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特表2023-553108ヒドロホルミル化プロセスにおける触媒金属の責務を改善するためのプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-20
(54)【発明の名称】ヒドロホルミル化プロセスにおける触媒金属の責務を改善するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C07C 45/50 20060101AFI20231213BHJP
   C07C 47/02 20060101ALI20231213BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20231213BHJP
【FI】
C07C45/50
C07C47/02
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534983
(86)(22)【出願日】2021-11-18
(85)【翻訳文提出日】2023-06-08
(86)【国際出願番号】 US2021059810
(87)【国際公開番号】W WO2022132372
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】63/124,922
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508168701
【氏名又は名称】ダウ テクノロジー インベストメンツ リミティド ライアビリティー カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【弁理士】
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147212
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】マイケル エー.ブラマー
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン エフ.ジャイルズ
(72)【発明者】
【氏名】グレン エー.ミラー
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC45
4H006BA24
4H006BA48
4H006BD33
4H006BD51
4H006BD84
4H006BE20
4H006BE40
4H039CA62
4H039CL45
(57)【要約】
本発明の実施形態は、連続液体リサイクルヒドロホルミル化プロセスにおけるロジウムの責務を改善するためのプロセスを対象とする。いくつかの実施形態では、プロセスは、反応ゾーンにおいて、ロジウム及び有機モノホスファイト配位子を含む触媒の存在下で、C7-C20オレフィン、水素、及び一酸化炭素を含む反応物を接触させて、反応流体を形成することであって、反応ゾーンへのオレフィンの供給速度が、100キログラム/時間を超える、形成することと、反応流体をストリップガス気化器に提供して、生成物ストリーム及び気化器テールストリームを生成することと、気化器テールストリーム中のC7-C20オレフィン含有量を測定することと、少なくとも50重量パーセントのC7-C20オレフィンを含むC7-C20オレフィンストリームを気化器テールストリームに添加して、気化器テールストリーム中のC7-C20含有量を2重量パーセント超に維持することと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続液体リサイクルヒドロホルミル化プロセスにおけるロジウムの責務を改善するプロセスであって、
反応ゾーンにおいて、ロジウム及び有機モノホスファイト配位子を含む触媒の存在下で、C7-C20オレフィン、水素、及び一酸化炭素を含む反応物を接触させて、反応流体を形成することであって、前記反応ゾーンへのオレフィンの供給速度が、100キログラム/時間を超える、形成することと、
前記反応流体をストリップガス気化器に提供して、生成物ストリーム及び気化器テールストリームを生成することと、
前記気化器テールストリーム中のC7-C20オレフィン含有量を測定することと、
少なくとも50重量パーセントのC7-C20オレフィンを含むC7-C20オレフィンストリームを前記気化器テールストリームに添加して、気化器テールストリーム中のC7-C20含有量を2重量パーセント超に維持することと、を含む、プロセス。
【請求項2】
少なくとも50重量%のC7-C20オレフィンを含む前記ストリームが、
(a)前記C7-C20オレフィンストリームを気化器キャッチポット底部液体層に添加すること、又は
(b)C7-C20オレフィンストリームを気化器テール冷却器に添加すること、又は
(c)気化器底部ポンプの直前にC7-C20オレフィンストリームを添加すること、又は
(d)前記気化器底部ポンプの直後にC7-C20オレフィンストリームを添加すること、のうちの1つ以上によって前記気化器テールストリームに添加される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記生成物ストリームからオレフィンを除去し、前記除去されたオレフィンの一部分を、前記気化器テールストリームに添加されたC7-C20オレフィンストリームの一部として戻すことを更に含む、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記気化器テールストリームに添加された前記C7-C20オレフィンストリーム中のC7-C20オレフィンの大部分が、前記生成物ストリームから除去されたオレフィンである、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記反応ゾーンにおいて接触させた前記オレフィンの大部分が、C8オレフィンである、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記生成物ストリームが、イソノニルアルデヒドを含む、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記触媒及び触媒成分の溶解度が、前記気化器テールストリームへの前記C7-C20オレフィンストリームの添加によって増加する、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続液体リサイクルヒドロホルミル化プロセスにおけるロジウムの責務を改善するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
金属-有機リン配位子錯体触媒の存在下で、オレフィンを一酸化炭素及び水素と反応させることによってアルデヒドを生成することができることは周知である。そのようなプロセスは、金属が8、9、又は10族から選択された金属-有機リン配位子錯体触媒を含有する触媒溶液の連続的なヒドロホルミル化及びリサイクルを含み得る。ロジウムは、ヒドロホルミル化用の金属-有機モノホスファイト配位子錯体触媒で使用される一般的な9族の金属である。そのようなプロセスの例は、米国特許第4,148,830号、同第4,717,775号、及び同第4,769,498号に開示されている。生じたアルデヒドは、アルコール、アミン、及び酸を含む多くの生成物を生成するために使用することができる。
【0003】
ロジウム及びかさ高い有機モノホスファイト配位子を含むヒドロホルミル化触媒は、非常に高い反応速度が可能である。例えば、「Rhodium Catalyzed Hydroformylation,」van Leeuwen,Claver,Kluwer Academic Pub.(2000)を参照されたい。そのような触媒は、生成速度を上げるために、又は線状アルファオレフィンよりもゆっくりと反応する内部及び/若しくは分岐内部オレフィンを効率的にヒドロホルミル化するために使用することができるので、産業上の有用性を有する。
【0004】
いくつかの条件下では、ロジウムのかさ高い有機モノホスファイト触媒は、液体リサイクルヒドロホルミル化プロセスにおいてロジウムの回復不能な損失を被ることが知られている。例えば、米国特許第4,774,361号を参照されたい。ロジウム損失の正確な原因は不明であるが、生成物分離工程によって、ロジウム損失が悪化するという仮説が立てられており、この生成物分離工程は通常、塔頂での生成物の気化及び凝縮を通じて達成され、高沸点の副生成物、及び反応ゾーンにリサイクルされる不揮発性触媒(気化器テール)を含む残留物ストリームが残される。より高級なオレフィン(例えば、C7以上)に由来する生成物の気化はまた、より高い温度を必要とし、これがロジウム損失を悪化させることが知られている。ロジウムは法外に高価であるので、ロジウムの継続的な損失は、触媒コストを劇的に増加させ得る。
【0005】
特に高活性のロジウム-有機モノホスファイト触媒を使用してC7以上のオレフィンをヒドロホルミル化するときのロジウムの責務を改善する、連続液体リサイクルヒドロホルミル化プロセスに対する必要性が依然としてある。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、ロジウムの責務を改善する連続液体リサイクルを使用して、C7及びそれ以上(例えば、C7-C20)のオレフィンをヒドロホルミル化するためのプロセスに関する。驚くべきことに、ストリップガス気化器からの気化器テールストリーム中のC7及びそれ以上のオレフィンの濃度を少なくとも2重量パーセントに維持することにより、ロジウムの責務が改善されることが見出されている。すなわち、プロセスにおけるロジウム損失量が低減されるであろう。これは、例えば、オレフィン供給物の一部分を、気化器キャッチポットに又は気化器キャッチポットポンプの直後などの、生成物/触媒分離ゾーン(ストリップガス気化器)のすぐ後に供給することによって、その地点から反応ゾーンへの気化器テールが少なくとも2重量パーセントのC7及びそれ以上のオレフィンを含有するように実現することができる。
【0007】
一態様では、連続液体リサイクルヒドロホルミル化プロセスにおけるロジウムの責務を改善するためのプロセスは、反応ゾーンにおいて、ロジウム及び有機モノホスファイト配位子を含む触媒の存在下で、C7-C20オレフィン、水素、及び一酸化炭素を含む反応物を接触させて、反応流体を形成することであって、反応ゾーンへのオレフィンの供給速度が、100キログラム/時間を超える、形成することと、反応流体をストリップガス気化器に提供して、生成物ストリーム及び気化器テールストリームを生成することと、気化器テールストリーム中のC7-C20オレフィン含有量を測定することと、少なくとも50重量パーセントのC7-C20オレフィンを含むC7-C20オレフィンストリームを気化器テールストリームに添加して、気化器テールストリーム中のC7-C20含有量を2重量パーセント超に維持することと、を含む。
