(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-20
(54)【発明の名称】パルス電流励起の過渡吸収分光計
(51)【国際特許分類】
G01N 21/66 20060101AFI20231213BHJP
G01N 21/63 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
G01N21/66
G01N21/63 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535048
(86)(22)【出願日】2021-01-12
(85)【翻訳文提出日】2023-06-08
(86)【国際出願番号】 CN2021071264
(87)【国際公開番号】W WO2022121082
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】202011470295.0
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505383316
【氏名又は名称】中国科学技▲術▼大学
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF SCIENCE AND TECHNOLOGY OF CHINA
【住所又は居所原語表記】96, Jinzhai Road, Baohe District, Hefei, Anhui 230026, P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【氏名又は名称】岡部 英隆
(72)【発明者】
【氏名】李 波
(72)【発明者】
【氏名】唐 貝貝
(72)【発明者】
【氏名】樊 逢佳
(72)【発明者】
【氏名】杜 江峰
【テーマコード(参考)】
2G043
【Fターム(参考)】
2G043AA03
2G043CA05
2G043EA06
2G043EA13
2G043HA09
2G043JA03
2G043KA08
2G043KA09
2G043LA03
2G043NA01
(57)【要約】
本開示は、パルス電流励起の過渡吸収分光計を提供し、中央制御ユニットと、中間制御ユニットから発された第一トリガ信号の作用で電流パルス信号を生成し、電流パルス信号が測定すべきサンプルに印加された後にサンプルが単一キャリア注入の非発光励起状態にあるか又はエレクトロルミネセンス信号の発光励起状態を生成するように構成されパルス発生器と、中間制御ユニットから送信された第二トリガ信号の作用でパルス光信号を出射するように構成されるレーザと、レーザの光出射方向に設けられ、パルス光信号を検出光信号及び参照光信号に分岐するように構成され、ここで検出光信号が測定すべきサンプルに照射された後に検出サンプル光信号を生成するビームスプリッタと、中央制御ユニットから送信された第三トリガ信号及び第四トリガ信号の作用でエレクトロルミネセンス信号、検出サンプル光信号、及び参照光信号を収集し、かつ単一時刻にサンプルの異なる波長光信号の吸収強度を反映する電気信号データに処理するデータ収集ユニットと、電気信号データを処理して測定すべきサンプルの過渡吸収信号を取得して結像するために構成されるデータ処理及び撮像ユニットと、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリガ信号を発するように構成される中央制御ユニットと、
中間制御ユニットから発された第一トリガ信号の作用で電流パルス信号を生成し、前記電流パルス信号が測定すべきサンプルに印加された後にサンプルが単一キャリア注入の非発光励起状態にあるか又はエレクトロルミネセンス信号の発光励起状態を生成するように構成されるパルス発生器と、
中間制御ユニットから発された第二トリガ信号の作用でパルス光信号を出射するように構成されるレーザと、
前記レーザの光出射方向に設けられ、前記パルス光信号を検出光信号及び参照光信号に分岐するように構成され、ここで前記検出光信号が測定すべきサンプルに照射された後に検出サンプル光信号を生成するビームスプリッタと、
中央制御ユニットから発された第三トリガ信号及び第四トリガ信号の作用で前記エレクトロルミネセンス信号、検出サンプル光信号、及び参照光信号を収集し、かつ単一時刻にサンプルの異なる波長光信号の吸収強度を反映する電気信号データに処理するデータ収集ユニットと、
前記電気信号データを処理して測定すべきサンプルの過渡吸収信号を取得して結像するために構成されるデータ処理及び撮像ユニットと、を含む
