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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-20
(54)【発明の名称】スロットダイ位置調整
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/31 20190101AFI20231213BHJP
   B29C 48/92 20190101ALI20231213BHJP
   B05C 5/02 20060101ALI20231213BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
B29C48/31
B29C48/92
B05C5/02
B05C11/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534897
(86)(22)【出願日】2021-11-11
(85)【翻訳文提出日】2023-07-11
(86)【国際出願番号】 IB2021060465
(87)【国際公開番号】W WO2022123355
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】63/122,996
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】セコー,ロバート ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ヤペル,ロバート エー.
(72)【発明者】
【氏名】ガラシ,ニコラス エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ロウクサ,ペンティ ケー.
(72)【発明者】
【氏名】ウィルヘルム,ジャスティン ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】コスタッチ,グレゴリー ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ラーカンプ,ブランドン エー.
(72)【発明者】
【氏名】トーマス,ポール シー.
【テーマコード(参考)】
4F041
4F042
4F207
【Fターム(参考)】
4F041AB01
4F041BA12
4F041CA03
4F041CA13
4F041CA17
4F042AB01
4F042BA12
4F042BA25
4F042CB08
4F042DH09
4F207AG01
4F207AP02
4F207AP11
4F207AR02
4F207AR12
4F207KA01
4F207KA17
4F207KB13
4F207KL75
4F207KL76
4F207KL78
4F207KL79
4F207KM05
4F207KM15
(57)【要約】
本明細書で説明するのは、スロットダイを調整する方法であって、スロットダイは、スロットダイの幅に沿って延びるアプリケータスロットであって、スロットダイを通る流体流路と流体連通しているアプリケータスロットと、チョーカーバー及び可撓性ダイリップからなる群のうちの少なくとも1つと、スロットダイの幅に沿って離間した複数のアクチュエータであって、各アクチュエータが、チョーカーバー又は可撓性ダイリップに動作可能に結合されて、そのそれぞれの位置で流体流路の断面高さを調整し、アプリケータスロットを通る流体流の局所的な調整を提供する、複数のアクチュエータと、を備える、方法が提供されることである。本方法は、アプリケータスロットから提供される押出物の厚さ値を測定することと、厚さ値をスロットダイの幅に沿った対応する位置にマッピングすることと、押出物厚さ値のデータ圧縮を実行して、測定された厚さ値の所望の厚さ値からの偏差を表す残差行列を取得することと、残差行列に基づいて複数のアクチュエータのうちの1つ以上の位置を調整して、チョーカーバー又は可撓性ダイリップの補正された形状を得ることと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スロットダイを調整する方法であって、前記スロットダイは、
前記スロットダイの幅に沿って延びるアプリケータスロットであって、前記スロットダイを通る流体流路と流体連通しているアプリケータスロットと、
チョーカーバー及び可撓性ダイリップからなる群のうちの少なくとも1つと、
前記スロットダイの前記幅に沿って離間した複数のアクチュエータであって、各アクチュエータが、前記チョーカーバー又は前記可撓性ダイリップに動作可能に結合されて、各アクチュエータのそれぞれの位置で流体流路の断面高さを調整し、前記アプリケータスロットを通る流体流の局所的な調整を提供する、複数のアクチュエータと、
を備え、前記方法は、
前記アプリケータスロットから提供される押出物の厚さ値を測定することと、
前記厚さ値を前記スロットダイの前記幅に沿った対応する位置にマッピングすることと、
前記押出物厚さ値のデータ圧縮を実行して、前記測定された厚さ値の所望の厚さ値からの前記偏差を表す残差行列を取得することと、
前記残差行列に基づいて前記複数のアクチュエータのうちの1つ以上の前記位置を調整して、前記チョーカーバー又は前記可撓性ダイリップの補正された形状を得ることと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記厚さ値を前記スロットダイの前記幅に沿った対応する位置にマッピングすることが、影響のアクチュエータゾーンと測定ゾーンとの畳み込みを表す重なり行列を使用して前記測定された厚さ値を変換することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記測定された厚さ値が、クロスウェブ方向に沿って互いに離間した複数のコーティングされた領域から構成されるストライプコーティング押出物に対応する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記データ圧縮が、前記スロットダイを通る流体流の影響を考慮する流量感度畳み込みを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記データ圧縮が、流体流を介して伝送されるアクチュエータ間の相互作用を考慮するウェーブレット変換を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ウェーブレット変換が、Rickerウェーブレット変換を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記複数のアクチュエータのうちの1つ以上の前記位置を調整することが、
前記残差行列を所与として、前記スロットダイを通る流体流の前記影響を減算して、0圧力スロット高さプロファイルを得ることと、
前記0圧力スロット高さプロファイルに向かって1つ以上のアクチュエータの前記位置を調整することと、
を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記スロットダイを通る流体流の前記影響を減算することが、圧力ダイたわみモデルを作成することと、前記圧力ダイたわみモデルを使用して、圧力補償されたスロット高さプロファイルを得ることと、前記圧力補償されたスロット高さプロファイルから前記測定又は予測されたたわみ量を減算して、前記0圧力スロット高さプロファイルを得ることと、を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記スロットダイの動作中にダイキャビティ圧力を測定することを更に含み、前記圧力ダイたわみモデルが、前記ダイキャビティ圧力を考慮する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記スロットダイを通る流体流の前記影響を減算することが、前記ダイ内の流体流によって誘発された前記チョーカーバー又は前記可撓性ダイリップのたわみ量を経験的に測定することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
1つ以上のアクチュエータが、前記押出物の予め選択されたスロット高さプロファイルに対応する一連の個別設定に基づく個別設定のセットに従って調整される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記個別設定のセットが、前記流体流路の高さを、流れ場物理学効果に起因するたわみの前記影響を除外したアクチュエータ位置に変換する剛性行列から決定される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記剛性行列が、対称行列であり、前記剛性行列が、前記スロットダイの前記幅に沿った少なくとも2つのアクチュエータが同一の流量感度を有すると仮定する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
押出物品の製造方法であって、
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法に従ってスロットダイを調整することと、
前記調整されたスロットダイの前記アプリケータスロットを通して押出物を押出して、前記押出物品を得ることと、
を含む、製造方法。
【請求項15】
スロットダイであって、
前記スロットダイの幅に沿って延びるアプリケータスロットであって、前記スロットダイを通る流体流路と流体連通しているアプリケータスロットと、
チョーカーバー及び可撓性ダイリップからなる群のうちの少なくとも1つと、
前記スロットダイの前記幅に沿って離間した複数のアクチュエータであって、各アクチュエータが、前記チョーカーバー又は可撓性ダイリップに動作可能に結合されて、各アクチュエータのそれぞれの位置で前記流体流路の高さを調整し、前記アプリケータスロットを通る流体流の局所的な調整を提供する、複数のアクチュエータと、
を備えるスロットダイと、
前記アプリケータスロットから提供される押出物の厚さ値を受信し、前記厚さ値を前記スロットダイの前記幅に沿った対応する位置にマッピングし、前記押出物厚さ値のデータ圧縮を実行して、前記測定された厚さ値の所望の厚さ値からの前記偏差を表す残差行列を取得し、前記残差行列に基づいて前記複数のアクチュエータのうちの1つ以上の位置を調整して、前記チョーカーバー又は前記可撓性ダイリップの補正された形状を得るように構成されたコントローラと、
