE3(nt27,125~31,825)欠失を伴う配列番号1の配列を有する改変ChAdV68配列に基づく。SAMベクターは、配列番号6に記載の核酸配列を有するRNAアルファウイルス骨格に基づく。GRT-C901及びGRT-R902のどちらも、同じ20の個別化ネオアンチゲン及び2つのユニバーサルCD4 T細胞エピトープ(PADRE及び破傷風トキソイド)を発現した。体細胞変異を検出するための全エクソーム及びトランスクリプトームのシークエンシングには腫瘍を使用し、EDGEアルゴリズムを使用して被験者の個別化ネオアンチゲンカセットを生成するための、HLAタイピング及び生殖細胞系列エクソームバリアントの検出/減算には、血液を使用した。
【0402】
GRANITEレジメンでは、免疫チェックポイント阻害物質、具体的には、SC IVニボルマブと組み合わせて、ワクチンをIM注射で両側に(例えば、それぞれの三角筋に)投与した。
【0403】
GRT-C901は、チンパンジーアデノウイルス68に基づいた、複製欠損型のE1及びE3が欠失したアデノウイルスベクターである。ベクターは、20のネオアンチゲン及び2つのユニバーサルCD4 T細胞エピトープ(PADRE及び破傷風トキソイド)をコードする発現カセットを含有した。GRT-C901を、5×1011vp/mLで溶液に製剤化し、相対する三角筋の2つの両側ワクチン注射部位のそれぞれに1.0mLをIM注射した。評価された被検者についてのGRT-C901カセット(表3A)及び決定されたHLA(表3B)は以下のとおりである。
【0404】
【0405】
【0406】
GRT-R902は、アルファウイルスに由来するSAMベクターである。GRT-R902ベクターは、RNA増幅に必要なウイルスタンパク質ならびに5’及び3’のRNA配列をコードしたが、構造タンパク質はコードしなかった。SAMベクターは、SAMを封入しLNPを形成するために4つの脂質、すなわち、イオン化可能なアミノ脂質、ホスファチジルコリン、コレステロール、及びPEGベースのコート脂質が含まれた、LNPに製剤化された。GRT-R902ベクターは、各患者でGRT-C901に使用されたものと同じネオアンチゲン発現カセットをそれぞれ含有した。GRT-R902を1mg/mLで溶液に製剤化し、相対する三角筋の2つの両側ワクチン注射部位のそれぞれにIM注射した(三角筋が好ましいが、両側の殿筋[背側もしくは腹側]または大腿直筋が使用される場合がある)。ブーストワクチン接種部位は、可能な限りプライムワクチン接種部位の近くにした。注射量は、投与される用量に基づいた。被検者G1及びG3のSAMの用量は30μg、被験者G8では100μg、及び被験者G11では300μgであった。用量の量は、SAMベクターの量を明示的に指す、すなわち、LNP等の他成分を指してはいない。LNP:SAMの比は約24:1であった。したがって、LNPの用量はそれぞれ、720μg、2400μg、または7200μgであった。
【0407】
ニボルマブは、PD-1と、そのリガンドであるPD-L1及びPD-L2との相互作用を遮断するヒトモノクローナルIgG4抗体(配列番号29522及び29523を参照のこと)である。ニボルマブを10mg/mLで溶液に製剤化し、0.2ミクロン~1.2ミクロンの孔径の低タンパク質結合性インラインフィルターを通して、プロトコル指定の用量にてIV注入(480mg)として投与した。IVプッシュまたはボーラス注射としては投与されなかった。ニボルマブ注入の直後に希釈剤でフラッシュし、ラインをきれいにする。イピリムマブを含むかまたは含まない各ワクチン接種(すなわち、GRT-C901またはGRT-R902のそれぞれ)に続いてニボルマブが同じ日に投与された。ニボルマブの用量及び経路は、Food and Drug Administration承認の用量及び経路に基づいた。
【0408】
