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特表2023-553058リチウム二次電池用正極活物質及びそれを含むリチウム二次電池
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  • 特表-リチウム二次電池用正極活物質及びそれを含むリチウム二次電池 図1a
  • 特表-リチウム二次電池用正極活物質及びそれを含むリチウム二次電池 図1b
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-20
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極活物質及びそれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20231213BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20231213BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20231213BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/13
H01M4/36 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534409
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(85)【翻訳文提出日】2023-06-06
(86)【国際出願番号】 KR2021018489
(87)【国際公開番号】W WO2022124774
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】10-2020-0169213
(32)【優先日】2020-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ウン-ソル・ロ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン-ヨプ・ド
(72)【発明者】
【氏名】カン-ジュン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ギ-ボム・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ミン・カク
(72)【発明者】
【氏名】サン-ミン・パク
(72)【発明者】
【氏名】デ-ジン・イ
(72)【発明者】
【氏名】サン-ウク・イ
(72)【発明者】
【氏名】ワン-モ・ジュン
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050DA02
5H050FA08
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA15
(57)【要約】
本発明は、一次巨大(macro)粒子の凝集体を含む少なくとも一つの二次粒子を含む正極活物質、その製造方法、及びそれを含むリチウム二次電池に関する。本発明の一態様によれば、一次巨大粒子を含む二次粒子及び単粒子を同時に使用することで、正極活物質の圧延時の粒子割れが減少し、充放電サイクル特性に優れたニッケル系正極活物質を提供することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1正極活物質及び第2正極活物質を含むリチウム二次電池用正極活物質であって、
前記第1正極活物質は、少なくとも一つの単粒子を含み、
前記第2正極活物質は、一次巨大粒子の凝集体を含む少なくとも一つの二次粒子を含み、
前記単粒子は、平均粒径(D50)が3~10μmである一つの粒子から構成され、
前記一次巨大粒子の平均粒径(D50)は1μm以上であり、
前記二次粒子の平均粒径(D50)は1~10μmである、リチウム二次電池用正極活物質。
【請求項2】
前記単粒子の平均粒径(D50)が前記二次粒子の平均粒径(D50)よりも大きい、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項3】
前記単粒子の平均粒径(D50)が前記二次粒子の平均粒径(D50)の1.1倍~2倍である、請求項2に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項4】
前記第1正極活物質と前記第2正極活物質との重量比が90:10~10:90である、請求項1から3のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項5】
前記第1正極活物質の粒子強度が前記第2正極活物質の粒子強度よりも大きい、請求項1から4のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項6】
前記第1正極活物質の粒子強度は200MPa以上であり、
前記第2正極活物質の粒子強度は120MPa以下である、請求項5に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項7】
前記一次巨大粒子の平均粒径(D50)と前記一次巨大粒子の平均結晶サイズとの比が2以上である、請求項1から6のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項8】
前記一次巨大粒子の平均結晶サイズが190nm以上である、請求項1から7のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項9】
前記二次粒子の平均粒径(D50)と前記一次巨大粒子の平均粒径(D50)との比が2~5である、請求項1から8のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項10】
前記第1正極活物質及び第2正極活物質は、それぞれ独立的にニッケル系リチウム遷移金属酸化物を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項11】
前記ニッケル系リチウム遷移金属酸化物が、それぞれ独立的にLiNi1-b-c-dCoMn2+δ(1.0≦a≦1.5、0<b<0.2、0<c<0.2、0≦d≦0.1、0<b+c+d≦0.2、-0.1≦δ≦1.0、QはAl、Mg、V、Ti、Zrからなる群より選択された一種以上の金属元素)である、請求項10に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項12】
請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質を含み、
前記第1正極活物質と前記第2正極活物質とが接触して形成された空間に前記一次巨大粒子が位置している、リチウム二次電池用正極。
【請求項13】
前記第1正極活物質同士が接触して形成された空間に前記一次巨大粒子が位置している、請求項12に記載のリチウム二次電池用正極。
【請求項14】
請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質を含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一次巨大粒子を含むリチウム二次電池用正極活物質及びその製造方法に関する。
【0002】
本出願は、2020年12月7日付け出願の韓国特許出願第10-2020-0169213号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
