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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-20
(54)【発明の名称】回収システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/221 20060101AFI20231213BHJP
【FI】
A61B17/221
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534618
(86)(22)【出願日】2021-12-08
(85)【翻訳文提出日】2023-07-24
(86)【国際出願番号】 IL2021051461
(87)【国際公開番号】W WO2022123565
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】63/122,992
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520095072
【氏名又は名称】セレトリーブ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ムスタファ マイサ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァスイレヴィトスキ マキシム
(72)【発明者】
【氏名】ベルソン アミール
(72)【発明者】
【氏名】アルフィア アヴィラム
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160EE22
4C160MM36
(57)【要約】
外管内で移動可能な内管と、内管に取り付けられ、外管内に隔離されたときの折り畳まれた状態と、外管の外へ前進したときの拡張された状態との間で移行するように構成された漏斗状スリーブとを備えるカテーテルシステム。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体血管から物質を回収するためのカテーテルシステムであって、
(a)外管内で移動可能な内管と、
(b)前記内管に取り付けられ、前記外管内に隔離されたときの折り畳まれた状態と、前記外管の外に前進したときの拡張された状態との間で移行するように構成された漏斗状スリーブと、
(c)使用者に所定の長さの前記スリーブの部分を前記外管から外に前進させることを可能にするための機構またはインジケータと
を備える、カテーテルシステム。
【請求項2】
前記機構が、前記部分の前進を引き起こすためのトリガである、請求項1に記載のカテーテルシステム。
【請求項3】
前記インジケータが、前記部分の前進を示すためのマーキングを含む、請求項1に記載のカテーテルシステム。
【請求項4】
前記スリーブが、編組スリーブである、請求項1に記載のカテーテルシステム。
【請求項5】
前記編組スリーブが、拡張すると長さが減少する、請求項4に記載のカテーテルシステム。
【請求項6】
前記編組スリーブが、カバーを備える、請求項4に記載のカテーテルシステム。
【請求項7】
前記カバーが、ポリウレタン、TPU、PTFEまたはシリコーンから製造される、請求項6に記載のカテーテルシステム。
【請求項8】
前記編組スリーブ内に吸引を加えるための導管をさらに備える、請求項6に記載のカテーテルシステム。
【請求項9】
前記導管と連通する真空源をさらに備える、請求項8に記載のカテーテルシステム。
【請求項10】
前記所定の長さの前記スリーブの前記部分が、前記外管から外に前進したときに円錐を形成する、請求項1に記載のカテーテルシステム。
【請求項11】
前記スリーブの遠位開口部が、閉鎖機構を備える、請求項1に記載のカテーテルシステム。
【請求項12】
前記閉鎖機構が、プルワイヤを備える、請求項11に記載のカテーテルシステム。
【請求項13】
前記プルワイヤが、前記遠位開口部を締め付けて閉鎖する、請求項12に記載のカテーテルシステム。
【請求項14】
前記プルワイヤが、前記漏斗状スリーブの壁から前記物質の分離を可能にするように配置される、請求項12に記載のカテーテルシステム。
【請求項15】
前記スリーブの遠位端が、拡張時に前記スリーブの開口部が傾いた楕円形を形成するように傾斜している、請求項1に記載のカテーテルシステム。
【請求項16】
前記漏斗状スリーブが、放射線不透過性マーカーバンドを備える、請求項1に記載のカテーテルシステム。
【請求項17】
前記編組スリーブが、遠位端にワイヤループを備える、請求項4に記載のカテーテルシステム。
【請求項18】
前記カバーが、疎水性コーティングを備える、請求項6に記載のカテーテルシステム。
【請求項19】
染料を注入するための導管をさらに備える、請求項1に記載のカテーテルシステム。
【請求項20】
前記漏斗状スリーブ内の前記物質の存在を識別するための少なくとも1つのセンサをさらに備える、請求項1に記載のカテーテルシステム。
【請求項21】
前記少なくとも1つのセンサの第1のセンサが、前記漏斗状スリーブの近位領域に配置される、請求項20に記載のカテーテルシステム。
【請求項22】
前記少なくとも1つのセンサの第2のセンサが、前記漏斗状スリーブの遠位領域に配置される、請求項21に記載のカテーテルシステム。
【請求項23】
前記漏斗状スリーブ内に配置され、前記漏斗状スリーブに取り付けられる複数の可撓性アームをさらに備える、請求項1に記載のカテーテルシステム。
