(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-20
(54)【発明の名称】有効成分送達システム
(51)【国際特許分類】
A61M 5/142 20060101AFI20231213BHJP
A61M 37/00 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
A61M5/142 522
A61M37/00 514
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534737
(86)(22)【出願日】2021-12-06
(85)【翻訳文提出日】2023-06-07
(86)【国際出願番号】 EP2021084424
(87)【国際公開番号】W WO2022128576
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】102020133395.1
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】300005035
【氏名又は名称】エルテーエス ローマン テラピー-ジステーメ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】クーリック,ミハエル
【テーマコード(参考)】
4C066
4C267
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066FF10
4C267AA72
(57)【要約】
【解決手段】有効成分、特に医薬品の有効成分を送達するための有効成分送達システムが、有効成分手段(10)及び有効成分手段と協働する電子手段(12)を備えている。有効成分手段(10)は、送達手段(30)に流体連結される有効成分リザーバ(16)を有している。特に別個の部品として製造されている電子手段(12)は、制御手段(36)及び制御手段に電気的に連結されているポンプ手段(34)を有している。ポンプ手段(34)により、有効成分リザーバ(16)から送達手段(30)に有効成分が搬送される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分、特に医薬品の有効成分を、好ましくは長期間に亘って及び/又は時間間隔を置いて送達するための有効成分送達システムであって、
有効成分手段(10)、及び前記有効成分手段と協働する電子手段(12)を備えており、
前記有効成分手段(10)は、送達手段(30)に流体連結される有効成分リザーバ(16)を有しており、
前記電子手段(12)は、少なくとも1つの制御手段(36)及び前記制御手段と電気的に連結されているポンプ手段(34)を有しており、前記ポンプ手段は、有効成分を前記有効成分リザーバ(16)から前記送達手段(30)に搬送させる、有効成分送達システム。
【請求項2】
前記有効成分手段(10)及び前記電子手段(12)は、特に互いに独立して製造され得る別個の部品として形成されている、請求項1に記載の有効成分送達システム。
【請求項3】
前記有効成分手段(10)は、前記有効成分送達システムを患者の皮膚に適用するための皮膚接触面(50)を有している、請求項1又は2に記載の有効成分送達システム。
【請求項4】
前記有効成分手段(10)は、前記電子手段(12)に連結するための連結面(52)を前記皮膚接触面(50)の反対側に有している、請求項3に記載の有効成分送達システム。
【請求項5】
前記有効成分手段(10)は、前記有効成分リザーバ(16)、特に交換可能な有効成分リザーバを受けるための受け領域(14)を有している、請求項1~4のいずれか1つに記載の有効成分送達システム。
【請求項6】
ポンプチャンバ(22)が、前記有効成分リザーバ(16)と前記送達手段(30)との間に設けられている、請求項1~5のいずれか1つに記載の有効成分送達システム。
【請求項7】
前記ポンプチャンバ(22)は、入口及び/又は出口に逆止弁(24, 26)を有している、請求項6に記載の有効成分送達システム。
【請求項8】
前記送達手段(30)は中空針(32)を有している、請求項1~7のいずれか1つに記載の有効成分送達システム。
【請求項9】
前記ポンプ手段(34)は、前記有効成分リザーバ(16)及び/又は前記ポンプチャンバ(22)に作用する、請求項1~8のいずれか1つに記載の有効成分送達システム。
【請求項10】
前記電子手段(12)は、患者のデータを得るためのセンサ手段(40)を有している、請求項1~9のいずれか1つに記載の有効成分送達システム。
【請求項11】