近年、携帯電話、ノートパソコン、電気自動車など電池を使用する電子機器の急速な普及に伴って、小型軽量でありながらも相対的に高容量を有する二次電池の需要が急増している。特に、リチウム二次電池は、軽量であって高エネルギー密度を有しており、携帯機器の駆動電源として脚光を浴びている。そこで、リチウム二次電池の性能を向上させるための研究開発が活発に行われている。
【0004】
リチウム二次電池は、リチウムイオンの挿入(intercalation)及び脱離(deintercalation)が可能な活物質からなる正極と負極との間に有機電解液またはポリマー電解液を充填した状態で、リチウムイオンが正極及び負極において挿入/脱離するときの酸化反応及び還元反応によって電気エネルギーを発生させる。
【0005】
リチウム二次電池の正極活物質としては、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)、リチウムマンガン酸化物(LiMnOまたはLiMnなど)、リン酸鉄リチウム化合物(LiFePO)などが使用されている。中でも、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)は、作動電圧が高くて容量特性に優れるという長所から広く使用され、高電圧用正極活物質として適用されている。しかし、コバルト(Co)の価格上昇及び供給不安定のため、電気自動車などのような分野の動力源としての大量使用には限界があり、これに代替可能な正極活物質の開発が求められている。そこで、コバルト(Co)の一部をニッケル(Ni)とマンガン(Mn)で置換したニッケルコバルトマンガン系リチウム複合遷移金属酸化物(以下、単に「NCM系リチウム複合遷移金属酸化物」とする)が開発されている。
【0006】
一方、大部分の正極活物質は、出力及び圧延密度を高めようとして、大きさの異なる2種の正極活物質が使用されている。このとき、正極活物質は一次粒子が集まって形成された二次粒子であり得る。しかし、一次粒子が集まって形成された二次粒子を用いて正極を構成する場合、電極の製造過程の一つである圧延段階で一次粒子及び/又は二次粒子が割れて、電極内の電子の移動経路が損失され、電解液との副反応が起き得る表面積が広くなるおそれがある。結果的に、寿命特性に劣るという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、粒子のサイズ及び形状を制御して圧延時の粒子割れを最小化することができる正極活物質を提供することである。
【0008】
これにより、正極活物質の圧延時の粒子割れが減少し、寿命特性が改善されたニッケル系正極活物質を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、下記具現例による正極活物質を提供する。
【0010】
具体的には、第1正極活物質及び第2正極活物質を含むリチウム二次電池用正極活物質であって、
前記第1正極活物質は、少なくとも一つの単粒子を含み、
前記第2正極活物質は、一次巨大(macro)粒子の凝集体を含む少なくとも一つの二次粒子を含み、
前記単粒子は、平均粒径(D50)が3~10μmである一つの粒子から構成され、
前記一次巨大粒子の平均粒径(D50)は1μm以上であり、
前記二次粒子の平均粒径(D50)は1~10μmであるリチウム二次電池用正極活物質を提供する。
【0011】
前記単粒子の平均粒径(D50)は、前記二次粒子の平均粒径(D50)よりも大きくなり得、より具体的には、前記単粒子の平均粒径(D50)は、前記二次粒子の平均粒径(D50)の1.1倍~2倍であり得る。
【0012】
前記第1正極活物質と前記第2正極活物質との重量比は90:10~10:90であり得る。
【0013】
前記第1正極活物質の粒子強度が前記第2正極活物質の粒子強度よりも大きくなり得る。
【0014】
前記第1正極活物質の粒子強度は200MPa以上であり、前記第2正極活物質の粒子強度は120MPa以下であり得る。
【0015】
前記一次巨大粒子の平均粒径(D50)と前記一次巨大粒子の平均結晶サイズとの比は、2以上であり得る。
【0016】
前記一次巨大粒子の平均結晶サイズは、190nm以上であり得る。
【0017】
前記二次粒子の平均粒径(D50)と前記一次巨大粒子の平均粒径(D50)との比は、2~5であり得る。
【0018】
前記第1正極活物質及び第2正極活物質は、それぞれ独立的にニッケル系リチウム遷移金属酸化物を含み得る。
【0019】
前記ニッケル系リチウム遷移金属酸化物は、それぞれ独立的にLiNi1-b-c-dCoMn2+δ(1.0≦a≦1.5、0<b<0.2、0<c<0.2、0≦d≦0.1、0<b+c+d≦0.2、-0.1≦δ≦1.0、QはAl、Mg、V、Ti、Zrからなる群より選択された一種以上の金属元素)であり得る。
【0020】
本発明の他の一態様は、リチウム二次電池用正極を提供する。具体的には、上述した正極活物質を含み、前記第1正極活物質と前記第2正極活物質とが接触して形成された空間に前記一次巨大粒子が位置しているリチウム二次電池用正極を提供する。
【0021】
前記第1正極活物質同士が接触して形成された空間に前記一次巨大粒子が位置し得る。
【0022】
本発明のさらに他の一態様は、上述した正極活物質を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様によれば、従来のように二次粒子大粒子と二次粒子小粒子とをバイモーダルで使用した場合に比べて、圧延時の粒子割れや微粉の発生量が著しく抑制されて寿命特性を大幅に向上させることができる。
【0024】
本発明の一態様によれば、従来の単粒子を単独で使用した場合に比べて、圧延時の粒子割れや微粉の発生量が著しく抑制されて寿命特性を大幅に向上させることができる。
【0025】
本明細書に添付される図面は、本発明の望ましい実施形態を例示するものであり、発明の内容とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするものであるため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。一方、本明細書に添付される図面における要素の形状、大きさ、縮尺または比率などはより明確な説明を強調するため誇張されることもある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1a】本発明の一実施形態による第1正極活物質及び第2正極活物質を概略的に示した模式図である。
図1b】本発明の一実施形態による第1正極活物質及び第2正極活物質を撮影したSEMイメージである。
図1c】本発明の実施例1による正極活物質を概略的に示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の具現例を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び特許請求の範囲において使用された用語や単語は通常的及び辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。したがって、本明細書に記載された実施形態に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施形態に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0028】
本明細書の全体において、ある部分が他の構成要素を「含む」とは、特に言及しない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0029】
本明細書及び特許請求の範囲において、「多数の結晶粒を含む」とは、特定範囲の平均結晶サイズを有する二つ以上の結晶粒子が集まってなる結晶体を意味する。このとき、前記結晶粒の結晶サイズは、CuKαX線(Xrα)によるX線回折分析(XRD)を用いて定量的に分析され得る。具体的には、製造した粒子をホルダーに入れ、X線を前記粒子に照射して作られる回折パターンを分析することで、結晶粒の平均結晶サイズを定量的に分析可能である。
