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特表2023-553099押出物品を製造するために使用されるスロットダイを調整するための方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-20
(54)【発明の名称】押出物品を製造するために使用されるスロットダイを調整するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/31 20190101AFI20231213BHJP
   B29C 48/92 20190101ALI20231213BHJP
【FI】
B29C48/31
B29C48/92
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534893
(86)(22)【出願日】2020-12-09
(85)【翻訳文提出日】2023-07-11
(86)【国際出願番号】 IB2020061685
(87)【国際公開番号】W WO2022123294
(87)【国際公開日】2022-06-16
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ヤペル,ロバート エー.
(72)【発明者】
【氏名】プラウサ,トーマス ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ラーカンプ,ブランドン エー.
(72)【発明者】
【氏名】ジョージェンソン,ジェイソン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】コスタッチ,グレゴリー ディー.
(72)【発明者】
【氏名】アンルー,ジェレミー ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン,マイケル ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】キングストン,アダム ティー.
【テーマコード(参考)】
4F207
【Fターム(参考)】
4F207AG01
4F207AP11
4F207AR06
4F207AR12
4F207KA01
4F207KA17
4F207KB13
4F207KK45
4F207KK64
4F207KL75
4F207KL76
4F207KL78
4F207KM05
4F207KM15
(57)【要約】
スロットダイを調整する方法であって、スロットダイが、スロットダイの幅にわたって延びるアプリケータスロットであって、スロットダイが、対向する第1及び第2のスロットダイ表面を備え、アプリケータスロットが、スロットダイを通る流体流路と流体連通している、アプリケータスロットを有する、方法が提供される。スロットダイは、第1及び第2のスロットダイ表面それぞれに動作可能に結合された第1及び第2の調整機構を含む。本方法は、押出物の予め選択されたクロスウェブプロファイルに基づいて、第1の調整機構の目標設定を割り当てることと、その目標設定を用いて、対向する第1及び第2のスロットダイ表面に沿った複数の位置に対応するスロット高さプロファイルを決定することと、コントローラを用いて、スロット高さプロファイル及び予め選択されたクロスウェブプロファイルの両方に基づく複数の個別設定からの個別設定のセットを予測することであって、予測は、個別設定のセットと押出物のクロスウェブプロファイルとの間の既知の相関に基づいている、予測することと、予測された個別設定のセットに従って第2の調整機構に結合された複数のアクチュエータの各々の位置を設定することと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スロットダイを調整する方法であって、前記スロットダイが、
前記スロットダイの幅にわたって延びるアプリケータスロットであって、前記スロットダイが、対向する第1及び第2のスロットダイ表面を備え、前記アプリケータスロットが、前記スロットダイを通る流体流路と流体連通している、アプリケータスロットと、
前記第1及び第2のスロットダイ表面それぞれに動作可能に結合された第1及び第2の調整機構であって、各々が、前記アプリケータスロットを通る流体流路の断面高さを独立して調整することができる、第1及び第2の調整機構と、
前記第2のスロットダイ表面の前記幅に沿って離間した複数のアクチュエータであって、各アクチュエータが、前記第2の調整機構に動作可能に結合されて、各アクチュエータのそれぞれの位置で流体流路の前記断面高さを調整し、前記アプリケータスロットを通る流体流の局所的な調整を提供する、複数のアクチュエータと、
を備え、前記方法が、
押出物の予め選択されたクロスウェブプロファイルに基づいて、前記第1の調整機構の目標設定を割り当てることと、
前記目標設定を用いて、前記対向する第1及び第2のスロットダイ表面に沿った複数の位置に対応するスロット高さプロファイルを決定することと、
コントローラを用いて、前記スロット高さプロファイル及び前記予め選択されたクロスウェブプロファイルの両方に基づく複数の個別設定からの個別設定のセットを予測することであって、前記予測は前記個別設定のセットと前記押出物のクロスウェブプロファイルとの間の既知の相関に基づいている、予測することと、
前記スロットダイの前記調整のために前記予測された個別設定のセットに従って各アクチュエータの位置を設定することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の調整機構が、前記第1のスロットダイ表面全体を実質的に一致して移動させるように構成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の調整機構が、チョーカーバー又は可撓性ダイリップを含み、前記複数のアクチュエータが、前記チョーカーバー又は前記可撓性ダイリップに動作可能に結合されている、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の調整機構が、第2のチョーカーバー又は第2の可撓性ダイリップを含み、前記第1のスロットダイ表面の前記幅に沿って離間した第2の複数のアクチュエータを更に含み、各アクチュエータが、前記第2のチョーカーバー又は前記第2の可撓性ダイリップに動作可能に結合されて、各アクチュエータのそれぞれの位置で流体流路の前記断面高さを調整し、前記アプリケータスロットを通る流体流の前記局所的な調整を提供する、請求項1又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記スロット高さプロファイルが、前記第2の調整機構が中立位置にあるときに決定される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記スロット高さプロファイルが、前記第1の調整機構の前記目標設定から決定される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記スロット高さプロファイルに対する前記第1の調整機構の較正を得ることを更に含み、前記スロット高さプロファイルが、前記得られた較正に基づいて前記目標設定から計算される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記較正が、前記第1の調整機構の一連のそれぞれの設定に対応する一連のスロット高さプロファイルを測定することによって経験的に得られる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記スロットダイを予め選択された動作温度まで加熱することを更に含み、前記較正が、前記スロットダイが前記予め選択された動作温度にある間に得られる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の調整機構の前記目標設定が、前記一連の測定されたスロット高さプロファイルから得られた前記較正に基づいて補間される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の調整機構が、前記第1のスロットダイ表面全体を実質的に一致して移動させることによって、前記アプリケータスロットを通る流体流路の前記断面高さを調整する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記予測された個別設定のセットが、前記複数のアクチュエータの中立位置に正規化されたときに公差内で集合的に平均して0になるアクチュエータ位置に対応する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記予測された個別設定のセットが、前記第1の調整機構におけるクロスウェブ変動性を実質的に打ち消すように計算される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
押出物品を製造する方法であって、
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法に従ってスロットダイを調整することと、
前記スロットダイの前記アプリケータスロットを通して、前記調整されたスロットダイに基づいて押出物を押出して、前記押出物品を得ることと、
を含む、方法。
【請求項15】
スロットダイであって、
前記スロットダイの幅にわたって延びるアプリケータスロットであって、前記スロットダイが、対向する第1及び第2のスロットダイ表面を備え、前記アプリケータスロットが、前記スロットダイを通る流体流路と流体連通している、アプリケータスロットと、
前記第1及び第2のスロットダイ表面それぞれに動作可能に結合された第1及び第2の調整機構であって、各々が、前記アプリケータスロットを通る流体流路の断面高さを独立して調整することができる、第1及び第2の調整機構と、
前記第2のスロットダイ表面の前記幅に沿って離間した複数のアクチュエータであって、各アクチュエータが、前記第2の調整機構に動作可能に結合されて、各アクチュエータのそれぞれの位置で流体流路の前記断面高さを調整し、前記アプリケータスロットを通る流体流の局所的な調整を提供する、複数のアクチュエータと、
を備える、スロットダイと、
前記スロットダイの動作のための複数の個別設定のうちの1つに従って各アクチュエータの位置を設定するように構成されたコントローラであって、押出物の予め選択されたクロスウェブプロファイルに基づいて、前記第1の調整機構の目標設定を割り当て、前記目標設定を用いて、前記対向する第1及び第2のスロットダイ表面に沿った複数の位置に対応するスロット高さプロファイルを決定し、前記スロット高さプロファイル及び前記予め選択されたクロスウェブプロファイルの両方に基づく複数の個別設定からの個別設定のセットを予測し、このとき前記予測は前記個別設定のセットと前記押出物のクロスウェブプロファイルとの間の既知の相関に基づいており、次いで前記スロットダイの前記調整のために前記予測された個別設定のセットに従って各アクチュエータの位置を設定するように更に構成された、コントローラと、
を備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、スロットダイ、並びにそれに関連するシステム及び方法を説明する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スロットダイは、アプリケータスロットを形成する対向するスロットダイ表面を含む。アプリケータスロットの幅は、移動ウェブの幅、又はフィルムなどの押出物を受け取るローラの幅に沿って延びることができる。本明細書で使用されるとき、スロットダイ及びスロットダイの構成要素に関して、「幅」は、スロットダイ及びその構成要素のクロスウェブ(又はクロスローラ)寸法を指す。この点に関して、スロットダイのアプリケータスロットは、スロットダイの幅に沿って延びる。
【0003】
