(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-20
(54)【発明の名称】静電ナノ粒子およびその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 47/69 20170101AFI20231213BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231213BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20231213BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20231213BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20231213BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231213BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20231213BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20231213BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20231213BHJP
C07K 17/06 20060101ALI20231213BHJP
C12N 15/88 20060101ALI20231213BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20231213BHJP
A61K 31/713 20060101ALN20231213BHJP
C07K 16/30 20060101ALN20231213BHJP
【FI】
A61K47/69
A61P35/00
A61K48/00
A61K31/7088
A61K9/16
A61K39/395 T
A61K39/395 L
A61K47/42
C07K16/00 ZNA
C07K16/46
C07K17/06
C12N15/88 Z
C12N15/113 110Z
A61K31/713
C07K16/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534305
(86)(22)【出願日】2021-12-02
(85)【翻訳文提出日】2023-07-12
(86)【国際出願番号】 EP2021083975
(87)【国際公開番号】W WO2022117731
(87)【国際公開日】2022-06-09
(32)【優先日】2020-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523207261
【氏名又は名称】バウマー セバスチャン
(71)【出願人】
【識別番号】523207272
【氏名又は名称】バウマー ニコル
(71)【出願人】
【識別番号】523207283
【氏名又は名称】ベルデル ウォルフガング
(71)【出願人】
【識別番号】523207294
【氏名又は名称】レンツ ゲオルク
(71)【出願人】
【識別番号】523207308
【氏名又は名称】ウィットマン リサ
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】バウマー セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】バウマー ニコル
(72)【発明者】
【氏名】ベルデル ウォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】レンツ ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】ウィットマン リサ
(72)【発明者】
【氏名】ファウスト アンドレアス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA16
4C076AA22
4C076AA31
4C076AA95
4C076BB11
4C076BB14
4C076BB25
4C076BB31
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4C086MA65
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4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA05
4H045BA40
4H045BA54
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA50
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、ナノ粒子を生成する方法に関しており、(c)抗体を、第1のコンジュゲート(A)を含む組成物と接触させる工程であって、第1のコンジュゲートが、二官能性リンカーにコンジュゲートされている陽性荷電ポリペプチドを含み、該組成物が、コンジュゲートされていない二官能性リンカーを本質的に含まないことを特徴とし、それによって、第2のコンジュゲート(B)が得られ、第2のコンジュゲートが、陽性荷電ポリペプチドと二官能性リンカーと抗体とを含む、工程;および(d)第2のコンジュゲート(B)と陽性荷電ポリペプチドと陰性荷電分子とを接触させる工程であって、それによって、ナノ粒子を形成させる、工程を含む。本発明は、本発明の方法によって得られるナノ粒子にも関し、(a)陽性荷電ポリペプチドと;(b)陽性荷電ポリペプチドにコンジュゲートされている抗体を含む、第2のコンジュゲート(B)と;(c)1つまたは複数の陰性荷電分子とを含むナノ粒子にも関する。本発明は、本発明のナノ粒子を含む組成物、および治療における使用のための本発明のナノ粒子または組成物にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(c)抗体を、第1のコンジュゲート(A)を含む組成物と接触させる工程であって、第1のコンジュゲートが、二官能性リンカーにコンジュゲートされている陽性荷電ポリペプチドを含み、該組成物が、コンジュゲートされていない二官能性リンカーを本質的に含まないことを特徴とし、それによって、第2のコンジュゲート(B)が得られ、第2のコンジュゲートが、陽性荷電ポリペプチドと二官能性リンカーと抗体とを含む、工程;および
(d)第2のコンジュゲート(B)と陽性荷電ポリペプチドと陰性荷電分子とを接触させる工程であって、それによって、ナノ粒子を形成させる、工程
を含む、ナノ粒子を生成する方法。
【請求項2】
工程(c)の前に、
(a)陽性荷電ポリペプチドを二官能性リンカーにコンジュゲートする工程;
(b)コンジュゲートされていない二官能性リンカーを除去する工程
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程(c)において、第1のコンジュゲート(A)と前記抗体とのモル比が少なくとも約10:1である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
工程(d)において、陽性荷電ポリペプチドと第2のコンジュゲート(B)とのモル比が少なくとも約10:1である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
前記抗体が細胞表面分子に特異的である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
陰性荷電分子が核酸である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
陽性荷電ポリペプチドがプロタミンまたはヒストンである、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
前記請求項のいずれか一項記載の方法によって得られる、ナノ粒子。
【請求項9】
(a)陽性荷電ポリペプチドと;
(b)陽性荷電ポリペプチドにコンジュゲートされている抗体を含む、第2のコンジュゲート(B)と;
(c)1つまたは複数の陰性荷電分子と
を含むナノ粒子。
【請求項10】
第2のコンジュゲートが前記ナノ粒子の外側部分に濃縮されている、請求項8または9記載のナノ粒子。
【請求項11】
1つまたは複数の陰性荷電分子が前記ナノ粒子の内側部分に濃縮されている、請求項8~10のいずれか一項記載のナノ粒子。
【請求項12】
約0.05μm~約10μmの平均直径を有する、請求項8~11のいずれか一項記載のナノ粒子。
【請求項13】
請求項8~12のいずれか一項記載のナノ粒子を含む、組成物。
【請求項14】
治療における使用のための、請求項8~12のいずれか一項記載のナノ粒子または請求項13記載の組成物。
【請求項15】
請求項8~12のいずれか一項記載のナノ粒子または請求項13記載の組成物を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年12月2日出願のルクセンブルク特許出願第102272号、2021年5月21日出願の欧州特許出願第21175260.5号、および2021年10月29日出願の欧州特許出願第21205482.9号の優先権の恩典を主張するものであり、それらの内容は、実際上、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、(c)抗体を、第1のコンジュゲート(A)を含む組成物と接触させる工程であって、第1のコンジュゲートが、二官能性リンカーにコンジュゲートされている陽性荷電ポリペプチドを含み、該組成物が、コンジュゲートされていない二官能性リンカーを本質的に含まないことを特徴とし、それによって、第2のコンジュゲート(B)が得られ、第2のコンジュゲートが、陽性荷電ポリペプチドと二官能性リンカーと抗体とを含む、工程;および(d)第2のコンジュゲート(B)と陽性荷電ポリペプチドと陰性荷電分子とを接触させる工程であって、それによって、ナノ粒子を形成させる、工程を含む、ナノ粒子を生成する方法に関する。本発明は、本発明の方法によって得られるナノ粒子にも関し、(a)陽性荷電ポリペプチドと;(b)陽性荷電ポリペプチドにコンジュゲートされている抗体を含む、第2のコンジュゲート(B)と;(c)1つまたは複数の陰性荷電分子とを含むナノ粒子にも関する。本発明は、本発明のナノ粒子を含む組成物、および治療における使用のための本発明のナノ粒子または組成物にも関する。
【背景技術】
【0003】
背景
RNA阻害(RNAi)の原理は、医学的適用の高度の見込みを立てられ、2006年にノーベル賞を受賞した。この方法は、遺伝子特異的なsiRNAオリゴヌクレオチドの選択および合成によって、事実上任意の遺伝子のmRNAの不活性化およびその後の発現のサイレンシングによる高い効率を示す。この方法は、分子生物学に革命を起こしたが、治療の現場へのこの原理の翻訳は、多数の特別な問題のため、困難であることが判明した。
【0004】
siRNAオリゴは、ヌクレアーゼによって攻撃され、免疫原性および腎クリアランスの上昇を示すため、「裸のsiRNA」の半減期および循環時間は、しばしば、見込みをはるかに下回る。従って、siRNAは、ナノ粒子またはカプセルなどの安定化剤と複合体化されるようになった。これらの安定化剤によって、siRNAの循環時間および生物学的利用率は上昇したが、(a)特定の表面分子を有する細胞を標的とし、これらの細胞へsiRNAを送達し、かつ(b)アニオン性の細胞膜を介したアニオン性のsiRNAの標的特異的移行を可能にする、標的細胞決定構造が依然として欠如していた。
【0005】
神経障害、ウイルス感染、およびがんの処置のため、多数の第I~III相臨床試験が実施されてきたが、現在までにFDAによって認可されたsiRNAは、1つのみである。例えば、パチシラン(商品名Onpattro)は、遺伝性トランスサイレチン型アミロイドーシスを有する人々における多発ニューロパチーの処置のための薬物療法である。遺伝性トランスサイレチン型アミロイドーシスは、世界中で50,000人が罹患していると見積もられている致死性の希少疾患である。
【0006】
腫瘍学的障害の処置のためのモジュール型治療アプローチを開発するため、本発明者らは、がん細胞特異的表面分子に対する抗体にsiRNAをカップリングするための、かつ特定のカチオン性ペプチド、プロタミンによって、結合時に内部移行を引き起こす系を開発した。これは、siRNAを意図されたがん細胞へ送達し、受容体などのそれぞれの表面分子に結合し、受容体依存的に内部移行する。
【0007】
プロタミンは、精子頭部に圧縮されたゲノムDNAの完全なセットを輸送するカチオン性の核酸結合ペプチドである。これは、核酸と複合体化されることができ、細胞膜を介した核酸の転移を容易にすることができるため、トランスフェクション、標的特異的送達、および遺伝子治療における適用を研究するために、多くの研究者の関心を引いた(Choi et al.,2009;Chono et al.,2008;Hansen et al.,1979;He et al.,2014;Liu,B.,2007)。プロタミンは、核酸送達媒体として試験され、様々な細胞決定ターゲティング部分に接続された。2005年に、Songら(Song et al.,2005a)は、ヒト免疫不全ウイルスHIV gp 160エンベロープタンパク質に対するFab断片(F105)と短縮型プロタミンペプチドとを接続した遺伝学的融合タンパク質を提示した。その融合タンパク質は、HIV gagタンパク質を標的とするsiRNAと複合体化され、そのコンジュゲートは、トランスフェクションが困難な、HIVに感染したT細胞およびHIVエンベロープによってトランスフェクトされたメラノーマ細胞を標的とすることができた。siRNA-F105担体コンジュゲートは、感染T細胞においてHIV複製を阻害した。ターゲティング原理を検証するため、プロタミンに融合したErb2単鎖抗体によってErbB2を標的とするため、同じ戦略を適用した。これによって、プロタミンと細胞決定基との遺伝学的融合は、多数の出版物において追随されたが、この概念は、臨床へ成功裏につなげられることはなかった。
【0008】
以前の研究において、本願の発明者は、Baumer,N.et al.,2016 Nat.Protoc.11,22-36,Baumer,N.et al.,2018 PLoS One 13,e0200163;およびBaumer,S.et al.,2015 Clin Cancer Res 21,1383-94に記載された化学的コンジュゲーションスキームに従って、二重特異性クロスリンカー、スルホ-SMCCによって、抗EGFRモノクローナル抗体(mAB)セツキシマブを、カチオン性ペプチド、プロタミンにコンジュゲートした。得られたIgG-プロタミンコンジュゲート分子は、EGF受容体を内部移行させることができ、siRNAを標的細胞へ送達することができた。
【0009】
アニオン性分子を標的細胞へ送達するための、さらなる、好ましくは、改善された手段および方法を提供することが、本発明の目的である。
【発明の概要】
【0010】
概要
本発明は、
(c)抗体を、第1のコンジュゲート(A)を含む組成物と接触させる工程であって、第1のコンジュゲートが、二官能性リンカーにコンジュゲートされている陽性荷電ポリペプチドを含み、該組成物が、コンジュゲートされていない二官能性リンカーを本質的に含まないことを特徴とし、それによって、第2のコンジュゲート(B)が得られ、第2のコンジュゲートが、陽性荷電ポリペプチドと二官能性リンカーと抗体とを含む、工程;および
(d)第2のコンジュゲート(B)と陽性荷電ポリペプチドと陰性荷電分子とを接触させる工程であって、それによって、ナノ粒子を形成させる、工程
を含む、ナノ粒子を生成する方法に関する。
【0011】
本発明は、本発明の方法によって得られるナノ粒子にも関する。
【0012】
本発明は、
(a)陽性荷電ポリペプチドと;
(b)二官能性リンカーを介して陽性荷電ポリペプチドにコンジュゲートされている抗体を含む、第2のコンジュゲート(B)と;
(c)1つまたは複数の陰性荷電分子と
を含むナノ粒子にも関する。
【0013】
本発明は、本発明のナノ粒子を含む組成物にも関する。
【0014】
本発明は、治療における使用のための、本発明のナノ粒子または本発明の組成物にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】(Baumer,N.et al.,2016)に発表されたコンジュゲーション手法の適用による、複数の抗体-SMCC-プロタミンコンジュゲートの形成。(
図2のように)反応後に過剰のスルホ-SMCCを枯渇させない場合、残留クロスリンカーは、IgGとプロタミン-SMCCと反応性スルホ-SMCCとから複数の異なるコンジュゲートを形成させることができる。SDS-PAGEによって観察され得る意図されない副生成物の例は、過剰のスルホ-SMCCによって内部架橋されたIgG(AおよびB:抗EGFR-mABセツキシマブ)と、それと同時に生じる、それがプロタミンに架橋されたものである。さらに、還元不可能な高分子量IgG多量体(A)と、それと同時に生じる、ゲル(B)に見られた、それがプロタミンに架橋されたものが観察された。極端な場合、意図されない副反応の複雑さは、おそらく、全ての可能なコンジュゲートa~dの混合物によって形成される、クラウド(B)の出現をもたらし得る。HC:重鎖、LC:軽鎖。未反応のSMCCの枯渇の省略は、意図された生成物(c)の機能に干渉し得る、不要な副生成物の形成をもたらす可能性がある。例えば、反応性SMCCは、所定のIgG分子内の軽鎖と重鎖との架橋(a)またはIgG二量体を形成する2個のIgG分子の架橋(d)をもたらし得る。
【
図2-1】(Baumer,N.et al.,2016)に発表されたコンジュゲーション手法の修正。A:スルホ-SMCCとプロタミンとのカップリングの後、過剰のスルホ-SMCCを枯渇させない場合、残留クロスリンカーは、IgGとプロタミン-SMCCと反応性スルホ-SMCCとから複数の異なるコンジュゲートを形成させることができる。代わりに、前プロトコルにおいては、抗体-SMCC-プロタミンコンジュゲートが、カップリングプロセスの後に脱塩された。この工程は、新プロトコルにおいて省かれた(C:抗EGFR抗体セツキシマブ、D:抗IGF1R抗体ImcA12)。SDS-PAGEによって観察され得る意図されない副生成物の例は、丸で強調されている。B:新コンジュゲーションプロトコルは、スルホ-SMCCとプロタミンとのカップリングの後に精製工程を含むようになっている。遊離スルホ-SMCCを保持し、SMCC-プロタミンコンジュゲートを溶出させるZebaスピンゲル精製カラムを使用して、SMCC-プロタミンコンジュゲートから未結合スルホ-SMCCを枯渇させる。結果として、SMCC-プロタミンと、IgG抗体セツキシマブ(Cet;E)およびImcA12(A12;F)の重鎖(HC)および軽鎖(LC)との明確なコンジュゲーション生成物が形成されるようになり、それは、クーマシー染色SDS-PAGEにおいて観察され得る。HC:重鎖、LC:軽鎖、P:プロタミン。未反応のSMCCの枯渇の省略は、意図された生成物(c)の機能に干渉し得る、不要な副生成物の形成をもたらす可能性がある。例えば、反応性SMCCは、所定のIgG分子内の軽鎖と重鎖との架橋(a)またはIgG二量体を形成する2個のIgG分子の架橋(d)をもたらし得る。
【
図3-1】NSCLCにおける、KRASを標的とする、抗体によって媒介されるsiRNA。A:抗EGFRモノクローナル抗体(mAB)セツキシマブとプロタミンとの間のターゲティング構築物。B:抗EGFR-mAB-プロタミン/遊離プロタミン(P/P)複合体(α-EGFR-mAB)は、抗体1モル当たり8モルまでのsiRNAに結合する。C:セツキシマブ(抗EGFR-mAB-)プロタミン/遊離SMCC-プロタミン(P/P)は、Alexa488タグ付きsiRNAをエンドソームに輸送するが(白ドット、左上パネル)、Alexa488陽性小胞がリソソームマーカーLysotrackerとオーバーラップしないため、リソソームには輸送しない(白ドット、右上パネル)。D:α-EGFR-mAB-プロタミン/遊離プロタミン/siRNA(α、抗;P/Pを含有)によって処理されたNSCLC細胞は、KRAS siRNAによるKRAS発現のサイレンシングを示したが、対照siRNAによっては示さなかった。E:α-EGFR-mAB-プロタミン/遊離プロタミン/siRNA(P/P)によって処理された細胞は、wt対立遺伝子およびG12D変異対立遺伝子を標的とするKRAS siRNAによるコロニー形成の有意な低下を示した。F:対照およびKRAS-siRNAとの複合体として全身適用されたα-EGFR-mAB-プロタミン/遊離プロタミンは、s.c.異種移植されたSKLU1細胞およびA549細胞を有するCD1-ヌードマウスにおいて耐容性が良く、α-EGFR-mAB-プロタミン/遊離プロタミン/KRAS-siRNAは、SKLU腫瘍およびA549腫瘍における腫瘍増殖を有意に阻害した。G:A549腫瘍は、対照(スクランブル)siRNAを保持するセツキシマブ-P/Pによって既に治療的に阻害されたが、KRAS siRNA処置群における腫瘍は、いずれの対照群より有意に軽量であった。切除された腫瘍を、Hに提示した。統計量:平均値の標準誤差(SEM)が選択されたFを除き、全ての実験において、平均値+/-標準偏差。有意性:*p<0.05、両側t検定。
【
図4】KRASノックダウンを受けたNSCLC異種移植片においては、増殖マーカーKi67の存在量がより低い。組織学的異種移植片切片における増殖マーカーKi67(A、C、EおよびG、I、Kの灰色ドット)の免疫蛍光決定。A549(A~F)においても、SK-LU1(G~L)においても、KRAS siRNAによって処置された腫瘍組織学的切片においては、PBSおよび対照siRNA担体によって処置された群と比較して、Ki67陽性核の数が大幅に低下した。
【
図5】NSCLC異種移植片は、アポトーシス細胞のより高い存在量を示す。TUNELアッセイによる異種移植腫瘍切片におけるアポトーシスの免疫組織学的割り当て。A~L:両方の異種移植された細胞株において、KRAS siRNA担体によって処置された腫瘍において、対照群と比較して、アポトーシス率の上昇が見られた。M~N:切片内のTUNEL陽性核の統計量:EGFR-mAB-プロタミン/遊離プロタミン(mAB-P/P)によって処置されたA549腫瘍においては、TUNEL陽性核の数が、PBS処置と比較して2倍増加し、KRAS siRNA担体によって処置された腫瘍では、3倍増加した。SK-LU1においては、EGFR-mAB-プロタミン/遊離プロタミンKRAS siRNA処置のみが、アポトーシス細胞の4倍の増加をもたらした。α、抗;cntr、対照。
【
図6】横紋筋肉腫(RMS)細胞株は、抗体-siRNA複合体によって標的とされ得る。A:細胞表面受容体EGFRおよびIGF1Rの発現を、2つのRMS細胞株において試験したところ、IGFR1RおよびEGFRは、両方の細胞株において発現されていた。B:セツキシマブ-プロタミン(遊離SMCC-プロタミンを含有するEGFR-mAB-P(/P/P))は、Alexa488によってマークされた対照siRNAを、RD細胞の大部分にシャトル輸送したが(FACSプロットCにおいて、>90%)、RH-30においては効果が低かった(FACSは示されない)。RH-30は、代わって、抗IGF1R指向GR11L-プロタミン(P/P)によるAlexa488対照siRNAのシャトル輸送を特徴とした。
【
図7】セツキシマブ-プロタミン/遊離SMCC-プロタミン(P/P)によって媒介されるcmyc/NRASおよびKRASのsiRNAノックダウンによるRD(胎児性RMS、ERMS)細胞およびRH30(胞巣状RMS、ARMS)細胞のターゲティング、ならびにRH30におけるPAX3は、軟寒天アッセイにおけるコロニー増殖を低下させた。細胞を採集し、示されたように対照(scr)siRNAまたはc-MycおよびNRASに対して有効な2つのsiRNAにカップリングされた30nMセツキシマブ-プロタミン/P(遊離SMCCを含有するEGFR-mAB-P/P)によって処理し、96プレート内の軟寒天に播種し、2週間培養し、染色し、計数した(A)。2つの有効なsiRNAの組み合わせは、PBS対照に対して正規化されたコロニー数を、対照群における87%から、63%まで低下させた(B)。C:KRASまたはNRASのいずれかに特異的なsiRNAにカップリングされたEGFR-mAB-P/PによるRD細胞の処理は、それぞれの細胞におけるNRAS発現を中程度に低下させた。P<0.001、両側T検定。D:配列GGCCTCTCACCTCAGAATTC(siPF1、SEQ ID NO:49)、GCCTCTCACCTCAGAATTCA(siPF2、SEQ ID NO:50)、CCTCTCACCTCAGAATTCAA(siPF3、SEQ ID NO:51)は、配列TGGCCTCTCACCTCAGAATTCAATTCGTC(SEQ ID NO:48)によって示される融合がん遺伝子PAX3-フォークヘッド(FKHR)のブレークポイント領域をカバーするsiRNAのそれぞれの位置を示す(PAX3部分は薄灰色、FKHR部分は濃灰色)。E:RH30細胞におけるPAX3-FKHRのセツキシマブ-プロタミン/Pによって媒介されるsiRNAノックダウンは、軟寒天アッセイにおけるコロニー増殖を低下させた。コロニー増殖は、セツキシマブによって媒介される、ブレークポイントに対するsiRNA siPF2(Dに可視化されたsiRNAウォーキング)の適用によって有意に阻害され得る。P<0.05、両側T検定。
【
図8】抗体-siRNA-P/P複合体形成はIGF1Rターゲティングに適用され得る。A:A673ユーイング肉腫細胞は、カップリングされていないGR11L抗体などのマウス抗IGF1R抗体GR11L-スルホ-SMCC-プロタミン/P複合体を、37℃で内部移行させることが、フローサイトメトリーによってここに示される。それは、内部移行しない4℃の対照と比較した、ヒストグラムシグナルの左方シフトによって図示される。B:A673細胞において、Alexa Fluor 488-siRNAからなる緑色蛍光細胞質小胞構造は、遊離SMCC-Pを含有するGR11L-プロタミンによって内部移行したが(矢印、右画像)、抗体コンジュゲートを欠く対照実験においては、しなかった(左画像)。内部移行したAlexa Fluor 488-siRNAは、白色の小胞沈着物(白矢印)として見られる。Hoechstによる細胞核の対比染色は、腎臓形構造として灰色で示される。四角で囲まれた区域は、示された細胞の拡大図を図示する。スケールバー、20μm。C:次いで、GSP複合体を、発がん性融合タンパク質EWS-FLI1のmRNAに対するsiRNAにカップリングし、A673細胞を、これらの複合体によって処理した。結果として、FLI1発現のウエスタンブロットにおいて、ここで検出されたように、EWS-FLI1発現がダウンレギュレートされた。EWS-FLI1(E/F)特異的siRNA 2は、対照siRNAおよびPBS対照と比較して、80%、EWS-FLI1タンパク質発現を低下させた。他のE/F特異的siRNA(siRNA 1およびFLI1-esiRNA)は、効果がはるかに低いことが判明した。EWS-FLI1は、約64kDaの二重バンドとして移動し、アクチンは43kDaに移動した。(Baumer,N.et al.,2016)に発表された。
【
図9】ユーイング肉腫細胞を標的とするための抗IGF1R-mAB、A12およびTepro。A:IGF1Rを標的とするmAB、A12(シクスツムマブ(cixutumumab))およびTepro(テプロツムマブ)は、当研究室において発現され、精製されており、siRNAの結合および輸送を可能にするため、プロタミン/Pにコンジュゲートされ得る。IgG-プロタミン/Pコンジュゲートは、妥当な分子量シフトを示す(矢印)。HC=重鎖、LC=軽鎖、-P=SMCC-プロタミン。B:抗IGF1R-mAB-プロタミンおよび異なる比率のsiRNAを使用したバンドシフトアッセイ。C:抗IGF1R-mAB-プロタミン(遊離SMCC-Pを含有)は、Alexa488によってマークされた対照siRNAをSKNM-Cユーイング細胞にシャトル輸送した(白ドット)。
【
図10】ブレークポイントsiRNAは、対照と比較して、ユーイングSKNM-C細胞のコロニー形成を有意に低下させた。SKNM-C細胞を、プロタミン/PにコンジュゲートされているA12(A)またはTepro(B)および示されたsiRNAによって処理し、コロニー形成アッセイに供した。E/F-siRNAは、ユーイング肉腫を駆動するEWS-Fli1のmRNAに干渉するsiRNAである。BCL2は、BCL2に対するsiRNAである。P<0.05、両側T検定。
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図11】実験から推測された有効な抗体-SMCC-プロタミン/P-siRNAまたは-SM-1/RF担体複合体の条件を満たすナノ粒子様構造の例の断面図。mAB間に静電的結合架橋が形成されており、いくつかのプロタミンがターゲティング抗体およびそれぞれのアニオン性カーゴにカップリングされており、アニオン性カーゴは、siRNA(A)、SM-1/RFなどのアニオン性低分子(B)、またはその両方(C)を含む。
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図12】抗体-プロタミン/遊離プロタミンコンジュゲートは、一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)に結合することができる。バンドシフトアッセイは、1モルのEGFR抗体-プロタミンコンジュゲートが、8~32モルのASOに結合することを明らかにしている。
【
図13】有効なsiRNA結合剤の分子組成の記載。抗CD20 mABを、示されるように、mABに対してモル過剰のSMCC-プロタミンにコンジュゲートした。次いで、得られたコンジュゲート混合物を、siRNAを複合体化する能力について試験した。提供されたプロタミン-SMCCのモル過剰とは無関係に、得られた、siRNAを複合体化する能力は、著しくは異ならず、およそ担体結合剤1モル当たり16モルのsiRNAという範囲であった。
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図14】CD20-mABリツキシマブ-プロタミン/Pコンジュゲートは、8モルのsiRNAに結合する。A:抗CD20-mAB、30倍のSMCC-プロタミンにカップリングされた抗CD20-mAB、および分子マーカー(M)を示す、クーマシー染色SDS-PAGE。HC=重鎖、LC=軽鎖、-P=SMCC-プロタミン。B:CD20-mAB-プロタミン/Pと、異なる比率のsiRNAとを使用したバンドシフトアッセイ。
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図15】抗体-P/P-siRNA複合体によるDLBCL細胞株のターゲティング。上パネル:選択されたDLBCL細胞株を、FACS分析によって、CD20およびCD33に関する発現について試験した。中央パネル(白ドット):Alexa488タグ付きsiRNAを、プロタミンにコンジュゲートされているCD20(リツキシマブ)およびCD33(ゲムツズマブ)に対するモノクローナルAb(いずれも遊離SMCC-プロタミンを含有)に結合させ、それらの組成物によって、それぞれの細胞株を一晩処理した。siRNAは、それぞれの抗体ターゲティングを介して内部移行し、細胞質小胞構造内に凝縮された。両方のターゲティングmAB(左:抗CD20、右:抗CD33)が、siRNAをそれぞれの細胞株へ輸送することが示された。下パネル:DLBCL細胞株をメチルセルロースに播種し、示される抗体-プロタミン/P-siRNAコンジュゲートによって処理した。CD33は、全ての細胞株に高発現しており、リツキシマブは、siRNAを細胞内小胞へ輸送するが、コロニー形成能によって検出される重要遺伝子ノックダウンに対する応答は低く、このことは、問題のあるエンドソーム放出を示す。対照的に、より低発現のCD33を標的とするゲムツズマブは、遺伝子ノックダウンに対するはるかに良好な応答を示す:有意性*p<0.01。ここで、特に、HBL-1細胞は、BTKキナーゼのノックダウンに対して良好な反応を示し、細胞質キナーゼSYK、ならびにB細胞受容体シグナル伝達経路のさらなる成分、例えば、CARD11b、CD79B、およびMYD88のノックダウンに対しても良好な反応を示す。
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図16】モノクローナル抗体による静電輸送のためのポリアニオン性低分子(SM)誘導体の合成。SM-1を、ポリアニオン性赤色蛍光発色団(RF)にコンジュゲートして、低分子量(1.44kDa)ポリアニオンを形成させた。
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図17】CD20-mABリツキシマブ-プロタミン/PコンジュゲートおよびEGFR-mABセツキシマブ-プロタミン/PコンジュゲートはSM-1/RFに結合する。A:1:32までの異なる比率のSM-1/RFを使用した、CD20-mAB-プロタミン/PおよびEGFR-mAB-プロタミン/Pを使用したバンドシフトアッセイ。B:1:200までの異なる分子過剰のSM-1/RFを使用した、CD20-mAB-プロタミン/PおよびEGFR-mAB-プロタミン/Pを使用したバンドシフトアッセイ。遊離SMCC-プロタミンも含有する抗体-プロタミンコンジュゲートによって、少なくとも100モルのSM-1/RFを複合体化することができる。
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図18】CD20-mABリツキシマブ-プロタミン/PコンジュゲートおよびEGFR-mABセツキシマブ-プロタミン/Pコンジュゲートは、SM-1/RFを輸送する。A:CD20陽性HBL-1 DLBCL細胞は、CD20-mAB-プロタミン/P/SM-1/RF(遊離SMCC-Pを含有)複合体を内部移行させる(灰色影、左側)。B:EGFR陽性A549 NSCLC細胞は、EGFR-mAB-プロタミン/P/SM-1/RF/P複合体を内部移行させる(白ドット、左側)。
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図19】EGFR-mABセツキシマブ-プロタミンコンジュゲートは、HPLCによる遊離SMCC-プロタミンの枯渇後、siRNAと効率的に結合しない。A:抗EGFR-mAB、32倍のSMCC-プロタミンにカップリングされた抗EGFR-mAB、および32倍のSMCC-プロタミンにカップリングされた抗EGFR-mABの未結合SMCC-プロタミンの枯渇時のHPLC画分25~31を示すクーマシー染色SDS-PAGE;HC=重鎖、LC=軽鎖、-P=SMCC-プロタミン。B:バンドシフトアッセイ。
【
図20】遊離プロタミンの有り無し両方で、siRNAの異なる担体によって処理されたNSCLC細胞の軟寒天におけるコロニー形成アッセイ。A:EGFR-mAB-プロタミン/P-KRAS-siRNAによって処理されたA549細胞は、EGFR-mAB-プロタミン/P/対照(scr)siRNAによって処理された細胞より有意に少ないコロニーを軟寒天において形成する。B:SK-LU1細胞。A549細胞(A)またはSK-LU1細胞(B)を、遊離プロタミンを含まないEGFR-mAB-プロタミンコンジュゲート(
