(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-20
(54)【発明の名称】超音波検査のドップラ映像におけるアーチファクトを除去する方法
(51)【国際特許分類】
A61B 8/06 20060101AFI20231213BHJP
【FI】
A61B8/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534747
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(85)【翻訳文提出日】2023-07-20
(86)【国際出願番号】 IB2021061798
(87)【国際公開番号】W WO2022130257
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2020/061992
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(31)【優先権主張番号】102021000003929
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523209896
【氏名又は名称】シンダイアグ エス.アール.エール.
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】コンティ,ダニエーレ
(72)【発明者】
【氏名】ベラコーサ マロッティ,ロジラリ
(72)【発明者】
【氏名】デ シモーネ,フラヴィア
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601DD03
4C601DE04
4C601EE04
4C601JB34
4C601JC06
4C601JC11
4C601JC16
4C601KK02
4C601KK18
(57)【要約】
アーチファクトをドップラタイプの超音波映像から除去するための、コンピュータで実施するノイズ除去法は:超音波映像を備えた複数(n個)のフレームを取得するステップ;ドップラ活性化を含んだ画素を識別するステップ;対応したフレームの画素をカテゴリに分類して、各フレームについて、ドップラ活性化を含んだ画素を識別するために、複数に属する各フレームについて、少なくとも第1または第2のカテゴリを、対応したフレームの各画素位置に関連させるよう、第1の画像データセットを生成するステップ;シーケンスで隣接する識別データが連続フレームを指すように、フレームシーケンスに従った順番の識別データを含んだフレーム部分に関連した、少なくとも持続シーケンス生成するステップであって、対応したフレーム部分がドップラ活性化画素を含む場合に、各識別データが第1の値を想定し、または対応したフレーム部分がドップラ活性化画素を含まない場合に、第1の値とは異なる第2の値を想定する、生成するステップ;上記の持続シーケンスにおいて、第1の値を有する連続識別データを備えた各持続サブシーケンスの長さを計算するステップ;基準閾値を自動計算するステップ;ドップラ画素が閾値未満の持続シーケンスに属する場合に、ドップラ画素を排除するステップ、を含む。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーチファクトをドップラタイプの超音波映像から除去するための、コンピュータで実施するノイズ除去法であって、
超音波映像を構成するn個のフレームを取得するステップと、
前記n個のフレームの各々について、超音波信号を含んだn番目のフレームにおける第1の画素を表わす第1の画素カテゴリ、及びドップラ活性化を含んだn番目のフレームにおける第2の画素を表わす第2の画素カテゴリ、を識別するステップと、
前記複数に属する各フレームについて、対応した前記フレームの画素を分類して、各フレームについてドップラ活性化を含んだ画素を識別するよう、少なくとも第1または第2のカテゴリを、対応した前記フレームの各画素の位置に関連付けるために、画像データの第1のセットを生成するステップと、
シーケンスにおける隣接した識別データが連続したフレームを指すよう、フレームシーケンスに従って順番付けられた識別データを含んだフレーム部分に関連した、少なくとも持続シーケンスを生成するステップであって、各識別データは、対応したフレーム部分がドップラ活性化画素を含んだ場合に、第1の値を想定し、または対応したフレーム部分がドップラ活性化画素を含まない場合に、第1の値とは異なる第2の値を想定する、生成するステップと、
前記フレーム部分に関連付けられた前記持続シーケンスにおいて、前記第1の値を有する連続した識別データを備えた、各持続性サブシーケンスの長さを計算するステップと、
前記n個のフレーム全ての識別データを指す、前記持続性サブシーケンスの長さ配分に基づいて、基準閾値を計算するステップと、
前記n個のフレームの各々について、
実際のドップラ信号を伴う画素を表わすよう、前記閾値よりも長い長さを有する前記持続性サブシーケンスの内1つにフレームnが対応する場合、前記画素位置が前記第2のカテゴリに属する情報を、または
アーチファクトを表わすよう、前記閾値よりも短い延長を有する前記持続性サブシーケンスの内、別の1つにフレームnが対応する場合、前記画素位置が前記第1のカテゴリに属する情報を、
対応したフレームの各画素位置に関連付けるために、画像データの第2のセット(SEED)を識別するステップと、
を含む、ノイズ除去法。
【請求項2】
前記フレーム部分は、前記フレームの画素であり、前記生成するステップは、複数のフレームフォーマットの各画素について、複数の持続シーケンスを生成するステップを含む、請求項1に記載のノイズ除去法。
【請求項3】
フレームn、及びフレームn+1における前記第1のカテゴリの画素を備えた接続構成要素を探索して、前記フレームの前記部分を定義するアルゴリズムを実行するステップを含み、ここで、前記フレームnと前記フレームnとフレームn+1との間における、前記接続構成要素の追跡を得るために、持続シーケンスを生成する前記ステップは、フレームnの第1の接続構成要素における第1のパラメータと、フレームn+1の第2の接続構成要素における第2のパラメータと、を比較して、前記第2の接続構成要素を、前記第1の接続構成要素における第1の持続シーケンスに関連付けるか、または前記比較するステップに基づいて前記第2の接続構成要素における第2の持続シーケンスを生成するステップを含み、前記パラメータは好ましくは重心、及び/または前記第1及び第2の接続構成要素の重複を表わすパラメータ、及び/または前記第1及び第2の接続構成要素の形状の類似性を表わすパラメータ、及び/または前記第1及び第2の接続構成要素のサイズまたは寸法のパラメータである、請求項1に記載のノイズ除去法。
【請求項4】
前記第2の画像データセット(SEED)を識別する前記ステップは、接続構成要素の探査アルゴリズムに基づいて実施され、前記実際のドップラ信号を表わす領域を識別し、前記超音波映像の少なくとも1つのn番目のフレームにおける、前記第2のカテゴリの画素における接続構成要素の探索に基づいて、セグメント分解アルゴリズムを実施するステップを含み、前記第2のカテゴリの前記接続構成要素と、重複基準に基づいて前記実際のドップラ信号を表わす接続構成要素とを備え、前記実際のドップラ信号を表わす前記接続構成要素の領域増長効果を得るために、前記重複基準を満たさない前記第2のカテゴリの前記接続構成要素を非活性化する、請求項2に記載のノイズ除去法。
【請求項5】
前記第2の画素カテゴリを識別する前記ステップは、前記フレームに存在する各ドップラ活性色について、複数のサブカテゴリに従って実施される、請求項1に記載のノイズ除去法。
【請求項6】
画素の前記第2のカテゴリを識別する前記ステップは、クラスタ化によって実施される、請求項1に記載のノイズ除去法。
【請求項7】
画素の前記第2のカテゴリを識別する前記ステップは、R、G、Bチャネルの強度差を介して選択することで実施される、請求項1に記載のノイズ除去法。
【請求項8】
閾値を計算する前記ステップは、サブシーケンスの長さ配分における90番目の百分位数の計算によって実施され、前記サブシーケンスの連続識別データは、第1の代表的ドップラ活性化値を有するか、または連続識別データがドップラ活性化の第1の代表値を有する前記サブシーケンスの、長さにおける標準偏差の2倍を伴う平均の合計に基づく、請求項2に記載のノイズ除去法。