スロットダイは、一般に、押出物、及びコーティング、並びに他の押出物品を形成するために使用される。一例として、スロットダイは、移動する可撓性基材つまり「ウェブ」に液体材料を塗布するためのスロットダイコーティングにおいて使用される。スロットダイコーティングの技術には多くのバリエーションがある。一例として、コーティング材料は、室温又は制御された温度であってもよい。コーティング材料が処理のために溶融又は液化されることを確実にするためにコーティング材料温度が上昇される場合、これは、しばしば「ホットメルト」コーティングと呼ばれる。
【0004】
他の例では、コーティング材料は、溶媒希釈剤を含むことができる。溶媒は、水、有機溶媒、又はコーティングの成分を溶解若しくは分散させる任意の好適な流体であってもよい。溶媒は、典型的には、乾燥によってなど、後続の処理において除去される。コーティングは、単一又は複数の層を含むことができ、いくつかのスロットダイを使用して、複数の層を同時に塗布することができる。コーティングは、ダイの幅にわたる連続コーティングであってもよく、又は代わりに、ストリップから構成されてもよく、各ストリップは、ダイの幅の一部分のみにわたって延び、隣接するストリップから分離されている。フィルム又はコーティングなどの押出物の厚さは、スロットダイを通る押出物の流量に依存する。一例では、スロットダイは、所望のスロット高さプロファイルを提供するために、スロットダイを通る押出物の流量を局所的に調整するために使用することができる調整可能なチョーカーバーを流路内に含むことができる。スロットダイはまた、所望のスロット高さプロファイルを提供するために、アプリケータスロットの高さ(すなわち、スロット高さ)自体を局所的に調整し、アプリケータスロットからの押出物の流量を制御するために弾性的に曲げる、つまり「屈曲させる」ことができる、可撓性ダイリップを含むことができる。
【0005】
いくつかのスロットダイ構成では、対向するスロットダイ表面の両方が、所望のウェブキャリパープロファイルを得るように調整可能である。これにより、有利には、スロットの片側に大きな調整範囲を提供することができ、調整可能なリップ全体を1つのリップとして効果的に移動させて、典型的にはスロットダイの幅を大まかに調整することができる。反対側では、可撓性の調整可能なダイリップを使用して、個別の制御ゾーンを通してより細かい調整を行うことができる。2つの調整可能なダイ表面の使用により、いくつかの製品及び製造環境がより大きい又はより小さい全体的なスロットダイを必要とする特定のダイに対して、より広い加工範囲を作り出すことができる。
【発明の概要】
【0006】
従来のシステムに伴う問題は、それらが、作成されたスロットダイプロファイルのリアルタイム知識を提供しないことである。これらのシステムは、どのスロットダイ表面を調整すべきかを決定する方法を有していない。これは、ダイリップ及び/又はチョーカーバーの両方を一方又は他方の方向に移動させることによって、ダイの調整プロファイルが容易に望ましくなく歪む可能性があることを意味する。適切な制約がなければ、スロットダイのこのオフセット曲げは、調整可能なダイリップに損傷を引き起こすほど深刻であり得る。
【0007】
実際には、市販の押出ダイは、一方のダイ表面の調整が、対向するダイ表面に対して行われた調整を追いかけるとき、永久的に曲げられた可撓性ダイリップを発生させる可能性があり、その結果、ダイリップがその弾性限界を超えて変形して金属を変形させ、これは容易に修理できないことが発見された。多くの場合、ダイリップを調整する機構は、「プッシュオンリー」であり、したがって、そのような変形は、アプリケータスロットの全体的な調整範囲を低減させ、より高いキャリパー製品の製造を複雑にする可能性がある。
【0008】
提供される方法は、対向するダイ表面が両方とも調整可能であり、かつ複数のダイ表面構成がスロットダイ内の流体流路の同じ断面高さプロファイルを提供する場合に、対向するダイ表面の位置を管理するための自動化及び半自動化技術を提供する。これらの技術は、可撓性ダイリップ又はチョーカーバー上の機械的ひずみを知的に分配することができ、それによって、可撓性ダイリップ又はチョーカーバーを変形させるリスクを著しく低減する。
【0009】
第1の態様では、スロットダイを調整する方法が提供される。スロットダイは、スロットダイの幅にわたって延びるアプリケータスロットを備え、スロットダイは、対向する第1及び第2のスロットダイ表面を備え、アプリケータスロットは、スロットダイを通る流体流路と流体連通している。スロットダイはまた、第1及び第2のスロットダイ表面それぞれに動作可能に結合された第1及び第2の調整機構を含み、第1及び第2の調整機構の各々が、アプリケータスロットを通る流体流路の断面高さを独立して調整することができる。スロットダイは、第2のスロットダイ表面の幅に沿って離間した複数のアクチュエータであって、各アクチュエータが、第2の調整機構に動作可能に結合されて、そのそれぞれの位置で流体流路の断面高さを調整し、アプリケータスロットを通る流体流の局所的な調整を提供する、複数のアクチュエータを更に含む。本方法は、押出物の予め選択されたクロスウェブプロファイルに基づいて、第1の調整機構の目標設定を割り当てることと、その目標設定を用いて、対向する第1及び第2のスロットダイ表面に沿った複数の位置に対応するスロット高さプロファイルを決定することと、コントローラを用いて、スロット高さプロファイル及び予め選択されたクロスウェブプロファイルの両方に基づく複数の個別設定からの個別設定のセットを予測することであって、予測は個別設定のセットと押出物のクロスウェブプロファイルとの間の既知の相関に基づいている、予測することと、スロットダイの調整のために予測された個別設定のセットに従って各アクチュエータの位置を設定することと、を含む。
【0010】
第2の態様では、押出物品を製造する方法であって、前述の方法に従ってスロットダイを調整することと、スロットダイのアプリケータスロットを通して、調整されたスロットダイに基づいて押出物を押出して、押出物品を得ることと、を含む、方法が提供される。
【0011】
第3の態様では、スロットダイと、コントローラとを備えるシステムが提供される。スロットダイは、スロットダイの幅にわたって延びるアプリケータスロットであって、スロットダイが、対向する第1及び第2のスロットダイ表面を備え、アプリケータスロットが、スロットダイを通る流体流路と流体連通している、アプリケータスロットと、第1及び第2のスロットダイ表面それぞれに動作可能に結合された第1及び第2の調整機構であって、各々が、アプリケータスロットを通る流体流路の断面高さを独立して調整することができる、第1及び第2の調整機構と、第2のスロットダイ表面の幅に沿って離間した複数のアクチュエータであって、各アクチュエータが、第2の調整機構に動作可能に結合されて、そのそれぞれの位置で流体流路の断面高さを調整し、アプリケータスロットを通る流体流の局所的な調整を提供する、複数のアクチュエータと、を備える。コントローラは、スロットダイの動作のための複数の個別設定のうちの1つに従って各アクチュエータの位置を設定するように構成されており、コントローラは、押出物の予め選択されたクロスウェブプロファイルに基づいて、第1の調整機構の目標設定を割り当て、その目標設定を用いて、対向する第1及び第2のスロットダイ表面に沿った複数の位置に対応するスロット高さプロファイルを決定し、スロット高さプロファイル及び予め選択されたクロスウェブプロファイルの両方に基づく複数の個別設定からの個別設定のセットを予測し、このとき予測は個別設定のセットと押出物のクロスウェブプロファイルとの間の既知の相関に基づいており、次いでスロットダイの調整のために予測された個別設定のセットに従って各アクチュエータの位置を設定するように更に構成されている。
【0012】
本開示の1つ以上の実施例の詳細を添付図面及び以下の説明に示す。本開示の他の特徴、目的、及び利点は、本明細書及び図面、並びに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
明細書及び図面中の参照文字が繰り返して使用されている場合、本開示の同じ又は類似の特徴又は要素を表すことを意図している。当業者は多くの他の修正形態及び実施形態を考案することができ、それらは本開示の原理の範囲及び趣旨に含まれることを理解されたい。図は、縮尺通りに描かれていないことがある。
図1】調整可能なダイリップと、複数のアクチュエータを有するチョーカーバーとを含むスロットダイであって、各アクチュエータは、そのそれぞれの位置で流体流路の高さを調整するように動作可能である、スロットダイを示す図である。
図2】チョーカーバー及びチョーカーバーに接続されたアクチュエータを示す、図1のスロットダイの上面図である。
図3】代替実施形態による、調整可能なダイリップと、チョーカーバーに接続された複数のアクチュエータを有するチョーカーバーとを含むスロットダイを示す図である。
図4】可撓性ダイリップと、回転ロッドに接続された複数のアクチュエータを有する調整可能な回転ロッドとを含むスロットダイを示す図である。
図5】可撓性ダイリップのうちの1つに接続された複数のアクチュエータを有する2つの可撓性ダイリップを含むスロットダイを示す図である。
図6】隔壁と組み合わせて動作可能な2つの可撓性ダイリップを示す、スロットダイの拡大図である。
図7】位置センサを含むアクチュエータアセンブリと、位置センサの出力に基づいてアクチュエータアセンブリの位置を選択するためのコントローラとを示す図である。
図8】押出物の予め選択されたクロスウェブプロファイルに従ってスロットダイの複数のアクチュエータの各アクチュエータの位置を選択するための技術を示すフローチャートである。
図9】押出物の予め選択されたクロスウェブプロファイルに従ってスロットダイの複数のアクチュエータの各アクチュエータの位置を選択するための技術を示すフローチャートである。
図10】スロットダイの複数のアクチュエータが、可撓性ダイリップに係合されている、又は可撓性ダイリップから係合解除されている、のいずれかであることを示す、スロットダイプロファイル比較を示す図である。
図11】可撓性ダイリップ設定及び可撓性ダイリップ位置それぞれに基づいて、スロットダイの片側の可撓性ダイリップによって提供される平均スロット高さプロファイルの較正曲線を示す図である。
図12】可撓性ダイリップ設定及び可撓性ダイリップ位置それぞれに基づいて、スロットダイの片側の可撓性ダイリップによって提供される平均スロット高さプロファイルの較正曲線を示す図である。
図13】可撓性ダイリップ設定及び可撓性ダイリップ位置それぞれに基づいて、スロットダイの片側の可撓性ダイリップによって提供されるスロット高さプロファイルの較正曲線を示す図である。
図14】可撓性ダイリップ設定及び可撓性ダイリップ位置それぞれに基づいて、スロットダイの片側の可撓性ダイリップによって提供されるスロット高さプロファイルの較正曲線を示す図である。
図15】本明細書に開示される技術に従ってダイリップ形状が操作されるスロットダイコントローラのユーザインターフェースを通じた例示的なワークフローを示す図である。
図16】本明細書に開示される技術に従ってダイリップ形状が操作されるスロットダイコントローラのユーザインターフェースを通じた例示的なワークフローを示す図である。
図17】本明細書に開示される技術に従ってダイリップ形状が操作されるスロットダイコントローラのユーザインターフェースを通じた例示的なワークフローを示す図である。
図18】本明細書に開示される技術に従ってダイリップ形状が操作されるスロットダイコントローラのユーザインターフェースを通じた例示的なワークフローを示す図である。
図19】本明細書に開示される技術に従ってダイリップ形状が操作されるスロットダイコントローラのユーザインターフェースを通じた例示的なワークフローを示す図である。
図20】本明細書に開示される技術に従ってダイリップ形状が操作されるスロットダイコントローラのユーザインターフェースを通じた例示的なワークフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書で使用する場合、「好ましい」及び「好ましくは」という用語は、一定の状況下で一定の利点をもたらすことができる、本明細書に記載の実施形態を指す。ただし、他の実施形態もまた、同じ又は他の状況下で好ましい場合がある。更にまた、1つ以上の好ましい実施形態の列挙は、他の実施形態が有用でないことを示唆するものではなく、他の実施形態を本発明の範囲から除外することを意図するものでもない。