【請求項24】
前記漏斗状スリーブが、完全に展開されたときに砂時計状の形状を有する、請求項1に記載のカテーテルシステム。
【請求項25】
生体血管から物質を回収する方法であって、
(a)生体血管内に所定の長さの円錐を形成するように、生体血管内に配置されたカテーテルの管から外へ漏斗状スリーブを部分的に前進させるステップと、
(b)前記生体血管内の物質を前記円錐内に吸引するステップと、
(c)前記漏斗状スリーブを前記管の外へさらに前進させ、前記吸引を加えて、前記漏斗状スリーブ内に前記物質を捕捉するステップと
を含む、方法。
【請求項26】
(b)が、前記物質の方向へ前記カテーテルを前進させている間に行われる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
(d)前記漏斗状スリーブの遠位端を閉じるステップをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記カテーテルが、(a)の後で(b)の前に前記生体血管を通して前進させられる、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
生体血管から物質を回収するためのカテーテルシステムであって、
(a)外管内で移動可能な内管と、
(b)前記内管に取り付けられ、前記外管内に隔離されたときの折り畳まれた状態と、前記外管の外に前進したときの拡張された状態との間で移行するように構成された漏斗状スリーブと、
(c)前記漏斗状スリーブ内に配置され、前記漏斗状スリーブに取り付けられる複数の可撓性アームであって、前記複数の可撓性アームが、物質が前記漏斗状スリーブから放出されるのを防ぎながら、前記物質が前記漏斗状スリーブに入るのを可能にするように構成される、複数の可撓性アームと
を備える、カテーテルシステム。
【請求項30】
前記漏斗状の直径が、完全に展開されたとき、近位部分または遠位部分よりも中間部分の方が小さい、請求項1に記載のカテーテルシステム。
【請求項31】
前記漏斗状スリーブ内に捕捉された血栓物質を粉砕するための装置をさらに備える、請求項1に記載のカテーテルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体血管から物質または物体を回収するためのシステム、およびそれを使用する方法に関する。本発明の実施形態は、脳塞栓/血栓を捕捉して回収するのに非常に効果的な漏斗状トラップを有するカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
外科的処置では容易にアクセスできない血管病変を治療するために使用される介入処置は、近年増加し続けている。
【0003】
このような介入処置は、脳内の血管などの小さく離れた血管に位置する病変を治療するために使用される場合に特に有利である。
【0004】
脳塞栓症は、物質、典型的には、血塊が移動し、脳組織に供給する血管を遮断する場合に引き起こされる血管病変である。
【0005】
脳塞栓を回収するための1つの従来技術は、塞栓を捕捉して回収するために使用される漏斗状トラップを有する回収カテーテルの使用を伴う。
【0006】
このような回収装置は小さな血塊の回収には効果的であるが、大きな血塊の回収は血塊の断片化を引き起こし、潜在的に有害な血塊粒子が血流に放出される可能性がある。
【0007】
したがって、血塊回収システム、特にそのようなシステムの血塊の会合および退縮能力には、依然として改善の余地がある。
【発明の概要】
【0008】
本発明の一態様によれば、生体血管から物質を回収するためのカテーテルシステムであって、外管内で移動可能な内管と、内管に取り付けられ、外管内に隔離されたときの折り畳まれた状態と、外管から外へ前進するときの拡張された状態との間で移行するように構成された漏斗状スリーブと、使用者に所定の長さのスリーブの部分を外管から外へ前進させることを可能にするための機構またはインジケータとを備える、カテーテルシステムが提供される。
【0009】
本発明の実施形態によれば、機構は、部分の前進を引き起こすためのトリガである。
【0010】
本発明の実施形態によれば、インジケータは、部分の前進を示すためのマーキングを含む。
【0011】
本発明の実施形態によれば、スリーブは、編組スリーブである。
【0012】
本発明の実施形態によれば、編組スリーブは、拡張すると長さが減少する。
【0013】
本発明の実施形態によれば、編組スリーブは、カバーを備える。
【0014】
本発明の実施形態によれば、カバーは、ポリウレタン、TPU、PTFEまたはシリコーンから製造される。
【0015】
本発明の実施形態によれば、カテーテルシステムは、編組スリーブ内に吸引を加えるための導管をさらに備える。
【0016】
本発明の実施形態によれば、カテーテルシステムは、導管と連通する真空源をさらに備える。
【0017】
本発明の実施形態によれば、所定の長さのスリーブの部分は、外管から外へ前進したときに円錐を形成する。
【0018】
本発明の実施形態によれば、スリーブの遠位開口部は、閉鎖機構を備える。
【0019】
本発明の実施形態によれば、閉鎖機構は、プルワイヤを備える。
【0020】
本発明の実施形態によれば、プルワイヤは、遠位開口部を締め付けて閉鎖する。
【0021】
本発明の実施形態によれば、プルワイヤは、漏斗状スリーブの壁から物質の分離を可能にするように配置される。
【0022】
