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特表2023-553071圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体、その製造方法、並びにそれを用いた圧電及び誘電応用部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-20
(54)【発明の名称】圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体、その製造方法、並びにそれを用いた圧電及び誘電応用部品
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/491 20060101AFI20231213BHJP
   C30B 29/22 20060101ALI20231213BHJP
   C01G 33/00 20060101ALI20231213BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20231213BHJP
   H10N 30/853 20230101ALI20231213BHJP
   H10N 30/079 20230101ALI20231213BHJP
【FI】
C04B35/491
C30B29/22 Z
C01G33/00 A
C01G53/00 A
H10N30/853
H10N30/079
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534606
(86)(22)【出願日】2021-12-08
(85)【翻訳文提出日】2023-06-07
(86)【国際出願番号】 KR2021018538
(87)【国際公開番号】W WO2022124793
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】10-2020-0173799
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0171668
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523194514
【氏名又は名称】セラコンプ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CERACOMP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】70,Sunmoon-ro 221beon-gil,Tangjeong-myeon,Asan-si,Chungcheongnam-do 31460,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】イ、ホ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ペク、ウォン ソン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ドン ホ
(72)【発明者】
【氏名】チュ、ヒョン ジェ
【テーマコード(参考)】
4G048
4G077
【Fターム(参考)】
4G048AA05
4G048AB01
4G048AC01
4G048AD03
4G048AD07
4G048AD08
4G077AA03
4G077AB02
4G077AB06
4G077BC60
4G077CA03
4G077HA11
(57)【要約】
圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体、その製造方法、並びにその圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体を用いた圧電及び誘電応用部品に関する。圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体は、圧電単結晶と多結晶セラミックス粒子との間の粒径分布及び圧電単結晶の含有体積割合を最適化して複合化することにより、圧電単結晶の優れた圧電特性とともに、大量生産を実現して、製造コストを低くすることができるので、圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体を用いた超音波トランスデューサ、圧電アクチュエータ、圧電センサ、誘電キャパシタ、電界放射トランスデューサ、及び電界-振動放射トランスデューサを含む圧電応用部品及び誘電応用部品に適用可能であり、圧電特性及び価格競争力を高めることができる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペロブスカイト型構造([A][B]O)の圧電単結晶及び多結晶セラミックス粒子が複合化された複合体であって、
前記圧電単結晶の平均粒径分布(a)が100乃至1,000μmであり、
前記多結晶セラミックス粒子の平均粒径分布(b)が2乃至20μmであり、
前記粒径分布割合(a/b)が20乃至100である
ことを特徴とする圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体。
【請求項2】
前記圧電単結晶が、30乃至80体積%で含有された
請求項1に記載の圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体。
【請求項3】
前記複合体内において、圧電単結晶が、<001>または<011>の結晶方向に配向された
請求項1に記載の圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体。
【請求項4】
前記圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体が、常温条件で、
(1)誘電定数(Dielectric Constant、K )が3,000以上、
(2)圧電電荷定数(Piezoelectric Charge Constant、d33)が1,200pC/N以上、及び
(3)最初に示される相転移(Phase Transition)温度が80℃以上である
請求項1に記載の圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体。
【請求項5】
前記圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体が、キュリー温度(T)以下において、強誘電体相間の相転移が存在し、前記圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体の誘電定数(K )が、常温よりも、強誘電体相間の相転移温度において3倍以上高い
請求項1に記載の圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体。
【請求項6】
前記圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体が、常温における圧電電荷定数(Piezoelectric Charge Constant、d33、pC/N)と誘電損失(Dielectric Loss、tanδ(%))との比[d33/tanδ]が1,000以上である
請求項1に記載の圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体。
【請求項7】
前記圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体が、常温における圧電電荷定数(d33、pC/N)、圧電電圧定数(Piezoelectric Voltage ConsTant、g33、10-3Vm/N))と誘電損失(Tanδ%)との比[(d33×g33)/tanδ]が25,000以上である
請求項1に記載の圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体。
【請求項8】
前記圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体が、前記複合体の内部の空いた空間の一部または全部がポリマーで充填された
請求項1に記載の圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体。
【請求項9】
前記圧電単結晶の内部において、多結晶セラミックス粒子よりもZrの含量がさらに高い
請求項1に記載の圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体。
【請求項10】
前記圧電単結晶が、下記化学式1:
化学式1
[A1-(a+1.5b)][(MN)1-x-y(L)Ti]O3-z
(前記式中、
Aは、PbまたはBaであり、
Bは、Ba、Ca、Co、Fe、Ni、Sn、及びSrからなる群より選ばれた少なくとも1種であり、
Cは、Co、Fe、Bi、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuからなる群より選ばれた少なくとも1種であり、
Lは、ZrまたはHfより選ばれた単独または混合形態であり、
Mは、Ce、Co、Fe、In、Mg、Mn、Ni、Sc、Yb、及びZnからなる群より選ばれた少なくとも1種であり、
Nは、Nb、Sb、Ta、及びWからなる群より選ばれた少なくとも1種であり、
0<a≦0.10、0<b≦0.05、0.05≦x≦0.58、0.05≦y≦0.62、及び0≦z≦0.02である)
の組成式を有する
請求項1に記載の圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体。
【請求項11】
前記式中、0.01≦a≦0.10及び0.01≦b≦0.05である
請求項10に記載の圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体。
【請求項12】
前記式中、a/b≧2である
請求項10に記載の圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体。
【請求項13】
前記式中、0.10≦x≦0.58及び0.10≦y≦0.62である
請求項10に記載の圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体。
【請求項14】