【請求項9】
閾値を計算する前記ステップは、前記活性化長さ配分において98番目の百分位数の計算によって、または連続識別データがドップラ活性化の第1の代表値を有する前記サブシーケンスの、長さにおける標準偏差の2倍を伴う平均の合計に基づく、請求項3に記載のノイズ除去法。
【請求項10】
前記閾値の計算は、前のステップから得られた各画素の色ラベリングによって、及び画像で見られる主な色を抽出するよう訓練された分類器の使用によって実施される、請求項1に記載のノイズ除去法。
【請求項11】
前記ノイズ除去されたフレームは、色が表わされた場合に、オリジナルフレームの値と等しいR、G、Bチャネルの値を有し、グレースケールが表わされた場合に、平均値である、請求項1に記載のノイズ除去法。
【請求項12】
領域増長は、形態学的崩壊法によって、ならびに、径またはサイド長さが5画素のカーネル及び10%の閾値を伴う拡張によって実施される。請求項4に記載のノイズ除去法。
【請求項13】
前記フレームを、三次元マトリクスとして表わすことができる、請求項1に記載のノイズ除去法。
【請求項14】
n番目のフレームを表示するステップを含み、そこで実際のドップラ信号に対応した画素は保持され、アーチファクトに相当する画素は変更される、請求項1~13の内いずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波検査のドップラ映像に含まれたアーチファクトを除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波撮像技術は、人体構造など、対象物の内部特徴の診断画像を生成するために、一般的に使用される。
【0003】
超音波撮像は、二次元画像上に、走査面に対応した人体の解剖学的断面を再現する技術である。エコー信号に含まれた情報が二次元画像に変換される機構は、複雑であり、いくつかのステップから構成される。これらの内いくつかは、生体組織における超音波の伝播に依存し、他のものは、装備技術か、またはいかにしてオペレータがそれらを取り扱うか、に依存する。超音波は、変換器によって生成されて適切に合焦される。超音波は、概ね一定のスピードで、密度または音響インピーダンスに依存して、組織ごとに僅かな変動を伴って、組織内に伝搬する。超音波と様々な解剖学的構造との間の接触は、反射、分散、回折、及び吸収など、様々な物理的現象の開始を示す。上記の現象の、初めの2つは、変換器に戻るエコー信号を生成して、適切に処理して超音波画像を作り出す。基本的に、原信号に含まれた情報は、超音波画像を作り出すには十分ではない。しかしそれを、他の必須情報:第1に、ビーム放出とエコー信号の戻りとの間で経過する時間の関数として確立される、信号発生源の深さ;第2に、走査面を構成するラインに沿った信号方向、に統合しなければならない。換言すると、超音波画像を生成するために、これら3つの情報を、走査領域の各ポイントのために得る必要がある。
【0004】
超音波撮像デバイスは、いくつかの撮像様式を取り扱うことが可能な、高性能機器である。超音波撮像デバイスの簡略化されたブロック図は:
-電気信号を作り出すことを担う、パルス発生器;
-発信源及び受信器としての両方の機能を実施するために駆動される、圧電変換器。発信源として、変換器は、電気パルスを波動に転換することによって生成された超音波音響信号を送信することを担う。組織を通して移動する音響波動パルスは、異なる音響インピーダンスを伴う物質によって、一部が反射される。それによって、受信器として、変換器は反射したパルスを検出すること、及びそれらを無線周波数(RF)の電気信号に転換すること、を担う;
-エコー信号発生の深さまで比例して増幅させることによって、及び不連続性を構成する表面の音響インピーダンスの差を正確に表わすために、ゲインを補う信号戻り時間まで、受信した信号を増幅させることによって、受信した信号に作用するTGCモジュール。換言すると、深い音場の面からプローブに到達する信号は、同じ特性を有するが浅い面に位置された反射体から発信されたエコー信号よりも弱い;
-増幅されたRF信号を、超音波がぶつかった各反射体の信号を表わす単一のピークに転換する、復調器。これは、反射が発生した全てのポイントを識別し、かつエコー振幅を定量化するのを可能にする;
-走査コンバータであって、時間継続入力信号を転換し、それを規定の間隔でサンプリングし、それをフォーマットに従って16、64、256のグレーレベルを伴う信号強度によって符号化される、別個の数値形式に変換し、このフォーマットは、画像が走査フィールドを構築するラインに沿って取得されるためにモニタに表わすことができ、一方でモニタの水平ラインに沿って表わされる、走査コンバータ。これは、2つの主なマクロフェーズによって実現され、入力の第1のフェーズにおいて、走査コンバータは、RF信号をアナログからデジタルへ変換し、そのデータをメモリマトリクスにおいてバイナリ形式で記憶する。出力の第2のフェーズにおいて、メモリマトリクスに記憶されたデータについて、デジタルからアナログへの変換を実施する;
-通常はモニタによって、追尾を見ることを可能にし、それを後で見るために適切な記憶媒体に記憶する、ディスプレイ/記憶システム。
【0005】
診断用の超音波撮像の、特定の用途は、ドップラ測定を使用して流体の流速を、検出及び表示する。これは物理的現象であり、それによって、動く本体にぶつかる音波の周波数は変動を受け、それは本体の動き自体のスピードに正比例する。
【0006】
したがってドップラ効果は、入力ビームと動く本体からの反射ビームとの間の、周波数変動の測定に基づく(医療適用において、動く本体は、多くの場合赤血球、したがって血液を表わす)。
【0007】
したがってドップラ効果は、生体組織の運動が調査される多くの超音波技術に基づく原理である。反射されたエコー周波数の変動は、反射する本体の速度及び方向に関連する。受信されたエコー信号は、領域を通る流体の流速を確立するために、基準値と比較される。流速は、検査下の構造から受信されたエコー信号の、ドップラ周波数のシフトを測定することによって、確立することができる。
【0008】
2つの基本的なドップラ取得システムが存在する:
-流動形態及び運動の調査を可能にする、連続波(CW);
-反射面と変換器との間の距離に関する情報も提供する、パルス波(PW)。
【0009】
カラードップラは、流動情報及びリアルタイムの二次元画像を統合することで、同じ原理に基づく。変換によって、接近する流動は赤色であり、離れる流動は青色である。先行技術で公知であるように、流速は色付けによって見ることができ、そこで異なる陰影及び色強度は、流量及びグレースケール画像の内側の方向を表わす。例えば血管の分岐部において攪乱が存在する場合、青及び赤の区画の、交互パターンが存在することになる。このように、プローブに対する流動方向を区別することが可能となる。これらのシステムは、さらに流動自体の量及び層流または攪乱期間を評価するのを補助する。
【0010】
超音波機械から可能な限り精確な結果を得ることが、いかに重要であるかは、それが医師によって正確な診察のために使用される場合があることから、明白である。
【0011】
これは、一方では医師またはオペレータの操作に、したがって有効な結果を得るために設定したパラメータで操作しなければならない超音波機械を用いた、彼/彼女の経験、及び他方では、システム自体に関連するこれらのシステムにおける、2つの主な課題のカテゴリを強調する。
【0012】
より深い層からの信号を増幅し、コントラストを最大にし、かつ飽和を回避することによって、画像明度の最も均等な配分を実現するために、医師または技術者が設定できる超音波機械のパラメータは、例えばゲイン制御及び超音波合焦設定である。超音波機械において、医師または技術者の、個々の作業の癖に従い、TGCによって使用されるスケール設定に作用するのを可能にする命令が存在し、深層の描写を向上させる。
【0013】
このパラメータは、信号対雑音比として理解される、信号背景に直接作用する。信号対雑音比は、生成フェーズ、超音波信号の受信、及び処理、における電気回路によって生成され、それは過剰な信号増幅またはゲイン値を伴って増加するエコー構造の特性をオフセットすることによって、血管領域における流動信号の虚偽表示として画像に現われることになる。虚偽表示の例は、