本発明の実施形態によれば、スリーブの遠位端は、拡張時にスリーブの開口部が傾いた楕円形を形成するように傾斜している。
【0023】
本発明の実施形態によれば、漏斗状スリーブは、放射線不透過性マーカーバンドを備える。
【0024】
本発明の実施形態によれば、編組スリーブは、遠位端にワイヤループを備える。
【0025】
本発明の実施形態によれば、カバーは、疎水性コーティングを備える。
【0026】
本発明の実施形態によれば、カテーテルシステムは、染料を注入するための導管をさらに備える。
【0027】
本発明の実施形態によれば、カテーテルシステムは、漏斗状スリーブ内の物質の存在を識別するための少なくとも1つのセンサをさらに備える。
【0028】
本発明の実施形態によれば、少なくとも1つのセンサの第1のセンサは、漏斗状スリーブの近位領域に配置される。
【0029】
本発明の実施形態によれば、少なくとも1つのセンサの第2のセンサは、漏斗状スリーブの遠位領域に配置される。
【0030】
本発明の実施形態によれば、カテーテルシステムは、漏斗状スリーブ内に配置され、それに取り付けられる複数の可撓性アームをさらに備える。
【0031】
本発明の実施形態によれば、漏斗状スリーブは、完全に展開されたときに砂時計状の形状を有する。
【0032】
本発明の別の態様によれば、生体血管から物質を回収する方法であって、生体血管内に所定の長さの円錐を形成するように、生体血管内に配置されたカテーテルの管から外へ漏斗状スリーブを部分的に前進させるステップと、生体血管内の物質を円錐内に吸引するステップと、漏斗状スリーブを管の外へさらに前進させ、吸引を加えることによって、漏斗状スリーブ内に物質を捕捉するステップとを含む、方法が提供される。
【0033】
本発明の実施形態によれば、吸引するステップは、物質の方向へカテーテルを前進させている間に行われる。
【0034】
本発明の実施形態によれば、方法は、漏斗状スリーブの遠位端を閉じるステップをさらに含む。
【0035】
本発明の実施形態によれば、カテーテルは、部分的な展開の後で生体血管を通して前進させられる。
【0036】
本発明の別の態様によれば、生体血管から物質を回収するためのカテーテルシステムであって、外管内で移動可能な内管と、内管に取り付けられ、外管内に隔離されたときの折り畳まれた状態と、外管の外に前進したときの拡張された状態との間で移行するように構成された漏斗状スリーブと、漏斗状スリーブ内に配置され、それに取り付けられる複数の可撓性アームであって、複数の可撓性アームが、物質が漏斗状スリーブから放出されるのを防ぎながら、物質が漏斗状スリーブに入るのを可能にするように構成される、複数の可撓性アームとを備える、カテーテルシステムが提供される。
【0037】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様または同等の方法および材料を本発明の実施または試験に使用することができるが、適切な方法および材料を以下に記載する。矛盾する場合は、定義を含む特許明細書が優先される。さらに、材料、方法、および例は、単なる例示であり、限定を意図するものではない。
【0038】
本発明は、添付の図面を参照して、本明細書では単なる例示として説明される。ここで特に図面を詳細に参照すると、示された詳細は、例示であり、本発明の好ましい実施形態の例示的な説明の目的のためだけであり、本発明の原理および概念的な態様の最も有用で容易に理解される説明と考えられるものを提供するために提示されたものであることが強調される。これに関して、本発明の基本的な理解に必要以上に詳細に本発明の構造の詳細を示す試みは行われておらず、図面を伴う説明により、当業者には本発明のいくつかの形態がどのように実際に具現化され得るかが明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1A~Fは、シャベル状漏斗(図1A、D~F)、標準的な漏斗(図1B)、トリガ解除ハンドル(図1A~B)およびマーキングを有するハンドル(図1C)を備える本カテーテルシステムの実施形態を示す。
図2図2A~Cは、シャベル漏斗カテーテル構成の2段階展開を示す。図2D~Eは、ワイヤループから形成されたリーフレットを示すシャベル構成をより詳細に示す。
図3図3A~Cは、標準的な漏斗カテーテル構成の2段階展開を示す。
図4図4A~Cは、シャベル漏斗カテーテル構成を使用した血塊捕捉(clot capture)を示す。図4D~Fは、可撓性アームを有するシャベル漏斗カテーテル構成を使用した血塊捕捉を示す。
図5図5A~Cは、標準的な漏斗カテーテル構成を使用した血塊捕捉を示す。
図6図6A~Bは、シャベルまたは標準的な漏斗の部分的な展開に使用されるトリガハンドル(図6A)又はマーキング(図6B)を示す。
図7図7A~Cは、標準的な漏斗を備えた本カテーテルシステムを使用したブタモデルにおける血塊捕捉の透視撮影画像である。
図8図8A~Bは、シャベル漏斗を備えた本カテーテルシステムを使用したブタモデルにおける血塊捕捉の透視撮影画像である。図8Cは、図8A~Bに示した手順によって回収された血塊物質の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、血管などの生体血管から塞栓などの物質/物体を回収するために使用され得るカテーテルシステムおよび方法である。
【0041】
本発明の原理および操作は、図面および添付の説明を参照することにより、より良く理解され得る。