パルス電流励起の過渡吸収分光計。
【請求項2】
前記測定すべきサンプルは、エレクトロ励起サンプルであり、サンプル台に置き、かつパルス発生器の出力ポートに接続され、それは、電流パルス信号に接続された後にエレクトロ励起状態にあり、エレクトロルミネセンス信号を発するか、又は、単一キャリア注入の非発光励起状態にある
請求項1に記載の過渡吸収分光計。
【請求項3】
前記レーザは、単色光レーザ又は白色光レーザである
請求項1に記載の過渡吸収分光計。
【請求項4】
前記第二トリガ信号の周波数は、前記第一トリガ信号の周波数の3/2倍であり、前記第三トリガ信号及び第四トリガ信号は、前記第一トリガ信号の周波数の3倍である
請求項1に記載の過渡吸収分光計。
【請求項5】
前記中間制御ユニットにより第一トリガ信号の周波数の1/2周波数の電流パルス信号を発して測定すべきサンプルを励起し、電流計により、検出光信号が照射されていないエレクトロ励起状態の測定すべきサンプルの第一電流値を測定し、前記電流計により、検出光信号が照射されたエレクトロ励起状態の測定すべきサンプルの第二電流値を測定し、さらに第一電流値と第二電流値の比率に基づいて電流パルスの形状及びシーケンスを調整することにより、その偶数電流パルス信号の大きさと奇数パルスの大きさの比が上記第一電流値と第二電流値の比率である
請求項2に記載の過渡吸収分光計。
【請求項6】
前記データ収集ユニットは、
前記エレクトロルミネセンス信号及び/又は検出サンプル光信号を受信し、かつ受信した光信号を異なる波長の光信号に分光するように構成される第一モノクロメータと、前記参照光信号を受信しかつ参照光信号を異なる波長の光信号に分光するように構成される第二モノクロメータと、を含むモノクロメータ群と、
それぞれ前記第一モノクロメータと第二モノクロメータで処理された異なる波長光信号をサンプルの異なる波長光信号の吸収強度を反映する電気信号データに処理するように構成される第一CCD及び第二CCDを含むCCD群と、
前記電気信号をカウントして記憶するために構成されるカウンタと、を含む
請求項1に記載の過渡吸収分光計。
【請求項7】
前記中間制御ユニットに遅延装置が設置され、前記遅延装置は、光学遅延台又は電子学カードにより実現され、前記遅延装置は、第一トリガ信号と第二トリガ信号との間の時間差を調整し、測定すべきサンプルの吸収信号の時間変化に伴う情報をテストし、第三トリガ信号と第四出発信号を調整しかつ時分割で送信するように構成される
請求項1に記載の過渡吸収分光計。
【請求項8】
前記参照光信号は、測定すべきサンプルに接触せず、検出光信号変動の測定への影響を除去するように構成される
請求項1に記載の過渡吸収分光計。
【請求項9】
前記データ処理及び撮像ユニットは以下の公式により測定すべきサンプルの過渡吸収信号ΔODを取得し、
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
ここで、
【数5】
および
【数6】
は、それぞれ電流パルス信号励起なし及び電流パルス信号励起あり時の参照光の光強度であり、
【数7】
および
【数8】
は、それぞれ電流パルス信号なし及び電流パルス信号あり時に検出光の光強度データであり、即ち
【数9】
はカウンタ6n+4回の収集データであり、
【数10】
および
【数11】
は、それぞれ電流パルス信号なし及び電流パルス信号あり時にパルス光信号の光強度であり、
【数12】
は、電流パルス励起がありかつ検出光照射時のデータ収集ユニットで収集された信号データであり、すなわちカウンタ6n+1回の収集データであり、
【数13】
は、光電伝導効果を計算した後のデータ収集ユニットで収集された電流パルス信号エレクトロルミネセンス信号データであるカウンタ6n+3回の収集データであり、ここでnは0から始まる整数であり、ODは吸光度であり、
【数14】
は、検出光信号がサンプルを透過する前の光強度であり、Iは、検出光信号がサンプルを透過した後の光強度である
請求項1に記載の過渡吸収分光計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学測定の技術分野に関し、特にパルス電流励起の過渡吸収分光計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の過渡吸収技術は、時間分解能ポンプ-検出技術であり、応用が広い。該技術は、パルスレーザを利用して被測定サンプルを励起し、その物理的又は化学的性質を変化させ、さらにサンプルの吸収係数を変化させ、他の検出光は、この変化を検出するために構成され、該検出光は、単色光であってもよいし白色光であってもよい。ポンプ光と検出光との間の遅延を変更することにより、サンプルが光により励起された後に異なる時刻の過渡吸収スペクトルを取得し、過渡信号の生成及び減衰を解析することによって、対応する動力学情報を取得することができる。過渡吸収スペクトル技術の利点は、サンプルが発光しなくても、その励起状態動力学を研究することができることにある。