【0008】
一態様では、連続液体リサイクルヒドロホルミル化プロセスにおけるロジウムの責務を改善するためのプロセスは、反応ゾーンにおいて、ロジウム及び有機モノホスファイト配位子を含む触媒の存在下で、混合C8オレフィン、水素、及び一酸化炭素を含む反応物を接触させて、反応流体を形成することであって、反応ゾーンへのオレフィンの供給速度が、100キログラム/時間を超える、形成することと、反応流体をストリップガス気化器に提供して、生成物ストリーム及び気化器テールストリームを生成することと、気化器テールストリーム中のC8オレフィン含有量を測定することと、少なくとも50重量パーセントのC8オレフィンを含むC8オレフィンストリームを気化器テールストリームに添加して、気化器テールストリーム中のC8含有量を2重量パーセント超に維持することと、を含む。
【0009】
一態様では、連続液体リサイクルヒドロホルミル化プロセスにおけるロジウムの責務を改善するためのプロセスは、反応ゾーンにおいて、ロジウム及び有機モノホスファイト配位子を含む触媒の存在下で、混合C9オレフィン、水素、及び一酸化炭素を含む反応物を接触させて、反応流体を形成することであって、反応ゾーンへのオレフィンの供給速度が、100キログラム/時間を超える、形成することと、反応流体をストリップガス気化器に提供して、生成物ストリーム及び気化器テールストリームを生成することと、気化器テールストリーム中のC9オレフィン含有量を測定することと、少なくとも50重量パーセントのC9オレフィンを含むC9オレフィンストリームを気化器テールストリームに添加して、気化器テールストリーム中のC9含有量を2重量パーセント超に維持することと、を含む。
【0010】
これら及び他の実施形態は、発明を実施するための形態においてより詳細に考察される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
元素の周期表及びその中の様々な族に対する全ての言及は、CRC Handbook of Chemistry and Physics,72nd Ed.(1991-1992)CRC Press、page I-11で公開されたバージョンである。
【0012】
相対する記述がない限り、又は文脈から黙示的でない限り、全ての部及びパーセンテージは、重量に基づくものであり、全ての試験方法は、本出願の出願日現在のものである。米国特許実務の目的のために、任意の参照される特許、特許出願、又は刊行物の内容は、それらの全体が参照により組み込まれる(又はその同等の米国版が参照によりそのように組み込まれる)。
【0013】
本明細書で使用される場合、「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つ」、及び「1つ以上」は、互換的に使用される。「含む(comprise)」、「含む(include)」という用語、及びそれらの変形は、これらの用語が明細書及び特許請求の範囲に現れる場合に限定的な意味を有しない。
【0014】
また、本明細書において、端点による数値範囲の列挙は、その範囲に包含される全ての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。本発明の目的のために、当業者が理解することと一致して、数値範囲は、その範囲に含まれる可能性のある全ての部分範囲を含み、かつ支持することを意図することを理解されたい。例えば、1~100の範囲は、1.01~100、1~99.99、1.01~99.99、40~60、1~55などを伝達することを意図している。
【0015】
本明細書で使用される場合、「ppmw」という用語は、重量百万分率を意味する。
【0016】
本発明の目的では、「炭化水素」という用語は、少なくとも1個の水素原子及び1個の炭素原子を有する全ての許容される化合物を含むことが意図される。そのような許容される化合物はまた、1個以上のヘテロ原子を有し得る。広義の態様では、許容される炭化水素は、置換又は非置換であり得る、非環式(ヘテロ原子を含む又は含まない)及び環式、分岐及び非分岐、炭素環及び複素環の、芳香族及び非芳香族有機化合物を含む。
【0017】
本明細書で使用される場合、「置換された」という用語は、別段の指示がない限り、有機化合物の全ての許容される置換基を含むことが意図される。広範な態様では、許容される置換基には、非環式及び環式、分岐状及び非分岐状、炭素環式及び複素環式、芳香族及び非芳香族の有機化合物の置換基が含まれる。例示的な置換基には、例えば、アルキル、アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル(炭素の数が1~20以上、好ましくは1~12の範囲であり得る)、並びにヒドロキシ、ハロ、及びアミノが含まれる。許容される置換基は、適切な有機化合物について、1つ以上であり得、同じか又は異なり得る。本発明は、有機化合物の許容される置換基によりいかなる方式でも限定されることは意図されていない。
【0018】
本明細書で使用される場合、「ヒドロホルミル化」という用語は、1つ以上の置換若しくは非置換オレフィン系化合物又は1つ以上の置換若しくは非置換オレフィン系化合物を含む反応混合物を、1つ以上の置換若しくは非置換アルデヒド又は1つ以上の置換若しくは非置換アルデヒドを含む反応混合物に転化することを含む全てのヒドロホルミル化プロセスを含むがこれらに限定されないことが企図される。アルデヒドは、不斉又は非不斉であり得る。
【0019】
本明細書では、「触媒流体」、「プロセス流体」、「反応流体」、「反応媒体」、及び「触媒溶液」という用語は互換的に使用され、限定されないが、(a)金属-有機モノホスファイト配位子錯体触媒、(b)遊離有機モノホスファイト配位子、(c)反応で形成されるアルデヒド生成物、(d)未反応の反応物、(e)当該金属-有機モノホスファイト配位子錯体触媒及び当該遊離有機モノホスファイト配位子用の溶媒、並びに任意選択的に(f)有機モノホスファイト配位子の分解から生じる1つ以上の化合物、を含む混合物を含み得、そのような配位子分解生成物が、溶解及び/又は懸濁している場合がある。反応流体は、限定されないが、(a)反応ゾーン内の流体、(b)分離ゾーンに向かう途中の流体ストリーム、(c)分離ゾーン内の流体、(d)リサイクルストリーム、(e)反応ゾーン又は分離ゾーンから引き出される流体、(f)配位子分解生成物又は他の不純物を除去するために処理される、引き出された流体、(g)反応ゾーン又は分離ゾーンに戻される処理済み又は未処理の流体、(h)外部冷却器内の流体、並びに(i)配位子分解生成物、及び酸化物、硫化物、塩、オリゴマーなどのそれらに由来する構成成分、を包含し得る。
【0020】
「有機モノホスファイト配位子」は、3つのP-O結合を含有する三価リン配位子である。
【0021】
「遊離配位子」という用語は、遷移金属に配位していない配位子を意味する。
【0022】
本発明の目的のために、「重質副生成物」及び「重質物」という用語は互換的に使用され、ヒドロホルミル化プロセスの所望の生成物の通常の沸点より少なくとも25℃高い通常の沸点を有する液体副生成物を指す。そのような材料は、例えば、アルドール縮合によるものを含む1つ以上の副反応を通じた通常の操作下のヒドロホルミル化プロセスで本質的に形成されることが知られている。
【0023】
本発明の目的のために、重質物に関する「二量体」という用語は、2つのアルデヒド分子に由来する重質副生成物を指す。同様に、「三量体」という用語は、3つのアルデヒド分子(例えば、C9アルデヒド三量体)に由来する重質副生成物を指す。
【0024】
本発明の目的のために、「反応ゾーン」及び「反応器」という用語は互換的に使用され、反応流体を含有するプロセスの領域を指し、オレフィン及び合成ガス(syngas)(合成ガス(synthesis gas))の両方が高温で添加される。
【0025】
本発明の目的のために、「分離ゾーン」及び「気化器」という用語は互換的に使用され、反応流体を加熱して(すなわち、温度が反応ゾーン温度よりも高く)、生成物アルデヒドの蒸気圧の上昇を引き起こす領域を指す。次いで、生じた気相は、凝縮器を通過して、液体としての生成物の収集を可能にする。次いで、均質な触媒を含有する不揮発性濃縮流出物(テール又は気化器テール)は、反応器のうちの1つ以上に戻される。分離ゾーンは、任意選択的に減圧で操作することができる。
【0026】
本発明の目的のために、「ストリップガス気化器」という用語は、生成物の除去を助ける流動ガスを特色とする気化器を指す。例示的なストリップガス気化器の詳細は、米国特許第8,404,903号に見出すことができる。
【0027】
本発明の目的のために、「COストリップガス気化器」という用語は、ストリップガス中の一酸化炭素の分圧が、16psi以上[0.110MPa以上]である、ストリップガス気化器の実施形態を指す。例示的なCOストリップガス気化器の詳細は、米国特許第10,023,516号に見出すことができる。
【0028】
本発明の目的のために、「ストリップガス」という用語は、ストリップガス気化器で用いられる流動ガスを指す。ストリップガスは、CO、並びに任意選択的に水素、及び不活性ガス(例えば、メタン、アルゴン、及び窒素)で構成され、少量のCO、水素、アルデヒド、オレフィン、及びアルカンと同様に、連続的に気化器に直接添加することができ、操作中に反応流体から蒸気相に移動する。ストリップガス気化器からのアルデヒドを含んだガス状流出物を、凝縮器(「ストリップガス凝縮器」)に通過させて、粗液体生成物ストリーム、及び凝縮されていないガスのストリームを生成する。次いで、凝縮されていないガスの少なくとも一部分は、コンプレッサー又はブロワーを使用して気化器にリサイクルされる(「リサイクルガス」)。したがって、ストリップガスとは、プロセスに継続的に導入される新鮮なガスと、リサイクルガスとの両方を含む、ストリップガス気化器を通って流れるガス状ストリームを指す。
【0029】
本発明の目的のために、「供給物対テール」及び「供給物対テール比」という用語は、互換的に使用され、分離ゾーン(例えば、ストリップガス気化器)の底部を出てヒドロホルミル化反応器に戻る気化器テールの質量に対する、分離ゾーン(例えばストリップガス気化器)に入る反応流体の質量を指す。「供給物対テール」は、アルデヒド生成物などの揮発性物質が反応流体から除去される割合の指標である。例えば、2の「供給物対テール比」は、分離ゾーン(例えば、ストリップガス気化器)に入る反応流体の重量が、ヒドロホルミル化反応器に戻る濃縮流出物の重量の2倍であることを意味する。
