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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-20
(54)【発明の名称】炎症性貧血の治療及び予防
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20231213BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20231213BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231213BHJP
   A61K 35/18 20150101ALI20231213BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20231213BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20231213BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20231213BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20231213BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20231213BHJP
   A61K 31/165 20060101ALI20231213BHJP
   A61K 31/415 20060101ALI20231213BHJP
   A61K 31/54 20060101ALI20231213BHJP
   C07D 231/12 20060101ALI20231213BHJP
   C07D 279/16 20060101ALI20231213BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231213BHJP
   C07C 233/11 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P7/06
A61P29/00
A61K35/18
A61P31/04
A61P31/12
A61P37/02
A61P37/06
A61P13/12
A61K31/165
A61K31/415
A61K31/54
C07D231/12 CSP
C07D279/16
A61P43/00 121
C07C233/11
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535627
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(85)【翻訳文提出日】2023-08-02
(86)【国際出願番号】 NL2021050756
(87)【国際公開番号】W WO2022124900
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】20213523.2
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PLURONIC
(71)【出願人】
【識別番号】522458631
【氏名又は名称】サンキン アイピー ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ブリュッヘン,ロビン
(72)【発明者】
【氏名】クレイ,トーマス ロベルト レオン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C087
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZA55
4C084ZA81
4C084ZB07
4C084ZB11
4C084ZB26
4C084ZB33
4C084ZB35
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC36
4C086BC89
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA55
4C086ZA81
4C086ZB07
4C086ZB11
4C086ZB26
4C086ZB33
4C086ZB35
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB36
4C087NA14
4C087ZA55
4C087ZA81
4C087ZB07
4C087ZB11
4C087ZB26
4C087ZB33
4C087ZB35
4C087ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA09
4C206GA22
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA55
4C206ZA81
4C206ZB07
4C206ZB11
4C206ZB26
4C206ZB33
4C206ZB35
4C206ZC75
4H006AA03
4H006AB24
4H006BJ50
4H006BM30
4H006BM71
4H006BV51
(57)【要約】
本発明は、炎症性貧血の治療又は予防のための方法であって、それを必要としている対象に、治療有効量の、Ca2+活性化カリウムチャネル(ガルドスチャネル)の阻害剤、1つ以上のケモカインとダッフィー抗原ケモカイン受容体(DARC)との相互作用の阻害剤及び赤血球において発現される接着分子の活性化を阻害する化合物からなる群から選択される化合物を投与することを含む方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症性貧血の治療又は予防のための方法であって、それを必要としている対象に、治療有効量の、
- Ca2+活性化カリウムチャネル(ガルドスチャネル)の阻害剤、
- 1つ以上のケモカインとダッフィー抗原ケモカイン受容体(DARC)との相互作用の阻害剤、及び
- 赤血球において発現される接着分子の活性化を阻害する化合物
からなる群から選択される化合物を投与することを含む方法。
【請求項2】
炎症性貧血の治療又は予防のための方法で使用するための、
- Ca2+活性化カリウムチャネル(ガルドスチャネル)の阻害剤、
- 1つ以上のケモカインとダッフィー抗原ケモカイン受容体(DARC)との相互作用の阻害剤、及び
- 赤血球において発現される接着分子の活性化を阻害する化合物
からなる群から選択される化合物。
【請求項3】
前記化合物は、前記ガルドスチャネルの阻害剤である、請求項1又は2に記載の方法又は使用のための化合物。
【請求項4】
前記化合物は、senicapoc、TRAM-34又はNS6180である、請求項3に記載の方法又は使用のための化合物。
【請求項5】
前記化合物は、1つ以上のケモカインとDARCとの相互作用の阻害剤である、請求項1又は2に記載の方法又は使用のための化合物。
【請求項6】
前記ケモカインは、インターロイキン8(IL-8、CXCL8)、RANTES(CCL5)、CXCL5、CXCL6、CXCL11、CCL17、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CCL7、CCL11、CCL13、CCL14、CCL2、CCL1、CCL8、CCL16、CCL18、CXCL9、CXCL10、CXCL13、CXCL12及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項5に記載の方法又は使用のための化合物。
【請求項7】
前記化合物は、DARCに特異的に結合する抗体又はその抗原結合部分である、請求項5又は6に記載の方法又は使用のための化合物。
【請求項8】
前記化合物は、赤血球において発現される接着分子の活性化を阻害する化合物である、請求項1又は2に記載の方法又は使用のための化合物。
【請求項9】
赤血球において発現される前記接着分子は、Lu/BCAM及び/又はCD44である、請求項8に記載の方法又は使用のための化合物。
【請求項10】
前記治療又は予防は、赤血球脱水、赤血球の変形性の低下及び/又はLu/BCAM及びCD44など、赤血球において発現される1つ以上の接着分子の活性化を抑える、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法又は使用のための化合物。
【請求項11】
前記貧血は、溶血性貧血である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法又は使用のための化合物。
【請求項12】
前記治療は、赤血球輸血をさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法又は使用のための化合物。
【請求項13】
前記治療又は予防は、炎症性疾患、例えば細菌若しくはウイルス感染、自己免疫疾患、癌、臓器移植後の拒絶又は慢性腎疾患に罹患している対象に前記化合物を投与することを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法又は使用のための化合物。
【請求項14】
慢性炎症に罹患している対象における赤血球脱水を軽減又は予防するための方法であって、前記対象に、
- Ca2+活性化カリウムチャネル(ガルドスチャネル)の阻害剤、及び
- 1つ以上のケモカインとダッフィー抗原ケモカイン受容体(DARC)との相互作用の阻害剤
からなる群から選択される化合物を投与することを含む方法。
【請求項15】
慢性炎症に罹患している対象における赤血球脱水を軽減又は予防するための方法で使用するための、
- Ca2+活性化カリウムチャネル(ガルドスチャネル)の阻害剤、及び
- 1つ以上のケモカインとダッフィー抗原ケモカイン受容体(DARC)との相互作用の阻害剤
からなる群から選択される化合物。
【請求項16】
前記慢性炎症は、炎症性疾患、自己免疫疾患、癌又は慢性腎疾患である、請求項14又は15に記載の方法又は使用のための化合物。