図19A、画分29/30を参照すること)によって処理した時、または同量のSMCC-プロタミンのみを使用した時、PBSによって処理された細胞と比較して、コロニー形成の差は観察されない。コロニーアッセイの写真および3回の独立した実験の平均値+/-SDが、ここに示される。アスタリスクは有意差を示す(P<0.05、両側T検定)。
【
図21-1】CD33-mABゲムツズマブ-プロタミンコンジュゲートは、HPLCによる遊離SMCC-プロタミンの枯渇後、siRNAと効率的に結合しない。A:抗CD33-mAB、32倍のSMCC-プロタミンにカップリングされた抗CD33-mAB、および32倍のSMCC-プロタミンにカップリングされた抗CD33-mABの未結合SMCC-プロタミンの枯渇時のHPLC画分24~30を示すクーマシー染色SDS-PAGE;HC=重鎖、LC=軽鎖、-P=SMCC-プロタミン。B:バンドシフトアッセイ。C:コロニー形成アッセイ。CD33-mAB-プロタミン/P-DNMT3A-siRNA(遊離SMCC-Pを含有)によって処理されたOCI-AML2細胞は、CD33-mAB-プロタミン/P-対照(scr)siRNA(遊離SMCC-Pを含有)によって処理された細胞より有意に少ないコロニーを軟寒天において形成する。OCI-AML2細胞を、遊離SMCC-プロタミンを含まないCD33-mAB-プロタミンコンジュゲートによって処理した時、PBSによって処理された細胞と比較して、コロニー形成の差は観察されない(A+B、画分30を参照すること)。3回の独立した実験の平均値±SDが、ここに示される。*P<0.033、両側T検定。
【
図22】CD20-mABリツキシマブ-プロタミンコンジュゲートは、HPLCによる遊離SMCC-プロタミンの枯渇後、SM-1/RFと効率的に結合しない。A:抗CD20-mAB、32倍のSMCC-プロタミンにカップリングされた抗CD20-mAB、32倍のSMCC-プロタミンにカップリングされた抗CD20-mABの未結合SMCC-プロタミンの枯渇時のHPLC画分19~25/26を示すクーマシー染色SDS-PAGE;HC=重鎖、LC=軽鎖、-P=SMCC-プロタミン。B:プロタミン枯渇型CD20-mAB調製物(左)およびプロタミン含有CD20-mAB調製物(右)によるバンドシフトアッセイ。SMCC-プロタミン枯渇型CD20-mAB調製物は、>32モルのSM-1/RFと結合しない。
【
図23】抗IGF1RモノクローナルAB IMCA-12(A12)-プロタミンコンジュゲートは、HPLCによる遊離SMCC-プロタミンの枯渇後、siRNAと効率的に結合しない。A:32倍のSMCC-プロタミンにカップリングされた抗IGF1R、および32倍のSMCC-プロタミンにカップリングされた抗IGF1R-mABの未結合SMCC-プロタミンの枯渇時のHPLC画分15~21を示すクーマシー染色SDS-PAGE;HC=重鎖、LC=軽鎖、-P=SMCC-プロタミン。B:プロタミン枯渇型IGF1R-mAB調製物(下部;画分20;Aを参照すること)およびSMCC-プロタミン含有IGF1R-mAB調製物(上部)によるバンドシフトアッセイ。SMCC-プロタミン枯渇型IGF1R-mAB調製物は、8モルのsiRNAと結合しない。
【
図24】遊離プロタミンの有り無し両方でA12担体によって処理されたSKNM-Cユーイング肉腫細胞の軟寒天におけるコロニー形成アッセイ。遊離SMCC-Pを含有するIGF1R(A12)-mAB-プロタミン/P-EWS-FLI1-siRNAによって処理されたSKNM-C細胞は、遊離SMCC-Pを含有するIGF1R(A12)-mAB-プロタミン/P-対照(scr)siRNAによって処理された細胞より有意に少ないコロニーを軟寒天において形成する。SKNM-C細胞を、遊離プロタミンを含まないEGFR-mAB-プロタミンコンジュゲートによって処理した時、コロニー形成の差は観察され得ない。3回の独立した実験の平均値+/-SDが、ここに示される。アスタリスクは有意差を示す(*P<、両側T検定)。
【
図25】遊離SMCC-プロタミンの有り無し両方でsiRNAの異なる担体によって処理されたSKNM-Cユーイング肉腫細胞の軟寒天におけるコロニー形成アッセイ。遊離SMCC-Pを含有するIGF1R(A12)-mAB-プロタミン/P/EWS-FLI1(E/F)-siRNAによって処理されたSKNM-C細胞は、遊離SMCC-Pを含有するIGF1R(A12)-mAB-プロタミン/P/対照(scr)siRNAによって処理された細胞より有意に少ないコロニーを軟寒天において形成する。SKNM-C細胞を、遊離SMCC-プロタミンを含むEGFR-mAB-プロタミンコンジュゲート、もしくは遊離SMCC-プロタミンを含まないEGFR-mAB-プロタミンコンジュゲート(
図19、画分29/30を参照すること)によって処理した時、または同量のSMCC-プロタミンのみを使用した時、scr-siRNA(scr、スクランブル)によって処理された細胞と比較してコロニー形成の差は観察され得ない。3回の独立した実験の平均値+/-SDが、ここに示される。アスタリスクは有意差を示す(P<0.05、両側T検定)。
【
図26】推定されるIgG-プロタミン-SMCC-プロタミン//遊離プロタミン/siRNA複合体と同じ濃度の、非枯渇型A12抗IGF1R mABまたは抗体が結合していないSMCC-プロタミンによって処理されたSKNM-Cユーイング肉腫細胞、OCI-AML-2白血病細胞、およびA549 NSCLC細胞の軟寒天におけるコロニー形成アッセイ。A:IGF1R(A12)-mAB-プロタミン/EWS-FLI1-siRNA/遊離SMCC-Pによって処理されたSKNM-C細胞は、IGF1R(A12)-mAB-プロタミン/対照(scr)siRNA/遊離SMCC-Pによって処理された細胞より有意に少ないコロニーを軟寒天において形成する。対照的に、有効なEWS-FLI1(E/F)-siRNAを1800nM濃度のSMCC-プロタミンのみと複合体化した場合、これは、有効でないことが判明した(A、右)。B:SMCC-プロタミンを、ターゲティング抗体を含まない有効なDNMT3a siRNAと共に、AML細胞株OCI-AML2においても使用したところ、それは、コロニー形成の阻害を示さなかった。C:最後に、同じセットアップを、遊離SMCC-プロタミンに結合した有効なKRAS siRNAによってA549において試験したところ、効果はなく、対照siRNAとの差はなかった。3回の独立した実験の平均値+/-SDが、ここに示される。アスタリスクは有意差を示す(P<0.05、両側T検定)。
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図27】A549 NSCLC細胞における小胞トラッキング。EGFR-mAB-プロタミン/遊離SMCC-P-Alexa488 siRNAによって処理された細胞を、Lysotrackerレッド染色に供した。Alexa488を含有する小胞(白ドット、右パネル)は、lysotracker(灰色ドット、中央パネル)染色とほとんど共局在しなかった。
【
図28】異なる複合体によって処理されたEGFR陽性NSCLC細胞SK-LU1における異なる抗EGFR-mAB(セツキシマブ)調製物の内部移行。遊離SMCC-プロタミンを含むEGFR-mAB-プロタミン/P/Alexa488-対照siRNA(上パネルの白ドット)および遊離SMCC-プロタミンを含まないEGFR-mAB-プロタミン/P/Alexa488-対照siRNA(下パネル)によって処理されたSK-LU1細胞。
【
図29】異なる複合体および遊離SMCC-プロタミンによって処理されたEGFR陽性NSCLC細胞A549における異なる抗EGFR-mAB(セツキシマブ)調製物の内部移行。遊離SMCC-プロタミンを含むEGFR-mAB-プロタミン/P/Alexa488-対照siRNA(Aにおける核染色、Dにおける白ドットとしてのsiRNA)、および遊離SMCC-プロタミンを含まないEGFR-mAB-プロタミン/P/Alexa488-対照siRNA(BおよびE)、ならびに遊離SMCC-プロタミン(CおよびF)によって処理されたA549細胞。A~C:Hoechstを使用した核染色、D~F:Alexa488-siRNA内部移行小胞について、A~Cと同じ細胞を図示する緑色チャネル(白ドット)。
【
図30】異なる複合体によって処理されたCD33陽性AML細胞OCI-AML2における異なる抗CD33-mAB(ゲムツズマブ)調製物の内部移行。遊離SMCC-プロタミンを含む抗CD33-mAB-プロタミン/P/Alexa488-対照siRNA(AおよびD)、および遊離SMCC-プロタミンを含まない抗CD33-mAB-プロタミン/P/Alexa488-対照siRNA(BおよびE)、ならびに遊離SMCC-プロタミン(CおよびF)によって処理されたOCI-AML2細胞。A~C.Hoechstを使用した核染色(灰色ドット)。D~F.Alexa488-siRNA内部移行小胞について、A~Cと同じ細胞を図示する緑色チャネル(Dにおける白ドット)。
【
図31】異なる複合体によって処理されたIGF1R陽性ユーイング肉腫細胞SKNM-Cにおける異なる抗IGF1R-mAB(ImcA12)調製物の内部移行。遊離SMCC-プロタミンを含む抗IGF1R-mAB-プロタミン/P/Alexa488-対照siRNA(AおよびD)、および遊離SMCC-プロタミンを含まない抗IGF1R-mAB-プロタミン/P/Alexa488-対照siRNA(BおよびE)、ならびに遊離SMCC-プロタミン(CおよびF)によって処理されたSKNM-C細胞。A~C:Hoechstを使用した核染色、D~F:Alexa488-siRNA内部移行小胞について、A~Cと同じ細胞を図示する緑色チャネル(Dにおける白ドット)。
【
図32】EGFR陰性SKNM-C細胞培養物における異なる抗EGFR-mAB(セツキシマブ)調製物の存在。下パネルは、白フレームによって示される上パネルの挿入図の拡大図を図示する。A:カップリングされていないセツキシマブは、Alexa488-対照siRNAをSKNMC細胞へ輸送しない。B:プロタミンにカップリングされたセツキシマブは、Alexa488-対照siRNAをSKNMC細胞へ輸送せず、Alexa488陽性小胞構造は、細胞の隣(白ドット、上パネルの矢印)および培養物の無細胞区域(下パネルの矢印)にのみ存在する。C:(HPLCによって除去された)遊離SMCC-プロタミンを含まないプロタミンにカップリングされたセツキシマブは、Alexa488陽性小胞構造を形成しない。
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図33】DLS測定におけるEGFR-mABセツキシマブ-プロタミンコンジュゲート。上パネル:単離され、または下パネルの測定のために使用された異なる複合体を図示するクーマシー染色PAGEゲル。下パネル:遊離SMCC-プロタミンを含むEGFR-mAB-P、および遊離SMCC-プロタミンを含まないEGFR-mAB-P、ならびに単独のSMCC-プロタミンを、室温で2時間インキュベートし、次いで、ゼータカウンター(MALVERN)で動的光散乱(DLS)を介して測定した。異なるピークは、異なるサイズ(nm)の粒子を表す。遊離SMCC-プロタミンを含むEGFR-mAB-P/siRNAによる最高ピークは、約427nmに存在するが、遊離SMCC-プロタミンを含まないものは、約3.2nm、遊離SMCC-プロタミン/siRNAは、5.7nmにピークを生じる。
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図34】室温での0~24時間のインキュベーション中のDLS測定におけるEGFR-mABセツキシマブ-プロタミン/Pコンジュゲート。siRNAモノマー(約1.92nm)は、混合後に、セツキシマブ-プロタミン/未結合プロタミン担体系によって、より大きい構造へ集合し、それは、安定化され、さらにはるかに大きいマクロ構造(約500nm)へ集合する。PBS中の保護されていない環境で、24時間後、マクロ構造は再び部分的に分解し始める。下の数は、測定された粒子のサイズ(nm)を示す。
【
図35】チャンバースライド上での一晩の無細胞インキュベーションにおける、蛍光Alexa488-siRNAを含む、抗体-プロタミン/遊離SMCC-P(P/P)コンジュゲート(白ドット)。A:EGFR-mAB-P/P、B:CD20-mAB-P/P、C:CD33-mAB-P/P、D:IGF1R-mAB-P/P、倍率40倍、バー=10μm。E~H:A~Dの拡大図、バーはやはり10μmである。
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図36】チャンバースライド上での一晩の無細胞インキュベーションにおける、蛍光Alexa488-siRNA(白ドット)を含む、遊離SMCC-プロタミンの有り無し両方の抗体-プロタミンコンジュゲート、およびSMCC-プロタミンのみ。遊離SMCC-プロタミンを含む抗体複合体:A~D。A.EGFR-mAB-P、B.CD20-mAB-P、C.CD33-mAB-P、D.IGF1R-mAB-P、E.遊離SMCC-プロタミン。遊離SMCC-プロタミンを含まない抗体複合体:F~I。F.EGFR-mAB-P、G.CD20-mAB-P、H.CD33-mAB-P、I.IGF1R-mAB-P。全て倍率40倍。
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図37】抗体複合体の蛍光光学顕微鏡写真(AおよびB)ならびに1つの共焦点光学切片におけるレーザースキャン顕微鏡(LSM)写真(CおよびD)。チャンバースライド上での一晩の無細胞インキュベーションにおける、蛍光Alexa488-siRNA(白ドット)を含む、セツキシマブ抗EGFR-mAB-プロタミン/遊離SMCC_Pコンジュゲート(AおよびC)ならびに抗CD20-mAB-プロタミン/遊離SMCC-P(BおよびD)の形成。
【
図38】示される異なる温度でのチャンバースライド上での一晩の無細胞インキュベーションにおける、蛍光Alexa488-siRNA(白ドット)を含む、遊離SMCC-プロタミンを含む抗EGFR抗体-プロタミンコンジュゲート。
【
図39】抗体とSMCC-プロタミンとの異なる比率によるセツキシマブのコンジュゲーション。A:各コンジュゲーションプロセスの詳細な組成。B:Aに図示されるようにカップリングされたコンジュゲーション生成物と比較された、カップリングされていない抗EGFR抗体セツキシマブを示すクーマシー染色SDS-PAGE。
【
図40】抗体とSMCC-プロタミンとの異なる比率によるセツキシマブのコンジュゲーション生成物の機能的分析。A~F:図中に紹介された異なるコンジュゲーション生成物を使用したバンドシフトアッセイ。G~L:異なるコンジュゲーション生成物をAlexa488-siRNAと共にインキュベートした時の、スライド上での無細胞での小胞の形成(白ドット、特に、J)。M~R:異なるセツキシマブ-SMCC-プロタミン/P/Alexa488-siRNA複合体のEGFR陽性A549細胞への内部移行(白ドット、矢印)。S~X:対照(「scr」)siRNAまたは抗KRAS siRNA(「KRAS」)との複合体としての遊離プロタミンを含有する異なるセツキシマブ-SMCC-プロタミン/Pコンジュゲーションによって処理されたA549細胞のコロニー形成。50倍を超えるSMCC-プロタミンを使用した時、コンジュゲートは非特異的に毒性である。3回の独立した実験の平均値+/-SDが、ここに示される。アスタリスクは有意差を示す(P<0.009、両側T検定)。
【
図41】異なる比率のSMCC-プロタミンまたは単独のプロタミンの補足による、遊離SMCC-プロタミンを枯渇させた抗EGFR-mAB-プロタミンの小胞形成の機能的分析。Alexa488-siRNAとのインキュベーションによる、スライド上での無細胞での小胞の形成。遊離SMCC-プロタミンを含まない抗EGFR-mAB-プロタミンは、図中に示されるような小胞(白ドット)を形成しない。遊離SMCC-プロタミンを段階的に添加した時、小胞形成が、1倍のSMCC-プロタミン(A)では起こらず、10倍のSMCC-プロタミン(B)では低度に、32倍のSMCC-プロタミン(C)では高度に起こる。スルホ-SMCCにカップリングされていない遊離プロタミンを段階的に添加した時、小胞形成が、1倍のSMCC-プロタミン(D)では起こらず、10倍のSMCC-プロタミン(E)では低度に、32倍のSMCC-プロタミン(Fの白ドット)では高度に起こる。
【
図42】チャンバースライド上での一晩の無細胞インキュベーションにおける蛍光性のAlexa488-siRNAおよび/またはSM-1/RFを含む抗CD20-mAB-プロタミン/遊離SMCC-Pコンジュゲートの形成。A.~C.緑色蛍光チャネル(白ドット)、D.~F.赤色蛍光チャネル(灰色ドット)。A.およびD.Alexa488-siRNAを含む抗CD20-mAB-P/P、B.およびE.赤色蛍光SM-1/RFを含む抗CD20-mAB-P/P、C.およびF.Alexa488-siRNAおよび赤色蛍光SM-1/RFを含む抗CD20-mAB-P/P、倍率40倍、バー=10μm。
【
図43】チャンバースライド上での一晩の無細胞インキュベーションにおける蛍光性のAlexa488-siRNAおよび/またはSM-1/RFを含む抗EGFR-mAB-プロタミン/遊離SMCC-Pコンジュゲートの形成。A~D:緑色蛍光チャネル(白ドット)、E~H:赤色蛍光チャネル(灰色ドット)。A.およびE.Alexa488-siRNAを含むEGFR-mAB-P/P、B.およびF.赤色蛍光SM-1/RFを含むEGFR-mAB-P/P、C.およびG.非蛍光対照siRNAおよび赤色蛍光SM-1/RFを含むEGFR-mAB-P/P、D.およびH.緑色蛍光Alexa488-siRNAおよび赤色蛍光SM-1/RFを含むEGFR-mAB-P/P、倍率40倍、バー=10μm。
【
図44】チャンバースライド上での一晩の無細胞インキュベーションにおけるSM-1/RFと組み合わせられた蛍光Alexa488-siRNAを含むリツキシマブ抗CD20-mAB-プロタミン/遊離SMCC-Pコンジュゲートの形成。A~C:倍率40倍の緑色蛍光チャネル(白ドット)および赤色蛍光チャネル(灰色ドット)、D~L:A~Cからの詳細の等倍率、バー=10μm。D、G、およびLにおいて:灰色環は、Alexa488-siRNA蛍光を図示する(矢印)。E、H、およびKにおいて:灰色円は、SM-1/RFの赤色蛍光を図示する(矢印)。F、I、およびLにおいて、緑色蛍光(灰色)の周縁部(Alexa488-siRNA、矢印)および内部の赤色蛍光(SM-1/RF)が弁別され得る。
【
図45】チャンバースライド上での一晩の無細胞インキュベーションにおける赤色蛍光SM-1/RFと組み合わせられた緑色蛍光Alexa488-siRNAを含むセツキシマブ抗EGFR-mAB-プロタミン/遊離SMCC-Pコンジュゲートの形成。A~C:倍率40倍の緑色蛍光チャネル(AおよびCの白色および環)ならびに赤色蛍光チャネル(BおよびCの灰色円)。D:A~Cからの詳細の拡大図、バー=10μm。
【
図46】抗CD20-mAB/P/遊離SMCC-/P(Aの灰色環)とSM-1/RF(Bの灰色円)とAlexa488-siRNAとによって形成された大きいミセル構造は、位相差光学顕微鏡法において可視である(BおよびC)。バー=5μm。
【
図47】抗体複合体の1つの共焦点光学切片のLSM写真およびZスタック。A:チャンバースライド上での一晩の無細胞インキュベーションにおける、SM-1/RFと組み合わせられた蛍光Alexa488-siRNA(白ドット)を含む抗EGFR-mAB(セツキシマブ)-プロタミン/遊離SMCC-Pコンジュゲートの形成。a:小胞を横切る1つのレベル、bおよびc:両方の軸における小胞の3D構造を再構成するZスタック。B:チャンバースライド上での一晩の無細胞インキュベーションにおける、SM-1/RF(灰色影)と組み合わせられた蛍光Alexa488-siRNA(白色環およびドット)を含む抗CD20-mAB(リツキシマブ)-プロタミン/Pコンジュゲートの形成。d:小胞を横切る1つのレベル、eおよびf:両方の軸における小胞の3D構造を再構成するZスタック。
【
図48】モノクローナル抗体による静電輸送のためのポリアニオン性イブルチニブ誘導体の合成。イブルチニブをCy3.5発色団とコンジュゲートして、低分子量(1.44kDa)ポリアニオンを形成させた。静電相互作用によってカチオン性プロタミンに連結されたmAB安定小胞と共に構築されるアニオン性イブルチニブ-Cy3.5(Cy3.5-RMA561)の化学構造。
【
図49】Cy3.5-RMA561の高分解能質量分析。質量分析計において、試料をイオン化し、電子ビームによって断片化し、得られた断片を、特定の偏向に従って、質量電荷(m/z)比によって分析した。HRMS(ESI、CH
3CN/H
2O):C
64H
62N
9O
15S
4
3-[M-H](z=3)についてのm/zの計算値:441.44216;実測値:441.44160;C
64H
62N
9O
15S
4H
2-[M-H](z=2)についてのm/zの計算値:662.66687;実測値:662.66630;(C
64H
62N
9O
15S
4H)
2
4-[M-H](z=4)についてのm/zの計算値:662.66687;実測値:662.66630。
【
図50】αCD20-mABリツキシマブ-プロタミン/遊離プロタミン-SMCCコンジュゲートおよびαEGFR-mABセツキシマブ-プロタミン/遊離プロタミン-SMCCコンジュゲートは、イブルチニブ-Cy3.5と結合する。A.1:32までの異なる比率のイブルチニブ-Cy3.5を使用したαCD20-mAB-プロタミン/PおよびαEGFR-mAB-プロタミン/Pを使用したバンドシフトアッセイ。B.1:200までの異なる分子過剰のイブルチニブ-Cy3.5を使用したαCD20-mAB-プロタミン/遊離プロタミン-SMCCおよびαEGFR-mAB-プロタミン/遊離プロタミン-SMCCを使用したバンドシフトアッセイ。少なくとも100モルのイブルチニブ-Cy3.5が、抗体-プロタミンコンジュゲートによって複合体化され得る。α、抗。
【
図51】αCD20-mABリツキシマブ-プロタミン/遊離プロタミン-SMCC/イブルチニブ-Cy3.5コンジュゲートおよびαEGFR-mABセツキシマブ-プロタミン/遊離プロタミン-SMCCコンジュゲートは、イブルチニブ-Cy3.5を内部移行させる。A.CD20陽性HBL-1 DLBCL細胞は、αCD20-mAB-プロタミン//遊離プロタミン-SMCC/イブルチニブ-Cy3.5複合体を内部移行させる。左:核染色、右:灰色ドット=Cy3.5。B.EGFR陽性A549 NSCLC細胞は、αEGFR-mAB-プロタミン//遊離プロタミン-SMCC/イブルチニブ-Cy3.5複合体を内部移行させる。左:核染色、右:灰色ドット=Cy3.5。α、抗。
【
図52】担体分子としてのリツキシマブ-プロタミン/遊離プロタミン-SMCCによって輸送されたイブルチニブ-Cy3.5コンジュゲート(αCD20-mAB-P/イブルチニブ-Cy3.5)によるインビトロでのBTKキナーゼの共有結合的な標識。10
5個の細胞を、示された濃度の化合物によって一晩処理し、ローディングダイにおいて溶解し、ゲル上を泳動させた。INTASゲルイメージャーにおけるCy3.5発光のため、SYBR Goldフィルター上でゲルをUV光に曝し(左)、次いで、同定のため、ブロットし、抗BTK-mABと共にインキュベートした(右)。RTX、リツキシマブ。細胞内BTKは、遊離イブルチニブ-Cy3.5にも、抗体-プロタミンと複合体化されたイブルチニブ-Cy3.5にも結合した。
【
図53】αCD20-mAB(リツキシマブ)-プロタミン/遊離プロタミンコンジュゲートおよびαEGFR-mABセツキシマブ-プロタミン/遊離プロタミンコンジュゲートは、イブルチニブ-Cy3.5を輸送し、単独のイブルチニブ-Cy3.5または抗体より効果的にコロニー形成を阻害する。A.およびB.コロニー形成アッセイ。αCD20-mAB(リツキシマブ)-プロタミン/遊離プロタミン-SMCC/イブルチニブ-Cy3.5によって処理されたHBL-1細胞(A)、およびαEGFR mAB-(セツキシマブ)プロタミン/遊離プロタミン-SMCC/イブルチニブ-Cy3.5によって処理されたA549細胞(B)は、PBS、複合体化されていないイブルチニブ-Cy3.5、またはαCD20 mAB-(リツキシマブ)プロタミン/遊離プロタミン-SMCC/イブルチニブ-Cy3.5によって処理された細胞より有意に少ないコロニーをメチルセルロースにおいて形成する。3回の独立した実験の平均値±SDが、ここに示される。アスタリスクは有意差を示す(p値<0.05、両側t検定)。α、抗。
【
図54】αCD20-mABリツキシマブ-プロタミンコンジュゲートは、HPLCによる遊離プロタミン-SMCCの枯渇後、イブルチニブ-Cy3.5と効率的に結合しない。A.αCD20-mAB、32倍のプロタミン-SMCCにカップリングされたαCD20-mAB、および32倍のプロタミン-SMCCにカップリングされたαCD20-mABの未結合プロタミン-SMCCの枯渇時のHPLC画分19~25/26を示すクーマシー染色SDS-PAGE;HC=重鎖、LC=軽鎖、-P=プロタミン-SMCC。B.プロタミン枯渇型αCD20-mAB調製物(左)およびプロタミン含有αCD20-mAB調製物(右)によるバンドシフトアッセイ。プロタミン-SMCC枯渇型αCD20-mAB-調製物は、>32モルのイブルチニブ-Cy3.5と結合しない。C.コロニー形成アッセイ。αCD20-mAB-プロタミン/遊離プロタミン-SMCC/イブルチニブ-Cy3.5によって処理されたHBL-1細胞は、単独のカップリングされていないイブルチニブ-Cy3.5またはカップリングされていないαCD20-mABによって処理された細胞より有意に少ないコロニーを軟寒天において形成する。HLB-1細胞を遊離プロタミン-SMCCを含まないαCD20-mAB-プロタミンコンジュゲートによって処理した時、PBSによって処理された細胞と比較して、コロニー形成の差は観察され得ない(A+B、画分25を参照すること)。3回の独立した実験の平均値±SDが、ここに示される。*P<0.0003、両側T検定。α、抗。
【
図55】αCD20-mABリツキシマブ-プロタミン/遊離プロタミン-SMCCコンジュゲートは、イブルチニブ-Cy3.5を効率的に配位結合させ、インビボで腫瘍部位へ輸送し、腫瘍増殖を有意に低下させる。A.NSG-HBL1異種移植モデルの腫瘍増殖および処置計画。移植後、腫瘍を200mm
3まで増殖させ、その後、週2回の腹腔内(i.p.)処置を開始した。B.リツキシマブ-プロタミン/遊離プロタミン/イブルチニブ-Cy3.5 1:20複合体(1回当たり4mg/kgマウス体重または0.625nmolリツキシマブ-プロタミンおよび/または12.5nmolイブルチニブ誘導体)による処置(写真中、=リツキシマブ-イブルチニブ-Cy3.5(C)またはリツキシマブ-P/P/イブルチニブ-Cy3.5(B))は、腫瘍の体積および増殖を有意に低下させた。週2回の全ての処置日に、腫瘍体積をノギス測定によって評価した。リツキシマブ-プロタミン/遊離プロタミン/イブルチニブ-Cy3.5 1:20複合体によって処置された群において、腫瘍体積は、1,000mm
3をはるかに下回るよう制限され、3回の処置後に600mm
3に萎縮し始めたが、他の全ての群は、急速な腫瘍増殖を示し、予め定義された法的規制によって早期に屠殺されなければならなかった。C.処置群と対照群との生存曲線の比較。各10匹のマウス群を、PBS、リツキシマブ、イブルチニブ標準物、イブルチニブ-Cy3.5、およびリツキシマブ-プロタミン/遊離プロタミン/イブルチニブ-Cy3.5 1:20複合体によって処置した。イブルチニブ-Cy3.5は、処置開始後8日目に腫瘍増殖を低下させず、予め定義された基準のため、全てのマウスが屠殺されなければならなかったが、PBSおよびリツキシマブによって処置されたマウスは、有意に長く、16日目まで生存した。イブルチニブによって処置されたマウス10匹のうち最後のものは、20日目に屠殺されなければならなかったが、リツキシマブ-プロタミン/遊離プロタミン/イブルチニブ-Cy3.5 1:20複合体によって処置されたマウス10匹のうち、5匹は処置開始後16日目まで、4匹は20日目まで生存した。リツキシマブ-プロタミン/遊離プロタミン/イブルチニブ-Cy3.5処置群と対照との差は、p≦0.03(ANOVA)と評価された。α、抗、RTX、リツキシマブ。
【
図56】NSGマウスに異種移植されたHBL-1細胞の腫瘍は、リツキシマブ-プロタミン/遊離プロタミン-SMCC/イブルチニブ-Cy3.5によって処置されたマウスにおいて、Cy3.5蛍光シグナルの著しい濃縮を示す。
図55に示された実験からの異種移植マウスを、不耐容の腫瘍サイズに達した後に屠殺し、器官および腫瘍を調製し、530nmでの励起および600nmでの発光によるCy3.5シグナルのエクスビボ蛍光検出に曝した。リツキシマブ-P/遊離P/イブルチニブ(写真中、=Rtx/イブルチニブ-Cy3.5)によって処置された群(下段)からの腫瘍は、腫瘍組織の全ての部分において、ターゲティングされていないイブルチニブ-Cy3.5および標準物イブルチニブと比較して、Cy3.5依存的な蛍光シグナルの著しい濃縮を示したが、対照器官においては、自己蛍光を示す壊死病巣のみが検出された。示された腫瘍調製物の直径は、全てのケースにおいて類似していたが、蛍光区域は異なる。スケールは、蛍光の任意単位を表す。点線は、各腫瘍の外周を表す。数字は、個々のマウスの識別名をさす。
【
図57】HBL1マウスを異種移植されたNSGマウスからのCy3.5蛍光について分析された異なるマウス器官に関する概要。
図55および56に示された実験からの異種移植マウスを、不耐容の腫瘍サイズに達した後に屠殺し、器官および腫瘍を調製し、530nmでの励起および600nmでの発光によるCy3.5シグナルについてのエクスビボ蛍光検出に曝した。リツキシマブ-P/遊離P/イブルチニブ(写真中、=Rtx/イブルチニブ-Cy3.5)によって処置された群(下段)からの腫瘍は、ターゲティングされていないイブルチニブ-Cy3.5と比較して、Cy3.5依存性蛍光シグナルの著しい濃縮を示した。スケールは、蛍光の任意単位を表す。器官は、明視野(上パネル)および赤色(Cy3.5)蛍光(下パネル)において、常に(右側のスキームに図示される)同じ方向に配置されている。
【
図58】チャンバースライド上での一晩(o/n)の無細胞インキュベーションにおける、緑色蛍光Alexa488-siRNAおよび/または赤色蛍光イブルチニブ-Cy3.5を含むリツキシマブαCD20-mAB-プロタミン/遊離SMCC-プロタミンナノ小胞の形成。A.~C.緑色蛍光チャネル、D.~F.赤色蛍光チャネル。A.およびD.緑色Alexa488-siRNAを含むαCD20-mAB-P/遊離P、B.およびE.赤色蛍光イブルチニブ-Cy3.5を含むαCD20-mAB-P/遊離P、C.およびF.緑色Alexa488-siRNAおよび赤色イブルチニブ-Cy3.5を含むαCD20-mAB-P/遊離P、倍率40倍、バー=10μm。全てのリツキシマブ-プロタミン調製物が、未結合プロタミン-SMCCを含有する。α、抗。
【
図59】チャンバースライド上での一晩(o/n)の無細胞インキュベーションにおける、緑色蛍光Alexa488-siRNAおよび/または赤色蛍光イブルチニブ-Cy3.5を含むセツキシマブαEGFR-mAB-プロタミン/遊離プロタミン-SMCCコンジュゲートの形成。A.~D.緑色蛍光チャネル、E~H.赤色蛍光チャネル、A.およびE.緑色蛍光Alexa488-siRNAを含むセツキシマブαEGFR-mAB-P/遊離プロタミン-SMCC、B.およびF.赤色蛍光イブルチニブ-Cy3.5を含むセツキシマブαEGFR-mAB-P/遊離プロタミン-SMCC、C.およびG.非蛍光対照siRNA(scr、スクランブル)および赤色蛍光イブルチニブ-Cy3.5を含むαEGFR-mAB-P、D.およびH.非蛍光Alexa488-siRNAおよび赤色蛍光イブルチニブ-Cy3.5を含むαEGFR-mAB-P、倍率40倍、バー=10μm。全てのセツキシマブプロタミン調製物が、未結合プロタミン-SMCCを含有する。α、抗。
【
図60】チャンバースライド上での一晩(o/n)の無細胞インキュベーションにおける、赤色蛍光イブルチニブ-Cy3.5と組み合わせられた緑色蛍光Alexa488-siRNAを含む、セツキシマブαEGFR-mAB-プロタミン/遊離プロタミン-SMCCコンジュゲート(A~B)およびリツキシマブ抗CD20-mAB-プロタミン/遊離プロタミン-SMCCコンジュゲート(C~D)の形成。緑色蛍光チャネルおよび赤色蛍光チャネルの倍率40倍。AおよびCにおいて、緑色蛍光の周縁部(Alexa488-siRNA)が可視であり、BおよびDにおいて、内部の赤色蛍光(イブルチニブ-Cy3.5)が見られる。全ての抗体-プロタミン調製物が、未結合プロタミン-SMCCを含有する。
【
図61】αCD20-mABリツキシマブ/遊離プロタミン-SMCCのsiRNAおよびイブルチニブ-Cy3.5との異なる複合体形成における粒子サイズの決定。A.B~Eに示される平均直径(nm)の図示。示された複合体のZetaview測定を、インキュベーション開始後1時間目および2時間目に実施した。B~Eのヒストグラムに図示される各粒子の平均直径によって決定される平均小胞サイズ(nm)が、ここに示される。全てのリツキシマブ-プロタミン調製物が、未結合プロタミン-SMCCを含有する。α、抗。
【
図62-1】A:αCD20-mABリツキシマブ-プロタミン/遊離プロタミン-SMCC(αCD20-mAB-P/P)コンジュゲートはイブルチニブ-Alexa488と結合する。1:2までの異なる比率のイブルチニブ-Alexa488を使用したαCD20-mAB-プロタミン/Pを使用したバンドシフトアッセイ。α、抗。B:Alexa488分子のアニオン性電荷は-2と限定されているため(矢印)、ポリカチオン性プロタミン融合体とAlexa488との相互作用は、-4という正味の電荷を有するCy3.5との相互作用より弱いことが見出された。Alexa488にコンジュゲートされているイブルチニブとプロタミンコンジュゲートとによって、わずか2:1のカップリング比が実現した。しかしながら、イブルチニブ-Alexa488とαCD20-mABリツキシマブ-プロタミン/遊離プロタミン-SMCC(αCD20-mAB-P/P)との複合体化は、やはり成功した。C~H:αCD20-mAB-プロタミンと遊離プロタミンとイブルチニブ-Cy3.5とを1:20の比率で1時間自己集合させ、その後、PBS(C、D)ならびに難条件、例えば、細胞培養培地RPMI/10%FCS(E、F)およびPBS/50%FCS(G、H)において、24時間インキュベートした後の安定性。C、E、G:Cy3.5蛍光、D、F、H:位相差。α、抗。
【