患者のデータは前記制御手段(36)に送信されて、特に前記ポンプ手段(34)を制御するときに考慮される、請求項10に記載の有効成分送達システム。
【請求項12】
前記有効成分手段(10)は、前記センサ手段(40)が突出する凹部(42)を有している、請求項10又は11に記載の有効成分送達システム。
【請求項13】
前記電子手段(12)はエネルギ貯蔵部(38)を有している、請求項1~12のいずれか1つに記載の有効成分送達システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効成分、特に医薬品の有効成分を送達するための有効成分送達システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、有効成分の送達のために経皮治療システム(TTS)が知られている。患者の皮膚に接着する経皮パッチを用いて、蓄えられた有効成分を皮膚を通して継続的に吸収することが可能である。このようなシステムは、注射とは異なり、有効成分の送達が患者にとって痛みを伴わないという利点を有する。
【0003】
更に、マイクロニードルを介した有効成分の送達が知られている。この場合、有効成分が皮膚の外層に送達されるように、有効成分が複数のニードルを介して皮膚の真皮に送達される。皮膚の外層には神経がないので、このような有効成分の送達も患者にとって痛みを伴わない。マイクロニードルは、有効成分を含んでニードル先端からニードル開口部を通して有効成分を送達する中空針として構成され得る。更に、マイクロニードルは皮膚に溶解する材料から形成されることが知られているため、マイクロニードルに蓄えられる有効成分は、マイクロニードルの溶解によって患者に送達される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のシステムは、特に長期間に亘る有効成分の連続供給のために開発されているが、例えば有効成分の周期的な供給が不可能であるという不利点を有する。このため、このような有効成分送達システムを皮膚から外して、次の有効成分投与のために新たな有効成分送達システムを皮膚に固定する必要がある。
【0005】
有効成分の送達が時間間隔を置いても可能な有効成分送達システムが欧州特許出願公開第0840634 号明細書から知られている。この有効成分送達システムは、マイクロニードルが有効成分リザーバに流体連結されているデバイスを備えている。システムに一体化されて制御手段に連結されているポンプが、例えば所定の時間又は所定の間隔で有効成分を送達するために使用され得る。しかしながら、欧州特許出願公開第0840634 号明細書に記載されているシステムは非常に複雑なシステムである。
【0006】
本発明の目的は、有効成分、特に医薬品の有効成分を簡単且つ確実に、特に長期間に亘って又は時間間隔を置いて送達することができる、有効成分、特に医薬品の有効成分を送達するための有効成分送達システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、この目的は、請求項1の特徴を有する有効成分送達システムによって達成される。
【0008】
本発明に係る有効成分送達システムは、特に医薬品の有効成分を送達するために使用される。有効成分送達システムにより、特に有効成分を長期間に亘って送達することが可能である。ここで、時間間隔、時点、送達量などが定められ得る。
【0009】
有効成分送達システムは、有効成分手段及び有効成分手段と協働する電子手段を備えている。有効成分手段は、有効成分、特に医薬品の有効成分が蓄えられる有効成分リザーバを有している。有効成分リザーバは送達手段に流体連結される。送達手段は、有効成分を患者に送達するために使用される。特に、有効成分は患者の皮膚の真皮に送達される。
【0010】
電子手段は、少なくとも制御手段及び制御手段と電気的に連結されているポンプ手段を有している。制御手段により、有効成分が所定の継続時間に亘って所定の時間に搬送されるように、ポンプ手段が制御され得る。ポンプ手段は、有効成分リザーバから送達手段に有効成分を搬送するために使用される。ここで、ポンプ手段は有効成分リザーバに直接又は間接的に作用し得る。更に、ポンプチャンバが、有効成分リザーバとポンプ手段が作用する送達手段との間に配置され得る。
【0011】
本発明の特に好ましい更なる展開例では、有効成分手段及び電子手段は別々に形成された部品である。特に、有効成分手段は電子手段から独立して製造されている。このため、電子手段の電子部品が滅菌によって損なわれることなく、有効成分手段が簡単に滅菌され得るという特有の利点がある。この点で、有効成分手段を照射によって滅菌することが特に可能である。更に、2つの手段を分離することにより、有効成分手段が特に複数の層から形成されたホイルとして製造され得るという利点がある。特に圧延処理などの連続的な処理での製造が可能である。このため、有効成分手段の製造が大幅に簡略化される。