【請求項17】
前記炎症性疾患は、細菌又はウイルス感染である、請求項16に記載の方法又は使用のための化合物。
【請求項18】
前記化合物は、ガルドスチャネル阻害剤である、請求項14~17のいずれか一項に記載の方法又は使用のための化合物。
【請求項19】
前記化合物は、senicapoc、TRAM-34又はNS6180である、請求項18に記載の方法又は使用のための化合物。
【請求項20】
前記化合物は、赤血球において発現されるダッフィー抗原ケモカイン受容体(DARC)へのケモカインの結合の阻害剤である、請求項14~17のいずれか一項に記載の方法又は使用のための化合物。
【請求項21】
前記ケモカインは、インターロイキン8(IL-8、CXCL8)、RANTES(CCL5)、CXCL5、CXCL6、CXCL11、CCL17、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CCL7、CCL11、CCL13、CCL14、CCL2、CCL1、CCL8、CCL16、CCL18、CXCL9、CXCL10、CXCL13、CXCL12及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項20に記載の方法又は使用のための化合物。
【請求項22】
前記化合物は、DARCに特異的に結合する抗体又はその抗原結合部分である、請求項20又は21に記載の方法又は使用のための化合物。
【請求項23】
炎症性貧血に罹患している対象におけるCa2+活性化カリウムチャネル(ガルドスチャネル)を介した赤血球からのカリウム流出を阻害するための方法であって、それを必要としている対象に、治療有効量の、
- 前記ガルドスチャネルの阻害剤、
- 1つ以上のケモカインとダッフィー抗原ケモカイン受容体(DARC)との相互作用の阻害剤、及び
- 赤血球において発現される接着分子の活性化を阻害する化合物
からなる群から選択される化合物を投与することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、特に炎症性貧血の治療法及び予防の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
炎症性貧血(AI)又は慢性疾患に伴う貧血は、自己免疫疾患、感染症及び癌を含む様々な疾患に罹患している多くの患者を侵す。AIは、全身性炎症の結果としての悪化した赤血球(RBC)分解及び減少した赤血球産生によって特徴付けられる。敗血症を含む細菌及びウイルス感染などの多くの炎症性疾患だけでなく、自己免疫疾患及び癌もAIを引き起こし得る。現在、AIは、主に赤血球(RBC)を輸血することによって治療される。輸血は、ヘモグロビン値を回復させるが、その有効性は、輸血されたものを含む全ての循環RBCの分解の増加によって損なわれ、この群の患者を血液製剤の最大の消費者の1つにしている。したがって、AIに罹患している患者におけるRBCの分解の増加及び赤血球産生の阻害が防止され得る場合、患者のケア及び輸血実施を大きく改善するであろう。したがって、それを考慮すると、赤血球産生の改善をもたらし、AI中のRBC分解を防止する手法を開発することが非常に重要である。
【0003】
したがって、AIの新規な治療法、特にRBCを輸血する現在使用されている治療法に関連する欠点を伴わない治療法が当技術分野で依然として必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明の概要
本発明の目的は、赤血球産生の改善と、AI中のRBC分解の防止とを組み合わせた、AIの治療又は予防のための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、本発明は、炎症性貧血の治療又は予防のための方法であって、それを必要としている対象に、治療有効量の、
- Ca2+活性化カリウムチャネル(ガルドスチャネル)の阻害剤、
- 1つ以上のケモカインとダッフィー抗原ケモカイン受容体(DARC)との相互作用の阻害剤、及び
- 赤血球において発現される接着分子の活性化を阻害する化合物
からなる群から選択される化合物を投与することを含む方法を提供する。
【0006】
さらなる態様では、本発明は、炎症性貧血の治療又は予防のための方法で使用するための、
- Ca2+活性化カリウムチャネル(ガルドスチャネル)の阻害剤、
- 1つ以上のケモカインとダッフィー抗原ケモカイン受容体(DARC)との相互作用の阻害剤、及び
- 赤血球において発現される接着分子の活性化を阻害する化合物
からなる群から選択される化合物を提供する。
【0007】
さらなる態様では、本発明は、炎症性貧血の治療又は予防のための薬剤の製造における、
- Ca2+活性化カリウムチャネル(ガルドスチャネル)の阻害剤、
- 1つ以上のケモカインとダッフィー抗原ケモカイン受容体(DARC)との相互作用の阻害剤、及び
- 赤血球において発現される接着分子の活性化を阻害する化合物
からなる群から選択される化合物の使用を提供する。
【0008】
好ましい実施形態では、本発明に従って治療される対象は、鎌状赤血球病に罹患していない。さらなる好ましい実施形態では、対象は、遺伝性球状赤血球症又は遺伝性乾燥赤血球症に罹患していない。
【0009】
さらなる態様では、本発明は、慢性炎症及び/又は慢性疾患に罹患している対象における赤血球脱水を軽減又は予防するための方法であって、それを必要としている対象に、治療有効量の、
- Ca2+活性化カリウムチャネル(ガルドスチャネル)の阻害剤、及び
- 1つ以上のケモカインとダッフィー抗原ケモカイン受容体(DARC)との相互作用の阻害剤
からなる群から選択される化合物を投与することを含む方法を提供する。
【0010】
さらなる態様では、本発明は、慢性炎症及び/又は慢性疾患に罹患している対象における赤血球脱水を軽減又は予防するための方法で使用するための、
- Ca2+活性化カリウムチャネル(ガルドスチャネル)の阻害剤、及び
- 1つ以上のケモカインとダッフィー抗原ケモカイン受容体(DARC)との相互作用の阻害剤
からなる群から選択される化合物を提供する。
【0011】
前記対象は、さらに好ましくは、炎症性疾患、例えばウイルス、細菌、寄生虫又は真菌感染症、敗血症、癌、自己免疫疾患(関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、脈管炎、サルコイドーシス及び炎症性腸疾患など)、臓器移植後の拒絶及び慢性腎疾患からなる群から選択される疾患に罹患している。対象は、鎌状赤血球病に罹患していないことがさらに好ましい。さらなる好ましい実施形態では、対象は、鎌状赤血球病、遺伝性球状赤血球症又は遺伝性乾燥赤血球症のいずれの1つにも罹患していない。
【0012】
さらなる態様では、本発明は、炎症性貧血に罹患している対象においてガルドスチャネルを介した赤血球からのカリウム流出を阻害するための方法であって、それを必要としている対象に、治療有効量の、
- Ca2+活性化カリウムチャネル(ガルドスチャネル)の阻害剤、
- 1つ以上のケモカインとダッフィー抗原ケモカイン受容体(DARC)との相互作用の阻害剤、及び
- 赤血球において発現される接着分子の活性化を阻害する化合物
からなる群から選択される化合物を投与することを含む方法を提供する。前記対象は、さらに好ましくは、炎症性疾患、例えばウイルス、細菌、寄生虫又は真菌感染症、敗血症、癌、自己免疫疾患(関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、脈管炎、サルコイドーシス及び炎症性腸疾患など)、臓器移植後の拒絶及び慢性腎疾患からなる群から選択される疾患に罹患している。対象は、鎌状赤血球病に罹患していないことがさらに好ましい。さらなる好ましい実施形態では、対象は、鎌状赤血球病、遺伝性球状赤血球症又は遺伝性乾燥赤血球症のいずれの1つにも罹患していない。
【0013】
詳細な説明
AIにおけるRBCの分解は、健康なRBCの破壊をもたらす増加したマクロファージ活性化の結果であると常に見なされてきた。本発明者らは、健康なRBCにおけるダッフィー抗原ケモカイン受容体(DARC)への、AI関連の炎症性ケモカイン、例えばIL-8の結合が、本質的に調節されるアポトーシス様プロセスを誘導することを見出した。最終的に、これにより、RBCがヒト脾臓の赤髄マクロファージによる食作用の標的とされる。本発明者らは、IL-8が健康な赤血球におけるCa2+流入を誘導することを見出した。これは、Ca2+イオノフォアを必要とせずに、K流出による赤血球脱水をもたらす。上記に引用される文献と対照的に、これらの発見は、炎症性貧血に罹患している患者におけるケモカイン媒介性赤血球脱水の防止に生理科学的根拠を与える。この疾患では、それ以外には健康な赤血球は、炎症状態によって誘導される高レベルのケモカインに連続して曝される。赤血球脱水が健康な状態及び罹患状態の両方でそれらの破壊に関連するとき、ケモカインに応答して赤血球脱水を防止することは、炎症性貧血における貧血を予防するのに役立ち得る。さらに、本発明者らは、DARCが赤芽球で発現されることを確立しており、炎症性ケモカインがDARC媒介性シグナル伝達を介して赤芽球増殖及び/又は分化を阻害すると考える。したがって、DARCへの炎症性ケモカインの結合は、RBC分解を誘導するだけでなく、赤血球産生に影響も与える。最後に、本発明者らは、DARCに結合するIL-8の刺激により、健康な赤血球がラミニン-α5への増加した接着を示し、これがRBCの表面におけるそのリガンドLu/BCAMの活性化に起因することを示した。以前に実証されているように(Klei et al. 2020, Blood)、ラミニン-α5とLu/BCAMとの間の相互作用は、Ca2+流入誘導性脱水後、溶血及びその後のRBCの分解を誘導する。ラミニン-α5へのRBCの増加した接着は、ガルドスチャネルの阻害剤(TRAM34)の添加によって抑えられた。したがって、ラミニン-α5への接着は、ガルドス効果によって媒介される溶血の直接的尺度である。重要なことに、炎症性サイトカイン及びケモカインを含有する敗血症患者の血清と共にインキュベートされたRBCは、Lu/BCAMの活性化及びラミニン-α5への接着も増加させ、これもTRAM34によって阻害され得る(図8)。