を備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットダイ、並びにそのアセンブリ、システム、及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スロットダイは、アプリケータスロットを形成するダイリップを含む。アプリケータスロットの幅は、移動するウェブの幅、又はフィルムなどの押出物を受け取るローラの幅に沿って延びることができる。本明細書で使用されるとき、スロットダイ及びスロットダイの構成要素に関して、「幅」は、スロットダイ及びその構成要素のクロスウェブ(又はクロスローラ)寸法を指す。この点に関して、スロットダイのアプリケータスロットは、スロットダイの幅に沿って延びる。
【0003】
スロットダイは、一般に、押出物及びコーティングを形成するために使用される。例として、スロットダイは、移動する可撓性基材つまり「ウェブ」に液体材料を塗布するためのスロットダイコーティングにおいて使用される。スロットダイコーティングの技術には多くのバリエーションがある。一例として、コーティング材料は、室温又は制御された温度であってもよい。コーティング材料が処理のために溶融又は液化されることを確実にするためにコーティング材料温度が上昇される場合、これは、しばしば「ホットメルト」コーティングと呼ばれる。他の例では、コーティング材料は、溶媒希釈剤を含むことができる。溶媒は、水、有機溶媒、又はコーティングの成分を溶解若しくは分散させる任意の好適な流体であってもよい。溶媒は、典型的には、乾燥によってなど、後続の処理において除去される。コーティングは、単一又は複数の層を含むことができ、いくつかのスロットダイを使用して、複数の層を同時に塗布することができる。コーティングは、ダイの幅にわたる連続コーティングであってもよく、又は代わりに、ストリップから構成されてもよく、各ストリップは、ダイの幅の一部分のみにわたって延び、隣接するストリップから空間的に分離されている。
【0004】
スロットダイを使用して、薄膜押出物を含む押出フィルムを形成することもできる。いくつかの例では、そのような押出物は、ウェブ基材に適用されたコーティングであってもよく、このプロセスは、押出コーティングと呼ばれることがある。他の例では、押出物は、フィルム又はウェブを直接形成することができる。押し出されたフィルムは、その後、長さ延伸又は幅出し操作によって加工されてもよい。コーティングと同様に、押出物は、単一層又は複数層を含んでもよい。
【0005】
フィルム又はコーティングなどの押出物の厚さは、他の要因の中でも、スロットダイを通る押出物の流量に依存する。一例では、スロットダイは、所望の厚さプロファイルを提供するために、スロットダイを通る押出物の流量を局所的に調整するために使用することができる調整可能なチョーカーバーを流路内に含むことができる。スロットダイはまた、所望の厚さプロファイルを提供するために、アプリケータスロット自体の高さを局所的に調整し、アプリケータスロットからの押出物の流量を制御するために使用することができる、可撓性ダイリップを含むことができる。
【0006】
スロットダイは、押出物に所望の厚さプロファイルを提供するために、アプリケータスロットの幅に沿って離間した複数のアクチュエータを含んでもよい。例えば、各アクチュエータは、チョーカーバー又は可撓性ダイリップの局所的な位置調整を提供するように構成することができる。スロットダイを使用する押出プロセスの過程で、押出物のクロスウェブプロファイルを測定することができる。次いで、各アクチュエータは、アプリケータスロットの幅にわたって押出物に均一な厚さなどの所望の厚さプロファイルを提供するように、個々に調整することができる。
【発明の概要】
【0007】
本明細書では、アプリケータスロットに沿ったアクチュエータ位置の予測及び連続制御のための行列ベースの計算モデルを適用するスロットダイ調整方法及びシステムについて説明する。提供される方法は、所望のコーティング厚さプロファイルに到達するために、圧力たわみ補償、行列重複、及び指数一般化、並びに行列記憶方法に基づく。これらの方法は、流れ場を介したアクチュエータ相互作用、並びに単一のアルゴリズムにおける非線形挙動を含むことができる。これらの方法は、個々に及び組み合わせて、自動スロットダイプロファイル制御システムの反復制御における実質的な向上を可能にする。
【0008】
第1の態様では、スロットダイを調整する方法であって、スロットダイは、スロットダイの幅に沿って延びるアプリケータスロットであって、スロットダイを通る流体流路と流体連通しているアプリケータスロットと、チョーカーバー及び可撓性ダイリップからなる群のうちの少なくとも1つと、スロットダイの幅に沿って離間した複数のアクチュエータであって、各アクチュエータが、チョーカーバー又は可撓性ダイリップに動作可能に結合されて、そのそれぞれの位置で流体流路の高さを調整し、アプリケータスロットを通る流体流の局所的な調整を提供する、複数のアクチュエータと、を備える、方法が提供される。本方法は、アプリケータスロットから提供される押出物の厚さ値を測定することと、厚さ値をスロットダイの幅に沿った対応する位置にマッピングすることと、押出物厚さ値のデータ圧縮を実行して、測定された厚さ値の所望の厚さ値からの偏差を表す残差行列を取得することと、残差行列に基づいて複数のアクチュエータのうちの1つ以上の位置を調整して、チョーカーバー又は可撓性ダイリップの補正された形状を得ることと、を含む。
【0009】
第2の態様では、押出物品の製造方法であって、前述の方法に従ってスロットダイを調整することと、調整されたスロットダイのアプリケータスロットを通して押出物を押出して、押出物品を得ることと、を含む、製造方法が提供される。
【0010】
第3の態様では、スロットダイであって、
スロットダイの幅に沿って延びるアプリケータスロットであって、スロットダイを通る流体流路と流体連通しているアプリケータスロットと、チョーカーバー及び可撓性ダイリップからなる群のうちの少なくとも1つと、スロットダイの幅に沿って離間した複数のアクチュエータであって、各アクチュエータが、チョーカーバー又は可撓性ダイリップに動作可能に結合されて、そのそれぞれの位置で流体流路の高さを調整し、アプリケータスロットを通る流体流の局所的な調整を提供する、複数のアクチュエータと、を備えるスロットダイと、アプリケータスロットから提供される押出物の厚さ値を受信し、厚さ値をスロットダイの幅に沿った対応する位置にマッピングし、押出物厚さ値のデータ圧縮を実行して、測定された厚さ値の所望の厚さ値からの偏差を表す残差行列を取得し、残差行列に基づいて複数のアクチュエータのうちの1つ以上の位置を調整して、チョーカーバー又は可撓性ダイリップの補正された形状を得るように構成されたコントローラと、を備える、システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】動作中の例示的なスロットダイであって、複数のアクチュエータを有するチョーカーバーを含み、各アクチュエータは、その位置で流体流路の高さを調整するように動作可能である、スロットダイを示す図である。
図2図1のスロットダイの上面図である。
図3】位置センサ及びコントローラを含むアクチュエータアセンブリを示す図である。
図4】例示的なスロットダイ調整プロセスを示す概略図である。
図5】例示的なスロットダイについて予測された流量感度データを示すプロットである。
図6】アクチュエータ移動に対する厚さ感度をモデル化するために使用されるRickerウェーブレットを示す図である。
図7】Rickerウェーブレット変換を使用して達成されるスロットダイプロファイルの補正を示す図である。
図7A】最も物理的に関連する指数Eを決定するために使用される、一連のスロット高さ変化からの厚さ感度の計算を示す図である。
図7B】最も物理的に関連する指数Eを決定するために使用される、一連のスロット高さ変化からの厚さ感度の計算を示す図である。
図7C】最も物理的に関連する指数Eを決定するために使用される、一連のスロット高さ変化からの厚さ感度の計算を示す図である。
図8】圧力たわみ効果のない計算されたスロット高さプロファイルを示す図である。
図9】計算されたスロット高さ圧力たわみ補正プロファイルを示す図である。
図10】圧力補正されたスロットの計算されたスロット高さプロファイルを示す図である。
図11】その中立位置から測定したときのダイリップの計算された屈曲を示すスロット高さプロファイルを示す図である。
図12】例示的なダイスロット調整プロセスを使用して得られた、計算されたスロット高さ及びコーティング厚さプロファイルを示す図である。
【0012】
明細書及び図面中の参照文字が繰り返して使用されている場合、本開示の同じ又は類似の特徴又は要素を表すことを意図している。当業者は多くの他の修正形態及び実施形態を考案することができ、それらは本開示の原理の範囲及び趣旨に含まれることを理解されたい。図は、縮尺通りに描かれていないことがある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書で使用する場合、「好ましい」及び「好ましくは」という用語は、一定の状況下で一定の利点をもたらすことができる、本明細書に記載の実施形態を指す。ただし、他の実施形態もまた、同じ又は他の状況下で好ましい場合がある。更にまた、1つ以上の好ましい実施形態の列挙は、他の実施形態が有用でないことを示唆するものではなく、他の実施形態を本発明の範囲から除外することを意図するものでもない。
【0014】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用する場合、文脈上別段の明記がない限り、単数形「a」、「an」及び「the」は複数の指示物を含むものとする。したがって、例えば、「a」又は「the」が付いた構成要素への言及には、構成要素及び当業者に公知のその均等物のうちの1つ以上を含んでもよい。更に、「及び/又は」という用語は、列挙された要素のうちの1つ若しくは全て、又は列挙された要素のうちの任意の2つ以上の組み合わせを意味する。
「含む」という用語及びその変化形は、これらの用語が添付の記載に現れた場合、限定的意味を有しないことに注意されたい。また更に、「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つの」及び「1つ以上の」は、本明細書では互換的に使用される。左、右、前方、後方、上部、底部、側、上方、下方、水平、垂直などの相対語が、本明細書において使用される場合があり、その場合、特定の図面において見られる視点からのものである。しかしながら、これらの用語は、記載を簡単にするために使用されるに過ぎず、決して本発明の範囲を制限するものではない。
