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特表2023-553028熱的に最適化された予燃焼室点火プラグ
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  • 特表-熱的に最適化された予燃焼室点火プラグ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-20
(54)【発明の名称】熱的に最適化された予燃焼室点火プラグ
(51)【国際特許分類】
   H01T 13/36 20060101AFI20231213BHJP
   H01T 21/00 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
H01T13/36
H01T21/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534236
(86)(22)【出願日】2021-12-01
(85)【翻訳文提出日】2023-06-05
(86)【国際出願番号】 EP2021083758
(87)【国際公開番号】W WO2022128473
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】102020215946.7
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】カスケ,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】シュタイテン,トマス
(72)【発明者】
【氏名】ミューラー,ベルント
(72)【発明者】
【氏名】ブランクマイスター,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】イルマズ,ウグール
【テーマコード(参考)】
5G059
【Fターム(参考)】
5G059AA03
5G059CC09
5G059DD02
5G059FF08
5G059GG05
(57)【要約】
【課題】
本発明は、中央電極(2)と、接地電極(3)と、雄ねじ(40)を備えたハウジング(4)と、前記ハウジング(4)に配置され、前記ハウジング(4)とともに予燃焼室(7)を画成しているキャップ(6)と、前記中央電極(2)を前記ハウジング(4)から電気絶縁させている絶縁体(5)とを含んでいる予燃焼室点火プラグ(1)に関する。
【解決手段】
本発明は、中央電極(2)と、接地電極(3)と、雄ねじ(40)を備えたハウジング(4)と、前記ハウジング(4)に配置され、前記ハウジング(4)とともに予燃焼室(7)を画成しているキャップ(6)と、前記中央電極(2)を前記ハウジング(4)から電気絶縁させている絶縁体(5)とを含んでいる予燃焼室点火プラグ(1)に関する。前記ハウジング(4)の前記雄ねじ(40)は前記予燃焼室点火プラグ(1)の軸線方向(X-X)にねじ山長さ(11)を有している。前記ハウジング(4)は前記絶縁体(5)において第1の固定領域(41)と第2の固定領域(42)とで次のように固定され、すなわち第1の締め付け力(F1)が前記第1の固定領域(41)において前記ハウジング(4)から前記絶縁体(5)へ作用し、且つ第2の締め付け力(F2)が前記第2の固定領域(42)において前記ハウジング(4)から前記絶縁体(5)へ作用するように固定され、その際前記第1および第2の締め付け力(F1,F2)は軸線方向(X-X)において互いに逆向きである。軸線方向(X-X)における前記第1の固定領域(41)と前記第2の固定領域(42)との間隔は締め付け長さ(12)を定義している。前記ねじ山長さ(11)と前記締め付け長さ(12)との比率は0.7ないし1.3の範囲内にある。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予燃焼室点火プラグ(1)において、
中央電極(2)と、
接地電極(3)と、
雄ねじ(40)を備えたハウジング(4)と、
前記ハウジング(4)に配置され、前記ハウジング(4)とともに予燃焼室(7)を画成しているキャップ(6)と、
前記中央電極(2)を前記ハウジング(4)から電気絶縁させている絶縁体(5)と、
を含み、
前記ハウジング(4)の前記雄ねじ(40)が前記予燃焼室点火プラグ(1)の軸線方向(X-X)にねじ山長さ(11)を有し、