【0014】
現在、脾臓におけるRBC保持は、主に脱水による変形性の減少に起因することが提示されている。本発明者らは、RBC老化中、貯蔵中及び鎌状赤血球病で発生するようなRBC脱水が接着分子の活性化をもたらし、これらが一緒に循環からのRBCクリアランスをもたらすことを見出した(Klei et al. 2020, Blood)。
【0015】
炎症性貧血(AI)では、赤血球産生が減少し、RBC破壊が悪化する。本発明者らは、健康なRBCがDARCへのIL-8の結合時に破壊の標的とされ、それによりAIで観察されるような循環RBCの急速な減少をもたらすことを見出した。さらに、DARCは、様々なケモカインに同時に結合することが可能であるだけでなく、RBCの変形性及び分解に対する大きい影響と共に、RBCにおけるシグナル伝達応答にも強く影響を与えることも示された。理論によって制約されるものではないが、健康なRBCで誘発されるIL-8依存的シグナル伝達応答が赤芽球で同様に発生し、それにより慢性炎症がDARC媒介性シグナル伝達を介して赤血球産生にかなり影響し得ると考えられる。要約すると、DARC媒介性シグナル伝達は、RBCの増加した分解及びAIにおける赤血球産生の阻害をもたらすと考えられる。
【0016】
上記を考慮して、本発明者らは、AIにおけるそれ以外には健康な赤血球でのガルドス効果の阻害が魅力的な治療法を提供し、AI中に起こる複数の有害な機構を抑え、特にRBCの増加した分解及び赤血球産生の阻害をもたらす接着分子の活性化を抑えることを確立した。
【0017】
したがって、本発明は、炎症性貧血の治療又は予防のための方法で使用するための、
- Ca2+活性化カリウムチャネル(ガルドスチャネル)の阻害剤、
- 1つ以上のケモカインとダッフィー抗原ケモカイン受容体(DARC)との相互作用の阻害剤、及び
- 赤血球において発現される接着分子の活性化を阻害する化合物
からなる群から選択される化合物を提供する。
【0018】
慢性炎症及び/又は慢性疾患に罹患している対象における赤血球脱水を軽減又は予防するための方法で使用するための、
- Ca2+活性化カリウムチャネル(ガルドスチャネル)の阻害剤、及び
- 1つ以上のケモカインとダッフィー抗原ケモカイン受容体(DARC)との相互作用の阻害剤
からなる群から選択される化合物も提供される。
【0019】
本明細書で使用されるとき、「対象」という用語は、ヒト及び動物、好ましくは哺乳動物を包含する。好ましくは、対象は、哺乳動物、より好ましくはヒトである。
【0020】
本明細書で使用されるとき、「治療有効量」という用語は、治療される疾患又は病態の症状の1つ以上をある程度軽減するのに十分である、投与される化合物の量を指す。これは、症状の軽減若しくは緩和、疾患若しくは病態の原因の軽減若しくは緩和又は任意の他の所望の治療効果であり得る。
【0021】
本明細書で使用されるとき、「予防」という用語は、疾患の臨床症状を依然として生じていない対象における、疾患若しくは病態、例えば炎症性貧血若しくは赤血球脱水の発生及び/又は疾患若しくは病態の臨床症状の出現を防止するか又は遅らせることを指す。「治療」という用語は、疾患又は病態、例えば炎症性貧血を阻害すること、すなわちその発生又は疾患若しくは病態の少なくとも1つの臨床症状を停止若しくは軽減すること及び/又は疾患若しくは病態の症状を軽減することを指す。
【0022】
本明細書で使用されるとき、「減少された」は、示される活性(例えば、赤血球脱水)が、本発明に従って使用される化合物の投与前と比較して少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約15%、より好ましくは少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約25%、より好ましくは少なくとも約50%、例えば少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%減少されることを意味する。
【0023】
本明細書で使用されるとき、慢性疾患に伴う貧血(ACD)とも呼ばれる炎症性貧血(AI)は、炎症を引き起こす疾患に罹患している対象を侵す貧血のタイプを指す。特に、AIは、全身性炎症に関連する疾患に罹患している対象を侵す貧血を指す。
【0024】
本明細書で使用されるとき、「貧血」は、血液中のRBC若しくはヘモグロビンの総量の減少又は酸素を運ぶ血液の能力の低下を指す。貧血の症状は、疲労感、脱力感、息切れ、頭痛、精神錯乱及び意識消失を含む。重症貧血は、生命に関わり得る。好ましい一実施形態では、貧血は、溶血性貧血である。本明細書で使用されるとき、「溶血性貧血」という用語は、対象におけるRBCの総量の減少を指す。
【0025】
炎症性貧血は、炎症性疾患、例えばウイルス、細菌、寄生虫又は真菌感染症、敗血症、癌、自己免疫疾患、臓器移植後の拒絶又は慢性腎疾患及び炎症によって誘導され得る。本発明に係る自己免疫疾患の例としては、限定されないが、関節炎疾患、例えば関節リウマチ、若年性特発性関節炎及び乾癬性関節炎、炎症性腸疾患、例えば潰瘍性大腸炎及びクローン病、全身性エリテマトーデス、強皮症、多発性硬化症、ベーチェット病、シェーグレン症候群、慢性肝炎及び糸球体腎炎が挙げられる。癌の場合、AIは、癌自体又は化学療法などの癌治療によって引き起こされ得る。AIに関連する癌の例としては、限定されないが、癌様白血病、リンパ腫及び骨髄腫並びに消化管癌、尿路癌、男性生殖器癌、頭頸部癌及び子宮頸部癌及び膣癌が挙げられる。
【0026】
したがって、好ましい実施形態では、対象は、慢性疾患及び/又は慢性炎症に罹患している。本明細書で使用されるとき、「慢性」は、例えば、少なくとも6か月間、好ましくは少なくとも1年間にわたる持続性の又は持続的な疾患又は病状を指す。好ましい実施形態では、前記慢性炎症及び/又は慢性疾患は、炎症性疾患、例えば細菌若しくはウイルス感染、自己免疫疾患癌又は慢性腎疾患である。
【0027】
さらなる好ましい実施形態では、対象は、炎症性疾患、例えばウイルス、細菌、寄生虫又は真菌感染症、敗血症、癌、自己免疫疾患(関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、脈管炎、サルコイドーシス及び炎症性腸疾患など)、臓器移植後の拒絶及び慢性腎疾患からなる群から選択される疾患に罹患している。
【0028】
さらなる実施形態では、対象は、炎症性貧血に罹患している。
【0029】
一実施形態では、対象は、炎症性貧血に罹患しており、炎症性疾患、例えばウイルス、細菌、寄生虫又は真菌感染症、敗血症、癌、自己免疫疾患(関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、脈管炎、サルコイドーシス及び炎症性腸疾患など)、臓器移植後の拒絶及び慢性腎疾患からなる群から選択される疾患に罹患している。
【0030】
好ましい実施形態では、対象は、鎌状赤血球病に罹患していない。さらなる好ましい実施形態では、対象は、遺伝性球状赤血球症又は遺伝性乾燥赤血球症に罹患していない。
【0031】
実施例で実証され、本明細書で上述されるように、本明細書に記載される方法に関して考えられるガルドス効果の阻害は、赤血球に対していくつかの影響を与える。特に、赤血球脱水、赤血球の変形性の低下及び赤血球において発現される接着分子の活性化の1つ以上が考えられる。したがって、治療又は予防は、好ましくは、赤血球脱水、赤血球の変形性の低下及び/又はLu/BCAM及びCD44など、赤血球において発現される1つ以上の接着分子の活性化を抑え、好ましくは赤血球脱水、赤血球の変形性の低下並びにLu/BCAM及びCD44など、赤血球において発現される1つ以上の接着分子の活性化の全てを抑える。
【0032】
本明細書で使用されるとき、「抑える」は、示される影響が減少されること又はその進行が停止若しくは減速されることを意味する。例えば、赤血球脱水を抑えることは、脱水が減少されること又は脱水の進行が停止若しくは減速されることを意味する。本明細書で使用されるとき、「減少された」は、示される活性が、本発明に従って使用される化合物の投与前と比較して少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約15%、より好ましくは少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約25%、より好ましくは少なくとも約50%、例えば少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%減少されることを意味する。本明細書で使用されるとき、「進行が停止される」は、関連する影響が、本発明に従って使用される化合物の投与前と比較してほぼ同じレベルに維持されることを意味する。本明細書で使用されるとき、「進行が減速される」は、関連する影響が、本発明に従って使用される化合物の投与前と比較して、より低い程度であるが、依然として増加していることを意味する。
【0033】
本明細書で使用されるとき、「赤血球の変形性」は、溶血せずに形状を変化させる赤血球の能力を指す。変形性は、毛細血管及び脾洞内の通過の成功に不可欠である。「赤血球の変形性の低下」は、赤血球が変形する、すなわちその形状を変化させる能力の低下を指す。赤血球の変形性及び本発明に従って使用される化合物が変形性の低下を抑えるか又は阻害するか否かは、当技術分野で公知の任意の好適な方法を用いて、例えば化合物の存在下及び非存在下において、Van Zwieten et al.(参照により本明細書に援用される)によって記載されるように、30ダイン/cm(3Pa)のせん断応力で自動化検流器及び細胞分析装置(ARCA)を用いて測定され得る。
【0034】
本明細書で使用されるとき、「赤血球脱水」は、細胞内脱水、特に細胞内へのCa2+の漏出並びにK及びHOの流出を指す。脱水は、典型的には、平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)の増加及び赤血球の密度の増加をもたらす。化合物が赤血球の脱水を阻害することができるか否かは、当技術分野で公知の任意の方法によって決定され得る。例えば、赤血球からのカリウム流出は、赤血球脱水の尺度として決定され得る。例えば、細胞アッセイを用いて、検出可能な形態又は86Rbなどのカリウムの類似体が測定される。例えば、赤血球は、86Rbに曝され、化合物の存在下及び非存在下におけるその取り込みが測定され得る。代わりに、赤血球中のK含量は、イオン選択性電極を用いて決定され得る。