【0030】
本発明の目的のために、「液体リサイクル」、「液体リサイクルヒドロホルミル化」、及び「液体リサイクルプロセス」という用語は、互換的に使用され、プロセス流体を分離ゾーンに導入して、触媒を含むテールストリームを生成し、テールストリームを反応ゾーンに戻す、ヒドロホルミル化プロセスを含むことが考慮される。そのようなプロセスの例は、米国特許第4,148,830号及び同第4,186,773号に記載されている。
【0031】
本発明の目的のために、「C7-C20オレフィン」という用語は、分岐を有するか若しくは有しない末端又は内部であり得る7~20個の炭素の単離された(非共役)不飽和炭化水素(モノ-オレフィン)を指す。この物質は、単一の異性体又は異性体の混合物であり得、オレフィンの混合物を含み得、これらの大部分が、C7及びそれ以上(最大C20)である。供給物は飽和炭化水素不純物も含有し得ることを理解されたい。不飽和は、トルエンなどの芳香環の一部ではない。好ましいオレフィンは、より高いレベルの末端オレフィンを有し、好ましくはオレフィンの隣に分岐を有しないものである。いくつかの実施形態では、オレフィンは、15個未満の炭素(「C7-C15オレフィン」)を有し、いくつかの実施形態では、12個未満の炭素(「C7-C12オレフィン」)を有する。
【0032】
本発明の目的のために、「混合C8オレフィン」及び「混合オクテン」という用語は、互換的に使用され、8個の炭素原子及び水素を含有する単一不飽和化合物で構成される一次オレフィン供給物を指す。これは、1-オクテン、C8内部オレフィン、及び2-メチル-1-ヘプテン、3-メチル-1-ヘプテン、2-エチル-1-ヘキセンなどの分岐末端オレフィンを含む。
【0033】
本発明の目的のために、「C8内部オレフィン」という用語は、二重結合が末端位置にない、8個の炭素原子で構成される単一不飽和化合物の全ての異性体を指す。C8内部オレフィンの例には、シス-2-オクテン、トランス-2-オクテン、シス-3-オクテン、トランス-3-オクテン、シス-4-オクテン、トランス-4-オクテン、3-メチル-2-ヘプテン、3-メチル-3-ヘプテン、5-メチル-2-ヘプテン、5-メチル-3-ヘプテン、3,4-ジメチル-2-ヘキセン、3,4-ジメチル-3-ヘキセン、2,3-ジメチル-3-ヘキセンなどが含まれる。
【0034】
本発明の目的のために、「混合C9オレフィン」及び「混合ノネン」という用語は、互換的に使用され、9個の炭素原子及び水素を含有する単一不飽和化合物で構成される一次オレフィン供給物を指す。これは、1-ノネン、C9内部オレフィン、及び2,3-ジメチル-1-ヘプテン、4,6-ジメチル-1-ヘプテン、4,6-ジメチル-2-ヘプテン、4,6-ジメチル-3-ヘプテン、2,4-ジメチル-2-ヘプテン、2,6-ジメチル-1-ヘプテン、2,6-ジメチル-2-ヘプテン、2,4,5-トリメチル-1-ヘキセン、2,4,5-トリメチル-2-ヘキセンなどの分岐末端オレフィンを含む。
【0035】
本発明の目的のために、「C9内部オレフィン」という用語は、二重結合が末端位置にない、9個の炭素原子で構成される単一不飽和化合物の全ての異性体を指す。C9内部オレフィンの例としては、2,4-ジメチル-2-ヘプテン、2,6-ジメチル-2-ヘプテン、2,4,5-トリメチル-2-ヘキセン、4,6-ジメチル-2-ヘプテン、4,6-ジメチル-3-ヘプテンなどが含まれる。
【0036】
本発明の目的のために、「リサイクルオレフィン」という用語は、ヒドロホルミル化されずにヒドロホルミル化反応ゾーンを少なくとも1回通過し、次いで、例えば蒸留によって粗アルデヒド生成物から分離された混合C7-C20オレフィン(例えば、C8プロセスでは混合C8オレフィン、又はC9プロセスでは混合C9オレフィン)を指す。「リサイクルオレフィン」及び「リサイクルC8オレフィン」(及びC9プロセスについて論じるときの「リサイクルC9オレフィン」)という用語は、本明細書では互換的に使用される。好ましくは、このようにして回収されたオレフィンの少なくとも一部分は、次いで、反応ゾーンに戻され、最も好ましくは、一部分は、本明細書に記載のような生成物/分離ゾーンの後に触媒を安定化させるために使用される。リサイクルオレフィンはまた、必要に応じて及び本明細書に記載のようにプロセスの他の部分に戻されてもよい。リサイクルC8オレフィンは、線状オクテン又はメチルヘプテンよりもゆっくりとヒドロホルミル化するジメチルヘキセンで主に構成されており、したがって、リサイクルオレフィンの濃度が増加すると、単回通過転化率が低下し得る。
【0037】
水素及び一酸化炭素は、プロセスに必要である。これらは、石油分解及び精製操作を含む任意の好適な供給源から取得し得る。合成ガス混合物は、水素及びCOの供給源として好ましい。
【0038】
合成ガス、すなわち「合成ガス(syngas)」は、様々な量のCO及びHを含有するガス混合物に与えられる名称である。生成方法は、周知されており、例えば、(1)天然ガス又は液体炭化水素の水蒸気改質及び部分酸化、並びに(2)石炭及び/又はバイオマスのガス化を含む。水素及びCOは、典型的には、合成ガスの主要構成成分であるが、合成ガスは、二酸化炭素、並びにCH、N、及びArなどの不活性ガスを含有し得る。HのCOに対するモル比は大きく変動し得るが、一般に1:100~100:1、好ましくは1:10~10:1の範囲である。合成ガスは、市販されており、多くの場合、燃料源として、又は他の化学物質の生成のための中間体として使用される。化学生成のための最も好ましいH:COモル比は、多くの場合、3:1~1:3であり、通常、ほとんどのヒドロホルミル化用途のためには約1:2~2:1が目標とされる。
【0039】
本発明のヒドロホルミル化プロセスで用いられ得るオレフィン出発物質は、本明細書で定義されるC7-C20オレフィンである。例えば、実施形態では、オレフィン出発物質が混合C8オレフィンであるとき、混合C8オレフィンは、1-ブテン、シス及びトランス-2-ブテン、並びに任意選択的にイソブテンを含む混合ブテンの二量体化を介して得ることができるような混合物を含む。一実施形態では、抽残液IIの二量体化に由来する混合オクテンを含むストリームが用いられ、そのような混合物は、例えば、AxensからのDimersolプロセス(Institut Francais du Petrole,Review,Vol.37,N°5,September-October 1982,p639)又はHuls AGからのOctolプロセス(Hydrocarbon Processing,February 1992,p45-46)によって生成することができる。本発明のプロセスで用いられるオレフィン混合物はまた、ある量の線状アルファオレフィンを含み得ることが理解される。
【0040】
いくつかの実施形態では、オレフィン出発物質は、本明細書で定義される混合C9オレフィンである。そのような混合物は、多様な供給源から入手可能であり得、例えば、Johan A.Martens,Wim H.Verrelst,Georges M.Mathys,Stephen H.Brown,Pierre A.Jacobs”Tailored Catalytic Propene Trimerization over Acidic Zeolites with Tubular Pores”,Angewandte Chemie International Edition Angewandte Chemie International Edition 2005,Volume 44,Issue 35,pages 5687-5690に記載されるプロセスによって生成することができる。
【0041】
本発明の実施形態は、オレフィン出発物質が上述のものなどのC7-20オレフィンであるプロセスで使用するために設計されていると理解されるべきである。いくつかの実施形態では、オレフィン出発物質は、主に混合C8オレフィン又は混合C9オレフィンである。しかしながら、混合C8オレフィンのヒドロホルミル化のために設計されたプロセスにおいて、少量の混合C9オレフィンもオレフィン出発物質中に存在し得ることも理解されるべきである。同様に、混合C9オレフィンのヒドロホルミル化のために設計されたプロセスにおいて、少量の混合C8オレフィンもオレフィン出発物質中に存在し得ることも理解されるべきである。
【0042】
溶媒は、有利には、ヒドロホルミル化プロセスに用いる。ヒドロホルミル化プロセスを過度に妨害しない任意の好適な溶媒が使用され得る。有機溶媒はまた、飽和限界までの溶解水を含有し得る。ロジウムで触媒作用が及ぼされるヒドロホルミル化では、例えば、米国特許第4,148,830号及び同第4,247,486号に記載されているように、生成されることが所望されるアルデヒド生成物及び/又は、例えば、ヒドロホルミル化プロセス中にその場で生成され得る高沸点アルデヒド液体縮合副生成物に対応するアルデヒド化合物を主な溶媒として採用することが望ましい場合がある。実際、連続プロセスの開始時に、必要に応じて任意の好適な溶媒を用いることができるが、主溶媒は、通常は最終的に、連続式プロセスの性質に起因して、アルデヒド生成物及び高沸点アルデヒド液体縮合副生成物(「重質物」)の両方を含む。溶媒の量は特に重要なものではなく、反応媒体に所望の量の遷移金属濃度を提供するのに十分であればよい。典型的には、溶媒の量は、反応流体の総重量を基準として、約5重量パーセント~約95重量パーセントの範囲である。2つ以上の溶媒の混合物もまた、用いられ得る。
【0043】
ヒドロホルミル化プロセスにおいて有用な触媒は、ロジウム-有機モノホスファイト配位子錯体で構成されている。一般に、そのような触媒は、予備形成又はその場で形成することができ、例えば米国特許第4,567,306号に開示されているもの、及び以下に論じられるものなどの有機モノホスファイト配位子、一酸化炭素、及び水素と、複雑に組み合わせられたロジウムから本質的になる。
【0044】
金属と錯化した有機モノホスファイト配位子に加えて、追加の、又は「遊離」配位子が用いられる。必要に応じて、有機モノホスファイト配位子の混合物を用いてもよい。本発明は、許容される有機モノホスファイト配位子又はそれらの混合物による任意の方式で限定されることを意図していない。本発明の成功した実施は、金属-有機モノホスファイト配位子錯体種の正確な構造に依存せず、かつそれに基づいていないものであり、それらの単核、二核、及び/又はより高核性の形態で存在し得ることに留意されたい。実際、正確な構造は判明していない。いずれの理論又は機構論に拘束されることを意図しないが、触媒種は、その最も単純な形態では、有機モノホスファイト配位子、並びに一酸化炭素及び/又は水素と、複雑に組み合わせられた金属とから本質的になると思われる。
