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特表2023-553051(9S)-N-[3-(6-メチルピリミジン-4-イル)-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イル]-9-(2,3,4-トリフルオロフェニル)-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]アゼピン-2-アミンの調製のための方法、および、その固体形態
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  • 特表-(9S)-N-[3-(6-メチルピリミジン-4-イル)-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イル]-9-(2,3,4-トリフルオロフェニル)-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]アゼピン-2-アミンの調製のための方法、および、その固体形態 図1
  • 特表-(9S)-N-[3-(6-メチルピリミジン-4-イル)-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イル]-9-(2,3,4-トリフルオロフェニル)-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]アゼピン-2-アミンの調製のための方法、および、その固体形態 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-20
(54)【発明の名称】(9S)-N-[3-(6-メチルピリミジン-4-イル)-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イル]-9-(2,3,4-トリフルオロフェニル)-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]アゼピン-2-アミンの調製のための方法、および、その固体形態
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/04 20060101AFI20231213BHJP
   A61P 39/02 20060101ALI20231213BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20231213BHJP
   A61K 31/55 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
C07D487/04 150
A61P39/02
A61P25/28
A61K31/55
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534366
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(85)【翻訳文提出日】2023-06-06
(86)【国際出願番号】 EP2021084887
(87)【国際公開番号】W WO2022122864
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/135740
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ウェイチュン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,グオツァイ
【テーマコード(参考)】
4C050
4C086
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050BB06
4C050CC10
4C050EE03
4C050FF05
4C050GG04
4C050HH04
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086CB11
4C086GA15
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA34
4C086MA52
4C086NA02
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZC37
(57)【要約】
本発明は、化合物(I)の調製のための方法、および、γ-セクレターゼのモジュレーターであり、脳におけるβ-アミロイドの沈着に関連する疾患、特にアルツハイマー病、ならびに脳アミロイド血管症、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血、オランダ型(HCHWA-D)、多発梗塞性認知症、ボクサー認知症(dementia pugilistica)およびダウン症候群などの他の疾患の予防および処置に有用であり得る、該化合物(I)の固体形態に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物(I):
【化29】

の調製のための方法であって、以下の工程:
工程a)化合物(III):
【化30】

の、化合物(II)
【化31】

と4-クロロ-6-メチル-ピリミジンとの反応を介した形成;
工程b)化合物(IV)
【化32】

の、化合物(III)の脱保護反応およびHCl塩の形成を介した形成;ならびに
工程c)化合物(I)
【化33】

の、化合物(IV)および化合物(V)
【化34】

からのBuchwaldクロスカップリング反応を介したクロスカップリング形成
を含む、方法。
【請求項2】
工程a)における化合物(III)の形成が溶媒の存在下で行われ、前記溶媒が、MeOH、IPA、tBuOH、および水(5重量%のTPGS-750-Mを含む)から選択され;好ましくは前記溶媒が水(5重量%のTPGS-750-Mを含む)であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程a)における化合物(III)の形成が塩基の存在下で行われ、前記塩基が、KOAc、NaOAc、NaOH、KOH、KCO3、NaCO、DIPEAおよびTEAから選択され;好ましくは前記塩基がTEAであることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程a)における化合物(III)の形成が0~120℃;好ましくは75~85℃;より好ましくは75~78℃または80~85℃で行われることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程b)における化合物(IV)の形成が溶媒の存在下で行われ、前記溶媒が、DCM、THF、ACNおよびアセトンから選択され;好ましくは前記溶媒がアセトンであることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記溶媒の体積が5~15Vであり;好ましくは前記体積が、5V、10V、または15Vであり;より好ましくは前記体積が10Vであることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
工程b)における化合物(IV)の形成が酸の存在下で行われ、前記酸がHClであり;好ましくは前記酸がHCl(36.5重量%)であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
酸の当量が5~15当量であり;好ましくは酸の前記当量が、5当量、6当量、10当量、または15当量であり;より好ましくは前記当量が6当量であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程b)における化合物(IV)の形成が-20~70℃;好ましくは0~25℃;より好ましくは20~25℃で行われることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程c)における化合物(I)の形成が塩基の存在下で行われ、前記塩基が、NaCO、KCO、NaHCO、KHCO、NaOH、およびKOHから選択され;好ましくは前記塩基がKCOであり;より好ましくは前記塩基がKCO(200~300メッシュ)であることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程c)における化合物(I)の形成が添加剤の存在下で行われ、前記添加剤が、HO、TEA、t-BuOH、IPA、PEG-400、TPGS-750-M、DMF、グリセロールおよびDMAcから選択され;好ましくは前記添加剤がDMAcであることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程c)における化合物(I)の形成が溶媒の存在下で行われ、前記溶媒が、IPAc、EtOAc、MTBE、Tol、THF、2-MeTHFおよびTAAから選択され;好ましくは前記溶媒がTAAであることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程c)における化合物(I)の形成が触媒の存在下で行われ、前記触媒が、Pd(OAc)およびPd(dba)から選択され;好ましくは前記触媒がPd(dba)であることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程c)における化合物(I)の形成がリガンドの存在下で行われ、前記リガンドが、BrettPhos、AdCyBrettPhos、tBuBrettPhos、AdBrettPhos、RocPhos、tBuXphos、BippyPhos、MetBuXphosおよびMeMeOtBuXphosから選択され;好ましくは前記リガンドがMeMeOtBuXphosであることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
工程c)における化合物(I)の形成が20~102℃で1~16時間;好ましくは100~102℃で2時間行われることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
工程c)における化合物(I)の形成が溶媒中での再結晶化をさらに含み、前記溶媒が、ヘプタン、ヘキサンおよび石油エーテルから選択され;好ましくは前記溶媒がヘプタンであり;より好ましくは前記溶媒がn-ヘプタンであることを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記再結晶化が20~80℃で1~48時間;好ましくは70~75℃で0.5時間行われることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
工程c)における化合物(I)の形成が、金属捕捉剤を使用して、前記クロスカップリング反応後の残留Pdを除去することをさらに含み、前記金属捕捉剤が、SiliaMetSチオール、SiliaMetS DMT、SiliaBondアミン、SiliaMetS AMPA、SiliaMetSシステイン、SiliaMetS DEAM、SiliaMetSジアミン、SiliaMetS DOTA、SiliaMetSイミダゾール、SiliaMetS TAAcOH、SiliaMetS TAACONa、SiliaMetSチオ尿素、SiliaBondトシル酸、SiliaMetSトリアミンおよびMP-TMTのうちの1つまたは複数から選択され;好ましくは前記金属捕捉剤がSiliaMetSチオールおよびSiliaMetS DMTであることを特徴とする、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
化合物(I)
【化35】