【0012】
特に、欧州特許出願公開第0840634 号明細書に記載されている形態の先行技術と比較して、有効成分手段を電子手段から分離して2つの別個の部品にすることは著しい利点である。特に、複雑さが十分低下し、ひいては費用対効果がより高い製造が可能である。
【0013】
更に、2つの手段を異なる部品に分離することにより、例えば異なる電子手段が同一の有効成分手段に連結され得るという利点がある。特に、例えば異なる適用領域のための異なる有効成分送達システムが簡単に実装され得るように、異なる有効成分手段及び電子手段を備えたモジュール式システムが設けられ得る。
【0014】
有効成分手段が、有効成分送達システムを患者の皮膚に適用するための皮膚接触面を有していることが好ましい。特に、皮膚接触面は患者に対向する有効成分手段の外側全体に亘って延びており、良好な皮膚接触が保証されるように平坦で実質的に平面な形状を有することが特に好ましい。特に、有効成分送達システムが患者の皮膚に容易に適用され得るように、接着層が皮膚接触面に適用されてもよい。
【0015】
更に、有効成分手段が皮膚接触面の反対側に連結面を有していることが好ましい。連結面は、有効成分手段を電子手段に連結するために使用される。連結面も平面形状を有することが好ましい。適用可能な場合、連結面は表面全体に亘って延びないため、例えば電子手段の一部が有効成分手段の凹部内に突出し得る。
【0016】
電子部品などを除いて有効成分手段及び電子手段の両方がプラスチック材料、特にプラスチックホイルで形成されていることが好ましい。従って、有効成分手段及び電子手段間の連結が、例えば積層によって行われ得る。
【0017】
本発明の好ましい更なる展開例では、有効成分手段は、有効成分リザーバ、特に交換可能な有効成分リザーバを受けるための受け領域を有している。特に、このため、有効成分手段が有効成分を含むリザーバから独立して製造され得るという利点がある。そのため、例えば異なる有効成分を含む有効成分リザーバが後で受け領域に挿入され得る。このため、更に有効成分リザーバの交換が容易になる。例えば有効成分送達システムが患者の皮膚に配置されている間に空の有効成分リザーバを充填された有効成分リザーバと交換することにより、このような交換を行うことができる。
【0018】
受け領域は、送達手段に流体連結される開口部を有するように構成されていることが好ましい。有効成分リザーバを交換するとき、有効成分が流体連結部分、つまり連結チャネルから受け領域に漏れ得ないように、逆止弁が前記開口部に配置され得る。
【0019】
有効成分リザーバが有効成分手段に直接設けられるか、又は有効成分リザーバのための受け領域が設けられるかに関わらず、ポンプチャンバが有効成分リザーバと送達手段との間に設けられることが好ましい。従って、ポンプチャンバは有効成分リザーバ及び送達手段に流体連結される。ポンプ手段は、有効成分を送達手段に向かって搬送するためにこのポンプチャンバに作用する。ポンプチャンバの入口及び/又は出口に逆止弁が設けられ得ることが好ましい。ポンプチャンバの入口に設けられている逆止弁が、受け領域の開口部に配置されている逆止弁と同一であってもよい。
【0020】
本発明の特に好ましい更なる展開例では、送達手段は中空針を有している。送達手段は中空針として形成された複数のマイクロニードルを有していることが好ましい。特に、このため、少なくとも4針/cm2 、好ましくは少なくとも50針/cm2、特に好ましくは少なくとも100 針/cm2 を有するマイクロニードルアレイが形成される。ここで、針が入り込む深さは、神経がある皮膚の層に入り込まないように針が皮膚の真皮に入り込むがより深く入り込まないような深さであることが好ましい。
【0021】
ポンプ手段は、有効成分リザーバ及び/又はポンプチャンバに直接作用するように構成及び配置されていることが好ましい。ポンピング効果は、ストローク生成要素によってもたらされ得る。ポンプ手段は圧電素子、偏心輪などを有してもよい。
【0022】
更に、電子手段が患者のデータを得るためのセンサ手段を有していることが好ましい。センサ手段は、一又は複数のセンサを有してもよい。センサ手段によって得られた患者のデータは、制御手段に直接送信され得る。測定された患者のデータは、ポンプ手段の制御に直接考慮されることが好ましい。
【0023】