前記圧電単結晶において、Lが混合形態であるとき、下記の化学式2または化学式3:
化学式2
[A1-(a+1.5b)][(MN)1-x-y(Zr1-w,HfTi]O
化学式3
[A1-(a+1.5b)][(MN)1-x-y(Zr1-w,HfTi]O3-z
(前記式中、A、B、C、M、N、a、b、x、y、及びzは、前記化学式1と同じであり、但し、0.01≦w≦0.20を示す)
の組成式を有する
請求項10に記載の圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体。
【請求項15】
前記圧電単結晶の組成に、体積比で0.1乃至20%の強化第二相(P)をさらに含む
請求項10に記載の圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体。
【請求項16】
前記強化第二相Pは、金属相、酸化物相、または気孔(pore)である
請求項15に記載の圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体。
【請求項17】
前記強化第二相Pは、Au、Ag、Ir、Pt、Pd、Rh、MgO、ZrO、及び気孔(pore)からなる群より選ばれた少なくとも1種である
請求項16に記載の圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体。
【請求項18】
前記強化第二相Pは、圧電単結晶内において、粒子の形状で均一に分布するか、または一定のパターンを有して規則的に分布する
請求項17に記載の圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体。
【請求項19】
ペロブスカイト型構造([A][B]O)の圧電単結晶を50μm以上に粉砕して単結晶粒子(a)を準備し、
平均粒径分布0.1乃至5μmの多結晶粉末粒子(b)を準備して、粒径分布a/bが20以上になるように混合して熱処理し、
前記熱処理によって圧電単結晶の粒径100μm以上に成長させ、熱処理後、粒径分布a/bが20乃至100になるように行われた
ことを特徴とする圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体の製造方法。
【請求項20】
前記混合時、圧電単結晶が80体積%以下で含有された
請求項19に記載の圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体の製造方法。
【請求項21】
前記熱処理後、圧電単結晶が30乃至80体積%で含有された
請求項19に記載の圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体の製造方法。
【請求項22】
前記熱処理後、成長された圧電単結晶の平均粒径分布(a)が100乃至1,000μmであり、成長された多結晶粒子の平均粒径分布(b)が2乃至20μmであり、前記粒径分布a/bが20乃至100である
請求項19に記載の圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体の製造方法。
【請求項23】
前記熱処理が、900乃至1,300℃で、1乃至100時間の間行われた
請求項19に記載の圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体の製造方法。
【請求項24】
前記熱処理が、1乃至20℃/分の昇温速度で行われた
請求項19に記載の圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体の製造方法。
【請求項25】
請求項1ないし18のいずれかに記載の圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体を含んだ
ことを特徴とする圧電応用部品及び誘電応用部品。
【請求項26】
圧電応用部品及び誘電応用部品が、超音波トランスデューサ(ultrasonic transducers)、圧電アクチュエータ(piezoelectric actuators)、圧電センサ(piezoelectric sensors)、誘電キャパシタ(dielectric capacitors)、電界放射トランスデューサ(Electric Field Generating Transducers)、及び電界-振動放射トランスデューサ(Electric Field and Vibration Generating Transducers)からなる群より選ばれたいずれか一つである
請求項25に記載の圧電応用部品及び誘電応用部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体、その製造方法、並びにそれを用いた圧電及び誘電応用部品に係り、さらに詳しくは、高い圧電電荷定数(Piezoelectric Charge Constant、d33)及び低い誘電損失(Dielectric Loss、Tanδ)を有する圧電単結晶と多結晶セラミックス(Polycrystalline Ceramics)粒子を複合化した複合体であって、前記粒子間の粒径分布及び圧電単結晶の含有体積割合を最適化して複合化することにより、圧電単結晶の高い圧電特性を維持し、機械的脆性(Brittleness)特性を改善し、大量生産が可能なように、生産工程を単純化して製作可能な、圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体、その製造方法、並びにそれを用いた圧電及び誘電応用部品に関する。
【背景技術】
【0002】
ペロブスカイト型結晶構造([A][B]O)の圧電単結晶は、既存の圧電多結晶体材料に比べて、遥かに高い誘電定数(K )、圧電電荷定数(d33)、及び電気機械結合係数(k33)を示し、圧電アクチュエータ、超音波トランスデューサ、圧電センサ、及び誘電キャパシタなどのような高性能部品に利用され、各種薄膜素子の基板材料としても、その応用が期待される。
【0003】
現在まで開発されたペロブスカイト型結晶構造の圧電単結晶には、PMN-PT(Pb(Mg1/3Nb2/3)O-PbTiO)、PZN-PT(Pb(Zn1/3Nb2/3)O-PbTiO)、PInN-PT(Pb(In1/2Nb1/2)O-PbTiO)、PYbN-PT(Pb(Yb1/2Nb1/2)O-PbTiO)、PSN-PT(Pb(Sc1/2Nb1/2)O-PbTiO)、BiScO-PbTiO(BS-PT)、PMN-PInN-PT、及びPMN-PYbN-PTなどがある。このような単結晶は、溶融(melting)時に共融(Congruent melting)挙動を行い、通常は既存の単結晶成長法であるフラックス法(flux method)、ブリッジマン法(Bridgman method)などで製造されていた。
【0004】
しかしながら、既存に開発されたPMN-PT及びPZN-PTの圧電単結晶は、常温で高い誘電及び圧電特性(K >4,000、d33>1,400pC/N、k33>0.85)を示すという長所があるが、低い相転移温度(T及びTRT)、低い抗電界(E)、脆性(brittleness)、及び高い製造コストなどの欠点により、圧電単結晶の活用がかなり制限される。
【0005】
一般に、ペロブスカイト型結晶構造の圧電単結晶は、菱面体晶相と正方晶相との間の相境界、すなわち、MPB(morphotropic phase boundary)組成の近傍領域で誘電及び圧電特性が最も高いと知られている。正方晶系の圧電単結晶は、圧電または電気光学的特性に優れた一部の特定な結晶方向においてその使用が可能であると知られている。
【0006】
しかしながら、ペロブスカイト型結晶構造の圧電単結晶は、一般に、菱面体晶相であるときに最も優れた誘電及び圧電特性を示すことから、菱面体晶相の圧電単結晶の応用が最も活発であるが、菱面体晶相の圧電単結晶は、菱面体晶相及び正方晶相の相転移温度(TRT)以下でだけ安定した挙動を示すので、菱面体晶相が安定した挙動を示し得る最大温度であるTRT以下でだけその使用が可能である。よって、TRT相転移温度が低い場合は、菱面体晶相の圧電単結晶の使用温度が低くなり、かつ圧電単結晶応用部品の製作温度及び使用温度もTRT以下に制限される。
【0007】
また、相転移温度(T及びTRT)及び抗電界(E)が低い場合は、機械加工、応力、発熱、及び駆動電圧下で圧電単結晶のポーリングが除去(depoling)されやすくなり、優れた誘電及び圧電特性を喪失してしまう。したがって、相転移温度(T及びTRT)及び抗電界(E)の低い圧電単結晶は、単結晶応用部品の製作条件、使用温度条件、及び駆動電圧条件などが制限される。PMN-PT単結晶の場合、一般に、T<150℃、TRT<80℃、及びE<2.5kV/cmであり、PZN-PT単結晶の場合、一般に、T<170℃、TRT<100℃、及びE<3.5kV/cmである。また、このような圧電単結晶で製作された誘電及び圧電応用部品も、製造条件、使用温度範囲や使用電圧条件などが制限され、圧電単結晶応用部品の開発及び実用化の障害要因となってきていた。
【0008】
圧電単結晶の短所を克服するために、PInN-PT、PSN-PT、及びBS-PTなどのような新たな組成の単結晶が開発され、また、PMN-PInN-PT及びPMN-BS-PTなどのように混ざり合った単結晶組成も研究されてきた。
【0009】
しかしながら、このような単結晶の場合、誘電定数、圧電電荷定数、相転移温度、抗電界、及び機械的特性などを同時に改善することができず、Sc及びInなどのような高価な元素を主成分とする組成からなる圧電単結晶は、高い単結晶の製造コストのため単結晶の実用化の障害要因となっていた。
【0010】
現在まで開発されたPMN-PTを含むペロブスカイト型結晶構造の圧電単結晶が低い相転移温度を示す理由は、大きく三つに分けられるが、第一は、PTとともに主な構成成分となるリラクサ(relaxor;PMNやPZNなど)の相転移温度が低いということである。
【0011】
非特許文献1には、ペロブスカイト型構造の圧電セラミックス多結晶体の正方晶相と立方晶相の相転移温度(T)が表1に提示されている。圧電単結晶のキュリー温度は、同じ組成の多結晶体のキュリー温度とほぼ同じであるため、多結晶体のキュリー温度から圧電単結晶のキュリー温度を推定することができる。
【0012】
第二は、正方晶相と菱面体晶相が境界をなすMPBが温度軸に対して垂直でなく緩やかに傾いていて、菱面体晶相と正方晶相の相転移温度(TRT)を高めるためには、キュリー温度(T)の低下が不可欠となることから、キュリー温度(T)、及び菱面体晶相と正方晶相の相転移温度(TRT)を同時に高めることは困難であった。