GRANITE被検者のワクチン接種後の免疫応答を評価した。被験者に対して採血を行い、PBMCを採取した。T細胞応答をIFN-ガンマELISpotにより評価した。再刺激に使用されたペプチドを以下に示す。末梢血単核球(PBMC)を2×105細胞/ウェル(エキソビボ)または105細胞/ウェル(IVS後)で播種し、最小エピトープペプチド(8~11mer)または対照の存在下、抗ヒトインターフェロン-ガンマ抗体でコートしたELISpotプレートで一晩刺激した。加湿5%CO2、37℃のインキュベーターでの20時間のインキュベーション後、細胞を除去しELISpotプレートを標準的プロトコルに従って作成した。データは、106脾細胞あたりのスポット形成細胞(SFC)として報告される。
【0409】
エキソビボIFNガンマELISpot
IFNg産生T細胞の検出を、エキソビボELISpotアッセイ(Janetzki et al.,2005)によって実施した。簡単に言えば、細胞を回収して計数し、4×106細胞/ml(エキソビボPBMC)または2×106細胞/ml(IVS増殖細胞)で培地に再懸濁させ、DMSO(VWR International)、フィトヘマグルチニン-L(PHA-L;Sigma-Aldrich,Natick、MA,USA)、CEFペプチドプール、または同族ペプチドの存在下、抗ヒトIFNg捕捉抗体(Mabtech,Cincinatti,OH,USA)でコートしたELISpot Multiscreenプレート(EMD Millipore)で培養した。5%CO2、37℃の加湿インキュベーターでの18~24時間のインキュベーション後、上清を採取し、細胞をプレートから除去し、抗ヒトIFNg検出抗体(Mabtech)、Vectastainアビジンペルオキシダーゼ複合体(Vector Labs,Burlingame,CA,USA)及びAEC基質(BD Biosciences,San Jose,CA,USA)を使用して、膜に結合したIFNgを検出した。ELISpotプレートを乾燥させ、遮光して保存し、標準化された評価(Janetzki et al.,2015)のためにZellnet Consulting,Inc.(Fort Lee,NJ,USA)に送付した。データは、100万細胞あたりのスポット形成単位(SFU)として示される。
【0410】
ELISpot上清におけるMSD
U-plexアッセイMSD U-PLEXバイオマーカーアッセイ(Meso Scale Discovery Inc.,Rockville,MD,USA)を使用して、エキソビボELISpot上清中での分泌されたIL-2、TNFa、及びグランザイムB(GRZB)の検出を実施した。アッセイを製造者の指示書に従って実施した。被分析物濃度(pg/ml)を、各サイトカインの既知標準の段階希釈を使用して計算した。グラフでのデータ表示の場合、標準曲線の最小範囲を下回る値はゼロとして表した。
【0411】
トリプレックスFluoroSpot
IFNg、IL-2及びグランザイムBを産生するT細胞の検出のために、患者試料のサブセットでマルチプレックスFluoroSpotアッセイを製造者(MABtech)の指示書に従って実施した。簡単に言えば、患者PBMCを融解し、2×106細胞/mlで一晩静置した。翌日、細胞を回収して計数し、播種前に4×106細胞/mlで再懸濁させた。プレコートしたFluoroSpotプレートをPBSで洗浄し、培地でブロッキングしてから患者特異的ペプチドプール及び細胞を加えた(2×105PBMC/ウェル)。5%CO2、37℃の加湿インキュベーターで18~24時間インキュベートした後、抗ヒトIFNg-BAM/抗BAM-490、ビオチン化抗ヒトグランザイムB/ストレプトアビジン-550、及び抗ヒト-IL-2-WASP/抗WASP-650抗体対に続けて、蛍光エンハンサーを使用して、分泌されたIFNg、IL-2及びグランザイムBを検出した。プレートを画像化し、AID iSpotリーダー(Autoimmun Diagnostika)で計数した。データは、100万細胞あたりのスポット形成単位(SFU)として示される。
【0412】
クラスI四量体染色