【0045】
本明細書で使用される場合、「錯体」という用語は、各々が独立して存在できる1つ以上の電子的に乏しい分子又は原子と独立して存在できる1つ以上の電子的に豊富な分子又は原子の結合により形成される配位化合物を意味する。例えば、本明細書で用いることが可能な有機モノホスファイト配位子は、金属と配位結合を形成することが可能な1つの利用可能な又は共有されていない電子対を有するリン供与体原子を有する。一酸化炭素は、配位子としても適切に分類されるが、存在して金属に配位し得る。錯体触媒の最終的な組成はまた、追加の配位子、例えば、金属の配位部位又は核電荷を満たす水素又はアニオンを含有し得る。例示的な追加の配位子には、例えば、アルキル、アリール、置換アリール、アシル、CF、C、CN、(R)PO、及びRP(O)(OH)O(式中、各Rは同じか又は異なり、置換又は非置換の炭化水素ラジカル、例えば、アルキル又はアリールである)、アセテート、アセチルアセトネート、SO、PF、PF、NO、NO、CH、CCN、CHCN、NH、ピリジン、(CN、テトラヒドロフランなどが含まれる。錯体種は、好ましくは、触媒を被毒するか、又は触媒性能に過度の悪影響を与え得る追加の有機配位子又はアニオンを含まない。ロジウム-有機モノホスファイト配位子錯体が触媒作用を及ぼすヒドロホルミル化反応では、活性触媒が金属に直接結合しているハロゲン及び硫黄を含まないことが好ましいが、必ずしも絶対にそのようでなくてもよい。
【0046】
ロジウム-有機モノホスファイト配位子錯体触媒の配位子及び/又は遊離配位子として機能し得る有機モノホスファイト化合物は、アキラル(光学不活性)又はキラル(光学活性)タイプのものであり得、当該技術分野では周知である。アキラルな有機モノホスファイト配位子が好ましい。
【0047】
代表的な有機モノホスファイトには、下式を有するものが含まれ得、
【0048】
【化1】
式中、R10は、4~40個以上の炭素原子を含有する置換又は非置換の三価炭化水素ラジカル、例えば、三価非環式及び三価環状ラジカル、例えば、1,2,2-トリメチロールプロパンなどに由来するものなどの三価アルキレンラジカル、又は1,3,5-トリヒドロキシシクロヘキサンなどに由来するものなどの三価シクロアルキレンラジカルを表す。そのような有機モノホスファイトは、例えば、米国特許第4,567,306号により詳細に記載されていることが見出され得る。
【0049】
代表的な有機モノホスファイトには、下式を有するものなどのジオルガノモノホスファイトが含まれ得、
【0050】
【化2】
式中、R20は、4~40個以上の炭素原子を含有する置換又は非置換の二価炭化水素ラジカルを表し、Wは、1~18個以上の炭素原子を含有する置換又は非置換の一価炭化水素ラジカルを表す。
【0051】
上記の式(II)においてWで表される代表的な置換及び非置換の一価炭化水素ラジカルには、アルキル及びアリールラジカルが含まれ、R20で表される代表的な置換及び非置換の二価炭化水素ラジカルには、二価非環式ラジカル及び二価芳香族ラジカルが含まれる。例示的な二価非環式ラジカルには、例えば、アルキレン、アルキレン-オキシ-アルキレン、アルキレン-S-アルキレン、シクロアルキレンラジカル、及びアルキレン-NR24-アルキレンが含まれ、式中、R24は、水素、又は置換若しくは非置換の一価炭化水素ラジカル、例えば、1~4個の炭素原子を有するアルキルラジカルである。より好ましい二価非環式ラジカルは、例えば、米国特許第3,415,906号及び同第4,567,302号などにより完全に開示されているものなどの二価アルキレンラジカルである。例示的な二価芳香族ラジカルには、例えば、アリーレン、ビスアリーレン、アリーレン-アルキレン、アリーレン-アルキレン-アリーレン、アリーレン-オキシ-アリーレン、アリーレン-NR24-アリーレンが含まれ、式中、R24は、上で定義されるように、アリーレン-S-アリーレン、及びアリーレン-S-アルキレンなどである。より好ましいR20は、例えば、米国特許第4,599,206号、同第4,717,775号、同第4,835,299号などにより完全に開示されているものなどの二価芳香族ラジカルである。
【0052】
代表的なより好ましい部類のジオルガノモノホスファイトは、次式のものであり、
【0053】
【化3】
式中、Wは上で定義された通りであり、各Arは同じか又は異なり、置換又は非置換アリールラジカルを表し、各yは同じか又は異なり、0又は1の値であり、Qは-C(R33-、-O-、-S-、-NR24-、Si(R35、及び-CO-から選択される二価架橋基を表し、式中、各R33は同じか又は異なり、水素、1~12個の炭素原子を有するアルキルラジカル、フェニル、トリル、及びアニシルを表し、R24は上で定義された通りであり、各R35は同じか又は異なり、水素又はメチルラジカルを表し、mは0又は1の値を有する。そのようなジオルガノモノホスファイトは、例えば、米国特許第4,599,206号、同第4,717,775号、及び同第4,835,299号により詳細に記載されている。
【0054】
代表的な有機モノホスファイトには、下式を有するものなどのトリオルガノモノホスファイトが含まれ得、
【0055】
【化4】
式中、各R46は、同じか又は異なり、置換又は未置換の一価炭化水素ラジカル、例えば、1~24個の炭素原子を含有し得るアルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリル、及びアラルキルラジカルである。例示的なトリオルガノモノホスファイトには、例えば、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、ブチルジエチルホスファイト、トリ-n-プロピルホスファイト、トリ-n-ブチルホスファイト、トリ-2-エチルヘキシルホスファイト、トリ-n-オクチルホスファイト、トリ-n-ドデシルホスファイト、ジメチルフェニルホスファイト、ジエチルフェニルホスファイト、メチルジフェニルホスファイト、エチルジフェニルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリナフチルホスファイト、ビス(3,6,8-トリ-t-ブチル-2-ナフチル)メチルホスファイト、ビス(3,6,8-トリ-t-ブチル-2-ナフチル)シクロヘキシルホスファイト、トリス(3,6-ジ-t-ブチル-2-ナフチル)ホスファイト、ビス(3,6,8-トリ-t-ブチル-2-ナフチル)(4-ビフェニル)ホスファイト、ビス(3,6,8-トリ-t-ブチル-2-ナフチル)フェニルホスファイト、ビス(3,6,8-トリ-t-ブチル-2-ナフチル)(4-ベンゾイルフェニル)ホスファイト、ビス(3,6,8-トリ-t-ブチル-2-ナフチル)(4-スルホニルフェニル)ホスファイトなどの、例えば、トリアルキルホスファイト、ジアルキルアリールホスファイト、アルキルジアリールホスファイト、トリアリールホスファイトなどが含まれる。好ましいトリオルガノモノホスファイトは、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイトである。そのようなトリオルガノモノホスファイトは、例えば、米国特許第3,527,809号及び同第4,717,775号により詳細に記載されている。
【0056】
上記のように、金属-有機モノホスファイト配位子錯体触媒は、当該技術分野で既知の方法により形成することができる。好ましい実施形態では、金属-有機モノホスファイト配位子錯体中の金属は、ロジウムである。例えば、予め形成されたロジウムヒドリド-カルボニル-有機モノホスファイト配位子触媒を調製し、ヒドロホルミル化プロセスの反応混合物に導入することができる。より好ましくは、ロジウム-有機モノホスファイト配位子錯体触媒は、反応媒体に導入されてその場で活性触媒を形成することができる、ロジウム触媒前駆体に由来し得る。例えば、ロジウムジカルボニルアセチルアセトネート、Rh、Rh(CO)12、Rh(CO)16、Rh(NOなどのロジウム触媒前駆体は、有機モノホスファイト配位子とともに反応混合物に導入されて、その場で活性触媒を形成することができる。いくつかの実施形態では、ロジウムジカルボニルアセチルアセトネートをロジウム前駆体として用い、溶媒の存在下で有機モノホスファイト配位子と組み合わせて触媒ロジウム-有機モノホスファイト配位子錯体前駆体を形成し、それを過剰な(遊離)有機モノホスファイト配位子とともに反応器に導入して、その場で活性触媒を形成する。いずれの場合でも、一酸化炭素、水素、及び有機モノホスファイト配位子化合物は全て、金属と錯化することが可能な配位子であり、ヒドロホルミル化反応に使用される条件下で、反応混合物中に活性金属-有機モノホスファイト配位子触媒が存在するので、本発明の目的には十分である。カルボニル及び有機モノホスファイト配位子は、初期のロジウムとまだ錯化していない場合、ヒドロホルミル化プロセスの前又はヒドロホルミル化プロセス中のいずれかでその場でロジウムと錯化することができる。
【0057】
例として、いくつかの実施形態で使用するための例示的な触媒前駆体組成物は、可溶化ロジウムカルボニル有機モノホスファイト配位子錯体前駆体、溶媒、及び任意選択的に遊離有機モノホスファイト配位子から本質的になる。好ましい触媒前駆体組成物は、ロジウムジカルボニルアセチルアセトネート、有機溶媒、及び有機モノホスファイト配位子の溶液を形成することにより調製され得る。有機モノホスファイト配位子は、一酸化炭素ガスの発生によって証明されるように、室温でロジウムアセチルアセトネート錯体前駆体のカルボニル配位子のうちの少なくとも1つと容易に置き換わる。この置換反応は、必要に応じて、溶液を加熱することにより促進され得る。ロジウムジカルボニルアセチルアセトネート錯体前駆体及びロジウム有機モノホスファイト配位子錯体前駆体の両方が可溶性である任意の好適な有機溶媒が用いられ得る。そのような触媒前駆体組成物中に存在するロジウム錯体触媒前駆体、有機溶媒、及び有機モノホスファイト配位子、並びにそれらの好ましい実施形態の量は、本発明のヒドロホルミル化プロセスで用いることが可能なそれらの量に明らかに対応することができる。経験により、上に説明されているヒドロホルミル化プロセスが開始された後、前駆体触媒のアセチルアセトネート配位子が異なる配位子、例えば、水素、一酸化炭素、又は有機モノホスファイト配位子で置き換えられて、活性錯体触媒が形成されることが示されている。ヒドロホルミル化条件下で前駆体触媒から遊離されるアセチルアセトンは、生成物アルデヒドとともに反応媒体から除去され、したがって、ヒドロホルミル化プロセスに決して有害ではない。そのようなロジウム錯体触媒前駆体組成物を使用することにより、ロジウム前駆体の取り扱い及びヒドロホルミル化の開始のための単純な経済的かつ効率的な方法が提供される。