【0015】
本明細書全体において、「一実施形態」、「特定の実施形態」、「1つ以上の実施形態」又は「ある実施形態」に対する言及は、その実施形態に関して記載される特定の特徴、構造、材料又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して様々な箇所にある「1つ以上の実施形態では」、「特定の実施形態では」、「一実施形態では」又は「実施形態では」などの句の出現は、必ずしも本発明の同一の実施形態に言及しているわけではない。該当する場合、商品名は、全て大文字で記載する。
【0016】
図1及び図2は、スロットダイ10を示す。スロットダイ10は、上部ダイブロック2と下部ダイブロック3とを含む。上部ダイブロック2は、下部ダイブロック3と組み合わせて、スロットダイ10を通る流体流路を形成する。流体流路は、入口5と、ダイキャビティ4と、アプリケータスロット6とを含む。アプリケータスロット6は、上部ダイブロック2に取り付けられた回転ロッド12と下部ダイブロック3のダイリップ13との間にある。スロットダイ10は、そのアプリケータスロットに回転ロッド12を含むので、スロットダイ10は、回転ロッドダイと呼ばれることがある。
【0017】
スロットダイ10は、スロットダイ10内の流体流路の幅にわたって延びているチョーカーバー11を含む。一例として、チョーカーバー11におけるスロットダイ10内の流体流路の幅は、チョーカーバー11がアプリケータスロット6の幅に沿って延びるように、アプリケータスロット6の幅とほぼ同じであってもよい。アクチュエータアセンブリ200は、共通の取付ブラケット9に取り付けられており、スロットダイ10の幅に沿って離間している。いくつかの実施例では、取付ブラケット9は、セグメント化されていてもよく、例えば、取付ブラケット9は、各アクチュエータアセンブリ200のための別個の構造体を含んでもよい。各アクチュエータアセンブリ200は、スロットダイ10内の押出物の流体流路内のチョーカーバー11の位置を変更することによって、スロットダイ10の幅に沿ったそのそれぞれの位置で流体流路の高さを調整し、アプリケータスロット6を通る流体流の局所的な調整を提供するように動作可能である。
【0018】
スロットダイ10の動作中、押出物は、流体流路入口5でスロットダイ10に入り、押出物がアプリケータスロット6を通って出て移動ローラ7に適用されるまで、ダイキャビティ4を含むスロットダイ10の流体流路を通って進み続ける。いくつかの実施形態では、押出物を、移動するウェブ(図示せず)に適用することができる。他の実施形態では、押出物をローラ7に直接適用することができる。任意選択的に、押出物及びウェブを一連のローラを通して搬送して、押出物を冷却することができる。
【0019】
1つ以上の追加のプロセスが、ローラ7の下流で押出物に対して行われてもよい。このようなプロセスとしては、延伸、コーティング、テクスチャリング、印刷、切断、圧延、及び積層が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかのプロセスでは、製造剥離ライナーを除去して、剥離ライナーを追加することができ、又は1つ以上の追加の層(積層転写テープなど)を追加することができる。硬化工程も行うことができ、e-ビーム、熱、又は紫外線(ultraviolet、UV)光などの化学線への曝露によって実施することができる。
【0020】
図2に示すように、スロットダイ10は、共通の取付ブラケット9に取り付けられた1組のアクチュエータアセンブリ200を含む。5つのアクチュエータアセンブリ200が示されているが、異なる数のアクチュエータアセンブリも可能である。各アクチュエータアセンブリ200は、チョーカーバー11に取り付けられている、又は他の方法でチョーカーバー11に係合されており、アクチュエータアセンブリ200は、チョーカーバー11の幅に沿って離間している。アクチュエータの各々は、スロットダイ10内の流体流路内のチョーカーバー11の位置の局所的な調整を提供することによって、その位置で流体流路の高さを制御するように動作可能である。
【0021】
図3に関して後述するように、アクチュエータアセンブリ200の各々は、リニアアクチュエータを駆動するモータを含むことができる。アクチュエータアセンブリ200の各々はまた、リニアアクチュエータの出力シャフトの位置移動を検出する、線形可変差動変圧器(linear variable differential transformer、LVDT)又はリニアエンコーダなどの精密センサを含むことができる。リニアアクチュエータアセンブリ200の出力シャフトは、各リニアアクチュエータアセンブリ200がチョーカーバーの局所位置を調整するように動作可能であるように、チョーカーバー11の幅に沿って離間している。以下で更に詳細に説明するように、各リニアアクチュエータの位置は、押出物の所望のクロスウェブプロファイルを提供するように個々に選択可能である。加えて、リニアアクチュエータアセンブリ200の位置は、スロットダイ10内のチョーカーバー11に隣接する流体流路の全断面積を調整することによって、スロットダイ10の動作中にダイキャビティ4内に所望のダイキャビティ圧力を提供するように正確に調整することができる。他の実施例では、各アクチュエータアセンブリ200の位置は、反復又はランダムパターン化特徴などのパターン化特徴を有する押出物を生成するように能動的に制御されてもよい。本明細書で言及されるとき、アクチュエータ又はアクチュエータアセンブリの位置への言及は、より具体的には、アクチュエータ出力シャフトの相対的配置を指すことが意図される。
【0022】
スロットダイ10の変形例も可能であり、その場合、アクチュエータアセンブリは、チョーカーバーの代わりに可撓性ダイリップ又は回転ロッドに係合されている。アクチュエータアセンブリはまた、アプリケータスロットの両側から流体流路の断面積を調整するために存在してもよい。これらの実施形態では、様々な組み合わせが可能であり、例えば、回転ロッドダイは、チョーカーバー及び可撓性ダイリップの両方を備えて構成することができ、各々は、回転ロッドダイの幅に沿って離間した複数のアクチュエータを介して正確に調整することができる。
【0023】
図3は、個々のアクチュエータアセンブリ200と、0バックラッシュカプラ240と、コントローラ300とを含むアセンブリを示す。図1及び図2に示すように、アクチュエータアセンブリ200は、例えば、スロットダイ10と同様にスロットダイ内の流体流路の高さを調整することによって、スロットダイの流体流路の局所的な調整を提供するために、スロットダイに使用されてもよい。
【0024】
アクチュエータアセンブリ200は、モータ210と、モータ210に結合されたリニアアクチュエータ220と、位置センサ230とを含む。一例として、モータ210は、ステッピングモータであってもよい。モータ210の出力シャフト(図示せず)は、リニアアクチュエータ220に機械的に結合されている。センサ230は、リニアアクチュエータ220の位置を感知する。例えば、センサ230は、LVDTセンサ又はリニアエンコーダであってもよい。センサ230は、クランプ232によってリニアアクチュエータ220の出力シャフト222に固定されており、リニアアクチュエータ220の出力シャフト222の相対位置を正確に測定する。他の実施例では、センサ230は、0バックラッシュカプラ240、ダイアクチュエータリンク機構252、可撓性ダイリップ32、回転ロッド22、又はチョーカーバー11を測定してもよい。アクチュエータアセンブリ200として使用するのに適したアクチュエータアセンブリは、Honeywell International Incorporated(Morristown,New Jersey)から入手可能である。
【0025】
コントローラ300は、一般に専用コンピュータであり、モータ210及びセンサ230の両方から位置入力を受信する。例えば、モータ210は、ステッピングモータであってもよく、ステッピングモータの既知の基準位置からステッピングモータが取った「ステップ」の数の指標を提供してもよい。センサ230は、モータ210によって提供されるよりも正確な位置情報をコントローラ300に提供することができる。コントローラ300は、モータ210に命令を与えて、アクチュエータ220の出力シャフト222を予め選択された位置に駆動する。例えば、コントローラ300は、予め選択された位置に従ってアクチュエータ220の出力シャフト222を位置決めするために、モータ210を動作させながら、センサ230を用いてアクチュエータ220の出力シャフト222の位置を監視してもよい。いくつかの実施例では、コントローラ300は、1組のアクチュエータアセンブリ200を同時に又は順次に、のいずれかで制御することができる。例えば、コントローラ300は、図2に示されるスロットダイ10のアクチュエータアセンブリ200の各々を制御することができる。
【0026】
スロットダイ10では、アクチュエータ220の出力シャフト222は、0バックラッシュカプラ240によってダイアクチュエータリンク機構252に有利に接続することができる。0バックラッシュカプラ240は、この実施例では、互いにねじ留めされる2つの半体、すなわち下半分242及び上半分244を含む。下半分242は、ねじでダイアクチュエータリンク機構252に直接取り付けられている。加えて、0バックラッシュカプラ240は、アクチュエータ220の出力シャフト222の端部にボルト留めされる積層突出アセンブリを含む。積層突出アセンブリは、絶縁ディスク248を取り囲む2つの金属ディスク246を含む。一例として、絶縁ディスク248は、セラミック材料を含むことができる。下半分242及び上半分244は、組み合わされて、アクチュエータ220の出力シャフト222の端部にボルト留めされた金属ディスク246及び絶縁ディスク248を含む積層突出アセンブリを取り囲む。上半分244が下半分242にしっかりとねじ留めされると、アクチュエータ220の出力シャフト222は、0バックラッシュカプラ240及びダイアクチュエータリンク機構252に効果的に接続される。
【0027】