【0042】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明はその適用において、以下の説明に記載されるか、または実施例によって例示される詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であるか、または様々な方法で実施もしくは実行することができる。また、本明細書で利用される表現および用語は、説明を目的としたものであり、限定するものとみなすべきではないことを理解されたい。
【0043】
血塊物質を回収するためにトラップを利用する機械的血栓除去装置は、当該技術分野で周知である。このようなトラップは、血管系から引き抜かれるときにトラップからの血塊または断片の放出を最小限に抑えながら、回収された血塊をスリーブ内に維持するための閉鎖可能な遠位開口部を備えることができる。
【0044】
以前に出願された特許出願(国際公開第2019064306号)において、本発明者らは、血塊全体の回収を実質的に強化する特有のトラップ閉鎖機構を開示した。本発明を実施に移す際に、本発明者らは、特に大きな血塊の場合における血塊トラップ (clot-trapping)能力を改善することに着手した。
【0045】
したがって、本発明の一態様によれば、生体血管から物質または物体を回収するためのカテーテルシステムが提供される。
【0046】
本明細書で使用される場合、「物質」という用語は、血栓/塞栓を特徴付けるような生体物質を指し、一方、「物体」という用語は、ステント、ステントグラフトなどのインプラントを指す。
【0047】
本システムを使用して任意の生体血管にアクセスし、治療することができ、例には、循環系の血管(例えば、動脈、静脈、リンパ管)、尿路の血管(例えば、尿道、尿管)およびリンパ系の血管が含まれる。
【0048】
本発明のシステムは、折り畳まれた状態と拡張された状態との間で移行するように構成された漏斗状スリーブを備える。拡張された状態にあるとき、漏斗状スリーブは、遠位端から近位端に向かって直径が先細になる漏斗のような形状をしている。漏斗は、円形でカテーテルの長手方向軸に垂直であってもよい(本明細書では「標準構成」とも呼ばれる)、または楕円形でカテーテルの長手方向軸に対して傾斜している(tilted)/角度をなしていてもよい(本明細書では「シャベル構成」とも呼ばれる)、遠位開口部を介してアクセス可能なルーメンを備える。
【0049】
折り畳まれると、漏斗状スリーブは小さなルーメン(ガイドワイヤおよび/またはマイクロカテーテルを通すのに十分な大きさ)を有する狭い円筒形になる。漏斗状スリーブは自己拡張可能であり、その場合、その少なくとも一部は、血管の直径によって制限される最終直径まで(および編組構造およびカテーテルシースからの展開の程度によって制限される直径まで)自己拡張する。
【0050】
本発明の一実施形態によれば、漏斗状スリーブは、交互の螺旋方向および逆螺旋方向に編組された金属(例えば、ステンレス鋼またはニチノール)ワイヤまたはポリマー(例えば、PTFE)ワイヤから製造することができる。編組(braid)は、漏斗状スリーブの内部容積に真空を適用できるように、TPUまたはポリウレタンなどのポリマーで(完全にまたは部分的に)覆うことができる。
【0051】
ワイヤの直径は0.02~0.25mmであってもよく、一方、ワイヤ間の編組角度は60~140度の範囲であってもよい。漏斗状スリーブは、交互の螺旋パターンでワイヤを巻き付けることによって適切なサイズのマンドレルを使用して製造することができる。例えば、単一のワイヤをループにすることができ、マンドレルの長さに沿ってワイヤごとに十字パターン(1×1パターン)または2本のワイヤごとに十字パターン(2×1パターン)を形成するようにループの尾部をマンドレルの周りに螺旋パターンで巻き付けることができる。編組構造を形成するためにいくつかのワイヤ(12~64)を使用することができる。直径が小さい同じパターンの編組構造(図1G)は、漏斗の半径方向の力を増加させ、それによって吸引下での崩壊を防ぐため、一部の構成では利点がある。このような編組の例は、国際公開第2019064306号に提供されている。漏斗状スリーブは、その遠位端(拡張された漏斗状スリーブの開口部を取り囲む)にワイヤループを備えることができる。ワイヤループは、軸方向の支持を提供し、漏斗状スリーブが血塊に接触するときに編組圧縮を減少させるリーフレットを形成する(これにより、編組構造が血塊に押し付けられたときに発生する可能性のあるアコーディオン効果を最小限に抑える)。ワイヤループはまた、展開の間の血管の外傷を最小限に抑える柔らかい先端も形成する。吸引の間、これらのワイヤリーフレットは、編組構造の崩壊を引き起こすことなく、血塊の周囲で崩壊し、血塊を包み込む。
【0052】
カテーテルおよび漏斗状スリーブのパラメータおよび寸法は、血管の用途および種類によって異なる。頭蓋内動脈における虚血性脳卒中用途に使用される場合、標的動脈のサイズは2.5~4.5mmの間で変化し得る。漏斗状スリーブの直径は、血流を止めるために血管の直径よりも少なくともわずかに大きくなければならず、したがって2~7mmの範囲になる。漏斗状スリーブの長さは、ルーメン内に長い血塊を受け入れるのを支持するのに十分な長さであることができるが、カテーテルの外管から押し出すか、またはシースを引き込むことによって漏斗状スリーブを展開できるほど十分に短くすることができる。
【0053】