【0015】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用する場合、文脈上別段の明記がない限り、単数形「a」、「an」及び「the」は複数の指示物を含むものとする。したがって、例えば、「a」又は「the」が付いた構成要素への言及には、構成要素及び当業者に公知のその均等物のうちの1つ以上を含んでもよい。更に、「及び/又は」という用語は、列挙された要素のうちの1つ若しくは全て、又は列挙された要素のうちの任意の2つ以上の組み合わせを意味する。
【0016】
「含む」という用語及びその変化形は、これらの用語が添付の記載に現れた場合、限定的意味を有しないことに注意されたい。また更に、「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つの」及び「1つ以上の」は、本明細書では互換的に使用される。左、右、前方、後方、上部、底部、側、上方、下方、水平、垂直などの相対語が、本明細書において使用される場合があり、その場合、特定の図面において見られる視点からのものである。しかしながら、これらの用語は、記載を簡単にするために使用されるに過ぎず、決して本発明の範囲を制限するものではない。
【0017】
本明細書全体において、「一実施形態」、「特定の実施形態」、「1つ以上の実施形態」又は「ある実施形態」に対する言及は、その実施形態に関して記載される特定の特徴、構造、材料又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して様々な箇所にある「1つ以上の実施形態では」、「特定の実施形態では」、「一実施形態では」又は「実施形態では」などの句の出現は、必ずしも本発明の同一の実施形態に言及しているわけではない。
【0018】
図1に示すように、スロットダイ10は、上部ダイブロック2と下部ダイブロック3とを含む。上部ダイブロック2は、下部ダイブロック3と組み合わせて、スロットダイ10を通る流体流路を形成する。流体流路は、入口5と、ダイキャビティ4と、アプリケータスロット6とを含む。アプリケータスロット6は、上部ダイブロック2に取り付けられた回転ロッド12と下部ダイブロック3のダイリップ13との間にある。ダイリップ13及び回転ロッド12は、対向する第1及び第2のスロットダイ表面それぞれを提供し、これはコントローラによって独立して操作されて、アプリケータスロット6の断面高さ寸法を画定することができる。スロットダイ10は、そのアプリケータスロットに回転ロッド12を含むので、スロットダイ10は、回転ロッドダイと呼ばれることがある。
【0019】
この例示的な実施形態では、ダイリップ13は、第1の調整機構に動作可能に結合されている。第1の調整機構の詳細は、重要ではないが、この実施例では、図1に示されるダイリップ13は、下部ダイブロック3の軸方向ヒンジ要素14に枢動可能に結合されており、ダイリップ13が軸方向ヒンジ要素14の周りを回転することによってアプリケータスロット6の断面高さ寸法を調整することができる。ダイリップ13は、回転ロッド12によって提供される対向する第2のスロットダイ表面に対して枢動する際に、(スロットダイ10の幅全体にわたって)第1のスロットダイ表面全体を実質的に一致して移動させる。ここでは示されていないが、ダイリップ13は、代替的に、枢動しないが、代わりに調整機構によって加えられる力に応じて弾性的に曲がる、可撓性ダイリップであってもよい。
【0020】
スロットダイ10は、スロットダイ10内の流体流路の幅にわたって延びているチョーカーバー11を更に含む。一例として、チョーカーバー11におけるスロットダイ10内の流体流路の幅は、チョーカーバー11がアプリケータスロット6の幅に沿って延びるように、アプリケータスロット6の幅とほぼ同じであってもよい。アクチュエータアセンブリ200は、共通の取付ブラケット9に取り付けられており、スロットダイ10の幅に沿って離間しており、上記の第1の調整機構と協調して動作する第2の調整機構を提供する。いくつかの実施例では、取付ブラケット9は、セグメント化されていてもよく、例えば、取付ブラケット9は、各アクチュエータアセンブリ200のための別個の構造体を含んでもよい。各アクチュエータアセンブリ200は、スロットダイ10内の押出物の流体流路内のチョーカーバー11の位置を変更することによって、スロットダイ10の幅に沿ったそのそれぞれの位置で流体流路の断面高さを調整し、アプリケータスロット6を通る流体流の局所的な調整を提供するように動作可能である。
【0021】
スロットダイ10の動作中、押出物は、流体流路入口5でスロットダイ10に入り、押出物がアプリケータスロット6を通って出て、移動するローラ7に適用されるまで、ダイキャビティ4を含むスロットダイ10の流体流路を通って進み続ける。いくつかの実施例では、押出物は、移動するウェブ(図示せず)に適用されてもよく、他の実施例では、押出物は、ローラ7に直接適用されてもよい。押出物及びウェブ(該当する場合)を、一連のローラの上を走らせて押出物を冷却することができる。1つ以上の追加のプロセスが、ローラ7の下流で押出物に対して行われてもよい。このようなプロセスとしては、延伸、コーティング、テクスチャリング、印刷、切断、及び圧延、並びに積層が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかのプロセスでは、製造剥離ライナーを除去して、剥離ライナーを追加することができ、又は1つ以上の追加の層(積層転写テープなど)を追加することができる。硬化工程も行うことができ、そのような硬化は、熱、電子ビーム、又は紫外線(ultraviolet、UV)放射線への曝露によって行うことができる。
【0022】
図2に示すように、スロットダイ10は、共通の取付ブラケット9に取り付けられた5つのアクチュエータアセンブリ200のセットを含む。各アクチュエータアセンブリ200は、チョーカーバー11に取り付けられており、アクチュエータアセンブリ200は、チョーカーバー11の幅の周りで離間している。アクチュエータの各々は、スロットダイ10内の流体流路内のチョーカーバー11の位置の局所的な調整を提供することによって、その位置で流体流路の高さを制御するように動作可能である。
【0023】
より詳細に後述するように、アクチュエータアセンブリ200の各々は、リニアアクチュエータを駆動するモータを含む。アクチュエータアセンブリ200の各々はまた、リニアアクチュエータの出力シャフトの位置移動を検出する、線形可変差動変圧器(linear variable differential transformer、LVDT)又はリニアエンコーダなどの精密センサを含む。リニアアクチュエータアセンブリ200の出力シャフトは、各リニアアクチュエータアセンブリ200がチョーカーバーの局所位置を調整するよう動作可能であるように、チョーカーバー11の幅に沿って離間している。以下で更に詳細に説明するように、各リニアアクチュエータの位置は、押出物の所望のクロスウェブプロファイルを提供するように個々に選択可能である。加えて、リニアアクチュエータアセンブリ200の位置は、スロットダイ10内のチョーカーバー11に隣接する流体流路の全断面積を調整することによって、スロットダイ10の動作中にダイキャビティ4内に所望のダイキャビティ圧力を提供するように正確に調整することができる。他の実施例では、各アクチュエータアセンブリ200の位置は、反復又はランダムパターン化特徴などのパターン化特徴を有する押出物を生成するように能動的に制御されてもよい。本明細書で言及されるとき、アクチュエータ又はアクチュエータアセンブリの位置への言及は、より具体的には、アクチュエータ出力シャフトの相対的配置を指すことが意図される。
【0024】
図3は、スロットダイ15が回転移動ではなく並進移動に基づく第1の調整機構を有することを除いて、スロットダイ10と共通の多くの特徴を有するスロットダイ15を示す。スロットダイ10の構成要素と同じ参照番号を有するスロットダイ15の構成要素は、スロットダイ10の同様に番号付けされた構成要素と実質的に同様である。
【0025】
この図が示すように、スロットダイ15の上半分は、スロットダイ10の上半分と実質的に同様である。しかしながら、スロットダイ10とは異なり、スロットダイ15は、下部ダイブロック3に摺動可能に係合され、かつ下部ダイブロック3に対して固定されたアクチュエータアセンブリ202に結合された、ダイリップ13を含む。この実施形態では、ダイリップ13は、アプリケータスロット6の出口端まで延びるスロットダイ表面を提供する。複数のアクチュエータアセンブリ202がこの構成で使用されてもよく、第1及び第2の調整機構の両方がアプリケータスロット6の高さをその両側から局所的に調整することを可能にすることができる。
【0026】
ここでは明確に示されていないが、第1の調整機構が、可撓性ダイリップ13を調整するために直線移動と回転移動との何らかの組み合わせを使用することも可能である。当業者によれば、任意の既知の機構を使用してこのような調整を行うことができる。好適な第1の調整機構の例は、例えば、米国特許第4,167,914号(Mladota)、同第4,465,015号(Ostaら)、同第6,017,207号(Druschel)、同第6,287,105号(Druschelら)、同第9,815,237号(Iulianoら)に記載されており、これらの記載は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0027】
図4は、スロットダイ20を示す。スロットダイ20は、回転ロッド22に接続された複数のアクチュエータアセンブリ200を有する調整可能な回転ロッド22を含む。各アクチュエータアセンブリ200は、その位置で回転ロッド22の局所位置を調整し、それによってアプリケータスロット6の局所高さを調整するように動作可能である。スロットダイ20のいくつかの態様は、スロットダイ10、15の態様と同様である。
【0028】
スロットダイ20は、上部ダイブロック2と下部ダイブロック3とを含む。上部ダイブロック2は、下部ダイブロック3と組み合わせて、スロットダイ20を通る流体流路を形成する。流体流路は、入口5と、ダイキャビティ4と、アプリケータスロット6とを含む。アプリケータスロット6は、上部ダイブロック2に取り付けられた調整可能な回転ロッド22と下部ダイブロック3のダイリップ13との間にある。スロットダイ20は、そのアプリケータスロットに調整可能な回転ロッド22を含むので、スロットダイ20は、回転ロッドダイと呼ばれることがある。
【0029】
スロットダイ20は、スロットダイ10で使用されるものと同様の第1の調整機構に動作可能に結合された調整可能なダイリップ13を含む。この調整機構では、ダイリップ13は、ダイリップ13が軸方向ヒンジ要素14の周りを回転することによってアプリケータスロット6の断面高さ寸法を調整することを可能にする、下部ダイブロック3の軸方向ヒンジ要素14に枢動可能に結合されている。
【0030】
スロットダイ20は、アプリケータスロット6の高さが、回転ロッド22に接続するアクチュエータアセンブリ200によって制御される点で、スロットダイ10とは異なる。アクチュエータアセンブリ200は、共通の取付ブラケット9に取り付けられており、スロットダイ20の幅に沿って離間している。各アクチュエータアセンブリ200は、回転ロッド22の位置を変更することによって、スロットダイ20の幅に沿ったそのそれぞれの位置で流体流路の断面高さを調整し、アプリケータスロット6を通る流体流の局所的な調整を提供するように動作可能である。図4には1つのアクチュエータアセンブリ200しか示されていないが、スロットダイ20は、図2を参照して既に説明したものと同様に、回転ロッド22及びスロットダイ20の幅に沿って離間したアクチュエータアセンブリ200のセットを含む。
【0031】