図5eに示される極度のアーチファクトである。合焦設定は、アクティブ合焦の数、超音波ビームの形状、及び厚さ、を変更するのを可能にする。正確に設定されない場合、超音波画像の空間解像度に影響を及ぼす。構成することができる他の設定は、撮像周波数である。その値が増加すると、解像度を最適にするのを可能にし、その一方でその値が減少すると、ビームの貫入を増加させるのを可能にする。医師またはオペレータが作用できる別のパラメータは、信号振幅とモニタに表わされるグレーレベルとの間の対応法則を変えることを可能にする、圧縮曲線に関するものである。線形強度/振幅の関係を用いると、グレースケールは、検査した組織の音響インピーダンスにおける差に正比例する。いくつかの事例において、これは診断の必要性に対して最適な設定ではなく、したがって医師またはオペレータは、例えば、より高い強度のエコーを圧縮して、より低い強度のエコーが高いグレースケール数を伴って表わされるのを可能にすることによって、重要性が少ない他のものよりも大きい痕跡である、いくつかの音響インピーダンス範囲を表わすことができる。臨床診察における敏感なパラメータは、「パルス繰り返し率」(または「流動感度」)であり、それは、変化する速度の流動を取得するために、システムの性能を制御する。パルス周波数が高すぎる場合、遅い流動に対する感度は減少し、対応する信号の損失をもたらす。
【0014】
本システムに属する他の重要なカテゴリ、または、主に超音波と生体構造との間の相互作用による、この技術から導出される制限は、超音波検査の結果において現われ得る、考えられるアーチファクトの以下の説明で強調されることになる。機器原点の重要な課題、及び/または医師もしくは技術者の経験に関する重要な課題は、超音波機械の使用フェーズ、及び構成フェーズとの両方において、超音波機械自体によって生成される結果に反映され、通常はアーチファクトの名前で識別される。アーチファクトは、超音波機械によって、または超音波とドップラ信号でノイズを重ねる組織との相互作用によって生成された、誤った情報または歪められた情報を意味する。詳細には、超音波機械を使用する上での医師または技術者の経験は、例えばプローブの位置付け、プローブ自体によって成された動き、及びこのような動きを実施するスピード、に依存して、アーチファクトのより大きい、またはより小さい量の変動の存在を、直接もたらす。
【0015】
ドップラ超音波撮像で見られるアーチファクトは、例えばカラードップラ超音波画像において、このアーチファクトが、全て着色画素として定義することができ、それが正確には血管分布を表わさないことを考えると、流動情報の観点から、混乱または判断を誤らせる場合がある。上述のように、3つの主な要因が、この課題の原因となる。すなわち人的エラーによる装備の不良コンフィギュレーション及び不適切な信号取得、解剖学的要因、ならびに技術的制約、である。例えば誤ったゲイン設定、ウォールフィルタ設定、または速度スケール設定は、血管における流動の存在または不在、流動方向及び流速、または実際の生理学的状況から大きく異なり得る状況を表示する歪みの追尾など、臨床的に関連した情報の損失を起こす場合がある。不適切な取得によるアーチファクトに言及すると、モーションアーチファクトは特に関連する。これらは例えば、不適切な照射角度設置によるものと、フラッシュアーチファクトを生じさせる最も頻繁な過誤である、速すぎる信号取得によるものと、を含む。オペレータの手とプローブとの間の角度である、照射角度による課題について、角度が60°よりも大きいとき、スペクトル曲線の振幅は、漸進的に減少され、速度計算は漸進的に信頼できなくなる。他方で、角度が90°に近付くとき、流動が、低い振幅の信号を生成できたとしても、信号は記録されない。以下の主なアーチファクトは、上記で定義されたカテゴリに従ったカラードップラ超音波において見出された。
不良コンフィギュレーションによるアーチファクト
【0016】
ドップラゲイン設定エラー:
適切なゲイン設定は、流動特性の精確な再現のために重要である。ゲイン設定が低すぎると、いくつかの関連情報は損失されることがあり、そのためゲインは、追尾の可視化を最大にするために頻繁に調節される。対照的に、高すぎるゲインはエンベロープ信号を劣化させ、そのスクリーン上の再現を中断させて、例えば流動乱流を発現させる場合があるスペクトル拡幅を模倣する。
【0017】
不適切な角度設定:
照射角度の課題について、超音波機械に補正パラメータを設定することが可能であるが、角度が完全に誤っている場合、この補正も無駄になる。このタイプのアーチファクトの発生は、非常に高い周波数またはゲイン調節のない変換器を使用することにも依拠し得る。
【0018】
不適切なフィルタ設定:
フィルタフェーズは、低速の柔軟組織のエコーから来た低周波数のドップラ信号を除去するよう設計され、このフィルタの遮断周波数はオペレータが選択可能である。設定が高すぎる場合、診断的に関連した速度情報は、損失され得る。
【0019】
スペクトル分散によるアーチファクト:
スペクトル分散は、過剰なシステムゲインによるか、またはグレースケールの感度の変化から、発生する場合がある。
生体構造に依拠したアーチファクト
【0020】
フラッシュアーチファクト:
このアーチファクトは、幾分広範囲の走査フィールド領域まで拡張した突然のカラーブラストとして発生する。カラーコーディングは完全に人為的結果であり、速すぎる変換器の動きによって、または心臓の運動、もしくは反射面の僅かな動きを生じさせる静脈拍動によって、起こり得る。
【0021】
疑似フローアーチファクト:
疑似フローは、血液ではない実際の流体運動を表わす。これらのタイプのアーチファクトは、ドップラ信号の過剰な増幅、過度に低いカラーコーディング(それは例えば嚢状構造内に現出する信号をもたらす場合がある)、隣接して動く構造、呼吸動態、の結果として観察される場合がある。ミラーアーチファクトまたは揺らぎの存在によっても発生し得る。
技術的制限に依拠するアーチファクト
【0022】
方向性の曖昧さ:
方向性の曖昧さは、超音波ビームが90°の角度で血管を遮るときに生じ得る。検出されたドップラ信号は、スペクトルのベースラインにおける上下の追跡として現われる。さらに、高いゲイン設定において、方向性の曖昧さはより明確であり、追尾はさらに不精確である。カラードップラ画像が、セクタータイプの変換器を使用して生成されたとき、ビームに対して直交した流動は、一般的に、変換器の表面に平行な血管の小さいセグメントに沿って存在し、その一方で線形プローブを使用すると、課題はより際立つ。
【0023】
サイドローブアーチファクト:
電気合焦のアレイ変換器は、一次ビームを、検査される重要領域に導く。しかし、アレイ要素のために、空間における弱い二次超音波ローブは、一次ビームとは関連のない領域を標的にすることができる。これらのローブの精確な箇所は、変換器の設計自体に依拠する。これらの二次ローブが(骨など)高い反射面にぶつかった場合、変換器に戻るエコーは、一次ビームのエコーと共にスクリーン上で検出され得る。
【0024】
ランダムノイズアーチファクト:
ドップラタイプの超音波機械において、全ての電気回路のように、ノイズはゲインに比例する。ランダムノイズは、特にゲインが高く設定され過ぎた場合に、プローブ-組織間の相互運動が生じるたびに、フラッシュアーチファクトの現出を通して、またはカラー領域の現出/消滅を通して、生じる。
【0025】
きらきら光るアーチファクト:
このアーチファクトのタイプは、高い反射構造の場合に視認でき、背景ノイズの存在における信号特性に関連した、変動するカラーモザイクとして、それ自体現われる。その現出は、超音波機械構成に厳格に依拠し、位相ジッタと呼ばれる固有の電子ノイズの狭帯域によって生成される。
【0026】
先行技術において、上述した1つまたは複数のアーチファクトが発生する原因となる、超音波撮像システム内の望ましくない信号を、フィルタで除去するために使用されるいくつかの信号処理技術が公知である。しかし、画像生成の上流で挿入された処理フェーズ及び/またはフィルタリングフェーズとして、超音波機械内の画像表示生成処理の一部として実行される、これらのソリューションは、器具の感度及び/または診断目的の関連情報の損失など、大なり小なり関連した方法で、自己破滅的な影響を示す。
【0027】