の固体形態であって、前記固体形態が、
10.0°±0.2°、15.6°±0.2°、16.1°±0.2°、18.4°±0.2°、19.3°±0.2°、20.1°±0.2°、および21.8°±0.2°に角度2シータで表される特徴的なピークを有するX線粉末回折(XRPD)パターンを呈するフォームAである、化合物(I)の固体形態。
【請求項20】
8.9°±0.2°、10.0°±0.2°、12.6°±0.2°、15.6°±0.2°、16.1°±0.2°、16.7°±0.2°、17.9°±0.2°、18.4°±0.2°、18.7°±0.2°、19.3°±0.2°、20.1°±0.2°、20.8°±0.2°、21.8°±0.2°、22.5°±0.2°、23.2°±0.2°、25.3°±0.2°、および25.4°±0.2°に角度2シータで表される特徴的なピークを有するX線粉末回折(XRPD)パターンを呈するフォームAである、請求項19に記載の固体形態。
【請求項21】
図1に示すX線粉末回折(XRPD)パターンを呈するフォームAである、請求項19または20に記載の固体形態。
【請求項22】
請求項1から20のいずれか一項に記載の方法に従って製造された場合の、請求項19から21のいずれか一項に記載の固体形態。
【請求項23】
請求項19から21のいずれか一項に記載の固体形態と、薬学的に許容され得る担体、賦形剤、希釈剤、アジュバント、ビヒクルまたはこれらの組み合わせとを含む、医薬組成物。
【請求項24】
脳におけるβ-アミロイドの沈着に関連する疾患、特にアルツハイマー病、または脳アミロイド血管症、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血、オランダ型(HCHWA-D)、多発梗塞性認知症、ボクサー認知症(dementia pugilistica)およびダウン症候群から選択される疾患を処置または予防するための、請求項19から21のいずれか一項に記載の固体形態。
【請求項25】
脳におけるβ-アミロイドの沈着に関連する疾患、特にアルツハイマー病、または脳アミロイド血管症、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血、オランダ型(HCHWA-D)、多発梗塞性認知症、ボクサー認知症(dementia pugilistica)およびダウン症候群から選択される疾患を処置または予防するための、請求項19から21のいずれか一項に記載の固体形態の使用。
【請求項26】
脳におけるβ-アミロイドの沈着に関連する疾患、特にアルツハイマー病、または脳アミロイド血管症、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血、オランダ型(HCHWA-D)、多発梗塞性認知症、ボクサー認知症(dementia pugilistica)およびダウン症候群から選択される疾患を処置または予防するための医薬品の製造のための、請求項19から21のいずれか一項に記載の固体形態または請求項23に記載の医薬組成物の使用。
【請求項27】
脳におけるβ-アミロイドの沈着に関連する疾患、特にアルツハイマー病、または脳アミロイド血管症、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血、オランダ型(HCHWA-D)、多発梗塞性認知症、ボクサー認知症(dementia pugilistica)およびダウン症候群から選択される疾患を処置または予防するための方法であって、治療有効量の請求項19から21のいずれか一項に記載の固体形態または請求項23に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物(I)の調製のための方法、および、γ-セクレターゼのモジュレーターであり、脳におけるβ-アミロイドの沈着に関連する疾患、特にアルツハイマー病、ならびに脳アミロイド血管症、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血、オランダ型(HCHWA-D)、多発梗塞性認知症、ボクサー認知症(dementia pugilistica)およびダウン症候群などの他の疾患の予防および処置に有用であり得る、該化合物(I)の固体形態に関する。
【化1】
【背景技術】
【0002】
化合物(I)の合成法は、WO2018060300、WO2019141832、WO2018083050、およびWO2011086098に開示された。しかしながら、現在の方法は、以下の課題のために大規模生産には適していない:
(a)非常に低い収率(約13%)での3回の合成工程+SFC、
【化2】

のための煩雑なワークアッププロセスを伴うカラム精製、
(c)ラセミ合成およびSFC分離による高コスト、
(d)大規模生産中に新たに形成されるトリアゾール環の安全性、再現性、およびスケーラビリティの懸念。
【発明の概要】
【0003】
上記のような課題を踏まえ、本発明の1つの目的は、したがって、上記課題のいくつかまたはすべてに対処し、より環境に優しい条件を用いて技術的規模で適用することができる効率的なキラル合成法を見出すことである。
【0004】
本発明の一態様は、化合物(I)
【化3】