【0003】
しかしながら、関連技術に乏しいため、電気励起後のキャリアの動力学情報を全面的に正確に測定することができない。
【発明の概要】
【0004】
本開示はパルス電流励起の過渡吸収分光計を提供し、トリガ信号を発するように構成される中央制御ユニットと、中間制御ユニットから発された第一トリガ信号の作用で電流パルス信号を生成し、前記電流パルス信号が測定すべきサンプルに印加された後にエレクトロルミネセンス信号を生成するか又は単一キャリア注入の非発光励起状態にあるように構成されるパルス発生器と、中間制御ユニットから発された第二トリガ信号の作用でパルス光信号を出射するように構成されるレーザと、前記レーザの光出射方向に設けられ、前記パルス光信号を検出光信号及び参照光信号に分岐するように構成され、ここで前記検出光信号が測定すべきサンプルに照射された後に検出サンプル光信号を生成するビームスプリッタと、中央制御ユニットから発された第三トリガ信号及び第四トリガ信号の作用で前記エレクトロルミネセンス信号、検出サンプル光信号、及び参照光信号を収集し、かつ単一時刻にサンプルの異なる波長光信号の吸収強度を反映する電気信号データに処理するデータ収集ユニットと、前記電気信号データを処理して測定すべきサンプルの過渡吸収信号を取得して結像するために構成されるデータ処理及び撮像ユニットと、を含む。
【0005】
選択的には、前記測定すべきサンプルは、エレクトロ励起サンプルであり、それはサンプル台に置き、かつパルス発生器の出力ポートに接続され、それは、電流パルス信号に接続された後にエレクトロ励起状態にあり、エレクトロルミネセンス信号を発するか、又は、単一キャリア注入の非発光励起状態にある。
【0006】
選択的には、前記レーザは、単色光レーザ又は白色光レーザである。
【0007】
選択的には、前記第二トリガ信号の周波数は、前記第一トリガ信号の周波数の3/2倍であり、前記第三トリガ信号及び第四トリガ信号は、前記第一トリガ信号の周波数の3倍である。
【0008】
選択的には、前記中間制御ユニットにより第一トリガ信号の周波数の1/2周波数の電流パルス信号を発して測定すべきサンプルを励起し、電流計により、検出光信号が照射されていないエレクトロ励起状態の測定すべきサンプルの第一電流値を測定し、前記電流計により、検出光信号が照射されたエレクトロ励起状態の測定すべきサンプルの第二電流値を測定し、さらに第一電流値と第二電流値の比率に基づいて電流パルスの形状及びシーケンスを調整することにより、その偶数電流パルス信号の大きさと奇数パルスの大きさの比が上記第一電流値と第二電流値の比率である。
【0009】
選択的には、前記データ収集ユニットは、前記エレクトロルミネセンス信号及び/又は検出サンプル光信号を受信し、かつ受信した光信号を異なる波長の光信号に分光するように構成される第一モノクロメータと、前記参照光信号を受信しかつ参照光信号を異なる波長の光信号に分光するように構成される第二モノクロメータと、を含むモノクロメータ群と、それぞれ前記第一モノクロメータと第二モノクロメータで処理された異なる波長光信号をサンプルの異なる波長光信号の吸収強度を反映する電気信号データに処理するように構成される第一CCD及び第二CCDを含むCCD群と、前記電気信号をカウントして記憶するために構成されるカウンタと、を含む。
【0010】
選択的には、前記中間制御ユニットに遅延装置が設置され、前記遅延装置は、光学遅延台又は電子学カードにより実現され、前記遅延装置は、第一トリガ信号と第二トリガ信号との間の時間差を調整し、測定すべきサンプルの吸収信号の時間変化に伴う情報をテストし、第三トリガ信号と第四出発信号を調整しかつ時分割で送信するように構成される。
【0011】
選択的には、前記参照光信号は、測定すべきサンプルに接触せず、検出光信号変動の測定への影響を除去するように構成される。
【0012】
選択的には、前記データ処理及び撮像ユニットは以下の公式により測定すべきサンプルの過渡吸収信号ΔODを取得する。
【0013】
【0014】
ここで、
【数5】
および
【数6】
は、それぞれ電流パルス信号励起なし及び電流パルス信号励起あり時の参照光の光強度で
あり、
【数7】
および
【数8】
は、それぞれ電流パルス信号なし及び電流パルス信号あり時に検出光の光強度データであり、即ち