図63】荷電イブルチニブ-Cy3.5は、プロタミンにコンジュゲートされている異なるmABと共に安定的なナノ粒子を形成するが、非荷電イブルチニブ(商品名:imbruvica)は、そうでない。SMCCを介してプロタミンにコンジュゲートされており、遊離SMCC-プロタミンを含有する、それぞれの抗体担体に、非荷電イブルチニブと比較して、荷電イブルチニブ-Cy3.5を負荷した。Cy3.5にコンジュゲートされているイブルチニブ試料のみが、ナノ粒子の高密度形成を示し、非荷電イブルチニブは、そうでなかった。Cy3.5依存性蛍光顕微鏡写真(上)および位相差(下)において、抗EGFR抗体(A~D)、抗CD33抗体(E~H)、および抗IGF1R抗体(I~L)を試験した。α、抗。
【
図64】実験から推測された効果的な抗体-プロタミン-プロタミン-siRNAまたは-イブルチニブ-Cy3.5担体複合体の条件を満たすナノ粒子様構造の理想的な例の断面図。一定の縮尺では図示されていない。静電結合架橋がmAB間に形成されており、いくつかのプロタミンが、ターゲティング抗体およびそれぞれのアニオン性カーゴにカップリングされており、アニオン性カーゴは、siRNA(A)、イブルチニブ-Cy3.5(B)、またはその両方(C)を含む。
【
図65】αCD20-mAB-プロタミン/遊離プロタミン-イブルチニブ-Cy3.5による静電ナノ粒子形成。担体抗体-プロタミンコンジュゲートにアニオン性イブルチニブ-Cy3.5を1:20の比率で負荷し、それを、蛍光顕微鏡法のための細胞培養物によって処理されたスライドガラス(A、B)またはリン酸タングステンによってネガティブ染色された電子顕微鏡法のための銅グリッド(C)に適用した。ここで、静電的な負荷は、多数の凝集物の形成をもたらし、より大きい凝集物が、強いCy3.5蛍光を示し(A)、コントラスト強調によって3D構造を図示するためのエンボスダイナミックフィルターを使用した光学顕微鏡法において可視であった(B)。透過型電子顕微鏡法(C)において、ネガティブ染色は、ほぼ同じ粒子サイズ範囲をもたらしたが、光学顕微鏡法においては検出不可能であった多数のより小さい小胞(C)の存在を明らかにした。α、抗。
【
図66】αCD20-mAB-P/Pと複合体化されたイブルチニブ-Cy3.5によるブルトンキナーゼBTKの細胞ターゲティング。A~F:Cy3.5シグナルの著しい細胞内濃縮を示す、ターゲティングコンジュゲートおよび対照によって処理されたHBL1 DLBCL細胞の蛍光顕微鏡法。G:ターゲティングコンジュゲートおよび対照によって72時間処理された細胞に由来する溶解物を、SDS PAGEに供し、Cy3.5シグナルのため照射した。ここでは、平行イムノブロットによってBTKとして同定された70kDaの明らかなバンドが、イブルチニブ-Cy3.5によって共有結合的にマークされ、このことは、イブルチニブ-Cy3.5誘導体の結合を示し、従って、その機能性を示す。H~P:イブルチニブ-ボディパイ(緑色、NおよびP)によって前処理されたHBL1 DLBCL細胞の蛍光顕微鏡法は、αCD20-mAB-P/P-イブルチニブ-Cy3.5処理後のCy3.5シグナルの細胞内濃縮を示さない(Lと比較してM)。α、抗。
【
図67】DLBCL細胞株におけるαCD20-mAB-プロタミン/遊離プロタミン-イブルチニブ-Cy3.5処理によるBTK不活性化の生理学的意義および機能的意義。A:HBL1細胞を、示されたそれぞれのコンジュゲートによって72時間処理し、溶解し、SDS-PAGE、ならびにリン酸化BTK(pBTK)、全BTK(tBTK)、リン酸化ERK(p-ERK)、全ERK(t-ERK)、および負荷対照としてのアクチンについてのウエスタンブロッティングに供した。ここで、ターゲティングされていないイブルチニブ-Cy3.5は、αCD20-mAB-プロタミン-イブルチニブ-Cy3.5よりわずかに少なくBTKのリン酸化を阻害し、ERKなどの予想される下流リン酸化標的の差は、より明白であった:ここで、αCD20-mAB-P/Pによって媒介されるイブルチニブ-Cy3.5処理のみが、ERKリン酸化を低下させることができた。B:コロニー形成アッセイにおいて、ターゲティングされていないイブルチニブ-Cy3.5は、HBL1細胞のコロニー増殖を中程度に低下させ、αCD20-mAB-P/Pによるイブルチニブ-Cy3.5の特異的ターゲティングは、コロニー増殖低下を30%未満に後押しした。コンジュゲート構築物内の遊離プロタミンの重要性を証明するため、コンジュゲート混合物からそれを枯渇させたところ、この組み合わせの適用は、イブルチニブ-Cy3.5の単独適用を超えるコロニー形成低下を明らかにせず、従って、抗体コンジュゲートは、そのターゲティング能を失っていた(B、右端のバー)。α、抗。
【
図68】DLBCL細胞株HBL1におけるαCD20-mAB-P/Pと複合体化されたイブルチニブ-Cy3.5による処理によるBTKターゲティングのアポトーシスの誘導。HBL1細胞を、示されたそれぞれのコンジュゲートによって72時間処理し、アネキシンV染色に供した。特に、αCD20-mAB-P/Pと複合体化されたイブルチニブ-Cy3.5によって処理された細胞において、フローサイトメトリーによって、アネキシンV発現(上パネル、X軸)によって、アポトーシス細胞が検出され、Y軸(上パネル)の蛍光によって、内部移行したイブルチニブ-Cy3.5蛍光の増加が見られた。右上および右下のゲートからの値を計数した。下パネル:3回の独立した実験におけるアネキシンV陽性細胞を要約した。P<0.05、両側T検定。α、抗。
【
図69】αIGF1R-mAB-プロタミン/遊離プロタミン-siRNA-プロタミンナノ担体による全身治療による、発がん性EWS-FLI1転座生成物のノックダウンによって、ユーイング肉腫異種移植腫瘍の増殖が阻害される。A.インビボ実験の処置スキーム。ナノ粒子が、示されたように腹腔内に与えられた。B~C.SK-N-MC異種移植腫瘍に対するターゲティングされたナノ担体の全身インビボ適用の結果。B.αIGF1R-mABテプロツムマブ(「Tepro」)-プロタミン/PsiRNAナノ粒子によって処置されたSK-N-MCの腫瘍増殖曲線(平均値+/-SEM;両側t検定、*p<0.05)。C.実験の最後に切除された腫瘍の重量統計量(平均値+SD、両側t検定、*p<0.05)。α、抗。
【
図70】担体抗体-プロタミン/遊離プロタミンとsiRNAとによって形成されたナノ粒子は、ほぼ中性の表面電荷を呈する。他の場所に記載されたように、ナノ粒子を2時間形成させ、動的光散乱(DLS)分析(Malvern Zeta-sizer)に供した。粒子サイズは、異なる抗体コンジュゲーション調製物に依って、示された偏差を伴う350~750nmの範囲であった。さらに重要なことに、粒子表面のゼータ電位は、わずかにのみ負~中性であった。
【
図71】抗EGFR-mAB-SMCC-プロタミンコンジュゲートと遊離SMCC-プロタミンとsiRNAとの間の効果的なナノ粒子形成のための前提条件の解読。A~G.32倍のSMCC-プロタミン、および抗体濃度に対する上昇するモル比(1:0.6~1:40)のAlexa488-対照siRNAの存在下での、60nM αEGFR-mAB-Pによる小胞形成。小胞形成は、siRNAの5~10倍モル過剰で観察され得る(D~E)。上パネル:Alexa488-siRNA陽性小胞の蛍光顕微鏡法。下パネル:上パネルと同じ調製物の位相差。α、抗。
【
図72】αEGFR-プロタミン/遊離プロタミン-Alexa488-siRNAによって形成されたナノ粒子は、血清含有条件で安定的である。A~B.αEGFR-mAB-プロタミンと遊離プロタミンとAlexa488-siRNAとを1:10の比率で2時間自己集合させ、その後、24時間、PBS(A)およびPBS/50%FCS(B)において24時間インキュベートした後の安定性。α、抗。
【
図73】αCD20-mAB-プロタミン/遊離P-イブルチニブ-Cy3.5ナノ担体の血清安定性。A~F.αCD20-mAB-プロタミンと遊離プロタミンとイブルチニブ-Cy3.5とを1:20の比率で2時間自己集合させ、その後、PBS(A、D)ならびに難条件、例えば、細胞培養培地RPMI/10%FCS(B、E)およびPBS/50%FCS(C、F)において、24時間(A~C)または72時間(D~F)インキュベートした後の安定性。A~F:Cy3.5蛍光顕微鏡法。α、抗。
【
図74】3つの異なるターゲティング抗体によって構築されたsiRNAナノ担体のpH安定性。各々10倍モル過剰のsiRNAと共に、αEGFR-mAB-プロタミン/遊離プロタミン(上パネル)、αIGF1R-mAB-プロタミン/遊離プロタミン(中央パネル)、およびαCD33-mAB-プロタミン/遊離プロタミン(下パネル)によって形成されたナノ担体を、標準的な条件で、RTで2時間形成させ、次いで、チャンバースライドにおける24時間の各pH安定性試験のため、30倍体積のそれぞれの緩衝液で希釈した。次に、スライドを洗浄し、マウントし、蛍光顕微鏡法に供した。ナノ担体は、5.2~8.0のpH値で安定的であり、より低いpHで凝集する傾向があることが示された。α、抗。
【
図75】αCD20-mAB-プロタミン/遊離プロタミンおよびイブルチニブ-Cy3.5によって構築されたナノ担体のpH安定性。αCD20-mAB-プロタミン/遊離プロタミンと20倍モル過剰のイブルチニブ-Cy3.5とによって形成されたナノ担体を、標準的な条件で、RTで2時間形成させ、次いで、チャンバースライドにおける24時間の各pH安定性試験のため、30倍体積のそれぞれの緩衝液で希釈した。次に、スライドを洗浄し、マウントし、蛍光顕微鏡法に供した。ナノ担体は、5.8~8.0のpH値で安定的であり、より低いpHで崩壊する傾向があることが示された。α、抗。
【
図76】αEGFR-mAB-P/遊離プロタミン-siRNAナノ担体内のターゲティングIgG抗体の免疫標識。2時間の自己集合によってナノ担体を形成させ(αEGFR-P/遊離プロタミン+Alexa488-siRNA(AおよびDの緑色))、処理されたガラス表面に一晩固定化し(A、E)、αhIgG-Alexa647によって染色し(A~C)、PBSで濯ぎ、DAKO蛍光封入剤によってマウントし、蛍光顕微鏡法に供した。ナノ担体構造は、表面領域においてのみターゲティングαEGFR抗体のAlexa647の顕著な染色を示す(B~C)。F.染色手法に関する概略図。α、抗。
【
図77】αIGF1R-mAB-P/遊離プロタミンsiRNAナノ担体内のターゲティングIgG抗体の免疫標識。2時間の自己集合によってナノ担体を形成させ(テプロツムマブ-プロタミン+Alexa488-siRNA(緑色))、処理されたガラス表面に一晩固定化し(A、D)、αhIgG-Alexa647によって染色し(A~C)、PBSで濯ぎ、DAKO蛍光封入剤によってマウントし、蛍光顕微鏡法に供した。ナノ担体構造は、表面領域においてのみターゲティングテプロツムマブ抗体のAlexa647の顕著な染色を示す(B~C)。F.染色手法に関する概略図。α、抗。
【
図78-1】ナノ担体複合体内の遊離プロタミンの可視化。ここでは、サイズ排除クロマトグラフィによって遊離プロタミンを枯渇させたαEGFR-mAB-プロタミン調製物、およびCy3発色団によってタグ付けされた遊離プロタミンによって再構成されたこの調製物を使用した。A:プロタミンを、製造業者の推奨に従って、Cy3-NHSエステルにコンジュゲートし、スピンカラムによって精製した。得られたプロタミン-Cy3は、強いCy3依存性蛍光を示し、コンジュゲートされていない材料と比較可能に濃縮され、従って、それを、一般的な32倍モル過剰で抗体-プロタミンに再構成した(B)。この再構成された材料とタグ無しsiRNAとによって形成されたsiRNAナノ担体は、ナノ構造の内腔に、プロタミンの強いCy3依存性の蛍光シグナルを示した(C)。対照的に、αhIgG-Alexa 647抗体によってαヒトIgGシグナルについて染色された同じナノ構造は、抗体位置について陽性に染色された周縁構造を呈した(D)。E:CおよびDの強調された部分のマージおよび拡大図。F:Eの強調された部分の拡大図。α、抗。
【
図79】シアニン色素にコンジュゲートされた阻害剤、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、およびベネトクラクスの合成。
【
図80】より簡単でより安価なポリアニオン性分子部分への概念の拡張。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明
本願の発明者らは、Baumer,N.et al.,2016 Nat.Protoc.11,22-36に記載される抗体-プロタミンコンジュゲートのためのコンジュゲーションプロトコルの修正が、抗体-プロタミンコンジュゲートと、標的へ送達すべき陰性荷電カーゴ分子とを含むナノ粒子の形成をもたらすことを、驚くべきことに見出した。
【0017】
プロタミンに化学的にコンジュゲートされているターゲティング部分と、遊離プロタミンと、siRNAなどの陰性荷電カーゴ分子とを含む複合ナノ粒子の形成は、発がん経路を選択的に阻止することができるsiRNAおよびその他のエフェクター薬物の細胞型特異的な治療的送達のために使用され得る。
【0018】
本発明のコンジュゲーションプロトコルにおいては、2つの工程が修正された。第1に、抗体-プロタミンの生成のためのコンジュゲーション工程を、抗体と、遊離スルホ-SMCCを本質的に含まないSMCC-プロタミンコンジュゲートとによって実施した。Baumer,N.et al.,2016 Nat.Protoc.11,22-36によって記載されたプロトコルにおいては、遊離スルホ-SMCCが、このコンジュゲーション工程に存在し、コンジュゲーション工程の後に初めて除去された。第2に、抗体-プロタミンコンジュゲートにsiRNAを負荷する工程のため、抗体-SMCCコンジュゲートとsiRNAとを、ある特定の量の遊離プロタミンの存在下で、相互に接触させる。驚くべきことに、抗体-プロタミンコンジュゲートと遊離プロタミンとsiRNAとを含むマクロ粒子が、この修正されたプロトコルによって形成される。
【0019】
本願の発明者らは、さらに驚くべきことに、そのようなナノ粒子が、記載された以前のプロトコル(Baumer,N.et al.,2016 Nat.Protoc.11,22-36)を使用して生成されたコンジュゲートと比較して、より効率的なsiRNAの結合および輸送を提供することを見出した。
【0020】
本発明の方法によって生成されたナノ構造は、直鎖状の単一抗体-プロタミン-siRNA複合体よりはるかに大きく、光学顕微鏡法によって小胞構造として検出され得る。これらのナノ粒子を形成させ、それぞれの細胞を効率的に標的とするためには、ある特定の量の未結合プロタミンが必要とされることを、本願の発明者らは見出した。次いで、意図された標的(がん)遺伝子のノックダウンが、特異的に実施される。低分子も標的特異的に効率的にそれぞれの細胞に輸送された、実施例6、15、および18~21に示されるように、陽性荷電ナノ構造(ミセル)は、他の陰性荷電低分子のための担体としても機能することができる。このアプローチによって、siRNAなどの治療用分子は、静電ナノ構造を形成するために機能するのみならず、ナノ構造の内部にも被包される。
【0021】
進行期および転移期にある大部分のがん型は、本発明が作成された時点で、効果的に治癒可能ではないため、新しい、より効果的な、より耐容性の良い治療オプションが、強く必要とされている。がん細胞に特異的な抗体などのターゲティング部分と、化学的に結合したSMCC-プロタミンと、遊離プロタミンとから構成されるナノ粒子は、そうでなければ真核細胞に取り込まれない陰性荷電分子、例えば、siRNAおよびその他の低分子を輸送することができる。特に、siRNAは、任意の遺伝子に対して明確にされ得るため、この系は、多数の疾患、例えば、がん、神経変性、およびウイルス感染に適用可能である可能性がある。
【0022】
従って、本願は、(c)抗体を、第1のコンジュゲート(A)を含む組成物と接触させる工程であって、第1のコンジュゲートが、二官能性リンカーにコンジュゲートされている陽性荷電ポリペプチドを含み、該組成物が、コンジュゲートされていない二官能性リンカーを本質的に含まないことを特徴とし、それによって、第2のコンジュゲート(B)が得られ、第2のコンジュゲートが、陽性荷電ポリペプチドと二官能性リンカーと抗体とを含む、工程;および(d)第2のコンジュゲート(B)と陽性荷電ポリペプチドと陰性荷電分子とを接触させる工程であって、それによって、ナノ粒子を形成させる、工程を含む、ナノ粒子を生成する方法に関する。
【0023】
「第1のコンジュゲート」とは、本明細書において使用されるように、二官能性リンカーにコンジュゲートされている陽性荷電ポリペプチドを含む、または、好ましくは、それからなるコンジュゲートをさす。
【0024】
本開示の方法において、(c)は、抗体が第1のコンジュゲートにコンジュゲートされるコンジュゲーション工程である。Baumer,N.et al.,2016 Nat.Protoc.11,22-36によって以前に記載された方法とは対照的に、この工程において利用される第1のコンジュゲートを含む組成物は、コンジュゲートされていない二官能性リンカーを本質的に含まない。これと一致して、工程(c)のコンジュゲーションは、好ましくは、コンジュゲートされていない二官能性リンカーを本質的に含まない組成物において実施される。
【0025】
工程(c)において、第1のコンジュゲートは、好ましくは、抗体と比較してモル過剰であり、即ち、好ましくは、第1のコンジュゲート分子は抗体分子より多く存在する。いくつかの態様において、工程(c)における第1のコンジュゲートと抗体とのモル比は、少なくとも約10:1、好ましくは、少なくとも約15:1、好ましくは、少なくとも約20:1である。いくつかの態様において、第1のコンジュゲートと抗体とのモル比は、約50:1まで、好ましくは、約45:1まで、好ましくは、約40:1までである。いくつかの態様において、工程(c)における第1のコンジュゲートと抗体とのモル比は、約10:1~50:1、好ましくは、約15:1~約45:1、好ましくは、約20:1~約40:1の範囲である。好ましい態様において、第1のコンジュゲートと抗体とのモル比は、約20:1、約21:1、約22:1、約23:1、約24:1、約25:1、約26:1、約27:1、約28:1、約29:1、約30:1、約31:1、約32:1、約33:1、約34:1、約35:1、約36:1、約37:1、約38:1、約39:1、約40:1である。
【0026】
本開示の方法において、工程(d)において、第2のコンジュゲートと陽性荷電ポリペプチドと陰性荷電分子とが、相互に接触させられる。理論によって拘束されることは望まないが、前記の3つの成分は、ナノ粒子を形成するため、自己集合すると考えられる。ここで、第2のコンジュゲートは、工程(c)において形成される第2のコンジュゲートである。
【0027】
工程(d)に関して、陽性荷電ポリペプチドに言及する時、その表現は、遊離の陽性荷電ポリペプチドと、陽性荷電ポリペプチドのコンジュゲート、例えば、リンカーにコンジュゲートされている陽性荷電ポリペプチドとの両方を包含する。工程(d)の陽性荷電ポリペプチドは、工程(c)における第1のコンジュゲートであってもよいし、または工程(c)における第1のコンジュゲートとは別の分子であってもよい。例えば、工程(d)に関して、陽性荷電ポリペプチドという用語は、(遊離の)プロタミンとSMCC-プロタミンとの両方を包含することができる。工程(d)に関して、この用語は、異なる陽性荷電ポリペプチドの混合物、例えば、陽性荷電ポリペプチドと陽性荷電ポリペプチドのコンジュゲートとの混合物も包含する。
【0028】
いくつかの態様において、工程(d)の陽性荷電ポリペプチドは、工程(c)の第1のコンジュゲートである。例示的な例として、工程(d)の陽性荷電ポリペプチドは、SMCC-プロタミンであり、工程(c)の第1のコンジュゲートも、SMCC-プロタミンである。工程(d)の陽性荷電ポリペプチドが工程(c)の第1のコンジュゲートである場合、(この場合、「残留」第1のコンジュゲートを含む)「残留」陽性荷電ポリペプチドから、工程(c)において形成される第2のコンジュゲートを分離する工程無しに、工程(c)において形成される組成物を、工程(d)において使用することができる。
【0029】
いくつかの態様において、工程(d)の陽性荷電ポリペプチドは、工程(c)の第1のコンジュゲートとは異なる。例示的な例として、工程(d)の陽性荷電ポリペプチドは、(遊離)プロタミンであるのに対し、工程(c)の第1のコンジュゲートは、SMCC-プロタミンである。そのようなケースにおいて、方法は、工程(c)の後、かつ/または工程(d)の前に、第2のコンジュゲートを第1のコンジュゲートから分離する工程を、工程(c)の後に含み得る。方法は、工程(d)において、かつ/または工程(d)の前に、陽性荷電ポリペプチドの添加も含み得る。
【0030】
工程(d)に関して、好ましい陽性荷電ポリペプチドには、プロタミン、SMCC-プロタミン、ヒストンサブユニット、SMCCにコンジュゲートされているヒストンサブユニット、またはそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されるわけではなく、プロタミン、SMCC-プロタミン、またはそれらの混合物が、好ましく、プロタミンまたはSMCC-プロタミンが、より好ましい。
【0031】
工程(d)において、陽性荷電ポリペプチドは、好ましくは、第2のコンジュゲートと比較してモル過剰であり、即ち、好ましくは、陽性荷電ポリペプチド分子は第2のコンジュゲート分子より多く存在する。いくつかの態様において、工程(d)における陽性荷電ポリペプチドと第2のコンジュゲートとのモル比は、少なくとも約10:1、好ましくは、少なくとも約15:1、好ましくは、少なくとも約20:1である。いくつかの態様において、陽性荷電ポリペプチドと第2のコンジュゲートとのモル比は、約50:1まで、好ましくは、約45:1まで、好ましくは、約40:1までである。いくつかの態様において、工程(d)における陽性荷電ポリペプチドと第2のコンジュゲートとのモル比は、約10:1~50:1、好ましくは、約15:1~約45:1、好ましくは、約20:1~約40:1の範囲である。好ましい態様において、陽性荷電ポリペプチドと第2のコンジュゲートとのモル比は、約20:1、約21:1、約22:1、約23:1、約24:1、約25:1、約26:1、約27:1、約28:1、約29:1、約30:1、約31:1、約32:1、約33:1、約34:1、約35:1、約36:1、約37:1、約38:1、約39:1、約40:1である。
【0032】
工程(d)において、陰性荷電分子は、好ましくは、第2のコンジュゲートと比較してモル過剰であり、即ち、好ましくは、陰性荷電分子は第2のコンジュゲート分子より多く存在する。いくつかの態様において、工程(d)における陽性荷電ポリペプチドと第2のコンジュゲートとのモル比は、少なくとも約10:1、少なくとも約15:1、少なくとも約20:1、少なくとも約25:1、少なくとも約30:1、少なくとも約40:1、少なくとも約50:1、少なくとも約70:1、少なくとも約100:1、少なくとも約150:1、少なくとも約200:1、少なくとも約250:1、少なくとも約300:1、少なくとも約400:1、または少なくとも約500:1である。
【0033】
工程(d)において、陰性荷電分子は、好ましくは、陽性荷電ポリペプチドと比較して等モルまたはモル過剰であり、即ち、好ましくは、陰性荷電分子は、陽性荷電ポリペプチド分子とほぼ同数またはそれ以上、存在する。いくつかの態様において、工程(d)における陰性荷電分子と陽性荷電ポリペプチドとのモル比は、少なくとも約1:1、少なくとも約2:1、少なくとも約3:1、少なくとも約4:1、少なくとも約5:1、少なくとも約6:1、少なくとも約7:1、少なくとも約8:1、少なくとも約9:1、少なくとも約100:1、少なくとも約20:1、少なくとも約30:1、少なくとも約40:1、少なくとも約50:1、少なくとも約60:1、少なくとも約70:1、少なくとも約80:1、少なくとも約90:1、または少なくとも約100:1である。
【0034】
本開示の方法は、広範囲の温度で実施され得る。本願の実施例は、ナノ粒子が、約4℃でも、室温でも、37℃でも形成され得ることを示す。従って、本開示の方法、例えば、工程(c)および/または工程(d)は、約1℃~約60℃、好ましくは、約2℃~約50℃、好ましくは、約3℃~約40℃、より好ましくは、約4℃~約37℃の温度で実施され得ることが構想される。従って、工程(d)は、約1℃~約60℃、好ましくは、約2℃~約50°、好ましくは、約3℃~約40℃、より好ましくは、約4℃~約37℃の温度で実施され得る。
【0035】
工程(d)は、好ましくは、ナノ粒子の形成を可能にするインキュベーション工程を含むことが構想される。インキュベーション工程は、好ましくは、少なくとも約1時間、好ましくは、少なくとも約1.5時間、好ましくは、少なくとも約2時間実施される。インキュベーション工程は、好ましくは、約48時間まで、好ましくは、約24時間まで、好ましくは、約18時間まで、好ましくは、約12時間まで、好ましくは、約10時間まで、好ましくは、約9時間まで、好ましくは、約8時間まで、好ましくは、約7時間まで、好ましくは、約6時間まで実施される。インキュベーション工程は、好ましくは、約1時間~約48時間、好ましくは、約1時間~約24時間、好ましくは、約1時間~約18時間、好ましくは、約1時間~約12時間、好ましくは、約1時間~約10時間、好ましくは、約1時間~約9時間、好ましくは、約1.5時間~約8時間、好ましくは、約1.5~約7時間、好ましくは、約2時間~約6時間実施される。理論によって拘束されることは望まないが、約2時間~約6時間のインキュベーションにおいて、最適な結果が達成され得ると考えられる。従って、好ましい態様において、工程は、約2時間~約6時間、例えば、約2時間、約2.1時間、約2.2時間、約2.3時間、約2.4時間、約2.5時間、約2.6時間、約2.7時間、約2.8時間、約2.9時間、約3時間、約3.1時間、約3.2時間、約3.3時間、約3.4時間、約3.5時間、約3.6時間、約3.7時間、約3.8時間、約3.9時間、約4時間、約4.1時間、約4.2時間、約4.3時間、約4.4時間、約4.5時間、約4.6時間、約4.7時間、約4.8時間、約4.9時間、約5時間、約5.1時間、約5.2時間、約5.3時間、約5.4時間、約5.5時間、約5.6時間、約5.7時間、約5.8時間、約5.9時間、および約6時間のインキュベーション工程を含む。
【0036】
本開示の方法は、工程(c)の前に、(a)陽性荷電ポリペプチドを二官能性リンカーにコンジュゲートする工程、および(b)コンジュゲートされていないリンカーを除去する工程をさらに含み得る。
【0037】
「コンジュゲートされていないリンカーを除去する」という用語は、本明細書において使用されるように、陽性荷電ポリペプチドと二官能性リンカーとのコンジュゲート(即ち、第1のコンジュゲート)を、コンジュゲートされていないリンカーから分離するために適当な任意の工程をさす。そのような方法は、当業者に周知であり、例えば、濾過、透析、ゲル濾過、クロマトグラフィ、または電気泳動を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0038】
「コンジュゲーション」または「コンジュゲート」という用語は、本明細書において使用されるように、化学的コンジュゲーションを含むが、これに限定されるわけではない手段による、全ての型の共有結合による、2個以上の分子の接合をさす。従って、コンジュゲーションは、リンカーの少なくとも一部分の、ポリペプチドへのコンジュゲーションを含み得る。この接続は、異なる反応基を介して達成されてもよいし、または同じ反応基を介して達成されてもよい。
【0039】
架橋のために標的とされ得るポリペプチド上の官能基には、一級アミン、スルフヒドリル、カルボニル、ヒドロキシル、炭水化物、カルボン酸等が含まれ、好ましくは、アミンおよび/またはスルフヒドリルおよび/またはカルボキシルを介して含まれる。いくつかの態様において、リンカーのポリペプチドへのコンジュゲーションは、該ポリペプチドのNH2基を介して達成される。いくつかの態様において、リンカーのポリペプチドへのコンジュゲーションは、該ポリペプチドのチオール基を介して達成される。いくつかの態様において、リンカーのポリペプチドへのコンジュゲーションは、該ポリペプチドのカルボキシル基を介して達成される。リンカー(または架橋剤)をポリペプチドに化学的にコンジュゲートする方法は、当業者に周知である。
【0040】
本開示の方法は、工程(c)の前に、抗体の精製の工程をさらに含み得る。そのような精製工程は、脱塩工程であり得る。そのような脱塩方法は、当業者に周知であり、例えば、ゲル濾過または透析を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0041】
本開示の方法は、工程(c)において得られたナノ粒子を、その作製環境の成分から分離し、かつ/または回収する工程をさらに含み得る。好ましくは、分離および/または回収の後、ナノ粒子は、その作製環境に由来する全ての他の成分との関連を含まないか、または実質的に含まない。その作製環境からの混入成分は、典型的には、ナノ粒子の使用、具体的には、治療的使用に干渉する材料であり、遊離の第2のコンジュゲート(即ち、ナノ粒子に含まれていない第2のコンジュゲート)、遊離の(即ち、ナノ粒子に含まれていない)陽性荷電ポリペプチド、または遊離の(即ち、ナノ粒子に含まれていない)陰性荷電分子を含み得る。ナノ粒子は、例えば、所定の試料の中の全タンパク質の少なくとも約5重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも約15重量%、少なくとも約20重量%、少なくとも約25重量%、少なくとも約30重量%、少なくとも約35重量%、少なくとも約40重量%、少なくとも約45重量%を構成し得る。好ましい態様において、ナノ粒子は、所定の試料の中の全タンパク質の少なくとも約50重量%、少なくとも約55重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約65重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約75重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約85重量%を構成する。好ましい態様において、ナノ粒子は、所定の試料の中の全タンパク質の少なくとも約90重量%、少なくとも約91重量%、少なくとも約92重量%、少なくとも約93重量%、少なくとも約94重量%、少なくとも約95重量%、少なくとも約96重量%、少なくとも約97重量%、少なくとも約98重量%、または少なくとも約99重量%を構成する。単離されたナノ粒子は、状況に依って、全タンパク質含量の約5%~約99.9重量%または約100重量%を構成し得ることが理解される。
【0042】
本開示の方法は、以下の工程を含み得る:
任意選択の:(a)陽性荷電ポリペプチドを二官能性リンカーにコンジュゲートする工程;
任意選択の:(b)コンジュゲートされていない二官能性リンカーを除去する工程;
任意選択の:抗体を精製する工程;
(c)抗体を、第1のコンジュゲート(A)を含む組成物と接触させる工程であって、第1のコンジュゲートが、二官能性リンカーにコンジュゲートされている陽性荷電ポリペプチドを含み、該組成物が、コンジュゲートされていない二官能性リンカーを本質的に含まないことを特徴とし、それによって、第2のコンジュゲート(B)が得られ、第2のコンジュゲートが、陽性荷電ポリペプチドと二官能性リンカーと抗体とを含む、工程;
任意選択の:タンパク質含量を決定する工程;
任意選択の;好ましくは、フローサイトメトリーを介して、抗体機能性を評価する工程;
(d)第2のコンジュゲート(B)と陽性荷電ポリペプチドと陰性荷電分子とを接触させる工程であって、それによって、ナノ粒子を形成させる、工程;および/または
任意選択の:ナノ粒子を回収し、かつ/もしくは単離する工程。
【0043】
「ポリペプチド」という用語は、本明細書において使用されるように、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸残基の一本鎖から構成される化合物をさす。「タンパク質」という用語は、本明細書において使用されるように、「ポリペプチド」という用語と同義であり得、または、さらに、2つ以上のポリペプチドの複合体をさし得る。ポリペプチドは、本明細書において使用されるように、少なくとも約10、少なくとも約20、少なくとも約30、少なくとも約40、少なくとも約50、少なくとも約60、少なくとも約70、少なくとも約80、少なくとも約90、少なくとも約100、少なくとも約150、少なくとも約200、少なくとも約250、少なくとも約300、少なくとも約350、少なくとも約400、少なくとも約450、少なくとも約500、少なくとも約600、少なくとも約700、またはさらにそれ以上のアミノ酸を含み得る。
【0044】
ポリペプチドは、本明細書において使用されるように、好ましくは、天然に存在し、かつ/またはタンパク質を構成するアミノ酸からなる。しかしながら、アミノ酸および/またはペプチド結合が機能的類似体に置換されたペプチド模倣体も、本発明に包含される。ポリペプチドという用語は、ポリペプチドの修飾、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化等もさし、それらを排除しない。そのような修飾は、基本的な参考書およびより詳細なモノグラフにも、研究文献にも、よく記載されている。
【0045】
「陽性荷電ポリペプチド」という用語は、生理学的pHまたはその近く(例えば、4~10、5~9、または6~8のpHを有する溶液中)で正味の正の電荷を有し、好ましくは、静電相互作用によって核酸または陰性荷電低分子と結合することができるポリペプチドを意味する。このクラスの担体には、プロタミン、ヒストン、またはヒストンサブユニットが含まれるが、これらに限定されるわけではない。好ましくは、そのような陽性荷電ポリペプチドは、少なくとも2+、好ましくは、少なくとも3+、好ましくは、少なくとも4+、好ましくは、少なくとも5+、好ましくは、少なくとも6+、好ましくは、少なくとも7+、好ましくは、少なくとも8+、好ましくは、少なくとも9+、好ましくは、少なくとも10+、好ましくは、少なくとも11+、好ましくは、少なくとも12+、好ましくは、少なくとも13+、好ましくは、少なくとも14+、好ましくは、少なくとも15+、好ましくは、少なくとも16+、好ましくは、少なくとも17+、好ましくは、少なくとも18+、好ましくは、少なくとも19+、好ましくは、少なくとも20+の正味の電荷を有する。「陽性荷電ポリペプチド」という用語は、遊離の(即ち、コンジュゲートされていない)ポリペプチドと、コンジュゲートされているポリペプチド、例えば、リンカーにコンジュゲートされているポリペプチドとの両方を包含し得る。
【0046】