【0013】
第三は、相転移温度が比較的高いリラクサ(PYbN、PInNやBiScOなど)をPMN-PTなどに混ぜ込む場合にも、相転移温度が組成に比例して単純に上昇しないか、または誘電及び圧電特性が低下するという問題を発生させるためである。
【0014】
さらには、非特許文献1に提示されたRelaxor-PT系単結晶は、主に溶融工程を用いる既存の単結晶成長法であるフラックス法及びブリッジマン法などで製造されるが、単結晶の製造工程上の理由から、組成が均一な大きな単結晶の製造は困難であり、かつ製造コストが高く、大量生産が困難であるため、未だ商用化には成功していない。
【0015】
また、一般に、圧電セラミックス単結晶は、圧電セラミックス多結晶体(polycrystalline ceramics)に比べて機械的強度及び破壊靭性が低いため、小さな機械的衝撃にも壊れやすいという欠点がある。このような圧電単結晶の脆性は、圧電単結晶を用いた応用部品の製作と応用部品の使用の際に圧電単結晶の破壊を誘発しやすく、圧電単結晶の使用に大きな制限となっていた。したがって、圧電単結晶の商用化のためには、圧電単結晶の誘電及び圧電特性の向上と併せて、圧電単結晶の機械的特性の向上が必要である。
【0016】
これに対して、特許文献1は、固相単結晶成長方法(Solid-state Single crystal Growth[SSCG] Method)に関する発明であって、従来の液相単結晶成長法とは異なり、溶融工程を利用せずに、特別な装置なしに、一般の熱処理工程によって、多結晶体で発生する異常粒成長を制御し、各種組成の単結晶を固相単結晶成長方法で製造できるようにして、単結晶の製造コストを低くし、高い再現性と経済的な方法により、単結晶を大量生産することができる単結晶成長方法を提示している。
【0017】
また、特許文献2は、固相単結晶成長法を用いて、高い誘電定数(K )、高い圧電定数(d33及びk33)、高い相転移温度(キュリー温度(Curie temperature、T))、高い抗電界(Coercive electric field、E)、及び向上した機械的特性を併せ持つ圧電単結晶を開示しており、単結晶の大量生産に適合した固相単結晶成長法によって製造された圧電単結晶は、割高な原料を含まない単結晶組成を開発して圧電単結晶の商用化を可能にする。
【0018】
しかしながら、一般に、圧電多結晶セラミックスに比べて、圧電単結晶は、高い圧電電荷定数を示すが、抗電界が低く、デポーリング(depoling)されやすいので、電気的安定性が低く、実際の使用には制限的である。よって、圧電単結晶の抗電界を高める方法が提案されたが、抗電界の増加は、圧電特性の低下が伴われるという問題のため、依然として低い実効性が指摘されてきた。
【0019】
最近、圧電多結晶セラミックスの組成を変化させ(Smなどの添加など)、圧電電荷定数を画期的に増加させる研究結果及び特許などが発表された[非特許文献2]。
【0020】
この場合は、圧電多結晶セラミックスの圧電電荷定数(d33)を1,000[pC/N]以上に高めることに成功したが、強誘電体相(菱面体晶相と正方晶相など)間の相転移温度やキュリー温度(T)が大きく低下し、誘電損失(Tanδ)が大きく増加して、依然として一般の圧電応用分野に適用することは、大きく制限される。したがって、実際的な応用が可能であるためには、高い圧電電荷定数を有するとともに、高い相転移温度及び低い誘電損失(tanδ)を有する圧電セラミックスの開発が必須である。
【0021】
しかしながら、一般の圧電多結晶体セラミックスにおいて、マトリクス粒子は、ランダムな方向に配列されており、圧電単結晶のような高い圧電特性を示さない。
【0022】
このような問題を解決するために、多結晶体セラミックスにおいて、粒子の方向を特性方向に配列する結晶配向成長(Templated Grain Growth)工程が提示されたことがあり、既存の結晶配向成長(Templated Grain Growth)工程では、特定の形状(例;薄い板状形)の種子単結晶を多結晶体の内部において特定の方向に配列し、種子単結晶を特定の方向に成長させる熱処理工程によって結晶配向されたセラミックスを製造する。この場合は、成長した結晶配向された粒子の内部に種子単結晶が残っているか、または反応によって消滅する。
【0023】
前記結晶配向成長工程によって製造された結晶配向セラミックスの場合、一般の多結晶体セラミックスに比べて、相対的に高い圧電特性を示すことが確認された。しかしながら、結晶配向成長工程に適合した特定の形状の種子単結晶を製造する工程コストが極めて高く、結果的に、結晶配向セラミックスの高い製造コストと大量生産の難しさにより、商用化に困難がある。
【0024】
したがって、特定の形状の種子単結晶と種子単結晶配列工程を使用せず、製造工程が単純化して、製造コストは低くなり、大量生産が可能な工程を要するようになった。
【0025】
ここに、本発明者は、従来の問題点を改善しようと努力した結果、優れた圧電特性にもかかわらず、大量生産の難しさと高い製造工程価格のため、多様な応用が制限される圧電単結晶を多結晶セラミックス粒子と複合化するが、前記圧電単結晶と多結晶セラミックス粒子間の粒径分布及び圧電単結晶の含有体積割合を最適化して、圧電単結晶の高い圧電特性を維持し、脆性(Brittleness)抑制の機械的特性を改善しながら、大量生産が可能なように、生産工程を単純化して製作可能な圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体を提供し、前記圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体の物性を確認することにより、本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】大韓民国特許第0564092号(2006.03.27公告)
【特許文献2】大韓民国特許第0743614号(2007.07.30公告)
【非特許文献】
【0027】
【非特許文献1】IEEE Transactions on Ultrasonics,Ferroelectrics,and Frequency Control,vol.44,no.5,1997,pp.1140-1147.
【非特許文献2】Appl. Mater. Interfaces 2019,11,46,43359-43367 High-Performance Sm-Doped Pb(Mg1/3Nb2/3)O3-PbZrO3-PbTiO3-Based Piezoceramics.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
本発明の目的は、圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体を提供することである。
【0029】
本発明の他の目的は、圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体の製造方法を提供することである。
【0030】
本発明のまた他の目的は、圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体を用いた圧電応用部品及び誘電応用部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0031】
上記したような目的を達成するために、本発明は、ペロブスカイト型構造([A][B]O)の圧電単結晶と多結晶セラミックス粒子とが複合化された複合体であって、前記圧電単結晶の平均粒径分布(a)が100乃至1,000μmであり、前記多結晶粒子の平均粒径分布(b)が2乃至20μmであり、前記粒径分布a/bが20乃至100である圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体を提供する。
【0032】
前記圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体において、圧電単結晶は、30乃至80体積%で含有されたことが好ましく、前記複合体内において、圧電単結晶が特定の結晶方向に配向されたものである。好ましくは、前記圧電単結晶の特定の結晶方向は、<001>または<011>方向である。
【0033】
前記圧電単結晶と多結晶セラミックス粒子間の粒径分布及び圧電単結晶の含有体積割合を最適化して複合化された圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体は、常温条件で、(1)誘電定数(Dielectric Constant、K )が3,000以上、(2)圧電電荷定数(Piezoelectric Charge Constant、d33)が1,200pC/N以上、及び(3)最初に示される相転移(Phase Transition)温度が80℃以上であるものであって、圧電単結晶の高い圧電特性を維持し、脆性(Brittleness)抑制の機械的特性を改善する。
【0034】
本発明の圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体は、キュリー温度(T)以下において、強誘電体相(菱面体晶相と正方晶相など)間の相転移が存在し、前記圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体の誘電定数(K )は、強誘電体相間の相転移温度において、常温よりも3倍以上高いという特徴を有する。
【0035】
また、常温における圧電電荷定数(Piezoelectric Charge Constant、d33、pC/N)と誘電損失(Dielectric Loss、tanδ(%))との比[d33/tanδ]が1,000以上であり、常温における圧電電荷定数(d33、pC/N)、圧電電圧定数(Piezoelectric Voltage ConsTant、g33、10-3Vm/N))と誘電損失(Tanδ%)との比[(d33×g33)/tanδ]が25,000以上である特徴を有する。
【0036】
本発明の圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体において、前記圧電単結晶は、ペロブスカイト型構造([A][B]O)の圧電単結晶であり、好ましくは、下記化学式1の組成式を有する圧電単結晶である。
【0037】
化学式1
[A1-(a+1.5b)][(MN)1-x-y(L)Ti]O3-z
