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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-20
(54)【発明の名称】ポリウレタンフォームの製造
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20231213BHJP
   C08G 81/00 20060101ALI20231213BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20231213BHJP
   C08G 18/61 20060101ALI20231213BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20231213BHJP
【FI】
C08G18/00 F
C08G81/00
C08G18/42
C08G18/61
C08G101:00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534882
(86)(22)【出願日】2021-11-22
(85)【翻訳文提出日】2023-06-07
(86)【国際出願番号】 EP2021082463
(87)【国際公開番号】W WO2022122360
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】20212361.8
(32)【優先日】2020-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ズーハン
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル フェレンツ
(72)【発明者】
【氏名】カーステン シラー
【テーマコード(参考)】
4J031
4J034
【Fターム(参考)】
4J031AA49
4J031AA59
4J031CA06
4J031CA32
4J031CA66
4J034DA01
4J034DB03
4J034DB07
4J034DF01
4J034DF02
4J034DF16
4J034DF20
4J034DF22
4J034DG03
4J034DG04
4J034DG05
4J034DG06
4J034DQ04
4J034DQ28
4J034HA01
4J034HA06
4J034HB05
4J034HB07
4J034HB08
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC22
4J034HC34
4J034HC35
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC63
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034KA01
4J034KB01
4J034KC18
4J034KC37
4J034KE02
4J034NA03
4J034NA06
4J034QB16
4J034QB17
4J034QC01
4J034RA10
(57)【要約】
少なくとも1つのイソシアネート成分と、ポリオール成分と、任意にウレタン結合またはイソシアヌレート結合の形成を触媒する触媒と、発泡剤とを含む、ポリウレタンフォーム、特に硬質ポリウレタンフォームを製造するための組成物であって、該組成物は、ポリエステル-ポリシロキサンブロックコポリマーを含むものとする、組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのイソシアネート成分と、ポリオール成分と、発泡剤と、任意にウレタン結合またはイソシアヌレート結合の形成を触媒する触媒とを含む、PUフォーム、特に硬質PUフォームを製造するための組成物において、前記組成物は、ポリエステル-ポリシロキサンブロックコポリマーを含むことを特徴とする、組成物。
【請求項2】
式1
【化1】
のポリエステル-ポリシロキサンブロックコポリマーが使用され、ここで、
=1~16個の炭素原子を有する同一のまたは異なる脂肪族または芳香族炭化水素基、好ましくは1~8個の炭素原子を有する脂肪族または芳香族炭化水素基、特にメチルまたはフェニルであり、
=R、RまたはRの群からの、好ましくはRの同一のまたは異なる基であり、
=同一のまたは異なるポリエステル基、好ましくは、一般式2
【化2】
のポリエステル基であり、
=任意に1つ以上の酸素原子によって中断された同一のまたは異なる二価のアルキル基、好ましくは-(CH-、-(CH-、-(CHOCHCH-、または-(CHOCHCH(CH)-であり、
=OまたはNHまたはNMe、好ましくはOであり、
=1~20個の炭素原子を有する同一のまたは異なる二価のアルキル基、好ましくは一般式-[CR -のアルキル基であり、
=1~8個の炭素原子を有する同一のまたは異なるアルキル基、またはH、好ましくはメチルまたはHであり、
=一般式-C(O)R10の同一のまたは異なる基、またはH、好ましくはHであり、
10=1~16個の炭素原子を有する同一のまたは異なるアルキル基、好ましくはメチルであり、
=同一のまたは異なるポリエーテル基、好ましくは、式3
【化3】
の同一のまたは異なるポリエーテル基であり、
11=2~12個の炭素原子を有する同一のまたは異なる二価のアルキル基、好ましくは3~6個の炭素原子を有する二価のアルキル基、特に-(CH-であり、
12=1~12個の炭素原子を有する同一のまたは異なるアルキル基、好ましくはメチル、エチルまたはフェニルであり、
13=-C(O)R10、H、および1~8個の炭素原子を有するアルキル基の群からの同一のまたは異なる基、好ましくは-C(O)CH、Hまたはメチルであり、
a=5~200、好ましくは5~100、特に好ましくは10~80であり、
b=1~20、好ましくは1~15、特に好ましくは2~10であり、
c=0~20、好ましくは0~15、特に好ましくは0であり、
d=2~80、好ましくは2~60、特に好ましくは3~40であり、
e=1~16、好ましくは1~12、特に好ましくは1~6であり、
x=0~80、好ましくは0~60、特に好ましくは3~40であり、
y=0~80、好ましくは0~60、特に好ましくは3~40であり、
z=0~60、好ましくは0~20、特に好ましくは0であるが、
但し、x+y+z>2であることを条件とし、かつ