本システムはまた、漏斗状スリーブを血管内に送達するためのカテーテルを備える。本発明の一実施形態によれば、漏斗状スリーブは、カテーテル内管(シャフト)の遠位端に取り付けられ、折り畳まれた構成のときに取り外し可能なシース(外管)によって覆われ得る。シースの取り外し(近位方向への引っ張り)により、漏斗状スリーブを展開することができる。
【0054】
本発明の別の実施形態では、漏斗状スリーブは、カテーテルの外管のルーメン内に折り畳まれた状態で捕捉され、漏斗状スリーブの近位端に取り付けられる内管を介して展開のために押し出される。
【0055】
本カテーテルシステムはまた、吸引源を漏斗状スリーブのルーメンに流体接続する専用の導管を介して漏斗状スリーブのルーメン(内部容積)に吸引力を加えることができる吸引源(例えば、シリンジ、ポンプ)を備えることもできる。カテーテルの内管は流体管としても機能することができる。
【0056】
本発明者らによって行われた実験により、漏斗状スリーブのルーメンに吸引力が加えられると、完全に伸長した漏斗状スリーブの遠位開口部が大きな血栓によって時々閉塞される可能性があることが明らかになった。このような閉塞により、吸引時に漏斗状スリーブが崩壊する可能性がある。
【0057】
本発明者らは、2~8mmの長さの円錐がカテーテルから伸びるように、またはシースによるカバーから外れるように漏斗状スリーブを部分的に展開すると、閉塞または崩壊することなく血栓物質を収集するシステムの能力が実質的に向上することを発見した。したがって、本発明者らは、漏斗状スリーブの円錐部分が最初に展開され(血栓において、または展開されて血栓まで前進させられ)、血栓がこの部分に係合して吸引され、次いで、血栓を完全に吸い込み、捕捉するように吸引を維持しながら漏斗状スリーブの残りが徐々に展開されるアプローチを考案した。
【0058】
このアプローチにより、本システムは血栓を吸引し、血栓を吸い込むにつれて漏斗の容積を増加させる。
【0059】
このような機能性を可能にするために、カテーテルシステムは、漏斗状スリーブの部分的な展開を可能にする機構またはインジケータを備える。この機構は、漏斗状スリーブの一部を正確に展開するためのトリガ、または使用者に特定の長さの漏斗状スリーブの一部を展開できるようにするマーキングを有するインジケータを備えることができる。
【0060】
ここで図面を参照すると、図1A~Dは、本明細書以下でシステム10と呼ぶ本発明のカテーテルシステムを示す。
【0061】
システム10は、内管14を取り囲む外管12を備えるカテーテルシャフトを備える。内管14は、生体血管(例えば、動脈)からの物質または物体を(ルーメン内に)捕捉し、回収するために使用される漏斗状スリーブ16(図1A~1Cに展開して示される)に取り付けられる。漏斗状スリーブ16は、遠位開口部34およびルーメン33を備え、シャベル状、漏斗状スリーブ16(図1A、1C、1D)または標準的な漏斗状スリーブ16(図1B)の2つのタイプのうちの1つであり得る。
【0062】
内管14は、意図された治療部位に適した長さ、直径および可撓性から選択される細長い中空管であってもよい。解剖学的部位が異なると、異なる剛性および軸方向の可撓性の内管14が必要となる。シャフトの長さに沿って可変の剛性および軸方向の可撓性を有する内管14は、当該技術分野で周知であり、PTFEのような低摩擦材料の内部コーティング、内層上の金属編組またはコイル、および様々なデュロメーター評価のPEBAXまたはポリアミド複合材などの外部ポリマー層(ジャケット)を含む、編組またはコイル状であり得る。このような管は、曲がりくねった脈管構造または頭蓋内脈管構造への送達に一般的に使用される。
【0063】
外管12は、内管14の上をスライドすることができる細長い中空管であり得る。内管14の長さは、内管14の長さよりも短くすることができ、漏斗状スリーブ16の部分的および完全な展開のために外管12を引き戻すことを可能にし得る。
【0064】
外管12は、意図された治療部位に適した長さ、直径、および可撓性から選択される。要求される高い遠位の可撓性および追跡性能は、柔らかい素材のジャケットおよび金属コイルの設計を選択することによって達成される。外管12は、曲がりくねった解剖学的構造への送達のために異なる剛性および軸方向の可撓性ならびに近位の剛性および押し込み可能性であり得る。その長さに沿って可変の剛性および軸方向の可撓性を有する管は、当該技術分野で周知である。このような管は、編組またはコイル状にすることができ、低摩擦層(例えば、PTFE)を有する内部ポリマー層、内部層を覆う異なるセクションにある金属編組およびコイル、ならびに様々なデュロメーター評価を含むPEBAX、ポリウレタンまたはポリアミド複合材などの外部ポリマー層(ジャケット)を含む。
【0065】
内管14の外径は、0.5~4mm(例えば、1.5mm)であってもよく、一方、内管14(吸引導管として機能することができる)の内径は、0.3~3.5mmであってもよい。ワイヤルーメン(閉鎖用)は内側ルーメンから分離することができ、0.03~0.3mmの直径であってもよい(内管14の壁に配置することができる)。内管14の長さは、50~150cmの間の任意の範囲とすることができ、標的血管および治療される部位に応じて選択される。
【0066】
外管12の外径は、1~6mmであってもよく、一方、外管12(内管14を収容する)の内径は、0.8~5.5mmであってもよい。外管12の長さは、45~145cmの間の任意の範囲とすることができ、標的血管および治療される部位に応じて選択される。
【0067】
