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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-20
(54)【発明の名称】抗-PD-1抗体およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20231213BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231213BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20231213BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20231213BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20231213BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231213BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20231213BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20231213BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20231213BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20231213BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231213BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231213BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231213BHJP
   A61K 38/05 20060101ALI20231213BHJP
   A61K 38/06 20060101ALI20231213BHJP
   A61K 31/5386 20060101ALI20231213BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20231213BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20231213BHJP
   A61K 38/12 20060101ALI20231213BHJP
   A61K 31/7064 20060101ALI20231213BHJP
   A61K 31/18 20060101ALI20231213BHJP
   A61K 31/16 20060101ALI20231213BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20231213BHJP
【FI】
C07K19/00
C12N5/10
C12N15/62 Z
C07K14/705
C07K16/28
A61K39/395 N
A61K39/395 L
A61K47/68
A61K47/65
A61K35/17
A61K35/15
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K39/395 D
A61P35/00
A61K38/05
A61K38/06
A61K31/5386
A61K31/4745
A61K31/519
A61K38/12
A61K31/7064
A61K31/18
A61K31/16
C12N15/09 Z ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535601
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(85)【翻訳文提出日】2023-06-09
(86)【国際出願番号】 KR2021018799
(87)【国際公開番号】W WO2022124866
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】63/123,705
(32)【優先日】2020-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519001408
【氏名又は名称】ユーティレックス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】クォン、ビョンエス.
(72)【発明者】
【氏名】ファン、ソンヒ
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ヒョンテ
(72)【発明者】
【氏名】パク、ヒョクジュン
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ウンヘ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4C086
4C087
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA19
4C084AA22
4C084BA44
4C084DA32
4C084DA43
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA25
4C085AA26
4C085BB41
4C085BB44
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C085GG06
4C085GG08
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB09
4C086CB22
4C086EA07
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA13
4C086ZB26
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB64
4C087BB65
4C087CA04
4C087CA12
4C087MA02
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA02
4C206GA22
4C206JA11
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206NA05
4C206NA13
4C206ZB26
4C206ZC75
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045DA86
4H045EA28
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、抗-PD-1(Programmed cell death protein 1)抗体またはその抗原結合断片、これをコーディングする核酸、前記核酸を含む組換え発現ベクター、前記組換え発現ベクターに形質感染された宿主細胞、前記抗体またはその抗原結合断片の製造方法、前記抗体またはその抗原結合断片を含む二重または多重特異的抗体、前記抗体のscFvおよび免疫細胞の活性化抗原に結合する抗体のscFvを一つ以上含む、免疫細胞エンゲージング(immune cell engage)の二重特異的または多重特異的抗体、前記抗体またはその抗原結合断片が薬物に結合された抗体-薬物接合体(ADC)、前記抗-PD-1抗体のscFvを細胞外ドメインの抗原結合部位として含むキメラ抗原受容体(CAR)、前記キメラ抗原受容体が導入されている免疫細胞、前記免疫細胞を含む併用治療用組成物、前記抗体またはその抗原結合断片を含む併用治療用組成物、癌の治療用組成物、癌の治療方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次を含むPD-1(Programmed cell death protein 1)に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片:
配列番号1、8および14で構成された群より選ばれた一つ以上のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号2、9および15で構成された群より選ばれた一つ以上のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、
配列番号3、4、10、16および56で構成された群より選ばれた一つ以上のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
配列番号5、11、17、57および58で構成された群より選ばれた一つ以上のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号6、12および18で構成された群より選ばれた一つ以上のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および
配列番号7、13および19で構成された群より選ばれた一つ以上のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3。
【請求項2】
前記抗体またはその抗原結合断片は、
(i)配列番号1の重鎖CDR1、配列番号2の重鎖CDR2および配列番号3の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、および配列番号5の軽鎖CDR1、配列番号6の軽鎖CDR2および配列番号7の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域と、
(ii)配列番号1の重鎖CDR1、配列番号2の重鎖CDR2および配列番号4の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、および配列番号5の軽鎖CDR1、配列番号6の軽鎖CDR2および配列番号7の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域と、
(iii)配列番号8の重鎖CDR1、配列番号9の重鎖CDR2および配列番号10の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、および配列番号11の軽鎖CDR1、配列番号12の軽鎖CDR2および配列番号13の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域と、
(iv)配列番号14の重鎖CDR1、配列番号15の重鎖CDR2および配列番号16の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、および配列番号17の軽鎖CDR1、配列番号18の軽鎖CDR2および配列番号19の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域と、
(v)配列番号1の重鎖CDR1、配列番号2の重鎖CDR2および配列番号56の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、および配列番号57の軽鎖CDR1、配列番号6の軽鎖CDR2および配列番号7の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域と、または
(vi)配列番号8の重鎖CDR1、配列番号9の重鎖CDR2および配列番号10の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、および配列番号58の軽鎖CDR1、配列番号12の軽鎖CDR2および配列番号13の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域と、を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
前記抗体またはその抗原結合断片は、
配列番号20、21、23、25、27、28、30、32、48および50で構成された群より選ばれた一つ以上のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
前記抗体またはその抗原結合断片は、
配列番号22、24、26、29、31、33、49、51、54および55で構成された群より選ばれた一つ以上のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
前記抗体またはその抗原結合断片は、
配列番号20の重鎖可変領域および配列番号22の軽鎖可変領域と、
配列番号21の重鎖可変領域および配列番号22の軽鎖可変領域と、
配列番号23の重鎖可変領域および配列番号24の軽鎖可変領域と、
配列番号25の重鎖可変領域および配列番号26の軽鎖可変領域と、
配列番号27の重鎖可変領域および配列番号29の軽鎖可変領域と、
配列番号28の重鎖可変領域および配列番号29の軽鎖可変領域と、
配列番号30の重鎖可変領域および配列番号31の軽鎖可変領域と、
配列番号32の重鎖可変領域および配列番号33の軽鎖可変領域と、
配列番号48の重鎖可変領域および配列番号49の軽鎖可変領域と、
配列番号50の重鎖可変領域および配列番号51の軽鎖可変領域と、
配列番号52の重鎖可変領域および配列番号53の軽鎖可変領域と、または
配列番号54の重鎖可変領域および配列番号55の軽鎖可変領域と、を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
前記抗体またはその抗原結合断片は、単鎖Fvs(scFv)、単鎖抗体、Fab、F(ab’)、ジスルフィド-結合Fvs(sdFv)を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
前記scFvは、重鎖可変領域と軽鎖可変領域がリンカーを介して連結されたことを特徴とする、請求項6に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片をコーディングする核酸。
【請求項9】
請求項8の核酸を含む組換え発現ベクター。
【請求項10】
請求項9の組換え発現ベクターに形質感染された宿主細胞。
【請求項11】
COS-7、BHK、CHO、CHOK1、DXB-11、DG-44、CHO/-DHFR、CV1、COS-7、HEK293、BHK、TM4、VERO、HELA、MDCK、BRL 3A、W138、Hep G2、SK-Hep、MMT、TRI、MRC 5、FS4、3T3、RIN、A549、PC12、K562、PER.C6、SP2/0、NS-0、U20S、またはHT1080である、請求項10に記載の宿主細胞。
【請求項12】
請求項10の宿主細胞を培養して抗体を生成するステップと、および生成された抗体を分離および精製するステップとを含む、PD-1に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片の製造方法。
【請求項13】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片を含む二重または多重特異的抗体。
【請求項14】
FGFR3、TIGIT、PD-L1、BTLA、CTLA-4、VISTA、LAG3、TIM3、CD137(4-1BB)、VISTA、CD258(LIGHT)、MARCO、CD134(OX40)、CD28、CD278(ICOS)、CD27、CD154(CD40L)、CD357(GITR)、CD30、DR3、CD226(DNAM1)、CD96、CD200、CD200R、トランスフェリン受容体(Transferrin receptor)、c-Met、EGFR、HER2、KDR、PDGFRa、NRP1で構成された群より選ばれた一つ以上に結合する抗体またはその抗原結合断片をパートナーとして含む、請求項13に記載の二重または多重特異的抗体。
【請求項15】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の抗体のscFvおよび免疫細胞の活性化抗原に結合する抗体のscFvを一つ以上含む、免疫細胞エンゲージング(immune cell engage)の二重特異的または多重特異的抗体。
【請求項16】
前記免疫細胞の活性化抗原は、次に該当する、請求項15に記載の二重特異的または多重特異的抗体:
T細胞の活性化抗原として、CD3、TCRα、TCRβ、TCRγ、TCRξ、ICOS、CD28、CD27、HVEM、LIGHT、CD40、4-1BB、OX40、DR3、GITR、CD30、TIM1、SLAM、CD2、またはCD226と、
NK細胞の活性化抗原として、NKp30、NKp40、NKp44、NKp46、NKG2D、DNAM1、DAP10、CD16(CD16aまたはCD16b)、CRTAM、CD27、PSGL1、CD96、CD100(SEMA4D)、NKp80、CD244(SLAMF4または2B4)、SLAMF6、SLAMF7、KIR2DS2、KIR2DS4、KIR3DS1、KIR2DS3、KIR2DS5、KIR2DS1、CD94、NKG2C、NKG2EまたはCD160と、
B細胞の活性化抗原として、OX40、CD40またはCD70と、
大食細胞の活性化抗原として、CD2アゴニスト、CD40、CD70、TCR(Toll-like Receptor)アゴニスト、CD47、STINGまたはOX40Lと、または
樹枝状細胞の活性化抗原は、CD2アゴニスト、OX40、OX40L、41BBアゴニスト、TCRアゴニスト、CD47アゴニスト、またはSTINGアゴニスト。
【請求項17】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片が薬物に結合された抗体-薬物接合体(ADC)。
【請求項18】
前記薬物は、マイタンシノイド、アウリスタチン(MMAE、MMAFを含む)、アミノプテリン、アクチノマイシン、ブレオマイシン、タリソマイシン、カンプトテシン、N8-アセチルスペルミジン、1-(2クロロエチル)-1,2-ジメチルスルホニルヒドラジド、エスペラマイシン、エトポシド、6-メルカプトプリン、ドラスタチン、トリコテセン、カリケアミシン、タキソール(taxol)、タキサン、パクリタキセル(paclitaxel)、ドセタキセル(docetaxel)、メトトレキサート、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンA、マイトマイシンC、クロラムブシル、デュオカルマイシン、L-アスパラギナーゼ(L-asparaginase)、メルカプトプリン(mercaptopurine)、チオグアニン(thioguanine)、ヒドロキシ尿素(hydroxyurea)、シタラビン(cytarabine)、シクロホスファミド(cyclophosphamide)、イホスファミド(ifosfamide)、ニトロソ尿素(nitrosourea)、シスプラチン(cisplatin)、カルボプラチン(carboplatin)、マイトマイシン(mitomycin)、ダカルバジン(dacarbazine)、プロカルバジン(procarbazine)、トポテカン(topotecan)、窒素マスタード(nitrogen mustard)、シトキサン(cytoxan)、エトポシド(etoposide)、5-フルオロウラシル(5-fluorouracil)、CNU(bischloroethylnitrosourea)、イリノテカン(irinotecan)、カンプトテシン(camptothecin)、ブレオマイシン(bleomycin)、イダルビシン(idarubicin)、ダウノルビシン(daunorubicin)、ダクチノマイシン(dactinomycin)、プリカマイシン(plicamycin)、ミトキサントロン(mitoxantrone)、アスパラギナーゼ(asparaginase)、ビノレルビン(vinorelbine)、クロラムブシル(chlorambucil)、メルファラン(melphalan)、カルムスチン(carmustine)、ロムスチン(lomustine)、ブスルファン(busuLfan)、トレオスルファン(treosulfan)、デカルバジン(decarbazine)、エトポシド(etoposide)、テニポシド(teniposide)、トポテカン(topotecan)、9-アミノカンプトテシン(9-aminocamptothecin)、クリスナトール(crisnatol)、マイトマイシンC(mitomycin C)、トリメトレキサート(trimetrexate)、ミコフェノール酸(mycophenolic acid)、チアゾフリン(tiazofurin)、リバビリン(ribavirin)、EICAR(5-ethynyl-1-beta-Dribofuranosylimidazole-4-carboxamide)、ヒドロキシ尿素(hydroxyurea)、デフェロキサミン(deferoxamine)、フロクスウリジン(floxuridine)、ドキシフルリジン(doxifluridine)、ラルチトレキセド(raltitrexed)、シタラビン(cytarabine(ara C))、シトシンアラビノシド(cytosine arabinoside)、フルダラビン(fludarabine)、タモキシフェン(tamoxifen)、ラロキシフェン(raloxifene)、メゲストロール(megestrol)、ゴセレリン(goserelin)、リュープロリドアセテート(leuprolide acetate)、フルタミド(flutamide)、ビカルタミド(bicalutamide)、EB1089、CB1093、KH1060、ベルテポルフィン(verteporfin)、フタロシアニン(phthalocyanine)、光感作剤Pe4(photosensitizer Pe4)、デメトキシ-ヒポクレリンA(demethoxy-hypocrellin A)、インターフェロン-α(Interferon-α)、インターフェロン-γ(Interferon-γ)、腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor)、ゲムシタビン(Gemcitabine)、ベルケイド(velcade)、レバミド(revamid)、タルアミド(thalamid)、ロバスタチン(lovastatin)、1-メチル-4-フェニルピリジニウムイオン(1-methyl-4-phenylpyridiniumion)、スタウロスポリン(staurosporine)、アクチノマイシンD(actinomycin D)、ダクチノマイシン(dactinomycin)、ブレオマイシンA2(bleomycin A2)、ブレオマイシンB2(bleomycin B2)、ペプロマイシン(peplomycin)、エピルビシン(epirubicin)、ピラルビシン(pirarubicin)、ゾルビシン(zorubicin)、ミトキサントロン(mitoxantrone)、ベラパミル(verapamil)およびタプシガルギン(thapsigargin)、核酸分解酵素および細菌や動植物由来の毒素で構成された群より選ばれた一つ以上であることを特徴とする、請求項17に記載の抗体-薬物接合体。