前記式中、Aは、PbまたはBaであり、Bは、Ba、Ca、Co、Fe、Ni、Sn、及びSrからなる群より選ばれた少なくとも1種であり、Cは、Co、Fe、Bi、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuからなる群より選ばれた少なくとも1種であり、Lは、ZrまたはHfより選ばれた単独または混合形態であり、Mは、Ce、Co、Fe、In、Mg、Mn、Ni、Sc、Yb、及びZnからなる群より選ばれた少なくとも1種であり、Nは、Nb、Sb、Ta、及びWからなる群より選ばれた少なくとも1種であり、0<a≦0.10、0<b≦0.05、0.05≦x≦0.58、0.05≦y≦0.62、及び0≦z≦0.02である。
【0038】
前記化学式1の組成式を有する圧電単結晶は、単結晶内の気孔率(Porosity)が0.5 vol%以上であることが好ましい。
【0039】
本発明の化学式1の組成式を有する圧電単結晶は、0.01≦a≦0.10及び0.01≦b≦0.05を満たす組成であり、さらに好ましくは、前記式中、a/b≧2を満たすことである。
【0040】
本発明の化学式1の組成式を有する圧電単結晶は、0.10≦x≦0.58及び0.10≦y≦0.62を満たすことがさらに好ましい。
【0041】
前記圧電単結晶において、Lが混合形態であるとき、下記化学式2または化学式3の組成式を有する。
【0042】
化学式2
[A1-(a+1.5b)][(MN)1-x-y(Zr1-w,HfTi]O
化学式3
[A1-(a+1.5b)][(MN)1-x-y(Zr1-w,HfTi]O3-z
前記式中、A、B、C、M、N、a、b、x、y、及びzは、前記化学式1または2と同じであり、但し、0.01≦w≦0.20を示す。
【0043】
このとき、圧電単結晶は、キュリー温度(Curie temperature、T)が180℃以上であるとともに、菱面体晶相と正方晶相の相転移温度(phase transition temperature between rhombohedral phase and tetragonal phase、TRT)が100℃以上であり、電気機械結合係数(longitudinal electromechanical coupling coefficient、k33)が0.85以上であり、抗電界(coercive electric field、E)が4乃至12kV/cmを満たす。
【0044】
特に、前記圧電単結晶は、誘電定数(K )4,000以上、好ましくは、4,000乃至15,000、及び圧電電荷定数(d33)1,400以上、好ましくは、1,400乃至6,000pC/Nを満たす。
【0045】
本発明は、前記圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体の製造方法であって、ペロブスカイト型構造([A][B]O)の圧電単結晶を50μm以上に粉砕して単結晶粒子(a)を準備し、
平均粒径分布0.1乃至5μmの多結晶粉末粒子(b)を準備して、粒径分布a/bが20以上になるように混合して熱処理し、
前記熱処理によって圧電単結晶の粒径100μm以上に成長させ、
熱処理後、粒径分布a/bが20乃至100になるように行われた圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体の製造方法を提供する。
【0046】
前記熱処理前、混合ステップにおいて、圧電単結晶は、80体積%以下で含有し、熱処理後、圧電単結晶は、単結晶が30乃至80体積%の範囲で含有されるようにする。
【0047】
また、前記熱処理後、成長された圧電単結晶の平均粒径分布(a)が100μm以上、さらに好ましくは、100乃至1,000μmであり、成長された多結晶粒子の平均粒径分布(b)が2乃至20μmであり、前記粒径分布a/bが20乃至100である要件を満たした圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体を製造する。
【0048】
このとき、熱処理は、900乃至1,300℃で、1乃至100時間の間行われ、1乃至20℃/分の昇温速度で行われたことが好ましい。
【0049】
さらには、本発明は、前記圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体を含んだ圧電応用部品及び誘電応用部品を提供する。
【0050】
具体的には、圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体を含んだ超音波トランスデューサ(ultrasonic transducers)、圧電アクチュエータ(piezoelectric actuators)、圧電センサ(piezoelectric sensors)、誘電キャパシタ(dielectric capacitors)、電界放射トランスデューサ(Electric Field Generating Transducers)、及び電界-振動放射トランスデューサ(Electric Field and Vibration Generating Transducers)からなる群より選ばれたいずれか一つに適用できる。
【発明の効果】
【0051】
本発明による圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体は、誘電定数(K ≧4,000)及び圧電電荷定数(d33≧1,400pC/N)を有する圧電単結晶の誘電特性が複合体の内部において抑制されずに保存され、本発明の圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体の誘電及び圧電電荷定数(d33≧1,200pC/N)も高く保存され、低い工程コストで大量生産が可能である。
【0052】
本発明の圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体は、優れた圧電特性と低い価格で大量生産が可能であるので、これを用いた圧電応用部品及び誘電応用部品の性能及び価格競争力を満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】本発明の実施例1の圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体に含まれた[Pb0.965Sr0.02La0.01][(Mg1/3Nb2/30.4Zr0.25Ti0.35]Oの圧電単結晶である。
図2】本発明の実施例1において、大きさ及び体積分率の変化によって製造された圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体である。
図3】本発明の実施例2の圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体に含まれた[Pb0.965Sr0.02Sm0.01][(Mg1/3Nb2/30.25(Ni1/3Nb2/30.10Zr0.30Ti0.35]Oの圧電単結晶である。
図4】本発明の実施例2において、大きさ及び体積分率の変化によって製造された圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体である。
図5】固相単結晶成長法で製造されたPMN-PT圧電単結晶の温度による誘電特性変化及び相転移現象の結果である。
図6】固相単結晶成長法で製造された[Pb0.965Sr0.02La0.01][(Mg1/3Nb2/30.4Zr0.25Ti0.35]Oの圧電単結晶の温度による誘電特性変化及び相転移現象の結果である。
図7】本発明の実施例1で製造された圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体の温度による誘電特性変化及び相転移現象を観察した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0055】
本発明は、ペロブスカイト型構造([A][B]O)の圧電単結晶及び多結晶セラミックス粒子が複合化された複合体であって、(1)前記圧電単結晶と多結晶セラミックス粒子の粒径の差が最適の割合で特定されると、圧電単結晶の優れた圧電特性が保存され、(2)前記圧電単結晶と多結晶セラミックス粒子の組成の差を最適化して、複合体の圧電及び機械的特性を改善することができる。
【0056】
さらに具体的に、本発明の圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体は、前記圧電単結晶の平均粒径分布(a)が100乃至1,000μmであり、前記多結晶粒子の平均粒径分布(b)が2乃至20μmであり、前記粒径分布a/bが20乃至100であることである。
【0057】
また、本発明の圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体に圧電単結晶30乃至80体積%で含有されるように、圧電単結晶と多結晶セラミックス粒子の体積比を最適化する。
【0058】
一般に、高い圧電電荷定数(d33≧1,400pC/N)を有する圧電単結晶を多結晶セラミックス粒子と複合化した複合体の場合、圧電電荷定数(d33≦1,000pC/N)が顕著に低くなる傾向を示すが、このようなレベルの複合体は、実際応用価値が低い。
【0059】
これに対して、本発明は、(1)圧電単結晶と多結晶セラミックス粒子間の粒径分布、及び(2)圧電単結晶の含有体積割合を最適化して、圧電単結晶の高い圧電特性(圧電電荷定数、d33≧1,200pC/N)を維持し、脆性(Brittleness)抑制の機械的特性を改善しながら、大量生産が可能なように、生産工程を単純化して製作可能な圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体を提供することができる。
【0060】
前記圧電単結晶は、形状に対して特別な制限はないが、マトリクス内において、充填率(Packing Density)を高めて、複合体の全体密度(Density)を高めるために、球形及び正六面体などのように等方性形状が好ましい。
【0061】
また、複合体内において、圧電単結晶は、ランダムな方向に配列されてもよいが、好ましくは、圧電単結晶が特定の結晶方向に配向される場合、圧電特性がさらに向上することができる。このとき、前記圧電単結晶の特定の結晶方向は、<001>または<011>方向である。
【0062】