【数9】
はカウンタ6n+4回の収集データであり、
【数10】
および
【数11】
は、それぞれ電流パルス信号なし及び電流パルス信号あり時にパルス光信号の光強度であり、
【数12】
は、電流パルス励起がありかつ検出光照射時のデータ収集ユニットで収集された信号データであり、すなわちカウンタ6n+1回の収集データであり、
【数13】
は、光電伝導効果を計算した後のデータ収集ユニットで収集された電流パルス信号エレクトロルミネセンス信号データであるカウンタ6n+3回の収集データであり、ここでnは0から始めの整数であり、ODは吸光度であり、
【数14】
は、検出光信号がサンプルを透過する前の光強度であり、Iは、検出光信号がサンプルを透過した後の光強度である。
【0015】
本開示が提供するパルス電流励起の過渡吸収分光計は、従来の技術において電気的に励起された後にキャリアの動力学情報を効果的に測定することができないなどの技術的問題を緩和することができ、そのテスト内容がより全面的であり、測定すべきサンプルの過渡成分の生成及び減衰動力学情報、及び励起状態動力学情報をテストすることができ、電流パルス信号により励起されたサンプル発光信号及び検出光の光電伝導効果によるエレクトロルミネセンス増強信号を排除し、測定された過渡吸収信号をより正確にし、測定すべきサンプルのキャリア動力学情報をより正確かつ直感的にテストし、直接電気パルスで励起されたポンプ-検出技術を採用し、応用がより広く、例えばLED、太陽電池などの分野のテスト及び分析に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図面は、本開示に対するさらなる理解を提供するために用いられ、かつ明細書の一部を構成し、以下の具体的な実施形態と共に本開示を説明するために用いられるが、本開示を限定するものではない。
【0017】
【
図1】
図1は、本開示の実施例のパルス電流励起の過渡吸収分光計の構成概略図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施例のパルス電流励起の過渡吸収分光計のパルスシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示は、パルス電流励起の過渡吸収分光計を提供し、一般的なポンプ-検出過渡吸収分光計による光によってサンプルを励起することと異なり、前記分光計は、電流パルス信号をポンプ源として使用し、光学又は電子遅延の検出光を結合し、電気励起後の測定すべきサンプルにおけるキャリア動力学情報を収集し、パルス電流ポンプ-光検出過渡吸収分光計を確立し、LED、エレクトロレーザ、光検出器及び太陽電池等のデバイスの移動率及び欠陥濃度等のパラメータを研究することに適用される。それは、電流パルス信号励起キャリア緩和情報をテストすることができ、励起子緩和情報を測定することができ、注入単電子又は単一正孔キャリア緩和情報をテストすることもできる。測定すべきサンプルの過渡成分の生成及び減衰に応じた吸収スペクトル及びキャリア動力学情報を測定することに用いることができる。分析装置により電流励起サンプルの励起状態エネルギー伝達、電荷移動、電気音響サブ結合などの関連情報を検出することができる。
【0019】
本開示を実現する過程において、発明者は、過渡吸収スペクトル技術に基づく一般的な過渡吸収分光計の動作原理が以下のとおりであることを発見した。パルスレーザをポンプ光としてサンプルに入射し、それをベース状態から励起状態に励起し、他のパルス単色光又は白色光レーザは光学遅延台又は電子学カードにより遅延された後に検出光としてサンプルの同じ位置に入射する。検出光のポンプ光に対する遅延時間を制御することにより、サンプルの吸収スペクトルの遅延時間に伴う変化を検出し、サンプルの励起状態緩和情報を取得することができる。しかしながら、上記従来の分光計は、その光励起メカニズムに限定され、キャリアは光吸収層のみで生成することができ、かつ電子正孔対の緩和情報のみを測定することができ、電極から注入又は転送されたキャリア緩和情報をテストすることができず、単電子又は正孔注入時のキャリア緩和情報をテストすることもできない。しかし、LED、エレクトロレーザ、光検出器及び太陽電池等のデバイスの研究において、以上のキャリア緩和情報は、異なる方面からデバイスの性能表現を反映することができ、同等に重要であり、不可欠である。これにより、本開示は、電流パルス信号で励起された過渡吸収分光計を提供し、前記電流パルス信号により励起された過渡吸収分光計の特徴は、さらに光電伝導効果を考慮した後のエレクトロルミネセンス信号、電流パルス信号ポンプあり及び電流パルス信号ポンプなしの検出光信号を収集し、データ処理後に電流パルス励起時のエレクトロルミネセンス信号及び検出光がデバイスの光電伝導効果に起因する電流増加によるエレクトロルミネセンス増分を排除することができる。