少なくとも1つの基Rが分子中に存在しなければならず、好ましくは少なくとも2つの異なる基Rが分子中に存在することを条件とする、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリエステル-ポリシロキサンブロックコポリマーが、環状エステル、その環状二量体または高次類似体と、アルコール官能性シロキサンおよび/またはアミノ官能性シロキサンとの反応によって、有利には式1および2から誘導して得られる、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリエステル-ポリシロキサンブロックコポリマーの製造に、特にプロピオラクトン、ラクチド、カプロラクトン、ブチロラクトンまたはバレロラクトンから選択される少なくとも2つ以上の異なる環状エステルが使用される、請求項1から3までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリエステル-ポリシロキサンブロックコポリマーが、ポリオール100部に対して0.01~15部、有利には0.1~10部、特に好ましくは0.1~5部の総量で使用される、請求項1から4までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、発泡剤として、3個、4個または5個の炭素原子を有する炭化水素、好ましくはシクロペンタン、イソペンタンおよび/もしくはn-ペンタン、ハイドロフルオロカーボン、好ましくはHFC 245fa、HFC 134aおよび/もしくはHFC 365mfc、過フッ素化化合物、例えば、ペルフルオロペンタン、ペルフルオロヘキサンおよび/もしくはペルフルオロヘキセン、ハイドロフルオロオレフィンまたはハイドロハロオレフィン、好ましくは1234ze、1234yf、1224yd、1233zd(E)および/もしくは1336mzz、水、含酸素化合物、例えば、ギ酸メチル、アセトンおよび/もしくはジメトキシメタンおよび/または塩素化炭化水素、好ましくはジクロロメタンおよび/もしくは1,2-ジクロロエタンを含む、請求項1から5までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリエステル-ポリシロキサンブロックコポリマーが、ポリエステル側鎖に加えてポリエーテル側鎖をも含む、請求項1から6までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
ポリエーテルのみを含有するシロキサン系泡安定剤が、泡安定剤の総量に対して15重量%未満、有利には10重量%未満、特に5重量%未満の量で含まれているか、または全く含まれていない、請求項1から7までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
Si含有泡安定剤が、泡安定剤の総量に対して10重量%超、特に20重量%超、特に好ましくは50重量%超の量で含まれている、請求項1から8までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項10】
ポリイソシアネートと、反応性水素原子を有する化合物と、発泡剤と、任意に他の添加物質とを含む発泡性反応混合物をベースとするPUフォーム、特に硬質PUフォームの製造方法であって、ポリエステル-ポリシロキサンブロックコポリマー、有利には請求項1から9までのいずれか1項で定義されたポリエステル-ポリシロキサンブロックコポリマーを使用し、特に請求項1から9までのいずれか1項で定義された組成物を使用する、方法。
【請求項11】
請求項10記載の方法により製造された、PUフォーム、特に硬質PUフォーム。
【請求項12】
断熱材としてのおよび/または建築材料としての、特に建築用途での、特にスプレーフォームでの、または冷却分野での、吸音のための音響用フォームとしての、包装用フォームとしての、自動車のヘッドライナーまたは配管用の配管外被としての、請求項11記載のPUフォーム、特に硬質PUフォームの使用。
【請求項13】
特に請求項1から9までのいずれか1項記載の組成物を使用してPUフォーム、有利には硬質PUフォームを製造する際の、特に請求項2から4までのいずれか1項に定義されたポリエステル-ポリシロキサンブロックコポリマーの使用。
【請求項14】
PUフォーム、有利には硬質PUフォームを製造する際の泡安定化成分としての、請求項13記載の使用。
【請求項15】
PUフォーム、有利には硬質PUフォームの可燃性を低減するための、特にPUフォームの難燃性、有利には耐炎性を改善し、かつ/または火炎高さを低減するための、特にDIN 4102-1による少なくともB2の難燃規格に準拠するための、請求項13または14記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン、特にポリウレタンフォームの分野に関する。本発明は特に、ポリエステル-ポリシロキサンブロックコポリマーを用いたポリウレタンフォームの製造、さらには該フォームの使用に関する。ここでいうポリウレタンフォームとは、特に硬質ポリウレタンフォームである。
【0002】
ポリウレタン(PU)とは、本発明において特に、ポリイソシアネートとポリオールあるいはイソシアネート反応性基を有する化合物との反応によって得られる生成物であると理解される。ここで、ポリウレタン以外に、例えばウレトジオン、カルボジイミド、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、ウレアおよび/またはウレトイミンのようなさらなる官能基も形成され得る。したがって、ポリウレタンのみならず、ポリイソシアヌレート、ポリウレア、ならびにウレトジオン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ビウレット基およびウレトイミン基を有するポリイソシアネート反応生成物も、本発明の意義におけるPUであると理解される。本発明において、ポリウレタンフォーム(PUフォーム)とは、ポリイソシアネートとポリオールあるいはイソシアネート反応性基を有する化合物とをベースとする反応生成物として得られるフォームであると理解される。ここで、名称が挙げられたポリウレタンの他に、例えばアロファネート、ビウレット、ウレア、カルボジイミド、ウレトジオン、イソシアヌレートまたはウレトイミンのようなさらなる官能基も形成され得る。
【0003】
PUフォーム、特に硬質PUフォームの提供に関して、基本的な目的は、良好な難燃性を有するPUフォームを創作することである。このため、難燃性を有する対応する難燃剤が公知の先行技術に記載されている。このような背景から、さらに、PUフォームの提供に際して良好な難燃性を可能にする方法に対する高い需要がある。
【0004】