0バックラッシュカプラ240は、アクチュエータアセンブリ200をスロットダイから熱的に分離するように機能する。具体的には、絶縁ディスク248は、アクチュエータ220の出力シャフト222とダイアクチュエータリンク機構252との間の金属間接触経路を著しく制限する。これは、スロットダイの損傷熱からアクチュエータアセンブリ200を保護するのに役立つ。例えば、スロットダイは、通常、300°F(149℃)を超える温度で動作する。これに対して、モータ210及びセンサ230を含むアクチュエータアセンブリ200の構成要素は、130°F(54℃)を超える温度に曝されたときに、機能の制限又は更には永久的な損傷を受ける可能性がある。このため、0バックラッシュカプラ240は、アクチュエータアセンブリ200の温度を130°F(54℃)以下に維持するように機能することができる。いくつかの実施例では、金属ディスク246は、アクチュエータ220の出力シャフト222とダイアクチュエータリンク機構252との間に金属間接触がないように、非金属材料から形成することができる。そのような特徴は、アクチュエータアセンブリ200をスロットダイハウジングから更に熱的に分離することができる。
【0028】
ここでは全体が記載されていないが、アクチュエータアセンブリ200は、米国特許第9,044,894号(Loukusaら)、同第9,216,535号(Triceら)、同第9,579,684号(Yapelら)、及び同第9,744,708号(Loukusaら)の他の場所に記載されているように、更なる選択肢及び利点を含むことができる。
【0029】
代替のアクチュエータ機構が可能である。他の実施形態では、アクチュエータ機構は、熱的に調整可能なボルト、差動ボルト、圧電アクチュエータ、空気圧アクチュエータ、及び/又は油圧アクチュエータのうちの1つ以上を含む。一実施形態では、アクチュエータ機構は、熱的に調整可能なボルトを含み、スロットダイを熱的に調整可能なボルトで改造するための技術は、押出物がアプリケータスロットを出た後の押出物のクロスウェブプロファイルを評価することと、押出物がアプリケータスロットを出た後の押出物のクロスウェブプロファイルが予め選択されたクロスウェブプロファイルにより厳密に一致するように、アクチュエータ機構のうちの1つ以上の相対位置をそのそれぞれの熱的に調整可能なボルトで調整することとを含むことができる。
【0030】
1つの例示的なアクチュエータ機構では、アプリケータスロットは、スロットダイの本体によって軸方向に変位させられる作動ロッドとともに、支点としての回転シャフトによって支持されたレバーを使用して、可撓性ダイリップに押圧荷重又は引張荷重を印加することによって調整することができる。レバーの回転力は、作動ロッドの軸方向に沿った力に変換することができ、この軸方向の力が可撓性ダイリップに作用する押圧荷重又は引張荷重となる。レバーは、レバーの作用点で作動ロッドに力を直接加えることができる。
【0031】
別の実施例では、熱的に調整可能なボルトが、可撓性ダイリップ上に配置されたそれぞれの熱電素子に結合された複数の調整ピンを使用して、アプリケータスロットを自動的に調整する。熱電素子は、熱電素子の膨張又は収縮を通じて対応する調整ピンによって可撓性ダイリップに加えられる機械的力の作用を通じてアプリケータスロットを調整するために、コントローラによって制御可能であってもよい。更なる選択肢として、アクチュエータ機構は、同時に調整される少なくとも2つの調整ピン及び/又は熱電素子を提供することを含むことができる。
【0032】
上記の更なる態様は、他の変形例と共に、米国特許第9,700,911号(Nakano)及びPCT特許公開第WO2019/219724号(Colellら)に記載されている。
【0033】
図4は、目標押出物厚さプロファイルを達成するために、押出プロセスにおいてスロットダイの複数のアクチュエータの各アクチュエータの位置を漸進的に調整するための例示的なワークフロー400を示すフローチャートである。限定することを意図するものではないが、ワークフロー400は、押出動作中のスロットダイ10(図1及び図2)、アクチュエータアセンブリ200(図3)、及びコントローラ300(図3)に関して記載されている。様々な実施例では、記載される技術は、ストリップコーティング、フィルムスロットダイ、多層スロットダイ、ホットメルト押出コーティングダイ、ドロップダイ、回転ロッドダイ、接着剤スロットダイ、溶媒コーティングスロットダイ、水性コーティングダイ、スロット供給ナイフダイ、押出複製ダイ、真空接触ダイ、又は他のスロットダイにも利用することができる。
【0034】
ワークフロー400の最初のステップは、スロットダイのアプリケータスロットから得られた押出物に対するプロファイル測定(ブロック402)を提供することである。既知の測定技術は、ベータゲージの使用を含む。ベータゲージは、放射性同位体源(例えば、プロメチウム、クリプトン、又はストロンチウムに基づく)から放出された放射線をウェブに透過させ、結果として生じるベータ粒子の減衰を検出することによって、ウェブの正規化質量を測定する。ベータゲージの測定フットプリントは小さいので、プロファイル測定は、ウェブの幅にわたって様々な位置で行われ、ウェブに沿って取られた測定間の時間差を考慮するために経時的に追跡される。完全なプロファイル測定は、統計的有意性を有するために、いくつかのスキャン(一般に、6つ以上のスキャン)の平均化を必要とすることがある。
【0035】
UV蛍光、レーザ三角測量などの直接厚さ測定、ガンマ後方散乱などの反射法、及び静電容量ベースのキャリパー感知に基づくものを含む、代替的な計測方法も利用可能である。これらの方法のいくつかは、ウェブの全幅にわたるウェブ厚さプロファイルを一度に捕捉することができる。コーティング厚さをその全幅に沿って一度に測定しながら、本明細書に記載されるワークフロー400を適用することにより、従来のスキャンベースの計測方法を使用するワークフローと比較して、サイクル時間に4倍~12倍の改善を提供することができると判定された。
【0036】
プロファイル測定(ブロック402)からのデータは、多くの場合、各クロスウェブスキャンに対する多数の個別の測定値を含む。これを管理するために、測定システムは、生の個別の測定値をより少数のデータ値に処理することができ、以下の式1によって定義されるようなクロスウェブ及びダウンウェブ平均化の形態を本質的に利用することができる。
【数1】
式中、粗粒度測定値Miは、特定のクロスウェブゾーンΔx及びダウンウェブ距離Δzにわたる平均値を表し、tは、そのクロスウェブゾーンΔx及びダウンウェブ距離Δz内の所与の厚さ測定値を表し、j及びkは、クロスウェブ方向及びダウンウェブ方向それぞれに沿った行列インデックスである。
【0037】
提供される技術は、連続フルウェブコーティング押出物及びストライプコーティング押出物の両方に使用することができる。フルウェブコーティングでは、多数の測定値は、コーティングされた幅全体を表す。ストライプコーティングの場合、測定された厚さ値は、クロスウェブ方向に沿って互いに離間した複数のコーティングされた領域に対応し、その結果、測定値は、コーティングされたストライプのみをカバーし、その間のコーティングされていないレーンをカバーしない。
【0038】
図4に示すように、次のステップは、これらのプロファイル測定のウェブからダイへのマッピング(ブロック404)を実行することである。ゲージ測定値をダイにマッピングするときに、特定の簡略化仮定を行うことができる。第1に、最新の計測システムはエッジ検出を有するものとすると、プロファイル測定から受信されるデータはエッジからエッジへ取られると仮定することができる。第2に、ゲージデータは、実際の押出物重量/厚さに直接対応すると仮定される。ウェブが剥離ライナー上に配置される場合、剥離ライナーの坪量が差し引かれ、データはコーティング重量のみを表すと更に仮定することができる。最後に、押出ウェブの両縁部から対称なネックインがあると仮定することができる。
【0039】
粗粒度測定値の数及び位置は、ダイリップアクチュエータの数及び位置と異なることが多く、したがって、測定値をアクチュエータ位置にマッピングする一般的な方法が望ましい。フィルムネックイン計算は、異なる流量、延伸距離、及びウェブ速度の影響を考慮することができる。一実施形態では、物理単位(インチ又はmm)でのコーティングされたウェブ座標は、アクチュエータ単位での座標(すなわち、連続アクチュエータ番号に基づくダイ座標系)にマッピングされる。このプロセスは、コーティング測定アレイ値から、物理的なコーティングされたウェブ位置へのマッピングを可能にし、次いで、ウェブからダイへのマッピング関数を介して物理的なダイ位置へのマッピングを可能にする。ここで、コーティング測定アレイは、例えば、移動するウェブをスキャナが横断するたびに生成される厚さ測定値の最新のアレイを表すことができる。
【0040】
同様のステップを逆の順序で含むように、プロセスを反転させること(すなわち、ダイからウェブへのマッピング)も可能である。直接マッピングの代わりに、逆の手順は、コーティング測定アレイの補間を含むことができる。すなわち、コーティングされたウェブ上の対応する位置へのダイアクチュエータ位置の直接マッピング(ダイからウェブへのマッピング関数、すなわちウェブからダイへのマッピング関数の逆を介した)、続いて、実際の測定アレイ値に対するこの直接マッピングの補間(連続関数及び一次導関数を特徴とするエルミート三次多項式などの低次多項式補間)である。
【0041】
ウェブからダイへ又はダイからウェブへのいずれかのマッピング関数評価が計算上非効率的又は非実用的である場合、著しく速い応答時間を可能にする傾向があるので、逆の手順が好ましい可能性がある。加えて、物理座標の使用を完全に回避することによってマッピングを簡略化することが有用であり得る。最も単純なマッピングは、ダイアクチュエータ座標からコーティング測定アレイ座標(測定アレイ番号と比較した相対位置に基づくコーティングされたウェブ座標)へ直接であってもよい。この論理拡張は、(例えば、三次多項式補間を使用して)最も計算効率がよい可能性が高いが、物理座標系が関与しないので、理解の透明性が損なわれる可能性がある。
【0042】
適切なダイからウェブへ又はウェブからダイへのマッピング関数では、プロファイル制御方式の他の場所でこの関数を利用することが有利であり得る。例えば、マッピングは、コーティング流れ場を通したコントローラ利得又はアクチュエータ相互作用などの制御パラメータにおけるクロスウェブ変動を組み込むことができる。これは、製造経験に基づいた特別な方法で、又はコーティング流れ場の流体機械モデルを使用したより科学的な方法で行うことができる。
【0043】
流れのモデル化は、流体レオロジーを特性化する任意の適切なモデルを使用してもよい。例えば、流れのモデル化は、有限要素解析を含んでもよく、又は1つ以上の方程式により直接的に依存してもよい。一例として、べき乗則流体の場合、スロット内の流れとスロットの幾何学形状との間の関係は、以下の式2によって与えられる。