本開示による好ましい陽性荷電ポリペプチドは、プロタミンを含む。プロタミンとは、小さい強塩基性のタンパク質をさし、その陽性荷電アミノ酸基(具体的には、アルギニン)は、一般的に、群れをなして配置されており、ポリカチオン性の性質のため、核酸の負の電荷を中和する。「プロタミン」という用語は、本明細書において使用されるように、天然起源もしくは生物学的起源から得られる、またはそれらに由来する任意のプロタミンアミノ酸配列、例えば、それらの断片、および該アミノ酸配列の多量体型またはそれらの断片を含むものとする。プロタミンは、天然起源のものであってもよいし、または組換え法によって作製されたものであってもよい。組換え法の使用は、複数コピーのプロタミンを作製することを可能にし、またはプロタミンの分子サイズおよびアミノ酸配列を修飾してもよい。相当する化合物が、化学的に合成されてもよい。人工プロタミンが合成される時、使用される手法は、例えば、輸送機能にとって望ましくない天然プロタミンの機能(例えば、DNAの凝縮)を有するアミノ酸残基の、他の適当なアミノ酸への置換を含み得る。一般に、本開示によるプロタミンは、任意の種のもの、または任意の種に由来するものであり得る。本開示のプロタミンは、哺乳類、鳥類、両生類、爬虫類、または魚類に由来するものであり得る。本開示のプロタミンは、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウマ、ウシ(cattle)、ブタ、ヤギ、ニワトリ、ヒツジ、ロバ、ウサギ、アルパカ、ラマ、ガチョウ、ウシ(ox)、シチメンチョウ、サケ等からなる群より選択される任意の種、好ましくは、ヒトもしくはサケのもの、またはそれらに由来するものであり得る。本開示のプロタミンは、異なるプロタミンの混合物であってもよい。好ましいプロタミンには、サケプロタミンが含まれる。好ましいプロタミンには、ヒトプロタミンが含まれる。好ましいプロタミンは、SEQ ID NO:53に示されるサケプロタミンに対して少なくとも約80%、好ましくは、少なくとも約85%、好ましくは、少なくとも約90%、好ましくは、少なくとも約95%の配列同一性を有する配列を含むか、または、好ましくは、それからなる。好ましいプロタミンは、SEQ ID NO:53に示されるサケプロタミンを含むか、または、好ましくは、それからなる。好ましいプロタミンは、SEQ ID NO:55に示されるヒトプロタミン1に対して少なくとも約80%、好ましくは、少なくとも約85%、好ましくは、少なくとも約90%、好ましくは、少なくとも約95%の配列同一性を有する配列を含むか、または、好ましくは、それからなる。好ましいプロタミンは、SEQ ID NO:55に示されるヒトプロタミン1を含むか、または、好ましくは、それからなる。
【0047】
前記のように、プロタミンは、siRNAなどの陰性荷電核酸とも直ちに相互作用する強い陽性荷電タンパク質である。理論によって拘束されることは望まないが、細胞内への複合体の取り込みは、受容体によって媒介されるエンドサイトーシスを介して媒介されると考えられる。さらに、抗体は受容体に結合し、ナノ粒子はクラスリン被覆ピットにおけるエンドサイトーシスを介して内部移行すると考えられる。さらに、小胞は細胞内に輸送され、そこで、siRNAが、ナノ粒子から放出され、RNAi経路に入ることができると考えられる。
【0048】
本開示によるさらに好ましい陽性荷電ポリペプチドには、ヒストンまたはヒストンサブユニットが含まれる。ヒストンとは、ヌクレオチド配列とは無関係に、DNAと結合し、それをヌクレオソームに折り畳むことを可能にする、陽性荷電アミノ酸(リジンおよびアルギニン)を高い割合で有する、クロマチンに存在する小さいDNA結合タンパク質をさす。「ヒストン」という用語は、本明細書において使用されるように、天然起源もしくは生物学的起源から得られる、またはそれらに由来する任意のヒストンアミノ酸配列、例えば、ヒストンサブユニット、それらの断片、および該アミノ酸配列の多量体型、またはそれらの断片を含むものとする。ヒストンH2、H3、およびH4が、特に適当である。一般に、本開示によるヒストンは、任意の種のもの、または任意の種に由来するものであり得る。本開示のヒストンは、哺乳類、鳥類、両生類、爬虫類、または魚類に由来するものであり得る。本開示のヒストンは、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウマ、ウシ、ブタ、ヤギ、ニワトリ、ヒツジ、ロバ、ウサギ、アルパカ、ラマ、ガチョウ、ウシ、シチメンチョウ、サケ等からなる群より選択される任意の種、好ましくは、ヒトのもの、またはそれらに由来するものであり得る。本開示のヒストンは、異なるヒストンまたはヒストンサブユニットの混合物であってもよい。好ましいヒストンには、ヒトヒストンが含まれる。好ましいヒストンは、SEQ ID NO:56に示されるヒトヒストンH2に対して少なくとも約80%、好ましくは、少なくとも約85%、好ましくは、少なくとも約90%、好ましくは、少なくとも約95%、好ましくは、少なくとも約98%、好ましくは、少なくとも約99%の配列同一性を有する配列を含むか、または、好ましくは、それからなる。好ましいヒストンは、SEQ ID NO:56に示されるヒトヒストンH2を含むか、または、好ましくは、それからなる。好ましいヒストンは、SEQ ID NO:57に示されるヒトヒストンH2由来ペプチドに対して少なくとも約80%、好ましくは、少なくとも約85%、好ましくは、少なくとも約90%、好ましくは、少なくとも約95%の配列同一性を有する配列を含むか、または、好ましくは、それからなる。好ましいヒストンは、SEQ ID NO:57に示されるヒトヒストンH2由来ペプチドを含むか、または、好ましくは、それからなる。好ましいヒストンは、SEQ ID NO:58に示されるヒトヒストンH2由来ペプチドに対して少なくとも約80%、好ましくは、少なくとも約85%、好ましくは、少なくとも約90%、好ましくは、少なくとも約95%の配列同一性を有する配列を含むか、または、好ましくは、それからなる。好ましいヒストンは、SEQ ID NO:58に示されるヒトヒストンH2由来ペプチドを含むか、または、好ましくは、それからなる。
【0049】
「リンカー」とは、本明細書において使用されるように、遊離の(即ち、コンジュゲートされていない)形態の少なくとも2つの官能基を含有するクロスリンカーまたは架橋剤をさし得る。1つの態様において、本発明の方法は、カルボジイミド、カルボニル、イミドエステル、イソシネート、マレイミド、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)-エステル、スルホ-NHS-エステル、PFP-エステル、ヒドロキシメチルホスフィン、アリールアジド、ピリジルジスルファイト、ビニルスルホンを含むが、これらに限定されるわけではない官能基を有する、ホモ二官能性またはヘテロ二官能性である架橋剤を含む。それらが生成する結合には、アミド結合、ジスルフィド結合、ヒドラジン結合、チオエーテル結合、およびエステル結合が含まれるが、これらに限定されるわけではない。架橋のためリンカーまたは架橋剤によって標的とされ得る官能基には、一級アミン、スルヒドリル、カルボニル、ヒドロキシル、炭水化物、カルボキシル等、好ましくは、アミンおよびスルフヒドリル、最も好ましくは、スルフヒドリルが含まれる。好ましくは、リンカーは、切断可能なジスルフィド結合(S-S)を含まない。1つの態様において、リンカーは、pH依存的な切断可能な側を含む。リンカーは、水溶性であり得、細胞膜透過性であり得、様々なスペーサーアーム長を有することができ、自発的に反応性であり得、または光反応基を含み得る。さらに、リンカーは、標識またはタグ付けされていてもよい。
【0050】
1つの態様において、リンカーは、抗体および陽性荷電ポリペプチドに直接コンジュゲートされてよく、そのための一例は、スルホ-SMCCリンカーである。架橋剤の例には、N-ヒドロキシスルホスクシンイミド(スルホ-NHS)、スルホスクシンイミジル(パーフルオロ-ジドベンズアミド)エチル-1,3'-ジチオプロピオネート(スルホ-SFAD)、スクシンイミジル4-ホルミルベンゾエート(SFB)、スクシンイミジル4-ヒドラジノニコチネートアセトンヒドラゾン(SANH)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)-プロピオネート(SPDP)、2-イミノチオラン(トラウト試薬)、N-スクシンイミジル(アセチルチオ)アセテート(SATA)、および3[2-ピリジルジチオ]プロピオニルヒドラジド(PDPH)、または公に入手可能であり、当業者に公知のその他の任意のリンカーが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0051】
「ヘテロ官能性」リンカーとは、標的とされる官能基が相互に異なるリンカーをさす。1つの態様において、リンカーは、架橋のため標的とされる官能基として、アミンおよびスルフヒドリル、またはアミンおよびヒドロキシル、好ましくは、アミンおよびスルフヒドリルを含む。別の態様において、本発明の方法は、架橋のため標的とされる官能基として、アミンおよびスルフヒドリルを含むリンカーを含む。別の態様において、本発明の方法は、切断可能な部位を含まない、例えば、切断可能なジスルフィド結合(S-S)を有しないヘテロ二官能性リンカーを含む。好ましいヘテロ官能性リンカーは、例えば、α-マレイミドアセトキシ-スクシンイミドエステル(AMAS)、N(4-[p-アジドサリチルアミド]ブチル)-3'-(2'-ピリジルジチオ)プロピオンアミド(APDP*)、(β-マレイミドプロピオン酸)ヒドラジド・TFA(BMPH)、(β-マレイミドプロピルオキシ)スクシンイミドエステル(BMPS)、ε-マレイミドカプロン酸(EMCA)、(ε-マレイミドカプロイルオキシ)スクシンイミドエステル(EMCS)、(γ-マレイミドブチリルオキシ)スクシンイミドエステル(GMBS)、κ-マレイミドウンデカン酸(KMUA)、スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシ-(6-アミドカプロエート)(LC-SMCC)、スクシンイミジル-6-(3'-[2-ピリジル-ジチオ]プロピオンアミド)ヘキサノエート(LC-SPDP)、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、スクシンイムジル-3-(ブロモアセトアミド)プロピオネート(SBAP)、スクシンイミジル(4-ヨードアセチル)アミノベンゾエート(SIAB)、スクシンイミジルヨードアセテート(SIA)、スクシンイミジル4-(ρ-マレイミド-フェニル)ブチレート(SMPB)、NHS-PEG24-マレイミドSM(PEG24)、NHS-PEG12-マリエミド(SM[PEG]12)、NHS-PEG8-マリエミド(SM[PEG]8)、NHS-PEG6-マレイミド(SM(PEG)6)、NHS-PEG4-マリエミド(SM[PEG]4)、NHS-PEG2-マリエミド(SM[PEG]2)、スクシンイミジル4-(N-マレイミド-メチル)シクロヘキサン-カルボキシレート(SMCC)、スクシンイミジルヨードアセテート(SIA)、スクシンイミジル(4-ヨードアセチル)アミノベンゾエート(SIAB)、(ε-マレイミドカプロイルオキシ)スルホスクシンイミドエステル(スルホ-EMCS)、-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル-6-(β-マレイミドプロピオンアミド)ヘキサノエート(SMPH)、N-(γ-マレイミドブトリルオキシ)スルホスクシンイミドエステル(スルホ-GMBS)、-(κ-マレイミドウンデカノイルオキシ)スルホスクシンイミドエステル(スルホ-KMUS)、スルホスクシンイミジル6-(α-メチル-α-[2-ピリジルジチオ]-トルアミド)ヘキサノエート(スルホ-LC-SMPT)、スルホスクシンイミジル6-(3'-[2-ピリジル-ジチオ]プロピオンアミド)ヘキサノエート(スルホ-LC-SPDP)、マレイミドベンゾイル-ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル(スルホ-MBS)、スルホスクシンイミジル(4-ヨード-アセチル)アミノベンゾエート(スルホ-SIAB)、スルホスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(スルホ-SMCC)、スルホスクシンイミジル4-(p-マレイミドフェニル)ブチレート(スルホ-SMPB)、N,N-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)、スルホ-NHS-(2-6-[ビオチンアミド]-2-(p-アジドベザミド)(スルホ-SBED)である。ヘテロ二官能性リンカーは、本発明の方法において、好ましい。
【0052】
いくつかの態様において、本発明の方法は、スルホ-SMCCであるヘテロ二官能性リンカーを含む。
【0053】
「コンジュゲートされていない二官能性リンカー」とは、本明細書において使用されるように、両方の官能基がコンジュゲートされていない二官能性リンカーをさす。いくつかの態様において、コンジュゲートされていない二官能性リンカーは、陽性荷電ポリペプチドにコンジュゲートされていない。いくつかの態様において、コンジュゲートされていない二官能性リンカーは、抗体にコンジュゲートされていない。
【0054】
「コンジュゲートされていない二官能性リンカーを本質的に含まない」という用語は、本明細書において使用されるように、コンジュゲートされていない二官能性リンカーが組成物の中に存在しないことが好ましいが、本開示による組成物の中に極めて少量のコンジュゲートされていない二官能性リンカーを有することが可能であり、但し、好ましくは、これらの量が、そのような組成物の有利な利用に実質的に影響しないことを意味する。いくつかの態様において、コンジュゲートされていないリンカーを本質的に含まない第1のコンジュゲートを含む組成物は、第1のコンジュゲート分子を、コンジュゲートされていないリンカー分子より少なくとも約10倍多く含む。従って、コンジュゲートされていないリンカーを本質的に含まない第1のコンジュゲートは、好ましくは、約10:1以上、好ましくは、約20:1以上、好ましくは、約50:1以上、好ましくは、約100:1以上、好ましくは、約200:1以上、好ましくは、約500:1以上、好ましくは、約1000:1以上、好ましくは、約2000:1以上、好ましくは、約5000:1以上、好ましくは、約10000:1以上である、第1のコンジュゲートと、コンジュゲートされていないリンカーとのモル比を有する。いくつかの態様において、コンジュゲートされていない二官能性リンカーを完全にまたは部分的に除去することができる精製工程、例えば、脱塩工程を受けた、第1のコンジュゲートと、コンジュゲートされていない二官能性リンカーとを最初に含んでいた組成物は、コンジュゲートされていない二官能性リンカーを本質的に含まない組成物であると見なされる。
【0055】
「抗体」という用語の定義は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、ヒト化抗体、およびヒト抗体などの態様を含む。全長抗体に加えて、その定義には、抗体誘導体および抗体断片、例えば、とりわけ、Fab断片も含まれる。抗体の断片または誘導体には、F(ab')2断片、Fv断片、scFv断片、またはシングルドメイン抗体、例えば、ドメイン抗体もしくはナノボディ、シングル可変ドメイン抗体、または他のV領域もしくはドメインとは無関係に抗原もしくはエピトープに特異的に結合する、VHH、VH、もしくはVLであり得る1個の可変ドメインのみを含む免疫グロブリン単一可変ドメインがさらに含まれる。この用語には、ダイアボディまたはデュアルアフィニティリターゲティング(Dual-Affinity Re-Targeting)(DART)抗体も含まれる。(二重特異性)単鎖ダイアボディ、タンデムダイアボディ(Tandab)、(VH-VL-CH3)2、(scFv-CH3)2、または(scFv-CH3-scFv)2のような構造によって例示される「ミニボディ」、「Fc DART」および「IgG DART」、マルチボディ、例えば、トリアボディが、さらに想定される。免疫グロブリンシングル可変ドメインには、単離された抗体シングル可変ドメインポリペプチドのみならず、抗体シングル可変ドメインポリペプチド配列のモノマーを1つまたは複数含むより大きいポリペプチドも包含される。
【0056】
さらに、「抗体」という用語は、本明細書において利用されるように、記載された抗体と同じ特異性を示す、本明細書に記載された抗体の誘導体またはバリアントにも関する。「抗体バリアント」の例には、非ヒト抗体のヒト化バリアント、「親和性成熟型」抗体、および変更されたエフェクター機能を有する抗体変異体が含まれる(例えば、米国特許第5,648,260号を参照すること)。
【0057】
「抗体」という用語には、異なるクラス(即ち、IgA、IgG、IgM、IgD、およびIgE)ならびにサブクラス(例えば、IgG1、IgG2等)の免疫グロブリン(Ig)も含まれる。本発明の意味における抗体という用語の定義に含まれる、抗体の誘導体は、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、ジスルフィド結合形成、ファルネシル化、水酸化、メチル化、またはエステル化などの分子の修飾を含む。
【0058】
抗体の機能性断片には、F(ab')2断片のドメイン、Fab断片、scFv、または単一の免疫グロブリン可変ドメインを含む構築物、またはシングルドメイン抗体ポリペプチド、例えば、単一の重鎖可変ドメインまたは単一の軽鎖可変ドメインが含まれ、本明細書中の前記のその他の抗体断片も含まれる。F(ab')2またはFabは、CH1ドメインとCLドメインとの間に起こる分子間ジスルフィド相互作用を最小化するか、または完全に除去するため、改変され得る。
【0059】
「ヒト」抗体という用語は、本明細書において使用されるように、抗体またはその機能性断片が、ヒト生殖系列抗体レパートリーに含有されるアミノ酸配列を含むことを意味すると理解されるべきである。従って、本明細書における定義のため、抗体またはその断片は、それが、そのようなヒト生殖系列アミノ酸配列からなる場合、即ち、当該抗体またはその機能性断片のアミノ酸配列が、発現されたヒト生殖系列アミノ酸配列と同一である場合、ヒトと見なされ得る。抗体またはその機能性断片は、その最も近いヒト生殖系列配列から、体細胞高頻度変異のインプリントのため予想される以上に逸脱しない配列からなる場合にも、ヒトと見なされ得る。さらに、多くの非ヒト哺乳類、例えば、げっ歯類、例えば、マウスおよびラットの抗体は、発現されたヒト抗体レパートリーにも存在すると予想され得るVH CDR3アミノ酸配列を含む。発現されたヒトレパートリーに存在すると予想され得る、ヒトまたは非ヒトが起源の任意のそのような配列も、本発明の目的のため、「ヒト」と見なされるであろう。従って、「ヒト抗体」という用語には、当技術分野において公知のヒト生殖系列免疫グロブリン配列に実質的に相当する可変領域および定常領域を有する抗体が含まれ、例えば、Kabatら(Kabat et al.,(1991)'Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.',National Institutes of Health)によって記載されたものが含まれる。
【0060】
本開示のヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダムなもしくは部位特異的な変異誘発によって、またはインビボでの体細胞変異によって導入された変異)を、例えば、CDR、具体的には、CDR3に含み得る。ヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基に置換された少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上の位置を有し得る。
【0061】
非ヒト抗体およびヒト抗体またはそれらの機能性断片は、好ましくは、モノクローナルである。モノクローナルであるヒト抗体を調製することは、特に困難である。マウスB細胞と不死化細胞株との融合物とは対照的に、ヒトB細胞と不死化細胞株との融合物は、生存可能でない。従って、ヒトモノクローナル抗体は、抗体テクノロジーの領域において存在することが一般的に認識されている大きい技術的障害を克服した結果である。抗体のモノクローナル性によって、そのような抗体は、十分に特徴決定され、再現性よく作製され、精製され得る単一の均一な分子種として存在するため、治療剤として使用するために特に適している。これらの要因は、その生物学的活性を高い精度で予測することができる生成物をもたらし、このことは、そのような分子が、ヒトにおける治療的投与のため、規制当局の認可を取得する予定である場合、極めて重要である。「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書において使用されるように、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体をさし、即ち、微量に存在し得る、可能性のある天然に存在する変異および/または翻訳後修飾(例えば、異性化、アミド化)を除き、集団を構成する個々の抗体は、同一である。モノクローナル抗体は、単一の抗原性部位に対して高度に特異的である。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的に含む、従来の(ポリクローナルな)抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して特異的である。特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の免疫グロブリンが混入していないハイブリドーマ培養物によって合成されるという点で有利である。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均一な抗体集団から得られるという抗体の特徴を示すものであって、特定の方法による抗体の作製を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohler et al.,Nature,256:495(1975)によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製されてもよいし、または組換えDNA法によって作製されてもよい(例えば、米国特許第4,816,567号を参照すること)。「モノクローナル抗体」は、例えば、Clackson et al.,Nature,352:624-628(1991)およびMarks et al.,J.Mol.Biol.,222:581-597(1991)に記載された技術を使用して、ファージ抗体ライブラリーから単離されてもよい。
【0062】
モノクローナル抗体または対応する機能性断片は、ヒト抗体または対応する機能性断片であることが、特に好ましい。ヒトへの治療的投与を目的とした抗体薬剤を企図する際、抗体がヒト起源のものであることは、高度に有利である。ヒト患者への投与の後、ヒト抗体またはその機能性断片は、おそらく、患者の免疫系による強力な免疫原性応答を誘発しない、即ち、非ヒトタンパク質である異物とは認識されない。即ち、治療用抗体の活性を阻止し、かつ/または患者の身体からの治療用抗体の排除を加速し、従って、望ましい治療効果の発揮を妨げる、治療用抗体に対する宿主、即ち、患者の抗体は、生成されない。
【0063】
本発明のさらなる態様によると、抗体は、免疫グロブリンであり得る。本発明のさらなる態様によると、抗体は、IgG抗体であり得る。IgGアイソタイプは、高度に弁別的な抗原の認識および結合を担う重鎖および軽鎖の可変抗体領域のみならず、「天然に」産生された抗体に通常存在する抗体ポリペプチドの重鎖および軽鎖の定常領域も含み、いくつかのケースにおいて、炭水化物による1つまたは複数の部位における修飾さえ含む。そのようなグリコシル化は、一般に、IgGフォーマットの特徴であり、インビボで様々なエフェクター機能を誘発することが公知である完全抗体のいわゆるFc領域を含む定常領域に位置する。さらに、Fc領域は、IgGのFc受容体との結合を媒介し、Fc受容体の存在が増加している位置、例えば、炎症組織へのIgGのホーミングも容易にする。有利には、IgG抗体は、IgG1抗体またはIgG4抗体であり、これらのフォーマットは、インビボでの作用機序が特によく理解され、特徴決定されているため、好ましい。これは、特に、IgG1抗体に当てはまる。
【0064】
本発明のさらなる態様によると、抗体の機能性断片は、好ましくは、scFv、シングルドメイン抗体、Fv、VHH抗体、ダイアボディ、タンデムダイアボディ、Fab、Fab'、またはF(ab)2であり得る。これらのフォーマットは、一般に、2つのサブクラス、即ち、単一のポリペプチド鎖からなるものと、少なくとも2本のポリペプチド鎖を含むものとに分けられ得る。前者のサブクラスのメンバーには、(ポリペプチドリンカーを介して単一のポリペプチド鎖に接合された1つのVH領域および1つのVL領域を含む)scFv;(単一の抗体可変領域を含む)シングルドメイン抗体、例えば、(単一のVH領域を含む)VHH抗体が含まれる。後者のサブクラスのメンバーには、(相互に非共有結合的に会合した別々のポリペプチド鎖として1つのVH領域および1つのVL領域を含む)Fv;(2つの抗体可変領域(通常、各ポリペプチド鎖につき1つのVHおよび1つのVL)を各々含む、2本の非共有結合的に会合したポリペプチド鎖を含み、2本のポリペプチド鎖が、二価の抗体分子が生じるよう、ヘッドトゥーテールコンフォメーションで配置されている)ダイアボディ;タンデムダイアボディ(2つの異なる特異性を有する4つの共有結合的に連結された免疫グロブリン可変領域(VH領域およびVL領域)を含み、前記のダイアボディの2倍の大きさのホモ二量体を形成する二重特異性単鎖Fv抗体);(それ自体、VL領域および軽鎖定常領域全体を含む抗体軽鎖全体を、1本のポリペプチド鎖として含み、完全なVH領域および重鎖定常領域の一部を含む抗体重鎖の一部を、もう1本のポリペプチド鎖として含み、それらの2本のポリペプチド鎖が鎖間ジスルフィド結合を介して分子間接続されている)Fab;Fab'(付加的な還元型ジスルフィド結合が抗体重鎖に含まれることを除き、前記のFabと同様);ならびに(2つのFab'分子を含み、各Fab'分子が鎖間ジスルフィド結合を介してそれぞれ他方のFab'分子に連結されている)F(ab)2が含まれる。一般に、本明細書中の前記の型の機能性抗体断片は、例えば、差し迫った具体的な緊急事態のため、治療的投与のために望まれる抗体の薬力学的特性を個別化する、大きい柔軟性を可能にする。例えば、血管新生が不十分であることが公知の組織(例えば、関節)を処置する時には、組織浸透の程度を増加させるため、投与される抗体のサイズを低下させることが望ましい場合がある。いくつかの状況において、治療用抗体が身体から排除される速度を増加させることが望ましい場合があり、その速度は、一般に、投与される抗体のサイズの減少によって加速可能である。抗体断片は、親抗体のエピトープ/標的に対する特異的結合特徴を維持する限り、例えば、CD33、EGFR、IGF1R、もしくはCD20に特異的に結合する限り、または抗体結合時に内部移行する能力を有するその他の細胞表面構造を標的とする抗体である限り、本発明に関して機能性抗体断片として定義される。
【0065】
本発明のさらなる態様によると、該抗体は、CLドメインを含み得る。本発明のさらなる態様によると、該抗体は、CH1ドメインを含み得る。本発明のさらなる態様によると、該抗体は、CH2ドメインを含み得る。本発明のさらなる態様によると、該抗体は、CH3ドメインを含み得る。本発明のさらなる態様によると、該抗体は、軽鎖全体を含み得る。本発明のさらなる態様によると、該抗体は、重鎖全体を含み得る。
【0066】
本発明のさらなる態様によると、該抗体またはその機能性断片は、一価、単一特異性;多価、単一特異性、具体的には、二価、単一特異性;または多価、多重特異性、具体的には、二価、二重特異性の形態で存在し得る。一般に、多価、単一特異性、具体的には、二価、単一特異性の抗体、例えば、本明細書中の前記の完全ヒトIgGは、アビディティ効果、即ち、同一の抗体が、同一の抗原、ここでは、例えば、CD33、EGFR、IGF1R、またはCD20の複数の分子と結合することによって、そのような抗体によってもたらされる中和が強まるという治療的利点を有し得る。抗体の断片の一価、単一特異性のいくつかの型は、前記の通りである(例えば、scFv、Fv、VHH、またはシングルドメイン抗体)。
【0067】
抗体またはその機能性断片は、例えば、有機ポリマーによって、例えば、ポリエチレングリコール(「PEG」)および/またはポリビニルピロリドン(「PVP」)の1つまたは複数の分子によって誘導体化され得る。当技術分野において公知であるように、そのような誘導体化は、抗体またはその機能性断片の薬物動態学的特性をモジュレートするために有利であり得る。特に好ましいのは、システインアミノ酸のスルフヒドリル基を介して部位特異的な抗体またはその機能性断片とのコンジュゲーションを可能にする、PEG-マレイミドとして誘導体化されたPEG分子である。これらのうち、特に好ましいのは、分枝型または直鎖型のいずれかの20kDおよび/または40kDのPEG-マレイミドである。1つまたは複数のPEG分子、具体的には、PEG-マレイミド分子にカップリングすることによって、より小さいヒト抗体断片、例えば、scFv断片の有効分子量を増加させることは、特に有利であり得る。
【0068】
重鎖および/または軽鎖の一部分が、特定の種に由来するか、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一もしくは相同であり、鎖の残りの部分が、別の種に由来するか、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一もしくは相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、ならびにそのような抗体の断片も、所望の生物学的活性を示す限り、本開示の抗体に含まれる(米国特許第4,816,567号;Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855(1984))。本明細書における関心対象のキメラ抗体には、非ヒト霊長類(例えば、旧世界ザル、類人猿等)に由来する可変ドメイン抗原結合配列とヒト定常領域配列とを含む「霊長類化」抗体が含まれる。
【0069】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンに由来する配列を最小に含有する、大部分がヒト配列の、キメラの免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはそれらの断片(例えば、Fv、Fab、Fab'、F(ab')2、もしくは抗体のその他の抗原結合部分配列)である。大部分について、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域(CDR)に由来する残基が、所望の特異性、親和性、および容量を有する、非ヒト種、例えば、マウス、ラット、またはウサギの超可変領域(ドナー抗体)に由来する残基に置換されているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの事例において、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基に置換される。さらに、「ヒト化抗体」は、本明細書において使用されるように、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見出されない残基も含み得る。これらの修飾は、抗体の性能をさらに改良し、最適化するために行われる。ヒト化抗体は、最適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、典型的には、ヒト免疫グロブリンのそれも含む。さらなる詳細については、Jones et al.,Nature,321:522-525(1986);Reichmann et al.,Nature,332:323-329(1988);およびPresta,Curr.Op.Struct.Biol.,2:593-596(1992)を参照すること。
【0070】
好ましい抗体は、好ましくは、受容体依存的に内部移行する、細胞表面分子、好ましくは、細胞表面ドメインと結合するもの、例えば、抗CD33抗体、抗EGFR抗体、抗IGF1R抗体、または抗CD20抗体である。好ましい抗体は、セツキシマブ、ゲムツズマブ、シクスツムマブ、テプロツムマブ、GR11L、およびリツキシマブからなる群より選択される。細胞表面ドメインと結合し、受容体依存的に内部移行するさらなる抗体は、参照により組み入れられるLU 92353 Aに開示されている。
【0071】
好ましい抗体は、以下の3つの重鎖CDRを含むVHドメインと、以下の3つの軽鎖CDRを含むVLドメインとを含む:配列GFSLTNYG(SEQ ID NO:1)を有するCDR-H1、配列IWSGGNT(SEQ ID NO:2)を有するCDR-H2、配列
を有するCDR-H3、配列QSIGTN(SEQ ID NO:4)を有するCDR-L1、配列YASを有するCDR-L2、および配列QQNNNWPTT(SEQ ID NO:5)を有するCDR-L3。好ましい抗体は、SEQ ID NO:6に記載の配列を有するVHドメインと、SEQ ID NO:7に記載の配列を有するVLドメインとを含む。好ましい抗体は、SEQ ID NO:8に記載の配列を有する重鎖と、SEQ ID NO:9に記載の配列を有する軽鎖とを含む。
【0072】
好ましい抗体は、以下の3つの重鎖CDRを含むVHドメインと、以下の3つの軽鎖CDRを含むVLドメインとを含む:配列GYTITDSN(SEQ ID NO:10)を有するCDR-H1、配列IYPYNGGT(SEQ ID NO:11)を有するCDR-H2、配列VNGNPWLAY(SEQ ID NO:12)を有するCDR-H3、配列ESLDNYGIRF(SEQ ID NO:13)を有するCDR-L1、配列AASを有するCDR-L2、および配列QQTKEVPWS(SEQ ID NO:14)を有するCDR-L3。好ましい抗体は、SEQ ID NO:15に記載の配列を有するVHドメインと、SEQ ID NO:16に記載の配列を有するVLドメインとを含む。好ましい抗体は、SEQ ID NO:17に記載の配列を有する重鎖と、SEQ ID NO:18に記載の配列を有する軽鎖とを含む。好ましい抗体は、SEQ ID NO:65に記載の配列を有する重鎖と、SEQ ID NO:18に記載の配列を有する軽鎖とを含む。
【0073】
好ましい抗体は、以下の3つの重鎖CDRを含むVHドメインと、以下の3つの軽鎖CDRを含むVLドメインとを含む:配列GGTFSSYAIS(SEQ ID NO:19)を有するCDR-H1、配列
を有するCDR-H2、配列
を有するCDR-H3、配列
を有するCDR-L1、配列GENKRPS(SEQ ID NO:23)を有するCDR-L2、および配列KSRDGSGQHLV(SEQ ID NO:24)を有するCDR-L3。好ましい抗体は、SEQ ID NO:25に記載の配列を有するVHドメインと、SEQ ID NO:26に記載の配列を有するVLドメインとを含む。好ましい抗体は、SEQ ID NO:27に記載の配列を有する重鎖と、SEQ ID NO:28に記載の配列を有する軽鎖とを含む。
【0074】
好ましい抗体は、以下の3つの重鎖CDRを含むVHドメインと、以下の3つの軽鎖CDRを含むVLドメインとを含む:配列GFTFSSYG(SEQ ID NO:29)を有するCDR-H1、配列IWFDGSST(SEQ ID NO:30)を有するCDR-H2、配列