【請求項19】
前記抗体またはその抗原結合断片は、薬物とリンカーを介して結合されることを特徴とする、請求項17に記載の抗体-薬物接合体。
【請求項20】
前記リンカーは、切断性リンカーまたは非切断性リンカーであることを特徴とする、請求項19に記載の抗体-薬物接合体。
【請求項21】
前記切断性リンカーは、酸性不安定リンカー(acid-labile linker)、二硫化リンカー、ペプチドリンカー、またはベータ-グルクロニド(beta-glucuronide)リンカーであり、または前記非切断性リンカーは、チオエーテル基またはマレイミドカプロイル基を含むことを特徴とする、請求項20に記載の抗体-薬物接合体。
【請求項22】
前記リンカーは、抗体の二硫化結合の還元時に露出されるシステイン残基または抗体に結合されたタグに存在するシステイン残基に結合されることを特徴とする、請求項19に記載の抗体-薬物接合体。
【請求項23】
抗原結合部位を含む細胞外ドメイン、トランスメンブレンドメインおよび細胞内の信号伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)であって、前記細胞外ドメインの抗原結合部位は、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の抗体のscFvであることを特徴とするキメラ抗原受容体。
【請求項24】
請求項23に記載のキメラ抗原受容体(CAR)が導入されている免疫細胞。
【請求項25】
T細胞、NK細胞、サイトカイン誘導キラー細胞(Cytokine Induced Killer cell、CIK)、活性化細胞の毒性Tリンパ球(Cytotoxic T Lymphocyte、CTL)、マクロファージ、腫瘍組織内浸透T細胞(Tumor-Infiltrating Lymphocytes、TIL)、樹枝状細胞で構成された群より選ばれた一つ以上である、請求項24に記載の免疫細胞。
【請求項26】
抗-PD-1抗体以外の抗体に対するscFvが細胞外ドメインの抗原結合部位として含まれたキメラ抗原受容体(CAR)がさらに導入されている、請求項23に記載の免疫細胞。
【請求項27】
前記抗-PD-1抗体以外の抗体は、FGFR3、TIGIT、PD-L1、BTLA、CTLA-4、VISTA、LAG3、TIM3、CD137(4-1BB)、VISTA、CD258(LIGHT)、MARCO、CD134(OX40)、CD28、CD278(ICOS)、CD27、CD154(CD40L)、CD357(GITR)、CD30、DR3、CD226(DNAM1)、CD96、CD200、CD200R、トランスフェリン受容体(Transferrin receptor)、c-Met、EGFR、HER2、KDR、PDGFRa、NRP1で構成された群より選ばれた一つ以上をターゲットする抗体またはその抗原結合断片である、請求項26に記載の免疫細胞。
【請求項28】
請求項24の免疫細胞および抗-PD-1抗体以外の薬物を含む併用治療用組成物。
【請求項29】
前記抗-PD-1抗体以外の薬物は、FGFR3、TIGIT、PD-L1、BTLA、CTLA-4、VISTA、LAG3、TIM3、CD137(4-1BB)、VISTA、CD258(LIGHT)、MARCO、CD134(OX40)、CD28、CD278(ICOS)、CD27、CD154(CD40L)、CD357(GITR)、CD30、DR3、CD226(DNAM1)、CD96、CD200、CD200R、トランスフェリン受容体(Transferrin receptor)、c-Met、EGFR、HER2、KDR、PDGFRa、NRP1で構成された群より選ばれた一つ以上をターゲットする抗体またはその抗原結合断片である、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片と、次に構成された群より選ばれた一つ以上を含む併用治療用組成物:
(i)免疫細胞と、
(ii)抗-PD-1抗体以外の抗体に対するscFvを細胞外ドメインとして含む抗原受容体(CAR)を含む免疫細胞と、および
(iii)免疫チェックポイント抑制剤(Immune checkpoint inhibitor)。
【請求項31】
前記免疫細胞は、T細胞、NK細胞、サイトカイン誘導キラー細胞(Cytokine Induced Killer cell、CIK)、活性化細胞の毒性Tリンパ球(Cytotoxic T Lymphocyte、CTL)、マクロファージ、腫瘍組織内浸透T細胞(Tumor-Infiltrating Lymphocytes、TIL)、樹枝状細胞で構成された群より選ばれた一つ以上である、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記抗-PD-1抗体以外の抗体は、FGFR3、TIGIT、PD-L1、BTLA、CTLA-4、VISTA、LAG3、TIM3、CD137(4-1BB)、VISTA、CD258(LIGHT)、MARCO、CD134(OX40)、CD28、CD278(ICOS)、CD27、CD154(CD40L)、CD357(GITR)、CD30、DR3、CD226(DNAM1)、CD96、CD200、CD200R、トランスフェリン受容体(Transferrin receptor)、c-Met、EGFR、HER2、KDR、PDGFRa、NRP1で構成された群より選ばれた一つ以上をターゲットする抗体またはその抗原結合断片である、請求項30に記載の組成物。
【請求項33】
前記免疫チェックポイント抑制剤は、TIGIT、PD-L1、BTLA、CTLA-4、VISTA、LAG3、TIM3、CD137(4-1BB)、CD258(LIGHT)、MARCO、CD134(OX40)、CD28、CD278(ICOS)、CD27、CD154(CD40L)、CD357(GITR)、CD30、DR3、CD226(DNAM1)、CD96、CD200、またはCD200Rをターゲットにする薬物である、請求項30に記載の組成物。
【請求項34】
請求項13に記載の二重特異的または多重特異的抗体、および次に構成された群より選ばれた一つ以上を含む併用治療用組成物:
(i)免疫細胞と、
(ii)抗-PD-1抗体以外の抗体に対するscFv断片を細胞外ドメインとして含む抗原受容体(CAR)を含む免疫細胞と、および
(iii)免疫チェックポイント抑制剤(Immune checkpoint inhibitor)。
【請求項35】
前記抗-PD-1抗体以外の抗体は、FGFR3、TIGIT、PD-L1、BTLA、CTLA-4、VISTA、LAG3、TIM3、CD137(4-1BB)、VISTA、CD258(LIGHT)、MARCO、CD134(OX40)、CD28、CD278(ICOS)、CD27、CD154(CD40L)、CD357(GITR)、CD30、DR3、CD226(DNAM1)、CD96、CD200、CD200R、トランスフェリン受容体(Transferrin receptor)、c-Met、EGFR、HER2、KDR、PDGFRa、NRP1で構成された群より選ばれた一つ以上をターゲットする抗体またはその抗原結合断片である、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
前記免疫チェックポイント抑制剤は、TIGIT、PD-L1、BTLA、CTLA-4、VISTA、LAG3、TIM3、CD137(4-1BB)、CD258(LIGHT)、MARCO、CD134(OX40)、CD28、CD278(ICOS)、CD27、CD154(CD40L)、CD357(GITR)、CD30、DR3、CD226(DNAM1)、CD96、CD200またはCD200Rをターゲットにする薬物である、請求項34に記載の組成物。
【請求項37】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片、前記抗体またはその抗原結合断片を含む二重または多重特異的抗体、前記抗体またはその抗原結合断片を含む抗体-薬物接合体、前記抗体またはその抗原結合断片を含むキメラ抗原受容体または前記キメラ抗原受容体を含む免疫細胞を含む癌の治療用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗-PD-1(Programmed cell death protein 1)抗体またはその抗原結合断片、これをコーディングする核酸、前記核酸を含む組換え発現ベクター、前記組換え発現ベクターに形質感染された宿主細胞、前記抗体またはその抗原結合断片の製造方法、前記抗体またはその抗原結合断片を含む二重または多重特異的抗体、前記抗体のscFvおよび免疫細胞の活性化抗原に結合する抗体のscFvを一つ以上含む、免疫細胞エンゲージング(immune cell engage)の二重特異的または多重特異的抗体、前記抗体またはその抗原結合断片が薬物に結合された抗体-薬物接合体(ADC)、前記抗-PD-1抗体のscFvを細胞外ドメインの抗原結合部位として含むキメラ抗原受容体(CAR)、前記キメラ抗原受容体が導入されている免疫細胞、前記免疫細胞を含む併用治療用組成物、前記抗体またはその抗原結合断片を含む併用治療用組成物、癌の治療用組成物、癌の治療方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
PD-1は免疫調節および末梢寛容の維持において重要な役割を果たすものとして認識される。活性化されたTおよびB細胞上で主に発現される免疫阻害受容体である細胞予定死受容体1(Programmed Cell Death Receptor 1:PD-1;細胞予定死受容体1、細胞予定死タンパク質1、CD279)は、CD28および細胞毒性T-リンパ球関連タンパク質-4(CTLA-4、CD152)に関わった免疫グロブリンスーパーファミリーの構成員であって、PD-1は、リガンドに結合する細胞外Ig可変-類型(V-型)および信号伝達分子に結合する細胞質尾を含むI型膜貫通糖タンパク質である。T、BおよびNKT細胞上で中間程度で発現され、リンパ球、単核球および骨髄細胞上でT/B細胞受容体の信号伝達によって上向き-調節される(Sharpe et al.、The function of programmed cell death 1 and its ligands in regulating autoimmunity and infection.Nature Immunology(2007);8:239-245)。
【0003】
PD-1は、PD-L1(CD274、B7-H1)および/またはPD-L2(CD273、B7-DC)によって結合されるとき、T-細胞反応を弱化させる。PD-1に対するこれらのリガンドの結合は、T-細胞増殖、サイトカイン生産および細胞溶解機能を阻害する信号を伝達する。PD-1に対するPD-L1結合遮断は、腫瘍-特異的なCD8+T-細胞免疫を向上させ、免疫係による腫瘍細胞の除去を容易にする。
【0004】
PD-1に対するリガンドであるPD-L1(CD274、B7-H1)および/またはPD-L2(CD273、B7-DC)は、多様な組織で発生するヒトの癌から発現される。例えば、卵巣癌、腎癌、結腸直腸癌、膵臓癌、肝癌および黒色腫の大型サンプルのセットで、PD-L1の発現は、後続治療に関係なく不良な予後と関わり、全体生存を減少させる。
【0005】
PD-L1発現腫瘍細胞は、PD-1発現T細胞と相互作用してT細胞の活性化を減衰させて免疫監視を回避し、それによって腫瘍に対する損傷された免疫反応に寄与する。
【0006】
PD-1抑制抗体として、メルク(Merck)社で開発したKeytruda(成分名pembrolizumab)またはBMS社のOpdivo(成分名nivolumab)が市販中である。しかし、このような薬物は、腫瘍細胞を攻撃して癌を死滅させるTリンパ球を活性化させてこそ薬効が示されるが、活性化の程度が微々に発現されるというなどの問題がある。よって、腫瘍または癌の成長の抑制に効果的な程度のTリンパ球の活性化のための既存の抗体と区別される新規な抗-PD-1抗体の開発が要求される。
【0007】
このような技術的な背景下において、本発明者は、新規な抗-PD-1抗体を開発しようと鋭意努力した結果、優れた抗体の特性および効能などを確認し、目的とする癌の治療に用いられてもよいことを確認することで、本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、PD-1(Programmed cell death protein 1)に対する新規な抗体またはその抗原結合断片を提供するのにある。
【0009】
本発明の他の目的は、前記抗体またはその抗原結合断片をコーディングする核酸を提供するのにある。
【0010】
本発明の他の目的は、前記核酸を含む組換え発現ベクターまたは前記組換え発現ベクターに形質感染された宿主細胞を提供するのにある。
【0011】
本発明の他の目的は、PD-1に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片の製造方法を提供するのにある。
【0012】
本発明の他の目的は、前記抗体またはその抗原結合断片を含む二重または多重特異的抗体を提供するのにある。
【0013】
本発明の他の目的は、前記抗体またはその抗原結合断片を含む免疫細胞エンゲージング(immune cell engage)の二重特異的または多重特異的抗体を提供するのにある。
【0014】
本発明の他の目的は、前記抗体またはその抗原結合断片が薬物に結合された抗体-薬物接合体(ADC)を提供するのにある。
【0015】
本発明の他の目的は、前記抗-PD-1抗体のscFvを細胞外ドメインの抗原結合部位として含むキメラ抗原受容体(CAR)、前記キメラ抗原受容体が導入されている免疫細胞、前記免疫細胞を含む併用治療用組成物を提供するのにある。
【0016】
本発明の他の目的は、前記抗体またはその抗原結合断片または前記免疫細胞エンゲージング(immune cell engage)の二重特異的または多重特異的抗体を含む併用治療用組成物を提供するのにある。
【0017】
本発明の他の目的は、抗体またはその抗原結合断片、前記抗体またはその抗原結合断片を含む二重または多重特異的抗体、前記抗体またはその抗原結合断片を含む抗体-薬物接合体、前記抗体またはその抗原結合断片を含むキメラ抗原受容体、前記キメラ抗原受容体を含む癌の治療用組成物または癌の治療方法を提供するのにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記目的を達成するために、本発明は、次を含むPD-1に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を提供する:
配列番号1、8および14で構成された群より選ばれた一つ以上のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、
配列番号2、9および15で構成された群より選ばれた一つ以上のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、
配列番号3、4、10、16および56で構成された群より選ばれた一つ以上のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、
配列番号5、11、17、57および58で構成された群より選ばれた一つ以上のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、
配列番号6、12および18で構成された群より選ばれた一つ以上のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2および
配列番号7、13および19で構成された群より選ばれた一つ以上のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3。
【0019】
本発明は、前記抗体またはその抗原結合断片をコーディングする核酸を提供する。
【0020】
本発明はまた、前記核酸を含む組換え発現ベクターを提供する。
【0021】
本発明はまた、前記組換え発現ベクターに形質感染された宿主細胞を提供する。
【0022】
本発明はまた、宿主細胞を培養して抗体を生成するステップと、および生成された抗体を分離および精製するステップとを含む、PD-1に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片の製造方法を提供する。
【0023】
本発明はまた、前記抗体またはその抗原結合断片を含む二重または多重特異的抗体を提供する。
【0024】
本発明はまた、前記抗体のscFvおよび免疫細胞の活性化抗原に結合する抗体のscFvを一つ以上含む、免疫細胞エンゲージング(immune cell engage)の二重特異的または多重特異的抗体を提供する。
【0025】
本発明はまた、前記抗体またはその抗原結合断片が薬物に結合された抗体-薬物接合体(ADC)を提供する。
【0026】
本発明はまた、抗原結合部位を含む細胞外ドメイン、トランスメンブレンドメインおよび細胞内の信号伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)であって、前記細胞外ドメインの抗原結合部位は、前記抗体のscFvであることを特徴とするキメラ抗原受容体を提供する。
【0027】
本発明はまた、前記キメラ抗原受容体(CAR)を含む免疫細胞を提供する。
【0028】
本発明はまた、前記免疫細胞および抗-PD-1抗体以外の薬物を含む併用治療用組成物を提供する。
【0029】
本発明はまた、前記抗体またはその抗原結合断片と、次に構成された群より選ばれた一つ以上を含む併用治療用組成物を提供する:
(i)免疫細胞と、
(ii)抗-PD-1抗体以外の抗体に対するscFv断片を細胞外ドメインとして含む抗原受容体(CAR)を含む免疫細胞と、および
(iii)免疫チェックポイント抑制剤(Immune checkpoint inhibitor)。
本発明はまた、前記二重特異的または多重特異的抗体、および次に構成された群より選ばれた一つ以上を含む併用治療用組成物を提供する:
(i)免疫細胞と、
(ii)抗-PD-1抗体以外の抗体に対するscFv断片を細胞外ドメインとして含む抗原受容体(CAR)を含む免疫細胞と、および
(iii)免疫チェックポイント抑制剤(Immune checkpoint inhibitor)。
【0030】
本発明はまた、前記抗体またはその抗原結合断片、前記抗体またはその抗原結合断片を含む二重または多重特異的抗体、前記抗体またはその抗原結合断片を含む抗体-薬物接合体、前記抗体またはその抗原結合断片を含むキメラ抗原受容体または前記キメラ抗原受容体が導入されている免疫細胞を含む、癌の治療用組成物を提供する。
【0031】
本発明はまた、前記抗体またはその抗原結合断片、前記抗体またはその抗原結合断片を含む二重または多重特異的抗体、抗体-薬物接合体、キメラ抗原受容体、前記キメラ抗原受容体を含む免疫細胞または二重特異的な免疫細胞の結合体を投与するステップを含む、癌の治療方法を提供する。
【発明の効果】
【0032】