【0035】
赤血球(RBC)脱水は、鎌状赤血球貧血、遺伝性乾燥赤血球症(HX)及び球状赤血球症(HS)を含むいくつかの血液疾患に特有の特徴であるが、健康なRBCと以前には関連付けられていなかった。鎌状赤血球貧血は、赤血球の鎌状赤血球化、慢性溶血性貧血及び微小循環の閉塞によって特徴付けられる。鎌状赤血球病では、ヘモグロビンのβ-グロビンサブユニットにおける点突然変異は、鎌状ヘモグロビン(HbS)として知られているものをもたらす。低い酸素圧でHbSが重合し、線維性沈殿物を形成し、これが血管閉塞性発作の発生を引き起こし得る。脱水された鎌状赤血球は、特に酸素圧も低い条件下でさらに鎌状になりやすい。Ca2+活性化K流出チャネル(ガルドスチャネル)の活性化は、鎌状赤血球脱水の主な原因である。したがって、ガルドスチャネルの遮断は、鎌状赤血球病における血管閉塞性発作を防止するための可能な治療手法として提示されている(例えば、Rivera et al. 2020)。しかしながら、Rivera et al.は、流出の代わりに、Caイオノフォア依存性K流入を測定している。K流入は、ガルドスチャネルを介して調節されず、赤血球脱水の原因ではない。さらに、ガルドスチャネル阻害剤Senicapocによる鎌状赤血球患者の治療を示したAtaga et al.は、血管閉塞性イベントの減少をもたらさなかった。鎌状赤血球でも、IL-8及びRANTESの存在下におけるDARC陽性鎌状赤血球の脱酸素時の細胞内Kの損失が記載されている(Durpes et al. 2010)。
【0036】
好ましい実施形態では、本発明に従って使用される化合物は、ガルドスチャネルとも呼ばれるCa2+活性化カリウムチャネルの阻害剤である。ガルドスチャネルは、ヒト赤血球からのCa2+依存的K流出に関与し、これは、そのため、ガルドス効果としても知られている。本明細書で使用されるとき、「ガルドスチャネルの阻害剤」は、好ましくは、炎症性貧血におけるこのチャネルを介した赤血球からのカリウム流出を阻害することができる化合物を指す。本明細書で使用されるとき、「阻害する」は、好ましくは、赤血球脱水が減少されるようにカリウム流出が減少されることを意味する。好ましくは、カリウム流出は、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約15%、より好ましくは少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約25%、より好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%減少される。一実施形態では、ガルドスチャネルを介したカリウム流出は、本質的にブロックされるか又はブロックされる。
【0037】
いずれのガルドスチャネル阻害剤も本発明に係る使用のために好適である。このような阻害剤の多くは、当技術分野で現在知られており、これらは、全て本発明で使用するのに好適である。ガルドスチャネル阻害剤の非限定的な例は、カリブドトキシン、イミダゾール及びトリアゾール誘導体、例えばクロトリマゾール(CLT)及びTRAM-34(1-[(2-クロロフェニル)ジフェニルメチル]-1H-ピラゾール)などの類似体、ミコナゾール、エコナゾール、ブトコナゾール、オキシコナゾール及びスルコナゾール、ICA-17043(senicapoc(登録商標)としても知られている4-フルオロ-α-(4-フルオロフェニル)-α-フェニル-ベンゼンアセトアミド)、NS6180(4-[[3-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]-2H-1,4-ベンゾチアジン-3(4H)-オン)、11-フェニル-ジベンザゼピン、ジフェニルインダノン、スルホンアミド、ニフェジピン、4-フェニル-4H-ピラン及びシクロヘキサジエン及び(二環式)シクロヘキサジエンラクトンである。好適なガルドスチャネル阻害剤は、米国特許第6028103号、米国特許出願公開第2007185209号、米国特許出願公開第2009036538号、米国特許出願公開第2010056637号、米国特許第6288122号、米国特許第5441957号、米国特許第5273992号、米国特許第7709533号、欧州特許第0781128号、国際公開第96/08242号、国際公開第2005/003143号、国際公開第97/34589号、国際公開第00/50026号、国際公開第99/24034号、米国特許第7119112号、国際公開第2004/016221号、米国特許出願公開第20030134842号、国際公開第99/026628号、米国特許出願公開第20020119953号、米国特許出願公開第20090076157号、米国特許出願公開第2009186810号及びWulff and Castle (2012)にさらに記載されており、これらの文献は、参照により本明細書に援用される。ガルドスチャネル阻害剤のさらに別の例は、ガルドスチャネルを介したカリウム流出をブロックする抗体又はその抗原結合部分である。
【0038】
好ましい実施形態では、ガルドスチャネル阻害剤は、クロトリマゾール、TRAM-34、Senicapoc、NS6180からなる群、より好ましくはクロトリマゾール、TRAM-34及びSenicapocからなる群から選択され、より好ましくは、阻害剤は、TRAM-34又はSenicapocである。
【0039】
別の好ましい実施形態では、本発明に従って使用される化合物は、好ましくは、赤血球における1つ以上のケモカインとダッフィー抗原ケモカイン受容体(DARC)との相互作用の阻害剤である。このような阻害剤は、本明細書で「DARC阻害剤」とも呼ばれる。好ましくは、インターロイキン-8(IL-8、CXCL8)、RANTES(CCL5)、MCP-1(CCL2)、CXCL5、CXCL6、CXCL8、CXCL11、CCL17、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CCL7、CCL11、CCL13、CCL14、CCL1、CCL8、CCL16、CCL18、CXCL9、CXCL10及びCXCL13からなる群から選択される1つ以上のケモカインの少なくとも結合が阻害される。最も好ましくは、DARCとのIL-8及びRANTESの少なくとも1つの相互作用が阻害され、最も好ましくはIL-8及びRANTESの両方の相互作用が阻害される。相互作用は、好ましくは、ガルドスチャネルを介したカリウム流出をもたらす1つ以上のプロセスが阻害されるように阻害される。
【0040】
本明細書で使用されるとき、「1つ以上のケモカインとDARCとの相互作用の阻害剤」は、好ましくは炎症性貧血において、赤血球におけるDARCへの1つ以上のケモカインの結合を阻害することができる化合物を指す。本明細書で使用されるとき、「阻害する」は、好ましくは、赤血球脱水が減少されるように結合が減少されることを意味する。好ましくは、1つ以上のケモカインの結合、より好ましくはカリウムの流出は、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約15%、より好ましくは少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約25%、より好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%減少される。一実施形態では、DARCへの1つ以上のケモカインの結合は、本質的にブロックされるか又はブロックされる。さらなる好ましい実施形態では、ガルドスチャネルを介したカリウム流出は、本質的にブロックされるか又はブロックされる。
【0041】
DARCへの少なくとも1つのケモカインの結合を阻害するいずれの化合物も本発明の方法で有用である。結合をブロックするいずれの機構も用いられ得る。化合物は、好ましくは、DARCへの結合によってDARCへのケモカインの結合をブロックする。
【0042】
好ましい実施形態では、1つ以上のケモカインとDARCとの相互作用の阻害剤は、DARCに特異的に結合する抗体又はその抗原結合部分である。本明細書で使用されるとき、「特異的に結合する」及び「に特異的な」という用語は、抗体又はその抗原結合部分とそのエピトープとの間の相互作用を指す。これらの用語は、前記抗体又はその部分が他のアミノ酸配列若しくは抗原の部分又は他の抗原よりも前記エピトープに優先的に結合することを意味する。抗体又は部分は、他の部分、アミノ酸配列又は抗原に非特異的に結合し得るが、そのエピトープに対する前記抗体又は部分の結合親和性は、他の部分、アミノ酸配列又は抗原に対する前記抗体又は部分の非特異的な結合親和性よりかなり高い。好ましくは、抗体又はその部分は、ブロッキング抗体又はその部分である。一実施形態では、その部分の抗体は、DARC Fy6エピトープに結合し、これは、IL-8などのケモカインによって結合されたエピトープである。好ましくは、抗体又はその部分は、ヒト若しくはヒト化抗体又はその部分である。当技術分野で公知のDARCへのケモカインの結合を阻害する、ヒト又はヒト化マウス抗体を含むいずれの抗DARC抗体又は抗Fy6抗体も本発明に従って使用され得る。本発明で使用するための例示的なDARC抗体は、抗DARC抗体 Fy6、欧州特許出願公開第1877030号若しくはPatterson et al., (2002)によって記載される抗体(これらの文献は、両方とも参照により本明細書に援用される)、抗Fya抗体、抗Fyb抗体及び/又は抗Fy3抗体である。これらの抗体は、好ましくは、ヒト又はヒト化抗体である。本発明で使用するための好適な抗DARC抗体は、例えば、ドナーの血液に由来し得、好ましくはドナー血漿から単離される。したがって、好ましい実施形態では、1つ以上のケモカインとDARCとの相互作用の阻害剤は、抗Fya抗体又はその抗原結合部分、抗Fyb抗体又はその抗原結合部分、抗Fy3抗体又はその抗原結合部分、抗Fy6抗体又はその抗原結合部分及びそれらの組合せからなる群から選択され、より好ましくは抗Fya抗体、抗Fyb抗体、抗Fy3抗体、抗Fy6抗体及びそれらの組合せからなる群から選択される。このような抗体は、例えば、Sanquin(Amsterdam, the Netherlands)から市販されている。