を有するCDR-H3、配列QSVSSY(SEQ ID NO:32)を有するCDR-L1、配列IWFDGSST(SEQ ID NO:33)を有するCDR-L2、および配列QQRSKWPPWT(SEQ ID NO:34)を有するCDR-L3。好ましい抗体は、SEQ ID NO:35に記載の配列を有するVHドメインと、SEQ ID NO:36に記載の配列を有するVLドメインとを含む。好ましい抗体は、SEQ ID NO:37に記載の配列を有する重鎖と、SEQ ID NO:38に記載の配列を有する軽鎖とを含む。
【0075】
好ましい抗体は、以下の3つの重鎖CDRを含むVHドメインと、以下の3つの軽鎖CDRを含むVLドメインとを含む:配列GYTFTSYN(SEQ ID NO:39)を有するCDR-H1、配列IYPGNGDT(SEQ ID NO:40)を有するCDR-H2、配列
を有するCDR-H3、配列SSVSYI(SEQ ID NO:42)を有するCDR-L1、配列ATSを有するCDR-L2、および配列QQWTSNPPT(SEQ ID NO:43)を有するCDR-L3。好ましい抗体は、SEQ ID NO:44に記載の配列を有するVHドメインと、SEQ ID NO:45に記載の配列を有するVLドメインとを含む。好ましい抗体は、SEQ ID NO:46に記載の配列を有する重鎖と、SEQ ID NO:47に記載の配列を有する軽鎖とを含む。
【0076】
「細胞表面ドメイン」とは、本明細書において使用されるように、細胞表面上の任意のタンパク質を意味する。細胞表面ドメインには、細胞表面抗原も含まれる。それは、さらに、細胞の細胞表面上の認識され得る任意のエピトープを含む。好ましくは、エピトープまたはタンパク質は、ある特定の細胞型にのみ存在するため、細胞型特異的である。1つの態様において、細胞表面ドメインは、がん細胞上に存在する。可能性のある細胞表面標的には、CD19、CD20、CD22、CD25、CD30、CD33、CD40、CD56、CD64、CD70、CD74、CD79、CD105、CD138、CD174、CD205、CD227、CD326、CD340、MUC16、GPNMB、PSMA、Cripto、ED-B、TMEFF2、EphB2、EphA2、FAP Av、インテグリン、メソテリン、EGFR、TAG-72、GD2、CAIX、および/または5T4が含まれる。他の可能性のある細胞表面ドメインには、CD52、CD3、CD117、CD99、CD34、CD44、CD117、CA15-3、CA-125、CA27-29、EpCAM、がん胎児抗原、T細胞に認識されるメラノーマ抗原1(MART1)、栄養膜糖タンパク質(TPBG)が含まれる。本発明による細胞表面分子は、好ましくは、陰性荷電分子による治療的処置に対して感受性である細胞に発現しているものである。
【0077】
好ましくは、そのような細胞表面ドメインは、CD33、EGFR、IGF1R、CD20である。細胞表面ドメインは、本発明による抗体が結合することができるエピトープを提供することもできる。
【0078】
前記と一致して、「エピトープ」という用語は、本明細書において定義される抗体によって特異的に結合/同定される抗原性決定基を定義する。抗体は、標的構造に特有の立体構造エピトープまたは連続エピトープと特異的に結合/相互作用することができる。
【0079】
好ましい態様において、本開示の抗体は、がん関連抗原に特異的である。本明細書において使用されるように、本明細書において交換可能に使用され得る「がん関連抗原」または「腫瘍関連抗原」とは、一般に、がん細胞または腫瘍細胞に関連する、即ち、正常細胞と比較して同程度またはそれ以上に存在する任意の抗原をさす。そのような抗原は、比較的、腫瘍特異的であり得、発現が悪性細胞の表面に限定されているが、非悪性細胞にも見出され得る。1つの態様において、本開示の抗体は、がん関連抗原に結合する。
【0080】
「内部移行する」という用語は、本発明において使用されるように、タンパク質などの分子が細胞膜に貪食され、細胞内に引き込まれるエンドサイトーシスを意味する。具体的には、結合ドメインが結合する細胞表面ドメインが、内部移行する。この内部移行を測定することができる方法は、本願の実施例に開示される。あるいは、例えば、そのような過程は、関心対象の受容体と細胞膜とが二重染色されるタイムラプス顕微鏡法によって観察され得る。好ましくは、細胞表面分子と結合することができる抗体を含むナノ粒子は、細胞表面分子と結合した時に内部移行する。
【0081】
「第2のコンジュゲート(B)」とは、本明細書において使用されるように、本明細書に開示される抗体と、本明細書に開示される陽性荷電ポリペプチドと、好ましくは、本明細書に開示される二官能性リンカーとを含む、または、好ましくは、それからなるコンジュゲートをさす。ここで、陽性荷電ポリペプチドと抗体とは、好ましくは、二官能性リンカーを介して相互接続されている。
【0082】
「陰性荷電分子」という用語は、生理学的pHまたはその近く(例えば、4~10、5~9、または6~8のpHを有する溶液中)で正味の正の電荷を有し、好ましくは、静電相互作用によって陽性荷電ポリペプチド、例えば、プロタミンまたはヒストンと結合することができる分子をさす。好ましい陰性荷電分子は、核酸および陰性荷電低分子である。好ましくは、そのような陰性荷電分子は、少なくとも2-、好ましくは、少なくとも3-、好ましくは、少なくとも4-、好ましくは、少なくとも5-、好ましくは、少なくとも6-、好ましくは、少なくとも7-、好ましくは、少なくとも8-、好ましくは、少なくとも9-、または、好ましくは、少なくとも10-の正味の電荷を有する。
【0083】
本明細書において言及される時、「ヌクレオチド配列」、「ポリヌクレオチド」、「核酸」、「核酸分子」という用語は、交換可能に使用され、任意の長さのポリマーである非分枝型のヌクレオチド、リボヌクレオチドもしくはデオキシリボヌクレオチドのいずれか、または両方の組み合わせをさす。核酸配列は、DNA、cDNA、ゲノムDNA、RNA、例えば、mRNA、siRNA、合成型、および混合型ポリマーの、センス鎖およびアンチセンス鎖の両方を含み、または、当業者によって容易に理解されるように、非天然のヌクレオチド塩基もしくはヌクレオチド塩基の誘導体を含有してもよい。さらに、そのような核酸の非限定的な例には、遺伝子休止(cessation)および/または遺伝子ノックダウン、例えば、mRNAの分解もしくは翻訳停止によるメッセージ(mRNA)の遺伝子ノックダウン、tRNAおよびrRNAの機能もしくはエピジェネティック効果の阻害を実行する、一本鎖であってもよいし、または二本鎖であってもよい、任意の型のRNA干渉(RNAi);短分子(または低分子)干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、エンドリボヌクレアーゼによって調製されたsiRNA(esiRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド、マイクロRNA、およびノンコーディングRNA等、DNAに対する低分子RNAの活性、およびダイサー基質siRNAが含まれるが、これらに限定されるわけではない。好ましい核酸は、siRNA、esiRNAアンチセンスオリゴヌクレオチド、またはmiRNAであり、siRNAが最も好ましい。いくつかの態様において、好ましくは、核酸が二本鎖である場合、核酸は約18~約25bpを有する。いくつかの態様において、好ましくは、核酸が一本鎖である場合、核酸は約18~約25ntを有する。
【0084】
本発明によって利用される核酸は、標的細胞に影響する。例えば、核酸分子の提供を介して、標的細胞において、特定の分子またはタンパク質の発現が、低下するか、または増加する。好ましくは、核酸分子の利用によって、特定の分子タンパク質の発現が低下する。
【0085】
本開示による核酸には、がんに関連する、またはがんの発生および/もしくは進行に関与する遺伝子またはタンパク質を標的とし、その発現を抑制するか、または阻止するように設計されたsiRNA分子が含まれる。
【0086】
好ましい核酸分子は、好ましくは、KRAS、BRAF、PIK3CA、PAX3-FKHR、EWS-FLI1、c-MYC、TP53、DNMT3A、IDH1、NPM1、またはFLT3に特異的である、siRNA、esiRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、またはmiRNAより選択される。さらに好ましいのは、KRAS、BRAF、PIK3CA、PAX3-FKHR、EWS-FLI1、c-MYC、TP53、DNMT3A、IDH1、NPM1、またはFLT3に特異的なsiRNAである。そのようなsiRNAは、当業者に公知であり、そのようなsiRNAの例示的な例が、以下の表に示される。
【0087】
本開示の好ましい核酸には、1つまたは複数の標的、好ましくは、1つの標的に対する異なるsiRNAの混合物も含まれる。例えば、本開示の核酸は、KRAS、BRAF、PIK3CA、PAX3-FKHR、EWS-FLI1、c-MYC、TP53、DNMT3A、IDH1、NPM1、およびFLT3からなる群より選択される標的に特異的であるsiRNAの混合物を含み得る。
【0088】
本発明による陰性荷電分子は、核酸ではない分子であってもよい。そのような分子は、低分子、好ましくは、有機低分子であり得る。陰性荷電分子は、約20kDa以下、好ましくは、約15kDa以下、または約10kDa以下の分子量を有し得る。陰性荷電分子は、約9kDa以下、約8kDa以下、約7kDa以下、約6kDa以下、約5kDa以下、約4kDa以下、約3kDa以下、または約2kDa以下の分子量を有していてもよい。例示的な例として、陰性荷電分子は、薬物および/またはプロドラッグであり得る。薬物および/またはプロドラッグは、陰性荷電部分にコンジュゲートされていてもよい。例えば、薬物は、陰性荷電部分、例えば、Cy3.5またはAlexa488にコンジュゲートされているイブルチニブであり得る。しかしながら、薬物は、他の陰性荷電部分にコンジュゲートされていてもよい。コンジュゲーションのために適当な陰性荷電部分は、当業者に公知である。適当な陰性荷電部分の例示的な例には、(例えば、遷移金属の共配位子としての)(ポリ)スルホン化アリール、(ポリ)スルホン化色素(例えば、カニン色素)、モノ/ジ/トリスルフェート、単糖または分岐オリゴ糖の(ポリ)スルフェート、グルタミン酸またはアスパラギン酸からのオリゴペプチドが含まれる。薬物および/またはプロドラッグは、付加的な部分にコンジュゲートされることなく、負の正味の電荷を有していてもよい。例示的な例として、負の正味の電荷を有する薬物は、レムデシビル三リン酸である。上記の例は、例示のみを目的としていること、他の多くの陰性荷電分子が、本発明に関して使用され得ることを、当業者は理解するであろう。
【0089】
本明細書において使用されるように、「イブルチニブ」(IUPAC名:1-[(3R)-3-[4-アミノ-3-(4-フェノキシフェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-イル]プロパ-2-エン-1-オン、CAS番号:936563-96-1)は、(その遊離形態で)以下の構造を有する分子に関する。
【0090】
本明細書において使用されるように、「「レムデシビル三リン酸」(IUPAC名[[(2R,3S,4R,5R)-5-(4-アミノピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-7-イル)-5-シアノ-3,4-ジヒドロキシオキソラン-2-イル]メトキシ-ヒドロキシホスホリル]ホスホノ水素リン酸、CAS番号:1355149-45-9)は、以下の構造を有する分子に関する。
【0091】
本願は、ナノ粒子にも関する。そのようなナノ粒子は、好ましくは、本明細書に記載された方法によって得られる。本発明のナノ粒子は、(a)好ましくは、本明細書に開示される、陽性荷電ポリペプチドと;(b)好ましくは、二官能性リンカーを介して、陽性荷電ポリペプチドにコンジュゲートされている抗体を含む、第2のコンジュゲート(B)と;(c)好ましくは、本明細書に開示される、1つまたは複数の陰性荷電分子とを含み得る。
【0092】
理論によって拘束されることは望まないが、陽性荷電ポリペプチドと、第2のコンジュゲートと、1つまたは複数の陰性荷電分子とは、粒子内に均一に分布していないと考えられる。代わりに、いくつかの態様において、第2のコンジュゲートは、ナノ粒子の外側部分に濃縮されている。いくつかの態様において、1つまたは複数の陰性荷電分子は、ナノ粒子の内側部分に濃縮されている。いくつかの態様において、陽性荷電ポリペプチドは、ナノ粒子の外側部分に濃縮されている。いくつかの態様において、陽性荷電ポリペプチドは、ナノ粒子の内側部分に濃縮されている。従って、本発明のナノ粒子は、第2のコンジュゲートが主として外側部分に存在し、陰性荷電分子がナノ粒子の内側部分に濃縮または被包されている小胞様構造を形成することができる。理論によって拘束されることは望まないが、そのような構造は、陰性荷電分子を保護し、従って、その安定性を増加させると考えられる。さらに、ナノ粒子の少なくとも一部、またはさらには全体が、第2のコンジュゲートを介して、細胞に結合した時、内部移行することができると考えられる。
【0093】
いくつかの態様において、本開示のナノ粒子は、少なくとも約0.05μmである平均直径を有する。いくつかの態様において、本開示のナノ粒子は、少なくとも約0.1μmである平均直径を有する。いくつかの態様において、ナノ粒子の平均直径は、少なくとも約0.2μmである。いくつかの態様において、本開示のナノ粒子は、約0.05μm~約10μm、好ましくは、約0.1μm~約10μm、好ましくは、約0.2μm~約5μmの範囲の平均直径を有する。本開示のナノ粒子の平均直径は、約0.3μm~約4μm、約0.4μm~約3μm、または約0.5μm~約2μmの範囲であってもよい。ナノ粒子の平均直径は、粒子サイズの決定のために適当な任意の方法、例えば、動的光散乱および顕微鏡分析によって決定され得る。粒子サイズの決定のための好ましい方法は、顕微鏡分析、好ましくは、透過型光学顕微鏡法によるものである。
【0094】
本発明は、本発明のナノ粒子および/または本発明の方法によって得られるナノ粒子を含む組成物にさらに関する。
【0095】
本発明は、本発明のナノ粒子および/または本発明の方法によって得られるナノ粒子を含む薬学的組成物にさらに関する。
【0096】
本開示の組成物、例えば、本開示の薬学的組成物において、組成物に含まれる第2のコンジュゲートの少なくとも約10%が、ナノ粒子に含まれていてよい。好ましい態様において、組成物に含まれる第2のコンジュゲートの少なくとも20%、好ましくは、少なくとも30%、好ましくは、少なくとも40%、好ましくは、少なくとも50%、好ましくは、少なくとも60%、好ましくは、少なくとも70%、好ましくは、少なくとも80%、好ましくは、少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、好ましくは、少なくとも98%、好ましくは、少なくとも99%が、ナノ粒子に含まれる。好ましい態様において、組成物は、ナノ粒子に含まれない第2のコンジュゲートを本質的に含まない。
【0097】
本開示の組成物、例えば、本開示の薬学的組成物において、組成物に含まれる陽性荷電ポリペプチドの少なくとも約10%が、ナノ粒子に含まれていてよい。好ましい態様において、組成物に含まれる陽性荷電ポリペプチドの少なくとも20%、好ましくは、少なくとも30%、好ましくは、少なくとも40%、好ましくは、少なくとも50%、好ましくは、少なくとも60%、好ましくは、少なくとも70%、好ましくは、少なくとも80%、好ましくは、少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、好ましくは、少なくとも98%、好ましくは、少なくとも99%が、ナノ粒子に含まれる。好ましい態様において、組成物は、ナノ粒子に含まれない陽性荷電ポリペプチドを本質的に含まない。
【0098】
本開示の組成物、例えば、本開示の薬学的組成物において、組成物に含まれる陰性荷電分子の少なくとも約10%が、ナノ粒子に含まれていてよい。好ましい態様において、組成物に含まれる陰性荷電分子の少なくとも20%、好ましくは、少なくとも30%、好ましくは、少なくとも40%、好ましくは、少なくとも50%、好ましくは、少なくとも60%、好ましくは、少なくとも70%、好ましくは、少なくとも80%、好ましくは、少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、好ましくは、少なくとも98%、好ましくは、少なくとも99%が、ナノ粒子に含まれる。好ましい態様において、組成物は、ナノ粒子に含まれない陰性荷電分子を本質的に含まない。
【0099】
「薬学的組成物」という用語は、患者、好ましくは、ヒト患者へ投与するための組成物に関する。薬学的組成物または製剤は、一般的には、活性成分の生物学的活性が有効であることを可能にするような形態であり、従って、本明細書に記載される治療的使用のため、対象へ投与され得る。一般的に、薬学的組成物は、担体、安定化剤、および/または賦形剤の適当な(即ち、薬学的に許容される)製剤を含む。適当な薬学的担体の例は、"Remington's Pharmaceutical Sciences" by E.W.Martinに記載されている。そのような組成物は、患者へ適切に投与するための形態を提供するため、治療的に有効な量の上記の分子を、好ましくは、精製された形態で、適当な量の担体と共に含有する。製剤は、投与様式に適合するべきである。
【0100】
1つの態様において、薬学的組成物は、非経口、経皮、腔内、動脈内、くも膜下腔内、および/もしくは鼻腔内への投与のための、または組織への直接注射のための組成物である。具体的には、組成物は、注入または注射を介して、患者へ投与されることが想定される。適当な組成物の投与は、種々の方法によって、例えば、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、局所、または皮内への投与によって実施され得る。本発明の組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含み得る。適当な薬学的担体の例は、当技術分野において周知であり、緩衝生理食塩水溶液、水、乳濁液、例えば、油/水 乳濁液、様々な型の湿潤剤、無菌溶液、リポソーム等を含む。そのような担体を含む組成物は、周知の従来の方法によって製剤化され得る。
【0101】
本発明の態様によると、「治療的に有効な量」という用語は、がんに関連する疾患の処置のために有効である、本発明の分子および/または本発明の方法によって得られる分子の量をさす。好ましい投薬量および好ましい投与方法は、投与後に、本発明の分子および/または本発明の方法によって得られる分子が、有効な量、血中に存在するようなものである。投与スケジュールは、疾患状態を観察し、臨床検査において標的分子の発現を減少させる分子の血清レベルを分析し、その後、それに応じて、投与間隔を、例えば、週2回または週1回から、2週に1回、3週に1回、4週に1回等に延長するか、あるいは、投与間隔を短縮することによって、調整され得る。がんのケースにおいて、本明細書に開示される分子または組成物の治療的に有効な量は、がん細胞の数を低下させ;腫瘍サイズを低下させ;末梢器官へのがん細胞の浸潤を阻害し(即ち、遅延させ、かつ/もしくは中止し);腫瘍転移を阻害し(即ち、遅延させ、かつ/もしくは中止し);腫瘍増殖を阻害し;かつ/またはがんに関連する症状のうちの1つもしくは複数を軽減することができるものである。
【0102】
別の態様において、薬学的組成物は、付加的な薬物と組み合わせて、即ち、併用療法の一部として、投与するために適当である。併用療法において、活性薬剤は、任意で、本発明の分子と同じ薬学的組成物に含まれてもよいし、または別の薬学的組成物に含まれてもよい。後者のケースにおいて、別の薬学的組成物は、本発明の分子を含む薬学的組成物の投与の前、それと同時、またはその後の投与のために適当である。付加的な薬物または薬学的組成物は、非タンパク質性化合物であってもよいし、またはタンパク質性化合物であってもよい。付加的な薬物がタンパク質性化合物であるケースにおいて、タンパク質性化合物は、免疫エフェクター細胞のための活性化シグナルを提供し得ることが有利である。好ましくは、タンパク質性化合物または非タンパク質性化合物は、本明細書中の前記定義の本発明の分子(もしくは調製物)、本明細書中の前記定義のベクター、または本明細書中の前記定義の宿主と、同時に投与されてもよいし、または非同時に投与されてもよい。
【0103】
薬学的組成物は、適当な用量で対象へ投与され得る。投薬計画は、主治医および臨床的要因によって決定される。医学分野において周知であるように、任意の1人の患者のための投薬量は、多くの要因、例えば、患者のサイズ、体表面積、年齢、投与される具体的な化合物、性別、投与の時間および経路、全般的な健康状態、ならびに同時に投与される他の薬物に依存する。
【0104】
非経口投与のための調製物には、無菌の水性または非水性の溶液、懸濁液、および乳濁液が含まれる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えば、オリーブ油、および注射可能な有機エステル、例えば、オレイン酸エチルである。水性担体には、水、アルコール性/水性の溶液、乳濁液、または懸濁液、例えば、生理食塩水および緩衝媒質が含まれる。非経口媒体には、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース、および塩化ナトリウム、乳酸リンゲル、または不揮発性油が含まれる。静脈内媒体は、液体および栄養補充剤、電解質補充剤(例えば、リンゲルデキストロースに基づくもの)等を含む。保存剤およびその他の添加剤、例えば、抗微生物剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガス等も存在し得る。さらに、本発明による薬学的組成物は、タンパク質性担体、例えば、好ましくは、ヒト起源の、血清アルブミンまたは免疫グロブリンを含み得る。本発明による薬学的組成物は、薬学的組成物の意図された使用に依って、前記の分子に加えて、さらなる生物学的活性剤を含み得ることが想定される。そのような薬剤は、胃腸系に作用する薬物、細胞分裂阻害薬として作用する薬物、高尿酸血症を防止する薬物、免疫反応を阻害する薬物(例えば、コルチコステロイド)、炎症応答をモジュレートする薬物、循環器系に作用する薬物、および/または当技術分野において公知のサイトカインなどの薬剤であり得る。
【0105】
例えば、がん治療における、本発明のナノ粒子および/または本発明の方法によって得られるナノ粒子の効果を分析するためのアウトカム尺度は、例えば、薬力学、免疫原性、およびがんのサイズを減少させる可能性より選択され得、それらは、例えば、MRI画像法および患者報告アウトカムによる。
【0106】
本発明による薬学的組成物などの薬物の開発における別の主要な課題は、薬力学的特性の予測可能なモジュレーションである。この目的のため、薬物候補の薬力学的プロファイル、即ち、所定の状態を処置する特定の薬物の能力に影響する薬力学特性パラメータのプロファイルが確立される。ある特定の疾患実体を処置するための薬物の能力に影響する薬物の薬力学的パラメータには、半減期、分布容積、肝初回通過代謝、および血清結合の程度が含まれるが、これらに限定されるわけではない。所定の薬剤の有効性は、前記のパラメータの各々によって影響され得る。「半減期」とは、投与された薬物の50%が、生物学的過程、例えば、代謝、排泄等によって排除される時間を意味する。「肝初回通過代謝」とは、肝臓と最初に接触した時、即ち、肝臓を最初に通過した際に代謝される薬物の傾向を意味する。「分布容積」とは、身体の様々なコンパートメント、例えば、細胞内および細胞外の空間、組織および器官等における薬物の保持の程度、ならびにこれらのコンパートメントにおける薬物の分布を意味する。
【0107】
「血清結合の程度」とは、薬物の生物学的活性の低下または喪失をもたらす血清タンパク質、例えば、アルブミンと相互作用し、結合する薬物の傾向を意味する。
【0108】
薬力学的パラメータには、投与された所定の量の薬物についての生物学的利用率、ラグタイム(Tlag)、Tmax、吸収速度、および/またはCmaxも含まれる。「生物学的利用率」とは、血液コンパートメント内の薬物の量を意味する。「ラグタイム」とは、薬物が投与されてから、血中または血漿中に検出され、測定可能になるまでの遅延時間を意味する。「Tmax」とは、薬物の最大血中濃度に達するまでの時間であり、吸収は、投与部位から全身循環への薬物の移動として定義され、「Cmax」とは、所定の薬物によって最大に得られる血中濃度である。生物学的効果のために必要とされる、薬物の血中または組織中の濃度に達するまでの時間は、全てのパラメータによって影響される。
【0109】
「毒性」という用語は、本明細書において使用されるように、有害事象または重篤な有害事象として顕在化する薬物の毒性作用をさす。これらの副次的事象は、投与後の薬物の全般的な耐容性の欠如および/または局所的な耐容の欠如をさし得る。毒性には、薬物によって引き起こされる催奇形作用または発がん作用も含まれ得る。
【0110】
「安全性」、「インビボ安全性」、または「耐容性」という用語は、本明細書において使用されるように、投与直後(局所的耐容)および薬物のより長い適用期間中に重篤な有害事象を誘導することのない薬物の投与を定義する。「安全性」、「インビボ安全性」、または「耐容性」は、例えば、処置およびフォローアップの期間中に規則的な間隔で評価され得る。測定には、臨床的評価、例えば、器官の症候、および検査異常のスクリーニングが含まれる。臨床的評価は、NCI-CTCおよび/またはMedDRAの基準に従って記録/コード化される正常所見に対する逸脱について実施され得る。器官の症候には、例えば、Common Terminology Criteria for adverse events v3.0(CTCAE)に示される、アレルギー/免疫学、血液/骨髄、心不整脈、凝固等の基準が含まれ得る。試験され得る検査パラメータには、例えば、血液学、臨床化学、凝固プロファイル、および尿分析、ならびにその他の体液、例えば、血清、血漿、リンパ液、または脊髄液の検査、酒(liquor)等が含まれる。従って、安全性は、検査パラメータの測定および有害事象の記録によって、例えば、身体検査、画像技術(即ち、超音波、X線、CTスキャン、磁気共鳴画像法(MRI)、技術的装置によるその他の尺度(即ち、心電図)、バイタルサインによって評価され得る。「有効かつ非毒性の用量」という用語は、本明細書において使用されるように、主要な毒性作用無しに、または本質的に無しに、関心対象の疾患を治癒させるか、または安定化するために十分高い、本発明の分子および/または本発明の方法によって得られる分子、好ましくは、本明細書において定義される抗体の耐容用量をさす。そのような有効かつ非毒性の用量は、例えば、当技術分野において記載されている用量漸増研究によって決定され得、重篤な有害副次的事象(用量制限毒性、DLT)を誘導する用量を下回るべきである。
【0111】
本発明の薬学的組成物は、種々の製剤を有し得る。(本明細書において「組成物(composition of matter)」、「組成物(composition)」、または「溶液」と呼ばれることもある)製剤は、好ましくは、様々な物理的状態のもの、例えば、液体製剤、凍結製剤、凍結乾燥製剤、フリーズドライ製剤、噴霧乾燥製剤、および再構成された製剤であり得、液体および凍結が好ましい。
【0112】
「液体製剤」とは、本明細書において使用されるように、それ自体における構成分子の自由な移動を特徴とするが、室温で分離する傾向はない、液体として見出される組成物をさす。液体製剤は、水性および非水性の液体を含み、水性製剤が好ましい。水性製剤とは、溶媒または主な溶媒が、水、好ましくは、注射用水(WFI)である製剤である。製剤中の本発明の分子および/または本発明の方法によって得られる分子の溶解は、均一または不均一であり得、前記のように、均一であることが好ましい。
【0113】
本発明の製剤に安定性を提供することを条件として、任意の適当な非水性液体が利用され得る。好ましくは、非水性液体は、親水性液体である。適当な非水性液体の例示的な例には、グリセロール;ジメチルスルホキシド(DMSO);ポリジメチルシロキサン(PMS);エチレングリコール類、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(「PEG」)200、PEG300、およびPEG400;ならびにプロピレングリコール類、例えば、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(「PPG」)425、およびPPG 725が含まれる。
【0114】
「混合水性/非水性液体製剤」とは、本明細書において使用されるように、水、好ましくは、WFIと、付加的な液体組成物との混合物を含有する液体製剤をさす。
【0115】
本明細書において使用される時、「製剤」または「組成物」は、本発明の分子および/または本発明の方法によって得られる分子(即ち、活性薬物/物質)と、医薬品に必要とされるさらなる化学物質および/または添加剤との混合物であり、好ましくは、液体状態である。本発明の製剤には、薬学的製剤が含まれる。
【0116】
製剤の調製は、薬学的組成物などの最終医薬品を作製するため、活性薬物を含む異なる化学物質が組み合わせられるプロセスを含む。本発明の製剤の活性薬物は、本発明のナノ粒子および/または本発明の方法によって得られるナノ粒子である。
【0117】
ある特定の態様において、本発明のナノ粒子および/または本発明の方法によって得られるナノ粒子は、本質的に純粋に、かつ/または本質的に均一に(即ち、製品に関連する不純物および/またはプロセスに関連する不純物であり得る、混入物質、例えば、タンパク質等を実質的に含まず)製剤化され得る。「本質的に純粋」という用語は、少なくとも約80重量%、好ましくは、約90重量%の化合物、好ましくは、少なくとも約95重量%の化合物、より好ましくは、少なくとも約97重量%の化合物、または、最も好ましくは、少なくとも約98重量%の化合物を含む組成物を意味する。「本質的に均一」という用語は、溶液中の様々な安定化剤および水の質量を除き、少なくとも約99重量%の化合物、好ましくは、単量体状態の化合物を含む組成物を意味する。
【0118】
「安定的な」製剤とは、その中の本発明の分子および/または本発明の方法によって得られる分子が、保管時に、物理的安定性および/もしくは化学的安定性および/もしくは生物学的活性を本質的に保持し、かつ/または、好ましくは、色および/もしくは透明度の視覚的な検査によって、もしくはUV光散乱もしくはサイズ排除クロマトグラフィによって測定されるように、対照試料と比較して、凝集、沈殿、断片化、分解、および/もしくは変性の実質的な徴候を示さないものである。タンパク質安定性を測定するための様々なさらなる分析技術が、当技術分野において利用可能であり、例えば、Peptide and Protein Drug Delivery,247-301,Vincent Lee Ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,Pubs.(1991)およびJones,A.Adv.Drug Delivery Rev.10:29-90(1993)に概説されている。
【0119】
「保管中」とは、本明細書において使用されるように、製剤が、調製された後、直ちに使用されるのではなく、調製後に、液体形態、凍結状態、または後に液体形態もしくはその他の形態に再構成するための乾燥形態のいずれかで、保管のためにパッケージングされることを意味する。
【0120】
本発明による「対象」とは、脊椎動物、好ましくは、哺乳類、より好ましくは、ヒト対象である。
【0121】
「脊椎動物」には、脊椎動物である魚類、鳥類、両生類、爬虫類、および哺乳類が含まれる。
【0122】
「哺乳類」には、イヌ、ネコ、ウマ、ラット、マウス、類人猿、ウサギ、ウシ(cows)、ブタ、ヒツジ、および、好ましくは、ヒトが含まれる。ヒトは、患者という用語によっても言及され得る。
【0123】
本発明は、治療における使用のための、本発明の方法によって得られるナノ粒子、または本発明のナノ粒子、および/または本発明の薬学的組成物にさらに関する。治療における使用は、好ましくは、対象においてがんを処置する方法における使用である。
【0124】
「がん」および「がん性」という用語は、本発明によって使用されるように、典型的には、未制御の細胞増殖を特徴とする、脊椎動物、好ましくは、哺乳類、より好ましくは、ヒトにおける状態を意味する。
【0125】
がんは、腫瘍細胞が類似しており、従って、腫瘍の起源であると推定される細胞の型によって分類される。これらの型には、細胞腫、肉腫、血液がん、胚細胞性腫瘍、および芽細胞腫が含まれる。
【0126】
「細胞腫」には、本明細書において言及される時、上皮細胞に由来するがんが含まれ得る。
【0127】
「肉腫」には、本明細書において言及される時、間葉系(結合組織)起源の細胞から生じるがんが含まれ得る。
【0128】
「血液がん」には、本明細書において言及される時、骨髄を離れ、それぞれ、リンパ節および血中において成熟する傾向がある、造血(造血性)細胞から生じるがんのクラスが含まれ得る。本明細書において白血病に言及する時には、通常、血流中で成熟する骨髄由来細胞が含まれ得る。本明細書においてリンパ腫に言及する時には、通常、リンパ系において成熟する骨髄由来細胞が含まれ得る。
【0129】
「胚細胞性腫瘍」には、本明細書において言及される時、精巣または卵巣に最も多く見られる、多能性細胞に由来するがんが含まれ得る。
【0130】
「芽細胞腫」には、本明細書において言及される時、未熟な「前駆」細胞または胚組織に由来するがんが含まれ得る。
【0131】
本発明のプロセスによって得られる分子、または本発明の分子、および/または本発明の方法によって得られる分子は、がんを処置する方法において使用され得、ここで、がんは、肺がん、例えば、非小細胞肺がん、肉腫、例えば、横紋筋肉腫またはユーイング肉腫、結腸直腸がん、血液がん、例えば、白血病またはリンパ腫、例えば、急性骨髄性白血病(AML)またはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBLC)からなる群より選択され得る。
【0132】
「処置」という用語は、本明細書において使用されるように、がんなどの疾患または障害を緩和し、縮小させ、安定化し、またはその進行を阻害することを意味する。
【0133】
本発明は、対象において腫瘍増殖を阻害し、かつ/または調節する方法において使用される、本発明のプロセスによって得られるナノ粒子、または本発明のナノ粒子、または本発明の薬学的組成物にさらに関する。
【0134】
「腫瘍」または「新生物」とは、細胞の異常な増殖または分裂の結果としての異常な組織の塊である。新生物細胞の増殖は、その周囲の正常組織の増殖を超えており、それらと協調しない。しかしながら、本発明の意味における腫瘍には、白血病および上皮内がんも含まれる。腫瘍は、良性、前悪性、または悪性であり得る。好ましい態様において、腫瘍は、前悪性または悪性である。最も好ましくは、腫瘍は、悪性である。
【0135】
本発明は、対象において腫瘍の部位へ核酸分子を送達するための、本発明の方法によって得られるナノ粒子、または本発明のナノ粒子、または本発明の(薬学的)組成物にさらに関する。
【0136】