さらに、潜在的に異なるタイプのアーチファクトの除去は、超音波機械のパラメータ構成、ならびに利用可能な処理、及び超音波機械モデルに依拠したフィルタリングの強化、の様々な組み合わせに依拠する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
本発明の目的は、オンボードのフィルタリング及び/または処理ブロックによって、信号情報及び/または画像生成に作用する代わりに、超音波機械で生成された超音波映像に作用することによって、上述の器具もしくは人的要因の欠点の少なくとも一部を解決することである。2D再現に作用する超音波機械によって生成された映像における、ノイズ除去ステップを通して、この結果を実現することが可能である。この分析は、アーチファクトを除去して、最適ではない設定及び/またはオペレータの経験及び/または技術的制限による影響を最小に抑えるために、映像に存在する任意のアーチファクトを識別することを目標とし、その結果アーチアクトのない映像、またはアーチファクトを大幅に低減した映像を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0029】
したがって、ノイズ除去はドップラ超音波映像の分析であり、以下で説明する方法のステップを通して、アーチファクトを除去するために実際の信号を重ねるか、または実際の信号の側面に位置させ得る映像内の、考えられる任意のアーチファクトの存在を識別することを目標とし、その結果、診断フェーズを阻むか、または誤らせ得る変質のない映像を得る。定義する価値があり、かつ説明内でその使用を関連付ける助けとなる、本発明に含まれる別の技術用語は:
-ドップラ活性化、すなわち、ドップラ信号及び着色画素などドップラアーチファクトを保持する画素のセット;
-超音波信号、すなわち、例えばドップラ信号がそこから集積される外部領域、に属するグレースケール画素など、非ドップラ超音波信号を保持する画素のセット;
-ドップラ信号、すなわち、血管分布の存在を示す実際のドップラ信号を保持する画素のセット。
【0030】
本発明の、コンピュータで実行されるノイズ除去法は、標準的な映像セグメント分解技術を使用して、映像を個々のフレームに分解することで始まり、以下のステップを含む:
-超音波映像からn個のフレームを取得するステップ;
-n個のフレームの各々について、超音波信号を含んだn番目のフレームにおける第1の画素を表わす第1の画素カテゴリ、及びドップラ活性化を含んだn番目のフレームにおける第2の画素を表わす第2の画素カテゴリ、を識別するステップ;
-上記の複数に属する各フレームについて、対応したフレームの画素を分類して、各フレームについてドップラ活性化を含んだ画素を識別するよう、少なくとも第1または第2のカテゴリを、対応したフレームの各画素の位置に関連付けるために、画像データの第1のセットを生成するステップ;
-隣接した識別データが隣接したフレームを指すよう、フレームシーケンスに従って順番付けられた識別データを含んだフレーム部分に関連した、少なくとも持続シーケンスを生成するステップであって、各識別データは、対応したフレーム部分がドップラ活性化画素を含んだ場合に第1の値を想定し、または対応したフレーム部分がドップラ活性化画素を含まない場合に、第1の値とは異なる第2の値を想定する、生成するステップ;
-上記の持続シーケンスにおいて、第1の値を有する連続した識別データを備えた、各持続性サブシーケンスの長さを計算するステップ;
-n個のフレーム全ての識別データを指す、上記の持続性サブシーケンスの長さ配分に基づいて、基準閾値を計算するステップ;
-n個のフレームの各々について:
・フレームnが、実際のドップラ信号を伴う画素を表わすよう、上記の閾値よりも長い長さを有する上記の持続性サブシーケンスの内1つに対応する場合、上記の画素位置が上記の第2のカテゴリに属する情報を;または
・フレームnが、アーチファクトを表わすよう、閾値よりも短い長さを有する上記の持続性サブシーケンスの内、別の1つに対応する場合、上記の画素位置が上記の第1のカテゴリに属する情報を、
対応したフレームの各画素位置に関連付けるために、画像データの第2のセット(SEED)を識別するステップ。
【0031】
この方法は、n個のフレームにおけるドップラ信号の持続性及び識別データに基づく。この識別データは、ドップラ活性化の存在を示す第1の値に属していても、アーチファクトと考慮されるが、n個のフレームにおいて比較的弱い持続性であり、識別データがドップラ活性化の存在を示す第1の値に属するため、データはn個のフレームにおいて、より持続性がある。
【0032】
ドップラ活性化の時間的持続シーケンスを生成するステップは、各フレームの部分に適用される。実施形態によると、このような領域は、フレームの単一画素であり、映像フォーマットのフレームにおける画素が存在するほど、多くの持続シーケンスが生成される。すなわちフレームを構築する画素マトリクスは、例えば800×566フォーマットである。各持続シーケンスは、映像の各フレームについて、識別データを含む。別の実施形態によると、持続シーケンスが指すフレームの部分は、ドップラ活性化を伴う画素の接続構成要素である。
【0033】
この第2の事象において、特に、フレームn及びフレームn+1における第1のカテゴリの画素を備えた、接続構成要素のために、探索アルゴリズムを実行するステップを実施して、上記のフレーム部分を定義する必要がある。ここで持続シーケンスを生成するステップは、フレームnにおける第1の接続構成要素における第1のパラメータを、フレームn+1における第2の接続構成要素と比較するステップと、第2の接続構成要素を第1の接続構成要素における第1の持続シーケンスに関連付けるか、またはnフレーム及びn+1フレームの間における接続構成要素の追跡を実現するために、上記の比較するステップに基づいて、第2の接続構成要素のための第2の持続シーケンスを生成するステップと、を含む。上記のパラメータは、好ましくは重心、及び/または、第1の及び第2の接続構成要素の重複を表わすパラメータ、及び/または、第1及び第2の接続構成要素における形状の類似性を表わすパラメータ、及び/または、第1及び第2の接続構成要素のサイズもしくは寸法のパラメータ、である。
【0034】
このように、接続構成要素は、ドップラ活性化領域の追跡または追尾を実施するのを可能にし、処理精度は、ドップラデータ取得中に変化するドップラ信号領域の存在下で、向上される。
【0035】
フレーム部分が画素である場合の、好ましい実施形態によると、本方法は、n番目のフレームに関する第2の画像データセット(SEED)に基づいて、少なくとも1つのn番目のフレームにおいて、セグメント分解アルゴリズムを実施して、アーチファクトを表わす画素が事前に除去されているドップラ信号を含んだ、別の画素を伴う第2の画素データセットを拡張するステップ、を含む。特に、実際のドップラ信号を表わす画素を参照した、各フレームの第2のデータセットにおいても、接続構成要素の調査が実施される。各フレームについて、映像フレームの接続構成要素と、実際のドップラ信号の実際のドップラ信号画素における画素の接続構成要素と、は重ねられ、例えば90%の重ねた閾値を定義する。重複テストをパスし、かつ機能しない映像フレームの接続構成要素は保持され、例えば変更される。重複テストにパスしなかった映像フレームのドップラ活性化接続構成要素における画素は、したがってアーチファクトであると考慮される。
【0036】
詳細には、画像データの第2のセットは、実際のドップラ信号(すなわちアーチファクトに関する画素を排除したドップラ信号)を伴う画素の代表域の範囲を、過小評価する傾向があることが判明している。オリジナルフレームを処理する精度を向上させるために、セグメント分解アルゴリズムが適用され、前の段落で示したように、事前に除去されているドップラ信号を伴う追加の画素を併合するよう、画像データの第2のセットを拡張する。これらの画素は、アーチファクトを表わすものと考慮される。
【0037】
好ましい実施形態によると、取得された各フレームは、三次元マトリクスによって表わすことができ、ここで第1の寸法は垂直軸における画素数を表わし、第2の寸法は水平軸における画素数を表わし、最後に第3の寸法はチャネル数(R、G、B)を表わし、それによって各画素を3つの値で示す。
【0038】