【0020】
本開示の特徴は、電流パルス信号を用いて励起し、単色光又は白色光によってサンプルの過渡吸収信号を検出することである。
【0021】
本開示の目的、技術的解決手段及び利点をより明らかにするために、以下に具体的な実施例を結合し、かつ図面を参照して、本開示をさらに詳細に説明する。
【0022】
本開示の実施例において、パルス電流励起の過渡吸収分光計を提供し、
図1に示すように、前記過渡吸収分光計は、トリガ信号を発するように構成される中央制御ユニットを含む。
【0023】
本開示の実施例において、前記過渡吸収分光計はさらに電流計を含み、前記電流計は、測定すべきサンプルの実電流を測定するために用いられる。
【0024】
本開示の実施例において、まず、中央制御ユニットにより第一トリガ信号の周波数の1/2周波数の電流パルス信号を発して測定すべきサンプルを励起し、前記電流計により検出光が照射されなかったエレクトロ励起状態の測定すべきサンプルの第一電流値を測定し、前記電流計により検出光信号が照射されたエレクトロ励起状態の測定すべきサンプルの第二電流値を測定し、さらに第一電流値と第二電流値の比率(比較結果)に基づいて電流パルスの形状及びシーケンスを調整し、その偶数電流パルス信号の大きさと奇数パルスの大きさの比を上記第一電流値と第二電流値の比率にし、パルス発生器により測定すべきサンプルの過渡吸収を測定する時のポンプ(電流パルス信号)を生成し、電流パルスの形状は
図2に示すとおりである。
【0025】
パルス発生器であって、中央制御ユニットから発された第一トリガ信号の作用で電流パルス信号を生成し、前記電流パルス信号が測定すべきサンプルに印加された後にエレクトロ光信号を生成するか又は単一キャリア注入の非発光励起状態にあるように構成される。
【0026】
レーザであって、中間制御ユニットから発された第二トリガ信号の作用でパルス光信号を出射するように構成される。
【0027】
ビームスプリッタであって、前記レーザの光出射方向に設けられ、前記パルス光信号を検出光信号及び参照光信号に分岐するように構成され、ここで前記検出光信号が測定すべきサンプルに照射された後に検出サンプル光信号を生成する。
【0028】
データ収集ユニットであって、中央制御ユニットから発された第三トリガ信号及び第四トリガ信号の作用で前記エレクトロルミネセンス信号、検出サンプル光信号、及び参照光信号を収集し、かつ単一時刻にサンプルの異なる波長光信号の吸収強度を反映する電気信号データに処理するために用いられる。
【0029】
データ処理及び撮像ユニットであって、前記電気信号データを処理して測定すべきサンプルの過渡吸収信号を取得しかつ結像するために構成される。
【0030】
前記パルス発生器は、前記第一トリガ信号の作用下で異なる大きさ、パルス時間及び周波数の方形又は他の形状の電流パルス信号を生成して測定すべきサンプルを励起することができる。
【0031】
前記測定すべきサンプルは、エレクトロ励起サンプルであり、それはサンプル台に置き、かつパルス発生器の出力ポートに接続され、それは電流パルス信号に接続された後にエレクトロ励起状態にあり、エレクトロルミネセンス信号を発するか、又は単一キャリア注入の非発光励起状態にある。
【0032】
前記レーザは、単色光レーザ又は白色光レーザである。
【0033】
前記参照光信号は、検出光信号の変動による測定への影響を除去するために構成される。
【0034】
前記第二トリガ信号の周波数は、前記第一トリガ信号の周波数の3/2倍である。
【0035】
前記第三トリガ信号及び第四トリガ信号は、前記第一トリガ信号の周波数の3倍である。
【0036】
前記データ収集ユニットは、
モノクロメータ群であって、第一モノクロメータ及び第二モノクロメータを含み、前記第一モノクロメータは、前記エレクトロルミネセンス信号及び/又は検知サンプル光信号を受信し、かつ受信した光信号を異なる波長の光信号に分光するために用いられ、前記第二モノクロメータは、前記参照光信号を受信しかつ参照光信号を異なる波長の光信号に分光するために構成されるものと、
CCD(Charge-coupled Device、電荷結合素子)であって、第一CCD及び第二CCDを含み、それぞれ前記第一モノクロメータと第二モノクロメータで処理された異なる波長光信号をサンプルの異なる波長光信号の吸収強度を反映する電気信号データに処理するために用いられるものと、