本発明による抗-PD-1抗体またはその抗原結合断片は、PD-1に対する優れた結合力を示し、目的とする腫瘍または癌の予防または治療に有用に用いられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】免疫マウス(immunized mice)のスクリーニングを示す。cDNAとrhproteinのimmunizationの間、各mouseのserumを分離してPD-1 antibodyの形成を確認した。2回のcDNA vaccinationの後に、#2、4mouseにおいてPD-1 antibodyが形成され、protein boostingの後にはすべてのmouseにおいてPD-1 antibodyが形成されることを確認した。Hybridoma developmentは、#2、4mouseのspleensを用いてFusionを進めた。
図2】ELISAによるHybridoma screeningを示す。Fusionの約2週間程度で十分なhybridoma clonesが形成され、そのsupernatantsを用いてELISAスクリーニングを進めた。その結果、#2mouseのfusionで12clones、#4mouseのfusionで7clones、total 19個のpositive clonesをselectionし、このうちOD=450値が1.0以上であるclonesは11個であった。
図3】Q-ELISAによるhPD-1 antibody hybridoma screeningを示す。各cloneは1×106 hybridomaを24hr培養した後、そのsupernatantを用いてELISAを進めることで抗体の生産量を定量的に比較して選別した。その結果、2-2B3、2-3C3、2-5F1、2-7C5、2-9A9、および4-8D4、4-8H11、4-9D12、4-9F10の9clonesを選別した。
図4A図4A乃至図4Cは、hPD-1 hybridoma antibodiesの特性を示す。Purified antibodiesはSDS-PAGE stain(図4A)、SEC-HPLC(図4B)、SPR(図4C)によりその特性を分析した。8clonesでrecombinant human PD-1-His protein(ECD)との結合力で類似したbinding affinityを示し、そのうち4-9D12、4-9F10がもう少し高いbinding affinityを有する。
図4B図4A乃至図4Cは、hPD-1 hybridoma antibodiesの特性を示す。Purified antibodiesはSDS-PAGE stain(図4A)、SEC-HPLC(図4B)、SPR(図4C)によりその特性を分析した。8clonesでrecombinant human PD-1-His protein(ECD)との結合力で類似したbinding affinityを示し、そのうち4-9D12、4-9F10がもう少し高いbinding affinityを有する。
図4C図4A乃至図4Cは、hPD-1 hybridoma antibodiesの特性を示す。Purified antibodiesはSDS-PAGE stain(図4A)、SEC-HPLC(図4B)、SPR(図4C)によりその特性を分析した。8clonesでrecombinant human PD-1-His protein(ECD)との結合力で類似したbinding affinityを示し、そのうち4-9D12、4-9F10がもう少し高いbinding affinityを有する。
図5】flow cytometryによるhPD-1 antibodiesとhPD-1 expressing cellsとの間のBinding testを示す。PD-1/PD-L1 blocking assayにおいて用いられたPD-1 expressing effector cellsの一部を用いてPD-1に対する抗体のbinding effectをflow cytometry分析した結果、2-2B3(49.9%)、2-7C5(50.4%)、4-8D4(23.5%)を確認した。
図6】hPD-1 hybridoma antibodiesに対するhPD-1/PD-L1 blocking functional assayを示す。分析は二つのgenetically engineered cell lines、PD-1 effector cells and PD-L1 aAPC cellsをco-cultureしたとき、PD-1/PD-L1 interactionはTCR-mediated luminescenceを抑制した。一方、PD-1/PD-L1 interactionを選別された抗体のfunctionによりdisruptionされると、TCR activationによりluminescenceが誘導される原理である。PD-1/PD-L1 co-cultureに選別された抗体を5ugから2-fold serial dilutionし、そのblocking effectを確認した結果、3個のclones、2-2B3、2-7C5、4-8D4抗体でcontrol anti-PD-1 antibodyと類似したblocking effectを示した。
図7A図7A乃至図7Cは、選別された3clones抗体のヒト化(humanization)を示す。Keytrudaと比較して抗体の特性を分析し、選別された抗体における結合力は2~8倍程度低かった。hPD-1 expressingにおいて、ヒト化PD-1抗体のSDS-PAGE&Q-ELISA(図7A)、SEC-HPLC&SPR(図7B)およびBinding effectの結果(図7C)を示した。
図7B図7A乃至図7Cは、選別された3clones抗体のヒト化(humanization)を示す。Keytrudaと比較して抗体の特性を分析し、選別された抗体における結合力は2~8倍程度低かった。hPD-1 expressingにおいて、ヒト化PD-1抗体のSDS-PAGE&Q-ELISA(図7A)、SEC-HPLC&SPR(図7B)およびBinding effectの結果(図7C)を示した。
図7C図7A乃至図7Cは、選別された3clones抗体のヒト化(humanization)を示す。Keytrudaと比較して抗体の特性を分析し、選別された抗体における結合力は2~8倍程度低かった。hPD-1 expressingにおいて、ヒト化PD-1抗体のSDS-PAGE&Q-ELISA(図7A)、SEC-HPLC&SPR(図7B)およびBinding effectの結果(図7C)を示した。
図8A図8Aは、本発明のヒト化候補抗体のIn vivoの効能分析のためにtumor sizeを分析した結果を示す。
図8B図8Bは、本発明のヒト化候補抗体の肝毒性テストの結果を示す。
図9A図9A乃至図9Cは、各候補抗体の抗原に対する親和度を増加させるためのgene engineeringの結果を示す。図9Aは、2B3Wの親和度を改善した5clonesの抗体、図9Bは、7C5の親和度を改善した5clonesの抗体、図9Cは8D4の親和度を改善した2clonesの抗体、図9Dは、ライバル社の抗体であるKeytruda(9nM)と比較して親和度がさらに高いT14-05(5.8nM)と親和度が類似したT15-01(9.7nM)抗体を選別した結果を示す。
図9B図9A乃至図9Cは、各候補抗体の抗原に対する親和度を増加させるためのgene engineeringの結果を示す。図9Aは、2B3Wの親和度を改善した5clonesの抗体、図9Bは、7C5の親和度を改善した5clonesの抗体、図9Cは8D4の親和度を改善した2clonesの抗体、図9Dは、ライバル社の抗体であるKeytruda(9nM)と比較して親和度がさらに高いT14-05(5.8nM)と親和度が類似したT15-01(9.7nM)抗体を選別した結果を示す。
図9C図9A乃至図9Cは、各候補抗体の抗原に対する親和度を増加させるためのgene engineeringの結果を示す。図9Aは、2B3Wの親和度を改善した5clonesの抗体、図9Bは、7C5の親和度を改善した5clonesの抗体、図9Cは8D4の親和度を改善した2clonesの抗体、図9Dは、ライバル社の抗体であるKeytruda(9nM)と比較して親和度がさらに高いT14-05(5.8nM)と親和度が類似したT15-01(9.7nM)抗体を選別した結果を示す。
図9D図9A乃至図9Cは、各候補抗体の抗原に対する親和度を増加させるためのgene engineeringの結果を示す。図9Aは、2B3Wの親和度を改善した5clonesの抗体、図9Bは、7C5の親和度を改善した5clonesの抗体、図9Cは8D4の親和度を改善した2clonesの抗体、図9Dは、ライバル社の抗体であるKeytruda(9nM)と比較して親和度がさらに高いT14-05(5.8nM)と親和度が類似したT15-01(9.7nM)抗体を選別した結果を示す。
図10A図10Aは、各候補抗体の親和度の改善のために選別された抗体のhPD-1を過発現する細胞に対する結合力をflow cytometryにより分析した結果を示す。
図10B図10Bは、ヒト血液から分離したactivated hCD8 T細胞における候補抗体の結合力をflow cytometryにより分析した結果を示す。
図11A図11Aは、各候補抗体のhPD-1を発現するeffector細胞と、そのreceptorであるhPD-L1を発現するAPC細胞との結合を阻害できる効能を細胞水準で分析した結果を示す。
図11B図11Bは、T14-05とT15-01抗体の陽性対照群であるkeytrudaと比較した結果を示す。
図12A図12Aは、選別された2B3W候補抗体およびそのエンジニアリングされたクローン抗体のVHとVLおよびCDR regionシーケンスの分析結果を示す。
図12B図12Bは、選別された7C5候補抗体およびそのエンジニアリングされたクローン抗体のVHとVLおよびCDR regionシーケンスの分析結果を示す。
図12C図12Cは、選別された8D4候補抗体およびそのエンジニアリングされたクローン抗体のVHとVLおよびCDR regionシーケンスの分析結果を示す。
図12D図12Dは、選別された最終候補抗体の配列を陽性対照群であるkeytrudaアミノ酸配列と比較した結果を示す。
図13】選別された最終候補抗体の種間Cross-Reactivityの分析結果を示す。
図14A図14A乃至図14Cは、最終候補抗体のIn vivo効能の分析結果を示す。図14Aは、抗体投与による各グループの個体別のtumor sizeの分析結果を示す。図14Bは、各グループの腫瘍の大きさの平均値をグラフ化した結果を示す。図14Cは、各グループのCD4とCD8 T細胞の分布結果を示す。
図14B図14A乃至図14Cは、最終候補抗体のIn vivo効能の分析結果を示す。図14Aは、抗体投与による各グループの個体別のtumor sizeの分析結果を示す。図14Bは、各グループの腫瘍の大きさの平均値をグラフ化した結果を示す。図14Cは、各グループのCD4とCD8 T細胞の分布結果を示す。
図14C図14A乃至図14Cは、最終候補抗体のIn vivo効能の分析結果を示す。図14Aは、抗体投与による各グループの個体別のtumor sizeの分析結果を示す。図14Bは、各グループの腫瘍の大きさの平均値をグラフ化した結果を示す。図14Cは、各グループのCD4とCD8 T細胞の分布結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
別に定義されない限り、本明細書において用いられたすべての技術的および科学的な用語は、本発明の属する技術分野において熟練した専門家によって、通常、理解されるものと同一の意味を有する。一般的に、本明細書において用いられた命名法は、本技術分野においてよく知られており、通常用いられるものである。
【0035】
抗-PD-1抗体
Balb/c Mouseを利用してfull length human PD-1 geneによるvaccination、recombinant human PD-1 proteinのboostingによりimmunizationした後、そのspleenをmouse myeloma cells、sp2/oとfusionさせた。Anti-hPD-1 antibodyを生産するhybridomaをscreeningしてclones selectionした。Selected clonesをpurificationしてその特性を分析し、hPD-1/PD-L1の結合をblockingできる機能を有するhybridoma antibodiesを選別した。選別されたanti-hPD-1 antibodiesのcDNA cloningしてchimeric PD-1 antibodiesおよび最終的にhumanized PD-1 antibodyを開発した。
【0036】
本発明は、一つの観点において、次を含むPD-1に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片に関するものである:配列番号1、8および14で構成された群より選ばれた一つ以上のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号2、9および15で構成された群より選ばれた一つ以上のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、配列番号3、4、10、16および56で構成された群より選ばれた一つ以上のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3;配列番号5、11、17、57および58で構成された群より選ばれた一つ以上のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号6、12および18で構成された群より選ばれた一つ以上のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2および配列番号7、13および19で構成された群より選ばれた一つ以上のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3。
【0037】
本明細書において用いられた用語「抗体(antibody)」は、PD-1に特異的に結合する抗-PD-1抗体を意味する。本発明の範囲には、PD-1に特異的に結合する完全な抗体の形態だけではなく、前記抗体分子の抗原結合断片も含まれる。
【0038】
完全な抗体は、2つの全体長さの軽鎖および2つの全体長さの重鎖を有する構造であり、それぞれの軽鎖は、重鎖とジスルフィド結合により連結されている。
【0039】
本明細書において用いられる用語「重鎖」は、抗原に特異性を付与するための十分な可変領域配列を有するアミノ酸配列を含む可変領域ドメインVHおよび3つの不変領域ドメインCH1、CH2およびCH3を含む全体長さの重鎖およびこの断片をすべて意味する。また、本明細書において用いられる用語「軽鎖」は、抗原に特異性を付与するための十分な可変領域配列を有するアミノ酸配列を含む可変領域ドメインVLおよび不変領域ドメインCLを含む全体長さの軽鎖およびこの断片をすべて意味する。
【0040】
前記全体抗体は、IgA、IgD、IgE、IgMおよびIgGの亜型(subtype)を含み、特にIgGは、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む。重鎖不変領域は、ガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)およびイプシロン(ε)タイプを有し、サブクラスとして、ガンマ1(γ1)、ガンマ2(γ2)、ガンマ3(γ3)、ガンマ4(γ4)、アルファ1(α1)およびアルファ2(α2)を有する。軽鎖の不変領域は、カッパ(κ)およびラムダ(λ)タイプを有する。
【0041】
抗体の抗原結合断片または抗体断片とは、抗原結合機能を保有している断片を意味し、Fab、F(ab’)、F(ab’)2およびFvなどを含む。抗体断片のうちFabは、軽鎖および重鎖の可変領域と軽鎖の不変領域および重鎖の第一の不変領域(CH1)を有する構造であって、1つの抗原結合部位を有する。Fab’は、重鎖CH1ドメインのC-末端に一つ以上のシステイン残基を含むヒンジ領域(hinge-region)を有するという点においてFabと差がある。F(ab’)2は、Fab’のヒンジ領域のシステイン残基がジスルフィド結合をなして生成される。
【0042】
Fvは、重鎖可変領域および軽鎖可変領域のみを有している最小の抗体欠片に相当する。二重鎖Fv(two-chain Fv)は、非共有結合により重鎖可変領域と軽鎖可変領域が連結されており、単鎖Fv(single-chain Fv、scFv)は、一般的にペプチドリンカーを介して重鎖の可変領域と軽鎖の可変領域が共有結合により連結されるか、またはC-末端ですぐに連結されていることから、二重鎖Fvのようにダイマーのような構造をなすことができる。このような抗体断片は、タンパク質加水分解酵素を利用するか(例えば、完全な形態の抗体をパパインで制限切断するとFabが得られ、ペプシンで切断するとF(ab’)2が得られる)、または遺伝子組換え技術を利用して製作してもよい。
【0043】
「Fv」断片は、完全な抗体認識および結合部位を含む抗体断片である。このような領域は、1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインが結合された二量体である。
【0044】
「Fab」断片は、軽鎖の可変および不変ドメインと、重鎖の可変および第1の不変ドメイン(CH1)を含む。F(ab’)2抗体断片は、一般的にFab’断片C-末端に存在するヒンジ領域のシステインにより共有的に連結された一対のFab’断片を含む。
【0045】
「単一鎖Fv(scFv)」抗体断片は、抗体のVHおよびVLドメインを含む単一ポリペプチド鎖からなった構造体である。scFvが抗原結合のために目的とする構造を形成できるようにするポリペプチドリンカーをVHドメインとVLドメインの間にさらに含んでもよい。
【0046】
一つの実施例において、本発明の抗体は、単一クローン抗体、多特異的抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、scFv、Fab断片、F(ab’)2断片、ジスルフィド-結合Fvs(sdFv)および抗-イディオタイプ(抗-Id)抗体、または前記抗体のエピトープ-結合断片などを含むが、これに限定されるものではない。
【0047】
前記重鎖不変領域は、ガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)またはイプシロン(ε)のうちいずれか一つのイソタイプから選ばれてもよい。例えば、不変領域は、ガンマ1(IgG1)、ガンマ2(IgG2)、ガンマ3(IgG3)またはガンマ4(IgG4)である。軽鎖不変領域はカッパまたはラムダ型であってもよい。
【0048】
前記単一クローン抗体は、実質的に同質的な抗体集団から修得した抗体、すなわち、集団を占めている個々の抗体が微量で存在できる可能な天然発生的突然変異を除いては同一のものを指称する。単一クローン抗体は高度に特異的であるため、単一抗原部位に対抗して誘導される。典型的に異なる決定因子(エピトープ)に対して異なる抗体を含む通常の(ポリクローナル)抗体とは対照的に、それぞれの単一クローン抗体は抗原上の単一決定因子に対して指示される。
【0049】
「エピトープ(epitope)」は、抗体が特異的に結合してもよいタンパク質決定部位(determinant)を意味する。エピトープは、通常化学的に活性である表面分子群、例えば、アミノ酸または糖側鎖で構成され、一般的に特定の3次元の構造的な特徴だけでなく、特定の電荷特性を有する。立体的なエピトープおよび非立体的なエピトープは、変性溶媒の存在下で前者に対する結合は消失するが、後者に対しては消失しない点において区別される。
【0050】
前記「ヒト化」形態の非-ヒト(例:マウス)抗体は、非-ヒト免疫グロブリンに由来した最小配列を含むキメラ抗体である。大部分の場合、ヒト化抗体は、受容者の超可変領域からの残基を目的とする特異性、親和性および能力を保有している非-ヒト種(供与者抗体)、例えば、マウス、ラット、ウサギまたは非-ヒト霊長類の超可変領域からの残基に代替させたヒト免疫グロブリン(受容者抗体)である。
【0051】
前記「ヒト抗体」は、ヒト免疫グロブリンに由来する分子であって、相補性決定領域、構造領域を含む抗体を構成するアミノ酸配列全体がヒトの免疫グロブリンで構成されていることを意味する。
【0052】
重鎖および/または軽鎖の一部が特別な種に由来するか、または特別な抗体部類または亜部類に属する抗体内の相応する配列と同一であるか、またはこれと相同性であるのに対し、残りの鎖は、また他の種に由来するか、またはまた他の抗体部類または亜部類に属する抗体内の相応する配列と同一であるか、または相同性である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)だけでなく、目的とする生物学的な活性を示す前記抗体の断片が含まれる。
【0053】
本発明において用いられた抗体の「可変領域」は、相補性決定領域(CDR;すなわちCDR1、CDR2、およびCDR3)および骨格領域(FR)のアミノ酸配列を含む抗体分子の軽鎖および重鎖部分を意味する。VHは重鎖の可変ドメインを意味する。VLは軽鎖の可変ドメインを意味する。