このような背景から、本発明の特定の具体的な課題は、良好な難燃性を有するPUフォーム、特に硬質PUフォームの提供を可能にすることにあった。
【0005】
この課題は、本発明の主題によって解決される。本発明の主題は、少なくとも1つのイソシアネート成分と、ポリオール成分と、発泡剤と、任意にウレタン結合またはイソシアヌレート結合の形成を触媒する触媒とを含む、PUフォーム、特に硬質PUフォームを製造するための組成物であって、該組成物は、ポリエステル-ポリシロキサンブロックコポリマーを含むものとする、組成物である。
【0006】
本発明による主題は、様々な利点をもたらす。例えば、良好な難燃性を有するPUフォーム、特に硬質PUフォームの提供が可能となる。有利なことに、これは、フォームの他の特性、特にその機械的特性に悪影響を与えることなく可能となる。特に硬質PUフォームの提供に関してはさらに、特に微細なセルで、均一で、かつ欠陥の少ないフォーム構造が可能となる。したがって、特に良好な使用特性を有する対応するPUフォームを提供することができ、特に硬質PUフォームの断熱性能に好影響を与える。本発明は、特に対応するPUフォームの難燃性の向上を可能にするものであり、それにより、対応するPUフォームの製造に使用される従来の難燃剤の量を低減することができる。本発明によるポリエステル-ポリシロキサンブロックコポリマーはさらに、泡安定剤としての役割を果たす。
【0007】
ポリエステル-ポリシロキサンブロックコポリマーおよびその製造は、当業者には古くから知られている。その製造は、例えば、触媒添加下での有機官能性シロキサンと環状エステルとの反応により行うことができ、例えば、触媒としての有機スズ化合物の存在下でのヒドロキシアルキルシロキサンとε-カプロラクトンとの反応により行うことができる。実験の部では、本発明により使用することができるブロックコポリマーの合成について、4つの実施例をもとに説明する。
【0008】
本発明の特に好ましい一実施形態によれば、式1
【化1】
のポリエステル-ポリシロキサンブロックコポリマーが使用され、ここで、
=1~16個の炭素原子を有する同一のまたは異なる脂肪族または芳香族炭化水素基、好ましくは1~8個の炭素原子を有する脂肪族または芳香族炭化水素基、特にメチルまたはフェニルであり、
=R、RまたはRの群からの、好ましくはRの同一のまたは異なる基であり、
=同一のまたは異なるポリエステル基、好ましくは、式2
【化2】
のポリエステル基であり、
=任意に1つ以上の酸素原子によって中断された同一のまたは異なる二価のアルキル基、好ましくは-(CH-、-(CH-、-(CHOCHCH-、または-(CHOCHCH(CH)-であり、
=OまたはNHまたはNMe、好ましくはOであり、
=1~20個の炭素原子を有する同一のまたは異なる二価のアルキル基、好ましくは一般式-[CR -のアルキル基であり、
=1~8個の炭素原子を有する同一のまたは異なるアルキル基、またはH、好ましくはメチルまたはHであり、
=一般式-C(O)R10の同一のまたは異なる基、またはH、好ましくはHであり、
10=1~16個の炭素原子を有する同一のまたは異なるアルキル基、好ましくはメチルであり、
=同一のまたは異なるポリエーテル基、好ましくは、式3
【化3】
の同一のまたは異なるポリエーテル基であり、
11=2~12個の炭素原子を有する同一のまたは異なる二価のアルキル基、好ましくは3~6個の炭素原子を有する二価のアルキル基、特に-(CH-であり、
12=1~12個の炭素原子を有する同一のまたは異なるアルキル基、好ましくはメチル、エチルまたはフェニルであり、
13=-C(O)R10、H、および1~8個の炭素原子を有するアルキル基の群からの同一のまたは異なる基、好ましくは-C(O)CH、Hまたはメチルであり、
a=5~200、好ましくは5~100、特に好ましくは10~80であり、
b=1~20、好ましくは1~15、特に好ましくは2~10であり、
c=0~20、好ましくは0~15、特に好ましくは0であり、
d=2~80、好ましくは2~60、特に好ましくは3~40であり、
e=1~16、好ましくは1~12、特に好ましくは1~6であり、
x=0~80、好ましくは0~60、特に好ましくは3~40であり、
y=0~80、好ましくは0~60、特に好ましくは3~40であり、
z=0~60、好ましくは0~20、特に好ましくは0であるが、
但し、x+y+z>2であることを条件とし、かつ
少なくとも1つの基Rが分子中に存在しなければならず、好ましくは少なくとも2つの異なる基Rが分子中に存在することを条件とする。
【0009】
対応する組成物は、特に難燃挙動や泡安定化といった本発明による上述の利点に関して特に有利な結果を示す。
【0010】
本発明によるポリエステル-ポリシロキサンブロックコポリマーが、環状エステル、その環状二量体または高次類似体と、アルコール官能性シロキサンおよび/またはアミノ官能性シロキサンとの反応によって、有利には式1および式2から誘導して得られる場合、これは、本発明のさらなる特に好ましい一実施形態に相当する。
【0011】
さらに、本発明によるポリエステル-ポリシロキサンブロックコポリマーの製造に、特にプロピオラクトン、ラクチド、カプロラクトン、ブチロラクトンまたはバレロラクトンから選択される少なくとも2つ以上の異なる環状エステルが使用されることが好ましい。これは、本発明のさらなる特に好ましい一実施形態に相当する。
【0012】
ポリエステル-ポリシロキサンブロックコポリマーが、ポリオール100部に対して0.01~15部、有利には0.1~10部、特に好ましくは0.1~5部の総量で使用される場合、これは、本発明のさらなる特に好ましい一実施形態に相当する。
【0013】
さらに、驚くべきことに、本発明によるポリエステル-ポリシロキサンブロックコポリマーと特定の発泡剤との併用が、特に難燃挙動や泡安定化といった本発明による上述の利点に関して特に有利な結果をもたらすことが見出された。
【0014】
また、本発明による組成物において、発泡剤として、水、3個、4個または5個の炭素原子を有する炭化水素、好ましくはシクロペンタン、イソペンタンおよび/もしくはn-ペンタン、ハイドロフルオロカーボン、好ましくはHFC 245fa、HFC 134aおよび/もしくはHFC 365mfc、ハイドロクロロフルオロカーボン、好ましくはHCFC 141b、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)またはハイドロハロオレフィン、例えば、1234ze、1234yf、1224yd、1233zd(E)および/もしくは1336mzz、含酸素化合物、例えば、ギ酸メチル、アセトンおよび/もしくはジメトキシメタン、または塩素化炭化水素、好ましくはジクロロメタンおよび/もしくは1,2-ジクロロエタンが使用される場合、これは、特に好ましい一実施形態に相当し、その際、特に、水、シクロペンタン、イソペンタンおよび/もしくはn-ペンタン、1233zd(E)または1236mzzが使用される。