本発明の1つの態様において、本発明の使用のための、本発明のプロセスによって得られるナノ粒子、または本発明のナノ粒子、または本発明の薬学的組成物は、KRAS、BRAF、PIK3CA、PAX3-FKHR、EWS-FLI1、c-MYC、TP53、DNMT3A、IDH1、NPM1、およびFLT3に対するsiRNAからなる群より選択されるsiRNAを含む。本発明のsiRNAは、KRAS、BRAF、PIK3CA、PAX3-FKHR、EWS-FLI1、c-MYC、TP53、DNMT3A、IDH1、NPM1、またはFLT3を標的とすることができる。好ましくは、siRNAは、細胞のKRAS、BRAF、PIK3CA、PAX3-FKHR、EWS-FLI1、c-MYC、TP53、DNMT3A、IDH1、NPM1、またはFLT3の発現を低下させる。好ましくは、これらの標的の発現は、減少する。
【0137】
「を標的とするsiRNA」とは、特定のsiRNAによって認識される標的を意味する。siRNAは、種々の方式で構築され得る。例えば、siRNAは、mRNAを標的とするものであり得る。
【0138】
一般に、siRNAの設計は、当業者に公知である。例えば、Reynolds et al.,(Reynolds et al.,(2004)"Rational siRNA design for RNA interference"Nature Biotechnology 22,326-330)またはJudge et al.,(Judge et al.,2006)"Design of Noninflammatory Synthetic siRNA Mediating Potent Gene Silencing in Vivo"Molecular Therapy(2006)13,494-505)またはSioud and Leirdal(Sioud and Leirdal(2004)"Potential design rules and enzymatic synthesis of siRNAs"Methods Mol Biol.2004;252:457-69)を参照すること。
【0139】
「発現」または「遺伝子発現」という用語は、特定の遺伝子または特定の遺伝子構築物の転写を意味する。「発現」または「遺伝子発現」という用語は、具体的には、タンパク質へのその後の翻訳を伴うか、または伴わない、遺伝子または遺伝子構築物の構造RNA(rRNA、tRNA)またはmRNAへの転写を意味する。この過程には、DNAの転写および得られたmRNA生成物のプロセシングが含まれる。次いで、mRNAは、ペプチド/ポリペプチド鎖に翻訳され、それが、最終的には、最終的なペプチド/ポリペプチド/タンパク質に折り畳まれる。タンパク質発現は、特定の細胞または組織における1つまたは複数のタンパク質の存在および存在量の測定を示すため、プロテオミクス研究者によって一般的に使用されている。細胞のタンパク質の発現は、様々な手段によって、例えば、免疫組織化学またはウエスタンブロット分析によって測定され得る。ここで、得られた結果は、健常細胞または対照標準と比較して評価されるべきである。より低発現の細胞は、対照細胞と比較した時、例えば、強度において、減少している染色を示す。より高発現の細胞は、同じ設定の対照細胞と比較した時、例えば、強度において、増加している染色を示す。mRNAの発現も、例えば、RT-PCRによって測定され得る。ここで、より低発現の細胞は、例えば、同じ設定の対照細胞と比較した時、検出可能なシグナルが認められるまでの、より多い増幅サイクル数を示す。細胞のタンパク質、mRNAの発現を決定するための種々の技術が、当業者に公知である。
【0140】
例えば、細胞は、対象の血液、肝臓、胃、口、皮膚、肺、リンパ系、脾臓、膀胱、膵臓、骨髄、脳、腎臓、腸、胆嚢、脳、喉頭、または咽頭に存在し得る。
【0141】
1つの態様において、本発明の方法によって得られるナノ粒子、または本発明のナノ粒子、または本発明の薬学的組成物は、本発明に従って使用され、ここで、対象は、哺乳類、好ましくは、ヒトである。
【0142】
本発明は、本発明の方法を実施するために適当な、1つまたは複数のカップリング緩衝液/試薬およびプロトコルを含むキットにも関する。
【0143】
1つの態様において、キットは、本発明の方法を実施するために適当な、1つまたは複数のカップリング緩衝液/試薬およびプロトコルを含む。
【0144】
本発明は、本発明の方法を実施するために適当な緩衝液/試薬およびプロトコルを含み、例えば、本発明の分子または本発明の方法によって得られる分子を精製するか、もしくは濃縮する手段、および/または該分子を洗浄する手段、および/または該分子を保管する手段を任意で含むキットに関する。従って、該分子および付加的な手段は、好ましくは、1つの密封されたパッケージまたはキットに一緒にパッケージングされる。
【0145】
本発明は、本発明のナノ粒子および/または本発明の方法によって得られるナノ粒子を含むキットにも関する。
【0146】
本発明は、本発明のナノ粒子および/または本発明の方法によって得られるナノ粒子を含み、かつ/または該分子を精製するか、もしくは濃縮する手段、および/または該分子を洗浄する手段、および/または該分子を保管する手段を任意で含むキットに関する。従って、該分子および付加的な手段は、好ましくは、1つの密封されたパッケージまたはキットに一緒にパッケージングされる。
【0147】
本発明のキット(または「キットオブパーツ(kit of parts)」)のパーツは、バイアルもしくはボトルに個々にパッケージングされてもよいし、または容器もしくはマルチコンテナユニットに組み合わせられてパッケージングされてもよい。キットの製造は、好ましくは、当業者に公知の標準的な手法に従う。
【0148】
本発明のキットは、任意で、ラベルを有する、1つまたは複数の容器を含み得る。適当な容器には、例えば、ボトル、バイアル、および試験管が含まれる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの多様な材料から形成されていてよく、好ましくは、滅菌されている。容器は、本発明の方法のために有効である、活性成分を有し、または緩衝液を含む組成物を保持する。さらなる容器は、特定の反応が起こることを可能にする適当な緩衝液(例えば、反応緩衝液)を保持してもよい。多様な緩衝液、例えば、反応緩衝液、ならびに/または本発明の分子および/もしくは本発明の方法によって得られる分子の精製のための緩衝液等を保持する容器が含まれることも想定される。組成物中の活性薬剤は、好ましくは、本発明の方法によって得られる分子、または本発明の分子、または本発明の薬学的組成物である。
【0149】
キットは、本発明の方法および使用に従って、本発明の方法を実施するための説明書も含み得る。キットは、本発明によるナノ粒子の補強のため、かつ/または本発明のナノ粒子のため、内容物が使用され得ることを示す、ラベルまたはインプリントをさらに含み得る。
【0150】
本発明のキットは、例えば、本発明のナノ粒子の調製または使用において当業者を補助する、緩衝液、バイアル、対照、安定化剤、説明書をさらに含むことも想定される。
【0151】
さらに、本発明は、治療、好ましくは、対象におけるがんの処置における、本発明のナノ粒子、または本発明の方法によって得られるナノ粒子、または本発明の薬学的組成物の使用にも関する。
【0152】
本発明は、本発明のナノ粒子、または本発明の方法によって得られるナノ粒子、または本発明の薬学的組成物を、治療的に有効な量、対象へ投与する工程を含む、対象においてがんを処置する方法にも関する。
【0153】
「投与」という用語は、治療的または診断的に有効な用量の、上記の本発明のナノ粒子の、対象への投与を意味する。種々の投与経路が可能であり、前記の通りである。
【0154】
本発明は、医薬、例えば、がんの処置において有効な医薬の調製のための、本発明のナノ粒子、または本発明の方法によって得られるナノ粒子、または本発明の薬学的組成物の使用にも関する。
【0155】
他に明記されない限り、説明および特許請求の範囲を含む本書において使用される以下の用語は、以下に与えられる定義を有する。
【0156】
当業者は、本明細書に記載される本発明の具体的な態様の多くの等価物を、ルーチンの実験法のみを使用して、認識し、または確かめることができるであろう。そのような等価物は、本発明に包含されるものとする。
【0157】
本明細書において使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」には、前後関係が明らかに他のことを示さない限り、複数の参照が含まれる。従って、例えば、「試薬」との言及には、そのような異なる試薬のうちの1つまたは複数が含まれ、「方法」との言及には、本明細書に記載された方法のため、修飾または置換され得る、当業者に公知の等価な工程および方法への言及が含まれる。
【0158】
他に示されない限り、一連の構成要素に先行する「少なくとも」という用語は、その一連の構成要素の全てをさすことが理解されるべきである。
【0159】
「および/または」という用語は、本明細書において使用される時、「および」、「または」、および「該用語によって接続された構成要素の全てまたは任意の他の組み合わせ」の意味を含む。
【0160】
「約」または「およそ」という用語は、本明細書において使用されるように、所定の値または範囲の20%以内、好ましくは、10%以内、より好ましくは、5%以内を意味する。しかしながら、それは、その具体的な数も含み、例えば、約20は20を含む。
【0161】
本明細書および下記の特許請求の範囲において、前後関係が他のことを要求しない限り、「含む(comprise)」という単語、ならびに「含む(comprises)」および「含む(comprising)」などの変形は、明記された整数もしくは工程、または整数もしくは工程の群が含まれることを意味し、他の任意の整数もしくは工程、または整数もしくは工程の群が除外されることを意味するものではないことが理解されるであろう。本明細書において使用される時、「含む(comprising)」という用語は、「含有する(containing)」または「含む(including)」という用語に置換され得、または、本明細書において使用される時、「有する(having)」という用語に置換されることもある。
【0162】
本明細書において使用される時、「からなる」は、特許請求の範囲の構成要素において特定されていない任意の構成要素、工程、または成分を除外する。本明細書において使用される時、「から本質的になる」は、特許請求の範囲の基本的かつ新規の特徴に実質的に影響しない材料または工程を除外しない。
【0163】
本明細書における各事例において、「含む」、「から本質的になる」、および「からなる」という用語のうちの任意のものは、他の2つの用語のうちのいずれかに置換され得る。任意のそのような置換は、本開示によって構想される。
【0164】
本発明は、本明細書に記載された特定の方法論、プロトコル、材料、試薬、および物質等に限定されず、従って、変動し得ることが理解されるべきである。本明細書において使用される用語法は、具体的な態様を説明するためのものに過ぎず、特許請求の範囲によってのみ定義される本発明の範囲を限定するためのものではない。
【0165】
本明細書の本文において引用された全ての文書(例えば、全ての特許、特許出願、科学的刊行物、製造業者の仕様書、説明書等)は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。先行発明のため、本発明がそのような開示に先行する権利を有しないことの承認として解釈されるべきものは、本明細書中に存在しない。参照により組み入れられた材料が、本明細書と矛盾するか、または一致しない場合には、本明細書が、そのような材料より優先される。
【0166】
本発明は、以下の項によってさらに例示される:
【0167】
項1.(c)抗体を、第1のコンジュゲート(A)を含む組成物と接触させる工程であって、第1のコンジュゲートが、二官能性リンカーにコンジュゲートされている陽性荷電ポリペプチドを含み、該組成物が、コンジュゲートされていない二官能性リンカーを本質的に含まないことを特徴とし、それによって、第2のコンジュゲート(B)が得られ、第2のコンジュゲートが、陽性荷電ポリペプチドと二官能性リンカーと抗体とを含む、工程;および(d)第2のコンジュゲート(B)と陽性荷電ポリペプチドと陰性荷電分子とを接触させる工程であって、それによって、ナノ粒子を形成させる、工程を含む、ナノ粒子を生成する方法。
【0168】
項2.工程(c)の前に、(a)陽性荷電ポリペプチドを二官能性リンカーにコンジュゲートする工程;(b)コンジュゲートされていない二官能性リンカーを除去する工程を含む、項1の方法。
【0169】
項3.抗体が工程(c)の前に精製される、項1または2の方法。
【0170】
項4.ナノ粒子の回収をさらに含む、前記項のいずれか一項の方法。
【0171】
項5.工程(c)において、第1のコンジュゲートが抗体と比較してモル過剰である、前記項のいずれか一項の方法。
【0172】
項6.工程(d)において、陽性荷電ポリペプチドが第2のコンジュゲート(B)と比較してモル過剰である、前記項のいずれか一項の方法。
【0173】
項7.工程(d)において、陰性荷電分子が第2のコンジュゲート(B)と比較してモル過剰である、前記項のいずれか一項の方法。
【0174】
項8.工程(d)において、陰性荷電分子が陽性荷電ポリペプチドと比較してモル過剰である、前記項のいずれか一項の方法。
【0175】
項9.工程(c)において、第1のコンジュゲート(A)と抗体とのモル比が少なくとも約10:1である、前記項のいずれか一項の方法。
【0176】
項10.工程(c)において、第1のコンジュゲート(A)と抗体とのモル比が約10:1~約50:1である、前記項のいずれか一項の方法。
【0177】
項11.工程(d)において、陽性荷電ポリペプチドと第2のコンジュゲート(B)とのモル比が少なくとも約10:1である、前記項のいずれか一項の方法。
【0178】
項12.工程(d)において、陽性荷電ポリペプチドと第2のコンジュゲート(B)とのモル比が約10:1~約50:1である、前記項のいずれか一項の方法。
【0179】
項13.工程(d)において、陰性荷電分子と第2のコンジュゲートとのモル比が少なくとも約1:1である、前記項のいずれか一項の方法。
【0180】
項14.工程(d)において、ナノ粒子が自己集合によって形成される、前記項のいずれか一項の方法。
【0181】
項15.工程(d)が約4~37℃でのインキュベーションを含む、前記項のいずれか一項の方法。
【0182】
項16.工程(d)が少なくとも約1時間のインキュベーションを含む、前記項のいずれか一項の方法。
【0183】
項17.第2のコンジュゲートにおいて、陽性荷電ポリペプチドと抗体とが二官能性リンカーを介して相互接続されている、前記項のいずれか一項の方法。
【0184】
項18.抗体が重鎖および軽鎖を含む、前記項のいずれか一項の方法。
【0185】
項19.抗体が細胞表面分子に特異的である、前記項のいずれか一項の方法。
【0186】
項20.細胞表面分子が抗体の結合時に内部移行することができる、項19の方法。
【0187】
項21.細胞表面分子が、陰性荷電分子による治療的処置に対して感受性である細胞に発現している、項19または20の方法。
【0188】
項22.抗体ががん関連抗原に特異的である、前記項のいずれか一項の方法。
【0189】
項23.抗体がCD33、EGFR、IGF1R、またはCD20に特異的である、前記項のいずれか一項の方法。
【0190】
項24.抗体がゲムツズマブ、セツキシマブ、シクスツムマブ、テプロツムマブ、GR11L、リツキシマブである、前記項のいずれか一項の方法。
【0191】
項25.抗体が
からなる群より選択されるCDR配列を有する、前記項のいずれか一項の方法。
【0192】
項26.抗体がa. SEQ ID NO:6および7;b. SEQ ID NO:15および16;c. SEQ ID NO:25および26;d. SEQ ID NO:35および36;ならびにe. SEQ ID NO:44および45:からなる群より選択されるVH配列およびVL配列を有する、前記項のいずれか一項の方法。
【0193】
項27.抗体がa. SEQ ID NO:8および9;b. SEQ ID NO:17および18;c. SEQ ID NO:27および28;d. SEQ ID NO:37および38;e. SEQ ID NO:46および47;ならびにf. SEQ ID NO:65および18:からなる群より選択される重鎖配列および軽鎖配列を有する、前記項のいずれか一項の方法。
【0194】
項28.陰性荷電分子が核酸である、前記項のいずれか一項の方法。
【0195】
項29.核酸が二本鎖核酸である、項28の方法。
【0196】
項30.核酸が一本鎖核酸である、項28の方法。
【0197】
項31.核酸が約18~約25bpを有する、項28~30のいずれか一項の方法。
【0198】
項32.核酸が約18~約25ntを有する、項28~30のいずれか一項の方法。
【0199】
項33.陰性荷電分子がDNAまたはRNAである、前記項のいずれか一項の方法。
【0200】
項34.陰性荷電分子がsiRNA、esiRNA、shRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、またはmiRNAである、前記項のいずれか一項の方法。
【0201】
項35.陰性荷電分子が、KRAS、BRAF、PIK3CA、PAX3-FKHR、EWS-FLI1、c-MYC、TP53、DNMT3A、IDH1、NPM1、またはFLT3に特異的なsiRNAである、前記項のいずれか一項の方法。
【0202】
項36.陰性荷電分子が、好ましくは、KRAS、BRAF、PIK3CA、PAX3-FKHR、EWS-FLI1、c-MYC、TP53、DNMT3A、IDH1、NPM1、およびFLT3からなる群より選択される、1つまたは複数の標的に特異的なsiRNAの混合物である、前記項のいずれか一項の方法。
【0203】
項37.陰性荷電分子が約20kDa以下の分子量を有する、前記項のいずれか一項の方法。
【0204】
項38.陰性荷電分子が少なくとも2-の電荷を有する、前記項のいずれか一項の方法。
【0205】
項39.陽性荷電ポリペプチドがプロタミンまたはヒストンである、前記項のいずれか一項の方法。
【0206】
項40.二官能性リンカーがヘテロ二官能性リンカーである、前記項のいずれか一項の方法。
【0207】
項41.二官能性リンカーがスルホ-SMCCである、前記項のいずれか一項の方法。
【0208】
項42.前記項のいずれか一項の方法によって得られる、ナノ粒子。
【0209】
項43.(a)陽性荷電ポリペプチドと;(b)陽性荷電ポリペプチドにコンジュゲートされている抗体を含む、第2のコンジュゲート(B)と;(c)1つまたは複数の陰性荷電分子とを含むナノ粒子。
【0210】
項44.陽性荷電ポリペプチドがナノ粒子の外側部分および/または内側部分に濃縮されている、項42または43のナノ粒子。
【0211】
項45.第2のコンジュゲートがナノ粒子の外側部分に濃縮されている、項42~44のいずれか一項のナノ粒子。
【0212】
項46.1つまたは複数の陰性荷電分子がナノ粒子の内側部分に濃縮されている、項42~45のいずれか一項のナノ粒子。
【0213】
項47.ナノ粒子が約0.05μm~約10μmの平均直径を有する、項42~46のいずれか一項のナノ粒子。
【0214】
項48.第2のコンジュゲートにおいて、陽性荷電ポリペプチドと抗体とが二官能性リンカーを介して相互接続されている、項42~47のいずれか一項のナノ粒子。
【0215】
項49.抗体が重鎖および軽鎖を含む、項42~48のいずれか一項のナノ粒子。
【0216】
項50.抗体が細胞表面分子に特異的である、項42~49のいずれか一項のナノ粒子。
【0217】
項51.細胞表面分子が抗体の結合時に内部移行することができる、項50の方法。
【0218】
項52.細胞表面分子が、陰性荷電分子による治療的処置に対して感受性である細胞に発現している、項50または51のナノ粒子。
【0219】
項53.抗体ががん関連抗原に特異的である、項42~52のいずれか一項のナノ粒子。
【0220】
項54.抗体がCD33、EGFR、IGF1R、またはCD20に特異的である、項42~53のいずれか一項のナノ粒子。
【0221】
項55.抗体がゲムツズマブ、セツキシマブ、シクスツムマブ、テプロツムマブ、GR11L、リツキシマブである、項42~54のいずれか一項のナノ粒子。
【0222】
項56.抗体が
からなる群より選択されるCDR配列を有する、項42~55のいずれか一項のナノ粒子。
【0223】
項57.抗体がa. SEQ ID NO:6および7;b. SEQ ID NO:15および16;c. SEQ ID NO:25および26;d. SEQ ID NO:35および36;ならびにe. SEQ ID NO:44および45:からなる群より選択されるVH配列およびVL配列を有する、項42~56のいずれか一項のナノ粒子。
【0224】
項58.抗体がa. SEQ ID NO:8および9;b. SEQ ID NO:17および18;c. SEQ ID NO:27および28;d. SEQ ID NO:37および38;e. SEQ ID NO:46および47;ならびにf. SEQ ID NO:65および18:からなる群より選択される重鎖配列および軽鎖配列を有する、項42~57のいずれか一項のナノ粒子。
【0225】
項59.陰性荷電分子が核酸である、項42~58のいずれか一項のナノ粒子。
【0226】
項60.核酸が二本鎖核酸である、項42~59のいずれか一項のナノ粒子。
【0227】
項61.核酸が一本鎖核酸である、項42~60のいずれか一項のナノ粒子。
【0228】
項62.核酸が約18~約25bpを有する、項42~61のいずれか一項のナノ粒子。
【0229】
項63.一本鎖核酸が約18~約25ntを有する、項42~62のいずれか一項のナノ粒子。
【0230】
項64.陰性荷電分子がDNAまたはRNAである、項42~63のいずれか一項のナノ粒子。
【0231】
項65.陰性荷電分子がsiRNA、esiRNA、shRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、またはmiRNAである、項42~64のいずれか一項のナノ粒子。
【0232】
項66.陰性荷電分子が、KRAS、BRAF、PIK3CA、PAX3-FKHR、EWS-FLI1、c-MYC、TP53、DNMT3A、IDH1、NPM1、またはFLT3に特異的なsiRNAである、項42~65のいずれか一項のナノ粒子。
【0233】
項67.陰性荷電分子が、好ましくは、KRAS、BRAF、PIK3CA、PAX3-FKHR、EWS-FLI1、c-MYC、TP53、DNMT3A、IDH1、NPM1、およびFLT3からなる群より選択される、1つまたは複数の標的に特異的なsiRNAの混合物である、項42~66のいずれか一項のナノ粒子。
【0234】
項68.陰性荷電分子が約20kDa以下の分子量を有する、項42~67のいずれか一項のナノ粒子。
【0235】
項69.陰性荷電分子が少なくとも2-の電荷を有する、項42~68のいずれか一項のナノ粒子。
【0236】
項70.陽性荷電ポリペプチドがプロタミンまたはヒストンである、項42~69のいずれか一項のナノ粒子。
【0237】
項71.二官能性リンカーがヘテロ二官能性リンカーである、項42~70のいずれか一項のナノ粒子。
【0238】
項72.二官能性リンカーがスルホ-SMCCである、項42~71のいずれか一項のナノ粒子。
【0239】
項73.項42~72のいずれか一項のナノ粒子を含む、組成物。
【0240】
項74.薬学的組成物である、項73の組成物。
【0241】
項75.治療における使用のための、項42~72のいずれか一項のナノ粒子または項73もしくは74の組成物。
【0242】
項76.使用ががんの処置における使用である、項75の使用のためのナノ粒子または組成物。
【0243】
項77.使用が固形腫瘍の処置における使用である、項75の使用のためのナノ粒子または組成物。
【0244】
項78.使用が、肺がん、肉腫、結腸直腸がん、血液がんからなる群より選択されるがんの処置における使用である、項75の使用のためのナノ粒子または組成物。
【0245】
項79.項42~72のいずれか一項のナノ粒子または項73もしくは74の組成物を含む、キット。
【0246】
項80.陰性荷電分子が、薬物および/またはプロドラッグ、例えば、レムデシビル三リン酸である、項1~41のいずれか一項の方法または項42~72のいずれか一項のナノ粒子。
【0247】
項81.陰性荷電分子が、負の正味の電荷を有する部分、例えば、Cy3.5またはAlexa488にコンジュゲートされている、薬物および/またはプロドラッグ、例えば、イブルチニブである、項1~41のいずれか一項の方法または項42~72のいずれか一項のナノ粒子。
【実施例】
【0248】
以下の実施例は本発明を例示する。これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。実施例は、例示のために含まれ、本発明は、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0249】
実施例1:コンジュゲーションプロトコルの修正
本発明者らは、Baumer,N.et al.,2016;Baumer,N.et al.,2018;Baumer,S.et al.,2015に発表されたようにして、選択された担体抗体とスルホ-SMCCとプロタミンとの間の化学的コンジュゲーションを実施した際に得られた、SDS-PAGE電気泳動において意図されない特性を有するコンジュゲートに困惑した。例えば、DTT、DTE、β-メルカプトエタノール、またはTCEPなどの還元剤によって、もはや還元不可能であることが判明するIgGコンジュゲートの現象が、高頻度に観察された(
図1、AおよびB、例示についてはゲルaを参照すること)。次に、一部は付加的なプロタミンを含み、一部は含まない、相互に架橋されたIgGの二量体または多量体を表す、意図されたよりはるかに高い分子量を示すコンジュゲートが観察された(
図1C、図面の簡単な説明、例示についてはゲルBを参照すること)。極端なケースにおいて、これらの副反応の全ての複雑さは、おそらく、
図1Bのこれらのコンジュゲートa~dの全ての混合物によって引き起こされる、得られたコンジュゲートのクラウド様の出現をもたらす。
【0250】
逆に、意図されたコンジュゲートは、ペプチドHCおよびLCの内外に天然ジスルフィド結合を保持し、付加的な内部架橋操作は有しないが、軽鎖(LC)および重鎖(HC)に架橋された多数のプロタミンを有する分子、
図1においてCでマークされた製剤であった。
【0251】
従って、本発明者らは、スルホ-SMCCによるプロタミンペプチドのアミノ末端活性化の後に、付加的な精製工程を導入することによって、コンジュゲーションプロトコルを修正した。まだ活性を有する過剰の遊離体スルホ-SMCCから、活性化されたSMCC-プロタミンを分離するゲルクロマトグラフィによって、得られた生成物を精製した。この工程以降、抗体コンジュゲーションは、残留クロスリンカーの混入がない、純粋なSMCC-プロタミンの均一な溶液によって実施された(
図2)。
【0252】
従って、以下の実施例に示される全ての実験は、「新しい」SMCC枯渇プロトコルに従うことによって実施された。得られた複合体は、電気泳動時の均一性、ターゲティング性能、および機能的有効性に関して、大幅に改善された。
【0253】
従って、ここに示される全ての所見は、Baumer,N.et al.,2016;Baumer,N.et al.,2018;Baumer,S.et al.,2015に発表された製剤化ではなく、新しい作製プロセスによって合成された治療剤によって実施された。
【0254】
実施例2:未発表の修正コンジュゲーションプロトコルを使用した、非小細胞肺がんにおけるがん遺伝子不活性化
次に、EGFR発現非小細胞肺がん細胞株(NSCLC)を、セツキシマブ-プロタミンによって標的とした。ここで、セツキシマブ-プロタミンは、セツキシマブ-プロタミン1モル当たり8モルのsiRNAに結合することができ(
図3A、B)、siRNAを受容体依存的に初期エンドソームへ送達した(
図3C)。インビトロで処理されたNSCLC細胞株において、KRASに対するsiRNAと複合体化された抗EGFR-mAB-プロタミンによる処理の後、KRASが効果的にサイレンシングされた(
図3D)。対照siRNAを負荷されたコンジュゲートされたセツキシマブは、セツキシマブ感受性A549細胞における細胞増殖、コロニー形成、CD1ヌードマウスにおける腫瘍増殖および腫瘍重量に対して小さい効果を有し、このことは、NSCLC患者におけるセツキシマブを使用した無作為化臨床試験と一致している。しかし、この効果は、KRAS siRNAの使用によって有意に増幅された。
図3EおよびF(右パネル)を参照すること。セツキシマブ抵抗性SK-LU1細胞は、セツキシマブ-対照siRNAに対して、はるかに良く耐えたが、ここでも、KRAS siRNAによってコロニー増殖および腫瘍増殖が有意に阻害された(
図3EおよびF、左パネル)。
【0255】
次に、凍結切片(A549腫瘍)およびパラフィン切片(SK-LU-1腫瘍)における免疫蛍光において、増殖マーカーKi67発現に対する、NSCLC異種移植腫瘍の全身抗EGFR-mAB-siRNA処置の効果を調査した。PBSまたは抗EGFR-mAB-対照siRNAによって処置されたA549(
図4A~D)およびSK-LU-1腫瘍(
図4G~J)において、Ki67染色は、それぞれの腫瘍細胞のHoechst染色された核の広範囲に及んだ。逆に、抗EGFR-mAB-KRAS-siRNAによって処置された腫瘍は、Ki67染色を示す増殖性細胞をはるかに少なく示した(
図4E~Fおよび2K~L)。
【0256】
全身抗EGFR-mAB-siRNA適用による腫瘍増殖遅滞は、腫瘍組織の増殖の低下によってのみならず、アポトーシスの増加によっても誘導され得る。さらに、アポトーシスの誘導は、当然、腫瘍サイズを能動的に縮小させることができる可能性のあるがん治療薬の望ましい効果である。アポトーシスの兆候としての核内DNA断片化を明らかにする、エクスビボのそれぞれの腫瘍組織のTUNEL(末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼdUTPニックエンド標識)染色によって、アポトーシス細胞の存在量を調査することを目指した。ペルオキシダーゼ染色の発色後、対照によって処置された腫瘍切片は、抗EGFR-mAB-対照siRNAによって処置されたA549腫瘍(
図5C~D)において、PBS処置(
図5A~B)と比較して、TUNEL陽性核の倍増を示し、担体がKRAS siRNAを含有する時、さらに倍増を示した(例示については、
図5E~F、統計量については、
図5M)。アポトーシスシグナルによって、PBSによって処置されたSK-LU1腫瘍(
図5G~H)と、抗EGFR-mAB-対照siRNAによって処置されたもの(
図5I~J)とは、区別不可能であったが、KRAS-siRNAを抗体担体にコンジュゲートし、異種移植腫瘍に適用した場合、TUNEL陽性核の数は4倍増加した(
図5K~Lおよび
図5N)。
【0257】
総合すると、抗EGFR-mAB-KRAS siRNAによる処置による腫瘍サイズの著しい有意な低下は、それぞれの腫瘍における増殖の低下とアポトーシスの増加との組み合わせによって説明され得る。
【0258】
さらに、本発明者らは、EGFRが肉腫においても表面発現しているという事実も活用する((Herrmann et al.,2010)および次の章を参照すること。本発明者らの系は、抗体を、活性抗がん剤としてではなく、がん遺伝子特異的エフェクターsiRNAを運ぶシャトル系の成分として利用するため、セツキシマブが、肉腫における最初の臨床試験において、単剤として無効であったという観察(Ha et al.,2013)は、本発明者らの目的には関係ない。
【0259】
実施例3:横紋筋肉腫におけるがん遺伝子の標的化
横紋筋肉腫(RMS)は、未熟筋芽細胞に起因し、子供および若年成人において主に発生する侵襲性軟部組織肉腫である。小児RMSは、組織学的外観に依って、2つの主要なカテゴリに分けられる:およそ2/3は、より良好な予後を有する胎児性RMS(ERMS)であり、1/3は、より侵襲性の胞巣状RMS(ARMS)である(Stevens,2005)。これまでに、11p15のヘテロ接合性喪失の蓄積を除き、診断的に価値のある共通の遺伝学的病変は、ERMSにおいて見出されていない(Chen et al.,2013)。ARMSの重要ドライバーの標的化は、治療的影響を有する可能性がより高い。胞巣状横紋筋肉腫(ARMS)を特徴付ける遺伝学的病変は、t(1;13)またはt(2;13)の染色体転座によるPAX3-FKHRまたはPAX7-FKHRの融合である。従って、PAX-FKHR融合遺伝子およびその転写物の標的化は、悪性増殖を阻害し、ARMS細胞のアポトーシスを誘導するための特異的かつ効果的な手段であり得る。発がん性融合タンパク質または変異型タンパク質の阻害は、困難であることが見出された。タンパク質が「創薬不可能」と明記されるか、または薬物処置がタンパク質の抵抗性バージョンの選択およびより侵襲性の再発をもたらすか、のいずれかであった(Verdine and Walensky,2007)。
【0260】
RNAiによる融合タンパク質のダウンレギュレーションは、発現がmRNAレベルで阻害されるため、これらの問題を克服するように意図される。具体的には、RMS細胞において、RNAiによるPAX3-FKHR融合タンパク質の発現のダウンレギュレーションは、悪性表現型に対する直接的な効果を有した。PAX3またはPAX3-FKHRに対するsiRNAによるPAX3-FKHR融合物のサイレンシングは、RMS細胞株の増殖、移動性、およびコロニー形成を低下させた(Kikuchi et al.,2008;Liu,L.et al.,2012)。従って、確立された抗体-プロタミン担体系による安定的かつ特異的な方法によって、腫瘍細胞に運ばれたRNAiによる、ARMS特異的融合タンパク質の効果的なダウンレギュレーションは、インビボで、治療効果をもたらすと、本発明者らは期待した。
【0261】
RMSにおいては、IGF1Rおよび上皮増殖因子受容体(EGFR)が、本発明者らのモジュール型担体の候補標的である。本発明者らの技術は、(a)細胞表面受容体装飾および(b)細胞発がん機構という2つの独立した特徴によって、腫瘍細胞を他の細胞から区別することを可能にし、従って、二層の特異性を提供する。本発明者らおよびその他(Herrmann et al.,2010)は、異なる胞巣状(および胎児性)RMS細胞株におけるEGFRおよびIGF1Rの高密度表面発現を同定した。これらの細胞表面受容体は、両方とも、本発明者らの系の標的成分として機能し得る。
【0262】
RMS細胞株における抗体構築物のターゲティング効率をチェックするため、ERMS EGFR
+細胞株RDを、抗EGFR抗体(セツキシマブ)-siRNA複合体によって処理し、ARMS IGF1R
+細胞株RH-30を、抗IGF1R-siRNA複合体によって処理した(
図6)。両細胞株は、IGF1RおよびEGFRを可変性のレベルで発現し(
図6A)、その最高発現によって、RD細胞は、抗EGFR-Alexa488-siRNAを優先的に内部移行させ(
図6BおよびC、上パネル)、RH-30細胞は、抗IGF1R-Alexa488 siRNA複合体を優先的に内部移行させる(
図6B、下パネル)。Alexa488-siRNAは、セツキシマブ-プロタミンによって、全EGFR
+RD細胞のうち90%もの細胞に内部移行することができたが(