本発明の実施形態によると、ドップラ信号を含んだ画素を表わす、ノイズ除去法のステップ2における着色画素の識別は、フレームを構成する画素のR、G,B値を、クラスタの中に分割することによって、及び超音波機械の淡色スケールを識別するクラスタの中に分類されない画素を選択することによって、実現することができる。
【0039】
本発明の別の実施形態によると、ノイズ除去法のステップ2における着色画素の識別は、画素を選択することによっても実現することができ、そこではRとG、GとB、またはRとBチャネルの強度差が、所定の閾値以上である。
【0040】
好ましい実施形態によると、閾値は、配分の90番目の百分位数として計算される。なぜなら、目的はドップラ信号の、最小の活性化長さの値を得ることであるためであり、それによって、この閾値よりも長い活性化シーケンス長さは、実際の信号に相当するものと想定され、その一方で閾値よりも短い活性化シーケンス長さは、アーチファクトと想定される。
【0041】
別の好ましい実施形態によると、ドップラ信号の、最小値の活性化の長さが、閉じて分離されたドップラ領域すなわちフレーム内に含まれた接続構成要素の、時間的持続性を追跡することによって導出されたとき、閾値は98番目の百分位数として計算される。
【0042】
別の実施形態によると、フレーム部分の両方における実施形態の閾値は、配分の非対称を補うために、対数にわたる代表的なドップラ活性化サブシーケンス長さの、2倍の標準偏差を伴う平均の合計として計算される。
【0043】
実際の信号の位置を特定するステップにおける、好ましい実施形態によると、ノイズ除去されたフレームにおける明白な結果は、オリジナルフレームのカラーチャネル[R、G、B]の値を伴うドップラ信号画素を含み得る。その一方で、他の画素は、グレースケール表示に分類される3つのチャネルにおける平均値を想定することになる。
【0044】
成長ステップの領域における好ましい実施形態によると、形態学的崩壊法が使用され、その後に形態学的膨張法が続き、5画素のカーネル径またはサイド、及び10%の閾値を伴う。
【0045】
好ましい実施形態によると、n番目のフレームを表示するステップが存在し、そこでは実際のドップラ信号に相当する画素は保持され、アーチファクトに相当する画素は変更され、例えばドップラ活性化画素として表示されないよう、所定のグレースケール値を提示する。
【0046】
本発明の好ましい実施形態を、例示目的のみで、添付の図面を参照して、以下で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】エコードップラタイプの映像から抽出した、フレームの例を示す図である。
【
図2】左に着色画素を識別する例、及び右に、例えばバイナリマスクなど、対応した画素セットを示す図である。
【
図3】左にSEEDの例、右に関連のフレームを示す図である。
【
図4】本発明で説明する方法のステップ7における4つのサブステップを示す図であり、上部左から開始し、時計回りに進み、接続構成要素の識別、膨張動作結果、着色画素の計算、及び本発明で説明する方法を形成するステップの最後の実行におけるフレームの最終結果、を確認することが可能である。
【
図5a】左に、超音波映像から抽出されたフレームの例を、右に、超音波映像で検出可能ないくつかのタイプのアーチファクトについて、本発明の方法によって操作されたノイズ除去処理の最後における、対応したフレームを示す図である。
【
図5b】左に、超音波映像から抽出されたフレームの例を、右に、超音波映像で検出可能ないくつかのタイプのアーチファクトについて、本発明の方法によって操作されたノイズ除去処理の最後における、対応したフレームを示す図である。
【
図5c】左に、超音波映像から抽出されたフレームの例を、右に、超音波映像で検出可能ないくつかのタイプのアーチファクトについて、本発明の方法によって操作されたノイズ除去処理の最後における、対応したフレームを示す図である。
【
図5d】左に、超音波映像から抽出されたフレームの例を、右に、超音波映像で検出可能ないくつかのタイプのアーチファクトについて、本発明の方法によって操作されたノイズ除去処理の最後における、対応したフレームを示す図である。
【
図5e】左に、超音波映像から抽出されたフレームの例を、右に、超音波映像で検出可能ないくつかのタイプのアーチファクトについて、本発明の方法によって操作されたノイズ除去処理の最後における、対応したフレームを示す図である。
【
図6】それぞれのフレームに関連付けられた、対応した画像データセットを伴う、時間的シーケンスにおける複数のフレームの概略概要図である。
【
図7】エコードップラタイプの映像における2つの連続したフレーム間の、信号及びノイズの時間的変動の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1は、エコードップラ映像に属する単一のフレームの例を示し、そこでは、上部左の画像領域に存在する実際のドップラ信号、及び嚢を示す特別な事例における、下部分の画像の暗い領域内に存在するアーチファクト、を識別することが可能である。
【0049】
以下の説明で、好ましい実施形態の例による、実際の信号の側面に位置し得る、及び/または実際の信号に重なり得る、複数のアーチファクトを除去するよう設計された、超音波映像を分析する本発明の方法によって構成されるステップが、さらに詳細に分析される。
エコードップラ映像入力の取得
【0050】
このステップにおいて、超音波映像はフレームのパケットの形態で取得される。または映像を直接取得することが可能であり、それはアルゴリズム自体によって解凍されることになり、それはアルゴリズムによって実行される単一フレームの分析が、全てのフレームの連続を通して時間的持続性の評価をもたらすことになる。各フレームは、三次元マトリクスとして表わすことができ、そこでは、第1の寸法は垂直軸の画素数を表わし、第2の寸法は水平軸の画素数を表わし、第3の寸法はカラーチャネル数(R、G、B)を表わす。このように、各画素の値を、0、255の範囲の、3つの値によって示すことができる。
ドップラ信号を含んだ画素識別
【0051】
実際のドップラ信号を、アーチファクトによって生じたノイズから分割するために、エコードップラ映像に含まれた全てのフレームについて、各フレーム内の全てのドップラ活性化(実際+アーチファクト/ノイズ)を分離する必要がある。この動作の結果は、各フレームについて、2つのセットのデータ識別をもたらす。ここで第1のセットはドップラ活性化(着色画素)を含み、第2のセットは超音波信号(グレースケールまたは単色)を含む。
【0052】
超音波映像に含まれた全てのフレームの、上記で識別された2つのセットの統合は、nフレーム×垂直軸におけるn画素、×水平軸におけるn画素、の寸法のマトリクスを通して表わすことができる。
【0053】
詳細には、このステップにおいて、着色画素すなわちドップラ活性化を含んだ画素は、各フレームについて識別され、その後画像データセットが生成され、そこではドップラ活性化(着色画素)を含んだ画素値は1で、他の画素値は0(グレースケールまたは単色画素)である。
【0054】
着色画素は、それらの画素を選択することによって識別でき、そのためにRとG、GとB、またはRとBチャネルの強度の間の差における率は、所定の閾値のもの以上である。好ましい実施形態による、この閾値は、|R-G|≧30V|R-B|≧30V|G-B|≧30として識別される。その理由は、計算スピードの要求によること、及び検査下の画素が2つのデータセットのいずれに分類されるかを識別するために既知の色を、ドップラ信号を保持する着色画素に割り当てる必要がないことによる。チャネル強度の差を通して識別するための代替の方法は、機械学習法である。
【0055】
本方法によると、フレームにおける全ての画素は、色によって別個のセットに分割され、次に2つのサブセットに併合される。すなわち第1のものはドップラスペクトル(着色画素)で見られる全ての色セットを含み、第2のものはグレースケールの超音波に特有の色セットを含む。これらの動作の基本は、所与の映像におけるドップラ信号表示の、特有の色調の演繹的知識である。各画素のための、この色ラベルの割り当ては、管理されないクラスタ化動作によって、または画像内の主な色を抽出するために訓練された分類子/ニューラルネットワークの助けを伴って、行なうことができる。
【0056】
その実施の1つにおいて、本方法は、以下を含む:
(1)K手段など、管理されないクラスタ化方法を、画素[R、G、B]の画素値の配分に初期設定する;