【0015】
さらに、本発明によるポリエステル-ポリシロキサンブロックコポリマーが、ポリエステル側鎖に加えてポリエーテル側鎖をも含むことが可能である。これは、本発明のさらなる好ましい一実施形態に相当する。
【0016】
本発明によるポリエステル-ポリシロキサンブロックコポリマーは、PUフォームの難燃性を向上させるだけでなく、泡安定剤としての役割も果たす。これにより、慣用の泡安定剤の完全な置換さえ可能となり、ここで、慣用の泡安定剤は、通常は、ポリエステル側鎖を含まないポリエーテルシロキサンである。したがって、ポリエーテルのみを含有するシロキサン系泡安定剤(=ポリエステル側鎖を含まないシリコーンポリエーテルコポリマー)が、泡安定剤の総量に対して15重量%未満、有利には10重量%未満、特に5重量%未満の量で含まれているか、または全く含まれていない本発明による組成物は、本発明の好ましい一実施形態に相当する。しかし、他の泡安定剤との混合物、特にポリエーテルを含有するシロキサン系泡安定剤との混合物を使用することも可能である。
【0017】
さらに、Si含有泡安定剤が、泡安定剤の総量に対して10重量%超、特に20重量%超、特に好ましくは50重量%超の量で本発明による組成物中に含まれている場合、これは、本発明の好ましい一実施形態に相当する。
【0018】
本発明のさらなる主題は、ポリイソシアネートと、反応性水素原子を有する化合物と、発泡剤と、任意に他の添加物質とを含む発泡性反応混合物をベースとするPUフォーム、特に硬質PUフォームの製造方法であって、ポリエステル-ポリシロキサンブロックコポリマー、有利には上記で既に詳説したポリエステル-ポリシロキサンブロックコポリマー、特に上記で好ましい一実施形態で詳説したポリエステル-ポリシロキサンブロックコポリマーを使用する方法である。本発明によるPUフォームの製造方法は、公知の方法によって、例えばハンドミキシング法で、または好ましくは発泡機を用いて実施することができる。発泡機を用いて本方法を実施する場合、高圧または低圧の機械を使用することが可能である。本発明による方法は、バッチ式または連続式のいずれでも実施することができる。
【0019】
本発明の意義における好ましい硬質PUフォーム配合物は、5~900kg/mの単位体積重量を与え、表1に示される組成を有する。
【0020】
【表1】
【0021】
本発明による方法のさらなる好ましい一実施形態および構成に関しては、さらに、本発明による組成物に関して上記で既に与えられた詳説が参照される。
【0022】
本発明のさらなるもう1つの主題は、上述の本発明による方法に従って、特に本発明による組成物を使用して製造されたPUフォーム、特に硬質PUフォームである。
【0023】
本発明によるPUフォーム、特に硬質PUフォームが、5~900kg/m、有利には5~350kg/m、特に10~200kg/mの単位体積重量を有する場合、本発明の好ましい一実施形態が存在する。
【0024】
本発明のさらなる主題は、上記の本発明によるPUフォーム、特に硬質PUフォームの、断熱材としてのおよび/または建築材料としての、特に建築用途での、特にスプレーフォームでの、または冷却分野での、吸音のための音響用フォームとしての、包装用フォームとしての、自動車のヘッドライナーまたは配管用の配管外被としての使用に関する。
【0025】
特に請求項のいずれかに定義された本発明による組成物を使用してPUフォーム、有利には硬質PUフォームを製造する際の、特に請求項のいずれかに定義された本発明によるポリエステル-ポリシロキサンブロックコポリマーの使用は、本発明のさらなる主題であり、その際、ポリエステル-ポリシロキサンブロックコポリマーは、特に、PUフォーム、有利には硬質PUフォームを製造する際の泡安定化成分として使用される。PUフォーム、有利には硬質PUフォームの可燃性を低減するための、特にPUフォームの難燃性、有利には耐炎性を改善し、かつ/または火炎高さを低減するための、特にDIN 4102-1:1998-05による少なくともB2の難燃規格に準拠することを目的とした使用が好ましい。
【0026】
本発明による好ましい組成物は、以下の成分を含む:
a)本発明によるポリエステル-ポリシロキサンブロックコポリマー
b)イソシアネート反応性成分、特にポリオール
c)少なくとも1つのポリイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートプレポリマー
d)ポリオールb)とイソシアネートc)との反応を促進あるいは制御する触媒
e)任意に、界面活性剤としてのさらなるケイ素含有化合物
f)1つ以上の発泡剤
g)任意に、さらなる添加剤、充填剤、難燃剤など。
【0027】
PUフォームの製造に、イソシアネート反応性基を少なくとも2つ有する成分、好ましくはポリオール成分と、触媒と、ポリイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートプレポリマーとが使用される場合、これは、本発明の好ましい一実施形態に相当する。その場合、触媒は、特にポリオール成分を通じて導入される。適切なポリオール成分、触媒、ならびにポリイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートプレポリマー自体は公知であるが、以下にも説明する。
【0028】
本発明の意義においてイソシアネート反応性成分あるいはポリオール成分b)として適したポリオールは、1つ以上のイソシアネート反応性基、有利にはOH基を有する全ての有機物質、およびその調製物である。好ましいポリオールは、ポリウレタン系、特にポリウレタンコーティング、ポリウレタンエラストマーまたはさらにはフォームの製造に慣用的に使用される、ポリエーテルポリオールおよび/またはポリエステルポリオールおよび/またはヒドロキシル基含有脂肪族ポリカーボネート、特にポリエーテルポリカーボネートポリオールおよび/または天然由来のポリオール、いわゆる「天然油系ポリオール」(NOP)の全てである。ポリオールは通常、1.8~8の官能基数および500~15000の範囲の数平均分子量を有する。通常は、10~1200mgKOH/gの範囲の水酸基価を有するポリオールが使用される。
【0029】