【0058】
したがって、本発明のプロセスで使用される金属-有機モノホスファイト配位子錯体触媒(例えば、ロジウム-有機モノホスファイト配位子錯体触媒)は、一酸化炭素と錯化した金属、及び有機モノホスファイト配位子から本質的になり、当該配位子が、金属に結合(錯化)している。更に、本明細書で使用される場合、「から本質的になる」という用語は、一酸化炭素及び有機モノホスファイト配位子に加えて、金属と錯化した水素を除外せず、むしろ含む。更に、そのような用語は、金属と錯化する可能性もある他の有機配位子及び/又はアニオンの可能性を排除するものではない。触媒を過度に害するか又は過度に不活性化する量の材料は望ましくなく、したがって、触媒は、絶対的に必要ではない可能性があるが、金属結合ハロゲンなど(例えば、塩素など)の汚染物質を含まないことが最も望ましい。活性金属-有機モノホスファイト配位子錯体触媒の水素及び/又はカルボニル配位子は、例えば、配位子が前駆体触媒に結合した結果として、及び/又はヒドロホルミル化プロセスで用いられる水素及び一酸化炭素ガスに起因してその場で形成された結果として存在し得る。
【0059】
記載されるように、本発明のヒドロホルミル化プロセスは、本明細書に記載の金属-有機モノホスファイト配位子錯体触媒(例えば、ロジウム-有機モノホスファイト配位子錯体触媒)の使用を含む。必要に応じて、そのような配位子の混合物も用いられ得る。本発明に包含される所与のヒドロホルミル化プロセスの反応流体中に存在する金属-有機モノホスファイト配位子錯体触媒の量は、用いられることが望ましい所与の金属濃度を提供するのに必要な最小量であり、例えば、上述の特許に開示のものなどを含む特定のヒドロホルミル化プロセスを触媒するのに必要な金属の少なくとも触媒量の塩基を供給する最小量のみを必要とする。一般に、反応媒体中の遊離金属として計算して、50ppmw~1000ppmwの範囲の触媒金属、例えば、ロジウムの濃度は、ほとんどのプロセスでは十分であるが、一般に100~500ppmwの金属を用いることが好ましい。触媒金属の濃度を測定するための分析技法は、当業者に周知であり、それには、原子吸光(atomic absorption、AA)、誘導結合プラズマ(inductively coupled plasma、ICP)、及び蛍光X線(X-ray fluorescence、XRF)が含まれる。AAが典型的には好ましい。
【0060】
金属-有機モノホスファイト配位子錯体触媒(例えば、ロジウム-有機モノホスファイト配位子錯体触媒)に加えて、遊離有機モノホスファイト配位子(すなわち、金属と錯化していない配位子)も、反応媒体中に存在し得る。遊離有機モノホスファイト配位子は、上で定義された本明細書で用いることが可能であると上で論じられた有機モノホスファイト配位子のうちのいずれかに対応し得る。遊離有機モノホスファイト配位子は、用いられる金属-有機モノホスファイト配位子錯体触媒の有機モノホスファイト配位子と同じであることが好ましい。しかしながら、そのような配位子は、いかなる所与のプロセスにおいても同じである必要はない。ヒドロホルミル化プロセスは、反応媒体中の金属1モル当たり0.1モル以下~100モル以上の遊離有機モノホスファイト配位子を含み得る。好ましくは、ヒドロホルミル化プロセスは、反応媒体中に存在する金属1モル当たり1~50モルの遊離モノホスファイト配位子の存在下で実行される。有機モノホスファイトの濃度は、典型的には、高圧液体クロマトグラフィー(high pressure liquid chromatography、HPLC)又は31P NMR分光法によって測定される。アキラルなオレフィンをヒドロホルミル化することによって非光学活性アルデヒドを生成することがより好ましいので、より好ましい有機モノホスファイト配位子は、アキラルタイプの有機モノホスファイト配位子、特に上の式(I~IV)によって包含されるものである。必要に応じて、任意の時点でかつ任意の好適な方式で、補充の又は追加の有機モノホスファイト配位子を、ヒドロホルミル化プロセスの反応媒体に供給して、例えば反応媒体中の遊離配位子の所定のレベルを維持してもよい。
【0061】
ヒドロホルミル化生成物は、不斉、非不斉、又はそれらの組み合わせであってよく、好ましい生成物は非不斉である。プロセスは、任意のバッチで、連続的又は半連続的な様式で行うことができ、いくつかの実施形態では、触媒液体リサイクル操作を含む。
【0062】
液体リサイクル手順は、一般に、例えば米国特許第5,288,918号、米国特許第8,404,903号、及び米国特許第10,023,516号に開示のように、触媒及びアルデヒド生成物を含有する液体反応流体の一部分をヒドロホルミル化反応器、すなわち反応ゾーンから連続的又は断続的のいずれかで引き出すことと、分離蒸留ゾーンにおいて、適宜常圧、減圧又は高圧下の1つ以上の段階での蒸留、すなわち気化分離によって、分離蒸留ゾーンからアルデヒド生成物を回収することと、を含み、非揮発性金属触媒を含有する残留物が反応ゾーンにリサイクルされる。揮発性物質の凝縮、並びに例えば更なる蒸留によるその分離及び更なる回収は、任意の従来の方式で実行することができ、必要に応じて、粗アルデヒド生成物に更なる精製及び異性体分離を継続してもよい。
【0063】
未反応のオレフィン出発物質は、従来の手段、例えば蒸留によって生成物アルデヒドから分離することができる。次いで、このように回収されたオレフィンは、反応ゾーンに戻されてリサイクルされてもよいか、又は反応ゾーンとストリップガス気化器との間の1つ以上の場所で反応流体に添加されてもよい。
【0064】
本明細書で用いることが可能なヒドロホルミル化反応混合物組成物は、ヒドロホルミル化プロセスにおいて意図的に使用されるか又は当該プロセス中にその場で形成されたものなどの少量の追加成分を含有することができ、通常は含有する。また存在し得るそのような成分の例には、未反応オレフィン出発物質、一酸化炭素及び水素ガス、並びにその場で形成されるタイプの生成物、例えば、飽和炭化水素及び/又はオレフィン出発物質に対応する未反応異性化オレフィン、配位子分解化合物、並びに高沸点液体アルデヒド縮合副生物、並びに用いられる場合、他の不活性共溶媒タイプの物質又は炭化水素添加剤が含まれる。
【0065】
本発明により包含されるヒドロホルミル化プロセスの反応条件は、光学活性及び/又は非光学活性アルデヒドを生成するためにこれまで用いられてきた任意の好適なヒドロホルミル化条件を含み得る。例えば、ヒドロホルミル化プロセスの水素、一酸化炭素及びオレフィン出発化合物の全ガス圧は、1~69,000kPaの範囲であり得る。しかしながら、一般に、本プロセスは、水素、一酸化炭素及びオレフィン出発化合物の全ガス圧14,000kPa未満、より好ましくは3,400kPa未満で操作されることが好ましい。最小全圧は、所望の反応速度を得るのに必要な反応物の量によって主に制限される。より具体的には、一酸化炭素及び水素の分圧は、各々独立して1~6,900kPa、好ましくは34~3,400kPaの範囲であり得る。一般に、反応ゾーン内のガス状水素対一酸化炭素のH:COモル比は、1:10~100:1以上の範囲であり得、より好ましい水素対一酸化炭素のモル比は、1:10~10:1である。
【0066】
一般に、ヒドロホルミル化プロセスは、任意の運転可能な反応温度で実施され得る。一般に、分岐内部オレフィン出発物質には、70℃~120℃のヒドロホルミル化反応温度が好ましい。非光学活性アルデヒド生成物が所望されるときには、アキラルタイプのオレフィン出発物質及び有機モノホスファイト配位子が用いられ、光学活性アルデヒド生成物が所望されるときには、プロキラル又はキラルタイプのオレフィン出発物質及び有機モノホスファイト配位子が用いられることを理解されたい。用いられるヒドロホルミル化反応条件は、所望のアルデヒド生成物のタイプによって左右される。
【0067】
本発明のヒドロホルミル化プロセスは、例えば、固定床反応器、管状反応器、ベンチュリ反応器、気泡塔反応器、連続撹拌タンク反応器(continuous stirred tank reactor、CSTR)、又はスラリー反応器などの1つ以上の好適な反応器を使用して実行され得る。反応器の最適なサイズ及び形状は、使用される反応器のタイプに依存する。本発明で用いられる少なくとも1つの反応ゾーンは、単一の容器、例えば米国特許第5,728,893号に記載のものなどの、その中に複数のゾーンを有する単一の容器であり得るか、又は2つ以上の個別の容器を含み得る。
【0068】
一実施形態では、ヒドロホルミル化は、例えば、米国特許第5,728,893号に記載のものなどの多段反応器中で実行され得る。そのような多段階反応器は、容器1個当たり1個を超える理論的反応段階を作り出す内部の物理的障壁を用いて設計され得る。実際には、それは、単一の連続撹拌タンク反応容器内に多数の反応器を有するようなものである。単一の容器内の複数の反応段階は、反応容器の容積を使用する費用効果の高い方法である。これにより、同じ結果を達成するのに必要とされるであろう容器の数が大幅に減少する。少数の容器は、別個の容器及び撹拌器に伴う必要とされる全体的な資本及び保守上の懸念を低減する。
【0069】
本発明で利用されるヒドロホルミル化プロセスは、消費されていない出発物質をリサイクルしながら、連続的な様式で行われる。反応は、直列又は並列の、単一の反応ゾーン又は複数の反応ゾーンで行われ得る。用いられ得る構成の物質は、反応中、出発物質に対して実質的に不活性でなければならず、装置の製作は、反応温度及び圧力に耐えることができるべきである。特に出発物質の所望のモル比を反応の過程中維持するために、プロセスでは、連続的に反応ゾーンに導入される出発物質又は成分を導入する手段、及び/又はその量を調整する手段を簡便に利用してもよい。出発物質及び/又はリサイクルオレフィンは、各々の又は全ての直列の反応ゾーンに添加され得る。
【0070】
ヒドロホルミル化プロセスは、ガラスライニングされたステンレス鋼又は類似の型の反応設備のいずれかで行われ得る。過度の温度変動を制御するために、又は可能性のあるあらゆる「暴走」反応温度を防止するために、反応ゾーンには1つ以上の内部及び/又は外部熱交換器を取り付けてもよい。
【0071】
本発明のヒドロホルミル化プロセスは、1つ以上の工程又は段階で行われ得る。反応工程又は段階の正確な数は、資本コストと達成される高い触媒選択性、活性、寿命、及び操作性の容易さとの間の最良の妥協点、並びに問題の出発物質の固有の反応性、並びに出発物質及び反応条件に対する所望の反応生成物の安定性により左右される。
【0072】