の調製のための方法であって、以下の工程:
工程a)化合物(III)
【化4】

の、化合物(II)(WO2020136188に記載されている方法により調製される)
【化5】

と4-クロロ-6-メチル-ピリミジンとの反応を介した形成;
工程b)化合物(IV)
【化6】

の、化合物(III)の脱保護反応およびHCl塩の形成を介した形成;ならびに
工程c)化合物(I)
【化7】

の、化合物(IV)および化合物(V)(WO2019141832に記載されている方法により調製される)
【化8】

からのBuchwaldクロスカップリング反応を介したクロスカップリング形成
を含む、方法に関する。
【0005】
本発明の別の態様は、化合物(I)の固体形態に関する。
【0006】
一実施形態では、化合物(I)の固体形態は、10.0°±0.2°、15.6°±0.2°、16.1°±0.2°、18.4°±0.2°、19.3°±0.2°、20.1°±0.2°、および21.8°±0.2°に角度2シータで表される特徴的なピークを有するX線粉末回折(XRPD)パターンを呈するフォームAである。
【0007】
さらなる実施形態では、化合物(I)の固体形態は、8.9°±0.2°、10.0°±0.2°、12.6°±0.2°、15.6°±0.2°、16.1°±0.2°、16.7°±0.2°、17.9°±0.2°、18.4°±0.2°、18.7°±0.2°、19.3°±0.2°、20.1°±0.2°、20.8°±0.2°、21.8°±0.2°、22.5°±0.2°、23.2°±0.2°、25.3°±0.2°°、および25.4°±0.2°に角度2シータで表される特徴的なピークを有するX線粉末回折(XRPD)パターンを呈するフォームAである。
【0008】
さらなる実施形態では、化合物(I)の固体形態は、図1に示すX線粉末回折(XRPD)パターンを呈するフォームAである。
【0009】
さらなる実施形態では、化合物(I)の固体形態は、約205.5℃±3℃の開始温度を有する吸熱ピークを含む示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを有するフォームAである。
【0010】
別の実施形態では、本明細書に開示されている固体形態;および薬学的に許容され得る担体、賦形剤、希釈剤、アジュバント、ビヒクル、またはこれらの組み合わせを含む医薬組成物が本明細書で提供される。
【0011】
別の実施形態では、脳におけるβ-アミロイドの沈着に関連する疾患、特にアルツハイマー病、または脳アミロイド血管症、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血、オランダ型(HCHWA-D)、多発梗塞性認知症、ボクサー認知症(dementia pugilistica)およびダウン症候群から選択される疾患を処置または予防するための、本明細書に開示されている固体形態が本明細書で提供される。
【0012】
別の実施形態では、脳におけるβ-アミロイドの沈着に関連する疾患、特にアルツハイマー病、または脳アミロイド血管症、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血、オランダ型(HCHWA-D)、多発梗塞性認知症、ボクサー認知症(dementia pugilistica)およびダウン症候群から選択される疾患を処置または予防するための、本明細書に開示されている固体形態の使用が本明細書で提供される。
【0013】
別の実施形態では、脳におけるβ-アミロイドの沈着に関連する疾患、特にアルツハイマー病、または脳アミロイド血管症、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血、オランダ型(HCHWA-D)、多発梗塞性認知症、ボクサー認知症(dementia pugilistica)およびダウン症候群から選択される疾患を処置または予防するための医薬品の製造のための、本明細書に開示されている固体形態または医薬組成物の使用が本明細書で提供される。
【0014】
別の実施形態では、脳におけるβ-アミロイドの沈着に関連する疾患、特にアルツハイマー病、または脳アミロイド血管症、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血、オランダ型(HCHWA-D)、多発梗塞性認知症、ボクサー認知症(dementia pugilistica)およびダウン症候群から選択される疾患を処置または予防するための方法であって、治療有効量の本明細書に開示されている固体形態または医薬組成物を投与することを含む、方法が本明細書で提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】フォームAについてのX線粉末回折パターン。
【0016】
図2】フォームAのDSCおよびTGA。
【発明を実施するための形態】
【0017】
略語
ACN アセトニトリル
API 医薬品有効成分
BocO 二炭酸ジ-tert-ブチル
DCM ジクロロメタン
DEAD ジエチルアゾジカルボキシレート
DIPEA N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DMAc N,N-ジメチルアセトアミド
DMF ジメチルホルムアミド
DSC 示差走査熱量測定
eq 当量
EtOAcまたはEA 酢酸エチル
EtOH エタノール
FaSSIF 空腹時人工腸液
FeSSIF 摂食時人工腸液
GC-MS ガスクロマトグラフィー-質量分析
IPA イソプロパノール
IPAc 酢酸イソプロピル
CO 炭酸カリウム
KOAc 酢酸カリウム
KOH 水酸化カリウム
LiHMDS リチウムビス(トリメチルシリル)アミド
MTBE メチルtert-ブチルエーテル
2-MeTHF 2-メチルテトラヒドロフラン
MeOH メタノール
MOM メトキシメチルアセタール
MgSO 硫酸マグネシウム
NaCO 炭酸ナトリウム
NaH 水素化ナトリウム
NHCl 塩化アンモニウム
NaHMDS ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド
NaOAc 酢酸ナトリウム
NaOH 水酸化ナトリウム
SFC 超臨界流体クロマトグラフィー
SGF 人工胃液
tBuOH tert-ブチルアルコール
TAA tert-アミルアルコール
TEA トリエチルアミン
Tol トルエン
THF テトラヒドロフラン
TGA 熱重量分析
UPLC 超高速液体クロマトグラフィー
v/v 体積比
Wt.% 重量パーセント
XRPD X線粉末回折
【0018】
本発明は、スキーム1に概説されているように、式(I)の化合物の調製のための革新的な方法を提供する。
【化9】
【0019】
合成は、以下の工程:
工程a)化合物(III)
【化10】

の、化合物(II)
【化11】

と4-クロロ-6-メチル-ピリミジンとの反応を介した形成;
工程b)化合物(IV)
【化12】

の、化合物(III)の脱保護反応およびHCl塩の形成を介した形成;ならびに
工程c)化合物(I)
【化13】

の、化合物(IV)および化合物(V)
【化14】

からのBuchwaldクロスカップリング反応を介したクロスカップリング形成
を含む。
【0020】
本発明の方法の工程の詳細な説明は以下の通りである:
工程a)化合物(III)
【化15】

の、化合物(II)
【化16】

と4-クロロ-6-メチル-ピリミジン
【化17】

との反応を介した形成。
【0021】
式(III)の化合物は、適切な溶媒の存在下で適切な塩基を用いて合成される。
【0022】
適切な溶媒は、MeOH、IPA、tBuOH、および水(5重量%のTPGS-750-Mを含む)から選択され;好ましくは溶媒は水(5重量%のTPGS-750-Mを含む)である。
【0023】
適切な塩基は、KOAc、NaOAc、NaOH、KOH、KCO3、NaCO、DIPEAおよびTEAから選択され、好ましくは適切な塩基はTEAである。
【0024】
反応は、0~120℃、好ましくは75~85℃、より好ましくは75~78℃または80~85℃で行われる。
【0025】
以前の公開WO2018060300およびWO2019141832では、NMPまたはEtOHを溶媒として用いているが、多くの不純物が検出された。これらは精製が困難であるために大規模製造には適していない。本発明では、適切な溶媒、特に水(5重量%のTPGS-750-M)を用いて化合物(III)を得て、これを十分に制御して大規模製造のために単純な濾過によって生成物を単離することができる。
【0026】
工程b)化合物(IV)
【化18】