【数2】
式中、Q/Wは、単位幅当たりの流量であり、Hは、スロット高さであり、Pは、圧力であり、Lは、ダイ幅であり、nは、べき乗則指数であり、Kは、べき乗則粘度の係数である。ニュートン定粘度流体は、n=1を有し、Kは、数値粘度を表す。
【0044】
別の例として、スロット均一性は、スロットの壁の均一性によって特徴付けることができる。各スロットが2tの総表示ランアウト、つまりTIRを有する場合、スロットからの流れのパーセント均一性は、以下の式3によって決定することができる。
【数3】
【0045】
定粘度(すなわち、ニュートン)流体の場合、これは、コーティング均一性がスロット高さHの三乗に従って変化することを意味する。この関係は、式4として示される。
【数4】
【0046】
式4は、押出流、材料、ダイ設計自体に関連する詳細を含む全ての詳細を考慮しない場合があるので、スロット設定を予測するために直接使用されない場合がある。しかしながら、この式は、ダイの幅にわたって正確に調整された高さプロファイルを提供する利点を示す。具体的には、式4は、流体流路の高さの任意の変動が、結果として得られる押出物のクロスウェブプロファイルにおいて拡大されることを示す。
【0047】
式2は、例えば、スロットダイ変化を予測するために使用されてもよく、その理由は、本明細書に開示される技術によれば、アクチュエータの位置、及び推論によってスロット高さHが、所望の押出物目標厚さ、現在の測定された押出物厚さと組み合わせて知られているからである。以前は、押出プロセス中にスロット高さの絶対位置を知ることは、例えば差動ボルトのバックラッシュのために、可能ではなかった。既知の目標厚さ及び測定された押出物厚さプロファイルを使用して、式2は、適切なスロットダイ変化を予測することができる。例えば、既知のスロット高さプロファイル及び測定された押出物厚さプロファイルからスロット高さプロファイルと押出物厚さプロファイルとの間の関係を推論によって知っているので、したがって、目標厚さプロファイルを得るためにスロット高さプロファイルを予測することができる。
【0048】
流路の他の要素はあまり重要ではないと仮定すると、ニュートン流体の場合、アクチュエータiに対応する予測されたスロット高さH’iは、式5に示すように計算される。
【数5】
【0049】
べき乗則流体の場合、式5は、式6として表すことができる。
【数6】
【0050】
より一般化されたべき乗則流体の場合、式5は、式7として表すことができる。
【数7】
【0051】
説明のために、流体機械予測は、ダイの幾何学的状況を含むことができる。図3の可撓性ダイリップ32などの可撓性ダイリップの場合、スロット高さは、ヒンジ点における公称固定スロットを有する収束又は発散スロットを考慮することによって、より良好に近似することができる。ヒンジ点スロットが一定のままであると仮定すると、式8を適用することができる。
【数8】
【0052】
次いで、流体力学潤滑近似によれば、流量/幅は、以下のように式9によって与えることができる。
【数9】
式中、μは、押出物の粘度であり、再びニュートン流体であると仮定される。次に、式9を用いて、スロット高さHを式10によって与えることができる。
【数10】
【0053】
これらの閉形式の例は、有用であるが、任意の数の他の機械的、熱的、及び流体力学的プロセスの詳細を含むようにモデルを拡張することができることを理解されたい。予測モデルが良好であればあるほど、本明細書に開示される技術は、所望の押出物プロファイルのための最良の動作条件に向かってより迅速に収束する。
【0054】
いくつかの実施形態では、このマッピングは、測定システムに既に組み込まれている任意のスキャン位置からダイボルト位置へのマッピングを組み込む。NDC Infrared Engineering Inc.(Irwindale,CA)からのプロファイル制御ソリューションなどの様々な市販のシステムがウェブからダイへのマッピングを実行することができる。
【0055】
ウェブからダイへのマッピングステップに続いて、プロファイル制御戦略は、データ圧縮ステップ(ブロック406)に進む。通常、コーティング測定アレイは、リップアクチュエータよりも多くの要素を含む(20~40個のアクチュエータと比較して500~1000個の測定要素)。有利なことに、データ圧縮(ブロック406)は、特に複雑な機械的及び流体力学的相互作用を伴う場合、多次元プロファイルデータを処理する際に、計算効率を改善し、コントローラのより速い応答性を提供することができる。スケールの小さな変動をアクチュエータが影響を及ぼし得る変動のスケールに変換することができるため、データ圧縮は、「粗視化」と呼ばれることがある。
【0056】
アクチュエータゾーン及び測定ゾーンが共通座標系(例えば、ダイ位置に対応する)に沿って画定されると、2つの間の変換は、様々な方法を使用して実行することができる。
【0057】
1つの方法は、式11に従って定義される重なり行列OLの使用に基づく。
【数11】
式中、S(a,x,l)は、クロスウェブ座標a、ゾーン位置x、及びゾーン幅lに依存する方形波関数である。上記の表記において、Aiは、i番目のアクチュエータゾーンのクロスウェブ座標であり、Gjは、j番目の測定ゾーンのクロスウェブ座標であり、wia及びwjsは、それぞれ、クロスウェブ座標に沿って定義されるアクチュエータゾーンの幅及びスキャンベースのゾーンの幅である。
【0058】
この重なり行列は、影響のアクチュエータゾーンと測定ゾーンとの畳み込みを表す。この矩形行列は、各アクチュエータに対して1つの行を含み、各測定値に対して1つの列を含む。上記で使用される座標系(すなわち、座標a)は、アクチュエータ番号に基づくことができ、アクチュエータは、0からNact-1まで番号付けされ、ここで、Nactは、アクチュエータの総数である。アクチュエータ間の幅は、この座標系において1(unity)(すなわち、1)であり、各アクチュエータの影響ゾーンは、その位置から両方のクロスウェブ方向にアクチュエータ間隔の1/2だけ延びる。すなわち、アクチュエータjのゾーンは、j-1/2からj+1/2までである。これは、アクチュエータjについて上で定義された二乗関数S(a,j,1)によって表される。同様に、各測定値は、それに関連付けられたゾーンを有し、このゾーンは、通常、その値を構成するデータ点、すなわちS(a,Mi,Δx)のクロスウェブゾーンΔxである。
【0059】
ストライプをコーティングする場合、Δxは、測定値に関連付けられたストライプの幅を表すことができる。全幅コーティングでは、Δxは、コーティングのクロスウェブ幅全体を表すことができる。上記の式11を例示的なストライプコーティングに適用すると、アクチュエータゾーン幅wiaは、1であり得、wjsは、それぞれのストライプ幅であり得る。いずれの場合も、測定値Mjは、クロスウェブ座標aを基準とし、したがって、測定システムに固有の任意の位置マッピングを組み込む。
【0060】
ストライプ又は全幅コーティングについて上記の重なり行列を計算することによって、測定値を個々のアクチュエータに関連付けられた値に変換する一般的な方法を実現することができる。例えば、測定値Msの所与のアレイは、重なり行列によって単純に乗算して、以下の式12に従ってアクチュエータに関連付けられたアレイMaを作成することができる。
【数12】
ここで、上付き文字aは、アクチュエータベースの値を指し、上付き文字sは、測定スキャンベースの値を指す。
【0061】
代替の方法も可能である。例えば、内挿法及び外挿法を使用して、測定ゾーンによる影響のアクチュエータゾーンを考慮することができる。例として、スプライン補間法を使用して、測定値を個々のアクチュエータにマッピングすることができる。
【0062】
以下の表1は、2つの異なる方法を使用してストライプ位置とアクチュエータ位置との間でストライプ位置及びコーティング厚さをどのように変換することができるかを示す。ここで、3番目の列は、測定されたコーティング厚さを表し、最後の列は、重なり行列マッピングデータを示す。
【0063】
【表1】
このチャートは、各アクチュエータ位置に対するコーティング厚さの重なり行列マッピングを示す。5番目の列は、スプライン補間された値を示す。これらは、これらの値が2つの異なる方法を使用してマッピングされたという事実を反映して、重なり行列値と正確に一致しない。
【0064】
次いで、ワークフロー400は、プロファイル偏差(ブロック408)を取得することに進む。1つの単純な技術は、コーティング重量測定値と所望のコーティング重量との間の差を用いた方形波畳み込みを使用する。方形波は、アクチュエータ位置の両側の1/2アクチュエータ間隔内で1の値を有し、他の場所では0の値を有する。アクチュエータ間の幅は、この座標系において1(unity)(つまり1)として定義される。この差は、以下の式13に従って各アクチュエータiについて計算することができる残差値Riのセットとして表すことができる。
【数13】
式中、Sは、クロスウェブ座標Aiを中心とする一般化された方形波関数であり、tm及びtdは、測定されたコーティング重量及び所望のコーティング重量それぞれを表す。
【0065】
式13によれば、データ圧縮は、ダイで測定された押出物厚さの知識を、目標プロファイル(ブロック407)を定義する押出物厚さの所望のクロスウェブプロファイルに関する入力と組み合わせて、プロファイル偏差(ブロック408)を得る。全体残差アレイRは、現在のコーティング重量測定値が各アクチュエータ位置において目標プロファイル(ブロック407)から逸脱する程度を表す。
【0066】
目標プロファイル(ブロック407)は、オペレータによって手動で設定することができる、又は手近なアプリケーションのための制御アルゴリズムに従ってコントローラによって自動的に設定することができる。いくつかの用途では、平坦なプロファイルが望ましいが、他のプロファイルが好ましい状況もある。例えば、「ドッグボーン」形状の目標プロファイルは、ドローレゾナンス(draw resonance)又はエッジスカロッピング(edge scalloping)に関連するものなど、押出プロセスにおけるエッジ不安定性を制御するために望ましい場合がある。
【0067】
前述の方形波畳み込みは、実施するのが簡単であるが、流れ場物理学のいくつかの重要な態様を考慮しない。例えば、残差アレイ要素と隣接するアクチュエータとの間に相互作用は存在しないが、流れ場の観点からは、広い影響ゾーンが存在し得る。一般に、単一のアクチュエータの移動は、相対的な流量を通じて全体的に流れ場に影響を及ぼし、他の例では、各アクチュエータの近傍において局所的に影響を及ぼす。