スロットダイ20の動作中、押出物は、流体流路入口5でスロットダイ20に入り、押出物がアプリケータスロット6を通って出て、移動するローラ7に適用されるまで、ダイキャビティ4を含むスロットダイ20の流体流路を通って進み続ける。いくつかの実施例では、押出物は、移動するウェブ(図示せず)に適用されてもよく、他の実施例では、押出物は、ローラ7に直接適用されてもよい。押出物及びウェブ(該当する場合)を、一連のローラの上を走らせて、押出物を冷却することができる。1つ以上の追加のプロセスが、ローラ7の下流で押出物に対して行われてもよく、このようなプロセスとしては、延伸、コーティング、テクスチャリング、印刷、切断、圧延、及び積層が挙げられるが、これらに限定されない。前述したように、製造剥離ライナーを除去して、剥離ライナーを追加することができ、又は1つ以上の追加の層(積層転写テープなど)を追加することができる。例えば、熱、電子ビーム、高周波、マイクロ波、又はUV放射線への曝露によって、硬化工程もまた、行うことができる。
【0032】
アクチュエータアセンブリ200の各々は、回転ロッド22の位置の局所的な調整を提供することによって、その位置で流体流路の高さを制御するように動作可能である。以下で更に詳細に説明するように、各アクチュエータアセンブリ200の位置は、押出物の所望のクロスウェブプロファイルを提供するように個々に選択可能である。加えて、リニアアクチュエータアセンブリ200の位置は、アプリケータスロット6の全断面積を調整することによって、スロットダイ20の動作中にダイキャビティ4内に所望のダイキャビティ圧力を提供するように正確に調整することができる。他の実施例では、各アクチュエータアセンブリ200の位置は、反復又はランダムパターン化特徴などのパターン化特徴を有する押出物を生成するように能動的に制御されてもよい。
【0033】
スロットダイ20はチョーカーバーを含まないが、他の実施例では、調整可能な回転ロッドを有するスロットダイはまた、スロットダイ10のチョーカーバー11のような調整可能なチョーカーバーを含んでもよい。このようなチョーカーバーの位置は、前述したようにアクチュエータのセットによって局所的に制御することができる。
【0034】
図5は、スロットダイ30を示す。スロットダイ30は、可撓性ダイリップ32に接続された複数のアクチュエータアセンブリ200を有する可撓性ダイリップ32を含む。各アクチュエータアセンブリ200は、その位置で可撓性ダイリップ32の局所位置を調整し、それによってアプリケータスロット6の局所高さを調整するように動作可能である。スロットダイ30のいくつかの態様は、前述したスロットダイの態様と同様であり、スロットダイ30に関して限定的に詳細に説明する。スロットダイ10及びスロットダイ20の構成要素と同じ参照番号を有するスロットダイ30の構成要素は、スロットダイ10及びスロットダイ20の同様に番号付けされた構成要素と実質的に同様である。
【0035】
スロットダイ30は、上部ダイブロック2と下部ダイブロック3とを含む。上部ダイブロック2は、下部ダイブロック3と組み合わせて、スロットダイ30を通る流体流路を形成する。流体流路は、入口5と、ダイキャビティ4と、アプリケータスロット6とを含む。アプリケータスロット6は、上部ダイブロック2の一部である調整可能なダイリップ36と下部ダイブロック3の可撓性ダイリップ32との間にある。
【0036】
再び図5を参照すると、調整可能なダイリップ36は、上部ダイブロック2に組み込まれていることを除いて、図1のスロットダイ10の調整機構と類似の第1の調整機構に結合されている。この調整機構は、上部ダイブロック2の軸方向ヒンジ要素14によって調整可能ダイリップ36に枢動可能に結合されている。調整可能なダイリップ36は、軸方向ヒンジ要素14の周りを回転することによって、アプリケータスロット6の幅にわたる断面高さ寸法を調整する。
【0037】
スロットダイ30では、アプリケータスロット6の高さはまた、可撓性ダイリップ32に接続する、アクチュエータアセンブリ200から構成される第2の調整機構によって部分的に決定される。可撓性ダイリップ32は、アクチュエータアセンブリ200によって加えられる力に応じて弾性的に曲がり、アクチュエータアセンブリ200は、可撓性ダイリップ32に押す力、引く力、又は押す力と引く力の両方を加えることができる。アクチュエータアセンブリ200は、共通の取付ブラケット9に取り付けられており、スロットダイ30の幅に沿って離間している。任意選択的に、取付ブラケット9は、比較的冷たい取付ブラケット9に対する加熱されたスロットダイ30の熱膨張の異なるレベルを考慮するために、スロットダイ30の幅に沿ってセグメントに分割されている。
【0038】
各アクチュエータアセンブリ200は、可撓性ダイリップ32の位置を変更することによって、スロットダイ30の幅に沿ったそのそれぞれの位置で流体流路の断面高さを調整し、アプリケータスロット6を通る流体流の局所的な調整を提供するように動作可能である。図5では1つのアクチュエータ200しか見えないが、スロットダイ30は、図2に示すアクチュエータアセンブリ200の配置と同様に、可撓性ダイリップ32及びスロットダイ30の幅に沿って離間したアクチュエータアセンブリ200のセットを含む。
【0039】
スロットダイ30の動作中、押出物は、流体流路入口5で圧力下でスロットダイ30に入り、押出物がアプリケータスロット6を通って出て、移動するローラ7に適用されるまで、ダイキャビティ4を含むスロットダイ30の流体流路を通って進み続ける。いくつかの実施例では、押出物は、移動するウェブ(図示せず)に適用されてもよく、他の実施例では、押出物は、ローラ7に直接適用されてもよい。押出物及びウェブ(該当する場合)を、一連のローラの上を走らせて、押出物を冷却することができる。
【0040】
他の実施例では、スロットダイ30は、異なる構成のローラと共に使用されてもよい。例えば、押出物は、温度制御されることができる下流ローラ(この場合、キャスティングホイールと呼ばれる)上に落ちるカーテンを形成することができる。他の実施例では、押出物カーテンは、後続の処理のために2つのローラのニップ内に垂直に落ちてもよく、又は水平に(又は任意の角度で)横断してもよい。これは、フィルム押出及び押出コーティング操作の両方においてしばしば使用される。
【0041】
1つ以上の追加のプロセスが、ローラ7の下流で押出物に対して行われてもよく、このようなプロセスとしては、延伸、コーティング、テクスチャリング、印刷、切断、及び圧延、及び積層が挙げられるが、これらに限定されない。前述のように、製造剥離ライナーを除去して、剥離ライナーを追加することができ、又は1つ以上の追加の層(積層転写テープなど)を追加することができる。熱、電子ビーム、又は紫外線への曝露により、硬化工程もまた、行うことができる。
【0042】
アクチュエータアセンブリ200の各々は、可撓性ダイリップ32の位置の局所的な調整を提供することによって、その位置で流体流路の高さを制御するように動作可能である。以下で更に詳細に説明するように、各アクチュエータアセンブリ200の位置は、押出物の所望のクロスウェブプロファイルを提供するように個々に選択可能である。加えて、リニアアクチュエータアセンブリ200の位置は、アプリケータスロット6の全断面積を調整することによって、スロットダイ30の動作中にダイキャビティ4内に所望のダイキャビティ圧力を提供するように正確に調整することができる。他の実施例では、各アクチュエータアセンブリ200の位置は、反復又はランダムパターン化特徴などのパターン化特徴を有する押出物を生成するように能動的に制御されてもよい。
【0043】
スロットダイ30はチョーカーバーを含まないが、他の実施例では、可撓性ダイリップを有するスロットダイはまた、スロットダイ10のチョーカーバー11のような調整可能なチョーカーバーを含んでもよい。このようなチョーカーバーの位置は、スロットダイ10のチョーカーバー11と同様に、アクチュエータのセットによって局所的に制御することができる。
【0044】
他のダイ構成もまた可能である。一実施例として、図6の部分断面図は、スロットダイ40を通過する2つの別個の流体流路17、17’を有する多層スロットダイ40を示しており、各流路は、対向するダイリップ38、39のうちの1つによって片側がそれぞれ境界付けられている。2つの流体流路17、17’は、アプリケータスロット6の上流に配置された隔壁19によって分離されている。任意選択的に、図6に示すように、隔壁19は、固定されており(すなわち、調整不可能であり)、概ねくさび形の構成を有する。隔壁19の末端縁部を越えて、流体流路17、17’は、アプリケータスロット6においてスロットダイ40から出る単一の流体流路に合流する。この実施例では、流体流路17、17’は、異なる流動特性を有する溶融ポリマーを収容するので、流路17、17’は、図示されるように異なる構成を有する(例えば、より広い又はより狭いチャネル壁を有する)ことができる。
【0045】
アプリケータスロット6は、対向するダイリップ38、39によって境界付けられている。対向するダイリップ38、39のいずれか又は両方は、前述のように、第1又は第2の調整機構に係合することができる。例示的な実施形態では、ダイリップ38、39の一方は、ダイリップを一体的に移動させる第1の調整機構によって制御され、他方は、各々がアプリケータスロット6の断面高さを局所的に調整することができる、複数のアクチュエータから構成される第2の調整機構によって制御される。任意選択的に、ダイリップ38、39の両方は、(図2に示されるようになど)各々がアプリケータスロット6の断面高さを局所的に調整することができる、複数のアクチュエータによって制御される。
【0046】
図7は、アクチュエータアセンブリ200と、0バックラッシュカプラ240と、コントローラ300とを含むアセンブリを示す。図1A図3に示すように、アクチュエータアセンブリ200は、例えば、スロットダイ20、30と同様にアプリケータスロットの高さを調整することによって、又はスロットダイ10、15、20、30と同様にスロットダイ内の流体流路の高さを調整することによって、スロットダイの流体流路の局所的な調整を提供するために、スロットダイに使用されてもよい。
【0047】
アクチュエータアセンブリ200は、モータ210と、モータ210に結合されたリニアアクチュエータ220と、位置センサ230とを含む。一例として、モータ210は、ステッピングモータであってもよい。モータ210の出力シャフト(図示せず)は、リニアアクチュエータ220に機械的に結合されている。センサ230は、リニアアクチュエータ220の位置を感知する。例えば、センサ230は、LVDTセンサ又はリニアエンコーダであってもよい。センサ230は、クランプ232によってリニアアクチュエータ220の出力シャフト222に固定されており、リニアアクチュエータ220の出力シャフト222の相対位置を正確に測定する。他の実施例では、センサ230は、0バックラッシュカプラ240、ダイアクチュエータリンク機構252、可撓性ダイリップ32、回転ロッド22、又はチョーカーバー11を測定してもよい。一例として、アクチュエータアセンブリ200として使用するのに適したアクチュエータアセンブリは、Honeywell International Incorporated(Morristown,New Jersey)から入手可能である。
【0048】
コントローラ300は、モータ210及びセンサ230の両方から位置入力を受信する。例えば、モータ210は、ステッピングモータであってもよく、ステッピングモータの既知の基準位置からステッピングモータが取った「ステップ」の数の指標を提供してもよい。センサ230は、モータ210によって提供されるよりも正確な位置情報をコントローラ300に提供することができる。コントローラ300は、モータ210に命令を与えて、アクチュエータ220の出力シャフト222を予め選択された位置に駆動する。例えば、コントローラ300は、予め選択された位置に従ってアクチュエータ220の出力シャフト222を位置決めするために、モータ210を動作させながら、センサ230を用いてアクチュエータ220の出力シャフト222の位置を監視してもよい。いくつかの実施例では、コントローラ300は、アクチュエータアセンブリ200のセットを同時に又は順次に、のいずれかで制御することができる。例えば、コントローラ300は、図1Bに示すように、スロットダイ10のアクチュエータアセンブリ200の各々を制御することができる。