の、化合物(III)の脱保護反応およびHCl塩の形成を介した形成。
【0027】
化合物(IV)は、適切な溶媒中で適切な酸を用いて合成される。
【0028】
適切な溶媒は、DCM、THF、ACNおよびアセトンから選択され;好ましくは溶媒はアセトンである。
【0029】
溶媒の適切な体積は5~15V;好ましくは体積は、5V、10V、または15V;より好ましくは体積は10Vである。
【0030】
適切な酸はHCl;好ましくは酸はHCl(36.5重量%)である。
【0031】
酸の適切な当量は5~15当量;好ましくは当量は、5当量、6当量、10当量、または15当量であり;より好ましくは当量は6当量である。
【0032】
反応は、-20~70℃、好ましくは0~25℃、より好ましくは20~25℃で行われる。
【0033】
溶媒は、脱保護および単離の点でプロセス全体にとって重要である。特許公開WO2019141832では、試薬としてTFAを用いた。中和後に生成物を水層から抽出することが困難であり、これは、直接的により低い収率をもたらす。本発明の適切な溶媒および適切な酸を脱保護反応に使用する場合、生成物は単純な濾過で単離され得、純度および収率はオリジナルのものと比較して有意に改善される。
【0034】
工程c)化合物(I)
【化19】

の、化合物(IV)および化合物(V)
【化20】
【0035】
からのBuchwaldクロスカップリング反応を介したクロスカップリング形成。
【0036】
この工程における化合物(I)は、適切な溶媒中、適切な塩基、触媒、添加剤、およびリガンドの存在下、Buchwaldクロスカップリング反応によって合成される。化合物(I)は、適切な溶媒中で行われる再結晶化を通じて精製される。パラジウムの除去は、適切な溶媒中、適切な金属捕捉剤を用いて行われる。
【0037】
このクロスカップリング反応に使用される適切な塩基は、NaCO、KCO、NaHCO、KHCO、NaOH、およびKOHから選択され;好ましくは塩基はKCOであり;より好ましくは塩基はKCO(200~300メッシュ)である。
【0038】
添加剤は、HO、TEA、t-BuOH、IPA、PEG-400、TPGS-750-M、DMF、グリセロールおよびDMAcから選択され;好ましくは添加剤はDMAcである。
【0039】
適切な溶媒は、IPAc、EtOAc、MTBE、Tol、THF、2-MeTHFおよびTAAから選択され;好ましくは溶媒はTAAである。
【0040】
触媒は、Pd(OAc)およびPd(dba)から選択され;好ましくは触媒はPd(dba)である。
【0041】
リガンドは、BrettPhos、AdCyBrettPhos、tBuBrettPhos、AdBrettPhos、RocPhos、tBuXphos、BippyPhos、MetBuXphosおよびMeMeOtBuXphosから選択され;好ましくはリガンドはMeMeOtBuXphosである。
【0042】
クロスカップリング反応は、20~102℃で1~16時間、好ましくは100~102℃で2時間行われる。
【0043】
再結晶化は、適切な溶媒中、20~80℃で1~48時間、好ましくは70~75℃で0.5時間行われる。ここで、適切な溶媒は、ヘプタン、ヘキサンおよび石油エーテルから選択され;好ましくは溶媒はヘプタンであり;より好ましくは溶媒はn-ヘプタンである。
【0044】
クロスカップリング反応後に最終生成物中の残留Pdを除去するために使用される金属捕捉剤は、SiliaMetSチオール、SiliaMetS DMT、SiliaBondアミン、SiliaMetS AMPA、SiliaMetSシステイン、SiliaMetS DEAM、SiliaMetSジアミン、SiliaMetS DOTA、SiliaMetSイミダゾール、SiliaMetS TAAcOH、SiliaMetS TAACONa、SiliaMetSチオ尿素、SiliaBondトシル酸、SiliaMetSトリアミンおよびMP-TMTのうちの1つまたは複数から選択され;好ましくは金属捕捉剤はSiliaMetSチオールおよびSiliaMetS DMTである。
【0045】
本発明のリガンドおよび反応溶媒(特に、MeMeOtBuXphosおよびTAA)は、工程cにおける変換率を改善し、ラセミ化リスクを減少させるのに役立つ。本発明において設計された反応条件は、高収率および良好なキラル純度の生成物(I)を生成することができる。
【実施例
【0046】
本発明は、以下の実施例を参照することによってより十分に理解されよう。しかしながら、これらは、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0047】
実施例1
tert-ブチルN-[3-(6-メチルピリミジン-4-イル)-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イル]カルバメート(化合物(III))
【化21】
【0048】
5Lの4つ口容器に、水(2000mL)中の4-クロロ-6-メチルピリミジン(182g、1.39mol)を投入した。次いで、得られた混合物に、tert-ブチル(1R,5S,8S)-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イルカルバメート(化合物(II))(334g、1.46mol、1.05当量)、DL-アルファ-トコフェロールメトキシポリエチレングリコールスクシネート(TPGS-750-M)(50g)およびトリエチルアミン(573g、789mL、5.5mol、4当量)を投入した。得られた混合物を3時間加熱還流(80~85℃)し、20~25℃に冷却し、14時間撹拌した。生成物をフィルタによって回収し、水(1000ml)で洗浄し、真空オーブン(30mmHg、50℃)で16時間乾燥させて、化合物(III)(433g、収率97.3%、純度99.26%)を白色固体として得た。
【0049】
化合物(III):H NMR(300MHz,CHLOROFORM-d)ppm 1.46(s,11H)1.50-1.66(m,3H)1.70-1.88(m,2H)2.35(s,6H)3.04(d,J=12.51Hz,2H)3.80(br.s.,1H)4.11(br.s.,2H)4.44(br.s.,1H)6.33(s,1H)8.49(s,1H).
【0050】
実施例2
tert-ブチルN-[3-(6-メチルピリミジン-4-イル)-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イル]カルバメート(化合物(III))
【化22】
【0051】