カウンタであって、前記電気信号をカウントして記憶するために構成されるものと、を含む。
【0037】
本開示の実施例において、前記データ収集ユニットはさらにフォーカス対物レンズ、光ファイバを含む。
【0038】
前記中央制御ユニットに遅延装置が設置され、遅延装置は、光学遅延台又は電子学カードにより実現することができ、前記遅延装置は、第一トリガ信号(又は電流パルス信号)と第二トリガ信号(又はパルス光信号)との間の時間差を調整するように構成され、それにより測定すべきサンプルの吸収信号の時間に伴って変化する情報をテストし、第三トリガ信号と第四出発信号を調整しかつ時分割で送信し、各部品の動作を調整する。
【0039】
検出光がサンプルに到達することは時間を必要とし、次に電流パルス信号がサンプルに到達するからサンプルが励起されるまでも時間差があり、この時間差を調整することにより、測定開始時刻の実際光信号がサンプルを検出する時間は、実際パルス電気信号がサンプルを励起する直前である。
【0040】
本開示の実施例において、単色又は白色光検出レーザは、周波数が電流パルス周波数3/2倍のトリガ信号によりトリガされ、発されたパルス光信号は二つのビームに分岐され、一つは検出光として測定すべきサンプルに照射され、もう一つは参照光とすることができ、参照光信号が測定すべきサンプルと接触しないため、単色又は白色光の時間的なジッタの問題を排除するように配置することができる。
【0041】
本開示の実施例において、データ処理及び撮像ユニットにより電気信号データを処理し、これに対し、参照光信号が検出光信号のジッタの影響を排除して有効データを形成し、測定すべきサンプルの三次元吸収強度の波長、時間に伴う変化図を取得する。
【0042】
前記データ収集ユニットで収集された光電伝導効果を考慮した後にエレクトロルミネセンス信号により、検出サンプルの光信号は第一モノクロメータにより分光されかつ同時に第一CCDに照射され、参照光信号は第二モノクロメータにより分光されかつ第二CCDに照射され、前記第一CCD及び第二CCDは、中央制御ユニットからの第三トリガ信号を受信して画像を収集し始め、かつ電気信号に変換してカウンタに伝送し、カウンタは、中央制御ユニットからの第四トリガ信号を受信してカウントを開始して記憶する。
【0043】
本開示の実施例において、中間制御ユニットから発された第二トリガ信号がレーザをトリガして検出光及び参照光を発する周波数は、第一トリガ信号がパルス発生器をトリガして発した電流パルス周波数の3/2倍であるため、カウンタがデータを収集し始める時の6n+1収集回を、電流パルス信号励起あり、検出光信号照射ある時のデータとし、6n+4収集回を、電流パルス信号照射なし、検出光信号照射がある時のデータとし、6n+3収集回を、光電伝導効果を考慮した後のエレクトロルミネセンス信号とし、ここでnは0からの整数を取り、かつ以下のデータ処理及び撮像ユニットにより以下の式に従って電流パルス信号が励起した測定すべきサンプルの過渡吸収信号を取得する。
【0044】
【0045】
ここで、
【数19】
および
【数20】
は、それぞれ電流パルス信号励起なし及び電流パルス信号励起あり時の参照光の光強度であり、
【数21】
および
【数22】
は、それぞれ電流パルス信号なし及び電流パルス信号がある時にパルス光信号(単色又は白色光)の光強度であり、
【数23】
は、電流パルス励起がありかつ参照光照射時の収集信号強度であり、すなわちカウンタ6n+1回の収集データであり、
【数24】
は、光電伝導効果を計算した後の収集端に収集された電流パルス信号エレクトロルミネセンス信号であるカウンタ6n+3回の収集データであり、
【数25】
および
【数26】
は、それぞれ電流パルス信号なし及び電流パルス信号がある時の検出光の光強度であり、
【数27】
は、カウンタ6n+4回の収集データであり、ここでODは吸光度であり、
【数28】
は、検出光信号がサンプルを透過する前の光強度であり、Iは、検出光信号がサンプルを透過した後の光強度である。
【0046】
以上は、一つの時点で取得された異なる波長の吸収データであり、さらに中央制御ユニットにおける遅延装置により検出光とポンプ電流パルス信号との間の時間差を実現し、かつ以上の過渡吸収信号を測定するステップを行うことにより、時間に伴って変化しかつ異なる波長の吸収強度のデータを取得し、かつデータ処理及び撮像ユニットにより測定すべきサンプルの経時変化及び異なる波長の吸収強度の三次元画像を描く。
【0047】