【0049】
スロットダイ10、15、20、30では、アクチュエータ220の出力シャフト222は、0バックラッシュカプラ240によってダイアクチュエータリンク機構252に接続されている。0バックラッシュカプラ240は、互いにねじ留めされる2つの半体、すなわち下半分242及び上半分244を含む。下半分242は、ねじでダイアクチュエータリンク機構252に直接取り付けられている。加えて、0バックラッシュカプラ240は、アクチュエータ220の出力シャフト222の端部にボルト留めされる積層突出アセンブリを含む。積層突出アセンブリは、絶縁ディスク248を取り囲む2つの金属ディスク246を含む。一例として、絶縁ディスク248は、セラミック材料を含むことができる。下半分242及び上半分244は、組み合わされて、アクチュエータ220の出力シャフト222の端部にボルト留めされた金属ディスク246及び絶縁ディスク248を含む積層突出アセンブリを取り囲む。上半分244が下半分242にしっかりとねじ留めされると、アクチュエータ220の出力シャフト222は、0バックラッシュカプラ240及びダイアクチュエータリンク機構252に効果的に接続される。
【0050】
0バックラッシュカプラ240は、アクチュエータアセンブリ200をスロットダイから熱的に分離するように機能する。具体的には、絶縁ディスク248は、アクチュエータ220の出力シャフト222とダイアクチュエータリンク機構252との間の金属間接触経路を著しく制限する。これは、スロットダイの損傷熱からアクチュエータアセンブリ200を保護するのに役立つ。例えば、スロットダイは、通常、華氏300度を超える温度で動作する。これに対して、モータ210及びセンサ230を含むアクチュエータアセンブリ200の構成要素は、華氏130度を超える温度に曝されたときに、機能の制限又は更には永久的な損傷を受ける可能性がある。このため、0バックラッシュカプラ240は、アクチュエータアセンブリ200の温度を華氏130度以下に維持するように機能することができる。いくつかの実施例では、金属ディスク246はまた、アクチュエータ220の出力シャフト222とダイアクチュエータリンク機構252との間に金属間接触がないように、非金属材料から形成することができる。そのような実施例は、アクチュエータアセンブリ200をスロットダイハウジングから更に熱的に分離する。更なる実施例では、カプラ240の表面積は、アクチュエータアセンブリ200の温度を華氏130度以下に維持するために熱を放散するように選択することができる。これは、独立して、又は絶縁ディスク248と組み合わせて使用することができる。更なる実施例では、能動的熱制御を使用して、0バックラッシュカプラ240、出力シャフト222、又はアクチュエータアセンブリ200を冷却することができる。能動的熱制御の適切な例としては、対流空気流、循環液体、及び熱電子デバイスが挙げられる。
【0051】
作動機構として差動ボルトを利用するスロットダイ設計とは対照的に、0バックラッシュカプラ240は、制限されたバックラッシュで、又はバックラッシュなしで、アクチュエータ220の出力シャフト222をダイアクチュエータリンク機構252に結合する。差動ボルト機構は100マイクロメートルを超えるバックラッシュを有することがあるのに対して、0バックラッシュカプラ240は、10マイクロメートル未満、又は更には約3マイクロメートルなどの5マイクロメートル未満など、ほとんどバックラッシュを提供しないことができる。
【0052】
アプリケータスロット幅又はチョーカーバー位置を制御するために1組の差動ボルトを利用するスロットダイでは、各差動ボルトの比較的大きなバックラッシュは、1つの差動ボルトの位置を調整することにより、他のボルトにおける流体流路の高さを変化させる可能性があることを意味する。このため、押出ダイの動作中にチョーカーバーの絶対位置を知ることはできない。対照的に、スロットダイ10、15、20、30では、アクチュエータ220の出力シャフト222の位置は、チョーカーバー11(スロットダイ10、15の場合)、回転ロッド22(スロットダイ20の場合)、及び可撓性ダイリップ32(スロットダイ30の場合)の局所位置に直接対応する。このため、スロットダイ10、15、20、及び30は、作動機構として差動ボルトを利用するスロットダイでは利用できない反復可能な正確な位置決めを容易にする。
【0053】
図8は、押出物の予め選択されたクロスウェブプロファイルに従ってスロットダイの複数のアクチュエータの各アクチュエータの位置を選択するための技術を示すフローチャートである。本明細書に開示されるスロットダイに限定されないが、明確にするために、図5の技術は、スロットダイ10(図1及び図2)、アクチュエータアセンブリ200(図4)、及びコントローラ300(図4)に関して説明する。異なる実施例では、図5の技術は、ストリップコーティング、フィルムスロットダイ、多層スロットダイ、ホットメルト押出コーティングダイ、ドロップダイ、回転ロッドダイ、接着剤スロットダイ、溶媒コーティングスロットダイ、水性コーティングダイ、スロット供給ナイフダイ、又は他のスロットダイに利用することができる。
【0054】
最初に、スロットダイ(スロットダイ10など)が用意される(ステップ502)。スロットダイは、スロットダイを通る流体流路と流体連通している、スロットダイの幅にわたって延びるアプリケータスロットを含む。アプリケータスロットの形状は、一対の対向するダイ表面によって画定される。第1のダイ表面は、一体構造であり、アプリケータスロットの大まかな調整を提供するために様々な位置に移動させることができる。第2のダイ表面は、スロットダイの幅に沿って離間した複数のアクチュエータに係合している。複数のアクチュエータの各アクチュエータは、アプリケータスロットを通る流体流の微調整を提供するために、そのそれぞれの位置で流体流路の断面高さを調整するように動作可能である。
【0055】
次に、各アクチュエータと通信するコントローラ300などのコントローラが用意される(ステップ504)。コントローラは、センサ230の測定された位置及び/又はモータ210のためのステッピングモータ設定などの複数の個別設定のうちの1つに従って、各アクチュエータの位置を設定するように構成されている。任意選択的に、コントローラ300は、第1の調整機構を操作するモータ又は他の駆動機構と通信し、それによって可撓性ダイリップ13を制御することもできる。あるいは、第1の調整機構は、可撓性ダイリップ13の位置を規定するために、オペレータによって手動で操作することができる。
【0056】
次に、アプリケータスロット6から出てくる押出物の目標ウェブキャリパーに基づいて、可撓性ダイリップ13を制御する第1の調整機構が設定される(ステップ505)。いくつかの実施形態では、この目標設定は、オペレータによって行われる。他の実施形態では、この目標設定は、オペレータの指示の下で、又はオペレータによって提供される入力に基づくコンピュータの予測に基づいて、のいずれかでコントローラによって行われる。そのような予測は、必要に応じて、同様の設定下でスロットダイ10を動作させるときに以前に収集された経験的ウェブキャリパーデータに基づくことができる。
【0057】
(所与の目標ウェブキャリパーに対する)第1の調整機構の目標設定は、第1及び第2のスロットダイ表面に沿った複数の位置におけるアプリケータスロットの断面高さを反映するスロット高さプロファイルに基づく。このスロット高さプロファイルは、第2の調整機構が基準位置、典型的には、各アクチュエータがスロットダイのチョーカーバー、可撓性ダイリップ、又は回転ロッドに本質的に0の力を加える中立位置にあるときに測定することができる。第1の調整機構の全ての可能な設定においてスロット高さプロファイルを測定することは実際的ではないので、所与の第1の調整機構設定に対するスロット高さプロファイルを近似するために、較正を得ることができる。
【0058】
一般に、この較正は、第1の調整機構の一連のそれぞれの設定に対応する一連のスロット高さプロファイルを系統的に測定することによって経験的に得られる。正確な較正を得るために、これらの測定は、予め選択された動作温度でスロットダイを加熱して安定させた後に行うことができる。測定が完了し、較正が得られると、補間、スプラインフィッティング、又は当該技術分野で既知の任意の他の方法によって、第1の調整機構の目標設定を得ることができる。
【0059】
次に、流体力学と、スロットダイ10のソリッドモデルなどのスロットダイ10のデジタルモデルとを使用して、コントローラ300は、第1のダイ表面に起因する予め選択されたクロスウェブプロファイルからの測定された偏差を考慮に入れる、予め選択されたクロスウェブプロファイルに対応する複数の個別設定からの個別設定のセットを予測する(ステップ506)。好ましい実施形態では、個別設定のセットは、予め選択されたクロスウェブプロファイルと第1のダイ表面との間の偏差を補償するように計算される。
【0060】
例示的な実施形態では、予測される個別設定のセットは、それらの中立位置に正規化されたときに、特定の公差内で集合的に平均して0になるアクチュエータ位置に設定が対応するように、ベースラインに従って定義される。この公差は、特に限定される必要はなく、例えば、±1000マイクロメートル、±100マイクロメートル、又は±10マイクロメートルの範囲内であってもよい。
【0061】
これらの偏差は予測不可能である傾向があり、スロットダイの幅にわたって著しく変化することがあるので、この補償は、このクロスウェブ変動性を実質的に低減し、取得されるクロスウェブプロファイルの忠実度を改善することができる。
【0062】
異なる実施例では、コントローラ300は、予め選択されたクロスウェブプロファイルを非一時的コンピュータ可読媒体から取り出してもよく、又は予め選択されたクロスウェブプロファイルをユーザ入力から受信してもよい。
【0063】
異なる実施例では、予測された設定は、センサ230からの測定値及び/又はモータ210の個別位置設定に対応することができる。センサ230は、モータ210によって提供されるよりも正確な位置情報をコントローラ300に提供することができる。このため、コントローラ300は、センサ230からの測定値に基づいてアクチュエータアセンブリ200の設定を予測することができ、予測された位置に対応するステップ数までモータ210を直接駆動するのではなく、予測された設定に従って出力シャフト222を配置するようにモータ210を動作させることができる。
【0064】
アクチュエータアセンブリ200などの複数のアクチュエータアセンブリを含むスロットダイでは、各アクチュエータアセンブリは、センサ230などの測定機器を含み、各測定機器は、スロットダイの局所測定値を提供するように構成されており、局所測定値は、それぞれの測定機器の位置における流体流路の断面高さに対応する。コントローラ300などのコントローラが、例えば個別設定のセットに従って、アクチュエータの各々を位置決めするとき、コントローラは、測定機器からの局所測定値を監視することができる。次いで、コントローラは、アクチュエータの各々に対して、アクチュエータが、個別設定のセットによって定義されるアクチュエータのそれぞれの位置における流体流路の絶対断面高さを提供するまで、アクチュエータの相対位置を調整してもよい。
【0065】
流体力学、押出物の流体特性、及びダイのデジタルモデルにより、コントローラ300は、スロットダイ10のアクチュエータの個別設定を予測することができる。多くの用途では、ダイの全幅にわたって押出物の一貫した厚さを提供することが望ましい。ストリップコーティングの別の実施例として、コントローラは、スロットダイ10のアクチュエータの個別設定を予測して、予め選択されたストリップ幅に対応する複数の個別設定からの個別設定のセットを予測することができる。
【0066】