本発明のプロセスが利用され得る、金属-有機モノホスファイト配位子錯体触媒を使用する典型的なヒドロホルミル化プロセスは、連続方式で実行され、(a)C7-C20オレフィン(例えば、C8オレフィンの少なくとも大部分を含むオレフィンストリーム)、一酸化炭素、及び水素を、反応流体を含有する反応ゾーンに供給することであって、反応流体が、溶媒、金属-有機モノホスファイト配位子錯体触媒、及び遊離有機モノホスファイト配位子を含む、供給することと、(b)オレフィン出発物質のヒドロホルミル化に適した反応温度及び圧力条件を維持することと、(c)混合C7-C20オレフィン(リサイクルオレフィンを含む)、一酸化炭素、及び水素の補充量を、これらの反応物が消費されるにつれて反応ゾーンに送給することと、(d)分離ゾーンにおいて反応流体から所望の生成物アルデヒド(複数可)を分離することと、(e)蒸留によって粗生成物アルデヒド(複数可)から未反応オレフィンを回収することと、任意選択的に(f)追加のロジウム及び/又は有機モノホスファイト配位子を添加して、目標濃度を維持することと、を含む。
【0073】
液体リサイクルヒドロホルミル化プロセスの一般的な例は、当該技術分野で周知であり、所望のアルデヒド反応生成物から分離された金属-配位子錯体触媒流体を、例えば米国特許第4,148,830号、同第4,668,651号、同第4,774,361号、同第5,102,505号、及び同第5,110,990号に開示のものなどの1つ以上の反応ゾーンに戻すことを含む。
【0074】
金属-有機モノホスファイト錯体触媒を含有する反応流体からの所望のアルデヒド生成物の分離は、望ましい任意の好適な温度で行うことができる。一般に、そのような分離は、150℃未満、より好ましくは50℃~140℃の範囲の温度などの比較的低い温度で行われることが好ましい。
【0075】
本発明のヒドロホルミル化プロセスの実施形態は、例えば米国特許第8,404,903号及び米国特許第10,023,516号に記載のものなどの分離ゾーンでストリップガス気化器を利用する。そのような実施形態では、反応流体は、一酸化炭素、並びに任意選択的に水素及び窒素を含む流動ガス(ストリップガス)のストリームとともに高温で気化器に導入され、生成物アルデヒド及び未反応オレフィンを含む揮発性構成成分で飽和する。ガス状ストリームは気化器を出て凝縮器(「ストリップガス凝縮器」)を通過して、生成物アルデヒド及びオレフィンで構成される液体の粗生成物ストリームを生成し、ストリップガス凝縮器を通過した後、ガス状ストリームは、気相として残る一酸化炭素、残留生成物アルデヒド、及びオレフィンで構成される。ガス状ストリームの少なくとも一部分はリサイクルされ、コンプレッサー又はブロワーを使用してストリップガス(リサイクルガス)に組み込まれる。ストリップガス中の未反応オレフィンなどの中程度の温度及び圧力で凝縮し得る構成成分の濃度は、ストリップガス凝縮器の温度によって部分的に決定される。例えば、ストリップガス凝縮器の温度を下げると、結果としてより凝縮性の構成成分が液体としてガス状ストリームから除去され、それによってリサイクルガス中のそれらの濃度が下がる。逆に、ストリップガス凝縮器の温度を上げると、リサイクルガス中の気化器に戻る凝縮性構成成分の濃度が高くなる。非揮発性物質(本明細書では「テール」又は「気化器テール」と称される)は、反応ゾーン(又は他の触媒処理及び/若しくは調整プロセス)に送り返される。
【0076】
典型的な気化器は、気化セクション(典型的には、流下膜式気化器、薄膜式気化器、又はワイプトフィルム気化器)を含み、液体及びガス状ストリームは、液体及びガスが分離される分離ゾーンに入る。この分離ゾーンは、本明細書では「キャッチポット」と称される。残留液相(気化器テール)は、触媒、遊離配位子、高沸点溶媒、及び重質物などの不揮発性成分を含み、反応ゾーンに送り返される。気相は、上述のように所望の生成物及びストリッピングガスを回収するためにストリップガス凝縮器へと進む。
【0077】
一実施形態では、分離ゾーンは、米国特許第10,023,516号に記載のものなどの一酸化炭素(CO)ストリップガス気化器を含み、そのような実施形態は、CO中に豊富なストリップガスを用いる。
【0078】
従来のプロセスでは、ストリップガス気化器に入る反応流体(供給物)の質量対ストリップガス気化器を出る非揮発性触媒含有流体(テール)の質量の比は、典型的には1超~3の範囲内に維持される。そのようなプロセスにおいて、この供給物対テール比が高すぎる(例えば、4以上)と、触媒は、ストリップガス気化器内で高度に濃縮され、これがロジウム損失を悪化させ得る。逆に、供給物対テール比が低すぎると、アルデヒドの除去速度によって生成速度が制限される。
【0079】
本発明は、生じた濃縮触媒ストリーム(気化器テール)をできるだけ早くオレフィンで処理すると、より高い供給物対テール比を使用することができることを見出した。例えば、いくつかの実施形態では、本発明のプロセスは、1.5~4の供給物対テール比でストリップガス気化器を動作させることができる。いくつかの実施形態では、供給物対テール比は、1.9~2.5である。この添加は、ストリームを希釈して溶解度を維持するだけでなく、ロジウム触媒自体を望ましくない分解プロセスに対して安定化させる。より高い供給物対テール比は、生成速度及び重質物除去を改善し、したがって、有利なプロセスである。
【0080】
いくつかの実施形態では、触媒及び触媒成分の溶解度は、気化器テールストリームへのC7-C20オレフィンストリーム(又は混合C8オレフィンストリーム若しくは混合C9オレフィンストリーム)の添加によって増加する。
【0081】
本発明のプロセスは、混合C8オレフィン又は混合C9オレフィンなどのC7-C20オレフィンがロジウム-有機モノホスファイト触媒組成物の存在下でヒドロホルミル化される、連続液体リサイクルヒドロホルミル化プロセスにおけるロジウムの責務を有利に改善することができる。以前の反応プロセスでは、反応流体中のロジウムの測定濃度は、経時的に低下することが観察されている。ロジウムの濃度は、例えば、原子吸光(AA)及び誘導結合プラズマ(ICP)を含む多様な技法を使用して測定することができる。本明細書又は特許請求の範囲で別段の指定がない限り、流体中のロジウムの量は、原子吸光を使用して測定される。本発明のプロセスを使用する場合、反応においてロジウムの濃度が低下する速度は、本発明のプロセスを使用すると、ロジウム及び有機モノホスファイト配位子を使用する混合C8オレフィン又は混合C9オレフィンのヒドロホルミル化の典型的なプロセスで観察されるよりも遅い。
【0082】
本発明の一実施形態では、連続液体リサイクルヒドロホルミル化プロセスにおけるロジウムの責務を改善するためのプロセスは、反応ゾーンにおいて、ロジウム及び有機モノホスファイト配位子を含む触媒の存在下で、C7-C20オレフィン、水素、及び一酸化炭素を含む反応物を接触させて、反応流体を形成することであって、反応ゾーンへのオレフィンの供給速度が、100キログラム/時間を超える、形成することと、反応流体をストリップガス気化器に提供して、生成物ストリーム及び気化器テールストリームを生成することと、気化器テールストリーム中のC7-C20オレフィン含有量を測定することと、少なくとも50重量パーセントのC7-C20オレフィンを含むC7-C20オレフィンストリームを気化器テールストリームに添加して、気化器テールストリーム中のC7-C20含有量を2重量パーセント超に維持することと、を含む。いくつかの実施形態では、気化器テールストリームに添加されるC7-C20オレフィンストリームは、少なくとも70重量パーセントのC7-C20オレフィン、又は少なくとも70重量パーセントのC7-C20オレフィン、又は少なくとも80重量パーセントのC7-C20オレフィン、又は少なくとも85重量パーセントのC7-C20オレフィン、又は少なくとも90重量パーセントのC7-C20オレフィン、又は少なくとも95重量パーセントのC7-C20オレフィンを含む。いくつかの実施形態では、C7-C20オレフィンストリームの添加後の気化器テールストリームは、いくつかの実施形態では、最大20重量パーセントのC7-C20オレフィンを含む。いくつかの実施形態では、混合C7-C20オレフィンストリームの添加後の気化器テールストリームは、2.5~15重量パーセントのC7-C20オレフィン、又は3~10重量パーセントのC7-C20オレフィンを含む。いくつかの実施形態では、反応ゾーンで接触するC7-C20オレフィンの大部分は、C8オレフィンである。
【0083】
いくつかの実施形態では、気化器テールストリームに添加されるC7-C20オレフィンストリームは、新鮮なC7-C20オレフィン(すなわち、プロセス中に以前に存在していない)のストリームである。いくつかの実施形態では、気化器テールストリームに添加されるC7-C20オレフィンストリーム中のC7-C20オレフィンの大部分は、新鮮なオレフィンである。いくつかの実施形態では、気化器テールストリームに添加されるC7-C20オレフィンストリームは、生成物ストリームから除去されるオレフィンを含む。いくつかの実施形態では、気化器テールストリームに添加されるC7-C20オレフィンストリーム中のC7-C20オレフィンの大部分は、生成物ストリームから除去されるオレフィンである。いくつかの実施形態では、気化器テールストリームに添加されるC7-C20オレフィンストリーム中のC7-C20オレフィンの少なくとも95重量パーセント、又はいくつかの実施形態では少なくとも99重量パーセントは、生成物ストリームから除去されるオレフィンである。
【0084】
本発明の別の実施形態では、連続液体リサイクルヒドロホルミル化プロセスにおけるロジウムの責務を改善するためのプロセスは、反応ゾーンにおいて、ロジウム及び有機モノホスファイト配位子を含む触媒の存在下で、混合C8オレフィン、水素、及び一酸化炭素を含む反応物を接触させて、反応流体を形成することであって、反応ゾーンへのオレフィンの供給速度が、100キログラム/時間を超える、形成することと、反応流体をストリップガス気化器に提供して、生成物ストリーム及び気化器テールストリームを生成することと、気化器テールストリーム中のC8オレフィン含有量を測定することと、少なくとも50重量パーセントの混合C8オレフィンを含むC8オレフィンストリームを気化器テールストリームに添加して、気化器テールストリーム中のC8含有量を2重量パーセント超に維持することと、を含む。いくつかの実施形態では、気化器テールストリームに添加される混合C8オレフィンストリームは、少なくとも70重量パーセントのC8オレフィン、又は少なくとも70重量パーセントのC8オレフィン、又は少なくとも80重量パーセントのC8オレフィン、又は少なくとも85重量パーセントのC8オレフィン、又は少なくとも90重量パーセントのC8オレフィン、又は少なくとも95重量パーセントのC8オレフィンを含む。いくつかの実施形態では、混合C8オレフィンストリームの添加後の気化器テールストリームは、いくつかの実施形態では、最大20重量パーセントのC8オレフィンを含む。いくつかの実施形態では、混合C8オレフィンストリームの添加後の気化器テールストリームは、2.5~15重量パーセントのC8オレフィン、又は3~10重量パーセントのC8オレフィンを含む。