本発明の圧電単結晶は、既存の結晶配向成長(Templated Grain Growth)工程とは異なり、マトリクスの内部において、特定の種子単結晶を用いて圧電単結晶を成長させないので、本発明の圧電単結晶の内部には、単結晶の成長に使用されたシード(Seed)単結晶や単結晶成長後に消滅したシード(Seed)単結晶を含まない。
【0063】
したがって、特定の種子単結晶を製造するための工程コストが省略されるので、製造工程が単純化され、製造コストは低くなって、大量生産が可能である。
【0064】
但し、外部で成長された圧電単結晶と多結晶体セラミックス粉末を混合し、複合体を焼結する工程中に圧電単結晶が一部成長する場合もあるが、既存の結晶配向成長(Templated Grain Growth)工程におけるように必須な工程ではない。
【0065】
以上の(1)圧電単結晶と多結晶セラミックス粒子間の粒径分布、及び(2)圧電単結晶の含有体積割合が最適化された圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体は、
[1]常温で誘電定数(Dielectric Constant、K )が3,000以上、
[2]常温で圧電電荷定数(Piezoelectric Charge Constant、d33)が1,200pC/N以上、
及び[3]常温で最初に示される相転移(Phase Transition)温度が80℃以上である特徴を有する。
【0066】
上記において、常温とは、常温温度範囲において、同一の温度条件で物性評価を行うものであり、本発明の明細書上において特別な言及がない限り、常温は、30℃の温度で行うことを意味する。
【0067】
さらに具体的には、本発明の圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体は、キュリー温度(T)以下において、強誘電体相(菱面体晶相と正方晶相など)間の相転移(Phase Transition)現象を示す。好ましくは、前記圧電単結晶の誘電定数(K )は、強誘電体相間の相転移温度において、キュリー温度(T)よりもさらに高いという特徴を有する。
【0068】
さらに好ましくは、前記圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体の誘電定数(K )は、常温よりも強誘電体相間の相転移温度において3倍以上高いという特徴を有する。
【0069】
また、一般に、圧電単結晶は、高い圧電電荷定数(d33)を有し、誘電損失(Tanδ)は、低い特徴を有する。これに対して、圧電多結晶セラミックスの場合、圧電電荷定数(d33)と誘電損失(Tanδ)が同時に増加する特徴を示し、高い圧電電荷定数と低い誘電損失(tanδ)を有する多結晶体圧電セラミックスの開発が難しい。
【0070】
ここに、本発明では、高い圧電電荷定数(d33)と低い誘電損失(tanδ)を有する圧電単結晶の特性を極大化して、複合体の圧電電荷定数(d33)は最大化し、誘電損失(tanδ)は最小化して、結果的に、圧電電荷定数(Piezoelectric Charge Constant、d33、pC/N)と誘電損失(Dielectric Loss、Tanδ(%))の比[=d33/Tanδ]が1,000以上に最大化された特徴がある。
【0071】
また、本発明の圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体は、誘電定数は、増加幅が少なく、常温で圧電電荷定数(d33、pC/N)、圧電電圧定数(Piezoelectric Voltage Constant、g33、10-3Vm/N))と誘電損失(tanδ%)の比[(d33×g33)/Tanδ]が25,000以上に最大化された特徴を同時に有する。
【0072】
また、本発明の圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体は、複合体の内部の空いた空間の一部または全部がポリマーで充填されてもよい。この場合、複合体の内部にポリマーとエポキシなどの柔軟性のマトリクス物質は、複合体の低温成形を可能にして、柔軟性を付与する。
【0073】
本発明の圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体に用いられる圧電単結晶は、高い誘電定数(K ≧4,000)、圧電電荷定数(d33≧1,400pC/N)、抗電界(E≧4~12kV/cm)の特徴を有する。
【0074】
さらに具体的に、本発明で用いられる圧電単結晶は、ペロブスカイト型構造([A][B]O)の圧電単結晶であり、好ましくは、下記化学式1の組成式を有する圧電単結晶である。
【0075】
化学式1
[A1-(a+1.5b)][(MN)1-x-y(L)Ti]O3-z
前記式中、Aは、PbまたはBaであり、
Bは、Ba、Ca、Co、Fe、Ni、Sn、及びSrからなる群より選ばれた少なくとも1種であり、
Cは、Co、Fe、Bi、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuからなる群より選ばれた少なくとも1種であり、
Lは、ZrまたはHfより選ばれた単独または混合形態であり、
Mは、Ce、Co、Fe、In、Mg、Mn、Ni、Sc、Yb、及びZnからなる群より選ばれた少なくとも1種であり、Nは、Nb、Sb、Ta、及びWからなる群より選ばれた少なくとも1種であり、
0<a≦0.10、0<b≦0.05、0.05≦x≦0.58、0.05≦y≦0.62、及び0≦z≦0.02である。
【0076】
前記化学式1の組成式を有する圧電単結晶において、単結晶内の気孔率(Porosity)が0.5体積%以上であることが好ましい。
【0077】
本発明の化学式1の組成式を有する圧電単結晶は、化学的組成が複合されながら、圧電特性がさらに増加する傾向に基づき、ペロブスカイト型結晶構造([A][B]O)において、[A]サイトイオンを複合組成で構成する。
【0078】
このとき、化学式1の組成式を有する圧電単結晶において、[A]サイトイオンの複合組成を具体的にみれば、[A1-(a+1.5b)]で構成されてもよく、前記Aの組成は、有鉛または無鉛元素を含み、本発明の実施例では、AがPbである有鉛系圧電単結晶に限定して説明するが、これに限定されるものではない。
【0079】
前記[A]サイトイオンにおいて、B組成は、金属二価元素、好ましくは、Ba、Ca、Co、Fe、Ni、Sn、及びSrからなる群より選ばれた少なくとも1種であり、C組成は、金属三価の元素であれば使用可能である。
【0080】
好ましくは、Co、Fe、Bi、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuからなる群より選ばれた少なくとも1種であり、さらに好ましくは、ランタン系元素を1種または2種の混合形態として使用する。
【0081】
本発明の実施例では、[A]サイトイオンにおいて、C組成は、Smを含んだ単独または少なくとも1種の混合組成として説明しているが、これに限定されるものではない。
【0082】
前記化学式1の組成式を有する圧電単結晶において、[A]サイトイオンの複合組成において、[A]サイトイオンに該当する[A1-(a+1.5b)]の組成は、目標とする物性を実現するための要件として、Aが有鉛系または無鉛系圧電単結晶であるとき、金属二価元素及び金属三価元素の組み合わせで構成されることを特徴とする。
【0083】
すなわち、0.01≦a≦0.10及び0.01≦b≦0.05を満たさなければならず、さらに好ましくは、a/b≧2を満たすものである。このとき、前記において、aが0.01未満であれば、ペロブスカイト相が不安定であるという問題があり、0.10を超過すれば、相転移温度が低くなり過ぎ、実際の使用が難しくなり、好ましくない。
【0084】
また、a/b≧2の要件を満たさなければ、誘電及び圧電特性が最大化されないか、または単結晶の成長が制限されるという問題のため、好ましくない。
【0085】
このとき、化学式1の組成式を有する圧電単結晶において、[A]サイトイオンの複合組成において、金属三価元素または金属二価元素の単独で構成された場合に比べて、複合組成であるとき、優れた誘電定数を実現することができる。
【0086】
一般的に知られている[A][MN]O-PbTiO-PbZrO状態図は、菱面体晶相と正方晶相との間の相境界(MPB)の周りにおいて優れた誘電及び圧電特性を示す組成領域を示す。[A][MN]O-PbTiO-PbZrO状態図において、菱面体晶相と正方晶相との間の相境界組成領域において誘電及び圧電特性が最大となり、MPB組成領域から離れるにつれて次第に誘電及び圧電特性が低下する。そして、MPB組成領域から菱面体晶相領域の中への5モル%以内の組成範囲では、誘電及び圧電特性の低下が少なく非常に高い誘電及び圧電特性値を維持し、また、MPB組成領域から菱面体晶相領域の中への10モル%以内の組成範囲では、誘電及び圧電特性が連続して低下するが、誘電及び圧電応用部品に適用するのに十分に高い誘電及び圧電特性値を示す。MPB組成領域から正方晶相領域の中へとその組成が変わっていく場合は、菱面体晶相領域の中へとその組成が変わっていく場合に比べて、誘電及び圧電特性がより速く低下する。しかしながら、正方定常領域中への5モル%以内の組成範囲や10モル%以内の組成範囲である場合にも、誘電及び圧電特性が連続して低下していたが、誘電及び圧電応用部品に適用するのに十分に高い誘電及び圧電特性値を示す。
【0087】
PbTiOとPbZrOとの間の相境界(MPB)は、PbTiO:PbZrO=x:y=0.48:0.52(モル比)として知られている。
【0088】
MPB組成領域から菱面体晶相領域の中へ及び正方晶相領域の中へとその組成がそれぞれ5モル%変わる場合は、xとyの最大値は、それぞれ0.53と0.57(言い換えれば、xが最大である場合のx:y=0.53:0.47であり、yが最大である場合のx:y=0.43:0.57である)となる。また、MPB組成領域から菱面体晶相領域の中へ及び正方晶相領域の中へとその組成がそれぞれ10モル%変わっていく場合には、xとyの最大値は、それぞれ0.58と0.62(言い換えれば、xが最大である場合のx:y=0.58:0.42であり、yが最大である場合のx:y=0.38:0.62である)となる。MPB組成領域から菱面体晶相領域の中へ及び正方晶相領域の中へのそれぞれ5モル%以内の組成範囲では、高い誘電及び圧電特性値を維持し、また、MPB組成領域から菱面体晶相の中へ及び正方晶相領域の中へのそれぞれ10モル%以内の組成範囲では、誘電及び圧電応用部品に適用するのに十分に高い誘電及び圧電特性値を示す。
【0089】