【0030】
本明細書及び特許請求の範囲において、D50は、粒度分布の50%基準における粒子径として定義され得、レーザー回折法(laser diffraction method)を用いて測定され得る。例えば、前記正極活物質の平均粒径(D50)の測定方法は、正極活物質の粒子を分散媒中に分散させた後、市販のレーザー回折粒度測定装置(例えば、マイクロトラック社製のMT3000)に導入し、約28kHzの超音波を出力60Wで照射した後、測定装置における体積累積量の50%に該当する平均粒径(D50)を算出し得る。
【0031】
本発明において、「一次粒子」とは、走査型電子顕微鏡を用いて5,000倍~20,000倍の視野で観察したとき、外観上粒界が存在しない粒子を意味する。本発明において一次粒子は、平均粒径(D50)によって一次微細(micro)粒子と一次巨大(macro)粒子とに分けられ得る。
【0032】
本発明において、「二次粒子」とは、前記一次粒子が凝集されて形成された粒子である。本発明において二次粒子は、平均粒径(D50)によって二次大粒子と二次小粒子とに分けられ得る。
【0033】
本発明において、「単粒子」とは、前記二次粒子とは独立的に存在するものであって、外観上粒界が存在しない粒子である。
【0034】
本発明において、「粒子」と記載する場合は、単粒子、二次粒子、一次粒子のうちのいずれか一つまたは全てが含まれる意味であり得る。
<正極活物質>
リチウム二次電池においては、体積当りエネルギー密度を向上させるため、粒度分布の異なる二つの種類の粒子を混合して正極活物質として使用する場合が大部分である。例えば、大粒子正極活物質と小粒子正極活物質とを適切な比率で使用すれば、バイモーダル(bimodal)効果により、同一圧力条件で大/小粒子の密度値から算術的に計算した値に比べて高い密度を示すようになる。
【0035】
一方、正極活物質粒子を用いて正極を製造するときには殆ど圧延工程を経る。このとき、正極活物質粒子がいわゆる一次粒子が集まって形成された二次粒子である場合は、圧延工程中に粒子割れが発生することがある。割れた粒子は電気伝導性が損失され、表面積の増加によって電解液との副反応を深化させるおそれがある。結果的に、寿命特性に劣るという問題がある。
【0036】
本発明の一態様は、従来と異なる二次粒子形態を含む正極活物質を提供する。
【0037】
具体的には、
第1正極活物質及び第2正極活物質を含むリチウム二次電池用正極活物質であって、
前記第1正極活物質は、少なくとも一つの単粒子を含み、
前記第2正極活物質は、一次巨大(macro)粒子の凝集体を含む少なくとも一つの二次粒子を含み、
前記単粒子は、平均粒径(D50)が3~10μmである一つの粒子から構成され、
前記一次巨大粒子の平均粒径(D50)は1μm以上であり、
前記二次粒子の平均粒径(D50)は1~10μmであるリチウム二次電池用正極活物質である。
【0038】
前記正極活物質は、上記の特徴を有することで、充放電容量維持率が増加したニッケル系正極活物質を提供することができる。また、圧延時の微粉生成の比率が減少した正極活物質を提供することができる。
【0039】
以下、前記一次粒子及び二次粒子が有する上記の特性を詳しく説明する。
【0040】
<第1正極活物質>
本発明において、第1正極活物質は、少なくとも一つの単粒子を含む。
【0041】
このとき、単粒子とは、二次粒子とは独立的に存在するものであって、外観上粒界が存在しない粒子を意味し、本発明における単粒子は、平均粒径(D50)が3~10μmである一つの粒子から構成されたものである。
【0042】
<第2正極活物質>
本発明において、第2正極活物質は、一次巨大粒子が凝集された二次粒子を含む。従来の二次粒子は、数十個~数百個の一次微細粒子が凝集されて二次粒子を形成する。一方、本発明の一態様では、一次粒子の平均粒径(D50)が1μm以上である一次巨大粒子が凝集されて「二次粒子」を構成する。
【0043】
本発明者らは、従来のように大きさの異なる二次粒子大粒子と二次粒子小粒子とを混合する場合、圧延過程で二次粒子の割れが発生して電気化学特性が劣る問題があることを見つけた。このとき、従来の二次粒子大粒子及び二次粒子小粒子とは、数百ナノメートルレベルの平均粒径を有する一次微細粒子が数十個~数百個凝集されて形成された二次粒子であるが、平均粒径(D50)が大きい場合を「二次粒子大粒子」、平均粒径(D50)が小さい場合を「二次粒子小粒子」と称する。
【0044】
一方、本発明の一態様では「一次巨大粒子が凝集された二次粒子」を従来の「単粒子」と適切な比率で混合することで、圧延過程での割れを抑制することができる。これは、単粒子の粒子強度が本発明による二次粒子の粒子強度よりも大きくて圧延過程でこのような単粒子は割れず、さらに、本発明による二次粒子は、圧延時に一次巨大粒子が離れ落ちながら割れないためである。
【0045】
すなわち、本発明の一態様による二次粒子は、例えば、電極形成のために高い圧力で圧延するとき、例えば、9トン(ton)以上の圧力で圧延するとき、二次粒子から一次巨大粒子が分離される一方、分離された一次巨大粒子自体は割れない。これにより、粒子割れを最小化して微粉を減らすことができる。また、第1正極活物質と第2正極活物質とを混合して使うことで、空いた空間を埋めて圧延性能が向上し、エネルギー密度が増加できる。結果的に、寿命性能が改善できる。
【0046】
本発明において、「一次巨大粒子」は、平均粒径(D50)が1μm以上のものである。
【0047】
本発明の具体的な一実施形態において、前記一次巨大粒子の平均粒径は1μm以上、1.5μm以上、2μm以上、2.5μm以上、3μm以上、または3.5μm以上であり得、5μm以下、4.5μm以下、または4μm以下であり得る。前記一次巨大粒子の平均粒径が1μm未満である場合、これを凝集した二次粒子は従来の二次小粒子に該当し、圧延時に粒子割れが発生する問題があり得る。
【0048】
本発明において「一次巨大粒子」は、平均粒径(D50)と平均結晶サイズとの比が3以上である。すなわち、前記一次巨大粒子は、従来の二次粒子を構成する一次微細(micro)粒子と比べるとき、一次粒子の平均粒径と平均結晶サイズとが同時に成長できる。
【0049】
クラック(crack)の観点から見ると、従来の単粒子のように、外観上粒界が存在しないながらも平均粒径が大きいものが有利である。そこで、本発明者らは一次粒子の平均粒径(D50)を成長させることに集中した。その過程で、過焼成などによって一次粒子の平均粒径(D50)のみを増加させると、一次粒子の表面に岩塩(rock salt)型構造が形成されて拡散抵抗が高くなる問題があることを見つけた。そして、それを解決するため、一次粒子の平均結晶サイズも一緒に成長させることが拡散抵抗を下げるのに有利であることを確認した。
【0050】
すなわち、本発明における一次巨大粒子は、平均粒径だけでなく平均結晶サイズも大きく、外観上粒界が存在しない粒子を意味する。
【0051】
このように、一次粒子の平均粒径と平均結晶サイズとが同時に成長する場合、高温での焼成によって表面に岩塩型構造が生じて抵抗の増加が大きい従来の単粒子に比べて、抵抗が低くなって長寿命の面でも有利である。
【0052】
このように、従来の単粒子に比べて、本発明の一態様で使われる「一次巨大粒子の凝集体から構成された二次粒子」の場合、一次粒子自体の大きさ増加及び岩塩型構造の形成減少によって抵抗が低くなるという面で有利である。
【0053】