センサ手段の配置のために、有効成分手段が、センサ手段が突出する凹部を有していることが好ましい。必要に応じて、一又は複数のセンサが配置される複数の凹部が設けられてもよい。少なくとも1つの凹部が有効成分手段に設けられることにより、センサが皮膚の近くに配置されるという利点がある。必要に応じて、有効成分手段は、センサが皮膚に直接接し得るように凹部に開口部を有してもよい。
【0024】
更に、電子手段は、患者のデータを記憶する、制御信号を計算するなどのための記憶手段を有してもよい。更に、データ送信のために送信手段及び/又は受信手段が設けられ得る。
【0025】
電子手段が、バッテリ又はコンデンサなどのエネルギ貯蔵部を有していることが更に好ましい。適用可能な場合、バッテリは充電式バッテリであってもよい。電気的なエネルギ貯蔵システム及び機械的なエネルギ貯蔵システムの結合も効果的であり得る。
【0026】
以下に、添付図面を参照して好ましい実施形態によって本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明に係る有効成分送達システムを示す平面略図である。
【
図2】II-II 線に沿った本発明に係る有効成分送達システムを示す側断面略図である。
【
図3】様々な状態のポンプチャンバを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係る有効成分送達システムは、有効成分手段10及び電子手段12を備えている。有効成分手段及び電子手段は別々に製造されて平坦な、特にホイル状の部品である。
【0029】
有効成分手段10は、リザーバ16が交換可能に配置され得る受け領域14を有している。
図1では、リザーバ16は、右側から受け領域14に挿入され得る。挿入状態ではリザーバ16の出口18がチャネル20内に突出している。逆止弁24, 26がポンプチャンバ22の入口及びポンプチャンバ22の出口に配置されている状態で、チャネル20は最初、ポンプチャンバ22に流体連結される。次に、ポンプチャンバ22は、有効成分の送達のためにチャネル28を介して送達手段30に流体連結される。
【0030】
送達手段30は複数の中空針32を有しており、リザーバ16内の有効成分が中空針を通して患者の皮膚に送達され得る。
【0031】
受け領域14に挿入されたリザーバ16から送達手段30に有効成分を搬送するために、電子手段12にポンプ手段34が配置されている。有効成分手段10が電子手段12に連結されると、ポンプ手段34はポンプチャンバ22の上側に配置され、有効成分がリザーバ16から送達手段30に向けて搬送されるようにポンプチャンバ22に作用する。ポンプ手段34は制御手段36に電気的に連結されている。記憶素子を更に有してもよい制御手段36はバッテリ38に連結されている。更に、制御手段36はセンサ手段40に連結されている。これらの電子部品は電子手段12に配置されている(
図2)。
【0032】
複数のセンサを有してもよいセンサ手段40は、有効成分手段10に設けられている凹部42内に突出する。従って、センサ手段40の底部44が皮膚と直接接してもよく、凹部42は、必要に応じて皮膚と直接接するための開口部を底部46に有してもよい。
【0033】
図2は、組立前の有効成分手段10及び電子手段12を示している。更に、ブリスタ48などのカバーホイルが示されている。ブリスタ48は、有効成分手段10の底部50に配置されており、有効成分送達システムが患者の皮膚に配置される直前に外される。そのため、底部50は、特に接着剤を含む皮膚接触面を形成している。皮膚接触面50の反対側に連結面52が有効成分手段10に設けられている。連結面52は、有効成分手段10を電子手段12の底部54に連結するために使用される。従って、電子手段12の底部54も連結面として機能する。連結は、接着、積層などによってなされ得る。
【0034】
ポンプチャンバ22は、
図3に示されているように形成されて、入口に逆止弁24を有して出口に逆止弁26を有してもよい。ポンプがポンプチャンバ22を押し付けると、有効成分がポンプチャンバから矢印56の方向に送達手段30に向かって流出するように、出口の逆止弁26が開く。
【0035】
ポンプチャンバ22を充填するとき、逆止弁26を閉じて逆止弁24を開けることにより、流体がリザーバから矢印58の方向にポンプチャンバ22に流れることが可能になる。
【0036】
流体は、
図4に概略的に示されているポンプ手段34によって搬送され得る。ポンプ手段34は、軸62を介して偏心輪64に連結された電気モータ60を有している。偏心輪64はポンプチャンバ22の最上部に作用し、
図3を参照して上述したように有効成分を搬送させる。
【国際調査報告】