また、PbTiOとPbZrOの含有量、すなわち、xとyの値が0.05以下である場合は、菱面体晶相と正方晶相との間の相境界を作ることができないか、または相転移温度と抗電界が低すぎて本発明には適していない。
【0090】
前記化学式1において、xは、0.05≦x≦0.58の範囲に属することが好ましく、さらに好ましくは、0.10≦x≦0.58である。このとき、xが0.05未満である場合には、相転移温度(TとTRT)、圧電電荷定数(d33、k33)または抗電界(E)が低く、xが0.58を超過する場合には、誘電定数(K )、圧電電荷定数(d33、k33)または相転移温度(TRT)が低いからである。一方、yは、0.050≦y≦0.62の範囲に属することが好ましく、さらに好ましくは、0.10≦y≦0.62を満たすことである。その理由は、yが0.05未満である場合には、相転移温度(TとTRT)、圧電電荷定数(d33、k33)または抗電界(E)が低く、0.62を超過する場合には、誘電定数(K )または圧電電荷定数(d33、k33)が低いからである。
【0091】
本発明の化学式1の組成式を有する圧電単結晶は、ペロブスカイト型結晶構造([A][B]O)における[B]サイトイオンにおいて、金属四価元素を含むが、特に、L組成に対して、ZrまたはHfより選ばれた単独または混合形態に限定する。
【0092】
前記混合形態であれば、下記化学式2または化学式3の組成式を有する圧電単結晶を提供する。
【0093】
化学式2
[A1-(a+1.5b)][(MN)1-x-y(Zr1-w,HfTi]O
化学式3
[A1-(a+1.5b)][(MN)1-x-y(Zr1-w,HfTi]O3-z
前記式中、A、B、C、M、N、a、b、x、y、及びzは、前記化学式1と同じであり、但し、0.01≦w≦0.20を示す。
【0094】
このとき、前記wが0.01未満であれば、誘電及び圧電特性が最大化されないという問題があり、0.20を超過すれば、誘電及び圧電特性が急激に低下して好ましくない。
【0095】
以上の化学式1乃至化学式3の組成式を有する圧電単結晶は、ペロブスカイト型結晶構造([A][B]O)において、[A]サイトイオンの複合組成と[B]サイトイオンの組成を組み合わせることにより、キュリー温度(Curie temperature、T)が180℃以上であり、同時に菱面体晶相と正方晶相の相転移温度(phase transition temperature between Rhombohedral phase and tetragonal phase、TRT)が100℃以上である圧電単結晶である。このとき、キュリー温度が180℃未満であれば、抗電界(E)を5kV/cm以上または相転移温度(TRT)を100℃以上に上げ難いという問題がある。
【0096】
また、本発明の化学式1の組成式を有する圧電単結晶は、ペロブスカイト型結晶構造([A][B]O)において、[O]位の酸素空孔(Oxygen vacancy)に対して、0≦z≦0.02に制御したことを特徴とする。このとき、前記zが0.02を超過すれば、誘電及び圧電特性が急激に低くなるという問題があり、好ましくない。
【0097】
前記範囲に酸素空孔(Oxygen vacancy)が誘導されると、抗電界(Corecive Electric Field)と内部電界(Internal Electric Field)が効果的に増加され、電界駆動時と機械的荷重条件において、圧電単結晶の安定性が上昇する。したがって、圧電特性を最大化し、同時に安定性も高めることができる。
【0098】
本発明による化学式1の組成式を有する圧電単結晶は、電気機械結合係数(k33)が0.85以上であり、前記電気機械結合係数が0.85未満であれば、圧電多結晶体セラミックスと特性が類似し、エネルギー変換効率が低くなるので、好ましくない。
【0099】
本発明による圧電単結晶は、抗電界(E)が4乃至12kV/cmであることが好ましく、前記抗電界が4kV/cm未満であれば、圧電単結晶加工時または圧電単結晶応用部品の製作または使用時にポーリング(poling)が除去されやすいという問題がある。
【0100】
また、本発明による圧電単結晶は、高い誘電定数(K ≧4,000~15,000)、高い圧電電荷定数(d33≧1,400~6,000pC/N)を同時に満たす。
【0101】
また、本発明の化学式1の組成式を有する圧電単結晶は、単結晶の内部の組成勾配が0.2乃至0.5モル%からなり、均一性のある単結晶を提供することができる。
【0102】
前記圧電単結晶の組成に、体積比で0.1乃至20%の強化第二相(P)をさらに含んでもよく、前記強化第二相Pは、金属相、酸化物相、または気孔(pore)である。
【0103】
さらに具体的に、前記強化第二相Pは、Au、Ag、Ir、Pt、Pd、Rh、MgO、ZrO、及び気孔(pore)からなる群より選ばれた少なくとも1種であり、前記強化第二相Pは、圧電単結晶内において、粒子状で均一に分布するか、または一定のパターンを有して規則的に分布する。
【0104】
また、圧電単結晶において、前記xとyは、菱面体晶相と正方晶相との間の相境界(MPB)の組成から10モル%、さらに好ましくは、前記xとyは、菱面体晶相と正方晶相との間の相境界(MPB)の組成から5モル%以内の範囲に属するものである。
【0105】
ジルコン酸鉛(PbZrO)は、230℃の高い相転移温度を有するのみならず、MPBが温度軸に対してさらに垂直になるようにする効果があり、高いキュリー温度を維持しながら、高い菱面体晶相と正方晶相の相転移温度(TRT)が得られ、TとTRTが同時に高い組成を開発することができる。
【0106】
従来、圧電単結晶の組成にジルコン酸鉛を混ぜる場合にも、相転移温度がジルコン酸鉛の含量に比例して上昇するからである。したがって、ジルコニウム(Zr)またはジルコン酸鉛を含むペロブスカイト型結晶構造の圧電単結晶は、既存の圧電単結晶の問題点を克服することができる。
【0107】
また、ジルコニア(ZrO)またはジルコン酸鉛は、既存の圧電多結晶の材料において主成分として用いられており、安価な原料であるので、単結晶の原料価格を高めずに、本発明の目的を達成することができる。
【0108】
これに対して、ジルコン酸鉛を含むペロブスカイト型圧電単結晶は、溶融時、PMN-PTとPZN-PTなどとは異なり、共融(Congruent melting)挙動を示さず、非共融(Incongruent melting)挙動を示す。したがって、非共融挙動を示すと、固相の溶融時、液相と固相のジルコニア(solid phase ZrO)に分離され、液相内の固相ジルコニア粒子が単結晶成長を妨害して、溶融工程を用いる一般の単結晶成長法であるフラックス法とブリッジマン法などでは製造することができない。
【0109】
また、溶融工程を用いる一般の単結晶成長法では、強化第二相を含む単結晶の製造が難しく、未だ報告されたことがない。これは、溶融温度以上で強化第二相が液相と化学的に不安定で反応するので、独立的な第二相形態を維持することができず、消滅するからである。また、液相内において、第二相と液相の密度差によって、第二相と液相の分離が生じ、第二相を含む単結晶の製造が難しく、さらに単結晶の内部に強化第二相の体積分率(volume fraction)、大きさ(size)、形状(shape)、配列(arrangement)、及び分布(distribution)などを調節することができない。
【0110】
よって、本発明は、溶融工程を用いない固相単結晶成長法を用いて強化第二相を含む圧電単結晶を製造する。固相単結晶成長法では、単結晶の成長が溶融温度以下で行われるので、強化第二相と単結晶との化学的反応が抑制され、強化第二相は、単結晶の内部に独立的な形状で安定して存在することができるようになる。
【0111】
また、単結晶の成長が強化第二相を含む多結晶体で行われ、単結晶の成長中、強化第二相の体積分率、大きさ、形状、配列、及び分布などの変化がない。したがって、強化第二相を含む多結晶体を作る工程において、多結晶の内部の強化第二相の体積分率、大きさ、形状、配列、及び分布などを調節して単結晶を成長させると、結果的に、所望の形状の強化第二相を含む単結晶、すなわち、第二相強化圧電単結晶(second phase-reinforced single crystals)を製造することができる。
【0112】
したがって、従来、単結晶成長法であるフラックス法とブリッジマン法では、ペロブスカイト型結晶構造([A][B]O)において、複合組成で圧電単結晶を製造することができない。特に、溶融工程を含むフラックス法とブリッジマン法の場合、製造工程において、単結晶の内部の組成勾配が1乃至5モル%以上で製造されるのに対して、本発明の固相単結晶成長法では、単結晶の内部の組成勾配が0.2乃至0.5モル%の均一な組成で製造されてもよい。
【0113】
したがって、本発明は、固相単結晶成長法によって、ジルコン酸鉛を含むペロブスカイト型結晶構造([A][B]O)において、[A]サイトイオンの複合組成及び[B]サイトイオン間の組合せが複雑な組成であっても、均一に圧電単結晶を成長させることにより、従来、圧電単結晶に比べて、誘電定数(K ≧4,000以上、好ましくは、4,000乃至15,000)、圧電電荷定数(d33≧1,400以上、好ましくは、1,400乃至6,000pC/N)、及び高い抗電界(E≧4乃至12kV/cm)が顕著に高くなった新規な圧電単結晶を提供することができる。
【0114】
また、本発明は、ペロブスカイト型構造([A][B]O)の圧電単結晶を50μm以上に粉砕して単結晶粒子(a)を準備し、
平均粒径分布0.1乃至5μmの多結晶粉末粒子(b)を準備して、粒径分布a/bが20以上になるように混合して熱処理し、
前記熱処理によって圧電単結晶の粒径100μm以上に成長させ、熱処理後、粒径分布a/bが20乃至100になるように行われた圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体の製造方法を提供する。
【0115】
本発明の圧電単結晶の製造方法は、固相単結晶成長法によって行われ[特許文献1及び2参照]、フラックス法とブリッジマン法に比べて、低い工程価格で大量生産が可能である。
【0116】
また、焼結(Sintering)工程によって、多結晶体セラミックスにおいて、粒子成長を最大化して粒径を数十~数百μm以上に増加させ(特に、異常粒成長[Abnormal Grain Growth]を用いる場合)、焼結された多結晶体を破砕して数十~数バッグμmの圧電単結晶または圧電単結晶集合体を得ることができる。
【0117】