【0085】
いくつかの実施形態では、気化器テールストリームに添加される混合C8オレフィンストリームは、新鮮なC8オレフィン(すなわち、プロセス中に以前に存在していない)のストリームである。いくつかの実施形態では、気化器テールストリームに添加される混合C8オレフィンストリーム中のC8オレフィンの大部分は、新鮮なオレフィンである。いくつかの実施形態では、気化器テールストリームに添加される混合C8オレフィンストリームは、生成物ストリームから除去されるオレフィンを含む。いくつかの実施形態では、気化器テールストリームに添加される混合C8オレフィンストリーム中のC8オレフィンの大部分は、生成物ストリームから除去されるオレフィンである。いくつかの実施形態では、気化器テールストリームに添加される混合C8オレフィンストリーム中のC8オレフィンの少なくとも95重量パーセント、又はいくつかの実施形態では少なくとも99重量パーセントは、生成物ストリームから除去されるオレフィンである。
【0086】
本発明の別の実施形態では、連続液体リサイクルヒドロホルミル化プロセスにおけるロジウムの責務を改善するためのプロセスは、反応ゾーンにおいて、ロジウム及び有機モノホスファイト配位子を含む触媒の存在下で、混合C9オレフィン、水素、及び一酸化炭素を含む反応物を接触させて、反応流体を形成することであって、反応ゾーンへのオレフィンの供給速度が、100キログラム/時間を超える、形成することと、反応流体をストリップガス気化器に提供して、生成物ストリーム及び気化器テールストリームを生成することと、気化器テールストリーム中のC9オレフィン含有量を測定することと、少なくとも50重量パーセントの混合C9オレフィンを含むC9オレフィンストリームを気化器テールストリームに添加して、気化器テールストリーム中のC9含有量を2重量パーセント超に維持することと、を含む。いくつかの実施形態では、気化器テールストリームに添加される混合C9オレフィンストリームは、少なくとも70重量パーセントのC9オレフィン、又は少なくとも70重量パーセントのC9オレフィン、又は少なくとも80重量パーセントのC9オレフィン、又は少なくとも85重量パーセントのC9オレフィン、又は少なくとも90重量パーセントのC9オレフィン、又は少なくとも95重量パーセントのC9オレフィンを含む。いくつかの実施形態では、混合C9オレフィンストリームの添加後の気化器テールストリームは、いくつかの実施形態では、最大20重量パーセントのC9オレフィンを含む。いくつかの実施形態では、混合C9オレフィンストリームの添加後の気化器テールストリームは、2.5~15重量パーセントのC9オレフィン、又は3~10重量パーセントのC9オレフィンを含む。
【0087】
いくつかの実施形態では、気化器テールストリームに添加される混合C9オレフィンストリームは、新鮮なC9オレフィン(すなわち、プロセス中に以前に存在していない)のストリームである。いくつかの実施形態では、気化器テールストリームに添加される混合C9オレフィンストリーム中のC9オレフィンの大部分は、新鮮なオレフィンである。いくつかの実施形態では、気化器テールストリームに添加される混合C9オレフィンストリームは、生成物ストリームから除去されるオレフィンを含む。いくつかの実施形態では、気化器テールストリームに添加される混合C9オレフィンストリーム中のC9オレフィンの大部分は、生成物ストリームから除去されるオレフィンである。いくつかの実施形態では、気化器テールストリームに添加される混合C9オレフィンストリーム中のC9オレフィンの少なくとも95重量パーセント、又はいくつかの実施形態では少なくとも99重量パーセントは、生成物ストリームから除去されるオレフィンである。
【0088】
気化器テールストリーム中のC7-C20オレフィン含有量(又はC8含有量若しくはC9含有量)を2重量パーセント超に維持するために、C7-C20オレフィンストリーム(又は混合C8オレフィンストリーム若しくは混合C9オレフィンストリーム)をいくつかの方法で添加することができる。例えば、気化器テールストリーム中のC7-20オレフィン(又はC8オレフィン若しくはC9オレフィン)の濃度を2重量パーセント超に維持するために、C7+オレフィンの添加は、(1)気化器キャッチポット底部液体層、若しくは(2)気化器テール冷却器、若しくは(3)気化器底部ポンプの直前(前)、若しくは(4)気化器底部ポンプの直後、又はこれらの位置の組み合わせなどの、数ヶ所の好ましい場所のうちの1つに対して行うことができる。言い換えれば、C7-C20オレフィン(又は混合C8オレフィン若しくは混合C9オレフィン)のストリームは、以下のうちの1つ以上:(a)C7-C20オレフィンストリーム(又は混合C8オレフィンストリーム若しくは混合C9オレフィンストリーム)を気化器キャッチポット底部液体層に添加すること、又は(b)C7-C20オレフィンストリーム(又は混合C8オレフィンストリーム若しくは混合C9オレフィンストリーム)を気化器テール冷却器に添加すること、又は(c)C7-C20オレフィンストリーム(又は混合C8オレフィンストリーム若しくは混合C9オレフィンストリーム)を気化器ボトムポンプの直前に添加すること、又は(d)C7-C20オレフィンストリーム(又は混合C8オレフィンストリーム若しくは混合C9オレフィンストリーム)を、気化器底部ポンプの直後に添加すること、のうちの1つ以上によって気化器テールストリームに添加される。気化器テールストリーム中のC7-C20オレフィン(又は混合C8オレフィン若しくは混合C9オレフィン)の濃度は、実施例のセクションに記載のものなどの方法を使用してガスクロマトグラフィー(gas chromatography、GC)によって決定され得る。安定性を維持するために、いくつかの実施形態によれば、C7-C20オレフィンのストリームを気化器テールストリームに早く添加することができるほど、より多くの利益が観察される。例えば、いくつかの実施形態では、添加が気化器キャッチポットに直接ではない場合、C7-C20オレフィンストリームは、流体流量に基づいて、流体がキャッチポットに入ってから30秒以内に添加されなければならない。
【0089】
米国特許公開第2017/0253549号に記載のものなどのキャッチポット分割プレートが使用されるとき、プレートは、特にオレフィンがキャッチポット内の冷却手段(例えば、スタブイン冷却器)の温度で又はそれを下回って添加される場合、添加されたC7-C20オレフィンをキャッチポットの下部分内に保持するのに役立ち、任意のオレフィン気化を最小限に抑える。C7-C20オレフィンは、フラッシングを最小限に抑えるために、冷却された気化器テール温度及び圧力で液体でなければならない。
【0090】
いくつかの実施形態では、混合C7-C20オレフィン又はリサイクルオレフィンを気化器キャッチポットと反応ゾーンとの間の反応流体に添加することによって、気化器テール中のC7-C20オレフィンの濃度を増加させることができる。混合C7-C20及びリサイクルオレフィンの組み合わせを、いくつかの実施形態で使用することができる。
【0091】
添加されるC7-C20オレフィンの量は、少なくとも、気化器テールストリーム中に少なくとも2重量パーセントのC7-C20オレフィンを達成するのに必要な量である。より多量のC7-C20オレフィンを用いてもよいが、気化器テールストリーム中のC7-C20オレフィンの濃度が50重量%超のC7-C20オレフィンである場合、溶解度の問題のために必要とされない限り、ほとんど利点は期待されない。いくつかの実施形態では、反応させる新鮮なC7-C20オレフィンの大部分は、反応ゾーンに直接添加され、新鮮なC7-C20オレフィンの一部分のみが気化器テールに添加される。これは、組成物の正確な制御を可能にし、より大きいパイプの必要性を回避することができる。いくつかの実施形態では、新鮮なC7-C20オレフィンの全てが反応ゾーンに供給され、リサイクルオレフィンのみが、気化器テールストリームに添加されるストリーム中で使用されて、気化器テール中のC7-20オレフィン含有量を2重量パーセント超に維持する。均一な組成物を保証するために、インラインミキサー及び良好な混合を保証するための他の手段は、ストリームが反応ゾーンに入る前が好ましい。
【0092】
気化器テールストリーム中に存在する条件下(気化器冷却器及びその後、並びに流体が反応器に入る前)では、これらの条件は、著しいヒドロホルミル化反応を促さないと理解されるべきである。温度は低く、合成ガスの分圧も低い。このように、反応熱又はオレフィン転化はほとんど期待されない。したがって、このセクションは、「反応ゾーン」の一部とはみなされないが、触媒分解は、本発明などにおける安定化剤の非存在下で起こり得る。
【0093】
ロジウム及び有機モノホスファイト配位子を含む触媒の存在下で、C7-C20オレフィン(又は混合C8オレフィン若しくは混合C9オレフィン)、水素、及び一酸化炭素を含む反応物を反応ゾーンで接触させて反応流体を形成する工程は、本明細書に記載のように行うことができる。任意の特定の理論に拘束されることを望まないが、ストリップガス気化器からの気化器テールストリーム中のC7-C20オレフィン(又はC8オレフィン若しくはC9オレフィンのある特定の濃度を維持することは、プロセスにおけるロジウムの責務を改善する(すなわち、反応流体中のロジウム濃度が減少する速度を減少させる)と考えられる。一般に、オレフィンの分子量が高いほど、同じ利益を得るためにより多くのオレフィンが必要とされる。
【0094】
C7-C20オレフィンのヒドロホルミル化を生じ得る例示的なアルデヒド生成物には、限定されないが、異性体を含むノナナール、デカナール、ドデカナール、ウンデンカナール、ドデカナール、トリデカナール、テトラデカナール、ペンタデカナール、ヘキサデカナール、ヘプタデカナール、オクタデカナール、ノナデカナール、イコサナール、ヘニコサナールなどが含まれる。
【0095】
C8オレフィンのヒドロホルミル化を生じ得る例示的なアルデヒド生成物には、限定されないが、イソノニルアルデヒド、n-ノナナール、2-メチルオクタナール、3-メチルオクタナール、4-メチルオクタナール、5-メチルオクタナール、6-メチルオクタナール、7-メチルオクタナール、2-エチルヘプタナール、2-プロピルヘキサナール、3-プロピルヘキサナール、4,5-ジメチルヘプタナール、2,3,4-トリメチルヘキサナール、3-エチル-4-メチルヘキサナール、2-エチル-4-メチルヘプタナール、2-プロピル-3-メチルペンタナール、2,5-ジメチルヘプタナール、2,3-ジメチルヘプタナールなどが含まれる。