硬質PUフォームの製造には、ポリオールまたはその混合物を使用することが好ましいが、但し、ポリオール成分100重量部に対して、含まれるポリオールの少なくとも90重量部が、100を超える、有利には150を超える、特に200を超える水酸基価を有するものとする。軟質フォームと硬質フォームとの根本的な相違点は、軟質フォームが弾性挙動を示し、可逆的に変形可能であることである。軟質フォームは、力の作用により変形しても、力の作用がなくなるとすぐに元の形状に戻る。一方、硬質フォームは、永久に変形したままである。
【0030】
ポリエーテルポリオールは、公知の方法によって製造することができ、例えば、触媒としてのアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属アルコキシドもしくはアミンの存在下での、好ましくは2個もしくは3個の反応性水素原子を結合形態で含む少なくとも1つのスターター分子を添加したアルキレンオキシドのアニオン重合によって、またはルイス酸、例えば五塩化アンチモンもしくは三フッ化ホウ素エーテル化合物の存在下でのアルキレンオキシドのカチオン重合によって、または複合金属シアン化物触媒反応によって製造することができる。適切なアルキレンオキシドは、アルキレン基に2~4個の炭素原子を含む。例としては、テトラヒドロフラン、1,3-プロピレンオキシド、1,2-あるいは2,3-ブチレンオキシドが挙げられ、有利には、エチレンオキシドおよび1,2-プロピレンオキシドが使用される。アルキレンオキシドは、個々に、累積的に、ブロック状で、交互に、または混合物として使用することができる。スターター分子としては、特に、少なくとも2個、有利には2~8個のヒドロキシル基を有する化合物、または分子内に少なくとも2個の第一級アミノ基を有する化合物が使用される。スターター分子として使用することができるのは、例えば、水、二価、三価もしくは四価アルコール、例えば、エチレングリコール、プロパン-1,2-および-1,3-ジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ヒマシ油等、高級多官能性ポリオール、特に糖化合物、例えばグルコース、ソルビトール、マンニトールおよびスクロース、多価フェノール、レゾール、例えばフェノールとホルムアルデヒドとのオリゴマー縮合生成物、ならびにフェノールとホルムアルデヒドとジアルカノールアミンとのマンニッヒ縮合物、ならびにメラミン、またはアミン、例えばアニリン、EDA、TDA、MDAおよびPMDA、特に好ましくはTDAおよびPMDAである。適切なスターター分子の選択は、ポリウレタン製造に際して得られるポリエーテルポリオールのそれぞれの適用分野に依存する。
【0031】
ポリエステルポリオールは、好ましくは2~12個の炭素原子を有する多価脂肪族または芳香族カルボン酸のエステルをベースとする。脂肪族カルボン酸の例は、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、コルク酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、マレイン酸およびフマル酸である。芳香族カルボン酸の例は、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸および異性体のナフタレンジカルボン酸である。ポリエステルポリオールは、これらの多価カルボン酸と、多価アルコール、有利には2~12個、特に好ましくは2~6個の炭素原子を有するジオールまたはトリオール、好ましくはトリメチロールプロパンおよびグリセリンとの縮合により得られる。
【0032】
ポリエーテルポリカーボネートポリオールは、二酸化炭素をカーボネートとして結合状態で含むポリオールである。二酸化炭素は化学工業の多くのプロセスで副産物として大量に生成されるため、アルキレンオキシド重合におけるコモノマーとしての二酸化炭素の使用は、商業的観点から特に重要である。ポリオール中のアルキレンオキシドの一部を二酸化炭素で置き換えることで、ポリオールの製造コストを大幅に削減できる可能性がある。さらに、COをコモノマーとして使用することは、温室効果ガスをポリマーに変換する反応であるため、環境面でも非常に有利である。触媒を使用してH官能性スターター物質にアルキレンオキシドおよび二酸化炭素を付加させることによりポリエーテルポリカーボネートポリオールを製造することは、長年知られている。この場合、様々な触媒系を使用することができる。第一世代は、例えば米国特許出願公開第3900424号明細書または米国特許出願公開第3953383号明細書に記載されているように、不均一系の亜鉛塩またはアルミニウム塩である。さらに、単核および二核金属錯体は、COとアルキレンオキシドとの共重合にうまく使用されている(国際公開第2010/028362号、国際公開第2009/130470号、国際公開第2013/022932号または国際公開第2011/163133号)。二酸化炭素とアルキレンオキシドとの共重合の触媒系の最も重要なクラスは、DMC触媒とも呼ばれる複合金属シアン化物触媒である(米国特許出願公開第4500704号明細書、国際公開第2008/058913号)。適切なアルキレンオキシドおよびH官能性スターター物質は、上述のように、カーボネートを含まないポリエーテルポリオールの製造にも使用されるものである。
【0033】
PUフォームの製造の再生可能な原料としての「天然油系ポリオール」(NOP)をベースとするポリオールは、化石資源、すなわち石油、石炭およびガスの利用可能性の長期的限界に鑑み、また原油価格の高騰を背景として重要性が高まっており、このような用途において既に何度も記載されている(国際公開第2005/033167号;米国特許出願公開第2006/0293400号明細書;国際公開第2006/094227号;国際公開第2004/096882号;米国特許出願公開第2002/0103091号明細書;国際公開第2006/116456号および欧州特許第1678232号明細書)。これらのポリオールの多くは、現在、様々な製造業者から市販されている(国際公開第2004/020497号、米国特許出願公開第2006/0229375号明細書、国際公開第2009/058367号)。ベースとなる原料(例えば、大豆油、パーム油またはヒマシ油)およびその後の処理によって、様々な特性プロファイルを有するポリオールが得られる。ここで、実質的に以下の2つの群に区別することができる:a)再生可能な原料をベースにしたポリオールであって、ポリウレタンの製造に100%使用できるように改良されたもの(国際公開第2004/020497号、米国特許出願公開第2006/0229375号明細書);b)再生可能な原料をベースにしたポリオールであって、処理や特性により、石油化学ベースのポリオールと一定の割合でしか置き換えられないもの(国際公開第2009/058367号)。