ダイを通って流れる押出物のモデル化は、アプリケータスロット幅、マニホールドキャビティからアプリケータスロットの出口までの距離、及びスロット自体を画定する2つの平行な表面間のアプリケータスロットの狭い寸法であるスロット高さを含む、ダイ自体の多くの態様を組み込むことができる。流れの均一性及びコーティングされた製品の重要な均一性を達成する際の1つの基本的な問題は、スロット高さプロファイルの可能な限り最良の均一性を有するダイを構成する能力である。感度は、線形よりも大きく、これは、スロット高さの変動が押出物において拡大されることを意味する。
【0067】
流れのモデル化は、流体レオロジーを特性化する任意の適切なモデルを使用してもよい。例えば、流れのモデル化は、有限要素解析を含んでもよく、又は1つ以上の方程式により直接的に依存してもよい。一例として、べき乗則流体の場合、スロット内の流れとスロットの幾何学形状との間の関係は、以下の式1によって与えられる。
【数1】
式中、Q/Wは、単位幅当たりの流量であり、Hは、スロット高さであり、Pは、圧力であり、Lは、ダイ幅であり、nは、べき乗則指数であり、Kは、べき乗則粘度の係数である。ニュートン定粘度流体は、n=1を有し、Kは、数値粘度を表す。
【0068】
別の例として、スロット均一性は、スロットの壁の均一性によって特徴付けることができる。各スロットが2tの総表示ランアウト(Total Indicated Runout、つまりTIR)を有する場合、スロットからの流れのパーセント均一性は、以下の式2によって決定することができる。
【数2】
【0069】
定粘度(すなわち、ニュートン)流体の場合、これは、コーティング均一性がスロット高さHの三乗に従って変化することを意味する。この関係は、式3として示される。
【数3】
【0070】
式3は、押出流、材料、ダイ設計自体に関連する詳細を含む全ての詳細を考慮しない場合があるので、スロット設定を予測するために直接使用されない場合がある。しかしながら、この式は、ダイの幅にわたって正確に調整された高さを提供する利点を示す。具体的には、式3は、流体流路の高さの任意の変動が、結果として得られる押出物のクロスウェブプロファイルにおいて拡大されることを示す。
【0071】
式1は、例えば、スロットダイ変化を予測するために使用されてもよく、その理由は、本明細書に開示される技術によれば、アクチュエータの位置、及び推論によってスロット高さHが、所望の押出物厚さ、現在の測定された押出物厚さと組み合わせて知られているからである。以前は、押出プロセス中にスロット高さの絶対位置を知ることは、例えば差動ボルトのバックラッシュのために、可能ではなかった。目標押出物厚さプロファイル及び測定された押出物厚さプロファイルを使用して、式1は、適切なスロットダイ変化を予測することができる。例えば、既知のスロット高さプロファイル及び測定された押出物厚さプロファイルからスロット高さプロファイルと押出物厚さプロファイルとの間の関係を推論によって知っているので、したがって、目標押出物厚さプロファイルを得るためにスロット高さプロファイルを予測することができる。
【0072】
流路の他の要素はあまり重要ではないと仮定すると、ニュートン流体の場合、アクチュエータiに対応する予測されたスロット高さH’iは、式4に示すように計算される。
【数4】
【0073】
べき乗則流体の場合、式4は、式5として表すことができる。
【数5】
【0074】
より一般化されたべき乗則流体の場合、式4は、式6として表すことができる。
【数6】
【0075】
説明のために、流体機械予測は、ダイの幾何学的状況を含むことができる。図3の可撓性ダイリップ32などの可撓性ダイリップの場合、スロット高さは、ヒンジ点における公称固定スロットを有する収束又は発散スロットを考慮することによって、より良好に近似することができる。ヒンジ点スロットが一定のままであると仮定すると、式7を適用することができる。
【数7】
【0076】
次いで、流体力学潤滑近似によれば、流量/幅は、以下のように式8によって与えることができる。
【数8】
【0077】
式中、μは、押出物の粘度であり、再びニュートン流体であると仮定される。次に、式8を用いて、スロット高さHを式9によって与えることができる。
【数9】
【0078】
これらの閉形式の例は、有用であるが、任意の数の他の機械的、熱的、及び流体力学的プロセスの詳細を含むようにモデルを拡張することができることを理解されたい。予測モデルが良好であればあるほど、本明細書に開示される技術は、所望の押出物プロファイルのための最良の動作条件に向かってより迅速に収束する。
【0079】
式1~式9は単なる例示であり、任意の数の式を使用して、予め選択されたクロスウェブプロファイルに対応するスロットダイ10のアクチュエータアセンブリ200の設定を予測することができる。例えば、スロットダイ10のアクチュエータアセンブリ200の最適な設定を予測することは、スロットダイ10及び押出物全体にわたる熱伝達及び熱放散をモデル化することを含むことができる。そのような予測モデル化は、熱及び流れによって誘起される力によるダイアセンブリ及び機械要素の機械的たわみの予測を含むことができる。前述したように、そのようなモデルは、有限要素解析に依存してもよく、又はより一般的な方程式を使用して、予め選択されたクロスウェブプロファイルに対応するスロットダイ10のアクチュエータアセンブリ200の設定を予測してもよい。
【0080】
コントローラ300が予め選択されたクロスウェブプロファイルに対応するスロットダイ10のアクチュエータアセンブリ200の設定を予測すると、スロットダイ10は、アクチュエータアセンブリ200が予測された設定のセットに従って位置決めされた状態で、押出物を流体流路に通してアプリケータスロット6から出すことによって動作される(ステップ508)。
【0081】
スロットダイ10の動作中、コントローラは、押出物の測定に従って、押出物がアプリケータスロットを出た後の押出物のクロスウェブプロファイルを評価する(ステップ510)。例えば、コントローラ300は、複数のクロスウェブ位置で押出物の厚さを直接測定するセンサから入力を受信してもよい。一例として、β線厚さゲージを使用して、スロットダイの動作中に押出物の厚さを測定することができる。ストリップコーティングの場合、コントローラ300は、個々のストリップのストリップ幅及び/又は厚さを直接測定するセンサからの入力を受信することができる。クロスウェブプロファイルの評価、流体力学、及びダイのデジタルモデルを使用して、コントローラ300は、次に、予測された個別設定のセットに対する調整が、押出物がアプリケータスロットを出た後に、予め選択されたクロスウェブプロファイルにより厳密に一致する押出物のクロスウェブプロファイルを提供することができるかどうかを判定する。
【0082】
コントローラ300が、予測された個別設定のセットに対する調整が、押出物がアプリケータスロットを出た後に、予め選択されたクロスウェブプロファイルにより厳密に一致する押出物のクロスウェブプロファイルを提供することができると判定した場合、コントローラは、予め選択されたクロスウェブプロファイルに対応する複数の個別設定からの改善された個別設定のセットを予測する(ステップ512)。押出物を流体流路に通してアプリケータスロットから出すことによってスロットダイを動作させ続けながら、コントローラ300は、改善された予測された個別設定のセットに従ってアクチュエータを再位置決めする(ステップ514)。ステップ510、512、及び514は、予測された設定のセットを改善することができないとコントローラ300が判定するまで、及び/又は所望のクロスウェブプロファイルを維持するために周期的間隔で、繰り返すことができる。個別設定のセット(ステップ514)は、同様の材料、押出又はコーティング特性、及び処理条件が必要とされる将来の取り出し、及び数分後、数時間後、又は数年後の将来の使用のためのレシピとして保存することができる。
【0083】
図9は、予め選択されたダイキャビティ圧力に従ってスロットダイの複数のアクチュエータの各アクチュエータの位置を選択するための技術を示すフローチャートである。本明細書に開示されるスロットダイに限定されないが、明確にするために、図9の技術は、スロットダイ10(図1及び図2)、アクチュエータアセンブリ200(図7)、及びコントローラ300(図7)に関して説明する。異なる実施例では、図9の技術は、フィルムスロットダイ、多層スロットダイ、ホットメルト押出コーティングダイ、ドロップダイ、回転ロッドダイ、接着剤スロットダイ、溶媒コーティングスロットダイ、水性コーティングダイ、スロット供給ナイフダイ、押出複製ダイ、真空接触ダイ、又は他のスロットダイに利用することができる。
【0084】
最初に、スロットダイ10などのスロットダイが用意される(ステップ602)。スロットダイは、スロットダイの幅にわたって延びるアプリケータスロットと、スロットダイの幅に沿って離間した複数のアクチュエータとを含む。アプリケータスロットは、スロットダイを通る流体流路と流体連通している。複数のアクチュエータの各アクチュエータは、アプリケータスロットを通る流体流の局所的な調整を提供するために、そのそれぞれの位置で流体流路の断面高さを調整するように動作可能である。
【0085】
図1図4を対象とするものを含む、本明細書に記載される技術は、図示されるように最初に構築されたダイスロット構成を使用して、又は代替的に、アクチュエータアセンブリ200のセットなどのアクチュエータアセンブリが後付けされたダイスロット構成を使用して実行することができる。異なる実施例では、これらの技術は、フィルムスロットダイ、多層スロットダイ、ホットメルト押出コーティングダイ、ドロップダイ、回転ロッドダイ、接着剤スロットダイ、溶媒コーティングスロットダイ、水性コーティングダイ、スロット供給ナイフダイ、押出複製ダイ、真空接触ダイ、又は他のスロットダイに利用することができる。
【0086】
作動機構は、熱的に調整可能なボルト、差動ボルト、圧電アクチュエータ、空気圧アクチュエータ、及び油圧アクチュエータのうちの1つ以上を含むことができる。一例では、作動機構は、熱的に調整可能なボルトを含み、スロットダイを熱的に調整可能なボルトで改造するための技術は、押出物がアプリケータスロットを出た後の押出物のクロスウェブプロファイルを評価することと、押出物がアプリケータスロットを出た後の押出物のクロスウェブプロファイルが予め選択されたクロスウェブプロファイルにより厳密に一致するように、作動機構のうちの1つ以上の相対位置をそのそれぞれの熱的に調整可能なボルトで調整することとを含むことができる。
【0087】
1つの例示的な作動機構では、アプリケータスロットは、スロットダイの本体によって軸方向に変位させられる作動ロッドとともに、支点としての回転シャフトによって支持されたレバーを使用して、可撓性ダイリップに押圧荷重又は引張荷重を印加することによって調整することができる。レバーの回転力は、作動ロッドの軸方向の力に変換され、この軸方向の力が可撓性ダイリップに作用する押圧荷重又は引張荷重となる。レバーは、レバーの作用点で作動ロッドに力を直接加えることができる。
【0088】
別の実施例では、熱的に調整可能なボルトが、可撓性ダイリップ上に配置されたそれぞれの熱電素子に結合された複数の調整ピンを使用して、アプリケータスロットを自動的に調整する。熱電素子は、熱電素子の膨張又は収縮を通じて対応する調整ピンによって可撓性ダイリップに加えられる機械的力の作用を通じてアプリケータスロットを調整するために、コントローラによって制御可能であってもよい。更なる選択肢として、作動機構は、同時に調整される少なくとも2つの調整ピン及び/又は熱電素子を提供することを含むことができる。
【0089】
上記の更なる態様は、他の変形例と共に、米国特許第9,700,911号(Nakano)及び国際公開第2019/219724号(Colellら)に記載されている。
【0090】
次に、各アクチュエータと通信するコントローラ300などのコントローラが用意される(ステップ604)。コントローラは、センサ230の測定された位置及び/又はモータ210のためのステッピングモータ設定などの複数の個別設定のうちの1つに従って、各アクチュエータの位置を設定するように構成されている。
【0091】