漏斗状スリーブ16は、5~80mmの長さであってもよく、直径は、完全に展開された場合には1~20mm(遠位)から0.3~18(近位)まで先細であり、外管12内に隔離された場合には10~160mmであってもよい。漏斗状スリーブ16(標準またはシャベル)は、代替として展開時に砂時計(hour-glass)形状を有してもよい(図1D)。砂時計形状は、漏斗状スリーブ16の2つの領域(それぞれ近位、遠位、R1およびR2としてマークされる)における直径の差が、ベルヌーイの原理により漏斗セクション(遠位近位)間に圧力差を生じさせるという利点があるため、漏斗の近位領域(R1)に向かって物質を前進させるのに役立つ。別の利点は、近位領域(R1)が血栓を捕捉して保持し、そのより小さい直径のために血栓の放出を防ぐことができることである(図1F)(物質上で崩壊する)。
【0068】
漏斗状スリーブ16の形状の砂時計形状(図1G)は、狭くなる領域(例えば、R2からR1への移行)でPPI(インチあたりのピッチ)が増加し、これにより漏斗の剛性が増加するため、吸引下での崩壊を防ぐという利点がある。
【0069】
漏斗状スリーブ16の展開は、外管12に取り付けられるハンドル18を使用して外管12を(近位に)引き戻すことによって(図1A)、または内管14をハンドル18に対して(遠位に)押し出すことによって行うことができる。マーキング20は、展開される漏斗状スリーブ16の長さを決定するために使用され得る。このようなマーキングは、所定の長さの円錐状形状(図2B、3B)を形成するために漏斗状スリーブ16を部分的に展開するために使用され得る。
【0070】
図6Bは、漏斗状スリーブ16を部分的に展開し、次いで完全に展開するために外管12とともに移動することができるハンドル18をより詳細に示す。ハンドル18は、内管14に対する外管12の移動を解放/ロックするためのボタン19を備える。内管14上のマーキング20は、漏斗状スリーブ16の部分的(1つまたは複数の段階)および完全な展開を示す。
【0071】
システム10はまた、例えば血栓の捕捉後に漏斗状スリーブ16を閉じるためのアクチュエータ22を備えることもできる。このようなアクチュエータは、アクチュエータ22から内管14を通って漏斗状スリーブ16の遠位開口部34まで延びるワイヤを引っ張るための機構を備えることができる。このようなワイヤは、引っ張られると、閉じた漏斗状スリーブ16を締め付けることができる。
【0072】
プルワイヤは、近位端から内部カテーテル(例えば、側壁導管)を通って、漏斗状スリーブのルーメンを通って(螺旋パターンで)延び、遠位端31を形成するワイヤループの一部または全てに取り付けられる。
【0073】
閉鎖は、締め付け(例えば、巾着縫合)によってもよく、または遠位端(シャベルの先端)の伸長部分をシャベルの基部に向かって引っ張ることによる偏向(シャベル構成において)によってもよい。あるいは、シャベルの先端を下向きに10~30度傾けて、閉鎖ワイヤを引っ張って持ち上げ、それによってシャベルの高さを変えることによって血栓を血管壁から切り離すこともできる。
【0074】
図1Bは、トリガ26と、漏斗状スリーブ16の部分的な展開(図2B、3Bに示される状態)を引き起こすための機構とを備えるハンドル23を示す。この機構は、トリガ26の作動時に外管12を測定された距離だけ引き戻す。あるいは、トリガ26は、インデントまたはマーキングに移動可能なスライダであってもよい。ハンドル23のスライダ構成は、図6Aにさらに詳細に示されている。トリガ26は、ハウジング27に沿って近位-遠位に動かすことができるスライダボタンである。このような動きにより、外管12が近位に部分的に引っ張られ、次いで漏斗状スリーブ16が完全にカバーから外れ、展開する。ハウジング27のインデントは、第1の部分的な展開(円錐状形状)、第2および任意選択の第3の部分的な展開、ならびに完全な展開に対応するプリセット位置でスライダボタンを停止させる。
【0075】
システム10はまた、ポート35を介して内管14に取り付けられた吸引源を備えることもできる。このような吸引源は、シリンジ28(図1C)または-2~-12psiの吸引圧力を加えるポンプであってもよい。
【0076】
図2A~2Cおよび図3A~Cは、シャベル状(図2A~2C)または標準(図3A~3C)の漏斗状スリーブ16の外管12からの展開を示す。本明細書で上述したように、漏斗状スリーブ16は段階的に展開され、最初の段階では、それは部分的に展開されて円錐状の形状を形成する。このような展開は、本明細書の上記のように、外管12を引き込むか、または内管14を押し出すことによって行うことができる。
【0077】
シャベル構成において、部分的な展開(例えば、先端部分)は、曲がりくねった血管を通る誘導を容易にするために使用され得る。
【0078】
漏斗状スリーブ16のシャベル構成は、図2D~Eにさらに詳細に示されている。
【0079】
これらの図に示される実施形態では、漏斗状スリーブ16は編組され(および任意選択で覆われ)、遠位端ワイヤループ17を備え、この遠位端ワイヤループ17は、漏斗状スリーブ16の外周の約25%~75%で1~3mmだけ長くなった遠位端31まで遠位に延びるリーフレットを形成する。結果として得られる遠位端31は、30~80度であり得る角度(B)で傾いている(beveled)。
【0080】