このような方法で圧電単結晶を製造し、選別して使用すると、圧電単結晶の製造コストを下げることができ、さらに低い工程価格で複合体の大量生産が可能である。
【0118】
本発明の圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体の製造方法において、複合体の優れた特性は、圧電単結晶に起因するが、多結晶セラミックス粒子も20乃至70体積%を占めるので、多結晶セラミックス粒子の選択も重要であろう。
【0119】
このとき、化学式1で表われる圧電単結晶と複合化される多結晶セラミックス粒子の組成は、化学式1で表われる組成と同じであるが、各組成式の差によって、圧電単結晶と区分され得る。また、圧電単結晶と多結晶セラミックス粒子の組成が異なる場合、両組成の組み合わせによって相乗効果も期待することができる。
【0120】
以上の多結晶セラミックスは、これに限定されず、公知の多結晶組成を含んでもよい。
【0121】
このとき、多結晶セラミックス粒子は、(1)高い圧電特性、(2)熱処理中、密度の上昇による優れた焼結特性、(3)破壊靭性の高い機械的特性が要求される。
【0122】
本発明の圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体の製造方法において、熱処理過程中、ペロブスカイト型構造([A][B]O)の圧電単結晶はもとより、多結晶セラミックス粒子も、粒径が同時に増加するようになるので、熱処理前、圧電単結晶の粒径は50μm以上が好ましい。このとき、前記圧電単結晶の粒径が50μm未満であれば、あまりにも小さく粉砕されて、複合化による効果が極めて小さくなる。
【0123】
また、多結晶セラミックス粒子の場合は、初期粒径が小さいほど、緻密化(Densification)に有利であるので、最小0.1μm以上、0.1乃至5μmと選定されて複合化されるものである。
【0124】
一般に、熱処理前と比較すると、熱処理後は、粒径分布割合(a/b)が減るようになるので、熱処理前の粒径分布割合(a/b)が20以上で混合されなければ、熱処理後の粒径分布割合(a/b)が20乃至100の要件を満たすことができない。
【0125】
熱処理中、粒子成長された圧電単結晶の粒径100μm以上になるように熱処理し、熱処理後の圧電単結晶粒子(a)と多結晶粉末粒子(b)との間の粒径分布割合(a/b)は、20乃至100になるようにする。
【0126】
また、熱処理中、単結晶粒子の成長は、多結晶セラミックス粒子を消耗しながら、すなわち、多結晶セラミックス粒子が単結晶粒子中に含まれながら、単結晶が成長されるので、熱処理中、単結晶粒子の成長によって、単結晶体積割合も上昇するようになる。
【0127】
したがって、熱処理前の圧電単結晶の初期投入割合は、80体積%以下に設定し、熱処理後は、30乃至80体積%になるように最適化することが好ましい。
【0128】
圧電単結晶と多結晶セラミックス粒子を混合して熱処理すると、熱処理中、単結晶と多結晶セラミックス粒子が全て成長して、粒径が増加し、成長する程度は、熱処理条件によって変わってもよく、これにより、熱処理後の物性を制御することができる。
【0129】
このとき、熱処理条件において、熱処理温度と時間が最も重要な変数であり、熱処理雰囲気(例えば、酸素分圧)、昇温速度、圧力などの追加的な変数が適用される。
【0130】
したがって、熱処理条件によって、粒子成長速度と密度などが変わるので、圧電及び機械的特性が異なってくる。
【0131】
但し、圧電単結晶とセラミックスの組成によって、最適の熱処理条件が変わってもよいが、好ましくは、熱処理温度及び時間は、900乃至1,300℃で、1乃至100時間の間行われる。
【0132】
また、熱処理は、1乃至20℃/分の昇温速度で行われることが好ましく、熱処理中、圧力は、1乃至50MPaで行われるが、これに限定されるものはない。
【0133】
さらには、本発明は、化学式1の組成式を有するペロブスカイト型圧電単結晶と多結晶セラミックス粒子間の特定の粒径分布割合で混合して熱処理することにより、圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体が得られる。
【0134】
前記得られた圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体は、圧電単結晶の高い圧電電荷定数と低い誘電損失を維持して、常温で圧電電荷定数(Piezoelectric Charge Constant[d33(pC/N)])と誘電損失(Dielectric Loss[tanδ(%)])の比[=d33/tanδ]が1,000以上を満たす。
【0135】
また、本発明で得られた圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体は、圧電単結晶の高い圧電電荷定数と低い誘電損失を維持しながら、誘電定数は、増加幅が大きくなく、常温で圧電電荷定数(Piezoelectric Charge Constant、d33、pC/N)])、圧電電圧定数(Piezoelectric Voltage ConsTant、g33、×10-3Vm/N)])と誘電損失(Dielectric Loss[tanδ(%)])の比[=(d33×g33)/tanδ]が25,000以上を満たす。
【0136】
また、本発明で得られた圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体は、
(1)30℃で誘電定数(Dielectric Constant)が3,000以上、
(2)30℃で圧電電荷定数(Piezoelectric Charge Constant[d33])が1,200 pC/N以上、及び
(3)30℃以上で最初に示される相転移(Phase Transition)温度が80℃以上を満たす。
【0137】
さらには、本発明は、ペロブスカイト型結晶構造の圧電単結晶を含むことにより、高い誘電定数(K ≧3,000)、圧電電荷定数(d33≧1,200pC/N)、抗電界(E≧3~4kV/cm)、及び高い内部電界(E≧0.5~1.0kV/cm)を同時に有する圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体を含んだ誘電及び圧電応用部品を提供する。
【0138】
具体的には、前記圧電応用部品は、超音波トランスデューサ(医療用超音波診断器、ソナー用トランスデューサ、非破壊検査用トランスデューサ、超音波洗浄機、超音波モータなど)、圧電アクチュエータ(d33型アクチュエータ、d31型アクチュエータ、d15型アクチュエータ、微細位置制御用の圧電アクチュエータ、圧電ポンプ、圧電バルブ、圧電スピーカ、バイモルフ型アクチュエータ、及び積層型アクチュエータなど)、圧電センサ(圧電加速度計など)、及び圧電ポリマー複合体(圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体とポリマーなどの複合体)などがある。
【0139】
また、前記誘電応用部品は、高効率キャパシタ(capacitor)、赤外線センサ、誘電体フィルタ、電界放射トランスデューサ、及び電界-振動放射トランスデューサなどがある。
【0140】
<実施例>
以下、実施例によって、本発明についてさらに詳しく説明する。
【0141】
本実施例は、本発明をさらに具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0142】
<実施例1>圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体の製作及び特性評価1
固相単結晶成長法によって、[Pb0.965Sr0.02La0.01][(Mg1/3Nb2/30.4Zr0.25Ti0.35]O組成の圧電単結晶を製造した。また、粉末合成工程において、過量のMgOを追加して製造された単結晶の内部には、MgO第二相と気孔強化相2vol%が含まれるようにした。このとき、前記製造された(001)圧電単結晶の圧電電荷定数、誘電定数、誘電損失特性を評価した結果、圧電電荷定数(d33)は2,650[pC/N]であり、誘電定数は8,773であり、誘電損失(tanδ)は0.5%であった。
【0143】
前記製造された[Pb0.965Sr0.02La0.01][(Mg1/3Nb2/30.4Zr0.25Ti0.35]O組成の圧電単結晶を小さな大きさに切断した後、ボールミリング(Ball Milling)工程によって連続的に粉砕した。最終粉砕された圧電単結晶粒子は、ふるい分け(Sieving)工程によって大きさ別に選別した。ボールミリング工程条件、時間、及びふるい分け条件を調節して、数十μmから数mmサイズの圧電単結晶粒子を製造した。
【0144】
前記製造された圧電単結晶粒子と粒径~1μmを有するか焼されたセラミックス粉末を混合して成形及び焼結して、最終的に圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体を製造した。前記圧電単結晶粒子とか焼されたセラミックス粉末との混合ステップにおいて、圧電単結晶の体積を調節して、図2のように、多様な体積分率を有する単結晶-多結晶セラミックス複合体を製造した。
【0145】
<実施例2>圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体の製作及び特性評価1
固相単結晶成長法によって、[Pb0.965Sr0.02Sm0.01][(Mg1/3Nb2/30.25(Ni1/3Nb2/30.10Zr0.30Ti0.35]O組成の圧電単結晶を製造した。また、単結晶成長中、多結晶体のマトリクスの気孔が単結晶の内部に捕獲され、製造された単結晶は、1.5体積%程度の気孔強化相を含んだ。前記製造された圧電単結晶の圧電電荷定数(d33)は4,457[pC/N]であり、誘電定数は14,678であり、誘電損失(Tanδ)は1.0%であった。
【0146】
前記製造された[Pb0.965Sr0.02Sm0.01][(Mg1/3Nb2/30.25(Ni1/3Nb2/30.10Zr0.30Ti0.35]O組成の圧電単結晶を用いることを除いては、前記実施例1と同じ工程によって、圧電単結晶粒子と圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体を製造した。
【0147】