このとき、前記一次巨大粒子の平均結晶サイズは、CuKαX線(X-ray)によるX線回折分析(XRD)を用いて定量的に分析され得る。具体的には、製造した粒子をホルダーに入れ、X線を前記粒子に照射して作られる回折パターンを分析することで、結晶粒の平均結晶サイズを定量的に分析可能である。サンプリングは、一般の粉末用ホルダー中央の凹溝に試料を入れ、スライドガラスを用いて表面を均一にし、高さをホルダーの周縁と同一にして用意する。LynxEye XE-T位置検出素子が取り付けられたブルカー社製のD8 Endeavor(CuKα、λ=1.54Å)を用いてFDS 0.5°、2θ 15°~90°領域に対し、ステップサイズ0.02°で全スキャン時間が20分になるように試料を測定する。測定されたデータに対し、各位置(site)から電荷(charge)(遷移金属サイトでの金属は+3、LiサイトのNiは+2)とカチオンミキシングを考慮してリートベルト解析を行う。結晶サイズ分析の際、計器的拡張(instrumental broadening)はブルカー社製のTOPASプログラムに実装されているファンダメンタルパラメータアプローチ(Fundemental Parameter Approach:FPA)を用いて考慮され、フィッティング時、測定範囲の全体ピークが使われる。ピーク形態はTOPASで使用可能なピークタイプのうちのFP(First Principle)でローレンツコントリビューション(Lorenzian contribution)のみを用いてフィッティングし、このときストレインは考慮しない。このような方法を通じて構造分析を行い、結晶粒の平均結晶サイズを定量的に分析可能である。
【0054】
本発明の具体的な一実施形態において、前記平均粒径(D50)と平均結晶サイズとの比は2以上、2.5以上、3以上であり得、50以下、40以下、35以下であり得る。
【0055】
また、前記一次巨大粒子の平均結晶サイズは、150nm以上、170nm以上、200nm以上であり得、300nm以下、270nm以下、または250nm以下であり得る。
【0056】
一方、本発明において「二次粒子」とは、上述した一次巨大粒子が凝集された形態である。前記二次粒子は、従来の単粒子収得方法と次のような点で相違する。
【0057】
従来の単粒子は、従来の二次粒子用前駆体をそのまま使用し、一次焼成温度のみを高めて単粒子を形成した。一方、本発明の一態様による二次粒子は、気孔度の高い前駆体を別途に使用する。これにより、焼成温度を高めなくても粒径の大きい一次巨大粒子が成長でき、その一方で二次粒子の平均粒径は従来に比べて相対的に不十分に成長する。
【0058】
これにより、本発明の一態様による二次粒子は、従来の二次粒子と同一または類似の平均粒径(D50)を有しながらも、一次粒子の平均粒径(D50)が大きい形態である。すなわち、従来の正極活物質が有する一般的な形態、すなわち平均粒径の小さい一次粒子が集まって二次粒子を形成する形態とは異なって、一次粒子を大きくした一次巨大粒子が凝集された二次粒子の形態を提供する。
【0059】
本発明の具体的な一実施形態において、前記二次粒子は、前記一次巨大粒子が1個~10個凝集されたものであり得る。より具体的には、前記二次粒子は、上記の数値範囲内で前記一次巨大粒子が1個以上、2個以上、3個以上、または4個以上凝集されたものであり得、上記の数値範囲内で前記一次巨大粒子が10個以下、9個以下、8個以下、または7個以下に凝集されたものであり得る。
【0060】
本発明において、前記二次粒子は、従来と同一または類似の平均粒径(D50)を有しながらも、一次巨大粒子の平均粒径(D50)が大きい形態である。すなわち、従来の正極活物質が有する一般的な形態、すなわち平均粒径の小さい一次微細粒子が集まって二次粒子を形成する形態とは異なって、一次粒子を大きくした一次巨大粒子が凝集された二次粒子の形態を提供する。
【0061】
本発明の一態様による二次粒子は、平均粒径(D50)が3μm~6μmである。より具体的には、3μm以上、3.5μm以上、4μm以上、または4.5μm以上であり、6μm以下、5.5μm以下、または5μm以下である。
【0062】
一般に粒子の形態にかかわらず、同じ組成であると、焼成温度が増加するほど粒子のサイズ及び粒子内の平均結晶サイズが増加する。一方、本発明の一態様による二次粒子は、多孔性の前駆体を用いることで、従来に比べて焼成温度を高めなくても粒径の大きい一次巨大粒子が成長でき、その一方で二次粒子は従来に比べて相対的に不十分に成長する。
【0063】
これにより、本発明の一態様による二次粒子は、従来の二次粒子と平均粒径(D50)が同一または類似でありながらも、従来の一次微細粒子に比べて平均粒径及び平均結晶サイズが大きい一次巨大粒子からなっている。
【0064】
本発明の具体的な一実施形態において、前記二次粒子の平均粒径(D50)と前記一次巨大粒子の平均粒径(D50)との比は2~4であり得る。
【0065】
本発明において、第2正極活物質は、上述した二次粒子を含むものを意味する。このとき、前記第2正極活物質を圧延するとき、前記二次粒子から前記一次巨大粒子が離れ落ち、前記一次巨大粒子自体は割れないものであり得る。このとき、前記圧延条件は9トンであり得る。
【0066】
これにより、本発明の一態様による正極活物質を9トンで圧延した後の1μm以下の微粒子が10%未満であり得る。
【0067】
前記単粒子の平均粒径(D50)は、前記二次粒子の平均粒径(D50)よりも大きくなり得る、例えば、前記単粒子の平均粒径(D50)は、前記二次粒子の平均粒径(D50)の1.1倍~2倍であり得る。
【0068】
<含量及び比率>
本発明の一態様による正極活物質において、前記第1正極活物質と前記第2正極活物質との重量比は90:10~10:90である。
【0069】
より具体的には、前記第1正極活物質と前記第2正極活物質との重量比は80:20~20:80であり得る。
【0070】
前記第1正極活物質のみを単独で使用するかまたは前記第2正極活物質のみを単独で使用する場合は、圧延時に形成される微粉の量が本発明の正極活物質に比べて相対的に多量存在する。
【0071】
また、従来のように従来の二次粒子大粒子と一次微細粒子から構成された二次粒子小粒子とを使用する場合は、前記二次粒子大粒子を単独で使用するときに比べて微粉の量が相対的に減少し得るが、相変らず粒子割れが発生して容量維持率が低い。
【0072】
<組成>
前記二次大粒子及び/又は二次小粒子は、ニッケル系リチウム遷移金属酸化物を含むものである。
【0073】
このとき、前記ニッケル系リチウム遷移金属酸化物は、それぞれ独立的にLiNi1-b-c-dCoMn2+δ(1.0≦a≦1.5、0<b<0.2、0<c<0.2、0≦d≦0.1、0<b+c+d≦0.2、-0.1≦δ≦1.0、QはAl、Mg、V、Ti、Zrからなる群より選択された一種以上の金属元素)を含み得る。
【0074】
<正極活物質の製造方法>
本発明の一態様による正極活物質は、次のような方法で製造され得るが、これに制限されるものではない。
【0075】
具体的には、第1正極活物質及び第2正極活物質をそれぞれ製造した後、混合して形成し得る。
【0076】
例えば、第1正極活物質は単粒子を含むものであって、従来当業界に周知の方法で製造され得る。
【0077】
例えば、第2正極活物質は、次のような方法で製造され得る。
【0078】
具体的には、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)及びマンガン(Mn)を含む正極活物質前駆体とリチウム原料物質とを混合して一次焼成する段階と、一次焼成の後、リチウム原料物質を混合して二次焼成する段階と、を含み得る。
【0079】
前記一次焼成及び前記二次焼成を通じて、一次粒子を含む二次粒子を製造することができる。
【0080】
前記正極活物質の製造方法を段階毎にさらに説明する。
【0081】
まず、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)及びマンガン(Mn)を含む正極活物質前駆体を用意する。