図8のプロセスについて前述したように、次に、可撓性ダイリップ13を制御する第1の調整機構が、目標押出物厚さ又はウェブキャリパーに基づいて設定される(ステップ605)。いくつかの実施形態では、この設定は、オペレータによって行われる。他の実施形態では、この設定は、オペレータの指示の下で半自動的に、又はオペレータによって提供される入力に基づくコンピュータの予測に基づいて、コントローラによって行われる。任意選択的に、そのような予測は、同様の設定下でスロットダイ10を動作させるときに以前に収集された経験的ウェブキャリパーデータに基づいて行うことができる。
【0092】
流体力学と、ダイ10のソリッドモデルなどのダイ10のデジタルモデルとを使用して、コントローラ300は、第1のダイ表面に起因する予め選択されたクロスウェブプロファイル(例えば、平坦なクロスウェブプロファイル)からの測定された偏差を考慮に入れながら、予め選択されたダイキャビティ圧力に対応する複数の個別設定からの個別設定のセットを予測する(ステップ606)。好ましい実施形態では、個別設定のセットは、予め選択されたクロスウェブプロファイルと第1のダイ表面との間の偏差を補償するように計算される。先に述べたように、予測された個別設定のセットは、アクチュエータ位置が、それらの中立位置に正規化されたときに集合的に平均して0になるように、数学的に定義することができる。
【0093】
この補償は、得られたクロスウェブプロファイルの忠実度を実質的に改善することができる。
【0094】
異なる実施例では、コントローラ300は、予め選択されたダイキャビティ圧力を非一時的コンピュータ可読媒体から取り出してもよく、又は予め選択されたダイキャビティ圧力をユーザ入力から受信してもよい。
【0095】
異なる実施例では、予測された設定は、センサ230からの測定値及び/又はモータ210の個別位置設定を考慮することができる。センサ230は、モータ210によって提供されるよりも正確な位置情報をコントローラ300に提供することができる。このため、コントローラは、センサ230からの測定値に部分的に基づいてアクチュエータアセンブリ200の設定を予測することができ、予測された位置に対応するステップ数までモータ210を直接駆動するのではなく、予測された設定に従って出力シャフト222を配置するようにモータ210を動作させることができる。
【0096】
流体力学、押出物の既知の流体特性、及びダイのデジタルモデルにより、コントローラ300は、スロットダイ10のアクチュエータの個別設定を予測することができる。ダイを通って流れる押出物のモデル化は、アプリケータスロット幅、マニホールドキャビティからアプリケータスロットの出口までの距離、及びスロット高さを含む、ダイ自体の多くの態様を組み込むことができる。
【0097】
任意の数の式を使用して、予め選択されたダイキャビティ圧力に対応するスロットダイ10のアクチュエータアセンブリ200の設定を予測することができる。例えば、スロットダイ10のアクチュエータアセンブリ200の最適な設定を予測することは、スロットダイ10及び押出物全体にわたる熱伝達及び熱放散をモデル化することを含むことができる。前述したように、そのようなモデルは、有限要素解析に依存してもよく、又はより一般的な方程式を使用して、予め選択されたダイキャビティ圧力に対応するスロットダイ10のアクチュエータアセンブリ200の設定を予測してもよい。
【0098】
コントローラ300が予め選択されたダイキャビティ圧力に対応するスロットダイ10のアクチュエータアセンブリ200の設定を予測すると、スロットダイ10は、アクチュエータアセンブリ200が予測された設定のセットに従って位置決めされた状態で、押出物を流体流路に通してアプリケータスロット6から出すことによって動作される(ステップ608)。
【0099】
スロットダイ10の動作中、コントローラは、ダイキャビティ4内の、又は流体流路入口5の前若しくは後に生じ得る流路内の好適な測定点でのダイキャビティ圧力を測定する(ステップ610)。例えば、コントローラ300は、ダイキャビティ4内のダイキャビティ圧力を直接測定するセンサから入力を受信してもよい。測定されたダイキャビティ圧力、流体力学、及びダイのデジタルモデルを使用して、コントローラ300は、次に、予測された個別設定のセットに対する調整が、予め選択されたダイキャビティ圧力により厳密に一致するダイキャビティ圧力を提供することができるかどうかを判定する。
【0100】
コントローラ300が、予測された個別設定のセットに対する調整が、予め選択されたダイキャビティ圧力により厳密に一致するダイキャビティ圧力を提供することができると判定した場合、コントローラは、予め選択されたダイキャビティ圧力に対応する複数の個別設定からの改善された個別設定のセットを予測する(ステップ612)。押出物を流体流路に通してアプリケータスロットから出すことによってスロットダイを動作させ続けながら、コントローラ300は、改善された予測された個別設定のセットに従ってアクチュエータを再位置決めする(ステップ614)。ステップ610、612、及び614は、予測された設定のセットを改善することができないとコントローラ300が判定するまで、及び/又は所望のダイキャビティ圧力を維持するために周期的間隔で、繰り返すことができる。
【0101】
いくつかの実施例では、図9の技術は、図8の技術と組み合わせることができる。例えば、コントローラ300は、予め選択されたダイキャビティ圧力も維持しながら、スロット高さに対して所望のクロスウェブプロファイルを提供しようとしてもよい。このような実施例では、コントローラ300は、図8及び図9に関して説明した同じ流体力学及びダイのデジタルモデルを使用して、所望のクロスウェブプロファイル及び予め選択されたダイキャビティ圧力の両方を提供するアクチュエータアセンブリ200の設定を決定することができる。一例では、圧力制御は、ストリップ又は正確な幅をコーティングするように配置されたダイの制御を可能にする。更に、圧力制御は、コントローラ300と通信するストリップ幅を検出するセンサがダイ圧力制御を選択するために利用される場合に達成することができる。個別設定のセット(ステップ514)は、同様の材料、押出又はコーティング特性、及び処理条件が必要とされる将来の取り出し、及び数分後、数時間後、又は数年後であり得る将来の時点での使用のためのレシピとして保存することができる。
【0102】
図10図20は、本明細書に開示される技術に従って、それぞれの第1及び第2の調整機構から力を加えることによって、対向する第1及び第2のダイ表面を操作する実施例を示す。
【0103】
図10は、2つの対向するダイ表面を有するスロットダイの複数のアクチュエータの各々に隣接する流体流路の断面高さを反映するクロスウェブプロファイルを示す。第1のダイ表面は、実質的に一致して移動され、第1の調整機構によって制御される一方、第2のダイ表面は、第2の調整機構(例えば、複数のアクチュエータ)によって局所的に調整することができる可撓性ダイリップによって提供される。
【0104】
この実施例では、第1の調整機構は、固定設定を有し、スロットダイは、典型的な動作温度である320°Fに加熱されている。2つのプロファイル、すなわち、(1)第2の調整機構が可撓性ダイリップから完全に切り離されたときに得られるクロスウェブプロファイル、及び(2)第2の調整機構がスロットダイの幅にわたって「ゼロ」のその較正プロファイル設定(これは、アクチュエータアセンブリの「中間ストローク」位置と呼ぶことができる)に移動されたときに得られるクロスウェブプロファイルが示されている。クロスウェブプロファイルは、典型的にはテーパゲージを使用して、経験的に測定される。あるいは、そのような測定は、光学プロフィロメトリーなどの「非接触」法を使用して行うことができる。ダイリップのプロファイルを測定する別の方法は、組み立てられたダイのスロット内に配置することができるキャパシタンスゲージ(Capacitec,Inc.(Ayer,Massachusetts)から入手可能なものなど)の使用を伴う。
【0105】
ここで示されるように、プロファイル(2)は、主にプロファイル(1)に追従し、較正プロファイルが、概して、可撓性ダイリップが静止しているとき、又はその自然な位置にあるときに得られるものと同じスロットダイ形状を提供することを示す。両方の場合において、クロスウェブプロファイルが平坦なクロスウェブプロファイルから著しく逸脱していることは注目に値する。有利なことに、理論的な平坦なスロット形状ではなく実際のスロットダイ形状に基づく較正プロファイルを参照することにより、コントローラは、これらの偏差を非常に効果的に補正することができる。
【0106】
図11は、第1の調整機構設定(ここでは回転設定)の関数として平均クロスウェブプロファイルを表す較正曲線を示し、図12は、第1の調整機構に関連付けられた実際のスライド位置の関数として平均クロスウェブプロファイルを示す。ダイ動作温度で得られたこれらの較正曲線は、概して互いに類似しているが、後者は、第1の調整機構に起因するバックラッシュの影響を除去するので、わずかにより正確である。図11及び図12の較正曲線の各々は、滑らかな曲線によって表されるように、第1のダイ表面のこの態様を数学的にモデル化するために重ね合わされた最良適合多項式関数を更に示す。
【0107】
図11及び図12で明らかなように、スロットダイ位置と第1の調整機構との間の関係は、非線形である。これらの関係の理解を使用して、さもなければこの挙動に対して線形関係を仮定することから生じ得る誤差を低減することができる。従来のねじベースの調整機構では、非線形性は、可撓性ダイリップとのプッシュ型係合からプル型係合への機械的遷移から生じ得る。
【0108】
図13及び図14は、較正データのより一般化された図を提供し、スロット高さの平均クロスウェブ値ではなく、クロスウェブプロファイルデータが各アクチュエータ位置について示されている。図11及び図12と同様に、図13は、第1の調整機構(「粗いギャップ(Coarse Gap)」又は「CG」)設定に基づく較正データを示し、図14は、第1の調整機構の実際のスライド位置に基づく同じデータを示す。これらのデータが明らかにするように、クロスウェブプロファイルの形状は、上方又は下方にシフトするにつれて著しく変化することができる。ここで、最も低い設定は、下に凹の形状を有するプロファイルをもたらし、最も高い設定は、上に凹の形状を有するプロファイルをもたらす。
【0109】
図15は、第1及び第2の調整機構のためのコントローラとしての役割を果たすプログラム可能論理コンピュータに接続されたディスプレイ上に示されたヒューマンマシンインターフェース650を示す。このインターフェース650は、オペレータがボタン上でブロックして、ここでは個々に調整可能な対向するダイ表面を有するダイを含む異なるダイの間で選択することを可能にする、ダイ選択ツール652を含む。図示のように、ダイ選択ツール652はまた、図13及び図14の較正データを入力/編集するためのボタンを提供する。ダイアログボックス654は、第1の調整機構の既定のスライド位置を示す。必要に応じて、ダイアログボックス654は、第1の調整機構の既定の設定を示すこともできる。既定のスライド位置又は設定は、オペレータによって入力又は編集することができる。
【0110】
図16は、第1の調整機構スライド位置の3つの別個の値が提供されるメインオペレータインターフェース700を示し、これらは、「記憶」(ボックス706)、「使用中」(ボックス708)、及び「センサ」(ボックス710)とラベル付けされている。「記憶」位置は、第1の調整機構の既定のスライド位置を反映する。「使用中」値は、直近に実行されたクルーズコントロールアルゴリズムに基づいてコントローラが最後に使用した第1の調整機構のスライド位置を反映する。例示的な実施形態では、それは、センサ値が「使用中」値から既定の公差を超えて逸脱する場合に、赤色に点滅する。最後に、「センサ」値は、ダイに取り付けられた位置センサから経験的に測定された第1の調整機構のスライド位置である。
【0111】