【0043】
別の好ましい実施形態では、本発明に従って使用される化合物は、赤血球において発現される接着分子の活性化を阻害する化合物である。本明細書で使用されるとき、「赤血球において発現される接着分子の活性化」は、赤血球の表面における任意の接着分子の活性化の増加を指す。このような接着分子の非限定的な例は、Lu/BCAM、CD44、CD47、CD147、LW/ICAM-4)である。好ましい実施形態では、赤血球において発現される少なくともLu/BCAM及び/又はCD44の活性化が考えられる。接着分子の活性化及び化合物がこのような活性化を阻害するか否かは、当技術分野で公知の任意の方法を用いて決定され得る。これは、例えば、本明細書における実施例で実証されるように、Lu/BCAM及びCD44のそれぞれのリガンドである、ラミニン-α5及びヒアルロン酸などの基質への赤血球の接着を定量することによって行われる。したがって、好ましくは、「赤血球において発現される接着分子の活性化」は、ラミニン-α5及び/又はヒアルロン酸(HA)への赤血球の増加した接着によって決定される、Lu/BCAM及びCD44接着分子の増加した活性化を指す。
【0044】
本明細書で使用されるとき、「赤血球において発現される接着分子の活性化を阻害する化合物」は、炎症性貧血における赤血球の分解が減少されるように、接着分子の活性化を阻害することができる化合物を指す。したがって、本明細書で使用されるとき、「阻害する」は、好ましくは、赤血球分解が減少されるように、赤血球における接着分子の活性化が減少されることを意味する。好ましくは、赤血球における接着分子の活性化は、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約15%、より好ましくは少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約25%、より好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%減少される。一実施形態では、赤血球における少なくとも1つの接着分子の活性化は、本質的にブロックされるか又はブロックされる。
【0045】
活性化が本発明に従って阻害され得るこのような接着分子の非限定的な例は、Lu/BCAM、CD44、CD47、CD147及びLW/ICAM-4である。好ましい実施形態では、赤血球において発現される少なくともLu/BCAM及び/又はCD44の活性化が阻害される。
【0046】
赤血球における接着分子の活性化を阻害するいずれの化合物も本発明の方法で有用である。好適な例としては、抗Lu/BCAM、抗CD44、抗CD47、抗CD147及び/又は抗LW/ICAM-4抗体など、接着分子に対する抗体が挙げられる。当業者は、例えば、接着分子によって特異的に認識されるリガンドへの赤血球の接着の頻度を測定することにより、化合物が赤血球における前記接着分子の活性化を阻害するかどうかを決定することが十分に可能である。このような測定のための好適な実験は、本明細書で実施例に記載されるフローアッセイであり、ここで、例えば敗血症患者のIL-8又は血清に応答してラミニン-α5又はヒアルロン酸への赤血球接着が増加される。化合物が赤血球における接着分子の活性化を阻害することが可能であるか否かは、このような化合物が、敗血症患者のIL-8又は血清に応答して赤血球の増加した接着を阻害することが可能であるか否かを判断することによって評価され得る。
【0047】
本発明に従って使用される化合物は、好ましくは、化合物と、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤及び/又は賦形剤とを含む医薬組成物において投与される。「薬学的に許容される」とは、担体、希釈剤又は賦形剤が製剤の他の成分と適合しなければならず、そのレシピエントに有害でないことを意味する。一般に、活性化合物の機能を妨げない任意の薬学的に好適な添加剤が使用され得る。本発明に従って使用される医薬組成物は、好ましくは、ヒト使用に好適である。
【0048】
好適な担体の例は、溶液、ラクトース、でんぷん、セルロース誘導体など、又はそれらの混合物を含む。好ましい実施形態では、前記好適な担体は、溶液、例えば生理食塩水である。投与単位、例えば錠剤を作製するために、充填剤、着色剤、ポリマーバインダーなどの従来の添加剤の使用が考えられる。錠剤、カプセルなどに組み込まれ得る賦形剤の例は、ゴムトラガカント、アカシア、トウモロコシでんぷん又はゼラチンなどのバインダー;微結晶性セルロースなどの賦形剤;トウモロコシでんぷん、アルファでんぷん、アルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤;スクロース、ラクトース又はサッカリンなどの甘味料;ペパーミント、ウィンターグリーン又はチェリーの油などの香味剤である。投薬単位形態がカプセルである場合、それは、上記のタイプの材料に加えて、脂肪油などの液体担体を含有し得る。コーティングとして又は他に投薬単位の物理的形態を改変するために、様々な他の材料が存在し得る。例えば、錠剤は、シェラック、糖又は両方で被覆され得る。シロップ又はエリキシル剤は、活性化合物、甘味料としてのスクロース、防腐剤としてのメチル及びプロピルパラベン、色素及びチェリー又はオレンジ香料などの香味料を含有し得る。静脈内投与用の組成物は、例えば、滅菌等張水性緩衝液中の本発明の化合物の溶液であり得る。必要に応じて、静脈内組成物は、例えば、可溶化剤、安定剤及び/又は注射部位における疼痛を軽減するための局所麻酔薬を含み得る。
【0049】
化合物の好適な投与経路は、当業者の能力の範囲内である。本発明に従って使用される化合物は、様々な経路によって対象に投与され得る。例えば、化合物は、例えば、局所(例えば、クリーム、軟膏、点眼剤)又は鼻腔内(例えば、溶液、懸濁液)を含む任意の好適な非経口又は経口経路によって投与され得る。非経口投与は、例えば、関節内、筋肉内、静脈内、脳室内、動脈内、髄腔内、皮下又は腹腔内投与を含み得る。さらに、化合物は、病院内で医療従事者から注入又は注射によって対象に投与され得る。特に、小分子は、経口又は非経口経路によって投与され得る。抗体及びその部分を含むタンパク性分子も経口又は非経口経路によって対象に投与され得るが、好ましくは注射又は注入、好ましくは静脈注射又は注入によって投与される。
【0050】
これらの化合物及びその組成物の正確な用量及びレジメンは、化合物自体の生物学的活性、対象の年齢、体重及び性別、薬剤が投与される個々の対象の要求、苦痛の程度又は医師の要求及び判断に依存するであろう。一般に、非経口投与は、吸着により依存する投与の他の方法より少ない投与量を必要とする。しかしながら、ヒト用の投与量は、好ましくは、体重1kg当たり0.001~10mgである。一般に、腸内及び非経口投与量は、総有効成分の1日当たり0.1~1.000mgの範囲であろう。
【0051】
本明細書で上述されるように、炎症性貧血の現在の治療は、赤血球の損失を補うために、全血又はその分画を含有する赤血球のいずれかの輸血を含む。しかしながら、輸血の有効性は、内因性赤血球の分解に加えて、輸血された赤血球の増加した分解によって損なわれる。本発明者らは、炎症性貧血における赤血球脱水及び分解を抑える可能性を確認したため、両方の治療を組み合わせることにより、輸血された赤血球の脱水及び/又は分解を抑えることも可能になった。したがって、本発明の一実施形態では、本発明に係る化合物による炎症性貧血の治療又は予防は、赤血球輸血と組み合わされる。これは、患者に、全血の輸血又は赤血球を含有するか若しくは含む血液分画の輸血など、赤血球を輸血するための任意のタイプの輸血であり得る。このように、内因性赤血球及び輸血された赤血球の脱水及び分解の両方が抑えられる。このような組合せ療法は、その場合、赤血球数が、炎症性貧血に罹患している対象で典型的に既に低下しているため、炎症性貧血の治療で特に有利である。
【0052】
特徴は、明確さ及び簡潔な説明のために、本発明の同じ又は別個の態様又は実施形態の一部として本明細書に記載され得る。本発明の範囲は、同じ又は別個の実施形態の一部として本明細書に記載される特徴の全て又はいくつかの組合せを有する実施形態を含み得ることが当業者によって理解されるであろう。
【0053】
本発明は、以下の非限定的な例でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図面の簡単な説明
図1A】脾臓における老化RBCは、変形しにくく、活性化された接着分子を発現する。ヒト脾臓組織をコラゲナーゼ緩衝液で処理して、RBCを単離する単一細胞懸濁液を生成した。ヒト脾臓及び循環に由来するRBCを溶解させ、細胞内カリウムをイオン選択性電極(脾臓RBC n=2)によって測定した。
図1B】脾臓における老化RBCは、変形しにくく、活性化された接着分子を発現する。自動化検流器及び細胞分析装置を用いて、循環及び脾臓に由来するRBCの変形性を測定した。RBCを10ダイン/cmのせん断応力にかけ、その後、RBCが変形する能力(幅に対する長さの比率)を自動的に測定した。黒色の棒のある線は、5人の健康な対照の変形性を示し、灰色は、2人の脾臓試料からのRBCの変形性を示す。
図1C】脾臓における老化RBCは、変形しにくく、活性化された接着分子を発現する。循環及び脾臓に由来するRBCを0.2ダイン/cmのせん断応力下でヒアルロン酸又はラミニン-α5被覆チャンバーに流した。RBCがラミニン-α5に確実に接着するが、代わりにヒアルロン酸の上を転がるとき、これらの2つのパラメータがEVOS顕微鏡法によって定量され、接着分子活性化4、5についての読み取りである(N=4~5、t検定、P<0.05)。