【0096】
混合C9オレフィンのヒドロホルミル化を生じ得る例示的なアルデヒド生成物には、限定されないが、n-デカナール、イソデカナール、2-メチルノナナール、3-メチルノナナール、4-メチルノナナール、5-メチルノナナール、6-メチルノナナール、2-エチルオクタナール、2-プロピルヘプタナール、3-プロピルヘプナール、4,5-ジメチルオクタナール、2,3,4-トリメチルヘプタナール、2,5-ジメチルオクタナール、2,3-ジメチルオクタナールなどが含まれる。
【0097】
いくつかの更なる実施形態は、生成物ストリームからオレフィンを除去し、除去されたオレフィンの一部分を、オレフィンストリーム(例えば、C7-C20オレフィンストリーム、混合C8オレフィンストリーム、混合C9オレフィンストリームなど)の一部としてストリップガス気化器の後の気化器テールストリームに戻すことを更に含む。いくつかの更なる実施形態では、気化器テールストリームに添加されるオレフィンストリーム(例えば、C7-C20オレフィンストリーム、混合C8オレフィンストリーム、混合C9オレフィンストリームなど)中のオレフィンの大部分は、生成物ストリームから除去されたオレフィンである。
【0098】
本発明のいくつかの実施形態を、以下の実施例においてより詳細に説明する。
【実施例
【0099】
以下の実施例における全ての部及び百分率は、他に示されていない限り重量による。別段の指示がない限り、圧力は絶対圧力として記載される。
【0100】
以下のパラメータを使用してガスクロマトグラフィー(GC)によって、オレフィン組成を決定する。
【0101】
【表1】
成分定量は、外部標準較正に基づく。複数の線状オクテン、ジメチルヘキセン、及びメチルヘプテン異性体を、報告目的のためにグループ化する。
【0102】
空気-アセチレンフレームを用いるPerkin Elmer PinAAcle 900Fを使用する原子吸光分光法(AA)によって、ロジウム濃度を測定する。
【0103】
オレフィンAは、5重量%の線状オクテン、57重量%のメチルヘプテン、34重量%のジメチルヘキセン、及び4重量%のパラフィンを含む。
【0104】
オレフィンBは、25重量%のメチルヘプテン及び62重量%のジメチルヘキセンを含み、残りはパラフィンを含む。オレフィンBの組成は、分離ゾーン(例えば、ストリップガス気化器)に入り、反応ゾーンにリサイクルされる生成物ストリームから回収した未反応オレフィンの代表的なものである。
【0105】
ジカルボニル(アセチルアセトナート)ロジウム(I)として、ロジウムを添加する。
【0106】
配位子Aは、以下の構造を有するトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトである。
【0107】
【化5】
【0108】
実施例1~13は、触媒に対する分離ゾーンの影響を実証するために、本明細書ではブロックイン手順と称される加速試験手順を使用する。当該試験手順は、実用的な様式で意味のある結果を得るために、通常の連続液体リサイクルヒドロホルミル化プロセス中に経験するであろうよりもはるかに長い期間、可溶化活性化ロジウム錯体触媒を高温及び低い分圧の合成ガスを施すことを含む。例えば、連続液体リサイクルヒドロホルミル化プロセス中に発生し得る本明細書で論じられるロジウム損失は、触媒が毎日ほんの数分間そのような気化器条件を施されるので、通常のアルデヒド蒸留回収手順下で定量的に定義するのに数週間かかり得るが、加速試験(ブロックイン手順)は、反応生成物流体を高いアルデヒド回収タイプの蒸留温度で長期間連続的に維持することによって、数時間又は数日以内に完了し得る。ブロックインセグメントは、反応器が高温及び低合成ガス分圧下で密閉されている期間を含む。この手順は、合成ガスの非存在下で活性化ロジウム触媒溶液を取り、様々な量のオレフィンを添加して、オレフィンの添加(気化器キャッチポットなどにおける)が分解に対して触媒を安定化させることを実証することによって、触媒溶液に対する分離ゾーンの効果をシミュレートすることを意図している。
【0109】
比較実験A.115℃のオイルバスに浸したFischer-Porterチューブに、窒素雰囲気下でテトラグリム(10mL)を充填する。配位子A(1.7重量%;ロジウム1モル当たり10モル)及びロジウムを、トルエン中のストック溶液として添加し、一酸化炭素及び水素を各々15標準L/時間の速度で約1時間溶液にスパージし、この時間の間、チューブ圧を164psi[1.13MPa]に維持する。ガス流を窒素に変更し、164psi[1.13MPa]を維持しながら、10標準L/時間で溶液をスパージする。30分後、チューブを密閉し、全圧を115psi[0.793MPa]に下げる。温度を115℃に維持し、ロジウム分析のために溶液を定期的にサンプリングする。この比較例は、合成ガスがなくなり、温度が高いという点で気化器キャッチポットをモデル化することを意図している。
【0110】
実施例1~3.変動させた量のオレフィンBを添加し、その直後に圧力を低減しチューブを密閉することを除いて、比較実験Aの手順に従う。これらの実施例は、本発明の実施形態によって企図されるように、気化器キャッチポットへのオレフィンストリームの添加をモデル化する。
【0111】
溶液中のロジウムの量を、初期、2日後、及び5日後に測定する。最終的なロジウムの責務は、以下のように計算する。
【0112】
【表2】
表1の結果は、4.5重量%以上のC8内部オレフィンの存在によって、ロジウムの責務が向上することを示している。
【0113】
比較実験B.比較実験Aの手順に従う。
【0114】
実施例4~7.オレフィンAの代わりにオレフィンBを添加することを除いて、実施例1~3の手順に従う。
【0115】
溶液中のロジウムの量を、初期、2日後、及び5日後に測定する。比較実験B及び実施例4~7の結果を、表2に要約する。
【0116】
【表3】
【0117】
表2の結果は、2重量%を超える全C8内部オレフィンの存在がロジウムの責務を改善すること、及びリサイクルオレフィン(例えば、ヒドロホルミル化プロセスにおいて生成物ストリームから分離され得るオレフィン)が有効であることを示している。溶液の外観は、ロジウム安定性の追加の定性的指標である。例えば、沈殿物又はフィルムの形成の色の暗色化は、ロジウムクラスター化が起こっていることを示す。
【0118】
比較実験C
110℃のオイルバスに浸したFischer-Porterチューブに、窒素雰囲気下でテトラグリム(20mL)を充填する。配位子A(1.7重量%)及びロジウムをトルエン中のストック溶液として添加し、一酸化炭素及び水素を各々10sL/時間の速度で約1時間溶液にスパージし、この時間の間、チューブ圧を164psia[1.13MPa]に維持する。ガス流を停止し、チューブを密閉し、全圧を24psia[0.17MPa]に下げる。温度を110℃に維持し、ロジウム分析のために溶液を定期的にサンプリングする。この比較例は、合成ガス分圧が低く(ストリップガス気化器と同等)、温度が高いという点で、気化器キャッチポットをモデル化している。
【0119】
実施例8.
チューブを密閉する前にオレフィンA(3mL)を添加することを除いて、比較実験Cの手順に従う。
【0120】
実施例9.
チューブを密閉する前にオレフィンB(3mL)を添加することを除いて、比較実験Cの手順に従う。
【0121】
比較実験C、実施例8、及び実施例9の結果を、表3に要約する。
【0122】
【表4】
表3に示すように、ロジウムの責務は、8~9重量%の分岐C8オレフィンの存在によって改善される。
【0123】
比較実験D.115℃のオイルバスに浸したFischer-Porterチューブに、窒素雰囲気下でテトラグリム(10mL)を充填する。配位子A(1.7重量%)及びロジウムをトルエン中のストック溶液として添加し、一酸化炭素及び水素を各々15sL/時間の速度で約1時間溶液にスパージし、この時間の間、チューブ圧を164psia[1.13MPa]に維持する。ガス流を窒素に変更し、164psiaを維持しながら、10sL/時間で溶液をスパージする。30分後、チューブを密閉し、全圧を115psia[0.79MPa]に下げる。温度を115℃に維持し、ロジウム分析のために溶液を定期的にサンプリングする。
【0124】
実施例10~14.変動させた量のオレフィンAを添加し、その直後に圧力を低減しチューブを密閉することを除いて、比較実験Dの手順に従う。
【0125】
比較実験D及び実施例10~14の結果を表4に示す。
【0126】
【表5】
表4の結果は、3.5重量%以上の分岐C8オレフィンの存在下で、ロジウムの責務が向上することを示している。
【0127】
実施例1~14は、気化器内の流体中の2重量%超のC8オレフィン濃度が、ロジウムの責務を改善させるであろうことを実証している。これらの実施例はまた、内部オレフィン及び末端オレフィンの両方が有効であることを示している。
【0128】
したがって、気化器テールストリーム中のC7-C20内部オレフィンの濃度を監視し、その濃度2重量%超を達成するか又は維持するように1つ以上の措置を行うことにより、本発明のいくつかの実施形態の結果を達成し、特に、ロジウム、有機モノホスファイト配位子、及びC7-C20オレフィンを含むヒドロホルミル化プロセスにおけるロジウムの責務が改善されると考えられる。
【0129】
実施例15~16
比較例Eについては、約10mLのC9アルデヒド生成物(オレフィンAに由来する)を、固体配位子A沈殿物の存在によって証明される溶解限度超の量の配位子Aと混合する。実施例15~16については、約10mLのオレフィンA、及び10mLのC9アルデヒド生成物:オレフィンAの体積比1:1の混合物を、それぞれ、固体配位子A沈殿物の存在によって証明される溶解限度超の量の配位子Aと各々混合する。各混合物を室温で約30分間十分に撹拌し、次いで掻き混ぜを停止し、固体配位子Aを底部に沈降させる。上澄み液をサンプリングし、HPLCによって分析して、溶液中の配位子Aの濃度を決定する。結果を表5に示す。
【0130】
【表6】
表5のデータは、配位子Aの溶解度が、生成物アルデヒドと比較して、(オレフィンAからの)C8オレフィンの存在によって向上することを示している。配位子は、多くの場合、気化器テール中に溶解した最高濃度で固体であり、したがって、配位子が溶液中に残ることを保証することは、ラインの詰まり又はポンプの損傷を回避するために望ましい。実施例15~16で実証されるように、オレフィンの添加は、配位子の溶解度を向上させ、したがって溶解度の問題を軽減するのに役立つ。
【国際調査報告】