前記製造された圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体は、Zr含量が圧電単結晶よりも多結晶セラミックスにおいて低いように調節した。このとき、Zr含量が低い場合、多結晶体セラミックスの焼結温度を下げることができ、さらに低い温度で圧電単結晶を熱処理して、圧電単結晶と多結晶セラミックス粒子間の化学的反応を最小化し、熱処理過程で発生する熱衝撃などを最小化することができるという長所がある。
【0148】
<実験例1>誘電及び圧電特性の評価1
前記実施例1で製作された圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体のうち、平均粒径~300μmの圧電単結晶-平均粒径~10μmの多結晶粒子が混合されて、成形及び焼結された複合体において、体積分率[単結晶体積/(単結晶体積+多結晶体積)]による圧電電荷定数[d33(pC/N)]、圧電電圧定数[g33(mVm/V)]、誘電損失[tanδ(%)]の変化を測定して、下記表1に記載した。
【0149】
【表1】
【0150】
前記表1の単結晶-多結晶セラミックス複合体のうち、圧電単結晶の体積分率が70%であり、平均粒径~10μmの多結晶粒子と混合されて製造された複合体について、単結晶の大きさ割合による圧電電荷定数[d33(pC/N)]、圧電電圧定数[g33(mVm/V)]、誘電損失[tanδ(%)]の変化を測定して、下記表2に記載した。
【0151】
【表2】
【0152】
前記結果から、[Pb0.965Sr0.02La0.01][(Mg1/3Nb2/30.4Zr0.25Ti0.35]O組成の圧電単結晶を用いて製作された圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体は、既存の圧電多結晶セラミックスよりも高い圧電電荷定数(d33)、高い圧電電圧定数(g33)とともに、低い誘電損失(Tanδ)を示した。特に、圧電単結晶粒径、体積分率、及び単結晶/多結晶の大きさ割合が特定である場合、複合体の圧電特性が最大化された(d33>1,000、d33/tanδ>1,000、(d33×g33)/tanδ>30,000)。
【0153】
また、圧電単結晶の体積割合が30%未満として小さいか、または80%を超過した場合、多結晶に対して向上した圧電及び機械的特性を得ることができなかった。
【0154】
特に、単結晶の体積分率が80%を超過した場合、複合体の焼結密度が低く、機械加工時、壊れやすく、測定試片を作ることができないか、ポーリング時、通電されるか、または圧電特性が急激に低くなる傾向を示した。
【0155】
<実験例2>誘電及び圧電特性の評価2
前記実施例2で製造された圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体の両面に銀ペースト(Ag paste)電極を塗布してポーリングした後、誘電及び圧電特性の評価を行った。
【0156】
前記製作された圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体のうち、平均粒径~600μmの圧電単結晶-平均粒径~8μmの多結晶粒子が混合して成形及び焼結された複合体において、体積分率[単結晶体積/(単結晶体積+多結晶体積)]による圧電電荷定数[d33(pC/N)]、圧電電圧定数[g33(mVm/V)]、及び誘電損失[tanδ(%)]の変化を測定して、下記表3に記載した。
【0157】
【表3】
【0158】
前記表3の単結晶-多結晶セラミックス複合体のうち、圧電単結晶の体積分率が60%であり、平均粒径~8μmの多結晶粒子と混合して製造された複合体について、単結晶の大きさ割合による圧電電荷定数[d33(pC/N)]、圧電電圧定数[g33(mVm/V)]、及び誘電損失[Tanδ(%)]の変化を測定して、下記表4に記載した。
【0159】
【表4】
【0160】
前記結果から、[Pb0.965Sr0.02Sm0.01][(Mg1/3Nb2/30.25(Ni1/3Nb2/30.10Zr0.30Ti0.35]O組成の圧電単結晶を用いて製作された圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体は、既存の圧電多結晶セラミックスよりも高い圧電電荷定数(d33)、高い圧電電圧定数(g33)とともに、誘電損失(Tanδ)を示した。
【0161】
特に、圧電単結晶粒子の粒径、体積分率、及び単結晶/多結晶の大きさ割合が特定である場合、複合体の圧電特性が最大化された(d33>1,000、d33/tanδ>1,000、(d33×g33)/tanδ>30,000)。圧電単結晶の体積割合が小さ過ぎるか(30%未満)、または極めて大きい場合(80%超過)は、多結晶に対して向上した圧電及び機械的特性が得られなかった。特に、単結晶の体積分率が80%を超過した場合、複合体の焼結密度が低く、機械加工時、壊れやすく、測定試片を作ることができないか、ポーリングの際に通電されるか、圧電特性が急激に低くなる傾向が確認された。
【0162】
<実験例3>温度による誘電特性の変化及び相転移現象の観察
固相単結晶成長法によって、PMN-PTと[Pb0.965Sr0.02La0.01][(Mg1/3Nb2/30.4Zr0.25Ti0.35]O組成の圧電単結晶を、それぞれ製造した。また、前記実施例1で製造された圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体をサンプルに選定し、前記圧電単結晶と圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体について、温度による誘電特性の変化及び相転移現象を観察した。
【0163】
図5は、固相単結晶成長法で製造されたPMN-PT圧電単結晶の温度による誘電特性の変化及び相転移現象を観察した結果であり、PMN-PT単結晶の誘電定数は、キュリー温度(T)において、強誘電体相間の相転移温度(TRT)においてよりも高い。
【0164】
図6は、固相単結晶成長法で製造された[Pb0.965Sr0.02La0.01][(Mg1/3Nb2/30.4Zr0.25Ti0.35]Oの圧電単結晶に対する温度による誘電特性の変化及び相転移現象の結果であって、特にキュリー温度(T)においてよりも、強誘電体相間の相転移温度(TRT)において誘電定数がさらに高いことが確認された。
【0165】
図7は、前記[Pb0.965Sr0.02La0.01][(Mg1/3Nb2/30.4Zr0.25Ti0.35]Oの圧電単結晶を用いた実施例1で製造された圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体の場合、常温誘電定数に対して、相転移温度において誘電定数が大きく高く[誘電定数(@TRT)>3×誘電定数(@30℃)]、一般のPMN-PT単結晶を使用するよりも、圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体の常温特性が大きく向上したことが確認された。
【0166】
前記結果から、圧電単結晶と同様に、圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体は、キュリー温度(T)以下において、強誘電体相(菱面体晶相と正方晶相など)間の相転移が観察され、誘電定数(K )は、常温よりも強誘電体相間の相転移温度において3倍以上高いことが確認された。
【0167】
したがって、さらに好ましくは、強誘電体相間の相転移温度において誘電定数が高い圧電単結晶を使用することが、圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体の圧電特性の向上に効果的である。
【0168】
<実験例4>機械的物性の評価
固相単結晶成長法で製造された[Pb0.965Sr0.02La0.01][(Mg1/3Nb2/30.4Zr0.25Ti0.35]O組成の圧電単結晶を用いて製造された前記実施例1の圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体をサンプルとして、破壊強度(Fracture Strength)及び破壊靭性(Fracture Toughness)などの機械的特性を比較評価した。このとき、破壊強度値をASTM法によって、4点曲げ強度測定法で測定した。
【0169】
前記表1に提示された実施例1の圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体のうち、体積分率40%と60%の両複合体を試片に選定して、(001)圧電単結晶試片と破壊強度を比較した。その結果を下記表5に記載した。
【0170】
【表5】
【0171】
また、前記表2に表1に提示された実施例1の圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体のうち、単結晶の大きさが200μmと500μmである両複合体の試片を選定して、(001)圧電単結晶試片と破壊強度を比較した。その結果を下記表6に記載した。
【0172】
【表6】
【0173】
前記結果から、[Pb0.965Sr0.02La0.01][(Mg1/3Nb2/30.4Zr0.25Ti0.35]Oの圧電単結晶に比べて、圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体は、2倍以上の高い破壊強度と破壊靭性値を示し、この値は、一般の圧電多結晶体セラミックスと類似することが確認された。
【0174】
したがって、この実験例で製造された圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体の破壊強度と破壊靭性は、圧電単結晶に比べて、約2倍増加することが確認された。
【0175】
また、圧電単結晶-多結晶セラミックス複合体において、単結晶を取り囲んでいる多結晶体のマトリクスは、それ自体で単結晶よりも機械的特性が高いのみならず、単結晶を外部の機械的衝撃から保護する役割をして、結果的に複合体の機械的性能が大きく向上する。
【0176】
以上の圧電特性に優れた単結晶と機械的特性に優れた多結晶体セラミックスを複合化することにより、圧電単結晶の高い圧電特性を維持し、機械的脆性(Brittleness)特性を改善した、両特性の全てに優れた複合体を製作することができた。
【0177】
以上、本発明は、記載された具体例についてのみ詳しく説明されたが、本発明の技術思想の範囲内で、様々な変形及び修正が可能であることは、当業者にとって明白なものであり、これらの変形及び修正が、添付の特許請求の範囲に属する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】