図2A】RBC脱水は、接着分子活性化に関連している。RBCを密度遠心分離によって単離して、古いRBCを得るか、又は鎌状赤血球患者の全血から若しくはRBC貯蔵培地生理食塩水アデニングルコースマンニトール(SAGM)中で4週間にわたる貯蔵後に単離し、その後、細胞内カリウムをイオン選択性電極によって測定した(n=3~8、一元配置ANOVA;**P<0.01;***P<0.001)。
図2B】RBC脱水は、接着分子活性化に関連している。合計で1e7個の対照RBC、古いRBC、貯蔵RBC及び鎌状RBCを0.2ダイン/cmでラミニン-α5 IBIDIチャンバーに流し、接着頻度を顕微鏡法によって評価した(n=3~7、一元配置ANOVA、±SEM)。
図2C】RBC脱水は、接着分子活性化に関連している。同じフロー実験をヒアルロン酸について行った。ここで、ローリング頻度を接着頻度の代わりに定量した(n=3~7、t検定、±SEM、P<0.05;**P<0.01;***P<0.001;****P<0.0001)。
図3】炎症性貧血のマウスモデル。AIを誘導するために、動物に熱殺菌Bアボルツス(B abortus)(菌株1119-3)の、1マウス当たり5×108個の粒子を腹腔内注射した。対照マウスに生理食塩水を腹腔内注射した。
図4A】RBCへのIL-8の結合は、RBCの脱水及び接着分子活性化をもたらす。合計で1×106個のRBCを37Cで30分間にわたって50nMのIL-8と共にインキュベートした。この期間中、Ca2+流入(Fluo4)をフローサイトメトリーによって測定した(n=4、t検定、P<0.05)。
図4B】RBCへのIL-8の結合は、RBCの脱水及び接着分子活性化をもたらす。合計で1×106個のRBCを37Cで30分間にわたって50nMのIL-8と共にインキュベートした。この期間中、Ca2+流入(Fluo4)をフローサイトメトリーによって測定した(n=4、t検定、P<0.05)。
図4C】RBCへのIL-8の結合は、RBCの脱水及び接着分子活性化をもたらす。50nMのIL-8に曝されたRBCの変形性をARCAによって評価した。
図5A】赤血球前駆体は、DARC依存的にSDF-1に結合する。合計で1×106個のRBCを37Cで30分間にわたって50nMのIL-8と共にインキュベートした。この期間中、Ca2+流入(Fluo4)をフローサイトメトリーによって測定した(n=4、t検定、P<0.05)。
図5B】赤血球前駆体は、DARC依存的にSDF-1に結合する。Fy6 DARCエピトープをモノクローナル抗体によって染色し、フローサイトメトリーによって定量した。データをRBCに対して正規化した(n=6、一元配置ANOVA、P<0.05、**P<0.01)。
図6A】IL-8は、RBCへのSDF-1結合を促進し、これがRBCの脱水をもたらす。SDF-1を50nMのIL-8の非存在下又は存在下で網状赤血球又はRBCに加えた。網状赤血球へのSDF-1結合をフローサイトメトリーによって定量した(N=4、一元配置ANOVA、**P<0.01、***P<0.001)。
図6B】IL-8は、RBCへのSDF-1結合を促進し、これがRBCの脱水をもたらす。SDF-1を50nMのIL-8の非存在下又は存在下で網状赤血球又はRBCに加えた。網状赤血球へのSDF-1結合をフローサイトメトリーによって定量した(N=4、一元配置ANOVA、**P<0.01、***P<0.001)。
図6C】IL-8は、RBCへのSDF-1結合を促進し、これがRBCの脱水をもたらす。50nMのIL-8をSDF-1の存在下又は非存在下でRBCに加え、Ca2+流入をフローサイトメトリー(Fluo-4)によって定量した。
図6D】IL-8は、RBCへのSDF-1結合を促進し、これがRBCの脱水をもたらす。ARCAによって評価したときの、対照並びに50nMのIL-8及び1μMのSDF-1で処理されたRBCの変形性。
図6E】IL-8は、RBCへのSDF-1結合を促進し、これがRBCの脱水をもたらす。合計で1e7個の対照、IL-8刺激及び脾臓RBCをラミニン-α5及びヒアルロン酸被覆IBIDIチャンバーに流した。接着及びローリング頻度を上述のように定量した。
図6F】IL-8は、RBCへのSDF-1結合を促進し、これがRBCの脱水をもたらす。SDF-1を、培養された赤芽球に加えた。分化の様々な段階をCD71及びCD235a発現に基づいて確認した。SDF-1結合をフローサイトメトリーによって定量した(n=4、一元配置ANOVA、***P<0.001)。
図7】炎症性貧血におけるDARCの役割のモデル。炎症性貧血の病態生理学におけるDARCの仮定された役割がRBC破壊のレベル及び赤血球産生の阻害の両方について示される。
図8A】敗血症患者からのIL-8及び血清に応答したラミニン-α5へのドナーRBCの接着。ドナーRBCを接着アッセイ前に37℃で30分間にわたってIl-8と共にインキュベートした。
図8B】敗血症患者からのIL-8及び血清に応答したラミニン-α5へのドナーRBCの接着。ドナーRBCをまず30分間にわたってTRAM34と共に、次に接着アッセイ前に37℃で30分間にわたってIL-8と共にインキュベートした。
図8C】敗血症患者からのIL-8及び血清に応答したラミニン-α5へのドナーRBCの接着。ドナーRBCをまず30分間にわたって抗DARC抗体と共に、次に接着アッセイ前に37℃で30分間にわたってIL-8と共にインキュベートした。
図8D】敗血症患者からのIL-8及び血清に応答したラミニン-α5へのドナーRBCの接着。ドナーRBCをまず30分間にわたってTRAM34又は抗DARC抗体と共に、次に接着アッセイ前に37℃で30分間にわたって敗血症患者の血清と共にインキュベートした。
【発明を実施するための形態】
【0055】
実施例
実施例1
材料及び方法
血液試料並びに高密度及び低密度赤血球の単離
ヘパリン化静脈血をインフォームドコンセント後に健康なボランティアから得た。血液検査は、Medical Ethical Committee of Sanquin Researchによって承認され、the 2013 Declaration of Helsinkiに従って行われた。赤血球を15分間にわたって240gで全血の遠心分離によって単離した。次に、血漿及び軟膜を除去し、赤血球を生理食塩水-アデニン-グルコース-マンニトール培地(SAGM培地、150mMのNaCl、1.25mMのアデニン、50mMのグルコース、29mMのマンニトール、pH5.6;Fresenius SE)で2回洗浄した。次に、洗浄された赤血球を実験に使用するか、又は最大で4週間にわたってSAGM中で貯蔵した。高密度及び低密度赤血球を、Percoll(GE Healthcare, Little Chalfont, UK)密度遠心分離を用いて単離した。簡潔に述べると、等張Percollを、100mlのPercoll当たり8.1mlの10×PBSを加えることによって調製した。次に、Percoll緩衝液(26.3g/LのBSA、132mMのNaCl、4.6mMのKCl、10mMのHEPES)を用いて、等張Percollを1.096g/mL(80%)、1.087g/mL(71%)、1.083g/mL(67%)1.080g/mL(64%)及び1.060g/mL(40%)まで希釈した。Percoll希釈物を15mL管中に積み重ね、2mLの単離された赤血球を上部に加え、室温で15分間にわたって2100gで遠心分離した。1.096g/mLのPercollより高密度の分画から単離された赤血球を高密度の老化赤血球として定義した一方、1.080g/mLのPercollより低密度の赤血球を本明細書では低密度の若い赤血球として定義した。
【0056】
フローサイトメトリー及び染色手順
フローサイトメトリー分析をLSRII+HTS(BD Biosciences, Franklin Lakes, US)に対して行い、データをFACS Divaソフトウェア(BD Biosciences, Franklin Lakes, US)によって分析した。赤血球を、1μMのFLUO-4(Invitrogen, Carlsbad, US)又は0.4%のpluronicを補充された0.1μMのPBFI(Invitrogen, Carlsbad, US)のいずれかで染色し、500uMのプロプラノロール又は10uMのバリノマイシン(All Sigma-Aldrich, Spruce, US)で刺激した。ブロッキング実験を、25μMのBAPTA-AM、10μMのTRAM-34、25μMのカルパイン1阻害剤(A6185)、1μg/mlのDFP(All Sigma-Aldrich, Spruce, US)又は40μMのZVAD-FMK(R&D systems, Minneapolis, US)を用いて行った。α2,3-結合シアル酸を、ビオチン化イヌエンジュ(Maackia Amurensis)II型レクチン(Vector Laboratories, Peterborough, UK)、続いてストレプトアビジンalexa fluor 488コンジュゲーション(ThermoFisher, Waltham, US)を用いたフローサイトメトリーによって定量した。赤血球におけるグリコホリン-A及びグリコホリン-C発現を抗グリコホリン-A-PE(M1732、Sanquin, Amsterdam, NL)及び抗GpC(BRIC10及びBRIC4、IBRGL(Bristol)製の製品)によって定量した。本発明者らが赤血球及びその前駆体へのSDF-1結合を決定する、あらゆるフローサイトメトリー実験では、本発明者らは、補足の表1に列挙されるビオチン化SDF-1抗体、続いてストレプトアビジン-647コンジュゲーションを使用した。その後、本発明者らは、核染色(hoechst)、抗トランスフェリン受容体(抗CD71-FITC)及びグリコホリン-A染色(抗CD235a-PE)を伴って赤血球発生の様々な段階を区別した。SDF相互作用及び非相互作用網状赤血球におけるFyエピトープ露出(例えば、Fy、Fy、Fy又はFy)を決定する場合などでさらなる染色を行う必要があった場合、本発明者らは、順序を入れ替えて、抗原特異的染色を確実にした。簡潔に述べると、本発明者らは、まずFyエピトープについて、続いて二次抗ヒト-405(Fy及びFyの場合)又は抗マウス-405(Fy又はFyの場合)について染色し、その後、本発明者らは、SDF、続いてストレプトアビジン-647コンジュゲーションについて染色し、その後、本発明者らは、抗CD71-FITC及び抗235a-PE)を伴った。抗原特異的染色をさらに確実にするために、本発明者らは、適切なIgGアイソタイプコントロールを伴った。赤血球細胞へのSDF-1の外からの添加を30分間にわたって37℃で行った一方、染色を4℃で行った。