【0034】
使用可能なポリオールのさらなるクラスの1つに、いわゆる充填ポリオール(ポリマーポリオール)が挙げられる。このポリオールの特徴は、固形分が40%以上である固形有機フィラーを分散分布した状態で含むことである。使用可能であるのは特に、SANポリオール、PUDポリオール、およびPIPAポリオールである。SANポリオールは、スチレン/アクリロニトリル(SAN)をベースとするコポリマーを分散した状態で含む高反応性ポリオールである。PUDポリオールは、ポリウレアを同様に分散した形態で含む高反応性ポリオールである。PIPAポリオールは、例えば従来のポリオール中でイソシアネートとアルカノールアミンとをイン・サイチュ反応させることによって形成されたポリウレタンを分散した形態で含む高反応性ポリオールである。
【0035】
使用可能なポリオールのさらなるクラスの1つに、ポリオールとイソシアネートとを有利には100:1~5:1、好ましくは50:1~10:1のモル比で反応させてプレポリマーとして得られるポリオールのクラスが挙げられる。このようなプレポリマーは、有利にはポリマーに溶解した状態で配合され、ここで、ポリオールは、好ましくはプレポリマーの製造に使用されるポリオールと同じものである。
【0036】
使用可能なポリオールのさらなるクラスの1つに、いわゆるリサイクルポリオール、すなわちポリウレタンをリサイクルして得られるポリオールが挙げられる。リサイクルポリオール自体は公知である。例えば、ポリウレタンはソルボリシスによって切断され、それによって可溶性の形態となる。ポリウレタンのほとんど全てのケミカルリサイクル法では、このような反応、例えば、グリコリシス、ヒドロリシス、アシドリシスまたはアミノリシスが採用されており、先行技術では多数の方法バリエーションが知られている。リサイクルポリオールの使用は、本発明の好ましい一実施形態である。
【0037】
イソシアネートとポリオールとの好ましい比は、配合の指数として表され、すなわちイソシアネート基とイソシアネート反応性基(例えばOH基、NH基)との化学量論比を100倍したものとして表されるが、このイソシアネートとポリオールとの好ましい比は、10~1000、好ましくは40~400の範囲にある。指数が100である場合、これは、反応性基のモル比が1:1であることを表す。
【0038】
イソシアネート成分あるいはポリイソシアネートc)として、有利には、イソシアネート官能基を2つ以上有する1つ以上の有機ポリイソシアネートが使用される。ポリオール成分として、有利には、イソシアネート反応性基を2つ以上有する1つ以上のポリオールが使用される。
【0039】
本発明の意義におけるイソシアネート成分として適したイソシアネートは、イソシアネート基を少なくとも2つ有する全てのイソシアネートである。総じて、それ自体公知の脂肪族、脂環式、アリール脂肪族、有利には芳香族多官能性イソシアネートの全てを使用することが可能である。特に好ましくは、イソシアネート消費成分の合計に対して40~400モル%の範囲のイソシアネートが使用される。
【0040】
ここで、例示的に挙げることができるのは、アルキレン基に4~12個の炭素原子を有するアルキレンジイソシアネート、例えば、1,12-ドデカンジイソシアネート、2-エチルテトラメチレン-1,4-ジイソシアネート、2-メチルペンタメチレン-1,5-ジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、および有利には1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、脂環式ジイソシアネート、例えば、1,3-および1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、ならびにこれらの異性体の任意の混合物、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネートまたは略称IPDI)、2,4-および2,6-ヘキサヒドロトルイレンジイソシアネート、ならびに対応する異性体混合物、ならびに有利には芳香族のジイソシアネートおよびポリイソシアネート、例えば2,4-および2,6-トルエンジイソシアネート(TDI)、ならびに対応する異性体混合物、ナフタレンジイソシアネート、ジエチルトルエンジイソシアネート、2,4’-および2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とポリフェニルポリメチレンポリイソシアネートとの混合物(粗製MDI)、ならびに粗製MDIとトルエンジイソシアネート(TDI)との混合物である。有機ジイソシアネートおよびポリイソシアネートは、個別に、またはそれらの混合物の形態で使用することができる。また、ジイソシアネートの対応する「オリゴマー」(イソシアヌレートをベースとするIPDI三量体、ビウレット、ウレトジオン)を使用することも同様に可能である。さらに、上記のイソシアネートをベースとするプレポリマーの使用も可能である。
【0041】
また、ウレタン基、ウレトジオン基、イソシアヌレート基、アロファネート基などの導入により変性されたイソシアネート、いわゆる変性イソシアネートの使用も可能である。
【0042】
特に適しており、したがって特に有利に使用される有機ポリイソシアネートは、トルエンジイソシアネートの種々の異性体(純粋な形態での、または組成の異なる異性体混合物としての2,4-および2,6-トルエンジイソシアネート(TDI))、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、いわゆる「粗製MDI」または「ポリマーMDI」(MDIの4,4’異性体に加え、2,4’および2,2’異性体、および多核生成物を含む)、ならびに主に2,4’異性体と4,4’異性体との混合物あるいはそのプレポリマーからなる「純MDI」と称される2核生成物である。特に適したイソシアネートの例は、例えば欧州特許第1712578号明細書、欧州特許第1161474号明細書、国際公開第00/58383号、米国特許出願公開第2007/0072951号明細書、欧州特許第1678232号明細書および国際公開第2005/085310号に詳述されており、これらは参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0043】
d)触媒