ワイヤループ17はまた、開口部34を画定する漏斗状スリーブ16の遠位端31が、漏斗状スリーブ16のルーメンの直径よりも大きい直径(15~60%大きい)を有するように、120~170度で(外周の大部分または全てにわたって)外側に(広げられた、図2D)角度を付けることができる(A)。これにより、遠位端31のリーフレットが血栓を吸い込む能力が強化され、漏斗状スリーブ16の遠位端31と血管壁との間にシールが形成される。この結果、より高い吸引力が得られ、漏斗状スリーブ16への血塊の流入がよりスムーズになり、動脈および漏斗状スリーブが崩壊する可能性が減少する。
【0081】
図4A~Cおよび5A~Cは、血管32内に滞留した血栓30の段階的な捕捉を示す。
【0082】
第1のステップ(図4A、5A)では、システム10は、標準的なオーバー・ザ・ワイヤ(over the wire)型の経皮アクセス技術(ワイヤが内管14を通って配置される)を使用して、血栓30から離れて、または血栓30に隣接して配置される。次に、漏斗状スリーブ16は、トリガ26またはマーキング20を使用して部分的に展開され、漏斗状スリーブ16の遠位開口部34が前進し、血栓30に対して配置される(図4B、5B)。次に、血栓30を部分的に内部に取り込む/係合するために、吸引が内管14を通して加えられる。ゆっくりと少量の血液がシリンジ内に引き出され、血栓の係合を示す。
【0083】
次に、吸引を維持しながら漏斗状スリーブ16を外側に延ばし、それによって血栓30を完全に内部に取り込む。完全に内部に取り込まれると、漏斗状スリーブ16の遠位開口部34が(例えばプルワイヤで)閉じられる。次に、システム10を血栓30とともに体外で回収することができる。
【0084】
図4D~Fは、漏斗状スリーブ16の遠位部分に可撓性アーム21を備える捕捉/閉鎖機構を有する標準的な漏斗状スリーブ16を使用した捕捉を示す。アーム21は、漏斗状スリーブ16の編組材料に取り付けられ(またはそれとともに形成され)、漏斗状スリーブ16の中心線から離れて16~25°の角度で遠位に突出する。物質(血栓)が漏斗状スリーブ16の開口部に向かって進むと(図4D)、それがアーム21を外側に押し(図4E)、それによって物質が漏斗状スリーブ16内に移動することを可能にする。この点で、アーム21は可撓性トラップドアとして機能する。物質が漏斗状スリーブの近位部分内にあると、遠位端に向かう動きによってアーム21が押され、遠位開口部が効果的に遮断され、物質の放出が防止される(図4F)。
【0085】
漏斗状スリーブ16ならびに外管12および/または内管14は、X線透視下で漏斗開口部、および血栓または閉塞部位からの遠位端31の距離を示すために放射線不透過性マーカー41(図2F)を含むことができる。放射線不透過性マーカー41は、例えば、外周付近の遠位端31の近くもしくは遠位端31における編組ワイヤ上に配置される3~6個の金のドットであってもよい。画像化された放射線不透過性マーカー間の距離を使用して、血管内の漏斗状スリーブ16の開口部の範囲を示すことができる。
【0086】
漏斗状スリーブ16はまた、ルーメン内の物質の存在を検出するためのセンサまたはセンサアレイ43(近位端および遠位端における)を備えることもできる。センサ43は、米国特許出願公開第20190159684号に記載されているようなインピーダンスセンサであってもよい。
【0087】
基部(近位)センサ43は、物質が漏斗状スリーブ16の先細の基部部分に到達するときにいつ吸引を停止できるかを決定するために使用することができる。先端(遠位)センサ43は、物質が漏斗状スリーブ16の開口部にあるかどうか、および閉鎖を妨げる可能性があるかどうかを決定するために使用することができる。
【0088】
システム10はまた、捕捉された血栓を粉砕するための粉砕機24(図9A~9B)を備えることもできる。粉砕機24は、内管14を通して漏斗状スリーブ16内に導入することができ(図9A)、回転すると血栓物質を粉砕し、その後内管14を通して血栓物質を収集できるようにする1つまたは複数の弓形ブレードを備えることができる展開可能なカッター25を備えることができる。
【0089】
本明細書で使用される場合、用語「約」は±10%を指す。
【0090】
本発明のさらなる目的、利点、および新規な特徴は、以下の実施例を検討することにより当業者には明らかとなるが、これらは限定することを意図するものではない。
【実施例
【0091】
ここで、以下の実施例を参照するが、これらの実施例は、上記の説明とともに、本発明を非限定的に説明するものである。
【0092】
動物試験
標準またはシャベル漏斗を有する本システムのプロトタイプを使用して60kgのメスのブタで試験を実施した。ブタの自己血から血塊を生成して全血血栓を生じさせ、6Frシースを使用して血栓を標的部位に注入し、血管造影を行って血管閉塞を確認した。大腿アクセス部位を使用して、漏斗がカテーテルシース(外管)内に折り畳まれた状態で、このシステムのオーバー・ザ・ワイヤおよびマイクロカテーテルを血管内の閉塞部位まで誘導した。放射線不透過性マーカーを備えた漏斗先端および外側カテーテル先端のマーカーバンドは、誘導の間、X線透視下で見ることができた(図7A)。
【0093】
カテーテルの遠位端を血塊から数ミリメートルに配置し、マイクロカテーテルおよびガイドワイヤを除去した。漏斗を外管の遠位端まで前進させ、外管を2~3mm引き戻し、漏斗を部分的に展開して円錐を形成した(図7B)。吸引を加えて外管を引っ張ると同時に、漏斗に取り付けられた内管を前方に押して漏斗を完全に展開させた(図7C)。プルワイヤを使用して漏斗の遠位開口部を閉じ、外管内に後退させた。次に、漏斗内に捕捉された血塊とともにシステムを除去した。
【0094】