図6C、中央パネル)、抗IGF1R抗体は、IGF1R
+RH-30細胞において、効果が低かった(
図6B、下パネル)。
【0263】
RMSに典型的なPAX3-フォークヘッド融合がん遺伝子の特異的標的化についての原理証明実験を実施するため、PAX3-FKHRのブレークポイント領域にかかる様々なsiRNA(
図7D)を設計し、コロニー形成アッセイにおいて、セツキシマブ-プロタミンにカップリングされた、これらのブレークポイントにかかるsiRNAによる処理に、ARMS RH-30細胞を供した。ブレークポイントsiRNAは、対照と比較して、RH-30のコロニー形成を有意に低下させ(
図7E)、ERMS型細胞RDのコロニー形成は、cMyc siRNAと組み合わせられたNRASの輸送によって損なわれた(
図7AおよびB)(いずれの標的遺伝子も、ERMSにおける周知のがん遺伝子である)。従って、RD細胞において、抗EGFR/NRAS siRNAによる処理の後、ウエスタンブロットにおいて、NRASのがん遺伝子発現が低下した(中央列、
図7C)。
【0264】
これらの結果は、がん遺伝子不活性化を誘発するため、選択された核酸を特異的に輸送するため、RMS腫瘍の受容体装飾に応じて、少なくとも2つの異なるモノクローナル抗体を含むモジュール型抗体-siRNA系を使用して、RMS細胞株を標的とすることが可能であることを例示している。
【0265】
実施例4:ユーイング肉腫におけるがん遺伝子の標的化
ユーイング肉腫は、子供および若年成人における骨腫瘍である。転移期の長期完全寛解は35%未満であるため、より良い治療オプションが高度に必要とされている(Paulussen et al.,1998;Paulussen et al.,2008)。これらの腫瘍細胞において、中心的な遺伝学的事象は、融合タンパク質EWS-FLI1の形成をもたらす染色体転座t(11;22)の発生である(Arvand and Denny,2001)。ユーイング肉腫細胞は、その表面に大量のIGF1Rを発現する。従って、本発明者らは、EWS-FLI1ブレークポイント特異的siRNAを輸送するため、抗IGF1R抗体、例えば、クローンImcA12(シクスツムマブ)またはテプロツムマブをSMCC-プロタミンコンジュゲートとして使用したモジュール型治療を適用することを意図した。原理証明として、市販の抗IGF1Rマウス抗体GR11L(Merck)を使用し、ユーイング細胞が標的とされることを示した。これらの結果は、(Baumer,N.et al.,2016)に発表されており、
図8に図示される。
【0266】
この治療オプションを使用可能にするため、2つの異なるIGF1R抗体を、CHO-S細胞においてクローニングし、発現させ、HPLCを使用して精製した。これらは、(本明細書において「A12」と呼ばれる)シクスツムマブおよび(本明細書において「Tepro」と呼ばれる)テプロツムマブのクローンであった。両方とも、十分な量で産生され、SMCC-プロタミンにカップリングされ(
図9A)、両方とも、siRNAに結合し(
図9B)、siRNAをIGF1R陽性細胞SKNM-Cに輸送した(
図9C)。
【0267】
EWS-FLI1に対するsiRNAとの複合体としてのこれらのIGF1R-mAB-プロタミンコンジュゲートと共に、細胞をインキュベートし、半固体軟寒天に播種した時、コロニー形成は有意に低下した(
図10AおよびB)。
【0268】
従って、本発明者らのモジュール型系は、抗IGF1R抗体および肉腫細胞の使用のため、具体的には、融合タンパク質に特異的なsiRNA、例えば、EWS-FLI1-siRNAのノックダウンのため、適用され得ると結論付けられる。
【0269】
実施例5:リンパ腫モデルにおけるがん遺伝子の標的化
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)は、高頻度のリンパ腫サブタイプである。DLBCL細胞は、その表面にCD20を発現する。影響を受けた患者のための標準的な第一選択治療は、化学療法と抗CD20抗体リツキシマブとの組み合わせである。リツキシマブは、CD20分子に結合し、それを阻止し、抗体依存性細胞傷害(ADCC)をもたらす。このアプローチによって、患者のおよそ65%が治癒し得る。第一選択処置に対して不応性であった患者、または初期応答後に再発した患者は、極端に低い生存率を特徴とし、このことは、新規治療アプローチが緊急に必要とされていることを示す。従って、本発明者らは、細胞ターゲティング抗体としての第一選択薬リツキシマブを、遺伝学的に極めて多様なリンパ腫細胞において同定された異なるがん遺伝子に対するsiRNAと組み合わせることを目指した(
図15)。
【0270】
本発明者らは、最初に、siRNAと結合するための各複合体の有効性を比較するため、異なる比率で、CD20抗体リツキシマブをSMCC-プロタミンに化学的にカップリングした(
図13)。興味深いことに、80モルまたは120モルの未結合SMCC-プロタミンの高過剰にも関わらず、siRNAの結合は、1モルの抗体を40モルのSMCC-プロタミンにカップリングする場合とほぼ同一であった(
図13)。従って、本発明者らは、最小量のSMCC-プロタミンで十分であると結論付け、抗体:SMCC-プロタミンのルーチンの比率である1:32に戻した(
図14)。以前に行われたのと同様に、リツキシマブ-プロタミンのsiRNAとの結合能を最初にチェックし、他の担体抗体で見出されたのと類似した、siRNAと担体系との配位結合(約8モル/モル)を観察した(
図14B)。
【0271】
その後、異なるDLBCL細胞株が、CD20およびCD33の表面発現について陽性と判定された(
図15、上パネル)。従って、抗CD20 mABリツキシマブおよび抗CD33-mABゲムツズマブによる内部移行研究を実施した。
【0272】
BTK以外のさらなる標的分子を得るため、抗体によって媒介されるsiRNAノックダウンによるB細胞受容体軸分子スクリーニングに、DLBCL細胞株を供したところ(
図15)、抗CD33抗体-siRNAターゲティングを使用して、特に、HBL1細胞において、有意なコロニー増殖阻害がもたらされた(
図15、下パネル)。
【0273】
実施例6:担体抗体-プロタミンと、siRNAとは異なる化学構造を有する低分子量ポリアニオン性薬物とによって形成された複合体
別のプロジェクトにおいて、本発明者らは、治療用モノクローナル抗体、例えば、リツキシマブまたはゲムツズマブが、低分子量(lmw)薬物のための担体分子として利用され得るという仮説を立てた。多数のlmw薬物、例えば、キナーゼ阻害剤群の薬物動態および安全性は、ターゲティングされた担体によって、ターゲティングされていない型より改善される可能性があるため、この戦略は臨床的に重要である。従って、本発明者らは、そのような抗体-阻害剤コンジュゲートの使用について、(i)抗体が、意図された標的細胞における阻害剤の濃縮を助けるため、それらは、より低い投薬量で適用され得、(ii)阻害剤が、意図されない細胞に取り込まれ、意図されない毒性反応を誘導することを抗体が阻害するという仮説を立てた。
【0274】
第1の実験セットにおいて、本発明者らは、本明細書において低分子1(SM-1)と呼ばれる公知の増殖阻害剤の誘導体である、4-という電荷を有する陰性荷電低分子を合成した。従って、陰性荷電の発光赤色蛍光RFを付加することによって、非荷電低分子阻害剤を(本明細書において「SM-1/RF」と呼ばれる)強アニオン性化合物に変換し、抗体-阻害剤コンジュゲートが形成されるよう、静電気力によってプロタミンベースの担体系に結合させた。
【0275】
赤色蛍光色素の強いポリアニオン性の電荷に加えて、このコンジュゲートは、赤色蛍光の形態でインビトロおよびインビボで容易に追跡可能であるという利点を有していた。
【0276】
その後、SM-1/RFと、2つの担体系、リツキシマブ(CD20)-プロタミンおよび信頼性の高いセツキシマブ(EGFR)-プロタミンとの結合について、同じ実験を実施した。両担体は、SM-1/RFの強い共集合を示し、siRNAと比較して低い分子量(およそ13kDa)のため、担体mAB 1モル当たりSM-1/RF 100モルを超える、極端に高いモル/モル静電飽和度を示した(
図17)。
【0277】
亜臨界の20倍過剰のSM-1/RFを負荷された対応するコンジュゲート、リツキシマブ-プロタミンおよびセツキシマブ-プロタミンを、CD20発現細胞株およびEGFR発現細胞株と共にインキュベートし、SM-1/RFの細胞内濃縮について分析した。いずれのケースにおいても、典型的な赤色蛍光励起/発光波長の組み合わせにおいて蛍光シグナルの細胞内濃縮が実証され得た(
図18)。従って、修飾されたSM-1/RF化合物は、細胞内に内部移行し、従って、作用を起こすことができる。
【0278】
実施例7:有効な抗体-プロタミン-siRNA製剤の驚くべき特色
使用された全ての抗体の正確なコンジュゲーション手法は、2つの工程に分けられ得る:第1に、プロタミンのスルホ-SMCCへのアミノ末端コンジュゲーション、次いで、過剰のコンジュゲーションクロスリンカーを除去するためのサイズ排除プロセス、第2に、活性化されたプロタミン-SMCCのIgG骨格へのシステイン指向性コンジュゲーション。得られたバイオコンジュゲートは、IgGの重鎖および軽鎖の両方において、SDS-PAGE電気泳動から分かるように、有意な分子量シフトを示す。IgGの約60~80%がプロタミンタグを含有するように変換され、過剰のプロタミンの残存量が常に可視であった。
【0279】
図19Aに示されるように、EGFR-mABセツキシマブ-プロタミンコンジュゲートについて、プロテインG相互作用クロマトグラフィによって反応混合物から未結合プロタミンを枯渇させた。プロタミンにコンジュゲートされた抗体を、プロテインGマトリックスに結合させ、未結合プロタミンを初期に溶出させ、その後、プロタミンを含まない精製されたIgG-プロタミン複合体を溶出させた(画分29~31を参照すること)。驚くべきことに、この材料は、プロタミンにコンジュゲートされていたが、古典的なバンドシフトアッセイにおいて、siRNAに結合することができず(
図19Bの右半分を参照すること)、一方、未精製のmAB-プロタミン複合体は、一般的な1:16のモル比で、siRNAに結合した。
【0280】
プロタミン含有調製物およびプロタミン枯渇型調製物の有効性をさらに検査するため、EGFRを発現するKRAS依存性のNSCLC細胞株、A549およびSK-LU1を、KRAS-siRNAおよび対照siRNAを輸送する両調製物によって処理した。遊離プロタミンを含有する調製物(
図19AおよびBを参照すること、「32倍のSMCC-プロタミンにカップリングされた抗EGFR-mAB」)のみが、がん遺伝子依存性のため予想されたように、KRAS-siRNAによって細胞株のコロニー増殖を効果的に低下させた(
図20AおよびB)。
【0281】
AMLの実験的処理のために使用された抗CD33 mABゲムツズマブに対して、全く同じ精製手法を実施し、同じ効果を観察した:HPLCによって未結合プロタミンを枯渇させたコンジュゲート調製物は、望ましい量、siRNAと結合しなかったが(
図21B、下パネル)、未精製のものは、正確に結合した(
図21B、上パネル)。
【0282】
さらに、未精製の材料とは対照的に、未結合SMCC-プロタミンを含まない担体には、コロニー形成アッセイにおいて、OCI-AML2細胞に対する抗DNMT3A-siRNAの阻害有効性が残存していなかった(
図21C)。この観察は、担体系の以前の分子集合仮説(
図3A)と適合性でなく、以前の仮説全般に異議を唱えた。
【0283】
これらの困惑させる予想外の観察の説明を見出すため、本発明者らは、複数の実験を実施した。
【0284】
図19からの結果を考慮して、本発明者らは、CD20-mAB-プロタミン-SM-1/RF-プロタミン付加物における未結合SMCC-プロタミンの存在が、siRNA付加物の場合と同程度に重要であるという仮説を立て、従って、以前に行われたように、アフィニティクロマトグラフィによってリツキシマブ-CD20 mAB調製物からプロタミンを枯渇させた。仮説の通り、枯渇型調製物(
図22A、画分25)は、SMCC-プロタミン含有調製物(
図22B、右)と同じ程度に、ポリアニオン性SM-1/RFと結合し、配位結合することができなかった(
図22B、左)。
【0285】
抗IGF1RモノクローナルAB IMCA-12コンジュゲートを使用することによって、同一の所見が得られた(
図23)。SMCC-プロタミンを枯渇させた抗体-プロタミンコンジュゲートは、siRNAに静電的に結合することができなかった。
【0286】
図24において、SMCC-プロタミンを枯渇させたA12担体抗体(
図23)の、がん遺伝子を不活性化するsiRNAをSKNM-Cユーイング肉腫細胞へ効果的に送達する能力を試験した。有効なsiRNAを負荷された非枯渇型A12-SMCC-プロタミンは、コロニー増殖を低下させたが、枯渇型調製物(
図23、画分19~21を参照すること)は、コロニー増殖を低下させなかった。
【0287】
実施例8:抗体-SMCC-プロタミン/遊離SMCC-プロタミン複合体内の遊離SMCC-プロタミンの役割の解読
前の結果によって、遊離SMCC-プロタミンが存在しない場合、ターゲティングが機能しないことが見出された。従って、本発明者らは、遊離SMCC-プロタミンが複合体内で果たしている役割を見出したいと考えた。当然、遊離SMCC-プロタミンによって主な機能が達成されるという可能性を排除しなければならなかった。従って、遊離SMCC-プロタミンおよびその他の陰性対照によって、一連の実験を実施した。
【0288】
最初に、EWS-FLI1転座生成物に依存するIGF1R陽性EGFR陰性ユーイング肉腫細胞株SKNM-Cによって、コロニー形成アッセイを実施した(
図25)。陽性対照として、抗EWS-FLI1(E/F)-siRNAにコンジュゲートされた抗IGF1R-mAB-プロタミン複合体によって、細胞を処理することによって、EWS-FLI1転座生成物を阻害したところ、SKNM-C細胞のコロニー増殖の有意な低下がもたらされた(
図25)。逆に、遊離SMCC-プロタミンの有り無し両方で、抗EGFR-mAB-プロタミンを担体として使用した抗EWS-FLI1-siRNAの輸送は、対照siRNAと比較してコロニー形成の減少をもたらさず(
図25)、このことから、IGF1Rによって媒介されるターゲティングが、特異的であり、遊離SMCC-プロタミンによるものではないことが示された。さらに、抗EGFR抗体と同じ濃度(60nM)の単独のSMCC-プロタミンも、コロニー形成の阻害を誘導することができなかった(
図25)。
【0289】
次に、SMCC-プロタミンにコンジュゲートされた抗IGF1R抗体と、抗IGF1R-mAB-プロタミン複合体に存在するのと同じ量の遊離SMCC-プロタミン(30倍過剰のSMCC-プロタミンにコンジュゲートされた担体の60nMは、可能性のある遊離SMCC-プロタミンの≦1800nMと等しい)と、有効な抗EWS-FLI1-siRNAとを含む定型的なターゲティング混合物を、SKNM-Cユーイング肉腫細胞に与えた(
図26A)。ターゲティング抗IGF1R-mAB A12を省き、完全混合物と同じ濃度の遊離SMCC-プロタミン+有効なsiRNAのみによってSKNM-C細胞を処理した時、対照scr-siRNAと比較して、コロニー増殖の低下は観察されなかった(
図26A)。AML細胞株OCI-AML-2(
図26B)およびA549 NSCLC細胞(
図26C)においても、この戦略を試験し、その際、常に、ターゲティングmAB(ここでは、それぞれ、抗CD33または抗EGFR)を省き、通常有効なsiRNAを与えた。SKNM-Cの場合と同様に、有効なsiRNAを負荷された遊離SMCC-プロタミンは、対照siRNAと同様に、効果がないままであった。
【0290】
このことから、意図された標的細胞表面分子の検出のためには、正しい抗体が必要とされるが、siRNAと効果的に結合し、複合体化し、治療的有効性のため、発がん性分子へそれをターゲティングするためには、(a)ターゲティング抗体にコンジュゲートされたプロタミン、および(b)混合物中に存在する十分な量の残留未結合SMCC-プロタミンという2つの付加的な前提条件が満たされなければならないという仮定がもたらされた。抗体にカップリングされた担体を含まない遊離SMCC-プロタミンは、これらの要件を満たすことができなかった。
【0291】
解決すべき次の疑問は、本発明者らの担体系のいずれの修飾された集合構造が、本発明者らの研究において観察された全てのインビトロおよびインビボでの有効性の結果を矛盾なく説明し得るかということであった。
【0292】
実施例9:安定的なナノ粒子を形成する予想外の静電マクロ構造の検出および可視化
細胞内の抗体-プロタミン-siRNA複合体は、
図27に図示されるように、対応する細胞表面受容体または分子が発現している場合、処理された細胞培養物試料において容易に同定される。ここで、siRNAと結合しているセツキシマブ(抗EGFR)-SMCC-プロタミンは、EGFRを発現するNSCLC細胞に内部移行し、内部で初期エンドソーム(白ドット、左パネル)にプロセシングされるが、リソソーム(灰色ドット、中央パネル)にはプロセシングされない。
【0293】
実施例10:遊離SMCC-プロタミンを含まない抗体-プロタミン-siRNA複合体または単独の遊離SMCC-プロタミン-siRNAは標的細胞に内部移行しない
興味深いことに、典型的な小胞構造の内部移行は、コンジュゲーションプロトコルからの残留SMCC-プロタミンが混合物中に残っている場合にのみ見られ(
図28、右手)、アフィニティクロマトグラフィによってプロタミン-SMCCを枯渇させた場合には見られなかった(
図28、左手、クロマトグラフィ結果については
図19も参照すること)。従って、視覚的にも、未結合プロタミン-SMCCの存在は、コンジュゲートの効率にとって重要である。
【0294】
他の抗体-SMCC-プロタミン複合体によっても、HPLCを介して遊離SMCC-プロタミンを枯渇させたカウンターパート、および遊離SMCC-プロタミンと比較しながら、これを実施した:遊離SMCC-プロタミンを含まない抗体-プロタミン-siRNA複合体によっても、遊離SMCC-プロタミンのみによっても、細胞株への内部移行は観察されなかった(
図29、
図30、および
図31)。
【0295】
実施例11:抗体-プロタミン-siRNA複合体によるインビトロでの小胞構造の形成
陰性対照実験を実施した時、即ち、EGF受容体を発現していない細胞を、EGF受容体を標的とする有効なコンジュゲートによって処理した時には必ず、極端に低い細胞ターゲティング効率が結果として観察されたが(
図32B)、細胞外における蛍光ミセル構造の蓄積に、本発明者らは興味をそそられた。おそらく、処理されたディッシュ表面上のマトリックス様構造に付着していた、これらの蓄積物は、コンジュゲートと結合し、コンジュゲートを内部移行させるための標的が、細胞上に見出されない場合にのみ見られた。さらに、これらの蓄積物は、全て同じサイズであり、1個のIgG+数個のプロタミン+8個の付着したsiRNAのモノマーを説明するおよそ10~20nmより、はるかに大きいに違いなかった。なぜなら、このサイズは、蛍光光学顕微鏡法において、粒子として検出可能ではないためである。蛍光光学顕微鏡法は、およそ発光波長の半分という解像度を有し、従って、粒子サイズは200nmより大きいということになる。
【0296】
従って、本発明者らは、活性のために必要な1種の安定的なマクロ構造を形成させるための3つの成分、(1)セツキシマブ-SMCC-プロタミン、(2)siRNA、および(3)未結合SMCC-プロタミンを仮定した。IgG-プロタミン-siRNAの効率を担うそのようなマクロ構造の存在を検証するため、溶液中の粒子によって引き起こされる光拡散を相関させるゼータカウンター(MALVERN)における動的光散乱(DLS)による粒子サイズ検出を適用した。結果は興味深いものであった:動的過程として、完全に尤もなサイズ(IgG-プロタミン-プロタミン-siRNAモノマーについての22nm)を有する成分が、数時間後に、400nmより大きいサイズのナノ構造へ自発的に集合するが、この過程は、プロタミン枯渇型調製物においては検出不可能である(
図33)。
【0297】
この過程は時間依存性であり、より大きい構造は、ある特定のインキュベーション時間の後にのみ形成される(
図34)。2~6時間の時間枠が、これらのマクロ構造を形成させるために十分であり、マクロ構造は、室温で、保護されていないPBS環境で、24時間後に、再び部分的に分解し始める。
【0298】
これらの測定に基づき、本発明者らは、抗体-プロタミン/遊離SMCC-プロタミン/siRNA複合体が、細胞外で、細胞コンテクストとは無関係に形成されるという仮説を立てた。これらの複合体を可視化するため、コーティングされたチャンバースライド上で、Alexa488-siRNAを使用して、無細胞で、異なる複合体組成物を一晩インキュベートし、翌日、発達した構造を固定した。蛍光顕微鏡法は、(1)抗体-SMCC-プロタミン、(2)遊離SMCC-プロタミン、(3)siRNAという3つの成分が相互に出会った時にのみ、小胞構造が形成されることを明らかにした(
図35を参照すること)。
【0299】
遊離SMCC-プロタミンを含む抗体-プロタミン複合体は、全て、小胞ナノ構造を形成するが、遊離SMCC-プロタミンを含まないもの、または単独のSMCC-プロタミンは、ナノ構造を形成しなかった(
図36)。
【0300】
詳細には、mAB-SMCC-プロタミン、コンジュゲートされていないSMCC-プロタミン、およびAlexa488によって標識されたsiRNAという3つの成分によって形成されたナノ構造は、マイクロメートルサイズのスフェロイドの形状に類似している(
図37)。その構造は、蛍光顕微鏡法およびレーザースキャン共焦点顕微鏡法によって検証される。スフェロイド構造は、siRNA化合物からのAlexa488シグナルで完全に満たされていることが明らかになった。
【0301】
【0302】
実施例12:インビトロでの小胞構造は異なる温度で発生する
小胞構造の形成が、ある特定の温度に依存するか否かも試験した。実際、それらは、4℃、室温(約22℃)、および37℃で形成される(
図38)。
【0303】
実施例13:抗体-プロタミン-siRNA複合体によるインビトロでの機能性小胞構造の形成は遊離SMCC-プロタミンの量に依存する
複合体内の抗体にカップリングされたSMCC-プロタミンおよび遊離分子としてのSMCC-プロタミンの機能をさらに解明するため、抗体(ここでは、抗EGFR抗体セツキシマブ)に添加されるSMCC-プロタミンの量を滴定した。一定量のセツキシマブを使用し、1:1~1:100のモル比のSMCC-プロタミンを添加した(詳細については、
図39Aを参照すること)。次いで、クーマシー染色SDS-PAGEにおいてコンジュゲーション効率をチェックしたところ、1:1~1:10の抗体:SMCC-プロタミン比をインキュベートした時には、抗体の軽鎖(LC)および重鎖(HC)のカップリングが、最適ではないようであることが見出された(
図39B)。コンジュゲーションプロセスは、1:32の抗体:SMCC-プロタミンのモル比で飽和し、1:50および1:100でさらに増強されることはないようであった(
図39B)。
【0304】
これらの異なるコンジュゲーションのsiRNA結合能を、ルーチンのバンドシフトアッセイによって分析した(
図40A~F)。siRNAの結合は、1:32~1:100のコンジュゲーション比で検出可能であり(
図40D~F)、より低い比では、効率的なsiRNA結合は検出不可能であった(
図40A~C)。
【0305】
異なるコンジュゲーション生成物の特性を、これらのコンジュゲーション生成物をAlexa488-対照siRNA(
図40G~L)と共にインキュベートした時に無細胞で小胞構造を形成する能力によって、さらに分析し、EGFR陽性A459細胞ともインキュベートした(
図40M~R)。1:1~1:10の比率でセツキシマブをSMCC-プロタミンにコンジュゲートした時、効率的な無細胞小胞形成は観察されず(
図40G~I)、1:32の比率では、小胞形成が極めて多量に存在し(
図40J)、1:50および1:100の比率で減少した(
図40K~L)。これらの複合体の内部移行能は、コンジュゲーション1:32で最も高く(
図40P)、コンジュゲーション1:10で減少した(
図40O)。1:1(
図40M)、1:3.2(
図40N)、または1:50~1:100(
図40Q~R)の比率では、内部移行は観察されなかった。これは、1:32のセツキシマブとSMCC-プロタミンとの複合体形成が、最も効率的なコンジュゲーション、無細胞小胞形成、および細胞への内部移行をもたらすため、最適であることを示唆した。
【0306】
機能アッセイとして、異なるコンジュゲーション生成物の、がん遺伝子KRASのノックダウンによってA549細胞のコロニー形成を阻害する効率を比較した。単独の未結合SMCC-プロタミンの影響を解明するため、等量の、セツキシマブにコンジュゲートされていない遊離SMCC-プロタミンとも、これを比較した(
図40S~X)。驚くべきことに、KRAS-siRNAと複合体化されたコンジュゲーションセツキシマブ:SMCC-プロタミン1:32のみが、スクランブル対照siRNAと比較して、コロニー形成の有意な減少をもたらす(
図40V)。単独のSMCC-プロタミンは、いかなる濃度でもKRASノックダウンを介してコロニー形成の阻害を誘導することができない(
図40S~X)。scr-siRNAおよびKRAS-siRNAとの複合体としてのSMCC-プロタミンの際立った毒性が、最高濃度でのみ観察された(
図40W~X)。
【0307】
実施例14:遊離SMCC-プロタミンをSMCC-プロタミン枯渇型抗体-プロタミンコンジュゲートに再添加して、インビトロで小胞構造を形成させることが可能であり、遊離SMCC-プロタミンを遊離プロタミンに置換することが可能である
複合体内の抗体にカップリングされたSMCC-プロタミンおよび遊離分子としてのSMCC-プロタミンの機能をさらに解明するため、HPLCによって遊離SMCC-プロタミンを枯渇させた抗体-プロタミンコンジュゲートに添加されるSMCC-プロタミンの量を滴定した。これらの抗体-プロタミンコンジュゲートは、
図36Fに図示されるように、蛍光siRNAを含む小胞構造を形成することができない。従って、本発明者らは、遊離SMCC-プロタミンを再添加して、この機能を果たすことができるか否か、そしてSMCC-プロタミンを、スルホ-SMCCを含まないプロタミンに置換することができるか否かを問うた。異なる量の遊離SMCC-プロタミンおよび単独のプロタミンを、抗EGFR-mAB-Pに添加した(
図41)。抗体に対して1倍のSMCC-プロタミンまたは10倍のSMCC-プロタミンの添加は、小胞構造を形成させるために有効ではなかったが(
図41AおよびB)、32倍のSMCC-プロタミンの添加は、極めて効果的な小胞の形成をもたらす(
図41C)。このアッセイによると、遊離SMCC-プロタミンを、化学的にカップリングされたスルホ-SMCCを含まないプロタミンに置換することが可能である(
図41F)。
【0308】
実施例15:抗体-プロタミン-siRNAおよび/またはSM-1/RF複合体によるインビトロでの小胞構造の形成
この新しい予想外のナノ構造モデルを試験するため、構造的には完全に異なるが、静電気的に等しい電荷を有する分子SM-1/RF(実施例8を参照すること)を使用し、それを抗体-プロタミンコンジュゲートと複合体化した(
図42~
図45)。
【0309】
付加的なsiRNAの有り無し両方のmAB-プロタミン-SM-1/RF-コンジュゲートの無細胞集合の結果を調べたところ、それぞれのナノ構造の量およびサイズに著しい違いが観察された:mAB-プロタミン+遊離SMCC-プロタミンによって複合体化されたsiRNAおよびSM-1/RFによって集合したものは、siRNAを含まないものより相当大きく、高頻度であった(
図42CおよびF、ならびに
図43DおよびH)。この現象は、4つの成分全てからなる混合型粒子が安定的なナノ構造を形成するという仮説によって説明される。詳細な蛍光顕微鏡写真において、最大粒子のナノ構造は、siRNAがスフェロイドミセルの境界を形成しており、SM-1/RFがこのスフェアの内腔を満たしているものとして明らかにされ得る(
図44および
図45、拡大図を参照すること)。
【0310】
混合型の抗体-プロタミン粒子が、SM-1/RFのみがmAB-プロタミンと複合体化されたものより高頻度であり、はるかに大きいというこの現象は、担体抗体が抗CD20-mABリツキシマブ(
図44)である場合にも、抗EGFR-mABセツキシマブ(
図45)である場合にも見られた。
【0311】
即ち、陰性荷電しているSM-1/RFは、抗体-プロタミン複合体と共に小さい小胞を形成することができるが(
図42Eおよび
図43F)、直鎖状で高度に陰性荷電している分子であるsiRNAは、抗体-プロタミン/遊離SMCC-プロタミン複合体間の1種の静電「接着剤」として機能し得る。これは、赤色蛍光SM-1/RFで満たされているように見える非常に大きい小胞において円形の輝きとして観察され得る(
図44および
図45)。
【0312】
図44および37に見られる大きいミセル構造は、位相差条件での定型的な光学顕微鏡分析においても可視である(
図46を参照すること)。
【0313】
さらに、この観察は、レーザースキャン顕微鏡法(LSM、
図47)によって確認された。ここで、無細胞で形成された小胞の共焦点分析は、緑色蛍光siRNAが環を形成することを示し(
図47A a~cおよび
図47B d~f)、抗CD20-mAB-Pによって形成されたような非常に巨大な小胞について、この小胞の内腔は、赤色蛍光SM-1/RFで満たされていることが分かる(
図47B dおよびf)。
【0314】
実施例16:提唱されたモデル
総合すると、担体-抗体-プロタミン+未結合プロタミンによるアニオン性カーゴ分子の結合の原理は、siRNA核酸以外のカーゴにも適用され得る。ここで、ポリアニオン性という特徴を与えるため、カーゴ分子を修飾すること、そして反応物の強力な静電配位結合および自己集合を可能にするため、未結合プロタミン-SMCCを調製物中に残すことが重要である。
【0315】
この観察は、新しい予想外の高分子ナノ構造が、本発明者らの担体系のインビトロおよびインビボでの薬物動態学的有効性のため、必要かつ十分である可能性があることを強く支持する。
【0316】
従って、本発明者らは、全く予想外の観察である、siRNAの安定性を担い、siRNAおよび/またはアニオン性低分子阻害剤を意図された細胞へ効果的に送達することができるナノ粒子様マクロ構造を形成するための、成分の組み合わせ、(1)抗体-プロタミン、(2)siRNA/アニオン性低分子阻害剤、および(3)未結合(SMCC-)プロタミンの仮説を立てる。このナノ構造集合の例示的な理想化されたモデルは、
図11に示される。
【0317】
結論として、最小の共通特徴要件がポリアニオン性であるということであり、他の構造的類似性を有しない、様々な化学的に異なるエフェクターペイロードを使用した実験は、本発明者らの新しい予想外のナノ構造モデルが、抗体-SMCCリンカー-プロタミンsiRNA担体および抗体-SM-1/RF系のインビトロおよびインビボでの薬物動態学的特徴の基礎であるという実験的証拠を与える。
【0318】
(1)siRNA/アニオン性低分子の輸送および標的細胞への特異的送達、ならびに(2)特異的な細胞内がん遺伝子不活性化、のための二重の特異性を有するこのモジュール型ナノ構造系は、様々な疾患群、例えば、がんのために使用され得る。
【0319】
実施例17:アンチセンスオリゴヌクレオチドの抗体-プロタミンコンジュゲートへのカップリング
遺伝子発現をノックダウンするための代替ツールとして現在使用されている一本鎖オリゴヌクレオチドを輸送するためにも、抗体-プロタミンナノ粒子が使用され得るか否かをチェックするため。これらの合成アンチセンス一本鎖オリゴヌクレオチド(「ASO」)は、siRNAと同程度に短く、siRNAと同様にαEGFR-mAB-プロタミンコンジュゲートに結合するという仮説が立てられる。従って、対照ASOを使用してバンドシフトアッセイを実施したところ、1モルのαEGFR-mAB-プロタミンコンジュゲートは、室温で1時間または37℃で5分間インキュベートされた時、少なくとも8~32モルのASOに結合し得ることが見られた(
図12)。
【0320】
実施例18:低分子量ポリアニオン性薬物イブルチニブ-Cy3.5(「RMA561」)の合成
イブルチニブは、ブルトンキナーゼの共有結合性結合剤である。イブルチニブは、いくつかのリンパ腫サブタイプにおいて使用されており、可溶性ブルトンキナーゼのATP結合ポケット内のシステインへの共有結合的な付加によって、B細胞受容体の下流のシグナル伝達を阻止する。イブルチニブは、リンパ腫細胞のみならず、正常細胞においてもBTKを標的とするため、感染、肺炎、または不整脈などの重篤な副作用を有し得る(Wilson et al.2015)。それは、より高い投薬量、無関係の細胞による妨害をもたらし、さらに、BTK以外の標的に対するバイスタンダー効果に部分的に起因し得る有害作用をもたらす(Byrd et al.2013)。次に、イブルチニブ投薬の長期化は、耐性の発達をもたらし得る(Lenz 2017)。ここでは、最初に、CD20を標的とする、DLBCLの標準治療の一部である適当な担体抗体、リツキシマブに、高度のリンカー化学によって、イブルチニブをコンジュゲートすることを試みた。コンジュゲーションは、成功したが、コンジュゲートの可溶性を変化させ、従って、さらに活用することはできないことが判明した。
【0321】
従って、非荷電イブルチニブを(本明細書において、イブルチニブ-Cy3.5と呼ばれる)強アニオン性化合物Cy3.5-RMA561に変換し、抗体-阻害剤複合体を形成させるため、静電気力によって、プロタミンベースの担体系に結合させた。シアニン色素Cy3.5は、可能性のある結合剤として、4個のスルホン酸基を呈することによって、強いアニオン性の特徴を示す(
図48)。本発明者らの観点から、ナノ担体を形成させるためには、アニオン性の電荷を分子の1つの部位に集中させ、全体的に直鎖状の形状を有することが好ましい。さらに、シアニン色素は、評価の全ての段階で、蛍光読み取りを使用することを可能にする。公開されたデータに従って(Kim et al.2015;Turetsky et al.2014)、市販のピラゾロピリミジン1から出発して、アミノ官能化されたイブルチニブ誘導体5を合成した。ピラゾロピリミジン1をヨウ素化し、スズキカップリングを介して、4-フェニルオキシベンゼンボロン酸によって置換し、イブルチニブコア構造の主要部分2を形成させた。高い結合親和性にとって重要な(S)-N-Boc-3-ヒドロキシピペリジンを、立体制御光延反応を介して付加し、化合物3を形成させた。ピペリジン部分の脱保護の後、標的との不可逆的な結合のため、α,β-不飽和リンカー4(マイケルアクセプター)を導入した。得られたBoc保護アミン5は、塩基性条件で、対応するアミドイブルチニブ-Cy3.5(Cy3.5-RMA561)を与える、シアニン色素Cy3.5(Lumiprobe)などの異なるアニオン性部分によって標識するためのリード構造を表す。最終生成物を、C18-SPEカートリッジによって精製し(純度>98%(HPLC))、高分解能質量分析によって検証した。
【0322】