【0082】
このとき、大粒子の第1正極活物質を製造するための前駆体は、市販の正極活物質前駆体を使用するか、または、当技術分野で周知の正極活物質前駆体の製造方法によって製造され得る。
【0083】
例えば、前記前駆体は、ニッケル含有原料物質、コバルト含有原料物質、及びマンガン含有原料物質を含む遷移金属溶液に、アンモニウム陽イオン含有キレート剤と塩基性化合物を添加して共沈反応させて製造されるものであり得る。
【0084】
前記ニッケル含有原料物質は、例えば、ニッケル含有酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硫化物、水酸化物、酸化物、またはオキシ水酸化物などであり得、具体的には、Ni(OH)、NiO、NiOOH、NiCO・2Ni(OH)・4HO、NiC・2HO、Ni(NO・6HO、NiSO、NiSO・6HO、脂肪酸ニッケル塩、ニッケルハロゲン化物、またはこれらの組み合わせであり得るが、これらに限定されることはない。
【0085】
前記コバルト含有原料物質は、コバルト含有酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硫化物、水酸化物、酸化物、またはオキシ水酸化物などであり得、具体的には、Co(OH)、CoOOH、Co(OCOCH・4HO、Co(NO・6HO、CoSO、Co(SO・7HO、またはこれらの組み合わせであり得るが、これらに限定されることはない。
【0086】
前記マンガン含有原料物質は、例えば、マンガン含有酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硫化物、水酸化物、酸化物、オキシ水酸化物、またはこれらの組み合わせであり得、具体的には、Mn、MnO、Mnなどのようなマンガン酸化物;MnCO、Mn(NO、MnSO、酢酸マンガン、ジカルボン酸マンガン塩、クエン酸マンガン、脂肪酸マンガン塩のようなマンガン塩;オキシ水酸化マンガン、塩化マンガン、またはこれらの組み合わせであり得るが、これらに限定されることはない。
【0087】
前記遷移金属溶液は、ニッケル含有原料物質、コバルト含有原料物質、及びマンガン含有原料物質を溶媒、具体的には水、または水と均一に混合可能な有機溶媒(例えば、アルコールなど)の混合溶媒に添加して製造されるか、または、ニッケル含有原料物質の水溶液、コバルト含有原料物質の水溶液、及びマンガン含有原料物質を混合して製造されたものであり得る。
【0088】
前記アンモニウム陽イオン含有キレート剤は、例えばNHOH、(NHSO、NHNO、NHCl、CHCOONH、(NHCO、またはこれらの組み合わせであり得るが、これらに限定されることはない。一方、前記アンモニウム陽イオン含有キレート剤は、水溶液の形態で使用されてもよく、このときの溶媒としては、水、または水と均一に混合可能な有機溶媒(具体的には、アルコールなど)と水との混合物が使用され得る。
【0089】
前記塩基性化合物は、NaOH、KOHまたはCa(OH)などのようなアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、これらの水和物、またはこれらの組み合わせであり得る。前記塩基性化合物も水溶液の形態で使用されてもよく、このときの溶媒としては、水、または水と均一に混合可能な有機溶媒(具体的には、アルコールなど)と水との混合物が使用され得る。
【0090】
前記塩基性化合物は、反応溶液のpHを調節するために添加されるものであって、金属溶液のpHが11~13になる量で添加され得る。
【0091】
一方、前記共沈反応は、窒素またはアルゴンなどの不活性雰囲気で、40℃~70℃の温度で行われ得る。
【0092】
上記のような工程によってニッケル-コバルト-マンガン水酸化物の粒子が生成され、反応溶液内に沈殿する。ニッケル含有原料物質、コバルト含有原料物質、及びマンガン含有原料物質の濃度を調節して、金属全体含量中のニッケル(Ni)の含量が60モル%以上である前駆体を製造し得る。沈殿したニッケル-コバルト-マンガン水酸化物粒子を通常の方法によって分離し、乾燥してニッケル-コバルト-マンガン前駆体を収得し得る。前記前駆体は、一次粒子が凝集されて形成された二次粒子であり得る。
【0093】
平均粒径及び結晶サイズがともに成長した一次巨大粒子を含む二次小粒子を含む小粒子形態の第2正極活物質の場合は、前記正極活物質前駆体として多孔性粒子をさらに使用し得る。
【0094】
このとき、前記第2正極活物質前駆体の製造のため、pH濃度を制御し得る。具体的には、pHが7~9になる量で添加され得る。
【0095】
その後、上述した前駆体とリチウム原料物質とを混合して一次焼成する。
【0096】
前記リチウム原料物質としては、リチウム含有硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、ハロゲン化物、水酸化物、またはオキシ水酸化物などが使用され得、水に溶解可能なものであれば特に限定されない。具体的には、前記リチウム原料物質は、LiCO、LiNO、LiNO、LiOH、LiOH・HO、LiH、LiF、LiCl、LiBr、LiI、CHCOOLi、LiO、LiSO、CHCOOLi、またはLiなどであり得、これらのうちのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用され得る。
【0097】
前記一次焼成は、ニッケル(Ni)の含量が60モル%以上である高含量ニッケル(high-Ni)NCM系リチウム複合遷移金属酸化物の場合、800~1,000℃で焼成し得、より望ましくは830~980℃、さらに望ましくは850~950℃で焼成し得る。ニッケル(Ni)の含量が60モル%未満である低含量ニッケル(low-Ni)NCM系リチウム複合遷移金属酸化物の場合、一次焼成は900~1,100℃で行われ得、より望ましくは930~1,070℃、さらに望ましくは950~1,050℃で行われ得る。
【0098】
前記一次焼成は、空気または酸素雰囲気下で、15~35時間行われ得る。
【0099】
次いで、前記一次焼成の後、追加的な二次焼成を行うことができる。
【0100】
前記二次焼成は、ニッケル(Ni)の含量が60モル%以上である高含量ニッケル(high-Ni)NCM系リチウム複合遷移金属酸化物の場合、600~950℃で焼成し得、より望ましくは650~930℃、さらに望ましくは700~900℃で焼成し得る。ニッケル(Ni)の含量が60モル%未満である低含量ニッケル(low-Ni)NCM系リチウム複合遷移金属酸化物の場合、二次焼成は700~1,050℃で行われ得、より望ましくは750~1,000℃、さらに望ましくは800~950℃で行われ得る。
【0101】
前記二次焼成は、空気または酸素雰囲気下で、10~24時間行われ得る。
【0102】
<正極及びリチウム二次電池>
本発明のさらに他の一態様によれば、前記正極活物質を含むリチウム二次電池用正極及びリチウム二次電池を提供する。
【0103】
具体的には、前記正極は、正極集電体、及び前記正極集電体上に形成されて前記正極活物質を含む正極活物質層を含む。
【0104】
このとき、前記正極活物質は、上述した通りである。
【0105】
すなわち、本発明の一態様による正極は、正極活物質上に第1正極活物質及び第2正極活物質を含む。
【0106】
このとき、前記正極は、製造過程で正極活物質形成用スラリーを集電体上に塗布した後、圧延過程を経ることになる。このような圧延過程を通じてパッキング密度が高くなる。特に、本発明の一態様では、圧延過程を経ながら第2正極活物質を構成する二次粒子から一次巨大粒子が離れ落ちるようになる。分離された一次巨大粒子は、第1正極活物質と第2正極活物質とが接触して生成された空間に位置し、形成された正極のパッキング密度をさらに高めることができる。また、電極の圧延過程を経ながら分離された一次巨大粒子は、前記第1正極活物質同士が接触して形成された空間に位置し、正極のパッキング密度をさらに高めることができる。