本発明の意義において適した触媒d)は、イソシアネートとOH官能基、NH官能基または他のイソシアネート反応性基との反応を促進させることができる全ての化合物である。ここでは、例えばアミン(環状、非環状;モノアミン、ジアミン、1つ以上のアミノ基を有するオリゴマー)、アンモニウム化合物、有機金属化合物および金属塩、有利にはスズ、鉄、ビスマス、カリウムおよび亜鉛の塩を含む先行技術から知られている慣用的な触媒を用いることができる。特に、複数の成分の混合物を触媒として使用することができる。
【0044】
任意成分であるe)は、所望のセル構造および発泡プロセスを最適化するための添加剤として機能する、界面活性作用を有するさらなるケイ素含有化合物であってよい。したがって、このような添加剤は、泡安定剤とも呼ばれる。ここで、本発明において、泡の生成を促進する(安定化、セル調節、セル開口など)全てのSi含有化合物を使用することが可能である。これらの化合物は、先行技術から十分に知られている。
【0045】
界面活性作用を有するさらなるSi含有化合物として、PUフォームの製造に適した全ての公知の化合物を使用することができる。
【0046】
本発明の意義において使用可能である対応するシロキサン構造は、例えば以下の特許文献に記載されているが、これらの文献には、成形フォーム、マットレス、断熱材、建築用フォームなど、従来のPUフォームにおける使用しか記載されていない:
中国特許第103665385号明細書、中国特許第103657518号明細書、中国特許第103055759号明細書、中国特許第103044687号明細書、米国特許出願公開第2008/0125503号明細書、米国特許出願公開第2015/0057384号明細書、欧州特許出願公開第1520870号明細書、欧州特許第1211279号明細書、欧州特許第0867464号明細書、欧州特許第0867465号明細書、欧州特許第0275563号明細書。挙げられたこれらの文献は、参照により本明細書に組み込まれ、本発明の開示内容の一部を構成するものとみなされる。
【0047】
発泡剤f)の使用は、どの発泡方法を用いるかに応じて、原則的には任意である。化学発泡剤および物理発泡剤を用いて作業することが可能である。ここでの発泡剤の選択は、系の性質に強く依存する。
【0048】
発泡剤の使用量によって、高密度フォームまたは低密度フォームが製造される。例えば、5kg/m~900kg/mの密度を有するフォームを製造することができる。好ましい密度は、5~350kg/m、特に好ましくは10~200kg/m、特に20~150kg/mである。
【0049】
物理発泡剤として、適切な沸点を有する対応する化合物を使用することができる。また、例えば水やギ酸といった、NCO基と反応してガスを放出する化学発泡剤を使用することも同様に可能である。本発明の意義における特に好ましい発泡剤には、3個、4個または5個の炭素原子を有する炭化水素、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)、ハイドロハロオレフィンおよび/または水が含まれる。
【0050】
添加物質g)としては、ポリウレタン、特にPUフォームの製造の際に使用される先行技術から知られている全ての物質を使用することができ、例えば、架橋剤および鎖延長剤、酸化劣化に対する安定剤(いわゆる酸化防止剤)、難燃剤、界面活性剤、殺生物剤、セル改良添加剤、セル開口剤、固体充填剤、帯電防止添加剤、核剤、増粘剤、染料、顔料、カラーペースト、香料、乳化剤などを使用することができる。
【0051】
難燃剤として、本発明による組成物は、ポリウレタンフォームの製造に適した全ての公知の難燃剤を含むことができる。本発明の意義における適切な難燃剤は、好ましくは、液体有機リン化合物、例えばハロゲン不含の有機ホスフェート、例えば、トリエチルホスフェート(TEP)、ハロゲン化ホスフェート、例えば、トリス(1-クロロ-2-プロピル)ホスフェート(TCPP)およびトリス(2-クロロエチル)ホスフェート(TCEP)、ならびに有機ホスホネート、例えばジメチルメタンホスホネート(DMMP)、ジメチルプロパンホスホネート(DMPP)、または固形物、例えば、ポリリン酸アンモニウム(APP)もしくは赤リンである。さらに、難燃剤として、ハロゲン化化合物、例えばハロゲン化ポリオール、ならびに固形物、例えば、膨張黒鉛、酸化アルミニウム、アンチモン化合物およびメラミンが適している。
【0052】
ポリエステル-ポリシロキサンブロックコポリマーの本発明による使用により、従来の泡安定剤では不十分な結果を招く難燃剤の削減が可能となる。
【0053】
本発明による主題について既に説明し、また以下に例示的に説明するが、本発明は、これらの例示的な実施形態に限定されるものではない。範囲、一般式または化合物のクラスが示されている場合、これらには、明示的に言及された対応する範囲または化合物群だけでなく、個々の値(範囲)または化合物を選び出すことによって得られる全ての部分範囲および部分化合物群も包含される。本明細書において文書が引用されている場合、その内容全体、特に当該文書が引用されている文脈を形成する事柄に関する内容全体が、本発明の開示内容に組み込まれるものとする。特に断りのない限り、パーセントデータは、重量パーセントデータである。平均値が記載されている場合、特に断りのない限り、これらは重量平均値である。測定によって求められたパラメータが記載されている場合、測定は、特に断りのない限り、温度25℃、圧力101,325Paで実施されたものである。
【0054】
以下に示す実施例は、本発明を例示的に説明するものであり、本明細書全体および特許請求の範囲からその適用範囲が明らかとなる本発明を、実施例で挙げられた実施形態に限定することを意図するものではない。
【0055】
実施例:
実施例1:ポリエステル-ポリシロキサンブロックコポリマーの合成
全ての反応を、保護ガス雰囲気下で行った。
【0056】
ブロックコポリマーA:
精密ガラス製撹拌機、温度計および滴下ロートを備えた5Lの三ツ口フラスコに、813.9gの2-アリルオキシエタノール(CAS:111-45-5)を装入し、これを100℃に加熱した。次に、Karstedt触媒(w(Pt)=2%)のトルエン溶液1.5gを添加した。続いて、一般式MeSiO(SiMeO)11(SiMeHO)SiMeのシロキサン2186.1gを2時間以内で計量添加した。発熱反応が始まった。反応温度を100~110℃に保持した。計量添加の終了後に、さらに2時間撹拌した。SiH官能基の完全な転化を、ガス容量分析により確立した。その後、この反応混合物を130℃に加熱し、1mbarで1時間にわたって揮発分を除去した。澄明でわずかに黄色がかった液体(ステップ1)が得られた。精密ガラス製撹拌機および温度計を備えた5Lの三ツ口フラスコに、1175gのステップ1を、ε-カプロラクトン(CAS:502-44-3)825g、ジラクチド(CAS:95-96-5)500g、およびKOSMOS(登録商標)29(Evonik社製スズ触媒)2.5gと共に装入した。この混合物を140℃で5時間撹拌した。液状のポリエステル-ポリシロキサンブロックコポリマーを得た。