【0054】
「相補性決定領域(complement determining region、CDR)」は、抗原結合のために必要な存在である、抗体可変ドメインのアミノ酸残基を意味する。各可変ドメインは典型的にCDR1、CDR2およびCDR3で確認された3つのCDR領域を有する。
【0055】
本発明による抗-PD-1抗体またはその抗原結合断片は、例えば、次を含んでもよい:
(i)配列番号1の重鎖CDR1、配列番号2の重鎖CDR2および配列番号3の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、および配列番号5の軽鎖CDR1、配列番号6の軽鎖CDR2および配列番号7の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域と、
(ii)配列番号1の重鎖CDR1、配列番号2の重鎖CDR2および配列番号4の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、および配列番号5の軽鎖CDR1、配列番号6の軽鎖CDR2および配列番号7の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域と、
(iii)配列番号8の重鎖CDR1、配列番号9の重鎖CDR2および配列番号10の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、および配列番号11の軽鎖CDR1、配列番号12の軽鎖CDR2および配列番号13の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域と、
(iv)配列番号14の重鎖CDR1、配列番号15の重鎖CDR2および配列番号16の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、および配列番号17の軽鎖CDR1、配列番号18の軽鎖CDR2および配列番号19の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域と、
(v)配列番号1の重鎖CDR1、配列番号2の重鎖CDR2および配列番号56の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、および配列番号57の軽鎖CDR1、配列番号6の軽鎖CDR2および配列番号7の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域と、または
(vi)配列番号8の重鎖CDR1、配列番号9の重鎖CDR2および配列番号10の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、および配列番号58の軽鎖CDR1、配列番号12の軽鎖CDR2および配列番号13の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域。
【0056】
「骨格領域(FR)」は、CDR残基以外の可変ドメイン残基である。各可変ドメインは、典型的に、FR1、FR2、FR3およびFR4の4つのFRを有する。
【0057】
抗-PD-1抗体のPD-1に対する結合親和性は10-5M乃至10-12Mの範囲内にある。例えば、抗-PD-1抗体のPD-1に対する結合親和性は、10-6M乃至10-12M、10-7M乃至10-12M、10-8M乃至10-12M、10-9M乃至10-12M、10-5M乃至10-11M、10-6M乃至10-11M、10-7M乃至10-11M、10-8M乃至10-11M、10-9M乃至10-11M、10-10M乃至10-11M、10-5M乃至10-10M、10-6M乃至10-10M、10-7M乃至10-10M、10-8M乃至10-10M、10-9M乃至10-10M、10-5M乃至10-9M、10-6M乃至10-9M、10-7M乃至10-9M、10-8M乃至10-9M、10-5M乃至10-8M、10-6M乃至10-8M、10-7M乃至10-8M、10-5M乃至10-7M、10-6M乃至10-7Mまたは10-5M乃至10-6Mである。
【0058】
前記PD-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、配列番号20、21、23、25、27、28、30、32、48および50で構成された群より選ばれた一つ以上のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含んでもよい。また、前記PD-1に結合する抗体またはその抗原結合断片は、配列番号22、24、26、29、31、33、49、51、54および55で構成された群より選ばれた一つ以上のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含んでもよい。
【0059】
本発明による具体的な実施例において、次を含んでもよい:
配列番号20の重鎖可変領域および配列番号22の軽鎖可変領域と、
配列番号21の重鎖可変領域および配列番号22の軽鎖可変領域と、
配列番号23の重鎖可変領域および配列番号24の軽鎖可変領域と、
配列番号25の重鎖可変領域および配列番号26の軽鎖可変領域と、
配列番号27の重鎖可変領域および配列番号29の軽鎖可変領域と、
配列番号28の重鎖可変領域および配列番号29の軽鎖可変領域と、
配列番号30の重鎖可変領域および配列番号31の軽鎖可変領域と、
配列番号32の重鎖可変領域および配列番号33の軽鎖可変領域と、
配列番号48の重鎖可変領域および配列番号49の軽鎖可変領域と、
配列番号50の重鎖可変領域および配列番号51の軽鎖可変領域と、
配列番号52の重鎖可変領域および配列番号53の軽鎖可変領域と、または
配列番号54の重鎖可変領域および配列番号55の軽鎖可変領域。
【0060】
scFv
scFvは、抗体のVHおよびVLドメインを含む単一ポリペプチド鎖からなった構造体であって、抗体断片である。scFvが抗原結合のために目的とする構造を形成できるようにするポリペプチドリンカーをVHドメインとVLドメインの間にさらに含んでもよい。
【0061】
一つの実施例において、抗体のVHおよびVLドメインを含む単一鎖Fv(scFv)でVHおよびVLドメインはリンカーを介して連結されてもよい。配列番号20、21、23、25、27、28、30、32、48および50で構成された群より選ばれた一つ以上のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域は、リンカーを介して配列番号22、24、26、29、31、33、49、51、54および55で構成された群より選ばれた一つ以上のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と連結されてもよい。
【0062】
本発明による具体的な実施例において、次を含んでもよい:
配列番号20の重鎖可変領域および配列番号22の軽鎖可変領域と、
配列番号21の重鎖可変領域および配列番号22の軽鎖可変領域と、
配列番号23の重鎖可変領域および配列番号24の軽鎖可変領域と、
配列番号25の重鎖可変領域および配列番号26の軽鎖可変領域と、
配列番号27の重鎖可変領域および配列番号29の軽鎖可変領域と、
配列番号28の重鎖可変領域および配列番号29の軽鎖可変領域と、
配列番号30の重鎖可変領域および配列番号31の軽鎖可変領域と、
配列番号32の重鎖可変領域および配列番号33の軽鎖可変領域と、
配列番号48の重鎖可変領域および配列番号49の軽鎖可変領域と、
配列番号50の重鎖可変領域および配列番号51の軽鎖可変領域と、
配列番号52の重鎖可変領域および配列番号53の軽鎖可変領域と、または
配列番号54の重鎖可変領域および配列番号55の軽鎖可変領域。
【0063】
前記リンカーはペプチドリンカーであってもよく、約10~25aaの長さを有してもよい。例えば、グリシンおよび/またはセリンのような親水性アミノ酸が含まれてもよいが、これに制限されるものではない。
【0064】
具体的に、前記リンカーは、例えば、(GS)、(GGS)、(GSGGS)または(GS)(n、mは、それぞれ1乃至10)を含んでもよく、前記リンカーは、例えば(GS)(n、mは、それぞれ1乃至10)であってもよい。具体的に、前記リンカーは、GGGGSを含んでもよい。
【0065】
「ファージディスプレイ」は、変異体ポリペプチドをファージ、例えば、繊維状ファージ粒子の表面上に外被タンパク質の少なくとも一部との融合タンパク質でディスプレイする技術である。ファージディスプレイの有用性は、無作為化タンパク質変異体の大きなライブラリを対象として、標的抗原と高親和度で結合する配列を迅速且つ効率的に分類できるという事実にある。ペプチドおよびタンパク質ライブラリをファージ上にディスプレイすることは、特異的な結合特性を有したポリペプチドを検討するために数百万個のポリペプチドをスクリーニングするのに用いられてきた。
【0066】
ファージディスプレイ技術は、特定リガンド(例:抗原)と結合する新規タンパク質を生成および選別するための強力な道具を提供した。ファージディスプレイ技術を用いて、タンパク質変異体の大きなライブラリを生成させ、標的抗原と高親和性で結合する配列を迅速に分類することができる。変異体ポリペプチドを暗号化する核酸をウイルス性外被タンパク質、例えば、遺伝子IIIタンパク質または遺伝子VIIIタンパク質を暗号化する核酸配列と融合させる。タンパク質またはポリペプチドを暗号化する核酸配列を遺伝子IIIタンパク質の一部を暗号化する核酸配列と融合させた1価ファージディスプレイシステムが開発された。1価ファージディスプレイシステムにおいては、遺伝子融合物が低水準で発現され、野生型遺伝子IIIタンパク質もまた発現されて粒子感染性が維持される。
【0067】
繊維状ファージ表面上におけるペプチドの発現とE.coliの周辺細胞質における機能性抗体断片の発現を立証することが抗体ファージディスプレイライブラリを開発するのにおいて重要である。抗体または抗原結合性ポリペプチドのライブラリは数多くの方式、例えば、無作為DNA配列を挿入することで単一遺伝子を変更させる方法または関連遺伝子系列をクローニングする方法により製造した。ライブラリを対象として、目的とする特徴を伴う抗体または抗原結合性タンパク質の発現に関してスクリーニングしてもよい。
【0068】
ファージディスプレイ技術は、目的とする特徴を有した抗体を製造するための通常のハイブリドーマおよび組換え方法に比べて幾つかの利点を有している。このような技術は、動物を用いることなく短い時間に多様な配列を有した大きな抗体ライブラリを生成させることができるようにする。ハイブリドーマの製造やヒト化抗体の製造は数ヶ月の製造期間を要する可能性がある。また、免疫が全く要求されないため、ファージ抗体ライブラリは毒性や抗原性の低い抗原に対しても抗体を生成させることができる。ファージ抗体ライブラリをまた用いて新規の治療的な抗体を生成および確認することができる。
【0069】
ファージディスプレイライブラリを用いて免疫させた、非-免疫させたヒト、生殖細胞係配列、または未感作B細胞Igレパートリー(repertory)からヒト抗体を生成させる技術を用いてもよい。各種リンパ系組織を用いて、未感作または非免疫抗原結合性ライブラリを製造してもよい。
【0070】
ファージディスプレイライブラリから高親和性の抗体を確認および分離できる技術は、治療用の新規な抗体分離に重要である。ライブラリから高親和性の抗体を分離することは、ライブラリの大きさ、細菌性細胞中での生産効率およびライブラリの多様性に左右される可能性がある。ライブラリの大きさは、抗体または抗原結合性タンパク質の不適切なフォールディングと停止コドンの存在による非効率的な生産により減少される。細菌性細胞における発現は、抗体または抗原結合性ドメインが適切にフォールディングされない場合には抑制されてもよい。発現は可変/不変界面の表面や選別されたCDR残基における残基を交代に突然変異させることで改善させてもよい。骨格領域の配列は、細菌性細胞で抗体ファージライブラリを生成させる場合、適切なフォールディングを提供するための一つの要素である。
【0071】
高親和性抗体の分離において抗体または抗原結合性タンパク質の多様なライブラリを生成させることが重要である。CDR3領域は、これらがたびたび抗原結合に参加するものと明らかにされた。重鎖上のCDR3領域は、大きさ、配列および構造的な立体形態の面において相当多様であるので、これを利用して多様なライブラリを製造してもよい。
【0072】
また、各位置で20個のアミノ酸をすべて用いて可変重鎖および軽鎖のCDR領域を無作為化することで多様性を発生させてもよい。20個のすべてのアミノ酸を用いると、多様性の大きい変異体抗体配列が生成され、新規な抗体を確認する機会が増加する可能性がある。
【0073】
本発明の抗体または抗体断片は、PD-1を特異的に認識できる範囲内で、本明細書に記載した本発明の抗-PD-1抗体の配列だけでなく、その生物学的な均等物も含んでもよい。例えば、抗体の結合親和度および/またはその他の生物学的な特性をよりさらに改善させるために、抗体のアミノ酸配列に追加的な変化を与えることができる。このような変形は、例えば、抗体のアミノ酸配列残基の欠失、挿入および/または置換を含む。このようなアミノ酸変異は、アミノ酸側鎖置換体の相対的な類似性、例えば、疎水性、親水性、電荷、大きさなどに基づいてなる。アミノ酸側鎖置換体の大きさ、形および種類に関する分析により、アルギニン、リシンとヒスチジンはいずれも正電荷を帯びた残基であり;アラニン、グリシンとセリンは類似した大きさを有し;フェニルアラニン、トリプトファンとチロシンは類似した形を有するということが分かる。従って、このような考慮事項に基づいて、アルギニン、リシンとヒスチジン;アラニン、グリシンとセリン;そしてフェニルアラニン、トリプトファンとチロシンは生物学的に機能均等物と言える。
【0074】
上述の生物学的な均等活性を有する変異を考慮すると、本発明の抗体またはこれをコーディングする核酸分子は、配列番号に記載されている配列と実質的な同一性(substantial identity)を示す配列も含むものと解析される。前記の実質的な同一性は、前記の本発明の配列と任意の他の配列を最大限対応するようにアラインし、当業界において、通常、利用されるアルゴリズムを利用してアラインされた配列を分析した場合に、最小90%の相同性、最も好ましくは最小95%の相同性、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上の相同性を示す配列を意味する。配列比較のためのアラインメントの方法は、当業界に公知になっている。NCBI Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)は、NBCIなどから接近可能であり、インターネット上でblastp、blasm、blastx、tblastn、およびtblastxのような配列分析プログラムと連動して利用することができる。BLASTは、www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/から接続可能である。このプログラムを利用した配列相同性比較方法は、www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/blast_help.htmlで確認することができる。
【0075】
このことに基づいて、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、明細書に記載されている明示された配列または全体と比べて90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の相同性を有してもよい。このような相同性は、当業界に公知になった方法による配列比較および/または整列によって決定されてもよい。例えば、配列比較アルゴリズム(すなわち、BLASTまたはBLAST 2.0)、手動整列、目視検査を利用して本発明の核酸またはタンパク質のパーセント配列相同性を決定してもよい。
【0076】
本発明は、他の観点において、前記抗体またはその抗原結合断片をコーディングする核酸に関するものである。本発明の抗体またはその抗原結合断片をコーディングする核酸を分離して抗体またはその抗原結合断片を組換え的に生産してもよい。
【0077】
「核酸」はDNA(gDNAおよびcDNA)およびRNA分子を包括的に含む意味を有し、核酸で基本構成単位であるヌクレオチドは、自然のヌクレオチドだけではなく、糖または塩基部位が変形された類似体(analogue)も含む。本発明の重鎖および軽鎖可変領域をコーディングする核酸の配列は変形されうる。前記変形は、ヌクレオチドの追加、欠失、または非保存的置換または保存的置換を含む。
【0078】
前記PD-1に結合する抗体またはその抗原結合断片をコーディングする核酸は、配列番号34乃至47で構成された群より選ばれた重鎖可変領域または軽鎖可変領域をコーディングする核酸を含んでもよい。
【0079】
本発明による具体的な実施例において、次を含んでもよい:
配列番号34の重鎖可変領域コーディング核酸および配列番号36の軽鎖可変領域コーディング核酸と、
配列番号35の重鎖可変領域コーディング核酸および配列番号36の軽鎖可変領域コーディング核酸と、
配列番号37の重鎖可変領域コーディング核酸および配列番号38の軽鎖可変領域コーディング核酸と、
配列番号39の重鎖可変領域コーディング核酸および配列番号40の軽鎖可変領域コーディング核酸と、
配列番号41の重鎖可変領域コーディング核酸および配列番号43の軽鎖可変領域コーディング核酸と、
配列番号42の重鎖可変領域コーディング核酸および配列番号43の軽鎖可変領域コーディング核酸と、
配列番号44の重鎖可変領域コーディング核酸および配列番号45の軽鎖可変領域コーディング核酸と、または
配列番号46の重鎖可変領域コーディング核酸および配列番号47の軽鎖可変領域コーディング核酸。
【0080】
前記抗体を暗号化するDNAは、通常の分子生物学的な手法を用いて(例えば、抗体と重鎖と軽鎖を暗号化するDNAと特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを用いることで)容易に分離または合成することができ、核酸を分離し、これを複製可能なベクター内へ挿入してさらにクローニングするか(DNAの増幅)またはさらに発現させる。このことに基づいて、本発明はまた他の観点で、前記核酸を含む組換え発現ベクターに関するものである。
【0081】
本明細書において用いられる用語「ベクター」は、宿主細胞で目的遺伝子を発現させるための手段であって、プラスミドベクター、コスミドベクター、バクテリオファージベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノ-関連ウイルスベクターのようなウイルスベクターなどを含む。ベクターの成分としては、一般的に、次のうちの一つ以上が含まれるが、それに制限されない:信号配列、複製起点、一つ以上の抗生剤耐性マーカー遺伝子、増強因子要素、プロモーター、転写終結配列。抗体をコーディングする核酸は、プロモーターおよび転写終結配列などのように作動的に連結されている。
【0082】
「作動的に連結」は、核酸発現調節配列(例:プロモーター、シグナル配列または転写調節因子結合位置のアレイ)と他の核酸配列との間の機能的な結合を意味し、これにより、前記調節配列は、前記他の核酸配列の転写および/または解読を調節することになる。
【0083】
原核細胞を宿主とする場合には、転写を進めることができる強力なプロモーター(例えば、tacプロモーター、lacプロモーター、lacUV5プロモーター、lppプロモーター、pLλプロモーター、pRλプロモーター、rac5プロモーター、ampプロモーター、recAプロモーター、SP6プロモーター、trpプロモーターおよびT7プロモーターなど)、解読の開始のためのリボソーム結合部位および転写/解読終結配列を含むことが一般的である。また、例えば、真核細胞を宿主とする場合には、哺乳動物細胞のゲノムに由来のプロモーター(例:メタロチオニンプロモーター、β-アクチンプロモーター、ヒトヘログロビンプロモーターおよびヒト筋肉クレアチンプロモーター)または哺乳動物ウイルスに由来のプロモーター(例:アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、HSVのtkプロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、HIVのLTRプロモーター、モロニーウイルスのプロモーター、エプスタインバーウイルス(EBV)のプロモーターおよびロウスサコマウイルス(RSV)のプロモーター)が利用されてもよく、転写終結配列としてポリアデニル化配列を一般的に有する。
【0084】
場合によって、ベクターは、それにより発現される抗体の精製を容易にするために、他の配列と融合されてもよい。融合される配列は、例えば、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(Pharmacia、USA)、マルトス結合タンパク質(NEB、USA)、FLAG(IBI、USA)および6x His(hexahistidine;Quiagen、USA)などがある。