【0107】
換言すると、第1正極活物質と第2正極活物質とを混合して使用すると、正極活物質同士の間に形成された空いた空間を一次巨大粒子が埋め、タップ密度及び圧延性能を向上させることができる。結果的に、電極の圧延後、第2正極活物質が一次巨大粒子の形態で分離されて粒子割れを最小化することができる。これにより、寿命特性が向上した正極を提供することができる。
【0108】
前記正極において、正極集電体は、電池に化学的変化を誘発せず導電性を有するものであれば特に制限されなく、例えばステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレス鋼の表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが使用され得る。また、前記正極集電体は、通常3μm~500μmの厚さを有し得、前記正極集電体の表面上に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めてもよい。例えばフィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態で使用され得る。
【0109】
前記正極活物質層は、上述した正極活物質とともに、導電材及びバインダーを含み得る。
【0110】
このとき、前記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池に化学変化を引き起こさず電子伝導性を有するものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的な例としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体などの伝導性高分子などが挙げられ、これらのうちの1種単独でまたは2種以上の混合物が使用され得る。前記導電材は、通常、正極活物質層の総重量に対して1~30重量%で含まれ得る。
【0111】
また、前記バインダーは、正極活物質粒子同士の間の付着及び正極活物質と正極集電体との接着力を向上させる役割を果たす。具体的な例としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの多様な共重合体などが挙げられ、これらのうちの1種単独または2種以上の混合物が使用され得る。前記バインダーは、正極活物質層の総重量に対して1~30重量%で含まれ得る。
【0112】
前記正極は、上述した正極活物質を用いることを除き、通常の正極の製造方法によって製造され得る。具体的には、前記正極活物質、及び選択的にバインダー及び導電材を含む正極活物質層形成用組成物を正極集電体上に塗布した後、乾燥及び圧延することで製造され得る。このとき、前記正極活物質、バインダー、導電材の種類及び含量は、上述した通りである。
【0113】
前記溶媒は、当技術分野で一般に使用される溶媒であり得、ジメチルスルホキシド(DMSO)、イソプロピルアルコール、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトン、または水などが挙げられ、これらのうちの1種単独または2種以上の混合物が使用され得る。前記溶媒の使用量は、スラリーの塗布厚さ、製造収率を考慮して前記正極活物質、導電材及びバインダーを溶解または分散させ、以後の正極製造のための塗布時に優れた厚さ均一度を実現可能な粘度を持たせる程度であれば十分である。
【0114】
また、他の方法として、前記正極は、前記正極活物質層形成用組成物を別途の支持体上にキャスティングした後、支持体から剥離して得たフィルムを正極集電体上にラミネーションすることで製造されてもよい。
【0115】
本発明のさらに他の一態様によれば、前記正極を含む電気化学素子が提供される。前記電気化学素子は、具体的には電池またはキャパシタなどであり得、より具体的にはリチウム二次電池であり得る。
【0116】
前記リチウム二次電池は、具体的には、正極、前記正極と対向して位置する負極、前記正極と負極との間に介在されるセパレータ及び電解質を含み、前記正極は、上述した通りである。また、前記リチウム二次電池は、前記正極、負極、セパレータの電極組立体を収納する電池容器、及び前記電池容器を密封する密封部材を選択的にさらに含み得る。
【0117】
前記リチウム二次電池において、前記負極は、負極集電体、及び前記負極集電体上に位置する負極活物質層を含む。
【0118】
前記負極集電体は、電池に化学的変化を誘発せず高い導電性を有するものであれば特に制限されなく、例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレス鋼の表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使用され得る。また、前記負極集電体は、通常3μm~500μmの厚さを有し得、正極集電体と同様に、前記集電体の表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の接着力を高めてもよい。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態で使用され得る。
【0119】
前記負極活物質層は、負極活物質とともに、選択的にバインダー及び導電材を含む。前記負極活物質層は、一例として負極集電体上に負極活物質、及び選択的にバインダー及び導電材を含む負極形成用組成物を塗布して乾燥するか、又は、前記負極形成用組成物を別途の支持体上にキャスティングした後、支持体から剥離して得たフィルムを負極集電体上にラミネーションすることで製造され得る。
【0120】
前記負極活物質としては、リチウムの可逆的な挿入(intercalation)及び脱離(deintercalation)が可能な化合物が使用され得る。具体的な例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素などの炭素質材料;Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金またはAl合金などのリチウムと合金化可能な金属質化合物;SiOβ(0<β<2)、SnO、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物のようにリチウムをドーピング及び脱ドーピング可能な金属酸化物;若しくはSi-C複合体またはSn-C複合体のように前記金属質化合物と炭素質材料とを含む複合物などが挙げられ、これらのうちのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用され得る。また、前記負極活物質として金属リチウム薄膜が使われてもよい。また、炭素質材料としては、低結晶性炭素及び高結晶性炭素などがすべて使用され得る。低結晶性炭素としては、軟質炭素及び硬質炭素が代表的であり、高結晶性炭素としては、無定形、板状、鱗片状、球形または繊維形の天然黒鉛または人造黒鉛、キッシュ黒鉛、熱分解炭素、メソフェーズピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、メソカーボンマイクロビーズ(meso-carbon microbeads)、メソフェーズピッチ(mesophase pitches)、及び石油または石炭系コークスなどの高温焼成炭素が代表的である。
【0121】
また、前記バインダー及び導電材は、正極に対して上述したものと同様である。
【0122】