(2)一旦画素がクラスタにグループ分けされると、重心が計算され、クラスタの3つの中央[R、G、B]として、すなわちクラスタの最も代表的な3つとして、定義される;
(3)所与のクラスタを構成する全ての画素まで拡張することによって、色ラベルを重心の各々に割り当てる。この動作は、各重心の色空間(ciede2000)における、既知の色ラベルからの距離を計算することによって、及び重心から、より短い距離におけるもののラベルとして選択することによって、成すことができる。
(4)グレー値(白及び黒を含む)以外の色ラベルを伴う全ての画素を、同じセットに設定し、グレースケール値を伴う画素を別のセットに設定する。
【0057】
これらの方法は、計算能力を必要とし、管理されない方法の場合、ラベルの創出のために映像内でドップラ信号が想定できる、色合いの演繹的知識も必要とする。その結果、映像内でドップラ信号が想定できる色の特性に対する依存性が存在する。その結果、使用した超音波機械の特徴及び設定に対する依存性、ならびに、パワードップラではなく、ドップラのタイプ、カラードップラに対する依存性、が存在する。本方法は、例えば色情報がアーチファクトの分析において保持されるべき場合に、例えば色情報が(従来赤である)接近方向を示す画素のフィルタリングを観察できる場合に、好ましい。
【0058】
強度差の識別法を使用する、着色画素の識別ステップの例が、
図2に示される。画像の左側は、検査下のフレームを示し、一方で画像の右側は、画像データセットに属する対応した要素を示し、ここでフレームにおいて識別された着色画素に相当する明るい領域と、他の画素の暗い領域と、が視認できる。
活性化シーケンスの識別(第2のカテゴリ)
【0059】
本発明の方法の基本的な想定は、ドップラアーチファクト、ノイズは、時間的持続性、すなわちフレームに関して示される期間を有することであり、それは、検査下における所与のエコードップラ映像のための実際の信号よりも短い。
【0060】
ドップラ信号の時間的持続性を定量化するために、各画素の「ドップラ活性化」長さが、2つの動作を通して計算される。
【0061】
第1の実施形態によると、このステップの入力は、n個の(フレーム)×n個の画素の垂直軸×前ステップで作り出されたn個の画素の水平軸、のサイズであるバイナリ画像のマトリクスである。初めに、マトリクスの各画素について、活性化ベクトルが追加され、長さn(映像のフレーム数と等しい)及び基数[0、1](着色の有無による各画素によって推定され得る値)のベクトルとして定義され、各ベクトル要素は、各フレームについて、フレームの対応した画素値を用いて値が付けられることになる。上記の値は、情報の第1のカテゴリ、すなわちドップラ活性化のない画素について、0に相当し、第2のカテゴリ、すなわちドップラ活性化を伴う画素について、1または「0以外」に相当する(
図6)。
【0062】
その後、各ベクトルについて、活性化シーケンスの長さが計算される(1または「0以外」の連続シーケンス-第2のカテゴリ)、シーケンス(1または「0以外」の連続シーケンス-第2のカテゴリ)、及び各シーケンスが、中断せずにドップラを持続(または消失)するフレーム数。
【0063】
これらの動作の適用に従って、得られた結果を、垂直軸でn個の画素×水平軸でn個の画素のサイズのマトリクスとして説明することができ、そこで各マトリクス要素は、異なる長さ1の持続ベクトルである。異なる持続ベクトルの長さの理由は、各画素で検出された活性化/不活性化の数によるものである。各ベクトル要素は、一対の値(カウント、値)であり、ここで値は、シーケンスの値(0、1)を指し、その一方でカウントは、シーケンスにおけるフレーム数を指す。
【0064】
例えば、映像が20のフレームに分割され、かつ座標x1、y1を伴う画素を想定すると、その活性化ベクトルは、上述のように、以下で定義される:
[0、0、0、1、1、0、0、0、0、0、1、1、1、1、1、0、0、1、1、1]
【0065】
対応する期間(または持続)ベクトルは、長さ6(活性化ベクトルにおける活性化/不活性化シーメンスの数に等しい)を有し、以下の対(カウント、値)で構成されることになる;
[(3、0)、(2、1)、(5、0)、(5、1)、(2、0)、(3、1)]
【0066】
別の好ましい実施形態によると、ドップラ信号の時間的持続性を、閉じて分離されたドップラ領域、すなわち単一画素で成すのではなく、フレームの内側におけるドップラ領域の接続構成要素の、時間的持続性を追尾することで成すことができる。
【0067】
ドップラタイプの超音波映像に属するフレームの内側において、超音波走査の対象である重要領域内で、グレースケール(または単色)の画素によって定義された領域を識別することが可能である。それは非ドップラ画素と称され、ドップラタイプの信号及び着色画素によって定義された領域を表わし、それはドップラ画素と称され、ドップラタイプの信号を表わす。ドップラ画素は、実際のドップラ活性化を表わすドップラ画素に従って、さらに区別することができ、それに対して実際のドップラ画素、及びアーチファクトを表わすドップラ画素として基準が作られ、アーチファクトドップラ画素と称される。
【0068】
接続構成要素によって、画像に存在する別個の対象の識別が意味される。これら対象の各々は、接続と呼ばれる同じ隣接関係を満たす画素のセットによって形成された特性を有する。
【0069】
フレーム内の画素の特質を識別し、それらをラベリングして、それらが特定の形状を伴う対象として表わされる単一のセットにグループ分けされるか、を判断するのを可能にするアルゴリズムによって、フレーム内の接続構成要素を識別することが可能である。これらのアルゴリズムは、形態学、重心距離、または重複などの基準に基づき、例えば実際のドップラ画素のカテゴリに属する画素を、人工のドップラ画素のカテゴリに属する画素から区別するのを可能にする。このアルゴリズムのファミリーは、所与のフレームにおける接続構成要素が一旦識別されたら、対象が後続フレームで変形または分解されたとしても、同じ接続構成要素に属する対象を区別できるように、後続のフレームでそれらを追跡するのを可能にする。追加として、接続構成要素がその後のフレームでもはや視認できないとき、アーチファクトをフィルタで取り除くことで、それら接続要素を識別することが可能である。
【0070】
基本となる必要性は、ドップラタイプの超音波映像における様々な実施から現出する。実際、静止映像の場合、プローブは移動せず、重要領域及び血管は、常に同じ領域を、映像を構築するフレームのシーケンスに沿ってカバーする。この場合、時間的持続性を、映像における全てのフレームのバイナリ画像マトリクスで、同じ列及び行の値を考慮することによって、画素ごとに判断することができる。反対に、取得フェーズの間にプローブが移動する映像を作る場合、背景は、もはや映像を構築するフレームのシーケンスに沿って静止せず、単一の画素は、連続したフレーム間の固定した対応を維持しない。この場合、時間的持続性は、映像を構成するフレームのシーケンスに沿って存在する接続構成要素を考慮することによって、実施することができる。一旦全てのドップラ活性化が分離されると(実際の信号、及びアーチファクト/ノイズ信号の両方を考慮すると)、前の段落「ドップラ信号を含んだ画素識別」で説明したように、各フレーム内において、接続構成要素は、2つの主なステップを通して識別される。
【0071】
第1の初期設定フェーズにおいて、対応した映像のフレームに関連付けられた第1の空ではないバイナリマスクに位置された、全ての接続構成要素(対象)は、識別される。
【0072】
このマスクについて、矩形の境界ボックスの重心、または接続構成要素自体の重心は、識別された各構成要素のために計算され、この構成要素に関連付けられたベクトルV0は、以下の情報を用いて初期設定される:
-唯一の識別子
-矩形の境界ボックスの重心、または接続構成要素自体の重心;
-現在のマスク内で、構成要素を境界付ける矩形の座標;
-関連のフレームに存在するときに、対象によって占有された座標(列及び行)の表示を含むことになるフレームの、全長に等しいサイズのベクトルV1であって、その初期設置フェーズにおいて、現在のフレームの対象によって占有された座標(列及び行)は、第1の要素として記憶される、ベクトルV1;