ここまで、図面を参照して本開示の実施例を詳細に説明した。説明すべきものとして、図面又は明細書本文において、示されないか又は説明されない実現方式は、いずれも当業者に知られた形式であり、詳細に説明しない。また、上記各部品及び方法に対する定義は、実施例に言及された様々な具体的な構造、形状又は方式に限定されるものではなく、当業者はそれを簡単に変更するか又は置換することができる。
【0048】
以上の説明によれば、当業者は本開示の過渡吸収分光計を明確に認識するべきである。
【0049】
前記のように、本開示は、パルス電流励起の過渡吸収分光計を提供し、パルス発生器により電流パルス信号を提供して測定すべきサンプルを励起してエレクトロルミネセンス信号を発し、又は単一キャリア注入の非発光励起状態にあるポンプ源とする。周波数は、電流パルス信号周波数3/2倍の単色光又は白色光レーザを使用して検出光信号及び参照光信号とする。遅延装置により電流パルス信号と検出光信号との間の遅延を調整する。周波数が電流パルス周波数3倍であるトリガ信号を使用してデータ収集ユニットにおけるCCD及びカウンタをトリガし、データ収集ユニットにより電流パルスがあるときにエレクトロルミネセンス信号を含む検出光信号、光電伝導を計算した後のエレクトロルミネセンス信号及びポンプパルス電流がない時の検出光信号を収集する。最後に、データ処理及び結像ユニットにより収集信号を処理しかつ時間及び波長に伴って変化する三次元画像を形成して吸収する。該電流パルス励起の過渡分光計は、サンプルがパルス電流励起下で発光することによるエレクトロルミネセンス信号及び光電伝導効果による追加電流が増加した発光信号を排除し、電気的注入された単電子、単一正孔又は電子正孔対の動力学を測定することができる。
【0050】
当業者であれば分かるように、説明の便宜上および簡潔にするために、上記各機能部品の分割のみを例に挙げて説明し、実際の応用において、必要に応じて上記機能を異なる機能モジュールにより完了することができ、すなわち、チップの内部構造を異なる機能モジュールに分割することにより、以上に説明した全て又は一部の機能を完了する。上記説明したチップの具体的な動作過程は、前述の方法実施例における対応するプロセスを参照することができ、ここで説明を省略する。
【0051】
最後に説明すべきこととして、以上の各実施例は、本開示の技術的解決手段を説明するだけであり、それを限定するものではない。前述の各実施例を参照して本開示を詳細に説明したが、当業者であれば理解すべきこととして、それは依然として前述の各実施例に記載の技術的解決手段を修正するか、又はそのうちの一部又は全ての技術的特徴に対して同等置換を行うことができる。衝突しない場合、本開示の実施例における特徴は任意に組み合わせることができ、これらの修正又は置換は、対応する技術的解決手段の本質を本開示の各実施例の技術的解決手段の範囲から逸脱させない。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリガ信号を発するように構成される中央制御ユニットと、
中間制御ユニットから発された第一トリガ信号の作用で電流パルス信号を生成し、前記電流パルス信号が測定すべきサンプルに印加された後にサンプルが単一キャリア注入の非発光励起状態にあるか又はエレクトロルミネセンス信号の発光励起状態を生成するように構成されるパルス発生器と、
中間制御ユニットから発された第二トリガ信号の作用でパルス光信号を出射するように構成されるレーザと、
前記レーザの光出射方向に設けられ、前記パルス光信号を検出光信号及び参照光信号に分岐するように構成され、ここで前記検出光信号が測定すべきサンプルに照射された後に検出サンプル光信号を生成するビームスプリッタと、
中央制御ユニットから発された第三トリガ信号及び第四トリガ信号の作用で前記エレクトロルミネセンス信号、検出サンプル光信号、及び参照光信号を収集し、かつ単一時刻にサンプルの異なる波長光信号の吸収強度を反映する電気信号データに処理するデータ収集ユニットと、
前記電気信号データを処理して測定すべきサンプルの過渡吸収信号を取得して結像するために構成されるデータ処理及び撮像ユニットと、を含む
パルス電流励起の過渡吸収分光計。
【請求項2】
前記測定すべきサンプルは、エレクトロ励起サンプルであり、サンプル台に置き、かつパルス発生器の出力ポートに接続され、それは、電流パルス信号に接続された後にエレクトロ励起状態にあり、エレクトロルミネセンス信号を発するか、又は、単一キャリア注入の非発光励起状態にある
請求項1に記載の過渡吸収分光計。
【請求項3】
前記レーザは、単色光レーザ又は白色光レーザである
請求項1に記載の過渡吸収分光計。
【請求項4】