シャベル状漏斗を有する本システムのプロトタイプを使用して60kgのメスのブタで2回目の試験を実施した。大腿アクセス部位を使用して、漏斗がカテーテルシース(外管)内に折り畳まれた状態で、このシステムのオーバー・ザ・ワイヤおよびマイクロカテーテルを血管内の閉塞部位まで誘導した。
【0095】
カテーテルの遠位端を血塊から数ミリメートルに配置し(血管造影写真のコントラスト境界によって示される)、マイクロカテーテルおよびガイドワイヤを除去した(図8A)。漏斗を外管の遠位端まで前進させ、外管を2~3mm引き戻し、漏斗を部分的に展開して円錐を形成した(図8B)。吸引を加えて外管を引っ張ると同時に、漏斗に取り付けられた内管を前方に押して漏斗を完全に展開させた(図8C)。プルワイヤを使用して漏斗の遠位開口部を閉じ、外管内に後退させた。次に、漏斗内に捕捉された血塊とともにシステムを除去した。
【0096】
明確にするために別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴は、単一の実施形態に組み合わせて提供することもできることは理解されるであろう。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈で説明されている本発明の様々な特徴は、別個にまたは任意の適切なサブコンビネーションで提供することもできる。
【0097】
本発明は、その特定の実施形態に関連して説明されてきたが、多くの代替、修正、および変形が当業者には明らかであることは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の精神および広い範囲内にあるそのような全ての代替、修正、および変形を包含することが意図されている。本明細書で言及されている全ての出版物、特許、および特許出願は、個々の出版物、特許、または特許出願が参照により本明細書に組み込まれることが具体的かつ個別に示されている場合と同じ程度に、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。さらに、本出願における参考文献の引用または特定は、そのような参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることの承認として解釈されるべきではない。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
【手続補正書】
【提出日】2023-07-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体血管から物質を回収するためのカテーテルシステムであって、
管内で移動可能な内管と、
記内管に取り付けられ、前記外管内に隔離されたときの折り畳まれた状態と、前記外管の外に前進したときの拡張された状態との間で移行するように構成された編組漏斗状スリーブと、を備え
前記編組漏斗状スリーブの遠位端の部分は、ワイヤによって形成された遠位方向に延びるリーフレットを含むシステム。
【請求項2】
前記リーフレットは、シャベル状の遠位延長部を形成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記リーフレットは、前記編組漏斗状スリーブの外周の25%~75%で遠位方向に1~3mm延在する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記編組漏斗状スリーブは、内部カバーを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記編組漏斗状スリーブの前記遠位端は、30~80度の角度で傾斜している、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
遠位開口部を締め付けて閉鎖するためのプルワイヤ閉鎖機構をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記編組漏斗状スリーブに配置され、前記編組漏斗状スリーブに取り付けられる複数の可撓性アームをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記編組漏斗状スリーブが、完全に展開されたときに砂時計状の形状を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記編組漏斗状スリーブ内に捕捉された血栓物質を粉砕するための装置をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
使用者に所定の長さの前記編組漏斗状スリーブの部分を前記外管から外に前進させることを可能にするための機構またはインジケータをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記機構が、前記部分の前進を引き起こすためのトリガである、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記インジケータは、前記部分の前進を示すためのマーキングを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記編組漏斗状スリーブの内部容積に吸引を加える導管をさらに備える、請求項4に記載のシステム。
【請求項14】
前記編組漏斗状スリーブの開口部における物質の有無を判定するためのセンサを備えた、請求項13に記載のシステム。
【国際調査報告】