HLAクラスI四量体を、Flex-T(商標)ビオチン化HLAモノマー(BioLegend、San Diego,CA,USA)またはMBL International,Woburn,MA,USA)から、かかるモノマーに、製造者の指示書に従ってUV交換により標的ペプチドを搭載して生成した。UV交換による標的ペプチド搭載の成功を、ELISA(BioLegend、製造者の指示書に従う)により評価した。別法として、ビオチン化モノマーを自社生成し、標的ペプチドを用いて事前に折り畳みを行った。フルオロフォア結合ストレプトアビジン(BioLegend製PE;eBioscience,San Diego,CA,USA製APC;BV421)を使用してペプチド-HLA(pHLA)モノマーを四量体に組み立てた。生成されたフルオロフォア標識ペプチド-MHC四量体を使用して、PBMCに四量体染色を行い、抗原特異的T細胞の識別に役立てた。患者PBMC試料を融解し、FAC緩衝液(PBS、10%FBS[v/v])で96ウェルV底プレートに再懸濁させた。染色前、試料を50nMダサチニブ(Sigma Aldrich,St.Louis,MO,USA)と共に5%CO2、37℃のインキュベーター内で30分間インキュベートした。その後、目的の標的ペプチドを搭載したHLAクラスIフルオロフォア標識四量体を、それぞれ対応するPBMC試料に直接加えた。同じ試料に複数の四量体を加える必要がある場合には、各四量体が等量のカクテルを作り、次いで混合し、同時に加えた。試料を室温で1時間、暗所にてインキュベートした。インキュベーション後、試料をFACS緩衝液中で洗浄し、精製された抗ヒトHLA-A、B、C抗体、抗ヒトCD8-PerCP-Cy5.5、抗ヒトCCR7-PE-Cy7、抗ヒトCD3-BV421(いずれもBioLegend)、抗ヒトCD45RA-SB702、抗ヒトCD4-APC-eF780(どちらもeBioscience)及びLive/Dead Green(ThermoFisher)を含有する抗体マスターミックスで染色した。試料を混合し、遮光した暗所で4℃にて20分間インキュベートした。試料をFACs緩衝液で1回洗浄し、その後、FACs緩衝液に再懸濁させてから、BD LSRFortessa(商標)フローサイトメーター(BD Biosciences)での取得を行った。
【0413】
フローサイトメトリー解析
FlowJoソフトウェア(FlowJo,LLC,Ashland,OR,USA)を使用して、フローサイトメーターで取得された試料を分析した。ヒト試料のゲーティング戦略は、以下のとおりである:リンパ球(SSC-A対FSC-A)、単一細胞(FSC-H対FSC-A)、生存細胞(FSC-A対LD-AF488)、CD3+細胞(FSC-A対CD3-BV421)、CD8+Tet+(CD8-PerCP-Cy5.5対四量体-PEもしくは四量体-APC、または対四量体-BV421)、メモリー表現型(CD45RA-SB702対CCR7-PE-Cy7)。結果は、陽性細胞集団%として表される(親の頻度)。示されている場合は、バックグラウンドを差し引いたデータとして示される。
【0414】
(表4)再刺激アッセイにおけるGRANITE患者G1のペプチド
【0415】
(表5)再刺激アッセイにおけるGRANITE患者G3のペプチド
【0416】
(表6)再刺激アッセイにおけるGRANITE患者G8のペプチド
【0417】
(表7)再刺激アッセイにおけるGRANITE患者G11のペプチド
【0418】
結果
GRANITE被検者G1及びG3のIFN-ガンマELISpotによりCD8T細胞免疫応答を評価した。
図3に示されるように、被験者G1では、最初にプライミングワクチンとして使用されたChAdVベクター[GRT-C901]によるブースト用量を68週目に投与された後、早くも2週間でCD8T細胞応答の増大が示された。
図3Aは、CD8エピトーププール全体に対する被験者G1の応答を示す。
図3B(試験の全タイムライン)及び
図3C(68週目及び70週目のみ)は、CD8エピトープのミニプールに対する被験者G1の応答を示す。
図4に示されるように、被験者G3でも、最初にプライミングワクチンとして使用されたChAdVベクター[GRT-C901]によるブースト用量を36週目に投与された後、早くも1週間で(37週目)CD8T細胞応答の増大が示された。
図5に示されるように、被験者G8でも、CD8T細胞応答の増大が示され、最初にプライミングワクチンとして使用されたChAdVベクター[GRT-C901]によるブースト用量を36週目に投与された後、29週間まで検出された。