【0085】
前記ベクターは、選択標識として当業界で通常利用される抗生剤耐性遺伝子を含み、例えば、アンピシリン、ゲンタマイシン、カルベニシリン、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン、カナマイシン、ジェネティシン、ネオマイシンおよびテトラサイクリンに対する耐性遺伝子がある。
【0086】
本発明は、また他の観点において、前記組換え発現ベクターに形質感染された宿主細胞に関するものである。本発明の抗体を生成させるために用いられた宿主細胞は、原核生物、酵母または高等真核生物細胞であるあるが、それに制限されるものではない。
【0087】
大腸菌(Escherichia coli)、バチルスサブチルス(Bacillus subtilus)およびバチルスチューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)のようなバチルス属菌株、ストレプトマイセス(Streptomyces)、シュードモナス(Pseudomonas)(例えば、シュードモナスプチダ(Pseudomonas putida))、プロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)およびスタフィロコッカス(Staphylococcus)(例えば、スタフィロコッカスカルノサス(Staphylocus carnosus))のような原核宿主細胞を利用してもよい。
【0088】
ただし、動物細胞に対する関心が最も大きく、有用な宿主細胞株の例は、COS-7、BHK、CHO、CHOK1、DXB-11、DG-44、CHO/-DHFR、CV1、COS-7、HEK293、BHK、TM4、VERO、HELA、MDCK、BRL 3A、W138、Hep G2、SK-Hep、MMT、TRI、MRC 5、FS4、3T3、RIN、A549、PC12、K562、PER.C6、SP2/0、NS-0、U20S、またはHT1080であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0089】
本発明は、また他の観点において、前記宿主細胞を培養して抗体を生成するステップと、および生成された抗体を分離および精製するステップとを含む、PD-1に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片の製造方法に関するものである。
【0090】
前記宿主細胞は各種培地で培養することができる。市販用培地のうち制限なく培養培地として用いてもよい。当業者に公知になっているその他のすべての必須補充物が適当な濃度に含まれてもよい。培養条件、例えば、温度、pHなどが発現のために選別された宿主細胞と共に、既に用いられており、これは当業者に明白である。
【0091】
前記抗体またはその抗原結合断片の回収は、例えば、遠心分離または限外ろ過によって不純物を除去し、その結果物を、例えば、親和クロマトグラフィーなどを利用して精製してもよい。追加のその他の精製技術、例えば、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーなどが用いられてもよい。
【0092】
二重または多重特異的抗体
本発明は、他の観点において、前記抗体またはその抗原結合断片を含む二重または多重特異的抗体に関するものである。
【0093】
二重特異的抗体は、一つ以上のターゲットに結合能または拮抗能を有する抗体を意味し、2個の互いに異なるターゲットに対する結合能または拮抗能を有する抗体が結合された形態または一ターゲットに対する結合能を有する抗体と他のターゲットに対する拮抗能を有する物質が結合されている抗体を意味する。
【0094】
多重特異的抗体は、少なくとも3以上の異なる抗原に対して結合特異性を有する抗体を意味する。多重特異的(multi-specific)抗体は、三重特異的(Tri-specific)以上の抗体、例えば、三重特異的(Tri-specific)抗体、四重特異的(Tetra-specific)抗体またはそれ以上のターゲットを標的する抗体を含んでもよい。
【0095】
二重特異的または多重特異的抗体に属する抗体は、scFv基盤抗体、Fab基盤抗体およびIgG基盤抗体などに区分してもよい。二重特異的または多重特異的抗体の場合、2つ以上の信号を同時に抑制または増幅させることができるので、一つの信号を抑制/増幅する場合よりさらに効果的である可能性があり、それぞれの信号をそれぞれの信号抑制剤で処理した場合と比較すると、低用量投薬が可能であり、同一の時間および空間における2つ以上の信号を抑制/増幅させることができる。
【0096】
二重特異的または多重特異的抗体の製造方法は広く公知になっている。伝統的に、二重特異的抗体の組換え生産は、2つ以上の重鎖が異なる特異性を有する条件で2つ以上の免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の共同発現を根幹とする。
【0097】
scFvに基づく二重特異的または多重特異的抗体の場合、異なるscFvのVLとVHをそれぞれ互いに組み合わせて混成scFvをheterodimericの形態で製造してダイアボディ(diabody)を作ってもよく、異なるscFvを互いに連結してtendem ScFvを製造してもよく、FabのCH1とCLをそれぞれのscFvの末端に発現させてheterodimericミニ抗体(miniantibody)を製造してもよく、FcのhomodimericドメインであるCH3ドメインの一部アミノ酸を置換して‘knob into hole’の形態のheterodimeric構造に変更させ、これらの変更されたCH3ドメインを異なるそれぞれのscFv末端に発現させることでheterodimeric scFvの形態のミニボディ(minibody)を製造してもよい。
【0098】
Fabに基づく二重特異的または多重特異的抗体の場合、特定抗原に対する個別Fab’を二硫化結合または媒介体を利用して互いに組み合わせてheterodimeric Fabの形態で製造してもよく、特定Fabの重鎖または軽鎖の末端に異なる抗原に対するscFvを発現させることで抗原結合価(valency)を2つにするか、FabとscFvとの間にヒンジ部位(hinge region)を設けることで、homodimericの形態で4つの抗原結合価を有するように製造してもよい。また、Fabの軽鎖末端と重鎖末端に異なる抗原に対するscFvを融合させることで、抗原に対する結合価を3つに作った二重標的バイボディ(bibody)、Fabの軽鎖末端と重鎖末端に異なるscFvをそれぞれ融合させることで、抗原に対する結合価を3つに有するようにした三重標的バイボディ、異なるFabの3つを化学的に接合させることで修得することができる。
【0099】
IgGに基づく二重特異的または多重特異的抗体の場合、トリオンファーマ(Trion Pharma)社によってマウスとラットハイブリドーマを再度交雑することで、ハイブリッドハイブリドーマ、一名クアドローマ(quadromas)を製造して二重特異的抗体を生産する方法が知られている。また、軽鎖部分は共有しつつ、異なる重鎖に対してFcのCH3 homodimericドメインの一部アミノ酸を変形させてheterodimericの形態で製作した、いわゆる‘Holes and Knob’の形態で二重特異的抗体を製造してもよい。heterodimericの形態の二重特異的抗体以外に、異なる2種のscFvをIgGの軽鎖と重鎖の可変ドメインの代わりにconstantドメインにそれぞれ融合発現させてhomodimericの形態の(scFv)4-IgGで製造してもよい。また、イムクローン(ImClone)社はヒトVEGFR-2に対するキメリック単クローン抗体であるIMC-1C11に基づいて、この抗体の軽鎖アミノ末端にマウス血小板誘導成長因子受容体-アルファ(Platelet-derived Growth Factor Receptor-α)に対するsingle variable domainのみを融合させて二重特異的抗体を製作して報告した。また、タンパク質キナーゼA(protein kinase A、PKA)Rサブユニットのdimerization and docking domain(DDD)とPKAのanchoring domainを利用した、いわゆる‘dock and lock(DNL)’方法を通じてCD20に対する多数の抗原結合価を有する抗体で製作してもよい。
【0100】
非常に多様な組換え抗体フォーマット、例えば、2価以上、3価以上または4価以上の二重特異的または多重特異的抗体が開発された。例えば、国際特許出願公開第WO2001/077342号、第WO2009/080251号、第WO2009/080252号、第WO2009/080253号、第WO2009/080254号、第WO2010/112193号、第WO2010/115589号、第WO2010/136172号、第WO2010/145792号、第WO2010/145793号および第WO2011/117330号に記載されている2価以上、3価以上または4価以上の抗体も含む。2価以上、3価以上または4価以上の抗体は、それぞれ2つ以上の結合ドメイン、3つ以上の結合ドメインまたは4つ以上の結合ドメインが抗体分子に存在するということを表示する。
【0101】
具体的な実施例において、本発明による二重または多重特異的抗体は、前記抗-PD-1抗体または抗原結合断片を、具体的に、IgG完全な抗体またはその断片形態、例えば、単一鎖Fv、Vドメインおよび/またはVドメイン、Fabまたは(Fab)の形態で含んでもよい。
【0102】
また、前記PD-1をターゲットにする抗体と他のターゲットに結合する抗体またはその抗原結合断片、例えば、FGFR3、TIGIT、PD-L1、BTLA、CTLA-4、VISTA、LAG3、TIM3、CD137(4-1BB)、VISTA、CD258(LIGHT)、MARCO、CD134(OX40)、CD28、CD278(ICOS)、CD27、CD154(CD40L)、CD357(GITR)、CD30、DR3、CD226(DNAM1)、CD96、CD200、CD200R、トランスフェリン受容体(Transferrin receptor)、c-Met、EGFR、HER2、KDR、PDGFRa、NRP1で構成された群より選ばれた一つ以上を含んでもよい。前記抗体またはその抗原結合断片は、具体的に、IgG完全な抗体またはその断片形態、例えば、単一鎖Fv、Vドメインおよび/またはVドメイン、Fabまたは(Fab)の形態で含んでもよい。
【0103】
本発明による二重または多重特異的抗体を通じてPD-1以外に、他のターゲットによって誘導されるか、または媒介された追加的な結合特異性を確保可能である。
【0104】
例えば、本発明による二重特異的抗体は、PD-1とFGFR3、TIGIT、PD-L1、BTLA、CTLA-4、VISTA、LAG3、TIM3、CD137(4-1BB)、VISTA、CD258(LIGHT)、MARCO、CD134(OX40)、CD28、CD278(ICOS)、CD27、CD154(CD40L)、CD357(GITR)、CD30、DR3、CD226(DNAM1)、CD96、CD200、CD200R、トランスフェリン受容体(Transferrin receptor)、c-Met、EGFR、HER2、KDR、PDGFRa、NRP1で構成された群より選ばれた一つを同時にターゲットにしてもよい。
【0105】
例えば、本発明による多重特異的抗体は、PD-1とFGFR3、TIGIT、PD-L1、BTLA、CTLA-4、VISTA、LAG3、TIM3、CD137(4-1BB)、VISTA、CD258(LIGHT)、MARCO、CD134(OX40)、CD28、CD278(ICOS)、CD27、CD154(CD40L)、CD357(GITR)、CD30、DR3、CD226(DNAM1)、CD96、CD200、CD200R、トランスフェリン受容体(Transferrin receptor)、c-Met、EGFR、HER2、KDR、PDGFRa、NRP1で構成された群より選ばれた2つ以上を同時にターゲットにしてもよい。
【0106】
免疫細胞エンゲージング(immune cell engage)の二重特異的または多重特異的抗体
本発明は、また他の観点において、抗体のscFvおよび免疫細胞の活性化抗原に結合する抗体のscFvを一つ以上含む、免疫細胞エンゲージング(immune cell engage)の二重特異的または多重特異的抗体に関するものである。
【0107】
前記免疫細胞エンゲージングの二重特異的または多重特異的抗体を通じて細胞毒性T細胞と癌ターゲット細胞との間の細胞溶解性シナプスを一時的に誘導して毒性物を放出するようにする。
【0108】
一つの実施例において、前記免疫細胞の活性化抗原は、例えば、次において選択されてもよく、これに結合する抗体またはその抗原結合断片が免疫細胞エンゲージャー(immune cell engager)の役割を果たすことができる:
T細胞の活性化抗原は、CD3、TCRα、TCRβ、TCRγ、TCRξ、ICOS、CD28、CD27、HVEM、LIGHT、CD40、4-1BB、OX40、DR3、GITR、CD30、TIM1、SLAM、CD2またはCD226と、
NK細胞の活性化抗原は、NKp30、NKp40、NKp44、NKp46、NKG2D、DNAM1、DAP10、CD16(e.g.、CD16a、CD16b)、CRTAM、CD27、PSGL1、CD96、CD100(SEMA4D)、NKp80、CD244(SLAMF4または2B4)、SLAMF6、SLAMF7、KIR2DS2、KIR2DS4、KIR3DS1、KIR2DS3、KIR2DS5、KIR2DS1、CD94、NKG2C、NKG2EまたはCD160と、
B細胞の活性化抗原は、OX40、CD40またはCD70と、
大食細胞の活性化抗原は、CD2アゴニスト、CD40、CD70、TCR(Toll-like Receptor)アゴニスト、CD47、STINGまたはOX40Lと、または
樹枝状細胞の活性化抗原は、CD2アゴニスト、OX40、OX40L、41BBアゴニスト、TCRアゴニスト、CD47アゴニスト、またはSTINGアゴニスト。
【0109】
免疫細胞エンゲージャー(immune cell engager)は、米国特許出願公開第2017/0368169号に具体的に記載されており、本発明に参照として導入されてもよい。
【0110】
具体的に、前記免疫細胞エンゲージングの二重特異的または多重特異的抗体は、直列scFvを含み、次の抗原および癌細胞上の表面抗原に結合してもよい。前記癌細胞上の表面抗原は、本発明による抗体が標的するPD-1である:
CD3、TCRα、TCRβ、TCRγ、TCRξ、ICOS、CD28、CD27、HVEM、LIGHT、CD40、4-1BB、OX40、DR3、GITR、CD30、TIM1、SLAM、CD2、またはCD226と、
NKp30、NKp40、NKp44、NKp46、NKG2D、DNAM1、DAP10、CD16(e.g.、CD16a、CD16b)、CRTAM、CD27、PSGL1、CD96、CD100(SEMA4D)、NKp80、CD244(SLAMF4または2B4)、SLAMF6、SLAMF7、KIR2DS2、KIR2DS4、KIR3DS1、KIR2DS3、KIR2DS5、KIR2DS1、CD94、NKG2C、NKG2EまたはCD160と、
OX40、CD40またはCD70と、
CD2アゴニスト、CD40、CD70、TCR(Toll-like Receptor)アゴニスト、CD47、STINGまたはOX40Lと、または
CD2アゴニスト、OX40、OX40L、41BBアゴニスト、TCRアゴニスト、CD47アゴニスト、またはSTINGアゴニスト。
【0111】
前記免疫細胞エンゲージングの二重特異的または多重特異的抗体は、例えば、VL(PD-1)-VH(PD-1)-VH(CD3またはCD16A)-VL(CD3またはCD16A)、VH(PD-1)-VL(PD-1)-VH(CD3またはCD16A)-VL(CD3またはCD16A)、VH(CD3またはCD16A)-VL(CD3またはCD16A)-VH(PD-1)-VL(PD-1)またはVH(CD3またはCD16A)-VL(CD3またはCD16A)-VL(PD-1)-VH(PD-1)の形態の構造を含んでもよい。
【0112】
前記scFvは、例えば、配列番号20、21、23、25、27、28、30、32、48および50で構成された群より選ばれた一つ以上のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域は、リンカーを介して配列番号22、24、26、29、31、33、49、51、54および55で構成された群より選ばれた一つ以上のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域と軽鎖可変領域はリンカーにより連結されてもよい。
【0113】
前記リンカーはペプチドリンカーであってもよく、約10~25aaの長さを有してもよい。例えば、グリシンおよび/またはセリンのような親水性アミノ酸が含まれてもよい。
【0114】
前記リンカーは、例えば、(GS)n、(GGS)n、(GSGGS)nまたは(GnS)m(n、mはそれぞれ1乃至10)を含んでもよいが、前記リンカーは、例えば(GS)(n、mはそれぞれ1乃至10)であってもよい。具体的に、前記リンカーは、GGGGSを含んでもよい。
【0115】
前記免疫細胞エンゲージングの二重特異的または多重特異的抗体の例示として、CD3およびCD19に結合するブリナツモマブ(blinatumomab)(Amgen);CD3およびEpCAMに結合するソリトマブ(solitomab)(Amgen);CD3およびCEAに結合するMEDI 565(MedImmune、Amgen);およびCD3およびPSMAに結合するBAY2010112(Bayer、Amgen)を含む。例示的なDARTは、CD3およびCD123に結合するMGD006(Macrogenics);およびCD3およびgpA33に結合するMGD007(Macrogenics)を含む。例示的なTandAbsは、CD3およびCD19に結合するAFM11(Affimed Therapeutics);およびCD30およびCD16Aに結合するAFM13(Affimed Therapeutics)を含んでもよい。
【0116】
抗体-薬物接合体(ADC)
本発明は、また他の観点において、前記抗体またはその抗原結合断片が薬物に結合された抗体-薬物接合体(ADC)に関するものである。
【0117】
抗体-薬物接合体は、ターゲット癌細胞へ抗癌薬物を伝達する前まで抗癌薬物が抗体に安定的に結合されていなければならない。ターゲットへ伝達された薬物は、抗体から遊離されてターゲット細胞の死滅を誘導しなければならない。このためには、薬物が抗体に安定的に結合すると同時にターゲット細胞から遊離されるときは、ターゲット細胞の死滅を誘導する十分な細胞毒性を有さなければならない。
【0118】
一つの実施例において、前記抗体は、リンカーを介して薬物に結合されてもよい。前記リンカーは、抗-PD-1抗体と薬物との間を連結する部位であって、細胞内の条件で切断可能な形態、すなわち、細胞内環境で抗体から薬物が放出できるようにし、抗体の長い半減期を反映して抗体が全身循環中には安定し、リンカーと薬物の結合が抗体の安定性および薬物の動態に影響を与えてはならない。
【0119】
前記リンカーは、例えば、切断性リンカーまたは非切断性リンカーを含んでもよい。切断性リンカーの場合、ペプチドリンカーのように細胞内ペプチダーゼまたはプロテアーゼ酵素、例えば、リソゾームまたはエンドソームプロテアーゼによって切断されてもよく、非切断性リンカーの場合、例えば、チオエーテルリンカーは、抗体が細胞内の加水分解によって非選択的に分解された後、薬物が放出されてもよい。
【0120】
一つの実施例において、前記切断性リンカーはペプチドリンカーを含んでもよい。前記ペプチドリンカーは、少なくとも2つ以上のアミノ酸の長さを有する。例えば、Val-Cit、Val-Ala、またはVal-CitのジペプチドまたはPhe-LeuまたはGly-Phe-Leu-Glyが含まれてもよい。リンカーの例示は、国際特許出願公開第WO2004/010957号に具体的に記載されており、本発明に参照として導入されてもよい。
【0121】
前記抗体-薬物接合体は、標的癌細胞の抗原にADCの抗体領域が結合してADC-抗原複合体を形成した後、エンドソーム-リソゾームの経路で癌細胞の内部へ内包化される。この場合、細胞毒性薬物の細胞内の放出は、エンドソム/リソゾームの内部環境によって調節される。
【0122】
一つの実施例において、前記切断性リンカーはpH敏感性であって、特定pH値で加水分解に敏感である可能性がある。一般的に、pH敏感性リンカーは、酸性条件で加水分解され得ることを示す。例えば、リソゾームで加水分解され得る酸性不安定リンカー、例えば、ヒドラゾン、セミカルバゾン、チオセミカルバゾン、シス-アコニチックアミド(cis-aconitic amide)、オルトエステル、アセタール、ケタルなどであってもよい。
【0123】