-上記の対象がまだ追跡されているか否か、を示すためのブール(boolean)情報BV0は、対象が追跡されたことを示す値に初期設定される。値の例は、T、1、Y、S、など;
-対象が、その初めの現出後にもはや視認できないフレームの数を示す、漸進的IV0;
-映像を構築するフレームの全長に等しい寸法のベクトルV2であって、各要素が設定されたとき、関連のフレームに対象の存在を示す、ベクトルV2。
【0073】
図7を参照し、左の画像が第1の空ではないバイナリマスクを表わすと想定すると、初期設定フェーズは、マスク内の4つの構成要素を検出することになる:S(Tn)、N1(Tn)、N2(Tn)、N3(Tn)。これらの構成要素の各々について、ベクトルは初期設定され、ベクトルV
S(Tn)、V
N1(Tn)、V
N2(Tn)、V
N3(Tn)は、上述の情報を含む。
【0074】
初期設定フェーズによって識別された後、各バイナリマスクについて、現在のマスクTn+1に存在する対象が、前のマスクTnで識別された移動する対象の1つとして追跡されるのではなく、新しい対象を表わすかどうか、を判断するものとする。この結果を実現するために、以下が必要となる:
-現在のマスクTn+1における全ての対象の位置を特定すること;
-マスクTn+1に属する各対象について、重心と、マスクTn+1の内側における構成要素の境界を決める矩形の座標と、を判断すること;
-TnとTn+1との間における対象の考えられる全ての対について、重心と、座標間の重複値との間の距離が計算される。
【0075】
一旦上記の値が計算されると、以下の条件の内少なくとも1つが満たされた場合、マスクTn+1に位置されたOTn+1対象は、前のマスクTnにおける対象として識別されるものとする。
-対象OTnが存在し、その対(OTn、OTn+1)、その重複値は、所定の閾値Tsと少なくとも等しい;
-対象OTnが存在し、その対(OTn、OTn+1)、その座標間の距離は、所定の閾値Tdと最大でも等しい。
【0076】
追加の比較規準を使用して、所与のマスクにおける対象が、形状、特徴、及び重複対象マスクの類似性など、前のマスクと同じ対象として識別され得るかどうかを判断することができる。アルゴリズムの実施形態によると、対象OTn、及び対象OTn+1の画素サイズの差は、所与の閾値Tm未満である。
【0077】
対象OTn+1が、前のマスクにおいて追跡された対象として識別された場合、関連の初期設定ベクトルは、対象OTn+1の特性を用いて更新される。:
-ベクトルV1は、現在のフレームにおける対象OTn+1によって占有された座標(列及び行)を含んだ、新しい要素を追加することによって更新される;
-ベクトルV2は、検査下のフレームに対応した要素の値を設定することによって更新される。
【0078】
現在のマスクTn+1における複数の対象が、前のマスクの追跡された対象として識別された場合、V1及びV2ベクトルは、それらそれぞれの特性を用いて、それらの各々は更新される。
【0079】
対象OTn+1が前のマスクで追跡された対象ではないと識別された場合、新しい対象が、初期設定フェーズ中に説明したのと同じ方法で、新しいV0ベクトルを定義することによって、追跡される。
【0080】
もはやバイナリマスクTn+1における適合を有さないバイナリマスクTn+1に存在する対象も、以下のように更新される:
-対象が追跡されたか否かを特定するブール特性BV0が、対象がもはや追跡されないことを示す値に設定される。値の例は、F、0、Nなどである。
-対象がもはや追跡されない、現出後のフレーム数を表わす漸進的IV0は、1だけ増加する。許容閾値によって、特定のフレーム数について消失した場合の対象は、所与のフレーム数について追跡される。
【0081】
実施形態によると、許容閾値は、対象が所与のフレーム数について消失し、次に後続のフレームに再現し得る可能性を考慮するよう、定義される。この閾値は、一次的に消失した対象が、2つの分離した対象ではなく、単一の追跡された対象として考慮されるよう、この事象が取り扱われるのを可能にする。実施形態によると、閾値は0であり、したがってフレームシーケンスを通して、対象の消失及び再現の事象は、2つの分離した対象として取り扱われる。
【0082】
図7は、2つの連続したフレーム間の、信号及びノイズの時間的変動の例を示す図である。
【0083】
接続構成要素の識別についての前の説明、及びバイナリマスクTnが第1の空ではないマスクであると想定すると、次に:
-初期設定フェーズ中、4つのベクトルV01、V02、V03、V04は、それぞれ対象S(Tn)、N1(Tn)、N2(Tn)、N3(Tn)に関連付けられて定義され、上述のそれぞれの特性を伴う値に設定されることになる;
-後続のマスクTn+1において、信号は劣化して、新しい対象[S1(Tn+1)、S2(Tn+1)、S3(Tn+1)]の出現と、Tnに存在する状況と比較して、他の[N2(Tn)、N3(Tn)]の消失と、を起こす;
-後続のマスクTn+1の追跡の終わりにおいて:
・対象S1(Tn+1)、S2(Tn+1)、S3(Tn+1)は、対象S(Tn)の接続構成要素として追跡されることになり、それらの特性は、時間Tで初期設定されたベクトルV01で更新されることになる;
・対象N1(Tn+1)は、対象N1(Tn)の接続構成要素として追跡され、その特性は、時間Tで初期設定されたベクトルV02で更新されることになる;
・もはやマスクTn+1における適合を有さない、マスクTnにおける対象N2(Tn)、N3(Tn)は、もはや追跡されないものとして更新されることになる。
活性化シーケンスの長さ配分における基準閾値の計算
【0084】
このステップの目的は、最小のドップラ活性化長さの値を得ることであり、それによって閾値よりも長い活性化が、実際のドップラ信号に属すると考慮され、その一方で閾値よりも短い活性化は、アーチファクトに関連付けられる。このステップは、前のステップで計算された期間(または持続)ベクトルのn-画素の寸法的セットを用いて開始する。しかし、このステップにおいて、活性化長さの値のみが考慮されることになり、非活性化長さは無視されることになる。
【0085】
超音波映像を構築する20のフレームに沿った画素x1、y1に関する持続性ベクトルを見出した前のステップで定義した、この例を用いて進める:
[(3、0)、(2、1)、(5、0)、(5、1)、(2、0)、(3、1)]
【0086】
活性化長さのみが考慮され、すなわち
[(2、1)、 (5、1)、(3、1)]
及びそれらから、以下のように期間のセットを定義することが可能である:
[2、5、3]。
【0087】
この手順は、フレームを構成する全ての画素について実行される。基準閾値は、90百分位数値または通常の配分のために(平均+1.282×標準偏差)として、全ての画素について全ての活性化継続の配分において計算される。
【0088】
閾値は、最小のドップラ信号の活性化長さが、フレーム内の、閉じて分離されたドップラ領域の時間的持続性を追跡することによって得られた場合、98番目の百分位数として計算される。
実際の信号SEEDの位置特定
【0089】
一旦閾値が定義されると、各フレームについて実際の信号座標の位置を特定する必要があり、ドップラ信号はシードする。
【0090】
各画素について、事前に計算された活性化シーケンスのベクトルが考慮に入れられ、以下のように閾値と比較される:
-閾値以上の長さを伴うシーケンスは「オン」に保たれる(活性化ベクトルシーケンスにおいて、画素値=1を保つ);
-より短い長さの活性化シーケンスは「オフに切替えられる」(「オンに切換え」が閾値に届かないことが、実際のドップラ信号に属するものと考慮されても、それらの活性化シーケンスについて、画素値=0に設定することによる)。
【0091】
前のステップで定義された例を用いて進めて、かつ前のステップが4の閾値で生じたと想定すると、画素x1、y1の活性化長さのベクトル:
[(3、0)、(2、1)、(5、0)、(5、1)、(2、0)、(3、1)]を確認でき、
以下のシーケンスのみが閾値を超えた継続を有する:
(5、1)。
【0092】
したがって、活性化ベクトルは最初に以下のように計算されている:
[0、0、0、1、1、0、0、0、0、0、1、1、1、1、1、0、0、1、1、1 ]
このステップの終わりには、上記で定義したように以下のようになる
[0、0、0、0、0、0、0、0、0、0、1、1、1、1、1、0、0、0、0、0]。