図6に示されるように、被験者G11でも、最初にプライミングワクチンとして使用されたChAdVベクター[GRT-C901]によるブースト用量を27週目に投与された後、早くも3週間で(30週目)CD8T細胞応答の増大が示され、T細胞応答の増大持続は、ChAdVベクターによるブースト後24週間まで続いた。
【0419】
ChAdVベクターによるブーストの有効性を評価するため、免疫細胞の特徴(例えば、機能及び免疫表現型)もまた決定された。
図7に示されるように、ChAdVブーストにより、腫瘍患者での抗原特異的なIFNγ及びグランザイムB CD8T細胞応答が増大した。最小IL-2産生もまた観察され、これは、主にCD8T細胞により誘導される応答と一致する。
【0420】
その後、エフェクターメモリーT細胞集団を評価した。エフェクターメモリーT細胞は、末梢循環及び組織に見られ、細胞傷害性機能を保持しており、再曝露時に病原体/抗原提示細胞に即時に応答がもたらされるよう高い増殖能を有する。
図8A(ブースト前)及び
図8B(ブースト後)に示されるように、ChAdVブーストにより、HLA-B
*44:05拘束性細胞のエフェクターメモリー表現型を有する抗原特異的T細胞頻度が増大した。
図8Cに示されるように、ChAdVブースト(右パネル)では、HLA-A
*02:01拘束性細胞のエフェクターメモリー表現型を有する、抗原特異的T細胞の頻度が増大した。いずれの場合にも、ブーストにより、四量体陽性HLA拘束性抗原特異的T細胞全体のパーセンテージも増加した。したがって、データから、ChAdVブーストが抗原特異的T細胞の増殖を全体的に刺激し、特にエフェクターメモリー表現型を有するT細胞の増殖を刺激したことが実証された。
【0421】
結果は、GRANITE ChAdVベクターGRT-C901が、プライミング用量としての同じベクターの投与後にブースト用量として早くも27週目に投与した場合に、強いCD8T細胞の免疫応答を刺激して、集団全体を増加させること、ならびに細胞の機能及び分化(例えば、活性化、サイトカイン産生、及び免疫表現型)を促進することの両方を刺激し、ChAdVブースト前と比べてT細胞応答を高め、それが少なくとも29週間続くことを示している。したがって、データは、ChAdVベクターが、同種プライム/ブーストワクチン接種戦略において有効であったことを示す。
【0422】
XVIII.HIV治療におけるChAdVブーストプロトコル
HIVである対象は、プライム/ブーストワクチンレジメンで治療され、プライムワクチン接種として使用されるChAdVベースのワクチンならびにブーストワクチン接種に使用されるLNPに製剤化されたSAMベースのワクチン及びChAdVベースのワクチンの組み合わせが含まれる。対象には、現在ART療法を受けているHIV陽性個人が含まれる。ChAdVベクターは、E1(nt577~3403)欠失及びE3(nt27,125~31,825)欠失を伴う配列番号1の配列を有する改変ChAdV68配列、またはE1(nt577~3403)配列、E3(nt27,125~31,825)配列、及びE4領域(nt34,916~35,642)配列が欠失している配列番号29369の配列を有する改変ChAdV68配列に基づく。SAMベクターは、配列番号6に記載の核酸配列を有するRNAアルファウイルス骨格に基づく。ChAdVベース及びSAMベースのワクチンはいずれも、コドンが最適化された全長GAG等のHIV抗原、ならびに2つのユニバーサルCD4 T細胞エピトープ(PADRE及び破傷風トキソイド)をコードする。
【0423】
ワクチンは、IM注射で両側に(例えば、それぞれの三角筋に)投与される。ChAdVベースのワクチンは、5×1011ウイルス粒子の総投与量で投与され、必要に応じて1×1011または1×1012ウイルス粒子にスケーリングされる。SAMベースのワクチンは、300μgのRNAの用量で投与され、必要に応じて100μgのRNAに漸減される。
【0424】
2つのワクチンレジメンを評価する。第1のコホートは、以下のレジメンで治療される:ChAdV-4w-SAM-12w-SAM-12w-ChAdV。第2のコホートは、以下のレジメンで治療される:ChAdV-4w-SAM-6w-SAM-6w-SAM-6w-SAM-6w-ChAdV。
【0425】