前記第二トリガ信号の周波数は、前記第一トリガ信号の周波数の3/2倍であり、前記第三トリガ信号及び第四トリガ信号は、前記第一トリガ信号の周波数の3倍である
請求項1に記載の過渡吸収分光計。
【請求項5】
前記中間制御ユニットにより第一トリガ信号の周波数の1/2周波数の電流パルス信号を発して測定すべきサンプルを励起し、電流計により、検出光信号が照射されていないエレクトロ励起状態の測定すべきサンプルの第一電流値を測定し、前記電流計により、検出光信号が照射されたエレクトロ励起状態の測定すべきサンプルの第二電流値を測定し、さらに第一電流値と第二電流値の比率に基づいて電流パルスの形状及びシーケンスを調整することにより、その偶数電流パルス信号の大きさと奇数パルスの大きさの比が上記第一電流値と第二電流値の比率である
請求項2に記載の過渡吸収分光計。
【請求項6】
前記データ収集ユニットは、
前記エレクトロルミネセンス信号及び/又は検出サンプル光信号を受信し、かつ受信した光信号を異なる波長の光信号に分光するように構成される第一モノクロメータと、前記参照光信号を受信しかつ参照光信号を異なる波長の光信号に分光するように構成される第二モノクロメータと、を含むモノクロメータ群と、
それぞれ前記第一モノクロメータと第二モノクロメータで処理された異なる波長光信号をサンプルの異なる波長光信号の吸収強度を反映する電気信号データに処理するように構成される第一CCD及び第二CCDを含むCCD群と、
前記電気信号をカウントして記憶するために構成されるカウンタと、を含む
請求項1に記載の過渡吸収分光計。
【請求項7】
前記中間制御ユニットに遅延装置が設置され、前記遅延装置は、光学遅延台又は電子学カードにより実現され、前記遅延装置は、第一トリガ信号と第二トリガ信号との間の時間差を調整し、測定すべきサンプルの吸収信号の時間変化に伴う情報をテストし、第三トリガ信号と第四
トリガ信号を調整しかつ時分割で送信するように構成される
請求項1に記載の過渡吸収分光計。
【請求項8】
前記参照光信号は、測定すべきサンプルに接触せず、検出光信号変動の測定への影響を除去するように構成される
請求項1に記載の過渡吸収分光計。
【請求項9】
前記データ処理及び撮像ユニットは以下の公式により測定すべきサンプルの過渡吸収信号ΔODを取得し、
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
ここで、
【数5】
および
【数6】
は、それぞれ電流パルス信号励起なし及び電流パルス信号励起あり時の参照光の光強度であり、
【数7】
および
【数8】
は、それぞれ電流パルス信号なし及び電流パルス信号あり時に検出光の光強度データであり、即ち
【数9】
はカウンタ6n+4回の収集データであり、
【数10】
および
【数11】
は、それぞれ電流パルス信号なし及び電流パルス信号あり時にパルス光信号の光強度であり、
【数12】
は、電流パルス励起がありかつ検出光照射時のデータ収集ユニットで収集された信号データであり、すなわちカウンタ6n+1回の収集データであり、
【数13】
は、光電伝導効果を計算した後のデータ収集ユニットで収集された電流パルス信号エレクトロルミネセンス信号データであるカウンタ6n+3回の収集データであり、ここでnは0から始まる整数であり、ODは吸光度であり、
【数14】
は、検出光信号がサンプルを透過する前の光強度であり、Iは、検出光信号がサンプルを透過した後の光強度である
請求項1に記載の過渡吸収分光計。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
選択的には、前記中間制御ユニットに遅延装置が設置され、前記遅延装置は、光学遅延台又は電子学カードにより実現され、前記遅延装置は、第一トリガ信号と第二トリガ信号との間の時間差を調整し、測定すべきサンプルの吸収信号の時間変化に伴う情報をテストし、第三トリガ信号と第四トリガ信号を調整しかつ時分割で送信するように構成される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0038
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0038】
前記中央制御ユニットに遅延装置が設置され、遅延装置は、光学遅延台又は電子学カードにより実現することができ、前記遅延装置は、第一トリガ信号(又は電流パルス信号)と第二トリガ信号(又はパルス光信号)との間の時間差を調整するように構成され、それにより測定すべきサンプルの吸収信号の時間に伴って変化する情報をテストし、第三トリガ信号と第四トリガ信号を調整しかつ時分割で送信し、各部品の動作を調整する。
【国際調査報告】