一方、前記リチウム二次電池において、セパレータは負極と正極とを分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであって、通常リチウム二次電池のセパレータとして使われるものであれば特に制限なく使用可能であり、特に電解質のイオン移動に対して抵抗が低く且つ電解液含浸能力に優れたものが望ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えばエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体、及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子から製造した多孔性高分子フィルム、または、これらの2層以上の積層構造体が使用され得る。また、通常の多孔性不織布、例えば高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布が使用されてもよい。また、耐熱性または機械的強度の確保のため、セラミックス成分または高分子物質が含まれたコーティングされたセパレータが使用され得、選択的に単層または多層構造で使用され得る。
【0123】
また、本発明で使われる電解質としては、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル型高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0124】
具体的には、前記電解質は、有機溶媒及びリチウム塩を含み得る。
【0125】
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動可能な媒質の役割を果たせるものであれば、特に制限なく使用され得る。具体的には、前記有機溶媒としては、メチルアセテート、エチルアセテート、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトンなどのエステル系溶媒;ジブチルエーテルまたはテトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;ベンゼン、フルオロベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)などのカーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;R-CN(RはC2~C20の直鎖状、分枝状または環状構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含み得る)などのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類;またはスルホラン類などが使用され得る。中でも、カーボネート系溶媒が望ましく、電池の充放電性能を向上可能な高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなど)と低粘度の線状カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネートなど)との混合物がより望ましい。この場合、環状カーボネートと線状カーボネートとは、約1:1~約1:9の体積比で混合して使用することが電解液性能に優れて望ましい。
【0126】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池で使われるリチウムイオンを提供可能な化合物であれば、特に制限なく使用され得る。具体的には、前記リチウム塩は、LiPF、LiClO、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAlO、LiAlCl、LiCFSO、LiCSO、LiN(CSO、LiN(CSO、LiN(CFSO、LiCl、LiI、またはLiB(Cなどが使用され得る。前記リチウム塩の濃度は、0.1~2.0M範囲内であり得る。リチウム塩の濃度が上記の範囲に含まれれば、電解質が適切な伝導度及び粘度を有するため、優れた電解質性能を示し、リチウムイオンが効果的に移動可能である。
【0127】
前記電解質には、上述した電解質構成成分の外にも、電池寿命特性の向上、電池容量減少の抑制、電池の放電容量向上などを目的として、例えば、ジフルオロエチレンカーボネートなどのようなハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノール、または三塩化アルミニウムなどの添加剤が1種以上さらに含まれ得る。このとき、前記添加剤は、電解質の総重量に対して0.1~5重量%で含まれ得る。
【0128】
本発明による正極活物質を含むリチウム二次電池は、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラなどの携帯機器、及びハイブリッド電気自動車(HEV)などの電気自動車分野などにおいて有用である。
【0129】
これにより、本発明のさらに他の一態様によれば、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュール、及びそれを含む電池パックが提供される。
【0130】
前記電池モジュールまたは電池パックは、電動工具;電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車、及びプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)を含む電気車両;または電力貯蔵用システムのうちのいずれか一つ以上の中大型デバイスの電源として用いられ得る。
【0131】
以下、本発明が属する技術分野で通常の知識を持つ者が本発明を容易に実施できるように実施例を挙げて詳しく説明する。しかし、本発明は多様な他の形態で具現可能であって、後述する実施例に限定されることはない。
【0132】
<実施例1>
共沈反応器(容量20L)に蒸留水4リットルを入れた後、温度50℃を維持しながら28重量%濃度のアンモニア水溶液100mLを投入した。その後、NiSO、CoSO、MnSOをニッケル:コバルト:マンガンのモル比が0.8:0.1:0.1になるように混合した3.2mol/L濃度の遷移金属溶液を300mL/hrで、28重量%のアンモニア水溶液を42mL/hrで反応器に連続的に投入した。400rpmのインペラ速度で撹拌し、pH維持のため、40重量%の水酸化ナトリウム溶液を用いてpHが9に維持されるように投入した。10時間共沈反応させて前駆体粒子を形成した。前記前駆体粒子を分離して洗浄した後、130℃のオーブンで乾燥して前駆体を製造した。
【0133】
共沈反応で合成されたNi0.8Co0.1Mn0.1(OH)前駆体をLiOHとLi/Me(Ni,Co,Mn)モル比が1.05になるように混合し、酸素雰囲気下、900℃で10時間熱処理してLiNi0.8Co0.1Mn0.1リチウム複合遷移金属酸化物を含む第1正極活物質を製造した。
【0134】
(第2正極活物質の製造)
共沈反応器(容量20L)に蒸留水4リットルを入れた後、温度50℃を維持しながら28重量%濃度のアンモニア水溶液100mLを投入した。その後、NiSO、CoSO、MnSOをニッケル:コバルト:マンガンのモル比が0.8:0.1:0.1になるように混合した3.2mol/L濃度の遷移金属溶液を300mL/hrで、28重量%のアンモニア水溶液を42mL/hrで反応器に連続的に投入した。400rpmのインペラ速度で撹拌し、pH維持のため、40重量%の水酸化ナトリウム溶液を用いてpHが9に維持されるように投入した。10時間共沈反応させて前駆体粒子を形成した。前記前駆体粒子を分離して洗浄した後、130℃のオーブンで乾燥して前駆体を製造した。
【0135】