【0057】
ブロックコポリマーB:
精密ガラス製撹拌機、温度計および滴下ロートを備えた5Lの三ツ口フラスコに、500.4gの2-アリルオキシエタノール(CAS:111-45-5)を装入し、これを100℃に加熱した。次に、Karstedt触媒(w(Pt)=2%)のトルエン溶液1.5gを添加した。続いて、一般式MeSiO(SiMeO)51(SiMeHO)SiMeのシロキサン2449.6gを2時間以内で計量添加した。発熱反応が始まった。反応温度を100~110℃に保持した。計量添加の終了後に、さらに2時間撹拌した。SiH官能基の完全な転化を、ガス容量分析により確立した。その後、この反応混合物を130℃に加熱し、1mbarで1時間にわたって揮発分を除去した。澄明でわずかに黄色がかった液体(ステップ1)が得られた。精密ガラス製撹拌機および温度計を備えた5Lの三ツ口フラスコに、1288gのステップ1を、ε-カプロラクトン(CAS:502-44-3)621g、ジラクチド(CAS:95-96-5)391g、およびKOSMOS(登録商標)29(Evonik社製スズ触媒)2.3gと共に装入した。この混合物を140℃で5時間撹拌した。液状のポリエステル-ポリシロキサンブロックコポリマーを得た。
【0058】
ブロックコポリマーC:
精密ガラス製撹拌機および温度計を備えた5Lの三ツ口フラスコに、合成例1で得られたステップ1(ブロックコポリマーA参照)1175gを、ε-カプロラクトン(CAS:502-44-3)825g、γ-ブチロラクトン(CAS:96-48-0)500g、およびKOSMOS(登録商標)29(Evonik社製スズ触媒)2.5gと共に装入した。この混合物を140℃で5時間撹拌した。液状のポリエステル-ポリシロキサンブロックコポリマーを得た。
【0059】
ブロックコポリマーD:
精密ガラス製撹拌機および温度計を備えた5Lの三ツ口フラスコに、合成例2で得られたステップ1(ブロックコポリマーB参照)1288gを、ε-カプロラクトン(CAS:502-44-3)621g、γ-ブチロラクトン(CAS:96-48-0)391g、およびKOSMOS(登録商標)29(Evonik社製スズ触媒)2.3gと共に装入した。この混合物を140℃で5時間撹拌した。液状のポリエステル-ポリシロキサンブロックコポリマーを得た。
【0060】
実施例2:硬質PURフォーム
応用技術的な比較のために、以下のフォーム配合物を使用した:
【表2】
【0061】
比較発泡を、ハンドミキシング法で行った。このために、ポリオール、触媒、水、界面活性剤および発泡剤をビーカーにはかり入れ、これをディスク型撹拌機(直径6cm)にて1000rpmで30秒間混合した。再秤量により、混合操作中に蒸発した発泡剤の量を求め、これを補充した。ここで、MDIを添加し、この反応混合物を、上記の撹拌機を用いて2500rpmで7秒間撹拌し、直ちに27.5×14×14cm(W×H×D)の寸法を有する開放された金型に移した。
【0062】
10分後、フォームを脱型した。発泡から1日後にフォームを分析した。多孔質構造および表面について、1から10までの等級で主観的に評価し、ここで、10は、(理想化された)欠陥のない非常に微細なフォームを表し、1は、極めて欠陥の多い粗いフォームを表す。
【0063】
結果を下表にまとめた:
【表3】
【0064】
これらの結果から、ブロックコポリマーA~Dを用いることで、ポリエーテルシロキサン系泡安定剤と同レベルかそれを超える多孔質構造および発泡品質を達成することが可能であることがわかった。密度、圧縮強度および断熱性能は、本発明によるブロックコポリマーによって全くまたはごくわずかにしか影響を受けず、ポリエーテルシロキサン系泡安定剤と同レベルである。
【0065】
実施例3:硬質PURフォーム
応用技術的な比較のために、以下のフォーム配合物を使用した:
【表4】
【0066】
比較発泡を、ハンドミキシング法で行った。このために、ポリオール、触媒、水、界面活性剤、難燃剤および発泡剤をビーカーにはかり入れ、これをディスク型撹拌機(直径6cm)にて1000rpmで30秒間混合した。再秤量により、混合操作中に蒸発した発泡剤の量を求め、これを補充した。ここで、MDIを添加し、この反応混合物を、上記の撹拌機を用いて2500rpmで7秒間撹拌し、直ちに27.5×14×14cm(W×H×D)の寸法を有する開放された金型に移した。
【0067】
10分後、フォームを脱型した。発泡から1日後に、DIN 4102-1:1998-05に準拠した小型バーナー試験(B2)により燃焼挙動を判定した。
【0068】
結果を下表にまとめた:
【表5】
【0069】
これらの結果から、ブロックコポリマーA~Dを用いることで、従来のポリエーテルシロキサンに比べて低い火炎高さ、ひいては燃焼挙動の改善を達成することができ、少なくともB2の難燃規格に準拠し得ることがわかった。使用に関連する他の全てのフォーム特性は、本発明によるコポリマーによって全くまたはごくわずかにしか影響を受けない。
【0070】
実施例4:硬質(PIR)ポリイソシアヌレートフォーム
応用技術的な比較のために、以下のフォーム配合物を使用した:
【表6】
【0071】
比較発泡を、ハンドミキシング法で行った。このために、ポリオール、触媒、水、界面活性剤、難燃剤および発泡剤をビーカーにはかり入れ、これをディスク型撹拌機(直径6cm)にて1000rpmで30秒間混合した。再秤量により、混合操作中に蒸発した発泡剤の量を求め、これを補充した。ここで、MDIを添加し、この反応混合物を、上記の撹拌機を用いて3000rpmで5秒間撹拌し、直ちに27.5×14×14cm(W×H×D)の寸法を有する開放された金型に移した。
【0072】
10分後、フォームを脱型した。発泡の1日後に、フォームをISO 5660-1 AMD 1:2019-08に準拠したコーンカロリーメーター試験に供し、燃焼時間を、フォームが着火してから火炎が消えるまでの時間として、25kW/mの加熱速度で調べた。
【0073】
結果を下表にまとめた:
【表7】
【0074】
これらの結果から、ブロックコポリマーA~Dを用いることで、従来のポリエーテルシロキサンに比べて短い燃焼時間、ひいては燃焼挙動の改善を達成できることがわかった。使用に関連する他の全てのフォーム特性は、本発明によるコポリマーによって全くまたはごくわずかにしか影響を受けない。
【国際調査報告】