前記ハウジング(4)が前記絶縁体(5)において第1の固定領域(41)と第2の固定領域(42)とで次のように固定され、すなわち第1の締め付け力(F1)が前記第1の固定領域(41)において前記ハウジング(4)から前記絶縁体(5)へ作用し、且つ第2の締め付け力(F2)が前記第2の固定領域(42)において前記ハウジング(4)から前記絶縁体(5)へ作用するように固定され、その際前記第1および第2の締め付け力(F1,F2)は軸線方向(X-X)において互いに逆向きであり、
軸線方向(X-X)における前記第1の固定領域(41)と前記第2の固定領域(42)との間隔が締め付け長さ(12)を定義し、
前記ねじ山長さ(11)と前記締め付け長さ(12)との比率が0.7ないし1.3の範囲内にある、
予燃焼室点火プラグ(1)。
【請求項2】
前記ねじ山長さ(11)と前記締め付け長さ(12)との前記比率が0.8ないし1.2の範囲内にあり、特に0.8ないし1.0の範囲内にある、請求項1に記載の予燃焼室点火プラグ(1)。
【請求項3】
前記第1の締め付け力(F1)が前記第2の締め付け力(F2)と同じ大きさである、請求項1~2のいずれか一項に記載の予燃焼室点火プラグ(1)。
【請求項4】
前記絶縁体(5)が、前記第1の固定領域(41)に第1の傾斜部(5a)を有し、前記第2の固定領域(42)に第2の傾斜部(5b)を有している、請求項1~3のいずれか一項に記載の予燃焼室点火プラグ(1)。
【請求項5】
前記第1の固定領域(41)が前記第2の固定領域(42)よりも小さな直径部上に配置されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の予燃焼室点火プラグ(1)。
【請求項6】
さらに、前記ハウジング(4)と前記絶縁体(5)との間に、特に前記予燃焼室(7)の近くに配置されている密封要素(9)を含んでいる、請求項1~5のいずれか一項に記載の予燃焼室点火プラグ(1)。
【請求項7】
前記密封要素(9)が、半径方向内側へ向けられているフランジ(44)の、燃焼室とは逆の側に配置されている、請求項6に記載の予燃焼室点火プラグ(1)。
【請求項8】
前記密封要素(9)が前記第1の固定領域(41)に配置されている、請求項6または7に記載の予燃焼室点火プラグ(1)。
【請求項9】
前記第1の固定領域(41)が、軸線方向(X-X)において、前記ねじ山長さ(11)の、前記予燃焼室(7)を起点に位置している第1の半部分(11a)内にある、請求項1~8のいずれか一項に記載の予燃焼室点火プラグ(1)。
【請求項10】
前記ねじ山長さ(11)は、前記ハウジング(4)の、前記キャップ(6)が前記ハウジングに固定されている第1の端部(4a)から、前記ハウジング(4)の当接面(10)まで達しており、前記当接面は外部構成部材への当接のために設置されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の予燃焼室点火プラグ(1)。
【請求項11】
前記フランジ(44)の当接面が、前記予燃焼室点火プラグの、前記燃焼室とは逆の側の端部の方向に傾斜している、請求項1~10のいずれか一項に記載の予燃焼室点火プラグ(1)。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の予燃焼室点火プラグ(1)を含んでいる内燃機関。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動中の熱的損傷のリスクを著しく低減させた、頑丈で熱的に最適化された予燃焼室点火プラグに関するものである。さらに、本発明はこの種の予燃焼室点火プラグを備えた内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
予燃焼室点火プラグは、従来技術から種々の構成において知られている。予燃焼室点火プラグは、ガス状媒体で作動する内燃機関で使用されることが多い。この種の予燃焼室点火プラグは通常予燃焼室を有し、この予燃焼室内に中央電極と接地電極とが配置されている。予燃焼室は、キャップとハウジングの一部分とによって画成されている。この場合、キャップおよび/または電極において過大な温度になると、望ましくない、コントロール不能なグロー式点火が発生することがある。これは、一方では摩耗が増大するので望ましくなく、他方ではこれによって内燃機関のより有害な排気ガスが発生することがある。最悪の場合には、内燃機関が本質的な損傷を蒙ることがある。それ故、予燃焼室点火プラグにおいては除熱を改善することがどうしても必要である。