50Lの反応器に、水(18L)中の4-クロロ-6-メチルピリミジン(1.8kg、14.0mol)を投入し、次いで、得られた混合物に、tert-ブチル(1R,5S,8S)-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イルカルバメート(化合物(II))(3.3kg、14.7mol)、DL-アルファ-トコフェロールメトキシポリエチレングリコールスクシネート(TPGS-750-M)(0.36kg)およびトリエチルアミン(5.67kg)を投入した。得られた混合物を75~78℃に3時間加熱し、20~25℃に冷却し、16時間撹拌した。生成物をフィルタによって回収し、水(3.6kg)で洗浄し、真空オーブン(30mmHg、50℃)で16時間乾燥させて、化合物(III)(4.25kg、収率95.3%、純度>99.0%)を得た。
【0052】
化合物(III):H NMR(300MHz,CHLOROFORM-d)ppm 1.46(s,11H)1.50-1.66(m,3H)1.70-1.88(m,2H)2.35(s,6H)3.04(d,J=12.51Hz,2H)3.80(br.s.,1H)4.11(br.s.,2H)4.44(br.s.,1H)6.33(s,1H)8.49(s,1H).
【0053】
実施例3
3-(6-メチルピリミジン-4-イル)-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-アミン;二塩酸塩
(化合物(IV))
【化23】
【0054】
2Lの3つ口容器に、アセトン(0.8L)中のtert-ブチル((1R,5S,8S)-3-(6-メチルピリミジン-4-イル)-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イル)カルバメート(40g、126mmol)を投入した。得られた混合物にHCl(36.5重量%、62.7mL、754mmol、6当量)を添加した。得られた反応混合物を20~25℃で16時間撹拌した。大量の白色固体が沈殿した。生成物を濾過によって回収した。濾過ケークをアセトン(100ml)で洗浄し、真空オーブン(30mmHg、50℃)で16時間乾燥させて、化合物(IV)(27g、収率73.1%、純度99%)を淡色固体として得た。
【0055】
化合物(IV):H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ=8.77(s,1H),8.61-8.42(m,3H),7.17(s,1H),4.71(br s,1H),4.04(br s,1H),3.58(br d,J=5.3Hz,2H),3.53-3.33(m,3H),3.22(br s,1H),2.58-2.53(m,2H),2.45(s,3H),2.04-1.92(m,2H),1.40(br s,2H).
【0056】
実施例4
3-(6-メチルピリミジン-4-イル)-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-アミン;二塩酸塩
(化合物(IV))
【化24】
【0057】
10Lの4つ口容器に、アセトン(8.6L)中のtert-ブチル((1R,5S,8S)-3-(6-メチルピリミジン-4-イル)-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イル)カルバメート(432g、1.34mmol)を投入し、得られた反応混合物を20~25℃で0.5時間撹拌した。次いで、得られた混合物にHCl(36.5重量%、671mL、8.06mol、6当量)を添加し、20~25℃で16時間撹拌した。大量の白色固体が沈殿した。生成物を濾過によって回収した。濾過ケークをアセトン(500ml)で洗浄し、真空オーブン(30mmHg、50℃)で16時間乾燥させて、化合物(IV)(417g、収率99.7%、純度99.27%)を淡色固体として得た。
【0058】
化合物(IV):H NMR(400MHz,DMSO-d)δ=8.77(s,1H),8.61-8.42(m,3H),7.17(s,1H),4.71(br s,1H),4.04(br s,1H),3.58(br d,J=5.3Hz,2H),3.53-3.33(m,3H),3.22(br s,1H),2.58-2.53(m,2H),2.45(s,3H),2.04-1.92(m,2H),1.40(br s,2H).
【0059】
実施例5
3-(6-メチルピリミジン-4-イル)-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-アミン;水和物;二塩酸塩
(化合物(IV))
【化25】
【0060】
50Lの反応器に、アセトン(22.1kg)中のtert-ブチル(((1R,5S,8S)-3-(6-メチルピリミジン-4-イル)-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イル)カルバメート(1.4kg、4.35mol)を投入し、得られた反応混合物を20~25℃で0.5時間撹拌した。次いで、得られた混合物にHCl(36.5重量%、2.61kg、26.1mol、6当量)を添加し、20~30℃で16時間撹拌した。大量の白色固体が沈殿した。生成物を濾過によって回収した。濾過ケークをアセトン(3×1.4L)で洗浄し、真空オーブン(30mmHg、50℃)で16時間乾燥させて、化合物(IV)(1.33kg、4.3mol、収率98%、純度99.84%)を淡色固体として得た。
【0061】
化合物(IV):H NMR(400MHz,DMSO-d)δ=8.77(s,1H),8.61-8.42(m,3H),7.17(s,1H),4.71(br s,1H),4.04(br s,1H),3.58(br d,J=5.3Hz,2H),3.53-3.33(m,3H),3.22(br s,1H),2.58-2.53(m,2H),2.45(s,3H),2.04-1.92(m,2H),1.40(br s,2H).
【0062】
実施例6
(9S)-N-[3-(6-メチルピリミジン-4-イル)-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イル]-9-(2,3,4-トリフルオロフェニル)-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-[1,2,4]-トリアゾロ[1,5-a]アゼピン-2-アミン(化合物(I)
【化26】
【0063】
250mLの容器に、水(20mL)中の化合物(IV)(9.83g、31.8mmol、1.1当量)を投入し、次いで、飽和KCO(30mL)を20~25℃でゆっくり添加した。得られた反応混合物を20~25℃で0.5時間、pH約8~10で撹拌した。得られた混合物を分離し、水層をn-BuOH(30mL)で3回抽出した。合わせた有機層をブライン(30mL、16.5重量%)で洗浄した。水層を分離し、有機層を濃縮して溶媒を除去した。残留物をtert-アミルアルコール(50mL)で希釈し、次いで再び濃縮した。得られたものをtert-アミルアルコール(50mL)で希釈し、得られた混合物を5Lの3つ口反応器に投入する。