【0093】
このステップの終わりにおいて、n個のフレーム×垂直軸でn個の画素、×水平軸でn個の画素の寸法を伴うマトリクスが生成されることになる。ここで、各フレームについて、各画素は、関連の活性化シーケンスが閾値に少なくとも等しい場合は値1を、そうでなければ0を有することになる。
実際の信号の位置特定
【0094】
このステップは、ドップラ信号を含んだ画素の識別ステップで定義された、n個のフレーム×垂直軸でn個の画素、×水平軸でn個の画素の寸法のマトリクスを考慮に入れる。ここで、マトリクスの各フレームについて、例えばバイナリマスクなど、前のステップで定義された画像データセットを使用して、映像の対応したオリジナルフレームにおける実際のドップラ信号を分離する(ノイズ除去されたフレームを得る)。各フレームについて、オリジナルフレームに属する画素の[R、G、B]値は、次に、前のステップで得られた画像データセットの1の値を伴う画素座標を考慮して、オリジナルフレームにおける各座標に対応した、関連の3つの[R、G、B]チャネル値を取入れることによって、またはオリジナルフレームにまでバイナルマスクを乗算することによって、実際の信号として保つことになる。
【0095】
考えられるノイズ除去フレームビューは、ドップラ信号画素が、オリジナルフレームの[R、G、B]チャネル値を保持することであり、したがって着色されており、その一方で他の画素は、オリジナルフレームにおける3つの[R、G、B]チャネル画素の平均値を想定し、したがってそれらはグレースケールである。
【0096】
図3は、左(
図3a)で、少なくとも閾値と等しい長さの画素の活性化シーケンスのみを保存して得られた所与のフレームについての、信号SEEDの例を示す(第2のカテゴリ画素)。
図3の右(
図3b)は、SEEDを
図1のオリジナルフレームに適用して得られたフレームを示す。実際の信号に相当する着色画素が確認することが可能で、その一方でアーチファクトはグレースケールでマスクされている。
セグメント分解及び拡張
【0097】
前の、実際の信号の位置特定ステップは、実際のドップラ信号を含んだ画素座標を戻す。しかし、戻された実際の信号領域は、正確に想定されず、過小評価され得る。例えば信号に重なったアーチファクトを除去した結果、それは実際の信号に属する画素の除去も引き起こす。除去された信号に属する画素に関し得る他の例は、血管の周辺の画素を、サブシーケンスフレームで薄くするオペレータによるプローブの動きによる場合、または信号自体の振動による場合がある。
【0098】
シード位置特定処理で識別された、信号領域の縁部を正確に識別するために、各シード(前のステップの終わりで認識された信号領域/座標など)から開始し、各シードに重なるオリジナル映像からの接続されたドップラ活性化構成要素は、信号領域/座標に装着される。これは、第1のセグメント分解アルゴリズムの、以下の動作に従って、各フレームについて実行される。例えば:
a.対応した活性化画像データセットが選択され、そこで値=1は着色画素を示し、値=0は他を示す(本方法のステップ2で得られた結果)。この画像データセットから、アーチファクトに相当する画素はまだ「オフに切替えられて」いないことに、留意されたい(
図2b)。
b.実際の信号の主な接続構成要素を、可能な限りアーチファクトに関連したものから分離するために、形態学的崩壊動作が、画像データセットに適用される。この実施形態において、崩落は、5画素径の円形カーネルを用いて適用される(
図4a)。
c.ポイントbの画像データセットにおいて、接続構成要素は、識別され、かつラベリングされる。すなわち隣接及び接続されたn画素>1によって形成された各巨視的構成要素(
図4a-それらの色を伴う接続構成要素)。関連の色を伴う接続構成要素。
d.
図4aの接続構成要素は、少なくとも閾値と等しい長さの画素の活性化シーケンスのみが保存された、画像データセットに基づいて、選択される(第2のカテゴリ画素-
図3a)。例えば、
図4eに
図3aのデータを重ねたデータに基づいて、所定の閾値より上の、
図3aの活性化画素を重ねる画素のパーセンテージを伴うよう、矢印で示された最も明るい領域のみが保持される。
e.第2のカテゴリの画素(
図3a)に基づいて選択された、各接続構成要素について、形態学的膨張動作が、前の崩壊適用(その逆動作として崩壊を回復させる)として同じ範囲まで適用される(その逆動作として崩壊を回復させる)。本実施形態(
図4b)において、拡張が、5画素径の円形カーネルを用いて適用される。
【0099】
拡張された画像が、スクリーン上で表示される必要があるとき、以下のステップが実行され、
図4bから開始される:
各拡張された接続構成要素について、フィルタリングから残った画素がいくつ含まれるかをカウントする(前のステップによる、実際の信号を含む画素);
新しいノイズ除去したフレームにおいて、着色画素の数が、所与の閾値以上である場合、色は全ての構成要素に拡張され、画素に、オリジナルフレームにおける対応した[R、G、B]を割り当てる。この実施形態において、最適な閾値は10%に設定されている。
【0100】
代替の実施形態によると、
図3aの領域は以下のように拡張される(図示せず):
図3aの画像データ(第2のカテゴリ)は、シードを定義するために関連のオリジナルフレーム(
図1)に重ねられる;
セグメント分解アルゴリズムは、例えば、
図3aがシードである最も大きい領域を識別するために増長する領域などのシードに基づいて、オリジナルフレームに適用される。
【0101】
この代替の方法でも、オリジナルフレームにおけるドップラ信号を表わす、より大きい領域を得るのを可能にする。なぜなら、アーチファクト、特にモーションアーチファクトは事前に除去されており、過小評価された拡張のドップラ領域は識別されているためである。すなわち
図3aである。
【0102】
最後に、
図5は、オリジナルフレームをそのノイズ除去されたフレームと横並びに配置することで、超音波映像のフレームからアーチファクトを除去するための、本発明で説明した方法のいくつかの実施形態を示す。
【0103】
左側は、ノイズ除去が適用される前のフレームを示し、右側はその後を示す。「アーチファクト」と考えられる着色画素が、フレースケール画素によって置換されていることに留意されたい。これら5つの映像は、それらが異なるタイプのアーチファクトを含むため選択されており、それらは、内部で異なる解剖学的対象を示し、かつ異なる特質を有する。そのオリジナルサイズにおいて、各フレームは800×566画素である。全体で、着色画素は、少なくとも30ポイントにおいてR、G、Bチャネル間の強度の差を示すよう、識別されている。選択された活性化閾値は、映像における各画素について、全ての活性化長さの90%である。
【0104】
図5a:フラッシュアーチファクト除去の例。この映像は、113フレームで構成され、57fpsで記録される;アルゴリズムは、17の連続した活性化フレームの受容閾値を設定している。
【0105】
図5b:フラッシュアーチファクト除去の例。この映像は、70フレームで構成され、13fpsで記録される;アルゴリズムは、11の連続した活性化フレームの受容閾値を設定している。
【0106】
図5c:フラッシュアーチファクト除去の例。この映像は、138フレームで構成され、57fpsで記録される;アルゴリズムは、16の連続した活性化フレームの受容閾値を設定している。
【0107】
図5d:疑似フローアーチファクト除去の例。この映像は、499フレームで構成され、57fpsで記録される;アルゴリズムは、19の連続した活性化フレームの受容閾値を設定している。
【0108】
図5e:ランダムかつ極度のアーチファクト除去の例。この映像は、229フレームで構成され、57fpsで記録される;アルゴリズムは、14の連続した活性化フレームの受容閾値を設定している。
【0109】
本発明によると、対応した画素を伴うn-フレームは重ねられ、p×q位置(高さ×幅)の、関連のj番目の画素が対応している。なぜなら、各フレームは同じ寸法を有するためであり、例えば超音波映像を実施する機械に基づいており、その定常性は高い。
【0110】
図8は、ドップラ映像のアーチファクト除去法のフローチャートを示し、そこでは上述のステップシーケンスが視認でき、それはアーチファクトのない、またはアートファクトを大幅に軽減した映像を得るのを可能にする。
【国際調査報告】