【0068】
アクチュエータ相互作用の強度及び範囲は、スロットダイの幾何形状及び構造、構成材料、コーティング液、コーティング方法、並びにコーティングビード流を含む様々な要因によって影響を受ける可能性がある。データ圧縮ステップにおいてアクチュエータ相互作用を捕捉する1つの方法は、流量感度畳み込みを使用して残差アレイを構築することであり、式14に示すように、∂tm/∂ΔHiは、流量感度、又はスロット高さの変化に対するコーティング重量(すなわち、押出物厚さ)の感度を示す。
【数14】
この構成では、各残差アレイ要素は、特定のアクチュエータのクロスウェブ位置におけるスロット高さに対するコーティング重量プロファイルのその部分の感度を表す。
【0069】
代替手法として、残差アレイは、フーリエ変換又はウェーブレット変換に基づくなど、フィルタリングの観点から提供することができる。その観点では、残差アレイは、コーティングプロファイルから除去されたときに所望の厚さプロファイルをもたらす特定のモードを含む。例えば、2つのパラメータ、ウェーブレット位置a、及びスケールσに基づくウェーブレット変換Ψは、以下の式15で与えられる。
【数15】
【0070】
流量感度とウェーブレット変換畳み込みは、全く異なる可能性があるが、驚くべきことに、アクチュエータ移動に対する厚さ感度は、押出ダイのウェーブレット関数によって厳密に表すことができることが発見された。特に、Ricker Wavelet(その形状のために「メキシカンハットウェーブレット」と呼ばれることもある)は、スロットダイの側縁部に隣接しないアクチュエータのアクチュエータ移動に対する厚さ感度に非常に近い近似を提供する。
【0071】
Ricker Waveletの形状は、ウェーブレット全体が0の全体積分面積を有するようにx軸の上下両方に延びるので、独自の技術的利点を提供する。この形状は、特定のスロットダイについて、流体流が所与のアクチュエータ位置で増加するときに隣接するアクチュエータ位置で生じる流体流の減少を正確にシミュレートすることができる。
【0072】
ウェーブレット変換は、より局所化された情報を提供するので、フーリエ変換よりも潜在的により有用であり得る。フーリエ変換は、典型的には周波数情報のみを抽出するのに対して、ウェーブレット変換は、ウェーブレットスケール(波長に類似)及び位置の両方を抽出する。しかし、アクチュエータを用いてチョーカーバー又は可撓性ダイリップを制御する場合、特定のウェーブレット変換は、アクチュエータの近くで、かつアクチュエータ調整の規模と同じ一般的なスケールで調整を案内するのに特に有用である。有利なことに、ウェーブレットは、アクチュエータが仲介することができる厚さプロファイルの部分のみを捕捉するので、これは効率的な表現である。
【0073】
例示的なワークフローでは、所与のアクチュエータに対するウェーブレット位置は、アクチュエータを中心とし、ウェーブレットスケールは、計算された流量/アクチュエータ感度に基づき、その両方が、スロット高さプロファイルデータを変換する際に使用される。
【0074】
例示的な押出ダイについての個々のアクチュエータ移動に対する流量感度の計算を図5に示す。これらの計算は、代表的な押出ダイにおける流体力学効果を予測する有限要素解析ソフトウェアを使用して行われた。これらのデータによって示されるように、中間アクチュエータの流量感度は、図6に示すRicker Waveletによって良好に近似されている。この仮定に基づいて、少なくとも2つのアクチュエータ、場合によっては全ての内部アクチュエータの流量感度は、このモデルの目的のために同一であるとして扱うことができる。Ricker Waveletは、アプリケータスロットの側縁部付近のアクチュエータの流れ特性を同様に表さないので、修正又は代替モデルを使用して、端部アクチュエータの流量感度を記述することができる。
【0075】
図7は、アクチュエータ相互作用のためのウェーブレット関数の潜在的有用性の単純な図を提供する。「目標」データ点は、所望の平坦押出物厚さプロファイルの形状であり、一方、「測定」データ点は、Ricker Waveletの形状のプロファイル偏差を示す。方形波畳み込みなどの非相互作用方式は、この偏差に応じて3つのアクチュエータを移動させる。ここで、アクチュエータ#9は、下方に移動され(より小さいギャップ)、アクチュエータ#8及びアクチュエータ#10は、上方に移動される。しかし、プロファイル偏差は、この押出ダイの厚さ感度に非常に類似した形状を有するので、この番号のアクチュエータの動きは、過剰補正の場合であり、プロファイル偏差を補正するために複数の補正を必要とする。適度に正確な流れ場物理学によって知らされるものなどの、アクチュエータ相互作用を正確に捕捉する方式は、「結果」データ点に示されるように、この偏差を1ステップで補正することができる。
【0076】
図4に戻って参照すると、残差アレイRが決定されると、次いで適切なスロット高さ調整を決定することができる(ブロック410)。目標プロファイル(ブロック407)を達成するのに適した可撓性ダイリップ又はチョーカーバーに係合された複数のアクチュエータに対する調整を予測するとき、ダイを通る流体流の影響を流体流が存在しないスロットダイに関する機械的影響から切り離すことを可能にする、圧力ダイたわみモデルを適用することが有利である。適切なモデルは、アプリケータスロットにわたる圧力プロファイルと、可撓性ダイリップ又はチョーカーバーにおける対応する圧力たわみ量とを予測することができる。場合によっては、この圧力に基づくたわみ(すなわち、圧力たわみD)を経験的に測定することが可能であり得る。
【0077】
圧力たわみは、それを計算されたスロット高さに加算することによって考慮することができ、合計は、アプリケータスロットを通して流れる流体による圧力たわみを含む、現在のスロット高さ(ブロック409)からの圧力補償されたスロット高さプロファイルと比較される。次に、たわみDの量の任意の変化(すなわち、ΔD)が小さいと仮定すると、流体のみに起因するたわみDを圧力補償されたスロット高さプロファイルH+Dから減算して、0圧力スロット高さプロファイル(H)を得ることができ、それによって、目標アクチュエータ位置を計算するための関連(nexus)を提供する。
【0078】
例示的な方法では、圧力ダイたわみモデルは、スロット高さに対するコーティング厚さの局所依存性に基づく。これは、現在のスロット高さ付近のテイラー級数を拡張することによってモデル化することができる。設定点からの小さな摂動のみが存在すると仮定すると、式16に示すように、線形項のみが保持される必要がある。
【数16】
式中、tは、新しいコーティング厚さであり、t0は、現在のコーティング厚さであり、ΔHは、スロット高さの変化である。多くの小さなプロファイル補正が行われる場合、この線形化された形態で十分であり得る。しかしながら、迅速な制御のために、大きなプロファイル補正が必要とされる。残念ながら、これらの場合における線形化された形態の使用は、不安定な制御をもたらす可能性がある。
【0079】
この問題を克服するために、非線形制御方式は、相互作用しない状況で設定することができる。各アクチュエータについて、式17に従って調整が行われる。
【数17】
式中、ΔHは、スロット高さの変化であり、H0は、現在のスロット高さであり、
【数18】
は、所望の(すなわち、目標)コーティング厚さであり、
【数19】
は、現在のコーティング厚さであり、Eは、流体のべき乗則指数に関する指数である。
【0080】
式17は、コーティングダイ幅にわたるD(すなわち、ダイたわみ)の予測を依然として必要とする。これは、式18を用いて得ることができる。
【数20】
式中、K0は、スケーリング係数であり、K1、K2、及びK3は、多項式係数であり、Pは、内部ダイキャビティ圧力であり、xは、ダイ中心から測定したときのアプリケータスロットに沿ったクロスウェブ位置である。
【0081】
式18を通して、圧力ダイたわみモデルは、ダイキャビティ圧力の影響を考慮するが、式18は、特定の仮定に基づいている。例えば、リップたわみは、ダイ中心線に関してほぼ対称であると仮定され、低次多項式で十分に近似される。多項式係数は、計算及び/又は測定によって提供することができる。可撓性ダイリップ又はチョーカーバーのたわみは、ダイキャビティ圧力に比例すると仮定することもできる。この仮定は、一般に、Pが実際のダイキャビティ圧力である場合には十分に正当化されるが、Pがダイのかなり上流で、例えば供給ホース又は配合機出口で測定される場合には、修正を必要とすることがある。更に、全てのダイが必ずしも対称的にたわむわけではなく(例えば、端部供給ダイはそうでない場合がある)、したがって、ダイたわみの異なる適切な相関モデルが、それらの事例において使用されることが認められる。
【0082】
可撓性ダイリップ構成の一実施形態では、ダイのたわみは、固定リップ側及び屈曲リップ側の両方のたわみを検出する測定インジケータのアレイを使用して特性化される。あるいは、テーパゲージを使用して、以下の複数の条件下:(1)流量及び圧力あり、(2)流量なし及び圧力なしでダイスロット高さを直接測定することができ、Dは、スロット高さ(1)からスロット高さ(2)を減算することによって計算される。
【0083】
有利なことに、式17及び式18の非線形モデルにより、不安定な制御に遭遇することなく、比較的大きな補正を使用して迅速な制御が可能になる。流れ場を介して伝達されるアクチュエータ間の相互作用も組み込むことによって、制御ステップの数を更に低減することができる。好ましい実施形態では、上記の式15に導入されたウェーブレット厚さ感度を使用して、前の非線形関数形式と組み合わせることができ、式19に示すようなコーティング厚さの非線形相互作用形式を提供する。
【数21】
【0084】
通常のニュートン-ラフソンの状況では、アクチュエータ位置更新は、式20に反映されるように、流れ場アクチュエータ相互作用を組み込む以下の行列方程式の解を用いて進行する。
【数22】
【0085】
これは、ウェーブレット変換畳み込みが式21に示されるような流体流相互作用行列によって事前調整されていることを除いて、上記の非線形非相互作用形式と本質的に等価である。
【数23】
【0086】
その最終形態では、アクチュエータ更新は、式22に従うことに基づいて進行することができる。
【数24】
【0087】