【0064】
メカニカルスターラーを備える5Lの反応器に、Pd(dba)(2.6g、2.9mmol、0.1当量)、MeOMetButylXphos(2.8g、5.8mmol、0.2当量)、炭酸カリウム(9.6g、69.3mmol、2.4当量)およびtert-アミルアルコール(80g)を投入した。得られた混合物をNで3回パージした。反応混合物を100~102℃に加熱し、その温度で0.5時間撹拌した。反応混合物に、(R)-2-ブロモ-9-(2,3,4-トリフルオロフェニル)-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]アゼピン(10g、28.9mmol、1当量)およびN,N-ジメチルアセトアミド(6ml)を添加した。得られた反応混合物をさらに2時間加熱還流した。LC-MSはsm/生成物<5%を示し;キラル純度は99.41%であった。2-MeTHF(100mL)を添加した。反応混合物を20~25℃に冷却した。水(100mL)を添加し、分離させた。得られた有機層をN-アセチルシステイン溶液(N-アセチルシステイン(1.5g)+KCO(1.5g)+水(100mL))で3回洗浄した。得られた混合物をセライトパッドを通してフィルタにかけ;次いで、濃縮して溶媒を除去した。残留物をIPAc(40mL)で希釈し、次いで、70~75℃に加熱した。反応物にヘプタン(240mL、24V)を70~75℃で添加した。大量の固体沈殿物が生じ;70~75℃でさらに0.5時間撹拌し、反応混合物を20~25℃にゆっくり冷却し、その温度でさらに16時間撹拌した。得られたケークを濾過によって回収し、ケークをヘプタン(2~3V)ですすいだ。
【0065】
500mLの反応器に、EtOH(200mL)中の粗化合物(I)(10g)を投入した。得られた反応混合物を70~75℃に加熱したら、クリアな褐色溶液が得られた。反応混合物に活性炭(30重量%、3g)およびsilaMetDMT(30重量%、3g)を添加し、次いで、得られた反応混合物を70~75℃でさらに4時間撹拌した。50~55℃に冷却した。セライトパッドを通してフィルタにかけた。ケークを温熱EtOH(50~55℃;20mL)ですすいだ。3Lの反応器に、得られた溶液およびsialeMetチオール(40重量%、4g)を投入した。得られた反応混合物を70~75℃にさらに4時間加熱した。50~55℃に冷却した。セライトパッドを通してフィルタにかけた。ケークを温熱EtOH(50~55℃;20mL)ですすいだ。得られた混合物を濃縮した。
【0066】
500mLの反応器に、エタノール(30mL)中の残留物を投入した。得られた反応混合物を70~75℃に加熱したら、クリアな褐色溶液が得られた。次いで、反応混合物を20~25℃にゆっくり冷却した。反応混合物に水(100mL)を添加した。得られた反応混合物を20~25℃で16時間撹拌した。生成物をフィルタによって回収し、水(30g)で洗浄し、真空オーブン(30mmHg、50℃)で16時間乾燥させて、化合物(I)(8.6g、HPLC純度で99.80%、ee%:98.74%、収率60.9%)を得た。
【0067】
化合物(I):H NMR(400MHz,DMSO-d)δ ppm 1.25(br d,J=7.70Hz,2H)1.46-1.65(m,1H)1.68-1.88(m,2H)1.74-1.85(m,1H)1.88-2.12(m,3H)1.98-2.08(m,1H)2.24(s,3H)2.36(br s,2H)2.90(br d,J=12.23Hz,2H)3.45(d,J=3.91Hz,1H)3.88-4.17(m,3H)4.24(br dd,J=14.24,3.73Hz,1H)4.31-4.39(m,1H)5.76(d,J=4.16Hz,1H)6.60(s,1H)7.16-7.25(m,1H)7.25-7.33(m,1H)8.33(s,1H)
【0068】
13C NMR(101MHz,DMSO-d)δ ppm 24.19(s,1C)25.69(s,1C)25.74(s,1C)27.36(s,1C)29.10(s,1C)31.67(s,1C)38.28(s,1C)38.66(s,1C)38.74(s,1C)50.03(s,1C)50.61(s,2C)62.24(s,1C)101.90(s,1C)112.57(dd,J=16.10,2.90Hz,1C)124.40-124.88(m,1C)127.74(dd,J=11.70,3.70Hz,1C)139.36(dt,J=247.41,15.68Hz,1C)149.26(br dd,J=247.00,11.00Hz,1C)149.53(dd,J=247.00,11.00Hz,1C)155.58(s,1C)157.61(s,1C)161.55(s,1C)163.19(s,1C)164.72(s,1C)
【0069】
19F NMR(376MHz,DMSO-d)δ ppm-162.58(td,J=21.67,6.94Hz,1F)-138.02(ddd,J=15.61,10.41,5.20Hz,1F)-136.27(br d,J=20.80Hz,1F)
[α]D25=16.973
【0070】
HRMS:計算値483.236[C2528+H]、実測値484.2448[M+H]
【0071】
実施例7
(9S)-N-[3-(6-メチルピリミジン-4-イル)-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イル]-9-(2,3,4-トリフルオロフェニル)-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-[1,2,4]-トリアゾロ[1,5-a]アゼピン-2-アミン(化合物(I))
【化27】
【0072】
3Lの容器に、水(200mL)中の化合物(IV)(98.3g、318mmol、1.1当量)を投入し、次いで、飽和KCO(300mL)を20~25℃でゆっくり添加した。得られた反応混合物を20~25℃で0.5時間、pH約8~10で撹拌した。得られた混合物を分離し、水層をn-BuOH(300mL)で3回抽出した。合わせた有機層をブライン(300mL、16.5重量%)で洗浄した。水層を分離し、有機層を濃縮して溶媒を除去した。残留物をtert-アミルアルコール(500mL)で希釈し、次いで再び濃縮した。得られたものをtert-アミルアルコール(500mL)で希釈し、得られた混合物を5Lの3つ口反応器に投入する。