他の実施例において、前記リンカーは、還元条件で切断されてもよく、例えば、二硫化リンカーがこれに該当されうる。SATA(N-succinimidyl-S-acetylthioacetate)、SPDP(N-succinimidyl-3-(2-pyridyldithio)propionate)、SPDB(N-succinimidyl-3-(2-pyridyldithio)butyrate)およびSMPT(N-succinimidyl-oxycarbonyl-alpha-methyl-alpha-(2-pyridyl-dithio)toluene)を用いて多様な二硫化結合が形成されてもよい。このような二硫化リンカーは、細胞内のグルタチオンのチオールと二硫化交換によって分解されてもよい。
【0124】
前記薬物および/または薬物-リンカーは、抗体のリジンを通じて無作為に接合されるか、または二硫化結合鎖を還元したときに露出するシステインを通じて接合されてもよい。場合によって、遺伝工学的に製作されたタグ、例えば、ペプチドまたはタンパク質に存在するシステインを通じてリンカー-薬物が結合されてもよい。前記遺伝工学的に製作されたタグ、例えば、ペプチドまたはタンパク質は、例えば、イソプレノイドトランスフェラーゼによって認識することができるアミノ酸モチーフを含んでもよい。前記ペプチドまたはタンパク質はペプチドまたはタンパク質のカルボキシ末端で欠失(deletion)を有するか、またはペプチドまたはタンパク質のカルボキシ(C)末端にスペーサーユニットの共有結合を通じた付加を有する。
【0125】
前記ペプチドまたはタンパク質は、アミノ酸モチーフとすぐに共有結合されるかまたはスペーサーユニットと共有結合されてアミノ酸モチーフと連結されてもよい。前記アミノ酸スペーサーユニットは、1乃至20個のアミノ酸で構成され、その中でグリシン(Glycine)ユニットが好ましい。
【0126】
前記イソプレノイドトランスフェラーゼは、例えば、ファルネシルトランスフェラーゼ(FTase、farnesyl protein transferase)またはゲラニルゲラニルトランスフェラーゼ(GGTase、geranylgeranyl transferase)であってもよく、FTaseおよびGGTase Iは先立って言及した化学式1のうちCAAXモチーフを認識することができ、GGTase IIはXXCC、XCXCまたはCXXモチーフ(ここで、Cはシステインであり、Aは脂肪族アミノ酸であり、Xはイソプレノイドトランスフェラーゼの基質特異性を決定するアミノ酸である)を認識することができる。
【0127】
また他の実施例において、前記リンカーは、リソゾームで多数存在するか、またはいくつかの腫瘍細胞で過発現するベータ-グルクロニダーゼ(β-glucuronidase)によって認識されて加水分解されるベータ-グルクロニドリンカーを含んでもよい。ペプチドリンカーとは異なり、親水性(hydrophilicity)が大きいことから疎水性の性質が高い薬物と結合時に、抗体-薬物複合体の溶解度を増加させ得るメリットを有する。
【0128】
これと関連して、国際特許出願公開第WO2015/182984号に開示されているベータ-グルクロニドリンカー、例えば、自己-犠牲基(self-immolative group)を含むベータ-グルクロニドリンカーを用いてもよく、上記文献は参照として導入される。
【0129】
場合によって、前記リンカーは、例えば、非切断性リンカーであってもよく、細胞内で抗体加水分解したステップのみを通じて薬物が放出され、例えば、アミノ酸-リンカー-薬物複合体を生産する。このような類型のリンカーは、チオエーテル基またはマレイミドカプロイル基(maleimidocaproyl)であってもよく、血液内の安定性を維持することができる。
【0130】
本発明の一実施例によると、抗体の二硫化結合鎖を還元したときに露出するシステインを通じてリンカー-薬物が無作為結合または配列GGGGGGGCVIMを有する抗体末端結合ペプチドを導入してリンカー-薬物が結合されてもよい。
【0131】
前記薬物(化学式(1)のDを含む)は薬理学的な効果を示す製剤により抗体に結合されてもよく、具体的に、化学療法剤、毒素、マイクロRNA(miRNA)、siRNA、shRNAまたは放射性同位元素であってもよい。前記化学療法剤は、例えば、細胞毒性製剤または免疫抑制剤であってもよい。具体的に、マイクロチューブリン抑制剤、有糸分裂抑制剤、トポイソメラーゼ抑制剤、またはDNAインターカレータとして機能できる化学療法剤を含んでもよい。また、免疫調節化合物、抗癌剤、抗ウイルス剤、抗バクテリア剤、抗真菌剤、駆虫剤またはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0132】
このような薬物には、例えば、マイタンシノイド、アウリスタチン(MMAE、MMAFを含む)、アミノプテリン、アクチノマイシン、ブレオマイシン、タリソマイシン、カンプトテシン、N8-アセチルスペルミジン、1-(2クロロエチル)-1,2-ジメチルスルホニルヒドラジド、エスペラマイシン、エトポシド、6-メルカプトプリン、ドラスタチン、トリコテセン、カリケアミシン、タキソール(taxol)、タキサン、パクリタキセル(paclitaxel)、ドセタキセル(docetaxel)、メトトレキサート、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンA、マイトマイシンC、クロラムブシル、デュオカルマイシン、L-アスパラギナーゼ(L-asparaginase)、メルカプトプリン(mercaptopurine)、チオグアニン(thioguanine)、ヒドロキシ尿素(hydroxyurea)、シタラビン(cytarabine)、シクロホスファミド(cyclophosphamide)、イホスファミド(ifosfamide)、ニトロソ尿素(nitrosourea)、シスプラチン(cisplatin)、カルボプラチン(carboplatin)、マイトマイシン(mitomycin)、ダカルバジン(dacarbazine)、プロカルバジン(procarbazine)、トポテカン(topotecan)、窒素マスタード(nitrogen mustard)、シトキサン(cytoxan)、エトポシド(etoposide)、5-フルオロウラシル(5-fluorouracil)、CNU(bischloroethylnitrosourea)、イリノテカン(irinotecan)、カンプトテシン(camptothecin)、ブレオマイシン(bleomycin)、イダルビシン(idarubicin)、ダウノルビシン(daunorubicin)、ダクチノマイシン(dactinomycin)、プリカマイシン(plicamycin)、ミトキサントロン(mitoxantrone)、アスパラギナーゼ(asparaginase)、ビノレルビン(vinorelbine)、クロラムブシル(chlorambucil)、メルファラン(melphalan)、カルムスチン(carmustine)、ロムスチン(lomustine)、ブスルファン(busuLfan)、トレオスルファン(treosulfan)、デカルバジン(decarbazine)、エトポシド(etoposide)、テニポシド(teniposide)、トポテカン(topotecan)、9-アミノカンプトテシン(9-aminocamptothecin)、クリスナトール(crisnatol)、マイトマイシンC(mitomycin C)、トリメトレキサート(trimetrexate)、ミコフェノール酸(mycophenolic acid)、チアゾフリン(tiazofurin)、リバビリン(ribavirin)、EICAR(5-ethynyl-1-beta-Dribofuranosylimidazole-4-carboxamide)、ヒドロキシ尿素(hydroxyurea)、デフェロキサミン(deferoxamine)、フロクスウリジン(floxuridine)、ドキシフルリジン(doxifluridine)、ラルチトレキセド(raltitrexed)、シタラビン(cytarabine(ara C))、シトシンアラビノシド(cytosine arabinoside)、フルダラビン(fludarabine)、タモキシフェン(tamoxifen)、ラロキシフェン(raloxifene)、メゲストロール(megestrol)、ゴセレリン(goserelin)、リュープロリドアセテート(leuprolide acetate)、フルタミド(flutamide)、ビカルタミド(bicalutamide)、EB1089、CB1093、KH1060、ベルテポルフィン(verteporfin)、フタロシアニン(phthalocyanine)、光感作剤Pe4(photosensitizer Pe4)、デメトキシ-ヒポクレリンA(demethoxy-hypocrellin A)、インターフェロン-α(Interferon-α)、インターフェロン-γ(Interferon-γ)、腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor)、ゲムシタビン(Gemcitabine)、ベルケイド(velcade)、レバミド(revamid)、タルアミド(thalamid)、ロバスタチン(lovastatin)、1-メチル-4-フェニルピリジニウムイオン(1-methyl-4-phenylpyridiniumion)、スタウロスポリン(staurosporine)、アクチノマイシンD(actinomycin D)、ダクチノマイシン(dactinomycin)、ブレオマイシンA2(bleomycin A2)、ブレオマイシンB2(bleomycin B2)、ペプロマイシン(peplomycin)、エピルビシン(epirubicin)、ピラルビシン(pirarubicin)、ゾルビシン(zorubicin)、ミトキサントロン(mitoxantrone)、ベラパミル(verapamil)およびタプシガルギン(thapsigargin)、核酸分解酵素および細菌や動植物由来の毒素で構成された群より選ばれた一つ以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0133】
場合によって、前記薬物は、リンカーおよびリンカー試薬上の親電子性基と共有結合を形成するために反応しうるアミン、チオール、ヒドロキシル、ヒドラジド、オキシム、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボキシレート、およびアリールヒドラジド基で構成された群より選ばれた一つ以上の親核基を含んでもよい。
【0134】
本発明による具体的な実施例において、MC-vc-PABリンカーを介して、本発明による抗体またはその抗原結合断片を薬物、例えば、アウリスタチン(MMAE)と連結したADCを製作した。このようなADCは、目的とする細胞毒性を示すことを確認した。
【0135】
キメラ抗原受容体(CAR)
本発明は、他の観点において、抗原結合部位を含む細胞外ドメイン、トランスメンブレンドメインおよび細胞内の信号伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)であって、前記細胞外ドメインの抗原結合部位は、前記抗体のscFvであることを特徴とするキメラ抗原受容体に関するものである。
【0136】
キメラ抗原受容体(CAR)は、標的抗原および該当抗原を発現する細胞に対して免疫反応を誘導できるように設計された合成コンストラクトである。CARは、細胞外ドメイン、トランスメンブレンドメインおよび細胞内の信号伝達ドメインを含む。癌細胞の表面に特異的に発現される癌細胞の表面抗原を認識する受容体をコーディングする遺伝子を免疫細胞に導入して、癌細胞を死滅させてもよい。癌細胞で特異的に発現する抗原と結合する受容体を含む免疫細胞を通じて、癌細胞のみを標的して免疫反応を引き起こすことができる。前記CARは、本発明による抗-PD-1抗体のscFvを細胞外ドメインの抗原認識部位として含む。
【0137】
1世代CARにおいては、癌細胞で特異的に発現する抗原認識部位を含む細胞外ドメイン、トランスメンブレンドメインおよび細胞内の信号伝達ドメインを含み、信号伝達ドメインとしてCD3ζのみを利用したが、癌に対する治療効果が微々たるものであり、持続時間が短いという問題があった。このような1世代CARは、米国登録特許第6,319,494号に具体的に記載されており、本発明に参照として導入される。
【0138】
免疫細胞に対する反応性向上のために補助刺激ドメイン(CD28またはCD137/4-1BB)とCD3ζを結合した2世代CARが製造され、1世代CARと比較して体内に残存するCAR含有免疫細胞の数が顕著に増加した。2世代CARは、一つの補助刺激ドメインを利用したものであるのに対し、3世代CARにおいては、2つ以上の補助刺激ドメインを利用した。生体内のCARを含む免疫細胞の拡張および持続性達成のために補助刺激ドメインを4-1BB、CD28またはOX40などと結合させてもよい。2世代CARは、米国登録特許第7,741,465号、第7,446,190号または第9,212,229号に具体的に記載されており、3世代CARは、米国登録特許第8,822,647号に具体的に記載されており、本発明に参照として導入される。
【0139】
4世代CARにおいては、IL-12またはIL-15のようなサイトカインを暗号化する追加遺伝子を含み、サイトカインのCAR基盤の免疫タンパク質がさらに発現できるようにし、5世代CARは、免疫細胞強化のためにインターロイキンレセプターチェーン、例えば、IL-2Rβをさらに含む。4世代CARは米国登録特許第10,316,102号、5世代CARは米国登録特許第10,336,810号に具体的に記載されており、本発明に参照として導入される。
【0140】
一つの実施例において、前記細胞外ドメインの抗原結合部位は抗体のscFvである。抗体のVHおよびVLドメインを含むscFvでVHおよびVLドメインはリンカーを介して連結されてもよい。配列番号20、21、23、25、27、28、30、32、48および50で構成された群より選ばれた一つ以上のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域は、リンカーを介して配列番号22、24、26、29、31、33、49、51、54および55で構成された群より選ばれた一つ以上のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と連結されてもよい。
【0141】
前記リンカーはペプチドリンカーであってもよく、約10~25aaの長さを有してもよい。例えば、グリシンおよび/またはセリンのような親水性アミノ酸が含まれてもよい。
【0142】
前記リンカーは、例えば、(GS)、(GGS)、(GSGGS)または(GS)(n、mはそれぞれ1乃至10)を含んでもよいが、前記リンカーは、例えば(GS)(n、mはそれぞれ1乃至10)であってもよい。具体的に、前記リンカーは、GGGGSを含んでもよい。
【0143】
前記トランスメンブレンドメインは、天然または合成供給源に由来されてもよい。供給源が天然である場合、ドメインは、任意の膜結合されたタンパク質またはトランスメンブレンタンパク質に由来されてもよい。前記トランスメンブレンドメインは、T-細胞受容体、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、ICOSのアルファ、ベータまたはゼータ鎖を含んでもよい。前記トランスメンブレンドメインを合成する場合、ロイシンとバリンのような疎水性残基を含むか、またはフェニルアラニン、トリプトファンおよびバリンを含むペプチドを各末端に含んでもよい。2個乃至10個のアミノ酸の長さである短いオリゴ-またはポリペプチドリンカーがトランスメンブレンドメインとCARの細胞質信号伝達ドメインとの間に結合を形成してもよい。グリシン-セリンペプチドをリンカーとして利用されてもよい。
【0144】
前記信号伝達ドメインは、CARが位置された免疫細胞の正常効果器の機能に対する活性化を誘導することができる。例えば、サイトカインの分泌を通じて細胞溶解活性化またはヘルパー活性化を誘導してもよい。前記信号伝達ドメインは効果器の機能信号を形質導入するのに十分な細胞内の信号伝達ドメインの切断された断片を含んでもよい。
【0145】
前記信号伝達ドメインにより抗原受容体関与後の信号伝達を開始するために協力して作用するT細胞受容体(TCR)および共同-受容体の細胞質が含まれてもよい。
【0146】
TCR単独を通じて生成された信号は、T細胞の完全な活性化のために不十分であり、共同-刺激信号が必要であるということもまた知られている。従って、T細胞の活性化にTCRを通じて抗原-依存性一次活性化を開始すること、および二次または共同-刺激信号を提供するように抗原-依存性方式で作用することが関与できる。一次細胞質信号伝達配列は、刺激性方式でまたは抑制性方式でTCR複合体の一次活性化を調節する。刺激性方式で作用する一次細胞質信号伝達配列は、免疫受容体チロシン-基盤の活性化モチーフまたはITAMとして公知になっている信号伝達モチーフを含んでもよい。一次細胞質信号伝達配列を含むITAMの例としては、TCRゼータ、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79bおよびCD66dを含んでもよい。
【0147】
場合によって、CARの細胞質ドメインは、CD3ゼータ鎖部分および共同刺激信号の伝達領域を含んでもよい。共同刺激信号の伝達領域は、共同刺激分子の細胞内ドメインを含むCARの一部分を意味する。例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、ICOS、リンパ球機能-関連の抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3およびCD83と特異的に結合するリガンドなどが含まれてもよい。CARの細胞質信号伝達部分内の細胞質信号伝達配列は、2個乃至10個のアミノ酸、例えば、グリシン-セリン含有ペプチドリンカーを介して連結されてもよい。
【0148】
本発明は、他の観点において、前記キメラ抗原受容体(CAR)が導入された免疫細胞に関するものである。
【0149】
前記免疫細胞は、免疫を誘導して目的とする癌の治療効果を誘発することができるものであって、例えば、T細胞、NK細胞、サイトカイン誘導キラー細胞(Cytokine Induced Killer cell、CIK)、活性化細胞の毒性Tリンパ球(Cytotoxic T Lymphocyte、CTL)、マクロファージ、腫瘍組織内浸透T細胞(Tumor-Infiltrating Lymphocytes、TIL)、樹枝状細胞で構成された群より選ばれてもよいが、これに制限されるものではない。
【0150】
場合によって、前記抗-PD-1抗体以外の抗体に対するscFvが細胞外ドメインの抗原結合部位として含まれたキメラ抗原受容体(CAR)がさらに導入されてもよい。
【0151】
前記抗-PD-1抗体以外の抗体は、例えば、FGFR3、TIGIT、PD-L1、BTLA、CTLA-4、VISTA、LAG3、TIM3、CD137(4-1BB)、VISTA、CD258(LIGHT)、MARCO、CD134(OX40)、CD28、CD278(ICOS)、CD27、CD154(CD40L)、CD357(GITR)、CD30、DR3、CD226(DNAM1)、CD96、CD200、CD200R、トランスフェリン受容体(Transferrin receptor)、c-Met、EGFR、HER2、KDR、PDGFRa、またはNRP1をターゲットする抗体であってもよい。
【0152】
治療用組成物
本発明は、また他の観点において、前記抗体またはその抗原結合断片、前記抗体またはその抗原結合断片を含む二重または多重特異的抗体、前記抗体またはその抗原結合断片を含む抗体-薬物接合体、前記抗体またはその抗原結合断片を含むキメラ抗原受容体または前記キメラ抗原受容体を含む免疫細胞を含む癌の治療用組成物に関するものである。
【0153】
本発明は、例えば、(a)本発明によるPD-1に対する抗体またはその抗原結合断片、前記抗体またはその抗原結合断片を含む二重または多重特異的抗体、前記抗体またはその抗原結合断片を含む抗体-薬物接合体、前記抗体またはその抗原結合断片を含むキメラ抗原受容体、または前記キメラ抗原受容体を含む免疫細胞の薬剤学的な有効量と、および(b)薬剤学的に許容される担体を含む癌の予防または治療用薬剤学的組成物であってもよい。本発明はまた、本発明によるPD-1に対する抗体またはその抗原結合断片、前記抗体またはその抗原結合断片を含む二重または多重特異的抗体、前記抗体またはその抗原結合断片を含む抗体-薬物接合体、前記抗体またはその抗原結合断片を含むキメラ抗原受容体または前記キメラ抗原受容体を含む免疫細胞を癌患者に投与するステップを含む癌の予防または治療方法であってもよい。
【0154】
「予防」は、本発明による組成物の投与により疾病の臨床症状を抑制させるか、または進行を遅延させるすべての行為を意味し、「治療」は、疾病に対する臨床症状発展の抑制、疾病に対する臨床症状軽減または除去を意味する。
【0155】