対象をモニターし、その結果から、プライム/ブーストワクチンレジメンがHIVの治療に有効であることが示される。
【0426】
XIX.ChAdVブースト療法プロトコル
対象は、プライム/ブーストワクチンレジメンで治療され、プライムワクチン接種及びブーストワクチン接種として使用されるChAdVベースのワクチンが含まれる。プロトコルには、ブーストワクチン接種に使用されるLNPに製剤化されたSAMベースのワクチンとの組み合わせも含まれ得る。ChAdVベクターは、E1(nt577~3403)欠失及びE3(nt27,125~31,825)欠失を伴う配列番号1の配列を有する改変ChAdV68配列、またはE1(nt577~3403)配列、E3(nt27,125~31,825)配列、及びE4領域(nt34,916~35,642)配列が欠失している配列番号29369の配列を有する改変ChAdV68配列に基づく。SAMベクターは、配列番号6に記載の核酸配列を有するRNAアルファウイルス骨格に基づく。ChAdVベースのワクチン、及びSAMベースのワクチン(該当する場合)は、連結されたT細胞エピトープ及び/または疾患、すなわち、対象が、それを有すると診断されている、それを有することが予測される、もしくはそれを有するリスクがある疾患に関連する全長タンパク質、ならびに2つのユニバーサルCD4 T細胞エピトープ(PADRE及び破傷風トキソイド)をコードする抗原カセットをコードする。
【0427】
ワクチンは、IM注射で両側に(例えば、それぞれの三角筋に)投与される。ChAdVベースのワクチンは、5×1011ウイルス粒子の総投与量で投与され、必要に応じて1×1011または1×1012ウイルス粒子にスケーリングされる。SAMベースのワクチンは、300μgのRNAの用量で投与され、例えば、必要に応じて10μg及び/または100μgのRNAまで、必要に応じて漸減される。
【0428】
評価されるワクチンレジメンにはブーストが、2か月目または約2か月目(例えば、8週目または約8週目)に投与される、同種のChAdVベースのプライム/ブーストワクチンレジメンが含まれる。
【0429】
対象をモニターし、その結果から、プライム/ブーストワクチンレジメンが、対象を治療及び/または免疫化するのに有効であることが示される。
【0430】
配列
表A
配列表、配列番号10,755~21,015を指す。明確にするため、所与のHLAアレルペプチドと関連すると予測された、EDGEスコアが0.001超であるHLAアレルを伴う各ペプチドには、固有の配列番号が割り当てられる。上記の配列識別子のそれぞれが、ペプチドのアミノ酸配列、HLAサブタイプ、ペプチドに対応する遺伝子名、ペプチドと関連する変異、及びそのペプチド:HLA対の保有率が0.1%超(「1」と表す)であるのか、または0.1%未満(「0」と表す)であるのかに関連付けられている。
【0431】
表Aは、その全体が、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる2018年12月5月23日出願の米国仮出願第62/675,559号に開示されている。
【0432】
AACR GENIEの結果
配列表、配列番号21,016~29,357を指す。明確にするため、所与のHLAアレルペプチドと関連すると予測された、EDGEスコアが0.001超及び保有率が0.1%超であるHLAアレルを伴う各ペプチドには、固有の配列番号が割り当てられる。上記の配列識別子のそれぞれが、ペプチド、HLAサブタイプ、及びそのペプチドのアミノ酸配列に対応する、遺伝子名及び変異に関連付けられている。
【0433】
追加のMS確認済みネオアンチゲン(配列番号29358~29364)
【0434】
表1.2
配列表、配列番号57~10,754を指す。がん症例の少なくとも0.98%において少なくとも10TPMの量で発現される遺伝子と関連する、予測共通抗原。上記の配列識別子のそれぞれが、遺伝子名、ペプチドのアミノ酸配列、Ensembl ID、及び対応するHLAアレルに関連付けられている。
【0435】
特定の配列
本明細書で言及されるベクター、カセット、及び抗体は以下に記載され、配列番号により言及される。
【0436】
【配列表】
【国際調査報告】