【0073】
メカニカルスターラーを備える上記の5Lの反応器に、Pd(dba)(26.5g、28.9mmol、0.1当量)、MeOMetButylXphos(28.7g、57.8mmol、0.2当量)、炭酸カリウム(95.8g、693mmol、2.4当量)を投入した。得られた混合物をNで3回パージした。反応混合物を100~102℃に加熱し、その温度で0.5時間撹拌した。反応混合物に、(R)-2-ブロモ-9-(2,3,4-トリフルオロフェニル)-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]アゼピン(100g、28.9mmol、1当量)およびN,N-ジメチルアセトアミド(70ml)を添加した。得られた反応混合物をさらに2時間加熱還流した。LC-MSはsm/生成物<5%を示し;キラル純度は99.41%であった。2-MeTHF(1L)を添加した。反応混合物を20~25℃に冷却した。水(1L)を添加し、分離させた。得られた有機層をN-アセチルシステイン溶液(N-アセチルシステイン(15g)+KCO(15g)+水(1L))で3回洗浄した。得られた混合物をセライトパッドを通してフィルタにかけ;次いで、濃縮して溶媒を除去した。残留物をIPAc(400mL)で希釈し、次いで、70~75℃に加熱した。反応物にヘプタン(2400mL、24V)を70~75℃で添加した。大量の固体沈殿物が生じ;70~75℃でさらに0.5時間撹拌し、反応混合物を20~25℃にゆっくり冷却し、その温度でさらに16時間撹拌した。得られたケークを濾過によって回収し、ケークをヘプタン(2~3V)ですすいだ。
【0074】
3Lの反応器に、EtOH(2L)中の粗化合物(I)(101g)を投入した。得られた反応混合物を70~75℃に加熱したら、クリアな褐色溶液が得られた。反応混合物に活性炭(30重量%、30g)およびsilaMetDMT(30重量%、30g)を添加し、次いで、得られた反応混合物を70~75℃でさらに4時間撹拌した。50~55℃に冷却した。セライトパッドを通してフィルタにかけた。ケークを温熱EtOH(50~55℃;200mL)ですすいだ。3Lの反応器に、得られた溶液およびsialeMetチオール(40重量%、40g)を投入した。得られた反応混合物を70~75℃にさらに4時間加熱した。50~55℃に冷却した。セライトパッドを通してフィルタにかけた。ケークを温熱EtOH(50~55℃;200mL)ですすいだ。得られた混合物を濃縮した。
【0075】
3Lの反応器に、エタノール(300mL)中の残留物を投入した。得られた反応混合物を70~75℃に加熱したら、クリアな褐色溶液が得られた。次いで、反応混合物を20~25℃にゆっくり冷却した。反応混合物に水(1L)を添加した。得られた反応混合物を20~25℃で16時間撹拌した。生成物をフィルタによって回収し、水(0.3kg)で洗浄し、真空オーブン(30mmHg、50℃)で16時間乾燥させて、化合物(I)(90g、HPLC純度で99.80%、ee%:98.74%、アッセイ:99.41%、KF:0.10%、重金属(Pd):18ppm、結晶形:フォームA、収率64.3%)を得た。
【0076】
化合物(I):H NMR(400MHz,DMSO-d)δ ppm 1.25(br d,J=7.70Hz,2H)1.46-1.65(m,1H)1.68-1.88(m,2H)1.74-1.85(m,1H)1.88-2.12(m,3H)1.98-2.08(m,1H)2.24(s,3H)2.36(br s,2H)2.90(br d,J=12.23Hz,2H)3.45(d,J=3.91Hz,1H)3.88-4.17(m,3H)4.24(br dd,J=14.24,3.73Hz,1H)4.31-4.39(m,1H)5.76(d,J=4.16Hz,1H)6.60(s,1H)7.16-7.25(m,1H)7.25-7.33(m,1H)8.33(s,1H)
【0077】
13C NMR(101MHz,DMSO-d)δ ppm 24.19(s,1C)25.69(s,1C)25.74(s,1C)27.36(s,1C)29.10(s,1C)31.67(s,1C)38.28(s,1C)38.66(s,1C)38.74(s,1C)50.03(s,1C)50.61(s,2C)62.24(s,1C)101.90(s,1C)112.57(dd,J=16.10,2.90Hz,1C)124.40-124.88(m,1C)127.74(dd,J=11.70,3.70Hz,1C)139.36(dt,J=247.41,15.68Hz,1C)149.26(br dd,J=247.00,11.00Hz,1C)149.53(dd,J=247.00,11.00Hz,1C)155.58(s,1C)157.61(s,1C)161.55(s,1C)163.19(s,1C)164.72(s,1C)
【0078】
19F NMR(376MHz,DMSO-d)δ ppm-162.58(td,J=21.67,6.94Hz,1F)-138.02(ddd,J=15.61,10.41,5.20Hz,1F)-136.27(br d,J=20.80Hz,1F)
[α]D25=16.973
【0079】
HRMS:計算値483.236[C2528+H]、実測値484.2448[M+H]
【0080】
実施例8
(9S)-N-[3-(6-メチルピリミジン-4-イル)-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イル]-9-(2,3,4-トリフルオロフェニル)-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-[1,2,4]-トリアゾロ[1,5-a]アゼピン-2-アミン(化合物(I))
【化28】
【0081】
20Lの容器に、水(1.1L)中の化合物(IV)(540g、1.75mmol、1.1当量)、n-BuOH(2.24kg)を投入し、次いで、飽和KCO(1.1L)を20~30℃でゆっくり添加した。得られた反応混合物を20~30℃で0.5時間撹拌して、pH約8~10の溶液を得た。溶液を分離し、水層をn-BuOH(1.34kg)で抽出した。合わせた有機層をブライン(2.75kg、16.5重量%)で洗浄した。有機層を濃縮し、残留物をtert-アミルアルコール(2.24kg)で希釈し、次いで再び3回濃縮した。残留物を、12Lの反応器中、tert-アミルアルコール(5.5L)で希釈した。
【0082】