この式の右辺は、アクチュエータ座標空間上に投影されたコーティング厚さ誤差を表すベクトルを提供し、上記の積分積は、アクチュエータ移動の補正ベクトルを生成するための全てのアクチュエータ投影の線形代数解を表す。ウェーブレット表現の非線形性は、大きなアクチュエータ調整に特に適用可能であり、式22が非線形挙動の約80~90%を捕捉することができることが見出された。
【0088】
非線形部分に対して微積分学の代わりに有限変形の数学を使用して、次いで、ウェーブレット相互作用行列は、粗粒度残差ベクトルに対する前処理行列(pre-conditioner)になる。この分析の、非相互作用する、及び相互作用するが線形化されている(Eが約1である場合)変形の両方は、以下に示す経路に沿って式20を大幅に簡略化することができる。
【数25】
【0089】
更なる実施形態は、制御アルゴリズムにおいて物理学ベースのモデル計算を使用することである。例えば、これは、更新されたマニホールド計算が次の測定スキャンの前に完了する場所に情報を渡しながら、流体機械計算を実行するコンピュータによって可能にすることができる。
【0090】
ガウス消去行列解法を適用して、アクチュエータ(すなわち、行列行)間に相互作用があるかどうかにかかわらず、関連する線形代数問題を同時に解くことができる。好ましい実施形態は、ガウス消去法を使用するが、行列要素が所与の数のアクチュエータ及びウェーブレット関数に対して一定であるという事実を利用する。効率のために、行列下-上(lower-upper、LU)分解を前もって一度実行し、次いで分解係数を記憶することが有用であり得る。ウェーブレット畳み込みからの新しい残差ベクトルごとに、L個の分解係数を適用することができ、その後に高速上三角行列解が続く。したがって、元のLU分解は、b*N2個程度の演算を必要とするが、各解は、b*N個程度しか必要とせず、式中、bは、帯域幅であり、Nは、アクチュエータの数である。
【0091】
式19~式22に適用されるベクトル及び行列計算をより明示的に示す代替表記では、スロット高さ調整は、以下のように式23から決定することができる。
【数26】
式中、td、t0、及びΨiは、所望のコーティング厚さ、現在のコーティング厚さ、及びRickerウェーブレットを表すベクトルであり、Δhi、h0,i、及びdiは、各アクチュエータ座標iについて、スロット高さの調整、現在のスロット高さ、及び流体圧力たわみを表すスカラー量であり、Eは、べき乗則流体指数である。加算演算により、クロスウェブプロファイルへの変更が全てのアクチュエータからの効果の総和を反映することが可能になる。
【0092】
有利なことに、この手法は、ダイスロット幅の変化と応答のスケールとの間の非線形関係を扱う。この相違及び拡張は、qベクトルを計算するが、次いで、所望のqを実現するのに必要なダイスロット幅の変化を決定するために非線形関数を使用する場合に示されている。
【0093】
ここから、ベクトルt0を因数分解すると、式24が得られる。
【数27】
次いで、t0によるベクトルの要素ごとの除算を実行することにより、式25で与えられるように、ベクトルA及びqの分離が可能になる。
【数28】
式中、
【数29】
演算子は、ベクトルの要素ごとの除算を指定する。qについて解くと、式26及び式27が得られる。
【数30】
【0094】
各アクチュエータからの必要な影響が分かると、式28を使用して、スロット幅と局所流量との間の非線形関係に基づいてこれらの結果を達成するのに必要なスロット幅の必要な変化を決定することができる。
【数31】
【0095】
このプロファイル制御アルゴリズムの実際の流体の流体力学への依存性を理解するために、指数Eは、スロット高さ変化に対する厚さ感度を正確に反映すべきである。市販の計算ソフトウェアによって与えられるマニホールド流量計算を使用して、この情報を得ることができる。異なる規模のギャップ変化に対する流量感度の計算を使用して、最も物理的に関連する指数Eを決定することができる。これらは、図7A図7Cに示されており、これは、式29の一般的なべき乗則流体関係に基づいてEを推定するために、異なるスロット高さの範囲にわたって測定されたコーティング厚さを示す。
【数32】
式中、所与のアクチュエータ位置について、h1及びt1は、スロット高さへの小さな摂動(又は「バンプ」)後のそれぞれのスロット高さ及びコーティング厚さであり、h0及びt0は、スロット高さへの小さな摂動(又は「バンプ」)前のそれぞれのスロット高さ及びコーティング厚さである(これらは、図4のワークフロー400から生じるスロット高さ及びコーティング厚さの変化を表さないことに留意されたい)。
【0096】
図7Aに示すように、指数Eは、式18の関係に基づく曲線当てはめ法を使用して推定することができ、式18は、以下の式30に示すように再表現することができる。
【数33】
曲線当てはめの実施例は、異なるスロットダイが異なるように挙動することができ、異なる指数をもたらすことを示す。このようにして、プロファイル制御アルゴリズムは、ダイ設計及び使用モードに応じて最適に実行するようにカスタマイズすることができる。
【0097】
次に、上記で得られたプロファイル偏差(ブロック408)及び現在のスロット高さ(ブロック409)の知識が与えられると、適切なスロット高さ調整(ブロック410)が決定される。ここで、現在のスロット高さ(ブロック409)は、圧力補正されたスロットプロファイルを作成するために、元のスロット高さプロファイル(圧力補正なし)及び圧力補正の両方を組み込む。スロット高さ調整(ブロック410)は、現在のスロット高さ(ブロック409)に対応する予測された0圧力スロット高さプロファイルを決定するために、例えば、式17及び式22の適用、次いで圧力補正の減算を伴う。
【0098】
上記で得られた0圧力スロット高さプロファイルを用いて、コントローラ300は、次いで、所望のスロット高さプロファイルを達成するために好適な個別アクチュエータ設定のセットを予測することができる。好ましい実施形態では、個別アクチュエータ設定のこのセットは、予め選択されたクロスウェブプロファイルに対応する複数のアクチュエータ設定に基づく。以下に説明するように、複数の個別アクチュエータ設定は、一連の予め選択されたクロスウェブプロファイルに対して決定することができ、それによって、アクチュエータ調整(ブロック412)を決定するために後で使用される予測モデルを提供する。
【0099】
異なる実施例では、コントローラ300は、予め選択されたクロスウェブプロファイルを非一時的コンピュータ可読媒体から取り出してもよく、又は予め選択されたクロスウェブプロファイルをユーザ入力から受信してもよい。
【0100】
好ましい実施形態では、複数の個別設定及び/又は0圧力現在スロット高さ(ブロック409)からの個別設定の予測は、剛性行列と呼ばれる数学的構成を通じて得ることができる。
【0101】
剛性行列は、アクチュエータ設定を流れ場物理学効果がない対応するスロット高さプロファイルに変換する。調整可能なギャップが最終ダイスロット若しくはチョーカーバースロット、ナイフコータ、又はその他であるかにかかわらず、スロット高さプロファイルは、式31によって表される多数のクロスウェブ位置での経験的測定によって決定することができる。
【数34】
式中、hiは、アクチュエータiの位置におけるスロット高さであり、xiは、クロスウェブ座標であり、Nmは、測定点の数である。
【0102】
これらの測定点におけるスロット高さの値は、ダイリップアクチュエータの位置に依存する。一般に、この依存性の関数形式は、式32のテイラー級数によって表すことができる。
【数35】
式中、hは、スロット高さ測定値のベクトルであり、Aは、(アクチュエータ単位での)アクチュエータ設定のベクトルであり、h0及びA0は、スロット高さ測定値及びアクチュエータ設定それぞれの初期セットを指す。ベクトルhの長さは、Nmであり、ベクトルAの長さは、アクチュエータの総数Naである。ここで、アクチュエータ単位は、実際の変位と同等であってもよい(例えば、1アクチュエータ単位=0.2マイクロメートル)ことに留意されたい。
【0103】
剛性行列Kは、上記の
【数36】
として定義され、階数2のNm×Na行列であり、ヘッセ行列
【数37】
は、階数3のNa×Nm×Na行列である。いくつかの実施例では、リップ移動の範囲は、一般に、ヘッセ行列成分及び高次項からの寄与が実質的に0であるように、線形弾性によって支配される範囲内にある。結果として、アクチュエータ位置の変化によるスロット高さの変化は、式33によって表されるように、剛性行列のみによって厳密に表すことができる。
【数38】
【0104】
剛性行列Kは、Nm×Naの成分を有し、j番目のアクチュエータ位置Ajの変化に起因する測定点xiにおけるスロット高さの変化を物理的に表す。ダイリップが無限に可撓性であった場合、剛性行列成分のほとんど全ては、アクチュエータ位置が測定点と一致する場合のみ0であり、剛性行列成分は、0ではない。測定点がアクチュエータと同じ位置にある場合、このシナリオでは、式34によって表されるように、剛性行列は、対角行列になる。
【数39】
式中、Iは、単位行列であり、kは、アクチュエータ位置の変化をスロット高さの変化に変換する比例定数であり、各アクチュエータについて同じであり、δijは、クロネッカーのデルタである。
【0105】
実際には、ダイリップ及びチョーカーバーは、無限に可撓性であるわけではなく、個々のアクチュエータにおける変化は、アクチュエータ位置の周りの領域におけるスロット高さを変化させる。この影響領域がどれだけ遠くまで延びるかは、対角線の非ゼロ成分からどれだけ遠くまで剛性行列に現れるかに反映される。このようにして、リップ剛性行列は、ダイの全幅にわたるアクチュエータ移動とスロット高さ変化との間の全ての相互作用をその成分に組み込む。
【0106】
ダイリップの剛性行列を経験的に測定することは、有限差分によって達成することができる。各アクチュエータが独立して変位されるときのダイスロット幅にわたるスロット高さ測定値間の差は、剛性行列の行を提供する。例えば、中心差分は、式35に示すように進行する。
【数40】
【0107】
この式は、単位の数Δjだけ、まず正方向に、続いて負方向の変位だけ変位されたj番目のアクチュエータを除いて、全てのアクチュエータがそれらの初期位置にあることを仮定する。変位の規模に対するこれら2つの設定でのスロット高さ測定値間の差は、剛性行列成分に対する中心差近似を提供する。この方法における中心差分は、順方向差分又は逆方向差分よりも高い精度を提供するが、2倍の測定を必要とする。異なる変位での追加の測定は、より高次の差分技術の使用を可能にするが、中心差分は、限られた労力で妥当な精度を与える。
【0108】