【発明の概要】
【0003】
これに対し、請求項1の構成要件を備えた本発明による予燃焼室点火プラグには、特に予燃焼室の領域での過大な温度を回避できるという利点がある。その際、特に電極温度を低下させることができ、その結果予燃焼室点火プラグの電極での摩耗が低減されるので高寿命が得られる。しかも、温度を低下させることにより、電極に対する材料を選定する際により大きな自由度が得られ、たとえば熱伝導性がより小さな材料を選択でき、これによって電極に対するコストを著しく低減させることができる。さらに、予燃焼室点火プラグは寿命全体にわたって改善された内部密封性を有する。また、本発明によれば、不適切な操作に対し、たとえば過大なトルクで予燃焼室点火プラグをねじ込んで、予燃焼室点火プラグの密封機能を低下させ、または、完全に阻害させ、その結果場合によってはガスが燃焼室から予燃焼室点火プラグの非密封領域を介して大気中へ到達することがあるような操作に対し、より高い堅牢性が得られる。これは、本発明によれば、予燃焼室点火プラグが、中央電極および接地電極と、雄ねじを備えたハウジングとを有していることによって達成される。さらにキャップが設けられ、キャップはハウジングに配置され、ハウジングの一部分とともに予燃焼室を画成している。予燃焼室点火プラグは、さらに、中央電極をハウジングから電気絶縁させる絶縁体を含んでいる。その際ハウジングは、軸線方向への延在部を備えたねじ山を有し、第1および第2の固定領域を介して絶縁体に固定されている。その際、第1および第2の固定領域での固定は、第1の締め付け力が第1の固定領域においてハウジングから絶縁体へ作用し、且つ第2の締め付け力が第2の固定領域においてハウジングから絶縁体へ作用するように行われている。その際、両締め付け力は予燃焼室点火プラグの軸線方向において互いに逆向きである。軸線方向における第1の固定領域と第2の固定領域との間隔は、締め付け長さを定義している。したがって、互いに逆向きの両プレストレス力により、絶縁体におけるハウジングのプレストレスが達成される。さらに、ねじ山長さと締め付け長さとの比率は、この比率が0.7ないし1.3の範囲内にあるように選定されている。ハウジングのプレストレスとの関連でねじ山長さと締め付け長さとをこのように選定することにより、広範な温度範囲にわたって改善された密封を達成でき、その結果予燃焼室点火プラグの密封性に対する最大級の要求をも満たすことができる。さらに、本発明に従ってねじ山長さと締め付け長さとを選定することによって得られる固定領域の位置により、予燃焼室点火プラグの内側密封要素が燃焼室から可能な限り離れて、より低温のシリンダヘッドの領域にあることを保証でき、したがって予燃焼室点火プラグの除熱にとって特に有利な条件が支配的であることを保証できる。これにより、予燃焼室点火プラグの構成部材、特に電極の熱的損傷を回避することができる。また、本発明に従ってねじ山長さと締め付け長さとを選定することは、予燃焼室点火プラグの寿命にわたってハウジングでのプレストレスの維持を支援する。これにより、予燃焼室点火プラグの寿命にわたって改善された密封作用を維持することができる。
【0004】
従属項は、本発明の有利な更なる構成を示している。
【0005】
予燃焼室点火プラグの更なる改善は、好ましくはねじ山長さと締め付け長さとの比率が0.8ないし1.2の範囲内にあれば達成される。さらに有利には、ねじ山長さと締め付け長さとの比率は0.8ないし1の範囲内にある。
【0006】
ハウジングに対する可能な限り均一なプレストレスを達成するため、好ましくは第1の締め付け力は第2の締め付け力と同じ大きさである。これによって、ハウジングの均一なプレストレスが達成される。
【0007】
さらに有利には、予燃焼室点火プラグは第1および第2の固定領域にそれぞれ傾斜部を有し、すなわち予燃焼室点火プラグの中心軸線に対し傾斜して配置される面を有している。これによって、第1および第2の固定領域において両プレストレス力の優れた調整能力を達成できる。その際、特に有利には、予燃焼室点火プラグの、燃焼室とは逆の側にある第2の固定領域は、フランジング加工により絶縁体に形成される。さらに、有利には、第1および第2の固定領域は異なる直径部上に配置されている。その際、特に有利には、第2の固定領域は第1の固定領域よりも大きな直径部上に配置されている。これにより、ハウジングの、予燃焼室へ向けられる面積が削減され、その結果ハウジング内への熱の侵入がより少なくなる。