図17及び図18は、第1の調整機構及び第2の調整機構それぞれに関連付けられたそれぞれのダイ表面のクロスウェブスロット高さプロファイルを示す。これらの2つのダイ表面を比較すると、いずれの場合も、ベンチマークの平坦なクロスウェブプロファイルに対して、第1の調整機構と第2の調整機構との間の均一性の著しい差が明らかになる。複数の個々に調整可能なアクチュエータに係合されたこの構成における第2のダイ表面は、全てのアクチュエータがそれらの0設定にあるときに非常に均一にすることができる。
【0112】
基準点として均一な第2のダイ表面を有することは、非常に有利であり得る。図19は、提供される技術の利点を例示する、押出物のゲージプロファイルを示す。このゲージプロファイルは、第1のダイ表面の不均一なプロファイルを基準面として定義することによって得られ、複数の個々に調整可能なアクチュエータが所望のスロット高さプロファイルからのこれらの偏差を正確に補償することを可能にした。比較として、図20は、図19のゲージプロファイルに対応するスロットダイの第2のダイ表面プロファイルを示す。図示のように、得られたウェブは、さもなければ平坦な対向するダイ表面に基づいて可能であるよりもはるかに良好な均一性を示す。
【0113】
スロットダイを動作させる他の方法も、当該技術分野で知られているものに基づいて可能である。このような方法としては、例えば、流体流の断面高さをまとめて、例えばアプリケータスロットにわたるその最大断面高さまで、実質的に開放することによって、スロットダイから障害物を取り除くことが挙げられる。そのような方法はまた、スロットダイをパージすることと、押出物に沿ってダウンウェブ厚さ変動を作り出すことによって二次元パターンを作り出すこととを含む。これらは、米国特許第9,579,684号(Yapelら)及び国際公開第2012/170713号(Secorら)の他の箇所に記載されている。
【0114】
コントローラ300に関して説明される技術などの本開示で説明される技術は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はそれらの任意の組み合わせに少なくとも部分的に実装してもよい。例えば、技術のさまざまな実施例は、コントローラ、ユーザインターフェース、又は他のデバイスに具現化された、1つ以上のマイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(digital signal processors、DSP)、特定用途向け集積回路(application specific integrated circuits、ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmable gate arrays、FPGA)、又は他の任意の等価集積回路若しくは個別論理回路、並びにそのような構成要素の任意の組み合わせ内に実装することができる。用語「コントローラ」は、一般的に、前述の論理回路単独、又は他の論理回路との組み合わせ、あるいは任意の他の等価回路、のいずれかを指してもよい。
【0115】
ソフトウェアで実装される場合、本開示で説明されるシステム及びコントローラに帰する機能は、ランダムアクセスメモリ(random access memory、RAM)、読み出し専用メモリ(read-only memory、ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(non-volatile random access memory、NVRAM)、電気的消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ(electrically erasable programmable read-only memory、EEPROM)、フラッシュメモリ、磁気媒体、光学媒体などのコンピュータ可読記憶媒体上の命令として具体化されてもよい。命令は、1つ以上のプロセッサに、本開示に記載される機能の1つ以上の実施例をサポートさせるために実行されてもよい。
【0116】
様々な実施例を前述の節に組み込んできた。これら及び他の実施例は、以下の特許請求の範囲内である。
【0117】
更に、上記特許出願において引用された全ての参照文献、特許、又は特許出願は、一貫した形でそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。組み込まれた参照文献の一部と本出願との間に不一致又は矛盾がある場合、前述の記載における情報が優先するものとする。前述の記載は、当業者が、特許請求の範囲に記載の開示を実践することを可能にするためのものであり、本開示の範囲を限定するものと解釈すべきではなく、本開示の範囲は特許請求の範囲及びその全ての等価物によって定義される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【手続補正書】
【提出日】2023-12-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0117
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0117】
更に、上記特許出願において引用された全ての参照文献、特許、又は特許出願は、一貫した形でそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。組み込まれた参照文献の一部と本出願との間に不一致又は矛盾がある場合、前述の記載における情報が優先するものとする。前述の記載は、当業者が、特許請求の範囲に記載の開示を実践することを可能にするためのものであり、本開示の範囲を限定するものと解釈すべきではなく、本開示の範囲は特許請求の範囲及びその全ての等価物によって定義される。
なお、各実施形態に加えて以下の態様について付記する。
(付記1)
スロットダイを調整する方法であって、前記スロットダイが、
前記スロットダイの幅にわたって延びるアプリケータスロットであって、前記スロットダイが、対向する第1及び第2のスロットダイ表面を備え、前記アプリケータスロットが、前記スロットダイを通る流体流路と流体連通している、アプリケータスロットと、
前記第1及び第2のスロットダイ表面それぞれに動作可能に結合された第1及び第2の調整機構であって、各々が、前記アプリケータスロットを通る流体流路の断面高さを独立して調整することができる、第1及び第2の調整機構と、
前記第2のスロットダイ表面の前記幅に沿って離間した複数のアクチュエータであって、各アクチュエータが、前記第2の調整機構に動作可能に結合されて、各アクチュエータのそれぞれの位置で流体流路の前記断面高さを調整し、前記アプリケータスロットを通る流体流の局所的な調整を提供する、複数のアクチュエータと、
を備え、前記方法が、
押出物の予め選択されたクロスウェブプロファイルに基づいて、前記第1の調整機構の目標設定を割り当てることと、
前記目標設定を用いて、前記対向する第1及び第2のスロットダイ表面に沿った複数の位置に対応するスロット高さプロファイルを決定することと、
コントローラを用いて、前記スロット高さプロファイル及び前記予め選択されたクロスウェブプロファイルの両方に基づく複数の個別設定からの個別設定のセットを予測することであって、前記予測は前記個別設定のセットと前記押出物のクロスウェブプロファイルとの間の既知の相関に基づいている、予測することと、
前記スロットダイの前記調整のために前記予測された個別設定のセットに従って各アクチュエータの位置を設定することと、
を含む、方法。
(付記2)
前記第1の調整機構が、前記第1のスロットダイ表面全体を実質的に一致して移動させるように構成されている、付記1に記載の方法。
(付記3)
前記第2の調整機構が、チョーカーバー又は可撓性ダイリップを含み、前記複数のアクチュエータが、前記チョーカーバー又は前記可撓性ダイリップに動作可能に結合されている、付記1又は2に記載の方法。
(付記4)
前記第1の調整機構が、第2のチョーカーバー又は第2の可撓性ダイリップを含み、前記第1のスロットダイ表面の前記幅に沿って離間した第2の複数のアクチュエータを更に含み、各アクチュエータが、前記第2のチョーカーバー又は前記第2の可撓性ダイリップに動作可能に結合されて、各アクチュエータのそれぞれの位置で流体流路の前記断面高さを調整し、前記アプリケータスロットを通る流体流の前記局所的な調整を提供する、付記1又は3に記載の方法。
(付記5)
前記スロット高さプロファイルが、前記第2の調整機構が中立位置にあるときに決定される、付記1~4のいずれか一項に記載の方法。
(付記6)
前記スロット高さプロファイルが、前記第1の調整機構の前記目標設定から決定される、付記1~5のいずれか一項に記載の方法。
(付記7)
前記スロット高さプロファイルに対する前記第1の調整機構の較正を得ることを更に含み、前記スロット高さプロファイルが、前記得られた較正に基づいて前記目標設定から計算される、付記6に記載の方法。
(付記8)
前記較正が、前記第1の調整機構の一連のそれぞれの設定に対応する一連のスロット高さプロファイルを測定することによって経験的に得られる、付記7に記載の方法。
(付記9)
前記スロットダイを予め選択された動作温度まで加熱することを更に含み、前記較正が、前記スロットダイが前記予め選択された動作温度にある間に得られる、付記8に記載の方法。
(付記10)
前記第1の調整機構の前記目標設定が、前記一連の測定されたスロット高さプロファイルから得られた前記較正に基づいて補間される、付記9に記載の方法。
(付記11)
前記第1の調整機構が、前記第1のスロットダイ表面全体を実質的に一致して移動させることによって、前記アプリケータスロットを通る流体流路の前記断面高さを調整する、付記1~10のいずれか一項に記載の方法。
(付記12)
前記予測された個別設定のセットが、前記複数のアクチュエータの中立位置に正規化されたときに公差内で集合的に平均して0になるアクチュエータ位置に対応する、付記1~11のいずれか一項に記載の方法。
(付記13)
前記予測された個別設定のセットが、前記第1の調整機構におけるクロスウェブ変動性を実質的に打ち消すように計算される、付記1~12のいずれか一項に記載の方法。
(付記14)
押出物品を製造する方法であって、
付記1~13のいずれか一項に記載の方法に従ってスロットダイを調整することと、
前記スロットダイの前記アプリケータスロットを通して、前記調整されたスロットダイに基づいて押出物を押出して、前記押出物品を得ることと、
を含む、方法。
(付記15)
スロットダイであって、
前記スロットダイの幅にわたって延びるアプリケータスロットであって、前記スロットダイが、対向する第1及び第2のスロットダイ表面を備え、前記アプリケータスロットが、前記スロットダイを通る流体流路と流体連通している、アプリケータスロットと、
前記第1及び第2のスロットダイ表面それぞれに動作可能に結合された第1及び第2の調整機構であって、各々が、前記アプリケータスロットを通る流体流路の断面高さを独立して調整することができる、第1及び第2の調整機構と、
前記第2のスロットダイ表面の前記幅に沿って離間した複数のアクチュエータであって、各アクチュエータが、前記第2の調整機構に動作可能に結合されて、各アクチュエータのそれぞれの位置で流体流路の前記断面高さを調整し、前記アプリケータスロットを通る流体流の局所的な調整を提供する、複数のアクチュエータと、
を備える、スロットダイと、
前記スロットダイの動作のための複数の個別設定のうちの1つに従って各アクチュエータの位置を設定するように構成されたコントローラであって、押出物の予め選択されたクロスウェブプロファイルに基づいて、前記第1の調整機構の目標設定を割り当て、前記目標設定を用いて、前記対向する第1及び第2のスロットダイ表面に沿った複数の位置に対応するスロット高さプロファイルを決定し、前記スロット高さプロファイル及び前記予め選択されたクロスウェブプロファイルの両方に基づく複数の個別設定からの個別設定のセットを予測し、このとき前記予測は前記個別設定のセットと前記押出物のクロスウェブプロファイルとの間の既知の相関に基づいており、次いで前記スロットダイの前記調整のために前記予測された個別設定のセットに従って各アクチュエータの位置を設定するように更に構成された、コントローラと、
を備える、システム。
【国際調査報告】