前記癌は、例えば、ホジキンリンパ種、非-ホジキンリンパ腫(例えば、B細胞リンパ種、びまん性巨大B細胞リンパ種、濾胞性リンパ種、慢性リンパ球性白血病、マントル細胞リンパ種、辺縁区域B細胞リンパ種、バーキットリンパ腫、リンパ形質細胞リンパ腫、毛状細胞白血病)、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄形成異常症候群、多発性骨髄腫、または急性リンパ球性白血病を含む。
【0156】
前記癌は、例えば、卵巣癌、直腸癌、胃癌、精巣癌、肛門部位癌、子宮癌、結腸癌、直腸癌、腎臓細胞癌腫、肝癌、肺の非-小細胞癌腫、小腸癌、食道癌、黒色腫、カポシ肉腫、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、肌または眼内悪性黒色腫、子宮癌、脳幹神経膠腫、脳下垂体腺癌、表皮状癌、子宮頸部扁平細胞癌の癌腫、卵管癌腫、子宮内膜癌腫、膣癌腫、軟組織肉腫、尿道癌、外陰部癌腫、陰茎癌、膀胱癌、腎臓癌または尿管癌、腎盂癌腫、脊椎腫瘍、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、前記癌の転移病変、または前記癌の組み合わせを含む。
【0157】
前記癌は、例えば、膠芽腫、肺癌、膀胱癌、口腔癌、頭頸部扁平細胞癌、胆嚢癌または子宮頸部癌でありうる。特に、膠芽腫の場合、前記抗体またはその抗原結合断片が脳および脊椎とその周辺循環系との間に存在する脳の毛細血管内皮細胞膜内にタイト結合(junction)によって形成された障壁である血液脳関門(blood-brain barrier)を通過する必要がある。BBB通過のために伝達体と連結されて用いられてもよい。BBBを介して薬物を伝達するために、例えば、ブラジキニン、またはHIFU(Hign density foucues ultrasound)のような方法を用いてBBBの浸透圧を瓦解させる方法がある。また、細胞に内在したグルコースおよびアミノ酸伝達体、インシュリンまたはトランスフェリンの受容体媒介のトランスサイトーシスのような伝達システムの使用または糖タンパク質の活性流出伝達(efflux transporter)を遮断するものが含まれてもよい。
【0158】
本発明の組成物に含まれる薬剤学的に許容される担体は、製剤時に通常利用されるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルジネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウムおよびミネラルオイルなどを含むが、これに限定されるものではない。本発明の組成物は、前記成分以外に潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含んでもよい。
【0159】
本発明の薬剤学的組成物は、経口または非経口で投与してもよく、非経口投与である場合には、静脈内注入、皮下注入、筋肉注入、腹腔注入、内皮投与、局所投与、鼻内投与、肺内投与および直腸内投与などで投与してもよい。
【0160】
経口投与時、タンパク質またはペプチドは消化されるので、経口用組成物は、活性薬剤をコーティングするか、または胃での分解から保護されるように剤形化されるべきである。また、薬剤学的組成物は、活性物質が標的細胞へ移動可能な任意の装置によって投与されてもよい。
【0161】
本発明による組成物の適した投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、病的状態、飲食、投与時間、投与経路、排泄速度および反応感応性のような要因によって多様であり、通常の熟練された医師であれば、所望の治療または予防に効果的な投与量を容易に決定および処方することができる。例えば、本発明の薬剤学的組成物の1日投与量は、0.0001~100mg/kgである。本明細書における用語「薬剤学的有効量」は、癌の予防または治療に十分な量を意味する。
【0162】
本発明の薬剤学的組成物は、当該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施可能な方法によって、薬剤学的に許容される担体および/または賦形剤を利用して製剤化することで、単位容量形態に製造するか、または多容量容器内に入れて製造されうる。この際、剤型は、オイルまたは水性媒質中の溶液、懸濁液または乳化液の形態であるか、エキス剤、散剤、坐剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤またはカプセル剤の形態でもあり、分散剤または安定化剤をさらに含んでもよい。
【0163】
併用治療
本発明は免疫細胞および抗-PD-1抗体以外の薬物を含む併用治療用組成に関するものである。
【0164】
一つの実施例において、前記抗-PD-1抗体以外の薬物は、化学療法剤または抗-PD-1抗体以外の抗体を含んでもよい。
【0165】
前記薬物は、マイタンシノイド、アウリスタチン(MMAE、MMAFを含む)、アミノプテリン、アクチノマイシン、ブレオマイシン、タリソマイシン、カンプトテシン、N8-アセチルスペルミジン、1-(2クロロエチル)-1,2-ジメチルスルホニルヒドラジド、エスペラマイシン、エトポシド、6-メルカプトプリン、ドラスタチン、トリコテセン、カリケアミシン、タキソール(taxol)、タキサン、パクリタキセル(paclitaxel)、ドセタキセル(docetaxel)、メトトレキサート、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンA、マイトマイシンC、クロラムブシル、デュオカルマイシン、L-アスパラギナーゼ(L-asparaginase)、メルカプトプリン(mercaptopurine)、チオグアニン(thioguanine)、ヒドロキシ尿素(hydroxyurea)、シタラビン(cytarabine)、シクロホスファミド(cyclophosphamide)、イホスファミド(ifosfamide)、ニトロソ尿素(nitrosourea)、シスプラチン(cisplatin)、カルボプラチン(carboplatin)、マイトマイシン(mitomycin)、ダカルバジン(dacarbazine)、プロカルバジン(procarbazine)、トポテカン(topotecan)、窒素マスタード(nitrogen mustard)、シトキサン(cytoxan)、エトポシド(etoposide)、5-フルオロウラシル(5-fluorouracil)、CNU(bischloroethylnitrosourea)、イリノテカン(irinotecan)、カンプトテシン(camptothecin)、ブレオマイシン(bleomycin)、イダルビシン(idarubicin)、ダウノルビシン(daunorubicin)、ダクチノマイシン(dactinomycin)、プリカマイシン(plicamycin)、ミトキサントロン(mitoxantrone)、アスパラギナーゼ(asparaginase)、ビノレルビン(vinorelbine)、クロラムブシル(chlorambucil)、メルファラン(melphalan)、カルムスチン(carmustine)、ロムスチン(lomustine)、ブスルファン(busuLfan)、トレオスルファン(treosulfan)、デカルバジン(decarbazine)、エトポシド(etoposide)、テニポシド(teniposide)、トポテカン(topotecan)、9-アミノカンプトテシン(9-aminocamptothecin)、クリスナトール(crisnatol)、マイトマイシンC(mitomycin C)、トリメトレキサート(trimetrexate)、ミコフェノール酸(mycophenolic acid)、チアゾフリン(tiazofurin)、リバビリン(ribavirin)、EICAR(5-ethynyl-1-beta-Dribofuranosylimidazole-4-carboxamide)、ヒドロキシ尿素(hydroxyurea)、デフェロキサミン(deferoxamine)、フロクスウリジン(floxuridine)、ドキシフルリジン(doxifluridine)、ラルチトレキセド(raltitrexed)、シタラビン(cytarabine(ara C))、シトシンアラビノシド(cytosine arabinoside)、フルダラビン(fludarabine)、タモキシフェン(tamoxifen)、ラロキシフェン(raloxifene)、メゲストロール(megestrol)、ゴセレリン(goserelin)、リュープロリドアセテート(leuprolide acetate)、フルタミド(flutamide)、ビカルタミド(bicalutamide)、EB1089、CB1093、KH1060、ベルテポルフィン(verteporfin)、フタロシアニン(phthalocyanine)、光感作剤Pe4(photosensitizer Pe4)、デメトキシ-ヒポクレリンA(demethoxy-hypocrellin A)、インターフェロン-α(Interferon-α)、インターフェロン-γ(Interferon-γ)、腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor)、ゲムシタビン(Gemcitabine)、ベルケイド(velcade)、レバミド(revamid)、タルアミド(thalamid)、ロバスタチン(lovastatin)、1-メチル-4-フェニルピリジニウムイオン(1-methyl-4-phenylpyridiniumion)、スタウロスポリン(staurosporine)、アクチノマイシンD(actinomycin D)、ダクチノマイシン(dactinomycin)、ブレオマイシンA2(bleomycin A2)、ブレオマイシンB2(bleomycin B2)、ペプロマイシン(peplomycin)、エピルビシン(epirubicin)、ピラルビシン(pirarubicin)、ゾルビシン(zorubicin)、ミトキサントロン(mitoxantrone)、ベラパミル(verapamil)およびタプシガルギン(thapsigargin)、核酸分解酵素および細菌や動植物由来の毒素で構成された群より選ばれた一つ以上であってもよい。
【0166】
一つの実施例において、前記抗-PD-1抗体以外の抗体は、例えば、FGFR3、TIGIT、PD-L1、BTLA、CTLA-4、VISTA、LAG3、TIM3、CD137(4-1BB)、VISTA、CD258(LIGHT)、MARCO、CD134(OX40)、CD28、CD278(ICOS)、CD27、CD154(CD40L)、CD357(GITR)、CD30、DR3、CD226(DNAM1)、CD96、CD200、CD200R、トランスフェリン受容体(Transferrin receptor)、c-Met、EGFR、HER2、KDR、PDGFRa、NRP1で構成された群より選ばれた一つ以上をターゲットする抗体またはその抗原結合断片であってもよい。
【0167】
本発明は、抗体またはその抗原結合断片と、次に構成された群より選ばれた一つ以上を含む併用治療用組成物に関するものである。
(i)免疫細胞と、
(ii)抗-PD-1抗体以外の抗体に対するscFvを細胞外ドメインとして含む抗原受容体(CAR)を含む免疫細胞と、および
(iii)免疫チェックポイント抑制剤(Immune checkpoint inhibitor)。
また、本発明は、前記免疫細胞エンゲージング(immune cell engage)の二重特異的または多重特異的抗体、および次に構成された群より選ばれた一つ以上を含む併用治療用組成物に関するものである:
(i)免疫細胞と、
(ii)抗-PD-1抗体以外の抗体に対するscFv断片を細胞外ドメインとして含む抗原受容体(CAR)を含む免疫細胞と、および
(iii)免疫チェックポイント抑制剤(Immune checkpoint inhibitor)。
【0168】
前記免疫細胞は免疫治療、例えば、免疫を誘導して目的とする癌の治療効果を誘発できるものであって、例えば、T細胞、NK細胞、サイトカイン誘導キラー細胞(Cytokine Induced Killer cell、CIK)、活性化細胞の毒性Tリンパ球(Cytotoxic T Lymphocyte、CTL)、マクロファージ、腫瘍組織内浸透T細胞(Tumor-Infiltrating Lymphocytes、TIL)、樹枝状細胞で構成された群より選ばれてもよいが、これに制限されるものではない。
【0169】
前記抗-PD-1抗体以外の抗体は、PD-1以外の標的をターゲットする抗体であって、例えば、FGFR3、TIGIT、PD-L1、BTLA、CTLA-4、VISTA、LAG3、TIM3、CD137(4-1BB)、VISTA、CD258(LIGHT)、MARCO、CD134(OX40)、CD28、CD278(ICOS)、CD27、CD154(CD40L)、CD357(GITR)、CD30、DR3、CD226(DNAM1)、CD96、CD200、CD200R、トランスフェリン受容体(Transferrin receptor)、c-Met、EGFR、HER2、KDR、PDGFRa、またはNRP1に結合する抗体またはその抗原結合断片であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0170】
前記免疫チェックポイント抑制剤は、抗原提示細胞(APC、antigen presenting cell)と免疫細胞、例えば、T細胞が会う部位でT細胞抑制信号を遮断し、T細胞の活性化を誘導できる製剤を意味する。前記免疫チェックポイント抑制剤は、例えば、TIGIT、PD-L1、BTLA、CTLA-4、VISTA、LAG3、TIM3、CD137(4-1BB)、CD258(LIGHT)、MARCO、CD134(OX40)、CD28、CD278(ICOS)、CD27、CD154(CD40L)、CD357(GITR)、CD30、DR3、CD226(DNAM1)、CD96、CD200、またはCD200Rをターゲットにする薬物であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0171】
前記併用投与対象の第1の成分および第2の成分のそれぞれは、同時に投与されてもよい。また、前記併用投与対象の第1の成分および第2の成分のそれぞれは、一定時間間隔を置いて別途に投与してもよい。前記併用投与対象のうちの第1の成分投与の前または後、第2の成分が別途に投与されてもよい。
【0172】
コンパニオン診断(Companion diagnostics、CDx)
コンパニオン診断は、特定の薬物治療に対する患者の反応性を予測するための分子診断技法の一種であって、薬物の適用において、適用対象患者の選別基準を提示し、これに符合する診断、予後および予測バイオマーカーの特異性および敏感性を考慮して、患者に適した薬物を処理できるようにする基準を提示することができる。
【0173】
抗癌剤の場合、反応を示す患者にとっては高い効果を示すが、反応する患者の割合が低いため、効果を示す患者を選別し出すことが重要であり、コンパニオン診断を通じて抗癌剤に反応する患者を選別し、患者の治療効率を増大させることができる。
【0174】
前記サンプルは、患者の組織または体液から得られる生物学的な被検体を意味する。組織サンプルの供給源は、凍結されたおよび/または保存された器官、組織サンプル、生検または吸引物に由来するもののような固形組織と、血液または任意の血液構成成分(例、血清、血漿)と、骨髄または任意の骨髄構成成分と、尿、脳脊髄液、全血液、血漿および血清のような体液であってもよい。サンプルは、非-細胞分画(はい、尿、血漿、血清または他の非細胞体液)を含んでもよい。サンプルは、体液、例えば、血液(例、全血液)を含んでもよい。具体的に、前記サンプルは、患者から得られる全血液サンプル、全骨髄サンプル、全末梢血液サンプル、または全腫瘍サンプルであってもよい。前記「全」サンプルは、該当サンプルから除去されるか、または分離された成分(例、細胞)が実質的にないサンプルである。前記サンプル、例えば、血液サンプルは、用いられる前に希釈(例えば、生理的な融化性緩衝液または培地によって)されてもよい。他の具体例において、「全」サンプル、例えば、全組織サンプルまたは全腫瘍サンプルは、起源組織由来の微細環境を実質的に維持し、例えば、腫瘍または免疫微細環境の構造を実質的に維持することができる。具体的に、サンプル、例えば、腫瘍サンプルは、さらに小さな欠片に加工(例、磨砕、たたき、ブレンディング、粉砕など)されて希釈(例えば、生理的な融化性緩衝液または培地によって)されてもよい。
【0175】
前記遺伝子の発現確認は、該当遺伝子の存否と発現の程度を確認する過程であって、重合酵素連鎖反応(PCR)によって行われてもよく、場合によって、転写重合酵素反応(RT-PCR)、競争的逆転写重合酵素反応(Competitive RT-PCR)、実時間逆転写重合酵素反応(Real-time RT-PCR)、RNase保護分析法(RPA;RNase protection assay)、ノーザンブロッティング(Northern blotting)、DNAチップを用いて行われてもよい。
【0176】
重合酵素連鎖反応(PCR)は、プライマーを利用して遺伝子増幅反応を通じて行われてもよい。マルチプレックスPCR、実時間(real-time)PCR、分別ディスプレイPCR(differential display PCR:DD-PCR)、cDNA末端の迅速増幅(rapid amplification of cDNA ends:RACE)、インバース重合酵素連鎖反応(inverse polymerase chain reaction:IPCR)、ベクトレット(vectorette)PCRおよびTAIL-PCR(thermal asymmetric interlaced PCR)などが行われてもよい。
【0177】
遺伝子コーディングによるタンパク質の発現有無を検出することもできる。前記遺伝子から発現されたタンパク質の存否と発現の程度を確認する過程である。前記タンパク質に対して特異的に結合する抗体、オリゴペプチド、リガンド、PNA(Peptide nucleic acid)またはアプタマー(aptamer)などを利用してタンパク質の量を確認することができる。
【0178】
このための分析方法としては、ウエスタンブロット、エライザ(enzyme linked immunosorbent assay、ELISA)、放射線免疫分析(RIA:Radioimmunoassay)、放射免疫拡散法(radioimmunodiffusion)、オクタロニー(Ouchterlony)免疫拡散法、ロケット(rocket)免疫電気泳動、組織免疫染色、免疫沈殿分析法(Immunoprecipitation Assay)、補体固定分析法(Complement Fixation Assay)、流細胞分析(Fluorescence Activated Cell Sorter、FACS)、タンパク質チップ(protein chip)を利用した方法などが含まれてもよい。
【実施例
【0179】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳しく説明しようとする。これらの実施例は、ただ本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されるものと解析されないことは、当業界における通常の知識を有した者にとって自明である。
【0180】
実施例1.候補クローンの製作および抗原結合力の分析
図1でのように、full length PD-1 DNA配列をvaccination vectorにクローニングしてDNA vaccinationとして用い、組換えヒトPD-1-Hisタンパク質と併合してマウスをimmunizationし、また安定的にヒトPD-1を発現する293細胞株を製作した。Immunizationの前と後に血液を採取してimmunizationの程度を確認した。2次DNA vaccinationの後、血清を分離してヒトPD-1を発現する293細胞株に結合させて分析した結果、1番、2番、4番マウスの血清に抗-PD-1抗体が生成されたことが確認できた。3次タンパク質でimmunizationした後、血清を分離してヒトPD-1を発現する293細胞株に結合させて分析した結果、5匹のすべてのマウスの血清に抗-PD-1抗体が生成されたことが確認できた。以後のDNA vaccinationとタンパク質immunizationを各一度ずつさらに投与した後、2番と4番マウスのspleenをSP2/0 myeloid cellsとfusionしてhybridoma clonesを生成した。
【0181】
図2でのように候補抗体は、hybridoma培養液を用いて組換えヒトPD-1-Hisタンパク質に結合力を有するclonesをELISA方法によって1次11個のclonesを選別した。
【0182】
図3でのように11個のhybridomaの各cloneを1×10細胞を24時間培養した後、その培養液を用いてELISAを進めることで定量的に抗体の結合力を比べた。ELISAは組換えヒトPD-1-Hisタンパク質を96-well ELISA plateで4℃、O/N coatingし、5%のnon-fat skim milkでRTで1hrの間blockingした。抗体は、各hybridoma培養液を100ulから1/2 serial dilutionしてRTで2hr処理し、anti-mIgG-HRPでdetectionした。その結果、1次選別された候補抗体のなかから2-2B3、2-3C3、2-5F1、2-7C5、2-9A9、および4-8D4、4-8H11、4-9D12、4-9F10の9個の2次候補抗体を選別した。