【0008】
さらに、有利には、予燃焼室点火プラグは、ハウジングと絶縁体との間に密封要素を含んでいる。密封要素は、好ましくはシールディスクである。その際、特に有利には、密封要素は第1の固定領域に配置されている。第1の固定領域にプレストレス力を作用させることにより、密封要素は好ましくは変形し、特に有利には塑性変形する。その際、特に有利には、密封要素は、ハウジングに設けた半径方向内側へ向けられているフランジの、燃焼室とは逆の側に配置され、その結果高温度および特に熱いガスに対する保護が与えられている。
【0009】
好ましくは、密封要素は第1の固定領域に配置されている。これにより、ハウジングを絶縁体に固定する際に密封要素も弾性変形することができて、ハウジングと絶縁体との間の隙間を密封することができる。本発明の更なる有利な実施形態によれば、第1の固定領域は、軸線方向において、ねじ山長さの、予燃焼室を起点に位置している第1の半部分内にある。
【0010】
第1の固定領域は、好ましくは、ハウジングの内周に配置されている。第2の固定領域は、好ましくはハウジングの、予燃焼室とは逆の側の端部に配置されている。
【0011】
第1の固定領域は、好ましくは、ハウジングの内周に形成されている環状隆起部によって設けられている。
【0012】
さらに有利には、ねじ山長さは、キャップとハウジングとの間の固定領域から、すなわちハウジングの燃焼室側端部から、ハウジングの当接面まで達している。当接面は、外部構成部材への当接のために設置されている。当接面は、好ましくは、予燃焼室点火プラグの中心軸線に対し垂直である。その際当接面は、たとえば、シリンダヘッドに直接またはたとえばパッキンリング等の配置によって間接に、当接するために設置されている。
【0013】
予燃焼室点火プラグは、好ましくは、内燃機関で使用するために設置されている。
【0014】
本発明は、さらに、本発明による予燃焼室点火プラグを備えた内燃機関、特に移動式内燃機関に関する。移動式内燃機関は、好ましくは、車両内で使用される。
【0015】
特に、モータースポーツでの予燃焼室点火プラグの使用も企図されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
次に、本発明の有利な一実施形態を、添付の図面を参照して詳細に説明する。図面において:
【0017】
図1】本発明の有利な一実施形態による予燃焼室点火プラグを一部分断面で示した概略図である。
図2図1の予燃焼室点火プラグの部分断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、図1および図2を参照して、本発明の第1実施形態による予燃焼室点火プラグ1を詳細に説明する。
【0019】
予燃焼室点火プラグ1は、中央電極2と接地電極3とを含んでいる。中央電極2には貴金属ピン20が配置されている。なお、接地電極3にも貴金属ピンが配置されていてもよいことを付け加えておく。
【0020】
予燃焼室点火プラグ1は、さらに、特に金属材料から成るハウジング4と、絶縁体5とを含んでいる。絶縁体5は、中央電極2をハウジング4から電気絶縁するために設置されている。
【0021】
ハウジング4には、さらに雄ねじ40が設けられている。雄ねじ40はねじ山長さ11を有し、ねじ山長さは、内燃機関の燃焼室の方向に向けられている第1の端部4aから、ハウジング4に設けた当接面10まで延びている(図2を参照)。当接面10は、予燃焼室点火プラグの中心軸線X-Xに対し垂直である。雄ねじの損傷を回避するため、雄ねじ40と当接面10との間には、周回するように延びる溝10aが設けられている。
【0022】
さらに、予燃焼室点火プラグ1はキャップ6を含んでいる(図1を参照)。キャップ6内には複数のキャップ穴60が形成されて、一方では予燃焼室7内でのガス交換を可能にし、他方では混合気の主点火のために内燃機関の燃焼室内へトーチ火炎流を予燃焼室7から噴出させる。その際、予燃焼室7はキャップ6とハウジング4の複数の部分とによって画成される。なお、中央電極2と接地電極3とは予燃焼室7内に配置されている。
【0023】