共沈反応で合成されたNi0.8Co0.1Mn0.1(OH)前駆体をLiOHとLi/Me(Ni,Co,Mn)モル比が1.05になるように混合し、酸素雰囲気下、800℃で10時間熱処理してLiNi0.8Co0.1Mn0.1リチウム複合遷移金属酸化物を含む第2正極活物質を製造した。
【0136】
<実施例2>
第1正極活物質と第2正極活物質との重量比を80:20ではなく、60:40に制御したことを除き、実施例1と同様の方法で正極活物質を製造した。結果を表1に示した。
【0137】
<実施例3>
実施例3では、平均粒径(D50)8μmの単粒子を含む第1正極活物質と平均粒径(D50)3μmの二次粒子を含む第2正極活物質とを80:20(重量比)で混合して正極活物質として使用した。このとき、二次粒子は、直径が1μm以上の一次巨大粒子が10個以内で凝集されている二次粒子である。
【0138】
具体的には、次のように正極活物質を製造した。
【0139】
(第1正極活物質の製造)
共沈反応器(容量20L)に蒸留水4リットルを入れた後、温度50℃を維持しながら28重量%濃度のアンモニア水溶液100mLを投入した。その後、NiSO、CoSO、MnSOをニッケル:コバルト:マンガンのモル比が0.8:0.1:0.1になるように混合した3.2mol/L濃度の遷移金属溶液を300mL/hrで、28重量%のアンモニア水溶液を42mL/hrで反応器に連続的に投入した。400rpmのインペラ速度で撹拌し、pH維持のため、40重量%の水酸化ナトリウム溶液を用いてpHが9に維持されるように投入した。10時間共沈反応させて前駆体粒子を形成した。前記前駆体粒子を分離して洗浄した後、130℃のオーブンで乾燥して前駆体を製造した。
【0140】
共沈反応で合成されたNi0.8Co0.1Mn0.1(OH)前駆体をLiOHとLi/Me(Ni,Co,Mn)モル比が1.07になるように混合し、酸素雰囲気下、900℃で15時間熱処理してLiNi0.8Co0.1Mn0.1リチウム複合遷移金属酸化物を含む第1正極活物質を製造した。
【0141】
(第2正極活物質の製造)
共沈反応器(容量20L)に蒸留水4リットルを入れた後、温度50℃を維持しながら28重量%濃度のアンモニア水溶液100mLを投入した。その後、NiSO、CoSO、MnSOをニッケル:コバルト:マンガンのモル比が0.8:0.1:0.1になるように混合した3.2mol/L濃度の遷移金属溶液を300mL/hrで、28重量%のアンモニア水溶液を42mL/hrで反応器に連続的に投入した。400rpmのインペラ速度で撹拌し、pH維持のため、40重量%の水酸化ナトリウム溶液を用いてpHが9に維持されるように投入した。10時間共沈反応させて前駆体粒子を形成した。前記前駆体粒子を分離して洗浄した後、130℃のオーブンで乾燥して前駆体を製造した。
【0142】
共沈反応で合成されたNi0.8Co0.1Mn0.1(OH)前駆体をLiOHとLi/Me(Ni,Co,Mn)モル比が1.03になるように混合し、酸素雰囲気下、800℃で8時間熱処理してLiNi0.8Co0.1Mn0.1リチウム複合遷移金属酸化物を含む第2正極活物質を製造した。
【0143】
<実施例4>
第1正極活物質と第2正極活物質との重量比を80:20ではなく、20:80に制御したことを除き、実施例3と同様の方法で正極活物質を製造した。結果を表1に示した。
【0144】
<比較例1>
比較例1は、実施例1で製造された第1正極活物質のみである。
【0145】
<比較例2>
比較例2は、実施例1で製造された第2正極活物質のみである。
【0146】
<比較例3>
比較例3は、実施例3で製造された第1正極活物質のみである。
【0147】
<比較例4>
比較例4は、実施例3で製造された第2正極活物質のみである。
【0148】
【表1】
【0149】
<100回充放電時の残存容量の測定方法>
実施例及び比較例による正極活物質を用いて正極を製作し、次のような方法で容量維持率を測定した。負極活物質として人造黒鉛と天然黒鉛とが5:5で混合された混合物と、導電材としてスーパーPと、バインダーとしてSBR/CMCとを96:1:3の重量比で混合して負極スラリーを製作し、これを銅集電体の一面に塗布した後、130℃で乾燥し、空隙率30%に圧延して負極を製造した。
【0150】
上記のように製造された正極と負極との間に多孔性ポリエチレンのセパレータを介在して電極組立体を製造し、前記電極組立体をケースの内部に位置させた後、ケースの内部に電解液を注入してリチウム二次電池を製造した。
【0151】
このとき、電解液はエチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート/ジエチルカーボネート(EC/EMC/DECの混合体積比=3/4/3)からなる有機溶媒に1.0M濃度のヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)を溶解させて製造した。
【0152】
製造されたリチウム二次電池フルセルに対し、45℃でCC(定電流(Constant Current))-CV(定電圧(Constant Voltage))モードで0.5Cで4.2Vになるまで充電し、1Cの定電流で3.0Vまで放電して100回充放電実験を行ったときの容量維持率を測定して寿命特性を評価した。その結果を表1に示した。
【0153】
表1から分かるように、比較例1~4のように、第1正極活物質または第2正極活物質をそれぞれ使用した場合は、圧延時に形成される微粉の量が本発明の正極活物質に比べて相対的に多量存在する。一方、第1正極活物質と第2正極活物質とを所定の比率で使用する場合、容量維持率が高いことを確認できる。このことから、本発明の場合、単粒子から構成された第1正極活物質と一次巨大粒子を含む第2正極活物質とを混合して使用することで、圧延及び割れに有利であって、寿命特性が向上したことを確認できる。
【0154】
<粒子強度の測定方法>
粒子に対し、島津製のMCT-W500装置を用いて圧子を正極活物質粒子に接触させた後、力を加えて粒子が割れるときの力を測定することで粒子の強度を測定した。
【0155】
<平均粒径の測定方法>
平均粒径(D50)は、粒子の体積累積粒度分布の50%基準での粒子サイズで定義され得、単粒子の場合は一次粒子の平均粒径を意味し、二次粒子の場合は二次粒子の平均粒径を意味する。
【0156】
D50は、レーザー回折法(laser diffraction method)を用いて測定した。粉末を分散媒中に分散させた後、市販のレーザー回折粒度測定装置であるマイクロトラック社製のMT3000を用いて28kHzの超音波を出力60Wで照射して体積累積粒度分布グラフを得た後、体積累積量の50%に該当する粒子サイズを求めた。
【0157】
<一次粒子結晶サイズの測定方法>
LynxEye XE-T位置検出素子が取り付けられたブルカー社製のEndeavor(CuKα、λ=1.54Å)を用いてFDS 0.5°、2θ 15°~90°領域に対し、ステップサイズ0.02°で全スキャン時間が20分になるように試料を測定した。
【0158】
測定されたデータに対し、各位置(site)から電荷(charge)(遷移金属サイトでの金属は+3、LiサイトのNiは+2)とカチオンミキシングを考慮してリートベルト解析を行った。結晶サイズ分析の際、計器的拡張(instrumental broadening)はブルカー社製のTOPASプログラムに実装されているファンダメンタルパラメータアプローチ(Fundemental Parameter Approach:FPA)を用いて考慮され、フィッティング時、測定範囲の全体ピークが使われた。ピーク形態はTOPASで使用可能なピークタイプのうちのFP(First Principle)でローレンツコントリビューション(Lorenzian contribution)のみを用いてフィッティングし、このときストレインは考慮しなかった。
図1a
図1b
図1c
【国際調査報告】