Bocで保護された誘導体5(8.2mg、0.014mmol、1.05当量)を、(モレキュラーシーブ4Aで脱水された)0.5mLの無水ジクロロメタンに溶解させ、塩化水素4Mジオキサン溶液(41μL、0.166mmol、12当量)を添加し、5が完全に遊離アミンに変換されるまで(TLC:シリカ、溶媒:10%MeOH/EtOAc、検出:UV254およびニンヒドリン染色によるトラッキング)、反応混合物を室温で撹拌した。反応混合物を35℃に加熱しながら真空で蒸発させた。残留白色固体を0.5mLの無水ジメチルホルムアミドに溶解させ、その溶液に、0.5mLの無水ジメチルホルムアミドおよびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(72μL、0.414mmol、30当量)に溶解したCy3.5のNHSエステル(Lumiprobeによる「スルホ-Cy3.5 NHSエステル」;15mg、0.014mmol、1.0当量)を添加した。TLC分析(RP C-18、溶媒:MeOH/H2O/AcOH 10/0.5/0.2 v/v/v、検出:UV-VISおよびニンヒドリン染色)によって制御された反応の完了まで、室温で遮光しながら反応混合物を撹拌した。反応混合物を35℃に加熱しながら真空で蒸発させ、残渣をペンタン、ジエチルエーテル、酢酸エチルで粉砕し、室温で真空乾燥し、21mgの粗生成物(Cy3.5-RMA561)を紫色固体の形態で得た。
【0323】
分析的に純粋な試料を、12g C18 SPEカートリッジでの粗生成物のクロマトグラフィ精製によって調製した。カートリッジを水(10mL)で洗浄することによってプレコンディショニングした。不純物および反応副生成物を除去するため、粗生成物を2つの部分に分け、各々を0.5mLの水に溶解させ、カートリッジに負荷し、次いで、水(10mL)で洗浄し、さらにアセトニトリル(10mL)で洗浄した。その後、生成物を、混合物ACN/H2O 1:1(v/v)によって、純粋なCy3.5-RMA561を排他的に含有する小数の画分に溶出させた。凍結乾燥後、2×8mgの純粋な生成物Cy3.5-RMA561が、紫色固体として得られた。
【0324】
Cy3.5色素の強ポリアニオン性の特徴に加えて、コンジュゲートは、赤色蛍光の形態でインビトロおよびインビボで容易に追跡可能であるという利点を有していた。
【0325】
実施例19:インビトロでのイブルチニブ-Cy3.5との抗体-プロタミン/プロタミン複合体形成の分析
最初に、イブルチニブ-Cy3.5と、2つの担体系、二官能性クロスリンカーであるスルホ-SMCCによってプロタミンにコンジュゲートされた両方の抗体(リツキシマブおよびセツキシマブ)、即ち、未結合プロタミン-SMCCを含有するリツキシマブ(抗CD20-mAB)-プロタミンおよび未結合プロタミン-SMCCを含有するセツキシマブ(抗EGFR-mAB)-プロタミンとの間の結合を特徴決定するための実験を、バンドシフトアッセイにおいて実施した。未結合プロタミン-SMCCを含有する担体-コンジュゲートは、両方とも、イブルチニブ-Cy3.5誘導体の強力な共集合を示し、siRNAと比較して低い分子量(およそ13kDa)のため、担体mAB 1モル当たりイブルチニブ-Cy3.5 100モルを超える極端に高いモル/モル静電飽和度を示した(
図50)。全てのさらなる実験において、化学的にコンジュゲートされた抗体-プロタミンの組成は、不変のままであり、即ち、得られた生成物は、抗体-プロタミンコンジュゲートに加えて未結合プロタミン-SMCCを依然として含有する。
【0326】
いずれも未結合プロタミン-SMCCを含有し、亜臨界の20倍過剰のイブルチニブ-Cy3.5を負荷されている、対応するコンジュゲート、リツキシマブ-プロタミンおよびセツキシマブ-プロタミンを、CD20発現細胞株およびEGFR発現細胞株と共にインキュベートし、イブルチニブ-Cy3.5の細胞内濃縮について分析した。いずれのケースにおいても、典型的なCy3.5励起/発光波長の組み合わせにおいて蛍光シグナルの細胞内濃縮が実証され得た(
図51)。従って、修飾されたイブルチニブ-Cy3.5化合物は、依然として細胞に内部移行し、従って、依然として標的BTKに結合するのであれば、作用を起こすことができる。
【0327】
次に、リツキシマブ担体抗体にカップリングされたイブルチニブ-Cy3.5誘導体をDLBCL細胞株に与え、細胞を溶解し、溶解物をSDS PAGE分析に供した。次いで、ゲルにUVを照射し、Cy3.5発色団からの発光をスキャンしたところ、実際、Cy3.5蛍光を発する70kDaの単一のタンパク質バンドが存在し、それは、後に、ウエスタンボット分析によってブルトンキナーゼBTKと同定された(
図52)。
【0328】
結論として、イブルチニブコア構造のポリアニオン性誘導体への化学的修飾は、ブルトンキナーゼBTKに結合するコンジュゲートの効率を変更しない。
【0329】
次に、抗体-阻害剤複合体の有効性を同定するための機能アッセイを計画した。腫瘍形成性の代理マーカーとして、足場無しのコロニー増殖を形成させるため、DLBCL腫瘍細胞をメチルセルロースに播種した。アッセイを抗体-阻害剤複合体の組み合わせによって処理し、適切な対照群と比較した。CD20高発現のHBL-1細胞は、イブルチニブ-Cy3.5を含むリツキシマブ-プロタミン/プロタミンによって処理された時、担体mABを含まない対照群と比較して、30%のコロニーしか形成しないことが明らかになった。対照的に、コンジュゲートされていないリツキシマブは、コロニー増殖に対して軽度の効果しか及ぼさなかった。さらに、EGFR高発現、CD20低発現のA549 NSCLC細胞において(
図53B)、セツキシマブ担体は、リツキシマブ担体より有意に優れており、このことから、意図された通りの受容体特異的取り込み機序が明らかになった。
【0330】
抗体-プロタミン/遊離プロタミン-SMCC/siRNAコンジュゲーション実験の結果から分かるように、本発明者らは、αCD20-mAB-プロタミン-イブルチニブ-Cy3.5-プロタミン付加物における未結合/遊離プロタミン-SMCCの存在が、siRNA付加物の場合と同程度に重要であり得るという仮説を立て、従って、前に行われたように、アフィニティクロマトグラフィによってリツキシマブ-αCD20 mAB調製物から遊離プロタミン-SMCCを枯渇させた。予想通り、枯渇型調製物(
図54A、画分25)は、プロタミン-SMCC含有調製物(
図54B、右)と同じ程度に、ポリアニオン性イブルチニブ-Cy3.5に結合し、配位結合することができなかった(
図54B、左)。遊離プロタミン-SMCCの枯渇後のαCD20-mAB-プロタミン/遊離プロタミン-SMCC複合体と比較可能に、遊離プロタミン-SMCCを含まないCD20-mAB-Pは、イブルチニブ-Cy3.5と複合体化された時、コロニー形成の阻害を与えない(
図54C)。
【0331】
実施例20:インビボでのイブルチニブ-Cy3.5との抗体-プロタミン/遊離プロタミン-SMCC複合体形成の分析
全ての必要な成分対照と比較して、リツキシマブ-プロタミン/遊離プロタミン/イブルチニブ-Cy3.5担体のインビボでの治療的有効性をさらに特徴決定するため、図示されるようなインビボ処置実験を実施した(
図55Aを参照すること)。この目的のため、免疫欠損NSGマウスに107個のHBL-1 DLBCL細胞を皮下移植し、200mm
3の平均サイズまで腫瘍増殖を観察し、マウスを各10匹の群に振り分け、1回当たり0.625nmolのリツキシマブコンジュゲートに相当するリツキシマブについて計算された4mg/kg体重という標準濃度、1回当たり0.625nmolのリツキシマブコンジュゲートに相当するリツキシマブ-プロタミン/遊離プロタミン-SMCC/イブルチニブ-Cy3.5(1:20)+18μgまたは12.5nmolのイブルチニブ-Cy3.5、ならびに等量の配位結合していないイブルチニブ(12.5nmol)およびイブルチニブ-Cy3.5(12.5nmol)、ならびにPBS対照による処置を開始した。イブルチニブ-Cy3.5による治療は、腫瘍増殖に対する治療効果を示さなかったが、リツキシマブ-プロタミン担体に結合した等量のイブルチニブ-Cy3.5の適用は、全ての他の群と比較して、有意に遅い腫瘍の増殖を与えた(
図55C)。これは、動物の生存分析にも翻訳された(
図55B)。
【0332】
従って、リツキシマブ-プロタミン/遊離プロタミン/イブルチニブ-Cy3.5 1:20複合体は、インビボモデルにおいて、全ての適切な成分対照と比較して、有意に優れたターゲティングおよび治療プロファイルを示した。さらに、適用されたイブルチニブの1回用量は、20倍低い範囲であった(12.5nmolのイブルチニブは、0.720mg/kgマウスに相当し、Nod-SCIDマウスにおける標準用量は12mg/kgである(Chen et al.2016;Zhang et al.2017))。
【0333】
この仮説を立証するため、屠殺されたマウスから器官を調製し、それらを、取り込まれたイブルチニブ-Cy3.5のエクスビボ蛍光検出に供した(
図56)。結果として、リツキシマブ-プロタミン/イブルチニブ-Cy3.5によって処置されたマウスに由来する腫瘍は、Cy3.5由来の蛍光シグナルの著しい蓄積を示し、それは、処置サイクルと共に増加した。この所見とは対照的に、リツキシマブを配位結合させずに与えられたイブルチニブ-Cy3.5によって処置されたマウスに由来する腫瘍においては、検出可能なシグナルがほとんど存在せず(
図56)、この群においては、大部分の器官に見られた散在性のバックグラウンドシグナルの傾向があった(
図57)。
【0334】
さらに、分析された器官において、特異的蛍光は検出されなかった(
図57)。リツキシマブ-プロタミン/遊離プロタミン-SMCC/イブルチニブ-Cy3.5コンジュゲートは、CD20陽性腫瘍に特異的に濃縮されると結論付けられる。
【0335】
実施例21:抗体-プロタミン/遊離プロタミン-siRNAおよび/またはイブルチニブ-Cy3.5複合体によるインビトロでの小胞構造の形成
新しいナノ構造をさらに特徴決定するため、静電的に荷電している緑色蛍光siRNAよび赤色蛍光イブルチニブ-Cy3.5を使用し、それを抗体-プロタミン/遊離プロタミン-SMCCコンジュゲートと複合体化した(
図58~
図60)。
【0336】
付加的なsiRNAの有り無し両方のmAB-プロタミン/遊離プロタミン/イブルチニブ-Cy3.5コンジュゲートの無細胞集合の結果を調べたところ、それぞれのナノ構造の量およびサイズに著しい違いが観察された:mAB-プロタミン+遊離プロタミン-SMCCによって複合体化されたsiRNAおよびイブルチニブ-Cy3.5によって集合したものは、siRNAを含まないものより相当大きく、高頻度であった(
図58CおよびF、ならびに
図59DおよびH)。この現象は、4つの成分全てからなる混合型粒子が安定的なナノ構造を形成するという仮説によって説明される。詳細な蛍光顕微鏡写真において、最大粒子のナノ構造は、siRNAがスフェロイドミセルの外縁部(
図60、AおよびC)を形成しており、イブルチニブ-Cy3.5がこのナノ構造の内腔(
図60BおよびD)をより満たしているものとして明らかにされ得る。
【0337】
混合型の抗体-プロタミン粒子が、イブルチニブ-Cy3.5のみがmAB-プロタミン/プロタミン担体と複合体化されたものより高頻度であり、はるかに大きいというこの現象は、担体抗体がαCD20-mABリツキシマブ(
図60C~D)である場合にも、抗EGFR-mABセツキシマブ(
図60AおよびB)である場合にも見られた。
【0338】
即ち、陰性荷電しているイブルチニブ-Cy3.5は、抗体-プロタミン複合体と共に小さい小胞を形成することができるが(
図58Eおよび
図59F)、直鎖状で高度に陰性荷電している分子であるsiRNAは、抗体-プロタミン/遊離プロタミン-SMCC複合体間の1種の静電「接着剤」として機能し得る。これは、赤色蛍光イブルチニブ-Cy3.5で満たされているように見える非常に大きい小胞において、円形の輝きとして観察され得る(
図60)。
【0339】
この構造をさらに特徴決定するため、ZetaView(登録商標)ナノ粒子トラッキングビデオ顕微鏡を使用して、粒子サイズの測定を実施した。ここで、1~1000nmの粒子を検出し、そのサイズおよび数について分析した(
図61)。対照(scr)siRNA、イブルチニブ-Cy3.5、またはその両方のそれぞれの添加によって、複合体形成の開始から1時間後に、安定的な最大粒子が検出された(
図61A、B、C、D)。等量の抗体-遊離プロタミン-SMCC(=1800nM=60nm抗CD20-mABのカップリングのために使用される30倍モル比)の使用は、常に、より小さい粒子を形成させた(
図61A、下パネル、および
図61E)。興味深いことに、
図60に見られるような極めて大きい混合型粒子の形成は、技術的な限界のため、Zetaviewデータにおいては観察されなかった。
【0340】
実施例22:担体-抗体-プロタミン融合物または抗体-プロタミンコンジュゲートによるアニオン性低分子薬物の複合体化
アニオン性低分子の複合体化に関して、1:2までの異なる比率のイブルチニブ-Alexa488を使用して、αCD20-mAB-プロタミンを使用して、バンドシフトアッセイにおいて、αCD20-mABリツキシマブ-プロタミン/遊離プロタミン-SMCC(αCD20-mAB-P/P)コンジュゲートが、イブルチニブ-Alexa488に結合することが見出された。α、抗(
図62、A):-2というAlexa488分子の限定されたアニオン性電荷のため(
図62、B)、ポリカチオン性プロタミン融合物とAlexa488との間の相互作用は、-4という正味の電荷を有するCy3.5とのもの(次の例)より強度が低いことが見出された。従って、Alexa488にコンジュゲートされたイブルチニブとプロタミンコンジュゲートとによって、わずか2:1のカップリング比が実現した。しかしながら、イブルチニブ-Alexa488とαCD20-mABリツキシマブ-プロタミン/遊離プロタミン-SMCC(αCD20-mAB-P/P)との複合体化は、依然として成功した。
【0341】
他のナノ粒子について発表されたような条件で、血清中(
図62E、G、F、H)で安定的である安定的なナノ粒子の形態の抗体-阻害剤複合体の構築が、蛍光顕微鏡法において検出され得た(
図62C~H)。重要なことに、イブルチニブ-Cy3.5は、蛍光によって検出可能であるため、これは、全ての下流適用についての優れた追跡能を与える。
【0342】
インビトロでインキュベートされた時、イブルチニブ-Cy3.5を負荷されたαCD20-mAB-P/Pは、赤色Cy3.5蛍光を発する静電的に安定化されたナノ粒子の集合をもたらした(
図65)。蛍光顕微鏡法において、最初に、規則的な形状の小胞構造が検出され(
図62C、D)、後に、より小さい粒子に加えて、2μmより大きい不規則な形状の凝集物が検出されたが、イブルチニブ-Cy3.5を複合体化するため、未修飾のαCD20-mABを使用した場合、または疎水性イブルチニブ(商品名:Imbruvica)を複合体化するため、修飾されたαCD20-mAB-P/遊離プロタミンを使用した場合には、この過程は見られなかった(示されない)。光学顕微鏡法において見られた静電粒子(
図65AおよびB)は、電子顕微鏡法においても確証され(
図65C)、ここで、<100~200nmの範囲のより小さい粒子が多数検出されたことから(
図65C)、本発明者らは「ナノ」担体という用語を選んだ。
【0343】
プロタミンコンジュゲートとの複合体化についてのアニオン性荷電低分子と非荷電低分子との比較に関して、荷電イブルチニブ-Cy3.5は、プロタミンにコンジュゲートされたmABと共に安定的なナノ粒子を形成するが、非荷電イブルチニブ(商品名:imbruvica)は、それを形成しないことが見出された。プロタミンにコンジュゲートされたそれぞれの抗体担体に、荷電イブルチニブ-Cy3.5または非荷電イブルチニブを負荷した。注目すべきことに、Cy3.5にコンジュゲートされたイブルチニブ試料のみが、ナノ粒子の高密度形成を示し、非荷電イブルチニブは、それを示さず(
図63)、このことから、ポリアニオンのある特定の構造と同様に、ポリアニオン性の正味の電荷も、プロタミンとの適切な静電相互作用にとって重要であることが示された。
【0344】
実施例23:提唱されたモデル
総合すると、抗体-プロタミン+未結合プロタミンからなる担体によるアニオン性カーゴ分子の結合の原理は、siRNA核酸以外のカーゴ、例えば、低分子、例えば、キナーゼ阻害剤イブルチニブにも適用され得る。ここで、ポリアニオン性の特徴を与えるため、カーゴ分子を修飾すること、そして成分のナノ構造への強力な静電自己集合を可能にするため、未結合プロタミン-SMCCを調製物中に残すことが重要である。
【0345】
この観察は、新しい予想外の高分子ナノ構造が、本発明者らの担体系のインビトロおよびインビボでの薬物動態学的有効性を担うことを強く支持している。
【0346】
従って、本発明者らは、全く予想外の観察である、siRNAの安定性を担い、siRNAおよび/またはアニオン性低分子阻害剤を意図された細胞へ効果的に送達することができるナノ粒子様マクロ構造を形成するための、成分の組み合わせ、(1)抗体-プロタミン、(2)siRNA/アニオン性低分子阻害剤、および(3)未結合プロタミン(-SMCC)を予想する。このナノ構造集合の理想化されたモデルは、
図64に示される。
【0347】
結論として、最小の共通特徴要件がポリアニオン性であるということであり、他の構造的類似性を有しない、様々な化学的に異なるエフェクターペイロードを使用した実験は、本発明者らの新しい予想外のナノ構造モデルが、ナノ担体-siRNA担体およびナノ担体-イブルチニブ-Cy3.5系のインビトロおよびインビボでの薬物動態学的特徴の基礎であるという実験的証拠を与える。
【0348】
(1)siRNA/アニオン性低分子の輸送および標的細胞への特異的送達、ならびに(2)特異的な細胞内がん遺伝子不活性化または薬理学的活性、のための二重の特異性を有するこのモジュール型ナノ構造系は、様々な疾患群、例えば、がんのために使用され得る。
【0349】
実施例24:インビトロでのαCD20-mAB-P/P-イブルチニブ-Cy3.5ナノ担体の機能的分析
次に、異なる細胞モデル系において、このαCD20-mAB-P/P-イブルチニブ-Cy3.5ナノ担体の有効性を調査した。
【0350】
最初に、Cy3.5蛍光を介して、CD20陽性DLBCL細胞への内部移行を調べた。カップリングされていないイブルチニブ-Cy3.5によって一晩処理されたリンパ腫細胞HBL1およびTMD-8は、細胞の妥当な赤色蛍光マーキングを示し(
図66Eの白色)、これは、イブルチニブ-Cy3.5がαCD20-mAB-P/Pと複合体化され、輸送された時、強化された(
図66F)。これは、担体抗体実装無しのイブルチニブ-Cy3.5アニオンのターゲティングされていない取り込みの機序と比べて、CD20受容体による内部移行の過程が有益であることを示した(
図66E)。次に、コンジュゲートによる72時間の細胞の処理は、SDS PAGE電気泳動において70kDaタンパク質の共有結合性Cy3.5マーキングの単一のバンドを示し、これは、修飾されたイブルチニブ-Cy3.5化合物の結合および機能性を示す(
図66G)。BTKの蛍光検出のためには、レーンの等しい負荷およびBTKの同定を示すため、ゲルに相当の過負荷をかけなければならなかったため、次に、蛍光検出後のBTKの免疫検出のため、ゲルをブロッティングした。実際、BTKを表すバンドが、Cy3.5蛍光において見られたのと同じ位置に出現し、このことから、予期された通り、イブルチニブ-Cy3.5がBTKと排他的に共有結合したことが示された(
図66G)。
【0351】
さらに、HBL1細胞をイブルチニブ-ボディパイと共に2時間インキュベートし、洗浄し、αCD20-mAB-P/P-イブルチニブ-Cy3.5によって処理した。細胞はイブルチニブ-ボディパイを取り込むが(
図66NおよびP)、Cy3.5蛍光は、前処理されていない細胞にのみ出現し(
図66L)、イブルチニブ-ボディパイによって前処理された細胞には出現しない(
図66P)。いくつかの細胞内赤色小胞は、イブルチニブ-Cy3.5のCD20によって媒介される内部移行を示すが(
図66P)、BTK結合を示唆するパターンは発生しない(イブルチニブ-Cy3.5については
図66L、イブルチニブ-ボディパイについては
図66NおよびPを参照すること)。これは、24時間のαCD20-mAB-P/P-イブルチニブ-Cy3.5処理の後にも、非蛍光イブルチニブとのプレインキュベーションおよびその洗浄の後にも当てはまる。
【0352】
イブルチニブによるBTKの共有結合性標的化の機能的効果は、BTK自己リン酸化能の阻害である。従って、αCD20-mAB/P/Pナノ担体における複合体化の有り無し両方で、イブルチニブ-Cy3.5処理後のDLBCL細胞におけるBTKのリン酸化状態を分析した(
図67A)。細胞を、PBS、複合体化されていないイブルチニブ-Cy3.5、およびαCD20-mAB-P/P/イブルチニブ-Cy3.5複合体によって72時間処理し、溶解し、ウエスタンブロット分析に供した。HBL1細胞(
図67A、左パネル)およびTMD8細胞(データは示されない)において、イブルチニブ-Cy3.5によって処理された時、それが複合体化されているか否かに関係なく、特異的なリン酸化BTK抗体によって検出されるチロシン223におけるBTKのリン酸化が有意に減少することが見出された。これは、
図66Gに図示されるようなBTKとの結合と一致した。全BTKの発現は、軽度の影響を受けた(
図67A)。合成されたイブルチニブ-Cy3.5コンジュゲートは、標的分子BTKとの結合に関しても、BTK自己リン酸化の不活性化に関しても、完全な機能性を保持していると結論付けられた。
【0353】
興味深いことに、試験された全てのリンパ腫細胞株において、リンパ腫特異的αCD20-mAB-P/P/ibru-Cy3.5ナノ担体系は、軟寒天培養におけるコロニー増殖を有意に阻害した。これは、単剤としてのイブルチニブまたはイブルチニブ-Cy3.5については、はるかに低い程度に観察され、未修飾のリツキシマブ(αCD20-mAB)を使用した場合には、観察されなかった(HBL1:
図67B)。このコロニーアッセイは、足場非依存性クローン性細胞増殖の定量化のために使用されており、インビボ腫瘍形成についての標準的なインビトロ代理である。従って、イブルチニブ-Cy3.5のロバストな治療効果は、アニオン性化合物が、カチオン性αCD20-mAB-プロタミン/遊離プロタミン担体複合体とアニオン性カーゴエフェクターとから構成される安定的な静電ナノ粒子へ集合した時にのみ見られると、本発明者らは主張する。
【0354】
次に、DLBCL細胞株におけるαCD20-mAB-P/P-イブルチニブ-Cy3.5によるBTK不活性化の機能的意義を、アポトーシス誘導に関して探求した。ここで、HBL1細胞(
図68)においても、TMD8細胞(データは示されない)においても、αCD20-mAB-P/P-イブルチニブ-Cy3.5処理は、アポトーシスシグナルの優れた誘導を示したのに対し(
図68、最も右のバー)、複合体化されていないイブルチニブ-Cy3.5による処理は、ターゲティングされた処理と比較しても、遊離イブルチニブ処理と比較しても、軽度の効果しか示さなかった。従って、αCD20-mAB-P/P-イブルチニブ-Cy3.5のターゲティングされた処理は、細胞内の活性イブルチニブ-Cy3.5の蓄積をもたらし、従って、複合体化されていないイブルチニブ-Cy3.5より重度のアポトーシス誘導をもたらすと仮定される。また、アニオン性分子イブルチニブ-Cy3.5は、複合体化されていない場合、遊離イブルチニブと比較してより低いアポトーシスの誘導によって判断されるように、疎水性遊離イブルチニブより細胞にアクセスしにくいか、または少なくとも効果が低いようである。
【0355】
実施例25:αIGF1R-mAB-プロタミン-siRNA-プロタミンナノ担体を用いる全身治療による発がん性EWS-FLI1転座生成物のノックダウンによってユーイング肉腫異種移植腫瘍の増殖が阻害される
テプロツムマブ-プロタミンナノ担体のインビボ有効性を試験するため、107個のヒトSK-N-MC細胞を、CD1ヌードマウスの側腹部に皮下(s.c.)異種移植し、少なくとも7匹のマウスのコホートを、PBS、またはスクランブル対照siRNAと複合体化されたαIGF1R-mAB-P/P、または前記のEWS-FLI1-siRNAと複合体化されたαIGF1R-mAB-P/Pのいずれかによってi.p.処置した(
図69A~C)。腫瘍が100~150mm3の平均サイズに達した時に処置を開始した。Tepro-mAB-P/EWS-FLI1-siRNA/Pナノ粒子を得た処置群の腫瘍は、両方の対照群と比較した時、有意な、ほぼ完全な増殖阻害を示した(
図69BおよびC)。このことは、全身インビボ適用後に、Tepro-mAB-P/siRNA/Pナノ粒子を介したEWS-FLI1のノックダウンが成功したことを示唆した。
【0356】
実施例26:担体抗体-プロタミン/遊離プロタミンとsiRNAとによって形成されたナノ粒子は、ほぼ中性の表面電荷を呈する
抗体-プロタミン/遊離プロタミン+siRNAからのナノ粒子の形成は、迅速であり、再現性があるが、抗体調製物に依存することが見出された。例えば、異なるα-IGFR-プロタミン調製物は、αEGFR-プロタミン調製物またはαCD33調製物によって形成されたものより大きい粒子の傾向があることが、DLS分析(
図70)および顕微鏡分析によって見られた。次に、表面電荷は、弱アニオン性の範囲でわずかにしか変動せず、ほぼ中性荷電の粒子を呈した。抗体自体の性質のみならず、アニオン性成分とカチオン性成分との静電バランスも、サイズおよび表面電荷についてのナノ粒子の属性を定義すると結論付けられる。
【0357】
実施例27:抗EGFR-mAB-SMCC-プロタミンコンジュゲートと遊離SMCC-プロタミンとsiRNAとの間の効果的なナノ粒子形成のための前提条件の解読
さらに、siRNAが、小胞を形成するために必要とされるか否かを評価した。一定量のαEGFR-mAB-Pおよび一定の32倍の遊離SMCC-プロタミンを、異なる量のAlexa488-対照siRNAと共にインキュベートした(
図71A~G、上パネルの緑色蛍光、下パネルの位相差)。注目すべきことに、ナノ粒子は、抗体に対して5~10倍というsiRNAの最適モル過剰で、効率的に形成される(
図71D~E)。
【0358】
実施例28:αEGFR-プロタミン/遊離プロタミン遊離プロタミン-Alexa488-siRNAによって形成されたナノ粒子は血清含有条件で安定的である
ターゲティングされたナノ粒子の全身治療的適用のためには、様々な難条件での安定性が最も重要であり、そうでなければ、崩壊によって、活性物質がナノ担体から分離する。ここで、αEGFR-mAB-プロタミンと遊離プロタミンとAlexa488-siRNAとを、高濃度のウシ血清アルブミンにおける安定性について試験したところ、ナノ担体は、24時間後でさえ安定的であることが判明した(
図72B)。
【0359】
実施例29:αCD20-mAB-プロタミン/遊離P-イブルチニブ-Cy3.5ナノ担体の血清安定性
24時間(
図73B~C)、さらには72時間(
図73E~F)、血清中で安定的である、安定的なナノ粒子の形態のαCD20-mAB-プロタミン/遊離P-イブルチニブ-Cy3.5抗体-阻害剤複合体の構築が、蛍光顕微鏡法(
図73A~F)において検出され得た。
【0360】
実施例30:3つの異なるターゲティング抗体によって構築されたsiRNAナノ担体のpH安定性
ナノ担体の全身適用のためには、配位結合したsiRNAエフェクター分子の早期の分解および喪失を防止するため、どのようなpH条件で構造が安定的であるかが重要である。ここでは、標準的な条件で、3つの異なるターゲティング抗体とsiRNAとによってsiRNAナノ担体を形成させ、pH4.8~8.0(
図74)の範囲の、従って、ナノ担体が治療的適用中に遭遇し得る全てのpH条件をカバーするpH条件で、完全性について試験した。複合体化されたsiRNAのAlexa488蛍光によって判断されたナノ担体は、5.2~8.0のpH条件で安定的であり、より低いpHで、より大きい超構造を形成する構造化の傾向があることが判明した。
【0361】
実施例31:αCD20-mAB-プロタミン/遊離プロタミンとイブルチニブ-Cy3.5とによって構築されたナノ担体のpH安定性
ここでは、標準的な条件で、αCD20-mAB-プロタミン/遊離プロタミンによってイブルチニブ-Cy3.5ナノ担体を形成させ、pH4.8~8.0の範囲の、従って、ナノ担体が治療的適用中に遭遇し得る全てのpH条件をカバーするpH条件で、完全性について試験した(
図75)。複合体化されたイブルチニブ-Cy3.5のCy3.5蛍光によって判断されたナノ担体は、5.8~8.0のpH条件で安定的であり、より低いpHで崩壊する構造化の傾向があることが判明した。
【0362】
実施例32:αEGFR-mAB-P/遊離プロタミン-siRNAナノ担体内およびαIGF1R-mAB-P/遊離プロタミンsiRNAナノ担体内のターゲティングIgG抗体の免疫標識
カチオン性抗体-プロタミン/遊離プロタミン調製物とsiRNAとの自己集合過程は、明確な構成を有するナノ粒子構造をもたらす:ここで、αEGFR-mAB-プロタミン/遊離プロタミン-siRNAナノ粒子(
図76)およびαIGF1R(テプロツムマブ)mAB-プロタミン/遊離プロタミン/siRNAナノ粒子(
図77)を、ヒトIgGシグナルの免疫検出に供した。ナノ担体内のヒトIgGの位置および方向を可視化するため、α-ヒトIgG-Alexa647を使用したところ、シグナルは、ナノ粒子ミセル構造の外縁部にのみ見られ(
図76Bおよび77B)、内腔には見られなかった。代わりに、蛍光標識されたsiRNAについてのシグナルが、構造の内腔に見出された(
図76Aおよび77A)。従って、かさ高いIgG分子は、ナノ粒子ミセルの外側を向いており、従って、それらのタンパク質標的である細胞表面分子および受容体型チロシンキナーゼの細胞外ドメインに最終的にアクセス可能であるに違いないと結論付けられた。
【0363】
実施例33:ナノ担体複合体内の遊離プロタミンの可視化
ナノ担体内の重要な遊離プロタミンの位置は、これまで不明のままであったため、本発明者らは、この点に着手し、所定のαEGFR-プロタミン調製物の遊離プロタミンを、Cy3-NHSエステルにコンジュゲートされたプロタミンに置換し(
図78A)、これを非蛍光siRNAと組み合わせてナノ担体構造を形成させた(
図78B)。次いで、ナノ担体を蛍光顕微鏡法に供したところ、プロタミン-Cy3がナノ担体の内腔に位置し(
図78C~E)、抗ヒトIgG-Alexa647によって染色されたIgG部分がナノ担体の周縁セクションに位置する(
図78E~F)染色パターンが明らかになった。
【0364】
実施例34:シアニン色素にコンジュゲートされた阻害剤、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、およびベネトクラクスの合成
この目的のため、各々、2つの異なるシアニン色素、スルホ-Cy3.5(商標)(励起591nm/発光604nm)およびスルホ-Cy5.5(商標)(励起684nm、発光710nm)に接続された3つの新しい化合物の合成を実施する。両シアニン色素は、カチオン性ペプチドであるプロタミンの配位結合に必要な4個の強アニオン性スルホニル基を示す同一のコア蛍光団構造を共有しているが、共役二重結合の数のみが異なり、それが、弁別可能な蛍光色素属性をもたらす。イブルチニブと同様に、3つの異なる薬物-色素コンジュゲートは、比較可能な全体的な分子形状で合成される。可能性のある候補として、ゲフィチニブ(EGFR阻害剤)、ゲムシタビン(細胞分裂阻害薬)、およびベネトクラクス(BLCL-2阻害剤)が選択されたのは、これらが、全てのケースにおいて、色素とのコンジュゲーションの後に標的分子との結合能を保持し、蛍光画像法適用を可能にするためである(Wu et al.2020;Zhu et al.2018;Gonzales et al.2018)。それらは、PEG4-スペーサーを付加し、市販の反応性NHS-エステルまたはアジド官能化色素を使用することによって、シアニン色素にコンジュゲートされる(
図79を参照すること)。
【0365】
最初に、市販のゲフィチニブ1から出発して、それを脱メチル化し、得られたフェノールをアジド-PEG4-メシル酸の求核攻撃によって変換し、ゲフィチニブ類似体を合成する。得られたアジドをアミン2に還元し、スルホ-Cy3.5またはスルホ-Cy5.5によって標識し、ナノ担体とのさらなる複合体化のためのゲフィチニブコンジュゲートを得る。
【0366】
ゲムシタビン3については、ヒドロキシル基を保護し、シトシンに脱離基を付加し、プロパルギルアミンの求核攻撃後にアルキン4を得る(Solanki et al.2020)。クリック反応によって、対応するアジド官能化シアニン色素によって標識した後、必要とされるコンジュゲートが得られる。
【0367】
第3の例、ベネトクラクスに関しては、公知のベネトクラクスコア構造5の合成から出発する(Giedt et al.2014)。既に言及されたメシル-PEG4-アジドを使用して、3工程で、スルホンアミド6に到達し、5との接続の後、アジドの還元およびその後のシアニン色素(NHS-エステル)による標識によって、さらなる評価のための対応するベネトクラクスコンジュゲートを得る。
【0368】
実施例35:概念は、より容易で、より安価なポリアニオン性分子部分に拡張され、PDTおよび放射線治療などの他の治療的介入にも拡張される
異なる結合モチーフおよび標的を有する他の抗がん薬への、静電結合原理の変換および評価の後、臨床的評価への翻訳を容易にするため、必要なアニオン性の特徴を、(初期の光学的特徴決定および蛍光画像法にとって重要であった)ここで使用されたシアニン色素から、(1)より容易で、より安価な合成の点から、より入手しやすい静電接続剤に変化させることが意図される。その候補は、大規模合成への道を開き得る、ポリ硫酸化された単糖、二糖、および分岐オリゴ糖、または一リン酸、二リン酸、および三リン酸である(
図80)。
【0369】
本明細書に例示的に記載された本発明は、本明細書において具体的に開示されていない任意の構成要素、制限の非存在下で、適当に実施され得る。さらに、本明細書において利用される用語および表現は、限定ではなく、説明の用語として使用されており、そのような用語および表現の使用には、示され、記載された特色またはその一部分の等価物を除外する意図はなく、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲内で、様々な修飾が可能であることが認識される。従って、本発明は、例示的な態様および任意選択の特色によって具体的に開示されたが、本明細書に開示される、その中で具現化された本発明の修飾および変動が、当業者によって使用され得ること、そしてそのような修飾および変動が、本発明の範囲に含まれると見なされることが理解されるべきである。
【0370】
本発明は、本明細書において広範にジェネリック(generically)に記載された。ジェネリックな開示に含まれるより狭い種およびサブジェネリックな群の各々も、本発明の一部を形成する。これには、削除される材料が、本明細書に具体的に列挙されるか否かに関係なく、属(genus)から任意の主題を除去する条件または否定的な限定を伴う本発明のジェネリックな記載が含まれる。
【0371】
他の態様は、以下の特許請求の範囲に含まれる。
【0372】
【配列表】
【国際調査報告】