特に図2から見て取れるように、ハウジング4は第1の固定領域41および第2の固定領域42において絶縁体5に固定されている。その際、ハウジング4の固定は、第1の締め付け力F1が第1の固定領域41においてハウジング4から絶縁体5へ作用し、第2の締め付け力F2が第2の固定領域42においてハウジング4から絶縁体5へ作用するように行われている。その場合、両締め付け力F1、F2は予燃焼室点火プラグ1の軸線方向X-Xにおいて互いに逆向きである。両締め付け力F1、F2は、好ましくは大きさが等しい。
【0024】
さらに、第1の固定領域41には第1の傾斜部5aが絶縁体に設けられ、第2の固定領域42には第2の傾斜部5bが設けられている。図2から見て取れるように、これら傾斜部は互いに対向して形成され、好ましくは45゜の角度で形成されている。
【0025】
このようにして、両締め付け力F1、F2により絶縁体5におけるハウジング4のプレストレスが達成され、これによってハウジング4は半径方向外側へ拡がる傾向にある。これにより、予燃焼室点火プラグ1の組み立て状態では、予燃焼室点火プラグがシリンダヘッドにねじ込まれていれば、予燃焼室点火プラグ1の外周とシリンダヘッドとの間での改善された密封が達成される。さらに、ハウジングの堅いばね特性によって、短い締め付け長さで大きな面圧がハウジング4と絶縁体5との間に配置されている密封要素9に作用する。その際密封要素9は、ハウジング4の、燃焼室とは逆の側に配置されており、半径方向内側へ向けられているフランジ44によって非常に熱いガスから保護されている。
【0026】
さらに、第1の固定領域41と第2の固定領域42との間の間隔はハウジングの締め付け長さ12を定義している。したがって、プレストレスはハウジングの締め付け長さ12の領域に発生する。また、このときねじ山長さ11と締め付け長さ12との比率Vは0.7ないし1.3の範囲内である。特に有利には、ねじ山長さ11と締め付け長さ12との比率は0.8ないし1.2の範囲内であり、さらに有利には0.8ないし1の範囲内である。この場合、ねじ山長さ11と締め付け長さ12との比率が1よりも小さいのが、すなわちねじ山長さ11が締め付け長さ12よりも短いのがさらに有利であり、この場合下限はほぼ0.7の値である。
【0027】
第1の固定領域41は第1の直径部D1上に配置され、第2の固定領域42は第2の直径部D2上に配置されている。その際、第1の直径部D1は第2の直径部D2よりも小さい。
【0028】
したがって、ねじ山長さ11および締め付け長さ12の選定の処置と、ハウジング4にプレストレスを設ける処置とをこのように組み合わせることにより、予燃焼室点火プラグ1の改善された堅牢性、特に密封性を達成できる。さらに、ねじ山長さ11および締め付け長さ12の巧みな選定は、作動中の予燃焼室点火プラグ1の明らかに改善された除熱を可能にし、その結果適度な電極温度のために高寿命が可能である。
【0029】
電極での温度が従来の予燃焼室点火プラグに比べて著しく低下されているため、電極に対する材料選定の際により大きな自由度が得られ、その結果電極に対するコストを低減させることが可能である。さらに、ハウジング4と絶縁体5との間の第1および第2の固定領域にプレストレスを設けることは、寿命全体にわたって予燃焼室点火プラグ1の内部密封性の改善が達成されることをもたらす。さらに、ねじ山長さ11と締め付け長さ12との長さ選定は、組み立てミスに、たとえば予燃焼室点火プラグ1を過大なトルクで締める際に、良い影響を与える。というのは、巧みな長さ選定によって、締めるトルクが過大な場合の予燃焼室点火プラグ1の損傷を阻止できるからである。
【0030】
たとえば、次の表に記載したように、雄ねじ40のねじ山径に依存して、締め付け長さに対するねじ山長さの特に有利な比率Vを得ることができる。
【0031】
【0032】
このようにして、予燃焼室点火プラグ1における本発明による処置により、予燃焼室点火プラグ1の構成部材において、特に電極において、著しく改善される寿命および作動中の低下される温度を達成することができる。よって、本発明による予燃焼室点火プラグ1は、特に固定式分野または移動式分野およびモータースポーツの分野での内燃機関において適している。
【符号の説明】
【0033】
1 予燃焼室点火プラグ
2 中央電極
3 接地電極
4 ハウジング
4a 端部
5 絶縁体
5a 絶縁体の第1の傾斜部
5b 絶縁体の第2の傾斜部
6 キャップ
7 予燃焼室
9 密封要素
10 当接面
11 雄ねじのねじ山長さ
11a 雄ねじのねじ山長さの第1の半部分
12 締め付け長さ
40 雄ねじ
41 第1の固定領域
42 第2の固定領域
44 フランジ