【0057】
赤血球変形性
若い及び老化赤血球の変形性を、上述されるように(van Zwieten et al.)、30ダイン/cm(3Pa)のせん断応力で自動化検流器及び細胞分析装置(ARCA)を用いて測定した。
【0058】
フローアッセイ
ラミニン-α5及びヒアルロン酸への赤血球接着を、非被覆IBIDI u-slideVI0.4又はibiTreatμ-slideVI0.4フローチャンバー(IBIDI)における受動吸着によって1レーン当たりHEPES緩衝液(132mMのNaCl、20mMのHEPES、6mMのKCl、1mMのMgSO、1.2mMのKHPO、1mMのCa2+、全てSigma-Aldrich(Spruce,US)製)中で希釈された0.5μgのラミニン-511(BioLamina, Sundyberg, Sweden)又は7.5ugのヒアルロン酸(Sigma-Aldrich, Spruce, US)を被覆することによって評価した。特に記載されない限り、赤血球をHEPES培地(0.5%のヒト血清アルブミン及び1mg/mlのグルコースを補充された上記のHEPES緩衝液)に流した。接着をEVOS顕微鏡法(ThermoFisher, Waltham, US)及び画像分析ソフトウェアVision4D(Arivis, Rostock, Germany)によって定量した。実験データを、Graphpad Prism 6ソフトウェアを用いて分析した。図の説明中に特に示されない限り、データは、平均±SDとして示される。データは、正規分布を辿ると仮定された。
【0059】
赤芽球培養
混合段階の赤芽球及び網状赤血球を上述のように培養した(van den Akker et al.;Leberbauer et al.、Heideveld et al.)。
【0060】
敗血症患者からのIL-8及び血清に応じたラミニン-α5へのドナーRBCの接着。
ラミニン-α5及びヒアルロン酸への赤血球接着を、非被覆IBIDI u-slideVI0.4又はibiTreatμ-slideVI0.4フローチャンバー(IBIDI)における受動吸着によって1レーン当たりHEPES緩衝液(132mMのNaCl、20mMのHEPES、6mMのKCl、1mMのMgSO4、1.2mMのK2HPO4、1mMのCa2+、全てSigma-Aldrich(Spruce, US)製)中で希釈された0.5μgのラミニン-511(BioLamina, Sundyberg, Sweden)又は7.5ugのヒアルロン酸(Sigma-Aldrich, Spruce, US)を被覆することによって評価した。特に記載されない限り、赤血球をHEPES+培地(0.5%のヒト血清アルブミン及び1mg/mlのグルコースを補充された上記のHEPES緩衝液)に流した。接着をEVOS顕微鏡法(ThermoFisher, Waltham, US)及び画像分析ソフトウェアVision4D(Arivis, Rostock, Germany)によって定量した。実験データを、Graphpad Prism 6ソフトウェアを用いて分析した。図の説明中に特に示されない限り、データは、平均±SDとして示される。データは、正規分布を辿ると仮定された。
【0061】
ドナーRBCを接着アッセイ前に37℃で30分間にわたってIl-8と共にインキュベートした。TRAM34の効果を決定するために、ドナーRBCをまず30分間にわたってTRAM34(Sigma-Aldrich, Inc)と共に、次に接着アッセイ前に37℃で30分間にわたってIL-8と共にインキュベートした。抗DARC抗体の効果を決定するために、ドナーRBCをまず30分間にわたって抗DARC抗体(ヒトドナー血漿から単離された、Sanquin(Amsterdam, the Netherlands)から市販されている)と共に、次に接着アッセイ前に37℃で30分間にわたってIL-8と共にインキュベートした。敗血症患者の血清の効果を決定するために、ドナーRBCをまず30分間にわたってTRAM34又は抗DARC抗体と共に、次に接着アッセイ前に37℃で30分間にわたって敗血症患者の血清と共にインキュベートした。
【0062】
結果
毎日、数十億もの老化RBCが定常状態RBCターンオーバー中に脾臓で分解される。脾臓の赤髄マクロファージは、老化RBCを認識し、それを除去し、RBCを分解し、赤血球産生のために鉄を再利用する機構を備えている。しかしながら、老化RBCが認識され、捕捉され、最終的に分解される正確な機構は、大部分が不明なままである。現在、脾臓におけるRBC保持は、主に脱水による変形性の低下によって引き起こされることが提示されている。脾臓内において、RBCは、再循環するために内皮細胞小孔を横断する必要がある。健康な変形性RBCは、これらの細胞小孔を通過することができるが、非変形性の老化RBCは、捕捉され、それにより赤髄マクロファージがこれらの細胞を認識し、貪食することが可能になる。脱水による変形性の低下の次に、古いRBCは、それらの表面におけるLu/BCAM及びCD44を含む接着分子を活性化し、これは、この器官におけるラミニン-α5及びヒアルロン酸に結合することによって脾臓における老化RBCの保持をもたらす。実際に、ヒト脾臓から単離されたRBCを調べると、低下された変形性(図1b)を示す脱水されたRBCの大きい亜集団(図1a)があることが分かった。さらに、これらのRBCは、接着分子Lu/BCAM及びCD44を活性化し、これにより、それらは、はるかに高い頻度でラミニン-α5及びヒアルロン酸に接着される(図1c)。したがって、分解されることが運命付けられたRBCは、脱水、低下した変形性及び接着分子活性化によって特徴付けられる。
【0063】
脱水によるRBCの変形性の低下は、RBC老化中に起こるだけでなく、輸血のためのRBC貯蔵中及び鎌状赤血球病でも起こり(図2a)、これは、悪化したRBCクリアランスが観察される2つの状況である。特に、これらの状況では接着分子活性化も観察され(図2b~c)、これは、増加したRBC分解の条件下において、RBCの同じ固有の変化が通常の生理的老化下でそれらの破壊をもたらすことを強く示唆している。
【0064】
RBC脱水及び同時に起こる変形性の低下は、RBCが細胞内恒常性を維持することができない場合に起こる。これは、HO流出を伴うガルドスチャネルとして知られているCa2+依存的K流出チャネルの活性化を引き起こす、細胞内のCa2+への一時的な漏出によって特徴付けられる。この現象は、ガルドス効果と呼ばれ、RBC老化の特徴であると見なされる。本発明者らは、老化RBCにおけるガルドス効果が、貯蔵された赤血球だけでなく、老化赤血球及び鎌状赤血球でも変形性の低下並びにRBC接着分子Lu/BCAM及びCD44の活性化を直接引き起こすことを以前に発見した(Klei et al. 2020, Blood Advances)。これは、脾臓における赤血球の保持をもたらすことを本発明者らが発見したRBC脱水及び接着分子活性化が複雑に結び付いていることを示す。
【0065】
炎症性貧血(AI)では、赤血球産生が減少し、RBC破壊が悪化する。これは、例えば、活発な出血を伴わずに、ヘモグロビンレベルが時間と共に急速に低下するICUの患者で示される。さらに、熱殺菌B.アボルツス(B. abortus)を用いて炎症を誘導するAIのマウスモデルにおいて、RBC破壊及び赤血球産生に対する同じ影響が観察され得る(図3)。
【0066】
AIにおける増加したRBC破壊は、脾臓マクロファージの炎症媒介性過剰活性化に起因するとされてきた。しかしながら、高感度のフローサイトメトリーに基づくアッセイを用いて、本発明者らは、IL-8を伴うRBCのインキュベーションがRBCのサブセットにおける細胞内カルシウムレベルの一時的なDARC依存的上昇を誘導するのに十分であったことを見出した(図4a~b)。RBCのサブセットのみがIL-8処理に応答したが、これは、全集団の変形性に対して影響を与えることが分かった(図4c)。これらの結果は、RBCの分解に寄与し得る、RBCの完全性に対するこの炎症性ケモカインの直接の影響を示す。本明細書に示されるように、RBCへのケモカイン結合の短期の影響は、RBCへの長期のケモカイン結合がAIの場合と同様にRBC水和状態にどのように影響を与え得るかの提示不足である可能性が大いにある(図6を参照されたい)。
【0067】
DARCは、循環RBCにおけるケモカインシンクとして機能するに過ぎない非シグナル伝達受容体であることが示唆されている。しかしながら、DARCへのケモカイン結合は、詳細に調べられておらず、DARCへのケモカイン結合の多くの側面は、依然として明らかになっていない。これは、SDF-1、好中球を骨髄に制限するケモカインが赤血球前駆細胞で特異的にDARCに結合することが分かったという、本発明者らが確認した最近の発見によって強調される(Klei et al., 2019 Sci Rep.)。本発明者らは、RBCと対照的に、赤血球前駆細胞がDARC依存的にSDF-1に結合することを見出した(図5a)。本発明者らは、DARCが、SDF-1相互作用網状赤血球(図5b)におけるいわゆるFy6エピトープ(図6b)の比較的高いアクセス性/露出によって反映されるように、異なる立体配置でRBC膜上に存在し得ることを確立した。
【0068】
IL-8がSDF-1と同様にDARC Fy6エピトープに結合することが記載されているため、本発明者らは、IL-8によってDARCへのSDF-1結合をブロックすることを最初に目的とした。驚くべきことに、IL-8の存在下において、網状赤血球は、少なく結合する代わりにはるかに多くSDF-1に結合していた(図6a)。さらに特筆すべきは、IL-8が、SDF-1が成熟RBCに結合することを可能にしたという発見であった(図6b)。SDF-1は、恒常性ケモカインであるため、本発明者らは、RBCにおけるDARCへのSDF-1のIL-8誘導性結合が、IL-8に関連するRBC脱水を抑え得るかどうか疑問を呈した(図5)。しかしながら、SDF-1の存在下において、IL-8は、さらにより強力なCa2+流入を誘導し(図6c)、RBC変形性の悪化した低下を引き起こした(図6d)。これは、Lu/BCAM及びCD44接着分子の著しい活性化をもたらすことが分かった(図6e)。