【0183】
実施例2.選別されたクローンの特性
図4でのように、hybridomaの培養液から選別された9個の候補抗体を精製してSDS-PAGE(4A)、SEC-HPLC(4B)、SPR(4C)によってその特性を分析した。9個のclonesは組換えヒトPD-1-Hisタンパク質との結合力において類似したbinding affinityを示し、そのうち、4-9D12、4-9F10 clonesが相対的にさらに高いbinding affinityを示した。
【0184】
図5および図6でのように、PD-1/PD-L1 blocking assayにおいて用いたPD-1 expressing effector cellsの一部を用いて精製された候補抗体の結合力をflow cytometry方法によって分析した結果、2-2B3(49.9%)、2-7C5(50.4%)、4-8D4(23.5%)などと確認した。
【0185】
図6でのように、精製された候補抗体のin vitro効能分析のために二つの遺伝的にengineered cell linesであるPD-1を発現するeffector cellsとPD-L1を発現するaAPC cellsを共同培養したとき、PD-1とPD-L1の結合は、TCR信号を妨害することでluminescence発光が抑制され、これに対し、PD-1とPD-L1の結合を選別された候補抗体の効能によってblockすることになれば、TCR信号活性化によってluminescence発光が誘導される原理を試用した。選別された抗体は、5ugから2-fold serial dilutionし、PD-1とPD-L1の結合に対するblocking効果を確認した結果、2-2B3、2-7C5、4-8D4 clonesで陽性対照群anti-PD-1抗体(Promega)と類似した抑制効果を示した。
【0186】
従って、以上の結果によって3つの候補抗体を選別し、選別された抗体は、cDNA cloningのために各hybridomaからRNAを分離してcDNAを合成した。各抗体のantibody fragmentsであるVHとVLはRACE PCRによって増幅され、増幅されたPCR productをpGEM-Teasy vectorにcloningした後、その配列を分析した。その結果、選別された3 clonesはそれぞれ異なる塩基、アミノ酸配列を有する抗体であり、この3つの抗体をヒト化した。
【0187】
実施例3.選別された個別クローンの配列の分析
選別されたクローンのVHとVLおよびCDR regionシーケンスの分析結果は、表1に整理した。選別されたクローンのうち2-2B3の二つのクローンを2-2B3Wおよび2-2B3Rで示した。
【0188】
2-2B3Wの場合、配列番号20の重鎖可変領域(VH)および配列番号22の軽鎖可変領域(VL)を含み;VH CDR1はGFVFSNYD(配列番号1)、VH CDR2はITIGGGTT(配列番号2)、VH CDR3はARWVYDPLYAMDY(配列番号3)、VL CDR1はESVDNYGISF(配列番号5)、VL CDR2はAAS(配列番号6)およびVL CDR3はQQSKEVPWT(配列番号7)であり;
2-2B3Rの場合、配列番号21の重鎖可変領域(VH)および配列番号22の軽鎖可変領域(VL)を含み;VH CDR1はGFVFSNYD(配列番号1)、VH CDR2はITIGGGTT(配列番号2)、VH CDR3はARRVYDPLYAMDY(配列番号4)、VL CDR1はESVDNYGISF(配列番号5)、VL CDR2はAAS(配列番号6)およびVL CDR3はQQSKEVPWT(配列番号7)であり;
2-7C5の場合、配列番号23の重鎖可変領域(VH)および配列番号24の軽鎖可変領域(VL)を含み;VH CDR1はGFTFSSFG(配列番号8)、VH CDR2はIYSNGDYT(配列番号9)、VH CDR3はARYYGNYGGYFDY(配列番号10)、VL CDR1はQSVSNDVA(配列番号11)、VL CDR2はYAS(配列番号12)およびVL CDR3はQQDYSSPPT(配列番号13)であり;
4-8D4の場合、配列番号25の重鎖可変領域(VH)および配列番号26の軽鎖可変領域(VL)を含み;VH CDR1はGYTFTTYW(配列番号14)、VH CDR2はINPTTGYT(配列番号15)、VH CDR3はARGVRYYFDY(配列番号16)、VL CDR1はQSLLDSRTRKNY(配列番号17)、VL CDR2はWAS(配列番号18)およびVL CDR3はKQSYNLIT(配列番号19)である。
【0189】
【表1-1】
【表1-2】
【0190】
シグナルペプチドはイタリック体で示した。各クローンのVH CDR regionおよびVL CDR regionは太字で示した。
【0191】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【0192】
実施例4.ヒト化抗体の製造
前記実施例1乃至3の結果から、クローン2-2B3W、2-2B3R、2-7C5および4-8D4に対するヒト化抗体である2B3W、2B3R、7C5および8D4を製作した。製作されたヒト化抗体の配列を分析した結果は、表3に示した。
【0193】
2B3Wの場合、配列番号27の重鎖可変領域(VH)および配列番号29の軽鎖可変領域(VL)を含み;VH CDR1はGFVFSNYD(配列番号1)、VH CDR2はITIGGGTT(配列番号2)、VH CDR3はARWVYDPLYAMDY(配列番号3)、VL CDR1はESVDNYGISF(配列番号5)、VL CDR2はAAS(配列番号6)およびVL CDR3はQQSKEVPWT(配列番号7)であり;
2B3Rの場合、配列番号28の重鎖可変領域(VH)および配列番号29の軽鎖可変領域(VL)を含み;VH CDR1はGFVFSNYD(配列番号1)、VH CDR2はITIGGGTT(配列番号2)、VH CDR3はARRVYDPLYAMDY(配列番号4)、VL CDR1はESVDNYGISF(配列番号5)、VL CDR2はAAS(配列番号6)およびVL CDR3はQQSKEVPWT(配列番号7)であり;
7C5の場合、配列番号30の重鎖可変領域(VH)および配列番号31の軽鎖可変領域(VL)を含み;VH CDR1はGFTFSSFG(配列番号8)、VH CDR2はIYSNGDYT(配列番号9)、VH CDR3はARYYGNYGGYFDY(配列番号10)、VL CDR1はQSVSNDVA(配列番号11)、VL CDR2はYAS(配列番号12)およびVL CDR3はQQDYSSPPT(配列番号13)であり;
8D4の場合、配列番号32の重鎖可変領域(VH)および配列番号33の軽鎖可変領域(VL)を含み;VH CDR1はGYTFTTYW(配列番号14)、VH CDR2はINPTTGYT(配列番号15)、VH CDR3はARGVRYYFDY(配列番号16)、VL CDR1はQSLLDSRTRKNY(配列番号17)、VL CDR2はWAS(配列番号18)およびVL CDR3はKQSYNLIT(配列番号19)である。
【0194】
【表3-1】
【表3-2】
【0195】
各クローンのVH CDR regionおよびVL CDR regionは太字で示した。各クローンのエンジニアリングされたアミノ酸残基は下線で示した。
【0196】
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【0197】
実施例5.特成の分析
図7でのように、3つのヒト化抗体は、Expi293 transient expression systemを用いてヒト化抗体を生産および精製し、SDS-PAGE(7A)とELISA方法によって精製された各ヒト化抗体の定量的結合力を分析し、このうち2B3R cloneは結合力を示さなかった。ELISAは図3の実施例と類似した方法により実施し、抗体は各500ng濃度から1/2 serial dilutionして処理した。ヒト化候補抗体の純度と結合力はSEC-HPLC、SPR(7B)によってその特性を分析し、陽性対照群としてライバル社Keytruda抗体と比べた。また精製された各ヒト化抗体は、ヒトPD-1を発現する293細胞に結合させてflow cytometryによって分析した結果、3つのヒト化抗体2B3W、7C5および8D4で高い結合力を示すことで、以降、in vivo、抗癌効能分析のための候補抗体として選別した。
【0198】
実施例6.候補抗体のIn vivo効能の分析
本発明者は、前記実施例5において選別されたヒト化抗体2B3W、7C5および8D4候補抗体のIn vivo効能を分析した。
【0199】
簡略には、次のとおりである:ヒト化候補抗体のIn vivo効能の分析のために、hPD-1を発現するC57BL/6 knock-in miceにhPD-L1を発現するMC38癌細胞株(mouse colon cancer)で腫瘍モデルを作り、抗癌効能および血清内肝毒性に対するマーカーを測定した。ヒト化候補抗体2B3W、7C5、8D4を10mg/kgの濃度で3日置きで5回投与し、各ヒト化抗体あたり5匹をグループにした。
【0200】
その結果、図8Aに示したように、各グループで個体別にtumor sizeを測定したとき、ライバル社の抗体であるkeytrudaと類似に、すべての候補抗体の投与により顕著に癌の成長が抑制された。これを各グループ別にその結果値の平均値をグラフ化した。腫瘍内TIL(tumor infiltrated lymphocyte)の分析は、腫瘍がほぼ除去されて分析することができなかった。
【0201】
また、図8Bに示したように、実験終了と同時に各グループの動物から血液を採取して肝毒性の有無を分析し、本発明の抗体処理群で肝毒性の症状は観察することができなかった。
【0202】
前記データは、本発明のヒト化候補抗体2B3W、7C5および8D4が優れた抗癌効果を示すだけでなく、肝毒性がないことから生体に安全であることを確認することができた。
【0203】
実施例7.候補抗体のgene engineeringの評価
本発明者は、前記実施例5において選別されたヒト化抗体2B3W、7C5および8D4候補抗体の抗原に対する親和度を増加させるためにgene engineeringを実施し、各候補抗体を得た。各抗体の特性をSDS-PAGE、SEC-HPLCおよびSPR分析して陽性対照群であるkeytrudaと比べた。
【0204】
その結果、図9Aに示したように、2B3Wの親和度が改善された5つのクローン(clones)の抗体T14-01、T14-02、T14-03、T14-04およびT14-05を獲得し、陽性対照群であるkeytruda(9nM)と比較したとき、2B3Wから親和度の改善されたT14-05(5.8nM)の場合、抗原親和度がkeytrudaより高いものと示された。
【0205】
また、図9Bに示したように、7C5の親和度が改善された5つのクローンの抗体T15-01、T15-02、T15-03、T15-04およびT15-05を獲得し、陽性対照群であるkeytruda(9nM)と比較したとき、7C5から親和度の改善されたT15-01(9.7nM)の場合、抗原親和度がkeytrudaと類似した抗原結合力を有したものと示された。
【0206】
一方、図9Cに示したように、8D4の親和度が改善された2つのクローンの抗体T16-01およびT1-02を獲得し、陽性対照群であるkeytruda(9nM)と比較したとき、これらの抗原親和度は改善されないものと示された。
【0207】
前記のように製造されたヒト化抗体のgene engineeringされた抗体の配列は、前記の表3にともに示した。
【0208】
また、図9Dに示したように、親和度の改善された候補抗体の中で選別されたT14-05(5.8nM)とT15-01(9.7nM)抗体をライバル社の抗体Keytruda(9nM)と最終的に比較したSEC-HPLC-純度とSPR-親和度を示した。
【0209】
前記結果から抗原親和度が高いと判断されたクローン2B3W-T14-05(T14-05)および7C5-T15-01(T15-01)をさらに選別した。
【0210】
実施例8.候補抗体の目的細胞に対する結合力の評価
本発明者は、前記実施例において選別されたヒト化抗体2B3W、7C5、8D4、T14-05およびT15-01のhPD-1-過発現細胞に対する結合力をflow cytometryにより分析した。
【0211】
その結果、図10Aに示したように、すべての候補抗体は細胞の表面に発現されるhPD-1に対して優れた結合力を示した。
【0212】
また、図10Bに示したように、ヒト血液から分離したactivated hCD8 T細胞で候補抗体の結合力をflow cytometryにより分析したとき、各クローンごとに結合力の割合的な差を示し、T14-05とT15-01抗体が相対的に高い結合力を示した。
【0213】
実施例9.候補抗体のPD-1/PD-L1細胞基盤のblockade assayの評価および配列の分析
本発明者は、前記実施例において選別されたヒト化抗体2B3W、7C5、8D4、T14-05およびT15-01が、hPD-1を発現するeffector細胞と、そのreceptorであるhPD-L1を発現するAPC細胞との結合を阻害できるかについて細胞水準で分析した。
【0214】
前記実験は、PD-1/PD-L1 Blockade Bioassay(Promega)kitを用い、ヒトPD-1を発現してluciferase reporterを有するJurkat Effector cellsとヒトPD-L1を発現するCHO-K1 aAPCをco-cultureしたとき、候補抗体の処理の際に抗体がhPD-1に結合してhPD-L1との結合をblockすると、TCR signalがactivationされることでluciferaseの発現の程度を測定できる方法を用いた。各候補抗体と親和度の改善された候補抗体を比べた。
【0215】
その結果、図11Aおよび11Bに示したように、PD-L1に対する候補抗体のPD-1のblocking effectはT14-05とT15-01抗体で陽性対照群であるkeytrudaと類似した効能を示すことを確認した。
【0216】
これに対し、前記の結果に基づいてクローンT14-05およびT15-01を最終候補抗体として選別してシークエンシングした。前記クローンT14-05およびT15-01の配列を分析した結果は、前記表3にともに示した。
【0217】
2B3Wから親和度の改善されたT14-05(2B3W-T14-05)の場合、配列番号48の重鎖可変領域(VH)および配列番号49の軽鎖可変領域(VL)を含み;VH CDR1はGFVFSNYD(配列番号1)、VH CDR2はITIGGGTT(配列番号2)、VH CDR3はARWRYDPLFAMDYW(配列番号56)、VL CDR1はESVTDYGISFMN(配列番号57)、VL CDR2はAAS(配列番号6)およびVL CDR3はQQSKEVPWT(配列番号7)であり;
7C5から親和度の改善されたT15-01(7C5-T15-01)の場合、配列番号50の重鎖可変領域(VH)および配列番号51の軽鎖可変領域(VL)を含み;VH CDR1はGFTFSSFG(配列番号8)、VH CDR2はIYSNGDYT(配列番号9)、VH CDR3はARYYGNYGGYFDY(配列番号10)、VL CDR1はQSVWDDLT(配列番号58)、VL CDR2はYAS(配列番号12)およびVL CDR3はQQDYSSPPT(配列番号13)である。
【0218】
図12Aに示したように、各CDR regionは太字で標記し、親和度の改善のためにsequence engineeringされた配列は下線で標記した。候補抗体T14-05は、VHのCDR3で2つのアミノ酸が変わったT14-04のVH配列と同一であり、VLはCDR1で2つのアミノ酸が変わった。
【0219】
また、図12Bに示したように、各CDR regionは太字で標記し、親和度の改善のためにsequence engineeringされた配列は下線で標記した。候補抗体T15-01は、7C5のVH sequenceは同一であり、VLのCDR1で4つのアミノ酸が変わった。
【0220】
また、図12Cに示したように、各CDR regionは太字で標記し、親和度の改善のためにsequence engineeringされた配列は下線で標記し、8D4およびそのクローンT16-01およびT16-02配列を分析した結果を示した。
【0221】
また、図12Dに示したように、最終的に選別されたT14-05とT15-01のアミノ酸配列を、陽性対照群であるkeytrudaのアミノ酸配列と比較した結果、各CDR regionを含めて互いに異なる配列を有する新規な抗体であることを確認した。抗体は、ヒトIgG4 isotypeのヒンジ部分を抗体構造の安定化を増加することができるCPPCPアミノ酸配列を用いた。
【0222】
実施例10.候補抗体の種間Cross-Reactivityの分析
本発明者は、前記実施例において最終的に選別されたヒト化抗体T14-05およびT15-01のhuman、monkey(cynomolgus、rhesus)、canine、mouseでの結合力を各種のPD-1抗原を利用してELISAにより分析した。
【0223】
その結果、図13に示したように、最終選別されたT14-05とT15-01の二つのヒト化候補抗体は、monkeyにcross-reactivityを有し、canineとmouseでは結合力を有さなかった。
【0224】
実施例11.最終候補抗体のIn vivo効能の分析
本発明者は、前記実施例において確認されたように、親和度が改善されたヒト化候補抗体の中でも陽性対照群であるkeytruda(9nM)より親和度が高いものと示されたT14-05(5.8nM)を代表的な抗体として利用してin vivoの抗癌効能を分析した。
【0225】
In vivoの効能分析のために、hPD-1を発現するC57BL/6 knock-in miceにhPD-L1を発現するmouse colon cancer MC38細胞株を1×10cells/mouse投与して腫瘍モデルを作り、抗癌効能を分析した。T14-05抗体(EU135-T14.05)は1mg/kg、3mg/kg、および5mg/kgの3種類の濃度を3日置きに6回投与し、各抗体投与濃度あたり6匹をグループした。陽性対照群としてライバル社の抗体であるKeytrudaを5mg/kgの濃度で投与して比較分析した。Tumor sizeの測定は、1次投与日から一週間に2回ずつ測定した。マウスの腫瘍の大きさ100~150mmで平均サイズに基づいて各グループを分け、マウス個体別の数字しっぽ標識を作って、抗体投与による腫瘍の大きさを追跡した。
【0226】
その結果、図14Aに示したように、各グループで個体別にtumor sizeを分析したとき、すべての抗体投与群で腫瘍の成長率は2次抗体投与後から遅延し始め、3次抗体投与後には、腫瘍の大きさの減少および壊死現象が始まり、顕著に癌の成長が抑制される現象を観察した。このような抗癌効能は抗体の濃度によって程度の差を示した。
【0227】
また、各グループで腫瘍の大きさの結果値の平均値をグラフ化した。その結果、図14Bに示したように、対照群PBSの持続的な腫瘍の成長と比較して抗体投与群においては癌の成長の減少を示し、特に、5mg/kg濃度の投与群においては、ライバル社の抗体であるkeytrudaよりさらによい抗癌効果を示した。また、T14-05投与群においては、抗体投与濃度に依存して抗癌効能を示した。
【0228】
また、3次抗体投与後、各グループのすべての個体から血液を採取してマウスCD4とCD8 T細胞の分布率を調査した。100ulの眼窩採血された血液は1:1の割合で100ulのPBSを添加して希釈し、これを100ulのFicollの上に載せて遠心分離することで密度勾配によるPBMCを分離した。分離されたPBMCはマウスCD45、マウスCD8、そしてマウスCD4抗体を用い、その割合をflow cytometryにより分析した。
【0229】
その結果、図14Cに示したように、PBS投与対照群(G1)と比較したとき、抗体を投与したすべてのグループで癌細胞の死滅のためのマウスCD8 T細胞の割合は増加したのに対し、マウスCD4 T細胞の割合は減少した。
【0230】
前記結果により、抗体投与群で免疫殺害細胞であるCD8 T細胞の増加によって抗癌効能が示されることを意味することができる。
【0231】
以上に本発明内容の特定の部分を詳しく記述したところ、当業界の通常の知識を有した者にとって、このような具体的な技術は単に好ましい実施様態であるだけであって、これにより本発明の範囲が制限されるものではない点は明白である。従って、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とそれらの等価物によって定義されると言える。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図12D
図13
図14A
図14B
図14C
【配列表】
2023553157000001.app
【国際調査報告】