数値差分理論は、最も正確な剛性行列エントリを生成するために中心差分において使用されるべき最適な変位の規模があることを示唆している(Richard L.Burdenら、Numerical Analysis 131-133(2nd ed.1981)。中心差分に内在する誤差は、変位サイズにおいて二次精度であり、すなわち、変位の二乗に比例する。しかし、スロット高さ測定は、それらに関連付けられた不確実性を有し、したがって、これらの誤差の両方が考慮されるとき、最適化されたアクチュエータ単位変位Δoptは、式36で与えられる。
【数41】
【0109】
式中、eは、スロット高さ測定誤差であり、Mは、ギャップ-アクチュエータ関係の3次導関数
【数42】
の上限である。
【0110】
典型的なバンプ試験では、スロット高さにおける約1ミル(25マイクロメートル)の変化のアクチュエータ変位が使用された。一般に、アクチュエータ間で著しい相互作用が発生し、アクチュエータ位置の変化は、2つ又は3つのアクチュエータだけ離れたスロット高さの変化をもたらした。いくつかの実施形態では、これは、帯剛性行列によって表される。多くの場合、帯剛性行列は、対称であると仮定することができる。例えば、行列は、行列の5つの対角線(主対角線+両側の2つの対角線)に沿ってのみ有意な非0成分を有することができる。国際公開第2012/170713号(Secorら)は、「バンプ」試験データをどのように使用して剛性行列を得ることができるかの例をより詳細に記載している。
【0111】
剛性行列が決定されると、スロット高さ測定値を2つの方法で使用することができる。第1に、アクチュエータ設定の任意のセットについて、結果として生じるスロット高さプロファイルは、剛性行列をアクチュエータ変位で乗算することによって計算することができる。次に、指定されたスロット高さプロファイルをもたらすアクチュエータ設定は、剛性行列の逆数にスロット高さの所望の変化を乗算することによって計算される。これらの計算は、式37及び式38それぞれによって表される。
【数43】
【0112】
ここで図4のアクチュエータ調整(ブロック412)を参照すると、所望の0圧力スロット高さ調整(ブロック410)が既知であり、逆剛性行列
K-1を最終的に式38に従って使用して、目標プロファイルを達成するためのアクチュエータ調整(ブロック412)を得ることができる。この線形代数問題を解く好ましい方法では、ガウス消去法を実行して、剛性行列変換の行列ベースの解を得る。
【0113】
上記の技術は、図3のアクチュエータアセンブリ200を使用してリアルタイムで実行することができる。ここで、コントローラ300は、センサ230及び動作モータ210からの測定値に基づいて少なくとも1つのアクチュエータアセンブリ200の設定を予測して、予測されたアクチュエータ調整(ブロック412)に対応する位置に出力シャフト222を配置する。コントローラ300がこのようにして予め選択されたクロスウェブプロファイルに対応するスロットダイ10のアクチュエータアセンブリ200の設定を決定すると、スロットダイ10は、アクチュエータアセンブリ200がアクチュエータ調整(ブロック412)に従って位置決めされた状態で、押出物を流体流路に通してアプリケータスロット6から出すことによって動作される。
【0114】
図8図12は、本明細書で説明する技術に従って計算されたスロットプロファイルの例示的な推移を示す。図8は、流れ場物理学効果を考慮せずに、剛性行列のみを使用して得られた0圧力スロット高さプロファイルの例を示す。次に、図9は、流量感度モデルに基づいて計算された圧力たわみ補正を示す。このモデルは、ダイキャビティ圧力たわみを実験的に測定して、データをモデルに当てはめることによって決定された。しかしながら、このモデルはまた、ダイの二次元断面を利用するたわみ計算のために有限要素メッシュを使用して決定されてもよく、この場合、分配マニホールドを通る流体流とダイ本体の構造的なたわみとが完全に結合される。
【0115】
図10は、図8及び図9のスロット高さプロファイルの合計を表す、圧力補正されたスロット高さプロファイルを示す。上記の式17において、図8は、H0を表し、図9は、Dを表し、図10は、H0+Dの和を表す。最後に、図11は、その中立位置にある可撓性ダイリップに対する、複数のアクチュエータによって誘発された可撓性ダイリップの実際の屈曲を示す。
【0116】
図12は、現在のスロット高さプロファイルと比較した、計算された圧力補正されたスロット高さプロファイルを示す。著しくより均一なスロット高さプロファイルをもたらすことに加えて、本技術は更に、非圧力補償モデルにおけるよりもはるかに大きいアクチュエータ位置の平均変化を示す傾向がある。図12では、新しいダイスロットプロファイルが、同様の方法で、現在のダイスロットプロファイルの上下でどのように振動するかを示すための例として、振動電流ダイスロットが使用された。
【0117】
これらの技術は、ダイ制御方法において著しく高い効率を提供することができる。効率の向上は、例えば、最良の達成可能なコーティング厚さプロファイルを達成するために、図4Aのワークフロー400における繰り返しサイクルの数を低減することに由来することができる。意味深いことに、これは、大規模製造プロセスにおいて廃棄物を少なくすることができる。より正確かつより速い収束はまた、そうでない場合に可能であるよりも、製造作業におけるコーティング厚さに対するより高い周波数外乱を排除するのに役立つことができる。
【0118】
アクチュエータ調整(ブロック412)の実行に続いて、ワークフロー400は、更新されたプロファイル測定(ブロック402)で再開し、プロセスは再び開始することができる。このプロファイル測定(ブロック402)は、ある時間が経過した後に行われ、アクチュエータの反復調整を可能にする。1)アクチュエータの調整/移動のための時間、2)物理的流体流/コーティングプロセスが変化したスロットで安定するための時間、3)ダイから計測システムへのコーティング/押出物の輸送のための時間(例えば、ダイからゲージまでの距離をライン速度で割ったもの)、及び4)コーティング重量プロファイルを決定するためにゲージスキャンを平均化するのに必要な時間を含む、様々な要因を、経過時間の量を決定する際に考慮することができる。
【0119】
多くの反復の過程にわたって、押出物プロファイルが目標プロファイル(ブロック407)に収束し、厳密に一致するように、個別アクチュエータ設定に対して連続的な改善を行うことができる。
【0120】
ワークフロー400は、予測された設定のセットを改善することができないとコントローラ300が判定するまで、及び/又は所望のクロスウェブプロファイルを維持するために周期的間隔で、繰り返すことができる。個別設定のセットは、同様の材料、押出又はコーティング特性、及び処理条件が必要とされる将来の取り出し、及び数分後、数時間後、又は数年後の将来の使用のためのレシピとして保存することができる。
【0121】
いくつかの実施形態では、ウェーブレットベースの技術を含む、本明細書に説明される技術を他の方法と組み合わせて使用して、コーティング厚さを制御することができる。例として、これらの技術に基づいて行われるアクチュエータ調整により、国際公開第2006/130141号(Kargら)、同第2006/130142号(Kargら)、及び同第2006/130143号(Kargら)に記載されているようなクロスウェブ熱分配システムを使用して更に最適化又は洗練された押出物プロファイルを提供することができる。各変換のウェーブレットスケール及び位置は、使用されているアクチュエータの感度及びタイプに合わせて調整して、より効率的な制御システムをもたらすことができる。
【0122】
コントローラ300に関して説明される技術などの本開示で説明される技術は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はそれらの任意の組み合わせに少なくとも部分的に実装してもよい。例えば、技術のさまざまな実施例は、コントローラ、ユーザインターフェース、又は他のデバイスに具現化された、1つ以上のマイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(digital signal processors、DSP)、特定用途向け集積回路(application specific integrated circuits、ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmable gate arrays、FPGA)、又は他の任意の等価集積回路若しくは個別論理回路、並びにそのような構成要素の任意の組み合わせ内に実装することができる。用語「コントローラ」は、一般的に、前述の論理回路単独、又は他の論理回路との組み合わせ、あるいは任意の他の等価回路、のいずれかを指してもよい。
【0123】
ソフトウェアで実装される場合、本開示で説明されるシステム及びコントローラに帰する機能は、ランダムアクセスメモリ(random access memory、RAM)、読み出し専用メモリ(read-only memory、ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(non-volatile random access memory、NVRAM)、電気的消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ(electrically erasable programmable read-only memory、EEPROM)、フラッシュメモリ、磁気媒体、光学媒体などのコンピュータ可読記憶媒体上の命令として具体化されてもよい。命令は、1つ以上のプロセッサに、本開示に記載される機能の1つ以上の実施例をサポートさせるために実行されてもよい。
【0124】
様々な実施例を前述の節で説明してきた。これら及び他の実施例は、本明細書で提供される特許請求の範囲内である。
【0125】
上記特許出願において引用された全ての文献、特許文献又は特許出願は、一貫した形でそれらの全容が参照により本明細書に組み込まれる。組み込まれた参照文献の一部と本出願との間に不一致又は矛盾がある場合、前述の記載における情報が優先するものとする。前述の記載は、当業者が、特許請求の範囲に記載の開示を実践することを可能にするためのものであり、本開示の範囲を限定するものと解釈すべきではなく、本開示の範囲は特許請求の範囲及びその全ての等価物によって定義される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】