【0069】
最後に、それ以外には健康なRBCの促進された分解の次に、AIは、減少した赤血球産生によっても特徴付けられる。本発明者らは、赤芽球が赤血球と対照的にSDF-1に結合することを見出した(図6f)。
【0070】
総合すると、これらのデータは、健康なRBCがDARCへのIL-8の結合時に破壊の標的とされ、それによりAIで観察されるような循環RBCの急速な減少をもたらすことを示す。さらに、本発明者らは、DARCが様々なケモカインに同時に結合することが可能であることを示すだけでなく、本発明者らは、これが、RBCの変形性及び分解に対する大きい影響と共に、RBCにおけるシグナル伝達応答に強く影響を与えることも決定した。本発明者らは、RBCで誘発されるIL-8依存的シグナル伝達応答が赤芽球で同様に起こり、それにより慢性炎症がDARC媒介性シグナル伝達を介して赤血球産生にかなり影響し得ると仮定する(図7)。要約すると、本発明者らは、DARC媒介性シグナル伝達がRBCの増加した分解及びAIにおける赤血球産生の阻害をもたらすと仮定する。
【0071】
次に、炎症性ケモカインに応答したガルドスチャネルの阻害剤の効果を評価した。本発明者らによって実証されるように(Klei et al 2020、出版が決定された)、老化赤血球及び他に循環からクリアランスされやすい赤血球は、Ca2+流入誘導性脱水(ガルドス効果)に応答して、RBCの表面におけるラミニン-α5(Lu/BCAMのリガンド)及びヒアルロン酸(CD44のリガンド)への増加した接着を示す。したがって、接着分子とラミニン-α5(Lu/BCAMのリガンド)及び/又はヒアルロン酸との間のこの相互作用は、RBC脱水の尺度として評価される。
【0072】
したがって、敗血症患者のIL-8及び血清に応答したラミニン-α5及びヒアルロン酸への赤血球接着をTRAM34、ガルドスチャネルの阻害剤の非存在下及び存在下で評価した。
【0073】
図8Aで実証されるように、ドナーRBCの接着は、IL-8インキュベーションによって促進される。IL-8インキュベーションに応答したドナーRBCの接着は、ガルドスチャネルの阻害剤、TRAM34(図8B)及び抗DARC抗体(図8C)によって阻害される。重要なことに、敗血症患者の血清に応答したドナーRBCの接着もガルドスチャネルの阻害剤、TRAM34及び抗DARC抗体によって阻害される(図8D)。
【0074】
実施例2
この実施例では、炎症性貧血(AI)におけるRBCガルドスチャネルの阻害剤であるSenicapocの有効性を試験するときのマウスモデルの使用が記載される。マウスモデルにおいて、AIは、熱殺菌B.アボルツス(B. abortus)(BA)の注射によって誘導され得る。このモデルは、ヒトにおけるAIに酷似しており、RBC分解は、実際に、循環におけるRBCの増加したアポトーシスの結果として起こることが分かった。このプロトコルにおいて、インビボでAIを制限するSenicapocの有効性、RBCガルドスチャネルの阻害剤であるSenicapocを調べた。Senicapocは、全身性炎症中の貧血の発生を制限することが予想される。インビトロで、本発明者らは、SenicapocがRBCのAI媒介性分解を抑えるという強力な証拠を得た(実施例1を参照されたい)。Senicapocは、忍容性良好であることが示されている。要約すると、この実施例からの結果は、全身性炎症中の貧血の可能な治療としてのSenicapocの使用を示すであろう。
【0075】
簡潔に述べると、マウスに、熱殺菌BAを腹腔内(i.p.)注射し、その後、対照マウスは、14日の期間にわたって貧血を発生した。実験群にも熱殺菌BAを注射したが、それらは、実験中にSenicapocで処置されていた。6匹の動物が各条件について使用されていた。担体のみを投与された非感染動物について、これらのマウスが群内で大きいばらつきを示さないという仮定に基づき、1実験当たり3匹のマウスを使用した。
【0076】
本発明者らは、検出力分析を基準にするために、BAが全身性炎症を誘導した後に対照及びSenicapoc処置マウスを比較することを目的とするこの実験設備を使用した。本発明者らは、BA注射後の群のヘマトクリット値が主要な読み取りであることを確認した。ヘマトクリット値を読み取りとして用いて、検出力分析は、ヘマトクリット値の差がSenicapoc処置動物で少なくとも10%であることを本発明者らが予測する手段によるものである。本発明者らは、αを0.05に、及び90%の検出力を設定した。ヘマトクリット値の減少は、BA注射後のWTマウスにおけるHtの45%の減少と共にKautz et al. (2014)から推定される。この検出力分析は、1群当たり6匹のマウスの推定をもたらした。
【0077】
参照文献
・van den Akker, E., et al. The majority of the in vitro erythroid expansion potential resides in CD34(-) cells, outweighing the contribution of CD34(+) cells and significantly increasing the erythroblast yield from peripheral blood samples. Haematologica 95, 1594-1598, doi:10.3324/haematol.2009.019828 (2010).
・Ataga KI, et al. Efficacy and safety of the Gardos channel blocker, senicapoc (ICA-17043), in patients with sickle cell anemia. Blood 2008;111:3991-7.
・Durpes MC, et al. Effect of interleukin-8 and RANTES on the Gardos channel activity in sickle human red blood cells: role of the Duffy antigen receptor for chemokines. Blood Cells Mol Dis. 2010;44:219-23.
・Heideveld, E. et al. CD14+ cells from peripheral blood positively regulate hematopoietic stem and progenitor cell survival resulting in increased erythroid yield. Haematologica 100, 1396-1406, doi:10.3324/haematol.2015.125492 (2015).
・Klei TRL et al. Differential interaction between DARC and SDF-1 on erythrocytes and their precursors. Sci Rep. 2019 Nov 7;9(1):16245. doi: 10.1038/s41598-019-52186-6.Klei TRL. et al. Hemolysis in the spleen drives erythrocyte turnover. Blood. 2020 Oct 1;136(14):1579-1589. doi: 10.1182/blood.2020005351.
・Klei TRL. et al. The Gardos effect drives erythrocyte senescence and leads to Lu/BCAM and CD44 adhesion molecule activation; 2020 accepted for publication in Blood Advances.
・Leberbauer, C. et al. Different steroids co-regulate long-term expansion versus terminal differentiation in primary human erythroid progenitors. Blood 105, 85-94, doi:10.1182/blood-2004-03-1002 (2005).
・Patterson et al.,“Expression of the Duffy Antigen/Receptor for Chemokines (DARC) by the Inflamed Synovial Endothelium,”J. Pathol. 197(1): 108-116 (2002)
・Rivera A, et al. Modulation of Gardos channel activity by cytokines in sickle erythrocytes. Blood. 2002;99(1):357-603.
・Wulff and Castle. Therapeutic potential of KCa3.1 blockers: an overview of recent advances, and promising trends. Expert Rev Clin Pharmacol. 2010 May; 3(3): 385-396.
・van Zwieten, R. et al. Partial pyruvate kinase deficiency aggravates the phenotypic expression of band 3 deficiency in a family with hereditary spherocytosis. Am J Hematol 90, E35-39, doi:10.1002/ajh.23899 (2015).
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
【国際調査報告】