F1 第1の締め付け力
F2 第2の締め付け力
X-X 軸線方向
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2023-06-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予燃焼室点火プラグ(1)において、
中央電極(2)と、
接地電極(3)と、
雄ねじ(40)を備えたハウジング(4)と、
前記ハウジング(4)に配置され、前記ハウジング(4)とともに予燃焼室(7)を画成しているキャップ(6)と、
前記中央電極(2)を前記ハウジング(4)から電気絶縁させている絶縁体(5)と、
を含み、
前記ハウジング(4)の前記雄ねじ(40)が前記予燃焼室点火プラグ(1)の軸線方向(X-X)にねじ山長さ(11)を有し、
前記ハウジング(4)が前記絶縁体(5)において第1の固定領域(41)と第2の固定領域(42)とで次のように固定され、すなわち第1の締め付け力(F1)が前記第1の固定領域(41)において前記ハウジング(4)から前記絶縁体(5)へ作用し、且つ第2の締め付け力(F2)が前記第2の固定領域(42)において前記ハウジング(4)から前記絶縁体(5)へ作用するように固定され、その際前記第1および第2の締め付け力(F1,F2)は軸線方向(X-X)において互いに逆向きであり、
軸線方向(X-X)における前記第1の固定領域(41)と前記第2の固定領域(42)との間隔が締め付け長さ(12)を定義し、
前記ねじ山長さ(11)と前記締め付け長さ(12)との比率が0.7ないし1.3の範囲内にある、
予燃焼室点火プラグ(1)。
【請求項2】
前記ねじ山長さ(11)と前記締め付け長さ(12)との前記比率が0.8ないし1.2の範囲内にある、請求項1に記載の予燃焼室点火プラグ(1)。
【請求項3】
前記ねじ山長さ(11)と前記締め付け長さ(12)との前記比率が0.8ないし1.0の範囲内にある、請求項1または2に記載の予燃焼室点火プラグ(1)。
【請求項4】
前記第1の締め付け力(F1)が前記第2の締め付け力(F2)と同じ大きさである、請求項1~のいずれか一項に記載の予燃焼室点火プラグ(1)。
【請求項5】
前記絶縁体(5)が、前記第1の固定領域(41)に第1の傾斜部(5a)を有し、前記第2の固定領域(42)に第2の傾斜部(5b)を有している、請求項1~のいずれか一項に記載の予燃焼室点火プラグ(1)。
【請求項6】
前記第1の固定領域(41)が前記第2の固定領域(42)よりも小さな直径部上に配置されている、請求項1~のいずれか一項に記載の予燃焼室点火プラグ(1)。
【請求項7】
さらに、前記ハウジング(4)と前記絶縁体(5)との間に、密封要素(9)を含んでいる、請求項1~のいずれか一項に記載の予燃焼室点火プラグ(1)。
【請求項8】
さらに、前記ハウジング(4)と前記絶縁体(5)との間に、前記予燃焼室(7)の近くに配置されている密封要素(9)を含んでいる、請求項1~7のいずれか一項に記載の予燃焼室点火プラグ(1)。
【請求項9】
前記密封要素(9)が、半径方向内側へ向けられているフランジ(44)の、燃焼室とは逆の側に配置されている、請求項7または8に記載の予燃焼室点火プラグ(1)。
【請求項10】
前記密封要素(9)が前記第1の固定領域(41)に配置されている、請求項7~9のいずれか一項に記載の予燃焼室点火プラグ(1)。
【請求項11】
前記第1の固定領域(41)が、軸線方向(X-X)において、前記ねじ山長さ(11)の、前記予燃焼室(7)を起点に位置している第1の半部分(11a)内にある、請求項1~10のいずれか一項に記載の予燃焼室点火プラグ(1)。
【請求項12】
前記ねじ山長さ(11)は、前記ハウジング(4)の、前記キャップ(6)が前記ハウジングに固定されている第1の端部(4a)から、前記ハウジング(4)の当接面(10)まで達しており、前記当接面は外部構成部材への当接のために設置されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の予燃焼室点火プラグ(1)。
【請求項13】
前記フランジ(44)の当接面が、前記予燃焼室点火プラグの、前記燃焼室とは逆の側の端部の方向に傾斜している、請求項に記載の予燃焼室点火プラグ(1)。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の予燃焼室点火プラグ(1)を含んでいる内燃機関。
【国際調査報告】