メカニカルスターラーを備える上記の12Lの反応器に、Pd(dba)(145g、159mmol、0.1当量)、MeOMetButylXphos(155g、318mmol、0.2当量)、炭酸カリウム(540g、3.97mol、2.5当量)を投入した。得られた混合物をNで3回パージした。反応混合物を100~102℃に加熱し、その温度で0.5時間撹拌した。反応混合物に、(R)-2-ブロモ-9-(2,3,4-トリフルオロフェニル)-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]アゼピン(550g、1.59mol、1当量)およびN,N-ジメチルアセトアミド(385ml)を添加した。得られた反応混合物をさらに2時間加熱還流した。LC-MSはsm/生成物<5%を示し;キラル純度は99.41%であった。2-MeTHF(4.7kg)を添加した。反応混合物を20~25℃に冷却した。2-MeTHF(4.7kg)および水(5.5kg)を添加した。有機層を分離し、N-アセチルシステイン溶液(N-アセチルシステイン82.5g+KCO 82.5g+水5.5kg)で3回およびブライン(5.5kg)で2回洗浄した。得られた混合物をセライトパッドを通してフィルタにかけ;次いで、濃縮して溶媒を除去した。残留物をIPAc(1.91kg)で希釈し、次いで、70~75℃に加熱した。反応物にヘプタン(9.02kg)を70~75℃で添加した。大量の固体沈殿物が生じ;70~75℃でさらに0.5時間撹拌し、反応混合物を20~25℃にゆっくり冷却し、その温度でさらに16時間撹拌した。得られたケークを濾過によって回収し、ケークをヘプタン(1.12kg)ですすいだ。
【0083】
50Lの反応器に、EtOH(8.68kg)中の粗化合物(I)を投入した。得られた反応混合物を70~78℃に加熱したら、クリアな褐色溶液が得られた。反応混合物に活性炭(165g)およびsilaMetDMT(165g)を添加し、次いで、得られた反応混合物を70~75℃でさらに4時間撹拌した。50~55℃に冷却した。セライトパッドを通してフィルタにかけた。ケークを温熱EtOH(50~55℃;0.87kg)ですすいだ。50Lの反応器に、得られた溶液およびsialeMetチオール(40重量%、165g)を投入した。得られた反応混合物を70~75℃にさらに4時間加熱した。50~55℃に冷却した。セライトパッドを通してフィルタにかけた。ケークを温熱EtOH(50~55℃;0.87kg)ですすいだ。得られた混合物を濃縮した。
【0084】
20Lの反応器に、エタノール(1.22kg)中の残留物を投入した。得られた反応混合物を70~75℃に加熱し、次いで、反応混合物を20~25℃にゆっくり冷却した。反応混合物に水(5.5kg)を添加した。得られた反応混合物を20~25℃で16時間撹拌した。生成物をフィルタによって回収し、水(1.1kg)で洗浄し、真空オーブン(30mmHg、50℃)で16時間乾燥させて、化合物(I)(425g、HPLC純度で99.80%、ee%:98.74%、アッセイ:99.41%、KF:0.10%、重金属(Pd):30ppm、結晶形:フォームA、収率55.30%)を得た。
【0085】
化合物(I):H NMR(400MHz,DMSO-d)δ ppm 1.25(br d,J=7.70Hz,2H)1.46-1.65(m,1H)1.68-1.88(m,2H)1.74-1.85(m,1H)1.88-2.12(m,3H)1.98-2.08(m,1H)2.24(s,3H)2.36(br s,2H)2.90(br d,J=12.23Hz,2H)3.45(d,J=3.91Hz,1H)3.88-4.17(m,3H)4.24(br dd,J=14.24,3.73Hz,1H)4.31-4.39(m,1H)5.76(d,J=4.16Hz,1H)6.60(s,1H)7.16-7.25(m,1H)7.25-7.33(m,1H)8.33(s,1H)
【0086】
13C NMR(101MHz,DMSO-d)δ ppm 24.19(s,1C)25.69(s,1C)25.74(s,1C)27.36(s,1C)29.10(s,1C)31.67(s,1C)38.28(s,1C)38.66(s,1C)38.74(s,1C)50.03(s,1C)50.61(s,2C)62.24(s,1C)101.90(s,1C)112.57(dd,J=16.10,2.90Hz,1C)124.40-124.88(m,1C)127.74(dd,J=11.70,3.70Hz,1C)139.36(dt,J=247.41,15.68Hz,1C)149.26(br dd,J=247.00,11.00Hz,1C)149.53(dd,J=247.00,11.00Hz,1C)155.58(s,1C)157.61(s,1C)161.55(s,1C)163.19(s,1C)164.72(s,1C)
【0087】
19F NMR(376MHz,DMSO-d)δ ppm-162.58(td,J=21.67,6.94Hz,1F)-138.02(ddd,J=15.61,10.41,5.20Hz,1F)-136.27(br d,J=20.80Hz,1F)
[α]D25=16.973
【0088】
HRMS:計算値483.236[C2528+H]、実測値484.2448[M+H]
【0089】
実施例9
化合物(I)のフォームAの特性評価
特性評価方法
DSC分析:
TA機器DSC Q2000
走査範囲:30~350℃
ランプ:10℃/分
TGA分析:
TA機器TGA Q5000
走査範囲:30~350℃、
ランプ:10℃/分
XRPD:
PANalytical Empyrean XRPD
X線源:CuKα(λ=1.5406Å)
作動電気:40mA
作動電圧:40kV
検出器:PSD
走査範囲:4~40度(2シータ)
走査ステップ:0.05度/ステップ(2シータ)
走査速度:1ステップ/秒
【表1】
【0090】
図2に示すDSC結果は、化合物(I)のフォームAが約205.5℃の融解開始温度を有することを示す。
【0091】
実施例10
溶解度研究
a.試験媒体
pH1.00緩衝液
pH3.00緩衝液
pH5.00緩衝液
pH7.00緩衝液
pH9.00緩衝液

Tritonを含まないSGF
FaSSIF
FeSSIF
【0092】
b.試験手順
レポート番号:AD-GSM-046v01
【0093】
約5mgの化合物(I)をガラスバイアルに秤量し、0.5mlの上に列挙した試験媒体を添加して懸濁液を形成する。これらの懸濁液を25℃下、1200rpmで約24時間振盪する。
【0094】
24時間後、すべてのバイアルを取り出し、懸濁液を0.22μmのPVDFフィルタによってフィルタにかける。濾液のpH値および濃度を、それぞれpHメータおよびUPLCによってチェックする。
【0095】
c.UPLC条件
【表2】
【0096】
d.結果
溶解度の結果を表2に列挙する。結果は、溶解度がpH依存的であることを示す。
【表3】
図1
図2
【国際調査報告】